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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】レーザ光源の制御
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/068 20060101AFI20240524BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240524BHJP
   H05B 45/14 20200101ALI20240524BHJP
   H05B 45/345 20200101ALI20240524BHJP
   H05B 45/325 20200101ALI20240524BHJP
   H05B 45/48 20200101ALI20240524BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240524BHJP
【FI】
H01S5/068
F21V23/00 113
F21V23/00 117
H05B45/14
H05B45/345
H05B45/325
H05B45/48
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574277
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064574
(87)【国際公開番号】W WO2022253740
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21177036.7
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】アルランドゥ カルネクマール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェント マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴドヴィン オレクサンデル ヴァレンティノヴィッチ
【テーマコード(参考)】
3K014
3K273
5F173
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K273AA10
3K273BA24
3K273CA01
3K273EA07
3K273EA17
3K273EA25
3K273EA35
3K273EA36
3K273FA07
3K273FA14
3K273FA24
3K273FA26
3K273FA27
3K273FA29
3K273FA41
3K273GA18
3K273GA25
3K273GA28
3K273GA29
5F173SA02
5F173SA15
5F173SA32
5F173SE01
5F173SF03
5F173SF17
5F173SF34
(57)【要約】
レーザ回路は、レーザデバイスに電流を供給するための電流源を有する。パルス幅変調レーザ駆動電流が使用され、レーザ駆動電流の振幅及びデューティサイクルは、推定されるジャンクション温度に依存して設定される。このやり方においては、様々な動作温度及び所望の光出力パワーに対して効率が高く保たれ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザデバイスと、
前記レーザデバイスに電流を供給するよう適合される電流源であって、前記電流が、振幅及びデューティサイクルを有する電流源と、
前記電流源を制御するためのコントローラと、
前記レーザデバイスのジャンクション温度を推定することを可能にする信号をモニタするためのセンサ装置とを有するレーザ回路であって、
前記コントローラが、
前記レーザデバイスのジャンクション温度を推定し、
前記ジャンクション温度に依存して前記レーザデバイスへの前記電流の前記振幅を設定し、
前記レーザデバイスのために必要とされる電力に依存して前記レーザデバイスへの前記電流の前記デューティサイクルを設定するよう適合されるレーザ回路。
【請求項2】
前記電流源が、前記レーザデバイスと並列に又は前記レーザデバイスと直列に結合されるスイッチング要素を有し、前記スイッチング要素が、前記レーザデバイスへの前記電流の前記デューティサイクルを制御するよう構成される請求項1に記載のレーザ回路。
【請求項3】
前記コントローラが、所望の効率及び所望の光出力パワーを達成するよう、パルス幅変調レーザ駆動電流の電流振幅及びデューティサイクルを制御するよう適合される請求項1又は2に記載のレーザ回路。
【請求項4】
前記コントローラが、最大効率に対応する振幅において動作し、且つ前記所望の光出力パワーを供給するためのデューティサイクルにおいて動作するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルを制御するよう適合される請求項3に記載のレーザ回路。
【請求項5】
前記センサ装置が、前記レーザデバイスのケース温度を測定するための温度センサを有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレーザ回路。
【請求項6】
前記センサ装置が、光出力パワーを測定するための光束センサを有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレーザ回路。
【請求項7】
レーザデバイス電流を測定するための電流振幅測定デバイスを更に有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のレーザ回路電流。
【請求項8】
前記コントローラが、更に、前記レーザの出力パワーを決定し、更に前記出力パワーに依存して前記レーザ駆動電流の振幅及びデューティサイクルを設定するよう適合される請求項1乃至7のいずれか一項に記載のレーザ回路。
【請求項9】
前記レーザデバイスが、垂直共振器面発光レーザを有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載のレーザ回路。
【請求項10】
前記レーザデバイスが、1つ以上のレーザダイオードを有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のレーザ回路。
【請求項11】
一定の光出力パワーを供給するための照明回路を有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載のレーザ回路。
【請求項12】
レーザデバイスを制御する方法であって、
前記レーザデバイスのジャンクション温度を推定するステップと、
前記ジャンクション温度に依存してパルス幅変調レーザ駆動電流の振幅を設定するステップと、
前記レーザデバイスのために必要とされる電力に依存して前記パルス幅変調レーザ駆動電流のデューティサイクルを設定するステップと、
前記レーザデバイスに前記レーザ駆動電流を供給するステップとを有する方法。
【請求項13】
所望の効率及び所望の光出力パワーを達成するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルの設定を制御するステップを有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
最大効率に対応する振幅において動作し、且つ前記所望の光出力パワーを供給するためのデューティサイクルにおいて動作するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルを設定するステップを有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータにおいて実行されるときに請求項12乃至14のいずれか一項に記載の方法を実施するよう適合されるコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザは、実質的な光出力パワー(optical output power)を放出するためにレーザ発振閾値電流よりも高い駆動電流を必要とすることが一般に知られている。このレーザ発振電流未満では、光子生成の効率が非常に低く、故に、レーザ発振電流は、主に、効率の損失に大きく寄与するものとみなされ得る。それ故、効率の観点から、駆動電流がレーザ発振電流より大幅に高くなるように駆動電流を最大化することは有益である。
【0003】
最大効率のための最大駆動電流は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などのレーザのジャンクション温度(junction temperature)に強く依存する。高いジャンクション温度においては、順方向電流の関数としての光出力パワーの(極大値(local maxima)後の)より早いロールオーバ(rollover)が予想されることができ、このような最大効率は、ジャンクション温度依存性のものである。レーザ照明源の主な目的は、特定の量の光が可能な限り高い効率で発せられることを確実にすることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、異なるジャンクション温度をもたらす、全ての動作条件において(所望の光量に対応する)一定の出力パワーを供給することを可能にすることは望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項によって規定されている。
【0006】
本発明の或る態様による例によれば、
レーザデバイスと、
前記レーザデバイスに電流を供給するよう適合される電流源であって、前記電流が、振幅及びデューティサイクルを有する電流源と、
前記電流源を制御するためのコントローラと、
前記レーザデバイスのジャンクション温度を推定することを可能にする信号をモニタするためのセンサ装置とを有するレーザ回路であって、
前記コントローラが、
- 前記レーザデバイスのジャンクション温度を推定し、
- 前記ジャンクション温度に依存して前記レーザデバイスへの前記電流の前記振幅を設定し、
- 前記レーザデバイスのために必要とされる電力に依存して前記レーザデバイスへの前記電流の前記デューティサイクルを設定するよう適合されるレーザ回路が提供される。
【0007】
このレーザ回路は、様々なジャンクション温度における高効率での動作を可能にするために、パルス幅変調レーザ駆動電流の振幅及びデューティサイクルの両方を使用する。高効率での動作を可能にすることによって、エネルギが節約されるだけでなく、電力損失の問題も軽減される。
【0008】
とりわけ温度の上昇は、前記コントローラが、効率的な動作ポイントにシフトするために前記電流の振幅の減少を実施し、同様の平均電流を維持するためにデューティサイクルの増加を実施することをもたらす。
【0009】
レーザの平均出力パワーは、PWM制御信号のデューティサイクルを適応させることによって、又は駆動電流を適応させることによって、制御されることができることが知られている。前記パワーを低下させるために前記駆動電流を下げることは、上記で説明したように、レーザ発振電流の寄与の増大によって効率が損なわれることから、有益ではない。最大効率のための駆動電流振幅は温度依存性のものであるので、PWM制御信号のデューティサイクルを制御するだけでレーザの出力パワーを低下させることも望ましくない。
【0010】
従って、本発明は、所望の出力の維持だけでなく、高効率動作も可能にするために、これらの2つのアプローチを組み合わせる。
【0011】
前記電流源は、前記レーザデバイスと並列に又は前記レーザデバイスと直列に結合されるスイッチング要素を有してもよく、前記スイッチング要素は、前記レーザデバイスへの前記電流の前記デューティサイクルを制御するよう構成される。
【0012】
これは、シャントスイッチ又は直列スイッチとして機能し得る。その代わりに、前記電流源自体が、パルス幅変調出力電流を生成してもよい。
【0013】
前記コントローラは、例えば、所望の効率及び所望の光出力パワーを達成するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルを制御するよう適合される。前記所望の光出力パワーは、例えば、一定であり得る。
【0014】
前記コントローラは、例えば、最大効率に対応する振幅において動作し、且つ前記所望の光出力パワーを供給するためのデューティサイクルにおいて動作するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルを制御するよう適合される。最大効率での動作を可能にすることによって、エネルギが節約されるだけでなく、電力損失の問題も軽減される。最大効率のポイントは、前記レーザデバイスの既知の特性に基づいて推定されてもよく、又はフィードバック制御を提供するために、前記効率がモニタされてもよい。
【0015】
前記センサ装置は、前記レーザデバイスのケース温度を測定するための温度センサを有してもよい。前記ケース温度は、前記レーザデバイスのジャンクション温度の推定値を供給するために使用され得る。これは、例えば、前記デバイス及び前記デバイスのケーシングに関連する熱情報を使用し得る。
【0016】
前記センサ装置は、加えて、又はその代わりに、光出力パワーを測定するための光束センサを有してもよい。測定される前記光出力パワーは、特定のデバイスのジャンクション温度の関数として前記光出力パワーの特性を示すデータと組み合わせて使用され得る。この特性情報は、例えば、前記レーザデバイス自体の製造プロセス中に、又は前記レーザ回路全体の組立及び工場較正(factory calibration)中に取得されている可能性がある。
【0017】
レーザデバイス電流を測定するために、電流振幅測定デバイスも設けられてもよい。これは、前記駆動電流のフィードバック測定を提供する。前記レーザは、前記電流源の設定に従った電流で駆動されるが、前記電流を測定することは、電流設定における誤差を検出することを可能にする。
【0018】
前記コントローラは、更に、前記レーザの出力パワーを決定し、更に前記出力パワーに依存して前記レーザ駆動電流の振幅及びデューティサイクルを設定するよう適合されてもよい。
【0019】
このやり方においては、駆動条件に基づいて出力パワーを推測する代わりに、前記出力パワーを所望の一定レベルに維持することを可能にするよう、フィードバック制御ループが設けられる。
【0020】
前記レーザデバイスは、垂直共振器面発光レーザを有してもよい。前記レーザデバイスは、その代わりに、1つ以上のレーザダイオードを有してもよい。
【0021】
前記レーザ回路は、例えば、一定の光出力パワーを供給するための照明回路である。
【0022】
本発明は、レーザデバイスを制御する方法であって、
前記レーザデバイスのジャンクション温度を推定するステップと、
前記ジャンクション温度に依存してパルス幅変調レーザ駆動電流の振幅を設定するステップと、
前記レーザデバイスのために必要とされる電力に依存して前記パルス幅変調レーザ駆動電流のデューティサイクルを設定するステップと、
前記レーザデバイスに前記レーザ駆動電流を供給するステップとを有する方法も提供する。
【0023】
前記方法は、所望の効率及び所望の光出力パワーを達成するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルの設定を制御するステップを有してもよい。
【0024】
前記方法は、その場合、最大効率に対応する振幅において動作し、且つ前記所望の光出力パワーを供給するためのデューティサイクルにおいて動作するよう、前記パルス幅変調レーザ駆動電流の前記電流振幅及び前記デューティサイクルを設定するステップを有してもよい。
【0025】
本発明は、コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータにおいて実行されるときに上記で規定されている方法を実施するよう適合されるコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムも提供する。
【0026】
下記の実施形態を参照して、本発明のこれら及び他の態様を説明し、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のより良い理解のために、及び本発明がどのようにして実施され得るかをより明確に示すために、ここで、ほんの一例として、添付図面を参照する。
図1】特定のVCSELに関して測定されるような順方向電流の関数としての出力パワーを示す。
図2】異なるジャンクション温度に対して可変電流振幅及びデューティサイクルを持つPWM駆動電流の例を示す。
図3】レーザ回路の簡略化されたブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図を参照して本発明について説明する。
【0029】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、説明の目的のためのものでしかなく、本発明の範囲を限定しようとするものではないことは理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面からよりよく理解されるようになるだろう。図は、単に概略的なものに過ぎず、縮尺通りには描かれていないことは、理解されたい。図の全体を通して、同じ参照符号は、同じ又は同様のパーツを示すために使用されていることも、理解されたい。
【0030】
本発明は、レーザデバイスに電流を供給するための電流源を有するレーザ回路を提供する。パルス幅変調レーザ駆動電流が使用され、レーザ駆動電流の振幅及びデューティサイクルは、推定されるジャンクション温度に依存して設定される。このやり方においては、様々な動作温度及び所望の光出力パワーに対して、効率が高く保たれ得る。
【0031】
本発明は、異なるジャンクション温度においては異なる出力パワー・駆動電流関数を示す任意のレーザに適用され得る。これは、レーザ及びレーザダイオードに適用される。ほんの一例として、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)に対して行われた測定を使用して本発明を説明する。
【0032】
図1は、特定のVCSELに関して測定されるような順方向電流(x軸)の関数として光出力パワー(y軸)を示している。プロット10は、20℃のケース温度における光出力パワーを順方向電流の関数として表しており、プロット20は、60℃のケース温度におけるVCSELの出力パワーを順方向電流の関数として表している。
【0033】
より正確な評価のためには、
=Pdissth,(j-c)+T
によって、実際のジャンクション温度が決定されることができ、ここで、Tは、VCSELのジャンクション温度であり、Pdissは、放散電力であり、Rth,(j-c)は、ジャンクションとケースとの間の熱抵抗であり、Tは、ケース温度である。
【0034】
図1は、その代わりに、ケース温度の測定のみに基づいている。
【0035】
VCSELの主な効率面を見ると、大まかには、
【数1】
と示されることができ、ここで、ηVCSELは、VCSELの効率であり、Poptは、VCSELの光出力パワーであり、Pelecは、VCSELに印加される電力である。
【0036】
図1において見られ得るように、レーザ発振閾値電流未満の駆動電流レベルに対する出力パワーは、ゼロに近いままである。レーザ発振電流を上回る電流レベルは、出力パワーの比例的な増加をもたらす。より高い電流レベルにおいては、入力電流と出力パワーとの間の比例関係が失われ、曲線は水平になり始める。これは、例えばプロット10の場合は600mAを超える、より高い電流における効率の低下を示している。高いケース温度においては、例えばプロット20において800mA以降に見られ得るような、順方向電流の増加に対してVCSEL出力パワーが減少さえするようなロールオーバ現象(rollover effect)さえある。
【0037】
従って、VCSELは、ジャンクション温度に依存する最大動作効率を有すると結論付けられることができる。特定の駆動電流を超えると効率が低下するのは、ジャンクションにおけるキャリア濃度に関係しており、ジャンクションにおけるキャリア濃度自体が、ジャンクション温度依存性のものである。従って、ピークの効率は、ジャンクション温度に強く関係していることが分かった。
【0038】
レーザ照明アプリケーションは、一般的に、一定の所定の平均光出力パワーを必要とする。この制約により、ジャンクション内の高電流密度により効率が低下する動作を超えないようにしながら、順方向電流に比べてレーザ発振電流の部分が小さくなるように順方向電流を最大化することによって、最高の効率が達成されることができる。
【0039】
実際には、この最大順方向電流は、(出力パワー対入力電流の)線形比例勾配をわずかに超えたところ、従って、勾配がわずかに減少し始めるところにあることが予想され得る。従って、レーザデバイスの既知の特性曲線に基づいて、ジャンクション温度の測定又は推定に基づいて(推定)最大効率のポイントが決定され得る。
【0040】
次いで、PWM制御信号のデューティサイクルを設定することによって、所望の平均出力パワーが得られることができる。
【0041】
用途によって、ケース温度が変化する可能性があり、それによって、間接的にジャンクション温度も変化する可能性があり、従って、所与の用途に対しても、温度に依存してレーザデバイスの制御を適応させることが望ましい。
【0042】
図2は、2つの異なるジャンクション温度においてVCSEL出力パワーの効率を最大化するために、可変電流振幅及びデューティサイクルを持つPWM駆動電流の例を示している。プロット30は、25℃のジャンクション温度に対するものであり、プロット40は、60℃のジャンクション温度に対するものである。
【0043】
見られ得るように、より高いジャンクション温度においては、電流振幅は低減されるが、デューティサイクル比は増加される。電流振幅は、図1のプロットの線形部分がより低い駆動電流において終わることから、低減される。デューティサイクルは、所望の光出力パワーを維持するよう増加される。
【0044】
上で説明したような制御信号の使用は、低いケース温度においては、又は最初の起動時には、高い電流振幅及び低いデューティサイクルでの回路動作をもたらす。システムが熱くなるにつれて、デューティサイクルは増加する一方で、電流振幅は減少する。しかしながら、平均光出力パワーは一定のままである。
【0045】
図1から、温度上昇は、効率の低下を生じさせることが理解されることができ、このことは、半導体の加熱の増加をもたらし得る。従って、状況によっては、熱暴走状態が生じ得る。従って、レーザ制御技術の一部として、熱暴走に対する保護が使用され得る。加熱の増加は、例えば、以下に説明するように、決定又は推定されるジャンクション温度から決定されることができる。
【0046】
図3は、この場合にはレーザダイオードD1乃至Dnの直列接続として表されている、レーザデバイス102と、レーザデバイスに電流を供給するための電流源104とを有する、レーザ回路100の簡略化されたブロック図を示している。
【0047】
コントローラ106は、電流源104によってレーザデバイスに供給されるパルス幅変調レーザ駆動電流の電流振幅Idc及びデューティサイクルを制御する。このデューティサイクルを実施するPWM信号「PWM」が生成される。PWM信号は、スイッチング要素がオンにされるときには電流がレーザデバイスを迂回するようにスイッチング要素108に印加される。しかしながら、この電流経路によって導入される損失は最小限である。好ましくは、スイッチング要素は、トランジスタであり、より好ましくは、金属酸化物電界効果トランジスタ(MOSFET)である。スイッチング要素は、その代わりに、電流源とレーザデバイスとの間の直列スイッチとして形成されてもよいことに留意されたい。更に、電流源が、直接、PWMベースの信号を供給することができる場合には、外部PWMスイッチは必要ない。このような場合には、コントローラは、電流源104の電流源回路の一部であるとみなされ得る。
【0048】
センサ装置は、レーザデバイス102のジャンクション温度の決定又は推定を可能にする信号を供給するために使用される。示されている例においては、センサ装置は、レーザデバイスのケース温度を測定する温度センサ110を有する。このことは、ヒートシンクの温度Thsの検知に基づくジャンクション温度の間接的な測定を提供する。
【0049】
センサ装置は、その代わりに、出力光束(optical output flux)を表す信号IPDを生成する、図3においてはフォトダイオード112として示されている、光束センサを有してもよい。
【0050】
この場合には、コントローラのレジスタに記憶されるパラメータであって、測定される光出力パワー及びこれらの記憶されるパラメータからコントローラ内の計算によってジャンクション温度が推定されることができるようなパラメータとして、システムの熱特性(パワー特性及びヒートシンク特性)が使用され得る。
【0051】
とりわけ、測定される光出力パワーは、特定のデバイスのジャンクション温度の関数として光出力パワーの特性を示すデータと組み合わせて使用され得る。この特性情報は、例えば、レーザデバイス自体の製造プロセス中に、又はレーザ回路全体の組立及び工場較正中に取得されている可能性がある。
【0052】
従って、ジャンクション温度の測定は、開ループ検知システム(open-loop sensing system)によって行われる。
【0053】
しかしながら、検出器電流IPDを生成するフォトダイオードの使用は、効率がフィードバックループによって最適化されることができることを意味する。効率は、測定される光出力パワー、及び入力電力を決定する駆動条件(電流及び電圧)から導き出されることができる。
【0054】
電流振幅しか制御される必要がないように、LED又はレーザの順方向電圧は、所与のパラメータである。光検出器によって光パワーが測定される場合には、光出力パワーが測定されることができるので、駆動電流は、必ずしも測定される必要はない。閉ループ電流コントローラが使用される場合には、電流レベルを実際に測定する必要なしに電流レベルが設定されることができる。
【0055】
駆動電流は、電流源104の制御に基づいている。しかしながら、レーザデバイス電流を測定するために、電流振幅測定デバイスが設けられることもある。示されている例においては、これは、電流検出抵抗器114であり、電流検出抵抗器の両端の電圧が、電流Isenseを示す。
【0056】
コントローラ106は、レーザデバイスのジャンクション温度を推定し、ジャンクション温度に依存してレーザ駆動電流の振幅及びデューティサイクルを設定する。それによって、コントローラ106は、最大効率のVCSEL駆動方式を実施することができる。上記で説明したように、光出力パワーが測定される場合には、電流検知は、必ずしも必要とされない。
【0057】
最小限としては、温度推定、即ち、温度センサ及び/又は光出力センサしか必要とされない。現在の駆動条件は、電流センサに提供される電流設定Idcとデューティサイクルとに基づいて既知であると考えられ得る。温度の関数としての光束出力についての情報(即ち、図1の情報)が、コントローラによって使用され、この情報は、工場較正から又は構成要素のデータシートから得られ得る。しかしながら、追加の電流検知フィードバックが設けられることもある。
【0058】
レーザ発振閾値電流及び電流密度の影響は、構成要素ごとに異なる可能性があるので、工場較正中に自己学習サイクルが使用されてもよい。このやり方においては、コントローラは、様々な温度にわたるレーザ構成要素の挙動を認識する。このことは、冷却インターフェースの品質の違いも補償する。
【0059】
利用可能な検知に応じて、半導体の経年劣化の影響に適応するために、レーザデバイスの寿命にわたって自己学習プロセスが使用されてもよい。これは、例えば、検知される値を、レーザ発振閾値及びレーザ発振効率ロールオーバの期待値と比較するために使用し得る。自己学習プロセスは、最適効率の動作ポイントを連続的に又は起動/電源投入のたびにスキャンすることなくデューティサイクル又は電流振幅を適応させるために、経年劣化の傾向を追跡し、フィードバック又はフィードフォワード制御信号を適用する機能を持つコンピュータプログラムの使用を含む。
【0060】
本発明は、VCSELだけでなく、レーザダイオードを含むあらゆるタイプのレーザに適用され得る。
【0061】
本発明は、低周波動作に関してとりわけ興味深い。動作周波数は、例えば、10Hz乃至100kHzの範囲内、とりわけ、1kHz乃至20kHzの範囲内である。デューティサイクルは、0.1から0.9まで、一般的には0.5乃至0.9の範囲内で変化し得る。
【0062】
本発明は、レーザベースの照明システムにおいて使用され得るが、産業用のレーザベースの加熱システムなどの他のレーザシステムにおいても使用され得る。
【0063】
上述のように、実施形態は、コントローラを使用する。コントローラは、必要とされる様々な機能を実施するために、数多くのやり方で、ソフトウェア及び/又はハードウェアで実施されることができる。プロセッサは、必要とされる機能を実施するようソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る1つ以上のマイクロプロセッサを採用するコントローラの一例である。しかしながら、コントローラは、プロセッサを採用して、又はプロセッサを採用せずに実施されてもよく、一部の機能を実施するための専用ハードウェアと、他の機能を実施するためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路)との組み合わせとして実施されてもよい。
【0064】
本開示の様々な実施形態において採用され得るコントローラ構成要素の例は、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むが、これらに限定されない。
【0065】
様々な実装形態において、プロセッサ又はコントローラは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROMなどの、揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリなどの、1つ以上の記憶媒体と関連付けられてもよい。記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラにおいて実行されるときに、必要とされる機能を実施する、1つ以上のプログラムで符号化されてもよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定されてもよく、又は前記記憶媒体に記憶されている1つ以上のプログラムがプロセッサ又はコントローラにロードされることができるような可搬式のものあってもよい。
【0066】
当業者は、請求項記載の発明の実施において、図面、明細及び添付の特許請求の範囲の研究から、開示されている実施形態に対する変形を、理解し、達成することができる。特許請求の範囲において、「有する」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数性を除外しない。
【0067】
単に、或る特定の手段が、相互に異なる従属請求項において挙げられているという事実は、これらの手段の組み合わせは有利になるようには使用されることができないことを示すものではない。
【0068】
特許請求の範囲又は明細書において「~するよう適合される」という用語が使用されている場合には、「~するよう適合される」という用語は、「~するよう構成される」という用語と同等であるよう意図されていることに留意されたい。
【0069】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】