(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】構造化された充填材及びこれを採用した直交流式接触器
(51)【国際特許分類】
F28F 25/08 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
F28F25/08 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574283
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2022055516
(87)【国際公開番号】W WO2022264039
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503195045
【氏名又は名称】コーク-グリッシュ,リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリフォード スコット
(72)【発明者】
【氏名】ニーウァウト アイザック
(57)【要約】
直交流用途のための構造化された充填材モジュールが提供され、このモジュールは、互いに直立して平行な関係で位置決めされた複数の波形の構造化された充填材シートを含む。隣接する構造化された充填材シートの波部は、互いに接触しており、交差する角度で延在している。開口及び隆起畝は、波部側壁上に位置決めされてもよい。構造化された充填材モジュールは、空気から二酸化炭素を除去するためのプロセスなどにおいて、直交流式接触器で使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化された充填材モジュールであって、
直立し、互いに平行関係となるよう位置決めされた複数の構造化された充填材シートであって、
各構造化された充填材シートは、対向する端部と、上縁部と、下縁部と、交互の山部及び谷部から形成された波部と、前記山部及び谷部のうちの隣接する山部と谷部との間に延在する波部側壁と、前記構造化された充填材シートを通りぬけて流体が通過できるようにするための前記波部内の開口と、を有し、
前記構造化された充填材シートは、前記構造化された充填材シートのうちの各シートの前記波部が、前記構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの前記波部と接触し、前記構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの前記波部に対して交差する角度で延在し、前記対向する端部の一方から前記対向する端部の他方への第1の流体流と、前記構造化された充填材シートの前記上縁部から前記下縁部へと下降する第2の流体流との直交流のために構成されるように、構築及び配置されており、
各構造化された充填材シートは、前記対向する端部の一方における入口領域と、前記対向する端部の他方における出口領域と、前記入口領域と前記出口領域との間に延在するバルク領域と、を有し、
前記バルク領域内の前記波部は、5~35度、10~25度、10~20度、及び12~17度からなる群から選択される範囲内の水平軸に対して画定される傾斜角度に沿って長手方向に延在する、構造化された充填材シートを備える、構造化された充填材モジュール。
【請求項2】
各構造化された充填材シートにおける前記波部の少なくとも一部は、各々が、前記バルク領域に、前記傾斜角度に沿って長手方向に延在する複数の一次セグメントと、前記一次セグメントのうちの隣接する一次セグメントの間の周期セグメントと、を有し、前記傾斜角度は、前記一次セグメントのうちの連続するものが一方の横方向に変位するような変曲点を通過する、請求項1に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項3】
前記開口が、前記波部側壁上にある、請求項2に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項4】
前記開口が、前記波部側壁上、並びに前記山部及び谷部上にある、請求項3に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項5】
前記波部上に隆起畝を含む、請求項3に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項6】
前記隆起畝が、前記開口の間に延在し、前記開口のうちの1つを接続する、請求項5に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項7】
前記入口領域内の前記波部が、前記入口領域内への流体流の抵抗を低減するように延在し、前記出口領域内の前記波部が、前記出口領域から出る流体流の抵抗を低減するように延在する、請求項3に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項8】
前記構造化された充填材シートの各々において、前記周期セグメントが前記一次セグメントと同一平面上にある、請求項3に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項9】
前記山部及び谷部が丸みを帯びた頂点を有する、請求項3に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項10】
前記波部側壁上に隆起畝を含む、請求項9に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項11】
前記隆起畝が、前記開口の間に延在し、前記開口のそれぞれを接続する、請求項10に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項12】
前記隆起畝が直線状又は波状であり、前記第1の流体流及び第2の流体流が、前記構造化された充填材モジュール内の前記直交流内にある、請求項10に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項13】
前記開口が、前記波部側壁の中心に沿って整列している、請求項12に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項14】
構造化された充填材モジュールであって、
直立し、互いに平行関係となるよう位置決めされた複数の構造化された充填材シートであって、
各構造化された充填材シートは、対向する端部と、上縁部と、下縁部と、交互の山部及び谷部から形成された波部と、前記山部及び谷部のうちの隣接する山部と谷部との間に延在する波部側壁と、前記構造化された充填材シートを通りぬけて流体が通過できるようにするための前記波部側壁上の開口と、前記波部側壁上の隆起畝と、を有し、
前記構造化された充填材シートは、前記構造化された充填材シートのうちの各シートの前記波部が、前記構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの前記波部と接触し、前記構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの前記波部と交差する角度で延在するように構築され、かつ配置されており、
各構造化された充填材シートは、前記対向する端部の一方における入口領域と、前記対向する端部の他方における出口領域と、前記入口領域と前記出口領域との間に延在するバルク領域と、を有し、
各構造化された充填材シートにおける前記波部の少なくとも一部は、各々が、前記バルク領域に、水平軸に対して画定される前記傾斜角度に沿って長手方向に延在する複数の一次セグメントと、前記一次セグメントのうちの隣接する一次セグメントの間の周期セグメントと、を有し、前記傾斜角度は、前記一次セグメントのうちの連続するものが一方の横方向に変位するような変曲点を通過する、構造化された充填材シートを備え、
前記バルク領域における前記波部の前記一次セグメントの前記傾斜角度は、10~25度、10~20度、及び12~17度からなる群から選択される範囲にあり、
前記構造化された充填材シートの各々において、前記周期セグメントが前記一次セグメントと同一平面上にある、構造化された充填材モジュール。
【請求項15】
前記入口領域内の前記波部が、前記入口領域内への流体流の抵抗を低減するように延在し、前記出口領域内の前記波部が、前記出口領域から出る流体流の抵抗を低減するように延在する、請求項14に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項16】
前記隆起畝の少なくとも一部が、前記開口の間に延在し、前記開口のうちの1つを接続する、請求項14に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項17】
前記隆起畝が直線状又は波状であり、前記第1の流体流及び第2の流体流が、前記構造化された充填材モジュール内の前記直交流内にある、請求項16に記載の構造化された充填材モジュール。
【請求項18】
流体から成分を除去するための直交流式接触器であって、
開口内部領域を画定するシェルであって、前記開口内部領域において、第1の流体流が前記シェルの入口端部から水平方向に対向する出口端部へと流れ得る、シェルと、
前記第1の流体流が前記開放内部領域に存在するとき、前記第1の流体流のための流路において、前記開放内部領域に位置決めされている、請求項1に記載の1つ以上の構造化された充填材モジュールと、
前記第1の流体流が、前記開放内部領域に存在する状態で、前記1つ以上の構造化された充填材モジュールにおける相互作用のために、第2の流体流を上方から前記1つ以上の構造化された充填材モジュールに送達するための液体分配器と、
前記開放内部領域に前記第1の流体流が存在するとき、前記第1の流体流と相互作用後に、前記1つ以上の構造化された充填材モジュールの下方から前記第2の流体流を収集して除去するための液体収集器と、を備える、直交流式接触器。
【請求項19】
前記第1の流体流が存在するときに、前記流路に沿って前記1つ以上の構造化された充填材モジュールを通して、前記第1の流体流を吹き込むために前記シェルの前記入口端部にファンを含む、請求項18に記載の直交流式接触器。
【請求項20】
前記入口領域内の前記波部が、前記入口領域内への流体流の抵抗を低減するように延在し、前記出口領域内の前記波部が、前記出口領域から出る流体流の抵抗を低減するように延在し、前記隆起畝の少なくとも一部が、前記開口の間に延在して前記開口のうちの1つを接続する、請求項19に記載の直交流式接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年6月14日に出願された、米国特許仮出願第63/210,458号の優先権を主張し、参照によってその全体が本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、全般的に物質移動に関し、より詳細には、流体流間の物質移動を促進するために使用される構造化された充填材、及び構造化された充填材を使用する直交流式接触器に関するものである。
【0003】
物質移動カラムは、特定の組成物及び/又は温度の製品流を提供するために、少なくとも2つの流体流に接触するように構成される。本明細書で使用するとき、用語「物質移動カラム」は、2つ以上の流体相間の熱及び/又は物質移動を促進する、直交流液体蒸気接触器、吸収器、分離器、蒸留塔、分割壁塔、液-液抽出器、スクラバー、及び蒸発器を包含することを意図する。多成分吸収及び蒸留において使用されるものなどの、いくつかの物質移動カラムは、気相及び液相と接触するように構成され、一方、抽出器などの他の物質移動カラムは、異なる密度の2つの液相と接触するように構成されている。
【0004】
構造化された充填材は、異なる流体流が広がり、互いに相互作用して、流体流のうちの1つの1つ以上の成分が他方の流体流に移動する物質移動を引き起こすことができる表面を提供するために、及び/又は流体流間の熱伝達を引き起こすために、物質移動カラムにおいて一般的に使用される。これらの構造化された充填材は、典型的には、互いに直立して平行な関係で位置決めされた複数の構造化された充填材シートを備える。構造化された充填材シートの1つのタイプは波部を有し、隣接する構造化された充填材シート上の波部は、互いに交差する関係で配置されて、流体流のうちの1つのための流路を形成する。他方の流体流は、交差する波部によって形成された流路に沿って流れる流体流に対して交差する関係、すなわち直交流又は向流で流れることができる。
【0005】
流体流が相互作用する比表面積を増大させることによって、流体流が構造化された充填材を通って流れるときの流体流間の物質及びエネルギー移動を最大限にすることが一般に望ましい。しかしながら、比表面積の増加は、一般に圧力降下の増加をもたらし、これは、十分な圧力を作り出して圧力降下を克服することに関連する資本及び運用コストの観点から望ましくない。結果として、効率を犠牲にすることなく、より低い圧力降下を達成するか、又は圧力降下を著しく増加させることなく効率の向上を達成する、改良された構造化された充填材の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、互いに直立して平行な関係で位置決めされた複数の構造化された充填材シートを含む構造化された充填材モジュールであって、各構造化された充填材シートは、対向する端部と、上縁部と、下縁部と、交互の山部及び谷部から形成された波部と、山部及び谷部のうちの隣接する山部と谷部との間に延在する波部側壁と、構造化された充填材シートを通りぬけて流体が通過できるようにするための波部内の開口と、を備える、構造化された充填材モジュールに関するものである。構造化された充填材シートは、構造化された充填材シートのうちの各シートの波部が、構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの波部と接触し、構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの波部に対して交差する角度で延在し、対向する端部の一方から対向する端部の他方への第1の流体流と、構造化された充填材シートの上縁部から下縁部へと下降する第2の流体流との直交流のために構成されるように、構築及び配置されている。各構造化された充填材シートは、対向する端部の一方に入口領域、対向する端部の他方に出口領域、及び入口領域と出口領域との間に延在するバルク領域を有する。バルク領域内の波部は、5~35度、10~25度、10~20度、及び12~17度からなる群から選択される範囲で水平軸に対して画定される傾斜角度に沿って長手方向に延在する。一変形例では、各構造化された充填材シートにおける波部の少なくとも一部は、各々が、バルク領域に、水平軸に対して画定される傾斜角度に沿って長手方向に延在する複数の一次セグメントと、一次セグメントのうちの隣接する一次セグメントの間の周期セグメントと、を有し、傾斜角度が、一次セグメントのうちの連続するものが一方の横方向に変位するような変曲点を通過する。
【0007】
別の態様では、本発明は、互いに直立して平行な関係で位置決めされた複数の構造化された充填材シートを含む構造化された充填材モジュールであって、各構造化された充填材シートが、対向する端部と、上縁部と、下縁部と、交互の山部及び谷部から形成された波部と、山部及び谷部のうちの隣接する山部と谷部との間に延在する波部側壁と、構造化された充填材シートを通りぬけて流体が通過できるようにするための波部側壁上の開口と、波部側壁上の隆起畝とを備える、構造化された充填材モジュールに関するものである。構造化された充填材シートは、構造化された充填材シートのうちの各シートの波部が、構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの波部と接触し、構造化された充填材シートのうちの各隣接するシートの波部と交差する角度で延在するように構築され、かつ配置されている。各構造化された充填材シートは、対向する端部の一方に入口領域、対向する端部の他方に出口領域、及び入口領域と出口領域との間に延在するバルク領域を有する。各構造化された充填材シートにおける波部の少なくとも一部は、各々が、バルク領域に、水平軸に対して画定される傾斜角度に沿って長手方向に延在する複数の一次セグメントと、一次セグメントのうちの隣接する一次セグメントの間の周期セグメントと、を有し、傾斜角度が、一次セグメントのうちの連続するものが一方の横方向に変位するような変曲点を通過する。バルク領域における波部の一次セグメントの傾斜角度は、10~25度、10~20度、及び12~17度からなる群から選択される範囲内にあり、構造化された充填材シートの各々において、周期セグメントは一次セグメントと同一平面上にある。
【0008】
更なる態様において、本発明は、流体から成分を除去するための直交流式接触器を目的とする。直交流式接触器は、第1の流体流がシェルの入口端部から水平方向に対向する出口端部まで流れ得る、開放内部領域を画定するシェルを備える。上述したような1つ以上の構造化された充填材モジュールは、第1の流体流が開放内部領域に存在するとき、第1の流体流のための流路において開放内部領域に位置決めされる。液体分配器は、第1の流体流が、開放内部領域に存在する状態で、1つ以上の構造化された充填材モジュールにおける相互作用のために、第2の流体流を上方から1つ以上の構造化された充填材モジュールに送達するために提供される。液体収集器は、開放内部領域に第1の流体流が存在するとき、第1の流体流と相互作用後に、1つ以上の構造化された充填材モジュールの下方から第2の流体流を収集して除去するために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書の一部を形成し、様々な図において同様の構成要素を示すために同一の参照番号が使用され、様々な表面特徴の例示を助けるために等高線が使用される添付の図面は、以下の通りである。
【0010】
【
図1】直交流式接触器内に位置決めされた本発明の一実施形態によって構築された構造化された充填材モジュール及び他の構造体の詳細を示すために一部を破断した、直交流式接触器の形態の物質移動カラムの側面斜視図である。
【
図2】
図1に示される構造化された充填材モジュールにおいて使用される単一の構造化された充填材シートの1つの面を示す立面図である。
【
図3】
図1に示される構造化モジュールのうちの1つの一部を形成する多数の構造化された充填材シートの側面斜視図である。
【
図4】
図3に示される構造化された充填材シートであるが、そのうちの1つを異なる視点から見た断片斜視図である。
【
図5】
図4に示される構造化された充填材シートの端面立面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の多数の構造化された充填材シートの側面斜視図であり、
図3に示される構造化された充填材シートの第1の実施形態と類似しているが、第1の実施形態における隣接する開口間に延びて接続する隆起畝と、
図3に示す山部及び谷部上の開口とが欠如していることを示す図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態の多数の構造化された充填材シートの側面斜視図であり、
図6に示される構造化された充填材シートの第2の実施形態と類似しているが、第2の実施形態に示す単一の列ではなく、各波部側壁に2列の開口を使用していることを示す図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態の多数の構造化された充填材シートの側面斜視図であり、
図6に示される構造化された充填材シートの第2の実施形態と類似しているが、第2の実施形態に示された円形開口ではなく細長い開口を使用していることを示す図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態の多数の構造化された充填材シートの側面斜視図であり、
図6に示される構造化された充填材シートの第2の実施形態と類似しているが、隣接する開口間に延在し接続する隆起畝を含むことを示す図である。
【
図10】本発明の第6の実施形態の多数の構造化された充填材シートの側面斜視図であり、
図9に示される構造化された充填材シートの第5の実施形態と類似しているが、隆起畝が、隣接する波部側壁上の千鳥状配置で隣接する開口の一部のみの間に含まれていることを示す図である。
【
図11】本発明の第7の実施形態の単一の構造化された充填材シートの一部の側面斜視図であり、隆起畝が不連続であり、隣接する開口の間に延在して隣接する開口を接続するのではなく、開口の上下に列をなして位置決めされていることを示す図である。
【
図12】本発明の第8の実施形態による、構造化された充填材シートの端面立面図である。
【
図13】本発明の第9の実施形態による、構造化された充填材シートの端面立面図である。
【
図14】本発明の第10の実施形態による、構造化された充填材シートの端面立面図である。
【
図15】本発明の第11の実施形態による、構造化された充填材シートの端面立面図である。
【
図16】本発明の第12の実施形態による、構造化された充填材シートの端面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図面をより詳しく、最初に
図1を参照すると、様々な物質移動、熱交換、及び/又は反応プロセスに使用するために好適な物質移動カラムが、全体にわたって番号10で示されている。1つの具体例として、物質移動カラム10は、周囲空気から二酸化炭素を除去するために使用される直交流式接触器であってもよい。
【0012】
物質移動カラム10は、第1の流体流を入口端部16から開放内部領域14の水平方向に対向する出口端部18まで水平方向に通過させるための、水平方向に延在する開放内部領域14を画定するシェル12を備える。液体分配器20は、第2の流体流を上方から開放内部領域14内に送達するために、シェル12によって、又はシェル12とは別個に形成される。図示の実施形態では、液体分配器20は、第2の流体流を開放内部領域14の全部又は選択された部分に均一に分配する多孔板24によって開放内部領域14の上方に位置決めされ、開放内部領域14から分離された上部プレナム22を備える。入口ノズル26を使用して、第2の流体流を供給ライン(図示せず)から上部プレナム22内に送出することができる。
【0013】
液体収集器28は、第2の液体流が開放内部領域14内で第1の流体流と相互作用した後に第2の液体流を下から収集して除去するために、シェル12によって、又はシェル12とは別個に形成される。図示された実施形態では、液体収集器28は、下部プレナム30は、開放内部領域14の全て又は選択部分から第2の流体流を均一に受け取る、液体分配器20とともに使用される多孔板24と同様の別の多孔板32によって開放内部領域14の下に位置決めされ、開放内部領域14から分離された下部プレナム30を備える。出口ノズル34を使用して、第2の流体流を下部プレナム30からフローライン(図示せず)に送出することができる。液体分配器20及び液体収集器28の図示された実施形態は単に例示的な実施形態であり、他の設計が、第2の液体流を開放内部領域14に送達し、次いでそこから除去するために使用され得ることを理解されたい。
【0014】
物質移動カラム10はまた、下降する第2の流体流に対して直交流の状態で開放内部領域14を通る第1の流体流の流れを引き起こすために、開放内部領域14の入口端部16から上流に、様々なタイプのファン36又は他の加圧手段のいずれかを含むことができる。
【0015】
1つ以上の構造化された充填材モジュール38は、物質移動カラム10の開放内部領域14内に位置決めされ、開放内部領域14又はその一部の水平断面及び垂直断面を横切って延在し、それにより、構造化された充填材モジュール38の周囲を第1の流体流が流れる機会を最小限に抑えながら、第1の流体流が構造化された充填材モジュール38を通って流れるようにする。図示の実施形態では、構造化された充填材モジュール38は、垂直に積み重ねられて複数の層を形成する。複数の構造化された充填材モジュール38は、各層内で端部から端部まで及び左右交互に位置決めされてもよい。
【0016】
各構造化された充填材モジュール38は、互いに直立して平行な関係で位置決めされた複数の構造化された充填材シート40を備える。構造化された充填材シート40の各々は、物質移動カラム10内で経験された処理条件に耐えるのに十分な強度及び厚さを有する、様々な金属、プラスチック、又はセラミックのいずれかのような好適な硬質材料で構築される。構造化された充填材シート40の各々は、前面及び後面を呈し、その全て又は一部分は概して平滑であり、表面テクスチャ加工をする必要がないか、又は様々なタイプのテクスチャ加工、エンボス加工、溝、ライン、若しくはくぼみを含んでもよい。充填シート40の表面の形状は、充填シート40が使用される特定の用途に依存し、広がりを促進し、それによって、第1の流体流と第2の流体流との間の接触を最大化するように選択されてもよい。
【0017】
次に
図2を参照すると、各構造化された充填材シート40は、対向する端部42及び44、上縁部46、並びに下縁部48を有する。平行波部50は、構造化された充填材シート40に形成され、交互の山部52及び谷部54と、山部52及び谷部54のうちの隣接するものとの間に延在する波部側壁56とを備える。各構造化された充填材シート40の前側の山部52は、構造化された充填材シート40の反対側又は後側に谷部54を形成する。同様に、各構造化された充填材シート40の前側の谷部54は、構造化された充填材シート40の後側に山部52を形成する。波部50は、構造化された充填材シート40の高さ及び幅全体に沿って延在してもよく、概して、山部52及び谷部54のための丸みを帯びた頂点を伴う正弦波断面である。別の実施形態では、波部50は、三角形の断面を有する。
【0018】
図3に見られるように、構造化された充填材シート40は、構造化された充填材シートのうちの各シートの波部50が、構造化された充填材シート40のうちの各隣接するシートの波部と接触し、交差する角度で延在するように構築され、かつ配置されている。構造化された充填材シート40の隣接するシートは、対向する関係で位置決めされ、そのため構造化された充填材シート40のうちの1つの前側は、隣接する構造化された充填材シート40の後側に面する。隣接する構造化された充填材シート40は、構造化された充填材シート40の各シートにおける波部50が、構造化された充填材シート40の隣接するシートの波部と交差する、又は交差波部の様式で延在するように、更に配置される。この配列の結果として、構造化された充填材シート40の各シート内の波部50は、構造化された充填材シート40のうちの各隣接するシートの波部に対する角度で延在する。構造化された充填材シート40の各シートの前側の波部50の山部52の一部の全てが、構造化された充填材シート40の隣接するシートの後側の山部52と接触していてもよいが、又は全く接触しなくてもよい。
【0019】
各構造化された充填材シート40は、端部42に入口領域58、対向する端部44に出口領域60、及び入口領域58と出口領域60との間に延在するバルク領域62を有することができる。入口領域58内の波部50の部分は、入口領域58内への流体流の抵抗を低減するように延在してもよく、出口領域60内の波部50の部分は、同様に、出口領域60から出る流体流の抵抗を低減するように延在してもよい。一実施形態では、入口領域58内の波部50は、端部42における水平軸に対するより小さい傾斜角度から、バルク領域62に入るにつれてより大きい傾斜角度に移行する。同様に、出口領域58における波部50は、出口領域内で、バルク領域62との境界におけるより大きな傾斜角度から、対向する端部44におけるより小さな傾斜角度へと移行してもよい。波部50が、入口領域58及び出口領域60においてより大きな容量部分を有するのではなく、構造化された充填材シート40の全体にわたって同じ構造である場合、バルク領域62が構造化された充填材シート40の全体にわたって延在することが理解されたい。
【0020】
各構造化された充填材シート40における波部50の全て又は少なくとも一部は、それぞれ、
図4に最もよく見られるように、バルク領域62に、水平軸に対して定義された傾斜角度に沿って長手方向に延在する複数の一次セグメント64と、一次セグメント64のうちの隣接する一次セグメントの間の周期セグメント66とを有し、傾斜角度が、一次セグメント64のうちの連続するものが一方の横方向に変位するような変曲点を通過する。
図5で最もよく分かるように、波部50の一次セグメント64及び周期セグメント66は、各波部50の山部52がその全長に沿って同じ平面内にあり、各波部50の谷部54も同様にその全長に沿って同じ平面内にあるように、同一平面上にあってもよい。
図3及び
図6~
図10では、説明を容易にするために、一次セグメント64のうちの2つと、介在する周期セグメント66のうちの単一の1つのみが示されているが、
図1、
図2及び
図4に示されるような他の実施形態では、一次セグメント64のうちの3つ以上及び介在周期セグメント66が使用されてもよい。バルク領域62における波部50の一次セグメント64の傾斜角度は、5~35度、10~25度、10~20度、及び12~17度からなる群から選択される範囲内であってよい。一実施形態では、傾斜角度は15度である。
【0021】
波部50は、構造化された充填材シート40のうちの隣接するシートの波部50間の接触点が、周期セグメント66上ではなく、一次セグメント64上に単独で又は主として位置するように構築されてもよい。波部50はまた、いくつかの実施形態において、周期セグメント66が構造化された充填材シート40のうちの隣接するシートの上でオフセットされるように構築されてもよい。これは、
図2に示すように、各構造化された充填材シート40上の対向する端部42から異なる距離で周期セグメント66を離間させることによって達成することができ、その結果、構造化された充填材モジュール38の組み立て中に、隣接する構造化された充填材シート40を互いに対して反転させて、構造化された充填材シートのうちの隣接するシートの上に周期セグメント66の千鳥状配置を生じさせることができる。
【0022】
構造化された充填材シート40の各々は、構造化された充填材モジュール38内の蒸気及び液体分配を容易にするために、構造化された充填材シート40を通って延在する複数の開口68が設けられてもよい。各開口68は、関連する充填材シート40を通る流体の通過を可能にするための開口面積を提供する。いくつかの実施形態では、開口68の最大平面寸法は、約1mm~約13mm、約1.5mm~約10mm、約2mm~約8mm、又は約2.5mm~約6mmの範囲内であり得る。図面では概ね円形の形状を有するものとして示されているが、開口68は、三角形、長円形、楕円形、長方形、又は正方形などの他の形状を有してもよい。各開口68の最大平面寸法は、開口68の中心を通過する開口68の2つの側の間の最長線に沿って測定される。開口68が円形の形状を有するとき、最大平面寸法は、直径である。
【0023】
図7に示すようないくつかの実施形態では、開口68の各々の開口面積は、最小限に抑えられてもよく、そのため個々の開口68は、約80mm2以下、約50mm2以下、又は約30mm2以下の開口面積を有するが、単位面積当たりの開口68の数は、最大化され得、そのため構造化された充填シート40の各々の全開口面積は、関連付けられた構造化された充填シート40の全表面積に基づいて、約6~約20パーセント、約8~約18パーセント、約10~約16パーセント、又は約11~約15パーセントの範囲内である。これらの小さい開口68を多数使用することにより、構造化された充填材シート40の面上での液体の拡散及び構造化された充填材シート40の両面への液体の移動が用意になる。
【0024】
開口68は、
図6~
図10の実施形態に示されるように、波部側壁56上にのみ位置決めされてもよく、又は
図1~
図5及び
図11の実施形態に示されるように、山部52及び谷部54内に付加的に含まれてもよい。
図1~
図5及び
図11の実施形態に示すような一実施形態では、開口68は、波部側壁56並びに山部52及び谷部54上に存在するが、直交流用途における圧力降下を最小限に抑えるために波部側壁56上に集中している。
図1~
図11の実施形態の各々に示されるような別の実施形態では、開口68は、波部側壁56の中心に沿って1つ以上の列で整列される。
【0025】
構造化された充填材シート40はまた、液体の拡散を容易にするために、構造化された充填材シート40の片面又は両面に複数の隆起した隆起畝70を備えてもよい。隆起畝70は細長く、いくつかの実施形態では、
図1~
図5及び
図9~
図11に示すように、波部50の一次セグメント64の傾斜角度に概ね沿って延在してもよく、波部50の周期セグメント66の輪郭に沿ってもよい。隆起畝70は、
図10に示されるような一部の開口のうちの隣接する開口の間に延在して連結してもよく、
図1~
図5及び
図9に示されるような全ての開口68のうちの隣接する開口の間に延在して接続してもよく、又は
図11に示すように、いずれの開口にも延在して連結しなくてもよい。隆起畝70は、
図11に示されるように連続的であってもよく、又は周期的な間隙を有してもよく、
図10及び
図11に示されるように波部側壁のうちの隣接する側壁上などで、互いに対して千鳥状であってもよい。いくつかの実施形態では、
図1~
図5及び
図9~
図11に示すように、隆起畝70は直線状であってもよい。他の実施形態では、隆起畝70は波状であってもよい(図示せず)。一実施形態では、隆起畝70は、各構造化された充填材シート40の少なくとも前面又は後面上の開口68のうちの隣接する開口の30~100パーセントの間に延在することができる。他の実施形態では、隆起畝70は、各構造化された充填材シート40の前面及び又は後面上の開口68のうちの隣接する開口の50~100パーセント、75~100パーセント、85~100パーセント、又は95~100パーセントの間に延在することができる。
【0026】
構造化された充填材シート40のシートの対向面上の隆起畝70は、
図5に示されるように互いに整列されてもよく、又は
図12に示されるようにオフセットされてもよい。
図13~
図16に示すように、隆起畝70が構造充填シート40の対向面上でオフセットされている場合、隆起畝70とは反対側の構造化された充填材シート40の面は、隆起畝70の下にあるくぼみ又は谷部72を含むことができる。隆起畝70の断面形状は変化してもよく、
図12に示す正方形断面などの矩形断面を含む。
図13~
図16に示されるような他の実施形態では、隆起畝70は、片側又は両側の角度付き又は面取りされた壁、丸みを帯びた部分、及び曲線によって形成されてもよい。隆起畝70はまた、
図16に示されるような曲線間に間隙のない一連の滑らかな交差曲線として形成されてもよい。隆起畝70の一方の側を形成する壁は、
図15に示されるように、隆起畝70の他方の側を形成する壁よりも長くてもよく、これにより、隆起畝70の対向する側の波部50の部分を、異なる平面になるようにずらすことができる。
【0027】
横方向にオフセットされた一次セグメント64と、傾斜角度が変曲点を通過する介在周期セグメント66とを有する波部50を構築することにより、圧力降下を最小限に抑えながら良好な物質移動係数をもたらす第1の流体のための流路が形成されると考えられる。開口68が波部側壁56の中心線に沿って位置し、隆起畝70が開口68の隣接する開口の間に延在して接続し、波部50の一次セグメント64に15度の傾斜角度が使用された構造化された充填材シート40を備える構造化された充填材モジュール38は、直交流配置で二酸化炭素溶媒を使用して空気から二酸化炭素を除去するときに、市販の製品と比較して、改善された物質移動及び圧力降下性能を実証した。
【0028】
構造化された充填材モジュール38を組み込んだ物質移動カラム10は、二酸化炭素、硫化水素又は二酸化硫黄などの酸性ガスを周囲空気又は気体流から除去するための直交流式接触器としての動作によく適している。動作中、ファン36は、第1の流体流として周囲空気を、構造化された充填材モジュール38を通って流れるように、開放内部領域14を通って水平方向に導く。液体分配器20は、二酸化炭素又は他の酸性ガスのためのリーン溶媒を、第2の流体流として、構造化された充填材モジュール38内に上方から導く。構造化された充填材モジュール38を通る空気(又は他の気体流)及び溶媒の直交流は、第1の流体流中の二酸化炭素又は他の酸性ガスを溶媒中に可溶化させる。次いで、リッチソルベントは、液体収集器28によって収集され、除去される。
【0029】
以上により、本発明は、当該発明に固有である他の利点とともに上記の本明細書の目的及び目標を全て実現するようによく適合された発明であることが分かるであろう。
【0030】
特定の機能及び部分的組み合わせは有用なものであり、他の機能及び部分的組み合わせと関係なく使用され得ることが理解されるだろう。これは特許請求の範囲によって想到されるものであり、本発明の範囲内である。
【0031】
本発明の範囲から逸脱することなく多くの考えられる実施形態が本発明から作られてよいため、本明細書に記載された又は添付図面に示された全ての事項は例示として解釈されるべきで、限定する趣旨ではないことが理解されるべきである。
【国際調査報告】