(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】改善された遮音特性を有する積層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240524BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20240524BHJP
B60J 1/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
C08L29/14
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574344
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022030666
(87)【国際公開番号】W WO2022256197
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェンジー
【テーマコード(参考)】
4G061
4J002
【Fターム(参考)】
4G061AA11
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB18
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA23
4G061DA38
4J002BE061
4J002EH046
4J002FD026
(57)【要約】
改善された音特性または音響特性を有する積層グレージングが開示される。積層グレージングは、2種の剛性基材および多層ポリマー中間膜を含み、積層グレージングは、積層グレージングで直接測定したグレージング面積当たり(1/m
2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の剛性基材;
多層ポリマー中間膜;および
第2の剛性基材;
を含む積層グレージングであって、
前記多層ポリマー中間膜が:
第1の残留ヒドロキシル含有率および第1の残留アセテート含有率を有する第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂ならびに第1の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(T
g)を有する、第1の層;
第2の残留ヒドロキシル含有率を有する第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2の可塑剤を含み、20℃未満のガラス転移温度(T
g)を有する、第2の層;ならびに
第3の残留ヒドロキシル含有率を有する第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(T
g)を有する、第3の層
を含み、
前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層との間にあり、
手順1に従って測定したとき、前記積層グレージングは、前記積層グレージングで直接測定したグレージング面積当たり(1/m
2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450である、積層グレージング。
【請求項2】
前記第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および前記第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂が同じものである、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記第1の残留ヒドロキシル含有率と前記第2の残留ヒドロキシル含有率との差が、少なくとも2.0重量パーセントである、請求項1または2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記多層中間膜が、テーパー状中間膜である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記多層中間膜のうちの1種の層が、テーパー状外形を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記中間膜が、グラデーションカラーバンドを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記中間膜が、少なくとも1種の層においてIR吸収剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記中間膜が、非ポリ(ビニルアセタール)層をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記中間膜は、ISO16940によって測定した20℃でのMIM損失係数(LF)が少なくとも0.29である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記積層グレージングが、乗り物のサイドライト、サンルーフまたは他の窓である、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
第1のガラス基材;
多層ポリマー中間膜;および
第2の剛性基材;
を含む風防ガラスであって、
前記多層ポリマー中間膜が:
第1の残留ヒドロキシル含有率および第1の残留アセテート含有率を有する第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂ならびに第1の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(T
g)を有する、第1の層;
第2の残留ヒドロキシル含有率を有する第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2の可塑剤を含み、20℃未満のガラス転移温度(T
g)を有する、第2の層;ならびに
第3の残留ヒドロキシル含有率を有する第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(T
g)を有する、第3の層
を含み、
前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層との間にあり、
手順1に従って測定したとき、前記風防ガラスは、前記風防ガラスで直接測定した風防ガラス面積当たり(1/m
2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450である、風防ガラス。
【請求項12】
前記第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および前記第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂が同じものである、請求項11に記載の風防ガラス。
【請求項13】
前記第1の残留ヒドロキシル含有率と前記第2の残留ヒドロキシル含有率との差が、少なくとも2.0重量パーセントである、請求項11または12に記載の風防ガラス。
【請求項14】
前記多層中間膜がテーパー状中間膜である、請求項11から13のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【請求項15】
前記多層中間膜のうちの1種の層が、テーパー状外形を有する、請求項11から14のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【請求項16】
前記中間膜が、グラデーションカラーバンドを有する、請求項11から15のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【請求項17】
前記中間膜が、少なくとも1種の層においてIR吸収剤を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【請求項18】
前記中間膜が、非ポリ(ビニルアセタール)層をさらに含む、請求項11から17のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【請求項19】
前記中間膜は、ISO16940によって測定した20℃でのMIM損失係数(LF)が少なくとも0.29である、請求項11から18のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【請求項20】
乗り物におけるヘッドアップディスプレイ用途に使用される、請求項11から19のいずれか一項に記載の風防ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、複層ガラスパネル用のポリマー中間膜および少なくとも1種のポリマー中間膜シートを有する複層ガラスパネルの分野に関連する。詳細には、本開示は、風防ガラスで測定したときに、改善された減衰などの改善された音響特性を有する、多数の熱可塑性層を含むポリマー中間膜を含む複層パネルの分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
[0002]複層パネルは、一般に、基材(例えば、限定されるものではないが、ガラス、ポリエステル、ポリアクリレートまたはポリカーボネート)の2つのシートと、それらの間に挟まれた1種または複数種のポリマー中間膜とで構成されるパネルである。積層複層ガラスパネルは、建築上の窓の用途において、自動車および航空機の窓において、太陽光発電パネル(photovoltaic solar panel)において、一般的に利用される。はじめの2つの用途は、一般的に、合わせ安全ガラスと称される。合わせ安全ガラスにおける中間膜の主な機能は、ガラスに加えられる衝撃または力からのエネルギーを吸収すること、力が加えられガラスが壊れるときでさえ、結合されたガラスの層を保つこと、およびガラスが壊れて鋭利な破片になることを防ぐことである。加えて、中間膜は、ガラスにより一層高い遮音等級をもたらし、UV光および/またはIR光の透過を減らし、付随する窓の美的魅力を高めることができる。太陽電池用途に関して、中間膜の主な機能は、商業用途および住居用途において電気を生じ供給するために使用される太陽光発電パネルを封入することである。
【0003】
[0003]ガラスパネルの、ある特定の特性および性能特性を実現するために、複層中間膜または多層中間膜を利用することが一般的な手法になった。本明細書において、用語「多層」および「複層」は、2種以上の層を有する中間膜を意味し、多層および複層は、区別なく使用され得る。複層中間膜は、典型的には、少なくとも1種の軟質層および少なくとも1種の硬質層を含有する。2つのより剛性またはより硬質な「スキン」層の間に挟まれた1つの軟質「コア」層を有する中間膜が、ガラスパネルの遮音特性を考慮して設計された。逆の構成を有する、すなわち、2つのより軟質な層の間に挟まれた1つの硬質層を有する中間膜は、ガラスパネルの衝撃性能を改善することが明らかになり、やはり遮音を考慮して設計され得る。また、複層中間膜の例には、少なくとも1種の「透明な」層または無着色層、および少なくとも1種の着色層または少なくとも1種の従来の層、例えば非音響層、および少なくとも1種の音響層(すなわち、以下にさらに定められるような、音響特性、または遮音をもたらす能力もしくは音響透過を減らす能力を有する層)を有する中間膜も挙げられる。複層中間膜の他の例には、美的魅力のために様々な色を有する少なくとも2つの層を有する中間膜が挙げられる。着色層は、典型的には、顔料もしくは染料または顔料および染料のいくつかの組み合わせを含有する。
【0004】
[0004]中間膜の層は、一般に、ポリ(ビニルブチラール)などのポリマー樹脂を、1種または複数種の可塑剤と混合し、当業者に公知の任意の適用可能な工程または方法、例えば、限定されるものではないが、押出成形によって、シートにその混合物を溶融加工することによって製造される。複層中間膜は、共押出成形または積層などの工程によって製造することができ、層は、共に組み合わされて、一体構造を形成する。任意選択で、他の追加の構成成分を、多様な他の目的のために添加してもよい。中間膜シートは、形成された後、典型的には、以下に説明するように、輸送および保存ならびに複層ガラスパネルにおける後の使用のために、集められ巻かれる。
【0005】
[0005]複層ガラスパネルが、一般に、中間膜と組み合わせて製造される方法について、以下に簡潔に説明する。第1に、少なくとも1種のポリマー中間膜シート(単層または多層)を2つの基材の間に設置し、いかなる余分な中間膜も端部から切り取り、組立体を作り出す。多数のポリマー中間膜シートまたは複層を有するポリマー中間膜シート(または両方の組み合わせ)を2つの基材内に設置し、多数のポリマー中間膜を有する複層ガラスパネルを作り出すことは珍しくはない。次いで、当業者に公知の適用可能な工程または方法によって、例えば、ニップローラー、真空バッグまたは他の脱気メカニズムを介して、空気を組立体から取り除く。加えて、中間膜は、当業者に公知の任意の方法によって、基材に部分的に圧着される。最後のステップにおいて、最終的な一体構造を形成するために、この予備接合は、高温高圧積層法、または当業者に公知の任意の他の方法、例えば、限定されるものではないがオートクレーブによって、より恒久的な状態になる。
【0006】
[0006]多層中間膜、例えば、軟質コア層および2つのより硬質なスキン層を有する三層中間膜が市販されている。硬質スキン層は、中間膜のハンドリング、加工性および機械的強度をもたらし;軟質コア層は、音響減衰特性をもたらす。
【0007】
[0007]風防ガラスおよび側面積層物(side laminate)は、乗り物のキャビン面積の大部分を占め、乗り物のキャビンに入る外部騒音(例えば、風騒音、交通騒音、タイヤ騒音、エンジン騒音)の主な経路であるので、乗り物のキャビン騒音レベルにとっては、風防ガラスおよび側面積層物の振動減衰特性が重要である。高振動減衰風防ガラスおよび側面積層物を有することにより、外部の騒音または音をより吸収させることができ、キャビンがより静かに保たれる。
【0008】
[0008]風防ガラスの減衰を最大化し、その一方で、風防ガラス用途の産業安全要件を満たす必要性がある。本発明は、風防ガラスで直接測定したときに、安全風防ガラスを提供するのに必要な最大減衰損失係数をもたらし、また要求される耐衝撃性も満たす、中間膜を開示する。
【0009】
[0009]要するに、高性能積層物を提供するために、多層中間膜を使用することが一般的である。当分野において、多層中間膜において望ましい、良好な光学的特徴、機械的特徴および音響特徴を有する多層中間膜の開発の必要性がある。より詳細には、当分野において、風防ガラスで直接測定したときに、減衰損失係数などの良好な音響特性を有する多層中間膜の開発が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]当分野におけるこれらの問題および他の問題ゆえに、とりわけ、本明細書において記載されるものは:第1の剛性基材;多層ポリマー中間膜;および第2の剛性基材を含む積層グレージングであって;多層ポリマー中間膜が:第1の残留ヒドロキシル含有率および第1の残留アセテート含有率を有する第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂ならびに第1の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する、第1の層;第2の残留ヒドロキシル含有率を有する第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2の可塑剤を含み、20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する、第2の層;ならびに第3の残留ヒドロキシル含有率を有する第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する、第3の層を含み、第2の層が、第1の層と第3の層との間にあり、手順1に従って測定さしたとき、積層グレージングは、積層グレージングで直接測定したグレージング面積当たり(1/m2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450(0.0500、0.0550、0.0600、0.0650、0.0700、0.0750、0.0800、0.0850)である、積層グレージングである。
【0011】
[0011]一実施形態において、風防ガラスは:第1のガラス基材;多層ポリマー中間膜;および第2の剛性基材を含み;多層ポリマー中間膜が、第1の残留ヒドロキシル含有率および第1の残留アセテート含有率を有する第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂ならびに第1の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する、第1の層;第2の残留ヒドロキシル含有率を有する第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2の可塑剤を含み、20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する、第2の層;第3の残留ヒドロキシル含有率を有する第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する、第3の層を含み、第2の層が、第1の層と第3の層との間にあり、手順1に従って測定したとき、風防ガラスは、風防ガラスで直接測定した風防ガラス面積当たり(1/m2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450(0.0500、0.0550、0.0600、0.0650、0.0700、0.0750、0.0800、0.0850)である。
【0012】
[0012]実施形態において、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂は同じものである。実施形態において、第1の可塑剤および第3の可塑剤は同じものである。他の実施形態において、第2の可塑剤は、第1の可塑剤または第3の可塑剤の少なくとも一方と同じものである。
【0013】
[0013]実施形態において、第1の残留ヒドロキシル含有率と第2の残留ヒドロキシル含有率との差は、少なくとも2.0(2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0)重量パーセントである。
【0014】
[0014]実施形態において、多層中間膜はテーパー状中間膜である。実施形態において、多層中間膜のうちの1種の層は、テーパー状外形を有し、他の実施形態において、多層中間膜の全ての層は、テーパー状外形を有する。
【0015】
[0015]実施形態において、中間膜は、グラデーションカラーバンド(gradient color band)を有する。実施形態において、中間膜は、少なくとも1種の層においてIR吸収剤を含む。
【0016】
[0016]実施形態において、中間膜は、非ポリ(ビニルアセタール)層をさらに含む。
【0017】
[0017]実施形態において、中間膜は、ISO16940によって測定した20℃でのMIM損失係数(LF)が少なくとも0.29(0.30、0.31、0.32、0.33、0.34)である。
【0018】
[0018]本明細書で開示された通りのポリマー中間膜を作製する方法もまた開示される。
【0019】
[0019]実施形態において、積層グレージングは、乗り物の風防ガラス、サイドライト(side lite)、サンルーフまたは他の窓である。実施形態において、積層グレージングは、ヘッドアップディスプレイ用途において使用される。
【0020】
[0020]ある特定の実施形態において、剛性基材(または基材)はガラスである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】[0021]第1の振動モードで風防ガラス減衰損失係数(η)を測定するための励振に対する振動応答曲線の一例を示す図である。
【
図2】[0022]風防ガラス2について、実験室MIM損失係数(LF)と比較した風防ガラス減衰損失係数(η)を示すグラフである。
【
図3】[0023]風防ガラス1について、実験室MIM損失係数(LF)と比較した風防ガラス減衰損失係数(η)を示すグラフである。
【
図4】[0024]両方の風防ガラスについて、実験室MIM損失係数(LF)と比較した風防ガラス面積当たり(1/m
2)の風防ガラス減衰損失係数(η)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0025]とりわけ、本明細書において記載されるものは、第1の剛性基材および第2の剛性基材ならびに多層ポリマー中間膜で構成される積層グレージングである。本開示の積層グレージングは、減衰損失係数によって測定したとき、改善された音響特性または遮音特性を有する。本発明の積層グレージングは、積層グレージングで直接測定した積層グレージング面積当たり(1/m2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450(0.0500、0.0550、0.0600、0.0650、0.0700、0.0750、0.0800、0.0850)である。
【0023】
[0026]中間膜を含む複層ガラスパネルもまた記載される。本発明の多層中間膜は、複層ガラスパネル用途、例えば、数ある用途の中でも、風防ガラス、サイドウインドウ、サンルーフならびに屋根および建築物の窓における、安全ガラスに使用することができる。
【0024】
[0027]多層ポリマー中間膜のそれぞれの層は、1種または複数種のポリマー樹脂、例えばポリ(ビニルアセタール)樹脂(例えばPVB)、および1種または複数種の可塑剤を混合することによって作製され得る。多層中間膜は、一般に、様々な組成の、2種以上の層および2種以上の樹脂を含有する。例えば、様々な残留ヒドロキシル含有率および/または様々な残留アセテート含有率のポリ(ビニルアセタール)樹脂、例えばPVB樹脂は、多層中間膜組成物の層に好適である。2種の層を含む多層において、2種の層の少なくとも一方は軟質層であり、他方の層は硬質層である。本明細書において、「軟質層」または「より軟質な層」は、約20℃未満のガラス転移温度を有する層である。本明細書において、「硬質層」または「より硬質な層」は、別の層よりもより硬質またはより剛性であり、別の層(例えば、より軟質な層)よりも一般に少なくとも2度(2℃)高いガラス転移温度を有する層を、一般に指す。
【0025】
[0028]組成物から形成された多層中間膜は、2つ以上のガラス転移を含有し、最低のガラス転移が、20℃未満、または15℃未満、または10℃未満、または5℃未満、または0℃未満、または-5℃未満、または-10℃未満で起こる。
【0026】
[0029]従来の多層中間膜、例えば三層音響中間膜は、低い残留ヒドロキシル含有率および高量の従来の可塑剤を有する単一のポリ(ビニルブチラール)(「PVB」)樹脂で構成される軟質コア層、ならびに顕著に高い残留ヒドロキシル含有率を有する2つの硬質スキン層を含有する(例えば、米国特許第5340654号、米国特許第5190826号、および米国特許第7510771号参照)。PVBコア樹脂における残留ヒドロキシル含有率および可塑剤の量は、中間膜が、乗り物および建物に備え付けられた風防ガラスおよび窓などの複層ガラスパネルにとって、周囲条件下で最適な遮音特性をもたらすように、最適化される。
【0027】
[0030]三層などの多層音響中間膜は、(1)可塑剤または可塑剤の混合物を選択するステップ、(2)スキン層(複数可)およびコア層(複数可)のために樹脂(複数可)を選択するステップ、(3)コア層(複数可)とスキン層(複数可)との間の可塑剤平衡を維持するステップ(例えば、特定の特性を有する樹脂を選択することによって)、ならびに(4)共押出成形または積層などの適用可能な方法によって、コア層(複数可)およびスキン層(複数可)を組み合わせて、多層中間膜を形成するステップによって設計され製造され得る。得られた多層音響中間膜は、従来の多層中間膜の他の好ましい特徴および望ましい特徴、例えば、多層音響中間膜で作製されたガラスパネルの光学特性および機械的強度を犠牲にすることなく、優れた透明性および遮音特性をもたらす。
【0028】
[0031]一般の中間膜および本開示の中間膜の両方ならびにそれらの形成において見出される、一部の専門用語および共通の成分について説明する。本明細書における用語「ポリマー中間膜シート」、「中間膜」および「ポリマーメルトシート」は、一般に、単層シートまたは多層中間膜を明示することができる。「単層シート」は、その名前が含意するように、1つの層として押出成型された単一のポリマー層である。他方で、多層中間膜は、別々に押出成形された層、共押出成形層、または別々に押出成形された層および共押出成形層の任意の組み合わせなどの、多数の層を含むことができる。したがって、多層中間膜は、例えば:共に組み合わせた2種以上の単層シート(「複数層シート」);共に共押出成形された2種以上の層(「共押出成形シート」);共に組み合わせた2種以上の共押出成形シート;少なくとも1種の単層シートおよび少なくとも1種の共押出成形シートの組み合わせ;単層シートおよび複数層シートの組み合わせ;ならびに少なくとも1種の複数層シートおよび少なくとも1種の共押出成形シートの組み合わせを含むことができる。本開示の多様な実施形態において、多層中間膜は、互いに直接接触して配置された少なくとも2種のポリマー層(例えば、単層または共押出成形された多層および/もしくは共に積層された多層)を含み、それぞれの層は、以下にさらに十分に詳述するようなポリマー樹脂を含む。本明細書において、少なくとも3つの層を有する多層中間膜について、「スキン層」は、一般に、中間膜の外層を指し、「コア層」は、一般に、内層(複数可)を指す。したがって、例示的な一実施形態は、スキン層//コア層//スキン層である。スキン層//コア層//スキン層構成を有する多層中間膜において、一部の実施形態で、スキン層はより硬質であってもよく、コア層はより軟質であってもよく、他の実施形態で、スキン層はより軟質であってもよく、コア層はより硬質であってもよい。
【0029】
[0032]ポリ(ビニルアセタール)樹脂は、酸触媒の存在下で、ポリビニルアルコール(「PVOH」)を1種または複数種のアルデヒド、例えばブチルアルデヒドと反応させ、樹脂を分離、安定化および乾燥することによる、公知のアセタール化法によって製造される。こうしたアセタール化法は、例えば、米国特許第2282057号および米国特許第2282026号、ならびにWade,B.2016,Vinyl AcetalPolymers,Encyclopedia of Polymer Science and Technology.1~22(オンライン、著作権 2016 John Wiley&Sons,Inc.)に開示されており、それらの開示全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。樹脂は、多様な形態、例えば、Eastman Chemical社の完全子会社であるSolutia Inc.からButvar(登録商標)樹脂として市販されている。
【0030】
[0033]本明細書において、ポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含有率(ビニルアルコール重量%またはPVOH重量%として計算される)は、加工処理が完了した後にポリマー鎖に残るヒドロキシル基の量を指す。例えば、PVBは、ポリ(酢酸ビニル)をポリビニルアルコール(PVOH)に加水分解し、次いでPVOHをブチルアルデヒドと反応させることによって生産され得る。ポリ酢酸ビニルを加水分解する方法において、典型的には、アセテート側基の全てがヒドロキシル基に変換されるわけではない。さらに、ブチルアルデヒドとの反応により、典型的には、全てのヒドロキシル基がアセタール基に変換されることにはならない。結果として、いずれの完成PVB樹脂においても、典型的には、ポリマー鎖の側基として、残留アセテート基(酢酸ビニル基として)および残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)が存在することになる。本明細書において、残留アセテート含有率(ポリ(ビニルアセタール)中の酢酸ビニル含有率%またはポリ(酢酸ビニル)(PVAc)重量%として計算される)は、ポリマー鎖に残った残留基の量を指す。本明細書において、残留ヒドロキシル含有率および残留アセテート含有率は、ASTM D1396によって、重量パーセント(wt.%)基準で測定される。
【0031】
[0034]実施形態において、本発明の多層中間膜が三層である場合、コア層は軟質層であり、スキン層は硬質層である。他の実施形態において、コア層は硬質であり、スキン層はより軟質である。他の組み合わせおよび他の層数も可能である。
【0032】
[0035]多様な実施形態において、中間膜が三層などの多層中間膜である場合、軟質(またはコア)層は、PVOH%として計算したヒドロキシル基を約7~約16重量パーセント(wt.%)、約7~約14wt.%、約9~約14wt.%、約8.5~約12wt.%含むポリ(ビニルアセタール)樹脂(または第1の樹脂)、ある特定の実施形態について、PVOH%として計算したヒドロキシル基を約11~約13wt.%含むポリ(ビニルアセタール)樹脂(または第1の樹脂)を含むが、他の量も可能である。樹脂はまた、ポリ(酢酸ビニル)として計算される残留アセテート基を30wt.%未満、残留アセテート基を25wt.%未満、残留アセテート基を20wt.%未満、15wt.%未満、13wt.%未満、10wt.%未満、7wt.%未満、5wt.%未満、もしくは1wt.%未満、もしくは0.5wt.%未満含むこともでき、または残留アセテート基を0~30wt.%、1~30wt.%、2~25wt.%、5~20wt.%、もしくは7~15wt.%の範囲で含むこともでき、残りは、アセタール、例えばブチルアルデヒド(これはイソブチルアルデヒドアセタール基を含む)であるが、任意選択で別のアセタール基、例えば、2-エチルヘキサナールアセタール基、またはブチルアルデヒドアセタール基および2-エチルヘキサナールアセタール基の混合である。
【0033】
[0036]多様な実施形態において、中間膜が三層などの多層中間膜である場合、硬質(またはスキン)層(複数可)は、軟質(またはコア)層における樹脂の残留ヒドロキシル含有率よりも多く、少なくとも2wt.%、または少なくとも3wt.%、少なくとも4wt.%、少なくとも5wt.%、少なくとも6wt.%、少なくとも7wt.%、少なくとも8wt.%、少なくとも9wt.%、少なくとも10wt.%、少なくとも11wt.%、少なくとも12wt.%、少なくとも13wt.%、少なくとも14wt.%、少なくとも15wt.%、少なくとも16wt.%、少なくとも17wt.%、少なくとも18wt.%、少なくとも19wt.%、もしくは少なくとも20wt.%、またはそれより多い残留ヒドロキシルを有するポリ(ビニルアセタール)樹脂を含み、スキン層における樹脂は、PVOH%として計算した残留ヒドロキシル基を約15~約35wt.%、約15~約30wt.%、または約17~約22wt.%;ある特定の実施形態については約17.25~約22.25wt.%含むことができるが、所望の特性に応じて、他の量も可能である。
【0034】
[0037]ポリ(ビニルアセタール)樹脂間のこの差は、より低い残留ヒドロキシル含有率を有する樹脂の残留ヒドロキシル含有率を、より高い残留ヒドロキシル含有率を有する樹脂の残留ヒドロキシル含有率から差し引くことによって計算される。本明細書において、用語「重量パーセント差」または「・・・差は、少なくとも・・・重量パーセントである」は、一方の数を他方から差し引くことによって計算される、2つの与えられた重量パーセント間の差を指す。例えば、残留ヒドロキシル含有率12重量パーセントを有するポリ(ビニルアセタール)樹脂は、残留ヒドロキシル含有率14重量パーセントを有するポリ(ビニルアセタール)樹脂よりも2重量パーセントより低い残留ヒドロキシル含有率を有する(14重量パーセント-12重量パーセント=2重量パーセント)。本明細書において、用語「様々な」は、別の値よりも、より高い値またはより低い値を指すことができる。1種または複数種の他のポリ(ビニルアセタール)層は、中間膜において存在することもでき、上記で示された範囲内の残留ヒドロキシルを有することができる。加えて、1種または複数種の他のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含有率は、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および/または第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留ヒドロキシル含有率と同じであっても異なってもよい。
【0035】
[0038]多様な実施形態において、軟質層用のポリ(ビニルアセタール)樹脂または硬質層(複数可)用のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ポリ(酢酸ビニル)として計算される残留アセテート基を30wt.%未満、残留アセテート基を25wt.%未満、残留アセテート基を20wt.%未満、15wt.%未満、13wt.%未満、10wt.%未満、7wt.%未満、5wt.%未満、または1wt.%未満含むこともでき、残りは、アセタール、例えばブチルアルデヒド(これはイソブチルアルデヒドアセタール基を含む)であるが、前述したように、任意選択で別のアセタール基、例えば、2-エチルヘキサナールアセタール基、またはブチルアルデヒドアセタール基および2-エチルヘキサナールアセタール基の混合である。
【0036】
[0039]一部の実施形態において、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、様々な残留アセテート含有率を有することができる。例えば、一部の実施形態において、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留アセテート含有率と、第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留アセテート含有率との差は、少なくとも約2重量パーセント、少なくとも約3重量パーセント、少なくとも約4重量パーセント、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約6重量パーセント、少なくとも約7重量パーセント、少なくとも約8重量パーセント、少なくとも約9重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約12重量パーセント、少なくとも約14重量パーセント、少なくとも約16重量パーセント、少なくとも約18重量パーセント、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約24重量パーセント、または少なくとも29重量パーセントであり得る。ポリ(ビニルアセタール)樹脂のうちの1種は、前述したように測定したとき、約4重量パーセント以下、約3重量パーセント以下、約2重量パーセント以下、または約1重量パーセント以下の残留アセテート含有率を有することができる。一部の実施形態において、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂のうちの一方は、少なくとも4重量パーセント、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約6重量パーセント、少なくとも約7重量パーセント、約8重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約12重量パーセント、少なくとも約14重量パーセント、少なくとも約16重量パーセント、少なくとも約18重量パーセント、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約25重量パーセント、または少なくとも約30重量パーセントの残留アセテート含有率を有することができる。他の実施形態において、第1のポリ(酢酸ビニル)樹脂および第2のポリ(酢酸ビニル)樹脂は共に、少なくとも4重量パーセント、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約6重量パーセント、少なくとも約7重量パーセント、約8重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、少なくとも約12重量パーセント、少なくとも約14重量パーセント、少なくとも約16重量パーセント、少なくとも約18重量パーセント、少なくとも約20重量パーセントの残留アセテート含有率を有することができる。第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂と第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂との間の残留アセテート含有率の差は、上記の範囲内であってもよく、またはその差は、約3重量パーセント未満、約2重量パーセント以下、約1重量パーセント以下、または約0.5重量パーセント以下であってもよい。中間膜において存在する追加のポリ(ビニルアセタール)層は、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および/または第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂の残留アセテート含有率と同じ残留アセテート含有率または異なる残留アセテート含有率を有することができる。
【0037】
[0040]本開示のポリ(ビニルアセタール)樹脂、例えば、1種(または複数)のポリ(ビニルブチラール)(PVB)樹脂は、典型的には、低角レーザー光散乱検出器、示差屈折計またはUV検出器を使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって測定して、50000ダルトンを超える、または500000ダルトン未満、または約50000~約500000ダルトン、または約70000~約500000ダルトン、または約100000~約425000ダルトンの分子量を有する。本明細書において、用語「分子量」は、重量平均分子量を意味する。
【0038】
[0041]中間膜シートのガラスへの接着を制御するために、本開示の中間膜において様々な接着制御剤(「ACA」)を使用することができる。本開示の中間膜の多様な実施形態において、中間膜は、樹脂100重量部当たりACA約0.003~約0.15重量部;樹脂100重量部当たりACA約0.01~約0.10重量部;および樹脂100重量部当たりACA約0.01~約0.04重量部を含むことができる。こうしたACAには、限定されるものではないが、米国特許第5728472号(その全体の開示は参照によって本明細書に組み込まれる)において開示されているACA、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、マグネシウムビス(2-エチルブチレート)、および/またはマグネシウムビス(2-エチルヘキサノエート)が挙げられる。
【0039】
[0042]他の添加剤を中間膜に組み込んで、最終製品におけるその性能を高め、ある特定の追加の特性を中間膜に付与することができる。こうした添加剤には、限定されるものではないが、当業者に公知の数ある添加剤の中でも、染料、顔料、安定剤(例えば紫外線安定剤)、抗酸化剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、IR吸収剤またはIR遮断剤(例えば、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、六ホウ化ランタン(LaB6)およびセシウムタングステン酸化物)、加工助剤、流動性向上添加剤、潤滑剤、衝撃改質剤、核生成剤、熱安定剤、UV吸収剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、増強添加剤、およびフィラーが挙げられる。
【0040】
[0043]多様な実施形態において、可塑剤は、高屈折率可塑剤、2種以上の高屈折率可塑剤の混合物、または従来の可塑剤および1種または複数種の高屈折率可塑剤(複数可)の混合物から選択され得る。
【0041】
[0044]本明細書において、屈折率約1.450以下を有する可塑剤は、「従来の可塑剤」と称される。従来の可塑剤には、限定されるものではないが、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「3GEH」)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジ(ブトキシエチル)アジペート、およびビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ならびにその混合物が挙げられる。これらの可塑剤は、屈折率約1.442~約1.449を有する。これと比較して、PVB樹脂は、屈折率およそ1.485~1.495を有する。多様な特性および用途のために生産された中間膜において、3GEH(屈折率=1.442)は、存在する最も一般的な可塑剤のうちの1つである。
【0042】
[0045]多様な実施形態において、1種または複数種の高屈折率可塑剤(複数可)が使用され得る。実施形態において、コア層および/またはスキン層の両方について、高屈折率可塑剤(複数可)は、可塑剤の屈折率が、少なくとも約1.460であり、または約1.460よりも高く、または約1.470よりも高く、または約1.480よりも高く、または約1.490よりも高く、または約1.500よりも高く、または1.510よりも高く、または1.520よりも高くあるように選択される。本明細書において、「高屈折率可塑剤」は、屈折率少なくとも約1.460を有する可塑剤である。一部の実施形態において、高屈折率可塑剤(複数可)は、従来の可塑剤と併せて使用され、一部の実施形態において、含まれる場合、従来の可塑剤はトリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート)(「3GEH」)であり、可塑剤混合物の屈折率は少なくとも1.460である。本明細書において、本開示の全体において使用される可塑剤または樹脂の屈折率は、ASTM D542に従って、波長589nmおよび25℃で測定されるか、またはASTM D542に従った文献で報告されたように測定される。
【0043】
[0046]使用され得る、高屈折率を有する可塑剤の例には、限定されるものではないが、ポリアジペート(RI約1.460~約1.485);エポキシド(RI約1.460~約1.480);フタレートおよびテレフタレート(RI約1.480~約1.540);ベンゾエート(RI約1.480~約1.550);ならびに他の特殊な可塑剤(RI約1.490~約1.520)が挙げられる。好適な高屈折率可塑剤の詳細な例には、限定されるものではないが、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3-ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ-o-トルエート、トリエチレングリコールジ-o-トルエート、ジプロピレングリコールジ-o-トルエート、1,2-オクチルジベンゾエート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、ビス-フェノールAビス(2-エチルヘキサオネート)、エトキシル化ノニルフェノール、ノニルフェニルテトラエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルテレフタレート、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールの安息香酸エステルの混合物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
[0047]中間膜における全可塑剤含有率は、0~120phr、もしくは0phrよりも高く、もしくは5phrよりも高く、もしくは10phrよりも高く、もしくは15phrよりも高く、もしくは20phrよりも高く、もしくは25phrよりも高く、もしくは30phrよりも高く、および/または120phr以下、もしくは115phr以下、もしくは110phr以下、もしくは105phr以下、もしくは100phr以下、もしくは95phr以下、もしくは90phr以下、もしくは85phr以下、もしくは80phr以下、もしくは75phr以下、もしくは70phr以下、または10~100phr、もしくは20~80phr、もしくは30~70phrの範囲内であってもよい。本開示の中間膜の多様な実施形態において、中間膜は、全可塑剤を5phrよりも多く、約5~約120phr、約10~約90phr、約20~約70phr、約30~約60phr、または120phr未満、または90phr未満、または60phr未満、または40phr未満、または30phr未満含む。全可塑剤含有率を上記で示したが、スキン層(複数可)またはコア層(複数可)の可塑剤含有率は、全可塑剤含有率とは異なってもよい。加えて、米国特許第7510771号(その全体の開示は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されているように、平衡状態のそれぞれの層の可塑剤含有率は、層のそれぞれの残留ヒドロキシル含有率によって求められるので、スキン層(複数可)およびコア層(複数可)は、前述された範囲で、様々な可塑剤の種類および様々な可塑剤含有率を有することができる。例えば、合わせたスキン層の厚さがコア層の厚さに等しい場合、中間膜の全可塑剤量約45.4phrならば、平衡状態で、中間膜は、それぞれ可塑剤30phrを含む2つのスキン層および可塑剤65phrを含むコア層を含むことができる。より厚いスキン層またはより薄いスキン層について、中間膜の全可塑剤量は、適宜変わることになる。本明細書において、中間膜の可塑剤含有率が与えられる場合、可塑剤含有率は、中間膜を製造するために使用された混合物またはメルトにおける可塑剤のphrを参照して求められる。
【0045】
[0048]中間膜における可塑剤の量は、中間膜のガラス転移温度(Tg)および最終音響性能に影響を与えるように調節され得る。ガラス転移温度(Tg)は、中間膜のガラス状態からゴム状態への転移を明示する温度である。一般に、より高い量の可塑剤充填は、より低いTgをもたらすことになる。以前より利用されている従来の中間膜は、一般に、音響(ノイズ低減)中間膜については約-10~25℃の範囲のTg、およびハリケーンおよび航空機の(より硬質なまたは構造的な)中間膜用途については最高で約45℃のTgを有した。ガラス転移温度(Tg)は、せん断モードの動的機械的熱分析(DMTA)によって求められ得る。DMTAは、所与の周波数および温度掃引速度で、温度の関数として、試験片の貯蔵弾性率(弾性)(G’)(パスカル)、損失弾性率(粘性)(G’’)(パスカル)、tanデルタ(=G’’/G’)を測定する。本明細書において、周波数1Hzおよび温度掃引速度3℃/分を使用した。次いで、Tgは、温度スケール(℃)のtanデルタピークの位置によって求められ、tanデルタピーク値は、tanデルタまたはピークtanデルタと称される。本明細書において、「tanデルタ」、「ピークtanデルタ」、「tanδ」、および「ピークtanδ」は、区別なく使用することができる。
【0046】
[0049]中間膜のガラス転移温度(Tg)はまた、中間膜の剛性にも関連し、一般に、ガラス転移温度がより高いほど、中間膜はより硬質である。一般に、ガラス転移温度30℃以上を有する中間膜は、風防機械的強度およびねじり剛性を増す。他方で、軟質層または中間膜(一般に、ガラス転移温度20℃未満を有する、層または中間膜によって特徴づけられる)は、減音効果(すなわち、音響特質)に寄与する。本開示の中間膜は、より硬質な層(複数可)について、約26℃以上、または約35℃以上のガラス転移温度、および軟質層(複数可)について、約20℃以下、または15℃以下、または10℃以下、または約5℃以下、または0℃以下、または約-5℃以下、または約-10℃以下のガラス転移温度を有することができるが、所望の性能および特性に応じて、他のガラス転移温度が可能である。
【0047】
[0050]一部の実施形態において、本開示の多層中間膜は、より軟質なコア層で積層された、より固いまたはより硬質なスキン層(例えば、硬質//軟質//硬質)を利用することによって、これらの2つの有利な特性(すなわち、強度および音響)を組み合わせている。多様な実施形態において、多層中間膜は、一般に、約26℃~約60℃、約26℃~40℃、約26℃以上、約30℃以上、および約35℃以上のガラス転移温度を有するポリ(ビニルアセタール)樹脂(複数可)を含む、より硬質な層(複数可)、ならびに約20℃以下、約10℃以下、または約5℃以下、または約0℃以下、または約-5℃以下、または約-10℃以下のガラス転移温度を有する、より軟質な層(複数可)を含む。
【0048】
[0051]押出成形もしくは共押出成形から形成または多数の層の積層によって形成された、最終の中間膜は、一般に、押出成形ダイを出たときのポリマーメルトのメルトフラクチャーによって形成されるので、ランダム粗面トポグラフィーを有し、さらに、当業者に公知の任意のエンボス加工法によって、一方の面または両方の面(例えばスキン層)のランダム粗面上をエンボス加工することができる。
【0049】
[0052]当業者に公知のポリマー中間膜シートを製造するための全ての方法が、本明細書に記載のポリマー中間膜シートを製造するための可能な方法として考慮されるが、この出願では、押出成形法および共押出成形法によって製造されたポリマー中間膜シートに焦点を当てる。本発明の最終の複層ガラスパネル積層体は、当分野で公知の積層法を使用して形成される。
【0050】
[0053]一般に、ポリマー中間膜シートの厚さまたはゲージは、約15ミル~100ミル(約0.38mm~約2.54mm)、約15ミル~60ミル(約0.38mm~約1.52mm)、約20ミル~約50ミル(約0.51~1.27mm)、および約15ミル~約35ミル(約0.38~約0.89mm)の範囲である。多様な実施形態において、多層中間膜の層のそれぞれ、例えばスキン層およびコア層は、約1ミル~99ミル(約0.025~2.51mm)、約1ミル~59ミル(約0.025~1.50mm)、1ミル~約29ミル(約0.025~0.74mm)、または約2ミル~約28ミル(約0.05~0.71mm)の厚さを有することができるが、所望の性能および特性に応じて、他の厚さが選択され得る。
【0051】
[0054]以下に記載の実施形態の多くは、PVBであるポリマー樹脂を言及するが、ポリマーは、複層パネルでの使用に好適な任意のポリマーであってもよいことが当業者に理解される。典型的なポリマーには、限定されるものではないが、ポリビニルアセタール(PVA)(例えば、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)またはポリ(ビニルイソブチラール)、PVisoBとも称されるポリ(ビニルブチラール)の異性体、脂肪族ポリウレタン(PU)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(塩化ビニル-co-メタクリレート)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステル共重合体、ポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート)、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、および酸共重合体、例えば、エチレン/カルボン酸共重合体および前述の可能な熱可塑性樹脂のいずれかから誘導されるそのイオノマー、前述のものの組み合わせなどが挙げられる。PVBおよびその異性体ポリビニルイソブチラール、ポリ塩化ビニル、イオノマーならびにポリウレタンは、一般に、中間膜に好適なポリマーであり、PVB(その異性体PVisoBを含める)は特に好適である。
【0052】
[0055]例示的な多層中間膜構成の例には、限定されるものではないが、PVB//PVisoB//PVB(PVisoB層は、様々な残留ヒドロキシル含有率および/もしくは様々な残留アセテート含有率を有する2種以上の樹脂または様々なポリマー組成を含む);PVC//PVB//PVC、PU//PVB//PU、イオノマー//PVB//イオノマー、イオノマー//PU//イオノマー、イオノマー//EVA//イオノマー(コア層PVB(PVisoBを含む)、PUまたはEVAは、1つのガラス転移を有する1種の樹脂、または様々なガラス転移を有する2種以上の樹脂を含むことができる)が挙げられる。あるいは、スキン層およびコア層は全て、同じまたは異なる原料樹脂を使用し、同じまたは異なる残留ヒドロキシル含有率および/または残留アセテート含有率を有するPVB、ならびに同じまたは異なる可塑剤であってもよい。樹脂およびポリマーの他の組み合わせが当業者に明らかになるであろう。
【0053】
[0056]ポリ(ビニルアセタール)またはポリ(ビニルブチラール)として一般に言及されるものの、任意のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、前述したように、任意の好適なアルデヒド、例えばイソブチルアルデヒドの残基を含むことができる。一部の実施形態において、1種または複数種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、少なくとも1種のC1~C10アルデヒドまたは少なくとも1種のC4~C8アルデヒドの残基を含むことができる。好適なC4~C8アルデヒドの例には、限定されるものではないが、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂のうちの少なくとも一方は、樹脂のアルデヒド残基の全重量に基づいて、少なくとも1種のC4~C8アルデヒドの残基を、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約30重量パーセント、少なくとも約40重量パーセント、少なくとも約50重量パーセント、少なくとも約60重量パーセント、もしくは少なくとも約70重量パーセント含むことができ、および/または少なくとも1種のC4~C8アルデヒドを、約90重量パーセント以下、約85重量パーセント以下、約80重量パーセント以下、約75重量パーセント以下、約70重量パーセント以下、もしくは約65重量パーセント以下含むことができ、または少なくとも1種のC4~C8アルデヒドを、約20~約90重量パーセント、約30~約80重量パーセント、もしくは約40~約70重量パーセントの範囲で含むことができる。C4~C8アルデヒドは、上記で列挙された群から選択され得るか、またはn-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0054】
[0057]多様な実施形態において、1種または複数種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)樹脂であってもよい。他の実施形態において、1種または複数種のポリ(ビニルアセタール)樹脂は、n-ブチルアルデヒドの残基を主に含むポリ(ビニルブチラール)樹脂であってもよく、例えば、樹脂の全アルデヒド残基の全重量に対して、ブチルアルデヒド以外のアルデヒドの残基を約50重量パーセント以下、約40重量パーセント以下、約30重量パーセント以下、約20重量パーセント以下、約10重量パーセント以下、約5重量パーセント以下、または約2重量パーセント以下含むことができる。
【0055】
[0058]本明細書において、複層パネルは、単一の基材、例えばガラス、アクリルまたはポリカーボネート(または他の剛性基材)を、その上に配置されたポリマー中間膜シート、および最も一般的にはそのポリマー中間膜上にわたってさらに配置されたポリマー膜と共に、含むことができる。ポリマー中間膜シートおよびポリマー膜の組み合わせは、一般的に、当分野で二層と称される。二層構造を有する典型的な複層パネルは、(ガラス)//(ポリマー中間膜シート)//(ポリマー膜)であり、ポリマー中間膜シートは、上記したように、多数の中間膜を含むことができる。ポリマー膜は、ポリマー中間膜シート単独で通常得られるものよりもより良好な光学特質を与える、滑らかな薄い剛性の基材を供給し、性能が向上した層として機能する。ポリマー膜は、それ自体、必要な耐貫通性およびガラス保持特性をもたらさないが、むしろ性能改善、例えば赤外吸収特性をもたらすという点で、本明細書で使用されるポリマー中間膜シートとは異なる。ポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)は、最も一般的に使用されるポリマー膜である。一般に、本明細書において、ポリマー膜は、ポリマーシートよりもより薄く、例えば、厚さ約0.001~0.2mmであるが、他の厚さが用いられてもよい。
【0056】
[0059]本開示の中間膜は、最も一般的には、2つの基材、例えば一対のガラスシート(または当分野で公知の他の剛性材料、例えば、ポリカーボネートもしくはアクリル)、およびその2つの基材の間に配置された中間膜を含む複層パネルにおいて利用される。こうした構造の一例は、(ガラス)//(ポリマー中間膜シート)//(ガラス)であり、上記したように、ポリマー中間膜シートが上記の多層中間膜を含むことができる。複層パネルのこれらの例は、限定を意味するものでは決してなく、当業者が、上記で記載されたもの以外の数多くの構造を、本開示の中間膜で作製できることを容易に認識するためのものである。
【0057】
[0060]典型的なガラス積層法は、以下のステップ:(1)2つの基材(例えば、ガラス)および中間膜を組み立てるステップ;(2)IR放射または対流手段によって組立体を短時間加熱するステップ;(3)第1の脱気のために、加圧ニップロール中に組立体を通すステップ;(4)組立体に約60℃~約120℃まで2回目の加熱を行い、中間膜の端部を封止するための、十分な一時的な接着を組立体に与えるステップ;(5)第2の加圧ニップロールに組立体を通して、中間膜の端部をさらに封止し、さらなるハンドリングを可能にするステップ;ならびに(6)約135℃から約150℃までの温度、および約180psigから約200psigまでの圧力で、約30~90分間、組立体をオートクレーブするステップを含む。実際のステップならびに時間および温度は、当業者に公知の通り、必要に応じて変えることができる。
【0058】
[0061]当分野で公知であり商業的に実施される中間膜-ガラス境界面の脱気において使用される他の手段(ステップ2~5)には、真空を利用して空気を取り除く真空バッグ法および真空リング法が挙げられる。
【0059】
[0062]実験室減衰損失係数(LF)は、ISO16940に記載されているように、機械インピーダンス測定(MIM)(実験室MIM損失係数とも称される)によって測定された。一対の2.3mmの透明ガラスを有する、幅25mm、長さ300mmの積層ガラス棒試料が準備され、振動シェーカー(ブリュエル・ケアー)によって棒の中心位置で励振される。インピーダンスヘッド(ブリュエル・ケアー)を使用して、棒を振動させるように励振する力、および振動の速度を測定し、得られた伝達関数がナショナルインスツルメンツのデータ収集および分析システムで記録される。第1の振動モードの損失係数は、ハーフパワー法を用いて計算される。積層物は、積層後、室温で4週間コンディショニングされ、実験室MIM試験を実施する前に、試験温度(例えば20℃)で少なくとも4時間コンディショニングされる。
【0060】
[0063]風防ガラス減衰損失係数(η)の測定は、以下の手順に従って行われた。手順1:風防ガラスは、試験前に、試験温度20+/-1℃で少なくとも4時間コンディショニングされる。風防ガラスは、バックミラーベースの中心で、長い(>40cm)ひも(例えば麻ひも)で吊り下げられ、支えに関連した減衰を最小化する。風防ガラスは、ブリュエル・ケアーインパルス衝撃ハンマーによって、風防ガラス上部側から400mm、運転手側に近い側面から400mmの位置で、外部表面で励振される。励振に対するパネル応答は、加速度計によって、同じ場所であるが、風防ガラス表面の内側で取得される。加速度計およびそれにつながるケーブルは、風防ガラス振動応答を歪ませないように、可能な限り軽くあるべきである。正確な励振力および応答を知ることにより、
図1に示すように、周波数応答関数が高速フーリエ変換プログラムによって生成された。第1の振動モードでの減衰損失係数(η)は、ハーフパワー法による周波数応答関数から計算される:η=Δf/f
0=(f
2-f
1)/f
0。
【0061】
[0064]応答曲線の一例を
図1に示す。応答曲線が極めて非対称であり、f
2を決定することができない場合、ピークのより急勾配側(通常ピークの左側)を使用して、ピークの右側に反映させることができた。したがって、減衰損失係数(η)は、η=Δf/f
0=2
*(f
0-f
1)/f
0として計算され得る。
【0062】
[0065]多様な実施形態において、本発明の中間膜は、風防ガラスで直接測定した風防ガラス面積当たり(1/m2)の風防ガラス減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450(0.0500、0.0550、0.0600、0.0650、0.0700、0.0750、0.0800、0.0850)である。
【0063】
[0066]以下の例の多くについて、実験室MIM損失係数とも称される減衰損失係数(LF)はまた、実験室において、ISO16940に準拠した機械インピーダンス測定によって、小さい積層物試料(大きさ(2.54cm×30.48cm(1インチ×12インチ)))で同様に測定された。実験室MIM損失係数LFは、風防ガラス減衰損失係数ηと相関し得る。可能な場合、実際の風防ガラス用途をより代表する前述の手順(手順1)を使用して、実際の風防ガラスで測定され特徴づけられた減衰損失係数を有することが望ましい。しかし、完全な風防ガラスを測定することは、常に可能または実用的であり得ず、ゆえに、本明細書に記載されたように、より小さい積層グレージングおよびより小さい試料が測定され得ることが理解される。
【0064】
[0067]平均破壊高さ(MBH)(耐衝撃性)は、ANSI/SAE Z26.1-1996によって、温度29.4℃で測定された。試験は、既知の厚さで測定され、必要に応じて、様々な中間膜を同じ中間膜厚さで比較することができるように、一定の厚さ(例えば、30ミルまたは45ミル)に規格化される。試験される積層物は、2.3mmの焼きなましガラスおよび以下の実施例に記載の中間膜で製造された。2.27キログラム(5ポンド)の鋼球を衝撃試験で使用した。以下に示した平均破壊高さデルタは、式:平均破壊高さデルタ(メートル)=実施例MBH-比較例1MBHによる、それぞれの実施例MBHと比較例1MBHとの差である。
【0065】
[0068]本発明はまた、以下に示される、次の実施形態を含む。
【0066】
[0069]一実施形態は:第1のガラス基材;多層ポリマー中間膜;および第2の剛性基材を含む積層グレージングであって;多層ポリマー中間膜が:第1の残留ヒドロキシル含有率および第1の残留アセテート含有率を有する第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂ならびに第1の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する、第1の層;第2の残留ヒドロキシル含有率を有する第2のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第2の可塑剤を含み、20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する、第2の層;第3の残留ヒドロキシル含有率を有する第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3の可塑剤を含み、26℃よりも高いガラス転移温度(Tg)を有する、第3の層を含み、第2の層が、第1の層と第3の層との間にあり、手順1に従って測定したとき、積層グレージングは、積層グレージングで直接測定したグレージング面積当たり(1/m2)の減衰損失係数(η)が少なくとも0.0450(0.0500、0.0550、0.0600、0.0650、0.0700、0.0750、0.0800、0.0850)である、積層グレージングを含む。積層グレージングは、風防ガラス、例えば、自動車または他の乗り物のための風防ガラスであってもよい。積層グレージングまたは風防ガラスは、乗り物におけるヘッドアップディスプレイ用途で使用され得る。
【0067】
[0070]実施形態において、積層グレージングまたは風防ガラスにおける中間膜は、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂が同じものである中間膜を含み得る。実施形態において、第1の残留ヒドロキシル含有率と第2の残留ヒドロキシル含有率との差は、少なくとも2.0(2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0)重量パーセントである。
【0068】
[0071]実施形態において、第1の可塑剤および第3の可塑剤は同じものである。他の実施形態において、第2の可塑剤は、第1の可塑剤または第3の可塑剤のうちの少なくとも一方と同じものである。実施形態において、少なくとも1種の可塑剤は、2種以上の可塑剤の混合物であってもよい。実施形態において、少なくとも1種の可塑剤は、本明細書において画定された高屈折率可塑剤であってもよい。
【0069】
[0072]実施形態において、多層中間膜はテーパー状中間膜である。テーパー状中間膜は、テーパー状にされた1種の層、テーパー状にされた2種の層、テーパー状にされた3種(以上)の層を有することができ、または全ての層がテーパー状にされてもよい。
【0070】
[0073]実施形態において、中間膜は、グラデーションカラーバンドを有するが、他の実施形態において、中間膜は、少なくとも1種の層においてIR吸収剤を含む。実施形態において、中間膜は、グラデーションカラーバンドを有することができ、かつ少なくとも1種の層においてIR吸収剤を含むことができる。
【0071】
[0074]実施形態において、中間膜は、少なくとも1種の非ポリ(ビニルアセタール)層をさらに含む。実施形態において、中間膜は、層間の接合層を含む。
【0072】
[0075]実施形態において、中間膜は、ISO16940によって測定した20℃でのMIM損失係数(LF)が、少なくとも0.29(0.30、0.31、0.32、0.33、0.34)である。
【0073】
[0076]本明細書に記載の特質のいずれも、任意の他の特質と組み合わせることができる。例えば、積層グレージングまたは風防ガラスは、非ポリ(ビニルアセタール)層およびグラデーションカラーバンドを有する中間膜を含むことができ、または中間膜は、少なくとも1種の層においてIR吸収剤を含むことができ、かつテーパー状中間膜であることもでき、または中間膜は、第1のポリ(ビニルアセタール)樹脂および第3のポリ(ビニルアセタール)樹脂が同じもので、かつ少なくとも第1の残留ヒドロキシル含有率および第2の残留ヒドロキシル含有率は、第1の残留ヒドロキシル含有率と第2の残留ヒドロキシル含有率との差が少なくとも2.0(2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0)重量パーセントであってもよい。他の特質の組み合わせもまた、含められ、考慮される。
【実施例】
【0074】
[0077]例示的な多層中間膜は、表1に示すように、ポリ(ビニルブチラール)樹脂100重量部を様々な量の可塑剤および他の一般的な添加剤(上記の通り)と混合し、溶融押出成形することによって製造された。開示された例について、3GEH可塑剤およびDPGジベンゾエート可塑剤の混合物が使用され、混合物における3GEHの量(%)は表1に示される。使用された3種のPVB樹脂は以下のものである:
[0078]PVB1:残留PVOH含有率約18.5重量%を有するPVB樹脂
[0079]PVB2:残留PVOH含有率約9重量%を有するPVB樹脂
[0080]PVB3:残留PVOH含有率約10.5重量%を有するPVB樹脂
[0081]加えて、市販の音響三層の比較例(Eastman Chemical社からのSaflex(登録商標)QシリーズPVB中間膜(比較例1)、および市販の競合標準音響PVB試料(比較例2))もまた、以下の表において示されるように使用された。
【0075】
[0082]次いで、表に示され以下により完全に記載されるように、多層中間膜を使用して、様々な積層物および風防ガラスを構成した。
【0076】
[0083]風防ガラスの減衰損失係数(η)などの音響特性の改善は、多層(三層)中間膜を含有する積層物の比較によって最も容易に理解され得る。以下に示し説明するように、これらの例は、多層中間膜に対して、ある種の変更が行われる場合の、風防ガラスの減衰特性を実証する。
【0077】
[0084]中間膜のそれぞれについて、20℃での実験室MIM損失係数(LF)が測定された。実験室MIM損失係数は、前述したように、完全なフロントガラスなどの大きな積層物の代わりに、2.3mmの焼きなましガラスで製造された実験室スケール試料(大きさ(2.54cm×30.48cm(1’’×12’’)))で試験されたMIM損失係数を指す。耐衝撃性もまた、前述したように、中間膜を使用して製造された積層物で測定された。結果を以下の表1に示す。
【0078】
【0079】
[0085]表1に示された中間膜の一部は、風防ガラス減衰損失係数(η)試験において使用された。試験された風防ガラスのガラス厚さおよび大きさを、以下の表2に示す。(風防ガラスで直接測定した風防ガラスまたはグレージングの面積当たり(1/m2)の)減衰損失係数(η)を、以下の表2に示す。
【0080】
【0081】
[0086]実験室MIM損失係数(LF)と風防ガラス減衰損失係数(η)との相関があることが分かった。
図2は、風防ガラス2について、実験室MIM損失係数(LF)と比較した風防ガラス減衰損失係数(η)を示し、
図3は、風防ガラス1について、実験室MIM損失係数(LF)と比較した風防ガラス減衰損失係数(η)を示す。
図2および
図3で示すように、風防ガラス減衰損失係数(η)は、実験室MIM損失係数が増加するにつれて増加する。
【0082】
[0087]実験室MIM損失係数(LF)と風防ガラス減衰損失係数(η)との相関は、
図4においてさらに表すことができる。
図4は、両方の風防ガラスについて、実験室MIM損失係数(LF)と比較した、風防ガラス面積で規格化された(1/m
2)風防ガラス減衰損失係数(η)を示す。
図4で示すように、風防ガラス面積当たり(1/m
2)の風防ガラス減衰損失係数(η)は、実験室MIM損失係数が増加するにつれて増加する。
【0083】
[0088]MIM損失係数に影響を及ぼす、またはMIM損失係数を変える(それによって、風防ガラス減衰損失係数(η)に影響を及ぼす、または風防ガラス減衰損失係数(η)を変える)複数の方法がある。例えば、MIM損失係数は、コア層厚さが増すことによって増加し得る。例えば、中間膜3D、中間膜3B、中間膜3A、および中間膜3Cを比較すると、コア層の厚さが増すにつれてMIM損失係数が増加する。また、中間膜2A、中間膜2B、中間膜2C、および中間膜1A、中間膜1B、中間膜1Cを比較すると、コア層の厚さが増すにつれてMIM損失係数が増加することが示されている。
【0084】
[0089]MIM損失係数はまた、可塑剤の種類およびコア樹脂を変えることによって増加し得る。中間膜3Dと比較例1を比較すると、2種の可塑剤(3GEHおよびDPG-ジベンゾエート)の混合物を使用することにより、かつコアにおいて使用される樹脂を変える(PVB3からPVB2)ことにより、MIM損失係数が0.284から0.302まで増加することが示されている。
【0085】
[0090]スキン層における可塑剤の量を増やすことによって、やはりMIM損失係数が改善される。中間膜4A、中間膜2A、中間膜1Aを中間膜4B、中間膜2B、中間膜1Bと比較すると、外部(スキン)層の可塑剤レベルが増加するにつれて、MIM損失係数が増加することが示されている。
【0086】
[0091]一部の場合において、4A、4B、4Cの実施例に示されたように、実験室MIM LFは、コア層厚さと共に常に増加するわけではなく、所与のスキン可塑剤レベルで最大の実験室MIM LFをもたらすことができる、多層における最適のコア層厚さがあることが明らかである。
【0087】
[0092]一部の場合において、中間膜実施例1C、中間膜実施例2C、中間膜実施例4Cで示されたように、実験室MIM LFは、スキン層の可塑剤の量と共に常に増加するわけではない。所与のコア厚さで最大の実験室MIM LFをもたらすことができる、多層におけるスキン層の最適の可塑剤レベルがあることも明らかである。
【0088】
[0093]実施例4A、実施例4B、および実施例4Cを比較することによって、実施例2A、実施例2B、および実施例2Cを比較することによって、実施例1A、実施例1B、および実施例1Cを比較することによって示されるように、耐衝撃性はコア層厚さの増加に伴い減少する。より良好な衝撃およびより少ない可塑剤を有する、試料1A、試料1B、および試料1Cを、試料2A、試料2B、および試料2Cと比較することによって、試料2A、試料2B、および試料2Cを試料4A、試料4B、および試料4Cと比較することによって示されるように、スキン可塑剤充填量を減らすことにより、コア層厚さの増加ゆえの耐衝撃性の損失を低減することが可能になった。
【0089】
[0094]結論として、本発明による多層中間膜を含む積層グレージング、例えば自動車用風防ガラスは、他の積層グレージングと比較して減衰を高めた。他の利点は、当業者に容易に明らかになる。
【0090】
[0095]本発明について、好ましい実施形態であると現在考えられるものを含めた、ある特定の実施形態についての説明と併せて開示したが、詳細な説明は、例証的であることを意図し、本開示の範囲を限定するものと理解されるべきではない。当業者によって理解されるように、本明細書に記載されたもの以外の実施形態は、本発明によって包含される。記載された実施形態の改変および変更は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく行われ得る。
【0091】
[0096]本明細書全体で与えられる、成分のそれぞれの所定の価値を有する実施形態を形成するために、本開示の任意の1つの成分に与えられた範囲、値または特徴のいずれも、本開示の他の成分のいずれかに与えられた、任意の範囲、値または特徴と、互換性である場合、区別なく使用され得るとさらに理解される。例えば、列挙するのは煩雑であるが、本開示の範囲内にある多くの置換を形成するために、与えられた範囲のいずれかの可塑剤を含むことに加えて、与えられた範囲のいずれかの残留ヒドロキシル含有率を有するポリ(ビニルブチラール)を含む中間膜を形成することができる。さらに、別段の指示がない限り、部類またはカテゴリー、例えば、フタレート類またはベンゾエート類について与えられた範囲は、部類内またはカテゴリーの構成要素内の化学種、例えばジオクチルテレフタレートに適用することもできる。
【国際調査報告】