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特表2024-521353PPARアゴニスト化合物の使用法およびその薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】PPARアゴニスト化合物の使用法およびその薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4174 20060101AFI20240524BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61P25/00
A61P25/08
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/12
A61K9/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574346
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022031977
(87)【国際公開番号】W WO2022256540
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/196,013
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/196,826
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518119984
【氏名又は名称】ミトブリッジ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】兼光 直敏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元貢
(72)【発明者】
【氏名】モリガン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼江 誓詞
(72)【発明者】
【氏名】田中 茉里奈
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076AA44
4C076BB01
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE32
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF68
4C086AA01
4C086BC38
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA12
4C086ZA02
4C086ZA06
(57)【要約】
本開示は、例えば、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)を有する患者を処置するための、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)のアゴニスト(例えば、本明細書に開示する化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)の使用法に関する。本開示はまた、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)のアゴニストと、クロスカルメロースナトリウムとを含む薬学的組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種または複数種の原発性ミトコンドリアミオパチーの処置方法であって、
その必要のある患者に、1日あたり30mg~125mgの量の化合物(I):
、または30mg~125mgの化合物(I)に等価の量の、その薬学的に許容される塩を投与する段階
を含む、方法。
【請求項2】
その必要のある患者に、化合物(I)のヘミ硫酸塩が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化合物(I)の量が30~50mg/日、または化合物(I)の30~50mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
化合物(I)の量が50~75mg/日、または化合物(I)の50~75mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
化合物(I)の量が75~125mg/日、または化合物(I)の75~125mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
化合物(I)の量が30mg/日、または化合物(I)の30mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
化合物(I)の量が50mg/日、または化合物(I)の50mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
化合物(I)の量が75mg/日、または化合物(I)の75mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
化合物(I)の量が125mg/日、または化合物(I)の125mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である、請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が経口投与される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
原発性ミトコンドリアミオパチーが、アルパース病、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、 ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様発作(MELAS)、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害-運動失調-網膜色素変性症(NARP)、またはピアソン症候群である、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
その必要のある患者が、コエンザイムQ10(CoQ10)、カルニチン、クレアチン、または他のミトコンドリア疾患に焦点を当てたビタミン療法もしくは補助療法で以前に処置されている、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と、クロスカルメロースナトリウムとを含む薬学的組成物を、患者に投与する段階
を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と、ラクトース一水和物と、微結晶セルロースと、クロスカルメロースナトリウムと、ヒドロキシプロピルセルロースと、ステアリン酸マグネシウムとを含む薬学的組成物を、患者に投与する段階
を含む、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 12~17%
ラクトース一水和物 55~65%
微結晶セルロース 5~15%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~5%
ステアリン酸マグネシウム 1~3%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 5~8%
ラクトース一水和物 65~72%
微結晶セルロース 5~15%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~5%
ステアリン酸マグネシウム 1~3%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 2~4%
ラクトース一水和物 69~74%
微結晶セルロース 5~15%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~5%
ステアリン酸マグネシウム 1~3%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
薬学的組成物がフィルムコーティング剤をさらに含み、
薬学的組成物の総重量に対するフィルムコーティング剤の重量パーセンテージが2~4%である、
請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 15.4%
ラクトース一水和物 59.1%
微結晶セルロース 10%
クロスカルメロースナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルセルロース 3%
ステアリン酸マグネシウム 2.5%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 6.1%
ラクトース一水和物 68.4%
微結晶セルロース 10%
クロスカルメロースナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルセルロース 3%
ステアリン酸マグネシウム 2.5%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 3.1%
ラクトース一水和物 71.4%
微結晶セルロース 10%
クロスカルメロースナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルセルロース 3%
ステアリン酸マグネシウム 2.5%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 14.9%
ラクトース一水和物 57.4%
微結晶セルロース 9.7%
クロスカルメロースナトリウム 9.7%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.9%
ステアリン酸マグネシウム 2.4%
フィルムコーティング剤 2.9%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 6.0%
ラクトース一水和物 66.4%
微結晶セルロース 9.7%
クロスカルメロースナトリウム 9.7%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.9%
ステアリン酸マグネシウム 2.4%
フィルムコーティング剤 2.9%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
化合物(I)を含む薬学的組成物を、患者に投与する段階を含み、
薬学的組成物が以下の成分を含み、かつ薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージが以下の通り:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 3.0%
ラクトース一水和物 69.3%
微結晶セルロース 9.7%
クロスカルメロースナトリウム 9.7%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.9%
ステアリン酸マグネシウム 2.4%
フィルムコーティング剤 2.9%
である、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年6月2日提出の米国特許仮出願第63/196,013号および2021年6月4日提出の第63/196,826号の優先権を主張する。前述の出願それぞれの全内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本開示は、例えば、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)を有する患者を処置するための、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)のアゴニスト(例えば、本明細書に開示する化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)の使用法に関する。本開示はまた、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)のアゴニストと、クロスカルメロースナトリウムとを含む薬学的組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)は、ミトコンドリアの生合成を制御することができる核内受容体である。WO2017/062468(特許文献1)は参照により本明細書に組み入れられるが、これに示されるとおり、PPARδの活性を調節することは、例えばアルパース病、MERRF-赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん、ピアソン症候群などのミトコンドリア機能不全に関連する疾患、発達遅延、および症状の処置に有用である。PPARδ活性の調節は、筋疾患、脱髄疾患、血管疾患、および代謝疾患などの他の状態の処置にも有効である。事実、PPARδは、ミトコンドリア疾患、筋関連疾患および障害、ならびに他の関連状態を処置および予防するために用いられる化合物の重要な生物学的標的である。
【0004】
原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)は、ミトコンドリア機能に影響を及ぼして筋疾患を引き起こす、遺伝子の突然変異または突然変異/欠失に起因する障害の、大きな異種グループを含む。これらの疾患は、さらなる臓器系の機能障害および臨床像の広範な変動性によって特徴づけ得る。現在、ミトコンドリアミオパチーに対して承認された処置はない。
【0005】
骨格筋および心筋において、ミトコンドリア機能障害は、エネルギー産生不良、乳酸の増加、筋修復の低下、および炎症の増加の一因となる。PPARδは、活性化されると、脂肪酸を輸送し酸化する、細胞の能力を高める転写プログラムを誘導する核内受容体であり、このことはグルコースを保存し、炎症および線維症を減少させ得る。
【0006】
WO2017/062468(特許文献1)およびWO2018/067860(特許文献2)は、PPARδアゴニスト化合物を開示しており、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において「化合物(I)」と呼ぶ化合物の1つを以下に示す。
【0007】
化合物(I)の化学名は、(R)-3-メチル-6-(2-((5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-イミダゾル-1-イル)メチル)-フェノキシ)ヘキサン酸である。化合物(I)の調製は、WO2017/062468(特許文献1)の実施例2dに記載されている。
【0008】
例えば、PMMを有する患者を処置するための、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩などの、PPARδアゴニスト化合物の使用法を開発する必要がある。
【0009】
PPARアゴニスト化合物が安定でありかつ患者に効果的に送達され得る、化合物(I)(またはその薬学的に許容される塩)などのPPARアゴニスト化合物の薬学的組成物を開発する必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2017/062468
【特許文献2】WO2018/067860
【発明の概要】
【0011】
本開示は、例えば、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)を有する患者を処置するための、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)のアゴニスト(例えば、本明細書に開示する化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)の使用法に関する。本開示はまた、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩などのPPARδアゴニスト化合物と、クロスカルメロースナトリウムとを含む改善された薬学的組成物も提供する。具体的には、本明細書に開示する薬学的組成物は、安定で、医療用途に適している。本明細書に開示する薬学的組成物は、臨床使用の要件を満たす優れた溶解率および高い溶解安定性を有し、活性医薬成分は良好なインビボバイオアベイラビリティを達成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の治験計画を示す。†第3相部分の用量レベルが決定されるまで、参加者は第2相部分の用量レベルを維持する。用量レベルが決定されると、選択された用量の治験化合物(すなわち、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)を、予定外の来院を含む次の来院からそれ以後調剤する。‡本治験の第2相部分中に30mg群および75mg群で得られた新たな薬物動態データに基づき、50mgおよび/または125mgなどの追加の用量レベルを試験してもよい。
図2】実施例1の治験来院計画を示す。†第3相部分の用量レベルが決定されるまで、参加者は第2相部分の用量レベルを維持する。第3相部分の用量レベルが決定されると、選択された用量の治験化合物(すなわち、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)を、予定外の来院を含む次の来院からそれ以後調剤する。§選択された用量レベルの治験化合物(すなわち、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)を調剤する。第3相部分のために選択された用量レベルに応じて、異なる用量レベルを採用する場合がある。
図3-1】図3A~3Eは、ミトコンドリア変異を有する細胞において、PPARδの調節が、グルコース恒常性および脂肪酸酸化を制御する遺伝子をどのように調節するかを示す。リー症候群/LHON、MELAS、KSS、および、MERRFにノックイン変異があるサイブリッド細胞株に関連するミトコンドリア変異を有する患者からの線維芽細胞を、化合物(I)(リー/LHON)で24時間または48時間処理した(残り)。3A)グルコース制御因子およびリポタンパク質リパーゼ阻害因子であるANGPTL4は、化合物(I)処理により大きく誘導され、標的関与のマーカーとして使用した。3B)グルコース保存遺伝子PDK4の転写活性化は、試験した4つの細胞株で観察され、増加は10~100倍の範囲であった。3C~3E)OXPHOSのための、脂肪酸のミトコンドリアへの移入、パッケージングおよび異化に関与する遺伝子は、ミトコンドリア変異を有する4つの細胞株で化合物(I)処理により増加する。データは平均値、最小値および最大値を表す箱ひげ図であり、統計解析は対応のないt検定または一元配置分散分析を用いて行った。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。統計値はn=3の生物学的複製を行って計算し、表示した。統計値が表示されていないグラフは、n=2の生物学的複製を示すか、またはn=3の群で有意性が得られなかった。
図3-2】図3-1の説明を参照。
図4図4Aおよび4Bは、PMM患者線維芽細胞のいくつかの遺伝子変異体が、健常患者線維芽細胞と比較して脂肪酸介在性OXPHOSの欠如を示し、これは化合物(I)処理によって改善されることを示す。4A)MELAS患者線維芽細胞は、健常ドナー対照のそれと比較してOXPHOSの欠如を示した。固有の脂肪酸介在性OXPHOSの傾向は、健常ドナー対照のそれらと比較して他のPMM細胞でも観察されるが、ドナーの変動性および疾患の重症度から、より多くのPMM患者線維芽細胞および健常ドナー線維芽細胞を試験する価値があるであろう。健常ドナー線維芽細胞は、その比較対象であるPMM線維芽細胞と、年齢および性別が一致していた。4B)化合物(I)処理は、3、9および30nMで脂肪酸OXPHOSを増加させた。データは、平均値、最小値および最大値を表す箱ひげ図であり、統計解析は対応のないt検定または一元配置分散分析を用いて行った。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。統計値はn=3の生物学的複製を行って計算し、表示した。統計値が表示されていないグラフは、n=2の生物学的複製を示す。
図5図5A~5Iは、PPARδの薬理学的調節が、老化食事誘発肥満(DIO)マウスにおいて持久運動能力をどのように改善するかを示す。雄の老化DIO(28週齡)マウスに、媒体製剤または化合物(I)を、5週間の処置後、30mg/kgで1日1回強制経口により投与した。5A~5B)5週間の処置後の四頭筋の標的関与遺伝子Angptl4およびPdk4に関する遺伝子発現解析(n=10、マウス)。5C~5E)四頭筋のPPARδ反応性FAO遺伝子に関する遺伝子発現解析(n=8、動物)。持久走エンドポイント、落下率(5F)、グリッドへ行った回数(5G)、および走行距離(5H)。走行指標を組み合わせることで、疲労指数(5I)による動物の疲労の指標が得られる(n=10、動物)。データは、平均値、最小値および最大値を表す箱ひげ図であり、統計解析は対応のないt検定を用いて行った。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図6図6A~6Eは、化合物(I)で処置した老化DIOマウスの組織曝露量、体組成およびさらなる活性基準を示す。雄の老化DIO(28週齡)マウスに、媒体製剤または化合物(I)を、5週間の処置後、30mg/kgで1日1回強制経口により投与した。6A)投与した腓腹筋における化合物(I)の組織曝露量。6B~6C)体重(g)および組成指標。6D~6E)媒体対化合物(I)処置動物における活性基準(処置群あたりn=10、動物)。データは、平均値、最小値および最大値を表す箱ひげ図であり、統計解析は対応のないt検定を用いて行った。媒体対化合物(I)処置動物の間で、体組成または自発活動において統計的有意差は観察されなかった。
図7図7A~7Cは、老化食事誘発肥満(DIO)マウスが、老化固形飼料食動物と比較して、どのように疲労の増加、自発活動の減少を示すかを示す。7A)疲労指数。28週齢のDIOマウスは、28週齢の固形飼料食マウスと比較して、疲労の増加を示した。7B~7C)自発活動および立ち上がり、それぞれxyおよびz軸のビーム遮断の合計回数と定義。28週齢のDIOマウスは、固形飼料食マウスのそれよりも有意に少ない活動を示した(処置群あたりn=10、動物)。データは、平均値、最小値および最大値を表す箱ひげ図であり、統計解析は一元配置分散分析を用いて行った。*p<0.05、**p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本開示は、例えば、PMMを処置するための、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタ(PPARδ)のアゴニスト(例えば、本明細書に開示する化合物(I)またはその薬学的に許容される塩)の使用法を提供する。具体的には、本開示は、長期処置に使用し得る、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩などのPPARδアゴニストの安全かつ有効な投与計画を提供する。
【0014】
本開示はまた、PPARδアゴニスト化合物、例えば、WO2017/062468またはWO2018/067860に開示される化合物を含む、改善された薬学的組成物も提供する。いくつかの態様において、本開示は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と、クロスカルメロースナトリウムとを含む薬学的組成物を提供する。1つの具体的な態様において、薬学的組成物は化合物(I)のヘミ硫酸塩を含む。
【0015】
いくつかの態様において、本開示は、PMMの処置方法であって、その必要のある患者に、1日あたり約30mg~約125mgの量の化合物(I)、または約30mg~約125mgの化合物(I)に等価の量の、その薬学的に許容される塩を投与する段階を含む方法を提供する。例えば、方法は、1日あたり約30mg~約75mgの量、1日あたり約30mg~約50mgの量、1日あたり約50mg~約125mgの量、1日あたり約75mg~約125mgの量、1日あたり約50mg~約75mgの量の化合物(I)、または前述のいずれかに等価の量の、化合物(I)の薬学的に許容される塩を投与する段階を含み得る。
【0016】
いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が経口投与される。
【0017】
いくつかの態様において、その必要のある患者に、化合物(I)のヘミ硫酸塩が投与される。
【0018】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は5mg/日、または化合物(I)の5mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0019】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は8mg/日、または化合物(I)の8mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0020】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は10mg/日、または化合物(I)の10mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0021】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は12mg/日、または化合物(I)の12mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0022】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は15mg/日、または化合物(I)の15mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0023】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は18mg/日、または化合物(I)の18mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0024】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は20mg/日、または化合物(I)の20mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0025】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は25mg/日、または化合物(I)の25mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0026】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は30mg/日、または化合物(I)の30mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0027】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は35mg/日、または化合物(I)の35mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0028】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は40mg/日、または化合物(I)の40mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0029】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は45mg/日、または化合物(I)の45mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0030】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は50mg/日、または化合物(I)の50mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0031】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は55mg/日、または化合物(I)の55mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0032】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は60mg/日、または化合物(I)の60mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0033】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は65mg/日、または化合物(I)の65mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0034】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は70mg/日、または化合物(I)の70mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0035】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は75mg/日、または化合物(I)の75mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0036】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は80mg/日、または化合物(I)の80mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0037】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は85mg/日、または化合物(I)の85mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0038】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は90mg/日、または化合物(I)の90mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0039】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は95mg/日、または化合物(I)の95mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0040】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は100mg/日、または化合物(I)の100mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0041】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は105mg/日、または化合物(I)の105mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0042】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は110mg/日、または化合物(I)の110mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0043】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は115mg/日、または化合物(I)の115mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0044】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は120mg/日、または化合物(I)の120mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0045】
いくつかの態様において、化合物(I)の量は125mg/日、または化合物(I)の125mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0046】
いくつかの態様において、PMMの処置方法において、化合物(I)の量は30~50mg/日、または化合物(I)の30~50mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0047】
いくつかの態様において、PMMの処置方法において、化合物(I)の量は50~75mg/日、または化合物(I)の50~75mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0048】
いくつかの態様において、PMMの処置方法において、化合物(I)の量は75~100mg/日、または化合物(I)の75~100mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0049】
いくつかの態様において、PMMの処置方法において、化合物(I)の量は75~125mg/日、または化合物(I)の75~125mg/日に等価の量の、その薬学的に許容される塩である。
【0050】
いくつかの態様において、原発性ミトコンドリアミオパチーは、アルパース病、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MDS)、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作(MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE)、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害-運動失調-網膜色素変性症(NARP)、バース症候群、またはピアソン症候群である。
【0051】
いくつかの態様において、PMMの処置方法において、その必要のある患者は、コエンザイムQ10(CoQ10)、カルニチン、クレアチン、または他のミトコンドリア疾患に焦点を当てたビタミン療法もしくは補助療法で以前に処置されている。
【0052】
いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が、毎週1、2、3、4、5、6、または7回投与される。いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、または少なくとも8週間持続的に投与される。
【0053】
いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも22日間、少なくとも23日間、少なくとも24日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも35日間、少なくとも40日間、少なくとも45日間、または少なくとも50日間、少なくとも2週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、または少なくとも12週間持続的に投与される。
【0054】
いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が、食物と共に投与される。いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が、食物なしで投与される。いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が食物なしで投与される場合、患者は、投与前4時間(および投与後少なくとも1.5時間)絶食を維持する。いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が食物なしで投与される場合、患者は、投与前6時間(および投与後少なくとも1.5時間)絶食を維持する。いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が食物なしで投与される場合、患者は、投与前8時間(および投与後少なくとも1.5時間)絶食を維持する。いくつかの態様において、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩が食物なしで投与される場合、患者は、投与前10時間(および投与後少なくとも1.5時間)絶食を維持する。
【0055】
本明細書に記載の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、活性医薬成分(API)として、ならびに1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を組み込み、かつヒト対象への投与に適切な、薬学的組成物を調製するための材料として有用である。
【0056】
いくつかの態様において、方法は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩と、クロスカルメロースナトリウムとを含む薬学的組成物を投与する段階を含む。1つの具体的な態様において、薬学的組成物は、化合物(I)のヘミ硫酸塩を含む。
【0057】
いくつかの態様において、方法は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、ここで薬学的組成物の総重量に対するクロスカルメロースナトリウムの重量パーセンテージは、約0.1%~約20%である。例えば、薬学的組成物の総重量に対するクロスカルメロースナトリウムの重量パーセンテージは、約0.5%~約10%、約1%~約15%、約5%~約10%、約5%~約15%、約10%~約15%、約10%~約20%、約12%~約20%、または約15%~約20%である。
【0058】
いくつかの態様において、方法は、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩(例えば、ヘミ硫酸塩)を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、ここで薬学的組成物はラクトース一水和物、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0059】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 12~17%
ラクトース一水和物 55~65%
微結晶セルロース 5~15%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~5%
ステアリン酸マグネシウム 1~3%。
【0060】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 5~8%
ラクトース一水和物 65~72%
微結晶セルロース 5~15%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~5%
ステアリン酸マグネシウム 1~3%。
【0061】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 2~4%
ラクトース一水和物 69~74%
微結晶セルロース 5~15%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~5%
ステアリン酸マグネシウム 1~3%。
【0062】
いくつかの態様において、方法は、フィルムコーティング剤をさらに含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対するフィルムコーティング剤の重量パーセンテージは2~4%である。
【0063】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 15.4%
ラクトース一水和物 59.1%
微結晶セルロース 10%
クロスカルメロースナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルセルロース 3%
ステアリン酸マグネシウム 2.5%。
【0064】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 6.1%
ラクトース一水和物 68.4%
微結晶セルロース 10%
クロスカルメロースナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルセルロース 3%
ステアリン酸マグネシウム 2.5%。
【0065】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 3.1%
ラクトース一水和物 71.4%
微結晶セルロース 10%
クロスカルメロースナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルセルロース 3%
ステアリン酸マグネシウム 2.5%。
【0066】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 12~17%
ラクトース一水和物 53~61%
微結晶セルロース 8~13%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~4%
ステアリン酸マグネシウム 2~3%
フィルムコーティング剤 2~4%。
【0067】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 5~7%
ラクトース一水和物 64~69%
微結晶セルロース 8~13%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~4%
ステアリン酸マグネシウム 2~3%
フィルムコーティング剤 2~4%。
【0068】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 2~4%
ラクトース一水和物 67~72%
微結晶セルロース 8~13%
クロスカルメロースナトリウム 8~13%
ヒドロキシプロピルセルロース 2~4%
ステアリン酸マグネシウム 2~3%
フィルムコーティング剤 2~4%。
【0069】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 14.9%
ラクトース一水和物 57.4%
微結晶セルロース 9.7%
クロスカルメロースナトリウム 9.7%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.9%
ステアリン酸マグネシウム 2.4%
フィルムコーティング剤 2.9%。
【0070】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 6.0%
ラクトース一水和物 66.4%
微結晶セルロース 9.7%
クロスカルメロースナトリウム 9.7%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.9%
ステアリン酸マグネシウム 2.4%
フィルムコーティング剤 2.9%。
【0071】
いくつかの態様において、方法は、以下の成分を含む薬学的組成物を投与する段階を含み、薬学的組成物の総重量に対する各成分の重量パーセンテージは以下の通りである:
化合物(I)のヘミ硫酸塩 3.0%
ラクトース一水和物 69.3%
微結晶セルロース 9.7%
クロスカルメロースナトリウム 9.7%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.9%
ステアリン酸マグネシウム 2.4%
フィルムコーティング剤 2.9%。
【0072】
本発明の方法と共に使用するための薬学的組成物は、本明細書に記載の効果が達成される限り、適宜に様々な薬学的添加剤を用いて製剤してもよい。薬学的添加剤は、それぞれが薬学的に許容され、薬理学的に許容される限り、特に限定されない。例えば、賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、抗酸化剤、界面活性剤、流動化剤などの、1つまたは複数を用いることができる。
【0073】
賦形剤の例には、例えばD-マンニトール、D-ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール;例えばデンプン、ラクトース、スクロース、デキストラン(例えば、デキストラン40)、グルコースなどの糖;および、例えばアラビアゴム、プルラン、合成ケイ酸アルミニウム、アルミノメタケイ酸マグネシウム、微結晶セルロースなどの他のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。結合剤の例には、アラビアゴム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。酸味料の例には、酒石酸、リンゴ酸などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。発泡剤の例には、炭酸水素ナトリウムなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。甘味料の例には、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。香料の例には、レモン、オレンジ、メントールなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルクなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。着色剤の例には、黄色酸化第二鉄、赤色酸化第二鉄、四酸化三鉄などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。界面活性剤の例には、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。流動化剤の例には、軽質無水ケイ酸などが含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの薬学的添加剤などは、単独または2つ以上の組み合わせで、適量で添加することができる。
【0074】
フィルムコーティングは、錠剤などの固体薬学的剤形に任意で適用される薄いポリマー系被膜である。本明細書に開示する方法と共に使用するのに適した薬学的組成物の1つの態様において、フィルムコーティング剤は残りの成分をカプセル化する。フィルムコーティング剤は、典型的には、ポリマー、可塑剤、着色剤、滑剤、香料、および/または粘度調整剤を含む。
【0075】
フィルムコーティング剤に使用されるポリマーは下記:
・セルロース系(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))
・ビニル、例えばポリビニルアルコール
・ポリビニルアルコール-アクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマー
であり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0076】
フィルムコーティング剤に使用される可塑剤は下記:
・多価アルコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール(PEG)またはグリセロール
・酢酸エステル、例えばトリアセチン(グリセロールトリアセテート)またはクエン酸トリエチル(TEC)
・グリセリド、例えばアセチル化モノグリセリド
・油、例えば鉱油または植物油
であり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0077】
フィルムコーティング剤に使用される着色剤は下記:
・水不溶性レーキ:例えばインジゴカルミン、タートラジン、アルラレッド、およびキノリンイエロー(同じ色のこれらの水溶性染料も使用し得る)
・無機色素:二酸化チタン、酸化第二鉄(黄色)、酸化第二鉄(赤色)、四酸化三鉄、および真珠光沢顔料(雲母を含む)
・天然着色料:野菜汁、カロテノイド、およびウコンを含む
であり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0078】
フィルムコーティング剤に使用される滑剤は下記:
・タルク
・ワックス、例えばカルナウバワックス
・ステアリン酸塩
であり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0079】
フィルムコーティング剤に使用される香料は下記:
・甘味料、天然または高強度の人工甘味料(例えばスクラロース)
・天然または人工香料、例えばミント、バニラ、またはベリー
であり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0080】
フィルムコーティング剤に使用される粘度調整剤は下記:
・炭水化物、例えばラクトース、ポリデキストロース、またはデンプン
・ゴム、例えばアカシアゴムまたはキサンタンゴム
であり得るが、それらに限定されるわけではない。
【0081】
いくつかの態様において、本明細書に開示する方法と共に使用するのに適した薬学的組成物は経口投与用である。1つの態様において、薬学的組成物は、錠剤、任意でフィルムコーティング錠の形態である。他の態様において、本明細書に開示する薬学的組成物は、カプセル剤、顆粒剤、または散剤の形態である。
【0082】
1つの局面において、本開示は、本明細書に開示する薬学的組成物を含むフィルムコーティング錠に関する。
【0083】
本教示に含まれるのは、本明細書に開示する化合物の薬学的に許容される塩である。開示する化合物は、塩基性アミン基を有し、従って、薬学的に許容される酸と、薬学的に許容される塩を形成することができる。本明細書に記載の化合物の適切な薬学的に許容される酸付加塩には、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、および硫酸)ならびに有機酸(例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸など)の塩が含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、1つの態様において、酸付加塩は、ヘミ硫酸塩である。カルボン酸などの酸性基を有する本教示の化合物は、薬学的に許容される塩基と、薬学的に許容される塩を形成することができる。適切な薬学的に許容される塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム塩およびカルシウム塩)ならびに有機塩基性塩(例えばメグルミン塩)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0084】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される塩」なる用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応なしでヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適し、妥当な損益比に見合った薬学的塩を指す。薬学的に許容される塩は当技術分野において周知である。例えば、S. M. Bergeらは、薬学的に許容される塩をJ. Pharm. Sci., 1977, 66:1-19に記載している。
【0085】
本発明の方法と共に使用するための化合物の中性形態を、それらの塩を塩基または酸と接触させ、通常の様式で親化合物を単離することにより、対応する塩から再生する。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解性などの一定の物理的性質において、様々な塩形態と異なり得る。本明細書に開示する化合物の中性形態もまた本発明の方法に含まれる。
【0086】
本明細書において用いられる「処置する」、「処置すること」、または「処置」なる用語は、障害または状態に関連して使用される場合、例えば、1つまたは複数の症状または疾患の進行を軽減、縮小、調節および/または改善する;あるいは障害または状態の改善をもたらす、任意の効果を含む。障害または状態の任意の症状の改善または重症度の軽減は、当技術分野において公知の標準の方法および技術に従って容易に評価することができる。
【0087】
対象におけるPPARδ関連疾患または状態の処置方法を開示する。方法は、治療的有効量の、本明細書において提供する1つまたは複数の組成物を、該対象に投与する段階を含み得る。
【0088】
1つの態様において、PPARδ関連疾患は、ミトコンドリア疾患である。ミトコンドリア疾患の例には、原発性ミトコンドリアミオパチー(一種または複数種)(いずれもPMMと略記)、アルパース病、CPEO-慢性進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、MELAS-ミトコンドリアミオパチー、脳筋症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様発作、MERRF-赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん、NARP-神経原性筋力低下、運動失調、および網膜色素変性症、ならびにピアソン症候群が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0089】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、血管疾患(例えば、心血管疾患、または、血流障害もしくは不十分な血流を示す組織における血管新生を増加させることから利益を得る任意の疾患)である。他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋ジストロフィーなどの筋疾患である。筋ジストロフィーの例には、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリ・ドレフュス型筋ジストロフィーが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0090】
いくつかの態様において、PPARδ関連疾患または状態は、多発性硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、脳脊髄炎、視神経脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、またはギラン・バレー(Guillian-Barre)症候群などの脱髄疾患である。
【0091】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、代謝疾患である。代謝疾患の例には、肥満、高トリグリセリド血症、高脂血症、低アルファリポタンパク血症、高コレステロール血症、脂質異常症、X症候群、およびII型糖尿病が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0092】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋肉構造障害である。筋構造障害の例には、ベスレムミオパチー、中心コア病、先天性線維型不均衡、遠位型筋ジストロフィー(MD)、デュシェンヌ&ベッカー型MD、エメリ・ドレフュス型MD、顔面肩甲上腕型MD、ヒアリン体筋症、肢帯型MD、筋ナトリウムチャネル障害、筋強直性軟骨異栄養症、筋強直性ジストロフィー、筋細管ミオパチー、ネマリン小体病、眼咽頭型MD、およびストレス性尿失禁が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0093】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、ニューロン活性化障害である。ニューロン活性化障害の例には、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン・バレー症候群、ランバート・イートン症候群、多発性硬化症、パーキンソン病、重症筋無力症、神経傷害、末梢神経障害、脊髄性筋萎縮症、遅発性尺骨神経麻痺、(外傷性)脊髄または脳損傷、(重症)熱傷、および中毒性神経筋障害が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0094】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋疲労障害である。筋疲労障害の例には、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、糖尿病(I型またはII型)、糖原病、線維筋痛症、フリートライヒ失調症、間欠性跛行、脂質蓄積性ミオパチー、MELAS、ムコ多糖症、ポンペ病、および甲状腺中毒性ミオパチーが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0095】
いくつかの態様において、PPARδ関連疾患は、筋量障害である。筋量障害の例には、悪液質、軟骨変性、脳性麻痺、コンパートメント症候群、重症疾患ミオパチー、封入体筋炎、筋萎縮(廃用)、サルコペニア、ステロイドミオパチー、および全身性エリテマトーデスが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0096】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、β酸化疾患である。β酸化疾患の例には、全身性カルニチントランスポーター、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)II欠損症、極長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(LCHADまたはVLCAD)欠損症、三機能酵素欠損症、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(MCAD)欠損症、短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ(SCAD)欠損症、およびβ酸化のリボフラビン応答性障害(RR-MADD)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0097】
いくつかの態様において、PPARδ関連疾患は、血管疾患である。血管疾患の例には、末梢血管不全、末梢血管疾患、間欠性跛行、末梢血管疾患(PVD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、および末梢閉塞性動脈症が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0098】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、眼血管疾患である。眼血管疾患の例には、(乾性/湿性)加齢黄斑変性症(AMD)、シュタルガルト病、高血圧性網膜症、糖尿病性網膜症、網膜症、黄斑変性症、網膜出血、および緑内障が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0099】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、筋性眼疾患である。筋性眼疾患の例には、斜視(内斜視/遊走眼(wandering eye)/ウォールアイ眼麻痺)、進行性外眼筋麻痺、内斜視、外斜視、屈折および調節の障害、遠視、近視、乱視、不同視、老視、調節の障害、または内眼筋麻痺が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0100】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、代謝疾患である。代謝疾患の例には、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低コレステロール血症、LDL高コレステロール血症および/またはHDL非コレステロール血症、VLDL高タンパク質血症、異常リポタンパク血症、アポリポタンパク質A-I低タンパク血症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化疾患、心血管系疾患、脳血管疾患、末梢循環疾患、メタボリック症候群、X症候群、肥満、糖尿病(I型またはII型)、高血糖、インスリン抵抗性、耐糖能障害、高インスリン血症、糖尿病合併症、心不全、心筋梗塞、心筋症、高血圧、肺動脈高血圧(PAH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、血栓、アルツハイマー病、神経変性疾患、脱髄疾患、多発性硬化症、副腎白質ジストロフィー、皮膚炎、乾癬、にきび、皮膚老化、異所発毛、炎症、関節炎、喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、および膵炎が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0101】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、がんである。がんの例には、結腸、大腸、皮膚、乳房、前立腺、卵巣、および/または肺のがんが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0102】
他の態様において、PPARδ関連疾患は、虚血傷害である。虚血傷害の例には、心筋梗塞などの心虚血;脳虚血(例えば、急性虚血性発作);血管性認知症などの脳の慢性虚血;および一過性脳虚血発作(TIA);虚血性大腸炎などの腸虚血;急性の腕または脚の虚血などの四肢虚血;チアノーゼまたは壊疽などの皮下虚血;および虚血性腎損傷(IRI)などの虚血性臓器損傷が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0103】
さらに他の態様において、PPARδ関連疾患は、腎疾患である。腎疾患の例には、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、急性腎炎、反復性血尿、持続性血尿、慢性腎炎、急速進行性腎炎、急性腎傷害(急性腎不全としても公知)、慢性腎不全、糖尿病性腎症、またはバーター症候群が含まれるが、それらに限定されるわけではない。WO/2014/165827は、参照により本明細書に組み入れられるが、急性熱傷害マウスモデルにおいて、PPARδの遺伝的および薬理学的活性化が、筋再生を促進することを示している。したがって、骨格筋の再生効率を増強する治療標的としてのPPARδの使用もまた提供する。
【0104】
いくつかの態様において、本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置方法であって、その必要のある患者に、有効量の、本明細書に開示する薬学的組成物を投与する段階を含む方法を開示する。
【0105】
いくつかの態様において、本開示は、原発性ミトコンドリアミオパチー(一種または複数種)(PMM)の処置方法であって、その必要のある患者に、有効量の、本明細書に開示する薬学的組成物を投与する段階を含む方法を開示する。具体的な態様において、原発性ミトコンドリアミオパチーは、アルパース病、慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)、カーンズ・セイヤー症候群(KSS)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MDS)、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、 ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作(MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE)、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害-運動失調-網膜色素変性症(NARP)、バース症候群、またはピアソン症候群である。
【0106】
いくつかの態様において、本開示は、全身酸素抽出不良による最大酸素摂取量の低下の処置方法であって、その必要のある患者に、有効量の、本明細書に開示する薬学的組成物を投与する段階を含む方法を開示する。1つの具体的な態様において、患者は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群を有する。
【0107】
いくつかの態様において、本開示は、疾患の処置方法であって、その必要のある患者に、有効量の、本明細書に開示する薬学的組成物を投与する段階を含む方法を開示し、ここで疾患は、肺動脈高血圧(PAH)、乾性加齢黄斑変性症(Dry AMD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、パーキンソン病、外傷性脊髄/脳損傷、重症熱傷、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、または筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)である。
【0108】
実験詳細
PMM細胞株の生成
リー症候群/レーバー遺伝性視神経症(LHON)細胞は、リー症候群およびLHONの両方と診断された患者から単離した。この対象は2つの点変異を有し;NADHデヒドロゲナーゼ複合体における、1つはmtDNAにコードされたND4遺伝子(変異11778G>A)および1つはmtDNAにコードされたND6遺伝子(変異14484T>C)であった。m.3243A>G MELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様発作)細胞は、mtDNAにコードされたtRNAロイシン遺伝子にm.3243A>G変異を有する患者から単離した。カーンズ・セイヤー症候群(KSS)線維芽細胞は、5キロベース(Kb)の共通欠失を有する患者から単離し、対照線維芽細胞株と共にCoriell Institueから入手した。MERRF m.8344A>G骨肉腫トランスミトコンドリアサイブリッドはMoraes研究室から入手した(Masucci, J.P., M.P. Schon Ea Fau - King, and M.P. King, Point mutations in the mitochondrial tRNA(Lys) gene: implications for pathogenesis and mechanism. (0300-8177))。
【0109】
細胞培養:
MELAS m.3243A>G線維芽細胞は、10%非働化済FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、2mM l-グルタミン、および100μg/mlのウリジンを補足したイーグル最小必須培地(EMEM)中で培養した。KSS線維芽細胞は、15%非働化済FBS、1×非必須アミノ酸、および100μg/mlのウリジンを補足したEMEM中で培養した。リー/LHON症候群線維芽細胞株は、1mMピルビン酸ナトリウム、10%HI FBS、および100μg/mlのウリジンを補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。MERRF tRNA-LYS 8344サイブリッド細胞は、10%非働化済FBS、1mMピルビン酸ナトリウムおよび100μg/mlのウリジンを補足したDMEM中で培養した。
【0110】
LHON/リー症候群線維芽細胞を除くすべての細胞株を、6穴プレートに50k/ウェルの密度で播種した。化合物(I)または0.1%DMSOを8時間後、完全培地に添加した。処理培地または媒体培地を24時間後にリフレッシュし、合計48時間処理した。LHON/リー症候群線維芽細胞を播種し、同じ様式で処理したが、処理時間は合計24間であった。
【0111】
RNAの単離および逆転写
mTotal RNAをNucleoSpin(登録商標)キット(Macherey-Nagel)を用い、製造者のプロトコルに従って単離した。1マイクログラムの全RNAを用い、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を用いてcDNAを生成した。
【0112】
遺伝子発現解析
MELAS m.3243A>G線維芽細胞、KSS線維芽細胞およびMERRF tRNA-Lys 8344サイブリッド遺伝子発現を5ng cDNAを用いて実施し、300nMのプライマーを水およびiQ SYBR Greenマスターミックスと混合し、384穴qPCRプレートにロードした後、BioRad CFX384 Real-Time PCR Detection Systemを用いて解析した。変化倍率を、試料ごとのΔCtとして算出し、Ct(関心対象遺伝子)-Ct(参照遺伝子の平均)として算出した。次いで、ΔΔCtを、ΔCt(実験試料)-平均ΔCt(対照群)として算出した。変化倍率を、2-ΔΔCTとして算出した。
【0113】
LHON/リー症候群線維芽細胞cDNAをdH20およびSYBR Greenマスターミックスと混合し、1μMのプライマーをそれぞれ384穴プレートの試料ソースプレートおよびプライマーソースプレートに分注した。反応液をSmartChip(WaferGen Bio-systems)にMultisample Nanodispenserでロードし、チップをSmartChip Cyclerで解析した。
【0114】
QBaseソフトウェアを用いて生の発現データをソフトウェアからエクスポートし、参照遺伝子で処理した後にグラフ化し、対照に対して正規化した。正規化値を得るために、各試料の較正正規化相対量(CNRQ)値を、全ての媒体処理試料の平均CNRQで除して、対照群に対する発現とした。
【0115】
MELAS M.3243A>G線維芽細胞およびMERRF TRNA-LYS 8344サイブリッド細胞におけるヘテロプラスミーの決定
M.3243A>G変異体のレベルを、以前にGrady, J.P., et al., mtDNA heteroplasmy level and copy number indicate disease burden in m.3243A>G mitochondrial disease. LID - e8262. (1757-4684)に記載されたとおりに決定した。公知の野生型(WT)と変異型(mut)とのDNA比の標準曲線を生成するために、100%WT DNAおよび100%mut DNAであることが公知のサイブリッド対照細胞株から、tRNA-Lys 8344 WTおよびmut配列を測定した。DNAをNucleoSpin(登録商標)DNA単離キットを用いてサイブリッド培養物から単離し、定量し、様々な比率(WT:mut DNAが100/0、80/20、60/40、50/50、40/60、20/80、および0/100)で、反応あたりの総DNA量5ng+50ngのサケ精子DNAと混合した。未知のMERRF TRNA-LYS 8344サイブリッド株からのDNAを単離し、PCR反応あたり5ngのDNAを加えた。PCR反応混合物は以下の通りであった:1×SsoAdvanced Universal probes supermix、250nM WTプローブ、250nM mutプローブ、各250nMフォワードおよびリバースプライマー、ならびに50ngサケ精子DNA。qPCRプロトコル:95℃で3分、95℃で10秒続いて50℃で30秒(40×サイクル)、95℃で10秒、5秒間隔で65℃~95℃の融解曲線。プローブベースのqPCRを試料に対して行い、WT-mut Ct値の変化を線形回帰でプロットし、R2を解析した。ヘテロプラスミーの割合を、標準の線形回帰から算出した線形回帰に基づいて算出した。
【0116】
高分解能呼吸計法によるミトコンドリア脂肪酸酸化検定
LHON/リー細胞を、0.5mMカルニチンを補足した完全培地中、DMSOまたは化合物(I)で24時間処理した後に検定した。処理した細胞をトリプシン処理し、クレブス-ヘンゼライト緩衝液(KHB)中に回収し、ペレット化した。
【0117】
パルミチン酸介在性OXPHOSを、Oxygraph-2k(Oroboros Instruments)を用いて測定した。KHB中の細胞(1×106)を、250μM BSAまたはBSA結合パルミチン酸と共に各チャンバーにロードした。KHBを最終体積が2mLになるように加えた。呼吸を、以前にZhang, Z., et al., Primary respiratory chain disease causes tissue-specific dysregulation of the global transcriptome and nutrient-sensing signaling network (1932-6203)に記載されたとおりに、37℃で測定した。簡単に言うと、BSAおよびBSA結合パルミチン酸処理した細胞を2つの別々のチャンバーで同時に分析した。基礎(ROUTINE)呼吸を確立した後、異なる複合体の阻害剤を以下の順で加えた:オリゴマイシンを最終濃度2ug/mlで、ATPシンターゼ(複合体V、LEAK状態)を阻害するために;FCCP(カルボニルシアニド-p-トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)脱共役剤を2.5~1.5μMの増分での段階的滴定で(最大呼吸量);ロテノンを最終濃度0.5μMで、複合体Iを阻害するために;および最後にアンチマイシンAを最終濃度2.5μMで、複合体IIIを阻害するために。
【0118】
データをDatLab6ソフトウェアを用いて解析した。データは100万細胞あたりの1秒あたりの分子状酸素ピコモルとして示した。FCCP添加後のBSA-パルミチン酸試料の最大呼吸(電子伝達鎖/システムの最大呼吸量)値を、BSAのみの試料の最大呼吸値で除した。非ミトコンドリア呼吸を、ロテノンおよびアンチマイシンAを順次添加した後に測定し(ROX、残存酸素消費量、バックグラウンド)、最大呼吸値から差し引いた。BSA-パルミチン酸対BSAのこの比率は、パルミチン酸の酸化に基づく酸素消費量の増加倍率を提供する。
【0119】
タツノオトシゴミトコンドリア脂肪酸酸化
FAOをタツノオトシゴXF96(Seahorse Biosciences)を用いて測定した。MELAS m.3243A>G線維芽細胞、KSS線維芽細胞、およびMERRF tRNA-Lys 8344サイブリッドを、フラスコに播種した8時間後にDMSOまたは化合物(I)で処理した。最初の処理の24時間後、培地を低グルコース(初代線維芽細胞は1.1mM、サイブリッドは5.5mM)および0.5mMカルニチンを含むDMSOまたは化合物(I)を含む完全培地に変更した。最初の処理の48時間後、細胞を96穴細胞培養マイクロプレートにウェルあたり40,000細胞の密度で播種した。FAO検定を播種の8時間後に開始した。
【0120】
200μLのKHBをブランクウェルに加え、対照BSA(最終0.074mM)またはBSA-パルミチン酸(最終0.074mM BSA、500μMパルミチン酸)と混合した200μLのKHBを適切なウェルに加えた。ストレス試験成分化合物を以下の順序で加えた;1)オリゴマイシン、2)FCCP、および3)ロテノンおよびアンチマイシンAをそれぞれ、最終濃度2.5μM、6μM、および1μM。パルミチン酸の酸化を、LHON/リー線維芽細胞と同じ比率を用いて評価した。
【0121】
老化DIOマウスによる強制消耗走行:
すべての動物試験は、Charles River Laboratoriesの動物福祉プロトコルに従って実施した。28週齢の雄の食事誘発肥満(DIO)C57BL/6NTacマウスに高脂肪食を与えた。20匹のマウスを体重に基づき、各10匹の2つのコホートに無作為に割り付けた。各コホートの各処置群に5匹のマウスを割り付けた(i)媒体または(ii)30mg/kgの化合物(I)(処置あたりn=10、動物の合計)。群に、1日1回45日間、暗期サイクルの開始時に強制経口投与した。トレーニングまたは持久走を行う日に、マウスをトレッドミル室に1時間馴化させた。最初の5分間の探索期間の後、動機づけグリッド強度を0.46mAに設定して、トレッドミルベルトを5m/分で10分間動かした。マウスは、動くベルトの上を歩行/走行してグリッドの電気ショックを避けることを学習するのに、グリッドに数回行く必要があった。2回の馴化期間の後、マウスは、電気グリッドを避けて動くベルトの上にとどまることを学習し、電気グリッドに行く回数が減った。持久走の最高速度は、速度馴化走行に基づいて16.5m/分を上限とし、これは5°の傾斜のトレッドミルの上部2/3を25%の動物が走る速度を表す。トレッドミルベルトに足を乗せず、電気グリッド上に10秒間とどまれば、マウスが消耗したと考えた。
【0122】
持久力を疲労指数として算出した;これは、移動距離、トレッドミル上の時間、走行中の休憩の回数、およびそれらの休憩の長さから説明される。個々の動物の累積刺激回数を経時的にプロットし、曲線下面積(AUC)を算出した。AUCを個々の動物が疲労走行中に完走した距離で除して疲労指数を求めた。自発活動はX軸およびY軸のレーザービーム遮断の合計回数と定義し、立ち上がりは処置群ごとのZ軸遮断の合計回数と定義した。
【0123】
組織採取
消耗走行の前後に、血液試料を尾静脈の切れ目から採取した。試験終了時(第45日)に、CO2安楽死後、全血ならびに腓腹筋および四頭筋の骨格筋を採取した。
【0124】
統計解析
データをGraph Pad Prismソフトウェアバージョン7.3で解析した。試料が正規分布している場合は、一元配置分散分析と、続いてDMSO対照細胞に対する事後ダネット検定、または対応のない両側t検定で分析した。試料が正規分布していない場合は、特に記載がないかぎり、クラスカル・ワリス検定と、DMSOに対するダンの事後検定、またはマン・ホイットニー検定を用いた。
【実施例
【0125】
以下の実施例は例示を意図するものであり、本開示の範囲をいかなる様式でも限定することを意味するものではない。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例1
表1の配合に従い、829.5gの粉砕した化合物(I)ヘミ硫酸塩、3193.5gのラクトース一水和物、および540.0gのクロスカルメロースナトリウムを流動層造粒装置を用いて混合し、混合生成物を得た。162.0gのヒドロキシプロピルセルロースを水に溶解することにより、結合剤溶液(固体含有量:7重量%)を調製した。結合剤溶液を噴霧することにより混合物を造粒し、乾燥し、篩い分けて造粒品を得た。4725.0gの造粒物、540.0gの微結晶セルロース、および135.0gのステアリン酸マグネシウムをコンテナミキサーを用いて混合し、打錠前の混合物を得た。得られた混合物をロータリー打錠機を用いて錠剤に成型し、非コーティング錠を得た。錠剤は製造装置に付着しなかったので、大規模生産に適している。得られた錠剤を、フィルムコーティング機を用い、フィルムコーティング剤を水に溶解/分散させて調製した液体(固体含有量:10重量%)を噴霧することによりフィルムコーティングして、フィルムコーティング錠を得た。
【0128】
実施例2
表1の配合に従い、実施例1と同様の様式で実施例2のフィルムコーティング錠を調製した。
【0129】
実施例3
表1の配合に従い、実施例1と同様の様式で実施例3のフィルムコーティング錠を調製した。
【0130】
実施例4
実施例1で得たフィルムコーティング錠をボトルに包装し、40℃、75%RHの開放条件下で1ヶ月間および3ヶ月間静置した。日本薬局方に記載の溶解試験(パドル法)に従い、以下の条件下で溶解試験を行い、貯蔵前後の溶解率を評価した。結果を表2に示す。
【0131】
・パドル法、50rpm
・試験媒質:0.1N HCl(pH1.2)900mL
・試験液の温度:37±0.5℃
・サンプリング時間:15分および30分
・測定方法:UHPLC
【0132】
UHPLC条件
・測定波長:266nm
・カラム:YMC-Triart C18(2.1mm×100mm、1.9μm)
・カラム温度:約40℃
・移動相:アセトニトリル/水混合物(=3/2)+0.1%トリフルオロ酢酸
・流速:化合物(I)の保持時間が約1.0分になるように調節した
・注入量:10μL
【0133】
【表2】
【0134】
上記表2に挙げる結果は、実施例1の錠剤が高い溶解安定性を有していたことを示している。
【0135】
実施例5
無作為二重盲検プラセボ対照アダプティブ第2/3相試験およびOLEを実施して、原発性ミトコンドリアミオパチーを有する参加者で化合物(I)の有効性、安全性、および耐容性を評価する。有効性(すなわち、機能的改善)は、機能的運動試験、6MWTによって評価する。試験は、以下の部分:スクリーニング(4週間);化合物(I)またはその薬学的に許容される塩対マッチングプラセボの2回用量による第2相用量選択部分(2週間);選択した単回用量処置対プラセボによる第3相部分(最大52週間);OLE(24週間);およびフォローアップ(4週間)からなる。
【0136】
第2相部分:
約30名の参加者を第2相用量選択部分に登録する。無作為化時に、参加者を1:1:1の割合で3群(30mgの化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、75mgの化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、またはプラセボ;各群n=10)のうちの1つに無作為に割り付ける。すべての参加者(化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩の2つの用量またはマッチングプラセボのうちの1つに割り付けた)は、少なくとも14日間、治験薬を1日1回服用する。第14日の薬物動態(AUCtauおよびCmax)データに基づき、さらなる用量コホートを非盲検様式で無作為化せずに第2相部分に追加してもよい。30mg錠剤または75mg錠剤のいずれでも参加者の曝露量が、健常成人に75mgを反復投与した後の第1相のカプセル剤と同程度にならなかった場合、50mgまたは125mgなどの追加の用量を選択する。選択した用量は、それぞれ268ng/mLおよび1530ng・h/mL以下の予想平均CmaxおよびAUCtauを提供し;これは、カプセル剤で75mgを反復投与した後に健常成人で観察された平均CmaxおよびAUCtauの2倍(200%)以内であり、52週齡のサルおよび26週齡のラットGLP毒性試験において、有害効果が観察されないレベル(NOAEL、試験した最高用量)の曝露量のそれぞれ37.4%および3.7%(AUC24)、ならびに51.2%および1.7%(Cmax)である。すべての参加者が第14日の評価を完了した後、追加の薬物動態データ解析とともに、薬力学的(すなわち、機構的PPARδ標的遺伝子発現)データ解析を実施する。薬物動態および薬力学的データに基づいて、試験の次の部分(第3相部分)に関連する用量レベルを選択する。参加者は、新たな安全性、耐容性および/または薬物動態データにより用量の変更が必要とされない限り、元の用量レベルを維持し、第3相用量が決定されるまでは新たな参加者を試験に登録しない。
【0137】
第3相部分:
第3相用量を選択した後、プラセボ群以外のすべての参加者を、試験の第3相部分の残りの間(第2相部分を含む最大52週間まで)、選択した用量レベルの化合物(I)またはその薬学的に許容される塩に切り替える。初めにプラセボに割り付けた参加者は、52週間までプラセボ群に残る。残りの参加登録者(n=約109、参加者)は、化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、またはマッチングプラセボのいずれかに、1:1の割合で無作為化する。
【0138】
試験の第3相部分を完了し、OLEに適格であるすべての参加者には、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を、さらに24週間服用する機会を提供する。
【0139】
有害事象(AE)、バイタルサイン、日常的な12誘導心電図(ECG)、安全性臨床検査、併用薬、人口統計学的データおよび累積AEデータを含む安全性データを、非盲検的様式で検討する。
【0140】
治験薬(IP)
化合物(I)またはその薬学的に許容される塩(錠剤含量は10mgおよび25mg)、プラセボ
【0141】
参加者には、できるだけ毎日午前中の同じ時間にIPを服用するよう指導すべきである。錠剤の粉砕は不可。IPは下記を除き、食事と共に、または食事なしで経口投与する。
【0142】
第0週(第2相部分に登録された参加者のみ)
第2相部分に登録された参加者に関して、参加者は、第1日のIP投与前に一晩絶食するものとする(すなわち、投与前少なくとも10時間から投与後少なくとも4時間まで飲食不可)。水分の摂取は、IPと共に摂取する水分を除き、投与前少なくとも1時間から少なくともIP投与時まで禁止とする。
【0143】
第2週(第2相部分に登録された参加者のみ)
参加者は一晩絶食するものとする(すなわち、投与前少なくとも10時間から投与後少なくとも4時間まで飲食不可)。水分の摂取は、IPと共に摂取する水分を除き、投与前少なくとも1時間から投与後少なくとも2時間まで禁止とする。
【0144】
第12、第36および第64週
参加者は一晩絶食するものとする(すなわち、投与前少なくとも10時間から少なくとも薬物動態採血時まで飲食不可)。水分の摂取は、IPと共に摂取する水分を除き、投与前少なくとも1時間から少なくともIP投与時まで禁止とする。
【0145】
処置群および期間
IP:治験薬;NA:該当なし
†第3相部分を完了し、OLEに適格であるすべての参加者には、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を24週間服用する機会を提供する。
§第3相部分の用量レベルは、新たな薬物動態/薬力学、安全性および耐容性データにより決定する。異なる用量レベルを採用することもある。
【0146】
実施例6
アンジオポエチン様4(ANGPTL4)はANGPTL4タンパク質をコードする遺伝子であり、PPARによって転写制御されている(Georgiadi, A., et al., Circ Res, 2010. 106(11): p. 1712-21)。PPARδの活性化は、リポタンパク質リパーゼを阻害するのに役立ちしたがって血清トリグリセリドレベルを高めるANGLPTL4の産生を誘導する。24時間または48時間処理した細胞は、化合物(I)処理後にANGPTL4の大きな誘導を示した(図3A)。ピルビン酸デヒドロナーゼキナーゼ4(PDK4)は、PPARδ転写カスケードの一部で活性化される。PKD4はピルビン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤として機能し、したがってグルコース代謝を低下させ、代替基質の利用を促進する(Phua, W.W.T., et al., International journal of molecular sciences, 2018. 19(5): p. 1425)。化合物(I)は、試験したすべての細胞株で、24時間または48時間処理によりPDK4を誘導し、転写産物は10~50倍増加した(図3B)。
【0147】
PPARδの主な機能は、ミトコンドリアFAOに関与する遺伝子の誘導である(Ravnskjaer, K., et al., Journal of lipid research, 2010. 51(6): p. 1370-1379)。化合物(I)が、FAOに関与する遺伝子の発現を増加させることができたかどうかを試験した。アシル-CoAデヒドロゲナーゼ超長鎖(ACADVL)は、長鎖脂肪酸(c16~c18)をミトコンドリアマトリックスへの移入前に分解するタンパク質をコードする。化合物(I)は、試験した細胞株の2つでACADVL発現を有意に上方制御させた。MELASおよびMERRF細胞は標的遺伝子の誘導を示したが、統計的比較を行うには十分な生物学的複製(n=2)はなかった(図3C)。カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1a(CPT1A)は、脂肪酸酸化における律速タンパク質をコードする。これは、脂肪酸をミトコンドリア外膜を横切ってアシルカルニチンとして移入するよう機能する(Qu, Q., et al., Cell Death & Disease, 2016. 7(5): p. e2226-e2226)。化合物(I)処理により、試験したすべての細胞株で、CPT1A転写産物の約2倍の誘導をもたらした(図3D)。溶質キャリアファミリー25メンバー20(SLC25A20)は、アシルカルニチンのミトコンドリアマトリックスへの移入を仲介するカルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼをコードし、試験した4つの細胞株すべてで化合物(I)処理により誘導された(図3E)。
【0148】
実施例7
化合物(I)は、脂肪酸の移入、操作、および異化を促進する遺伝子、ならびにグルコースのピルビン酸への変換を制限する遺伝子の転写を増加させた(図3A~3E)。この遺伝子誘導のカスケードは、グルコースから脂肪酸への代謝のシフトを示唆している。化合物(I)で処理したPMM細胞で観察された遺伝子発現の増加の代謝効果を評価するために、脂肪酸(パルミチン酸)を唯一の基質としてOXPHOSを測定する細胞呼吸計法を利用した。PMM患者の筋細胞にはミトコンドリア障害があることを考えると、PMM患者の線維芽細胞には脂肪酸由来のOXPHOSの欠如があるかどうかの疑問が生じた。この疑問を評価するために、次いで、健常ドナー線維芽細胞に対しPMM患者線維芽細胞における脂肪酸介在性OXPHOSを測定した。健常ドナーおよびPMM患者の細胞は年齢および性別をマッチさせた。ドナーのばらつきが大きく、患者試料の入手が限られていたにもかかわらず、PMM線維芽細胞(MELASとKSS)は、健常対照と比較して脂肪酸介在性OXPHOSの能力低減を示し、それぞれ63%および37%の減少であった。60%のtRNA-Lys 8344ヘテロプラスミーを有するMERRFサイブリッドは、対照サイブリッドに比べて脂肪酸介在性OXPHOSの欠如を示さなかった(図4A)。
【0149】
化合物(I)による処理は、試験したリー/LHON細胞株において、脂肪酸介在性OXPHOSを有意に増加させた。MELASおよびKSS患者線維芽細胞の両方で、用量反応傾向が見られたが、2つの生物学的複製による有意性は、細胞入手の制限のために試験不可能であった。化合物(I)刺激は、30nM用量で脂肪酸介在性OXPHOSを30%以上増加させ、これは健常ドナー線維芽細胞との比較で観察された脂肪酸介在性OXPHOSの部分的(MELAS)およびほぼ完全な回復(KSS)である。MERRFサイブリッド細胞株では、脂肪酸介在性OXPHOS増加の用量依存的傾向が観察されたが、30nMでの反応はあまり顕著ではなかった(図4B)。
【0150】
実施例8
PMM細胞株で観察されたOXPHOSの改善を考えて、化合物(I)のインビボでの有効性を試験した。老化食事誘発肥満(DIO)マウスは、骨格筋FAO低減および運動能力低下の表現型が報告されている、骨格筋ミトコンドリア機能不全の非遺伝的マウスモデルである(Yokota, T., et al., American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology, 2009. 297(3): p. H1069-H1077およびCollins, K.H., et al., Frontiers in physiology, 2018. 9: p. 112)。
【0151】
老化DIOマウスに、30mg/kgの化合物(I)を1日1回、夜間周期の開始前に5週間経口投与した。化合物(I)への骨格筋曝露の解析により、薬物は検出可能であり、14nMのマウスEC50をカバーすることが示された(図6A)。遺伝子発現解析により、化合物(I)はPPARδ標的遺伝子であるAngptl4およびPdk4の発現をそれぞれ3.5倍および2.5倍増加させたことが明らかになった(図5Aおよび5B)。FAO遺伝子(Acadvl、Cpt1a、およびSlc25a20)の発現も、化合物(I)処置マウスで有意に増加した(図5C~5E)。化合物(I)は、試験中に体重または体組成を変化させなかった(図6Bおよび6C)。30mg/kgの化合物(I)で5週間処置した老化DIO動物は、持続走行を促進するために必要な動機づけグリッドにおける落下率の低下を示した(図5F)。化合物(I)で処置した動物は、動機づけグリッドへの落下率が低下したが、これは走行距離の増加には対応しなかった(図5Gおよび5H)。走行距離に変化がないにもかかわらず、これらのデータは走行能力の改善を示している。持久力の変化をよりうまく定量化するために、疲労指数を確立した。疲労指数は、各処置群内の総走行距離に対する経時的な累積落下回数の比で表す。このアプローチを独立した試験で用いて、老化DIOマウスが、同齢の対照と比較して疲労指数が大きいことを確認した(図7A)。この疲労指数を持久力の指標として用いて、化合物(I)処置マウスは、媒体のみで処置した対照動物よりも疲労が少ないことが示された(図5I)。さらに、化合物(I)マウスは、自発活動ならびに立ち上がりが増加する傾向を示し(図6Dおよび6E);両方の活動で、老化DIOは、同齢の固形飼料食動物よりも成績が悪かった(図7Bおよび7C)。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】