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特表2024-521369切削インサート及びこれを含む切削工具組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】切削インサート及びこれを含む切削工具組立体
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/14 20060101AFI20240524BHJP
   B23B 27/22 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B23B27/14 C
B23B27/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574671
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 KR2022008075
(87)【国際公開番号】W WO2022260426
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】17/345,105
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508151781
【氏名又は名称】デグテック エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,チャンウォン
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046CC00
3C046CC01
3C046CC06
3C046JJ02
(57)【要約】
一実施例によるフロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングが可能な切削インサートは、上面、上面と上下方向に対向する下面;上面と下面を連結する側面;上面と下面を貫通する装着ホール;及び、上面と側面の境界に形成される複数の切削刃を含む。上面は、1つ以上の切削コーナーを有し、複数の切削刃は、切削コーナーから延長する主切削刃及び副切削刃を含み、上下方向に垂直である仮想の基準面に対して高送りバック‐ターニングに用いられる副切削刃の代表傾きは、フロント‐ターニングに用いられる主切削刃の代表傾きより大きい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングが可能な切削インサートであって、
上面;
前記上面と上下方向に対向する下面;
前記上面と前記下面を連結する側面部;
前記上面と前記下面を貫通する装着ホール;及び
前記上面と前記側面部の境界に形成される複数の切削刃を含み、
前記上面は1つ以上の切削コーナーを有し、
前記複数の切削刃は、前記切削コーナーから延長する主切削刃及び副切削刃を含み、
前記上下方向に垂直である仮想の基準面に対して高送りバック‐ターニングに用いられる前記副切削刃の代表傾きは、フロント‐ターニングに用いられる前記主切削刃の代表傾きより大きい、切削インサート。
【請求項2】
前記側面部は、第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含み、
前記第1側面と前記第2側面が対向し、前記第3側面と前記第4側面が対向し、
前記上面に前記切削コーナーが一対備えられ、
前記一対の切削コーナーは、隣接した前記第1側面と前記第3側面が前記上面と会う第1切削コーナー、及び、隣接した前記第2側面と前記第4側面が前記上面と会う第2切削コーナーからなり、
前記主切削刃は、前記第1切削コーナーから延長して前記第1側面と前記上面が会う角に形成される第1切削刃、及び前記第2切削コーナーから延長して前記第2側面と前記上面が会う角に形成される第2切削刃からなり、
前記副切削刃は、前記第1切削コーナーから延長して前記第3側面と前記上面が会う角に形成される第3切削刃、及び前記第2切削コーナーから延長して前記第4側面と前記上面が会う角に形成される第4切削刃からなる、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記上面は、ひし形状を有し、
前記一対の切削コーナーのそれぞれは、66°以上75°以下であるコーナー角を有する、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記複数の切削刃のそれぞれは、ストレート及びセレーションの組み合わせ形状、ストレート及びカーブの組み合わせ形状、複数のストレートの組み合わせ形状、ストレート形状及びカーブ形状のうちのいずれか1つの形状を有する、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記主切削刃の代表傾きは、前記切削コーナーから前記主切削刃の長さの半分地点を過ぎた第1垂直線まで延長する第1仮想線の前記基準面に対する傾きであり、
前記第1仮想線を基準として、前記第1仮想線と前記第1仮想線の上方の前記主切削刃によって形成される部分の総面積は、前記第1仮想線と前記第1仮想線の下方の前記主切削刃によって形成される部分の総面積と同じであり、
前記副切削刃の代表傾きは、前記切削コーナーから前記副切削刃の長さの半分地点を過ぎた第2垂直線まで延長する第2仮想線の前記基準面に対する傾きであり、
前記第2仮想線を基準として前記第2仮想線と前記第2仮想線の上方の前記副切削刃によって形成される部分の総面積は、前記第2仮想線と前記第2仮想線の下方の前記副切削刃によって形成される部分の総面積と同じである、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記上面は、シート面及びレーキ面を含み、
前記シート面は、前記基準面に平行な平面として形成され、
前記レーキ面は、複数の谷部と複数の山部が交互に連結される曲面として形成される、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記レーキ面は、前記主切削刃に隣接したフロント‐ターニングレーキ面及び前記副切削刃に隣接したバック‐ターニングレーキ面を含む、請求項6に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記一対の切削コーナーを通るコーナーの二等分線、及び、前記フロント‐ターニングレーキ面の谷部と山部との交差部の延長線の間の角度は、前記コーナーの二等分線、及び、前記バック‐ターニングレーキ面の谷部と山部との交差部の延長線の間の角度より小さい、請求項7に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記バック‐ターニングレーキ面には、複数のドット部が前記副切削刃の延長方向に沿って離隔されるように形成された、請求項7に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記副切削刃と前記複数のドット部との間の距離は、前記主切削刃と前記フロント‐ターニングレーキ面のシート面交差部の間の距離より小さい、請求項9に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記フロント‐ターニングレーキ面には、前記装着ホールに向かう方向に進むほど下方傾斜した第1グルーブ面及び前記第1グルーブ面に連結され、前記装着ホールに向かう方向に進むほど上向き傾斜した第2グルーブ面を有するフロント‐ターニングチップフォーマが形成され、
前記バック‐ターニングレーキ面には、前記装着ホールに向かう方向に進むほど下方傾斜した第3グルーブ面及び前記第3グルーブ面に連結され、前記装着ホールに向かう方向に進むほど上向き傾斜した第4グルーブ面を有するバック‐ターニングチップフォーマが形成される、請求項7に記載の切削インサート。
【請求項12】
前記バック‐ターニングチップフォーマの長さは、前記上面と会う前記第3側面の角の長さの1/2以上である、請求項11に記載の切削インサート。
【請求項13】
前記基準面に対する前記バック‐ターニングチップフォーマの傾斜角は、前記一対の切削コーナーを通るコーナーの二等分線に対称の位置の前記フロント‐ターニングチップフォーマの傾斜角より大きい、請求項11に記載の切削インサート。
【請求項14】
前記バック‐ターニングチップフォーマの傾斜路の距離は、前記一対の切削コーナーを通るコーナーの二等分線に対称の位置の前記フロント‐ターニングチップフォーマの傾斜路の距離より小さい、請求項11に記載の切削インサート。
【請求項15】
前記主切削刃は、被削材に対して90°超の切込角を有し、前記副切削刃は、被削材に対して30°未満の切込角を有する、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項16】
前記上面と前記下面は、前記基準面を中心に鏡対称である、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項17】
被削材を旋削加工するための切削工具組立体であって、
フロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングの兼用が可能な切削インサート;
前記切削インサートが装着されるインサートポケットを先端に備える工具ホルダー;及び
前記切削インサートを前記工具ホルダーのインサートポケットに位置固定させる固定部材とを含み、
前記切削インサートは、
上面、前記上面と上下方向に対向する下面、前記上面と前記下面との間に位置する複数の側面、及び、前記上面と前記複数の側面が会う角に形成される複数の切削刃を含み、
前記上面と前記下面との間に位置して前記上下方向に垂直である仮想の基準面を中心に、前記上面と前記下面は鏡対称であり、
前記上面は、一対の切削コーナーを備え、
前記複数の切削刃は、前記一対の切削コーナーから延長するフロント‐ターニング用の主切削刃及び高送りバック‐ターニング用の副切削刃を含み、
前記基準面に対して前記副切削刃の代表傾きは、前記主切削刃の代表傾きより大きく、
前記主切削刃は、前記被削材に対して90°超の切込角を有し、前記副切削刃は、前記被削材に対して30°未満の切込角を有する、切削工具組立体。
【請求項18】
前記主切削刃の代表傾きは、前記切削コーナーから前記主切削刃の長さの半分地点を過ぎた第1垂直線まで延長する第1仮想線の前記基準面に対する傾きであり、
前記第1仮想線を基準として前記第1仮想線と前記第1仮想線の上方の前記主切削刃によって形成される部分の総面積は、前記第1仮想線と前記第1仮想線の下方の前記主切削刃によって形成される部分の総面積と同じであり、
前記副切削刃の代表傾きは、前記切削コーナーから前記副切削刃の長さの半分地点を過ぎた第2垂直線まで延長する第2仮想線の前記基準面に対する傾きであり、
前記第2仮想線を基準として前記第2仮想線と前記第2仮想線の上方の前記副切削刃によって形成される部分の総面積は、前記第2仮想線と前記第2仮想線の下方の前記副切削刃によって形成される部分の総面積と同じである、請求項17に記載の切削工具組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被削材の旋削加工に用いられる切削インサート及び、これを含む切削工具組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋削加工は、旋盤で行う作業であり、主に丸い形状の被削材を回転させ、その表面を切削工具で削って加工する方式である。このような旋削加工において、一般にバック‐ターニング時の切削インサートの切込角が小さいと、被削材から発生するチップの厚さが薄くなり、長く伸びるチップが発生してチップの排出流れが円滑でなくなる。よって、従来は切削インサートのコーナー角を小さく設計してバック‐ターニング時の切削インサートの切込角が確保されるようにした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、切削インサートのコーナー角が小さくなると、フロント‐ターニング時の切削インサートの切込角は大きくなり、切削インサートに相対的に大きな負荷が加えられるフロント‐ターニング切削が不利になる。また、切削インサートのコーナー角が小さくなると、切削インサートの上面と下面が小さくなるので、切削インサート設計時のチップフォーマの形成、及びチップの排出誘導のための空間を確保するにあたって多くの制約が発生した。特に、両面型ネガティブインサートの場合、切削インサートの上面と下面を工具装着面としても用いなければならないので、切削インサートの設計時に更なる空間の制約問題が発生して、チップ排出誘導のための空間の確保と、安定した装着のための面積確保の側面でさらに不利になるという点があった。従来の旋削加工に用いられる切削インサートにおいて、小さなコーナー角を有する切削インサートは、主にプロファイリングの用途で用いられる。このような切削インサートはバック‐ターニングの際、先端部分のみ用いられるが、チップフォーマが形成される長さが非常に小さいため、高送りバック‐ターニングに用いるのが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、非回転切削工具、即ち、旋削工具に装着される両面型切削インサートを提供する。また、本開示は、フロント‐ターニング及びバック‐ターニングの兼用が可能であり、チップフォーマの形状を効果的に構成し、やわらかいチップの生成及びチップの良好な排出を誘導することができる切削インサートを提供する。また、本開示は、チップが長く伸びないチップの厚さを得ることができる高送りバック‐ターニングが可能な切削インサートを提供する。また、本開示は、安定した装着面の確保が可能であり、大きな負荷を受けるフロント‐ターニングを円滑に行うことができる切削インサートを提供する。
【0005】
また、本開示は、このような切削インサートを含む切削工具組立体を提供する。
【0006】
本開示の一側面は、切削インサートに関するものである。例示的実施例による切削インサートは、フロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングが可能な切削インサートであり、上面;上面と上下方向に対向する下面、;上面と下面を連結する側面部;上面と下面を貫通する装着ホール;及び上面と側面部の境界に形成される複数の切削刃を含み、上面は1つ以上の切削コーナーを有し、複数の切削刃は、切削コーナーから延長する主切削刃及び副切削刃を含み、上下方向に垂直である仮想の基準面に対して高送りバック‐ターニングに用いられる副切削刃の代表傾きは、フロント‐ターニングに用いられる主切削刃の代表傾きより大きい。
【0007】
一実施例において、切削インサートは第1側面、第2側面、第3側面及び第4側面を含み、第1側面と第2側面が対向し、第3側面と第4側面が対向し得る。上面には切削コーナーが一対備えられ得る。一対の切削コーナーは隣接した第1側面と第3側面が上面と会う第1切削コーナー、及び隣接した第2側面と第4側面が上面と会う第2切削コーナーからなり得る。また、主切削刃は第1切削コーナーから延長して第1側面と上面が会う角に形成される第1切削刃、及び第2切削コーナーから延長して第2側面と上面が会う角に形成される第2切削刃からなり得る。副切削刃は第1切削コーナーから延長して第3側面と上面が会う角に形成される第3切削刃、及び第2切削コーナーから延長して第4側面と上面が会う角に形成される第4切削刃からなり得る。
【0008】
一実施例において、上面はひし形状を有し、一対の切削コーナーのそれぞれは66°以上75°以下であるコーナー角を有し得る。
【0009】
一実施例において、複数の切削刃のそれぞれは、ストレート及びセレーションの組み合わせ形状、ストレート及びカーブの組み合わせ形状、複数のストレートの組み合わせ形状、ストレート形状及びカーブ形状のうちのいずれか1つの形状を有し得る。
【0010】
一実施例において、主切削刃の代表傾きは、切削コーナーから主切削刃の長さの半分地点を過ぎた第1垂直線まで延長する第1仮想線の基準面に対する傾きであってもよく、第1仮想線を基準として、第1仮想線と第1仮想線の上方の主切削刃によって形成される部分の総面積は、第1仮想線と第1仮想線の下方の主切削刃によって形成される部分の総面積と同じであってもよい。また、副切削刃の代表傾きは、切削コーナーから副切削刃の長さの半分地点を過ぎた第2垂直線まで延長する第2仮想線の基準面に対する傾きであってもよく、第2仮想線を基準として第2仮想線と第2仮想線の上方の副切削刃によって形成される部分の総面積は、第2仮想線と第2仮想線の下方の副切削刃によって形成される部分の総面積と同じであってもよい。
【0011】
一実施例において、上面はシート面及びレーキ面を含み、シート面は基準面に平行な平面として形成され、レーキ面は複数の谷部と複数の山部が交互に連結される曲面として形成され得る。
【0012】
一実施例において、レーキ面は、主切削刃に隣接したフロント‐ターニングレーキ面及び副切削刃に隣接したバック‐ターニングレーキ面を含み得る。
【0013】
一実施例において、一対の切削コーナーを通るコーナーの二等分線、及びフロント‐ターニングレーキ面の谷部と山部との交差部の延長線の間の角度は、コーナーの二等分線、及びバック‐ターニングレーキ面の谷部と山部との交差部の延長線の間の角度より小さいこともある。
【0014】
一実施例において、バック‐ターニングレーキ面には複数のドット部が副切削刃の延長方向に沿って離隔されるように形成され得る。
【0015】
一実施例において、副切削刃と複数のドット部との間の距離は、主切削刃とフロント‐ターニングレーキ面のシート面交差部の距離より小さいこともある。
【0016】
一実施例において、フロント‐ターニングレーキ面には装着ホールに向かう方向に進むほど下方傾斜した第1グルーブ面及び第1グルーブ面に連結され、装着ホールに向かう方向に進むほど上向き傾斜した第2グルーブ面を有するフロント‐ターニングチップフォーマが形成され、バック‐ターニングレーキ面には装着ホールに向かう方向に進むほど下方傾斜した第3グルーブ面及び第3グルーブ面に連結され、装着ホールに向かう方向に進むほど上向き傾斜した第4グルーブ面を有するバック‐ターニングチップフォーマが形成され得る。
【0017】
一実施例において、バック‐ターニングチップフォーマの長さは上面と会う第3側面の角の長さの1/2以上であり得る。
【0018】
一実施例において、基準面に対するバック‐ターニングチップフォーマの傾斜角は、一対の切削コーナーを通るコーナーの二等分線に対称の位置のフロント‐ターニングチップフォーマの傾斜角より大きいこともある。
【0019】
一実施例において、バック‐ターニングチップフォーマの傾斜路の距離は、一対の切削コーナーを通るコーナーの二等分線に対称の位置のフロント‐ターニングチップフォーマの傾斜角より小さいこともある。
【0020】
一実施例において、主切削刃は被削材に対して90°超の切込角を有し、副切削刃は被削材に対して30°未満の切込角を有し得る。
【0021】
前述した実施例において、上面と下面は基準面を中心に鏡対称であり得る。
【0022】
本開示の他側面は、切削工具組立体に関するものである。例示的実施例による切削工具組立体は、フロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングの兼用が可能な切削インサート;切削インサートが装着されるインサートポケットを先端に備える工具ホルダー;及び切削インサートを工具ホルダーのインサートポケットに位置固定させる固定部材を含む。切削インサートは、上面、上面と上下方向に対向する下面、上面と下面との間に位置する複数の側面、及び、上面と複数の側面が会う角に形成される複数の切削刃を含み、上面と下面との間に位置して上下方向に垂直である仮想の基準面を中心に、上面と下面は鏡対称である。上面は一対の切削コーナーを備え、複数の切削刃は、一対の切削コーナーのそれぞれから延長するフロント‐ターニング用の主切削刃及び高送りバック‐ターニング用の副切削刃を含み、基準面に対して副切削刃の代表傾きは主切削刃の代表傾きより大きく、主切削刃は被削材に対して90°超の切込角を有し、副切削刃は被削材に対して30°未満の切込角を有する。
【0023】
一実施例において、主切削刃の代表傾きは、切削コーナーから主切削刃の長さの半分地点を過ぎた第1垂直線まで延長する第1仮想線の基準面に対する傾きであってもよい。、第1仮想線を基準として第1仮想線と第1仮想線の上方の主切削刃によって形成される部分の総面積は、第1仮想線と第1仮想線の下方の主切削刃によって形成される部分の総面積と同じであってもよい。副切削刃の代表傾きは、切削コーナーから副切削刃の長さの半分地点を過ぎた第2垂直線まで延長する第2仮想線の基準面に対する傾きであってもよい。第2仮想線を基準として第2仮想線と第2仮想線の上方の副切削刃によって形成される部分の総面積は、第2仮想線と第2仮想線の下方の副切削刃によって形成される部分の総面積と同じであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本開示の実施例によると、切削インサートが有する構造的な特徴によるバック‐ターニング時の角度の制御を通じ、チップが長く伸びないように誘導することができる。
【0025】
本開示の実施例による切削インサートは、4つのコーナーを有する両面型インサートであり、バックターニング及びフロントターニングの両方向いずれにおいても安定した切削が可能であり、特にバックターニング方向では高送り加工が可能なため、生産性の向上を図ることができる。また、円滑なチップの排出を誘導できるため、チップが長く伸びることによる被削材の表面の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
明細書に含まれ、明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の実施例を示す。
【0027】
図1は、本開示の一実施例による切削インサートを示した斜視図である。
【0028】
図2は、本開示の一実施例による切削インサートを他の方向から見た斜視図である。
【0029】
図3は、図1に示された切削インサートの平面図である。
【0030】
図4は、図1に示された切削インサートの正面図である。
【0031】
図5は、図1に示された切削インサートの右側面図である。
【0032】
図6は、図5に示された主切削刃の拡大図である。
【0033】
図7は、図5に示された副切削刃の拡大図である。
【0034】
図8A及び図8Bは、ストレート及びカーブの組み合わせ形状の切削刃における代表傾きを示した図面である。
【0035】
図9A及び図9Bは、複数のストレートの組み合わせ形状の切削刃における代表傾きを示した図面である。
【0036】
図10A及び図10Bは、ストレート形状の切削刃における代表傾きを示した図面である。
【0037】
図11A及び図11Bは、カーブ形状の切削刃における代表傾きを示した図面である。
【0038】
図12は、図3に示されたZ1地点における切削インサートの部分断面図である。
【0039】
図13は、図3に示されたZ2地点における切削インサートの部分断面図である。
【0040】
図14は、本開示の一実施例による切削工具組立体を示した斜視図である。
【0041】
図15は、図14に示された切削工具組立体の分解斜視図である。
【0042】
図16は、図14の切削工具組立体が被削材を切削する様子を示した図面である。
【0043】
図17は、図14の切削工具組立体が被削材を切削する様子を別方向から示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示の実施例は、本開示の技術的思想を説明するための目的で例示されたものである。本開示による権利範囲は、以下に提示される実施例やこれら実施例に関する具体的説明に限定されるものではない。
【0045】
本開示に用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、特に定義されない限り、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有する。本開示の全ての用語は、本開示をさらに明確に説明する目的で選択されたものであり、本開示による権利範囲を制限するために選択されたものではない。
【0046】
本開示で用いられる「含む」、「備える」、「有する」等の表現は、当該表現が含まれる語句または文章で特に言及されない限り、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open‐ended terms)として理解されるべきである。
【0047】
本開示で記述された単数型の表現は特に言及されない限り複数型の意味を含み得、これは請求の範囲に記載された単数型の表現にも同様に適用される。
【0048】
本開示で用いられる「第1」、「第2」等の表現は、複数の構成要素を相互区分するために用いられ、当該構成要素の順序または重要度を限定するものではない。
【0049】
本開示で用いられる「上方」、「上」等の方向指示語は、添付の図面において上面が下面に対して位置する方向を基準とする。「下方」、「下」等の方向指示語は「上方」または「上」の反対方向を意味する。添付の図面に示す切削インサートは異なって配向することもあり、この方向指示語は、それに合わせて解釈されてもよい。
【0050】
以下、添付の図面を参照して切削インサート及びこれを含む切削工具組立体の実施例を説明する。添付の図面において、同一または対応する構成要素には同一の参照符号が付与されている。また、以下の実施例の説明において、同一または対応する構成要素の重複記述は省略され得る。しかし、構成要素に関する技術が省略されても、そのような構成要素がある実施例に含まれないことを意図するものではない。
以下、添付の図面を参照して切削インサート及びこれを含む切削工具組立体の実施例について説明する。
【0051】
図1は、本開示の一実施例による切削インサート(1000)を示した斜視図であり、図2は、本開示の一実施例による切削インサート(1000)を他の方向から見た斜視図である。
【0052】
図1及び図2を参照すると、切削インサート(1000)は、旋削加工に用いることができる両面型インデキサブル切削インサートとして参照され得る。切削インサート(1000)は、上下方向(図1及び図2のz方向)に対向する上面(1100)と下面(1200)、及び上面(1100)と下面(1200)を連結する側面部(1300)を含む。一実施例による切削インサート(1000)は、上面(1100)と下面(1200)を貫通するように形成される装着ホール(1400)を備え、クランプスクリュなどに固定部材を用いて旋削工具に堅固に装着され得る。
【0053】
切削インサート(1000)は、側面部(1300)として4つの側面、即ち、第1側面(1310)、第2側面(1320)、第3側面(1330)及び第4側面(1340)を有する。ここで、第1側面(1310)と第2側面(1320)が対向し、第3側面(1330)と第4側面(1340)が対向する。即ち、切削インサート(1000)を上方または下方から見た時、上面(1100)と下面(1200)は四角形状を有する。一実施例では、複数の側面の角の長さ(S1、S2)がいずれも同じであるため、上面(1100)と下面(1200)はひし形状を有する。
【0054】
切削インサート(1000)において、上面(1100)と複数の側面が会う角及び下面(1200)と複数の側面が会う角には切削刃が形成され得る。
【0055】
上面(1100)と下面(1200)のそれぞれは、隣接した側面の角が会う4つのコーナーを有し、4つのコーナーのうち2つの切削コーナー(1110)として参照され得、残りの2つは非切削コーナー(1110')として参照され得る。
【0056】
一実施例において、一対の切削コーナー(1110)は、隣接した第1側面(1310)と第3側面(1330)が上面(1100)[または下面(1200)]と会う第1切削コーナー(1111)、及び隣接した第2側面(1320)と第4側面(1340)が上面(1100)[または下面(1200)]と会う第2切削コーナー(1112)からなる。一対の非切削コーナー(1110')は、隣接した第1側面(1310)と第4側面(1340)が、上面(1100)[または下面(1200)]と会う第1非切削コーナー(1111')、及び隣接した第2側面(1320)と第3側面(1330)が上面(1100)[または下面(1200)]と会う第2非切削コーナー(1112')からなる。
【0057】
切削インサート(1000)に形成される複数の切削刃は、一対の切削コーナー(1110)から延長する主切削刃(1500)と副切削刃(1600)を含む。即ち、上面(1100)と下面(1200)のそれぞれに主切削刃(1500)と副切削刃(1600)が備えられる。主切削刃(1500)は、フロント‐ターニング(またはフォワードターニング)に用いられ、副切削刃(1600)は、バック‐ターニング(またはバックワードターニング)、特に、高送りバック‐ターニングに用いられ得る。生産性を顕著に向上することができる高送りの条件は、0.5mm/rev以上の条件であり得る。
【0058】
切削インサート(1000)を両面使用できるように、上面(1100)と下面(1200)は、装着ホール(1400)の中心(CP)を通り、上下方向に延長する中心軸線(L0)に対して垂直である仮想の平面(以下、基準面とする)に対して鏡対称である。従って、以下では、説明の重複を避けるために、上面(1100)と下面(1200)のうち、上面(1100)を中心に説明する。
【0059】
一実施例による切削インサート(1000)は、ひし形状の上面(1100)を有するが、切削インサート(1000)の形状はこれに限定されるものではない。例えば、切削インサート(1000)は、円形、楕円形及び多様な多角状の上面を有し得る。多様な形状の上面には1つ以上の切削コーナーが備えられ得る。上面がひし形状の場合、このような上面は多様なコーナー角を有する切削コーナーを備え得る。多様な形状の上面を有する切削インサートにおいても、切削コーナーから延長する主切削刃と副切削刃が形成されているため、切削インサートをフロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングのいずれにも適用可能である。
【0060】
図3は、図1に示された切削インサート(1000)の平面図である。
【0061】
図3を参照すると、主切削刃(1500)は、第1切削コーナー(1111)から延長して第1側面(1310)と上面(1100)が会う角に形成される第1切削刃(1510)、及び第2切削コーナー(1112)から延長して第2側面(1320)と上面(1100)が会う角に形成される第2切削刃(1520)からなる。また、副切削刃(1600)は、第1切削コーナー(1111)から延長して第3側面(1330)と上面(1100)が会う角に形成される第3切削刃(1610)、及び第2切削コーナー(1112)から延長して第4側面(1340)と上面(1100)が会う角に形成される第4切削刃(1620)からなる。即ち、各切削コーナー当たり1つの主切削刃(1500)と1つの副切削刃(1600)が形成される。
【0062】
切削コーナー(1110)は、被削材のターニング加工時の振動を引き起こす高い半径圧力を発生させずに加工精度を向上させることができるように、鋭角のコーナー角(a)を有し得る。
【0063】
切削コーナー(1110)のコーナー角(a)は66°以上75°以下であり得る。一実施例の切削インサート(1000)におけるコーナー角(a)は70°である。切削コーナーのコーナー角が66°未満の場合、切削コーナーが細くなって構造的に弱くなるので、このようなコーナー角を有する切削インサートは大きな負荷を受ける高送りバック‐ターニングに用いるのに適さなくなる。また、上面が狭くなるので、チップ形成機能を提供するための傾斜面の領域と、チップ排出のための空間確保が制限され、良好なチップの排出を期待しにくくなる。切削コーナーのコーナー角が75°超の場合は、バック‐ターニング時の被削材に対する切削インサートの切込角(または、切削刃の角度)が小さくなり、被削材から発生するチップの厚さが薄くなる。厚さが薄いチップは長く伸びやすくなり得るため、チップの円滑な排出が難しくなり、これによって被削材の加工表面に傷が発生するなど、加工品質の低下がもたらされ得る。
【0064】
上面(1100)は、装着ホール(1400)と複数の切削刃(1500、1600)との間に備えられる、シート面(1120)とレーキ面(1130)を含む。シート面(1120)は、工具への装着のための装着面であり、基準面(F)(図4及び図5参照)に対して平行な平面として形成される。レーキ面(1130)は、旋削工程で形成されたチップが滑る表面(チップの排出誘導のための表面)であり、複数の谷部と複数の山部が交互に連結される曲面として形成される。
【0065】
レーキ面(1130)は、フロント‐ターニング時に発生するチップの排出を円滑に誘導することができるよう、主切削刃(1500)に隣接したフロント‐ターニングレーキ面(1131)と、バック‐ターニング時に発生するチップの排出を円滑に誘導することができるよう、副切削刃(1600)に隣接したバック‐ターニングレーキ面(1132)を含む。
【0066】
フロント‐ターニングレーキ面(1131)は、主切削刃(1500)[第1及び第2主切削刃(1510、1520)]の延長方向に沿って複数の谷部(1131A)と複数の山部(1131B)が交互に連続するように形成される。また、バック‐ターニングレーキ面(1132)は、副切削刃(1600)[第1及び第2副切削刃(1610、1620)]の延長方向に沿って複数の谷部(1132A)と複数の山部(1132B)が交互に連続するように形成される。一実施例において、フロント‐ターニングレーキ面(1131)は、フロント‐ターニング時に被削材から発生するチップが、被削材から遠ざかる方向に排出が誘導されるよう、捻じれた形状を有する。即ち、一対の切削コーナー(1110)、即ち、第1切削コーナー(1111)と第2切削コーナー(1112)を通る仮想の線をコーナーの二等分線(B)とする時、フロント‐ターニングレーキ面(1131)の谷部(1131A)と山部(1131B)との交差部の延長線(C1)と、コーナーの二等分線(B)の間の角度(b1)は、バック‐ターニングレーキ面(1132)の谷部(1132A)と山部(1132B)との交差部の延長線(C2)とコーナーの二等分線(B)との間の角度(b2)より小さい。このように、バック‐ターニングレーキ面(1132)での角度(b2)を、フロント‐ターニングレーキ面(1131)での角度(b1)より大きく形成することによって、特にバック‐ターニング時における、チップが長く伸びる方向のチップの排出を反対方向に誘導することができる。
【0067】
バック‐ターニング時に発生するチップは、丸く巻かれたやわらかいチップに生成され、よりスムーズに排出誘導され得るように、バック‐ターニングレーキ面(1131)には副切削刃(1600)の延長方向に沿って複数のドット部(1133)が互いに離隔されるように形成される。ドット部(1133)は、バック‐ターニングレーキ面(1132)、特に、バック‐ターニングレーキ面(1132)の谷部(1132A)で顕著に形成され得、ドット部(1133)はシート面(1120)に平行な表面を含むように形成され得る。このようなドット部(1133)は、良好なチップコントロールのためのチップブレーカの役割を担うことができる。一実施例では、バック‐ターニングレーキ面(1132)に3つのドット部(1133)が形成されたが、ドット部(1133)の個数はこれに限定されない。チップが円滑に排出される方向に誘導されるように、複数のドット部(1133)を連結する仮想線は、副切削刃(1600)に対して傾いていることがある。即ち、複数のドット部(1133)は、切削コーナー(1110)[第1切削コーナー(1111)及び第2切削コーナー(1112)]を基準として、切削コーナー(1110)から遠ざかるほど、隣接した副切削刃(1600)との間隔が大きくなるように形成され得る。
【0068】
切削インサート(1000)を上方から見ると、副切削刃(1600)と複数のドット部(1133)との間の距離(D1)は、主切削刃(1500)とフロント‐ターニングレーキ面(1131)のシート面交差部の間の距離(D2)より小さい。ここで、距離(D1)は、副切削刃(1600)に対する複数のドット部(1133)の最大距離であってもよく、距離(D2)は、主切削刃(1500)に対するフロント‐ターニングレーキ面(1131)のシート面交差部の最大距離であってもよい。
【0069】
一実施例の切削インサート(1000)では、レーキ面(1130)をウェーブした曲面形状に形成すると同時に、バック‐ターニングレーキ面(1132)における距離(D1)を、フロント‐ターニングレーキ面(1131)における距離(D2)より短くすることによって、チップの長い伸びを追加で防止することができるようにしたところ、これを通じ、丸く巻かれた形状のやわらかいチップが生成されて良好なチップの排出が誘導されるようにした。
【0070】
図4は、図1に示された切削インサート(1000)の正面図である。図5は、図1に示された切削インサート(1000)の右側面図である。図6は、図5に示された主切削刃(1500)の拡大図である。図7は、図5に示された副切削刃(1600)の拡大図である。また、図8A及び図8Bは、ストレート及びカーブの組み合わせ形状の切削刃での代表傾きを示した図面であり、図9A及び図9Bは、複数のストレートの組み合わせ形状の切削刃における代表傾きを示した図面である。また、図10A及び図10Bは、ストレート形状の切削刃における代表傾きを示した図面であり、図11A及び図11Bはカーブ形状の切削刃における代表傾きを示した図面である。
【0071】
図4図7を参照すると、一実施例による切削インサート(1000)は、ストレート及びセレーションの組み合わせ形状の切削刃[主切削刃(1500)及び副切削刃(1600)]を有する。ストレート区間は、切削コーナー(1110)から延長し得、セレーション区間は直線区間に連続するように続いて延長し得る。切削インサート(1000)の切削刃の形状は一実施例に限定されず、多様な形状に形成され得る。例えば、図8A図11Bに示された通り、他の実施例では、切削インサートの切削刃[主切削刃(1500)及び副切削刃(1600)]は、ストレート及びカーブの組み合わせ形状(図8A及び図8B参照)、複数のストレートの組み合わせ形状(図9A及び図9B参照)、ストレート形状(図10A及び図10B形状)及びカーブ形状(図11A及び図11B形状)のうちのいずれかの形状を有するように形成され得る。
【0072】
フロント‐ターニング及び高送りバック‐ターニングにいずれも用いることができる切削インサート(1000)において、高送りバック‐ターニングに用いられる副切削刃(1600)は、基準面(F)に対してフロント‐ターニングに用いられる主切削刃(1500)より傾斜して形成される。即ち、主切削刃(1500)の第1傾斜角(d1)は、副切削刃(1600)の第2傾斜角(d2)より小さな大きさを有する。
【0073】
ここで、主切削刃(1500)の第1傾斜角は、主切削刃(1500)の代表傾き(d1)を意味する。代表傾き(d1)は、切削コーナー(1110)から主切削刃(1500)の長さの半分地点(P1)を過ぎる第1垂直線(V1)まで延長する第1仮想線(L1)の基準面(F)に対する傾きである。また、副切削刃(1600)の第2傾斜角は、副切削刃(1600)の代表傾き(d2)を意味する。代表傾き(d2)は、切削コーナー(1110)から副切削刃(1600)の長さの半分地点(P2)を過ぎる第2垂直線(V2)まで延長する第2仮想線(L2)の基準面(F)に対する傾きである(図6図11B参照)。
【0074】
一実施例において、第1仮想線(L1)は、次の通り特定され得る。即ち、第1仮想線(L1)を基準に、第1仮想線(L1)と第1仮想線(L1)の上側の主切削刃(1500)により形成される部分(第1仮想線(L1)の上方の斜線部分)の総面積は、第1仮想線(L1)と第1仮想線(L1)の下側の主切削刃(1500)により形成される部分(第1仮想線(L1)の下方の斜線部分)の総面積と同じであってもよい。
【0075】
一実施例において、第2仮想線(L2)は、次の通り特定され得る。即ち、第2仮想線(L2)を基準に第2仮想線(L2)と第2仮想線(L2)の上側の副切削刃(1600)により形成される部分(第2仮想線(L2)の上方の斜線部分)の総面積は、第2仮想線(L2)と第2仮想線(L2)の下側の副切削刃(1600)により形成される部分(第2仮想線(L2)の下方の斜線部分)の総面積と同じであってもよい。
【0076】
図12は、図3に示されたZ1地点における切削インサート(1000)の部分断面図である。図13は、図3に示されたZ2地点における切削インサート(1000)の部分断面図である。
【0077】
図12に示された通り、フロント‐ターニングレーキ面(1131)には、フロント‐ターニングチップフォーマ(1140)が形成される。フロント‐ターニングチップフォーマ(1140)は、装着ホール(1400)に向かう方向に進むほど下方傾斜した第1グルーブ面(1141)と第1グルーブ面(1141)に連結され、装着ホール(1400)に向かう方向に進むほど上向き傾斜した第2グルーブ面(1142)を含む。
【0078】
また、図13に示された通り、バック‐ターニングレーキ面(1132)には、バック‐ターニングチップフォーマ(1150)が形成される。バック‐ターニングチップフォーマ(1150)は、装着ホール(1400)に向かう方向に進むほど下方傾斜した第3グルーブ面(1151)と第3グルーブ面(1151)に連結され、装着ホール(1400)に向かう方向に進むほど上向き傾斜した第4グルーブ面(1152)を含む。
【0079】
前述した通り、一実施例による切削インサート(1000)は、十分な大きさのコーナー角(a)を有し、空間上の制約を大きく受けずに上面(1100)のレーキ面(1130)に、フロント‐ターニングチップフォーマ(1140)及びバック‐ターニングチップフォーマ(1150)を容易に形成することができる。一実施例においては、安定したチップの排出の誘導が可能なように、バックターニングチップフォーマ(1150)は、上面(1100)のいずれか1つの角長さ[例えば、上面と会う第3側面の角長さ(S2)]の1/2以上の長さ(M)を有するように形成される(図3参照)。
【0080】
図12及び図13を参照すると、基準面(F)に対するバック‐ターニングチップフォーマ(1150)の傾斜角(e2)が、コーナーの二等分線(B)に対称である位置のフロント‐ターニングチップフォーマ(1140)の傾斜角(e1)より大きく、バック‐ターニングチップフォーマ(1150)の傾斜路の距離(N2)がコーナーの二等分線(B)に対称の位置のフロント‐ターニングチップフォーマ(1140)の傾斜路の距離(N1)より小さく形成されてチップブレーキングを誘導することができ、これを通じてチップの長い伸びを防止することができる。
【0081】
図14は、本開示の一実施例による切削工具組立体(100)を示した斜視図である。図15は、図14に示された切削工具組立体(100)の分解斜視図である。
【0082】
図14及び図15を参照すると、切削工具組立体(100)は、旋盤に設けられ、回転する被削材を切削するように構成され得る。そのために、切削工具組立体(100)は、前述した切削インサート(1000)と、切削インサート(1000)が装着されるインサートポケット(2100)の先端に備える工具ホルダー(2000)及び切削インサート(1000)を、工具ホルダー(2000)のインサートポケット(2100)に位置固定させることができる固定部材(3000)を含み得る。
【0083】
一実施例による切削工具組立体(100)は、切削インサート(1000)を工具ホルダー(2000)に安定的に装着できるように切削インサート(1000)を支持する芯(4000)を含む。切削インサート(1000)は、芯(4000)によって支えられた状態で、工具ホルダー(2000)のインサートポケット(2100)に安着され得る。他の実施例において、切削インサート(1000)は、芯(4000)によって支持されずに工具ホルダー(2000)のインサートポケット(2100)に直接安着されることもある。この場合、インサートポケット(2100)は、切削インサート(1000)の下面の形状と相補的な形状を有する表面を含み得る。
【0084】
固定部材(3000)は、上下に突き合わされた切削インサート(1000)と、芯(4000)に嵌められるインサートスクリュ(3100)、切削インサート(1000)の位置固定のためのクランプ(3200)、及び、クランプ(3200)に挿入されて工具ホルダー(2000)に締結されるクランプスクリュ(3300)を含む。クランプ(3200)が切削インサート(1000)を加圧するようにクランプスクリュ(3300)を締め、切削インサート(1000)を工具ホルダー(2000)に位置固定させることができる。
【0085】
図16及び図17は、図14の切削工具組立体(100)が被削材(W)を切削する様子を示した図面である。
【0086】
図16及び図17を参照すると、切削インサート(1000)の主切削刃(1500)は、被削材(W)に対して90°超の切込角(f)を有し、副切削刃(1600)は、被削材(W)に対して30°未満の切込角(g)を有する。バック‐ターニング時の切込角(g)は、フロント‐ターニング時の切込角(f)より小さいので、切削刃及びチップフォーマなどの効果的な配置を通じたチップの排出空間の確保が重要である。一実施例の切削工具組立体(100)に採用された切削インサート(1000)は、切削刃及びチップフォーマなどの効果的な配置を通じてやわらかいチップの生成及び良好なチップの排出を誘導する。切削インサート(1000)は、切込角が小さいバック‐ターニングの方向に加工を行うことによって円滑なチップの排出を誘導することができる。
【0087】
切削工具組立体(1000)は、最適化された刃先構造を有し得る。即ち、切削インサート(1000)において、副切削刃(1600)の代表傾き(d2)は、主切削刃(1500)の代表傾き(d1)より正の角度を有する。従って、切削工具組立体(100)に装着された切削インサート(1000)は、被削材(W)の中心線(CLW)に対して正の刃先配置と類似の構造を有し得る。従って、正の刃先配置と類似の構造を通じて切削が完了した素材外径の表面へのチップの長い伸びを防止し、円滑なチップの排出を誘導することができる。
【0088】
前述した実施例によると、切削インサート(1000)はさらに小さなリード角(g)でバック‐ターニングを可能にするチップコントロール機能を有する。従って、従来の切削インサートよりさらに大きな切削コーナーのコーナー角(a)を有することができるため、バック‐ターニング時の切込角を確保するために切削コーナーを狭く形成する場合に発生する問題点を解決することができる。
【0089】
前述した実施例による技術的特徴について、右側用の切削インサートを例にあげて説明したが、切削刃が反対側に配置される左側用の切削インサートにおいても適用可能である。
【0090】
以上、一部の実施例と添付の図面に示す例によって、本開示の技術的思想が説明されたものの、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者が理解できる本開示の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲で多様な置換、変形及び変更がなされ得るという点を理解する必要がある。また、そのような置換、変形及び変更は添付の請求の範囲内に属するものと考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】