(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】二官能性ケイ素系光開始剤
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
C08F2/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574796
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2022065318
(87)【国際公開番号】W WO2022258568
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021000014885
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ カザルーチェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツォ ラッツァーノ
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA06
4J011CC10
4J011QA23
4J011QB24
4J011SA85
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J011WA05
4J011WA06
(57)【要約】
本発明は、改良された反応性及び表面硬化性を有する新規のシリーズの二官能性ケイ素系光開始剤及びその光重合組成物における使用に係る。本発明は、前記光開始剤を含んでなる組成物の光重合法及び印刷された、被覆された及び組み立てられた部品を含む製品における使用にも係る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは70~98.9質量%(組成物の総含量基準);及び
b)下記式(I)又は(II)の少なくとも1の化合物又はその塩及び/又は溶媒和化合物0.1~35質量%、好ましくは0.1~20質量%、さらに好ましくは0.2~15質量%(組成物の総含量基準);及び
c)促進剤及び/又は共開始剤0~20質量%、好ましくは0~15質量%、さらに好ましくは0.2~15質量%(組成物の総含量基準)を含んでなる光重合性組成物。
式(I)
【化1】
又は式(II)
【化2】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(III)
【化3】
の基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(IV)
【化4】
の基であり、及び他は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、C3-C12アルケニル、-O(C3-C12アルケニル)、-S(C3-C12アルケニル)、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、C1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、ベンジル、及びCH
2トリルから選ばれ;
R
21は、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
3、Si(Si(C1-C12アルキル)
3)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(アリール)
3、及びSi(アリール)
2Si(アリール)
3から選ばれ;
R
22、R
23、R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C3-C12アルケニル、COOH、COO(C1-C12アルキル)、O(C3-C12アルケニル)、S(C3-C12アルケニル)、C5-C7シクロアルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
X、Y、及びZは、それぞれ独立して、O、S、Se、SO、SO
2、NH、N(C1-C12アルキル)、N-アリール、直接結合、CH
2、C(C1-C12アルキル)
2、C(C1-C12アルコキシ)
2、CH(C1-C12アルキル)、CH(C1-C12アルコキシ)、CHOH、C(アリール)
2、CH(アリール)、C(アリールオキシ)
2及びCH(アリールオキシ)から選ばれる。]
【請求項2】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1が式(III)
【化5】
の基であり、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1が式(IV)
【化6】
の基であり、及び他は水素であり;
YがO、S、CH
2、CHOH、CH(C1-C12アルコキシ)、及び直接結合から選ばれ;
Xが直接結合、C(C1-C12アルキル)
2、S、及びCH
2から選ばれ;
ZがO、S、CH
2、N(C1-C12アルキル)、C(C1-C12アルキル)
2、及び直接結合から選ばれ;
R
19及びR
20がC1-C20アルキルであり;
R
21がSi(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3及びSi(C1-C12アルキル)
3から選ばれ;
R
22、R
23、R
25、及びR
26が水素であり;
R
24が水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれる、
請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、下記成分:
(d)1以上の光増感剤(d)0.01~15質量%(組成物の総含量基準);及び/又は
(e)1以上の更なる光開始剤0.5~15質量%(組成物の総含量基準)
の1以上を含んでなる請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、下記成分:
(d)1以上の光増感剤(d)0.01~15質量%(組成物の総含量基準);及び/又は
(e)1以上の更なる光開始剤0.5~15質量%(組成物の総含量基準)
の1以上を含んでなる請求項2に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
式(I)又は式(II)の化合物又はその塩及び/又は溶媒和化合物。
式(I)
【化7】
又は式(II)
【化8】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(III)
【化9】
の基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(IV)
【化10】
の基であり、及び他は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、C3-C12アルケニル、-O(C3-C12アルケニル)、-S(C3-C12アルケニル)、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、C1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、ベンジル、及びCH
2トリルから選ばれ;
R
21は、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
3、Si(Si(C1-C12アルキル)
3)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(アリール)
3、及びSi(アリール)
2Si(アリール)
3から選ばれ;
R
22、R
23、R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C3-C12アルケニル、COOH、COO(C1-C12アルキル)、O(C3-C12アルケニル)、S(C3-C12アルケニル)、C5-C7シクロアルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
X、Y、及びZは、それぞれ独立して、O、S、Se、SO、SO
2、NH、N(C1-C12アルキル)、N-アリール、直接結合、CH
2、C(C1-C12アルキル)
2、C(C1-C12アルコキシ)
2、CH(C1-C12アルキル)、CH(C1-C12アルコキシ)、CHOH、C(アリール)
2、CH(アリール)、C(アリールオキシ)
2及びCH(アリールオキシ)から選ばれる。]
【請求項6】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1が式(III)
【化11】
の基であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1が式(IV)
【化12】
の基であり、及び他は水素であり;
YがO、S、CH
2、CHOH、CH(C1-C12アルコキシ)、及び直接結合から選ばれ;
Xが直接結合、C(C1-C12アルキル)
2、S、及びCH
2から選ばれ;
ZがO、S、CH
2、N(C1-C12アルキル)、C(C1-C12アルキル)
2、及び直接結合から選ばれ;
R
19及びR
20がC1-C20アルキルであり;
R
21がSi(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3及びSi(C1-C12アルキル)
3から選ばれ;
R
22、R
23、R
25、及びR
26が水素であり;
R
24が水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれる、
請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
光重合性組成物、コーティング、接着剤、及びインクを光硬化する方法であって、前記方法は、
(i)請求項1~4のいずれかに記載の光重合性組成物を提供する工程;
(ii)前記光重合性組成物を基材上にコーティング又はプリントする工程;及び
(iii)前記コーティング又はプリントした組成物を前記基材上で光源にて光硬化する工程
を含んでなる方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の光重合性組成物を提供し、及び前記組成物を光源にて光硬化することを含んでなる三次元プリントする方法。
【請求項9】
光源がUVA、UVB、及びUVC領域の1つの紫外光である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
光源が350~420 nmの領域で発光するLED光源である請求項7に記載の方法。
【請求項11】
光源がUVA、UVB、及びUVC領域の1つの紫外光である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
光源が350~420 nmの領域で発光するLED光源である請求項8に記載の方法。
【請求項13】
さらに、光重合前に、光重合性組成物を基材上に塗布する工程を含んでなる請求項8に記載の方法。
【請求項14】
請求項7に記載の方法に従って得られた製品。
【請求項15】
請求項8に記載の方法に従って得られた製品。
【請求項16】
請求項1~4のいずれかに記載の組成物を三次元プリントすることによって得られた製品。
【請求項17】
請求項5又は6に記載の化合物を含んでなる混合物を三次元プリントすることによって得られた製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された反応性及び表面硬化性を有する新規のシリーズの二官能性ケイ素系光開始剤及びその光重合組成物における使用に係る。本発明は、前記光開始剤を含んでなる組成物の光重合法及びプリントされた、コーティングされた、及び組み立てられた部品を含む製品における使用にも係る。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、多くの光開始剤が毒物又は生殖毒物として禁止され又は禁止される予定であるため、新しい光開始剤(Pls)の企画及び開発が注目を集めている。
【0003】
文献では各種のNorrishタイプI及びII光開始剤が報告されており、そのいくつかの例は、アシルゲルマニウム光開始剤(EP 3150641、EP 2649981)、ベンゾイルフェニルテルリドPIs(Macromolecules, 2014, 47(16), 5526-5531)、ケイ素系PIs(特開2010-229169、Macromolecules, 2009, 5 42(16), 6031-6037、Macromolecules 2007, 40(24), 8527-8530、Macromol. Rapid Commun. 2017, 38, 1600470、Macromolecules, 2017, 50(17), 6911-6923、WO 020/13652)、ケトクマリン(US 2015259316、EP 3472140)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの種類の中でも、Hg及びLED波長での作動可能性及び合成可能性のため、ケイ素系PIsが多くの注目を集めている。
【0005】
残念なことには、標準的な用途で使用される際には、これらの光開始剤は深刻な制限、表面硬化性を示す。
【0006】
このような欠点は、これらの光開始剤の使用を強力に制限し、アミンを使用したとしても、この課題を完全には克服できなかった。
【0007】
そのため、ケイ素系PIsの良好な反応性に影響を及ぼすことなく、これ生成物の表面硬化性を改善できる技術的解決の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の目的は、二官能性ケイ素系PIsを含んでなる新規の光硬化性組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、新規の二官能性ケイ素系PIs、光開始剤としてのそれらの使用、及びそれらを含んでなる光硬化性組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、二官能性ケイ素系PIsを使用するエチレン系不飽和化合物を光硬化する方法、及び前記方法によって製造された製品を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明者らは、驚くべきことには、ケイ素系PIs上にベンゾイル部分を形成する場合、表面硬化性とともに反応性が予想外に増大されることを発見した。新しい化合物は、Hgランプ及びLEDランプの下で深部及び表面の両方で良好に硬化させることができる。さらに、合成の可能性が保持され、LED下での透明なコーティングにおける反応性が非常に増大される。新しい化合物を、各種の処方でテストし、従来のケイ素系PIsと比較したところ、良好な性能を示した。
【0011】
従って、本発明は、光開始剤としての有用な特別な二官能性ケイ素系PIs、前記光開始剤を含んでなる組成物、及び前記二官能性ケイ素系PIsを含んでなる組成物の光重合法に係る。
【0012】
その態様の1つによれば、本発明は、
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは70~98.9質量%(組成物の総含量基準);及び
b)下記式(I)又は(II)の少なくとも1の化合物又はその塩及び/又は溶媒和化合物0.1~35質量%、好ましくは01~20質量%(組成物の総含量基準);及び
c)促進剤及び/又は共開始剤0~20質量%、好ましくは0~15質量%(組成物の総含量基準)
を含んでなる光重合性組成物に係る。
式(I)
【化1】
又は式(II)
【化2】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(III)
【化3】
の基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(IV)
【化4】
であり、及び他は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、C3-C12アルケニル、-O(C3-C12アルケニル)、-S(C3-C12アルケニル)、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、C1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、ベンジル、及びCH
2トリルから選ばれ;
R
21は、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
3、Si(Si(C1-C12アルキル)
3)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(アリール)
3、及びSi(アリール)
2Si(アリール)
3から選ばれ;
R
22、R
23、R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C3-C12アルケニル、COOH、COO(C1-C12アルキル)、O(C3-C12アルケニル)、S(C3-C12アルケニル)、C5-C7シクロアルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
X、Y、及びZは、それぞれ独立して、O、S、Se、SO、SO
2、NH、N(C1-C12アルキル)、N-アリール、直接結合、CH
2、C(C1-C12アルキル)
2、C(C1-C12アルコキシ)
2、CH(C1-C12アルキル)、CH(C1-C12アルコキシ)、CHOH、C(アリール)
2、CH(アリール)、C(アリールオキシ)
2及びCH(アリールオキシ)から選ばれる。]
【0013】
本発明によれば、用語「光硬化」及び「光重合」及び関連する用語は同意語である。
【0014】
表現「組成物の総含量基準」は、各成分の%質量が、上記の成分a)、b)、及びc)に加えて更なる追加の成分を含めた組成物の成分の総質量に対して計算されることを意味し、組成物中に存在できる水及び/又は溶媒は前記%質量の計算については考慮されない。
【0015】
好適な具体例によれば、R21はトリメチルシリル基ではない。
【0016】
他の態様によれば、本発明は、下記式(I)又は式(II)の化合物又はその塩及び/又は溶媒和化合物に係る。
式(I)
【化5】
又は式(II)
【化6】
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(III)
【化7】
の基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(IV)
【化8】
であり、及び他は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、C3-C12アルケニル、-O(C3-C12アルケニル)、-S(C3-C12アルケニル)、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
R
19及びR
20は、それぞれ独立して、C1-C20アルキル、C5-C7シクロアルキル、ベンジル、及びCH
2トリルから選ばれ;
R
21は、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
3、Si(Si(C1-C12アルキル)
3)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3、Si(アリール)
3、及びSi(アリール)
2Si(アリール)
3から選ばれ;
R
22、R
23、R
24、R
25及びR
26は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、C3-C12アルケニル、COOH、COO(C1-C12アルキル)、O(C3-C12アルケニル)、S(C3-C12アルケニル)、C5-C7シクロアルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、C5-C7シクロアルコキシ、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、 (C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ;
X、Y、及びZは、それぞれ独立して、O、S、Se、SO、SO
2、NH、N(C1-C12アルキル)、N-アリール、直接結合、CH
2、C(C1-C12アルキル)
2、C(C1-C12アルコキシ)
2、CH(C1-C12アルキル)、CH(C1-C12アルコキシ)、CHOH、C(アリール)
2、CH(アリール)、C(アリールオキシ)
2及びCH(アリールオキシ)から選ばれる。]
【0017】
好適な具体例によれば、R21はトリメチルシリル基ではない。
【0018】
他の態様によれば、本発明は、光重合性組成物のコーティング、接着剤、及びインクを光硬化する方法であって、
上述の定義された光重合性組成物を提供する工程;
前記光重合性組成物を基材上に被覆又はプリントする工程;及び
前記被覆又はプリントされた組成物を前記基材上で光源にて光硬化する工程
を含んでなる方法に係る。
【0019】
他の態様によれば、本発明は、上述の定義された組成物を含んでなる混合物を光源にて光硬化することを含んでなる三次元印刷法に係る。
【0020】
本明細書において、用語「アルキル」又は「アルキル基」は、別に指示しない限り、所定の数の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の飽和アルキル鎖を意味し、すなわち、炭素原子3個については、n-プロピル及びイソプロピル;炭素原子4個については、n-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチル;炭素原子5個については、n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル及び2-メチル-ブチル等である。
【0021】
「アルケニル」又は「アルケニル基」は、炭素原子2~12個、好ましくは炭素原子C3~C12を含有する不飽和基を意味し、例えば、アリル、メタリル、又はウンデセニルである。
【0022】
用語「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」は、別に指示しない限り、炭素原子5又は6個を含有する脂肪族環、例えば、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0023】
用語「アリール」又は「アリール基」は、例えば、置換又は未置換のアリール基、例えば、置換又は未置換のフェニル基、置換又は未置換のナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フルオレニル基を含むが、これらに限定されない。
【0024】
表現「1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル」は、1より大の酸素原子が存在する場合、前記酸素は少なくとも1のメチレン基によって相互に分離されている、すなわち、酸素原子は非連続的であることを意味する。例としては、-O-CH2-OCH3、-O-CH2CH2-OCH2CH3、-O-[CH2CH2O]vCH3、-O-[CH2CH2O]vOH、-O-[CH2CH2O]vCH2CH、-CH2-O-[CH2CH2O]vCH3(ここで、v=1-24)、-O-[CH2CH2CH2O]pOH、-O-[CH2CH2CH2O]pCH3、-O-[CH2CH2CH2O]pCH2CH3、-CH2-O-[CH2CH2CH2O]pCH3(ここで、p=1-16)が含まれる。
【0025】
基が置換されている場合、用語「置換」は、前記基が1以上の置換基を有することを意味し、置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、又はアリールチオ基、複素環基から選ばれ;さらに好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、フェニル、トリフルオロメチル、シアノ、アセチル、エトキシカルボニル、カルボキシル、カルボキシレート、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、アセチルアミノ、ピペリジノ、ピロリジル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、フェノキシ、ヒドロキシル、アセトキシ、-PO3H、メチルチオ、エチルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、フェニルチオ、メルカプト、アセチルチオ、チオシアノ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、ジメチルスルホニル、スルホネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル、ペンタメチルジシリル、トリエチルシリル、トリメチルスタンニル、フリル、チエニル、ピリジル、及びモルホリノから選ばれる。
【0026】
表現「直接結合」はY、X、又はZが存在しないことを意味し、直接結合は2つの環を結合する(A-B又はC-D)。
【0027】
本発明の好ましい具体例によれば、
i.R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(III)
【化9】
の基であり;及び
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10の少なくとも1及びR
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18の少なくとも1は式(IV)
【化10】
であり;
ii.及び他は水素であり;及び/又は
iii.Yは、O、S、CH
2、CHOH、CH(C1-C12アルコキシ)、直接結合、さらに好ましくはS、O、及びCH(C1-C12アルコキシ)から選ばれ;及び/又は
iv.Zは、O、S、CH
2、N(C1-C12アルキル)、C(C1-C12アルキル)
2、直接結合から選ばれ、さらに好ましくはO、S、CH
2、C(C1-C12アルキル)
2、から選ばれ;及び/又は
v.Xは、直接結合、C(C1-C12アルキル)
2、S、CH
2から選ばれ、さらに好ましくは直接結合、C(C1-C12アルキル)
2から選ばれ;及び/又は
vi.R
19及びR
20はC1-C20アルキルであり、好ましくはそれぞれ独立して、メチル及びエチルであり、より好ましくは共にメチルであり;
vii.R
21は、Si(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3及びSi(C1-C12アルキル)
3から選ばれ、より好ましくはSi(C1-C12アルキル)
2Si(C1-C12アルキル)
3であり、さらに好ましくはSi(メチル)
2Si(メチル)
3であり;及び/又は
viii.R
22、R
23、R
25、及びR
26は水素であり;及び/又は
ix.R
24は、水素、ハロゲン、置換又は未置換のC1-C20アルキル、アリール、置換又は未置換のC1-C20アルコキシ、1以上の酸素によって中断されたC1-C50アルキル、アリールオキシ、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、アリールチオ、置換又は未置換の (C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ、より好ましくは、R
24は、水素、置換又は未置換のC1-C20アルキルチオ、置換又は未置換の(C1-C12アルキル)
2アミノ、(C5-C7シクロアルキル)
2アミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジン、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれ、さらに好ましくは、R
24は、水素、モルホリノ、及びN(C1-C12アルキル)ピペラジノから選ばれる。
【0028】
好ましい具体例によれば、上述の好ましい具体例(i.)~(ix.)の全てが組み合わされる。
【0029】
好ましい具体例によれば、式(III)の1つの基のみ及び式(IV)の1つの基のみが式(I)及び(II)の化合物の中に存在する。
【0030】
好ましい具体例によれば、式(III)の1つの基のみ及び式(IV)の1つの基のみが式(I)及び(II)の化合物の中に存在し、2つの基の1つは式(I)及び(II)の化合物の環A又はCに結合し、他は環B又はDに結合する。或いは、好ましくは、環Aが式(III)の基を有する場合、環Bは式(IV)の基を有し、また、その逆も可である。環C及びDについても同様である。
【0031】
好ましい具体例によれば、R19及びR20はメチル又はエチルであり、より好ましくは共にメチルであり;及びR21はSi(C1-C12アルキル)2Si(C1-C12アルキル)3及びSi(C1-C12アルキル)3であり、さらに好ましくはSi(メチル)2Si(メチル)3である。
【0032】
好ましい具体例によれば、R21はトリメチルシリル基ではない。
【0033】
式(I)及び(II)によって表される化合物は、WO 2020/136522の実施例に開示されているように、当業者に知られている一般的な方法に従って、対応するα-ヒドロキシケトンを原料として調製される。
【0034】
本発明によれば、式(I)及び(II)の光開始剤は、エチレン系不飽和化合物(a)を含んでなる光硬化性組成物を調製するために使用される。前記不飽和化合物(a)は1以上のオレフィン系二重結合を含有する。それらは低分子量の(モノマー性)又は高分子量の(オリゴマー性)化合物である。
【0035】
二重結合1個を有する好適な低分子量モノマー(モノマー性化合物)の例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えば、メチル-、エチル-、ブチル-、2-エチルヘキシル-、2-ヒドロキシエチル-、又はイソボルニル-アクリレート;及びメチル又はエチルメタクリレートである。さらに、更なる例は、ケイ素又はフッ素にて変性した樹脂、例えば、シリコーンアクリレートである。これらのモノマーの更なる例は、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、アルキルスチレン、及びハロゲノスチレン、ビニルエステル、例えば、ビニルアセテート、ビニルエーテル、例えば、iso-ブチルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、又は塩化ビニリデンである。
【0036】
二重結合2個以上を有するモノマーの例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、4,4'-ビス-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジビニルフタレート、トリアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、又はトリス-(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0037】
高分子量(オリゴマー性)の多不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化又はビニル-エーテル基又はエポキシ基含有ポリエステル、アクリル化ポリウレタン、又はポリエーテルである。不飽和オリゴマーの更なる例は、通常、マレイン酸、フタル酸、及び1以上のジオールから調製され、約500~3000 Daの分子量を有する不飽和ポリエステル樹脂である。このような不飽和オリゴマーはプレポリマーとも称される。
【0038】
本発明の実施に特に好適な化合物(a)の例は、エチレン系不飽和カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び鎖に又は側鎖にエチレン系不飽和基を含有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタン及びそのコポリマー、アルキル樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、(メタ)アクリル基を有するポリマー及びコポリマー、及びその混合物である。
【0039】
上記エステルの調製に有用な不飽和カルボン酸及び酸無水物の実例は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸、及び不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、及びオレイン酸である。アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0040】
エステル化されるポリオールの例は、芳香族及び脂肪族及び脂環式ポリオール、好ましくは脂肪族及び脂環式ポリオールである。
【0041】
芳香族ポリオールは、例えば、ノボラック及びレゾールとともに、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシフェニル、2,2-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。エステ化されるポリエポキシドとしては、前記ポリオールに基づくものであり、特に、芳香族ポリオールとエピクロロヒドリンとの間の反応生成物が含まれる。重合鎖又は側鎖にヒドロキシル基を含有するポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー又はポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル又はそのコポリマーも、ポリオールとして、好適である。さらに好適なポリオールはヒドロキシ末端基を有するオリゴエステルである。
【0042】
脂肪族及び脂環式ポリオールの例としては、好ましくは炭素原子2~12個を含有するアルキレンジオール、例えば、1,2-又は1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは200~1500 Daの分子量を有するポリエチレングリコール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β-ヒドロキシ-エチル)アミノ、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びソルビトールが含まれる。
【0043】
さらに好適なエチレン系不飽和化合物(a)は、好ましくはアミノ基2~6個、好ましくは2~4個を有する、不飽和カルボン酸から得られる不飽和ポリアミド、及び芳香族、脂肪族、及び脂環式ポリアミドである。このようなポリアミドの例は、エチレンジアミン、1,2-又は1,3-プロピレンジアミン、1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンチレンジアミン、1,6-へキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ-(β-アミノエチル)エーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン及びジ(β-アミノエトキシ)-及びジ(β-アミノプロポキシ)エタンである。他の好適なポリアミンは、側鎖における追加のアミノ基及びアミノ末端基を含有するオリゴアミドを含有できるポリマー及びコポリマーである。
【0044】
このような不飽和ポリアミドの具体的な例は、メチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、及びN-[(β-ヒドロキシエトキシ)エチル]-アクリルアミドである。
【0045】
不飽和ポリウレタン、例えば飽和又は不飽和のジイソシアネート及び不飽和又は飽和のジオールに由来するものも成分(a)として本発明の実施には好適である。ポリブタジエン及びポリイソプレン及びそのコポリマーも使用可能である。
【0046】
好適はモノマーには、例えば、エチレン、プロペン、ブテン及びヘキセンのようなオレフィン、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、及び塩化ビニルが含まれる。
【0047】
側鎖に不飽和(メタ)アクリレート基を有するポリマーも成分(a)として使用される。それらは、代表的には、ノボラック系エポキシ樹脂及び(メタ)アクリル酸の反応生成物;(メタ)アクリル酸によりエステル化されたビニルアルコール又はそのヒドロキシアルキル誘導体のホモ-又はコポリマー;及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートによりエステル化された(メタ)アクリレートのホモ-及びコポリマーである。
【0048】
好ましい具体例によれば、光硬化性組成物は、さらに、促進剤とも称される共開始剤(c)を含んでなる。
【0049】
促進剤/共開始剤(c)の好適な例は、アルコール、チオール、チオエーテル、ヘテロ原子に隣接する炭素に結合した有効水素を有するアミン又はエーテル、ジスルフィド及びホスフィンである(例えばEP 438123及びGB 2180358に記載されている)。
【0050】
アミン促進剤/共開始剤の好適な例としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー性又はポリマー性のアミンが含まれるが、これらに限定されない。これらは、一級、二級、又は三級アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体が含まれる。
【0051】
アミン促進剤/共開始剤として、アミン修飾アクリレート化合物が使用され、このようなアミン修飾アクリレートの例としては、一級又は二級アミンとの反応によって修飾されたアクリレート(US 3844916、EP 280222、US 5482649、又はUS 734002に記載)が含まれる。
【0052】
多官能性アミン及びポリマー性アミン誘導体も共開始剤として好適であり、いくつかの例は、Omnipol(登録商標)ASA(IGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)AB-2(Rahn A.G.)、Speedcure(登録商標)7040(Lambson Limited)、又はUS 2013/0012611に記載のものである。
【0053】
本発明の光硬化性組成物は、成分(a)、(b)及び(c)(存在する場合)に加えて、次の成分:光増感剤(d)及び/又は更なる可能な光開始剤(e)及び/又は一般的な添加剤(f)の1以上を含んでなることもできる。
【0054】
本発明の光硬化性組成物は、さらに水及び/又は溶媒、例えば有機溶媒を含んでなる組成物としても処方される。
【0055】
光増感剤(d)は、組成物の総含量基準で、0.01~15質量%、好ましくは0.01~10質量%の量で存在できる。
【0056】
光増感剤の例は、当分野において一般的に使用されるもの、芳香族カルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン、クマリン、及び3-アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、及び3-(アロイルメチレン)-チアゾリン、カンファーキノン及びエオジン、ローダミン、エリスロシン染料である。
【0057】
チオキサントンの例は、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-1-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、又はPCT/EP2011/069514に記載のもの、例えば、n-ドデシル-7-メチル-チオキサントン-3-カルボキシレート、及びN,N-ジイソブチル-7-メチル-チオキサントン-3-カルバミドである。ポリマー性チオキサントン誘導体(例えば、Omnipol(登録商標)TX(IGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)TX-1(Rahn A.G.)、Speedcure(登録商標)7010(Lambson Limited))も好適である。
【0058】
ベンゾフェノンの例は、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、メチル2-ベンゾイルベンゾアート、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミニウムクロリド・一水和物、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニル)オキシエチル-ベンゼンメタナミニウムクロリド、又はUS 9938231に記載されたもの(例えば、Omnirad(登録商標)991(IGM Resins B.V.))である。
【0059】
ポリマー性ベンゾフェノン誘導体(例えば、Omnipol(登録商標)BP、Omnipol 2702及びOmnipol 682(いずれもIGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)BP-2(Rahn A.G.)、及びSpeedcure(登録商標)7005(Lambson Limited))も好適である。
【0060】
3-アシルクマリン誘導体の例は、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(プロポキシ)クマリン、3-ベンゾイル-6,8-ジクロロクマリン、3-ベンゾイル-6-クロロクマリン、3,3'-カルボニル-ビス[5,7-ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3'-カルボニル-ビス(7-メトキシクマリン)、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-イソブチロイルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジエトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジブトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(アリルオキシ)クマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-イソブチロイル-1,7-ジメチルアミノクマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7-ジエチルアミノ-3-チエノイルクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン、又はEP 2909243及びWO 2017/216699に記載されたものである。
【0061】
3-(アロイルメチレン)チアゾリジンの例は、3-メチル-1,2-ベンゾイルメチレン-β-ナフトチアゾリン、3-メチル-2-ベンゾイルメチレン-ベンゾチアゾリン、3-エチル-2-プロピオニルメチレン-β-ナフトチアゾリンである。
【0062】
他の芳香族カルボニル化合物の例は、アセトフェノン、3-メトキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、ベンジル(例えば、WO 2013/164394に記載のもの)、2-アセチルナフタレン、2-ナフトアルデヒド、9,10-アントラキノン、9-フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α-(p-ジメチルアミノベンジリデン);ケトン、例えば、2-(4-ジメチルアミノ-ベンジリデン)-インダン-1-オン、又は3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-インダン-5-イル-プロぺノン、3-フェニルチオフタルイミド、N-メチル-3,5-ジ(エチルチオ)フタルイミドである。
【0063】
チオキサントン、クマリン、及び3-アシルクマリンが特に好ましい。
【0064】
上記成分(d)は、組成物の棚寿命を短くすることなく、光開始剤(b)の反応性を増大させることが観察された。さらに、このような組成物は、光増感剤(d)を適切に選択することにより、光開始剤(b)の分光感度を各種の所望の波長範囲にシフトさせることができるとの格別の利点を有する。当業者であれば、光開始剤(b)を各種の所望の波長範囲で機能させるように好適な光増感剤(d)を選択することができる。
【0065】
更なる可能な光開始剤(e)は、組成物の総含量基準で、組成物の0.5~15質量%、好ましくは1~10質量%の量で存在できる。
【0066】
他の好適な光開始剤(e)の例は、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル、及びベンジルケタール、例えば、ベンジルジメチルケタール、ケトスルホン、例えば、1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(Esacure(登録商標)1001(IGM Resins B.V.)、3-ケトクマリン、例えば、EP 2909243及びWO 2017/216699に記載のもの、フェニルグリオキシレート及びその誘導体、二量体のフェニルグリオキシレート、ペルエステル、例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル、例えば、EP 126541に記載のもの、アシルホスフィン光開始剤(モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、及び多官能性モノ-又はビス-アシルホスフィンオキシドの中から選ばれる)、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば、o-クロロヘキサフェニルビスイミダゾールと、2-メルカプトベンゾチアゾールとの組み合わせ、フェロセニウム化合物又はチタノセン、例えば、ジシクロペンタジエニル-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピロロ-フェニル)チタン、O-アシルオキシムエステル光開始剤である。
【0067】
α-ヒドロキシケトン及びα-アミノケトンの例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)である。
【0068】
O-アシルオキシムエステル光開始剤の例は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル] 1-(O-アセチルオキシム)、又はGB 2339571に記載のものである。
【0069】
アシルホスフィン光開始剤の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ジペンチルオキシフェニル)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸、グリセロールエトキシ化trimester(Omnipol(登録商標)TP(IGM Resins B.V.))が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
ハロメチルトリアジン系光開始剤の例は、2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジンである。
【0071】
本発明による光硬化性組成物が、ハイブリッド系(これに関連して、ハイブリッド系とは、フリーラジカル硬化性系及びカチオン硬化性系の混合を意味する)で使用される場合には、更なる光開始剤(e)として、カチオン性光開始剤も使用できる。好適なカチオン性光開始剤の例は、例えば、US 4950581に記載されているように、芳香族のスルホニウム塩、ホスホニウム塩、又はヨードニム塩、又は例えば、GB 2348644、US 4450598、US 4136055、WO 00/10972、及びWO 00/26219に記載されたように、シクロペンタジエニルアレン-鉄(II)錯塩、例えば、(η6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート又はオキシム系光潜在性酸である。
【0072】
本発明による光硬化性組成物は、組成物の総含量基準で、0~10%の量の一般的な添加剤を含んでなることもできる。添加剤は、例えば熱開始剤、結合剤、安定剤、及びその混合物である。
【0073】
添加剤の選択は、使用分野及びその分野について求められる特性に基づいて決定される。上記の添加剤(f)は当該技術では知られており、当分野で一般的に使用される量で使用される。
【0074】
例えば、特に顔料が配合された組成物の場合、組成物は、追加の添加剤(f)として、熱開始剤(加熱される際にフリーラジカルを形成する化合物)、例えば2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアソズルフィド、ペンタアザジエンのようなアゾ化合物、又はヒドロペルオキシド又はペルオキシカルボネート、例えばtert-ブチルヒドロペルオキシド(例えばEP 245639に記載)を含んでなることもできる。
【0075】
本発明の光硬化性組成物には結合剤が添加されもよい。結合剤の添加は、特に、光硬化性化合物が液体又は粘稠な物質である場合に有利である。結合剤の量は、例えば、組成物の総含量基準(可能な水及び溶媒を除く)の5~60質量%、好ましくは10~50質量%である。結合剤は、使用分野及び要求される特性、例えば、水性及び有機溶媒システムにおける現像性、基材への接着性、及び酸素に対する感受性に従って選択される。
【0076】
好適な結合剤は、例えば、重量平均分子量(Mw)約5,000~2,000,000 Da、好ましくは、10,000~1,000,000 Daを有するポリマーである。例示的な例は、アクリレート及びメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、例えば、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(メタクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アクリル酸アルキルエステル);セルロースエステル及びエーテル、例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ポリオレフィン、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリル、メチルメタクリレート及び酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コ-ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリマー、例えば、ポリカプロラクタム及びポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレングリコールテレフタレート)及びポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)である。
【0077】
好適な安定剤は、例えば、熱阻害剤、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、又は立体障害フェノール、例えば、2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾールであり、早期重合を阻止する。暗所貯蔵安定性を増大させるために、例えば、銅化合物、例えば、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、又はオクテン酸銅、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、又は亜リン酸トリベンジル、四級アンモニウム化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム又は塩化トリメチルベンジルアンモニウム、又はヒドロキシルアミン誘導体、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンを使用できる。重合の間に雰囲気中の酸素を除去する目的で、パラフィン又は同様のワックス様物質を使用でき、当該物質は、ポリマーに不溶であり、重合の開始時に表面に移動し、空気の侵入を阻止する透明な表面層を形成する。
【0078】
UV吸収剤のような光安定剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、シュウ酸アミド、又はヒドロキシフェニル-s-トリアジンタイプを使用することもできる。このような化合物は、立体障害アミン(HALS)を使用して又は使用することなく、単独で又は混合物の形で使用される。
【0079】
本発明による光硬化性組成物は、更なる添加剤(f)として、光還元性染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリン、又はアクリジン染料、及び/又は放射線開裂可能なトリハロメチル化合物も含むことができる。これらの化合物は、例えば、EP 445624に記載されている。
【0080】
さらに通例の添加剤(f)は、目的の用途に応じて、光学的増白剤、フィラー、顔料(白色及び有色顔料の両方)、着色料、帯電防止剤、湿潤剤、又は流動性向上剤である。当分野において一般的に使用される添加剤、例えば、帯電防止剤、流動性向上剤、及び接着性増強剤も使用できる。
【0081】
上記成分に加えて、他の成分も本発明による組成物中に存在できる。
【0082】
本発明による組成物には、当分野において一般的に使用される連鎖移動剤を添加することも可能である。例はメルカプタン、アミン、及びベンゾチアゾールである。
【0083】
本発明の組成物は、着色料及び/又は有色顔料を含んでいてもよい。目的の用途に応じて、無機顔料及び有機顔料の両方を使用できる。このような添加剤は、当業者には公知である。いくつかの例は、カーボンブラック、酸化鉄、例えば、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、群青、コバルトブルー、バナジウム酸ビスマス、カドミウムイエロー、及びカドミウムレッドである。有機顔料の例は、モノ-又はビス-アゾ顔料及びその金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式顔料、例えば、ペリレン、アントラキノン、チオインジゴ、キナクリドン、又はトリフェニルメタン顔料、及びジケト-ピロロ-ピロール、イソインドリノン、例えば、テトラクロロイソインドリノン、イソインドリノン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロン、及びキノフタロン顔料である。処方において、顔料は、単独で又は混合物として使用される。
【0084】
目的の用途に応じて、顔料は、当分野における一般的に使用される量で、例えば、組成物の総質量基準で0.1~30質量%、又は10~25質量%の量で処方に添加される。
【0085】
組成物は、例えば、広範囲の種類の有機着色料を含んでいてもよい。例は、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料、及び金属錯体染料である。通常の濃度は、組成物の総質量基準で、例えば、0.1~20質量%、特に、1~5質量%である。
【0086】
本発明の光硬化性組成物は、水を含んでなることができる。
【0087】
本発明の光硬化性組成物は、各種の目的、例えば、印刷用インク、例えば、スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、オフセット印刷インク、及びインクジェット印刷インクとして、クリアコートとして、例えば、木材又は金属用の着色コートとして、粉末コーティングとして、特に、紙、木材、金属、又はプラスチック用のコーティング材料として、構造体及び道路マーキング用、複写写真法用、ホログラム記録材料用、画像記録法又は有機溶媒を使用する又は水性アルカリ媒体を使用する版面の再生において、スクリーン印刷用マスクの製造用の日光-硬化性塗料として、歯科用充填材料として、接着剤として、感圧性接着剤として、ラミネート樹脂として、フォトレジスト、例えば、ガルバノレジストとして、エッチレジスト又は永久レジスト(液体及び乾燥フィルムの両方)として、光構造化性絶縁体として、及び電子回路用ソルダーマスクとして、各種のタイプのディスプレイスクリーン用のカラーフィルターの製造おける又はプラズマディスプレイ及びエレクトロルミネセントディスプレイの製造中の構造物の形成における、光学スイッチ、光学格子(干渉格子)の製造における、バルク硬化(透明鋳型でのUV硬化)による又はステレオリソグラフィー法(例えば、US 4575330に記載されている)による三次元物品の製造における、複合材料(例えば、ガラス繊維及び/又は他の繊維及び他の補助剤を含むことができるスチレンポリエステル)の製造又は当業者には周知の三次元印刷法における、電子部品のコーティング又は封止におけるレジストとして、又は光ファイバー用のコーティング剤として適している。
【0088】
本発明の光硬化性組成物は、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズ又はフレネルレンズの製造において、医療用装置、補助具又はインプラントの製造において、ドライフィルムペイントにおいても適している。
【0089】
本発明の光硬化性組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの調製にも適している。このようなゲルは、例えば、DE 19700064及びEP 678534に記載されている。
【0090】
本発明の式(I)又は(II)の化合物を含んでなる、又は本発明の光硬化性組成物を含んでなる製品は、本発明の他の主題である。
【0091】
本発明による化合物及び組成物は、放射線硬化性粉末コーティング用のフリーラジカル光開始剤又は光開始系としても使用される。
【0092】
本発明による光硬化性組成物は、例えば、全ての種類の基材、例えば、木材、布地、紙、セラミックス、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、及びセルロースアセテート:特にフィルム状)、及び金属(例えば、Al、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、又はCo)、及びGaAs、Si又はSiO2(保護フィルムが塗布されるか又は例えば、像様露光によって像が適用される)のためのコーティング材料として好適である。
【0093】
他の態様によれば、本発明の更なる主題は、光重合性組成物コーティング、接着剤及びインクを光硬化する方法であり、前記方法は、
(i)上記定義の光重合性組成物を提供すること;
(ii)前記光重合性組成物を基材上にコーティング又はプリントすること;及び
(iii)前記コーティングした又はプリントして組成物を前記基材上で光源にて光重合することを含んでなる。
【0094】
他の態様によれば、本発明の更なる主題は、本発明の組成物からなる混合物を光源にて光硬化することを含んでなる三次元印刷法である。
【0095】
好ましい具体例によれば、本発明の方法において使用される光重合性組成物は、先に定義したように、少なくとも成分(a)、(b)、(c)、さらに好ましくは少なくとも(a)、(b)、(c)及び(d)を含んでなる。
【0096】
約200~約800 nmの波長で発光する広範囲の種類の光源が使用できる。点光源及び扁平形ラジエーター(ランプカーペット)の両方が好適である。例は、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、中圧、高圧、及び低圧水銀アークラジエーター(好適な部位で金属ハロゲン化物がドープされている:メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、スーパーアクチニック蛍光管、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、フラッシュランプ、写真投光器ランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線、及びレーザーである。
【0097】
1具体例によれば、前記光源は、UVA、UVB、及びUVC領域の少なくとも1における紫外光を含んでなる。
【0098】
好ましい具体例によれば、前記光源はLED源であり、特に、365~400 nm、さらに好ましくは、365 nm、385 nm、及び395 nmの波長で発光するLED光源が特に好ましい。
【0099】
本発明によれば、ランプと露光される基材との間の距離は、目的の用途、ランプの種類及び強度に応じて変化でき、例えば0.1~150 cm、好ましくは、1~50cmである。
【0100】
前記光重合性組成物は、既にコーティング又はプリントされた層を含んでなる基材上にも塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源にて光重合された後に、プリンティング又はコーティングに好適な1以上の組成物によってオーバープリント又はオーバーコーティングされてもよい。
【0101】
前記コーティング又はプリント手段によって前記光重合性組成物を前記基材上に塗布し、前記光源によって光重合し、さらにコーティング又はプリンテトすることによる物品の綿密な仕上げ又は仕上げすることなく得られた物品は、本発明の更なる主題である。
【0102】
上記のように、発明者らは、驚くべきことには、式(I)及び(II)の化合物が光開始剤として活性であり、その活性は、従来技術のPIsのものと比べて信じられないほど増大されたとの知見を得た。新規の化合物は、透明の及び着色された系の両方において、LED及びHgランプでの表面硬化性における大きな改善を示した。
【0103】
下記の実施例(説明のためのものであって、これに限定されない)によって、本発明を以下に詳述する。
【0104】
表示した化学名と化学構造とが一致しない場合、化学構造が優先する。
【0105】
[実施例]
1H NMRスペクトルをBruker Avance 300 MHz NMRスペクトロメーターにて記録した。
【実施例1】
【0106】
1-{4-[(4-ベンゾイルフェニル)スルファニル]フェニル}-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-いる)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化11】
1-{4-[(4-ベンゾイルフェニル)スルファニル]フェニル}-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(2.5g、6.80ミリモル)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、ジクロロペンタメチルジシラン(1.57 ml、8.164ミリモル)及びイミダゾール(556 mg、8.16ミリモル)を添加した。室温において混合物を2時間撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル:5/95)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物3.07 gを得た(収率=89%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): -0.04 (s, 9H), 0.14 (s, 6H), 1.5 (s, 6H), 7.43-7.53 (m, 4H), 7.53-7.61 (t, 2H), 7.64-7.78 (m, 5H), 8.02-8.13 (m, 2H)
【実施例2】
【0107】
2-メチル-1-[4-({4-[4-(モルホリノ-4-イル)ベンゾイル]フェニル}スルファニル)フェニル]-2-[(1,1,2,2,2-ペンチルメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化12】
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-({4-[4-(モルホリノ-4-イル)ベンゾイル]フェニル}スルファニル)フェニル]プロパン-1-オン(1g、2.166ミリモル)のジクロロメタン(10ml)溶液に、クロロペンメチルジシラン(501μl、2.6ミリモル)及びイミダゾール(177 mg、2.6ミリモル)を添加した。室温において混合物を3時間撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル:30/70)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物832 mgを得た(収率=65%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): -0.03 (s, 9H), 0.17 (s, 6H), 1.5 (s, 6H), 3.28 -3.37 (m, 4H), 3.71-3.77 (m, 4H), 6.98 -7.07 (d, 2H), 7.40 -7.54 (m, 4H), 7.61-7.72 (d, 4H), 8.01-8.10 (d, 2H)
【実施例3】
【0108】
1-[4-(4-ベンゾイルフェノキシ)フェニル]-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン- 1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化13】
1-[4-(4-ベンゾイルフェノキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(500 mg、1.387ミリモル)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、クロロペンタメチルジシラン(321μl、1.665ミリモル)及びイミダゾール(113 mg、1.665ミリモル)を添加した。室温において混合物を2時間撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル:5/95)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物276 mgを得た(収率=40%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): -0.02 (s, 9H), 0.15 (s, 6H), 1.5 (s, 6H), 7.16-7.26 (m, 4H), 7.52-7.62 (t, 2H), 7.64-7.72 (m, 1H), 7.72-7.78 (m, 2H), 7.79-7.87 (m, 2H), 8.13-8.22 (m, 2H)
【実施例4】
【0109】
1-(6-ベンゾイル-9-エチル-9H-カルバゾクロム-3-イル)-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化14】
工程1
1-(6-ベンゾイル-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-クロロ- 2-メチルプロパン-1-オンの合成
温度計を具備する三頚丸底フラスコにおいて、9-エチル-9H-カルバゾール(1g、5.121ミリモル)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、0℃において、塩化ベンゾイル(637μl、5.48ミリモル)及び塩化アルミニウム(765 mg、5.73ミリモル)を添加した。窒素雰囲気下、室温において混合物を1時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、臭化α-クロロイソブチリル(1.21 g、5.27ミリモル)及び塩化アルミニウム(737 mg、5.531ミリモル)を添加した。15℃において混合物をさらに1時間撹拌し、ついで、氷、水(40ml)及び濃HCl(5ml)中で冷却した。ついで、10分間撹拌し、有機相を分離し、塩水(20ml)にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥した。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフフィー(酢酸エチル/石油エーテル:1/9)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物1.27 gを得た(収率=61%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 1.35-1.44 (t, 3H), 2.07-2.12 (s, 6H), 4.50-4.66 (q, 2H), 7.52-7.65 (t, 2H), 7.65-7.74 (m, 1H), 7.74-7.89 (m, 4H), 7.90-7.99 (dd, 1H), 8.27-8.38 (dd, 1H), 8.71-8.80 (d, 1H), 8.96-9.04 (d, 1H)
【0110】
工程2
1-(6-ベンゾイル- 9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンの合成
1-(6-ベンゾイル-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-クロロ-2-メチルプロパン-1-オン(1.13 mg、2.79ミリモル)及び臭化テトラブチルアンモニウム(9mg、0.03ミリモル)のジクロロメタン(4ml)溶液に30%NaOH水溶液(3.35ミリモル)を添加した。混合物を24時間加熱還流した。
混合物をジクロロメタンにて希釈し、塩水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフ(酢酸エチル/石油エーテル:3/7)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物706 mgを得た(66%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 1.28-1.43 (t, 3H), 1.43-1.53 (s, 6H), 4.49-4.64 (q, 2H), 7.54-7.65 (m, 2H), 7.65-7.73 (m, 1H), 7.73-7.86 (m, 4H), 7.91-7.99 (dd, 1H), 8.36-8.45 (dd, 1H), 8.62-8.68 (d, 1H), 9.10-9.16 (d, 1H)
【0111】
工程3
1-(6-ベンゾイル-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
1-(6-ベンゾイル-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(634、1.645ミリモル)をジクロロメタン(2ml)に溶解し、クロロペンタメチルジシラン(381μl、1.974ミリモル)及びイミダゾール(134 mg、1.974ミリモル)を添加した。室温において混合物を2時間撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル:10/90)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物773 mgを得た(収率=91%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): -0.07 (s, 9H), 0.15 (s, 6H), 1.32-1.43 (t, 3H), 1.57 (s, 6H), 4.48-4.66 (q, 2H), 7.52-7.64 (t, 2H), 7.65-7.73 (m, 1H), 7.73-7.82 (m, 3H), 7.82-7.90 (s, 1H), 7.95-8.04 (dd, 1H), 8.21-8.30 (dd, 1H), 8.62-8.68 (d, 1H), 9.10-9.16 (d, 1H)
【実施例5】
【0112】
1-(4-{[4-(4-フルオロベンゾイル)フェニル]スルファニル}フェニル)-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化15】
1-(4-{[4-(4-フルオロベンゾイル)フェニル]スルファニル}フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(1g、2.535ミリモル)をジクロロメタン(2ml)に溶解し、クロロペンタメチルジシラン(587μl、3.042ミリモル)及びイミダゾール(207 mg、3.042ミリモル)を添加した。室温において混合物を2時間撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル:3/97)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物680 mgを得た(収率=51%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): -0.4 (s, 9H), 0.14 (s, 6H), 1.51 (s, 6H), 7.34-7.44 (t, 2H), 7.45-7.55 (d, 4H), 7.69-7.77 (d, 2H), 7.78-7.88 (m, 2H), 8.04-8.12 (d, 2H)
【実施例6】
【0113】
1-(7-ベンゾイル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化16】
工程1
1-(7-ベンゾイル- 9H-フルオレン-2-イル)-2-クロロ-2-メチルプロパン-1-オンの合成
温度計を具備する三頚丸底フラスコにおいて、9H-フルオレン(10g、60.161ミリモル)をジクロロメタン(50ml)に溶解し、0℃において、塩化ベンゾイル(7.48 ml、64.37ミリモル)及び塩化アルミニウム(8.98 g、64.38ミリモル)を添加した。窒素雰囲気下、室温において混合物を1時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、臭化α-クロロイソブチリル(14.24 g、61.97ミリモル)及び塩化アルミニウム(8.66 g、64.97ミリモル)を添加した。15℃において混合物をさらに1時間撹拌し、ついで、氷、水(40ml)及び濃HCl(5ml)中で冷却した。ついで、10分間撹拌し、有機相を分離し、塩水(20ml)にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥した。粗生成物をメタノール中で沈殿させて、ベージュ色の固形物22.21 gを得た(収率=98%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 2.06 (s, 6H), 4.16 (s, 2H), 7.55-7.64 (t, 2H), 7.66-7.74 (m, 1H), 7.75-7.87 (m, 3H), 8.02 (s, 1H), 8.12-8.22 (m, 3H), 8.30 (s, 1H)
【0114】
工程2
1-(7-ベンゾイル-9H-フルオレン-2-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンの合成
1-(7-ベンゾイル-9H-フルオレン-2-イル)-2-クロロ-2-メチルプロパン-1-オン(22.21 g、59.25ミリモル)及び臭化テトラブチルアンモニウム(191 mg、0.592ミリモル)のジクロロメタン(50ml)溶液に30%NaOH水溶液(71.1ミリモル)を添加した。混合物を24時間加熱還流した。
混合物をジクロロメタンにて希釈し、塩水にて洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル:3/7)によって粗生成物を精製し、ついで、トルエンにて結晶化させて、生成物6.5gを得た(31%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 1.45 (s, 6H), 4.12 (s, 2H), 7.52-7.64 (t, 2H), 7.65-7.74 (t, 1H), 7.74-7.91 (m, 3H), 8.00 (s, 1H), 8.07-8.21 (m, 2H), 8.23-8.33 (d, 1H), 8.44 (s, 1H)
【0115】
工程3
1-(7-ベンゾイル-9H-フルオレン-2-イル)-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン- 1-オンの合成
1-(7-ベンゾイル-9H-フルオレン-2-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(1g、2.806ミリモル)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、クロロペンタメチルジシラン(649μl、3.367ミリモル)及びイミダゾール(229 mg、3.367ミリモル)を添加した。室温において混合物を2時間撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル:1/9)によって粗生成物を精製して、純粋な生成物1.08 gを得た(収率=79%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): -0.013 (s, 9H), 0.16 (s, 6H), 1.56 (s, 6H), 4.11 (s, 2H), 7.52-7.65 (t, 2H), 7.65-7.74 (m 1H), 7.74-7.87 (m, 3H), 8.01 (s, 1H), 8.08-8.24 (m, 3H), 8.36 (s, 1H)
【0116】
上記実施例の方法に従って操作することによって、下記の化合物が合成される。
【化17】
【0117】
[比較テスト]
本発明の二官能性ケイ素系光開始剤(PIs)を、WO 2020/136522の実施例5の式
【化18】
の化合物(COMP-1)と比較した。
【0118】
[実施例7.1]
比較テスト
[実施例7.1.1.]
水銀(Hg)ランプ下でのタックフリーの透明コーティング
Photomer 6577(芳香族ウレタンアクリレート10 F)50%、Photomer 4335(PETIA)15%、Photomer 4666(DPHA)15%、Photomer 4172(PPTTA)20%の溶液に、各々、濃度3質量%で光開始剤を溶解することによってテスト用の光重合性組成物を調製した。
共開始剤(Esacure A198)を同じ量(3質量%)で組成物に添加した(含有される場合)。
バーコーターを使用して、ニスを塗ったボール紙上に光重合性組成物を厚さ12ミクロンで塗布した。水銀ランプ(120 W/cm)を使用して光重合させた。
結果をタックフリーが達成される最大速度としてm/分で表示した(表1)。
【表1】
表1のデータは、共開始剤が前記従来の化合物に添加される場合でも、従来技術化合物と比較して、大きい改善が本発明の化合物から得られるを証明している。
【0119】
[実施例7.1.2.]
LEDランプ下でのタックフリーの透明コーティング
実施例7.1.1.において報告したようにして調製した光重合性組成物にOmnirad ITX0.5質量%を添加し、LEDライトを使用して395 nm(16W/cm
2)で光重合させた。
結果をタックフリーが達成される最大速度(m/分)として表示した(表2)。
【表2】
水銀ランプにて観察された反応性における改善がLEDランプ下でも確認された。
【0120】
[実施例7.1.3.]
水銀ランプ下でのシアンオフセットインクにおける表面硬化及びスルー硬化(through cure)
工業用シアンオフセットインクにおいて光開始剤を3質量%の濃度で溶解させることによってテスト用組成物を調製した。共開始剤(Esacure A198)を同じ量(3質量%)で組成物に添加した(含有される場合)。50℃においてテスト用組成物を機械的撹拌機によって1時間撹拌し、IGFリプロテスター機器を使用して、白色のボール紙上に厚さ1.5ミクロンで塗布した。
水銀ランプ(120 W/cm)を距離8cmで使用して組成物を硬化させた。
表面硬化について、乾燥表面を得るための速度100 m/分での通過の回数を考慮して評価を行った。通過の回数が少ないほど、表面硬化性は良好である。
スルー硬化テストは所定の速度で得られた完全なインク硬化の測定であり、「拇指ねじれ圧力テスト(thumb twist pressure test)」によってチェックされる。より高速であることは、反応性がより高いことに相当する。
結果を表3に示す。
【表3】
これらのテストは、式(I)及び(II)の化合物が光開始剤として非常に反応性であり、従来技術の光開始剤よりも効果的であることを証明している。
【0121】
[実施例7.1.4.]
LED 395 nmランプ下でのシアンオフセットインクにおける表面硬化及びスルー硬化
実施例7.1.3において報告したようにして調製した光重合性組成物にOmnirad ITX 0.5質量%を添加し、395 nmのLEDランプ(16W/cm
2)を使用して組成物を硬化させた。
表面硬化について、乾燥表面を得るための速度100 m/分での通過の回数を考慮して評価を行った。通過の回数が少ないほど、表面硬化は良好である。
スルー硬化テストは所定の速度で得られた完全なインク硬化の測定であり、「拇指ねじれ圧力テスト(thumb twist pressure test)」によってチェックされる。
結果をスルー硬化が達成される最大速度としてm/分で及び乾燥表面を得るための通過回数で示す(表4)。
【表4】
これらの全てのテストが、従来技術のケイ素系化合物と比較して、本発明の化合物の反応性が非常に良好であることを証明している。このような良好な性能は、共開始剤(c)の存在下だけでなく、不在下でも、及び多くの異なる条件(透明、インク、異なるランプ)下でも証明されている。
【国際調査報告】