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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】短鎖抗菌ペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20240524BHJP
   C07K 4/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K38/08
C07K4/00 ZNA
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P33/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575380
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 IB2021000411
(87)【国際公開番号】W WO2022259007
(87)【国際公開日】2022-12-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】511134470
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ ルシェルシェ サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラドラム,アリ
(72)【発明者】
【氏名】コスタ アンドレ,ソニア マリア
(72)【発明者】
【氏名】ピエッセ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フロン,ティエリ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA31
4C084MA32
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、SHf由来の新規な短鎖抗菌ペプチド、該ペプチドを含む医薬組成物、及び特に薬物、殺菌剤、防腐剤、バイオフィルム形成防止剤又は殺虫剤としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号1)の抗菌ペプチドであって、
X1は、F、hF、4a-F、(C~Cアルキル)F、W、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X2は、F、I、W、hF、K、(C~Cアルキル)F、L及びRから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、F、K、hF、R、(C~Cアルキル)F及びWから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、L、F、R、hF及びWから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X5は、S、HmS、R、K及びhFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X6は、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、I、F、R、W及びhFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X8は、Famide及びRamideから成る群から選択されるアミノ酸である、抗菌ペプチド、
並びに前記ペプチドの薬学的に許容され得る塩であって、
式中、配列番号2~13のペプチドは除外される、
抗菌ペプチド及び薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
X1は、F、hF、p-BuF、4a-F、W、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X2は、F、I、W、hF、K、p-BuF、L及びRから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、F、K、hF、R、p-BuF及びWから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、L、F、R、hF及びWから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X5は、S、HmS、R、K及びhFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X6は、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、I、F、R、W及びhFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X8は、Famide及びRamideから成る群から選択されるアミノ酸である、請求項1に記載の抗菌ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが、正味の正電荷を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の抗菌ペプチド。
【請求項4】
前記正味の正電荷が、少なくとも+2であり、好ましくは+2~+5の間に含まれることを特徴とする、請求項3に記載の抗菌ペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドの疎水性の値が、50~80%で構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドが、少なくとも3つのアミノ酸Fを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、環状であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、3F及び2R又は3Kを含むか、又は4F及び1又は2又は4Rを含むか、又は5F及び2又は3R又は3Kを含むか、又は6F及び1R又は2Rを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド。
【請求項9】
前記ペプチドの少なくとも1つのアミノ酸Fが、hFによって及び/又は(C~Cアルキル)Fによって置換されていることを特徴とする、請求項8に記載の抗菌ペプチド。
【請求項10】
(C1~アルキル)Fがp-BuFであることを特徴とする、請求項9に記載の抗菌ペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドが、配列番号14~配列番号79から成る群から選択されるアミノ配列を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドが、配列番号19、25、29、30、32、33、34、38、39、41、42、43、49、50、51、53、55、56、65、66又は72から選択されるアミノ配列を含み、
より好ましくは本発明のAMPが配列番号55又は56を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド。
【請求項13】
X1はアミノ酸Fであり、
X2はアミノ酸p-BuFであり、
X3はK、hF及びRから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、L及びFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X5はアミノ酸Rであり、
X6は、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、I及びFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X8はアミノ酸Famideである、請求項1又は2に記載の抗菌ペプチド。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗菌ペプチドと、薬学的に許容される支持体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
薬物として使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫による感染を予防及び/又は治療するために使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗菌ペプチド又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ペプチドが殺菌剤、防腐剤又は殺虫剤であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗菌ペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な短鎖抗菌ペプチド、該ペプチドを含む医薬組成物、及び特に薬物、殺菌剤、防腐剤、バイオフィルム形成防止剤又は殺虫剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌間の抗生物質耐性の進化及び広がりは、今日、特に多剤耐性株の出現を伴う病院環境において、大きな公衆衛生問題である。集中的な研究努力により、これらの耐性株に対して有効な新しい抗生物質が開発されてきた。それにもかかわらず、使用により、これらの薬剤に対する耐性機構が出現し、薬剤の有効性が制限される。
【0003】
この現象を考慮すると、抗菌ペプチド(AMP)は、新しい治療薬の設計に非常に有望であると思われる。カチオン性抗菌ペプチドは、多細胞生物の自然免疫系の重要な成分の1つであると考えられており、病原体に対する第1選択防御を提供する。これらのペプチドの関心は、一方では、特に多剤耐性株によって引き起こされる感染症の治療における使用を可能にするペプチドの非常に広い活性スペクトルにある。第2に、ペプチドの作用様式は、微生物膜の透過処理又は迅速な断片化に基づいており、したがって、耐性機構が発達する可能性は低い。
【0004】
特に、AMPは、細菌バイオフィルムに対する潜在的な薬剤としてかなりの関心を集めている。バイオフィルムは、一緒にくっついてコミュニティを形成する細菌であり、自己生成マトリックス内に埋め込まれている。バイオフィルム細菌は、細菌の自由生活対応物よりもはるかに大きな抗生物質に対する耐性を示し、嚢胞性線維症、心内膜炎、膀胱炎に罹患した患者の慢性感染症、留置医療機器並びに齲蝕及び歯周炎に関与する歯垢形成によって引き起こされる感染症などの治療が困難な様々な病理学的状態の原因となる。抗生物質に対するバイオフィルム耐性は、主にそのようなコミュニティ内の細菌の増殖速度が遅く、代謝活性が低いためであり、AMPの使用が魅力的な治療アプローチであると思われる理由は、AMPの作用様式のために、増殖の遅い細菌又は増殖していない細菌にも作用する可能性が高いためである。
【0005】
抗菌ペプチドは、植物、昆虫、両生類及び哺乳動物において同定されている。両生類の皮膚はAMPの主要な供給源であり、あらゆる種類のカエルは、一般に10~15個のAMPで構成される特定のペプチドレパートリーを有する。
【0006】
アカガエル科のカエルは非常に多く、この科には現在合計26属422種がいる(https://amphibiansoftheworld.amnh.org/参照)。これらのカエルは、12ファミリーに分類された顕著な多様性のAMPを合成及び分泌する(非特許文献1)。そのようなファミリーの1つであるtemporinは、小さなサイズ(一般に13~14残基)のAMPを含み、その配列は種によって大きく異なる。100個を超えるtemporinファミリーが同定されている。これらのtemporinは、例えばRana temporaria(非特許文献2)、Rana esculenta(非特許文献3)、Rana japonica(非特許文献4)、Rana ornativentris(非特許文献5)及びPelophylax(Rana)saharicus(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)などのいくつかのラナ種から単離されている。
【0007】
アカガエル科ペプチドの他の12ファミリーとは異なり、temporinは、ジスルフィド架橋によって環化されたC末端ヘプタペプチドドメインである「ラナボックス」モチーフを欠いている(非特許文献9)。更に、大部分のtemporinは単一の塩基性残基を含み、これは生理学的pHで+2の正味電荷を与える。一般に、temporinは、グラム陽性菌及び酵母に対して特に活性であるが、抗真菌特性も示し(非特許文献10)し、いくつかについては、抗ウイルス特性を示す(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。
【0008】
北アフリカのカエルであるPelophylax saharicusの皮膚から単離したtemporin-SHaは、リーシュマニア症の病原体であるリーシュマニア属原虫に対して抗寄生虫活性を示すことが分かった(非特許文献14)。この発見に基づいて、改善された抗菌活性を示す該temporinの類似体は、αヘリックスの極性面の1つ又は複数のアミノ酸を塩基性アミノ酸で置換することによって得られた(特許文献1及び特許文献2)。著者らは、temporin-SHaの類似体の細胞傷害性が低下していることを実証した。
【0009】
Temporin-SHf(SHf)は、カエルPelophylax saharicusからも単離された非定型AMPであり、最も小さい天然のTemporinで、フェニルアラニンリッチペプチドあるという特徴を有し(非特許文献15、非特許文献16)、合成SHf類似体を有し、いくつかの類似体については、グラム陽性及び/又はグラム陰性細菌に対する抗菌活性を示し、非溶血活性を有する。著者らは、類似体[p-BuF、R]SHfが非細胞傷害性であり、グラム陽性及び肺炎桿菌を除くグラム陰性細菌に対して抗菌活性を有することを実証した。彼らはまた、SHfのα-MeF類似体が、グラム陽性及び肺炎桿菌を含むグラム陰性細菌に対して強い活性を有するが、より高い溶血活性を示すことを実証した。これらのSHf類似体はいずれも、臨床的に関連する株に対して強い抗菌活性と低い細胞傷害性の両方を示さなかった。
【0010】
したがって、強力な抗菌活性を示し、哺乳動物細胞に対する毒性が大幅に低減した、改善されたAMPが依然として大いに必要とされている。これらのAMPをより容易かつ低コストで製造するために、これらのAMPの大きさを縮小する必要性もある。
【0011】
興味深いことに、本発明者らは、溶血活性の低下と組み合わせて、グラム陽性及びグラム陰性細菌に対する広範な抗菌活性を有する新しい短鎖SHf類似体を設計した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2010/106293号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2015/044356号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Conlon,”Structural diversity and species distribution of host-defense peptides in frog skin secretions”,Cell.Mol.Life Sci.,2011 Jul,68:2303-15;Ladram and Nicolas,”Antimicrobial peptides from frog skin:biodiversity and therapeutic promises”,Front.Biosci.(Landmark Ed),2016,21:1341-71
【非特許文献2】Simmaco et al.,”Temporins,antimicrobial peptides from the European red frog Rana temporaria”,Eur.J.Biochem.,1996,242:788-92)
【非特許文献3】Simmaco et al.,”Purification and characterization of bioactive peptides from skin extract of Rana esculenta”,Biochem.Biophys.Acta,1990,1033:318-23
【非特許文献4】Isaacson et al.,”Antimicrobial peptides with atypical structural features from the skin of the Japanese brown frog Rana japonica”,Peptides,2002,23:419-25
【非特許文献5】Kim et al.,”Antimicrobial peptides from the skin of the Japanese mountain brown frog,Rana ornativentris”,J.Pept.Res.,2001,58:349-56
【非特許文献6】Abbassi et al.,”Isolation,characterization and molecular cloning of new temporins from the skin of the North African ranid Pelophylax saharica”,Peptides,2008,29:1526-33
【非特許文献7】Abbassi et al.,”Temporin-SHf,a new type of phe-rich and hydrophobic ultrashort antimicrobial peptide”,J.Biol.Chem.,2010,285:16880-92
【非特許文献8】Abbassi et al.,”Antibacterial and leishmanicidal activities of temporin-SHd,a 17-residue long membrane-damaging peptide”,Biochimie,2013,95:388-9
【非特許文献9】Mangoni,”Temporins,anti-infective peptides with expanding properties”,Cell.Mol.Life Sci.,2006,63:1060-9
【非特許文献10】Rollins-Smith et al.,”Activities of temporin family peptides against the chytrid fungus(Batrachochytrium dendrobatidis)associated with global amphibian declines”,Antimicrob.Agents Chemother.,2003,47:1157-60
【非特許文献11】Chinchar et al.,”Inactivation of viruses infecting ectothermic animals by amphibian and piscine antimicrobial peptides”,Virology,2004,323:268-75
【非特許文献12】Marcocci et al.,”The amphibian antimicrobial peptide temporin B inhibits in vitro Herpes Simplex Virus 1 infection”,Antimicrob.Agents Chemother.,2018,62:e02367-17
【非特許文献13】Roy et al.,”Comparison of anti-viral activity of frog skin anti-microbial peptides temporin-Sha and [K3]SHa to LL-37 and temporin-Tb against Herpes Simplex Virus type 1”,Viruses,2019,11:77
【非特許文献14】Abbassi et al.,”Isolation,characterization and molecular cloning of new temporins from the skin of the North African ranid Pelophylax saharica”,Peptides,2008,29:1526-33
【非特許文献15】Abbassi et al.,”Temporin-SHf,a new type of phe-rich and hydrophobic ultrashort antimicrobial peptide”,J.Biol.Chem.,2010,285:16880-92
【非特許文献16】Andre et al.,”Structure-activity relationship-based optimization of small temporin-SHf analogs with potent antibacterial activity”,ACS Chem.Biol.,2015,10:2257-66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、新規な抗菌ペプチドである、temporin-SHfの類似体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号1)の抗菌活性を示すペプチドであって、
式中、X1は、F(フェニルアラニン)、hF(ホモフェニルアラニン)、(C1~アルキル)F(C1~アルキルフェニルアラニン)及び好ましくはp-BuF(4-tert-ブチル-フェニルアラニン)、4a-F(4-アミノフェニルアラニン)、W(トリプトファン)、R(アルギニン)及びK(リジン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X2は、F(フェニルアラニン)、I(イソロイシン)、W(トリプトファン)、hF(ホモフェニルアラニン)、K(リジン)、(C1~アルキル)F(C1~アルキルフェニルアラニン)及び好ましくはp-BuF(4-tert-ブチル-フェニルアラニン)、L(ロイシン)及びR(アルギニン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、F(フェニルアラニン)、K(リジン)、hF(ホモフェニルアラニン)、R(アルギニン)、(C1~アルキル)F(C1~アルキルフェニルアラニン)及び好ましくはp-BuF(4-tert-ブチル-フェニルアラニン)及びW(トリプトファン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、L(ロイシン)、F(フェニルアラニン)、R(アルギニン)、hF(ホモフェニルアラニン)及びW(トリプトファン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X5は、S(セリン)、HmS(α-ヒドロキシメチルセリン)、R(アルギニン)、K(リジン)及びhF(ホモフェニルアラニン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X6は、R(アルギニン)及びK(リジン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、I(イソロイシン)、F(フェニルアラニン)、R(アルギニン)、W(トリプトファン)及びhF(ホモフェニルアラニン)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
X8は、F-NH(フェニルアラニンアミド)及びR-NH(アルギニンアミド)から成る群から選択されるアミノ酸であり、
及び前記ペプチドの薬学的に許容される塩を含み、以下のペプチドは除外される、
FFFLSRIFamide(配列番号2)、
FFFLRRIFamide(配列番号3)、
FFFLRRIFacid(配列番号4)、
FSFLSRIFamide(配列番号5)、
FFFL(HmS)RIFamide(配列番号6)、
FF(α-MeF)LSRIFamide(配列番号7)、
(p-BuF)FFLSRIFamide(配列番号8)、
(p-BuF)FFLRRIFamide(配列番号9)、
F(p-BuF)FLSRIFamide(配列番号10)、
F(p-BuF)FLRRIFamide(配列番号11)、
FF(p-BuF)LSRIFamide(配列番号12)、
FF(p-BuF)LRRIFamide(配列番号13)、
ペプチドに関する。
【0016】
HmSは、α-ヒドロキシメチルセリンである。このアミノ酸は、以下の構造を有する。
【化1】

【0017】
α-MeFは、α-メチル-フェニルアラニンである。このアミノ酸は、以下の構造を有する。
【化2】

【0018】
アミノ酸hF(ホモフェニルアラニン)は、Fと比較して、その側鎖に更なる-CH-をもたらす。この残基は、アミノ酸Fよりも疎水性である。このアミノ酸は、以下の構造を有する。
【化3】

【0019】
アミノ酸p-BuF(4-tert-ブチル-フェニルアラニン)は、以下の構造を有する。
【化4】

【0020】
アミノ酸4a-F(4-アミノ-フェニルアラニン)は、以下の構造を有する。
【化5】

【0021】
本明細書で使用される「微生物(microbe)」又は「微生物(microbial)」という用語は、細菌、真菌、酵母、ウイルス及び/又は寄生虫を指す。
【0022】
本明細書で使用される「微生物感染」という用語は、細菌、真菌、酵母、ウイルス及び/又は寄生虫によって引き起こされる感染症を指す。
【0023】
本明細書で使用される「抗菌活性」という用語は、抗菌、抗ウイルス、抗真菌及び/又は抗寄生虫活性を指す。該活性は、IC50又はMICなどの色々なパラメータを測定することによって評価されてもよい。
【0024】
「IC50」又は「最大半量阻害濃度」は、微生物集団のインビトロ増殖を半減させるのに必要な物質の濃度である。「MIC」又は「最小発育阻止濃度」は、該物質の存在下、一般に37℃で18~24時間のインキュベーション後に微生物の増殖を完全に阻害する物質の最低濃度である。
【0025】
本発明はまた、本発明によるペプチドの薬学的に許容される塩を包含する。薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの薬学的に許容され得る鉱酸の塩、酢酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸及び酒石酸などの薬学的に許容される有機酸の塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアンモニウムの塩などの薬学的に許容される鉱物塩基の塩、又は薬学的技術において一般的に使用される塩形成性窒素を含有する有機塩基の塩であってもよい。該塩の調製方法は、当業者に周知である。
【0026】
好ましい実施形態によれば、配列:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号1)の抗菌ペプチドであって、式中、
X1は、F、hF、p-BuF、4a-F、W、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X2は、F、I、W、hF、K、p-BuF、L及びRから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X3は、F、K、hF、R、p-BuF及びWから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、L、F、R、hF及びWから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X5は、S、HmS、R、K及びhFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X6は、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、I、F、R、W及びhFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X8は、Famide及びRamideから成る群から選択されるアミノ酸であり、
配列番号2~13のペプチドは除外される、
抗菌ペプチド。
【0027】
好ましい実施形態によれば、本発明の抗菌ペプチドは、
配列X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8(配列番号1)を含み、式中、
X1はアミノ酸Fであり、
X2はアミノ酸p-BuFであり、
X3はK、hF及びRから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X4は、L及びFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X5はアミノ酸Rであり、
X6は、R及びKから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X7は、I及びFから成る群から選択されるアミノ酸であり、
X8はアミノ酸Famideであり、
配列番号11のペプチドは除外される。
【0028】
この実施形態によれば、好ましいAMPは、配列番号25、29及び30、及び好ましくは配列番号25である。
【0029】
好ましい実施形態によれば、AMPはpH7で正の正味電荷を有し、好ましくは正の正味電荷は少なくとも+2、より好ましくは+3、+4又は+5である。正の正味電荷は、peptide property calculator(https://pepcalc.com/)によって提供される方法内で計算される。
【0030】
好ましい実施形態では、AMPの疎水性値は、50~80%、好ましくは60~80%、より好ましくは70~80%、更により好ましくは75%で構成される。疎水性値は、peptide hydrophobicity/hydrophilicity analysisによって提供される方法の範囲内で計算してもよい(https://www.peptide2.com/N_peptide_hydrophobicity_hydrophilicity.php参照)。
【0031】
好ましい実施形態によれば、AMPは、少なくとも3つのF(フェニルアラニン)を有する配列を含む。
【0032】
特定の実施形態によれば、本発明は、第1のアミノ酸X1が最後のX8アミノ酸に共有結合しており、配列番号22のペプチドが環状ペプチドである環状形態の上記に定義されるAMPに関する。
【0033】
好ましい実施形態では、AMPは、
-3個のアミノ酸F(フェニルアラニン)及び2個のアミノ酸R(アルギニン)又は3個のアミノ酸K(リジン)、又は
-4個のアミノ酸F(フェニルアラニン)及び1個若しくは2個若しくは4個のアミノ酸R(アルギニン)、又は
-5個のアミノ酸F(フェニルアラニン)及び2若しくは3個のアミノ酸R(アルギニン)若しくは3個のアミノ酸K(リジン)、又は
-6個のアミノ酸F(フェニルアラニン)及び1若しくは2個のアミノ酸R(アルギニン)を有する配列を含む。
【0034】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのアミノ酸F(フェニルアラニン)を、ホモフェニルアラニン(hF)及び/又は(C~Cアルキル)Fで置換する。好ましくは、(C1~アルキル)Fは4-tert-ブチル-フェニルアラニン(p-BuF)である。
【0035】
位置又はアミノ酸に関して本明細書で使用される「置換」という用語は、特定の位置のアミノ酸が別のアミノ酸によって置き換えられていること、又は配列番号1のものとは異なるアミノ酸が存在することを意味する。
【0036】
本発明のAMPを構成するアミノ酸は、L又はD配置、好ましくはL配置であってもよい。
【0037】
好ましい実施形態によれば、AMPは、配列番号14~配列番号79から成る群から選択される配列を含む(表1参照)。
【表1】
【0038】
好ましくは、本発明のAMPは、配列番号19、25、29、30、32、33、34、38、39、41、42、43、49、50、51、53、55、56、65、66又は72のペプチドの中から選択され、より好ましくは本発明のAMPは、配列番号55又は56を有する。
【0039】
別の特定の実施形態によれば、本発明によるAMPは、X2がp-BuFではない、又はX5がアルギニン(R)ではない、上で定義される配列番号1の配列を有し、配列番号3、4、9、10、11及び13のペプチドは除外される。この実施形態によれば、AMPは、配列番号19、32、33、34、38、39、41、42、43、49、50、51、53、55、56、65、66又は72の中から選択される。
【0040】
この特定の実施形態によれば、本発明によるAMPは、好ましくは、X2がp-BuFではなく、X5がアルギニン(R)ではない、配列番号1の配列を有する。この実施形態によれば、AMPは、配列番号33、34、41、42、55又は56の中から選択される。
【0041】
本発明によるAMPは、古典的な化学合成(固相又は均一液相で、Behrendtら、”Advances in Fmoc solid-phase peptide synthesis”,J Pept Sci.,2016,22:4-27を参照する)又は酵素合成(Bongers and Heimer,”Recent applications of enzymatic peptide synthesis”,Peptides,1994,15:183-93)によって得てもよい。
【0042】
本発明によるAMPはまた、ペプチドをコードし、該ペプチドを発現する導入遺伝子を含む、本明細書に以下に記載されるような宿主細胞を培養すること、及び該宿主細胞又はペプチドが分泌された培地から該ペプチドを抽出することから成る方法によっても得てもよい。この方法では、天然アミノ酸を有するAMPのみを得ることができる。
【0043】
別の態様では、本発明は、本発明によるAMPをコードする核酸、該核酸を含む発現カセット又は発現ベクターに関する。本発明は更に、該核酸、発現カセット又は発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0044】
「核酸」は、DNA又はRNAに基づく任意の分子を意味すると理解される。これらは、合成又は半合成の組換え分子であってもよく、場合により増幅又はベクターにクローニングされ、化学的に修飾され、非天然塩基又は例えば修飾結合、修飾プリン若しくはピリミジン塩基、又は修飾糖を含む修飾ヌクレオチドを含む。
【0045】
本発明による核酸は、一本鎖又は二本鎖のDNA及び/又はRNAの形態であってもよい。好ましい実施形態によれば、核酸は、当業者に周知の組換え技術によって合成された単離されたDNA分子である。
【0046】
本発明による核酸は、本発明によるペプチドの配列から推定されてもよく、コドン使用は、核酸が転写される宿主細胞に従って適合されてもよい。これらのステップは、当業者に周知の方法に従って実行されてもよく、そのいくつかは参照マニュアル”Molecular cloning:a laboratory manual”(Sambrook et al.,Third Edition Cold Spring Harbor,2001)に記載されている。
【0047】
本発明は更に、発現に必要とされる配列に作動可能に連結された本発明による核酸を含む発現カセットに関する。特に、核酸は、宿主細胞での発現を可能にするプロモーターの制御下にあってもよい。一般に、発現カセットは、転写の開始を可能にするプロモーター、本発明による核酸、及び転写ターミネーターから構成されるか、又はそれらを含む。「発現カセット」という用語は、作動可能に連結されたコード領域及び調節領域を含む核酸構築物を表す。「作動可能に連結される」という表現は、コード配列(目的の遺伝子)の発現及び/又はコードされたペプチドの標的化が転写プロモーター及び/又はシグナルペプチドの制御下にあるように要素が組み合わされることを示す。典型的には、プロモーター配列は、目的の遺伝子の上流に、そこから離れて配置され、発現の制御に適合する。同様に、シグナルペプチドの配列は、一般に、目的の遺伝子の配列の上流で、目的の遺伝子と同じ読み枠で、任意のプロモーターの下流で融合される。スペーサー配列は、発現及び/又は標的化を妨げない限り、調節エレメントと遺伝子との間に存在してもよい。好ましい実施形態では、該発現カセットは、プロモーターに作動可能に連結された配列を活性化する少なくとも1つの「エンハンサー」を含む。
【0048】
本発明はまた、本発明による核酸又は発現カセット又は発現ベクターに関する。該発現ベクターは、宿主細胞を形質転換し、該細胞における本発明の核酸の発現を可能にするするために使用されてもよい。
【0049】
ベクターは、環状又は非環状の、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAであってもよい。有利には、ベクターは、プラスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス、コスミド及び人工染色体の中から選択される。
【0050】
有利には、発現ベクターは、本発明による核酸の発現を可能にする調節エレメントを含む。これらのエレメントは、例えば、転写プロモーター、転写活性化因子、ターミネーター配列、開始コドン及び終止コドンを含んでもよい。発現が望まれる宿主細胞にしたがって該要素を選択する方法は、当業者に周知である。
【0051】
ベクターはまた、例えば、抗生物質耐性遺伝子又は宿主細胞ゲノムから欠失されたそれぞれの遺伝子の相補性を提供する選択可能な遺伝子などの、宿主細胞におけるその選択を可能にする要素を含んでもよい。そのような要素は当業者に周知であり、文献に広く記載されている。
【0052】
形質転換される宿主細胞が植物細胞である場合、発現ベクターは植物ベクターであることが好ましい。植物ベクターの例は文献に記載されており、特に、A.tumefaciens pBIN 19のT-DNAプラスミド(Bevan,”Binary Agrobacterium vectors for plant transformation”、Nucleic Acids Res.,1984,12:8711-21),pPZPlOO(Hajdukewicz et al.,”The small,versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation”,Plant Mol.Biol.,1994,25:989-94),the pCAMBIA series(R.Jefferson,CAMBIA,Australia)を含む。本発明のベクターは、複製起点及び/又は選択マーカー遺伝子及び/又は植物組換え配列を更に含んでもよい。
【0053】
ベクターは、当業者に周知の分子生物学の古典的技術によって構築してもよい。
【0054】
本発明は、細胞を形質転換又はトランスフェクトするための本発明による核酸、発現カセット又は発現ベクターの使用に関する。宿主細胞は、一過性又は安定な様式で形質転換/トランスフェクトされてもよく、核酸、カセット又はベクターを、エピソームの形態又は染色体の形態で細胞に含有されてもよい。本発明は、本発明による核酸、カセット又は発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0055】
一実施形態によれば、宿主細胞は微生物、好ましくは細菌又は酵母である。
【0056】
別の実施形態によれば、宿主細胞は、動物細胞、例えばCOS又はCHO細胞(米国特許第4889803号、米国特許第5047335号)などの哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、細胞は非ヒト及び非胚性である。
【0057】
更に別の実施形態によれば、宿主細胞は植物細胞である。本明細書で使用される「植物細胞」という用語は、植物に由来し、カルスなどの未分化組織、及び胚、植物部分、植物又は種子などの分化組織を構成してもよい任意の細胞を指す。
【0058】
本発明はまた、本発明による抗菌ペプチドを産生するための方法であって、本発明による核酸、発現カセット又は発現ベクターで細胞を形質転換又はトランスフェクトすること、トランスフェクト/形質転換された細胞を培養すること、及び該細胞によって産生されたペプチドを回収することを含む、方法に関する。組換えペプチドを産生するための方法は、当業者に周知である。例えば、不死化ヒト細胞株における産生のための国際公開第01/70968号パンフレット、植物における産生のための国際公開第2005/123928号パンフレット及びトランスジェニック動物の乳における産生のための米国特許出願公開第2005-229261号明細書に記載されている特定の方法を挙げてもよい。
【0059】
本発明はまた、無細胞とも呼ばれるインビトロ発現系に本発明による核酸、カセット又は発現ベクターを挿入すること、及び該系によって産生されたペプチドを回収することを含む、本発明による抗菌ペプチドの製造方法に関する。多くのインビトロ又は無細胞発現系が市販されており、該系の使用は当業者に周知である。
【0060】
本発明はまた、本発明によるペプチドに特異的に結合する抗体に関する。
【0061】
本発明は、本発明によるペプチドに特異的な抗体に関する。本明細書で使用される「抗体」という用語は、特に、ポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体、その断片(例えば、フラグメントF(ab)´2、F(ab))、一本鎖抗体若しくはミニボディ、又は本発明のペプチドを認識する初期抗体のドメイン、特にCDR(相補性決定領域)を含む任意のポリペプチドを指す。例えば、これらは、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に周知の方法に従ってハイブリドーマから調製されてもよい。抗体を調製するための様々な方法は、当業者に周知である。
【0062】
本発明はまた、本発明によるペプチドを検出するための本発明による抗体の使用に関する。本発明はさらに、特に免疫学的アッセイのための、本発明によるペプチドの定量的測定を行うための本発明による抗体の使用に関する。該測定は、特に、本発明による宿主細胞又はトランスジェニック植物での本発明のペプチドの発現の決定を可能にすることができる。
【0063】
さらなる態様では、本発明は、本発明による少なくとも1つのAMPと、薬学的に許容される支持体及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0064】
該医薬組成物は、本発明の少なくとも2つ以上のAMPの混合物を含んでもよく、好ましくは、配列番号25、29及び30から成る群から選択される少なくとも2つのAMPの混合物を含む。
【0065】
薬学的に許容される支持体は、皮膚又は粘膜と直接接触する布地、不織布又は医療機器であることができる。本発明のペプチドは、それらに組み込むことができる。これらの支持体は、固定システムの布地、不織布若しくは医療機器への生分解によって、又は後者と身体との摩擦によって、身体の水分によって、皮膚のpHによって又は体温によって、本発明のペプチドを放出する。同様に、布地及び不織布を使用して、身体と直接接触する衣類を作製することができる。好ましくは、本発明のペプチドを含有する布地、不織布及び医療機器は、皮膚又は粘膜の状態、障害及び/又は病状の治療及び/又はケアのために使用される。
【0066】
好ましい布地、不織布、衣類、医療機器は、包帯、ガーゼ、Tシャツ、靴下、パンティホース、下着、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、包帯、創傷被覆材、ベッドカバー、ワイプ、ヒドロゲル、接着剤パッチ、非接着剤パッチ、微小電気パッチ及び/又はフェイスマスクである。
【0067】
本発明による組成物に使用することができる薬学的に許容される賦形剤は、当業者に周知であり(Gennaro,”Remington´s Pharmaceutical Sciences,18th edition”,Mack Publishing Company,1990;Frokjaer and Hovgaard,”Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins”,Taylor&Francis,2000;Kibbe,”Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition”,A Pharmaceutical Press,2000)、特に生理食塩水及びリン酸緩衝液を含む。
【0068】
本発明による医薬組成物は、局所投与又は全身投与、特に経口投与、舌下投与、皮膚投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、局所投与、気管内投与、鼻腔内投与、経皮投与、直腸投与、眼内投与又は耳介内投与に適してもよい。好ましくは、本発明による医薬組成物は、皮膚、経口、局所、又は経皮投与に適している。
【0069】
特定の実施形態によれば、本発明による医薬組成物は局所投与に適している。
【0070】
本発明による医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、ペースト剤、軟膏、クリーム剤、絆創膏、ポーション、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、パッチ、スプレー又はエアロゾルの形態であってもよい。
一実施形態によれば、本発明による組成物は、1~2000mgの本発明によるペプチドを含む。好ましくは、本発明による組成物は、10~100、150、200、250、500、750、1000又は1500mgの本発明によるペプチドを含む。
【0071】
本発明による組成物は、他の抗菌剤、特にAMP又は抗生物質などの追加の活性物質をさらに含んでもよい。組成物はまた、本発明によるペプチドの活性を増強することができる物質を更に含んでもよい。
【0072】
本発明は更に、薬物としての本発明によるAMPに関する。好ましくは、薬物は、細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫によって引き起こされる感染症を治療することを意図している。
【0073】
微生物感染は、グラム陰性菌に起因してもよい。特に、グラム陰性菌は、大腸菌及びシュードモナス属、サルモネラ属、アシネトバクター属又はクレブシエラ属の細菌から成る群から選択されてもよい。好ましくは、グラム陰性菌は、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)から成る群から選択される。
【0074】
微生物感染は、グラム陽性菌に起因してもよい。特に、グラム陽性菌は、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、リステリア属又はエンテロコッカス属の細菌から成る群から選択されてもよい。好ましくは、グラム陽性菌は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、リステリア(Listeria ivanovii)及びエンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)から成る群から選択される。
【0075】
微生物感染はまた、真菌に起因してもよい。特に、真菌は、カンジダ属又はアスペルギルス属に由来してもよい。例えば、真菌は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びカンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)から成る群から選択されてもよい。
【0076】
特定の実施形態によれば、処置は治癒的又は予防的であってもよい。
【0077】
治療される対象は動物、好ましくは哺乳動物である。特定の実施形態によれば、治療される対象はヒトである。別の実施形態によれば、治療される対象は、家畜(domestic animal)、繁殖動物、家畜(livestock)又は使役動物である。この獣医学的使用は、抗生物質を回避して微生物感染症を治療するためのものである。バイオフィルムは、院内感染の約60%の原因である。バイオフィルムは本質的に、埋め込まれた生体材料の微生物コロニー形成に起因する。細菌バイオフィルムの根絶は、プランクトン状態の細菌に対して通常活性な抗生物質が、バイオフィルムに組織化された構造に対してはるかに効果的でないことが判明することが多いことを考慮すると、主要な臨床的問題である。このタイプのバイオフィルムに対するAMPの効果は、temporin-A(Cirioni et al.,”Prophylactic efficacy of topical temporin A and RNAIII inhibiting peptide in a subcutaneous rat Pouch model of graft infection attributable to Staphylococci with intermediate resistance to glycopeptides”,Circulation,2003,108:767-71)を用いて行われた以前の研究で実証されている。
【0078】
特定の実施形態では、本発明のペプチドは、嚢胞性線維症、心内膜炎、膀胱炎、留置型医療機器によって引き起こされる感染症、歯垢形成又は歯周炎などのバイオフィルム形成を伴う微生物感染症を治療するために使用される。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、多剤耐性細菌によって引き起こされる細菌感染症を治療するために使用される。治療される細菌感染症としては、例えば、菌血症、敗血症、皮膚及び軟部組織感染症、肺炎、静脈ライン又は他のカテーテルに関連する感染症、キャニル及び/又はデバイス、表在性皮膚及び/又は粘膜感染症が挙げられる。細菌感染症としては、重度の院内感染、易感染性患者の感染、臓器移植患者の感染、集中治療室(ICU)での感染、熱傷の重度の感染、重度のコミュニティ感染、嚢胞性線維症患者の感染が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。
【0080】
本発明はまた、治療有効用量の本発明によるペプチド、核酸、カセット又はベクターを投与することを含む、微生物感染症を治療する方法に関する。
【0081】
本明細書で使用される「治療有効用量」という用語は、感染に関与する細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫に対する抗菌活性を観察するために必要な本発明によるペプチド、核酸、カセット又はベクターの量を指す。投与される本発明によるペプチド、核酸、カセット又はベクターの量及び処置の期間は、処置される対象の生理学的状態、病原体および該病原体に対するペプチドの抗菌活性に従って当業者によって決定される。
【0082】
更に別の態様では、本発明は、殺菌剤、保存剤又は殺虫剤としての本発明によるペプチドの使用に関する。
【0083】
「殺菌剤」という用語は、表面(例えば、壁、ドア、医療機器)、液体(例えば、水)又は気体(例えば、麻酔ガス)上のペプチドの抗菌活性を指す。
【0084】
一実施形態によれば、本発明によるペプチドは、細菌バイオフィルムの除去に使用される。好ましい実施形態によれば、本発明によるペプチドは、特に外科用又は補綴用機器を消毒するために使用される。
【0085】
本発明はまた、本発明によるAMPでコーティングされた又はそれを含む少なくとも1つの表面を有する本体を含む医療機器又はインプラントに関する。本発明はまた、本発明によるペプチドのコーティングを適用すること、又は装置若しくはインプラントの少なくとも1つの表面と接触させることを含む、医療用装置又はインプラントを調製する方法に関する。
【0086】
この種の医療機器又はインプラント並びにその使用及び調製方法は、例えば特許出願WO2005/006938に記載されている。
【0087】
本発明によるペプチドでコーティングされた又はそれを含む表面は、ポリエチレン、ダクロン、ナイロン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ラテックス、シリコーンエラストマーなどの熱可塑性材料若しくはポリマー材料、又は金などの金属材料で構成されてもよい。特定の実施形態では、本発明のペプチドは、そのN末端又はC末端を介して、官能基化表面、好ましくは金属表面に共有結合している。任意選択で、ペプチドは、スペーサーアームを介して表面に付着されてもよい。
【0088】
好ましくは、表面は、0.4~300mg/cmの密度でペプチドによりコーティングされてもよい。
【0089】
あるいは、装置又はインプラント、特に骨及び関節補綴装置は、本発明によるペプチドを含むセメント混合物でコーティングされてもよい。
【0090】
ペプチドは、別の活性分子、好ましくは抗生物質と組み合わせてもよい。
【0091】
装置又はインプラントは、例えば、血管内カテーテル、腹膜カテーテル、胸膜カテーテル及び泌尿器カテーテル、心臓弁、心臓ペースメーカ、血管シャント、冠状動脈障害、歯科インプラント又は整形外科用若しくは眼内プロテーゼであってもよい。
【0092】
本発明は、本発明による少なくとも1つのペプチドを含む食品組成物に関する。
【0093】
食品は、微生物による感染のリスクを排除又は防止し、それによって食品の保存性を改善するために、本発明によるペプチドで処理されてもよい。この場合、ペプチドは保存剤として使用される。
【0094】
本発明によるペプチドは、殺虫剤として使用されてもよい。この場合、ペプチドは、植物病原体による植物の感染症を予防又は治療するために使用される。
【0095】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのペプチドを含む農薬組成物に関する。
【0096】
本発明によるAMPは、LC50>200μMで有害であると考えられていないtemporin-SHfと比較して、抗菌活性及び同様の細胞溶解活性を示す。
【0097】
好ましくは、本発明によるAMPは、細胞溶解活性を示さないか又は弱い細胞溶解活性を示す。特に、本発明のペプチドは、赤血球について30μMを超える、好ましくは40μM、50、100、200、500、600、800μM超のLC50を有してもよい。LC50値は、例えば、ラット、イヌ、ウサギ、ブタ、ネコ又はヒト赤血球、好ましくはラット又はヒト赤血球、より好ましくはヒト赤血球で得られてもよい。
【0098】
本明細書で使用される「致死濃度、50%」又は「LC50」という用語は、集団の半分を死滅させるのに必要な物質の濃度を指す。LC50は、物質の毒性の定量的指標である。
【0099】
細胞傷害性の低下に加えて、本発明のペプチドは、少なくとも1つの細菌株、ウイルス株、真菌株又は寄生虫株に対して、好ましくは、temporin-SHfの抗菌活性と同等又はそれ以上の抗菌活性を有する。
【0100】
有利には、本発明のSHf類似体は、グラム陰性及びグラム陽性細菌に対して抗菌活性を有し、また非細胞傷害性である。それらはサイズが小さいので、より容易に合成できる。
【0101】
本発明は、類似体の合成及び抗菌試験を示す非限定的な実施例に言及する、続く追加の説明を用いてよりよく理解されるであろう。
【実施例
【0102】
材料及び方法
【0103】
ペプチド合成
全てのSHf類似体は、前述のように固相標準Fmoc化学プロトコルを使用して合成したが(Raja et al.,”Structure,antimicrobial activities and mode of interaction with membranes of novel phylloseptins from the painted-belly leaf frog,Phyllomedusa sauvagii”,PLoS One,2013,8:e70782)、以下の変更を用いた。合成は、Protide Rink Amide LL樹脂(CEM Corporation、米国、0.19mmol/g置換)を用い、CEM Liberty Blue自動マイクロ波ペプチド合成装置(CEM Corporation、ペプチド合成プラットフォーム、IBPS、フランス、パリのソルボンヌ大学)で行った。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)での脱保護後洗浄の後、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)/オキシマ活性化法を用いたカップリングを行った。ペプチジル樹脂を、94%トリフルオロ酢酸(TFA)、1%トリイソプロピルシラン(TIS)、2.5% HO及び2.5% 1,2-エタンジチオール(EDT)を含有する酸性混合物とのインキュベーション(室温で3時間)によって開裂及び脱保護した。樹脂を濾過により除去し、ペプチドを冷エーテル中に沈殿させた。次いで、粗物質を、0.1%TFA/水中のアセトニトリル(0.07%TFA)の20~70%直線勾配によって(1%アセトニトリル/分)5mL/分の流量で溶出するPhenomenex Luna(登録商標)C18(2)半分取カラム(10μm、250×10mm)での半分取RP-HPLCにかけた。ペプチド純度を、分析RP-HPLC、続いてMALDI-TOF分析(フランス、パリのソルボンヌ大学にあるIBPSの質量分析及びプロテオミクスプラットフォーム)によって評価した。
【0104】
細菌株及び酵母株
【0105】
以下の株を使用した:
グラム陰性菌:Escherichia coli ATCC 25922、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853、Acinetobacter baumannii ATCC 19606、Klebsiella pneumoniae ATCC 13883、
グラム陽性菌:Staphylococcus aureus ATCC 25923、多剤耐性Staphylococcus aureus ATCC BAA-44、Streptococcus pyogenes ATCC 19615、Listeria ivanovii Li 4 pVS 2、Enterococcus faecalis ATCC 29212、
【0106】
抗菌活性試験
各株について、約10細菌/mL(指数増殖期)の標準接種材料を調製した。この目的のために、株の1つを予め接種したLB寒天上で単離したコロニーを、BHI寒天上で単離したコロニーからBHI(Brain Heart Infusion)中で増殖させた化膿レンサ球菌(S.pyogenes)及びL.ivanoviiを除いて、4mLのLBブロス培地中で培養した。次いで、液体培養物を、細菌が指数増殖期に達するように振盪しながら37℃で2~3時間インキュベートした。遠心分離後、ほとんどの細菌懸濁液をミューラーヒントン(MH)ブロス培地で、約10cfu/mL(cfu:コロニー形成単位)の濃度に相当する0.01のOD630nmに希釈した。E.faecalis(LB)並びにS.pyogenes及びL.ivanovii(BHI)には異なる培地を使用した。
【0107】
各ペプチドの最小阻害濃度(MIC)は、ブロス培地中での増殖阻害試験によって決定した。MICは、37℃で18~24時間のインキュベーション後に試験した細菌株の増殖を阻害することができるペプチドの最低濃度として定義される。試験は、滅菌96ウェルマイクロタイタープレートで行った。一連の漸増濃度のペプチド(2~400μM)を最初に滅菌MilliQ水中で調製した。各ペプチド濃度の50μLを50μLの細菌懸濁液(10cfu/mL)を含むウェルに混合した。次いで、マイクロタイタープレートを振盪しながら37℃で18~24時間インキュベートした。細菌増殖は、プレートリーダーで630nmでOD(濁度)を測定することによって決定した。試験を各ペプチド濃度について3回ずつ行い、少なくとも3回の独立した実験を行ってMIC値を決定した。
【0108】
増殖阻害陰性対照は、ペプチドを含有する溶液を50μLの滅菌MilliQ水で置き換えることによって得た。細菌増殖の完全な阻害を可能にする陽性対照は、ペプチドを含有する溶液を50μLの0.7%ホルムアルデヒドで置き換えることによって得た。
【0109】
細胞傷害性アッセイ
溶血実験は、以前に記載されたプロトコル(Abbassi et al.,”Isolation,characterization and molecular cloning of new temporins from the skin of the North African ranid Pelophylax saharica”,Peptides,2008,29:1526-33)に従って、健常な成人ドナー(フランス、パリのEtablissement Francais du sang)から得られたヒト赤血球を使用して行った。
【0110】
簡単に説明すると、合成ペプチド(1~200μM、最終濃度)を、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で赤血球(2×10細胞)と共に37℃で1時間インキュベートした(100μL、最終容量)。遠心分離(12,000×g、15秒)後、上清の吸光度を450nmで測定した。50%溶血を生じるペプチドの平均濃度であるLC50値を、0.1%トリトン(v/v)に相当する陽性対照(100%溶血)を用いて三連で実行した3回の独立した実験から決定した。
【0111】
結果
SHf、公知のSHf類似体及び本発明のAMPの生物学的活性(抗菌活性及び細胞傷害性)を表2に提供する。
【0112】
【表2】
MIC:最小発育阻止濃度
LC50:溶解濃度50%
EC:大腸菌(Escherichia coli);PA:緑膿菌(Psudomonas aeruginosa);
AB:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii);
KP:肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae);SA:黄色ブドウ球菌(Stapylococcus aureus);
SP:化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes);LI:Listeria ivanovii;
EF:エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)
NE:評価せず。
【配列表】
2024521385000001.app
【国際調査報告】