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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】パワー半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240524BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240524BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L29/78 301B
H01L29/78 301C
H01L27/092 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575648
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2022008227
(87)【国際公開番号】W WO2022260478
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076037
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070241
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュル ジュ
【テーマコード(参考)】
5F045
5F048
5F140
【Fターム(参考)】
5F045AA15
5F045AC01
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC09
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AF02
5F045BB07
5F045DA52
5F045DB08
5F045DP03
5F045EC05
5F045EE05
5F045EE19
5F045EF09
5F045EH02
5F045EH11
5F045EK06
5F045EK07
5F048AC03
5F048BA02
5F048BA06
5F048BA07
5F048BA14
5F048BA15
5F048BB09
5F048BF02
5F048BF07
5F140AB03
5F140AC01
5F140BA00
5F140BA01
5F140BA02
5F140BA07
5F140BA08
5F140BA09
5F140BC12
5F140BD11
5F140BD13
5F140BF05
5F140BF07
5F140BG27
5F140BG28
5F140BJ05
5F140BJ07
5F140BK29
5F140BK30
(57)【要約】
本発明の実施形態に係る活性層形成ステップは、第1の領域と第2の領域を含むSiC基板を用意するステップと、SiC基板の第1の領域に第1のドープガスと混合されたソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第1の活性層を形成するステップ、及びSiC基板の第2の領域に第2のドープガスと混合されたソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第2の活性層を形成するステップを含む。
したがって、本発明の実施形態によれば、低温下で活性層を形成することができる。したがって、基板又はその上部に形成された薄膜が高温の熱により損傷されることを防ぐことができる。また、活性層の形成のために基板を昇温させる電力又は時間を節約することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板の上に互いに異なる不純物がドープされた第1の活性層と第2の活性層を形成する活性層形成ステップを含むパワー半導体の製造方法であって、
前記活性層形成ステップは、
第1の領域と第2の領域を含むSiC基板を用意するステップと、
前記SiC基板の第1の領域に、第1のドープガスと混合されたソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第1の活性層を形成するステップと、
前記SiC基板の第2の領域に、第2のドープガスと混合されたソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第2の活性層を形成するステップと、
を含み、
前記第2のドープガスは、第1のドープガスとは異なる元素を含む、パワー半導体素子の製造方法。
【請求項2】
SiC基板の上に互いに異なる不純物がドープされた第1の活性層と第2の活性層を形成する活性層形成ステップを含むパワー半導体の製造方法であって、
前記活性層形成ステップは、
第1の領域と第2の領域を含むSiC基板を用意するステップと、
前記SiC基板の第1の領域にソースガス、第1のドープガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第1の活性層を形成するステップと、
前記SiC基板の第2の領域にソースガス、第2のドープガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第2の活性層を形成するステップと、
を含み、
前記第2のドープガスは、第1のドープガスとは異なる元素を含む、パワー半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種又は2種以上を含む、請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含む、請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップは、
前記ソースガスの噴射、パージガスの噴射、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射の順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含む、請求項1に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1の活性層を形成するステップは、
前記ソースガスの噴射、第1のドープガス噴射、パージガスの噴射、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射の順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含み、
前記第2の活性層を形成するステップは、
前記ソースガスの噴射、第2のドープガス噴射、パージガスの噴射、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射の順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含む、請求項2に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップは、
前記リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップ及び前記ソースガスの噴射ステップとリアクタントガス噴射ステップとの間にプラズマを生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含む、請求項5又は請求項6に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記プラズマを生じさせるステップは、水素ガスを噴射するステップを含む、請求項7に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップの前に、前記SiC基板の上に結晶質のバッファー層を形成するステップを含む、請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項10】
前記バッファー層は、AlNから形成されている、請求項9に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1及び第2のドープガスのうちのどちらか一方のドープガスは、Mgを含み、
残りの他方のドープガスは、Si、In、Al、Znのうちの少なくともいずれか1種を含む、請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項12】
第1の領域と第2の領域を含み、前記第1の領域に第1の導電型の第1の活性層が形成されたSiC基板を用意するステップと、
前記第2の領域にソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して、第2の導電型の第2の活性層を形成するステップと、
を含み、
前記第1の導電型と第2の導電型とは互いに異なり、nタイプ及びpタイプのうちのどちらか一方である、パワー半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1の活性層は、ソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して形成し、
前記第1及び第2の活性層を形成するステップにおいて噴射される前記ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種又は2種以上を含む、請求項12に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップにおいて噴射される前記リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含む、請求項12に記載のパワー半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、原子層蒸着法により活性層を形成するパワー半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解効果トランジスター(field effect transistor)は、基板の上に形成された活性層と、活性層の上側に形成されたソース及びドレイン電極と、活性層の上側においてソース電極とドレイン電極との間に位置するように形成されたゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間に設けられたウェル(well)領域と、を備える。
【0003】
活性層は、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法により形成する。このとき、基板の温度を約1200℃の高温に調節した状態で、薄膜を蒸着して活性層を蒸着する。すなわち、基板が約1200℃の高温に保たれるときに、基板の上に活性層が蒸着されることが可能になる。
【0004】
ところが、このように、基板を高温に加熱した状態で活性層を形成することに伴い、基板又は前記基板の上に形成された薄膜が損傷されてしまうという問題が生じる。そして、これは、電界効果トランジスターの機能を低下させたり、不良を引き起こしたりする要因として働く。特に、電界効果トランジスターを電子機器の電力の変換用や制御用に用いる場合、高温下で活性層を形成するときに生じた損傷は、品質又は機能を大幅に低下させる原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国登録特許公報第2571583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温下で製造することのできるパワー半導体素子の製造方法を提供する。
【0007】
本発明は、低温下で活性層を形成することのできるパワー半導体素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、SiC基板の上に互いに異なる不純物がドープされた第1の活性層と第2の活性層を形成する活性層形成ステップを含むパワー半導体の製造方法であって、前記活性層形成ステップは、第1の領域と第2の領域を含むSiC基板を用意するステップと、前記SiC基板の第1の領域に、第1のドープガスと混合されたソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第1の活性層を形成するステップと、前記SiC基板の第2の領域に、第2のドープガスと混合されたソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第2の活性層を形成するステップと、を含み、前記第2のドープガスは、第1のドープガスとは異なる元素を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の実施形態は、SiC基板の上に互いに異なる不純物がドープされた第1の活性層と第2の活性層を形成する活性層形成ステップを含むパワー半導体の製造方法であって、前記活性層形成ステップは、第1の領域と第2の領域を含むSiC基板を用意するステップと、前記SiC基板の第1の領域にソースガス、第1のドープガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第1の活性層を形成するステップと、前記SiC基板の第2の領域にソースガス、第2のドープガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して第2の活性層を形成するステップと、を含み、前記第2のドープガスは、第1のドープガスとは異なる元素を含んでいてもよい。
【0010】
前記ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0011】
前記リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0012】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップは、前記ソースガスの噴射、パージガスの噴射、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射の順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含んでいてもよい。
【0013】
前記第1の活性層を形成するステップは、前記ソースガスの噴射、第1のドープガス噴射、パージガスの噴射、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射の順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含み、前記第2の活性層を形成するステップは、前記ソースガスの噴射、第2のドープガス噴射、パージガスの噴射、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射の順に行われる一つの工程サイクルを繰り返し行うステップを含んでいてもよい。
【0014】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップは、前記リアクタントガスを噴射するステップの後にプラズマを生じさせるステップ及び前記ソースガスの噴射ステップとリアクタントガス噴射ステップとの間にプラズマを生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0015】
前記プラズマを生じさせるステップは、水素ガスを噴射するステップを含んでいてもよい。
【0016】
前記パワー半導体の製造方法は、前記第1及び第2の活性層を形成するステップの前に、前記SiC基板の上に結晶質のバッファー層を形成するステップを含んでいてもよい。
【0017】
前記バッファー層は、AlNから形成されてもよい。
【0018】
前記第1及び第2のドープガスのうちのどちらか一方のドープガスは、Mgを含み、残りの他方のドープガスは、Si、In、Al、Znのうちの少なくともいずれか1種を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法は、第1の領域と第2の領域を含み、前記第1の領域に第1の導電型の第1の活性層が形成されたSiC基板を用意するステップと、前記第2の領域にソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して、第2の導電型の第2の活性層を形成するステップと、を含み、前記第1の導電型と第2の導電型とは互いに異なり、nタイプ及びpタイプのうちのどちらか一方であってもよい。
【0020】
前記第1の活性層は、ソースガス、パージガス、リアクタントガス、パージガスをこの順に噴射して形成し、前記第1及び第2の活性層を形成するステップにおいて噴射される前記ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0021】
前記第1及び第2の活性層を形成するステップにおいて噴射される前記リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によれば、低温下で活性層を形成することができる。したがって、基板又はその上部に形成された薄膜が高温の熱により損傷されることを防ぐことができる。また、活性層の形成のために基板を昇温させる電力又は時間を節約することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【0023】
また、活性層を結晶化させて形成することができる。すなわち、低温下で活性層を形成しながらも、結晶化した活性層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る方法により活性層が形成された基板を示す概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る方法により製造される相補型金属酸化半導体素子の一例を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る方法により相補型金属酸化半導体素子の活性層を形成する方法を説明するための概念図である。
図4】活性層と基板との間にバッファー層が形成された変形例を示す概念図である。
図5】実施形態の変形例に係る相補型金属酸化半導体素子の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置を概略的に示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置の他の例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。図面は、本発明の実施形態を説明する大きさが誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指す。
【0026】
本発明の実施形態は、パワー半導体素子(電力用半導体素子)の製造方法に関する。より詳細には、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法により活性層を形成する方法を含むパワー半導体素子の製造方法に関する。より具体的には、nタイプ(n-type、n型)又はpタイプ(p-type、p型)の第1の活性層及び前記第1の活性層とは異なるタイプの第2の活性層を備え、原子層蒸着法により第1及び第2の活性層を形成する方法を含むパワー半導体素子の製造方法に関する。このようなパワー半導体素子は、相補型金属酸化半導体(CMOS:Complementary Metal-Oxide Semiconductor)と呼ばれる素子であってもよい。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る方法により活性層が形成された基板を示す概念図である。
【0028】
図1を参照すると、活性層10:10a、10bは、基板Sの上に形成される層であって、パワー半導体素子、より具体的には、相補型金属酸化半導体素子を構成する活性層であってもよい。このような活性層10は、原子層蒸着(ALD)法により形成されてもよい。また、原子層蒸着法により活性層10を形成するに際して、リアクタントガスの噴射を中断又は終了した後に、プラズマを生じさせて形成してもよい。このとき、水素(H)ガスを用いたプラズマ(以下、水素プラズマと称する。)を生じさせて活性層10を形成してもよい。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る方法により製造される相補型金属酸化半導体素子の一例を示す断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る方法により相補型金属酸化半導体素子の活性層を形成する方法を説明するための概念図である。
【0030】
以下、図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係る方法により形成される活性層を備えるパワー半導体素子の製造方法について説明する。このとき、相補型金属酸化半導体素子を例にとって説明する。
【0031】
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る方法により製造される相補型金属酸化半導体素子は、基板Sと、基板Sの上において互いに異なる領域に形成され、互いに異なるタイプに形成された第1及び第2の活性層10a、10bと、第1の活性層10aの上側において水平方向に隔設された第1のソース電極41a及び第1のドレイン電極42aと、第2の活性層10bの上側において水平方向に隔設された第2のソース電極41b及び第2のドレイン電極42bと、第1の活性層10aの上側において第1のソース電極41aと第1のドレイン電極42aとの間に位置するように形成された第1のゲート電極50aと、第2の活性層10bの上側において第2のソース電極41bと第2のドレイン電極42bとの間に位置するように形成された第2のゲート電極50bと、第1のソース電極41aと第1の活性層10aとの間及び第1のドレイン電極42aと第1の活性層10aとの間のそれぞれに形成された第1のウェル層(well layer)20aと、第2のソース電極41bと第2の活性層10bとの間及び第2のドレイン電極42bと第2の活性層10bとの間のそれぞれに形成された第2のウェル層(well layer)20bと、第1のソース電極41aと第1のドレイン電極42aとの間に位置するように第1の活性層10aの上に形成された第1のゲート絶縁層30aと、第2のソース電極41bと第2のドレイン電極42bとの間に位置するように第2の活性層10bの上に形成された第2のゲート絶縁層30bと、を備えていてもよい。
【0032】
ここで、第1及び第2のソース電極41a、41bと接するように、又は第1及び第2のソース電極41a、41bの下側に形成された第1及び第2のウェル層20a、20bは、相補型金属酸化半導体素子のソース(source)として機能する層であってもよい。また、第1及び第2のドレイン電極42a、42bと接するように、又は第1及び第2のドレイン電極42a、42bの下側に形成された第1及び第2のウェル層20a、20bは、相補型金属酸化半導体素子のドレイン(drain)として機能する層であってもよい。
【0033】
基板Sは、シリコン(Si)を含む基板であってもよく、pタイプ(p-type)の基板であってもよい。より具体例を挙げると、基板Sは、pタイプのSiC基板であってもよい。
【0034】
基板Sの上には、図1及び図2に示すように、第1の活性層10aと第2の活性層10bが形成される。このとき、第1の活性層10aと第2の活性層10bは、基板Sの上部面において互いに異なる領域又は互いに異なる位置に形成される。以下、説明のしやすさのために、基板Sの上部面のうち、第1の活性層10aが形成される領域を第1の領域Aと称し、第1の領域Aとは異なり領域であり、第2の活性層10bが形成される領域を第2の領域Aと称する。
【0035】
第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれは、ヒ化ガリウム(GaAs:Gallium Arsenic)、リン化インジウム(InP:Indium Phosphide)、ヒ化リン化インジウムガリウム(AlGaInP:Aluminum Gallium Indium Phosphide)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)、酸化インジウム亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、炭化ケイ素(SiC:Silicon Carbide)のうちのいずれか1種の層又は薄膜から形成されてもよい。すなわち、第1及び第2の活性層10a、10bは、GaAs層、InP層、AlGaInP層、IGZO層、IZO層及びSiC層のうちのいずれか1種から形成されてもよい。
【0036】
そして、第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれは、nタイプ(n-type、n型)又はpタイプ(p-type、p型)に形成されるが、第1の活性層10aと第2の活性層10bは、互いに異なるタイプ(type)に形成される。例えば、第1の活性層10aがpタイプに形成され、第2の活性層10bがnタイプに形成されるか、あるいは、第1の活性層10aがnタイプに形成され、第2の活性層10bがpタイプに形成される。別の言い方をすれば、第1の活性層10aと第2の活性層10bとは、互いに異なる導電型に形成される。すなわち、第1の活性層10aがpタイプである第1の導電型に形成されるとき、第2の活性層10bは、nタイプである第2の導電型に形成されてもよい。他の例を挙げると、第1の活性層10aがnタイプである第2の導電型に形成されるとき、第2の活性層10bは、pタイプである第1の導電型に形成されてもよい。
【0037】
以下では、第1及び第2の活性層10a、10bについて説明するに際して、第1の活性層10aがpタイプ(第1の導電型)に形成され、第2の活性層10bがnタイプ(第2の導電型)に形成されることを例にとって説明する。
【0038】
第1及び第2の活性層10a、10bは、原子層蒸着(ALD)法により形成されてもよい。また、原子層蒸着法により第1及び第2の活性層10a、10bを形成するに際して、リアクタントガスの噴射を中断又は終了した後にプラズマを生じさせてもよい。このとき、水素(H)ガスを用いたプラズマ(以下、水素プラズマと称する。)を生じさせて第1及び第2の活性層10a、10bを形成してもよい。
【0039】
以下、原子層蒸着法を用いて第1及び第2の活性層10a、10bを形成する方法について説明する。このとき、第1の活性層10aと第2の活性層10bとは、ドープ材料が互いに異なり、その形成方法が略同様であるため、第1及び第2の活性層10a、10bを活性層1010a、10bとまとめて称してその形成方法について説明する。
【0040】
活性層10を形成するステップは、ソースガスを噴射するステップと、ドープガスを噴射するステップと、パージガスを噴射するステップ(1次パージ)と、リアクタントガスを噴射するステップ、及びパージガスを噴射するステップ(2次パージ)を含んでいてもよい。そして、活性層10を形成するステップは、リアクタントガスを噴射するステップの後に、プラズマを生じさせるステップを含んでいてもよい。このとき、プラズマを生じさせるステップは、例えば、リアクタントガスを噴射し、2次パージが終了した後に行われてもよい。このような場合、ソースガスの噴射と、ドープガスの噴射と、パージガス噴射(1次パージ)と、リアクタントガスの噴射と、パージガスの噴射(2次パージ)、及びプラズマ発生の順に行われてもよい。また、2次パージの後に生じさせるプラズマは、水素プラズマであってもよい。すなわち、2次パージの終了後にプラズマを生じさせるに際して、水素ガスを噴射し、前記水素ガスを放電してプラズマを生じさせてもよい。
【0041】
また、リアクタントガスを噴射するステップにおいて、プラズマを生じさせてもよい。すなわち、リアクタントガスを噴射し、前記リアクタントガスを放電してプラズマを生じさせてもよい。
【0042】
活性層10を形成するに際して、上述したような「ソースガスの噴射-ドープガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマ発生」を活性層10の形成のための一つの工程サイクル(Cycle)としてもよい。また、上述した工程サイクルを複数回繰り返し行うことにより、複数回の原子層の蒸着が行われる。そして、工程サイクルを行うべき回数を調整することにより、目標の層厚の活性層10を形成することができる。
【0043】
上述したような工程サイクルにおいて、ソースガスの噴射、ドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)の後にリアクタントガスが噴射されれば、基板S上においてソースガスとリアクタントガスとの反応が起こって、反応物、例えば、AlGaInPが生成される。そして、この反応物が基板Sの上に堆積又は蒸着され、このため、基板Sの上にAlGaInPからなる薄膜が形成される。また、噴射されるドープガスの種類に応じて、pタイプのAlGaInP薄膜又はnタイプのAlGaInP薄膜が形成される。
【0044】
一方、従来には、基板の上に活性層を形成するために薄膜を蒸着するに際して、チャンバーの内部又は基板の温度を約1200℃の高温に保っていた。別の言い方をすれば、チャンバーの内部又は基板の温度が1200℃の高温に保たれなければ、基板の上面に薄膜が蒸着されることができない。このように、高温下で活性層を形成する場合、基板又は基板の上に形成されている薄膜が損傷される虞があり、活性層が損傷される虞もある。このため、素子の機能又は品質が低下するという問題がある。
【0045】
しかしながら、実施形態においては、原子層蒸着法を用いて薄膜を蒸着するに際して、プラズマを生じさせる。すなわち、リアクタントガスが噴射された後に、又はリアクタントガスの噴射の終了後にプラズマ、例えば、水素プラズマを生じさせる。より具体的に説明すれば、リアクタントガスの噴射及びパージガスの噴射(2次パージ)が終了した後、水素ガスを用いたプラズマを生じさせる。
【0046】
このとき、プラズマは、ソースガスとリアクタントガスとの反応率を向上させることができ、ソースガスとリアクタントガスとの反応物が基板Sに堆積され易いように、又は付着し易いようにすることができる。したがって、チャンバー100の内部又は基板Sの温度が低温、例えば、600℃以下である状態で、原子層蒸着法により活性層10が形成されることが可能になる。さらに好ましくは、300℃以上、かつ、550℃以下の状態で原子層蒸着法により活性層10が形成されてもよい。すなわち、従来のように、基板を高温に加熱した状態で、活性層10を形成せず、低温下で活性層10を形成することができる。このため、高熱による基板S、基板の上に形成されている薄膜又は活性層10の損傷を防ぐことができる。
【0047】
また、プラズマは、ソースガスとリアクタントガスとの反応により基板Sの上に蒸着される薄膜が結晶質となるようにすることができる。より具体的には、多結晶質の活性層10が形成されるようにすることができる。すなわち、原子層蒸着法により活性層10を形成するに際して、リアクタントガスの噴射後にプラズマを生じさせることにより、前記プラズマにより結晶質又は多結晶質の活性層10を形成することができる。
【0048】
また、プラズマは、チャンバー100の内部に残留する不純物を分解して取り除き易いようにすることができる。したがって、蒸着膜、すなわち、活性層10の形成に際して不純物による汚染を防止もしくは抑止することができる。
【0049】
上記においては、ソースガスの噴射後にドープガスを噴射することについて説明した。すなわち、ソースガスとドープガスとが別途の段階に分けられて噴射されることについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、ソースガスとドープガスとを混合して噴射してもよい。すなわち、ソースガスとドープガスとを混合し、混合されたガス(以下、混合ガスと称する。)をソースガスの噴射ステップにおいて噴射してもよい。このような場合、「混合ガスの噴射-プラズマ発生-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマ発生」を一つの工程サイクルとしてもよい。
【0050】
また、上記においては、2次パージの終了後、又はリアクタントガスの噴射後にプラズマを生じさせることについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、ソースガスの噴射とリアクタントガスの噴射との間のステップにおいて水素プラズマを生じさせてもよい。より具体的には、ソースガスの噴射ステップと1次パージステップとの間に水素プラズマを生じさせてもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-プラズマ発生-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を一つの工程サイクルとしてもよい。
【0051】
他の例を挙げると、1次パージステップとリアクタントガス噴射ステップとの間に水素プラズマを生じさせてもよい。このため、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-プラズマ発生-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を一つの工程サイクルとしてもよい。
【0052】
さらに他の例を挙げると、ソースガスの噴射とリアクタント噴射との間のステップ及びリアクタントガス噴射ステップの後のそれぞれにおいてプラズマを生じさせてもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-プラズマ発生-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマ発生」を工程サイクルとしてもよいし、あるいは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-プラズマ発生-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマ発生」を工程サイクルとしてもよい。
【0053】
上述したような工程サイクルにより活性層10を形成するに際して、形成しようとする活性層10の種類に応じて、ソースガス及びリアクタントガスの物質が決定されてもよい。
【0054】
活性層10は、GaAs層、InP層、AlGaInP層、IGZO層、IZO層及びSiC層のうちのいずれか一つから形成されてもよい。このような場合、ソースガスは、Ga、In、Zn及びSiのうちのいずれか1種を含むガスであってもよいし、あるいは、2種以上を含むガスであってもよい。すなわち、ソースガスは、Gaを含有するガス、Inを含有するガス、Al、Ga及びInを含有するガス(AlGaIn含有ガス)、In、Ga及びZnを含有するガス(IGZ含有ガス)、In及びZn(IZ含有ガス)を含有するガス、Siを含有するガスのうちのいずれか1種又は2種以上を含むガスであってもよい。また、リアクタントガスは、As、P、O及びCのうちのいずれか1種又は2種以上を含むガスであってもよい。すなわち、リアクタントガスは、As含有ガス、P含有ガス、O含有ガス、C含有ガスのうちのいずれか1種又は2種以上を含むガスであってもよい。
【0055】
例えば、活性層10としてGaAs層を形成する場合、ソースガスとして、Gaを含有するガスが使用可能であり、リアクタントガスとして、Asを含有するガスが使用可能である。また、活性層10としてInP層を形成する場合、ソースガスとして、Inを含有するガスが使用可能であり、リアクタントガスとして、Pを含有するガスが使用可能である。他の例を挙げると、活性層10としてAlGaInP層を形成する場合、ソースガスとして、Alを含有するガス、Gaを含有するガス、Inを含有するガスが使用可能であり、リアクタントガスとして、Pを含有するガスが使用可能である。さらに他の例を挙げると、活性層10としてIGZO層を形成する場合、ソースガスとして、Inを含有するガス、Gaを含有するガス、Znを含有するガスが使用可能であり、リアクタントガスとして、Oを含有するガスが使用可能である。そして、活性層10としてIZO層を形成する場合、ソースガスとして、Inを含有するガス、Znを含有するガスが使用可能であり、リアクタントガスとして、Oを含有するガスが使用可能である。また、活性層10としてSiC層を形成する場合、ソースガスとして、Siを含有するガスが使用可能であり、リアクタントガスとして、Cを含有するガスが使用可能である。
【0056】
ここで、Ga含有ガスとして、例えば、トリメチルガリウム(Trimethyl Gallium;Ga(CH)(TMGa)を含有するガスが使用可能であり、In含有ガスとして、例えば、トリメチルインジウム(Trimethyl Indium;In(CH)(TMIn)及びジエチルアミノプロピルジメチルインジウム(Diethylamino Propyl Dimethyl Indium)(DADI)のうちの少なくとも一方を含有するガスが使用可能である。また、Al含有ガスとして、例えば、TMA(Trimethyl Aluminum、(Al(CH)を含有するガスが使用可能であり、Zn含有ガスとして、ジエチル亜鉛(Diethyl Zinc;Zn(C(DEZ)及びジメチル亜鉛(Dimethyl Zinc;Zn(CH(DMZ)のうちの少なくとも一方を含有するガスが使用可能である。そして、Si含有ガスとしては、例えば、SiH、Siのうちの少なくとも1種を含有するガスが使用可能である。
【0057】
また、As含有ガスとしては、AsH及びAsHのうちのどちらか一方を含有するガスが使用可能であり、P含有ガスとしては、例えば、ホスフィン(PH)を含むガスが使用可能である。また、O含有ガスは、酸素であってもよく、C含有ガスとしては、例えば、SiHCHを含有するガスが使用可能である。
【0058】
上述したように、GaAs層の活性層10を形成する場合、ソースガスとして、Ga含有ガスを用い、InP層の活性層10を形成する場合、ソースガスとして、In含有ガスを用い、SiC層の活性層10を形成する場合、ソースガスとして、Si含有ガスを用いる。このため、GaAs層、InP層、SiC層のうちのいずれか一つから活性層10を形成する場合、1種のソースガスを用いると説明可能である。
【0059】
他の例を挙げると、AlGaInP層の活性層10を形成する場合、ソースガスとして、3種のガス、すなわち、Al含有ガス、Ga含有ガス、In含有ガスを用いる。他の例を挙げると、IGZO層から活性層10を形成する場合、ソースガスとして、3種のガス、すなわち、In含有ガス、Ga含有ガス、Zn含有ガスを用いる。このため、AlGaInP層又はIGZO層から活性層10を形成する場合、2種以上の複数種のソースガスを用いると説明可能である。
【0060】
複数種のソースガスを用いて、又は噴射して活性層10を形成するに際して、複数種のソースガスを混合したソースガスを噴射して活性層10を形成してもよい。複数種のソースガスを混合して噴射する方法についての具体的な説明は、後述する蒸着装置の説明に際して再び行う。
【0061】
ドープガスは、ソースガスの噴射後に噴射されてもよいし、あるいは、ソースガスと混合されて噴射されてもよい。このとき、形成しようとする活性層10のタイプに応じて、ドープされるべきガスが決定されてもよい。例えば、pタイプの活性層10を形成しようとする場合、ドープガスとして、Mgを含有するガスが使用可能であり、nタイプの活性層10を形成しようとする場合、ドープガスとして、Siを含有するガスが使用可能である。ここで、Mgを含有するドープガスとして、CpMgを含有するガスが使用可能であり、Siを含有するドープガスとして、例えば、ポリシラン(HSi-(SiH-SiH)を含有するガスが使用可能である。また、さらに、第2のドープガスは、Si、In、Al、Znのうちの1種又は1種以上のガスをさらに混合したものであってもよい。
【0062】
そして、上述した工程サイクルを複数回繰り返して活性層10を形成する。このとき、活性層10の形成のための最初の、すなわち、第1回目の工程サイクルにおいては、ドープガスを噴射するステップなしに行われてもよい。すなわち、活性層10の形成のために第1回目に行われる工程サイクルは、「ソースガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマ発生」であってもよく、ソースガスの噴射に際してドープガスを一緒に噴射するか、あるいは、ドープガスを別途に噴射しない。そして、以降の次回からは、ソースガスの噴射の後にドープガスを噴射するか、あるいは、ソースガスの噴射に際してドープガスを一緒に噴射する。このため、活性層10の上に活性層10が形成されるに際して、第1回目の工程サイクルにより蒸着された薄膜は、ドープされていない薄膜であり、この後に行われる工程サイクルにより蒸着される薄膜は、ドープされた薄膜であってもよい。
【0063】
いうまでもなく、最初の、すなわち、第1回目の工程サイクルからドープガスを噴射して活性層10を形成してもよい。
【0064】
活性層10は、図2に示すように、表面の高さが異なるように段付きの形状に設けられてもよい。別の言い方をすれば、活性層10は、基板Sの上部面に形成された第1の層11及び第1の層11の一部の領域に形成された第2の層12を備えるものであると説明可能である。このため、活性層10のうち、第2の層12が形成されている領域の厚さが他の領域に比べて厚くてもよい。別の言い方をすれば、活性層10は、第2の層12が形成された領域の高さが、第1の層11のみが形成された部分に比べてさらに高い形状、すなわち、段付きの形状に設けられてもよい。
【0065】
活性層の形状は、上述したような段付きの形状に設けることに何ら限定されるものではなく、ソース電極41a、41bと活性層10a、10bとの間、及びドレイン電極42a、42bと活性層10a、10bとの間にウェル層20a、20bが設けられることが可能である限り、いかなる形状に設けられても構わない。
【0066】
第1及び第2のウェル層(well layer)20a、20bは、通常、相補型金属酸化半導体素子においてウェル領域(well region)と称される層であってもよい。このとき、原子層蒸着法により蒸着されて活性層10a、10bの上にウェル領域が形成されるため、説明のしやすさのために、ウェル層20a、20bと称する。このようなウェル層20a、20bは、ソース電極及びドレイン電極と活性層との間に位置するように設けられてもよい。より具体的には、第1のウェル層20aは、第1のソース電極41aと第1の活性層10aとの間、第1のドレイン電極42aと第1の活性層10aとの間に設けられ、第2のウェル層20bは、第2のソース電極41bと第2の活性層10bとの間、第2のドレイン電極42bと第2の活性層10bとの間に設けられる。このため、第1のウェル層20aは、図2に示すように、第1の活性層10aの第1の層11と第1のソース電極41aとの間、前記第1の層11と第1のドレイン電極42aとの間に位置するように設けられてもよい。また、第2のウェル層20bは、第2の活性層10bの第1の層11と第2のソース電極41bとの間、前記第1の層11と第2のドレイン電極42bとの間に位置するように設けられてもよい。そして、第1及び第2のウェル層20a、20bは、原子層蒸着法により形成してもよい。
【0067】
第1及び第2のウェル層20a、20bは、活性層10と同一の材料にnタイプ又はpタイプの不純物がドープされるように設けられてもよい。例えば、第1の活性層10aがpタイプのAlGaInPから形成される場合、第1のウェル層20aは、AlGaInPに不純物、例えば、Siをドープしてnタイプに設けてもよいし、あるいは、第2の活性層10bがnタイプのAlGaInPから形成される場合、第2のウェル層20bは、AlGaInPに不純物、例えば、Mgをドープしてpタイプに設けてもよい。このため、第1のウェル層20aは、SiがドープされたnタイプのAlGaInP層であり、第2のウェル層20bは、MgがドープされたpタイプのAlGaInP層であると説明可能である。
【0068】
以下、原子層蒸着法を用いて第1及び第2のウェル層20a、20bを形成する方法について説明する。このとき、第1のウェル層20aと第2のウェル層20bは、ドープする材料のみに相違点があり、その形成方法は略同様であるため、第1及び第2のウェル層20a、20bをウェル層2020a、20bとまとめて称してその形成方法について説明する。
【0069】
ウェル層20は、原子層蒸着法により形成されてもよい。すなわち、「ソースガスの噴射-ドープガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」を工程サイクルとしてウェル層20を形成してもよい。このとき、ウェル層20の形成のために噴射されるソースガス、ドープガス、リアクタントガス、パージガスは、活性層10の形成に際して用いられたガスと同種のものであってもよい。
【0070】
そして、ウェル層20を形成するためのドープガスは、ソースガスと混合されて噴射されてもよい。すなわち、ソースガスとドープガスとを混合し、この混合ガスをソースガスの噴射ステップにおいて噴射してもよい。このような場合、「混合ガスの噴射-プラズマ発生-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)」をウェル層20を形成するための一つの工程サイクルとしてもよい。
【0071】
また、ウェル層20を形成するに際して、リアクタントガスの噴射に際してプラズマを生じさせてもよいし、あるいは、2次パージの後にプラズマをさらに生じさせてもよい。そして、2次パージの後に生じるプラズマは、水素プラズマであってもよい。
【0072】
このようにして形成されたウェル層20は、相補型金属酸化半導体素子においてソース及びドレイン領域として機能する。すなわち、第1及び第2のソース電極41a、41bの下側に形成された第1及び第2のウェル層20a、20bは、相補型金属酸化半導体素子のソースとして機能し、第1及び第2のドレイン電極42a、42bの下側に形成された第1及び第2のウェル層20a、20bは、相補型金属酸化半導体素子のドレインとして機能する。
【0073】
ゲート絶縁層30:30a、30bは、活性層10:10a、10bの上部に形成されてもよい。すなわち、第1のゲート絶縁層30aは、第1の活性層10aの上部に形成され、第2のゲート絶縁層30bは、第2の活性層10bの上部に形成されてもよい。より具体的に説明すれば、上下方向を基準として、第1のゲート絶縁層30aは、第1のゲート電極50aと第1の活性層10aとの間に位置するように形成されてもよく、第2のゲート絶縁層30bは、第2のゲート電極50bと第2の活性層10bとの間に位置するように形成されてもよい。また、幅方向を基準として、第1のゲート絶縁層30aは、第1のソース電極41aと第1のドレイン電極42aとの間に位置するように形成され、第2のゲート絶縁層30bは、第2のソース電極41bと第2のドレイン電極42bとの間に位置するように形成されてもよい。そして、第1のゲート絶縁層30aは、下部面の周縁が一対の第1のウェル層20aの上部に位置し、残りが第1の活性層10aの上部に位置するように形成され、第2のゲート絶縁層30bは、下部面の周縁が一対の第2のウェル層20bの上部に位置し、残りが第2の活性層10bの上部に位置するように形成され、このため、第1のゲート絶縁層30aの周縁と一対の第1のウェル層20aの周縁とが重なり合い、第2のゲート絶縁層30bの周縁と一対の第2のウェル層20bの周縁とが重なり合うように設けられてもよい。
【0074】
このような第1及び第2のゲート絶縁層30a、30bは、シリコンジオキシド(SiO)に比べて高い誘電定数を有する高誘電率(high-k)の薄膜から形成されてもよい。より具体的には、第1及び第2のゲート絶縁層30a、30bは、酸化アルミニウム(AlO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ケイ素ハフニウム(HfSiO)及び酸化ケイ素ランタン(LaSiO)のうちのいずれか1種又はこれらの2種以上の組み合わせから作製されてもよく、ここで、「x」は、1~3であってもよい。いうまでもなく、第1及び第2のゲート絶縁層30a、30bは、上述した例に何ら限定されるものではなく、シリコンジオキシド(SiO)に比べて誘電率がさらに高い他の多種多様な高誘電体材から形成してもよい。
【0075】
ソース電極41a、41b及びドレイン電極42a、42bは、それらの間にゲート絶縁層30a、30b及びゲート電極50a、50bが位置するように活性層10a、10b及びウェル層20a、20bの上に形成されてもよい。すなわち、第1のソース電極41a及び第1のドレイン電極42aは、それらの間に第1のゲート絶縁層30a及び第1のゲート電極50aが位置するように一対の第1のウェル層20aのそれぞれの上部に形成されてもよい。別の言い方をすれば、第1のゲート絶縁層30aを基準として、一方の側に第1のソース電極41aが形成され、他方の側に第1のドレイン電極42aが形成されてもよい。また、第2のソース電極41b及び第2のドレイン電極42bは、それらの間に第2のゲート絶縁層30b及び第2のゲート電極50bが位置するように一対の第2のウェル層20bのそれぞれの上部に形成されてもよい。すなわち、第2のゲート絶縁層30bを基準として、一方の側に第2のソース電極41bが形成され、他方の側に第2のドレイン電極42bが形成されてもよい。
【0076】
第1及び第2のソース電極41a、41bと第1及び第2のドレイン電極42a、42bは、金属を含む材料から形成され、例えば、Ti及びAuのうちの少なくともどちらか一方の材料から形成されてもよい。また、第1及び第2のソース電極41a、41bと第1及び第2のドレイン電極42a、42bは、例えば、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition:CVD法)、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法及び原子層蒸着(ALD)法、スパッターリング蒸着法などにより形成されてもよい。
【0077】
ゲート電極50a、50bは、ゲート絶縁層30a、30bの上部に形成されてもよい。別の言い方をすれば、第1のゲート電極50aは、第1のソース電極41aと第1のドレイン電極42aとの間に位置するように第1のゲート絶縁層30aの上部に形成され、第2のゲート電極50bは、第2のソース電極41bと第2のドレイン電極42bとの間に位置するように第2のゲート絶縁層30bの上部に形成されてもよい。このとき、第1及び第2のゲート電極50a、50bは、金属を含む材料から形成されてもよく、例えば、Ti及びAuのうちの少なくとも一方を含む材料から形成されてもよい。また、第1及び第2のゲート電極50a、50bは、スパッターリング蒸着法により形成されてもよい。
【0078】
図4は、活性層と基板との間にバッファー層が形成された変形例を示す概念図である。図5は、実施形態の変形例に係る相補型金属酸化半導体素子の一例を示す図である。
【0079】
図4及び図5を参照すると、基板Sと第1及び第2の活性層10a、10bとの間にバッファー層60が形成されてもよい。そして、図5に示されているように、変形例に係る相補型金属酸化半導体素子は、基板Sと第1及び第2の活性層10a、10bとの間に形成されたバッファー層60を備えていてもよい。すなわち、変形例に係る相補型金属酸化半導体素子は、実施形態と比較して、第1及び第2の活性層10a、10bと基板Sとの間に形成されたバッファー層60を備えることに相違点があり、他の構成は同一であり得る。
【0080】
バッファー層60は、第1及び第2の活性層10a、10bを形成する前に、基板Sの上に先に形成される層であって、原子層蒸着法により形成される第1及び第2の活性層10a、10bがさらに有効に結晶化できるように補助するシード層(seed layer)であってもよい。別の言い方をすれば、バッファー層60は、原子層蒸着法により第1及び第2の活性層10a、10bを形成するとき、水素プラズマによる結晶化の他に、第1及び第2の活性層10a、10bの結晶化をさらに補助するシード層であってもよい。このようなバッファー層60は、AlNから形成されてもよく、原子層蒸着法、化学気相蒸着方法などにより形成されてもよい。
【0081】
結晶質であるバッファー層60の上に原子層蒸着法により第1及び第2の活性層10a、10bを蒸着すれば、前記下地層であるバッファー層60の結晶方向に第1及び第2の活性層10a、10bが成長することができる。このため、結晶質、より具体的には、多結晶質の活性層10a、10bをさらに容易に形成することができる。
【0082】
図6は、本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置を概略的に示す図である。
【0083】
蒸着装置は、原子層蒸着(ALD)法により薄膜を蒸着する装置であってもよい。このとき、蒸着装置は、パワー半導体素子、例えば、相補型金属酸化半導体素子の構成要素のうちの少なくとも第1及び第2の活性層10a、10bを形成するための装置であってもよい。また、蒸着装置は、第1及び第2の活性層10a、10bと第1及び第2のウェル層20a、20bを形成するための装置であってもよい。
【0084】
このような蒸着装置は、図6に示されているように、チャンバー100と、チャンバー100内に配設されて基板Sを支持するための支持台200と、支持台200と向かい合うように配置されてチャンバー100の内部に工程のためのガス(以下、工程ガスと称する。)を噴射する噴射部300と、噴射部300に工程ガスを提供するガス供給部400と、互いに異なる経路を有するように噴射部300に接続され、ガス供給部400から提供されたガスを噴射部300に供給する第1及び第2のガス供給管500a、500bと、チャンバー100内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源部600と、を備えていてもよい。
【0085】
また、蒸着装置は、支持台200に昇降動作及び回転動作のうちの少なくとも一方の動作を行わせる駆動部700と、チャンバー100に接続されるように配設された排気部(図示せず)と、をさらに備えていてもよい。
【0086】
チャンバー100は、内部に搬入された基板Sの上に薄膜が形成可能な内部空間を備えていてもよい。例えば、その断面の形状が四角形、五角形、六角形などの形状であってもよい。いうまでもなく、チャンバー100の内部の形状は種々に変形可能であり、基板Sの形状と対応するように設けられることが好ましい。
【0087】
支持台200は、噴射部300と向かい合うようにチャンバー100の内部に配設されて、チャンバー100の内部に装入された基板Sを支持する。このような支持台200の内部には、ヒーター210が設けられてもよい。このため、ヒーター210を動作させると、支持台200の上に載置された基板S及びチャンバー100の内部が加熱されることが可能になる。
【0088】
また、基板S又はチャンバー100の内部を加熱するための手段として、支持台200に設けられたヒーター210の他に、チャンバー100の内部又はチャンバー100の外部に別途のヒーターが設けられてもよい。
【0089】
噴射部300は、支持台200の延在方向に互いに離れるように並置された複数本の孔(以下、孔311と称する。)を有し、チャンバー100の内部において支持台200と向かい合うように配置された第1のプレート310と、少なくとも一部が複数本の孔311のそれぞれに嵌入されるように設けられた複数本のノズル320と、チャンバー100の内部において前記チャンバー100内の上壁と第1のプレート310との間に位置するように配設された第2のプレート330と、を備えていてもよい。
【0090】
また、噴射部300は、第1のプレート310と第2のプレート330との間に位置している絶縁部340をさらに備えていてもよい。
【0091】
ここで、第1のプレート310は、RF電源部600と接続され、第2のプレート330は接地されてもよい。そして、絶縁部340は、第1のプレート310と第2のプレート330との電気的な接続を防ぐ役割を果たすことができる。
【0092】
第1のプレート310は、支持台200の延在方向に延設された板状のものであってもよい。そして、第1のプレート310には、複数本の孔311が設けられるが、複数本の孔311のそれぞれは、第1のプレート310を上下方向に貫通するように設けられてもよい。そして、複数本の孔311は、第1のプレート310又は支持台200の延在方向に並べられてもよい。
【0093】
複数本のノズル320のそれぞれは、上下方向に延びた形状のものであってもよく、その内部には、ガスの通過可能な通路が設けられており、上端及び下端が開口された形状のものであってもよい。そして、複数本のノズル320のそれぞれは、少なくともその下部が第1のプレート310に設けられた孔311に嵌入され、上部は第2のプレート330とつながるように配設されてもよい。このため、ノズル320は、第2のプレート330から下部へと突出した形状であると説明可能である。
【0094】
ノズル320の外径は、孔311の内径に比べて小さくなるように設けられてもよい。そして、ノズル320が孔311の内部に嵌設されるに際して、ノズル320の外周面が孔311の周壁(すなわち、第1のプレート310の内側壁)から離れるように配設されてもよい。このため、孔311の内部は、ノズル320の外側空間と、ノズル320の内側空間と、に仕切られ得る。
【0095】
孔311の内部空間において、ノズル320内の通路は、第1のガス供給管500aから提供されたガスが移動、噴射される通路である。そして、孔311の内部空間におけるノズル320の外側空間は、第2のガス供給管500bから提供されたガスが移動、噴射される通路である。したがって、以下では、ノズル320内の通路を第1の経路360aと称し、孔311の内部におけるノズル320の外側空間を第2の経路360bと称する。
【0096】
第2のプレート330は、その上部面がチャンバー100内の上壁から離れ、下部面が第1のプレート310から離れるように配設されてもよい。このため、第2のプレート330と第1のプレート310との間、及び第2のプレート330とチャンバー100の上壁との間のそれぞれに空いた空間(空きスペース)が設けられることが可能になる。
【0097】
ここで、第2のプレート330の上側空間は、第1のガス供給管500aから提供されたガスが拡散・移動する空間(以下、拡散空間350と称する。)であって、複数本のノズル320の上側の開口と連通してもよい。別の言い方をすれば、拡散空間350は、複数の第1の経路360aと連通している空間である。このため、第1のガス供給管500aを通過したガスは、拡散空間350において第2のプレート330の延在方向に拡散した後、複数の第1の経路360aを通過して下側に噴射されることができる。
【0098】
また、第2のプレート330の内部には、ガスが移動する通路である深穴(図示せず)が設けられており、前記深穴は、第2のガス供給管500bと接続され、第2の経路360bと連通するように設けられてもよい。したがって、第2のガス供給管500bから提供されたガスは、第2のプレート330の深穴、第2の経路360bを経て基板Sに向かって噴射されることが可能になる。
【0099】
ガス供給部400は、原子層蒸着法により薄膜を蒸着するのに必要となるガスを提供する。このようなガス供給部400は、ソースガスが貯留されたソースガス貯留部410と、ソースガスと反応するリアクタントガスが貯留されたリアクタントガス貯留部420と、パージガスが貯留されたパージガス貯留部430と、ソースガス貯留部410と第1のガス供給管500aとをつなぐように配設された第1の搬送管470aと、リアクタントガス貯留部420及びパージガス貯留部430と第2のガス供給管500bとをつなぐように配設された第2の搬送管470bと、を備えていてもよい。
【0100】
ここで、パージガス貯留部430に貯留されたパージガスは、例えば、Nガス又はArガスであってもよい。
【0101】
また、ガス供給部400は、リアクタントガスの噴射の後、又は2次パージの後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせるステップにおいて供給されるガス(以下、プラズマ発生用のガスと称する。)が貯留されたプラズマ発生用のガス貯留部440を備えていてもよい。このとき、プラズマ発生用のガスは、例えば、水素ガスであってもよい。
【0102】
そして、ガス供給部400は、ドープガスが貯留されたドープガス貯留部450と、複数種のガスを混合するように第1の搬送管470aに配設された混合部460と、を備えていてもよい。
【0103】
また、ガス供給部400は、ソースガス貯留部410及びドープガス貯留部450のそれぞれと第1の搬送管470aとをつなぐ複数本の第1の接続管480aと、複数本の第1の接続管480aのそれぞれに配設された弁、リアクタントガス貯留部420、パージガス貯留部430、プラズマ発生用のガス貯留部440のそれぞれと第2の搬送管470bとをつなぐ複数本の第2の接続管480bと、複数本の第2の接続管480bのそれぞれに配設された弁と、を備えていてもよい。
【0104】
ソースガス貯留部410は、複数で設けられてもよく、複数のソースガス貯留部410:410a、410b、410cには互いに異なる種類のソースガスが貯留されてもよい。そして、複数のソースガス貯留部410a、410b、410cのそれぞれに第1の接続管480aが接続されてもよく、前記複数のソースガス貯留部410a、410b、410cのそれぞれに接続された第1の接続管480aが第1の搬送管470aと接続されてもよい。
【0105】
ドープガス貯留部450は、複数で設けられてもよく、複数のドープガス貯留部450:450a、450bには互いに異なる種類のドープガスが貯留されてもよい。そして、複数のドープガス貯留部450a、450bのそれぞれに第1の接続管480aが接続されてもよく、前記複数のソースガス貯留部450a、450bのそれぞれに接続された第1の接続管480aが第1の搬送管470aと接続されてもよい。
【0106】
混合部460は、複数のソースガス貯留部410a、410b、410cから提供されたガスを混合したり、複数のソースガス貯留部410a、410b、410cのうちの少なくともいずれか一つから提供されたガスと複数のドープガス貯留部450a、450bのうちのどちらか一方から提供されたガスとを混合する手段であってもよい。このような混合部460は、ガスが混合可能な内部空間を有するように設けられてもよい。また、混合部460は、複数のソースガス貯留部410a、410b、410c及び複数のドープガス貯留部450a、450bのそれぞれに接続された第1の接続管480aと第1の搬送管470aとをつなぐように配設されてもよい。このため、混合部460の内部に流れ込んだ複数種のガスが前記混合部460の内部において混合された後、第1の搬送管470aを介して第1のガス供給管500aに搬送されることが可能になる。
【0107】
図7は、本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法に用いられる蒸着装置の他の例を概略的に示す図である。実施形態に係るパワー半導体素子の第1及び第2の活性層10a、10b、第1及び第2のウェル層20a、20bのうちの少なくとも一つを形成するための蒸着装置は、図6に示す装置に何ら限定されるものではなく、図7に示す蒸着装置を用いてもよい。
【0108】
図7を参照すると、蒸着装置は、チャンバー100と、チャンバー100内に配設されて基板Sを支持するための支持台200と、それぞれが支持台200と向かい合うようにチャンバー100の内部に配設された第1及び第2のガス噴射部300a、300bと、第1及び第2のガス噴射部300a、300bに工程ガスを提供するガス供給部400と、プラズマの発生のためにチャンバー100内に電場を誘導するためのコイルを備えるアンテナ610、及びアンテナ610と接続された電源部620を備えていてもよい。
【0109】
また、蒸着装置は、支持台200と対向するように配設された加熱部500と、支持台200を昇降させたり回転させたりする駆動部700と、チャンバー100の内部のガス及び不純物を排気する排気部800と、を備えていてもよい。
【0110】
チャンバー100は、内部に搬入された基板Sの上に薄膜が形成可能な内部空間を有する筒状、例えば、図7に示されているように、ドーム状のものであってもよい。より具体的には、チャンバー100は、チャンバー胴体110と、チャンバー胴体110の上部に配設された上胴体120、及びチャンバー胴体110の下部に配設された下胴体130を備えていてもよい。チャンバー胴体110は、上部及び下部が開放された筒状のものであってもよく、チャンバー胴体110の上部の開口を覆うように上胴体120が配設され、チャンバー胴体110の下部の開口を覆うように下胴体130が配設されてもよい。そして、上胴体120は、その幅方向の中心に向かって進むにつれて高さが次第に増加する斜面を有するドーム(dome)状のものであってもよい。また、下胴体130は、その幅方向の中心に向かって進むにつれて高さが減少する斜面を有するドーム(dome)状のものであってもよい。このようなチャンバー100、すなわち、チャンバー胴体110と、上胴体120及び下胴体130のそれぞれは、透光可能な透明な材質から作製されてもよく、例えば、石英(quartz)製のものであってもよい。
【0111】
ガス供給部400は、図6において説明した構成と同様に設けられてもよい。すなわち、ガス供給部400は、ソースガスが貯留されたソースガス貯留部410と、ソースガスと反応するリアクタントガスが貯留されたリアクタントガス貯留部420と、パージガスが貯留されたパージガス貯留部430と、ソースガス貯留部410と第1のガス噴射部300aとをつなぐように配設された第1の搬送管470aと、リアクタントガス貯留部420及びパージガス貯留部430と第2のガス噴射部300bとをつなぐように配設された第2の搬送管470bと、を備えていてもよい。
【0112】
また、ガス供給部400は、リアクタントガスの噴射の後に、又は2次パージの後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせるステップにおいて供給されるガス(以下、プラズマ発生用のガスと称する。)が貯留されたプラズマ発生用のガス貯留部440を備えていてもよい。このとき、プラズマ発生用のガスは、例えば、水素ガスであってもよい。
【0113】
そして、ガス供給部400は、ドープガスが貯留されたドープガス貯留部450と、複数種のガスを混合するように第1の搬送管470aに配設された混合部460と、を備えていてもよい。
【0114】
また、ガス供給部400は、ソースガス貯留部410及びドープガス貯留部450のそれぞれと第1の搬送管470aとをつなぐ複数本の第1の接続管480aと、複数本の第1の接続管480aのそれぞれに配設された弁、リアクタントガス貯留部420、パージガス貯留部430、プラズマ発生用のガス貯留部440のそれぞれと第2の搬送管470bとをつなぐ複数本の第2の接続管480bと、複数本の第2の接続管480bのそれぞれに配設された弁と、を備えていてもよい。
【0115】
アンテナ610は、チャンバー100の上胴体120の上部に配設されてもよい。このとき、アンテナ610は、複数のターン(turn)数で巻き付けられた螺旋状に設けられてもよいし、あるいは、同心円状に配置されて互いにつながっている多数の円形コイルを備える構成であってもよい。いうまでもなく、アンテナ610は、螺旋状のコイル又は同心円状の円形コイルに何ら限定されるものではなく、他の形状を有する多種多様な形状のアンテナが採用可能である。
【0116】
アンテナ610の両方の終端のうちの一方の端には、電源部620が接続され、他方の端は接地端子と接続されてもよい。したがって、電源部620を介してアンテナ610に電源、例えば、RF電源が供給されれば、チャンバー100の内部に噴射されたガスがイオン化又は放電されてチャンバー100の内部にプラズマを生じさせることになる。
【0117】
加熱部500は、チャンバー100の内部及び支持台200を加熱する手段であって、チャンバー100の外部に配設されてもよい。より具体的には、加熱部500は、チャンバー100の外部の下側において少なくとも一部が支持台200と向かい合うように配設されてもよい。このような加熱部500は、複数のランプを備える手段であってもよく、複数のランプは、支持台200の幅方向に並設されてもよい。そして、複数のランプは、輻射熱を放出するハロゲンなどのランプを備えていてもよい。
【0118】
以下、図2及び図3を参照して、本発明の実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法について説明する。このとき、図6の蒸着装置を用いて説明し、相補型金属酸化半導体素子を例にとって説明する。
【0119】
まず、支持台200に設けられたヒーター210を動作させて支持台200を加熱する。このとき、支持台200又は前記支持台200に載置されるべき基板Sの温度が工程温度、例えば、500℃~520℃となるようにヒーターを動作させる。
【0120】
次いで、基板S、例えば、SiCからなる基板Sをチャンバー100の内部に装入して支持台200の上に載置する。このとき、基板Sは、一枚以上の複数枚の基板を支持台200に設けてもよい。この後、支持台200の上に載置された基板Sが目標の工程温度、例えば、500℃~520℃となると、基板Sの上に第1及び第2の活性層10a、10bを形成する。
【0121】
このとき、原子層蒸着法を用いて第1及び第2の活性層10a、10bを形成する。原子層の蒸着は、ソースガスの噴射、ドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)の順に行われるが、このとき、2次パージの後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせる。すなわち、原子層蒸着法により第1及び第2の活性層10a、10bを形成する工程サイクルは、「ソースガスの噴射-ドープガスの噴射-パージガスの噴射(1次パージ)-リアクタントガスの噴射-パージガスの噴射(2次パージ)-プラズマ発生」であってもよい。そして、上述した工程サイクルを複数回繰り返し行って、目標の層厚の第1及び第2の活性層10a、10bを形成する。
【0122】
以下、噴射部300及びガス供給部400を用いて、チャンバー100の内部に工程ガスを噴射して第1及び第2の活性層10a、10bを形成する方法についてより具体的に説明する。このとき、AlGaInPからなるpタイプの第1の活性層10aとAlGaInPからなるnタイプの第2の活性層10bを形成する場合を例にとって説明する。
【0123】
また、第1の活性層10aと第2の活性層10bのうちのどちらか一方、例えば、第1の活性層10aを先に形成した後、第2の活性層10bを形成することについて説明する。
【0124】
第1の活性層10aの形成のために、支持台200に載置された基板Sの上側に前記基板Sの第1の領域Aを晒し、第2の領域Aを遮蔽するマスクを配置する。ここで、マスクは、基板Sの第1の領域Aと対応する領域に開口が設けられたシャドウマスクであってもよい。
【0125】
基板Sの上側にマスクが配置されれば、チャンバー100の内部にソースガスを噴射する。このために、第1のソースガス貯留部410に貯留されているAl含有ガス、第2のソースガス貯留部410に貯留されているGa含有ガス、第3のソースガス貯留部410に貯留されているIn含有ガスのそれぞれを混合部460に供給する。このため、混合部460の内部において3種のソースガス、すなわち、Al含有ガス、Ga含有ガス、In含有ガスが混合される。
【0126】
混合されたソースガスは、第1の搬送管470a及び第1のガス供給管500aを経て噴射部300内に拡散空間350に流れ込む。そして、混合されたソースガスは、拡散空間350内において拡散した後、複数本のノズル320、すなわち、複数の第1の経路360aを通過して基板Sに向かって噴射される。そして、噴射されたソースガスは、マスクの開口を通過した後、基板Sの上部面の第1の領域Aの上に吸着される。
【0127】
ソースガスの噴射が中断又は終了すれば、第1のドープガス貯留部450aを介して第1のドープガスを提供して、チャンバー100の内部に第1のドープガスを噴射する。このとき、第1のドープガスは、Mg含有ガスであってもよく、より具体的には、CpMgを含有するガスが使用可能である。第1のドープガス貯留部450aから排出された第1のドープガスは、第1の接続管480aと、第1の搬送管470a及び第1のガス供給管500aを経た後、第1の経路360aを介して下側に噴射されてもよい。噴射された第1のドープガスは、マスクの開口を通過した後、基板Sの上部面の第1の領域Aの上に吸着されてもよい。
【0128】
第1のドープガスの噴射が中断又は終了すれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを提供して、チャンバー100の内部にパージガスを噴射する(1次パージ)。このとき、パージガス貯留部430から排出されたパージガスは、第2の接続管480bと、第2の搬送管470b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。
【0129】
次いで、リアクタントガス貯留部420からリアクタントガス、例えば、P含有ガスを提供されてチャンバー100の内部に噴射する。このとき、リアクタントガスは、パージガスと同一の経路を介してチャンバー100の内部に噴射されてもよい。すなわち、リアクタントガスは、第2の接続管480bと、第2の搬送管470b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。噴射されたリアクタントガスは、マスクの開口を通過して基板Sの第1の領域Aへと向かう。そして、第1の領域Aに辿り着いたリアクタントガスは、第1の領域Aの上に吸着されているソースガスと反応し、このため、反応物、すなわち、AlGaInPが生成可能である。そして、この反応物が基板Sの上に堆積又は蒸着され、このため、基板Sの上にAlGaInPからなる薄膜が形成される。このとき、第1のドープガスによりMgがドープされたAlGaInP薄膜、すなわち、pタイプのAlGaInP薄膜が形成される。
【0130】
このように、チャンバー100の内部にリアクタントガスが噴射されるとき、RF電源部600を動作させて第1のプレート310にRF電源を供給してもよい。第1のプレート310にRF電源が供給されれば、噴射部300内の第2の経路360b及び第1のプレート310と支持台200との間の空間にプラズマが生成可能である。
【0131】
リアクタントガスの噴射が中断されれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを提供して、チャンバー100の内部にパージガスを噴射する(2次パージ)。このとき、2次パージによりソースガスとリアクタントガスとの反応による副産物などがチャンバー100の外部に排出可能である。
【0132】
2次パージが終了すれば、プラズマ発生用のガス貯留部440からガス、例えば、水素ガスを提供し、RF電源を動作させて第1のプレート310にRF電源を供給する。このため、チャンバー100の内部に水素ガスを用いたプラズマ、すなわち、水素プラズマが生成される。
【0133】
上述したような「ソースガスの噴射、第1のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルにより基板Sの第1の領域Aの上に第1の活性層10aが形成される。このとき、第1の活性層10aは、MgがドープされたAlGaInP薄膜、すなわち、pタイプのAlGaInP薄膜からなり得る。
【0134】
そして、「ソースガスの噴射、第1のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルは、複数回繰り返し行われてもよい。そして、第1の活性層10aの目標の層厚に応じて、工程サイクルを行うべき回数を決定してもよい。
【0135】
このように、リアクタントガスの噴射の後に、又は2次パージの後にチャンバー100の内部にプラズマを生じさせることにより、600℃以下の低温下でも基板Sの上に第1の活性層10aを形成することができる。また、結晶質、より具体的には、多結晶質の第1の活性層10aを形成することができる。
【0136】
目標の層厚の第1の活性層10aが形成されれば、次いで、第2の活性層10bを形成する。このために、第1の活性層10aが形成された基板Sの上側に前記基板Sの第2の領域Aを晒し、第1の領域Aを遮蔽するマスクを配置する。ここで、マスクは、基板Sの第2の領域Aと対応する領域に開口が設けられたシャドウマスクであってもよい。
【0137】
基板Sの上側にマスクが配置されれば、第1の活性層10aの形成時と同様の方法により薄膜を蒸着して第2の活性層10bを形成する。但し、第1の活性層10aの形成時とは異なるドープガスを用いて薄膜を蒸着する。別の言い方をすれば、Mgを含む第1のドープガスとは異なる元素を含む第2のドープガスを用いて薄膜を蒸着する。このとき、「ソースガスの噴射、第2のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルは、複数回繰り返し行って第2の活性層10bを形成する。ここで、ソースガス、パージガス、リアクタントガスは、第1の活性層10aの形成時と同種のものであってもよい。そして、第2のドープガスは、第2のドープガス貯留部450bから提供され、Siを含有するガス、例えば、ポリシラン(HSi-(SiH-SiH)を含有するガスが使用可能である。
【0138】
このように、「ソースガスの噴射、第2のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルにより、基板Sの第2の領域Aの上に第2の活性層10bが形成される。このとき、第2の活性層10bは、SiがドープされたAlGaInP薄膜、すなわち、nタイプのAlGaInP薄膜からなり得る。
【0139】
また、第2のドープガスは、Si、In、Al、Znのうちの1種又は1種以上のガスを混合したものであってもよい。
【0140】
そして、第2のドープガスの噴射ステップを含む上述した工程サイクルは、複数回繰り返し行われてもよい。このとき、第2の活性層10bの目標の層厚に応じて、工程サイクルを行うべき回数を決定してもよい。
【0141】
目標の層厚の第1及び第2の活性層10a、10bが形成されれば、第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれの一部をエッチングする。例えば、第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれの幅方向の中心領域の外側の領域において、所定の層厚の第1及び第2の活性層10a、10bをエッチングする。このために、例えば、第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれの中心領域を閉鎖し、前記中心領域の外側の領域の一部を開放するマスクを設け、前記マスクを第1及び第2の活性層10a、10bの上側に配置する。そして、第1及び第2の活性層10a、10bの上側からエッチング用のガスを噴射して、開放領域に晒された第1及び第2の活性層10a、10bの一部をエッチングする。このとき、マスクの開放領域と向かい合う第1及び第2の活性層10a、10bが目標の層厚で残留できるようにエッチングを行う。このとき、エッチングガスは、SF、Cl、CF又はO少なくともいずれか1種又は2種のガスの組み合わせ及びプラズマを印加してエッチングに用いてもよい。
【0142】
このようなエッチングにより、第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれに上部面からその反対側へと陥凹した凹部又は井戸(well)を設けることが可能である。すなわち、第1の活性層10aに幅方向に隔設された一対の第1の凹部が設けられ、第2の活性層10bに幅方向に隔設された一対の第2の凹部が設けられてもよい。このとき、第1の活性層10aに設けられる一対の第1の凹部は、引き続いて形成される第1のソース電極41a及び第1のドレイン電極42aと向かい合う位置に設けられ、第2の活性層10bに設けられる一対の第2の凹部は、引き続いて形成される第2のソース電極41b及び第2のドレイン電極42bと向かい合う位置に設けられてもよい。したがって、第1及び第2の活性層10a、10bのそれぞれは、基板Sの上部面に形成された第1の層11及び第1の層11の上部において凹部の外側に形成された第2の層12を備える形状となり得る。すなわち、第1及び第2の活性層10a、10bは、第2の層12が形成された領域の高さが、第1の層11のみが形成された部分に比べてさらに高い形状、すなわち、段付きの形状となり得る。
【0143】
上述したように、活性層10a、10bの一部をエッチングする工程は、図6に示す蒸着装置とは別途の装置において行われてもよい。そして、エッチングが行われる装置は、蒸着装置とイン・サイチュにて接続された装置であってもよい。
【0144】
エッチングが終了すれば、第1の活性層10aの第1の層11の上に第1のウェル層20aを形成し、第2の活性層10bの第1の層11の上に第2のウェル層20bを形成する。別の言い方をすれば、エッチングにより第1の活性層10aに設けられた一対の第1の凹部の内部に第1のウェル層20aを形成し、エッチングにより第2の活性層10bに設けられた一対の第2の凹部の内部に第2のウェル層20bを形成する。第1及び第2のウェル層20a、20bは、例えば、原子層蒸着法により形成してもよく、活性層10a、10bの形成時と同一の蒸着装置を用いて形成してもよい。
【0145】
以下、第1及び第2のウェル層20a、20bを形成する方法について説明し、図6に示す蒸着装置を用いて形成する方法について説明する。このとき、nタイプのAlGaInP層から第1のウェル層20aを形成し、pタイプのAlGaInP層から第2のウェル層20bを形成する場合を例にとって説明する。
【0146】
まず、第1のウェル層20aを形成する方法について説明する。第1の活性層10aに設けられた一対の第1の凹部と向かい合う領域に開口が設けられ、残りが閉鎖されたマスクを基板Sの上側に配置する。
【0147】
次いで、チャンバー100の内部にソースガスを噴射する。このために、第1のソースガス貯留部410に貯留されているAl含有ガス、第2のソースガス貯留部410に貯留されているGa含有ガス、第3のソースガス貯留部410に貯留されているIn含有ガス、ドープガス貯留部450に貯留されているSi含有ガスのそれぞれを混合部460に供給する。このため、混合部460の内部においてAl含有ガス、Ga含有ガス、In含有ガス、Si含有ガスが混合される。混合されたガスは、第1の搬送管470aと、第1のガス供給管500a及び噴射部300の第1の経路360aを通過して基板Sに向かって噴射される。噴射されたガスは、マスクの開口を通過して第1の活性層10aに設けられた一対の第1の凹部に辿り着いた後、前記第1の凹部に吸着される。
【0148】
ソースガスの噴射が中断又は終了すれば、第2のドープガス貯留部450bを介して第2のドープガスを提供して、チャンバー100の内部に第2のドープガスを噴射する。このとき、第2のドープガスは、Si含有ガスであってもよく、より具体的には、ポリシラン(HSi-(SiH-SiH)を含有するガスが使用可能である。第2のドープガス貯留部450bから排出された第2のドープガスは、第1の接続管480aと、第1の搬送管470a及び第1のガス供給管500aを経た後、第1の経路360aを介して下側に噴射されてもよい。噴射された第2のドープガスは、マスクの開口を通過した後、第1の活性層10aに設けられた一対の第1の凹部に辿り着くことができる。
【0149】
この後、パージガス貯留部430からパージガスを提供して、噴射部300の第2の経路360bを介してチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(1次パージ)。
【0150】
次いで、リアクタントガス貯留部420からリアクタントガス、例えば、P含有ガスを提供して、噴射部300の第2の経路360bを介してチャンバー100の内部に噴射する。そして、このとき、第1のプレート310にRF電源を供給してプラズマを生じさせてもよい。
【0151】
リアクタントガスが噴射されれば、第1の凹部に吸着されているソースガスとリアクタントガスとの反応が起こって、反応物、すなわち、AlGaInPが生成可能である。このとき、ソースガスの噴射後に第2のドープガスが噴射されたため、反応物は、SiがドープされたAlGaInP薄膜となる。したがって、第1の活性層10aの第1の凹部にnタイプのAlGaInP薄膜からなる第1のウェル層20aが形成可能である。別の言い方をすれば、エッチングにより第1の活性層10aに設けられた一対の井戸(well)領域にnタイプのAlGaInP薄膜からなる第1のウェル層20aが形成可能である。さらに別の言い方をすれば、第1の活性層10aの第1の層11の上にnタイプのAlGaInP薄膜からなる第1のウェル層20aが形成可能である。
【0152】
また、第2のドープガスは、Si、In、Al、Znのうちの1種又は1種以上のガスを混合したものであってもよい。
【0153】
リアクタントガスの噴射が終了すれば、パージガス貯留部430からパージガスを提供して、チャンバー100の内部にパージガスを噴射する(2次パージ)。
【0154】
2次パージが終了すれば、チャンバー100の内部にプラズマを生じさせるステップが追加されてもよい。すなわち、プラズマ発生用のガス貯留部440からガス、例えば、水素ガスを提供して、チャンバー100の内部に水素ガスを噴射し、第1のプレート310にRF電源を供給する。このため、チャンバー100の内部に水素ガスを用いたプラズマ、すなわち、水素プラズマが生成される。
【0155】
この後、「ソースガスの噴射、第2のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルを複数回行って、目標の層厚の第1のウェル層20aを形成する。
【0156】
目標の層厚の第1のウェル層20aが形成されれば、次いで、第2のウェル層20bを形成する。このために、第2の活性層10bに設けられた一対の第2の凹部と向かい合う領域に開口が設けられ、残りが閉鎖されたマスクを基板Sの上側に配置する。
【0157】
基板Sの上側にマスクが配置されれば、第1のウェル層20aの形成時と同様の方法により第2の凹部に薄膜を蒸着して第2のウェル層20bを形成する。但し、第1のウェル層20aの形成時とは異なるドープガスを用いて薄膜を蒸着する。すなわち、Siを含む第2のドープガスとは異なる元素を含む第1のドープガスを用いて薄膜を蒸着する。このとき、「ソースガスの噴射、第1のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルは、複数回繰り返し行って第2のウェル層20bを形成する。
【0158】
ここで、ソースガス、パージガス、リアクタントガスは、第1のウェル層20aの形成時と同種のものであってもよい。そして、第1のドープガスは、第1のドープガス貯留部450aから提供され、Mgを含有するガス、例えば、CpMgを含有するガスが使用可能である。
【0159】
このような「ソースガスの噴射、第1のドープガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)、プラズマ発生」の順に行われる工程サイクルにより、第2の活性層10bに設けられた一対の第2の凹部に第2のウェル層20bが形成される。このとき、第2のウェル層20bは、MgがドープされたAlGaInP薄膜、すなわち、pタイプのAlGaInP薄膜からなり得る。
【0160】
そして、第1のドープガス噴射ステップを含む上述した工程サイクルは、複数回繰り返し行われてもよく、第2のウェル層20bの目標の層厚に応じて、工程サイクルを行うべき回数を決定してもよい。
【0161】
上記においては、第1及び第2のウェル層20a、20bを形成するに際して、2次パージの後にプラズマを生じさせることについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、2次パージの後にプラズマを生じさせるステップが省略されてもよい。
【0162】
目標の層厚の第1及び第2のウェル層20a、20bが形成されれば、第1及び第2の活性層10a、10bと、第1及び第2のウェル層20bの上部に位置するようにゲート絶縁層30a、30bと、を形成する。すなわち、第1の活性層10a及び第1のウェル層20aの上部に第1のゲート絶縁層30aを形成し、第2の活性層10b及び第2のウェル層20bの上部に第2のゲート絶縁層30bを形成する。このとき、第1のゲート絶縁層30aは、下部面の周縁が一対の第1のウェル層20aの上部に位置し、残りが一対の第1のウェル層20aの間の第1の活性層10aの上部に位置するように形成する。また、第2のゲート絶縁層30bは、下部面の周縁が一対の第2のウェル層20bの上部に位置し、残りが一対の第2のウェル層20bの間の第2の活性層10bの上部に位置するように形成する。このとき、第1及び第2のゲート絶縁層30a、30bは、例えば、Alから形成されてもよく、化学気相蒸着法、有機金属化学気相蒸着法及び原子層蒸着法のうちのいずれか一つの方法により形成してもよい。
【0163】
次いで、第1及び第2のソース電極41a、41bと第1及び第2のドレイン電極42a、42bを形成する。すなわち、一対の第1のウェル層20aのどちらか一方の上部に第1のソース電極41aを、残りの他方の第1のウェル層20aの上部に第1のドレイン電極42aを形成する。また、一対の第2のウェル層20bのどちらか一方の上部に第2のソース電極41bを、残りの他方の第2のウェル層20bの上部に第2のドレイン電極42bを形成する。
【0164】
そして、第1及び第2のゲート絶縁層30a、30bのそれぞれの上部にゲート電極50a、50bを形成する。このとき、ゲート電極50a、50bは、ソース及びドレイン電極41a、41b、42a、42bと同一の材料及び同様の方法により作製されてもよい。例えば、ゲート電極50a、50bは、Ti及びAuの少なくとも一方の材料から形成されてもよく、スパッターリング蒸着法により形成されてもよい。
【0165】
このように、実施形態に係るパワー半導体素子の製造方法によれば、低温下で活性層10:10a、10bを形成することができる。したがって、基板S又はその上部に形成された薄膜が高温の熱により損傷されることを防ぐことができる。また、活性層10の形成のために基板Sを昇温させる電力又は時間を節約することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【0166】
また、活性層10を結晶化させて形成することができる。すなわち、低温下で活性層10を形成しながらも、結晶化した活性層を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の実施形態によれば、低温下で活性層を形成することができる。したがって、基板又はその上部に形成された薄膜が高温の熱により損傷されることを防ぐことができる。また、活性層形成のために基板を昇温させる電力又は時間を節約することができ、全体の工程時間を短縮させることができる。
【0168】
また、活性層を結晶化させて形成することができる。すなわち、低温下で活性層を形成しながらも、結晶化した活性層を形成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】