(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】NKP46、サイトカイン受容体、腫瘍抗原およびCD16Aに結合する多特異性タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240524BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240524BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/24 ZNA
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12Q1/02
A61P43/00 107
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
A61K39/395 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575730
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022065493
(87)【国際公開番号】W WO2022258662
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ゴーティエ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】モレル,ヤニ
(72)【発明者】
【氏名】デマリア,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ79
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR80
4B063QS28
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA34
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
NKp46に結合し、エフェクター細胞を、複数の受容体を介して対象とする標的細胞を溶解するように特異的に再方向付けする多特異性タンパク質が提供される。タンパク質は、疾患、特にがんまたは感染性疾患の処置において有用性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする抗原に結合する抗原結合性ドメイン(ABD);ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABD;FcRnに結合する能力を有し、適宜、CD16Aに結合する能力をさらに有するFcドメイン二量体;およびNK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDを含む、多特異性タンパク質であって;ポリペプチド鎖1、2および3:
【化1】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は第2のABDを形成し、前記第1のABDは前記対象とする抗原に結合し、かつ前記第2のABDはNKp46に結合し;
CH1は重鎖定常ドメイン1であり、かつCLは軽鎖定常ドメインであり;
(CH1またはCL)
aおよび(CH1またはCL)
bのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
L1、L2およびL3は各々アミノ酸ドメインリンカーであり、L1、L2およびL3は異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDであり、適宜、Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドである]
を含む、前記タンパク質。
【請求項2】
対象とする抗原に結合する抗原結合性ドメイン(ABD);ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABD;FcRnに結合する能力を有し、適宜、CD16Aに結合する能力をさらに有するFcドメイン二量体;およびNK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDを含む、多特異性タンパク質であって;ポリペプチド鎖1、2および3:
【化2】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は第2のABDを形成し、前記第1のABDはNKp46に結合し、かつ前記第2のABDは前記対象とする抗原に結合し;
CH1は重鎖定常ドメイン1であり、かつCLは軽鎖定常ドメインであり;
(CH1またはCL)
aおよび(CH1またはCL)
bのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
L1、L2およびL3は各々アミノ酸ドメインリンカーであり、L1、L2およびL3は異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDであり、適宜、Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドである]
を含む、前記タンパク質。
【請求項3】
対象とする抗原に結合する抗原結合性ドメイン(ABD);ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABD;FcRnに結合する能力を有し、適宜、CD16Aに結合する能力をさらに有するFcドメイン二量体;およびNK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDを含む、多特異性タンパク質であって、ポリペプチド鎖1、2、3および4:
【化3】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は第2のABDを形成し、前記第1のABDは前記対象とする抗原に結合し、かつ前記第2のABDはNKp46に結合し;
CH1は重鎖定常ドメイン1であり、かつCLは軽鎖定常ドメインであり;
(CH1またはCL)
aおよび(CH1またはCL)
cのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
(CH1またはCL)
bおよび(CH1またはCL)
dのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
L1、L2およびL3は各々アミノ酸ドメインリンカーであり、L1、L2およびL3は異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDであり、適宜、Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドである]
を含む、前記タンパク質。
【請求項4】
対象とする抗原に結合する抗原結合性ドメイン(ABD);ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABD;FcRnに結合する能力を有し、適宜、CD16Aに結合する能力をさらに有するFcドメイン二量体;およびNK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDを含む、多特異性タンパク質であって、ポリペプチド鎖1および2:
【化4】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は第2のABDを形成し、前記第1のABDはNKp46に結合し、かつ前記第2のABDは前記対象とする抗原に結合し;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
L1、L2、L3、L4およびL5は各々アミノ酸ドメインリンカーであり、L1、L2、L3、L4およびL5は異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABDであり、適宜、Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドであり;かつ
適宜、鎖1は、前記V
b-1と前記(ヒンジまたはL3)との間に位置付けられたCH1またはCLドメインを含み、かつ鎖2は、前記V
b-2と前記(ヒンジまたはL4)との間に位置付けられたCH1またはCLドメインを含み、前記鎖のうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、CH1は重鎖定常ドメイン1であり、かつCLは軽鎖定常ドメインである]
を含む、前記タンパク質。
【請求項5】
対象とする抗原を発現する標的細胞に向けたNK細胞の細胞傷害性を増強する能力を有する多特異性タンパク質であって、
(a)対象とする抗原に結合する抗原結合性ドメイン(ABD);
(b)ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABD;
(c)FcRnに結合する能力を有し、適宜、CD16Aに結合する能力をさらに有するFcドメイン二量体;および
(d)NK細胞上に存在するヒトサイトカイン受容体に結合するABD
を含み;
ヒトNKp46ポリペプチドに結合する前記ABDが、そのC末端において、適宜Ig由来または非Ig由来ポリペプチドリンカーを介して、FcドメインのN末端に接続されており、かつ前記Fcドメインが、そのC末端において、ポリペプチドリンカーを介して、ヒトサイトカイン受容体に結合する前記ABDのN末端に接続されており、かつ前記タンパク質が、ヒトNKp46ポリペプチドに結合する単一のABDおよびヒトサイトカイン受容体に結合する単一のABDを有し、その結果、前記タンパク質が、NKp46および前記ヒトサイトカイン受容体の各々に対して一価の結合性を呈する、前記タンパク質。
【請求項6】
ポリペプチド鎖1および2を含む前記タンパク質がヘテロ二量体タンパク質であるか、ポリペプチド鎖1、2および3を含む前記タンパク質がヘテロ三量体タンパク質であるか、またはポリペプチド鎖1、2、3および4を含む前記タンパク質がヘテロ四量体タンパク質である、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質がヘテロ三量体であり、かつヒトNKp46ポリペプチドに結合する前記ABDがscFvであり、かつ対象とする抗原に結合する前記ABDがFabである、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項8】
NK細胞の表面上のNKp46および前記サイトカイン受容体、および適宜さらにCD16Aに同時エンゲージングする能力を有する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項9】
ヒトNKp46ポリペプチドに結合する前記ABDおよび前記サイトカインポリペプチドが、膜平面結合コンフォメーション(membrane planar binding confirmation)を取る能力を有するように構成されている、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
ヒトサイトカイン受容体に結合する前記ABDが、NK細胞上の受容体に対する結合親和性を低減させるために改変されていないサイトカインまたはその断片もしくは変異型を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記Fcドメインが、ヒトCD16Aに結合するFcドメイン二量体である、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記多特異性タンパク質が、前記対象とする抗原を発現する標的細胞をNKp46発現NK細胞が溶解することを指令する能力を有し、前記標的細胞の前記溶解がNKp46シグナル伝達により媒介される、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項13】
ヒトNKp46ポリペプチドに結合する前記ABDが、前記ヒトNKp46ポリペプチドのD1/D2ジャンクションに結合するV
Hおよび/またはV
Lドメインを含み、かつ前記サイトカインが改変型IL-2ポリペプチドである、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項14】
(i)ヒトサイトカイン受容体に結合する前記ABDが、アッセイ中に存在するいかなる抗原にも結合しない対照ABDにより置き換えられていることを除いて同一である多特異性タンパク質、および/または(ii)NKp46に結合するABDが、アッセイ中に存在するいかなる抗原にも結合しない対照ABDにより置き換えられていることを除いて同一である多特異性タンパク質と比較して、対象とする抗原を発現する標的細胞に向けたNK細胞の細胞傷害性における増加を引き起こす、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記サイトカインまたはサイトカイン受容体に結合する前記ABDが、野生型ヒトIL-2ポリペプチドと比較してCD25に対する低減された結合性を示すIL-2ポリペプチドを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項16】
ヒトNKp46ポリペプチドに結合する1つのみのABD、サイトカイン受容体に結合する1つのみのABD、対象とする抗原に結合する1つのみのABD、および1つのみのFcドメイン二量体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項17】
前記タンパク質またはヒトNKp46ポリペプチドに結合する前記ABDが、SPRにより決定された場合に、1~100nMのKDでヒトNKp46ポリペプチドに結合する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項18】
前記タンパク質または前記サイトカインが、SPRにより決定された場合に、10nM~1μMのKDで前記ヒトサイトカイン受容体に結合する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項19】
サイトカイン受容体に結合する前記ABDが、I型サイトカインおよび共通サイトカイン受容体ガンマ鎖(cg鎖)ファミリーのメンバーであり、適宜、前記サイトカインが、野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-7、またはIL-21である、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項20】
ヒトサイトカイン受容体に結合する前記ABDが、非改変型または野生型サイトカインポリペプチドと比較して、T細胞上に存在する第2のサイトカイン受容体に対する低減された結合親和性を示す変異型サイトカインである、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項21】
前記サイトカイン受容体がCD122であり、かつサイトカイン受容体に結合する前記ABDが、(a)野生型IL-2ポリペプチドと比較してCD25に対する低減された結合性を結果としてもたらす改変を含むIL-2ポリペプチド、または(b)野生型IL-15ポリペプチドと比較してCD215に対する低減された結合性を結果としてもたらす改変を含むIL-15ポリペプチドである、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項22】
対象とする抗原に結合する前記ABDが免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、前記VH領域が、配列番号132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154または184~261のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが、配列番号133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155または262~351のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項23】
NKp46に結合する前記ABDが免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、前記VH領域が、配列番号3、5、7、9、11、13、112、113、115、116、117、119、120、121、123、124、125、127、128、129または184~261のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが、配列番号4、6、8、10、12、14、114、118、122、126、130、262~351のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項24】
a.Fcドメインが、配列番号160~165のいずれかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;
b.CH1ドメインが、配列番号156のいずれかのCH1ポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;
c.CKもしくはCLドメインが、配列番号156のいずれかに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;かつ/または;
d.ヒンジドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4ヒンジドメインからのポリペプチドに対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項25】
前記多特異性タンパク質が、
(a)対象とする前記抗原に結合するABDであって、scFvまたはFabを含み、
a.前記scFvが、配列番号132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154および184~261のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH、ドメインリンカー、ならびに配列番号133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155および262~351のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLを含み;かつ
b.前記Fabが、配列番号132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154および184~261のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのVH、配列番号133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155および262~351のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのVL、配列番号156に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのヒトCH1ドメインならびに配列番号159に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのヒトCLドメインを含み、前記VHが前記CH1またはCLドメインのうちの1つに融合しており、かつ前記VLが前記CH1またはCLドメインのうちの他方に融合している、対象とする前記抗原に結合する前記ABD、
(b)ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABDであって、scFvまたはFabを含み、
a.前記scFvが、配列番号3、5、7、9、11、13、112、113、115、116、117、119、120、121、123、124、125、127、128、129および184~261のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH、ドメインリンカー、ならびに配列番号4、6、8、10、12、14、114、118、122、126、130および262~351のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLを含み;かつ
b.前記Fabが、配列番号3、5、7、9、11、13、112、113、115、116、117、119、120、121、123、124、125、127、128、129および184~261のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのVH、配列番号4、6、8、10、12、14、114、118、122、126、130および262~351のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのVL、配列番号156に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのヒトCH1ドメインならびに配列番号159に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのヒトCLドメインを含み、前記VHが前記CH1またはCLドメインのうちの1つに融合しており、かつ前記VLが前記CH1またはCLドメインのうちの他方に融合している、ヒトNKp46ポリペプチドに結合する前記ABD、
(c)第1および第2のFc単量体を含むFcドメイン二量体であって、各々のFc単量体が、配列番号160~165から選択される配列に対して少なくとも80%または90%同一のアミノ酸配列を含む、前記Fcドメイン二量体;ならびに
(d)前記多特異性タンパク質の前記ポリペプチド鎖のうちの1つのC末端にドメインリンカーを介して融合した、配列番号352~387から選択される配列に対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも80%または90%同一のアミノ酸配列を含むサイトカインポリペプチド
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記対象とする抗原に一価で結合する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項27】
前記標的細胞が腫瘍細胞である、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項28】
対象とする前記抗原ががん抗原である、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項29】
前記多特異性タンパク質が、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9 VHおよびVLドメインを含むモノクローナル抗体とNKp46ポリペプチドに対する結合について競合する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項30】
前記多特異性タンパク質が、
a.野生型NKp46に対する結合性と比較して残基R101、V102、E104および/またはL105において突然変異を有する突然変異体NKp46ポリペプチド;
b.野生型NKp46に対する結合性と比較して残基K41、E42、E119、Y121および/またはY194のうちのいずれか1つまたは複数において突然変異を有する突然変異体NKp46ポリペプチド;ならびに
c.野生型NKp46に対する結合性と比較して残基P132、E133、I135、および/またはS136のうちのいずれか1つまたは複数において突然変異を有する突然変異体NKp46ポリペプチド
からなる群から選択される突然変異体NKp46ポリペプチドに対する減少した結合性を有する、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項31】
NKp46に結合する前記抗原結合性ドメインが、
(a)配列番号3のVHのCDR 1、2および3を含むVHならびに配列番号4のVLのCDR 1、2および3を含むVL;
(b)配列番号5のVHのCDR 1、2および3を含むVHならびに配列番号6のVLのCDR 1、2および3を含むVL;
(c)配列番号7のVHのCDR 1、2および3を含むVHならびに配列番号8のVLのCDR 1、2および3を含むVL;
(d)配列番号9のVHのCDR 1、2および3を含むVHならびに配列番号10のVLのCDR 1、2および3を含むVL;
(e)配列番号11のVHのCDR 1、2および3を含むVHならびに配列番号12のVLのCDR 1、2および3を含むVL;または
(f)配列番号13のVHのCDR 1、2および3を含むVHならびに配列番号14のVLのCDR 1、2および3を含むVL
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項32】
前記請求項のいずれか一項に記載の多特異性タンパク質、および医薬的に許容される担体またはアジュバントを含む、医薬組成物。
【請求項33】
請求項1~31のいずれか一項に記載の多特異性タンパク質の前記ポリペプチド鎖のうちの少なくとも1、2、3または4つ(one, two, three of four)(またはすべて)を発現する組換え細胞。
【請求項34】
請求項1~31のいずれか一項に記載の多特異性タンパク質の前記ポリペプチド鎖のうちの少なくとも1、2、3または4つ(three of four)(またはすべて)をコードする、核酸または核酸のセット。
【請求項35】
疾患の処置用の医薬としての、および/または疾患の処置用の医薬の製造における、前記請求項のいずれか一項に記載のタンパク質または組成物の使用。
【請求項36】
疾患を有する対象においてNKp46
+CD16
+ NK細胞および/またはNKp46
+CD16
- NK細胞のNK細胞活性化、細胞傷害性および/または増殖を増強する方法であって、前記対象に請求項1~31のいずれかに記載の多特異性タンパク質を投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
適宜さらに毒性が低減された状態で、疾患を有する対象においてNK細胞および/または腫瘍に非常に強力なサイトカインをデリバリーするかまたは導く方法であって、前記対象に請求項1~31のいずれかに記載の多特異性タンパク質を投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
前記サイトカインが、その野生型サイトカイン対応物と比較して、NK細胞上に存在するそのサイトカイン受容体に対する親和性の少なくとも50%、80%または90%を保持する変異型もしくは野生型サイトカインまたはそのサイトカイン断片である、請求項35~37に記載の方法または使用。
【請求項39】
前記多特異性タンパク質(または前記多特異性タンパク質中に含まれる場合の前記サイトカイン)が、単独で前記サイトカインを用いて、または前記NKp46 ABDおよび/もしくはCD16 ABDが対照ABDにより置き換えられているタンパク質において観察される場合よりも低いNK細胞におけるサイトカイン経路シグナル伝達についてのEC50を呈し、適宜、NK細胞におけるサイトカイン経路シグナル伝達についての前記EC50が、少なくとも10倍または100倍低く、適宜、サイトカイン経路シグナル伝達が、前記サイトカインをNK細胞と接触させ、前記NK細胞におけるSTATリン酸化を測定することにより評価される、請求項35~38に記載の方法または使用。
【請求項40】
前記疾患が、がん、感染性疾患または炎症性もしくは自己免疫疾患である、請求項35~39に記載の方法または使用。
【請求項41】
ヘテロ多量体タンパク質を作製する方法であって、
a)請求項4または5~31のいずれかに記載の少なくとも第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を用意すること;
b)請求項4または5~31のいずれかに記載の少なくとも第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を用意すること;ならびに
c)宿主細胞中でまたは異なる宿主細胞のセット中で別々に前記第1および第2の核酸を発現させて、それぞれ前記第1および第2のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し;産生された前記タンパク質をアフィニティー精製支持体、適宜プロテインA支持体上にロードし、前記ヘテロ多量体タンパク質を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項42】
ヘテロ多量体タンパク質を作製する方法であって、
(a)請求項1、2または5~31のいずれかに記載の第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を用意すること;
(b)請求項1、2または5~31のいずれかに記載の第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を用意すること;
(c)請求項1、2または5~31のいずれかに記載の第3のポリペプチド鎖を含む第3の核酸を用意すること;ならびに
(d)宿主細胞中でまたは異なる宿主細胞のセット中で別々に前記第1、第2および第3の核酸を発現させて、それぞれ前記第1、第2および第3のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し;産生された前記タンパク質をアフィニティー精製支持体、適宜プロテインA支持体上にロードし、前記ヘテロ多量体タンパク質を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項43】
ヘテロ多量体タンパク質を作製する方法であって、
(a)請求項3または5~31のいずれかに記載の第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を用意すること;
(b)請求項3または5~31のいずれかに記載の第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を用意すること;
(c)請求項3または5~31のいずれかに記載の第3のポリペプチド鎖をコードする第3の核酸を用意すること;
(d)請求項3または5~31のいずれかに記載の第4のポリペプチド鎖をコードする第4の核酸を用意すること;ならびに
(e)宿主細胞中でまたは異なる宿主細胞のセット中で別々に前記第1、第2、第3および第4の核酸を発現させて、それぞれ前記第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し;産生された前記タンパク質をアフィニティー精製支持体、適宜プロテインA支持体上にロードし、前記ヘテロ多量体タンパク質を回収すること
を含む、前記方法。
【請求項44】
ポリペプチドを同定または評価する方法であって、
(a)請求項1~31のいずれかに記載のタンパク質ののポリペプチドをコードする核酸を用意する工程;
(b)宿主細胞中で前記核酸を発現させて、それぞれ前記タンパク質を産生し;前記タンパク質を回収する工程;ならびに
(c)産生された前記タンパク質を対象とする生物学的活性について評価する工程
を含む、前記方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドを評価することが、適宜NKp46
+CD16
+ NK細胞および/またはNKp46
+CD16
- NK細胞において、標的細胞(対象とする抗原を発現する)の存在下でそのようなNK細胞とインキュベートされた場合に、NK細胞活性化、細胞傷害性、増殖および/またはサイトカイン受容体シグナル伝達を増強する前記ポリペプチドの能力を試験することを含む、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月9日に出願された米国仮出願第63/208,511号の利益を主張し、その開示は、任意の図面および配列表を含む、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子的な形式の配列表と共に出願されている。配列表は、326KBのサイズの、2022年5月6日に作成された「NKp46-13 PCT_ST25 txt」という名称のファイルとして提供される。電子的な形式の配列表中の情報は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
エフェクター細胞に結合し、エフェクター細胞を、複数の受容体を介して対象とする標的細胞を溶解するように特異的に再方向付けする多特異性タンパク質が提供される。タンパク質は、疾患、特にがんまたは感染性疾患の処置において有用性を有する。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン2(IL2またはIL-2)は、NK細胞により発現されるサイトカイン受容体に作用する多能性サイトカインの1つの例である。IL-2は、活性化されたT細胞、特にCD4+ヘルパーT細胞により主に産生され、B細胞、T細胞およびNK細胞の増殖および分化の補助において機能する。IL-2はまた、Tregの機能および生存のために必須である。真核細胞において、ヒトIL-2(uniprot:P60568)は、20残基のシグナル配列を有する153アミノ酸の前駆体ペプチドとして合成され、前駆体ペプチドは、配列番号352のアミノ酸配列を有する成熟した分泌されるIL-2を生じさせる。インターロイキン2は、4つのアンチパラレルの両親媒性アルファヘリックスを有する。これらの4つのアルファヘリックスは、その機能のために必須である四次構造を形成する。ほとんどの場合において、IL-2は、3つの異なる受容体:インターロイキン2受容体アルファ(IL-2Rα;CD25)、インターロイキン2受容体ベータ(IL-2Rβ;CD122)、およびインターロイキン2受容体ガンマ(IL-2Rγ;CD132)を通じて働く。IL-2RβおよびIL-2RγはIL-2シグナル伝達のために必須であり、IL-2Rα(CD25)はシグナル伝達のために必要でないが、受容体に対するIL-2の高親和性結合を付与することができる。IL-2Rα、β、およびγの組合せにより形成される三量体受容体(IL-2αβγ)はIL-2高親和性受容体(KD 約10pM)であり、二量体受容体(IL-2βγ)は中親和性受容体(KD 約1nM)である。
【0005】
免疫細胞は二量体または三量体IL-2受容体を発現する。二量体受容体は細胞傷害性CD8+ T細胞およびナチュラルキラー細胞(NK)上に発現され、三量体受容体は活性化されたリンパ球およびCD4+CD25+FoxP3+阻害性制御性T細胞(Treg)上に主に発現される。休止したエフェクターT細胞およびNK細胞は細胞表面上にCD25を有しないので、それらはIL-2に対して相対的に非感受性である。Treg細胞は、身体中で最も高いレベルのCD25を一貫して発現する。組織中に典型的には存在する低濃度のIL-2に起因して、IL-2は、高親和性受容体複合体(CD25:CD122:CD132)を発現する細胞を優先的に活性化させ、したがって通常の状況下で、IL-2はTreg細胞増殖を優先的に刺激する。
【0006】
IL-15、IL-12、IL-7、IL-27、IL-18、IL-21、およびIFN-αは、受容体結合、複合体アセンブリーおよびシグナル伝達の多くの態様をIL-2と共有する。例えばIL-15、IL-21およびIL-7は、IL-2のようにいずれも、共通γ鎖受容体(CD132)を介してNK細胞に作用する。IL-15は、3つのサブユニット:IL-15Rα、CD122、およびCD132から構成されるIL-15受容体(IL-15R)に結合する。これらのサブユニットの2つ、CD122およびCD132はIL-2の受容体と共有されるが、IL-2受容体は追加のサブユニット(CD25)を有する。IL-15Rα(CD215)は、非常に高い親和性でIL15に特異的に結合し、他のサブユニットから独立してIL-15に結合する能力を有する。IL-21はI型サイトカインの別の例であり、そのIL-21受容体(IL-21R)は、IL-2/IL-15受容体共通ガンマ鎖(CD132)とヘテロ二量体受容体複合体を形成することが示されている。
【0007】
NK細胞は、抗腫瘍免疫を媒介する潜在能力を有する。しかしながら、NK細胞は、IL-2がIFN-aと共に投与された場合にそれらの過剰活性化および複数の炎症性サイトカインの分泌を通じてマウスにおいて毒性を引き起こすことが示されている[Rothschilds et al, Oncoimmunology. 2019;8(5)]。追加的に、NK細胞はまた、これもまたIL-2Rβyを通じてシグナル伝達するサイトカインIL-15の毒性を引き起こすことが示された[Guo et al, J Immunol. 2015;195(5):2353-64を参照する国際公開第2020247843号パンフレットを参照]。
【0008】
サイトカイン、例えばIL-2により媒介される免疫毒性に対する1つの潜在的な解決策は、それを腫瘍特異的抗体と融合または会合させることであった。しかしながら、IL-2はインビボ(in vivo)で抗腫瘍効果において抗腫瘍抗体と実際に協同するが、同じ分子中にIL-2および抗腫瘍抗原抗体を含めることは有効性も毒性の利点も示さないことが見出された。IL-2部分は体内分布を完全に支配し、無関連の抗原を認識する免疫サイトカインは、抗体と組み合わせられた場合に腫瘍特異的な免疫サイトカインと同等に機能するという観察を説明した[Tzeng et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2015 Mar 17; 112(11): 3320-332]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
NK細胞に対するサイトカインの効果に焦点を当てた研究は、単一のサイトカインまたは単純な組合せに一般に集中してきた。より最近において、IL-15、IL-18、IL-21、およびIFN-αは、単独でおよび組合せで、IL-2と協同する潜在能力があり、また、非常に低濃度の、先天および適応の両方の共通γ鎖サイトカインは、等しく低い濃度のIL-18と協同して、迅速かつ強力なNK細胞CD25およびIFN-γ発現を駆動することが報告されている(Nielsen et al. Front Immunol. 2016; 7: 101)。しかしながら、ヒトへのサイトカインの投与は毒性を伴っており、これはサイトカインとの組合せ処置を困難なものとする。さらには、NK細胞におけるサイトカイン受容体シグナル伝達経路と他の活性化受容体との間の潜在的な相乗作用または相互作用に関しては依然としてほとんど分かっていない。したがって、疾患、特にはがんの処置においてNK細胞を動員するための新たな仕方に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、NK細胞上のNKp46ならびにサイトカイン受容体(例えばCD122および/またはCD132)に結合し、かつ適宜、NK細胞上のCD16Aにさらに結合し、かつ標的細胞上の対象とする抗原(例えばがん抗原)にも結合する機能的な多特異性タンパク質であって、対象とする抗原を発現する標的細胞(例えば、疾患に寄与する細胞、がん細胞)に向けたNK細胞の細胞傷害性を増加させる能力を有する、多特異性タンパク質の発見から生じたものである。これらのタンパク質を用いて観察される利点は、NK細胞上のNKp46、サイトカイン受容体(例えばCD122および/またはCD132)、ならびに適宜さらにCD16Aに同時エンゲージするそれらの能力の結果としてもたらされると考えられる。実施例では、T細胞上のその受容体(CD25)に対する親和性を低減させるために改変されているが、NK細胞上のその受容体(CD122および/またはCD132)に対する野生型IL-2の実質的に完全な親和性を保持した変異型IL-2サイトカイン(IL-2v)を使用した。多特異性タンパク質の構成は、同じ細胞表面上でのNKp46およびサイトカイン受容体の同時エンゲージメントを可能にするようにそれぞれの抗原結合性ドメインを提示するように設計された[すなわちNKp46において、サイトカイン受容体(およびさらにCD16A)はシスで結合している]。さらに、実施例では、NKp46結合性ドメインとサイトカインとの間に置かれたCD16Aに結合する野生型Fcドメインを有するタンパク質を使用したところ、CD16Aに対する結合性は、腫瘍およびNK標的化された体内分布に負に影響せず、代わりにNKp46、CD16Aおよびサイトカイン受容体の三重の同時エンゲージメントに繋がり、次いでNK細胞上のその受容体に対する結合親和性を保持するサイトカインの組込みを可能にすることが示された。KDについて低いナノモル濃度範囲内(約15nMのKD)のNKp46に対する結合親和性を付与する抗NKp46 VH/VLドメインを多特異性タンパク質中に組み込むことにより、NK細胞上のそれらの受容体に対する実質的に完全な結合親和性を保持するサイトカインを使用することができた。サイトカインは、NKp46に対する多特異性タンパク質の親和性以上であるNK細胞上のそれらの受容体に対する結合についてのKDを一般に有する。
【0011】
本明細書における結果を考慮すると、サイトカインIL2およびサイトカイン受容体複合体IL2βγについて
図1において示されるように、サイトカイン、例えば1型サイトカイン、例えばIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27もしくはIL-12サイトカイン、IL-18サイトカインまたは1型インターフェロン(例えばIFN-α、IFN-β)をNKp46に標的化することは、サイトカインの受容体(例えばIL2/15βγ、IL-21R、IL-7Ra、IL-27Ra、IL-12R、IL-18R、IFNAR)に対するシス提示を促進すると考えられる。本明細書において示されるように、Fcドメインに直ちに隣接して(かつそのC末端側に)置かれたIL2vは、三重の受容体シス提示が起こることを可能にした。
【0012】
NK細胞上のNKp46に方向付けられた多特異性タンパク質は、NK細胞上のそれらの受容体(例えばCD122)に対する結合親和性の低減の要求なしに広範囲のサイトカインが使用されることを可能にするという利点を有する。サイトカイン(cytokokines)は、それらの野生型対応物と比較してNK細胞上のそれらの受容体に対する低減された結合親和性を有するように適宜改変され得るが、そのような改変または減弱を組み込んでいない多特異性タンパク質中の広範囲のサイトカインを使用することもまた可能である。NK細胞上のNKp46に方向付けられた多特異性タンパク質は、そのため、いくつかのサイトカインをそれらの野生型形態において使用することができ、特にはその場合、サイトカインは、NK細胞上のその受容体において実質的に低減された活性を有さず、かつ/または、その受容体に対するサイトカインの親和性は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性以下の強さである。よって、任意の実施形態において、サイトカインABD(例えば多特異性タンパク質内のサイトカイン部分)は、野生型形態のサイトカインと比較して実質的に低減していないNK細胞上のその受容体に対する結合親和性および/または活性(例えばシグナル伝達の誘導)を有するとして特定され得る。適宜、サイトカイン部分は、野生型形態のサイトカインを用いて観察される場合の少なくとも70%または80%であるNK細胞上のその受容体(例えばCD122)におけるシグナル伝達を誘導する。よって、任意の実施形態において、サイトカインABD(例えば多特異性タンパク質内のサイトカイン部分)は、野生型形態のサイトカインと比較して実質的に低減していないNK細胞上のその受容体に対する親和性を有するとして特定され得る。適宜、サイトカイン部分は、野生型形態のサイトカインの場合の3-log、2-logまたは1-log以内のNK細胞上のその受容体(例えばCD122)に対する結合親和性を有する(例えば、サイトカイン部分は、野生型形態のサイトカインについての場合よりも3-、2-または1-log以下で高いサイトカイン受容体に対する結合についてのKDを有する)。親和性は、SPRを使用して決定される、組換え受容体タンパク質に対する結合についてのKDであり得る。サイトカインのシグナル伝達または受容体結合親和性は、他は同等である多特異性タンパク質中に組み込まれた場合として特定され得る。
【0013】
したがって、特には長いインビボ半減期を有する治療剤のために、個々のNK細胞上のNKp46およびサイトカイン受容体(例えばCD122)、およびさらにCD16Aの各々に結合する能力を組み合わせた治療用分子という特定の利点がある。単一の多特異性タンパク質においてこれらの結合的特色を組み合わせることで、剤(NKp46多特異性タンパク質およびIL-2)を別々に投与する場合と比較してより高いインビボ抗腫瘍活性が提供された。
【0014】
多特異性タンパク質は、NK細胞活性(例えば、腫瘍浸潤性NK細胞によるものを含む、NK細胞増殖、活性化、細胞傷害性および/またはサイトカイン放出)の増強において高い効力であるが、例えば、サイトカインIL-6およびTNF-αの低い全身性増加または放出の、低い免疫毒性を有することに起因して、特に有利である。本開示は、NKp46およびサイトカイン受容体(例えばCD122)およびCD16A結合性ドメインの間の十分な距離を可能にして、3つすべての受容体が単一のNK細胞により結合されることを可能にし、それにより、組み合わせられたNK細胞受容体活性化を提供するタンパク質フォーマットを使用する例を提供する。重要なことに、単一の細胞上での組み合わせられた結合は、NKp46発現および/またはCD16発現細胞(例えば、NK細胞)の最小のオフターゲット免疫毒性および同胞性殺傷の欠如の原因となる可能性があり、その理由は、多特異性タンパク質は、NKp46および/またはCD16+エフェクター細胞の表面においてサイトカイン受容体(例えばCD122)に加えて少なくとも1つの活性化受容体により結合されるからである。
【0015】
多特異性タンパク質は、NKp46+CD16+ NK細胞およびNKp46+CD16A- NK細胞の両方の活性および/または増殖を増強するために有用であり得る。CD16Aに対する結合の非存在下であっても、NKp46およびCD122に対する組み合わせられた二重の結合は、NK細胞活性の強い増強を実証する。健常個体において、CD16-集団は全NK細胞集団の5~15%を表し、一部のがん患者においてCD16- NK細胞の割合は大きく増加しており、全NK細胞集団の50%程度を構成する。さらに、腫瘍微環境は、細胞の表面からのCD16Aのシェディングを誘導することまたはCD16A+ NK細胞からCD16- NK細胞への変換を促進することのいずれかによりCD16A+ NK細胞の表現型に影響することが示されている。追加的に、CD16Aの多型に起因して、一部の個体は、ADCCを媒介する能力の低減を結果としてもたらすCD16Aにおける(例えばCD16Aの残基158における)突然変異を有する。腫瘍中の活性化されたNKp46+ NK細胞の数の両方を増加させながら、特に腫瘍環境において起こり得るように、CD16A不全を克服することは、特に有利である。いっそうさらに、多特異性タンパク質は、NKG2Dを介する結合もシグナル伝達も要求せず、例えば胃および前立腺がんにおいて一般的なまたは共通の特色であることが公知であるように、活性化受容体NKG2Dの表面発現の相対的に低いレベルにより特徴付けられるNKおよび/またはT細胞を有する患者においてNK細胞活性を増強するために使用され得る。
【0016】
提供されるのは、特に、Fcドメイン(例えばFc二量体)、ヒトNKp46ポリペプチドに結合するNKp46結合性ドメイン、対象とする抗原(例えば腫瘍関連またはがん抗原;標的細胞により発現されて存在する対象とする抗原)に結合する結合性ドメイン、およびNK細胞上に発現されるヒトサイトカイン受容体ポリペプチドに結合する抗原結合性ドメインを含む、多特異性タンパク質(例えばFc含有タンパク質)である。Fcドメイン(例えばFc二量体)は、NKp46結合性ドメインとヒトサイトカイン受容体ポリペプチドに結合する抗原結合性ドメインとの間に差し挟まれているとして特定され得る。1つの実施形態において、ヒトNKp46ポリペプチドに結合するABDは、そのC末端において、適宜Ig由来(例えばヒンジドメインもしくはその部分)または非Ig由来ポリペプチドリンカーを介して、FcドメインのN末端に接続されており、かつFcドメインは、そのC末端において、ポリペプチドリンカーを介して、ヒトサイトカイン受容体に結合するABDのN末端に接続されている。
【0017】
Fcドメイン(例えばFc二量体のFc単量体部分)、NKp46結合性ドメイン(またはその部分、例えば可変領域もしくは可変領域-CH1/CK単位)およびヒトサイトカイン受容体に結合するABDは、同じポリペプチド鎖(第1のポリペプチド鎖)上に置かれているとして適宜特定可能であり、例えば、NKp46結合性ドメイン部分は、そのC末端において、ヒンジドメイン配列または任意のドメインリンカーを介してFc単量体のN末端に融合しており、Fc単量体は次いで、そのC末端において、ドメインリンカーを介して、ヒトサイトカイン受容体に結合するABDのN末端に融合している。タンパク質の残りのエレメント(NKp46結合性ドメインの相補的な部分、相補的なFc単量体、対象とする抗原に結合する結合性ドメイン)は、第1のポリペプチド鎖と共に二量体化する1つまたは複数の追加のポリペプチド鎖上に置かれ得る。NKp46結合性ドメイン、Fcドメインおよびサイトカインはそのため、膜平面結合立体配置を取ることができる。
【0018】
1つの実施形態において、Fcドメインは、そのC末端において、20個または20個未満のアミノ酸残基、適宜15個未満のアミノ酸残基、適宜10個または10個未満のアミノ酸残基、適宜5~15残基、適宜5~10残基、適宜3~5残基を有するリンカーペプチドにより、ヒトサイトカイン受容体に結合するABDに融合している。
【0019】
1つの実施形態において、タンパク質は、ヒトNKp46ポリペプチドに結合する1つのみのABD、対象とする抗原に結合する1つのみのABD、1つのみの二量体Fcドメイン、およびヒトサイトカイン受容体に結合する1つのみのABDを有し、その結果、タンパク質は、NKp46、CD16A、対象とする抗原およびヒトサイトカイン受容体の各々に対して一価の結合性を呈する。多特異性タンパク質は、多特異性タンパク質のトポロジー内でFc二量体に対してN末端に位置付けられた、NKp46結合性ドメインおよび対象とする抗原に結合する結合性ドメイン、ならびに多特異性タンパク質のトポロジー内でFc二量体に対してC末端に位置付けられたヒトサイトカイン受容体ポリペプチドを有するとして適宜特徴付けられ得る。
【0020】
Fcドメインは、ヒトCD16Aポリペプチドへの結合性を適宜伴うかまたは適宜伴わずにヒトFcRnポリペプチドに結合するとして特定され得る。
【0021】
提供されるのは、例えば、Fcドメイン(例えばFc二量体)、FcドメインのN末端に位置付けられた、ヒトNKp46ポリペプチドに結合するNKp46結合性ドメイン、FcドメインのN末端に位置付けられた、対象とする抗原(例えば腫瘍関連またはがん抗原;標的細胞により発現されて存在する対象とする抗原)に結合する結合性ドメイン、およびFcドメインのC末端に位置付けられた、NK細胞上に発現されるヒトサイトカイン受容体ポリペプチドに結合する抗原結合性ドメインを含む、多特異性タンパク質(例えばFc含有タンパク質)である。サイトカイン受容体は、例えば、CD122(IL2/15Rβ)、IL-21R、IL-7Ra、IL-27Ra、IL-12R、IL-18R、IFNAR(IFNAR1および/またはIFNAR2)であり得る。Fcドメインは、ヒトCD16Aポリペプチドへの結合を適宜伴うかまたは適宜伴わずにヒトFcRnポリペプチドに結合するとして特定され得る。
【0022】
サイトカイン受容体に結合する抗原結合性ドメインは、それが見出されるポリペプチド鎖のC末端に位置付けられた、その野生型形態と比較して非NK細胞(例えばT細胞、Treg細胞)上に見出される受容体対応物に対する結合性を低減させる改変を有する変異型サイトカインであり得る。サイトカインは、タンパク質内でトポロジカルにC末端に、かつ/またはそれが置かれたポリペプチド鎖のC末端に位置付けられるとして特定され得る。
【0023】
サイトカイン受容体に結合する抗原結合性ドメインは、それが結合するサイトカイン受容体に対する結合親和性を低減させるために改変された(例えばアミノ酸改変を導入することによる)ヒトサイトカインポリペプチド(例えばIL-2、IL-15、IL-21)であり得、適宜、結合親和性は、NK細胞の表面において発現されない受容体について選択的に低減されている。本明細書にさらに記載されるように、サイトカインがその天然の結合パートナーとして1つより多くの受容体を有し、かつ受容体のうちの1つが非NK細胞上に発現される場合、サイトカインポリペプチドは、その野生型サイトカイン対応物と比較して非NK細胞(例えばTreg細胞、T細胞)上に発現されるそのような受容体に対する結合を低減させるために改変され得る。
【0024】
NKp46-1 VH/VLペアのCDRを組み込んだタンパク質により例示される1つの実施形態において、NKp46結合性ドメインはNKp46ポリペプチドのD1/D2ジャンクションに結合する。NKp46のX線結晶学研究に基づいて、NKp46ポリペプチドのD1/D2ジャンクションは、細胞表面から約70オングストロームにおいて位置付けられ、これは、CD122のサイトカイン結合性部位についての細胞表面からの予測される距離に対応すると考えられる。NKp46ポリペプチドのD1/D2ジャンクションに対するおよび/またはNKp46-1により結合される領域もしくはエピトープに対する結合は、サイトカイン受容体、例えばCD122の最適なエンゲージメントを可能にするNK細胞表面からの距離におけるNKp46 ABDの位置付けを提供することができる。次いで、低減された長さ(例えば2~5残基、2~10残基;3、4、5、6、7、8、9または10残基)のドメインリンカーは、効力におけるいかなる減少もなしにサイトカインとNKp46 ABDまたは多特異性タンパク質の残部との間に使用され得る。NKp46上の他のドメインが結合される場合、より長いドメインリンカー、例えば5~15残基、10~15残基、またはより長いものが使用され得る。
【0025】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、サイトカイン受容体結合性ドメイン、例えばNK細胞の表面において発現される受容体に結合するサイトカインに、適宜ドメインリンカーを介して、融合したFcドメインまたはその部分を含む。
【0026】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、
(i)N末端からC末端へ、NKp46ポリペプチドに結合するscFv、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメイン、適宜ドメインリンカー、および野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドを含む、第1のポリペプチド鎖、ならびに
(ii)N末端からC末端へ、対象とする抗原に結合する結合性ドメインの可変ドメイン、ヒトCH1またはCL定常ドメイン、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖;ならびに
(iii)N末端からC末端へ、(ii)の可変ドメインと会合して、対象とする抗原に結合する結合性ドメインを形成する可変ドメイン、およびヒトCH1またはCL定常ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖であって、
(ii)および(iii)の可変ドメインのうちの1つがVHであり、かつ他方がVLであり、(ii)および(iii)の定常ドメインのうちの1つがCH1であり、かつ他方がCLであり、その結果、(ii)および(iii)の定常ドメインがCH1-CL二量体化により会合する、
第3のポリペプチド鎖
を含む、三量体[例えばヘテロ三量体(heterotimer)]である。よって、鎖(ii)および(iii)は、二量体化してFab構造を形成することができ、かつ鎖(i)および(ii)は、CH3-CH3相互作用を介して二量体化して二量体Fcドメインを形成する。
【0027】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、
(i)N末端からC末端へ、NKp46結合性ドメインの可変ドメイン、ヒトCH1またはCL定常ドメイン、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメイン、適宜ドメインリンカー、および野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドを含む、第1のポリペプチド鎖、ならびに
(ii)N末端からC末端へ、鎖(i)の可変ドメインと会合してNKp46結合性ドメインを形成する可変ドメイン、およびヒトCH1またはCL定常ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖であって;
(i)および(ii)の可変ドメインのうちの1つがVHであり、かつ他方がVLであり、鎖(i)および(ii)の定常ドメインのうちの1つがCH1であり、かつ他方がCLであり、その結果、鎖(i)および(ii)の定常ドメインがCH1-CL二量体化により会合する、
第2のポリペプチド鎖;ならびに
(iii)N末端からC末端へ、対象とする抗原に結合するsvFc、ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖
を含む、三量体(例えばヘテロ三量体)である。よって、鎖(i)および(ii)は、二量体化してFab構造を形成することができ、かつ鎖(i)および(iii)は、CH3-CH3相互作用を介して二量体化して二量体Fcドメインを形成する。
【0028】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、
(i)N末端からC末端へ、NKp46結合性ドメインの可変ドメイン、ヒトCH1またはCL定常ドメイン、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメイン、適宜ドメインリンカー、および野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドを含む、第1のポリペプチド鎖、ならびに
(ii)N末端からC末端へ、(i)の可変ドメインと会合してNKp46結合性ドメインを形成する可変ドメイン、およびヒトCH1またはCL定常ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖であって;
(i)および(ii)の可変ドメインのうちの1つがVHであり、かつ他方がVLであり、(i)および(ii)の定常ドメインのうちの1つがCH1であり、かつ他方がCLであり、その結果、(i)および(ii)の定常ドメインがCH1-CL二量体化により会合する、
第2のポリペプチド鎖;ならびに
(iii)N末端からC末端へ、対象とする抗原に結合する結合性ドメインの可変ドメイン、ヒトCH1またはCL定常ドメイン、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖;ならびに
(iv)N末端からC末端へ、(iii)の可変ドメインと会合して、対象とする抗原に結合する結合性ドメインを形成する可変ドメイン、およびヒトCH1またはCL定常ドメインを含む、第4のポリペプチド鎖であって、
(iii)および(iv)の可変ドメインのうちの1つがVHであり、かつ他方がVLであり、(iii)および(iv)の定常ドメインのうちの1つがCH1であり、かつ他方がCLであり、その結果、(iii)および(iv)の定常ドメインがCH1-CL二量体化により会合する、
第4のポリペプチド鎖
を含む、四量体(例えばヘテロ四量体)である。よって、鎖(i)および(ii)は、二量体化してFab構造を形成することができ、鎖(iii)および(iv)は、二量体化してFab構造を形成することができ、かつ鎖(i)および(iIi)は、CH3-CH3相互作用を介して二量体化して二量体Fcドメインを形成する。
【0029】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、
(i)N末端からC末端へ、NKp46結合性ドメインの可変ドメイン、ヒトCH1またはCL定常ドメイン、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメインを含む、第1のポリペプチド鎖、ならびに
(ii)N末端からC末端へ、(i)の可変ドメインと会合してNKp46結合性ドメインを形成する可変ドメイン、およびヒトCH1またはCL定常ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖であって;
(i)および(ii)の可変ドメインのうちの1つがVHであり、かつ他方がVLであり、(i)および(ii)の定常ドメインのうちの1つがCH1であり、かつ他方がCLであり、その結果、(i)および(ii)の定常ドメインがCH1-CL二量体化により会合する、
第2のポリペプチド鎖;ならびに
(iii)N末端からC末端へ、対象とする抗原に結合する結合性ドメインの可変ドメイン、ヒトCH1またはCL定常ドメイン、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメイン、適宜ドメインリンカー、および野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドを含む、第3のポリペプチド鎖;
(iv)N末端からC末端へ、(iii)の可変ドメインと会合して、対象とする抗原に結合する結合性ドメインを形成する可変ドメイン、およびヒトCH1またはCL定常ドメインを含む、第4のポリペプチド鎖であって、
(iii)および(iv)の可変ドメインのうちの1つがVHであり、かつ他方がVLであり、(iii)および(iv)の定常ドメインのうちの1つがCH1であり、かつ他方がCLであり、その結果、(iii)および(iv)の定常ドメインがCH1-CL二量体化により会合する、
第4のポリペプチド鎖
を含む、四量体(例えばヘテロ四量体)である。よって、鎖(i)および(ii)は、二量体化してFab構造を形成することができ、鎖(iii)および(iv)は、二量体化してFab構造を形成することができ、かつ鎖(i)および(iIi)は、CH3-CH3相互作用を介して二量体化して二量体Fcドメインを形成する。
【0030】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、
(i)N末端からC末端へ、NKp46ポリペプチドに結合するscFv、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメイン、適宜ドメインリンカー、および野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドを含む、第1のポリペプチド鎖、ならびに
(ii)N末端からC末端へ、対象とする抗原に結合するscFv、ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖
を含む、二量体(例えばヘテロ二量体)である。よって、鎖(i)および(ii)は、CH3-CH3相互作用を介して二量体化して二量体Fcドメインを形成する。
【0031】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、
(i)N末端からC末端へ、対象とする抗原に結合するscFv、適宜ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、CH3ドメイン、適宜ドメインリンカー、および野生型または変異型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドを含む、第1のポリペプチド鎖、ならびに
(ii)N末端からC末端へ、NKp46ポリペプチドに結合するsvFc、ドメインリンカーまたはヒンジポリペプチド、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む、第2のポリペプチド鎖
を含む、二量体(例えばヘテロ二量体)である。よって、鎖(i)および(ii)は、CH3-CH3相互作用を介して二量体化して二量体Fcドメインを形成する。
【0032】
本明細書における任意の実施形態の1つの態様において、サイトカインまたはサイトカイン受容体ABDは、遊離サイトカインとして、または多特異性タンパク質中に組み込まれたものとして試験された場合に、SPRにより決定された場合に、1μMもしくはそれ未満、200nMもしくはそれ未満、100nMもしくはそれ未満、50nMもしくはそれ未満、または25nMもしくはそれ未満の結合親和性(KD)でその受容体に結合する。1つの実施形態において、サイトカインまたはサイトカイン受容体ABDは、SPRにより決定された場合に、1nMまたは1nMより高い、適宜10nMより高い、適宜15nMより高い結合親和性(KD)でその受容体に結合する。1つの実施形態において、サイトカインまたはサイトカイン受容体ABDは、SPRにより決定された場合に、約1nm~約200nm、適宜約1nm~約100nm、適宜約10nM~約1μM、適宜約10nM~約200μM、適宜約10nM~約100nM、適宜約15nM~約1μM、または適宜約15nM~約200nMの結合親和性(KD)でその受容体に結合する。
【0033】
1つの実施形態において、サイトカインは、野生型サイトカイン、またはNK細胞においてシグナル伝達を誘導する野生型サイトカイン対応物の能力の少なくとも80%を有するその断片もしくは変異型であり、適宜、シグナル伝達は、単離されたサイトカイン部分をNK細胞と接触させ、NK細胞におけるSTATリン酸化を測定することにより評価される。1つの実施形態において、サイトカインは、野生型サイトカイン、または、野生型サイトカイン対応物と比較して、NK細胞上に存在するそのサイトカイン受容体に対する親和性の少なくとも50%、60%、70%、80%もしくは90%を保持するその断片である。1つの実施形態において、サイトカインは、野生型サイトカイン対応物と比較して、NK細胞上に存在するそのサイトカイン受容体に対する親和性の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%を保持する変異型サイトカインである。1つの実施形態において、サイトカインは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に対するサイトカインの親和性を実質的に低減させる突然変異を含まない。1つの実施形態において、多特異性タンパク質(または多特異性タンパク質中に含まれる場合のサイトカイン)は、その野生型サイトカイン対応物を単独で用いて観察される場合よりも低いNK細胞におけるサイトカイン経路シグナル伝達についてのEC50を呈する。1つの実施形態において、多特異性タンパク質(または多特異性タンパク質中に含まれる場合のサイトカイン)は、サイトカインを単独で用いて、または同等の構造であるがNKp46 ABDおよび/もしくはCD16 ABDを欠いたタンパク質において観察される場合よりも低いNK細胞におけるサイトカイン経路シグナル伝達についてのEC50を呈する。適宜、NK細胞におけるサイトカイン経路シグナル伝達についてのEC50は、少なくとも10倍または100倍低く、適宜、サイトカイン経路シグナル伝達は、それぞれのサイトカインまたは多特異性タンパク質をNK細胞と接触させ、NK細胞におけるSTATリン酸化を測定することにより評価される。
【0034】
1つの実施形態において、Fcドメイン(またはCD16結合性ドメイン)、NKp46結合性ドメインおよびサイトカイン受容体結合性ドメインが、それらのそれぞれのNKp46、CD16Aまたはサイトカイン受容体結合パートナーに、そのような結合パートナーが細胞(例えばNK細胞)の表面において一緒に存在する場合に結合する能力を各々有するように、多特異性タンパク質は構成される。一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、NKp46に対する一価結合(例えば多特異性タンパク質は1つのみのNKp46 ABDを含む)、対象とする抗原に対する一価(または適宜二価)結合、CD16Aに対する一価結合(例えば多特異性タンパク質は1つのみのFcドメイン二量体を含む)、およびサイトカイン受容体に対する一価結合(例えば、多特異性タンパク質は1つのみのサイトカイン受容体ABDを含む)により特徴付けられ得る。
【0035】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、例えば、多特異性タンパク質内のドメインの配置または構成を通じて、適宜、伸長された構成にある場合に18オングストローム(5アミノ酸残基)、36オングストローム(10残基)または54オングストローム(15残基)の最大の潜在的な長さを有する1つまたは複数のドメインリンカーの使用(use of one or more using domain linkers)を通じて、NKp46結合性ドメインおよびサイトカイン受容体結合性ドメイン、および、存在し、かつCD16に結合する能力を有する場合に、CD16結合性ドメインが、NKp46、CD16Aおよびサイトカイン受容体の各々がNK細胞の表面において結合しているような膜平面結合コンフォメーションを取ることができるように構成されている。
【0036】
例えば、多特異性タンパク質は、異なるポリペプチド鎖(CH3-CH3会合を介して二量体化する)上に位置付けられた第1および第2のFcドメイン単量体を含むFcドメイン二量体を含む。第1のFcドメイン単量体は、そのN末端において抗NKp46 ABD(またはその部分)に融合することができ、そのC末端においてサイトカインに融合することができる。抗NKp46 ABDの部分は、例えば[(VHまたはVL)-CH1]単位または[(VHまたはVL)-CL]単位であり得、ABDはFabである。第2のFcドメイン単量体は、そのN末端において、対象とする抗原に結合するABD(またはその部分)に融合され得る。対象とする抗原に結合するABDの部分は、例えば、[(VHもしくはVL)-CH1]単位または[(VHもしくはVL)-CL]単位であることができ、ABDはFabである。
図2~4は例示的なドメイン構成を示す。
【0037】
任意の実施形態において、サイトカイン受容体結合性ドメイン(サイトカイン受容体ABD)、NKp46結合性ドメイン(NKp46 ABD)およびCD16結合性ドメイン(CD16 ABD)は、ドメインが、多量体(例えばヘテロ多量体)タンパク質上で、互いに隣接している構成において配向されるように多特異性タンパク質を構成する1つまたは複数のポリペプチド鎖内で置かれているとして特定され得る。ドメインは、適宜、ドメインリンカー、例えば予め決定された抗原にそれ自体は結合しない5~20残基の連結性ペプチドにより分離され得る。
【0038】
任意の実施形態において、多特異性タンパク質は、例えば、多特異性タンパク質内のドメインの配置または構成を通じて、NKp46 ABDおよびサイトカイン受容体ABD(例えばサイトカイン部分)が、多特異性タンパク質分子内のFcドメイン二量体の同じ側または面にあり、それにより、膜平面結合コンフォメーションにおいてNKp46、CD16Aおよびサイトカイン受容体に結合する能力を増強する位置を取る能力を有するように構成されているとして特定され得る。適宜、本開示のヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体タンパク質において、NKp46 ABD(または、ABDが2つのポリペプチド鎖の会合から形成される場合に、その部分)およびサイトカイン受容体ABD(または、ABDが2つのポリペプチド鎖の会合から形成される場合に、その部分)を同じポリペプチド鎖上にFcドメイン単量体のうちの1つと共に位置付ける。
【0039】
1つの実施形態において、NKp46結合性ドメインは、多特異性タンパク質のNKp46結合性ドメインが、細胞の表面においてNKp46に結合している場合に、細胞膜から約70オングストロームであるようにNKp46に結合する。NKp46-1 VH/VLペアのCDRを組み込んだタンパク質により例示される1つのそのような実施形態において、NKp46結合性ドメインはNKp46ポリペプチドのD1/D2ジャンクションに結合する。適宜、NKp46結合性ドメインは、野生型NKp46ポリペプチドと比較して、NKp46突然変異体2(残基K41、E42およびE119において突然変異を有する)ならびに突然変異体Supp7(残基Y121およびY194において突然変異を有する)に対する減少した結合性を呈する。1つの実施形態において、NKp46抗原結合性ドメインは、野生型NKp46ポリペプチドと比較して、突然変異:K41、E42、E119、Y121およびY194のうちの1、2、3、4または5つを有するNKp46突然変異体ポリペプチドに対する減少した結合性を示すとして特徴付けられ得る。
【0040】
NKp46-3 VH/VLペアのCDRを組み込んだタンパク質により例示される別の実施形態において、NKp46結合性ドメインは、D1/D2ジャンクションと比較してNK細胞膜のより近位に位置付けられるNKp46ポリペプチドのD2ドメインに結合する。任意に、NKp46結合性ドメインは、野生型NKp46ポリペプチドと比較して、NKp46突然変異体19(残基I135、およびS136において突然変異を有する)ならびに突然変異体Supp8(残基P132およびE133において突然変異を有する)に対する減少した結合性を呈する。1つの実施形態において、NKp46抗原結合性ドメインは、野生型NKp46ポリペプチドと比較して、突然変異:I135、S136、P132およびE133のうちの1、2、3または4つを有するNKp46突然変異体ポリペプチドに対する減少した結合性を示すとして特徴付けられ得る。1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、D2ドメイン内で結合するNKp46結合性ドメインとサイトカインとの間に少なくとも10個のアミノ酸残基のドメインリンカーを含む。
【0041】
本明細書における任意の実施形態において、多特異性タンパク質は、1つのみの(単一)サイトカイン受容体結合性ドメインを有することにより特徴付けられ得る。
【0042】
本明細書における任意の実施形態において、多特異性タンパク質は、1つのみの(単一)NKp46結合性ドメインを有することにより特徴付けられ得る。
【0043】
NKp46 ABDは、好都合には、Fab、単一ドメイン抗体またはscFvであり得る。Fcドメイン単量体または二量体は、1つまたは複数(例えば1~5個、1~10個)のアミノ酸置換または他の改変を適宜含む、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプのものであり得る。サイトカイン(Cyt)は、例えば、IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドであり得、適宜、ポリペプチドは、野生型ヒトサイトカイン対応物から少なくとも1つのアミノ酸残基だけ異なる変異型サイトカインである。
【0044】
1つの態様において、タンパク質は、以下の構造(左においてトポロジカルなN末端および右においてC末端):
(NKp46 ABD)
(Fcドメイン二量体)(Cyt)
(抗原ABD)
を有するヘテロ多量体タンパク質におけるように、両方ともFcドメイン二量体のトポロジカルにN末端に置かれた、標的細胞上の対象とする抗原に結合するABD(抗原ABD)およびNKp46に結合するABDを含み、
抗原ABDおよびFcドメイン二量体はリンカーまたは免疫グロブリンヒンジポリペプチドにより接続されており、NKp46 ABDおよびFcドメイン二量体はリンカーまたは免疫グロブリンヒンジポリペプチドにより接続されており、かつFcドメイン二量体およびCytはリンカーにより接続されている。
【0045】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、NKp46ポリペプチドおよびサイトカイン受容体の各々に一価で結合し、多特異性タンパク質は、対象とする抗原を発現する標的細胞をNKp46発現NK細胞が溶解することを指令する能力を有する。有利には、1つの実施形態において、NK細胞および標的細胞の存在下で、多特異性タンパク質は、(i)標的細胞上の対象とする抗原、(ii)NK細胞上のNKp46、(iii)NK細胞上のCD16Aおよび(iv)NK細胞上のサイトカイン受容体(例えばCD122、IL-21R、IL-7Ra、IL-27Ra、IL-12R、IL-18R、IFNAR)に結合することができ、かつ標的細胞およびNK細胞上のそのようなタンパク質に結合した場合に、NKp46(タンパク質はNKp46アゴニストとして作用する)およびサイトカイン受容体(タンパク質はサイトカイン受容体アゴニストとして作用する)を通じてNK細胞におけるシグナル伝達および/またはNK細胞の活性化を誘導し、それにより、特にNKp46により伝達される活性化シグナルを介して、NK細胞の活性化および/または標的細胞の溶解を促進することができる。
【0046】
1つの実施形態において、NK細胞および標的細胞の存在下で、多特異性タンパク質は、NK細胞の細胞傷害性、NK細胞におけるサイトカイン受容体経路シグナル伝達(STATシグナル伝達により評価された場合)および/またはNK細胞の活性化を誘導することができ、そのような細胞傷害性、活性化および/またはシグナル伝達は、多特異性タンパク質が標的細胞の非存在下でNK細胞と接触された場合に観察される場合よりも大きい(例えば少なくとも100倍または1000倍低いEC50値)。
【0047】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46およびCD122に結合することができ(例えば、タンパク質は、IL2またはIL15部分、適宜、CD25に対する減少した結合性を有する改変型または変異型IL2またはIL15を含む)、かつ、NKp46およびCD122の両方に結合した場合に、NKp46およびCD122の両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびCD122に結合することができ、かつ、NKp46、CD16およびCD122に結合した場合に、NKp46、CD16AおよびCD122を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば、実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT5を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0048】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46およびIL-21Rに結合することができ(例えばタンパク質はIL21部分を含む)、かつ、NKp46およびIL-21Rの両方に結合した場合に、NKp46およびIL-21Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびIL-21Rに結合することができ、かつ、NKp46、CD16AおよびIL-21Rに結合した場合に、NKp46、CD16AおよびIL-21Rを通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば、実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT3を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0049】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46およびIL-18Rに結合することができ(例えばタンパク質はIL18部分を含む)、かつ、NKp46ならびにIL-18R(IL-18Rαおよび/またはIL-18Rβ)の両方に結合した場合にNKp46およびIL-18Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびIL-18Rに結合することができ、かつ、NKp46、CD16AおよびIL-18Rに結合した場合に、NKp46、CD16AおよびIL-18Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば、実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT3を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0050】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46ならびにIL-7R[例えばIL-7Rα(CD127)および/またはCD132]に結合することができ(例えばタンパク質はIL-7部分を含む)、かつ、NKp46およびIL-7Rの両方に結合した場合に、NKp46およびIL-7Rαの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびIL-7Rに結合することができ、かつ、NKp46、CD16AおよびIL-7Rに結合した場合に、NKp46、CD16AおよびIL-7Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば、実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT5を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0051】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46ならびにIL-27R(例えばIL-27Rαおよび/またはGP130)に結合することができ(例えばタンパク質はIL-27部分を含む)、かつ、NKp46およびIL-27Rの両方に結合した場合に、NKp46およびIL-27Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびIL-27Rに結合することができ、かつ、NKp46、CD16AおよびIL-27Rに結合した場合に、NKp46、CD16AおよびIL-27Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT1を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0052】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46ならびにIL-12R(例えば、IL-12Rβ1および/またはIL-12Rβ2)に結合することができ(例えばタンパク質はIL-27部分を含む)、かつ、NKp46およびIL-12Rの両方に結合した場合に、NKp46およびIL-12Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびIL-12Rに結合することができ、かつ、NKp46、CD16AおよびIL-12Rに結合した場合に、NKp46、CD16AおよびIL-12Rの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば、実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT4を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0053】
適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46およびIFNARに結合することができ、かつ、NKp46ならびにIFNAR(IFNAR1および/またはIFNAR2)の両方に結合した場合に、NKp46およびIFNARの両方を通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。例えば、多特異性タンパク質はIFN-αまたはIFN-β部分を含むことができる。適宜、多特異性タンパク質は、NK細胞上のNKp46、CD16AおよびIFNARに結合することができ、かつ、NKp46、CD16AおよびIFNARの両方に結合した場合に、NKp46、CD16AおよびIFNARを通じてNK細胞においてシグナル伝達を誘導することができる。NKp46および/またはCD16Aを介するシグナル伝達は、NK細胞活性化のマーカー(例えば、実施例において使用されたマーカー、CD69発現など)により評価され得る。適宜、サイトカインシグナル伝達は、STAT[例えば、STAT1、STAT2またはIFN調節因子(IRF)-9]を測定することにより評価され、観察されるシグナル伝達は、NKp46結合性ドメインが対照ABD(例えばアッセイシステム中に存在するいかなるタンパク質にも結合しないもの)で置き換えられている比較用タンパク質を用いて観察される場合よりも大きい。
【0054】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、FcドメインがヒトFcRnポリペプチドにより結合されるような十分なヒトFcドメインの全長Fcドメインまたは少なくとも部分を含み、適宜、SPRにより評価された場合の前記FcRn結合親和性は、従来的なヒトIgG1抗体の場合の1-log以内である。
【0055】
多特異性タンパク質は、有利には、CD16+NK細胞およびCD16-NK細胞の両方を強力に動員することができる(すべてのNK細胞はNKp46+である)。
【0056】
1つの態様において、多特異性タンパク質は、2つまたはより多くのポリペプチド鎖を含み、すなわち複数鎖タンパク質(多量体タンパク質とも称される)を含む。例えば、多特異性タンパク質または複数鎖タンパク質は、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体もしくはヘテロ四量体であり得るか、または4つより多くのポリペプチド鎖を含んでもよい。
【0057】
任意の抗原結合性ドメイン[例えば対象とする抗原(例えば腫瘍抗原)、NKp46、またはサイトカイン受容体に結合するABD]は、例えばscFvまたは単一抗原結合性ドメイン、例えばsdAbまたはナノボディ、VNARまたはVHHドメインまたはDARPin(登録商標)タンパク質モジュールとして、単一のポリペプチド鎖上に完全に含有され得る。代替的に、抗原結合性ドメインは、別々のポリペプチド鎖上に置かれた2つまたはより多くのタンパク質ドメインから作ることができ、その結果、2つまたはより多くの相補的なタンパク質ドメイン(例えばVH/VLペアとして)が多量体タンパク質中で会合している場合に抗原結合性ドメインはその標的に結合する。
【0058】
ABDは、柔軟性ドメインリンカーを介して(適宜、介在配列、例えば定常領域ドメインまたはその部分、例えばCH1もしくはCκを介して)Fcドメイン単量体(またはそのCH2もしくはCH3ドメイン)に接続され得る。リンカーは、ポリペプチドリンカー、例えば、少なくとも5残基、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20残基、またはより多くの残基の長さを含むペプチドリンカーであり得る。他の実施形態において、リンカーは、2~4残基、2~5残基、2~6残基、2~8残基、5~10残基、2~15残基、4~15残基、5~15残基、10~15残基、4~20残基、5~20残基、2~20残基、10~30残基、または10~50残基の長さを含む。適宜、リンカーは、抗体定常領域に由来するアミノ酸配列、例えば、N末端CH1またはヒンジ配列を含む。適宜、リンカーはアミノ酸配列RTVAを含む。適宜、リンカーは、グリシンおよび/またはセリン残基を主にまたは排他的に含む、例えば、アミノ酸配列(GxS)n(Gは、1、2、3または4であり、かつnは、1~10、1~6または1~4の整数である)を含む柔軟性リンカーである。適宜、リンカーは、1~20個または1~10個のさらなるアミノ酸残基、例えばアミノ酸配列GEGTSTGS(G2S)2GGADを含む。
【0059】
1つの実施形態において、提供されるのは、ポリペプチド鎖1、2および3:
【0060】
【化1】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は、対象とする抗原に結合する第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は、NKp46に結合する第2のABDを形成し;
CH1はヒト免疫グロブリンCH1ドメインであり、かつCLは軽鎖定常ドメインであり;
(CH1またはCL)
aおよび(CH1またはCL)
bのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
Lはアミノ酸ドメインリンカーであり、各々のLは異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドである]
を有するヘテロ三量体である。
【0061】
1つの実施形態において、提供されるのは、ポリペプチド鎖1、2および3:
【0062】
【化2】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は、NKp46に結合する第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は、対象とする抗原に結合する第2のABDを形成し;
CH1はヒト免疫グロブリンCH1ドメインであり、かつCLは軽鎖定常ドメインであり;
(CH1またはCL)
aおよび(CH1またはCL)
bのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
Lはアミノ酸ドメインリンカーであり、各々のLは異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドである]
を有するヘテロ三量体である。
【0063】
1つの実施形態において、提供されるのは、ポリペプチド鎖1、2、3および4:
【0064】
【化3】
[式中、
V
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、V
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-1およびV
b-1は、対象とする抗原に結合する第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、かつV
a-2およびV
b-2は、NKp46に結合する第2のABDを形成し;
CH1はヒト免疫グロブリンCH1ドメインであり、かつCLは軽鎖定常ドメインであり;
(CH1またはCL)
aおよび(CH1またはCL)
cのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
(CH1またはCL)
bおよび(CH1またはCL)
dのうちの1つはCH1であり、かつ他方はCLであり、その結果、(CH1/CL)ペアが形成され;
ヒンジは免疫グロブリンヒンジ領域またはその部分であり;
Lはアミノ酸ドメインリンカーであり、各々のLは異なるかまたは同じであり得;
CH2およびCH3はそれぞれヒト免疫グロブリンCH2およびCH3ドメインであり;かつ
Cytは、NK細胞上に存在するサイトカイン受容体に結合するサイトカインポリペプチドまたはその部分であり、適宜、Cytは、野生型または変異型ヒトIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αまたはIFN-βポリペプチドである]
を有するヘテロ四量体である。
【0065】
本明細書におけるタンパク質において、ヒンジポリペプチドが鎖1中に存在する場合、ヒンジポリペプチドは鎖2中にも存在する。ポリペプチド鎖1および2はそのため、鎖間ジスルフィド結合を形成し、かつそれにより互いに結合され得る。
【0066】
本開示は、本明細書においてさらに記載されているさらなるヘテロ二量体、ヘテロ三量体およびヘテロ四量体多特異性分子およびドメイン配置をさらに提供する。1つの態様において、多特異性タンパク質は、
図2~4のいずれかにおいて示されている構造またはドメイン配置を有するヘテロ多量体、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体、ヘテロ四量体である。
【0067】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、ABD(例えば、抗NKp46 ABD、対象とする抗原または腫瘍抗原に結合するABD)は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)であって、各々のVHおよびVLが、3つの相補性決定領域(CDR-1、CDR-2およびCDR-3)を含む、VHおよびVLを含むとして特定され得る。適宜、CDRは、非ヒト哺乳動物、例えばマウスまたはラットに由来する。本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、VHは、ヒトVHドメイン(例えば、フレームワーク、および、適宜、ヒトIGHV遺伝子に由来するかまたはそれを起源とするさらなるCDR)のアミノ酸配列を有するとして特定され得る。本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、VLは、ヒトVLドメイン(例えば、フレームワーク、および、適宜、ヒトIGKVまたはIGLV遺伝子に由来するかまたはそれを起源とするさらなるCDR)のアミノ酸配列を有するとして特定され得る。
【0068】
実施形態のいずれかの1つの態様において、VH領域は、IGHV1-18、IGHV1-2、IGHV1-24、IGHV1-3、IGHV1-45、IGHV1-46、IGHV1-58、IGHV1-69、IGHV1-69-2、IGHV1-69D、IGHV1-8、IGHV2-26、IGHV2-5、IGHV2-70、IGHV2-70D、IGHV3-11、IGHV3-13、IGHV3-15、IGHV3-20、IGHV3-21、IGHV3-23、IGHV3-23D、IGHV3-30、IGHV3-30-3、IGHV3-30-5、IGHV3-33、IGHV3-43、IGHV3-43D、IGHV3-48、IGHV3-49、IGHV3-53、IGHV3-62、IGHV3-64、IGHV3-64D、IGHV3-66、IGHV3-7、IGHV3-72、IGHV3-73、IGHV3-74、IGHV3-9、IGHV3-NL1、IGHV4-28、IGHV4-30-2、IGHV4-30-4、IGHV4-31、IGHV4-34、IGHV4-38-2、IGHV4-39、IGHV4-4、IGHV4-59、IGHV4-61、IGHV5-10-1、IGHV5-51、IGHV6-1、IGHV7-4-1、IGHV1-38-4、IGHV1/OR15-1、IGHV1/OR15-5、IGHV1/OR15-9、IGHV1/OR21-1、IGHV2-70、IGHV2/OR16-5、IGHV3-16、IGHV3-20、IGHV3-25、IGHV3-35、IGHV3-38、IGHV3-38-3、IGHV3/OR15-7、IGHV3/OR16-10、IGHV3/OR16-12、IGHV3/OR16-13、IGHV3/OR16-17、IGHV3/OR16-20、IGHV3/OR16-6、IGHV3/OR16-8、IGHV3/OR16-9、IGHV4-61、IGHV4/OR15-8、IGHV7-81、およびIGHV8-51-1からなる群から選択されるヒトV遺伝子群の遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。適宜、VH領域は、前記遺伝子からのアミノ酸配列(例えばCDRおよび/またはヒトフレームワーク領域、例えばKabat番号付けによるもの)を含むVHを含む。実施形態のいずれかの1つの態様において、VH領域は、配列番号184~261のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0069】
実施形態のいずれかの1つの態様において、VL領域は、IGKV1-12、IGKV1-13、IGKV1-16、IGKV1-17、IGKV1-27、IGKV1-33、IGKV1-39、IGKV1-5、IGKV1-6、IGKV1-8、IGKV1-9、IGKV1-NL1、IGKV1D-12、IGKV1D-13、IGKV1D-16、IGKV1D-17、IGKV1D-33、IGKV1D-43、IGKV1D-8、IGKV2-24、IGKV2-28、IGKV2-29、IGKV2-30、IGKV2-40、IGKV2D-26、IGKV2D-28、IGKV2D-29、IGKV2D-30、IGKV2D-40、IGKV3-11、IGKV3-15、IGKV3-20、IGKV3D-11、IGKV3D-15、IGKV3D-20、IGKV3D-7、IGKV4-1、IGKV5-2、IGKV6-21、IGKV6D-21、IGKV1-37、IGKV1/OR2-0、IGKV1/OR2-108、IGKV1D-37、IGKV1D-42、IGKV2D-24、IGKV3-7、IGKV3/OR2-268、IGKV3D-20、IGKV6D-41、IGLV1-36、IGLV1-40、IGLV1-44、IGLV1-47、IGLV1-51、IGLV10-54、IGLV2-11、IGLV2-14、IGLV2-18、IGLV2-23、IGLV2-8、IGLV3-1、IGLV3-10、IGLV3-12、IGLV3-16、IGLV3-19、IGLV3-21、IGLV3-22、IGLV3-25、IGLV3-27、IGLV3-9、IGLV4-3、IGLV4-60、IGLV4-69、IGLV5-37、IGLV5-39、IGLV5-45、IGLV5-52、IGLV6-57、IGLV7-43、IGLV7-46、IGLV8-61、IGLV9-49、IGLV1-41、IGLV1-50、IGLV11-55、IGLV2-33、IGLV3-32、IGLV5-48およびIGLV8/OR8-1からなる群から選択されるヒトV遺伝子群の遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。適宜、VL領域は、前記遺伝子からのアミノ酸配列(例えばCDRおよび/またはヒトフレームワーク領域、例えばKabat番号付けによるもの)を含むVLを含む。実施形態のいずれかの1つの態様において、VL領域は、配列番号262~351のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0070】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、ABDはscFvまたはFabを含み、scFvは、配列番号3、5、7、9、11、13、112、113、115、116、117、119、120、121、123、124、125、127、128、129、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154および184~261のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH、ドメインリンカー、ならびに配列番号4、6、8、10、12、14、114、118、122、126、130、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155および262~351のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLを含み;かつFabは、配列番号3、5、7、9、11、13、112、113、115、116、117、119、120、121、123、124、125、127、128、129、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154および184~261のいずれかから選択される配列に対して(to a selected)少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのVH、配列番号4、6、8、10、12、14、114、118、122、126、130、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155および262~351のいずれかから選択される配列に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのVL、配列番号156に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのヒトCH1ドメインならびに配列番号159に対して少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む1つのヒトCLドメインを含み、VHはCH1またはCLドメインのうちの1つに融合しており、かつVLはCH1またはCLドメインのうちの他方に融合している。
【0071】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL2は、配列番号354~365のいずれかのIL-2ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。適宜、IL2は、CD25に対する結合性を低減させる2、3、4、5またはより多くのアミノ酸置換、例えば本明細書において開示される残基のいずれかにおける置換をさらに含む。
【0072】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL15は、配列番号366のいずれかのIL-15ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL12は、配列番号386および/もしくは387のいずれかのIL-12ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0074】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL7は、配列番号383のいずれかのIL-7ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL27は、配列番号384および/もしくは385のいずれかのIL-21ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL21は、配列番号368もしくは369のいずれかのIL-27ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IL18は、配列番号370のいずれかのIL-18ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IFN-αは、配列番号371~381のいずれかのIFN-αポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、IFN-βは、配列番号382のいずれかのIFN-αポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、Fcドメインは、配列番号160~165のいずれかのFcポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、CH1、CH2およびCH3ドメインのそれぞれは、配列番号156、157もしくは158のCH1、CH2またはCH3ポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、CKまたはCLドメインは、配列番号159のいずれかのCKポリペプチドに対して、またはその少なくとも40、50、60、70、80もしくは100個のアミノ酸残基の連続する配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、ヒンジドメインは、配列番号166~170のいずれかのCKポリペプチドに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0084】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、本明細書において記載されるヘテロ三量体タンパク質の第1の鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、本明細書において記載されるヘテロ三量体タンパク質の第2の鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび本明細書において記載されるヘテロ三量体タンパク質の第3の鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、本明細書において記載されるヘテロ二量体タンパク質の第1の鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、および本明細書において記載されるヘテロ二量体タンパク質の第2の鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0085】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、本明細書において記載されるヘテロ三量体タンパク質の第1の鎖のアミノ酸配列を含むポリペプチド、本明細書において記載されるヘテロ三量体タンパク質のアミノ酸配列(an amino acid sequence of a heterotrimeric protein)を含むポリペプチドおよび本明細書において記載されるヘテロ三量体タンパク質の第3の鎖のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0086】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、配列番号175のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号176のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび配列番号177のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0087】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、配列番号178のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号179のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび配列番号180のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0088】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、配列番号181のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号182のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドおよび配列番号183のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0089】
1つの態様において、本発明は、本明細書において開示されるT53Aタンパク質の第1のポリペプチド鎖の配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98または99%同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖;本明細書において開示されるそれぞれのT53Aタンパク質の第2のポリペプチド鎖の配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98または99%同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;および適宜、本明細書において開示されるT53Aタンパク質の第3のポリペプチド鎖の配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98または99%同一のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖を含む、単離された多特異性ヘテロ三量体タンパク質を提供する。1つの実施形態において、CDRは、配列同一性を計算するために考慮される配列から除外される。1つの実施形態において、VHおよび/またはVL可変領域は、ポリペプチド鎖の配列同一性を計算するために考慮される配列から除外される。適宜、各々のVH領域は、配列番号3、5、7、9、11、13、112、113、115、116、117、119、120、121、123、124、125、127、128、129、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154および184~261のいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。適宜、各々のVL領域は、配列番号4、6、8、10、12、14、114、118、122、126、130、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155および262~351のいずれかのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0090】
本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、提供されるのは、第1のポリペプチド鎖、および/または第2のポリペプチド鎖、および/または第3のポリペプチド鎖および/または第4のポリペプチドをコードする組換え核酸である。本明細書において記載される実施形態のいずれかの1つの態様において、本発明は、第1のポリペプチド鎖、および/または第2のポリペプチド鎖および/または第3のポリペプチド鎖をコードする核酸を含む組換え宿主細胞であって、適宜、少なくとも1、2、3または4mg/Lの収率(精製の前または後の最終の生産性または濃度)と共に本発明に従って多量体または他のタンパク質を産生する、組換え宿主細胞を提供する。提供されるのはまた、本発明による第1のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸、本発明による第2のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸、および、適宜、本発明による第3のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸を含む、キットまたは核酸のセットである。提供されるのはまた、本発明による二量体、三量体および四量体タンパク質を作製する方法である。
【0091】
方法のいずれも、特に「発明の詳細な説明」におけるものを含む、本出願において記載される任意の工程を含むとしてさらに特徴付けられ得る。本発明はさらに、本明細書において記載されるタンパク質を同定、試験および/または作製する方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法のいずれかにより取得可能な多特異性タンパク質に関する。本開示はさらに、本明細書において開示される多特異性タンパク質のうちの少なくとも1つを含有する薬学的または診断用製剤に関する。本開示はさらに、処置または診断の方法において主題多特異性タンパク質を使用する方法に関する。
【0092】
本発明のこれらのおよび追加の有利な態様および特色は、本明細書の他の箇所にさらに記載され得る。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】
図1は、1つの面において腫瘍細胞上の腫瘍抗原に結合し、別の面においてIL2βγ複合体、NKp46およびCD16Aの三重の受容体シス提示を介してNK細胞に結合する多特異性NK細胞エンゲージャー(NKCE)タンパク質のトポロジーを示す。NK細胞上のIL2v捕捉は、CD122に対する結合性を向上させ、かつCD25媒介性IL-2提示を模倣し得る。
【
図2A】
図2Aおよび
図2Bは、NK細胞上のNKp46、CD16Aおよびサイトカイン(cytokiner)受容体(例えばCD122)、ならびに腫瘍細胞上の腫瘍抗原(例えばTA、Tag、CD20)に結合するT53Aフォーマットの例示的な多特異性タンパク質を示す。
図2Aにおいて、CH3ドメイン中の星印は、突然変異H435RおよびY436F(Kabat EU番号付け)を指し示す。
【
図2B】
図2Aおよび
図2Bは、NK細胞上のNKp46、CD16Aおよびサイトカイン(cytokiner)受容体(例えばCD122)、ならびに腫瘍細胞上の腫瘍抗原(例えばTA、Tag、CD20)に結合するT53Aフォーマットの例示的な多特異性タンパク質を示す。
図2Aにおいて、CH3ドメイン中の星印は、突然変異H435RおよびY436F(Kabat EU番号付け)を指し示す。
【
図3】
図3は、NK細胞上のNKp46、CD16Aおよびサイトカイン受容体(例えばCD122)、ならびに腫瘍細胞上の腫瘍抗原(TA)に結合するヘテロ四量体フォーマットの例示的な多特異性タンパク質を示し、NKp46結合性ドメインおよびTA結合性ドメインの両方は、タンパク質中でトポロジカルにN末端に(かつFcドメインに対してN末端に)位置付けられるFabであり、サイトカインはトポロジカルにC末端に置かれている。二量体Fcドメインは、Fcドメイン二量体のN末端側にあるTA ABDおよびNKp46 ABDと、Fcドメイン二量体のC末端側にあるサイトカインとの間に差し挟まれている。タンパク質は、1つのNKp46 ABD、1つのTA ABD、1つの二量体Fcドメインおよび1つのサイトカイン部分を有し、それにより、TA、NKp46およびサイトカイン受容体結合について1:1:1のフォーマットを有する。
【
図4A】
図4Aは、トポロジカルにタンパク質のN末端に位置付けられた2つのTA結合性ドメインおよび1つのNKp46結合性ドメイン、二量体Fcドメイン、ならびにトポロジカルにC末端に置かれたサイトカインを有する例示的な多特異性タンパク質を示す。タンパク質は、1つの二量体Fcドメインおよび1つのサイトカインを有し、それにより、TA、NKp46およびサイトカイン受容体結合について2:1:1のフォーマットを有する。
図4Bにおいて示されるのは、3つの異なる鎖から作られた
図4Aのタンパク質についての例示的なヘテロ四量体タンパク質構造である。
図4Cにおいて示されるのは、4つの異なる鎖から作られた
図4Aのタンパク質についての例示的なヘテロ五量体タンパク質構造である。
図4Bおよび
図4Cにおいて、CH3ドメイン中の星印は突然変異H435RおよびY436F(Kabat EU番号付け)を指し示す。
【
図4B】
図4Aは、トポロジカルにタンパク質のN末端に位置付けられた2つのTA結合性ドメインおよび1つのNKp46結合性ドメイン、二量体Fcドメイン、ならびにトポロジカルにC末端に置かれたサイトカインを有する例示的な多特異性タンパク質を示す。タンパク質は、1つの二量体Fcドメインおよび1つのサイトカインを有し、それにより、TA、NKp46およびサイトカイン受容体結合について2:1:1のフォーマットを有する。
図4Bにおいて示されるのは、3つの異なる鎖から作られた
図4Aのタンパク質についての例示的なヘテロ四量体タンパク質構造である。
図4Cにおいて示されるのは、4つの異なる鎖から作られた
図4Aのタンパク質についての例示的なヘテロ五量体タンパク質構造である。
図4Bおよび
図4Cにおいて、CH3ドメイン中の星印は突然変異H435RおよびY436F(Kabat EU番号付け)を指し示す。
【
図4C】
図4Aは、トポロジカルにタンパク質のN末端に位置付けられた2つのTA結合性ドメインおよび1つのNKp46結合性ドメイン、二量体Fcドメイン、ならびにトポロジカルにC末端に置かれたサイトカインを有する例示的な多特異性タンパク質を示す。タンパク質は、1つの二量体Fcドメインおよび1つのサイトカインを有し、それにより、TA、NKp46およびサイトカイン受容体結合について2:1:1のフォーマットを有する。
図4Bにおいて示されるのは、3つの異なる鎖から作られた
図4Aのタンパク質についての例示的なヘテロ四量体タンパク質構造である。
図4Cにおいて示されるのは、4つの異なる鎖から作られた
図4Aのタンパク質についての例示的なヘテロ五量体タンパク質構造である。
図4Bおよび
図4Cにおいて、CH3ドメイン中の星印は突然変異H435RおよびY436F(Kabat EU番号付け)を指し示す。
【
図5】
図5は、野生型IL-2または変異型IL2のいずれかを含有し、かつNKp46、CD16Aおよび対象とする抗原に対する結合性を欠いたヘテロ三量体タンパク質によるTReg細胞の活性化を示す。変異型IL2を含有するタンパク質は、野生型IL-2および野生型IL-2を含有するヘテロ三量体タンパク質と比較してTreg細胞を活性化させる能力の強い減少を示した。
【
図6】
図6は、精製されたNK細胞が、CD20×NKp46結合性タンパク質によりCD20陽性RAJI腫瘍標的細胞を溶解することを指令する能力を示す。FcドメインとIL2vとの間に異なるリンカーを有するGA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、腫瘍標的細胞のNK細胞溶解の媒介において非常に強力であった。
【
図7】
図7、
図8、
図9および
図10は、それぞれNK細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞およびTreg細胞の中でのpSTAT5細胞の%を示す。5、10または15残基のリンカーを有するGA101-T53A-NKp46-IL2vは、各々の細胞タイプの同等の活性化を示した。GA101-T53A-NKp46-IL2vは、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、NK細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における強い増加を結果としてもたらした。またさらに、GA101-T53A-NKp46-IL2vは、強い減少と組み合わせて、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、CD4 T細胞 CD8 T細胞および特にTreg細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における減少を結果としてもたらした。GA101-T5-NKp46-IL2vタンパク質は、したがって、Treg細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞を上回るNK細胞の選択的な活性化を可能にした。
【
図8】
図7、
図8、
図9および
図10は、それぞれNK細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞およびTreg細胞の中でのpSTAT5細胞の%を示す。5、10または15残基のリンカーを有するGA101-T53A-NKp46-IL2vは、各々の細胞タイプの同等の活性化を示した。GA101-T53A-NKp46-IL2vは、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、NK細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における強い増加を結果としてもたらした。またさらに、GA101-T53A-NKp46-IL2vは、強い減少と組み合わせて、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、CD4 T細胞 CD8 T細胞および特にTreg細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における減少を結果としてもたらした。GA101-T5-NKp46-IL2vタンパク質は、したがって、Treg細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞を上回るNK細胞の選択的な活性化を可能にした。
【
図9】
図7、
図8、
図9および
図10は、それぞれNK細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞およびTreg細胞の中でのpSTAT5細胞の%を示す。5、10または15残基のリンカーを有するGA101-T53A-NKp46-IL2vは、各々の細胞タイプの同等の活性化を示した。GA101-T53A-NKp46-IL2vは、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、NK細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における強い増加を結果としてもたらした。またさらに、GA101-T53A-NKp46-IL2vは、強い減少と組み合わせて、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、CD4 T細胞 CD8 T細胞および特にTreg細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における減少を結果としてもたらした。GA101-T5-NKp46-IL2vタンパク質は、したがって、Treg細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞を上回るNK細胞の選択的な活性化を可能にした。
【
図10】
図7、
図8、
図9および
図10は、それぞれNK細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞およびTreg細胞の中でのpSTAT5細胞の%を示す。5、10または15残基のリンカーを有するGA101-T53A-NKp46-IL2vは、各々の細胞タイプの同等の活性化を示した。GA101-T53A-NKp46-IL2vは、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、NK細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における強い増加を結果としてもたらした。またさらに、GA101-T53A-NKp46-IL2vは、強い減少と組み合わせて、NKp46にもCD16Aにも結合しない野生型ヒトIL-2と比較して、CD4 T細胞 CD8 T細胞および特にTreg細胞の中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける増加を引き起こす能力における効力における減少を結果としてもたらした。GA101-T5-NKp46-IL2vタンパク質は、したがって、Treg細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞を上回るNK細胞の選択的な活性化を可能にした。
【発明を実施するための形態】
【0094】
定義
本明細書において使用される場合、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味することがある。請求項において使用される場合、語「含む」(comprising)と組み合わせて使用される場合、語「a」または「an」は、1つまたは1つより多くを意味することがある。
【0095】
「含む」(comprising)が使用される場合、これは、適宜、「から本質的になる」、または適宜、「からなる」により置き換えられ得る。
【0096】
本明細書において使用される場合、用語「抗原結合性ドメイン」または「ABD」は、エピトープに免疫特異的に結合する能力を有する3次元構造を含むドメインを指す。そのため、1つの実施形態において、前記ドメインは、超可変領域、適宜抗体鎖のVHおよび/またはVLドメイン、適宜少なくともVHドメインを含むことができる。別の実施形態において、結合性ドメインは抗体鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んでもよい。別の実施形態において、結合性ドメインは、非免疫グロブリンスキャフォールドからのポリペプチドドメインを含んでもよい。
【0097】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味において使用されており、全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、ならびに、所望される生物学的活性を呈する限り、抗体断片および誘導体を特に含む。抗体の産生に関連する様々な技術は、例えば、Harlow, et al., ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)において提供されている。「抗体断片」は、全長抗体の部分、例えばその抗原結合性または可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab)2、F(ab’)2、F(ab)3、Fv(典型的には抗体の単一のアームのVLおよびVHドメイン)、単鎖Fv(scFv)、dsFv、Fd断片(典型的にはVHおよびCH1ドメイン)、ならびにdAb(典型的にはVHドメイン)断片;VH、VL、VhH、ならびにV-NARドメイン;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ならびにカッパボディ(例えば、Ill et al., Protein Eng 1997;10: 949-57を参照);ラクダIgG;IgNAR;ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体断片、ならびに単離されたCDRまたは抗原結合性残基もしくはポリペプチドが会合または連結して一緒になって機能的抗体断片を形成することができる1つまたは複数の単離されたCDRまたは機能的なパラトープを含む。様々なタイプの抗体断片が、例えば、Holliger and Hudson, Nat Biotechnol 2005; 23, 1126-1136;国際公開第2005040219号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第20050238646号明細書および同第20020161201号明細書において記載または総説されている。
【0098】
用語「超可変領域」は、本明細書において使用される場合、抗原結合性の原因となる抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基[例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31~35(H1)、50~65(H2)および95~102(H3);Kabat et al. 1991]ならびに/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基[例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol 1987;196:901-917]を一般に含む。典型的には、この領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.、上掲において記載される方法により行われる。本明細書における「Kabat位置」、「Kabatにおけるような可変ドメイン残基番号付け」および「Kabatに従って」などの語句は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのためのこの番号付けシステムを指す。Kabat番号付けシステムを使用して、ペプチドの実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含有することがある。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後に挿入された単一のアミノ酸(Kabatに従って残基52a)ならびに重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばKabatに従って残基82a、82b、および82cなど)を含んでもよい。残基のKabat番号付けは、「標準的」なKabat番号付けされた配列との抗体の配列の相同性の領域におけるアライメントにより所与の抗体について決定されてもよい。
【0099】
本明細書において使用されている「フレームワーク」または「FR」残基により、CDRとして定義される領域を除外した抗体可変ドメインの領域が意味される。各々の抗体可変ドメインフレームワークは、CDRにより分離された連続する領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)にさらに分けられ得る。
【0100】
本明細書において定義されている「定常領域」により、軽鎖または重鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによりコードされる抗体由来定常領域が意味される。
【0101】
本明細書において使用されている「定常軽鎖」または「軽鎖定常領域」または「CL」により、カッパ(Cκ)またはラムダ(Cλ)軽鎖によりコードされる抗体の領域が意味される。定常軽鎖は、単一のドメインを典型的には含み、本明細書において定義されるように、Cκ、またはCλの108~214位を指し、番号付けはEUインデックスによるものである(Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., United States Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda)。
【0102】
本明細書において使用されている「定常重鎖」または「重鎖定常領域」により、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロン遺伝子によりコードされて、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA、またはIgEとして抗体のアイソタイプを定義する抗体の領域が意味される。全長IgG抗体について、本明細書において定義されている定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端を指し、そのため118~447位を含み、番号付けはEUインデックスによるものである。
【0103】
本明細書において使用されている「Fab」または「Fab領域」により、VH、CH1、VL、およびCL免疫グロブリンドメインを含む単位が意味される。用語Fabは、VL-CL部分と会合するVH-CH1部分を含む単位の他に、軽鎖ドメインと重鎖ドメインとの間のクロスオーバーまたはインターチェンジがあるクロスオーバーFab構造を含む。例えば、Fabは、VL-CH1単位と会合するVH-CL単位を有してもよい。Fabは、単離状態のこの領域、またはタンパク質、多特異性タンパク質もしくはABD、もしくは本明細書において概説されている任意の他の実施形態の文脈におけるこの領域を指すことがある。
【0104】
本明細書において使用されている「単鎖Fv」または「scFv」により、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体断片であって、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖中に存在するものが意味される。一般に、Fvポリペプチドは、抗原結合のための所望される構造をscFvが形成することを可能にするVHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvを産生する方法は当技術分野において周知である。scFvを産生する方法の総説には、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照。
【0105】
本明細書において使用されている「Fv」または「Fv断片」または「Fv領域」により、単一の抗体のVLおよびVHドメインを含むポリペプチドが意味される。
【0106】
本明細書において使用されている「Fc」または「Fc領域」により、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除外した抗体の定常領域を含むポリペプチドが意味される。そのため、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインのN末端にある柔軟性ヒンジを指す。IgAおよびIgMについて、FcはJ鎖を含んでもよい。IgGについて、Fcは免疫グロブリンドメインCγ2(CH2)およびCγ3(CH3)ならびに適宜Cγ1とCγ2との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、そのカルボキシル末端に対して残基C226、P230またはA231を含むように通常は定義され、番号付けはEUインデックスによるものである。Fcは、単離状態のこの領域、または、以下に記載されるように、Fcポリペプチドの文脈におけるこの領域を指すことがある。本明細書において使用されている「Fcポリペプチド」または「Fc由来ポリペプチド」により、Fc領域の全体または部分を含むポリペプチドが意味される。本明細書におけるFcポリペプチドは、抗体、Fc融合物およびFc断片を含むがそれに限定されない。また、本発明によるFc領域は、Fc関連エフェクター機能を変更する(増強するかまたは減少させる)少なくとも1つの改変を含有する変異型を含む。また、本発明によるFc領域は、例えば、異なるアイソタイプまたは種の抗体に由来する、異なるFc領域の異なる部分またはドメインを含むキメラFc領域を含む。
【0107】
本明細書において使用されている「可変領域」により、軽鎖(κおよびλを含む)ならびに重鎖免疫グロブリン遺伝子座位をそれぞれ構成するVL[Vκ(Vκ)およびVλを含む]ならびに/またはVH遺伝子のいずれかにより実質的にコードされる1つまたは複数のIgドメインを含む抗体の領域が意味される。軽鎖または重鎖可変領域(VLまたはVH)は、「相補性決定領域」または「CDR」として参照される3つの超可変領域を差し挟まれた「フレームワーク」または「FR」領域からなる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、例えばKabat["Sequences of Proteins of Immunological Interest," E. Kabat et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983)を参照]、およびChothiaにおけるように、精密に定義されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成軽鎖および重鎖の組み合わせられたフレームワーク領域は、抗原に対する結合の主な原因となるCDRを位置付けおよびアライメントするために役立つ。
【0108】
用語「~に特異的に結合する」は、抗体またはポリペプチドが、単離された標的細胞の表面上に存在する組換え形態のタンパク質、その中のエピトープ、またはネイティブなタンパク質のいずれかを使用して評価された場合に、結合パートナー、例えばNKp46に、好ましくは競合結合アッセイにおいて、結合できることを意味する。競合結合アッセイおよび特異的結合を決定するための他の方法は、以下にさらに記載されており、当技術分野において周知である。
【0109】
抗体またはポリペプチドが特定の多特異性タンパク質または特定のモノクローナル抗体(例えば、抗NKp46一特異性抗体または多特異性タンパク質の文脈におけるNKp46-1、-2、-4、-6または-9)と「競合する」と言われる場合、それは、抗体またはポリペプチドが、組換え標的(例えばNKp46)分子または表面発現される標的(例えばNKp46)分子のいずれかを使用する結合アッセイにおいて特定の多特異性タンパク質またはモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいてNKp46ポリペプチドまたはNKp46発現細胞に対するNKp46-1、-2、-4、-6または-9の結合性を低減させる場合、抗体は、それぞれNKp46-1、-2、-4、-6または-9と「競合する」と言われる。
【0110】
用語「親和性」は、本明細書において使用される場合、エピトープに対する抗体またはタンパク質の結合の強さを意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag](式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は未結合の抗体のモル濃度であり、[Ag]は未結合の抗原のモル濃度である)として定義される解離定数KDにより与えられる。親和性定数KAは1/KDにより定義される。タンパク質の親和性を決定する好ましい方法は、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988)、Coligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)、およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589-601 (1983)(これらの参考文献は参照により本明細書に全体が組み込まれる)において見出され得る。タンパク質の親和性を決定するための当技術分野において周知の1つの好ましいおよび標準的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニング[例えばBIAcore(商標)SPR分析デバイスを用いる分析によるもの]の使用である。
【0111】
本発明の文脈内において、「決定因子」は、ポリペプチド上の相互作用または結合の部位を呼称する。
【0112】
用語「エピトープ」は、抗原決定因子を指し、抗体またはタンパク質が結合する抗原上の区画または領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接的に関与するアミノ酸残基の他に、特有の抗原結合性抗体またはペプチドにより有効に遮断されるアミノ酸残基、すなわち、抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。それは、例えば、抗体または受容体と組み合わせられ得る複合体抗原分子上の最も単純な形態または最小の構造的区画である。エピトープは、リニアまたはコンフォメーショナル/構造的であり得る。用語「リニアエピトープ」は、アミノ酸の直鎖状配列(一次構造)上で連続するアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。用語「コンフォメーショナルまたは構造的エピトープ」は、すべてが連続しているわけではなく、そのため、分子のフォールディング(二次、三次および/または四次構造)により互いに近接状態とされるアミノ酸の直鎖状配列の分離された部分を表すアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。コンフォメーショナルエピトープは3次元構造に依存している。用語「コンフォメーショナル」は、したがって多くの場合に、「構造的」(structural)と交換可能に使用される。エピトープは、数ある中でも、アラニンスキャニング、ファージディスプレイ、X線結晶学、アレイベースオリゴ-ペプチドスキャニングまたはpepscan分析、部位特異的突然変異誘発、ハイスループット突然変異誘発マッピング、H/D-Ex質量分析、相同性モデリング、ドッキング、水素-重水素交換を含むがそれに限定されない当技術分野において公知の異なる方法により同定され得る。[例えば、Tong et al., Methods and Protocols for prediction of immunogenic epitopes", Briefings in Bioinformatics 8(2):96-108; Gershoni, Jonathan M; Roitburd-Berman, Anna; Siman-Tov, Dror D; Tarnovitski Freund, Natalia; Weiss, Yael (2007). "Epitope Mapping". BioDrugs 21 (3): 145-56;およびFlanagan, Nina (May 15, 2011); "Mapping Epitopes with H/D-Ex Mass Spec: ExSAR Expands Repertoire of Technology Platform Beyond Protein Characterization", Genetic Engineering & Biotechnology News 31 (10)を参照]。
【0113】
「価」(valent)または「価数」(valency)は、抗原結合性タンパク質中の決定された数の抗原結合性部分の存在を表す。天然IgGは2つの抗原結合性部分を有し、二価である。特定の抗原のための1つの結合性部分を有する分子は、その抗原について一価である。
【0114】
本明細書において「アミノ酸改変」により、ポリペプチド配列中のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失が意味される。本明細書におけるアミノ酸改変の例は置換である。本明細書において「アミノ酸改変」により、ポリペプチド配列中のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失が意味される。本明細書において「アミノ酸置換」または「置換」により、タンパク質配列中の所与の位置にけるアミノ酸の、別のアミノ酸での置き換えが意味される。例えば、置換Y50Wは、50位におけるチロシンがトリプトファンで置き換えられている、親ポリペプチドの変異型を指す。アミノ酸置換は、野生型タンパク質中に存在する残基/残基の位置/突然変異体タンパク質中に存在する残基を列記することにより指し示される。ポリペプチドの「変異型」は、参照ポリペプチド、典型的にはネイティブなまたは「親」ポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。ポリペプチド変異型は、ネイティブなアミノ酸配列内のある特定の位置において1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有してもよい。
【0115】
「保存的」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似した物理化学特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において公知であり、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0116】
用語「同一性」または「同一の」は、2つまたはより多くのポリペプチドの配列の間の関係性において使用される場合、2つまたはより多くのアミノ酸残基のストリングの間のマッチの数により決定される場合の、ポリペプチドの間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)により対処されるギャップアライメント(存在する場合)と共に2つまたはより多くの配列のうちのより小さいものの間の同一のマッチのパーセントを測定する。関連するポリペプチドの同一性は、公知の方法により容易に算出され得る。そのような方法は、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991;およびCarillo et al., SIAM J. Applied Math. 48, 1073 (1988)において記載されているものを含むが、それに限定されない。
【0117】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列の間の最大のマッチを与えるように設計される。同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムにおいて記載されている。2つの配列の間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラムの方法は、GAP[Devereux et al., Nucl. Acid. Res. 12, 387 (1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.]、BLASTP、BLASTN、およびFASTA[Altschul et al., J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990)]を含む、GCGプログラムパッケージを含む。BLASTXプログラムは、the National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他のソース(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul et al.、上掲)から公開されている。周知のSmith Watermanアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用され得る。
【0118】
「単離された」分子は、それが属する分子のクラスに関して見出される組成物中の主な種である分子である(すなわち、分子は、組成物の分子のタイプの少なくとも約50%を構成し、典型的には、組成物中の分子、例えば、ペプチドの種の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはより多くを構成する)。一般的に、ポリペプチドの組成物は、組成物中のすべての存在するペプチド種の文脈において、または少なくとも提案される使用の文脈における実質的に活性のペプチド種に関して、ポリペプチドについて98%、98%、または99%の均質性を呈する。
【0119】
本明細書における文脈において、「処置」または「処置する」は、文脈に矛盾しない限り、疾患または障害の1つまたは複数の症状または臨床的に関連する所見を予防するか、軽減するか、管理するか、治癒するか、または低減させることを指す。例えば、疾患または障害の症状または臨床的に関連する所見が同定されていない患者の「処置」は予防的(preventiveまたはprophylactic)療法である一方、疾患または障害の症状または臨床的に関連する所見が同定されている患者の「処置」は予防的療法を一般に構成しない。
【0120】
本明細書において使用される場合、語句「NK細胞」は、非従来的な免疫に関与するリンパ球の亜集団を指す。NK細胞は、ある特定の特徴および生物学的特性、例えばヒトNK細胞についてのCD56および/またはNKp46を含む特異的な表面抗原の発現、細胞表面上のアルファ/ベータまたはガンマ/デルタTCR複合体の非存在、特異的細胞溶解機構の活性化により「自己」MHC/HLA抗原を発現しない細胞に結合し、それを殺傷する能力、腫瘍細胞またはNK活性化受容体のリガンドを発現する他の疾患細胞を殺傷する能力、ならびに免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力を理由として同定され得る。これらの特徴および活性のいずれも、当技術分野において周知の方法を使用してNK細胞を同定するために使用され得る。NK細胞の任意の亜集団もまた用語NK細胞により包含される。本明細書の文脈において、「活性」NK細胞は、標的細胞を溶解するかまたは他の細胞の免疫機能を増強する能力を有するNK細胞を含む、生物学的に活性のNK細胞を呼称する。NK細胞は、当技術分野において公知の様々な技術、例えば血液試料からの単離、サイタフェレーシス、組織または細胞収集などにより得られ得る。NK細胞を伴うアッセイのための有用なプロトコールは、Natural Killer Cells Protocols (edited by Campbell KS and Colonna M). Humana Press. pp. 219-238 (2000)において見出され得る。
【0121】
本明細書において使用される場合、NKp46において「アゴニスト」活性を有する剤は、「NKp46シグナル伝達」を引き起こすかまたは増加させることができる剤である。「NKp46シグナル伝達」は、細胞内シグナル伝達経路を活性化させるかまたは伝達するNKp46ポリペプチドの能力を指す。NKp46シグナル伝達活性における変化は、例えば、例えばシグナル伝達成分のリン酸化をモニターすることにより、NKp46シグナル伝達経路における変化を測定するために設計されたアッセイ、ある特定のシグナル伝達成分の、他のタンパク質もしくは細胞内構造物との会合を測定するか、もしくは成分、例えばキナーゼの生化学的活性におけるアッセイ、もしくはNKp46感受性プロモーターおよびエンハンサーの制御下のレポーター遺伝子の発現を測定するために設計されたアッセイにより、または間接的にNKp46ポリペプチドにより媒介される下流の効果(例えばNK細胞における特異的細胞溶解機構の活性化)により測定され得る。レポーター遺伝子は、天然に存在する遺伝子(例えばサイトカイン産生をモニターする)であり得るか、または細胞に人工的に導入された遺伝子であり得る。他の遺伝子をそのような調節エレメントの制御に置くことができ、該遺伝子はそのため、NKp46シグナル伝達のレベルをレポートするために役立つ。
【0122】
「NKp46」は、Ncr1遺伝子により、またはそのような遺伝子から調製されたcDNAによりコードされるタンパク質またはポリペプチドを指す。任意の天然に存在するアイソフォーム、アレル、オルソログまたは変異型は用語NKp46ポリペプチドにより包含される(例えば、配列番号1、またはその少なくとも20、30、50、100もしくは200個のアミノ酸残基の連続する配列に対して90%、95%、98%または99%同一のNKp46ポリペプチド)。ヒトNKp46の304アミノ酸残基配列(アイソフォームa)は以下に示される:
MSSTLPALLC VGLCLSQRIS AQQQTLPKPF IWAEPHFMVP KEKQVTICCQ GNYGAVEYQL HFEGSLFAVD RPKPPERINK VKFYIPDMNS RMAGQYSCIY RVGELWSEPS NLLDLVVTEM YDTPTLSVHP GPEVISGEKV TFYCRLDTAT SMFLLLKEGR SSHVQRGYGK VQAEFPLGPV TTAHRGTYRC FGSYNNHAWS FPSEPVKLLV TGDIENTSLA PEDPTFPADT WGTYLLTTET GLQKDHALWD HTAQNLLRMG LAFLVLVALV WFLVEDWLSR KRTRERASRA STWEGRRRLN TQTL(配列番号1)
【0123】
配列番号1はNCBIアクセッション番号NP_004820に対応し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。ヒトNKp46 mRNA配列はNCBIアクセッション番号NM_004829において記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
ポリペプチドの産生
本明細書において記載されるタンパク質は、好都合には、周知の免疫グロブリン由来ドメイン、特に重鎖および軽鎖可変ドメイン、ヒンジ領域、CH1、CL、CH2およびCH3定常ドメイン、ならびに野生型または変異型サイトカインポリペプチドを使用して構成および産生され得る。共通のポリペプチド鎖上に置かれたドメインは、関係する特定のドメインに依存して、直接的またはリンカーを介した接続のいずれかで互いに融合され得る。免疫グロブリン由来ドメインは、好ましくは、ヒト化されているか、またはヒト起源であり、それにより、ヒトに投与された場合の免疫原性のリスクの減少が提供される。本明細書において示されるように、最小の非免疫グロブリン連結アミノ酸配列(例えば4または5個以下のドメインリンカー、一部の場合には、1または2個もの少なさのドメインリンカー、および短い長さのドメインリンカーの使用)を使用し、それにより免疫原性のリスクをさらに低減する有利なタンパク質フォーマットが記載される。
【0125】
免疫グロブリン可変ドメインは抗体(免疫グロブリン鎖)に一般的に由来し、例えば、2つのポリペプチド鎖上に見出される会合したVLおよびVHドメイン、または単鎖抗原結合性ドメイン、例えばscFv、VHドメイン、VLドメイン、dAb、V-NARドメインもしくはVHHドメインの形態である。対合および/またはフォールディングのための実質的なさらなる要求なしにFabまたはscFvからの広範囲の可変領域の使用を直接的に可能にする本明細書において開示されるある特定の有利なタンパク質フォーマットにおいて、抗原結合性ドメイン(例えば、ABD1およびABD2)はまた、FabまたはscFvとして抗体から容易に誘導され得る。
【0126】
用語「抗原結合性タンパク質」は、抗原結合特性を有する免疫グロブリン誘導体を指すために使用され得る。結合性タンパク質は、標的抗原に結合する能力を有する免疫学的に機能的な免疫グロブリン部分を含む。免疫学的に機能的な免疫グロブリン部分は、免疫グロブリン、もしくはその部分、免疫グロブリン部分に由来する融合ペプチドまたは抗原結合性部位を形成する免疫グロブリン部分を組み合わせたコンジュゲートを含んでもよい。抗原結合性部分は、そのため抗原結合性部分の由来となる免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の少なくとも必然的に1、2または3つのCDRを含み得る。一部の態様において、抗原結合性タンパク質は単一のポリペプチド鎖(単量体)からなることができる。他の実施形態において、抗原結合性タンパク質は少なくとも2つのポリペプチド鎖を含む。そのような抗原結合性タンパク質は、多量体、例えば、二量体、三量体または四量体である。
【0127】
抗原結合性タンパク質の例は、それらの抗原についての特異性および親和性を保持する抗体断片、抗体誘導体または抗体様結合性タンパク質を含む。
【0128】
典型的には、抗体は、そのための抗体(例えばヒトポリペプチド)を得ることが所望されるポリペプチド、またはその断片もしくは誘導体、典型的には免疫原性断片を含む免疫原を用いる、非ヒト動物、例えば、マウス、ラット、モルモットまたはウサギの免疫化により最初に得られる。抗原を用いて非ヒト哺乳動物を免疫化する工程は、マウスにおいて抗体の産生を刺激するための当技術分野において周知の任意の方式において実行されてもよい[例えば、E. Harlow and D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照;その全開示は参照により本明細書に組み込まれる]。ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されているトランスジェニック動物を使用することにより[Jakobovitz et al. Nature 362 (1993) 255]、またはファージディスプレイ法を使用する抗体レパートリーの選択により産生されてもよい。例えば、XenoMouse(Abgenix、Fremont、CA)が免疫化のために使用され得る。XenoMouseは、その免疫グロブリン遺伝子が機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子により置き換えられているマウス宿主である。そのため、このマウスによりまたはこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマにおいて産生された抗体は既にヒト化されている。XenoMouseは米国特許第6,162,963号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において記載されている。抗体はまた、例えば[Ward et al. Nature, 341 (1989) p. 544;その全開示は参照により本明細書に組み込まれる]において開示されるように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択により産生されてもよい。ファージディスプレイ技術[McCafferty et al (1990) Nature 348:552-553]は、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから抗体を産生するために使用され得る。例えば、Griffith et al (1993) EMBO J. 12:725- 734;米国特許第5,565,332号明細書;米国特許第5,573,905号明細書;米国特許第5,567,610号明細書;および米国特許第5,229,275号明細書を参照。コンビナトリアルライブラリーがヒト起源の可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを含む場合、コンビナトリアルライブラリーからの選択はヒト抗体をもたらす。
【0129】
任意の実施形態において、抗原結合性ドメインは、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、元々の抗体の所望される特異性、親和性、および能力を維持しながら元々の抗体(親またはドナー抗体、例えばマウスまたはラット抗体)のCDRからの残基により置き換えられているヒト化抗体から得られ得る。非ヒト生物を起源とする核酸によりその一部または全体がコードされる親抗体のCDRは、ヒト抗体可変領域のベータシートフレームワーク中に全体的にまたは部分的にグラフトされて、グラフトされたCDRによりその特異性が決定される抗体が作出される。そのような抗体の作出は、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット、Jones, 1986, Nature 321:522-525, Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536において記載されている。抗原結合性ドメインは、そのため、非ヒト超可変領域またはCDRおよびヒトフレームワーク領域配列(適宜、復帰突然変異を有する)を有することができる。
【0130】
追加的に、広範囲の抗体が、DNAおよび/もしくはアミノ酸配列を含む、科学および特許文献において、または商用供給業者から利用可能である。抗体は、典型的には、予め決定された抗原に対して方向付けられている。抗体の例は、排除されるべき標的細胞、例えば増殖性細胞または疾患病理に寄与する細胞により発現される抗原を認識する抗体を含む。例は、腫瘍抗原、微小生物(例えば細菌もしくは寄生生物)抗原またはウイルス抗原を認識する抗体を含む。
【0131】
代替的に、本明細書において記載されるタンパク質において使用される抗原結合性ドメインは、様々な非免疫グロブリンスキャフォールド、例えば、スタフィロコッカス(staphylococcal)プロテインAのZ-ドメインに基づくアフィボディ、操作されたKunitzドメイン、ヒトフィブロネクチンIIIの10番目の細胞外ドメインに基づくモノボディまたはアドネクチン、リポカリンから誘導されるアンチカリン、DARPins(登録商標)(設計されたアンキリンリピートドメイン;designed ankyrin repeat domains)、多量体化されたLDLR-Aモジュール、アビマーまたはシステインリッチノッチンペプチドのいずれかから容易に誘導され得る。例えば、Gebauer and Skerra (2009) Current Opinion in Chemical Biology 13:245-255(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
【0132】
本明細書においてさらに例示されるように、抗原結合性ドメインは好都合にはVHおよびVL(VH/VLペア)を含むことができる。一部の実施形態において、VH/VLペアは、CH1およびCLドメイン(CH1/CLペア)をさらに含むFab構造中に組み込まれ得る。VH/VLペアは、互いと会合して抗原結合性ドメインを形成している1つのVHおよび1つのVLドメインを指す。CH1/CLペアは、共有結合性または非共有結合性結合、好ましくは非共有結合性結合により互いに結合し、そのためヘテロ二量体(例えば、1つまたは複数のさらなるポリペプチド鎖を含むことができるタンパク質、例えばヘテロ三量体、ヘテロ四量体、ヘテロ五量体内のもの)を形成している1つのCH1および1つのCLドメインを指す。ペアを形成する定常鎖ドメインは、同じポリペプチド鎖上に、または異なるポリペプチド鎖上に任意の好適な組合せで存在することができる。
【0133】
NKp46に結合する例示的なCDRまたはVHおよびVLドメインは、本明細書において提供される抗NKp46抗体から誘導され得るか、(セクション「NKp46可変領域およびCDR配列」を参照)、またはPCT国際公開第2016/207278号パンフレットおよび国際公開第2017/114694号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)のCDR、VHおよびVLドメインのいずれかから選択され得る。可変領域は、直接的に使用され得るか、またはNKp46抗体からの超可変もしくはCDR領域を選択し、かつそれらを所望されるVLもしくはVHフレームワーク、例えばヒトフレームワーク中に置くことにより改変され得る。NKp46に結合する抗原結合性ドメインはまた、抗体を生成する方法を使用してデノボ(de novo)で誘導され得る。抗体は、NKp46ポリペプチドに対する結合性について試験され得る。本明細書における任意の実施形態の1つの態様において、NKp46に結合するポリペプチド(例えば多特異性タンパク質)は、細胞の表面上に発現されるNKp46、例えばNK細胞により発現されるネイティブなNKp46に結合する能力を有する。
【0134】
対象とする抗原に結合する抗原結合性ドメイン(ABD)は、所望される予め決定された対象とする抗原(例えばNKp46以外の抗原)に基づいて選択可能であり、例えば、がん抗原、例えば腫瘍細胞上に、および/もしくは、腫瘍促進効果を媒介する能力を有する免疫細胞、例えば単球もしくはマクロファージ、適宜、サプレッサーT細胞、制御性T細胞、もしくは骨髄由来抑制細胞上に存在する抗原(がんの処置のため);細菌もしくはウイルス抗原(感染性疾患の処置のため);または炎症促進性免疫細胞、例えばT細胞、好中球、マクロファージ上などに存在する抗原(炎症性および/もしくは自己免疫障害の処置のため)を含んでもよい。
【0135】
本明細書において使用される場合、用語「細菌抗原」は、インタクトな、弱毒化されたもしくは殺傷された細菌、任意の構造的なもしくは機能的な細菌タンパク質もしくは炭水化物、または抗原性であるために十分な長さ(典型的には約8アミノ酸もしくはより長い)の細菌タンパク質の任意のペプチド部分を含むが、それに限定されない。例はグラム陽性細菌抗原およびグラム陰性細菌抗原を含む。一部の実施形態において、細菌抗原は、ヘリコバクター(Helicobacter)種、特にヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris);ボレリア(Borrelia)種、特にボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi);レジオネラ(Legionella)種、特にレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia);マイコバクテリア(Mycobacteria)種、特にM.ツベルクローシス(M. tuberculosis)、M.アビウム(M. avium)、M.イントラセルラレ(M. intracellulare)、M.カンサシー(M. kansasii)、M.ゴルドネ(M. gordonae);スタフィロコッカス(Staphylococcus)種、特にスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);ナイセリア(Neisseria)種、特にN.ゴノレエ(N. gonorrhoeae)、N.メニンギチジス(N. meningitidis);リステリア(Listeria)種、特にリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);ストレプトコッカス(Streptococcus)種、特にS.ピオゲネス(S. pyogenes)、S.アガラクチエ(S. agalactiae);S.フェカリス(S. faecalis);S.ボビス(S. bovis)、S.ニューモニエ(S. pneumoniae);嫌気性ストレプトコッカス種;病原性カンピロバクター(Campylobacter)種;エンテロコッカス(Enterococcus)種;ヘモフィラス(Haemophilus)種、特にヘモフィラス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae);バシラス(Bacillus)種、特にバシラス・アントラシス(Bacillus anthracis);コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、特にコリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae);エリシペロトリックス(Erysipelothrix)種、特にエリシペロトリックス・ルシオパチエ(Erysipelothrix rhusiopathiae);クロストリジウム(Clostridium)種、特にC.ペルフリンゲンス(C. perfringens)、C.テタニ(C. tetani);エンテロバクター(Enterobacter)種、特にエンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ(Klebsiella)種、特にクレブシエラ1Sニューモニエ(Klebsiella 1S pneumoniae)、パスツレラ(Pasteurella)種、特にパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、バクテロイデス(Bacteroides)種;フソバクテリウム(Fusobacterium)種、特にフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum);ストレプトバシラス(Streptobacillus)種、特にストレプトバシラス・モニリホルミス(Streptobacillus moniliformis);トレポネーマ(Treponema)種、特にトレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue);レプトスピラ(Leptospira);病原性エシェリヒア(Escherichia)種;およびアクチノマイセス(Actinomyces)種、特にアクチノマイセス・イスラエリ(Actinomyces israeli)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0136】
本明細書において使用される場合、用語「ウイルス抗原」は、インタクトな、弱毒化されたもしくは殺傷されたウイルス全体、任意の構造的なもしくは機能的なウイルスタンパク質、または抗原性であるために十分な長さ(典型的には約8アミノ酸もしくはより長い)のウイルスタンパク質の任意のペプチド部分を含むが、それに限定されない。ウイルス抗原の供給源は、ファミリー:レトロウイルス科[例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えばHIV-1(HTLV-III、LAVもしくはHTLV-III/LAVとしても参照される)、またはHIV-III;および他の分離株、例えばHIV-LP];ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水胞性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えば、ハンタンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ボルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);ならびにイリドウイルス科(例えば、アフリカ豚熱ウイルス);ならびに未分類のウイルス[例えば、デルタ肝炎因子(B型肝炎ウイルスの欠陥性サテライトであると考えられる)、C型肝炎;ノーウォークおよび関連ウイルス、ならびにアストロウイルス]からのウイルスを含むが、それに限定されない。代替的に、ウイルス抗原は、組換えにより産生されてもよい。
【0137】
本明細書において使用される場合、用語「がん抗原」および「腫瘍抗原」は、交換可能に使用され、がん細胞により差次的に発現されるか、または腫瘍促進効果(例えば免疫抑制効果)を有する非腫瘍細胞(例えば免疫細胞)により発現され、それにより、がん細胞を標的化するために活用され得る抗原(NK細胞上に発現されるサイトカイン受容体、NKp46、およびCD16以外)を指す。がん抗原は、腫瘍特異的であるらしい免疫応答を潜在的に刺激することができる抗原であり得る。これらの抗原の一部は、正常細胞によりコードされるが、必ずしも発現されないか、またはより低いレベルもしくはより低い頻度で発現される。これらの抗原は、正常細胞において通常はサイレントな(すなわち、発現されない)抗原、分化のある特定のステージにおいてのみ発現される抗原、ならびに一時的に発現される抗原、例えば胚性および胎児抗原として特徴付けられ得る。他のがん抗原は、突然変異体細胞遺伝子、例えばがん遺伝子(例えば、活性化されたrasがん遺伝子)、抑制因子遺伝子(例えば、突然変異体p53)、内部欠失または染色体転座の結果としてもたらされる融合タンパク質によりコードされる。さらに他のがん抗原は、ウイルス遺伝子、例えばRNAおよびDNA腫瘍ウイルス上に保有されるものによりコードされ得る。さらに他のがん抗原は、腫瘍促進効果に寄与するかまたはそれを媒介する能力を有する免疫細胞、例えば免疫逃避に寄与する細胞、単球またはマクロファージ、適宜、サプレッサーT細胞、制御性T細胞、または骨髄由来抑制細胞上に発現され得る。
【0138】
がん抗原は、通常は、過剰発現されるか、もしくは異常な時点において発現される正常細胞表面抗原であるか、または標的化された細胞の集団により発現される。理想的には、標的抗原は、増殖性細胞(例えば、腫瘍細胞)または腫瘍促進性細胞(例えば免疫抑制効果を有する免疫細胞)上にのみ発現されるが、これは実際にはほとんど観察されない。結果として、標的抗原は、多くの場合に、増殖性/疾患組織と健常組織との間の差次的発現に基づいて選択される。がん抗原の例は、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Crypto、CD4、CD19、CD20、CD30、CD38、CD47、糖タンパク質NMB、CanAg、Her2(ErbB2/Neu)、Siglecファミリーメンバー、例えばCD22(Siglec2)またはCD33(Siglec3)、CD79、CD123、CD138、CD171、PSCA、L1-CAM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、CD52、CD56、CD80、CD70、E-セレクチン、EphB2、メラノトランスフェリン、Mud 6およびTMEFF2を含む。がん抗原の例はまた、免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)、例えばサイトカイン受容体、キラー-Ig様受容体、CD28ファミリータンパク質、例えば、キラー-Ig様受容体3DL2(KIR3DL2)、B7-H3、B7-H4、B7-H6、PD-L1を含む。例はまた、MAGE、MART-1/Melan-A、gp100、主要組織適合複合体クラスI関連AおよびB鎖ポリペプチド(MICAおよびMICB)、アデノシンデアミナーゼ結合性タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、受容体タンパク質チロシンキナーゼ3(TYRO-3)、ネクチン(例えばネクチン-4)、主要組織適合複合体クラスI関連AおよびB鎖ポリペプチド(MICAおよびMICB)、UL16結合性タンパク質(ULBP)ファミリーのタンパク質、レチノイン酸早期転写物-1(RAET1)ファミリーのタンパク質、癌胎児性抗原(CEA)ならびにその免疫原性エピトープCAP-1およびCAP-2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)、T細胞受容体/CD3-ゼータ鎖、MAGEファミリー腫瘍抗原、GAGEファミリー腫瘍抗原、抗ミュラー管ホルモンII型受容体、デルタ様リガンド4(DLL4)、DR5、ROR1[受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1またはNTRKR1(EC 2.7.10.1)としても公知]、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、MUCファミリー、VEGF、VEGF受容体、アンジオポエチン-2、PDGF、TGF-アルファ、EGF、EGF受容体、ヒトEGF様受容体ファミリーのメンバー、例えば、HER-2/neu、HER-3、HER-4または少なくとも1つのHERサブユニットを含むヘテロ二量体受容体、ガストリン放出ペプチド受容体抗原、Muc-1、CA125、インテグリン受容体、αvβ3インテグリン、α5β1インテグリン、αIIbβ3-インテグリン、PDGFベータ受容体、SVE-カドヘリン、hCG、CSF1R(腫瘍関連単球およびマクロファージ)、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニンおよびγ-カテニン、p120ctn、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、腺腫様大腸ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ウイルス産生物、例えばヒトパピローマウイルスタンパク質、imp-1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1およびCT-7、ならびにc-erbB-2を含むが、これは網羅的であることを意図されない。
【0139】
適宜、多特異性タンパク質は、間質改変部分(stromal modifying moiety)、例えば、間質の成分、例えばECM成分、例えば、グリコサミノグリカン、例えば、ヒアルロナン(ヒアルロン酸もしくはHAとしても公知)、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、デルマタン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパリン、エンタクチン、テネイシン、アグリカンおよびケラチン硫酸;または細胞外タンパク質、例えば、コラーゲン、ラミニン、エラスチン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、およびビトロネクチンを変更または分解する能力を有する部分を除外するか、または要求しないとして特定され得る。例えば、間質改変部分は、ヒアルロナン分解酵素、ヒアルロナン合成を阻害する剤、またはヒアルロン酸に対する抗体分子であり得る。適宜、多特異性タンパク質は、メソテリン標的化部分またはメソテリン結合性ABDを除外するとして特定され得る。適宜、多特異性タンパク質は、PD-L1標的化部分、HER3標的化部分、IGFIR標的化部分またはヒアルロニダーゼ1標的化部分、または間質標的化部分もしくはABDとがん抗原標的化部分との組合せ(a combination a stroma targeting moiety or ABD and a cancer-antigen targeting moiety)を除外するとして特定され得る。適宜、がん抗原または対象とする抗原は、PD-L1、HER3、IGFIRまたはヒアルロニダーゼ1以外であるとして特定され得る。
【0140】
例として、対象とする抗原に結合するABDがHER2ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、抗体トラスツズマブ、ペルツズマブまたはマルゲツキシマブから選択され得る:
トラスツズマブ重鎖可変領域
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGFNIK DTYIHWVRQA PGKGLEWVAR
IYPTNGYTRY ADSVKGRFTI SADTSKNTAY LQMNSLRAED TAVYYCSRWG
GDGFYAMDYW GQGTLVTVSS
(配列番号132)
トラスツズマブ軽鎖可変領域
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDVN TAVAWYQQKP GKAPKLLIYS ASFLYSGVPS
RFSGSRSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ HYTTPPTFGQ GTKVEIK
(配列番号133)
マルゲツキシマブVH:
QVQLQQSGPE LVKPGASLKL SCTASGFNIK DTYIHWVKQR PEQGLEWIGRIYPTNGYTRY
DPKFQDKATI TADTSSNTAY LQVSRLTSED TAVYYCSRWG GDGFYAMDYW
GQGASVTVSS(配列番号134)
マルゲツキシマブVL:
DIVMTQSHKF MSTSVGDRVS ITCKASQDVN TAVAWYQQKP GHSPKLLIYS
ASFRYTGVPD RFTGSRSGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYTTPPTFGG
GTKVEIK(配列番号135)
【0141】
別の例において、対象とする抗原に結合するABDがCD19ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、ブリナツモマブからのVLおよびVLペアから選択され得る。
ブリナツモマブVH:
QVQLQQSGAELVRPGSSVKISCKASGYAFSSYWMNWVKQRPGQGLEWIGQIWPGDGDTNYNGKFKGKATLTADESSSTAYMQLSSLASEDSAVYFCARRETTTVGRYYYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号136)
ブリナツモマブVL:
DIQLTQSPASLAVSLGQRATISCKASQSVDYDGDSYLNWYQQIPGQPPKLLIYDASNLVSGIPPRFSGSGSGTDFTLNIHPVEKVDAATYHCQQSTEDPWTFGGGTKLEIK(配列番号137)
【0142】
別の例において、対象とする抗原に結合するABDがCD20ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、リツキシマブおよびオビヌツズマブからのVLおよびVLペアから選択され得る:
リツキシマブVH:
QVQLQQPGAELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYNMHWVKQTPGRGLEWIGAIYPGNGDTSYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARSTYYGGDWYFNVWGAGTTVTVSA(配列番号138)
リツキシマブVL:
QIVLSQSPAILSASPGEKVTMTCRASSSVSYIHWFQQKPGSSPKPWIYATSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRVEAEDAATYYCQQWTSNPPTFGGGTKLEIK(配列番号139)
オビヌツズマブVH:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSYSWINWVRQAPGQGLEWMGRIFPGDGDTDYNGKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNVFDGYWLVYWGQGTLVTVSS(配列番号140)
オビヌツズマブVL:
DIVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSKSLLHSNGITYLYWYLQKPGQSPQLLIYQMSNLVSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCAQNLELPYTFGGGTKVEIK(配列番号141)
【0143】
別の例において、対象とする抗原に結合するABDがEGFRポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、デパツキシズマブおよびネシツムマブからのEGFR結合性VLおよびVLペアから選択され得る:
セツキシマブVH:
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSA(配列番号142)
セツキシマブVL:
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELK(配列番号143)
パニツムマブVH:
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSS(配列番号144)
パニツムマブVL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYFCQHFDHLPLAFGGGTKVEIK(配列番号145)
ニモツズマブVH:
QVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTNYYIYWVRQAPGQGLEWIGGINPTSGGSNFNEKFKTRVTITADESSTTAYMELSSLRSEDTAFYFCTRQGLWFDSDGRGFDFWGQGTTVTVSS(配列番号146)
ニモツズマブVL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQNIVHSNGNTYLDWYQQTPGKAPKLLIYKVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCFQYSHVPWTFGQGTKLQI(配列番号147)
ネシツムマブVH:
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSISSGDYYWSWIRQPPGKGLEWIGYIYYSGSTDYNPSLKSRVTMSVDTSKNQFSLKVNSVTAADTAVYYCARVSIFGVGTFDYWGQGTLVTVSS(配列番号148)
ネシツムマブVL:
EIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCHQYGSTPLTFGGGTKAEIK(配列番号149)
デパツキシズマブVH:
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGYSISSDFAWNWIRQPPGKGLEWMGYISYSGNTRYQPSLKSRITISRDTSKNQFFLKLNSVTAADTATYYCVTAGRGFPYWGQGTLVTVSS(配列番号150)
デパツキシズマブVL:
DIQMTQSPSSMSVSVGDRVTITCHSSQDINSNIGWLQQKPGKSFKGLIYHGTNLDDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCVQYAQFPWTFGGGTKLEIK(配列番号151)
【0144】
別の例において、対象とする抗原に結合するABDがBCMAポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、ベランタマブ、テクリスタマブ、エルラナタマブまたはパブルタマブからのBCMA結合性VLおよびVLペアから選択され得る:
ベランタマブVH:
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSS(配列番号152)
ベランタマブVL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSNLHSGVPS
RFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIK(配列番号153)
パブルタマブVH:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNHIIHWVRQAPGQCLEWMGYINPYPGYHAYNEKFQGRATMTSDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARDGYYRDTDVLDYWGQGTLVTVSS(配列番号154)
パブルタマブVL:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEPEDIATYYCQQGNTLPWTFGCGTKVEIK(配列番号155)
【0145】
別の例において、対象とする抗原に結合するABDがPD-L1ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、米国特許第7,943,743号明細書(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において示される抗体3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4からの、または抗体MPDL3280A[アテゾリズマブ、Tecentriq(商標)、例えば、米国特許第8,217,149号明細書を参照、Roche/Genentechからの抗PD-L1]、MDX-1105(Bristol-Myers Squibbからの抗PD-L1)、MSB0010718C(アベルマブ;Pfizerからの抗PD-L1)およびMEDI4736(デュルバルマブ;AstraZenecaからの抗PD-L1)のいずれかのPD-L1結合性VHおよびVLペアから選択され得る。別の例において、対象とする抗原に結合するABDがB7-H3ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、エノブリツズマブ、PCT国際公開第2018/129090号パンフレットにおいて示されるTRL4542、PCT国際公開第2018/209346号パンフレットにおいて示される8H9、またはPCT国際公開第2016/106004号パンフレット、国際公開第2017/180813号パンフレット、国際公開第2019/024911号パンフレット、国際公開第2019/225787号パンフレット、国際公開第2020/063673号パンフレット、国際公開第2020/094120号パンフレット、国際公開第2020/102779号パンフレット、国際公開第2020/140094号パンフレットおよび国際公開第2020/151384号パンフレットの抗体のいずれかのB7-H3結合性VHおよびVLペアから選択され得る。単一ドメインB7H3 ABDの例は、PCT国際公開第2020/041626号パンフレットにおいて記載されているAffibody(商標)フォーマットならびにPCT国際公開第2020/076970号パンフレットおよび国際公開第2021/247794号パンフレットの単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。別の例において、対象とする抗原に結合するABDがB7-H6ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、米国特許第11,034,766号明細書;米国特許第8,822,652号明細書;米国特許第9,676,855号明細書;米国特許第11,034,766号明細書;米国特許第11,034,767号明細書またはPCT国際公開第2013/037727号パンフレットもしくは国際公開第2021/064137号パンフレットにおいて示されるB7-H6結合性VHおよびVLペアから選択され得る。別の例において、対象とする抗原に結合するABDがB7-H4ポリペプチドに結合する場合、例示的なVHおよびVLペアは、アルセバリマブのB7-H4結合性VHおよびVLまたは米国特許第10,626,176号明細書;米国特許第9,676,854号明細書;米国特許第9,574,000号明細書;米国特許第10,150,813号明細書;米国特許第10,814,011号明細書もしくはPCT国際公開第2009/073533号パンフレット、国際公開第2019/165077号パンフレット、国際公開第2019/169212号パンフレット、国際公開第2019/147670号パンフレット、国際公開第2021/155307号パンフレット、国際公開第2022/039490号パンフレット、国際公開第2019/154315号パンフレットもしくは国際公開第2021/185934号パンフレットにおいて示されるVHおよびVLペアから選択され得る。上記のVH、VLおよびCDR配列の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
1つの実施形態において、対象とする抗原に結合するABDは、がん抗原、ウイルス抗原、微小生物抗原、または感染した細胞(例えばウイルスに感染した細胞)上もしくは炎症促進性免疫細胞上に存在する抗原に結合する。1つの実施形態において、前記抗原は、腫瘍細胞、および感染した細胞または炎症促進細胞上に選択的に発現または過剰発現されるポリペプチドである。1つの実施形態において、前記抗原は、阻害された場合に、腫瘍細胞、感染した細胞または炎症促進細胞の増殖および/または生存を減少させるポリペプチドである。
【0147】
ポリペプチド中に組み込まれるABDは、多特異性NKp46結合性タンパク質中に含められるのに先立って任意の所望される活性について試験することができ、例えばABDは、その結合パートナーに対する結合性(例えば結合親和性)について好適なフォーマット(例えば従来的なIgG抗体、fab、Fab’2またはscFvとして)において試験され得る。
【0148】
抗体に由来するABDは、最小でも結合活性を付与するために十分な超可変領域を一般に含む。ABDは、リンカーエレメント(例えばリンカーペプチド、CH1、CκもしくはCλドメイン、ヒンジ、またはその断片)を含むがそれに限定されない、所望され得るような他のアミノ酸または機能的ドメインを含んでもよいことが理解される。1つの例において、ABDは、scFv、VHドメインおよびVLドメイン、または単一ドメイン抗体(ナノボディもしくはdAb)、例えばV-NARドメイン、DarpInもしくはVHHドメインを含む。ABDは、互いと会合してABDを形成するVHおよびVLドメインから作られ得る。
【0149】
1つの実施形態において、NKp46および対象とする抗原のためのABDを形成するVHおよびVLペアの1つまたは両方は、タンデム可変領域、例えばscFv(柔軟性ポリペプチドリンカーを介してVLドメインに融合したVH)内にある。
【0150】
1つの実施形態において、NKp46および対象とする抗原のための1つまたは両方のABDは、従来的なまたは非従来的なFab構造を有することができる。Fab構造は、CH1ドメインに連結したVHまたはVL可変ドメインおよび相補的なCκ(またはCλ)定常ドメインに連結した相補的な可変ドメイン(それぞれVLまたはVH)として特徴付け可能であり、CH1およびCκ(またはCλ)定常ドメインは会合(二量体化)する。例えば、Fabは、第2の鎖上のVL-Cκ単位(Cκに融合したVL)と二量体化する第1のポリペプチド鎖上のVH-CH1単位(CH1に融合したVH)から形成され得る。代替的に、Fabは、第2の鎖上のVL-CH1単位(CH1に融合したVL)と二量体化する第1のポリペプチド鎖上のVH-Cκ単位(Cκに融合したVH)から形成され得る。
【0151】
一部の実施形態において、NKp46および対象とする抗原のためのABDのうちの1つは、可変ドメインがCH1ドメインに連結しており、かつ相補的な可変ドメインが相補的なCκ(またはCλ)定常ドメインに連結しているFab構造を含み、CH1およびCκ(またはCλ)定常ドメインは会合してヘテロ二量体タンパク質を形成しており、かつ他のABDは、scFvまたは単一結合性ドメイン(例えばVhHドメイン、DARPin)を含むかまたはからなる。scFvまたは単一結合性ドメインは、適宜、CκもしくはCλドメインまたはヒンジドメインに融合することができる。
【0152】
CH1および/またはCκドメインは次に、適宜各々の場合においてヒンジ領域(または好適なドメインリンカー)を介して、CH2ドメインに連結され得る。CH2ドメインは次にCH3ドメインに連結される。CH2-CH3ドメインは、そのため適宜、全長Fcドメイン(適宜、全長Fcドメイン;C末端リジンを欠いたCH3ドメインを除く)として具体化され得る。
【0153】
ヒトFcRnに結合する能力を有するFcドメイン二量体は、CD16Aならびに適宜他のFcγ受容体(例えば、CD16B、CD32A、CD32Bおよび/もしくはCD64)に結合する能力を有する(capable or binding)か、またはCD16Aおよび適宜他のFcγ受容体に対する低減(例えば野生型Fcドメインと比較して)もしくは消失された結合を有するように特定され得る。1つの実施形態において、Fc部分は、宿主細胞中でのポリペプチドの産生により、またはN297連結グリコシル化をもたらすプロセス、例えば哺乳動物細胞により得られてもよい。1つの実施形態において、Fc部分は、CD16またはCD16Aに対する結合性を増加させる、例えばCH2ドメイン中の、1つまたは複数のアミノ酸改変を含むヒトガンマアイソタイプ定常領域を含む。
【0154】
サイトカイン受容体抗原結合性ドメインは、サイトカイン、(例えば1型サイトカイン、例えばIL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27もしくはIL-12サイトカイン、IL-18サイトカインまたは1型インターフェロン、例えばIFN-αもしくはIFN-β)として容易に具体化され得る。例示的なサイトカイン受容体ABDおよび改変されたサイトカインは本明細書においてさらに記載されている。
【0155】
所望される特異性および/または活性を有する適切な抗原結合性ドメインが一旦同定されたら、ABDの各々(each of the or ABD)をコードする核酸は、好適な配置において、適切な発現ベクターまたはベクターのセット中に、任意のエレメント、例えばCH1、CK、CH2およびCH3ドメインまたはその部分、突然変異体IL2ポリペプチドならびに適切な宿主中へのトランスフェクションのための任意の他の適宜のエレメントをコードするDNA(例えばヒンジ由来またはリンカーエレメントをコードするDNA)と共に、別々に置かれ得る。ABDは、そのタイプのポリペプチドの機能が生成されて、互いに作動可能に連結した所望されるドメインを有するポリペプチド鎖が産生されるように、発現ベクター中、または別々のベクター中に配置される。宿主は次に、多特異性ポリペプチドの組換え産生のために使用される。
【0156】
例えば、ポリペプチド融合産物は、1つのABDまたはその部分(例えばVH、VLもしくはVH/VLペア)がCH2ドメインのN末端に作動可能に連結しており(例えば直接的に、またはCH1、CκもしくはCλ定常領域および/もしくはヒンジ領域を介して)、かつCH2ドメインがそのC末端においてN末端CH3ドメインに作動可能に連結しているベクターから産生され得る。別のABDまたはその部分は、第1のABDを含むポリペプチドと二量体、例えばヘテロ二量体を形成する第2のポリペプチド鎖上にあり得る。
【0157】
多特異性ポリペプチドは次に、適切な宿主細胞中で、または任意の好適な合成プロセスにより産生され得る。多特異性ポリペプチドの発現のために選択される宿主細胞は、限定なしに、免疫グロブリンCH2ドメインにおいてタンパク質を装飾するオリゴ糖部分の組成におけるバリエーションを含む、最終組成物にとっての重要な寄与因子である。そのため、本発明の1つの態様は、多特異性ポリペプチドがFcRnおよびCD16結合性を保持するように所望される治療用タンパク質を発現する産生細胞の使用および/または開発のための適切な宿主細胞の選択を伴う。宿主細胞は、哺乳動物起源であってもよいか、またはCOS-1、COS-7、HEK293、BHK21、CHO、BSC-1、Hep G2、653、SP2/0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫もしくは植物細胞、もしくはその任意の派生物、不死化もしくは形質転換された細胞から選択されてもよい。宿主細胞は、N結合型グリコシル化ポリペプチドを産生する能力を有する任意の好適な種または生物、例えばヒトまたは齧歯動物IgGタイプN結合型グリコシル化を産生する能力を有する哺乳動物宿主細胞であってもよい。
【0158】
多量体の多特異性タンパク質、例えばヘテロ二量体、ヘテロ三量体およびヘテロ四量体は、対象とする抗原に結合するドメインおよびNKp46結合性ドメインが、各々独立して、Fab(例えば従来的なもしくは非従来的なFab構造)、scFvまたは単一ドメイン抗体[ナノボディもしくはdAb、例えばV-NARドメイン、DarpIn(商標)もしくはVHHドメイン]であり得る様々なドメイン配置にしたがって製造され得る。異なるポリペプチド鎖上の異なるドメインは会合して多量体タンパク質を形成する(Different domains onto different polypeptide chain that associate to form a multimeric protein.)。よって、異なるタンパク質が、CD16またはCD16Aならびに適宜他のFcγ受容体、例えば、CD16B、CD32A、CD32Bおよび/またはCD64)に対する追加的な結合性を有するまたは有しない状態で、ヒトFcRnポリペプチド(新生児Fc受容体)に結合する能力を有するFcドメイン二量体に基づいて構築され得る。NK細胞の細胞傷害性の最大の増強は、活性化ヒトCD16受容体(CD16A)[activating human CD16 receptor (CD16A) binding]に対する実質的な結合性を有するFc部分の使用を通じて得ることができ;そのようなCD16結合性は、本明細書においてさらに記載されるように、好適なCH2および/またはCH3ドメインの使用を通じて得られ得る。1つの実施形態において、Fc部分はヒトIgG1アイソタイプ定常領域に由来する。改変されたCH3ドメインの使用もまた、広範囲のヘテロ多量体タンパク質構造の使用の可能性に寄与する。よって、タンパク質は、ヒトFcドメイン単量体、適宜、優先的なCH3-CH3ヘテロ二量体化を起こす能力を有するCH3ドメインを含むFcドメイン単量体に融合した可変ドメインを各々が含む第1および第2のポリペプチド鎖を含み、第1および第2の鎖はCH3-CH3二量体化を介して会合し、タンパク質は結果的にFcドメイン二量体を含む。各々の鎖の可変ドメインは、同じまたは異なる抗原結合性ドメインの部分であり得る。
【0159】
多特異性タンパク質は、そのため、好都合には、CH1ドメイン、CLドメイン、Fcドメインおよびサイトカイン、およびドメインリンカーと共に、scFvまたはFab構造として配置されたVHおよびVLペアを使用して構築され得る。好ましくは、タンパク質は、最小の非天然配列、例えば非Igリンカーの最小の使用、適宜、抗体由来配列ではない5、4、3、2または1つ以下のドメインリンカーを使用し、適宜、ドメインリンカーは、15、10または5個以下のアミノ酸残基の長さである。1つの実施形態において、CD16 ABDはFcドメイン二量体である。
【0160】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質(例えば二量体、三量体、四量体)は、以下:ドメインが、2、3または4つのポリペプチド鎖に置くことができること、Fcドメインが、Fcドメイン二量体のトポロジカルなN末端側におけるNKp46 ABDおよび対象とする抗原(抗原)ABDと、Fcドメイン二量体のトポロジカルなC末端におけるサイトカイン受容体ABDとの間に差し挟まれていること[例えば、タンパク質は、(i)C末端における末端または遠位のサイトカイン受容体ABDならびに(ii)トポロジカルなN末端における末端または遠位の対象とする抗原(抗原)ABDおよびNKp46 ABDを有する]、サイトカイン受容体に結合するABDが、柔軟性リンカー(例えば、GおよびS残基を含むリンカー)を介してFc二量体のFcドメイン単量体のうちの1つに接続されていることのいずれかのドメイン配置を含んでもよい:
(NKp46 ABD)
(Fcドメイン二量体)(サイトカイン受容体ABD)
(抗原ABD)
【0161】
サイトカイン受容体ABDは、IL2、IL15、IL18、IL21またはIFN-αポリペプチドであり得る。Fcドメイン二量体は、ヒトFcRnおよび適宜さらに1つまたは複数のヒトFcγ受容体(例えばCD16A)に結合するように特定され得る。会合して特定のABDを形成する可変領域は、同じポリペプチド鎖上または異なるポリペプチド鎖上にあることができる。1つの実施形態において、対象とする抗原IL2、IL15、IL18、IL21またはIFN-αポリペプチド(例えばがん抗原)ABDおよびNKp46 ABDのうちの1つまたは両方は、タンデム可変領域(例えばscFv)内に存在する2つの可変領域から形成され、1つの実施形態において、対象とする抗原ABDおよびNKp46 ABDのうちの1つまたは両方はタンデム可変領域(例えばscFv)を含み、かつ他方はFab構造を含む。別の実施形態において、対象とする抗原およびNKp46 ABDの両方はFab構造を含む。別の実施形態において、対象とする抗原およびNKp46 ABDのうちの1つはFab構造を含み、かつ他方はscFv構造を含む。1つの実施形態において、IL2、IL15、IL18、IL21またはIFN-αポリペプチドは、ドメインリンカーを介して、Fcドメイン単量体のC末端に融合しており、Fcドメインは次いで、そのN末端において、NKp46 ABDまたはその部分[例えばV-(CH1もしくはCL)セグメント]に融合している。
【0162】
本開示は、対象とする抗原(一価でまたは二価で)ならびに一価でNKp46、CD16Aおよびサイトカイン受容体の各々に結合する多量体多特異性タンパク質を作製する有利なアプローチを提供する。該アプローチは、FcドメインがNKp46 ABDとサイトカインポリペプチドとの間に位置付けられているドメイン構成を容易に可能とする。
【0163】
ある特定の例において、多量体タンパク質は、適宜CH1もしくはCL定常領域を介してまたはリンカーを介して、FcドメインのN末端に接続または融合された、1または2つの免疫グロブリン可変ドメインを含む中心(第1の)ポリペプチド鎖から構成されてもよく、FcドメインはそのC末端においてサイトカインポリペプチド(例えばサイトカインポリペプチドのC末端)に接続されている。1つのみの可変ドメインが中心鎖上に存在する場合、追加のポリペプチド鎖(例えば、VおよびCドメイン、適宜VKおよびCKドメインを含む軽鎖)は、中心鎖の可変ドメインとABDを形成する(form and ABD)ための相補的な可変領域を提供する。2つの可変ドメインが中心鎖上に存在する場合、それらは、ABDを形成するためにscFvとして配置され得る。さらなる1または2つの追加の鎖(すなわち第3および第4の鎖)は次に、少なくとも1つのさらなるABDを提供することができる。
【0164】
そのため、第1/中心鎖に加えて、さらなる1、2または3つのポリペプチド鎖は、ABDがscFvとして構成されているのか、それともFabとして構成されているのかに依存して、相補的なFcドメインおよび可変ドメインを提供する。この構成において、Fcドメインは、多特異性タンパク質中でNKp46結合性ABDとサイトカインポリペプチドとの間に差し挟まれている。このようにして、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体多特異性タンパク質は構築され得る。
【0165】
中心ポリペプチド鎖のドメイン配置(左から右にN末端からC末端へ)の例は、各々のVが可変ドメインである以下のもののいずれかを含む:
(Va-1-(CH1もしくはCL)-(ヒンジもしくはリンカー)-CH2-CH3-リンカー-Cyt (第1/中心鎖)
または
(Va-2-Vb-2)-(ヒンジもしくはリンカー)-CH2-CH3-リンカー-Cyt (第1/中心鎖)
【0166】
第1/中心鎖のこれらのドメイン配置において、Va-1は、さらなるポリペプチド鎖(例えば、定常領域に融合した可変領域Vb-1を含むさらなる鎖)上の可変領域Vb-1と共にABDを形成する軽鎖または重鎖可変ドメインであり;Va-2およびVb-2は一緒になってscFvを形成し(Va-2およびVb-2のうちの1つは軽鎖可変ドメインであり、かつ他方は重鎖可変ドメインであり、かつそれらは柔軟性ポリペプチドリンカーにより分離されている;任意の実施形態において、V-Vは、よって、2つのV領域の間に置かれたリンカーを含むとして特定され得る);かつCH3ドメインは、ドメインリンカー(例えば柔軟性の化学またはポリペプチドリンカー)を介してサイトカインに接続または融合されている。適宜、ABDが単一ドメイン、例えばVHH、アンチカリンまたはDarpin(商標)タイプ構造である場合、Va-2-Vb-2はそれぞれの単一ドメインにより置き換えられ得る。
【0167】
第2のポリペプチド鎖は次に、1または2つの免疫グロブリン可変ドメイン、適宜定常領域、および第1/中心ポリペプチド鎖とのCH3-CH3二量体化を起こすために好適なFcドメインを含むように構成され得る。第2のポリペプチド鎖が1つの免疫グロブリン可変ドメインを有する場合、それは、好都合には、CH1またはCLドメインに融合させることができ、CH1またはCLドメインは次いで、ヒンジ領域を介してCH2ドメインに融合される。第2のポリペプチド鎖が2つの免疫グロブリン可変ドメインを有する場合、2つの可変ドメインは一緒になってscFvを形成することができ、かつポリペプチドリンカーを介してCH2ドメインに融合され得る。
【0168】
第2のポリペプチド鎖は、以下のドメイン配置を含むことができる:
(Va-4-Vb-4)-(ヒンジもしくはリンカー)-CH2-CH3 (第2の鎖)
または
(Va-3-(CH1もしくはCK)-(ヒンジもしくはリンカー)-CH2-CH3 (第2の鎖)
【0169】
第2の鎖のこれらのドメイン配置において、Va-3は、さらなるポリペプチド鎖(例えば、軽鎖定常領域に融合した可変領域Vb-3を含む鎖)上の可変領域Vb-3と共にABDを形成する軽鎖または重鎖可変ドメインであり;Va-4およびVb-4は一緒になってscFvを形成する(Va-4およびVb-4のうちの1つは軽鎖可変ドメインであり、かつ他方は重鎖可変ドメインであり、かつそれらは柔軟性ポリペプチドリンカーにより分離されている)。
【0170】
二量体タンパク質が所望される場合、以下のヘテロ二量体がそのため構成され得る:
【0171】
【0172】
ヘテロ三量体多特異性タンパク質のために、第1および第2の鎖のうちの1つは、2つの可変ドメイン(例えば、scFvとして)を含むように選択することができ、かつ以下のドメイン配置を含む第3のポリペプチド鎖が次に提供され得る:
(V-(CH1またはCK) (第3の鎖)
【0173】
第3の鎖のドメイン配置において、Vb-1またはVb-3としても指定され得るVは、第1または第2のポリペプチド鎖上の可変領域Va-1またはVa-3と共にABDを形成する軽鎖または重鎖可変ドメインである。第3の鎖中のCH1またはCKドメインは、第3の鎖が会合するように選択されるそれぞれの第1または第2のポリペプチド鎖とCH1-CK二量体化を起こすように選択される(会合する鎖のうちの1つはCH1を有し、かつ他方はCKを有する)。
【0174】
結果としてもたらされるヘテロ三量体タンパク質はそのため、例えば、以下のドメイン配置を有する分子として構築され得る:
【0175】
【化5】
[式中、第1/中心鎖および第2の鎖はCH3-CH3二量体化により会合し、かつ第1/中心鎖および第3の鎖はCH1またはCκ二量体化により会合し、第1/中心鎖および第3の鎖のドメインは、第1および第3の鎖がCH1-Cκ二量体化により会合することを可能にするために相補的であるように選択され、かつV
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、かつV
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはVHであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-2およびV
b-2は第2の抗原結合性ドメイン(例えば、V
a-2およびV
b-2がリンカーにより分離されたscFv)を形成し、ABDのうちの1つはNKp46に結合し、かつ他方は対象とする抗原に結合する]。1つの特有の実施形態において、V
a-2およびV
b-2は、NKp46に結合するABDを形成し、かつV
a-1およびV
b-1は、対象とする抗原に結合するABDを形成する。別の実施形態において、V
a-2およびV
b-2は、対象とする抗原に結合するABDを形成し、かつV
a-1およびV
b-1は、NKp46に結合するABDを形成する。
【0176】
別の例示的な構造は、以下のドメイン配置を有する:
【0177】
【0178】
1つの特有の実施形態において、Va-1およびVb-1は、NKp46に結合するABDを形成し、かつVa-2およびVb-2は、対象とする抗原に結合するABDを形成する。別の実施形態において、Va-1およびVb-1は、対象とする抗原に結合するABDを形成し、かつVa-2およびVb-2は、NKp46に結合するABDを形成する。
【0179】
ヘテロ四量体多特異性タンパク質において、第1および第2の鎖の両方は、CH1またはCK定常ドメインに融合した1つの可変ドメインを含むように選択することができ、かつ上記において示されている第3のポリペプチド鎖の他に、以下のドメイン配置を含む第4のポリペプチド鎖が提供され得る:
(V-(CH1またはCK) (第4の鎖)
【0180】
第4の鎖のドメイン配置において、Vb-1またはVb-3としても指定され得るVは、第1または第2のポリペプチド鎖上の可変領域Va-1またはVa-3と共にABDを形成する軽鎖または重鎖可変ドメインである。第3の鎖のVがVb-1として指定され、かつ第3の鎖が第1の鎖と会合し、その結果、Vb-1およびVa-1がABDを形成する場合、第4の鎖のVはVb-3であり、かつ第4の鎖は第2の鎖と会合し、その結果、Vb-3はVa-3と会合してABDを形成する。第4の鎖中のCH1またはCKドメインは、第4の鎖が会合するように選択されるそれぞれの第1または第2のポリペプチド鎖とCH1-CK二量体化を起こすように選択される(会合する鎖のうちの1つはCH1を有し、かつ他方はCKを有する)。
【0181】
結果としてもたらされるヘテロ四量体タンパク質は次に、例えば、以下のドメイン配置を有する分子として構築され得る:
【0182】
【化7】
[式中、第1/中心鎖および第2の鎖はCH3-CH3二量体化により会合し、かつ第1/中心鎖および第3の鎖はCH1またはCκ二量体化により会合し、第1/中心鎖および第3の鎖のドメインは、第1および第3の鎖がCH1-Cκ二量体化により会合することを可能にするために相補的であるように選択され、第2の鎖および第4の鎖のドメインは、第2および第4の鎖がCH1-Cκ二量体化により会合することを可能にするために相補的であるように選択され、かつV
a-1、V
b-1、V
a-3およびV
b-3は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、かつV
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-3およびV
b-3のうちの1つはVHであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-3およびV
b-3は第2の抗原結合性ドメインを形成し、ABDのうちの1つはNKp46に結合し、かつ他方は対象とする抗原に結合する]。1つの特有の実施形態において、V
a-3およびV
b-3は、NKp46に結合するABD、かつV
a-1およびV
b-1は、対象とする抗原に結合するABDを形成する。別の特有の実施形態において、V
a-3およびV
b-3は、対象とする抗原に結合するABD、かつV
a-1およびV
b-1は、NKp46に結合するABDを形成する。
【0183】
このようにして、広範な異なるドメイン配置が、可変ドメイン、定常ドメインおよびIL2vポリペプチドから構築され得る。結果としてもたらされるヘテロ二量体、ヘテロ三量体およびヘテロ四量体タンパク質のドメイン配置の例は、以下の表1において示される(ドメインリンカーは示されていない)。
【0184】
【0185】
表1において示されるように、一部の実施形態において、多特異性ヘテロ四量体タンパク質は、重鎖および軽鎖の組合せの2つのペアを含有し、各々のペアが別個の結合特異性を有し、サイトカインポリペプチドが、例えばドメインリンカーを介して、2つの重鎖のうちの1つ(第1および第2の鎖のうちの1つ)のFcドメインのC末端に結合している、天然の免疫グロブリン構造において生成され得る。天然の免疫グロブリン構造と比較して、VHおよびVKドメインが互いにより置換されており、かつ/またはCH1およびCKドメイン(CH1 and CK are domains)が互いにより置換されている、他の多特異性ヘテロ三量体およびヘテロ四量体タンパク質が構築され得る。所望される場合、CH1および/またはCLドメインは、立体的反発、または電荷ステアリング相互作用を通じて、所望されるヘテロ二量体化を促進または増強するために操作され得る。軽鎖(第3および存在する場合に第4の鎖)の正確な二量体化は、誘引性/反発性電荷ペアをCH1およびCKドメイン中に生じさせるアミノ酸置換の導入を通じて増強され得る。2つの重鎖のホモ二量体化はCH3相互作用により媒介される。ヘテロ二量体形成を促進するために、アミノ酸置換が、2つのそれぞれのCH3領域に導入され得る。
【0186】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、重鎖の1つが、そのC末端においてドメインリンカーを介して融合したサイトカイン[例えば、Fcドメイン単量体のC末端に融合した(-リンカー-Cyt)部分]を有する半抗体に基づく構造からの製造後アセンブリーにより生成可能であり、それにより、重鎖および軽鎖誤対合の課題が解決される。そのような多特異性タンパク質は、有利には、半抗体のヘテロ二量体化を助長するための改変を含有し、例えば、1つのFc単量体中のF405L突然変異および他のFc単量体中のK409R突然変異を含む。例えば、Labrijn et al., (2013) PNAS 110 (13) 5145-515を参照。各々の半抗体タイプ構造は、別々の細胞株において個々に製造され、精製される。精製された抗体は次に穏やかな還元に供されて、半抗体が得られ、半抗体は次に多特異性タンパク質にアセンブルされ、従来的な精製方法を使用して混合物から精製される。
【0187】
またさらなる多特異性タンパク質は、対象とする抗原のための2つの結合性部位を有し(例えば、対象とする抗原に二価で結合するか、または2つの異なる対象とする抗原の各々に一価で結合する)、NKp46に一価で結合し、かつサイトカイン受容体に一価で結合する類似した構造を使用して製造することができ、すなわち、多特異性タンパク質は2:1:1の構成を有する。例は
図4において示される。
【0188】
1つの例は、2つのFab構造および1つのscFvを有する3つの異なるポリペプチドから作られるヘテロ四量体タンパク質であり、2つのFabは対象とする抗原に結合する。以下のドメイン配置を有する、FcドメインがNKp46 ABDとサイトカインとの間に差し挟まれているタンパク質が構築され得る:
【0189】
【化8】
[式中、鎖1および鎖2はCH3-CH3二量体化により会合し、鎖1および鎖3(2つの同一の鎖3ポリペプチドのうちの第1のもの)はCH1またはCκ二量体化により会合し、かつ鎖2および鎖3(2つの同一の鎖3ポリペプチドのうちの第2のもの)はCH1またはCκ二量体化により会合し、鎖1、2および鎖3のドメインは、鎖1および2がCH1-Cκ二量体化により鎖3と会合することを可能にするために相補的であるように選択され、かつV
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、かつV
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはVHであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-2およびV
b-2は第2の抗原結合性ドメインを形成し、V
a-1およびV
b-1は、NKp46に結合するABD、かつV
a-2およびV
b-2は、対象とする抗原に結合するABDを形成する。
【0190】
別の例は、3つのFab構造を有する4つの異なる鎖から構築されるヘテロ五量体タンパク質であり、3つのFab構造のうちの2つは対象とする抗原に結合する。以下のドメイン配置を有する、FcドメインがNKp46 ABDとサイトカインとの間に差し挟まれているタンパク質が構築され得る:
【0191】
【化9】
[式中、鎖1および鎖2はCH3-CH3二量体化により会合し、鎖1および鎖3はCH1またはCκ二量体化により会合し、かつ鎖1および鎖4(2つの同一の鎖4ポリペプチドのうちの第2のもの)はCH1またはCκ二量体化により会合し、鎖1および鎖3のドメインは、鎖1および3がCH1-Cκ二量体化により会合することを可能にするために相補的であるように選択され、鎖1および2ならびに4のドメインは、鎖1および2ならびに鎖4(2つの同一の鎖4ポリペプチドの各々)がCH1-Cκ二量体化により会合することを可能にするために相補的であるように選択され、かつV
a-1、V
b-1、V
a-2およびV
b-2は各々V
HドメインまたはV
Lドメインであり、かつV
a-1およびV
b-1のうちの1つはV
Hであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-1およびV
b-1は第1の抗原結合性ドメイン(ABD)を形成し、V
a-2およびV
b-2のうちの1つはVHであり、かつ他方はV
Lであり、その結果、V
a-2およびV
b-2は第2の抗原結合性ドメインを形成し、V
a-1およびV
b-1は、NKp46に結合するABD、かつV
a-2およびV
b-2は、対象とする抗原に結合するABDを形成する。
【0192】
任意の実施形態において、タンパク質が、CH3-CH3会合を介して二量体化する別々の鎖上に置かれた第1および第2のFcドメイン単量体を含むFcドメイン二量体を有し、Fcドメイン単量体のうちの1つが抗NKp46 ABDおよびサイトカインの両方に接続されており、かつ他の(第2の)Fcドメイン単量体が遊離C末端を有する(例えば、抗NKp46 ABDもサイトカインもそのC末端に融合していない)ことが特定されてもよい。
【0193】
適宜、本明細書における任意の実施形態において、同じポリペプチド鎖上の異なるドメインの間の融合または連結は、特には、ドメインが天然に互いに直接的に融合していない場合(例えば、タンデムに置かれた2つのVドメインの間、VドメインとFcドメイン単量体との間、CH1またはCκドメインとFcドメインとの間、Fcドメイン単量体とサイトカインとの間)は、介在性アミノ酸配列を介して、例えばヒンジ領域またはリンカーペプチドを介して、起こってもよい。ドメインリンカーを示すことなく描写される本明細書における一部のドメイン配置または構造では、ドメイン配置は、特定されるドメインの間にドメインリンカーを有するとして特定され得ることが理解される。例えば、サイトカインは、隣接するドメインにドメインリンカーを介して融合しているとして特定され得、かつドメインリンカーは、関連するドメイン配置または構造中に挿入され得る。別の例において、タンデム可変ドメイン(例えばscFv中)は、ドメインリンカーを介して互いに融合しているとして特定され得、かつドメインリンカーは、関連するドメイン配置または構造中の2つのV領域の間に挿入され得る。別の例において、CH1またはCL(もしくはCK)定常領域は、そのFcドメインまたはCH2ドメインにドメインリンカーもしくはヒンジドメインまたはその部分を介して融合可能であり、よってドメインリンカーもしくはヒンジドメインまたはその部分は、関連するドメイン配置または構造中のCH1またはCLドメインとFcドメインまたはCH2ドメインとの間に挿入され得る。示されるリンカーを有する多特異性タンパク質のドメイン配置の例は、フォーマット「T53A」における代表的なヘテロ三量体について
図2Bにおいて示されており、これは、ドメインリンカー、例えばヒンジおよびグリシン-セリンリンカー、ならびに鎖間ジスルフィドブリッジを示す。
【0194】
本明細書における任意の実施形態において、ポリペプチド鎖(例えば、鎖1、2、3または4)は、遊離Nおよび/またはC末端を有する(ポリペプチド鎖の末端において他のタンパク質ドメインはない)として特定され得る。
【0195】
本明細書における任意の実施形態において、本明細書において記載されるタンパク質ドメインは、適宜、N末端からC末端へと指し示されるとして特定され得る。実例の目的のための本開示のタンパク質配置は、N末端(左)からC末端(右)へと示されている。ポリペプチド鎖上の隣接するドメインは、互いに融合しているとして参照され得る(例えば、ドメインは、その左においてドメインのC末端に融合しているということができ、かつ/またはドメインは、その右においてドメインのN末端に融合しているということができる)。本明細書において記載されるタンパク質ドメインは、互いに直接的に(例えばCH1もしくはCLドメインに直接的に融合したVドメイン)、またはポリペプチド鎖上のドメインを接続するために役立つリンカーもしくは短い介在性アミノ酸配列を介して融合することができる(例えば、それらは、適宜、他の予め決定された機能性を欠いているか、または予め決定されたリガンドに対する特異的結合性を欠いているとして特定されてもよい)。2つのポリペプチド鎖は、非共有結合性相互作用により互いに結合しており(「|」により指し示される)、適宜、相補的なCH1およびCκドメイン内のシステイン残基の間に形成される鎖間ジスルフィド結合を介してさらに結合され得る。
【0196】
接続およびリンカー
一般に、組換え技術により生成される、ペプチド結合を含む、多特異性タンパク質において使用され得る多数の好適なリンカーがある。一部の実施形態において、リンカーは「ドメインリンカー」であり、これは、本明細書において概説されている任意の2つのドメインを連結して一緒にするために使用される。隣接するタンパク質ドメインは、ドメインリンカーにより互いに接続または融合されているとして特定され得る。例示的なドメインリンカーは、(ポリ)ペプチドリンカー、適宜、柔軟性(ポリ)ペプチドリンカーである。アミノ酸ベースリンカー、例えば、本明細書において交換可能に使用されるペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーは、特定のドメイン、例えばヒンジ、CH1もしくはCLドメインに由来する部分配列を有してもよく、または以下のアミノ酸残基:Gly、Ser、Ala、もしくはThrを主に含んでもよい。リンカーペプチドは、2つの分子が所望される活性を保持するように互いに対して正確なコンフォメーションを取るような仕方で該2つの分子を連結するために十分な長さを有するべきである。1つの実施形態において、リンカーは、約1~50アミノ酸の長さ、好ましくは約2~30アミノ酸の長さである。1つの実施形態において、4~20アミノ酸の長さのリンカーが使用されてもよく、約5~約15個のアミノ酸は一部の実施形態において用途を有する。任意の好適なリンカーが使用され得るが、多くの実施形態において、リンカー(例えば柔軟性リンカー)は、例えば(GS)n、(GSG2S)n、(G4S)n、(GSSS)n、(GSSSS)n(配列番号171)および(GGGS)n[nは少なくとも1の整数である(適宜、nは、1、2、3または4である)]を含む、グリシン-セリンポリペプチドまたはポリマー、グリシン-アラニンポリペプチド、アラニン-セリンポリペプチド、および他の柔軟性リンカーを利用することができる。グリシンおよびセリン残基を含むリンカーは、プロテアーゼ耐性を一般に提供する。(GS)1リンカーの1つの例は、アミノ酸配列STGSを有するリンカーであり;そのようなリンカーは、ドメインをFcドメイン(またはそのCH3ドメイン)のC末端に融合させるために有用であり得る。一部の実施形態において、例えば、n=1~20である(G2S)n、例えば、(G2S)、(G2S)2、(G2S)3、(G2S)4、(G2S)5、(G2S)6、(G2S)7もしくは(G2S)8、または、例えば、nが1~15の整数である(G3S)nを含むペプチドリンカーが使用される。1つの実施形態において、ドメインリンカーは、(G4S)nペプチドを含み、例えば、nは、1~10、適宜1~6、適宜1~4の整数である。一部の実施形態において、例えば、n=1~20である、(GS2)n、(GS3)nまたは(GS4)n、例えば、(GS2)、(GS2)2、(GS2)3、(GS3)1、(GS3)2、(GS3)3、(GS4)1、(GS4)2、(GS4)3を含むペプチドリンカーが使用され、例えば、nは1~15の整数である。1つの実施形態において、ドメインリンカーは、(GS4)nペプチドを含み、例えば、nは、1~10、適宜1~6、適宜1~4の整数である。1つの実施形態において、ドメインリンカーはC末端GSジペプチドを含み、例えば、リンカーは、(GS4)を含み、かつアミノ酸配列GSSSS(配列番号171)、GSSSSGSSSS(配列番号172)、GSSSSGSSSSGS(配列番号173)またはGSSSSGSSSSGSSSS(配列番号174)を有する。
【0197】
ペプチドまたはドメインリンカーのいずれも、少なくとも3残基、少なくとも4残基、少なくとも5残基、少なくとも10残基、少なくとも15残基、またはより多くの残基の長さを含むように特定されてもよい。他の実施形態において、リンカーは、2~4残基、2~4残基、2~6残基、2~8残基、2~10残基、2~12残基、2~14残基、2~16残基、2~18残基、2~20残基、2~22残基、2~24残基、2~26残基、2~28残基、2~30残基、2~50残基、5~15残基、または10~50残基の長さを含む。
【0198】
ポリペプチドリンカーの例は、CH1またはCLドメインからの配列断片を含んでもよく;例えば、CL/CH1ドメインの最初の4~12または5~12個のアミノ酸残基は、scFv部分の連結における使用のために特に有用である。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えばCKまたはCλに由来することができる。リンカーは、例えばCy1、Cy2、Cy3、Cy4およびCμを含む、任意のアイソタイプの免疫グロブリン重鎖に由来することができる。リンカー配列はまた、他のタンパク質、例えばIg様タンパク質(例えばTCR、FcR、KIR)、ヒンジ領域由来配列、および他のタンパク質からの他の天然配列に由来してもよい。ある特定のドメイン配置において、VHおよびVLドメインは、リンカーペプチドにより分離されてタンデムに別のドメインに連結しており(例えばscFv)、次いでFcドメイン(またはそのCH2ドメイン)のNまたはC末端に融合している。そのようなタンデム可変領域またはscFvは、Fcドメインにヒンジ領域もしくはその部分、CH1もしくはCLドメインのN末端断片、またはグリシンおよびセリン含有柔軟性ポリペプチドリンカーを介して接続され得る。
【0199】
Fcドメインは、他のドメインに、任意の好適な連結性アミノ酸配列を含む、免疫グロブリン由来配列を介してまたは非免疫グロブリン配列を介して接続され得る。有利には、免疫グロブリン由来配列は、CH1またはCLドメインとFcドメインとの間で容易に使用可能であり、これは特に、CH1またはCLドメインがそのC末端においてFcドメイン(またはCH2ドメイン)のN末端に融合される場合に該当する。免疫グロブリンヒンジ領域またはヒンジ領域の部分は、ポリペプチド鎖上でCH1ドメインとCH2ドメインとの間に存在することができ、そしてそれが一般的である。ヒンジまたはその部分はまた、CLがポリペプチド鎖上でFcドメインに隣接している場合に、ポリペプチド鎖上でCL(例えばCκ)ドメインとFcドメインのCH2ドメインとの間に置かれ得る。しかしながら、ヒンジ領域は、適宜、例えば、好適なリンカーペプチド、例えば柔軟性ポリペプチドリンカーにより置き換えられ得ることが理解される。
【0200】
タンデム可変領域(例えばscFv)中で、2つのVドメイン(例えばVHドメインおよびVLドメイン)は、ABDが、ABDが結合することが意図される抗原に結合することを可能にするような仕方でフォールディングすることを可能にするために十分な長さのリンカーにより一般に連結して一緒にされる。リンカーの例は、グリシンおよびセリン残基を含むリンカー、例えば、アミノ酸配列GEGTSTGSGGSGGSGGAD(配列番号388)を含む。別の特有の実施形態において、scFvのVHドメインおよびVLドメインは、アミノ酸配列(G4S)3により連結して一緒にされる。
【0201】
1つの実施形態において、scFvのVHまたはVLドメインをFcドメインのCH2ドメインに連結するために使用される(ポリ)ペプチドリンカーは、CH1ドメインもしくはCLドメインおよび/またはヒンジ領域の断片を含む。例えば、CH1のN末端アミノ酸配列は、野生型抗体の天然の構造に可能な限り近い構造を模倣するために可変ドメインに融合され得る。1つの実施形態において、リンカーは、ヒンジドメインまたはN末端CH1アミノ酸からのアミノ酸配列を含む。1つの実施形態において、リンカーペプチドは、定型的なVK-CKエルボージャンクションを模倣し、例えば、リンカーはアミノ酸配列RTVAを含むかまたはからなる。
【0202】
1つの実施形態において、CH1またはCKドメイン(例えばFabのCH1またはCKドメイン)のC末端をCH2ドメインのN末端と接続するために使用されるヒンジ領域は、ヒンジ領域の断片(例えばシステイン残基を有しない切断されたヒンジ領域)であるか、またはシステイン残基、適宜、ヒンジ領域中の両方のシステイン残基を除去する(例えば別のアミノ酸により置換するか、もしくは欠失させる)1つもしくは複数のアミノ酸改変を含んでもよい。システインの除去は、望ましくないジスルフィド結合形成、例えば、単量体ポリペプチド中のジスルフィドブリッジの形成を予防するために有用であり得る。
【0203】
本明細書における「ヒンジ」または「ヒンジ領域」または「抗体ヒンジ領域」は、抗体の第1の定常ドメインと第2の定常ドメインとの間の柔軟なポリペプチドまたはリンカーを指す。構造的に、IgG CH1ドメインはEU 220位において終了し、IgG CH2ドメインはEU 237位の残基において始まる。そのため、IgGのためにヒンジは221位(IgG1中のD221)~236位(IgG1中のG236)を一般に含み、番号付けはEUインデックスによるものである。ポリペプチド内に見出される定常領域ドメイン内の特有のアミノ酸残基に対する参照は、他に指し示されなければまたは他に文脈に矛盾しなければ、IgG抗体の文脈において、Kabatに従って定義される。
【0204】
1つの実施形態において、ヒンジ領域(またはその断片)は、ヒトIgG1抗体のヒンジドメインに由来する(derived form)。例えば、ヒンジドメインは、アミノ酸配列:THTCPPCPAPELL(配列番号166)、またはそれに対して少なくとも60%、70%、80%もしくは90%同一のアミノ酸配列を含んでもよく、適宜、1つまたは両方のシステインは、欠失しているか、または異なるアミノ酸残基により置換されている。
【0205】
1つの実施形態において、ヒンジ領域(またはその断片)は、ヒトIgM抗体のCμ2-C Cμ3ヒンジドメインに由来する。例えば、ヒンジドメインは、アミノ酸配列:NASSMCVPSPAPELL(配列番号167)、またはそれに対して少なくとも60%、70%、80%もしくは90%同一のアミノ酸配列を含んでもよく、適宜、1つまたは両方のシステインは、欠失しているか、または異なるアミノ酸残基により置換されている。
【0206】
非共有結合または相互作用を介して互いと二量体化および会合するポリペプチド鎖は、それぞれのCH1およびCκドメインの間、および/または鎖上のそれぞれのヒンジドメインの間に形成される鎖間ジスルフィド結合により追加的に結合していてもよく、またはそうでなくてもよい。CH1、Cκおよび/またはヒンジドメイン(または他の好適な連結性アミノ酸配列)は、適宜、鎖の所望される対合が助長され、かつ望ましくないまたは不正確なジスルフィド結合形成が回避されるように鎖間ジスルフィド結合が鎖の間に形成されるように構成され得る。例えば、対合すべき2つのポリペプチド鎖が各々、ヒンジドメインに隣接するCH1またはCκを有する場合、それぞれのCH1/Cκ-ヒンジセグメントの間の鎖間ジスルフィド結合形成のために利用可能なシステインの数が低減される(または完全に排除される)ようにポリペプチド鎖は構成され得る。例えば、それぞれのCH1、Cκおよび/またはヒンジドメインのアミノ酸配列は、ポリペプチドのCH1/Cκおよびヒンジドメインの両方におけるシステイン残基を除去するために改変可能であり;それにより、二量体化する2つの鎖のCH1およびCκドメインは非共有結合性相互作用を介して会合する。
【0207】
別の例において、ヒンジドメインに隣接する(例えば、N末端にある)CH1またはCκドメインは、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を有するシステインを含み、かつCH1またはCκのC末端に置かれたヒンジドメインは、ヒンジの1つまたは両方のシステイン(例えばKabatに従ってヒトIgG1ヒンジについて番号付けされた場合にCys 239およびCys 242)の欠失または置換を含む。1つの実施形態において、ヒンジ領域(またはその断片)は、アミノ酸配列:THTSPPSPAPELL(配列番号168)、またはそれに対して少なくとも60%、70%、80%もしくは90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0208】
別の例において、ヒンジドメインに隣接する(例えば、N末端にある)CH1またはCκドメインは、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を有するシステイン残基において欠失または置換を含み、かつCH1またはCκのC末端に置かれたヒンジドメインは、ヒンジの1つまたは両方のシステイン(例えばKabatに従ってヒトIgG1ヒンジについて番号付けされた場合にCys 239およびCys 242)を含む。1つの実施形態において、ヒンジ領域(またはその断片)は、アミノ酸配列:THTCSSCPAPELL(配列番号169)、またはそれに対して少なくとも60%、70%、80%もしくは90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0209】
別の例において、ヒンジ領域はIgM抗体に由来する。そのような実施形態において、CH1/CK対合は、IgM抗体におけるCμ2ドメインホモ二量体化を模倣する。例えば、ヒンジドメインに隣接する(例えば、N末端にある)CH1またはCκドメインは、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を有するシステインにおいて欠失または置換を含み、かつCH1またはCκのC末端に置かれたIgMヒンジドメインは、ヒンジの1つまたは両方のシステインを含む。1つの実施形態において、ヒンジ領域(またはその断片)は、アミノ酸配列:THTCSSCPAPELL(配列番号170)、またはそれに対して少なくとも60%、70%、80%もしくは90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0210】
ポリペプチドリンカーの代替として、様々な非タンパク質性ポリマーまたは化学的リンカーが多特異性タンパク質において用途を有し得る。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマーを含むがそれに限定されない非タンパク質性ポリマーは、リンカーとして用途を有し得る。一部の例において、多特異性タンパク質のポリペプチド鎖中のアミノ酸配列は、反応性基、適宜保護された反応性基を導入するために改変されてもよく、そのように改変されたタンパク質または鎖は次に、相補的な反応性基を含むリンカーまたはポリペプチドと反応させられる。一部の例において、多特異性タンパク質のポリペプチド鎖中のアミノ酸残基は、反応性基を含むリンカーに(相補的な反応性基を有するリンカーを用いて機能化された第2のポリペプチドとのさらなる反応のため)、または酵素触媒された反応を介して直接的に第2のポリペプチドに結合することができる。例えば、アクセプターグルタミンまたはリジンを含むポリペプチドは、トランスグルタミン酵素(例えば細菌トランスグルタミナーゼ、BTG)の存在下で第一級アミンを含むリンカーと反応することができ、その結果、トランスグルタミナーゼ酵素は、ポリペプチドの一次構造内の、例えば免疫グロブリン定常ドメイン内の、または定常領域に挿入もしくは付加(例えば、融合)されたTGase認識タグ内のアクセプターグルタミン残基へのリンカーのコンジュゲーションを触媒する。第2のポリペプチドもまた、類似した方式においてリンカーを用いて機能化することができ、コンジュゲートされたリンカーの各々が相補的な反応性基(例えば1つのポリペプチドのリンカー上のRおよび他のポリペプチドのリンカー上のR’)を有する場合、2つの機能化されたポリペプチドは、反応の残基を含むリンカーまたはR’とRを介して結合するように反応することができる。反応性基ペアRおよびR’の例は、双直交反応する能力を有する範囲の基を含み、例えば、アジドとシクロオクチンとの間(銅フリークリック化学)、ニトロンとシクロオクチンとの間の1,3-双極子付加環化、アルデヒドおよびケトンからのオキシム/ヒドラゾン形成ならびにテトラジンライゲーションがある(国際公開第2013/092983号パンフレットも参照)。結果としてもたらされるリンカーおよび機能化された抗体、またはそのYエレメントはそのため、RおよびR’の反応の結果としてもたらされるRR’基、例えばトリアゾールを含むことができる。抗体へのBTG媒介性コンジュゲーションにおける使用のための方法およびリンカーは、PCT国際公開第2014/202773号パンフレット(その開示は参照により組み込まれる)において記載されている。「TGase」または「TG」と交換可能に使用される「トランスグルタミナーゼ」は、ε-(γ-グルタミル)リジンイソペプチド結合を結果としてもたらす、ペプチド結合したグルタミンのγ-カルボキサミド基と、リジンまたは構造的に関連する第一級アミン、例えばアミノペンチル基、例えばペプチド結合したリジンのε-アミノ基との間のアシル転移反応を通じてタンパク質を架橋する能力を有する酵素を指す。TGaseは、特に、細菌トランスグルタミナーゼ(BTG)、例えばEC参照番号EC 2.3.2.13を有する酵素(タンパク質-グルタミン-γ-グルタミルトランスフェラーゼ)を含む。用語「アクセプターグルタミン」残基は、抗体のグルタミン残基を指す場合に、TGaseにより認識され、かつグルタミンとリジンまたは構造的に関連する第一級アミン、例えばアミノペンチル基との間の反応を通じてTGaseにより架橋され得るグルタミン残基を意味する。好ましくは、アクセプターグルタミン残基は、表面に露出されたグルタミン残基である。用語「TGase認識タグ」は、アクセプターグルタミン残基を含むアミノ酸の配列であって、ポリペプチド配列中に組み込まれた(例えば付加された)場合に、好適な条件下で、TGaseにより認識され、アミノ酸の配列内のアミノ酸側鎖と反応パートナーとの間の反応を通じてTGaseによる架橋に繋がるものを指す。認識タグは、酵素認識タグを含むポリペプチド中に天然に存在しないペプチド配列であってもよい。TGase認識タグの例は、国際公開第2012/059882号パンフレットおよび国際公開第2014/072482号パンフレットにおいて開示されているアミノ酸配列(これらの配列の開示は参照により本明細書に組み込まれる)を含む。
【0211】
定常領域
定常領域ドメインは、定常重鎖(CH1)および軽鎖(CL、CκまたはCλ)ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ならびにCH3ドメインを含む、任意の好適なヒト抗体、特にはガンマアイソタイプのヒト抗体に由来することができる。
【0212】
重鎖定常ドメインに関して、「CH1」は、EUインデックスに従って118~220位を一般に指す。文脈に依存して、CH1ドメイン(例えばドメイン配置において示されている)は、適宜、CH1がヒンジ領域の少なくとも部分を含むようにヒンジ領域中に伸長した残基を含むことができる。例えば、ポリペプチド鎖上のC末端および/またはFcドメインのC末端、および/またはFcドメインであるかもしくはそのC末端にあるFab構造内に位置付けられた場合に、CH1ドメインは、適宜、ヒンジ領域の少なくとも部分を含むことができ、例えば、CH1ドメインは、少なくとも上ヒンジ領域、例えばヒトIgG1ヒンジの上ヒンジ領域を含むことができ、適宜さらに、上ヒンジの末端スレオニンはセリンにより置き換えられ得る。そのようなCH2ドメインは、したがって、そのC末端においてアミノ酸配列:EPKSCDKTHS(配列番号389)を含むことができる。
【0213】
例示的なヒトCH1ドメインアミノ酸配列は以下を含む:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRV(配列番号156)
または
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHS(配列番号157)
または
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHT(配列番号158)
【0214】
例示的なヒトCκドメインアミノ酸配列は以下を含む:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号159)
【0215】
一部の例示的な構成において、多特異性タンパク質は、可変領域、CH1および/またはCLドメインが、CKドメインとのCH1ドメインの所望される鎖対合を促進するためにノブ-イントゥー-ホールまたは静電ステアリングアプローチにおいてアミノ酸置換を導入することにより操作された1または2つのFab(例えば1つのFabはNKp46に結合し、他方は対象とする抗原に結合する)を含むヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体であり得る。一部の例示的な構成において、多特異性タンパク質は、FabがVH/VLクロスオーバー(VHおよびVLが互いに置き換わっている)またはCH1/CLクロスオーバー(CH1およびCLが互いに置き換わっている)を有し、かつCH1および/またはCLドメインが、ノブ-イントゥー-ホールまたは静電ステアリングにより正確な鎖会合を促進するためのアミノ酸置換を含む、1または2つのFab(例えば1つのFabはNKp46に結合し、他方は対象とする抗原に結合する)を含むヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体であり得る。
【0216】
「CH2」は、EUインデックスに従って237~340位を一般に指し、「CH3」は、EUインデックスに従って341~447位を一般に指す。CH2およびCH3ドメインは、任意の好適な抗体に由来することができる。そのようなCH2およびCH3ドメインは、野生型ドメインとして使用可能であるか、または改変されたCH2もしくはCH3ドメインのための基礎として役立ち得る。適宜、CH2および/またはCH3ドメインは、ヒト起源であるか、または別の種(例えば、齧歯動物、ウサギ、非ヒト霊長動物)のものを含んでもよいか、または改変されているかもしくはキメラのCH2および/もしくはCH3ドメイン、例えば、異なる抗体アイソタイプもしくは種の抗体からの、異なるCH2もしくはCH3ドメインからの部分もしくは残基を含むものを含んでもよい。
【0217】
ドメイン配置のいずれにおいても、Fcドメイン単量体は、CH2-CH3単位(全長CH2およびCH3ドメインまたはその断片)を含んでもよい。Fcドメイン単量体を有する2つの鎖を含むヘテロ二量体またはヘテロ三量体(すなわちヘテロ二量体またはヘテロ三量体はFcドメイン二量体を含む)において、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化の能力を有する(例えば、それは野生型CH3ドメインもしくはCH3インターフェースにおいて野生型配列を有するCH3ドメインを含むか、または所望されるCH3-CH3二量体化を促進するための改変を有するCH3ドメインを含む)。
【0218】
例示的なヒトIgG1 CH2-CH3(Fc)ドメインアミノ酸配列は以下を含む:
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号160)
【0219】
Fcドメインは、適宜、C末端リジン(K)をさらに含んでもよい。一部の例示的な構成において、多特異性タンパク質は、ポリペプチド鎖が、所望されるタンパク質を生成するように互いの間でのヘテロ二量体化のために操作されている、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体またはヘテロ四量体であり得る。所望される鎖対合がCH1-Cκ二量体化により駆動されないか、または対合の増強が所望される実施形態において、鎖は、優先的な2つの異なる鎖のヘテロ二量体化を2つの同一の鎖のホモ二量体化よりも助長する、アミノ酸改変(例えば、置換)を有する定常またはFcドメインを含んでもよい。
【0220】
一部の実施形態において、「ノブ-イントゥー-ホール」アプローチが使用され、該アプローチにおいて、抗体が優先的にヘテロ二量体化するようにドメインインターフェース(例えば抗体Fc領域のCH3ドメインインターフェース)は突然変異される。これらの突然変異は、インターフェース(例えばFc二量体インターフェース)間の電荷極性の変更を作出し、その結果、静電気的にマッチした鎖(例えばFc含有鎖)の共発現は好都合な誘引性相互作用をサポートし、それにより、所望されるヘテロ二量体(例えばFcヘテロ二量体)形成が促進される一方、不都合な反発的電荷相互作用は、望ましくないヘテロ二量体(例えば、Fcホモ二量体)形成を抑制する。例えば、Brinkmann and Kontermann, 2017 MAbs, 9(2): 182-212(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において総説されている突然変異およびアプローチを参照。例えば、第1のFc単量体上の「ホール」突然変異はY349C/T366S/L368A/Y407Vを含むことができ、かつ第2のFc単量体上の相補的な「ノブ」突然変異はS354C/T366W(Kabat EU番号付け)を含むことができる。例えば、1つの重鎖はT366W置換を含み、かつ第2の重鎖は、T366S、L368AおよびY407V置換を含む。例えば、Ridgway et al (1996) Protein Eng., 9, pp. 617-621; Atwell (1997) J. Mol. Biol., 270, pp. 26-35;および国際公開第2009/089004号パンフレット(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照。別のアプローチにおいて、1つの重鎖はF405L置換を含み、かつ第2の重鎖はK409R置換を含む。例えば、Labrijn et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 110, pp. 5145-5150を参照。別のアプローチにおいて、1つの重鎖は、T350V、L351Y、F405A、およびY407V置換を含み、かつ第2の重鎖は、T350V、T366S、K392L、およびT394W置換を含む。例えば、Von Kreudenstein et al., (2013) mAbs 5:646-654を参照。別のアプローチにおいて、1つの重鎖は、K409DおよびK392Dの両方の置換を含み、かつ第2の重鎖は、D399KおよびE356Kの両方の置換を含む。例えば、Gunasekaran et al., (2010) J. Biol. Chem. 285:19637-19646を参照。別のアプローチにおいて、1つの重鎖は、D221E、P228EおよびL368E置換を含み、かつ第2の重鎖は、D221R、P228R、およびK409R置換を含む。例えば、Strop et al., (2012) J. Mol. Biol. 420: 204-219を参照。別のアプローチにおいて、1つの重鎖は、S364HおよびF405A置換を含み、かつ第2の重鎖は、Y349Tおよび、T394F置換を含む。例えば、Moore et al., (2011) mAbs 3: 546-557を参照。別のアプローチにおいて、1つの重鎖はH435R置換を含み、かつ第2の重鎖は、適宜、置換を含んでもよく、または含まなくてもよい。例えば、米国特許第8,586,713号明細書を参照。そのようなヘテロ多量体抗体が、ヒトIgG2またはIgG4に由来するFc領域を有する場合、これらの抗体のFc領域は、CD16結合性を可能にするアミノ酸改変を含有するように操作され得る。一部の実施形態において、抗体は、残基N297(Kabat EU番号付け)において哺乳動物抗体タイプN結合型グリコシル化を含んでもよい。
【0221】
一部の実施形態において、ジスルフィド結合の1つまたは複数のペア、例えばA287CおよびL306C、V259CおよびL306C、R292CおよびV302C、ならびにV323CおよびI332C(Kabat番号付け)が、安定性を増加させるために、例えばさらに、他のFc改変により引き起こされる安定性の喪失に対して(to a loss of stability)、Fc領域中に導入される。追加の例は、Fc安定性および凝集抵抗性を増強するためにK338I、A339K、およびK340S突然変異を導入することを含む(Gao et al, 2019 Mol Pharm. 2019;16:3647)。
【0222】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質(where a multispecific protein)は、ヒトFcガンマ受容体に対する低減された結合性を有することが意図される。一部の実施形態において、多特異性タンパク質が、ヒトCD16Aポリペプチドに対する低減された結合性(ならびに適宜さらに、CD32A、CD32Bおよび/またはCD64に対する低減された結合性)を有することが意図される場合、FcドメインはヒトIgG4 Fcドメインであり、適宜さらに、Fcドメインは、ヒンジジスルフィドを安定化させるためのS228P突然変異を含む。1つの実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG4 Fcドメインに対して少なくとも90%、95%または99%同一のアミノ酸配列を有し、適宜、Kabat S228P突然変異をさらに含む。
【0223】
実施形態において、多特異性タンパク質が、ヒトCD16Aポリペプチドに対する低減された結合性(ならびに適宜さらに、CD32A、CD32Bおよび/またはCD64に対する低減された結合性)を有することが意図される場合、CH2および/もしくはCH3ドメイン(またはそれを含むFcドメイン)は、FcγRIIIA(CD16)に対する結合性を減少または消失させるための改変を含んでもよい。例えば、Fcドメイン二量体タンパク質中の残基N297(Kabat番号付け)におけるCH2突然変異は、CD16A結合性を実質的に排除することができる。しかしながら、他の構成が実行され得ることを当業者は理解する。例えば、233~236位におけるヒトIgG1もしくはIgG2残基中へのならびに/または327、330および331位における残基中への置換は、Fcγ受容体に対する結合性、ならびにそのためADCCおよびCDCを大きく低減させることが示された。さらには、Idusogie et al. (2000) J. Immunol. 164(8):4178-84は、K322を含む、異なる位置におけるアラニン置換は、補体活性化を有意に低減させることを実証した。
【0224】
1つの実施形態において、Kabat重鎖残基297におけるアスパラギン(N)は、アスパラギン以外の残基(例えばグルタミン、グルタミン以外の残基、例えばセリン)により置換され得る。
【0225】
1つの実施形態において、CD16Aに対する結合性を低減させるために改変されたFcドメインは、Kabat残基234、235および322におけるFcドメイン中の置換を含む。1つの実施形態において、タンパク質は、Kabat残基234、235および331におけるFcドメイン中の置換を含む。1つの実施形態において、タンパク質は、Kabat残基234、235、237および331におけるFcドメイン中の置換を含む。1つの実施形態において、タンパク質は、Kabat残基234、235、237、330および331におけるFcドメイン中の置換を含む。1つの実施形態において、FcドメインはヒトIgG1サブタイプのものである。アミノ酸残基は、KabatによるEU番号付けに従って指し示される。
【0226】
1つの実施形態において、CD16Aに対する結合性を低減させるために改変されたFcドメインは、Kabat残基233~236のうちの1つもしくは複数、適宜、残基233~237のうちの1つもしくは複数、または残基234、235および/もしくは237のうちの1、2もしくは3つにおけるアミノ酸改変(例えば置換)、ならびにKabat残基330および/または331におけるアミノ酸改変(例えば置換)を含む。そのようなFcドメインの1つの例は、Kabat残基L234、L235およびP331における置換(例えば、L234A/L235E/P331SまたはL234F/L235E/P331S)を含む。そのようなFcドメインの別の例は、Kabat残基L234、L235、G237およびP331における置換(例えば、L234A/L235E/G237A/P331S)を含む。そのようなFcドメインの別の例は、Kabat残基L234、L235、G237、A330およびP331における置換(例えば、L234A/L235E/G237A/A330S/P331S)を含む。1つの実施形態において、抗体は、L234A/L235E/N297X/P331S置換、L234F/L235E/N297X/P331S置換、L234A/L235E/G237A/N297X/P331S置換、またはL234A/L235E/G237A/ N297X/A330S/P331S置換を含むヒトIgG1 Fcドメインを含み、Xは、アスパラギン以外の任意のアミノ酸であり得る。1つの実施形態において、Xはグルタミンであり;別の実施形態において、Xは、グルタミン以外の残基(例えばセリン)である。
【0227】
1つの実施形態において、CD16Aに対する低いまたは低減された結合性を有するFcドメインはヒトIgG4 Fcドメインを含み、Fcドメインは、以下のアミノ酸配列(S228P置換を有するヒトIgG4)、またはそれに対して少なくとも90%、95%もしくは99%同一のアミノ酸配列を有する。
ASTKG PSVFPLAPCS RSTSESTAAL GCLVKDYFPE PVTVSWNSGA LTSGVHTFPA VLQSSGLYSL SSVVTVPSSS LGTKTYTCNV DHKPSNTKVD KRVESKYGPP CPPCPAPEFL GGPSVFLFPP KPKDTLMISR TPEVTCVVVD VSQEDPEVQF NWYVDGVEVH NAKTKPREEQ FNSTYRVVSV LTVLHQDWLN GKEYKCKVSN KGLPSSIEKT ISKAKGQPRE PQVYTLPPSQ EEMTKNQVSL TCLVKGFYPS DIAVEWESNG QPENNYKTTP PVLDSDGSFF LYSRLTVDKS RWQEGNVFSC SVMHEALHNH YTQKSLSLSL(配列番号161)
【0228】
1つの実施形態において、CD16Aに対する結合性を低減させるために改変されたFcドメインは、以下のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、95%もしくは99%同一であるが、Kabat 234、235および331位(下線)におけるアミノ酸残基を保持しているアミノ酸配列を含む:
【化10】
【0229】
1つの実施形態において、CD16Aに対する結合性を低減させるために改変されたFcドメインは、以下のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、95%もしくは99%同一であるが、Kabat 234、235および331位(下線)におけるアミノ酸残基を保持しているアミノ酸配列を含む:
【化11】
【0230】
1つの実施形態において、CD16Aに対する結合性を低減させるために改変されたFcドメインは、以下のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、95%もしくは99%同一であるが、Kabat 234、235、237、330および331位(下線)におけるアミノ酸残基を保持しているアミノ酸配列を含む:
【化12】
【0231】
1つの実施形態において、CD16Aに対する結合性を低減させるために改変されたFcドメインは、以下のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、95%もしくは99%同一であるが、Kabat 234、235、237および331位(下線)におけるアミノ酸残基を保持している配列を含む:
【化13】
【0232】
上記のFcドメイン配列のいずれも、適宜、天然に存在する配列におけるように、C末端リジン(K)をさらに含むことができる。
【0233】
CD16(CD16A)に対する結合が所望される本明細書におけるある特定の実施形態において、CH2および/もしくはCH3ドメイン(またはそれを含むFcドメイン)は、野生型/非改変Fcガンマ受容体結合性部位(例えば野生型Fcドメイン)を有してもよく、またはヒトCD16および適宜別の受容体、例えばFcRnに対する結合性を増加させる1つもしくは複数のアミノ酸改変(例えばアミノ酸置換)を含んでもよい。適宜、改変は、新生児Fc受容体(FcRn)、例えばヒトFcRnに結合するFc由来ポリペプチドの能力を実質的に減少も消失もさせない。典型的な改変は、少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば置換、欠失、挿入)、および/または変更されたタイプのグリコシル化、例えば、低フコシル化を含む改変されたヒトIgG1由来定常領域を含む。そのような改変は、Fc受容体:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)との相互作用に影響することができる。FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)およびFcγRIII(CD 16)は活性化(すなわち、免疫系増強)受容体であり、FcγRIIB(CD32B)は阻害(すなわち、免疫系減弱)受容体である。改変は、例えば、エフェクター(例えばNK)細胞上のFcγRIIIaに対するFcドメインの結合を増加させ、かつ/またはFcγRIIBに対する結合性を減少させるものであってもよい。改変の例は、PCT国際公開第2014/044686号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において提供されている。FcγRIIIaまたはFcRn結合性に影響する(それを増強する)特有の突然変異(IgG1 Fcドメイン中)もまた以下に記載される。
【0234】
【0235】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、Fc領域のCH2および/またはCH3ドメイン中に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む(comprise)(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはより多くのアミノ酸改変を有する)変異型Fc領域を含み、改変はヒトCD16ポリペプチドに対する結合性を増強する。他の実施形態において、多特異性タンパク質は、アミノ酸237~341のFc領域のCH2ドメイン中に、または残基231~341を含む下ヒンジ-CH2領域内に少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはより多くのアミノ酸改変)を含む。一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、少なくとも2つのアミノ酸改変(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、またはより多くのアミノ酸改変)を含み、そのような改変のうちの少なくとも1つはCH3領域内にあり、かつ少なくとも1つのそのような改変はCH2領域内にある。包含されるのはまた、ヒンジ領域中のアミノ酸改変である。1つの実施形態において、包含されるのは、CH1ドメイン中、適宜、残基216~230(Kabat EU番号付け)を含む上ヒンジ領域中のアミノ酸改変である。Fc改変の任意の好適な機能的な組合せ、例えば、米国特許第7,632,497号明細書;同第7,521,542号明細書;同第7,425,619号明細書;同第7,416,727号明細書;同第7,371,826号明細書;同第7,355,008号明細書;同第7,335,742号明細書;同第7,332,581号明細書;同第7,183,387号明細書;同第7,122,637号明細書;同第6,821,505号明細書および同第6,737,056号明細書;ならびに/またはPCT国際公開第2011/109400号パンフレット;国際公開第2008/105886号パンフレット;国際公開第2008/002933号パンフレット;国際公開第2007/021841号パンフレット;国際公開第2007/106707号パンフレット;国際公開第06/088494号パンフレット;国際公開第05/115452号パンフレット;国際公開第05/110474号パンフレット;国際公開第04/1032269号パンフレット;国際公開第00/42072号パンフレット;国際公開第06/088494号パンフレット;国際公開第07/024249号パンフレット;国際公開第05/047327号パンフレット;国際公開第04/099249号パンフレットおよび国際公開第04/063351号パンフレット;ならびに/またはLazar et al. (2006) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 103(11): 405-410; Presta, L.G. et al. (2002) Biochem. Soc. Trans. 30(4):487-490; Shields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 26; 277(30):26733-26740およびShields, R.L. et al. (2001) J. Biol. Chem. 276(9):6591-6604のいずれかにおいて開示されている異なるFc改変の任意の組合せを行うことができる。
【0236】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、野生型Fc領域と比べて少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはより多くのアミノ酸改変)を含むFcドメインを含み、その結果、分子は、野生型Fc領域を含む同じ分子と比べてヒトCD16に対する増強された結合親和性を有し、適宜、変異型Fc領域は、221、239、243、247、255、256、258、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、300、301、303、305、307、308、309、310、311、312、316、320、322、326、329、330、332、331、332、333、334、335、337、338、339、340、359、360、370、373、376、378、392、396、399、402、404、416、419、421、430、434、435、437、438および/または439(Kabat EU番号付け)のうちのいずれか1つまたは複数の位置における置換を含む。
【0237】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、野生型Fc領域と比べて少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはより多くのアミノ酸改変)を含むFcドメインを含み、その結果、分子は、野生型Fc領域を含む分子と比べてヒトCD16に対する増強された結合親和性を有し、適宜、変異型Fc領域は、239、298、330、332、333および/または334のうちのいずれか1つまたは複数の位置における置換(例えばS239D、S298A、A330L、I332E、E333Aおよび/またはK334A置換)を含み、適宜、変異型Fc領域は、残基S239およびI332における置換、例えばS239DおよびI332E置換(Kabat EU番号付け)を含む。
【0238】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、Kabat残基N297におけるN結合型グリコシル化を含むFcドメインを含む。一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、ヒトCD16に対する結合親和性を増加させる変更されたグリコシル化パターンを含むFcドメインを含む。そのような炭水化物改変は、例えば、変更されたグリコシル化機構を有する宿主細胞中で多特異性タンパク質をコードする核酸を発現させることにより達成され得る。変更されたグリコシル化機構を有する細胞は当技術分野において公知であり、組換え抗体を発現し、それにより、変更されたグリコシル化を有する抗体を産生するための宿主細胞として使用され得る。例えば、Shields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1の他に、欧州特許第1176195号明細書;PCT国際公開第06/133148号パンフレット;国際公開第03/035835号パンフレット;国際公開第99/54342号パンフレット(これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照。1つの態様において、多特異性タンパク質は、1つまたは複数の低フコシル化された定常領域を含有する。そのような多特異性タンパク質は、アミノ酸変更を含んでもよいか、もしくはアミノ酸変更を含まなくてもよく、かつ/または低フコシル化を結果としてもたらす条件下で発現もしくは合成もしくは処理されてもよい。1つの態様において、多特異性タンパク質組成物は、組成物中の抗体種のうちの少なくとも20、30、40、50、60、75、85、90、95%または実質的にすべてが、フコースを欠いたコア炭水化物構造(例えば複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)を含む定常領域を有する、本明細書において記載される多特異性タンパク質を含む。1つの実施形態において、提供されるのは、フコースを有するコア炭水化物構造を含むN結合型グリカンを含まない多特異性タンパク質組成物である。コア炭水化物は好ましくはAsn297における糖鎖である。
【0239】
適宜、Fcドメイン二量体を含む多特異性タンパク質は、例えば、表面プラズモン共鳴により評価された場合に、従来的なヒトIgG1抗体の場合の1-log以内のヒトCD16Aポリペプチドに対する結合親和性を有することにより特徴付けられ得る。
【0240】
1つの実施形態において、Fc受容体結合性を増強するためにFcドメインが操作されているFcドメイン二量体を含む多特異性タンパク質は、例えば、表面プラズモン共鳴により評価された場合に、従来的なまたは野生型のヒトIgG1抗体の場合よりも少なくとも1-log高いヒトCD16Aポリペプチドに対する結合親和性を有することにより特徴付けられ得る。
【0241】
1つの実施形態において、Fcドメイン二量体を含む多特異性タンパク質は、例えば、表面プラズモン共鳴により評価された場合に、従来的なヒトIgG1抗体の場合の1-log以内のヒトFcRn(新生児Fc受容体)ポリペプチドに対する結合親和性を有することにより特徴付けられ得る。
【0242】
適宜、Fcドメイン二量体を含む多特異性タンパク質は、表面プラズモン共鳴[例えば、本明細書中の実施例におけるように、Sensor Chip CM5上に固定化された二特異性抗体および固定化された二特異性抗体上に注入される可溶性CD16ポリペプチドの段階希釈液を用いて、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)上で行われるSPR測定により評価された場合に、10-5M(10μモル濃度)未満、適宜10-6M(1μモル濃度)未満のヒトFc受容体ポリペプチド(例えば、CD16A)に対する結合性(一価)についてのKdにより特徴付けられ得る。
【0243】
サイトカイン受容体ABD
NK細胞上のサイトカイン受容体に結合する抗原結合性ドメイン(サイトカイン受容体ABD)は、有利には、サイトカイン受容体ABDがNK細胞の表面上のサイトカイン受容体に結合するような好適なサイトカインポリペプチドまたはポリペプチド断片を含むことができる。サイトカインは、例えば、全長野生型IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αもしくはIFN-βポリペプチド、そのようなサイトカインのためのNK細胞受容体に結合するために十分なその断片、または以上のいずれかの変異型であり得る。サイトカイン分子は、ヒトサイトカインの少なくとも20、30、40、50、60、70、80または100個の連続するアミノ酸を含む断片であり得、サイトカインは、NK細胞の表面上に存在するそのサイトカイン受容体に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、サイトカインは、例えば、非NK細胞、例えばTreg細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞上に存在する受容体に対する結合親和性を減少させるための、野生型ヒトサイトカインと比較して1つまたは複数のアミノ酸改変(例えばアミノ酸置換)を含むヒトサイトカインの変異型である。サイトカインは、例えば、I型サイトカイン、および、共通ガンマ鎖(CD132)と会合する受容体サブユニット(例えば、IL-2Rβ/IL-15RβまたはIL-21R)サブユニットを含むヘテロ多量体またはヘテロ二量体受容体複合体を介してシグナル伝達する共通サイトカイン受容体ガンマ鎖(cg鎖)サイトカインファミリーのメンバーであり得る。
【0244】
1つの実施形態において、NKp46および適宜さらにCD16Aに結合する多特異性タンパク質は、ヒト野生型サイトカイン対応物と比較してNK細胞上に発現されるサイトカイン受容体における実質的に完全な活性および/または結合親和性を保持する野生型サイトカイン(またはその変異型の断片)の組込みを可能にする。1つの実施形態において、サイトカインは、野生型サイトカインもしくはその断片であるか、または改変されたサイトカインであって、サイトカインが、シグナル伝達を誘導する能力の実質的な低減を有しないかつ/またはNK細胞上のその受容体(例えばCD122、IL-21R、IL-7Ra、IL-27Ra、IL-12R、IL-18R)における結合親和性の実質的な低減を有しないものである。1つの実施形態において、サイトカインは、NK細胞上のその受容体(例えばCD122、IL-21R、IL-7Ra、IL-27Ra、IL-12R、IL-18R)を通じたシグナル伝達を誘導するその能力を実質的に低減させる改変(例えば、置換、欠失など)を含まない。1つの実施形態において、サイトカインは、NK細胞上のその受容体(例えばCD122、IL-21R、IL-7Ra、IL-27Ra、IL-12R、IL-18R)を通じたシグナル伝達を誘導する野生型サイトカイン対応物の能力の少なくとも80%、90%を保持する。適宜、シグナル伝達は、サイトカイン(例えば組換えタンパク質ドメインとしてまたは本開示の多特異性タンパク質内)をNK細胞と接触させ、シグナル伝達を測定すること、例えばNK細胞におけるSTATリン酸化を測定することにより評価される。
【0245】
一部の実施形態において、約15nMの範囲内のNKp46についてのKDを有する本明細書において開示される例示的な抗NKp46 VH/VLペア、またはその機能的に保存的な変異型が、多特異性タンパク質において使用される場合、サイトカインまたはサイトカイン受容体ABD(遊離サイトカインとして、または多特異性タンパク質中に組み込まれたものとして)は、SPRにより決定された場合に、200nMもしくはそれ未満、100nMもしくはそれ未満、50nMもしくはそれ未満または25nMもしくはそれ未満の結合親和性(KD)でその受容体に結合するとして特定され得る。1つの実施形態において、サイトカインまたはサイトカイン受容体ABDは、SPRにより決定された場合に、1nMまたは1nMより高い、適宜10nMより高い、適宜15nMより高い結合親和性(KD)でその受容体に結合する。1つの実施形態において、サイトカインまたはサイトカイン受容体ABDは、SPRにより決定された場合に、約1nm~約200nm、適宜)[(optionally)]約1nm~約100nm、適宜約10nM~約200nM、適宜約10nM~約100nM、適宜約15nM~約100nMの結合親和性(KD)でその受容体に結合する。
【0246】
サイトカイン結合性ABDがCD122結合性ABDである場合、ABDは、CD122 ABDがCD122に結合するような好適なインターロイキン-2(IL-2)ポリペプチドであるか、またはそれを含むことができる。本明細書において例示されるように、ABDは、有利には、野生型ヒトインターロイキン-2と比較してCD25(IL-2Rα)に対する低減された結合性(例えば、例えばSPRにより決定された場合に、低減または消失された結合親和性)を有する変異型または改変型IL-2ポリペプチドである。そのような変異型または改変型IL-2ポリペプチドはまた、本明細書において「IL2v」または「非アルファIL-2」として参照される。CD122結合性ABDは、適宜、野生型ヒトIL-2の場合と実質的に同等であるか、または野生型ヒトIL-2と比較して低減された(弱毒化された)ヒトCD122に対する結合親和性を有するとして特定され得る。CD122結合性ABDは、適宜、野生型ヒトIL-2の場合と実質的に同等であるCD122シグナル伝達を誘導する能力および/またはCD122に対する結合親和性を有するとして特定され得る。1つの実施形態において、CD122結合性ABDは、CD122に対する結合親和性における低減よりも大きいCD25に対する結合親和性における低減、例えばCD25に対する結合親和性における少なくとも1-log、2-logまたは3-logの低減および1-log未満のCD122に対する結合親和性における低減を有する。
【0247】
IL-2は、単量体IL-2受容体(IL-2R)としての形態においてIL-2Rβ(CD122)に結合し、続いてIL-2Rγ(CD132;共通γ鎖とも称される)サブユニットを動員すると考えられている。表面においてCD25を発現しない細胞において、CD122に対する結合性(例えば低減された結合性)は、したがって、適宜、CD122:CD132複合体におけるまたはそれに対する結合性であるとして特定され得る。CD122(またはCD122:CD132複合体)は、適宜、NK細胞の表面に存在するとして特定され得る。表面においてCD25を発現する細胞において、IL-2は、単量体IL-2受容体としての形態においてCD25(IL-2Rα)に結合し、続いてサブユニットIL-2RβおよびIL-2Rγと会合すると考えられている。CD25に対する結合性(例えば低減された結合性、部分的に低減された結合性)は、したがって、適宜、CD25:CD122複合体またはCD25:CD122:CD132複合体におけるまたはそれに対する結合性であるとして特定され得る。
【0248】
本明細書における多特異性タンパク質において、多特異性タンパク質は、適宜、多特異性タンパク質が細胞(例えばNK細胞、CD122+CD25-細胞)の表面においてNKp46(および適宜さらにCD16)に結合している場合に、CD122 ABD(例えばIL2v)が前記細胞の表面においてCD122に結合する能力を有するように構成されているかつ/またはコンフォメーションにある(もしくはコンフォメーションを取る能力を有する)として特定され得る。適宜、さらに、多特異性タンパク質:CD122複合体は、前記細胞の表面においてCD132に結合する能力を有する。
【0249】
CD122 ABDまたはIL2vは、改変型IL-2ポリペプチド、例えば、CD25に対する結合性を減少させる1つまたは複数の(one more)アミノ酸置換、挿入または欠失を導入することにより改変された単量体IL-2ポリペプチドであり得る。
【0250】
一部の実施形態において、CD25に対する結合性が選択的に減少されることが求められる場合、IL-2ポリペプチドは、それを、CD25に対する結合性のさらなる減少または消失を結果としてもたらす1つまたは複数の他の追加の分子、例えばポリマーまたは(ポリ)ペプチドと結合または会合させることにより改変され得る。例えば、野生型または突然変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2のCD25結合性部位をシールドするか、マスクするか、それに結合するか、またはそれと相互作用し、それによりCD25に対する結合性を減少させる別の部分を該IL-2ポリペプチドに結合させることにより改変またはさらに改変され得る。一部の例において、分子、例えばポリマー(例えばPEGポリマー)は、例えばIL-2ポリペプチド上の特有の部位において専用の化学的フックを含有するアミノ酸を設置するための導入(例えば置換)により、CD25により結合されるIL-2上のエピトープをシールドまたはマスクするためにIL-2ポリペプチドにコンジュゲートされる。他の例において、野生型または変異型IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2のCD25結合性部位に結合するかまたはそれと相互作用し、それによりCD25に対する結合性を減少させる抗IL-2モノクローナル抗体または抗体断片に結合される。
【0251】
任意の実施形態において、IL2ポリペプチドは、全長IL-2ポリペプチドであり得るか、または、断片もしくはそれを含むIL2vが特定される活性を保持する(例えば、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、少なくとも部分的なCD122結合性を保持する)限り、IL-2ポリペプチド断片であり得る。
【0252】
本明細書において示されるように、IL2vポリペプチドは、有利には、ヒトCD122に結合する少なくとも(at least at least)一部の、または適宜実質的に完全な、能力を保持しながら、ヒトCD25(IL-2Rα)に結合するその能力を低減させるように設計された1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含むIL-2ポリペプチドを含むことができる。
【0253】
CD25+細胞上のIL-2の活性化バイアスを低減させる様々なIL2vまたは非アルファIL-2部分が記載されている。そのようなIL2vは、IL-2Rαに対する結合性を低減させ、かつIL-2Rβに対する少なくとも部分的な結合性を維持する。いくつかのIL2vポリペプチドが記載されており、多くは、IL-2ポリペプチドのアミノ酸残基領域35~72および/または79~92中に突然変異を有する。例えば、IL-2Rαに対する親和性の減少は、野生型IL-2ポリペプチドの配列中の以下の残基:R38、F42、K43、Y45、E62、P65、E68、V69、およびL72(アミノ酸残基番号付けは、配列番号352において示される成熟IL-2ポリペプチドを参照している)の1つまたは複数を置換することにより得られてもよい。
【0254】
野生型成熟ヒトIL-2タンパク質および最初の3つの残基APTを欠いた野生型成熟IL-2pタンパク質断片は以下のそれぞれ配列番号352および353において示される:
野生型成熟ヒトIL-2
APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCQSIISTLT(配列番号352)
野生型成熟IL-2p:
SSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCQSIISTLT(配列番号353)
【0255】
例示的なIL2v(本明細書の実施例においてもIL2vと称される)は、適宜さらに3つのN末端残基APAの欠失と共に、以下に示されるように、5つのアミノ酸置換T3A、F42A、Y45A、L72GおよびC125Aを有する野生型IL-2のアミノ酸を有することができる:
APASSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTAKFAMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT(配列番号354)
【0256】
1または2つもの少ない突然変異は、IL-2RαおよびL-2Rβに対する結合性を低減させることができる。例えば、本明細書における多特異性タンパク質において例示されるように、野生型IL-2pアミノ酸配列中に2つのアミノ酸置換R38AおよびF42Kを有するIL2vポリペプチドは、IL-2Rβに対する結合性の保持と共に、IL-2Rαに対する結合性の好適な低減を示し、本明細書においてIL2v2と称される、高度に活性の多特異性タンパク質を結果としてもたらした。
【化14】
【0257】
1つの実施形態において、IL2vポリペプチドは、本明細書においてIL2v3と称される、以下に示されるような、3つのアミノ酸置換R38A、F42KおよびT41Aを有する野生型IL-2pアミノ酸配列を有する:
【化15】
【0258】
そのため、1つの実施形態において、IL2変異型は、ヒト野生型IL-2ポリペプチドと比較して少なくとも1つまたは少なくとも2つのアミノ酸改変(例えば置換、挿入、欠失)を含む。1つの実施形態において、IL2vは、ヒト野生型IL-2ポリペプチドと比較して、R38置換(例えばR38A)およびF42置換(例えば、F42K)を含む。1つの実施形態において、IL2vは、ヒト野生型IL-2ポリペプチドと比較して、R38置換(例えばR38A)、F42置換(例えば、F42K)およびT41置換(例えばT41A)を含む。1つの実施形態において、IL2vは、ヒト野生型IL-2ポリペプチドと比較して、T3置換(例えばT3A)、F42置換(例えば、F42A)、Y45置換(例えばY45A)、L72置換(例えばL72G)およびC125置換(例えばC125A)を含む。適宜、IL2vは、配列番号352~356のポリペプチドと同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ酸配列を含む。適宜、IL2vはヒトIL-2ポリペプチドの断片を含み、断片は、配列番号352~356のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列(amino sequence)を有する。
【0259】
位置の任意の組合せが改変され得る。一部の実施形態において、IL-2変異型は、2つまたはより多くの改変を含む。一部の実施形態において、IL-2変異型は、3つまたはより多くの改変を含む。一部の実施形態において、IL-2変異型は、4、5、または6つまたはより多くの改変を含む。
【0260】
IL2変異型ポリペプチドは、例えば、2、3、4、5、6または7つのアミノ酸改変(例えば置換)を含むことができる。例えば、米国特許第5,229,109号明細書(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、R38AおよびF42K置換を有するヒトIL2ポリペプチドを提供する。米国特許第9,447,159号明細書(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、置換T3A、F42A、Y45A、およびL72G置換を有するヒトIL2ポリペプチドを記載している。米国特許第9,266,938号明細書(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、例えばIL-2Rα受容体に対する親和性を低減または消失させるための三重突然変異F42A/Y45A/L72Gを含む、残基L72(例えばL72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R、およびL72K)、残基F42(例えばF42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、およびF42K);ならびに残基Y45(例えば、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45RおよびY45K)において置換を有するヒトIL2ポリペプチドを記載している。いっそうさらに国際公開第2020/057646号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、アミノ酸残基K35、T37、R38、F42、Y45、E61およびE68の間の様々な組合せにおけるアミノ酸置換を含むIL-2vポリペプチドのアミノ酸配列に関する。いっそうさらに、国際公開第2020252418号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、少なくとも1つのアミノ酸残基位置R38、T41、F42、F44、E62、P65、E68、Y107、またはC125が別のアミノ酸で置換されたIL-2vポリペプチドのアミノ酸配列に関し、例えば、アミノ酸置換は、19位におけるL19D、L19H、L19N、L19P、L19Q、L19R、L19S、L19Yの置換、38位におけるR38A、R38F、R38Gの置換、41位におけるT41A、T41G、およびT41Vの置換、42位におけるF42Aの置換、44位におけるF44GおよびF44Vの置換、62位におけるE62A、E62F、E62H、およびE62Lの置換、65位におけるP65A、P65E、P65G、P65H、P65K、P65N、P65Q、P65Rの置換、68位におけるE68E、E68F、E68H、E68L、およびE68Pの置換、107位におけるY107G、Y107H、Y107LおよびY107Vの置換、ならびに125位におけるC125Iの置換、126位におけるQ126Eの置換からなる群から選択される。位置の番号付けは野生型成熟ヒトIL-2に関する。
【0261】
改変型IL-2は、適宜、野生型ヒトIL-2ポリペプチド(例えば配列番号352のアミノ酸配列を含む)と比較して、少なくとも1-log、適宜少なくとも2-log、適宜少なくとも3-log減少したCD25またはCD25:CD122:CD132複合体に対する結合性についてのKDを呈するとして特定され得る。改変型IL-2は、適宜、野生型ヒトIL-2ポリペプチドと比較して、CD25またはCD25:CD122:CD132複合体に対する20%、30%、40%または50%未満の結合親和性を呈するとして特定され得る。IL2は、適宜、野生型ヒトIL-2ポリペプチドと比較して、CD122またはCD122:CD132複合体に対する少なくとも50%、70%、80%または90%の結合親和性を呈するとして特定され得る。一部の実施形態において、IL2は、野生型ヒトIL-2ポリペプチドと比較して、CD122またはCD122:CD132複合体に対する少なくとも50%、60%、70%または80%であるが100%未満の結合親和性を呈する。一部の実施形態において、IL2vは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、CD25に対する50%未満の結合親和性およびCD122に対する少なくとも50%、60%、70%または80%の結合親和性を呈する。
【0262】
CD25およびCD122ならびにその複合体に対する野生型および開示される突然変異体ポリペプチドの結合親和性における差異は、例えば、当業者が精通しているタンパク質-タンパク質相互作用の親和性を測定する標準的な表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイにおいて測定され得る。
【0263】
例示的なIL2変異型ポリペプチドは、配列番号352のアミノ酸配列を有する野生型成熟IL-2ポリペプチドと比べて1つもしくはより多くの、2つもしくはより多くの、または3つもしくはより多くのCD25親和性低減性アミノ酸置換を有する。1つの実施形態において、例示的なIL2vポリペプチドは、以下の群:Q11、H16、L18、L19、D20、D84、S87、Q22、R38、T41、F42、K43、Y45、E62、P65、E68、V69、L72、D84、S87、N88、V91、I92、T123、Q126、S127、I129、およびS130から選択される1つもしくはより多くの、2つもしくはより多くの、または3つもしくはより多くの置換された残基を含む。
【0264】
1つの実施形態において、例示的なIL2変異型ポリペプチドは、アミノ酸残基位置R38、T41、F42、F44、E62、P65、E68、Y107、またはC125のうちの1、2、3、4、5またはより多くが別のアミノ酸で置換されている。
【0265】
1つの実施形態において、CD25またはそれを含むタンパク質複合体(例えば、CD25:CD122:CD132複合体)に対する親和性の減少は、野生型成熟IL-2ポリペプチドの配列中の以下の残基:R38、F42、K43、Y45、E62、P65、E68、V69、およびL72のうちの1つまたは複数を置換することにより得られてもよい。
【0266】
1つの実施形態において、CD122 ABDまたはIL-2ポリペプチドはIL-2模倣性ポリペプチドである。例えばSilva et al, (2019) Nature 565(7738): 186-191および国際公開第2020/005819号パンフレット(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるように、合成IL-2/IL-15ポリペプチド模倣物は、CD122に結合するがCD25には結合しないようにコンピュータにより設計可能であり、これはまた、CD122に結合するがCD25には結合しないIL-2およびIL-15模倣性ポリペプチドを提供する。
【0267】
例えば、IL-2模倣性ポリペプチドは、ドメインX1、X2、X3、およびX4を含む天然に存在しないポリペプチドとして特徴付け可能であり、
(a)X1は、EHALYDAL(配列番号357)に対して少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含むペプチドであり;
(b)X2は、少なくとも8アミノ酸の長さのヘリカルペプチドであり;
(c)X3は、YAFNFELI(配列番号358)に対して少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含むペプチドであり;
(d)X4は、ITILQSWIF(配列番号359)に対して少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含むペプチドであり;
X1、X2、X3、およびX4は、ポリペプチド中で任意の順序であってもよく、
アミノ酸リンカーが任意のドメインの間に存在してもよく、かつポリペプチドはCD122(またはCD122:CD132ヘテロ二量体)に結合する。適宜、ポリペプチドは、200nMもしくはそれ未満、100nMもしくはそれ未満、50nMもしくはそれ未満または25nMもしくはそれ未満の結合親和性でCD122:CD132ヘテロ二量体に結合する。
【0268】
1つの態様において、本発明は、ドメインX1、X2、X3、およびX4を含む天然に存在しないポリペプチドであって、
(a)X1が、アミノ酸(ammo acid)配列EHALYDAL(配列番号357)を含むペプチドであり;
(b)X2が、少なくとも8アミノ酸の長さのヘリカルペプチドであり;
(c)X3が、アミノ酸配列YAFNFELI(配列番号358)を含むペプチドであり;
(d)X4が、アミノ酸配列ITILQSWIF(配列番号359)を含むペプチドであり;
X1、X2、X3、およびX4が、ポリペプチド中で任意の順序であってもよく、
アミノ酸リンカーが任意のドメインの間に存在してもよく、かつポリペプチドがCD122(またはCD122:CD132ヘテロ二量体)に結合する、ポリペプチドを提供する。適宜、ポリペプチドは、200nMもしくはそれ未満、100nMもしくはそれ未満、50nMもしくはそれ未満または25nMもしくはそれ未満、適宜約1nm~約100nm、適宜約10nM~約200nM、適宜約10nM~約100nM、適宜約15nM~約100nMの結合親和性でCD122:CD132ヘテロ二量体に結合する。
【0269】
1つの例において、X1、X3、およびX4は任意の好適な長さであってもよく、すなわち、各々のドメインは、それぞれ配列番号357、358および359のペプチド以外の任意の好適な数の追加のアミノ酸を含有してもよい。1つの実施形態において、X1は、ペプチド PKKKIQLHAEHALYDALMILNI(配列番号360)に対してその長さに沿って少なくとも25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または100%同一のアミノ酸配列を含むペプチドであり;X3は、アミノ酸配列LEDYAFNFELILEEIARLFESG(配列番号361)に対してその長さに沿って少なくとも25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または100%同一のアミノ酸配列を含むペプチドであり;かつX4は、アミノ酸配列EDEQEEMANAIITILQSWIFS(配列番号362)に対してその長さに沿って少なくとも25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または100%同一のアミノ酸配列を含むペプチドである。
【0270】
1つの例において、コンピュータにより設計される合成IL-2ポリペプチドまたは模倣物(またはCD122 ABD)は、[(GS4)3ドメインリンカーを有するまたは有しない]以下において示されるアミノ酸配列[ネオロイキン(neoleukin)]を含む:
PKKKIQLHAEHALYDALMILNIVKTNSPPAEEKLEDYAFNFELILEEIARLFESGDQKDEAEKAKRMKEWMKRIKTTASEDEQEEMANAIITILQSWIFS(配列番号363)
または
GSSSSGSSSSGSSSSPKKKIQLHAEHALYDALMILNIVKTNSPPAEEKLEDYAFNFELILEEIARLFESGDQKDEAEKAKRMKEWMKRIKTTASEDEQEEMANAIITILQSWIFS(配列番号364)
【0271】
さらに他の例において、IL-2ポリペプチドは、それを、CD25に対する結合性の減少を結果としてもたらす1つまたは複数の他の追加の化合物、化学的化合物、ポリマー(例えばPEG)、またはポリペプチドもしくはポリペプチド鎖と接続、融合、結合または会合させることにより改変される。例えば、野生型IL-2ポリペプチドまたはその断片は、ヒトIL-2のCD25結合性部位に結合するかまたはそれと相互作用し、それによりCD25に対する結合性を減少させる抗IL-2モノクローナル抗体またはその抗体断片を含むがそれに限定されない、CD25結合性ペプチドまたはポリペプチドをそれに結合させることにより改変され得る。
【0272】
1つの例において、IL-2は、受容体ドメイン、例えば、サイトカイン受容体ドメインをさらに含む。1つの実施形態において、サイトカイン分子は、IL-2受容体、またはその断片(例えば、IL-2受容体アルファのIL-2結合性ドメイン)を含む。1つの例において、Lopes et al, J Immunother Cancer. 2020; 8(1)(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるように、CD25由来ポリペプチドはIL-2ポリペプチドに融合している。1つの例において、IL-2は、CD25ポリペプチドに融合した循環置換された(circularly permuted)(cp)IL-2を含む変異型融合タンパク質である(例えば、PCT国際公開第2020/249693号パンフレットを参照;その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。CD122 ABDが、CD25ポリペプチドに融合した循環置換された(cp)IL-2を含む場合、ABDは、PCT国際公開第2013/184942号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるcpIL-2:IL-2Raポリペプチドまたはタンパク質を含むことができる。例えば、CD25ポリペプチドに融合した置換された(permuted)(cp)IL-2変異型は、アミノ酸配列:
SKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTGGSS STKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELK PLEEVLNLAQGSGGGSELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLY MLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLP GHCREPPPWENEATERIYHFWGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWT QPQLICTG(配列番号365)、または配列番号365の約20アミノ酸から全長までの連続するストレッチにかけて約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはより高い配列同一性を有するアミノ酸配列を有することができる。
【0273】
1つの例において、IL-2は、特異的な抗IL-2モノクローナル抗体(mAb)と会合しており、そのためIL-2/抗IL-2 mAb複合体(IL-2cx)を形成している。そのような複合体は、CD25結合性を克服することが示されている[Boyman et al., Science 311, 1924-1927 (2006)]。例示的な抗IL2抗体は抗体NARA1である。PCT国際公開第2017/122130号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、柔軟性リンカーが、NARA1の軽鎖または重鎖の可変領域にIL-2を接続するために使用されている融合タンパク質を記載している。Sahin et al. [Nature Communications volume 11, Article number: 6440 (2020)]は、IL-2が、NARA1の軽鎖の相補性決定領域1(L-CDR1)と接触させられ、かつそれに結合しており、IL-2が抗体断片(または断片のポリペプチド鎖)上のその抗原結合性溝に結合しているタンパク質複合体を結果としてもたらす、改善されたコンストラクトを記載している。
【0274】
他の例において、IL-2ポリペプチドまたはその断片は、選択された位置において導入された天然アミノ酸または非天然アミノ酸に共有結合された対象とする部分(例えば化合物、化学的化合物、ポリマー、直鎖状または分岐鎖状PEGポリマー)をそれに結合させることにより改変され得る。そのような改変型インターロイキン2(IL-2)ポリペプチドは、改変型IL-2ポリペプチドとCD25との間の結合性を低減させるがCD122:CD132シグナル伝達複合体に対する意義のある結合性を保持するポリペプチド上の位置において少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むことができ、CD25に対する低減された結合性は、野生型IL-2ポリペプチドとCD25との間の結合性と比較したものである。非天然アミノ酸は、IL-2の残基K35、T37、R38、T41、F42、K43、F44、Y45、E60、E61、E62、K64、P65、E68、V69、N71、L72、M104、C105、およびY107のうちのいずれか1つまたは複数において位置付けられ得る。PCT国際公開第2019/028419号パンフレットおよび国際公開第2019/014267号パンフレット(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるように、非天然アミノ酸は、直交性tRNAシンテターゼ/tRNAペアにより改変型IL-2ポリペプチド中に組み込まれ得る。非天然アミノ酸は、例えば、リジンアナログ、芳香族側鎖、アジド基、アルキン基、またはアルデヒドもしくはケトン基を含むことができる。改変型IL-2ポリペプチドは次に、水溶性ポリマー、脂質、タンパク質、またはペプチドに非天然アミノ酸を通じて共有結合され得る。好適なポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(a-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(POZ)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはその組合せ、または多糖、例えばデキストラン、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、アミロース、ヘパリン、ヘパラン硫酸(HS)、デキストリン、もしくはヒドロキシエチル-デンプン(HES)を含む。
【0275】
一部の例において、例示的なIL2v/非アルファIL-2コンジュゲートは、IL-2ポリペプチド中のアミノ酸残基(例えばK35、F42、F44、K43、E62、P65、R38、T41、E68、Y45、V69、およびL72から選択される位置における残基)が、ポリマーに化学的リンカーを介して結合された天然または非天然アミノ酸残基により置き換えられたIL-2ポリペプチドの全長または断片を含むことができる。ポリマーは、PEGポリマー、例えば5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、および60kDaから選択される平均分子量を有するPEG基であり得る。
【0276】
改変型IL2ポリペプチドは、改変型IL-2ポリペプチドとCD25との間の結合性を低減させるが、CD122:CD132複合体を形成するCD122:CD132シグナル伝達複合体との意義のある結合性を保持するポリペプチド上の位置において少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むことができ、CD25に対する低減された結合性は、野生型IL-2ポリペプチドとCD25との間の結合性と比較したものである。例示的なIl2v/非アルファIL-2コンジュゲートはTHOR-707(Synthorx inc)である。
【0277】
例えば、PCT国際公開第2020/163532号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるように、IL-2コンジュゲート中のアミノ酸残基は、式(I):
【0278】
【0279】
【化17】
であるか、
YはCH2であり、かつZは
【0280】
【化18】
であるか、
ZはCH2であり、かつYは
【0281】
【化19】
であるか、または
YはCH2であり、かつZは
【0282】
【化20】
であり、
かつWは、5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、および60kDaから選択される平均分子量を有するPEG基であり;かつ
Xは、構造:
【0283】
【化21】
を有する]
の構造により置き換えられる。
【0284】
1つの実施形態において、IL-2は、放出可能なポリマー(例えば放出可能なPEGポリマー)を含み、例えばIL-2は、インビボおよび/またはインビトロ(in vitro)でCD25結合性における減少を結果としてもたらす放出可能なポリマーにコンジュゲート、連結または結合している。そのような改変型IL-2の例はベムペガルデスロイキンまたはRSLAIL-2(Nektar Therapeutics inc.)を含み、これは、IL-2と比べてCD25に対する親和性における約60倍の減少を呈するが、IL-2と比べてCD122に対する親和性における約5倍のみの減少を呈する。「ベムペガルデスロイキン」(CAS番号1939126-74-5)は、ヒトインターロイキン-2(デス-1-アラニン、125-セリン)が、そのアミノ残基において平均で6個の[(2,7-ビス{[メチルポリ(オキシエチレン)iokD]カルバモイル}-9H-フルオレン-9-イル)メトキシ]カルボニル部分でN置換されているIL-2である。PCT国際公開第2020/095183号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるように、含まれる放出可能なPEGは、アミド連結[フルオレン-C(0)-NH~]を介してフルオレン環上の2および7位から伸長しており、かつフルオレン環の9位にメチレン基(-CH2-)を介して結合されたカルバミン酸窒素原子への結合を介するIL-2への放出可能な共有結合を有するポリ(エチレングリコール)鎖を用いて2,7,9-置換されたフルオレンに基づき得る。
【0285】
サイトカイン結合性ABDがCD122結合性ABDである別の実施形態において、ABDは、CD122 ABDがCD122に結合するような好適なインターロイキン-15(IL-15)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IL-15分子、例えば、IL-15、例えば、ヒトIL-15の全長、断片または変異型(IL-15v)である。一部の実施形態において、IL-15分子は、例えば、配列番号366のアミノ酸配列を有する、野生型ヒトIL-15アミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、IL-15分子は、配列番号366の成熟野生型ヒトIL-15アミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IL-15分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIL-15の変異型である。適宜、IL-15は、ヒトIL-15ポリペプチドの断片を含み、断片は、配列番号366の野生型成熟ヒトIL-15ポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する。
野生型成熟ヒトIL-15:
NW VNVISDLKKI EDLIQSMHID ATLYTESDVH PSCKVTAMKC FLLELQVISL ESGDASIHDT VENLIILANN SLSSNGNVTE SGCKECEELE EKNIKEFLQS FVHIVQMFIN TS(配列番号366)
【0286】
一部の実施形態において、例えば、米国特許第2016/0184399号明細書において記載されるように、IL-15変異型は、45、51、52、または72位(ヒトIL-15の配列、配列番号366に関する)において改変(例えば置換)を含む。一部の実施形態において、IL-15変異型は、4、5、または6またはより多くの改変を含む。一部の実施形態において、IL-15変異型は、8、10、61、64、65、72、101、または108位(ヒトIL-15の配列、配列番号366に関する)のアミノ酸において1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態において、IL-15変異型は、野生型IL-15と比較して増加したCD122に対する親和性を有する。一部の実施形態において、IL-15変異型は、野生型IL-15と比較して減少したCD122に対する親和性を有する。一部の実施形態において、突然変異は、D8N、K10Q、D61N、D61H、E64H、N65H、N72A、N72H、Q101N、Q108N、またはQ108H(ヒトIL-15の配列、配列番号366に関する)から選択される。位置の任意の組合せが突然変異され得る。一部の実施形態において、IL-15変異型は、2つまたはより多くの突然変異を含む。一部の実施形態において、IL-15変異型は、3つまたはより多くの突然変異を含む。一部の実施形態において、IL-15変異型は、4、5、または6またはより多くの突然変異を含む。一部の実施形態において、IL-15変異型は、61および64位における突然変異を含む。一部の実施形態において、61および64位における突然変異はD61NまたはD61HおよびE64QまたはE64Hである。一部の実施形態において、IL-15変異型は61および108位における突然変異を含む。一部の実施形態において、61および108位における突然変異はD61NまたはD61HおよびQ108NまたはQ108Hである。
【0287】
IL-15Rαの細胞外ドメインは、IL-15に結合する、sushiドメインとして参照されるドメインを含む。一般的なsushiドメインは、補体制御タンパク質(CCP)モジュールまたはショートコンセンサスリピート(SCR)としても参照され、補体システムの複数のメンバーを含む、いくつかのタンパク質中に見出されるタンパク質ドメインである。sushiドメインは、約60アミノ酸の配列ストレッチを含む、4つの高度に保存されたシステイン残基のうちの第1および第4のシステインにより結合されるベータ-サンドイッチフォールドを取る(Norman, Barlow, et al. J Mol Biol. 1991;219(4):717-25)。IL-15Rαのsushiドメインの第1および第4のシステインにより結合されるアミノ酸残基は、最小ドメインとして参照される62アミノ酸ポリペプチドを含む。最小sushiドメインのNおよびC末端においてIL-15Rαの追加のアミノ酸を含むこと、例えばN末端IleおよびThrならびにC末端IleおよびArg残基を含むことは、65アミノ酸伸長されたsushiドメインを結果としてもたらす。
【0288】
CD122 ABDは、受容体ドメイン、例えば、サイトカイン受容体ドメインをさらに含むことができる。1つの実施形態において、サイトカイン分子は、IL-15受容体、またはその断片(例えば、IL-15受容体アルファのIL-15結合性ドメイン)を含む。
【0289】
一部の実施形態において、CD122 ABDは、IL-15受容体アルファ(IL-15Rα)sushiドメイン、第1のドメインリンカー、およびIL-15ポリペプチドに結合し、例えばN末端からC末端へ、IL-15Rα sushiドメインはドメインリンカーに融合しており、次いでドメインリンカーはIL-15ポリペプチドに融合している。適宜、IL-15ポリペプチドは、例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、変異型IL-15ポリペプチドである。他の実施形態において、変異型IL-15ドメインは、配列番号366のアミノ酸配列ならびにN4D/N65D、D30N/N65D、およびD30N/E64Q/N65Dからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む。
【0290】
本明細書において記載されているsushiドメインは、野生型sushiドメインと比べて1つまたは複数の突然変異を含んでもよい。一部の実施形態において、IL-l5Rα sushiドメインは以下のアミノ酸配列を含む:
ITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIR(配列番号367)
【0291】
IL-15ポリペプチドは、いくつかの公知の技術のいずれかを使用して、例えばIL-15Rαに対する結合性の減少を結果としてもたらす化学的化合物、ポリマー(例えばPEG)、またはポリペプチドもしくはポリペプチド鎖へのコンジュゲーションまたは結合により、IL-15ポリペプチドを1つまたは複数の他の追加の化合物と接続、融合、結合または会合させることにより改変され得る。1つの例において、野生型IL-15ポリペプチドまたはその断片は、ヒトIL-15のIL-15Rα結合性部位に結合するかまたはそれと相互作用し、それによりIL-15Rαに対する結合性を減少させる抗IL-15モノクローナル抗体またはその抗体断片を含むがそれに限定されない、IL-15Rα結合性ペプチドまたはポリペプチドを野生型IL-15ポリペプチドまたはその断片に結合させることにより改変され得る。
【0292】
別の例において、IL-15ポリペプチドまたはその断片は、選択された位置において導入された新規のアミノ酸に共有結合された対象とする部分(例えば化合物、化学的化合物、ポリマー、直鎖状または分岐鎖状PEGポリマー)をそれに結合させることにより改変され得る。そのような改変型IL-15ポリペプチドは、改変型IL-15ポリペプチドとIL-15Rαとの間の結合性を低減させるがCD122:CD132複合体を形成するCD122:CD132シグナル伝達複合体との意義のある結合性を保持するポリペプチド上の位置において少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むことができ、IL-15Rαに対する低減された結合性は、野生型IL-15ポリペプチドとIL-15Rαとの間の結合性と比較したものである。非天然アミノ酸は、IL-15の残基N1、W2、V3、N4、16、S7、D8、K10、K11、E13、D14、L15、Q17、S18、M19、H20、121、D22、A23、T24、L25、Y26、E28、S29、D30、V31、H32、P33、S34、C35、K36、V37、T38、K41、L44、E46、Q48、V49、S51、L52、E53、S54、G55、D56、A57、S58、H60、D61、T62、V63、E64、N65、I67、I68、L69、N71、N72、S73、L74、S75、S76、N77、G78、N79、V80、T81、E82、S83、G84、C85、K86、E87、C88、E89、E90、L91、E92、E93、K94、N95、196、K97、E98、L100、Q101、S102、V104、H105、Q108、M109、F110、I111、N112、T113、およびS114のうちのいずれか1つまたは複数において位置付けられ得る。国際公開第2019165453号パンフレット、国際公開第2019/028419号パンフレットおよび国際公開第2019/014267号パンフレット(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)において開示されるように、非天然アミノ酸は、直交性tRNAシンテターゼ/tRNAペアにより改変型IL-2ポリペプチド中に組み込まれ得る。非天然アミノ酸は、例えば、リジンアナログ、芳香族側鎖、アジド基、アルキン基、またはアルデヒドもしくはケトン基を含むことができる。改変型IL-15ポリペプチドは次に、水溶性ポリマー、脂質、タンパク質、またはペプチドに非天然アミノ酸を通じて共有結合され得る。好適なポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(a-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(POZ)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはその組合せ、または多糖、例えばデキストラン、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、アミロース、ヘパリン、ヘパラン硫酸(HS)、デキストリン、もしくはヒドロキシエチル-デンプン(HES)を含む。
【0293】
例えば、国際公開第2020/163532号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるように、IL-15コンジュゲート中のアミノ酸残基は、式(I):
【0294】
【0295】
【化23】
であるか、
YはCH2であり、かつZは
【0296】
【化24】
であるか、
ZはCH2であり、かつYは
【0297】
【化25】
であるか、または
YはCH2であり、かつZは
【0298】
【化26】
であり、
かつWは、5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、および60kDaから選択される平均分子量を有するPEG基であり;かつ
Xは、構造:
【0299】
【化27】
を有する]
の構造により置き換えられる。
【0300】
1つの実施形態において、IL-15は、放出可能なポリマー(例えば放出可能なPEGポリマー)を含み、例えば、IL-15は、インビボおよび/またはインビトロでIL-15R結合性における減少を結果としてもたらす放出可能なポリマーにコンジュゲート、連結または結合している。例は、PCT国際公開第2020/097556号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において開示される化合物を含む。例えば、改変型IL-15は、構造:
【0301】
【化28】
[式中、(n)は約150~約3,000の整数であり、(m)は、2、3、4、および5から選択される整数であり、(n’)は1であり、かつ~NH~はIL-15ポリペプチドのアミノ基を表す]
を有する化合物を含むことができる。
【0302】
サイトカイン結合性ABDがIL-21受容体(IL-21R)結合性ABDに結合する別の実施形態において、ABDは、IL-21R ABDがNK細胞の表面上のIL-21Rに結合するような好適なインターロイキン-21(IL-21)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。IL-21Rは、IL-2受容体およびIL-15受容体と構造が類似しており、これらのサイトカイン受容体の各々は共通ガンマ鎖(γc)を含む。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IL-21分子、例えば、IL-21、例えば、ヒトIL-21の全長、断片または変異型である。実施形態において、IL-21分子は、例えば、配列番号368のアミノ酸配列を有する、野生型ヒトIL-21である。一部の実施形態において、IL-15分子は、配列番号368の成熟野生型ヒトIL-21アミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IL-21分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIL-21の変異型である。適宜、IL-21はヒトIL-21ポリペプチドの断片を含み、断片は、配列番号368のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する。
野生型成熟ヒトIL-21:
HKSSSQ GQDRHMIRMR QLIDIVDQLK NYVNDLVPEF LPAPEDVETN CEWSAFSCFQ KAQLKSANTG NNERIINVSI KKLKRKPPST NAGRRQKHRL TCPSCDSYEK KPPKEFLERF KSLLQKMIHQ HLSSRTHGSE DS(配列番号368)
【0303】
一部の実施形態において、IL-21変異型は、ヒトIL-21Rに結合する実質的な能力を保持しながら、ヒトIL-21Rに結合するその能力を低減させるように設計された1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含むIL-21ポリペプチドを含むことができる。例えば、IL-21は、SPRにより決定された場合に、約0.04nMより高いかまたは約0.04nMであるKDでヒトIL-21Rに結合するとして特徴付けられ得る。
【0304】
そのようなIL-21変異型の例はPCT国際公開第2019028316号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において提供されている。例示的な態様において、アミノ酸置換は、配列番号368の番号付けに従って10、14、20、75、76、77、78および81からなる群から選択される2つのアミノ酸位置に、または配列番号369のアミノ酸位置番号付けに従って5、9、15、70、71、72、73、および76からなる群から選択される2つのアミノ酸位置に位置する。例示的な態様において、IL-21変異型は、アミノ酸配列:
QGQDX HMXXM XXXXX XVDXL KNXVN DLVPE FLPAP EDVET NCEWS AFSCF QKAQL KSANT GNNEX XIXXX XXXLX XXXXX TNAGR RQKHR LTCPS CDSYE KKPPK EFLXX FXXLL XXMXX QHXSS RTHGS EDS(配列番号369)を含み、Xは任意のアミノ酸を表し、かつIL-21変異型アミノ酸配列は、ヒトIL-21のアミノ酸配列(配列番号368)から少なくとも1アミノ酸だけ異なる。
【0305】
例示的な態様において、IL-21変異型は、配列番号369においてXにより指定される位置において少なくとも1つのアミノ酸だけ配列番号368から異なる配列番号369の配列を含む。例示的な態様において、IL-21変異型は、配列番号368に対して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%)配列同一性を有する。
【0306】
例示的な実施形態において、IL-21変異型は、配列番号368のアミノ酸位置番号付けに従って、アミノ酸配列のN末端半分内において、例えば10~30または13~28位(両方とも両端を含む)内の位置において、野生型IL-21アミノ酸配列と比べてアミノ酸置換を含む。他の例示的な実施形態において、IL-21変異型は、配列番号368のアミノ酸位置番号付けに従って、アミノ酸配列のC末端半分内において、例えば、105~138または114~128位(両方とも両端を含む)内の位置において、野生型IL-21アミノ酸配列と比べてアミノ酸置換を含む。他の例示的な実施形態において、IL-21変異型は、配列番号368のアミノ酸位置番号付けに従って、アミノ酸配列の3分割の中央において、例えば、60~90または70~85位(両方とも両端を含む)内の位置において、野生型IL-21アミノ酸配列と比べてアミノ酸置換を含む。
【0307】
適宜、IL-21変異型は、野生型IL-21アミノ酸配列と比べて、1つのみのアミノ酸置換を含む。適宜、アミノ酸置換は、配列番号368のアミノ酸位置番号付けに従って、10、13、14、16、17、18、19、20、21、24、28、70、71、73、74、75、76、77、78、80、81、82、83、84、85、114、115、117、118、121、122、124、125、または128からなる群から選択されるアミノ酸位置に位置する。
【0308】
サイトカイン結合性ABDがIL-18受容体(IL-18Rα)結合性ABDに結合する別の実施形態において、ABDは、IL-18R ABDがNK細胞の表面上のIL-18Rαに結合するような好適なインターロイキン-18(IL-18)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IL-18分子、例えば、IL-18、例えば、ヒトIL-18の全長、断片または変異型である。実施形態において、IL-18分子は、例えば、配列番号370のアミノ酸配列を有する、野生型ヒトIL-18である。一部の実施形態において、IL-18分子は、配列番号370の成熟野生型ヒトIL-18アミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IL-18分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIL-18の変異型である。適宜、IL-18はヒトIL-18ポリペプチドの断片を含み、断片は、配列番号370のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する。
野生型成熟ヒトIL-18:
YFGKLESKLSVIRNLNDQVLFIDQGNRPLFEDMTDSDCRDNAPRTIFIISMYKDSQPRGMAVTISVKCEKISTLSCENKIISFKEMNPPDNIKDTKSDIIFFQRSVPGHDNKMQFESSSYEGYFLACEKERDLFKLILKKEDELGDRSIMFTVQNED(配列番号370)
【0309】
1つの実施形態において、IL-18は、IL-18Rαに対する親和性を実質的に減少させないままIL-18BPに対するその結合親和性を減少させるために改変される。例えば、IL-18は、適宜K53および/またはM60における置換とさらに組み合わせて、IL-18Rα結合性に関与しない位置M51、S55、R104および/またはN110における改変、例えばアミノ酸置換を含んでもよい(位置は野生型成熟IL-18アミノ酸配列に関する)。1つの実施形態において、IL-18は、M51S、S55A、R104Q、R104KもしくはR104Sおよび/またはN110A置換を有する。1つの実施形態において、IL-18はK53SまたはK53A置換を含む。1つの実施形態において、IL-18はM60SまたはM60K置換を含む。
【0310】
別の実施形態において、サイトカイン結合性ABDは、I型インターフェロン受容体、例えばインターフェロン-α受容体(IFN-αR)に結合する。ABDは、IFN-α ABDがNK細胞の表面上のIFN-αRに結合するような好適なI型インターフェロン、例えばインターフェロン-α(IFN-α)またはインターフェロン-β(IFN-β)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。インターフェロン-α受容体は、インターフェロンα/β受容体(IFNAR)としても公知であり、2つのサブユニットIFNAR1およびIFNAR2から構成されるヘテロ二量体膜貫通型受容体である。I型IFNについて、主なSTATシグナル伝達複合体は、STAT1、STAT2、およびIFN調節因子(IRF)-9からなるIFN刺激性遺伝子因子3により形成される。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IFN-αまたはIFN-β分子、例えば、IFN-αまたはIFN-β、例えば、ヒトIFN-αまたはIFN-βの全長、断片または変異型、例えばヒトIFN-α1、IFN-α2、IFN-α4、IFN-α5、IFN-α6、IFN-α7、IFN-α8、IFN-α10、IFN-α12、IFN-α14、IFN-α16またはIFN-α17ポリペプチドである。一部の実施形態において、IFN-αまたはIFN-β分子は、例えば、配列番号371~382のいずれかのアミノ酸配列を有する、野生型ヒトIFN-αまたはIFN-βである。他の実施形態において、IFN-αまたはIFN-β分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIFN-αまたはIFN-βの変異型である。一部の実施形態において、IFN-αまたはIFN-β分子は、それぞれ配列番号371~382の成熟野生型ヒトIFN-αまたはIFN-βアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IFN-αまたはIFN-β分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIFN-αまたはIFN-βの変異型である。適宜、IFN-αまたはIFN-βはヒトIFN-αまたはIFN-βポリペプチドの断片を含み、断片は、配列番号371~382のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する。
野生型ヒトIFN-α成熟タンパク質:
IFNα2
CDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKE(配列番号371)
IFNα1
CDLPETHSLDNRRTLMLLAQMSRISPSSCLMDRHDFGFPQEEFDGNQFQKAPAISVLHELIQQIFNLFTTKDSSAAWDEDLLDKFCTELYQQLNDLEACVMQEERVGETPLMNADSILAVKKYFRRITLYLTEKKYSPCAWEVVRAEIMRSLSLSTNLQERLRRKE(配列番号372)
IFNα4
CDLPQTHSLGNRRALILLAQMGRISHFSCLKDRHDFGFPEEEFDGHQFQKTQAISVLHEMIQQTFNLFSTEDSSAAWEQSLLEKFSTELYQQLNDLEACVIQEVGVEETPLMNEDSILAVRKYFQRITLYLTEKKYSPCAWEVVRAEIMRSLSFSTNLQKRLRRKD(配列番号373)
IFNα5
CDLPQTHSLSNRRTLMIMAQMGRISPFSCLKDRHDFGFPQEEFDGNQFQKAQAISVLHEMIQQTFNLFSTKDSSATWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACMMQEVGVEDTPLMNVDSILTVRKYFQRITLYLTEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSANLQERLRRKE(配列番号374)
IFNα6
CDLPQTHSLGHRRTMMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFRFPQEEFDGNQFQKAEAISVLHEVIQQTFNLFSTKDSSVAWDERLLDKLYTELYQQLNDLEACVMQEVWVGGTPLMNEDSILAVRKYFQRITLYLTEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSSSRNLQERLRRKE(配列番号375)
IFNα7
CDLPQTHSLRNRRALILLAQMGRISPFSCLKDRHEFRFPEEEFDGHQFQKTQAISVLHEMIQQTFNLFSTEDSSAAWEQSLLEKFSTELYQQLNDLEACVIQEVGVEETPLMNEDFILAVRKYFQRITLYLMEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSFSTNLKKGLRRKD(配列番号376)
IFNα8
CDLPQTHSLGNRRALILLAQMRRISPFSCLKDRHDFEFPQEEFDDKQFQKAQAISVLHEMIQQTFNLFSTKDSSAALDETLLDEFYIELDQQLNDLESCVMQEVGVIESPLMYEDSILAVRKYFQRITLYLTEKKYSSCAWEVVRAEIMRSFSLSINLQKRLKSKE(配列番号377)
IFNα10
CDLPQTHSLGNRRALILLGQMGRISPFSCLKDRHDFRIPQEEFDGNQFQKAQAISVLHEMIQQTFNLFSTEDSSAAWEQSLLEKFSTELYQQLNDLEACVIQEVGVEETPLMNEDSILAVRKYFQRITLYLIERKYSPCAWEVVRAEIMRSLSFSTNLQKRLRRKD(配列番号378)
IFNα14
CNLSQTHSLNNRRTLMLMAQMRRISPFSCLKDRHDFEFPQEEFDGNQFQKAQAISVLHEMMQQTFNLFSTKNSSAAWDETLLEKFYIELFQQMNDLEACVIQEVGVEETPLMNEDSILAVKKYFQRITLYLMEKKYSPCAWEVVRAEIMRSLSFSTNLQKRLRRKD(配列番号379)
IFNα16
CDLPQTHSLGNRRALILLAQMGRISHFSCLKDRYDFGFPQEVFDGNQFQKAQAISAFHEMIQQTFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYIELFQQLNDLEACVTQEVGVEEIALMNEDSILAVRKYFQRITLYLMGKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSFSTNLQKGLRRKD(配列番号380)
IFNα17
CDLPQTHSLGNRRALILLAQMGRISPFSCLKDRHDFGLPQEEFDGNQFQKTQAISVLHEMIQQTFNLFSTEDSSAAWEQSLLEKFSTELYQQLNNLEACVIQEVGMEETPLMNEDSILAVRKYFQRITLYLTEKKYSPCAWEVVRAEIMRSLSFSTNLQKILRRKD(配列番号381)
【0311】
ある特定の態様において、IFN-αまたはIFN-β変異型ポリペプチドは、それぞれ配列番号371~482に対して少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または約90%より高い(例えば、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%)配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0312】
一部の実施形態において、野生型または改変型シグナル伝達剤は、その受容体、特にはIFNAR2に対する減少した結合親和性を有する改変型インターフェロン-αである。そのような実施形態において、改変型IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα6、IFNα7、IFNα8、IFNα10、IFNα12、IFNα14、IFNα16またはIFNα17剤は、IFNAR(IFNAR1および/またはIFNAR2鎖)に対する親和性および/またはそれにおけるシグナル伝達の誘導の低減を有する。
【0313】
野生型IFNα1を例外として、野生型IFNは、例えば、マイクロカロリメータ(microcal)またはSPRにより決定された場合に、0.1nM~5nMの親和性(KD)でIFNAR2に、約1μMの親和性でIFNAR1に結合する。IFNα1は、約200nMのKDでIFNAR2に結合する。一部の実施形態において、IFNは、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性と等しいかまたはそれ未満のIFNAR1および/またはIFNAR2に対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IFNは、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低いIFNAR1および/またはIFNAR2に対する親和性を有するように改変される。
【0314】
例えば、本明細書において示される例示的なNKp46 ABDにおいて、NKp46 ABDは、約15nMのNKp46結合性についてのKDを有する。IFNは、そのため、10倍(1-log)~1000倍(3-log)の結合親和性の低減(1-log~3-logのKDにおける増加)を引き起こす改変の導入により改変され得る。IFNは、以下の表において示されるアミノ酸置換のいずれかを含むことができる。以下の表は、野生型対応物と比較して少なくとも1 logおよび野生型対応物と比較して3-log以下の親和性における減少(より高いKD)のカットオフを用いた、IFNAR2に対するIFN-αポリペプチドの結合親和性を減少させる例示的な単一アミノ酸置換を示す。以下の表は、野生型サイトカインと比較して突然変異したサイトカインのIFNAR2についてのKD値に基づく相対的な親和性を示す。
【0315】
【0316】
以下の表は、親和性における少なくとも2倍の減少を有する、IFNAR1に対するIFN-αポリペプチドの結合親和性を減少させる例示的な単一アミノ酸置換を示す。表は、野生型サイトカインと比較して突然変異したサイトカインのIFNAR1についてのKD値に基づく相対的な親和性を示す。
【0317】
【0318】
IFNα2の突然変異体形態はまた、例えば、PCT国際公開第2008/124086号パンフレット、国際公開第2010/030671号パンフレット、国際公開第2013/059885号パンフレット、国際公開第2013/107791号パンフレット、国際公開第2015/007520号パンフレットおよび国際公開第2020/198661号パンフレット(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されている。
【0319】
一部の実施形態において、前記IFNα2突然変異体(IFNα2aまたはIFNα2b)は、144~154位における1つまたは複数のアミノ酸、例えば148、149および/または153位のアミノ酸において突然変異している。一部の実施形態において、IFNα2突然変異体は、国際公開第2013/107791号パンフレットにおいて記載される、L153A、R149A、およびM148Aから選択される1つまたは複数の突然変異を含む。一部の実施形態において、IFNα2突然変異体は、IFNAR1に対する低減された親和性および/または活性を有する。一部の実施形態において、IFNα2突然変異体は、国際公開第2010/030671号パンフレットにおいて記載されるように、F64A、N65A、T69A、L80A、Y85A、およびY89Aから選択される1つまたは複数の突然変異を含む。一部の実施形態において、IFNα2突然変異体は、国際公開第2008/124086号パンフレットにおいて記載されるようにK133A、R144A、R149A、およびL153Aから選択される1つまたは複数の突然変異を含む。一部の実施形態において、IFNα2突然変異体は、国際公開第2015/007520号パンフレットおよび国際公開第2010/030671号パンフレットにおいて記載されるように、R120EおよびR120E/K121Eから選択される1つまたは複数の突然変異を含む。1つの実施形態において、突然変異体ヒトIFNα2は、配列番号371と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、突然変異体IFNα2は、配列番号371に関して位置L15、A19、R22、R23、L26、F27、L30、L30、K31、D32、R33、H34、D35、Q40、H57、E58、Q61、F64、N65、T69、L80、Y85、Y89、D114、L117、R120、R125、K133、K134、R144、A145、M148、R149、S152、L153、およびN156において1つまたは複数の突然変異を有する。一部の実施形態において、ヒトIFNα2突然変異体は、国際公開第2013/059885号パンフレットにおいて開示されるように、L15A、A19W、R22A、R23A、L26A、F27A、L30A、L30V、K31A、D32A、R33K、R33A、R33Q、H34A、D35A、Q40A、T106A、T106E、D114R、L117A、R120A、R125A、K134A、R144A、A145G、A145M、M148A、R149A、S152A、L153A、およびN156Aから選択される1つまたは複数の突然変異を含み、例えば一部の実施形態において、ヒトIFNα2突然変異体は、突然変異H57Y、E58N、Q61S、および/もしくはL30A;突然変異H57Y、E58N、Q61S、および/もしくはR33A;突然変異H57Y、E58N、Q61S、および/もしくはM148A;突然変異H57Y、E58N、Q61S、および/もしくはL153A;突然変異N65A、L80A、Y85A、および/もしくはY89A;または突然変異N65A、L80A、Y85A、Y89A、および/もしくはD114Aを含む。
【0320】
実施形態において、野生型または改変型シグナル伝達剤は、その受容体、特にはIFNAR2に対する減少した結合親和性を有する改変型インターフェロン-αである。そのような実施形態において、改変型IFNα2剤は、IFNAR(IFNAR1および/またはIFNAR2鎖)に対する親和性および/またはそれにおけるシグナル伝達の誘導の低減を有する。
【0321】
一部の実施形態において、IFNα1インターフェロンは、配列番号372に関して位置L15、A19、R23、S25、L30、D32、R33、H34、Q40、C86、D115、L118、K121、R126、E133、K134、K135、R145、A146、M149、R150、S153、L154、およびN157における1つまたは複数のアミノ酸において突然変異を有するように改変される。突然変異は、適宜、疎水性突然変異であり得、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンから選択され得る。一部の実施形態において、FNα1インターフェロンは、配列番号372に関してL15A、A19W、R23A、S25A、L30A、L30V、D32A、R33K、R33A、R33Q、H34A、Q40A、C86S、C86A、D115R、L118A、K121A、K121E、R126A、R126E、E133A、K134A、K135A、R145A、R145D、R145E、R145G、R145H、R145I、R145K、R145L、R145N、R145Q、R145S、R145T、R145V、R145Y、A146D、A146E、A146G、A146H、A146I、A146K、A146L、A146M、A146N、A146Q、A146R、A146S、A146T、A146V、A146Y、M149A、M149V、R150A、S153A、L154A、およびN157Aから選択される1つまたは複数の突然変異を有するように改変される。一部の実施形態において、FNα1突然変異体は、配列番号372に関してL30A/H58Y/E59N/Q62S、R33A/H58Y/E59N/Q62S、M149A/H58Y/E59N/Q62S、L154A/H58Y/E59N/Q62S、R145A/H58Y/E59N/Q62S、D115A/R121A、L118A/R121A、L118A/R121A/K122A、R121A/K122A、およびR121E/K122Eから選択される1つ以上の複数の突然変異を含む。一部の実施形態において、IFN-α1は、望ましくないジスルフィド対合を低減させる1つまたは複数の突然変異を含む変異型であり、1つまたは複数の突然変異は、例えば、配列番号372に関してアミノ酸位置C1、C29、C86、C99、またはC139におけるものである。一部の実施形態において、位置C86における突然変異は、例えば、C86SまたはC86AまたはC86Yであり得る。
【0322】
実施形態において、野生型または改変型シグナル伝達剤はIFN-βである。一部の実施形態において、IFN-βは、以下において示されている配列を有するヒトのものである:
MSYNLLGFLQRSSNFQCQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRN(配列番号382)
【0323】
一部の実施形態において、ヒトIFN-βは、Met-1欠失およびCys-17のSerへの突然変異を有する非グリコシル化形態のヒトIFN-βである。様々な実施形態において、改変型IFN-βは、IFNARのIFNAR1サブユニットに対するその結合性またはその親和性を低減させる1つまたは複数の突然変異を有する。1つの実施形態において、改変型IFN-βは、IFNAR1における低減された親和性および/または活性を有する。様々な実施形態において、改変型IFN-βは、ヒトIFN-βであり、かつ位置F67、R71、L88、Y92、195、N96、K123、およびR124において1つまたは複数の突然変異を有する。一部の実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、F67G、F67S、R71A、L88G、L88S、Y92G、Y92S、I95A、N96G、K123G、およびR124Gから選択される置換である。
【0324】
一部の実施形態において、改変型IFN-βは、IFNARのIFNAR2サブユニットに対するその結合性またはその親和性を低減させる1つまたは複数の突然変異を有する。1つの実施形態において、改変型IFN-βは、IFNAR2において低減された親和性および/または活性を有する。様々な実施形態において、改変型IFN-βは、ヒトIFN-βであり、かつ位置W22、R27、L32、R35、V148、L151、R152、およびY155における1つまたは複数の突然変異を有する。一部の実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、W22G、R27G、L32A、L32G、R35A、R35G、V148G、L151G、R152A、R152G、およびY155Gから選択される置換である。
【0325】
例示的なIFN-β突然変異は、PCT国際公開第2020/198661号パンフレット、国際公開第2000/023114号パンフレットおよび米国特許出願公開第20150011732号明細書(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されている。
【0326】
サイトカイン結合性ABDがIL-7受容体(IL-7R)結合性ABDに結合する別の実施形態において、ABDは、IL-7R ABDがNK細胞の表面上のIL-7Rαに結合するような好適なインターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IL-7分子、例えば、IL-7、例えば、ヒトIL-7の全長、断片または変異型である。実施形態において、IL-7分子は、例えば、配列番号383のアミノ酸配列を有する、野生型ヒトIL-7である。一部の実施形態において、IL-7分子は、配列番号383の成熟野生型ヒトIL-7アミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IL-7分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIL-7の変異型である。適宜、IL-7はヒトIL-7ポリペプチドの断片を含み、断片は、配列番号383のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、またはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する。
野生型成熟ヒトIL-7:
DCDIEGKDGKQYESVLMVSIDQLLDSMKEIGSNCLNNEFNFFKRHICDANKEGMFLFRAARKLRQFLKMNSTGDFDLHLLKVSEGTTILLNCTGQVKGRKPAALGEAQPTKSLEENKSLKEQKKLNDLCFLKRLLQEIKTCWNKILMGTKEH(配列番号383)
【0327】
野生型IL-7は、例えば、マイクロカロリメータまたはSPRにより決定された場合に、約50~100nMの親和性(KD)でIL-7Rαに結合する。一部の実施形態において、IL-7は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性と等しいかまたはそれ未満のIL-7Rαに対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IL-7は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低いIL-7Rαに対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IL-7は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低いが、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも3-log、または適宜2-log以下だけ低いIL-7Rαに対する親和性を有するように改変される。例えば、本明細書において示される例示的なNKp46 ABDにおいて、NKp46 ABDは、約15nMのNKp46結合性についてのKDを有する。IL-7は、そのため、IL-7とIL-7Rαとの間の親和性の低減を引き起こすアミノ酸置換Q22A、D74Aおよび/またはK81A(野生型成熟IL-7アミノ酸配列に関する)などの改変の導入により改変され得る。
【0328】
サイトカイン結合性ABDがIL-27受容体(IL-27R)結合性ABDに結合する別の実施形態において、ABDは、IL-27R ABDがNK細胞の表面上のIL-27R(WSX-1および/またはgp130)に結合するような好適なインターロイキン-27(IL-27)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IL-27分子、例えば、P28およびEBI3サブユニットを含む全長、断片または変異型、例えば、P28およびEBI3サブユニットを含むヒト単鎖またはヘテロ二量体IL-27であり、適宜、IL-27のEBI3およびp28サブユニットは、ドメインリンカー[例えば、柔軟性ポリペプチドリンカー、グリシン・セリン残基を含有するリンカー、(G4S)2または(G4S)3リンカー]により連結されて単鎖フォーマットとされている。EBI3のN末端に連結したp28のC末端またはその逆のいずれかを通じて、柔軟性リンカーによりEBI3サブユニットに連結したp28サブユニットからなるIL-27の単鎖形態が生成され得る。実施形態において、IL-27分子は、野生型ヒトIL-27、例えば、配列番号384および385のアミノ酸配列を含む単鎖融合生成物もしくはヘテロ二量体または配列番号384および385のいずれかのIL27R結合性断片である。一部の実施形態において、IL-27分子は、配列番号384の成熟野生型ヒトIL-27 p28サブユニットアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列および/または配列番号385の成熟野生型ヒトIL-27 EBI3サブユニットアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IL-27分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIL-27の変異型である。適宜、IL-27は、ヒトIL-27 p28サブユニットポリペプチドの断片であって、配列番号384のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、もしくはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する、断片、および/または、ヒトIL-27 EBI3サブユニットポリペプチドの断片であって、配列番号385のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、もしくはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する、断片を含む。p28サブユニットは、そのN末端において多特異性タンパク質(またはそのNKp46 ABD)に連結しているとして特定され得る。EBI3サブユニットは、そのN末端において、p28サブユニットのC末端に、適宜ドメインリンカーを介して、連結しているとして特定され得るか、またはp28サブユニットと会合する別々のポリペプチド上に置かれているとして特定され得る。
野生型成熟ヒトIL-27 p28サブユニット:
FPRPPGRPQLSLQELRREFTVSLHLARKLLSEVRGQAHRFAESHLPGVNLYLLPLGEQLPDVSLTFQAWRRLSDPERLCFISTTLQPFHALLGGLGTQGRWTNMERMQLWAMRLDLRDLQRHLRFQVLAAGFNLPEEEEEEEEEEEEERKGLLPGALGSALQGPAQVSWPQLLSTYRLLHSLELVLSRAVRELLLLSKAGHSVWPLGFPTLSPQP(配列番号384)
野生型成熟ヒトIL-27 EBI3サブユニット:
RKGPPAALTLPRVQCRASRYPIAVDCSWTLPPAPNSTSPVSFIATYRLGMAARGHSWPCLQQTPTSTSCTITDVQLFSMAPYVLNVTAVHPWGSSSSFVPFITEHIIKPDPPEGVRLSPLAERQLQVQWEPPGSWPFPEIFSLKYWIRYKRQGAARFHRVGPIEATSFILRAVRPRARYYVQVAAQDLTDYGELSDWSLPATATMSLGK(配列番号385)
【0329】
一部の実施形態において、IL-27は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性と等しいかまたはそれ未満であるWSX-1および/またはgp130に対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IL-27は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低いWSX-1および/またはgp130に対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IL-27は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低いが、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも3-log、または適宜2-log以下だけ低いWSX-1および/またはgp130に対する親和性を有するように改変される。
【0330】
サイトカイン結合性ABDがIL-12受容体(IL-12R)結合性ABDに結合する別の実施形態において、ABDは、IL-12R ABDがNK細胞の表面上のIL-12R(IL-12Rβ1および/またはIL-12Rβ2)に結合するような好適なインターロイキン-12(IL-12)ポリペプチドであるか、またはそれを含むものであり得る。一部の実施形態において、サイトカイン分子は、IL-12分子、例えば、P35およびP40サブユニットを含む全長、断片または変異型、例えば、P35およびP40サブユニットを含むヒト単鎖またはヘテロ二量体IL-12であり、適宜、IL-12のp40およびp35サブユニットは、ドメインリンカー[例えば、柔軟性ポリペプチドリンカー、グリシン・セリン残基を含有するリンカー、(G4S)2または(G4S)3リンカー]により連結されて単鎖フォーマットとされている。p40のN末端に連結したp35のC末端またはその逆のいずれかを通じて、柔軟性リンカーによりp40サブユニットに連結したp35サブユニットからなるIL-12の単鎖形態が生成され得る。実施形態において、IL-12分子は、野生型ヒトIL-12、例えば、配列番号386および387のアミノ酸配列を含む単鎖融合生成物もしくはヘテロ二量体または配列番号386もしくは387のいずれかのIL12R結合性断片である。一部の実施形態において、IL-12分子は、配列番号386の成熟野生型ヒトIL-12 p35サブユニットアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列および/または配列番号387の成熟野生型ヒトIL-12 p40サブユニットアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を含む。他の実施形態において、IL-12分子は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸改変を有する、ヒトIL-12の変異型である。適宜、IL-12は、ヒトIL-12 p35サブユニットポリペプチドの断片であって、配列番号386のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、もしくはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する、断片、および/または、ヒトIL-12 p40サブユニットポリペプチドの断片であって、配列番号387のポリペプチドの40、50、60、70もしくは80個のアミノ酸の連続する配列と同一であるか、もしくはそれに対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは99%同一のアミノ配列を有する、断片を含む。p35(アルファ)およびP40(ベータ)は、P35サブユニットのCys74とP40サブユニットのCys177との間のジスルフィドブリッジにより連結しているとして特定され得る。p35サブユニットは、そのN末端において多特異性タンパク質(またはそのNKp46 ABD)に連結しているとして特定され得る。p40サブユニットは、そのN末端において、p35サブユニットのC末端に、適宜ドメインリンカーを介して、連結しているとして特定され得るか、またはp35サブユニットと会合する別々のポリペプチド上に置かれているとして特定され得る。
野生型成熟ヒトIL-12 p35サブユニット:
RNLPVATPDPGMFPCLHHSQNLLRAVSNMLQKARQTLEFYPCTSEEIDHEDITKDKTSTVEACLPLELTKNESCLNSRETSFITNGSCLASRKTSFMMALCLSSIYEDLKMYQVEFKTMNAKLLMDPKRQIFLDQNMLAVIDELMQALNFNSETVPQKSSLEEPDFYKTKIKLCILLHAFRIRAVTIDRVMSYLNAS(配列番号386)
野生型成熟ヒトIL-12 p40サブユニット:
IWELKKDVYVVELDWYPDAPGEMVVLTCDTPEEDGITWTLDQSSEVLGSGKTLTIQVKEFGDAGQYTCHKGGEVLSHSLLLLHKKEDGIWSTDILKDQKEPKNKTFLRCEAKNYSGRFTCWWLTTISTDLTFSVKSSRGSSDPQGVTCGAATLSAERVRGDNKEYEYSVECQEDSACPAAEESLPIEVMVDAVHKLKYENYTSSFFIRDIIKPDPPKNLQLKPLKNSRQVEVSWEYPDTWSTPHSYFSLTFCVQVQGKSKREKKDRVFTDKTSATVICRKNASISVRAQDRYYSSSWSEWASVPCS(配列番号387)
【0331】
野生型IL-12二量体は、例えば、マイクロカロリメータまたはSPRにより決定された場合に、約5~7nMおよび5nMの親和性(KD)でそれぞれIL-12Rβ1およびIL-12Rβ2に結合し、かつIL-12二量体は、約50pMのKDでIL12Rβ1:IL-12Rβ2二量体に結合する。一部の実施形態において、IL-12は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性と等しいかまたはそれ未満であるIL-12Rβ1および/またはIL-12Rβ2に対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IL-12は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低いIL-12Rβ1および/またはIL-12Rβ2に対する親和性を有するように改変される。一部の実施形態において、IL-12は、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも少なくとも1-log低い(1-log高いKD)が、NKp46に対するNKp46 ABDの親和性よりも3-log、または適宜2-log以下だけ低いIL-12Rβ1および/またはIL-12Rβ2に対する親和性を有するように改変される。
【0332】
NKp46可変領域およびCDR配列
一部の実施形態において、多特異性タンパク質またはそのNKp46 ABD(またはABDの由来となる抗NKp46抗体)は、NKp46のD1ドメイン、NKp46のD2ドメインに結合するか、または配列番号1のNKp46ポリペプチドのD1およびD2ドメインにまたがる領域(D1およびD2ドメインの境界、D1/D2ジャンクションにある)に結合する。一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、10-8M未満、10-9M未満、または10-10M未満のKDにより特徴付けられる、全長IgG抗体としての、ヒトNKp46に対する親和性を有する抗NKp46抗体からのVH/VLペアを含む。一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、SPRにより決定された場合に、1~100nM、適宜1~50nM、適宜1~20nM、適宜約10または15nMの、ヒトNKp46に対する親和性(KD)を有する。
【0333】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質(またはそのNKp46結合性ABDもしくはVH/VLペア、例えば多特異性タンパク質においてもしくは従来的な全長抗体として構成された場合)は、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9とNKp46上の実質的に同じ領域、部位またはエピトープにおいてNKp46に結合する。別の実施形態において、抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9により結合されるセグメントまたはエピトープと少なくとも部分的にオーバーラップするか、またはその中の少なくとも1つの残基を含む。1つの実施形態において、エピトープのすべての鍵となる残基は、ドメインD1またはD2に対応するセグメント中にある。1つの実施形態において、抗体または多特異性タンパク質は、D1ドメイン中に存在する残基の他に、D2ドメイン中に存在する残基に結合する。1つの実施形態において、抗体は、配列番号1のNKp46ポリペプチドのドメインD1またはD2に対応するセグメント中の1、2、3、4、5、6、7またはより多くの残基を含むエピトープに結合する。1つの実施形態において、抗体は、ドメインD1に結合し、かつ残基R101、V102、E104および/またはL105のうちの1、2、3、または4つを含むエピトープにさらに結合する。
【0334】
別の実施形態において、抗体または多特異性タンパク質は、D1/D2ドメインジャンクションにおいてNKp46に結合し、かつ残基K41、E42、E119、Y121および/またはY194のうちの1、2、3、4または5つを含むかまたはからなるエピトープに結合する。
【0335】
別の実施形態において、抗体または多特異性タンパク質は、ドメインD2に結合し、かつ残基P132、E133、I135、および/またはS136のうちの1、2、3、または4つを含むエピトープに結合する。
【0336】
提供される実施例セクションは、突然変異体ヒトNKp46ポリペプチドのシリーズを記載している。実施例において、NKp46突然変異体をトランスフェクトされた細胞に対する多特異性タンパク質の結合性を測定し、野生型NKp46ポリペプチド(配列番号1)に結合する抗NKp46抗体の能力と比較した。本明細書において記載されている抗NKp46抗体またはNKp46結合性多特異性タンパク質と突然変異体NKp46ポリペプチドとの間の結合性における低減は、結合親和性における低減(例えば、公知の方法、例えば特定の突然変異体を発現する細胞のFACS試験により、もしくは突然変異体ポリペプチドに対する結合性のBiacore試験により測定された場合)および/または抗NKp46抗体のトータル結合能力における低減(例えば、ポリペプチド濃度に対する抗NKp46抗体濃度のプロットにおけるBmaxにおける減少により立証される)があることを意味する。結合性における有意な低減は、突然変異した残基はNKp46に対する抗NKp46抗体の結合に直接的に関与しているか、または抗NKp46抗体もしくはNKp46結合性多特異性タンパク質がNKp46に結合している場合に結合性タンパク質に近接していることを指し示す。抗体エピトープは、そのため、好ましくは、そのような残基を含み、そのような残基に隣接する追加の残基を含んでもよい。
【0337】
一部の実施形態において、結合性における有意な低減は、NKp46 ABDまたはNKp46結合性多特異性タンパク質と突然変異体NKp46ポリペプチドとの間の結合親和性および/または能力が、抗体と野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1において示されるポリペプチド)との間の結合性と比べて40%より大きく、50%より大きく、55%より大きく、60%より大きく、65%より大きく、70%より大きく、75%より大きく、80%より大きく、85%より大きく、90%より大きくまたは95%より大きく低減していることを意味する。ある特定の実施形態において、結合性は、検出可能な限度未満に低減している。一部の実施形態において、結合性における有意な低減は、突然変異体NKp46ポリペプチドに対する抗NKp46抗体の結合性が、抗NKp46抗体と野生型NKp46ポリペプチド[例えば、配列番号1において示されるポリペプチド(またはその細胞外ドメイン)]との間で観察される結合性の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%または10%未満)である場合に立証される。そのような結合測定は、当技術分野において公知の様々な結合アッセイを使用して行われ得る。1つのそのようなアッセイの特有の例は実施例セクションにおいて記載される。
【0338】
一部の実施形態において、NKp46結合性多特異性タンパク質は、野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1)中の残基が置換されている突然変異体NKp46ポリペプチドに対して有意により低い結合性を呈する。本明細書において使用される簡略化された表記において、フォーマットは、野生型残基:ポリペプチド中の位置:突然変異体残基であり、残基の番号付けは配列番号1において指し示される通りである。
【0339】
一部の実施形態において、NKp46結合性多特異性タンパク質(NKp46 binding multispecific)は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して残基R101、V102、E104および/またはL105(配列番号1に関する)のいずれか1つまたは複数の突然変異(例えば、アラニン置換)を有する突然変異体NKp46ポリペプチドに対して減少した結合性を有する。
【0340】
一部の実施形態において、NKp46結合性多特異性タンパク質は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して残基K41、E42、E119、Y121および/またはY194(配列番号1に関する)の1つまたは複数において突然変異(例えば、アラニン置換)を有する突然変異体NKp46ポリペプチドに対して減少した結合性を有する。
【0341】
一部の実施形態において、NKp46結合性多特異性タンパク質は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して残基P132、E133、I135、および/またはS136(配列番号1に関する)の1つまたは複数において突然変異(例えば、アラニン置換)を有する突然変異体NKp46ポリペプチドに対して減少した結合性を有する。
【0342】
抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6およびNKp46-9の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、本明細書中の表B(それぞれ配列番号3、5、7、9、11および13)において列記されており、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6およびNKp46-9の軽鎖可変領域のアミノ酸配列もまた、本明細書中の表B(それぞれ配列番号4、6、8、10、12および14)において列記されている。
【0343】
NKp46結合性多特異性タンパク質は、モノクローナル抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9と本質的に同じエピトープまたは決定因子に結合する;適宜、抗体は、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9の超可変領域を含む。本明細書における実施形態のいずれにおいても、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9は、そのアミノ酸配列および/またはそれをコードする核酸配列により特徴付けられ得る。1つの実施形態において、抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9のFabまたはF(ab’)2部分を含む。提供されるのはまた、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9の重鎖可変領域を含む抗体である。1つの実施形態によれば、抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。提供されるのはまた、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9の軽鎖可変領域のCDRの1、2または3つをさらに含むポリペプチドである。適宜、前記軽鎖または重鎖CDRのいずれか1つまたは複数は、1、2、3、4または5またはより多くのアミノ酸改変(例えば置換、挿入または欠失)を含有してもよい。
【0344】
多特異性タンパク質またはNKp46結合性ABDは、例えば、以下を含むことができる:
(a)適宜、1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Bにおいて記載されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9の重鎖可変領域;
(b)適宜、1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Bにおいて記載されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9の軽鎖可変領域(the light chain variable region NKp46-1, NKp46-2, NKp46-3, NKp46-4, NKp46-6 or NKp46-9);
(c)適宜、これらのアミノ酸のうちの1つもしくは複数が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Bにおいて記載されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9の重鎖可変領域;および、適宜、1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Bにおいて記載されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9のそれぞれの軽鎖可変領域;
(d)適宜、CDR中の1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Aにおいて示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9の重鎖CDR 1、2および3(HCDR1、HCDR2)アミノ酸配列;
(e)適宜、CDR中の1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Aにおいて示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9の軽鎖CDR 1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;または
(f)適宜、CDR中の1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Aにおいて示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9の重鎖CDR 1、2および3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;ならびに、適宜、CDR中の1、2、3もしくはより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、表Aにおいて示されているそれぞれのNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6もしくはNKp46-9抗体の軽鎖CDR 1、2および3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列。
【0345】
1つの実施形態において、上述のCDRは、例えば表Aにおいて示されている、Kabatによるものである。1つの実施形態において、上述のCDRは、例えば表Aにおいて示されている、Chothia番号付けによるものである。1つの実施形態において、上述のCDRは、例えば表Aにおいて示されている、IMGT番号付けによるものである。
【0346】
本明細書における実施形態のいずれかの別の態様において、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のいずれも、その少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10個の連続するアミノ酸の配列により、かつ/または対応する配列番号もしくは表Aにおいて列記される特定のCDRもしくはCDRのセットと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%もしくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして特徴付けられてもよい。
【0347】
別の態様において、多特異性タンパク質は、上記の(a)~(f)によるモノクローナル抗体とNKp46上のエピトープに対する結合について競合する。
【0348】
IMGT、KabatおよびChothia定義システムによる、CDRの配列は、以下の表Aにおいて要約される。本発明による抗体の可変鎖の配列は、以下の表Bにおいて列記される。本明細書における任意の実施形態において、VLまたはVH配列は、シグナルペプチドまたはその任意の部分を含有するかまたは欠くように特定または番号付けされ得る。
【0349】
【0350】
【0351】
NKp46 ABDのVHおよびVLペアは、適宜、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9のいずれかのVHおよびVLの機能保存的変異型であり得る。「機能保存的変異型」は、タンパク質(例えば抗体または抗体断片)中の所与のアミノ酸残基が、類似した特性(例えば、極性、水素結合潜在能力、酸性、塩基性、疎水性、および芳香族など)を有するアミノ酸を用いたアミノ酸の置き換えを含むが、それに限定されない、タンパク質の全体的なコンフォメーションおよび機能を変更することなく変化している変異型である。保存されているとして指し示されるもの以外のアミノ酸はタンパク質中で異なってもよく、その結果、類似した機能の任意の2つのタンパク質の間のタンパク質またはアミノ酸配列類似性パーセントは、変動してもよく、例えば、アライメントスキーム、例えばクラスター方法に従って決定された場合に70%~99%であってもよく、類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づく。「機能保存的変異型」はまた、BLASTまたはFASTAアルゴリズムにより決定された場合に本明細書において上記に定義されているKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合する能力を有する抗体と少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、いっそう好ましくは少なくとも90%、よりいっそう好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有し、かつ本明細書において上記に定義されているKIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合する能力を有する抗体と同じまたは実質的に類似した特性または機能を有するポリペプチドを含む。
【0352】
例示的なヒト化されたVHおよびVLドメインは、例えば表2において示される配列番号のアミノ酸を有する、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6またはNKp46-9の抗原結合性領域の全体を含むことができる。
【0353】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp-46-4、NKp46-6またはNKp46-9抗体の軽鎖可変領域は、それぞれの抗体について、ヒト軽鎖FR1フレームワーク領域;表Aにおいて記載されているアミノ酸配列、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10個の連続するアミノ酸の配列であって、これらのアミノ酸の1つもしくは複数が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、配列を含むLCDR1領域;ヒト軽鎖FR2フレームワーク領域;表Aにおいて記載されているアミノ酸配列、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10個の連続するアミノ酸の配列であって、これらのアミノ酸の1つもしくは複数が異なるアミノ酸により置換されていてもよい、配列を含むLCDR2領域;ヒト軽鎖FR3フレームワーク領域;および表Aにおいて記載されているアミノ酸配列、またはその少なくとも4、5、6、7、8、9もしくは10個の連続するアミノ酸の配列であって、これらのアミノ酸の1つもしくは複数が欠失しているか、もしくは異なるアミノ酸により置換されていてもよい、配列を含むLCDR3領域を含んでもよい。適宜、可変領域は、ヒト軽鎖FR4フレームワーク領域をさらに含む。NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp-46-4、およびNKp46-9 VH/VLドメインのヒト化は、PCT国際公開第2017114694号パンフレット(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)において記載されており、アミノ酸配列は以下において示される。
【化29】
【化30】
【0354】
VHおよびVLの組合せの例は以下を含む:
(a)配列番号3のCDR1、2および3ならびにヒトIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVH、ならびに配列番号4のCDR1、2および3ならびにヒトIGKV1-33遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVL;
(b)配列番号5のCDR1、2および3ならびにヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVH、ならびに配列番号6のCDR1、2および3ならびにヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVL;
(c)配列番号7のCDR1、2および3ならびにヒトIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVH、ならびに配列番号8のCDR1、2および3ならびにヒトIGKV3-11および/もしくはIGKV3-15遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVL;
(d)配列番号9のCDR1、2および3ならびにヒトIGHV1-46および/もしくはIGHV1-69遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVH、ならびに配列番号10のCDR1、2および3ならびにヒトIGKV1-NL1遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVL;または
(e)配列番号13のCDR1、2および3ならびにヒトIGHV4-30-4遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVH、ならびに配列番号14のCDR1、2および3ならびにヒトIGKV1-39遺伝子セグメントのFR1、2および3を含むVL。
【0355】
別の態様において、ヒト化された抗NKp46 VHおよびVLの組合せの例は以下を含む:
(a)NKp46-1 H1もしくはH3可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVH、およびNKp46-1 L1可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVL;
(b)NKp46-2 H1、H2もしくはH3可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVH、およびNKp46-2 L1可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVL;
(c)NKp46-3 H1、H3もしくはH4可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVH、およびNKp46-3 L1可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVL;
(d)NKp46-4 H1可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVH、およびNKp46-4 L2可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVL;
(e)NKp46-9 H2可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVH、およびNKp46-9 L1もしくはL2可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVL;または
(f)NKp46-9 H3可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVH、およびNKp46-9 L1もしくはL2可変ドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、98%もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むVL。
【0356】
【0357】
活性試験
多特異性タンパク質は、生物学的活性、例えば、抗原結合性、NK細胞の増殖を誘発する能力、NKによる標的細胞溶解を誘発する、および/または、NK細胞により誘発される任意の特有のシグナル伝達活性、例えばサイトカイン産生もしくは活性化のマーカーの細胞表面発現を含む、NK細胞の活性化を誘発する能力について評価され得る。1つの実施形態において、提供されるのは、本開示の多特異性タンパク質の生物学的活性、例えば、抗原結合性、それにより誘発される標的細胞溶解および/または特有のシグナル伝達活性を誘発する能力を評価する方法である。多特異性タンパク質の構成要素のうちの1つ(例えばNKp46結合性ABD、対象とする抗原に結合するABD、Fcドメイン、サイトカイン受容体ABDなど)の特有の寄与または活性が評価される場合、多特異性フォーマットは、対象とする構成要素(例えばドメイン)の評価を可能とする好適なフォーマットにおいて産生され得ることが理解される。本開示はまた、多特異性タンパク質の試験、評価、作製および/または産生における使用のためのそのような方法を提供する。例えば、サイトカインの寄与または活性が評価される場合、多特異性タンパク質は、サイトカインを有するタンパク質、および、サイトカインが、それを欠失させるか、または他にその活性をモジュレートするように改変されている別のタンパク質(例えば、2つの多特異性タンパク質はそれ以外は同じまたは同等の構造を有する)として産生され、対象とするアッセイにおいて試験され得る。例えば、抗NKp46 ABDの寄与または活性が評価される場合、多特異性タンパク質は、ABDを有するタンパク質、および、ABDが存在しないか、またはNKp46に結合しないABD(例えば、アッセイシステム中に存在しない抗原に結合するABD)により置き換えられている別のタンパク質として産生可能であり、2つの多特異性タンパク質はそれ以外は同じまたは同等の構造を有し、かつ2つの多特異性タンパク質は対象とするアッセイにおいて試験される。別の例において、対象とする抗原(例えば腫瘍抗原)に対するABDの寄与または活性が評価される場合、多特異性タンパク質は、ABDを有するタンパク質、および、ABDが存在しないか、または腫瘍抗原もしくは対象とする抗-抗原に結合しないABD(例えば、アッセイシステム中に存在しない抗原に結合するABD、異なる腫瘍抗原に結合するABD)により置き換えられている別のタンパク質として産生可能であり、2つの多特異性タンパク質はそれ以外は同じまたは同等の構造を有し、かつ2つの多特異性タンパク質は対象とするアッセイにおいて試験される。
【0358】
本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、タンパク質がNKp46発現細胞(例えば精製されたNK細胞)および対象とする抗原(例えば腫瘍抗原)を発現する標的細胞(例えば腫瘍細胞)の存在下でインキュベートされた場合に、NKp46発現細胞(例えばNK細胞、レポーター細胞)の活性化を誘導する能力を有する。
【0359】
本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、タンパク質がNKp46発現細胞(例えば精製されたNK細胞)および対象とする抗原を発現する標的細胞の存在下でインキュベートされた場合に、NKp46発現細胞(例えばNK細胞、レポーター細胞)においてNKp46シグナル伝達を誘導する能力を有する。本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、タンパク質がCD16AおよびNKp46発現細胞(例えば精製されたNK細胞)ならびに対象とする抗原を発現する標的細胞の存在下でインキュベートされた場合に、CD16AおよびNKp46発現細胞(例えばNK細胞、レポーター細胞)においてCD16Aシグナル伝達を誘導する能力を有する。
【0360】
適宜、NK細胞活性化またはシグナル伝達は、活性化の細胞表面マーカー、例えばCD107、CD69、Sca-1またはLy-6A/E、KLRG1などの発現の増加により特徴付けられる。
【0361】
本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、タンパク質がNKp46および/またはCD16発現細胞(例えば精製されたNK細胞)の存在下で、適宜標的細胞の非存在下で、インキュベートされた場合に、NKp46および/またはCD16発現細胞(例えばNK細胞、レポーター細胞)の細胞表面上に存在するCD137の増加を誘導する能力を有する。
【0362】
本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、サイトカイン受容体ABD(例えばCD122 ABD)を欠いた同じ多特異性タンパク質と比較して少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍、NK細胞を活性化させるかまたはその増殖を増強する能力を有する。適宜、多特異性タンパク質は、CD25発現T細胞の活性化またはその増殖の増強についてのEC50よりも少なくとも10倍、50倍または100倍低いNK細胞の活性化またはその増殖の増強についてのEC50を示す。
【0363】
本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍CD25発現T細胞を上回ってNK細胞を活性化させるかまたはその増殖を増強する能力を有する。適宜、CD25発現T細胞は、CD4 T細胞、適宜Treg細胞、またはCD8 T細胞である。
【0364】
サイトカイン受容体ABD含有タンパク質による細胞(例えばNK細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞またはTreg細胞)におけるサイトカイン受容体を介する活性化または増殖の増強は、多特異性タンパク質を用いた処理後の前記細胞におけるpSTATまたは細胞増殖マーカー(例えばKi67)の発現を測定することにより決定され得る。CD122 ABD含有タンパク質による細胞(例えばNK細胞、CD4 T細胞、CD8 T細胞またはTreg細胞)におけるIL-2R経路を介する活性化または増殖の増強は、多特異性タンパク質を用いた処理後の前記細胞におけるpSTAT5または細胞増殖マーカーKi67の発現を測定することにより決定され得る。IL-2およびIL-15はSTAT5タンパク質のリン酸化に繋がり、STAT5タンパク質は細胞増殖、生存、分化およびアポトーシスに関与する。リン酸化されたSTAT5(pSTAT5)は核に移行して、CD25を含む標的遺伝子の転写を調節する。STAT5はまたNK細胞生存のために要求され、NK細胞はJAK-STATシグナル伝達経路により緊密に調節される。本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、タンパク質がNKp46発現細胞(例えば精製されたNK細胞)の存在下でインキュベートされた場合に、NKp46発現細胞(例えばNK細胞)においてSTAT5シグナル伝達を誘導する能力を有する。本明細書において記載される任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、少なくとも10倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍CD25発現T細胞を上回ってNK細胞においてpSTAT5の発現の増加を引き起こす能力を有する。適宜、多特異性タンパク質は、CD25発現T細胞におけるpSTAT5の発現の誘導についてのそのEC50よりも少なくとも10倍、50倍または100倍低いNK細胞におけるpSTAT5の発現の誘導についてのEC50を示す。同様に、サイトカイン受容体シグナル伝達はまた、他のサイトカイン/サイトカイン受容体ペア、例えばIL-15(STAT5)、IL-21(STAT3)、IL-27(STAT1)、IL-12(STAT4)などについて評価され得る。
【0365】
活性は、例えば、適宜さらに標的細胞(例えば腫瘍細胞)の存在下で、NKp46発現細胞(またはアッセイに依存してCD25発現細胞)を多特異性ポリペプチドと接触させることにより測定され得る。一部の実施形態において、活性は、例えば、標的細胞およびNK細胞(すなわちNKp46発現細胞)を、多特異性ポリペプチドの存在下で、互いと接触させることにより測定される。NKp46発現細胞は、精製されたNK細胞もしくはNKp46発現細胞として、または末梢血単核細胞(PBMC)の集団内のNKp46発現細胞として用いられてもよい。標的細胞は、対象とする抗原を発現する細胞、または適宜腫瘍細胞であり得る。
【0366】
1つの例において、多特異性タンパク質は、それぞれNK細胞活性と関連付けられるとして当技術分野において公知の任意の特性または活性、例えば、細胞傷害性(CD107)またはサイトカイン産生(例えばIFN-γもしくはTNF-α)のマーカー、細胞内遊離カルシウムレベルにおける増加、例えば再方向付け殺傷アッセイにおいて、標的細胞を溶解する能力などにおける測定可能な増加を引き起こす能力について評価され得る。
【0367】
標的細胞(対象とする抗原を発現する標的細胞)およびNKp46を発現するNK細胞の存在下で、多特異性タンパク質は、インビトロでNK細胞活性と関連付けられる特性または活性(例えば、NK細胞の細胞傷害性、CD107発現、IFNγ産生、標的細胞の殺傷の活性化)における増加を引き起こす能力を有する。例えば、本発明による多特異性タンパク質は、NK細胞活性を検出するアッセイ、例えば、NK活性化マーカーの発現を検出するか、またはNK細胞の細胞傷害性を検出するアッセイ、例えば、CD107もしくはCD69発現、IFNγ産生を検出するアッセイ、または細胞傷害性の古典的なインビトロクロム放出試験により測定された場合に、多特異性タンパク質と接触させられていない同じNK細胞および標的細胞を用いて同じエフェクター:標的細胞比を用いて達成される場合と比較して約20%より大きく、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、またはより大きくNK細胞活性を増加させるその能力に基づいて選択され得る。NK細胞活性化を検出するためおよび細胞傷害性アッセイのためのプロトコールの例は、本明細書中の実施例の他に、例えば、Pessino et al, J. Exp. Med, 1998, 188 (5): 953-960; Sivori et al, Eur J Immunol, 1999. 29:1656-1666; Brando et al, (2005) J. Leukoc. Biol. 78:359-371; El-Sherbiny et al, (2007) Cancer Research 67(18):8444-9;およびNolte-'t Hoen et al, (2007) Blood 109:670-673)において記載されている。細胞傷害性の古典的なインビトロクロム放出試験において、標的細胞は、NK細胞の追加に先立って51Crを用いて標識され、次に殺傷は、殺傷の結果としての、培地への細胞からの51Crの放出に比例しているとして概算される。適宜、本発明による多特異性タンパク質は、NK細胞活性のアッセイ(例えば対象とする抗原を発現する標的細胞のNK細胞媒介性溶解を検出するアッセイ)により測定された場合に、同じ対象とする抗原に結合する従来的なヒトIgG1抗体と比較して標的細胞に向けたNK細胞活性、すなわち、標的細胞の溶解を誘導するより大きい能力を有するその能力について選択され得るか、または該能力により特徴付けられ得る。
【0368】
本明細書において示されるように、多特異性タンパク質の異なるABDは、インビボで強力な抗腫瘍活性を最終的に顕現する多特異性タンパク質の全体的な活性に寄与する。本明細書において例示される試験方法は、特定のABDを欠いた多特異性タンパク質の変異型を作製することおよび/または特定のABDのための受容体を欠いた細胞を使用することにより多特異性タンパク質の異なる個々のABDの活性のインビトロ評価を可能とする。本明細書において示されるように、本開示による多特異性タンパク質は、サイトカイン受容体ABD(例えばCD122 ABD)を含まない場合およびCD16に結合しないFcドメインを有する場合、タンパク質が標的細胞上の対象とする抗原に結合していない場合に(例えば標的細胞の非存在下で)NK細胞のNKp46シグナル伝達(および/またはその結果としてもたらされるNK活性化)を実質的に誘導しない。そのため、多特異性タンパク質の一価NKp46結合性構成要素はそれ自体はNKp46シグナル伝達を引き起こさない。よって、CD16に結合するFcドメインを有する多特異性タンパク質の場合、そのような多特異性タンパク質は、サイトカイン受容体ABD(例えばCD122 ABD)が不活性化されている(例えば、改変、マスクまたは欠失されており、それにより、IL-2Rに結合するその能力が排除されている)構成において産生可能であり、タンパク質は、CD16陰性NK細胞による、NKp46発現に対するこの多特異性タンパク質の効果を試験することによりNKp46シグナル伝達またはNKp46媒介性NK細胞活性化を誘発するその能力について評価され得る。多特異性タンパク質は、適宜、多特異性タンパク質が標的細胞の非存在下でNKp46発現CD16陰性細胞(例えば、精製されたNK細胞または精製されたレポーター細胞)とインキュベートされた場合にそのようなNKp46発現CD16陰性細胞(例えばNKp46+CD16- NK細胞、レポーター細胞)によるNKp46シグナル伝達を実質的に引き起こさない(または増加させない)として特徴付けられ得る。
【0369】
本明細書における任意の実施形態の1つの態様において、多特異性タンパク質は、例えば、以下により特徴付けられ得る:
(a)多特異性タンパク質がNKp46発現細胞(例えば精製されたNK細胞)の存在下でインキュベートされた場合にNKp46発現細胞(例えばNK細胞)においてサイトカイン受容体(例えばCD122)シグナル伝達を誘導する能力を有すること(例えば、STATシグナル伝達を評価すること、例えばSTATリン酸化を評価することにより決定される);
(b)NKp46(および適宜さらにCD16)を発現するNK細胞および標的細胞の存在下でインキュベートされた場合に、NK細胞が標的細胞を溶解するのを誘導する能力を有すること;ならびに
(c)多特異性タンパク質が、サイトカイン受容体ABD(例えばCD122 ABD)を欠くように改変されているかまたは不活性化されたサイトカイン受容体ABDを含む場合に、標的細胞の非存在下で、NK細胞(適宜CD16陰性NK細胞、CD16を発現しないNKp46発現NK細胞)、適宜精製されたNK細胞とインキュベートされた場合に、NK細胞活性化もしくは細胞傷害性を欠如しているおよび/またはNKp46におけるアゴニスト活性を欠如していること。
【0370】
化合物の使用
1つの態様において、提供されるのは、それを必要とする哺乳動物における疾患の処置、予防または診断用の薬学的調製物を製造するための、多特異性タンパク質、および/または該タンパク質(もしくはそのポリペプチド鎖)を発現する細胞)のいずれかの使用である。提供されるのはまた、医薬または医薬中の活性成分もしくは活性物質としての上記に定義される化合物のいずれかの使用である。さらなる態様において、本発明は、投与(例えば、皮下または静脈内注射による)のための固体または液体製剤を提供するために本明細書において定義されている化合物を含有する医薬組成物を調製する方法を提供する。そのような方法または製法は、該化合物を医薬的に許容される担体と混合する工程を少なくとも含む。
【0371】
1つの態様において、提供されるのは、本明細書において記載される多特異性タンパク質もしくは抗体、またはそれを含む(医薬)組成物を使用または投与することにより、個体において予め定義された状態を処置するか、予防するか、もしくはより一般にはそれに影響するか、またはある特定の状態を検出する方法である。
【0372】
例えば、1つの態様において、本発明は、それを必要とする患者(例えばがん、またはウイルスもしくは細菌感染症を有する患者)においてNKp46発現細胞、特にはNKp46+ NK細胞(例えばNKp46+CD16+ NK細胞、NKp46+CD16- NK細胞)の活性および/または増殖を回復させるかまたは増強する方法であって、本明細書において記載される多特異性タンパク質を前記患者に投与する工程を含む、方法を提供する。1つの態様において、本発明は、CD25発現リンパ球、例えばCD4 T細胞、CD8 T細胞、Treg細胞を上回ってNK細胞の活性および/または増殖を選択的に回復させるかまたは増強する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は、増加したリンパ球(例えばNK細胞)活性が有益であるか、または不十分なNK細胞活性により引き起こされるかもしくは特徴付けられる疾患、例えばがん、またはウイルスもしくは微小生物/細菌感染症を有する患者においてNKp46+リンパ球(例えばNKp46+CD16+ NK細胞、NKp46+CD16- NK細胞)の活性を増加させることに方向付けられている。
【0373】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする患者(例えば固形腫瘍を有する患者)において腫瘍浸潤性NK細胞または腫瘍内NKp46発現細胞、特にはNKp46+ NK細胞(例えばNKp46+CD16+ NK細胞、NKp46+CD16- NK細胞)の活性および/または増殖を回復させるかまたは増強する方法であって、本明細書において記載される多特異性タンパク質を前記患者に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0374】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする患者(例えば固形腫瘍を有する患者)において腫瘍浸潤性NK細胞または腫瘍内NKp46発現細胞、特には活性化されたNKp46発現細胞、特にはNKp46+ NK細胞(例えばNKp46+CD16+ NK細胞、NKp46+CD16- NK細胞)の数を増加させる方法であって、本明細書において記載される多特異性タンパク質を前記患者に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0375】
別の態様において、本発明は、それを必要とする患者(例えばがん、またはウイルス、寄生生物もしくは細菌感染症を有する患者)においてNKp46+ NK細胞(例えばNKp46+CD16+ NK細胞、NKp46+CD16- NK細胞)の活性および/または増殖を回復させるかまたは増強する方法であって、患者に由来する細胞、例えば、免疫細胞、および適宜、対象とする抗原を発現する標的細胞を、本発明による多特異性タンパク質と接触させる工程ならびに多特異性タンパク質で処理された細胞を患者中に再注入する工程を含む、方法を提供する。1つの実施形態において、この方法は、増加したリンパ球(例えばNK細胞)活性が有益であるか、または不十分なNK細胞活性により引き起こされるかもしくは特徴付けられる疾患、例えばがん、またはウイルスもしくは微小生物、例えば、細菌もしくは寄生生物感染症を有する患者においてNKp46+リンパ球(例えばNKp46+CD16+ NK細胞)の活性を増加させることに方向付けられている。
【0376】
別の実施形態において、主題多特異性タンパク質は、処置される患者または異なるドナーに由来する免疫細胞、特にはNK細胞と組み合わせて使用または投与されてもよく、これらのNK細胞は、それを必要とする患者、例えば増加したリンパ球(例えばNK細胞)活性が有益であるか、または不十分なNK細胞活性により引き起こされるかもしくは特徴付けられる疾患、例えばがん、またはウイルスもしくは微小生物、例えば、細菌もしくは寄生生物感染症を有する患者に投与されてもよい。NK細胞は(CAR-T細胞と異なり)TCRを発現しないので、これらのNK細胞は、異なるドナーに由来するものであっても、GVHD反応を誘導しない[例えば、Glienke et al., "Advantages and applications of CAR-expressing natural killer cells", Front. Pharmacol. 6, Art. 21:1-6 (2015); Hermanson and Kaufman, Front. Immunol. 6, Art. 195:1-6 (2015)を参照]。
【0377】
1つの実施形態において、NKp46、CD16およびCD122を含む、エフェクター細胞の複数の活性化受容体を介してNK細胞活性化、増殖、腫瘍浸潤および/または標的細胞溶解を媒介する本明細書において開示される多特異性タンパク質は、そのエフェクター細胞または腫瘍浸潤性エフェクター細胞(例えばNKp46+ NK細胞)が低機能であるか、疲弊しているかまたは抑制されている個体、例えば、1もしくは複数の阻害性受容体(例えばTIM-3、PD1、CD96、TIGITなど)の発現および/もしくは上方調節、またはCD16の発現の下方調節もしくは低いレベル(例えば、上昇した割合のNKp46+CD16- NK細胞の存在)により特徴付けられる意義のあるエフェクター細胞の集団を有する患者の処置のために有利に使用され得る。
【0378】
本明細書において記載される多特異性ポリペプチドは、抗体を用いて処置され得る障害、例えばがん、固形および非固形腫瘍、血液学的悪性腫瘍、感染症、例えばウイルス感染症、ならびに炎症性または自己免疫障害を予防または処置するために使用され得る。
【0379】
1つの実施形態において、対象とする抗原(非NKp46 抗原)は、癌腫、例えば膀胱、頭頸部、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺および皮膚の癌腫、例えば扁平上皮細胞癌;リンパ球系列の造血腫瘍、例えば白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫;骨髄系列の造血腫瘍、例えば急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病;間葉起源の腫瘍、例えば線維肉腫および横紋筋肉腫;他の腫瘍、例えば神経芽腫および神経膠腫;中枢および末梢神経系の腫瘍、例えば星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、および神経鞘腫;間葉起源の腫瘍、例えば線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫;ならびに他の腫瘍、例えば黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞がんおよび奇形癌、リンパ球系列の造血腫瘍、例えばT細胞およびB細胞腫瘍、以下に限定されないが例えばT細胞障害、例えばT細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、例えば小細胞および大脳様細胞タイプのもの;大顆粒リンパ球性白血病(LGL)、好ましくはT細胞タイプのもの;セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;退形成(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性;ならびにリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)からなる群から選択されるがんのタイプの悪性細胞の表面上に発現される抗原である。
【0380】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、癌腫、例えば膀胱、頭頸部、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺および皮膚の癌腫、例えば扁平上皮細胞癌;リンパ球系列の造血腫瘍、例えば白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫;骨髄系列の造血腫瘍、例えば急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病;間葉起源の腫瘍、例えば線維肉腫および横紋筋肉腫;他の腫瘍、例えば神経芽腫および神経膠腫;中枢および末梢神経系の腫瘍、例えば星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、および神経鞘腫;間葉起源の腫瘍、例えば線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫;ならびに他の腫瘍、例えば黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞がんおよび奇形癌からなる群から選択されるがんを予防または処置するために使用される。本発明に従って処置され得る他の例示的な障害は、リンパ球系列の造血腫瘍、例えばT細胞およびB細胞腫瘍、以下に限定されないが例えばT細胞障害、例えばT細胞前リンパ球性白血病(T-PLL)、例えば小細胞および大脳様細胞タイプのもの;大顆粒リンパ球性白血病(LGL)、好ましくはT細胞タイプのもの;セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性および免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;退形成(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性;ならびにリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)を含む。
【0381】
1つの例において、腫瘍抗原は、リンパ腫細胞または白血病細胞の表面上に発現される抗原であり、かつ多特異性タンパク質は、リンパ腫または白血病を有する個体に投与され、かつ/または該個体の処置のために使用される。
【0382】
1つの実施形態において、本明細書において記載される本発明の多特異性ポリペプチドは、本開示の多特異性タンパク質が特異的に結合する対象とする抗原(例えば腫瘍抗原)を発現する腫瘍細胞により特徴付けられるがんを予防または処置するために使用され得る。
【0383】
1つの態様において、処置の方法は、個体に本明細書において記載される多特異性タンパク質を、例えば、本明細書において開示されている疾患、例えば上記に同定されるがんのいずれかの処置のための、治療有効量において投与することを含む。治療有効量は、疾患または障害を有する患者において治療効果を有する(または疾患もしくは障害を有する患者および該患者と実質的に類似した特徴を有する患者の少なくとも実質的な割合においてそのような効果を促進、増強、および/もしくは誘導する)任意の量であってもよい。
【0384】
多特異性タンパク質は、個体から得られた生物学的試料(例えばがん細胞、がん組織またはがん隣接組織を含む生物学的試料)中の標的細胞上の対象とする抗原(例えば腫瘍抗原)の発現を検出する先行する工程と共にまたは(with our)該工程なしで使用されてもよい。別の実施形態において、本開示は、それを必要とする個体においてがんを処置または予防する方法であって、
a)対象とする抗原(例えば多特異性タンパク質がその対象とする抗原のABDを介して特異的に結合する対象とする抗原)を発現する個体からの試料中の細胞(例えば腫瘍細胞)を検出すること、ならびに
b)対象とする抗原を発現する細胞が、適宜、少なくとも参照レベルに対応する(例えば多特異性タンパク質から実質的な利益を誘導する個体に対応する)レベルにおいて、または適宜、参照レベルと比較して増加した(例えば健常個体もしくは本明細書において記載されるタンパク質から実質的な利益を誘導しない個体に対応する)レベルにおいて、試料中に含まれると決定されたら、対象とする抗原、NKp46、サイトカイン受容体(例えばCD122)、および適宜CD16Aに結合する(例えば、そのFcドメインを介して)本開示の多特異性タンパク質を個体に投与すること
を含む、方法を提供する。
【0385】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、対象とする抗原の表面発現の低いレベルにより特徴付けられる腫瘍を処置するために使用される。よって、腫瘍またはがんは、低いレベルの腫瘍抗原を発現する細胞により特徴付けられ得る。適宜、腫瘍抗原のレベルは、がん細胞1個当たり100,000個未満の腫瘍抗原コピーである。一部の態様において、腫瘍抗原のレベルは、がん細胞1個当たり90,000個未満、75,000個未満、50,000個未満、または40,000個未満の腫瘍抗原コピーである。使用は、適宜、対象の1つまたは複数のがん細胞の腫瘍抗原のレベルを検出することをさらに含む。
【0386】
多特異性タンパク質は、処置される個体からのNK細胞を検出するかまたは特徴付ける先行する工程と共にまたは該工程なしで使用されてもよい。適宜、1つの実施形態において、本発明は、それを必要とする個体においてがんを処置または予防する方法であって、
a)個体からの腫瘍試料中(または腫瘍内および/もしくは隣接組織内)のNK細胞(例えば腫瘍浸潤性NK細胞)を検出すること、ならびに
b)腫瘍または腫瘍試料が、適宜、参照レベルと比較して減少したレベルまたは数において(例えば、従来的なIgG抗体療法、例えば同じがん抗原に結合する従来的なIgG1抗体から誘導される利益がないか、低いかまたは不十分である個体に対応するレベルにおいて)、NK細胞の少ない数または低い活性により特徴付けられると決定されたら、がん抗原、NKp46(例えば、一価で)、サイトカイン受容体(例えば、CD122)および適宜CD16Aに結合する多特異性タンパク質を個体に投与すること
を含む、方法を提供する。
【0387】
一部の実施形態において、個体は、CD16(例えばCD16A)欠損腫瘍微環境により特徴付けられる腫瘍を有する。適宜、多特異性タンパク質を使用する処置の方法は、個体からの試料(例えば腫瘍試料)中のCD16の発現レベルを検出する工程を含む。CD16を検出することは、適宜、CD16AまたはCD16Bのレベルを検出することを含む。一部の態様において、CD16欠損微環境は、造血幹細胞移植を受けた患者において評価される。適宜、CD16欠損微環境は浸潤性NK細胞の集団を含み、かつ浸潤性NK細胞は、対照NK細胞と比較して50%未満のCD16の発現を有する。一部の態様において、浸潤性NK細胞は、対照NK細胞と比較して30%未満、20%未満、または10%未満のCD16の発現を有する。適宜、CD16欠損微環境は浸潤性NK細胞の集団を含み、かつ浸潤性NK細胞の少なくとも10%は、対照NK細胞と比較して低減されたCD16の発現を有する。一部の態様において、浸潤性NK細胞の少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%は、対照NK細胞と比較して低減されたCD16の発現を有する。
【0388】
適宜、1つの実施形態において、提供されるのは、それを必要とする個体においてがんを処置または予防する方法であって、
a)個体からの腫瘍または腫瘍試料(例えば、腫瘍および/または隣接組織内)からの細胞(例えば腫瘍浸潤性NK細胞)におけるCD16発現を検出すること、ならびに
b)腫瘍または腫瘍試料がCD16欠損微環境により特徴付けられると決定されたら、がん抗原、NKp46、およびサイトカイン受容体(例えばCD122)(および適宜さらにCD16A)に結合する多特異性タンパク質を個体に投与すること
を含む方法である。
【0389】
適宜、1つの実施形態において、提供されるのは、それを必要とする個体においてがんを処置または予防する方法であって、
a)個体からの腫瘍試料中(または腫瘍内および/もしくは隣接組織内)のNK細胞(例えば腫瘍浸潤性NK細胞)の表面におけるCD16発現を検出すること、ならびに
b)腫瘍または腫瘍試料が、適宜、参照レベルと比較して増加したレベルまたは数において、CD16- NK細胞の上昇した割合により特徴付けられると決定されたら、がん抗原、NKp46、およびサイトカイン受容体(例えばCD122)(および適宜さらにCD16A)に結合する多特異性タンパク質を個体に投与すること
を含む方法である。
【0390】
1つの実施形態において、本開示は、それを必要とする個体において疾患(例えばがん)を処置または予防する方法であって、
a)個体からの試料中(例えば循環中または腫瘍環境中)の免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞、T細胞)上の1もしくは複数の阻害性受容体または腫瘍細胞上のそのリガンドの細胞表面発現を検出すること、ならびに
b)適宜、参照レベルと比較して増加したレベルにおける(例えば、健常個体、免疫疲弊も抑制も患っていない個体、または本明細書において記載されるタンパク質から実質的な利益を誘導しない個体と比較して増加したレベルにおける)、免疫エフェクター細胞上の前記1もしくは複数の阻害性受容体または腫瘍細胞上のそのリガンドの細胞表面発現が決定されたら、対象とする抗原(例えばがん抗原)、NKp46(例えば、一価で)、およびサイトカイン受容体(例えばCD122)(および適宜さらにCD16A)に結合する多特異性タンパク質(例えば多特異性タンパク質)を個体に投与すること
を含む方法を提供する。
【0391】
一部の実施形態において、多特異性タンパク質は、胃がんまたは前立腺がんを有する個体を処置するために使用される。免疫エフェクター細胞上のNKG2Dの減少した細胞表面発現が胃がんおよび前立腺がんにおいて観察されている。
【0392】
一部の実施形態において、個体は、NKG2Dの発現の減少、例えば細胞表面発現の減少により特徴付けられるNK細胞および/またはT細胞を有する。発現のレベルは、例えば、参照値、例えば健常個体においてNKおよび/またはT細胞上に観察されるNKG2Dレベルに対応する参照値と比較され得る。一部の実施形態において、個体は、腫瘍微環境中のNKおよび/またはT細胞上のNKG2Dの発現の減少により特徴付けられるNKおよび/またはT細胞を有する。一部の実施形態において、個体は、腫瘍微環境中のNKG2Dの可溶性リガンド、例えば可溶性MICA、MICBまたはULBPタンパク質の存在(例えば増加したレベルにおけるもの)により特徴付けられるNKおよび/またはT細胞を有する。
【0393】
1つの実施形態において、本開示は、それを必要とする個体において疾患(例えばがん)を処置または予防する方法であって、
a)個体からの試料中(例えば循環中または腫瘍環境中)の免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞、T細胞)上のNKG2Dポリペプチドの細胞表面発現を検出すること、ならびに
b)適宜、参照レベルと比較して減少したレベルにおける(例えば、健常個体、免疫疲弊も抑制も患っていない個体、または本明細書において記載されるタンパク質から実質的な利益を誘導しない個体と比較して増加したレベルにおける)、免疫エフェクター細胞上の1または複数の阻害性受容体の細胞表面発現の減少が決定されたら、対象とする抗原(例えばがん抗原)、NKp46(例えば、一価で)、およびサイトカイン受容体(例えばCD122)(および適宜さらにCD16A)に結合する多特異性タンパク質(例えば多特異性タンパク質)を個体に投与すること
を含む方法を提供する。
【0394】
1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、単剤療法(他の治療剤を伴わない)として、または1つもしくは複数の他の治療剤との併用処置において使用されてもよい。1つの実施形態において、多特異性タンパク質は、IL-2、IL-15、IL-21、IL-7、IL-27、IL-12、IL-18、IFN-αおよびIFN-βポリペプチドから選択される剤との併用処置の非存在下で投与される。
【0395】
多特異性タンパク質はまた、キット中に含まれ得る。キットは、適宜、任意の数のポリペプチドおよび/または他の化合物、例えば、1、2、3、4、または任意の他の数の多特異性タンパク質および/または他の化合物をさらに含有してもよい。キットの内容物のこの記載は、いかなるようにも限定的でないことが理解される。例えば、キットは、他のタイプの治療用化合物を含有してもよい。適宜、キットはまた、例えば、本明細書において記載される方法、例えば特有の疾患状態の検出または処置における方法を詳述する、ポリペプチドを使用するための指示書を含む。
【0396】
提供されるのはまた、主題多特異性タンパク質および適宜、上記に定義されている他の化合物を含む、医薬組成物である。多特異性タンパク質および適宜別の化合物は、薬学的担体と共に精製された形態において医薬組成物として投与されてもよい。形態は、意図される投与のモードおよび治療的なまたは診断的な応用に依存する。薬学的担体は、化合物を患者にデリバリーするために好適な任意の適合性の非毒性物質であり得る。医薬的に許容される担体は当技術分野において周知であり、例えば、水性溶液、例えば(無菌)水または生理緩衝食塩水または他の溶媒もしくは媒体、例えばグリコール、グリセロール、油、例えばオリーブ油もしくは注射用有機エステル、アルコール、脂肪、ワックス、および不活性固体を含む。医薬的に許容される担体は、例えば化合物を安定化させるかまたはその吸収を増加させるために作用する生理学的に許容される化合物をさらに含有してもよい。そのような生理学的に許容される化合物は、例えば、炭水化物、例えばグルコース、スクロースもしくはデキストラン、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤もしくは賦形剤を含む。生理学的に許容される化合物を含む、医薬的に許容される担体の選択は、例えば、組成物の投与の経路に依存することは当業者に公知である。医薬的に許容されるアジュバント、緩衝化剤、および分散剤などもまた医薬組成物中に組み込まれ得る。そのようなアジュバントの非限定的な例は、無機および有機アジュバント、例えばミョウバン、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウム、スクアレン、リポソーム、リポ多糖、二本鎖(ds)RNA、一本鎖(s-s)DNA、およびTLRアゴニスト、例えば非メチル化CpGを例として含む。
【0397】
本発明による多特異性タンパク質は非経口的に投与され得る。非経口投与用の化合物の調製物は無菌でなければならない。滅菌は、適宜凍結乾燥および再構成に先立つかまたはその後になされる、無菌濾過膜を通じた濾過により容易に達成される。化合物の投与のための非経口経路は、公知の方法、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、または病巣内経路による注射または注入に従う。化合物は、注入により連続的にまたはボーラス注射により投与されてもよい。静脈内注入用の典型的な組成物は、特定のタイプの化合物およびその要求される投薬レジメンに依存して、20%のアルブミン溶液および1mg~10gの化合物を適宜補充された、100~500mlの無菌0.9% NaClまたは5%のグルコースを含有するように構成され得る。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は当技術分野において周知である。
【実施例】
【0398】
多特異性タンパク質の調製
GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号175、176および177において示される。それぞれ配列番号178、179および180ならびに配列番号181、182および183の3つのポリペプチド鎖を有するGA101-T53A-NKp46-IL2vの変異型を製造した。
図2Aは、実施例において使用された例示的な「T53A」フォーマット多特異性タンパク質のトポロジーを示す。このフォーマットは、トポロジカルにN末端に位置する1つのscFvおよび1つのFab構造、ならびにトポロジカルにC末端のサイトカインを有し、二量体FcドメインがN末端側におけるscFvおよびFabとC末端側におけるサイトカインとの間に差し挟まれている。配列番号175、176および177の鎖のタンパク質において、NKp46結合性ドメインはscFv構造を有し、かつ腫瘍抗原(TAまたはTAg)結合性ドメインは、抗CD20抗体GA101のVH-VLペアを含むFab構造を有する。実施例において使用された例示的な「T53A」フォーマットタンパク質のドメイン構造は
図2Bにおいて示される。
図2Bは、異なる長さのドメインリンカー(例えばヒンジおよびグリシン-セリンリンカー)、ならびに鎖間ジスルフィドブリッジを示す。Fcドメインは、野生型ヒトIgG1のFcガンマ受容体結合性部位アミノ酸配列を有し、そのためCD16Aに対する結合性を保持する。Fcドメインは、ヘテロ二量体化を助長するための「ノブ-イントゥー-ホール」突然変異をさらに含有した。K&N(ノブ-イントゥー-ホール)突然変異は、Fab保有断片上の「ホール」(Y350C、T367S、L369AおよびY408V)ならびにScFv保有断片上の「ノブ」(S355CおよびT367W)であった。
【0399】
追加的に、二量体ドメインを構成するFc単量体のうちの1つ(黒丸を用いて指し示される単量体)はまた、プロテインAに対する結合性を低減させるためのCH3ドメイン中の突然変異[Jendeberg et al. (1997) Journal of Immunological Methods 201: 25-34において開示される、EU番号付けにしたがって、H435RおよびY436F]を含有し;適宜であるこれらの突然変異は、タンパク質の活性に影響しないが、ホモ二量体の排除を可能にすることにより精製の効率を潜在的に向上させることができる。
【0400】
各々の多特異性抗原結合性タンパク質のための各々のポリペプチド鎖をコードする配列をpTT-5ベクター中のHindIII制限部位とBamHI制限部位との間に挿入した。3つのベクター(エンドトキシンフリーミディプレップまたはマキシプレップとして調製された)を使用して、PEIの存在下(37℃、5% CO2、150rpm)でEXPI-293F細胞(Life Technologies)への共トランスフェクトを行った。該細胞を使用して1×106細胞/ml(EXPI293培地、Gibco)の密度において培養フラスコへの播種を行った。バルプロ酸(最終濃度0.5mM)、グルコース(4g/L)およびトリプトンN1(0.5%)を加えた。上清を6日後に採取し、0.22μmのポアを有するStericupフィルターに通過させた。
【0401】
rProtein A Sepharose Fast Flow(GE Healthcare、参照番号17-1279-03)を使用して採取後の上清から多特異性抗原結合性タンパク質を精製した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)精製を次に行い、予想されるサイズにおいて溶出されたタンパク質を最後に0.22μmデバイスにおいて濾過した。
【0402】
産生された多特異性タンパク質のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を以下の表3において示す。
【0403】
【0404】
IL2vはTregにおけるIL2R活性化を制限する
突然変異体IL-2の1つのC末端部分を含有するヘテロ三量体Fcドメイン含有タンパク質を、Treg細胞を活性化させるその能力について評価した。タンパク質は、野生型ヒトIL-2と比較してCD25に対する減少された結合親和性を付与する突然変異T3A、C125A、F42A、Y45AおよびL72Gを導入することによりヒトIL-2ポリペプチドが改変された変異型IL-2ポリペプチド(IL-2v)を組み込んでいる。
【0405】
ヘテロ三量体は、IL2vがアイソタイプ対照(IC)Fabの鎖の1つのC末端に融合しており、次いで該C末端はCD16A結合性を実質的に排除するために突然変異したFcドメインのC末端に融合しており、次いで該C末端は別のIC Fabに融合した。IC Fabは、試験システム中のいかなるタンパク質にも結合しないVH/VLペアを有する。このヘテロ三量体タンパク質(IL2vイムノコンジュゲート)を、IL2vが野生型ヒトIL-2ポリペプチドにより置き換えられた同一のヘテロ三量体タンパク質(IL2pWTイムノコンジュゲート)、および組換えにより産生された全長野生型IL-2(rec huIL-2)と比較した。
【0406】
簡潔に述べれば、1M/ウェルの精製されたPBMCを96ウェルプレート中に播種し、増加性用量の組換えhuIL-2、IC-T6-IC-IL2(IL2pWTイムノコンジュゲート)またはIC-T6-IC-IL2v(IL2vイムノコンジュゲート)(133nM~0.0000013nMの用量)を用いて37℃、5.5%CO2のインキュベーター中で20分間処理した。STAT5リン酸化を次に、Treg(CD3+ CD4+ CD25+ FoxP3+に関してゲーティングされた)に関するフローサイトメトリーにより分析した。
【0407】
結果を
図5において示す。IL2vイムノコンジュゲートは、IL2pWTイムノコンジュゲートおよびrec huIL-2と比較して、Tregの中でのpSTAT5+細胞のパーセントにおける約3-logの減少を結果としてもたらした。突然変異したヒトIL-2を組み込んだIL2vイムノコンジュゲートタンパク質は、したがって、野生型IL-2と比較してTreg細胞を活性化させる能力の強い減少を示す。
[実施例2]
【0408】
トポロジカルにN末端のNKp46および腫瘍抗原結合性部位を有するNKCE-IL2vは強力なNK細胞媒介性細胞傷害性を促進する
細胞表面におけるNKp46、CD16AおよびIL2受容体タンパク質の3次元モデリングは、二量体FcドメインがIL2vに隣接してそのN末端に位置付けられた設定において、Fc-CD16A相互作用は細胞膜に近い可能性があり、IL2v部分が、そのIL-2結合性部位が細胞表面から約70オングストロームに位置付けられているCD122との効率的な相互作用を可能にするためには細胞膜に近過ぎて位置付けられることに繋がり得ることを示唆した。
【0409】
腫瘍抗原(CD20;抗CD20 VH/VLペアを指す「GA101」としても交換可能に指し示される)、CD16A(野生型Fcガンマ受容体結合性部位を有する二量体Fcドメインを含めることによる)、NKp46およびCD122(IL2v分子を含めることによる)にすべて結合する異なるヘテロ三量体タンパク質のシリーズを比較した。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質の構造を
図2Aおよび
図2Bにおいて示しており、NKp46結合性ドメイン(scFvとして)を、二量体Fcドメインを構成する単量体のうちの1つのN末端に置き、IL2vを同じFcドメインのC末端に置いた(NKp46、FcおよびIL2v部分のドメイン配置は、N末端からC末端へ:抗NKp46 scFv - 二量体Fc - IL2v)。IL2vをFcドメインから分離する柔軟なドメインリンカーの長さを変動させ、5アミノ酸残基の短いリンカー、GA101-T53A-NKp46-IL2vの10アミノ酸残基リンカー、および15アミノ酸残基の長いリンカーを含めた。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質のドメイン構造を
図2Bにおいて示す。
【0410】
試験されたタンパク質は以下の通りであった:
- GA101-T53A-NKp46-IL2v(10残基リンカー)
- GA101-T53A-NKp46-IL2v短リンカー(5残基リンカー)
- GA101-T53A-NKp46-IL2v長リンカー(15残基リンカー)。
【0411】
この実験において、NK細胞エンゲージャータンパク質を、カルセイン放出をリードアウトとして使用する標準的な4時間細胞傷害性アッセイにおいて10:1のエフェクター:標的比において2人のヒトドナーからのNK細胞によるRAJI腫瘍細胞(CD20+)の殺傷を誘導するそれらの能力について評価した。
【0412】
簡潔に述べれば、精製されたNK細胞を完全培地中で終夜静置した。静置させたNK細胞を次に、カルセイン放出を以前にロードしたRaji腫瘍細胞と10:1の比において共培養した。細胞を、上記される試験タンパク質(20ug/ml~0.0001ug/mlの用量)と37℃、5.5%のCO2のインキュベーター中で4hインキュベートした。
【0413】
結果を
図6において示しており、y軸上にNK細胞により誘導された特異的溶解%およびx軸上に試験タンパク質の濃度を示している。5、10または15残基リンカーを含む、すべてのGA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、腫瘍標的細胞に向けたNK細胞の細胞傷害性を媒介する能力において非常に強力であった。
[実施例3]
【0414】
NKCE-IL2vは選択的にNK細胞においてIL2R活性化を促進する
図2Bにおいて示されるヘテロ三量体Fcドメイン含有GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質を、Treg細胞、NK細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞を活性化させるその能力について評価した。
【0415】
簡潔に述べれば、1M/ウェルの精製されたPBMCを96ウェルプレート中に播種し、増加性用量のNKCE-IL2vまたはIL2vイムノコンジュゲート(133nM~0.0000013nMの用量)を用いて37℃、5.5%のCO2のインキュベーター中で20分間処理した。STAT5リン酸化を次に、NK細胞(CD3-CD56+)、CD8 T細胞(CD3+ CD8+)、CD4 T細胞(CD3+ CD4+ FoxP3-)およびTreg(CD3+ CD4+ CD25+ FoxP3+に関してゲーティングされた)に関するフローサイトメトリーにより分析した。
【0416】
結果を
図7において示しており、該図は、y軸上にNK細胞の中でのpSTAT5細胞の%およびx軸上に試験タンパク質の濃度を示している。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、NK細胞を活性化させる能力において組換えヒトIL-2よりも強力であった。
【0417】
結果を
図8において示しており、該図は、y軸上にCD4 T細胞の中でのpSTAT5細胞の%およびx軸上に試験タンパク質の濃度を示している。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、CD4 T細胞を活性化させる能力において組換えヒトIL-2よりも低い効力であった。
【0418】
結果を
図9において示しており、該図は、y軸上にCD8 T細胞の中でのpSTAT5細胞の%およびx軸上に試験タンパク質の濃度を示している。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、CD8 T細胞を活性化させる能力において組換えヒトIL-2よりも低い効力であった。
【0419】
結果を
図10において示しており、該図は、y軸上にTreg細胞の中でのpSTAT5細胞の%およびx軸上に試験タンパク質の濃度を示している。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、Treg細胞を活性化させる能力において組換えヒトIL-2よりも低い効力であった。
【0420】
全体的に、GA101-T53A-NKp46-IL2vは、組換えIL-2よりも低いTreg細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の活性化のレベルを示した。しかしながら、GA101-T53A-NKp46-IL2vは、NKp46にもCD16Aにも結合しない組換えヒトIL-2と比較して、NK細胞の中でのpSTAT5+細胞の増加においてはるかに強力であった(より低いEC50)。GA101-T53A-NKp46-IL2vタンパク質は、Treg細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞を上回るNK細胞の強力かつ選択的な活性化を可能にした。
【0421】
すべての見出しおよび副見出しは、簡便性のためにのみ本明細書において使用されており、いかなるようにも本発明を限定するとして解釈されるべきではない。すべての可能なバリエーションにおける上記される要素の任意の組合せは、本明細書において他に指し示されないか、または他に明確に文脈に矛盾しなければ、本発明により包含される。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書において他に指し示されなければ、範囲内に入る各々の別々の値に個々に言及する簡略化された方法として役立つことが単に意図され、各々の別々の値は、それが本明細書において個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。他に記載されなければ、本明細書において提供されるすべての正確な値は、対応するおおよその値の代表的なものである(例えば、特定の因子または測定に関して提供されるすべての正確な例示的な値は、適切な場合に、「約」により改変された、対応するおおよその測定値も提供すると考えられ得る)。本明細書において記載されるすべての方法は、本明細書において他に指し示されないか、または他に明確に文脈に矛盾しなければ、任意の好適な順序において行われ得る。
【0422】
本明細書において提供される任意のおよびすべての例、または例示的な表現(例えば、「例えば」)の使用は、本発明をより良好に説明することが単に意図され、他に指し示されなければ、本発明の範囲に対する限定を課さない。本明細書中のいかなる記載も、明示的に記載されなければ、任意の要素が本発明の実施にとって必須であることを指し示すとして解釈されるべきではない。
【0423】
1つまたは複数の要素への言及などの用語を使用する本発明の任意の態様または実施形態の本明細書における記載は、他に記載されないか、または明確に文脈に矛盾しなければ、その1つまたは複数の特定の要素「からなる」か、「から本質的になる」か、またはそれを「実質的に含む」本発明の類似した態様または実施形態のためのサポートを提供することが意図される(例えば、特定の要素を含むとして本明細書において記載される組成物は、他に記載されないか、または明確に文脈に矛盾しなければ、その要素からなる組成物もまた記載するとして理解されるべきである)。
【0424】
本明細書において参照されるすべての刊行物および特許出願は、各々の個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが特におよび個々に指し示されたかのようにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0425】
以上の発明が、理解を明確にする目的のために実例および例によってある程度詳細に記載されたが、ある特定の変更および改変が、添付の請求項の精神または範囲から離れることなくそれに対してなされてもよいことは本発明の教示に照らして当業者に容易に明らかとなる。
【配列表】
【国際調査報告】