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特表2024-521412トレブルチニブの結晶形並びにその製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】トレブルチニブの結晶形並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240524BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C07D471/04 105Z
C07D471/04 CSP
A61K31/4545
A61P25/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575800
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2022096779
(87)【国際公開番号】W WO2022257845
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110652005.2
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110690510.6
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111326112.2
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ミンフア・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャミン・シー
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ジャン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、トレブルチニブ(tolebrutinib)(本明細書以後では「化合物I」と呼ばれる)の新規な結晶形、その製造方法、該結晶形を含有する医薬組成物、並びにBTK阻害薬及び多発性硬化症を処置するための薬物におけるその使用に関する。提供されるトレブルチニブの結晶形は、先行技術と比較して1つ又はそれ以上の改善された特性を有し、そして将来の薬物の最適化及び開発にとって高い価値がある。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値4.1°±0.2°、10.2°±0.2°及び22.6°±0.2°に特性ピークを含む、化合物I
【化1】
の結晶形。
【請求項2】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値11.3°±0.2°、16.5°±0.2°及び17.8°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項1に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項3】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値8.2°±0.2°、10.8°±0.2°及び24.7°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項1に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項4】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値8.2°±0.2°、10.8°±0.2°及び24.7°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項2に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項5】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、実質的に図1に示されるとおりである、請求項1に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項6】
化合物Iの固体をアルコール溶媒中に加えて懸濁液を形成し、撹拌し、そして分離して固体を得、該固体を高温真空乾燥して結晶形を得ることを含む、請求項1に記載の結晶形を製造する方法。
【請求項7】
上記アルコール溶媒はC1~C4のアルコールであり、そして撹拌の温度は0~50℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値4.2°±0.2°、11.1°±0.2°及び21.7°±0.2°に特性ピークを含む、化合物Iの結晶形。
【請求項9】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値20.6°±0.2°、21.0°±0.2°及び22.2°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項8に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項10】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値10.4°±0.2°、17.7°±0.2°及び23.1°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項8に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項11】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値10.4°±0.2°、17.7°±0.2°及び23.1°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項9に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項12】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、実質的に図6に示されるとおりである、請求項8に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項13】
化合物Iの固体をアセトン中に加えて懸濁液を形成し、次いで撹拌して結晶形を得ることを含む、請求項8に記載の結晶形を製造するための方法。
【請求項14】
撹拌の温度は0~50℃である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値8.5°±0.2°、18.6°±0.2°及び22.0°±0.2°に特性ピークを含む、化合物Iの結晶形。
【請求項16】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値12.9°±0.2°、19.1°±0.2°及び23.3°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項15に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項17】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値13.2°±0.2°、13.8°±0.2°及び21.1°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項15に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項18】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、2θ値13.2°±0.2°、13.8°±0.2°及び21.1°±0.2°に少なくとも1つの特性ピークを含む、請求項16に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項19】
CuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンが、実質的に図11に示されるとおりである、請求項15に記載の化合物Iの結晶形。
【請求項20】
化合物Iの固体をエーテル溶媒又は芳香族炭化水素溶媒中に加えて懸濁液を形成し、-20℃~-5℃で撹拌して結晶形を得ることを含む、請求項15に記載の結晶形を製造するための方法。
【請求項21】
上記エーテル溶媒はC5のエーテルであり、そして芳香族炭化水素溶媒は、C9の芳香族炭化水素溶媒であり、上記撹拌の温度は-20℃である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療有効量の、請求項1に記載の結晶形、又は請求項8に記載の結晶形、又は請求項15に記載の結晶形、又は該結晶形のいずれか2つの任意の混合物、又は3つの該結晶形の任意の混合物;及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項23】
BTK阻害薬の製造のための、請求項1に記載の結晶形、又は請求項8に記載の結晶形、又は請求項15に記載の結晶形、又は該結晶形のいずれか2つの任意の混合物、又は3つの該結晶形の任意の混合物の使用。
【請求項24】
多発性硬化症の処置のための薬物の製造のための、請求項1に記載の結晶形、又は請求項8に記載の結晶形、又は請求項15に記載の結晶形、又は該結晶形のいずれか2つの任意の混合物、又は3つの該結晶形の任意の混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、化学結晶学の分野に関し、特にトレブルチニブ(Tolebrutinib)の結晶形、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
多発性硬化症(MS)は、世界中で100万人より多くの人々が患う神経疾患である。これは若年及び中年の成人における神経障害の最も一般的な原因であり、そして対象及びその家族に対して重度の身体的、心理的、社会的及び経済的な影響をを有する。MSは、身体の免疫系の異常な応答が中枢神経系(CNS)に向けられる免疫介在性プロセスを含む。疾患の過程では、神経細胞のミエリン鞘に硬化、すなわち、病変又は瘢痕が現れ、電気シグナルの伝達を妨害する。硬化は時間が経つにつれて蓄積し、そしてMS患者が経験する衰弱性の症状を生じる。
【0003】
免疫調節薬はMS治療の頼みの綱であった。2017年の臨床試験からの結果(非特許文献1)は、Bリンパ球を標的とする薬剤の有効性を実証した。
【0004】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)経路は、Bリンパ球及びCNS小膠細胞を含む骨髄系細胞におけるシグナル伝達に不可欠である。これらの細胞型の各々がMSの病態生理に関与していた。さらに、BTKシグナル伝達は、B細胞の抗体分泌形質細胞への成熟にとって極めて重要であるので、BTK阻害は細胞性免疫及び体液性免疫の両方を調節し得る。従って、BTKシグナル伝達の阻害剤は、免疫系の両方の側面を標的とする二重機構を表す。
【0005】
従って、神経炎症の原因である抗原誘導B細胞活性化を阻害し、かつ脳及び脊髄における神経炎症に関連付けられる非適応性小膠細胞を調節することができる、BTKを阻害する化合物は、現在利用可能な治療と比較した場合に、再発性多発性硬化症(RMS)の処置において優れた利益をもたらす有用なものであるかもしれない。
【0006】
経口選択的BTK阻害剤であるトレブルチニブは、RMS患者において安全性及び有効性を示した。
【0007】
トレブルチニブの化学名は、(R)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2(3H)-オン(本明細書以下では化合物Iと呼ばれる)であり、そして構造は以下:
【化1】
のように示される。
【0008】
結晶形は、その構成要素が高秩序微細構造で配置され、全方向に広がる結晶格子を形成する固体物質である。結晶多形は、化合物が1つより多くの結晶形で存在する現象を指す。化合物は、1つ又はそれ以上の結晶形で存在し得るが、それらの存在及び特徴を確実に予測することはできない。薬物物質の異なる結晶形は異なる物理化学的特性を有し、これは薬物のインビボでの溶解及び吸収に影響を及ぼし得、そしてさらに薬物の臨床有効性にある程度影響を及ぼす。特に、いくつかの難溶性の経口固体又は半固体投薬形態については、結晶形は製剤の性能に決定的であり得る。さらに、結晶形の物理化学的特性は、製造プロセスにとって非常に重要である。したがって結晶多形は、薬物研究及び薬物品質管理の重要な部分である。
【0009】
化合物Iの白色固体は特許文献1に開示される。本開示の発明者らは、製造プロセスを繰り返し、化合物Iの無定形物質を得た。さらに、本開示の発明者らは、得られた無定形物質を調べ、そしてその結果は、化合物Iの無定形物質が不十分な安定性、強い吸湿性及び容易な分解性のような不利な点を有し、そして薬剤用途に適していないということを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2016196840A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Hauserら, N Engl JMed. 2017;376 (3):221-34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術の不利益を克服するために、化合物Iを含有する薬物の開発のための製薬の基準を満たす新しい結晶形の必要がまだある。本開示の発明者らは、驚くべきことに、溶解性、吸湿性、精製能、安定性、接着性、圧縮性、流動性、インビトロ及びインビボでの溶解、バイオアベイラビリティなどの側面において利点を有する化合物Iの結晶形を得た。特に、本開示の化合物Iの結晶形は、良好な安定性、より低い吸湿性及び分解性がほとんど無いことのような利点を有し、これは先行技術に存在する問題を解決し、かつ化合物Iを含有する薬物の開発のために非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
要旨
本開示は、化合物Iの新規な結晶形、その製造方法及び使用、並びに該新規な結晶形を含有する医薬組成物を提供する。
【0014】
本開示の目的に従って、化合物Iの結晶形CSII(本明細書では以後フォームCSIIと呼ばれる)が提供される。
【0015】
本明細書において提供される一態様において、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値4.1°±0.2°、10.2°±0.2°及び22.6°±0.2°に特性ピークを含む。
【0016】
さらに、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値11.3°±0.2°、16.5°±0.2°及び17.8°±0.2°に1つ又は2つ又は3つの特性ピークを含む。好ましくは、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値11.3°±0.2°、16.5°±0.2°及び17.8°±0.2°に特性ピークを含む。
【0017】
さらに、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値8.2°±0.2°、10.8°±0.2°及び24.7°±0.2°に1つ又は2つ又は3つの特性ピークを含む。好ましくは、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値8.2°±0.2°、10.8°±0.2°及び24.7°±0.2°に特性ピークを含む。
【0018】
本明細書において提供される別の態様において、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値4.1°±0.2°、10.2°±0.2°、22.6°±0.2°、11.3°±0.2°、16.5°±0.2°、17.8°±0.2°、8.2°±0.2°、10.8°±0.2°、24.7°±0.2°及び20.5°±0.2°に1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10の特性ピークを含む。
【0019】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、実質的に図1に示されるとおりである。
【0020】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIのTGA曲線は、実質的に図2に示されるとおりであり、これは26℃から100℃に加熱された場合に約0.1%の重量減少を示す。
【0021】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIのDSC曲線は実質的に図3に示されるとおりであり、これはおよそ131℃(開始温度)に吸熱ピークを示す。このピークは溶融吸熱ピークである。
【0022】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIは無水物である。
【0023】
本開示の目的に従って、フォームCSIIを製造するための方法も提供される。この方法は:
化合物Iの固体をアルコール溶媒中に加えて懸濁液を形成し、特定の温度で撹拌し、そして分離して固体を得、該固体を高温真空乾燥により特定の時間の間乾燥してフォームCSIIを得ること;
を含む。
【0024】
さらに、該アルコール溶媒は、好ましくはC1~C4のアルコールであり、より好ましくはエタノールであり;該温度は好ましくは0~50℃であり、より好ましくは50℃であり;該撹拌時間は好ましくは1日より長く;該高温真空乾燥の温度は、好ましくは50~75℃であり;該乾燥時間は3時間より長い。
【0025】
本開示の目的に従って、本開示は、化合物IのフォームCSIII(本明細書以下ではフォームCSIIIと呼ばれる)を提供する。
【0026】
本明細書において提供される一態様において、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値4.2°±0.2°、11.1°±0.2°及び21.7°±0.2°に特性ピークを含む。
【0027】
さらに、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値20.6°±0.2°、21.0°±0.2°及び22.2°±0.2°に1つ又は2つ又は3つの特性ピークを含む。好ましくは、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値20.6°±0.2°、21.0°±0.2°及び22.2°±0.2°に特性ピークを含む。
【0028】
さらに、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値10.4°±0.2°、17.7°±0.2°及び23.1°±0.2°に1つ又は2つ又は3つの特性ピークを含む。好ましくは、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値10.4°±0.2°、17.7°±0.2°及び23.1°±0.2°に特性ピークを含む。
【0029】
本明細書において提供される別の態様において、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値4.2°±0.2°、11.1°±0.2°、21.7°±0.2°、20.6°±0.2°、21.0°±0.2°、22.2°±0.2°、10.4°±0.2°、17.7°±0.2°、23.1°±0.2°、8.4°±0.2°、13.3°±0.2°、16.3°±0.2°、24.2°±0.2°、及び25.4°±0.2°に1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10又は11又は12又は13又は14の特性ピークを含む。
【0030】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIIのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、実質的に図6に示されるとおりである。
【0031】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIIのTGA曲線は、実質的に図7に示されるとおりであり、これは26℃から100℃に加熱された場合に約0.5%の重量減少を示す。
【0032】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIIのDSC曲線は、実質的に図8に示されるとおりであり、これはおよそ133℃(開始温度)に吸熱ピークを示す。このピークは溶融吸熱ピークである。
【0033】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIIIは無水物である。
【0034】
本開示の目的に従って、フォームCSIIIを製造するための方法も提供される。この方法は:
化合物Iの固体をアセトン中に加えて懸濁液を形成し、撹拌してフォームCSIIIを得ること;
を含む。
【0035】
さらに、該撹拌の温度は好ましくは0~50℃であり、より好ましくは5℃である。
【0036】
本開示の目的に従って、本開示は、化合物IのフォームCSIV(本明細書以下ではフォームCSIVと呼ばれる)を提供する。
【0037】
本明細書において提供される一態様において、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値8.5°±0.2°、18.6°±0.2°及び22.0°±0.2°に特性ピークを含む。
【0038】
さらに、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値12.9°±0.2°、19.1°±0.2°及び23.3°±0.2°に1つ又は2つ又は3つの特性ピークを含む。好ましくは、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値12.9°±0.2°、19.1°±0.2°及び23.3°±0.2°に特性ピークを含む。
【0039】
さらに、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値13.2°±0.2°、13.8°±0.2°及び21.1°±0.2°に1つ又は2つ又は3つの特性ピークを含む。好ましくは、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値13.2°±0.2°、13.8°±0.2°及び21.1°±0.2°に特性ピークを含む。
【0040】
本明細書において提供される別の態様において、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、2θ値8.5°±0.2°、18.6°±0.2°、22.0°±0.2°、12.9°±0.2°、19.1°±0.2°、23.3°±0.2°、13.2°±0.2°、13.8°±0.2°、21.1°±0.2°、7.7°±0.2°、17.2°±0.2°及び26.7°±0.2°に1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10又は11又は12の特性ピークを含む。
【0041】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIVのCuKα放射線を使用した粉末X線回折パターンは、実質的に図11に示されるとおりである。
【0042】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIVのDSC曲線は、実質的に図13に示されるとおりであり、これはおよそ144℃(開始温度)に吸熱ピークを示す。このピークは溶融吸熱ピークである。
【0043】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIVのTGA曲線は、実質的に図14に示されるとおりであり、これは29℃から120℃まで加熱された場合に約0.2%の重量減少を示す。
【0044】
いかなる限定も意味しないが、フォームCSIVは無水物である。
【0045】
本開示の目的に従って、フォームCSIVを製造するための方法も提供される。この方法は:
化合物Iの固体をエーテル溶媒又は芳香族炭化水素溶媒中に加えて懸濁液を形成し、-20℃~5℃で撹拌して、本発明のフォームCSIVを得ること;
を含む。
【0046】
さらに、該エーテル溶媒は、好ましくはC5のエーテルであり、より好ましくはメチルtert-ブチルエーテルであり;該芳香族炭化水素溶媒は、好ましくはC9の芳香族炭化水素溶媒であり、より好ましくはイソプロピルベンゼンであり;該撹拌温度は好ましくは-20℃である。
【0047】
本開示の目的に従って、本開示は、化合物Iの他の結晶形、又は塩を製造するための、フォームCSII、フォームCSIII、フォームCSIV、又は該結晶形のいずれか2つの任意の混合物、又は3つの結晶形の任意の混合物の使用を提供する。
【0048】
本開示の目的に従って、治療有効量の、フォームCSII、フォームCSIII、フォームCSIV、又は3つの該結晶形の任意の混合物、及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0049】
さらに、BTK阻害薬の製造のための、フォームCSII、フォームCSIII、フォームCSIV、又はいずれか2つの該結晶形の任意の混合物、又は3つの結晶形の任意の混合物の使用が、本開示により提供される。
【0050】
さらに、多発性硬化症の処置のための薬物の製造のための、フォームCSII、フォームCSIII、フォームCSIV、又はいずれか2つの該結晶形の任意の混合物、又は3つの結晶形の任意の混合物の使用が、本開示により提供される。
【0051】
技術的効果
本開示のフォームCSII原薬は、以下の予期せぬ利点を有する:
(1)本開示のフォームCSII原薬は、先行技術よりも良好な安定性を有する。
【0052】
先行技術の固体の化学純度は、光を当てて25℃/60%RH、40℃/75%RH、60℃/75%RH、及び80℃の条件下で貯蔵された場合、有意に減少する。詳細には、40℃/75%RHで6か月間貯蔵した後、純度は3.46%減少し、そして認定された基準値を超える不純物の数は4に増加する。60℃/75%RHで1か月のみの貯蔵の後、純度は6.3%超減少し、そして認定された基準値を超える不純物の数は4に増加する。先行技術の固体の化学的安定性は、医薬基準を大きく下回る。
【0053】
本開示のフォームCSII原薬の結晶状態は、25℃/60%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも6か月変化しない。化学純度は99.8%より高く、そして結晶形は、貯蔵の間、実質的に変化しないままである。これらの結果は、本開示のフォームCSII原薬が、薬物貯蔵に適切な長期の条件下で良好な安定性を有するということを示す。
【0054】
一方で、フォームCSII原薬の結晶状態は、40℃/75%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも6か月間変化しない。フォームCSII原薬の結晶状態は、60℃/75%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも1か月変化しない。化学純度は99.8%より高く、そして貯蔵の間、実質的に変化しないままである。フォームCSII原薬の化学純度は、80℃の条件下で貯蔵された場合、少なくとも2日間、実質的に変化しないままである。
【0055】
光源の全照度が1.2×10lux-hr以上であり、かつ近紫外ランプのエネルギーが200W-hr/mエネルギー以上である条件下では、少なくとも1週間純度の変化はない。これらの結果は、フォームCSII原薬が、加速された、高温及び照明条件下でより良好な安定性を有するということを示す。
【0056】
様々な季節、地域気候及び環境などにより引き起こされる高温及び高湿度条件は、原薬及び製剤の貯蔵、輸送及び製造プロセスに影響を及ぼす。原薬の貯蔵、輸送、及び製造プロセスの間、必然的に光条件の影響があり、従って、加速された高温及び照明条件下での良好な安定性は、薬物開発にとって非常に重要である。フォームCSII原薬は、加速された高温及び照明条件下で良好な安定性を有し、このことは、結晶転移に起因する薬物品質に対する影響、又は薬物貯蔵の間の純度の減少を避けるために有益である。
【0057】
さらに、フォームCSII原薬の不純物含有量は、安定性調査の過程の間ずっと、認定された基準値を超えず、医薬品開発の要件を満たすことができた。
【0058】
原薬の良好な物理的及び化学的安定性は、製造及び貯蔵の間に結晶転移が起こらず、かつ実質的に不純物が生成されないということを確実にする。フォームCSIIは、良好な物理的及び化学的安定性を有し、原薬及び製剤の一貫して管理可能な品質を確実にし、結晶転移又は不純物生成により引き起こされる品質変化、バイオアベイラビリティ変化、毒性及び副作用を最小にする。
【0059】
さらに、フォームCSIIの結晶形は、製剤を形成するために賦形剤と混合された後変化せず、フォームCSII製剤が製造プロセスの間安定であることを示し、このことは薬物の製造のために有利である。
【0060】
さらに、フォームCSIIは、機械的力下で良好な物理的安定性を有する。フォームCSIIは、原薬の粉砕後に変化しないままである。製造プロセスの間に原薬を粉砕又は微粉砕することがしばしば必要となり、そして良好な物理的安定性は、製造プロセスの間の原薬の減少した結晶化度及び結晶転移の危険性を低減することができる。
【0061】
(2)先行技術と比較して、本開示のフォームCSIIはより低い吸湿性を有する。試験結果は、フォームCSIIの重量増加が先行技術の1/6だけであることを示す。80%RHでのフォームCSIIの重量増加は0.60%であり、フォームCSIIがわずかに吸湿性であることを示す。先行技術の固体の80%RHでの重量増加は3.69%であり、先行技術が吸湿性であることを示す。
【0062】
一態様において、高い吸湿性は、化学的分解及び多形転移を引き起こす傾向があり、これは原薬の物理的及び化学的安定性に直接影響を及ぼす。さらに、高い吸湿性は、原薬の流動性を減少させ、それにより原薬の加工に影響を及ぼす。
【0063】
別の態様において、高い吸湿性を有する原薬は、製造及び貯蔵の間、低湿度環境を必要とし、これにより製造に厳しい必要条件が課され、そしてより高い費用を強いる。より重要なことには、高い吸湿性は、製剤中の活性薬剤成分の含有量の変動を引き起こす可能性があるため、製剤の品質に影響を及ぼす。
【0064】
より低い吸湿性を有する本開示により提供されるフォームCSIIは、製造及び貯蔵条件に対する要求が厳しくなく、これにより製造、貯蔵及び品質管理の費用を減少させ、そして強い経済的価値を有する。
【0065】
本開示のフォームCSIII原薬は、以下の予期せぬ利点を有する:
(1)本開示のフォームCSIII原薬は、先行技術よりも良好な安定性を有する。
光を当てて25℃/60%RH、40℃/75%RH、60℃/75%RH、及び80℃の条件下で貯蔵された場合、先行技術の固体の化学的純度は有意に減少する。特に、40℃/75%RHで6か月間貯蔵した後、純度は3.46%減少し、そして認定された基準値を超える不純物の数は4に増加する。60℃/75%RHで1か月だけの貯蔵後に、純度は6.3%超減少し、そして認定された基準値を超える不純物の数は4に増加する。先行技術の固体の化学的安定性は、医薬基準を大きく下回る。
【0066】
本開示のフォームCSIII原薬の結晶状態は、25℃/60%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも6か月間変化しない。化学純度は99.9%より高く、そして結晶形は、貯蔵の間に実質的に変化しないままである。これらの結果は、本開示のフォームCSIII原薬が薬物貯蔵に適切な長期の条件下で良好な安定性を有するということを示す。
【0067】
一方で、フォームCSIII原薬の結晶状態は、40℃/75%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも6か月間変化しない。フォームCSIII原薬の結晶状態は、60℃/75%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも1か月間変化しない。化学純度は99.8%より高く、かつ貯蔵の間に実質的に変化しないままである。フォームCSIII原薬の化学純度は、80℃の条件下で貯蔵された場合、少なくとも2日間実質的に変化しないままである。
【0068】
光源の全照度が1.2×10lux-hr以上であり、かつ近紫外ランプのエネルギーが200W-hr/mエネルギー以上である条件下では、少なくとも1週間純度の変化はない。これらの結果は、フォームCSIII原薬が、加速された高温及び照明条件下でより良好な安定性を有するということを示す。様々な季節、地域気候及び環境などにより引き起こされる高温及び高湿度条件は、原薬及び製剤の貯蔵、輸送及び製造プロセスに影響を及ぼす。原薬の貯蔵、輸送、及び製造プロセスの間、必然的に光条件の影響があり、従って、加速された高温及び照明条件下での良好な安定性は、薬物開発にとって非常に重要である。フォームCSIII原薬は、加速された高温及び照明条件下で良好な安定性を有し、このことは、結晶転移に起因する薬物品質に対する影響、又は薬物貯蔵の間の純度の減少を避けるために有益である。
【0069】
さらに、フォームCSIII原薬の不純物含有量は、安定性調査の過程の間ずっと、認定された基準値を超えず、医薬品開発の要件を満たすことができた。
【0070】
原薬の良好な物理的及び化学的安定性は、製造及び貯蔵の間に結晶転移が起こらず、かつ実質的に不純物が生成されないということを確実にする。フォームCSIIIは、良好な物理的及び化学的安定性を有し、原薬及び製剤の一貫して管理可能な品質を確実にし、結晶転移又は不純物生成により引き起こされる品質変化、バイオアベイラビリティ変化、毒性及び副作用を最小にする。
【0071】
さらに、フォームCSIIIの結晶形は、製剤を形成するために賦形剤と混合された後変化せず、フォームCSIII製剤が製造プロセスの間安定であることを示し、このことは薬物の製造のために有利である。
【0072】
さらに、フォームCSIIIは、機械力下で良好な物理的安定性を有する。フォームCSIIIは、原薬の粉砕後に変化しないままである。製造プロセスの間に原薬を粉砕又は微粉砕することがしばしば必要となり、そして良好な物理的安定性は、製造プロセスの間の原薬の減少した結晶化度及び結晶転移の危険性を低減することができる。
【0073】
(2)先行技術と比較して、本開示のフォームCSIIIはより低い吸湿性を有する。試験結果は、フォームCSIIIの重量増加が先行技術の1/6だけであることを示す。80%RHでのフォームCSIIIの重量増加は0.66%であり、フォームCSIIIがわずかに吸湿性であることを示す。先行技術の固体の80%RHでの重量増加は3.69%であり、先行技術が吸湿性であることを示す。
【0074】
一態様において、高い吸湿性は、化学的分解及び多形転移を引き起こす傾向があり、これは原薬の物理的及び化学的安定性に直接影響を及ぼす。さらに、高い吸湿性は、原薬の流動性を減少させ、それにより原薬の加工に影響を及ぼす。
【0075】
別の態様において、高い吸湿性を有する原薬は、製造及び貯蔵の間、低湿度環境を必要とし、これにより製造に厳しい必要条件が課され、そしてより高い費用を強いる。より重要なことには、高い吸湿性は、製剤中の活性薬剤成分の含有量の変動を引き起こす可能性があるため、製剤の品質に影響を及ぼす。
【0076】
より低い吸湿性を有する本開示により提供されるフォームCSIIIは、製造及び貯蔵条件に対する要求が厳しくなく、これにより製造、貯蔵及び品質管理の費用を減少させ、そして強い経済的価値を有する。
【0077】
本開示のフォームCSIV原薬は、以下の予期せぬ利点を有する:
(1)本開示のフォームCSIV原薬は、先行技術よりも良好な安定性を有する。
先行技術の固体の化学純度は、40℃/75%RHの条件下で2か月貯蔵した場合有意に減少し、純度は2.18%減少する。
【0078】
本開示のフォームCSIV原薬の結晶状態は、25℃/60%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも2か月間変化しない。化学純度は99.7%より高く、そして結晶形は貯蔵の間実質的に変化しないままである。これらの結果は、本開示のフォームCSIV原薬が、薬物貯蔵に適した長期の条件下で良好な安定性を有することを示す。
【0079】
一方で、フォームCSIV原薬の結晶状態は、40℃/75%RHの条件下で貯蔵された場合、少なくとも2か月間変化しない。これらの結果は、フォームCSIV原薬が、加速条件下でより良好な安定性を有することを示す。様々な季節、地域気候及び環境などにより引き起こされる高温及び高湿度条件は、原薬及び製剤の貯蔵、輸送及び製造プロセスに影響を及ぼす。従って、加速された条件下での良好な安定性は、薬物開発にとって非常に重要である。フォームCSIV原薬は、加速された条件下で良好な安定性を有し、このことは、結晶転移に起因する薬物品質に対する影響、又は薬物貯蔵の間の純度の減少を避けるために有益である。
【0080】
原薬の良好な物理的及び化学的安定性は、製造及び貯蔵の間に結晶転移が起こらず、かつ実質的に不純物が生成されないということを確実にする。フォームCSIVは、良好な物理的及び化学的安定性を有し、原薬及び製剤の一貫して管理可能な品質を確実にし、結晶転移又は不純物生成により引き起こされる品質変化、バイオアベイラビリティ変化、毒性及び副作用を最小にする。
【0081】
さらに、フォームCSIVの結晶形は、製剤を形成するために賦形剤と混合された後変化せず、フォームCSIV製剤が製造プロセスの間安定であることを示し、このことは薬物の製造のために有利である。
【0082】
さらに、フォームCSIVは、機械力下で良好な物理的安定性を有する。フォームCSIVは、原薬の粉砕後に変化しないままである。製造プロセスの間に原薬を粉砕又は微粉砕することがしばしば必要となり、そして良好な物理的安定性は、製造プロセスの間の原薬の減少した結晶化度及び結晶転移の危険性を低減することができる。
【0083】
(2)先行技術と比較して、本開示のフォームCSIVはより低い吸湿性を有する。試験結果は、フォームCSIVの重量増加が先行技術の1/15だけであることを示す。80%RHでのフォームCSIVの重量増加は0.24%であり、フォームCSIVがわずかに吸湿性であることを示す。先行技術の固体の80%RHでの重量増加は3.69%であり、先行技術が吸湿性であることを示す。
【0084】
一態様において、高い吸湿性は、化学的分解及び多形転移を引き起こす傾向があり、これは原薬の物理的及び化学的安定性に直接影響を及ぼす。さらに、高い吸湿性は、原薬の流動性を減少させ、それにより原薬の加工に影響を及ぼす。
【0085】
別の態様において、高い吸湿性を有する原薬は、製造及び貯蔵の間、低湿度環境を必要とし、これにより製造に厳しい必要条件が課され、そしてより高い費用を強いる。より重要なことには、高い吸湿性は、製剤中の活性薬剤成分の含有量の変動を引き起こす可能性があるため、製剤の品質に影響を及ぼす。
【0086】
より低い吸湿性を有する本開示により提供されるフォームCSIVは、製造及び貯蔵条件に対する要求が厳しくなく、これにより製造、貯蔵及び品質管理の費用を減少させ、そして強い経済的価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1図1はフォームCSIIのXRPDパターンを示す。
図2図2はフォームCSIIのTGA曲線を示す。
図3図3はフォームCSIIのDSC曲線を示す。
図4図4は、フォームCSIIの貯蔵(上から下に:初期、25℃/60%RH(開放パッケージ)で6か月間貯蔵、40℃/75%RH(開放パッケージ)で6か月間貯蔵、60℃/75%RH(開放パッケージ)で1か月間貯蔵)の前及び後のXRPDパターンを重ねたものを示す。
図5図5は、DVS試験(上から下に:初期、最後)の前及び後のフォームCSIIのXRPDパターンを重ねたものを示す。
図6図6はフォームCSIIIのXRPDパターンを示す。
図7図7はフォームCSIIIのTGA曲線を示す。
図8図8はフォームCSIIIのDSC曲線を示す。
図9図9は、フォームCSIIIの貯蔵(上から下に:初期、25℃/60%RH(開放パッケージ)で6か月間貯蔵、40℃/75%RH(開放パッケージ)で6か月間貯蔵、60℃/75%RH(開放パッケージ)で1か月間貯蔵)の前及び後のXRPDパターンを重ねたものを示す。
図10図10は、DVS試験(上から下に:初期、最後)の前及び後のフォームCSIIIのXRPDパターンを重ねたものを示す。
図11図11はフォームCSIVのXRPDパターンを示す。
図12図12はフォームCSIVのXRPDパターンを示す。
図13図13はフォームCSIVのDSC曲線を示す。
図14図14はフォームCSIVのTGA曲線を示す。
図15図15は、フォームCSIVの貯蔵(上から下に:初期、25℃/60%RH(開放パッケージ)で2か月間貯蔵、40℃/75%RH(開放パッケージ)で2か月間貯蔵)の前及び後のXRPDパターンを重ねたものを示す。
図16図16は、DVS試験(上から下に:初期、最後)の前及び後のフォームCSIVのXRPDパターンを重ねたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
詳細な説明
本開示は、本開示の結晶形の製造及び使用を詳細に記載する以下の実施例によりさらに説明される。本開示の範囲から逸脱することなく材料及び方法の変更を達成することができるということは当業者に明らかである。
【0089】
本開示において使用される略語は以下に説明される:
XRPD: 粉末X線回折
DSC: 示差走査熱量測定
TGA: 熱重量分析
DVS: 動的水蒸気吸着測定
H NMR: プロトン核磁気共鳴
RH: 相対湿度
UPLC: 超高速液体クロマトグラフィー
LC: 液体クロマトグラフィー
TEA: トリエチルアミン
【0090】
データ収集のために使用された機器及び方法:
本開示における粉末X線回折パターンは、BrukerのX線粉末回折計により取得された。本開示のX線粉末回折法のパラメーターは以下のとおりである:
X線: Cu、Kα
Kα1(Å):1.54060;Kα2(Å):1.54439
Kα2/Kα1強度比:0.50
【0091】
本開示におけるTGAデータはTA Q500により取得された。本開示のTGA法のパラメーターは以下のとおりである:
加熱速度:10℃/分
パージガス:窒素
【0092】
本開示におけるDSCデータはTA Q2000により取得された。本開示のDSC法のパラメーターは以下のとおりである:
加熱速度:10℃/分
パージガス:窒素
【0093】
DVSは、SMS(Surface Measurement Systems Ltd.)Instrinsic DVS機器により測定された。機器制御ソフトウェアはDVS-Instrinsic制御ソフトウェアであった。DVS法についてのパラメーターは以下のとおりである:
温度:25℃
ガス及び流量:窒素、200mL/分
RH範囲:0%RH~95%RH
H NMRをBruker Avance II DMX 400M HZ NMR分光計から収集した。サンプル1~5mgを秤量し、そして重水素化ジメチルスルホキシド0.5mLに溶解して濃度2~10mg/mLの溶液を得た。
【0094】
本開示における関連する物質をUPLCにより検出し、そしてパラメーターを以下に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
本開示において、上記「撹拌」は、磁気撹拌又は機械式撹拌のようなこの分野における従来の方法を使用することにより達成され、そして撹拌速度は50~1800r/分である。好ましくは、磁気撹拌速度は300~900r/分であり、そして機械式撹拌速度は100~300r/分である。
【0097】
上記「分離」は、遠心分離又はろ過のようなこの分野における従来の方法を使用することにより達成される。「遠心分離」の操作は以下のとおりである:分離しようとするサンプルを遠心分離チューブ中に入れ、次いで固体が全てチューブの底に沈むまで速度10000r/分で遠心する。
【0098】
上記「乾燥」は、真空乾燥、ブラスト乾燥又は風乾のようなこの分野における従来の方法を使用して達成される。乾燥温度は、室温又はそれ以上であり得る。好ましくは、乾燥温度は室温から約60℃、又は50℃、又は40℃までである。乾燥時間は2~48時間、又は終夜であり得る。乾燥は、ドラフト、通風対流式オーブン又は真空オーブンで達成される。
【0099】
上記「室温」は、特定の温度ではないが、10~30℃の温度範囲である。上記「開放パッケージ」は、サンプルをガラスバイアル中に入れて、バイアルをアルミホイルで覆い、そしてホイルに5~10個の穴を開けることである。
【0100】
上記「特性ピーク」は、結晶を識別するために使用される代表的な回折ピークを指し、これらは通常、CuKα放射線を使用して±0.2°の偏差を有し得る。
【0101】
本開示において、「結晶」又は「結晶形」は、本明細書において示されるX線回折パターンにより同定される結晶形又は結晶形態を指す。当業者は、実験誤差が、機器条件、サンプル調製及びサンプルの純度に依存することを理解することができる。X線回折パターンにおける回折ピークの相対強度もまた、実験条件によって変わり得る;従って、回折ピーク強度の順位は唯一の因子とも決定的な因子ともみなすことはできない。実際に、粉末X線回折パターンにおける回折ピークの相対強度は、結晶の好ましい配向に関連し、そして本明細書に示される回折ピーク強度は説明のためのものであり、そして同一の回折ピーク強度は必要ではない。従って、当業者には当然のことながら、本開示の結晶形は、本明細書に示される実施例のX線回折パターンと全く同じX線回折パターンを必ずしも有しているわけではない。そのX線回折パターンが同じか又は類似した特性ピークを有するいずれの結晶形も、本開示の範囲内であるべきである。当業者は、パターンの2つのグループが同じ結晶形を反映しているのか又は異なる結晶形を反映しているのかを同定するために、本開示において示されるパターンを未知の結晶形と比較することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示のフォームCSII、フォームCSIII及びフォームCSIVは、純粋であり、かついずれの他の結晶形も実質的に含まない。本開示において、新規な結晶形を記載するために使用される場合の用語「実質的に含まない」は、新規な結晶形中の他の結晶形の含有量が、20%(質量/質量)未満、詳細には10%(質量/質量)未満、より詳細には5%(質量/質量)未満、そしてさらに詳細には1%未満(質量/質量)であることを意味する。
【0103】
本開示において、重量、時間、温度などのような測定可能な値に言及する場合の用語「約」は、特定された量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0104】
別段の定めがない限り、以下の実施例は室温で行われた。
【0105】
本開示によれば、原料として使用される化合物I及び/又はその塩は、固体(結晶又は無定形)、オイル、液体形態又は溶液である。好ましくは、原料として使用される化合物Iは固体である。
【0106】
以下の実施例において使用される化合物I及び/又はその塩の原料は、先行技術において公知の方法、例えばWO2016196840A1に開示される方法により製造された。
【0107】
実施例1: フォームCSIIの製造
化合物I固体1000.0mgを秤量して20mLガラスバイアル中に入れ、続いてエタノール10.0mLを加えた。50℃、500rpmで約7日間磁気撹拌した後、得られた懸濁液を10日間室温で放置した。次いで、固体を吸引ろ過により単離した。50℃で約3時間真空乾燥し、60℃で約17時間真空乾燥し、75℃で約5時間真空乾燥した後、得られた固体は、XPRDで決定して本開示のフォームCSIIであると確認され、そのXRPDパターンは図1に示されるとおりであり、そしてXRPDデータは表2に記載される。
【0108】
TGA曲線は図2に示されるとおりであり、これは26℃から100℃に加熱された場合に約0.1%の重量減少を示す。
【0109】
DSC曲線は図3に示されるとおりである。これはおよそ131℃(開始温度)に1つの吸熱ピークを示し、これはフォームCSIIの溶融吸熱ピークである。
【0110】
【表2-1】
【表2-2】
【0111】
実施例2:フォームCSIIのNMRキャラクタリゼーション
フォームCSIIのH NMRデータは以下のとおりである: H NMR(400MHz、DMSO) δ 7.76(d、J=5.6Hz、1H)、7.53-7.37(m、4H)、7.22(t、J=10.6、4.2Hz、1H)、7.14(t、4H)、6.97(d、J=5.5Hz、1H)、6.91-6.71(m、1H)、6.14(dd、J=16.8Hz、1H)、5.69(dd、1H)、4.81(s、2H)、4.51(t、J=13.4Hz、1H)、4.15(dd、J=34.1、12.7Hz、2H)、3.76(t、J=12.1Hz、0.5H)、3.16(t、J=12.8Hz、0.5H)、2.83-2.61(m、0.5H)、2.46-2.30(m、1H)、2.03-1.77(m、2H)、1.66-1.45(m、1H)。(化合物Iの構造に従って、ピペリジン環上の1つの水素のピークはδ 3.33-3.76 ppmに現れる。この水素から分裂した0.5Hは、水のピークに近いため水のシグナルに覆われている)。
【0112】
実施例3: フォームCSIIの物理的及び化学的安定性
本開示のフォームCSII及び先行技術の無定形形態を秤量し、そしてそれぞれ25℃/60%RH、40℃/75%RH及び60℃/75%RHの条件下で、開放パッケージで貯蔵した。純度及び固体形態をUPLC及びXRPDにより決定した。結果を表3に記載し、そして安定性評価のために貯蔵の前と後のフォームCSIIの重ねたXRPDパターンを図4に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
これらの結果は、フォームCSIIが25℃/60%RH及び40℃/75%RHの条件下で少なくとも6か月間安定であり、かつ固体形態及び純度が基本的に変化しないままであったことを示し、フォームCSIIが長期及び加速条件下の両方で良好な安定性を有することを示す。60℃/75%RH条件下で1か月の貯蔵後に、固体形態及び純度は基本的に変化しないままであり、フォームCSIIがストレス条件下でも同様に良好な安定性を有することを示す。フォームCSIIの不純物含有量は、安定性試験プロセスを通して認定基準値を超えず、医薬品開発の要件を満たす。25℃/60%RH、40℃/75%RH及び60℃/75%RHでの貯蔵後に、先行技術の無定形形態の純度は有意に減少し、これは医薬品開発の要件を大きく下回る。詳細には、40℃/75%RHで6か月間の貯蔵後に、純度は3.46%減少し、そして認定基準値を超える不純物の数は4に増加した。60℃/75%RHで1か月のみの貯蔵後に、純度は6.3%超減少し、そして認定基準値を超える不純物の数は4に増加した。これらの結果は、本開示のフォームCSIIが先行技術の無定形形態と比較した場合に優れた化学的安定性を有することを示す。
【0115】
実施例4:高温でのフォームCSIIの安定性
特定の量の本開示のフォームCSII及び先行技術の無定形形態を秤量し、そして80℃で2日間貯蔵し、そして貯蔵の前及び後の固体の純度をUPLCにより決定し、結果を表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
これらの結果は、フォームCSIIの化学純度が2日間80℃で基本的に変化しないままであったが、一方で無定形形態の有意な分解が同じ条件下で観察されたということを示す。本開示のフォームCSIIは、先行技術の無定形形態と比較して高温で優れた安定性を有する。
【0118】
実施例5: フォームCSIIの光安定性
特定の量の本開示のフォームCSII及び先行技術の無定形形態を秤量し、そして中国薬局方の方法に従って、光源の総照度が1.2×106lux-hr以上であり、かつ近紫外ランプのエネルギーが200W-hr/m以上である条件下で、約1週間貯蔵し、貯蔵の前及び後の固体の純度をUPLCにより測定し、そして結果を表5に示す。
【0119】
【表5】
【0120】
これらの結果は、フォームCSIIの化学純度が上記の光条件下で基本的に変化しないままであったが、一方で無定形形態の有意な分解が同じ条件下で観察されたということを示す。本開示のフォームCSIIは、先行技術の無定形形態と比較して優れた光安定性を有する。
【0121】
実施例6: フォームCSIIの吸湿性
特定の量の本開示のフォームCSII及び先行技術の無定形形態を、DVS機器を使用した吸湿性試験のためにサンプリングした。各相対湿度での重量変化を、25℃で0%RH-95%RH-0%RHのサイクルの間記録した。
【0122】
結果を表6に記載し、そしてDVS試験の前と後のフォームCSIIの重ねたXRPDパターンを図5に示す。
【0123】
【表6】
【0124】
これらの結果は、フォームCSIIが80%RHで0.60%の重量増加というわずかな吸湿性であったが、一方で先行技術の固体は80%RHで3.69%の重量増加で吸湿性であったことを示す。フォームCSIIの吸湿性は、先行技術の固体の吸湿性より優れている。さらに、フォームCSIIの結晶状態はDVS試験の後変化しないままであり、フォームCSIIが良好な安定性を有することを示す。
【0125】
吸湿性の説明及び定義(中国薬局方の2020年版における通則9103 薬物吸湿性試験ガイドライン、実験条件: 25±1℃、80±2%RH):
潮解性: 溶液を形成するために十分な水が吸収される。
非常に吸湿性: 15.0パーセントに等しいか又は15.0パーセントより大きい質量増加。
吸湿性: 15.0パーセント未満であるが2.0パーセントに等しいか又は2.0パーセントより大きい質量増加。
わずかに吸湿性: 2.0パーセント未満であるが0.2パーセントに等しいか又は2.0パーセントより大きい質量増加。
非吸湿性又はほとんど非吸湿性: 0.2パーセント未満の質量増加。
(欧州薬局方の第10版の5.11における吸湿性の定義は中国薬局方と同様である)。
【0126】
実施例7: フォームCSIIの粉砕安定性
フォームCSIIを、乳鉢で5分間手動で粉砕した。粉砕の前及び後にXRPDを調べた。結果は、フォームCSIIの結晶状態が粉砕後に変化しないままであることを示し、フォームCSIIが良好な粉砕安定性を有することを示した。
【0127】
実施例8: フォームCSIIを含む製剤の製造
表7及び表8における配合及びプロセスに従って、適切な量の本開示のフォームCSIIを用いて錠剤を製造した。XRPDを製剤化の前及び後に試験した。結果は、フォームCSIIの結晶状態が製剤化プロセスの後に変化しないままであることを示す。
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
実施例9: フォームCSIIIの製造
化合物Iの固体491.9mgを秤量して20mLガラスバイアル中に入れ、続いてアセトン5mLを加えた。得られた懸濁液を室温で約15分間撹拌し、次いでアセトン3mLを加えた。約4日間5℃で撹拌した後、固体を単離した。50℃で約20時間真空乾燥した後、得られた固体を、XRPDにより決定して、本開示のフォームCSIIIと確認し、これについてXRPDパターンは図6に示されるとおりであり、そしてXRPDデータは表9に記載される。
【0131】
TGA曲線は図7に示されるとおりであり、これは26℃から100℃に加熱された場合に約0.5%の重量減少を示す。
【0132】
DSC曲線は図8に示されるとおりである。これはおよそ133℃(開始温度)に1つの吸熱ピークを示し、これはフォームCSIIIの溶融吸熱ピークである。
【0133】
【表9-1】
【表9-2】
【0134】
実施例10: フォームCSIIIのNMRキャラクタリゼーション
フォームCSIIIのH NMRデータは以下のとおりである: H NMR(400MHz、DMSO) δ 7.76(d、J=5.6Hz、1H)、7.52-7.36(m、4H)、7.21(t、1H)、7.14(t、4H)、6.97(d、J=5.5Hz、1H)、6.90-6.72(m、1H)、6.14(dd、J=17.0Hz、1H)、5.69(dd、J=13.6Hz、1H)、4.81(s、2H)、4.51(t、J=13.5Hz、1H)、4.14(dd、J=33.1、14.1Hz、2H)、3.76(t、J=12.1Hz、0.5H)、3.16(t、J=12.6Hz、0.5H)、2.82-2.59(m、0.5H)、2.44-2.28(m、1H)、2.11-1.75(m、2H)、1.68-1.37(m、1H)。(化合物Iの構造に従って、ピペリジン環上の1つの水素のピークはδ 3.33-3.76ppmに現れる。この水素から分裂した0.5Hは、水のピークに近いために水のシグナルに覆われる)。
【0135】
実施例11: フォームCSIIIの物理的及び化学的安定性
本開示のフォームCSIII及び先行技術の無定形形態を、秤量してそれぞれ25℃/60%RH、40℃/75%RH及び60℃/75%RHの条件下で開放パッケージにおいて貯蔵した。純度及び固体形態をUPLC及びXRPDにより決定した。結果を表10に記載し、そして安定性評価のために貯蔵の前及び後のフォームCSIIIの重ねたXRPDパターンを図9に示す。
【0136】
【表10】
【0137】
これらの結果は、フォームCSIIIが25℃/60%RH及び40℃/75%RHの条件下で少なくとも6か月安定であり、かつ固体形態及び純度が基本的に変化しないままであったことを示し、フォームCSIIIが長期及び加速の両方の条件下で良好な安定性を有することを示す。60℃/75%RHの条件下で1か月間貯蔵した後、固体形態及び純度は基本的に変化しないままであり、フォームCSIIIがストレス条件下でも同様に良好な安定性を有することを示す。フォームCSIIIの不純物含有量は、安定性試験プロセスの間中、認定基準値を超えず、これは医薬品開発の要件を満たす。25℃/60%RH、40℃/75%RH及び60℃/75%RHでの貯蔵後に、先行技術の無定形形態の純度は有意に減少し、医薬品開発の要件を大きく下回った。詳細には、40℃/75%RHで6か月間の貯蔵後に、純度は3.46%減少し、そして認定基準値を超える不純物の数は4に増加した。60℃/75%RHで1か月間のみの貯蔵後に、純度は6.3%超減少し、そして認定基準値を超える不純物の数は4に増加した。これらの結果は、本開示のフォームCSIIIが、先行技術の無定形形態と比較した場合に優れた化学的安定性を有することを示す。
【0138】
実施例12: 高温でのフォームCSIIIの安定性
特定の量の本開示のフォームCSIII及び先行技術の無定形形態を、秤量して80℃で2日間貯蔵し、そして貯蔵の前及び後の固体の純度をUPLCにより決定し、結果を表11に示す。
【0139】
【表11】
【0140】
これらの結果は、フォームCSIIIの化学純度が80℃で2日間基本的に変化しないままであるが、一方で無定形形態の有意な分解が同じ条件下で観察されたことを示す。本開示のフォームCSIIIは、先行技術の無定形形態と比較して高温で優れた安定性を有する。
【0141】
実施例13: フォームCSIIIの光安定性
特定の量の本開示のフォームCSIII及び先行技術の無定形形態を秤量し、そして中国薬局方の方法に従って、光源の総照度が1.2×10lux-hr以上であり、かつ近紫外ランプのエネルギーが200W-hr/m以上である条件下で約1週間貯蔵して、貯蔵の前及び後の固体の純度をUPLCにより測定し、そして結果を表12に示す。
【0142】
【表12】
【0143】
これらの結果は、フォームCSIIIの化学純度が、上記の光条件下で基本的に変化しないままであるが、一方で無定形形態の有意な分解が同じ条件下で観察されたことを示す。本開示のフォームCSIIIは、先行技術の無定形形態と比較して優れた光安定性を有する。
【0144】
実施例14: フォームCSIIIの吸湿性
特定の量の本開示のフォームCSIII及び先行技術の無定形形態を、DVS機器を使用した吸湿性試験のためにサンプリングした。各相対湿度での重量変化を、25℃で0%RH-95%RH-0%RHのサイクルの間記録した。結果を表13に記載し、そしてDVS試験の前及び後のフォームCSIIIの重ねたXRPDパターンを図10に示す。
【0145】
【表13】
【0146】
これらの結果は、フォームCSIIIは80%RHで0.66%の重量増加があり、わずかに吸湿性であったが、一方で先行技術の固体は80%RHで3.69%の重量増加であり、吸湿性であったことを示す。フォームCSIIIの吸湿性は先行技術より優れていた。さらに、フォームCSIIIの結晶状態はDVS試験後に変化しないままであり、フォームCSIIIが良好な安定性を有することを示す。
【0147】
実施例15: フォームCSIII製剤の粉砕安定性
フォームCSIIIを、乳鉢で5分間手動で粉砕した。粉砕の前及び後にXRPDを調べた。結果は、フォームCSIIIの結晶状態が粉砕後に変化しないままであることを示し、フォームCSIIIが良好な粉砕安定性を有することを示した。
【0148】
実施例16: フォームCSIIIを含む製剤の製造
表7及び表8における配合及びプロセスに従って、適切な量の本開示のフォームCSIIIを用いて錠剤を製造した。XRPDを製剤化の前及び後に試験した。結果は、フォームCSIIIの結晶状態が製剤化プロセスの後に変化しないままであることを示す。
【0149】
実施例17: フォームCSIVの製造
化合物Iの固体11.0mgを秤量してガラスバイアル中に入れ、続いてメチルtert-ブチルエーテル0.08mLを加えて懸濁液を形成した。この懸濁液を-20℃で約23時間撹拌し、次いで固体の一部を単離した。得られた固体は、XRPDにより決定して、本開示のフォームCSIVであると確認された。次いで、さらにメチルtert-ブチルエーテル0.08mLをバイアル中に加えた。室温で約2日間撹拌した後、固体を単離した。得られた固体をXRPDにより決定して本開示のフォームCSIVであると確認し、これについてのXRPDパターンを図11に示し、そしてXRPDデータを表14に記載する。
【0150】
【表14-1】
【表14-2】
【0151】
実施例18: フォームCSIVの製造
化合物Iの固体300.0mgを秤量し、ガラスバイアル中に入れて、続いてイソプロピルベンゼン4.5mLを加えた。-20℃で約39時間撹拌した後、固体をろ過により単離した。22時間50℃で真空乾燥した後、得られた固体をXRPDにより決定して、本開示のフォームCSIVであると確認し、これについてのXRPDパターンを図12に示し、そしてXRPDデータを表15に記載する。
【0152】
DSC曲線は図13に示されるとおりである。これはおよそ144℃(開始温度)に1つの吸熱ピークを示し、これはフォームCSIVの溶融吸熱ピークである。
【0153】
フォームCSIVのH NMRデータは以下のとおりである: H NMR(400MHz、DMSO) δ 7.76(d、J=5.6Hz、1H)、7.53-7.39(m、4H)、7.22(t、J=7.4Hz、1H)、7.14(t、J=7.7Hz、4H)、6.97(d、J=5.5Hz、1H)、6.92-6.74(m、1H)、6.14(dd、1H)、5.69(dd、1H)、4.82(s、2H)、4.52(t、J=11.8Hz、1H)、4.15(dd、J=33.2、12.0Hz、2H)、3.78(t、J=12.8Hz、0.5H)、3.16(t、J=12.6Hz、0.5H)、2.79-2.63(m、0.5H)、2.40-2.25(m、1H)、2.07-1.76(m、2H)、1.68-1.40(m、1H)。(化合物Iの構造に従って、ピペリジン環上の1つの水素のピークはδ 3.33-3.76ppmに現れる。この水素から分裂した0.5Hは、水のピークに近いために水のシグナルに覆われる)。
【0154】
【表15-1】
【表15-2】
【0155】
実施例19: フォームCSIVのTGA試験
特定の量のフォームCSIVをTGA試験のためにサンプリングした。TGAの結果を図14に示し、これは29℃から120℃まで加熱された場合に重量減少約0.2%を示す。
【0156】
実施例20: フォームCSIVの物理的及び化学的安定性
本開示のフォームCSIV及び先行技術の無定形形態を秤量し、そしてそれぞれ25℃/60%RH及び40℃/75%RHの条件下で、開放パッケージにおいて貯蔵した。純度及び固体形態をUPLC及びXRPDにより決定した。結果を表16に記載し、そして安定性評価のために貯蔵の前及び後のフォームCSIVの重ねたXRPDパターンを図15に示す。
【0157】
【表16】
【0158】
結果は、フォームCSIVが、25℃/60%RH及び40℃/75%RHの条件下で少なくとも2か月間安定であり、そして固体形態及び純度が基本的に変化しないままであったことを示し、フォームCSIVが長期及び加速の両方の条件下で良好な安定性を有することを示す。40℃/75%RHでの貯蔵後に、先行技術の固体の純度は有意に減少し、純度は2.18%減少した。これらの結果は、本開示のフォームCSIVが、先行技術の無定形形態と比較した場合に優れた化学安定性を有するということを示す。
【0159】
実施例21: 高温でのフォームCSIVの安定性
特定の量の本開示のフォームCSIV及び先行技術の無定形形態を、80℃で2日間貯蔵し、そして貯蔵の前及び後の固体の純度をUPLCにより決定し、結果を表17に示す。
【0160】
【表17】
【0161】
これらの結果は、フォームCSIVの化学純度が80℃で2日間基本的に変化しないままであったが、一方で無定形形態の有意な分解が同じ条件下で観察されたことを示す。本開示のフォームCSIVは、先行技術の無定形形態と比較して高温で優れた安定性を有する。
【0162】
実施例22: フォームCSIVの光安定性
特定の量の本開示のフォームCSIV及び先行技術の無定形形態を秤量し、そして中国薬局方の方法に従って、光源の総照度が1.2×10lux-hr以上であり、かつ近紫外ランプのエネルギーが200W-hr/m以上である条件下で約1週間貯蔵して、貯蔵の前及び後の固体の純度をUPLCにより測定し、そして結果を表18に示す。
【0163】
【表18】
【0164】
これらの結果は、フォームCSIVの化学純度が上記の光条件下で基本的に変化しないままであったが、一方で無定形形態の有意な分解が同じ条件で観察されたということを示す。本開示のフォームCSIVは、先行技術の無定形形態と比較して優れた光安定性を有する。
【0165】
実施例23: フォームCSIVの吸湿性
特定の量の本開示のフォームCSIV及び先行技術の無定形形態を、DVS機器を使用した吸湿性試験のためにサンプリングした。各相対湿度での重量変化を、25℃で0%RH-95%RH-0%RHのサイクルの間記録した。これらの結果を表19に記載し、そしてDVS試験の前及び後のフォームCSIVの重ねたXRPDパターンを図16に示す。
【0166】
【表19】
【0167】
これらの結果は、フォームCSIVは80%RHで0.24%の重量増加であり、わずかに吸湿性であったが、一方で先行技術の固体は80%RHで3.69%の重量増加であり、吸湿性であったことを示す。フォームCSIVの吸湿性は先行技術より優れている。さらに、フォームCSIVの結晶状態はDVS試験後に変化しないままであり、フォームCSIVが良好な安定性を有することを示す。
【0168】
実施例24: フォームCSIVの粉砕安定性
フォームCSIVを、乳鉢で5分間手動で粉砕した。粉砕の前及び後にXRPDを調べた。結果は、フォームCSIVの結晶状態が粉砕後に変化しないままであったことを示し、フォームCSIVが良好な粉砕安定性を有することを示した。
【0169】
実施例25: フォームCSIVを含む製剤の製造
表7及び表8における配合及びプロセスに従って、適切な量の本開示のフォームCSIVを用いて錠剤を製造した。XRPDを製剤化の前及び後に試験した。結果は、フォームCSIVの結晶状態が製剤化プロセスの後に変化しないままであることを示す。
【0170】
上に記載される実施例は、本開示の技術的概念及び特徴を説明するためだけのものであり、かつ当業者が本開示を理解し、そしてそれにより実行することができるようにすることを意図され、そして本開示の保護する範囲を限定すると結論づけられるべきではない。本開示の精神に従う等価な変形又は改変は、本開示の保護する範囲に包含されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
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【国際調査報告】