(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】放射性免疫複合体とチェックポイント阻害剤併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/10 20060101AFI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240524BHJP
A61K 103/40 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
A61K51/10 100
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P37/04
A61K47/68
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
A61K103:40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575836
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022033058
(87)【国際公開番号】W WO2022261467
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519210572
【氏名又は名称】フュージョン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Fusion Pharmaceuticals Inc.
【住所又は居所原語表記】270 Longwood Road South Hamilton,Ontario L8P 0A6,Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブラク, エリック スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】メトカーフ, ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】グリンシュタイン, ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】フー, メイドゥオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリアント, ジョン フィツモーリス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA12
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
放射性免疫複合体および1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤を投与することを含む併用療法。本開示は、チェックポイントタンパク質の阻害を、がん細胞への損傷を標的とする治療と組み合わせると、有効性が改善された、より毒性の低い治療法を提供できる可能性があるという洞察を包含する。放射性崩壊は、細胞を構成する生体分子に直接的な物理的損傷(一本鎖または二本鎖DNAの切断など)または間接的な損傷(バイスタンダー効果またはクロスファイア効果など)を引き起こす可能性がある。本開示は、がん細胞を標的とする放射性免疫複合体をチェックポイント阻害と組み合わせて、腫瘍に対する免疫応答を誘発または改善する。一部の実施形態では、開示される併用療法は、がんを好転させるかまたは処置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する患者を処置する方法であって、
(i)前記患者に[
225Ac]放射性免疫複合体を投与するステップであって、前記患者が、1もしくはそれを超えるチェックポイント阻害剤を受けたことがあるか、もしくは受けている、ステップ、
(ii)前記患者に1もしくはそれを超えるチェックポイント阻害剤を投与するステップであって、前記患者が[
225Ac]-放射性免疫複合体を受けたことがあるか、もしくは受けている、ステップ、または
(iii)1もしくはそれを超えるチェックポイント阻害剤と組み合わせて、[
225Ac]放射性免疫複合体を前記患者に投与するステップ、を含み、
前記[
225Ac]-放射性免疫複合体が、式:A-L
1-X-L
2-Z-B
を有する化合物でキレート化された
225Acを含み、式中、
Aは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α,α’,α”,α”’-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミド-メチレンホスホン酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、およびHP-DO3A(10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸)からなる群より選択されるキレート部分であり、
L
1は、結合、または必要に応じて置換されたC
1~6アルキルもしくはC
1~6ヘテロアルキルであり、
Xは、-C(O)NR
1-*、-NR
1C(O)-*、-OC(O)NR
1-*、-NR
1C(O)O-*、-NR
1C(O)NR
1-、-CH
2-Ph-C(O)NR
1-*、-NR
1C(O)-Ph-CH
2-*、-O-、または-NR
1-であり、ここで、「*」は、L
2との結合点を示し、各R
1は、独立して、水素またはC
1~6アルキルであり、
L
2は、必要に応じて置換されたC
1~50アルキルまたはC
1~50ヘテロアルキルであり、
Zは、-C(O)-、-CH
2-、-OC(O)-#、-C(O)O-#、-NR
2C(O)-#、-C(O)NR
2-#、または-NR
2-であり、ここで、「#」は、Bとの結合点を示し、各R
2は、独立して、水素またはC
1~6アルキルであり、
Bは標的化部分であり、
前記[
225Ac]-放射性免疫複合体を、前記患者の体重1kg当たり10kBq~400kBqの線量で前記患者に投与するか、または1~30MBqの単位投与量として前記患者に投与する、方法。
【請求項2】
前記患者に、[
225Ac]-放射性免疫複合体を投与するステップを含み、前記患者が、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤を受けたことがある、または受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤と組み合わせて[
225Ac]放射性免疫複合体を前記患者に投与するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キレート部分が、DOTAである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、式I:
【化34】
で表される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、式II:
【化35】
表される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的化部分が、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Bが、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、エンドシアリン(TEM-1)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)抗体もしくはその抗原結合フラグメントである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Bが、フィギツムマブ、シクスツムマブ、TAB-199、AVE1642、BIIB002、ロバツムマブ、およびテプロツムマブ、ならびにそれらの抗原結合フラグメントからなる群より選択されるIGF-1R抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Bが、AVE1642またはその抗原結合フラグメントである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記[
225Ac]-放射性免疫複合体を、前記患者の体重1kg当たり約10kBq~約200kBqの線量で投与する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記[
225Ac]-放射性免疫複合体を、前記患者の体重1kg当たり約30kBq~約120kBqの線量で投与する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤とCTLA-4阻害剤の両方を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PD-1阻害剤または前記CTLA-4阻害剤が、抗体である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤を、より低い有効用量で投与する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記[
225Ac]放射性免疫複合体を、より低い有効線量で投与する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤が、約5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与されるPD-1阻害剤を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記PD-1阻害剤が、ペンブロリズマブである、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤が、それぞれ約5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与されるPD-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤の両方を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
Bが、AVE1642またはその抗原結合フラグメントであり、前記1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤が、ペンブロリズマブであるPD-1阻害剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記[
225Ac]放射性免疫複合体を、前記患者の体重1kg当たり約30kBq~約120kBq/kgの線量で投与し、前記PD-1阻害剤を、約5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、乳がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肉腫、副腎皮質癌、神経内分泌がん、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫および急性骨髄性白血病からなる群より選択されるがんを有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、IGF-1Rを発現する固形腫瘍を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
Bが、腫瘍関連抗原に結合することができ、前記投与が、前記腫瘍関連抗原に特異的なCD8+T細胞の増加をもたらす、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記投与するステップが、前記患者由来の試料中の総CD8+T細胞集団の少なくとも60%が前記腫瘍関連抗原に特異的であることをもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記試料が、腫瘍試料である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年6月11日に出願された米国仮特許出願第63/209,736号の優先権を主張し、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(2022年6月10日に「FPI_021_Sequence_Listing.txt」という名称のtxtファイルとして電子的に提出)を参照する。txtファイルは2022年6月9日に生成されたものであり、サイズは19.2キロバイトである。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
がん細胞は、T細胞の活性化の抑制をはじめとする多様な機構を用いて免疫監視を回避している。
【0004】
哺乳動物の免疫系は、正常細胞と外来細胞の区別をチェックポイント分子に頼っている。特定の免疫細胞に発現するチェックポイント分子は、免疫応答を開始するために活性化または不活性化される必要がある。チェックポイントタンパク質を阻害することにより、免疫システムの活性化が促進される。
【0005】
チェックポイント阻害は、がんの免疫療法の一方法として検討されている。チェックポイントタンパク質を阻害することにより、T細胞が活性化し、T細胞にがん細胞を攻撃させることができる。しかし、チェックポイント阻害は体内の一部の正常細胞を免疫系に攻撃させる可能性があり、それは重篤な副作用を引き起こし得る。さらに、一部のチェックポイント阻害剤は、臨床では中程度の効果しか示さない。がんの処置の改善が依然として必要とされている。特に、患者の毒性を増加させない有効性の向上が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、チェックポイントタンパク質の阻害を、がん細胞への損傷を標的とする治療と組み合わせると、有効性が改善された、より毒性の低い治療法を提供できる可能性があるという洞察を包含する。放射性崩壊は、細胞を構成する生体分子に直接的な物理的損傷(一本鎖または二本鎖DNAの切断など)または間接的な損傷(バイスタンダー効果またはクロスファイア効果など)を引き起こす可能性がある。本開示は、がん細胞を標的とする放射性免疫複合体をチェックポイント阻害と組み合わせて、腫瘍に対する免疫応答を誘発または改善する。一部の実施形態では、開示される併用療法は、がんを好転させる(ameliorate)かまたは処置する。
【0007】
一態様では、がんを有する患者を処置する方法を提供し、当該方法は、式:A-L1-X-L2-Z-B(式中、Aは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α,α’,α”,α”’-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミド-メチレンホスホン酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7三酢酸)、およびHP-DO3A(ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸)から選択されるキレート部分であり、
L1は、必要に応じて置換されたC1~6アルキルまたはC1~6ヘテロアルキルであり、
Xは、C=O(NR1)、NR1C=O(O)、NR1C=O(NR1)、CH2PhC=O(NR1)、O、またはNR1であり、各R1は、独立して、HまたはC1~6アルキルであり、
L2は、必要に応じて置換されたC1~50アルキルまたはC1~50ヘテロアルキルであり、
Zは、C=O、CH2、OC=O、NR2C=O、またはNR2であり、各R2は、独立して、HまたはC1~6アルキルであり、
Bは、標的化部分である)を有する化合物でキレート化された225Acを含む治療有効量の[225Ac]-放射性免疫複合体を患者に投与することを含み、
患者は、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤を受けたことがあるか、または受けており、[225Ac]放射性免疫複合体は、当該患者の体重1kgあたり約10kBq~約400kBqの線量で投与されるか、または当該患者に約1~30MBqの単位投与量として投与される。
【0008】
一部の実施形態では、上記化合物は、DOTAであるキレート部分を有する。
【0009】
一部の実施形態では、化合物は、式I:
【化1】
を有する。
【0010】
一部の実施形態では、化合物は、式II:
【化2】
を有する。
【0011】
一部の実施形態では、標的化部分は、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0012】
一部の実施形態では、Bは、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、エンドシアリン(TEM-1)抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)抗体もしくはその抗原結合フラグメントである。
【0013】
一部の実施形態では、Bは、フィギツムマブ、シクスツムマブ、TAB-199、AVE1642、BIIB002、ロバツムマブ、およびテプロツムマブ、ならびにそれらの抗原結合フラグメントからなる群より選択されるIGF-1R抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0014】
一部の実施形態では、Bは、AVE1642またはその抗原結合フラグメントである。
【0015】
一部の実施形態では、[225Ac]-放射性免疫複合体を、当該患者の体重1kgあたり約10kBq~約200kBq(例えば、約10kBq~約150kBq/kg、約10kBq~約120kBq/kg、約10kBq~約100kBq/kg、約30kBq~約150kBq/kg、約30kBq~約120kBq/kg、約30kBq~約100kBq/kg、約40kBq~約120kBq/kg、約40kBq~約100kBq/kg、または約40kBq~約80kBq/kg)の線量で投与する。
【0016】
一部の実施形態では、[225Ac]-放射性免疫複合体を、約1~30MBq(例えば、約2~25MBq、約3~20MBq、約5~15MBq、約8~12MBq、または約10MBq)の単位投与量として当該患者に投与する。
【0017】
一部の実施形態では、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、CTLA-4阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
一部の実施形態では、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤とCTLA-4阻害剤の両方を含む。
【0019】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤またはCTLA-4阻害剤は、抗体である。
【0020】
一部の実施形態では、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤は、約5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与されるPD-1阻害剤を含む。
【0021】
一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、ペンブロリズマブである。
【0022】
一部の実施形態では、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤とCTLA-4阻害剤の両方を含み、それぞれ約5mg/kg~約15mg/kg(例えば、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、または約14mg/kg)の用量で投与される。
【0023】
一部の実施形態では、Bは、AVE1642またはその抗原結合フラグメントであり、1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブであるPD-1阻害剤を含む。
【0024】
一部の実施形態では、[225Ac]放射性免疫複合体を、当該患者の体重1kg当たり約30kBq~約120kBq/kgの線量で投与し、PD-1阻害剤を、約5mg/kg~約15mg/kgの用量で投与する。
【0025】
一部の実施形態では、患者は、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がんまたはTNBC)、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肉腫、副腎皮質癌、神経内分泌がん、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫および急性骨髄性白血病からなる群より選択されるがんを有する。
【0026】
一部の実施形態では、患者は、IGF-1Rを発現する固形腫瘍を有する。
【0027】
一部の実施形態では、Bは、腫瘍関連抗原に結合することができ、当該投与は、腫瘍関連抗原に特異的なCD8+T細胞の増加をもたらす。
【0028】
一部の実施形態では、投与は、患者由来の試料中の総CD8+T細胞集団の少なくとも60%が腫瘍関連抗原に特異的であることをもたらす。一部の実施形態では、試料は腫瘍試料である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、種々のチェックポイント阻害剤による処置後のCT26同系マウス腫瘍モデルにおける相対的腫瘍体積を示す。処置開始後の様々な時点における相対的腫瘍体積が、ビヒクル対照、抗PD-1アイソタイプ対照(15mg/kg)、抗PD-1(5mg/kgまたは15mg/kg)、抗CTLA-4アイソタイプ対照(15mg/kg)および抗CTLA-4(5mg/kgまたは15mg/kg)処置群について示される。
【0030】
【
図2】
図2は、CT-26同系マウス腫瘍モデルにおける[
177Lu]-化合物Bの体内分布を示す。4時間、24時間、48時間、96時間および168時間での血液、骨、腸、腎臓および副腎、肝臓および胆嚢、肺、脾臓、腫瘍、ならびに尿および膀胱におけるグラム当たりの注射線量(%ID)のパーセンテージを示す。
【0031】
【
図3】
図3は、免疫応答性マウス対免疫不全マウスにおける[
225Ac]-化合物Cの増強された有効性を示す。処置開始後の様々な時点での相対的腫瘍体積を対照群および処置群(50nCiまたは400nCi[
225Ac]-化合物C)について示す。
【0032】
【
図4-1】
図4Aは、CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物Cとα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果を示す。処置開始後の様々な時点での相対的腫瘍体積を、対照(緩衝液)および処置群(抗CTLA-4(5mg/kg)、抗PD-1(5mg/kg)、200nCi[
225Ac]-化合物C、抗CTLA-4を伴う200nCi[
225Ac]-化合物C、抗PD-1を伴う200nCi[
225Ac]-化合物C、または抗CTLA-4および抗PD-1を伴う200nCi[
225Ac]-化合物C)について示す。
【0033】
【
図4-2】
図4Bは、CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物Dとα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果を示す。処置開始後の様々な時点での相対的腫瘍体積を、対照(ビヒクルまたはコールドなヒトIGF-1R抗体)および処置群(抗CTLA-4(5mg/kg)、抗PD-1(5mg/kg)、200nCi[
225Ac]-化合物C、抗CTLA-4を伴う200nCi[
225Ac]-化合物C、抗PD-1を伴う200nCi[
225Ac]-化合物C、または抗CTLA-4および抗PD-1を伴う200nCi[
225Ac]-化合物C)について示す。
【0034】
【
図5】
図5は、CT26再チャレンジ時の[
225Ac]-化合物C処置マウスにおける防御免疫の発生を示す。再チャレンジ後の様々な時点における相対的腫瘍体積が、対照群および処置群について示される([
225Ac]-化合物C、抗PD-1を伴う[
225Ac]-化合物C、抗CTLA-4を伴う[
225Ac]-化合物C、または抗CTLA-4および抗PD-1を伴う[
225Ac]-化合物C)。
【0035】
【
図6】
図6は、[
225Ac]-化合物C処置後のサイトカイン応答およびT細胞動員を評価するためのプロセスを示す。
【0036】
【
図7】
図7は、「ヒト化」IGF-1 Rモデルの開発を示す。ヒトIGF-1Rプラスミドで安定にトランスフェクトしたCT26細胞由来の試料におけるhIGF-1Rの発現についてプローブしたウエスタンブロットを示す。
【0037】
【0038】
【
図8】
図8Aは、キレート、リンカー、および架橋基を含む二官能性キレートの一般構造を示す概略図である。
図8Bは、キレート、リンカー、および標的化部分を含む二官能性コンジュゲートの一般構造を示す概略図である。
【0039】
【
図9-1】
図9Aは、CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物D1とα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果を示す。処置開始後の様々な時点での相対的腫瘍体積を、対照(ビヒクル)および処置群(200nCi[
225Ac]-化合物D1、200nCi[
225Ac]-化合物D1と抗PD-1、200nCi[
225Ac]-化合物D1と抗CTLA-4、または200nCi[
225Ac]-化合物Cと抗CTLA-4および抗PD-1)について示す。
【0040】
【
図9-2】
図9Bは、CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物D2とα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果を示す。処置開始後の様々な時点での相対的腫瘍体積を、対照(ビヒクル)および処置群(200nCi[
225Ac]-化合物D2、200nCi[
225Ac]-化合物D2と抗PD-1、200nCi[
225Ac]-化合物D2と抗CTLA-4、または200nCi[
225Ac]-化合物D2と抗CTLA-4および抗PD-1)について示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面は必ずしも一定の拡大縮小比で描かれているわけではなく、図面内のオブジェクトが必ずしも互いの関係において一定の拡大縮小比で描かれているわけでもないことを理解されたい。図面は、本明細書に開示される装置、システム、および方法のさまざまな実施形態を明確にし、理解することを意図する描写である。可能な限り、同じまたは類似の部品を指すために、同じ参照番号が図面全体にわたって使用される。さらに、図面は、いかなる方法によっても、本教示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0042】
詳細な説明
本開示は、[225Ac]放射性免疫複合体およびチェックポイント阻害剤を使用してがんに対する免疫応答を誘導または改善するための併用療法に関する。一部の実施形態では、本明細書中に開示される方法の使用は、がんの処置または改善をもたらす。
【0043】
一部の実施形態では、より低い有効線量の[225Ac]放射性免疫複合体および/またはチェックポイント阻害剤が使用される。
【0044】
放射性標識された標的化部分(放射性免疫複合体としても知られている)は、疾患状態で上方制御されるおよび/または疾患細胞(例えば、腫瘍細胞)に特異的なタンパク質または受容体を標的化して、目的の細胞を損傷および死滅させるために放射性ペイロードを送達するように設計されている。本明細書で使用される場合、「放射性免疫療法」は、治療効果をもたらすために、以下に記載されるものなどの放射性免疫複合体を使用する方法を指す。ペイロードの放射性崩壊は、DNAへの直接的な影響(一本鎖もしくは二本鎖DNA切断など)またはバイスタンダーもしくはクロスファイヤ効果などの間接的な影響を引き起こし得るアルファ、ベータ、もしくはガンマ粒子またはオージェ電子を生成する。
【0045】
放射性免疫複合体は、典型的には、標的化部分(例えば、腫瘍上または腫瘍によって発現される分子、例えば、IGF-1R、FGFR3またはTEM-1/エンドシアリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、ペプチドまたは小分子)、キレート部分またはキレート部分の金属錯体(例えば、放射性同位体を含む)、およびリンカーを含有する。コンジュゲートは、標的親和性を維持しながら構造変化が最小限になるように、二官能性キレートを標的化分子に付加することによって形成され得る。放射性免疫複合体は、そのようなコンジュゲートを放射性標識することによって形成され得る。
【0046】
二官能性キレートは、構造的に、キレート、リンカー、および架橋基を含む。二官能性キレートのいくつかの例は、標的化された部分にコンジュゲーションした様々な環状および非環状構造を用いて記載されている[Bioconjugate Chem.2000,11,510-519、Bioconjugate Chem.2012,23,1029-1039、Mol Imaging Biol.2011,13,215-221、Bioconjugate Chem.2002,13,110-115]。
定義
化学用語
【0047】
定義
化学用語:
本明細書において使用される「アシル」という用語は、本明細書において定義されるようにカルボニル基を通じて親分子基に結合されている、本明細書において定義される水素またはアルキル基(例えば、ハロアルキル基)を表し、ホルミル(すなわち、カルボキシアルデヒド基)、アセチル、トリフルオロアセチル、プロピオニル、ブタノイルなどに例示される。例示的な非置換アシル基は、1~7、1~11、または1~21個の炭素を含む。一部の実施形態では、アルキル基は、本明細書に記載される1、2、3または4つの置換基でさらに置換される。
【0048】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、特に記載のない限り、1~20個の炭素(例えば、1~10個または1~6個)の直鎖および分枝鎖飽和基の両方を含む。アルキル基は、メチル、エチル、n-およびiso-プロピル、n-、sec-、iso-およびtert-ブチル、ネオペンチルなどにより例示され、必要に応じて1個、2個、3個、または、炭素数2またはそれを超えるアルキル基の場合には4個の、以下からなる群より独立に選択される置換基で置換されていてよい:(1)C1-6アルコキシ;(2)C1-6アルキルスルフィニル;(3)本明細書において定義されるアミノ(例えば、非置換アミノ(すなわち、-NH2)または置換アミノ(すなわち、-N(RN1)2、ここでRN1はアミノについて定義される通り);(4)C6-10アリール-C1-6アルコキシ;(5)アジド;(6)ハロ;(7)(C2-9ヘテロシクリル)オキシ;(8)必要に応じてO-保護基で置換されているヒドロキシ;(9)ニトロ;(10)オキソ(例えば、カルボキシアルデヒドまたはアシル);(11)C1-7スピロシクリル;(12)チオアルコキシ;(13)チオール;(14)必要に応じてO-保護基で置換されている-CO2RA’、ここでRA’は、(a)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c)C6-10アリール、(d)水素、(e)C1-6 alk-C6-10アリール、(f)アミノ-C1-20アルキル、(g)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2およびs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’は、HまたはC1-20アルキルである)、および(h)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2およびs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;(15)-C(O)NRB’RC’、ここで、RB’とRC’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C1-6アルキル、(c)C6-10アリール、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される;(16)-SO2RD’、ここでRD’は、(a)C1-6アルキル、(b)C6-10アリール、(c)C1-6 alk-C6-10アリール、および(d)ヒドロキシからなる群より選択される;(17)-SO2NRE’RF’、ここでRE’およびRF’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C1-6アルキル、(c)C6-10アリールおよび(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される;(18)-C(O)RG’、ここでRG’は、(a)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c)C6-10アリール、(d)水素、(e)C1-6 alk-C6-10アリール、(f)アミノ-C1-20アルキル、(g)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’はHまたはC1-20アルキルである)、および(h)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;(19)-NRH’C(O)RI’、ここでRH’は、(a1)水素および(b1)C1-6アルキルからなる群より選択され、RI’は、(a2)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b2)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c2)C6-10アリール、(d2)水素、(e2)C1-6 alk-C6-10アリール、(f2)アミノ-C1-20アルキル、(g2)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’は、HまたはC1-20アルキルである)、および(h2)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;(20)-NRJ’C(O)ORK’、ここでRJ’は、(a1)水素および(b1)C1-6アルキルからなる群より選択され、RK’は、(a2)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b2)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c2)C6-10アリール、(d2)水素、(e2)C1-6 alk-C6-10アリール、(f2)アミノ-C1-20アルキル、(g2)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’はHまたはC1-20アルキルである)、および(h2)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;ならびに(21)アミジン。一部の実施形態では、これらの基の各々は、本明細書に記載されるようにさらに置換することができる。例えば、C1-アルカリルのアルキレン基は、オキソ基でさらに置換されて、それぞれのアリーロイル置換基を得ることができる。
【0049】
本明細書において使用される「アルキレン」および接頭辞「alk-」という用語は、2つの水素原子の除去により直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素から誘導された飽和二価炭化水素基を表し、メチレン、エチレン、イソプロピレンなどに例示される。「Cx-yアルキレン」および接頭辞「Cx-y alk-」は、x~y個の炭素を有するアルキレン基を表す。xの例示的な値は、1、2、3、4、5、および6であり、yの例示的な値は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、または20(例えば、C1-6、C1-10、C2-20、C2-6、C2-10、またはC2-20アルキレン)である。一部の実施形態では、アルキレンは、アルキル基について本明細書において定義される1、2、3、または4個の置換基でさらに置換することができる。
【0050】
「アルケニル」という用語は、特に記載のない限り、1またはそれを超える炭素-炭素二重結合を含む2~20炭素(例えば、2~6または2~10炭素)の一価の直鎖または分枝鎖基を表し、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニルなどに例示される。アルケニルにはシス異性体とトランス異性体の両方が含まれる。アルケニル基は、必要に応じて、本明細書において定義されるアミノ、アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール)から独立に選択される1、2、3、または4個の置換基、あるいは、本明細書に記載される例示的なアルキル置換基のいずれかで置換されていてもよい。
【0051】
本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、炭素-炭素三重結合を含む2~20炭素原子(例えば、2~4、2~6、または2~10炭素)の一価の直鎖または分枝鎖基を表し、エチニル、1-プロピニルなどに例示される。アルキニル基は、必要に応じて、本明細書において定義されるアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール)から独立に選択される1、2、3、または4個の置換基、あるいは、本明細書に記載される例示的なアルキル置換基のいずれかで置換されていてもよい。
【0052】
本明細書において使用される「アミノ」という用語は、-N(RN1)2を表し、式中、各RN1は、独立に、H、OH、NO2、N(RN2)2、SO2ORN2、SO2RN2、SORN2、N-保護基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アルカリル、シクロアルキル、アルクシクロアルキル(alkcycloalkyl)、カルボキシアルキル(例えば、必要に応じてO-保護基で置換されている、例えばアリールアルコキシカルボニル基または本明細書に記載されるいずれかで必要に応じて置換されている)、スルホアルキル、アシル(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、または本明細書に記載される他のもの)、アルコキシカルボニルアルキル(例えば、必要に応じてO-保護基で置換されている、例えばアリールアルコキシカルボニル基または本明細書に記載されるいずれかで必要に応じて置換されている)、ヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール)、またはアルクヘテロシクリル(例えば、アルクヘテロアリール)であり、ここで、これらの列挙されるRN1基の各々は、各基について、本明細書において定義されるように必要に応じて置換され得るか;または2つのRN1が結合してヘテロシクリルまたはN-保護基を形成し得、各RN2は、独立に、H、アルキル、またはアリールである。アミノ基は、非置換アミノ(すなわち、-NH2)基または置換アミノ(すなわち、-N(RN1)2)基であってよい。好ましい実施形態では、アミノは-NH2または-NHRN1であり、ここでRN1は、独立に、OH、NO2、NH2、NRN2
2、SO2ORN2、SO2RN2、SORN2、アルキル、カルボキシアルキル、スルホアルキル、アシル(例えば、アセチル、トリフルオロアセチル、または本明細書に記載される他のもの)、アルコキシカルボニルアルキル(例えば、t-ブトキシカルボニルアルキル)またはアリールであり、各RN2は、H、C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、またはC6-10アリールであり得る。
【0053】
本明細書に記載される「アミノ酸」は、側鎖を有する分子、アミノ基、および酸基(例えば、-CO2Hのカルボキシ基または-SO3Hのスルホ基)を指し、アミノ酸は側鎖、アミノ基、または酸基(例えば、側鎖)によって親分子基に結合している。一部の実施形態では、アミノ酸は、カルボニル基によって親分子基に結合しており、側鎖またはアミノ基がカルボニル基に結合している。例示的な側鎖としては、必要に応じて置換されているアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルカリル、アルクヘテロシクリル、アミノアルキル、カルバモイルアルキル、およびカルボキシアルキルが挙げられる。例示的なアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシノルバリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、ノルバリン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、ピロリシン、セレノシステイン、セリン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが挙げられる。アミノ酸基は、必要に応じて、1、2、3個、または、炭素数2またはそれを超えるアミノ酸基の場合には4個の、以下からなる群より独立に選択される置換基で置換されていてよい:(1)C1-6アルコキシ;(2)C1-6アルキルスルフィニル;(3)本明細書において定義されるアミノ(例えば、非置換アミノ(すなわち、-NH2)または置換アミノ(すなわち、-N(RN1)2、ここでRN1はアミノについて定義される通り);(4)C6-10アリール-C1-6アルコキシ;(5)アジド;(6)ハロ;(7)(C2-9ヘテロシクリル)オキシ;(8)ヒドロキシ;(9)ニトロ;(10)オキソ(例えば、カルボキシアルデヒドまたはアシル);(11)C1-7スピロシクリル;(12)チオアルコキシ;(13)チオール;(14)-CO2RA’、ここでRA’は、(a)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c)C6-10アリール、(d)水素、(e)C1-6 alk-C6-10アリール、(f)アミノ-C1-20アルキル、(g)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2およびs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’は、HまたはC1-20アルキルである)、および(h)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2およびs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;(15)-C(O)NRB’RC’、ここで、RB’とRC’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C1-6アルキル、(c)C6-10アリール、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される;(16)-SO2RD’、ここでRD’は、(a)C1-6アルキル、(b)C6-10アリール、(c)C1-6 alk-C6-10アリール、および(d)ヒドロキシからなる群より選択される;(17)-SO2NRE’RF’、ここでRE’およびRF’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C1-6アルキル、(c)C6-10アリールおよび(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される;(18)-C(O)RG’、ここでRG’は、(a)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c)C6-10アリール、(d)水素、(e)C1-6 alk-C6-10アリール、(f)アミノ-C1-20アルキル、(g)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’はHまたはC1-20アルキルである)、および(h)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;(19)-NRH’C(O)RI’、ここでRH’は、(a1)水素および(b1)C1-6アルキルからなる群より選択され、RI’は、(a2)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b2)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c2)C6-10アリール、(d2)水素、(e2)C1-6 alk-C6-10アリール、(f2)アミノ-C1-20アルキル、(g2)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’は、HまたはC1-20アルキルである)、および(h2)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;(20)-NRJ’C(O)ORK’、ここでRJ’は、(a1)水素および(b1)C1-6アルキルからなる群より選択され、RK’は、(a2)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル)、(b2)C2-20アルケニル(例えば、C2-6アルケニル)、(c2)C6-10アリール、(d2)水素、(e2)C1-6 alk-C6-10アリール、(f2)アミノ-C1-20アルキル、(g2)-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3OR’のポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、R’はHまたはC1-20アルキルである)、および(h2)-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1のアミノ-ポリエチレングリコール(ここでs1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)からなる群より選択される;ならびに(21)アミジン。一部の実施形態では、これらの基の各々は、本明細書に記載されるようにさらに置換することができる。
【0054】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、1個または2個の芳香環を有する単環式、二環式または多環式炭素環式環系を表し、フェニル、ナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、インダニル、インデニルなどに例示され、以下からなる群より独立に選択される1、2、3、4、または5個の置換基で必要に応じて置換されていてもよい:(1)C1-7アシル(例えば、カルボキシアルデヒド);(2)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ-C1-6アルキル、C1-6アルキルスルフィニル-C1-6アルキル、アミノ-C1-6アルキル、アジド-C1-6アルキル、(カルボキシアルデヒド)-C1-6アルキル、ハロ-C1-6アルキル(例えば、パーフルオロアルキル)、ヒドロキシ-C1-6アルキル、ニトロ-C1-6アルキル、またはC1-6チオアルコキシ-C1-6アルキル);(3)C1-20アルコキシ(例えば、C1-6アルコキシ、例えばパーフルオロアルコキシなど);(4)C1-6アルキルスルフィニル;(5)C6-10アリール;(6)アミノ;(7)C1-6 alk-C6-10アリール;(8)アジド;(9)C3-8シクロアルキル;(10)C1-6 alk-C3-8シクロアルキル;(11)ハロ;(12)C1-12ヘテロシクリル(例えば、C1-12ヘテロアリール);(13)(C1-12ヘテロシクリル)オキシ;(14)ヒドロキシ;(15)ニトロ;(16)C1-20チオアルコキシ(例えば、C1-6チオアルコキシ);(17)-(CH2)qCO2RA’(ここでqは0~4の整数であり、RA’は、(a)C1-6アルキル、(b)C6-10アリール、(c)水素、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(18)-(CH2)qCONRB’RC’、ここで、qは0~4の整数であり、RB’およびRC’は独立に、(a)水素、(b)C1-6アルキル、(c)C6-10アリール、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(19)-(CH2)qSO2RD’(ここで、qは0~4の整数であり、RD’は、(a)アルキル、(b)C6-10アリール、および(c)alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(20)-(CH2)qSO2NRE’RF’(ここで、qは0~4の整数であり、RE’とRF’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C1-6アルキル、(c)C6-10アリール、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(21)チオール;(22)C6-10アリールオキシ;(23)C3-8シクロアルコキシ;(24)C6-10アリール-C1-6アルコキシ;(25)C1-6 alk-C1-12ヘテロシクリル(例えば、C1-6
alk-C1-12ヘテロアリール);(26)C2-20アルケニル;および(27)C2-20アルキニル。一部の実施形態では、これらの基の各々は、本明細書に記載されるようにさらに置換することができる。例えば、C1-アルカリルまたはC1-アルクヘテロシクリルのアルキレン基は、さらにオキソ基で置換されて、それぞれのアリーロイルおよび(ヘテロシクリル)オイル置換基を得ることができる。
【0055】
本明細書において使用される「アリールアルキル」という用語は、本明細書において定義されるアルキレン基を通じて親分子基に結合している、本明細書において定義されるアリール基を表す。例示的な非置換アリールアルキル基は、7~30炭素(例えば、7~16または7~20炭素、例えばC1-6 alk-C6-10アリール、C1-10 alk-C6-10アリール、またはC1-20 alk-C6-10アリール)である。一部の実施形態では、アルキレンとアリールは各々、それぞれの基について本明細書において定義される1、2、3、または4個の置換基でさらに置換することができる。接頭辞「alk-」に先行されるその他の基も同様に定義され、「alk」は、特に記載のない限り、C1-6アルキレンを指し、結合した化学構造は本明細書において定義される通りである。
【0056】
本明細書において使用される「カルボニル」という用語は、C(O)基を表し、これはC=Oとしても表され得る。
【0057】
本明細書において使用される「カルボキシ」という用語は、-CO2Hを意味する。
【0058】
本明細書において使用される「シアノ」という用語は、-CN基を表す。
【0059】
本明細書において使用される「シクロアルキル」は、特に記載のない限り、3~8個の炭素の一価の飽和または不飽和非芳香族環式炭化水素基を表し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロヘプチル(bicycle heptyl)などに例示される。シクロアルキル基が1つの炭素-炭素二重結合または1つの炭素-炭素三重結合を含む場合、そのシクロアルキル基は、それぞれ「シクロアルケニル」または「シクロアルキニル」基と呼ぶことができる。例示的なシクロアルケニルおよびシクロアルキニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキシニルなどが挙げられる。シクロアルキル基は、必要に応じて以下で置換され得る:(1)C1-7アシル(例えば、カルボキシアルデヒド);(2)C1-20アルキル(例えば、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ-C1-6アルキル、C1-6アルキルスルフィニル-C1-6アルキル、アミノ-C1-6アルキル、アジド-C1-6アルキル、(カルボキシアルデヒド)-C1-6アルキル、ハロ-C1-6アルキル(例えば、パーフルオロアルキル)、ヒドロキシ-C1-6アルキル、ニトロ-C1-6アルキル、またはC1-6チオアルコキシ-C1-6アルキル);(3)C1-20アルコキシ(例えば、C1-6アルコキシ、例えばパーフルオロアルコキシなど);(4)C1-6アルキルスルフィニル;(5)C6-10アリール;(6)アミノ;(7)C1-6 alk-C6-10アリール;(8)アジド;(9)C3-8シクロアルキル;(10)C1-6 alk-C3-8シクロアルキル;(11)ハロ;(12)C1-12ヘテロシクリル(例えば、C1-12ヘテロアリール);(13)(C1-12ヘテロシクリル)オキシ;(14)ヒドロキシ;(15)ニトロ;(16)C1-20チオアルコキシ(例えば、C1-6チオアルコキシ);(17)-(CH2)qCO2RA’(ここでqは0~4の整数であり、RA’は、(a)C1-6アルキル、(b)C6-10アリール、(c)水素、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(18)-(CH2)qCONRB’RC’、ここで、qは0~4の整数であり、RB’およびRC’は独立に、(a)水素、(b)C6-10アルキル、(c)C6-10アリール、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(19)-(CH2)qSO2RD’(ここで、qは0~4の整数であり、RD’は、(a)C6-10アルキル、(b)C6-10アリール、および(c)C1-6
alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(20)-(CH2)qSO2NRE’RF’(ここで、qは0~4の整数であり、RE’とRF’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C6-10アルキル、(c)C6-10アリール、および(d)C1-6 alk-C6-10アリールからなる群より選択される);(21)チオール;(22)C6-10アリールオキシ;(23)C3-8シクロアルコキシ;(24)C6-10アリール-C1-6アルコキシ;(25)C1-6 alk-C1-12ヘテロシクリル(例えば、C1-6 alk-C1-12ヘテロアリール);(26)オキソ;(27)C2-20アルケニル;および(28)C2-20アルキニル。一部の実施形態では、これらの基の各々は、本明細書に記載されるようにさらに置換することができる。例えば、C1-アルカリルまたはC1-アルクヘテロシクリルのアルキレン基は、さらにオキソ基で置換されて、それぞれのアリーロイルおよび(ヘテロシクリル)オイル置換基を得ることができる。
【0060】
本明細書において使用される「ジアステレオマー」という用語は、互いに鏡像でなく、互いに重ね合わせることのできない立体異性体を意味する。
【0061】
本明細書において使用される「鏡像異性体」という用語は、光学純度または鏡像体過剰率(当技術分野で標準的な方法で測定)が少なくとも80%(すなわち、1つの鏡像異性体が少なくとも90%、他方鏡像異性体が最大10%)、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%である化合物のそれぞれの個々の光学活性形態を意味する。
【0062】
本明細書において使用される「ハロゲン」という用語は、臭素、塩素、ヨウ素、またはフッ素から選択されるハロゲンを表す。
【0063】
本明細書において使用される「ヘテロアルキル」という用語は、構成炭素原子のうちの1個または2個がそれぞれ窒素、酸素、または硫黄で置き換えられている、本明細書において定義されるアルキル基を指す。一部の実施形態では、ヘテロアルキル基は、アルキル基について本明細書において記載される1、2、3、または4個の置換基でさらに置換することができる。本明細書において使用される「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」という用語は、それぞれ、構成炭素原子のうちの1個または2個がそれぞれ窒素、酸素、または硫黄で置き換えられている、本明細書において定義されるアルケニル基およびアルキニル基を指す。一部の実施形態では、ヘテロアルケニル基およびヘテロアルキニル基は、アルキル基について本明細書において記載される1、2、3、または4個の置換基でさらに置換することができる。
【0064】
本明細書において使用される「ヘテロアリール」という用語は、芳香族である、本明細書で定義されるヘテロシクリルの部分集合を表す、すなわち、それらは単環式または多環式環系内に4n+2個のπ電子を含む。例示的な非置換ヘテロアリール基は、1~12(例えば、1~11、1~10、1~9、2~12、2~11、2~10、または2~9)炭素のものである。一部の実施形態では、ヘテロアリールは、ヘテロシクリル基について定義される1、2、3、または4個の置換基で置換されている。
【0065】
本明細書において使用される「ヘテロアリールアルキル」とは、本明細書において定義されるアルキレン基を通じて親分子基に結合している、本明細書において定義されるヘテロアリール基を指す。例示的な非置換ヘテロアリールアルキル基は、2~32炭素(例えば、2~22、2~18、2~17、2~16、3~15、2~14、2~13、または2~12炭素、例えばC1-6 alk-C1-12ヘテロアリール、C1-10 alk-C1-12ヘテロアリール、またはC1-20 alk-C1-12ヘテロアリール)である。一部の実施形態では、アルキレンとヘテロアリールは各々、それぞれの基について本明細書において定義される1、2、3、または4個の置換基でさらに置換することができる。ヘテロアリールアルキル基は、ヘテロシクリルアルキル基の部分集合である。
【0066】
本明細書において使用される「ヘテロシクリル」という用語は、特に記載のない限り、窒素、酸素、および硫黄からなる群より独立に選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を含有する5、6または7員環を表す。5員環は、0~2個の二重結合を有し、6および7員環は、0~3個の二重結合を有する。例示的な非置換ヘテロシクリル基は、1~12(例えば、1~11、1~10、1~9、2~12、2~11、2~10、または2~9)炭素のものである。「ヘテロシクリル」という用語はまた、1またはそれを超える炭素および/またはヘテロ原子が単環式環の2つの隣接しないメンバーを架橋している架橋多環式構造、例えば、キヌクリジニル基を有する複素環化合物も表す。「ヘテロシクリル」という用語には、上記の複素環のいずれかが1、2、または3つの炭素環に縮合している二環式、三環式、および四環式基が含まれ、例えば、アリール環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、または別の単環式複素環、例えばインドリル、キノリル、イソキノリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニルなどが含まれる。縮合ヘテロシクリルの例としては、トロパンおよび1,2,3,5,8,8a-ヘキサヒドロインドリジンが挙げられる。複素環には、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、ピラジニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソキサゾリル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、インドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、ジヒドロキノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアジアゾリル、フリル、チエニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,3-オキサジアゾリル)、プリニル、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾリル)、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロキノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ジヒドロイソキノリル、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジチアゾリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニルなどが含まれ、それには、1またはそれを超える二重結合が還元され、水素で置換された、それらのジヒドロおよびテトラヒドロ形態が含まれる。さらに他の例示的なヘテロシクリルには、以下が挙げられる:2,3,4,5-テトラヒドロ-2-オキソ-オキサゾリル;2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-イミダゾリル;2,3,4,5-テトラヒドロ-5-オキソ-1H-ピラゾリル(例えば、2,3,4,5-テトラヒドロ-2-フェニル-5-オキソ-1H-ピラゾリル);2,3,4,5-テトラヒドロ-2,4-ジオキソ-1H-イミダゾリル(例えば、2,3,4,5-テトラヒドロ-2,4-ジオキソ-5-メチル-5-フェニル-1H-イミダゾリル);2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-1,3,4-オキサジアゾリル(例えば、2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾリル);4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1H-トリアゾリル(例えば、4,5-ジヒドロ-3-メチル-4-アミノ5-オキソ-1H-トリアゾリル);1,2,3,4-テトラヒドロ-2,4-ジオキソピリジニル(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロ-2,4-ジオキソ-3,3-ジエチルピリジニル);2,6-ジオキソ-ピペリジニル(例えば、2,6-ジオキソ-3-エチル-3-フェニルピペリジニル);1,6-ジヒドロ-6-オキソピリミジニル(oxopyridiminyl);1,6-ジヒドロ-4-オキソピリミジニル(例えば、2-(メチルチオ)-1,6-ジヒドロ-4-オキソ-5-メチルピリミジン-1-イル);1,2,3,4-テトラヒドロ-2,4-ジオキソピリミジニル(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロ-2,4-ジオキソ-3-エチルピリミジニル);1,6-ジヒドロ-6-オキソ-ピリダジニル(例えば、1,6-ジヒドロ-6-オキソ-3-エチルピリダジニル);1,6-ジヒドロ-6-オキソ-1,2,4-トリアジニル(例えば、1,6-ジヒドロ-5-イソプロピル-6-オキソ-1,2,4-トリアジニル);2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-インドリル(例えば、3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-インドリルおよび2,3-ジヒドロ-2-オキソ-3,3’-スピロプロパン-1H-インドール-1-イル);1,3-ジヒドロ-1-オキソ-2H-iso-インドリル;1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-2H-iso-インドリル;1H-ベンゾピラゾリル(例えば、1-(エトキシカルボニル)-1H-ベンゾピラゾリル);2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾリル(例えば、3-エチル-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾリル);2,3-ジヒドロ-2-オキソ-ベンゾキサゾリル(例えば、5-クロロ-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-ベンゾキサゾリル);2,3-ジヒドロ-2-オキソ-ベンゾキサゾリル;2-オキソ-2H-ベンゾピラニル;1,4-ベンゾジオキサニル;1,3-ベンゾジオキサニル;2,3-ジヒドロ-3-オキソ,4H-1,3-ベンゾチアジニル;3,4-ジヒドロ-4-オキソ-3H-キナゾリニル(例えば、2-メチル-3,4-ジヒドロ-4-オキソ-3H-キナゾリニル);1,2,3,4-テトラヒドロ-2,4-ジオキソ-3H-キナゾリル(例えば、1-エチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-2,4-ジオキソ-3H-キナゾリル);1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-7H-プリニル(例えば、1,2,3,6-テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2,6-ジオキソ-7H-プリニル);1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-1H-プリニル(例えば、1,2,3,6-テトラヒドロ-3,7-ジメチル-2,6-ジオキソ-1H-プリニル);2-オキソベンゾ[c,d]インドリル;1,1-ジオキソ-2H-ナフト[1,8-c,d]イソチアゾリル;および1,8-ナフチレンジカルボキサミド。さらなる複素環には、3,3a,4,5,6,6a-ヘキサヒドロ-ピロロ[3,4-b]ピロール-(2H)-イル、および2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル、ホモピペラジニル(またはジアゼパニル)、テトラヒドロピラニル、ジチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、オキセパニル、チエパニル、アゾカニル、オキセカニル、およびチオカニルが含まれる。複素環基には、次式の基も含まれる
【化3】
ここで、
E’は、-N-および-CH-からなる群より選択され;F’は、-N=CH-、-NH-CH
2-、-NH-C(O)-、-NH-、-CH=N-、-CH
2-NH-、-C(O)-NH-、-CH=CH-、-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-O-、および-S-からなる群より選択される;G’は、-CH-および-N-からなる群より選択される。本明細書で言及されるヘテロシクリル基はいずれも、必要に応じて、以下からなる群より独立に選択される1、2、3、4、または5個の置換基で置換されていてもよい:(1)C
1-7アシル(例えば、カルボキシアルデヒド);(2)C
1-20アルキル(例えば、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ-C
1-6アルキル、C
1-6アルキルスルフィニル-C
1-6アルキル、アミノ-C
1-6アルキル、アジド-C
1-6アルキル、(カルボキシアルデヒド)-C
1-6アルキル、ハロ-C
1-6アルキル(例えば、パーフルオロアルキル)、ヒドロキシ-C
1-6アルキル、ニトロ-C
1-6アルキル、またはC
1-6チオアルコキシ-C
1-6アルキル);(3)C
1-20アルコキシ(例えば、C
1-6アルコキシ、例えばパーフルオロアルコキシなど);(4)C
1-6アルキルスルフィニル;(5)C
6-10アリール;(6)アミノ;(7)C
1-6 alk-C
6-10アリール;(8)アジド;(9)C
3-8シクロアルキル;(10)C
1-6 alk-C
3-8シクロアルキル;(11)ハロ;(12)C
1-12ヘテロシクリル(例えば、C
2-12ヘテロアリール);(13)(C
1-12ヘテロシクリル)オキシ;(14)ヒドロキシ;(15)ニトロ;(16)C
1-20チオアルコキシ(例えば、C
1-6チオアルコキシ);(17)-(CH
2)
qCO
2R
A’(ここでqは0~4の整数であり、R
A’は、(a)C
1-6アルキル、(b)C
6-10アリール、(c)水素、および(d)C
1-6 alk-C
6-10アリールからなる群より選択される);(18)-(CH
2)
qCONR
B’R
C’(ここで、qは0~4の整数であり、R
B’およびR
C’は独立に、(a)水素、(b)C
1-6アルキル、(c)C
6-10アリール、および(d)C
1-6 alk-C
6-10アリールからなる群より選択される);(19)-(CH
2)
qSO
2R
D’(ここで、qは0~4の整数であり、R
D’は、(a)C
1-6アルキル、(b)C
6-10アリール、および(c)C
1-6 alk-C
6-10アリールからなる群より選択される);(20)-(CH
2)
qSO
2NR
E’R
F’(ここで、qは0~4の整数であり、R
E’とR
F’の各々は、独立に、(a)水素、(b)C
1-6アルキル、(c)C
6-10アリール、および(d)C
1-6 alk-C
6-10アリールからなる群より選択される);(21)チオール;(22)C
6-10アリールオキシ;(23)C
3-8シクロアルコキシ;(24)アリールアルコキシ;(25)C
1-6 alk-C
1-12ヘテロシクリル(例えば、C
1-6 alk-C
1-12ヘテロアリール);(26)オキソ;(27)(C
1-12ヘテロシクリル)イミノ;(28)C
2-20アルケニル;および(29)C
2-20アルキニル。一部の実施形態では、これらの基の各々は、本明細書に記載されるようにさらに置換することができる。例えば、C
1-アルカリルまたはC
1-アルクヘテロシクリルのアルキレン基は、さらにオキソ基で置換されて、それぞれのアリーロイルおよび(ヘテロシクリル)オイル置換基を得ることができる。
【0067】
本明細書において使用される「炭化水素」という用語は、炭素と水素原子のみからなる基を表す。
【0068】
本明細書において使用される「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を表す。一部の実施形態では、ヒドロキシル基は、アルキルについて本明細書において定義される1、2、3、または4個の置換基(例えば、O-保護基)で置換することができる。
【0069】
本明細書において使用される「異性体」という用語は、任意の化合物のあらゆる互変異性体、立体異性体、鏡像異性体、またはジアステレオマーを意味する。化合物は、1またはそれを超えるキラル中心および/または二重結合を有することができ、したがって、立体異性体、例えば二重結合異性体(すなわち、幾何E/Z異性体)またはジアステレオマー(例えば、鏡像異性体(すなわち、(+)または(-))またはシス/トランス異性体)として存在することができることが認識されている。特に記載のない限り、本明細書に示される化学構造は、対応するすべての立体異性体、すなわち、立体異性体的に純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋、鏡像異性的に純粋、またはジアステレオ異性的に純粋)と、鏡像異性体と立体異性体の混合物、例えば、ラセミ化合物の両方を包含する。化合物の鏡像異性体と立体異性体の混合物は、一般に、周知の方法、例えばキラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩錯体としての化合物の結晶化、またはキラル溶媒中の化合物の結晶化などによってその成分の鏡像異性体または立体異性体に分割することができる。鏡像異性体および立体異性体は、立体異性的(stereomerically)または鏡像異性的に純粋な中間体、試薬、および触媒から周知の不斉合成方法によって得ることもできる。
【0070】
本明細書において使用される「N-保護アミノ」という用語は、本明細書において定義される1または2個のN-保護基が結合している、本明細書において定義されるアミノ基をさす。
【0071】
本明細書において使用される「N-保護基」という用語は、合成手順中の望ましくない反応からアミノ基を保護することを意図する基を表す。一般的に使用されるN-保護基は、Greene、「Protective Groups in Organic Synthesis」3rd Edition(John Wiley&Sons、New York、1999)に開示され、これは参照により本明細書に援用される。N-保護基には、アシル基、アリーロイル基またはカルバミル基、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、α-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、4-ニトロベンゾイルなど、およびキラル補助剤、例えばアラニン、ロイシン、フェニルアラニンなどの保護または非保護D、LまたはD、L-アミノ酸;ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニルなどのスルホニル含有基;カルバメート形成基、例えばベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5-トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1-(p-ビフェニリル)-1-メチルエトキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,-トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4-ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル-9-メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなど、アルカリル基、例えばベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチルなど、およびシリル基、例えばトリメチルシリルなどが含まれる。好ましいN-保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0072】
本明細書において使用される「O-保護基」という用語は、合成手順中の望ましくない反応から酸素含有(例えば、フェノール、ヒドロキシル、またはカルボニル)基を保護することを意図する基を表す。一般的に使用されるO-保護基は、Greene、「Protective Groups in Organic Synthesis」3rd Edition(John Wiley&Sons、New York、1999)に開示され、これは参照により本明細書に援用される。例示的なO-保護基としては、アシル基、アリーロイル基またはカルバミル基、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、α-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、t-ブチルジメチルシリル、トリ-iso-プロピルシリルオキシメチル、4,4’-ジメトキシトリチル、イソブチリル、フェノキシアセチル、4-イソプロピルフェノキシアセチル(isopropylpehenoxyacetyl)、ジメチルホルムアミジノ、および4-ニトロベンゾイル;アルキルカルボニル基、例えばアシル、アセチル、プロピオニル、ピバロイルなど;必要に応じて置換されているアリールカルボニル基、例えばベンゾイルなど;シリル基、例えばトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-iso-プロピルシリルオキシメチル(TOM)、トリイソプロピルシリル(TIPS)など;メチル、メトキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、p-メトキシベンジル、トリチルなどのヒドロキシルを含むエーテル形成基;アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n-イソプロポキシカルボニル、n-ブチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、sec-ブチルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、2-エチルヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニルなど;アルコキシアルコキシカルボニル基、例えばメトキシメトキシカルボニル、エトキシメトキシカルボニル、2-メトキシエトキシカルボニル、2-エトキシエトキシカルボニル、2-ブトキシエトキシカルボニル、2-メトキシエトキシメトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、プロパルギルオキシカルボニル、2-ブテノキシカルボニル、3-メチル-2-ブテノキシカルボニルなど;ハロアルコキシカルボニル、例えば2-クロロエトキシカルボニル、2-クロロエトキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルなど;必要に応じて置換されているアリールアルコキシカルボニル基、例えばベンジルオキシカルボニル、p-メチルベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジニトロベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメチルベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシ-カルボニル、フルオレニルメチルオキシカルボニルなど;および必要に応じて置換されているアリールオキシカルボニル基、例えばフェノキシカルボニル、p-ニトロフェノキシカルボニル、o-ニトロフェノキシカルボニル、2,4-ジニトロフェノキシカルボニル、p-メチル-フェノキシカルボニル、m-メチルフェノキシカルボニル、o-ブロモフェノキシカルボニル、3,5-ジメチルフェノキシカルボニル、p-クロロフェノキシカルボニル、2-クロロ-4-ニトロフェノキシ-カルボニルなど);置換アルキル、アリール、およびアルカリルエーテル(例えば、トリチル;メチルチオメチル;メトキシメチル;ベンジルオキシメチル;シロキシメチル;2,2,2,-トリクロロエトキシメチル;テトラヒドロピラニル;テトラヒドロフラニル;エトキシエチル;1-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]エチル;2-トリメチルシリルエチル;t-ブチルエーテル;p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、p-ニトロフェニル、ベンジル、p-メトキシベンジル、およびニトロベンジル);シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル;トリエチルシリル;トリイソプロピルシリル;ジメチルイソプロピルシリル;t-ブチルジメチルシリル;t-ブチルジフェニルシリル;トリベンジルシリル;トリフェニルシリル;およびジフェニルメチルシリル(diphenymethylsilyl));炭酸塩(例えば、メチル、メトキシメチル、9-フルオレニルメチル;エチル;2,2,2-トリクロロエチル;2-(トリメチルシリル)エチル;ビニル、アリル、ニトロフェニル;ベンジル;メトキシベンジル;3,4-ジメトキシベンジル;およびニトロベンジル);カルボニル保護基(例えば、アセタール基およびケタール基、例えばジメチルアセタール、1,3-ジオキソランなど;アシラール基;およびジチアン基、例えば1,3-ジチアン、1,3-ジチオランなど);カルボン酸保護基(例えば、エステル基、例えばメチルエステル、ベンジルエステル、t-ブチルエステル、オルトエステルなど;およびオキサゾリン基が挙げられる。
【0073】
本明細書において使用される「オキソ」という用語は、=Oを表す。
【0074】
本明細書において使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、1またはそれを超えるモノマー単位からなるアルコキシ鎖を表し、各モノマー単位は-OCH2CH2-からなる。ポリエチレン(Polyethyelene)グリコール(PEG)は、時にはポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)とも呼ばれるため、これらの用語は本開示の目的のために置き換え可能と見なされる。例えば、ポリエチレングリコールは、-(CH2)s2(OCH2CH2)s1(CH2)s3O-という構造(ここで、s1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数である(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)を有することがある。また、ポリエチレングリコールは、-NRN1(CH2)s2(CH2CH2O)s1(CH2)s3NRN1-のアミノ-ポリエチレングリコール、(ここで、s1は1~10の整数(例えば、1~6または1~4)であり、s2とs3の各々は、独立に、0~10の整数(例えば、0~4、0~6、1~4、1~6、または1~10)であり、各RN1は、独立に、水素または必要に応じて置換されているC1-6アルキルである)を含むとも考えられ得る。
【0075】
本明細書において使用される「立体異性体」という用語は、化合物(例えば、本明細書に記載される任意の式の化合物)が有する可能性のある、すべての可能な異なる異性体形態ならびにコンフォメーション形態、特にすべての立体化学的およびコンフォメーション的に可能な異性体、基本的な分子構造の全てのジアステレオマー、鏡像異性体および/または配座異性体を指す。一部の化合物は、異なる互変異性形態で存在することがあり、互変異性形態はすべて本開示の範囲内に含まれる。
【0076】
本明細書において使用される「スルホニル」という用語は、-S(O)2-基を表す。
【0077】
本明細書において使用される「チオール」という用語は、-SH基を表す。
【0078】
その他の用語
本明細書において使用される「約」または「およそ」という用語は、特に指示がない限り、または文脈から推測されない限り、列挙された定量値から±10%の変動を指す(列挙された定量値自体を含む)。例えば、別様に述べるか、または文脈から推測され無い限り、約100kBq/kgの線量は、100±10%kBq/kg、すなわち、90kBq/kg~110kBq/kg(両端の値を含む)の線量範囲を示す。
【0079】
本明細書で使用される、「組合せ投与」、「併用投与」または「同時投与」という用語は、2またはそれを超える薬剤が同時に、または患者に対する各薬剤の効果が重複する可能性があるような間隔で被験体に投与されることを意味する。したがって、組合せて投与される2またはそれを超える薬剤は一緒に投与する必要はない。一部の実施形態では、これらは互いに90日以内(例えば、80、70、60、50、40、30、20、10、5、4、3、2、または1日以内)に投与される、28日以内(例えば、14、7、6、5、4、3、2、または1日以内)、24時間以内(例えば、12、6、5、4、3、2、または1時間以内)、または約60、30、15、10、5、または1分以内に投与される。一部の実施形態では、薬剤の投与は、組合せの効果が達成されるように十分に接近した間隔で行われる。
【0080】
本明細書において、薬剤を被験体に「投与する」ことは、前記被験体の細胞を薬剤と接触させることを含む。
【0081】
本明細書において、「抗体」とは、指定された抗原に特異的に結合する免疫グロブリンおよびそのフラグメントを含むアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはそのフラグメントを指す。抗体は、任意のタイプのもの(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM)またはサブタイプのもの(例えば、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)であってよい。当業者であれば、抗体の特徴的な配列または部分には、抗体の1またはそれを超える領域(例えば、可変領域、超可変領域、定常領域、重鎖、軽鎖、およびそれらの組合せ)に見出されるアミノ酸配列が含まれることがあることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗体の特徴的な配列または部分が、1またはそれを超えるポリペプチド鎖を含み得ること、および同じポリペプチド鎖または異なるポリペプチド鎖に見出される配列要素を含み得ることを理解するであろう。
【0082】
本明細書において、「抗原結合フラグメント」とは、親抗体の結合特性を保持する抗体の部分を指す。
【0083】
本明細書において使用される「二官能性キレート」という用語は、キレート、リンカー、および架橋基を含む化合物を指す。例えば、
図8Aを参照されたい。「架橋基」は、共有結合によって2またはそれを超える分子を結合することができる、例えば、二官能性キレートと標的化部分とを結合することができる反応性基である。
【0084】
本明細書において使用される「二官能性コンジュゲート」という用語は、キレートまたはその金属錯体、リンカー、および標的化部分、例えば抗体またはその抗原結合フラグメントを含む化合物を指す。例えば、
図8Bを参照されたい。
【0085】
「がん」という用語は、悪性新生物細胞の増殖によって引き起こされるあらゆるがん、例えば腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、およびリンパ腫などを指す。「固形腫瘍がん」は、異常な組織塊を含むがん、例えば肉腫、癌腫、およびリンパ腫である。本明細書において同義的に使用される「血液がん」または「液体がん」は、体液中に存在するがん、例えば、リンパ腫および白血病である。
【0086】
「チェックポイント阻害剤」という用語は、「免疫チェックポイント阻害剤」または「ICI」としても公知であり、免疫チェックポイントタンパク質の作用を遮断する、例えば、そのような免疫チェックポイントタンパク質がそのパートナータンパク質に結合するのを遮断する薬剤を指す。
【0087】
「キレート」という用語は、中心金属または放射性金属原子に2またはそれを超える点で結合することができる、有機化合物またはその部分を指す。
【0088】
本明細書において使用される「複合体」という用語は、キレート基またはその金属錯体、リンカー基を含み、必要に応じて治療部分、標的化部分、または架橋基を含む分子を指す。
【0089】
本明細書において使用される「化合物」という用語は、示される構造のすべての立体異性体、幾何異性体、および互変異性体を含むことを意味する。
【0090】
本明細書に記載される化合物は、非対称であり得る(例えば、1またはそれを超える立体中心を有する)。特に明記されない限り、すべての立体異性体、例えば鏡像異性体およびジアステレオマーが意図される。非対称に置換された炭素原子を含む本開示の化合物は、光学活性またはラセミ体で単離することができる。光学活性出発物質から光学活性形態を調製する方法は、例えば、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成によるなど、当技術分野で公知である。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体も本明細書に記載の化合物中に存在し得、そのような安定な異性体はすべて本開示において検討されている。本開示の化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載され、それらは異性体の混合物として、または別々の異性体形態として単離され得る。
【0091】
本開示の化合物には、互変異性形態も含まれる。互変異性形態は、隣接する二重結合との単結合の交換、および付随するプロトンの移動から生じる。互変異性形態には、同じ経験式および全電荷を有する異性体のプロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体が含まれる プロトトロピック互変異性体の例には、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、アミド-イミド酸対、エナミン-イミン対、およびプロトンが複素環系の2またはそれを超える位置を占有し得る環状形態、例えば、1H-および3H-イミダゾール、1H-、2H-および4H-1,2,4-トリアゾール、1H-および2H-イソインドール、ならびに1H-および2H-ピラゾールが含まれる。互変異性形態は、適切な置換によって平衡状態になるか、または立体的に1つの形に固定され得る。
【0092】
本明細書のさまざまな箇所で、本開示の化合物の置換基は、グループまたは範囲で開示されている。本開示は、そのようなグループまたは範囲のメンバーの各々、およびあらゆる個々の下位組み合わせ(subcombination)を含むことが特に意図される。例えば、「C1-6アルキル」という用語は、メチル、エチル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、およびC6アルキルを個別に開示することが特に意図される。本明細書において、「必要に応じて置換されているX」(例えば、必要に応じて置換されているアルキル)という形の語句は、「Xが必要に応じて置換されているX」(例えば、「アルキル、前記アルキルは必要に応じて置換されている」)と同等であることが意図される。これは、特徴「X」(例えば、アルキル)自体が任意であることを意味するものではない。
【0093】
本明細書において使用される「架橋基」とは、2またはそれを超える分子を共有結合によって連結できる任意の反応性基を指す。一部の実施形態では、架橋基は、アミノ反応性またはチオール反応性架橋基である。一部の実施形態では、アミノ反応性またはチオール反応性架橋基は、活性化エステル、例えばヒドロキシスクシンイミドエステル、2,3,5,6-テトラフルオロフェノールエステル、4-ニトロフェノールエステルなど、またはイミダート、無水物、チオール、ジスルフィド、マレイミド、アジド、アルキン、歪んだアルキン、歪んだアルケン、ハロゲン、スルホネート、ハロアセチル、アミン、ヒドラジド、ジアジリン、ホスフィン、テトラジン、イソチオシアネートを含む。一部の実施形態では、架橋基は、グリシン-グリシン-グリシンおよび/またはロイシン-プロリン-(任意のアミノ酸)-トレオニン-グリシンであってよい。これらはソルターゼに媒介されるカップリング反応を使用して標的化剤とリンカーをカップリングするための認識配列である。当業者は、架橋基の使用が本明細書に開示される特定の構築物に限定されず、むしろ他の既知の架橋基が含まれてよいことを理解するであろう。
【0094】
本明細書において使用される(例えば、治療転帰または効果に関連して)「減少」「減少した」、「増加」「増加した」、または「減少」「減少した」という用語は、基準レベルと比較した意味を有する。一部の実施形態では、基準レベルは、実験動物モデルまたは臨床試験において前記方法を対照とともに使用することによって決定されるレベルである。一部の実施形態では、基準レベルは、同じ被験体での処置の開始前または開始時のレベルである。一部の実施形態では、基準レベルは、前記処置方法によって処置されていない集団における平均レベルである。
【0095】
本明細書において使用される薬剤(例えば、前述の複合体のいずれか)の「有効量」という用語は、臨床結果などの有益または望ましい結果をもたらすために十分な量であり、したがって、「有効量」は、適用される文脈によって異なる。
【0096】
本明細書において使用される「免疫複合体」という用語は、標的化部分(例えば、抗体、ナノボディ(nanobody)、アフィボディ(affibody)、フィブロネクチンIII型ドメイン由来のコンセンサス配列、ペプチド、または小分子など)を含むコンジュゲートを指す。一部の実施形態では、免疫複合体は、標的化部分あたり平均で少なくとも0.10個のコンジュゲートを含む(例えば、標的化部分あたり少なくとも平均0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、4、5、または8個のコンジュゲート)。
【0097】
本明細書において使用される「より低い有効用量」は、薬剤(例えば、治療剤)とともに使用される場合に本発明の併用療法において治療上有効であり、この薬剤が参照実験でまたは他の治療的指針のために単剤療法として使用される場合に治療上有効であると決定された用量よりも低い、薬剤の投薬量を指す。
【0098】
「薬学的組成物」という用語は、薬学的に許容され得る賦形剤とともに製剤化される本明細書に記載される化合物を含有する組成物を表す。一部の実施形態では、薬学的組成物は、哺乳動物における疾患の処置のための治療レジメンの一部として政府の規制機関の承認を得て製造または販売される。薬学的組成物は、例えば、経口投与用の単位剤形で(例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、ジェルキャップ、またはシロップ剤);局所投与用に(例えば、クリーム、ゲル、ローション、または軟膏として);静脈内投与用に(例えば、粒子状塞栓を含まない滅菌溶液として、そして静脈内使用に適した溶媒系で);または本明細書に記載される任意のその他の製剤に製剤化することができる。
【0099】
本明細書において使用される「薬学的に許容され得る賦形剤」とは、本明細書に記載される化合物以外の構成成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解できるビヒクル)であり、患者において無毒で非炎症性であるという特性を有する構成成分を指す。賦形剤としては、例えば、付着防止剤(antiadherent)、抗酸化剤、結合剤、コーティング剤、圧縮助剤、崩壊剤、色素(顔料)、皮膚軟化薬、乳化剤、フィラー(希釈剤)、膜形成剤またはコーティング剤、矯味矯臭薬、芳香剤、流動促進剤(流動増強剤)、滑沢剤、防腐剤、印刷用インク、放射線防護剤、吸着剤、懸濁剤または分散剤、甘味料、または水分補給用の水(water of hydration)を挙げることができる。例示的な賦形剤としては、限定されるものではないが、アスコルビン酸、ヒスチジン、リン酸緩衝液、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびキシリトールが挙げられる。
【0100】
本明細書において使用される「薬学的に許容され得る塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、またはアレルギー応答がなく、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適している、本明細書に記載される化合物の塩を表す。薬学的に許容され得る塩は、当技術分野で周知である。例えば、薬学的に許容され得る塩は、Bergeら,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977およびPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終単離および精製中にその場で、または遊離塩基基を適した有機酸と反応させることによって別々に調製することができる。
【0101】
化合物は、薬学的に許容され得る塩として調製できるようにイオン化可能な基を有していてよい。これらの塩は、無機酸または有機酸を含む酸付加塩であってもよいし、化合物の酸性形態の場合には、塩は無機塩基または有機塩基から調製されてもよい。多くの場合、化合物は、薬学的に許容され得る酸または塩基の付加生成物として調製される薬学的に許容され得る塩として調製または使用される。適した薬学的に許容され得る酸および塩基は当技術分野で周知であり、例えば、酸付加塩を形成する塩酸、硫酸、臭化水素酸、酢酸、乳酸、クエン酸、または酒石酸、および塩基性塩を形成する水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェイン、様々なアミンなどである。適切な塩の調製のための方法は、当技術分野で十分に確立されている。
【0102】
代表的な酸付加塩としては、数ある中でも、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウム、ならびに無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられ、これには、限定されるものではないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびエチルアミンが挙げられる。
【0103】
本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに結合している一連の少なくとも2つのアミノ酸を指す。一部の実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも3~5個のアミノ酸を含むことができ、その各々は少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に結合している。当業者は、ポリペプチドが、1またはそれを超える「非天然」アミノ酸、またはそれにもかかわらずポリペプチド鎖に組み込むことができる他の実体を含み得ることを理解するであろう。一部の実施形態では、ポリペプチドはグリコシル化されていてよい、例えば、ポリペプチドは、1またはそれを超える共有結合された糖部分を含んでいてよい。一部の実施形態では、単一の「ポリペプチド」(例えば、抗体ポリペプチド)は、2またはそれを超える個別のポリペプチド鎖を含んでよく、それは、場合によって、例えば1またはそれを超えるジスルフィド結合または他の手段によって互いに連結されてよい。
【0104】
本明細書において使用される「放射性複合体」という用語は、本明細書に記載される放射性同位体または放射性核種のいずれかなどの、放射性同位体または放射性核種を含む任意の複合体を指す。
【0105】
本明細書において使用される「放射性免疫複合体」という用語は、本明細書に記載される放射性同位体または放射性核種のいずれかなどの、放射性同位体または放射性核種を含む任意の免疫複合体を指す。
【0106】
本明細書において使用される「放射免疫療法」という用語は、治療効果を生じるために放射性免疫複合体を使用する方法を指す。一部の実施形態では、放射免疫療法には、放射性免疫複合体を、それを必要とする被験体に投与することが含まれ得、放射性免疫複合体の投与により被験体において治療効果がもたらされる。一部の実施形態では、放射免疫療法には、放射性免疫複合体を細胞に投与することが含まれ得、放射性免疫複合体の投与により細胞が殺傷される。放射免疫療法が細胞の選択的殺傷を伴う場合、一部の実施形態では、この細胞は、がんを有する被験体(例えば、患者)のがん細胞である。
【0107】
本明細書において使用される「放射性核種」という用語は、放射性崩壊を受けることができる原子を指す(例えば、3H、14C、15N、18F、35S、47Sc、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、75Br、76Br、77Br、89Zr、86Y、87Y、90Y、97Ru、99Tc、99mTc 105Rh、109Pd、111In、123I、124I、125I、131I、149Pm、149Tb、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Th、229Th、66Ga、67Ga、68Ga、82Rb、117mSn、201Tl)。放射性核種、放射性同位体、または放射性同位元素という用語は、放射性核種を説明するためにも使用され得る。上記のように、放射性核種は検出剤として使用することができる。一部の実施形態では、放射性核種は、α線を放出する放射性核種である。
【0108】
「被験体」とは、ヒト(例えば、患者)または非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0109】
「実質的な同一性」または「実質的に同一」とは、基準配列とそれぞれ同じポリペプチド配列を有するか、または、2つの配列を最適に整列させた場合に基準配列内の対応する位置に、それぞれ指定された割合の同じアミノ酸残基を有するポリペプチド配列を意味する。例えば、基準配列と「実質的に同一」なアミノ酸配列は、基準アミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する。ポリペプチドの場合、比較配列の長さは、通常、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、75、90、100、150、200、250、300、または350の連続したアミノ酸(例えば、全長配列)となるであろう。配列同一性は、配列分析ソフトウェアを使用して、例えばデフォルト設定で測定されてよい(例えば、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue、Madison、WI 53705)のGenetics Computer Groupの配列分析ソフトウェアパッケージ)。このようなソフトウェアは、相同性の程度をさまざまな置換、欠失、およびその他の修飾に割り当てることにより、類似した配列を一致させることができる。
【0110】
本明細書において使用される「標的化部分」という用語は、所与の標的に結合する分子または分子の任意の部分を指す。一部の実施形態では、標的化部分は、抗体またはその抗原結合フラグメント、ナノボディ、アフィボディ、またはフィブロネクチンIII型ドメインのコンセンサス配列などのタンパク質またはポリペプチドである。一部の実施形態では、標的化部分は、ペプチドまたは小分子である。
【0111】
本明細書において使用される「治療部分」という用語は、治療上の利益を与える分子または分子の任意の部分を指す。一部の実施形態では、治療部分は、タンパク質またはポリペプチド、例えば、抗体、その抗原結合フラグメントである。一部の実施形態では、治療部分は小分子である。
【0112】
本明細書で使用され、当技術分野でよく理解されているように、状態を「処置する」または状態(例えば、がんなどの本明細書に記載される状態)の「処置」は、臨床結果などの有益または望ましい結果を得るためのアプローチである。有益または望ましい結果には、限定されるものではないが、1またはそれを超える症状または状態の軽減または好転;疾患、障害、または状態の程度の減少;疾患、障害、または状態の安定した(すなわち、悪化していない)状態;疾患、障害、または状態の拡散の防止;疾患、障害、または状態の進行の遅延または緩徐化;疾患、障害、または状態の好転または緩和;および検出可能か検出不能かにかかわらず、寛解(部分的または完全)、が含まれ得る。がん処置の文脈において、「好転させること」には、例えば、転移の発生率の低下、腫瘍体積の縮小、腫瘍血管新生の減少、および/または腫瘍増殖速度の低下が含まれ得る。疾患、障害、または状態を「緩和すること」とは、処置がない場合の程度または時間経過と比較して、疾患、障害、または状態の程度および/または望ましくない臨床的症状発現が軽減されること、および/または進行の時間経過が遅くなるかまたは長くなることを意味する。
【0113】
本明細書において、「腫瘍関連抗原」という用語は、正常細胞よりも有意に多い量で腫瘍細胞に存在している抗原を意味する。
【0114】
本明細書において、「腫瘍特異的抗原」という用語は、腫瘍細胞にのみ内因的に存在する抗原を指す。
【0115】
放射性免疫複合体
本開示による使用に適した放射性免疫複合体は、一般に、以下の式:
A-L1-X-L2-Z-B
(式中、各変数は、上記の概要のセクションで定義されている通りである)を有する化合物でキレート化された225Acを含む[225Ac]放射性免疫複合体を指す。
【0116】
一部の実施形態では、放射性免疫複合体は、以下の構造:
【化4】
(式中、Bは標的化部分(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント、ペプチド、または小分子)である)を含む。
【0117】
一部の実施形態では、放射性免疫複合体は、以下の構造:
【化5】
(式中、Bは標的化部分(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント、ペプチド、または小分子)である)を含む。
抗体およびその抗原結合フラグメント
【0118】
抗体は一般にジスルフィド結合によって互いに連結された2つの同一のポリペプチド軽鎖と2つの同一のポリペプチド重鎖を含む。各鎖のアミノ末端に位置する第1のドメインはアミノ酸配列が可変であり、個々の抗体の抗体結合特異性を提供する。これらは、可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域として公知である。各鎖の他のドメインは、アミノ酸配列が比較的不変であり、定常重(CH)領域および定常軽(CL)領域として公知である。軽鎖は一般に、1つの可変領域(VL)と1つの定常領域(CL)を含む。IgG重鎖には、可変領域(VH)、第1定常領域(CH1)、ヒンジ領域、第2定常領域(CH2)、および第3定常領域(CH3)が含まれる。IgEおよびIgM抗体では、重鎖には、さらなる定常領域(CH4)が含まれる。
【0119】
本明細書に記載される抗体には、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかの抗原結合フラグメントが含まれ得る。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントはヒト化されている。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントはキメラである。抗体は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであってよい。
【0120】
抗体の「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書において、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれを超えるフラグメントを指す。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、scFvフラグメント、dAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544-546)、および単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。一部の実施形態では、「抗原結合フラグメント」は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を使用して得ることができ、フラグメントは、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングすることができる。
【0121】
本明細書に記載される抗体またはフラグメントは、抗体の合成について当技術分野で公知のあらゆる方法によって生成することができる(例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Brinkmanら、1995,J.Immunol.Methods 182:41-50;国際公開第92/22324号;国際公開第98/46645号)。キメラ抗体は、例えば、Morrison,1985,Science 229:1202に記載される方法を使用して生成することができ、ヒト化抗体は、例えば、米国特許第6,180,370号に記載される方法によって生成することができる。
【0122】
本明細書に記載されるさらなる抗体は、例えば、Segalら、J.Immunol.Methods 248:1-6(2001);およびTuttら、J.Immunol.147:60(1991)に記載される二重特異性抗体および多価抗体である。
【0123】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも100kDaのサイズ、例えば、少なくとも150kDaのサイズ、少なくとも200kDaのサイズ、少なくとも250kDaのサイズ、または少なくとも300kDaのサイズである。
【0124】
インスリン様成長因子1(IGF-1R)抗体
インスリン様成長因子1受容体は、インスリン様成長因子1(IGF-1)および2(IGF-2)によって活性化されたヒト細胞の表面に見出される膜貫通タンパク質である。一部の実施形態では、放射性免疫複合体は、インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)に対する抗体を含む。典型的ながん遺伝子ではないが、IGF-1Rは、がんの開始および進行を促進し、分裂促進性の形質転換および形質転換された表現型の維持において重要な役割を果たす。IGF-1Rは、乳がん、肺がん(例えば、非小肺がん)、肝臓がん、前立腺がん、膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、黒色腫、副腎皮質癌、およびさまざまな種類の肉腫を含む、複数の一般的ながんの発症に関連している。IGF-1Rシグナル伝達は、腫瘍細胞の増殖と代謝を刺激し、血管新生を支援し、アポトーシスからの保護を付与する。それは、転移因子(例えば、HIF-1依存性低酸素シグナル伝達)、足場非依存性増殖、ならびに血管外漏出後の腫瘍転移の増殖および生存に影響を与える。IGF-1Rは、治療抵抗性のがん幹細胞集団の発生、維持、および濃縮にも関与している。
【0125】
がんにおけるIGF-1Rの役割を意味づけるデータが豊富にあるにもかかわらず、IGF-1Rを標的とする治療薬は、疾患への重要な影響をまだ示していない。この有効性の欠如については、患者の同定、IGF-1/IRシグナル伝達経路の複雑性および相互依存性、ならびにその他の成長ホルモン代償機構の開発のための適切なバイオマーカーを特定できないことを含めて、多くの推測があった[Beckwith and Yee,Mol Endocrinol,November 2015,29(11):1549-1557]。しかし、放射免疫療法は、IGF-1Rが抗体により誘発される内部移行とリソソーム分解を受けて、がん細胞内に標的放射性同位元素を送達する能力を利用することにより、IGF-1受容体を過剰発現するがんを処置するための実行可能な機構を提供することができる。IGF-1Rを標的とした放射性免疫複合体の内部移行とリソソーム分解は、がん細胞内に送達された放射性同位元素の滞留時間を延長し、それにより細胞死放出が起こる可能性が最大化する。崩壊系列あたり4つのアルファ粒子を生成するアクチニウム225の場合、細胞死は、細胞あたりに送達されるわずか1原子の放射性核種によって達成することができる[Sgourosら、J Nucl Med.2010,51:311-2]。アルファ粒子による直接的なDNAの衝撃および破壊による細胞死は、所与のアルファ粒子の崩壊に対して、標的化された細胞で、あるいは2つまたは3つの標的化されていない細胞の半径で発生する可能性がある。非常に高い潜在的な抗腫瘍効力を有することに加えて、IGF-1R標的化放射性免疫複合体は、治療用抗体で必要とされるように、腫瘍学的プロセスを阻害するのに受容体と結合するリガンドを遮断することに依存しないため、機械的抵抗性が生じない可能性がある。
【0126】
フィギツムマブ、シズツムマブ、TAB-199、AVE1642(ヒト化EM164およびhuEM164としても公知)、BIIB002、ロバツムマブ、およびテプロツムマブをはじめとする、いくつかのIGF-1R抗体が開発され、さまざまな種類のがんの処置について調査されている。IGF-1Rに結合した後、これらの抗体は細胞内に内部移行され、リソソーム酵素によって分解される。腫瘍細胞での過剰発現と内部移行の組合せは、正常組織の毒性作用物質への曝露を制限しながら、検出剤を腫瘍部位に直接送達する可能性をもたらす。
【0127】
一部の実施形態では、IGF-1R抗体またはその抗体結合フラグメントの軽鎖可変領域は、下記に示されるようなAVE1642のアミノ酸配列を有する1つ、2つまたは3つの相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2および/またはCDR-L3、あるいは、それらと1つまたは2つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するCDR領域を含む:
【0128】
AVE1642の軽鎖可変領域のCDRは、以下の配列を含む:
【0129】
配列番号1(CDR-L1)RSSQSIVHSNVNTYLE
配列番号2(CDR-L2)KVSNRFS
配列番号3(CDR-L3)FQGSHVPPT
【0130】
一部の実施形態では、IGF-1R抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域は、AVE1642(配列番号4)の軽鎖可変領域、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、またはAVE1642(配列番号4)の軽鎖可変領域と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む:
【0131】
AVE1642の軽鎖可変領域は、以下の配列を含む:
配列番号4
【化6】
【0132】
一部の実施形態では、IGF-1R抗体またはその抗体結合フラグメントの重鎖可変領域は、下記に示されるようなAVE1642のアミノ酸配列を有する1つ、2つまたは3つの相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2および/またはCDR-H3、あるいは、それらと1つまたは2つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するCDR領域を含む:
【0133】
AVE1642の重鎖可変領域のCDRは、以下の配列を含む:
配列番号5(CDR-H1)SYWMH
配列番号6(CDR-H2)EINPSNGRTNYNQKFQG
配列番号7(CDR-H3)GRPDYYGSSKWYFDV
【0134】
一部の実施形態では、IGF-1R抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域は、AVE1642(配列番号8)の重鎖可変領域、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、またはAVE1642(配列番号8)の重鎖可変領域と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む:
【0135】
AVE1642の重鎖可変領域は、以下の配列を含む:
配列番号8
【化7】
【0136】
AVE1642の軽鎖は、以下の配列を含む:
【0137】
配列番号22
【0138】
【0139】
【0140】
AVE1642の重鎖は、以下の配列を含む:
【0141】
配列番号23
【0142】
【0143】
エンドシアリン(TEM-1)抗体
TEM-1またはCD-248としても公知であるエンドシアリンは、腫瘍関連内皮細胞、間質細胞、および周皮細胞によって発現される抗原である。
【0144】
エンドシアリン抗体の例としては、hMP-E-8.3(国際公開第2017/134234号に開示、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)およびオンツキシズマブ(MORAb-004)が挙げられる。
【0145】
線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)抗体
線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)は、増殖、分化、遊走および生存を含む広範囲の細胞プロセスを状況依存的に調節することによって、胚発生、組織ホメオスタシスおよび代謝の間に重要な役割を果たす。これは、多くの場合、構成的活性化をもたらす変異に起因して、多くのがん型において過剰発現される。
【0146】
一部の実施形態では、提供される方法は、FGFR3を標的とする抗体またはその抗原結合フラグメントを含む[225Ac]放射性免疫複合体を用いる。
【0147】
特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントのアミノ酸配列改変体、例えば、ヒトFGFR3および/または変異体FGFR3(例えば、がんに関連する変異体FGFR3)に結合することができる改変体が企図される。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントの結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体またはその抗原結合フラグメントのアミノ酸配列改変体は、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾としては、例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントのアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が挙げられる。最終コンストラクトが所望の特徴、例えば抗原結合を有する限り、最終コンストラクトに到達するために、欠失、挿入および置換の任意の組み合わせを行うことができる。
【0148】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、阻害性抗体(「アンタゴニスト抗体」とも呼ばれる)またはその抗原結合フラグメントであり、例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書でさらに説明するように、標的分子(例えば、FGFR3)の1またはそれを超える機能を少なくとも部分的に阻害する。
【0149】
阻害性抗体の非限定的な例としては、ヒト化モノクローナル抗体、例えば、MFGR1877S(CAS番号1312305-12-6;Genentech)(ボファタマブとしても知られており、その凍結乾燥形態はB-701またはR3Mabとしても知られているヒトモノクローナル抗体);PRO-001(Prochon);PRO-007(Fibron);IMC-D11(Imclone);およびAV-370(Aveo Pharmaceuticals)が挙げられる。(例えば、米国特許第8,410,250号;米国特許出願公開第10,208,120号;国際公開第2002102972号A2、国際公開第2002102973号A2、国際公開第2007144893号A2、国際公開第2010002862号A2、および国際公開第2010048026号A2を参照されたい。)
【0150】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、アゴニスト抗体(刺激抗体としても知られる)である。
【0151】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、アゴニストでもアンタゴニストでもなく、またはアゴニストともアンタゴニストとも特徴づけられていない。
【0152】
さらなる公知のFGFR3抗体としては、例えば、マウスモノクローナル抗体、例えば、Genentech(例えば、米国特許第8,410,250号を参照されたい)からの1G6、6G1および15B2、B9(Sc-13121)(Santa Cruz Biotechnology)、MAB766(クローン136334)(R&D systems)、MAB7661(クローン136318)(R&D systems)およびOTI1B10(OriGene);ウサギポリクローナル抗体、例えばab10651(Abcam);ウサギモノクローナル抗体、例えば、C51F2(カタログ番号4574)(Cell Signaling Technology)が挙げられる。
【0153】
本開示の特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の特異的重鎖相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2および/またはCDR-H3を含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントの相補性決定領域(CDR)は、フレームワーク領域に隣接している。3つのCDRを含有する抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖または軽鎖は、典型的には4つのフレームワーク領域を含有する。
【0154】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗体結合フラグメントの重鎖可変領域は、下記に示されるようなアミノ酸配列を有する1つ、2つまたは3つの相補性決定領域(CDR)CDR-H1、CDR-H2および/またはCDR-H3、あるいは、それらと1つまたは2つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するCDR領域を含む:
CDR-H1:
GFTFTSTGIS(配列番号9)
CDR-H2:
GRIYPTSGSTNYADSV(配列番号10)
CDR-H3:
TYGIYDLYVDYTEYVMDY(配列番号11)または
ARTYGIYDLYVDYTEYVMDY(配列番号12)
【0155】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗体結合フラグメントの軽鎖可変領域は、下記に示されるようなアミノ酸配列を有する1つ、2つまたは3つの相補性決定領域(CDR)CDR-L1、CDR-L2および/またはCDR-L3、あるいは、それらと1つまたは2つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するCDR領域を含む:
CDR-L1:
RASQDVDTSLA(配列番号13)
CDR-L2:
SASFLYS(配列番号14)
CDR-L3:
QQSTGHPQT(配列番号15)
【0156】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、いかなる変異もない配列番号9、10、11、13、14、および15のアミノ酸配列を有するCDR配列を有する。例えば、一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9、10および11のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3と、配列番号13、14および15のアミノ酸配列を有する鎖相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3とを含む。
【0157】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、いかなる変異もない配列番号9、10、12、13、14、および15のアミノ酸配列を有するCDR配列を有する。例えば、一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9、10および12のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3と、配列番号13、14および15のアミノ酸配列を有する鎖相補性決定領域CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3とを含む。
【0158】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号16と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【化10】
【0159】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域は、配列番号18のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号18と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【化11】
【0160】
一部の実施形態では、FGFR3抗体の重鎖は、配列番号20のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号20と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する定常領域を含む。
【化12】
【化13】
【0161】
一部の実施形態では、FGFR3抗体の重鎖は、配列番号24のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号24と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する配列を含む。
【化14】
【0162】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域は、配列番号17のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号17と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【化15】
【0163】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号19と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【化16】
【0164】
一部の実施形態では、FGFR3抗体の軽鎖は、配列番号21のアミノ酸配列、またはそれと1、2、3、もしくは4アミノ酸が異なるアミノ酸配列、または配列番号21と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する定常領域を含む。
【化17】
【0165】
一部の実施形態では、FGFR3抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下からなる群より選択される少なくとも1、2、3、4、5、または6つの相補性決定領域(CDR)を含む:
配列番号9のアミノ酸配列、またはそれと1もしくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むCDR-H1;
配列番号10のアミノ酸配列、またはそれと1もしくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むCDR-H2;
配列番号11もしくは12のアミノ酸配列、または配列番号11もしくは12と1もしくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むCDR-H3;
配列番号13のアミノ酸配列、またはそれと1もしくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むCDR-L1;
配列番号14のアミノ酸配列、またはそれと1もしくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むCDR-L2;および
配列番号15のアミノ酸配列、またはそれと1もしくは2アミノ酸が異なるアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0166】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号16または配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、(ii)配列番号17または配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0167】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0168】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、(i)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0169】
一部の実施形態では、FGFR3抗体は、MFGR1877S(ボファタマブ)である。
【0170】
ナノボディ(nanobody)
ナノボディは、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。ナノボディは、単一ドメイン抗体と呼ばれることもある。抗体と同様に、ナノボディは特定の抗原に選択的に結合する。ナノボディは、重鎖可変ドメインまたは軽鎖ドメインであり得る。ナノボディは、天然に存在するものであってもよいし、生物工学による産物であってもよい。ナノボディは、部位特異的変異誘発または変異原性スクリーニング(例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ)によって生物学的に操作される場合がある。
【0171】
アフィボディ(affibody)
アフィボディは、特定の抗原に結合するように操作されたポリペプチドまたはタンパク質である。したがって、アフィボディは抗体のある機能を模倣していると考えられ得る。アフィボディは、ブドウ球菌プロテインAの免疫グロブリン結合領域内のBドメインの操作された改変体であってよい。アフィボディは、Fab領域に対する親和性が低いBドメインであるZドメインの操作された改変体であってよい。アフィボディは、部位特異的変異誘発または変異原性スクリーニング(例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ)によって生物学的に操作される場合がある。
【0172】
多様な異なるタンパク質(例えば、インスリン、フィブリノゲン、トランスフェリン、腫瘍壊死因子-α、IL-8、gp120、CD28、ヒト血清アルブミン、IgA、IgE、IgM、HER2およびEGFR)への特異的結合を示すアフィボディ分子が生成されており、μMからpMの範囲の親和性(Kd)を示している。
【0173】
フィブロネクチンIII型ドメイン
フィブロネクチンIII型ドメインは、多様な細胞外タンパク質に見られる進化的に保存されたタンパク質ドメインである。フィブロネクチンIII型ドメインは、特定の抗原に選択的に結合できる分子を生成するための分子足場として使用されてきた。選択的結合のために操作されたフィブロネクチンIII型ドメイン(FN3)の改変体は、モノボディと呼ばれることもある。FN3ドメインは、部位特異的変異誘発または変異原性スクリーニング(例えば、CIS-ディスプレイ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ)によって生物学的に操作される場合がある。
【0174】
修飾されたポリペプチド
本開示に従って使用されるポリペプチドは、修飾されたアミノ酸配列を有し得る。修飾されたポリペプチドは、対応する参照ポリペプチドと実質的に同一であり得る(例えば、修飾されたポリペプチドのアミノ酸配列は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有し得る)。特定の実施形態では、修飾は、望ましい生物活性(例えば、IGF-1Rまたはエンドシアリンとの結合)を著しく破壊しない。修飾は、元のポリペプチドの生物活性を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、または95%)低下させることもあり、影響がないこともあり、(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、または1000%)増加させることもある。修飾されたポリペプチドは、インビボ安定性、生物学的利用能、毒性、免疫学的活性、免疫学的同一性、およびコンジュゲーション特性などのポリペプチドの特徴を有するかまたは最適化することがある。
【0175】
修飾には、翻訳後プロセシングなどの自然なプロセスによるもの、または当技術分野で公知の化学修飾技術によるものが含まれる。修飾は、ポリペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含むポリペプチドのどこでも起こり得る。同じ種類の修飾が、所与ポリペプチドのいくつかの部位に同じ程度または異なる程度で存在することがあり、ポリペプチドが、1を超える種類の修飾を含むことがある。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分岐していてよく、分岐の有無にかかわらず、環状であってよい。環状、分岐状、および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の自然なプロセスから生じることもあれば、または合成によって作製されることもある。その他の修飾には、ペグ化、アセチル化、アシル化、アセトアミドメチル(acetomidomethyl)(Acm)基の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フラビンへの共有結合、ヘム部分への共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬物の共有結合、マーカー(例えば、蛍光または放射性)の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移-RNAに媒介されるタンパク質へのアミノ酸の付加、例えばアルギニル化およびユビキチン化などが含まれる。
【0176】
修飾されたポリペプチドには、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の挿入、欠失、あるいは保存的または非保存的置換(例えば、D-アミノ酸、デスアミノ酸)も含まれ得る(例えば、そのような変更がポリペプチドの生物学的活性を実質的に変えない場合)。特に、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端への1またはそれを超えるシステイン残基の付加は、例えば、ジスルフィド結合によるこれらのポリペプチドのコンジュゲーションを容易にすることができる。例えば、ポリペプチドは、アミノ末端に単一のシステイン残基またはカルボキシ末端に単一のシステイン残基を含むように修飾することができる。アミノ酸置換は、保存的(すなわち、残基が同じ一般的な種類または群の別のものによって置き換えられる)であっても、非保存的(すなわち、残基が別の種類のアミノ酸によって置き換えられる)であってもよい。さらに、天然に存在するアミノ酸を、天然に存在しないアミノ酸の代わりに使用することができる(すなわち、天然に存在しない保存的アミノ酸置換または天然に存在しない非保存的アミノ酸置換)。
【0177】
合成によって作製されたポリペプチドは、DNAに天然にコードされていないアミノ酸(例えば、天然に存在しないまたは非天然のアミノ酸)の置換を含むことができる。天然に存在しないアミノ酸の例としては、D-アミノ酸、N-保護アミノ酸、システインの硫黄原子にアセチルアミノメチル基が結合しているアミノ酸、ペグ化アミノ酸、式NH2(CH2)nCOOHのオメガアミノ酸(式中、nは2-6である)、中性非極性アミノ酸、例えばサルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、n-メチルイソロイシン、およびノルロイシンなどが挙げられる。フェニルグリシンは、Trp、Tyr、またはPheを置換し得る。シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性の非極性であり、システイン酸は酸性であり、オルニチンは塩基性である。プロリンはヒドロキシプロリンで置換されてよく、コンフォメーションを与える特性を保持し得る。
【0178】
類似体は、置換変異誘発によって生成されることがあり、元のポリペプチドの生物活性を保持し得る。「保存的置換」として識別された置換の例を表1に示す。そのような置換により所望されない変化が得られた場合は、表1で「例示的置換」と呼ばれる、またはアミノ酸クラスに関連して本明細書でさらに説明される他の種類の置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
表1:アミノ酸置換
【表1】
【0179】
機能または免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造の例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしての維持、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性の維持、または(c)側鎖のかさの維持に対する影響が有意に異なる置換を選択することによって達成される。
【0180】
キレート部分
適切なキレート部分の例としては、DOTA(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α,α’,α”,α”’-テトラメチル-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸、DOTAM(1,4,7,10テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン)、DOTPA(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10テトラプロピオン酸)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTP(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTA-4AMP(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10テトラキス(アセトアミド-メチレンホスホン酸)、CB-TE2A(1,4,8,11テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11二酢酸)、NOTA(1,4,7トリアザシクロノナン-1,4,7三酢酸)、NOTP(1,4,7トリアザシクロノナン-1,4,7トリ(メチレンホスホン酸)、TETPA(1,4,8,11テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11テトラプロピオン酸)、TETA(1,4,8,11テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11四酢酸)、HEHA(1,4,7,10,13,16ヘキサアザシクロヘキサデカン-1,4,7,10,13,16六酢酸)、PEPA(1,4,7,10,13ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N”’,N”“-五酢酸)、H4octapa(N,N’-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、H2dedpa(1,2-[[6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル]-メチルアミノ]エタン)、H6phospa(N,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-メチル-1,2-ジアミノエタン)、TTHA(トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N”’,N”’-六酢酸)、DO2P(テトラアザシクロドデカンジメタンホスホン酸)、HP-DO3A(ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、デフェロキサミン、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DTPA-BMA(ジエチレントリアミン五酢酸-ビスメチルアミド)、HOPO(オクタデンテートヒドロキシピリジノン)、またはポルフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
好ましくは、キレート部分は、DOTA(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α,α’,α”,α”’-テトラメチル-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸、DOTAM(1,4,7,10テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTP(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTA-4AMP(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10テトラキス(アセトアミド-メチレンホスホン酸)、NOTA(1,4,7トリアザシクロノナン-1,4,7三酢酸)、およびHP-DO3A(10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7テトラアザシクロドデカン-1,4,7三酢酸)から選択される。
【0182】
一部の実施形態では、キレート部分は、DOTAである。
【0183】
一部の実施形態では、キレート部分は検出剤として有用であり、したがって、そのような検出可能なキレート部分を含む放射性免疫複合体を診断剤またはセラノスティック剤として使用することができる。
【0184】
リンカー
[225Ac]-放射性免疫複合体を参照すると、リンカーは、以下の式:
A-L1-X-L2-Z-B
の構造内に示される通りであり、リンカーは、典型的には、-L1-X-L2-Z-を含み、式中、
L1は、結合または必要に応じて置換されたC1~6アルキルまたはC1~6ヘテロアルキルであり、
Xは、-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-*、-OC(O)NR1-*、-NR1C(O)O-*、-NR1C(O)NR1-、-CH2-Ph-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-Ph-CH2-*、-O-、または-NR1-であり、式中、「*」は、L2との結合点を示し、各R1は、独立して、水素またはC1~6アルキルであり、
L2は、必要に応じて置換されたC1~50アルキルまたはC1~50ヘテロアルキルであり、
Zは、-C(O)-、-CH2-、-OC(O)-#、-C(O)O-#、-NR2C(O)-#、-C(O)NR2-#、または-NR2-であり、式中、「#」は、Bとの結合点を示し、各R2は、独立して、水素またはC1~6アルキルである。
【0185】
一部の実施形態では、L
1は、必要に応じて置換されたC
1~6アルキルである。例えば、L
1は、-CH
2CH
2-である。例えば、L
1は、構造:
【化18】
を有し、式中、R
2は、水素または-CO
2Hである。
【0186】
一部の実施形態では、Xは、-C(O)NR1-*であり、「*」は、L2との結合点を示し、R1は、Hである。
【0187】
一部の実施形態では、L
2は、必要に応じて置換されたC
1~50アルキル(例えば、C
1~40アルキル、C
1~30アルキル、C
1~20アルキル、C
2~18アルキル、C
3~16アルキル、C
4~14アルキル、C
5~12アルキル、C
6~10アルキル、C
8~10アルキルまたはC
10アルキル)である。例えば、L
2は、以下に示すようにC
10アルキルである:
【化19】
。
【0188】
一部の実施形態では、L2は、必要に応じて置換されたC1~50ヘテロアルキル(例えば、C1~40ヘテロアルキル、C1~30ヘテロアルキル、C1~20ヘテロアルキル、C2~18ヘテロアルキル、C3~16ヘテロアルキル、C4~14ヘテロアルキル、C5~12ヘテロアルキル、C6~10ヘテロアルキル、C8~10ヘテロアルキル、C4ヘテロアルキル、C6ヘテロアルキル、C8ヘテロアルキル、C10ヘテロアルキル、C12ヘテロアルキル、C16ヘテロアルキル、C20ヘテロアルキルまたはC24ヘテロアルキル)である。特定の実施形態では、L2は、1~20個のオキシエチレン(-O-CH2-CH2-)単位、例えば、2個のオキシエチレン単位(PEG2)、3個のオキシエチレン単位(PEG3)、4個のオキシエチレン単位(PEG4)、5個のオキシエチレン単位(PEG5)、6個のオキシエチレン単位(PEG6)、7個のオキシエチレン単位(PEG7)、8個のオキシエチレン単位(PEG8)、9個のオキシエチレン単位(PEG9)、10個のオキシエチレン単位(PEG10)、12個のオキシエチレン単位(PEG12)、14個のオキシエチレン単位(PEG14)、16個のオキシエチレン単位(PEG16)または18個のオキシエチレン単位(PEG18)を含むポリエチレングリコール(PEG)部分を含む必要に応じて置換されたC1~50ヘテロアルキルである。
【0189】
特定の実施形態では、L
2は、1~20個のオキシエチレン(-O-CH
2-CH
2-)単位またはその一部を含むポリエチレングリコール(PEG)部分を含む必要に応じて置換されたC
1~50ヘテロアルキルである。例えば、L
2は、以下に示されるようなPEG3を含むリンカーである:
【化20】
。
【0190】
一部の実施形態では、Zは、-C(O)-または-CH2-である。一部の実施形態では、Zは、-C(O)-であり、Bからのリジン残基を介したBへのコンジュゲーション点である。
【0191】
特定の実施形態では、式A-L
1-X-L
2-Z-Bは、以下の構造:
【化21】
(式中、Y
1は、-CH
2OCH
2L
2-B、C(O)L
2-B、またはC(S)L
2-Bであり、Y
2は、-CH
2CO
2Hであるか、または、Y
1は、Hであり、Y
2は、L
1-X-L
2-Bである)によって表すことができる。
【0192】
チェックポイント阻害剤
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は放射性免疫複合体と同時投与される。一般に、適したチェックポイント阻害剤は、免疫抑制チェックポイントタンパク質を阻害する。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)、LAG-3、T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3)、およびキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)からなる群より選択されるタンパク質を阻害する。
【0193】
例えば、一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤はCTLA-4、PD-1、またはPD-L1に結合できる。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1とPD-L1の相互作用を妨害する(例えば、結合を妨害する)。
【0194】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は小分子である。
【0195】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ヒトもしくはヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントである。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、マウス抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0196】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤はCTLA-4抗体である。CTLA-4抗体の限定されない例としては、BMS-986218、BMS-986249、イピリムマブ、トレメリムマブ(旧チシリムマブ、CP-675,206)、MK-1308、およびREGN-4659が挙げられる。CTLA-4抗体のさらなる例は、マウスモノクローナル抗体である4F10-11である。
【0197】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤はPD-1抗体である。PD-1抗体の限定されない例としては、カムレリズマブ、セミプルマブ(cemiplumab)、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブおよびトリパリマブが挙げられる。PD-1抗体のさらなる例は、マウスモノクローナル抗体であるRMP1-14である。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブである。
【0198】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤はPD-L1抗体である。PD-L1抗体の限定されない例としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブが挙げられる。
【0199】
一部の実施形態では、1を超えるチェックポイント阻害剤の組合せが使用される。例えば、一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤とPD-1もしくはPD-L1阻害剤の両方が使用される。
【0200】
併用療法
上に提供されるように、本開示は、特定の線量レベルでがんを有効に処置するための、[225Ac]-放射性免疫複合体および1またはそれを超えるチェックポイント阻害剤を含む併用療法に関する。
【0201】
一部の実施形態では、併用療法は、PD-1阻害剤またはCTLA-4阻害剤と、以下の化合物のうちの1つでキレート化された
225Acを含む、[
225Ac]-放射性免疫複合体とを含む:
【化22】
、Bは、IGF-1R抗体またはその抗原結合ドメインである;
【化23】
、BはFGFR3抗体またはその抗原結合ドメインである;
【化24】
、Bは、TEM-1抗体またはその抗原結合ドメインである;
【化25】
、Bは、IGF-1R抗体、FGFR3抗体もしくはTEM-1抗体、またはそれらの抗原結合ドメインである;
【化26】
、Bは、IGF-1R抗体、FGFR3抗体もしくはTEM-1抗体、またはそれらの抗原結合ドメインである;
【化27】
、Bは、IGF-1R抗体、FGFR3抗体もしくはTEM-1抗体、またはそれらの抗原結合ドメインである;
【化28】
、Bは、IGF-1R抗体、FGFR3抗体もしくはTEM-1抗体、またはそれらの抗原結合ドメインである。
【0202】
一部の実施形態では、併用療法は、PD-1阻害剤と、以下の化合物:
【化29】
、(Bは、TAB-199またはAVE1642である)のうちの1つでキレート化された
225Acを含む[
225Ac]-放射性免疫複合体とを含む。
【0203】
一部の実施形態では、併用療法は、ペンブロリズマブと、以下の化合物:
【化30】
、(Bは、AVE1642である)
でキレート化された
225Acを含む[
225Ac]-放射性免疫複合体とを含む。
【0204】
被験体
一部の開示される方法では、治療(例えば、治療剤を含む)が被験体に投与される。一部の実施形態では、被験体は哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0205】
一部の実施形態では、被験体は別の治療を投与済みであるかまたは投与中である。例えば、一部の実施形態では、被験体は、放射性免疫複合体を投与済みであるかまたは投与中である。一部の実施形態では、被験体はチェックポイント阻害剤を投与済みであるかまたは投与中である。
【0206】
一部の実施形態では、被験体はがんを有するか、がんを発症するリスクがある。例えば、被験体はがんと診断されている。がんは、原発性がんであっても転移性がんであってもよい。被験体は、リンパ節併発の有無にかかわらず、および転移の有無にかかわらず、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVなど、どのステージのがんを有していてもよい。提供される組成物は、がんのさらなる増殖を予防または低減し、かつ/または別の場合にはがんを好転させる(例えば、転移を予防または低減する)ことができる。一部の実施形態では、被験体はがんを有さないが、例えば、環境曝露、1またはそれを超える遺伝子変異または改変体の存在、家族歴などの1またはそれを超えるリスク因子の存在のために、がんを発症するリスクがあると決定されている。一部の実施形態では、被験体はがんと診断されていない。
【0207】
一部の実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0208】
一部の実施形態では、固形腫瘍がんは、乳がん(例えば、TNBC)、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肉腫、副腎皮質癌、神経内分泌がん、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、または急性骨髄性白血病である。
【0209】
一部の実施形態では、がんは非固形(例えば、液体(例えば、血液))のがんである。
【0210】
投与および投薬量
有効用量およびより低い有効用量
本開示は、各治療薬の量がそれ自体で治療上有効であってもなくてもよい併用療法を提供する。例えば、第1の治療および第2の治療を、障害、例えば、がんを処置するかまたは好転させるのに有効な量で一緒に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、第1および第2の治療の少なくとも1つは、より低い有効用量で被験体に投与される。一部の実施形態では、第1および第2の治療は両方とも、より低い有効用量で投与される。
【0211】
一部の実施形態では、第1の治療は放射性免疫複合体を含み、第2の治療はチェックポイント阻害剤を含む。
【0212】
一部の実施形態では、第1の治療はチェックポイント阻害剤を含み、第2の治療は放射性免疫複合体を含む。
【0213】
一部の実施形態では、本明細書に開示される治療の組合せは、障害およびその合併症の症状を治癒するか、または少なくとも部分的に抑止するのに十分な方式(例えば、投薬量およびタイミング)で被験体に投与される。単一の治療(「単剤療法」)の文脈において、この目的を達成するために十分な量は、「治療上有効な量」、すなわち疾患に関連する少なくとも1つの症状または医学的状態を実質的に改善するのに十分な化合物の量として定義される。「治療上有効な量」は、通常、治療薬によって異なる。既知の治療剤の場合、関連する治療上有効な量は、当業者に公知であるか、または容易に決定され得る。
【0214】
例えば、がんの処置において、疾患または状態の任意の症状を低減、予防、遅延、抑制、または抑止する薬剤または化合物は、治療上有効となる。治療上有効な量の薬剤または化合物は、疾患または状態を治癒するために必要ではないが、疾患または状態の発症が遅延、妨害、または予防されるか、あるいは疾患または状態の症状が好転させるか、あるいは疾患または状態の期間が変更されるかまたは、例えば、個体においてより重篤でなくなるかまたは回復を加速させるような、疾患または状態の処置を提供する。例えば、処置は、それががんを退縮させるかまたはがんの増殖を遅らせる場合には、治療上有効となり得る。
【0215】
これらの使用に有効な投薬計画(例えば、各治療薬の量、治療の相対的なタイミングなど)は、疾患または状態の重症度、ならびに被験体の体重および全身状態に依存し得る。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される治療薬を含む特定の組成物の治療上有効な量は、哺乳動物の年齢、体重、および状態の個体差を考慮して、当業者によって決定され得る。本開示の特定の複合体は、がん細胞を標的として残留し得る能力が強化されているため、これらの化合物の投薬量は、コンジュゲ―ションされていない薬剤の治療効果に必要とされる同等の用量よりも低くなり得る(例えば、約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、または0.1%未満またはそれと同等)。治療上有効および/または最適な量は、当業者によって経験的に決定することもできる。したがって、より低い有効用量も、当業者によって決定され得る。
【0216】
本発明の方法を実施するために、[225Ac]-放射性免疫複合体を、典型的には、約10kBq~約400kBq/kgの線量で投与する。一部の実施形態では、[225Ac]-放射性免疫複合体を、当該患者の体重1kgあたり10kBq~約200kBq(例えば、約10kBq~約150kBq/kg、約10kBq~約120kBq/kg、約10kBq~約100kBq/kg;約20kBq~約150kBq/kg、約20kBq~約120kBq/kg、約20kBq~約100kBq/kg;約30kBq~約150kBq/kg、約30kBq~約120kBq/kg、約30kBq~約100kBq/kg;約40kBq~約150kBq/kg、約40kBq~約120kBq/kg、約40kBq~約100kBq/kg、または約40kBq~約80kBq/kg)の線量で投与する。
【0217】
一部の実施形態では、[225Ac]-放射性免疫複合体を、当該患者の体重1kgあたり約30kBq~約120kBq(例えば、約35kBq/kg、約40kBq/kg、約45kBq/kg、約50kBq/kg、約55kBq/kg、約60kBq/kg、約65kBq/kg、約70kBq/kg、約75kBq/kg、約80kBq/kg、約85kBq/kg、約90kBq/kg、約95kBq/kg、約100kBq/kg、約105kBq/kg、約110kBq/kg、または約115kBq/kg)の線量で投与する。
【0218】
一部の実施形態では、[225Ac]-放射性免疫複合体を、約1~30MBq(例えば、約1~25MBq、約1~20MBq、約1~15MBq、約1~10MBq;約2~25MBq、約2~20MBq、約2~15MBq、約2~10MBq;約3~25MBq、約3~20MBq、約3~15MBq、約3~10MBq;約5~25MBq、約5~20MBq、約5~15MBq、約5~10MBq)の単位投与量として当該患者に投与する。
【0219】
一部の実施形態では、[225Ac]放射性免疫複合体を、約5~15MBq(例えば、約6MBq、約7MBq、約8MBq、約9MBq、約10MBq、約11MBq、約12MBq、約13MBq、または約14MBq)の単位投与量として当該患者に投与する。
【0220】
一部の実施形態では、[225Ac]放射性免疫複合体を、約20~30MBq(例えば、約21MBq、約22MBq、約23MBq、約24MBq、約25MBq、約26MBq、約27MBq、約28MBq、または約29MBq)の単位投与量として当該患者に投与する。
【0221】
組成物(例えば、治療剤を含む薬学的組成物)の単回または複数回の投与は、処置している医師が選択する用量レベルおよびパターンを用いて行うことができる。用量および投与スケジュールは、被験体の疾患または状態の重症度に基づいて決定および調整することができ、これらは、臨床医によって一般的に実施される方法または本明細書に記載される方法に従う処置の過程を通して監視されてよい。
【0222】
一部の実施形態では、上記の単位投与量は、被験体(例えば、患者)に1日2回、1日3回または1日4回投与することができる。例えば、[225Ac]-放射性免疫複合体を約10~30MBqの単位投与量として投与する場合、患者に1日2回、約20MBq~約60MBqの総投与量で投与することができる。
【0223】
開示される併用療法の方法では、第1および第2の治療は、順次にまたは同時に被験体に投与されてよい。例えば、第1の治療剤を含む第1の組成物および第2の治療剤を含む第2の組成物は、順次にまたは同時に被験体に投与されてよい。あるいは、またはさらに、第1の治療剤と第2の治療剤の組合せを含む組成物が被験体に投与されてもよい。
【0224】
一部の実施形態では、放射性免疫複合体は、単回用量で投与される。一部の実施形態では、放射性免疫複合体は、複数回投与される。放射性免疫複合体が複数回投与される場合、各投与の用量は、同じであっても異なっていてもよい。
【0225】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、単回用量で投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、複数回投与される(例えば、少なくとも2回、少なくとも3回など)。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、定期的または半定期的なスケジュールに従って複数回、例えば、約2週間に1回、週1回、週2回、週3回、または週3回より多く投与される。チェックポイント阻害剤が複数回投与される場合、各投与の用量は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、チェックポイント阻害剤は、初回用量で投与されてよく、その後のチェックポイント阻害剤の投薬量は、初回用量よりも多くても少なくてもよい。
【0226】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤の第1の用量は、放射性免疫複合体の第1の用量と同時に投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤の第1の用量は、放射性免疫複合体の第1の用量の前に投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤の第1の用量は、放射性免疫複合体の第1の用量の後に投与される。一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤のその後の用量が投与される。
【0227】
一部の実施形態では、放射性免疫複合体(またはその組成物)およびチェックポイント阻害剤(またはその組成物)は、互いに28日以内(例えば、14、7、6、5、4、3、2、または1日以内)に投与される。
【0228】
一部の実施形態では、放射性免疫複合体(またはその組成物)およびチェックポイント阻害剤(またはその組成物)は、互いに90日以内(例えば、80、70、60、50、40、30、20、10、5、4、3、2、または1日以内)に投与される。さまざまな実施形態では、チェックポイント阻害剤は、放射性免疫複合体と同時に投与される。さまざまな実施形態では、チェックポイント阻害剤は、放射性免疫複合体の第1の投与の後に複数回投与される。
【0229】
一部の実施形態では、組成物(例えば放射性免疫複合体を含む組成物など)は、放射線処置計画または診断目的で投与される。放射線処置計画または診断目的で投与される場合、組成物は、診断上有効な用量および/または治療有効用量を決定するために有効な量で被験体に投与され得る。一部の実施形態では、開示される複合体またはその組成物(例えば、薬学的組成物)の第1の用量が、放射線処置計画に有効な量で投与され、それに続いて、本明細書に開示される複合体および別の治療薬を含む併用療法が投与される。
【0230】
1またはそれを超える薬剤(例えば、放射性免疫複合体および/またはチェックポイント阻害剤)を含む薬学的組成物は、多様な薬物送達システムにおいて開示される方法およびシステムに従って使用するために製剤化することができる。1またはそれを超える生理学的に許容され得る賦形剤または担体も、適切な製剤のために組成物に含めることができる。適した製剤の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.,1985に見出される。薬物送達のための方法の簡単な概説には、例えば、Langer(Science 249:1527-1533,1990)を参照されたい。
【0231】
製剤
薬学的組成物は、予防的および/または治療的処置のために、非経口、鼻腔内、局所、経口、または経皮的手段などによる局所投与のために製剤化され得る。薬学的組成物は、非経口的に(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下注射によって)、あるいは経口摂取によって、あるいは、血管またはがんの状態によって影響を受ける領域への局所適用または関節内注射によって投与することができる。さらなる投与経路の例としては、血管内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、上皮内、ならびに鼻、眼、強膜内、眼窩内、直腸、局所、またはエアロゾル吸入投与が挙げられる。また、デポー注射または侵食性のインプラントまたは成分などの手段による持続放出投与も特に企図されている。適した組成物には、例えば非経口投与用の、許容され得る担体、好ましくは水性担体、例えば、数ある中でも、水、緩衝化水、食塩水、またはPBSなどに溶解または懸濁させた薬剤(例えば、本明細書に開示される化合物)を含む組成物が含まれる。組成物は、生理学的条件を近似させるために、薬学的に許容され得る補助物質、例えば、数ある中でも、pH調整剤および緩衝化剤、張度調整剤、湿潤剤、または洗剤などを含んでいてよい。一部の実施形態では、組成物は経口送達用に製剤化される;例えば、組成物は、錠剤またはカプセル剤などの単位剤形の製剤のための結合剤またはフィラーなどの不活性成分を含んでよい。一部の実施形態では、組成物は、局所投与用に製剤化される;例えば、組成物は、クリーム、軟膏、ゲル、ペースト、または点眼薬の製剤のための溶媒または乳化剤などの不活性成分を含んでよい。
【0232】
組成物は、例えば、従来の滅菌技術によって滅菌するか、または滅菌濾過されてよい。水溶液は、そのまま使用できるように包装してもよいし、凍結乾燥させてもよく、凍結乾燥した調製物は、投与前に滅菌した水性担体と組み合わされる。調製物のpHは、一般に、3~11、より好ましくは5~9または6~8、最も好ましくは6~7、例えば6~6.5であろう。一部の実施形態では、固体形態の組成物は、錠剤またはカプセル剤の密封されたパッケージのように、それぞれが一定量の上記1または複数の薬剤を含有する、複数の単回用量単位に包装される。一部の実施形態では、固体形態の組成物は、局所適用可能なクリームまたは軟膏用に設計された圧搾可能なチューブなどのように柔軟な量の容器に包装される。
【0233】
一部の実施形態では、より低い有効線量を表す量の本明細書に記載の[225Ac]-放射性免疫複合体を含む組成物が提供される。
【0234】
キット
一部の実施形態では、(1)本明細書に記載の[225Ac]-放射性免疫複合体を含む組成物と、(2)チェックポイント阻害剤と組み合わせて組成物を投与するための指示とを含むキットが提供される。
【0235】
一部の実施形態では、(1)チェックポイント阻害剤を含む組成物と、(2)本明細書に記載の[225Ac]-放射性免疫複合体と組み合わせて組成物を投与するための指示とを含むキットが提供される。
【0236】
効果
一部の実施形態では、本開示の方法は、治療効果をもたらす。一部の実施形態では、治療効果は免疫応答を含み、例えば、免疫応答はT細胞、例えばCD8+(例えば、IFNγ産生CD8+細胞)および/またはCD4+細胞の増加を含む。一部の実施形態では、T細胞は、処置または改善されているがんに発現する腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に特異的なT細胞を含む。一部の実施形態では、T細胞の増加は、脾臓と比較して腫瘍で観察される。
【0237】
一部の実施形態では、投与ステップは、哺乳動物の試料中の全T細胞集団の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%が腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に特異的であるという結果をもたらす。一部の実施形態では、試料は腫瘍試料である。
【0238】
一部の実施形態では、治療効果は、腫瘍体積の減少(例えば、少なくとも部分的な腫瘍退縮)、安定した腫瘍体積、または腫瘍体積の増大速度の低下を含む。一部の実施形態では、治療効果は、再発または転移の発生の低下を含む。
【0239】
一部の実施形態では、治療効果は腫瘍退縮、すなわち腫瘍体積の減少を含む。一部の実施形態では、腫瘍退縮は、処置開始前の腫瘍体積の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の腫瘍体積の減少を特徴とする。一部の実施形態では、治療効果は完全な腫瘍退縮を含む。
【0240】
一部の実施形態では、腫瘍退縮(部分的または完全にかかわらず)は、腫瘍体積が一定期間にわたって減少した後に実質的に再び増加しないという点で持続性である。一部の実施形態では、腫瘍退縮は、処置開始後少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも20日間、少なくとも23日間、少なくとも25日間、少なくとも26日間、少なくとも27日間、少なくとも28日間、少なくとも29日間、または少なくとも30日間にわたって持続性である。
その他の薬剤
【0241】
一部の実施形態では、開示される方法は、抗増殖剤、放射線増感剤、または免疫制御剤または免疫調節剤の投与をさらに含む。
【0242】
「抗増殖性」または「抗増殖剤」は、本明細書において同義的に使用され、表2に収載される抗増殖剤をはじめとする抗がん剤を意味し、これらはいずれも、状態または障害を処置するために放射性免疫複合体と組み合わせて使用することができる。抗増殖剤には、有機白金誘導体、ナフトキノンおよびベンゾキノン誘導体、クリソファン酸およびそれらのアントラキノン誘導体も含まれる。
【0243】
「免疫制御剤」または「免疫調節剤」は、本明細書において同義的に使用され、表2に収載されるものをはじめとする免疫調節因子を意味し、これらはいずれも、放射性免疫複合体と組み合わせて使用することができる。
【0244】
本明細書において、「放射線増感剤」には、放射線治療に対するがん細胞の感受性を高めるあらゆる薬剤が含まれる。放射線増感剤には、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、白金の類似体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ゲムシタビン、EGFRアンタゴニスト(例えば、セツキシマブ、ゲフィチニブ)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、COX-2阻害剤、bFGFアンタゴニスト、およびVEGFアンタゴニストが含まれ得る。
表2
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【実施例】
【0245】
実施例1.CT-26同系モデルにおけるチェックポイント阻害剤の単剤有効性が観察された。
2つのチェックポイント阻害剤(PD-1およびCTLA-4)の単剤有効性試験を、マウス結腸癌モデルであるCT-26モデルで実施した。これらの癌腫は、α-PD-1mAbに部分的に感受性があり、α-CTLA-4mAbに感受性があることが知られている。マウスに、α-PD-1mAbまたはα-CTLA-4mAbのいずれかの5または15mg/kgのいずれかを腹腔内注射した。α-PD-1mAb群は、週2回4週間投与された。α-CTLA-4mAb群は、3日の間隔で1日3回だけ投与された。このモデルで予想されるように、CTLA-4処置のほうがPD-1処置よりも有効であった。両方の処置群では、5mg/kgが、腫瘍の増殖を最も有効に損なう用量であると思われた。
図1を参照されたい。異なる処置の後のCD8+/CD4+T細胞の動員も、免疫組織化学およびフローサイトメトリー技術を用いて測定される。
【0246】
実施例2.マウスがんモデルを作製するためのhIGF-1R発現CT26クローンの選択
CT26細胞をヒトIGF-1Rプラスミドで安定にトランスフェクトした。hIGF-1R発現クローンの選択のために、hIGF-1Rの存在についてウエスタンブロット分析を行った。
図7を参照されたい。インビトロおよびインビボ特性の両方に基づいて最良のクローンを選択した。得られた細胞株をマウスに異種移植して、以下でさらに説明するように、[
225Ac]化合物D(化合物A1とコンジュゲーションされ、[
225Ac]で放射性標識したTAB-199;実施例5-Bを参照されたい)ならびに/または他の放射性免疫複合体(例えば、AVE1642を含むコンジュゲート)および免疫チェックポイント阻害剤とのさらなる相乗作用を試験するためのマウスモデルを作製した。
【0247】
実施例3.CT-26同系モデルにおける[
177Lu]-化合物Bの生体内分布
IGF-1Rに対するマウスモノクローナル抗体であるMAB391(例えば、F.J.Calzone et al.,PLoS One.2013;8(2):e55135を参照されたい)を化合物A1(以下に示す構造によって表される二官能性キレート)とコンジュゲーションし、当技術分野で周知の方法を使用してLu-177で放射性標識して、[
177Lu]-化合物Bを形成した。
【化31】
【0248】
インビボで抗原発現マウスIGF-1R過剰発現腫瘍を標的とする[
177Lu]-化合物Bの能力を、CT-26同系モデルを使用して実証した。腫瘍取り込みは、注射24~96時間後から15~17%注射線量/g(ID/g)で安定していた。
図2を参照されたい。
【0249】
実施例4.免疫不全マウスと比較した免疫応答性マウスにおける[
225Ac]-化合物Cの増強された有効性
IGF-1Rに対するマウスモノクローナル抗体であるMAB391を化合物A1とコンジュゲーションし、標準的な技術を用いて[
225Ac]で放射性標識して、[
225Ac]-化合物Cを形成した。免疫応答性マウスおよび免疫不全マウスにおける[
225Ac]-化合物Cの有効性試験を、92.5kBq/kgまたは740kBq/kg(50nCiまたは400nCi)線量の[
225Ac]-化合物Cを用いて行った。[
225Ac]-化合物Cは、免疫系を有しないマウスと比較して、インタクトな免疫系を有するマウスにおいて腫瘍体積を減少させることにおいて増強された有効性を有することが見出された。
図3を参照されたい。
【0250】
注目すべきことに、マウスにおける50nCiの投与量は92.5kBq/kgに相当し、これはヒトにおける約7MBqと等価である(ヒト等価線量)。マウスにおける400nCiの投与量は740kBq/kgに相当し、これはヒトにおける約55MBqと等価である(ヒト等価線量)。
【0251】
実施例5-A.CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物Cとα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果。
インビボ相乗効果研究を行って、CT26マウスモデルにおける相対的腫瘍体積に対する[
225Ac]-化合物C(実施例4に記載)ならびにチェックポイント阻害剤、α-CTLA-4およびα-PD-1抗体の効果を試験した。CTLA-4阻害剤単独またはPD-1阻害剤単独のいずれかで処置したマウスは、ビヒクル対照群と比較した場合、相対的腫瘍体積の中程度の減少を示した。370kBq/kg(または200nCi)線量の[
225Ac]-化合物Cで処置したマウスは、ビヒクル対照群またはCTLA-4阻害剤もしくはPD-1阻害剤単独を投与した群と比較して、腫瘍体積のより大きな減少を示した。しかしながら、[
225Ac]-化合物Cを370kBq/kgの線量でCTLA-4もしくはPD-1のいずれか、または両方と同時投与した場合、相乗効果が見られた-同時投与は、[
225Ac]-化合物Cによる処置と比較した場合、またはCTLA-4阻害剤もしくはPD-1阻害剤単独による処置と比較した場合、有意に小さい腫瘍体積をもたらした。
図4Aを参照されたい。
【0252】
注目すべきことに、マウスにおける200nCiの投与量は370kBq/kgに相当し、これはヒトにおける約28MBqと等価である(ヒト等価線量)。
【0253】
実施例5-B.CT26同系マウスモデルにおける[225Ac]-化合物Dとα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果。
IGF-1Rに対するヒトモノクローナル抗体であるTAB-199(例えば、https://www.antibodypedia.com/gene/4140/IGF1R/antibody/2726933/TAB-199を参照されたい)を、この分野で知られている標準的な技術を使用して化合物A1とコンジュゲーションし、[225Ac]で放射性標識して、[225Ac]-化合物Dを形成した。
【0254】
インビボ相乗効果研究を行って、CT26マウスモデルにおける相対的腫瘍体積に対する[
225Ac]-化合物Dならびにチェックポイント阻害剤、α-CTLA-4およびα-PD-1抗体の効果を試験した。370kBq/kg(または200nCi)の線量の[
225Ac]-化合物Dで処置したマウスは、一過性の腫瘍退縮のみを示し、続いて腫瘍が再成長した。しかし、[
225Ac]-化合物Dを370kBq/kgでCTLA-4もしくはPD-1のいずれか、またはその両方と同時投与した場合、相乗効果が観察され、持続性の腫瘍退縮を示し、同時投与は、[
225Ac]-化合物Dによる処置と比較した場合、有意に小さい腫瘍体積をもたらした。
図4Bを参照されたい。
【0255】
注目すべきことに、マウスにおける200nCiの投与量は370kBq/kgに相当し、これはヒトにおける約28MBqと等価である(ヒト等価線量)。
【0256】
処置開始の2日前および12日後に、チェックポイント阻害剤を含むまたは含まない200nCi[225Ac]-化合物Dで処置したマウスから血液試料を採取し、ImmunoSEQ技術(例えば、Wolf K,DiPaolo D.,Immunosequencing:accelerating discovery in immunology and medicine.Curr Trends Immunol 2016;17:85-93;Liu X,Wu J.History,applications,and challenges of immune repertoire research.Cell Biol Toxicol 2018;34(6):441-57を参照されたい)を使用してT細胞受容体レパートリーの分析を行った。結果は、[225Ac]-化合物Dによる処置が、免疫複合体によって誘発される免疫活性化を示唆するよりクローン的なT細胞応答を誘導することを示唆した。
【0257】
実施例6.CT26再チャレンジ時の[
225Ac]-化合物Cで再処置したマウスにおける保護免疫の発生
再チャレンジ実験を行って、CT26再チャレンジ時の[
225Ac]-化合物C処置マウスにおける防御免疫の発生を試験した。マウスを、[
225Ac]-化合物C単独で、またはα-CTLA-4もしくはα-PD-1抗体と組み合わせて以前に処置した。ナイーブマウスを対照として使用した。[
225Ac]-化合物C+/-抗CTLA-4または抗PD-1抗体で以前に処置された全てのマウスは、腫瘍チャレンジから保護され、保護的T細胞免疫の発生を示唆した。
図5を参照されたい。
【0258】
実施例7.[
225Ac]-化合物C処置後のサイトカイン応答およびT細胞動員
[
225Ac]-化合物C処置後のサイトカイン応答およびT細胞動員を測定した。マウスに1×10
6個のCT26細胞を接種した。次いで、マウスを[
225Ac]-化合物C、コンジュゲーションしていないMAB391抗体またはビヒクルのいずれかで処置した。腫瘍、脾臓および血漿からの試料を、24、48または72時間でサイトカインの存在について分析した。異なるT細胞型の存在を評価するために、免疫組織化学のために72時間、5日および8日で腫瘍および脾臓から追加の試料を採取した。最後に、8日目に、腫瘍浸潤リンパ球を抽出し、単離し、フローサイトメトリーを用いて定量した。
図6を参照されたい。
【0259】
以下の表3に示すように、コンジュゲーションしていないMAB391抗体と比較して、[
225Ac]-化合物Cで処置した腫瘍においてサイトカイン発現の変化が見られた:
表3.サイトカイン発現の変化
【表3】
【0260】
実施例8.併用療法は、脾臓および腫瘍自体の両方において腫瘍関連抗原特異的CD8+T細胞の増加をもたらす。
[225Ac]-化合物D(実施例5-Bを参照されたい)は、アクチニウム-225(225Ac)で標識されたヒトモノクローナルIGF-1R抗体TAB-199を含む放射性免疫複合体である。[225Ac]-化合物Dとチェックポイント阻害剤(α-PD-1、α-CTLA-4、またはα-PD-1とα-CTLA-4の両方)との組み合わせをCT26同系マウスモデルで試験した。最初の腫瘍接種後28日目にマウスにCT26細胞を再チャレンジした。
【0261】
CD8+およびCD4+T細胞集団を、再チャレンジ後に脾臓および腫瘍の両方において評価した。[225Ac]-化合物Dおよびチェックポイント阻害剤で処置したマウスでは、脾臓および腫瘍の両方がCD8+T細胞の存在を示した。重要なことに、対照と比較して、腫瘍におけるCD8+T細胞頻度の増加が観察された。これらの結果は、これらの併用処置が、治療上有効なCD8+T細胞のレベルの改善をもたらすことを示唆している。
【0262】
抗原特異的T細胞を検出し、MHCクラスI四量体アッセイを使用して計数した。このアッセイでは、CT26細胞に特異的なエピトープを提示するMHC I分子をビオチンで標識する。ストレプトアビジンの存在下では、これらのMHC I分子は四量体化する。それにより、CD26エピトープに特異的なCD8+T細胞は、それらのT細胞受容体が四量体内のMHC I/CT26エピトープ複合体に結合すると標識される。四量体分析に基づいて、CD8+T細胞のおよそ35%、62%および75%が、それぞれ、[225Ac]-化合物D/α-CTLA-4、[225Ac]-化合物D/α-PD-1および [225Ac]-化合物D/α-CTLA-4/α-PD-1で処置されたマウスにおいて抗原特異的であった。
【0263】
実施例9.CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物D1とα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果。
TAB-199を化合物A2(以下に示す構造によって表される二官能性キレート)とコンジュゲーションし、当分野で公知の標準的な技術を使用して[
225Ac]で放射性標識して、[
225Ac]-化合物D1を形成した。
【化32】
【0264】
インビボ相乗効果研究を行って、CT26マウスモデルにおける相対的腫瘍体積に対する[
225Ac]-化合物D1ならびにチェックポイント阻害剤、α-CTLA-4およびα-PD-1抗体の効果を試験した。370kBq/kg(または200nCi)の線量の[
225Ac]-化合物D1で処置したマウスは、一過性の腫瘍退縮のみを示し、続いて腫瘍が再成長した。しかし、[225Ac]-化合物D1を370kBq/kgでCTLA-4もしくはPD-1のいずれか、またはその両方と同時投与した場合、相乗効果が観察され、持続性の腫瘍退縮を示し、同時投与は、[
225Ac]-化合物D1による処置と比較した場合、有意に小さい腫瘍体積をもたらした。
図9Aを参照されたい。
【0265】
注目すべきことに、マウスにおける200nCiの投与量は370kBq/kgに相当し、これはヒトにおける約28MBqと等価である(ヒト等価線量)。
【0266】
実施例10.CT26同系マウスモデルにおける[
225Ac]-化合物D2とα-CTLA-4/PD-1処置との間の相乗効果。
TAB-199を化合物A3(以下に示す構造によって表される二官能性キレート)とコンジュゲーションし、当分野で公知の標準的な技術を使用して[
225Ac]で放射性標識して、[
225Ac]-化合物D2を形成した。
【化33】
【0267】
インビボ相乗効果研究を行って、CT26マウスモデルにおける相対的腫瘍体積に対する[
225Ac]-化合物D2ならびにチェックポイント阻害剤、α-CTLA-4およびα-PD-1抗体の効果を試験した。370kBq/kg(または200nCi)の線量の[
225Ac]-化合物D2で処置したマウスは、一過性の腫瘍退縮のみを示し、続いて腫瘍が再成長した。しかし、[225Ac]-化合物Dを370kBq/kgでCTLA-4またはPD-1とCTLA-4との組み合わせのいずれかと同時投与した場合、相乗効果が観察され、持続性の腫瘍退縮を示し、同時投与は、[
225Ac]-化合物D2による処置と比較した場合、有意に小さい腫瘍体積をもたらした。
図9Bを参照されたい。
【0268】
注目すべきことに、マウスにおける200nCiの投与量は370kBq/kgに相当し、これはヒトにおける約28MBqと等価である(ヒト等価線量)。
【0269】
実施例11.AVE1642を含む[225Ac]標識コンジュゲートとの併用療法の効果。
AVE1642を、化合物A1、化合物A2、または化合物A3などの二官能性キレートとコンジュゲーションさせ、次いで[225Ac]で放射性標識することによって調製することができる、AVE1642(ヒト化モノクローナルIGF-1R抗体)を含む[225Ac]標識放射性免疫複合体を、実施例4~9に記載したプロトコルと同様のプロトコルを用いてチェックポイント阻害剤(例えば、CTLA-4抗体および/またはPD-1抗体)と組み合わせて試験することができる。例えば、腫瘍体積、動物生存、サイトカイン発現、T細胞免疫(例えば、腫瘍関連抗原特異的CD8+T細胞の存在、量および/または機能)、および腫瘍再チャレンジに対する保護に対する効果を、併用療法群と単独療法処置群および/または対照群との間で比較することができる。
【0270】
実施例12.FGFR3標的化部分を含む[225Ac]標識コンジュゲートとの併用療法の効果。
FGFR3標的化部分を、化合物A1、化合物A2または化合物A3などの二官能性キレートとコンジュゲーションさせ、次いで[225Ac]で放射性標識することによって調製することができる、FGFR3標的化部分(例えば、FGFR3抗体もしくはそのフラグメント、または小分子)を含む[225Ac]標識コンジュゲートは、FGFR3変化がんのマウスモデルを使用して、実施例4~9に記載したものと同様の実験を用いて、チェックポイント阻害剤(例えば、CTLA-4抗体および/またはPD-1抗体)と組み合わせて試験することができる。例えば、腫瘍体積、動物生存、サイトカイン発現、T細胞免疫(例えば、腫瘍関連抗原特異的CD8+T細胞の存在、量および/または機能)、および腫瘍再チャレンジに対する保護に対する効果を、併用療法群と単独療法処置群および/または対照群との間で比較することができる。
均等物/他の実施形態
【0271】
当業者は、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または日常的な実験のみを使用して確認できるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】