(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂及びその調製方法、組成物並びに繊維製品
(51)【国際特許分類】
C08G 69/26 20060101AFI20240524BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20240524BHJP
D02G 3/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C08G69/26
D01F6/60 351Z
D02G3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575942
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 CN2022071923
(87)【国際公開番号】W WO2022257462
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】202110641293.1
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517272909
【氏名又は名称】上海凱賽生物技術股分有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520198823
【氏名又は名称】▲凱▼▲賽▼(金▲郷▼)生物材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】秦 兵兵
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 朝▲續▼
(72)【発明者】
【氏名】高 源▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 修▲才▼
【テーマコード(参考)】
4J001
4L035
4L036
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001DB03
4J001DC11
4J001DD01
4J001DD07
4J001DD13
4J001EB08
4J001EB09
4J001EC07
4J001EC08
4J001GA13
4J001GB02
4J001GB05
4J001GC04
4J001GD02
4J001HA02
4J001JA10
4J001JB01
4J001JB21
4J001JB30
4J001JC04
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB89
4L035BB91
4L035HH01
4L035HH10
4L036PA21
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド樹脂及びその製造方法、組成物、並びに繊維製品を提供する。ポリアミドの構造単位は、ジアミン構造単位及び二酸構造単位を含み、二酸構造単位の90mol%以上がアジピン酸に由来し、ジアミン構造単位の90mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来し、ポリアミド樹脂における水抽出性物質の含有量は0.7質量%以下である。水抽出性物質の数平均分子量は、2000以下である。本開示のポリアミド樹脂の製造方法は簡便であり、そのプロセスパラメータは制御が容易であり、大規模な装置の補助を必要とせず、それによりその大量生産が容易になる。本発明のポリアミド樹脂は、長い成分拭き取り紡糸口金期間、少ないフィラメント切れ回数を有し、得られる繊維は、少ないフィラメント切れ、少ない糸むら、少ない染めの黒い点、良好な染色効果、優れた引伸破断力及び引張り強さ、並びに低い沸水収縮率を有する。紡糸収率及び染色収率は高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン構造単位及び二酸構造単位を含み、前記二酸構造単位の90mol%以上がアジピン酸に由来し、前記ジアミン構造単位の90mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来し、かつ、水抽出性物質を0.7質量%以下の含有量でしか含有しない、ポリアミド樹脂。
【請求項2】
ポリアミド樹脂が、28,000以上、好ましくは30,000~45,000、より好ましくは30,000~40,000の数平均分子量を有し、且つ/又は
前記水抽出性物質を、0.6質量%以下、好ましくは0.5質量%以下の含有量しか含んでおらず、且つ/又は
前記水抽出性物質を、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上の含有量で含有し、且つ/又は
ポリアミド樹脂中の前記ジアミン構造単位の95mol%以上、好ましくは97mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来し、且つ/又は
ポリアミド樹脂の前記ジアミン構造単位が、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン、及びドデカンジアミンに由来する構造単位の1つ又は複数を更に含み、且つ/又は
ポリアミド樹脂中の前記二酸構造単位の95mol%以上、好ましくは97mol%以上がアジピン酸に由来し、且つ/又は
ポリアミド樹脂の前記二酸構造単位が、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸に由来する構造単位の1つ又は複数を更に含み、且つ/又は
ポリアミド樹脂が、前記ジアミン構造単位及び二酸構造単位で構成されるポリアミドを90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、一層より好ましくは99質量%以上の含有量で含有し、且つ/又は
ポリアミド樹脂が、添加剤を10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の含有量で含有する、請求項1に記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
前記水抽出性物質が、下記構造:
【化1】
(式中、n1及びn2は、それぞれ、1~8から選択される整数であり、好ましくは、n1及びn2は、それぞれ、1~6から選択される整数であり、より好ましくは、n1及びn2は、それぞれ、1~5から選択される整数であり、一層より好ましくは、n1は、2、3、又は4であり、n2は、2、3、4、又は5であり、m1及びm2のそれぞれは、4である)
の1つ又は2つを含み、且つ/又は
前記水抽出性物質が、500~2,000の数平均分子量を有し、且つ/又は
ポリアミド樹脂が、ポリアミド56樹脂であり、かつ、ポリアミド56樹脂が、ポリアミド56を90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、一層より好ましくは99質量%以上の含有量で含有する、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂。
【請求項4】
添加剤が、以下のものに限定されないが、末端キャッピング剤、核剤、酸化防止剤、消泡剤、及び流動性改質剤、又はそれらの組み合わせのいずれか1種を含み、且つ/又は
添加剤が、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸、酢酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸、シリコーン消泡剤、カプロラクタム、カーボンブラック、ナノ炭酸カルシウム、二酸化チタン、及びフタロシアニン化合物、又はそれらの混合物のいずれか1種を含む、請求項2に記載のポリアミド樹脂。
【請求項5】
200~2,000ppm、好ましくは250~1,200ppm、より好ましくは300~1,000ppmの含有量で水分を含有し、且つ/又は
10~100mol/ton、好ましくは20~90mol/ton、より好ましくは30~80mol/tonの含有量で末端アミノ基を含有し、且つ/又は
1.8~4.0、好ましくは2.2~3.5、より好ましくは2.4~3.3の相対粘度を有する、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂を製造する方法であって、
S1、不活性ガス雰囲気中でナイロン塩溶液を調製する工程;
S2、前記ナイロン塩溶液を加熱して、ナイロン塩溶液の反応系の圧力を0.5~2.5MPaへと上昇させ、0.5~4時間、脱気することによってその圧力を維持し、次いで減圧して反応系の圧力を0~0.7MPaへと低下させ、次いで反応系を-0.05~-0.08MPaの真空度へと真空にし、それによりポリアミド溶融物を得る工程;及び
S3、得られた溶融物を排出し、ストランドペレット化を実施してポリアミドチップを得る工程、
を含む、方法。
【請求項7】
工程S1において、ナイロン塩溶液を調製するために、1,5-ペンタンジアミン及び二酸を(1~1.1):1のモル比で使用し、且つ/又は
工程S2において、圧力を維持する過程が完了した後、反応系が232~260℃の温度を有し、且つ/又は
工程S2において、減圧する過程が完了した後、反応系が240~295℃の温度を有し、且つ/又は
工程S2において、真空にする工程の後、反応系が250~290℃の温度を有し、且つ/又は
工程S2において、真空にする工程の後、反応系の真空を11~75分間維持し、且つ/又は
工程S3において、ストランドペレット化を、15~50℃の水温において水中で実施する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程:
S4、反応器内でポリアミドチップを水と混合して混合物を得る工程、及び次いで反応器内の空気を不活性ガスで置換する工程;及び、
S5、不活性ガス雰囲気中で前記の混合物を加熱し、混合物をろ過し、ポリアミドチップをすすぎ、ポリアミドチップを乾燥させてポリアミド樹脂を得る工程、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程S4において、反応器が連続抽出カラム及びバッチ反応釜から選択され、且つ/又は
工程S4において、反応器内の空気を置換する工程が、真空ポンプを用いて反応器を真空にし、次いで不活性ガスで反応器を再充填する工程を含み、且つ/又は
工程S4において、反応器内の空気を置換する工程が2回以上繰り返され、且つ/又は
工程S4において、水が脱イオン水であり、好ましくは脱酸素処理を施した脱イオン水であり、且つ/又は
工程S4において、水の質量が、ポリアミドチップの質量の1倍以上、好ましくは2倍以上、例えば1~12倍、2~10倍、及び2~6倍であり、且つ/又は
工程S4及び工程S5において、不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガス、及びヘリウムガス等から選択される1種又は複数であり、且つ/又は
工程S5において、混合物を4~50時間、好ましくは8~45時間加熱し、且つ/又は
工程S5において、混合物を80~140℃、好ましくは85~120℃の温度において加熱し、且つ/又は
工程S5において、ポリアミドチップを50℃~100℃の温度の熱水ですすぎ、且つ/又は
工程S5において、ポリアミドチップが、真空乾燥、凍結乾燥、気流乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥、及び高周波乾燥から選択される1つ又は複数によって乾燥される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂を製造する方法であって、以下の工程:
(1)反応器内でポリアミドチップを水と混合して混合物を得て、次いで反応器内の空気を不活性ガスで置換する工程;及び
(2)不活性ガス雰囲気中で前記混合物を加熱し、ポリアミドチップをろ過し、ポリアミドチップをすすぎ、ポリアミドチップを乾燥させてポリアミド樹脂を得る工程、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂を成分として含む樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂、又は請求項11に記載の樹脂組成物を原料として使用して製造された繊維。
【請求項13】
未延伸糸、中延伸糸、高延伸糸、延伸加工糸、延伸糸、工業用糸、嵩高連続フィラメント、短繊維、及びモノフィラメント繊維を含み、且つ/又は
3.3~10.0cN/dtex、好ましくは3.5~9.0cN/dtex、より好ましくは4.0~8.5cN/dtexの引張り強さを有し、且つ/又は
10%~90%、好ましくは15%~80%、より好ましくは18%~55%の引伸破断力を有し、且つ/又は
1.0%~13.8%、好ましくは3.0%~12.0%、より好ましくは4.0%~10.0%の沸水収縮率を有し、且つ/又は
11~2330dtex、好ましくは33.0~933dtex、より好ましくは44.0~555dtexの線密度を有し、且つ/又は
1.5%以下、好ましくは1.3%以下、より好ましくは1.2%以下、なおより好ましくは1.0%以下の糸むらを有し、且つ/又は
2(回/24時間)以下、好ましくは1(回/24時間)以下、より好ましくは0(回/24時間)の糸切れ回数を有し、且つ/又は
3(フィラメント切れ/9kgパッケージ)以下、好ましくは2(フィラメント切れ/9kgパッケージ)以下、より好ましくは1(フィラメント切れ/9kgパッケージ)以下のフィラメント切れ数を有し、且つ/又は
96%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上の完成品率を有し、且つ/又は
96%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98.5%以上の染色M率を有する、請求項12に記載の繊維。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の繊維を製造する方法であって、以下の工程:
(a)ポリアミド樹脂を溶融状態に加熱して、ポリアミド溶融物を形成する工程;
(b)ポリアミド溶融物を紡糸して、紡績したままの糸を形成する工程;
(c)前記の紡績したままの糸を後処理して、ポリアミド繊維を得る工程、
を含む、方法。
【請求項15】
繊維調製過程の間、紡糸口金拭き取りサイクルが3(回/24時間)以下、好ましくは2(回/24時間)以下、より好ましくは1(回/24時間)以下である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー材料の分野に属し、特に、ポリアミド樹脂、その調製方法、その組成物、及びその繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、その優れた特性及び溶融成形の容易さから、衣料用材料、工業材、繊維、又は汎用エンジニアリングプラスチックに広く使用され、多くの注目を集めてきた。ポリアミド5Xは、バイオベースのペンタンジアミン及び一連の二酸(diacid)から合成される直鎖状の長鎖高分子である。アミド結合は水素結合を形成する傾向があるため、ポリアミド5X繊維は高い強度及び良好な吸湿性を有する。ポリアミド5Xの重合中、環化反応の発生により、ポリマーの高分子鎖は鎖内アミド基交換反応中に2つのセグメントに切断されるか、又は低分子量の直鎖状分子物質が直接脱水反応を起こし、オリゴマーが生成する。一般的に、水抽出性物質とは、単量体から十量体までのオリゴマー、例えば二量体及び三量体であり、直鎖状構造及び環状構造を含む。
【0003】
通常、水抽出性物質は、別々に処理及び形成することができず、大量の水抽出性物質がチップとともに紡糸部に入る場合、紡糸過程に深刻な影響をもたらすだけでなく、原料が非常に無駄になってしまう。樹脂中の二量体及び三量体の含有量が比較的多い場合、チップの分子量分布に影響を与え、その結果、原繊維の強度が低下し、くず糸の割合が増加する等の一連の悪影響が生じる。溶融紡糸過程中に、これらの化合物は溶融物から蒸発して気体となり、ポリアミド5X溶融物中の気泡の数を増加させる。蒸発した気体は再凝固した後、紡糸環境を悪化させ、紡糸口金拭き取りサイクル時間(spinneret wipe cycle time)を短かくさせる。更に、ポリアミド5X溶融物中の水抽出性物質は、繊維中に「弱い部分」を形成し、その部分で外力(例えば、延伸力)の作用により糸切れが起こりやすく、紡糸が困難になる。更に、水抽出性物質は、フィラメント表面に析出しやすく、延伸中のフィラメント切れ、浮遊フィラメント、及びモノフィラメント切れの増加、完成フィラメントの強度の低下、及び完成品の割合の低下等の好ましくない現象を引き起こす。
【0004】
従って、紡糸過程中のポリアミド5Xの紡糸口金拭き取りサイクル時間の短さ、浮遊フィラメント、モノフィラメント切れ、及び完成品率の低さ等の好ましくない現象をどのように改善するかは、先行技術において解決すべき喫緊の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の技術及び製品の欠点を克服するために、本開示の目的の一つは、ポリアミド樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリアミドは、ジアミン構造単位及び二酸(diacid)構造単位を含み、二酸構造単位の90mol%以上がアジピン酸に由来し、ジアミン構造単位の90mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来し、ポリアミド樹脂は、数平均分子量2,000以下の水抽出性物質を0.7質量%以下の含有量でしか含まない。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態によれば、水抽出性物質の含有量は、0.6質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。水抽出性物質は、主に重合過程中にモノマーから出現するオリゴマーである。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂は、28,000以上、好ましくは30,000~45,000、より好ましくは30,000~40,000の数平均分子量を有する。
【0009】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、水抽出性物質の含有量(質量%)が上記で定義した範囲内にある場合、得られるポリアミド樹脂及び後述する樹脂組成物の耐黄変性が改善される。
【0010】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、水抽出性物質の含有量(質量%)が上記で定義した範囲内にある場合、紡糸過程中の紡糸口金拭き取りサイクル時間が大幅に延長され、生産効率も大幅に改善される。
【0011】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、水抽出性物質の含有量(質量%)が上記で定義した範囲内にある場合、紡糸過程中のフィラメント切れが減少し、ポリアミド繊維が高い強度を有する。
【0012】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、水抽出性物質の含有量(質量%)が上記で定義した範囲内にある場合、ポリアミド繊維が低い沸水収縮率及び改善された寸法安定性を有する。
【0013】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、水抽出性物質の含有量(質量%)が上記で定義した範囲内にある場合、ポリアミド繊維が低い糸むら及び良好な染色効果を有する。
【0014】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、水抽出性物質の含有量(質量%)が上記で定義した範囲内にある場合、ポリアミド樹脂が高い完成品率及び紡糸過程中の高い染色M率(dyeing M rate)を有する。
【0015】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド樹脂中の水抽出性物質の含有量は、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。水抽出性物質の含有量が上で定義した範囲未満である場合、ポリアミド繊維の性能が低下する。
【0016】
ポリアミド樹脂中の水抽出性物質の含有量は、抽出処理のためにポリアミド樹脂を脱イオン水中で加熱した場合(例えば、ポリアミド樹脂を97℃~100℃の水で24時間抽出した場合)の、抽出処理前のポリアミド樹脂の質量に対する、抽出処理後に水に抽出され得た成分の質量の割合である。
【0017】
水抽出性物質の含有量(%)=(水抽出前のポリアミド樹脂の質量(m1)-水抽出後のポリアミド樹脂の質量(m2))/水抽出前のポリアミド樹脂の質量(m1)×100%。
【0018】
抽出は、例えば、ポリアミド樹脂を97℃~100℃の水を使用して24時間抽出することにより実施され、ポリアミド樹脂の水に対する質量比は、1:48~51、例えば1:50である。
【0019】
更に、水抽出性物質の含有量を測定するための方法は、ポリアミド試料を130℃の送風オーブンで7時間乾燥させ、次いでアルミニウムプラスチック袋に密封して乾燥機で冷却し、続いてポリアミド試料の約2gを正確に秤量し、ポリアミド試料の実際の質量(m1)を記録する工程と、ポリアミド試料を250mLの丸底フラスコに入れ、脱イオン水100mLを添加し、このようにして得られた混合物を97℃~100℃で24時間加熱還流し、抽出後のポリアミド試料を取り出し、脱イオン水で3回洗浄し、次いで、130℃の送風オーブンで7時間乾燥させ、あらかじめ秤量しておいたアルミニウムプラスチック袋に移し、密封して乾燥機で冷却し、次いで、アルミニウムプラスチック袋及びポリアミド試料の合計質量並びにアルミニウムプラスチック袋の質量をそれぞれ秤量し、前者から後者を差し引いて、水抽出後のポリアミド試料の質量(m2)を得る工程と、式:水抽出性物質の含有量(%)=(m1-m2)/m1×100%に従い、水抽出前後のポリアミド試料の質量の差から水抽出性物質の含有量を計算する工程とを含む。
【0020】
更に、ポリアミド樹脂溶融物中の水抽出性物質の含有量を測定する場合、溶融物を密閉容器に入れ、冷却し、次いで上記の方法に従って試験するためにサンプリングする。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態によれば、水抽出性物質は、500~2,000の数平均分子量を有する。
例えば、水抽出性物質は、下記構造:
【化1】
(式中、n1及びn2は、それぞれ、1~8から選択される整数であり、好ましくは、n1及びn2は、それぞれ、1~6から選択される整数であり、より好ましくは、n1及びn2は、それぞれ、1~5から選択される整数であり、更に好ましくは、n1は、2、3又は4であり、n2は、2、3、4又は5であり、m1は4であり、m2は4である)の1つ又は2つを含む。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂中のペンタンジアミンは、化学ベースの材料又はバイオベースの材料に由来することができ、好ましくはバイオベースの材料に由来する1,5-ペンタンジアミンである。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂中のジアミン構造単位の95mol%以上、好ましくは97mol%以上が1,5-ペンタンジアミンに由来する。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂のジアミン構造単位は、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン、及びドデカンジアミンに由来する構造単位の1つ又は複数を更に含む。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂中の二酸構造単位の95mol%以上、好ましくは97mol%以上がアジピン酸に由来する。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂の二酸構造単位は、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸に由来する構造単位の1つ又は複数を更に含む。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂中のジアミン構造単位及び二酸構造単位で構成されるポリアミド(主要ポリマー)の含有量は、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、一層より好ましくは99質量%以上である。ジアミン構造単位及び二酸構造単位は、上記の制限に適合する。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂は添加剤を含有する。
【0029】
添加剤は、以下のものに限定されないが、末端キャッピング剤、核剤、酸化防止剤、消泡剤、及び流動性改質剤、又はそれらの組み合わせのいずれか1種を含む。末端キャッピング剤は、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸、及び酢酸を含む。
【0030】
添加剤は、これらに限定されないが、ラウリン酸、ステアリン酸、安息香酸、酢酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、亜リン酸、シリコーン消泡剤、カプロラクタム、カーボンブラック、ナノ炭酸カルシウム、二酸化チタン、及びフタロシアニン化合物、又はそれらの混合物のいずれか1種を含む。
【0031】
本開示のいくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド樹脂中の添加剤の含有量は、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂はポリアミド56樹脂である。ポリアミド56樹脂中のポリアミド56の含有量は、90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、更により好ましくは99質量%以上である。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂は、200~2,000ppm、好ましくは250~1,200ppm、より好ましくは300~1,000ppmの水分含有量を有する。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂中の末端アミノ基の含有量は、10~100mol/ton、好ましくは20~90mol/ton、より好ましくは30~80mol/tonである。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂の相対粘度は1.8~4.0、好ましくは2.2~3.5、より好ましくは2.4~3.3である。
【0036】
別段の規定のない限り、又は明らかに矛盾しない限り、本開示における圧力はゲージ圧を指す。
【0037】
本開示の第2の目的は、前述のポリアミド樹脂を調製するための方法を提供することである。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本方法は、
S1、不活性ガス雰囲気中でナイロン塩溶液を調製する工程;
S2、ナイロン塩溶液反応系の圧力を0.5~2.5MPaに上昇させるようにナイロン塩溶液を加熱し、脱気によって圧力を0.5~4時間維持し、次いで減圧して反応系の圧力を0~0.7MPa(ゲージ圧)に低下させ、次いで反応系を真空にして真空度を-0.05~-0.08MPaにし、これによってポリアミド溶融物を得る工程;及び
S3、得られた溶融物を排出し、ストランド造粒を実施してポリアミドチップを得る工程
を含む。
【0039】
これらのうち、工程S1において、ナイロン塩溶液を調製するために、1,5-ペンタンジアミン及び二酸(diacid)を(1~1.1):1のモル比で使用する。
【0040】
工程S2において、圧力を維持する過程が完了した後、反応系は232~260℃の温度を有する。
【0041】
工程S2において、減圧する過程が完了した後、反応系は240~295℃、好ましくは243~288℃の温度を有する。
【0042】
工程S2において、真空にする工程の後、反応系は250~290℃、好ましくは252~285℃の温度を有する。
【0043】
工程S2において、真空にする工程の後、反応系の真空を11~75分間維持する。
【0044】
工程S3において、ストランド造粒を、水温15~50℃の水中で実施する。ポリアミドチップ又はポリアミドペレットは、工程S3で説明したストランド造粒を行う際に得られる。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態によれば、本方法は、
S4、反応器内でポリアミドチップを水と混合して混合物を得て、次いで反応器内の空気を不活性ガスで置換する工程;及び
S5、不活性ガス雰囲気中で上記混合物を加熱し、混合物をろ過し、ポリアミドチップをすすぎ、ポリアミドチップを乾燥させてポリアミド樹脂を得る工程
を更に含む。
【0046】
工程S4において、反応器は密閉環境を形成できる反応器である。工程S4において、反応器は、例えば、連続抽出カラム又はバッチ反応釜であり得る。
【0047】
好ましくは、工程S4において、反応器内の空気を置換する工程は、真空ポンプを用いて反応器を真空にする工程と、次いで不活性ガスで反応器を再充填する工程とを含む。反応器内の空気を置換する工程の上記の操作は、2回以上繰り返されてもよい。
【0048】
工程S4において、水は脱イオン水、好ましくは脱酸素処理を施した脱イオン水であり、脱酸素処理は、熱脱酸素、超音波脱酸素、真空脱酸素、化学的脱酸素、分析的脱酸素(analytical deoxygenation)、若しくは他の任意の脱酸素方法、又はそれらの組み合わせのうちの1つであり得る。いくつかの好ましい実施形態では、脱酸素処理後の脱イオン水中の溶存酸素の含有量は、0.5mg/L以下、好ましくは0.1mg/L以下である。
【0049】
工程S4において、脱イオン水の質量は、ポリアミドペレットの質量の1倍以上、好ましくは2倍以上、例えば、1~12倍、1~10倍、2~10倍、2~6倍、1.5倍、2.3倍、2.5倍、3倍、5倍、又は8倍である。
【0050】
工程S1、工程S4、及び工程S5において、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等から選択される1種又は複数であり、より好ましくは、高純度窒素ガス、高純度アルゴンガス、及び高純度ヘリウムガスから選択される1種又は複数である。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態によれば、工程S4において、空気を置換する操作中に、真空にして真空度を-0.1MPa~0.001MPa(ゲージ圧)にし、5~20分間維持した後、不活性ガスを再充填し、より好ましくは空気を置換する操作を5~15回、より好ましくは8~10回繰り返す。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態によれば、工程S5において、混合物を4~50時間、好ましくは8~45時間加熱する。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態によれば、工程S5において、混合物は80~140℃、より好ましくは85~120℃の温度で加熱される。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態によれば、工程S5において、ポリアミドチップを、50℃~100℃の温度の熱水ですすぐ。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態によれば、工程S5において、ポリアミドチップは、真空乾燥、凍結乾燥、気流乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥、及び高周波乾燥から選択される1つ又は複数によって乾燥される。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ポリアミド樹脂を調製するための方法は、
(1)反応器内でポリアミドチップを水と混合し、次いで反応器内の空気を不活性ガスで置換する工程;及び
(2)その混合物を不活性ガス雰囲気中で加熱し、ポリアミドチップをろ過し、ポリアミドチップをすすぎ、そしてポリアミドチップを乾燥させてポリアミド樹脂を得る工程
を含む。
【0057】
工程(1)で説明したポリアミドチップは、市販のポリアミドチップ、S1~S3を含む上記の方法に従って調製されたポリアミドチップ、又は他の方法に従って調製されたポリアミドチップである。工程(1)において、反応器は、連続抽出カラム及びバッチ反応釜から選択される。反応器内の空気を置換する操作方法は、真空ポンプを使用して反応器を真空にする工程と、次いで不活性ガスで反応器を再充填する工程とを含む。反応器内の空気を置換する操作は、2回以上繰り返される。水は脱イオン水であり、好ましくは脱酸素処理を施した脱イオン水である。水の質量は、ポリアミドペレットの質量の1倍以上、好ましくは2倍以上、例えば、1~12倍、2~10倍、2~6倍、例えば、3倍、5倍、8倍、又は10倍である。工程(1)及び工程(2)において、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、及びヘリウムガス等から選択される1種又は複数である。
【0058】
工程(2)において、加熱時間は4~50時間、好ましくは8~45時間であり、加熱温度は80~140℃、更に85~120℃であり、すすぎは50℃~100℃の温度の熱水で実施され、乾燥は真空乾燥、凍結乾燥、気流乾燥、マイクロ波乾燥、赤外線乾燥、及び高周波乾燥から選択される1つ又は複数である。
【0059】
本開示の第3の目的は、上記のポリアミド樹脂のいずれかを含む樹脂組成物を提供することである。
【0060】
本開示の第4の目的は、上記のポリアミド樹脂のいずれかを原料として使用して調製される繊維を提供することである。
【0061】
いくつかの実施形態では、繊維は3.3~10.0cN/dtex、好ましくは3.5~9.0cN/dtex、より好ましくは4.0~8.5cN/dtex、3.0~7.0cN/dtex、4.0~10.0cN/dtex、又は4.0~6.0cN/dtex、例えば5cN/dtex、6cN/dtex、又は7cN/dtexの引張り強さを有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、繊維は10%~90%、好ましくは15%~80%、より好ましくは18%~55%、例えば20%、25%、35%、40%、又は47%の引伸破断力を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、繊維は1.0%~13.8%、好ましくは3.0%~12.0%、3.0%~10.0%、又は3.0%~7.0%、例えば4.5%、5%、6.5%、7%、又は8%の沸水収縮率を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、繊維は11~2330dtex、好ましくは33.0~933dtex、44.0~555dtex、30~100dtex、又は30~60dtex、例えば130dtex、220dtex、300dtex、又は400dtexの線密度を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、繊維は1.5%以下、好ましくは1.3%以下、より好ましくは1.2%以下、なおより好ましくは1.0%以下の糸むらを有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、繊維は96%以上、好ましくは97%以上、より更には98%以上の完成品率を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、繊維は96%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、一層より好ましくは98.5%以上、なおより好ましくは99%以上の染色M率を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、繊維は2(回/24時間)以下、好ましくは1(回/24時間)以下、より好ましくは0(回/24時間)の糸切れ回数を有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、繊維のフィラメント切れ数は、3(フィラメント切れ/9kgパッケージ)以下、好ましくは2(フィラメント切れ/9kgパッケージ)以下、より好ましくは1(フィラメント切れ/9kgパッケージ)以下のフィラメント切れ数を有する。
【0070】
本開示の第5の目的は、上述した繊維を調製するための方法であって、その方法は、以下の工程:
(a)ポリアミド樹脂を溶融状態へと加熱して、ポリアミド溶融物を形成する工程;
(b)そのポリアミド溶融物を紡糸して、紡績したままの糸(as-spun yarn)を形成する工程;及び
(c)紡績したままの糸を後加工して、ポリアミド繊維を得る工程
を含む。
【0071】
後加工には、冷却処理、及び/又は、延伸処理、及び/又は、巻取り処理、及び/又は、セット処理が含まれる。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態によれば、繊維調製工程の間、紡糸口金拭き取りサイクルは3(回/24時間)以下、好ましくは2(回/24時間)以下、より好ましくは1(回/24時間)以下である。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態によれば、工程(c)で得られる繊維は、未延伸糸(POY)、中延伸糸(medium oriented yarn)(MOY)、高延伸糸(HOY)、延伸加工糸(DTY)、延伸糸(FDY)、工業用糸(IDY)、嵩高連続フィラメント(BCF)、短繊維、及びモノフィラメント繊維を含む。
【0074】
従来技術と比較して、本開示は少なくとも以下の利点を有する。
1.本開示のポリアミド樹脂の調製方法は、大規模な装置を使用することなく簡便であり、そのプロセスパラメータは制御が容易であり、それによりその大量生産が容易になる。
2.本開示のポリアミド樹脂は、少ない水抽出性物質、長い紡糸口金拭き取りサイクル時間、少ないフィラメント切れ回数を有し、得られるポリアミド繊維は、少ないフィラメント切れ、少ない繊維の糸むら、少ない染めの黒い点(dark grain)、良好な染色効果を有し、且つ繊維は、優れた引伸破断力、引張り強さ、低い沸水収縮率、高い紡糸収率、及び高い染色収率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本開示の目的、技術的解決策、及び利点をより明確にするために、本開示の実施形態における技術的解決策を、本開示の実施形態と併せて明確且つ完全に以下に説明する。明らかに、記載された実施形態は、本開示の実施形態のすべてではなく、実施形態の一部に過ぎない。本開示の実施形態に基づき、創造的な作業を伴わずに当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本開示の保護範囲に属する。
【0076】
1.相対粘度ηrを測定するための方法
相対粘度は、ウベローデ粘度計を使用した濃硫酸法で測定され、次の工程を含む。乾燥ポリアミド試料0.5±0.0002gを正確に秤量し、濃硫酸(98%)50mLを添加して溶解し、25℃の一定温度の水浴中で濃硫酸の流下時間t0及びポリアミド溶液の流下時間tを測定し記録する。
【0077】
相対粘度を計算するための式は、以下の通りである。
相対粘度ηr=t/t0
(式中、tは、ポリアミド溶液の流下時間であり;t0は、濃硫酸溶媒の流下時間である。)
【0078】
2.水分含有量
水分含有量は、カールフィッシャー水分滴定装置によって、樹脂試料1gを使用して、温度200℃において、試験時間20分で測定する。
【0079】
3.末端アミノ基含有量の測定
試料をトリフルオロエタノールで溶解した後、塩酸標準液及び水酸化ナトリウム標準液で滴定し、次いで末端アミノ基の含有量を計算する。
【0080】
4.数平均分子量(単位:g/mol)の測定
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定する。
【0081】
5.ポリアミド樹脂中の水抽出性物質の含有量の測定
ポリアミド試料を130℃において送風オーブン中で7時間乾燥させ、次いでアルミニウムプラスチック袋に密封して乾燥機中で冷却し、約2gのポリアミド試料を正確に秤量し、ポリアミド試料の実際の質量(m1)を記録する。ポリアミド試料を250mLの丸底フラスコに入れ、脱イオン水100mLを添加し、97℃~100℃において24時間加熱還流し、ポリアミド試料を水で抽出し、脱イオン水で3回洗浄し、次いで、130℃において送風オーブン中で7時間乾燥させ、次いであらかじめ秤量しておいたアルミニウムプラスチック袋に移し、密封し、次いで乾燥機中で冷却し、アルミニウムプラスチック袋及びポリアミド試料の合計質量並びにアルミニウムプラスチック袋の質量をそれぞれ秤量し、前者から後者を差し引いて、水抽出後のポリアミド試料の質量(m2)を得る。水抽出性物質の含有量は、次の式: 水抽出性物質の含有量(%)=(m1-m2)/m1×100%、に従って水抽出前後のポリアミド試料の質量の差から計算する。
【0082】
更に、ポリアミド樹脂溶融物中の水抽出性物質の含有量を測定する場合、溶融物を密閉容器に入れ、冷却し、次いで上記の方法に従って試験するためにサンプリングする。
【0083】
6.線密度
線密度は、GB/T14343-2008に準拠して測定する。
【0084】
7.沸水収縮率
沸水収縮率は、GB/T6505-2008に準拠して測定する。
【0085】
8.フィラメント切れ回数
フィラメント切れ回数(回/24時間)は、手動で数えられる。フィラメント切れ回数が少ないということは、紡糸性がより良好であることを意味すると考えられている。
【0086】
9.糸むら
糸むらは、GB/T14346-93に準拠して測定する。
【0087】
10.繊維の完成品率
完成品率=(調製された完成繊維の質量/投入された樹脂の総質量)×100%。
【0088】
11.染色M率
上記調製方法によって調製されたポリアミド繊維の染色均一性は、染色均一性法(ASTMZ7667-B999)を使用して測定し、染色M率は、5段階色判定標準法を使用して測定する。
M率=(4.5以上の染色均一性を有する繊維の数)/全染色繊維の総数)×100%。
【0089】
12.フィラメント切れ数
フィラメント切れ数は、手動で測定する。
【0090】
13.引張り強さ及び引伸破断力
これらは、GB/T14344-2008の人工フィラメント糸の引張試験方法(Testing method for tensile of man-made filament yarn)を参照して、プレテンション力0.05±0.005cN/dtex、及びクランプ距離(clamping distance)500mm、及び延伸速度500mm/分の条件で測定した。
【0091】
14.紡糸口金拭き取りサイクル
紡糸口金拭き取りサイクルは、手動で計算する。
【実施例】
【0092】
(調製例1)
(1)窒素ガス雰囲気下で、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸、及び水を、1,5-ペンタンジアミンのアジピン酸に対するモル比が1.08:1となるように均一に混合し、60質量%のナイロン塩溶液を調製した。この%はナイロン塩溶液を基準とした質量%である。このナイロン塩溶液をサンプリングしたところ、10質量%の濃度に希釈した場合、7.85のpH値を有していた。
(2)上記溶液を加熱し、反応系内の圧力を1.5時間かけて2.3MPaへと上昇させ、次いで脱気して圧力を3時間維持した。圧力維持過程終了時、反応系の温度は245℃であり、次いで1時間かけて反応系内の圧力を0.003MPa(ゲージ圧)へと減圧した。減圧終了時、反応系の温度は273℃であった。反応系を32分間真空にして-0.06MPaの真空度を維持し、真空にした後の反応系の温度は272℃であり、ポリアミド56の溶融物を得た。
(3)工程(2)で得られた溶融物を排出させ、20℃の水温において水中でストランドペレット化を実施して、ポリアミド56のチップを得た。
【0093】
(調製例2)
(1)窒素ガス雰囲気下、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸、デカン二酸(アジピン酸の3質量%を占める)、及び水を、1,5-ペンタンジアミンのアジピン酸及びデカン二酸の合計に対するモル比が1.06:1となるように均一に混合して、ナイロン塩溶液62質量%を得た。この%はナイロン塩溶液を基準とした質量%である。このナイロン塩溶液をサンプリングしたところ、10質量%の濃度に希釈した場合、8.4のpH値を有していた。次いでナイロン塩溶液に、カプロラクタム2%、酢酸400ppm、安息香酸600ppm、消泡剤10ppm、及び次亜リン酸ナトリウム18ppmを添加した。
(2)上記溶液を加熱し、反応系内の圧力を1.5時間かけて2.1MPaへと上昇させ、次いで脱気して圧力を3時間維持した。圧力維持過程終了時、反応系の温度は245℃であった。圧力を0.5MPaまで再び低下させ、この時点で、配合されたTiO2水溶液(15質量%のTiO2含有量を有する)を、二酸化チタンのナイロン塩に対する質量比が0.3%となるように添加し、次いで反応系内の圧力を1時間かけて0.004MPa(ゲージ圧)まで低下させた。減圧終了時、反応系の温度は276℃であった。反応系を30分間真空にし、-0.07MPaの真空度を維持し、真空にした後の反応系の温度は273℃であり、ポリアミド溶融物を得た。
(3)工程(2)において得られた溶融物を排出させ、21℃の水温において水中でストランドペレット化を実施して、ポリアミドチップを得た。
【0094】
(実施例1-A)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:6となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.08MPa(ゲージ圧)にし、12分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を9回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、上記の混合物を98℃において45時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、94℃の熱水ですすぎ、次いで103℃において18時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0095】
(実施例1-B)
(a)調製例2で調製したポリアミドチップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:6となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.08MPa(ゲージ圧)にし、11分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を9回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、その混合物を98℃において45時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、95℃の熱水ですすぎ、次いで103℃において18時間真空乾燥してポリアミド樹脂を得た。
【0096】
(実施例2)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:6となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.09MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を9回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、上記の混合物を90℃において32時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、95℃の熱水ですすぎ、次いで105℃において15時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0097】
(実施例3)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:3となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.07MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を5回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、上記の混合物を96℃において48時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、95℃の熱水ですすぎ、次いで105℃において15時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0098】
(実施例4)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:6となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.08MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、混合物を95℃において35時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、60℃の熱水ですすぎ、次いで105℃において15時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0099】
(実施例5)
(1)窒素ガス雰囲気下、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸、及び水を、1,5-ペンタンジアミンのアジピン酸に対するモル比が1:1となるように均一に混合し、70質量%のナイロン塩溶液を調製した。この%はナイロン塩溶液を基準とした質量%である。このナイロン塩溶液をサンプリングしたところ、10質量%の濃度に希釈した場合、7.96のpH値を有していた。
(2)上記溶液を加熱し、反応系内の圧力を1.5時間かけて2.0MPaへと上昇させ、次いで脱気して圧力を2.40MPaにおいて3時間維持した。圧力維持過程終了時、反応系の温度は243℃であり、次いで1時間かけて反応系内の圧力を0.005MPa(ゲージ圧)へと減圧した。減圧終了時、反応系の温度は290℃であった。反応系を30分間真空にして-0.08MPaの真空度を維持し、真空にした後の反応系の温度は290℃であり、ポリアミド56の溶融物を得た。
(3)工程(2)で得られた溶融物を排出させ、ストランドペレット化を実施した。
(4)ポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:6となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.07MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返す工程が含まれていた。
(5)工程(4)で得られた反応混合物を、N2とともに導入することによって保護し、96℃において46時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、95℃で水ですすぎ、105℃で15時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0100】
(実施例6)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れし、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:12となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.09MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返す工程が含まれていた。
(b)工程(a)で得られた反応混合物をN2ガスとともに導入することによって保護し、95℃において50時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、95℃において熱水ですすぎ、次いで105℃において15時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0101】
(実施例7-A)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:20となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.09MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、反応混合物を95℃において50時間加熱し、次いでろ過し、チップを水から分離し、95℃において熱水ですすぎ、次いで105℃において15時間真空乾燥してポリアミド56樹脂を得た。
【0102】
(実施例7-B)
(a)調製例1で調製したポリアミド56チップを反応釜に入れ、次いで脱酸素脱イオン水を、チップの脱酸素脱イオン水に対する質量比が1:40となるように添加した。空気を窒素ガスで置換し、具体的な操作方法には、真空ポンプで真空にして真空度を-0.09MPa(ゲージ圧)にし、10分間真空を維持し、次いで窒素ガスを充填し、窒素ガスの置換を10回繰り返す工程が含まれていた。
(b)N2ガス雰囲気下、上記の反応混合物を95℃で50時間加熱した。
【0103】
次いでろ過し、チップを水から分離し、分離したチップを原料として使用して、工程(a)~(b)を3回繰り返し、次いでチップを95℃において熱水ですすぎ、次いで105℃において15時間真空乾燥して、ポリアミド56樹脂を得た。
【0104】
(実施例7-C)
(1)窒素ガス雰囲気下、1,5-ペンタンジアミン、アジピン酸、及び水を、1,5-ペンタンジアミンのアジピン酸に対するモル比が1.05:1となるように均一に混合して、60質量%のナイロン塩溶液を調製した。この%はナイロン塩溶液を基準とした質量%である。このナイロン塩溶液をサンプリングしたところ、10質量%の濃度に希釈した場合、7.98のpH値を有していた。
(2)上記溶液を加熱し、反応系内の圧力を1.5時間かけて2.0MPaへと上昇させ、次いで脱気して圧力を3時間維持した。圧力維持過程終了時、反応系の温度は243℃であり、次いで1時間かけて反応系内の圧力を0.005MPa(ゲージ圧)まで低下させた。減圧終了時、反応系の温度は290℃であった。反応系を30分間真空にして-0.08MPaの真空度を維持し、真空にした後の反応系の温度は290℃であり、ポリアミド56の溶融物を得た。
(3)工程(2)で得られた溶融物を排出させ、20℃の水温において水中でストランドペレット化を実施した。
(4)このチップを105℃において15時間真空乾燥させて、ポリアミド56樹脂を得た。
【0105】
(実施例8)
実施例1-Aにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸(single screw)押出機で紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、280℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流(melt streamlet)となり、紡糸口金プレートは48個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.25mm、深さは0.75mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度85%、及び風速0.45m/秒で、サイド送風装置(side-blowing device)によって冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネル(spinning channel)を通過させた後、冷却成形したトウ(tow)を、第1及び第2のゴデット(godet)に引き取り、次いで巻取り機で4300m/分の巻取り速度で紡糸ケーキへと巻き取り、未延伸糸(POY, preoriented yarn)を得た。
【0106】
(実施例9)
実施例1-Aにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン56延伸糸(FDY, full drawn yarn)を得た。
【0107】
(実施例10)
実施例1-Aにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは51個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.2mm、深さは0.6mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度83%、及び風速0.4m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、4200m/分の巻取り速度で第1及び第2のゴデットに引き取り、ポリアミド56未延伸糸を製造した。加工速度550m/分、延伸比1.28、D/Y比1.65、及び加熱箱温度185℃の原糸加工機で、未延伸糸を延伸、加ねん、セット、及びグリッド加工し、延伸加工糸(DTY, draw textured yarn)を得た。
【0108】
(実施例11)
実施例3において調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、280℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは48個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.25mm、深さは0.75mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度85%、及び風速0.45m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、第1及び第2のゴデットに引き取り、次いで巻取り機で4300m/分の巻取り速度で紡糸ケーキへと巻き取り、未延伸糸(POY)を得た。
【0109】
(実施例12)
実施例3において調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン56延伸糸(FDY)を得た。
【0110】
(実施例13)
実施例3において調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは51個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.2mm、深さは0.6mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度83%、及び風速0.4m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、4200m/分の巻取り速度で第1及び第2のゴデットに引き取り、ポリアミド56未延伸糸を製造した。加工速度550m/分、延伸比1.28、D/Y比1.65、及び加熱箱温度185℃の原糸加工機で、未延伸糸を延伸、加ねん、セット、及びグリッド加工し、延伸加工糸(DTY)を得た。
【0111】
(実施例14)
実施例4で調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、280℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは48個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.25mm、深さは0.75mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度85%、及び風速0.45m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、第1及び第2のゴデットに引き取り、次いで巻取り機で4300m/分の巻取り速度で紡糸ケーキへと巻き取り、未延伸糸(POY)を得た。
【0112】
(実施例15)
実施例4において調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン56延伸糸(FDY)を得た。
【0113】
(実施例16)
実施例4において調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金は51個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.2mm、深さは0.6mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度83%、及び風速0.4m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、4200m/分の巻取り速度で第1及び第2のゴデットに引き取り、ポリアミド56未延伸糸(POY)を製造した。加工速度550m/分、延伸比1.28、D/Y比1.65、及び加熱箱温度185℃の原糸加工機で、未延伸糸を延伸、加ねん、セット、及びグリッド加工し、延伸加工糸(DTY)を得た。
【0114】
(実施例17)
実施例7-Bにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸加熱押出機(single screw heating)を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、280℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは48個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.25mm、深さは0.75mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度85%、及び風速0.45m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、第1及び第2のゴデットに引き取り、次いで巻取り機で4300m/分の巻取り速度で紡糸ケーキへと巻き取り、未延伸糸(POY)を得た。
【0115】
(実施例18-A)
実施例7-Aにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン56延伸糸(FDY)を得た。
【0116】
(実施例18-B)
実施例7-Bにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン56延伸糸(FDY)を得た。
【0117】
(実施例19)
実施例7-Bにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは51個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.2mm、深さは0.6mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度83%、及び風速0.4m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、4200m/分の巻取り速度で第1及び第2のゴデットに引き取り、ポリアミド56未延伸糸(POY)を製造した。加工速度550m/分、延伸比1.28、D/Y比1.65、及び加熱箱温度185℃の原糸加工機で、未延伸糸を延伸、加ねん、セット、及びグリッド加工し、延伸加工糸(DTY)を得た。
【0118】
(実施例20)
実施例1-Bにおいて調製したポリアミド樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、280℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは48個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.25mm、深さは0.75mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度85%、及び風速0.45m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、第1及び第2のゴデットに引き取り、次いで巻取り機で4300m/分の巻取り速度で紡糸ケーキに巻き取り、未延伸糸(POY)を得た。
【0119】
(実施例21)
実施例1-Bにおいて調製したポリアミド樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン延伸糸(FDY)を得た。
【0120】
(実施例22)
実施例1-Bにおいて調製したポリアミド樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは51個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.2mm、深さは0.6mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度83%、及び風速0.4m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、4200m/分の巻取り速度で第1及び第2のゴデットに引き取り、ポリアミド未延伸糸(POY)を製造した。加工速度550m/分、延伸比1.28、D/Y比1.65、及び加熱箱温度185℃の原糸加工機で、未延伸糸を延伸、加ねん、セット、及びグリッド加工し、延伸加工糸(DTY)を得た。
【0121】
(実施例23)
実施例7-Cにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、280℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金は48個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.25mm、深さは0.75mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度85%、及び風速0.45m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、第1及び第2のゴデットに引き取り、次いで巻取り機で4300m/分の巻取り速度で紡糸ケーキに巻き取り、未延伸糸(POY)を得た。
【0122】
(実施例24)
実施例7-Cにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは36個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.22mm、深さは0.605mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温21℃、風湿度90%、及び風速0.43m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャンネルを通過させた後、冷却成形したトウを、巻取り速度4800m/分、ドラフト比1.5、及び設定温度155℃で、第1及び第2の対の加熱ゴデットに引き取り、ナイロン56延伸糸(FDY)を得た。
【0123】
(実施例25)
実施例7-Cにおいて調製したポリアミド56樹脂を、フィーダーを通して紡糸装置に供給し、次いで加熱後、単軸押出機を介して紡糸パックに均一に分配した。紡糸マニホールドの温度は、283℃であった。紡糸口金から排出された後、ポリアミド56樹脂は溶融した細流となり、紡糸口金プレートは51個のオリフィスを有し、各オリフィスの直径は0.2mm、深さは0.6mmであった。ポリアミド56樹脂を、風温22℃、風湿度83%、及び風速0.4m/秒で、サイド送風装置により冷却成形した。紡糸仕上げ剤を施し、紡糸チャネルを通過させた後、冷却成形したトウを、4200m/分の巻取り速度で第1及び第2のゴデットに引き取り、ポリアミド56未延伸糸(POY)を製造した。加工速度550m/分、延伸比1.28、D/Y比1.65、及び加熱箱温度185℃の原糸加工機で、未延伸糸を延伸、加ねん、セット、及びグリッド加工し、延伸加工糸(DTY)を得た。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表1~表4から分かるように、本開示のポリアミド樹脂は、水抽出性物質の含有量が少なく、このポリアミド樹脂から調製された繊維は、優れた引伸破断力、引張り強さを有し、沸水収縮率が低く、糸むら等が少ない。更に、紡糸過程では、フィラメント切れ回数が少なく、紡糸口金拭き取りサイクル時間が長く、紡糸により得られる繊維の糸むらが少なく、染色均一性が改善され、染色M率が高い。水抽出性物質の含有量が少ない樹脂は、紡糸過程中の紡糸口金下での水抽出性物質の析出及び凝固を低減することができ、それにより、紡糸過程中に水抽出性物質が過剰に析出して、浮遊フィラメント、モノフィラメント切れ、及び紡糸口金の頻繁な拭き取り等の現象が発生することを回避することができ、繊維の完成品率を更に向上させることができる。
【0129】
最後に、上記の実施例は、本開示の技術的解決策を説明することのみを意図したものであり、それらを限定するものではないことに留意されたい。本開示を前述の実施例を参照して詳細に説明したが、当業者であれば、前述の実施例に記載された技術的解決策に依然として修正を加えることができるか、又はその技術的特徴の一部又は全部に同等の置換を加えることができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決策の本質を本開示の実施例における技術的解決策の範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
【国際調査報告】