(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】キャピラリーリアクターにおけるポリアクリレートの半連続懸濁重合
(51)【国際特許分類】
C08F 220/06 20060101AFI20240524BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F2/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576023
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2022064844
(87)【国際公開番号】W WO2022258445
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】パートリック レーブ
(72)【発明者】
【氏名】シビル フォン ボンハート
(72)【発明者】
【氏名】ラベア シェーラー
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ムシャノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ナーゲル
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011JA02
4J011JB14
4J011JB25
4J100AJ02P
4J100AM24Q
4J100CA04
4J100CA23
4J100EA03
4J100FA03
4J100FA21
4J100JA19
(57)【要約】
本発明は、懸濁重合およびそれに続く凝集によるポリアクリレート粒子の製造方法に関する。本発明は、所定の形状およびサイズを有するポリマー粒子の製造方法であって、該方法によって、熱管理の改善が可能となるとともに、有機物質が最小限度の量で済む方法を規定するという課題に基づく。生成されるアンダーサイズの量が可能な限り少なくなるようにするため、粒子の形状およびサイズを確立するための機械的作業工程、特に粉砕およびふるい分けが回避されることが望ましい。最終的には、この方法を工業的規模で経済的に運転できるようにすることが望ましい。本発明による方法の重要な態様は、重合工程と凝集工程とを別々の装置で実施することであり、すなわち、懸濁重合を連続運転式のキャピラリーリアクターで実施し、凝集をバッチリアクターで実施することである。本発明のさらなる重要な態様は、マイクロ構造装置の使用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁重合および凝集によるポリアクリレート粒子の製造方法であって、以下:
a)少なくとも以下の成分を有するモノマー溶液を提供する工程:
・少なくとも部分的に中和されていてよいアクリル酸;
・少なくとも1つの架橋剤;
・少なくとも1つの開始剤または開始剤系の一部;
・水;
b)脂肪族炭化水素または脂肪族炭化水素を含む混合物である有機分散剤を提供する工程;
c)少なくとも1つの界面活性剤を提供する工程;
d)少なくとも1つのピッカリング乳化剤を提供する工程;
e)前記分散剤中に前記モノマー溶液を分散させることにより、分散液を製造する工程;
f)前記界面活性剤の存在下に前記分散剤内で前記アクリル酸を重合させることにより、前記分散剤中に懸濁した一次ポリアクリレート粒子を得る工程;
g)前記一次ポリアクリレート粒子を前記分散剤内で前記ピッカリング乳化剤の存在下に凝集させて、二次ポリアクリレート粒子を得る工程;
h)前記二次ポリアクリレート粒子を前記分散剤から分離する工程;
を含む方法において、
i)前記重合を、少なくとも部分的に、平行に整列された複数のキャピラリーを有する連続運転式の第1のリアクターで行い、前記キャピラリーの内部が、前記リアクターの反応空間を形成し、前記第1のリアクターが、少なくとも1つの導管を有し、前記導管は、前記キャピラリーに沿って延在し、前記導管を伝熱媒体が流れ;
k)前記凝集を、少なくとも部分的に、少なくとも1つの容器を有する非連続運転式の第2のリアクターで行い、前記容器の内部が、前記第2のリアクターの反応空間を形成する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記界面活性剤と前記ピッカリング乳化剤との双方を前記分散剤中に提供して、前記分散液の製造および前記モノマーの前記重合を、前記界面活性剤および前記ピッカリング乳化剤の存在下に行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤とピッカリング乳化剤とを別々に、すなわち、前記分散剤と前記界面活性剤とを含む第1のバッチと、前記分散剤と前記ピッカリング乳化剤とを含む第2のバッチとに分けて提供し、前記分散液を2工程で、すなわち、前記モノマーを前記第1のバッチと混合する第1の工程と、前記第1のバッチと前記モノマーとの混合物を前記第2のバッチと混合する第2の工程との2工程で製造する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1のバッチと前記モノマーとの混合物を前記第2のバッチと混合する前記第2の工程を、少なくとも1つの第2のマイクロ構造ミキサー、特にキャタピラーミキサーで行う、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記モノマーを前記第1のバッチと混合する前記第1の工程を、少なくとも1つの第1のマイクロ構造ミキサーで行い、前記第1のマイクロ構造ミキサーの設計が、インターデジタルミキサーおよびキャタピラーミキサーからなる群から選択される、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記界面活性剤を前記分散剤中で提供し、前記ピッカリング乳化剤を前記凝集の開始時になってから計量供給することで、前記分散液の製造および前記重合を、前記界面活性剤の存在下でかつ前記ピッカリング乳化剤の不在下で行う、請求項1記載の方法。
【請求項7】
DIN EN ISO 175(発行日2011年3月1日)に準拠して試験温度70℃、試験時間1時間で測定された、前記分散剤に浸漬した際の前記ポリアクリレート粒子の重量変化パーセンテージが、100未満である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステルである、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ピッカリング乳化剤が、オルガノクレイである、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
各キャピラリーが長さLおよび等価直径dを有し、各キャピラリーのL/d比が50~500である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記キャピラリーの前記等価直径が、1mm~10mmである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第1のリアクターが、複数の導管を有し、前記導管が、前記キャピラリーに沿って延在し、前記導管を前記伝熱媒体が流れることで、前記伝熱媒体用導管と前記キャピラリーとが一緒になって平行アセンブリを形成している、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記モノマー溶液が、以下の成分:
・アクリル酸;
・前記アクリル酸の初期重量に対して33重量%~50重量%の水酸化ナトリウム;
・前記アクリル酸の初期重量に対して164重量%~247重量%の水;
・前記アクリル酸の初期重量に対して778重量ppm~1167重量ppmの、架橋剤としてのN,N’-メチレンビスアクリルアミド;
・前記アクリル酸の初期重量に対して1206重量ppm~1809重量ppmの、開始剤としてのペルオキソ二硫酸カリウム;
を有し、
分散剤としてシクロヘキサンを使用し、
・シクロヘキサンの使用量は、前記アクリル酸の初期重量に対して606重量%~909重量%であり;
界面活性剤としてソルビタン脂肪酸エステルを使用し、
・ソルビタン脂肪酸エステルの使用量は、前記アクリル酸の初期重量に対して1重量%~2重量%であり;
ピッカリング乳化剤として層状シリケートを使用し、
・層状シリケートの使用量は、前記アクリル酸の初期重量に対して2重量%~3重量%である、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記モノマー溶液を、以下:
a)アクリル酸を提供する;
b)水酸化ナトリウム水溶液を供給する;
c)メチレンビスアクリルアミドを提供する;
d)ペルオキソ二硫酸カリウムを含む水溶液を提供する;
e)アクリル酸、水酸化ナトリウム水溶液およびメチレンビスアクリルアミドを混合し、中和されたアクリル酸を得る;
f)前記中和されたアクリル酸と、前記ペルオキソ二硫酸カリウムを含む水溶液とを、少なくとも1つのインターデジタルミキサーで混合する
のように提供する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記分散剤から分離された二次ポリアクリレート粒子を乾燥させ、その際、ISO 17190-3(2001年12月1日発行)に準拠して測定された乾燥二次ポリアクリレート粒子の粒度分布のD
50値が、200μm~600μmであるが、ただし、前記分離された二次粒子も前記乾燥二次ポリアクリレート粒子も、粉砕および/または分級に供しないものとする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁重合およびそれに続く凝集によるポリアクリレート粒子の製造方法に関する。
【0002】
懸濁重合という用語は、文献や技術用語の中で統一的に用いられているわけではない。したがって、ここではまず用語を注意深く定義する必要がある。
【0003】
ここで懸濁重合について言及する場合、これはモノマーまたはモノマー溶液の液滴を連続相中で重合させ、その際、連続相には、モノマーも形成されたポリマーも溶解しないものとするプロセスを意味する。
【0004】
したがって、ここで用いる懸濁重合という用語は、Slomkowski, S., Aleman, J., Gilbert, R., et al. (2011). Terminology of polymers and polymerization processes in dispersed systems (IUPAC Recommendations 2011). Pure and Applied Chemistry, 83(12), pp. 2229-2259. doi:10.1351/PAC-REC-10-06-03の「懸濁重合」の定義に準拠している。
【0005】
このようなプロセスの終了時には、形成されたポリマーは、液体連続相中に固体として懸濁されている。プロセスの開始時には、モノマーまたはモノマー溶液は、連続相内で液滴の形態で存在しており、これは、モノマーまたはモノマー溶液が液体であることを示唆している。液体連続相中で微細に分散した液滴は、総じてエマルションと呼ばれる。本明細書で取り上げられるプロセスが「乳化重合」と呼ばれることもあるのはこのためである。しかし、Slomkowski,S.、Aleman,J.、Gilbert,R.らの定義によれば、「乳化重合」という用語は、コロイドスケールの系に限定される。しかし、本明細書で取り上げられる本発明は、必ずしもコロイド系で起こるとは限らない。技術者の中には、特に水性系に対して乳化重合という用語を用いる人もいる。しかし、本発明は有機媒体中でも作用する。これらの理由から、乳化重合という用語は、本発明には不適切である。本明細書では、Slomkowski,S.、Aleman,J.、Gilbert,R.らが意味する懸濁重合に限定して言及する。有機分散剤中に微細に分散した水相中にモノマーが存在する場合、このプロセスは「逆懸濁重合」とも呼ばれ得る。
【0006】
不要な混乱を引き起こさないために、以下、エマルションという用語を完全に避ける。その代わりに、本発明による反応系を説明する場合には、分散液という用語を用いる。
【0007】
分散液とは、液体連続相中に液滴および/または固体粒子が微細に分散している混合物を指す。Heusch, R. and Reizlein, K. (2000). Disperse Systems and Dispersants, Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, (Ed.). doi:10.1002/14356007.a08_577を参照のこと。
【0008】
したがって、「分散液」という用語は、重合前、重合中および重合後の反応混合物を指す。
【0009】
重合前のモノマー液滴は表面張力により実質的に球状であるため、重合直後のポリマー粒子も実質的に球状である。ここで、ポリマー粒子の直径は、実質的に液滴の直径と一致する。したがって、ポリマー粒子のサイズは、モノマーの液滴のサイズにより制御することができる。
【0010】
しかし、重合開始直後には、形成されたポリマー粒子や形成されたばかりのポリマー粒子が分散液内で合体し始め、より大きな凝集体を形成することに留意すべきである。このプロセスは凝集と呼ばれる。巨視的には、凝集体もまた粒子と見なされるが、この粒子は、必ずしも球状であるとは限らない。凝集体は、しばしばブラックベリーの形状を有し、すなわち、多くの小さな球体から構成された、規則的な形状の、比較的丸みがあるが球状ではない物体である。しかし、凝集体は、不規則な形状を有する場合もある。
【0011】
凝集体は時間とともにさらに成長するため、凝集の制御は、最終的に得られるポリマー粒子のサイズに大きな影響を与える。
【0012】
ここで、比較的球状の小粒子と、通常はブラックベリー状の大きな凝集体とを区別するために、本発明においては「一次粒子」および「二次粒子」について言及する。一次粒子は、モノマー液滴の重合から直接形成されるポリマーであり、二次粒子という用語は、一次粒子の合体によって形成される凝集体を指す。
【0013】
工業プロセスでは、重合と凝集は、はっきりと分かれた逐次的なステップではなく、同時にも進行する。したがって、プロセス終了時に、分散液には、まだ凝集していない新たな一次粒子と、以前の一次粒子から集合した二次粒子とが含まれている。したがって、この工程で得られるポリマー粒子のサイズ分布およびモルフォロジーは、重合と凝集との双方の工程レジームに依存する。
【0014】
他の重合プロセスと比較した、懸濁重合およびそれに続く凝集の技術的利点は、得られるポリマー粒子のモルフォロジーおよび粒度分布を、化学プロセス工学的手段を用いて極めて正確に調整できることである。粒子技術的手段によるポリマーの機械的後処理を、用途によっては省くことができる。理想的には、粒子を、すでに使用可能な形状およびサイズで懸濁液から取り出すことができる。
【0015】
したがって、懸濁重合およびそれに続く凝集によるポリマー粒子の製造は、ポリマー粒子が一定のモルフォロジーおよびサイズ分布を有する場合に特に重要である。
【0016】
ポリマー粒子のモルフォロジーおよびサイズ分布が重要である工業的関連性の例として、高吸収性物質の製造が挙げられる。
【0017】
「高吸収性物質」とは、衛生用品の分野で一般的に使用されている用語であり、吸水性ポリマー粒子を表すために使用される。工業的実地では、高吸収性物質は、通常はポリアクリレートまたはアクリル酸ナトリウムをベースとしている。これらには、大量の水または水性液体を吸収してハイドロゲルに結合させる能力がある。高吸収性物質は、紙おむつ、女性用衛生用品および失禁用品のような個人用の使い捨て衛生用品に組み込まれ、排泄された体液を吸収して衛生用品に固定する。ハイドロゲルは、スポンジとは異なり、ほとんど押しつぶすことができないため、吸収された体液は、機械的圧力がかかっても衛生用品内に留まる。
【0018】
吸水性ポリマー粒子の分野の序論は、Markus Frank: Superabsorbents. Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry. Published Online: 15 JAN 2003 DOI: 10.1002/14356007.f25_f01に提供されている。
【0019】
工業的実地では、高吸収性物質の製造は、通常は次のようにして行われる:
モノマー溶液が提供される。これは、少なくとも1つのモノマー、架橋剤、ほぼ常に水、およびさらなる助剤を含む。モノマーとして、通常はエチレン性不飽和物質、一般的にはアクリル酸が使用される。アクリル酸は、例えばカ性ソーダ液で部分的に中和されていてもよい。これに対応して、カ性ソーダ液で中和されたポリアクリレートは、より厳密にはアクリル酸ナトリウムである。コモノマーが含まれていてもよい。その後、モノマー溶液の重合が開始される。反応の過程でモノマーからポリマー鎖が形成され、これが架橋剤によって架橋されることでポリマーネットワークが得られる。モノマー溶液中に含まれる水がポリマーネットワークに取り込まれることにより、ハイドロゲルが生じる。
【0020】
ハイドロゲルが粗く粉砕されて乾燥されることで、水分がネットワークから排出される。乾燥した固体のポリマー材料が得られる。
【0021】
その後、粉砕およびふるい分けによって所望の粒度とされる。粒度は、用途によって異なる。衛生用品には、通常は約300μm~800μmの粒度を有する粉末状の高吸収性物質が組み込まれる。
【0022】
最後に、粒子の表面で後架橋が施される。その際に、粒子はコア-シェル構造を形成し、これは粒子の吸収特性に大きな影響を与える。所望の性能を狙いどおりに確立するために、必要に応じてさらなる添加物質が加えられる。
【0023】
すでに述べたように、粒子の形状およびサイズは高吸収性物質の使用性にとって非常に重要であり、例えば、不規則な形状の粒子は、球状の粒子よりも比表面積が大きい。表面積が大きいと吸水が促進されるため、不規則な形状の高吸収性物質は、球状の高吸収性物質よりも吸水が速い傾向がある。小さな高吸収性物質粒子は、比表面積が大きいと同時に吸収容量がわずかである。したがって、これらはまた、より大きな吸水性ポリマー粒子よりも迅速にハイドロゲルを形成する。特に不利な現象は、高吸収性物質粉末に細粒と粗粒との双方が含まれる場合に生じ、例えばおむつでは、これにより、高吸収性物質層に洪水状の負荷がかかった後に、まず細粒が膨潤することで、層全体の透過性が損なわれる。この結果、体液が、層のより大きな粒にもはやまったく到達しなくなり、衛生用品全体が機能しなくなる。この恐るべき現象は、「ゲルブロッキング効果」と呼ばれる。ゲルブロッキングを避けるための対策は、可能な限り狭い粒度分布を目指すことである。これは、粉末の個々の粒が統計的に可能な限り等しい大きさであり、したがって概ね等しい膨潤速度を有することを示唆している。
【0024】
高吸収性物質の形状およびサイズを最善の様式で調整するために、従来の製造プロセスでは、通常は「粉砕」および「ふるい分け」の作業工程が最適化されるが、それはまさに、これらの作業工程が、高吸収性物質の形状およびサイズを決定的に左右するためである。粉砕およびふるい分けの欠点は、その際に常にアンダーサイズ、つまり所望のサイズより小さい吸水性粒子が発生することである。これらの「微粉」は、手間をかけてプロセス内で再利用する必要がある。特に、再循環された微粉が生成物の品質を損なわないようにしなければならない場合、高度なプロセス工学的複雑さが要求される。よって、高吸収性物質を工業的規模で経済的に生産できるようにするためには、微粉の発生を可能な限り避けなければならない。
【0025】
微粉を避けるための技術的にまったく異なるアプローチは、「粉砕」や「ふるい分け」といった機械的な作業工程を省くことができるように、高吸収性物質を直接的にすぐに使えるサイズおよび形状で重合することである。
【0026】
これにより、懸濁重合およびそれに続く凝集が可能になる。
【0027】
国際公開第2016/087262号(第19頁の実施例6)から、懸濁重合によってポリアクリレートをベースとする吸水性ポリマー粒子を製造することが知られている。反応は撹拌槽型リアクターで行われる。撹拌槽型リアクター内でも粒子が凝集することが予想される。
【0028】
欧州特許出願公開第2993191号明細書(第14頁の実施例1)には、懸濁重合およびそれに続く凝集による吸水性ポリアクリレート粒子の製造方法が開示されている。重合および凝集は、有機分散剤中で界面活性剤の存在下に行われる。これら2つのプロセス工程は、撹拌槽型リアクター中で行われる。二次ポリアクリレート粒子は、すでに目標の粒度分布を有しているため、凝集後に最終的な粒度分布を確立するための追加の粉砕または分級工程は必要ない。
【0029】
この先行技術の1つの欠点は、高吸収性物質を工業的規模で製造できるようにするためには、懸濁重合を比較的大型の撹拌槽型リアクターで実施しなければならないことである。大型の撹拌槽型リアクターの場合、熱管理が難しく、特にリアクターの内部から反応熱を除去することが困難である。ポリアクリレートを得るためのアクリル酸の重合は著しく発熱性であるため、撹拌槽型リアクター内部の温度が著しく上昇する。例えば、形成されたばかりのポリマー粒子の局所的に限定的な過熱が生じることがあり、これが生成物品質に悪影響を及ぼす。このことは、撹拌槽においては結局、分散剤を相応して多量に使用することによってのみ防止でき、その際、ポリマーは、さほど高濃度にならない。その結果、相応して大きなリアクター容積も必要となり、これにより資本コストおよび運転コストが上昇する。それにより、粉砕および分級工程が省かれたことの利点が再び失われてしまう。さらに、分散剤として使用可能な有機物質は、健康上や環境上で懸念があることが多いため、多量に使用すべきではない。
【0030】
この先行技術に照らして、本発明は、アクリル酸をベースとし、所定の形状およびサイズを有するポリマー粒子の製造方法であって、該方法によって、熱管理の改善が可能となるとともに、有機物質が最小限度の量で済む方法を規定するという課題に基づく。生成されるアンダーサイズの量が可能な限り少なくなるようにするため、粒子の形状およびサイズを確立するための機械的作業工程、特に粉砕およびふるい分けが回避されることが望ましい。最終的には、この方法を工業的規模で経済的に運転できるようにすることが望ましい。
【0031】
これらの課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。
【0032】
したがって、本発明の主題は、懸濁重合および凝集によるポリアクリレート粒子の製造方法であって、該方法は、以下:
a)少なくとも以下の成分を有するモノマー溶液を提供する工程:
・少なくとも部分的に中和されていてよいアクリル酸;
・少なくとも1つの架橋剤;
・少なくとも1つの開始剤または開始剤系の一部;
・水;
b)脂肪族炭化水素または脂肪族炭化水素を含む混合物である有機分散剤を提供する工程;
c)少なくとも1つの界面活性剤を提供する工程;
d)少なくとも1つのピッカリング乳化剤を提供する工程;
e)分散剤中にモノマー溶液を分散させることにより、分散液を製造する工程;
f)界面活性剤の存在下に分散剤内でアクリル酸を重合させることにより、分散剤中に懸濁した一次ポリアクリレート粒子を得る工程;
g)一次ポリアクリレート粒子を分散剤内でピッカリング乳化剤の存在下に凝集させて、二次ポリアクリレート粒子を得る工程;
h)二次ポリアクリレート粒子を分散剤から分離する工程;
を含み、
i)重合を、少なくとも部分的に、平行に整列された複数のキャピラリーを有する連続運転式の第1のリアクターで行い、キャピラリーの内部が、リアクターの反応空間を形成し、第1のリアクターが、少なくとも1つの導管を有し、この導管は、キャピラリーに沿って延在し、この導管を伝熱媒体が流れ;
k)凝集を、少なくとも部分的に、少なくとも1つの容器を有する非連続運転式の第2のリアクターで行い、容器の内部が、第2のリアクターの反応空間を形成する、方法である。
【0033】
本発明による方法では、所望の粒度および粒子形状を確立するために、懸濁重合とそれに続く凝集とを組み合わせる。ここで、本発明による方法の重要な態様は、重合工程と凝集工程とを別々の装置で実施することであり、すなわち、懸濁重合を連続運転式のキャピラリーリアクターで実施し、凝集をバッチリアクターで実施することである。
【0034】
マイクロ構造装置の使用は、本発明のさらなる重要な態様である。連続運転式の第1のリアクターは、平行に整列された複数のキャピラリーを有し、キャピラリーの内部は、リアクターの反応空間を形成する。キャピラリーに沿って、少なくとも1つの導管がリアクターを通って延在し、この導管を通って伝熱媒体が流れる。導管は、キャピラリーの全体を管状に取り囲んでいてもよいし、複数のキャピラリーに組み込まれた複数の導管として設計されていてもよい。その場合、導管も同様に、複数のキャピラリーとして設計されており、リアクターのキャピラリーと束ねられている。いずれの場合も、少なくともキャピラリーの壁によって、伝熱媒体と反応混合物とが分離される。したがって、物質移動なしに反応混合物と伝熱媒体との間で熱が移動する。この点で、キャピラリーリアクターは多管式リアクターに類似しているが、キャピラリーの直径に対する長さの比は、管の場合よりもはるかに大きい。管状リアクターと比較すると、キャピラリーリアクターは、直径の小さい多数のキャピラリーを有するのに対して、管状リアクターは、それぞれ直径がより大きい少数の管で同じリアクター容積を実現する。キャピラリーの直径は、部分的にはミリメートルまたはサブミリメートルの範囲であるため、ミニリアクターまたはマイクロリアクターとも呼ばれる。このようなマイクロ構造装置を用いて工業的規模で生産できるようにするために、装置は、相応して平行に配置され、短い滞留時間で運転される。キャピラリーリアクターの滞留時間は、総じて管状リアクターよりも短いため、そこでは異なる流動条件も存在する。
【0035】
多管式リアクターとキャピラリーリアクターとのさらなる重要な相違点は、平行に配置された複数のキャピラリーは、必ずしも束ねる必要がないのに対して、管状リアクターは、伝統的には複数の管を組み合わせて(束ねて)チューブバンドルが得られるように製造されることである。対照的に、キャピラリーリアクターは付加製造が可能であるため、出発材料として、管はまったく使用されず、金属粉末が使用される。したがって、平行に整列された複数のキャピラリーは、チューブバンドルによってではなく、付加的に組み立てられた出発材料から直接得られる。
【0036】
化学的マイクロ構造工学の技術の序論は、Ehrfeld, W., Hessel, V., Loewe, H.: Microreactors: New Technology for Modern Chemistry. Published Online 29 April 2004. Wiley‐VCH Verlag GmbH. DOI:10.1002/3527601953に提供されている。
【0037】
撹拌槽型リアクターに対するキャピラリーリアクターの大きな利点は、熱管理がより優れていることである。キャピラリーリアクターでは、反応熱は、実質的に反応混合物を経由せずに伝熱媒体を通じて除去されるため、反応混合物とは明らかに異なる伝熱媒体を使用することが可能である。伝熱媒体は、第一に、物理的に高い熱容量を有することができるとともに、化学的にまったく異なる物質クラスに属していてもよく、なぜならば、伝熱媒体は、反応に関与しないかまたは反応に関与する物質と接触しないためである。例えば、伝熱媒体として水を使用することができるが、これは十分に無害であり、さらには熱容量も大きい。キャピラリーリアクターでは、分散剤は、重合液滴または新たな粒子からキャピラリーの壁へと熱を除去する機能を限られた程度でのみ担えばよいため、分散剤は、撹拌槽型リアクターよりもはるかに少量で使用することができる。このことは特に、分散剤が反応に関与する物質と接触するために、危険物質である特定の化学物質でなければならない場合に有利である。
【0038】
マイクロリアクターのさらなる利点は、その高いプロセス強度である。このため、バッチリアクターに比べて構築スペースが削減され、これによりセットアップコストの利点が引き出される。
【0039】
キャピラリーリアクターでは、短い滞留時間によっても高いプロセス強度が達成される。多くの重合はかなり急速に進行するため、これらはキャピラリーリアクターでも実施できる。凝集の場合は事情が異なる。これには一定の時間が必要であるが、キャピラリーリアクターではこの時間を確保できない。それにもかかわらず、凝集を可能にするために、本発明では、別の装置、すなわちバッチリアクターで重合の前に凝集を行うことが提供される。
【0040】
最も単純な場合、バッチリアクターは容器であり、その内部は、凝集が進行する反応空間を形成する。凝集は、重合ほど著しい発熱性ではないため、凝集中の注意深い熱管理は重要ではない。その代わり、バッチリアクターでの滞留時間を正確に制御することが重要である。なぜならば、凝集のために粒子に確保できる時間が凝集体のサイズおよび形状を決定するためである。一次粒子がバッチリアクターに供給されてから所定の滞留時間が経過したら二次粒子をバッチリアクターから取り出すだけであるため、バッチリアクター内の滞留時間を良好に制御することができる。
【0041】
原則的に、本発明による方法では、一次粒子が第1のリアクターから第2のリアクターに移送される際に、連続運転からバッチ式運転への切り替えが行われる。したがって、本方法は、半連続法である。
【0042】
連続運転式のキャピラリーリアクターでの滞留時間は、非連続運転式のバッチリアクターよりもはるかに短いが、キャピラリーリアクターでも一次粒子の凝集を防ぐことはできない。同様に、バッチリアクターでは、これまで重合しなかった液滴の後重合が起こる。したがって、本発明による方法では、「重合」工程と「凝集」工程とが、理想的に別々に行われるわけではなく、また第1のリアクターでのみまたは第2のリアクターでのみ行われるわけでもない。したがって、本発明によれば、重合を少なくとも部分的に第1のリアクターで生じさせ、凝集を少なくとも部分的に第2のリアクターで生じさせることが目的とされる。特に、2つのプロセス工程をそれぞれ、各リアクターにおいて目的にかなうように可能な限り完全に行うことが好ましい。
【0043】
重合と凝集とが別個の装置で行われることにより、全体的に、本発明により製造される粒子のサイズ分布をより良好に制御することができる。キャピラリーリアクターにより、より優れた熱管理が可能となり、したがってポリマー粒子の局所的な過熱に起因する品質低下が阻止される。最後に、分散剤の必要性が減少する。これらは、主に本発明によって達成される利点である。
【0044】
界面活性剤は、モノマー液滴を連続相により良好に分散させるために必要である。ピッカリング乳化剤は、より大きな一次粒子を生成するために必要である。
【0045】
よって、本発明の好ましい一発展形態では、分散液の製造およびモノマーの重合を、界面活性剤およびピッカリング乳化剤の存在下に行うことが提供される。これは、界面活性剤とピッカリング乳化剤との双方が分散剤中に提供されることにより達成される。つまり、これら2つの助剤は、すでに第1のリアクターの上流で分散剤中に導入される。第1のリアクターは連続運転式であるため、分散剤中にピッカリング乳化剤および界面活性剤を連続的に計量することが可能である。混合は、そこで有利には、可動部を必要としないスタティックミキサーを用いて行うことができる。スタティックミキサーの使用には、分散液の特性をより良好に調整できるという利点がある。特に、スタティックミキサーは、分散剤中の2つの助剤の特に均一な分布を可能にする。
【0046】
分散剤中の2つの助剤の混合は、有利には別々のバッチで、その結果、2工程で行われる。したがって、本方法の好ましい一発展形態では、界面活性剤とピッカリング乳化剤とを別々に、すなわち、分散剤と界面活性剤とを含む第1のバッチと、分散剤とピッカリング乳化剤とを含む第2のバッチとに分けて提供し、分散液を2工程で、すなわち、モノマーを第1のバッチと混合する第1の工程と、第1のバッチとモノマーとの混合物を第2のバッチと混合する第2の工程との2工程で製造することが提供される。この手順は、反応混合物の均質化をより良好にし、したがって助剤の使用のより一層の節約を可能にする。
【0047】
バッチは、有利には、マイクロ構造装置で混合される。これには、マイクロ構造装置内に存在する流体力学を、装置の境界を越えて維持できるという利点がある。有利には、各マイクロ構造装置は、さらにはキャピラリーにより互いに接続され、ある装置から次の装置への移行時に流動条件にさほど大きな変化がないようにする。
【0048】
特に好ましい一実施形態では、第1のバッチとモノマーとの混合物を第2のバッチと混合する第2の工程を、少なくとも1つのマイクロ構造ミキサーで行う。特に、このためにキャタピラーミキサーを使用することができる。
【0049】
キャタピラーミキサーは、マイクロ構造設計のスタティックミキサーである。キャタピラーミキサーは、混合される流体が流れるチャネルを含み、このチャネルに沿って、連続して配置された複数の上向きおよび下向きの傾斜路が配置されている。この傾斜路により、チャネルを流れる流体が多重に分割および再結合され、2つのバッチが強力に混合される。特定のミキサーの形状は、さらに、キャピラリーリアクターに分散液を十分に供給できるような高い処理能力を可能にする。
【0050】
キャタピラーリアクターのより正確な説明は、上記のEhrfeldらによる論文の第3.7.4節、p.62以降に記載されている。
【0051】
モノマーを第1のバッチと混合する混合の第1の工程でも、有利には同様にマイクロ構造スタティックミキサーが使用される。しかし、特に低流量では、キャタピラーミキサーよりもいわゆるインターデジタルミキサーの方が、この混合作業にはより好適である。
【0052】
インターデジタルミキサーでは、混合される流れが複数の小さな部分流に分割され、その後、交互に再び互いに接触して混合される。インターデジタルミキサーのより正確な説明は、Ehrfeldらによる上記論文の第3.8.1節、p.64以降に記載されている。
【0053】
第1の工程でキャタピラーミキサーを使用する場合、これは、第1のバッチとモノマーとの混合物を第2のバッチと混合する第2の工程で有利に使用されるキャタピラーミキサーよりも内部構造サイズが小さいことが望ましい。
【0054】
したがって、本発明の好ましい一発展形態では、モノマーを第1のバッチと混合する第1の工程を、少なくとも1つのインターデジタルミキサーで行うか、または第2の工程で使用されるキャタピラーミキサーよりも内部構造サイズが小さいキャタピラーミキサーで行うことが提供される。この結果、第1の混合工程で製造される分散液の液滴サイズが第2の混合工程で維持される。
【0055】
ピッカリング乳化剤が必要となるのは凝集の段階になってからであるため、ピッカリング乳化剤を凝集部のすぐ上流で初めて計量供給することが可能である。これは、ピッカリング乳化剤の不在下で重合が行われることを意味する。対照的に、分散時の界面活性剤の存在は不可欠である。
【0056】
よって、対応する方法変形例では、界面活性剤を分散剤中で提供し、ピッカリング乳化剤を凝集の開始時になってから計量供給することで、分散液の製造および重合を、界面活性剤の存在下でかつピッカリング乳化剤の不在下で行うことが提供される。
【0057】
ここで用いられる懸濁重合の定義によれば、モノマー(アクリル酸)もポリマー(ポリアクリレート)も分散剤に溶解しない。よって、モノマーおよびポリマーは、分散剤に対して安定でなければならない。ポリマーの場合の安定性とは、特にポリマーが分散剤中で膨潤しないことである。これは、分散剤がポリマーへ移行せず、したがって粒子の体積変化を引き起こさないことを意味する。膨潤では、ポリマーは分散剤に溶解しないが、それでも、分散剤が膨潤ポリマー中に残り、必要に応じて手間をかけて再び排出しなければならないことは望ましくない。そのため、分散剤に対するポリマーの膨潤挙動が最小限であることが望ましい。
【0058】
液体に対するプラスチックの膨潤挙動は、総じて非常に大きく異なり、温度依存性もある。液体に対する固体ポリマーの膨潤を測定するための標準化された試験方法は、DIN EN ISO 175に記載されている。これは、試験片を特定の温度で試験液に浸漬し、その体積の変化を測定するものである。
【0059】
本発明に関連して、DIN EN ISO 175(発行日2011年3月1日)に準拠して試験温度70℃、試験時間1時間で測定された、分散剤に浸漬した際のポリアクリレート粒子の重量変化パーセンテージが100未満であることが目的にかなう。
【0060】
これは、粒子を70℃で分散剤に1時間浸漬しても、粒子の体積が2倍にならないことを意味する。高吸収性物質の製造に関して、これは、水が分散剤としてまったく適していないことを意味し、なぜならば、高吸収性物質は乾燥重量の1,000倍もの水を吸収することができ、100%よりもはるかに大きく膨潤するためである。
【0061】
本方法は、高吸収性物質の製造に優れた適性を有する。これに関して、本発明によれば、以下の成分を含む特定のモノマー溶液が提供される:
a)少なくとも部分的に中和されていてよい、モノマーとしてのアクリル酸;
b)少なくとも1つの架橋剤;
c)少なくとも1つの開始剤または開始剤系の一部;
d)水。
【0062】
高吸収性物質の高吸水性ゆえに分散剤として水が適さないことから、分散剤として脂肪族炭化水素が使用される。また、分散剤として、少なくとも1つの脂肪族炭化水素を含む混合物を使用することもできる。
【0063】
ここでモノマーとして使用される物質は、アクリル酸である。部分的に中和されたアクリル酸も、本発明の趣意においては同様にアクリル酸である。アクリル酸がアルカリ金属、例えば水酸化ナトリウムで中和されている場合、対応するアクリル酸アルカリ金属塩、例えばアクリル酸ナトリウムがポリマーとして得られる。アクリル酸アルカリ金属塩は、本発明の趣意においては同様にポリアクリレートである。
【0064】
アクリル酸だけでなく、モノマー溶液は、アクリル酸と共重合するさらなるモノマーをさらに含むことができる。コポリマーが重合によりポリマー粒子に組み込まれている場合、簡略化のため、これに関連してなおもポリアクリレート粒子について言及する。
【0065】
高吸収性物質の製造に使用できるコポリマーは、有利にはエチレン性不飽和であり、少なくとも1つの酸基を有することが望ましい。
【0066】
酸基を有するエチレン性不飽和モノマーまたはコモノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、β-メチルアクリル酸(クロトン酸)、α-フェニルアクリル酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、2’-メチルイソクロトン酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、β-ステアリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレンおよび無水マレイン酸であり、特にアクリル酸およびメタクリル酸、さらにアクリル酸が好ましい。アクリル酸は、高吸収性物質の工業的生産に通常使用される標準的なモノマーである。
【0067】
酸基を有するエチレン性不飽和モノマーは、部分的または完全に、好ましくは部分的に中和されていてよい。有利には、酸基を有するモノエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも10mol%、特に好ましくは少なくとも25~50mol%、さらに好ましくは50~90mol%が中和されている。モノマーの中和は、重合前に行うことも、重合後に行うこともできる。この場合、部分的な中和は、少なくとも10mol%、特に好ましくは少なくとも25~50mol%、さらに好ましくは50~90mol%行われる。さらに、中和は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、ならびに炭酸塩および重炭酸塩を用いて行うことができる。さらに、酸と水溶性塩を形成するさらなるいずれの塩基も考えられる。異なる塩基との混合中和も考えられる。好ましいのは、アンモニアまたはアルカリ金属水酸化物、特に好ましくは水酸化ナトリウムまたはアンモニアによる中和である。
【0068】
架橋剤として、特に、分子内に少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するいわゆる縮合架橋剤が適している。これらの例は、以下のものである:アルケニルジ(メタ)アクリレート、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,18-オクタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンジ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アルケニルジ(メタ)アクリルアミド、例えばN-メチルジ(メタ)アクリルアミド、N,N’-3-メチルブチリデンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミドまたはN,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ベンジリジンジ(メタ)アクリレート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-プロパノール-2、ヒドロキノンジ(メタ)アクリレート、有利にはヒドロキシル基1つ当たり1~30molのアルキレンオキシドでオキシアルキル化された、有利にはエトキシル化されたトリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレートエステル、チオエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、チオプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、チオポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、チオポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテル、例えば1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ジビニルエステル、例えばアジピン酸ジビニル、アルカジエン、例えばブタジエンまたは1,6-ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アリル化合物、例えばジ(メタ)アリルフタレートまたはジ(メタ)アリルスクシネート、ジ(メタ)アリルジメチルアンモニウムクロリドのホモおよびコポリマー、ならびにジエチル(メタ)アリルアミノメチル(メタ)アクリレートアンモニウムクロリドのホモおよびコポリマー、ビニル(メタ)アクリル化合物、例えばビニル(メタ)アクリレート、(メタ)アリル(メタ)アクリル化合物、例えば(メタ)アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基1つ当たり1~30molのエチレンオキシドでエトキシル化された(メタ)アリル(メタ)アクリレート、ポリカルボン酸のジ(メタ)アリルエステル、例えばジ(メタ)アリルマレエート、ジ(メタ)アリルマレエート、ジ(メタ)アリルスクシネートまたはジ(メタ)アリルテレフタレート、3個以上のエチレン性不飽和ラジカル重合性基を有する化合物、例えばグリセリントリ(メタ)アクリレート、有利にはヒドロキシル基1つ当たり1~30molのエチレンオキシドでオキシエチル化されたグリセリンの(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、有利にはヒドロキシル基1つ当たり1~30molのアルキレンオキシドでオキシアルキル化、有利にはエトキシル化されたトリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリル酸エステル、トリメタクリルアミド、(メタ)アリリデンジ(メタ)アクリレート、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、有利にはヒドロキシル基1つ当たり1~30molのエチレンオキシドでオキシエチル化されたペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸エステル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリビニルトリメリテート、トリ(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルアルキルアミン、例えばジ(メタ)アリルメチルアミン、トリ(メタ)アリルホスフェート、テトラ(メタ)アリルエチレンジアミン、ポリ(メタ)アリルエステル、テトラ(メタ)アリルオキシエタンまたはテトラ(メタ)アリルアンモニウムハライド。
【0069】
また、架橋剤としてポリオールを使用することも可能である。架橋剤として適したポリオールの例は、以下のものである:エチレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、例えばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールまたはテトラプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールおよびソルビトール、アミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはプロパノールアミン、ポリアミン化合物、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンまたはペンタエチレンヘキサミン、ポリグリシジルエーテル化合物、例えばエチレングリコールイグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、グリシドール、ポリイソシアネート、有利にはジイソシアネート、例えば2,4-トルエンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアジリジン化合物、例えば2,2-ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサメチレンジエチレンウレアおよびジフェニルメタンビス-4,4’-N,N’-ジエチレンウレア、ハロゲンペルオキシド、例えばエピクロロ-およびエピブロモヒドリン、ならびにα-メチルピクロロヒドリン、アルキレンカーボネート、例えば1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキソラン-2-オン、ポリ-1,3-ジオキソラン-2-オン、第四級ポリアミン、例えばジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物。架橋剤クラスIIの化合物として、さらに、ポリオキサゾリン、例えば1,2-エチレンビスオキサゾリン、シラン基を有する架橋剤、例えば*-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび*-アミノプロピルトリメトキシシラン、オキサゾリジノン、例えば2-オキサゾリジノン、ビス-およびポリ-2-オキサゾリジノン、ならびにジグリコールシリケートが好ましい。
【0070】
最後に、(メタ)アクリル酸のヒドロキシル基またはアミノ基を有するエステルを架橋剤として使用することも可能である。これらの例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ならびにヒドロキシル基またはアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドまたはジオールのモノ(メタ)アリル化合物である。
【0071】
当然のことながら、高吸収性物質製造用のモノマー溶液は、前述の構造の架橋剤を複数含むこともできる。
【0072】
モノマーとしてアクリル酸を使用する場合、以下の架橋剤が最も好ましい:N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルメチルアンモニウムクロリド、テトラアリルアンモニウムクロリド、およびアクリル酸1mol当たり9molのエチレンオキシドを用いて製造されたアリルノナエチレングリコールアクリレート。
【0073】
重合を起こすためには、開始剤または開始剤系の少なくとも一部が必要であり、これはモノマー溶液中に供給される。
【0074】
重合は、原則として、重合条件下でラジカルを形成し、高吸収性物質の製造に通常使用されるすべての開始剤を使用して開始することができる。これには、熱開始剤およびレドックス開始剤が含まれる。開始剤は、モノマー溶液中に溶解または分散される。モノマー溶液が水性の場合には、水溶性開始剤を使用することが望ましい。
【0075】
特に好ましくは、本発明による方法では、温度作用下にラジカルに分解する熱開始剤が使用される。その理由は、キャピラリーリアクターを使用するためである。レドックスベースの開始剤系を使用する場合とは異なり、開始剤として必要な成分は1つのみであるため、混合のコストが低下する。キャピラリーリアクターにより良好な熱管理が可能となるため、熱開始剤を良好にキャピラリー内で分解させることができる。
【0076】
キャピラリーリアクター内での滞留時間は短いため、特に半減期の短い熱重合開始剤が本方法に関して重要である。半減期は、それぞれ180℃未満、さらに好ましくは140℃未満の温度で、10秒未満、さらに好ましくは5秒未満であることが望ましい。ここで、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、ペルスルフェートおよびアゾ化合物が、特に好ましい熱重合開始剤である。非常に特に好ましくは、唯一の開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウムが使用される。対照的に、場合によっては、各種熱重合開始剤の混合物を使用することが有利である。これらの混合物の中では、過酸化水素とペルオキソ二硫酸ナトリウムまたはペルオキソ二硫酸カリウムとの混合物が好ましく、これらは、考えられる任意の量比で使用することができる。
【0077】
適切な有機ペルオキシドは、有利には、アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、カプリルペルオキシド、イソプロピルペルオキシジカーボネート、2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-アミルペルピバレート、t-ブチルペルピバレート、t-ブチルペルネオヘキソネート、t-ブチルイソブチレート、t-ブチルペル-2-エチルヘキセノエート、t-ブチルペルイソノナノエート、t-ブチルペルマレエート、t-ブチルペルベンゾエート、t-ブチル-3,5,5-トリメチルヘキサノエートおよびアミルペルネオデカノエートである。さらに、熱重合開始剤として以下のものが好ましい:アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトロール、アゾビスジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、アゾビスアミジノプロパンジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルおよび4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)。言及された化合物は、慣用の量で、有利には、重合されるモノマーの量に対してそれぞれ0.01~5mol%、好ましくは0.1~2mol%の範囲で使用される。
【0078】
熱開始剤に対して代替的に、少なくとも2つの成分からなるレドックス系を開始剤として使用することも可能である。この場合、一方の成分は還元作用を有し、他方の成分は酸化作用を有する。レドックス誘導重合を開始するために、レドックス系の還元成分と酸化成分とが混合される。これは、キャピラリーリアクターのすぐ上流で初めて、またはより良好にはキャピラリーリアクター内で初めて行うことができ、なぜならば、そうしないと、重合開始が早すぎてしまい、ポリマーによりキャピラリーが閉塞されるためである。その結果、モノマー溶液は、開始剤系の一成分のみにより提供され、その後、第2の成分と混合される。これはやや手間がかかるため、熱により作用する開始剤が好ましい。
【0079】
それにもかかわらず、確立されたレドックス系が使用される場合、酸化成分として、上記で規定されたペル化合物の少なくとも1つが適しており、還元成分として、有利には、アスコルビン酸、グルコース、ソルボース、マンノース、亜硫酸水素アンモニウムもしくはアルカリ金属亜硫酸水素塩、硫酸アンモニウムもしくはアルカリ金属硫酸塩、チオ硫酸アンモニウムもしくはアルカリ金属チオ硫酸塩、次亜硫酸アンモニウムもしくはアルカリ金属次亜硫酸塩または硫化アンモニウムもしくはアルカリ金属硫化物、金属塩、例えば鉄(II)イオンもしくは銀イオン、またはナトリウムヒドロキシメチルスルホキシレートが適している。有利には、レドックス開始剤の還元成分として、アスコルビン酸またはピロ亜硫酸ナトリウムが使用される。重合時に使用されるモノマーの量に対して、レドックス開始剤の還元成分は、1×10-5~1mol%、レドックス開始剤の酸化成分は1×10-5~5mol%使用される。レドックス開始剤の酸化成分の代わりに、またはそれに加えて、1つ以上の、有利には水溶性のアゾ化合物を使用することが可能である。
【0080】
特に確立されているレドックス系は、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよびアスコルビン酸から構成される。通常は、重合は、これらの開始剤を用いて0℃~90℃の温度範囲で開始される。キャピラリーリアクター内の滞留時間が短いため、高エネルギー放射線の作用によって分解が起こる光開始剤は、本方法にはさほど適していない。
【0081】
分散剤として使用される脂肪族炭化水素は、有利にはシクロヘキサンである。また、以下の脂肪族炭化水素を分散剤として使用することも可能である:n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、2-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、トランス-1,2-ジメチルシクロペンタン、シス-1,3-ジメチルシクロペンタン、トランス-1,3-ジメチルシクロペンタン。当然のことながら、これらの脂肪族炭化水素の混合物を分散剤として使用することも可能である。
【0082】
界面活性剤は、有利にはソルビタン脂肪酸エステルである。適切なソルビタン脂肪酸エステルの例は、モノステアリン酸ソルビタン(E491)、トリステアリン酸ソルビタン(E492)、モノラウリン酸ソルビタン(E493)、モノオレイン酸ソルビタン(E494)、モノパルミチン酸ソルビタン(E495)、およびトリオレイン酸ソルビタンである。列挙したE番号を有するソルビタン脂肪酸エステルは、食品認可を受けており、したがって衛生用品との接触に好ましい。特に好ましいのは、モノラウリン酸ソルビタン(E493)およびモノオレイン酸ソルビタン(E494)である。これらの界面活性剤の混合物を使用することも可能である。
【0083】
ピッカリング乳化剤として、有利にはオルガノクレイが使用される。オルガノクレイとは、有機的に後処理された層状シリケートである。好ましくは、第四級アンモニウム塩で後処理された層状シリケート、特に好ましくは第四級アンモニウム塩で後処理されたベントナイト(第四級アンモニウムベントナイトコンプレックス、QABC)が使用される。QABCタイプの適切なオルガノクレイは、Byk-Chemie GmbH、ヴェーゼル(ドイツ)からTixogel-VZの商品名で入手可能である。
【0084】
キャピラリーが、同じ長さの管に比べて断面積がはるかに小さいことについては、すでに述べた。特に好ましくは、各キャピラリーのL/d比は、50~500である。ここでLは、キャピラリーの長さを表し、dは、等価直径を表す。等価直径とは、断面積がキャピラリーの断面積と同じである仮想的な円の直径である。よって、一辺の長さがaの正方形の断面において、等価直径dは次のように計算される:
d=2×a/√π
キャピラリーの断面が円形の場合、等価直径は、実際の直径に対応する。
【0085】
有利には、キャピラリーの等価直径は、1mm~10mmである。有利には、すべてのキャピラリーが同じ等価直径を有する。
【0086】
第1のリアクターからの熱の除去を改善するために、伝熱媒体をキャピラリーに沿って複数の導管に通すことができる。このようにして、導管は、反応が行われるキャピラリーと交互に配置されていてよい。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、第1のリアクターが、複数の導管を有し、これらの導管は、キャピラリーに沿って延在し、これらの導管を伝熱媒体が流れることで、伝熱媒体用導管とキャピラリーとが集合的な平行アセンブリを形成していることが提供される。伝熱媒体がキャピラリーに沿って流れる導管は、キャピラリーと寸法が類似していてもよく、すなわち断面積および長さが実質的に同じであってよい。熱の除去を改善するために、キャピラリー(反応空間)および導管(熱伝達)が、平行アセンブリ内で交互にまたはサンドイッチ状に配置されていてよい。
【0087】
本発明による方法によって高吸収性物質を製造するための特に好ましい処方は、以下の組成を有する:
モノマー溶液:
・モノマーとしてのアクリル酸
・アクリル酸の初期重量に対して33重量%~50重量%の水酸化ナトリウム;
・アクリル酸の初期重量に対して164重量%~247重量%の水;
・アクリル酸の初期重量に対して778重量ppm~1167重量ppmの、架橋剤としてのN,N’-メチレンビスアクリルアミド;
・アクリル酸の初期重量に対して1206重量ppm~1809重量ppmの、開始剤としてのペルオキソ二硫酸カリウム;
分散剤:
・シクロヘキサン。シクロヘキサンの使用量は、アクリル酸の初期重量に対して606重量%~909重量%である;
界面活性剤:
・ソルビタン脂肪酸エステル。ソルビタン脂肪酸エステルの使用量は、アクリル酸の初期重量に対して1重量%~2重量%である;
ピッカリング乳化剤:
・層状シリケート。層状シリケートの使用量は、アクリル酸の初期重量に対して2重量%~3重量%である。
【0088】
非常に特に好ましくは、本処方によるモノマー溶液は、以下のように提供される:
a)アクリル酸を提供する;
b)水酸化ナトリウム水溶液を供給する;
c)メチレンビスアクリルアミドを提供する;
d)ペルオキソ二硫酸カリウムを含む水溶液を提供する;
e)アクリル酸、水酸化ナトリウム水溶液およびメチレンビスアクリルアミドを混合し、中和されたアクリル酸を得る;
f)中和されたアクリル酸と、ペルオキソ二硫酸カリウムを含む水溶液とを、少なくとも1つのインターデジタルミキサーで混合する。
【0089】
この高吸収性物質の製造の特別な利点は、粒度分布を調整するためのさらなる作業工程を必要とすることなく、高吸収性物質をすでに使用可能なサイズで凝集部から取り出せることである。これにより、追加の作業工程が省かれるだけでなく、微粉の発生も減少する。よって、本方法の特定の一発展形態では、分散剤から分離された二次ポリアクリレート粒子を乾燥させ、その際、ISO 17190-3(2001年12月1日発行)に準拠して測定された乾燥二次ポリアクリレート粒子の粒度分布のD50値は、200μm~600μmであるが、ただし、分離された二次ポリアクリレート粒子も乾燥二次ポリアクリレート粒子も、粉砕および/または分級に供しないものとすることが提供される。
【0090】
分離された二次ポリアクリレート粒子の乾燥には、一般的に知られている構造の乾燥機を用いることができる。特に、噴霧乾燥機または回転乾燥機が適している。どちらの構造の乾燥機も、様々な装置製造業者から市販されている。これらの詳細については、Tsotsas, E. , Metzger, T. , Gnielinski, V. and Schluender, E. (2010). Drying of Solid Materials. In Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, (Ed.). Section 2.1.5. and Section 2.2.4 doi:10.1002/14356007.b02_04.pub2;に記載されている。
【0091】
噴霧乾燥機の使用は、比較的穏やかにポリマー粒子から水を排出することができるため、乾燥がポリマー粒子のモルフォロジーのさほど著しい変化を伴わないという利点を有する。したがって、噴霧乾燥機が特に好ましい。
【0092】
次に、本発明につき実施形態例をもとに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】プロセスシーケンスを概略的に示す図である。
【
図3】試験セットアップのプロセスフローチャートを示す図である。
【0094】
プロセスシーケンス:
図1に、本発明によるポリマーの製造を、簡略化したプロセスフローチャートにより示す。
【0095】
本プロセスの目的は、ポリアクリレート粒子1の製造である。この目的のために、まずモノマー2が液状で提供される。モノマー2およびその提供方法は、ポリマーによって異なる。通常は、モノマー2は溶媒に溶解した状態で提供され、これはモノマー溶液と呼ばれる。
【0096】
さらに、液体の分散剤3が提供される。分散剤3は、その中で反応が実施される媒体であり、反応には実質的に関与しない。分散剤3の化学的性質は、反応に関与する物質に依存する。本方法には、2つの必須助剤、すなわち界面活性剤4およびピッカリング乳化剤5が必要である。両物質とも、液体でも固体でもよい。両物質が反応時に効果を発揮するためには、両物質が分散剤中に微細に分散されていなければならない。界面活性剤4およびピッカリング乳化剤5が液体か固体かによって、これらは分散剤3中に溶解、乳化または懸濁される。これがいつ行われるかは、プロセスによって異なる。一般的な場合、界面活性剤4およびピッカリング乳化剤5は、分散剤3中に提供される。
【0097】
次に、分散液6が製造され、この分散液6では、モノマー2が分散剤3中に分散されている。これは、第1のミキサー7で行われる。したがって、分散液6は、モノマー2、分散剤3、界面活性剤4およびピッカリング乳化剤5を含む。
【0098】
次いで、分散液6が第1のリアクター8に移送され、その中でモノマーが重合される。第1のリアクター8は、連続運転式のキャピラリーリアクターである。これは、複数のキャピラリー9を含む。キャピラリー9は、重合が行われる第1のリアクター8の反応空間を形成する。キャピラリー9は、第1のリアクター8内で平行に配置されている。また、伝熱媒体11が通される複数の導管10も平行に組み込まれている。伝熱媒体用導管およびキャピラリー9は、アセンブリ内で平行に延在している。分散液は、専らキャピラリー9を通り、伝熱媒体11は、導管10内を通る。したがって、伝熱媒体11と分散液6とは物理的に互いに分離されているため、伝熱媒体11は反応に関与することができない。それにもかかわらず、導管10およびキャピラリー8の壁を通じて伝熱媒体11と分散液6との熱交換を行うことができる。したがって、キャピラリー9および導管10を含む第1のリアクター8は、有利には金属のような熱伝導性の高い材料で形成される。充填密度を高めるために、キャピラリー9および導管10は、矩形断面を有することができる。第1のリアクター8は、付加製造法を用いて製造される。これにより、特に、束ねられた管と比較してキャピラリー9の充填密度を高めることができる。
【0099】
第1のリアクターの重要な点は、そのマイクロ構造性である。特に、キャピラリーは断面が非常に小さいため、キャピラリー8の等価直径は、わずか1mm~10mmに過ぎない。断面が正方形の場合、これは0.89mm~8.86mmの辺長に相当する。キャピラリー8の長さは、等価直径に比べて非常に長く、約50倍~500倍である。例えば、等価直径d=0.89mmのキャピラリーは、長さl=20cmを有することができ、したがってl/d比=225である。
【0100】
この場合、単一キャピラリーの内部容積は、わずか158mm3である。したがって、十分に大きな反応容積を提供するために、第1のリアクターでは複数のキャピラリーが組み合わせられる。例えば、第1のリアクターは10本のキャピラリーを有することができ、したがって総反応容積は15.8cm3である。工業的規模で十分にポリマーを生産できるようにするために、キャピラリーリアクターは、キャピラリー内の滞留時間を短くする目的で、非常に高い処理能力で運転される。それに応じてプロセス強度も高くなる。また、全体の容量を増加させるために(ナンバリングアップ)、複数のキャピラリーリアクターを平行に接続することも可能である。この場合、個々のキャピラリーの寸法は維持される。このようにして、キャピラリー内の最適化された流動条件を、より大きな生産規模でも利用することができる。
【0101】
これを達成するためには、効率的な熱管理が必要である。これは、伝熱媒体11用の複数の導管10をキャピラリー8のアセンブリに組み込むことにより達成される。キャピラリー8で発生する重合熱を、伝熱媒体11を通じて速やかに除去できるようにするために、有利には、アセンブリ内でキャピラリー8と導管10とが交互に配置される。導管10およびキャピラリー8が、サンドイッチ状に配置されていてもよい。導管の寸法は、要求される熱伝達性能に依存する。導管10をキャピラリー8と同じオーダー(等価直径1~10mm)で設計することが目的とされる。導管の詳細な断面は、伝熱媒体11の熱容量、その温度およびその流速に依存する。
【0102】
導管がキャピラリーと同程度の大きさである場合、導管をアセンブリ内に均一に分配することもでき、これにより熱の除去が改善される。その結果、第1のリアクターは、キャピラリーと導管との双方に関して、完全にマイクロ構造のセットアップを有することになる。金属製のマイクロ構造装置の製造は、付加製造法、例えば選択的レーザー溶融法(Selective Laser Melting)によって可能である。有利には、金属製キャピラリーの内側に、例えばテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)および/またはセラミックによるコーティングが施されていてよい。
【0103】
分散液が再び第1のリアクター8を出た際に、重合は実質的に行われている。その場合、分散液6は、分散剤3に懸濁された固体の一次粒子12を含んでいる。界面活性剤4もピッカリング乳化剤5も反応に関与しないため、これらの物質は重合後も依然として分散剤3中に含まれている。
【0104】
一次粒子12は、後のポリマーの前駆体である。一次粒子12は、分散液3内のモノマー液滴の重合により形成されるため、実質的にモノマー液滴のサイズおよび形状を有する。一次粒子12のサイズはまだ所望の最終値に相当するものではないため、一次粒子12は、次に第2のプロセス工程で凝集に供される。凝集は、このために特別に設けられた第2のリアクター13で行われる。
【0105】
第2のリアクター13は、第1のリアクター8の下流に配置されている。有利には、第2のリアクター13は、第1のリアクター8のすぐ下流に配置されている。凝集の前にさらなる化学的プロセス工程が必要な場合には、第1のリアクター8と第2のリアクター13との間に中間リアクター(図示せず)を配置することも考えられる。
【0106】
第2のリアクター13は、非連続運転式の(バッチ)リアクターである。第2のリアクター13は、第2のリアクター13の反応空間を形成する容器14を有する。容器14は、第1のリアクター8から抜き出された分散液6で満たされる。容器14が満杯になると、図面に示されていない交換リアクターが充填される。このようにして、本方法は、連続運転モード(第1のリアクターでの重合)から非連続運転モード(第2のリアクターでの凝集)に切り替わる。
【0107】
第2のリアクター13の容器14内で、一次粒子12には、より大きな二次粒子15へと凝集する時間が与えられる。容器14内の滞留時間は、二次粒子15が最終的に所望のサイズの完成ポリアクリレート粒子1となるように選択される。場合によっては、第1のリアクターで未転化であったモノマーが、第2のリアクターで後重合することもある。
【0108】
重要なことは、凝集時に一次粒子12が分散剤中に均一に分布し、それにより二次粒子15の粒度分布も可能な限り均一となることである。この目的のために、容器14内の分散液6を、凝集時に撹拌しなければならない。凝集は、高温で行うことができる。この目的のために、第2のリアクター13は、ヒーターを備えることができる。
【0109】
必要に応じて、凝集の終了後に、二次粒子15に対するさらなる化学的プロセス工程を第2のリアクター13内で行うことができる。例えば、第2のリアクター13内のポリアクリレート粒子に表面後架橋を施して、二次粒子15が、後の高吸収性物質の吸収特性に好影響を与えるコア/シェル構造をとるようにしてもよい。二次粒子15にはまた、第2のリアクター13内の分散液3内で任意の添加物質を付与してもよい。これらのプロセス工程が熱を必要とする場合、容器14を、それに対応して加熱可能または冷却可能とする必要がある。
【0110】
凝集および容器14内で行われる任意のさらなる工程が終了すると、分散液6は第2のリアクター13から取り出され、分離装置16に移送され、この分離装置16で、完成ポリアクリレート粒子1が分散液6から分離される。
【0111】
分離装置16は、機械的(ふるい、浮選)、熱的(分散剤の蒸発)または膜技術によって機能することができる。選択される分離方法は、物質系によって異なる。高吸収性物質の場合、ゲル中に含まれる水を除去するために二次粒子15をいずれにせよ乾燥させる必要があるため、分散剤を蒸発させることができる。水と分散剤との分離は、適切な乾燥機、例えば噴霧乾燥機で同時に行うことができる。
【0112】
ピッカリング乳化剤5および界面活性剤4の性質によっては、これらの助剤を分散剤と同時に分離することができる。また、助剤は、第2の分離工程(図示せず)で分離される。
【0113】
有利には、ピッカリング乳化剤5および界面活性剤4は分散剤3と一緒に分離され、返送導管17に沿って再循環される。再循環は、理想的なケースでは、分散剤、ピッカリング乳化剤および界面活性剤の提供に取って代わることができる。しかし実際には、これらの物質の一部は常に失われるため、対応する補充が必要である(図示せず)。
【0114】
処方:
実施形態例では、以下の処方を提供した:
処方A 架橋剤を含む、部分的に中和されたアクリル酸の水溶液(モノマー溶液として):
アクリル酸(AA):294.5g
水酸化ナトリウム(NaOH):122.4g
水(H2O):560g
N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA):293.6mg
【0115】
アクリル酸の中和度は、約75%である。MBA架橋剤の濃度は、アクリル酸の重量に対して1000ppmである。溶液の密度は、約1.14g/である。したがって、処方Aによる溶液では、アクリル酸が約4.8M(約30重量%)である。
【0116】
処方Aによる溶液の流量は、3ml/minまたは3.42g/minである。この結果、ランタイム10分の理論バッチ処方は以下のようになる(合計34.2gの処方A溶液):
アクリル酸(AA):10.26g
水酸化ナトリウム(NaOH):4.29g
水(H2O):19.62g
N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA):0.01g
【0117】
処方B 開始剤水溶液:
ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS):440.35mg
水(H2O):42.67g
【0118】
したがって、処方Bによる溶液では、開始剤(KPS)が約38.2mMである。
【0119】
処方Bによる溶液の流量は、0.15ml/minである。この結果、ランタイム10分の理論バッチ処方は以下のようになる(合計1.5mlの処方B溶液):
ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS):15.5mg
水(H2O):1.5g
【0120】
処方C 連続相:
シクロヘキサン(CH):1l
モノラウリン酸ソルビタン(Span 20):1.74g
【0121】
処方Cによる溶液の流量は、5ml/minである。この結果、ランタイム10分の理論バッチ処方は以下のようになる(合計50mlの処方C溶液):
シクロヘキサン(CH):50ml
モノラウリン酸ソルビタン(Span 20):87mg
【0122】
処方D バッチ相:
シクロヘキサン(CH):1l
モノラウリン酸ソルビタン(Span 20):1.74g
オルガノクレイ(Tixogel VZ):5.5g
【0123】
バッチリアクターに90mlを装入し、18分間にわたって試料採取する。この結果、ランタイム10分のバッチ処方は以下のようになる(合計50mlの処方D溶液):
シクロヘキサン(CH):50ml
モノラウリン酸ソルビタン(Span 20):87mg
オルガノクレイ(Tixogel VZ):275mg
【0124】
処方全体(簡略化):
それぞれの流量(A:B:C=3:0.15:5)[ml/min]を考慮すると、簡略化された処方全体は以下のようになる:
アクリル酸(AA):10.28g
水酸化ナトリウム(NaOH):4.29g
水(H2O):21.12g
N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA):0.01g
ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS):15.5mg
シクロヘキサン(CH):77.9g(100ml)
モノラウリン酸ソルビタン(Span 20):174mg
オルガノクレイ(Tixogel VZ):275mg
【0125】
したがって、アクリル酸のモル量に対する開始剤のモル量は、約400ppmであった。したがって、アクリル酸の総重量に対する架橋剤の重量割合は、約1000ppmであった。
【0126】
キャピラリーリアクター:
図2は、リアクターの構想の実施の詳細な技術的構成を示している。キャピラリーリアクターは、3つの個々のモジュールで構成されている。各モジュールは、3層からなる6本の反応チャネルを含み、各チャネルの断面は2mm×2mm、長さは20cmである。モジュール1つ当たりの総反応容量は、約14.4cm
3である。3層のキャピラリーは、4層の伝熱媒体用導管(7×1mm×2mm)で囲まれている。これを、材料としてステンレス鋼を用い、付加製造法(選択的レーザー溶融-SLM)を用いて作製した。
【0127】
ポリアクリル酸粒子は、キャピラリーリアクターで製造される。これらは、キャピラリー壁に付着する可能性があるため、長期的にはキャピラリーを閉塞する。この付着に対抗する1つの方法は、ポリアクリル酸粒子の付着が低減された材料でキャピラリーをコーティングすることである。この解決策を提供するため、SLMによって単一チャネルのテストピースを作製し、コーティングを行った。コーティングは、一方ではFEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー)で行い、他方ではセラミックで行った。コーティング後、テストピースを切り開き、顕微鏡でコーティングの品質を確認した。どちらのコーティングも、目視では申し分のないものであった。
【0128】
試験セットアップ:
図3は、使用した試験セットアップのプロセスフローチャートを示す。MBA架橋剤を混和した部分的に中和されたアクリル酸の水溶液(処方A)が、まずSIMM-V2インターデジタルミキサー型のマイクロミキサーで開始剤溶液(処方B)と室温で混合される。次に、この反応溶液を、一連の2つのインターデジタルミキサー(SIMM-V2)により有機相(シクロヘキサン/Span 20-処方C)中に分散させる。続いて、やや粗い構造のマイクロミキサー(チャネル断面600μm×600μmのキャタピラーミキサー、CPMM-R600/12)を用いて、シクロヘキサン/Span 20中に懸濁させたTixogel VZ(処方D)を混ぜ入れた。使用したキャタピラーミキサーは、分散に使用したインターデジタルミキサーよりも明らかに構造サイズが大きい。したがって、キャタピラーミキサーは、分散液の液滴サイズを変化させない。
【0129】
リアクターとして、長さ20mのFEP製1/8インチ単一キャピラリー、または複数の単一キャピラリーを束ねたキャピラリーリアクター8を選択的に使用することができた。単一キャピラリーを有する構造変形例は、
図3に示されていない。キャピラリーリアクター8は、上記の段落で説明したとおりに設計されていた。第2のリアクター13(バッチ)は、容積250mlの3ツ口フラスコとして設計されていた。第2のリアクターは、油浴により温度制御可能であり、KPG(登録商標)スターラーを用いて撹拌することができた。
【0130】
分散媒からのポリアクリレート粒子の分離、およびポリアクリレート粒子からの水の排出に、回転乾燥機および噴霧乾燥機が利用できた。
【0131】
試験シーケンス:
実験用装置では、3つのプロセスモードが可能であった:
・キャピラリーを使用しない半連続予備重合:部分的に中和されたアクリル酸溶液と開始剤との混合およびこの混合物の分散のみを連続的に行う。その後、試料採取時間に相当する量のシクロヘキサン/Span 20/Tixogel VZの入った加熱フラスコに分散液を直接捕集する。
・キャピラリーを使用した半連続予備重合:上記の変形例と同様であるが、ただし、フラスコ内での試料採取を開始する前に、生成された分散液が加熱キャピラリーを通る点が相違する。
・連続予備重合:上記変形例とは異なり、この場合には、分散後に、シクロヘキサン/Span 20/Tixogel溶液も、加熱キャピラリーでのさらなる処理の前に、連続的に混ぜ入れる。
【0132】
連続の場合の流量比は、部分的に中和されたAA/MBA:開始剤:シクロヘキサン/Span 20:シクロヘキサン/Span 20/Tixogel[ml/min]=3.0:0.3:5.0:5.0であった(これは、開始剤約1200ppm、架橋剤約1000ppmに相当する)。
【0133】
半連続の変形例では、シクロヘキサン/Span 20/Tixogelの連続的な搬送は行わない。対応する量を、バッチフラスコに装入する。
【0134】
予備試験では、まずキャピラリーバンドルではなく単一キャピラリーを使用した。キャピラリーの長さは20m、直径は1/8インチであった。この結果、反応容積Vi=39.2mlとなった。この結果、プロセスの連続部分での滞留時間は以下のようになった:キャピラリーなしの半連続予備重合:0分/キャピラリーありの半連続予備重合:4.7分/連続予備重合:2.9分。70℃でのキャピラリーの運転。
【0135】
250mlの三ツ口フラスコ中で、油浴温度85℃で18分間かけて試料採取を行う。その際、KPGスターラーで撹拌を行う。85℃で約1/2時間にわたって後撹拌する。その後、KPG(登録商標)撹拌からマグネチックスターラー/スターラーバーに切り替え、室温で約3~4時間撹拌を続ける。その後、ろ過により粒子材料を除去する。空気下で一晩乾燥させる。ロータリーエバポレーターで、50℃で最終的に約1/2~1時間にわたってさらに乾燥させる。特にこれらのパラメーターは、試験や試料によって異なる可能性がある。回転乾燥させた試料の顕微鏡画像および完全に水で膨潤した粒子の顕微鏡画像により試料品質を評価する。
【0136】
試験PL058では、3つのプロセスモードすべてについて試料を生成した(PL058A、PL058B、PL058C)。いずれのケースでも、粒子か、または撹拌を止めるとすぐに沈降して再懸濁可能な粒子スラリーが得られた。最初の粒子は、試料採取開始から約10分後に観察することができた。これらは、小さな一次粒子からなる凝集体であった。乾燥後、粒子は水中で膨潤可能であった。
【0137】
試験体PL058A(34g、うち最大22gのアクリレート)、PL058B(33g、うち最大22gのアクリレート)およびPL058C(30g、うち最大22gのアクリレート)から得られた回転乾燥試料材料を、さらなる試料特性評価/分析に供した。
【0138】
その後、生成されたポリマー粒子懸濁液を噴霧乾燥によって直接さらに処理することを目的として、本方法に、直接噴霧乾燥を結合した。
【0139】
重合を、主にキャピラリーを用いた半連続予備重合の標準化された条件下で実施した(当然のことながら、ろ過工程および乾燥工程は行わない)。使用した溶液の組成は、上記の処方と同じである。
【0140】
流量は、部分的に中和されたAA/MBA(処方A):開始剤(処方B):シクロヘキサン/Span 20(処方C)[ml/min]=3.0:0.15:5.0であった。よって、キャピラリー中の分散液の滞留時間は、約4.8分であった。したがって、開始剤濃度は、アクリル酸のモル量に対して約400ppmであり、架橋剤濃度は、アクリル酸の重量に対して約1000ppmであった。最後に室温で撹拌していた粒子懸濁液から段階的に材料を取り出し(典型的には約50ml)、次いで、噴霧乾燥用に試料を希釈するために、同量のシクロヘキサン/Span 20/Tixogel(処方D)と再度混合した。このようにして、粒子の凝集を避け、ポンプによる噴霧乾燥機への搬送性を向上させる。1つのバッチの噴霧乾燥には、約45~60分を要した。合計で7つのバッチを実施した。最初の材料が得られた後に、そのバッチの実施に付随して噴霧乾燥を行い、それにより、材料を速やかに段階的にさらに処理した。
【0141】
噴霧乾燥では、原則として、非常に微細なフラクションと粗いフラクション(主要な材料)との2つのフラクションが得られた。7つすべてのバッチの後処理から得られた粗いフラクションの合計をまとめて試料(噴霧乾燥材料試料PL075)とし、これにより特性評価/分析を行った。
【0142】
噴霧乾燥を除けば、この試料は製造プロセスにおいて材料試料PL58Bと最も類似している。PL075のコンシステンシーは、主に粉末状で、凝集物は小さく、流動性がある。
【0143】
噴霧乾燥試験に続き、処理方法の影響を調べるため、比較としてさらに大きな試料を作製した。処理は、バッチ内のポリマー粒子懸濁液の生成時点までは、噴霧乾燥試験と同じである。懸濁液のさらなる希釈および噴霧乾燥ではなく、ろ過による除去、空気乾燥およびロータリーエバポレーターでの後乾燥(水浴温度95℃まで、メンブレンポンプ真空、90分まで、30mbarまで)という「標準的な後処理」を行った。ここでも、(試験条件を維持して)複数のバッチを実施した。
【0144】
乾燥後に、材料はより大きな凝集体/ブロック状で存在する。個々の粒子も少量認められる。
【0145】
このようにして、ポリマー粒子懸濁液の生成について、非常に信頼性の高い方法を確立することができた。ここで、プロセスについて、予備重合部分を完全に連続的にすること、すなわちTixogelの計量供給を連続的に行うことに尽力した。これに並行してさらに、キャピラリーの温度を系統的に変化させた(70℃、80℃、85℃および95℃)。ここで温度を上げる目的は、キャピラリー内での転化率を上げることであった。
【0146】
温度が高くなるにつれて、粒子が小さくなる傾向が観察された。また、試験では、Tixogel懸濁液の調合およびエージングが、試験結果において、特に生成されるポリマー材料の全般的な品質に関して重要な役割を担い得るという知見も得られた。
【0147】
そのため、Tixogelの調合も改良し、標準化した。ここで、Tixogel懸濁液を、次のように準備する:
500mlのシクロヘキサンを0.87gのSpan20と混合し、5分間撹拌する(500rpm)。続いて、2.75gのTixogelを加え、さらに5分間撹拌する。続いて、今度はIKA Ultraturrax分散装置(15000rpm)で2分間処理する。0.825gの水を加え、再びUltraturraxで1分間処理する。その後、撹拌(500rpm)しながら窒素を溶液にバブリングする。さらに撹拌しながら搬送および保管を行う。温度上昇に関する最後の試験はすでに、後に特定のキャピラリーリアクターに本プロセスを移行させることを視野に入れて行った。本プロセスの連続部分で最大限の転化率を達成すること、あるいはリアクターを通過する流速を高くして運転することができ、それでも顕著な転化率を達成できるようにすることを目的とした。速度が低すぎると、相分離、沈降あるいは沈殿のリスクがある。
【0148】
既存の1/8インチキャピラリーの長さは20mであり、内容積は39.2mlである。リアクターにおいて、3つのモジュールすべてを使用した場合、18本すべてのチャネルに平行に流した場合のチャネル長はわずか60cmであり、それぞれ6本のチャネルのみに流し、リアクター内で流体の流れを2回偏向させた場合のチャネル長は1.80mである。
【0149】
最終的に温度を95℃まで上げたため、次の試験は、使用するキャピラリーを短くする方向で行った(10mにし、内容積はわずか19.6mlとする)。さらに、開始剤の量を増やすことによりキャピラリー内での転化率を上げる試みを行った。この目的のために、同じ濃度の開始剤溶液で、流量を0.15ml/minから0.3ml/minを経て0.6ml/minまで増加させた。
【0150】
滞留時間が短くなり、開始剤濃度が高くなるにつれて、生成される試料の粘着性が若干高くなる傾向にある。しかし、0.15ml/minおよび0.30ml/minの開始剤溶液では、得られた試料はまだ比較的良好である。0.60ml/minの開始剤溶液の場合のみ、試料は不均質になりすぎる。
【0151】
0.60ml/minの試料の不均質性は、ろ過後の状態、さらには乾燥状態および膨潤状態でもすでに現れている。
【0152】
さらなる工程として、重合リアクターへの本方法の移行を視野に入れ、1/8インチのFEPキャピラリー(最終的に10m、内容積19.8ml)を、1/8インチのステンレス鋼製キャピラリーのセット(di=2.3mm、Vi全体=15.2ml、l全体=約8m)に交換した。したがって、内部容積は、リアクターモジュールにほぼ相当する。実質的に試験すべきことは、表面材質をFEPからステンレス鋼に変えた場合に、キャピラリーが非常に急速に閉塞するか否かという点であった。
【0153】
2つの試験を実施し、一方は90℃で0.30ml/minの開始剤溶液を用い、もう一方は95℃で同じく0.30ml/minの開始剤溶液を用いた。キャピラリーでの処理を安定的に行い、したがって非常に良好に制御することができた。処理中にブロッキング現象は観察されなかった。得られたポリマー材料は、既存の試料に匹敵する特性を示す。
【0154】
これらの準備試験は、重合リアクターへの移行のための工程の準備であった。
【0155】
上記の反応モジュールにより、一方では、18本すべてのチャネルを平行に運転すること、または6本のチャネルの層を流れる平行流の後に2回偏向させることが可能となる。まず、18本すべてのチャネルを流れるリアクターモジュールを使用した。
【0156】
試験手順では、加熱回路提供用の外部サーモスタットが78℃で作動した。目標反応温度は、約75℃であった。反応チャネルに導入された3つの熱電対で測定された温度は、一方ではこの値に近く(約76℃)、他方では互いに非常に近く(76.1℃、76.4℃および76.0℃)、これは、反応モジュールの熱管理が良好であることを強調するものである。この温度で、開始剤流量0.30ml/minで1回、0.60ml/minで1回の計2回の試験を行った。どちらの場合も、粒子を得ることができた。試験の実施中に反応モジュールの閉塞/ブロッキングは観察されなかった。
【0157】
重合リアクターへの本プロセスの移行を、3つすべてが直列接続された反応モジュールを使用することにより拡張させた。既存のプロセスパラメーターを維持した。これにより、重合リアクターでの滞留時間は、3倍の3.3分となる。この場合にも、試験の実施中にリアクターの閉塞は観察されなかった。粒子試料を、真空乾燥キャビネットで乾燥させた。
【0158】
以下の異なるプロセス条件を反映した合計で4つの試料系列を実行した:
・長さ20mのキャピラリーでの連続予備重合、70℃
・長さ20mのキャピラリーでの連続予備重合、85℃
・3つのモジュールからなる重合リアクターでの連続予備重合、70℃
・3つのモジュールからなる重合リアクターでの連続予備重合、85℃
【符号の説明】
【0159】
1 ポリアクリレート粒子
2 モノマー
3 分散剤
4 界面活性剤
5 ピッカリング乳化剤
6 分散液
7 ミキサー
8 第1のリアクター(キャピラリーリアクター)
9 キャピラリー
10 導管
11 伝熱媒体
12 一次粒子
13 第2のリアクター
14 容器
15 二次粒子
16 分離装置
17 返送導管
【国際調査報告】