(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】安定化されたアピリモドの組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20240524BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240524BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240524BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240524BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P25/00
A61P25/28
A61P35/00
A61P31/12
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576165
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022033107
(87)【国際公開番号】W WO2022261499
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523463731
【氏名又は名称】オルフアイ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ファンドリック キース
(72)【発明者】
【氏名】ベケット ポール
(72)【発明者】
【氏名】メルビン ローレンス エス. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ヤング ピーター ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ ジョアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076BB02
4C076CC01
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4C076FF65
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
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4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
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4C086NA03
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZB26
4C086ZB33
(57)【要約】
安定化されたアピリモドの薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物が提供される。アピリモド塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含むアピリモドの固体経口剤形であって、前記アピリモド塩が、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である、アピリモドの固体経口剤形が提供される。神経変性疾患、がん、およびウイルス感染症の治療において使用するための前記組成物が提供される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化されたアピリモドの薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記アピリモドが、25℃、60%相対湿度(RH)の条件下で少なくとも3か月間、好ましくは少なくとも6か月間保管される場合、1つ以上の分解生成物の形成を避けるように安定化されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の分解生成物が、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の一方または両方から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記塩が、塩酸塩、リン酸塩、乳酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、およびグリコール酸塩からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記塩が、塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が、固体経口剤形として製剤化される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記固体経口剤形が、ハードもしくはソフトゼラチンカプセル、錠剤、経口溶解錠剤、または舌下剤形である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記固体経口剤形が、口腔内崩壊錠である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記固体経口剤形が、酸性条件下で急速に溶解し、任意で、前記酸性条件のpHが1~2である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記1つ以上の薬学的に許容される賦形剤が、1つ以上の希釈剤、潤滑剤、流動促進剤、湿潤剤、崩壊剤、および安定剤から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記希釈剤が、マンニトール、ラクトース、コーンスターチ、および微結晶セルロースのうちの1つ以上から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
流動促進剤、潤滑剤、またはその両方をさらに含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記流動促進剤が、コロイダル無水シリカであり、前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
超崩壊剤をさらに含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記超崩壊剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、およびクロスポビドンからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
アピリモド塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含むアピリモドの固体経口剤形であって、前記アピリモド塩が、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である、アピリモドの固体経口剤形。
【請求項17】
前記アピリモド塩が微粒化されている、請求項16に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項18】
前記固体経口剤形が、ゼラチンおよび/またはマンニトールをさらに含む、請求項16に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項19】
前記固体経口剤形が、フィッシュゼラチンおよびマンニトールをさらに含む、請求項16に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項20】
前記固体経口剤形が、アピリモド塩酸塩15~20%w/w、フィッシュゼラチン2~5%w/w、マンニトール1~4%w/w、および水72~78%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる、請求項16~20のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項21】
前記固体経口剤形が、アピリモドマロン酸塩18~22%w/w、フィッシュゼラチン2~5%w/w、マンニトール1~4%w/w、および水70~75%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる、請求項16~20のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項22】
前記固体経口剤形が、アピリモド酒石酸塩21~25%w/w、フィッシュゼラチン2~5%w/w、マンニトール1~4%w/w、および水68~72%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる、請求項16~20のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項23】
前記固体経口剤形が、口腔内崩壊錠である、請求項16~22のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項24】
前記固体経口剤形が、酸性条件下で急速に溶解する、請求項16~23のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項25】
前記固体経口剤形が、酸性条件下で15分以内に少なくとも80%の溶解を達成する、請求項16~24のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項26】
前記酸性条件のpHが1~2である、請求項25に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項27】
前記固体剤形が、25℃、60%相対湿度(RH)の条件下で保管される場合、少なくとも3か月間安定である、請求項16~26のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項28】
請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項16~27のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形を含む、キット。
【請求項29】
疾患の治療を必要とする対象における前記疾患の治療において使用するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項16~27のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項30】
疾患の治療を必要とする対象における前記疾患を治療するための医薬の製造において使用するための、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項16~27のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形。
【請求項31】
神経変性疾患もしくは障害の治療を必要とする対象における前記神経変性疾患もしくは障害を治療するための方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項16~27のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記神経変性疾患もしくは障害が認知症である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記認知症が、エイズ認知症複合(ADC)、アルツハイマー病(AD)に関連する認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症(FTD)、混合型認知症、レビー小体型老人性認知症、および血管性認知症から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記神経変性疾患もしくは障害が、前頭側頭型認知症(FTD)または筋萎縮性側索硬化症(ALS)である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
治療を必要とする前記対象が、C9ORF72遺伝子にリピート拡張を有する対象である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
治療を必要とする前記対象が、SOD1遺伝子に変異を有する対象である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
がんの治療を必要とする対象における前記がんを治療するための方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項16~27のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項38】
前記がんが、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、黒色腫またはその他の皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膵臓がん、肝臓がん、および精巣がんから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ウイルス感染症の治療を必要とする対象における前記ウイルス感染症を治療するための方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項16~27のいずれか1項に記載のアピリモドの固体経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記ウイルス感染症が、コロナウイルスによって引き起こされる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV-1、MERS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルス感染症が、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスによって引き起こされる、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、ヒトである、請求項31~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
アピリモドの固体経口剤形を製造する方法であって、アピリモド塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを混合することを含み、前記アピリモド塩が、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である、方法。
【請求項45】
前記アピリモド塩が微粒化されている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記薬学的に許容される賦形剤が、フィッシュゼラチンおよびマンニトールを含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記固体剤形が、口腔内崩壊錠である、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)に基づいて、2021年6月11日に提出された「安定化されたアピリモド組成物」と題する米国仮出願第63/202,438号による優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、アピリモドの安定化された形態、アピリモドの安定化された製剤、およびそれらを治療に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アピリモド(STA-5326とも呼ばれ、以下、「アピリモド」という)は、IL-12およびIL-23の有力な転写阻害剤として認識されている。例えば、Wada et al.Blood109(2007):1156-1164(非特許文献1)を参照されたい。IL-12およびIL-23は、通常、抗原刺激に応答してB細胞やマクロファージなどの免疫細胞によって生成される炎症性サイトカインである。自己免疫疾患および慢性炎症を特徴とする他の疾患は、部分的にはこれらのサイトカインの不適切な生成を特徴とする。免疫細胞において、アピリモドによるIL-12/IL-23の転写の選択的阻害は、最近、アピリモドの、ホスファチジルイノシトール-3-リン酸5-キナーゼ(PIKfyve)への直接結合によって媒介されることが示されている。例えば、Cai et al.Chemistry and Biol.20(2013):912-921(非特許文献2)、Gayle et al,Blood129(2017);1768-1778(非特許文献3)を参照されたい。PIKfyveは、自然免疫に重要であるToll様受容体シグナリングにおいて役割を果たしている。
【0004】
アピリモドは、その免疫調節剤およびIL-12/IL-23の特異的阻害剤としての活性に基づいて、自己免疫および炎症性の疾患および障害の治療に有用であると提案されている。例えば、US6,858,606(特許文献1)およびUS6,660,733(特許文献2)(関節リウマチ、敗血症、クローン病、多発性硬化症、乾癬、またはインスリン依存性糖尿病など、IL-12またはIL-23の過剰生成を特徴とする疾患および障害の治療に有用であると言われている、アピリモドを含むピリミジン化合物のファミリーが記載されている)を参照されたい。同様に、アピリモドは、そのc-RelまたはIL-12/23を阻害する活性に基づいて、特定のがん、特にこれらのサイトカインが異常な細胞増殖を促進する役割を果たすと考えられているがんの治療に有用であると提案されている。例えば、WO2006/128129(特許文献3)、およびBaird et al.,Frontiers in Oncology3:1(非特許文献4)(それぞれ2013)を参照されたい。
【0005】
アピリモドの3つの臨床試験はそれぞれ、アピリモドの自己免疫疾患および炎症性疾患における潜在的な有効性に焦点を当てている。これらの試験は、乾癬、関節リウマチ、クローン病の患者を対象として実施された。乾癬患者を対象とした非盲検臨床研究では、アピリモドの経口投与は、TH1およびTH17媒介炎症性疾患の治療のためのIL-12/IL-23合成の阻害を支持する免疫調節活性を示したと結論づけられた。Wada et al.,PLosOne7:e35069(2012年4月)(非特許文献5)。しかし、関節リウマチとクローン病の対照試験の結果は、アピリモドによるIL-12/IL-23の阻害がこれらの適応症のいずれにおいても臨床的改善につながるという考えの裏付けにならなかった。関節リウマチ患者を対象としたアピリモドのランダム化二重盲検プラセボ対照第II相臨床試験では、アピリモドは滑膜IL-12およびIL-23の発現を変化させることができなかった。Krauz et al.,Arthritis&Rheumatism 64:1750-1755(2012)(非特許文献6)。著者らは、「結果は、アピリモドによるIL-12/IL-23の阻害がRAにおける強力な臨床的改善を誘導できるという考えの裏付けにならない」と結論づけた。同様に、活動性クローン病の治療のためのアピリモドのランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、アピリモドは耐性が良好であったが、プラセボよりも優れた効果を示さなかったと結論づけられた。Sands et al Inflamm Bowel Dis.2010年7月;16(7):1209-18(非特許文献7)。
【0006】
WO2005/112938(特許文献4)には、アピリモドを含む、IL-12の二塩阻害剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US6,858,606
【特許文献2】US6,660,733
【特許文献3】WO2006/128129
【特許文献4】WO2005/112938
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wada et al.Blood109(2007):1156-1164
【非特許文献2】Cai et al.Chemistry and Biol.20(2013):912-921
【非特許文献3】Gayle et al,Blood129(2017);1768-1778
【非特許文献4】Baird et al.,Frontiers in Oncology3:1
【非特許文献5】Wada et al.,PLosOne7:e35069(2012年4月)
【非特許文献6】Krauz et al.,Arthritis&Rheumatism 64:1750-1755(2012)
【非特許文献7】Sands et al Inflamm Bowel Dis.2010年7月;16(7):1209-18
【発明の概要】
【0009】
本発明は、特に25℃、60%相対湿度(RH)の環境条件下で保管される場合に、少なくとも1か月間、好ましくは1~3か月間、1~6か月間、または1~12か月間化学的分解に対して安定なアピリモドの医薬調製品を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩は、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠(ODT)とする)である。さらに、本明細書に記載のアピリモド塩(例えば、口腔内崩壊錠などの固体経口剤形である)は酸性条件(例えば、pH1~2)下で急速に溶解し、良好なバイオアベイラビリティーを有するが、予想外に、アピリモド遊離塩基ODTはゆっくりと溶解する。本明細書では、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の形成を含む、化学的分解に対して耐性のあるアピリモド塩、好ましくは単塩、を含む組成物、関連する組成物、およびそれらを治療に使用する方法が提供され、上記の方法は、神経変性疾患および障害、がん、ならびにウイルス感染症の治療法にそれらを使用する方法を含む。実施形態では、神経変性疾患もしくは障害は、アルツハイマー病(AD)、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、混合型認知症、レビー小体型老人性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、および血管性認知症から選択される。実施形態では、神経変性疾患もしくは障害は、前頭側頭型認知症(FTD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)から選択される。実施形態では、がんは非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、腎臓がん、結腸直腸がん、または黒色腫である。実施形態では、ウイルス性疾患はコロナウイルスによって引き起こされる。実施形態では、ウイルス感染症はコロナウイルスによって引き起こされる。実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-1、MERS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択される。実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。実施形態では、ウイルス感染症は、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスによって引き起こされる。1つの実施形態では、ウイルスはエボラウイルスである。1つの実施形態では、エボラウイルスは、ブンディブギョ株、スーダン株、タイフォレスト株、およびザイール株からなる群から選択される株に属する。1つの実施形態では、エボラウイルスはザイールエボラウイルスである。
【0010】
本開示のいくつかの態様は、安定化されたアピリモドの薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記アピリモドは、25℃、60%相対湿度(RH)の条件下で少なくとも3か月間、好ましくは少なくとも6か月間保管される場合、1つ以上の分解生成物の形成を避けるように安定化される。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の分解生成物は、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の一方または両方から選択される。いくつかの実施形態では、前記塩は、塩酸塩、リン酸塩、乳酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、およびグリコール酸塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記塩は、塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、固体経口剤形として製剤化される。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、ハードもしくはソフトゼラチンカプセル、錠剤、経口溶解錠剤、または舌下剤形である。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、口腔内崩壊錠である。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、酸性条件下で急速に溶解し、任意で、前記酸性条件のpHは1~2である。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、1つ以上の希釈剤、潤滑剤、流動促進剤、湿潤剤、崩壊剤、および安定剤から選択される。いくつかの実施形態では、前記希釈剤は、マンニトール、ラクトース、コーンスターチ、および微結晶セルロースのうちの1つ以上から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、流動促進剤、潤滑剤、またはその両方をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記流動促進剤はコロイダル無水シリカであり、前記潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、超崩壊剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記超崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、およびクロスポビドンからなる群から選択される。
【0014】
本開示の他の態様は、アピリモド塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含むアピリモドの固体経口剤形であって、前記アピリモド塩が、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である、アピリモドの固体経口剤形を提供する。いくつかの実施形態では、前記アピリモド塩は微粒化されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、ゼラチンおよび/またはマンニトールをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、フィッシュゼラチンおよびマンニトールをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、アピリモド塩酸塩15~20%w/w、フィッシュゼラチン2~5%w/w、マンニトール1~4%w/w、および水72~78%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、アピリモドマロン酸塩18~22%w/w、フィッシュゼラチン2~5%w/w、マンニトール1~4%w/w、および水70~75%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、アピリモド酒石酸塩21~25%w/w、フィッシュゼラチン2~5%w/w、マンニトール1~4%w/w、および水68~72%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、口腔内崩壊錠である。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、酸性条件下で急速に溶解する。いくつかの実施形態では、前記固体経口剤形は、酸性条件下で15分以内に少なくとも80%の溶解を達成する。いくつかの実施形態では、前記酸性条件のpHは1~2である。いくつかの実施形態では、前記固体剤形は、25℃、60%相対湿度(RH)の条件下で保管される場合、少なくとも3か月間安定である。
【0018】
本明細書に記載の医薬組成物またはアピリモドの固体経口剤形を含むキットが提供される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物またはアピリモドの固体経口剤形は、疾患の治療を必要とする対象における前記疾患の治療に使用される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物またはアピリモドの固体経口剤形は、疾患の治療を必要とする対象における前記疾患を治療するための医薬の製造に使用される。
【0021】
本明細書では、神経変性疾患もしくは障害の治療を必要とする対象における前記神経変性疾患もしくは障害を治療するための方法であって、本明細書に記載の医薬組成物またはアピリモドの固体経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法がさらに提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記神経変性疾患もしくは障害は認知症である。いくつかの実施形態では、前記認知症は、エイズ認知症複合(ADC)、アルツハイマー病(AD)に関連する認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症(FTD)、混合型認知症、レビー小体型老人性認知症、および血管性認知症から選択される。いくつかの実施形態では、前記神経変性疾患もしくは障害は、前頭側頭型認知症(FTD)または筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。いくつかの実施形態では、治療を必要とする前記対象は、C9ORF72遺伝子にリピート拡張を有する対象である。いくつかの実施形態では、治療を必要とする前記対象は、SOD1遺伝子に変異を有する対象である。
【0023】
また、本明細書では、がんの治療を必要とする対象における前記がんを治療するための方法であって、本明細書に記載の医薬組成物またはアピリモドの固体経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記がんは、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、黒色腫またはその他の皮膚がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膵臓がん、肝臓がん、および精巣がんから選択される。
【0024】
また、本明細書では、ウイルス感染症の治療を必要とする対象における前記ウイルス感染症を治療するための方法であって、本明細書に記載の医薬組成物またはアピリモドの固体経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、前記ウイルス感染症は、コロナウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、前記コロナウイルスは、SARS-CoV-1、MERS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択される。いくつかの実施形態では、前記ウイルス感染症は、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスによって引き起こされる。いくつかの実施形態では、前記対象は、ヒトである。
【0025】
本開示のさらなる態様は、アピリモドの固体経口剤形を製造する方法であって、アピリモド塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを混合することを含み、前記アピリモド塩が、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である、方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記アピリモド塩は微粒化されている。いくつかの実施形態では、前記薬学的に許容される賦形剤は、フィッシュゼラチンおよびマンニトールを含む。いくつかの実施形態では、前記固体剤形は、口腔内崩壊錠である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1A~Bは、参照カプセル製剤におけるアピリモドジメシル酸塩の化学的不安定性。(
図1A)は、様々な条件下での2-ビニルピリジンの経時的な量を示す:5℃で冷蔵(円形)、環境条件(25℃/60%RH、正方形)、中間条件(30℃/60%RH、三角形)、加速条件(40℃/75%RH、菱形);2-ビニルピリジンの量は、高圧液体クロマトグラフ(HPLC)によって決定;2-ビニルピリジンの検出の下位レベルは0.10%である。(
図1B)は、様々な条件下での別の分解生成物であるSTA-6066の経時的な量を示す:5℃で冷蔵(正方形)、環境条件(25℃/60%RH、三角形)、中間条件(30℃/60%RH、円形)、加速条件(40℃/75%RH、菱形)。
【
図2】環境温度でのFaSSGF(pH1.6)におけるアピリモド遊離塩基および9つの塩の動的溶解度の結果のまとめを示す。
【
図3】環境温度でのFaSSiF(pH6.5)におけるアピリモド遊離塩基および9つの塩の動的溶解度の結果のまとめを示す。
【
図4】口腔内崩壊錠(ODT)としての微粒化されたアピリモド塩酸塩の溶解プロファイルを示す。
【
図5】口腔内崩壊錠(ODT)としての微粒化されたアピリモドマロン酸塩の溶解プロファイルを示す。
【
図6】口腔内崩壊錠(ODT)としての微粒化されたアピリモドL-酒石酸塩の溶解プロファイルを示す。
【
図7】口腔内崩壊錠(ODT)としての微粒化されたアピリモド遊離塩基の溶解プロファイルを示す。予想外に、遊離塩基ODTは溶解が遅かった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明者らは、アピリモドジメシル酸塩が、一般的な薬学的に許容される賦形剤によって経口剤形用の粉末ブレンドとして製剤化された場合、室温で不安定であることを予期せず発見した。具体的には、アピリモドは、化学的に分解され、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066を含む望ましくない分解生成物を生成しやすかった。2-ビニルピリジンは、げっ歯類モデル(マウス、ラット)において消化管から吸収され、衰弱、運動失調、血管拡張、呼吸困難、けいれんを引き起こす。Clayton,G.D.およびF.E.Clayton(編).Patty’s Industrial Hygiene and Toxicology:Volume 2A、2B、2C:Toxicology.第3版.New York:John Wiley Sons,1981-1982.,第2735ページを参照されたい。
【0028】
本発明は、環境温度(25℃)で化学的分解に対して安定な、特に2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の形成に対して安定な、アピリモドの医薬調製品の需要を解決する。本開示は、参照組成物と比較して化学的分解に耐性のある、アピリモドの薬学的に許容される塩を含む組成物を提供する。実施形態では、参照組成物は、ゼラチンカプセルにおける賦形剤とアピリモドジメシル酸塩との乾燥粉末ブレンドである。本開示は、それぞれ、130℃を超える融点を有するアピリモドを含有する結晶性固体を形成する、特に一般的な賦形剤と粉末ブレンドとして製剤化された場合、化学的分解および多形体形成に対して、特に2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の形成に対して安定である、多くの酸を提供する。
【0029】
実施形態では、本開示は、アピリモドの薬学的に許容される単塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む乾燥粉末ブレンドの形態である医薬組成物を提供し、そのうち、前記組成物は、0.2%w/w未満のアピリモド分解生成物を含む。実施形態では、組成物は、環境条件、即ち25℃/60%RHの制御された温度と相対湿度(RH)で1~3か月間、または1~6か月間暴露した後、0.05%未満、0.1%未満、または0.2%w/w未満のアピリモド分解生成物を含む。実施形態では、アピリモド分解生成物は、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の一方または両方から選択される。
【0030】
【0031】
アピリモドは、化学名が2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N’-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-(ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)であり、CAS番号が541550-19-0である。アピリモドは、例えば、米国特許第7,923,557号、米国特許第7,863,270号、およびWO2006/128129に記載の方法に従って調製され得る。
【0032】
アピリモドのジメシル酸塩形態は、水へのその高い溶解度(831mg/mL)と物理的安定性のため、最初に開発対象として選択された。例えば、WO2005112938を参照されたい。しかし、アピリモドジメシル酸塩形態自体の安定性とは対照的に、本発明者らは、カプセル剤形中の乾燥粉末として使用されるために典型的な固体賦形剤とブレンドされると、アピリモドが、主に2-ビニルピリジンとSTA-6066に分解されたことを発見した。
【0033】
したがって、本発明は単塩、即ち、酸とアピリモドとの化学量論比が1:1である塩を提供する。ここで説明する単塩は、ジメシル酸塩の形態と比較して酸性度の低い塩を形成し、環境条件下で一般的な賦形剤と乾燥粉末として製剤化された場合に、比較的、より安定である。適切な溶媒中にアピリモドがある溶液を50℃に加熱し、1当量の酸を添加することで、アピリモドと適切な酸の単塩を調製した。溶液を環境温度まで冷却し、一晩撹拌した。X線粉末回折分析によって、塩の結晶性を確認した。その後、塩を、空気にさらすか、窒素を吹き込みながら50℃の真空オーブンで真空乾燥するか、またはその両方の組み合わせによって乾燥させた。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩は、塩酸塩、リン酸塩、乳酸塩、L-酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、およびグリコール酸塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩は、塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である。
【0035】
実施形態では、アピリモドは微粒化されている。薬物粒子の微粒化は、例えば流体エネルギーまたはジェットミル、ピンミル、湿式研磨、ボールミルおよび/またはペブルミル、エッジランナーミル、ロータリーカッターミル、エンドランナーミル、ローラーミル、ハンマーミル、乳鉢と乳棒、コロイドミルなどのミルなどの機械的手段によって達成できる。微粒化された薬物粒子を生成するための他の技術としては、機械的コミュニケーション、噴霧乾燥、超臨界流体(SFC)が挙げられる。また、ミクロンまたはサブミクロンサイズの結晶を直接生成するインサイチュ技術を採用してもよい。
【0036】
実施形態では、アピリモドはナノ化される。ナノ化の好適な方法としては、超音波沈殿、ビーズミル、高圧ホモジナイゼーション、媒体ミル、および乾式共グラインディングが挙げられる。
【0037】
医薬組成物および製剤
本開示は、アピリモドの安定化された塩形態、およびそれを含む医薬組成物を提供する。このコンテキストにおいて、「安定化された」とは、アピリモドの化学的分解と、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066などの分解生成物の形成に対する安定化とを指す。
【0038】
実施形態では、本開示は、アピリモドと1つ以上の賦形剤とを含む、ハードもしくはソフトゼラチンカプセル、錠剤、口腔内崩壊錠、または舌下剤形の形態である医薬組成物を提供する。実施形態では、本開示は、アピリモドと1つ以上の賦形剤との乾燥粉末ブレンドを含む、ハードもしくはソフトゼラチンカプセル、または錠剤の形態である医薬組成物を提供する。本実施形態により、上記の1つ以上の賦形剤は、1つ以上の希釈剤、潤滑剤、流動促進剤、湿潤剤、崩壊剤、および安定剤から選択され得る。このコンテキストにおいて、「希釈剤」、「充填剤」、および「増量剤」という用語は互換可能に使用される。本実施形態により、粉末ブレンドにおけるアピリモドの量は10~60wt%であり、残部は1つ以上の賦形剤で満たされる。実施形態では、上記の1つ以上の賦形剤は、希釈剤または複数の希釈剤の組み合わせを含む。好適な希釈剤としては、乳糖、コーンスターチ、および微結晶セルロースが挙げられる。一実施形態では、上記の1つ以上の賦形剤は、希釈剤に加えて、流動促進剤、潤滑剤、または流動促進剤と潤滑剤の両方を含む。通常、流動促進剤は、コロイダル無水シリカなど、粒子間摩擦を減少させる材料であり、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムなど、粉末の金属への付着を軽減させる材料である。実施形態では、上記の1つ以上の賦形剤は、ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤、および崩壊剤、好ましくはデンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロース、またはクロスポビドンなどの超崩壊剤をさらに含み得る。
【0039】
錠剤またはカプセルに適した希釈剤の例としては、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、セラブレート、酢酸セルロース、セルロース微結晶、セルロース粉末、ケイ化セルロース微結晶、コーンスターチ、コーンシロップ固体、デキストレート、デキストリン、デキストロース、エリスリトール、エチルセルロース、パルミトステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、イヌリン、カオリン、ラクチトール、ラクトース、ラクトース一水和物とポビドンの共加工物、ラクトース一水和物および粉末セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、中鎖トリグリセリド、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、プロピルパラベンナトリウム、シメチコン、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ソルビトール、スターチ、スクロース、砂糖、ひまわり油、タルク、トレハロース、キシリトールが挙げられる。
【0040】
錠剤またはカプセルに適した崩壊剤の例としては、寒天、アルギン酸、アスパラギン、アルギン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロース、セラトニア、キトサン、コロイダル二酸化ケイ素、コーンスターチおよびアルファー化スターチ、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリシン、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ラクトース一水和物およびコーンスターチ、マグネシウムアルミニウム、マルトース、メチルセルロース、ポラクリリンカリウム、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、スターチが挙げられる。
【0041】
錠剤またはカプセルに適した接着剤の例としては、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム、アタパルジャイト、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ポリカルボフィルカルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、セラトニア、キトサン、コロホニー、コポビドン、コーンシロップ固体、デキストラート、デキストリン、デキストロース、無水デキストロース、エチルセルロース、エチレングリコールとビニルアルコールのグラフト共重合体、ゼラチン、グルコース、ベヘン酸グリセリン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒプロメロース、イソマルト、ラクトース一水和物、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、ポビドン、プロピルパラベンナトリウム、アルギン酸ナトリウム、スターチ、スクロース、砂糖、植物油、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸塩、ゼインが挙げられる。
【0042】
錠剤またはカプセルに適した潤滑剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ヒマシ油、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ロイシン、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、ミリスチン酸、パーム油、パルミチン酸、ポロクサマー、ポリエチレングリコール、グリコールカリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸フマル酸ナトリウム、ステアリン酸、スクロースステアリン酸塩、タルク、植物油、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0043】
錠剤またはカプセルに適した流動促進剤としては、セルロース、コロイダル二酸化ケイ素、疎水性コロイダルシリカ、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、タルクが挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩は、固体経口剤形である。いくつかの実施形態では、固体経口剤形は口腔内崩壊錠(ODT)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩は、固体経口剤形、例えば口腔内崩壊錠としての塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩である。いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、酸性条件下で急速に溶解する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記の1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、ゼラチン(例えば、フィッシュゼラチン)および/またはマンニトールを含む。いくつかの実施形態では、上記の1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、フィッシュゼラチンおよびマンニトールを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、アピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)、フィッシュゼラチン、およびマンニトールを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、アピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)、フィッシュゼラチン、マンニトール、および水を含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、アピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)15~25%w/w(例えば、15~25%w/w、15~22.5%w/w、15~20%w/w、15~17.5%w/w、17.5~25%w/w、17.5~22.5%w/w、17.5~20%w/w、20~25%w/w、20~22.5%w/w、または22.5~25%w/w)、フィッシュゼラチン2~5%w/w(例えば、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、4~5、2.5~4.5、2~4、1.5~3.5、または3.5~4%w/w)、マンニトール1~4%w/w(例えば、1~4、1~3、1~2、2~4、2~3、3~4、1.5~3.5、2~3、または2.5~3%w/w)、および水70~80%w/w(例えば、70~80%w/w、70~75%w/w、または75~80%w/w)を含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるアピリモド塩の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、アピリモド塩酸塩15~20%w/w(例えば、約15、15.5、16、16.5、17、17.5、17.86、18、18.5、19、19.5、または20%w/w)、フィッシュゼラチン2~5%w/w(例えば、約2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0%w/w)、マンニトール1~4%w/w(例えば、約2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3%w/w)、および水72~78%w/w(例えば、約72、72.5、73、73.5、74、74.5、75、75.5、75.64、76、76.5、77、77.5、または78%w/w)を含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。いくつかの実施形態では、固体経口剤形は、アピリモド塩酸塩15~20%w/w、フィッシュゼラチン3.5~3.8%w/w、マンニトール2.5~3%w/w、および水72~78%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、アピリモドマロン酸塩18~22%w/w(例えば、約18、18.5、19、19.5、20、20.5、20.99、21、21.5、または22%w/w)、フィッシュゼラチン2~5%w/w(例えば、約2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0%w/w)、マンニトール1~4%w/w(例えば、約2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3%w/w)、および水70~75%w/w(例えば、約70、70.5、71、71.5、72、72.5、72.51、73、73.5、74、74.5、または75%w/w)を含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。いくつかの実施形態では、固体経口剤形は、アピリモドマロン酸塩18~22%w/w、フィッシュゼラチン3.5~3.8%w/w、マンニトール2.5~3%w/w、および水70~75%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、アピリモド酒石酸塩21~25%w/w(例えば、約21、21.5、22.5、23、23.05、23.5、24、24.5、または25%w/w)、フィッシュゼラチン2~5%w/w(例えば、約2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0%w/w)、マンニトール1~4%w/w(例えば、約2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3%w/w)、および水68~72%w/w(例えば、約68、68.5、69、69.5、70、70.5、71、71.5、または72%w/w)を含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。いくつかの実施形態では、固体経口剤形は、アピリモド酒石酸塩21~25%w/w、フィッシュゼラチン3.5~3.8%w/w、マンニトール2.5~3%w/w、および水68~72%w/wを含む水性組成物を凍結乾燥することで得られる。
【0050】
いくつかの実施形態では、アピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)のいずれか1つが凍結乾燥され、水を含有しない(例えば、凍結乾燥により水が水溶液から除去される)。いくつかの実施形態では、アピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)のいずれか1つにおいて、アピリモド塩が微粒化されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアピリモド塩(例えば、アピリモドの塩酸塩、マロン酸塩、またはL-酒石酸塩)の固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)のいずれかが、例えば、米国特許第US7972621号、米国特許第US9192580号、米国特許第US10548839号、および米国特許第US10828261号に記載されるように生成されてもよく、上記の米国特許のそれぞれのすべての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0052】
「医薬組成物」は、治療のための対象への投与に適した形態である活性医薬成分または「API」(アピリモドなど)、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含有する製剤である。「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、通常に安全で非毒性であり、生物学的にもその他の点においても望ましくないものではない、医薬組成物の調製に有用な賦形剤を指し、獣医学的使用およびヒト薬学的使用に許容される賦形剤を含む。薬学的に許容される賦形剤の例としては、無菌液体、水、緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油、洗剤、懸濁剤、炭水化物(例えば、グルコース、ラクトース、スクロースまたはデキストラン)、抗酸化物(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、またはそれらの適切な混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
医薬組成物は、例えば、液体、エアゾール、溶液、吸入剤、ミスト、スプレー;または固体、粉末、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ジェル、パッチなど、様々な形態をとることができる。特定の形態は通常、肺、吸入、鼻内、経口、バッカル、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、髄腔内、経皮、経粘膜、直腸などの所望のルートによって投与するのに適している。例えば、医薬組成物は、吸入または吹送(口または鼻のいずれかを介する)によるエアゾール投与のための水溶液または粉末の形態;経口投与のための錠剤またはカプセルの形態;直接注射で、または静脈内注入用の無菌輸液に添加することで投与するための無菌水溶液または分散液の形態;または、経皮または経粘膜投与のためのローション、クリーム、フォーム、パッチ、懸濁液、溶液、または坐剤の形態であり得る。
【0054】
実施形態では、医薬組成物は、カプセル、錠剤、口腔剤形、トローチ、ロゼンジ、および、エマルション、水性懸濁液、分散液または溶液の形態である経口液体を含むがこれらに限定されない経口剤形である。カプセルは、APIと、例えば薬学的に許容されるスターチ(例えば、コーン、ジャガイモ、またはタピオカスターチ)、砂糖、人工甘味料、粉末セルロース(結晶セルロースおよび微結晶セルロースなど)、小麦粉、ゼラチン、ガムなどの不活性充填剤および/または希釈剤との混合物を含有し得る。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加できる。水性懸濁液および/またはエマルジョンが経口投与される場合、APIは、油相に懸濁または溶解され、乳化剤および/または懸濁剤と組み合わせてもよい。必要に応じて、特定の甘味料および/または調味料および/または着色剤を添加してもよい。
【0055】
追加の薬学的に許容される賦形剤としては、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁剤または安定化剤が挙げられ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、乳糖、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥スターチ、粉砂糖が挙げられる。好ましい表面改質剤としては、非イオン性およびアニオン性表面改質剤が挙げられる。表面改質剤の代表例としては、ポロクサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイダル二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
医薬組成物は、バルクで、または用量単位形態で提供することができる。投与を容易にし、かつ用量を均一にするために、医薬組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。「単位剤形」という用語は、治療すべき対象に対する単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、そのうち、各単位は、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量のAPIを含有する。単位剤形は、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤、カプセル、IVバッグ、またはエアロゾル吸入器上の単一ポンプであり得る。本明細書に記載の医薬組成物の実施形態では、単位剤形はカプセルである。
【0057】
本開示のコンテキストにおいて、単位剤形は、典型的には、アピリモドなどのAPIを1~1000mg、好ましくは25~500mgの範囲で含有する。例えば、単位剤形は、25mg、50mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、または500mgの量のアピリモドを含有し得る。実施形態では、医薬組成物は、100mg、125mgまたは200mgの単位用量でアピリモドを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、約25℃および約60%の相対湿度(RH)の条件下で保管される場合、少なくとも1か月間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月間またはそれ以上)安定である。いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、約25℃および約60%の相対湿度(RH)の条件下で保管される場合、少なくとも3か月間安定である。いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、約25℃および約60%の相対湿度(RH)の条件下で保管される場合、少なくとも6か月間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月間またはそれ以上)安定である。いくつかの実施形態では、安定性はHPLCによって測定および/または分析される。
【0059】
いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、高いバイオアベイラビリティーを示す。いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、酸性条件下で20分以内(例えば、20、15、10または5分以内)に少なくとも60%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上)の溶解を達成する。いくつかの実施形態では、固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)は、酸性条件下で15分以内に少なくとも80%の溶解を達成する。いくつかの実施形態では、酸性条件のpHは1~2(例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2)である。
【0060】
本開示はまた、疾患の治療を必要とする対象における前記疾患の治療に使用される、本明細書に記載されるような医薬組成物および/またはアピリモドの固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)を提供する。
【0061】
本開示はまた、疾患の治療を必要とする対象における前記疾患の治療のための医薬の製造に使用される、本明細書に記載されるような医薬組成物および/またはアピリモドの固体経口剤形(例えば、口腔内崩壊錠とする)を提供する。
【0062】
本開示はまた、本発明の方法で使用される医薬組成物を含むパッケージおよびキットを提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、およびシリンジからなる群から選択される1つ以上の容器を含むことができる。キットは、本発明の疾患、症状または障害の治療および/または予防に使用される説明書、1つ以上のシリンジ、1つ以上のアプリケーター、または本発明の医薬組成物を再構成するのに適した無菌溶液のうちの1つ以上をさらに含むことができる。
【0063】
別段の指示がない限り、本明細書で使用されるすべての百分率および比は、重量によるものである。本発明の他の特徴および利点は、異なる実施例から明らかである。提供される実施例は、本発明を実践するのに有用な異なる構成要素および方法論を示す。これらの実施例は、クレームされる発明を限定するものではない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実践するのに有用な他の構成要素および方法論を特定し、採用することができる。
【0064】
治療法
本発明は、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの治療を必要とする対象における前記神経変性疾患もしくは障害、またはがんを治療するための方法であって、本明細書に記載されるような、アピリモドの安定化された塩形態を含む医薬組成物を、そのような治療を必要とする前記対象に投与することを含む方法を提供する。本開示はまた、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの治療に有用な医薬の調製に使用される、そのようなアピリモドの安定化された塩形態の使用を提供する。
【0065】
本明細書に記載の方法に従って治療され得る神経変性疾患および障害としては、例えば、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、びまん性レビー小体病、レビー小体型認知症、運動ニューロン疾患、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD)、フリードライヒ運動失調症、プリオン病、脊髄小脳失調症(SCA)、および脊髄性筋萎縮症(SMA)が挙げられる。治療され得る他のあまり一般的ではない神経変性疾患および障害としては、例えば、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、進行性核上性麻痺(PSP、Steele-Richardson-Olszewski症候群)、老年性舞踏病、ハンチントン舞踏病、脊髄失調症(脊髄小脳性失調症(SCA)を含む)、フリードライヒ運動失調症、亜急性硬化性全脳炎、前頭側頭型認知症(FTD、または前頭側頭葉変性とも呼ばれる)、およびハラーフォルデン・スパッツ病(パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、PKAN)が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、神経変性疾患もしくは障害はALSである。ALSまたは前頭側頭型認知症を治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、C9ORF72遺伝子にリピート拡張がある患者である。C9ORF72遺伝子中のGGGGCCリピート拡張は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の最も一般的な遺伝的原因であり、全世界のすべてのALS病例の約10%、家族性前頭側頭型認知症(FTD)の10%を占めている。リピート拡張により、ジペプチドリピートタンパク質(DPR)、核RNA病巣、およびRNA/DNA G-四重鎖を含む神経毒性種が生成される。リピート拡張はまた、通常小胞輸送とリソソーム生合成を調節するタンパク質であるC9ORF72タンパク質の生成を抑制する。ヒト誘導運動ニューロンでは、C9ORF72におけるリピート拡張は、グルタミン酸受容体の蓄積と神経毒性ジペプチドリピートタンパク質のクリアランス障害という2つのメカニズムを通じて神経変性を引き起こす。ALSを治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、別の一般的な遺伝的原因である、SOD1における変異を有する患者である。ALSまたは前頭側頭型認知症を治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、多くの散発性および家族性ALSに見られる、TARDBP遺伝子の産物であるTDP-43凝集体の蓄積を有する患者である。
【0067】
様々な形態の認知症も神経変性疾患とみなされ得る。通常、「認知症」という用語は、記憶、思考、言語、発話、社会的能力に、日常的な機能に支障をきたすほど深刻な影響を与える一群の症状を指す。したがって、本開示はまた、エイズ認知症複合(ADC)、アルツハイマー病(AD)に関連する認知症、ボクサー認知症、びまん性レビー小体病、前頭側頭型認知症、混合型認知症、レビー小体型老人性認知症、および血管性認知症を含む認知症を治療する方法を提供する。一実施形態では、認知症は前頭側頭型認知症である。前頭側頭型認知症を治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、C9ORF72遺伝子にリピート拡張がある患者である。
【0068】
本明細書に記載の方法に従って治療され得る神経筋疾患としては、例えば、乳児性脊髄性筋萎縮症(SMA1,ヴェルドニッヒ・ホフマン病)、および若年性脊髄性筋萎縮症(SMA3,クーゲルベル・グウェランダー病)が挙げられる。
【0069】
アルツハイマー病を治療するための実施形態では、上記の方法は、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、Aricept(商標)、Exelon(商標)、Razadyne(商標))またはグルタミン酸作動薬(メマンチン(Namenda(商標))、リルゾール、およびトリグリルゾールから選択される)を投与することを含む、アピリモドを治療レジメンの一部とする組み合わせ療法を含み得る。
【0070】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための実施形態では、上記の方法は、エダラボン(Radicava(商標)、Radicut(商標))などの抗酸化剤を投与することを含む、アピリモドを治療レジメンの一部とする組み合わせ療法を含み得る。ALSを治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、C9ORF72遺伝子にリピート拡張がある患者である。ALSを治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、SOD1遺伝子に変異がある患者である。ALSを治療するための実施形態では、治療を必要とする患者は、TDP-43の凝集を示している患者である。
【0071】
実施形態では、本開示は、パーキンソン病、パーキンソニズム症候群、または多発性硬化症の治療を必要とする対象における前記パーキンソン病、パーキンソニズム症候群、または多発性硬化症を治療する方法であって、本明細書に記載されるような、アピリモドの安定化された塩形態を含む医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0072】
本開示はまた、がんを治療する方法であって、本明細書に記載されるような、アピリモドの安定化された塩形態を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。実施形態では、がんは、脳腫瘍、神経膠腫、肉腫、乳がん、肺がん、非小細胞肺がん、中皮腫、虫垂がん、泌尿器生殖器がん、腎細胞がん、前立腺がん、膀胱がん、精巣がん、陰茎がん、子宮頸がん、卵巣がん、フォン・ヒッペル・リンドウ病、頭頸部がん、胃腸がん、肝細胞がん、胆嚢がん、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、膵臓がん、肝がん、メラノーマ、神経内分泌腫瘍、甲状腺腫瘍、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、血液悪性腫瘍、または白血病から選択される。
【0073】
実施形態では、がんはリンパ腫である。実施形態では、リンパ腫はB細胞リンパ腫である。実施形態では、B細胞リンパ腫は、ホジキンB細胞リンパ腫および非ホジキンB細胞リンパ腫からなる群から選択される。実施形態では、B細胞リンパ腫は、DLBCL、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(MZL)または粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、小細胞リンパ性リンパ腫(慢性リンパ性白血病と重なる)、およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される非ホジキン性B細胞リンパ腫である。実施形態では、B細胞リンパ腫は、バーキットリンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンシュトレームマクログロブリン血症として現れ得る)、節辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,下肢型(原発性皮膚DLBCL,下肢型)、高齢者EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、および形質芽細胞性リンパ腫からなる群から選択される非ホジキンB細胞リンパ腫である。一実施形態では、がんは非ホジキンリンパ腫または濾胞性リンパ腫である。
【0074】
本開示はまた、ウイルス感染症を治療する方法を提供する。実施形態では、ウイルス感染症はコロナウイルスによって引き起こされる。実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-1、MERS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択される。実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV-2である。実施形態では、ウイルス感染症は、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスによって引き起こされる。1つの実施形態では、ウイルスはエボラウイルスである。1つの実施形態では、エボラウイルスは、ブンディブギョ株、スーダン株、タイフォレスト株、およびザイール株からなる群から選択される株に属する。1つの実施形態では、エボラウイルスはザイールエボラウイルスである。
【0075】
「…を必要とする対象」とは、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの治療を必要とする対象を指す。実施形態では、必要とする対象は、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの標準療法に対する「非反応性」または「難治性」を有する対象である。このコンテキストにおいて、「非反応性」および「難治性」という用語は、療法に対する対象の反応が神経変性疾患もしくは障害、またはがんに関連する1つ以上の症状を軽減するのに臨床的に不十分であることを指す。実施形態では、治療を必要とする患者は、例えば、神経変性疾患もしくは障害、特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)または前頭側頭型認知症(FTD)に関連する実施形態では、C9ORF72遺伝子にリピート拡張がある患者である。
【0076】
「対象」とは通常、哺乳動物を指す。哺乳動物は、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであり得る。対象はヒトであることが好ましい。本明細書では、「対象」および「患者」という用語は互換可能に使用される。
【0077】
「治療」、「治療すること」、または「治療する」という用語は、本明細書に記載されるような、神経変性疾患もしくは障害、またはがんを有する対象に対する管理およびケアを指し、疾患もしくは障害の進行を遅らせるために、および/または、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの1つ以上の症状を緩和するために、本明細書に記載されるような治療薬またはその組み合わせの投与を含む。このコンテキストにおいて、治療することは、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの1つ以上の症状を緩和するのに有効な量の治療薬または複数の薬剤の組み合わせを投与することを含む。「緩和」という用語は、症状の重症度が軽減または減少するプロセスを指すが、当該症状は、一定期間または一時的に除去されることがあっても、必ずしも除去されるとは限らない。症状を除去することは好ましいが、必要ではない。「予防」、「予防すること」、または「予防する」という用語は、特に疾患もしくは障害、またはがんの進行を予防するというコンテキストにおいて、症状の発症を軽減または除去することを指し、そのうち、進行は1つ以上の症状の発症によって定義される。
【0078】
「治療有効量」という用語は、神経変性疾患もしくは障害、またはがんを治療するか、その症状を改善するか、その重症度を軽減するか、またはその期間を短縮するのに、あるいは別の療法の治療効果を増強または改善するのに十分な量を指す。対象に対する正確な有効量は、対象の体重と体型と健康状態、病状の性質と程度、および、投与のために選択された治療薬または複数の治療薬の組み合わせに依存する。
【0079】
実施形態では、成人における神経変性疾患もしくは障害、がん、またはウイルス感染症の治療に使用されるアピリモドの治療有効量は、100~400mg/日、好ましくは約150~250mg/日である。実施形態では、神経変性疾患もしくは障害、がん、またはウイルス感染症の治療に使用されるアピリモドの治療有効量は、150、200、250、または300mg/日である。本明細書に記載の方法の実施形態では、医薬組成物は、成人対象に1日2回投与するために、75、100、または125mgのアピリモドを含み得る。
【0080】
本明細書に記載の治療法により、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの治療において、アピリモドは、単独療法として投与されてもよく、そのうち、アピリモドは、投与する唯一のAPIである。本明細書に記載の方法は、アピリモドと少なくとも1つの追加のAPIとを使用する組み合わせ療法を含んでもよい。「組み合わせ療法」または「共療法」という用語は、2つのAPIの共作用により有益な効果を提供することを意図している特定の治療レジメンの一部として、本明細書に記載の化合物(例えば、アピリモド)と少なくとも1つの追加のAPIとを投与することを含む。有益な効果は、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの進行を遅らせること、および/または、神経変性疾患もしくは障害、またはがんの1つ以上の症状を緩和することをもたらし得る。組み合わせの有益な効果には、組み合わせから生じる薬物動態学的または薬力学的共作用が含まれるが、これに限定されない。組み合わせの有益な効果はまた、組み合わせにおける別の薬剤に関連する毒性、副作用または有害事象の軽減にも関与し得る。「組み合わせ療法」は、付随的かつ任意的に本開示の組み合わせをもたらす別個の単独療法レジメンの一部として、これらの治療用化合物のうちの2つ以上を投与することを包含することを意図していない。
【0081】
組み合わせ療法のコンテキストにおいて、APIのアピリモドの投与は、追加のAPIの投与と同時またはそれに連続して行ってもよく、追加のAPIの投与の前、それと同時、またはその後で行ってもよい。組み合わせ療法の異なるAPIは、同時投与のために単一剤形で製剤化してもよく、異なる剤形で個別に投与してもよい。個別に投与する場合、組み合わせ療法のAPIのそれぞれに対し、投与は、同じ投与ルートによって行ってもよく、異なる投与ルートによって行ってもよい。
【0082】
好ましくは、組み合わせ療法は相乗効果を提供する。「相乗」という用語は、いずれかの単一療法単独の相加効果を上回る組み合わせの有効性を指す。組み合わせ療法の相乗効果により、組み合わせにおける少なくとも1つの薬剤の、組み合わせ以外の用量および/または頻度と比較してより低い用量および/またはより少ない頻度での投与の使用が可能となり得る。相乗効果は、組み合わせにおけるいずれかの療法の単独使用に伴う有害または望ましくない副作用の回避または軽減においても現れ得る。
【0083】
実施形態では、本明細書に記載されるような医薬組成物の投与は、治療される疾患または障害の症状または合併症の除去につながるが、除去は必要ではない。1つの実施形態では、症状の重症度が低減される。がんのコンテキストにおいて、そのような症状は、腫瘍が成長因子を分泌し、細胞外マトリックスを分解し、血管新生し、隣接する組織との接着を失い、または転移する程度、および転移の数を含む、重症度または進行の臨床マーカーを含み得る。
【実施例】
【0084】
実施例1.安定性の研究
アピリモドの参照固体経口剤形は、ゼラチンカプセル内に含有される、賦形剤とアピリモドジメシル酸塩との乾燥粉末ブレンドである。活性医薬成分またはAPI、即ち、アピリモドジメシル酸塩は、粉末ブレンド中に約14wt%存在し、残りのボリュームは主に微結晶セルロース(65%)およびラクトース(17%)などの充填剤、および崩壊剤、潤滑剤、流動助剤などの少量の追加の賦形剤で構成される。
【0085】
アピリモドのジメシル酸塩形態は、水へのその高い溶解度(831mg/mL)と物理的安定性のため、最初に開発対象として選択された。具体的に、アピリモドのジメシル酸塩は、制御された室温では4年間、加速条件下では6か月間安定であることが発見された。これらの試験では、アピリモドジメシル酸塩は、スチールドラム内のヒートシールされたアルミニウムコーティング袋内の二重ポリエチレン袋に保管された。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、制御された温度および相対湿度(RH)の環境条件下(25℃/60%RH)で、4年後に残存する医薬物質の百分率は98.7%であり、2-ビニルピリジン分解生成物の量は0.03%未満であった。40℃/75%RHの「加速」条件下でも、99.7%の医薬物質が残存し、2-ビニル-ピリジンの量が0.03%未満であることにより証明されるように、アピリモドジメシル酸塩は6か月間安定であった。
【0086】
しかしながら、アピリモドジメシル酸塩形態自体の安定性とは対照的に、本発明者らは、アピリモドが、充填剤/増量剤、崩壊剤、潤滑剤、流動加工助剤などの典型的な賦形剤とブレンドされると、より急速に分解し始め、許容できない量の分解生成物の2-ビニルピリジンとSTA-6066を生成したことを発見した。
【0087】
2-ビニルピリジン(
図1A)およびSTA-6066(
図1B)の形成速度は温度に依存することが発見された。冷蔵条件(5℃)では、カプセル内での形成は非常に遅く、分解生成物によるが、1年で約0.1%以下、2年で約0.1~0.4%であった。しかし、環境条件(25℃/60%RH)でカプセルを保管すると、2-ビニル-ピリジンおよびSTA-6066の両方の分解生成物の形成速度が大幅に速くなった。
図1Aおよび
図1Bに示すように、最初に、2-ビニルピリジンとSTA-6066のそれぞれの量は0.10%未満(検出限界を下回る)であるが、1か月に至ると、両方の分解生成物の量が検出可能になり、2-ビニル-ピリジンは約0.12%、STA-6066は約0.35%である。両方の分解生成物は時間の経過とともに増加し、9か月に至ると、2-ビニルピリジンは0.71%、STA-6066は2.9%に増加する。加速保管条件(40℃/75%RH)下では、2-ビニルピリジンおよびSTA-6066の形成における、同様であるが加速した傾向が観察される。そのため、最初に、2-ビニルピリジンとSTA-6066のそれぞれの量は検出限界を下回る(<0.10%)が、1か月に至ると、2-ビニルピリジンの量は0.85%、STA-6066の量は3.1%に増加する。30℃/65%RHの中間条件を使用すると、両方の分解生成物の形成における中間の傾向が観察された。
【0088】
そのため、本発明者らの安定性研究では、ジメシル酸塩の形態は、一般的な賦形剤と粉末ブレンドに製剤化された場合(長期保管に最も望ましい環境条件(25℃/60%RH)下での場合を含む)、不安定であったことが示された。いかなる理論にも拘束されることは望ましくないが、この不安定性とその結果としての望ましくない分解生成物の形成は、ジメシル酸塩の形態の1つ以上の側面によって引き起こされる可能性があると考えられる。第一に、この形態は非常に酸性が強いため、以下の概略図に示すように、アピリモドの化学的断片化を触媒して2-ビニル-ピリジンおよびSTA-6066化合物を形成するのを助長する可能性がある。
【0089】
第二に、ジメシル酸塩の形態は非常に溶解性が高いため、少ないがかなりの量のアピリモドジメシル酸塩が、1つ以上の賦形剤中に存在する微量の水に溶解可能であり、アピリモドの化学的分解の発生に適した水性環境を提供する。
【0090】
US7,745,436には、例えば経口剤形として投与される場合に十分に生物学的に利用可能となるようにアピリモドの所望の水溶解度を提供するには、ジメシル酸塩などの強酸性の塩が必要であることが教示されている。’436特許には、過剰(少なくとも2)当量の強酸で二塩を形成するには、pKaの低い酸(メタンスルホン酸(-1.2)、HBr(-7)、HCl(-4.5)、硫酸(-3))が必要であることが教示されている。これらの二塩は非常に溶解性が高いことが発見され、例えば、ジメシル酸塩の水溶性は831mg/mLで、ジクロライドの水溶性は213mg/mLであった。これらの溶解度は、対応する単塩よりも10倍高かった。また、’426特許には、二塩は単塩と比べて劣化しにくく(着色がより少なく)、光に対する感度がより低い(光安定性がより優れる)ことが教示されている。したがって、’436特許により証明されているように、好ましいアピリモドの薬学的に許容される塩は、低いpKaを有する酸から形成された二塩であることは、共通の通常知識の一部であった。
【0091】
まず、アピリモドの適切な結晶形態および酸とアピリモドの1:1の化学量論比の両方を提供し、かつカプセル剤形用の一般的な賦形剤と製剤化された場合、環境条件(25℃/60%RH)下での分解に対してジメシル酸塩よりも安定である他の塩を特定しようとした。また、溶解性の高いジメシル酸塩の形態と同様の経口バイオアベイラビリティーを有する製剤を開発しようとした。
【0092】
まず、アピリモドと適切な結晶性塩を形成し、酸とアピリモドの1:1の化学量論比を維持することができる、約1~5の範囲のpKaを有する酸を特定した。以下の表1に示す酸はそれぞれ、酸とアピリモドの比1:1で結晶性固体を形成し、それぞれ、130℃を超える融点を有する。また、これらの塩は、50℃/75%RHの加速条件下で少なくとも4週間、結晶構造における変化に対して物理的に安定であり、X線粉末回折(XRPD)分析により測定されるような結晶化度またはDSCにより測定される融点には観察可能な影響がなかった。TGA分析により、これらの塩は、形成時においても4週間の安定性試験期間中においても溶媒化されていないことが実証された。
【0093】
【0094】
方法
粉末X線回折(XRPD)。XRPDディフラクトグラムは、Niフィルター処理したCu Ka(45kV/40mA)放射線と0.03°2θのステップサイズおよびX’celerator(商標) RTMS(リアルタイムマルチストリップ)検出器を使用して、PANalytical X’Pert Pro回折計で取得された。入射ビーム側における構成:可変発散スリット(照射長10mm)、0.04radのソーラースリット、固定散乱防止スリット(0.50°)、および10mmビームマスク。回折ビーム側における構成:可変散乱防止スリット(観察長10mm)および0.02radのソーラースリット。サンプルは、ゼロバックグラウンドのSiウェーハ上に平らにマウントされた。
【0095】
示差走査熱量測定(DSC)。DSCは、オートサンプラーおよび冷蔵冷却システムを備えたTA Instruments Q100またはQ2000示差走査熱量計を用いて、40mL/分のN2パージ下で実施された。特に明記されない限り、スクリーニングサンプルのDSCサーモグラムは、圧着されたAlパン内で15℃/minで得られた。特に明記されない限り、投入およびスケールアップされた材料のDSCサーモグラムは、圧着されたAlパン内で10℃/分で得られた。
【0096】
熱重量分析(TGA)。TGAサーモグラムは、TA Instruments Q50熱重量分析装置を用いて、PtまたはAlパン内で40mL/分のN2パージ下で得られた。特に明記されない限り、スクリーニングサンプルのTGAサーモグラムは、15℃/minで得られた。特に明記されない限り、投入およびスケールアップされた材料のTGAサーモグラムは、10℃/分で得られた。
【0097】
HCl塩の調製
アセトン(50ml;20Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(2.515g;6.010mmol)に添加し、50℃に加熱して溶液を得た。1当量のHCl水溶液(3M;2.00ml)を添加し、続いてHCl塩の種結晶(バッチ103173-SU-01)を添加して、急速な沈殿につながった。この混合物を50℃で2時間撹拌した後、室温(RT)で一晩撹拌した。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトンで洗浄し、2時間風乾した後、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、2.63g(96.2%)のHCl塩が得られた。
【0098】
リン酸塩の調製
アセトン(50ml;20Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(2.514g;6.007mmol)に添加し、50℃に加熱して溶液を得た。1当量のリン酸水溶液(3M;2.00mL)を添加して、スラリーがすぐに観察され、続いてリン酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-10)を添加した。サンプルはすぐに沈殿した。この混合物を50℃で2時間撹拌した後、室温で一晩撹拌した。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトンで洗浄し、2時間風乾した後、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、2.46g(79.2%)のリン酸塩が得られた。
【0099】
マレイン酸塩の調製
アセトン(60ml;20Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(3.002g;7.173mmol)に添加し、50℃に加熱して溶液を得た。1当量のマレイン酸水溶液(3M;2.40ml)を添加して、希薄スラリーを得た。マレイン酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-04)を添加した。サンプルを50℃で2時間撹拌した後、室温でさらに3日間撹拌し続けた。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトンで洗浄し、2時間風乾した。固体は、濾過後の表面においてはわずかにオフホワイトであったことが観察されたが、残りの固体は白色であった。サンプルを、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、2.91g(75.9%)のマレイン酸塩が得られた。
【0100】
マロン酸塩の調製
アセトン(50ml;20Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(2.515g;6.011mmol)に添加し、50℃に加熱して溶液を得た。1当量のマロン酸水溶液(3M;2.00ml)を添加し、続いてマロン酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-11)を添加した。最初は濁った溶液が観察されたが、徐々にスラリーになった。混合物を50℃で2時間撹拌した後、室温で3日間撹拌し続けた。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトンで洗浄し、2時間風乾した。翌日、サンプルを、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、2.80g(89.3%)のマロン酸塩が得られた。
【0101】
L-酒石酸塩の調製
アセトン(51ml;20Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(2.527g;6.038mmol)に添加し、50℃に加熱して溶液を得た。1当量のL-酒石酸水溶液(3M;2.013ml)を添加した。スラリーが観察され、L-酒石酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-09)を添加した。混合物を50℃で2時間撹拌した後、室温で一晩撹拌し続けた。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトンで洗浄し、2時間風乾した後、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、3.26g(94.8%)のL-酒石酸塩が得られた。
【0102】
ヘミフマル酸塩の調製
アセトン(61ml;20Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(3.067g;7.329mmol)に添加し、50℃に加熱して溶液を得た。1当量のフマル酸(固体;851mg)をフマル酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-06)とともに添加して、淡黄色のスラリーが観察された。混合物を50℃で2時間撹拌した後、室温で一晩撹拌し続けた。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトンで洗浄し、2時間風乾した後、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、3.45g(98.8%)のヘミフマル酸塩が得られた。
【0103】
DL-乳酸塩の調製
アセトニトリル(31ml;10Vol)を、母体アピリモド、ロット60404(3.085g;7.370mmol)に添加し、室温で撹拌し、スラリーを得た。1当量のDL-乳酸ニート(11.3M;652.2uL)を添加し、続いてDL-乳酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-13)を添加した。非常に希薄なスラリーを真空下で一晩濃縮して乾燥させた。アセトニトリル(30ml;10Vol)を固体に添加し、続いてバッチ103173-SU-13の追加の種結晶を添加した。スラリーを室温でさらに一日撹拌した。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトニトリルで洗浄し、2時間風乾した後、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、3.35g(89.3%)のDL-乳酸塩が得られた。
【0104】
DL-乳酸塩の調製
2%の水(合計30.6mL)を有するアセトニトリルを、DL-乳酸塩バッチ103173-SU-21(3.029g;5.96mmol)に添加した。スラリーを室温で3日間放置した。試験アリコートを採取し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトニトリルで洗浄し、1.5時間風乾した後、窒素を吹き込みながら真空下で50℃のオーブンに2時間入れた。この実験により、2.35g(77.6%)のDL-乳酸塩が得られた。
【0105】
グリコール酸塩の調製
アセトニトリル(51ml;10Vol)を、母体アピリモド、ロット604004(5.081g;12.140mmol)に添加し、室温で撹拌し、スラリーを得た。1当量のグリコール酸(固体;923mg)を添加し、続いてグリコール酸塩の種結晶(バッチ103173-SU-14)を添加した。スラリーを室温で2日間撹拌した。試験アリコートを濾過したところ、かなりの量の未反応の母体が示された。その後、サンプルを50℃に加熱し、2時間撹拌した。追加の試験アリコートを濾過したが、改善は見られなかった。グリコール酸を溶液として追加の当量で添加し(THF中3M;4.05mL)、混合物を50℃に2時間加熱し、続いて室温で一晩撹拌し続けた。翌日、試験アリコートを濾過し、XRPDで分析して結晶化度を確認した。残りのサンプルを濾過し、アセトニトリルで洗浄し、2時間風乾した。重量5.26g(87.6%)のグリコール酸塩が得られた。
【0106】
様々なpHでの安定性
次に、様々なpHでのアピリモドの溶解度を評価した。サンプルは、室温で0.1N HCl(pH1)およびブリトンロビンソン緩衝液(BRB)(pH2、3、4、5、6、7、8)において調製された。3日後、各サンプルを30分間遠心分離し、溶液を濾過し、HPLC分析によってアピリモドの濃度を決定した。HPLC分析は、XTerra MS C18(5μm,4.6×150mm)カラムおよび18分間の勾配HPLC条件を使用して実施された。アピリモドのUVスペクトルは、232、260、および332nmで最大吸光度を示した。結果により、アピリモドは、予想外に、水性媒体においてpHによって異なる溶解度を示すことが実証された。そのため、溶解度は、約1のpHでは10mg/mLを超えるが、pH2では137μg/mLに減少し、より高いpHではさらに減少する(表2)。
【0107】
【0108】
動的溶解度研究
動的溶解度の研究は、表1に示される様々なアピリモド塩について、pH1.6の絶食状態模擬胃液(FaSSGF)において環境温度で実施された。FaSSGFは、絶食胃液の平均的な酸性pH、および絶食胃液と同様の浸透圧を有する溶解媒体である。FaSSGFは、コップ1杯の水を飲んだ後に経口薬が胃の中で如何に作用するかを明らかにするのに役立つことができる。FaSSGFにおける試験から生成された安定性、溶解度、および溶解データは、絶食状態での薬物の吸収に影響を与える重要な要因を特定するのに役立ち、ひいては薬物のための適切な固体状態および配合アプローチの選択に役立つことができる。
【0109】
環境温度でpH1.6のFaSSGFにおいて環境温度で1時間撹拌した後、マレイン酸塩およびヘミフマル酸塩を除くすべてのサンプルでは100%の溶解が観察された。結果を
図2に示す。FaSSGFにおいて試験した場合、マレイン酸塩およびヘミフマル酸塩の残留物は結晶性であり、粉末回折(PXRD)分析によると投入塩とマッチングした。
【0110】
追加の動的溶解度研究は、環境温度でpH6.5の絶食状態模擬腸液(FaSSIF)において実施され、その結果を
図3に示す。FaSSIFは、コップ1杯の水を飲んだ後に経口薬が如何に溶解し、潜在的に腸上部からの流体に吸収されるかを明らかにするのに役立つ。環境温度で1時間撹拌した後、すべてのサンプルの溶解度が大幅に低下し、その結果、μg/mLの濃度になり、その濃度が4時間後も24時間後も維持されていた。PXRD分析により、1時間撹拌した後、すべてのサンプルは濁った懸濁液のように見えたが、4時間後および24時間後には、それらの外観は乳白色の懸濁液に変化した。アピリモド遊離塩基を除いて、9つのすべての塩の残留物は結晶性であり、FaSSIFで試験した場合、それぞれの投入塩とマッチングしなかった。
【0111】
要約すると、FaSSGFにおいて、マレイン酸塩とヘミフマル酸塩を除き、すべての塩は2mg/mLを超える場合に可溶であった。FaSSIFにおいて、すべての塩の溶解度は10μg/mL未満で、HCl塩は他の塩および遊離塩基と比較して、1時間でより高い溶解度を示した。
【0112】
固有溶解速度
アピリモド遊離塩基および9つのアピリモド塩のための固定ディスクを準備した。3900psiで調製品から遊離塩基および9つの塩の固有溶解速度を準備した。各ディスクを、37℃に設定したパドル速度50rpmのDistekサーキュレーター/ヒーターおよびDistek溶解槽を備えた、700mLの0.01N HCl媒体を含有する平底容器に入れた。Opt-Diss405システムの単一分析波長は333nmに設定され、バックグラウンド波長は400nmに設定され、読み取りは1分から35分ごとに行われた。表3において、塩およびアピリモド遊離塩基の代表的な固有溶解プロファイルが提供される。ジメシル酸塩は、IDRプロファイルが遊離塩基または対応する塩より高いが、非メシル酸塩は固有溶解速度において著しい差異を示し、その一方、ヘミフマル酸塩は、固有溶解速度がD/L-乳酸塩およびHCl塩よりも10倍未満低い。塩の挙動の動的溶解性は予測不可能であり、非メシル酸塩間の著しい差異は、塩の挙動における予期せぬ発見であった。
【0113】
【0114】
IDR分析の最後、いずれかの物理的変化を知るために、ペレット表面をPXRDによって分析し、対応する投入APIと比較した。8つの非メシル酸塩および遊離塩基の残留物(表4)の残留物を分析し、遊離塩基、HCl、リン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、L-酒石酸塩、およびヘミフマル酸塩が最初の投入材料のXRPDパターンとマッチングしたことを発見した。グリコール酸塩残留物のXRPDパターンは、投入材料と一致するパターンおよび結晶性の悪い相を示した。D/L-乳酸残留物のXRPDパターンは、遊離塩基水和物と一致していた。この結果により、最も高い溶解度を有するHClも、溶解プロセス中に良好な物理的安定性を示すことが示される。
【0115】
【0116】
まとめると、これらの結果により、アピリモドの単塩(HCl、リン酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、L-酒石酸塩、およびヘミフマル酸塩)は、アピリモド製剤に対して適切な固体状態の安定性と固有溶解度を有することが実証される。
【0117】
実施例2.アピリモド塩の口腔内崩壊錠
本研究では、微粒化されたアピリモド塩(塩酸塩、マロン酸塩、およびL-酒石酸塩)を、50mgまたは125mgの用量強度で口腔内崩壊錠に組み込んだ。アピリモド塩酸塩(d90=3.77μm)、アピリモドマロン酸塩(d90=5.72μm)およびアピリモドL-酒石酸塩(d90=7.20μm)の3つの塩を、アピリモド遊離塩基の16.67%w/wに相当する濃度で評価した。本研究は、活性医薬成分(API)の添加、混合、および投与中の微粒化された塩の湿潤性および分散挙動を評価し、0時間の懸濁保持(SH)時点で投与された125mgの用量強度の生成物の溶解速度を測定するために実施された。溶解試験は、APIの塩形態が15分の目標時間内に100%の溶解を達成できるか否かを判定するために使用された。製剤の詳細を以下の表5に示す。
【0118】
【0119】
口腔内崩壊錠の合成
試験されたアピリモド塩の口腔内崩壊錠を製造した。APIは錠剤に容易に組み込まれた。混合した後、混合物は、滑らかな粘稠度を有し、目に見える凝集物やエアレーションがないように見えた。この混合物をブリスターに加え、凍結トンネル滞留時間3分15秒で-80.0℃で凍結させた。生成物は冷凍トンネルを一回通過した後凍結した。その後、凍結生成物を凍結トンネルから冷凍庫に移送し、凍結乾燥機に入れるまで-15℃以下で保管した。
【0120】
粒子は、各バッチにわたって、かつ0時間と24時間の両方の懸濁保持(SH)時点で投与されたサンプルから均一に分布された。アピリモドマロン酸塩は針状の形態を有したが、アピリモド塩酸塩およびアピリモドL-酒石酸塩の粒子はより不規則な形状であった。24時間のSH期間にわたって、製剤中にAPIの形態学的変化は観察されなかった。
【0121】
分散時間
試験されたアピリモド塩の口腔内崩壊錠の分散時間の結果を表6にまとめる。分散時間は、約20℃のビーカー一杯の水にユニットを加えたときに、ユニットが完全に濡れるのに必要な時間の測定値である。表からわかるように、試験されたすべての錠剤の分散時間は口腔内崩壊錠(ODT)に対して許容可能である。
【0122】
【0123】
溶解試験
完成したサンプルに対して実施された溶解試験の結果は、
図4(アピリモド塩酸塩)、
図5(アピリモドマロン酸塩)、および
図6(アピリモドL-酒石酸塩)に詳述される。遊離塩基単位の溶解データは、比較のために
図7にさらに提供される。各塩の溶解試験を、塩酸緩衝液(pH1.2)、酢酸緩衝液(pH4.5)、およびリン酸緩衝液(pH7.0)で行った。完成した製品の溶解を各緩衝液500mlで評価し、5、10、20、30、45、および60分後に薬物放出率を記録した。溶解媒体ごとに3回の反復を実施した。
図4~7に示される結果は、各緩衝液の時点ごとの平均薬物放出率を示す。
【0124】
結果により、すべてのバッチはpH1.2の緩衝液において最もよい溶解度を有することが示される。対照的に、pH4.5およびpH7.0の緩衝液においては限定的な溶解度を達成した。アピリモドのマロン酸塩またはL-酒石酸塩のいずれかを含有するユニットについて、平均薬物放出率は10分の時点でそれぞれ93.3%および92.0%であった。さらに、アピリモドのマロン酸塩およびL-酒石酸塩は、塩酸塩と比較して溶解性の向上を示した。塩酸塩を含有するユニットについて、10分後の平均薬物放出率は83.8%であった。塩酸塩についても、溶解が後の時点で穏やかになった。しかし、試験されたすべての塩の溶解性は遊離塩基よりも優れた(
図4~
図7)。
【0125】
同等物と範囲
特許請求の範囲では、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」などの冠詞は、反対であることの指示がない限り、またはコンテキストから明らかでない限り、1つまたは複数を意味することができる。グループメンバーのうちの1つまたは複数の間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、反対であることの指示がない限り、またはコンテキストから明らかでない限り、グループメンバーのうちの1つ、2つ以上、または全てが、所与の製品またはプロセスに存在するか、使用されるか、またはその他の方式で関連する場合に満たされるものとみなされる。本開示は、グループのちょうど1つのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在するか、使用されるか、またはその他の方式で関連する実施形態を含む。本開示は、グループメンバーのうちの2つ以上、または全てが所与の製品またはプロセスに存在するか、使用されるか、またはその他の方式で関連する実施形態を含む。
【0126】
さらに、本開示は、列挙された請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、条項、および説明用語が別の請求項に導入されるすべての変形、組み合わせ、および順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同一の基礎とする請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1つ以上の制限を含むように修正できる。要素がリストとして(例えば、マークーシュグループ形式で)表示される場合、要素の各サブグループも開示されており、要素のいずれか1つ以上はグループから除去され得る。一般に、本開示または本明細書に記載の態様が特定の要素および/または特徴を含むものとして言及される場合、本明細書に記載の特定の実施形態または本明細書に記載の態様は、これらの要素および/または特徴からなるか、または、本質的にこれらの要素および/または特徴からなることを理解されたい。簡略化のために、これらの実施形態は、本明細書では具体的に正確に(in haec verba)説明されていない。また、「含む」および「含有する」という用語はオープンであることを意図しており、追加の要素またはステップの包含を許容することにも留意されたい。範囲が与えられた場合、エンドポイントが含まれる。さらに、別段の指示がない限り、または、コンテキストおよび/または当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、コンテキストが明確に別段の指示をしない限り、本明細書に記載の異なる実施形態において記載された範囲内の、範囲の下限の単位の10分の1までの、任意の特定の値またはサブ範囲を想定することができる。
【0127】
本出願は、様々な発行された特許、公開された特許出願、雑誌記事、およびその他の出版物を参照し、それらのすべては参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合には、明細書に準ずるものとする。また、従来技術の範囲内にある本開示の特定の実施形態のいずれかは、任意の1つ以上の請求項から明示的に除外され得る。このような実施形態は、当業者には既知であるとみなされるため、このような実施形態の除外が本明細書に明示的に記載されていなくても、除外され得る。本明細書に記載の特定の実施形態のいずれかは、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、いかなる理由でも、いずれかの請求項から除外され得る。
【0128】
当業者は、ルーチンな実験のみを使用して、本明細書に記載の特定の実施形態の多くの同等物を認識するであろうか、または確認できるであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されるとおりである。当業者であれば、添付の特許請求の範囲に定義されるような本開示の精神または範囲から逸脱することなく、この説明に対して様々な変更および修正を行うことができることを理解するであろう。
【国際調査報告】