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特表2024-521464分離およびPCR増幅を達成するための流体ボリュームの制御方法および装置
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  • 特表-分離およびPCR増幅を達成するための流体ボリュームの制御方法および装置 図1
  • 特表-分離およびPCR増幅を達成するための流体ボリュームの制御方法および装置 図2
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  • 特表-分離およびPCR増幅を達成するための流体ボリュームの制御方法および装置 図7
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  • 特表-分離およびPCR増幅を達成するための流体ボリュームの制御方法および装置 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】分離およびPCR増幅を達成するための流体ボリュームの制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20240524BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F04B43/02 Z
C12M1/00 A
F04B43/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576370
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021055638
(87)【国際公開番号】W WO2022086981
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/093,640
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520225875
【氏名又は名称】フォーミュラトリックス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Formulatrix, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】カビル ヤマナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ヘレラ
(72)【発明者】
【氏名】ラズマス リンドブロム
【テーマコード(参考)】
3H077
4B029
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077CC02
3H077CC09
3H077CC13
3H077DD02
3H077EE02
3H077EE16
3H077FF08
3H077FF38
4B029AA27
4B029BB20
(57)【要約】
流体ボリュームの制御装置であって、モータと、カムシャフトの回転軸においてモータに連結されたカムシャフトと、カムシャフトの円周上に配置された少なくとも1つのカムと、ピンフレームと、ピンフレーム内に配置され、少なくとも1つのカムと動作可能に関連付けられた少なくとも1つのピンとを備え、モータによるカムシャフトの回転が、少なくとも1つのカムを少なくとも1つのピンに接触させ、少なくとも1つのピンを第1の方向に駆動する装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータにカムシャフトの回転軸で連結されたカムシャフトと、
該カムシャフトの外周に配置された少なくとも1つのカムと、
ピンフレームと、
該ピンフレームに配置され、少なくとも1つの前記カムと作動的に関連する少なくとも1つのピンとを備え、
前記モータによる前記カムシャフトの回転が、少なくとも1つの前記カムと少なくとも1つの前記ピンとを接触させ、少なくとも1つの前記ピンを第1の方向に駆動する流体ボリュームの制御装置。
【請求項2】
前記カムシャフトが、複数の前記カムと複数の前記ピンとを備え、複数の前記カムの各々が、複数の前記ピンの1つに対応する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の前記カムは、前記回転軸回りの前記カムシャフトの回転が、複数の前記カムの各々を利用して対応する前記ピンを駆動することにより、複数の前記ピンを所望のタイミングおよび順序で駆動するように、前記カムシャフトの円周上に配置されている請求項2記載の装置。
【請求項4】
可撓性の弾性のある膜を含むカートリッジをさらに備え、前記膜が前記カートリッジと少なくとも1つの前記ピンとの間に配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記カートリッジが、その中に形成され、少なくとも1つの前記ピンに対応する少なくとも1つのウェルを備える請求項4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記ピンが、可撓性の弾性のある前記膜によってバネ付勢されている請求項4に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記ピンが、可撓性の弾性のある前記膜によって、前記第1の方向とは反対の第2の方向に移動可能に設けられている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ピンフレームが、少なくとも前記ピンが通過する少なくとも1つのスロットを備える請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ピンフレームの前記スロットが、少なくとも1つの前記ピンをカートリッジ内のウェルの上方に位置させ、少なくとも1つの前記ピンが前記カートリッジと少なくとも1つの前記カムとの間に位置する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
リアルタイムqPCR分析を実施するためのシステムであって、
請求項1に記載の流体ボリュームの制御装置と、
膜および少なくとも1つのウェルを備えるカートリッジと、
チップであって、前記カートリッジの少なくとも1つの前記ウェルが前記膜と前記チップとの間に配置されている前記チップとを備えるシステム。
【請求項11】
前記カムシャフトが複数の前記カムと複数の前記ピンを備え、複数の前記カムの各々が複数の前記ピンの1つに対応する請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
複数の前記カムは、前記回転軸回りの前記カムシャフトの回転が、複数の前記カムの各々を利用して対応する前記ピンを駆動することにより、複数の前記ピンを所望のタイミングおよび順序で駆動するように、前記カムシャフトの円周上に配置されている請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの前記カムが、少なくとも1つの前記ピンを少なくとも1つの前記ウェル内に駆動する請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記膜が弾性を有する請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記膜が少なくとも1つの前記ピンと少なくとも1つの前記ウェルとの間に配置され、少なくとも1つの前記ピンが前記ウェル内に駆動されると、前記膜が前記ウェルと流体シールを形成する請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
少なくとも1つの前記ピンが、可撓性で弾性のある前記膜によって、前記第1の方向とは反対の第2の方向への動きを提供される請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
リアルタイムqPCRシステムにおける流体ボリュームの制御方法であって、
モータによりカムシャフトを回転軸回りに回転させることと、
少なくとも1つのピンを、前記カムシャフト上のカムに接触させることと、
前記カムにより少なくとも1つの前記ピンを第1の方向に駆動することと、
カートリッジのウェル内において、少なくとも1つの前記ピンを使って膜を押し下げることと、
少なくとも1つの前記ピンおよび前記膜を使用して前記ウェル内の流体を押し出すこととを含む方法。
【請求項18】
少なくとも1つの前記カムを用いて少なくとも1つの追加の前記ピンを駆動し、追加の前記ピンおよび前記膜を用いて追加の前記ウェル内において追加の前記流体を押すために、回転を維持することをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記回転が、前記カートリッジからチップ上の少なくとも1つの流路への前記流体の流れを制御するために、所望のタイミングおよび順序で複数の前記ピンの駆動をもたらす請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記膜の弾性を利用して、少なくとも1つの前記ピンを前記第1の方向とは反対の第2の方向に動かすことをさらに含む請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照)】
【0001】
本出願は、2020年10月19日に出願され、「Point of Collection qPCR System」と題された米国仮特許出願第63/093,640号のPCT第8条に基づく優先権の利益を主張する。本出願はまた、全て2021年10月19日に同時出願され、同一の出願人であるFormulatrix, Inc.が記載されている「Fluidic Detection and Control Algorithm for PCR Analysis」、「Disposable Cartridge for Reagent Storage and Methods Using Same」および「Apparatuses with Fluidic Channel Geometries for Sample to Answer PCR Analysis and Methods of Using Same」と題されたPCT出願、および「Fluidic Channel Geometries of a Chip」と題された米国意匠出願第29/812,034号に関連する。上記出願の内容は全て、参照により、その全体が本明細書に完全に記載されているように組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、流体の流れに関し、より詳細には、排他的ではないが、少量の流体を迅速かつ効率的に移動させるための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリットルスケールの液体を移動させるための現在のアプローチのほとんどは、機械的に複雑なアプローチを伴う。シリンダに対して密封されたピストンを備えた注射器を考えてみよう。ほとんどのシステムにおいて、これは圧力または真空を加える直接的な方法であるが、密封力(シリンダに対してスライドするOリングまたは密封界面)を考慮すると、ピストンを上下に駆動することは、通常、シリンダに対するピストンの相対運動を駆動するためにボールねじを回転させるモータによって達成される。
【0004】
蠕動ポンプは、もう1つのより単純な方法であるが、不連続な体積の気体や液体を加えたり取り除いたりすることになり、用途によっては好ましくない。
【0005】
もう1つの方法は、遠心装置、いわゆる“cd-microfluidics”であり、異なる回転速度、界面の特徴を利用して液体の運動を実現する。
ufluidix.com/circle/whats-a-discman-and-how-is-it-a-medical-diagnostic-device-cd-microfluidics/を参照のこと。
遠心装置を使用することは、いくつかのワークフローには便利かもしれないが、リアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(「qPCR」)のような特定のプロセスは、現在、このメカニズムを効果的に利用することができない。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、流体ボリュームを制御するための装置であって、モータと、カムシャフトの回転軸においてモータに連結されたカムシャフトと、カムシャフトの円周上に配置された少なくとも1つのカムと、ピンフレームと、ピンフレーム内に配置され、少なくとも1つのカムと動作可能に関連付けられた少なくとも1つのピンとを備え、モータによるカムシャフトの回転が、少なくとも1つのカムを少なくとも1つのピンに接触させ、少なくとも1つのピンを第1の方向に駆動する装置が提供される。
【0007】
本発明の一実施形態において、カムシャフトは、複数のカムと複数のピンとを備え、複数のカムの各々は、複数のピンのうちの1つに対応する。
【0008】
本発明の一実施形態において、複数のカムは、回転軸回りのカムシャフトの回転が、複数のカムの各々を利用して対応するピンを駆動することにより、所望のタイミングおよび順序で複数のピンの駆動をもたらすように、カムシャフトの円周上に配置される。
【0009】
本発明の一実施形態において、装置は、可撓性の弾性のある膜を含むカートリッジをさらに備え、膜は、カートリッジと少なくとも1つのピンとの間に配置される。
【0010】
本発明の一実施形態において、カートリッジは、その中に形成され、少なくとも1つのピンに対応する少なくとも1つのウェルを備える。
【0011】
本発明の一実施態様において、少なくとも1つのピンは、可撓性で弾性のある膜によってバネ付勢されている。
【0012】
本発明の一実施態様において、少なくとも1つのピンは、可撓性で弾性のある膜によって、第1の方向とは反対の第2の方向に移動可能に設けられている。
【0013】
本発明の一実施形態において、ピンフレームは、少なくとも1つのピンが通る少なくとも1つのスロットを備える。
【0014】
本発明の一実施形態において、ピンフレームのスロットは、少なくとも1つのピンをカートリッジ内のウェルの上方に位置させ、少なくとも1つのピンは、カートリッジと少なくとも1つのカムとの間に位置する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の他の態様によれば、リアルタイムqPCR分析を実施するためのシステムであって、請求項1に記載の流体ボリュームの制御装置と、膜と少なくとも1つのウェルとを備えるカートリッジと、チップであって、カートリッジの少なくとも1つのウェルが膜とチップとの間に配置されているチップとを備えるシステムが提供される。
【0016】
本発明の一実施形態において、カムシャフトは、複数のカムと複数のピンとを備え、複数のカムの各々は、複数のピンのうちの1つに対応する。
【0017】
本発明の一実施形態において、複数のカムは、回転軸回りのカムシャフトの回転が、複数のカムの各々を利用して対応するピンを駆動することにより、所望のタイミングおよび順序で複数のピンの駆動をもたらすように、カムシャフトの円周上に配置される。
【0018】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのカムが少なくとも1つのピンを少なくとも1つのウェル内に駆動する。
【0019】
本発明の一実施形態において、膜は弾性を有する。
【0020】
本発明の一実施態様において、膜は、少なくとも1つのピンと少なくとも1つのウェルとの間に配置され、少なくとも1つのピンによってウェル内に駆動されると、膜がウェルと流体シールを形成する。
【0021】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのピンは、可撓性で弾性のある膜によって、第1の方向とは反対の第2の方向への動きを提供される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の他の態様によれば、リアルタイムqPCRシステムにおいて流体ボリュームを制御する方法であって、モータによりカムシャフトを回転軸回りに回転させることと、少なくとも1つのピンをカムシャフト上に位置するカムに接触させることと、少なくとも1つのピンをカムにより第1の方向に駆動することと、少なくとも1つのピンを用いてカートリッジのウェル内の膜を押し下げることと、少なくとも1つのピンと膜を用いてウェル内の流体を押し出すこととを含む方法が提供される。
【0023】
本発明の一実施形態において、この方法は、少なくとも1つのカムで少なくとも1つの追加のピンを駆動し、追加のピンと膜を使用して追加のウェル内で追加の流体を押すために、回転を維持することをさらに含む。
【0024】
本発明の一実施形態において、回転は、カートリッジからチップ上の少なくとも1つのチャネルへの流体の流れを制御するために、所望のタイミングおよび順序で複数のピンの駆動をもたらす。
【0025】
本発明の一実施形態において、この方法は、膜の弾性を利用して、少なくとも1つのピンを第1の方向とは反対の第2の方向に移動させることをさらに含む。
【0026】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が、本発明の実施形態の実施または試験において使用され得るが、例示的な方法および/または材料が以下に記載される。矛盾がある場合は、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0027】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムの実施は、選択されたタスクを手動、自動、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の計装および機器によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、またはファームウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを使用してそれらの組み合わせによって実施され得る。
【0028】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令および/またはデータを記憶するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを記憶するための、例えば、磁気ハードディスクおよび/またはリムーバブルメディアなどの不揮発性ストレージを含む。オプションとして、ネットワーク接続も提供される。オプションとして、ディスプレイおよび/またはキーボードやマウスなどのユーザ入力装置も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して、例示のためにのみ、本明細書で説明する。ここで図面を具体的に参照して詳細に説明すると、示された具体的な内容は例示であり、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の実施形態の説明のためのものであることが強調される。この点に関して、図面と共に取られる説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【0030】
図1】本発明の例示的な実施形態による、qPCRシステムの斜視図である。
図2】本発明の例示的な実施形態に従った、カバーを取り外したqPCRシステムの斜視図である。
図3】本発明の例示的な実施形態に従った、流体ボリュームの制御装置のブロック図である。
図4】本発明の例示的な実施形態に従った、流体ボリュームの制御装置の斜視図である。
図5】本発明の例示的な実施形態に従った、流体ボリュームの制御装置の長軸方向の縦断面図である。
図6】本発明の例示的な実施形態に従った、流体ボリュームの制御装置の短軸における横断面図である。
図7】本発明の例示的な実施形態に従った、流体ボリュームの制御装置を使用する方法のフローチャートである。
図8】本発明の例示的な実施形態に従った、カートリッジの上面斜視図である。
図9】本発明の例示的な実施形態に従った、チップの底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、流体の流れに関し、より詳細には、排他的ではないが、少量の流体を迅速かつ効率的に移動させるための装置および方法に関する。
【0032】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、および/または図面に図示される構成要素および/または方法の構造の詳細および配置に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施し、または実施されることが可能である。
【0033】
一般に、本明細書に記載される装置および方法は、サンプル抽出および精製のプロセス、並びにサンプル精製の産物上において生じるであろうポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)の逆転写、伸長、および変性ステップのその後の熱プロセスを加速する。現在記載されている装置および方法は、少量の液体、任意で複数の対応するウェルに配置された複数の異なる液体を、より大きなシステム内で、流体含有カートリッジ内の1つまたは複数および/または一連の流路を通して迅速かつ効率的に移動させるものであり、より大きなシステムは、例えば、COVID-19試験のためのリアルタイム(「RT」)qPCR分析に使用される。本明細書に記載された解決策は、最小数の単純な部品を使用して、所望の順序で流体/液体の移動を実現し、RT-qPCRシステムのチップ内の少なくとも2つの異なる領域間で液体量を非常に迅速に循環させる。
【0034】
次に図面を参照すると、図1は、本発明の例示的な実施形態によるRT-qPCRシステム100の斜視図である。本発明の実施形態において、本明細書および同日出願され、関連出願のセクションで参照される関連出願においてより詳細に記載されるように、使い捨てカートリッジ406(図4図8に関してより詳細に示される。)が、分析のためにRT-qPCRシステム100のスロット102に挿入される。このRT-qPCRシステム100は、迅速で、便利に小型で、使い易く、正確で、手頃な価格で、拡張可能であることを意図している。例示的なRT-qPCRシステム100は、マサチューセッツ州ベッドフォードのFormulatrix社から入手可能であろう。
【0035】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、カバーを取り外したRT-qPCRシステム100の斜視図である。RT-qPCRシステム100の構成部分を形成し、図3図6に関してより詳細に示され、説明される、流体ボリュームの制御装置200が示される。
【0036】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、流体ボリュームの制御装置200のブロック図である。本発明の実施形態において、装置200は、カムシャフト300の円周上に位置する少なくとも1つのカム302を含む少なくとも1つのカムシャフト300と、カムシャフト300を駆動するためのモータ304と、カムシャフト300の少なくとも1つのカム302によって駆動される1つ以上のピン306とを備える。それ自体が複数の部分から構成されるシステムである装置200は、より大きなqPCRシステム100の構成部分であることが理解されるべきである。このより大きなRT-qPCRシステム100内において、流体ボリュームの制御装置200は、カートリッジ内および全体的なRT-qPCRシステム100内において、特に制御された流体の流れを実現するために、以下に記載するように、カートリッジ406と作動的に相互作用する。
【0037】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、流体ボリュームの制御装置200の一例である、流体ボリュームの制御装置400の斜視図である。簡潔にするために、図4の装置400は、流体ボリュームの制御装置200/400を使用する方法のフローチャート700である図7と併せて説明される。本発明の特徴は、以下に詳述するように、装置200/400の単一の回転軸のみを使用して、マルチチャンネルシステム内の異なる流体リザーバ/ウェルに含まれる様々な異なる液体を制御する能力であることを理解されたい。これにより、システムの全ての作動流体の上方に配置された膜を使用して、システム内の流体を作動または駆動するための最小限の機械的複雑さで、サンプル処理の完全なサンプルから回答までのシーケンスを発生させることができる。
【0038】
本発明の実施形態では、1つ以上のカム408を備えるカムシャフト402が提供され、カムシャフト402は、モータ404によって装置400の主要回転軸回りに回転される(702)。本発明の一実施形態において、モータ404はステッピングモータである。カムシャフト402、およびカム408の少なくとも1つは、カムシャフト402がモータ404によって回転されるときに、少なくとも1つのカム408が少なくとも1つのピン412に接触し(704)、少なくとも1つのピン412を下方のカートリッジ406のウェル414内に駆動する(706)ように、動作可能に配置される。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのピン412は、ピンフレーム410のスロットによって、それぞれのカム408に対して所望の位置に作動的に位置決めされ、スロットは、ピン412をその中に、そしてそれを貫通するように保持する。駆動中(706)、可撓性および/または弾性のある膜500(図5に関してより詳細に示され、説明される)は、膜500とウェル414の壁との間に流体シールを形成するウェル414内に押し込まれ(708)、それによって、圧力(例えば空気圧)によりウェル414内の流体を、カートリッジ406の下に配置されたチップ900(例えば、図9のチップ900のチャネル902を参照)内に、およびチップ900を通して押し込む(710)。
【0039】
カムシャフト402が回転し、少なくとも1つのカム408が少なくとも1つの対応するピン412に接触/駆動するように回転すると、カートリッジ406の異なるウェル414が、少なくとも1つのピン412/膜500の押し込み(710)によって「稼働」されることを理解されたい。本発明のいくつかの実施形態では、カートリッジ406内の複数のウェル414に対応するシステム400内の複数のピン412が存在し、回転軸回りのカムシャフト402の回転が、カムシャフト上のカム408の意図的な形状と連動して、所望のタイミングおよび/または順序でのピンの稼働をもたらし、迅速かつ自動化されたqPCR分析のために、ウェル414内に位置する複数の流体をチップ900のチャネル902内に正確に導入することを可能にする。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも1つのピン412は、ピン412が駆動されていないとき(706)、静止した、予め駆動された構成に戻るように、ばね付勢されるか、またはバイアスされる。任意選択で、膜500の弾性/弾力性は、少なくとも1つのピン412にこのバネのような挙動を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、回転(702)から押し出し(710)は、例えば、カムシャフト400の回転を維持することによって追加のカム408を使用して、所望のように、全ての流体ウェル414が稼働されるまで、追加のウェル内の追加の流体を押し出すために、繰り返される(712)。
【0041】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載の装置および方法を用いて、少なくとも1つの液量が、(チップ900内の)多数の異なるタイプの領域、例えば、PCR増幅を達成するために所望の温度に加熱される少なくとも1つの領域、および/または(例えば、検査されるサンプルを捕捉するために)磁力を受ける少なくとも1つの領域にわたって駆動される。さらに、代替的に、および/または任意に、洗浄液の少なくとも一部分が磁気的に捕捉された試料を通過するように駆動され、および/または溶出バッファが少なくとも1つの磁化された領域を通過するように駆動され、磁気的に捕捉された試料をチップ900から、またはチップの構成要素から溶出する。
【0042】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、流体ボリュームの制御装置400の長軸方向に沿う縦断面図である。図5に示されているのは、カム408がピン412を第1の方向、例えば(この図から見て)下向きに膜500内へ駆動(706)し、したがって、膜500をウェル414内へ押し下げ、次いで、ピン412が、任意選択で、膜500の弾性に起因して、および/またはバネ荷重がかけられていることに起因して、第2の方向、例えば、上向きに移動するときのピン412の動き502である。本明細書の他の箇所に記載されているように、ウェル内への膜500の挿入はウェル414内の圧力を上昇させ、一方、ウェル414からの膜500の移動はウェル内の圧力を下降させる。
【0043】
図6は、本発明の例示的な実施形態による、流体ボリュームの制御装置400の短軸方向に沿う横断面図である。カムシャフト402の回転600が示されており、カム408は、本発明の実施形態において、回転600の方向への移動のためにバイアスされている。カム408iがピン412の周りを回転すると、ピン412を下方に、膜(図示せず)を通して、カートリッジ406のウェル414内に駆動する。
【0044】
図8は、本発明の例示的な実施形態によるカートリッジ406の上面斜視図である。図9は、本発明の例示的な実施形態による、チャネル902の例示的な構成を示す、カートリッジ406内に装着されたチップ900の底面斜視図である。
【0045】
用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」およびそれらの組合せは、「含むがこれらに限定されない」ことを意味する。
【0046】
「からなる」という用語は、「~を含み、~に限定される」という意味である。
「本質的にからなる」という用語は、組成物、方法または構造が、追加の成分、ステップおよび/または部分を含んでもよいが、追加の成分、ステップおよび/または部分が、請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0047】
「複数」という用語は、「2つ以上」を意味する。
【0048】
本明細書において、単数形の「一の」、「ある」および「その」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数形の言及を含む。例えば、用語「ある化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0049】
本出願を通じて、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示される場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜上、簡潔にするためのものであり、本発明の範囲を柔軟性なく限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値と同様に、可能な全ての部分範囲を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1から6までのような範囲の記述は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6までのような部分範囲、およびその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示したとみなされるべきである。これは範囲の広さに関係なく適用される。
【0050】
本明細書において数値範囲が示される場合は常に、示された範囲内の引用数字(分数または積分)を含むことを意味する。本明細書において、第1の指示数値と第2の指示数値との「間の範囲」、および第1の指示数値「から」第2の指示数値までの「範囲」という表現は、互換的に使用され、第1および第2の指示数値、並びにその間の全ての分数および整数数字を含むことを意味する。
【0051】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもあることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴も、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本発明の他の説明された実施形態において適切なように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明された特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とはみなされない。
【0052】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替案、修正および変形が当業者に明らかであることは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲に属する、そのような代替案、修正例および変形例を全て包含することを意図している。
【0053】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用または特定は、かかる参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈してはならない。セクションの見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
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【国際調査報告】