(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】IL-2および抗PD-1ベースの治療薬およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240524BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20240524BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240524BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240524BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240524BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240524BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240524BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240524BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240524BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240524BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/26
C07K19/00
C07K14/55
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/12
C07K14/715
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/64
A61K38/20
A61K39/395 T
C12P21/02 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577131
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022072895
(87)【国際公開番号】W WO2022266598
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】チア-ヤン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャシ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ニコリン・ブロッホ
(72)【発明者】
【氏名】トン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・デーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】エリック・スミス
(72)【発明者】
【氏名】エリカ・ウルマン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG05
4B064AG20
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AA87X
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4B065AB01
4B065AC14
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4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
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4C076FF70
4C084AA02
4C084AA19
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4C084ZB26
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA04
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトPD-1に特異的に結合する抗原結合性部分およびIL2部分を含む融合タンパク質、ならびにその使用方法に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって:(i)ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に特異的に結合する抗原結合性部分、および(ii)インターロイキン2(IL2)部分を含む融合タンパク質。
【請求項2】
抗原結合性部分は、ヒトPD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
ヒトPD-1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトモノクローナル抗体である、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
抗原結合性部分は、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み:
HCDR1は配列番号43、4、または24のアミノ酸配列を含み;
HCDR2は配列番号45、6、または26のアミノ酸配列を含み;
HCDR3は配列番号47、8、または28のアミノ酸配列を含み;
LCDR1は配列番号12、または32のアミノ酸配列を含み;
LCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み;および
LCDR3は配列番号16、または35のアミノ酸配列を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
抗原結合性部分は、(i)配列番号43、45、47、12、14、および16;(ii)配列番号4、6、8、12、14、および16;または(iii)配列番号24、26、28、32、14、および35のそれぞれのアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
抗原結合性部分は、配列番号43、45、47、12、14、および16のそれぞれのアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む、請求項4または5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
抗原結合性部分は、配列番号41、2、または22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号10または30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
HCVRは配列番号2のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
HCVRは配列番号22のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
HCVRは配列番号41のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
抗原結合性部分は、配列番号55の重鎖定常領域および配列番号56の軽鎖定常領域を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
抗原結合性部分は重鎖および軽鎖を含み、重鎖は配列番号61、57、または59のアミノ酸配列を含み、軽鎖は配列番号62、58、または60のアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
抗原結合性部分は、配列番号61/62、57/58、または59/60の重鎖/軽鎖配列対を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
抗原結合性部分は、配列番号61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
IL2部分は、(i)IL2またはその断片;および(ii)IL2受容体α(IL2Rα)またはその断片を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
IL2またはその断片は、ヒトIL2(hIL2)またはその断片である、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
IL2Rαまたはその断片は、ヒトIL2Rα(hIL2Rα)またはその断片である、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
IL2またはその断片は、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
IL2Rαまたはその断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
IL2またはその断片は、リンカーを介してIL2Rαまたはその断片のC末端に接続される、請求項15~19のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
IL2部分は、リンカーを介して抗原結合性部分の重鎖定常領域のC末端に接続される、請求項1~20のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
リンカーは、GGGGS(配列番号67)の1つまたはそれ以上の繰り返しのアミノ酸配列を含む、請求項20または21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
リンカーは、配列番号50または52のアミノ酸配列を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
IL2部分は、配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
融合タンパク質であって:(i)ヒトPD-1に特異的に結合するヒト抗体の軽鎖可変領域(LCVR)を含む第1のポリペプチド;ならびに(ii)(a)ヒトPD-1に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(HCVR)および(b)IL2部分を含む第2のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項26】
HCVRは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含み、ならびにLCVRは、3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み:
HCDR1は配列番号43、4、または24のアミノ酸配列を含み;
HCDR2は配列番号45、6、または26のアミノ酸配列を含み;
HCDR3は配列番号47、8、または28のアミノ酸配列を含み;
LCDR1は配列番号12、または32のアミノ酸配列を含み;
LCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み;および
LCDR3は配列番号16、または35のアミノ酸配列を含む、
請求項25に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、(i)配列番号43、45、47、12、14、および16;(ii)配列番号4、6、8、12、14、および16;または(iii)配列番号24、26、28、32、14、および35のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、配列番号43、45、47、12、14、および16のアミノ酸配列をそれぞれ含む、請求項26または27に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
HCVRおよびLCVRは、(i)配列番号41および10;(ii)配列番号2および10;または(iii)配列番号22および30のアミノ酸配列を含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
第1のポリペプチドは、LCVRに連結された軽鎖定常領域を含む、請求項25~29のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
軽鎖定常領域は、配列番号56のアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
第2のポリペプチドは、HCVRに連結された重鎖定常領域を含み、IL2部分は重鎖定常領域のC末端に連結される、請求項25~31のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
重鎖定常領域は、配列番号55のアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
第1のポリペプチドは、配列番号62、58、または60の軽鎖配列を含む、請求項25~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
第2のポリペプチドは、配列番号61、57、または59の重鎖配列を含む、請求項25~34のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
配列番号61/62、57/58、または59/60の重鎖/軽鎖配列対を含む、請求項25~35のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
配列番号61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む、請求項25~36のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
IL2部分は、(i)IL2またはその断片;および(ii)IL2Rαまたはその断片を含む、請求項25~37のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
IL2部分は、リンカーを介して重鎖定常領域のC末端に接続される、請求項25~38のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
IL2またはその断片は、リンカーを介してIL2Rαまたはその断片のC末端に接続される、請求項38または39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
IL2またはその断片は、ヒトIL2(hIL2)またはその断片である、請求項38~40のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
IL2Rαまたはその断片は、ヒトIL2Rα(hIL2Rα)またはその断片である、請求項38~41のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
IL2またはその断片は、配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項38~42のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
IL2Rαまたはその断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む、請求項38~43のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項45】
リンカーは、GGGGS(配列番号67)の1つまたはそれ以上の繰り返しのアミノ酸配列を含む、請求項40~44のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
リンカーは、配列番号50または52のアミノ酸配列を含む、請求項45に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
IL2部分は、配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項25~46のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項48】
第1のポリペプチドは、配列番号62、58、または60のアミノ酸配列を含む、請求項25~47のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項49】
第2のポリペプチドは、配列番号63、64、または65のアミノ酸配列を含む、請求項25~48のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項50】
第1のポリペプチドは、配列番号58のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列を含む、請求項25~49のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項51】
第1のポリペプチドは、配列番号60のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列を含む、請求項25~49のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項52】
第1のポリペプチドは、配列番号62のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列を含む、請求項25~49のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項53】
融合タンパク質は、二量体融合タンパク質を形成する、請求項1~52のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項54】
融合タンパク質は、それぞれの重鎖定常領域を介して二量体化する、請求項1~53のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項55】
融合タンパク質は、PD-1への結合についてREGN2810、ペムブロリズマブまたはニボルマブと交差競合しない、請求項1~54のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項56】
融合タンパク質は、IL2と比較して、ヒトIL2Rα/β/γおよびIL2Rβ/γ複合体を活性化する活性の低下を示す、請求項1~55のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項57】
融合タンパク質は、非標的IL2Rα-IL2と比較して、ヒトIL2Rαを活性化する活性の増大を示す、請求項1~56のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項58】
融合タンパク質は、野生型ヒトIL2と比較して、IFN-γ放出のレベルによって測定されるように、T細胞を刺激する活性の増大を示す、請求項1~57のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項59】
融合タンパク質は、IL2Rα、IL2RβおよびIL2Rγに対する減弱した結合を示す、請求項1~58のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項60】
核酸または複数の核酸であって、請求項1~59のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸または複数の核酸。
【請求項61】
ベクターであって、請求項60に記載の核酸または複数の核酸を含むベクター。
【請求項62】
宿主細胞であって、請求項60に記載の核酸もしくは複数の核酸または請求項61に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項63】
請求項25~59のいずれか1項に記載の融合タンパク質の第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のベクター、および請求項25~59のいずれか1項に記載の融合タンパク質の第2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のベクターを発現する請求項62に記載の宿主細胞。
【請求項64】
請求項1~59のいずれか1項に記載の融合タンパク質を産生する方法であって、融合タンパク質または断片の産生を可能にする条件下で請求項62または63に記載の宿主細胞を培養すること、およびそのようにして産生された融合タンパク質またはその断片を回収することを含む方法。
【請求項65】
医薬組成物であって、請求項1~59のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項66】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片をさらに含む、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、PD-1への結合について融合タンパク質と交差競合しない、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~59のいずれか1項に記載の融合タンパク質または請求項65~67のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項69】
対象の体重に基づき0.005mg/kg~10mg/kgの量で融合タンパク質を対象に投与することを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
対象に第2の治療薬または治療法を投与することをさらに含む、請求項68または69に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、IL2ベースの治療薬およびその使用方法に関し、より具体的には、IL2部分、およびヒトPD-1に特異的に結合する抗原結合性部分を含む融合タンパク質、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン2(IL-2またはIL2)は、主に活性化T細胞によって産生される多能性サイトカインである。T細胞の増殖および分化を刺激し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成および末梢血リンパ球の細胞傷害性細胞およびリンパ球活性化キラー(LAK)細胞への分化を誘導し、T細胞によるサイトカインおよび細胞溶解分子の発現を促進し、B細胞の増殖および分化ならびにB細胞による免疫グロブリンの合成を促進し、ナチュラルキラー(NK)細胞の生成、増殖、活性化を刺激する(非特許文献1、および非特許文献2を参照)。IL2は、サプレッサーT細胞としても知られる末梢CD4+CD25+制御性T(Treg)細胞の維持に関与している(例えば、非特許文献3を参照)。Treg細胞は、T細胞の助力と活性化を阻害することによる細胞間接触、あるいはIL-10やTGFβのような免疫抑制性サイトカインの放出によって、エフェクターT細胞が(自己の)標的を破壊するのを抑制する。Treg細胞の枯渇は、IL2によって誘導される抗腫瘍免疫を増強することが示された(非特許文献4)。
【0003】
しかし、IL2はその多面的作用のため、腫瘍増殖の抑制には最適ではない。抗腫瘍剤としてのIL2の使用は、腫瘍応答に必要な投与量に伴う重篤な毒性によって制限されてきた。Proleukin(登録商標)(Prometheus Laboratories、San Diego、Calif.が販売)はIL2の組換え型で、転移性黒色腫と転移性腎癌の処置において承認されているが、その副作用は非常に重篤であるため、集中治療が可能な病院での使用のみが推奨されている。IL2療法の主な副作用は血管漏出症候群(VLS)で、肺や肝臓に間質液が貯留し、肺水腫や肝障害を引き起こす。VLSに対する処置法は、IL2を中止する以外にない。IL2が誘発する肺水腫は、IL2が肺内皮細胞に直接結合することに起因することが示されており、この細胞は、低レベルから中レベルの機能的高親和性IL2受容体を発現している(非特許文献5)。癌治療のために開発されているCD122指向性IL2治療法が一般的に受け入れられているにもかかわらず、このような分子は癌治療のための治療指標が低く、わずかな抗癌作用を得るためには高く毒性のある用量が必要であることが、驚くべきことに判明している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Waldmann、2006、Nat Rev Immunol 6:595~601
【非特許文献2】Malek、2008、Annu Rev Immunol 26:453~79
【非特許文献3】Fontenotら、2005、Nature Immunol 6:1142~51
【非特許文献4】Imaiら、2007、Cancer Sci 98:416~23
【非特許文献5】Kriegら、2010、Proc Nat Acad Sci USA 107:11906~11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、治療効能および安全性プロファイルが改善された新規IL2治療法に対する緊急の必要性が当技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記の必要性の1つまたはそれ以上に対処するものである。本開示の融合タンパク質は、腫瘍反応性T細胞を標的とするヒトPD-1に特異的に結合する抗原結合性部分を含む。抗原結合性部分は、腫瘍反応性T細胞上の活性を選択的に再構成するのに有用である。融合タンパク質は、IL2部分をさらに含み、IL2部分は、IL2Rαに結合したIL2を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、修飾されていないIL2配列を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、内因性IL2Rαと会合する能力を保持する。融合タンパク質は、トランス形に隔絶されたコンフォメーションのIL2部分を含む。これは、活性化CD8+T細胞との係合を維持する;しかし、IL2部分の結合した立体配置は、IL2のマスキングおよびその活性の減衰に役立ち、したがって、全身毒性の低減につながる。例えば、本開示の融合タンパク質は、野生型IL2と比較して、マウスにおいて急性肺水腫(血管漏出)を誘導しない。本開示の融合タンパク質は、IL2単独またはPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)との併用と比較して、増強された抗腫瘍効能および改善された治療指数を提供する。
【0007】
一態様では、開示された技術は:(i)ヒトプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に特異的に結合する抗原結合性部分、および(ii)インターロイキン2(IL2)部分を含む融合タンパク質に関する。一部の実施形態では、抗原結合性部分は、ヒトPD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、ヒトPD-1に結合する抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗原結合性部分は、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み:HCDR1は配列番号43、4、または24のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号45、6、または26のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号47、8、または28のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号12または32のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号16または35のアミノ酸配列を含む。
【0008】
一部の実施形態では、抗原結合性部分は、(i)配列番号43、45、47、12、14、および16;(ii)配列番号4、6、8、12、14、および16;または(iii)配列番号24、26、28、32、14、および35のそれぞれのアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。一部の実施形態では、抗原結合性部分は、配列番号43、45、47、12、14、および16のそれぞれのアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。一部の実施形態では、抗原結合性部分は、配列番号41、2、または22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号10または30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。一部の実施形態では、HCVRは配列番号2のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号10のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、HCVRは配列番号22のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号30のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、HCVRは配列番号41のアミノ酸配列を含み、LCVRは配列番号10のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗原結合性部分は、配列番号55の重鎖定常領域および配列番号56の軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗原結合性部分は重鎖および軽鎖を含み、重鎖は配列番号61、57、または59のアミノ酸配列を含み、軽鎖は配列番号62、58、または60のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗原結合性部分は、配列番号61/62、57/58、または59/60の重鎖/軽鎖配列対を含む。
【0009】
一部の実施形態では、抗原結合性部分は、配列番号61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む。一部の実施形態では、IL2部分は、(i)IL2またはその断片;および(ii)IL2受容体α(IL2Rα)またはその断片を含む。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、ヒトIL2(hIL2)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、ヒトIL2Rα(hIL2Rα)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、リンカーを介してIL2Rαまたはその断片のC末端に接続される。一部の実施形態では、IL2部分は、リンカーを介して抗原結合性部分の重鎖定常領域のC末端に接続される。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号67)の1つまたはそれ以上の繰り返しのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは配列番号50または52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL2部分は、配列番号54のアミノ酸配列を含む。
【0010】
別の態様では、開示された技術は:(i)ヒトPD-1に特異的に結合するヒト抗体の軽鎖可変領域(LCVR)を含む第1のポリペプチド;ならびに(ii)(a)ヒトPD-1に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(HCVR)および(b)IL2部分を含む第2のポリペプチドを含む融合タンパク質に関する。一部の実施形態では、HCVRは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含み、ならびにLCVRは、3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み:HCDR1は配列番号43、4、または24のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号45、6、または26のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号47、8、または28のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号12または32のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号16または35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、(i)配列番号43、45、47、12、14、および16;(ii)配列番号4、6、8、12、14、および16;または(iii)配列番号24、26、28、32、14、および35のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれ配列番号43、45、47、12、14、および16のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、HCVRおよびLCVRは、(i)配列番号41および10;(ii)配列番号2および10;または(iii)配列番号22および30のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、LCVRに連結された軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号56のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、HCVRに連結された重鎖定常領域を含み、IL2部分は重鎖定常領域のC末端に連結される。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号55のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号62、58または60の軽鎖配列を含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号61、57または59の重鎖配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61/62、57/58、または59/60の重鎖/軽鎖配列対を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む。一部の実施形態では、IL2部分は、(i)IL2またはその断片;および(ii)IL2Rαまたはその断片を含む。一部の実施形態では、IL2部分は、リンカーを介して重鎖定常領域のC末端に接続される。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、リンカーを介してIL2Rαまたはその断片のC末端に接続される。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、ヒトIL2(hIL2)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、ヒトIL2Rα(hIL2Rα)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、配列番号51のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号67)の1つまたはそれ以上の繰り返しのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは配列番号50または52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL2部分は、配列番号54のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号62、58または60のアミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号63、64または65のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号58のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号60のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号62のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、二量体融合タンパク質を形成する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、それぞれの重鎖定常領域を介して二量体化する。
【0014】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、PD-1への結合についてREGN2810、ペムブロリズマブまたはニボルマブと交差競合しない。一部の実施形態では、融合タンパク質は、IL2と比較して、ヒトIL2Rα/β/γおよびIL2Rβ/γ複合体を活性化する活性の低下を示す。一部の実施形態では、融合タンパク質は、非標的IL2Rα-IL2と比較して、ヒトIL2Rαを活性化する活性の増大を示す。一部の実施形態では、融合タンパク質は、野生型ヒトIL2と比較して、IFN-γ放出のレベルによって測定されるように、T細胞を刺激する活性の増大を示す。一部の実施形態では、融合タンパク質は、IL2Rα、IL2RβおよびIL2Rγに対する減弱した結合を示す。
【0015】
別の態様では、開示された技術は、核酸または複数の核酸であって、本明細書に開示された融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸または複数の核酸に関する。別の態様では、開示された技術は、ベクターであって、本明細書に開示された核酸または複数の核酸を含むベクターに関する。別の態様では、開示された技術は、宿主細胞であって、本明細書に開示された核酸もしくは複数の核酸またはベクターを含む宿主細胞に関する。一部の実施形態では、宿主細胞は、本明細書に開示された融合タンパク質の第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のベクター、および本明細書に開示された融合タンパク質の第2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のベクターを発現する。
【0016】
別の態様では、開示された技術は、本明細書に開示された融合タンパク質を産生する方法であって、融合タンパク質または断片の産生を可能にする条件下で本明細書に開示された宿主細胞を培養すること、およびそのようにして産生された融合タンパク質またはその断片を回収することを含む方法に関する。
【0017】
別の態様では、開示された技術は、本明細書に開示された融合タンパク質を含む医薬組成物に関する。一部の実施形態では、医薬組成物は、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片をさらに含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片は、PD-1への結合について融合タンパク質と交差競合しない。
【0018】
別の態様では、開示された技術は、癌を処置する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に開示された融合タンパク質または医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法に関する。一部の実施形態では、方法は対象の体重に基づき0.005mg/kg~10mg/kgの量で融合タンパク質を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、方法は対象に第2の治療薬または治療法を投与することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】実施例6に記載のin vivo試験の結果を示すグラフの図である。
図1Aおよび
図1Bは、アイソタイプ対照Ab、アイソタイプ対照hIL2Rα-IL2+抗PD-1、REGN10486+アイソタイプ対照Ab処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1A)および生存率(
図1B)を示す。
図1Cおよび
図1Dは、アイソタイプ対照、REGN10486、REGN10595、およびREGN10597処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1C)および生存率(
図1D)を示す。
【
図1B】実施例6に記載のin vivo試験の結果を示すグラフの図である。
図1Aおよび
図1Bは、アイソタイプ対照Ab、アイソタイプ対照hIL2Rα-IL2+抗PD-1、REGN10486+アイソタイプ対照Ab処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1A)および生存率(
図1B)を示す。
図1Cおよび
図1Dは、アイソタイプ対照、REGN10486、REGN10595、およびREGN10597処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1C)および生存率(
図1D)を示す。
【
図1C】実施例6に記載のin vivo試験の結果を示すグラフの図である。
図1Aおよび
図1Bは、アイソタイプ対照Ab、アイソタイプ対照hIL2Rα-IL2+抗PD-1、REGN10486+アイソタイプ対照Ab処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1A)および生存率(
図1B)を示す。
図1Cおよび
図1Dは、アイソタイプ対照、REGN10486、REGN10595、およびREGN10597処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1C)および生存率(
図1D)を示す。
【
図1D】実施例6に記載のin vivo試験の結果を示すグラフの図である。
図1Aおよび
図1Bは、アイソタイプ対照Ab、アイソタイプ対照hIL2Rα-IL2+抗PD-1、REGN10486+アイソタイプ対照Ab処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1A)および生存率(
図1B)を示す。
図1Cおよび
図1Dは、アイソタイプ対照、REGN10486、REGN10595、およびREGN10597処置マウスの腫瘍体積(mm
3)(
図1C)および生存率(
図1D)を示す。
【
図2A】実施例8に記載の、抗α-hPD1抗体(「αhPD1」または「ahPD1」)親抗体のPD1+細胞への結合(
図2A)と、抗αhPD1抗体-IL2Rα-IL2融合構築物のPD1+細胞への結合(
図2B)とを比較するFACS結合アッセイの結果を示すグラフのセットの図である。
【
図2B】実施例8に記載の、抗α-hPD1抗体(「αhPD1」または「ahPD1」)親抗体のPD1+細胞への結合(
図2A)と、抗αhPD1抗体-IL2Rα-IL2融合構築物のPD1+細胞への結合(
図2B)とを比較するFACS結合アッセイの結果を示すグラフのセットの図である。
【
図3A】実施例9に記載の、特定の抗体混合物と比較した、抗PD-1-IL2Ra-IL2+hIgG4抗体の混合物の実験デザイン(
図3A)および得られたネイティブ質量スペクトル(
図3B)を示す図である。
【
図3B-1】実施例9に記載の、特定の抗体混合物と比較した、抗PD-1-IL2Ra-IL2+hIgG4抗体の混合物の実験デザイン(
図3A)および得られたネイティブ質量スペクトル(
図3B)を示す図である。
【
図3B-2】実施例9に記載の、特定の抗体混合物と比較した、抗PD-1-IL2Ra-IL2+hIgG4抗体の混合物の実験デザイン(
図3A)および得られたネイティブ質量スペクトル(
図3B)を示す図である。
【
図4A】実施例10に記載の、抗体またはサイトカイン滴定に応答したT細胞のIFNγ放出および増殖を示すグラフのセットの図である。T細胞と混合した同種PBMCを、組換えIL2、抗PD-1-IL2Rα-IL2(REGN10597、REGN10595、およびREGN10486)またはアイソタイプ-IL2Rα-IL2対照(REGN9903)の用量滴定で処理し、IFNγ放出(
図4A)および増殖(
図4B)を評価した。
【
図4B】実施例10に記載の、抗体またはサイトカイン滴定に応答したT細胞のIFNγ放出および増殖を示すグラフのセットの図である。T細胞と混合した同種PBMCを、組換えIL2、抗PD-1-IL2Rα-IL2(REGN10597、REGN10595、およびREGN10486)またはアイソタイプ-IL2Rα-IL2対照(REGN9903)の用量滴定で処理し、IFNγ放出(
図4A)および増殖(
図4B)を評価した。
【
図5A】実施例11に記載の、REGN2810の非存在下(
図5A)または存在下(
図5B)における抗体またはサイトカイン滴定に応答したT細胞のIFNγ放出を示すグラフのセットの図である。RAJI/CD80 KO/CD86 KO/PDL1細胞をT細胞とインキュベートし、REGN2810の非存在下(
図5A)または存在下(
図5B)で、固定用量の抗CD3×CD20(REGN1979)および用量滴定のアイソタイプ対照(REGN7540)、アイソタイプ-IL2Rα-IL2抗体(REGN9903)、mAb9048の可変領域を有する抗PD1抗体(REGN15187)、抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10597)、またはREGN9903+REGN15187の組合せで処理した。IFNγ放出を測定した。
【
図5B】実施例11に記載の、REGN2810の非存在下(
図5A)または存在下(
図5B)における抗体またはサイトカイン滴定に応答したT細胞のIFNγ放出を示すグラフのセットの図である。RAJI/CD80 KO/CD86 KO/PDL1細胞をT細胞とインキュベートし、REGN2810の非存在下(
図5A)または存在下(
図5B)で、固定用量の抗CD3×CD20(REGN1979)および用量滴定のアイソタイプ対照(REGN7540)、アイソタイプ-IL2Rα-IL2抗体(REGN9903)、mAb9048の可変領域を有する抗PD1抗体(REGN15187)、抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10597)、またはREGN9903+REGN15187の組合せで処理した。IFNγ放出を測定した。
【
図6A】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6B-1】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6B-2】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6C】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6D】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6E】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6F】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6G】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図6H】実施例12に記載の、PD1×LAG3ヒト化マウスにおける抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物REGN10597のin vivo活性評価を示すグラフの図であり、主に以下:非標的対照REGN9904とPD-1遮断抗体REGN2810の組合せ(
図6Aおよび
図6B)、比較対象の抗PD1標的「非α」(3m)分子REGN13233(
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)、ならびに、REGN10597と同じ成分をすべて含むが、IL2およびIL2Rαが互いに逆の順序で融合した構築物(
図6Gおよび6H)と比較する。
【
図7A】実施例13に記載のIL2結合アッセイのグラフを示す図である。YT/STAT5-Luc/IL2Ra KO(
図7A)またはYT/STAT5-Luc/IL2Ra OE(
図7B)を、IL2に直列に融合した抗体(REGN8512;破線で灰色の開円)またはIL2RaおよびIL2に直列に融合した抗体(REGN9904;実線で黒色の閉円)の滴定とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、二次抗体AF647抗ヒトIgGで染色し、洗浄、固定し、iQue Plusフローサイトメーターで取得した。
【
図7B】実施例13に記載のIL2結合アッセイのグラフを示す図である。YT/STAT5-Luc/IL2Ra KO(
図7A)またはYT/STAT5-Luc/IL2Ra OE(
図7B)を、IL2に直列に融合した抗体(REGN8512;破線で灰色の開円)またはIL2RaおよびIL2に直列に融合した抗体(REGN9904;実線で黒色の閉円)の滴定とともにインキュベートした。細胞を洗浄し、二次抗体AF647抗ヒトIgGで染色し、洗浄、固定し、iQue Plusフローサイトメーターで取得した。
【
図8A】実施例14に記載の、Ab-IL2Ra-IL2およびAb-IL2-IL2RaのIL2レポーターアッセイ比較を示すグラフの図である。YT/STAT5-Luc/IL2Ra KO/hPD1(
図8A)またはYT/STAT5-Luc/hIL2Ra/hPD1(
図8B)を、非標的IL2Ra-IL2(黒色破線で黒色の開いた丸い記号、REGN9903)、非標的IL2-IL2Ra(灰色破線で灰色の四角い開いた記号)、抗PD1-IL2Ra-IL2(黒色実線で黒色の閉じた丸い記号、REGN10597)、または抗PD1-IL2-IL2Ra(灰色実線で灰色の四角い閉じた記号)の滴定とともにインキュベートした。4時間30分後、STAT5活性を発光計測値により評価した。
【
図8B】実施例14に記載の、Ab-IL2Ra-IL2およびAb-IL2-IL2RaのIL2レポーターアッセイ比較を示すグラフの図である。YT/STAT5-Luc/IL2Ra KO/hPD1(
図8A)またはYT/STAT5-Luc/hIL2Ra/hPD1(
図8B)を、非標的IL2Ra-IL2(黒色破線で黒色の開いた丸い記号、REGN9903)、非標的IL2-IL2Ra(灰色破線で灰色の四角い開いた記号)、抗PD1-IL2Ra-IL2(黒色実線で黒色の閉じた丸い記号、REGN10597)、または抗PD1-IL2-IL2Ra(灰色実線で灰色の四角い閉じた記号)の滴定とともにインキュベートした。4時間30分後、STAT5活性を発光計測値により評価した。
【
図9A】実施例14に記載の、Ab-IL2Ra-IL2およびAb-IL2(3m)のIL2レポーターアッセイ比較を示すグラフの図である。YT/STAT5-Luc/IL2Ra KO/hPD1(
図9A)またはYT/STAT5-Luc/hIL2Ra/hPD1(
図9B)を、非標的IL2Ra-IL2(黒色破線で黒色の開いた丸い記号、REGN9904)、非標的IL2(3m)(灰色破線で灰色の菱形の開いた記号)、抗PD1-IL2Ra-IL2(黒色実線で黒色の閉じた丸い記号、REGN10597)、または抗PD1-IL2(3m)(灰色実線で灰色の菱形の閉じた記号)の滴定とともにインキュベートした。4時間後、STAT5活性を発光計測値により評価した。
【
図9B】実施例14に記載の、Ab-IL2Ra-IL2およびAb-IL2(3m)のIL2レポーターアッセイ比較を示すグラフの図である。YT/STAT5-Luc/IL2Ra KO/hPD1(
図9A)またはYT/STAT5-Luc/hIL2Ra/hPD1(
図9B)を、非標的IL2Ra-IL2(黒色破線で黒色の開いた丸い記号、REGN9904)、非標的IL2(3m)(灰色破線で灰色の菱形の開いた記号)、抗PD1-IL2Ra-IL2(黒色実線で黒色の閉じた丸い記号、REGN10597)、または抗PD1-IL2(3m)(灰色実線で灰色の菱形の閉じた記号)の滴定とともにインキュベートした。4時間後、STAT5活性を発光計測値により評価した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
このような方法や条件は異なる場合があるため、本開示は、記載された特定の方法および実験条件に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が、ここで記載される。本明細書で言及されるすべての刊行物は、特に断らない限り、参照によってその全体が本明細書に組み入れる。
【0021】
融合タンパク質
一態様では、本開示は:(i)ヒトPD-1に特異的に結合する抗原結合性部分、および(ii)IL2部分を含む融合タンパク質を提供する。開示された融合タンパク質は、抗hPD1抗体(REGN2810など)と比較して、T細胞を刺激し、腫瘍増殖を阻害するのに驚くほど効果的である。特定の実施形態では、融合タンパク質は、抗PD-1標的IL2分子(REGN13233など)と比較して、より優れた安全性プロファイルを示す。
【0022】
開示された融合タンパク質は、単量体または多量体、例えば、二量体(ホモ二量体もしくはヘテロ二量体)または高次複合体である。簡単のために、ホモ二量体(または同じポリペプチドの高次多量体)である融合タンパク質は、それらの構成単量体によって記載される;しかし、適切な細胞株における構成単量体の組換え発現の際に、ホモ二量体(または高次多量体)分子が産生される。
【0023】
一部の実施形態では、抗原結合性部分は、ヒトPD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、ヒトPD-1に結合する抗原結合性部分はヒトモノクローナル抗体である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結した免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)、ならびにその多量体(例えば、IgM)またはその抗原結合性断片を指す。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)ならびに重鎖定常領域(ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む)を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVR」または「VL」)および軽鎖定常領域(CL)を含む。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域が散在する、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存性の高い領域にさらに細分化することができる。それぞれのVHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシル末端に配列された3つのCDRおよび4つのFRからなる。一部の実施形態では、抗体(またはその抗原結合性断片)のFRは、ヒト生殖細胞配列と同一であってもよいし、天然または人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRの対照解析に基づいて定義することができる。「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合性断片も含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合性断片」、抗体の「抗原結合性部分」などの用語は、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、天然に存在する、酵素的に取得可能な、合成された、または遺伝子工学的に操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解消化や、抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子工学技術のような任意の適切な標準技術を用いて、完全な抗体分子から誘導することができる。このようなDNAは既知であり、および/または、例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することができる。DNAは、例えば、1つまたはそれ以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切な立体配置に配列するため、またはコドンを導入するため、システイン残基を作製するため、アミノ酸を修飾、付加または削除するためなどに、化学的または分子生物学的技術を用いて配列決定および操作することができる。
【0026】
抗原結合性断片の非限定的な例としては:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))、または束縛されたFR3-CDR3-FR4ペプチド、が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール免疫医薬品(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用される「抗原結合性断片」という表現に包含される。
【0027】
抗体の抗原結合性断片は一般的に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、どのようなサイズやアミノ酸組成であってもよく、一般に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するか、またはフレームワーク配列と同じ位置にある少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインに会合するVHドメインを有する抗原結合性断片では、VHドメインおよびVLドメインは、任意の適切な配置で互いに対して位置することができる。例えば、可変領域は二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VLの二量体を含んでいてもよい。あるいは、抗体の抗原結合性断片は単量体のVHまたはVLドメインを含んでいてもよい。
【0028】
一部の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合的に連結した少なくとも1つの可変ドメインを含むことができる。本開示の抗体の抗原結合性断片内に見出される可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的で例示的な立体配置には:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CL、が含まれる。上記の例示的な立体配置のいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインの任意の立体配置において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されるか、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結される。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5個、10個、15個、20個、40個、60個またはそれ以上)のアミノ酸から構成され、その結果、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可撓性または半可撓性の連結をもたらす。さらに、本開示の抗体の抗原結合性断片は、上記の可変ドメインおよび定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を、互いに非共有結合的な会合で、および/または1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインとの会合で(例えば、ジスルフィド結合によって)含むことができる。
【0029】
本明細書で開示された融合タンパク質に含まれる抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト抗体またはその抗原結合性断片であってもよい。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。本開示の融合タンパク質に含まれるヒト抗体またはその抗原結合性断片は、それにもかかわらず、例えばCDRおよび特にCDR3において、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム変異誘発または部位特異的突然変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含むことがある。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスのような他の哺乳動物種の生殖細胞由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図していない。
【0030】
本明細書で開示された融合タンパク質に含まれる抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。本明細書で使用される場合、「組換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体(以下にさらに記載する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体(以下にさらに記載する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子を導入した動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら、(1992)Nucl. Acids Res.20:6287~6295参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列とのスプライシングを伴う他の任意の手段により調製、発現、作製または単離された抗体のような、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されたすべてのヒト抗体が含まれる。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。一部の実施形態では、しかしながら、このような組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニック動物が使用される場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)に供され、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞のVHおよびVL配列に由来し、それに関連する配列であるが、in vivoではヒト抗体生殖細胞レパートリー内に天然には存在しない可能性がある。
【0031】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトPD-1に特異的に結合する。本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」などの用語は、抗体またはその抗原結合性断片が、生理的条件下で比較的安定な抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを決定する方法は当技術分野でよく知られており、例えば平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。例えば、本開示の文脈で使用されるヒトPD-1に「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイで測定される約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満のKDでヒトPD-1またはその一部と結合する抗体を含む。しかしながら、ヒトPD-1に特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)生物種のPD-1分子のような他の抗原に対して交差反応性を示すことがある。
【0032】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み:HCDR1は配列番号4、24、または43のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号6、26、または45のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号8、28、または47のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号12、または32のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号16または35のアミノ酸配列を含む。
【0033】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、(i)配列番号4、6、8、12、14、および16;(ii)配列番号24、26、28、32、14、および35;または(iii)配列番号43、45、47、12、14、および16のそれぞれのアミノ酸配列を含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。
【0034】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号43、45、47、12、14、および16のアミノ酸配列をそれぞれ含むHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。
【0035】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2、22、もしくは41のアミノ酸配列、または配列番号2、22、もしくは41に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR);および配列番号10、もしくは30のアミノ酸配列、または配列番号10、もしくは30に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0036】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、および配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0037】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号22のアミノ酸配列、または配列番号22に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、および配列番号30のアミノ酸配列、または配列番号30に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0038】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVR、および配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0039】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号55の重鎖定常領域、または配列番号55に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号56の軽鎖定常領域、または配列番号56に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をさらに含む。
【0040】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号57、59、もしくは61のアミノ酸配列、または配列番号57、59、もしくは61に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号58、60、もしくは62のアミノ酸配列、または配列番号58、60、もしくは62に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0041】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号57のアミノ酸配列、または配列番号57に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号58のアミノ酸配列、または配列番号58に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0042】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号59のアミノ酸配列、または配列番号59に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号61のアミノ酸配列、または配列番号61に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0043】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖は、配列番号61のアミノ酸配列、または配列番号61に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号62のアミノ酸配列、または配列番号62に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号57/58、59/60、または61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む。
【0045】
一部の実施形態では、IL2部分は、(i)IL2またはその断片;および(ii)IL2受容体α(IL2Rα)またはその断片を含む。
【0046】
一部の実施形態では、IL2部分は、野生型またはバリアントIL2ドメインを含んでいてもよく、これは、場合によりリンカーを介して、IL-2RαのIL2結合ドメインに融合される。IL-2RαのIL2結合ドメインは、野生型またはバリアントIL2ドメインのN末端またはC末端である。一部の実施形態では、IL-2RαのIL2結合ドメインは、野生型またはバリアントIL2ドメインのN末端である。
【0047】
一部の実施形態では、IL2部分は、配列番号54のアミノ酸配列、または配列番号54に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0048】
真核細胞では、ヒトIL2は153アミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、そこから20アミノ酸が取り除かれ、成熟した分泌型IL2となる(Taniguchiら、1983、Nature 302(5906):305~10)。成熟ヒトIL2は以下のアミノ酸配列:
APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCQSIISTLT(配列番号75)
を有する。
【0049】
一部の実施形態では、IL2部分は、IL2Ra指向性であり、例えば、それらは、IL-2Rβと比較してIL-2Rαに優先的に結合させる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をIL2ドメインに有する。一部の実施形態では、IL2部分は、CD122指向性ではなく、例えば、それらは、IL-2Rαと比較してIL-2Rβに優先的に結合させるアミノ酸置換をIL2ドメインに有さない。
【0050】
一部の実施形態では、本開示の融合タンパク質は、IL-2Rβへの結合を減少させる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換をIL2ドメインに有する。例えば、一部の実施形態では、IL2部分は、野生型ヒトIL2と比較して、最大50倍(一部の実施形態では、最大100倍)~1,000倍減弱したヒトIL-2Rβへの結合を有する可能性がある。一部の実施形態では、IL-2Rβへの結合が減少したIL2部分は、IL-2Rαへの親和性を保持するか、またはIL-2Rαへの結合が減少することがある。例えば、一部の実施形態では、IL2部分は、野生型ヒトIL2と比較して、最大50倍減弱したヒトIL2-Rαへの結合を有することがある。一実施形態では、IL2ドメインは、IL-2Rβに対する親和性を低下させ、IL2-Rαに対する親和性を維持する1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。例示的なアミノ酸置換は、N88Dである。IL2のIL-2Rβに対する親和性を低下または消失させる他のアミノ酸置換は、D20T、N88R、N88DまたはQ126Dである(例えば、米国特許公開第2007/0036752号を参照)。
【0051】
一部の実施形態では、IL2ドメインは、IL2-Rαに対する親和性を低下させ、IL-2Rβに対する親和性を維持するか、またはより低い程度に低下させる1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、CD122指向性IL2部分を生じる。例示的なCD122指向性IL2ドメインは、H16AおよびF42Aの両方の置換を含むものである。したがって、一部の実施形態では、IL2部分は、H16AおよびF42A置換を有するヒトIL2のアミノ酸配列を含む。
【0052】
一部の実施形態では、IL2部分は、ヒトIL2の残基3に対応する位置において、IL2のO-グリコシル化部位を除去するアミノ酸置換を含む。T3における例示的なアミノ酸置換は、T3A、T3G、T3Q、T3E、T3N、T3D、T3R、T3K、およびT3Pである。特定の実施形態では、置換はT3Aである。
【0053】
一部の実施形態では、IL2ドメインは、C125での置換を含んでいてもよい。C125は、米国特許第4,518,584号に記載されているように、タンパク質の凝集を低下させるために、S、V、またはAで置換することができる。一部の実施形態では、IL2ドメインは、米国特許第5,206,344号に記載されているように、メチオニン104をアラニンなどの中性アミノ酸で置換することを含んでいてもよい。一部の実施形態では、IL2ドメインは、IL2のN末端アラニン残基を欠失することができ、des-A1 IL2を生じる。
【0054】
一部の実施形態では、IL2ドメインは、他の変異に加えて、des-A1 M104A IL2、des-A1 M104A C125S IL2、M104A IL2、M104A C125A IL2、des-A1 M104A C125A IL2、およびM104A C125S IL2から選択されるアミノ酸欠失および/または置換を有することができ、その受容体へのIL2の結合を変化させることができる。これらおよび他の突然変異体は、米国特許第5,116,943号およびWeigerら、1989、Eur J Biochem 180:295~300に記載されている。
【0055】
一部の実施形態では、IL2ドメインは、成熟ヒトIL2に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0056】
一部の実施形態では、IL2またはその断片は、配列番号53のアミノ酸配列、または配列番号53に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0057】
一部の実施形態では、IL2部分は、IL-2RαのIL2結合ドメイン(「IL2-Rαドメイン」と称される)、例えば、IL2のC末端またはN末端で、場合によりリンカーを介して融合したIL-2Rαの細胞外ドメインをさらに含む。一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、ヒトIL2Rα(hIL2Rα)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2-Rαドメインは、成熟ヒトIL-2Rα細胞外ドメイン(ヒトIL-Rαのアミノ酸22~272に対応する)を含んでいてもよい。一部の実施形態では、IL2-Rαドメインは、ヒトIL-2Rα細胞外ドメインのIL2結合部分(ヒトIL-2Rαのアミノ酸22~186に対応する2つの「スシ」ドメインを含む)を含んでいてもよい。一部の実施形態では、IL2-Rαドメインは、ヒトIL-2Rαのアミノ酸22~240に対応する、ヒトIL-2Rα細胞外ドメインの代替IL2結合部分を含んでいてもよい。
【0058】
一部の実施形態では、IL2-RαドメインまたはIL-2Rα細胞外ドメインのIL2結合部分は、上記の配列のいずれか、すなわち、IL-2Rαのアミノ酸22~186、IL-2Rαのアミノ酸22~240、もしくはIL-2Rαのアミノ酸22~272のいずれか1つ、またはそのIL2結合部分のいずれかに対して、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0059】
一部の実施形態では、IL2-RαドメインまたはIL2結合部分は、ヒトIL-2RαのIL2結合部分に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなることができ、場合により結合部分は、ヒトIL2-Rαの細胞外ドメインの(a)少なくとも160アミノ酸、少なくとも161アミノ酸、少なくとも162アミノ酸、少なくとも164アミノ酸もしくは少なくとも165アミノ酸、および/または(b)最大251、最大240、最大230、最大220、最大210、最大200、最大190、最大180もしくは最大170アミノ酸のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、ヒトIL-2Rαの部分は、前文の(a)および(b)のいずれか1つ、例えば、ヒトIL-2Rαから少なくとも160および最大180のアミノ酸、ヒトIL-2Rαから少なくとも162および最大200のアミノ酸、ヒトIL-2Rαから少なくとも160および最大220のアミノ酸、ヒトIL-2Rαから少なくとも164および最大190のアミノ酸などによって結合されている。
【0060】
一部の実施形態では、IL2-RαドメインまたはIL2結合部分は、IL2-Rαのアミノ酸残基186のC末端に、最大5アミノ酸、最大10アミノ酸、最大15アミノ酸、最大20アミノ酸、最大30アミノ酸、または最大40アミノ酸を付加的に有するかまたは有さない、アミノ酸22~186に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
【0061】
一部の実施形態では、IL2-RαドメインまたはIL-2Rα細胞外ドメインは、例えば、アミノ酸N49、アミノ酸N68、アミノ酸T74、アミノ酸T85、アミノ酸T197、アミノ酸T203、アミノ酸T208、およびアミノ酸T216のうちの1つまたはそれ以上における置換によって、天然のIL-2Rαの細胞外ドメインと比較して、少なくとも1つ少ないO-グリコシル化および/またはN-グリコシル化を有する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の置換は、アスパラギンから、アラニン、スレオニン、セリン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから選択されるアミノ酸への置換である。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の置換は、スレオニンから、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから選択されるアミノ酸への置換である。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の置換は、アミノ酸S50(例えば、S50P)、アミノ酸S51(例えば、S51R、S51N、S51D、S51C、S51Q、S51E、S51G、S51H、S51I、S51L、S51K、S51M、S51F、S51P、S51W、S51Y、もしくはS51V)、アミノ酸T69(例えば、T69P)、アミノ酸T70(例えば、T70R、T70N、T70D、T70C、T70Q、T70E、T70G、T70H、T70I、T70L、T70K、T70M、T70F、T70P、T70W、T70Y、もしくはT70V、アミノ酸C192(例えば、C192R、C192N、C192D、C192Q、C192E、C192G、C192H、C192I、C192L、C192K、C192M、C192F、C192P、C192W、C192Y、もしくはC192V)、またはそれらの任意の組合せにおいてである。
【0062】
一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、配列番号51のアミノ酸配列、または配列番号51に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0063】
融合タンパク質は、分子の種々の成分を接続する1つまたはそれ以上のリンカー(例えば、ペプチドリンカーまたは非ペプチドリンカー)を含むことができる。一部の実施形態では、融合タンパク質の2つまたはそれ以上の成分は、ペプチドリンカーによって互いに接続される。限定ではなく例として、リンカーは、(a)IL2部分および抗原結合性部分;(b)IL2部分内の異なるドメイン(例えば、IL2ドメインおよびIL-Rαドメイン);または(c)抗原結合性部分内の異なるドメイン(例えば、抗PD-1抗体の異なる成分)を接続するために使用することができる。
【0064】
ペプチドリンカーは、2アミノ酸から60アミノ酸以上の範囲であることができ、一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、3アミノ酸から50アミノ酸、4アミノ酸から30アミノ酸、5アミノ酸から25アミノ酸、10アミノ酸から25アミノ酸、10アミノ酸から60アミノ酸、12アミノ酸から20アミノ酸、20アミノ酸から50アミノ酸、または25アミノ酸から35アミノ酸の長さの範囲である。
【0065】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、または少なくとも7アミノ酸の長さであり、場合により、最大30アミノ酸、最大40アミノ酸、最大50アミノ酸、または最大60アミノ酸の長さである。一部の実施形態では、リンカーは、長さが5アミノ酸から50アミノ酸の範囲であり、例えば、長さが5から50、5から45、5から40、5から35、5から30、5から25、または5から20アミノ酸の範囲である。前述の他の実施形態では、リンカーは、長さが6アミノ酸から50アミノ酸の範囲であり、例えば、長さが6から50、6から45、6から40、6から35、6から30、6から25、または6から20アミノ酸の範囲である。前述のさらに他の実施形態では、リンカーは、長さが7アミノ酸から50アミノ酸の範囲であり、例えば、長さが7から50、7から45、7から40、7から35、7から30、7から25、または7から20アミノ酸の範囲である。
【0066】
一部の実施形態では、リンカーは、極性(例えば、セリン(S))または荷電(例えば、リジン(K))残基を含む。一部の実施形態では、リンカーは、例えば、1つまたはそれ以上のグリシン(G)またはセリン(S)残基を含む可撓性リンカーである。
【0067】
本開示の融合タンパク質において使用することができる可撓性リンカーの例としては、Chenら、2013、Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357~1369、およびKleinら、2014、Protein Engineering,Design&Selection 27(10):325~330、により開示されているものが挙げられる。特に有用な可撓性リンカーは、グリシンおよびセリンの繰り返し、例えば、GnSもしくはSGnの単量体または多量体であるか、またはそれらを含み、nは1~10の整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。一実施形態では、リンカーは、G4S(GGGGS;配列番号67)の繰り返しの単量体または多量体、例えば、(GGGGS)nであるか、またはそれらを含む。
【0068】
ポリグリシンリンカーは、本開示の融合タンパク質において好適に使用することができる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、連続する2つのグリシン(2Gly)、連続する3つのグリシン(3Gly)、連続する4つのグリシン(4Gly)(配列番号68)、連続する5つのグリシン(5Gly)(配列番号69)、連続する6つのグリシン(6Gly)(配列番号70)、連続する7つのグリシン(7Gly)(配列番号71)、連続する8つのグリシン(8Gly)(配列番号72)または連続する9つのグリシン(9Gly)(配列番号73)を含む。
【0069】
一部の実施形態では、IL2部分および抗原結合性部分は、リンカーを介して接続される。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号67)の1つまたはそれ以上の繰り返しのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは配列番号50または52のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL2部分は、ペプチドカーを介して抗原結合性部分のC末端に連結される。一部の実施形態では、リンカーは配列番号50のアミノ酸配列を含む。
【0070】
別の態様では、本開示は:(i)ヒトPD-1に特異的に結合するヒト抗体の軽鎖可変領域(LCVR)を含む第1のポリペプチド;ならびに(ii)(a)ヒトPD-1に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域(HCVR);および(b)IL2部分を含む第2のポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0071】
一部の実施形態では、HCVRは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)を含み、ならびにLCVRは、3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み:HCDR1は配列番号4、24、または43のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号6、26、または45のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号8、28、または47のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号12、または32のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号16または35のアミノ酸配列を含む。
【0072】
一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、(i)配列番号4、6、8、12、14、および16;(ii)配列番号24、26、28、32、14、および35;または(iii)配列番号43、45、47、12、14、および16のそれぞれのアミノ酸配列を含む。
【0073】
一部の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、配列番号43、45、47、12、14、および16のそれぞれのアミノ酸配列を含む。
【0074】
一部の実施形態では、HCVRは、配列番号2、22、もしくは41のアミノ酸配列、または配列番号2、22、もしくは41に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、LCVRは、配列番号10、もしくは30のアミノ酸配列、または配列番号10、もしくは30に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0075】
一部の実施形態では、HCVRは、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
一部の実施形態では、HCVRは、配列番号22のアミノ酸配列、または配列番号22に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号30のアミノ酸配列、または配列番号30に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
一部の実施形態では、HCVRは、配列番号41のアミノ酸配列、または配列番号41に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
一部の実施形態では、HCVRおよびLCVRは、(i)配列番号2および10;(ii)配列番号22および30;または(iii)配列番号41および10のそれぞれのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、HCVRおよびLCVRは、配列番号41および10のそれぞれのアミノ酸配列を含む。
【0079】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、LCVRに連結された軽鎖定常領域をさらに含む。一部の実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号56のアミノ酸配列、または配列番号56に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、HCVRとIL2部分との間に配置された重鎖定常領域をさらに含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、配列番号55のアミノ酸配列、または配列番号55に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号58、60、もしくは62の軽鎖アミノ酸配列、または配列番号58、60、もしくは62に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0082】
一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号57、59、もしくは61の重鎖アミノ酸配列、または配列番号57、59、もしくは61に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する重鎖アミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号57/58、59/60、または61/62の重鎖/軽鎖配列対を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号61/62の重鎖/軽鎖アミノ酸配列対を含む。
【0084】
一部の実施形態では、IL2部分は、リンカーを介して重鎖定常領域のC末端に接続される。一部の実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号67)の1つまたはそれ以上の繰り返しのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、リンカーは配列番号50または52のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、リンカーは配列番号50のアミノ酸配列を含む。
【0085】
一部の実施形態では、IL2部分は、(i)IL2またはその断片;および(ii)IL2受容体α(IL2Rα)またはその断片を含む。
【0086】
一部の実施形態では、IL2またはその断片は、ヒトIL2(hIL2)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2またはその断片は、配列番号53のアミノ酸配列、または配列番号53に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0087】
一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、ヒトIL2Rα(hIL2Rα)またはその断片である。一部の実施形態では、IL2Rαまたはその断片は、配列番号51のアミノ酸配列、または配列番号51に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0088】
一部の実施形態では、IL2部分は、配列番号54のアミノ酸配列、または配列番号54に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0089】
一部の実施形態では、IL2またはその断片は、リンカーを介してIL2Rαまたはその断片のC末端に連結される。一実施形態では、リンカーは配列番号52のアミノ酸配列を含む。
【0090】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号58、60、もしくは62のアミノ酸配列、または配列番号58、60、もしくは62に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、配列番号63、64、もしくは65のアミノ酸配列、または配列番号63、64、もしくは65に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0091】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号58のアミノ酸配列、または配列番号58に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列、または配列番号64に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0092】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号60のアミノ酸配列、または配列番号60に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列、または配列番号63に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0093】
一部の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列番号62のアミノ酸配列、または配列番号62に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列、または配列番号65に対して80%、85%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0094】
また、本開示において、本明細書中に記載の融合タンパク質によって形成される二量体融合タンパク質が提供される。一部の実施形態では、二量体融合タンパク質は、ホモ二量体融合タンパク質であり、それぞれの構成単量体は、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、それぞれの構成単量体は、本明細書中に記載の融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体融合タンパク質の単量体は、それぞれの単量体の重鎖定常領域を介して二量体化する。
【0095】
生物学的活性
本開示の融合タンパク質は、IL2Rα、IL2Rβ、およびIL2Rγに対する減弱した結合を示す。一部の実施形態では、融合タンパク質は、REGN2810、ペムブロリズマブまたはニボルマブと競合しない。一部の実施形態では、融合タンパク質は、IL2と比較して、ヒトIL2Rα/β/γ三量体およびIL2Rβ/γ二量体受容体複合体を活性化する活性の低下を示し、非標的IL2Rα-IL2構築物と比較して、ヒトIL2Rα/β/γ三量体およびIL2Rβ/γ二量体受容体複合体を活性化する活性の増大を示す。一部の実施形態では、融合タンパク質は、野生型ヒトIL2と比較して、IFN-γ放出のレベルによって測定されるように、抗原活性化T細胞を刺激する活性の増大を示す。一部の実施形態では、融合タンパク質は、IL2単独または抗PD-1抗体との併用と比較して、増強された抗腫瘍効能を示した。
【0096】
核酸および宿主細胞
別の態様では、本開示は、本開示の融合タンパク質をコードする1つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸または核酸を提供する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、単一の核酸によってコードされる。他の実施形態では、例えば、ヘテロ二量体分子または2つ以上のポリペプチド鎖を含む抗PD-1抗体からなる分子の場合、融合タンパク質は、複数(例えば、2つ、3つ、4つまたはそれ以上)の核酸によってコードされる。
【0097】
単一の核酸は、単一のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質、2つもしくはそれ以上のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質、または3つ以上のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質の一部をコードすることができる(例えば、単一の核酸は、3つ、4つもしくはそれ以上のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖、または4つもしくはそれ以上のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質の3つのポリペプチド鎖をコードすることができる)。発現を別々に制御するために、2つまたはそれ以上のポリペプチド鎖をコードするオープンリーディングフレームは、別々の転写調節エレメント(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)の制御下にあることができる。また、2つまたはそれ以上のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームは、同じ転写調節エレメントによって制御され、別々のポリペプチドへの翻訳を可能にする配列内リボソーム進入部位(IRES)配列によって分離される。
【0098】
一部の実施形態では、2つまたはそれ以上のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質は、2つまたはそれ以上の核酸によってコードされる。融合タンパク質をコードする核酸の数は、融合タンパク質中のポリペプチド鎖の数と等しいか、またはそれ未満である(例えば、2つ以上のポリペプチド鎖が単一の核酸によってコードされる場合)。
【0099】
本開示の核酸は、DNAまたはRNA(例えば、mRNA)であることができる。
【0100】
別の態様では、本開示は、本開示の核酸を含む宿主細胞およびベクターを提供する。核酸は、本明細書でより詳細に後述するように、同一の宿主細胞または別個の宿主細胞中に存在する単一のベクターまたは別個のベクター中に存在することができる。
【0101】
一部の実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載の抗体のHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のベクター、および本明細書に記載の抗体のLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のベクターを発現する。
【0102】
一部の実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載の融合タンパク質の第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1のベクター、および本明細書に記載の融合タンパク質の第2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2のベクターを発現する。
【0103】
本開示は、本明細書に記載の融合タンパク質または融合タンパク質成分、例えば半抗体のポリペプチド鎖の1つまたは2つをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、ラムダファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。
【0104】
数多くのベクターシステムを用いることができる。例えば、1つのクラスのベクターは、例えばウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(ラウス肉腫ウイルス、MMTVもしくはMOMLV)またはSV40ウイルスのような動物ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。別のクラスのベクターは、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、フラビウイルスなどのRNAウイルスに由来するRNAエレメントを利用する。
【0105】
さらに、DNAを染色体に安定に組み込んだ細胞は、トランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれ以上のマーカーを導入することによって選択することができる。マーカーは、例えば、従属栄養宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)、または銅などの重金属に対する耐性を提供することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、発現させるDNA配列に直接連結するか、または共形質転換によって同じ細胞に導入することができる。mRNAを最適に合成するためには、付加的なエレメントが必要な場合もある。これらのエレメントには、スプライスシグナル、転写プロモーター、エンハンサー、終結シグナルなどが含まれる。
【0106】
構築物を含む発現ベクターまたはDNA配列が発現のために調製されると、発現ベクターは適切な宿主細胞にトランスフェクションまたは導入される。これを達成するために、例えば、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、レトロウイルス形質導入、ウイルストランスフェクション、遺伝子銃、脂質ベースのトランスフェクション、その他の従来技術など、様々な技術を採用することができる。得られたトランスフェクトされた細胞を培養し、発現されたポリペプチドを回収するための方法および条件は、当業者に公知であり、本明細書に基づいて、採用される特定の発現ベクターおよび哺乳動物宿主細胞に応じて変化または最適化される。
【0107】
本開示はまた、本開示の核酸を含む宿主細胞を提供する。一実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の核酸を含むように遺伝子操作される。一実施形態では、宿主細胞は、発現カセットを使用することによって遺伝子操作される。「発現カセット」という語句は、そのような配列に適合する宿主において遺伝子の発現に影響を及ぼすことができるヌクレオチド配列を指す。このようなカセットは、プロモーター、イントロンを含むまたは含まないオープンリーディングフレーム、および終結シグナルを含むことができる。例えば、誘導性プロモーターのような、発現に必要または有用な付加的因子もまた使用されることがある。
【0108】
本開示はまた、本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0109】
細胞は、真核細胞、細菌細胞、昆虫細胞、またはヒト細胞であることができるが、これらに限定されない。適切な真核細胞としては、Vero細胞、HeLa細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、およびMDCKII細胞が挙げられるが、これらに限定されない。適切な昆虫細胞としては、Sf9細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
医薬組成物
本明細書に開示された融合タンパク質または二量体融合タンパク質は、融合タンパク質(例えば、二量体融合タンパク質)および1つまたはそれ以上の担体、賦形剤および/または希釈剤を含む組成物の形態であってもよい。
【0111】
組成物は、獣医学的用途またはヒトにおける医薬的用途のような特定の用途のために製剤化される。組成物の形態(例えば、乾燥粉末、液体製剤など)および使用される賦形剤、希釈剤および/または担体は、融合タンパク質または二量体融合タンパク質の意図される用途、および治療用途の場合、投与様式に依存する。
【0112】
治療用途の場合、組成物は、薬学的に許容される担体を含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。この組成物は、(患者に投与する所望の方法に依存して)任意の適切な形態であることができる。この医薬組成物は、経口、経皮、皮下、経鼻、静脈内、筋肉内、腫瘍内、くも膜下腔内、局所的または局在的などの種々の経路で患者に投与される。どのような場合にも最も適した投与経路は、特定の抗体、対象、疾患の性質および重症度、ならびに対象の身体状態に依存する。一部の実施形態では、医薬組成物は静脈内または皮下に投与される。
【0113】
医薬組成物は、1用量あたり所定量の本開示の融合タンパク質を含む単位剤形で都合よく提示される。単位用量に含まれる融合タンパク質の量は、処置される疾患、ならびに当技術分野で周知の他の要因に依存する。このような単位用量は、1回の投与に適した量の融合タンパク質を含む凍結乾燥粉末の形態であっても、液体の形態であってもよい。乾燥粉末単位剤形は、注射器、適量の希釈剤および/または投与に有用な他の成分とともにキットに包装される。液体の形態の単位剤形は、1回の投与に適した量の融合タンパク質が予め充填された注射器の形態で都合よく供給される。医薬組成物はまた、複数回の投与に適した量の融合タンパク質を含むバルクで供給される。
【0114】
医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液として保存するために、所望の純度を有する融合タンパク質を、当技術分野で通常使用される任意の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(本明細書中では、これらすべてを「担体」と称する)、すなわち緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤(isotonifier)、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤、および他の種々の添加剤 (Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版(Osol編、1980)参照)。このような添加物は、使用される用量と濃度において、レシピエントに無毒でなければならない。
【0115】
使用の方法
本開示の融合タンパク質は、宿主の免疫系の刺激が有益である疾患状態、特に細胞性免疫応答の増強が望ましい状態の処置に有用である。これらは、宿主の免疫応答が不十分または欠損している疾患状態を含んでもよい。本開示の融合タンパク質を投与することができる疾患状態は、例えば、細胞性免疫応答が特異的免疫の重要な機構となる腫瘍または感染症を含む。本開示の融合タンパク質を採用することができる特定の疾患状態には、癌、例えば腎細胞癌または黒色腫;免疫不全、特にHIV陽性患者、免疫抑制患者、慢性感染症などが含まれる。本開示の融合タンパク質は、それ自体または任意の適切な医薬組成物で投与される。
【0116】
一態様では、医薬品として使用するための本開示の融合タンパク質が提供される。さらなる態様では、疾患の処置に使用するための本開示の融合タンパク質が提供される。一部の実施形態では、処置の方法に使用するための本開示の融合タンパク質が提供される。一部の実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における疾患の処置に使用するための、本明細書に記載の融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、本開示は、治療有効量の融合タンパク質を対象に投与することを含む、疾患を有する対象を処置する方法に使用するための融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害である。一部の実施形態では、疾患は癌である。
【0117】
一部の実施形態では、本方法は、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療薬、例えば、治療される疾患が癌である場合には抗癌剤を対象に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、本開示は、免疫系を刺激する際に使用するための融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、本開示は、免疫系を刺激するために有効量の融合タンパク質を対象に投与することを含む、対象の免疫系を刺激する方法に使用するための融合タンパク質を提供する。
【0118】
本明細書の実施形態のいずれかに記載の「免疫系の刺激」は、免疫機能の一般的な増加、T細胞機能の増加、B細胞機能の増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現の増加、T細胞応答性の増加、ナチュラルキラー細胞活性またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性の増加などのいずれか1つまたはそれ以上を含むことができる。
【0119】
さらなる態様では、本開示は、それを必要とする対象における疾患の処置のための医薬品の製造または調製における、本開示の融合タンパク質の使用を提供する。一実施形態では、医薬品は、疾患を有する対象に治療有効量の医薬品を投与することを含む、疾患を処置する方法に使用するためのものである。一部の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害である。一部の実施形態では、疾患は癌である。そのような一実施形態では、本方法は、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療薬、例えば、治療される疾患が癌である場合には抗癌剤を対象に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、医薬品は、免疫系を刺激するためのものである。さらなる実施形態では、医薬品は、免疫系を刺激するために有効量の医薬を対象に投与することを含む、対象の免疫系を刺激する方法に使用するためのものである。
【0120】
一部の実施形態では、処置される疾患は、増殖性障害、好ましくは癌である。癌の非限定的な例としては、膀胱癌、脳腫瘍、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、食道癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、血液癌、皮膚癌、扁平上皮癌、骨癌、および腎臓癌が挙げられる。本開示の融合タンパク質を用いて処置することができる他の細胞増殖性障害としては:腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部領域、および泌尿生殖器系、に位置する新生物が挙げられるが、これらに限定されない。また、前癌状態または病変および癌転移も含まれる。一部の実施形態では、癌は、腎細胞癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳腫瘍、頭頸部癌からなる群から選択される。同様に、他の細胞増殖性障害もまた、本開示の融合タンパク質によって処置することができる。このような細胞増殖性障害の例としては:高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖障害、パラプロテイン血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球症、および上記に列挙した器官系に位置する、新生物以外の任意の他の細胞増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、疾患は、自己免疫、移植拒絶反応、外傷後の免疫応答、および感染症(例えば、HIV)に関連する。より具体的には、融合タンパク質は、リンパ腫;自己免疫、移植拒絶反応、移植片対宿主病、虚血、および脳卒中を含む免疫細胞媒介性障害に関与する細胞の排除に使用することができる。当業者は、多くの場合、融合タンパク質が治癒を提供せず、部分的な利益のみを提供する場合があることを容易に認識する。一部の実施形態では、何らかの利益を有する生理学的変化はまた、治療的に有益であると考えられる。したがって、一部の実施形態では、生理学的変化を提供する融合タンパク質の量は、「有効量」または「治療有効量」と考えられる。処置を必要とする対象または患者は、典型的には哺乳動物であり、より具体的にはヒトである。
【0121】
様々な時点にわたる単回または複数回の投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投与スケジュールが本明細書では企図される。
【0122】
本開示の融合タンパク質は、一般に、意図される目的を達成するのに有効な量で使用される。疾患の状態を処置または予防するために使用する場合、本開示の融合タンパク質またはその医薬組成物は、治療有効量で投与または適用される。
【0123】
典型的な1日の投与量は、約1μg/kgから100mg/kg以上の範囲の可能性がある。状態に応じて、数日間またはそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は一般に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続されるであろう。融合タンパク質の1つの例示的な投与量は、約0.005mg/kgから約10mg/kgの範囲であろう。他の非限定的な例では、用量はまた、投与あたり約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg体重、約500μg/kg体重、約1mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約50mg/kg体重、または約100mg/kg体重以上、およびそこから誘導可能な任意の範囲を含むこともある。本明細書に列挙した数値から誘導可能な範囲の非限定的な例では、上記の数値に基づいて、約5mg/kg体重~約50mg/kg体重、約5μg/kg体重~約100mg/kg体重などの範囲を投与することができる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kgまたは10mg/kg(またはそれらの任意の組合せ)の1回またはそれ以上の用量を患者に投与することができる。このような用量を、断続的に、例えば、1週間ごとまたは3週間ごとに投与してもよい(例えば、患者が融合タンパク質の約2~約20回、または例えば、約6回の用量を受けるように)。最初の高用量のローディング用量が投与され、次いで1回またはそれ以上の低用量が投与される。しかし、他の投与量レジメンも有用である。この治療の経過は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニターできる。
【0124】
本明細書に記載の融合タンパク質の治療有効用量は、一般に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療上の利益を提供する。融合タンパク質の毒性および治療効能は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定される。細胞培養アッセイおよび動物試験は、LD50(集団の50%に致死する用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するために使用される。毒性と治療効能の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療指数を示す融合タンパク質が好ましい。一実施形態では、本開示に記載の融合タンパク質は、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用に適切な投与量の範囲を策定する際に使用することができる。投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、種々の因子、例えば、採用される剤形、利用される投与経路、対象の状態などに依存して、この範囲内で変化することがある(例えば、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Finglら、1975、In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1、1頁を参照されたい)。
【0125】
毒性が低いため、本開示の融合タンパク質は、野生型IL2よりも高い最大治療用量を有することができる。
【0126】
本開示に記載の融合タンパク質は、1つまたはそれ以上の他の薬剤または療法と組み合わせて投与される。例えば、本開示の融合タンパク質は、少なくとも1つの追加の治療剤または療法と共投与される。「治療剤」という用語は、そのような処置を必要とする対象における症状または疾患を処置するために投与される任意の薬剤を包含する。そのような追加の治療剤は、処置される特定の適応症に適した任意の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する活性成分から構成される。一部の実施形態では、追加の治療剤は、免疫調節剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着阻害剤、細胞毒性剤、細胞アポトーシスの活性化因子、またはアポトーシス誘導因子に対する細胞の感受性を高める薬剤である。特定の実施形態では、追加の治療剤は抗癌剤、例えば微小管破壊剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法剤、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化因子、または抗血管新生剤である。
【0127】
特定の実施形態では、第2の治療剤または治療法は:放射線、手術、化学療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、癌ワクチン、PD-1阻害剤、B7-H3阻害剤、B7-H4阻害剤、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)阻害剤、T細胞膜タンパク質3(TIM3)阻害剤、ガレクチン9(GAL9)阻害剤、Vドメイン免疫グロブリン(Ig)含有T細胞活性化抑制因子(VISTA)阻害剤、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)阻害剤、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)阻害剤、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)阻害剤、CTLA4阻害剤、CD38阻害剤、CD47阻害剤、CD28活性化因子、4-1BB活性化因子、GITRアゴニスト、CD40アゴニスト、OX40調節剤、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、アンジオポエチン-2(Ang2)阻害剤、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、腫瘍特異的抗原に対する抗体、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)ワクチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、細胞毒素、インターロイキン6受容体(IL-6R)阻害剤、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤、IL-10阻害剤、IL-7、IL-12、IL-21、IL-15、IL-18、I型インターフェロン、抗体薬物複合体、抗炎症薬、およびこれらの組合せ、から選択される。
【0128】
特定の実施形態では、本開示の融合タンパク質は、抗PD-1抗体と組み合わせて使用され、抗体は、ヒトPD-1への結合について融合タンパク質と交差競合しない。
【0129】
そのような他の薬剤は、好適には、意図された目的に有効な量で組み合わせて存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される融合タンパク質の量、障害または処置のタイプ、および上述した他の要因に依存する。融合タンパク質は、一般に、本明細書の記載と同じ用量および投与経路で、または本明細書に記載の用量の約1~99%の用量で、または経験的/臨床的に適切であると決定される任意の用量および任意の経路で使用される。
【0130】
上記のこのような併用療法は、併用投与(2つまたはそれ以上の治療剤が同じ組成物または別個の組成物に含まれる)および別個の投与を包含し、この場合、本開示の融合タンパク質の投与は、追加の治療剤および/またはアジュバントの投与の前、同時、および/または後に起こり得る。本開示の融合タンパク質はまた、放射線療法および/または手術と組み合わせて使用することができる。
【0131】
さらなる定義
本開示に記載の組成物および方法の詳細な説明の理解を助けるために、本開示の様々な態様の明確な開示を容易にするために、(本明細書の他の箇所で開示されるものに加えて)いくつかの明示的な定義が提供される。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0132】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」という用語は、共有結合的または非共有結合的に結合される2つまたはそれ以上のポリペプチド配列を含むタンパク質を意味する。例えば、本開示に包含される融合ポリペプチドは、第1のポリペプチドをコードする核酸配列と第2のポリペプチドをコードする核酸配列とを結合して単一のオープンリーディングフレームを形成するキメラ遺伝子構築物の翻訳産物を含むことができる。あるいは、融合タンパク質は、宿主細胞中で共発現することができる別々のベクター上の2つまたはそれ以上の遺伝子構築物によってコードされることがある。言い換えれば、「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」は、ペプチド結合によって、またはいくつかのペプチドを介して結合される2つまたはそれ以上のタンパク質の組換えタンパク質である。一部の実施形態では、融合タンパク質はまた、2つのドメイン間にペプチドリンカーを含んでいてもよい。
【0133】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは直鎖状であっても分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。用語はまた、修飾;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、ペギル化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作をされたアミノ酸ポリマーを包含する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方、ならびにアミノ酸アナログ、およびペプチド模倣物を含む、天然および/または非天然または合成アミノ酸を含む。
【0134】
本明細書中で使用される場合、IL-2の「野生型」形態は、野生型形態が突然変異体IL-2ポリペプチドのそれぞれのアミノ酸位置に野生型アミノ酸を有すること以外は、突然変異体IL-2ポリペプチドと同じであるIL-2の形態である。例えば、IL-2突然変異体が完全長IL-2(すなわち、任意の他の分子と融合または結合していないIL-2)である場合、この突然変異体の野生型形態は完全長天然IL-2である。IL-2突然変異体がIL-2とIL-2の下流にコードされる別のポリペプチド(例えば、抗体鎖)との融合体である場合、このIL-2突然変異体の野生型形態は、同じ下流ポリペプチドに融合した野生型アミノ酸配列を有するIL-2である。さらに、IL-2突然変異体がIL-2の短縮型(IL-2の非短縮部分内の突然変異または修飾された配列)である場合、このIL-2突然変異体の野生型形態は、野生型配列を有する同様に短縮されたIL-2である。
【0135】
本明細書に開示される融合タンパク質は、1つまたはそれ以上の保存的修飾を含むことができる。1つまたはそれ以上の保存的修飾を有する融合タンパク質は、所望の機能的特性を保持することがあり、これは、当技術分野で公知の機能的アッセイを用いて試験することができる。本明細書中で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質の結合特性に有意な影響を及ぼさないかまたは変化させないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR介在性突然変異誘発など、当技術分野で知られている標準的な技術によって導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン);非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン);β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン);および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。Casタンパク質は、1つまたはそれ以上の保存的修飾を含む。1つまたはそれ以上の保存的修飾を有するCasタンパク質は、所望の機能的特性を保持することがあり、これは、当技術分野で公知の機能的アッセイを用いて試験することができる。本明細書中で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質の結合特性に有意な影響を及ぼさないかまたは変化させないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR介在性突然変異誘発など、当技術分野で知られている標準的な技術によって導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン);酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸);非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン);非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン);β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン);および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。
【0136】
本明細書中で使用される場合、2つのアミノ酸配列間のパーセント相同性は、2つの配列間のパーセント同一性に相当する。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要のあるギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、以下の非限定的な例に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0137】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ギャップ長ペナルティーを12とし、ギャップペナルティーを4とする、PAM120重み付け残基表を使用する、ALIGNプログラム(version 2.0)へと組み込まれた、E.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl.Biosci.、4:11~17(1988))のアルゴリズムを使用して決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み付けおよび1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けを使用する、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)内のGAPプログラムへと組み込まれた、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444~453(1970))アルゴリズムを使用して決定することができる。
【0138】
加えてまたは代替的に、本開示のタンパク質配列は、例えば、関連配列を同定するために公的データベースに対して検索を行うための「クエリー配列」としてさらに使用することができる。このような検索は、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403~10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本開示の抗体分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施することができる。比較のためにギャップアラインメントを得るには、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389~3402に記載のGapped BLASTを利用することができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。
【0139】
本明細書で使用される場合、核酸またはその断片に言及する場合、「実質的同一性」または「実質的に同一」という用語は、別の核酸(またはその相補鎖)と適切なヌクレオチドの挿入または欠失で最適に整列させた場合に、後述のFASTA、BLASTまたはGAPなどの配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定されるように、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%においてヌクレオチド配列の同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的同一性を有する核酸分子は、ある例では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同一または実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることがある。ポリペプチドに適用される場合、「実質的類似性」または「実質的に類似する」という用語は、デフォルトのギャップ重み付けを用いたGAPプログラムまたはBESTFITプログラムなどによって最適に整列された場合、2つのペプチド配列が少なくとも90%の配列同一性を共有すること、さらに好ましくは少なくとも95%、98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的性質(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換はタンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、置換の保存的性質を補正するために、類似性のパーセントまたは程度を上方修正することができる。この調整を行う手段は、当業者によく知られている。例えば、参照によって本明細書に組み入れる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307~331を参照されたい。
【0140】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「組換え体」という用語は、例えば、DNAスプライシングおよびトランスジェニック発現を含む、組換えDNA技術として当技術分野で公知の技術または方法によって作製、発現、単離、または取得された本開示のタンパク質またはその断片を指す。この用語は、非ヒト哺乳動物(トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、トランスジェニックマウスを含む)、または細胞(例えば、CHO細胞)発現系で発現された融合タンパク質、または組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された融合タンパク質を指す。
【0141】
本明細書で使用される場合、融合タンパク質またはその成分(例えば、抗体のような標的部分)の文脈における「会合する」という用語は、2つまたはそれ以上のポリペプチド鎖間の機能的関係を指す。特に、「会合した」という用語は、機能的な融合タンパク質を産生するように、2つまたはそれ以上のポリペプチドが、例えば、分子相互作用を通して非共有結合的に、または1つまたはそれ以上のジスルフィド橋もしくは化学的架橋を通して共有結合的に、互いに会合していることを意味する。本開示の融合タンパク質に存在し得る会合の例には、Fc領域におけるホモ二量体またはヘテロ二量体Fcドメイン間の会合、FabまたはscFvにおけるVH領域とVL領域間の会合、FabにおけるCH1とCL間の会合、およびドメイン置換FabにおけるCH3とCH3間の会合が含まれる(しかし、これらに限定されない)。
【0142】
本明細書で使用される場合、融合タンパク質中のIL2部分および/または標的部分に関して本明細書で使用される「一価」という用語は、それぞれ単一のIL2部分および/または標的部分(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性部分)のみを有する融合タンパク質を意味する。
【0143】
本明細書で使用される場合、融合タンパク質中のIL2部分および/または標的部分に関して本明細書で使用される「二価」という用語は、それぞれ2つのIL2部分および/または標的部分(例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合性部分)を有する融合タンパク質を意味する。典型的には、IL2部分および/または標的部分について二価である融合タンパク質は、二量体(ホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれか)である。
【0144】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、抗原特異性および結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸配列を指す。一般に、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、HCDR-H3)があり、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDR(CDR1-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。CDRの境界を特定するために使用できる例示的な規約には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、ABM定義、およびIMGT定義が含まれる。例えば、Kabat、1991、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、Bethesda,Md.(Kabat番号付け方式);Al-Lazikaniら、1997、J.Mol.Biol.273:927~948(Chothia番号付け方式);Martinら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268~9272(ABM番号付け方式);およびLefrancら、2003、Dev.Comp.Immunol.27:55~77(IMGT番号付け方式)を参照されたい。抗体中のCDR配列を同定するための公開データベースも利用可能である。
【0145】
本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」という用語は、別の重鎖の対応する部分と対になる重鎖の部分を指す。「Fc領域」という用語は、2つの重鎖Fcドメインの会合によって形成される抗体ベースの結合分子の領域を指す。Fc領域内の2つのFcドメインは、互いに同じであっても異なっていてもよい。天然の抗体では、Fcドメインは通常同一であるが、一方または両方のFcドメインが、例えばノブ-イン-ホール相互作用を介して、ヘテロ二量体化を可能にするように有利に修飾される可能性がある。
【0146】
本明細書で使用される場合、「EC50」という用語は、特定の曝露時間後にベースラインと最大値の中間の応答を誘導する分子(融合タンパク質など)の最大半量の有効濃度を指す。EC50は本質的に、最大効果の50%が観察される抗体または融合タンパク質の濃度を表す。一部の実施形態では、EC50値は、アッセイにおいて最大半量のSTAT5活性化を与える融合タンパク質の濃度に等しい。
【0147】
エピトープ、または抗原決定基とは、本明細書に記載の、抗体または他の抗原結合性部分によって認識される抗原(例えば、標的分子)の一部分である。エピトープは、直鎖状であっても、コンフォメーション状であってもよい。
【0148】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、すべての脊椎動物、たとえば哺乳動物および非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、および爬虫類等の非哺乳動物を含む。注記した場合を除いて、「患者」または「対象」という用語は、本明細書では相互交換可能に用いられる。
【0149】
本明細書で使用される場合、本明細書で使用される「標的分子」という用語は、本開示の融合タンパク質の標的部分によって特異的に結合され、細胞表面上または細胞外マトリックス中に発現される任意の生物学的分子(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、またはそれらの組合せ)を指す。
【0150】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」、および「処置すること」という用語は、増殖性障害の進行、重症度および/もしくは持続期間の減少もしくは改善、または本開示の1つまたはそれ以上の融合タンパク質の投与によって生じる増殖性障害の1つまたはそれ以上の症状(好ましくは、1つまたはそれ以上の識別可能な症状)の改善を指す。特定の実施形態では、「処置する」、「処置」、および「処置すること」という用語は、腫瘍の増殖のような増殖性障害の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指すが、必ずしも患者によって識別可能である必要はない。他の実施形態では、「処置する」、「処置」、および「処置すること」という用語は、例えば識別可能な症状の安定化による物理的な、例えば物理的パラメータの安定化による生理学的な、またはその両方による増殖性障害の進行の抑制を指す。他の実施形態では、「処置する」、「処置」、および「処置すること」という用語は、腫瘍サイズまたは癌細胞数の減少または安定化を指す。
【0151】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、異常細胞の制御不能な(急速であることが多い)増殖を特徴とする疾患を指す。癌細胞は、局所的に、または血流やリンパ系を介して身体の他の部分に広がる可能性がある。様々な癌の例が本明細書に記載されており、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳腫瘍、副腎癌、自律神経節癌、胆道癌、骨癌、子宮内膜癌、眼球癌、卵管癌、生殖器癌、大腸癌、髄膜癌、食道癌、腹膜癌、下垂体癌、陰茎癌、胎盤癌、胸膜癌、唾液腺癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、上部気道消化管癌、尿路癌、膣癌、外陰癌、リンパ腫、白血病、肺癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
本明細書で使用される場合、「腫瘍」という用語は、本明細書において「癌」という用語と互換的に使用され、例えば、両方の用語は、固形腫瘍および液性腫瘍、例えば、びまん性腫瘍または循環性腫瘍を包含する。本明細書で使用される場合、「癌」または「腫瘍」という用語は、悪性癌および腫瘍と同様に、前悪性癌および腫瘍を含む。
【0153】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示の核酸が導入された細胞を指す。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において同義的に使用される。このような用語は、特定の対象細胞、およびこのような細胞の子孫または潜在的子孫を指すことが理解される。特定の修飾は突然変異または環境影響いずれかのために、続く世代において生じるので、このような後代は、親細胞と実際同一ではない場合もあるが、本明細書における用語の範囲内に依然として含まれる。典型的な宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞などの真核宿主細胞である。
【0154】
本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(mRNAまたは他のRNA転写物などへ)転写される過程、および/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される過程を指す。転写産物およびコードされたポリペプチドを総称して「遺伝子産物」と呼ぶことがある。ポリヌクレオチドがゲノムDNA由来の場合、発現には真核細胞におけるmRNAのスプライシングが含まれる。
【0155】
本明細書で使用される場合、「単離された」核酸分子またはポリヌクレオチドとは、本来の環境から除去された核酸分子、DNAまたはRNAを指す。例えば、ベクターに含まれる治療用ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示の目的上、単離されたものと考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞で維持された組換えポリヌクレオチド、または溶液中で精製された(部分的または実質的に)ポリヌクレオチドが含まれる。単離されたポリヌクレオチドは、通常ポリヌクレオチド分子を含む細胞中に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、ポリヌクレオチド分子は染色体外に、または本来の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。単離されたRNA分子は、本開示のin vivoまたはin vitro RNA転写物、ならびにポジティブ鎖およびネガティブ鎖の形態、ならびに二本鎖の形態を含む。本開示に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、合成的に産生されたこのような分子をさらに含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターのような調節エレメントであってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0156】
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、いずれも正常な機能を損なうヒトまたは動物の身体またはその一部の異常な状態を反映しているという点で、一般的に、「障害」および「状態」(医学的状態における)という用語と同義であることを意図しており、互換的に使用され、典型的には特徴的な徴候および症状によって示され、ヒトまたは動物の生命の期間または質を低下させる。
【0157】
本明細書で使用される場合、「組成物」または「医薬組成物」という用語は、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤のような他の成分と組み合わせて、本開示の融合タンパク質と共に有用な少なくとも1つの成分の混合物を指す。医薬組成物は、生物への本開示の1つまたはそれ以上の成分の投与を容易にする。
【0158】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、担体または希釈剤のような、組成物の生物学的活性または特性を損なわず、比較的無毒性である、すなわち、その材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる組成物の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、対象に投与することができる材料を指す。
【0159】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物または担体、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を含み、本開示の化合物を、それが意図される機能を発揮するように、対象内または対象へ運搬または輸送することに関与する。典型的には、このような化合物は、ある臓器または身体の一部から別の臓器または身体の一部に運搬または輸送される。それぞれの塩または担体は、製剤の他の成分と適合性があり、対象に害を与えないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能する物質の例としては:ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび座薬用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル、ラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;希釈剤;造粒剤;潤滑剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;香味剤;香料;保存剤;酸化防止剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;固化剤;懸濁化剤;界面活性剤;保水剤;担体;安定剤;および医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質、またはそれらの任意の組合せ、が挙げられる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、本開示の1つまたはそれ以上の成分の活性と適合性であり、対象に生理学的に許容される、任意のおよびすべてのコーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤などを含む。補足的活性化合物も組成物中に組み込まれる。
【0160】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、生物学的状態の任意の変化、すなわち、増加、減少などを指すことを意味する。
【0161】
本明細書で使用される場合、「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」という用語はすべて、一般に、統計的に有意な量の増加を意味するために本明細書で使用される;疑義を避けるために、「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」という用語は、基準レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、基準レベルと比較して少なくとも約20%の増加、または少なくとも約30%の増加、または少なくとも約40%の増加、または少なくとも約50%の増加、または少なくとも約60%の増加、または少なくとも約70%の増加、または少なくとも約80%の増加、または少なくとも約90%の増加、または100%を含み100%までの増加、または10~100%の間の任意の増加、または基準レベルと比較して少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または基準レベルと比較して2倍から10倍以上の間の任意の増加を意味する。
【0162】
本明細書で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の言及を含む。
【0163】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」または「有する(having)」という用語およびその変形は、特に断りのない限り、その後に列挙される項目およびその等価物、ならびに追加の主題を包含することを意味する。
【0164】
本明細書で使用される場合、「一実施形態では」、「様々な実施形態では」、「一部の実施形態では、」などの語句が繰り返し使用される。このような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、文脈がそうでないことを指示しない限り、そうであってもよい。
【0165】
本明細書で使用される場合、「および/または」または「/」という用語は、この用語が関連する項目のいずれか1つ、項目の任意の組合せ、または項目のすべてを意味する。
【0166】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という語は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないことがある。必要な場合には、定義から「実質的に」という語を取り除くことができる。
【0167】
本明細書で使用される場合、目的の1つまたはそれ以上の値に適用される、「およそ(approximately)」または「約(about)」という用語は、記載された基準値に類似する値を指す。一部の実施形態では、「およそ(approximately)」または「約(about)」という用語は、特に断らない限り、または文脈から明らかな場合を除き(そのような数値が可能な値の100%を超える場合を除く)、記載された基準値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下のいずれかの方向(より大きい、またはより小さい)に収まる値の範囲を指す。本明細書において別段の指示がない限り、「約(about)」という用語は、個々の成分、組成物、または実施形態の機能性の点で同等である、記載された範囲に近接した値、例えば重量パーセントを含むことを意図している。
【0168】
本明細書で開示される場合、値の多数の範囲が提供される。その範囲の上限と下限との間に、文脈が明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1までのそれぞれの介在値も具体的に開示されていることが理解される。明記された範囲内の任意の明記された値または介在値と、その明記された範囲内の任意の他の明記された値または介在する値との間のそれぞれの小範囲は、本開示に包含される。これらの小さい範囲の上限値および下限値は、それぞれ独立に、範囲に含まれることも除外されることもあり、いずれか、どちらでもない、または両方の限界値が小さい範囲に含まれるそれぞれの範囲も、本開示に包含され、明記された範囲内の特に除外された限界値に従う。明記された範囲に限界値の一方または両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外した範囲も本開示に包含される。
【0169】
本明細書で使用される場合、「それぞれ」という用語は、項目のコレクションに関連して使用される場合、コレクション内の個々の項目を特定することを意図しているが、必ずしもコレクション内のすべての項目を指すわけではない。明示的な開示または文脈が明確に指示する場合は、例外が生じる可能性がある。
【0170】
本明細書に提供されたすべての任意の例、または例証的な語(例えば、「のような」)の使用は、本発明をよりよく説明するためのものに過ぎず、別途特許請求の範囲に記載される本発明の範囲に制限をかけるものではないことが意図される。本明細書中の語は、本開示の実施にとって不可欠な任意の特許請求の範囲に記載されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0171】
本明細書において他に示されない限り、または情況により明白に否定されない限り、本明細書に記載されたすべての方法は、任意の適当な順序で実施される。提供されるいずれの方法に関しても、方法の工程は同時に発生してもよいし、順次発生してもよい。方法の工程が順次起こる場合、特に断りのない限り、工程はどのような順序で起こってもよい。方法が工程の組合せを含む場合、本明細書において特に断りのない限り、工程のそれぞれの組合せまたはサブ組合せは、本開示の範囲内に包含される。
【0172】
本明細書に引用される各刊行物、特許出願書類、特許書類、および他の参考文献は、本開示と矛盾しない限りにおいて、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。本明細書に開示された刊行物は、本開示の出願日前の開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなる内容も、本開示が先行開示によるそのような公開に優先する権利を持たないことを認めるものと解釈すべきではない。さらに、提供された公開日は、実際の公開日と異なる場合があり、独立に確認する必要がある場合がある。
【0173】
本明細書に記載の実施例および実施形態は説明目的のためのみであり、ならびに様々の修飾またはそれに照らした変更は当業者に示唆され、本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきであることは理解される。
【実施例】
【0174】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されたものであり、本発明者らが本発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書に記載される任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。実際、実施形態の修飾および変形は、本明細書を読むことにより当業者には明らかであり、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、若干の実験誤差および逸脱は説明されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部、分子量は平均分子量、温度は摂氏度、室温は約25℃、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【実施例1】
【0175】
ヒトPD-1に対するヒト抗体の作製
ヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖可変領域をコードするDNAを含むVELOCIMMUNE(登録商標)マウスを用いて、PD-1タンパク質に対するヒト抗体を作製した。このマウスにアジュバント存在下、GenBank受託NP_005009.2の約25~170アミノ酸のPD-1断片を免疫した。抗体免疫応答はPD-1特異的イムノアッセイによってモニターした。所望の免疫応答が得られた場合、脾臓細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させて生存率を保ち、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、PD-1特異的抗体を産生する細胞株を同定するために選択した。
【0176】
参照によりその全体を本明細書に特に組み入れる、米国特許第7,582,298号に記載されているように、骨髄腫細胞と融合することなく抗原陽性マウスB細胞から抗PD-1抗体を直接単離した。
【0177】
この方法を用いて、いくつかの完全ヒト抗PD-1抗体(すなわち、ヒト可変ドメインおよびヒト定常ドメインを有する抗体)が得られた。
【0178】
上記で開示したように作製された例示的な抗体はmAb29512、mAb7798、mAb9048と命名され、表1および表2で同定されたHCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCVR、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列および核酸配列を有する。
【0179】
例示的な抗PD-1抗体を、当技術分野で知られている標準的な分子生物学的技術を用いてIL2ベースの試薬を構築する際に使用した。表4に試薬のアミノ酸配列を開示する。
【0180】
本実施例の方法に従って作製された例示的タンパク質の生物学的特性は、以下に記載される実施例において詳細に記載される。
【実施例2】
【0181】
重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸およびヌクレオチド配列
表1は、例示的な抗PD-1抗体の重鎖および軽鎖可変領域配列、CDR配列のアミノ酸配列識別子を示す。
【0182】
【0183】
例示的な抗PD-1抗体の対応する核酸配列識別子を表2に示す。
【0184】
【0185】
抗体はヒトまたはマウスのFcアイソタイプを有することがある。当業者には理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができるが(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG1またはヒトIgG4を有する抗体に変換することができる、など)、いずれにせよ、表1に示す数値識別子で示される可変ドメイン(CDRを含む)は同じままであり、抗原に対する結合特性は、Fcドメインの性質にかかわらず、同一または実質的に類似していると予想される。
【0186】
ヒンジ領域のセリンからプロリンへの突然変異(S108P)を含むヒトIgG4 Fcを含むmAb29512、mAb7798、およびmAb9048の例示的な抗体は、それぞれH4H29512、REGN2810、およびH4H9048と命名された。表3に、これらの抗体の完全長重鎖および軽鎖配列のアミノ酸配列識別子を示す。
【0187】
【0188】
REGN2810(セミピリマブとしても知られる;LIBTAYO(登録商標))は、米国特許第9,987,500号で初めて開示され、その後、皮膚扁平上皮癌、基底細胞癌、非小細胞肺癌の処置のために承認されている。
【0189】
表4は、抗PD-1-IL2Rα-IL2試薬のアミノ酸配列識別子を示す。
【0190】
【0191】
IL2部分は、配列番号50のアミノ酸配列を含むリンカーを介して重鎖定常領域(配列番号55)のC末端に接続される。REGN10595については、重鎖(HC)配列番号57は、HCVR(配列番号2)、重鎖定常領域(配列番号55)、リンカー(配列番号50)、およびIL2部分(配列番号54)のアミノ酸配列を含む。REGN10486については、重鎖(HC)配列番号59は、HCVR(配列番号22)、重鎖定常領域(配列番号55)、リンカー(配列番号50)、およびIL2部分(配列番号54)のアミノ酸配列を含む。REGN10597については、重鎖(HC)配列番号61は、HCVR(配列番号41)、重鎖定常領域(配列番号55)、リンカー(配列番号50)、およびIL2部分(配列番号54)のアミノ酸配列を含む。
【0192】
以下の実施例で使用される対照構築物:
比較のため、以下の対照構築物を以下の実施例に含めた:「Comp 1」:WO2008/156712(Merck Sharp&Dohme)に記載の抗体「MK-3475」のVH/VL配列を有するモノクローナル抗PD-1抗体;「Comp 2」:WO2006/121168(Medarex、Inc/E R Squibb)に記載の抗体「5C4」のVH/VL配列を有するモノクローナル抗PD-1抗体;および「REGN13233」:配列番号41/10のVH/VL配列を含み、CD25結合が消失したIL2バリアント(IL2(3m))に連結された抗PD-1抗体(Kleinら、2017、Oncoimmunology)。
【実施例3】
【0193】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物と親二価抗PD1抗体との結合動態
抗PD1-IL2RΑ-IL2融合構築物と親二価抗PD1抗体との結合動態を評価するために、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現させたヒトPD-1(hPD-1.mmH、配列番号66)と精製抗PD-1親mAbおよび抗PD1-IL2RΑ-IL2融合構築物との結合の平衡解離定数(KD値)を、Biacore 3000または4000装置を用いたリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを用いて測定した。CM5 Biacoreセンサー表面は、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、#BR-1008-39)を用いてアミンカップリングにより誘導体化した。すべてのBiacore結合試験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)を含む緩衝液中で行った。HBS-EPランニング緩衝液で調製した異なる濃度のhPD-1.mmH(3倍希釈で100から3.7nM、または3倍希釈で90nMから3.33nMの範囲)を、抗PD-1抗体または抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物の捕捉表面上に、30または50μL/分の流速で注入した。抗体と試薬の会合を4分または5分間モニターし、HBS-EPランニング緩衝液中の解離を10分間モニターした。それぞれのサイクルの最後に、抗PD-1 mAbまたは抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物捕捉表面を、20mMリン酸を12秒間注入して再生した。すべての結合動態実験は25℃で行った。
【0194】
速度論的結合(k
a)および解離(k
d)速度定数は、Scrubber 2.0c曲線フィッティングソフトウェアを用いて、リアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルにフィッティングすることにより決定した。結合解離平衡定数(K
D)と解離半減期(t1/2)は動力学速度定数から次のように計算した:
【数1】
【0195】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物と親二価抗PD1抗体の結合動態を表5に要約する。
【0196】
【実施例4】
【0197】
抗PD-1 mAbと抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物の交差競合
抗PD-1 mAbと抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物の交差競合を評価するために、抗PD1-IL2Rα-IL2と市販の抗PD-1 mAbの結合競合を、Octet HTXバイオセンサー(ForteBio Corp.、A Division of Sartorius)を用いたリアルタイム、ラベルフリーのバイオレイヤー干渉法(BLI)アッセイを用いて決定した。実験全体は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20、0.1mg/mL BSAを含む緩衝液(Octet HBS-EP緩衝液)中、25℃で行い、プレートは1000rpmの速度で振とうした。2つの抗体がhPD-1.mmH(配列番号66)上のそれぞれのエピトープに結合するために互いに競合できるかどうかを評価するために、hPD-1.mmHの20μg/mL溶液を含むウェルにバイオセンサーを2分間浸漬することにより、まず約0.34nmのhPD-1.mmHをHIS1K抗体コートOctetバイオセンサー(Fortebio Inc、#18-5120)に捕捉した。次に、抗原を捕捉したバイオセンサーを、50μg/mLのmAb-1溶液を含むウェルに5分間浸漬することにより、一次抗PD-1抗体または抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物(以降、mAb-1と呼ぶ)で飽和させた。続いて、二次抗PD-1抗体または抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物(以降、mAb-2と呼ぶ)の50μg/mL溶液を含むウェルにバイオセンサーを3分間浸漬した。実験のそれぞれの工程の間に、すべてのバイオセンサーをOctet HBS-EP緩衝液で洗浄した。実験期間中、リアルタイムの結合反応をモニターし、それぞれの工程の終了時の結合反応を記録し、mAb-1と前複合体化したhPD-1.mmHに対するmAb-2の結合反応を比較し、異なる抗PD-1抗体の競合的/非競合的挙動を、50%阻害閾値を用いて決定した。
【0198】
表6は、結合の順序とは無関係に、両方向で競合する抗体の関係を定義したものである。
【0199】
【0200】
表6は、REGN10486とその親抗体REGN2810が、hPD-1への結合においてREGN10595またはREGN10597と交差競合しなかったことを示す。
【実施例5】
【0201】
抗PD1-IL2Rα-IL2構築物の細胞株工学的in vitro機能特性評価
YT/レポーター細胞のエンジニアリング:ヒトT/NK細胞白血病YT細胞株を、シグナル伝達および転写活性化因子5(STAT5)-ルシフェラーゼレポーター構築物でエレクトロポレーションし、Iscoves+20%FBS+P/S/G+200μg/mLハイグロマイシンで維持した。IL-2に高い反応性を示す単一細胞クローンを同定し、YT/Stat5-Luc cl.4と新たに命名した。CRISPR-Cas9技術を用いてIL2Rα(CD25)をこのクローンでノックアウトし、得られた細胞株YT/STAT5-Luc/IL2Rα KOをフローサイトメトリーで検証した。次いで、ヒトIL2RαをYT/STAT5-Luc/IL2Rα KO細胞株(受託番号NP_000408.1のアミノ酸M1-I272)に安定的に再導入し、得られた細胞株YT/STAT5-Luc/hIL2Rαをフローサイトメトリーで検証し、Iscoves+20%FBS+P/S/G+200μg/mLハイグロマイシン+15μg/mLブラストサイジンで維持した。YT/Stat5-Luc cl.4、YT/Stat5-Luc/IL2Rα KO、およびYT/Stat5-Luc/hIL2Rα細胞を、ヒトPD1(受託番号NP_005009.2のアミノ酸M1-L288、2Q=>E突然変異)を安定に発現するように操作し、1mg/mL G418添加培地で細胞を選択した。細胞をフローサイトメトリーで検証し、YT/STAT5-Luc/hPD1、YT/STAT5-Luc/IL2Rα KO/hPD1、およびYT/STAT5-Luc/hIL2Rα/hPD1と新たに命名した。
【0202】
PD1レポーター細胞のエンジニアリング:アクチベータータンパク質1(AP1)ルシフェラーゼレポーター構築物を安定に発現するようにJurkat E6-1細胞を操作し、抗生物質耐性細胞を選択し、RPMI+10%FBS+P/S/G+1μg/mLピューロマイシンで維持した。得られたレポーター細胞のプールを、ヒトPD1(受託番号NP_005009.2のアミノ酸M1-L288、2Q=>E突然変異)を発現するように操作し、高PD-1発現クローン細胞株を蛍光活性化細胞選別法によって単離し、RPMI+10%FBS+P/S/G+1μg/mLピューロマイシンで維持した。得られたクローンをJurkat/AP1-Luc/hPD1 cl.4E5と新たに命名した。
【0203】
HEK293/抗CD3/PD-L1細胞のエンジニアリング:HEK293に、ヒトCD79a(受託番号NP_001774.1のhIga:M1-P226)、ヒトCD79b(受託番号NP_000617.1のhIgb:M1-E229)、抗CD3可変ドメイン(抗CD3 mIgE重鎖、抗CD3 κ軽鎖;クローン2706N、IgE genbank#AAB59424.1、CemX-migis-Cyto/TM PIR#PIH1215)およびヒトPD-L1(受託番号NP_054862.1のアミノ酸M1-T290)をコードするレンチウイルスベクターを形質導入し、次いで単細胞選別し、DMEM+10%FBS+P/S/G+500μg/mL G418+100μg/mLハイグロマイシン+1μg/mLピューロマイシンで維持した。抗CD3およびPD-L1の発現をフローサイトメトリーで確認し、得られたクローン株を293/aCD3/hPD-L1 cl.A3と新たに命名した。
【0204】
Raji/CD80 KO/CD86 KOおよびRaji/CD80 KO/CD86 KO/PD-L1細胞のエンジニアリング:CRISPR-Cas9技術を用いて、Raji細胞におけるCD80およびCD86の発現を除去した。Raji/CD80 KO/CD86 KO細胞を単一細胞クローニングし、得られたクローン(Raji/CD80 KO/CD86 KO cl.1D6)をヒトPD-L1(受託番号NP_054862.1のアミノ酸M1-T290)を発現するように操作した。得られた細胞株Raji/CD80 KO/CD86 KO/hPD-L1をフローサイトメトリーで検証し、RPMI-1640+10%FBS+HEPES+NaPyr+P/S/G+0.5μg/mLピューロマイシンで維持した。
【0205】
PD1アンタゴニストアッセイ
膜結合型抗hCD3εおよびヒトPD-L1を発現するHEK293細胞を、Jurkat/AP1-Luc/hPD-1レポーターT細胞とインキュベートした。HEK293細胞上の抗CD3を介して、レポーター細胞上のT細胞受容体と複合体化したCD3がクラスター化すると、転写因子AP1が活性化され、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を駆動する。レポーターT細胞におけるルシフェラーゼ発現は、阻害性受容体PD-1とHEK293細胞上のPD-L1との相互作用によって抑制されることがあるが、このことはPD1/PD-L1軸をブロックする抗体の添加によって克服することができる。
【0206】
10%FBSとP/S/Gを添加したRPMI1640をアッセイ培地として使用し、細胞懸濁液と抗体希釈液を調製した。スクリーニングの前日、操作したJurkat/AP1-Luc/hPD1レポーター細胞を細胞3×10
5個/mLに希釈した。アッセイ当日、細胞を遠心沈殿し、アッセイ培地に再懸濁し、96ウェル白色平底プレートに293/aCD3/hPD-L1細胞2.5×10
4個/ウェルでプレーティングした。次いで、11段階の滴定範囲(500nM~477fM)で連続希釈(1:4)した非標的IL2Rα-IL2[抗PSMA-IL2Rα-IL2(無関係な(PSMA)抗体と融合したIL2Rα-IL2)、抗PD1(REGN2810、H4H29512またはH4H9048)、抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10486、REGN10595、REGN10597)または12番目の滴定範囲は組換えタンパク質を含まないアイソタイプ対照(アイソタイプ対照1またはアイソタイプ対照2)をプレーティングした細胞に添加し、続いてJurkat/AP1-Luc/hPD1レポーター細胞2.5×10
4個/ウェルを添加した。プレートを37℃/5%CO
2で5時間インキュベートした後、100μLのONE-Glo(商標)(Promega)試薬をウェルに加え、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を検出した。発光した光は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)を用いて相対発光量(RLU)で測定した。抗体のEC
50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用い、12点の用量反応曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。誘導倍率は以下の式で計算した:
【数2】
【0207】
IL2レポーターアッセイ
本実験では、操作したYTレポーター細胞を、組換えIL2-Fc、非標的IL2Rα-IL2、または抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物のいずれかを介して刺激した。機能的IL2受容体は、IL2Rサブユニット(IL2Rα、IL2Rβ、およびIL2Rγ)の差次的アセンブリーによって形成され、IL2Rβ/IL2Rγサブユニットのアセンブリーは低親和性受容体を含み、3つのサブユニット(IL2Rα/IL2Rβ/IL2Rγ)すべてを含む受容体は高親和性受容体を形成する。IL2Rによるサイトカインの結合は、STAT5の活性化につながり、この活性化によって操作された細胞株におけるルシフェラーゼ産生が駆動する。低親和性IL2受容体(IL2Rβ/γ)または高親和性IL2受容体(IL2Rα/β/γ)の存在下での抗PD1-IL2Rα-IL2の相対的効力を評価するために、内因性IL2Rαを発現するYT/STAT5-Lucレポーター細胞を、IL2Rαを欠損または過剰発現するように操作した。レポーター細胞は内因性PD1を発現しているが、PD1発現レベルが抗PD1-IL2Rα-IL2効力に及ぼす影響を評価するために、PD1を過剰発現させた誘導体を作製した。
【0208】
10%FBSとP/S/Gを添加したRPMI1640をアッセイ培地として使用し、細胞懸濁液と抗体希釈液を調製した。スクリーニングの前日、IL2Rαを過剰発現または欠失し、PD1を内因性に発現または過剰発現している操作したレポーターYT/Stat5-Luc細胞を細胞3×10
5個/mLに希釈した。アッセイ当日、レポーター細胞2.5×10
4個/ウェルを96ウェル白色平底プレートに新鮮なアッセイ培地にプレーティングし、11段階の滴定範囲(200nM~191fM)で連続希釈(1:4)したIL2-Fc(配列番号74)、非標的IL2Rα-IL2、REGN10486、REGN10595、REGN10597、またはアイソタイプ対照、とインキュベートした。12番目の滴定範囲は組換えタンパク質を含まない。プレートを37℃/5%CO
2で5時間インキュベートした後、100μLのONE-Glo(商標)(Promega)試薬をウェルに加え、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を検出した。発光した光は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)を用いてRLUで測定した。抗体のEC
50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用い、12点の用量反応曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。誘導倍率は以下の式で計算した:
【数3】
【0209】
PD1競合アッセイ
非標的IL2Rα-IL2または抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物のいずれかによる刺激の前に、抗PD1二価抗体またはアイソタイプ対照を操作したYTレポーター細胞に添加した。二価の抗PD1と抗PD1-IL2Rα-IL2との競合は、抗PD1-IL2Rα-IL2がPD-1発現STAT5-Lucレポーター細胞を標的とし、したがって活性化する能力を鈍らせるであろう。PD1過剰発現レポーター細胞は、標的化効率を最大化し、抗PD1-IL2Rα-IL2との抗PD1二価競合を最もよく検出できるようにするために使用される。
【0210】
10%FBSとP/S/Gを添加したRPMI1640をアッセイ培地として使用し、細胞懸濁液と抗体希釈液を調製した。スクリーニングの前日、IL2Rαをノックアウトまたは過剰発現させたYT/Stat5-Luc/hPD1レポーター細胞を細胞3×10
5個/mLに希釈した。アッセイ当日、レポーター細胞2.5×10
4個/ウェルをアッセイ培地中、96ウェル白色平底プレートにプレーティングし、抗PD1二価抗体またはアイソタイプ対照抗体(5段階、500nM~0.05nMまでの1:10希釈、6番目は組換えタンパク質を含まない)の滴定を添加し、続いて非標的IL2Rα-IL2、REGN10486、REGN10595、またはREGN10597(62.5nM~59.6fM;11段階の希釈範囲で1:4の連続希釈、12番目は組換えタンパク質を含まない)の滴定を添加した。プレートを37℃/5%CO
2で4時間インキュベートした後、100μLのONE-Glo(商標)(Promega)試薬をウェルに加え、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を検出した。発光した光は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)を用いてRLUで測定した。抗体のEC
50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用い、12点の用量反応曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。誘導倍率は以下の式で計算した:
【数4】
【0211】
初代T細胞刺激アッセイ
初代T細胞を、マイトマイシン処理したRaji/CD80 KO/CD86 KO細胞との4日間の共培養により刺激した。Raji細胞は内因的にCD20を発現しているので、CD20×CD3二重特異性抗体を添加して初代T細胞を活性化した。アイソタイプ対照、IL2、抗PD1、非標的IL2Rα-IL2抗体(REGN9904)または抗PD1-IL2Rα-IL2抗体(REGN10486、REGN10595またはREGN10597)の滴定を共培養の間に添加し、T細胞活性への影響を、均一で洗浄なしのAlphaLISAキット(Perkin Elmer)を用いて細胞培養上清中のIFN-γの放出を測定することにより決定した。
【0212】
ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)は、EasySep Direct Human PBMC単離キット(Stemcell)を用いて、製造業者の推奨プロトコールに従い、健康なドナーのロイコパックから単離した。T細胞は、EasySep Human T cell単離キット(Stemcell)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってPBMCから単離した。細胞を遠心沈殿し、刺激培地(10%FBS、HEPES、NaPyr、NEAA、0.01mM BMEを添加したX-VIVO 15細胞培養培地)に再懸濁し、細胞1×105個/ウェルを96ウェル丸底プレートにプレーティングした。Raji/CD80 KO/CD86 KOおよびRaji/CD80 KO/CD86 KO/hPD-L1細胞を、一次刺激培地中、20μg/mLのマイトマイシンCで、細胞10×106個/mLの濃度で、37℃で1時間処理し、細胞増殖を停止させた。次いで細胞を、2%FBSを含むD-PBSで3回洗浄し、1ウェルあたり5×104細胞を加えた。その後、0.5nMの抗CD3×抗CD20二重特異性抗体を、抗PD1の滴定、IL2、REGN2810+IL2の組合せ、非標的IL2Rα-IL2抗体、抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10486、REGN10595もしくはREGN10597)、またはアイソタイプ対照抗体(アイソタイプ対照1もしくはアイソタイプ対照2)と組み合わせて、9段階で500nM~0.3pMの範囲で1:6の連続希釈、10番目の希釈点は0.5nM一定の二重特異性抗体のみを含む、で添加した。プレートを37℃/5%CO2で96時間インキュベートした。IFN-γは、それぞれのサンプルウェル中のIFN-γのpg/mLを外挿するために、既知のIFN-γ濃度のサンプルを用いて、製造業者のプロトコールに従ってAlphaLISAアッセイを用いて細胞培養上清について定量した。測定は、マルチラベルプレートリーダー Envision(Perkin Elmer)で行った。サイトカインのEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用い、10点の用量反応曲線上の4パラメータのロジスティック方程式から決定し、10番目希釈点は0.5nM一定の二重特異性抗体のみを含んでいた。
【0213】
結果の要約および結論
PD1アンタゴニストアッセイ:
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物が、PD1/PD-L1を介するTCRシグナル伝達の抑制をブロックする能力を、AP1レポーター細胞ベースのバイオアッセイを用いて評価した。293/aCD3/hPD-L1細胞をJurkat/AP1-Luc/hPD1レポーター細胞とインキュベートすると、PD-L1によるPD1活性化によりレポーター活性が低下する。二価の抗PD1抗体または抗体融合IL2Rα-IL2タンパク質がPD1-PD-L1相互作用を阻害し、レポーター活性をレスキューする能力を評価した。操作したレポーター細胞について、EC50および誘導倍率の値を表7に要約する。
【0214】
レポーター細胞を対照タンパク質(アイソタイプ対照Ab 1、アイソタイプ対照Ab 2、または非標的IL2Rα-IL2)で処理した場合、ルシフェラーゼ活性の増加は検出されなかった。対照的に、レポーター細胞を抗PD1抗体、REGN2810または対応する抗PD1-IL2Rα-IL2、REGN10486とインキュベートすると、同様の効力(それぞれ3.668E-09と5.351E-09)でルシフェラーゼ活性が増強された(それぞれ19.210倍と17.740倍)。一方、二価のPD1抗体であるH4H29512とH4H9048はルシフェラーゼ活性を増強せず、対応する抗PD1-IL2R-IL2タンパク質であるREGN10595とREGN10597は弱い効力(それぞれ1.266E-08と1.264E-08)で低いルシフェラーゼ活性(それぞれ2.725倍と3.038倍)を誘導した。
【0215】
IL2レポーターアッセイ:
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物がPD1標的IL-2受容体シグナル伝達を誘導する能力を、STAT5-レポーターアッセイを用いて評価した。内因性IL2Rαを発現する、IL2Rα発現を欠く(KO細胞)、またはIL2Rαを過剰発現する、ならびに内因性または過剰発現PD1を発現するYT/STAT5-Lucレポーター細胞を、アイソタイプ対照、IL2-Fc、非標的IL2Rα-IL2、または抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10486、REGN10595、またはREGN10597)と共インキュベートし、STAT5レポーター活性を評価した。誘導倍率の値およびEC50をそれぞれ表8および9に要約する。
【0216】
IL2と比較して、非標的IL2Rα-IL2は、IL2Rαの発現に関係なく、STAT5レポーター活性の誘導の減少を示した。PD1標的分子は、IL2Rαの発現に関係なく、非標的IL2Rα-IL2と比較して高い効力を示した。さらに、PD1をレポーター細胞上で過剰発現させると、抗PD1-IL2Rα-IL2の効力はIL2と同様の効力に向かってさらに増大した。
【0217】
PD-1競合アッセイ:
抗PD1二価mAbが抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物を妨害する能力を、STAT5-レポーターバイオアッセイを用いて評価した。IL2Rαを過剰発現するか、またはIL2Rαの発現を欠き、PD1を過剰発現するYT/STAT5-Lucレポーター細胞を、非標的IL2Rα-IL2またはPD1標的抗PD1-IL2Rα-IL2構築物(REGN10486、REGN10595、またはREGN10597)の滴定とインキュベートする前に、500nMのアイソタイプ対照または抗PD1二価mAb(REGN2810、Comp 1またはComp 2)のいずれかとインキュベートした。インキュベーション後、STAT5レポーター活性を評価した。抗PD1二価mAbと抗PD1-IL2Rα-IL2との競合は、抗PD1-IL2Rα-IL2によるPD1標的化の喪失をもたらし、レポーター活性の低下をもたらすであろう。EC50値を表10に要約する。
【0218】
二価のPD1 mAbが存在しない場合、PD1標的IL2Rα-IL2(REGN10486、REGN10595、REGN10597)は非標的IL2Rα-IL2(REGN9904)と比較して大きな効力を有していた。REGN10486の効力はレポーター細胞をPD1抗体(REGN2810、Comp 1またはComp 2)とインキュベートすることにより強く低下したが、REGN10595とREGN10597の効力への影響はIL2Rαの発現にかかわらず最小であった。抗PD1(REGN2810、Comp 1またはComp 2)の添加は、非標的IL2Rα-IL2の効力に影響を及ぼさなかった。
【0219】
初代T細胞刺激アッセイ:
T細胞刺激を増強する抗PD1-IL2Rα-IL-2の能力を、IFN-γサイトカイン産生を測定する機能的初代T細胞アッセイで評価した。マイトマイシンCで処理したRaji/CD80 KO/CD86 KOまたはRaji/CD80 KO/CD86 KO/hPD-L1細胞とインキュベートしたT細胞を、一定量の0.5nMの抗CD3×抗CD20二重特異性抗体とアイソタイプ対照の滴定、IL2、抗PD1二価抗体(REGN2810)の単独もしくはIL2との組合せ、非標的IL2Rα-IL2、または抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10486、REGN10595、もしくはREGN10597)で処理した。T細胞とRaji細胞の4日間の共インキュベーションは、測定可能なIFN-γ放出をもたらした。Raji/CD80 KO/CD86 KO細胞の存在下で、抗PD1-IL2Rα-IL2、IL2、またはIL2とREGN2810の併用でT細胞を処理すると、同レベルのIFNγ放出が起こるが、非標的IL2Rα-IL2、アイソタイプ対照抗体、およびREGN2810は、より低いレベルのIFNγ放出をもたらした。hPD-L1を発現しているRAJI/CD80 KO/CD86 KO細胞の存在下では、PD-L1を発現していないRAJI細胞と比較して、アイソタイプ対照処理サンプルでは全体的なIFNy放出が減少した。非標的IL2Ra-IL2およびREGN2810による処理は、アイソタイプ対照と比較して、IFNy放出の同程度の増加をもたらすが、IL2、REGN10597およびREGN10595による処理は、さらに大きな応答をもたらした。最大の応答は、REGN10486またはIL2とREGN2810の併用で観察された。抗体の用量範囲にわたるEC50と最大インターフェロン放出値を表11に要約する。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【実施例6】
【0225】
PD1×LAG3ヒト化マウスにおけるin vivo抗腫瘍効能評価
試験1:
ヒトPD1×LAG3ノックインマウス(Burova E.ら、Mol Cancer Ther 2019(18)(11)2051~2062に記載)に、0日目に3×10
5MC38腫瘍細胞を皮下接種し、平均腫瘍サイズが95mm
3に達した7日目に無作為化した。次いで、マウスにアイソタイプ対照Ab(0.33mg/kg)、アイソタイプ-IL2Rα-IL2抗体(0.5mg/kg)+抗hPD1抗体(0.33mg/kg)、または抗hPD1-IL2Rα-IL2(0.5mg/kg)+アイソタイプ対照Ab(0.33mg/kg)を半週ごとに合計4回、腹腔内投与した。それぞれの処置群における平均腫瘍体積(mm
3+SEM)をプロットした(
図1A)。腫瘍サイズはv=ab^2/2として計算し、ここでaは最長腫瘍直径を表し、bは垂直腫瘍直径である。
図1Aの矢印は処置日数を示す。
【0226】
それぞれの処置群におけるKaplan-Meier生存曲線もプロットした(
図1B)。生存の喪失は、腫瘍が深い潰瘍化を示したとき、または腫瘍がいずれかの寸法で20mmに達したとき、または総容積で2250mm
3に達したときに安楽死と定義された。
【0227】
試験2:
ヒトPD1×LAG3ノックインマウスに、0日目に3×10
5MC38腫瘍細胞を皮下接種し、平均腫瘍サイズが105mm
3に達した7日目に無作為化した。次いで、マウスにアイソタイプ(0.5mg/kg)または3つの異なるクローンの抗hPD1-IL2Rα-IL2(0.5mg/kg)を半週ごとに合計4回、腹腔内投与した。それぞれの処置群における平均腫瘍体積(mm
3+SEM)を示した(
図1C)。腫瘍サイズはv=ab^2/2として計算し、ここでaは最長腫瘍直径を表し、bは垂直腫瘍直径である。図中の矢印は処置日数を示す。
【0228】
それぞれの処置群におけるKaplan-Meier生存曲線もプロットした(
図1D)。生存の喪失は、腫瘍が深い潰瘍化を示したとき、または腫瘍がいずれかの寸法で20mmに達したとき、または総容積で2250mm
3に達したときに安楽死と定義された。
【0229】
結果の要約および結論
試験1では、抗hPD1-IL2Rα-IL2の抗腫瘍効能を、2つの個別成分であるアイソタイプ-IL2Rα-IL2と等モルの親抗hPD1遮断抗体の組合せと比較して評価した。
【0230】
アイソタイプ-IL2Rα-IL2+抗hPD1は、試験された用量では効果的な腫瘍制御を与えることができなかったが、同じモル用量の抗hPD1-IL2Rα-IL2+アイソタイプ処置は、確立された腫瘍を退縮させることができ、処置されたマウスの大部分で長期無腫瘍生存をもたらした(
図1A~B)。この結果は、抗hPD1標的IL2Rα-IL2の抗腫瘍効能が、非標的IL2Rα-IL2と親抗hPD1抗体の組合せよりも優れていることを実証した。
【0231】
試験2では、抗hPD1-IL2Rα-IL2の3つの異なるクローンの抗腫瘍活性を比較した。抗hPD1クローンの1つは強力に遮断するが、他の2つはhPD1シグナル伝達を最小限に遮断する。抗hPD1-IL2Rα-IL2分子の3つのクローンすべてが同程度に強力な抗腫瘍効能を示し、同様の長期無腫瘍生存率をもたらした(
図1C~D)。この結果は、抗hPD1-IL2Rα-IL2療法の強固な抗腫瘍効能には、その遮断活性よりも抗hPD1を標的としたIL2Rα-IL2の送達が主に関与していることを示している。また、抗hPD1-IL2Rα-IL2分子を非競合PD1遮断試薬と組み合わせることで、治療効能をさらに高めることができる可能性も示された。
【実施例7】
【0232】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物の溶液中における組換え単量体IL2Rα、IL2Rβ、またはIL2Rγタンパク質に結合する能力
ヒトIL-2受容体α結合
C末端ヘキサヒスチジンタグで発現させたヒトIL2Rα(hIL2Rα.6H、R&D、カタログ番号10305-RL-050)と、C末端IL2Rα-IL2融合を有する精製抗PD1抗体との結合を、Biacore S-200装置を用いたリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサー技術を用いて測定した。hIgG捕捉表面を調製するために、CM5 Biacoreセンサー表面をモノクローナル抗ヒトFab抗体(Cytiva、カタログ番号28-9583-25)の混合物でアミンカップリングにより誘導体化した。すべてのBiacore結合試験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)を含む緩衝液中、25℃で行った。抗PD1-IL2Rα-IL2構築物および対照は、3μg/mL溶液を8μL/分で1分間注入することにより、この抗hFab表面に捕捉した。次いで、HBS-EPランニング緩衝液で調製した1μMのhIL2Rα.6H溶液を、50μL/分の流速で捕捉抗体IL2融合構築物捕捉表面上に注入した。IL2融合抗体の会合を1分間モニターし、その後HBS-EPランニング緩衝液中で1分間解離させた。結合反応は注入終了時に測定し、表12に示す。それぞれのサイクルの最後に、抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物捕捉表面を、10mMグリシン、pH1.5を30秒間注入して再生した。
【0233】
ヒトIL-2受容体β/γ結合
C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現させたヒトIL2受容体β(hIL2Rβ)(hIL2Rβ.mmH、REGN9169)またはC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現させたヒトIL2受容体γ(hIL2Rγ)(hIL2Rγ.mmH、REGN1183)と抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物との結合を、Biacore S-200装置を用いたリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサー技術を用いて測定した。CM5 Biacoreセンサー表面は、モノクローナル抗ヒトFab抗体(Cytiva、カタログ番号28-9583-25)の混合物を用いてアミンカップリングにより誘導体化した。すべてのBiacore結合試験は、0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.05% v/v Surfactant P20(HBS-EPランニング緩衝液)を含む緩衝液中、25℃で行った。すべてのIL2受容体成分は同じ緩衝液で調製した。抗PD1-IL2Rα-IL2構築物および対照は、3μg/mL溶液を8μl/分で1分間注入することにより、この抗hFab表面に捕捉した。
【0234】
IL2RγはIL2RβまたはIL2Rα/βに依存したIL2に対する親和性を持つことが文献(Liparotoら、Biochemistry.2002)で報告されている。したがって、IL2Rβの添加は、検出可能な三元複合体の形成を可能にする。結合前のIL2Rβの存在下でIL2Rγの結合を探索するために逐次結合実験を設計した。抗PD1-IL2Rα-IL2表面に、1μM IL2Rβ.mmHを50μl/分で30秒間注入した後、直ちに1μM IL2Rβ.mmhおよび1μM IL2Rγ.mmHの混合溶液を1分間注入した。それぞれの注入終了時の結合シグナルを記録した。結果を表13に示す。それぞれのサイクルの最後に、抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物捕捉表面を、10mMグリシン、pH1.5を30秒間注入して再生した。
【0235】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物の活性を計算するために、抗PD1-IL2-IL2Rα融合物の捕獲量、IL2受容体相互作用の化学量論、および相互作用タンパク質の分子量に基づいて、理論的最大シグナル(TRmax)を最初に計算した。次いで、抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物の活性を、計算されたTRmaxのパーセンテージとして表した。さらに、TRmax結果のパーセンテージを、次式を用いて対照抗体(REGN1945およびREGN8512)に対して正規化した:
【数5】
【0236】
結果、要約および結論
抗PD1-IL2-IL2Rα融合構築物は、非減弱(IL2のみ)の対照と比較して、hIL2Rαへの結合が大幅に減少した。
【0237】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物は、非減弱(IL2のみ)の対照と比較して、部分的に減少した結合シグナルでhIL2Rβと結合する能力を示した。結合したhIL2Rβの存在下で、hIL2Rγの最小限結合が、非減弱IL2対照構築物と比較して観察された。
【0238】
【0239】
【実施例8】
【0240】
FACS結合アッセイによる抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物および親mAbの細胞結合特性
αhPD1-IL2Rα-IL2タンパク質とそれぞれの親抗hPD1抗体とのhPD1結合を比較するために、内因性レベルのhPD1を発現するYT/STAT5 luc/Cl4細胞をFACS洗浄液(PBS+2%FBS)で2回洗浄し、FACS洗浄液に細胞1×10^6個/mlで再懸濁した。次いで、細胞(100μl/ウェル)を96ウェルU底プレートにプレーティングした。細胞を遠心沈殿し(1200RPM、5分)、mAbクローンIDに列挙された様々な抗体希釈液100μl/ウェルに再懸濁した。抗体滴定は、FACS洗浄液を用いて6倍希釈し、20μg/mlから調製した。細胞を抗体とともに4℃で30分間インキュベートした。次いで、FACS洗浄液を用いて細胞を2回洗浄し、未結合の抗体を除去した。次いで、細胞をAPC-抗ヒトFcγ二次抗体の1:200希釈液100μl/ウェルに再懸濁した。細胞を4℃で30分間インキュベートした。次いで、FACS洗浄液を用いて細胞を2回洗浄し、未結合の抗体を除去した。次いで、細胞を160μl/ウェルのFACS洗浄液に再懸濁し、BD FACSCanto(商標)Flow Cytometerを用いて結合試験を行った。
【0241】
抗hPD1-IL2Rα-IL2タンパク質とそれぞれの抗hPD1親抗体はPD1+細胞に同程度に結合する(
図2A、2B)。抗hPD1-IL2Rα-IL2タンパク質結合は、対応する親型mAbよりもわずかに低い親和性(約2倍)を示す。
【実施例9】
【0242】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物のFab交換およびネイティブ質量分析(MS)の解析
Fab交換およびネイティブ質量分析(MS)の解析を用いて、PD-1-IL2Ra-IL2融合分子のコンフォメーションを決定した。REGN10597、REGN8509、REGN2810およびREGN475をそれぞれペプチドN-グリコシダーゼF(PNGase F;タンパク質10μgあたり1IUBミリユニット)で45℃、1時間処理して、それぞれの重鎖定常領域からグリカン鎖を完全に除去した。次いで、脱グリコシル化タンパク質サンプルを、
図3Aおよび以下の表14に従って混合し、それぞれの混合物を、2mM DTTの存在下、37℃で30分間インキュベートした。次いで、処理したタンパク質混合物を、ネイティブLC-MSプラットフォーム(仮特許第10724号を参照)で、質量分析結合ネイティブ脱塩サイズ排除クロマトグラフィー分析(SEC-MS)に供した。脱塩SECは、BEH(登録商標)SECカラム(4.6×30mm、200Å、1.7μm)を用い、150mM酢酸アンモニウム(pH6.8)を0.2mL/分の流速で、均一溶媒流で行った。質量測定はThermo Q-Exactive UHMR質量分析計で行った。
【0243】
【0244】
ヒンジ領域のジスルフィド結合が破壊されると、IgG4分子は高速でFab交換を行い、その産物はネイティブMS解析によってモニターすることができる。2つのIgG4抗体の混合物(混合物1)または1つのIgG4抗体+抗hCD20-IL2の混合物(混合物2)を用いた対照実験では、部分還元条件下でFab交換が、FabRICATOR消化条件下でFc交換が認められた(
図3B)。FabまたはFc交換産物は、PD1-IL2Rα-IL2+IgG4分子の混合物(混合物3)について、それぞれ部分還元条件下またはFabRICATOR消化条件下で観察されず、このことは、PD1-IL2Rα-IL2分子が主に不活性型で存在し、IL2RαとIL2との間の強い鎖間相互作用がFab(またはFc)交換を禁止していることを示唆する(
図3B)。要約すると、Fab交換およびネイティブMSの解析は、抗PD1-IL2Rα-IL2分子が主にトランス隔絶されたコンフォメーションに存在することを示す。
【実施例10】
【0245】
混合リンパ球反応(MLR)アッセイによる抗PD1-IL2Rα-IL2構築物のヒト初代T細胞活性化増強能の評価
混合リンパ球反応(MLR)アッセイを用いて、抗PD1-IL2Ra-IL2構築物がヒト初代T細胞活性化を増強する能力を評価した。同種ドナーのPBMCはT細胞を刺激し、増殖とサイトカインの放出をもたらす。組換えIL-2の添加はT細胞の活性化をさらに補助する。したがって、このアッセイを用いて、PD1標的IL2Ra-IL2がT細胞増殖とT細胞活性化の指標となるIFNgの放出にどのような影響を与えるかを評価した。
【0246】
ヒト初代細胞の単離
Precision for Medicine(ドナー1)またはStem Cell Technologies(ドナー2)から入手した2人の健康なドナーの末梢血のロイコパックから、EasySep(商標)Direct Human PBMC単離キットを用い、製造業者の推奨プロトコールに従ってヒトPBMCを単離した。ドナー2のCD3+ T細胞は、StemCell TechnologiesのEasySep(商標)Human CD3+ T Cell単離キットを用い、製造業者の推奨プロトコールに従ってPBMCから単離した。
【0247】
アッセイ手順:
単離したドナー2のCD3+ T細胞を、初代培養培地(10%FBS、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、1X非必須アミノ酸、0.01mM β-メルカプトエタノールを添加したX Vivo 15培地)に細胞1×10^6個/mlの濃度で再懸濁した。ドナー1のPBMC(細胞10×10^6個/ml)を、37℃/5%CO2で、50μg/mLのマイトマイシンCを初代培養液で希釈したもので1時間処理した(細胞増殖を停止させるため)。初代培養液で3回洗浄した後、PBMCを再懸濁し、T細胞とPBMCの最終的な比率が1:3(1mlあたり1×10^6 T細胞+3×10^6 PBMC)になるように、ドナー2のT細胞に加えた。CD3+T細胞/PBMC混合物を6日間インキュベートした後、Miltenyi CD3+Microbeadsを用いて製造者の使用説明書に従って、T細胞を再単離した。その後、単離した細胞を初代細胞培養培地で24時間休ませた。100,000個のT細胞を丸底マイクロタイタープレートのウェルに加え、新鮮なマイトマイシンC処理ドナー1PBMCを細胞300,000個/ウェルでウェルに加えた。抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10597、REGN10595またはREGN10486)、アイソタイプ-IL2Rα-IL2対照(REGN9903)、抗PD1(REGN2810)、組換えIL2、または適合IgG4およびIgG4アイソタイプ対照(それぞれREGN1945およびREGN7540)を、1000nMから0.595pMの範囲の9段階で1:6の希釈で滴定し、最後の10番目は抗体なし(曲線上の最低点で表示)とした。それぞれの条件を3回実施した。37℃/5%CO2で72時間インキュベーションした後、マイクロタイタープレートを遠心分離して細胞をペレット化し、50μlの培地上清を回収した。回収した上清から5μlを、ヒトIFNγAlphaLISA(PerkinElmer)アッセイで、製造業者のプロトコールに従って試験した。測定は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)で行った。ペレット化した細胞を、3H-チミジン(1.25mCi/ml)を含む初代刺激培地に再懸濁し、37℃/5%CO2で6時間インキュベートした。プレートは、Filtermate Cell Harvester(PerkinElmer)を用いて処理し、MicroBeta2マイクロプレートカウンター(PerkinElmer)を用いて測定した。数値は、1分あたりのカウント数(CPM)として記録した。抗体のEC50値は、GraphPad(商標)ソフトウェアを用い、10点の用量反応曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。
【0248】
同種PBMCの存在下で、組換えIL-2、抗PD-1-IL2Rα-IL2(REGN10597、REGN10595、REGN10486)またはアイソタイプ-IL2Rα-IL2対照(REGN9903)の用量滴定で処理したT細胞は、IFNγ放出および増殖において用量依存的な増加をもたらした(
図4A、4Bおよび表15)。組換えIL2は、最も高い最大サイトカイン放出および最も強力な増殖をもたらし、次いで抗PD1-IL2Rα-IL2分子が続いた。アイソタイプ標的IL2Rα-IL2は、PD-1標的と比較して、サイトカイン放出および増殖の効力が減少した。REGN2810はIFNγのみ用量依存的にわずかに増加させたが、適合IgG4およびIgG4sアイソタイプ対照(それぞれREGN1945およびREGN7540)はサイトカイン放出や増殖に影響を与えなかった。
【0249】
【実施例11】
【0250】
Rajiベースの初代T細胞刺激アッセイにおける抗PD1-IL2Rα-IL2構築物とアイソタイプ対照IL2Rα-IL2+抗PD1構築物の比較
ヒト初代T細胞活性化を増強する抗PD1-IL2Rα-IL2構築物の能力を、Raji細胞ベースの初代T細胞アッセイを用いて評価した。CD3×CD20二重特異性抗体存在下で、CD80とCD86をノックアウトし、ヒトPD-L1を過剰発現させたRaji細胞(Raji/CD80 KO/CD86 KO/hPD-L1)と共培養することによりT細胞を刺激し、T細胞からサイトカインを放出させた。組換えIL-2の添加はT細胞の活性化をさらに補助する。したがって、このアッセイを用いて、PD1標的IL2Rα-IL2がT細胞活性化の指標となるIFNγのT細胞放出にどのような影響を与えるかを評価した。
【0251】
ヒト初代細胞の単離:
Precision for Medicineから入手した健康なドナーの末梢血のロイコパックから、EasySep(商標)Direct Human PBMC単離キットを用い、製造業者の推奨プロトコールに従ってヒトPBMCを単離した。CD3+T細胞は、StemCell TechnologiesのEasySep(商標)Human CD3+T Cell単離キットを用い、製造業者の推奨プロトコールに従ってPBMCから単離した。
【0252】
RajiベースのT細胞アッセイの手順:
T細胞を遠心沈殿し、刺激培地(10%FBS、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、1×非必須アミノ酸、0.01mM β-メルカプトエタノールを添加したX Vivo 15培地)に再懸濁し、細胞1×105個/ウェルを96ウェル丸底プレートにプレーティングした。Raji/CD80 KO/CD86 KO/hPD-L1細胞(細胞1×107個/ml)を、細胞増殖を停止させるため、37℃/5%CO2、刺激培地で希釈した20mg/mlのマイトマイシンCで1時間処理した。次いで、2%FBSを含むD-PBSで細胞を3回洗浄し、刺激培地に再懸濁し、1ウェルあたり5×104個の細胞を加えた。その後、0.5nMの抗CD3×抗CD20二重特異性抗体(REGN1979)を、20nMの一定のアイソタイプ対照(REGN1945)または抗PD1(REGN2810)と共に加えた。アイソタイプ対照(REGN7540)、アイソタイプ-IL2Rα-IL2抗体(REGN9903)、mAb9048のVRを持つ抗PD1抗体(REGN15187)、抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10597)、またはREGN9903+REGN15187の等モル滴定のいずれかの滴定を、1分子あたり500nMから0.3pMまでの9段階、1:6の連続希釈でウェルに添加し、第10番目の希釈点では0.5nM一定のREGN1979および20nM REGN2810またはREGN1945のみを含んでいた。それぞれの条件を2回実施した。プレートを37℃/5%CO2で96時間インキュベートした。IFNγは、製造業者のプロトコールに従って、AlphaLISAアッセイを用いて細胞培養上清について定量した。測定は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(Perkin Elmer)で行った。サイトカインのEC50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用い、10点の用量反応曲線上の4パラメータのロジスティック方程式から決定し、10番目希釈点は0.5nM一定のREGN1979と20nM REGN2810またはREGN1945のみを含んでいた。
【0253】
結果の要約
Raji/CD80 KO/CD86 KO/hPDL1の存在下で、REGN2810の存在下または非存在下で、アイソタイプ-IL2Rα-IL2(REGN9903)または抗PD1-IL2Rα-IL2(REGN10597)の用量滴定で処理したT細胞は、IFNγ放出において驚くほど有意な用量依存性の増加をもたらした(表16および
図5A、5B)。抗PD1-IL2Rα-IL2分子は、最も高い最大サイトカイン放出をもたらし、続いてアイソタイプ-IL2Rα-IL2分子の単独または抗PD1抗体REGN15187との併用が続いた。適合IgG4およびIgG4sアイソタイプ対照(それぞれREGN1945およびREGN7540)は、IFNγ放出に影響を与えなかった。
【0254】
【実施例12】
【0255】
抗PD1-IL2Rα-IL2融合構築物のin vivo抗腫瘍効能と安全性プロファイル
最初の実験では、単剤REGN10597のin vivo抗腫瘍効能を評価した。ヒトPD1×LAG3ノックインマウス(Burova E.ら、2019に記載)に、0日目に3×10
5MC38腫瘍細胞を皮下接種し、平均腫瘍サイズが105mm
3に達した7日目に無作為化した。それぞれの無作為化された群のマウスは、特定の用量レベルで表示された分子の腹腔内注射を半週に1回、合計4回受けた。それぞれの処置群における平均腫瘍体積(mm
3+SD)をプロットした(
図6A)。腫瘍サイズはv=a・b^2/2として計算し、ここでaは最長腫瘍直径を表し、bは垂直腫瘍直径である。図中の矢印は処置日数を示す。それぞれの処置群における個々の腫瘍成長曲線および完全な腫瘍拒絶を受けたマウスの頻度を示した(
図6B)。
【0256】
0.5mg/kgまたは1mg/kgの用量レベルでのREGN10597単剤療法は、1mg/kgのREGN9904と10mg/kgのREGN2810の併用療法よりも優れた抗腫瘍活性を示し、処置したマウスにおいてより高い頻度で腫瘍が完全に退縮した。また、0.2mg/kgのREGN10597処置でも中間の抗腫瘍効能が観察された(
図6A、6B)。
【0257】
第2の実験では、REGN10597のin vivo活性および毒性プロファイルを、IL2Raへの結合が阻害された抗PD1標的IL2ムテインである比較対象REGN13233と比較した。ヒトPD1×LAG3ノックインマウス(Burova E.ら、2019に記載)に、0日目に3×10
5MC38腫瘍細胞を皮下接種し、平均腫瘍サイズが70mm
3に達した7日目に無作為化した。それぞれの無作為化された群のマウスは、特定の用量レベルで標示された分子の腹腔内注射を半週に1回、合計4回受けた。それぞれの処置群における平均腫瘍体積(mm
3+SD)(
図6C)、Kaplan-Meier生存曲線(
図6D)、および体重変化の割合(平均値+SD)(
図6E)をプロットした。
図6Aの矢印は処置日数を示す。完全な腫瘍拒絶を受けたマウスの頻度を、(
図6D)において選択した群について示した。13日目に、全群から血液を採取し、フローサイトメトリーにより分析した。総白血球数を示した(
図6F)。
【0258】
REGN10597およびREGN13233の両単剤療法は、REGN2810とそれぞれの非標的対照(REGN10597についてはREGN9904、REGN13233についてはREGN13234)との組合せよりも優れた抗腫瘍効能を示し、両群の処置マウスの大部分において完全な腫瘍退縮を示した(
図6C、6D)。
【0259】
しかしながら、処置したマウスにおいて明らかな体重変化を引き起こさなかったREGN10597とは異なり、同じ用量のREGN13233処置は、循環リンパ球の顕著な増加を伴う有意な体重減少をもたらした(
図6E)。この毒性の差は、REGN10597およびREGN13233の異なるIL-2部分に起因すると思われるが、同様の体重減少および白血球数の増加がREGN13234処置群において観察された(
図6E、6F)。マルチパラメータフローサイトメトリーによる白血球のさらなる免疫表現型解析により、REGN10597はPD-1
+ CD4およびCD8 T細胞をより選択的に拡大したのに対し、REGN13233はこれらの細胞を拡大しただけでなく、CD44
+ CD62L
+ CD8 T細胞およびNK細胞集団も大幅に拡大したことが明らかになった。
【0260】
これらの結果から、REGN10597と比較対象分子であるREGN13233はともに強固な抗腫瘍効能を示したが、REGN10597は、より幅広いCD8+ TおよびNK細胞集団を拡大したREGN13233と比較して、in vivoでPD1+ T細胞をより選択的に拡大する能力があるためと思われ、安全性プロファイルがより優れていることが示された。
【0261】
第3の実験では、REGN10597のin vivo抗腫瘍効能を、REGN10597と同じ部分をすべて含むが、IL2部分とIL2Rα部分が逆の順序で互いに融合している分子であるaPD1-IL2-IL2Rαの抗腫瘍効能と比較した。ヒトPD1×LAG3ノックインマウス(Burova E.ら、2019に記載)に、0日目に3×10
5MC38腫瘍細胞を皮下接種し、平均腫瘍サイズが120mm
3に達した9日目に無作為化した。それぞれの群のマウスは、次いで特定の用量レベルで表示された分子の腹腔内注射を週に1回、合計2回受けた。(
図6G)。それぞれの処置群における平均腫瘍体積(mm
3+SD)をプロットした。腫瘍サイズはv=a・b^2/2として計算し、ここでaは最長腫瘍直径を表し、bは垂直腫瘍直径である。図中の矢印は処置日数を示す(
図6H)。それぞれの処置群におけるKaplan-Meier生存曲線も示した。生存の喪失は、腫瘍が深い潰瘍化を示したとき、または腫瘍がいずれかの寸法で20mmに達したとき、または総容積で2250mm
3に達したときに安楽死と定義された。完全な腫瘍拒絶を受けたマウスの頻度を、選択した群について示した。
【0262】
in vivoで強固な抗腫瘍活性を示したREGN10597とは異なり、aPD1-IL2-IL2Rαの同用量または高用量は、最小限の腫瘍増殖制御を示した。この結果は、REGN10597におけるIL2Rα-IL2融合の正しい順序が、in vivoでのその強力な抗腫瘍活性にとって重要であることを示している(
図6G、6H)。
【実施例13】
【0263】
Ab-IL2Ra-IL2融合分子のIL2受容体へのフロー結合
機能的IL2受容体は、IL2Rサブユニット(IL2Ra=CD25、IL2Rb=CD122、IL2Rg=CD132)の差次的アセンブリーによって形成され、免疫細胞上に発現する中親和性IL2受容体(IL2Rb/IL2Rg)および高親和性IL2受容体(IL2Ra/IL2Rb/IL2Rg)をもたらす(PMID:16293754)。中親和性IL2受容体(IL2Rb/g、IL2Raノックアウト)または高親和性受容体(IL2Rb/gおよびIL2Ra過剰発現)を発現する細胞に対するIL2およびIL2Ra-IL2キメラ抗体の結合能を、フローサイトメトリーを用いて評価した。
【0264】
YT細胞は内因性にヒトPD1を発現しているが、過剰発現PD-1細胞(PD1 OE)を作製した。ヒトIL2およびヒトIL2Ra-IL2キメラ抗体(=一次抗体)の細胞への結合を調べるために、3つのIL2受容体サブユニットすべてを内因性に発現するYT/STAT5-Luc/PD1 OEレポーター細胞を遺伝子修飾して、IL2Raサブユニットのノックアウトによる中親和性IL2受容体(CD25 KO)、またはIL2Raの過剰発現による高親和性受容体(CD25 OE)を細胞表面に発現するようにした。これらの細胞への抗体の結合は、蛍光標識二次抗体を用いてフローサイトメトリーによって検出した。簡単に説明すると、CD25 KOまたはCD25 OEであるPD1 OE YT細胞を染色緩衝液(PBS中2%FBS)に再懸濁し、96ウェルプレートに1ウェルあたり3×10
5細胞を播種し、1:5に連続希釈した一次抗体[アイソタイプ-IL2(REGN8512)またはアイソタイプ-IL2Ra-IL2(REGN9904)]とともに氷上で30分間インキュベートした。最終抗体濃度は768fMから300nMの範囲であり、「二次抗体のみ」と表示した抗体なしの対照も含まれる。インキュベーション後、サンプルを氷冷染色緩衝液で洗浄し、続いてAF647標識抗ヒトIgG抗体と氷上で30分間インキュベートした。未結合の二次抗体を除去し、サンプルを氷冷PBSで1回洗浄し、生存率色素で染色し、氷冷染色緩衝液で1回洗浄し、室温で30分間固定し、染色緩衝液で洗浄し、染色緩衝液に再懸濁し、iQue Plusフローサイトメーターで分析する前にろ過し、幾何平均蛍光強度(gMFI)を測定した。二次抗体のみに対する最大結合倍率の算出には以下の式を用いた:
【数6】
【0265】
結果の要約
表17は、CD25ノックアウトまたは過剰発現細胞に結合する抗体-IL2または抗体-IL2Ra-IL2キメラ構築物の最大幾何MFI値および誘導倍率値を要約したものである。アイソタイプIL2分子(REGN8512)およびアイソタイプIL2Ra-IL2分子(REGN9904)の用量依存的結合が、中親和性IL2Rβ/γ受容体(CD25 KO)または高親和性IL2Rα/β/γ受容体(CD25 OE)のいずれかを発現する操作されたYT細胞の両方で観察された(
図7A、7B;表17)。予想されたように、CD25 OE細胞上では、両方の構築物について最大結合倍率が大きかった。しかし、Ab-IL2Ra-IL2の結合は、IL2Rα/β/γ-およびIL2Rβ/γ-発現細胞株の両方においてAb-IL2と比較して大きく減少し、融合タンパク質中のIL2Raの存在によるIL-2の「マスキング」を示唆した。
【0266】
【実施例14】
【0267】
PD1-IL2R2-IL2分子の効力を評価するバイオアッセイ
機能的IL2受容体は、IL2Rサブユニット(IL2Ra=CD25、IL2Rb=CD122、IL2Rg=CD132)の差次的アセンブリーによって形成され、免疫細胞上に発現する中親和性IL2受容体(IL2Rβ/γ)および高親和性IL2受容体(IL2Rα/β/γ)をもたらす(PMID:16293754)。
【0268】
IL2またはIL2Ra-IL2またはIL-2-IL2Raキメラ抗体の生物活性を評価するために、IL2が操作されたYT/STAT5-Luc上の中親和性または高親和性IL2受容体に結合すると、STAT5駆動ルシフェラーゼ発現が活性化される細胞ベースのレポーターアッセイを確立した。YT細胞は内因性にヒトPD1を発現しているが、過剰発現PD-1細胞(PD1 OE)を作製した。3つのIL2受容体サブユニットすべてを内因性に発現するYT/STAT5-Luc/PD1 OEレポーター細胞を遺伝子修飾して、IL2Raサブユニットのノックアウトによる中親和性IL2受容体(CD25 KO)、またはIL2Raの過剰発現による高親和性受容体(CD25 OE)を細胞表面に発現するようにした。
【0269】
10%FBSとP/S/Gを添加したRPMI1640をアッセイ培地として使用し、細胞懸濁液と抗体希釈液を調製した。スクリーニングの前日、操作されたYT/STAT5-Lucレポーター細胞(CD25 KO/PD1 OEおよびCD25 OE/PD1 OE)を細胞3×10
5個/mLに希釈した。アッセイ当日、細胞を遠心沈殿し、アッセイ培地に再懸濁し、96ウェル白色平底プレートにレポーター細胞2.5×10
4個/ウェルでプレーティングし、11段階の滴定範囲(200nM~21fM)で連続希釈(1:5)(
図1A、1B、1C、1D)、または11段階の滴定範囲(250nM~238fM)で連続希釈(1:4)(
図2A、2B)し、12番目の滴定範囲は組換えタンパク質を含まないアイソタイプ-IL2Ra-IL2[REGN9903またはREGN9904]、アイソタイプ-IL2-IL2Ra、アイソタイプ-IL2(3m)[REGN13234]、抗PD1(アーム9048)-標的-IL2Ra-IL2[REGN10597]、抗PD1(アーム9048)-標的-IL2-IL2Raまたは抗PD1(アーム9048)-標的-IL2(3m)[REGN13233]とインキュベートした。プレートを37℃/5%CO
2で4時間30分(
図1A、1B、1C、1D)または4時間(
図2A、2B)インキュベートした後、100mLのONE-Glo(商標)(Promega)試薬をウェルに加え、細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を検出した。発光した光は、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)を用いてRLUで測定した。抗体のEC
50値は、GraphPad Prism(商標)ソフトウェアを用い、12点の用量反応曲線上の4パラメータロジスティック方程式から決定した。誘導倍率は以下の式で計算した:
【数7】
【0270】
結果の要約
アイソタイプIL2Ra-IL2(REGN9903)、アイソタイプ-IL2-IL2Ra、抗PD1標的-IL2Ra-IL2(REGN10597)および抗PD1標的-IL2-IL2Raは、レポーター細胞上のIL2Ra発現の非存在下(
図8A)または存在下(
図8B)の両方で、STAT5駆動レポーター発現の用量依存的増加をもたらした(表18)。PD-1標的分子は、アイソタイプ標的分子と比較して増強された効力を示した。IL2-IL2Raキメラ分子は、レポーター細胞上のIL2Ra発現の有無にかかわらず、IL2Ra-IL2キメラ分子と比較して低下した効力を示した。
【0271】
【0272】
アイソタイプIL2Ra-IL2(REGN9903)、アイソタイプ-IL2(3m)(REGN13234)、抗PD1標的-IL2Ra-IL2(REGN10597)および抗PD1標的-IL2(3m)(REGN13233)は、レポーター細胞上のIL2Ra発現の非存在下(
図9A)または存在下(
図9B)の両方で、STAT5駆動レポーター発現の用量依存的増加をもたらした(表19)。PD1標的分子は、レポーター細胞におけるIL2Ra発現の非存在下(REGN13233:53pM、REGN10597:84pM)またはレポーター細胞上のIL2Raの存在下(REGN13233:46pM、REGN10597:37pM)において同様の効力を示した。PD1標的の非存在下では、IL2Ra-IL2キメラ分子はIL2(3m)キメラ分子と比較して低下した効力を示した。
【0273】
【0274】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本開示の様々な修飾が、前述の説明および添付の図から当業者に明らかになるであろう。このような修飾は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】