(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】小型モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20240524BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H02K1/14 Z
H02K21/16 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577189
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 FR2022051146
(87)【国際公開番号】W WO2022263769
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501377391
【氏名又は名称】ムービング マグネット テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ビイェ,リオネル
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
【Fターム(参考)】
5H601AA05
5H601CC01
5H601CC13
5H601CC15
5H601CC27
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601GA02
5H601GA13
5H601GB05
5H601GB13
5H601GB34
5H601GB43
5H601GB48
5H621BB10
5H621GA06
5H621JK15
(57)【要約】
本発明は、3つの電気巻線によって励磁されるステータ部と、複数の磁極を備えるロータ(50)とによって形成される三相電気モータに関し、前記ステータ部は、半径方向に延びる歯を有する。前記ステータ部は、第1の角度方向セクタにおいて各々が巻線を支持している、3つの連続する巻線を有する歯と、第1の角度方向セクタに相補的な第2の角度方向セクタにおいて、1~3つの巻線を有しない相補的な歯と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの電気巻線(11~13)によって励磁されるステータ部と、複数の磁極を備えるロータ(50)とによって形成される三相電気モータであって、
前記ステータ部は、半径方向に延びる歯(1~6)を有し、
前記ステータ部は、
第1の角度方向セクタにおいて各々が巻線(11~13)を支持している、巻線を有する連続する3つの歯(1~3)と、
前記第1の角度方向セクタに相補的な第2の角度方向セクタにおいて、巻線を有しない1つ~3つの相補的な歯(4~6)と、を備える三相電気モータ。
【請求項2】
前記巻線を有しない歯(4~6)の角度方向の幅、長さおよび任意選択的な形状は、無電流トルクの規則性および滑らかさ、または多かれ少なかれ急激なインデックス化に有利に働くように、三相電気モータの前記無電流トルク曲線を成形するために調整されている、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項3】
前記巻線を有しない歯(4~6)の角度方向の幅、長さおよび任意選択的な形状は、前記ロータと前記ステータの歯との間に作用する半径方向の磁力のバランスをとるように調整されている、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項4】
連続する巻線を有する2つの歯(1、2、3)の間の角度方向の間隔は60°である、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項5】
前記三相電気モータは、60°の角度で分離された巻線を有しない3つの歯(4~6)を備え、前記巻線を有しない歯(4~6)の各々は、前記巻線を有する歯(1~3)のうちの1つと直径上で対向している、請求項2に記載の三相電気モータ。
【請求項6】
前記三相電気モータは、前記第2の角度方向セクタに位置する巻線を有しない2つの歯(4、6)を備え、各巻線を有しない歯と、当該歯に隣接する巻線を有する歯との間に形成される角度は同一である、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項7】
前記ステータは前記巻線を有しない歯の間に切り欠きを有し、このように開放された空間は、前記ロータの位置を測定するための磁気感応性プローブを収容することを可能にする、請求項6に記載の三相電気モータ。
【請求項8】
前記三相電気モータは、巻線を有しない単一の歯(5)を備え、前記巻線を有しない歯(5)は、前記巻線を有する中央の歯(2)と直径上で対向している、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項9】
半径方向に測定される前記巻線(11~13)の長さが、前記ロータ(50)の直径よりも小さい、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項10】
前記ステータは、2つ以上の部品(81、82)から作られている、請求項1に記載の三相電気モータ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の三相電気モータと、移動変圧器とを含むハウジングを備えたギヤードモータ。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記三相電気モータを制御するための手段を有する制御電子機器(100)をさらに備える、請求項11に記載のギヤードモータ。
【請求項13】
前記ロータ(50)は、Nが2以下の自然数である、2
N個の一対の磁極を有する、請求項1に記載の三相電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、他の構成要素(歯車、電子回路など)の良好な編成を可能にするようにステータ部が一体化され、小型で質量が低減された三相電気モータに関し、特にハウジング内に収容された多段減速ギアを駆動することを目的とする。
【0002】
〔背景技術〕
本出願人による特許EP2171831B1は、従来技術において知られており、電気巻線によって励磁されるステータ部と、交互の方向に放射状に磁化されたN対の磁極を有するロータとを有する三相電気モータの公知の解決策を記載している。
【0003】
ステータ部は、それぞれ半径R2とは異なるR1、R2を有する2つの角度方向セクタα-1、α-2を有し、環状リングからそれぞれ半径方向に延びる、幅広の歯および幅狭の歯を備える。幅広の歯は幅狭の歯の幅の2倍以上の幅を有し、ノッチ幅は、幅狭の歯の幅よりも大きい。角度方向セクタα-1は220°よりも小さく、少なくとも3つの巻線を備える。
【0004】
特許EP3326263はまた、少なくとも2つの電気的位相を有するブラシレスモータと、軸を中心に回転するロータと、各々が巻線を支持する少なくとも2つの磁極を有するステータアセンブリとから作成されるハウジングから構成されるギヤードモータの別の解決策を記載していることで知られている。ギヤードモータの巻線軸は180°未満の機械角だけ離間し、半径方向に延びる。
【0005】
特許FR3096195は、減速ギア列と、積層体の積み重ねによって形成されたステータと、3*k個の電気巻線と、k=1又は2のk*N組の磁極を有するロータとを有する三相電気モータとを備えるギヤードモータの別の解決策を記載している。ステータは、2つの別個の角度方向セクタα1及びα2を有する。α1及びα2は、前記モータの回転中心を中心とする。ステータは、規則的に配置され回転中心に向かって収束するノッチと、3*k*N歯とを交互に備え、前記ロータが配置されたキャビティを規定し、前記ステータは、N=4及びα1が180°以下であり、前記モータの前記巻線の全てを備えることを特徴とする。
〔従来技術の欠点〕
【0006】
背景技術の解決策は、モータを収容するのに十分な空間がある用途には満足のいくものである。しかしながら、寸法を均一に縮小することは不可能である。実際、複数の寸法は巻線に印加される電気エネルギーなどのパラメータによって制約され、これは銅の体積を低減することを可能にせず、したがって、巻線のセクションまたは巻線のバルクを限界未満に低減することを可能にしない。また、巻線本体および電気接続要素などの複数の要素の寸法は、モータのサイズに比例して縮小することができないため、巻線の導電性ワイヤに利用可能な体積はモータのサイズに比例して縮小される。その結果、前記モータの性能が低下する。
【0007】
従って、背景技術の解決策は、固定された電力レベルに対する小型化の限界に直面することにある。
〔本発明によって提案される解決策〕
【0008】
本発明の主題はこの欠点を解決するためのものであり、その最も一般的な意味によれば、3つの電気巻線によって励磁されるステータ部と、磁化されたロータとによって形成される3相電気モータに関する。ステータ部は、半径方向に延びる歯を有し、第1の角度方向セクタにおいて各々が巻線を支持する3つの連続する巻線を有する歯と、前記第1の角度方向セクタに相補的な第2の角度セクタにおいて、巻線を有しない1つ~3つの相補的な歯と、を備える。
【0009】
特定の場合において、前記巻線を有しない歯は、前記3つの巻線を有する歯の無電流トルクを所定の基準値に調整するように構成される。
【0010】
別の特定の場合では、前記巻線を有しない歯の角度方向の幅、長さ、および任意選択な形状は、無電流トルクの規則性および滑らかさ、または多かれ少なかれ急激なインデックス化に有利に働くように、三相電気モータの無電流トルク曲線を成形するために調整される。
【0011】
ここでもまた、別の特定の場合において、前記巻線を有しない歯の角度方向の幅、長さ、および任意選択的な形状は、前記ロータと前記ステータの前記歯との間に作用する半径方向の磁力のバランスをとるように調整されている。
【0012】
有利には、連続する巻線を有する2つの前記歯の間の角度方向の間隔は60°である。
【0013】
第1の実施形態によれば、前記ステータは6つの歯を備え、前記巻線を有する歯と直径上で対向し、60°の間隔を有する3つの巻線を有しない歯を備える。
【0014】
第2の実施形態によれば、前記ステータは5つの歯を備える。1つの巻線を有しない歯は前記第1の角度方向セクタの両側にあり、巻線を有しない前記歯と、当該歯に連続する巻線を有する前記歯との間に60°の間隔を有する。
【0015】
第3の実施形態によれば、前記ステータは4つの歯を備え、1つの巻線を有しない歯が、中央の巻線を有する前記歯の直径上で対向している。
【0016】
一変形形態によれば、半径方向に測定される前記巻線の長さは、挿入を容易にするために、前記ロータの直径未満である。
【0017】
別の変形形態によれば、前記ステータは、長い巻線の挿入を可能にするために2つの部品で製造される。
【0018】
一変形形態によれば、電気モータは60°の角度で分離された巻線を有しない3つの歯を備え、前記巻線を有しない前記歯の各々は、前記巻線を有する歯の1つと直径上で対向している。
【0019】
別の変形形態によれば、前記電気モータは、前記第2の角度方向セクタに位置する巻線を有しない2つの歯を備え、各巻線を有しない歯と当該歯に隣接する巻線を有する歯との間に形成される角度は同一である。
【0020】
さらに別の変形形態によれば、前記電気モータは巻線を有しない単一の歯を備え、前記巻線を有しない歯は、巻線を有する中央の歯と直径上で対向している。
【0021】
特に、前記ステータは前記巻線を有しない歯との間に切り欠きを有し、このように開放された空間は、前記ロータの位置を測定するための磁気感応性プローブを収容することを可能にする。
【0022】
1つのバージョンによれば、半径方向に測定される前記巻線の長さは、前記ロータの直径未満である。
【0023】
別のバージョンによれば、前記ステータは、2つ以上の部品から作られる。
【0024】
さらに別のバージョンによれば、前記ロータは、Nが2以下の自然数である、2N個の一対の磁極を有する。
【0025】
ギヤードモータは、3相電気モータと、移動変圧器とを含むハウジングを備える。
【0026】
前記ハウジングを備えるギヤードモータは、前記三相電気モータを制御するための手段を有する制御電子機器(100)をさらに備える。
〔1つの非限定的な例示的実施形態の詳細な説明〕
【0027】
本発明は、添付の図面によって示される非限定的な例示的な実施形態に関する以下の説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
[
図1]
図1は、第1の例示的な実施形態の斜視図を示す。
[
図2]
図2は、第1の例示的な実施形態の正面図を示す。
[
図3]
図3は、第1の例示的な実施形態の断面図を示す。
[
図4]
図4は、第1の例示的な実施形態のステータシートの図を示す。
[
図5]
図5は、不均等な歯を有する第1の例示的な実施形態の変形形態のステータシートの図を示す。
[
図6a],
[
図6b],
[
図6c]
図6a、6b、6cは、第1の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
[
図7]
図7は、第3の例示的な実施形態の斜視図を示す。
[
図8a],
[
図8b],
[
図8c]
図8a、8b、8cは、第3の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
[
図9]
図9は、本発明によるステータの別の実施形態の斜視図を示す。
[
図10]
図10は、本発明による異なるロータの変形形態の斜視図を示す。
[
図11]
図11は、本発明によるステータの別の実施形態の斜視図を示す。
[
図12]
図12は、本発明の減速ギアへの結合の斜視図を示す。
[
図13]
図13は、減速ギアへの本発明の変形形態の結合の斜視図を示す。
[
図14]
図14は、減速ギアへの本発明の変形形態の結合の斜視図を示す。
[
図15]
図15は、
図14に示され、ギヤードモータのハウジングに組み込まれた変形形態の斜視図を示す。
[
図16]
図16は、2組の磁極を有するロータを備えた本発明による別の実施形態の斜視図を示す。
[
図17]
図17は、単一の巻線を有しない歯を有するステータを備えた、本発明による別の実施形態の斜視図を示す。
[
図18]
図18は、巻線を有しない歯の2つの異なる幅について、当該歯の各々に作用する磁力のシミュレーションを示す。
[
図19]
図19は、巻線を有しない歯の2つの異なる幅に対してステータに加えられる磁力の合力のシミュレーションを示す。
〔一般的な規則〕
【0028】
したがって、本発明は、経済的かつ頑丈で、大量生産されるのに適している特にギヤードモータを備えるモータを提供することを目的とする。この目的のために、モータは、外形寸法および質量に関して与えられるすべての制約について、減速ギアまたは移動変圧器システムとの容易な統合を可能にする多相電気モータを備える。
【0029】
小さな構造の場合、歯の間の空間は背景技術のステータアーキテクチャ(構成)では不十分であり、ノッチ内に十分な銅を収容することができない。実際に、巻線本体はモータの寸法に対して無視できない幅を有し、巻線とステータ積層体との間で保証される成形性および誘電抵抗の理由から、巻線本体を低減することができないため、銅に利用可能な空間を増大させることが必要である。本発明によって提案されるより少ない数の歯への移行は、銅の利用可能な体積を増加させることを可能にする。一定体積の残りの巻線本体について、巻線本体の体積に対する銅の体積の比が良好に影響を受ける。本発明の主題である解決策は、1~3個の巻線を有しない歯が付加された3つの連続する巻線を有する歯の構造、すなわち、最大で4組の磁極を備えたロータと組み合わせて合計4~6個の歯を選択することにある。ここで、歯は、互いに60°または120°で分布される。4組の磁極を有する6個の歯の構造の巻線係数は、5組の磁極を有する12個の歯を有する上記で述べた構造と比較して磁気的に好ましくないため、当業者は空間要件が十分に大きくない限り、当然には選択しないであろう。
【0030】
モータは3つの巻線(最大で6つの巻線を支持することができる)のみが供給される。なぜなら、巻線本体の全体積を低減させることができるため、銅の体積を最大にし、電気接続を大幅に単純化するためである。
【0031】
60°だけ機械的に分離された巻線を有するステータと、4つの組の磁極を有するロータとを関連付ける磁気の解決策は、この構成が低調波範囲の無電流トルクを有し、その結果有意な振幅を有するため、自明ではない。本発明は、歯の特定の角度方向の幅を選択することによってこの問題を解決することを提案する。
【0032】
ステータ構造は非対称であり、一組の巻線は、180°未満の同じ角度方向セクタに位置している3つの歯にわたり分布している。相補的な角度方向セクタは、磁力のバランスをとるために、1つ、2つ、または3つの裸の歯、すなわち、巻線なしの歯を有する。
【0033】
巻線を有しない歯の長さを増加させることは、特定の長さを過ぎてマシンの性能に何ら有益な影響を及ぼさないので、巻線を有する歯よりも短い巻線を有しない歯を選択することが可能である。これは、巻線を有する歯を含む角度方向セクタに内接する円形のキャビティの半径R1よりも短い半径R2の円形のキャビティ(空洞)において、巻線を有しない歯を含む相補的な角度方向セクタに内接する能力につながる。
〔第1の例示的な実施形態〕
【0034】
図1~
図4は、6つの歯(1~6)を有する変形形態の第1の実施形態に対応する。3つの連続する歯(1~3)には、それぞれ絶縁コア(21~23)によって支持される巻線(11~13)が巻かれている。歯(1~3)は、これらの間に60°の角度を形成し、3つのより短い巻線を有しない歯(4~6)によって6つの歯(1~6)を有する変形形態が完成される。
【0035】
歯は、環状周辺ゾーン(10)に対して半径方向に延びる。
【0036】
ステータ(30)は、強磁性金属のシートから切断された一群の積層体(20)によって公知の方法で形成される。巻線(11~13)は、プリント回路との接続を可能にする「圧入」型の接点(31~33;41~43)を有するコア(21~23)に取り付けられる。
〔巻線を有しない歯の特性の決定〕
【0037】
巻線を有しない歯(4~6)の角度方向の幅α
2、長さ、および形状は、任意選択的に、規則性および滑らかさ、または多かれ少なかれ急激なインデックス化に有利になり得る、無電流トルクに関する所望の挙動の機能として調整される。これらの特性は実験的に、ロータのプロトタイプ(原型)の連続的な調整によって、または無電流トルクをモデル化することによって決定することができる。60°の機械角によって連続的に分離された6つの歯を有するモータと、4組の磁極を有するロータとの組合せでは、無電流トルクC
0が、22°と23°との間の値を有し、同一の角度方向の広がりα
0を有する前端を有する歯を選択することによって最小化することができる。しかしながら、同一の歯を有するこの構成は、巻線(11、12、13)に配置することができる空間を制限するため、必ずしも最適ではない。
図5に示される本発明による別の実施形態は、巻線を有する歯(1~3)の角度方向の幅α
1よりも大きい、巻線を有しない歯(4~6)の角度方向の幅α
2を選択することによって、この問題を解決することを提案する。良好な結果は、一定の全角度広がりを維持するように、巻線を有しない歯(4~6)が広げられ、巻線を有する歯(1~3)が狭められたときに得られる。すなわち、例えば巻線を有する歯がx°だけ、すなわちα
1=α
0-x°に狭められる場合、巻線を有しない歯がx°だけ、すなわちα
2=α
0+x°に広げられなければならない。したがって、xが最大5°になることがある歯幅の非常に異なる組み合わせを仮定することが可能であり、α
1=17°の巻線を有する歯(1~3)に関連するα
2=27°の巻線を有しない歯(4~6)をもたらす。歯のサイズを決定するための数学的規則は、絶対的ではなく、本発明を限定するものではなく、トレンド(傾向)を説明するために与えられているに過ぎず、当業者は教示された値に近い値について数値シミュレーションおよび実験的調整を実施することによって完全な補償を得ることができる。
【0038】
図6a、6b、6cは、機械角の機能として、巻線を有する歯および巻線を有しない歯によって感知される磁化高調波3に起因するトルク変動を示している。また、
図6a、6b、6cは、電気的期間を示し、巻線を有する歯の角度方向の幅α
1と、無電流トルクリップルC
0を最小限にするように最適化された巻線を有しない歯の角度方向の幅α
2との間の比率について示している。
図6a、6b、6cは、6つの歯を有するステータの場合を示す。4組の磁極を有し、60°(0°、60°、120°、180°、240°、300°)の倍数の機械角で分布する歯を有する構造では、無電流トルクリップルが主に磁化高調波3に起因してC
0であり、C
0.6と呼ばれる磁気周期の6倍の周波数のリップルを生成する。したがって、
図6aは曲線(101)において、巻線を有する歯(1)によって知覚されるトルク
0.6のシミュレーションを示し、曲線(102)は巻線を有する一組の歯(1~3)によって知覚されるトルクの合計を示す。これらの組は、公称電流の供給中に巻線曲線(100)によって生成されるトルクと比較して無視できない振幅を有する。過度の無電流トルクは、動作中に望ましくない振動を発生させ、早期摩耗および騒音につながる。したがって、可能な限り過度の無電流トルクを制限することが非常に重要である。
図6bは曲線(103)において、巻線を有しない歯(4)についてシミュレートされたトルクC
0.6を示し、曲線(104)は、すべての巻線を有しない歯(4~6)についてのトルクC
0.6の合計を示す。
図6cに示されるように、巻線を有する歯についてシミュレートされたトルクの合計C
0.6、すなわち曲線(102)と、巻線を有しない歯についてシミュレートされたトルクの合計C
0.6、すなわち曲線(104)とは、同じ振幅を有するが逆位相であるため、歯(1~6)のすべてにわたって合計され、曲線(110)によって示されるトルクの合計C
0.6の完全な相殺をもたらすことを気づくことができる。
〔第2の例示的な実施形態〕
【0039】
図7は互いに接続されていないが、巻線(11、13)によって囲まれた巻線を有する歯(1、3)にそれぞれ接続された2つの巻線を有しない歯(4および6)のみを有する別の実施形態を示す。ステータは、磁化されたロータ(50)を取り囲む。接続されていない歯は例えば、前記ステータを構成する積層体の束の前記歯の間に切り欠きを用いて、2つの巻線を有しない歯を分離する最小角でこれらの歯の間の磁気的連続性に中断があることを意味すると理解される。巻線を有しない歯(4、6)の間に開放された空間は、ロータの位置を測定し、巻き線の電気供給を制御するための磁気感応性プローブ(30)を収容することを可能にする。
【0040】
6つの規則的に分布した歯を備える場合とは対照的に、60°(0°、60°、120°、180°、240°、300°)の倍数である機械角で分布した5つの歯を有する構造は、歯が同一の角度方向の広がりを有する前端を有する場合、最小の無電流トルクを有さない。それにもかかわらず、本発明は、巻線を有する歯(1~3)の角度方向の幅α1よりも大きい巻線を有しない歯(4、6)の角度方向の幅α3を選択することによって、この問題を解決することを提案する。良好な結果は、巻線を有しない歯の角度方向の広がりα3が同一であり、これらの合計が巻線を有する歯の総角度方向の広がりに等しいときに得られる。巻線を有する歯は、22°と23°との間である、巻線を有する歯の角度方向の広がりα1と等しい。これは、3×α1=2×α3の関係をもたらす。前述の実施形態に関して説明したように、この角度方向の広がりα1は、必ずしも固有または最適ではなく、より多くの空間に巻線(11、12、13)を配置することができるように低減することができる。この低減は一定の歯(1、2、3、4、6)の角度方向の広がりを保つように、巻線を有しない歯の角度方向の幅α3の増加を伴わなければならない。例えば、巻線を有する歯(1、2、3)がx°だけ、すなわちα1=α0-xに薄くされる場合、3×α1=2×α3を満たすように、巻線を有しない歯(4、6)が相補的な値、すなわちα3=α0+(3/2)xだけ広げられなければならない。したがって、xが最大5°になることがある歯幅の非常に異なる組み合わせを仮定することが可能であり、α3=40.5°の2つの巻線を有しない歯(4、6)に関連するα1=17°の巻線を有する歯(1~3)をもたらす。
前記歯のサイズ決定のための数学的規則は絶対的ではなく、本発明を限定するものではなく、傾向を説明するために与えられているに過ぎず、当業者は教示された値に近い値について数値シミュレーションおよび実験的調整を実施することによって完全な補償を得ることができる。当業者はこの目的を満たすために、巻線を有しない歯と当該歯に直接隣接する巻線を有する歯との間の角度方向の間隔を変更することもできる。したがって、60°とは異なり得、重要な態様は、1つの巻線を有しない歯と当該歯に隣接する巻線を有する歯との間の角度方向の間隔が同一であることである。
【0041】
図8a、8b、8cは、機械角の機能として、巻線を有する歯および巻線を有しない歯によって知覚される磁化高調波3に起因するトルク変動を示している。
図8a、8b、8cは、電気的期間を示し、巻線を有する歯の角度方向の幅α
1と、無電流トルクリップルC
0を最小限にするように最適化された巻線を有しない歯の角度方向の幅α
2との間の比率について示している。
図8a、8b、8cは、5つの歯を有するステータの場合を示す。より具体的には
図8aは、曲線(105)において、巻線を有しない歯(1)によって知覚されるトルクC
0.6のシミュレーションを示し、曲線(106)は巻線を有する一組の歯(1~3)によって知覚されるトルクの合計C
0.6を示す。これらの組は、公称電流の供給中に巻線曲線(100)によって生成されるトルクと比較して無視できない振幅を有する。したがって、可能な限り過度の無電流トルクを制限することが非常に重要である。
図8bは曲線(107)において、非巻線を有しない歯(4)についてシミュレートされたトルクC
0.6を示し、曲線(108)は、すべての巻線を有しない歯(4、6)に関するトルクの合計C
0.6を示す。
図8cに示されるように、巻線を有する歯についてシミュレートされたトルクの合計C
0.6、すなわち曲線(106)と、巻線を有しない歯についてシミュレートされたトルクの合計C
0.6、すなわち曲線(108)とは、同じ振幅を有するが逆位相である。このため、歯(1~6)のすべてにわたって合計され、曲線(110)によって示されるトルクの合計C
0.6の完全な相殺をもたらすことを気づくことができる。
【0042】
図示されていない最終的な代替案は、相補的な角度方向セクタに配置された単一の巻線を有しない歯を使用して、無電流トルクを補償することである。
【0043】
図6a、6b、6c、ならびに
図8a、8b、8cは、特定の歯幅を用いて実行される、無電流トルクの合計C
0.6の完全な補償を示す。それにもかかわらず、無電流トルクの補償は本発明を限定するものではなく、なぜなら、特定の用途では、無電流トルクの非ゼロ振幅が例えば、アクチュエータが給電されていないときにアクチュエータのロックを確実にするために、望ましいからである。次に、当業者は巻線を有する歯の幅を調整して、そのマシンの性能を最適化することができる。また、当業者は、巻線を有しない歯の幅を調整して、無電流トルクの所望の値を得ることができる。
【0044】
他の場合には、この非対称なステータ構造に最小のノイズが求められるとき、前記歯と前記ロータとの間に作用される半径方向の力に注意を払うこととが重要である。また、前記ロータに作用される方向の力の合力を回避するために、またはステータ構造の振動励起をもたらす歯に作用される半径方向の力を最小限に抑えるために、できるだけバランスをとるように努めることが重要である。当業者はこの目的を満たすために、巻線を有する歯および巻線を有しない歯の角度方向の幅を調整することもできる。
図18および
図19は磁気ステータ力を示し、巻線を有しない歯が巻線を有する歯と同じ角度方向の幅を有する場合、または巻線を有する歯がより広い場合のいずれかで、2つの異なる歯幅について、磁気ステータ力を比較する。
図18は各歯上の積層体(x、y)の平面内の磁力のシミュレーションを示し、各歯上およびすべてのロータ位置について、ロータが、電気的周期にわたる巻線の供給によって駆動されるとき、各楕円体は歯に対応する。曲線(201、202、203)は全ての歯が等しいときの巻線を有する歯(1、2、3)に作用する力を示す。曲線(204、205、206)は全ての歯が等しいときの巻線を有しない歯(4、5、6)に作用する力を示す。曲線(301、302、303)は、巻線を有しない歯が角度的により広いときの巻線を有する歯(1、2、3)に作用する力を示す。曲線(304、305、306)は、巻線を有しない歯が角度的により広いときの巻線を有しない歯(4、5、6)に作用する力を示す。巻線を有しない歯がより広いとき、楕円体は、より弱い力に対応するより小さい表面を有することに留意されたい。これは、全ての歯が同じ角度方向の幅(210)のとき、または巻線を有する歯がより大きな角度方向の幅(310)を有するときにステータに作用される力の合力を示す
図19によって確認される。
力の振幅は、第2の場合(巻線を有する歯がより大きな角度方向の幅(310)を有するとき)にはより小さいだけでなく、楕円体が力の平面においてより中心にあるので、より対称的であることに留意されたい。
【0045】
最後に、60°の倍数(すなわち、0°、60°、120°、180°、240°、300°)の角度での同一の角度方向の広がりを有する巻線を有しない歯の分布は再度、無電流トルクの合計C0.6を最適化することを可能にしない。当業者は別の分布だけでなく、例えば、相補的な角度方向のセクタの空間を開放するために、巻線を有しない歯についての様々な角度方向の幅も仮定することができる。
〔組み立てられたステータ〕
【0046】
図9に示す別の実施形態によれば、ステータ(8)は例えばダブテールによって組み立てられた2つの部品から形成することができる。一方の部品(81)は、前記巻線(11、12、13)を支持する前記歯を有する角度方向セクタを備え、他方の部品(82)は巻線を有しない歯(4、5、6)を有する相補的な角度方向セクタを備える。この実施形態は特に、前記ロータ(50)の直径よりも長い巻線(11、12、13)を吊るすことを可能にする。
〔ロータの変形形態〕
【0047】
本発明は
図1に示されるように、4組の磁極を有するリング型ロータに限定されず、当業者に知られている任意のロータの変形形態を使用することができる。例えば、
図10に示されるように、ロータ(501)は8つの埋め込み磁石(51)を有することができる。しかし、ロータ(502)、および軟強磁性材料で作られた突出極(52)を有する交互の磁極(53)を有する
図10に示されるものなど、より少ない磁石を使用する別の形態を仮定することも可能である。
【0048】
好ましくは、ロータが4組の磁化された磁極を備えるが、本発明はこの数に限定されず、巻線を有しない歯(4~6)の幾何学的特徴を注意深く選択することによって、本発明によって与えられる利点から恩恵を受けつつ、より少ない数の磁極を使用することもできる。最良の利点を有する磁極の組の数pは、式p=2
Nに基づいて得られ、Nは2以下の自然数、すなわち0、1または2である。したがって、
図16は、2組の磁極を備えるロータの可能な変形形態を示す。
〔歯スナウトを有するステータの変形〕
【0049】
図11に示される1つの別の実施形態によれば、巻線を有する歯(1、2、3)は、歯スナウトと呼ばれる正面フレアを有することができ、ロータフローの収集を最適化しながら、巻線に対するより多くの空間に配置することを可能にする。巻線を有しない歯は、上記に加えて、または代替として、例えば、ステータを可能な限り軽くするために、歯をより薄くした歯スナウトを有する可能性があることに留意されたい。
〔ギヤードモータでの使用〕
【0050】
その変形形態の全てによる本発明は、ギヤードモータへのその一体化に関心がある。
図12、
図13、および
図14は、ロータを減速ギアの第1のモジュールに結合するための様々な構成を示す。
図15は、3相モータを制御するための手段を有する制御電子機器も備える、ギヤードモータのハウジングに組み込むことができることを示す。ロータ(50)は、運動を低減するために第1のモジュール(52)の歯車に噛み合うピニオン(51)と一体である。この第1のモジュールはシャフト(53)によって支持され、その配置は磁気回路のバルクによって制限される。
図12は2つの巻線を有しない歯(4、5)の間にこのシャフトを挿入する可能性を示しており、これにより、ピニオン(51)およびモジュール(52)のホイール(ギア)の直径に対してより大きな自由度を得ることが可能になるため、この第1段階の低減に対してより多くの選択が可能になる。
図13は、2つの巻線(12、13)の周囲におけるシャフト(53)の別の可能な位置決めを示す。この構成は非常にコンパクトな解決策を得るために、巻線を含まない角度方向セクタに位置する空間を完全に開放するため、ギヤードモータのハウジングのコーナにステータを位置付けることを可能にする。最後に、
図14は、
図7に示すように、2つの巻線を有しない歯を有する本発明の1つのバージョンの自由角度方向セクタにシャフト(53)を挿入する可能性を示している。実際、2つの巻線を有しない歯(4、6)は、強磁性回路によって接続されておらず、自由空間を使用して、減速チェーンの第1のモジュール(52)のピニオン(54)を収容することができる。これにより、軸方向に非常にコンパクトなバージョンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図4】第1の例示的な実施形態のステータシートの図を示す。
【
図5】不均等な歯を有する第1の例示的な実施形態の変形形態のステータシートの図を示す。
【
図6a】第1の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
【
図6b】第1の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
【
図6c】第1の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
【
図8a】第3の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
【
図8b】第3の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
【
図8c】第3の最適化された例示的な実施形態による典型的なトルク曲線を示す。
【
図9】本発明によるステータの別の実施形態の斜視図を示す。
【
図10】本発明による異なるロータの変形形態の斜視図を示す。
【
図11】本発明によるステータの別の実施形態の斜視図を示す。
【
図12】本発明の減速ギアへの結合の斜視図を示す。
【
図13】減速ギアへの本発明の変形形態の結合の斜視図を示す。
【
図14】減速ギアへの本発明の変形形態の結合の斜視図を示す。
【
図15】
図14に示され、ギヤードモータのハウジングに組み込まれた変形形態の斜視図を示す。
【
図16】2組の磁極を有するロータを備えた本発明による別の実施形態の斜視図を示す。
【
図17】単一の巻線を有しない歯を有するステータを備えた、本発明による別の実施形態の斜視図を示す。
【
図18】巻線を有しない歯の2つの異なる幅について、当該歯の各々に対する磁力のシミュレーションを示す。
【
図19】巻線を有しない歯の2つの異なる幅に対してステータに加えられる磁力の合力のシミュレーションを示す。
【国際調査報告】