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特表2024-521482高濃度L-グルタミン酸を生産するための菌株及びそれを用いたL-グルタミン酸生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】高濃度L-グルタミン酸を生産するための菌株及びそれを用いたL-グルタミン酸生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240524BHJP
   C12P 13/14 20060101ALI20240524BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240524BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20240524BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P13/14 A
C12N1/20 A
C12N9/02
C12N15/53
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577282
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2022004562
(87)【国際公開番号】W WO2023277307
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0085738
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ナラ
(72)【発明者】
【氏名】ボン,ヒョン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジン ナム
(72)【発明者】
【氏名】イ,アー レム
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ,ジョン オク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE19
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA10
4B065AA24X
4B065AA24Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA17
4B065CA41
(57)【要約】
本出願は、高濃度L-グルタミン酸を生産するための菌株及びそれを用いたL-グルタミン酸生産方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VKOR(vitamin K epoxide reductase family protein)タンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物。
【請求項2】
前記VKORタンパク質は、コリネバクテリウム属由来のものである、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記VKORタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列で表されるポリペプチドからなるものである、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
前記VKORタンパク質は、配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチドによりコードされるものである、請求項1に記載の微生物。
【請求項5】
前記VKORタンパク質の不活性化は、配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの欠損又は弱化である、請求項1に記載の微生物。
【請求項6】
前記コリネバクテリウム属微生物はコリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項1に記載の微生物。
【請求項7】
前記微生物は、VKORタンパク質が不活性化されていない親株又は野生型に比べて、L-グルタミン酸生産能が向上したものである、請求項1に記載の微生物。
【請求項8】
前記微生物は、OdhAタンパク質がさらに不活性化されたものである、請求項1に記載の微生物。
【請求項9】
VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物を培地で培養するステップを含むL-グルタミン酸生産方法。
【請求項10】
前記VKORタンパク質は、コリネバクテリウム属由来のものである、請求項9に記載の生産方法。
【請求項11】
前記VKORタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列で表されるポリペプチドからなるものである、請求項9に記載の生産方法。
【請求項12】
前記VKORタンパク質は、配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチドによりコードされるものである、請求項9に記載の生産方法。
【請求項13】
前記VKORタンパク質の不活性化は、配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの欠損又は弱化である、請求項9に記載の生産方法。
【請求項14】
前記コリネバクテリウム属微生物はコリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項9に記載の生産方法。
【請求項15】
前記微生物は、OdhAタンパク質がさらに不活性化されたものである、請求項9に記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、高濃度L-グルタミン酸を生産するための菌株及びそれを用いたL-グルタミン酸生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-グルタミン酸(L-glutamic acid)は、発酵により生産される代表的なアミノ酸であり、特有の独特な味を有し、食品分野はもとより、医薬品分野、その他動物飼料分野などで広く用いられる重要なアミノ酸の一つである。L-グルタミン酸は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus)、放線菌(Streptomyces)、ペニシリウム(Penicillum)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エルウィニア(Erwinia)、パントエア(Pantoea)属などの微生物を用いて生産する方法が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
現在、L-グルタミン酸を高効率で生産する微生物及び発酵工程技術の開発のために様々な研究が行われている。例えば、コリネバクテリウム属微生物においてアミノ酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増加させたり、アミノ酸生合成に不要な遺伝子を除去するなどの標的物質に特異的なアプローチがL-グルタミン酸生産収率の向上のために主に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3220929号明細書
【特許文献2】米国特許第6682912号明細書
【特許文献3】米国特許第7662943号明細書
【特許文献4】米国特許第10584338号明細書
【特許文献5】米国特許第10273491号明細書
【特許文献6】韓国登録特許第10-0292299号公報
【特許文献7】韓国公開特許第10-2020-0136813号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Vitamins & Hormones Volume 78, 2008, Pages 103-130
【非特許文献2】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【非特許文献3】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【非特許文献4】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【非特許文献5】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【非特許文献6】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【非特許文献7】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【非特許文献8】[CARILLO ET AL/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【非特許文献9】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献10】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【非特許文献11】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745
【非特許文献12】J. Sambrook et al.,Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989
【非特許文献13】F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York, 9.50-9.51, 11.7-11.8
【非特許文献14】Nakashima N et al., Bacterial cellular engineering by genome editing and gene silencing. Int J Mol Sci. 2014;15(2):2773-2793
【非特許文献15】Sambrook et al. Molecular Cloning 2012
【非特許文献16】Weintraub, H. et al., Antisense-RNA as a molecular tool for genetic analysis, Reviews - Trends in Genetics, Vol. 1(1) 1986
【非特許文献17】Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010, Vol. 2. 1-16
【非特許文献18】"Manual of Methods for General Bacteriology" by the American Society for Bacteriology (Washington D.C., USA, 1981)
【非特許文献19】Appl Environ Microbiol. 2007 Feb;73(4):1308-19. Epub 2006 Dec 8.
【非特許文献20】DG Gibson et al., NATURE METHODS, VOL.6 NO.5, MAY 2009, NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix
【非特許文献21】Appl. Microbiol. Biothcenol.(1999) 52:541-545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、L-グルタミン酸を高収率で生産すべく鋭意努力した結果、不活性化されたVKORタンパク質によりL-グルタミン酸生産能が向上することを確認し、本出願を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、VKOR(vitamin K epoxide reductase family protein)タンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本出願は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物を培地で培養するステップを含むL-グルタミン酸生産方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本出願は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物、それを培養した培地、又はそれらの組み合わせを含むL-グルタミン酸生産用組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本出願は、VKORタンパク質を不活性化するステップを含む、コリネバクテリウム属微生物の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本出願は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物、それを培養した培地、又はそれらの組み合わせを含むL-グルタミン酸生産用組成物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本出願は、VKORタンパク質を不活性化するステップを含む、コリネバクテリウム属微生物の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本出願は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物のL-グルタミン酸生産用途を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本出願のVKORタンパク質を不活性化させたL-グルタミン酸生産コリネバクテリウム属微生物は、高収率でL-グルタミン酸を生産することができるので、L-グルタミン酸の産業的生産に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本出願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本出願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本出願に含まれる。また、以下の具体的な記述に本出願が限定されるものではない。さらに、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本出願の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本出願に含まれることが意図されている。
【0016】
本出願の一態様は、VKOR(vitamin K epoxide reductase family protein)タンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物を提供する。
【0017】
本出願における「VKOR(vitamin K epoxide reductase family protein)」とは、ビタミンK2,3-エポキシド(vitamin K 2, 3-epoxide)とビタミンK(vitamin K)をビタミンKヒドロキノン(vitamin K hydroquinone)に還元する活性を有する酵素を意味する(非特許文献1)。
【0018】
一実施例において、本出願のVKORタンパク質は、微生物に由来するものであってもよい。前記微生物は、具体的にはコリネバクテリウム属微生物に由来するものであり、より具体的にはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)などに由来するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
前記VKORタンパク質のアミノ酸配列は、VKOR遺伝子によりコードされるものであってもよい。例えば、VKOR遺伝子は、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032由来のNCgl0775、又はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869由来のBBD29_04485であるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本出願のVKORタンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列で表されるポリペプチドを含むものであってもよく、前記ポリペプチドからなるものであってもよい。また、本出願のVKORタンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するものであってもよく、前記アミノ酸配列から実質的に構成される(essentially consisting of)ものであってもよい。具体的には、前記タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列で表されるポリペプチドからなるものであってもよい。
【0021】
配列番号1のアミノ酸配列は、公知のデータベースである米国国立衛生研究所の遺伝子バンク(NIH GenBank)から得られる。本出願において、配列番号1のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%又は99.9%以上の相同性又は同一性を有するアミノ酸配列を含むものであってもよい。また、そのような相同性又は同一性を有し、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質に相当する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換、保存的置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本出願に含まれることは言うまでもない。
【0022】
例えば、アミノ酸配列のN末端、C末端及び/又は内部に、本出願のタンパク質の機能を変更しない配列の付加もしくは欠失、自然に発生し得る突然変異、非表現突然変異(silent mutation)又は保存的置換を有するものが挙げられる。
【0023】
前記「保存的置換(conservative substitution)」とは、あるアミノ酸が類似した構造的及び/又は化学的性質を有する他のアミノ酸に置換されることを意味する。このようなアミノ酸置換は、一般に残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて発生し得る。通常、保存的置換は、タンパク質又はポリペプチドの活性にほとんど又は全く影響を及ぼさない。
【0024】
本出願における「相同性(homology)」又は「同一性(identity)」とは、2つの与えられたアミノ酸配列又は塩基配列が類似する程度を意味し、百分率で表される。相同性及び同一性は、しばしば互換的に用いられる。
【0025】
保存されている(conserved)ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列相同性又は同一性は標準配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に用いられてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)又は同じ(identical)配列は、中程度又は高いストリンジェントな条件(stringent conditions)下において、一般に配列全部又は一部分とハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションには、ポリヌクレオチドにおいて一般のコドン又はコドン縮退を考慮したコドンを有するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションも含まれることは言うまでもない。
【0026】
任意の2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が相同性、類似性又は同一性を有するか否かは、例えば非特許文献2のようなデフォルトパラメーターと「FASTA」プログラムなどの公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, 非特許文献3)(バージョン5.0.0又はそれ以降のバージョン)で行われるように、ニードルマン=ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献4)を用いて決定することができる(GCGプログラムパッケージ(非特許文献5)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献6、7及び8)を含む)。例えば、国立生物工学情報センターのBLAST又はClustal Wを用いて相同性、類似性又は同一性を決定することができる。
【0027】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドの相同性、類似性又は同一性は、例えば非特許文献9に開示されているように、非特許文献4などのGAPコンピュータプログラムを用いて、配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち短いものにおける記号の総数で、類似する配列記号(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を割った値と定義している。GAPプログラムのためのデフォルトパラメーターは、(1)二進法比較マトリックス(同一性は1、非同一性は0の値をとる)及び非特許文献10に開示されているように、非特許文献11の加重比較マトリックス(又はEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス)と、(2)各ギャップに3.0のペナルティ、及び各ギャップの各記号に追加の0.10ペナルティ(又はギャップオープンペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5)と、(3)末端ギャップに無ペナルティとを含む。
【0028】
本出願において、前記VKORタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、VKOR遺伝子であってもよい。VKOR遺伝子の一例として、NCgl0775、BBD29_04485遺伝子などが挙げられるが、これらについては前述した通りである。
【0029】
本出願における「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチド単量体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)であって、所定の長さより長いDNA又はRNA鎖を意味し、より具体的には前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド断片を意味する。
【0030】
本出願のVKORタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであってもよい。本出願の一例として、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号2の配列を有するものであってもよく、配列番号2の配列を含むものであってもよい。また、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号2の配列からなるものであってもよく、配列番号2の配列から実質的に構成されるものであってもよい。具体的には、前記VKORタンパク質は、配列番号2の塩基配列で表されるポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよい。
【0031】
本出願のポリヌクレオチドは、コドンの縮退(degeneracy)により、又は本出願のVKORタンパク質を発現させようとする生物において好まれるコドンを考慮して、VKORタンパク質のアミノ酸配列が変化しない範囲でコード領域に様々な改変を行うことができる。具体的には、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号2の配列と相同性もしくは同一性が70%以上、75%以上、76%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上である塩基配列を有するものであるか、前記塩基配列を含むものであるか、又は配列番号2の配列と相同性もしくは同一性が70%以上、75%以上、76%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上である塩基配列からなるものであるか、前記塩基配列から実質的に構成されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、本出願のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子配列から調製されるプローブ、例えば本出願のポリヌクレオチド配列の全部又は一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列であればいかなるものでもよい。前記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(非特許文献12、13参照)に具体的に記載されている。例えば、相同性もしくは同一性の高いポリヌクレオチド同士、70%以上、75%以上、76%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上
もしくは99%以上の相同性もしくは同一性を有するポリヌクレオチド同士をハイブリダイズし、それより相同性もしくは同一性の低いポリヌクレオチド同士をハイブリダイズしない条件、又は通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、具体的には60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度において、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件が挙げられる。
【0033】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、2つの核酸が相補的配列を有することが求められる。「相補的」とは、互いにハイブリダイゼーションが可能なヌクレオチド塩基間の関係を表すために用いられるものである。例えば、DNAにおいて、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。よって、本出願のポリヌクレオチドには、実質的に類似する核酸配列だけでなく、全配列に相補的な単離された核酸フラグメントが含まれてもよい。
【0034】
具体的には、本出願のポリヌクレオチドと相同性又は同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーションステップが行われるハイブリダイゼーション条件と前述した条件を用いて検出することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃又は65℃であってもよいが、これらに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適宜調節される。
【0035】
前記ポリヌクレオチドをハイブリダイズする適切なストリンジェンシーはポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野で公知である(例えば、非特許文献12)。
【0036】
本出願における「微生物(又は菌株)」とは、野生型微生物や自然に又は人為的に遺伝的改変が行われた微生物が全て含まれるものであり、外部遺伝子が挿入されるか、内在性遺伝子の活性が強化又は不活性化されるなどの原因により、特定機序が弱化又は強化された微生物であって、目的とするポリペプチド、タンパク質又は産物の生産のために遺伝的改変(modification)が行われた微生物である。
【0037】
本出願におけるポリペプチド活性の「不活性化」は、内在性活性に比べて活性が低下することや、活性がなくなることが全て含まれる概念である。前記不活性化は、弱化(inactivation)、欠乏(deficiency)、下方調節(down-regulation)、減少(decrease)、低下(reduce)、減衰(attenuation)などと混用される。
【0038】
前記不活性化には、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異などによりポリペプチド自体の活性が本来微生物が有するポリペプチドの活性に比べて減少又は除去されること、それをコードするポリヌクレオチドの遺伝子の発現阻害やポリペプチドへの翻訳(translation)阻害などにより細胞内での全体的なポリペプチド活性の程度及び/又は濃度(発現量)が天然菌株に比べて低下すること、前記ポリヌクレオチドの発現が全くないこと、及びポリヌクレオチドが発現したとしてもポリペプチドの活性がないことの少なくとも1つが含まれる。前記「内在性活性」とは自然要因又は人為的要因により遺伝的に変異して形質が変化する場合に、形質変化の前の親株、野生型又は非改変微生物が本来有していた特定ポリペプチドの活性を意味する。これは、「改変前の活性」と混用される。ポリペプチドの活性が内在性活性に比べて「不活性化、弱化、欠乏、減少、下方調節、低下、減衰」するとは、形質変化の前の親株又は非改変微生物が本来有していた特定ポリペプチドの活性に比べて低下することを意味する。
【0039】
このようなポリペプチドの活性の不活性化は、これらに限定されるものではなく、当該分野で周知の様々な方法を適用することにより達成することができる(例えば、非特許文献14、15など)。
【0040】
具体的には、本出願のポリペプチド活性の不活性化は、1)ポリペプチドをコードする遺伝子の全部又は一部を欠失させること、2)ポリペプチドをコードする遺伝子の発現が減少するように発現調節領域(又は発現調節配列)を改変すること、3)ポリペプチドの活性が弱化又は低下するように前記ポリペプチドを構成するアミノ酸配列を改変すること(例えば、アミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸を欠失/置換/付加すること)、4)ポリペプチドの活性が欠失又は低下するように前記ポリペプチドをコードする遺伝子配列を改変すること(例えば、ポリペプチドの活性が欠失又は弱化するように改変されたポリペプチドをコードするように前記ポリペプチド遺伝子の核酸塩基配列の1つ以上の核酸塩基を欠失/置換/付加すること)、5)ポリペプチドをコードする遺伝子転写産物の開始コドン、シャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列もしくは5’UTR領域をコードする塩基配列を改変すること、6)ポリペプチドをコードする前記遺伝子転写産物に相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)を導入すること、7)リボソーム(ribosome)の付着を不可能にする2次構造物が形成されるようにポリペプチドをコードする遺伝子のシャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列の前にシャイン・ダルガノ配列と相補的な配列を付加すること、8)ポリペプチドをコードする遺伝子配列のORF(open reading frame)の3’末端に逆転写するようにプロモーターを付加すること(Reverse transcription engineering, RTE)、又は9)前記1)~8)から選択される2つ以上の組み合わせにより行われるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0041】
例えば、前記1)ポリペプチドをコードする前記遺伝子の一部又は全部を欠失させることは、染色体内の内在性標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド全体を欠失させること、一部のヌクレオチドが欠失したポリヌクレオチド又はマーカー遺伝子に置換することにより行われてもよい。
【0042】
前記2)発現調節領域(又は発現調節配列)を改変することは、欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより発現調節領域(又は発現調節配列)上の変異を発生させるか、より低い活性を有する配列に置換することにより行われてもよい。前記発現調節領域には、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を調節する配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記3)及び4)のアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を改変することは、ポリペプチドの活性が弱化するように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより配列上の変異を発生させるか、より低い活性を有するように改良されたアミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列、又は活性がなくなるように改良されたアミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列に置換することにより行われるが、これらに限定されるものではない。例えば、ポリヌクレオチド配列に変異を導入して終止コドンを形成することにより、遺伝子の発現を阻害又は低下させることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記5)ポリペプチドをコードする遺伝子転写産物の開始コドンもしくは5’UTR領域をコードする塩基配列を改変することは、例えば、内在性開始コドンに比べてポリペプチドの発現率が低い他の開始コドンをコードする塩基配列に置換することにより行われるが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記6)ポリペプチドをコードする前記遺伝子転写産物に相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)を導入することは、例えば、非特許文献16を参照することができる。
【0046】
前記7)リボソーム(ribosome)の付着を不可能にする2次構造物が形成されるようにポリペプチドをコードする遺伝子のシャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列の前にシャイン・ダルガノ配列と相補的な配列を付加することは、mRNA翻訳を不可能にするか、速度を低下させることにより行われてもよい。
【0047】
また、前記8)ポリペプチドをコードする遺伝子配列のORF(open reading frame)の3’末端に逆転写するようにプロモーターを付加すること(Reverse transcription engineering, RTE)は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子転写産物に相補的なアンチセンスヌクレオチドを作成して活性を弱化させることにより行われてもよい。
【0048】
本出願におけるポリペプチド活性の「強化」とは、ポリペプチドの活性を内在性活性に比べて向上させることを意味する。前記強化は、活性化(activation)、上方調節(up-regulation)、過剰発現(overexpression)、向上(increase)などと混用される。ここで、活性化、強化、上方調節、過剰発現、向上には、本来なかった活性を示すようになることや、内在性活性又は改変前の活性に比べて活性が向上することが全て含まれる。前記「内在性活性」とは、自然要因又は人為的要因により遺伝的に変異して形質が変化する場合に、形質変化の前の親株又は非改変微生物が本来有していた特定ポリペプチドの活性を意味する。これは、「改変前の活性」と混用される。ポリペプチドの活性が内在性活性に比べて「強化」、「上方調節」、「過剰発現」又は「向上」するとは、形質変化の前の親株又は非改変微生物が本来有していた特定ポリペプチドの活性及び/又は濃度(発現量)に比べて向上することを意味する。
【0049】
前記強化は、外来ポリペプチドの導入により達成してもよく、内在性ポリペプチドの活性強化及び/又は濃度(発現量)増加により達成してもよい。前記ポリペプチドの活性が強化されたか否かは、当該ポリペプチドの活性の程度、発現量、又は当該ポリペプチドから生産される産物の量の増加により確認することができる。
【0050】
前記ポリペプチドの活性の強化には、当該分野で周知の様々な方法を適用することができ、標的ポリペプチドの活性を改変前の微生物より強化できるものであればいかなるものでもよい。具体的には、分子生物学における通常の方法であり、当該技術分野における通常の知識を有する者に周知の遺伝子工学及び/又はタンパク質工学を用いたものであるが、これらに限定されるものではない(例えば、非特許文献15、17など)。
【0051】
具体的には、本出願のポリペプチド活性の強化は、1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数を増加させること、2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子の発現調節領域を活性が強力な配列に置換すること、3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写産物の開始コドンもしくは5’UTR領域をコードする塩基配列を改変すること、4)ポリペプチド活性が強化されるように前記ポリペプチドのアミノ酸配列を改変すること、5)ポリペプチド活性が強化されるように前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を改変すること(例えば、ポリペプチド活性が強化されるように改変されたポリペプチドをコードするように前記ポリペプチド遺伝子のポリヌクレオチド配列を改変すること)、6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリペプチドもしくはそれをコードする外来ポリヌクレオチドを導入すること、7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドンを最適化すること、8)ポリペプチドの三次構造を分析し、露出部分を選択して改変すること、もしくは化学的に修飾すること、又は9)前記1)~8)から選択される2つ以上の組み合わせにより行われるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0052】
より具体的には、前記1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数を増加させることは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主に関係なく複製されて機能するベクターを宿主細胞内に導入することにより行われる。あるいは、当該ポリペプチドをコー
ドするポリヌクレオチドを宿主細胞内の染色体に1コピー又は2コピー以上導入することにより行われてもよい。前記染色体への導入は、宿主細胞内の染色体に前記ポリヌクレオチドを挿入することのできるベクターを宿主細胞内に導入することにより行われるが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子の発現調節領域(又は発現調節配列)を活性が強力な配列に置換することは、例えば前記発現調節領域の活性がさらに強化されるように、欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより配列上の変異を発生させるか、より高い活性を有する配列に置換することにより行われる。前記発現調節領域には、特にこれらに限定されるものではないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写及び翻訳の終結を調節する配列などが含まれる。例えば、本来のプロモーターを強力なプロモーターに置換することにより行われるが、これに限定されるものではない。
【0054】
公知の強力なプロモーターの例としては、CJ1~CJ7プロモーター(特許文献3)、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、gapAプロモーター、SPL7プロモーター、SPL13(sm3)プロモーター(特許文献4)、O2プロモーター(特許文献5)、tktプロモーター、yccAプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
前記3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写産物の開始コドンもしくは5’UTR領域をコードする塩基配列を改変することは、例えば内在性開始コドンに比べてポリペプチド発現率が高い他の開始コドンをコードする塩基配列に置換することにより行われるが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記4)及び5)のアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を改変することは、ポリペプチドの活性が強化されるように、前記ポリペプチドのアミノ酸配列又は前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより配列上の変異を発生させるか、より高い活性を有するように改良されたアミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列、又は活性が向上するように改良されたアミノ酸配列もしくはポリヌクレオチド配列に置換することにより行われるが、これらに限定されるものではない。具体的には、前記置換は、相同組換えによりポリヌクレオチドを染色体に挿入することにより行われるが、これに限定されるものではない。ここで、用いられるベクターは、染色体に挿入されたか否かを確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。前記選択マーカーについては前述した通りである。
【0057】
前記6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリヌクレオチドを導入することは、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示すポリペプチドをコードする外来ポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入することにより行われる。前記外来ポリヌクレオチドは、前記ポリペプチドと同一/類似の活性を示すものであれば、その由来や配列はいかなるものでもよい。前記導入は、公知の形質転換方法を当業者が適宜選択して行うことができ、宿主細胞内で前述したように導入したポリヌクレオチドが発現することにより、ポリペプチドが生成されてその活性が向上する。
【0058】
前記7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドンを最適化することは、宿主細胞内で転写又は翻訳が増加するように、内在ポリヌクレオチドのコドンを最適化するか、宿主細胞内で最適化された転写、翻訳が行われるように、外来ポリヌクレオチドのコドンを最適化することにより行われる。
【0059】
また、前記8)ポリペプチドの三次構造を分析し、露出部分を選択して変形すること、もしくは化学的に修飾することは、例えば分析しようとするポリペプチドの配列情報を既知のタンパク質の配列情報が保存されているデータベースと比較し、配列の類似性の程度に応じて鋳型タンパク質の候補を決定し、それを基に構造を確認し、改変又は化学的に修飾する露出部分を選択して改変又は修飾することにより行われる。
【0060】
このようなポリペプチド活性の強化は、対応するポリペプチドの活性又は濃度、発現量を野生型や改変前の微生物で発現するポリペプチドの活性又は濃度に比べて向上させるか、当該ポリペプチドから生産される産物の量を増加させることにより行われるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本出願の微生物において、ポリヌクレオチドの一部又は全部の改変は、(a)微生物中の染色体導入用ベクターを用いた相同組換え、もしくは遺伝子はさみ(engineered nuclease, e.g., CRISPR-Cas9)を用いたゲノム編集、並びに/又は(b)紫外線や放射線などの光及び/もしくは化学物質処理により誘導することができるが、これらに限定されるものではない。前記遺伝子の一部又は全部の改変方法には、DNA組換え技術による方法が含まれる。例えば、標的遺伝子と相同性のあるヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列又はベクターを前記微生物に導入して相同組換え(homologous recombination)を起こすことにより遺伝子の一部又は全部の欠失が行われる。この導入されるヌクレオチド配列又はベクターには、優性選択マーカーが含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
本出願のベクターとは、好適な宿主内で標的ポリペプチドを発現させることができるように、好適な発現調節領域(又は発現調節配列)に作動可能に連結された前記標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含むDNA産物を意味する。前記発現調節領域には、転写を開始するプロモーター、その転写を調節するための任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を調節する配列が含まれる。ベクターは、好適な宿主細胞内に形質転換されると、宿主ゲノムに関係なく複製又は機能することができ、ゲノム自体に組み込まれる。
【0063】
本出願に用いられるベクターは、特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知の任意のベクターが用いられる。通常用いられるベクターの例としては、天然状態又は組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクター又はコスミドベクターとしては、pWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、Charon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしては、pDZ系、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系、pET系などを用いることができる。具体的には、pDZ、pDC、pDCM2、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。
【0064】
例えば、細胞内染色体導入用ベクターにより、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体内に挿入することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば相同組換え(homologous recombination)により行うことができるが、これに限定されるものではない。前記染色体に導入されたか否かを確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。前記選択マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選択、すなわち標的核酸分子が挿入されたか否かを確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性、表面ポリペプチドの発現などの選択可能表現型を付与するマーカーが用いられる。選択剤(selective agent)で処理した環境においては、選択マーカーを発現する細胞のみ生存するか、異なる表現形質を示すので、形質転換された細胞を選択することができる。
【0065】
本出願における「形質転換」とは、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞又は微生物内に導入することにより、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドを発現させることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現するものであれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、いかなるものでもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、標的ポリペプチドをコードするDNA及び/又はRNAを含むものである。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現するものであれば、いかなる形態で導入されるものでもよい。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自ら発現する上で必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されるものでもよい。通常、前記発現カセットは、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含む。前記発現カセットは、自己複製可能な発現ベクター形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
また、前記「作動可能に連結」されたものとは、本出願の標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するプロモーター配列と前記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されたものを意味する。
【0067】
本出願の微生物は、VKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化された微生物であってもよく、VKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化されるようにベクターにより遺伝的に改変された微生物(例えば、組換え微生物)であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記ベクターについては前述した通りである。
【0068】
本出願の微生物は、L-グルタミン酸生産能を有する微生物であってもよい。
【0069】
本出願の微生物は、自然にL-グルタミン酸生産能を有する微生物であってもよく、L-グルタミン酸生産能のない親株に、VKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化されてL-グルタミン酸生産能が付与された微生物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
例えば、本出願の組換え微生物は、VKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化されるようにベクターにより形質転換され、VKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化された微生物であって、VKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化されてL-グルタミン酸を生産する微生物であればいかなるものでもよい。
【0071】
本出願の目的上、本出願の組換え微生物は、天然の野生型微生物、又はVKORタンパク質もしくはそれをコードするポリヌクレオチドを含んでL-グルタミン酸を生産する微生物において、前記VKORタンパク質もしくはそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化され、前記天然の野生型微生物、又はVKORタンパク質もしくはそれをコードするポリヌクレオチドを含んでL-グルタミン酸を生産する微生物に比べて、L-グルタミン酸生産能が向上した微生物であるが、これらに限定されるものではない。例えば、前記L-グルタミン酸生産能が向上したか否かを比較する対象菌株であって、VKORタンパク質が不活性化されていない非改変微生物は、L-グルタミン酸生産菌株として知られるodhA遺伝子が欠損したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869菌株、L-グルタミン酸生産NTG変異菌株として知られるコリネバクテリウム・グルタミカムBL2菌株(KFCC11074,特許文献6)であるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
一例
として、前記生産能が向上した組換え菌株は、変異前の親株又は非改変微生物のL-グルタミン酸生産能に比べて、約1%以上、具体的には約1%以上、約2.5%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約14.3%以上、約20%以上、約28.6%以上、約30%以上、約31.9%以上、約33.3%以上、約37.7%以上、約40%以上、約42.9%以上、約46.3%以上、約50%以上又は約52.4%以上(上限値に特に制限はなく、例えば約200%以下、約150%以下、約100%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下又は約15%以下である)向上したものであるが、変異前の親株又は非改変微生物の生産能に比べて、+値の増加量を示すものであればいかなるものでもよい。他の例として、前記生産能が向上した微生物は、変異前の親株又は非改変微生物に比べて、L-グルタミン酸生産能が約1.01倍以上、約1.02倍以上、約1.03倍以上、約1.05倍以上、約1.06倍以上、約1.07倍以上、約1.08倍以上、約1.09倍以上、約1.1倍以上、約1.14倍以上、約1.28倍以上、約1.32倍以上、約1.33倍以上、約1.37倍以上、約1.43倍以上、約1.46倍以上又は約1.52倍以上(上限値に特に制限はなく、例えば約10倍以下、約5倍以下、約3倍以下又は約2倍以下である)向上したものであるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本出願における「非改変微生物」とは、微生物に自然に発生し得る突然変異を含む菌株を除外するものではなく、野生型菌株もしくは天然菌株自体、又は自然要因もしくは人為的要因により遺伝的に変異して形質が変化する前の菌株を意味する。例えば、前記非改変微生物とは、本明細書に記載されたVKORタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化されていないか、不活性化される前の菌株を意味する。前記「非改変微生物」は、「改変前の菌株」、「改変前の微生物」、「非変異菌株」、「非改変菌株」、「非変異微生物」又は「基準微生物」と混用される。
【0074】
本出願の他の例として、本出願の微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singulare)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)又はコリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)であり、具体的にはコリネバクテリウム・グルタミカムであるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
さらに他の例として、本出願の組換え微生物は、L-グルタミン酸生合成経路内のタンパク質の一部の活性がさらに強化されるか、L-グルタミン酸分解経路内のタンパク質の一部の活性がさらに不活性化されることにより、L-グルタミン酸生産能が強化された微生物であってもよい。
【0076】
具体的には、本出願の微生物は、OdhAタンパク質がさらに不活性化されるか、odhA遺伝子がさらに欠損した微生物であってもよい。より具体的には、本出願の微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869においてOdhAタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム・グルタミカム、前記コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869においてodhA遺伝子が欠損した微生物であってもよい。前記OdhAタンパク質は、NCBI Sequence ID WP_060564343.1のアミノ酸配列(配列番号32)を含むものであり、前記odhA遺伝子は、NCBI GenBank BBD29_06050の塩基配列を含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
しかし、前記OdhAタンパク質の不活性化又はodhA遺伝子の欠損は一例であり、これらに限定されるものではなく、本出願の微生物は、様々な公知のL-グルタミン酸生合成経路のタンパク質活性が強化された微生物や、分解経路のタンパク質活性が不活性化された微生物であってもよい。
【0078】
本出願の他の態様は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物を培地で培養するステップを含むL-グルタミン酸生産方法を提供する。
【0079】
本出願のL-グルタミン酸生産方法は、VKORタンパク質もしくはそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化された微生物、又はVKORタンパク質もしくはそれをコードするポリヌクレオチドが不活性化されるようにベクターにより遺伝的に改変されたコリネバクテリウム属微生物を培地で培養するステップを含んでもよい。
【0080】
本出願における「培養」とは、本出願の微生物を適宜調節した環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当該技術分野で公知の好適な培地と培養条件で行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば選択される微生物に応じて容易に調整して用いることができる。具体的には、前記培養は、回分、連続及び/又は流加培養であるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
本出願における「培地」とは、本出願の微生物を培養するために必要な栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水をはじめとする栄養物質や発育因子などを供給する。具体的には、本出願の微生物の培養に用いられる培地及び他の培養条件は、通常の微生物の培養に用いられるものであればいかなるものでもよく、好適な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有する通常の培地中で好気性条件下にて温度、pHなどを調節して本出願の微生物を培養することができる。
【0082】
具体的には、コリネバクテリウム属微生物の培養培地は非特許文献18に開示されている。
【0083】
本出願における前記炭素源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトースなどの炭水化物、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などの有機酸、グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのアミノ酸などが挙げられる。また、デンプン加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米糠、キャッサバ、バガス、トウモロコシ浸漬液などの天然の有機栄養源を用いることができ、具体的には、グルコースや殺菌した前処理糖蜜(すなわち、還元糖に変換した糖蜜)などの炭水化物を用いることができ、その他適量の炭素源であればいかなるものでも用いることができる。これらの炭素源は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源と、グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのアミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類又はその分解生成物、脱脂大豆ケーキ又はその分解生成物などの有機窒素源とを用いることができる。これらの窒素源は、単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
前記リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム又はそれらに相当するナトリウム含有塩などが挙げられる。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどを用いることができ、それ以外に、アミノ酸、ビタミン及び/又は好適な前駆体などを用いることができる。これらの構成成分又は前駆体は、培地に回分式又は連続式で添加することができる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0086】
また、本出願の微生物の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などの化合物を培地に好適な方式で添加することにより、培地のpHを調整することができる。さらに、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。さらに、培地の好気状態を維持するために、培地中に酸素又は酸素含有気体を注入してもよく、嫌気及び微好気状態を維持するために、気体を注入しなくてもよく、窒素、水素又は二酸化炭素ガスを注入してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本出願の培養において、培養温度は20~45℃、具体的には25~40℃に維持し、約10~160時間培養するが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本出願の培養により生産されたL-グルタミン酸は、培地中に分泌されるか、細胞内に残留する。
【0089】
本出願のL-グルタミン酸生産方法は、本出願の微生物を準備するステップ、前記微生物を培養するための培地を準備するステップ、又はそれらの組み合わせ(任意の順序,in any order)を、例えば前記培養するステップの前にさらに含んでもよい。
【0090】
本出願のL-グルタミン酸生産方法は、前記培養に用いた培地(培養が行われた培地)又は培養した微生物からL-グルタミン酸を回収するステップをさらに含んでもよい。前記回収するステップは、前記培養するステップの後にさらに含んでもよい。
【0091】
前記回収は、本出願の微生物の培養方法、例えば回分、連続、流加培養方法などに応じて、当該技術分野で公知の好適な方法を用いて目的とするL-グルタミン酸を回収(collect)するものであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLC又はそれらの組み合わせが用いられ、当該分野で公知の好適な方法を用いて培地又は微生物から目的とするL-グルタミン酸を回収することができる。
【0092】
また、本出願のL-グルタミン酸生産方法は、精製ステップをさらに含んでもよい。前記精製は、当該技術分野で公知の好適な方法により行うことができる。例えば、本出願のL-グルタミン酸生産方法が回収ステップと精製ステップの両方を含む場合、前記回収ステップと前記精製ステップは、順序に関係なく連続的又は非連続的に行ってもよく、同時に又は1つのステップとして統合して行ってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本出願の方法におけるVKORタンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、微生物などについては前述した通りである。
【0094】
本出願のさらに他の態様は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物、それを培養した培地、又はそれらの組み合わせを含むL-グルタミン酸生産用組成物を提供する。
【0095】
本出願の組成物は、L-グルタミン酸生産用組成物に通常用いられる任意の好適な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
本出願のさらに他の態様は、VKORタンパク質を不活性化するステップを含む、コリネバクテリウム属微生物
の製造方法を提供する。
【0097】
本出願のさらに他の態様は、VKORタンパク質が不活性化されたコリネバクテリウム属微生物のL-グルタミン酸生産用途を提供する。
【0098】
前記VKORタンパク質、不活性化、コリネバクテリウム属微生物などについては前述した通りである。
【実施例
【0099】
以下、実施例を挙げて本出願をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本出願を例示する好ましい実施形態にすぎず、本出願がこれらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されていない技術的な事項は、本出願の技術分野又は類似技術分野における熟練した技術者が十分に理解し、容易に実施することのできるものである。
【実施例1】
【0100】
トランスポゾンを用いたランダム突然変異ライブラリーの作製 実施例1-1:野生型コリネバクテリウム・グルタミカム由来L-グルタミン酸生産能を有するコリネバクテリウム・グルタミカム菌株の作製 野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869由来L-グルタミン酸生産能を有する菌株を作製するために、先行技術文献(非特許文献19)に基づいてodhA遺伝子を欠損させたコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhA菌株を作製した。
【0101】
具体的には、odhA遺伝子欠損のために、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869の染色体DNAを鋳型とし、配列番号3と配列番号4、配列番号5と配列番号6のプライマーセットを用いて、odhA遺伝子の上流(Upstream)領域及び下流(Downstream)領域をPCRにより得た。ポリメラーゼとしてはSolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCR増幅条件は、95℃で5分間の変性後、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃で60秒間の重合を30サイクル行い、次いで72℃で5分間の重合反応を行うものとした。
【0102】
増幅したodhAの上流及び下流領域、並びにSmaI制限酵素で切断した染色体形質転換用ベクターpDCM2(特許文献7)をギブソンアセンブリ(非特許文献20)方法でクローニングすることにより組換えベクターを得て、pDCM2-△odhAと命名した。クローニングは、ギブソンアセンブリ試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合し、その後50℃で1時間保存することにより行った。
【0103】
作製したpDCM2-△odhAベクターを野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でodhA遺伝子を欠損させた菌株を得た。遺伝子欠損の有無は、配列番号7及び配列番号8を用いたPCRとゲノムシーケンシングにより確認し、作製した菌株をATCC13869△odhAと命名した。
【0104】
ここで用いたプライマー配列を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
実施例1-2:トランスポゾンを用いたランダム突然変異ライブラリーの作製 L-グルタミン酸生産能が向上した菌株を得るために、次の方法でベクターライブラリーを作製した。
【0107】
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhAを親株とし、EZ-Tn5TM <R6Kγori/KAN-2>Tnp TransposomeTM Kit(Epicentre)を用いて得たプラスミドをエレクトロポレーション(非特許文献21)により形質転換し、カナマイシン(25mg/l)を含む複合平板培地に塗抹して約5,000個のコロニーを確保した。 <複合平板培地(pH7.0)> グルコース10g,ペプトン10g,牛肉抽出物5g,酵母抽出物5g,ブレインハートインフュージョン(Brain Heart Infusion)18.5g,NaCl 2.5g,尿素2g,ソルビトール91g,寒天20g(蒸留水1リットル中)
【実施例2】
【0108】
トランスポゾンを用いたランダム突然変異ライブラリーのスクリーニング 実施例1-2で確保した約5,000個のコロニーをそれぞれ300μLの次の選択培地に接種し、96ディープウェルプレート(96-deep well plate)にて37℃、1000rpmで約48時間培養した。 <選択培地(pH7.0)> 原糖5%,1Mリン酸緩衝液(pH8.0)100ml,大豆粕加水分解物(HSM, hydrolysed soybean meal)0.096%,硫酸アンモニウム2.25%,リン酸二水素カリウム0.1%,硫酸マグネシウム0.04%,硫酸鉄10mg/L,チアミン塩酸塩0.2mg/L,ビオチン0.3mg/L(蒸留水1L中)
【0109】
培養終了後に、YSI(YSI 2900 Biochemistry Analyzer)によりL-グルタミン酸を測定した。親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhAと比較して高いL-グルタミン酸値を示す変異株として10個のコロニーを選択した。その他のコロニーは、親株として用いたコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhA菌株と同等又は低下したL-グルタミン酸値を示した。
【0110】
前述したように選択した10種の菌株を上記と同様に再び培養し、最終的に親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhA菌株と比較してL-グルタミン酸生産能が向上した上位1種の突然変異株ATCC13869△odhA/mt-8を選択した。
【実施例3】
【0111】
選択した突然変異株におけるL-グルタミン酸生産能向上の原因解明 実施例2で選択したATCC13869△odhA/mt-8を対象に、トランスポゾンのランダムな挿入により欠損した遺伝子をメーカーのマニュアル及びKitのプライマー1(配列番号9)及びプライマー2(配列番号10)により分析した結果、米国国立衛生研究所の遺伝子バンク(NIH Genbank)に報告されている塩基配列に基づいて、配列番号2のポリヌクレオチド配列を含む遺伝子(BBD29_04485)が不活性化されていることが確認された。
【0112】
ここで用いたプライマー配列を表2に示す。
【0113】
【表2】
【実施例4】
【0114】
VKORタンパク質不活性化のための組換えベクターの作製 実施例4-1:VKORタンパク質をコードするBBD29_04485遺伝子欠損のための組換えベクターの作製 実施例3で確認したように、コリネバクテリウム属菌株の染色体上でVKORタンパク質をコードするBBD29_04485遺伝子(配列番号2)を欠損させるとL-グルタミン酸の生産能が向上するか否かを確認するために、遺伝子欠損組換えベクターを作製した。
【0115】
そのために、まず前記遺伝子の欠損のための断片を作製すべく、配列番号11~14のプライマーを合成した。
【0116】
具体的には、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869の染色体DNAを鋳型とし、配列番号11と配列番号12、配列番号13と配列番号14のプライマーセットを用いて、BBD29_04485遺伝子断片をPCRにより得た。ポリメラーゼとしてはSolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCR増幅条件は、95℃で5分間の変性後、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃で60秒間の重合を30サイクル行い、次いで72℃で5分間の重合反応を行うものとした。
【0117】
増幅した遺伝子断片、及びSmaI制限酵素で切断した染色体形質転換用ベクターpDCM2をギブソンアセンブリ方法でクローニングすることにより組換えベクターを得て、pDCM2-△BBD29_04485と命名した。クローニングは、ギブソンアセンブリ試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合し、その後50℃で1時間保存することにより行った。
【0118】
ここで用いたプライマー配列を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
実施例4-2:VKORタンパク質をコードするBBD29_04485の開始コドン変更のための組換えベクターの作製 コリネバクテリウム属菌株の染色体上でBBD29_04485遺伝子の開始コドンをそれぞれTTG及びCTGに変更するとL-グルタミン酸の生産能が向上するか否かを確認するために、まず開始コドン変更組換えベクターを作製した。
【0121】
そのために、まず前記遺伝子の開始コドン変更のための断片を作製すべく、配列番号15~20のプライマーを合成した。
【0122】
具体的には、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869の染色体DNAを鋳型とし、配列番号15と配列番号16、配列番号17と配列番号18、配列番号15と配列番号19、及び配列番号18と配列番号20のプライマーセットを用いて、遺伝子断片をPCRにより得た。ポリメラーゼとしてはSolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCR増幅条件は、95℃で5分間の変性後、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃で60秒間の重合を30サイクル行い、次いで72℃で5分間の重合反応を行うものとした。
【0123】
増幅した遺伝子断片、及びSmaI制限酵素で切断した染色体形質転換用ベクターpDCM2をギブソンアセンブリ方法でクローニングすることにより組換えベクターを得て、それぞれpDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1t)ベクター、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1c)と命名した。クローニングは、ギブソンアセンブリ試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合し、その後50℃で1時間保存することにより行った。
【0124】
ここで用いたプライマー配列を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
実施例4-3:VKORタンパク質をコードするBBD29_04485のリボソーム結合部位(Ribosome binding site, RBS)変更のための組換えベクターの作製 コリネバクテリウム属菌株の染色体上でBBD29_04485遺伝子を弱化させるために、前記遺伝子の上流の35個の塩基対(base pair)と、オープンリーディングフレーム(open reading frame, ORF)のN末端から35個の塩基対とを含む塩基配列から、シャイン・ダルガノ配列(Shine-Dalgano, SD)を予測した。
【0127】
前記塩基配列に基づいて、RBS Calculator(github)によりRBS1、RBS2、RBS3の計3種のリボソーム結合部位候補群を予測した。その結果、前記3種のリボソーム結合部位候補群は、従来のリボソーム結合部位に比べてそれぞれ発現が50%、20%、10%に減少するものと予測された。
【0128】
予測されたリボソーム結合部位を表5に示す。
【0129】
【表5】
【0130】
コリネバクテリウム属菌株の染色体上でBBD29_04485のリボソーム結合部位を変更して遺伝子を弱化させるとL-グルタミン酸の生産能が向上するか否かを確認するために、前述したように予測したリボソーム結合部位3種のそれぞれに対するリボソーム結合部位変更組換えベクターを作製した。
【0131】
そのために、まず前記遺伝子のリボソーム結合部位変更のための断片を作製すべく、配列番号21~28のプライマーを合成した。
【0132】
具体的には、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869の染色体DNAを鋳型とし、配列番号21と配列番号22、配列番号23と配列番号24、配列番号21と配列番号25、配列番号24と配列番号26、配列番号21と配列番号27、及び配列番号24と配列番号28のプライマーセットを用いて、遺伝子断片をPCRにより得た。ポリメラーゼとしてはSolgTM Pfu-X DNAポリメラーゼを用い、PCR増幅条件は、95℃で5分間の変性後、95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃で60秒間の重合を30サイクル行い、次いで72℃で5分間の重合反応を行うものとした。
【0133】
増幅した遺伝子断片、及びSmaI制限酵素で切断した染色体形質転換用ベクターpDCM2はギブソンアセンブリ方法でクローニングすることにより組換えベクターを得て、それぞれpDCM2-△RBS(wt)::RBS1ベクター、pDCM2-△RBS(wt)::RBS2ベクター、及びpDCM2-△RBS(wt)::RBS3ベクターと命名した。クローニングは、ギブソンアセンブリ試薬と各遺伝子断片を計算されたモル数で混合し、その後50℃で1時間保存することにより行った。
【0134】
ここで用いたプライマー配列を表6に示す。
【0135】
【表6】
【実施例5】
【0136】
VKORタンパク質をコードするBBD29_04485が弱化した野生型コリネバクテリウム・グルタミカム由来L-グルタミン酸生産能を有する菌株の作製 実施例1で作製したATCC13869△odhA菌株を対象に、実施例4で作製したpDCM2-△BBD29_04485ベクター、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1t)ベクター、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1c)ベクター、pDCM2-△RBS(wt)::RBS1ベクター、pDCM2-△RBS(wt)::RBS2ベクター、及びpDCM2-△RBS(wt)::RBS3ベクターを導入してL-グルタミン酸生産能に及ぼす効果を確認した。
【0137】
まず、pDCM2-△BBD29_04485ベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhA菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でBBD29_04485遺伝子を欠損させた菌株を得た。
【0138】
相同組換えの上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅する配列番号29と配列番号30を用いたPCRとゲノムシーケンシングにより当該遺伝的操作を確認し、それをCA02-1624と命名した。
【0139】
次に、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1t)ベクター、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1c)ベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhA菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でBBD29_04485遺伝子の開始コドンをGTGからそれぞれTTG及びCTGに変更した菌株を得た。
【0140】
相同組換えの上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅する配列番号31と配列番号30を用いたPCRとゲノムシーケンシングにより当該遺伝的操作を確認し、それらをそれぞれCA02-1625、CA02-1630と命名した。
【0141】
次に、pDCM2-△RBS(wt)::RBS1ベクター、pDCM2-△RBS(wt)::RBS2ベクター、及びpDCM2-△RBS(wt)::RBS3ベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869△odhA菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でBBD29_04485遺伝子のリボソーム結合部位をそれぞれRBS1、RBS2、RBS3に変更した菌株を得た。
【0142】
相同組換えの上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅する配列番号31と配列番号30のプライマーを用いたPCRとゲノムシーケンシングにより当該遺伝的操作を確認し、それらをそれぞれCA02-1631、CA02-1632及びCA02-1633と命名した。
【0143】
ここで用いたプライマー配列を表7に示す。
【0144】
【表7】
【0145】
ATCC13869△odhA菌株を対照群とし、前述したように作製したCA02-1624、CA02-1625、CA02-1630、CA02-1631、CA02-1632及びCA02-1633菌株の計6種におけるL-グルタミン酸生産能を確認するために次の方法で培養した。
【0146】
種培地となる平板培地に前記菌株を接種し、30℃で20時間培養した。その後、次の生産培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに菌株を1白金耳接種し、30℃、200rpmで40時間振盪培養した。培養終了後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてL-グルタミン酸生産量を測定した。測定結果を表8に示す。 <種培地> グルコース1%,肉汁0.5%,ポリペプトン1%,塩化ナトリウム0.25%,酵母エキス0.5%,寒天2%,尿素0.2%,pH7.2 <生産培地> 原糖6%,炭酸カルシウム5%,硫酸アンモニウム2.25%,リン酸二水素カリウム0.1%,硫酸マグネシウム0.04%,硫酸鉄10mg/L,チアミン塩酸塩0.2mg/L,ビオチン50μg/L
【0147】
【表8】
【0148】
表8に示すように、野生型由来ATCC13869△odhA菌株に比べて、BBD29_04485遺伝子を欠損させたCA02-1624、BBD29_04485遺伝子の開始コドンをそれぞれTTG、CTGに弱化させたCA02-1625、CA02-1630、BBD29_04485遺伝子のリボソーム結合部位をそれぞれRBS1、RBS2及びRBS3に弱化させたCA02-1631、CA02-1632及びCA02-1633の全てにおいて、L-グルタミン酸の濃度が増加することが確認された。
【0149】
よって、具体的な手段に関係なく、VKORタンパク質の活性さえ不活性化されれば、L-グルタミン酸の生産能が強化されることが分かる。
【0150】
前記菌株のうち、CA02-1624は、ブダペスト条約上の受託機関である韓国微生物保存センターに2021年1月13日付けで
受託番号KCCM12928Pとして寄託した。
【実施例6】
【0151】
N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(N-Methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine, NTG)変異株コリネバクテリウム・グルタミカム菌株における、VKORタンパク質をコードするBBD29_04485の欠損効果の確認 野生型コリネバクテリウム属由来菌株以外に、L-グルタミン酸生産能が向上したNTG変異コリネバクテリウム属由来菌株においても前記遺伝子が同じ効果を発揮するか否か確認するために、L-グルタミン酸生産NTG変異菌株として知られるコリネバクテリウム・グルタミカムBL2菌株(KFCC11074,特許文献6)における、実施例5で確認した前記遺伝子の弱化効果を検証した。
【0152】
具体的には、実施例5においてL-グルタミン酸の濃度が40%以上増加したpDCM2-△BBD29_04485ベクター、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1c)ベクター、及びpDCM2-△RBS(wt)::RBS3ベクターの計3種をKFCC11074菌株に導入し、L-グルタミン酸生産能に及ぼす効果を確認した。
【0153】
まず、pDCM2-△BBD29_04485ベクターをKFCC11074菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でBBD29_04485遺伝子を欠損させた菌株を得た。
【0154】
相同組換えの上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅する配列番号29と配列番号30のプライマーを用いたPCRとゲノムシーケンシングにより当該遺伝的操作を確認し、それをCA02-1634と命名した。
【0155】
次に、pDCM2-△BBD29_04485::BBD29_04485(g1c)ベクターをKFCC11074菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でBBD29_04485遺伝子の開始コドンをGTGからCTGに変更した菌株を得た。
【0156】
相同組換えの上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅する配列番号31と配列番号30を用いたPCRとゲノムシーケンシングにより当該遺伝的操作を確認し、それをCA02-1635と命名した。
【0157】
次に、pDCM2-△RBS(wt)::RBS3ベクターをKFCC11074菌株にエレクトロポレーションにより形質転換し、その後2次交差過程を経て、染色体上でBBD29_04485遺伝子のリボソーム結合部位をRBS3に変更した菌株を得た。
【0158】
相同組換えの上流領域及び下流領域をそれぞれ増幅する配列番号31と配列番号30を用いたPCRとゲノムシーケンシングにより当該遺伝的操作を確認し、それをCA02-1636と命名した。
【0159】
KFCC11074菌株を対照群とし、作製したCA02-1634、CA02-1635、CA02-1636菌株の計3種におけるL-グルタミン酸生産能を確認するために次の方法で培養した。
【0160】
種培地となる平板培地に前記菌株を接種し、30℃で20時間培養した。その後、次の生産培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに菌株を1白金耳接種し、30℃、200rpmで40時間振盪培養した。培養終了後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてL-グルタミン酸生産量を測定した。測定結果を表9に示す。 <種培地> グルコース1%,肉汁0.5%,ポリペプトン1%,塩化ナトリウム0.25%,酵母エキス0.5%,寒天2%,尿素0.2%,pH7.2 <生産培地> 原糖6%,炭酸カルシウム5%,硫酸アンモニウム2.25%,リン酸二水素カリウム0.1%,硫酸マグネシウム0.04%,硫酸鉄10mg/L,チアミン塩酸塩0.2mg/L,ビオチン500μg/L
【0161】
【表9】
【0162】
同表に示すように、KFCC11074菌株に比べて、BBD29_04485遺伝子を欠損させたCA02-1634において、L-グルタミン酸の濃度が約46.4%増加することが確認された。また、BBD29_04485遺伝子の開始コドンをCTGに弱化させたCA02-1635において、L-グルタミン酸の濃度が約37.7%増加することが確認された。さらに、BBD29_04485遺伝子のリボソーム結合部位をRBS3に弱化させたCA02-1636において、L-グルタミン酸の濃度が約31.9%増加することが確認された。
【0163】
以上の説明から、本出願の属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
【0164】
【配列表】
2024521482000001.app
【国際調査報告】