(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】蒸し生姜抽出物又はこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンを有効成分として含む変形性関節症の予防、改善又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240524BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240524BHJP
A61K 36/9068 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/36 20060101ALN20240524BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20240524BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20240524BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P19/02
A61K36/9068
A61K31/12
A61K47/36
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/686 Z
A61K125:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577563
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2022007917
(87)【国際公開番号】W WO2022265281
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077699
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358279
【氏名又は名称】ジェネンセル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENENCELL CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】514136462
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ-インダストリー コーオペレイション グループ オブ キュン ヒー ユニヴァーシティ
【住所又は居所原語表記】KYUNGHEE UNIV. GLOBAL CAMPUS, 1732, DEOGYEONG-DAERO, GIHEUNG-GU, YONGIN-SI, GYEONGGI-DO 17104, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】カン ス チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム テ ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヘリン
(72)【発明者】
【氏名】パク デ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム イン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】カン トン ホ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨン グン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ジョン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ペ ジェ ウ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018MD08
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
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4B063QR66
4B063QS10
4B063QS14
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4B063QX02
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC09
4C076CC40
4C076EE38
4C076FF02
4C088AB81
4C088AC13
4C088BA08
4C088BA11
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4C088BA37
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4C088CA08
4C088CA11
4C088CA17
4C088CA28
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA96
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA04
4C206CB14
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA96
(57)【要約】
本発明は、蒸し生姜抽出物又はこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンを有効成分として含む変形性関節症の予防、改善、又は治療用組成物に関し、本発明に係る蒸し生姜抽出物又はこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、炎症性サイトカイン発現抑制、軟骨組織回復、軟骨生成、又は軟骨分解抑制などの効果を示し、炎症性サイトカイン及びMMP生成に関与するI-κB又はNF-κBタンパク質の発現を抑制するので、変形性関節症を予防、改善、又は治療するための機能性食品組成物、薬学的組成物などに有用に用いられることが期待される。
【選択図】
図5a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその食品学的に許容可能な塩を有効成分として含む、変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項2】
前記食品組成物は健康機能性食品組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項3】
前記蒸し生姜抽出物は、水、C
1乃至C
4の低級アルコール、n-ヘキサン、エチルアセテート、アセトン、アセトニトリル、n-ブチルアセテート、1,3-ブチレングリコール、メチレンクロライド、及びこれらの混合溶媒からなる群から選ばれた一つの溶媒で抽出されることを特徴とする、請求項1に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項4】
前記蒸し生姜抽出物は、1-デヒドロ-6-ジンジャージオン、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオール、6-パラドール、8-パラドール、1-デヒドロ-8-ジンジャージオン、及びこれらの食品学的に許容可能な塩からなる群から選ばれた一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項5】
前記1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、蒸し生姜抽出物の乾燥重量に対して0.001重量%乃至10重量%の容量で含まれることを特徴とする、請求項4に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項6】
前記組成物は、インターロイキン-1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、及びプロスタグランジンE
2(PGE
2)からなる群から選ばれる一つ以上の発現を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項7】
前記組成物は、軟骨組織回復、軟骨生成、又は軟骨分解抑制活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項8】
前記組成物は、I-κB又は核因子(NF)-κBタンパク質の発現を減少させることを特徴とする、請求項1に記載の変形性関節症の予防又は改善用食品組成物。
【請求項9】
蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、変形性関節症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項10】
前記蒸し生姜抽出物は、1-デヒドロ-6-ジンジャージオン、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオール、6-パラドール、8-パラドール、1-デヒドロ-8-ジンジャージオン、及びこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選ばれた一つ以上を含むことを特徴とする、請求項9に記載の変形性関節症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項11】
下記の段階を含む、蒸し生姜抽出物を含む変形性関節症の予防、改善、又は治療用組成物の製造方法:
(a)生姜を洗浄し、85℃乃至105℃で1時間乃至3時間にわたって蒸熟させる段階;
(b)蒸熟された生姜を40℃乃至60℃で30時間乃至50時間にわたって乾燥させる段階;
(c)前記乾燥させた蒸し生姜を溶媒に入れ、75℃乃至95℃で10時間乃至20時間にわたって抽出する段階;
(d)前記抽出した蒸し生姜をろ過し、10℃乃至65℃の温度で減圧濃縮する段階;及び
(e)前記減圧濃縮した蒸し生姜抽出物をろ過し、噴霧乾燥させることによって蒸し生姜抽出粉末を製造する段階。
【請求項12】
蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩を含む組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、変形性関節症の治療又は改善方法。
【請求項13】
蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩を含む組成物の変形性関節症の予防、改善、又は治療のための使用。
【請求項14】
蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩の変形性関節症の予防、改善、又は治療に用いられる薬剤の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸し生姜抽出物又はこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンを有効成分として含む変形性関節症の予防、改善、又は治療用組成物に関する。
【0002】
本出願は、2021年6月15日に出願された韓国特許出願第10-2021-0077699号に基づいた優先権を主張し、該当の出願の明細書及び図面に開示された全ての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
変形性関節症は、骨関節炎とも言い、関節部位の物理的刺激を通じてコンドロサイト(chondrocyte)と関節膜(synovial fluid)で発現されるサイトカインと軟骨分解酵素によって関節内軟骨が持続的に分解及び損傷することによって関節面の運動機能が消失し、不安定性が誘発される状態を称する。変形性関節症は、65歳以上の年齢での有病率が、男性の場合は約60%で、女性の場合は約70%である最も一般的な形態の関節炎である。変形性関節症のための現在の治療選択肢は制限的であり、これらは、単純鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)又は関節内(IA)注射グルココルチコイド及びヒアルロン酸(HA)製剤による対症的治療を含む。非薬理学的な尺度は、身体運動及び体重損失から関節洗浄液、究極的には外科的な関節置換に至るまでの範囲である。
【0004】
関節炎の治療に多く使用するイブプロフェン、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤(Nonsteroidal anti-inflammatory drugs、NSAIDs)は、速効性があるという長所を有するが、胃腸管の損傷を誘発し、長期間の使用に制約を有する。また、関節の健康と関連した個別認定型及び告示型素材は22個であって、そのほとんどは、中国、インドなどの海外で原材料を輸入したり、海外で開発された素材を輸入して販売しており、韓国産原材料を活用した関節健康機能性素材の開発が必要な実情である。
【0005】
一方、生姜(Zingiber officinale Roscoe)は、ショウガ科に属する多年生熱帯植物であって、全世界に約47属、約1,400種があり、主にインドとマレー諸島などの熱帯に分布し、古代からアジアの暖かい地域で栽培されたが、現在は、主に熱帯と温帯地域の高温地帯で栽培されており、韓国では、ショウガ属のミョウガ、ハナショウガ属のハナショウガ、ハナミョウガ属のハナミョウガが南部地方に自生している。
【0006】
生姜は、韓国で食用可能な食品として登載されており、米国、ヨーロッパなどの海外でも古くから食用してきた素材であって、主要成分としては、6-ジンゲロール(gingerol)、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオール(shogaol)、6-パラドール(paradol)、8-パラドール、1-デヒドロ(dehydro)-6-ジンジャージオン(gingerdione)、及び1-デヒドロ-8-ジンジャージオンなどがある。食品原料としては、根茎(乾姜)、根、幹、葉を食用可能であることが食品公典に登載されており、GLP機関では、単回投与毒性(齧齒類及び非齧齒類)、遺伝毒性3種(復帰突然変異、染色体異常、小核試験)及び13週の反復投与毒性(齧齒類)試験を行うことによって安全性を確認したことがある。
【0007】
東医宝鑑などの漢方では、根茎を乾かしたものを薬剤として使用しており、これは、風邪による悪寒、発熱、頭痛、嘔吐、咳、痰を治療し、食中毒による腹痛、下痢などの症状に飲用された。また、生姜抽出物は、抗酸化、脳神経保護、胃腸管の不便さ改善などに対する活性が知られており、生姜の主成分であるジンゲロール及びショウガオールは、抗酸化、抗癌、抗菌、神経保護効能以外にも、糖尿、血圧及びコレステロール低下などの代謝症侯群に効果があるものとして知られている。
【0008】
本発明者等は、生姜を蒸熟させて得た蒸し生姜抽出物を用いて様々な生理活性を分析することによって、変形性関節症の予防、改善、又は治療に対する天然物由来の機能性素材としての開発を試みた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、既存の関節炎治療剤の副作用を改善し、優れた変形性関節症の改善効果を示す素材を開発するために研究した結果、一般に高麗人参を紅参に作る過程に含まれる方法として、人体に有益な成分を生成し、吸収率を改善し、長期保存を可能にする蒸熟過程を生姜に適用することによって蒸し生姜抽出物を製造し、その変形性関節症改善の効果を確認したので、これに基づいて本発明を完成した。
【0010】
そこで、本発明の目的は、蒸し生姜抽出物を有効成分として含む変形性関節症の予防又は改善用食品組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、蒸し生姜抽出物を有効成分として含む変形性関節症の予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、蒸し生姜抽出物を用いた変形性関節症の予防、改善、又は治療用組成物の製造方法を提供することにある。
【0013】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されなく、言及していない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような目的を達成するために、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン(1-dehydro-6-gingerdione);又はその食品学的に許容可能な塩を有効成分として含む、変形性関節症の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、変形性関節症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0016】
本発明の一具現例として、前記食品組成物は健康機能性食品組成物であり得るが、これに制限されない。
【0017】
本発明の他の具現例として、前記蒸し生姜抽出物は、水、C1乃至C4の低級アルコール、n-ヘキサン、エチルアセテート、アセトン、アセトニトリル、n-ブチルアセテート、1,3-ブチレングリコール、メチレンクロライド、及びこれらの混合溶媒からなる群から選ばれた一つの溶媒で抽出されるものであり得るが、これに制限されない。
【0018】
本発明の更に他の具現例として、前記蒸し生姜抽出物は、1-デヒドロ-6-ジンジャージオン、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオール、6-パラドール、8-パラドール、1-デヒドロ-8-ジンジャージオン、これらの食品学的に許容可能な塩、及びこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選ばれた一つ以上を含み得るが、これに制限されない。
【0019】
本発明の更に他の具現例として、前記1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、蒸し生姜抽出物の乾燥重量に対して0.001重量%乃至10重量%の容量で含まれ得るが、これに制限されない。
【0020】
本発明の更に他の具現例として、前記組成物は、IL-1β、TNF-α、IFN-γ、及びプロスタグランジンE2(PGE2)からなる群から選ばれる一つ以上の発現を減少させ得るが、これに制限されない。
【0021】
本発明の更に他の具現例として、前記組成物は、軟骨組織回復、軟骨生成、又は軟骨分解抑制活性を有し得るが、これに制限されない。
【0022】
本発明の更に他の具現例として、前記組成物は、I-κB又は核因子(NF)-κBタンパク質の発現を減少させ得るが、これに制限されない。
【0023】
また、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩を含む組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、変形性関節症の治療又は改善方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩を含む組成物の変形性関節症の予防、改善、又は治療のための使用を提供する。
【0025】
また、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩の変形性関節症の予防、改善、又は治療に用いられる薬剤の製造のための使用を提供する。
【0026】
また、本発明は、下記の段階を含む、蒸し生姜抽出物を含む変形性関節症の予防、改善、又は治療用組成物の製造方法を提供する:
【0027】
(a)生姜を洗浄し、85℃乃至105℃で1時間乃至3時間にわたって蒸熟させる段階;
【0028】
(b)蒸熟させた生姜を40℃乃至60℃で30時間乃至50時間にわたって乾燥させる段階;
【0029】
(c)前記乾燥させた蒸し生姜を溶媒に入れ、75℃乃至95℃で10時間乃至20時間にわたって抽出する段階;
【0030】
(d)前記抽出した蒸し生姜をろ過し、10℃乃至65℃の温度で減圧濃縮する段階;及び
【0031】
(e)前記減圧濃縮した蒸し生姜抽出物をろ過し、噴霧乾燥させることによって蒸し生姜抽出粉末を製造する段階。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る蒸し生姜抽出物又はこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、炎症性サイトカイン発現抑制、軟骨組織回復、軟骨生成、又は軟骨分解抑制などの効果を示し、炎症性サイトカイン及びMMP生成に関与するI-κB又はNF-κBタンパク質の発現を抑制するので、変形性関節症を予防、改善、又は治療するための機能性食品組成物、薬学的組成物などに有用に用いられることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一具現例に係る生姜抽出物と蒸し生姜抽出物の1-デヒドロ-6-ジンジャージオンの変化を示した図である。
【
図2a】本発明の一具現例に係る蒸し生姜抽出物の処理による細胞毒性(左側の図面)及びNO生成抑制効果(右側の図面)を確認した図である。
【
図2b】本発明の一具現例に係る蒸し生姜抽出物の各有効成分の処理による細胞毒性を確認した図である。
【
図2c】本発明の一具現例に係る蒸し生姜抽出物の各有効成分の処理によるNO生成変化を確認した図である。
【
図3a】本発明の一具現例に係る蒸し生姜抽出物及び1-デヒドロ-6-ジンジャージオン処理によるIL-1βのmRNAの発現変化を確認した図である。
【
図3b】本発明の一具現例に係る蒸し生姜抽出物及び1-デヒドロ-6-ジンジャージオン処理によるIL-1βのタンパク質の発現変化を確認した図である。
【
図4】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルの誘導及び蒸し生姜抽出物の投与過程を図式化して示した図である。
【
図5a】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルにおいて、蒸し生姜抽出物の投与による軟骨組織の構造変化をマイクロ(Micro)-CTイメージで確認した図である。
【
図5b】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルにおいて、蒸し生姜抽出物の投与による軟骨組織の形態学的指標を定量化して示した図である。
【
図6】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルの血液において、蒸し生姜抽出物の投与によるIL-1β、TNF-α、及びPGE
2の発現変化を確認した図である。
【
図7】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルの軟骨において、蒸し生姜抽出物の投与によるIL-1β、IFN-γ、及びTNF-αの発現変化を確認した図である。
【
図8】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルの軟骨において、蒸し生姜抽出物の投与によるTIMP1、TIMP2、MMP-9、及びCOL-2の発現変化を確認した図である。
【
図9】本発明の一具現例に係る変形性関節症動物モデルの軟骨において、蒸し生姜抽出物の投与によるI-κB及びNF-κBタンパク質の発現変化を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施例では、生姜の蒸熟処理によって蒸し生姜抽出物を製造した(実施例1を参照)。
【0035】
本発明の他の実施例では、蒸し生姜抽出物から分離された6-ショウガオール、6-ジンゲロール、及び1-デヒドロ-6-ジンジャージオンのうち、特に1-デヒドロ-6-ジンジャージオンの含量が生姜抽出物に比べて大きく増加することを確認し、1-デヒドロ-6-ジンジャージオンを指標成分として設定した(実施例2を参照)。
【0036】
本発明の一実験例では、in vitro上で蒸し生姜抽出物及びこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンが低い細胞毒性を示し、高いNO生成及びIL-1β発現抑制などの効果を示すことを確認した(実験例1を参照)。
【0037】
本発明の他の実験例では、MIA(Mono-iodoacetate)で誘導した変形性関節症動物モデルの血液又は軟骨組織において、蒸し生姜抽出物が炎症性サイトカインの発現を減少させ、軟骨組織回復、軟骨生成、及び軟骨分解抑制活性を示し、軟骨における変形性関節症の進行によって炎症性サイトカイン及びMMP生成に関与するI-κB及びNF-κBタンパク質の発現を減少させるという効果を示すことを確認した(実験例2を参照)。
【0038】
そこで、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその食品学的に許容可能な塩を有効成分として含む、変形性関節症の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0039】
本発明において、「蒸熟」とは、一般に熱処理を通じて蒸して煮る過程を言い、一定の温度で湿熱した空気を提供して熟成させる方法であって、人参を紅参に製造するときに多く使用されている。蒸熟は、長期保管及び流通を目的とする加熱処理方法の一つであって、漢方では修治と言い、漢方薬の加熱処理を通じて毒性を低下させ、副作用を最小化することによって治療効果を高め、加工や切片に便利に使用しようとする方法の一つとして使用してきた。
【0040】
本発明において、「抽出物」は、前記蒸し生姜の抽出処理によって得られる抽出液、前記抽出液の希釈液や濃縮液、前記抽出液を乾燥させて得られる乾燥物、前記抽出液の粗精製物や精製物、又はこれらの混合物などのように、抽出液自体及び抽出液を用いて形成可能な全ての剤形の抽出物を含む。本発明の一実施例によると、前記蒸し生姜抽出物は、乾燥粉末の形態であり得るが、これに制限されない。
【0041】
本発明の前記蒸し生姜の抽出物において、前記蒸し生姜の抽出は、特に制限されなく、当該技術分野で通常使用する方法によって行うことができる。前記抽出方法の非制限的な例としては、熱水抽出法、超音波抽出法、ろ過法、還流抽出法などを挙げることができ、これらは、単独で行われたり、2種以上の方法を併用して行われ得る。
【0042】
本発明において、前記蒸し生姜を抽出するときに使用される抽出溶媒の種類は、特に制限されなく、天然物から抽出物を抽出する当業界で公知となった通常の方法によって、すなわち、通常の温度、圧力の条件下で通常の溶媒を使用して抽出することができる。例えば、本発明において、前記蒸し生姜抽出物は、水、C1乃至C4の低級アルコール、n-ヘキサン、エチルアセテート、アセトン、アセトニトリル、n-ブチルアセテート、1,3-ブチレングリコール、メチレンクロライド、及びこれらの混合溶媒からなる群から選ばれた一つの溶媒で抽出することができ、本発明の一実施例によると、エタノールを溶媒として使用して抽出できるが、これに制限されない。
【0043】
本発明において、前記エタノールを溶媒として使用して蒸し生姜を抽出する場合、例えば、10%乃至100%のエタノール、10%乃至90%のエタノール、10%乃至80%のエタノール、10%乃至70%のエタノール、20%乃至90%のエタノール、20%乃至80%のエタノール、20%乃至70%のエタノール、30%乃至90%のエタノール、30%乃至80%のエタノール、30%乃至70%のエタノール、40%乃至90%のエタノール、40%乃至80%のエタノール、40%乃至70%のエタノール、50%乃至90%のエタノール、50%乃至80%のエタノール、50%乃至70%のエタノール、60%乃至90%のエタノール、60%乃至80%のエタノール、60%乃至70%のエタノール、65%乃至75%のエタノール、又は70%のエタノールを使用できるが、これに制限されない。
【0044】
前記製造された抽出物は、後でろ過したり、濃縮又は乾燥過程を行うことによって溶媒を除去することができ、ろ過、濃縮及び乾燥を全て行うことができる。例えば、ろ過は、ろ過紙を用いたり、減圧ろ過器を用いて行うことができ、濃縮は減圧濃縮器、乾燥は噴霧乾燥、凍結乾燥法などを用いて行えるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本発明において、「変形性関節症」とは、骨の関節面を覆っている関節軟骨の摩耗によって軟骨の下にある骨が露出し、関節周辺の滑液膜に炎症が生じることによって痛症と変形が発生する疾患であって、頻繁に骨関節炎(osteoarthritis)とも呼ばれ、関節疾患のうち最も多く発生する疾患である。
【0046】
本発明において、前記蒸し生姜抽出物は、1-デヒドロ-6-ジンジャージオン、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオール、6-パラドール、8-パラドール、1-デヒドロ-8-ジンジャージオン、これらの食品学的に許容可能な塩、及びこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群から選ばれた一つ以上を含み得るが、これに制限されない。
【0047】
本発明において、「1-デヒドロ-6-ジンジャージオン」は、分子式C17H22O4の化合物として、下記の化学式1の構造を有するフェノール化合物の一種であって、分子量は290.4である(CAS No.76060-35-0)。本発明において、前記1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、蒸し生姜から分離されたものであり得るが、これに制限されなく、当業界で公知となった方法で化学的に合成したり、又は市販される物質であり得る。
【0048】
【0049】
本発明において、前記1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、蒸し生姜抽出物の指標成分であって、その含量は、蒸し生姜抽出物の乾燥重量に対して0.001重量%以上であってもよく、例えば、0.001重量%乃至10重量%、0.001重量%乃至5重量%、0.001重量%乃至3重量%、0.001重量%乃至1重量%、0.001重量%乃至0.5重量%、0.001重量%乃至0.3重量%、0.005重量%乃至10重量%、0.005重量%乃至5重量%、0.005重量%乃至3重量%、0.005重量%乃至1重量%、0.005重量%乃至0.5重量%、0.005重量%乃至0.3重量%、0.01重量%乃至10重量%、0.01重量%乃至5重量%、0.01重量%乃至3重量%、0.01重量%乃至1重量%、0.01重量%乃至0.5重量%、0.01重量%乃至0.3重量%、0.1重量%乃至10重量%、0.1重量%乃至5重量%、0.1重量%乃至3重量%、0.1重量%乃至1重量%、0.1重量%乃至0.5重量%、0.1重量%乃至0.2重量%、0.1重量%乃至0.15重量%、又は0.118重量%の容量で蒸し生姜抽出物に含まれ得るが、これに制限されない。
【0050】
本発明において、「指標成分」とは、原料中に含有されている化学的に究明された成分のうち品質管理の目的で定めた成分を言い、生薬を確認するときに基準になる物質である。
【0051】
本発明において、「食品学的に許容可能な塩」とは、食品学的に許容される有機酸、無機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。
【0052】
本発明において、「食品」とは、栄養素を一つ又はそれ以上含有している天然物又は加工品を意味し、好ましくは、一定程度の加工工程を経て直接食べられる状態になったものを意味し、通常、健康機能性食品、飲料、食品添加剤及び飲料添加剤などを全て含む。
【0053】
本発明において、前記食品組成物は健康機能性食品組成物であり得るが、これに制限されない。
【0054】
本発明において、前記「健康機能性食品(functional food)」とは、特定の保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同一の用語であって、栄養供給以外にも、生体調節機能が効率的に表れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味し、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、粉末、液剤、片状(flake)、ペースト、シロップ剤、ゲル、ゼリー、バー(bar)、又はフィルムの剤形として製造され得る。ここで、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対する栄養素の調節、生理学的作用などの保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0055】
本発明において、前記蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその食品学的に許容可能な塩は、変形性関節症の予防又は改善用食品組成物に有効成分として含まれ得る。
【0056】
本発明において、「有効成分」は、直接又は間接にその成分自体が有している薬理作用が製剤の効能・効果を示すと期待される物質又は物質群であって、その成分は、全体の組成物の乾燥重量に対して1重量%以上含まれてもよく、例えば、10重量%乃至100重量%、20重量%乃至100重量%、30重量%乃至100重量%、40重量%乃至100重量%、50重量%乃至100重量%、60重量%乃至100重量%、70重量%乃至100重量%、80重量%乃至100重量%、90重量%乃至100重量%、10重量%乃至80重量%、20重量%乃至80重量%、30重量%乃至80重量%、40重量%乃至80重量%、50重量%乃至80重量%、60重量%乃至80重量%、又は70重量%乃至80重量%含まれていてもよいが、これに制限されない。
【0057】
本発明の蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその食品学的に許容可能な塩を食品添加物として使用する場合、これをそのまま添加したり、他の食品又は食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適宜使用することができる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康又は治療的処置)によって適宜決定され得る。一般に、食品又は飲料の製造時、本発明の蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその食品学的に許容可能な塩は、原料に対して15重量%以下、又は10重量%以下の量で添加され得る。しかし、健康及び衛生を目的としたり、又は健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の面で何ら問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量でも使用され得る。
【0058】
前記食品の種類には特別な制限がない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常の意味での健康機能食品を全て含む。
【0059】
本発明に係る健康飲料組成物は、通常の飲料のように、様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖及び果糖などのモノサッカライド、マルトース及びスクロースなどのジサッカライド、デキストリン及びシクロデキストリンなどのポリサッカライド、及びキシリトール、ソルビトール及びエリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の組成物100mL当たり、一般に約0.01g~0.20g、又は約0.04g~0.10gである。
【0060】
前記以外にも、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果汁、果汁入り飲料及び野菜汁飲料を製造するための果肉を含有することができる。このような成分は、独立的に又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率は、それほど重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01重量部~0.20重量部の範囲で選ばれることが一般的である。
【0061】
本発明の他の様態として、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、変形性関節症の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0062】
本発明において、「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。
【0063】
本発明の更に他の様態として、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩を含む組成物を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、変形性関節症の治療又は改善方法を提供する。
【0064】
本発明の更に他の様態として、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩を含む組成物の変形性関節症の予防、改善、又は治療のための使用を提供する。
【0065】
本発明の更に他の様態として、本発明は、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;又はその薬学的又は食品学的に許容可能な塩の変形性関節症の予防、改善、又は治療に用いられる薬剤の製造のための使用を提供する。
【0066】
本発明において、「予防」とは、変形性関節症の発病を抑制又は遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明に係る薬学的組成物の投与によって変形性関節症及びそれによる代謝異常症が好転したり有利に変更される全ての行為を意味し、「改善」とは、本発明に係る組成物の投与によって変形性関節症と関連したパラメーター、例えば、症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0067】
本発明に係る薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質、及び制御放出添加剤からなる群から選ばれた一つ以上であり得る。
【0068】
本発明に係る薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、又はエアロゾルなどの外用剤などの形態に剤形化して使用され得る。また、前記外用剤は、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤又はカタプラズマ剤などの剤形を有することができる。
【0069】
本発明に係る薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油を挙げることができる。
【0070】
製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。
【0071】
本発明に係る錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤として、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、尿素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC 1928、HPMC 2208、HPMC 2906、HPMC 2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェルなどの賦形剤;ゼラチン、アラビアゴム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用され得、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、1-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼイン及びゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアゴム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、D-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸などの崩壊剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化食物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000、PEG 6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、DL-ロイシン、硬質無水ケイ酸などの滑沢剤;が使用され得る。
【0072】
本発明に係る液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用され得る。
【0073】
本発明に係るシロップ剤としては、白糖の溶液、他の糖類或いは甘味剤などが使用され得、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用され得る。
【0074】
本発明に係る乳剤としては、精製水が使用され得、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用され得る。
【0075】
本発明に係る懸濁剤としては、アカシア、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC 1828、HPMC 2906、HPMC 2910などの懸濁化剤が使用され得、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用され得る。
【0076】
本発明に係る注射剤としては、注射用蒸留水、0.9%の塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、PEG、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、不揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンなどの溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、尿素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドなどの溶解補助剤;弱酸及びその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基及びその塩(アンモニア及び酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの等張化剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミンテトラ酢酸などの安定剤;ナトリウムビサルファイト0.1%、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンナトリウムビサルファイトなどの硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムなどの無痛化剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムなどの懸濁化剤;を含むことができる。
【0077】
本発明に係る坐剤としては、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツイン又はスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポル、マスポル-15、ネオスポスタル-エン、パラマウンド-B、スポシール(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)などの基剤が使用され得る。
【0078】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクなどの潤滑剤も使用される。
【0079】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどが使用され得る。
【0080】
本発明に係る薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット・リスク比で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定され得る。
【0081】
本発明に係る薬学的組成物は、個別治療剤で投与されたり、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与されてもよく、単一又は多重投与されてもよい。上記の各要素を全て考慮した上で、副作用なしに最小限の量で最大効果を得られる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野で通常の技術者によって容易に決定され得る。
【0082】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与され得る。投与の全ての方式は予想され得るが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髓の周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口又は鼻を介した噴霧、皮膚投与、経皮投与などによって投与され得る。
【0083】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0084】
本発明において、蒸し生姜抽出物;これから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオン;その食品学的に許容可能な塩;又はその薬学的に許容可能な塩は、1日に200mg乃至600mg、250mg乃至600mg、300mg乃至600mg、350mg乃至600mg、400mg乃至600mg、450mg乃至600mg、200mg乃至550mg、200mg乃至500mg、250mg乃至550mg、250mg乃至500mg、300mg乃至550mg、300mg乃至500mg、350mg乃至550mg、350mg乃至500mg、400mg乃至550mg、400mg乃至500mg、450mg乃至550mg、450mg乃至500mg、又は480mgの用量で、6週乃至18週、6週乃至16週、6週乃至14週、8週乃至18週、8週乃至16週、8週乃至14週、10週乃至18週、10週乃至16週、10週乃至14週、又は12週間にわたって個体に投与できるが、これに制限されない。
【0085】
本発明において、「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非ヒトである霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0086】
本発明において、「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0087】
本発明の更に他の様態として、本発明は、下記の段階を含む、蒸し生姜抽出物を含む変形性関節症の予防、改善、又は治療用組成物の製造方法を提供する:
【0088】
(a)生姜を洗浄し、85℃乃至105℃で1時間乃至3時間にわたって蒸熟させる段階;
【0089】
(b)蒸熟された生姜を40℃乃至60℃で30時間乃至50時間にわたって乾燥させる段階;
【0090】
(c)前記乾燥させた蒸し生姜を溶媒に入れ、75℃乃至95℃で10時間乃至20時間にわたって抽出する段階;
【0091】
(d)前記抽出した蒸し生姜をろ過し、10℃乃至65℃の温度で減圧濃縮する段階;及び
【0092】
(e)前記減圧濃縮した蒸し生姜抽出物をろ過し、噴霧乾燥させることによって蒸し生姜抽出粉末を製造する段階。
【0093】
本発明において、前記(a)段階での蒸熟は、85℃乃至105℃、90℃乃至105℃、95℃乃至100℃、又は97℃で1時間乃至3時間、1時間乃至2.5時間、1.5時間乃至3時間、1.5時間乃至2.5時間、又は2時間にわたって行えるが、これに制限されない。
【0094】
本発明において、前記(b)段階での乾燥は、30時間以上行うことができ、例えば、40℃乃至60℃、45℃乃至60℃、45℃乃至55℃、又は50℃で30時間乃至50時間、30時間乃至45時間、30時間乃至40時間、又は30時間乃至35時間にわたって行えるが、これに制限されない。
【0095】
本発明において、前記(c)段階での抽出は、75℃乃至95℃、75℃乃至90℃、80℃乃至95℃、80℃乃至90℃、又は85℃で10時間乃至20時間、10時間乃至17時間、12時間乃至20時間、12時間乃至17時間、又は15時間にわたって行えるが、これに制限されない。
【0096】
本発明において、前記(d)段階での減圧濃縮は、65℃以下の温度で行うことができ、例えば、10℃乃至65℃、20℃乃至65℃、30℃乃至65℃、40℃乃至65℃、50℃乃至65℃、又は60℃乃至65℃で行うことができ、20brix以上、例えば、20brix乃至100brix、20brix乃至80brix、20brix乃至60brix、又は20乃至40brixになるように減圧濃縮できるが、これに制限されない。
【0097】
本発明において、前記(e)段階は、減圧濃縮した蒸し生姜抽出物をろ過した後、蒸し生姜抽出物及び炭水化物を1:0.5乃至2、1:0.5乃至1.5、1:0.5乃至1、1:1乃至2、1:1乃至1.5、又は1:1の乾燥重量比で混合する段階をさらに含むことができ、本発明の一実施例によると、前記炭水化物はデキストリンであり得るが、これに制限されない。
【0098】
本発明において、前記(e)段階は、蒸し生姜抽出物及び炭水化物の混合物を80℃乃至100℃、85℃乃至100℃、80℃乃至95℃、85℃乃至95℃、又は90℃で10分乃至20分、10分乃至17分、12分乃至17分、又は15分間殺菌する段階をさらに含み得るが、これに制限されない。
【0099】
本発明において、前記(e)段階において、噴霧乾燥は、入口(inlet)の温度が180℃乃至200℃、180℃乃至195℃、185℃乃至200℃、185℃乃至195℃、又は190℃で、出口(outlet)の温度が80℃乃至100℃、80℃乃至95℃、85℃乃至100℃、85℃乃至95℃、又は90℃である乾燥器で行えるが、これに制限されない。
【0100】
以下、本発明の理解を促進するために、好ましい実施例及び実験例を提示する。しかし、下記の実施例及び実験例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎなく、下記の実施例及び実験例によって本発明の内容が限定されることはない。
【実施例】
【0101】
実施例1.蒸し生姜抽出物の製造
【0102】
1-1.蒸し生姜の製造
【0103】
生の生姜を購入し、その根茎部位を使用しており、精製水で5分~7分間洗浄した後、洗浄された生姜を蒸熟器に入れ、97℃で2時間にわたって蒸熟させた。その後、蒸熟された生姜を乾燥器に入れ、50℃で30時間以上乾燥させることによって蒸し生姜を製造した。
【0104】
1-2.蒸し生姜抽出物の製造
【0105】
前記実施例1-1で製造した蒸し生姜の原材料に70%の酒精(エタノール)を15倍加え、85℃で15時間にわたって抽出した。その後、これをろ過した後、65℃以下の低温で20brix以上になるように減圧濃縮し、これを再びろ過した。その後、蒸し生姜濃縮液をデキストリンと混合し、90℃で15分間殺菌した後、入口の温度190℃、出口の温度90℃の乾燥器で噴霧乾燥させることによって蒸し生姜抽出粉末を製造した。
【0106】
上記のような蒸し生姜抽出粉末の製造過程及び条件を下記の表1に示した。
【0107】
【0108】
実施例2.蒸し生姜抽出物からの化合物の分離
【0109】
前記実施例1で製造した蒸し生姜抽出物からn-ヘキサンと蒸留水を活用して溶媒系統分画を行った。収得したn-ヘキサン分画物からSiO2、ODS、Sephadex LH-20などの多様なレジンを活用してオープンカラムクロマトグラフィーを繰り返し行うことによって、主要成分である1-デヒドロ-6-ジンジャージオン、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオール、6-パラドール、8-パラドール、及び1-デヒドロ-8-ジンジャージオンを収得した。
【0110】
また、下記の条件のように、蒸し生姜抽出物に対して液体クロマトグラフィー(High Pressure Liquid Chromatography、HPLC)分析を行った。
【0111】
蒸し生姜抽出物と生姜抽出物を80%のメタノールに溶かし、10,000ppmの溶液に製造した後、0.22μmのメンブレンフィルター(Woongki Science Co.,Ltd.,ソウル、韓国)で精製することによってサンプルを製造した。分析に使用されたHPLCとしては、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)1260シリーズを使用し、分析用カラムとしては、Cadenza CD-C18(3μm、250mm×4.6mm)を使用した。このとき、測定波長は370nm、試料注入量は10μL、溶媒溶出速度は0.4mL/minとし、分析溶媒としては、ギ酸(formic acid)が0.1%含有された水(A)及びアセトニトリル(B)を使用し、溶媒の組成を次のように変化させながら60分間観測を行った。
【0112】
(B)基準、30%(0分)→30%(5分)→55%(10分)→55%(13分)→80%(20分)→80%(23分)→100%(30分)→100%(60分)。
【0113】
その結果、
図1に示したように、蒸し生姜抽出物と生姜抽出物とを比較したとき、特徴的に1-デヒドロ-6-ジンジャージオンの含量が大きく増加することを確認し、1-デヒドロ-6-ジンジャージオンを指標成分として設定した。蒸し生姜中の指標成分である1-デヒドロ-6-ジンジャージオンの含量を確認するために、標準品を活用して検量曲線を作成し、作成された検量曲線に基づいて、蒸し生姜抽出物に対して1-デヒドロ-6-ジンジャージオンが1.18mg/g含有されていることを確認した。生姜抽出物に対する1-デヒドロ-6-ジンジャージオンの含量は0.54mg/gであった。
【0114】
[実験例]
【0115】
実験例1.In vitro上での抗炎症効果の確認
【0116】
1-1.細胞生存率及びNO生成抑制効果の確認
【0117】
マウス大食細胞であるRAW 264.7細胞において、生姜抽出物(GE)、蒸し生姜抽出物(GGE)、及び蒸し生姜の各有効成分を用いて細胞生存率及びNO生成抑制効果を確認した。
【0118】
細胞生存率は、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)を用いて確認した。生存細胞は、MTTをホルマザン(formazan)に変換することを用いて吸光度を測定するものであって、RAW 264.7細胞を96ウェル-プレートに1×104細胞/ウェルの濃度で接種した後、37℃、5%CO2条件のインキュベーターで24時間にわたって培養し、生姜抽出物(GE)及び蒸し生姜抽出物(GGE)を25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mLの濃度で処理し、蒸し生姜の各有効成分は1.3μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mLの濃度で処理し、24時間にわたって培養した後、5mg/mLのMTT溶液を10μLずつ添加し、これを2時間にわたって培養した。その後、培地上清液を除去し、DMSO 100μLを入れて溶解させた後、540nmで吸光度を測定した。
【0119】
NO生成抑制効果の確認のために、RAW 264.7細胞を96ウェル-プレートに1×104細胞/ウェルの濃度で接種した後、37℃、5%CO2条件のインキュベーターで24時間にわたって培養し、炎症誘導のためにLPS(lipopolysaccharide)を1μg/mLの濃度で2時間にわたって前処理した後、蒸し生姜抽出物を25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mLの濃度で処理し、蒸し生姜の各有効成分は1.3μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、20μg/mLの濃度で処理し、24時間にわたって培養した後、上清液を新しい96ウェル-プレートに50μLだけ移し、グリース試薬(Griess reagent)を50μL添加し、常温で20分間反応させた後、450nmで吸光度を測定した。
【0120】
その結果、
図2aに示したように、蒸し生姜抽出物の場合は、生姜抽出物に比べて細胞毒性が低く(左側の図面)、LPSによって誘導されたNO生成を抑制する効果を示すことを確認した(右側の図面)。
【0121】
また、
図2b及び
図2cに示したように、蒸し生姜の各有効成分のうち、特に指標成分である1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、低い細胞毒性を示しながら(
図2b)濃度依存的に高いNO生成抑制効果(
図2c)を示すことを確認した。
【0122】
1-2.IL-1β発現抑制効果の確認
【0123】
RAW 264.7細胞において、蒸し生姜抽出物(GGE)及び蒸し生姜の有効成分である1-デヒドロ-6-ジンジャージオン(6-GD)処理によるインターロイキン-1β(IL-1β)のmRNA及びタンパク質の発現を確認した。
【0124】
具体的には、RAW 264.7細胞を6ウェル-プレートに1×104細胞/ウェルで接種した後、LPSを1μg/mLの濃度で2時間にわたって前処理し、蒸し生姜抽出物を濃度別(50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL)に24時間にわたって処理した。トータルRNAは、TRIzol溶液を用いて抽出し、Nanodropを通じてRNAを定量した後、同量のRNAをcDNA合成キット(Takara、Japan)を用いてcDNAに合成した後、qRT-PCR(quantitative real time-PCR)を行った。
【0125】
実験に使用したプライマー配列は、下記の表2に示した。
【0126】
【0127】
また、インターロイキン-1β(IL-1β)のタンパク質発現を確認するために、RIPAバッファーを用いてタンパク質を抽出し、同量のタンパク質を12%のSDS-PAGEで電気泳動した後、ニトロセルロースメンブレン(nitrocellulose membrane)に移動(transfer)させた。その後、5%のスキムミルク(skim milk)で常温で1時間にわたってブロッキング(blocking)を行った後、IL-1βに対する1次抗体(Invirogen、USA)を4℃で一晩中反応させ、酵素、放射線物質、又は蛍光物質などが付着した2次抗体(HPR-conjugated rabbit、Cell Signaling、USA)を常温で1時間にわたって反応させた。1時間後、Lumi-Pico試薬でタンパク質を検出した。
【0128】
その結果、
図3a及び
図3bに示したように、蒸し生姜抽出物又は1-デヒドロ-6-ジンジャージオン処理によって炎症性サイトカインであるIL-1βのmRNA(
図3a)及びタンパク質(
図3b)の発現が減少することを確認した。
【0129】
実験例2.変形性関節症動物モデルでの効果の確認
【0130】
2-1.変形性関節症動物モデルの誘導及び蒸し生姜抽出物の投与
【0131】
5週齢のウィスター(Wistar)ラットの関節腔にMIA(Mono-iodoacetate)50μL(3mg/kg)を2週間にわたって投与し、変形性関節症を誘導した。
【0132】
その後、6週間にわたって生姜抽出物(200mg/kg)、蒸し生姜抽出物(50mg/kg、100mg/kg、200mg/kg)及び陽性対照群(PC)としてのセレコキシブ(10mg/kg、celecoxib)を経口投与し、マイクロ-CT分析、血液及び関節軟骨での関節構造及び炎症マーカーの分析を実施した。
【0133】
上記のような変形性関節症動物モデルの誘導及び蒸し生姜抽出物の投与過程は、
図4に図式化して示した。
【0134】
2-2.マイクロ-CT分析
【0135】
前記実験例2-1のMIA誘導変形性関節症動物モデルを用いて関節組織の構造変化を確認するために、マイクロ-CT撮影及び分析を実施した。
【0136】
その結果、
図5aに示したように、正常群(NC)に比べて、MIA誘導群の場合は、軟骨組織が破壊され、変形性関節症が誘導されたことを確認し、生姜抽出物(GE)、蒸し生姜抽出物(GGE)及びPC(celecoxib)投与群の場合は、正常群のレベルに軟骨組織が回復されることを確認することができた。
【0137】
また、
図5bに示したように、骨表面積(bone surface、BS)、骨表面密度(bone surface density、BS/TV)、及び骨梁数(trabecular number、Tb.N)は、MIAによって増加したが、生姜抽出物及び蒸し生姜抽出物の投与によって減少することを確認し、骨梁幅(trabecular thickness、Tb.Th)は、MIAによって減少したが、生姜抽出物及び蒸し生姜抽出物の投与によって増加することを確認した。特に、生姜抽出物に比べて、蒸し生姜抽出物投与群でさらに優れた軟骨組織回復効果が表れることを確認した。
【0138】
2-3.変形性関節症動物モデルの血液における炎症性サイトカイン発現の確認
【0139】
前記実験例2-1のMIA誘導変形性関節症動物モデルの血液において、炎症性サイトカインの発現を確認した。
【0140】
具体的には、MIA誘導変形性関節症動物に6週間にわたって生姜抽出物及び蒸し生姜抽出物を投与し、剖検前に節食した後、腹帯静脈から血液を採取し、4℃、12,000rpmで15分間遠心分離することによって血清を分離した。血中炎症性サイトカインの含量を測定するために、IL-1β、TNF-α、PGE2の含量をキット(R&D system、米国)に構成された物品で製造社の実験方法に合わせて反応させた後で測定した。
【0141】
その結果、
図6に示したように、MIA誘導変形性関節症動物モデルの血液において、炎症性サイトカインであるIL-1β、TNF-α、及びプロスタグランジンE
2(PGE
2)の発現は、蒸し生姜抽出物の処理によって有意に減少することを確認し、ここで、蒸し生姜抽出物の処理時、生姜抽出物を処理した場合に比べて炎症性サイトカインの発現減少効果がさらに高いことが分かった。
【0142】
2-4.変形性関節症動物モデルの軟骨における炎症性サイトカイン発現の確認
【0143】
前記実験例2-1のMIA誘導変形性関節症動物モデルの軟骨において、炎症性サイトカインの発現を確認した。
【0144】
具体的には、実験動物の膝関節軟骨組織を採取し、TRIzol試薬を用いてRNAを抽出した後、Nanodropを通じてRNAを定量し、同量のRNAをcDNA合成キット(Takara、Japan)を用いてcDNAに合成した後、qRT-PCRを行った。
【0145】
実験に使用したプライマー配列は、下記の表3に示した。
【0146】
【0147】
その結果、
図7に示したように、MIA誘導変形性関節症動物モデルの軟骨において、炎症性サイトカインであるIL-1β、IFN-γ、及びTNF-αの発現が蒸し生姜抽出物の処理によって有意に減少することを確認し、特に、IL-1β及びTNF-αの場合は、生姜抽出物を処理した場合に比べて発現減少効果がさらに高いことが分かった。
【0148】
2-5.変形性関節症動物モデルの軟骨における軟骨分解抑制及び生成効果の確認
【0149】
MIA誘導変形性関節症動物モデルの軟骨において、軟骨構成成分であるコラーゲンとゼラチンなどを分解するMMPs(Matrix metalloproteinases)、前記MMPsの作用を抑制するTIMP(tissue inhibitor of metalloproteinases)、及び軟骨組織の生成に関与するCOL-2(collagen typeII)の発現を確認した。
【0150】
具体的には、変形性関節症動物モデルの関節軟骨における軟骨分解抑制及び軟骨生成効果を確認するために、前記実験例2-4と同一の方法で実験動物の軟骨組織において、TRIzol試薬を用いてRNAを抽出し、Nanodropを通じてRNAを定量した後、同量のRNAをcDNA合成キット(Takara、Japan)を用いてcDNAに合成した後、qRT-PCRを用いて遺伝子の発現を確認した。
【0151】
実験に使用したプライマー配列は、下記の表4に示した。
【0152】
【0153】
その結果、
図8に示したように、MIA誘導変形性関節症動物モデルの軟骨において、生姜抽出物に比べて、蒸し生姜抽出物を処理したときに高いTIMP1及びTIMP2の発現増加、MMP-9の発現減少などの効果を確認しただけでなく、COL-2の発現が有意に増加することを確認した。
【0154】
これによって、本発明に係る蒸し生姜抽出物は、変形性関節症における軟骨の分解抑制及び軟骨生成効果を示すことを確認した。
【0155】
2-6.変形性関節症動物モデルの軟骨におけるI-κB及びNF-κB発現の確認
【0156】
MIA誘導変形性関節症動物モデルの軟骨において、変形性関節症の進行によって炎症性サイトカイン及びMMP生成に関与するI-κB及びNF-κBタンパク質の発現を確認した。
【0157】
具体的には、IκB及びNF-κBの発現を確認するために、RIPAバッファーを用いて実験動物の軟骨組織からタンパク質を抽出し、同量のタンパク質を12%のSDS-PAGEで電気泳動した後、ニトロセルローズメンブレンに移動させた。その後、5%のスキムミルクで常温で1時間にわたってブロッキングを行った後、phospho-IκB(Santa Cruz、USA)、IκB(Santa Cruz、USA)、phospho-NF-κB(Cell Signaling、USA)、及びNF-κB(Cell Signaling、USA)に対する1次抗体を4℃で一晩中反応させ、酵素、放射線物質、又は蛍光物質などが付着した2次抗体(HPR-conjugated rabbit又はmouse、Cell Signaling、USA)を常温で1時間にわたって反応させた。1時間後、Lumi-Pico試薬でタンパク質を検出して定量化した。
【0158】
その結果、
図9に示したように、MIA誘導変形性関節症動物モデルの軟骨において、生姜抽出物に比べて、蒸し生姜抽出物を処理したときにI-κB及びNF-κBのタンパク質発現がさらに有意に減少することを確認し、これによって、本発明に係る蒸し生姜抽出物は、NF-κB減少による抗炎症作用によって変形性関節症改善効果を示すことが分かった。
【0159】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解できるだろう。そのため、以上で記述した各実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る蒸し生姜抽出物又はこれから分離された1-デヒドロ-6-ジンジャージオンは、変形性関節症を予防、改善、又は治療するための機能性食品組成物、薬学的組成物などに有用に用いられることが期待されるので、産業上の利用可能性がある。
【配列表】
【国際調査報告】