(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】SMMAコポリマーおよびSBCブロックコポリマーを含む高い透明度および延性のある成形用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/14 20060101AFI20240524BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C08L25/14
C08L53/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577589
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2022066170
(87)【国際公開番号】W WO2022263445
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516008383
【氏名又は名称】イネオス・スタイロリューション・グループ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュ・コクラン
(72)【発明者】
【氏名】ジャレット・アール・ローレット
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC07W
4J002BP01X
4J002EE038
4J002EF058
4J002EH028
4J002EJ016
4J002EN008
4J002EP008
4J002EU176
4J002EW066
4J002FD036
4J002FD056
4J002FD076
4J002FD097
4J002FD178
4J002GC00
4J002GG00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GQ00
(57)【要約】
高い透明度および延性のある成形用組成物であって:(a)44~64wt.-%のビニル芳香族モノマーと、36~56wt.-%のメタクリル酸メチルとから製造される、71~90wt.-%のランダムコポリマー(a);(b)ジエンの割合が47~67wt.-%である、ビニル芳香族モノマーから製造された少なくとも2つのハードブロックSと、ジエンから製造された少なくとも1つのソフトブロックB、および/またはジエンおよびビニル芳香族モノマーから製造された少なくとも1つのソフトブロックB/Sとを含む、10~29wt.-%のビニル芳香族-ジエンブロックコポリマー(b);(c)0~5wt.-%の添加剤および/または加工助剤(c)、を含む高い透明度および延性のある成形用組成物は、高い硬度、耐熱性および剛性を有し、家電に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用組成物であって、成分(a)、(b)および(c)、
(a)44~64wt.-%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(a11)、特にスチレンと、36~56wt.-%のメタクリル酸メチル(a12)とから製造される、71~90wt.-%の少なくとも1種のランダムコポリマー(a);
(b)ブロックコポリマー(b)全体に基づくジエンの割合が47~67wt.-%である、ビニル芳香族モノマー、特にスチレンから製造された少なくとも2つの、好ましくは末端の、ハードブロックSと、ジエン、特にブタジエンから製造された少なくとも1つのソフトブロックB、および/またはジエンおよびビニル芳香族モノマー、特にブタジエンおよびスチレンから製造された少なくとも1つのソフトブロックB/Sとを含む、10~29wt.-%の少なくとも1種のビニル芳香族-ジエンブロックコポリマー(b);
(c)0~5wt.-%の1つまたはそれ以上の添加剤および/または加工助剤(c)、
を含み、成分(a)、(b)および(c)の合計量は100wt.-%である、成形用組成物。
【請求項2】
75~88wt.-%、好ましくは78~85wt.-%の成分(a)と、
12~25wt.-%、好ましくは15~22wt.-%の成分(b)と、
0~5wt.-%、好ましくは0~3wt.-%の成分(c)と、
を含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項3】
73~80wt.-%の成分(a)と、
17~20wt.-%の成分(b)と、
0~3wt.-%の成分(c)と、
を含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項4】
73~80wt.-%の成分(a)と、
17~20wt.-%の成分(b)と、
0.1~3wt.-%の成分(c)と、
を含む、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項5】
成分(a)および(b)の屈折率(波長589.3nmにおける)の値の相違は0.01以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項6】
ランダムコポリマー(a)は、48~60wt.-%、好ましくは50~58wt.-%のビニル芳香族モノマー(b11)、特にスチレンと、40~52wt.-%、好ましくは42~50wt.-%のメタクリル酸メチル(b12)とから製造される、請求項1~5のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項7】
ビニル芳香族-ジエンブロックコポリマー(b)のジエンの割合は52~62wt.-%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項8】
成分(b)は、2つの末端ハードブロックS、および少なくとも1つのソフトブロックBおよび/または少なくとも1つのソフトブロックB/Sを有する直鎖状ブロックコポリマーである、請求項1~7のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項9】
成分(b)は、構造S-B-SまたはS-B/S-Sのスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである、請求項1~8のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項10】
成分(a)は連続相を形成し、その中に成分(b)が微細に分散している、請求項1~9のいずれか1項に記載の成形用組成物。
【請求項11】
成分(a)および(b)ならびに必要に応じて成分(c)は、好ましくは押出成形により溶融混合される、請求項1~10のいずれか1項に記載の成形用組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の成形用組成物から製造された成形物品。
【請求項13】
家庭用品、家電、熱成形包装およびブロー成形ボトルのための請求項1~10のいずれか1項に記載の成形用組成物、または請求項12に記載の成形物品の、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン-メチルメタクリレート(SMMA)コポリマーおよびスチレン-ブタジエン(SBC)ブロックコポリマーを含む成形用組成物に関する。これらの(熱可塑性)成形用組成物およびそれから得られる製品は、高い透明度、硬度、耐熱性および剛性を有する。本発明はまた、製造方法のためのプロセス、およびそれから製造される熱可塑性成形用組成物および成形物品、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン-ブタジエンブロックコポリマーは、スチレン-メチルメタクリレートコポリマーとのブレンドにおいて、良好な透明性および/または低いヘイズを維持しながら衝撃強度を得るための効果的な改質剤を提供することが長年知られている。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、SMMAコポリマー(MMA25~35wt.-%)とSBCのブレンドが記載されており、SBCはテーパー状、直鎖状または放射状、ジブロック(ビニル芳香族モノマー-共役ジエン)またはトリブロック(ビニル芳香族モノマー-共役ジエン-ビニル芳香族モノマー)の分子構造を有する。得られた材料の透明度およびヘイズのような光学的特性ならびに靭性(ノッチ付きアイゾット衝撃強度)のような機械的特性は、まだ改善が必要である。
【0004】
特許文献3は、48~67wt.-%のSMMAコポリマー(MMA含有量:10~35wt.-%)と、少なくとも2つの末端ビニル芳香族ポリマーブロックS1およびS2、ならびに少なくとも1つのランダムビニル芳香族/ジエンコポリマーブロック(B/S)を含む、33~52wt.-%の星形ビニル芳香族ジエンブロックコポリマー(ジエン含有量:15~50wt.-%)と、を含むポリマー組成物を開示している。前記組成物は、改善された靭性と透明度を示す。しかしながら、前記先行技術組成物の耐熱性および耐スクラッチ性(すなわち表面硬度)は、依然として改良の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US5,290,862
【特許文献2】US6,734,247
【特許文献3】WO2018/091513
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い透過率および透明度を維持しながら、高い表面硬度およびビカット軟化温度を有する、剛性および靭性の良好なバランスを有するSMMAコポリマーおよびSBCブロックコポリマーを含む成形用組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、改善された加工性(すなわち、押出成形プロセスにおいて)を有するSMMA/SBC成形用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、特許請求の範囲に記載の成形用組成物を提供することによって達成される。
【0008】
本発明の1つの態様は、成分(a)、(b)および(c):
(a)44~64wt.-%、好ましくは48~60wt.-%、より好ましくは50~58wt.-%のビニル芳香族モノマー(a11)、特にスチレンと、36~56wt.-%、好ましくは40~52wt.-%、より好ましくは42~50wt.-%のメタクリル酸メチル(a12)とから製造される、71~90wt.-%の少なくとも1種のランダムコポリマー(a);
(b)ブロックコポリマー全体に基づくジエンの割合が47~67wt.-%、好ましくは52~62wt.-%であるビニル芳香族モノマー、特にスチレンから製造された少なくとも2つのハードブロックS(好ましくは末端Sブロック)と、ジエンから製造された少なくとも1つのソフトブロックBおよび/またはジエンおよびビニル芳香族モノマーから製造された少なくとも1つのソフトブロックB/Sとを含む、10~29wt.-%の少なくとも1種のビニル芳香族-ジエンブロックコポリマー(b);
(c)0~5wt.-%の1つまたはそれ以上の添加剤および/または加工助剤(c)、
を含み(またはこれらからなり)、成分(a)、(b)および(c)の合計量は100wt.-%である、成形用組成物である。
【0009】
この書類において、wt.-%は質量パーセントを意味する。
【0010】
ランダムコポリマー(a)とは、ビニル芳香族モノマーとメタクリル酸メチルの重合単位の統計的分布を有するコポリマーを意味する。
【0011】
好ましくは、本発明による成形用組成物は、以下の量の成分(a)、(b)および(c)を含む(またはこれらからなる):
(a)75~88wt.-%、
(b)12~25wt.-%、
(c)0~5wt.-%。
【0012】
より好ましくは、本発明による成形用組成物は、以下の量の成分(a)、(b)および(c)を含む(またはこれらからなる):
(a)78~85wt.-%、
(b)15~22wt.-%、
(c)0~3wt.-%。
【0013】
特に好ましいのは、以下を含む(またはこれらからなる)本発明による成形用組成物である:
(a)73~80wt.-%、
(b)17~20wt.-%、
(c)0~3wt.-%。
【0014】
成分(c)が存在する場合、その最小量は通常0.1wt.-%である。
【0015】
好ましいのは、成分(a)が連続相を形成し、その中に成分(b)が微細に分散している、本発明による成形用組成物である。
【0016】
好ましいのは、成分(a)および(b)の屈折率の値の相違が0.01以下、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下の成形用組成物である。これにより、特に高い透明度と低いヘイズを有する製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい一実施形態において、本発明による成形用組成物は、成分(a)、(b)および場合により(c)からなる。
【0018】
成分(a)
好ましいのは、48~60wt.-%のビニル芳香族モノマー(a11)、特にスチレンと、40~52wt.-%のメタクリル酸メチル(a12)とから製造されたランダムコポリマー(a)-成分(a)として-であり、より好ましいのは、50~58wt.-%の(a11)と42~50wt.-%の(a12)とから製造されたランダムコポリマー(a)である。前記組成物において、(a11)と(a12)の合計量は100wt.-%である。
【0019】
スチレン-メチルメタクリレート(SMMA)コポリマー(a)は、バルク、溶液、懸濁、沈殿または乳化重合により公知の方法で得ることができる。これらのプロセスの詳細は、例えば、Kunststoffhandbuch、R.Vieweg、G.Daumiller編、第V巻「Polystyrol」、Carl-Hanser-Verlag、ミュンヘン、1969、118以降ページに、記載されている。SMMAコポリマー(a)は公知の製品であり、例えばIneos Styrolution(フランクフルト、ドイツ)からNAS(登録商標)XCとして市販されている。
【0020】
成分(b)
少なくとも1つの、好ましくは1つの、ビニル芳香族-ジエンブロックコポリマー(b)-成分(b)として-は、直鎖状または星形ブロックコポリマーであってよく、ビニル芳香族モノマー、特にスチレンから製造された少なくとも2つのハードブロックS(好ましくは末端ブロック)と、ジエンから製造された少なくとも1つのソフトブロックBおよび/またはジエンおよびビニル芳香族モノマーから製造された少なくとも1つのソフトブロックB/Sとを含む。
【0021】
一般に-ブロックコポリマー全体を基準として-ジエンの割合は47~67wt.-%であり、ビニル芳香族モノマーの割合は33~53wt.-%である。
【0022】
好ましくは-ブロックコポリマー全体を基準として-ジエンの割合は52~62wt.-%であり、ビニル芳香族モノマーの割合は38~48wt.-%である。ハード(ポリマー)ブロックS、またはソフト(コポリマー)ブロックB/Sに使用することができるビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ビニルトルエンまたはこれらの混合物であり、好ましくはスチレンである。ブロックコポリマー(b)のハード(ポリマー)ブロックSは、ガラス転移温度(Tg)70℃超のハード相である。
【0023】
ハードブロックSは、95~100wt.-%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび0~5wt.-%の少なくとも1種のジエンから製造することができ、好ましくは、ハードブロックSはビニル芳香族モノマー、特にスチレンから製造されたホモポリマーである。
【0024】
成分(b)の製造に使用できる好適なジエンは共役ジエンである。少なくとも1つのソフトブロックBまたは少なくとも1つのソフトブロックB/S(または場合によりハードブロックS)に好ましいジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンまたはピペリレンまたはこれらの混合物であり、特に好ましくは1,3-ブタジエンである。ソフト(ポリマー)ブロックBおよび/またはソフト(コポリマー)ブロックB/Sは、Tg<0℃のソフト相である。
【0025】
ソフトブロックBは、95~100wt.-%の少なくとも1種のジエンと0~5wt.-%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから製造することができ、好ましくは、ソフトブロックBは共役ジエン、特に1,3-ブタジエンから製造されたホモポリマーである。
【0026】
多くの場合、ソフトブロックはブロックB/S、特にランダムブロックB/Sである。「ランダム」ブロックB/Sとは、ビニル芳香族モノマーとジエンの重合単位の統計的分布を有するコポリマーブロックを意味する。
【0027】
多くの場合、(コポリマー)ブロックB/S、特にランダムコポリマーブロックB/Sは、5~39wt.-%超、特に6~39wt.-%のビニル芳香族モノマー、特にスチレンと、61~95wt.-%未満、特に61~94wt.-%のジエン、特に1,3-ブタジエンとから製造され、ビニル芳香族モノマーとジエンの合計量は100wt.-%である。
【0028】
好ましくは、ブロックコポリマー(b)は、2つのハードブロックS、好ましくは末端ハードブロックS、および、少なくとも1つのソフトブロックBおよび/または少なくとも1つのソフトブロックB/Sを有する直鎖状ブロックコポリマーである。
【0029】
1つ以上の、好ましくはランダムな(コポリマー)ブロックB/Sが存在することもある。多くの場合、ブロックコポリマー(b)は、ビニル芳香族モノマーの割合が異なり、したがってガラス転移温度が異なる、少なくとも2つの、特にランダムな、ソフト(コポリマー)ブロック(B/S)1および(B/S)2を含む。(B/S)1、(B/S)2のようなすべてのコポリマーブロックB/Sについて、Tgは、0℃未満、一般に-80℃~0℃の範囲、好ましくは-70℃~-20℃の範囲、特に好ましくは-70~-40℃である。Tgは、SBC-ポリマー化学者に公知の方法で測定される。
【0030】
一実施形態によれば、ブロックコポリマー(b)は、構造S-B-Sのブロックコポリマー、特に構造S-B-Sのスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。
【0031】
実施形態によれば、ブロックコポリマー(b)は、構造S-B/S-Sのブロックコポリマー、特に構造S-B/S-Sのスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。
【0032】
ブロックコポリマー(b)は、好ましくは逐次アニオン重合によって製造される。前述のSBC生成物は公知である。それらの製造は、「Modern Styrenic Polymers:Polystyrenes and Styrenic Copolymers」(J.Scheirs編、Wiley、英国、2003、502~507ページ)、「Practical Guide to Structures、Properties and Applications of Styrenic Polymers」;N.Niessnerら、Smithers、2013、79~129ページ)およびUS6,521,712(欄2、52行目~欄4、2行目)に記載されている。ブロックコポリマー(b)は公知の製品であり、米国DynasolからCalprene(登録商標)743Xとして市販されている。
【0033】
成分(c)
熱可塑性成形用組成物は、最大5.0wt.-%、好ましくは0.10~3.0wt.-%の少なくとも1種のさらなる添加剤および/または加工助剤(c)(成分(c)として)を、場合により含んでもよい。
【0034】
好適な添加剤および/または加工助剤(c)には、充填剤/繊維および顔料を除き、ポリマーの加工または仕上げに慣用的に使用されるすべての物質が含まれる(例えば、「Plastics Additives Handbook」、Hans Zweifel編、第6版、Hanser Publ.、ミュンヘン、2009)。
【0035】
好ましい添加剤および/または加工助剤(c)は、安定剤(例えば紫外線安定剤)、酸化遅延剤、酸化防止剤、熱分解や光による分解に対抗するための薬剤、滑剤、および染料のようなものである。
【0036】
これらの添加剤および/または加工助剤(c)は、製造操作のどの段階でも混和することができるが、添加物質の安定化効果(または他の特異的効果)から早期に利益を得るために、好ましくは早い段階で混和する。
【0037】
好適な酸化防止剤は、例えば、モノホスファイト系酸化防止剤、ジホスファイト系酸化防止剤および立体障害フェノール系酸化防止剤から選択される1つまたはそれ以上の化合物である。1つまたはそれ以上の酸化防止剤が存在する場合、それらは、好ましくは、三置換モノホスファイト誘導体のようなモノホスファイト系酸化防止剤、置換ペンタエリスリロールジホスファイト誘導体のようなジホスファイト系酸化防止剤、および2,6-ジ-tertブチルフェノール系誘導体のような立体障害フェノール系酸化防止剤から選択される。
【0038】
好適な潤滑剤/滑剤および脱型剤としては、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸エステル、アミドワックス(ビスステアリルアミド、特にエチレンビスステアリン酸アミド)、ポリオレフィンワックスおよび/または一般に炭素原子数12~30の高級脂肪酸、その誘導体および対応する脂肪酸混合物を挙げることができる。
【0039】
好適な染料は、ポリマーの透明、半透明、または非透明の着色に使用できる染料のいずれかであり、特にスチレンコポリマーの着色に適した染料である。この種の染料は、当業者に公知である。
【0040】
酸化遅延剤および熱安定剤の例は、周期表のI族からの金属のハロゲン化物であり、例としては、ナトリウム、カリウムおよび/またはリチウムのハロゲン化物、場合により銅(I)のハロゲン化物、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物と組み合わせたもの、立体障害フェノール類、ヒドロキノン類、これらの群の異なる置換基を持つ代表的なもの、およびこれらの混合物であり、成形用組成物の重量に基づいて、1wt.-%までの濃度で使用される。
【0041】
光の影響に対抗する好適な安定剤(例えばUV安定剤)の例は、種々の置換レゾルシノール類、サリシレート類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、およびHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)、例えばTinuvin(登録商標)として市販されているものであり、これらは一般に成形用組成物を基準として2wt.-%までの量で使用される。
【0042】
製造方法
本発明のさらなる態様は、成分(a)、(b)および必要に応じて成分(c)の溶融混合による、本発明による成形用組成物の製造方法である。好ましくは、成分(a)、(b)および必要に応じて成分(c)の溶融混合は、押出機、好ましくは二軸スクリュー押出機中で行われる。溶融混合は、好ましくは押出機中で、160~260℃の範囲の温度で行うことができる。好ましくは、溶融混合は押出機中で180~230℃の範囲の温度で行われる。
【0043】
前記プロセスにより得られる成形用組成物は、良好な加工性を示し、したがって、容易に加工することができる、すなわち、例えば、押出成形および熱間成形(例えば、射出成形)により、任意の所望の形状に成形することができる。
【0044】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による成形用組成物から製造される成形物品である。
【0045】
本発明による成形用組成物およびそれから製造される成形物品は、高い透過率および透明度を維持しながら、高い表面硬度およびビカット軟化温度を有し、剛性および靭性の良好なバランスを示す。これらは、多くの用途に有利に使用することができる。
【0046】
本発明のさらなる主題は、家庭用品、家電、熱成形包装およびブロー成形ボトル用の様々な用途のための、本発明による成形組成物およびそれから製造される成形物品の使用である。
【0047】
実施例、図および特許請求の範囲は、本発明をさらに説明するものである。
【実施例】
【0048】
試験方法:
降伏点における引張応力および破断点における引張歪は、規格ASTM D638-14に準拠した試験で測定した。
曲げ弾性率は、ASTM D790-17に準拠して決定した。
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠して200℃、5kgで決定した。
ガードナー衝撃強度はASTM D5420-21に準拠して決定した。
ノッチ付きおよびノッチなしのアイゾット衝撃強度は、ASTM D256-10(2018)に準拠して決定した。
ビカット軟化温度(VST)は、ASTM D1525(力10N、速度120℃/時)に準拠して決定した。
ロックウェル硬度は、ASTM D785に準拠して決定した。
ヘイズおよび光学的特性(透過率、透明度)は、ASTM D1003に準拠して決定した。
【0049】
出発材料:
SMMA(a):NAS(登録商標)XC、Ineos Styrolution製、ドイツ;ランダムスチレン/メチルメタクリレートコポリマー、MMA含有量:45wt.-%。
SBS(b):Calprene(登録商標)743X、Dynasol製、スペイン;直鎖状スチレンブタジエンSBSブロックコポリマー;スチレン総含有量:43wt.-%。
【0050】
表1~4に示された材料を、ゾーン温度を180~230℃に設定した30mm二軸押出機を用いて溶融混合した。得られた成形用組成物から試験片を射出成形し、その断片の機械的および光学的特性を試験した。表1~4は、実施例1~10について、ブロックコポリマー(b)含有量の関数として作製した射出成形試料の特性を示す。
【0051】
表1~4は、比較例1~5で使用したTerlux(登録商標)2802、Terlux(登録商標)2812(ともにメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)樹脂)、Zylar(登録商標)631(衝撃改質スチレン・アクリルコポリマー(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂)、Zylar(登録商標)720EX(MBS樹脂)およびDenka(登録商標)TH-21(MBS樹脂)のような、現在市販のスチレン系衝撃改質透明成形用組成物と比較した本発明による試料(実施例1~10)の利点を、さらに証明している。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表1~4に示すように、本発明による成形用組成物(実施例1~10)は、現在市販のスチレン系衝撃改質透明成形用組成物と比較して、外観を犠牲にすることなく、より高い硬度およびビカット軟化温度が達成され、剛性および靭性のより良いバランスを作り出す。特定の高いジエン含有量を有するゴム成分(ブロックコポリマー(b))を、高いMMA含有量を有する特定のSMMAコポリマーと組み合わせて使用することにより、ゴム成分の量が少なくて済み、高い透過率および透明度を維持しながら、ゴム成分(b)がその中に微細に分散したSMMA連続相が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1a】SBSゴム成分(b)の量のみが異なる、押出成形プロセスによって得られたSMMA/SBS成形用組成物の形態を示すTEM画像である。10wt.-%のSBSゴム成分含有量を有する本発明によるSMMA/SBS成形用組成物を示す画像である。
【
図1b】SBSゴム成分(b)の量のみが異なる、押出成形プロセスによって得られたSMMA/SBS成形用組成物の形態を示すTEM画像である。20wt.-%のSBSゴム成分含有量を有する本発明によるSMMA/SBS成形用組成物を示す画像である。
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図1c】SBSゴム成分(b)の量のみが異なる、押出成形プロセスによって得られたSMMA/SBS成形用組成物の形態を示すTEM画像である。30wt.-%のSBSゴム成分含有量を有するSMMA/SBS成形用組成物(非発明)を示す画像である。10wt.-%または20wt.-%のSBSゴム成分(b)を有する本発明による成形用組成物(
図1aおよび1b参照)は、SBSゴム成分が微細に分散したSMMA連続相を示すのに対して、30wt.-%のSBSゴム成分を有する対応する成形用組成物は、SMMAの形態が変化した、すなわち不連続な形態を有する(
図1c参照)。
【
図1d】スチレンとMMAモノマーの重合反応にゴム成分を添加することによりリアクター技術によって製造された比較例5(Denka TH-21)による衝撃改質SMMAコポリマーを示すTEM画像である。
【0058】
本発明による好ましい成形用組成物は、SBSゴム成分(b)が分散したSMMA連続相を形成し、これにより、高い透過率および透明度を維持しながら、より良好な押出成形性、耐熱性および耐薬品性を得ることができる(
図1および2ならびに表4参照)。
【0059】
本発明に記載のSMMAコポリマーとSBC-ブロックコポリマーを含む組成物は、高い透明度と延性を示した。
【0060】
【0061】
表1~4に示すように、実施例5~7の成形用組成物は、特性の最良のバランスを達成するために、SBSゴム成分(B)の最適な添加レベルを有する。
【0062】
表5は、現在市販のスチレン系衝撃改質透明樹脂(比較例1~3参照)と比較した実施例5~7の成形用組成物の利点を示している。比較例1および2の透明MABS製品と比較して-実施例5~7の成形用組成物は、同様の硬度、VSTおよび光学特性を維持しながら、より高いメルトフローレート、引張強度およびガードナー衝撃強度を有する。実施例5~7の成形用組成物を比較例3の現行市販のMBS製品と比較すると、硬度、剛性、およびビカットにおける利点は大きい。
【0063】
さらに、押出成形を介して成分(a)および(b)を溶融混合することにより得られる本発明による成形用組成物(実施例5~7参照)は、反応器中のゴム成分の存在下でのMMAおよびスチレンモノマーの重合を介して製造される成形用組成物(表6、比較例4および5参照)と比較して、優れた光学特性、より高い剛性、およびより高いVSTを示す。
【0064】
【国際調査報告】