(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】時計用季節表示を有するカレンダー機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/247 20060101AFI20240524BHJP
G04B 19/26 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G04B19/247 Z
G04B19/26 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577593
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2022055525
(87)【国際公開番号】W WO2022264046
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】タナー サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】フェイエ ジュリアン
(57)【要約】
時計用季節表示を有するカレンダー機構は、角度位置が日付を表す駆動ホイール(26)と、3か月ごとに、30日より少ない所定の時間間隔の間にのみ、駆動ホイール(26)によって駆動され且つ季節表示部材(80)を駆動するように構成される季節表示部材(80)及び季節表示駆動部材(62)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用季節表示を有するカレンダー機構であって、
角度位置が日付を表す駆動ホイール(26)と、
季節表示部材(80)と、
3か月ごとに、30日より少ない、所定の時間間隔の間のみに、前記駆動ホイール(26)により駆動され且つ前記季節表示部材(80)を駆動するように構成される季節表示駆動部材(62)と、
を備える、ことを特徴とするカレンダー機構。
【請求項2】
前記所定の時間間隔は、最大で10日であり、好ましくは最大で7日、好ましくは最大で5日である、請求項1に記載のカレンダー機構。
【請求項3】
前記季節表示駆動部材(62)は、前記所定の時間間隔の間、数日にわたって、好ましくは少なくとも3日にわたって、好ましくは少なくとも4日にわたって分散されるいくつかのピッチずつ、前記季節表示部材(80)を動かすように構成される、請求項1又は2に記載のカレンダー機構。
【請求項4】
前記所定の時間間隔は、各暦の4半期の最後の月の一部である、請求項1~3の何れか1項に記載のカレンダー機構。
【請求項5】
前記所定の時間間隔は、前記最後の月の最後の日前に終わる、請求項4に記載のカレンダー機構。
【請求項6】
前記所定の時間間隔は、少なくとも部分的に、各暦の4半期の最後の月の21日を含む、請求項4又は5に記載のカレンダー機構。
【請求項7】
前記所定の時間間隔は、最も早くて18日に、好ましくは最も早くて19日に始まり、最も遅くて23日に終わる、請求項4~6の何れか1項に記載のカレンダー機構。
【請求項8】
前記季節表示駆動部材(62)は、前記駆動ホイール(26)によって駆動されるように構成されるホイール組立体(58)の一部を形成し、さらに月表示駆動部材(60)を備える、請求項1~7の何れか1項に記載のカレンダー機構。
【請求項9】
前記ホイール組立体(58)は、3か月に1回転する4半期ホイール組立体であり、前記季節表示駆動部材(62)は、歯付き部分(78)を備えるホイールであり、前記月表示駆動部材(60)は、互いに対して120°で配置される3本の歯(64)を備える別のホイールである、請求項8に記載のカレンダー機構。
【請求項10】
前記4半期ホイール組立体(58)は、前記季節表示部材(80)が、衝撃の際の慣性の影響下で前記4半期ホイール組立体(58)を駆動させることを防ぐために、安全部材(88)を更に備える、請求項9に記載のカレンダー機構。
【請求項11】
前記安全部材(88)は、前記4半期ホイール組立体(58)のシャフト(92)と実質的に同心で且つ前記季節表示部材(80)が歯付き部分(78)と係合するときに衝突の際に接触することができる安全部材(88)を含み、前記安全部材(88)は、前記季節表示部材(80)の通常駆動を妨げないように、前記季節表示駆動部材(62)に対する限られた回転可動性と、前記安全外面(90)における切り欠き(100)と、を有する、請求項10に記載のカレンダー機構。
【請求項12】
前記駆動ホイール(26)は、日付指示部材を駆動し且つ日付駆動ホイール組立体(10)によって駆動されるように構成される日付ホイール(16)に同軸であり、前記駆動ホイール(26)は、前記所定の時間間隔の間、前記日付ホイール(16)の駆動に対して時間オフセット方式で前記日付駆動ホイール組立体(10)によって駆動されるように構成される、請求項1~11の何れか1項に記載のカレンダー機構。
【請求項13】
前記駆動ホイール(26)は、前記日付ホイール(16)の駆動に対して時間オフセット方式で前記日付駆動ホイール組立体(10)によって直接駆動される前記所定の時間間隔の間を除き、毎日前記日付ホイール(16)によって駆動されるように構成される、請求項12に記載のカレンダー機構。
【請求項14】
前記日付駆動ホイール組立体(10)は、異なる高さに第1及び第2フィンガ(12,14)を備え、前記第1フィンガ(12)は、前記日付ホイール(16)と毎日協働するように構成され、前記第2フィンガ(14)は、前記所定の時間間隔の間、前記駆動ホイール(26)に固定して取り付けられる少なくとも1本の歯(34)と協働するように構成される、請求項13に記載のカレンダー機構。
【請求項15】
前記第2フィンガ(14)は、また、前記日付ホイール(16)により保持されるレバー(22)の歯(24)と協働するように構成され、30日の月の最後の日から次に来る月の最初の日への経過の間、前記日付ホイール(16)に同軸の月カム(20)と協働するように構成される、請求項14に記載のカレンダー機構。
【請求項16】
時針ホイール(4)と前記駆動ホイール(26)との間に、ギア(6,8)を含み、前記ギアの少なくとも一部(6,102)は、午前0時頃の逆向きの時刻設定を防ぐために単一方向である、請求項1~15の何れか1項に記載のカレンダー機構。
【請求項17】
請求項1~16の何れか1項に記載のカレンダー機構を備える時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計用の季節の表示を有するカレンダー機構に関する。
【背景技術】
【0002】
季節の表示を有するカレンダー機構が、米国特許第563268号明細書、独国特許出願公開第102008031441号明細書及び欧州特許出願公開第3327516号明細書において提案されている。
【0003】
米国特許第563268号明細書においては、季節及び月の名前は、時計の文字盤上に記され、現在の月及び現在の季節に関する情報は、文字盤上で回転する月の針によって与えられる。季節の表示は、かくして、月の表示に依存し、正確な日付で季節の変化を示すことを不可能にする。
【0004】
独国特許出願公開第102008031441号明細書においては、時計の文字盤は、それぞれ夏に太陽、秋に葉、冬に雪片、及び春に花の形態の4つのシンボルを備える。各々のシンボルは、文字盤又は文字盤の透明な領域で作り出された開口である。時計のムーブメントによって駆動され且つ文字盤より下に配置される第1の回転プレートが、季節がその始まり、中盤又は終わりにあるかどうかを示すためにアクティブな季節の色を変更させることを可能にする色付けされた部分を有する。第2のプレートが、アクティブではない3つの季節に対応するシンボルを視認できなくするのに役立つ。この特許出願は、季節を表示する原理のみに関する。プレートを駆動させるための機構は説明されていない。
【0005】
最後に、欧州特許出願公開第3327516号明細書においては、第1のホイールが、日付を表示するために、31日で一回転するように構成され、第1のホイールに同軸の第2のホイールが、季節を表示するために設けられる。第1及び第2のホイールは、同一のホイール組立体によるが異なるギア比で駆動され、これにより、第2のホイールは、第1のホイールより速く回転し、第1のホイールが12回転するごとに1回転ずつオフセットする。第1のホイールは、日付を示す針を保持する。第2のホイールは、その上面上に、文字盤に作られる大きな開口部を通して完全に視認可能な、季節を表すシンボルを備え、現在の季節は、日付を示す針における開口部を通して視認可能なシンボル又はシンボルの一部によって示される。この機構は、単純であるという利点を有するが、現在の季節の正確な表示も季節の変化の正確な指示も不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第563268号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008031441号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3327516号明細書
【特許文献4】スイス特許第685585号明細書
【特許文献5】国際公開第2019/193430号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、季節を表示するためのカレンダー機構を提案することを目的とし、現在の季節及び季節の変化の表示が正確に可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、カレンダー機構が、請求項1において記載されるように提供され、特定の実施形態が、従属項において画定されている。
【0009】
本発明はまた、カレンダー機構等を備える、腕時計、懐中時計又はミニチュアクロックなどの時計に関する。
【0010】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して与えられる以下の詳細な説明を読むと明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1つの特定の実施形態によるカレンダー機構の平面図を示す。
【
図2】
図1で示されるカレンダー機構の斜視図を示す。
【
図3】
図1で示されるカレンダー機構の日付駆動ホイール組立体の、時針カム及びピニオンによって形成される単一方向ギアを示す。
【
図4】いくつかの要素が下部に配置されるものを示すために取り除かれた、
図1で示されるカレンダー機構の一部の平面図を示す。
【
図5】
図4と類似の図であるが、破線を用いて隠れている部分を示す図である。
【
図6】非作動状態における、季節表示駆動ホイール、安全部材及び季節表示スターホイールを示す、
図1で示されるカレンダー機構の一部の底面図を示す。
【
図7】季節表示スターホイールの駆動中の、季節表示駆動ホイール、安全部材及び季節表示スターホイールを示す、
図6で示される部分の底面図を示す。
【
図8】季節の経過前の四半期駆動ホイール及び四半期中間ホイールを示す、本発明の別の実施形態によるカレンダー機構の平面図を示す。
【
図9】季節の経過前の四半期駆動ホイール及び四半期中間ホイールを示す、本発明の別の実施形態によるカレンダー機構の斜視図を示す。
【
図10】月の経過前の四半期駆動ホイール及び四半期中間ホイールを示す、
図8で示される部分の平面図を示す。
【
図11】月の経過前の四半期駆動ホイール及び四半期中間ホイールを示す、
図9で示される部分の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~3を参照すると、時計ムーブメントに組み入れられた、本発明によるカレンダー機構1が、時計ムーブメントの時針ホイールに同軸で且つそこに固定して取り付けられたかくして12時間ごとに一回転の割合で回転する時針カムを備える。この時針カム2は、周長の4分の1にわたって、日付駆動ホイール組立体10のピニオン8と協働するように構成される4本の歯を有する歯付き部分6を有するディスクである。ピニオン8は、歯付き部分がピニオンに対向して配置されるとき、すなわち、12時間周期ごとに3時間の間、歯付き部分6によって駆動され、この3時間の駆動で180°回転する。ピニオン8は、時針カム2の歯無し部分に対向しているとき、つまり残りの9時間の間は、不動のままである。ピニオン8はかくして、24時間ごとに1回転するが、この24時間の間の動作は合計で6時間のみ続く。時針カム2はしたがってピニオン8の回転を加速させることを可能にする加速カムを構成する。時針カム2はまた、
図3を参照して下で説明されるように、午前0時前後のムーブメントの任意の逆向きの時間設定を妨げる機能を有する。
【0013】
ピニオン8の他に、日付駆動ホイール組立体10は、角度的にも高さ的にもオフセットされた位置においてピニオン8に堅固に結合される、下側フィンガ12又は第1フィンガ及び上側フィンガ14又は第2フィンガを備える(
図4参照)。日付駆動ホイール組立体10の各々の回転によって、午前0時前後、下側フィンガ12は、31本の歯を有し且つ日付ジャンパ18の作用を受ける日付ホイール16を1ピッチずつ進める。この日付ホイール16は、かくして月ごとに1回転し、日付ホイール16に対して自由にピボット回転する月カム20に同軸である。月カム20の外縁部は、谷及び隆起部の交互配置を備え、谷は、31日の月に対応し、隆起部は、31日より少ない月に対応する。
【0014】
月レバー22が、日付ホイール16のプレート上にピボット回転方式で取り付けられ、月カム20の外縁部と協働することが可能な突出部22aを備える。月レバー22は、自由に回転するが、その移動は月カム20によって一方向に及び日付ホイール16のプレートに打ち込まれるピン22bによって他方向に制限される。月レバー22が月カム20の隆起部に対して突出部22aを支えるときに、月レバー22の歯24が、日付ホイール16の歯部上に重ね合わさり、かくして、日付ホイール16が30日目に対応する角度位置にあるときに、上側フィンガ14の軌道上に位置する。突出部22aが月カム20の谷で静止するとき、歯24は、日付ホイール16の歯部に対して引っ込められ、上側フィンガ14と協働することができない。
【0015】
かくして、31日の月の間、上側フィンガ14は、日付ホイール16に作用することができず、30日から31日への経過は、その他の日と同様に、下側フィンガ12の作用によって実行される。たとえ歯24が日付ホイール16の歯部上に重ね合わされて配置されたとしても、実際には歯24は上側フィンガ14と合うときに後退し、上側フィンガ14が日付ホイール16を駆動させることを妨げる。対照的に、30日の月の30日目には、午前0時前後に上側フィンガ14は月レバー22の歯24と協働し、この歯24は、その後30日から31日への経過のために第1のピッチだけ日付ホイール16を動かすために、月カム20の隆起部上で突出部22aを支持しており、その後下側フィンガ12は、日付ホイール16をさらに1ピッチずつ進めて31日から1日への経過を確実にするために、日付ホイール16の歯部と協働する。
【0016】
日付ホイール16の各々の動作は、ギアトレイン(図示せず)を介して、竜頭、ディスク又は針等の日付指示部材(図示せず)に伝達される。
【0017】
日付駆動ホイール組立体10、日付ホイール16及び月レバー22は、スイス特許第685585号明細書及び国際公開第2019/193430号に記載の原理に基づく年次日付機構の一部を形成する。それにもかかわらず、日付機構は、単純又は恒久的であり得る。
【0018】
4半期駆動ホイール26が、日付ホイール16に同軸で取り付けられる。4半期駆動ホイール26は、日付ホイール16内に作られる2つの開口部28によって画定される一定の角度を通してのみ日付ホイール16に対して回転することができ、2つの開口部28をそれぞれ2つのピン30が通過し、ピンは一方で4半期駆動ホイール26上に打ち込まれ他方で季節部品32上に打ち込まれる。季節部品32は、日付ホイール16の歯部上に重ね合わされる4本の歯を有する歯付き部分34を備える。日付ホイール16のプレート上に取り付けられる戻しばね36が、ピン30の少なくとも1つが、対応する開口部28の壁に対して支持位置に保たれるように、季節部品32上に作用する。この支持位置は、4半期駆動ホイール26を駆動させることを日付ホイール16に許容する。
【0019】
季節部品32は、各月の19日の午前0時前後に、上側フィンガ14が、季節部品32の第1の歯と合って、日付ホイール16の1ピッチに対応する角度だけ、戻しばね36の作用に抗して、日付ホイール16に対して4半期駆動ホイール26を動かすために、第1の歯と協働するように位置決めされている。そして、1ピッチずつ日付ホイール16を進めて4半期駆動ホイール26に追いつくために、まだ19日の午前0時前後に、下側フィンガ12は、日付ホイール16の歯部に作用する。20日の午前0時前後に、上側フィンガ14は、季節部品32の第2の歯と合い、戻しばね36の作用に抗して、日付ホイール16の1ピッチに対応する角度だけ、日付ホイール16に対して4半期駆動ホイール26を動かすために、第2の歯と協働する。そして、下側フィンガ12は、1ピッチずつ日付ホイール16を進めて4半期駆動ホイール26に追いつくために、日付ホイール16の歯部に作用する。同一の動作が、21日に、上側フィンガ14と季節部品32の第3の歯との間及び下側フィンガ12と日付ホイール16の歯部との間で行なわれ、そして、22日に、上側フィンガ14と季節部品32の第4の歯との間及び下側フィンガ12と日付ホイール16の歯部との間で行なわれる。他の日には、対応する開口部28の壁に支持されるピン30の少なくとも1つによって4半期駆動ホイール26を駆動するのは、日付ホイール16である。
【0020】
かくして、4半期駆動ホイール26は、日付ホイール16のように、各日に1回転の1/31ずつ駆動されるが、19日と23日との間では、この動作は、日付ホイール16に対して時間オフセット方式で実行される。これはエネルギー消費の分配を可能にする。以下で見られるように、19日と23日との間の4半期駆動ホイール26の動作は、実際に、4半期ごとに季節表示の動作を起こす。エネルギー消費量の大きなピークを避けるために、日付のジャンプ及び季節表示のジャンプが異なる時間に行われることが有利である。しかしながら、1つの変形例においては、季節部品32は省略することが可能であり、4半期駆動ホイール26は、日付ホイール16に固定して取り付けられることが可能である。
【0021】
4半期駆動ホイール26は、2本の大型歯38によって形成される季節駆動歯付き部分を備える。4半期駆動ホイール26は、月を駆動させるための小型歯40をさらに備える。2本の大型歯38は、4半期中間ホイール42に4ピッチ‐19日から20日の1番目、20日から21日の2番目、21日から22日の3番目、22日から23日の4番目‐だけ進ませるように寸法づけられる。小型歯40は、4半期中間ホイール42を毎月の末に1ピッチだけ進ませる。4半期中間ホイール42は、各々4本の歯を有する6つの歯付き部分44を備え、歯付き部分44は、各々が歯の場所を占める6つの空隙46によって分離される。空隙46は、小型歯40が毎回4半期中間ホイール42の正しい歯を捕えることを可能にする機能を有する。空隙46は、2本の大型歯38による4半期中間ホイール42の駆動を妨げない。
【0022】
4半期中間ホイール42は、6か月で1回転を実行する。月駆動ホイール48(
図1参照)が、4半期中間ホイール42に同軸に固定して取り付けられ、中間ホイール50を介して、月カム20に同軸に固定して取り付けられる月ホイール52を12か月ごとに1回転ずつ駆動する。
【0023】
4半期中間ホイール42は、4半期ジャンパ56の作用を受けるとともに4半期ホイール組立体58の一部を構成する15本歯ピニオン54と噛み合う(
図5参照)。4半期ホイール組立体58は、月表示駆動ホイール60及び季節表示駆動ホイール62を備え、両者ともピニオン54に固定して取り付けられる(
図1参照)。4半期ホイール組立体58は、4半期ごとに1回転ずつ動くが、4半期中間ホイール42に関しては、その動きは不規則であり、19日と23日との間の午前0時前後に毎日1回のジャンプと毎月の終わりの午前0時前後に1回のジャンプ、すなわち月ごとに5回のジャンプ及び4半期ごとに15回のジャンプをする。
【0024】
月表示駆動ホイール60は、互いに120°で配置される3本の歯64が設けられる(
図1ではその2つのみが見られる)。各月の最終日に、これらの歯64の1本は、1ピッチずつ、月表示中間ホイール組立体68のピニオン66を進め(
図2参照)、月表示中間ホイール組立体68のホイール70は、ピニオン66に固定して取り付けられるとともに、文字盤と組み合わせて現在の月を表示する針やディスク等の月指示部材を保持する月表示ホイール72と噛み合う。ピニオン66及びホイール70に固定して取り付けられ凹面を有する正方形部74が、衝撃の際に、慣性の影響下における月表示ホイール72及び月指示部材の不時の回転、或いは月表示ホイール72による4半期ホイール組立体の駆動さえも防ぐために、月表示駆動ホイール60の周縁部の歯無し上部分に密接に嵌合する。歯64と垂直に整列する歯無し上部分に作り出される3つの切り欠き76が、歯64の1本がピニオン66を駆動するためにピニオン66と協働するときに、正方形部74及び、かくして月表示中間ホイール組立体68が回転することを可能にする。
【0025】
季節表示駆動ホイール62は、3本の歯を有する歯付き部分78を備え、季節表示駆動ホイール62の残部は、歯が無い。歯付き部分78は、3か月ごとに、19日と23日との間に、4本の歯によって歯付き部分78を動かすために16本の歯を有する季節表示スターホイール80と噛み合う。季節表示スターホイール80は、季節ジャンパ82の作用を受け、文字盤又は時針内の開口部を通して連続して見られる季節のシンボルを保持するディスク等の季節指示部材を保持する。示される例において、季節表示駆動ホイール62と噛み合うように使用されない季節表示スターホイール80の歯の間の谷は、季節指示ディスクを季節表示スターホイール80に固定するねじ84を受け入れるために材料で部分的に満たされる。
【0026】
季節表示スターホイール80が、86で示される季節指示駆動ホイール62の歯無し部分と向かい合うとき、季節表示スターホイール80の歯部は、衝撃の際にこの歯無し部分86に直ちに接触し、不時の方式での回転を防ぐ。対照的に、歯付き部分78と係合である日の間、季節表示スターホイール80は、衝撃及びその慣性の影響下において、駆動効果を呈し、4半期ホイール組立体58を駆動し得る。これを避けるために、安全部材88が、4半期ホイール組立体58を補完する。
【0027】
安全部材88は、4半期ホイール組立体58の歯無し部分86及びシャフト92と実質的に同心である安全面90を備え(
図6参照)、安全面90は、歯付き部分78の領域において、異なる高さで歯無し部分86の周縁部に広がる。安全部材88は、4半期ホイール組立体58のシャフト92を中心に自由に回転するように取り付けられるが、季節表示駆動ホイール62に対するその回転は、季節表示駆動ホイール62内にはめ込まれるピン94と安全部材88内で作り出される長円形孔96との間の協働により制限される。季節表示駆動ホイール62と安全部材88との間で作用する戻しばね98が、季節表示駆動ホイール62に対する角度位置においてピン94に対して安全部材88を支え続け、角度位置においては、安全面90に設けられる3つの切り欠き100が歯付き部分78の3本の歯とそれぞれ垂直に整列する。
【0028】
季節表示スターホイール80の歯部は、季節表示駆動ホイール62と安全部材88の両方と協働することができる十分な高さを有する。歯付き部分78及び季節表示スターホイール80が、
図6で示される構成におけるように、係合し且つ動かない状態にあるとき、季節表示スターホイール80の1本の歯80aは、安全面90の一部と向かい合い、歯80aに隣接する季節表示スターホイール80の1本の歯80bは、ホイール62及びスターホイール80の相対角度位置に応じて、安全面90の別の一部又は季節表示駆動ホイール62の歯無し部分86と向かい合う。かくして、季節表示スターホイール80を回転させようとするカレンダー機構1によって衝撃が受け入れられるとき、2本の歯80a、80bの1つは、衝撃の方向に応じて、安全面90又は歯無し部分86に直ちに接触する。このようにして、季節表示スターホイール80の不時の方式での回転及び4半期ホイール組立体58の駆動が防止される。
【0029】
季節表示駆動ホイール62に対する安全部材88の回転可動性は、安全部材88が、季節表示駆動ホイール62による季節表示スターホイール80の駆動を妨げないことを可能にする。実際、季節表示スターホイール80の各ジャンプは、スターホイール80が季節ジャンパ82の作用に抗して歯付き部分78によって駆動される第1ジャンプ部分と、季節ジャンパ82が季節ホイール80の歯の先を通過した後に季節ジャンパ82によって引き起こされる第2ジャンプ部分と、を備える。第1のジャンプ部分の間、安全部材88は、長円形孔96の壁を支えるピン94により、季節表示駆動ホイール62に対して固定される。第2のジャンプ部分の間、安全部材88は、切り欠き100の1つに配置される季節表示スターホイール80の歯(
図7参照)が通過することを可能にするために、戻しばね98の作用に抗して季節表示駆動ホイール62に対する可動性を利用し、歯はその後、季節表示駆動ホイール62のジャンプが終わるまで動き続ける。
【0030】
カレンダー機構1の異なる移動部材は、毎月の19日と23日との間で、上側フィンガ14による4半期駆動ホイール26の作動が、2つの連続的な月の間の4半期ホイール組立体58による季節表示スターホイール80の作動を引き起こさない(歯付き部分78が季節表示スターホイール80と向かい合わない)ように、且つ19日と23日との間の第3の月において4半期ホイール組立体58による季節表示スターホイール80の作動を引き起こすように、互いに指標とされることは理解されてきたであろう。季節表示スターホイール80及び季節表示スターホイール80が搭載する季節指示部材は、かくして、19日と23日との間で3か月ごとに4分の1回転ずつ回転し、残りの時間は動かない。
【0031】
季節表示スターホイール80が、例えば、19日と23日の間の4回のジャンプよりも、18日と22日との間の4回のジャンプ、20日と22日との間の2回のジャンプ、20日と21日の間の1回のジャンプ、又は21日又は22日の間の1回のジャンプ、で4分の1回転ずつ動くように、カレンダー機構1を修正することが可能であることは言うまでもない。
【0032】
上記の全ての日付は、季節の変化に関するヨーロッパの日付に基づいている。季節の変化に関するヨーロッパの日付は、季節ごとに且つ年ごとに異なるが、各暦の4半期の最後の月の19日と23日との間、つまり、3月、6月、9月、及び12月の月の19日と23日との間に常にあり、これは少なくとも2100年まで適用される。
【0033】
しかしながら、本発明は、ヨーロッパの日付以外の季節の変化に関する日付、例えば、ロシア又は東洋の日付、特に月の始め又は月の半ばにおける季節の変化に関する日付に適用可能である。一般的に言えば、本発明において、季節表示スターホイール80は、3か月ごとに30日未満の所定の時間間隔の間だけ駆動され、この時間間隔は、好ましくは最大10日、好ましくは最大7日、好ましくは最大5日である。
【0034】
ヨーロッパの日付の場合、所定の時間間隔は各暦の4半期の最後の月の一部であり、好ましくはこの時間間隔は、最後の月の最後の日前に終わる。この時間間隔は好ましくは、少なくとも部分的に、各暦の4半期の最後の月の21日を含む。この時間間隔は、好ましくは、最も早くて18日に始まり、最も遅くて23日に終わる。
【0035】
いずれの場合においても、数日にわたって、好ましくは少なくとも3日にわたって、より好ましくは少なくとも4日にわたって、分散される数回のジャンプで季節表示スターホイール80を動かすことは有利であり、これは、季節表示スターホイール80が動く間の時間間隔が、季節の変化に関する正確な日付をカバーすることを確実にすること、及び季節の変化を示すために4分の1回転ずつ動かなければならない季節表示スターホイール80の駆動に必要とされるトルクをなめらかにし、かくしてエネルギー消費におけるピークを避けること、の2つの理由のためである。
【0036】
下側フィンガ12による4半期駆動ホイール26の作用が各月の最後の日から次の月の最初の日への移行においてのみ月表示ホイール72上に効果を生じるように、カレンダー機構1の種々の移動部材は、互いに対して指標とされることは同様に理解されてきたであろう。
【0037】
かくして、本発明は、季節の変化に関する正確な日付における現在の季節に或いはあらかじめ選択された日付に、特に、月の最後の日付とは異なる日付に表示される情報を変えることを可能にする。さらに、安全部材74及び88の性質により、季節の表示は、月の表示と恒久的に同期され、よって、一方又は他方の修正中又は継続作動中の季節と月との間の非同期は起こり得ない。
【0038】
上記のようなカレンダー機構1において、季節表示スターホイール80は、安全部材88の存在に起因する破損のリスク無く逆方向に動くことはできない。カレンダー機構1の他のパーツは、この問題、例えばレトログラード式であった場合の月表示、によって影響され得る。カレンダー機構1を保護するために、本発明は、午前0時頃の逆方向への時間の修正を防止する。これを行うために、
図3で示されるように、午前0時頃を含む時間範囲に対応する日付駆動ホイール組立体10のピニオン8の歯102は、ピニオン8の軸に対して接線方向に指向される平坦な先端部104を有し、平坦な先端部104の前フランク106の面上で切頭される。時針カム2が、巻き真108の逆回転により駆動され、反時計方向に回転し始めると、時針カム2の歯6は、歯102の1つの先端部104に接触し、接合部によってギアを妨げる。歯102及び歯付き部分6は、かくして、単一方向ギアを形成する。
【0039】
巻き真108の回転は、この巻き真が軸方向の時刻設定位置に位置するとき、ツヅミ車110、第1中間ホイール112、第2中間ホイール114、第3中間ホイール116、モーションワークホイール118及びモーションワークピニオン120を介して(
図1及び
図2参照)連続的に時針ホイール4に伝達される。第2及び第3中間ホイール114、116は、同軸で固定して取り付けられる。しかしながら、第2及び第3中間ホイール114、116の1つは、時針カム2が日付駆動ホイール組立体10のピニオン8に妨げられる間、ユーザーによって過大なトルクが巻き真108に逆方向に作用している場合に、巻き真108をモーションワークから接続を断つことができるように、中間ホイール114、116の共通シャフトに摩擦的に取り付けられる。
【0040】
1つの例示的な実施形態において、月及び季節の表示は、4半期中間ホイール42に同軸に固定して取り付けられるつめ車上で作用する修正器を用いて修正され得る。もう一つの例示的な実施形態において、月及び季節の表示は、巻き真108の回転が日付ホイール16を時針ホイール4から独立して回転させる専用の軸方向位置を有する時計ムーブメントの巻き真108によって修正され得る。この他の例示的な実施形態において、4半期中間ホイール42と日付ホイール16との間の任意の非同期化を妨げるのは有益である。この目的を達成するために、
図8から
図11に示される安全システムが使用され得る。
【0041】
この安全システムは、4半期駆動ホイール26の周縁部に、第1の安全面122及び第3の安全面124を備える。第1の安全面122は、季節を駆動させるために2本の大きな歯38に先行する4半期駆動ホイール26の歯無し部分に、4半期駆動ホイール26の全高にわたって、角度を成して延びる。さらに、第1の安全面122は、ホイール26の軸と同心であり、半径R1を有する。第2の安全面124は、歯無し部分をわずかに超えて突き出る2本の大型歯38のあとに続く4半期駆動ホイール26の歯無し部分に角度を成して延びるが、高さ方向には、4半期駆動ホイール26の下側部分にわたってのみ延びる。さらに、第2の安全面124は、ホイール26の軸と同心であり、半径R1より大きく且つ2本の大型歯38の歯先円の半径と等しい半径R2を有する。2本の大型歯38のあとに続く4半期駆動ホイール26の歯無し部分の上側部分126は、ホイール26の軸と同心であり且つ半径R1より小さい半径R3を有する。この上側部分126は、2本の大型歯38によって形成された季節駆動歯付き部分から、この場合もはや歯の形態ではなく第1の安全面122と上側部分126との間の遷移面の形態にある、月を駆動させるための小型歯40まで延びる。
【0042】
図8で見られるように、第1の安全面122は、空隙46によって隔てられた4半期中間ホイール42の2つの隣接する歯付き部分44の最後の歯44a及び第1の歯44bのためにそれぞれ接合部として役立ち、かくして、衝撃の際、ホイール42が季節の経過前に一方向又は他方向に4半期駆動ホイール26に対する指示を解除することを防止する。その面で、第2の安全面124は、4半期中間ホイール42(
図10参照)の2つの隣接する歯付き部分44の第2の歯44c及び第1の歯44dのためにそれぞれ接合部として役立ち、かくして、衝撃の際、ホイール42が月の経過前に一方向又は他方向に4半期駆動ホイール26に対する指示を解除することを防止する。
【0043】
4半期中間ホイール42の歯と安全面122、124との間、同様に4半期中間ホイール42の歯と4半期駆動ホイール26の歯との間での協働を可能にするために、各々の歯付き部分44の最後の2本の歯は、最初の2本の歯の高さより低い高さを有し、第2の安全面124の高さと異なる高さ、すなわち、
図9及び
図11で示されるように、上側部分126及び遷移面40の高さ上に配置される。
【0044】
本発明は、例のみとして上記で説明されてきた。改良が特許請求の範囲からそれることなく行われ得ることは言うまでもない。
【国際調査報告】