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特表2024-521498動力工具及び動力工具を動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】動力工具及び動力工具を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/28 20060101AFI20240524BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H02K3/28 J
H02P27/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577618
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022065658
(87)【国際公開番号】W WO2022268513
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】21181111.2
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルカ, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスマッハ, ヴァルター
【テーマコード(参考)】
5H505
5H603
【Fターム(参考)】
5H505AA13
5H505HB01
5H505HB05
5H603BB01
5H603BB11
5H603CA01
5H603CA05
(57)【要約】
本発明は、モータを有する動力工具であって、モータは、ロータとステータとを含み、ステータは、第1の巻線と第2の巻線とを含み、巻線は、巻線が、比較モータと比較して実質的に全速度であるが、実質的に半分の電力での動力工具のモータの動作を可能にするように設計される、動力工具に関する。比較モータでは、ステータコイルは、連続ワイヤ層で実質的に完全に巻かれる。更なる態様では、本発明は、そのような動力工具を動作させる方法及び動力工具内の2つのアキュムレータ間の電荷平衡化を実施する方法に関する。二重巻線ステータは、動力工具内の2つのアキュムレータ間の電荷平衡化を可能にするために、モータインバータとステータコイルとで構成されるブリッジ回路と合わせて使用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(12)を有する動力工具(10)であって、前記モータは、ロータ(14)とステータ(16)とを含む、動力工具(10)において、前記ステータ(16)は、第1の巻線(70)と第2の巻線(80)とを含み、前記巻線(70、80)は、前記巻線(70、80)が、比較モータの範囲内の速度であるが、前記比較モータと比較して実質的に半分の電力での前記動力工具(10)の前記モータ(12)の動作を可能にするように設計され、前記比較モータのステータコイルは、連続巻線で実質的に完全に巻かれることを特徴とする動力工具(10)。
【請求項2】
第1のアキュムレータ(40)と第2のアキュムレータ(50)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の動力工具(10)。
【請求項3】
前記ステータ(16)は、いくつかのステータコイル対(18)を含み、各ステータコイル対(18)は、第1のステータコイル(20)と第2のステータコイル(30)とを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項4】
ステータコイル対(18)の前記ステータコイル(20、30)は、前記ステータ(16)内で実質的に互いに対向することを特徴とする、請求項3に記載の動力工具(10)。
【請求項5】
前記ステータ(16)は、3つのステータコイル対(18)を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項6】
第1のインバータ(24)と第2のインバータ(34)とを有し、及び前記インバータ(24、34)は、前記ステータコイル(20、30)とブリッジ回路(90)を形成することを特徴とする、請求項3に記載の動力工具(10)。
【請求項7】
前記第1の巻線(70)は、第1のワイヤ層(22)を含み、及び前記第2の巻線(80)は、第2のワイヤ層(32)を含み、各ステータコイル(20、30)は、第1のワイヤ層(22)と第2のワイヤ層(32)とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の動力工具(10)。
【請求項8】
前記モータ(12)は、ブラシレスモータであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の動力工具(10)を動作させる方法において、前記ステータ(16)の前記第1の巻線(70)は、第1のインバータ(24)によって通電される一方、前記ステータ(16)の前記第2の巻線(80)は、第2のインバータ(34)によって通電され、それにより、全体として、前記比較モータの範囲内の電力は、前記動力工具(10)の前記モータ(12)に提供されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記動力工具(10)の第1のアキュムレータ(40)と第2のアキュムレータ(50)との間の電荷平衡化は、両方向において行われ得ることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各アキュムレータ(40、50)は、インバータ(24、34)を割り当てられ、より高い電荷状態を有するアキュムレータ(40)と、より低い電荷状態を有するアキュムレータ(50)との間の電荷平衡化は、前記より低い電荷状態を有する前記アキュムレータ(50)が、それに割り当てられた前記インバータ(24又は34)によって動作モードから発電機モードに移行されることで行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
動力工具(10)内の2つのアキュムレータ(40、50)間の電荷平衡化を実施する方法において、前記動力工具(10)は、第1のステータコイル(20)に通電するための第1のインバータ(24)と、第2のステータコイル(30)に通電するための第2のインバータ(34)とを含み、前記インバータ(24、34)は、前記動力工具(10)の前記アキュムレータ(40、50)間の電荷平衡化を実施するようにセットアップされる、前記ステータコイル(20、30)とのブリッジ回路(90)を形成することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記ステータコイル(20、30)は、第1の巻線(70)と第2の巻線(80)とを有するステータ(16)を形成し、前記電荷平衡化は、電気エネルギーが前記ステータ(16)の前記第1の巻線(70)から前記第2の巻線(80)に又はその逆に伝達されることで行われることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを有する動力工具であって、モータは、ロータとステータとを含み、ステータは、第1の巻線と第2の巻線とを含み、巻線は、巻線が、比較モータと比較して実質的に全速度であるが、実質的に半分の電力での動力工具のモータの動作を可能にするように設計される、動力工具に関する。比較モータでは、ステータコイルは、連続ワイヤ層で実質的に完全に巻かれる。更なる態様では、本発明は、そのような動力工具を動作させる方法及び動力工具内の2つのアキュムレータ間の電荷平衡化を実施する方法に関する。二重巻線ステータは、動力工具内の2つのアキュムレータ間の電荷平衡化を可能にするために、モータインバータとステータコイルとで構成されるブリッジ回路と合わせて使用され得る。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、異なるタイプの作業を実施することができる動力工具が知られている。例えば、ハンマードリル、ノミ、カット若しくはアングルグラインダ、スクリュードライバ又はコアドリルなどが知られており、これらの各々において、工具は、モータによって駆動される。電源は、主電源接続を介して又は電池若しくは蓄電池を用いて提供され得る。
【0003】
そのような動力工具の多数の用途が知られており、そこでは、対応する作業を実行するために高電力が要求される。電源がアキュムレータにより形成される動力工具の場合、作業に必要な電力がアキュムレータの可能な最大出力を超えることが起こり得る。この課題に対応するため、そのような動力工具は、多くの場合、直列又は並列に接続され得る2つのアキュムレータで所望の電力を提供することができるように、2つのアキュムレータのためのインターフェイスを装備される。
【0004】
しかしながら、2つのアキュムレータを備えた動力工具を使用するとき、以下の問題が生じる可能性がある:アキュムレータの一方が完全に又は部分的に放電された場合、全作業期間にわたって動力工具に対して全電力を提供することができない。アキュムレータの一方が完全に放電された場合、アキュムレータから更なる電力を引き出すことができない。したがって、2つのアキュムレータの一方に電荷が残っているにもかかわらず、動力工具での作業を停止する必要があり得る。
【0005】
従来技術では、動力工具内の電気構成要素間の電荷平衡化を可能にし得る方法が知られている。例えば、米国特許第5,631,534A号明細書は、直列に接続された電池間の電荷平衡化を可能にする電子構成要素の配置を開示している。そのような平衡化方法がデバイス又はアキュムレータレベルで実施される場合、そのような配置に対して例えば様々なスイッチ、ドライバ、インダクタンス及び電流測定デバイスなどの多数の構成要素が必要となる。そのような配置は、製造が複雑であり、エラーが発生しやすい。
【0006】
加えて、既知の平衡化方法では、動力工具が停止しているときにのみ電荷平衡化を行うことができるという問題が先行技術から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上述の欠陥及び欠点を克服し、少なくとも2つのアキュムレータを有する改良された動力工具及び動力工具を動作させる方法を提供することであり、これによりアキュムレータ間の電荷平衡化を可能にする。本発明の特別な関心事は、電荷平衡化が両方向において行われることでもある。当業者は、動力工具のアキュムレータ間の電荷平衡化を少なくとも動作中又は動力工具での作業中にも実施することができる技術的解決策が提供され得る場合も理解するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明による主題の有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0009】
第1の態様では、この目的は、モータを有する動力工具によって達成され、モータは、ロータとステータとを含む。ステータは、第1の巻線と第2の巻線とを含み、巻線は、巻線が、比較モータの範囲内の速度であるが、比較モータと比較して実質的に半分の電力での動力工具のモータの動作を可能にするように設計され、比較モータのステータコイルは、連続巻線で実質的に完全に巻かれる。そのような二重巻線ステータの可能な一実施形態を図1に示す。別個のステータコイル対を図2に示す。
【0010】
電気モータの提案された構造では、ロータは、モータの内部に配置され、ステータは、ロータの周囲に配置される。ステータは、例えば、3つのステータコイル対を含み得、ステータコイル対の各々は、第1のステータコイルと第2のステータコイルとから構成され得る。ステータコイルは、特に、動力工具のモータのロータの周囲に円形に配置され得る。本発明の意味では、ステータコイル対のステータコイルは、ステータ内で実質的に互いに対向することが好ましい。したがって、ステータコイルの配置は、例えば、第1のコイル対の第1のコイルに続いて第2のコイル対の第1のコイルが配置され、次いで第3のコイル対の第1のコイルが配置され、次いで第1のコイル対の第2のコイルが配置され、次いで第2のコイル対の第2のコイルが配置され、更に第3のコイル対の第2のコイルが配置されるように構成され得る。
【0011】
本発明に関連して、奇数のステータコイルも設けられ得る。提案された動力工具のステータは、例えば、9つのステータコイルを含むか、又は9つのスロットを有するように設計され得る。本発明の意味では、提案された動力工具のモータのトポロジーは、従来のモータのトポロジーに対応し、そのステータコイルは、例えば、標準的なモータの「半分のサイズ」であることが好ましい。好ましくは、「半分のサイズ」という用語は、ステータコイルに関する本発明に関連して、ステータコイルが巻かれたワイヤが、従来の標準的なモータのステータコイルが巻かれたワイヤの実質的に半分の直径を有することを意味する。換言すれば、ここで提案された動力工具のモータのステータコイルが巻かれるワイヤは、従来の比較モータのステータコイルが巻かれるワイヤの半分の太さである。金属又は誘導材料の結果としてのより少ない量を補償するために、本発明の意味では、提案されたモータのステータコイルが二重に巻かれることが好ましい。本発明の目的のために、これは、例えば、ステータの各歯が従来の標準的なモータと比較して2倍巻かれるか又は2倍の巻数で巻かれることを意味する。
【0012】
本発明の意味では、ステータのステータコイルは、それらの巻線が第1のワイヤ層と第2のワイヤ層とを含むという意味で同一に又は実質的に同一に巻かれ、ワイヤ層は、それらが、比較モータの速度の範囲内の速度であるが、比較モータと比較して実質的に半分の電力での動力工具のモータの動作を可能にするように形成されることが好ましい。比較モータと比較して半分の電力でのモータの動作は、特にステータコイル内に存在し、且つ動力工具のモータのステータの第1の巻線及び第2の巻線を形成する2つのワイヤ層が設けられることによって可能になる。
【0013】
本発明の意味では、ステータコイルは、第1のワイヤ層と第2のワイヤ層とを含むことが好ましく、第1のワイヤ層は、好ましくは、内側ワイヤ層であり、第2のワイヤ層は、好ましくは、外側ワイヤ層である。ワイヤは、好ましくは、銅又は銅合金から構成され得る。提案されたモータのステータコイルのバイファイラ巻線は、本発明の基本的な発想を表す。2つの巻線は、好ましくは、互いに電気的又は直流的に絶縁された2つのコイルを表し、これらは、一緒になって、提案された動力工具のモータのステータコイルを形成する。互いに電気的又は直流的に絶縁された2つの巻線は、好ましくは、ステータの歯の周囲に配置される。
【0014】
本発明の意味では、ステータにおいて互いに隣接して配置された2つのステータコイルの第1のワイヤ層が互いに電気的に導電的に接続されることが好ましい。換言すれば、隣接する2つのステータコイルの第1のワイヤ層間に導電接続が存在する。例えば、第2のステータコイル対のステータコイルの第1のワイヤ層は、一方の側面上で第1のステータコイル対のステータコイルの第1のワイヤ層に接続され得、第2のステータコイル対のステータコイルのこの第1のワイヤ層は、他方の側面上で第3のステータコイル対のステータコイルの第1のワイヤ層に接続される。加えて、ステータの第1のワイヤ層のそれぞれの間に電気的接続が存在し得る。
【0015】
本発明の意味では、ステータが実質的に同一の方法で2回巻かれることが好ましい。本発明の意味では、2つの巻線を有するステータを設けることは、好ましくは、「二重巻線ステータ」と呼ばれる。「二重巻線」は、特にステータの第1の巻線と第2の巻線とによって達成され、巻線は、それぞれワイヤ層を含む。第1のワイヤ層を有する巻線は、ステータコイルの第1の巻線を形成し、第2のワイヤ層を有する巻線は、ステータコイルの第2の巻線を形成する。好ましくは、巻線の各々は、巻線が動力工具モータを全速度及び半電力で動作させることができるように設計される。このように、二重巻線ステータは、2つの個別のモータのように作用するが、ステータ上に配置されるか又は巻かれる。本発明の意味では、2つの巻線の部分電力が比較モータの全電力に実質的に加算され、比較モータのステータコイルが連続ワイヤ層で実質的に完全に巻かれることが好ましい。換言すれば、この最後の従属節は、好ましくは、比較モータに関する本発明に関連して、全又は半電力又は速度が指定されることを意味し、想定される比較モータは、連続ワイヤ層で実質的に完全に巻かれることを特徴とする。
【0016】
本発明の意味では、ステータコイルの第1の巻線は、第1のインバータによって通電される一方、ステータコイルの第2の巻線は、第2のインバータによって通電され、それにより、2つの巻線の合計により、比較モータの範囲内の電力が動力工具のモータに提供されることが可能になることが好ましい。換言すれば、ステータの巻線がインバータによってそれぞれ通電される場合、比較モータの実質的に全電力に近づくことができる。好ましくは、各巻線は、比較モータの全出力の実質的に半分に寄与する。換言すれば、2つの巻線層の各々の寄与は、比較モータの電力の約50%である。
【0017】
提案された動力工具は、好ましくは、3つ以上のインバータを有することもできる。例えば、動力工具は、3、4、...又はn個のインバータを有することができ、その場合、提案された動力工具のモータ電力への寄与は、33%、25%又は1/n・100%である。
【0018】
本発明の意味では、比較モータは、2つの巻線又は2つのワイヤ層を含まないが、1つの巻線及び巻線を形成する1つのワイヤ層のみを含むことが好ましい。本発明の意味では、ステータは、3つのステータコイル対を含むことが好ましい。動力工具のモータは、好ましくは、少なくとも2つのモータ位相を有する。
【0019】
本発明の意味では、モータは、ブラシレスモータであることが好ましい。本発明に関連して、それは、好ましくは、電子整流モータであり、これは、本発明の意味では、好ましくは「ECモータ」とも呼ばれる。提案された動力工具のモータのロータは、例えば、ブラシを介して電機子界磁を有し得る。例えば、本発明に関連して、1つのアキュムレータのみを有する既知の動力工具のn個の個別のアキュムレータ電子機器を、本発明によるn重巻線ステータを有するブラシレスモータを介して互いに接続することができる。本発明の例示的な実施形態では、モータの電力を2倍にするために、2つの個別のアキュムレータ電子機器を、二重巻線ステータを有するECモータを介して互いに接続することができる。その結果、そのような個別のアキュムレータ電子機器は、大量であることにより低コストで入手可能であるため、コストを最適化した新たな動力工具電子機器を得ることができる。本発明の意味では、サブモータ、それぞれの1つのアキュムレータ、1つのインバータ及び電子機器から構成されるサブシステムがモータ全体のステータのシートメタル内の磁束を共有することが好ましい。動力工具は、好ましくは、n個のサブシステムを含み得、サブシステムは、アキュムレータ、電子機器及びモータ内の巻線を含む。その結果、n個のサブシステムを有する動力工具は、n個のアキュムレータ、n個の電子機器及びモータ内のn個の巻線を含む。換言すれば、サブシステム、アキュムレータ、電子機器及び動力工具のモータ内の巻線の数は、ステータ鉄内の磁束を共有するサブシステム又はそれらの構成要素に対応する。
【0020】
第2の態様では、本発明は、動力工具を動作させる方法であって、ステータコイルの第1の巻線は、第1のインバータによって通電される一方、ステータコイルの第2の巻線は、第2のインバータによって通電され、それにより、比較モータの範囲内の電力は、動力工具のモータに提供される、方法に関する。提案された動力工具について説明した定義、技術的効果、利点は、提案された動作させる方法に対しても同様に適用される。本発明の意味では、2つのインバータを介して巻線に通電することによってモータの全電力を提供できることが特に好ましく、この全電力は、好ましくは、比較モータの全電力に対応する。第1のインバータ及び第2のインバータに加えて、更なるインバータ、例えば3つ又は4つのインバータを設けることができる。
【0021】
本発明の一実施形態では、2つのスタンドアロン又は独立したインバータが動力工具のモータを介して互いに直列に接続される。インバータは、モータと、それぞれの場合に2つの別個のアキュムレータの1つとの間に配置されることが好ましい。換言すれば、本発明のこの好ましい実施形態では、第1のアキュムレータ、第1のインバータ、モータ、第2のインバータ及び第2のアキュムレータは、互いに直列に接続され得る。特にアキュムレータが異なる電圧レベル又は電荷状態を有する場合、本発明に関連して、電荷平衡化がもたらされる。通常、充電レベルがより低いアキュムレータは、より低い電圧レベルも有する。その結果、電荷又は電気的平衡化電流は、より高い電圧レベルを有する満充電のアキュムレータから、例えばより低い電荷状態及びより低い電圧レベルを有する他のアキュムレータの方向に流れ得る。
【0022】
本発明の意味では、動力工具は、第1のアキュムレータと第2のアキュムレータとを含むことが好ましい。3つ以上のアキュムレータを設けることもでき、本明細書では、通常、見やすくするために2つのアキュムレータが想定される。本発明に関連して提案された二重巻線ステータにより、動力工具のアキュムレータ間の電荷平衡化を特に単純な方法で実施することができる。特に、電荷平衡化を両方向において行うことが可能である。本発明の意味では、空のアキュムレータの電荷を満充電のアキュムレータの充電レベルまで増加させることが好ましい。これは、例えば、アキュムレータから電荷を非対称に引き出すことによって行うことができる。好ましくは、本発明の意味では、電荷の非対称的な引き込みは、例えば、満充電のアキュムレータが、提供される全電力の70%の割り当てを有する一方、空のアキュムレータが全電力の30%の割り当てを有することを意味する。このプロセス中、両方のアキュムレータは、空になり続けるが、その程度が異なる。その結果、特定の期間後、少なくとも2つのアキュムレータの均一の充電レベルを達成することができる。
【0023】
本発明の意味では、アキュムレータの1つが一方のパートモータ、すなわちステータコイルが2つの巻線の1つによって形成されるモータによって充電され、他方のパートモータに対して作動することも好ましい可能性がある。換言すれば、本発明のこの例示的な実施形態では、一方のインバータ側が他方のインバータ側に対して作動するため、一方のパートモータは、わずかに制動される。これは、好ましくは、第1のパートモータが発電機モードであることを意味し、その結果、そのアキュムレータを充電することができる。
【0024】
本発明の意味では、動力工具の第1のアキュムレータと第2のアキュムレータとの間の電荷平衡化が両方向において行われ得ることが好ましい。この両方向の電荷平衡化は、特に動力工具が停止しているときに行われ得る。
【0025】
電荷交換の両面性又はその双方向性は、特に、ステータの2つの巻線が、それらに割り当てられたインバータと一緒に完全なHブリッジ又はブリッジ回路を形成することによって達成される。本発明に関連して、このブリッジ回路が双方向直流/直流コンバータ(DC-DCコンバータ)、特に降圧/昇圧DC-DCコンバータのように挙動し、そのような直流/直流コンバータが電流又は電気エネルギーを両方向に「ポンピング」、すなわち伝達することができるという事実が利用される。本発明の意味では、電荷平衡化に必要なインダクタンスは、動力工具のモータのステータコイルによって提供されることが好ましい。変圧器と同様に、電気エネルギーは、一方の巻線から他方の巻線に伝達される。このようにして、動力工具のアキュムレータの電荷差又は異なる電荷状態を平衡化することができる。特に動力工具のモータを直流/直流コンバータ(DC-DCコンバータ)として使用することにより、動力工具が停止しているとき、説明される電荷平衡化が可能になり得る。
【0026】
本発明の意味では、第1のアキュムレータは、第1の電荷状態を有し、第2のアキュムレータは、第2の電荷状態を有し、動力工具が停止しているとき、上述の電荷平衡化手段により、特にブリッジ回路を用いて電荷状態を平衡化できることが好ましい。例えば、第1のアキュムレータの第1の電荷状態が75%であり、第2のアキュムレータの第2の電荷状態が25%である場合、本発明により、その終了時に両方のアキュムレータが約50%の電荷状態を有するように電荷平衡化を実施することができる。特に、このようにして実施される電荷平衡化により、アキュムレータ内で電荷がよりよく分配され、それにより電荷を利用することができるため、動力工具をより長く効果的に使用することが可能になる。特に、アキュムレータの一方が依然として十分に充電されているにもかかわらず、動力工具での作業を終了しなければならない事態が回避される。
【0027】
本発明の意味では、各アキュムレータは、インバータを割り当てられ、より高い電荷状態を有するアキュムレータと、より低い電荷状態を有するアキュムレータとの間の電荷平衡化は、より低い電荷状態を有するアキュムレータが、それに割り当てられたインバータによって動作モードから発電機モードに移行されることで行われることが好ましい。その結果、より高い電荷状態を有するアキュムレータの容量が有利に活用され得、その結果、電荷平衡化が生じる。より低い電荷状態のアキュムレータの動作モードから発電機モードへの移行は、特により低い電荷状態のアキュムレータのインバータに対して小さい制動トルクを付与することで行われ得る。動力工具のアキュムレータ間の電荷平衡化を実施するこの方法は、有利には、動作中、すなわち動力工具での作業時にも実施することができ、これについては、従来技術では技術的に満足のいくいかなる解決策も存在しなかった。
【0028】
図3は、本発明の好ましい実施形態を示し、例えば、第1の巻線は、第1のインバータを介して第1のアキュムレータに接続される一方、第2の巻線は、第2のインバータを介して第2のアキュムレータに接続される。図3に示される回路では、有利には、動作中及び動力工具が停止しているときの両方で電荷平衡化を可能にすることができる。
【0029】
提案された本発明の利点は、2つのインバータを単純なアキュムレータ電圧に対して設計できることである。これは、小さい電圧で作業するときに特に有利である。
【0030】
本発明の別の重要な利点は、動力工具の一方の側が故障した場合又はアキュムレータが空になった場合、少なくとも部分的に充電された2つのアキュムレータを有する無傷の動力工具と比較して半分のトルクで作業を継続できることである。
【0031】
第3の態様では、本発明は、動力工具内の2つのアキュムレータ間の電荷平衡化を実施する方法に関し、動力工具は、第1のステータコイルに通電するための第1のインバータと、第2のステータコイルに通電するための第2のインバータとを含み、インバータは、動力工具のアキュムレータ間の電荷平衡化を実施するようにセットアップされる、ステータコイルとのブリッジ回路を形成する。上述した定義、技術的効果及び利点は、提案された平衡化又は電荷平衡化方法に対しても同様に適用される。本発明の意味では、ステータコイルは、第1の巻線と第2の巻線とを有するステータを形成し、電荷平衡化は、電気エネルギーがステータの第1の巻線から第2の巻線に又はその逆に伝達されることによって達成されることが好ましい。
【0032】
更なる利点は、以下の図の説明から明らかになるであろう。本発明の例示的な実施形態を図に示す。図、説明及び特許請求の範囲は、多数の特徴を組み合わせて含む。当業者はまた、有用な更なる組み合わせを生成するために、適宜、特徴を個別に検討し、それらを組み合わせるであろう。
【0033】
図では、同一及び類似の構成要素は、同じ参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の好ましい実施形態による二重巻線ステータの例示的な実施形態を示す。
図2】3つのステータコイル対を有するステータの可能な実施形態を示す。
図3】2つのアキュムレータを有する二重巻線ステータの例示的な回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、動力工具10の提案されたモータ12の例示的な実施形態を示す(動力工具10は、図示されていない)。図1では、好ましくはブラシレス電気モータである動力工具10のモータ12のロータ14及びステータ16を見ることができる。ステータ16は、一連のステータコイル20、30を含み、これらは、例えば、対になって配置され得るか、又はステータコイル対18を形成し得る。それぞれの場合において、ステータコイルの一方のグループは、好ましくは、第1のステータコイル20と呼ぶことができ、ステータコイルの他方のグループは、好ましくは、第2のステータコイル30と呼ぶことができる。動力工具10のモータ12のステータ16は、第1の巻線70と第2の巻線80とを含み、巻線70、80は、それぞれワイヤ層22、32を含む。本発明の意味では、第1の巻線70は、第1のワイヤ層22を含み、第2の巻線80は、第2のワイヤ層32を含むことが好ましい。各ステータコイル20、30は、好ましくは、第1のワイヤ層22と第2のワイヤ層32とを含み、ステータコイル20、30の第1のワイヤ層22は、ステータ16の第1の巻線70を形成する一方、ステータコイル20、30の第2のワイヤ層32は、ステータ16の第2の巻線80を形成する。2つの巻線70、80の各々により、動力工具10は、全速度を達成することができるが、比較モータの動作と比較して半分の電力のみであるように動作させることが可能になる。比較モータは、提案されたモータに実質的に対応するが、比較モータのステータは、1つの巻線、すなわち1つのワイヤ層のみを有する。好ましくは、提案された二重巻線ステータ16の2つの巻線70、80の各々は、インバータ24、34によって通電され、動力工具10のモータ12のステータ16の第1の巻線70は、第1のインバータ24によって通電される一方、動力工具10のモータ12のステータ16の第2の巻線80は、第2のインバータ34によって通電される。その結果、有利には、モータ12の全電力に近づくことができ、各巻線層70、80は、モータ12の電力に対して約50%寄与する。
【0036】
加えて、図1は、それぞれの場合に隣接するステータコイル20、30の第1のワイヤ層22間に存在し得る電気ライン60を示す。電気ラインは、ステータ16の内部上に配置することができ、それぞれの場合にステータコイル20、30内の第1のワイヤ層22を互いに接続する。動力工具10のモータ12のロータ14は、動力工具10のモータ12の内部に配置されるため、ステータ16の内部は、好ましくは、動力工具10のモータ12のロータ14に面する。図1に示される相互接続は、他の多くの可能性のうちの本発明の例示的な一実施形態に過ぎない。巻線70、80から到来するラインは、インバータ24、34の各々に1つずつ向かう。動力工具10のモータ12は、外部ロータモータでもあり得る。
【0037】
図2は、3つのステータコイル対18を有する動力工具10のモータ12のステータ16の可能な実施形態を示す。各ステータコイル対18は、好ましくは、第1のステータコイル22と第2のステータコイル32とを含み、この第1のステータコイル22と第2のステータコイル32とは、一緒になってステータコイル対18を形成し、好ましくは動力工具10のモータ12のステータ16において互いに対向して位置する。3つのステータコイル対18は、図2並びに副図2a、2b及び2cにおいて、ステータコイル対18a、18b及び18cとして指定される。
【0038】
図3は、2つのインバータ24、34を有する、提案された二重巻線ステータ16の好ましい実施形態の回路図を示す。動力工具10のモータ12のステータ16は、図3の中央に示されている。文字A、B、Cは、3つのステータコイル対18a、18b、18cを表す一方、数字1、2は、ステータコイル対18の第1のステータコイル22又は第2のステータコイル32のいずれかを示す。換言すれば、ステータコイルA1、B1、C1は、ステータコイル対18の第1のステータコイル22を形成する一方、ステータコイルA2、B2、C2は、ステータコイル対18の第2のステータコイル32を形成する。第1のステータコイルA1、B1、C1は、好ましくは、第1のインバータ24に接続される一方、第2のステータコイルA2、B2、C2は、好ましくは、第2のインバータ34に接続される。本発明の意味では、インバータ24、34及びステータコイル20、30がブリッジ回路90又はHブリッジを形成し、このブリッジ回路90を介して動力工具10のアキュムレータ40、50間の電荷平衡化が可能であり得ることが好ましい。アキュムレータ40、50は、図示されていない。これは、特に、動力工具10のモータ12が直流/直流コンバータとして使用されるために可能である。これにより、電気エネルギーをステータ16の第1の巻線70からステータ16の第2の巻線80に又はその逆に伝達することが可能になる。電気エネルギーをステータ16の一方の巻線70から他方の巻線80に伝達することができることにより、エネルギーを一方のアキュムレータ40から他方のアキュムレータ50に伝達することもでき、その結果、充電差を平衡化することができる。この電荷平衡化方法は、特に動力工具10が停止しているときに実施することができる。その特別な利点は、電気エネルギーを両方向に伝達できることである。
【0039】
二重巻線ステータ16の提案された本発明により、電荷平衡化は、動力工具10の動作中に実施することもできる。この目的のために、充電されるアキュムレータに接続されるインバータ(例えば、24)をモータ動作から発電機動作に切り替えることができる。その結果、満充電されたアキュムレータ(例えば、50)の容量を使用して、より低い電荷状態を有するアキュムレータ(例えば、40)を再充電することができる。この方法は、特に小さい制動トルクを付与することによって可能となり得る。この制動動作を使用して電気エネルギーを生成することができ、この場合、電気エネルギーは、好ましくは、より低い電荷状態を有するアキュムレータを充電するために使用することができる。特に、発電された電気エネルギーを用いてその容量を充電することができる。このダブルフィードは、事実上、2つのモータを互いに独立して制御できることを意味し、一方のパートモータは、他方のパートモータに対して作動して、それを制動することができる。その結果、一方のパートモータは、有利には、発電機モードに移行し、そのアキュムレータを充電することができる。本発明の意味では、図3において、2つのコイルトライアングルの各々がパートモータを表すことが好ましい。換言すれば、コイルトライアングルの1つは、提案された動力工具10の第1のパートモータ20、24、70を表し、他のコイルトライアングルは、提案された動力工具10の第2のパートモータ30、34、80を表す。
【符号の説明】
【0040】
10 動力工具
12 動力工具のモータ
14 ロータ
16 ステータ
18 ステータコイル対
20 第1のステータコイル
22 第1のワイヤ層
24 第1のインバータ
30 第2のステータコイル
32 第2のワイヤ層
34 第2のインバータ
40 第1のアキュムレータ
50 第2のアキュムレータ
60 電気ライン
70 第1の巻線
80 第2の巻線
90 Hブリッジ又はブリッジ回路
図1
図2a
図2b
図2c
図3
【国際調査報告】