(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】臍帯血免疫抑制細胞の薬剤学的用途
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20240524BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K35/51
A61P9/10
A61P43/00 105
A61P29/00
C12N5/078
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577898
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2021007420
(87)【国際公開番号】W WO2022265124
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトに公開された「[■■■ ■■]■■■・■■■ ■■■ ■ ■■■‘GvHD’■■ ■■ ■■■ ■■」(翻訳:[健康な家族]白血病・血液がん患者のもう一つの敵‘GvHD’をつかむ新薬開発に希望)の記事
(71)【出願人】
【識別番号】523472180
【氏名又は名称】バイジェンセル・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510058863
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ コリア インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジュン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】テ・ギュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・オン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヒョン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・イル・チョ
(72)【発明者】
【氏名】バン・グル・イム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ア・キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BB19
4B065BC12
4B065BD14
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
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4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZB11
4C087ZB21
(57)【要約】
本発明は、臍帯血免疫抑制細胞の薬剤学的用途に関し、より詳細には、本発明は、機能と表現型の分析及び区別基準に従って選別されたヒト由来臍帯血免疫抑制細胞の抗炎症、抗線維化、心筋梗塞の予防または治療のための新しい細胞治療剤としての用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯血免疫抑制細胞を含む炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物。
【請求項2】
臍帯血免疫抑制細胞は、CD11b+、CD33+、CD14+、CD15-及びHLA-DR
LOWを含む細胞表現型を発現するものである、請求項1に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物。
【請求項3】
臍帯血免疫抑制細胞は、アルギナーゼ(Arginase)I、誘導性酸化窒素合成酵素(inducible nitricoxide synthesis(iNOS))、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine2,3-dioxygenase(IDO))を含むT細胞抑制物質を発現するものである、請求項1に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物。
【請求項4】
臍帯血免疫抑制細胞は、ヒト臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFのサイトカインの組み合わせを含む細胞培養培地で2~7週間培養して誘導されるものである、請求項1に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物。
【請求項5】
GM-CSF及びSCFのサイトカインの組み合わせは、1:0.8~0.3の濃度比で含まれる、請求項4に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物。
【請求項6】
臍帯血免疫抑制細胞は、炎症抑制細胞(M2マクロファージ)の分化及び移動の増加、伝染性細胞(M1マクロファージ)の分化及び移動の減少、心機能(ESV(endsystolic volume)、FS(fraction shortening)、EF(ejection fraction))改善、心筋梗塞のサイズの減少または心筋梗塞時の心臓への移動性の増加を示す、請求項1に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物。
【請求項7】
CD33+CD11b+表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を区分し、二重CD15陽性細胞を陽性対照群としてCD14+表現型を発現する臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階と、
HLA-DRを発現する陽性細胞に対してCD11b+CD33+CD14+の細胞表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞のうちHLA-DR
LOW表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階と、
末梢血単核細胞及び臍帯血免疫抑制細胞0.125~2μl/mL濃度の磁性ビーズの下で共培養してT細胞の増殖能を確認し、
対照群として末梢血単核細胞及び0.05~320ng/mL濃度の免疫抑制剤を0.125~2μl/mL濃度の磁性ビーズの下で共培養してT細胞の増殖能を確認し、前記臍帯血免疫抑制細胞のT細胞増殖能を対照群と比較する段階と、
前記臍帯血免疫抑制細胞は、ヒト臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFのサイトカイン組み合わせを含む細胞培養培地で2~7週間培養して誘導されたものである、免疫抑制能に優れた臍帯血由来の臍帯血免疫抑制細胞の選別方法。
【請求項8】
CD15陽性細胞は、顆粒球(granulocyte)、及びCD15遺伝子を発現するように遺伝子強化された細胞株のいずれかを含む、請求項7に記載の免疫抑制能に優れた臍帯血免疫抑制細胞の選別方法。
【請求項9】
HLA-DRを発現する陽性細胞は、樹状細胞、単核球、及びHLA-DR遺伝子を発現するように遺伝子強化した細胞株のいずれかを含む、請求項7に記載の免疫抑制能に優れた臍帯血免疫抑制細胞の選別方法。
【請求項10】
末梢血単核細胞及び臍帯血免疫抑制細胞は、1:0.25~1の細胞数の割合で共培養される、請求項7に記載の免疫抑制能に優れた臍帯血免疫抑制細胞の選別方法。
【請求項11】
免疫抑制剤は、ラパマイシン、シクロスポリンA、タクロリムス、マイコフェノリック酸、アザチオプリン、ブレジニン、シロリムス及びエベロリムスからなる群から選ばれる1つ以上である、請求項7に記載の免疫抑制能に優れた臍帯血免疫抑制細胞の選別方法。
【請求項12】
治療有効量の臍帯血免疫抑制細胞を、これを必要とする対象体に投与する段階を含む、炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法。
【請求項13】
臍帯血免疫抑制細胞は、CD11b+、CD33+、CD14+、CD15-及びHLA-DR
LOWを含む細胞表現型を発現するものである、請求項12に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法。
【請求項14】
臍帯血免疫抑制細胞は、アルギナーゼ(Arginase)I、誘導性酸化窒素合成酵素(inducible nitricoxide synthesis(iNOS))、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine2,3-dioxygenase(IDO))を含むT細胞抑制物質を発現するものである、請求項12に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法。
【請求項15】
臍帯血免疫抑制細胞は、ヒト臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSFとSCFのサイトカインの組み合わせを含む細胞培養培地で2~7週間培養して誘導されるものである、請求項12に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法。
【請求項16】
GM-CSF及びSCFのサイトカインの組み合わせは、1:0.8~0.3の濃度比で含まれる、請求項15に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法。
【請求項17】
臍帯血免疫抑制細胞は、炎症抑制細胞(M2マクロファージ)の分化及び移動の増加、伝染性細胞(M1マクロファージ)の分化及び移動の減少、心機能(ESV(endsystolic volume)、FS(fraction shortening)、EF(ejection fraction))改善、心筋梗塞のサイズの減少または心筋梗塞時の心臓への移動性の増加を示す、請求項12に記載の炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症、抗線維化、心筋梗塞の予防または治療能のある臍帯血免疫抑制細胞の薬剤学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
臍帯血免疫抑制細胞は、強力な免疫抑制効果を有する臍帯血由来分化細胞の集合である。造血分化の様々な段階でマクロファージ(macrophages)、樹状細胞(dendritic cells)、顆粒球(granulocytes)を発達させる造血幹細胞前駆体であり、健康な個体ではこれらの細胞がないが、感染・炎症反応・がん・自己免疫などの病的な状態で末梢血液、リンパ器官、脾臓、がん組織などに蓄積する。SCH、VEGF、GM-CSF、G-CSF、M-CSFなどの促進因子、IFN-g、IL-1b、IL-6、IL-12、IL-13などのサイトカイン、カルシウム結合タンパク質S100A8、S100A9、complement component 3(C3)、シクロオキシゲナーゼ-2(cyclooxygenase-2)とプロスタグランジンE2(prostaglandin E2)などが臍帯血免疫抑制細胞を増殖して活性化させる因子である。
【0003】
臍帯血免疫抑制細胞は、ほとんどが細胞-細胞間の直接接触を通じて免疫抑制作用をすることが知られており、半減期の短いサイトカインなどの物質を分泌して免疫抑制機能を行うことが知られている。現在まで知られている作用物質としては、アルギナーゼ(Arginase)Iと誘導性酸化窒素合成酵素(inducible nitricoxide synthesis(iNOS))、活性酸素物質(reactive oxygenspecies,ROS)、ペルオキシナイトライト(peroxynitrite)などがあり、このうち、アルギナーゼ(Arginase)IとiNOSは、代表的なT-細胞抑制物質で、直接的にT-細胞の増殖を抑制する一方、ROSとペルオキシナイトライト(peroxynitrite)は、T-細胞受容体の翻訳後の修飾(post-translational modification)過程を通じて抗原認識能を抑制する。このような臍帯血免疫抑制細胞の機能と作用機序に対する研究に基づき、最近ではこれらの調節を通じて免疫反応の抑制のための新しい治療法を開発しようとする努力が加速化されている。
【0004】
臍帯血免疫抑制細胞を治療剤として開発するためには、臍帯血免疫抑制細胞が体外培養に分化増幅しなければならないが、ヒト由来臍帯血免疫抑制細胞の大量増幅に困難性があるのが実状である。最も大きな障害となる原因は、臍帯血抑制細胞の標準化と安定した培養技術が確立されておらず、その分類基準もあいまいなためである。また、血液内のCD34陽性細胞があまりにも少量であるため、CD34陽性細胞の確保だけでなく、大量生産に多くの困難性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ヒト由来臍帯血免疫抑制細胞の抗炎症、抗線維化、心筋梗塞の予防または治療的用途を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、免疫抑制能に優れたヒト由来臍帯血免疫抑制細胞の選別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、臍帯血免疫抑制細胞を含む炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物を提供する。
【0008】
本発明は、さらに治療的有効量の臍帯血免疫抑制細胞を、これを必要とする対象体に投与する段階を含む、炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法を提供する。
【0009】
本発明は、さらにCD33+CD11b+表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を区分し、二重CD15陽性細胞を陽性対照群としてCD14+表現型を発現する臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階、
【0010】
HLA-DRを発現する陽性細胞に対してCD11b+CD33+CD14+の細胞表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞のうちHLA-DRLOW表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階、及び
【0011】
末梢血単核細胞及び臍帯血免疫抑制細胞を0.125~2μl/mLの濃度の磁性ビーズの下で共培養してT細胞の増殖能を確認し、
【0012】
対照群として末梢血単核細胞及び0.05~320ng/mL濃度の免疫抑制剤を0.125~2μl/mL濃度の磁性ビーズの下で共培養してT細胞の増殖能を確認し、前記臍帯血免疫抑制細胞のT細胞増殖能を対照群と比較する段階、
【0013】
前記臍帯血免疫抑制細胞は、ヒト臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFのサイトカイン組み合わせを含む細胞培養培地で2~7週間培養して誘導されたものである、免疫抑制能に優れた臍帯血由来の臍帯血免疫抑制細胞の選別方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、機能と表現型の分析及び区分基準によって優れた免疫抑制能を有するヒト由来臍帯血免疫抑制細胞を提供する効果がある。
【0015】
本発明の前記機能と表現型の分析及び区分基準によって選別されたヒト由来臍帯血免疫抑制細胞は、炎症抑制細胞(M2マクロファージ)の分化及び移動増加、炎症誘発細胞(M1マクロファージ)の分化及び移動減少、心機能(ESV(endsystolic volume)、FS(fraction shortening)、EF(ejection fraction))の改善、心筋梗塞のサイズの減少または心筋梗塞時の心臓への移動性の増加を通じて炎症、線維化、心筋梗塞の予防または治療のための新しい細胞治療剤として使用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、T細胞刺激のための磁性ビーズ(Dynabead)の濃度による臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の免疫抑制能分析結果を示す。
【
図2】
図2は、免疫抑制剤の濃度による臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の免疫抑制能分析結果を示す。
【
図3】
図3は、抗-CD33/CD11b/CD14抗体を用いた表現型による臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の選別結果を示す。
【
図4】
図4は、CD15陽性対照群を用いた表現型による臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の選別結果を示す。
【
図5】
図5は、HLA-DRを発現する陽性対照群(遺伝子強化されたK562細胞株 (Genetically modified K562 cell line) 及び樹状細胞)を用いたHLA-DR表現型による臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の選別結果を示す。
【
図6】
図6は、臍帯血免疫抑制細胞のロット別表現型及び品質確認結果を示す。
【
図7】
図7は、臍帯血免疫抑制細胞内に免疫抑制タンパク質であるiNOS2、アルギナーゼ(Arginase)I、IDOの発現確認結果を示す。
【
図8】
図8は、臍帯血免疫抑制細胞の試験管内の免疫抑制能の確認結果を示す。
【
図9】
図9は、臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)は、心筋梗塞部位のサイズ変化(抗繊維化:infart size)及び心機能指標(ESV(endsystolic volume)、FS(fraction shortening)、LVEF(left ventricular ejection fraction))改善効果を示す。
【
図10】
図10は、LADライゲーションモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の伝染性細胞(M1マクロファージ)及び炎症抑制細胞(M2マクロファージ)の分化及び移動に対する効果を示す。
【
図11】
図11は、LADライゲーションモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の心筋梗塞部位のサイズ変化(抗線維化:infart size)及び心機能指標(ESV,FS,EF)の濃度依存的改善効果を示す。
【
図12】
図12は、LADライゲーションモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞の生存率に対する濃度及び回数依存的効果を示す。
【
図13】
図13は、心筋梗塞マウスモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の心臓への移動性の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成を具体的に説明する。
【0018】
本発明は、臍帯血免疫抑制細胞を含む炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物に関する。
【0019】
本発明の臍帯血免疫抑制細胞は、ヒト臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFのサイトカインの組み合わせを含む細胞培養培地で一定時間培養して誘導されたものであってもよい。
【0020】
前記CD34陽性細胞は、通常の分離方法を通じて分離したものであってもよく、例えば、ヒト抗-CD34抗体を用いて分離したものであってもよい。
【0021】
本発明の臍帯血免疫抑制細胞は、前記CD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFを含む細胞培養培地で2週間~7週間、より具体的には、3週間~6週間培養して増幅及び分化されてもよい。より好ましくは、3週間~6週間維持されてもよいが、これに制限されるものではない。一具体例によれば、3週間~6週間培養時に30%~95%のCD11b+CD33+発現を有する臍帯血免疫抑制細胞に分化誘導されてもよい。
【0022】
前記細胞培養培地は、動物細胞培養用安全培地であってもよい。例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F-10、F-12、αMEM(αMinimal essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal essential Medium)、Iscove’s Modified Dulbecco’s Mediumなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0023】
前記GM-CSF及びSCFは、1:0.8~0.3の濃度比で細胞培養培地に添加されてもよい。
【0024】
好ましくは、前記GM-CSFは、50ng/mL~200ng/mLの濃度で細胞培養培地に添加されてもよい。前記SCFは、10ng/mL~100ng/mLの濃度で細胞培養培地に添加されてもよい。前記範囲内の場合、CD34+細胞の増殖が相対的に増加してもよい。一具体例によれば、CD34陽性細胞をG-CSF/SCFの下で3週間培養する場合、600倍程度増殖するが、GM-CSF/SCFの下では、1000~3000倍の細胞数で増殖されてもよい。
【0025】
前記CD34陽性細胞の臍帯血免疫抑制細胞への分化条件は、CO2培養器で、5~15%の二酸化炭素の通気量で35~37℃で行われてもよいが、これに特に制限されるものではない。
【0026】
前記条件の下で分化誘導及び増殖した臍帯血免疫抑制細胞は、培養初期CD34+細胞数に基づいて1000~3000倍の細胞数で増殖されてもよい。
【0027】
本明細書において、用語の「臍帯血免疫抑制細胞(cord blood derived immunosuppressing cell)」は、未成熟な骨髄系細胞で腫瘍や、自己免疫疾患、感染において顆粒球などが完全に分化が行われず、未成熟な状態で存在し、がん患者だけでなく、急性炎症性疾患、外傷、敗血症、寄生虫・真菌感染でも増加することが知られている。臍帯血免疫抑制細胞の機能は、活性化されたT細胞を効果的に抑制する役割を果たす。臍帯血免疫抑制細胞がT細胞を調節する機序は、酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase)と活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)及びアルギナーゼ(Arginase)という酵素が必須アミノ酸であるL-アルギニン(L-arginine)の代謝を最大化することでT細胞活性を抑制することが知られている。したがって、前記臍帯血から分離されたCD34陽性細胞から分化誘導された本発明の臍帯血免疫抑制細胞は、CD11b+、CD33+、CD14+、CD15-及び設定範囲内、すなわち、30%以下のHLA-DRLOWを含む細胞表現型を発現する単核構成(monocytic)臍帯血免疫抑制細胞であってもよい。本明細書において、前記HLA-DRLOW表現型の臍帯血免疫抑制細胞とは、HLA-DRを発現する陽性細胞のHLA-DR発現量に対して30%以下の発現量を示す細胞を指す。前記臍帯血免疫抑制細胞は、さらに細胞表面マーカーとしてPDL-1、CCR2、CCR5、CD62L、CXCR4及びICAM-1の発現を含んでもよい。
【0028】
本発明の一具体例によれば、前記臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFの下で6週間培養して細胞表面を染色すると、HLA-ABC70%、HLA-DRは30%以下、CD45は90%以上発現され、G-CSF/SCF組み合わせの下で分化誘導された臍帯血免疫抑制細胞と比較して本発明のGM-CSF/SCF組み合わせの下で分化誘導された臍帯血免疫抑制細胞でのみCD83とCD80の10%発現が観察された。CD86は、GM-CSF/SCF組み合わせによる臍帯血免疫抑制細胞で40%程度発現されて共刺激分子の低い発現態様を示した。また、CD40は、40%、リンパ球マーカーであるCD1d、CD3、B220は、5%未満で発現された。T細胞の増殖や活性化を抑制することが知られているPDL-1は、GM-CSF/SCFの組み合わせによって培養された細胞でのみ30%程度発現された。CD13は、膜貫通糖タンパク質であって骨髄前駆体で発現され、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)は、骨髄細胞のアズール親和性顆粒内のタンパク質であって、両方とも臍帯血免疫抑制細胞で発現されるタンパク質である。GM-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞で、G-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞よりもCD13の発現が有意に増加した。MPOは、2つのそれぞれ異なる組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞においていずれも90%以上発現された。
【0029】
また、前記GM-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞は、G-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞及びヒト末梢血液由来樹状細胞に対してアルギナーゼ(Arginase)I、誘導性酸化窒素合成酵素(inducible nitricoxide synthesis(iNOS))、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine2,3-dioxygenase(IDO))を含むT細胞抑制物質の発現が増加している。
【0030】
前記GM-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞は、同種CD4T細胞の増殖を有意に抑制させて、抗原特異的なT細胞免疫反応によるIFN-γの分泌を強力に減少させる。前記GM-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞は、CD40抗体で刺激を受けたとき、IL-10の分泌が有意に増加したことが観察され、VEGF及びTGF-βは、CD40抗体の刺激の有無に影響を受けずに高く分泌される。また、CD4T細胞がインビトロで臍帯血免疫抑制細胞の刺激を受けると、FoxP3を発現するTreg細胞が増加することが知られており、GM-CSF/SCFの組み合わせにより誘導された臍帯血免疫抑制細胞でCD4T細胞を刺激する場合、FoxP3発現が確認されるが、炎症サイトカインであるIL-17は、分泌しない。
【0031】
本発明の臍帯血免疫抑制細胞は、一具体例によれば、炎症抑制細胞(M2マクロファージ)の分化及び移動の増加、伝染性細胞(M1マクロファージ)の分化及び移動減少、心機能(ESV(end-systolic volume,収縮機ボリューム)、FS(fraction shortening,分画短縮率)、EF(ejection fraction、左心室駆出率))改善、心筋梗塞のサイズの減少または心筋梗塞時の心臓への移動性の増加を通じて炎症、線維化、心筋梗塞の予防または治療のための細胞治療剤として使用されてもよい。
【0032】
本発明の炎症、線維化または心筋梗塞の予防または治療用組成物は、薬剤学的に許容可能な担体をさらに含んでもよい。
【0033】
前記薬剤学的に許容可能な担体は、医薬分野で通常使用される担体及びビヒクルを含み、具体的にイオン交換樹脂、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、各種リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物)、水、塩または電解質(例えば、プロタミンサルフェート、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム及び亜鉛塩)、膠質性シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系基質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアリレート、ワックス、ポリエチレングリコールまたは羊毛脂などを含むが、これに制限されるものではない。
【0034】
また、本発明の組成物は、前記成分に加えて、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、または保存剤などをさらに含んでもよい。
【0035】
一態様として、本発明による組成物は、非経口投与のための水溶性溶液として製造してもよく、好ましくは、ハンクス溶液(Hank’s solution)、リンガー溶液(Ringer’s solution)または物理的に緩衝された塩水などの緩衝溶液を使用してもよい。水溶性注入(injection)懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させることができる基質を添加してもよい。
【0036】
本発明の組成物は、全身系または局所的に投与されてもよく、例えば、経口、非経口、例えば、坐剤、経皮、静脈、腹腔、筋肉内、病変内、鼻腔、脊椎管内投与で投与されてもよく、また、徐放型または連続的または反復的放出のための移植装置を使用して投与されてもよい。投与回数は、所望の範囲内で1日1回、または数回に分けて投与してもよく、投与期間も特に限定されるものではない。
【0037】
また、このような投与のために公知の技術で適切な剤形に製剤化されてもよい。例えば、経口投与時には、不活性希釈剤または食用担体と混合するか、または硬質または軟質ゼラチンカプセルに密封されるか、または錠剤に圧形して投与してもよい。経口投与用の場合、活性化合物は賦形剤と混合して摂取型錠剤、頬側の錠剤、トロッキー、カプセル、エリクシール、サスペンション、シロップ、ウェハなどの形態で使用されてもよい。注射用、非経口投与用などの各種剤形は、当技術分野で公知の技法または通用する技法に従って製造してもよい。剤形投与は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などを使用してもよい。
【0038】
本発明の組成物の患者への投与量は、患者の身長、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間及び経路、一般的な健康、及び同時に投与される他の薬物を含む多くの要素によって異なる。通常、臍帯血免疫抑制細胞は、1回投与時、通常、体表面積m2あたり109~1010細胞前後で投与されてもよい。したがって、一般成人(約60kg)を基準として約2×1010細胞が投与されることが適切であるが、前記投与量は、上述したように、患者の様々な条件及び併用投与される薬物の種類及び量に応じて変わり得る。したがって、薬学的に活性である本発明の臍帯血免疫抑制細胞は、106~1010cells/kg(体重)の量で投与されてもよく、前記例示範囲の以下または以上の投与も特に前記要素を考慮して投与される。投与法が連続注入であれば、1分あたり体重1kgあたり103~109細胞単位の範囲内でなければならない。
【0039】
本発明は、さらに治療的有効量の臍帯血免疫抑制細胞をこれを必要とする対象体に投与する段階を含む、炎症、線維化または心筋梗塞の治療方法が提供される。
【0040】
本明細書で使用される「治療的有効量(therapeutically effective amount)」とは、炎症、線維化または心筋梗塞を改善、緩和または治療できる程度を意味する。
【0041】
前記個体は、ヒト、イヌ、ニワトリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、モルモット、サル、マウス、ラットなどを含んでもよい。
【0042】
本発明は、さらにCD33+CD11b+表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を区分し、二重CD15陽性細胞を陽性対照群としてCD14+表現型を発現する臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階、
【0043】
HLA-DRを発現する陽性細胞に対してCD11b+CD33+CD14+の細胞表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞のうち、HLA-DRLOW表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階、
【0044】
末梢血単核細胞及び臍帯血免疫抑制細胞を0.125~2μl/mL濃度の磁性ビーズの下で共培養してT-細胞の増殖能を確認し、
【0045】
対照群として末梢血単核細胞及び0.05~320ng/mL濃度の免疫抑制剤を0.125~2μl/mL濃度の磁性ビーズの下で共培養してT細胞の増殖能を確認し、前記臍帯血免疫抑制細胞のT細胞増殖能を対照群と比較する段階、
【0046】
前記臍帯血免疫抑制細胞は、ヒト臍帯血から分離されたCD34陽性細胞をGM-CSF及びSCFのサイトカイン組み合わせを含む細胞培養培地で2~7週間培養して誘導されたものである、免疫抑制能に優れた臍帯血由来の臍帯血免疫抑制細胞の選別方法に関する。
【0047】
本発明の免疫抑制能に優れた臍帯血由来の臍帯血免疫抑制細胞の選別方法は、表現型選別基準、すなわち、CD11b+CD33+CD14+の細胞表現型及びHLA-DRLOW表現型を有する臍帯血免疫抑制細胞を選別する基準、及びT細胞増殖能を確認するための選別基準、すなわち、T細胞増殖能の確認が容易な磁性ビーズ及び/又は免疫抑制剤の濃度範囲を確認し、これを対照群として末梢血単核細胞と共培養してT細胞増殖能を比較することにより、免疫抑制能に優れた臍帯血由来の臍帯血免疫抑制細胞を選別することを特徴とする。
【0048】
したがって、第1の段階は、細胞表現型、すなわち、CD11b+CD33+CD14+の細胞表現型及びHLA-DRLOW表現型を確認する段階である。
【0049】
前記CD15陽性細胞は、顆粒球(granulocyte)、及びCD15遺伝子を発現するように遺伝子強化された細胞株 (genetically modified cell line)、例えば、CD15DNA、CD15遺伝子を含むレンチウイルス、CD15IVT mRNAなどを用いて遺伝子強化した細胞株を使用してもよい。
【0050】
前記HLA-DRを発現する陽性細胞は、樹状細胞、単核球、及びHLA-DR遺伝子を発現するように遺伝子強化した細胞株、例えば、HLA-DR DNA、HLA-DR遺伝子を含むレンチウイルス、HLA-DR IVT mRNAなどを用いて遺伝子強化したK562細胞株を使用してもよい。
【0051】
前記HLA-DRLOW表現型は、HLA-DRを発現する陽性細胞のHLA-DR発現量に対して30%以下の発現量を示す臍帯血免疫抑制細胞を意味する。
【0052】
第2の段階は、末梢血単核細胞と磁性ビーズの共培養によるT細胞増殖誘導時にT細胞増殖能の確認が容易な磁性ビーズと対照群として使用する免疫抑制剤の濃度範囲を特定し、これを対照群として細胞表現型が確認された臍帯血免疫抑制細胞と末梢血単核細胞の共培養によるT細胞の増殖能を比較し、T細胞増殖抑制能に優れた臍帯血免疫抑制細胞を選別する段階である。
【0053】
末梢血単核細胞と共培養する磁性ビーズは、0.125~2μl/mLの濃度で使用してもよい。前記範囲内の濃度を使用した場合、T細胞増殖を誘導したときに免疫抑制能分析が最も容易であった。
【0054】
前記末梢血単核細胞と磁性ビーズの共培養によるT細胞増殖誘導の際に対照群として使用する免疫抑制剤は、0.05~320ng/mLの濃度で使用してもよい。前記範囲内の濃度を使用した場合、T細胞の増殖を誘導したときに免疫抑制能分析が最も容易であった。
【0055】
前記免疫抑制剤は、ラパマイシン、シクロスポリンA、タクロリムス、マイコフェノリック酸、アザチオプリン、ブレジニン、シロリムス、またはエベロリムスなどから使用してもよい。
【0056】
前記末梢血単核細胞及び臍帯血免疫抑制細胞は、1:0.25~1の細胞数の割合で共培養されてもよい。
【0057】
以下、本発明による実施例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0058】
発明の実施のための形態
<実施例1>臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の誘導及び増殖
互いに異なる個体由来の臍帯血からCD34+細胞を分離した後、GM-CSF(100ng/mL)/SCF(50ng/mL)、またはG-CSF(100ng/mL)/SCF(50ng/mL)のサイトカインの組み合わせで48ウェルプレートでIMDM培地を用いて1×105で培養を開始し、CD34+細胞の増幅を誘導した。
【0059】
その結果、GM-CSF/SCF組み合わせでは、1週目に10倍以上、2週目に100倍以上、3週目に1,000倍以上増幅したのに対し、G-CSF/SCF組み合わせでは3週目に600倍に増幅した。したがって、GM-CSF(100ng/mL)/SCF(50ng/mL)の組み合わせがより効率的にCD34+細胞を増幅させることが分かった。
【0060】
次に、臍帯血からCD34+細胞を分離した後、GM-CSF(100ng/mL)/SCF(50ng/mL)またはG-CSF(100ng/mL)/SCF(50ng/mL)で6週間培養した後にフローサイトメーターを通じて分析した。Lin-細胞をゲーティングした後にCD11b+CD33+の発現を確認した結果、GM-CSF/SCFは、3週間にCD11b+CD33+30%以上、6週間の長期間培養を通じて90%程度の臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)群が発現することを確認した。一方、G-CSF/SCFは、3週間に15%程度で発現され、その後は次第に減少した細胞群が観察された。GM-CSF/SCFの組み合わせは、高効率で臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の分化を誘導することを確認した。
【0061】
次に、臍帯血由来CD34+細胞から分化誘導された臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)において免疫抑制タンパク質の発現を測定した。
【0062】
このために、6週間培養された臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)においてiNOS2、アルギナーゼ(Arginase)I、IDOの発現を比較した結果、iNOS2とIDOは、G-CSF/SCF組み合わせよりもGM-CSF/SCFで有意に高く発現されることを観察した。アルギナーゼ(Arginase)IもG-CSF/SCFの組み合わせよりもGM-CSF/SCFの組み合わせにおいて高く発現されたが、2つの組み合わせの間の差は、有意性を示さなかった。
【0063】
<実施例2>表現型と機能による臍帯血免疫抑制細胞の区分基準
臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)は、表現型と機能による区分基準がまだ確立されていない。したがって、明確な対照群を用いて機能と表現型によって正常な臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を区分し、これを用いて細胞を明確に定義し、その機能を確認した。
【0064】
(1)T細胞刺激のための磁性ビーズ(Dynabead)の濃度差に応じて正常な機能を有する臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を選択するための免疫抑制能分析基準の確立
Dynabeadを2μlを用いてT細胞を刺激する場合に産生された臍帯血免疫抑制細胞の免疫抑制能を完全に観察することは困難であった。したがって、Dynabeadに対する適正濃度を確立するために濃度別にDynabeadを用いてCD4とCD8T細胞の増殖の抑制に変化があるかどうかを測定した。具体的にPBMCは、CFSE(Carboxyfluorescein succinimidyl ester)で標識してT細胞を刺激する磁性ビーズであるDynabeadを2μl、1μl、0.5μl、0.25μl、0.125μlを用いてCBICと1:1、1:0.5、1:0.25(PBMC:CBIC)比で6日間共培養した。次に、anti-CD3、CD4、CD8抗体を用いて細胞表面染色後のT細胞の増殖能を確認した。
【0065】
図1に示すように、Dynabead0.125μlでT細胞増殖を行った時、免疫抑制能分析が最も容易であることを確認した。
【0066】
(2)免疫抑制剤の濃度差に応じて正常な機能を有する臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を選択するための免疫抑制能分析基準の確立
【0067】
Dynabeadを2μlを用いてT細胞を刺激する場合に対照群として使用されたRapamycinとCSAの免疫抑制能を完全に観察することは困難であった。Dynabeadに対する適正濃度を確立するために濃度別にDynabeadを用いて、CD4とCD8T細胞の増殖の抑制に変化があるかどうかを測定した。具体的には、CBICの免疫抑制能の分析基準を確立するために対照群としてRapamycinとCyclosporin A(CsA)を濃度別(Rapamycin;5ng/mL~320ng/mL、CsA;0.05ng/mL~3.2ng/mL)に連続希釈して使用した。PBMCは、CFSEで標識してT細胞を刺激する磁性ビーズであるDynabeadを2μl、1μl、0.5μl、0.25μl、0.125μlを用いてCBICと1:1、1:0.5、1:0.25(PBMC:CBIC)比で6日間共培養した。次に、anti-CD3、CD4、CD8抗体を用いて細胞表面染色後のT細胞の増殖能を確認した。
【0068】
図2に示すように、Dynabead0.125μlでT細胞増殖を行ったとき、免疫抑制能分析が最も容易であることを確認した。
【0069】
(3)表現型に応じて正常な臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を選択するための表現型分析基準の確立
6週間培養したCBICの表現型を分析するため、anti-CD33/CD11b/CD14抗体を用いて細胞表面染色後、フローサイトメーターを通じて分析した。このとき、染色していないCBICを対照群として使用した。
【0070】
その結果、臍帯血免疫抑制細胞の表現型を確認し、詳細な分析基準が確立された。臍帯血免疫抑制細胞は、大きく2つに分類されるが、顆粒球-骨髄性免疫抑制細胞(G-CBIC)または単核球-骨髄性免疫抑制細胞(M-CBIC)に分類される。顆粒球-骨髄性免疫抑制細胞は、CD33+CD11b+CD15+CD14-の表現型を示し、単核球-骨髄性免疫抑制細胞は、CD33+CD11b+CD15-CD14+の表現型を示すことが知られている。CBICは、共通してCD33+CD11b+の表現型を示し、CD15とCD14の発現により顆粒球-骨髄性免疫抑制細胞と単核球-骨髄性免疫抑制細胞に区分されてもよい。単核球-骨髄性免疫抑制細胞は、一般に免疫抑制反応が顆粒球-骨髄性免疫抑制細胞よりも強いと知られている。
【0071】
図3に示すように、実施例で誘導された臍帯血免疫抑制細胞は、骨髄性免疫抑制細胞の共通表現型であるCD33+CD11b+を示し、細部表現型は、CD33+CD11b+CD14+で、単核球-骨髄性免疫抑制細胞の表現型と類似していることを確認した。
【0072】
(4)陽性対照群を用いて臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の中で他の細胞が混在するかどうかを区分する表現型分析基準の確立
CD15陽性対照群である顆粒球(Granulocyte)とCD15+遺伝子強化細胞株、CD14陽性対照群である単核球(monocyte)とCD14+遺伝子強化細胞株を基準に区分すると、CBICの表現型は、CD33+CD11b+CD14+/CD15で確認される。また、CD14とCD15の二重陽性細胞は存在しないことが知られている。したがって、6週間培養したCBICの表現型を分析するため、anti-CD33/CD11b/CD15抗体を用いて細胞表面染色後、フローサイトメーターを通じて分析した。このとき、染色していないCBICを対照群として使用した。
【0073】
図4に示すように、CD33+CD11b+CD14+細胞は、93.9~99.6%レベルであるため、CD15+が混在していないことが確認できる。
【0074】
(5)HLA-DR陽性対照群を用いて正常な臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を単核球と区分して選択するためのHLA-DR表現型分析基準の確立
臍帯血免疫抑制細胞の表現型研究は、まだ完璧ではなく、細胞を完全に分類するには困難性があった。顆粒球-骨髄性免疫抑制細胞は、好中球(Neutrophils)と表現型が類似しており、単核球-骨髄性免疫抑制細胞は、単核球(monocyte)と表現型が類似している。
【0075】
本発明では、単核球-骨髄性免疫抑制細胞と単核球の表現型をHLA-DRを高発現する樹状細胞とK562細胞株を用いてHLA-DR陰性の表現型を区分し、これにより単核球と表現型が異なる臍帯血免疫抑制細胞を最終的に製造した。
【0076】
具体的には、抗-CD33/CD11b/HLA-DR抗体を用いて6週間培養したCBIC細胞の表面を染色した後、フローサイトメーターを通じて分析した。HLA-DRを発現する樹状細胞とK562細胞株にanti-HLA-DR抗体を用いて細胞表面を染色した後、対照群として使用した。
【0077】
図5に示すように、対照群より低いHLA-DRの表現型を確認することができ、これはM-CBICの表現型であるHLA-DR Lowに適していると考えられた。
【0078】
(6)臍帯血免疫抑制細胞のロット別表現型及び品質確認結果
6週間培養したCBICの表現型を分析するため、抗CD33/CD11b/CD14抗体を用いて細胞表面染色後、フローサイトメーターを通じて分析した。このとき、染色していないCBICを対照群として使用した。
【0079】
図6に示すように、CD33+CD11b+CD14+発現率が最小93.9%最大99.70%、中間(平均)96.94%で、39回の測定がいずれも基準値である90%を上回って再現され、反復的に品質が維持された。
【0080】
(7)臍帯血免疫抑制細胞内に免疫抑制タンパク質であるiNOS2、Arginase 1、IDOの発現確認
6週間培養したCBICの細胞内物質を分析するため、Lyse/Fix bufferを用いて10分間37℃で固定した後、Perm bufferを入れて氷上に30分間静置して細胞外壁に穿孔を誘導した。その後、抗-iNOS2/Arginase/IDO抗体を入れて細胞内染色を行った後、フローサイトメーターを通じて分析した。このとき、細胞内に染色抗体を入れていないCBICを対照群として使用した。
【0081】
図7に示すように、臍帯血免疫抑制細胞もロット間の差がなく、免疫抑制物質であるアルギナーゼ(Arginase)I、誘導性酸化窒素合成酵素(inducible nitricoxide synthesis(iNOS))、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO))を発現した。
【0082】
(8)臍帯血免疫抑制細胞の試験管内の免疫抑制能の確認
臍帯血免疫抑制細胞によるヒトヘルパーT細胞の増殖抑制機能を分析するために正常成人のCFSE(5μM濃度利用)が標識されたCD4T細胞(1×105)をDynabeadを用いて96ウェルプレートで6日間培養した。
【0083】
図8に示すように、Dynabeadを通じてヒトヘルパーT細胞の増殖が発生したのに対し、臍帯血免疫抑制細胞(1×10
5)が培養されたグループでは、ヘルパーT細胞の増殖が抑制された。
【0084】
<実施例3>臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の心筋梗塞部位のサイズ変化(抗線維化)及び心機能指標(ESV,FS,EF)に対する効果
臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の心筋梗塞部位の抗線維化と心機能指標(ESV,FS,EF)に対する効果を実験するため、LADライゲーションモデルを確立し、臍帯血免疫抑制細胞を投与した後、投与しない対照群(PBS)と比較して心筋梗塞部位をMT染色を通じて心筋梗塞部位のサイズを確認した。また、心臓組織を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、パラフィン固定し、4μmセクションで切片を作製した後、Masson-Trichrome染色した。スライドスキャナーでスキャンした後、iamge Jで分析した。
【0085】
図9に示すように、心筋梗塞マウスモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞を投与したマウスで投与しない対照群と比較したとき、心筋梗塞部位のサイズが減少することを確認した。
【0086】
次に、心機能を確認するため、LADライゲーションモデルを確立し、臍帯血免疫抑制細胞を投与した後、投与しない対照群(PBS)と比較して心機能を超音波を通じて確認した。MRIは、BioSpec 47/40(Bruker,Ettlingen,Germany)を使用して行い、二重心電
図ECG及び呼吸ゲーティングを行った。MRイメージ獲得のために針電極でECG信号を得た。内径が72mmの求積ケージRF共振器(Bruker)を使用して信号を送受信し、MRイメージ獲得のために前脚と後脚に固定された針電極でR-waveを用いてECG信号を得た。イメージングパラメータ:FOV=60×60mm
2、マトリックスサイズ=256×256、スライス厚=1.5mm、スライス数=1、TR=8ms、TE=2.8ms、flip angle=30°、平均数=6、total scan time=3 min 16s。噴出率(EF)及び断片低短縮(FS)は、乳頭筋レベルでMモード追跡を通じて測定した。
【0087】
図9に示すように、心筋梗塞マウスモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞を投与したマウスで投与しない対照群と比較したとき、心機能指標が向上することを確認した。
【0088】
<実施例4>臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の炎症抑制細胞及び伝染性細胞に対する効果
臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の炎症抑制細胞及び伝染性細胞
に対する効果を確認した。このために、LADライゲーションモデルを確立し、臍帯血免疫抑制細胞を投与した後、投与しない対照群(PBS)と比較して免疫効果マーカーであるM1、M2マクロファージを免疫組織化学技法(IHC)で確認した。また、パラフィン包埋切片を脱パラフィン及び再水和(rehydrated)し、1次抗体CD68、iNOS、CD206を4℃でオーバーナイトの間反応させた後、2次抗体RTで1hr反応させた。DAPI染色後、蛍光顕微鏡で確認した(LSM 510 Meta;Zeiss,Jena,Germany)。
【0089】
図10に示すように、心筋梗塞マウスモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞を投与したマウスで投与しない対照群と比較したとき、M1(CD68+iNOS)マクロファージの減少及びM2(CD68+CD206)マクロファージの増加を確認した。
【0090】
<実施例5>臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を対象体に投与して心筋梗塞部位のサイズの変化(抗繊維化)及び心機能指標(ESV,FS,EF)に対する効果
臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を濃度別に対象体に投与し、心筋梗塞部位のサイズ変化(抗線維化)及び心機能指標(ESV,FS,EF)に対する効果を確認した。このために、LADライゲーションモデルを確立し、臍帯血免疫抑制細胞を投与した後、投与しない対照群(PBS)と比較して心筋梗塞部位をMT染色を通じて心筋梗塞部位のサイズを確認した。心臓組織を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、パラフィン固定した。 4μmのセクションで切片を作製した後、Masson-Trichrome染色した。スライドスキャナーでスキャンした後、iamge Jで分析した。
【0091】
図11に示すように、心筋梗塞マウスモデルにおいて対照群と比較したとき、2×10
6、8×10
6グループ群で心筋梗塞部位のサイズが減少することを確認した。
【0092】
次に、LADライゲーションモデルに臍帯血免疫抑制細胞を投与した後、投与しない対照群(PBS)と比較して超音波を行って心機能を確認した。MRIは、BioSpec 47/40(Bruker,Ettlingen,Germany)を使用して行い、二重心電
図ECG及び呼吸ゲーティングを行った。MRイメージ獲得のために針電極からECG信号を得た。内径72mmの求積ケージRF共振器(Bruker)を使用して信号を送受信した。MRイメージ獲得のために前脚と後脚に固定された針電極でR-waveを用いてECG信号を得た。イメージングパラメータ:FOV=60×60mm
2、マトリックスサイズ=256×256、スライス厚=1.5mm、スライス数=1、TR=8ms、TE=2.8ms、flip angle=30°、平均数=6、total scan time=3 min 16s。噴出率(EF)及び断片低短縮(FS)は、乳頭筋レベルでMモード追跡を通じて測定した。
【0093】
図11に示すように、心筋梗塞マウスモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞を投与したマウスで投与しない対照群と比較したとき、2週目に対照群と比較してlow(0.5×10
6)、mid(2.0×10
6)、High(8.0×10
6)グループの心機能指標が向上する傾向を示し、4週目にlowグループが2週目と比較したとき、心機能指標が低下し、midとhighグループは、維持(2つのグループ間の差はない)される傾向を示した。
【0094】
結論として、臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)を対象体に投与して心筋梗塞部位の抗線維化と心機能指標(ESV,FS,EF)改善効果を用量依存的に示した。
【0095】
<実施例6>臍帯血免疫抑制細胞の生存率確認結果
臍帯血免疫抑制細胞を血管注射して生存率用量反応性を確認するためにLADライゲーションモデルを確立し、臍帯血免疫抑制細胞を投与した後、投与しない対照群(PBS)と比較して生存率を確認した。また、心筋梗塞誘発後、30日間生存率を確認した。
【0096】
図12に示すように、心筋梗塞マウスモデルにおいて臍帯血免疫抑制細胞を投与したマウスで投与しない対照群と比較したとき、臍帯血免疫抑制細胞注入群の生存率が高いことを確認した。
【0097】
<実施例7>臍帯血免疫抑制細胞(CBIC)の心筋梗塞マウスの心臓への移動性確認結果
LADライゲーションモデルに臍帯血免疫抑制細胞を投与し、正常マウスの投与群と比較して移動性を確認した。心筋梗塞及び対照マウスのリンパ節、肺、肝臓、腎臓、脾臓、心臓組織を摘出してgDNAを抽出した。表1に記載の条件に従って定量PCR法でhuman ALU(ALU)遺伝子を分析した(順方向プライマー:5’-ACCTGAGGTCAGGAGTTTGAGA-3’、逆方向プライマー:5’-ACCACGCCCGGCTAATTTT-3’)。
【0098】
【0099】
図13に示すように、心筋梗塞マウスモデルでは、正常マウスに比べて臍帯血免疫抑制細胞の心臓への移動性が2~3倍高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、炎症、線維症、心筋梗塞の予防または治療の分野に適用しうる。
【国際調査報告】