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特表2024-521514がん治療のための順次的な自然免疫調節と適応免疫調節
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】がん治療のための順次的な自然免疫調節と適応免疫調節
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240524BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240524BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K48/00
A61K39/395 U
A61P11/00
A61P37/02
A61K33/243
A61K31/365
A61K31/4745
A61K31/282
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577935
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022066533
(87)【国際公開番号】W WO2022263618
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21179848.3
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473039
【氏名又は名称】ウィッティグ,バーグハート
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ウィッティグ,バーグハート
(72)【発明者】
【氏名】ヤニグ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ローア,ジャニーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086CB22
4C086EA16
4C086HA12
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB07
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB07
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、化学療法剤による導入化学治療後のがん患者に対して最適な免疫調節シグナルを送達するように設計されたバイオマーカー主導型治療プロトコルにおけるTLR9アゴニスト及びチェックポイントモジュレーターの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療における使用のためのTLR9アゴニストであって、
- 前記TLR9アゴニストを、治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を受けた患者に投与し;
- 導入化学療法を受けた後の前記患者は、第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて「1回目に不一致(non-matched-in-first)」のステータスが割り当てられており、
・ ここで前記第1の予測バイオマーカーアッセイにより、前記患者から得られた血液試料中のB細胞、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、樹状細胞(DC)、形質細胞様樹状細胞(pDC)、骨髄様樹状細胞(mDC)から選択される免疫細胞サブセット内の活性化細胞のパーセント、及び/又はCD4+T細胞のうちの制御性T(Treg)細胞のパーセントを決定し;かつ
・ 前記免疫サブセット内の活性化細胞のパーセントが、活性化細胞のパーセントの中央値未満であるか、又はCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントの中央値未満である場合、前記患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられ、
- 前記導入化学療法の後に、前記TLR9アゴニストをTLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの一部として投与し、
・ ここで化学療法剤を、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第1週に投与し、かつ
・ 前記TLR9アゴニストを、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第2週及び第3週において、週1回、又は週2回投与し;かつ
- 前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの1~4セットの後に、前記TLR9アゴニストをTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンの一部として投与し、
・ ここで前記TLR9アゴニストを、前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンのn週間の間に、週2回、毎週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは5~35の整数であり、特に9~18の整数であり、より特にnは12であり;かつ
- 前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンの少なくとも3週間後に、第2の予測バイオマーカーアッセイにより、前記患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントを決定し、
- 前記試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが少なくとも20%(以上)である場合、前記患者に「2回目に一致(matched-in-second)」のステータスが割り当てられ、かつ
・ ここで「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は
・ 前記患者が、疾患の進行の診断がなく、前記導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値を超える場合、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合、
・ チェックポイントモジュレーター(CPM)をn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは3~15の整数であり;又は
- 前記試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%未満である場合、前記患者に「2回目に不一致(non-matched-in-second)」のステータスが割り当てられ、かつ
・ ここで、「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、前記TLR9アゴニストを、n週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9週間ごとである、
前記TLR9アゴニスト。
【請求項2】
- 前記第2の予測バイオマーカーアッセイは、6~15週間ごとに実施され、特に9週間ごとに実施される、
請求項1に記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【請求項3】
がんの治療における使用のためのCPM(チェックポイントモジュレーター)剤であって、
- 前記CPM剤は、治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を受けた患者に投与され;
- 導入化学療法を受けた後の前記患者は、請求項1に規定される免疫細胞サブセット内の活性化細胞のパーセントを決定する第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて、「1回目に一致(matched-in-first)」のステータスが割り当てられており、
・ ここで前記免疫サブセット内の活性化細胞のパーセントが活性化細胞のパーセントの中央値以上である場合、又はCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントがCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントの中央値以上である場合、前記患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられ、
- 前記導入化学療法の後に、前記CPM剤をCPM導入免疫調節サイクルの一部として投与し、
・ ここで化学療法剤とCPM剤とを、前記CPM導入免疫調節サイクルの第1週に1回投与し、かつ
・ 前記CPM導入免疫調節サイクルの1~5セットの後に、前記CPM剤をCPM維持免疫調節レジメンの一部として投与し、
・ 前記CPM剤を、n週間の前記CPM維持免疫調節レジメンの2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは6~36の整数であり、特に9~18の整数であり、より特にnは12である、
前記CPM剤。
【請求項4】
- 前記患者は、請求項3に規定されるCPM維持免疫調節レジメンを前の3週間受けており、
- 第2の予測バイオマーカーアッセイにより、前記患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントを決定し、
・ ここでCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%以上である場合、前記患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、かつ
「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、前記CPM剤をn週間の間、2週間ごと、又は3週間ごとに投与し、ここでnは6~36の整数であり、より特に9~12の整数であり、特にnは12である、
請求項3に記載の使用のためのCPM剤。
【請求項5】
- 請求項4に規定されるとおり決定される前記第2の予測バイオマーカーアッセイにおいて、
・ 試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%未満である場合に前記患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられ;又は
- 試料中の活性化Treg細胞のパーセントが20%以上である場合に前記患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、
- 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は、前記患者が、疾患の進行の診断なしに、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値を超える場合に、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合に、TLR9アゴニストをn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり、又は
- 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、前記CPM剤をn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは6~36の整数であり、特に9~12の整数であり、より特にnは12である、
請求項4に記載の使用のためのCPM剤。
【請求項6】
- 前記第2の予測バイオマーカーアッセイは、6~15週間ごとに実施され、特に9週間ごとに実施され、
- 前記患者が請求項3に規定されるCPM維持免疫調節レジメンを前の3週間受けている場合であって、その後に
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は前記患者が疾患の進行の診断なしに、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値を超える場合、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合に、前記TLR9アゴニストを、その後のn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは、6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり;又は
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、前記CPMをその後n週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与することを継続し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~12の整数であり、より特にnは9であり;
又は
- 前記患者が請求項1に規定されるTLR9維持免疫調節レジメンを前の3週間受けている場合であって;
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後に、前記TLR9アゴニストを、その後のn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは、6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり;又は
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は前記患者が疾患の進行の診断なしに、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値を超える場合、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合、前記CPM剤をその後のn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~12の整数であり、より特にnは9である、
請求項1又は2に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項4又は5に記載の使用のためのCPM剤。
【請求項7】
前記患者は前記TLR9アゴニスト及び前記CPM調節剤の同時投与を受けない、特に1週間以内、より特に2週間以内に、前記TLR9アゴニスト及び前記CPM調節剤の同時投与を受けない、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト又はCPM調節剤。
【請求項8】
個別化維持がん療法に良好に応答する可能性に応じてがん患者を分類する方法であって、前記がん患者は、治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を受けており;
前記方法は:
- 第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて、前記患者から得られた血液試料中の活性化B細胞のパーセントを決定すること;
- 免疫サブセット内の活性化B細胞のパーセントが、活性化B細胞のパーセントの中央値以上である場合、前記がん患者に「1回目に一致」のステータスを割り当てることであって、
ここで「1回目に一致」のステータスが割り当てられた前記がん患者は、その後のCPM導入免疫調節サイクルに良好に応答する可能性が割り当てられ、
・ ここで化学療法剤とCPM剤とを、前記CPM導入免疫調節サイクルの第1週に1回投与し、かつ
・ 前記CPM導入免疫調節サイクルの1~5セットの後に、前記CPM剤をCPM維持免疫調節レジメンの一部として投与し、
・ 前記CPM剤をn週間の間、前記CPM維持免疫調節レジメンの2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは6~36の整数であり、特に9~18の整数であり、より特にnは12であること;
又は
- 免疫サブセット内の活性化B細胞のパーセントが、活性化細胞のパーセントの中央値未満である場合、前記がん患者に「1回目に不一致」のステータスを割り当てることであって、
ここで「1回目に不一致」のステータスが割り当てられた前記がん患者は、その後のTLR9アゴニスト導入免疫調節と、それに続くTLR9アゴニスト維持レジメンのサイクルとに良好に応答する可能性が割り当てられ、
・ ここで化学療法剤を、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第1週に投与し、かつ
・ 前記TLR9アゴニストを、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第2週及び第3週に、週1回、又は週2回投与し、かつ
・ 前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの1~4セットの後に、前記TLR9アゴニストをTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンの一部として投与し、かつ
・ 前記TLR9アゴニストを、前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンのn週間の間、週2回、毎週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは5~35の整数であり、特に9~18の整数であり、より特にnは12であり;かつ
前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメン又は前記CPM維持免疫調節レジメンの開始からその後の6~15週間、特にその後9週間ごとに、
- 第2の予測バイオマーカーアッセイにおいて、前記患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントを決定すること;
- 試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%以上である場合、前記がん患者に「2回目に一致」のステータスを割り当てることであって、
ここで、「2回目に一致」のステータスが割り当てられた患者は、その後のCPM維持免疫調節レジメンの投与に良好に応答する可能性が割り当てられ、
・ ここで、前記CPMをn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは3~15の整数であること、
又は
- 試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%未満である場合、前記がん患者に「2回目に不一致」のステータスを割り当てることであって、
ここで「1回目に不一致」のステータスが割り当てられた患者は、その後のTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンの投与に良好に応答する可能性が割り当てられ、
・ ここで前記TLR9アゴニストを、前記TLR9アゴニスト切り替え維持免疫調節レジメンのn週間の間、週2回、毎週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であること、
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記患者は、約188日の疾患の進行の診断がない、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値を超えており、
かつここで
- 前の2週間にTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンを受けた患者は、その後のCPM維持免疫調節レジメンの投与に対して良好に応答する可能性が割り当てられ、又は
- 前の2週間にCPM維持免疫調節レジメンを受けた患者は、その後のTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンの投与に対して良好に応答する可能性が割り当てられる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記TLR9アゴニストは、非メチル化CGジヌクレオチドを含むオリゴデオキシヌクレオチドであり、特に少なくとも3個の非メチル化CGジヌクレオチドを含むオリゴデオキシヌクレオチドである、請求項1、2、6若しくは7のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項5~7のいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤、又は請求項8若しくは9に記載の方法。
【請求項11】
前記非メチル化CGジヌクレオチドは、それらの5’側にNが隣接し、かつそれらの3’側にNが隣接し、ここでNは、AA、TT、GG、GT、AT、又はGAであり、かつNは、CT、TT、TC、TG、CG、AT、又はCTである、請求項1、2、6、7若しくは10のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項5~7若しくは10のいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤、又は請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記TLR9アゴニストの二次構造はダンベル型として特徴付けられる、請求項1、2、6、7、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項5~7、10若しくは11のいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記TLR9アゴニストはレフィトリモド(Lefitolimod)(CAS:1548439-51-5)である、請求項1、2、6、7、若しくは10~12のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項5~7、若しくは10~12のいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤、又は請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記TLR9アゴニストを、皮下注入によって:
- 週2回、50~80mgの用量、特に60mgの用量で2日又は3日の間隔、
- 週1回、30~60mgの用量、特に60mgの用量、
- 週1回、100~150mgの用量、特に120mgの用量、又は
- 2週間ごとに1回、100~150mgの用量、特に120mgの用量、
において投与し、
特に、前記TLR9アゴニストを60mgの用量で週1回投与する、
請求項1、2、6、7、若しくは10~13のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項5~7、若しくは10~13のいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤、又は請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記チェックポイントモジュレーターは、PD-1又はPDL-1に特異的な抗体であり、特にアテゾリズマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブから選択される抗体であり、より特にアテゾリズマブ又はデュルバルマブから選択される抗PD-L1抗体である、請求項1、2、6、7、若しくは10~14のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は請求項5~7、若しくは10~14のいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤、又は請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記がんは、免疫アジュバンド治療と組み合わせた化学療法剤に感受性のがんであり、特に乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、転移性結腸直腸癌、又は肺がんから選択されるがんであり、より特に小細胞肺がん又は転移性結腸直腸がんであり、さらにより特に進展期小細胞肺がん(SCLC)である、請求項1~15のいずれか一項に記載の、使用のためのTLR9アゴニスト、又は使用のためのCPM剤、又は方法。
【請求項17】
前記患者に:
- 活性化B細胞の比率がB細胞のうち16.9%以下である場合、特にB細胞のうち15.42%以下である場合、前記患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられ、及び/又は
- 活性化B細胞の比率がB細胞のうち15.42%超過、16.9%超過である場合、特にB細胞のうち21%超過の場合、前記患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる、
請求項1~16のいずれか一項に記載の、使用のためのTLR9アゴニスト、又は使用のためのCPM剤、又は方法、特に肺がんの治療、より特に進展期SCLCの治療における使用のための前記TLR9アゴニスト、又は前記CPM剤、又は前記方法。
【請求項18】
前記導入化学療法は:
- 2、3、4、又は5サイクルを含み、特に4サイクルを含み、ここで各サイクルは3週間からなる、治療サイクルの第1のセット
からなり、かつ
- 化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせを、前記導入化学療法サイクルの第1週に投与し、
- 特に、前記導入化学療法サイクルは、前記導入化学療法サイクルの第1週に白金ベースの組み合わせの化学療法剤を投与することからなる、
請求項1~17のいずれか一項に記載の、使用のためのTLR9アゴニスト、又は使用のためのCPM剤、又は方法。
【請求項19】
前記導入化学療法は:
- 抗悪性腫瘍性白金錯体薬、特にシスプラチン、オキサリプラチン、又はカルボプラチンから選択される抗悪性腫瘍性白金錯体薬、及び
- 抗悪性腫瘍性アルカロイド薬、特にエトポシド又はトポテカンから選択される抗悪性腫瘍性アルカロイド薬、
による治療を含むか、又はそれからなる、
請求項1~18のいずれか一項に記載の、使用のためのTLR9アゴニスト、又は使用のためのCPM剤、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん患者の治療における使用のためのTLR9アゴニスト及びチェックポイントモジュレーター剤に関する。
【0002】
本出願は、2021年6月16日に出願された欧州特許出願第21179848.3号の優先権の利益を主張し、これは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
Toll様受容体(Toll-like receptor:TLR)は、宿主の細胞コンパートメントに対して区別可能なエピジェネティックな修飾を有し、又は誤標的させる、リポ多糖又は病原体由来核酸のような病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular pattern:PAMP)を認識するパターン認識受容体の一群に属し、TLRによって認識されるパターンのファミリーは、損傷関連核パターン(damage-associated nuclear pattern:DAMP)である。DAMPは宿主細胞から生じ、これは炎症又はがんなどの病的プロセスによって死滅する。TLRは、免疫細胞が自然免疫系を介して病原体又は病的細胞と闘うことを可能にすることによる即時免疫反応において重要な役割を果たしている。適応免疫は次いで適応免疫群の抗原特異的なエフェクターT細胞及びメモリーT細胞を活性化する。したがって、TLRアゴニストは、チェックポイント阻害剤と同様に、がんを治療するための治療的免疫調節剤の開発にとって魅力的な候補である。
【0004】
TLR9は形質細胞様樹状細胞(pDC)及びB細胞に主に発現する。これはヒト/脊椎動物の核DNAには存在しない非メチル化CGモチーフを認識し、自然免疫と適応免疫との両方を広く活性化する。合成DNA分子は免疫治療アプローチに使用されており、これは、病原体のDNAを模倣することでTLR9アゴニストとして機能し、幅広い免疫学的活性を引き起こす非メチル化CGモチーフを含有する。
【0005】
TLR9アゴニストのファミリーであるdSLIM(登録商標)ファミリー(dSLIM:double Stem Loop Immunomodulator)のメンバーは、DNAの化学的又はその他の人工的修飾のいずれも有さない、ダンベル型の共有結合で閉じたDNA分子からなる(Kapp K.ら,2019 Oncoimmunology DOI:10.1080/2162402X.2019.1659096、Schmidt M.ら,2015 Nucleic Acid Therapeut.25(3):140)。核酸分解からの保護は、アクセス可能な3’末端又は5’末端を回避する共有結合で閉じた構造によって実現される。Lefitolimod(レフィトリモド)(米国特許第(US)6849725号B2に開示、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる;他としてはMGN1703と称される)は、特異的な免疫調節配列及び構造を示すTLR9アゴニストのこの群に属する。転移性結腸直腸癌(metastatic colorectal carcinoma:mCRC)及び進展期小細胞肺がん(extensive stage small cell lung cancer:esSCLC)の化学療法との併用における探求調査及び予備的なマウス調査における有望な免疫原性データから、TLR9誘発性免疫活性化は、がん患者の腫瘍細胞上の腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、及び腫瘍新生抗原を認識する免疫監視を再活性化するために利用できることが示唆されるが、しかし、TLR9アゴニスト治療に応答する全生存期間(overall survival:OS)の延長に、がん患者のどのサブセットが関連しているか、あるいはどの臨床的治療状況が関連しているのかはまだ明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第(US)6849725号B2
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kapp K.ら,2019 Oncoimmunology DOI:10.1080/2162402X.2019.1659096
【非特許文献2】Schmidt M.ら,2015 Nucleic Acid Therapeut.25(3):140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術状態に基づき、本発明の目的は、がん患者を治療するための、特に自然免疫応答又は適応免疫応答を調節することが可能な順次的な適用におけるTLR9アゴニスト及びチェックポイント調節化合物を含む投与スケジュール及びその組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本明細書の独立請求項の主題、並びに本明細書の従属請求項、実施例、図及び一般的説明に記載されたさらに有利な実施形態によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】すべてのカプランマイヤープロットの挿入図には、ハザード比(hazard ratio)とそれに対応する信頼区間(confidential interval:CI)及び対数順位p値(log rank p-value)が示される。図1は、A:比較解析に使用した研究及びさらなる代表的な研究によるIMPULSEの無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)と全生存期間(overall survival:OS)のデータとの比較オーバーレイを示す。IMPULSEのmPFS1とmOS1は導入化学療法の開始時点から計算した。21d CT:21日間の化学療法サイクル(chemotherapy cycle:CT)、ECOG:米国東海岸癌臨床試験グループの機能状態(Eastern Cooperative Oncology Group performance status)
図1B】B:新しい治療法の論理的根拠を示す。
図2図2は、4サイクル又は5サイクルのPE化学療法後にTLR9アゴニストによる治療を行ったIMPULSE患者の全生存期間(OS1)の比較を示す。mOSにおける利益は2.3ヶ月(m)であり、免疫療法で一般的に観察されるプラトー領域が見えるようになった。#Chemo=5は5サイクルのPE化学療法で治療した患者、又は#Chemo=4は4サイクルのPE導入化学療法で治療した患者である。
図3A図3は、B細胞活性化状態(CD86陽性のCD45+CD19+B細胞のパーセンテージ)によるIMPULSEのLefitolimod(レフィトリモド)の患者とコントロール群(維持療法継続)とのOS1を比較したカプランマイヤープロットである。細胞の活性化は、MGN1703(レフィトリモド)で24時間培養した後、ベースラインの末梢血単核球試料をフローサイトメトリーで測定した。A、B:試料は、活性化細胞のパーセントが中央値16.9%以下、又は中央値16.9%超過に分けられる。
図3B】A、B:試料は、活性化細胞のパーセントが中央値16.9%以下、又は中央値16.9%超過に分けられる。
図3C】C、Dは、コントロール群において2つの集団に分けられた患者群に適用された閾値15.42%を示すが、これはレフィトリモド群では適用されない。
図3D】C、Dは、コントロール群において2つの集団に分けられた患者群に適用された閾値15.42%を示すが、これはレフィトリモド群では適用されない。
図3E】E、Fは、活性化B細胞15.42%の閾値によるレフィトリモド群とコントロール群とのOSを示す。
図3F】E、Fは、活性化B細胞15.42%の閾値によるレフィトリモド群とコントロール群とのOSを示す。
図4A-1】図4は、レフィトリモド切り替え維持治療を受けたIMPULSE患者のOS1と、コントロール群の治療(維持療法継続)についてのOS1とを比較したカプランマイヤープロットを示し、これらは活性化免疫細胞バイオマーカーの状態が以下の閾値の中央値以下(左)又は超過(右)に従って分割される:A. T細胞の活性化状態、CD69+陽性のCD45+CD3+T細胞のパーセンテージ
図4A-2】A. T細胞の活性化状態、CD69+陽性のCD45+CD3+T細胞のパーセンテージ
図4B-1】B. ナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性化状態、CD69陽性のCD45+CD3+CD56+T細胞のパーセンテージ
図4B-2】B. ナチュラルキラーT(NKT)細胞の活性化状態、CD69陽性のCD45+CD3+CD56+T細胞のパーセンテージ
図4C-1】C. 形質細胞樹状細胞(PDC)の活性化状態、BCDA2陽性の系列(CD3/CD14/CD16/CD19/CD20/CD56)-CD45+CD123+HLA-DR+PDCのパーセンテージ
図4C-2】C. 形質細胞樹状細胞(PDC)の活性化状態、BCDA2陽性の系列(CD3/CD14/CD16/CD19/CD20/CD56)-CD45+CD123+HLA-DR+PDCのパーセンテージ
図4D-1】D. 骨髄様樹状細胞(mDC)の活性化状態、CD86陽性のCD45+系列CD11c+HLA-DR+骨髄様樹状細胞のパーセンテージ
図4D-2】D. 骨髄様樹状細胞(mDC)の活性化状態、CD86陽性のCD45+系列CD11c+HLA-DR+骨髄様樹状細胞のパーセンテージ
図4E-1】E. 樹状細胞(DC)の活性化状態、CD40陽性CD45+系列HLA-DR+骨髄性樹状細胞のパーセンテージ
図4E-2】E. 樹状細胞(DC)の活性化状態、CD40陽性CD45+系列HLA-DR+骨髄性樹状細胞のパーセンテージ
図5-1】図5は、最適な無増悪生存期間(PFS)バイオマーカーの閾値の決定を示す。左パネル、ROC曲線、右パネル、ユーデン指数。AUC、曲線下面積(area under curve)。AUCが大きいほど、受信者動作曲線(ROC)ではアウトカムが改善したことを示し、一方、ユーデン指数では、2つの曲線の交点が高いほどバイオマーカーの性能が最適であることを示す。
図5-2】図5は、最適な無増悪生存期間(PFS)バイオマーカーの閾値の決定を示す。左パネル、ROC曲線、右パネル、ユーデン指数。AUC、曲線下面積(area under curve)。AUCが大きいほど、受信者動作曲線(ROC)ではアウトカムが改善したことを示し、一方、ユーデン指数では、2つの曲線の交点が高いほどバイオマーカーの性能が最適であることを示す。
図6A図6は、PFS1が閾値188日超過であったIMPULSE患者と、PFSが閾値188日未満であった患者とを比較したカプランマイヤープロットを示す。A:TLR9アゴニストによる切り替え維持療法
図6B】B:継続維持療法としてのPE化学療法(PFS1188日超過又は以下に応じる)。
図7A-1】A:ゲーティングされたCD45+CD3+CD4+T細胞中のCD45+CD3+CD4+CD25+CD127-制御性T(Treg)のパーセンテージが中央値以上又は中央値未満であるかどうかに従ったTLR9アゴニストによる切り替え維持療法又はコントロール継続維持療法を受けるIMPULSE患者を比較するカプランマイヤープロットを示す。
図7A-2】A:ゲーティングされたCD45+CD3+CD4+T細胞中のCD45+CD3+CD4+CD25+CD127-制御性T(Treg)のパーセンテージが中央値以上又は中央値未満であるかどうかに従ったTLR9アゴニストによる切り替え維持療法又はコントロール継続維持療法を受けるIMPULSE患者を比較するカプランマイヤープロットを示す。
図7B-1】B:導入化学療法後又は再導入化学療法後のCD86+活性化B細胞のパーセントの中央値が16.9%以下又は21%以下のいずれかに応じて分けられる、TLR9アゴニストによる切り替え維持療法を受けたIMPULSE患者と、コントロールとなる標準治療の継続維持療法を受けたIMPULSE患者とを比較したカプランマイヤープロットを示す。導入化学療法後又は再導入化学療法後に活性化B細胞が中央値(16.9%)以下の患者は、第5のサイクルのPE化学療法後に順次的なTLR9アゴニスト切り替え維持療法により治療され、導入化学療法後又は再導入化学療法後に活性化B細胞が中央値以下(16.9%、又は21%以下)の継続維持療法において患者が有するPFS1が6.2か月超過であり、4サイクル、5サイクル、又は6サイクルのPE化学療法により治療される。
図7B-2】B:導入化学療法後又は再導入化学療法後のCD86+活性化B細胞のパーセントの中央値が16.9%以下又は21%以下のいずれかに応じて分けられる、TLR9アゴニストによる切り替え維持療法を受けたIMPULSE患者と、コントロールとなる標準治療の継続維持療法を受けたIMPULSE患者とを比較したカプランマイヤープロットを示す。導入化学療法後又は再導入化学療法後に活性化B細胞が中央値(16.9%)以下の患者は、第5のサイクルのPE化学療法後に順次的なTLR9アゴニスト切り替え維持療法により治療され、導入化学療法後又は再導入化学療法後に活性化B細胞が中央値以下(16.9%、又は21%以下)の継続維持療法において患者が有するPFS1が6.2か月超過であり、4サイクル、5サイクル、又は6サイクルのPE化学療法により治療される。
図8A図8は、レフィトリモド又はコントロールの標準治療で治療されたIMPALA転移性結腸直腸がん試験の患者において分析された第2のバイオマーカー成分を示す。A:指示される治療群における活性化B細胞バイオマーカー値、及びCD86陽性のCD45+CD19+B細胞のパーセントの相対分布。TLR9アゴニスト又はコントロールの継続維持療法を受けたIMPALA患者の全生存期間(OS)を、B.無増悪生存期間225日超過、又は維持期治療250日超過、C.無増悪生存期間225日超過、又は再導入期治療250日超過に応じて分けて比較したカプランマイヤープロット。
図8B-1】図8は、レフィトリモド又はコントロールの標準治療で治療されたIMPALA転移性結腸直腸がん試験の患者において分析された第2のバイオマーカー成分を示す。A:指示される治療群における活性化B細胞バイオマーカー値、及びCD86陽性のCD45+CD19+B細胞のパーセントの相対分布。TLR9アゴニスト又はコントロールの継続維持療法を受けたIMPALA患者の全生存期間(OS)を、B.無増悪生存期間225日超過、又は維持期治療250日超過、C.無増悪生存期間225日超過、又は再導入期治療250日超過に応じて分けて比較したカプランマイヤープロット。
図8B-2】図8は、レフィトリモド又はコントロールの標準治療で治療されたIMPALA転移性結腸直腸がん試験の患者において分析された第2のバイオマーカー成分を示す。A:指示される治療群における活性化B細胞バイオマーカー値、及びCD86陽性のCD45+CD19+B細胞のパーセントの相対分布。TLR9アゴニスト又はコントロールの継続維持療法を受けたIMPALA患者の全生存期間(OS)を、B.無増悪生存期間225日超過、又は維持期治療250日超過、C.無増悪生存期間225日超過、又は再導入期治療250日超過に応じて分けて比較したカプランマイヤープロット。
図8C-1】図8は、レフィトリモド又はコントロールの標準治療で治療されたIMPALA転移性結腸直腸がん試験の患者において分析された第2のバイオマーカー成分を示す。A:指示される治療群における活性化B細胞バイオマーカー値、及びCD86陽性のCD45+CD19+B細胞のパーセントの相対分布。TLR9アゴニスト又はコントロールの継続維持療法を受けたIMPALA患者の全生存期間(OS)を、B.無増悪生存期間225日超過、又は維持期治療250日超過、C.無増悪生存期間225日超過、又は再導入期治療250日超過に応じて分けて比較したカプランマイヤープロット。
図8C-2】図8は、レフィトリモド又はコントロールの標準治療で治療されたIMPALA転移性結腸直腸がん試験の患者において分析された第2のバイオマーカー成分を示す。A:指示される治療群における活性化B細胞バイオマーカー値、及びCD86陽性のCD45+CD19+B細胞のパーセントの相対分布。TLR9アゴニスト又はコントロールの継続維持療法を受けたIMPALA患者の全生存期間(OS)を、B.無増悪生存期間225日超過、又は維持期治療250日超過、C.無増悪生存期間225日超過、又は再導入期治療250日超過に応じて分けて比較したカプランマイヤープロット。
図9A図9は、A:導入化学療法(例えばesSCLCに対する白金-エトポシド導入化学療法、IMPULSE)又は再導入化学療法(mCRCに対する5-FU/FA又はCAPEと、OX又はIRI、単独、又は抗VEGF又は抗EGFR抗体との併用、IMPALA)に基づくがん治療に続く、バイオマーカー誘導型、順次的、2段階、分岐型の自然免疫調節と適応免疫調節との交代モデルを示す。このモデルは、患者の適応免疫活性化レベルを反映するバイオマーカーの中央値に基づいて、自然免疫刺激又は適応免疫刺激に応じて適用するための最も効果的な効果を有すると予測される。
図9B】B.簡易的なモデルの概要。
図10図10は、白金ベースの導入化学療法の治療の期間を変えた免疫調節治療レジメンの代表例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の概要
本発明は、がん患者のサブグループにおける使用のためのTLR9アゴニスト又はチェックポイントモジュレーター(checkpoint modulator:CPM)薬を提供する。本明細書における実験的研究は、血液試料中に免疫相関物質が存在することを実証し、この免疫相関物質は患者が第1の導入化学療法治療後に自然免疫刺激又は適応免疫刺激に応答する可能性があるかどうかを示す。さらに、本発明は、本発明者らが臨床アウトカム(clinical outcome)の改善に関連すると見出した前記製剤の投与のための特定のタイミング及び治療条件を提供する。
【0012】
本発明の一態様は、がんに対する導入化学療法治療を最初に受け、かつ第1の予測バイオマーカーアッセイにおける免疫学的非応答性の腫瘍又は腫瘍微小環境を示す閾値中央値未満の免疫細胞サブセットの活性化のマーカーを示すことが判明した患者における使用のためのTLR9アゴニストを提供する。その後にTLR9アゴニストを、「TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクル」の1サイクル、又は2サイクル、又は3サイクルの繰り返しの形態で最初に投与する(ここで、化学療法剤を第1週に投与し、かつTLR9アゴニストを第2週、及び第3週に投与する)。次いで、TLR9アゴニストを、「TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメン」の一部として投与する(ここで、TLR9アゴニストを、前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンのn週間の間、週2回、各週1回、又は2週間ごとに投与し、ここで、nは5~35週間の整数であり、特に9~18週間の整数であり、より特にnは12週間である)。
【0013】
現在の免疫腫瘍学的治療プロトコルでは、それぞれの免疫療法薬が化学療法又は標的療法と「組み合わせ」られる。つまり、一緒に、又は同日に適用される。例えば、この研究で分析された試験におけるesSCLCの一次療法(first line therapy)では、PE化学療法がPD-L1阻害抗体であるアテゾリズマブ(Atezolizumab)(Tecentriq(登録商標)、Roche)又はデュルバルマブ(Durvalumab)(Imfinzi(登録商標)、AstraZenenca)とともに投与される。組み合わせレジームの成果はこれまでのところ控えめで、一部の患者に限定されており、持続的な応答をもたらすことはできていない。対照的に、本発明は、特定のバイオマーカーによって同定された標的集団、及び組み合わせアプローチと比較した治療の二分割された2段階の順次性という点で、以前の研究とは異なるチェックポイントモジュレーターの投与レジメンを提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、がんの導入化学療法を受け、かつ第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて免疫疲弊を示す閾値中央値を超えている免疫細胞サブセット活性化のマーカーを示す患者に使用するためのCPM薬を提供する。これらの患者は、免疫的に「ホット(hot)」でありながら疲弊した腫瘍微小環境を示しており、ここでの事後解析では、上記のようなTLR9アゴニストによる実質的な利益に関連せず、むしろCPM薬が有意な臨床的利益を生み出す。これに従い、CPM剤を1~5セットの「CPM剤導入免疫調節サイクル」の形(化学療法剤とCPM剤とを一緒に3週間に1回投与)で最初に投与する。その後、CPM剤を、「CPM剤維持免疫調節レジメン」の一部として投与する(ここで、CPM剤を、n週間の前記CPM剤維持免疫調節レジメンの週2回、各週1回、又は2週ごとに投与し、nは6~36週間の整数であり、特に9~18週間の整数であり、より特にnは12週間である)。
【0015】
本発明の一態様は、導入化学療法後に、TLR9アゴニスト又はCPM薬のいずれかによる交互の免疫調節治療へのがん患者の割り当てに関する。前記交互治療のタイミングは、免疫疲弊の指標を測定する第1及び第2の予測バイオマーカーアッセイのアウトカムによって導かれる。閾値超過に活性化された免疫細胞は、「ホット」なTME(腫瘍微小環境)、又は以前は「ホット」だったが現在は「疲弊」したTMEのいずれかを示し;免疫応答は、その疲弊状態に関わらず、TLR9アゴニストによってさらに活性化されることは可能でない。閾値未満で活性化免疫細胞は、「コールド(cold)」なTME(以前は「ホット」なTMEであったが現在は「疲弊している」TME)のいずれかを示し;ここで、免疫応答は、「免疫監視再活性化」(immune surveillance reactivation:ISR)として知られるプロセスにおいてTLR9アゴニストによって活性化又は再活性化することが可能である。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0017】
本発明は、免疫学的に「コールド」、又は「ホット」な腫瘍微小環境を有すると同定された患者の両方における、標準的な化学療法の最初のラウンド後の免疫バイオマーカー評価の標的を絞った提供による、使用のための治療を提供する。
【0018】
用語と定義
本明細書を解釈するために、以下の定義が適用され、適宜、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆もまた同様である。以下に定める定義が、参照により本明細書に組み込まれる文書と矛盾する場合は、ここに定める定義が優先されるものとする。
【0019】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び他の同様の形態、並びにそれらの文法的に同等な用語は、意味において同等であること、及びこれらの単語のいずれか1つに続く1つ又は複数の項目が、係る1つ又は複数の項目を網羅的にリストするものではない、又はリストした1つ又は複数の項目のみに限定するものではないことにおいてオープンエンドとすることを意図している。例えば、成分A、B及びCを「含む(comprising)」品目は、成分A、B及びCからなる(すなわち、成分A、B及びCのみを含有する)こともできるし、又は成分A、B及びCのみならず、1つ又は複数の他の成分を含むこともできる。このように、「含む(comprising)」及びその類似の形態、並びにその文法的同等な用語は、「本質的にそれからなる(consisting essentially of)」又は「それからなる(consisting of)」の実施形態の開示を含むことが意図及び理解される。
【0020】
値の範囲が提供されている場合、文脈上明らかにそうでないと指示されない限り、その範囲の上限と下限の間の、下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載の範囲内の他の記載の値若しくは介在値は、記載の範囲の具体的に除外される制限を受けて本開示内に包含されると理解される。記載の範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除いた範囲もまた開示に含まれる。
【0021】
本明細書において、値又はパラメーター「約(about)」という言及は、その値又はパラメーターそれ自体に向けられた変動を含む(及び記述する)。例えば、「約(about)X」と言及する記述には、「X」という記述も含まれる。
【0022】
添付の特許請求の範囲を含め、本明細書で使用されるとおり、単数形「a」、「or(又は)」、「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の参照語を含む。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術及び生化学)により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学的方法、遺伝学的方法及び生化学的方法(一般に、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第4編(2012)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、及びAusubelら,Short Protocols in Molecular Biology(2002)第5編,John Wiley&Sons,Inc.を参照)及び化学的方法には、標準的な技術が使用される。
【0024】
予測バイオマーカーアッセイ
本発明による予測バイオマーカーは、がん患者の免疫状態を判定するために、血液試料から単離した末梢血単核球(PBMC)中の免疫細胞サブセット表現型マーカー及び活性化マーカーの細胞表面発現をアッセイする。活性化マーカー又は表現型マーカーの発現は、フローサイトメトリー又はマルチプレックス解析などの技術を介してアッセイすることができる。
【0025】
液体生検における活性化免疫細胞集団を測定する適切な方法は当該技術分野で知られており、これには、スライド上又は液体試料中で単一細胞レベルにて細胞表現型、及び活性化マーカー発現を測定し、特定の細胞サブセット内の活性化細胞の割合を求める方法が含まれる。このような方法論には、組織学又は流体工学ベースのアッセイのいずれかによって実行される質量分析アッセイ、多重化免疫組織化学、又はフローサイトメトリープロトコルが含まれる。フローサイトメトリーは、本発明による細胞サブセットとその活性化マーカーとを測定するために特に用いられる方法である。
【0026】
本明細書において、マーカーの発現の文脈で使用される場合、「陽性」という用語は、標識分子プローブ、特に蛍光標識抗体によってアッセイされる抗原の発現を意味し、ここで「陽性」と称される構造体(例えば、細胞)上の標識のシグナル(例えば、蛍光)は、同じ標的に特異的に結合しないアイソタイプ一致標識抗体による染色と比較して、強度の中央値が少なくとも30%高い(≧30%)、特に50%以上又は80%以上である。このようなマーカーの発現は、マーカー名の後に上付き文字「プラス」()を付けること(例えばCD4)、又はマーカー名の後にプラス記号を付けること(「CD4+」)で示される。本明細書において、「発現」という語が、「遺伝子発現」又は「マーカー若しくは生体分子の発現」の文脈で使用され、「発現」についてさらなる修飾が言及されない場合、これは、上記で定義される「陽性の発現」の意味を含む。
【0027】
本明細書において、マーカーの発現の文脈で使用される場合、「陰性」という用語は、標識分子プローブ、特に蛍光標識抗体によってアッセイされる抗原の発現を指し、ここで標識シグナル強度の中央値は、同じ標的に特異的に結合しないアイソタイプ一致抗体の強度の中央値よりも30%未満だけ高い、特に15%未満だけ高い。このようなマーカーの発現は、マーカー名の後に上付き文字のマイナス()を付けること(例えばCD86)、あるいはマーカー名の後にマイナス記号を付けること(「CD86-」)で示される。
【0028】
本明細書の文脈における「分子プローブ」という用語は、特定のリガンド、特に抗体、抗体断片、抗体様分子又はアプタマー、より特に抗体又は抗体断片であって、特定の表面タンパク質などの標的分子に(≦)10-7mol/l以下、特に(≦)10-8mol/l以下の解離定数で結合できるものに関する。分子プローブは、蛍光色素、金属粒子、ビーズ、色素、又は酵素などの検出可能なマーカーを含む。
【0029】
「分子プローブのセット」という用語は、予測バイオマーカーアッセイで測定さる細胞表現型マーカー又は活性化マーカーに特異的な分子プローブのパネルに関する。
【0030】
本明細書における「蛍光標識」又は「蛍光色素」という用語は、可視又は近赤外スペクトルにおいて蛍光を発することができる小分子に関する。蛍光標識又は可視色を呈する標識の例としては、限定されるものではないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、アロフィコシアニン(APC)、ペリジニンクロロフィル(PerCP)、フィコエリトリン(PE)、Alexa Flour(Life Technologies、カールズバッド、カリフォルニア州、米国)、dylight fluor(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)、ATTO Dye(ATTO-TEC GmbH、ジーゲン、ドイツ)、BODIPY Dye(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン系染料)などが挙げられる。
【0031】
化学療法治療
本明細書の文脈における「導入化学療法」という用語は、腫瘍細胞死を誘導するために、がん患者に標準治療の化学療法薬、すなわち抗悪性腫瘍化学療法薬を投与する数週間又は数か月、特に6週間~12週間の期間に関する。これは、がん細胞に対して自然及び適応免疫の応答を開始する腫瘍抗原を放出し、これは後に本発明によって提供される免疫調節剤、すなわちTLR9アゴニスト分子又はチェックモジュレーター剤(CPM)の投与によって利用され得る。このような「導入化学療法」は通常、反復「サイクル」の治療を含むか、又はそれらからなり、各サイクルは、2~4週間の期間に1回、通常は3週間に1回の抗腫瘍化学製剤の投与又は標的モノクローナル抗体治療からなる。「導入化学療法」に使用される抗悪性腫瘍剤は、本発明に従って特に限定されるものではなく、標準治療の臨床評価によって確認される腫瘍のタイプ及び悪性度に従って選択され、処方されるべきである。
【0032】
導入化学療法の例としては、IMPULSE試験に参加しているようなesSCLC患者の場合、白金製剤をベースとした組み合わせ導入化学療法を2~6サイクル行い、各サイクルはエトポシドとの組み合わせにおけるシスプラチン若しくはカルボプラチンの投与を3週間に1回行うことを含むがこれらに限定されるものではない。乳がん又は子宮頸がんの場合、導入化学療法は、シスプラチン若しくはカルボプラチンなどの白金錯体、あるいは上皮成長因子若しくは血管成長因子阻害抗体を周期的に投与することからなり得る。
【0033】
本明細書で使用される「導入化学療法」という用語は、mCRC治療ガイドラインに従ってIMPALA試験で検討されたいわゆる「再導入」化学療法を包含し、前記化学療法の薬物治療プロトコルは、腫瘍再発の場合、及び/又は転移の診断の場合、寛解期間後に患者に2回目として提供される。IMPALA臨床試験に参加しているような転移性大腸がん患者の場合、導入(又は再導入)化学療法は、これらに限定されないが、成長ホルモン受容体を標的とする抗体、白金ベースの化学療法、オキサリプラチンなどの白金錯体、又は他の抗有糸分裂化学療法剤などの抗悪性腫瘍剤による治療のサイクルであり得る。
【0034】
本明細書で使用される「白金ベースの化学療法治療」という用語は、第2の化学療法剤との組み合わせた以下のものを含む組み合わせ薬を指す:
- 白金含有薬物であって、白金含有錯体としても知られ、例えば、カルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、及び/又はトリプラチンから選択される白金含有薬物。
【0035】
前記白金製剤及び第2の化学療法剤は、単一の錠剤又は注入剤中に組み合わせることもでき、或は2つの別々の製剤として同時に投与することもできる。
【0036】
「導入化学療法」サイクルで利用され得るか、又は白金ベースの化学療法治療を提供するために上記で規定された白金含有薬物と共に使用され得る第2の化学療法薬として利用され得る、追加の抗腫瘍化学療法薬の例には、当該分野で公知であり、以下の薬物クラスが挙げられるが、これらに限定されない:
- アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルムスチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、エトポシド、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ、及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;
- 抗メタボリック型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサートから選択される抗メタボリック型抗悪性腫瘍薬;
- 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
- 抗メタボリック型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサートから選択される抗メタボリック型抗悪性腫瘍薬;
- アントラサイクリン型抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン型抗悪性腫瘍薬;
- 選択的SERM抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
- SERD抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラントから選択されるSERD抗悪性腫瘍薬;
- アロマターゼ阻害剤薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;及び/又は
- PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬;
- HER2標的抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985,RC48,A166,HER2ALT-P7,T-DM1,ARX788,KN026,BVAC-B,MT-5111,AVX901,TAS0728,MP0274,MM-302,FS102、及びH2NVACから選択されるHER2標的抗悪性腫瘍薬;
- エストロゲン成長因子受容体(EGFR)生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にゲフェチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシミブ(cetuxumib)、ネラチニブ、オシメラチブ(osimeratib)、パニツマミブ(panitumamib)、バンデタニブ、ネシツムマブ、及びダコミチニブから選択されるEGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬;
- 血管新生抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、イトラコナゾール、サリドマイド、及びレナリドマイドから選択される血管新生抗悪性腫瘍薬、又は血管内皮増殖因子(VEGF)生物活性阻害抗悪性腫瘍薬。
【0037】
本明細書の分脈において、「サイクルのセット」、「治療サイクル」、又は「サイクル」という用語は、複数の薬剤、又は薬剤の組み合わせが、特定の期間にわたって特定の順序で送達され、この順序が任意に同一のセット又はサイクル又は治療で繰り返される治療を指す。本明細書で用いられる「レジメン」という用語は、単一の治療又は治療薬を指し、特定の週の期間にわたって一定の間隔で送達される。
【0038】
免疫療法
本明細書の分脈において、「がん免疫調節」、「がん免疫療法」、「生物学的療法」又は「免疫調節療法」という用語は、免疫系ががんと闘うのを助けるがん治療の種類を包含することを意味する。がん免疫療法の非限定的な例としては、免疫チェックポイント阻害剤及びアゴニスト、T細胞移入療法、サイトカイン及びその組換え誘導体、アジュバント、及び小分子又は細胞によるワクチン接種などが挙げられる。
【0039】
本明細書の分脈において、「チェックポイントモジュレーター」又は「チェックポイント阻害抗体」という用語は、免疫チェックポイント機構として当該技術分野で知られている、免疫細胞の活性化を制限する阻害性シグナル伝達カスケードを破壊することができるがん免疫療法剤、特に抗体(又は抗体様分子)を包含することを意味する。本明細書の分脈において、「チェックポイントモジュレーター」という用語は、当技術分野で知られている免疫チェックポイント機構の一部として、T細胞活性化後のT細胞阻害につながるシグナルカスケードを破壊することができる薬剤、特に抗体(又は抗体様分子)を包含することを意味する。特定の実施形態において、「チェックポイント阻害剤」又は「チェックポイント阻害抗体」は、CTLA-4(Uniprot P16410)、PD-1(Uniprot Q15116)、PD-L1(Uniprot Q9NZQ7)、B7H3(CD276;Uniprot Q5ZPR3)、VISTA(Uniprot Q9H7M9)、TIGIT(UniprotQ495A1)、TIM-3(HAVCR2、Uniprot Q8TDQ0)、CD158(キラー細胞免疫グロブリン様受容体ファミリー)、TGF-β(P01137)に対する抗体である。
【0040】
「チェックポイントモジュレーター剤」又は「チェックポイント阻害抗体」の非限定的な例としては、イピリムマブ(Yervoy;CAS番号477202-00-9)、又はPD-1(Uniprot Q15116)に対する抗体、又はPD-L1(Uniprot Q9NZQ7)に対する抗体、B7H3(CD276;Uniprot Q5ZPR3)に対する抗体が挙げられ、臨床的に利用可能な抗体医薬であるニボルマブ(Bristol-Myers Squibb;CAS番号946414-94-4)、デュルバルマブ(Astra Zeneca;CAS番号1428935-60-7)、ペムブロリズマブ(Merck Inc.;CAS番号1374853-91-4)、ピジリズマブ(CAS番号1036730-42-3)、アテゾリズマブ(Roche AG;CAS番号1380723-44-3)、セミプリマブ(Sanofi Aventis;CAS番号1801342-60-8)、アベルマブ(Merck KGaA;CAS番号1537032-82-8)などが例として挙げられる。
【0041】
本明細書の分脈において、「TLR9アゴニスト」という用語は、病原性DNAを検出するtoll様受容体9の刺激剤、特に、DNAのいずれの化学的又は他の人工的な修飾を欠いたダンベル型の共有結合で閉じたDNA分子からなるTLR9アゴニストの新しいファミリーであるdSLIM(登録商標)ファミリー(dSLIM(double Stem Loop Immunomodulator):ダブルステムループ免疫調節剤)のメンバーを指す(Kapp K.ら、2019 Oncoimmunology DOI:10.1080/2162402X.2019.1659096、Schmidt M.ら,2015 Nucleic Acid Therapeut.25(3):140)。核酸分解に対する保護は、3’末端のアクセス可能性を回避する共有結合で閉じた構造によって達成される。レフィトリモド(Lefitolimod)(MGN1703)は、特異的な免疫調節配列及び構造を表すこの群のTLR9アゴニストに属する。
【0042】
本明細書の分脈において「ステム」という用語は、同じDNA分子内(部分的に自己相補的)又は異なるDNA分子内(部分的又は完全に相補的)のいずれかで塩基対形成によって形成されるDNA二本鎖を指す。
【0043】
本明細書の分脈において、「ループ」という用語は、ステム構造内又はステム構造の末端でのいずれかでの、対になっていない一本鎖の領域を指す。
【0044】
本明細書の分脈において、「ダンベル型」という用語は、二本鎖ステム(同一ポリヌクレオチド内の塩基対形成)と、二本鎖ステムの両端にある2つの一本鎖ループとを含むポリヌクレオチドを指す。
【0045】
本明細書で使用されるとおり、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を伴う、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を指す。特定の実施形態において、本発明による医薬組成物は、局所投与、非経口投与、又は注入投与に適した形態で提供される。
【0046】
本明細書で使用されるとおり、「薬学的に許容される担体」という用語は、当業者に知られているとおり、任意の溶媒、分散媒質、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩類、保存剤、薬物、薬物安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、色素など、及びそれらの組み合わせを含む(例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,ISBN 0857110624を参照)。
【0047】
本明細書で使用されるとおり、任意の疾患又は障害(例えば、がん)の「治療する」又は「治療」という用語は、一実施形態では、疾患又は障害を改善すること(例えば、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせるか、阻止するか、又は軽減すること)を指す。別の実施形態では、「治療する」又は「治療」とは、患者が識別できない可能性のあるものも含めて、少なくとも1つの身体的パラメーターを緩和又は改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」又は「治療」とは、身体的(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、身体的パラメーターの安定化)、又はその両方のいずれかで、疾患又は障害を調節することを指す。疾患の治療及び/又は予防を評価する方法は、以下の本明細書で特に説明しない限り、当技術分野で一般的に知られている。
【0048】
本明細書の分脈において、治療すべき疾患又は再発を予防すべき疾患として言及される「がん」という用語は、特に、悪性新生物疾患に関するものであり、より特に、癌腫(上皮由来がん)、肉腫(結合組織由来がん)、リンパ腫及び白血病、胚細胞由来腫瘍及び胚腫を含む。特定の実施形態において、がんは、乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、転移性結腸直腸癌、及び肺がんからなる群から選択される腫瘍性疾患を指し得る。より特定の実施形態において、本明細書で提供されるTLR9アゴニスト、及び/又はチェックポイントモジュレーターは、小細胞肺がん、特に進展期小細胞肺がん(extensive stage small cell lung cancer:esSCLC)、又は転移性結腸直腸がんを治療するために使用される。
【0049】
発明の詳細な説明
TLR9アゴニストの順次的適用/交互投与スケジュール
本発明の第1の態様は、がんと診断された患者の治療においての使用のためのTLR9アゴニストに関する。
【0050】
TLR9アゴニストは、化学療法薬治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を受けた患者に投与される。導入化学療法とは、数週間から数か月の期間、特に6~12週間、患者の腫瘍の種類に適した標準治療の抗悪性腫瘍薬治療を指し、通常、2~4週間ごとに薬剤を経口又は注入により投与するサイクルで投与される。この導入化学療法には、一次がん診断治療と、再導入化学療法の両方とが包含され、再導入化学療法は、過去にがん治療をすでに受けており、かつ疾患の一定期間の経過後のがんの再発若しくはがんの進行、又はベースライン測定値又は閾値を超える腫瘍増殖がないことが最近に診断された患者に施される。
【0051】
導入化学療法の後に(本発明の文脈における「~後」とは、好ましくは導入化学療法後の翌週、又は多くとも2~3週間後に開始することを意味する)、TLR9アゴニストを「TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクル」の一部として投与する。
【0052】
本発明のこの態様によれば、「TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクル」は、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの最初の週に、TLR9アゴニストの用量と共に化学療法剤若しくは薬物、又は薬物の組み合わせを投与することを含むか、又はそれからなる。これに続いて、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第2週、及び第3週において、TLR9アゴニストを週1回、又は週2回投与する。いくつかの実施形態では、TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルは、導入化学療法期に投与されたのと同じ治療剤を利用する。化学療法剤は、上記の導入化学療法で使用されるものから選択することができる。特定の実施形態は、TLR9アゴニストとの組み合わせにおける白金含有錯体、又は白金ベースの化学療法治療の使用に関する。
【0053】
前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルを1、2、3、又は4サイクル繰り返した後、TLR9アゴニストを「TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメン」の一部として順次的に投与する。
【0054】
本発明のこの態様によれば、「TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメン」の間、TLR9アゴニストは、前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンのn週間中に、週2回、それぞれの週に1回、又は2週間ごとに投与され、ここでnは5~35の整数である(mCRC、mBC、又はSCLC及び他のがんに適した治療スケジュールを包含する)。特定の実施形態では、nは9~18週間の整数である(SCLCに関する標準的な治療タイミング)。より特定の実施形態では、nは12週間である(実施例で評価したIMPULSE試験において、応答性のある患者の集団を含むことが実証される)。「TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクル」とは対照的に、「TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメン」の間、患者には追加の化学療法剤は投与されない。
【0055】
本発明のこの態様の特定の実施形態は、第1の予測バイオマーカーアッセイで「1回目に不一致(non-matched-in-first)」のステータスを割り当てられた患者における使用のためのTLR9アゴニストに関する。第1の予測バイオマーカーアッセイは、免疫疲弊を測定する患者から得られた血液試料における免疫の状態、すなわち、B細胞、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、樹状細胞(DC)、骨髄性樹状細胞(DC)、及び/又は形質細胞様樹状細胞(pDC)から選択される免疫細胞サブセット内の活性化細胞のパーセント、又はCD4+T細胞サブセット内の制御性T(Treg)細胞のパーセントを決定する。特定の実施形態では、本発明による予測バイオマーカーアッセイは、フローサイトメトリーを利用して細胞サブセットを同定し、活性化表現型を表す割合を測定する。
【0056】
第1の予測バイオマーカーにおいて決定される活性化免疫細胞又はTreg細胞のパーセントは、バイオマーカー評価の前に、患者と同じがんと診断され、かつ治療サイクルの前記第1のセットを受けたがん患者コホートから得られた血液試料について事前に決定された中央値の閾値(a threshold of a median value)と比較される。活性化免疫細胞の割合がこの閾値の中央値(median threshold)以上であれば、患者は「一致(matched)」、活性化免疫細胞又はTreg細胞のパーセントが該閾値未満であれば「不一致(non-matched)」に割り当てられる。
【0057】
第1の予測バイオマーカーの特定の実施形態は、CD4+T細胞中の制御性T(Treg)細胞のパーセントの決定に関する。これらの実施形態によれば、免疫サブセット内の活性化細胞のパーセントが、活性化細胞の中央値のパーセント未満、又はCD4+T細胞中のTreg細胞の中央値のパーセント未満の場合、患者は「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる。
【0058】
本発明の第1の態様による第1の予測バイオマーカーの特定の実施形態は、CD80、又はCD86、特にCD86(Uniprot P42081)などの活性化マーカーを発現するB細胞(例えば、CD19+CD45+細胞と定義されるもの)のパーセントを決定するフローサイトメトリーアッセイの使用に関する。いくつかの実施形態では、活性化B細胞のパーセンテージが約16.9%の閾値を下回る場合、患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる。
【0059】
使用のためのTLR9若しくはCPM、又は本発明による方法のさらなる特定の実施形態では、患者から得られた血液試料中の活性化B細胞のパーセントが少なくとも15.42%である場合、患者には「1回目に一致(matched-in-first)」のステータスが割り当てられ、血液試料中の活性化B細胞のパーセントが15.42%未満である場合、患者には「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる。
【0060】
より特定の実施形態では、本発明による使用のためのTLR9、CPM、又は方法のうち、患者から得られた血液試料中のCD86+CD19+CD45+B細胞のパーセントが総CD19+CD45+B細胞のうち少なくとも15.42%である場合に患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられ、及び血液試料中のCD86+CD19+CD45+B細胞のパーセントが総CD19+CD45+B細胞のうち15.42%未満である場合、患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる。第1又は第2の予測バイオマーカーアッセイで評価される免疫活性化マーカーの高発現は、患者が十分な自然免疫刺激剤TLR9アゴニストを投与されていることを示唆し、したがって、代替的な治療、例えば化学療法薬、又は特にチェックポイントモジュレーターの恩恵を受ける可能性がより高い。
【0061】
いくつかの実施形態において、導入化学療法を受け、かつ上記に関連する本発明の態様によって規定される第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて「1回目に一致」のステータスが割り当てられた患者の治療は、本発明によって特に限定されない。免疫サブセット内の活性化細胞のパーセントが前記閾値以上、特に活性化細胞の中央値のパーセント以上である場合、又はCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが閾値以上である場合、患者は「1回目に一致」のステータスを割り当てられる可能性がある。特定の実施形態では、患者はB細胞の中央値のパーセント16.9%以上にて「1回目に一致」に割り当てられる。
【0062】
特定の実施形態では、第1の予測バイオマーカーが一致した場合、例えば、試験試料において観察された活性化B細胞のパーセントが、免疫疲弊を示す免疫活性化の所定の閾値以上の場合、TLR9アゴニストを中止する。特定の実施形態は、このバイオマーカーが一致した場合に、標準治療のがん治療に復帰することに関し、例えば白金ベースの化学療法による維持を継続したり、又はIMPULSE試験で実証されるとおりトポテカンなどの二次化学療法に切り替えたりする。
【0063】
特定の実施形態では、前の3週間に上記で規定されたTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンを受け、かつ第2の予測バイオマーカーアッセイも受けたがん患者にTLR9を投与する。特定の実施形態において、この第2の予測バイオマーカーアッセイは、患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞中の制御性T細胞のパーセントを決定する。
【0064】
いくつかの実施形態において、試料中の活性化Treg細胞のパーセントが、同じ病態に対して同じ治療を受けた患者のコホートから得られるTregの中央値未満である場合、患者は「2回目に不一致(non-matched-in-second)」のステータスが割り当てられる。いくつかの実施形態では、試料中の活性化Treg細胞のパーセントが20%未満である場合、患者は「2回目に不一致」のステータスを割り当てられる。
【0065】
「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、患者には、TLR9アゴニストをn週間の間、週に2回、週に1回、又は2週間ごとに投与し、ここで、nは6~24の整数である。特定の実施形態では、nは6~15の整数である。より特定の実施形態では、nは9である。
【0066】
特定の実施形態では、第2の予測バイオマーカーにおいて以下の場合に上記の導入化学療法後に、TLR9アゴニストが投与される:
・ 試料中のCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセンテージが20%未満である場合に患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられる場合、又は
・ 試料中のCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが20%以上の場合に患者に「2回目に一致(matched-in-second)」のステータスが割り当てられる場合。
【0067】
別の実施形態では、
・ 試料中のCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセンテージが約15%未満である場合、患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられる、或は
・ 試料中のCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセンテージが約15%以上である場合、患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0068】
第2の予測バイオマーカーアッセイの別の実施形態では、患者は、ex vivo試料中で測定された活性化B細胞のパーセントに基づいてバイオマーカーのステータスが割り当てられ、例えば、患者は、CD80又はCD86を共発現するCD19+細胞のパーセントが約15%の閾値以下である場合に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、及び活性化B細胞のパーセントが15%未満の場合、「2回目に不一致」が割り当てられる。
【0069】
「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、患者に、TLR9アゴニストをn週間、週に2回、週に1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここで、nは6~24の整数である。特定の実施形態では、nは6~15の範囲である。より特定の実施形態では、nは9である。「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、チェックポイントモジュレーター(CPM)がn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに投与され、ここで、nは3~15の整数である。
【0070】
いくつかの実施形態では、臨床的標準治療の状況において導入化学療法又は再導入化学療法を受けている患者コホートの無増悪生存期間の中央値に患者が達した場合、患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0071】
本明細書の分脈において、「腫瘍の進行」又は「疾患の進行」という用語は、導入化学療法前のベースライン測定で得られた腫瘍の大きさ、悪性度、及び重症度の指標評価と比較した腫瘍の増殖、再発、又は転移を指す。本発明による疾患の進行は、当該技術分野で知られている標準化された臨床評価プロトコル、例えばRECIST 1.1基準(Lawrence S.H.ら,2016 Eur.J.Cancer 62:138)又はirRC基準(Hoos A.ら,2007 30(1)1)を用いて評価することができる。疾患の進行は、例えば、ベースライン測定後の時点における双方向測定により決定される腫瘍体積が25%増加する場合、及び/又は新たながん細胞病変が同定される場合に、割り当てられ得、又は診断され得る。
【0072】
これに対して、「疾患の進行」を有すると特徴付けられなかった患者は、「無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)」と特徴付けられる。この用語は、irRC基準及び/又はRECIST 1.1基準で定義される閾値に従う「疾患の進行」がない期間、例えばがん治療開始からの日数、を指す。換言すれば、本発明による患者の治療プロトコルを開始する導入化学療法薬の最初の投与から数えた期間であって、患者の腫瘍がベースラインレベル、又はベースライン腫瘍サイズ(例えば腫瘍体積の25%超過の増加)を超えて増殖又は転移しない期間である。「無増悪生存期間の中央値」とは、本発明に従って治療されるがん患者と同じ起源組織に由来するがんと診断されたことを特徴とする患者のコホートにおいて疾患の進行の診断が観察/診断されるまでの日数の中央値を指す。コホートの大きさは、実施例(図5)で実証されるとおり、患者のアウトカム間を区別できる中央値と信頼区間との計算を実行するのに十分な大きさである必要がある。
【0073】
いくつかの実施形態では、TLR9アゴニスト維持調節を受けたesSCLC患者は、導入化学治療開始後188日超過の間、疾患の進行の診断がないことにより特徴付けられる場合、「2回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、TLR9アゴニスト維持調節を受けた大腸がん患者は、再導入化学療法の初回投与開始から225日~250日の間、疾患の進行と診断されず、「2回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、TLR9アゴニストの維持調節を受けた患者は、患者がその特定のがんの無増悪生存時点の中央値、例えばSCLCの場合に最初の導入化学療法の開始後少なくとも188日、に疾患の進行がないと特徴付けられる場合、又は第2の予測バイオマーカーが、Treg細胞のパーセントが閾値15%超過、又はさらには閾値20%超過であることを示す場合、又は活性化B細胞のパーセントが15%超過である場合、「2回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0076】
上記で規定した本発明の第1の態様による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態は、CPM剤への切り替えの適切なタイミングを決定するために、前記第2の予測バイオマーカーアッセイ(12ページ及び13ページで規定(原文))を6週間から15週間ごとに実施するようなTLR9アゴニストの使用に関する。特定の実施形態では、第2の予測バイオマーカーアッセイは9週間ごとに実施される。特定の実施形態では、第2の予測バイオマーカーは、患者が寛解又は進行するまで9週間ごとに実施される。これらの実施形態によれば:
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、TLR9アゴニストを、その後n週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは6~24の範囲の整数である。特定の実施形態では、nは6~15の範囲である。より特定の実施形態では、nは9である。
又は
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、患者に、治療をチェックポイントモジュレーター(CPM)剤に切り替えることが割り当てられ、次の3~9週間、2週間ごと又は3週間ごとに投与される。
【0077】
いくつかの実施形態では、導入化学療法の後にTLR9アゴニストを投与された患者は、第2の予測バイオマーカーを参照することなく、疾患の進行の診断なしに、PFS中央値に達した時点で、その後の3~9週間、2週間ごと又は3週間ごとに投与するチェックポイントモジュレーター(CPM)剤による治療に割り当てられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、導入化学療法後188日間、TLR9アゴニストを投与され、かつ疾患の進行のエビデンスがないSCLC患者を、CPM剤による治療に切り替える。別の実施形態では、TLR9アゴニスト免疫調節維持レジメンを受けているmCRC患者が、疾患の進行の診断なしにPFSの閾値225日間に達した場合、CPM維持免疫療法レジメンを受けることに切り替えられる。
【0079】
本発明による使用のためのTLR9アゴニスト
TLR9アゴニストは、主にオリゴデオキシヌクレオチド又はその構造誘導体であり、該オリゴデオキシヌクレオチド配列は、1個又は数個の非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。TLR9アゴニストは、その化学構造と相関する刺激作用に応じて、A、B、Cの3つのクラスに分類されている。
- クラスAのCpG ODN(CpGオリゴデオキシヌクレオチド)はIFN-α産生を強く刺激するが、TLR9依存性のNF-κBシグナル伝達に対しては弱い刺激剤でしかない。このクラスの多くの代表物は、中央のCpGを持つ回文モチーフと、ヌクレオシド間にホスホロチオエート結合を持つ3’末端のポリGストレッチとによって特徴付けられる。
- クラスBのCpG ODNは、B細胞を非常に効果的に活性化するが、IFN-αの分泌を刺激するにはごく弱い。このクラスの主な例は、すべてのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート(チオホスフェート)で形成されていることを特徴とする。
- クラスCのCpG ODNは、IFN-α産生並びにB細胞刺激を活性化する。構造的には、C型CpG ODNは、全長PTO骨格と配列の中央のCpG含有回文モチーフとの両方を持ち、両方のクラスの特性を兼ね備えていることが多い。
【0080】
多くの異なるTLR9アゴニストの小分子構造とデオキシリボヌクレオチドオリゴマーとが、免疫調節薬として臨床的に開発されてきた。例えば、US2010144846A1及びそのファミリー、US2007142315A1及びそのファミリー、US2004143112A1及びそのファミリー、US2007066553A1及びそのファミリー、US2006241076A1及びそのファミリー、US10894963B2及びそのファミリーに開示されているTLR9アゴニスト分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
PF-35112676(Pfizer)は、CPG7909(Coley)とも呼ばれるクラスBのTLR9アゴニストである。クラスBのTLR9アゴニストは、有害な副作用を伴い、患者の生存率を高めることが実証されていないため、腫瘍学的適応では承認されていない。このことは、本発明が答える新たな(デノボ)T細胞応答を開始するための、免疫コールド腫瘍を標的とする代替的なアプローチの必要性を強調する。クラスBのCpG-ODNはワクチンのアジュバントとしては優れているが、がん治療には不向きであることが証明され、一方で、レフィトリモドなどのクラスAのTLR9アゴニスト、又は潜在的にはクラスCの分子の方が、この目的の治療効果に適している。特定の実施形態において、本発明による使用のためのTLR9アゴニストは、少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチドを含み、該CGジヌクレオチドは、以下で言及する用語である「CpGモチーフ」の一部であり、該CpGモチーフは、5’側でNが隣接し、かつ3’側でNが隣接する非メチル化CGからなり、ここで、NはAA、TT、GG、GT、又はATであり、NはCT、TT、TC、TG、又はCGであり、Cはデオキシシチジンであり、Gはデオキシグアノシンであり、Aはデオキシアデノシンであり、Tはデオキシチミジンである。
【0082】
特定の実施形態において、本発明による使用のためのTLR-9アゴニストは、少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチド、及び少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンのストレッチを含み、ここで、該オリゴデオキシリボヌクレオチドのデオキシリボース部分は、ホスホジエステル結合によって連結されている。特定の実施形態では、少なくとも3つ、特に4つの連続したデオキシグアノシンのストレッチは、オリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端に位置する。
【0083】
特定の実施形態では、少なくとも3つの連続したデオキシグアノシンのストレッチは、2つのCGジヌクレオチドの間、より特に2つのCpGモチーフの間に位置する。
【0084】
特定の実施形態において、本発明による使用のためのTLR9アゴニストは、二本鎖ステム、2つの一本鎖ループを含み、ダンベルの形状を形成し、かつ1つ又はいくつかのCpGモチーフを含む。その特定の実施形態では、CpGモチーフはダンベルのステム部分に含まれる。他の特定の実施形態では、CpGモチーフはダンベルのループ部分の一方又は両方に含まれる。さらに他の特定の実施形態では、CpGモチーフはダンベルのステム部とループ部との両方に含まれる。
【0085】
本発明による使用のためのTLR9アゴニスト、又は本発明による使用のためのCPMの特定の実施形態において、TLR9アゴニストは、二本鎖ステムと、この二本鎖領域のいずれの末端にある少なくとも2つの一本鎖ループとを含む、ダンベル型の共有結合で閉じたポリヌクレオチドとして特徴付けられる。
【0086】
本発明によるTLR9アゴニストの特定の実施形態では、少なくとも1つ、より特に少なくとも3つのCGジヌクレオチドが、ダンベル型ポリヌクレオチド構造の一本鎖ループのそれぞれに配置される。
【0087】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストは、ダンベル型ポリヌクレオチド構造の一本鎖ループの各々に位置する少なくとも3つの非メチル化CGジヌクレオチドを含む、アクセス可能な3’末端を欠く共有結合で閉じた構造により特徴付けられるオリゴヌクレオチドである。
【0088】
先の段落で規定したTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストモチーフを規定するために使用される非メチル化CGジヌクレオチドは、以下からなる(すべてのヌクレオチドは、従来の5’から3’の方向で記載する):5’末端の2つのヌクレオチドN、その直後に非メチル化CG、続いて3’側において直後に連続する2つのヌクレオチドNがあり、ここでNはAA、TT、GG、GT、AT、又はGAであり、かつNはCT、TT、TC、TG、CG、AT、又はCTである。
【0089】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態において、それは確立済みの分類に関してクラスAに属する。
【0090】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストはクラスBのTLR9アゴニスト分子ではない。本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストはクラスAのTLR9アゴニスト分子である。本発明による使用のためのTLR9アゴニストの他の特定の実施形態では、TLR9アゴニストはクラスCのTLR9アゴニスト分子である。
【0091】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストは、DNA骨格にホスホジエステル結合のみを含有するオリゴデオキシヌクレオチドである。
【0092】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストは、化学修飾されたヌクレオチドを含有しないオリゴデオキシヌクレオチドであり、言い換えれば、それは、ホスホジエステル結合によって連結された、デオキシグアノシン、デオキシアデニン、デオキシチミン、及びデオキシシチジンの4つのDNA形成ヌクレオチドの鎖からなる。
【0093】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストのさらなる特定の実施形態では、TLR9アゴニストの二次構造は、二本鎖DNAステムの両末端が一本鎖DNAループによって共有結合で閉じられることによって特徴付けられる。この構造は、3’エキソヌクレアーゼによる分解が可能な3’末端を欠く。
【0094】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストのさらなる特定の実施形態では、TLR9の二次構造はダンベル型として特徴付けられる。
【0095】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストのさらなる特定の実施形態では、少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチドは、一本鎖ループ内に位置する。
【0096】
特定の実施形態において、本発明による使用のためのTLR9アゴニストは、20~150個、特に30~60個のデオキシリボヌクレオチドの長さを有する単一の環状デオキシヌクレオチドオリゴマーである。
【0097】
ある特定の実施形態において、本発明による使用のためのTLR9アゴニストは、MGN1703(CAS:1548439-51-5)とも呼ばれるLefitolimod(レフィトリモド)である(US6849725B2に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。TLR9アゴニストに関する以下の項目は、本明細書に開示される本発明により包含される:
【0098】
項目AA:本明細書の態様、実施形態又は請求項のいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニストであって、前記TLR9アゴニストは、1つ又は複数の非メチル化CpGジヌクレオチドを含むオリゴデオキシヌクレオチド配列であり、特に前記TLR9アゴニストはクラスBのTLR9アゴニスト分子として特徴付けられない、前記TLR9アゴニスト。
【0099】
BB:前記TLR9アゴニストは、確立済みの分類に関してクラスAのTLRアゴニストである、項目AAに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0100】
CC:前記TLR9アゴニストは、ホスホジエステル結合によって連結された、4つのDNA形成ヌクレオチドの鎖からなる、項目AA又はBBに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0101】
DD:前記TLR9アゴニストはホスホロチオエート部分を含有しない、項目AA~CCのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0102】
EE:前記TLR9アゴニストは、1つの非メチル化CGジヌクレオチドを含むオリゴデオキシヌクレオチドである、項目AA~DDのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0103】
FF:前記TLR9アゴニストは、少なくとも3つの非メチル化CGジヌクレオチドを含む、項目AA~EEのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0104】
GG:前記TLR9アゴニストは共有結合で閉じた構造である、項目AA~FFのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト又はCPM。
【0105】
HH:前記TLR9アゴニストは、ダンベル型の共有結合で閉じたポリヌクレオチドとして特徴付けられ、かつ前記ダンベル型の共有結合で閉じたポリヌクレオチドは、二本鎖ステム、及び第1の一本鎖ループ、及び第2の一本鎖ループを含み、前記第1及び第2の一本鎖ループは、前記二本鎖ステムのいずれの末端に位置する、項目GGに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0106】
II:少なくとも1つの非メチル化CGジヌクレオチドは、ダンベル型ポリヌクレオチド構造の一本鎖ループの各々に位置する、項目HHに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0107】
JJ:少なくとも3つの非メチル化CGジヌクレオチドは、ダンベル型ポリヌクレオチド構造の一本鎖ループの各々に位置する、項目HH又はIIに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0108】
KK:前記TLR9アゴニストは、その5’末端でN(CpGジヌクレオチド)及びその3’末端でNが隣接する直後の配列に非メチル化CGジヌクレオチドを含み、ここで、Nは、AA、TT、GG、GT、AT、又はGAからなるリストから選択され、かつNは、CT、TT、TC、TG、CG、AT、又はCTからなるリストから選択される、項目AA~JJのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0109】
LL:前記TLR9アゴニストは、20~150デオキシリボヌクレオチド長、特に30~60デオキシリボヌクレオチド長を有する単一の環状デオキシヌクレオチドオリゴマーである、項目AA~KKのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0110】
CpGジヌクレオチドのTLR9アゴニストのこれらの定義は、TLR9アゴニストが存在する本明細書で企図されるチェックポイントモジュレーター剤(CPM)の使用又は投与スケジュールを対象とする、本明細書のいずれの態様又は実施形態、項目又は請求項に適用されるものとする。
【0111】
チェックポイントモジュレーター(CPM)剤の順次適用/交互投与スケジュール
本発明のさらなる態様は、がんの治療における使用のためのCPM剤に関し、前記CPM剤は、治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を最初に受けた患者に投与される。
【0112】
さらに、前記導入化学療法を受けた患者は、10ページ及び11ページ(原文)に記載されているとおり、患者試料中の免疫細胞活性化を測定する第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて、「1回目に一致」のステータスが割り当てられている。免疫サブセット内の活性化細胞のパーセンテージが、活性化免疫細胞、特に活性化細胞の中央値のパーセント、について提供された閾値以上である場合、又はCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセンテージが閾値以上である場合、患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられる。特定の実施形態において、CPMは、患者試料において決定された活性化B細胞のパーセンテージが、患者試料のコホートの活性化B細胞の中央値を決定することによって得られた閾値を超える場合に、「1回目に一致」のステータスを割り当てられた患者における使用のために提供される。特定の実施形態では、試料中の活性化B細胞が活性化B細胞の閾値約16.9%以上である場合、患者に「1回目に一致」が割り当てられる。
【0113】
さらに、導入化学療法に続いて、CPM剤を「CPM導入免疫調節サイクル」、特に3週間のCPM導入免疫調節サイクルの一部として投与する。CPM導入免疫調節サイクルは、化学療法剤の投与と、前記サイクルの第1の週に1回CPM剤の投与を伴い、それに続いて1週間又は2週間の無治療とを含む、又はそれからなる。
【0114】
前記CPM導入免疫調節サイクルの1サイクル、又は2、3、4、若しくは5サイクルの繰り返しの後、「CPM維持免疫調節レジメン」の一部として前記CPM剤を投与し、これには、2週間又は3週間に1回、n週間にわたって前記CPM剤を投与することを含む、又はそれからなり、ここでnは6~36の整数である。特定の実施形態では、nは9~18の整数である。より特定の実施形態では、nは12週間である「CPM維持免疫調節レジメン」の実施である。
【0115】
肺がん治療のためのCPM維持免疫調節に関する特定の実施形態では、前記第1の予測バイオマーカーアッセイで「1回目に一致」のステータスが割り当てられた患者に、9~18週間の前記CPMを注入により投与する。特定の実施形態では、12週間のCPM維持免疫調節レジメンを第1の予測アッセイで「1回目に一致」と割り当てられた肺がん患者に施す。
【0116】
転移性がん、特にmCRCの再導入化学療法の治療のために投与されるCPM維持免疫調節に関連する特定の実施形態では、CPM維持免疫調節レジメンにおいて、CPM剤は注入により9~18週間投与される。特定の実施形態では、前記CPM維持免疫調節レジメンは24週間施される。
【0117】
本発明のこの態様による使用のためのCPMの特定の実施形態は、前の3週間のCPM維持免疫調節レジメンを受けた患者に関し、ここで患者試料において第2の予測バイオマーカーアッセイ値が決定されており、第2の予測バイオマーカーにより、患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが閾値の中央値超過であることを決定する。特定の実施形態では、CD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが15~20%の閾値以上である場合、患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、その後、CPM維持免疫調節レジメンが施され、このレジメンでは、CPM薬剤がn週間にわたって2週間又は3週間ごとに投与され、ここでnは6~36の整数である。特定の実施形態では、nは9~12の整数である。より特定の実施形態では、nは12週間であるCPM維持免疫調節レジメンの実施である。
【0118】
他の実施形態は、5つの前の段落のうちの1つに規定されるCPM維持免疫調節レジメンを受けた患者で、かつ第2の予測バイオマーカーアッセイも受けた患者における使用のためのCPMに関する。これらの実施形態によれば:
・ 試料中のCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが閾値20%未満である場合、患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられる、又は
・ 試料中の活性化Treg細胞のパーセントが閾値20%以上である場合に、患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0119】
別の実施形態では、第2の予測バイオマーカーの閾値は、CD4+T細胞中の15%のTregである。
【0120】
「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、CPM維持免疫調節レジメンを受けた患者の治療は、TLR9アゴニストのn週間にわたる週2回、週1回、又は2週間ごとの投与に切り替わり、ここでnは6~24の整数である。特定の実施形態では、nは6~15の整数である。より特定の実施形態では、nは9週間である。
【0121】
いくつかの実施形態では、CPM剤維持免疫調節レジメンを受けた患者は、その後、第2の予測バイオマーカー評価を参照することなく、適用されることなく、特定のがん疾患を特徴付けるPFS生存期間の中央値の閾値に達すると、上記のとおりTLR9アゴニストの投与に切り替わる。特定の実施形態では、この切り替えはesSCLC患者については188日間のPFS後、又はmCRC患者については225日間のPFS後に行われる。
【0122】
別の実施形態では、「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、CPM維持免疫調節レジメンを受けた患者に対して、CPM剤を2週間ごと又は3週間ごとに、n週間にわたって投与することを継続し、ここでnは6~36の範囲の整数である。特定の実施形態では、nは9~12の範囲である。より特定の実施形態では、「2回目に一致」のステータスが割り当てられた患者にCPMを12週間投与する。
【0123】
バイオマーカー主導の免疫調節の交互投与
白金ベースの導入化学療法は、第1のバイオマーカーによって定義される腫瘍患者由来の2つの集団の患者試料を生成する。一方は免疫学的にコールドな腫瘍であり、すなわち自然及び適応の免疫細胞活性化のそれぞれの割合がバイオマーカー値の閾値の中央値(threshold median)以下であり、もう一方は免疫学的にホットな腫瘍であり、すなわち自然と適応の免疫細胞活性化のそれぞれの割合がバイオマーカー値の閾値の中央値超過である(これらの腫瘍は免疫学的に「ホット」であるが、チェックポイント阻害経路によって媒介される免疫疲弊により、基礎となる免疫反応は抗腫瘍活性という点ではもはや有効ではない可能性がある)。
【0124】
本発明による記載の治療アルゴリズムにおいて、免疫細胞活性化のバイオマーカーを欠く腫瘍(免疫「コールド」腫瘍と呼ばれることもある)では免疫応答が促進される。これらは、TLR9アゴニストと組み合わせて化学療法を採用する後続のサイクルにより、導入免疫調節中に免疫「ホット」腫瘍に変換される。一度、コールド腫瘍が免疫ホット腫瘍に変換され、維持されると、Treg及びCD86+B細胞集団に代表される制御性B集団による自然対抗制御が開始される可能性があると、本発明者らは実施例で示されたエビデンスから結論付けている。したがって、1つ又は複数の患者試料の活性化マーカーが第2のバイオマーカーと一致する場合、有効な抗腫瘍適応免疫のための新抗原の提示及び交差提示のメカニズムを再開することを目的とする治療レジームに従って免疫調節をTLR9アゴニスト維持治療からCPM治療へと交代する。第2のバイオマーカーを数ヶ月間隔で繰り返し適用することにおいて、患者試料の値が第2のバイオマーカーともう一度一致する場合に、維持免疫調節をCPM維持治療からTLR9アゴニスト治療へと交代する。
【0125】
先行技術に従って自然免疫刺激と適応免疫刺激とを組み合わせるのではなく、いくつかの実施形態では、TLR9アゴニストとCPM薬剤とは、順次的な様式で、すなわち、代替性の自然免疫経路と適応免疫経路との時限的かつ定量的に制御された刺激を通じて、送達される。
【0126】
特定の実施形態において、第2のバイオマーカーにより、これらの適応免疫刺激化合物(CPM剤)又は自然免疫刺激化合物(TLR9アゴニスト)の投与の切り替え投与、又は反復、交互投与の適切なタイミングを決定する。これらの実施形態によれば、CPM、又はTLR9アゴニストは、6~15週間ごと、特に9週間ごとに、血液試料において前記第2の予測バイオマーカーアッセイを測定した患者に投与される。第2の予測バイオマーカーアッセイの結果により免疫系が閾値を超える活性化B細胞又はTreg細胞の形で疲弊の兆候を表示することが示される場合に、適応免疫細胞上の阻害剤チェックポイントシグナルに対抗するためにCPMが投与される。あるいは、免疫「コールド」腫瘍を活性な免疫環境に変換するために、TLR9アゴニストを投与する。
【0127】
別の実施形態では、上記の段落で指定された適応免疫刺激剤又は自然免疫刺激剤の投与は、患者が「2回目に一致」基準を満たした際、又は患者が標準治療の化学療法を受けている患者の無増悪生存期間の中央値、例えばSCLCの場合、導入化学療法サイクルの開始から数えて無増悪生存期間188日に達した際のいずれか早い時点で交代される。
【0128】
特定の実施形態において、第1の予測バイオマーカーの適用後、患者が前の3週間以内に「CPM維持免疫調節レジメン」を受け、次いで:
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後(又はPFSの閾値の中央値に達した後)、TLR9アゴニストをその後のn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは6~24の範囲の整数である。特定の実施形態では、nは6~15週間の範囲である。より特定の実施形態では、nは、9週間のTLR9アゴニストの投与である。又は
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、CPMをその後n週間にわたって、2週間ごと又は3週間ごとに投与を継続し、ここでnは6~24週間の範囲内の整数である。特定の実施形態ではnは6~12週間の範囲である。より特定の実施形態では、nは9週間である。
【0129】
反対に、第1の予測バイオマーカーを適用した後、患者が前の3週間に「TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメン」を受けた場合は、次いで:
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後に、TLR9アゴニストを、その後のn週間にわたって、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは6~24の範囲の整数である。特定の実施形態では、nは6~15週間の範囲である。より特定の実施形態では、nは9週間である。又は
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後に(又はPFSの閾値の中央値に達した後に)、CPMをその後のn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに投与し、ここでnは6~24週間の範囲の整数である。特定の実施形態では、nは6~12週間の範囲である。より特定の実施形態では、nは9週間である。
【0130】
いくつかの実施形態では、第2の予測バイオマーカーを繰り返し適用した後、第2の予測バイオマーカーの評価を参照することなく、実施例で示されるとおり、がん疾患を特徴付けるPFS生存期間の中央値の閾値に達すれば、例えば、esSCLC患者に対してはPFSが188日、又はmCRC患者に対してはPFSが225日に達すれば、治療は、TLR9アゴニストの1週間に2回、1回、又は2週間ごとの投与から、CPMの2、3週間ごとの投与に切り替わり、又はその逆に切り替わる。
【0131】
予測バイオマーカー
特定の実施形態において、上記のいずれか1つの態様又は実施形態によるTLR9アゴニスト、及び/又はチェックポイントモジュレーターを、免疫アジュバンド療法と組み合わせた化学療法剤に感受性のある種類のがんと診断された患者に、バイオマーカー主導型治療プロトコルにて投与する。特に前記がんは、乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、転移性結腸直腸癌、肺がんから選択される。より特定の実施形態では、TLR9アゴニスト、及び/又はチェックポイントモジュレーターは、実施例で分析した臨床試験で調査したとおり、小細胞肺がん、特に進展期小細胞肺がん(extensive stage small cell lung cancer:esSCLC)、又は転移性大腸がんを治療するために使用される。
【0132】
肺がん、特にesSCLCを治療するために、前述の態様又は実施形態のいずれか1つに従って使用されるTLR9アゴニスト、及び/又はチェックポイントモジュレーターの他の実施形態では、第1の予測バイオマーカーの結果が、esSCLC患者試料のコホートの分析から得られた閾値の中央値未満である場合、患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる。特定の実施形態において、患者は、第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて分析された試料において測定された患者のバイオマーカー値が以下のように特徴付けられる場合、「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる:
‐ 活性化B細胞の比率がB細胞のうち約16.9%未満であること、
‐ 活性化T細胞の比率がT細胞のうち約0.76%未満であること、
‐ Treg細胞の比率がCD4+T細胞のうち約7.6%未満であること、
‐ 活性化NKT細胞の比率がNKT細胞のうち4.1%未満であること、
‐ 活性化pDCの比率がpDCのうち7.6%未満であること、
‐ mDCの比率が0.48%未満であること、及び/又は
‐ 活性化DCの比率がDCのうち54.51%未満であること。
本発明の特定の実施形態において、患者試料中の活性化B細胞のパーセントがB細胞のうち閾値約16.9%未満である場合、患者は「1回目に不一致」のステータスを割り当てられる。
【0133】
別の実施形態では、第1の予測バイオマーカーの結果が以下のように特徴付けられる場合、患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられる:
‐ 活性化B細胞の比率がB細胞のうち16.9%以上であり、特にB細胞のうち21%以上であること、
‐ 活性化T細胞の比率がT細胞のうち0.76%以上であること、
‐ 活性化Treg細胞の比率がTreg細胞のうち7.6%以上であること、及び/又は
‐ 活性化NK細胞の比率がNK細胞のうち4.1%以上であること、
‐ 活性化pDCの比率がpDCのうち7.6%以上であること、
‐ mDCの比率が0.48%以上であること、及び/又は
‐ 活性化DCの比率がDCのうち54.51%以上であること。
【0134】
特定の実施形態では、患者のPBMC試料中の活性化B細胞のパーセントがB細胞のうち16.9%以上である場合に、患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられる。特定の実施形態では、患者の試料中の活性化B細胞のパーセントがB細胞のうち21%以上である場合に、患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられる。
【0135】
特定の実施形態において、活性化マーカーCD86を発現するB細胞のパーセントは、第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて患者PBMC試料において決定され、CD86+B細胞のパーセントがCD45+CD19+B細胞のうち16.9%以上である場合、患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられる。特定の実施形態では、患者試料のバイオマーカー値が、全B細胞のうち約16.9%未満である活性化CD86+B細胞の比率の閾値を下回る場合、患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられる。
【0136】
特定の実施形態では、治療に対する患者の割り当ては、フローサイトメトリーにより定量化される以下のマーカーを用いて活性化免疫細胞のパーセントを決定することにより実施される:マーカーCD86を発現するB細胞、活性化T細胞、及び/又はCD69+の割合に従うNK細胞、CD40+又はBDCA-2+、特にBDCA-2+である活性化mDC又はpDC、及び/又はCD40を発現する活性化DC。
【0137】
特定の実施形態では、B細胞、T細胞、NKT細胞、pDC、又はDC中の活性化細胞のパーセントが、第1の予測バイオマーカーアッセイで決定される。
【0138】
特定の実施形態は、活性化B細胞;及び活性化T細胞、NKT細胞、PDC細胞、又はDCのうちの1つ又は複数のパーセントが、第1の予測バイオマーカーアッセイで決定されるアッセイである。
【0139】
他の実施形態では、活性化B細胞、T細胞、及びNKT細胞のパーセントは、第1の予測バイオマーカーアッセイで決定される。
【0140】
特定の実施形態において、活性化B細胞のパーセントは、第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて決定される。
【0141】
特定の実施形態では、制御性B(Breg)細胞のパーセントが第2の予測バイオマーカーアッセイで使用されるアッセイである。
【0142】
特定の実施形態において、活性化B細胞は、第1又は第2の予測バイオマーカーアッセイにおいてCD86+と定義される。
【0143】
本発明の特定の実施形態では、活性化CD86+B細胞のパーセント及びCD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが、第2の予測バイオマーカーアッセイにおいて使用されるアッセイである。
【0144】
本発明の特定の実施形態では、CD4+T細胞中のTreg細胞のパーセントが決定されるアッセイが、第2の予測バイオマーカーアッセイに使用される。
【0145】
本発明による閾値として機能する活性化細胞サブセットのパーセンテージの中央値は、実施例で実証されるとおり、患者試料のコホートから得られるバイオマーカー発現の分析から得られるデータから計算され得る。患者の前記コホートは、治療されている患者と同じ組織に由来するがんと診断されていることによって特徴付けられ、好ましくは、患者が第1又は第2の予測バイオマーカーアッセイを受けるのと同じ時点、又はその同じ時点から1~2か月以内に導入化学療法を受けていることにより特徴付けられる。このようなコホートにおける患者の数は特に限定されないが、実施例で示したレフィトリモドの研究で実証されるとおり、異なるアウトカムの患者を識別できるように十分な力を与える必要がある。
【0146】
特定の実施形態において、活性化免疫細胞のパーセント、又はTreg細胞のパーセントは、上記で規定した本発明の態様による第1、又は第2の予測バイオマーカーアッセイにて、末梢血試料において決定される。特定の実施形態では、この血液試料は、例えば勾配遠心分離によって処理されて、血小板、好中球、及び赤血球を含まない末梢血単核球(PBMC)試料を提供し、これは、実施例で実証されるとおり、免疫細胞サブセット及び活性化マーカーの存在について評価される。本発明者らが実施可能と考える別の実施形態では、免疫活性化パラメーターを評価するために、全血、又は血液塗布試料、組織学的又は生検試料を分析する。
【0147】
本発明の特定の実施形態では、PBMC試料又は全血試料は、細胞培養工程を経た予測バイオマーカーアッセイに使用される。この細胞培養工程では、試料を免疫アゴニスト、例えばTLR9アゴニストで、4~48時間の範囲で刺激する。特定の実施形態では、レフィトリモドで約24時間刺激した患者のPBMC試料が、第1、及び/又は第2の予測バイオマーカーアッセイで使用される。
【0148】
導入化学療法
特定の実施形態において、TLR9アゴニスト、及び/又はCPMは、エトポシド又はトポテカンと組み合わせて、肺がんの治療に最も一般的に利用されている薬剤を含む導入化学療法であるカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン四硝酸塩から選択される白金含有薬剤を含む白金ベースの化学療法を受けた患者に使用される。
【0149】
本発明による使用のためのTLR9アゴニスト、又はチェックポイントモジュレーターは、本発明の特定の実施形態によって、異なる種類の導入化学療法に続くことが可能である。特定の実施形態では、導入化学療法は、2、3、4又は5回の治療サイクルを含む治療サイクルの第1のセットからなる。特定の実施形態では、患者は前記導入化学療法の3週間サイクルを4セット又は繰り返し受けており、化学療法剤は前記サイクルの第1週に投与される。
【0150】
特定の実施形態において、TLR9アゴニスト、及び/又はチェックポイントモジュレーターは、投与される化学療法剤が抗悪性腫瘍性白金錯体薬剤を含む導入化学療法期間後に患者に投与される。特定の実施形態において、抗悪性腫瘍性白金錯体薬剤は、シスプラチン、オキサリプラチン、又はカルボプラチンから選択され、抗悪性腫瘍性アルカロイド薬剤と共に投与される。特定の実施形態において、前記抗悪性腫瘍性白金錯体薬剤は、エトポシド、又はトポテカンから選択される抗悪性腫瘍性アルカロイド薬剤と組み合わせて投与される。
【0151】
特定の実施形態において、本発明による導入化学療法は再導入化学療法の一形態であり、寛解期間後に腫瘍の再発が生じた後、又は腫瘍の進行が診断された後に化学療法が施されるか、又は再開される。IMPALA第III相試験では、レフィトリモド切り替え維持療法は、コントロール群と比較して無増悪生存期間(mPFS)の中央値が劣っていた。しかしながら、再導入治療を受け、その後化学療法とレフィトリモドとのサイクルを受けた患者では、mPFSはコントロールと比較して化学療法/レフィトリモド群で有意に優れていた。
【0152】
特定の実施形態では、抗悪性腫瘍化学療法薬を2~4週間ごとに1回投与し、これは導入化学療法の1サイクルをもたらす。特定の実施形態では、抗悪性腫瘍化学療法薬は、導入化学療法サイクルの3週間ごとに1回投与される。
【0153】
導入化学療法のサイクルは、例えば転移性乳がんなどで、例えばEGF、VEGF特異的モノクローナル抗体治療などを用いた化学療法レジームに一般的である。特定の実施形態において、TLR9アゴニスト、又は免疫チェックポイント阻害剤は、ホルモン受容体標的化モノクローナル抗体治療の静脈内注入を含む、又はそれからなる導入化学療法を施された患者において、本発明に従って使用される。
【0154】
特定の実施形態において、TLR9アゴニスト、及び/又はCPMは、カルボプラチン又はシスプラチンの、エトポシド又はトポテカンとの組み合わせにおける投与を含む導入化学療法後に、SCLC又はNSCLC患者に投与される(二次治療として)。
【0155】
特定の実施形態において、TLR9アゴニスト、及び/又はCPMは、カルボプラチンによる治療サイクルを含む、又はそれからなる導入化学療法後に、乳がん、卵巣がん、又は子宮内膜がんの患者に投与される。
【0156】
特定の実施形態において、TLR9アゴニスト、及び/又はCPMは、シスプラチンによる治療のサイクルの投与を含む、又はそれからなる導入化学療法後に子宮頸がん患者に投与される。
【0157】
特定の実施形態において、TLR9アゴニスト又はCPMは、オキサリプラチンの投与を含む、又はそれからなる結腸直腸がん(CRC)に対する導入化学療法後に患者に使用される。特定の実施形態では、導入化学療法は、転移性CRCを治療するための再導入設定において、オキサリプラチンを投与することを含む。
【0158】
特定の実施形態では、がん患者は、抗悪性腫瘍薬による治療を合計6サイクル受け、例えば、抗悪性腫瘍薬単独で4サイクルと、TLR9アゴニスト若しくはCPM剤の導入免疫調節治療サイクルにおいて抗腫瘍薬をTLR9アゴニスト若しくはCPM剤と組み合わせて使用する治療の2サイクルとを受ける。
【0159】
医療治療、剤形及び塩
同様に、本発明の範囲内には、TLR9アゴニスト又はCPMを、場合によっては抗新生物化学療法薬と組み合わせて、或は上記の説明による白金ベースの薬剤の組み合わせなどの薬剤の組み合わせを、患者に投与することを含む、それを必要とする患者におけるがんを治療すること又はその治療が含まれる。
【0160】
同様に、本発明の上記態様又は実施形態のいずれかによるTLR9アゴニスト分子、及びCPM剤を含む、がんの予防又は治療のための剤形が提供される。
【0161】
上記の態様又は実施形態のいずれかによる使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、TLR9アゴニストは皮下注入によって投与される。
【0162】
特定の実施形態では、TLR9アゴニストを:
・ 50~80mgの用量で週2回、特に60mgの用量で2日又は3日の間隔、
・ 30~60mgの用量、特に60mgの用量で週1回、
・ 100~150mgの用量、特に120mgの用量で週に1回、又は
・ 100~150mgの用量、特に120mgの用量で2週に1回、
投与する。
【0163】
本発明による使用のためのTLR9アゴニストの特定の実施形態では、60mgの用量で週に1回投与する。
【0164】
特定の実施形態において、本発明による使用のためのチェックポイントモジュレーターは、PD-1又はPDL-1に特異的な抗体である。特定の実施形態では、CPMはアテゾリズマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブから選択される抗体である。より特定の実施形態では、CPMはアテゾリズマブ又はデュルバルマブから選択される抗PD-L1抗体である。
【0165】
上記のものなどのチェックポイントモジュレーターの投与プロトコルは、臨床使用においてよく知られている。CPMは一般に、静脈内注入又は皮下注入によって投与され、投与量はがんの種類や重症度によって、あるいは副作用の発生に応じて変化し得る。特定の実施形態は、組み合わせられる「CPM導入免疫調節サイクル」又は「単剤CPM維持免疫調節レジメン」の一部として、3週間ごとに静脈内注入によって送達されるCPMの使用に関する。
【0166】
当業者は、本明細書で特に言及した薬物化合物が、該薬物の薬学的に許容される塩として存在し得ることを認識している。薬学的に許容される塩には、イオン化された薬物及び逆帯電した対イオンが含まれる。薬学的に許容されるアニオン性塩形態の非限定的な例としては、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、石酸塩(bitatrate)、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エボン酸塩、エストル酸塩(estolate)、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、第2リン酸塩、サリチル酸塩、ジサリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、及び吉草酸塩が挙げられる。薬学的に許容されるカチオン性塩形態の非限定的な例としては、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、エチレンジアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛が挙げられる。
【0167】
投与形態、特に化学療法薬については、経鼻、口腔、直腸、経皮又は経口投与などの経腸投与が可能である。あるいは、特にTLR9アゴニスト又はCPMについては、皮下、静脈内、肝内又は筋肉内注入形態などの非経口投与が使用され得る。任意に、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤が存在してもよい。
【0168】
医薬組成物及び投与
本発明の別の態様は、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。さらなる実施形態において、本組成物は、本明細書に記載されるような少なくとも2つの薬学的に許容される担体を含む。
【0169】
本発明の特定の実施形態において、本発明の化合物は、薬物の制御が容易な投与量を提供し、患者に明快で取り扱いが容易な製品を提供するために、一般的に医薬剤形に製剤化される。
【0170】
医薬組成物は、経腸投与、特に経口投与又は直腸投与用に製剤化することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、固体の形態(カプセル、錠剤、丸薬、顆粒、粉末又は坐剤を含むがこれらに限定されない)、又は液体の形態(溶液、懸濁液又は乳濁液を含むがこれらに限定されない)で構成することができる。
【0171】
医薬組成物は、非経口投与、例えば、静脈(i.v.)注入、皮内投与、皮下投与又は筋肉内投与用に製剤化することができる。
【0172】
本発明の化合物の投与レジメンは、特定の薬剤の薬力学的特性及びその投与様式及び投与経路;レシピエントの種、年齢、性別、健康状態、病状、及び体重;症状の性質及び程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎機能及び肝機能、並びに所望の効果などの既知の因子によって変化する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、1日1回投与してもよいし、1日の総投与量を1日に2回、3回、又は4回の用量に分けて投与してもよい。
【0173】
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物又は組み合わせは、約50~70kgの対象に対して約1~1000mgの活性成分(複数可)の単位投与量であり得る。化合物、医薬組成物、又はそれらの組み合わせの治療上有効な投与量は、対象の種、体重、年齢、個人の状態、治療される障害又は疾患又はその重症度に依存する。通常の技術を有する医師、臨床医又は獣医師であれば、障害又は疾患の予防、治療又は進行抑制に必要な各有効成分の有効量を容易に決定することができる。
【0174】
本発明の医薬組成物は、滅菌のような従来の医薬操作に供することができ、及び/又は従来の不活性希釈剤、潤滑剤、又は緩衝剤、並びに保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤及び緩衝剤などのアジュバントを含有することができる。これらは、標準的なプロセス、例えば、従来の混合、造粒、溶解又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物を調製するための多くのそのような手順及び方法は当技術分野で知られており、例えば、L.Lachmanら,Theory and Practice of Industrial Pharmacy,第4編,2013(ISBN 8123922892)を参照されたい。
【0175】
本発明による製造方法及び治療方法
本発明は、追加の態様として、がんの治療又は予防のための医薬の製造方法における使用のための、上記で詳細に規定される治療プロトコルによる、活性化免疫細胞バイオマーカーによって同定されるがん患者のサブセットを治療する本明細書で同定されるとおりのTLR9アゴニスト、又はCPM、又はその薬学的に許容される塩の使用をさらに包含する。
【0176】
同様に、本発明は、TLR9アゴニスト又は免疫チェックポイントモジュレーションなどの免疫調節に対する感受性に関連するがん疾患、例えば、多くの突然変異によって特徴付けられる腫瘍、過去に免疫調節療法にすでに応答している腫瘍、又は特定の遺伝的特性によって免疫調節に感受性がある可能性が高いと決定されている腫瘍、と診断されている患者の治療方法を包含する。この方法は、本明細書で詳細に規定されるとおり、本明細書で同定されるとおりの有効量のTLR9アゴニスト若しくはCPM、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【0177】
本発明はさらに、本明細書で提供される本発明の態様及び実施形態によって特定されるバイオマーカー主導型治療プロトコルによって、TLR9、又はCPM、あるいはTLR9とCPMとを交互に投与する治療が適応となり得る患者のがんの状態を検出するためのキットの製造における使用のための、T細胞、Treg、B細胞、NKT細胞、pDC、mDC、又はDC、又はそれらの特異的活性化マーカーを同定する抗体などの本明細書で同定される免疫細胞サブセット活性化マーカーを評価する分子プローブの使用を包含する。
【0178】
本明細書において、例えば細胞表面免疫細胞活性化タンパク質又はTLR9アゴニスト、CPM、又は特定の種類のがんなど、単一の分離可能な特徴に対する代替物が「実施形態」として示されている場合、そのような代替物は自由に組み合わせて、本明細書に開示された本発明の個別の実施形態を形成することができることを理解されたい。したがって、検出可能なバイオマーカー免疫細胞集団に対する別の実施形態のいずれかを、TLR9アゴニスト又はCPMの別の実施形態のいずれかと組み合わせることができ、これらの組み合わせを、本明細書で言及する任意のがんの種類又は診断方法と組み合わせることができる。
【0179】
本発明は、以下の項目をさらに包含する:
【0180】
A.がんの治療における使用のためのTLR9アゴニストであって、
- 前記TLR9アゴニストは、治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を受けた患者に投与され;
- 導入化学療法を受けた後の前記患者は、第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて「1回目に不一致」のステータスが割り当てられており、
・ 前記第1の予測バイオマーカーアッセイは、患者から得られた血液試料中のB細胞、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、樹状細胞(DC)、形質細胞様樹状細胞(pDC)、骨髄様樹状細胞(mDC)から選択される免疫細胞サブセット内の活性化細胞のパーセント、及び/又はCD4+T細胞のうちの制御性T(Treg)細胞のパーセントを決定し;かつ
・ 前記免疫サブセット内の活性化細胞のパーセントが、活性化細胞のパーセントの中央値未満、又はCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントの中央値未満の場合、前記患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられ、
- 前記導入化学療法の後に、前記TLR9アゴニストをTLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの一部として投与し、
・ ここで、化学療法剤が、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第1の週に投与され;及び
・ 前記TLR9アゴニストは、前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの第2週及び第3週において、週1回、又は週2回投与され、かつ
- 前記TLR9アゴニスト導入免疫調節サイクルの1~4セットの後に、前記TLR9アゴニストをTLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンの一部として投与し、
・ ここで、前記TLR9アゴニストは、前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンのn週間の間、週2回、各週1回、又は2週間ごとに投与され、ここでnは5~35の整数であり、特に9~18の整数であり、より特にnは12である、
前記TLR9アゴニスト。
【0181】
B.
- 患者は、項目1に規定されるとおりの前記TLR9アゴニスト維持免疫調節レジメンを前の3週間に受けており、
- 第2の予測バイオマーカーアッセイは、患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントを決定し、
- 試料中の活性化Treg細胞のパーセントが20%未満である場合、患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられ、かつ
「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、前記TLR9アゴニストを、n週間の間、週に2回、週に1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9である、項目Aに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0182】
C.
- 項目Bに規定されるとおりの前記第2の予測バイオマーカーアッセイにおいて
・ 試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%未満である場合に患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられ、又は
・ 試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%以上である場合に患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、
-「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、前記TLR9アゴニストを、n週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり、又は
- 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は患者が疾患の進行の診断がなく、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値の中央値、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合に、チェックポイントモジュレーター(CPM)をn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここで、nは3~15の整数である、
項目Bに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0183】
D.
- 前記第2の予測バイオマーカーアッセイは、6~15週間ごと、特に9週間ごとに実施される、
項目B又はCに記載の使用のためのTLR9アゴニスト。
【0184】
E.がんの治療における使用のためのCPM剤であって、
- 前記CPM剤は、治療サイクルの第1のセットからなる導入化学療法を受けた患者に投与され;
- 前記導入化学療法を受けた患者は、項目Aに規定されるとおりの免疫細胞サブセット内の活性化細胞のパーセントを決定する第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて、「1回目に一致」のステータスが割り当てられており、
・ 免疫サブセット内の活性化細胞のパーセントが活性化細胞のパーセントの中央値以上である場合、又はCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントがCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントの中央値以上である場合、患者に「1回目に一致」のステータスが割り当てられ、
- 前記導入化学療法の後に、前記CPM剤はCPM導入免疫調節サイクルの一部として投与され、
・ ここで化学療法剤とCPM剤とは、前記CPM導入免疫調節サイクルの第1の週に1回投与され、かつ
- 前記CPM導入免疫調節サイクルの1~5回のセット後に、CPM維持免疫調節レジメンの一部として前記CPM剤が投与され、
・ 前記CPM剤は、n週間の間、前記CPM維持免疫調節レジメンの2週間ごと又は3週間ごとに1回、投与され、ここでnは6~36の整数であり、特に9~18の整数であり、より特にnは12である、
前記CPM剤。
【0185】
F.
- 前記患者は、項目Gに規定されるとおりのCPM維持免疫調節レジメンを前の3週間受けており、
- 第2の予測バイオマーカーアッセイにより、前記患者から得られた血液試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントを決定し、
・ CD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%以上である場合、患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、及び
- 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、前記CPM剤はn週間の間、2週間ごと、又は3週間ごとに投与され、ここでnは6~36の整数であり、特に9~12の整数であり、特にnは12である、項目Eに記載の使用のためのCPM剤。
【0186】
G.
- 項目Fに規定されるとおり決定される前記第2の予測バイオマーカーアッセイにおいて
・ 試料中のCD4+T細胞のうちのTreg細胞のパーセントが20%未満である場合に患者に「2回目に不一致」のステータスが割り当てられ;又は
- 試料中の活性化Treg細胞のパーセントが20%以上である場合、患者に「2回目に一致」のステータスが割り当てられ、
- ここで、「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は、患者が疾患の進行の診断がなく導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の中央値、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合に、TLR9アゴニストをn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与し、ここで、nは6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり、又は
-「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、前記CPM剤をn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは6~36の整数であり、特に9~12の整数であり、より特にnは12である、
項目Fに記載の使用のためのCPM剤。
【0187】
H.
- 前記第2の予測バイオマーカーアッセイは、6~15週間ごと、特に9週間ごとに実施され、
- 患者が、項目Eに規定されるCPM維持免疫調節レジメンを前の3週間に受けている場合であって、次いで
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は患者が疾患の進行の診断がなく、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合に、前記TLR9アゴニストを、その後のn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与し、ここでnは、6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり;又は
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後に、前記CPMをその後のn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与することを継続し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~12の整数であり、より特にnは9であり;
又は
- 患者が項目Aで規定されるTLR9維持免疫調節レジメンを前の3週間に受けている場合;
・ 「2回目に不一致」のステータスが割り当てられた後、前記TLR9アゴニストを、その後のn週間の間、週2回、週1回、又は2週間ごとに投与することを継続し、ここでnは、6~24の整数であり、特に6~15の整数であり、より特にnは9であり;又は
・ 「2回目に一致」のステータスが割り当てられた後、及び/又は、患者が疾患の進行の診断がなく、導入化学療法の開始からの無増悪生存期間の閾値期間の中央値、特に約188日の無増悪生存期間の閾値の中央値を超える場合、前記CPMをその後のn週間の間、2週間ごと又は3週間ごとに1回投与し、ここでnは6~24の整数であり、特に6~12の整数であり、より特にnは9である、
項目B~Dのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は項目F若しくはGに記載の使用のためのCPM剤。
【0188】
I.前記TLR9アゴニストは、非メチル化CGジヌクレオチドを含むオリゴデオキシヌクレオチドであり、
特に
- 前記非メチル化CGジヌクレオチドは、その5’末端でNが隣接し、その3’末端でNが隣接し、ここで、Nは、AA、TT、GG、GT、又はATであり、NはCT、TT、TC、TG、又はCGであり、及び/又は
- 前記TLR9アゴニストは、少なくとも3つ又は4つの連続したデオキシグアノシンのストレッチを含み、及び/又は
- 前記TLR9アゴニストはダンベル型デオキシヌクレオチドであり、
さらにより特に前記TLR9アゴニストはレフィトリモド(CAS:1548439-51-5)である、
項目A~D、若しくはHのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は項目G若しくはHに記載の使用のためのCPM剤。
【0189】
J.前記TLR9アゴニストを皮下注入によって:
- 週2回、50~80mgの用量、特に60mgを2日又は3日の間隔、
- 週1回、30~60mgの用量、特に60mgの用量、
- 週1回、100~150mgの用量、特に120mgの用量、又は
- 2週間ごとに1回、100~150mgの用量、特に120mgの用量、
にて投与し、
特に、TLR9アゴニストを60mgの用量で週1回投与する、
項目A~D、H、又はIのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は項目G~Iのいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤。
【0190】
K.前記チェックポイントモジュレーターは、PD-1又はPDL-1に特異的な抗体であり、特にアテゾリズマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブから選択される抗体であり、より特にアテゾリズマブ又はデュルバルマブから選択される抗PD-L1抗体である、
項目A~D、又はH~Jのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又は項目E~Jのいずれか一項に記載の使用のためのCPM剤。
【0191】
L.前記がんは、免疫アジュバンド治療と組み合わせた化学療法剤に感受性のがんであり、特に乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、転移性結腸直腸癌、又は肺がんから選択されるがんであり、より特に小細胞肺がん又は転移性結腸直腸がんであり、なおより特に進展期小細胞肺がん(SCLC)である、項目A~Kのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又はCPM剤。
【0192】
M.
- 前記第1の予測バイオマーカーの結果が、
i. 活性化B細胞の比率がB細胞のうち16.9%未満であること、
ii. 活性化T細胞の比率がT細胞のうち0.76%未満であること、
iii. Treg細胞の比率がCD4+T細胞のうち7.6%未満であること、
iv. 活性化NKT細胞の比率がNK細胞のうち4.1%未満であること、
v. 活性化mDCの比率がpDCのうち0.48%未満であること、
vi. 活性化pDCの比率がpDCのうち5.0%未満であること、及び/又は
vii. 活性化DCの比率がDCのうち54.51%未満であること、
から選択される閾値と比較された場合に、前記患者に「1回目に不一致」のステータスが割り当てられるか:又は
- 第1の予測バイオマーカーの結果が、
i. 活性化B細胞の比率がB細胞のうち16.9%以上であり、特にB細胞のうち21%以上であること、
ii. 活性化T細胞の比率がT細胞のうち0.76%以上であること、
iii. 活性化Treg細胞の比率がTreg細胞のうち7.6%以上であること、及び/又は
iv. 活性化NKT細胞の比率がNK細胞のうち4.1%以上であること、
v. 活性化mDCの比率がpDCのうち0.48%以上であること、
vi. 活性化pDCの比率がpDCのうち5.0%以上であること、及び/又は
vii. 活性化DCの比率がDCのうち54.51%以上であること;
から選択される閾値と比較される場合に、「1回目に一致」のステータスが患者に割り当てられ、
特に、活性化B細胞のパーセンテージは、第1の予測バイオマーカーアッセイにおいて決定される、
項目A~Lのいずれか一項に記載の使用のための、特に肺がんの治療における使用のための、より特に進展期SCLCの治療における使用のための、TLR9アゴニスト、又はCPM剤。
【0193】
N.前記導入化学療法は、
- 2、3、4、又は5サイクル、特に4サイクルを含み、ここで各サイクルは3週間からなる、治療サイクルの第1のセット
からなり、及び
- 化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせを、前記導入化学療法サイクルの第1週に投与し、
- 特に、前記導入化学療法サイクルは、前記導入化学療法サイクルの第1週に白金ベースの化学療法剤の組み合わせを投与することからなる、
項目A~Mのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又はCPM剤。
【0194】
O.前記導入化学療法は、
- 抗悪性腫瘍性白金錯体薬、特にシスプラチン、オキサリプラチン、又はカルボプラチンから選択される抗悪性腫瘍性白金錯体薬、及び
- 抗悪性腫瘍性アルカロイド薬、特にエトポシド又はトポテカンから選択される抗悪性腫瘍性アルカロイド薬、
による治療を含むか、又はそれからなる、
項目A~Nのいずれか一項に記載の使用のためのTLR9アゴニスト、又はCPM剤。
【0195】
本発明は、以下の実施例及び図によってさらに説明され、そこからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例
【0196】
実施例、方法
IMPULSE試験、NCT02200081
国際多施設非盲検第II相試験を白金ベースの一次治療後の進展期小細胞肺がんの102人の患者を対象に実施した。一次導入化学療法(白金ベース)を4サイクル受けた患者を、レフィトリモド組み合わせ維持療法の投与、又は地域の標準治療(コントロール)の投与のいずれかにに無作為に割り付けた。進行後、患者は二次治療を受けた。
【0197】
IMPALA試験、NCT02077868
国際多施設非盲検第III相試験を欧州8カ国で549人の転移性大腸がん患者を対象に実施した。いずれかの一次導入化学療法(5-FU/FA、又はCAPEと、OX、又はIRI、単独、又は抗VEGF抗体若しくは抗EGFR抗体の併用)に対して客観的応答を示した患者を、レフィトリモド単剤療法又は地域の標準療法(コントロール)の投与のいずれかに無作為に割り付けた。進行後、患者は再導入療法を開始し、実験群の患者はレフィトリモドの追加投与を継続した。
【0198】
細胞培養物のin vitroでのバイオマーカー試験
予定された来院時にリチウムヘパリンチューブに採取された約20mLの全血を、採取後24時間以内に分析し、室温(18℃~24℃)で輸送した。末梢血単核球を密度勾配遠心分離(Ficoll)によって単離した。in vitroでのレフィトリモドMGN1703刺激に対する各患者の個々の反応を決定するために、PBMCのサイトカイン及びケモカイン産生を分析した。PBMCをMGN1703で24時間治療した。免疫細胞の活性化はフローサイトメトリーで測定し、膜結合タンパク質は、10%(v/v)のヒト血清、2.5%(v/v)の仔ウシ胎児血清、及び0.1%(w/v)のアジドを含むリン酸緩衝生理食塩水を氷上に置き、モノクローナル抗体で無傷細胞を染色した。以下の抗体を使用した:抗系列カクテル(anti-lineage cocktail)1CD3、CD14、CD16、CD9、CD20、CD56)、抗CD123(7G3)、抗HLA-DR(L243)、抗CD40(5C3)、抗CD11c(B-ly6)、抗CD86(2331FUN-1)、抗CD19(4G7)、抗CD69(FN50)、すべてBD Biosciences社製;抗CD14(61D3)、抗CD169(7-239)、抗CD3(OKT-3)、抗CD56(MEM188)、抗CD80(2D10)、すべてeBioscience社製。
【0199】
実施例1:導入又は再導入化学療法後の、順次的、二段階、バイオマーカー誘導型、分岐型の自然免疫調節と適応免疫調節の交代
第II相IMPULSE試験では、TLR9アゴニストのレフィトリモド(dSLIM-30L1)によるES-SCLCの免疫療法的な切り替え維持療法のOSにおける有益性を検討した。様々な地域の標準治療(standards of care:SoC)との比較は、典型的にはカルボプラチンとエトポシド、又はシスプラチンとエトポシドである。無増悪生存期間の中央値(median progression-free survival:mPFS)又は全生存期間の中央値(median overall survival:mOS)により評価したとおり、レフィトリモド切り替え維持療法による追加的な利益は観察されなかった。しかしながら、患者の特定のサブグループは、OSの中央値の強い改善と、患者試料の免疫原性の解析によって確認される生物学的作用機序、すなわち免疫監視の再活性化(Thomas M.ら,Oncol.29(10):2076)とを示した。IMPLUSE試験のすべての利用可能な免疫学的データ及び関連する臨床パラメーターについて、組み合わせ事後解析(combinatorial post hoc analyse)を行った。さらに、どのような条件下で適応免疫又は自然免疫の刺激が化学療法のアウトカムを向上させ得るかを決定するために、PD-L1阻害剤-抗体を用いた化学療法免疫調節維持試験についての治療群及びコントロール群それぞれのmPFS及びmOSの公表データを組み入れ、チェックポイント阻害剤の使用とIMPULSEで使用されたTLR9アゴニストの使用とを比較した。
【0200】
レフィトリモド免疫調節維持療法は、IMpower133(Horn L.ら,2018 N.Engl.J.Med.379:2220)、(クリ二カルトライアルズ・ドット・ガブの識別番号(ClinicalTrials.gov Identifier):NCT02763579、アテゾリズマブ)と、CASPIAN(Paz-Ares L.ら,2019 Lancet 394(10212):1929)、(クリ二カルトライアルズ・ドット・ガブの識別番号:NCT03043872、デュルバルマブ)とを比較した。Keynote-604(Rudin C.ら,,2020 J.Clin.Oncol.38:9001)、(クリ二カルトライアルズ・ドット・ガブの識別番号:NCT03066778、ペムブロリズマブ)、及びEA5161(Leal T.ら,2020,J.Clin.Oncol.38:9000)、(クリ二カルトライアルズ・ドット・ガブの識別番号:NCT03382561、ニボルマブ)試験によるアウトカムを比較対象として考慮した。
【0201】
使用されたすべての肺がん試験(IMPULSE、IMpower133、CASPIAN、Keynote-604、及びEA5161)は「維持」試験であり、抗腫瘍反応(RECISTガイドラインで定義されているとおり)を開始するために免疫導入療法(化学療法サイクルのセット)が適用され、その後腫瘍が進行するまで維持療法が行われる。IMpower133、CASPIAN、Keynote-604、及びEA5161は「継続維持」試験であり、一方、IMPULSEは「切り替え維持」試験である。4つの継続維持試験では、導入化学療法中及び維持療法期に免疫調節製剤(IMP)、すなわちそれぞれPD-L1チェックポイント阻害剤(CPI)であるアテゾリズマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブが提供される。切り替え維持療法試験IMPULSEでは、導入化学療法中はIMPのレフィトリモドは使用されないが、該試験の維持療法期に導入(「切り替え(スイッチ)」)される(図1)。したがって、IMPULSEのPFS及びOSのデータを他の試験と比較するために、IMPULSEのmPFS1とmOS1とは導入化学療法の開始時点から求めた。したがって、以下のすべての解析では、IMPULSEのそれぞれのmOS1値を使用する。
【0202】
表1は、IMPULSEと、IMpower133、CASPIAN、Keynote-604、及びEA5161のコントロール群及び各治療群とのmOSの比較を提供する。明らかに、IMPULSE、IMpower133、及びCASPIANにより到達されるmOSは同様に高いが、Keynote-604及びEA5161のmOSは数ヶ月低い。極めて重要な第III相試験IMpower133とCASPIANとにより達成したmOSにより、アテゾリズマブ(Roche社製のTecentriq(登録商標))とデュルバルマブ(AstraZeneca社製のImfinzi(登録商標))の承認につながった。臨床的な成功(IMpower133及びCASPIAN)又は失敗(IMPULSE)の異なる定義は、それぞれの試験のコントロール群のmOSに関連する。IMpower133のコントロール群のmOSは10.3か月(m)であり、CASPIANの対応するmOSもまた10.3mである。両試験のmOSは、これらの患者に対する以前のmOSである10.7mに近く(Steffens C.C.ら,2019 Lung Cancer 130:216)、したがって、本試験の目的のためにIMPLUSEのデータと比較可能であると考えられ、組み合わされた。
【0203】
I.順次的免疫調節戦略の利点
導入化学療法(esSCLCの一次治療として、IMPULSE)におけるレフィトリモド治療を、再導入化学療法(転移性大腸癌(mCRC)の一次治療として)及びTLR9アゴニストによる免疫調節(IMPALA、図8)と比較した解析によると、TLR9アゴニストは、組み合わせよりもむしろ白金ベースの化学療法の後に適用した場合にmOSの点でより有効であることが示された。
【0204】
例:白金/エトポシド(platinum/etoposide:PE)化学療法を2、3、又は4回のqw3サイクル(第1のサイクルは、それぞれの第1週にPE化学療法を適用し、それぞれの第2週及び第3週は無治療である;第2のサイクル以下同様)行った後に順次、PE化学療法をqw3サイクル行い、ここでサイクルのそれぞれの第1週にPEを適用し、サイクルのそれぞれの第2週及び第3週にTLR9アゴニストを適用する。
【0205】
エビデンス:PE化学療法の4回のqw3サイクルに続いて、第5のサイクルのPE化学療法を順次行い、ここでサイクルの第1週にPE化学療法を行った後、サイクルの第2週と第3週とにTLR9アゴニストを投与した場合、患者のmOSは2.3か月改善した(図2)。
【0206】
II:最適な導入免疫調節のための予測バイオマーカー分析
導入化学療法又は再導入化学療法の第1、第2、第3のqw3サイクルの後、及びTLR9アゴニスト治療を順次追加するqw3サイクルの前に、予測バイオマーカーのコレクションを決定した。様々な組織由来のがんに適用可能なバイオマーカーの閾値の有用性を評価するため、がん患者コホートの試料の活性化免疫細胞の割合の閾値の中央値に従って分割される患者群において全生存期間を分析した。活性化免疫細胞が閾値の中央値以下の患者は、適応免疫導入のエビデンスをほとんど示さず、それを超える患者は、「中央値を超える活性化免疫細胞」又は「活性化免疫細胞high」という用語で特徴付けられ、これらは、活性化B細胞、活性化T細胞、活性化制御性T細胞、若しくは活性化NKT細胞、樹状細胞、若しくは形質細胞様樹状細胞のそれぞれの割合が、導入化学療法開始からの期間が同じであり、かつ同じ起源組織に由来するがんと診断された患者のコホートに対して決定された中央値を超えていることを示す。
【0207】
例:進展期小細胞肺がん(esSCLC)
- 活性化B細胞の割合が中央値16.9%超過
- 活性化T細胞の割合が中央値0.76%超過
- 活性化制御性T細胞の割合が中央値7.6%超過
- 活性化ナチュラルキラーT細胞の割合が中央値4.1%超過
- 活性化pDCの割合がpDCのうち5.1%未満
- 活性化mDCの割合が0.48%未満、及び/又は
- 活性化DCの割合がDCのうち54.51%未満。
【0208】
エビデンス:コホートの中央値超過の活性化免疫細胞を有する患者は全生存期間の増大を示す。例えば、継続維持としてPE化学療法を受けたB細胞が中央値超過(16.9%超過)の患者のmOSは17.9か月であるのに対し、活性化B細胞が中央値を下回る(16.9%以下)の患者のmOSはわずか10.8か月である(図3)。示される患者群に適用された閾値15.42%は、コントロール群では2つの集団を分離したが、レフィトリモド群では分離せず、このことは、活性化B細胞サブセットの増加によって特徴付けられる免疫疲弊を示す患者に対しては、チェックポイント阻害モジュレーションは、早期の化学療法導入及び免疫調節維持期において実質的な初期の利益をもたらす可能性が高いことを示している。同様の結果は、さらなる免疫サブセットで観察された(図4)。
【0209】
今回の研究から得られた重要な観察結果は、活性化細胞の閾値、特に活性化B細胞のパーセントの中央値が、該研究のコントロール群でのみmOSにおいて強い予防効果を識別するということである。これは欧州特許第(EP)339245号A1におけるTLR9アゴニストについて開示された内容と矛盾する。ここで提供される分析は、再導入化学療法(一次治療の転移性結腸直腸癌など)と比較して、導入化学療法(esSCLCの一次治療として)におけるレフィトリモド治療とTLR9アゴニストによる免疫調節との間の違いを分離しており、TLR9アゴニストは、白金ベースの化学療法と併用するよりも、その後に適用した場合に、mOSの点でより有効であることを示す。図3は、活性化B細胞が15.42%を超えるコントロール患者集団が選択される場合、生存期間が(選択される閾値に応じて)3倍~10倍改善することを示している。
【0210】
これらのグループ分けに感度のある提案される治療モデル設計では、予測バイオマーカー「活性化免疫細胞high」に一致する患者、その中でも活性化B細胞が統計学的に最も有意な値を示す患者は、チェックポイント阻害期間を含む「分岐の上位経路」に割り当てられる。「活性化免疫細胞high」に一致しない患者は、TLR9アゴニスト治療を含む「分岐の下位経路」に割り当てられる(図9及び10)。
【0211】
III.最適な維持免疫調節のための予測バイオマーカー分析
無増悪生存期間(PFS)がある閾値に達したSCLC患者は、全生存期間(OS)において有意な利益を示す可能性が高い。最適な閾値を定義するために選択される方法は、「ユーデン指数」と「受信者動作特性曲線(ROC曲線)」の組み合わせである。比較される多くのユーデン指数とROC曲線のうち、図5に示す曲線のペアが最適な閾値を表している。
【0212】
例:PFS1が188日超過(6.2か月超過)に到達するesSCLC患者は、OS1が350日(11.5か月)超過になる可能性が最も高い。この最適な閾値は、TLR9アゴニストによる切り替え維持療法下(6.1か月)の患者及び継続維持療法としてのPE化学療法下(6.7か月)の患者のそれぞれの完全解析セット(full analysis set:FAS)で見出されたPFS1値に酷似している。
【0213】
エビデンス:上記で導出された6.2か月超過のPFSの閾値をカプランマイヤープロットにおいて使用して、TLR9アゴニストのレフィトリモドによる切り替え維持療法下の患者サブグループと継続維持療法下の患者サブグループとのmOS1を計算すると、それぞれ17.1か月と16.7か月が測定された(図6参照)。PFSの閾値が6.2か月以下についての対応するmOS1値は10.7か月と10.2か月とに達し、IMpower133試験及びCASPIAN試験のコントロール群で認められたmOS(10.3か月)と一致しただけであった。
【0214】
制御性T細胞(Treg)の割合は、「導入免疫調節」の開始(ベースライン、「導入化学療法」開始後90~104日)の後、「維持免疫調節」(来院2回、118~125日、来院3回、146~153日、来院4回、188~195日)で20%以上増加する。来院4回は、統計的に決定された最適なPFSの閾値に相当する(表2参照)。これにより、「第2の予測バイオマーカー」の絶対測定値が得られる。これは「導入化学療法」の開始後188日、およそ6か月以上に、患者のTregの割合が20%以上である場合に一致する(図7A)。同様に、最適なPFSの閾値に対応する中央値超過の活性化B細胞はまた、その後の時点において、全生存期間における有意な利益を有する患者を識別するのに使用することも可能である(図7B)。
【0215】
がん免疫調節のための標的治療アルゴリズム
I、II、IIIの下で示された臨床試験データのディープな組み合わせ事後解析の結果により、一次導入化学療法又は再導入(白金ベース)化学療法の治療アルゴリズムに不可欠な要素が確立された。この不可欠な要素は以下のとおりである:
1)「順次的」、
2)「2段階型、バイオマーカー誘導型、分岐型」、及び
3)「自然免疫調節と適応免疫調節との交代」。
【0216】
1)「順次的」とは、自然免疫と適応免疫との経路において、活性化を引き起こす自然な順序を採用することを指す。承認されたすべての免疫腫瘍学的治療プロトコルにおいて、それぞれの免疫治療薬は化学療法又は標的療法と「組み合わせ(併用)」され、すなわち、一緒に、又は同日に適用される。例えば、この研究で分析される試験におけるesSCLCの一次療法(first line therapy)では、PE化学療法がPD-L1阻害抗体であるアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Roche)又はデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標)、AstraZenenca)と一緒に投与される。
【0217】
Th1免疫は化学療法によってもたらされ、さらに、上記のデータは、PE「導入化学療法」後に2つの患者サブグループの存在を実証し、すなわち、4サイクルのPE「導入化学療法」後に中央値を超える活性化免疫細胞、「活性化免疫細胞high」(優先的な活性化B細胞だけでなく、活性化T細胞、活性化制御性T細胞、及び活性化NKT細胞)、を有する患者、及び中央値未満の活性化免疫細胞、「活性化免疫細胞low」、を有する患者の存在を実証する。注目すべきことに、この区別は、「導入化学療法」の数サイクルが、2つの患者集団を区別する可能性のある異なる免疫応答を生成した後にのみ生じるため、「導入化学療法」の開始時からのTLR-9アゴニスト又は免疫チェックポイント阻害剤(ICI)などのCPM剤との組み合わせは免疫測定値によって根拠が示されるものではない。しかしながら、これは、IMpower-133及びCASPIANの臨床試験のアウトカムが非常によく似ていることから、現在の標準治療(SoC)となっている(図1及び表1)。
【0218】
IMPULSE臨床試験及びIMPALA臨床試験の事後分析では、適応免疫(PD-L1遮断など)を標的とするICIを適用することにより自然なダウンレギュレーション反応を効果的に打ち消す前に、「導入化学療法」(IMPULSEではPE「導入化学療法」を4サイクル)によって免疫反応を最初に生じさせる必要があることが示唆される。したがって、提案される治療アルゴリズムは、予測バイオマーカーの一致が決定され、かつそれぞれの順次的治療(「導入免疫調節」)が開始される前に、白金ベースの「導入化学療法」(図9及び図10では「導入又は再導入化学療法」として示されている)の2、3、4、又は5サイクルにより開始される。
【0219】
また、「維持免疫調節」から「維持免疫調節の交代」へと移行する予測も順次的である。ここでは、TLR9アゴニストによる治療又はICIによる治療のいずれかの「順次的な交代」は、同時の適応及び自然の免疫刺激物の両方の「組み合わせ」に対する代替案として提示されている。なお、「交代」の根拠については3)で説明する。
【0220】
2)「2段階型、バイオマーカー誘導型、分岐型」とは、予測免疫バイオマーカーの評価により可能な最良の臨床アウトカムに関連する治療プログラムを患者に選択することができることを意味する。ここでの「分岐経路」アプローチでは、第1のバイオマーカーに一致しても一致しなくても、患者を治療から除外することはなく、上か下かのいずれかの経路に割り当てる(図9及び図10)。「2段階」とは、適切な導入免疫調節剤を選択するための第1のバイオマーカーと、免疫調節維持療法を誘導するための、又は場合によっては交代療法のタイミングを誘導するための、第2のバイオマーカーの2つを適用することを指す。第2のバイオマーカーが一致してもしなくても、患者が治療から除外されるわけではなく、TLR9(自然)又はICI(適応)の維持免疫調節のいずれかを交代する時間枠が割り当てられる。
【0221】
第1の予測バイオマーカー:
- 活性化B細胞の割合が中央値超過(図3
- 活性化T細胞の割合が中央値超過(図4
- 活性化制御性T細胞(Treg)の割合が中央値超過(図4
- 活性化ナチュラルキラーT細胞の割合が中央値超過(図4
- 活性化樹状細胞の割合が中央値超過(図4
- 活性化骨髄樹状細胞の割合が中央値超過
- 活性化形質細胞様樹状細胞の割合が中央値超過(図4)。
【0222】
第2の予測バイオマーカー:
- 無増悪生存期間(PFS)が中央値188日、6.2か月超過(図5及び6)
- 活性化制御性B細胞(Breg)の割合が導入化学療法開始から6か月超過後中央値以上(図7)。
- 活性化制御性T細胞(Treg)の割合が導入化学療法開始から6か月超過後20%以上(好ましい基準)(図7)。
【0223】
3)「自然免疫調節と適応免疫調節との交代」
これは、本明細書に示した治療アルゴリズムのもう一つの重要な概念である。免疫チェックポイント阻害剤(PD-1遮断剤、PD-L1遮断剤が規制当局に承認された例である)との免疫調節剤(例えば、TLRアゴニスト、cGAS-STING、RIG-I)の多くの「組み合わせ」アプローチでは、腫瘍療法に対する免疫応答の時間経過及び質は考慮されていないが、「液体生検(リキッドバイオプシー)」によって分析される免疫細胞、並びにケモカイン及びサイトカインの質と量により、腫瘍微小環境(tumour micro-environment:TME)における免疫生物学的状況を反映することができる。
【0224】
導入化学療法後又は再導入化学療法後に、液体生検試料の測定値が活性化免疫細胞high(又は中央値超過)に分類された患者は、免疫学的に「ホット」であるが、「免疫編集」された腫瘍微小環境(TME)を反映している可能性が高い。ここで、本発明者らは、TLR9アゴニストによる治療は、誤標的された活性化B細胞、疲弊T細胞、制御性細胞(Breg及びTreg)の割合を増加させる可能性が高いと予測している。これらの患者は、第1の予測バイオマーカーに一致する患者と相関し、分岐の上側の経路に割り当てられる(図9及び図10)。これらの患者の「導入免疫調節」は、白金ベースの化学療法とICI(好ましくはPD-L1遮断抗体)とからなる。白金ベース(好ましくはPE)の化学療法は、患者の腫瘍細胞を破壊し続けるだけでなく、活性化B細胞及び疲弊T細胞を除去する可能性もある。「維持免疫調節」は、「第2の予測バイオマーカー」が一致するまで、すなわち、無増悪生存期間(PFS)がそれぞれの腫瘍実在の中央値(mPFS)よりも長く続くか、又は適応免疫活性化のパラメーターが閾値の中央値未満に下がるまで、免疫チェックポイントを遮断し続けるであろう。PFSが中央値超過であることは、進行中の抗腫瘍免疫応答が、さらなる免疫編集によってその効力を失っていることを示している。
【0225】
液体生検試料の測定値が第2の予測バイオマーカーと一致した患者は、次いでICI維持による適応免疫からTLR9アゴニスト維持による自然免疫へと、「維持免疫調節」を交代するであろう。抗原提示細胞(APC)の活性化(すなわち形質細胞様樹状細胞(pDC)がTLR9アゴニストによって活性化される)は、骨髄性樹状細胞に活性化を伝達し、それによって、まだ編集されていない新しい抗腫瘍免疫反応に対して腫瘍(新(neo))抗原提示を再始動する。
【0226】
導入化学療法後又は再導入化学療法後に、液体生検試料の測定値が活性化免疫細胞low(又は中央値未満)に分類された患者は、免疫学的に「コールド」な腫瘍微小環境を反映している可能性が高い。このような腫瘍では、TLR9アゴニストによる「導入免疫調節」及び「維持免疫調節」療法が、免疫監視再活性化(ISR)によってOSを改善するであろう。ISRにより、免疫学的に「コールド」な腫瘍微小環境(tumour micro-environment:TME)を免疫学的に「ホット」な環境に変えることが必要とされる。これは、TLR9アゴニストによる「維持免疫調節」の間に達成される。TLR9の活性化は、抗原提示装置(pDC及びmDC)及びエフェクター細胞(NK細胞及びNKT細胞)を有する自然免疫だけでなく、T細胞及びB細胞を介する適応免疫も広く活性化する。その後、「第2の予測バイオマーカー」が一致した場合、すなわち、無増悪生存期間(PFS)がそれぞれの腫瘍の実在の中央値(mPFS)よりも長く続くか、又は液体生検で測定された適応免疫活性化パラメーターが閾値の中央値よりも上昇する。中央値超過のPFSは、抗腫瘍免疫応答の進行が、制御性免疫細胞(Treg及びBreg)によるダウンレギュレーション制御のために効力を失っていることを示す。第2の予測バイオマーカーに一致した患者は、次いでTLR9アゴニストによる自然免疫からICIによる適応免疫への「維持免疫調節」に交代するであろう。ICIによって免疫チェックポイントを遮断することで、Treg及びBregの活性をダウンレギュレートし、それにより抗腫瘍適応免疫の進行を可能にするであろう。
【0227】
概要
実施例に関連する組み合わせ事後解析は、アクセス可能なIMPLUSE試験の関連臨床パラメーター及び免疫学的データを、PD-L1阻害剤-抗体を利用した化学療法免疫調節維持試験のそれぞれの治療群及びコントロール群の公表されたmPFS及びmOSデータと組み合わせて、チェックポイント阻害剤の使用とIMPULSEで使用されるTLR9アゴニストとを比較するものである。解析により、2つの治療プロトコルのうちの1つに対する患者の適合性を反映する、根底にある免疫状況に関する免疫パラメーターが特定されるが、これは化学療法サイクルの第1のラウンドの後にのみ明らかになる。
【0228】
免疫解析は、「第1の予測バイオマーカー」である、導入化学療法後又は再導入化学療法後の活性化免疫細胞、特に活性化(例えばCD86+)B細胞の割合が中央値を上回るか下回るかに基づいて分類された液体生検試料の測定値で患者を識別し、これにより免疫学的に「コールド」又は「ホット」な腫瘍微小環境を区別し、ここでがん治療薬TLR9アゴニスト又はICIなどのCPMによる治療それぞれが有効な治療をもたらし得る。
【0229】
このような適応免疫の発達、及び疲弊した表現型の最終的な発達は、応答が衰える変曲点、すなわち、それぞれの腫瘍実体について無増悪生存期間(PFS)の中央値(mPFS)超過の継続、又は液体生検で測定されたT細胞のうちのTregのパーセントによって反映される適応免疫活性化の閾値の中央値超過の上昇、を特定することによって、本発明による「第2の予測バイオマーカー」によってその後に追跡される。PFSが中央値を超えるか、又はTregコンパートメントが疲弊していることは、進行中の抗腫瘍免疫応答が、制御性免疫細胞(Treg及びBreg)によるダウンレギュレーション制御によって効力を失っていることを示している。したがって、第2の予測バイオマーカーに一致する患者は、TLR9アゴニストによる自然免疫からICIによる適応免疫へと、「維持免疫調節」に交代するであろう。ICIによって免疫チェックポイントを遮断するであろう。
【0230】
表1は、IMPULSEのmOS1(図1参照)及び治療の意図(intention to treat(ITT))解析を用いた全生存期間(mOS)の中央値の概要を示す。IMPULSE、IMpower133、CASPIAN、Keynote-604、及びEA5161のそれぞれの治療群とコントロール群とを示す。
【0231】
表2は、制御性T細胞(%)の記述統計及び一対比較;2標本のt検定、治療群の比較;一対のt検定、治療群内のベースラインとの差を示す。制御性T細胞(Treg)の割合は、TLR9アゴニストの期間と共に増加する。PE化学療法、導入化学療法に対して白金/エトポシド、その後進行するまで継続維持。ベースライン、導入PE化学療法の第4サイクル終了時。来院2回、118~125日、来院3回、146~153日、来院4回、188~195日は、導入PE化学療法、IMPULSE開始から算出。
【0232】
【表1】
【0233】
【表2】
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A-1】
図4A-2】
図4B-1】
図4B-2】
図4C-1】
図4C-2】
図4D-1】
図4D-2】
図4E-1】
図4E-2】
図5-1】
図5-2】
図6A
図6B
図7A-1】
図7A-2】
図7B-1】
図7B-2】
図8A
図8B-1】
図8B-2】
図8C-1】
図8C-2】
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】