IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーションの特許一覧

<>
  • 特表-精製方法 図1
  • 特表-精製方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/44 20060101AFI20240524BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20240524BHJP
   C07C 41/38 20060101ALI20240524BHJP
   C07C 41/42 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C07C41/44
C07C43/12
C07C41/38
C07C41/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577944
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 AU2022050617
(87)【国際公開番号】W WO2022261728
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2021901845
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ツァナクツィディス
(72)【発明者】
【氏名】セシリー エルドリッジ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AD11
4H006AD16
4H006AD30
4H006GP01
4H006GP20
(57)【要約】
ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物から一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、(a)アミンおよび酸のうちの1つを反応混合物に添加するステップと、(b)ステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、(c)ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加し、それによってハロゲン化アルコキシエタンを精製するステップと、を含む、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物から一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、
(a)アミンおよび酸のうちの1つを前記反応混合物に添加するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた前記混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、前記有機相は、前記ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(c)ステップ(a)で使用されなかった前記アミンおよび前記酸の他方をステップ(b)で得られた前記有機相に添加し、それによって前記ハロゲン化アルコキシエタンを精製するステップと、
を含む、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法。
【請求項2】
精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップ(d)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化アルコキシエタンは、(i)XおよびYの各々は、独立して-Clまたは-Fである、一般式XClHC-CYFの化合物、および(ii)Xは、-Clまたは-Fである、一般式XClC=CFの化合物から選択される前駆体化合物を使用して製造される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式XClC=CFの化合物は、ClC=CFである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式XClHC-CYFの化合物は、ClHC-CFである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン化アルコキシエタンは、メトキシフルランである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
メタノール、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、ジクロロ酢酸メチル、1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエチレン、クロロホルム、およびフッ化水素のうちの1つ以上を含む不純物からハロゲン化アルコキシエタンを精製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
メトキシエテン(ME)、オルトエステル(OE)、およびジクロロ酢酸メチル(MDA)の1つ以上を含む不純物からハロゲン化アルコキシエタンを精製するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オルトエステルは、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリメトキシエタンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アミンは、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、エタノールアミン、ピロリジン、2-アミノブタン、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸は、クエン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、亜硝酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)において、アミンまたは酸は、反応混合物に対して0.25:1~2:1の体積比に従って添加される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
酸は、少なくとも10%の酸溶液である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
粗バッチ反応混合物を極性液体と混合して、極性相と別個の有機相との間の相分離を誘導するステップと、
前記有機相を前記極性相から分離し、前記分離された有機相は、前記ハロゲン化アルコキシエタンを含む前記反応混合物である、ステップと、
をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)で得られた前記有機相を前記極性相から分離するステップと、
ステップ(c)で得られた前記混合物に極性液体を添加して、極性相と前記ハロゲン化アルコキシエタンを含む別個の有機相との間の相分離を誘導するステップと、
をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記極性液体は、水である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、蒸留によって単離される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記蒸留は、フラッシュ蒸留を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記蒸留は、前記ハロゲン化アルコキシエタンを含有する蒸留塔底液を得るためのフラッシュ蒸留とそれに続く前記塔底液の分別蒸留とを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、約99.9%の純度を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、1%未満のメトキシエテン(ME)、オルトエステル(OE)およびジクロロ酢酸メチル(MDA)を含むメトキシフルランである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、前記ハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも99%の純度を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法に従って精製される一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してハロゲン化アルコキシエタンの精製方法に関し、特に、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシである、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化アルコキシエタン化合物は、農薬、染料、難燃剤、造影剤はいうまでもなく、今日の医薬品有効成分のかなりの部分を構成している。
【0003】
医薬品有効成分としてハロゲン化アルコキシエタン化合物を使用するには、医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンを一貫して供給する必要がある。従来、ハロゲン化アルコキシエタンは、バッチ合成手順で製造されていた。しかし、これらの手順では高純度のハロゲン化アルコキシエタンを直接製造するのが難しく、製造後の精製手順で補完する必要がある。これらの精製手順は主に不純物の物理的な除去に基づいており、本質的に効率が低く、運用コストが高いという問題がある。
【0004】
したがって、ハロゲン化アルコキシエタンの従来のバッチ合成を補完し、商業的に適切な規模で医薬品グレードの化合物を提供するのに効果的なハロゲン化アルコキシエタンの精製手順を提供する機会が残されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物から一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、
(a)アミンおよび酸のうちの1つを反応混合物に添加するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(c)ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加し、それによってハロゲン化アルコキシエタンを精製するステップと、
を含む、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法を提供する。
【0006】
本明細書で使用される場合、「反応混合物」という表現は、ハロゲン化アルコキシエタンのバッチ式合成から得られる生成物の混合物を指す。したがって、当該反応混合物はハロゲン化アルコキシエタンを含むものであることが理解されるであろう。
【0007】
ハロゲン化アルコキシエタンを「精製」するための方法であるということは、その方法が反応混合物から不純物、例えば本明細書に記載される種類の不純物を除去し、その結果、反応混合物と比較して不純物の量が少ない混合物が得られることを意味する。
【0008】
本発明の方法におけるステップ(a)および(c)の順序は、驚くべきことに、ハロゲン化アルコキシエタンの精製を促進して、バッチ合成手順で製造される医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンを得るのに効果的であることが判明した。
【0009】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップ(d)をさらに含む。ステップ(d)は、有利には、医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンの単離を提供し得る。ハロゲン化アルコキシエタンに関して本明細書で使用されるとき、「医薬品グレード」という表現は、ハロゲン化アルコキシエタンが少なくとも99%の純度(例えば、約99.9%の純度)であることを意味する。
【0010】
特定の理論に限定されることを望むものではないが、本発明に従って添加されるアミンおよび酸は、ハロゲン化アルコキシエタンに対して不活性のままでありながら、反応混合物中に存在する不純物をより除去しやすい化合物に効率的に変換され得ると仮定される。したがって、提案された処理は、医薬グレードのハロゲン化アルコキシエタン化合物の製造のための分別蒸留などの物理的分離に基づく既存の精製経路を有利に置き換えまたは補完し得る。
【0011】
本発明の方法は、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物に対して行われる。ハロゲン化アルコキシエタンを製造するための「バッチ」合成手順であるこの手順は、ハロゲン化アルコキシエタンの合成に使用されるすべての試薬の意図した量が一度にまたは順次反応容器に装入され、反応が進行するにつれて反応系に試薬を追加することなく、所定の反応条件下で反応する。これは、反応が進行するにつれて1つ以上の試薬が反応系に連続的に導入される半連続または連続合成手順とは対照的である。当該手順の例には、ケミカルフロー反応器内で行われる反応が含まれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンは、(i)XおよびYの各々は、独立して-Clまたは-Fである、一般式XClHC-CYFの化合物、および(ii)Xは、-Clまたは-Fである、一般式XClC=CFの化合物から選択される前駆体化合物を使用して製造される。一般式XClC=CFの適切な化合物の例は、ClC=CFであり、一般式XClHC-CYFの適切な化合物の例は、ClHC-CFであり得る。それらの場合、ハロゲン化アルコキシエタンは、メトキシフルランなどの商業的に関心の高い化合物であり得る。
【0013】
本発明はまた、本発明の方法に従って精製され、少なくとも99%の純度を有する、一般式XClHC-CFOR(式中、Xは-Clまたは-Fであり、ORはC1-4アルコキシである)のハロゲン化アルコキシエタンを提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様および実施形態について、下記でより詳細に説明する。
【0015】
本発明はまた、下記の非限定的な図面を参照して本明細書で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】精製前のメトキシフルランを含有する混合物のガスクロマトグラフィー(GC)のトレースを示す図である。
図2】本発明の実施形態手順による精製メトキシフルランのガスクロマトグラフィー(GC)のトレースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法は、一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンであって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシである、ハロゲン化アルコキシエタンを精製するための方法である。
【0018】
本明細書で使用される場合、「C1-4アルコキシ」という表現は、1~4個の炭素を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシ基を意味する。直鎖および分枝アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびt-ブトキシが挙げられる。
【0019】
本発明の方法は、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物から精製される。当該バッチ合成手順は、ハロゲン化アルコキシエタンが(i)XおよびYの各々は、独立して-Clまたは-Fである、一般式XClHC-CYFの化合物、および(ii)Xは、-Clまたは-Fである、一般式XClC=CFの化合物から選択される前駆体化合物を使用して製造されるものであり得る。
【0020】
例えば、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順は、(i)XおよびYの各々は、独立して-Clまたは-Fである、一般式XClHC-CYFの化合物、または(ii)Xは、-Clまたは-Fである、一般式XClC=CFの化合物のいずれかを塩基およびC1-4アルカノールと反応させることを含むものであり得る。
【0021】
ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順で使用される塩基は(i)XおよびYの各々は、独立して-Clまたは-Fである、一般式XClHC-CYFの化合物、または(ii)Xは、-Clまたは-Fである、一般式XClC=CFの化合物へのC1-4アルカノールの付加反応を触媒し得る任意の塩基であり得る。いくつかの実施形態では、塩基は、アルカリ金属塩基カチオンを含む。例えば、塩基は、アルカリ金属(例えば、Li、NaおよびK)、アルカリ金属塩(例えば、炭酸塩、リン酸塩)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド(例えば、メチラート、エチラート、フェノラート)およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、塩基は、ナトリウムメトキシドおよびカリウムメトキシドから選択され得る。いくつかの実施形態において、塩基は、一般式M-OHのアルカリ金属水酸化物であり、Mは、Li、NaおよびKからなる群から選択されるアルカリ金属である。いくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物は、NaOHまたはKOHである。いくつかの実施形態では、塩基は、KOHである。いくつかの実施形態では、塩基はアンモニウムまたはホスホニウム塩基カチオンを含む。そのような適切な塩基の例は、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジル(トリメチル)アンモニウム、塩化N-メチル-N,N,N-トリオクチルアンモニウム(アリコート336)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラメチルホスホニウムを含む。
【0022】
1-4アルカノールは、一般式XClC=CYFの化合物の第2の炭素へのC1-4アルコキシ基の付加を促進し得、または一般式XClC=CFの化合物のC=C結合への付加反応を促進し得、第2の炭素に結合したC1-4アルコキシ基をもたらす任意のC1-4アルカノールであり得る。いくつかの実施形態では、C1-4アルカノールは、メタノール(CHOH)、エタノール(CHCHOH)、1-プロパノール(CHCHCHOH)、2-プロパノール((CHCHOH)、1-ブタノール(CHCHCHCHOH)、2-ブタノール(CHCHCHOHCH)、2-メチル-1-プロパノール((CHCHCHOH)、2-メチル-2-プロパノール((CHCOH)、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、C1-4アルカノールはメタノールである。
【0023】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順で使用される一般式XClHC-CYFの化合物はClHC-CFであるか、またはハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順で使用される一般式XClC=CFの化合物はClC=CFである。このような例では、C1-4アルカノールとしてメタノールを使用する場合、得られるハロゲン化アルコキシエタンは、メトキシフルランである。
【0024】
したがって、いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンは、メトキシフルランである。
【0025】
それらの場合、メトキシフルランがPenthrox(登録商標)の有効成分であるため、特に有利である。Penthrox(登録商標)は、急性外傷性疼痛の初期管理や創傷被覆材などの短期間の痛みを伴う処置に効果的で即効性の短期鎮痛薬である。Penthrox(登録商標)は、医師、国防軍、救急車の救急隊員、スポーツクラブ、サーフィンのライフセーバーが、「グリーンホイッスル」として知られる吸入装置を介して緊急鎮痛を行うために使用される鎮痛剤である。
【0026】
Penthrox(登録商標)は、世界中の多くの主要な法域で規制当局の承認を取得しており、患者(子供を含む)が監督下で薬剤を自己投与できるようにする使い捨ての単回使用吸入器として広く普及すると期待される。現在のテストは、グリーンホイッスルに加えて販売される予定のPenthrox(登録商標)の自己投与用の先進的な吸入器で行われている。テスト吸入器は、約3mlのPenthrox(登録商標)を患者に迅速かつ簡単な方法で送達する、完全に統合された鎮痛システムとして開発された。試験吸入器は、ロックアウトタブ、吸入器を作動させるプランジャー、および使用者が通常の呼吸によって活性Penthrox(登録商標)組成物を吸入し得るマウスピースを含む。ロックアウトタブが取り外されると、プランジャーを押し下げることによって吸入器が作動され得る。その後、ユーザーが単に吸入することによってマウスピースを通じて有効成分が放出されるように吸入器が設定される。
【0027】
Penthrox(登録商標)は、(i)応急処置および緊急サービス(例えば、病院の緊急事態、救急車サービス、救命クラブなど)を提供し得る、(ii)形性、機敏性、応急処置のポイントオブケアおよびを必要とする(例えば、軍隊)、ならびに(iii)主流の鎮痛薬の選択としてPenthrox(登録商標)を一般大衆(例えば、薬局)に販売し得る、世界中の施設で、利用できるようにすることを目指している。
【0028】
したがって、本発明の方法は、メトキシフルランを含む粗バッチ反応混合物を精製して医薬品グレードのメトキシフルランを得るのに特に有利であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順で使用される一般式XClHC-CYFの化合物はFClHC-CFであるか、またはハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順で使用される一般式XClC=CFの化合物はFClC=CFである。このような例では、C1-4アルカノールとしてメタノールを使用する場合、得られるハロゲン化アルコキシエタンは、ClFHC-CFOCH(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルメチルエーテル)である。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態では、ハロゲン化アルコキシエタンは、ClFHC-CFOCH(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルメチルエーテル)である。
【0031】
ClFHC-CFOCHは、吸入麻酔薬エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチル-ジフルオロメチルエーテル)の合成における既知の前駆体であるため、高純度かつ大量のClFHC-CFOCHを生成し得る可能性は特に有利であり得る。したがって、本発明の方法は、ClFHC-CFOCHを含む粗バッチ反応混合物を精製して、医薬品グレードのClFHC-CFOCH、そして最終的にはエンフルランを提供するのに特に有利である。
【0032】
本発明の方法は、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物からハロゲン化アルコキシエタンを精製するためのものである。当該反応混合物は、ハロゲン化アルコキシエタンに加えて、望ましくない不純物を含み得る。したがって、本発明の方法は、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順に由来する反応混合物からの不純物の除去を容易にする方法であるともいえ得る。ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順で使用される合成条件および/または前駆体化合物の性質に応じて、当該不純物は、1つまたは複数の反応副生成物および/または1つまたは複数の未反応前駆体化合物を含み得る。
【0033】
例えば、ハロゲン化アルコキシエタンがClHC-CFまたはClC=CFを塩基(例えば、本明細書に記載される種類の塩基)およびメタノールと反応させることによって得られるメトキシフルランであるとき、得られる反応混合物中の不純物は、ジクロロジフルオロエチレン(DCDFE)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、エーテル(例えば、メトキシエテン(ME)、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテン、ハロマー(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルメチルエーテル)などのビニルエーテル))、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリメトキシエタンなどのオルトエステル(OE)、ジクロロ酢酸メチル(MDA)、クロロホルム、およびHFの、1つまたは複数のメタノールを含み得る。下記のスキーム1は、反応混合物中でのメトキシフルランのさらなる反応によるこれらの不純物の一部の形成に関わる仮定されたメカニズムを示す。
【0034】
【化1】
【0035】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、メタノール、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、ジクロロ酢酸メチル、1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロエチレン、クロロホルム、フッ化水素およびメトキシエテン(ME)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリメトキシエタンなどのオルトエステル(OE)、およびジクロロ酢酸メチル(MDA)のうちの1つ以上を含む不純物からハロゲン化アルコキシエタンを精製するための方法である。
【0036】
有利には、本発明の方法は、反応混合物中に存在する不純物の量に関係なく、ハロゲン化アルコキシエタンを含む反応混合物からの不純物の除去を容易にし得る。例えば、反応混合物は、混合物の最大約30体積%の量の不純物を含有し得る。いくつかの実施形態では、反応混合物は、混合物体積で約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2.5%未満、または約1%未満の量の不純物を含有する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、混合物の5体積%未満の量の不純物を含有する。
【0037】
本発明の方法は、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するために使用されるバッチ反応器システムに統合され得る。例えば、この方法は、合成後の精製手順としてハロゲン化アルコキシエタンを合成するためのバッチ反応器システムに統合され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の精製手順は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する粗バッチ反応混合物に対して直接行われる。それらの場合、当該粗バッチ反応混合物は、本発明による反応混合物である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の反応混合物は、粗バッチ反応混合物に由来する。それらの場合、粗バッチ反応混合物は、さらなる処理を受け、その結果、本発明の反応混合物が得られる。例えば、粗バッチ反応混合物は、最初に相分離手順を受け得る。当該手順は、粗バッチ反応混合物に極性液体を添加して、極性相とハロゲン化アルコキシエタンとを含む別個の有機相から作製される二相混合物を形成することを含み得る。このような場合、有機相は極性相から分離され、さらなる処理の前に廃棄され得る。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、粗バッチ反応混合物を極性液体と混合して極性相と別の有機相との間の相分離を誘導するステップと、当該有機相を極性相から分離するステップとをさらに含み、ここで、別の有機相は、本発明によるハロゲン化アルコキシエタンを含む反応混合物である。
【0041】
本発明の文脈において、二相混合物中の別の有機相からの極性相の分離は、当業者に知られている任意の手段に従って行われ得る。例えば、当該分離は、重力分離器(例えば、相分離フラスコ、タンク、または分液漏斗)、超疎水性メッシュ、超疎油性メッシュなどによって行われ得る。当業者であれば、二相混合物の相を効果的に分離するための適切な手段および手順を特定可能であろう。
【0042】
本明細書で使用される場合、「極性液体」は、本明細書に記載される種類のハロゲン化アルコキシエタンを含有する混合物に添加され得、極性相とハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相とを含む二相混合物の形成をもたらす液体物質である。この点に関して適切な極性液体の例は水である。
【0043】
本発明の方法は、アミンおよび酸のうちの1つを反応混合物に添加するステップ(a)を含む。「アミンおよび酸のうちの1つを反応混合物に添加する」とは、アミンまたは酸のいずれかを反応混合物に添加することを意味する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、反応混合物にアミンを添加することを含む。いくつかの実施形態では、精製手順は、反応混合物に酸を添加することを含む。アミンまたは酸は、本明細書に記載される種類のアミンまたは酸であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、反応混合物にアミンを添加することを含む。
【0045】
特定の理論に限定されることを望むものではないが、本明細書に記載される種類のアミンは、N-アルキル化および/またはアミド化経路を通じて反応混合物中に存在する不純物と反応し得ると考えられる。これは、不純物を、出発不純物よりも単離ステップで除去しやすい化合物に有利に変換する。
【0046】
例えば、本明細書に記載される種類のメトキシフルランを製造するためのバッチ合成手順は、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテン(ビニルエーテル)および/またはジクロロ酢酸メチル不純物の形成を引き起こし得る。このような場合、1,1-ジクロロ-2-フルオロ-2-メトキシエテン(ビニルエーテル)は、N-メチル化を通じて第一級および/または第二級アミンと反応し、2,2-ジクロロアセチルフルオリドを生成する。2,2-ジクロロアセチルフルオリドとジクロロ酢酸メチルとは両方とも、アミド化経路を通じて第一級および/または第二級アミンとさらに反応して、対応するジクロロアセトアミドを生成し得る。得られるジクロロアセトアミドは、単離ステップでより除去しやすくなる。これらの反応の概略図をスキーム2に示す。
【0047】
【化2】
【0048】
アミンは、第一級アミンであっても第二級アミンであってもよい。
【0049】
本発明の方法での使用に適したアミンの例としては、エチレンジアミン(1,2-ジアミノエタン)、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、エタノールアミン、ピロリジン、2-アミノブタン、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、アミンは、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、およびそれらの混合物から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、反応混合物に酸を添加することを含む。
【0051】
適切な酸の例としては、クエン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、硝酸、亜硝酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、酸はメタンスルホン酸(MSA)である。
【0052】
酸は、反応混合物中に存在する不純物との効果的な反応を促進するのに適した任意の形態で添加され得る。例えば、酸は、酸水溶液などの酸溶液の形態であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、酸は少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の酸溶液である。
【0054】
ステップ(a)において、アミンまたは酸は、意図された目的に適合する任意の有効量に従って、反応混合物に添加され得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.05:1~約2:1(アミンまたは酸:反応混合物)の体積比に従って、反応混合物に添加される。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.1:1、約0.25:1、約0.5:1、約1:1、または約2:1(アミンまたは酸:反応混合物)の体積比に従って反応混合物に添加される。
【0055】
ステップ(a)は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の反応を促進するのに有効な任意の方法で実施され得る。例えば、アミンまたは酸の添加は、バッチ手順または連続手順として実行され得る。
【0056】
アミンまたは酸は、ステップ(a)において反応混合物に添加され、得られた混合物は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応につながる任意の時間、反応され得る。例えば、ステップ(a)で得られた混合物を少なくとも約1分間反応させてもよい。いくつかの実施形態では、ステップ(a)で得られた混合物を、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約60分間、または少なくとも約2時間反応させる。反応中、混合物は、一定の撹拌下に維持され得る。
【0057】
ステップ(a)における反応混合物へのアミンまたは酸の添加は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応に役立つ任意の温度で実施され得る。例えば、アミンまたは酸は、約10℃~約120℃の温度で反応混合物に添加され得る。添加温度を高くすると(例えば、最大120℃)、より揮発性の不純物の分離が容易になり得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約10℃~約50℃の温度で反応混合物に添加される。いくつかの実施形態において、ステップ(a)におけるアミンまたは酸は、室温で反応混合物に添加される。得られた混合物は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応を助長する温度に保たれ得る。例えば、得られた混合物は、約10℃~約50℃の温度に保たれ得る。場合によっては、不純物とアミンまたは酸との反応は、発熱し得、その場合、アミンまたは酸の添加後、アミンまたは酸の添加に伴って、得られる混合物の温度が徐々に上昇することが観察され得る。
【0058】
本発明の方法はまた、ステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加するステップ(b)をも含む。これによって、極性相と別個の有機相とで作製される二相混合物が形成され、その別個の有機相はハロゲン化アルコキシエタンを含有する。
【0059】
極性液体は、本明細書に記載される種類の極性液体であり得る。例えば、ステップ(b)で使用される極性液体は、水であり得る。それらの場合、ステップ(b)の極性相は水相である。
【0060】
ステップ(b)において、極性液体は、ステップ(a)で得られた混合物に、必要な相分離および極性相と分離された有機相との形成を誘導するのに適した任意の量で添加され得る。例えば、極性液体は、約0.5:1~約2:1(極性液体:混合物)の体積比に従って、ステップ(a)で得られた混合物に添加され得る。いくつかの実施形態では、極性液体は、約0.5:1、約1:1、約1.5:1、または約2:1(極性液体:混合物)の体積比に従って、ステップ(a)で得られた混合物に添加される。
【0061】
ステップ(a)で得られた混合物にステップ(b)で極性液体が添加されると、得られた二相混合物は、出発混合物中に存在する極性不純物の極相への溶解につながる任意の時間撹拌下に維持され得る。例えば、得られた二相混合物は、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、または少なくとも約60分間、一定の撹拌下に維持され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)の後に、さらなる処理の前に、ステップ(b)で得られた有機相を極性相から分離するステップが続く。分離は、意図された目的に適した当業者に知られている任意の手順に従って行われ得る。例えば、分離は、本明細書に記載される種類の手段によって達成され得る。このような場合、分離された極性相は廃棄される。
【0063】
本発明の方法はまた、ステップ(a)のアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加するステップ(c)を含む。
【0064】
「ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方」という表現は、アミンがステップ(a)で使用される場合、酸はステップ(c)で使用されることを意味する。逆に、酸がステップ(a)で使用される場合、アミンはステップ(c)で使用される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、反応混合物にアミンを添加し、その後、得られた混合物に酸を添加することを含む。アミンまたは酸は、本明細書に記載される種類のアミンまたは酸であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、反応混合物に酸を添加し、その後、得られた混合物にアミンを添加することを含む。アミンまたは酸は、本明細書に記載される種類のアミンまたは酸であり得る。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、
(i)アミンを反応混合物に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)ステップ(i)で得られた酸をステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
を含む。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、
(i)酸を反応混合物に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)ステップ(i)で得られたアミンをステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
を含む。
【0069】
アミンおよび酸は、本明細書に記載される種類のアミンおよび酸であり、いかなるプロセス条件も本明細書に記載される種類のプロセス条件であることを理解されたい。
【0070】
ステップ(c)において、ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加することは、ステップ(a)で変換され得なかった不純物を変換しおよび/またはステップ(a)で促進された反応によって生成される望ましくない副生成物不純物を除去するのに有利である。
【0071】
例えば、ステップ(a)が反応混合物に酸を添加することを含むとき、エタン不純物(反応混合物中に存在する場合)は対応するクロロ酢酸塩に変換され得、これは、精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離に影響を及ぼし、さらなる酸性副生成物不純物の形成を引き起こし得る。これによって、クロロ酢酸による最終製品の汚染が生じ得る。例えば、酸性条件下では、副生成物2,2-ジクロロ-1,1,1-トリエトキシエタンは、下記のスキーム3に要約されるように、ジクロロ酢酸メチルに変換され得る。
【0072】
【化3】
【0073】
このような場合、ステップ(c)で追加されるアミンは、アミド化経路を通じてクロロ酢酸と反応して、単離ステップでの除去がより容易な対応するジクロロアセトアミドを生成し得る。
【0074】
ステップ(c)において、アミンまたは酸は、意図された目的に適合する任意の有効量に従って、ステップ(b)で得られた有機相に添加され得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.05:1~約2:1(アミンまたは酸:有機相)の体積比に従って、ステップ(b)で得られた有機相に添加される。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、約0.1:1、約0.25:1、約0.5:1、約1:1、または約2:1(アミンまたは酸:有機相)の体積比に従って、ステップ(b)で得られた有機相に添加される。
【0075】
ステップ(c)は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の反応を促進するのに有効な任意の方法で実施され得る。例えば、ステップ(b)で得られた有機相へのアミンまたは酸の添加は、バッチ手順または連続手順として実行され得る。
【0076】
当業者であれば理解するように、ステップ(b)で得られた有機相へのアミンまたは酸の添加には、最初にステップ(b)で得られた極性相から当該有機相を分離する必要があり得る。例えば、ステップ(c)で使用されるアミンまたは酸がステップ(b)で得られた極性相と危険な反応をし得るとき、有機相と当該極性相を最初に分離する必要がある。相分離は、本明細書に記載される種類の任意の手順に従って達成され得る。
【0077】
ステップ(c)では、アミンまたは酸をステップ(b)の有機相に添加すると、得られた混合物を、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応につながる任意の時間反応させ得る。例えば、精製手順のステップ(c)で得られた混合物を少なくとも約1分間反応させ得る。いくつかの実施形態では、精製手順のステップ(c)で得られた混合物は、少なくとも約5分間、少なくとも約15分間、少なくとも約30分間、少なくとも約60分間、または少なくとも約2時間反応される。反応中、混合物は、一定の撹拌下に維持され得る。
【0078】
ステップ(c)におけるアミンまたは酸の添加は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応に役立つ任意の温度で実施され得る。例えば、ステップ(c)において、アミンまたは酸は、約10℃~約120℃の温度で添加され得る。添加温度を高くすると(例えば、最大120℃)、より揮発性の不純物の分離が容易になり得る。いくつかの実施形態では、アミンまたは酸は、ステップ(c)において約10℃~約50℃の温度で添加される。いくつかの実施形態では、ステップ(c)におけるアミンまたは酸は、室温で添加される。得られた混合物は、1つ以上の不純物とアミンまたは酸との間の効果的な反応を助長する温度に保たれ得る。例えば、得られた混合物は、約10℃~約50℃の温度に保たれ得る。
【0079】
有利なことに、本発明の方法に従って使用されるアミンまたは酸は、ハロゲン化アルコキシエタンに対して不活性のままでありながら、不純物と特に効果的に反応し得る。
【0080】
例えば、医薬品グレードのメトキシフルランを得る精製手順において、本明細書に記載される種類のアミンは、メトキシフルランを保持しながら、低成分の不純物(例えば、ジクロロ酢酸メチル)と選択的に反応するのに特に効果的である。これは、99%を超える純度、例えば約99.9%の純度でメトキシフルランをさらに単離するのに特に有利であることが判明した。
【0081】
メトキシフルランの特に有利な精製手順では、精製方法のステップ(a)は、反応混合物に酸を添加することを含み、精製方法のステップ(c)は、アミンをステップ(b)で得られる有機相に添加することを含む。例えば、メトキシフルランの精製方法のステップ(a)は、反応混合物にメタンスルホン酸を添加することを含み得、精製方法のステップ(c)は、ステップ(b)の精製手順で得られた有機相にエタノールアミンを添加することを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、メトキシフルランの製造のための方法であり、反応混合物に酸(例えば、メタンスルホン酸)を添加すること、および得られた混合物にアミン(例えばエタノールアミン)を続いて添加することを含む、精製方法を含む。
【0082】
アミンおよび酸はハロゲン化アルコキシエタンに対して不活性なままであるため、本発明の方法は、関連する混合物中に存在する不純物の量に対して過剰のアミンおよび酸を使用して実行され得る。したがって、ハロゲン化アルコキシエタンを製造するために使用される特定のバッチ合成手順に依存する不純物のレベルにおける任意の差異は有利に適応され得る。
【0083】
通常のバッチ手順では、粗バッチ反応混合物は、70%未満の純度のハロゲン化アルコキシエタンを含有する。有利には、ステップ(c)に続いて、本発明の方法は、70%以上の純度で精製されたハロゲン化アルコキシエタンを有利に提供し得る。例えば、ステップ(c)に続いて、本発明の方法は、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、または少なくとも90%の純度でハロゲン化アルコキシエタンを与える。
【0084】
要するに、本発明の方法は、反応混合物中に存在する不純物の量に関係なく、ハロゲン化アルコキシエタンを含む反応混合物からの不純物の除去を容易にし得る。これは、ハロゲン化アルコキシエタンのバッチ反応合成が低い変換収率によって制限される場合に特に有利である。それらの場合、本発明の精製手順は、医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンを提供するのに大いに役立ち得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、本方法は、ステップ(c)で得られた混合物に極性液体を添加するステップを含む。これによって、極性相と別個の有機相からの相分離が引き起こされ、有機相はハロゲン化アルコキシエタンを含む。いくつかの実施形態では、当該有機相は、さらなる処理の前に極性相から分離され得る。分離は、意図された目的に適した当業者に知られている任意の手順に従って行われ得る。
【0086】
例えば、分離は、本明細書に記載される種類の手段によって達成され得る。このような場合、分離された極性相は廃棄される。本明細書に記載される種類の分離ステップに続いて、分離された有機相は、さらに処理される前に乾燥を受け得る。例えば、本明細書に記載される種類の分離された有機相は、乾燥剤を用いて乾燥され得る。これに関して適切な乾燥剤の例としては、硫酸マグネシウムなどの無機乾燥剤が挙げられる。
【0087】
したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(c)で得られた混合物に極性液体を添加した後、極性相から分離された有機相は、さらなる処理の前に乾燥剤で乾燥される。乾燥剤は硫酸マグネシウムであり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップ(d)をさらに含む。このステップは、本明細書に記載される種類の相分離手順に従って、ステップ(c)の混合物から得られた乾燥有機相に対して実行され得る。
【0089】
ステップ(d)において、精製されたハロゲン化アルコキシエタンは、少なくとも95%、例えば少なくとも99%、例えば約99.9%の純度を有するハロゲン化アルコキシエタンをもたらす、当業者に既知の任意の適切な手段によって単離され得る。
【0090】
例えば、ステップ(d)において、精製されたハロゲン化アルコキシエタンは蒸留によって単離され得る。当業者であれば、例えば特定のハロゲン化アルコキシエタンの物理的特性および残留不純物の性質および量に基づいて、ハロゲン化アルコキシエタンの単離を可能にする適切な蒸留条件を容易に特定可能であろう。
【0091】
いくつかの実施形態では、精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離は、分別蒸留によって行われる。これらの実施形態は、ClC=CFを本明細書に記載の種類の塩基およびメタノールと反応させることによって得られる精製メトキシフルランの単離に特に有利である。
【0092】
いくつかの実施形態では、精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離はフラッシュ蒸留を含む。フラッシュ蒸留は、ハロゲン化アルコキシエタンよりも著しく揮発性の高い不純物を除去するのに効果的である。これらの不純物には、例えば、未反応のアルカノールおよび/または未反応の前駆体化合物が含まれ得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離は、その後の蒸留によって行われる。
【0094】
例えば、精製ハロゲン化アルコキシエタンの単離は、まずフラッシュ蒸留を行ってハロゲン化アルコキシエタンに富む塔底液を得、続いて当該塔底液を蒸留して単離精製ハロゲン化アルコキシエタンを得ることで行われ得る。フラッシュ蒸留は、ハロゲン化アルコキシエタンよりも著しく揮発性の高い不純物を除去するのに効果的である。これらの不純物には、例えば、未反応のアルカノールおよび/または未反応の前駆体化合物が含まれ得る。当該フラッシュ蒸留は、ステップ(c)から得られるハロゲン化アルコキシエタンに富んだ混合物に対して実施され得る。例えば、当該フラッシュ蒸留は、ステップ(c)で得られた混合物を相分離することによって得られた、乾燥したハロゲン化アルコキシエタンに富む有機相に対して実施され得る。続いて、ハロゲン化アルコキシエタンに富む塔底液を蒸留すると、単離された精製ハロゲン化アルコキシエタンが容易に得られる。
【0095】
当業者であれば、精製手順のステップ(d)における精製されたハロゲン化アルコキシエタンの単離がその後の蒸留によって行われる場合に、適切な蒸留条件を容易に特定することが可能であろう。例えば、フラッシュ蒸留は、ハロゲン化アルコキシエタンの沸点より低い温度で行われ得るが、揮発性の不純物がより優先的に蒸発するのに十分な温度である。いくつかの実施形態では、フラッシュ蒸留は、約30℃~約90℃、例えば約35℃~約60℃の温度で行われる。ハロゲン化アルコキシエタンに富む塔底液のその後の蒸留は、ハロゲン化アルコキシエタンの沸点を超える温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、蒸留は100℃を超える温度で行われる。
【0096】
一連のフラッシュ蒸留および分別蒸留による精製ハロゲン化アルコキシエタンの単離の実施形態は、ClHC-CFを本明細書に記載の種類の塩基およびメタノールと反応させることによって得られるメトキシフルランの単離に特に有利である。
【0097】
ステップ(d)の実施によって、医薬品グレードのハロゲン化アルコキシエタンを得ることができるため、本発明は、ハロゲン化アルコキシエタンを精製するためのバッチ合成手順から得られる反応混合物から一般式XClHC-CFORのハロゲン化アルコキシエタンを精製する方法であって、Xは、-Clまたは-Fであり、ORは、C1-4アルコキシであり、
(a)アミンおよび酸のうちの1つを反応混合物に添加するステップと、
(b)ステップ(a)で得られた混合物に極性液体を添加して相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(c)ステップ(a)で使用されなかったアミンおよび酸の他方をステップ(b)で得られた有機相に添加するステップと、
(d)精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む方法を提供するともいえ得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される種類の一連のステップを含む。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態では、精製手順は、
(i)アミンを反応混合物に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)酸をステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
(iv)精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0100】
したがって、いくつかの代替実施形態では、精製手順は、
(i)酸を反応混合物に添加するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた混合物に極性液体を添加して相分離ならびに極性相および別個の有機相の形成を誘導し、有機相は、ハロゲン化アルコキシエタンを含有する、ステップと、
(iii)アミンをステップ(ii)で得られた有機相に添加するステップと、
(iv)精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0101】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、
(i)ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られた粗反応混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた有機相を分離するステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られた有機相にアミンおよび酸のうちの1つを添加するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(v)ステップ(iv)で得られた有機相を分離するステップと、
(vi)ステップ(iii)で使用されなかったアミンおよび酸の他方を、ステップ(v)で得られた有機相に添加するステップと、
(vii)ステップ(vi)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離を誘導ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含む別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(viii)ステップ(vii)で得られた有機相を分離するステップと、
(ix)ステップ(viii)で得られた有機相を乾燥させるステップと、
(x)ステップ(ix)で得られた有機相に対してフラッシュ蒸留を行って、ハロゲン化アルコキシエタンに富む塔底液を得るステップと、
(xi)ステップ(x)で得られたハロゲン化アルコキシエタンに富む塔底液を分別蒸留によって蒸留し、それによって精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0102】
前段落に列挙されたステップ(i)~(xi)のすべての化合物およびプロセス条件は、本明細書に記載される種類の化合物およびプロセス条件であることが理解されるであろう。一連の当該ステップ(i)~(xi)を有する実施形態は、ClHC-CFを本明細書に記載の種類の塩基およびメタノールと反応させることによって得られるメトキシフルランの精製に特に有利である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、
(i)ハロゲン化アルコキシエタンを製造するためのバッチ合成手順から得られた粗反応混合物に極性液体を添加して、極性相とハロゲン化アルコキシエタンを含む別個の有機相との間の相分離を誘導し、ステップと、
(ii)ステップ(i)で得られた有機相を分離するステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られた有機相にアミンおよび酸のうちの1つを添加するステップと、
(iv)ステップ(iii)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含有する別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(v)ステップ(iv)で得られた有機相を分離するステップと、
(vi)ステップ(iii)で使用されなかったアミンおよび酸の他方を、ステップ(v)で得られた有機相に添加するステップと、
(vii)ステップ(vi)で得られた混合物に極性液体を添加して、相分離を誘導ならびに極性相およびハロゲン化アルコキシエタンを含む別個の有機相の形成を誘導するステップと、
(viii)ステップ(vii)で得られた有機相を分離するステップと、
(ix)ステップ(viii)で得られた有機相を乾燥させるステップと、
(x)ステップ(ix)で得られた有機相を分別蒸留によって蒸留し、それによって精製されたハロゲン化アルコキシエタンを単離するステップと、
を含む。
【0104】
前段落に列挙されたステップ(i)~(x)のすべての化合物およびプロセス条件は、本明細書に記載される種類の化合物およびプロセス条件であることが理解されるであろう。一連の当該ステップ(i)~(x)を有する実施形態は、ClC=CFを本明細書に記載の種類の塩基およびメタノールと反応させることによって得られるメトキシフルランの精製に特に有利である。
【0105】
次に、本発明の特定の実施形態を、下記の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例
【0106】
[実施例1]
メトキシフルランを、バッチ合成手順を使用してハロゲン化アルコキシエタンとして合成した。メトキシフルランを含有する粗混合物を、ClCHCF(HCFC-123、またはSUVA-123)とナトリウムメトキシド(NaOCH)のメタノール中の溶液を120℃の温度で反応させることによって得た。水を加え、得られた二相混合物をさらに30分間撹拌した。粗生成物を下層として分離し、乾燥させて透明な液体(粗製物A)を得た。メトキシフルランを含有する当該粗バッチ反応混合物(粗製物A)の組成を表1に示す。
【0107】
続いて、約473ml(672g)の粗製物Aを、磁気撹拌装置および周囲温度(20℃で記録)で温度計を取り付けた1Lフラスコに移した。50mlのメタンスルホン酸(MSA)を、撹拌しながら約3分間かけて混合物にゆっくりと加えた。この添加時間中に温度が20℃から35℃に上昇することが観察された。得られた混合物を60分間撹拌したままにした。続いて、水400mlを加え、得られた二相混合物をさらに30分間撹拌した。
【0108】
次いで、二相混合物を分液漏斗に移し、それによってメトキシフルランを含有する有機層を水層から除去した。有機層を分液フラスコに戻し、さらに400mlの水で洗浄し、相を分離し、有機相を1Lフラスコに戻した。当該有機相の組成を表1に示す(粗製物B)。この段階では、メトキシフルランに富む有機相(粗製物B)中にはメトキシエテン(ME)またはオルトエステル(OE)の不純物は検出されなかった。ただし、4.57%のジクロロ酢酸メチル(MDA)不純物が検出された。
【0109】
MDAを除去するために、粗製物B(メトキシフルランに富む有機相)をエタノールアミンで処理した。50mlのエタノールアミンを、周囲温度で撹拌しながら約1分間かけて粗製物Bにゆっくりと添加した。得られた混合物を約30分間撹拌したままにした。その後、水400mlを加えて撹拌を止め、有機層と水層とを層分離した。次いで、得られた懸濁液を分液漏斗に移し、有機層を水層から除去した。分離した有機相(こちらもまたメトキシフルランに富む、粗製物C)を乾燥剤である硫酸マグネシウムで乾燥させ、純度を調べるためにサンプリングした。最終体積は400ml(567g、精製効率84%に基づくモル収量、および純度74%超)であった。粗製物Cの組成を表1に示す。
【0110】
続いて、低沸点不純物(メタノールおよびHCFC-123など)をフラッシュ蒸留によって粗製物Cから除去した。約400gの粗製物Cを、短経路蒸留カラム(長さ約300mm)を備えた500ml真空フラスコに移し、次にコンデンサーカラムおよび500ml留分収集フラスコに接続した。次いで、メトキシフルランに富む粗製物Cを、蒸留物が凝縮器上で凝縮し収集フラスコに収集されるのが観察されるまで(バッチ温度約35~45℃)、大気圧下で徐々に加熱した。蒸留物の速度が遅くなるにつれて、蒸留物が観察されなくなるまで、バッチの温度を徐々に60℃まで上昇させた。これを、フラスコが熱から取り除かれるまで約2時間放置した。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析は、すべてのメタノールおよびHCFC-123がフラスコから除去されたことを示し、フラッシュ蒸留塔底物として89%を超える純度で311.77gのメトキシフルランを得た。フラッシュ蒸留後にフラスコ内に残る当該フラッシュ蒸留塔底物の組成を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
フラッシュ蒸留塔底物をさらに蒸留することによって、さらに高純度のメトキシフルランが得られた。追加の蒸留は、長経路分別蒸留塔(長さ約500mm、メトキシフルランの沸点より高い約104℃の高温を使用した)を使用したこと以外は上記のように実施した。約50mlの最初の蒸留留分を最初に集めて廃棄し、残りの蒸留物を4時間かけて集めて、245.10gの約99.9%純度のメトキシフルランを得た。その最終蒸留物の組成を表1に示す。
【0113】
本明細書で使用される場合、質量、重量、時間、体積、濃度、パーセンテージなどの値または量を指すときの「約」という用語は、特定の数値から、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、いくつかの実施形態では±0.1%の、変動を包含し得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「室温」という表現は、約20℃~25℃の温度範囲を包含し、平均約23℃であると理解されたい。
【0115】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、文脈上別段の必要がない限り、「備える」という語、および「含む」および「備えている」などの変形は、記載された整数、ステップまたは整数の群を含むことを意味するものと理解されるであろう。ただし、他の整数、ステップ、または整数またはステップの群は除外されない。
【0116】
本明細書における以前の出版物(またはそこから派生した情報)、または既知の事項への言及は、その以前の出版物(またはそれに由来する情報)の承認または確認、あるいは何らかの形の示唆ではなく、また、そのように解釈されるべきではなく、または既知の事項は、本明細書が関連する分野における共通の一般知識の一部を形成する。
図1
図2
【国際調査報告】