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特表2024-521517関節軟骨の形成のための外部可動化手段を含む植込み型デバイス
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  • 特表-関節軟骨の形成のための外部可動化手段を含む植込み型デバイス 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】関節軟骨の形成のための外部可動化手段を含む植込み型デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20240524BHJP
   A61F 2/36 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61F2/38
A61F2/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577978
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 FR2022051169
(87)【国際公開番号】W WO2022263778
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2106453
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473578
【氏名又は名称】パランジェン
【氏名又は名称原語表記】PALINGEN
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ、プルキエ
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ、ムココ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA04
4C097AA07
4C097BB01
4C097CC03
4C097DD01
(57)【要約】
本発明は、関節軟骨の生成を目的とする除去可能な植込み型デバイスであって、生体適合性材料で作製される第1の支持部(2)と、生体適合性材料で作製され、第1の支持部(2)に移動可能に取り付けられる第2の支持部(3)であって、第1の支持部(2)および第2の支持部(3)が、それらの間に、細胞発現空間(40)を形成する腔を画定し、この細胞発現空間(40)は、細胞発現空間内で増殖する骨軟骨形成原細胞を受容するために提供される、第2の支持部(3)と、細胞発現空間の内側にせん断を発生させるために、第2の支持部(3)を第1の支持部(2)に対して移動させるように構成される操作可能な外部可動化手段(5A、5B)と、を含む、除去可能な植込み型デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節軟骨の生成を目的とする除去可能な植込み型デバイスであって、
・生体適合性材料で作製される第1の支持部(2)と、
・生体適合性材料で作製され、前記第1の支持部(2)に移動可能に取り付けられる第2の支持部(3)であって、前記第1の支持部(2)および前記第2の支持部(3)が、それらの間に、細胞発現空間(40)を形成する腔を画定し、前記細胞発現空間(40)が、前記細胞発現空間(40)内で増殖する骨軟骨形成原細胞を受容することが意図される、前記第2の支持部(3)と、
・前記細胞発現空間(40)の内側にせん断を発生させるために、前記第2の支持部(3)を前記第1の支持部(2)に対して移動させるように構成される操作可能な外部可動化手段(5A、5B)と、
を含む、除去可能な植込み型デバイス。
【請求項2】
前記第1の支持部(2)および前記第2の支持部のうちの少なくとも一方は、底支持壁を含み、および前記底支持壁から延びる2つの側面支持壁(28)を含み、前記2つの側面支持壁(28)が前記細胞発現空間(40)を定める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、前記第1の支持部(2)および前記第2の支持部(3)によって形成される閉じたハウジングを含み、前記細胞発現空間(40)が前記ハウジングの内側に画定される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の支持部(2)は、前記第2の支持部(3)に対向する内側面(26)を含み、前記第2の支持部(3)は、前記内側面(26)に沿って前記第1の支持部(2)に対して摺動するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の支持部(3)は、前記内側面(26)の延長表面(P)に平行の方向に前記第1の支持部(2)に対して並進で移動可能に取り付けられる、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第2の支持部(3)は、回転軸(R)の周りで前記第1の支持部(2)に対して回転可能に取り付けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の支持部および/または前記第2の支持部(3)のうちの少なくとも一方は、前記回転軸(R)の周りに延びる円筒側面(38)を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記支持部(3)は、前記側面(38)に略垂直の基部(39)をさらに含み、前記外部可動化手段(5)は、前記基部(39)と一緒に回転することを余儀なくされ、前記回転軸(R)の周りで回転可能である、ハンドル(54)を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記外部可動化手段は、前記第2の支持部(3)に取り付けられ、前記第2の支持部(3)をけん引するように構成される、少なくとも1つの可動化ひも(5A)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記可動化ひも(5A)は、前記第2の支持部(3)の第1の外側面(30)に取り付けられ、前記デバイスは、前記第2の支持部(3)の第2の外側面(32)に取り付けられる追加の可動化リンク(5B)をさらに含み、前記第2の外側面(32)は、前記第1の外側面(30)の反対側である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記可動化ひも(5A、5B)は、半剛性より糸、好ましくは、高分子材料で作製されるより糸を含む、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、前記第1の支持部(2)に対する前記第2の支持部(3)の運動を誘導するように構成されるスライド(6)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の支持部(2)および/または前記第2の支持部(3)のうちの少なくとも一方は、格子(42)を含み、前記格子(42)は、前記デバイスの内側に開く複数の細胞成長腔を画定する、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1の支持部(2)および/または前記第2の支持部(3)のうちの少なくとも一方は、前記支持部に固定される剛性化要素(7)のネットワークを含み、前記剛性化要素(7)におけるせん断に対する剛性は、前記細胞発現空間(40)の中心領域におけるせん断に対する剛性よりも真に大きい、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
軟骨細胞の形成のためのインプラントであって、
・請求項1~14のいずれか一項に記載の植込み型デバイス(1)と、
・前記植込み型デバイスの第1の支持部(2)と前記植込み型デバイスの第2の支持部(3)との間に介在される細胞修復マトリックス(4)であって、前記細胞修復マトリックス(4)は、前記植込み型デバイスの細胞発現空間(40)内で増殖することが意図される大量の骨軟骨形成原細胞を含む、前記細胞修復マトリックス(4)と、
を含む、インプラント。
【請求項16】
前記細胞修復マトリックス(4)は、少なくとも1つの骨膜移植片、好ましくは、血管柄付き骨膜移植片を含む、請求項15に記載のインプラント。
【請求項17】
前記骨膜移植片は、脛骨の骨膜に由来する、請求項16に記載のインプラント。
【請求項18】
前記インプラントは、個人の筋肉内領域に除去可能に移植されるように構成され、および/または個人の皮下領域に除去可能に移植されるように構成される、請求項15~17のいずれか一項に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の悪化した関節軟骨の形態に好ましくは好適な、悪化した軟骨の上記区域に取って代わるために関節軟骨の形成を誘発することが意図される植込み型デバイスに関する。
【0002】
本発明は、特に、関節軟骨の特定の細胞層の形成を実施するのに好適な植込み型デバイスに関する。植込み型デバイスは、細胞修復マトリックスと組み合わされる。修復マトリックスは、好ましくは、骨膜移植片を含む。
【背景技術】
【0003】
関節軟骨損傷(または“軟骨疾患”)は、1つまたは複数の軟骨面の崩壊を呈し、これにより骨表面の保護および関節の機械的応力の制振のためのそれらの機械的特性を失う。ヒトにおける未治療の軟骨疾患は、進行した骨関節炎へと悪化して、著しい慢性痛を引き起こし得、特に高齢患者においては非常に重症になり得る。
【0004】
膝の例では、自然歩行またはかがみ運動中、大腿骨と脛骨との間の膝関節にかかる圧力は非常に大きい。関節軟骨の可動性および制振機能が維持されない場合、これらの自然運動は痛みを伴うようになる。
【0005】
関節軟骨のそのような病変は、互いに対向する2つの関節面のうちの一方にのみ位置し得るが、互いに対向する両方の関節軟骨面が罹患することもあり得る。関節病変の原因は、年齢と関係した軟骨の摩耗(骨関節炎)、または、特に若年者における、衝撃もしくは事故に関係した関節外傷のいずれかにある。現在の医業においては、軟骨疾患の重症度は、ICRS機能スコアによって臨床的に、および、ICRSグレードによって、またはアウターブリッジ分類によって、放射線学的に(MRI)、評価される。
【0006】
知られている先行技術は、軟骨疾患を患う患者のための多数の治療手法を含む。骨関節炎の初期型においては、全身投与または局所注射による抗炎症作用に基づいた治療が提案される。関節内注射、例えば、ヒアルロン酸の注射(“関節内補充療法”と称される)または血小板を強化した血漿の注射も知られている。デブリードマンによる関節洗浄、Pridieマイクロドリル技術、微小破壊技術、または膠原およびヒドロキシアパタイトからなる3次元マトリックスの使用など、関節鏡検査下での比較的低侵襲の治療法も提案され得る。
【0007】
しかしながら、上述の手法は、多くの場合は臨床レベルでは一時的である結果、および新規軟骨の形成の不確定さをもたらす。組織学的には、このやり方で形成される軟骨は、品質が乏しい。
【0008】
別の知られている手法は、1つまたは複数の健全な骨軟骨区域を、治療対象の個人の関節から、同じ個人における治療対象の関節の区域に(“骨軟骨自己移植術”により)直接的に移植することにある。この場合、骨軟骨芯は、例えば、治療対象の関節の非荷重負荷領域から収集され、修復を必要とする区域へ移される。
【0009】
図1aは、ヒト個人の膝関節を治療するための、大腿顆における骨軟骨自己移植術を示す(Reprise du sport apres autogreffe osteochondrale en mosaique des condyles femoraux: 25 cas a 9 ans de recul moyen, Cognault, Seurat, Chaussard, Ionescu, Saragaglia, Revue de chirurgie orthopedique et traumatologique 101(2015) pages 215-220)。
【0010】
図1aは、「骨軟骨移植術(mosaicplasty)」技術を例証する。同じ個人から事前に取られた複数の芯13(この場合は4つの芯)が、損傷した関節面内にモザイク配置で移植される。各芯13は、軟骨面、および軟骨下骨の下層厚を含む。芯13は、好ましくは、およそ7または8ミリメートルの直径およびおよそ15ミリメートルの長さを有する。
【0011】
しかしながら、芯の収集に好適な、“ドナー”部位の、言い換えると、非荷重負荷関節領域の数は、限られる。したがって、このような骨軟骨移植術による自己移植の技術は、限られた関節面病変(典型的には3平方センチメートル未満)の治療に取り組むものである。
【0012】
“骨軟骨同種移植”と呼ばれる別の手法は、治療対象の個人とは異なる別の個人からの健全な骨軟骨区域に関与する。この技術は、大量の骨軟骨移植片を使用する、より大きな表面関節病変の治療に好適である。
【0013】
しかしながら、この技術は、骨軟骨収集が死後12時間未満のヒトの遺体に対して行われなければならないことから、現行では実施が困難である。
【0014】
図1bは、例えば関節骨軟骨同種移植を目的とした、骨軟骨芯13bisの例を示す。収集後および患者への移植前の、芯13bisが、分離して示される。芯13bisの長さは、この場合、およそ4センチメートルである。
【0015】
図1aおよび図1bに関連して上に提示される手法の限界をふまえて、ヒトにおける進行した骨関節炎の場合、関節形成術(人工関節の移植)を行うことが提案されている。このやり方で頻繁に治療される関節としては、特に、股および膝関節が挙げられる。膝の進行した軟骨疾患の場合、最終的な単顆または全人工膝関節は、頻繁に、麻酔下で手術により移植され、永久的に固定される。
【0016】
公開番号WO2005/016175A2の国際特許出願は、関節の期待される機械的特性を復元するために、罹患した関節腔内に直接移植される、剛性の生体適合性材料で設計される最終的な人工関節を説明する。しかしながら、そのような永久人工関節の場合、関節の長期再教育が実施されなければならない。理学療法セッションおよび対症療法を含む、専門のセンターにおけるかなりの治療が、多くの場合必要である。
【0017】
人工関節の構成要素の機械的摩耗による、および/または補綴材料の感染による、経時的な人工関節の機械的機能性の損失の深刻なリスクも存在する。
【0018】
上記から、現状では、現在の外科診療および手法は、関節軟骨の、十分な品質および耐久性の完全に満足のいく修復を可能にしないこと、ならびに/または、植込み型デバイスの感染および/もしくは機械的摩耗のリスクを提示する、ということが言える。加えて、既知の先行技術からのこれらの治療のうちの一部は、広範囲に及ぶ医療および手術療法を必要とする。
【0019】
したがって、既知の手法は、軟骨病変と関係した関節痛および関節可動性障害の治療に関する公衆衛生課題に適切に応えていない。
【発明の概要】
【0020】
したがって、特に、膝(大腿脛骨、または膝蓋大腿関節)における、または人間の股関節において、関節の悪化した軟骨の領域に取って代わるために、関節軟骨の新規区域の生成を促進することができる、植込み型デバイスが必要とされている。
【0021】
望ましいデバイスは、関節軟骨の区域および軟骨下骨の層を有利には含む新規骨軟骨組織の形成を可能にしなければならない。
【0022】
良好な品質の骨軟骨組織を獲得するために、新たに形成された軟骨は、関節軟骨の軟骨細胞の異なる層(表層、中間層、放射層、および石灰化軟骨層)特徴を含まなければならない。関節軟骨のこれらの異なる機能層は、構造および細胞組成に関して、以下の出版物において説明されている:Composition and Structure of Articular Cartilage: A Template for Tissue Repair, Poole, Kojima, Yasuda, Mwale, Kobayashi, Laverty, October 2001, Clinical Orthopaedics and Related Research 391(391): S26-S33。
【0023】
望ましいデバイスは、優れた手術操作性を有さなければならず、その移植のために過度な医療介入を必要としない。好ましくは、デバイスは、移植が容易でありながら、骨軟骨自己移植術技術と比較してより大きい表面関節領域の修復を可能にしなければならない。
【0024】
好ましくは、望ましいデバイスは、軟骨の新規区域の形成を誘発しなければならず、その幾何形状は、治療対象の関節の特定の形態によく適している。修復された軟骨の表面は、本来の軟骨の幾何形状に非常に近い幾何形状を有することが望ましく、これにより、最適動作のための幾何基準を満たすこと、および治療後の患者の軟骨の新たな摩耗を回避することが可能になる。
【0025】
副次的目的は、損傷した軟骨の2つの領域における、新たに形成された軟骨の部分の生成および埋入を、同じ負傷した関節の2つの反対面で可能にするデバイスを提供することである。
【0026】
上で述べたニーズに応えるために、本発明の第1の態様は、関節軟骨の生成を目的とする除去可能な植込み型デバイスであって、
生体適合性材料で作製される第1の支持部と、
生体適合性材料で作製され、第1の支持部に移動可能に取り付けられる第2の支持部であって、第1の支持部および第2の支持部が、それらの間に、細胞発現空間を形成する腔を画定し、細胞発現空間は細胞発現空間内で増殖する骨軟骨形成原細胞を受容するために提供される、第2の支持部と、
細胞発現空間の内側にせん断を発生させるために、第2の支持部を第1の支持部に対して移動させるように構成される操作可能な外部可動化手段と、を含む、除去可能な植込み型デバイス、に関する。
【0027】
上に規定される植込み型デバイスは、治療対象の関節とは好ましくは異なる解剖学的領域に移植された直後に、自己骨軟骨組織の形成を可能にすることが意図される。
【0028】
この植込み型デバイスは、除去可能であり、治療対象の関節とは好ましくは分離される、細胞受容空間、好ましくは、個人の筋肉内領域または皮下領域に、一時的に移植される。
【0029】
そのようなデバイスの1つの利点は、デバイスの外部可動化フェーズの終わりに、修復される必要のある軟骨の表面に一致する幾何形状を有する骨軟骨組織の形成を可能にすることである。形成される組織は、次いで、その生成に役立った生体適合性支持体から除去され、治療対象の関節に移植され得る。
【0030】
形成される骨軟骨組織は、例えば、上で述べた自己移植または同種移植技術と同様の様式で、治療対象の関節に移植される。
【0031】
任意選択的に、および非限定的な様式で、この第1の態様による植込み型デバイスは、以下の特徴を、単独で、または任意の技術的に実現可能な組み合わせで、有し得る。
-デバイスは、第1の支持部および第2の支持部によって形成される閉じたハウジングを含み、細胞発現空間がハウジングの内側に画定される。
-第1の支持部は、第2の支持部に対向する内側面を含み、第2の支持部は、内側面に沿って第1の支持部に対して摺動するように構成される。
-第2の支持部は、内側面の延長表面に平行の方向に第1の支持部に対して並進で移動可能に取り付けられる。
-第2の支持部は、回転軸の周りで第1の支持部に対して回転可能に取り付けられる。
-第1の支持部および/または第2の支持部からの少なくとも一方は、回転軸の周りに延びる円筒側面を含む。
-支持部は、側面に略垂直の基部をさらに含み、外部可動化手段は、基部と一緒に回転することを余儀なくされ、回転軸の周りを回転可能である、ハンドルを含む。
-外部可動化手段は、第2の支持部に取り付けられ、第2の支持部をけん引するように構成される、少なくとも1つの可動化ひもを含む。
-可動化ひもは、第2の支持部の第1の外側面に取り付けられる。
-デバイスは、第2の支持部の第2の外側面に取り付けられる追加の可動化リンクを含み、第2の外側面は第1の外側面の反対側である。
-可動化ひもは、半剛性より糸、好ましくは、高分子材料で作製されるより糸を含む。
-デバイスは、第1の支持部に対する第2の支持部の運動を誘導するように構成されるスライドを含む。
-第1の支持部および/または第2の支持部からの少なくとも一方は、格子を含む。
-格子は、デバイスの内側に開く複数の細胞成長腔を画定する。
-第1の支持部および/または第2の支持部からの少なくとも一方は、上記支持部に固定される剛性化要素のネットワークを含む。
-剛性化要素におけるせん断に対する剛性は、細胞発現空間の中心領域におけるせん断に対する剛性よりも真に大きい。
【0032】
本発明の第2の態様は、軟骨細胞の形成のためのインプラントであって、
上に規定される植込み型デバイスと、
植込み型デバイスの第1の支持部と植込み型デバイスの第2の支持部との間に介在される細胞修復マトリックスであって、細胞修復マトリックスは、植込み型デバイスの細胞発現空間内で増殖することが意図される大量の骨軟骨形成原細胞を含む、細胞修復マトリックスと、を含む、インプラントに関する。
【0033】
任意選択的に、および非限定的な様式で、この第2の態様によるインプラントは、以下の特徴を、単独で、または任意の技術的に実現可能な組み合わせで、有し得る。
-細胞修復マトリックスは、少なくとも1つの骨膜移植片を含む。
-骨膜移植片は、血管柄付きである。
-骨膜移植片は、脛骨の骨膜に由来する。
-インプラントは、個人の筋肉内領域に除去可能に移植されるように構成される。
-インプラントは、個人の皮下領域に除去可能に移植されるように構成される。
【0034】
インプラントの他の特徴、目的、および利点は、すでに説明された図1aおよび図1bに加えて、完全に例証として提供され、限定ではなく、添付の図面を参照して読まれるべきである、以下の説明から明らかになるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】ヒト個人の膝関節を治療するための、大腿顆における骨軟骨自己移植術を示す図である。
図1b】関節骨軟骨同種移植を目的とした、骨軟骨芯13bisの例を示す図である。
図2】間葉系幹細胞にかけられる機械的応力に応じて、骨または線維または軟骨関節組織へ間葉系幹細胞を分化させるための3つの経路を概略的に例証する図である。
図3】筋肉内領域における本発明の例による移植、次いで、新規軟骨の形成を促進するために上記インプラントの外部リンクによる可動化、次いで、デバイスの外植、および生成した骨軟骨構造の受容者関節への移行という、複数の連続した移植ステップを概略的に例証する図である。
図4a】第1の例示的な実施形態による植込み型デバイスの上からの概略透視図であって、デバイスが平行6面体ハウジングの形態を有し、デバイスの第1の部分およびデバイスの第2の部分が互いと別個に表され、この場合、骨膜茎移植片が第1の部分に取り付けられる、図である。
図4b】閉位置で見た同じ植込み型デバイスを例証する図であって、第1の部分および第2の部分は、一方が他方の上に組み合わされている、図である。
図5】骨膜移植片が細胞発現空間内に配置される間の、図4bのデバイスの(図4bに示される平面A-Aに沿った)概略断面図である。
図6】第1の支持部分および第2の支持部分の相対運動、ならびに骨軟骨形成原細胞の発現を例証する、図4bのデバイスの(図4aに示される平面B-Bに沿った)縦断面図である。
図7】一方が凸状であり他方が凹状である、デバイスの内側の骨軟骨組織の2つの部分の生成を伴う、上記植込み型デバイスの機械可動化後の図4bのデバイスの概略断面図である。
図8】第1の支持部の、第2の支持部からの、および2つの支持部から抽出される新たに形成された骨軟骨組織の2つの部分からの分離を概略的に例証する図であって、植込み型デバイスは図4aおよび4bの例と一致する、図である。
図9】第2の例示的な実施形態による植込み型デバイスの概略断面図であって、デバイスは、曲線を伴う平行6面体ハウジングの形態を有し、上方要素において凹状表面を有する骨軟骨組織の単一部分を生成することが意図される、図である。
図10】第3の例示的な実施形態による植込み型デバイスの概略縦断面図であって、デバイスは、その移植時に、円筒ハウジングの概形を有し、筋肉内に移植され、上記デバイスは、互いに向かい合う、平坦な形状を有する新たに形成された骨軟骨組織の2つの部分を生成することが意図される、図である。
図11】骨軟骨形成原細胞が成長している間の、デバイスの機械可動化中の図10のデバイスの概略縦断面図である。
図12】第4の例示的な実施形態による植込み型デバイスの概略縦断面図であって、デバイスが準円筒ハウジングの概形を有し、その一方の基部が凸状であり、他方の基部が凹状であり、上記デバイスが、下方要素において凸状表面を有する新たに形成された骨軟骨組織の単一部分を生成することが意図される、図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に説明される植込み型デバイスの例は、好ましくは、特に人間の、膝(大腿脛骨、または膝蓋大腿関節)、または股関節に、その後移植されることになる新規軟骨の形成を目的とする。
【0037】
しかしながら、以下に説明される植込み型デバイスの様々な例は、ヒトまたは動物の身体の任意の関節面のための軟骨の新規区域の生成を促進するために、適応可能である。
【0038】
以下の例は、植込み型デバイスに提供される空間の内側で、骨軟骨形成原細胞を生成するのに好適な修復マトリックスとしての骨膜移植片の使用を提供する。以下に見られるように、使用される骨膜移植片は、好ましくは、同じ個人から収集され、血管柄付きである場合とそうでない場合とがある。
【0039】
しかしながら、組織工学において知られている他のタイプの細胞修復マトリックスが使用され得るということに留意されたい。修復マトリックスは、タンパク質、成長因子など、成長および軟骨細胞への定方向性分化を助ける物質または組成物と組み合わされる場合とそうでない場合とがある。
【0040】
添付の図のすべてにおいて、および以下の説明の全体を通して、同様の要素には、同一の英数字参照符号が付与される。
【0041】
新規関節軟骨の形成に関する一般原理
関節軟骨は、関節内に存在する可撓性の結合的組織であり、骨の端を保護する、骨端にかかる負荷の応力を弱める、および対向する関節面の調和した摺動の、機械的機能を確実にする。
【0042】
関節軟骨は、主に、軟骨細胞と呼ばれる細胞、および細胞外マトリックス(膠原、グリコサミノグリカン)からなる。軟骨細胞の機能は、軟骨組織の合成および維持である。それらは、各々が1つまたは複数の軟骨細胞を含む区画内に位置する。これらの区画は、軟骨芽細胞と呼ばれる。軟骨の区域は、軟骨に影響を及ぼす様々な病理によって悪化され得る。関節軟骨の自然修復は、非常に非効率である。軟骨性病変の発現は、軟骨ひび、軟骨の厚さの低減、および軟骨下骨の病変を合併する。このような発現は、軟骨下骨の露出を伴う軟骨の完全消失につながり得る(象牙質化)。
【0043】
関節軟骨は、特に、長骨の骨端表面に存在する。軟骨細胞は、成人では関節軟骨の最上表層に位置する幹細胞の細胞分化に由来する。しかしながら、軟骨細胞の新生は、非常に遅く、この組織は、修復が非常に困難である。
【0044】
長骨は、軟骨領域を除いて、“骨膜”と呼ばれる膜表面で覆われ、骨折の場合に骨修復を確実にする。
【0045】
骨膜は、特に、骨格組織のための修復幹細胞(軟骨形成間葉系幹細胞)が豊富である。骨膜の組成および役割の詳細な説明については、以下の出版物を参照することができる:Periosteum contains skeletal stem cells with high bone regenerative potential controlled by Periostin, Duchamp de Lageneste et al., Nature Communications, February 2018 22; 9(1): 773。
【0046】
身体が関節面の損傷した領域において関節軟骨を自発的に修復することの困難さに直面して、ここで提案されるデバイスは、悪化した領域において、本来の関節軟骨(悪化前の最初の状態)と品質的および幾何学的に等価である骨軟骨組織を再構築することを目指す。骨軟骨組織の再構築は、(典型的には、以下に見られるように、自己骨膜移植片からの)骨軟骨形成原細胞によって実現される。
【0047】
異なるタイプの結合的組織への間葉系幹細胞の分化は、特に、間葉系幹細胞の環境内での機械的応力に依存する。これらの応力の研究は、細胞分化経路に対する局所的な機械的因子の影響を研究する“メカノバイオロジ”のより一般的な文脈に入る。
【0048】
例証として、添付の図2は、間葉系幹細胞の分化の3つの経路A、B、およびCを示す。
【0049】
大量の依然として未成熟の骨軟骨形成原細胞10から始めて、細胞体積にかかる機械的応力を通じて、分化経路、したがって、新たに形成された組織の表現型および生来の機能性に影響を与えることが可能である。
【0050】
“経路A”では、細胞は、“自由”であり、機械的応力(または最小応力)はかからない。骨軟骨形成原細胞は、次いで、骨細胞11A(bone cell/osteocyte)を優先的に生成する。この経路Aの臨床的な例証は、ギブスによって、または整形外科アセンブリによって正しく安定化される骨折部位の未来である。骨膜または骨髄に由来する骨軟骨形成原細胞が早期に存在する骨折部位(骨折仮骨)は、(一般には軟骨内軟骨状態を通過した後)骨へと分化する。
【0051】
“経路B”では、伸縮力FBが、好ましい方向にかけられる。次いで、線維組織11B(靭帯を構成する組織)の形成が見られる。この経路Bの臨床的な例証は、例えば、腓骨から取られる骨膜の皮弁による足首の外側靱帯の外科的再構築である。
【0052】
最後に、“経路C”では、せん断力FCがかけられ、骨軟骨形成原細胞の体積の上方部は左に移動され、上記体積の下方部は右に移動される。出願者の知る限りでは、骨軟骨形成を促進するこの分化経路Cは、自然にも、内科外科診療においても、現在まで取り出されていない。故に、提案されたデバイスは、関節軟骨の区域を最終的に獲得するために、軟骨細胞の形成に向けて骨軟骨形成原細胞の定方向性分化を促進する、細胞体積に印加されるせん断運動に依拠する。
【0053】
経路Cを介した骨軟骨形成原細胞の定方向性分化の後、この場合は、へき開面に沿って一方の側から他方の側に延びる新規軟骨面11Cが獲得される。
【0054】
以下に説明される植込み型デバイスの様々な例は、上述の経路Cと同様の細胞分化経路に沿って未成熟の骨軟骨形成原細胞の定方向性分化を推し進めることを目指す。
【0055】
以下に見られるように、本発明の植込み型デバイスは、未成熟の骨軟骨形成原細胞が増殖を誘発される細胞発現空間を画定する。典型的には(好ましくは自己)骨膜移植片を含む修復マトリックスは、この空間に配置される。機械的応力が、この空間の内側に、外部可動化によって生成され、理想的には各運動により再現可能である、正確なへき開面における細胞修復マトリックスのせん断を発生させる。
【0056】
骨軟骨形成原細胞の発現および上記細胞の軟骨細胞への定方向性分化(経路C)を確実にするため、ここでは、植込み型デバイスを、一時的に、治療対象の個人の身体内に直接的に、この細胞発現にとって好ましい組織空間に埋入することが提案される。
【0057】
選択された空間(例えば、筋肉領域または皮下領域)は、骨軟骨形成原細胞の発現を促進するために、植込み型デバイスの内側に配置された細胞修復マトリックスに栄養を補給する。特にそれは、細胞修復マトリックスが非血管化骨膜移植片を含む場合に細胞修復マトリックスに栄養を補給することができる環境にデバイスを移植することに関係する。
【0058】
非常に好ましくは、以下に説明される例のいずれか1つに一致する植込み型デバイスは、最初、治療対象の関節、またはその関節の近くに移植されない。上記植込み型デバイスは、一時的に、個人の身体の別の領域に埋入されることが提案される。
【0059】
骨軟骨形成原細胞の成長および定方向性分化フェーズ中、上記植込み型デバイスを個人の筋肉内領域、または個人の皮下領域に除去可能に埋入することが非常に有利である。
【0060】
筋肉内領域は、新規骨軟骨形成原細胞の成長に特に好ましい生物環境を有する。以下の出版物は、筋肉内領域の環境と骨軟骨形成原細胞の成長との相互作用に関して引用され得る:The potential role of muscle in bone repair, Liu, Schindeler, Little, J Musculoskelet Neuronal Interact 2010; 10(1) pp.71-76,また以下の出版物も同様である: Role of muscle stem cells during skeletal regeneration, Rana Abou-Khalil, Frank Yang, Shirley Lieu, Anais Julien, Jaselle Perry, Catia Pereira, Frederic Relaix, Theodore Miclau, Ralph Marcucio, Celine Colnot, Stem Cells, May 2015, 33(5): 1501-11。これらの2つの科学出版物は、筋肉内領域が、移植片に栄養を補給する血液流を供給することができる高い血管新生を有することができるだけでなく、骨修復に直接貢献する前駆細胞も含むということを示す。
【0061】
故に、修復マトリックスとして骨膜移植片を植込み型デバイスの内側で使用すること、および筋肉内領域の内側に植込み型デバイスを置くことが有利である。骨膜細胞および隣接する筋原細胞の複合作用は、軟骨の新規区域および軟骨下骨を含む骨軟骨組織を形成するために、骨軟骨形成原細胞の増殖および定方向性分化のための特に好適な状況を形成する。
【0062】
以下では、例に従って、植込み型デバイスの埋入および軟骨の新規区域の獲得における主たるステップが説明される。
【0063】
軟骨の形成を促進するためにインプラントおよび機械的可動化を埋入すること
添付の図3は、この場合はヒト個人の筋肉8の筋肉内領域80における、除去可能な植込み型デバイス1を含む、および細胞修復マトリックス4を含むインプラントのための、次いで上記インプラントの外部可動化のための連続した埋入ステップを示す。最後に、新たに形成された軟骨12が、デバイス1から抽出され、新たに形成された軟骨12は、同じ個人の損傷した軟骨90の区域の関節面の区域(この場合は切り抜き腔92)に移植される。
【0064】
この場合、植込み型デバイス1は、平行6面体ハウジングの形態を有する。それは、例えば、以下に説明される例1Aおよび1Bのうちの任意の1つに一致する。同じ方法ステップが、別の植込み型デバイスを使用して実施され得る。
【0065】
治療対象の関節面は、好ましくは、筋肉8とは別個である。言い換えると、移植後の新たに形成された軟骨の拒絶現象の可能性を回避するために、筋肉が、非常に有利なことに、関節面と同じ個人に属することを除いて、治療対象の損傷した関節面と植込み型デバイス1を埋入するために選択される筋肉との間には必ずしも結びつきはない。
【0066】
本例では、筋肉8は、ふくらはぎである。筋肉内領域80は、例えば、ふくらはぎの中心区域に相当する。
【0067】
埋入を開始するため、筋肉内領域80が露出される。例えば、切開が筋肉8において行われる。デバイス1を挿入するのに十分な空間が、施術者によって筋肉の内側に提供される。
【0068】
次いで、デバイス1は、筋肉内領域80内へ挿入される。デバイス1は、デバイス1の内側の細胞発現空間に挿入される修復マトリックス(図3には示されない)と組み合わされて、軟骨の形成のためのインプラントを形成する。デバイス1は、典型的には、修復マトリックスの周りで閉じられる。
【0069】
修復マトリックスの1つの役割は、増殖および定方向性分化の後、軟骨細胞へと分化し、新たに形成された軟骨12を形成することが意図される骨軟骨形成原細胞を供給することである。非常に好ましくは、修復マトリックスは、骨膜移植片を含む。
【0070】
好ましくは自己の骨膜移植片は、例えば、個人の骨表面で収集されている。本例では、骨膜移植片は、脛骨の前面で収集される。例えば、骨膜移植片は、非常に薄い矩形の皮弁であり、例えば、1センチメートル~5センチメートルの幅および5センチメートル~10センチメートルの長さを有する。代替的に、骨膜移植片は、個人の任意の他の骨に由来し得る。それは、茎44と組み合わされる場合とそうでない場合とがある(ひいては骨膜“皮弁”と称される)。
【0071】
デバイス1は、デバイス1の第1の部分2の運動がデバイス1の第2の部分3に対して強いられることを可能にする外部可動化手段と関連付けられる。故に、せん断が、細胞修復マトリックス内にせん断応力を発生させるために、2つの部分の間に発生する。
【0072】
本例では、外部可動化手段は、可動化リンク5を含む。ここでは、可動化リンク5の第1の対は、第2の部分3の各側面に固定され、リンクの第2の対は、第1の部分2の各側面に固定される。
【0073】
リンクのこの第2の対は、第1の部分2を筋肉内領域に対して適所に安定させることを可能にする一方、リンクの第1の対の可動化リンクは、第2の部分3を動かすために使用される。第2の対のリンクを筋肉内領域に対して安定化させるため(特に、デバイス1の可動化中)、好ましくは、留め具53が、上記リンクを皮膚に対して固定する。これらの留め具53は、好ましくは、筋肉8の切開の閉創中、例えば、縫合糸によって生成される。
【0074】
必要な場合、安定化または可動化リンクの3つ以上の対を使用することが可能である。
【0075】
図3に戻ると、筋肉内領域80の縫合後、後続の可動化を可能にするために、可動化リンク5は、この場合、皮下の内側部52および個人の皮膚の外側に留まることが意図される外側部50を有する。容易な操作を確実にするのに十分な長さの外側部50を有するために、十分な長さの可動化リンク5が選択される。
【0076】
ここでは、可動化リンク5は、好ましくは可塑化糸および/または縫合糸を伴う、半剛性より糸を含む。
【0077】
筋肉8の切開は、次いで、外側部50を外側に残すように閉じられる。外側部50は、皮膚内、好ましくは筋肉8より上に作られる切開点51を通過する。次いで、留め具53が、必要に応じて作成される。
【0078】
デバイス1は、1つまたは複数の生体適合性材料で作製され、修復マトリックスは、好ましくは自己由来である。したがって、身体によるデバイス1の拒絶のリスクは限られる。
【0079】
この段階で、植込み型デバイス1は、筋肉不動の状況において、筋肉内領域80内に残って、好ましくは不動のままである。これの利点は、骨軟骨形成原細胞に、デバイス1の内側の細胞発現空間内で増殖するための時間を与えることである。骨軟骨形成原細胞は、次いで、細胞発現空間に“定着”するまで、いかなる機械的せん断応力もなしに、増殖する。
【0080】
以下のステップにおいて、デバイス1は、第2のハウジング部分3を第1のハウジング部分2に対して動かすために、(好ましくは機械的に)不動化される。可動化の前に、骨軟骨形成原細胞は、概して、比較的未成熟の状態にあり、それらの定方向性分化を可能にする。
【0081】
図3に例証される例では、外部可動化フェーズ中、
- 第1のハウジング部分2は、筋肉8に対して固定されたままである。例えば、第1の部分2に装着される可動化リンク5は、第1の部分2が筋肉に対して固定されたままであることを強いるために、保持される。
- 第2のハウジング部分3は、第2の部分3に装着される可動化リンク5を介して、筋肉8に対して、および部分2に対して移動される。例えば、第2の部分3の片側に位置する可動化リンク5は、例えば、図3に例証される可動化方向Dに引っ張られ、次いで、交互に、第2の部分3の反対側に位置する可動化リンク5が引っ張られる。
【0082】
デバイス1の外部可動化のための機械的手段は、代替の可動化手段によって補足または置換され得るということを理解されたい。例えば、電気機械的および/または電磁気可動化手段が使用され得る。第2のハウジング部分3は、例えば、電動式であり、遠隔制御可能であり得る。
【0083】
例えば、植込み型デバイス1に組み込まれる制御装置と組み合わせた、電気機械的および/または電磁気可動化手段の使用の利点は、制御信号の助けを借りてデバイス1の外部可動化の制御を可能にすることであり、これにより可動化フェーズ中に可動化リンクを引き寄せる必要性を除去する。
【0084】
デバイス1の外部可動化は、好ましくは、運動の実態を監視するように、医用画像技術を使用して、例えば、超音波検査によって、施術者によってリアルタイムに制御される。任意選択的に、デバイス1には、第1の部分2に対する第2の部分3の運動および/または速度および/または加速度を検出するための1つまたは複数のセンサが装備され得る。デバイス1は、例えば、1つまたは複数の加速度計を含む。
【0085】
好ましくは、骨膜移植片は、特に、デバイス1の外部可動化中、部分2の下方面が不動化される場合、茎44によって血管新生されたままである(血管柄付き移植片が使用される場合)。
【0086】
この目的のため、好ましくは貫通穴46が、骨膜移植片の茎44の管が通り抜けることを可能にするように、第1のハウジング部分2の下方面を通って提供される。ここでは、貫通穴46は、図4aに示されるように、第1の部分2の外壁24を通り抜ける。ここでは、貫通穴46は、第1の部分2に存在する格子42の中心領域に配置される。
【0087】
貫通穴46は、好ましくは、小さい。実際、骨膜茎移植片(好ましくは、低厚および可撓性のものである)は、小さい貫通穴46をすり抜けるために一時的に丸まり得る。次いで、血管柄付き骨膜は、広げられて、細胞発現空間に挿入され得る。
【0088】
代替的に、または組み合わせで、貫通穴は、骨膜移植片茎の通過を可能にするために、第2の部分3に提供され得る。しかしながら、可動化中の第2の部分3の運動に起因する血管茎44の締め付けまたはねじれを回避するために、血管茎44は、筋肉支持体に対して不動のままである第1の部分2を通過することが有利である。
【0089】
植込み型デバイス1の外部可動化フェーズは、デバイスの内側にせん断応力を発生させるのに十分な期間の間、必要なだけ繰り返され得る。例えば、数分の可動化が、例えば、1分~10分の期間中、毎日実行され得る。
【0090】
後続ステップにおいて、新たに形成された軟骨または軟骨12がデバイス1の内側の細胞発現空間において獲得されると、デバイス1は、1つまたは複数の新たに形成された軟骨12を回収するように、身体から除去され、分解される。
【0091】
筋肉内領域80は、筋肉からデバイス1を除去するために再開創され、次いで、第1の部分2は、第2の部分3から分離される(デバイス1の分解の例は、添付の図8に関連して以下に説明される)。
【0092】
図3の下部に例証されるように、結果として生じる新たに形成した軟骨12は、好ましくは、表面には軟骨面120(この場合は凸形状)、および軟骨面120の下には新たに形成された軟骨下骨122の領域を含む。
【0093】
損傷した軟骨90の区域を含む、修復対象の関節領域9もまた、図3に表される。
【0094】
新たに形成された軟骨12は、次いで、切り抜き腔92内に、この腔の切り抜き後、病変区域の適所に移植される。本例では、関節領域9は、大腿顆である。治療される関節は、大腿脛骨関節である。
【0095】
しかしながら、新たに形成された軟骨はまた、別の関節に位置する軟骨の損傷した区域を修復するために移植され得るということを理解されたい。新たに形成された軟骨の埋入は、特に、膝蓋大腿関節、距腿関節、肩甲上腕関節、肩鎖関節、および腸骨大腿関節を対象とする。
【0096】
結果として生じる新たに形成された軟骨12は、非常に有利には、修復対象の損傷した軟骨90の区域の幾何形状に精密に一致される。故に、新たに形成された軟骨12は、損傷した軟骨90の区域に精密に一致される。
【0097】
好ましくは、切り抜き腔92は、損傷した区域90の表面上に事前に生成されており、新たに形成された軟骨12が、その後、切り抜き腔92に移植される。
【0098】
用語“切り抜き”は、不健全な軟骨を浸食し、軟骨下骨を露出させることからなる操作を意味するものとする。切り抜きは、軟骨の損傷した区域が洗浄されることを可能にする。さらには、切り抜きは、微小出血、新規血管の流入、本来の軟骨下骨における成長因子の局所放出を発生させ得る。
【0099】
新たに形成された軟骨12の形態は、植込み型デバイス1の形状の選択によって制御される。デバイス1の設計を通じて、および特に、細胞発現空間を定める壁の形状に応じて、関節腔の所与の特定の形態に一致する軟骨を獲得することが可能である。この目的のため、第1の部分2および/または第2の部分3は、好ましくは、修復対象の損傷した区域90の形態に応じて、カスタム製造される。
【0100】
そのようなカスタム製造は、例えば、3D印刷によって実施される。生体適合性材料を使用した任意の3D印刷技術、例えば、出版物Bioactive scaffolds for osteochondral regeneration, Deng, Chang, Wu, Journal of Orthopaedic Translation (2019) 17、15~25頁(特に22頁)に説明される技術、押出による印刷、レーザ印刷、光造形法、溶融堆積モデリング(FDM)、選択的レーザ焼結(SLS)、電界紡糸などのうちの1つまたは複数を使用することが可能である。
【0101】
植込み型デバイス1の3D印刷は、医用画像によって獲得される損傷した軟骨90の区域の幾何形状を考慮する3次元モデルに基づき得る。
【0102】
この目的のために使用され得る医用画像技術の例は、磁気共鳴画像法(MRI)(T2緩和時間MRIまたはT1rho MRI)および/または関節軟骨の遅延ガドリニウム増強MRI(dGEMRIC)および/または標準X線撮影および/または関節鏡スキャナである。
【0103】
1つまたは複数の新たに形成された軟骨12を回収した後、上記軟骨は、関節領域9に移植される。新たに形成された軟骨12の埋入は、任意選択的に、関節鏡によって実行され、そのような手技は、低侵襲である。
【0104】
ここに提案される手法の注目すべき利点は、新たに形成された軟骨12を獲得した後、損傷した軟骨90の区域の切り抜き(この場合は大腿顆の表面から)の使用を可能にすることである。
【0105】
故に、修復されなければならない軟骨の病変領域を切り抜く前に、新たに形成された軟骨12の部分の品質および形状を制御することが可能である。新たに形成された軟骨12のために獲得される形状に従って切り抜き腔92の形状を適合させることも可能である。切り抜きが依然として適所にある本来の軟骨(損傷しているが)を破壊することを伴う限りは、切り抜きを、また、デバイスの内側での新たに形成された軟骨の不十分な生成の場合は、移植手技を、断念することをも可能である。
【0106】
新規軟骨の形成を促進することを目的とする植込み型デバイスの例は、添付の図4a~図12を参照して以下に説明される。これらの例のうちの任意の1つによる除去可能な植込み型デバイスは、図3を参照して上に説明される手技を実施するために使用され得る。
【0107】
例1A-軟骨の2つの部分を形成するための並進での可動化
図4aは、上から透視的に示される、第1の例示的な実施形態による除去可能な植込み型デバイス1を概略的に示す。デバイス1は、好ましくは、筋肉内領域に除去可能に移植されることが意図され、および/または皮下領域に除去可能に移植されることが意図される。
【0108】
デバイス1は、閉じたハウジングの概形を有する。デバイス1は、生体適合性材料で作製される第1のハウジング部分2および生体適合性材料で作製される第2のハウジング部分3を含む。
【0109】
第1の部分2は、図4aの上部に示され、第2の部分3は、図4aの下部に示される。したがって、この図4aでは、2つのハウジング部分は、互いから別個にされる。
【0110】
第1の部分2および第2の部分3は、細胞発現空間40を形成する腔を、それらの間に画定することが意図される。
【0111】
添付の図4bは、デバイス1を示し、第1のハウジング部分2は、(例えば、図の読みやすさのために図4bには示されていないスライド6を介して)第2のハウジング部分3と組み合わされている。細胞発現空間40は、図4bの右に、片側が見えている。
【0112】
細胞修復マトリックス4を受容することが意図されるデバイス1の内側もまた、添付の図5において断面が見えている。この図5の断面図、ならびに図7および図9において、第1の部分2の内側面26と第2の部分3の反対内側面36との間の垂直間隙は、縮尺通りに示されておらず、これらの図の読みやすさのために拡大されている。上記垂直間隙は、第1の部分2および第2の部分3の寸法と比較して非常に小さい(例えば、1ミリメートル未満)。
【0113】
空間40は、骨軟骨形成原細胞(特に、細胞修復マトリックス4の発現に由来する細胞)を受容すること、およびこれらの細胞の増殖を可能にすることが意図される。
【0114】
第2のハウジング部分3は、第1のハウジング部分2に除去可能に取り付けられる。第2の部分3と第1の部分2との接続は、可動化フェーズ中、外部可動化手段(以下に説明される)によるデバイス1の装填中に崩壊しないように十分に耐久性がある。
【0115】
第2の部分3は、第1の部分2に移動可能に取り付けられ、本例では、第2の部分3は、ハウジングの長手方向軸Bに平行の方向に、第1の部分2に対して並進で移動可能である。
【0116】
第1の部分2および/または第2の部分3は、好ましくは、高分子材料(PTFEなど)、細胞外マトリックス、生体セラミック材料、生物学的ガラスもしくは生体適合性金属、またはこれらの材料の任意の混合物から選択される生体適合性材料で形成される。
【0117】
第1のハウジング部分2は、第1の側面20および第2の側面22によって少なくとも部分的に横方向に定められる。側面20および22は、ハウジングの長手方向軸に対して略垂直であり、2つの略平行表面に沿って延びる。
【0118】
本例では、第1の側面20および第2の側面22は各々、中央中空を有する。故に、中空チャネルが第1の部分2の長手方向軸Bに沿って形成され、側面20および22を接続する。
【0119】
加えて、第1のハウジング部分2は、外側面24によって外面的に定められ、内側面26によって内面的に定められる。外側面24および内側面26は、2つの略平行表面の上に延びる。
【0120】
内側面26は、第2のハウジング部分3の反対に置かれる。本例では、内側面26は、第1の部分2の底における骨軟骨形成原細胞の発現を可能にするために、その中心において(側面20と22との間の中空チャネルにおいて)空洞化される。
【0121】
第1のハウジング部分2は、中空チャネルを横方向に定める2つの内側壁28をさらに含む。内側壁28は、外側面24の裏に位置する底壁から第2の部分3へ向かって延びる。
【0122】
第2のハウジング部分3は、第1の側面30および第2の側面32によって横方向に定められる。側面30および32は、ハウジングの長手方向軸に対して略垂直であり、2つの略平行表面の上に延びる。ここでもまた、第1の側面30および第2の側面32は各々、中央中空を含む。故に、追加の中空チャネルが第2の部分3の長手方向軸Bに沿って形成され、側面30および32を接続する。
【0123】
第2のハウジング部分3は、外側面34によって外面的に定められ、内側面36によって内面的に定められる。外側面34および内側面36は、2つの略平行表面の上に延びる。内側面36は、第1のハウジング部分2の反対に置かれる。
【0124】
第2のハウジング部分3は、中空チャネルを横方向に定める2つの内側壁38をさらに含む。内側壁38は、外側面34の裏に位置する底壁から第2の部分2へ向かって延びる。
【0125】
本例では、および図4bに示されるように、デバイス1を構成するハウジングが閉じているとき、第1の部分2および第2の部分3のそれぞれの中空チャネルは、互いに対向して置かれる。
【0126】
デバイス1の縦断面図である添付の図6は、上記2つの中空チャネルを通過する断面に相当する。図6は、デバイス1の外部可動化中の第1の部分2および第2の部分3を例証する。細胞発現空間40は、2つの中空チャネルの内側に延びる。上記空間40は、第1の部分2の内側壁28によって、および第2の部分3の内側壁38によって横方向に定められる。細胞発現空間40はまた、外側面34の内側によって上から(図4aの配向による)から定められ、外側面24の内側によって下から定められる。
【0127】
故に、第2の部分3が第1の部分2と整列されるとき、デバイス1の内側に提供される細胞発現空間40は、略平行6面体形態を有する。
【0128】
修復マトリックス4の機能は、多数の骨軟骨形成原細胞を生成することである。修復マトリックス4は、有利には、骨膜移植片を含み、その生物学的機能は、上に想起されている。
【0129】
非常に有利には(義務ではないが)、骨膜移植片は、血管柄付き移植片、例えば、有茎血管柄付き移植片である。図4aは、茎44に装着される骨膜移植片を例証し、茎44は、第1のハウジング部分2の本体に提供される貫通穴46を通過する。非血管化移植片もまた可能であるか、または任意選択的に、少なくとも2つの異なる移植片が使用される場合、非血管化移植片および血管柄付き移植片の組み合わせが可能である。
【0130】
有利には、骨膜移植片は、自己移植から生じる。言い換えると、骨膜移植片を形成する細胞は、関節インプラントが埋入される同じ個人に由来する自己細胞である。自己細胞の使用は、個人の身体による、骨軟骨形成原細胞の、および結局は、修復した軟骨の軟骨細胞の、はるかに良好な耐性を促進する。故に、軟骨の再生成は、より効果的に促進され、拒絶のリスクはかなり制限される。
【0131】
本例では、骨膜移植片は、脛骨の骨膜に由来する。利点は、脛骨の骨に対する収集手技が容易かつ比較的低侵襲であることである。
【0132】
好ましくは、外部可動化手段による作用の前、修復マトリックス4は、デバイス1と必ずしも一体ではない凝集性の固体要素の形態をとる。例えば、修復マトリックス4は、筋肉内または皮下領域へのデバイス1の挿入の直前に、細胞発現空間40に挿入される(および任意選択的に、縫合される)。
【0133】
貫通穴46の利点は、外部可動化手段による可動化フェーズ全体を通して修復マトリックス4の血管新生を可能にすることである。開口部は、修復マトリックス4が可動化中に血管新生されるように、インプラントの外側から少なくとも1つの血管の通過を可能にする。そのような血管新生は、良好な細胞発現を保証するために、修復マトリックス4が骨膜移植片を含む場合に非常に関係がある。
【0134】
故に、(例えば、筋肉内領域または皮下領域における)インプラントの埋入後、骨軟骨形成原細胞は、修復マトリックス4から生体内で増殖する。
【0135】
図6は、インプラントの内側での増殖後に空間40を埋める骨軟骨形成原細胞を示す。第1の部分2および/または第2の部分3が円すい形チップ43を含む場合、骨軟骨形成原細胞は、優先的に、チップ43によって画定される区画を埋める。
【0136】
本例では、第2の部分3は、デバイス1の外部可動化によって、その並進運動中、内側面26に沿って第1の部分2に対して摺動するように構成される。図5内の破線は、内側面26の延長表面Pを示す。
【0137】
デバイス1は、外部可動化手段を含み、第1の部分2に対する第2の部分3の運動が強いられることを可能にする。故に、せん断が、第2の部分3と第1の部分2との間に、特にこの場合は、内部摺動表面26の延長表面Pの近くに発生する。故に、せん断応力は、細胞発現空間40内に発生する。
【0138】
そのようなせん断応力は、細胞発現空間40内の表面Pの近くに存在する細胞の分化を指向する利点を有する。より詳細には、表面Pに最も近い細胞が、せん断応力に最も曝露される。したがって、細胞は、優先的に、軟骨表面細胞へと分化することになる(図2に例証される分化経路C)。
【0139】
故に、デバイス1の外部可動化は、せん断応力をかけるために、細胞発現空間40の内側にへき開面を作成する。
【0140】
こうして作成されるせん断応力は、関節の可動性面に、この場合は大腿顆と脛骨プラトーとの間にかけられる応力と同様である。
【0141】
デバイス1は、好ましくは、骨軟骨形成原細胞が増殖し始めた後に可動化される(図6に例証される例を参照)。
【0142】
外部可動化手段は、好ましくは、機械的手段を含む。より好ましくは、上記手段は、第2の部分3を第1の部分2に対してけん引することを可能にするように構成される、第2の部分3に取り付けられる少なくとも1つの可動化ひもを含む。
【0143】
用語“可動化ひも”は、第1の部分2に対する第2の部分3の相対運動、この場合は並進運動を強いるために引っ張ることができる、デバイス1の一部に固定される留め具(糸、ケーブル、ベルトなど)を意味するものとする。好ましくは、上記可動化ひもは、その後、外側面に、典型的には第2の部分3の側面30および/または32のうちの一方に固定される。
【0144】
図4a~図8の例では、外部可動化手段は、側面30に固定される第1の可動化ひも5A、および反対側面32に固定される第2の可動化ひも5Bを含む。故に、2つの可動化ひも5Aおよび5Bは、第2の部分3の反対外側面に固定される。これらのリンクは、読みやすさのため、図4bには示されていない。
【0145】
図3に関連して以前に説明されたように、デバイス1が移植されるとき、2つの可動化ひも5Aおよび5Bは、好ましくは、糸の皮下内部長および皮膚の外側に留まることが意図される糸の外部長を有する。
【0146】
可動化ひも5Aおよび5Bを使用して、第2の部分3は、細胞発現空間内にせん断を作成するように、第1の部分2に対して、左側から、次いで右側から(図4aおよび図6の配向による)けん引され得る。
【0147】
可動化ひも5Aおよび5Bは、好ましくは、糸の半剛性より糸で作製される。上記ひもは、好ましくは、高分子材料で作製される。例えば、縫合糸に通常使用される任意の材料を使用することが可能である。
【0148】
任意選択的に、および有利には、デバイス1は、第1の部分2に対する第2の部分3の運動を誘導するスライド6をさらに含む。故に、外部可動化手段5によるデバイス1の装填中、第2の部分3は、第2の部分3が第1の部分2に対して横方向に移動しないように、スライド6に沿って摺動する。
【0149】
そのようなスライドは、図4aおよび図5において見ることができる。本例では、スライド6は、第1の部分2に固定される少なくとも1つのモノレールを有する。モノレールは、第1の部分2の残部と機械的に一体である。上記モノレールは、この場合、第2の部分3に対向して配向される内側面26から突出する。そして、第2の部分3は、その内側面36に、モノレールに相補的な少なくとも1つの溝60を有する。図の読みやすさのため、溝60の実際の形状は、図4aおよび図4bに例証されない。
【0150】
図4aに示されるように、スライド6は、好ましくは、2つの側面に2つの同一の長手方向モノレールを有する。
【0151】
代替的に、同様の動作を有するスライドが、内側面36に1つまたは2つのモノレールを、および内側面26に1つまたは複数の相補的な溝を配置することによって獲得され得る。
【0152】
そのようなスライド6は、外部可動化手段が電気的であって機械的ではないデバイス1の変異形に移行可能である。
【0153】
さらには、デバイス1は、任意選択的に、身体に対して、例えば、デバイス1が存在する筋肉内または皮下領域に対して、第1の部分2を固定するための手段を含む。
【0154】
この目的のため、デバイス1は、好ましくは、少なくとも1つの固定リンク、依然としてより好ましくは、一対の固定リンクを含む。図4aでは、デバイス1は、側面30に第1の固定リンク5Cを含み、側面32に第2の固定リンク5Dをさらに含む。これらのリンクは、読みやすさのため、図4bには示されていない。
【0155】
固定リンク5Cおよび/または固定リンク5Dは、例えば、デバイス1が移植される筋肉8に装着される。固定リンク5Cおよび5Dは、例えば、第1の部分2が固定されたままである一方、第2の部分3が外部可動化フェーズ中に並進で移動されるように、筋肉8に縫合される。代替的に、固定リンク5Cおよび5Dは、可動化ひも5Aおよび5Bのように、皮膚の外側に留まることが意図される糸のそれぞれの外部長を有し得る。固定リンク5Cおよび5Dは、その後、糸のこれらの外部長において、例えば、手動で、不動化され得る。
【0156】
固定リンク5Cおよび5Dは、好ましくは、糸の半剛性より糸で作製される。上記リンクは、好ましくは、高分子材料で作製される。例えば、縫合糸に通常使用される任意の材料を使用することが可能である。
【0157】
第1の部分2および/または第2の部分3は、好ましくは、中空構造を有し、細胞発現空間40が延びる中空凹部を形成する。
【0158】
図4a~図8の例では、第1の部分2は、そのような中空構造を形成する格子42を有する。
【0159】
格子42は、外側面24の内部から、外側面24に垂直の延長方向(幅)に延びる。添付の図の読みやすさのため、格子42は、図4aおよび図4bに例証されていない。
【0160】
格子42は、幅の方向(外側面24に垂直の延長方向)において、デバイス1の内側に開いている複数の細胞成長貫通腔を画定する。
【0161】
細胞成長腔は、この場合、格子42内に形成される円すい形チップ43の間に画定される。円すい形チップ43の基部は、好ましくは、外側に向けて配向され、円すい形チップ43の頂点は、内側に向けて配向される。
【0162】
中空貫通区画(例えば、平行6面体および/またはハニカム区画)が、円すい形チップ43の間に形成される。区画の内部空間は、修復マトリックス4が置かれる領域の延長に位置する。故に、区画の内部空間は、細胞発現空間40を延長する。図5に例証されるように、修復マトリックス4は、次いで、第1の部分2の格子42の上面より上に埋入および/または固定され得る。
【0163】
成長腔(この場合は格子42の内側の区画)は、この場合、2つの側面を通過する。外側では、区画は、第1の部分2の外側面24を通過し、内側では、区画は、細胞発現空間40につながる。
【0164】
そのような格子42の利点は、第1の部分2に対する第2の部分3の並進運動中、外側面24の近くに位置する細胞(へき開面Pから最も遠い細胞である)が、へき開面P近くの細胞よりも機械的に安定していることである。
【0165】
故に、植込み型デバイスの外部可動化中、せん断に対する剛性の勾配が、細胞発現空間40の内側に作成される。外側面24の近くに位置する細胞は、分化後に骨細胞を優先的に形成するように誘発される(図2の経路A)。故に、デバイス1の可動化の終わりに獲得される新たに形成された軟骨12内に軟骨下骨の層を獲得することが可能である。
【0166】
さらには、格子42は、血液かん流が、デバイス1の外側から、細胞発現空間40の内側に到達することを可能にする。
【0167】
加えて、格子42を形成するために円すい形チップ43を使用する利点は、格子42の分離壁が、このとき、表面におけるそれらの厚さよりも大きい厚さを基部において有することであり、これによりせん断に対する剛性の勾配を増強する。
【0168】
格子42を獲得するために、1つまたは複数の腔は、第1の部分2の設計に元々提供され得る。例えば、第1の部分2の3Dモデルは、その設計から格子42の腔を組み込み得る。代替的に、格子42の腔は、生成後に穿孔により獲得され得る。
【0169】
格子42を第1の部分2に提供する追加の利点は、修復マトリックス4と筋肉内領域の環境との相互交流、および特に、修復マトリックス4のより良好な血管新生を可能にすることである。
【0170】
本例1Aでは、第2の部分3は、格子を含まない。しかしながら、この場合、第2の部分3は、細胞発現空間40の延長に成長腔を形成する円すい形チップ43を含む。故に、第2の部分3の円すい形チップは、第1の部分2の円すい形チップに対向している。第1の部分2とは異なり、第2の部分3の円すい形チップ43の間の空間は、貫通穿孔を形成しない。
【0171】
代替的に、第2の部分3もまた、例えば、格子42と同様の、貫通穿孔を備え得る。しかしながら、外側面34が穿孔されないこと、および第2の部分3の円すい形チップ43の間に形成される腔が貫通しないことが有利である。実際、第2の部分3は、筋肉領域に対して移動するように誘発される。平滑な外側面34は、第2の部分3の運動中、第2の部分3と筋肉環境との間の摩擦または擦れ合いを回避することが可能である。
【0172】
任意選択的に、および有利には、第1の部分2および/または第2の部分3の円すい形チップ43の少なくとも一部は、それらの基部に、凹部を有し得る。円すい形チップ43の凹部の形状は、好ましくは、新たに形成された骨軟骨組織のその後の抽出を妨害しないように選択される。
【0173】
例として、そのような凹部は、円すい形チップ43の基部に三角形状を有し、円すいの頂点に向かってピラミッド形状に延び得る(例えば、三角すい形状)。故に、円すい形チップ43の表面に生成される三角形凹部は、好ましくは、上記チップ43の頂点まで延びない。
【0174】
そのような空洞化した円すい形チップ43は、それらが、形成される骨軟骨形成原細胞と細胞発現空間の内側の生体材料支持物との間の合計接触面を拡大することから、有利である。さらには、第1の支持部分2および/または第2の支持部分3の剛性は、局所的に増加される。添付の図面を簡略化するため、円すい形チップ43は、これらの図内のそのような凹部と一緒に示されていない。
【0175】
代替的に、デバイス1の円すい形チップ43は、凹部を有さない。
【0176】
好ましくは、並進運動をブロックするための手段が、第1の部分2および/または第2の部分3に提供される。並進ブロック手段は、第1の部分2に対する第2の部分3の並進運動の範囲を画定することを可能にする。
【0177】
本例では、そのような並進ブロック手段は、少なくとも1つのくさび37に当接するように構成される少なくとも1つの突起27を含む。
【0178】
ここでは、第1の部分2は、第1の部分2の片側に、上方に突出する一対の突起27を含む。突起27は、好ましくは、長手方向軸Bの片側に、長手方向軸Bに沿って互いの近くに軸方向に置かれる。各突起27は、例えば、基部、および球形末端を伴う基部から突出するロッドを含む。
【0179】
ここでは、第2の部分3は、一対のくさび37を含む。くさび37は、長手方向軸Bの同じ側に互いに対向して置かれる。長手方向軸Bに沿ったくさび37の内側面の間の距離は、好ましくは、長手方向軸Bに沿った突起27の間の距離より真に大きい。
【0180】
故に、第1の部分2および第2の部分3が、図4bに例証されるように、組み合わされているとき、突起27は、くさび37の間に提供される長手方向空間の内側で要素2の側面においてそれらの基部内へ挿入される。故に、第1の部分2に対する第2の部分3の並進運動の範囲は、くさび37の内側面における突起27の当接によって制限される。
【0181】
代替的に、くさびおよび突起が、他方の側、もしくは両側に配置され得、ならびに/または1つもしくは複数の突起が、第2の部分3に提供され得、ならびに/または1つもしくは複数のくさびが、第1の部分2に提供され得るということを理解されたい。
【0182】
任意選択的に可動化フェーズ中に定期的に繰り返され得る外部可動化手段によるデバイス1の可動化の終わりに、空間40の骨軟骨形成原細胞は、軟骨細胞および軟骨下骨へ分化する。故に、例1Aでは、添付の図7に例証されるように、新たに形成された軟骨12の2つの対向部分が、互いに対向して、獲得される。
【0183】
格子42の表面において、表面Pに最も近い細胞は、軟骨面120を獲得するために、軟骨細胞へと優先的に分化する。
【0184】
格子42の基部において(ハウジングの両側の外側面24および34の近く)、表面Pから最も遠い細胞は、皮軟骨下領域122を獲得するために、軟骨下骨細胞へと優先的に分化する。
【0185】
図8は、皮下または筋肉内領域に対するデバイス1の抽出後のデバイス1の分解を示す。本例では、機械的な力が、第1の部分2および第2の部分3を分離するために加えられる。こうして、スライド6は、好ましくは、モノレールにおいて、破壊される。例えば、モノレールの基部は、第1の部分2に留まり、モノレールの遠位部は、第2の部分3によって取り去られる。
【0186】
こうして、損傷した軟骨区域を修復するために関節腔内に取り入れられる準備の整った2つの統合した軟骨が獲得される。
【0187】
本例では、損傷した軟骨区域は、大腿脛骨関節に位置する。例えば、獲得される新たに形成された軟骨12のうちの一方は、大腿顆に位置付けられ、新たに形成された軟骨12の他方は、大腿顆に対向する脛骨プラトーに位置付けられる。各々の新たに形成された軟骨は、好ましくは、対応する損傷した区域、例えば、それぞれの切り抜き腔内に直接埋め込まされる。
【0188】
結果として生じる新たに形成された軟骨12は、好ましくは、修復対象の損傷した軟骨区域の幾何形状に一致し、適切な場合、切り抜き腔の幾何形状に一致する。新たに形成された軟骨12の埋入後、軟骨の表面は、好ましくは、軟骨の損傷した区域に隣接する表面と連続して延びる。
【0189】
添付の図4a~図8の例について、上に説明されるような植込み型デバイスの部分の可動化および分離のステップは、添付の図9図12に関連して以下に説明される除去可能な植込み型デバイスの他の例に同様の様式で移行される。
【0190】
上に説明される第1の例による植込み型デバイスの利点は、好ましくは、同じ関節の2つの対向表面に属する2つの損傷した軟骨区域における移植に好適な、新たに形成された軟骨12の2つの区域の同時形成を可能にすることである。
【0191】
ヒト成人大腿脛骨関節の軟骨の平均総厚は、およそ5ミリメートルである。故に、新たに形成された軟骨12の平均厚(軟骨の外側面の延長表面に垂直)は、例えば、1ミリメートル~10ミリメートルである。
【0192】
例1B-単一軟骨形成区画を用いた並進での可動化
図9は、第2の例示的な実施形態による植込み型デバイスを概略的に例証する。植込み型デバイスは、延長の長手方向軸に垂直に、断面で見られる。
【0193】
この第2の例による植込み型デバイスは、第1のハウジング部分2の構造を除いて、上に説明される第1の例によるデバイス1に非常に近い構造的および機能的特徴を有する。第2のハウジング部分3は、第1のハウジング部分2に対して並進で移動可能である。
【0194】
先行する例1Aとは異なり、第1の部分2(好ましくは、筋肉内領域に対して固定して保持される)は、穿孔されず、格子42を含まない。この場合、第1の部分2は、第2の部分3に対向する中実内側面26’を含む。スライド6が含まれる場合、内側面26’は、スライド6の2つの長手方向モノレールの間に延び得る。
【0195】
任意選択的に、および有利には、剛性化要素7のネットワークが、第1の部分2の内側に配置される。剛性化要素7は、内側面26’に対して、第1の部分2の内側に置かれる。剛性化要素7のネットワークは、好ましくは、内側面26’の範囲の大半の部分をカバーする。
【0196】
剛性化要素7は、例えば、十字形状を有し、好ましくは、内側面26’に固定される。十字形状は、例えば、生体材料の3D印刷によって獲得される。そのような剛性化要素7は、図9に示される。
【0197】
剛性化要素7の利点は、第1の部分2の側において、細胞発現空間40の底におけるせん断に対する剛性を増加させることである。故に、剛性勾配は、第1の部分2と第2の部分3との間で増加される。
【0198】
この第2の例では、骨膜移植片は、好ましくは、茎によって血管新生されたままである。この目的のため、貫通穴が、好ましくは、茎の管が通り抜けることを可能にするために、第1の部分2の下方面を通って提供される。
【0199】
第2の部分3は、第1の部分2に対して並進で移動可能である。例えば、スライド6は、内側面26’を含む表面Pに沿った運動を誘導するために、第1の部分2の内側に一体的に固定される。植込み型デバイスの可動化フェーズ中、表面Pに最も近い細胞は、せん断を受ける傾向がある一方、円すい形チップ43の底における細胞は、第2の部分3と共に移動する傾向がある。表面Pから最も遠い細胞は、軟骨下骨へと優先的に分化する。
【0200】
可動化および細胞発現後、軟骨表面および軟骨下骨の領域を含む完全な新たに形成された骨軟骨組織は、典型的には、第1の部分2の内側に獲得され、損傷した関節区域が治療されることを可能にする。この例1Bによる植込み型デバイスの身体からの抽出の後、第1の部分2および第2の部分3は、骨軟骨組織から分離される。円すい形チップ43は、新たに形成された骨軟骨組織に組み込まれない。
【0201】
剛性化要素7が埋め込まれる第2の部分3の側に潜在的に生成される軟骨は、患者内で再使用されない。
【0202】
可能性のある代替案において、剛性化要素7は、円すい形チップ43に取って代わること、またはこれとの組み合わせによって、可動性の第2の部分3の側に(面34に対して)位置付けられ得る。剛性化要素7は、次いで、任意選択的に、新たに形成された骨軟骨組織の抽出時に第2の部分3から分離され、この新たに形成された組織を組み込まれたままである。特に、剛性化要素7が、生体吸収性の生体材料、または治療関節の内側で長期間にわたって非常に良好な耐容性を示す生体材料で形成される場合、移植されるべき軟骨への剛性化要素の組み込みが可能である。
【0203】
例2A - 軟骨の2つの部分を形成するための回転での可動化
図10は、第3の例示的な実施形態による植込み型デバイスを概略的に例証する。上記デバイスは、好ましくは、個人の筋肉内領域に除去可能に移植されることが意図され、および/または個人の皮下領域に移植されることが意図される。図10は、断面で見た、表皮82の下に、筋肉8の内側に移植されるデバイスを示す。
【0204】
この第3の例は、主に第1のハウジング部分2に対する第2のハウジング部分3の回転運動により、ならびに第1の部分2および第2の部分3の構造により、上に説明される例とは異なる。
【0205】
この場合、第1の部分2は、底(図10の配向による)が開いており、軸Rの周りで略円筒状である。第1の部分2は、側壁28および底壁29を含む。底壁29は、好ましくは、円盤形状である。側壁28は、底壁29の環状端から下方に延びる。
【0206】
第2の部分3もまた、上部(図10の配向による)が開いており、軸Rの周りで略円筒形状を有する。第2の部分3は、側壁38および底壁39を含む。底壁39は、円盤形状である。側壁38は、底壁39の環状端から上方に延びる。
【0207】
第2の部分3は、第1の部分2に除去可能に取り付けられる。
【0208】
第1の部分2および/または第2の部分3は、好ましくは、軸Rの周りに回転対称を有する。互いに閉じた第1の部分2および第2の部分3は、こうして、略円筒状の閉じたハウジングを形成する。
【0209】
第2の部分3が、側壁38の内側で軸Rの周りを回転可能であるように、側壁38の外径は、有利には、側壁28の内壁よりも小さい。
【0210】
2つの先行する例と同様の様式で、第2の部分3は、特に外部可動化中の影響下で、第1の部分2に対して移動されるように構成される。
【0211】
デバイスは、好ましくは、第1の部分2に対して軸Rの周りでの第2の部分3の回転を誘導することが意図されるスライド6を含む。
【0212】
図10および図11の例では、スライド6は、好ましくは、側壁38の自由端の近くで、第2の部分3の側壁38から外側から(軸Rに対して)径方向に延びる環状肋材を含む。そして、第1の部分2は、側壁28から内部へ向かって(軸Rに対して)径方向に配向される環状溝を含む。代替的に、スライドは、第2の部分3の溝に相補的な、内向きに向けられる第1の部分2の環状肋材によって形成され得るということを理解されたい。
【0213】
任意選択的に、デバイスは、第1の部分2に対する第2の部分3の固定および回転誘導のための追加の手段を含む。
【0214】
例として、側壁28の自由端(第2の部分3の方へ向けられる)は、径方向外側に雄ねじを有し得る。第1の部分2への第2の部分3の取り付け中、閉じたハウジングを獲得するために、第1の部分2の外径よりも大きい直径の追加の固定リングが、スライド6の上に装着され、側壁28の自由端において閉じられ得る。そして、固定リングは、好ましくは、径方向内側に、側壁28の雄ねじに相補的な雌ねじを有し、上記リングを上記壁に対してねじ込むことを可能にする。そのような固定リングは、図10図12には示されない。
【0215】
細胞発現空間40は、底壁29の内側と底壁39の内側の間に軸方向に画定される。この細胞発現空間40は、修復マトリックス4を受容し得る。このマトリックスは、上で既に説明された特徴を有する。上記マトリックスは、好ましくは、特に、骨膜移植片を含む。好ましくは、この第3の例でも、骨膜移植片は、茎によって血管新生されたままである。この目的のため、第1の部分2および/または第2の部分3は、茎のための貫通穴を含み得る(添付の図面には示されない)。
【0216】
先行する例のように、修復マトリックス4の機能は、細胞発現空間40内で多数の骨軟骨形成原細胞を生成することである。好ましくは、特定の細胞発現時間の後、骨軟骨形成原細胞は、図11に例証されるように、第1の部分2の内部空間および第2の部分3の内部空間を埋める。
【0217】
2つの先行する例と同様の様式で、外部可動化手段5は、細胞発現空間40内にせん断を発生させるように、第1の部分2に対して第2の部分3を移動させるために動作可能である。
【0218】
本例では、外部可動化手段5は、回転軸Rの周りで回転され得るハンドルを含む。この場合、可動ハンドルは、底壁39に固定される。ここでは、可動ハンドルは、軸Rに沿って底壁39から延びるスリーブ54、およびスリーブ54から外側に向かって延びる把持部56(この場合はホイールの形態にある)を含む。
【0219】
可動ハンドルは、軸Rの周りでのその回転において、第2のハウジング部分3と一体である。故に、施術者または患者が把持部56を掴み、図11に例証されるように上記把持部を枢動させる場合、第2の部分3は回転される。
【0220】
好ましくは、第2の部分3の機械的作用中、第1の部分2は、筋肉8に対して固定されたままである。留め具83など、第1の部分2の安定化手段が、例えば、この目的のために提供される。
【0221】
側壁38の内側に径方向に位置する体積に存在する骨軟骨形成原細胞は、第2の部分3の回転運動によって駆動される傾向がある一方、側壁28の内側に径方向に位置する体積に存在する骨軟骨形成原細胞は、固定されたままである傾向がある。
【0222】
せん断表面Zは、側壁28の内側の空間と側壁38の内側の空間との間の界面に示される。第2の部分3の回転運動中、せん断応力は、特に、せん断表面Zの近くに位置する細胞において、発生する。
【0223】
上に説明されるように、そのようなせん断応力は、骨軟骨形成原細胞の軟骨細胞への定方向性分化を促進する。軟骨面の発現は、せん断表面Zの近くで促進される。
【0224】
任意選択的に、および有利には、空間40の内側のせん断に対する剛性の勾配を作成するため(底壁29および39の近くではせん断に対する高い剛性、およびせん断表面Z近くのより低い剛性)、第1のハウジング部分2および/または第2のハウジング部分3は、上記2つのハウジング部分のそれぞれの底壁29および39から延びる円すい形チップ43を含む。円すい形チップ43は、それらの間に、例えば、平行6面体またはハニカム形状の形態にある区画を形成する。細胞発現空間40は、区画の底へ延びる。
【0225】
本例では、円すい形チップ43は、第1の部分2および第2の部分3の両方に提供される。利点は、細胞発現空間40の内側のせん断に対する剛性の勾配を増加させることである。さらには、円すい形チップ43は、第1の部分2と第2の部分3との間の細胞発現空間40を延長する腔を形成する。故に、軟骨下領域の形成が、獲得される新たに形成された軟骨において促進される。
【0226】
第1の固定部分2では、円すい形チップ43の間に形成される腔は、好ましくは、貫通腔である。故に、格子42が底壁29に形成され、これにより固定されたままであるように誘発される。
【0227】
対照的に、底壁39は、好ましくは、穿孔されない。底壁39の外表面は、好ましくは、平滑である。
【0228】
任意選択的に、および有利には、植込み型デバイスは、デバイスが移植される身体の領域、この場合は筋肉8、に対する第1の部分2の安定化手段をさらに含む。この例では、デバイスは、留め具83を含む。留め具83は、第1の部分2(例えば、側壁28)を表皮82にしっかりと接続する。留め具83は、例えば、2つの縫合糸を含み、その各々が、一方の端を側壁28に、および反対端を表皮82に固定される。故に、第2の部分3の可動化中、第1の部分2は、筋肉8に対して固定されたままである。
【0229】
この第3の例による植込み型デバイスの利点は、第1の部分2および第2の部分3が可動化中に互いに対して軸方向に移動されないことである。第1の部分2および第2の部分3の内側にそれぞれ含まれる骨軟骨形成原細胞の2つの体積は、可動化全体を通して接触したままである。これにより、せん断応力が縁において不十分であるということを回避することが可能である。
【0230】
この第3の例による植込み型デバイスは、2つの軟骨の同時形成を可能にする。新たに形成された骨軟骨組織の抽出後、円すい形チップ43(存在する場合)は、好ましくは、新たに形成された組織を組み込まない。
【0231】
可能性のある代替案において、この例2Bの植込み型デバイスは、ハウジングの内側に剛性化要素7の1つまたは複数のネットワークを含み得る。上に説明されるものと同様の構造の剛性化要素7は、例えば、底壁29および/または底壁39に対して位置付けられ、好ましくは、十字形状を有する。剛性化要素7は、好ましくは、円すい形チップ43に取って代わり、対応する底壁の範囲の大半の部分をカバーする。そのような剛性化要素7は、新たに形成された骨軟骨組織に組み込まれ得る(特に、これらの剛性化要素が、生体吸収性の生体材料、または関節によって長期間にわたって良好な耐容性を示す別の材料で形成される場合)。
【0232】
例2B - 凸状軟骨を形成するための回転での可動化
図12は、第3の例と構造的および機能的に同様の第4の例による植込み型デバイスを示す。
【0233】
この第4の例において、第2の部分3は、外部可動化手段5を介して、第1の部分2に対して軸Rの周りを回転可能である。第4の例のデバイスは、第1の部分2および第2の部分3の特定の構造的特徴により、第3の例のデバイスとは異なる。第1の部分2への第2の部分3の取り付けのため、先行する例にあるように、調節可能なねじ付き固定リングが、第2の部分3に提供され得る。
【0234】
この第4の例では、第2の部分3の底壁39は、好ましくは、平滑であり、穿孔されない。第1の部分2の底壁29は、好ましくは、修復マトリックス4の血管新生を促進する格子42を形成するように、穿孔される。
【0235】
この第4の例では、骨膜移植片は、好ましくは、茎によって血管新生されたままである。この目的のため、貫通穴が、好ましくは、茎の管が通り抜けることを可能にするために、第1の部分2を通って提供される。
【0236】
この場合、第1の部分2の底壁29および/または第2の部分3の底壁39は、平坦な幾何形状を有さない。ここでは、2つの底壁29および39は、湾曲している。底壁29および39の凸面は、好ましくは、修復対象の軟骨の損傷した区域の凸面に対応する。底壁29および39の形状に必要な凸面は、例えば、治療対象の軟骨の茎の3Dモデルから決定される。利点は、植込み型デバイスの設計から、可動化フェーズの終わりに獲得される新たに形成された軟骨のための適切な最終形状を提供することである。
【0237】
可動部分の凸面のそのような適合は、上に説明される他の例のいずれかについても同様に適用可能であるということを理解されたい。
【0238】
加えて、この場合、この例2Bの植込み型デバイスは、底壁39に対して位置付けられる剛性化要素7を含む。剛性化要素7は、好ましくは、先行する例2Aの第2の部分3の円すい形チップ43に取って代わる。第4の例による植込み型デバイスは、例えば、非平坦形状(本例2Bにおける凸形状)を有する軟骨の単一の損傷区域を治療するために、第1の部分2の側における単一の新たに形成された軟骨の形成を可能にするのに好適である。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】