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特表2024-521519全身性硬化症の予防または治療用薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】全身性硬化症の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20240524BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K31/496
A61K39/395 N
A61P11/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61P29/00 101
A61P37/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578001
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2022010751
(87)【国際公開番号】W WO2023003416
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0097163
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEWOONG PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35-14,Jeyakgongdan 4-gil,Hyangnam-eup,Hwaseong-si,Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】リー,キャロライン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ダジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュンソク
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC39
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明による薬学的組成物は、全身性硬化症の予防または治療に有用に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、全身性硬化症の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
【請求項2】
前記全身性硬化症は、全身性硬化症関連肺疾患(systemic sclerosis associated interstitial lung disease;SSc-ILD)である、
請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物は、全身性硬化症関連肺疾患の皮膚硬化緩和および肺機能改善の二重効果を有する、
請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩である、
請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬学的組成物は、線維化症の予防または治療に使用される他の有効成分を追加的に含む、
請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記線維化症の予防または治療に使用される他の有効成分は、ニンテダニブまたはトシリズマブである、
請求項5に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身性硬化症の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
全身性硬化症(systemic sclerosis;SSc)は、皮膚、血管、内部臓器の肥大(厚くなること)や硬化(硬くなること)を起こす退行性疾患であって、自己免疫リウマチ疾患に属する。この疾患は慢性的で長期間にわたって進行する。全身性硬化症の原因はまだ明らかにされていないが、特定の化学物質(トルエン、ベンゼン、ビニルクロライド、シリカなど)も発病と関連があるという報告もあり、病歴、理学的検査、組織検査、血液検査を総合して診断する。上部下部胃腸管検査、X-ray検査、肺機能検査、心電図、心超音波検査などで臓器内部の損傷程度を確認することができる。
【0003】
全身性硬化症は、一般に、予後が悪くないものの、肺、腎臓、または心臓に転移した場合、生命を脅かすことがある。間質性肺疾患および肺動脈高血圧が進行して呼吸困難などが起こり、深刻な高血圧を伴った腎臓危機が発生することがある。
【0004】
全身性硬化症は、内部の免疫体系のエラーによって発生する自己免疫疾患の一種類である。全身性硬化症は、リウマチ内科で診療、自己免疫阻害による多様な症状を好転させるための治療を行う。全身性硬化症は、皮膚侵犯部位の程度に応じて極限性(limited)またはびまん性(diffuse cutaneous)全身性硬化症に大きく分類されるが、全身性硬化症患者の一部は、免疫調節障害とともに全身性硬化症関連肺疾患(SSc-ILD)症状が現れる。全身性硬化症関連肺疾患は、主にびまん性全身性硬化症でより多く観察される。また、その25~30%の患者は進行性全身性硬化症関連肺疾患(progressive SSc-ILD)に発展して、全身性硬化症患者の主な死亡原因として知られている(Lancet,2017;390:1685-1699)。
【0005】
全身性硬化症関連肺疾患は、全身性硬化症患者で発生する呼吸器疾患で、呼吸器内科で診療、肺機能を改善するための治療を行う。全身性硬化症関連肺疾患は、全身性硬化症患者の早期死亡率と関連性が高く、米国国内の調査結果、全身性硬化症患者の肺線維症による死亡率が約20年間6%から33%に5倍以上に増加して、間質性肺疾患が全身性硬化症関連死亡の最も頻繁な原因になり、EULARの調査結果でも35%以上の全身性硬化症患者の死亡率に影響を与えていることを明らかにした。(Steen VD,Medsger TA.Changes in causes of death in systemic sclerosis,1972-2002.Ann Rheum Dis.2007;66:940-4)
【0006】
全身性硬化症がある患者で間質性肺疾患の発病または進行に対する危険要素には、dcSSc(diffuse cutaneous systemic sclerosis)の存在、アフリカ系米国人、発病時の年齢(高齢)、より短い疾病期間およびanti-Scl-70/anti-topoisomerase I抗体およびanti-centromere抗体の不在など、未だに究明されていない多様な理由によって間質性肺疾患の発病条件が成立した時に発病する。しかし、このような危険要素のどれも絶対的ではなく、全身性硬化症が誘発されるからといって、無条件に全身性硬化症関連肺疾患が誘発されるのではない。また、すべての患者が呼吸器症状を示すのではないので、診断にあたる医師や研究者らは多様な方法によりその早期診断および治療剤の開発に力を傾けている(Respiratory Research volume20,Article number:13(2019))。
【0007】
特に、最近の臨床試料を用いた研究をみると、全身性硬化症関連肺疾患は、全身性硬化症患者に由来するが、血液中の多様なcytokineおよびIGFBP-1、MMP-9、およびH3.1などのような多様なBiomarkerの有意な差を示していて、患者の疾患的特性が異なることを示していると考えられる。これらの研究は、今のところ、全身性硬化症コホートで全身性硬化症関連肺疾患を診断するためのBiomarkerとして活用するために持続的に進められており、これは2つの疾病が関連性が高いものの独立した分類と考えられるベースになり得るデータである。また、MMP-7およびMMP-9が血液中特異的に全身性硬化症関連肺疾患患者で全身性硬化症患者より増加しているという事実は、肺線維化的発病の理由および1/3に達する全身性硬化症関連肺疾患患者の急速で高い死亡率を裏付ける証拠である上に、全身性硬化症関連肺疾患と全身性硬化症を臨床的のみならず病理学的にも区分できる根拠として解釈される((i)Clin Epigenetics.2020Aug17;12(1):124、(ii)Sarcoidosis Vasc Diffuse Lung Dis.2015Sep14;32(3):228-36、(iii)European Respiratory Journal2021 58:2101560)。
【0008】
全身性硬化症は、現在まで病症の進行を中断させられる治療法がなく、一部の薬物を介して特定の症状を緩和し、器官の損傷を減少させることができる。非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)が関節の痛みの緩和に役立ち、カルシウム通路遮断剤はレイノー現象の症状を緩和させることができるが、胃腸の問題をもたらすことがある。コルチコステロイドを介した筋肉炎症状緩和、免疫抑制剤を介した肺炎症緩和、高血圧薬物を介した急性腎臓損傷および血圧上昇緩和が可能であるが、一部症状の緩和効果に過ぎないという限界点があり、全般的な症状緩和薬物は存在しない。
【0009】
全身性硬化症関連肺疾患については、オフェブ(登録商標)(ニンテダニブ、Nintedanib)およびアクテムラ(登録商標)(トシリズマブ、tocilizumab)が治療剤として許可された。ニンテダニブは、特発性肺線維症治療剤として肺線維症患者の肺機能を改善することが知られている。しかし、ニンテダニブは、肺線維化の改善にのみ効果があり、皮膚硬化症状については治療効果の立証に失敗して、すでに進行性間質性肺疾患が伴う末期全身性硬化症関連肺疾患患者に肺機能改善のための補助治療剤としてのみ処方されている。トシリズマブは、リウマチ関節炎を治療するための免疫抑制剤としてリウマチ疾患の症状を緩和することが知られている。しかし、トシリズマブは、線維化の緩和/改善を立証できず、深刻な肺機能の阻害がまだ発生していない初期段階の全身性硬化症関連肺疾患患者に予防次元の補助治療剤として使用されている。つまり、許可された両薬物とも、全身性硬化症はもちろん、全身性硬化症随伴肺疾患患者に根本的な治療効果を提供できないのでfirst-line treatmentとして処方されておらず、依然として患者はcyclophosphamide、mycophenolateのような副作用が激しい免疫抑制剤に依存しなければならない。
【0010】
一方、PRS(prolyl-tRNA synthetase)は、アミノアシル-tRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase;ARS)ファミリー酵素群の一つであって、タンパク質合成のためにアミノ酸を活性化させる役割を果たす。つまり、ARSは、アミノアシルアデニレート(AA-AMP)を形成した後、活性化されたアミノ酸を対応するtRNAの3番末端に移動させる役割(translational function)を果たす。ARSは、タンパク質合成に核心的な役割を果たすため、ARS阻害は、すべての細胞の生長と成長を抑制する。これによって、ARSは、抗生剤や細胞過発現を抑制しなければならない疾病治療剤の有望なターゲットとして認識されている(Nature,2013,494:121-125)。
【0011】
PRSは、EPRS(Glutamyl-Prolyl-tRNA Synthetase)形態の多重合成酵素複合体(multisynthetase complex、MSC)状態で存在して機能する。特に、多様なMSCの中でも、EPRSは、血管新生(angiogenesis)の核心因子であるVEGF A(vascular endothelial growth factor A)の生成を抑制する転写サイレンサー(translational silencer)として機能し、また、多様な固形癌と密接な関連性があると報告された(Nat.Rev.Cancer,2011,11,708-718)。
【0012】
そこで、本発明者らは、全身性硬化症の予防または治療方法を鋭意研究した結果、後述する特定のPRS阻害剤が全身性硬化症の予防または治療に有用であることを確認して、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、全身性硬化症の予防または治療に有用に使用できる薬学的組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記のような全身性硬化症の予防または治療用薬学的組成物を提供する:
下記の化1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、全身性硬化症の予防または治療用薬学的組成物。
【化1】
【0015】
上記化1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、韓国特許登録番号第10-2084772号に記載の化合物であって、具体的には、当該明細書の実施例40に記載された物質である。
【0016】
本発明による薬学的組成物は、全身性硬化症の中でも、特に、全身性硬化症関連肺疾患(systemic sclerosis associated interstitial lung disease;SSc-ILD)の予防または治療に有用に使用できる。特に、本発明による薬学的組成物は、全身性硬化症関連肺疾患の皮膚硬化緩和および肺機能改善の二重効果を有する。本発明で使用する用語「肺機能改善」は、実質的な肺の基本的な機能である、血液を体内供給する能力が改善されることを意味し、これは肺線維化の改善に当然伴う効果ではなく、肺線維化指標とは別に、体内酸素飽和度により確認することができる。
【0017】
本発明で使用される用語「予防」は、本発明の組成物の投与で前記疾患の発生、拡散および再発を抑制させたり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」は、本発明の組成物の投与で前記疾患の症状が好転または有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0018】
一方、上記化1で表される化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用可能であり、塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が有用である。遊離酸としては、無機酸と有機酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸などを使用することができ、有機酸としては、クエン酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、4-トルエンスルホン酸、グルタミン酸、またはアスパラギン酸などを使用することができる。好ましくは、上記化1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩である。
【0019】
また、上記化1で表される化合物は、結晶形態または非結晶形態で製造可能であり、結晶形態で製造される場合、任意に水和または溶媒和できる。本発明では、上記化1で表される化合物の化学量論的水和物だけでなく、多様な量の水を含有する化合物が含まれる。上記化1で表される化合物の溶媒和物は、化学量論的溶媒和物および非化学量論的溶媒和物をすべて含む。
【0020】
本発明の薬学的組成物は、標準薬学的実施により経口または非経口投与形態に剤形化することができる。これらの剤形は、有効成分のほか、薬学的に許容可能な担体、補助剤または希釈液などの添加物を含有することができる。
【0021】
適当な担体としては、例えば、生理食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物性オイルおよびイソプロピルミリステートなどがあり、希釈液としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシンなどがあるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の化合物は、注射溶液の製造に通常使用されるオイル、プロピレングリコールまたは他の溶媒に溶解することができる。また、局所作用のために、本発明の化合物を軟膏やクリームに剤形化することができる。
【0022】
本発明の化合物の薬学的投与形態は、これらの薬学的に許容可能な塩または溶媒和物の形態でも使用可能であり、また、単独でまたは他の薬学的活性化合物と結合だけでなく適当な集合で使用可能である。一例として、本発明による薬学的組成物は、全身性硬化症の予防または治療に使用される他の有効成分を追加的に含むことができる。このような他の有効成分の例には、オフェブ(登録商標)(ニンテダニブ、Nintedanib)またはアクテムラ(登録商標)(トシリズマブ、tocilizumab)が挙げられる。また、本発明による薬学的組成物が他の有効成分を追加的に含む場合、上記化1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と、他の有効成分との重量比は、1:0.1~1:10が好ましい。
【0023】
本発明の化合物は、一般的な食塩水、5%デキストロースのような水溶性溶媒または合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステルまたはプロピレングリコールのような非水溶性溶媒に化合物を溶解したり、懸濁させたりまたは乳化させて注射剤として剤形化できる。本発明の剤形は、溶解剤、等張化剤(isotonic agents)、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤のような通常の添加剤を含むことができる。
【0024】
本発明による薬学的組成物を経口または非経口的経路を通して投与可能である。投与方法により、本発明による組成物は、上記化1で表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を0.001~99重量%、好ましくは0.01~60重量%含有することができる。
【0025】
本発明の薬学組成物は、マウス、ラット、家畜およびヒトなどをはじめとする哺乳動物に多様な経路で投与可能である。投与のすべての方式は予想できるが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管(intracerebroventricular)注射によって投与可能である。
【発明の効果】
【0026】
上述のように、本発明による薬学的組成物は、全身性硬化症の予防または治療に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実験例1において、3D skin organoidの厚さをH&E免疫化学染色により確認した結果を示す図である。
図2】本発明の実験例2において、全身性皮膚硬化症skin organoid移植マウスモデルの皮膚厚さを免疫化学染色により確認した結果を示す図である。
図3】本発明の実験例2において、全身性皮膚硬化症skin organoid移植マウスモデルの皮膚組織の線維化因子Collagen I、Collagen III、αSMAを免疫化学染色により確認した結果を示す図である。
図4】本発明の実験例3において、マウスに対する実験スケジュールを示す図である。
図5】本発明の実験例3-1において、マウスの体重変化の結果を示す図である。
図6】本発明の実験例3-2において、マウスの肺重量変化の結果を示す図である。
図7】本発明の実験例3-3において、マウスの肺機能評価の結果を示す図である。
図8】本発明の実験例3-4において、マウスの皮膚厚さ評価の結果を示す図である。
図9】本発明の実験例3-5において、マウス体内のコラーゲン含有量測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、下記の実施例によって本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0029】
実施例
韓国特許登録番号第10-2084772号の実施例40と同様の方法で下記の化合物を製造し、以下、「活性成分」または「Example」と名付けた。
【化2】
1H NMR (500 MHz, MeOD): δ 9.67 (s, 1H). 8.02 (d, 1H), 7.82 (d, 1H), 4.62 (m, 2H), 3.60 (m, 1H), 3.28 (m, 1H), 2.99 (m, 2H), 2.25 (m, 2H), 2.08 (m, 2H), 1.99 (m, 1H), 1.78 (m, 2H), 1.54 (m, 1H)
【0030】
実験例1:3D skin organoidモデルにおける皮膚硬化緩和効果の確認
全身性皮膚硬化症患者のiPSC由来線維芽細胞を用いて、文献(Lancet.2009Nov21;374(9703):1745-53)に記載の方法により3D skin organoidを作製し、活性成分1uMをDMSO溶液で処理した時、3D skin organoidの厚さが減少することを、H&E免疫化学染色により確認した(図1)。対照群はDMSOのみ処理した。
【0031】
実験例2:3D skin organoid移植マウスモデルにおける皮膚硬化緩和効果の確認
先に構築された全身性皮膚硬化症患者iPSC由来3D skin organoidをSCIDマウスに移植して全身性皮膚硬化症マウスモデルを構築した。マウスの皮膚組織を1x2cmに切断した後、3D skin organoid皮膚組織をマウスの皮膚に縫合した。皮膚移植方法は、臨床で使用されるtie-over dressing方法を用いて、マウスの背中に移植した。縫合部位にガーゼを載せた後、縫合糸で縛り、バンドでドレッシングした。
【0032】
全身性皮膚硬化症skin organoid移植マウスモデルに活性成分3mg/kg、10mg/kgを2週間毎日皮下投与を進行させた。陰性対照群(NC)は正常皮膚組織に生理食塩水を、陽性対照群(SSc)は全身性皮膚硬化症skin organoid移植皮膚組織に生理食塩水を投与した。全身性皮膚硬化症の1次評価指標である皮膚厚さを免疫化学染色により測定して、その結果を図2に示した。図2に示されているように、活性成分によって皮膚組織の厚さが有意に減少することを確認した(***p<0.001)。
【0033】
活性成分によって全身性皮膚硬化症皮膚組織で線維化因子が減少するか否かを確認するために免疫化学染色を行い、その結果を図3に示した。図3に示されているように、活性成分によって線維化因子Collagen I、Collagen III、αSMAが有意に減少することを確認した(*p<0.05、***p<0.001)。
【0034】
実験例3:全身性硬化症関連肺疾患(SSc-ILD)マウスモデルにおける治療効果の確認
C57BL/6マウス7週齢を入手して、5日以上室内で順化させた。全身性硬化症関連肺疾患モデルは、osmotic pumpを注入したモデルをdesignした。その理由として、万一、osmotic pumpを用いたモデリングでなければ、毎日試験動物の背中にBLMを皮下注射で4週間注入しなければならないモデルであり、このような試験は投与部位に非常に激しい痛みを与えかねないからである。
【0035】
図4に示されているように、osmotic pumpを用いた薬物の投与速度は0.5ul/hrであり(7days)、osmotic pumpの大きさは1.5cmであった。切開部位を縫合し、osmotic pumpを挿入した後、1週間bleomycin投薬後、10日目にosmotic pumpを除去した。1週間BLM投与マウスモデルで全身性硬化症関連肺疾患が誘発されたことを確認し、具体的な実験群は下記表1の通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
実験例3-1:Body weight(%)
活性成分投与28daysの結果に基づいて(表2および図5)、体重の変化は活性成分3mg/kgから有意な結果を示し、30mg/kgではp<0.01で、vehicleに比べて体重が有意に増加したことを確認した。
【0038】
【表2】
【0039】
実験例3-2:Lung weight
Lung weightの変化は、30mg/kgでのみ有意な傾向性を示したが、body weightに補正時、10mg/kgから有意性が現れ、30mg/kgではp<0.01で有意性が高くなることを確認した(表3および図6)。
【0040】
【表3】
【0041】
実験例3-3:肺機能(Lung Function)評価(SpO2(%))
本肺機能評価は、全身性硬化症関連肺疾患患者における本活性物質の治療効果を示すための実験であって、一般的な肺線維化の改善効果とは異なり、実質的に全身性硬化症関連肺疾患患者の症状と生活の質を左右する最も大きな影響を与える、最も直接的で重要な評価指標である。これは、体内酸素濃度を測定することによって、全身性硬化症関連肺疾患動物モデルにおける肺の機能改善効果を最も直接的に示すことができる実験である。
【0042】
28日目にマウスの腹部側を通してSpO2測定装置(Berry、Veterinary Pulse Oximeter)で測定した。その結果を図7に示した。
【0043】
図7に示されているように、活性成分10mg/kgから有意な結果を示し、活性成分30mg/kgではp<0.001で、vehicleに比べて酸素飽和度が高くなったことが分かった。また、活性成分30mg/kg投与群では、比較群のニンテダニブ60mg/kg投与群と同等程度の酸素飽和度回復率を示していることを確認した。
【0044】
実験例3-4:皮膚厚さ(Skin thickness)評価
28日目にマウスから皮膚組織を抽出して、H&EおよびMansson’s Trichrome(MT stain)を進行させた。Stainが進行した写真をimagejを通してrandomに10箇所のskin thicknessを測定した(最小200~300umの間隔をおいて進行)。できるだけ写真の全体部位を均一に測定し、測定時、stain組織が損傷している部位は排除した。その結果を図8および表4に示した。
【0045】
図8に示されているように、BLM群では、skinのdermisのほか、Adiposeがなければならない部分にもCollageがいっぱいに埋められてよく誘導されたことが確認された。活性成分10mg/kgから有意な結果を示すことが確認され、活性成分30mg/kgではP<0.0001以下で非常に有意な結果を示した。また、全体的に活性成分を投与した時、MT stainの染色程度が低いことから、皮膚内のコラーゲン密度が減少したことを確認した。特に、活性成分3mg/kgでskin thicknessは著しく減少しなかったが、skinのcollagenのdensityが減少する傾向性を示すことが確認された。特に、活性成分10mg/kgでニンテダニブ60mg/kgより優れたskin thicknessの改善効果が確認された。
【0046】
【表4】
【0047】
実験例3-5:体内のコラーゲン含有量の測定
マウス体内のhydroxyproline量を測定して、コラーゲン含有量を間接的に測定しようとした。INSOLUBLE Collagen Assay(Biocolor、S2000)を用いて分析し、具体的には、下記の通りであった。
【0048】
まず、冷凍された皮膚組織10mgを100ul Fragmentation Reagentとともに粉砕した。37%HCl100ulを添加し、65℃で3時間incubationした。30分間隔で組織崩壊を助けるためにチューブ内容物を振った。12,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、1.5ml tubeに移した。10~100ulの間のsampleから50ulを取り、蒸留水を添加して100ulに合わせてsampleを準備した。
【0049】
前記準備されたsample100ulに1ml dyeを入れて、30分間混合した。12,000rpmで10分間遠心分離した後、新しいtubeに移した。750ulのice-cold Acid-Salt Wash ReagentでDyeを除去した。12,000rpmで10分間遠心分離した後、新しいtubeに移した。チューブをvortex mixerを用いてコラーゲン結合染料を溶液と混合し、コラーゲン結合染料を10分内に溶解して、測定準備を完了した(2~3時間内に測定を完了しなければならない)。吸光度を測定する準備ができるまでチューブの蓋を閉じておいた。
【0050】
各試料の200ulを96micro-well plateの個別wellに移し、560nmで吸光度を測定した。Hydroxyproline値をnormal群に比べてratio値で結果を表示し、その結果を表5および図9に示した。
【0051】
BLM群を確認した結果、Saline群に比べてskinのHydroxyprolineが2倍以上増加したことを確認して、モデリングがよく行われたことを確認した。また、活性成分10mg/kgから有意な結果を示し、活性成分30mg/kgではP<0.001以下で非常に有意な結果を示した。
【0052】
【表5】
【0053】
上記の実験結果を通して確認できるように、本発明の活性成分は、全身性硬化症治療効果と全身性硬化症関連肺疾患の肺機能の阻害改善という全く異なる2つの効果を示した。このような二重効果は、いずれか1つに対する治療効果を通して予測できない部分であり、本発明の活性物質の特徴として把握される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】