(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント調節因子と組み合わせた腫瘍内アルファ放射体照射
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20240524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/4245 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/7064 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/63 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20240524BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K51/00 100
A61K39/395 N
A61K31/4245
A61K31/7064
A61K31/444
A61K31/454
A61K31/497
A61K31/63
A61K31/437
A61K31/165
A61K31/44
A61K31/403
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578793
(86)(22)【出願日】2022-06-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2022055680
(87)【国際公開番号】W WO2022269446
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519371231
【氏名又は名称】アルファ タウ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ケイサリ ヨナ
(72)【発明者】
【氏名】ケルソン イツァーク
(72)【発明者】
【氏名】ドマンケヴィッチ ヴェレド
(72)【発明者】
【氏名】デル マレ ロウマニ サラ
(72)【発明者】
【氏名】デン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】マンスール ファイルズ
(72)【発明者】
【氏名】シーガル ローネン
(72)【発明者】
【氏名】エフラティ マーガリット
(72)【発明者】
【氏名】シャイ アミット
(72)【発明者】
【氏名】ニシュリ ヨッシ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084AA19
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
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4C086BC10
4C086BC17
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4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
患者の腫瘍の処置のための医薬として使用するための、免疫チェックポイントを調節する物質であって、医薬の投与パターンが、1つ又は複数のセッションで治療有効量の前記物質を腫瘍に投与すること、及び前記物質を投与することから2週間未満で腫瘍内アルファ放射体放射線療法のためにラジウム224を担持するシード(204)を腫瘍に移植することを含む、前記物質。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍の処置のための医薬として使用するための、免疫チェックポイントを調節する物質であって、医薬の投与パターンが、1つ又は複数のセッションで治療有効量の前記物質を腫瘍に投与すること、及び前記物質を投与することから2週間未満で腫瘍内アルファ放射体放射線療法のためにラジウム224を担持するシードを腫瘍に移植することを含む、前記物質。
【請求項2】
医薬の投与パターンが、シードの移植から5日未満のうちに前記物質を投与することを開始することを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項3】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも12時間後に前記物質の投与を開始することを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項4】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも72時間後に前記物質の投与を開始することを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項5】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも12時間前に前記物質の投与を開始することを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項6】
医薬の投与パターンが、シードの移植の少なくとも72時間前に前記物質の投与を開始することを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項7】
抗血管新生薬を含む、請求項1に記載の物質。
【請求項8】
チェックポイント阻害剤を含む、請求項1に記載の物質。
【請求項9】
低分子阻害剤を含む、請求項1に記載の物質。
【請求項10】
ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、トリパリマブ、又はシンチリマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項11】
アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項12】
イピリムマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項13】
レラトリマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項14】
LY3321367を含む、請求項1に記載の物質。
【請求項15】
チラゴルマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項16】
エパカドスタットを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項17】
エノブリツズマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項18】
HLX23又はORIC-533を含む、請求項1に記載の物質。
【請求項19】
モナリズマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項20】
ペキシダルチニブ又はラクノツズマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項21】
ペピネマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項22】
エナポタマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項23】
タボリマブ又はクダロリマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項24】
ボプラテリマブ、ソチガリマブ又はエロツズマブを含む、請求項1に記載の物質。
【請求項25】
シードが:
少なくとも1ミリメートルの長さを有する支持体;及び
シードが腫瘍に移植された場合に、崩壊なしでラジウム224原子の20%以下が24時間内に支持体から腫瘍に出るが、崩壊の際にラジウム224原子の少なくとも5%の娘放射性核種が崩壊の際に支持体を出るように支持体に結合している、ラジウム224原子
を含む、請求項1~24のいずれかに記載の物質。
【請求項26】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、
細胞内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程;及び
腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始の2週間以内に、免疫チェックポイントを調節する物質を患者に投与する工程
を含む、方法。
【請求項27】
物質を投与する工程が、免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
物質を投与する工程が、免疫チェックポイント二重特異性抗体を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
物質を投与する工程が、免疫チェックポイントを内部移行する分子を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
物質を投与する工程が、LAG3チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
物質を投与する工程が、PD-1チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
物質を投与する工程が、PDL-1チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
物質を投与する工程が、CTLA4チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
物質を投与する工程が、低分子阻害剤を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
物質を投与する工程が、共刺激分子を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
物質を投与する工程が、ニボルマブ又はペンブロリズマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
物質を投与する工程が、アテゾリズマブ、アベルマブ又はデュルバルマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
物質を投与する工程が、イピリムマブ又はトレメリムマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
物質を投与する工程が、レラトリマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
物質を投与する工程が、テボテリマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
物質を投与する工程が、TSR-022を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
物質を投与する工程が、エチジリマブ又はチラゴルマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
物質を投与する工程が、エノブリツズマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
物質を投与する工程が、ポマリドミドを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
物質を投与する工程が、ベルゾセルチブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
物質を投与する工程が、セレコキシブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項47】
物質を投与する工程が、ベムラフェニブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
物質を投与する工程が、ボリノスタットを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項49】
物質を投与する工程が、ソラフェニブ又はスニチニブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項50】
物質を投与する工程が、タボリマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項51】
物質を投与する工程が、エロツズマブを投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項52】
物質を投与する工程が、腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始の少なくとも72時間後に前記物質を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項53】
物質を投与する工程が、腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始後2週間未満で前記物質を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項54】
物質を投与する工程が、腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始後144時間未満で前記物質を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項55】
物質を投与する工程が、免疫チェックポイント遮断薬を投与する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項56】
患者の処置のためのキットであって、
アルファ放射原子がその上にマウントされた、対象の体に少なくとも部分的に導入するための、少なくとも1つの供給源;
少なくとも1つの免疫チェックポイント調節因子;並びに
少なくとも1つの供給源及び少なくとも1つの免疫チェックポイント調節因子を含有するパッケージ
を含む、キット。
【請求項57】
患者の腫瘍のアルファ放射体放射線療法処置で使用するために設計されたアルファ放射装置であって、アルファ放射体放射線療法処置パターンが、アルファ放射体装置で腫瘍を処置すること、その後、アルファ放射体放射線療法の開始後6週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の免疫チェックポイント調節因子を投与することを含む、アルファ放射装置。
【請求項58】
アルファ放射体放射線療法処置パターンが、アルファ放射体装置で腫瘍を処置すること、その後、アルファ放射体放射線療法の開始後2週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の免疫チェックポイント調節因子を投与することを含む、請求項57に記載のアルファ放射装置。
【請求項59】
アルファ放射体放射線療法の開始後6週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の免疫チェックポイント調節因子で処置された腫瘍を有する集団のアルファ放射体放射線療法処置で使用するために設計された、アルファ放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、腫瘍治療、及び特に腫瘍内アルファ放射体照射と免疫チェックポイント調節因子との併用に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界中の多くの国における主要死因である。したがって、がんの処置に莫大な量の資源が費やされており、多種多様なかかる処置が提案されている。
ある種類の腫瘍治療は、インサイチュで腫瘍細胞を殺滅する、腫瘍アブレーションである。インサイチュでの細胞の殺滅に加えて、腫瘍アブレーションは、残りの腫瘍細胞及び離れた腫瘍細胞の排除をもたらす、抗腫瘍免疫応答を誘導し得る。これは、死んだ腫瘍細胞及び/又は死につつある腫瘍細胞から放出される、腫瘍抗原及び危険信号の拡散によって起こる。腫瘍抗原は、樹状細胞(DC)等の抗原提示細胞(APC)によって捕捉され、次いで、例えば、Nakayama, Masafumi. "Antigen presentation by MHC-dressed cells." Frontiers in immunology 5 (2015): 672に記載されているような交差提示経路を介してT細胞に提示される。
外部(例えば、体外照射療法)又は内部(例えば、密封小線源治療)から適用し得る、高温又は低温、マイクロ波、レーザー、電気、光線力学、化学的(例えば、活性酸素種(ROS)を使用する)及び放射線アブレーション等の、複数のアブレーション方法が提案されており、アルファ線、ベータ線及び光子照射等の異なるタイプの照射を含み得る。これらの方法の議論は、例えば、Keisari, Yona. "Tumor abolition and antitumor immunostimulation by physico-chemical tumor ablation.”Front Biosci 22 (2017): 310-347に見られる。あらゆる特定の患者に使用されるアブレーション方法は、一般に、腫瘍のタイプ、その位置、サイズ、ステージ及び/又は腫瘍の他のパラメーターに従って選択される。
【0003】
免疫療法と呼ばれる、別の種類の腫瘍治療は、腫瘍細胞に対する患者の免疫応答の促進を伴う。免疫チェックポイント阻害剤、Toll様受容体(TLR)アゴニスト(例えば、CpG)、局所的遺伝子療法、サイトカイン療法、ある特定のタンパク質標的に対する抗体、CAR-T細胞療法、樹状細胞ワクチン、腫瘍浸潤リンパ球の養子移入、免疫抑制細胞の阻害、及び腫瘍溶解性ウイルス療法等の、多くの免疫療法方法が提案されている。これらの方法は、例えば、Papaioannou, Nikos E., et al. "Harnessing the immune system to improve cancer therapy." Annals of translational medicine 4.14 (2016)で議論されている。一般に、各患者に使用される特定の方法は、腫瘍のタイプ又はそのステージに従って選択される。上述の療法のタイプの複数の組合せが、例えばAznar, M. Angela, et al. "Intratumoral delivery of immunotherapy act locally, think globally." The Journal of Immunology 198.1 (2017): 31-39の表1に記載されるように、前臨床及び臨床試験で試験された。免疫チェックポイント阻害剤での処置の場合、例えば、処置の奏効率は比較的低い(約20%)。処置を受ける患者は殆ど応答しないばかりでなく、重大な有害効果を生じる。免疫チェックポイント阻害剤の奏効率を促進し得る処置を見つけるために、広範な努力が為されているが、現在、著しい成功はない。
【0004】
"Randomized Phase-II Trial of Nivolumab with Stereotactic Body Radiotherapy Versus Nivolumab Alone in Metastactic Head and Neck Squamous Cell Carcinoma"と題された、Sean McBride et al., Journal of Clinical Oncology, vol. 39, issue 1, page 30-38の論文は、体幹部定位放射線治療をニボルマブに加えても向上は見られなかった試験について記載している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一部の実施形態の一態様は、免疫チェックポイント調節因子と腫瘍内アルファ放射体放射線療法(alpha-emitter radiotherapy)との間の相乗作用に基づく腫瘍処置に関する。用語、腫瘍内は、本明細書で、アルファ放射体放射性核種を1つ又は複数の最初の位置で腫瘍内のシードに埋め込み、アルファ放射体放射性核種又はその娘放射性核種は腫瘍中の他の位置に移動し、そこでアルファ放射崩壊が起こる、処置をいう。シードからの放射性核種の移動は、シード上の放射性核種が複数の放射性崩壊の連鎖を開始する場合、拡散によっても、崩壊によってもよい。
以下の記載及び特許請求の範囲に挙げられている種々の選択肢及び代替物は、選択肢が特に矛盾している場合を除き、代替的に、又はあらゆる適した組合せで共に、使用され得る。
したがって、本発明の一実施形態に従って、患者の腫瘍の処置のための医薬として使用するための、免疫チェックポイントを調節する物質であって、医薬の投与パターンが、1つ又は複数のセッションで治療有効量の前記物質を腫瘍に投与すること、及び前記物質を投与することから2週間未満で腫瘍内アルファ放射体放射線療法のためにラジウム224を担持するシードを腫瘍に移植することを含む、前記物質が提供される。
【0006】
医薬の投与パターンは、シードの移植から5日未満のうちに前記物質を投与することを開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも12時間後に前記物質の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも72時間後に前記物質の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも12時間前に前記物質の投与を開始することを含んでもよい。医薬の投与パターンは、シードの移植の少なくとも72時間前に前記物質の投与を開始することを含んでもよい。物質は、抗血管新生薬(antiangiogenic agent)を含んでもよい。物質は、チェックポイント阻害剤を含んでもよい。物質は、低分子阻害剤を含んでもよい。物質は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、トリパリマブ、又はシンチリマブを含んでもよい。物質は、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブを含んでもよい。一部の実施形態では、物質は、イピリムマブ、レラトリマブ、LY3321367、チラゴルマブ、エパカドスタット及び/又はエノブリツズマブを含む。
【0007】
物質は、HLX23又はORIC-533を含んでもよい。或いは、又は更に、物質は、モナリズマブ、ペキシダルチニブ及び/又はラクノツズマブを含む。物質は、ペピネマブを含んでもよい。物質は、エナポタマブを含んでもよい。物質は、タボリマブ又はクダロリマブ(cudarolimab)を含んでもよい。物質は、ボプラテリマブ、ソチガリマブ又はエロツズマブを含んでもよい。一部の実施形態では、シードは、少なくとも1ミリメートルの長さを有する支持体;及びシードが腫瘍に移植された場合に、崩壊なしでラジウム224原子の20%以下が24時間内に支持体から腫瘍に出るが、崩壊の際にラジウム224原子の少なくとも5%の娘放射性核種が崩壊の際に支持体を出るように支持体に結合している、ラジウム224原子を含む。
本発明の一実施形態に従って、腫瘍を有する患者を処置する方法であって、細胞内アルファ放射体放射線療法で腫瘍を処置する工程;及び腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始の2週間以内に、免疫チェックポイントを調節する物質を患者に投与する工程を含む、方法が更に提供される。
【0008】
物質を投与する工程は、免疫チェックポイント阻害剤及び/又は免疫チェックポイント二重特異性抗体を投与する工程を含んでもよい。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、免疫チェックポイントを内部移行する分子を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、LAG3チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、PD-1チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、PDL-1チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、CTLA4チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む。
【0009】
一部の実施形態では、物質を投与する工程は、低分子阻害剤を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、共刺激分子を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、ニボルマブ又はペンブロリズマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、アテゾリズマブ、アベルマブ又はデュルバルマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、イピリムマブ又はトレメリムマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、レラトリマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、テボテリマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、TSR-022を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、エチジリマブ又はチラゴルマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、エノブリツズマブ、ポマリドミド、ベルゾセルチブ及び/又はセレコキシブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、ベムラフェニブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、ボリノスタットを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、ソラフェニブ又はスニチニブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、タボリマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、エロツズマブを投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始の少なくとも72時間後に物質を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始後2週間未満で物質を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、腫瘍内アルファ放射体放射線療法での腫瘍の処置の開始後144時間未満で物質を投与する工程を含む。一部の実施形態では、物質を投与する工程は、免疫チェックポイント遮断薬(immune checkpoint blockade)を投与する工程を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に従った、患者の処置のためのキットであって、アルファ放射原子がその上にマウントされた、対象の体に少なくとも部分的に導入するための、少なくとも1つの供給源、少なくとも1つの免疫チェックポイント調節因子;並びに少なくとも1つの供給源及び少なくとも1つの免疫チェックポイント調節因子を含むパッケージを含む、キットが、更に提供される。
【0011】
本発明の一実施形態に従った、患者の腫瘍のアルファ放射体放射線療法処置で使用するために設計された、アルファ放射装置であって、アルファ放射体放射線療法処置パターンが、アルファ放射体装置で腫瘍を処置することと、その後、アルファ放射体放射線療法の開始後6週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の免疫チェックポイント調節因子を投与することを含む、アルファ放射装置が、更に提供される。アルファ放射体放射線療法処置パターンは、アルファ放射体装置で腫瘍を処置することと、その後、アルファ放射体放射線療法の開始後2週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の免疫チェックポイント調節因子を投与することを含んでもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に従った、アルファ放射体放射線療法の開始後6週間未満で、1つ又は複数のセッションで治療有効量の免疫チェックポイント調節因子で処置された腫瘍を有する集団のアルファ放射体放射線療法処置で使用するために設計された、アルファ放射装置が、更に提供される。
【0013】
装置は、少なくとも1ミリメートルの長さを有する支持体;及び装置が腫瘍に移植された場合に、崩壊なしでラジウム224原子の20%以下が24時間内に支持体から腫瘍に出るが、崩壊の際にラジウム224原子の少なくとも5%の娘放射性核種が崩壊の際に支持体を出るように支持体に結合している、ラジウム224原子を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に従った、治療方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に従った、アルファ放射体照射と免疫チェックポイント調節因子との併用のためのキットの略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に従った、マウス扁平上皮癌腫瘍成長に対するアルファ放射体照射と抗PD-1の併用の効果を試験する実験の結果を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態に従った、マウス膵腫瘍成長に対するアルファ放射体照射と抗PD-1との併用の効果を試験する実験の結果を示すグラフである。
【
図5】マウス扁平上皮癌マウス腫瘍における、樹状(DC)細胞の活性化に対するアルファ放射体照射の効果を試験する実験の結果を示すグラフである。
【
図6A-6C】本発明の一実施形態に従った、マウス扁平上皮癌マウス腫瘍における、それぞれCD3+、CD8+及びグランザイムB T細胞に対するアルファ放射体照射と抗PD-1との併用の効果を試験する実験の結果を示すドットプロットである。
【
図6D】本発明の実施形態に従った、a-PD1対a-PD1と一緒にDaRTでの処理の後の、扁平上皮癌腫瘍組織におけるCD3 T細胞密度を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に従った、マウス脾臓における骨髄系由来免疫抑制細胞(immune myeloid derived suppressive cell)(MDSC)に対するアルファ放射体照射と抗PD-1との併用の効果を試験する実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一部の実施形態の一態様は、患者の腫瘍におけるアルファ放射体照射を含み、アルファ放射体照射と1つ又は複数の免疫チェックポイント調節因子との間の相互作用を達成する時間枠内で患者に1つ又は複数の免疫チェックポイント調節因子の治療上有効な処置を適用する、併用腫瘍処置に関する。一部の実施形態では、1つ又は複数の免疫チェックポイント調節因子は、アルファ放射体照射処置の開始の前又は後4週間以内又は更には2週間以内に患者に投与される。出願人は、アルファ放射体照射とその後の免疫チェックポイント調節因子の特定の免疫療法を適用する特定の腫瘍アブレーションの組合せが、別々に処置のそれぞれよりも実質的により大きい治療効果を有することを見出した。慣習的な放射線療法は、例えば免疫器官を傷つけることによって、又はMDSC等の免疫抑制細胞を増殖させることによって、患者の自然免疫系に損傷を与え得、そのため免疫チェックポイント調節因子の利点を妨害し得るが、出願人は、アルファ放射体照射は、免疫チェックポイント調節因子と共に適用された場合に、免疫抑制集団を減少させながらプラスの効果を有することを見出した。
【0016】
出願人によって行われた実験によると、アルファ放射体照射の後、樹状細胞(DC)はアルファ放射体照射の後約1週間以内に腫瘍において活性化される。この発見により、出願人は、アルファ放射体照射処置の開始から2週間以内に免疫チェックポイント調節因子処置を開始することが有利であり得ると決定した。また、出願人は、処置の間のこの順序付けで、併用治療によって、明確に文書化された、免疫チェックポイント調節因子に対する応答性についての基準である、腫瘍へのT細胞浸潤に相乗作用がもたらされることを示した。また、出願人は、グランザイムB分泌によって表されるT細胞機能が、併用処置においてのみ上昇することを見出した。更に、全身的なMDSC集団は、aPD-1単独療法と比較して、併用処置において減少する。
【0017】
出願人の実験において、出願人が、DaRT処置の開始の7日後に、T細胞を含む、腫瘍における細胞の大量破壊があったことを見出したことに留意されるべきである。また、この段階で、負の調節を行う細胞は腫瘍に入った。しかしながら、更に7日後、DaRT処置の開始から14~16日目に、T細胞及びT細胞の機能の予期しない増大があった。更に、この段階で、負の調節を行う細胞は、減少を示した。この予期しない変化は、免疫チェックポイント調節因子のみで処置した場合には起こらなかった。
【0018】
出願人は、アルファ放射体挿入の後の腫瘍微小環境における免疫細胞と死細胞/死につつある細胞との空間的及び時間的な共存を可能にすることによって、アルファ放射体照射がエフェクターT細胞を刺激してチェックポイント調節に応答させると考えている。腫瘍内拡散型アルファ放射体放射線療法(Diffusing alpha-emitter Radiation Therapy)(DaRT)は、放射性原子で覆われた供給源を任意に用いることによって、腫瘍の処置のためにアルファ放射原子を利用する。アルファ放射原子は、時間的及び空間的の両方に徐放性の様式で局所的に放出される。即ち、原子は腫瘍において徐々に拡散する。最初の時点で、放射能の殆どは供給源の近くに集中している。時間が経つにつれて、この分布は、腫瘍中で、原子の一部が供給源に近い位置からより離れた位置へ移動するように変化する。経時的な放射性原子の移動距離の変化に加えて、各時点について、供給源からの距離の関数として、異なる分布の活性がある。即ち、各所定の時点及び移動距離について、供給源と移動最大距離との間の直線に沿って、異なる量の活性があり、ここで供給源に近い点ほど、一般に、より高い活性を有する。これにより、腫瘍組織の、統一されていない、且つ非即時の破壊が可能になる。
【0019】
免疫チェックポイント調節因子、特に免疫チェックポイント阻害剤は、細胞傷害性T細胞に対する負の調節を阻害し、それらが腫瘍細胞を適切に認識及び殺滅することを可能にする。T細胞が腫瘍細胞を同定するために、活性化の事象が最初に起こるべきであり、これはT細胞と活性化抗原提示細胞(APC)との間の相互作用に依存する。この相互作用は、リンパ節において、又は腫瘍自体において起こり得る。一般に、免疫チェックポイント阻害剤は、特定の腫瘍抗原の存在を認識するようAPCによって予め活性化されたT細胞クローンが存在しない場合、機能しない。T細胞が腫瘍抗原に対して特異的にAPCによって予め活性化されている場合、Tリンパ球は、この抗原を呈示する腫瘍に浸潤し得、これは免疫チェックポイント阻害剤の作用の成功を条件づけ得る。かかるプロセスはまた、転移細胞でも起こり得る。
【0020】
DaRTによる腫瘍細胞殺滅は、特定の抗腫瘍免疫応答の誘導につながる。このプロセスは、局所的炎症反応、樹状細胞及びマクロファージ等のAPCの動員、並びにそれらの、死細胞から放出される、又は死につつある細胞上に提示されている腫瘍抗原による、及び腫瘍微小環境に存在する損傷関連分子パターン(DAMP)、イートミーシグナル(eat-me signal)及びサイトカインによる、活性化を伴う。抗原を負荷され、活性化されたAPCは、その特異的な活性化のために、T細胞に腫瘍抗原を呈示する。DaRT誘導性DNA損傷は複雑と考えられ、シードからの放射性原子の放出が漸進的であるので、DaRT媒介性のインサイチュの腫瘍破壊及び確実な炎症は、広範な腫瘍抗原に対するより強い長期の全身性且つ特異的な適応免疫応答をもたらすと、出願人は考えている。更に、出願人は、DaRTによって、T細胞機能を損なうMDSC等の抑制性の免疫細胞の量が減少したことを見出した。他の腫瘍アブレーション療法と対照的に、DaRTは、腫瘍微小環境の完全破壊を即座に引き起こさず、むしろ漸進的に引き起こす。これによって、APC及びT細胞と死につつある細胞/死細胞との共存が可能になり得、細胞傷害性T細胞の、それらの機能が次いでチェックポイント阻害剤で促進されるように活性化するのに必要な相互作用が可能になる。また、DaRTの短距離効果のために、リンパ節及び骨髄等の重要な免疫器官、並びに腫瘍に近接した三次リンパ様構造はインタクトなままであり、局所的及び全身的免疫応答を支持する。
【0021】
処置方法
図1は、本発明の実施形態に従った、治療方法100のフローチャートである。患者における腫瘍の同定(102)に続き、治療方法100は、例えば腫瘍へのアルファ放射体放射線源の移植によって、アルファ放射体照射処置(本明細書でアルファ放射体放射線療法とも呼ばれる)を開始すること(104)で始まる。アルファ放射体照射処置を開始した後の限定された期間(106)、1つ又は複数のセッションで、治療上有効な免疫チェックポイント調節因子が患者に投与される(108)。
【0022】
一部の実施形態では、アルファ放射体照射処置が完了した後、処置の効果が評価される(110)。一部の実施形態では、評価の後、残りの原発腫瘍を除去するための手術(112)が用いられる。一部の実施形態では、手術は、照射処置の開始又は完了の少なくとも1週間又は更には少なくとも14日後に行われる。癌性腫瘍を除去するための手術は一般にできる限り早く行われるが、一方、出願人は、免疫チェックポイント調節とアルファ放射体放射線療法処置との併用を適用した後に、処置が効果を生じることができるように待ち、その時にのみ腫瘍を除去する方が良いことを見出した。或いは、手術はあらゆる他の適切な時点で、おそらくアルファ放射体放射線療法の前に行われるか、又は不要若しくは実施不可能と思われた場合は全く行われない。更に或いは、又は更に、評価(110)は行われない。一部の実施形態では、治療方法100は、支持的処置を提供する工程(114)を更に含む。
【0023】
腫瘍タイプ
治療方法100は、癌性腫瘍、良性新生物、インサイチュ新生物(前悪性)、悪性新生物(がん)、及び不確定又は未知の挙動の新生物を含む、あらゆる腫瘍タイプの処置で使用され得る。一部の実施形態では、
図1の方法を使用して、乳がん、腎がん、膵がん、皮膚がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、卵巣がん、膀胱がん、脳がん、外陰がん及び前立腺がん等の、比較的固形の腫瘍を処置する。他の実施形態では、
図1の方法を使用して、非固形腫瘍を処置する。
図1の方法は、原発腫瘍及び続発性腫瘍の両方に使用し得る。
【0024】
図1の方法によって処置され得る例示的な腫瘍としては、排他的ではないが、消化管の腫瘍(結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸がん、大腸腺癌、遺伝性非ポリポーシス1型、遺伝性非ポリポーシス2型、遺伝性非ポリポーシス3型、遺伝性非ポリポーシス6型;結腸直腸がん、遺伝性非ポリポーシス7型、小腸及び/又は大腸癌、食道癌、食道がんを伴う胼胝、胃癌、膵癌、膵内分泌腫瘍)、子宮内膜癌、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺がん、前立腺腺癌、腎がん(例えば、ウィルムス腫瘍2型又は1型)、肝がん(例えば、肝芽腫、肝細胞癌、肝細胞がん)、膀胱がん、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、絨毛性腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣の未熟型奇形腫、子宮、上皮性卵巣、仙尾部腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、成人上皮性腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣癌、漿液性卵巣がん、卵巣性索腫瘍、子宮頸癌、子宮頸部癌、小細胞及び非小細胞肺癌、上咽頭、乳癌(例えば、乳管がん、浸潤性乳管がん;乳がん、乳癌に対する感受性、4型乳がん、乳がん1、乳がん3;乳がん-卵巣がん)、扁平上皮癌(例えば、頭頚部において)、外陰がん、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌、悪性脳腫瘍(腫瘍)、種々の他の癌(例えば、気管支原性大細胞、腺管、類表皮、大細胞、髄様、粘膜表皮性、燕麦細胞、小細胞、紡錘細胞、有棘細胞、移行細胞、未分化、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽腫(ependimoblastoma)、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド、リンパ芽球)、線維芽細胞腫、巨細胞腫、グリア系腫瘍、神経膠芽腫(例えば、多形性、星状細胞腫)、グリオーマヘパトーマ(glioma hepatoma)、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロミエローマ、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞)、副腎腫、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化腫、平滑筋芽腫、平滑筋肉腫、リンパ肉腫、メラノーマ、乳房腫瘍、肥満細胞腫、髄芽腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎芽腫、神経組織グリア系腫瘍、神経組織神経腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、骨軟骨腫、骨骨髄腫(osteomyeloma)、骨肉腫(例えば、ユーイング)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(侵襲性)、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング、組織球細胞、イエンセン、骨原性、細網細胞)、シュワン腫、皮下腫瘍、奇形癌腫(例えば、多能性)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫及び毛包上皮腫、胃がん、線維肉腫、多形性神経膠芽腫;多発性グロムス腫瘍、リー・フラウメニ症候群、固形リンパ腫、脂肪肉腫、II型リンチ家族性がん症候群(lynch cancer family syndrome II)、雄性生殖細胞腫瘍、甲状腺髄様、多発性髄膜腫、内分泌腺新生物粘液肉腫、傍神経節腫、家族性非クロム親和性(familial nonchromaffin)、毛母腫、乳頭、家族性及び散発性、ラブドイド素因症候群(rhabdoid predisposition syndrome)、家族性ラブドイド腫瘍、軟部肉腫、並びに神経膠芽腫を伴うターコット症候群が挙げられる。
【0025】
一部の実施形態では、
図1の方法は、アルファ放射体照射単独によって実質的に影響を受けることが知られる腫瘍に適用される。他の実施形態では、
図1の方法は、アルファ放射体照射単独によって実質的に影響を受けない、例えばサイズが全く減少しないか、又はサイズが5%若しくは10%を超えて減少しないタイプの腫瘍に適用される。
【0026】
出願人によって行われた実験から、アルファ放射体照射処置又は免疫チェックポイント調節因子処置単独の後に腫瘍へのT細胞浸潤の促進が見られない腫瘍であっても、
図1の方法に従って、免疫チェックポイント調節因子とアルファ放射体照射処置との組合せの標的とされた場合に、腫瘍へのT細胞浸潤を劇的に促進させることが示される。また、このT細胞浸潤は、腫瘍サイズの減少と相関し、機能的T細胞応答が支持される。
【0027】
免疫チェックポイント調節因子
免疫チェックポイント調節因子は、小分子、抗体(遮断薬としても公知)又は免疫チェックポイント経路の調節をもたらすあらゆる他のタイプの薬物であり得る。
一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、免疫チェックポイント分子等の細胞の1つ又は複数の分子の機能を阻害する、免疫チェックポイント阻害剤を含む。免疫チェックポイント阻害剤は、抗体又は小分子であり得る。表1に、免疫チェックポイント阻害剤の標的となり得る種々の分子を、特定の対応する免疫チェックポイント阻害剤と共に挙げる。
【0028】
【0029】
他の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、以下のもののいずれか等の、免疫チェックポイント二重特異性抗体を含む:
a.抗CTLA-4+OX40(ATOR-1015)
b.抗PDL1+Lag3(MGD013、FS118)
c.抗PDL1+TGFベータ受容体(M7824)
d.抗PDL1+TIGIT
e.抗PDL1+4-1BB(INBRX-105、ATG-101)
f.抗pd1+CTLA4(MGD019)
g.抗PD-1+TIM-3(RO7121661)
h.抗CD47-PD-L1(PF-0725876)
i.抗PD-L1+クローディン18.2(Q-1802)
j.ImmTAC(IMC-F106C、IMCgp100-テベンタフスプ)
k.抗PD-1+LAG3(RO7247669、テボテリマブ)
l.抗pd-1+CD137(IBI319)
m.抗CD137+HER-2(PRS-343)
n.抗PD-1+ICOS(イズラリマブ)
o.抗PD-L1+CD27(CDX-527)
【0030】
更に他の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、以下のもののいずれか等の、免疫チェックポイント発現を阻害する分子を含む:
a.ATR阻害剤(例えば、ベルゾセルチブ)
b.Cox-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)
c.BRAF阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ)
d.MEK阻害剤(例えば、トラメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、及びコビメチニブ)
e.PI3K阻害剤(例えば、イデラリシブ、アルペリシブ、タセリシブ、ピクチリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、ゲダトリシブ、アピトリシブ、ダクトリシブ)
f.HDAC阻害剤(エンチノスタット(entinistat)、ボリノスタット、モセチノスタット、パノビノスタット、ACY-241)
g.DNMT阻害剤(デシタビン、グアデシタビン、アザシチジン)
h.ブロモドメイン阻害剤(JQ1、I-BET151)
i.RTK阻害剤(セディラニブ、セマキシニブ)
【0031】
更に他の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、免疫チェックポイント発現を阻害する分子を含み、また、
a.IMiD(例えば、ポマリドミド、レナリドマイド、ブレフェラミド、サリドマイド、イベルドミド、アプレミラスト)
b.TK阻害剤(ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、ニロチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ(eriotinib)、ボスチニブ、ラパチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、レスタウルチニブ、イマチニブ)
等の、血管の発生を予防する抗血管新生薬である。
【0032】
他の実施形態では、アルファ放射体照射と組み合わせた免疫チェックポイント調節因子は、免疫チェックポイントを内部移行する分子を含む。かかる分子は、例えば、ARB-272572、及び/又はARB-276309を含み得る。
他の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、免疫共刺激分子を含む。これらの分子は、免疫チェックポイント阻害剤によって影響を受けるものに関する免疫経路に作用するので、出願人は、以下のものの1つ又は複数等の、これらの分子をDaRTと共に使用することは、負の調節の除去を介するのではなく刺激を介して、これらの経路に対する正の調節により同様の結果につながると結論付けた:
A)OX40(タボリマブ、クダロリマブ、GSK3174998、DB36、DB71、DB15、CVN、MGCD0103、SNDX-275、INBRX-106、PF-0451860)
B)ICOS(GSK3359609、JTX-2011/ボプラテリマブ、MEDI-570、KY104)
C)CD137/4-1BB(PF-05082566)
D)SLAM(エロツズマブ)
E)CD40(APX005M(ソチガリマブ)、SEA-CD40、CDX-1140、MP0317)
投与された免疫チェックポイント調節因子は、単一の薬物を含んでもよく、若しくは上記の複数の異なる薬物の組合せを含んでもよく、一緒に投与してもよく、又は別々のセッションで投与してもよい。
【0033】
投与の経路
一部の実施形態では、腫瘍及び/又は転移への免疫チェックポイント調節因子の投与は、例えば経口で、又は静脈内(IV)注射若しくは輸注によって、全身投与によって行われる。一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子の送達は、標的化された送達の適切な方法を使用する。
【0034】
或いは、又は更に、免疫チェックポイント調節因子は、1つ又は複数の同定された腫瘍に、直接インサイチュで投与される(108)。この代替案において、免疫チェックポイント調節因子は、腫瘍内注射によって投与してもよい。一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子はアルファ放射体放射性核種を担持するシードから投与されるが、好ましくは、免疫チェックポイント調節因子を与えられて影響を受ける腫瘍のより広いカバー範囲を達成するために、免疫チェックポイント調節因子は、シードから別々に投与される。
免疫チェックポイント調節因子を患者に投与する前に、1つの腫瘍、複数の腫瘍、及び/又は転移のサイズを推定してもよく、それに従って、投与される免疫チェックポイント調節因子の量を選択してもよい。
【0035】
タイミング
一部の実施形態では、チェックポイント調節因子は、単一のセッションで、患者に投与される(108)。或いは、免疫チェックポイント調節因子は、複数のセッション、おそらくは少なくとも3つ、少なくとも7つ又は更には少なくとも12のセッションで投与される(108)。別々のセッションは、少なくとも4時間、8時間、24時間、48時間又は更には少なくとも72時間、互いに離れていてもよい。複数のセッションは、同じ免疫チェックポイント調節因子を使用してもよい。或いは、異なるセッションは、異なる免疫チェックポイント調節因子を使用する。免疫チェックポイント調節因子が複数のセッションで投与される(108)実施形態については、以下のパラグラフは、他に述べられない限りは、投与の第1のセッションに関する。
【0036】
特に見込みのある結果を提供することが分かっている一実施形態は、アルファ放射体放射線療法供給源挿入の1~2日後の第1の免疫チェックポイント阻害剤投与セッション、及び約2週間の処置の継続を含んでいた。
第1の種類の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子療法のタイミングは、アルファ放射体照射が最も効力がある場合、最初に、T細胞がアルファ放射体照射の破壊領域に浸潤するよう免疫チェックポイント調節因子によって誘導されないように免疫チェックポイント調節因子なしでアルファ放射体照射が適用されるように、選択される。
【0037】
この第1の種類の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子の投与は、アルファ放射源を移植した後(104)、限定されたバッファー期間(106)を開始する。バッファー期間は、シード上の所定のパーセンテージのアルファ放射体粒子が崩壊を経た後に免疫チェックポイント調節因子に効果を生じさせるよう、選択してもよい。所定のパーセンテージは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%又は更には少なくとも50%であってもよい。
アルファ放射体放射線療法誘導(104)と免疫チェックポイント調節処置の開始(108)との間のバッファー期間(106)は、免疫チェックポイント調節因子を投与する前にアルファ放射体放射線療法誘導が効果を生じるのを可能にするように選択される。例えば、アルファ放射体供給源の挿入によってアルファ放射体放射線療法誘導が誘導される場合に、限定された期間(106)は、腫瘍細胞に対するアルファ放射体放射線療法の特定のタイプの殺滅効果のために、腫瘍細胞膜でのMHC1発現、サイトカイン及びDAMP分泌並びにAPCの活性化の上方制御を可能にするのに適したバッファー期間となるよう選択される。或いは、又は更に、期間(106)の長さは、殺滅された腫瘍細胞が免疫細胞を活性化させる時間を与えるために十分なように選択される。
【0038】
アルファ放射体供給源の移植(104)と免疫チェックポイント調節因子の投与の第1のセッション(108)との間のバッファー期間(106)は、少なくとも6時間、少なくとも9時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも96時間又は更には少なくとも120時間であってもよい。バッファー期間(106)は、免疫チェックポイント阻害剤が適用された時にアルファ放射体放射線療法の効果がすでに免疫細胞を活性化しているように、1カ月より短いか、3週間より短いか、2週間より短いか、10日間より短いか、1週間より短いか、120時間より短いか、96時間より短いか、72時間より短いか、又は更には48時間より短くてもよい。バッファー時間は、腫瘍が回復及び悪性細胞の大規模な再生の機会を有する前に腫瘍へのT細胞の浸潤の促進が効果を生じるように、十分短くてもよい。一部の実施形態では、限定された期間(106)は、例えばアルファ放射体放射線療法に対してより迅速に反応する腫瘍において、30時間より短いか、又は更には20時間より短い。
【0039】
第2の種類の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、約2週間以内に起こる、移植されたシードの放射性核種の殆どが放射性崩壊を経た後に投与される。
第3の種類の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子は、免疫チェックポイント調節因子が実質的に放射線療法の持続期間全体を通して作用するように、アルファ放射シードの移植の前に投与される。この種類の実施形態は、例えば特に悪性タイプの腫瘍において使用され、この場合、アルファ放射体放射線療法シードを待つことによる遅延なしに、できる限り早く悪性細胞の攻撃を開始することが最善である。免疫チェックポイント調節因子は、アルファ放射体照射処置の開始の少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間若しくは更には少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間又は更には少なくとも1週間前にこの種類の実施形態で投与してもよい。或いは、免疫チェックポイント調節因子は、アルファ放射シードの移植の短時間前に投与される。例えば、免疫チェックポイント調節因子は、この代替案に従って、シードの移植の72時間未満、48時間未満、24時間未満、12時間未満又は更には6時間未満前に投与される。
【0040】
一部の実施形態では、アルファ放射体シードの移植及び/又は活性化の後に、免疫チェックポイント調節因子療法を適用するのに最も適した時点を決定するために、腫瘍の1つ又は複数のパラメーターをモニタリングする。モニタリングは、腫瘍がアルファ放射体放射線療法の活性化のためにいつ変化し始めたかを同定するために適切なモダリティ(例えば、X線、超音波、PET-CT、MRI、CT)を使用して、腫瘍の画像化を含んでもよい。或いは、モニタリングは、血液検査を行って特性のレベルを同定することを含む。しかしながら、一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節因子はアルファ放射体放射線療法の効果が検出可能になる前に投与されることに留意されるべきである。
【0041】
アルファ放射体照射
アルファ放射体照射処置は、腫瘍の内部にアルファ放射原子を放出する、ラジウム224又はラジウム223等の放射性原子を担持するシードの挿入によって実施してもよい。アルファ放射原子は、原子がシードを出ないが、娘放射性核種を生じる放射性核種崩壊の際にシードを出るように、シードに結合してもよい。シードは、24時間あたりに、元々用いられた時にシードに結合していた放射性核種原子の数の少なくとも0.1%、0.5%、又は更には少なくとも1%の速度で、娘放射性核種原子を放射してもよい。一部の実施形態では、娘放射性核種原子は、24時間あたりに、シードに結合した放射性核種原子の25%未満、10%未満、5%未満又は更には3%未満の速度で、シードからゆっくり放出される。
【0042】
原子が放射性核種崩壊なしにシードを出ないようにアルファ放射原子をシードに結合させる代わりに、例えば参照によって本明細書に組み込まれる「controlled release of radionuclides」と題されたPCT公開WO2019/193464に記載されているように、アルファ放射原子は、放射性核種崩壊以外の方法で原子が24時間あたり少なくとも0.1%の速度で制御可能にシードを出るように、シードに結合している。
一部の実施形態では、アルファ放射体照射は、アルファ放射体放射療法(DaRT)を拡散させることを含む。アルファ放射体放射線療法は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許8,834,837、米国特許出願2009/0136422、2019年10月10日に提出された米国仮特許出願第62/913,184、及び/又はPCT公開WO2018/207105に記載されている方法及び/又は装置のいずれかを使用して行ってもよい。
【0043】
アルファ放射体照射処置は、シードの外表面にアルファ放射原子を含む1つ又は複数のシードを腫瘍に挿入することによって、開始(104)してもよい。或いは、アルファ放射体放射線療法は、アルファ放射原子を担持する、予め挿入されたシードを活性化することによって開始される。この代替案に従って、シードは、アルファ照射及び/又は娘放射性核種がシードから出るのを予防する生体吸収性のコーティングとともに、患者に挿入してもよい。生体吸収性コーティングは、コーティングの所望の再吸収速度を達成するよう適合させた、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)又はPLA及びPGAのコポリマーを含んでもよい。或いは、又は更に、コーティングは、コポリ乳酸/グリコール酸(PLGA)を含む。コーティングのポリマーは、5,000~100,000の範囲の分子量を有してもよい。コーティングの材料は、超音波エネルギー、体温との反応及び/又は体液との反応の1つ又は複数等の当該分野で公知の方法のいずれかを通して、患者において溶解する。所望の再吸収速度への調節の後の、本発明の実施形態に従って使用され得る生体吸収性ポリマーの更なる議論は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許8,821,364及び米国特許出願2002/0055667に記載されている。一部の実施形態では、開始(108)は、コーティングを溶解させてアルファ照射及び/又は娘放射性核種がシードを出ることを可能にする刺激を適用することを含む。他の実施形態では、開始(108)は、更なる医師の開始なしに、腫瘍の組織との接触によってコーティングを溶解させることによって達成される。
【0044】
アルファ放射体放射線療法は、少なくとも24時間、少なくとも5日間、少なくとも10日間又は更には少なくとも14日間、患者に適用してもよい。かかる期間にわたって腫瘍細胞の破壊を広げることによって、免疫チェックポイント調節因子が患者の免疫系が変化に適用させて腫瘍及び/又は転移の残りの破壊に関与することを助ける時間が与えられる。一部の実施形態では、シードは、指定された処置期間の後、患者から除去される。例えば、シードは、腫瘍の除去のための手術の間に除去してもよい。或いは、シードは除去されない。一部の実施形態では、シードは、生分解性材料を含む。
【0045】
更なる処置
支持的処置の提供(114)は、一部の実施形態では、放射線療法及び/又は免疫チェックポイント阻害剤の望ましくない副作用に対抗する1つ又は複数の処置を含む。支持的処置は、アルファ放射体放射線療法によって誘導される促進された組織修復に対抗する1つ又は複数の処置を含んでもよく、そのため促進された組織修復は、残りの腫瘍細胞を支持し、腫瘍再発を促進する。或いは、又は更に、支持的処置は、放射線療法及び/又は免疫チェックポイント阻害剤によって引き起こされる組織損傷の後に、炎症を下方制御する1つ又は複数の抗炎症処置を含む。一部の実施形態では、支持的処置は、患者の体が放射線療法によって損傷を受けた腫瘍細胞のDNAを修復する企てを妨害するよう、DNA修復を予防する1つ又は複数の処置を含む。他の実施形態では、支持的処置は、病原体攻撃を刺激する1つ又は複数の処置を含む。
【0046】
一部の実施形態では、支持的処置は、免疫増強剤、サイトカイン、RIG-1アゴニスト、STINGアゴニスト及び/又はTLRアゴニスト等の1つ又は複数の免疫賦活剤を含む。
一部の実施形態では、支持的処置は、上記で挙げた効果の2つ又は更には3つを有する処置を含む。
一部の実施形態では、支持的処置は、支持的な免疫調節、例えば、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)等の免疫抑制細胞の阻害及び/若しくはTreg阻害剤(例えば、シクロホスファミド)並びに/又はTLR経路の活性化(TLRアゴニスト)のための当該分野で公知の処置のいずれかを含む。MDSC阻害剤としては、例えば、エパカドスタット等のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害剤、ガルニセルチブ等のTGFb阻害剤、シルデナフィル等のPDE5阻害剤、及び/又はエトドラク等のCox2阻害剤が挙げられる。
【0047】
或いは、又は更に、支持的処置は、TLR7、8(例えば、MEDI9197、イミキモド)、TLR9(例えば、MGN1703、SD-101、TLR4、GSK1795091、G100、GLA-SE)、TLR3(例えば、ポリICLC)及び/又はSTING(例えば、MIW815)等の、1つ又は複数のパターン認識受容体及び/又はアゴニストを投与することを含む。
或いは、又は更に、更なる処置は、アルファ放射体放射線療法によって誘導される免疫応答を増大させるか、これに影響を与えないか、又は最小限妨げるのみであることが分かっているタイプのDNA修復阻害剤を投与することを含む。一部の実施形態では、投与されたDNA修復阻害剤としては、ATR阻害剤、例えばベルゾセルチブ、AZD6738、及び/又はNU6027が挙げられる。或いは、又は更に、DNA修復阻害剤としては、KU-55933、KU-60019及び/又はEPT-46464等のATM/ATR阻害剤、DNA-PK阻害剤(例えば、6-ニトロベラトルアルデヒド、NU7441)、Wee1阻害剤(例えば、アダボセルチブ)、Hsp90阻害剤(例えば、タネスピマイシン)及び/又はPARP阻害剤(例えば、オラパリブ、タラゾパリブ)が挙げられる。
【0048】
或いは、又は更に、更なる処置は、アルファ放射体放射線療法及び/又は免疫チェックポイント阻害によって誘導される免疫応答を増大させるか、これに影響を与えないか、又は最小限妨げるのみであることが分かっているタイプの抗血管新生因子を含む。一部の実施形態では、更なる処置は、ベバシズマブ又はiMiD、例えばポマリドミド、サリドマイド、レナリドマイド及び/又はアプレミラストを含む。
更に或いは、又は更に、更なる処置は、アルファ照射並びに/又は免疫チェックポイント阻害及び/若しくはアルファ放射体照射に対する免疫応答を妨害しないことが分かっているタイプの局所的又は全身的化学療法処置を含む。化学療法処置は、シクロホスファミド(CP)、ドキソルビシン、ゲムシタビン、オキサリプラチン及び/又はシスプラチンの1つ又は複数を含んでもよい。
【0049】
一部の実施形態では、更なる処置は、或いは、又は更に、NSAID等の抗炎症薬、例えばCox2阻害剤を含んでもよい。
更に或いは、又は更に、更なる処置は、DNMT阻害剤(例えば、デシタビン、アザシチジン、グアデシタビン)及び/又はHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット、ボリノスタット)等の1つ又は複数のエピジェネティック薬を投与することを含む。
一部の実施形態では、更なる処置は、アルファ放射体照射が適用されている間に提供される(114)。他の実施形態では、更なる処置は、アルファ放射体放射線療法が完了した後、例えばシード中の放射性核種の大部分が核反応を経た後、及び/又は患者からシードが除去された後に、提供される(114)。更に他の実施形態では、更なる処置は、アルファ放射体放射線療法の前に提供される(114)。
一部の実施形態では、支持的処置は、免疫チェックポイント調節セッション及び/又は放射線療法処置の1つから72時間未満、48時間未満若しくは更には32時間未満のうちに提供される。
更なる処置を提供するタイミングは、更なる処置の特定のタイプに従って選択してもよい。
更なる処置は、腫瘍タイプに対応して提供してもよい(114)。
【0050】
処置キット
図2は、
図1の方法に従った、患者の処置のためのキット200の略図である。キット200は、腫瘍への挿入のための1つ又は複数のアルファ放射体放射線療法シード204及び免疫チェックポイント阻害のための1回又は複数の用量216の薬剤/複数の薬剤を含む無菌パッケージ202を含む。
シード204は、放射線がケーシングを出ないようにする、バイアル又は他のケーシング206内で提供してもよい。一部の実施形態では、ケーシングは、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、「Radiotherapy Seeds and Applicators」と題されたPCT出願PCT/IB2019/051834に記載されているような、ケーシング206からの放射線の漏出を防止するようにグリセリン等の強粘液を充填されている。一部の実施形態では、PCT出願PCT/IB2019/051834に記載されているように、キット200は、シード204を患者に導入するのに使用されるシードアプリケーター208を更に含む。アプリケーター208は、そこに1つ又は複数のシード204を予め充填して提供してもよい。この選択肢に従って、ケーシング206中の別々のシード204が、予め充填されたシードより多くの数が必要な場合に供給される。或いは、ケーシング206中のシード204は、キット200中で提供されず、アプリケーター208内のシードのみがキット200に含まれる。
【0051】
示されるように、免疫チェックポイント阻害剤の用量216は、1つ又は複数の針210中に予め充填されて提供される。他の実施形態では、用量216は、1つ又は複数の容器又はバイアル中で提供され、針は、無菌パッケージ202内で別々に提供されるか、又はキット200中で全く提供されない。
【0052】
一部の実施形態では、キット200は、支持的な免疫調節処置(114)に必要な1つ又は複数の薬物220を更に含む。
一部の実施形態では、キット200は、異なる温度での保存が必要な物質のために、適切な隔離によって分離された、複数の別々の区画を含む。例えば、第1の区画は、第1の区画の物質を約-20℃で保つドライアイスを含んでもよく、第2の区画は、物質を約4℃で第2の区画に維持するために氷を含む。
【0053】
放射線療法シード204は、対象の体への挿入のために構成された金属又は非金属の支持体を含んでもよい。シード204は、例えば参照によって本明細書に組み込まれる米国特許8,894,969に記載されているように、外表面に、例えばラジウム224等の放射性核種原子を更に含む。放射性核種原子は、一般に、放射性核種原子が支持体を出ないが、放射性崩壊の際に、崩壊による反動のために、それらの娘放射性核種がシード204を出得るように、シードに結合している。崩壊により支持体を出る娘放射性核種のパーセンテージは、脱離確率(desorption probability)と呼ばれる。シードへの放射線療法原子の結合は、一部の実施形態では、加熱処理によって達成される。或いは、又は更に、コーティングは、放射性崩壊の際に放射性核種原子の放出を防止するように、且つ/又は娘放射性核種の放出の速度を調節するように、シード及び原子を覆う。娘放射性核種は、反動のためにコーティングを通ってシード204の外に通過し得るか、又は反動によって娘放射性核種がコーティングに運ばれて、そこから拡散によって放出され得る。
【0054】
シード204は、一部の実施形態では、患者の腫瘍内の完全な移植のためのシードを含み、棒又は板等のあらゆる適切な形状を有し得る。完全に移植される代わりに、シード204は、患者内に部分的にのみ移植され、針、ワイヤー、内視鏡の先端、腹腔鏡の先端、又はあらゆる他の適切なプローブの一部である。
一部の実施形態では、シード204は円柱状であり、少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、又は更には少なくとも5ミリメートルの長さを有する。シード204は、5~60mm(ミリメートル)の間の長さを有してもよい。シード204は、0.7~1mmの直径を有してもよいが、一部の場合では、より大きい直径又はより小さい直径の供給源が使用される。特に、小さい間隔の処置の設計のために、シード204は、0.7mm未満、0.5mm未満、0.4mm未満、又は更には0.3mm以下の直径を有してもよい。
【0055】
実験
図3は、
図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、SCC腫瘍を有するBlb/cマウスを、以下のように処置した。aPD-1群は、10mg/kgの用量で、不活性な供給源、及び腹腔内にマウス抗PD-1を2、6、9、13日目に受けた。DaRT群は、75kBq Ra-224を負荷された6.5mmのDaRTシードを0日目に、及び対照抗体を受けた。不活性(対照)群は、対照抗体に加えて、不活性な供給源を受けた。DaRT+aPD-1群は、75kBq Ra-224を負荷された6.5mmのDaRTシードを0日目に、及び、腹腔内に抗PD1を10mg/kgの用量で、2、6、9、13日目に受けた。対照と比較して、aPD-1処置については、腫瘍成長に対する効果は観察されなかった。DaRTは、対照と比較して、腫瘍成長を有意に減少させた。併用処置によって、対照及びDaRT群と比較して、腫瘍成長が阻害された。これは、アルファ放射原子の拡散によるDaRTの明らかな殺滅効果を超えて、チェックポイント遮断薬の存在下では別のタイプの殺滅(おそらくはT細胞媒介性)が腫瘍サイズに影響を及ぼすことが示される。このことから、DaRTがチェックポイント遮断薬への応答に対して免疫系を活性化することが示唆される。この実験は、同様の結果を伴って繰り返された(aPD-1用量が2、4、8、12日目に与えられた)。
【0056】
図4は、
図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、膵管腺癌(PDAC)腫瘍を有するC57BL/6マウスを、以下のように処置した。aPD-1群は、不活性な供給源、及び腹腔内投与されたマウス抗PD-1を10mg/kgの用量で、1、4、7、10、14日目に受けた。DaRT群は、80kBq Ra-224を負荷された6.5mmのDaRTシードを0日目に、及び対照抗体を受けた。不活性(対照)群は、不活性な供給源及び対照抗体を受けた。DaRT+aPD-1群は、80kBq Ra-224を負荷された6.5mmのDaRTシードを0日目に、及び腹腔内に抗PD1を、10mg/kgの用量で、1、4、7、10、14日目に受けた。GEM群は、腹腔内にゲムシタビン(GEM)を、60mg/Kgの用量で、0、3、7、10、14、17日目に受けた。
【0057】
14日目に、組合せの群のみが、対照群と比較して、腫瘍体積の有意な減少を示した。併用処置は、DaRTと比較して、SCC腫瘍について観察されたのと同じ傾向で、腫瘍成長を阻害した(
図3)。特に、この実験は、比較的早期の時点である20日目に終了させた。
【0058】
図5は、
図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、SCC腫瘍を有するBlb/cマウスを、以下のように処置した。aPD-1群は、不活性な供給源、及び腹腔内にマウス抗PD-1を、10mg/kgの用量で、2、5、8、11、14日目に受けた。DaRT群は、75kBq Ra-224を負荷された6.5mmのDaRTシードを0日目に、及び対照抗体を受けた。不活性(対照)群は、不活性な供給源及び対照抗体を受けた。DaRT+aPD-1群は、75kBq Ra-224を負荷された6.5mmのDaRTシードを0日目に、及び腹腔内に抗PD1を、10mg/kgの用量で2、5、8、11、14日目に受けた。この実験において、腫瘍内活性化樹状細胞(DC)の%のFACS解析を用いた。7日目に腫瘍を切除し、コラゲナーゼ(1.5mg/ml)、ヒアルロニダーゼ(0.75mg/ml)及びDNアーゼ(0.1mg/ml)で酵素的に分離した。得られた単細胞懸濁液を、以下の抗体混合物と共に、4℃で30分間インキュベートした:CD11c-PE-cy7、CD86-BV650、CD11b-BB515(FITC)、Ly6G-BV421、Ly6C-PE-CF594(PI)、CD45-APC、MHCクラスII-PE。FACSバッファー(PBS+2%ウシ胎仔血清+5mM EDTA)中での2回の洗浄の後、Stratedigm S1000EXi FACS機器で試料を読み取った。ゲーティング戦略:DCをCD45
+、CD11c及びMHC-IIダブルポジティブ細胞として同定した。CD86を活性化マーカーとして染色した。解析から、不活性群と対比して、DaRTの初期での活性化樹状細胞(DC)の%の増大が明らかになった。これらのデータから、アルファ放射体誘導性細胞死は、DC活性化とその後のT細胞の動員及び作動をもたらすペプチド提示及びDAMPシグナルの促進による、新しい腫瘍抗原の同定の促進につながり得ることが示唆される。これは、DaRTがチェックポイント遮断薬への応答に対して免疫系を活性化することを支持する。
【0059】
図6は、
図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、
図5に関して記載されているのと同じ処置を使用した。実験から、CD3、CD8、及びグランザイムB分子の免疫組織化学的染色によって評価された、Tリンパ球腫瘍浸潤及び機能性に対するDaRTと抗PD1との組合せの効果が示される。免疫組織化学に供された、DaRT挿入(2つの独立した実験)後16日目に切除された腫瘍に対して解析を行った。手短に言えば、腫瘍をO.C.T.で凍結し、5μmの厚さで凍結切片にした。次いで、組織切片をアセトン中で20分間固定し、空気乾燥し、Leica Bond III機械で染色した。PBS中の5%正常ヤギ血清(NGS)、5%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロッキングを行った。使用した一次抗体は、ブロッキング溶液で希釈された、1:400に希釈されたウサギ抗マウスCD3(abcam AB-ab16669)、1:500のウサギ抗マウスCD8アルファ(abcam ab217344)、1:200のウサギ抗マウスグランザイムB(abcam ab255598)であった。二次抗体は、DAB基質及びヘマトキシリンと共にLeica Bond IIIキットの一部として提供されるウサギ-HRPコンジュゲートであった。結果から、腫瘍中のCD3+、CD8+、グランザイムB(それぞれ
図6A、6B、6C)密度の増大におけるDaRTと一緒に抗PD1免疫チェックポイント阻害剤の相乗効果が明らかに示される。aPD-1単独及びDaRT+aPD-1腫瘍の代表的な写真(
図6D)は、2剤併用療法におけるCD3 T細胞含量の明らかな増大を示す。まとめると、これらの結果から、単剤治療と比較した場合に併用療法におけるより良好な治療成績を支持する、より強い抗腫瘍免疫応答が示される。
【0060】
図7は、
図1の方法を試験するために出願人が行った実験の結果を示す。実験において、
図5に記載されているのと同じ処置及び同じFACS染色プロトコールを使用した。ゲーティング戦略:PMN-MDSCをCD45
+、CD11b
+、Ly6G
+Ly6Cl
ow細胞集団として同定した。2つの独立した実験由来のDaRT挿入後16日目の脾臓でのFACS解析から、不活性と比較した場合に、DaRT、aPD-1単独及び組合せ(DaRT+抗PD1)群中の多形核骨髄系由来サプレッサー細胞の%の減少が明らかになった。興味深いことに、併用療法から、aPD-1単独と比較した場合に、末梢MDSCの有意な減少が示される。末梢MDSCは予後と相関があるため、この結果は、両方の療法を共に使用することにおける、可能な治療上の利点を支持する。
【0061】
結論
上述の方法及び装置が、方法を行うための装置及び装置を使用するための方法を含むと解釈されることが認識されよう。一実施形態に関して記載された特徴及び/又は工程を他の実施形態と共に使用し得る場合があること、並びに本発明の全ての実施形態が特定の図に示されているか、又は特定の実施形態の1つに関して記載されている、特徴及び/又は工程の全てを有する訳ではないことが、理解されるべきである。タスクは、必ずしも記載された正確な順序で行われる必要はない。
【0062】
上述の実施形態の一部は、本発明に必須ではあり得ず例として記載されている、構造、作用又は構造及び作用の詳細を含み得ることが留意されるべきである。本明細書に記載されている構造及び作用は、当該分野で公知のように、構造又は作用が異なる場合でも、同じ機能を行う均等物で交換可能である。上述の実施形態は、例として引用され、本発明は、上記で特に示され、記載されているものに限定されない。むしろ、本発明の範囲は、上述の種々の特徴の組合せ及び部分的組合せの両方、並びに上記の記載を読んだ際に当業者が思い当たる、且つ従来技術に開示されていない、その変形及び修飾を含む。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲で使用されるような要素及び限定によってのみ限定され、用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する」及びそれらの活用形は、特許請求の範囲で使用される場合、「含むが、必ずしも限定されない」ことを意味するであろう。
【国際調査報告】