(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】貫通孔を有する歯科コンポーネント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579009
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022063886
(87)【国際公開番号】W WO2022268421
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506260386
【氏名又は名称】ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェル, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ラティア ガルシア, ハビエル
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA44
4C159RR01
4C159RR15
4C159SS01
4C159TT10
(57)【要約】
角度付きチャネル(170)を有し、歯科インプラントに取り付けるための歯科コンポーネント(110)の製造方法が開示される。歯科コンポーネントは歯冠側(130)と根尖側(120)を有する。本方法は第1の孔(140)と第2の孔(150)を形成するステップを含む。第1の孔は第1の軸(141)に実質的に沿って延び、端部領域(143)を有する止まり孔として形成される。第2の孔は第2の軸(151)に実質的に沿って延び、第2の孔への入口は第1の孔の端部領域に対して歯冠側に配置され、角度付きチャネルを形成するために第1の孔の端部領域と交差する。第1の軸及び第2の軸は互いに対して傾斜する。第1の孔の端部領域の少なくとも一部は角度付きチャネルの一部として保持される。この方法によって製造される歯科コンポーネント、及びCAD/CAMを使用して角度付きチャネルを有する歯科コンポーネントをデザインする方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度付きチャネル(170、270、470、570)を有し、かつ歯科インプラントに取り付けるための歯科コンポーネント(110、210、410、510)を製造する方法であって、前記歯科コンポーネントは、歯冠側(130、230、430、530)と根尖側(120、220、420、520)とを有し、前記方法は、
第1の軸(141、241、341、441、541)に沿って実質的に延びる第1の孔(140、240、340、440)を形成するステップ、ただし前記第1の孔は端部領域(143、243、343、443、543)を有する、
第2の軸(151、251、451、551)に沿って実質的に延びる第2の孔(150、250、450、550)を形成するステップ、ただし前記第2の孔への入口(152、252、452、552)は、前記第1の孔の前記端部領域に対して歯冠側に配置される、を含み、
前記第1の孔及び前記第2の孔は、前記角度付きチャネルを形成するために、互いに交差するように形成され、
前記第1の軸及び前記第2の軸は、互いに対して傾斜しており、
前記第1の孔の前記端部領域の少なくとも一部は、前記角度付きチャネルの一部として保持される、方法。
【請求項2】
前記第1の孔(140、240、340、440)の前記端部領域(143、243、343、443、543)は、前記第1の軸(141、241、341、441、541)と前記第2の軸(151、251、451、551)との間の交点(111、211、411、511)に対して歯冠側に配置されるように形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の軸(141、241、341、441、541)に沿って延びる断面において、前記端部領域(143、243、343、443、543)の輪郭は、少なくとも1つの湾曲した凹部(145、245、345、445、545)を含み、
前記少なくとも1つの湾曲した凹部の少なくとも一部は好ましくは、前記歯科コンポーネント(110、210、410、510)の前記角度付きチャネル(170、270、470、570)の一部を形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の孔(140、240、340、440)を、前記第2の孔(150、250、450、550)の前に形成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の軸と前記第2の軸との間の傾斜角は、0°または5°よりも大きく、60°、30°、または20°以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
回転工具が、前記第1の軸(141、241、341、441、541)の周りの少なくとも1つの経路に沿って前記回転工具を案内することによって前記第1の孔(140、240、340、440)を形成しながら、揺動運動を行い、
前記回転工具の長手軸は、前記第1の軸に対してある角度で、好ましくは一定の角度で配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の孔(140、240、340、440)を、前記第1の軸(141、241、341、441、541)の周りの少なくとも1つの経路に沿った軌道ミリングによって形成し、
前記回転工具を好ましくは、前記第1の軸と平行に向ける、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記歯科コンポーネント(110、210、410、510)を製造するために使用されるブランクは、セラミック材料で形成されたグリーン成形体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
好ましくは請求項1~8のいずれか1項により製造される歯科コンポーネント(110、210、410、510)であって、前記歯科コンポーネントは、
根尖側及び歯冠側、
第1の軸(141、241、341、441、541)に沿って実質的に延びる第1の孔(140、240、340、440)、ただし前記第1の孔は端部領域を有する、
第2の軸(151、251、451、551)に沿って実質的に延びる第2の孔(150、250、450、550)、ただし前記第2の孔への入口は、前記第1の孔の前記端部領域に対して歯冠側に配置される、
を含み、
前記第1の孔及び前記第2の孔は、互いに傾斜しており、互いに交差して、角度付きチャネル(170、270、470、570)を形成し、
前記第1の孔と前記第2の孔との間の交差部の少なくとも一部は、前記第1の孔の前記端部領域内にある、歯科コンポーネント。
【請求項10】
前記第1の孔(140、240、340、440)の直径は、前記第2の孔(150、250、450、550)の直径以上である、請求項9に記載の歯科コンポーネント(110、210、410、510)。
【請求項11】
前記第1の軸(141、241、341、441、541)及び/または前記第2の軸(151、251、451、551)は直線である、請求項9または10に記載の歯科コンポーネント。
【請求項12】
前記第1の孔(140、240、340、440)の前記端部領域(143、243、343、443、543)は、前記第1の軸(141、241、341、441、541)に対して垂直な減少する断面を有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の歯科コンポーネント。
【請求項13】
前記第1の軸(141、241、341、441、541)に沿って延びる断面において、前記端部領域(143、243、343、443、543)の輪郭は湾曲しており、
湾曲した輪郭は好ましくは、複数の湾曲した凹部(245、445、545)を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の歯科コンポーネント。
【請求項14】
前記歯科コンポーネントの前記角度付きチャネル(170、270、470、570)は、円錐形のネジ座を有する、請求項9~13のいずれか1項に記載の歯科コンポーネント。
【請求項15】
前記第1の孔(140、240、340、440)の前記端部領域(143、243、343、443、543)は、前記第1の軸(141、241、341、441、541)と前記第2の軸(151、251、451、551)との間の交点(111、211、411、511)に対して歯冠側に配置される、請求項9~14のいずれか1項に記載の歯科コンポーネント。
【請求項16】
CAD/CAMを使用して仮想歯科コンポーネント(710)をデザインする方法であって、前記方法は、
歯科コンポーネントの幾何学的データを用意するステップ、
前記歯科コンポーネント内に第1の孔の幾何学的形状(740)を提供するステップ、ただし前記第1の孔は実質的に第1の軸(741)に沿って延び、前記第1の孔は端部領域を有する、
第2の軸(751)に沿って実質的に延びる第2の孔(750)を形成するステップ、ただし前記第2の孔の入口(752)は、前記第1の孔の前記端部領域に対して歯冠側に配置される、
を含み、
前記第1の孔及び前記第2の孔は、角度付きチャネルを形成するために、互いに交差して形成され、
前記第1の軸及び前記第2の軸は互いに対して傾斜しており、
前記第1の孔の前記端部領域の少なくとも一部は、前記角度付きチャネルの一部として保持される、方法。
【請求項17】
前記第1の孔の前記端部領域は、前記第1の軸(741)と前記第2の軸(751)との間の交点に対して歯冠側に配置されるように形成される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度付きチャネルを有する歯科コンポーネントを製造する方法、歯科コンポーネント、及びCAD/CAMを使用して歯科コンポーネントを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラントを介して患者の骨組織内にアンカーされた少なくとも1つの歯の歯科修復物は、患者にとって利用可能な強化された処置を表す。この技術は、耐久性があって美的に満足のいく結果をもたらす程度まで開発されてきた。これらの結果を達成するために、利用できる多くの製品ポートフォリオ及びシステムが存在する。
【0003】
これらの多くのシステムにもかかわらず、製造を改善し、これらの処理をより低コストで利用できるようにするために、打開すべき課題が依然として存在する。これらの課題の1つは、歯科コンポーネントを歯科インプラントまたはアバットメントに固定するための、歯科コンポーネントを通って延びるチャネルの配置及び製造である。これらのチャネルは基本的に、患者の口腔に露出した入口を有する。これらの入口は歯科修復物の取り付け後に充填されるが、患者の歯が日常の状況の間に見える場合には、これらの入口は見えないかまたは少なくともほとんど見えないならば有利である。これは、歯科修復物が患者の前歯に関係している場合には、特に重要である。
【0004】
この点における特別の課題は、歯科修復物がセラミック製の一片の修復物である場合に存在する。なぜならば、修復物を固定するためのチャネルを修復物内に作らなければならないからである。さらに、このようなチャネルは、前歯の場合に、その入口が舌側において目に見えないように配置されるように、角度を付けるべきである。このような角度付きチャネルの形成は、この問題にどのように取り組むかについての示唆があったが、依然として製造中の特別な課題である。
【0005】
たとえば、EP2053985B3では、ネジ部材が挿入されるべきネジ溝を含む歯科上部構造に対する製造方法と、前記歯科上部構造をスペーサ要素またはインプラントに固定する間に前記ネジ部材の頭部へのサポートを与えるためのネジ部材シートとが提案されている。前記歯科上部構造には、前記ネジ溝の中心軸と前記第2の口の中心軸とが設けられており、これらは少なくとも部分的に一致しない。すなわち、ネジ溝は、歯科上部構造を通る直線に沿って延びてはいない。角度付きチャネルを提供するための他の技術が、EP3378434B1に開示されている。両技術とも、これらのチャネルを形成するための高度に特殊化された製造装置を必要とする。
【発明の概要】
【0006】
角度付きチャネルを形成するために必要な特殊化された工具に加えて、固定要素を容易に挿入して取り外すことができるように、このようなチャネルをデザイン及び製造することも課題である。
【0007】
したがって、本開示の根本的な目的は、前述の問題に対処する角度付きチャネルを有する歯科コンポーネントを提供することであった。さらなる目的は、このような歯科コンポーネントを製造する方法及び製造するための歯科コンポーネントを形成する方法であった。
【0008】
さらに別の目的は、歯科コンポーネントの完全性及び安定性に影響することを回避するためにコンパクトである角度付きチャネルを有する歯科コンポーネントをデザイン及び製造することであった。
【0009】
したがって、本開示は、角度付きチャネルを有し、歯科インプラントに取り付けるための歯科コンポーネントを製造する方法であって、歯科コンポーネントは歯冠側と根尖側とを有し、本方法は、第1の軸に沿って実質的に延びる第1の孔を形成するステップ(ただし第1の孔は端部領域を有する)、第2の軸に沿って実質的に延びる第2の孔を形成するステップ(ただし第2の孔への入口は、第1の孔の端部領域に対して歯冠側に配置される)を含む方法に関する。第1の孔及び第2の孔は、角度付きチャネルを形成するために互いに交差するように形成される。言い換えれば、第1の軸及び第2の軸は互いに対して傾斜している。第1の孔の端部領域の少なくとも一部は、角度付きチャネルの一部として保持される。
【0010】
言い換えれば、第1の孔と第2の孔との間の交差部の少なくとも一部は、第1の孔の歯冠端部領域によって形成される(すなわち、第1の孔を形成することから生じる)。
【0011】
さらに、角度付きチャネルは特に、歯科ネジなどの固定要素の挿入のために構成されている。
【0012】
第1の孔の端部領域の一部が、第1の孔と第2の孔との間の交点において角度付きチャネルの一部として保持されるため、固定要素が第1の孔と第2の孔との間を通過するのに十分な空間が提供される。端部領域は好ましくは、固定要素が第2の孔から第1の孔への移行部を通過することを、すなわち、挿入されている間にその方向を変化させることを可能にする。
【0013】
端部領域は好ましくは、第2の孔への入口とは基本的に反対側に配置される。言い換えれば、第2の軸の根尖方向に第2の孔内を見ると、第1の孔の端部領域の少なくとも一部が見える。
【0014】
第1の孔は特に、止まり孔のように機械加工される。したがって、第1の孔の端部領域自体が(すなわち、第1の孔の前または後に機械加工される第2の孔とは無関係に、第2の孔を考慮することなく)好ましくは、ドーム形状である。
【0015】
第1の孔及び/または第2の孔は好ましくは、孔(複数可)が単一の処理ステップで形成され得るように形成する(すなわち、工具が歯科コンポーネントの加工を開始し、孔(複数可)が形成されたときにのみ後退する)。
【0016】
歯科コンポーネントはとりわけ、歯科修復物、アバットメント、クラウン、ブリッジ、またはスペーサであってもよい。歯科コンポーネントは、歯科インプラントに直接または間接的に取り付けてもよい。
【0017】
第1の孔の端部領域は好ましくは、第1の軸と第2の軸との間の交点に対して歯冠側に配置されるように形成する。
【0018】
第1の孔の根尖部分と第1の孔の端部領域との間の移行部の輪郭の傾斜の変化は好ましくは、第1の孔の端部領域と第2の孔との間の移行部の傾斜の変化よりも小さい。
【0019】
第1の軸に沿って延びる断面において、端部領域の輪郭は特に、少なくとも1つの湾曲した凹部を含む。少なくとも1つの湾曲した凹部の少なくとも一部は好ましくは、歯科コンポーネントの角度付きチャネルの一部を形成する。複数の(すなわち2つ以上の)湾曲した凹部を含む端部領域の場合、これらの部分は特に、互いに移行している。第1の孔は好ましくは、第2の孔の前に形成される。それでも、第1の孔の前に第2の孔を形成することも可能である。
【0020】
第1の軸と第2の軸との間の傾斜角は好ましくは、0°または5°よりも大きく、60°、30°、または20°以下である。
【0021】
第1の孔及び第2の孔は、切断または研削によって、詳細には回転工具を使用することによって、形成してもよい。
【0022】
好ましくは、回転工具は、第1の孔を形成しながら揺動運動を行う。回転工具は、第1の軸の周りの少なくとも1つの経路に沿って案内され、回転工具の長手軸は好ましくは、第1の軸に対してある角度で、好ましくは一定の角度で配置される。
【0023】
さらにいっそう好ましくは、第1の孔は、第1の軸の周りの少なくとも1つの経路に沿った軌道ミリングによって形成され、回転工具は特に、第1の軸と平行に配向される。
【0024】
歯科コンポーネントを製造するために使用されるブランクは好ましくは、セラミック材料で形成された成形体である。
【0025】
本開示によってさらに、好ましくは前述した方法で製造される歯科コンポーネントが提供される。歯科コンポーネントは、根尖側と、歯冠側と、第1の軸に沿って実質的に延びる第1の孔(ただし第1の孔は端部領域を有する)と、第2の軸に沿って実質的に延びる第2の孔(ただし第2の孔への入口は、第1の孔の端部領域に対して歯冠側に配置される)とを含む。第1の孔及び第2の孔は、互いに交差して、角度付きチャネルを形成する(たとえば、第1の孔(第1の軸)及び第2の孔(第2の軸)は、互いに対して傾斜している)。第1の孔と第2の孔との間の交差部の少なくとも一部は、第1の孔の端部領域内に配置される。言い換えれば、第1の孔と第2の孔との間の交線は、少なくとも部分的に、第1の孔の端部領域内に配置される。
【0026】
第1の孔の直径は、第2の孔の直径以上であってもよい。
【0027】
第1の軸及び/または第2の軸は直線であることが、特に好ましい。
【0028】
第1の孔の端部領域は、第1の軸に垂直な減少する断面を有していてもよい。
【0029】
第1の軸に沿って延びる断面において、端部領域の輪郭は湾曲していても(すなわち、丸みを帯びていても)よく、湾曲した輪郭は好ましくは、複数の湾曲した凹部を含む。
【0030】
歯科コンポーネントの角度付きチャネルは、円錐形のネジ座を有していてもよい。
【0031】
第1の孔の端部領域は、第1の軸と第2の軸との間の交点に対して歯冠側に配置してもよい。
【0032】
本開示によってさらに、CAD(すなわち、CADシステム)を使用して歯科コンポーネントをデザインする方法が提供される。本方法は、歯科コンポーネントの幾何学的データを用意するステップ、歯科コンポーネント内に第1の孔の幾何学的形状を提供するステップ(ただし第1の孔は、実質的に第1の軸に沿って延び、端部領域を有する)、第2の軸に沿って歯科コンポーネント内に実質的に延びる第2の孔を形成するステップ(ただし第2の孔への入口は、第1の孔の歯冠端部領域に対して歯冠側に配置される)を含む。第1の孔及び第2の孔は、角度付きチャネルを形成するために互いに交差して形成される。詳細には、第1の軸及び第2の軸は互いに対して傾斜している。さらに、第1の孔の端部領域の少なくとも一部は、角度付きチャネルの一部として保持される。
【0033】
第1の孔の端部領域は好ましくは、第1の軸と第2の軸との間の交点に対して歯冠側に配置されるように形成される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下の図は、本開示の好ましい実施形態を例示している。これらの実施形態は、限定と解釈すべきではなく、単に以下の説明と関連付けて本発明の理解を高めるものと理解すべきである。これらの図において、同じ参照符号は、図面の全体を通して、同じまたは等価な機能及び/または構造を有する特徴を指す。これは特に、下2桁が同一である参照符号に適用され、前の桁は実施形態を示す。これらのコンポーネントの繰り返しの説明は、説明を簡潔にする理由から全般的に省略することに注意されたい。
【0035】
【
図1】第1の実施形態による第1のドーム形状の孔を含む歯科コンポーネントの断面図である。
【
図2】第2の孔をさらに含む
図1の歯科コンポーネントの断面図であって、第1及び第2の孔によって角度付きチャネルが形成される図である。
【
図3】第2の実施形態によるドーム形状の第1の孔を含む歯科コンポーネントの断面図である。
【
図4】第2の孔をさらに含む
図3の歯科コンポーネントの断面図であって、第1及び第2の孔によって角度付きチャネルが形成される図である。
【
図5】歯科コンポーネントの種々の第1の孔を例示する斜視図である。
【
図6】歯科コンポーネントの角度付きチャネルの断面図である。
【
図7】別の実施形態による歯科コンポーネントの断面図である。
【
図8】第2の孔をさらに含む
図7の歯科コンポーネントの断面図であって、第1及び第2の孔によって角度付きチャネルが形成される図である。
【
図9A】揺動運動を行う回転工具を使用した、第1の孔のドーム形状の端部領域の形成を概略的に例示する断面図である。
【
図9B】揺動運動を行う回転工具を使用した、第1の孔のドーム形状の端部領域の形成を概略的に例示する断面図である。
【
図10】ソフトウェアインターフェースを使用した、角度付きチャネルを有する歯科コンポーネントの形成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、全般的に、角度付き貫通孔を含み、歯科インプラントに直接または間接的に取り付けられるように構成された歯科コンポーネントの典型的な実施形態について説明する。
【0037】
図1及び2に、第1の実施形態による歯科コンポーネント110の2つの製造ステップを例示する。
図1を参照して、歯科コンポーネント110は、第1の根尖側120及び第2の歯冠側130を含む。
【0038】
根尖側120において、歯科コンポーネント110は好ましくは、第1の入口(開口部)142を含む。この入口142において、第1の孔140は、第1の軸141に沿って歯冠方向(すなわち、歯冠成分を有し、横方向成分、すなわち、頬成分、口唇成分、及び/または舌側成分を有し得る方向)に、実質的に延びる。第1の軸141は、好ましくは直線である。
【0039】
第1の孔140は、端部領域143を有する止まり孔として形成される。すなわち、それは、歯科コンポーネント110の全体にわたって延びてはいない孔として形成される。製造中、工具(好ましくは、ミリングまたは穿孔工具などの回転工具)が、根尖側120から第1の軸141に沿って案内されて、詳細には切断または研削によって、第1の孔140を生成する。しかし、歯科コンポーネント110の材料内に案内された工具の先端が、根尖側120と反対側の歯科コンポーネントの側または表面に到達する前に、歯科コンポーネント110の機械加工は停止される。
【0040】
歯科コンポーネント内では、第1の孔140はドーム形状の端部領域143を含む。このドーム形状の端部領域は、第1の孔140の断面の変化によって画定される。詳細には、端部領域143は、第1の軸141に沿った断面において丸みを帯びた輪郭または湾曲した輪郭を有する。好ましくは、端部領域143の丸みを帯びた輪郭は、少なくとも1つの湾曲した凹部を含む。
【0041】
歯科コンポーネント110は好ましくは、根尖側120を介して歯科インプラント(図示せず)に直接取り付け可能なように構成されている。それでも、スペーサなどの中間の歯科コンポーネント(図示せず)を介して歯科インプラントに間接的に取り付け可能なように構成してもよい。
【0042】
取り付けるために、第1の孔140は、端部領域143に対して根尖側に配置される歯科インプラントに取り付けるための取り付け領域160を含んでいてもよい。言い換えれば、任意選択の取り付け領域160が、端部領域143と根尖側120における第1の孔140への第1の入口142との間に配置されている。それは、第1の入口の一部であってもよいし(たとえば、
図1~4)、第1の入口142までのある距離にあってもよい(たとえば、
図5の2つの下図)。
【0043】
取り付け領域160は、第1の軸141に沿って種々の直径161、162のセクションを含んでいてもよい。取り付け領域は、歯科コンポーネント110と、それに取り付けるべき他の歯科コンポーネント(たとえば、歯科インプラントまたは中間の歯科コンポーネント)との間の相対的な向きに対する選択肢を少なくとも限定する割出し手段163を含んでいてもよい。取り付け領域160は、種々の歯科コンポーネントに対する汎用の取り付け領域160としてデザインしてもよい。
【0044】
歯科コンポーネント110は、歯科修復物(
図1~4、7、8、及び10を参照)またはアバットメント(
図6を参照)であってもよい。詳細には、歯科修復物の場合、歯科コンポーネント110は、好ましくはセラミック材料で形成され、さらに好ましくは、本開示により成形体として、すなわち少なくとも最終的な焼結ステップが適用される前に製造される。
【0045】
図2を参照して、
図1の歯科コンポーネント110を示すが、ここでは、第1の入口142に対して歯冠側に、詳細には歯科コンポーネント110の端部領域143に対して歯冠側に配置された第2の入口152も含んでいる。第2の入口152は好ましくは、歯冠方向に面している。第2の入口152は、第2の孔150の端部を形成している。第2の孔は、第2の軸151に沿って実質的に延びている。
【0046】
図2に示したように、第2の入口152は好ましくは、第1の孔140と第2の孔150との間の交点に対して歯冠側に配置される。
【0047】
図2では、第2の孔150は第1の孔140の形成後に形成されると示しているが、こうである必要はない。それとは反対に、第1の孔140は、第2の孔150の後に製造してもよいし、同時に製造してもよい。
【0048】
第2の孔150が延びる第2の入口152は、歯科コンポーネント110の歯冠側130、舌側、または頬側に形成してもよい。
【0049】
第2の孔150は、第1の孔140の第1の軸141に対して傾斜している第2の軸151に沿って実質的に延びている。第1の軸141と第2の軸151との間の傾斜角は、0°よりも大きく、60°以下である。好ましくは、傾斜角度は40°未満であるか、または最も好ましくは30°未満である。第1の軸及び第2の軸141、151は、一方または両方を、直線及び/または曲線として形成してもよい。
【0050】
第1の孔140と第2の孔150とは、歯科コンポーネント110の内部で互いに交差している。言い換えれば、第1の孔140の第1の軸141と、第2の孔150の第2の軸151とは、好ましくは、第1の孔140と第2の孔150とが互いに交差するように、交点111において互いに交差する。それでも、第1の孔140と第2の孔150とは、第1の孔140と第2の孔150とが交差する限り、それぞれの軸が交点において互いに交差しないように形成してもよい。
【0051】
第1の孔140と第2の孔150とは、第1の孔140の端部領域143の少なくとも一部が保持されるように形成される。言い換えれば、第1及び第2の孔が形成されたとき、第1の孔140の端部領域143の一部が、依然として第2の孔150から半径方向に延びている。詳細には、端部領域143は、第2の軸151から出発して第1の半径方向に配置されている。この端部領域143は基本的に、第2の孔150の歯冠入口152の側と反対の第1の孔140の側に配置されている。さらに、前記第1の半径方向と反対の第2の半径方向において、第2の孔150の根尖の端部は、端部領域143から、詳細には第1の孔140の円筒部分から離れたところで第1の孔140と交差している(
図2、4、6、8、及び9Aを参照)。
【0052】
第1の孔140と第2の孔150との間の交点は、交差する等高線または交線153によって画定される。交線153は少なくとも部分的に、第1の孔140の端部領域143の少なくとも一部によって形成される。互いに交差する第1の孔140と第2の孔150とは全体として、歯科コンポーネント110の全体にわたって延びる角度付きチャネル170を形成する。
【0053】
交線153は好ましくは、この線の最も歯冠側の点から出発して、歯科コンポーネント110の根尖側120に向かって延びる交線153の2つの反対の方向が互いに離れるように、すなわち、端部領域が根尖側120に向かって、詳細には単調に(たとえば単調に非減少して)広くなるように、端部領域143に形成される。
【0054】
第2の孔150の入口152によって、歯科ネジなどの固定要素(図示せず)を角度付きチャネル170内に、したがって、歯科コンポーネント110内に導入することができる。固定は、前記歯科コンポーネント110を歯科インプラントに取り付けるためである。この取り付けのために、歯科コンポーネントは、ネジ座(
図5、7、及び8を参照)を有していてもよい。角度付きチャネルが、固定要素をネジ座に送ることに役立つことも可能である。たとえば、歯科コンポーネント110及び210の取り付け領域160及び260はそれぞれ、それ自体はネジ座を含むアバットメントへの(たとえば、接着剤またはセメントによる)取り付けに役立ってもよい。
【0055】
角度付きチャネル170の根尖方向において、角度付きチャネル170の断面は、第1の孔140の端部領域143の一部が保持されることに起因して、交線153の後にサイズが増加する。このサイズの増加によって、固定要素(詳細には、固定要素の頭部)は、(組み立て中に)第1の孔140から第2の孔150内に容易に通過することができ、逆もまた(取り外し中に)同様である。
【0056】
したがって、第1及び第2の孔140、150の配置は、固定要素が角度付きチャネルを通過するための十分な空間を提供するように構成されている。歯科コンポーネント110の内部の第1の孔140と第2の孔150との交点に形成される空間によって、特に、第1の軸141と第2の軸151とに実質的に垂直な軸を中心とした固定要素の回転運動が可能になる。この回転によって、第2の軸151に沿った移動から第1の軸141に沿った移動へまたはその逆に切り替えるための固定要素の再位置付けが可能になり、結果的にそうなる。
【0057】
第2の孔150は好ましくは、第1の孔140と同じ直径で形成される。第2の孔150は、第1の孔140の直径よりも小さい直径で形成してもよい。後者によって、角度付きチャネル170へのより小さい入口152が得られる。これは、観察者にとって、より簡単に隠れ、見えにくい。
【0058】
歯科コンポーネント110、より詳細には角度付きチャネル170は、歯科コンポーネント110の第1の、詳細には根尖側120から出発する第1の孔140を形成し、工具を実質的に第1の軸141に沿って案内することによって製造される。同様に、第2の孔150は、反対方向(すなわち、90°よりも大きく異なる方向)に面する歯科コンポーネント110の側から出発して、工具を実質的に第2の軸151に沿って案内することによって形成される。歯科コンポーネント110の製造は好ましくは、少なくとも1つの回転工具を使用して行われる。
【0059】
前述したように、第1の孔140は特に、第1の軸141に垂直な低減された断面を伴う歯冠端部領域143を有する止まり孔として形成される。低減された断面は好ましくは、第1の軸141に沿って延びる断面における第1の孔の端部領域143の湾曲した等高線から生じる。この湾曲した等高線によって、強化された応力分布、したがって歯科コンポーネント110の強度が可能になる。さらに、湾曲した等高線を有する端部領域143は、他の(たとえば線形の)等高線と比べて、固定要素の挿入経路に対する近似が改善されることを表す。したがって、滑らかな挿入プロセスを実現するために除去する材料が少なくなり、歯科コンポーネント110の強度が受ける影響が減る。それでも、端部領域143は、特に金属などの非セラミック材料の場合には、第1の孔140(
図6を参照)と実質的に同じ断面を含んでいてもよい。
【0060】
第1の孔140の根尖部分と第1の孔140の端部領域143との間の移行部における傾斜の変化は好ましくは、第1の孔140の端部領域143と第2の孔150との間の移行部における傾斜の変化よりも小さい。
【0061】
第1の孔140と第2の孔150とは、孔が互いに交差して、角度付きチャネル170を形成するように形成される。言い換えれば、第1の孔140と第2の孔150とは、第1の軸141と第2の軸151とが交点111において互いに交差するように形成される。しかし、第1の孔140と第2の孔150とは、規定された点において軸が互いに交差しないように形成してもよい。第1の孔と第2の孔とは、第1の孔の端部領域の少なくとも一部が角度付きチャネルの一部として保持されるように、互いに対して形成される。
【0062】
第1の軸141及び第2の軸151は、互いに対して傾斜している。傾斜角度は、0°または5°より大きくてもよく、60°、30°、または20°より小さくてもよい。第1の軸及び第2の軸141、151は、直線及び/または曲線であってもよい。
【0063】
第1及び第2の孔140、150を形成することは、好ましくは、研削または切断によって行われる。第1及び第2の孔140、150は、同じ回転工具によって形成してもよい。第1の実施形態において、第1の孔140は、第2の孔150を形成する前に形成される。しかし、第1の孔140を形成する前に第2の孔150を形成することも可能であり得る。
【0064】
回転工具の直径は好ましくは、角度付きチャネル170を通過するべき固定要素よりも小さい。第1の孔140と第2の孔150とは、実質的に同じ直径で形成してもよい(第1の孔140の場合、特に、取り付け領域160が存在したとしてもそれを考慮しない)。本開示の代替的な実施形態では、第1の孔140と第2の孔150とは、異なる直径で形成してもよく、好ましくは、第1の孔140の直径は、第2の孔150の直径よりも大きい。
【0065】
取り付け領域160は、歯科コンポーネント110の第1の根尖側120に形成してもよい。取り付け領域は、第1の軸141に垂直な、端部領域143を含む第1の孔140の残りの部分とは異なる断面を有する。断面は、(たとえば、割出し手段が存在する場合には)より大きくてもよいし、(たとえば
図7及び8に示すもののような一体に形成されたネジ座の場合には)より小さくてもよい。歯科の第1の孔140の取り付け領域160と端部領域143との間では、第1の孔140は好ましくは、形状が基本的に円筒状である。同様に、第2の孔150は好ましくは、その延長部分に沿った形状が基本的に円筒状である(第1の孔140と第2の孔150との間の交点の領域は円筒状でなくてもよい)。
【0066】
第1及び第2の孔140、150の円筒形状の場合、歯科コンポーネント110及び角度付きチャネル170は、単純な円筒状のミリング工具またはドリルを使用して3軸機械上で形成できて有利である。したがって、特別なまたは高価な機器または工具は必要でないため、チャネル170は、歯科実験室または歯科医のオフィスでも加工し得る。さらに、完全な角度付きチャネルを備えた歯科コンポーネントは、中央の製造場所においてより費用効率高く生産し得る。
【0067】
また、一態様により歯科コンポーネント110の製造中に同じ回転工具を使用することにより、工具の変更、したがって機械のわずかな停止時間も回避されるため、時間を節約することができる。
【0068】
角度付きチャネルを形成する第1及び第2の孔140、150によって、固定要素の通過を可能にする十分な空間が得られる。この点に関して、第1及び第2の孔140、150の位置決め及び寸法設計における柔軟性によって、角度付きチャネル170を通る固定要素の所望の移動による材料の除去を抑えることができる。それによって、歯科コンポーネント110の安定性が向上し、前記コンポーネントの故障のリスクが低減される。さらに、歯科コンポーネント110の製造プロセスは、製造中に廃棄される材料が減るため、より効率的になり得る。
【0069】
図3及び4を参照して、これらの図に、本開示による歯科コンポーネントの別の実施形態を示す。以下の図において、またこれら及び以後の図に関して、簡潔さのために、説明は主に、前述した歯科コンポーネント110とは異なる特徴、または前述した歯科コンポーネント110に補足される特徴に向けられる。それでも、当業者であれば図から特に理解するように、以前の実施形態の特徴の説明は全般的に、以後の実施形態の特徴にも適用される。
【0070】
図3に例示したように、第1の孔240も、歯科コンポーネント210の第1の、詳細には根尖側220の第1の入口242を出発して形成され、第1の軸241に沿って延びる。しかし、第1の孔240のドーム形状の端部領域243は、複数の湾曲した凹部245を含む。より具体的には、第1の軸241に沿った第1の孔240の断面は、2つ以上の湾曲した凹部(
図1を参照)を示す。
図3に例示したように、複数の湾曲した凹部245は好ましくは、第1の軸241に対して非対称に配置される。以前の実施形態に関連するように、これによって、固定要素が第1の孔240と第2の孔250との間を通過するための十分な空間が得られると同時に、材料の不要な除去が防止される。さらに、複数の湾曲した凹部245によって、固定要素の挿入経路に対して端部領域243の形状をより良好に近似することができる。
【0071】
図3~9Bに例示するように、端部領域243が複数の(すなわち2つ以上の)湾曲した凹部245を含む場合には、これらの部分は特に、一方から他方へ移行している(すなわち、それらは互いに直接隣接している)。
【0072】
図4を参照して、
図3の歯科コンポーネント210は、第2の軸251に沿って延びる歯科コンポーネント210の第2の歯冠側230の第2の入口252から延びる第2の孔250によって補足されている。第1の孔240と第2の孔250とは互いに交差して、角度付きチャネル270を形成している。以前の実施形態と同様に、湾曲した凹部245のうちの少なくとも1つの少なくとも一部は、角度付きチャネル270の少なくとも一部を形成する。言い換えれば、第1の孔240と第2の孔250との交線253は、湾曲した凹部245のうちの少なくとも1つの少なくとも一部によって、少なくとも部分的に形成される。
【0073】
湾曲した凹部245によって、第1の孔240と第2の孔250との間の角度付きチャネル270のより滑らかな材料節減の移行が得られる。湾曲した凹部245によって特に、第1の孔240の端部領域243の中心軸と第2の孔250の第2の軸251との間のより滑らかな移行が達成され、したがって、第1及び第2の孔240、250の間の移行が改善される。この結果、角度付きチャネル270を通って移動する固定要素のより滑らかな挿入及び取り出しが可能になる。さらに、端部領域243と第2の孔250との間の鋭いエッジが減るので、固定要素の取り扱いが改善される。詳細には、第1の軸241に沿った方向と第2の軸251に沿った方向との間の移動中の固定要素の前述した回転運動が改善される。
【0074】
第1の孔240は好ましくは、実質的に第1の軸241に沿って案内される回転工具によって形成される。そして、湾曲した凹部245が、第1の軸の周りにほぼ半分まで(好ましくは約90°~225°)延びる経路に沿った工具の後続の軌道運動によって形成される。経路の中心は好ましくは、第2の軸251が第2の入口252まで延びる側とは反対側に配置される。工具がたどる後続の経路は、第1の孔240の端部領域243の根尖方向において、第1の軸241に対する距離が増加する。
【0075】
軌道ミリングを行うことによって、第1の孔240の断面は、実質的に円形断面から長円形または楕円形断面へと操作し得る。
【0076】
複数の湾曲した凹部245は、
図9A及び9Bを参照して以下でさらに詳述する揺動回転工具によって形成してもよい。
【0077】
第1の孔240の形成及び湾曲した凹部245の形成は好ましくは、同じ回転工具を用いて行われる。それでも、回転工具は、第1の孔240の基本的な幾何学的形状を形成した後に変更してもよい。その後、直径がより小さい他の回転工具を、湾曲した凹部245を形成するために使用してもよい。回転工具は、第1の軸241に対して半径方向及び実質的に平行に変位させ、その後、前述した後続の経路に従うための複数の後続のステップにおいて、半径方向に変位させた軸に沿って並進させてもよい。
【0078】
第2の孔250は好ましくは、第1の孔240を形成するために使用される同じ回転工具によって形成される。代替的な実施形態では、第2の孔250は、特に異なる直径を有するときに、他の回転工具を用いて形成してもよい。前述したように、第2の孔250は、第1の孔240と実質的に同じ直径でまたは第1の孔240の直径よりも小さい直径で形成してもよい。また、この実施形態では、第1の孔240は、第2の孔250を形成する前に形成してもよいし、第2の孔250は、第1の孔240を形成する前に形成してもよいし、孔240、250は、少なくとも部分的に同時に形成してもよいことが指摘される。
【0079】
この製造ステップにより、第1の孔240と第2の孔250との間の交点における角度付きチャネル270のより滑らかな移行が可能になる。なぜならば、第1の孔240と第2の孔250との間の理想的な連続的な移行が近似されるからである。したがって、固定要素を角度付きチャネル270を通って移動させるために必要な空間が最適化され、その結果、材料の(不要な)除去が減る。これによって、歯科コンポーネント210の安定性がさらに改善される。以前の実施形態と同様に、製造を再び3軸機械上で行ってもよい。
【0080】
図5における一番上の図は基本的に、
図1に示した第1の孔140に対応する第1の軸341に沿った第1の孔340を例示する。この図において、第1の孔340は、回転工具によって第1の軸341に沿って形成され、取り付け領域を含む。
【0081】
さらに、一番上の図の下にある第1の孔340の2つの図は、
図3及び4の第2の実施形態と同様の複数の湾曲した凹部345を含む第1の孔340のドーム形状の端部領域(ネガ、すなわち本体として示す)を形成する2つの後続のステップを示す。第2の(中央の)図において、第1の凹部345は、回転工具によって、好ましくは軌道ミリングを行うことによって形成される。それによって、第1の孔340の直径は、第1の軸341の一部に沿って拡大されている。第3の(最も低い)図では、第1の孔340と第2の孔(図示せず)との間の連続的な移行を近似するために、さらに湾曲した凹部345が形成されている。
【0082】
図6に、
図3~5に例示したものと同様に湾曲した凹部445含むアバットメントにおける角度付きチャネル470の断面図を示す。前述したように、第2の孔450は、第1の孔440の端部443の少なくとも一部が保持されるように第1の孔440と交差するように、第2の軸451に沿って形成される。
図6にさらに示すように、湾曲した凹部445のうちの少なくとも1つの少なくとも一部は、角度付きチャネル470の少なくとも一部を形成する。また、第1の孔440と第2の孔450との間の交線453は、湾曲した凹部445のうちの少なくとも1つによって、少なくとも部分的に形成される。
【0083】
図7及び8を参照して、本開示のさらに別の実施形態を例示する。
図7によれば、第1の孔540は、歯科コンポーネント510の第1の、詳細には根尖側520の入口542を出発して形成され、実質的に第1の軸541に沿って製造されている。
【0084】
図5の第2及び第3の図と同様に、第1の孔540はネジ座546を含む。すなわち、直径の減少によって生成された、第1の孔540の第1の軸541に沿った領域を含む。例示したように、ネジ座546は、第1の軸541に対して実質的に90°で形成してもよい。ネジ座546は、軌道ミリングによって形成してもよい。それでも、それは、
図9に関連して後述するように、ある角度で、すなわち円錐形状で形成してもよい。
【0085】
さらに、
図5の2つの図とは対照的に、組立て領域が、第1の軸541に沿ってネジ座546に対して根尖側に配置されている。
【0086】
すでにより詳細に前述したように、第1の孔540は、湾曲した凹部545(
図3~6を参照)を含む端部領域543を含む止まり孔として製造される。
【0087】
図8において、第2の孔550が、
図7の歯科コンポーネント510内に機械加工されている。以前の実施形態と同様に、第2の孔550は、根尖側520とは反対側に面する側の入口552から出発して形成され、第2の孔550の第2の軸551に沿って延びるかまたは機械加工されている。
【0088】
図9Aに、歯科コンポーネント610のさらに別の実施形態を例示する。全般的に、コンポーネント610の深さは、
図7及び8に示したものと同様のデザインを有する。しかし、以前の実施形態とは対照的に、第1の孔640の端部領域643は、揺動運動を行う回転工具を使用して製造されている。揺動運動により、端部領域643は、複数の湾曲した凹部645を備えて製造される。
【0089】
揺動運動の結果、第1の孔640は、第1の孔640と第2の孔650との間の交点に対して根尖側に配置された円錐形部分も含む。円錐形部分は、第1の孔640の第1の軸641に沿ってテーパになっており、円錐形のネジ座646として使用してもよい。
【0090】
図9Bに、3つのステップで、揺動回転工具を使用して第1の孔640をどのように形成するかを例示する。揺動運動中、回転工具は、2つの重ね合わせた運動を行う、一方の運動は、回転工具の軸を中心とした回転運動であり、第2の移動は、回転工具の軸に対して傾斜し第1の孔640の第1の軸641と平行な軸を中心とした回転である。
【0091】
これは、回転工具が2つの重ね合わせた運動を行う前述した軌道ミリングとは異なる。ここでは、一方は、回転工具の軸を中心とした回転で、第2は、軌道軸(たとえば第1の軸)の周りの経路に沿った回転(円形、軌道)運動である。
【0092】
回転工具の揺動運動によって、穴または孔の直径は、単一の直径ではなく、工具の軌道軸に沿って変化する複数の直径によって形成される。回転工具の揺動運動によって、そうでなければアクセスが困難な機械加工領域が可能になる。
【0093】
図9Bには、第1の孔640と、ネジ座646として使用してもよい円錐形状とが、回転工具の挿入方向において直径が減少しながら開口部の背後にどのように形成されるかを概略的に例示している。図示したように、回転工具は、前述の軸を中心に運動しながら、任意選択のネジ座646の高さにおける開口部を越えて挿入される。これによって、第1の軸641に沿って実質的に延びる第1の孔640を機械加工しながら、任意選択のネジ座646が円錐形状で形成される。さらに、少なくとも1つの湾曲した凹部645も、揺動回転工具の先端部によって、第1の孔640の歯冠端部643に形成される。
【0094】
図10を参照して、本開示による歯科コンポーネントをデザインするためのソフトウェアまたはCADソフトウェアを例示する。仮想環境内に仮想の患者状況が提供される。そして、ユーザは歯科コンポーネント710をデザインする。
【0095】
ドーム形状または他の前述した円形状を有する歯冠端部領域を備えた第1の孔740の形状、位置、及び/または向きが計算されて、仮想歯科コンポーネント710内の正確な場所に現れる。
【0096】
この前または後で、ユーザは、第2の孔750の位置及び/または向きを、たとえば、視認性が低い歯科コンポーネント710の側(図では歯冠側)に第2の入口752を配置することによって調整してもよい。第2の入口から出発して、第2の孔750が第2の軸751に沿って延びる。ユーザは、第1の軸741の周りで第2の孔750の向きを選択してもよい(第1の軸741の周りで0~360°)。第2の孔は、第1の孔の端部領域の少なくとも一部が(仮想の)角度付きチャネル770の一部として保持されるように形成される。
【0097】
歯科コンポーネント(
図10では歯科修復物)の位置に応じて、患者に合わせてカスタマイズされた解決策を仮想環境においてデザインするために、ユーザに異なる方法を提案してもよい。たとえば、ユーザには、第2の孔が患者の口の外側から少なくとも見えにくいように美的側面を考慮することができるように、第2の孔750の位置を調整する選択肢があってもよい。ユーザには、歯科インプラントから出発する構造的側面に従って歯科コンポーネントをデザインする可能性も提供され得る。
【0098】
新しい歯科コンポーネント710の幾何学的情報を、本発明による適切な角度付きネジチャネルを備えた歯科コンポーネントを製造するためのCAMシステムに送る。
【0099】
提供した図では、参照符号の下2桁は、同じまたは等価な機能及び/または構造を有する特徴を図面の全体を通して指す。前の数字は実施形態を示す。このため、参照符号のリストは参照符号の下2桁のみを指す。
【符号の説明】
【0100】
10 歯科コンポーネント
11 交点
20 第1の根尖側
30 第2の歯冠側
40 第1の孔
41 第1の軸
42 第1の入口(開口部)
43 端部領域
45 湾曲した凹部
46 ネジ座
50 第2の孔
51 第2の軸
52 第2の入口(開口部)
53 交線または交差する等高線
60 取り付け領域
61、62 取り付け領域の変化する直径
63 割出し手段
70 角度付きチャネル
【国際調査報告】