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特表2024-521545抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント
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  • 特表-抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント 図1a
  • 特表-抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント 図1b
  • 特表-抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント 図2
  • 特表-抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント 図3
  • 特表-抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント 図4a
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  • 特表-抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240527BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240527BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240527BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240527BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240527BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240527BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240527BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K39/395 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565380
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2021006816
(87)【国際公開番号】W WO2022244908
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065517
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520077986
【氏名又は名称】ゲノム アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チャ, ミ ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ユ, ヒョンキョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ブ ナム
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョヌク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC752
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント、及びその使用に関する。加えて、本発明による抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、BCAMを発現する細胞に関連する病態、例えば癌を予防又は治療するために使用することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7、9及び11からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR1と、
配列番号13、15及び17からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR2と、
配列番号19、21及び23からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR3と、
配列番号8、10及び12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1と、
配列番号14、16及び18からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2と、
配列番号20、22及び24からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3と
を含む抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
(a)前記配列番号7のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR1、
前記配列番号13のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR2、
前記配列番号19のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR3、
前記配列番号8のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR1、
前記配列番号14のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR2、及び
前記配列番号20のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR3、
(b)前記配列番号9のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR1、
前記配列番号15のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR2、
前記配列番号21のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR3、
前記配列番号10のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR1、
前記配列番号16のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR2、及び
前記配列番号22のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR3、又は
(c)前記配列番号11のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR1、
前記配列番号17のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR2、
前記配列番号23のアミノ酸配列を含む前記重鎖CDR3、
前記配列番号12のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR1、
前記配列番号18のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR2、及び
前記配列番号24のアミノ酸配列を含む前記軽鎖CDR3
を含む、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号1、3及び5からなる群から選択されるいずれか1つの重鎖可変領域と、
配列番号2、4及び6からなる群から選択されるいずれか1つの軽鎖可変領域と
を含む、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(c)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗BCAM抗体が多重特異性抗体である、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗原結合フラグメントが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体scFv、F(ab’)2フラグメント、VL、VH、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ(scFV(CH3)2)、IgG deltaCH2、scFv-Fc、(scFv)2-Fc、フィノマー、二重親和性再ターゲティング(DART)、又はTRIDENTである、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
1×10-7M以下の結合解離平衡定数(K)でヒトBCAMタンパク質に結合する、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である、請求項1に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを含む抗体薬物複合体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項12】
癌を予防又は治療する用の医薬組成物であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
【請求項13】
追加の抗癌剤をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント、及び前記追加の抗癌剤が、単一の製剤として同時に投与されるか、又は別々の製剤として同時若しくは逐次的に投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗体111a、111b又は111cが結合するエピトープと同じエピトープに結合する、ヒトBCAMに特異的に結合する抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント、及びその使用に関する。さらに、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、BCAMを発現する細胞に関連する病態、例えば癌の予防又は治療に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
基底細胞接着分子(BCAM)は、Igスーパーファミリーの膜貫通タンパク質であり、ルーテル式血液型糖タンパク質(Lu)としても知られている。Luは当初、ルーテル式血液型の抗原として研究され、BCAMは卵巣癌で発現上昇する抗原として同定された。Lu及びBCAMは同じ細胞外ドメインを有するが、細胞質尾部が異なる。詳細には、BCAMは、Lu細胞質尾部に存在するCOOH末端の40アミノ酸を欠いている。さらに、Lu特異的細胞質領域にはSH3結合モチーフ、ジロイシンモチーフ、及び潜在的なリン酸化部位を有する。Lu及びBCAMの細胞質尾部の共有領域はスペクトリン結合モチーフを含む。BCAM及びLuの構造は互いに重なり合っているため、実際の組織ではLuとBCAMとを区別することは難しく、LuとBCAMとは互換的に呼ばれ、Lu/BCAMと呼ばれたり、また、CD239とも呼ばれたりする。
【0003】
BCAMの細胞外ドメインは、1つのV-セット、1つのC1-セット、及び3つのI-セット(V-C1-I-I-I)のドメインを含む。BCAMは基底膜の主要成分であるラミニンα5に特異的に結合することから、BCAMは基底膜への細胞接着に関与していると考えられている。ラミニンα5はβ鎖とγ鎖に結合してヘテロ三量体を形成し、これは正常組織や疾患組織の基底膜の多くに見られる。加えて、BCAMは、α5、β1、γ1鎖から構成されるラミニン-511(LM-511)で肺癌細胞の遊走を促進する。さらに、LM-511での腫瘍細胞の遊走は、BCAMに対する機能阻害抗体の存在下で阻害される。BCAMの過剰発現は卵巣癌腫だけでなく、皮膚癌及び肝細胞癌腫でも観察されることが確認され、したがって、BCAMは診断及び抗体医薬品の開発に有用な抗原として提唱されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yamato Kikkawaら、Scientific Report、2018年4月26日;8(1):6612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、BCAMタンパク質に特異的に結合する抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを提供することである。
【0006】
さらに、本発明は、癌などのBCAMを発現する細胞に関連する病態を予防又は治療するための抗体又は抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0008】
本発明は、癌を予防又は治療する用の医薬組成物であって、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。加えて、本発明は、BCAM発現細胞を標的とするために阻害剤を選択的に送達できる抗体薬物複合体(ADC)の形態の抗体又は抗原結合フラグメントを提供する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、配列番号7、9及び11からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号13、15及び17からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号19、21及び23からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号8、10及び12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号14、16及び18からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、並びに配列番号20、22及び24からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、配列番号1、3及び5からなる群から選択されるいずれか1つの重鎖可変領域、並びに配列番号2、4及び6からなる群から選択されるいずれか1つの軽鎖可変領域を含む抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明の抗原結合フラグメントは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体scFv、F(ab’)2フラグメント、VL、VH、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ(scFV(CH3)2)、IgG deltaCH2、scFv-Fc、(scFv)2-Fc、フィノマー、二重親和性再ターゲティング(DART)、又は本発明のCDR配列を含むTRIDENTであってもよい。本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体であってもよく、多重特異性抗体であってもよい。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子、及び該核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0013】
本発明はまた、癌を予防又は治療するための組成物であって、抗体又はその抗原結合フラグメントを有効成分として含む組成物を提供する。医薬組成物は、別の抗癌剤若しくは化学療法剤などの追加の抗癌剤と併用することができるか、又は放射線療法と併用することができる。
【0014】
本発明はまた、BCAMタンパク質を分析又は検出するための組成物であって、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトBCAMタンパク質に高親和性で結合する。その結果、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、癌の予防又は治療に効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】選択された抗体の重鎖可変領域(1a)のアミノ酸配列を示す図である。太字及び下線の配列は各領域のCDR配列を表す。
図1b】選択された抗体の軽鎖可変領域(1b)のアミノ酸配列を示す図である。太字及び下線の配列は各領域のCDR配列を表す。
図2】ELISA分析による本発明の抗体のBCAMに対する結合能を示す図である。
図3】FACS分析による本発明の抗体のBCAMに対する結合能を示す図である(PBSとヒトIgGの値は重なっていることを示す)。
図4a】Octet分析による本発明の抗体のBCAMに対する結合能を示す図である。
図4b】Octet分析による本発明の抗体のBCAMに対する結合能を示す図である。
図4c】Octet分析による本発明の抗体のBCAMに対する結合能を示す図である。
図5】共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した本発明の抗体の細胞内在化の程度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント
本発明は、BCAMタンパク質に特異的に結合する抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0018】
一実施形態では、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:
配列番号7、9及び11からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号13、15及び17からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号19、21及び23からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号8、10及び12からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号14、16及び18からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、並びに
配列番号20、22及び24からなる群から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3。
【0019】
具体的な実施形態では、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:
(a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、又は
(c)配列番号11のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び
配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3。
【0020】
本明細書で使用される場合、各鎖又はその可変領域が特定のアミノ酸配列を含むとは、鎖又は可変領域がアミノ酸配列全体を含むか、アミノ酸配列全体を有するか、又はアミノ酸配列からなることを意味する。
【0021】
一例では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0022】
別の一例では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列から本質的になる重鎖CDR1、配列番号13のアミノ酸配列から本質的になる重鎖CDR2、配列番号19のアミノ酸配列から本質的になる重鎖CDR3、配列番号8のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖CDR1、配列番号14のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列から本質的になる軽鎖CDR3を含む。
【0023】
別の一例では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7のアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号13のアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、配列番号19のアミノ酸配列からなる重鎖CDR3、配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号14のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、及び配列番号20のアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」という用語、又はその変形語は、オープンな意味を指す。一例として、列挙されているアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合フラグメントは、必須か否かにかかわらず、列挙されていない追加のアミノ酸配列を含むことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語又はその変形語句は、言及された要素のいずれかを含み、実施形態の基本的かつ新規な特性又は機能的特性に実質的に影響を与えない要素の存在を許容する。一例として、列挙されているアミノ酸配列から本質的になる抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗体又はそのフラグメントの特性に実質的に影響を与えない1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含むことができる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「からなる」という用語又はその変形語句は、本明細書に記載されるそれぞれの構成要素が、実施形態のその説明に記載又は列挙されていないいずれの要素も許可しない場合を指す。
【0027】
本明細書で定義される別の抗体又はその抗原結合フラグメントの各鎖又は変異領域は、上記の例のようなアミノ酸配列を含む、有する、又はそれからなることもできる。
【0028】
「相補性決定領域」(CDR;CDR1、CDR2、及びCDR3)という用語は、抗原結合に必要な抗体可変領域内のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、通常、CDR1、CDR2、及びCDR3と特定される3つのCDR領域を有する。
【0029】
別の実施形態では、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:
配列番号1、3及び5からなる群から選択されるいずれか1つの重鎖可変領域、並びに
配列番号2、4及び6からなる群から選択されるいずれか1つの軽鎖可変領域。
【0030】
具体的な実施形態では、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(c)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
【0031】
抗体可変領域とは、CDR及びフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖部分及び重鎖部分を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド、タンパク質などの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を指す。本明細書での「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、したがって、インタクトなポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のみならず、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、その抗原結合フラグメント、その抗体フラグメント、抗原認識部位(例えば、可変領域)を含む免疫グロブリン分子の他の任意の改変された構成を含む融合タンパク質、合成抗体(例えば、「抗体模倣物」)、「FynomAb」などを広範に包含する。
【0033】
抗体には、免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgG、IgA、及びIgEの5つのクラスがあり、それぞれ重鎖定常領域遺伝子μ、δ、γ、α、及びεから作られる重鎖を含む。抗体の軽鎖及び重鎖は、抗体ごとに異なるアミノ酸配列を有する可変領域と同じアミノ酸配列を有する定常領域とに分けられ、重鎖定常領域はCH1、H(ヒンジ)、CH2、CH3ドメインを含む。各ドメインは2つのβシートからなり、その間に分子内ジスルフィド結合が連結されている。
【0034】
本明細書で、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を「111a」と呼び、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を「111b」と呼び、配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体を「111c」と呼ぶ。
【0035】
本発明の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であってもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、ある種に可変領域配列が由来し、別の種に定常領域配列が由来する抗体、例えば可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指す。キメラ抗体の作製方法は当技術分野で公知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Morrison、Science 229:1202(1985)などを参照されたい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、別の哺乳動物種、例えばマウス又はニワトリなどの非ヒト種の生殖細胞系列に由来する1つ又は複数のCDR配列が、ヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク配列に移植された抗体を指す。フレームワーク配列は、例えば変異によってさらに改変されることがある。ヒトIg配列は、例えばNCBI Database(Entez Gene)などに参考として開示されることがある。適切な配列を使用して、抗体の免疫原性を低下させたり、又は結合、親和性、on-rate、off-rate、結合活性、特異性、半減期、若しくは他の適切な特性を低下、増強、又は修正したりすることができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト免疫グロブリン配列に由来する可変領域を含む抗体を指す。抗体の定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「抗原結合フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は通常、少なくとも親抗体の抗原結合ドメイン又は可変領域の少なくとも一部(例えば、1つ又は複数のCDR)を含むことを指す。抗体フラグメントは、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持している。本明細書で使用することができる抗原結合フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、一本鎖抗体scFv、F(ab’)2フラグメント、VL、VH、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ((scFV-CH3)2)、IgG deltaCH2、scFv-Fc、(scFv)2-Fc、フィノマー、二重親和性再ターゲティング(DART)、アンチカリン、FN3モノボディ、DARPin、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィティン、アルファボディ、アビマー、Im7、VLR、VNAR、Trimab、CrossMab、TRIDENT、ナノボディ、バイノボディ、又はdi-sdFvが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
具体的には、Fabフラグメントは、VL、VH、CL、及びCH1ドメインから構成される一価のフラグメントを指す。
【0041】
Fab’フラグメントがFabフラグメントと異なる点は、抗体ヒンジ領域から少なくとも1つのシステインを含むCH1ドメインのカルボキシル末端にいくつかの残基が付加されている点である。
【0042】
Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するFab’を指す。
【0043】
F(ab’)2抗体フラグメントは、Fab’フラグメント間のヒンジシステインを介して一対のFab’フラグメントとして生成される。
【0044】
Fvは、抗原認識部位及び抗原結合部位を完全に含む最小限の抗体フラグメントである。このフラグメントは、1つの重鎖可変領域と1つの軽鎖可変領域が非共有結合で緊密に結合した二量体からなる。この2つの領域の折りたたみから、6つの超可変ループ(重鎖と軽鎖からそれぞれ3つのループ)が生じ、抗原結合のためのアミノ酸残基をもたらし、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変領域であっても、結合部位全体よりは低い親和性ではあるが、抗原を認識し結合する能力がある。
【0045】
一本鎖抗体scFvは、一本のポリペプチド鎖に連結されたVH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。本明細書においてscFvポリペプチドは、scFv抗体フラグメント、抗原結合フラグメントscFv、scFv抗体、抗体scFv、又は単にscFvとも呼ばれる。
【0046】
ダイアボディとは、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10残基)を使用してscFvフラグメントを構築することにより調製される小さな抗体フラグメントを指し、Vドメインの鎖間対合は達成されるが鎖内対合は達成されず、その結果、二価のフラグメント、すなわち2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られる。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメインとVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」scFvフラグメントからなるヘテロダイマーである。同様に、トリアボディ及びテトラボディは、それぞれ3つのポリペプチド鎖及び4つのポリペプチド鎖を含み、それぞれ3つの抗原結合部位及び4つの抗原結合部位を形成するが、これらは互いに同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0047】
フィノマーとは、ヒトFyn SH3ドメインに由来する非免疫グロブリン由来の結合ポリペプチドを指す。Fyn SH3由来ポリペプチドは当技術分野で公知であり、例えば、Grabulovskiら(2007)JBC、282、3196~3204頁、国際公開第2008/022759号などに開示されている。フィノマーは別の分子(例えば抗体)と遺伝的に融合して、「FynomAb」、すなわち二重特異性を有するように工学操作し得る形態を生成することができる。
【0048】
二重親和性再ターゲティング(DART)及びTRIDENTは、2つ以上の標的に同時に結合するように設計されたものを指す。DARTは、共有結合で連結された二重特異性ダイアボディ、例えばC末端ジスルフィド架橋を介して連結されたダイアボディを指し、その構造及び定義などは、J.Mol.Biol.(2010)399、436~449などに開示されている。
【0049】
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトBCAMタンパク質などのBCAMタンパク質に特異的に結合することができる。
【0050】
具体的な一実施形態では、本発明は、抗体111a、111b又は111cが結合するエピトープと同じエピトープに結合する、ヒトBCAMに特異的に結合する抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖及び軽鎖の各々のCDR1、CDR2、及びCDR3は、抗体111a、111b又は111cの重鎖及び軽鎖の各々のCDR1、CDR2、及びCDR3と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは100%の相同性を有する。同様に、抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖及び軽鎖の各々は、抗体111a、111b又は111cの重鎖及び軽鎖の各々と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは100%の相同性を有する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「BCAM」という用語は基底細胞接着分子を指し、細胞外マトリックスタンパク質であるラミニンの受容体として作用する表面糖タンパク質である。「BCAM」は、ルーテル式血液型糖タンパク質(Lu)又はCD239としても知られており、本明細書において、「BCAM」、「Lu」、「Lu/BCAM」及び「CD239」は、同じタンパク質を指し、互換的に使用することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」又は「特異的な」という用語は、標的と抗体との間の結合などの測定可能で再現可能な相互作用を指し、これは、生物学的分子を含む不均一な分子集団の存在下で標的の存在を決定するものである。例えば、特定の標的(例えば、エピトープ)に特異的に結合する抗体とは、他の標的に結合するよりも、より高い親和性、結合活性、より容易に、及び/又はより長い期間、この標的に結合する抗体である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ヒトBCAMタンパク質に特異的に結合する」という用語は、1×10-7M以下、又は好ましくは5×10-8M以下の結合解離平衡定数(K)でヒトBCAMタンパク質に結合する抗体を指すことができる。したがって、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、1×10-7M以下の結合解離平衡定数(K)、好ましくは5×10-8M以下のKでヒトBCAMタンパク質に結合することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「K」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合解離平衡定数を指し、式K=K/K(式中、Kは結合速度定数であり、Kdは解離速度定数である)から算出され、定数Kの単位はMである。抗体のK値は、当技術分野で広く確立された方法を使用して決定することができる。抗体のK値を測定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴(SRP)、好ましくはビアコア(Biacore)(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステム、又はオクテット(Octet)(登録商標)システムなどのバイオレイヤー干渉法(BLI)を使用することである。具体的な一例として、本明細書に記載されるKは、オクテット(登録商標)システムを使用したBLIによって得られる値であってもよい。
【0055】
別の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、薬物複合形態、すなわち抗体薬物複合体(ADC)を形成することができる。本明細書で使用される場合、「抗体薬物複合体」又は「ADC」という用語は、式M-[L-D]で表すことができ、式中、Mは抗体分子、すなわち本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを表し、Lは任意のリンカー又はリンカーユニットであり、Dは適切な薬物又はプロドラッグであり、nは約1~約20の整数である。ADCに含まれる薬物は、本発明の抗体の特異的結合を妨害しない薬物である限り、治療又は診断の用途に応じて適宜選択することができる。一実施形態では、薬物としては、細胞毒性剤(例えば、化学療法剤)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位元素若しくは化合物、又は毒素が挙げられるが、これらに限定されない。ADCに含まれ得る薬物及びリンカー、並びにその調製方法は、当技術分野で公知の方法に従うことができる。したがって、本発明は、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを含む抗体薬物複合体を提供する。
【0056】
別の実施形態では、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、ELISAアッセイによって決定されるように、150nM以下、例えば130nM以下、100nM以下、50nM以下、20nM以下、又は10nM以下のEC50でBCAMタンパク質に結合する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「EC50」という用語は、抗体を用いたインビトロ又はインビボアッセイに関する用語であり、最大応答の50%、すなわち最大応答とベースラインとの間の中間の応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0058】
核酸分子及びベクター
本発明の別の態様は、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子に関する。
【0059】
核酸は、細胞全体、細胞溶解物中、又は特異的に精製された形態若しくは実質的に純粋な形態で存在することができる。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動及び当技術分野で周知の他の方法を含む標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば他の細胞核酸又はタンパク質から離れて精製された場合、「単離された」又は「実質的に純粋になった」ことになる。
【0060】
本発明の核酸は、例えば、DNA又はRNAであってもよく、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態では、核酸はcDNA分子である。
【0061】
一実施形態では、本発明の核酸分子は、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖領域、重鎖領域、又は軽鎖及び重鎖の両方の領域をコードし、好ましくは、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、又は軽鎖及び重鎖の両方の可変領域をコードする。
【0062】
VL及び/又はVH領域をコードするDNAフラグメントが得られると、そのようなDNAフラグメントを標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができ、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子、又はscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VL又はVHをコードするDNAフラグメントが、別のタンパク質、例えば抗体定常領域又はフレキシブルリンカーをコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2つのDNAフラグメントが接合されることを意味する。
【0063】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に結合させることにより、完全長の重鎖遺伝子に変換することができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、又はIgD定常領域であってもよい。
【0064】
Fabフラグメント重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結することができる。
【0065】
scFv遺伝子を作製するには、VL及びVHをコードするDNAフラグメントを、フレキシブルリンカーをコードする別のフラグメント、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする別のフラグメントと作動可能に連結されることにより、VL及びVH領域がフレキシブルリンカーによって接合されて、VL及びVH配列が連続した一本鎖タンパク質として発現できる。
【0066】
RNA又はDNAなどの本発明の核酸配列は、種々の供給源から単離され、遺伝子工学的に操作され、増幅され、及び/又は組換え的に発現することができる。任意の組換え発現系を使用することができ、これには細菌に加えて、例えば酵母、昆虫又は哺乳動物系が挙げられる。例えば、発現ベクターへのサブクローニング、プローブの標識、配列決定、及びハイブリダイゼーションなどの核酸の操作は、当技術分野で公知のように行うことができる。
【0067】
したがって、本発明は、核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、原核細胞及び/又は真核細胞において自己複製が可能なDNA分子を指し、遺伝子又はDNAフラグメントを細胞などに送達するための担体として一般的に使用される組換えベクター、クローニングベクター、又は発現ベクターと互換的に使用される。ベクターは一般に、原核細胞及び/又は真核細胞で複製可能な複製起点、抗生物質分解酵素などの特定の条件/物質に対する耐性を付与することができる選択マーカー遺伝子、真核細胞又は原核細胞で遺伝子を転写可能なプロモーター、及び翻訳可能配列を含むが、これらに限定されない。
【0069】
ベクターの一種に「プラスミド」があるが、これは環状の二本鎖DNAループで、そこに追加のDNAセグメントをライゲートできるものを指す。別の一種のベクターはウイルスベクターであり、このベクターではウイルスゲノムに追加のDNAセグメントをライゲートし得る。ある種のベクターは、導入された宿主細胞内で自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム型哺乳動物ベクター)。
【0070】
抗体又はその抗原結合フラグメントの調製
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、従来公知の方法に従って調製することができる。
【0071】
一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、ファージディスプレイ技術などの抗体ディスプレイ技術を使用して調製することができる。
【0072】
抗体のファージライブラリーを、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子をファージ表面タンパク質(pIII)に融合させた形態でファージミドベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)で発現させた後、M13ヘルパーファージを感染させ、重鎖及び軽鎖可変領域の様々な組合せの配列を有する抗体フラグメント(scFv又はFab)がファージ表面に提示された抗体ライブラリーを調製する。このライブラリーから、特定の抗原に結合する抗体のフラグメントをパニング法で単離し、単離された抗体フラグメントを特性決定した後、全IgG型に変換して動物細胞で大量発現させることにより、特異的ヒトモノクローナル抗体を産生する。
【0073】
ライブラリーとしては、ヒト体内に既に存在する抗体遺伝子を使用したナイーブ抗体ライブラリーを使用することができ、或いは、抗体のCDRにランダム合成配列を付加することによって多様性を高めた合成抗体ライブラリーを使用することができる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ファージミドベクター」という用語は、ファージ複製起点を有するプラスミドDNAを指し、通常、選択マーカーとして抗生物質耐性遺伝子を有する。
【0075】
ファージディスプレイに使用されるファージミドベクターは、M13ファージのgIII遺伝子又はその一部を含み、ScFv遺伝子はgIII遺伝子の5’末端にライゲートされて、形質転換体を通して発現される。
【0076】
「ヘルパーファージ」とは、ファージミドがファージ粒子にパッケージされるために必要な遺伝情報を提供するファージである。ファージミドにはファージのgIII遺伝子又はその一部が含まれているため、ファージミドで形質転換した宿主細胞(形質転換体)をヘルパーファージに感染させ、残りのファージ遺伝子をもたらす。ヘルパーファージには、M13K07又はVCSM13が含まれ、ヘルパーファージに感染した形質転換体を選択することができるように、カナマイシン耐性遺伝子などの抗生物質耐性遺伝子を含むものがほとんどである。加えて、パッケージングシグナルが欠損しているため、ヘルパーファージ遺伝子ではなくファージミド遺伝子が選択的にファージ粒子にパッケージングされる。
【0077】
別の実施形態では、本発明の抗体は、例えばモノクローナル抗体の形態で、当技術分野で公知の方法に従って試験用被験体(例えばマウス)にBCAM抗原を注射し、次いで目的の配列又は機能的特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離することによって調製することができる。
【0078】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)で容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として提供される。単離されると、DNAは発現ベクターに入れられ、大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞など、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞でのモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0079】
使用及び方法
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、BCAMに特異的に結合し、癌を予防又は治療する。
【0080】
したがって、一実施形態では、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するための方法であって、被験体に、有効量の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法を提供する。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するための抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0082】
別の実施形態では、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するための医薬組成物であって、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、医薬組成物中に有効量含有させることができる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「被験体」という用語は、ヒト及び非ヒト動物の両方を含むことを意味する。非ヒト動物としては、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類を含む哺乳類及び非哺乳類が挙げられるが、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマが好ましい。好ましい被験体は、癌の予防又は治療を必要とするヒトである。
【0084】
好ましくは、本発明の抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントは、BCAMタンパク質に特異的に結合し、それにより、BCAMを発現している癌細胞に効果的に結合し、インビボでの癌細胞の増殖を阻害することが可能であり、癌の予防、改善又は治療に有効に使用することができる。BCAMは腫瘍の遊走に関連し、さらに、その過剰発現が皮膚癌、卵巣癌、膵臓癌、乳癌などで特に見られることが知られている(F.R.M.Latiniら、Blood Cells,Molecules and Diseases 50(2013)161~165などを参照されたい)。したがって、本発明の抗BCAM抗体は、腫瘍の遊走が観察される全ての癌、例えば転移性癌に使用することができ、その過剰発現が観察される特定の癌腫にも使用することができる。
【0085】
本発明の抗体を使用した場合に増殖が阻害され得る癌の例としては、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、明細胞癌腫)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌腫)、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、結腸癌、及び肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、骨癌、膵臓癌、肝臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸癌腫、膣癌腫、外陰癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病を含む慢性又は急性の白血病、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、尿管癌、腎盂癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘導されるものを含む環境誘発癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを使用して、BCAMタンパク質に特異的に結合して抗体薬物複合体(ADC)を形成することにより、癌を予防又は治療することができる。したがって、一実施形態では、本発明は、薬剤と複合した形態の抗BCAM抗体又は抗原結合フラグメントを提供する。一実施形態では、薬物としては、細胞毒性剤(例えば、化学療法剤)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位元素若しくは化合物、又は毒素が挙げられるが、これらに限定されない。ADCに含まれ得る薬物及びリンカー、並びにその調製方法は、当技術分野で公知の方法に従うことができる。
【0087】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、単独で使用することができるか、又は他の抗癌治療と併用することができる。他の抗癌治療としては、例えば、標準的な癌治療(例えば、化学療法、放射線療法、又は手術)、又は細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、抗ホルモン剤、血管新生阻害剤若しくは代謝拮抗剤、標的化剤、免疫刺激剤若しくは免疫調節剤、免疫チェックポイント阻害剤、又は細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、及び他の毒性剤と複合した抗体などの他の抗癌剤を挙げることができる。
【0088】
好ましくは、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、免疫チェックポイント阻害剤、化学療法剤、放射線療法剤などの他の抗癌剤と併用することができる。
【0089】
免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ)、又は抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)であってもよい。化学療法剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、キナーゼ阻害剤、紡錘体毒植物性アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、光増感剤、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、抗プロゲステロン、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD)、エストロゲン受容体拮抗剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン作動剤、抗アンドロゲン、アロマターゼ阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、異常な細胞増殖又は腫瘍増殖に関与する遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化学療法剤の具体例としては、ゲムシタビン、ビノレルビン、エトポシド(VP-16)、シスプラチン又はカルボプラチンなどの白金アナログ、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、及びドキセタキセルなどのタキソイドなどが挙げられる。
【0090】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントを他の抗癌剤と併用する場合、別々に投与してもよく、又は複数の有効成分が単一の医薬製剤中に存在する複合医薬品の形態で適用してもよい。別々の製剤として投与する場合、2つの製剤を逐次的に投与してもよく、又は同時に投与してもよい。同時投与の場合は、一緒に患者に与えられる。逐次的投与の場合、長くない時間間隔で投与することができ、例えば、製剤は12時間以内、又は6時間以内の期間に患者に投与することができる。
【0091】
一実施形態では、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するための方法であって、被験体に、有効量の抗体又はその抗原結合フラグメントを、追加の抗癌剤と併用して投与することを含む方法を提供する。本実施形態は、抗BCAM抗体又は抗原結合フラグメントを含む単一の組成物を、追加の抗癌剤と共に、投与を必要とする患者に同時に投与することだけでなく、抗BCAM抗体又は抗原結合フラグメント及び追加の抗癌剤をそれぞれ別々に含む組成物を、投与を必要とする患者に同時又は逐次的に投与することも含む。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するために追加の抗癌剤と併用するための抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントの使用を提供する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するための医薬組成物又は組合せであって、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント、及び追加の抗癌剤を含む医薬組成物又は組合せを提供する。本明細書において、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント、及び追加の抗癌剤を含む医薬組成物又は組合せは、2つの構成成分が物理的に単一の製剤の形態で一緒に存在する場合だけでなく、2つの構成成分が別々の製剤で同時又は逐次的に投与される場合も含み、この場合、2つの薬物は別々に提供されてもよいし、単一のキットで一緒に提供されてもよい。したがって、本発明は、癌を予防、改善、又は治療するためのキットであって、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメント、及び追加の抗癌剤を含むキットを提供する。
【0094】
医薬組成物
本発明は、抗BCAM抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。組成物は不活性成分、すなわち薬学的に許容できる賦形剤(Handbook of Pharmaceutical Excipientsなどを参照)を含有していてもよい。治療用製剤及び診断用製剤の組成物は、製剤を生理学的に許容できる担体、賦形剤、又は安定剤と混合することにより、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、又は懸濁液の形態で調製することができる。
【0095】
適切な投与経路としては、筋肉内投与、静脈内投与、又は皮下投与などの非経口投与が挙げられる。本発明の医薬組成物に使用される、又は本発明の方法を実施するために使用される抗体の投与は、局所適用、又は皮内、皮下、腹腔内、非経口、動脈内、若しくは静脈内注射などの様々な従来の方法によって実施することができる。一実施形態では、本発明の抗体は静脈内又は皮下投与される。
【実施例
【0096】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより詳細に説明することを意図しているに過ぎず、本発明の範囲は、本発明の主題に従って、これらの実施例によって限定されないことは、当業者には明らかであろう。
【0097】
実施例1:ファージディスプレイによるBCAM特異的抗体の調製
1.1 ファージディスプレイによるscFv抗体ライブラリーの調製及び選択
本発明の抗体をファージディスプレイ法によって調製した。
【0098】
ヒト血液又は骨髄から得た抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域のmRNAをPCRで増幅し、cDNAを合成した。制限酵素を使用してファージミドベクターでクローニングを行い、エレクトロポレーションにより大腸菌で発現させた。続いて、ヘルパーファージで感染を行い、scFvの形態でヒトライブラリーを調製した。
【0099】
ライブラリーは、バイオパニングにより標的抗原BCAMに高親和性で結合する抗体をスクリーニングした。BCAMに結合する陽性クローンを選択し、配列決定によってBCAMに対してユニークなscFv配列を選択した。
【0100】
1.2 抗BCAM IgG4抗体111a~111cの調製
ヒトIgG4の形態の抗体を産生するために、実施例1.1で選択したscFvの軽鎖領域及び重鎖領域を発現ベクターにクローニングした。DNAを一過性にトランスフェクトし、培養して抗体を発現させ、培養培地をκ領域捕捉体に結合させて抗体を溶出させ、3種類の抗BCAMヒトIgG4抗体(111a、111b、及び111c)を調製した。
【0101】
各IgG4抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列、並びに各可変領域のCDRのアミノ酸配列を、それぞれ図1a及び1b、並びに表1及び2に示す(図1a及び1b並びに表1中の太字及び下線の配列は、各CDRを表す)。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
実施例2:抗BCAM IgG4抗体の結合活性の確認
2.1 ELISAによる抗原タンパク質との結合能の確認
実施例1で調製した各抗体の抗原タンパク質(BCAMタンパク質)に対する結合能を確認するため、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay))試験を行った。抗原タンパク質をPBS緩衝液で希釈し、15nMの濃度に調製した。96ウェルハーフプレート(Costar、カタログ番号3690)の各ウェルに50μLの抗原タンパク質をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレート内の溶液を全て除去した後、ブロッキング緩衝液(PBS中3%BSA)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。3種類の抗体サンプル(111a、111b、及び111c)をブロッキング緩衝液で1μMから7点(1pM)まで10倍の希釈比で順次希釈した。ブロッキング工程終了後、ウェルから緩衝液を除去し、希釈により調製した抗体を各ウェルに50μLずつ添加し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベートしたウェルを0.1%PBST(PBS中0.1%Tween20)で洗浄し、抗体検出用の二次抗体であるHRP複合抗ヒトIgG Fc抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号31423)で37℃、1時間処理した後、0.1%PBSTで再度洗浄した。ABTS溶液(ThermoFisher Scientific、カタログ番号00-2024)を着色のために各ウェルに50μLずつ添加し、室温で10分間反応させ、405nmの光学濃度(OD405)を測定した。抗体の濃度に応じたOD405値を図2及び表3に示す。各抗体の抗原に対する結合活性の程度を比較するため、各抗体のEC50濃度を算出し、結果を表4に示す。
【0105】
その結果、ELISA実験により試験した抗体111a、111b、及び111cは、BCAMに対して優れた結合能を有することが確認された。
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
2.2 蛍光標識細胞分取(Fluorescence Activated Cell Sorting)(FACS、フローサイトメトリー)による抗原タンパク質への結合能の確認
実施例1で調製した3種類の抗体についてFACS試験を行った。
【0109】
ヒトBCAM抗原は、トランスフェクション(293FT/BCAM1プラスミドを使用)によりHEK293FT細胞で発現させた。トランスフェクトしたHEK293FT細胞(1x10細胞)をPBSに懸濁し、その50μLをプレートに播種した。
【0110】
これとは別に、実施例1の抗BCAM抗体とアイソタイプ対照(ヒトIgG)抗体の各々を、PBSを使用して45μg/mLの濃度で初期希釈し、3倍希釈で12回希釈し、適切な時間、適切な温度でプレートをインキュベートした。陰性対照として、PBS緩衝液を使用した。
【0111】
次いで、洗浄後、アレクサフルーア(AlexaFluor)(登録商標)647 AffiniPure Goat Anti-Human IgG(H+L)(min X Bov,Hrs,Ms Sr Prot)(Jackson)(1μg/mL)を添加し、プレートを再度インキュベートし、PBSで再度洗浄し、フローサイトメータで抗原抗体結合度を解析した。
【0112】
結果を表5及び図3に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
2.3 バイオレイヤー干渉法(BLI)による抗原タンパク質への結合能の確認
実施例1で調製した3種類の抗体について、オクテット(オクテットQK、ForteBio)を使用してBLIによる結合能確認試験を行った。
【0115】
具体的には、アミンカップリングを使用してヒトBCAM(抗原)を結合させるため、Reactive 2nd Generation(AR2G)バイオセンサー(カタログ番号18-5094、Sartorius)をマウントし、AE2G試薬キット(カタログ番号18-5095)を使用して活性化した。その後、バイオセンサーを抗原溶液に10分間入れてヒトBCAMを結合させ、エタノールアミン溶液に5分間入れて反応を終了させた。ヒトBCAMが結合したバイオセンサーを、調製した3種類の抗体111a、111b、及び111cを含む緩衝液に入れ、結合反応を5分間モニターした後、解離反応を15分間行った。この時、抗体溶液を順次希釈し、濃度の違いによる会合及び解離速度を検証した。結合速度定数(Ka)及び解離速度定数(Kd)は、カーブフィッティングソフトウェアを使用して1:1結合モデルに当てはめることにより決定した。結合解離平衡定数(KD)は、KD=Kd/Kaで算出した。結合ダイナミクスデータを以下の表6に、結合センサーグラムを図4a、4b、及び4cに示す。
【0116】
【表6】
【0117】
このことから、本発明の抗体はヒトBCAMタンパク質に高い親和性で結合することが確認された。
【0118】
実施例3:共焦点レーザー顕微鏡による抗体の細胞内在化の確認
実施例1で調製した3種類の抗体を使用して、抗体の細胞内在化を確認する実験を行った。
【0119】
5×10個のMKN-1(ヒト胃癌細胞株、KCLB)細胞を細胞培養スライド(SPL、韓国)に播種した。翌日、細胞がプレートに接着していることを確認し、既存の細胞培養培地を除去した後、実施例1で調製した抗体111a、111b、及び111cをPBSで希釈して10μg/mL又は40μg/mLを調製し、各ウェルを抗体500μLで処理した。抗体を4℃で1時間反応させた後、残った抗体を除去し、細胞スライドをPBSで3回洗浄した。細胞スライドを2つのグループに分け、一方のグループを細胞内在化の陰性対照とし、もう一方のグループを細胞内在化誘導グループとして使用した。陰性対照として使用する細胞スライドは、4%パラホルムアルデヒド(PFA、Sigma、米国)を使用して固定(室温で10分間処理)し、細胞内在化誘導グループとして使用する細胞スライドは、37℃のインキュベータに移して1時間インキュベートした後、陰性対照と同様に4%PFAを使用して固定した。固定した各細胞スライドをPBSで洗浄してPFAを完全に除去した後、0.1%TritonX100を用いて15分間室温で処理し、二次抗体の透過を可能にする準備をした。細胞スライドをPBS洗浄及びブロッキング工程(3%BSAで室温20分処理)に供した後、細胞スライドを蛍光複合化二次抗体(10μg/mLのアレクサ488複合化ヤギ抗ヒトIgG、Invitrogen、米国)を用いて4℃で1時間処理した。二次抗体処理に供した細胞スライドは、核染色のためにそれぞれヘキスト33342(Invitrogen、米国)を用いて室温で3分間処理し、PBSで洗浄し、マウント液(Agilent Technologies、米国)で処理し、カバーガラスで覆ってスライドサンプルを完成させた。抗体の細胞内在化の程度は、LSM710共焦点レーザー顕微鏡(Carl Zeiss、ドイツ)を使用して400倍の倍率で観察した。
【0120】
結果を図5に示す。陰性対照グループ(細胞内在化を誘導しなかった4℃及び1時間の抗体処理条件、図5の上段写真)の場合では、3種類の抗体はそれぞれ癌細胞表面に結合していたが、細胞内在化誘導条件である37℃及び1時間の抗体処理条件(図5の下段写真)の場合では、各抗体は細胞内に内在化し、細胞表面の蛍光シグナルは減少したが、細胞内の蛍光シグナルは増加したことが確認された(核染色部分の蛍光シグナルをアスタリスクで示し、各抗体染色部分の蛍光シグナルを三角で示す)。これらの結果は、本発明の抗体が細胞内在化を通じて細胞毒性薬物を細胞内に送達する可能性を有すること、すなわち、該抗体は、将来的に薬物と複合したADCの形態で使用され得ることを示している。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
【配列表】
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【国際調査報告】