(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】主要な化合物としてLNFP-I及び2’-FLを有するHMOブレンドプロファイルを生成する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/18 20060101AFI20240527BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240527BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240527BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240527BHJP
C12N 15/69 20060101ALN20240527BHJP
C12N 15/67 20060101ALN20240527BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240527BHJP
【FI】
C12P19/18 ZNA
C12N1/21
C12N1/19
C12N15/54
C12N15/69 Z
C12N15/67 Z
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565527
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022063317
(87)【国際公開番号】W WO2022243314
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】パパダキス, マノス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, テッド
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー, ピーター
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF04
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA10
4B065AA01Y
4B065AA19X
4B065AA24X
4B065AA26X
4B065AA30X
4B065AA77X
4B065AA80X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA21
4B065CA41
(57)【要約】
本開示は、主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを生成するための方法であって、方法が、遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質を含み、コラン酸遺伝子クラスターを機能的に発現し、タンパク質の発現を制御するための天然又は異種調節又はエピソーム要素を含み、任意選択的に異種糖トランスポータを発現する工程と、好適な細胞培養培地中で細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、を含む方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要なHMOとして2’-FL及びLNFP-Iを有するヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを生成するための方法であって、
a.少なくとも2つのHMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、前記細胞が、
i.配列番号1、2、若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号12若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み、
ii.配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み、且つ
iii.配列番号6及び7及び49のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6若しくは7若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み、
iv.コラン酸遺伝子クラスターを機能的に発現し、且つ
v.i)~iv)のいずれか1つの前記発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って前記細胞を培養し、前記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成された前記ヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記コラン酸遺伝子クラスターを、コピー数を増加させることによって、及び/又は前記発現を制御するための調節要素として適切な要素を選択することによって過剰発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号1又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号4又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
i)及びii)の前記発現を、前記コピー数を増加させることによって、並びに/又はi)及びii)に適切な調節要素を選択することによって過剰発現する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
i)及び/若しくはii)の前記発現が、単一コピーから得られる、並びに/又はi)及び/若しくはii)の発現のための前記調節要素が、低い又は中間の強度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
i)及び/若しくはii)の前記発現が、2つ以上のコピーから得られる、並びに/又はi)及び/若しくはii)の発現のための前記調節要素が、高い強度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記調節要素が、配列番号13(PglpF)、配列番号12(PgatY_70UTR)、配列番号27(Plac)、配列番号9(PmglB_70UTR)、配列番号11(Pscr)、又はこれらのバリアントからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記調節要素が、PglpF_SD9(配列番号23)、PglpF_SD7(配列番号21)、PglpF_SD6(配列番号20)、PglpF_B28(配列番号24)、PglpF_B29(配列番号25)、Pscr(配列番号11)、及びPlac(配列番号27)からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記調節要素が、PglpF(配列番号13)、PglpF_SD10(配列番号15)、PglpF_SD8(配列番号22)、PglpF_SD5(配列番号19)、PglpF_SD4(配列番号18)、PgatY_70UTR(配列番号12)、PmglB_70UTR(配列番号9)、及びPmglB_70UTR_SD4(配列番号9)からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
v)又はv)の上流の領域に結合し、i)、ii)、iii)、又はiv)のいずれか1つの前記発現を抑制する遺伝子産物が、前記細胞内で欠失しているか又は機能しない、請求項1~10のいずれか一項の記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子産物が、DNA結合転写リプレッサGlpR(配列番号48)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
iii)の前記異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、FutC(配列番号6)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、発現時に糖排出トランスポータとして機能する遺伝子産物をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記糖排出トランスポータが、
i.配列番号28、又は配列番号28と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
ii.配列番号29、又は配列番号29と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
iii.配列番号30、又は配列番号30と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
iv.配列番号31、又は配列番号31と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
v.配列番号32、又は配列番号32と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
vi.配列番号33、又は配列番号33と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
から選択されるアミノ酸配列からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記HMOブレンドが、前記全HMOのモル%の25%~70%の2’-FL、及び30%~60%のLNFP-Iを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)の前記遺伝的に操作された細胞の培養中発酵温度が、30~32℃であり、2’-FLのモル%が、前記生成されたHMOブレンドの30%~40%である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)の前記遺伝的に操作された細胞の培養中のラクトースのレベルは、20g/L未満であり、2’-FLのモル%が、前記生成されたHMOブレンドの25%~35%である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ii.配列番号1若しくは2若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iii.配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iv.配列番号6及び7のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6若しくは7若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
v.コラン酸遺伝子クラスターと、
vi.i)~iv)のいずれか1つの前記発現を制御するための天然若しくは異種調節又はエピソーム要素と、
vii.2’FL及び/又はLNFP-Iを前記細胞外に輸送することができる糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列と、
をコードする組換え核酸配列を含む遺伝的に操作された細胞。
【請求項20】
コラン酸遺伝子クラスターを、前記コピー数を増加させることによって、及び/又は適切な調節要素を選択することによって過剰発現する、請求項19に記載の遺伝的に操作された細胞。
【請求項21】
前記細胞が、大腸菌(E.coli)、C.グルタミクム(C.glutamicum)、L.ラクティス(L.lactis)、枯草菌(B.subtilis)、S.リビダンス(S.lividans)、P.パストリス(P.pastoris)、及び出芽酵母(S.cerevisiae)からなる群から選択される、請求項19又は20に記載の遺伝的に操作された細胞。
【請求項22】
1つ以上のHMOの産生における、請求項19又は20に記載の遺伝的に操作された細胞の使用。
【請求項23】
前記1つ以上のHMOが、主に、2’-FL及びLNFP-Iのブレンドである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記主要なHMOブレンドが、全HMOのモル%の25~70%の2’-FL、及び全HMOのモル%の30~60%のLNFP-Iを有する、請求項22又は23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
本開示は、主にLNFP-I及び2’-FL、並びにあまり重要でない量のその他のHMOからなる、固有のHMOブレンドプロファイルを有する様々なヒトミルクオリゴ糖(HMO)の混合物を生成する方法に関する。あまり豊富でないHMOは、LNT、LNT-II、又はDFLである場合がある。特定のHMOブレンドを達成するための戦略には、菌株操作及び発酵方法が含まれる。
【0002】
[背景]
ヒト乳は、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル及び微量元素の複合混合物を表す。最も主要な画分は、炭水化物によって表され、炭水化物は更に、ラクトース及びより複合したオリゴ糖(ヒト乳オリゴ糖、HMO)に更に分けることができる。ラクトースはエネルギー源として使用されるが、複合オリゴ糖は乳児によって代謝されない。複合オリゴ糖の画分は、炭水化物画分全体の最大1/10を占め、おそらく150種を超える異なるオリゴ糖で構成されている。これらの複合オリゴ糖の発生及び濃度は、ヒトに特有であり、例えば家畜化された乳畜などの他の哺乳類の乳に大量に存在することはない。
【0003】
現在まで、少なくとも115種のHMOの構造が決定されており、ヒト乳中には、おそらくはるかにより多くのものが存在する。HMOは、ヒト発生における重要な機能性の発見により、過去10年の間で非常に感心が高くなった。それらのプレバイオティクス特性の他に、HMOは、それらの適用分野を拡大する追加のプラスの効果と結び付けられている。HMOの健康上の利点は、乳児用調製粉乳及び乳児食などの食品における使用、並びに消費者用健康食品のためのそれらの承認を可能にした。
【0004】
HMOの化学合成と関連する欠点を回避するために、いくつかの酵素的方法及び発酵手法が開発されている。発酵に基づくプロセスは、伝統的に、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、3-フコシルラクトース(3-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、及び6’-シアリルラクトース(6’-SL)などの個々のHMOのために開発されている。発酵系プロセスでは、典型的には、組換え大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)などの遺伝的に操作された細菌株が利用される。
【0005】
発酵プロセスなどのHMOの生物工学的生産は、費用効率良く且つ大規模でHMOを製造するための有益なアプローチである。その方法は、所望のオリゴ糖の合成のために必要とされるグリコシルトランスフェラーゼを発現するように構築された遺伝子操作細菌に依存し、HMO前駆体としてのヌクレオチド糖の細菌の固有のプールを利用する。現在、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)含有ブレンドの組成物を作成する方法、及び遺伝子工学又は発酵パラメータの調整のいずれかによって獲得したブレンドの様々なHMOレベルを微調整する方法に関する知識は存在しない。なぜなら、HMO製造のための商業的発酵プロセスパラメーターは通常秘密にされており、したがって、例えば発酵パラメータがLNFP-Iブレンド組成物又は他のHMOブレンドに及ぼす影響は記載されていないためである。
【0006】
国際公開第2019/0011133号パンフレットは、LNT又はLNnTをフコシル化して、LNFP-I、LNFP-II、LNFP-III、及びLNFP-VIを生成することができるフコシルトランスフェラーゼの同定について記載している。具体的には、LNFP-Iを生成するためのFucTフコシルトランスフェラーゼの使用が記載されている。しかしながら、LNFP-Iと2’-FLのブレンドを生成することができるフコシルトランスフェラーゼの開示はされていない。
【0007】
国際公開第2019/123324号パンフレットは、LNFP-Iの形成について記載しているが、形成されるHMOの総量に含まれるLNFP-I又は2’-FLのモル%は示されていない。
【0008】
[概要]
本開示は、HMOブレンドの生物工学的生成を目的とし、一方で、通常、産業界の焦点は純粋なHMOの生成にあり、即ち、典型的な関心は、HMO副産物レベルを最小限に抑え、遠心分離などの下流プロセスで副産物を精製することである。
【0009】
本開示は、多様な可能性のあるブレンド組成の中から、主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有する、遺伝的に操作された細胞から特定のHMOブレンドを生成し、それらを特定の市場、顧客に合わせて調整し、特定の生物学的効果を達成する方法に関する詳細で深い知識を提供するが、特定のHMO及びHMO混合物の生物学的活性及び機能に関する知識は、急速に出現している。
【0010】
直接的な利点は、ブレンドが1つの産生菌株によって製造され、HMOの混合物として精製されるため、いくつかの産生菌株によって生成された個別に産生されたHMOが混合されないことである。これにより、より持続可能な製造プロセスが実現し;貴重なHMOが精製プロセス中に廃棄されないため、発酵における炭素源からHMO生成物への変換が、より高い全体収率で行われる。
【0011】
その最も広い態様において、本開示は、主要なHMOとしてLNFP-I及び/又は2’-FLを有するヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを生成するための方法であって、生成される総ヒトミルクオリゴ糖(HMO)の60モル%超がLNFP-Iであり、方法が:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]若しくは2[PmnagT]若しくは3[HD0466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]若しくは5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]及び7[mtun]及び49[FucT54]のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6及び7及び498と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスターを機能的に発現し、且つ
v.i)~iv)のいずれか1つの発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む方法に関する。
【0012】
プロモータなどのv)の調節要素は、前述のグリコシルトランスフェラーゼ(i~iii)及びコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスター(iv)の発現を制御し、この調節要素は、構築体(プロモータ/調節要素+コーディング配列)のi、ii、iii、及び/又はivのコーディング配列に先行しなければならない。構築体は、ゲノム中に組み込まれ得るか、又は構築体は、プラスミド又は別のエピソーム要素の形で細胞に導入され得る。
【0013】
本明細書で開示される更なる態様は、
i.配列番号1若しくは2若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と;
ii.配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と;
iii.配列番号6若しくは7若しくは49のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と;
iv.コラン酸遺伝子クラスターと、
v.i)~iv)のいずれか1つの発現を制御するための天然若しくは異種調節又はエピソーム要素と、
vi.2’FL及び/又はLNFP-Iを細胞外に輸送することができる糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列と、
をコードする組換え核酸配列を含む遺伝的に操作された細胞に関する。
【0014】
更なる態様において、本開示は、
i.配列番号1[lgtA]若しくは配列番号2[PmnagT]若しくは配列番号3[HDO466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
ii.配列番号4[galTK]若しくは配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
iii.配列番号6[futC]若しくは配列番号7[mtun]若しくは配列番号49[fucT54]のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体
からなる群から選択されるタンパク質の1つ以上をコードする核酸配列を含む核酸構築体であって、
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
上記核酸構築体が、核酸構築体中に存在する遺伝子の発現を制御するための天然若しくは異種の調節要素、即ちi)~iv)の1つ以上を更に含む、核酸構築体に関する。好ましくは、調節要素は、lacオペロン又はglpオペロンのプロモータ配列に由来する組換えプロモータ配列であり、i)~iv)のコーディング配列のうちの1つ以上とプロモータ配列とが作動可能に連結している。
【0015】
別の態様において、本開示は、1つ以上のヒトミルクオリゴ糖(HMO)、特に主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドの生合成生成のための、本開示による遺伝的に操作された細胞又は核酸構築体の使用に関する。
【0016】
[詳細な説明]
種々の例示的な実施形態及び詳細は、関連する場合に図及び配列を参照して以降で説明される。図はまた、実施形態の説明を容易にすることのみを意図されることに留意するべきである。これらは、本開示の包括的な説明又は本開示の範囲に対する限定として意図されない。加えて、示される実施形態は、示される全ての態様又は利点を有する必要はない。特定の実施形態と併せて説明される態様又は利点は、その実施形態に必ずしも限定されず、そのように示されないか又はそのように明示的に説明されないとしても、他のあらゆる実施形態で実行され得る。
【0017】
[例示的な方法]
本開示は、大腸菌(E.coli)宿主細胞を、LNFP-I及び2’-FL生成のための遺伝的に操作された細胞ファクトリーに変換する。遺伝的に操作された細胞は、以下を目的とした応用合理的遺伝子操作プログラムの重点分野に該当する:
a)HMO生成プロセスにおける重要な基質、即ち、ラクトース及びLNTに対して明確な特異性を示す様々な野生型α-1,2-フコシルトランスフェラーゼをスクリーニングする、
b)例えば、2’-FL及び/又はLNFP-Iを細胞外に輸送できる主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)の糖トランスポータを導入する、
c)活性化糖GDP-フコース、UDP-GlcNAc、及びUDP-Gal(糖供与体)の合成を含む、LNFP-I及び2’-FL生合成経路に直接関与する酵素をコードする遺伝子のコピー数及び/又は遺伝子の発現を増加させる、並びに
d)ラクトース、LNT-II、及びLNT(糖受容体)を修飾して、それぞれLNT-II、2’-FL、LNT、及びLNFP-Iを形成する。
【0018】
原則として、合理的なエンジニアリング戦略(c)は複数の方法で適用することができる:
1)コラン酸遺伝子クラスター及び/又は2’-FL及び/又はLNFP-Iの合成に関与する酵素をコードするグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子のコピー数を変更して、これら2つのHMOの比率を所望のレベルに微調整することができ、
2)これらの遺伝子の単一コピーの発現を転写レベル又は翻訳レベルで変化させることによって、同じ効果を達成できる。換言すれば、単一遺伝子コピーの発現を駆動するプロモータの強度及び/又は対応するmRNAのリボソーム結合を定義するシャイン・ダルガーノ配列の強度は、2’-FL及びLNFP-Iの比率を望ましいレベルまで微調整するために様々な方法で変更することができ、
3)HMO生成プロセスにおける重要な遺伝子の発現を抑制する制御因子の欠失は、最終産生細胞におけるHMO力価の改善、又は所与のブレンドの様々なHMOの相対濃度の変更に向けた別の方法である。したがって、様々なHMOの生合成における重要な工程を触媒する酵素のPglpF駆動遺伝子発現のGlpRによる抑制が排除されると、それらのmRNA及びおそらくそれらによってコードされる酵素のレベルが増加する可能性がある。後者は、最終的に全HMO力価が高くなるだけでなく、LNFPI-含有HMOブレンド中に存在する様々なHMOの相対濃度の複数の変化も引き起こす可能性がある。
【0019】
したがって、主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを生成するための方法が開示される。好ましくは、HMOブレンドは、全HMOのモル%の25%~70%の2’-FL、及び30%~60%のLNFP-Iを有する。
【0020】
方法は、HMOブレンドを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備することを含む。遺伝的に操作された細胞は、配列番号1[lgtA遺伝子]若しくは配列番号2[PmnagT]若しくは配列番号3[HD0466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含んでもよい。
【0021】
遺伝的に操作された細胞は、配列番号4[galTK遺伝子]若しくは配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含んでもよい。
【0022】
遺伝的に操作された細胞は、配列番号6[futC]若しくは配列番号7[mtun]若しくは配列番号49[fucT54]若しくは配列番号8[smob]のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、49、若しくは8のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含んでもよい。
全HMOのモル%の25%~70%の2’-FL及び30%~60%のLNFP-Iを得るために、配列番号6[FutC]の異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、又は少なくとも80%であるアミノ酸配列を有するその機能的相同体を使用することが好ましい。
【0023】
全HMOのモル%の40%~55%の2’-FL及び40%~60%のLNFP-Iを得るために、配列番号7[mtun]若しくは配列番号49[FucT54]の異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、少なくとも80%であるアミノ酸配列を有するその機能的相同体を使用することが好ましい。
【0024】
本開示の方法による遺伝的に操作された細胞は、更に、その天然ゲノム遺伝子座からのgmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manBなどであるがこれらに限定されないコラン酸遺伝子クラスターを機能的に発現し得る。遺伝的に操作された細胞は、細胞の天然又は任意の他のゲノム遺伝子座からのコラン酸遺伝子クラスターの発現を制御するための天然又は異種調節要素を含み得る。
【0025】
遺伝的に操作された細胞を、好適な細胞培養培地中で培養し、上記タンパク質を発現し、主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するHMOブレンドを生成することができる。HMOブレンドは、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)生成の工業環境で適用される任意の手段によって収集することができる。
【0026】
[lgtA/galTK/mtun]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号7[mtun]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号7と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0027】
[PmnagT/galTK/mtun]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号2[PmnagT]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号7[mtun]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号7と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0028】
[HD0466/galTK/mtun]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号3[HD0466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号7[mtun]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号7と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0029】
[HD0466/cvb3galT/mtun]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号3[HD0466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号7[mtun]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号7と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0030】
[PmnagT/cvb3galT/mtun]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号2[PmnagT]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号7[mtun]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号7と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0031】
[lgtA/cvb3galT/mtun]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号7[mtun]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号7と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0032】
[lgtA/galTK/futC]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0033】
[PmnagT/galTK/futC]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号2[PmnagT]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0034】
[HD0466/galTK/futC]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号3[HD0466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0035】
[HD0466/cvb3galT/futC]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号3[HD0466]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ00000000タンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0036】
[PmnagT/cvb3galT/futC]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号2[PmnagT]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0037】
[lgtA/cvb3galT/futC]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0038】
[lgtA/galTK/futC/smob]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号6[futC]及び配列番号8[smob]で示される2つの異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は独立して、配列番号6若しくは配列番号8と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0039】
[PmnagT/galTK/fucT54]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号2[PmnagT]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号49[fucT54]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号49と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0040】
[HD044949/galTK/fucT54]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号3[HD044949]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号4[galTK]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号49[fucT54]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号49と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0041】
[HD044949/cvb3galT/fucT54]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号3[HD044949]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ00000000タンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号49[fucT54]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号49と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0042】
[PmnagT/cvb3galT/fucT54]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号2[PmnagT]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号49[fucT54]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号49と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0043】
[lgtA/cvb3galT/fucT54]
1つ以上の例示的な方法において、方法は:
a.HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i.配列番号1[lgtA]で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii.配列番号5[cvb3galT]で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii.配列番号49[fucT54]で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号49と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv.コラン酸遺伝子クラスター(gmd、wcaG、wcaH、wcaI、manC、manB)を機能的に発現し、
v.i)~iv)の発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b.好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c.工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む。
【0044】
本開示は、主に2’-FL及びLNFP-IからなるHMOブレンドを生成するためのいくつかの菌株操作ツール及び発酵プロセスの調整を提供する。本明細書で提示されるアプローチは、2’-FL及びLNFP-Iが獲得したブレンドの主要なHMOであることを保証するだけでなく、各々が独自の方法で2つのHMOのいずれかの合成を促進する。
【0045】
例えば、主にLNFP-I及び2’-FLからなり、LNFP-Iが最も豊富なHMOであるブレンドの合成は、スルフリフレクサス・モビリス(Sulfuriflexus mobilis)(GenBank ID:WP_126455392.1)由来のSmob酵素などの適切なα-1,2-フコシルトランスフェラーゼを選択することによってのみ達成できる。その代わりに、主にLNFP-I及び2’-FLからなり、2’-FLが最も豊富なHMOであるブレンドが望まれる場合は、そのとき対応する産生株が、本明細書に開示されるトランスポータタンパク質の群から選択される異種MFSトランスポータとともに、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1)由来のFutC酵素を発現する必要がある。
【0046】
更に、コラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現レベルは、産生菌株によって発現されるグリコシルトランスフェラーゼに関係なく、ブレンド中のHMO、2’-FL、又はLNFP-Iのいずれかの普及を可能にする高度な方法で調整できる。例えば、その天然遺伝子座からのコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現を駆動するプロモータの強度を変更することは、細胞内GDP-フコースのレベルを制御し、その後内在化したラクトースと新たに形成されたLNTの両方のフコシル化の程度を制御するための固有のツールであり、これは、産生菌株で発現されるグリコシルトランスフェラーゼ又は他の異種タンパク質に特徴的な方法で、2’-FL及びLNFP-Iの比率に影響を与える。
【0047】
[ヒトミルクオリゴ糖(HMO)]
本開示の文脈において、用語「オリゴ糖」は、いくつかの単糖単位を含有する糖ポリマーを意味する。単糖単位の数は、3~15の範囲、例えば3~10の範囲、例えば3~6の範囲、例えば3~5の範囲である。いくつかの実施形態において、好ましいオリゴ糖は、3又は4単糖単位、即ち三糖、四糖、五糖、又は六糖からなる糖ポリマーである。本開示の好ましいオリゴ糖は、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)である。
【0048】
本文脈において、用語「ヒトミルクオリゴ糖」又は「HMO」は、ヒト母乳中に見出される複合糖質を意味する。HMOは、1つ以上のベータ-N-アセチル-ラクトサミニル及び/又は1つ以上のベータ-ラクト-N-ビオシル単位によって伸長され得る還元末端にラクトース単位を含むコア構造を有し、このコア構造は、アルファ-L-フコピラノシル及び/又はアルファ-N-アセチル-ノイラミニル(シアリル)部分によって置換され得る。
【0049】
この点に関して、非酸性(又は中性)HMOは、シアリル残基を欠き、酸性HMOは、それらの構造に少なくとも1つのシアリル残基を有する。非酸性(又は中性)HMOは、フコシル化されても又はされなくてもよい。このような中性の非フコシル化HMOの例としては、ラクト-N-トリオース2(LNT-2)ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH)、パラ-ラクト-N-ヘキサオース(pLNH)及びラクト-N-ヘキサオース(LNH)が挙げられる。中性フコシル化HMOの例としては、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH-I)、3-フコシルラクトース(3’-FL)、ジフコシルラクトース(DFL)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP-II)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP-III)、ラクト-N-ジフコヘキサオースIII(LNDFH-III)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースII(FLNH-II)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFH-II)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースI(FLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオースI(FpLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ネオヘキサオースII(F-pLNnH II)及びフコシル-ラクト-N-ネオヘキサオース(FLNnH)が挙げられる。酸性HMOの例としては、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、3-フコシル-3’-シアリルラクトース(FSL)、3’-O-シアリルラクト-N-テトラオースa(LST a)、フコシル-LST a(FLST a)、6’-O-シアリルラクト-N-テトラオースb(LST b)、フコシル-LST b(FLST b)、6’-O-シアリルラクト-N-ネオテトラオース(LST c)、フコシル-LST c(FLST c)、3’-O-シアリルラクト-N-ネオテトラオース(LST d)、フコシル-LST d(FLST d)、シアリル-ラクト-N-ヘキサオース(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI(SLNH-I)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースII(SLNH-II)及びジシアリル-ラクト-N-テトラオース(DSLNT)が挙げられる。
【0050】
本開示の文脈において、ラクトースは、HMO種であるとみなされない。
【0051】
[ヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンド]
用語「ブレンド」又は「HMOブレンド」は、LNT、LNnT、LNH、LNT-II、LNnH、para-LNH、para-LNnH、2’-FL、3FL、DFL、LNFP I、LNDFH-I、LNFP II、LNFP III、LNFP V、F-LNnH、DF-LNH I、DF-LNH II、DF-LNH I、DF-para-LNH、DF-para-LNnH、3’-SL、6’-SL、FSL、F-LST a、F-LST b、F-LST c、LST a、LST b、LST c、及びDS-LNTから選択されるHMOが挙げられるがこれらに限定されないものなどの、2つ以上のHMO及び/又はHMO前駆体の混合物を指す。本明細書で記載されるHMOブレンドは、精製されたHMO又は異なる発酵バッチで生成されたHMOを混合することによってではなく、発酵終了時に得られる。HMOブレンドは発酵中又は発酵終了時に生成されるHMOの組成であり、発酵終了時のHMOブレンドは最終HMOブレンドとも呼ばれる。HMOのブレンドは下流で精製される場合があるが、その目的は、発酵後に得られるHMOブレンドと同様の比率のHMOブレンドを維持することである。精製後のブレンドに更なるHMOは添加されないと考えられる。
【0052】
1つ以上の例示的な実施形態において、本明細書で言及される「HMOブレンド」は、LNT、LNT-II、LNnH、para-LNH、2’-FL、DFL、及びLNFP Iからなる群から選択される2つ以上のHMO及び/又はHMO前駆体の混合物に関する。好ましくは、HMOブレンド又はHMOブレンドの主要成分は、単一の産生菌株から産生される。
【0053】
[主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するブレンド]
本開示は、主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するHMOの固有且つ多様なブレンドを達成する2つの主要な方法、即ち菌株操作戦略及び発酵プロセス戦略を強調する。本目的を達成するための菌株操作戦略は、HMO産生細胞の以下の遺伝形質の操作を含む。
1.導入されるα-1,2-フコシルトランスフェラーゼの選択
2.コラン酸遺伝子クラスターの発現の程度
3.β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼの発現の程度又はコピー数
4.主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)の糖トランスポータの導入
5.細胞の規制状況の変化 例えばglpR調節因子の欠失
【0054】
本開示における発酵プロセス戦略は、非常に予測可能な方法で、菌株操作から誘導される所与の菌株との特定のHMOブレンドプロファイルを達成するために、発酵温度及び/又は発酵ブロス中のラクトースレベルの調整が含まれる。
【0055】
[ブレンド比]
本明細書で開示される方法によって生成されるHMO生成物は、また、それらの比によって説明することもできる。本明細書で記載される「比」は、HMOの2つの量の間の比として理解され、例えば、一方の量を他方の量で割ったもの、又は一方の量を総量で割ったものなどであるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の菌株による発酵後、HMOブレンドは、90~30%のモル%のLNFP-1及び70~10%のモル%の2’-FL、例えば、90~40%のモル%のLNFP-1及び60~10%のモル%の2’-FL、例えば、全HMOの25%~70%のモル%の2’-FL及び30%~60%のモル%のLNFP-Iを有する。
【0057】
実施例からの発酵データ(温度調節)によって裏付けられたモル%ブレンド比は、以下のような例示的なHMOブレンド組成範囲を示す:全てのHMOの合計に対するLNFP-I[47~63]、2’-FL[31~51]、及びLNT[1~5]、又は63/31/5~47/51/1(全てモル%)のLNFP-I/2’-FL/LNTの組み合わせ、例えば温度を調節する場合、LNFP-Iのモル%は80~30%、2’-FLは70~20%などであるが、これらに限定されない。
【0058】
発明のいくつかの実施形態において、発酵は25~34℃、好ましくは30~32℃で行われ、ブレンド中の主なHMOのモル%は、LNFP-Iが30~60%、2’-FLが40~70%である。
【0059】
発明のいくつかの実施形態において、発酵は25~28℃で行われ、ブレンド中の主なHMOのモル%は、LNFP-Iが45~55%、2’-FLが45~55%である。
【0060】
発明のいくつかの実施形態において、発酵は28~34℃で行われ、ブレンド中の主なHMOのモル%は、LNFP-Iが30~45%、2’-FLが55~70%である。
【0061】
実施例からのラクトース調節については、高ラクトースプロセスについてのモル%の例示的な以下の範囲を示す:LNFP-I/HMO[60~68]、LNT/HMO[21~27]、LNT-II/HMO[6~9]、2’-FL/HMO[4~6]。また、低ラクトースプロセスについては、モル%で以下の範囲が見つかった:LNFP-I/HMO[66~70]、2’-FL/HMO[25~30]、LNT/HMO[3~4]、LNT-II/HMO[1~1.5]。
【0062】
本明細書において、例えば、低ラクトースプロセスは、2つの最も豊富なHMOであるLNFP-I及び2’-FLを有するブレンドを支持する。
【0063】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、ラクトースを調節する場合、LNFP-Iのモル%は90~40%、2’-FLは60~10%であり得る。
【0064】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、ラクトースを調節する場合、LNFP-Iのモル%は90~30%、2’-FLは70~10%であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、発酵中のラクトースは低く、例えば20g/L未満、好ましくは15g/L未満、例えば0.5~15g/L、好ましくは10g/L未満、例えば1~10g/Lであり、2’-FLのモル%は、ブレンド中の全HMOの20%超、好ましくは30%超である。
【0066】
1つ以上の例示的な実施形態において、LNFP-I/2’-FL/LNT間の比は、15:8:2、15:7:2、15:6:2、又は15:5:2であり得る。
【0067】
以下の比は、規制バッチで製造された材料、従ってモル比ではなく質量比に基づく。
【0068】
1つ以上の例示的な実施形態において、LNFP-I/2’-FL/LNT間の質量比は、60:30:1、40:20:1、30:15:1、10:5:1、8:4:1、6:3:1であり得る。
【0069】
本明細書では、LNFP-I/2’-FL/LNT間の質量比は、80:40:1、80:30:1、80:20:1、80:15:1、80:10:1、80:5:1、80:4:1であり得ることが記載されている。
【0070】
1つ以上の例示的な実施形態において、LNFP-I/2’-FL/LNT間の質量比は、60:30:1、60:30:2、60:30:3、60:30:4、60:30:5であり得る。
【0071】
1つ以上の例示的な実施形態において、LNFP-I/2’-FL/LNT間の質量比は、60:15:1、60:15:2、60:15:3、60:15:4、60:15:5であり得る。
【0072】
1つ以上の例示的な実施形態において、LNFP-I/2’-FL/LNT間の質量比は、以下[80~50]:[25~15]:[0~5]の範囲内であり得る。
【0073】
1つ以上の例示的な実施形態において、(LNFP-I+2’-FL)/LNT間の質量比は、以下の範囲[95~75]:[0~5]の範囲内であり得る。
【0074】
[機能的酵素]
コラン酸遺伝子クラスターを過剰発現し、異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びα-1,2-フコシルトランスフェラーゼからなる群から選択される機能的酵素を発現する細胞によって産生される様々なHMOの存在量を変化させるために、いくつかの遺伝子工学的アプローチが適用されている。
【0075】
一般的に、以下の実施例で明らかなように、本発明者らは、ほとんどの遺伝子操作がLNFP-I及び2’-FLの比率に影響を与え、程度は低いが、最終HMOブレンド中のLNT及びLNT-IIなどの前駆体糖の相対存在量にも影響を与えることを観察した。最終HMOブレンドは、発酵の終了時に遺伝子改変細胞によって産生されるHMOの混合物として理解される。
【0076】
獲得した最終HMOブレンドのLNFP-Iと2’-FLの比率の有意差は、様々な細菌種からの異なる異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼを導入するだけで最初に得られた。
【0077】
このタイプの様々なグリコシルトランスフェラーゼを試験した結果、様々な最終HMOブレンドが得られ、ここでLNFP-I及び2’-FLが主なHMOであった。ラクトース及びLNTに対する異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼの特異性は、主に、LNFP-I又は2’-FLがブレンド内で最も豊富なHMOであるかどうかを決定した。
【0078】
[導入された機能的酵素の選択]
例えば、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する又は配列番号6)からのα-1,2-フコシルトランスフェラーゼFutCのラクトースに対するより高い特異性は、2’-FLが最も豊富なHMOであるHMOブレンドをもたらした。
【0079】
これに対して、スルフリフレクサス・モビリス(Sulfuriflexus mobilis)(GenBank ID:WP_126455392.1又は配列番号8)からのα-1,2-フコシルトランスフェラーゼSmob酵素により、ブレンドが得られ、ここでのLNFP-Iが主なHMOであり、2’-FLが2番目に豊富なHMOであり、LNT-IIが限られた量でのみ形成されていた。
【0080】
ほぼ等モル濃度のLNFP-I及び2’-FLを含むHMOブレンドをもたらす酵素もあり、これは、いずれかの重要な基質、即ち、LNT及びラクトースに対するそれらの特異性がほぼ均等であることを示している。
【0081】
このような酵素の例は、シデロキシダンス・リソトロフィカス(Sideroxydans lithotrophicus)ES-11(GenBank ID:WP_013031010.1又は配列番号49)からのα-1,2-フコシルトランスフェラーゼFucT54及びメチロバクター・ツンドリパルダム(Methylobacter tundripaludum)(GenBank ID:WP_031437198.1又は配列番号7)からのMtunである。
【0082】
α-1,2-フコシルトランスフェラーゼの選択とは別に、FutCを発現する細胞の他のいくつかのタイプの遺伝子改変は、LNFP-I及び2’-FLの比率に特異的に影響を与える可能性がある。
【0083】
したがって、futC発現細胞における特定の遺伝的変化は、LNFP-I又は2’-FLのいずれかが最も豊富なHMOであり、2’-FL又はLNFP-Iがそれぞれ2番目に豊富なHMOである所与のHMOブレンドに関連付けられている可能性がある。
【0084】
HMOブレンドを合成することができるように、組換え細胞は、グリコシルトランスフェラーゼ活性を備える機能的酵素をコードする少なくとも1つの組換え核酸を含む。グリコシル化活性は、内在化した単糖又は二糖から連続的なグリコシル化工程を経てオリゴ糖を合成するために必要な酵素活性として理解されるべきであり、内在化したアクセプタ、例えばラクトースは、第1のグリコシル化工程で三糖にグリコシル化され、次いでその三糖が第2のグリコシル化工程で四糖にグリコシル化されるなどである。グリコシル化工程は、それぞれのグリコシルトランスフェラーゼによって媒介される。
【0085】
この関連で、語句「活性化された糖ヌクレオチドのグリコシル残基を、上記アクセプタから上記オリゴ糖への生合成経路の中間体に転移させることができるグリコシルトランスフェラーゼ」又は「活性化された糖ヌクレオチドのグリコシル残基を、上記アクセプタから上記オリゴ糖への生合成経路の中間体に転移させることができるグリコシルトランスフェラーゼ」は、第2、第3などのグリコシル化工程を指す。オリゴ糖、より具体的にはHMOに関して、用語「生合成経路の中間体」は、所望のオリゴ糖又はHMOを生成するために必要な反応工程における中間体オリゴ糖又はHMOとして理解されるべきである。
【0086】
例えば、ラクト-N-テトラオースはラクトースから調製され、第1のグリコシルトランスフェラーゼ(β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ)は、UDP-GlcNAcのGlcNAcを内在化したラクトースに転移し、ラクト-N-トリオースII(LNT-II)を形成し、次いで第2のグリコシルトランスフェラーゼ(β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ)は、UDP-GalのGalを先に形成したLNT-IIに転移し、ラクト-N-テトラオース(LNT)を形成し、第3のグリコシルトランスフェラーゼ(α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ)は、GDP-FucのFucを先に形成したLNTに転移し、従ってラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)を形成する。この関連で、LNT-II及びLNTは、ラクトースからLNFP-Iへの生合成経路の中間体であると考えられる(
図12も参照されたい)。同じ又は第2のグリコシルフコシルトランスフェラーゼは、GDP-FucのFucをLNFP-Iに転移して、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH-I)を形成することができる。
【0087】
グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子は、遺伝的に操作された細胞のゲノムに(染色体組み込みによって)組み込まれる場合があるか、又はあるいは、それは、遺伝的に操作された細胞のゲノムに組み込まれるか、若しくはプラスミドDNAに挿入され、プラスミド保有(plasmid-borne)グリコシルトランスフェラーゼとして発現され得る構築体に含まれる場合がある。
【0088】
HMOブレンド、例えば2’-FL又はLNFP-Iの生成に2つ以上のグリコシルトランスフェラーゼが必要な場合、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する異なる酵素をコードする2つ以上の組換え核酸は、ゲノムに組み込まれる、構築体に含まれる、及び/又はプラスミドから発現され得る(例えば、2’-FL及び/又はLNFP-Iを生成するためにβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(第2のグリコシルトランスフェラーゼをコードする第2の組換え核酸)及びβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(第3のグリコシルトランスフェラーゼをコードする第3の組換え核酸)と潜在的に組み合わされたα-1,2-フコシルトランスフェラーゼ(第1のグリコシルトランスフェラーゼをコードする第1の組換え核酸)であって、第1、第2、及び第3の組換え核酸は、互いに独立して、染色体に、又は1つ以上の構築体及び/若しくはプラスミドに組み込むことができる)。
【0089】
1つ以上の例示的な実施形態において、第1、第2、及び第3の組換え核酸は両方とも、遺伝的に操作された細胞の染色体に安定して組み込まれる。組み込みは、宿主細胞のゲノム内の1つ以上の部位で行うことができる。宿主細胞の1つのゲノム部位に組み込まれた場合、組換え核酸は、オペロンを形成する単一の調節要素の制御下にあるか、又は個々の調節要素の制御下のいずれかにあることができる。あるいは、組換え核酸は、個々の調節要素の制御下で宿主細胞のゲノム内のいくつかの場所に組み込まれ得る。
【0090】
現在の例示的な別の実施形態において、第1、第2、及び第3のグリコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つは、プラスミド保有である。
【0091】
[異種発現]
本開示において、異種という用語は、タンパク質をコードする核酸が、通常はそのタンパク質を産生(即ち発現)しない細胞に導入され、その細胞がタンパク質を発現できるようになり、遺伝子改変細胞と呼ばれることを意味する。従って、異種とは、発現されたタンパク質が最初にレシピエント/宿主細胞とは異なる細胞型又は種からクローニングされた、又はそれに由来するという事実を指す。所望のタンパク質をコードする核酸は、レシピエント細胞がcDNAをタンパク質として発現することを促進する形式でなければならない(即ち、それは発現ベクターに入れられる)。外来遺伝物質をレシピエント細胞に転移する方法には、トランスフェクションと形質導入、並びにクリスパー/casが含まれる。レシピエント細胞の種類の選択は、タンパク質の機能を詳細に調べる実験の必要性に基づいて行われることが多く、異種発現系として知られる最も一般的なレシピエントは、通常、DNAを転移しやすいため、又はタンパク質の機能をより簡単に評価できるという理由で選択される。
【0092】
実施例で示すように、最終ブレンドにおける1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序は、2’-FL>LNFP-IからLNFP-I>2’-FLに逆転する可能性があり、これは、futC発現細胞におけるlgtA(β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼをコードする)及びgalTK(β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする)遺伝子のコピー数を同時に増加させることによって達成される。
【0093】
[異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ]
異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼは、UDP-GlcNAcのGlcNAcをラクトースに転移する能力を含む任意のタンパク質である。本明細書で使用されるβ-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼは、遺伝的に操作された細胞の種に起源を持たない、即ち、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、異種起源のものである。異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼの例は、それぞれ、配列番号1、2、及び3で例示されるLgtA、PmnagT、及びHD0466である。
【0094】
[lgtA]
lgtA遺伝子は、β-1,3-N-アセチル-グルコサミニル-トランスフェラーゼをコードする遺伝子であり、遺伝子の相同体はいくつかの細菌種で見出されており、ここで遺伝子は細菌のリポオリゴ糖のラクト-N-ネオ-テトラオース構造要素の合成に関与している。
【0095】
1つ以上の例示的な実施形態において、lgtA遺伝子は、配列番号40で示されるとおりであるか、又は配列番号40と少なくとも70%同一、例えば、配列番号40と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0096】
1つ以上の例示的な実施形態において、lgtA遺伝子は、配列番号1のタンパク質、又は配列番号1と少なくとも70%同一、例えば、配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0097】
[PmnagT]
1つ以上の例示的な実施形態において、PmnagT遺伝子は、配列番号41で示されるとおりであるか、又は配列番号41と少なくとも70%同一、例えば、配列番号41と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0098】
1つ以上の例示的な実施形態において、PmnagT遺伝子は、配列番号2のタンパク質、又は配列番号2と少なくとも70%同一、例えば、配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0099】
[HDO466]
1つ以上の例示的な実施形態において、HD0466遺伝子は、配列番号42で示されるとおりであるか、又は配列番号42と少なくとも70%同一、例えば、配列番号42と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0100】
1つ以上の例示的な実施形態において、HD0466遺伝子は、配列番号3のタンパク質、又は配列番号3と少なくとも70%同一、例えば、配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0101】
1つ以上の例示的な実施形態において、これらの酵素を使用して生成され得る異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及びHMOブレンドを、以下のマトリクスに示す。
【0102】
【0103】
[異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ]
異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼは、UDP-GalのGalをGlcNAc部分に転移する能力を含む任意のタンパク質である。本明細書で使用されるβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼは、遺伝的に操作された細胞の種に起源を持たない、即ち、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、異種起源のものである。
【0104】
異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの例は、GalTK及びCvb3galTであり、それぞれ、配列番号4及び5で例示される。
【0105】
[galTK]
1つ以上の例示的な実施形態において、galTK遺伝子は、配列番号43で示されるとおりであるか、又は配列番号43と少なくとも70%同一、例えば、配列番号43と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0106】
1つ以上の例示的な実施形態において、galTK遺伝子は、配列番号4のタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%同一、例えば、配列番号4と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0107】
[cvb3galT]
1つ以上の例示的な実施形態において、cvb3galT遺伝子は、配列番号44で示されるとおりであるか、又は配列番号44と少なくとも70%同一、例えば、配列番号44と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0108】
1つ以上の例示的な実施形態において、cvb3galT遺伝子は、配列番号5のタンパク質、又は配列番号5と少なくとも70%同一、例えば、配列番号5と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0109】
異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼのいくつかの非限定的な実施形態を、以下のマトリクスに示す。
【0110】
【0111】
[異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ]
α-1,2-フコシロシルトランスフェラーゼは、α-1,2結合を介してO抗原反復単位のガラクトース残基にフコースを付加する役割を果たす。1つ以上の例示的な実施形態において、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質は、配列番号6若しくは7若しくは8のいずれか1つであるか、又は配列番号6、7、若しくは8のいずれか1つと少なくとも80%同一、例えば、少なくとも番号6、7、若しくは8と少なくとも85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である。
【0112】
好適な異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼの例及びHMOブレンドに対するそれらの効果を以下のマトリクスに示す。
【0113】
【0114】
[futC]
1つ以上の例示的な実施形態において、futC遺伝子は、配列番号45で示されるとおりであるか、又は配列番号45と少なくとも70%同一、例えば、配列番号45と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0115】
1つ以上の例示的な実施形態において、futC遺伝子は、配列番号6のタンパク質、又は配列番号6と少なくとも70%同一、例えば、配列番号6と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0116】
[Mtun]
1つ以上の例示的な実施形態において、Mtun遺伝子は、配列番号46で示されるとおりであるか、又は配列番号46と少なくとも70%同一、例えば、配列番号46と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0117】
1つ以上の例示的な実施形態において、Mtun遺伝子は、配列番号7のタンパク質、又は配列番号7と少なくとも70%同一、例えば、配列番号7と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0118】
[FucT54]
1つ以上の例示的な実施形態において、FucT54遺伝子は、配列番号49のタンパク質、又は配列番号49と少なくとも70%同一、例えば、配列番号49と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。国際公開第2019/008133号パンフレットにおいて、FucT54はいくつかのLNFP-Iを生成することが示されているが、2’-FLを生成する能力は調査されていない。
【0119】
[smob]
smob遺伝子は、配列番号47で示されるとおりであるか、又は配列番号47と少なくとも70%同一、例えば、配列番号47と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一の核酸配列を有するその機能的相同体である。
【0120】
smob遺伝子は、配列番号8のタンパク質、又は配列番号8と少なくとも70%同一、例えば、配列番号8と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体をコードする。
【0121】
異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質は、配列番号8[smob]である。これは、より高いレベルのLNFP-Iが望まれる場合に特に有用であり、細胞は最適には糖トランスポータとして作用する遺伝子産物を任意選択的に更に含み得る。
【0122】
1つ以上の例示的な実施形態において、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質は、配列番号7[mtun]又は配列番号49[fucT54]である。これらは、等モル濃度のLNFP-I及び2’-FLが望ましい場合に特に有用なHMOブレンドである。
【0123】
1つ以上の例示的な実施形態において、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質は、配列番号6[futC]である。これは、より高いレベルの2’FLが望まれる場合に特に有用であり細胞は糖トランスポータとして作用する遺伝子産物を更に含む。
【0124】
[コラン酸遺伝子クラスター]
大腸菌(scherichia coli)K-12のコラン酸遺伝子クラスターは、細菌の細胞壁の主要なオリゴ糖である細胞外多糖類コラン酸の産生に関与している。コラン酸(colonic acid)(CA)遺伝子クラスターは、次の遺伝子、gmd、wcaG、wcaH、wcal、manB、及びmanCで構成されており、これは、GDP-フコース生合成経路にも寄与し、これは、GDP-フコースはHMOのグリコシル単位のフコシル化の供与体として機能するため、HMOの生成において重要である。CA遺伝子クラスターの例は、配列番号52に示す。
【0125】
コラン酸遺伝子クラスター並びにβ-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びα-1,2-フコシルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子は、本明細書で使用される遺伝子改変細胞にPglpF駆動発現カセットの形で導入されたため、glpR遺伝子(DNA結合転写リプレッサGlpRをコードする)の欠失は、細胞内の全てのPglpFプロモータからGlpRによって課される転写抑制を排除し、この方法で全てのPglpFベースの遺伝子発現を増強する可能性がある。従って、最終ブレンドのHMO含有量は様々な形で影響を受ける可能性がある。本開示の枠組みにおいて、futC発現細胞の遺伝的バックグラウンドからglpR遺伝子を欠失させると、最終HMOブレンドにおけるLNFP-I対2’-FLの比率が増加し得ることが観察された。
【0126】
1つ以上の例示的な実施形態において、コラン酸遺伝子クラスターは、その天然のゲノム遺伝子座から発現されて、遺伝子クラスターによってコードされる機能的タンパク質を生成し、それによってGDPフコース生合成経路に寄与する可能性がある。発現は積極的に調節され得る。発現は、天然プロモータを目的のプロモータと交換すること、及び/又は別のゲノム遺伝子座から遺伝子クラスターを発現することにより上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させること、若しくはコラン酸遺伝子クラスターをエピソーム的に発現することにより調節することができる。実施例に示すように、このような手段は、例えば異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質の機能を改善する(実施例2を参照)。
【0127】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、iv)のコラン酸遺伝子クラスターの発現は、天然プロモータを目的のプロモータと交換すること、及び/又は別のゲノム遺伝子座から遺伝子クラスターを発現することにより上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させること、若しくはコラン酸遺伝子クラスターをエピソーム的に発現することにより調節される。
【0128】
1つ以上の例示的な実施形態において、iv)のコラン酸遺伝子クラスターは、機能的に発現され得る。
【0129】
[機能的に発現する]
本文脈において、コラン酸遺伝子クラスターに関する用語「機能的に発現する」は、次のように理解しなければならない:コラン酸遺伝子クラスターの発現は、機能的なGDP-フコース生合成経路に必要な酵素を提供しなければならない。
【0130】
発現は、天然プロモータを目的のプロモータと交換することによって調節することができる。発現はまた、上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させることによって調節することもできる。コラン酸遺伝子クラスターのエピソーム発現も発現に影響を与える。
【0131】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、v)のコラン酸遺伝子クラスターの発現は、天然プロモータを目的のプロモータと交換すること、及び/又は上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させること、若しくはコラン酸遺伝子クラスターをエピソーム的に発現することにより調節される。
【0132】
1つ以上の例示的な実施形態において、コラン酸遺伝子クラスターの発現の制御は、天然プロモータを目的のプロモータと交換すること、及び/又は染色体上の異なる遺伝子座からクラスターを発現すること若しくはコラン酸遺伝子クラスターをエピソーム的に発現することにより上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させることによって調節される。
CA遺伝子クラスター内の個々の遺伝子については以下に記載される。
【0133】
[Gmd]
gmd遺伝子は、GDP-D-マンノースのGDP-4-デヒドロ-6-デオキシ-D-マンノースへの変換を触媒するタンパク質GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(UniProt 受入番号 P0AC88)をコードする。このタンパク質は、GDP-α-D-マンノースからGDP-L-フコースを合成する反応に関与する。1つ以上の例示的な実施形態において、gmd遺伝子は、過剰発現する。
【0134】
[wcaG]
fclとしても知られるwcaG遺伝子は、GDP-4-デヒドロ-6-デオキシ-D-マンノースのGDP-フコースへの2段階のNADP依存性変換を触媒するタンパク質GDP-L-フコースシンターゼ(EC 1.1.1.271、(UniProt 受入番号 P32055))をコードする。1つ以上の例示的な実施形態において、wcaG遺伝子は、過剰発現する。
【0135】
[wcaH]
wcaH遺伝子は、GDP-マンノースとGDP-グルコースの両方を加水分解するタンパク質GDP-マンノースマンノシルヒドロラーゼ(EC 3.6.1.-、(UniProt アクセッション番号 P32056))をコードする。1つ以上の例示的な実施形態において、wcaH遺伝子は、過剰発現する。
【0136】
[wcaI]
wcaI遺伝子はコラン酸生合成グリコシルトランスフェラーゼWcaI(UniProt アクセッション番号 P32057)をコードしており、未修飾フコースのUPP-Glc(α-D-グルコピラノシル-ジホスホウンデカプレノール-グルコース)への転移を触媒する。1つ以上の例示的な実施形態において、wcal遺伝子は、過剰発現する。
【0137】
[manB]
manB遺伝子は、α-D-マンノース-1-ホスフェートのD-マンノース-6-ホスフェートへの変換を触媒することにより、GDPマンノースの生合成に関与するタンパク質ホスホマンノムターゼ(EC 5.4.2.8、(UniProt アクセッション番号 P24175))をコードする。従って、manBの発現レベルは、GDP-マンノースの形成を調節する。1つ以上の例示的な実施形態において、manB遺伝子は、過剰発現する。
【0138】
[manC]
manC遺伝子は、タンパク質マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ(EC:2.7.7.13、(UniProt アクセッション番号 P24174))をコードし、これは、GTP及びα-D-マンノース-1-ホスフェートからのGDP-マンノースの合成を介してGDP-マンノースの生合成に関与する。
【0139】
1つ以上の例示的な実施形態において、manC遺伝子は、過剰発現する。
【0140】
[天然のゲノム遺伝子座]
本開示に関連して、コラン酸遺伝子クラスターに関して用語「天然のゲノム遺伝子座」は、遺伝的に操作された細胞のゲノムにおける遺伝子クラスターの元の自然な位置に関する。
【0141】
[配列同一性]
2つ以上の核酸又はアミノ酸配列の文脈において、用語「[特定の]%の配列同一性」は、2つ以上の配列が、核酸又はアミノ酸の比較ウィンドウ又は指定された配列にわたって最大一致について比較及び整列されたとき、所与のパーセントで共通する核酸又はアミノ酸残基を有することを意味する(即ち、配列は、少なくとも90パーセント(%)の同一性を有する)。核酸配列又はアミノ酸配列の同一性パーセントは、デフォルトパラメーターを用いるBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用して、又は手動によるアラインメント及び視覚的検査によって測定することができる(例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/を参照されたい)。この定義は、欠失及び/又は付加を有する試験配列の補体及び配列並びに置換を有する補体及び配列にも適用される。同一性パーセント、配列類似性の決定に、またアラインメントに好適なアルゴリズムの例は、BLAST 2.2.20+アルゴリズムであり、これは、Altschul et al.Nucl.Acids Res.25-3389(1997)に記載されているBLAST 2.2.20+アルゴリズムである。BLAST 2.2.20+は、本開示の核酸及びタンパク質に対する配列同一性パーセントを決定するために使用される。BLAST分析を実施するためのソフトウエアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手可能である。一般的に使用されている配列アラインメントアルゴリズムの例は、
CLUSTAL Omega(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)、
EMBOSS Needle(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/)、
MAFFT(http://mafft.cbrc.jp/alignment/server/)又は
MUSCLE(http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/muscle/)である。
【0142】
好ましくは、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mo/.Biol.48:443-453)を用いて決定され、これはEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277,)、好ましくはバージョン5.0.0以後のNeedleプログラム(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss needle/で入手可能)により実行される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティ及びEBLOSUM62(30 BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリクスである。Needle標識「最長同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性パーセントとして用いられ、以下のように算出される:(同一の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント内のギャップの総数)。
【0143】
好ましくは、2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、10、好ましくは、バージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)、10好ましくはバージョン5.0.0以後のNeedleプログラムにより実行される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティ及びDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリクスである。Needle標識「最長同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性パーセントとして用いられ、以下のように算出される:(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント内のギャップの総数)。
【0144】
[機能的相同体]
本明細書中に記載されるタンパク質/核酸配列の機能的相同体は、その元々の機能性を保持する、変更を遺伝コード内に有するタンパク質/核酸配列である。機能的相同体は、変異誘発によって得られ得る。機能的相同体は、タンパク質/核酸配列の機能性と比較して、少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、又は100%の存続する機能性を有しなければならない。
【0145】
開示されるアミノ酸又は核酸配列のいずれか1つの機能的相同体は、より高い機能性も有し得る。配列番号1~47のいずれか1つの機能的相同体は、HMO収率、純度、バイオマス形成の引下げ、遺伝的に操作された細胞の生存能力、本開示に従う遺伝的に操作された細胞のロバスト性又は消耗品の引下げに関してHMOの産生に関与することができなければならない。
【0146】
[発現の制御]
本文脈において、用語「発現の制御」は、遺伝子のmRNAへの転写とその後のタンパク質への翻訳が制御される遺伝子発現に関連する。遺伝子発現は主に転写レベルで制御され、主に調節要素など(ただしこれに限定されない)DNA上の特定の部位へのタンパク質の結合の結果として発生する。
【0147】
上記のように、エンジニアリング戦略は、次のように複数の方法で適用できる:
1)コピー数
2)これらの遺伝子の任意のコピーの発現を転写レベル又は翻訳レベルで制御すること
3)HMO生成プロセスにおける重要な遺伝子の発現を抑制する調節因子の欠失
4)HMO生成プロセスにおける重要な遺伝子の活性化及び/又は増強する調節因子の過剰発現。
【0148】
LNFP-I及び2’-FL生合成経路に直接関与する酵素をコードする遺伝子のコピー数及び/又は遺伝子の発現を増加させ、活性化糖であるGDP-フコース、UDP-GlcNAc、及びUDP-Gal(糖供与体)を合成し、ラクトース、LNT-II、LNT、及びLNFP-I(糖受容体)を修飾して、それぞれ、LNT-II、2’-FL、LNT、LNFP-I、及びLNDFH-Iを形成することが望ましい。
【0149】
[過剰発現]
様々な分子機構により、適用される生成プロセスに関連した条件下で遺伝子が適切なレベルで発現されることが保証される。例えば、転写の調節は次のような影響経路にまとめることができる:遺伝的(制御因子と目的の遺伝子との直接相互作用)、制御因子と転写機構との調節及び/又は相互作用、並びにエピジェネティック(転写に影響を与えるDNA構造の非配列変化)。
【0150】
遺伝子発現が任意の遺伝子についての臨界閾値を下回ると、突然変異表現型が生じるが、その理由は、そのような欠損は本質的に標的遺伝子の機能の部分的又は完全な喪失を模倣するのに対し、天然遺伝子の発現増加は細胞又は生物にとって有益又は破壊的である可能性があるからであることが知られている。
【0151】
遺伝子の過剰発現は、重要な遺伝子調節配列に結合して転写を促進する転写アクチベータ、又は転写にプラスの影響を与える配列要素(以下に記載するように調節要素とも呼ばれる)を構成するエンハンサによって直接達成され得る。同様に、遺伝子の直接の過剰発現は、単にゲノム内のコピー数を増加させるか、又は天然プロモータをより強力なプロモータに置き換えるか、又は更には対応するmRNAのリボソームへの結合を制御する配列、つまり遺伝子のコード配列の上流に存在するシャイン・ダルガーノ配列を改変することによっても達成することができる。
【0152】
更に、遺伝子の過剰発現はまた、通常は目的の遺伝子のコーディング配列周囲の重要な調節配列に結合し、それによってその転写を阻害する転写リプレッサの部分的又は完全な不活化によって間接的に達成され得る。
【0153】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法の工程i)、ii)、及びiii)の異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びα-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質の過剰発現は、上記タンパク質をコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって、及び/又はこれらの遺伝子の発現を制御するため適切な要素を選択することによって、及び/又は上記タンパク質をコードする遺伝子のコーディング配列周囲の調節要素に結合するリプレッサを不活性化することによって提供される。
【0154】
[コピー数の増加]
コピー数変動は構造変動の一種である:具体的には、これはかなりの数の塩基対の一種の乗算であり、タンパク質をコードする遺伝子を表す場合、同じタンパク質をコードする遺伝子の数が増加することになる。このような変動は、多くの種で自然に発生する可能性があるが、宿主細胞を遺伝的に改変することによって導入することもできる。
【0155】
1つ以上の例示的な実施形態において、発現は、所望の遺伝子のコピー数を増加させることにより制御される。コピー数は、細胞内に高いコピー数を有するプラスミドを導入することによって、又は宿主細胞のゲノムに遺伝子の追加のコピーを導入することによって増加させることができる。
【0156】
例えば、最終ブレンドは、futC発現細胞におけるlgtA(β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼをコードする)及びgalTK(β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする)遺伝子のコピー数を同時に増加させることにより、2’-FL>LNFP-IからLNFP-I>2’-FLへ逆転させることができる(実施例3参照)。
【0157】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、目的は、配列番号6[FutC]若しくは配列番号7[mtun]若しくは配列番号49[FucT54]のα-1,2-フコシロシル-トランスフェラーゼ又はそれらの相同体と組み合わされた、例えばlgtA及びgalTKにより例示されるβ-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及びβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のコピー数を増加させることである。
【0158】
[調節要素]
本明細書に記載される方法による遺伝的に操作された細胞は、内因性若しくは異種性及び/又は合成核酸配列の制御された過剰発現を可能にする調節要素を含み得る。
【0159】
用語「調節要素」は、プロモータ配列、シグナル配列、及び/又は調節要素に作動可能に連結された核酸配列の転写及び/又は翻訳に影響を与える転写因子結合部位のアレイを含む。
【0160】
調節要素は、転写レベル及び転写後レベルで発見され、さらにそれらのレベルでの分子の網状組織を可能にする。例えば、転写後レベルでは、mRNAの安定性、翻訳、細胞内局在を制御する生化学シグナルが調節要素によって処理される。RNA結合タンパク質は、別の種類の転写後調節要素であり、配列要素又は構造要素として更に分類される。調節要素として機能する可能性のある特定の配列モチーフも、mRNA修飾に関連している。様々なDNA調節要素が遺伝子発現の調節に関与しており、DNA、クロマチンを構成する細胞タンパク質、遺伝子アクチベータ及びリプレッサ、並びに転写因子が関与する生化学的相互作用に依存する。
【0161】
一般に、転写及び翻訳調節配列としては、プロモータ配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、遺伝子調節因子ための結合部位、並びにエンハンサ配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
プロモータ及びエンハンサは遺伝子発現の主要なゲノム調節要素である。プロモータは、遺伝子の転写開始部位(TSS)の1~2キロベース(kb)内のDNA領域であり;それらには、RNAポリメラーゼの転写機構を組み立てるのに必要な短い調節要素(DNAモチーフ)が含まれている。細菌及び古細菌の種では、プロモータの下流、典型的には開始コドンから約8塩基にシャイン・ダルガーノ配列があるのが一般的である。加えて、TSSのより遠位に位置するDNA調節要素は、転写に大きく寄与する可能性がある。このような領域はエンハンサと呼ばれることが多く、位置に依存しないDNA調節要素は、部位特異的な転写因子と相互作用して細胞型の同一性を確立し、遺伝子発現を調節する。エンハンサは、その配列状況とは独立して、ルーピングとして知られるプロセスを通じて、標的遺伝子から数kb~数百kbの距離で作用し得る。これらの特徴のため、好適なエンハンサを同定し、DNA配列のみに基づいてそれらを標的遺伝子に結び付けることは困難である。
【0163】
プロモータは、他の転写及び翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)と一緒に、所与の遺伝子又は遺伝子の群(1つのオペロン)を発現するために必要である。
【0164】
目的の特定の遺伝子の発現を促進する好適なプロモータ配列の同定は、多くの場合、困難な努力を必要とする面倒な作業である。本開示に関連して、調節要素は、翻訳後調節因子であっても、若しくはなくてもよく、又は翻訳調節因子であっても、若しくはなくてもよい。
【0165】
適切な調節要素(例えば、プロモータ、エンハンサ、及び/又はシャイン・ダルガーノ配列)を選択することにより、異種遺伝子の発現に影響を与える可能性がある。プロモータ又はシャイン・ダルガーノ配列など調節要素の強度は、β-ガラクトシダーゼ活性が、以前に説明されるようにアッセイされるlacZ酵素アッセイを用いて評価することができる(例えば、Miller J.H.Experiments in molecular genetics,Cold spring Harbor Laboratory Press,NY,1972を参照されたい)。簡潔には、細胞は、Z-バッファ中に希釈されて、ドデシル硫酸ナトリウム(0.1%)及びクロロホルムにより浸透性にされる。アッセイは、30℃で実施される。試料が予熱されて、アッセイは、200μlオルト-ニトロ-フェニル-β-ガラクトシダーゼ(4mg/mL)の添加によって開始されて、試料が僅かに黄色に変わった場合に500μlの1M Na2CO3の添加によって止められる。オルトニトロフェノールの放出は、その後、420nmでの光学濃度の変化として判定される。特定の活性は、ミラーユニット(MU)[A420/(min*mL*A600)]で報告される。活性が10,000MUを超える調節要素は、強いとみなされ、活性が3,000MU未満の調節要素は、弱いとみなされ、その間にあるものは、中間の強度を有する。強い調節要素の例は、およそ14.000MUの活性を有するPglpFプロモータであり、弱いプロモータの例は、IPTGにより誘導された場合におよそ2300MUの活性を有するPlacである。
【0166】
従って、本発明の一実施形態において、調節要素は、本発明による1つ以上の異種核酸配列の発現、即ち過剰発現を増強することができる1つ以上の要素を含む。特に、β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又はβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現レベルの調節は、2’-FLの形成に影響を与え得る。一実施形態において、10,000MU超、例えば12,000MU超、例えば15,000MU超の調節要素が、1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又はβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を制限している。1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又はβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を制御するための強いプロモータの使用により、LNFP-Iへの経路が促進されるため、2’-FLに対するLNFP-Iの比率が増加する(
図12を参照)。
【0167】
本発明の別の実施形態において、調節要素は、本発明による1つ以上の異種核酸配列の発現の適切な制御を可能にする1つ以上の要素を含む。特に、β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又はβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現レベルの調節は、2’-FLの形成に影響を与え得る。一実施形態において、10,000MU未満、例えば8,000MU未満、未満、例えば6,000MU未満、例えば4,000MU未満、例えば2,000MU未満の調節要素が、1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又はβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を制御している。1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又はβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を制御するための中程度又は弱い強度のプロモータを使用することにより、中間生成物LNT-II及びLNTが生成される速度が低下し、その結果系内に存在するラクトースからより多くの2’-FLが生成されるようになるため、LNFP-I対2’-FLの比率が減少する(
図12を参照)。
【0168】
それに関して、本発明による1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ及び/又はスクロース加水分解酵素、及び/又はPTS依存性スクロース利用系、及び/又は1つ以上の天然若しくは異種MFSトランスポータタンパク質をコードする核酸配列及び/又は遺伝子の発現を調節する調節要素は、プロモータ配列であり得る。
【0169】
本明細書で開示される方法の実行において、異なる又は同一のプロモータ配列を使用して、宿主細胞のゲノムに統合されたか又はエピソームDNAの異なる目的の遺伝子の転写を促進してもよい。
【0170】
[天然]
本開示に関連して、用語「天然」は、本発明の方法に従って遺伝的に操作された元の細胞のゲノムに由来するが、任意の遺伝子改変前の核酸配列を指す。それに関して、核酸配列は、遺伝的に操作された細胞に関して、それが大腸菌(E.coli)K-12株に由来し、異種起源のものではなく、組み換えられた核酸配列ではない場合、天然のものとみなされ得る。
【0171】
[異種調節要素]
調節要素は、内因性又は異種の及び/又は組換え及び/又は合成の核酸配列であり得る。本文脈において、用語「異種調節要素」は、本明細書に記載される元の遺伝的に操作された細胞に対して内因性ではない調節要素として理解されるべきである。異種調節要素はまた、組換え調節要素であってもよく、ここで2つ以上の作動可能に結合していない天然調節要素が、異種及び/又は合成調節要素に組み換えられる。異種調節要素は、当業者に公知の方法を使用して遺伝的に操作された細胞に導入され得る。
【0172】
[プロモータ配列]
遺伝子及び/又は核酸配列の発現を調節する調節要素又は要素は、1つ以上のプロモータ配列を含んでいてもよく、ここでプロモータ配列は、目的の遺伝子の核酸配列の発現を調節するという意味で、目的の遺伝子の核酸配列に作動可能に連結される。
【0173】
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、プロモータ配列である。
【0174】
一般的には、プロモータは、天然、異種、及び/又は合成核酸配列を含んでもよく、2つ以上の核酸配列又は上記の同じ若しくは異なる起源を組み換えた、組換え核酸配列であってもよく、それにより、同種、異種、若しくは合成の核酸プロモータ配列、及び/又は同種、異種、若しくは合成の核酸調節要素を生成する。
【0175】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の遺伝子及び/又は異種核酸配列の調節要素は、2つ以上の天然又は異種プロモータ配列を含む。
【0176】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の調節要素は、単一のプロモータ配列を含む。
【0177】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の遺伝子及び/又は異種核酸配列の調節要素は、同一のプロモータ配列を有する2つ以上の調節要素を含む。
【0178】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の遺伝子及び/又は異種核酸配列の調節要素は、同一でないプロモータ配列を有する2つ以上の調節要素を含む。
【0179】
調節構造、即ち、転写因子結合部位の遺伝子ごと(gene-by-gene)の分布、及びそれらの部位に結合する転写因子の正体は、複数の異なる増殖条件を使用でき、大腸菌(E.coli)ゲノム全体から100を超える遺伝子があり、これらは調節要素として機能する。従って、本明細書に記載の1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の異種又は天然の核酸配列の転写及び/又は転写レベルの調節を可能にする任意のプロモータ配列が好適であり得る。
【0180】
1つ以上の例示的な実施形態において、調節要素は、PBAD、Pxyl、PsacB、PxylA、PrpR、PnitA、PT7、Ptac、PL、PR、PnisA、Pb、Pscr、PgatY_70UTR、PglpF、PglpF_SD1、PglpF_SD10、PglpF_SD2、PglpF_SD3、PglpF_SD4、PglpF_SD5、PglpF_SD6、PglpF_SD7、PglpF_SD8、PglpF_SD9、PglpF_B28、PglpF_B29、Plac_16UTR、Plac、PmglB_70UTR、及びPmglB_70UTR_SD4からなる群から選択される。
【0181】
PglpF、PlgpA、PlgpT、PgatY、PmglB、及びPlacプロモータ系から誘導されるプロモータ配列の幅広い選択は、国際公開第2019123324号パンフレット及び同第2020255054号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0182】
1つ以上の例示的な実施形態において、調節要素は、配列番号13(PglpF)、配列番号12(PgatY_70UTR)、配列番号27(Plac)、配列番号9(PmglB_70UTR)、配列番号11(Pscr)、又はこれらのバリアントからなる群から選択されるプロモータである。特に、国際公開第2019123324号パンフレットに記載されているPglpF若しくはPlacのバリアント、又は国際公開第2020255054号パンフレットに記載されているPmglB_70UTRのバリアントが望ましい。
【0183】
1つ以上の例示的な実施形態において、異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又は異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現は、単一コピーから得られ、且つ/又は異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ及び/又は異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼの発現のための調節要素は、低い又は中間の強度を有する。中強度及び低強度を有する調節要素は、PglpF_SD9(配列番号23)、PglpF_SD7(配列番号21)、PglpF_SD6(配列番号20)、PglpF_B28(配列番号24)、PglpF_B29(配列番号25)、Pscr(配列番号11)、及びPlac(配列番号27)からなる群から選択することができる。
【0184】
1つ以上の例示的な実施形態において、i)及び/若しくはii)の発現は、2つ以上のコピーから得られる、並びに/又はi)及び/若しくはii)の発現のための調節要素は、高い強度を有する。高強度を有する調節要素は、PglpF(配列番号13)、PglpF_SD10(配列番号15)、PglpF_SD8(配列番号22)、PglpF_SD5(配列番号19)、PglpF_SD4(配列番号18)、PgatY_70UTR(配列番号12)、PmglB_70UTR(配列番号9)、及びPmglB_70UTR_SD4(配列番号9)からなる群から選択することができる。
【0185】
1つ以上の例示的な実施形態において、調節要素は、Pscr、PgatY_70UTR、PglpF、PglpF_SD1、PglpF_SD2、PglpF_SD3、PglpF_SD4、PglpF_SD5、PglpF_SD6、PglpF_SD7、PglpF_SD8、PglpF_SD9、PglpF_SD10、PglpF_B28、PglpF_B29、Plac、及びPlac_16UTRからなる群から選択される。1つ以上の例示的な実施形態において、調節要素は、PglpF、Pscr、Plac、PglpF_B29、及びPglpF_B28からなる群から選択される。
【0186】
本発明の好ましい例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の遺伝子及び/又は異種核酸配列の発現を調節するための調節要素に含まれるプロモータ配列は、glpFKXオペロンプロモータ配列、PglpFを包含する。
【0187】
1つ以上の例示的な実施形態において、調節要素は、PglpF(配列番号13)、又はPglpF_SD10(配列番号15)、PglpF_SD9(配列番号23)、PglpF_SD8(配列番号22)、PglpF_SD7(配列番号21)、PglpF_SD6(配列番号20)、PglpF_SD5(配列番号19)、PglpF_SD4(配列番号18)、PglpF_B28(配列番号24)、及びPglpF_B29(配列番号25)から選択されるそのバリアントからなる群から選択される。
【0188】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の遺伝子及び/又は異種核酸配列の発現を調節するための調節要素に含まれるのプロモータ配列は、lacオペロンプロモータ配列、Placを包含する。
【0189】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、MDO株(「材料及び方法」を参照)に由来し、天然コラン酸遺伝子座の前の単純なプロモータ交換及び/又は異なるゲノム遺伝子座[Plac(CA)::
PglpF_B28(CA)]にあるこの遺伝子クラスターの第2のコピーの導入によって、コラン酸遺伝子クラスターをコードする核酸を過剰発現する。
【0190】
1つ以上の例示的な実施形態において、本開示の構築体に含まれる組換え遺伝子の発現を調節するための調節要素は、mglBACであり;ガラクトース/メチル-ガラクトシドABCトランスポータ周辺質結合タンパク質プロモータPmglB又は配列番号9のPmglB_70UTR又は配列番号10のPmglB_70UTR_SD4等のそのバリアントであるが、これらに限定されない。更なるPmglBバリアントは、国際公開第2020255054号パンフレットに記載されているように記載される。
【0191】
1つ以上の例示的な実施形態において、本開示の構築体に含まれる組換え遺伝子の発現を調節するための調節要素は、gatYZABCDであり;テガトース-1,6-ビスPアルドラーゼプロモータPgatY又はそのバリアントである。
【0192】
[Pscr]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、Pscr又は配列番号11などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0193】
[PgatY_70UTR]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PgatY_70UTR又は配列番号12などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0194】
[PglpF]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF又は配列番号13などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0195】
[PglpF_SD1]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD1又は配列番号14などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0196】
[PglpF_SD10]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD10又は配列番号15などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0197】
[PglpF_SD2]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD2又は配列番号16などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0198】
[PglpF_SD3]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD3又は配列番号17などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0199】
[PglpF_SD4]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD4又は配列番号18などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0200】
[PglpF_SD5]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD5又は配列番号19などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0201】
[PglpF_SD6]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD6又は配列番号20などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0202】
[PglpF_SD7]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD7又は配列番号21などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0203】
[PglpF_SD8]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD8又は配列番号22などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0204】
[PglpF_SD9]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_SD9又は配列番号23などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0205】
[PglpF_B28]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_B28又は配列番号24などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0206】
[PglpF_B29]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PglpF_B29又は配列番号25などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0207】
[Plac_16UTR]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、Plac_16UTR又は配列番号26などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0208】
[Plac]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、Plac又は配列番号27などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0209】
[PmglB_70UTR]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PmglB_70UTR又は配列番号9などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0210】
[PmglB_70UTR_SD4]
1つ以上の例示的な実施形態において、異種調節要素は、PmglB_70UTR_SD4又は配列番号10などであるがこれに限定されないそのバリアントである。
【0211】
[エピソーム要素]
用語「エピソーム要素」は、染色体外核酸配列を指し、自律的に複製するか、又は遺伝的に操作された細胞のゲノムに組み込むことができる。従って、エピソーム核酸配列は、遺伝的に操作された細胞の染色体に組み込むことができるプラスミドである場合があり、即ち、全てのプラスミドがエピソーム要素であるわけではない。
【0212】
1つ以上の例示的な実施形態において、エピソーム核酸配列は、染色体に組み込まれていないプラスミドであってもよい。これらの実施形態において、エピソーム要素は、目的の発現カセットを運ぶプラスミドDNA配列を指し、そのカセットはプロモータ配列、目的の遺伝子のコーディング配列、及びターミネータ配列から構成される。
【0213】
1つ以上の例示的な実施形態において、エピソーム核酸配列は、一部のみが染色体に組み込まれたプラスミドであってもよい。これらの実施形態において、発現カセットは、上記のものに似ているが、目的の遺伝子が組み込まれる遺伝子座の上流及び下流のDNA領域に相同な2つのDNA断片を更に含む。
【0214】
[アクチベータ]
1つ以上の例示的な実施形態において、本明細書に開示される遺伝的に操作された細胞は、LNFP-I、2’-FL、LNT II、及びLNTなどであるがこれらに限定されないヒトミルクオリゴ糖(HMO)の生成を促進するのに必要な酵素をコードする遺伝子の発現を増強する過剰発現された遺伝子産物を含む。
【0215】
1つ以上の例示的な実施形態において、本開示の細胞は、v)の調節要素又はv)の調節要素の上流の領域に結合し、i)~iii)のタンパク質又はiv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現を増強する、過剰発現された遺伝子産物を含み得る。
【0216】
1つ以上の例示的な実施形態において、本開示の細胞は、v)の調節要素又はv)の調節要素の上流の領域に結合し、i)~iii)のタンパク質又はiv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現を増強する、過剰発現された遺伝子産物を含み得、ここで異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質は、配列番号6である。
【0217】
[CRP]
1つ以上の例示的な実施形態において、上記遺伝子産物は、cAMP DNA結合転写二重制御因子CRPである。
【0218】
CRPは、転写因子のCRP-FNRスーパーファミリーに属する。CRPはいくつかの大腸菌(E.coli)遺伝子の発現を制御し、その多くは二次炭素源の異化に関与している。環状AMP(cAMP)により活性化すると、CRPは特定のプロモータ配列に直接結合し、その結合により直接相互作用を通じてRNAポリメラーゼが動員され、プロモータ配列に続く核酸配列の転写が活性化され、目的の遺伝子の発現が引き起こされる。従って、CRPの過剰発現は、目的の遺伝子/核酸配列の発現の増強につながる可能性がある。他の機能の中では、CRPはPglpFプロモータにその機能を発揮し、リプレッサGlpRとは逆にPglpFファミリーのプロモータ配列を活性化する。このようにして、本開示の遺伝的に操作された細胞のCRPの過剰発現は、PglpFファミリーのプロモータによって調節される遺伝子の発現を促進する。
【0219】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、crp遺伝子は、過剰発現する。crp遺伝子は、GenBank受入ID NP_417816を有するアミノ酸配列と100%同一のタンパク質又はGenBank受入ID NP_417816と少なくとも70%同一、例えば80%、例えば90%、例えば95%、例えば98%同一のその機能的相同体をコードし得る。
【0220】
2’-FL産生株における本開示で示唆されるGlpR及び/又はCRPの遺伝的操作は、これらの株による2’-FLの全体的な産生にとって有益である。
【0221】
[リプレッサ]
実施例5で示すように、DNA結合転写リプレッサGlpRをコードするglpR遺伝子の欠失は、LNFP-I、2’-FL、LNT II、及びLNT(豊富な順)を含む最大4つのHMOを含むHMO混合物の特定の標的組成を獲得するための遺伝的ツールとして使用される。
【0222】
1つ以上の例示的な実施形態において、本開示による方法は、v)の調節要素又はv)の調節要素の上流の領域に結合し、i)~iii)のタンパク質又はiv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現を抑制する、機能しない(又は存在しない)遺伝子産物を更に含む細胞を含む。
【0223】
1つ以上の例示的な実施形態において、本開示による方法は、細胞を含み、ここでv)の調節要素又はv)の調節要素の上流の領域に結合し、i)、ii)、若しくはiii)のタンパク質のいずれか1つ、又はv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現を抑制する遺伝子産物は、欠失しているか又は機能しない。
【0224】
1つ以上の例示的な好ましい実施形態において、本開示による方法は、v)の調節要素又はv)の調節要素の上流の領域に結合し、i)~iii)のタンパク質又はiv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現を抑制する、機能しない(又は存在しない)遺伝子産物を更に含む細胞を含み、ここで異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質は、配列番号6である。
【0225】
1つ以上の例示的な実施形態において、上記遺伝子産物は、DNA結合転写リプレッサGlpRである。
【0226】
[GlpR]
GlpRは転写調節因子のDeoRファミリーに属し、異なるオペロンで構成されているグリセロール-3-ホスフェートレギュロン(regulon)のリプレッサとして機能する。この調節因子はglpEGRオペロンの一部であるが、独立した(glpR)転写単位として構成的に発現することもできる。加えて、調節されるオペロンは、大腸菌(Escherichia coli)が誘導物質、グリセロール、又はグリセロール-3-リン酸(G3P)の存在下、及びグルコースの非存在下で増殖する場合に誘導される。誘導物質の非存在下で、このリプレッサは、20核酸長のDNA標的部位からなる逆方向反復配列にタンデムに結合する。
【0227】
glpR遺伝子に関する用語「機能しない又は存在しない」は、細菌ゲノムからの対応する核酸配列(例えば、配列番号48又はglpF由来プロモータを下方制御することができるglpRをコードするそのバリアント)の完全又は部分的欠失によるglpR遺伝子の不活化を指す。glpR遺伝子は、調節要素へのDNA結合に影響を与える終止コドン、フレームシフト、又はアミノ酸変異を導入するコーディング配列に変異を導入することによって、機能しなくすることもできる。glpR遺伝子は、DNA結合転写リプレッサGlpRをコードする。この方法では、PglpFファミリーのプロモータ配列は、遺伝的に操作された細胞において、さもなければPglpFプロモータを下方制御するリプレッサ遺伝子が欠失しているため、上方制御される。
【0228】
1つ以上の例示的な実施形態において、glpR遺伝子は欠失している。
【0229】
[糖排出トランスポータ]
過去10年間、いくつかの新しい効果的な糖排出トランスポータタンパク質が同定されており、それぞれ組換えにより生成された様々なHMOに対する特異性を有し、上記タンパク質を発現する組換え細胞の開発は、高い規模の産業的HMO製造に有利である。糖輸送は、限定されるものではないが、オリゴ糖などの糖の輸送に関する。
【0230】
例えば、いくつかの選択された糖排出トランスポータタンパク質のうちの1つを導入することによってfutC発現細胞を操作すること、並びにコラン酸遺伝子クラスターの発現レベルを増加させることは、最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序を、LNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iへと著しく逆転させることができる2つの効率的な遺伝子改変であることが判明した。
【0231】
従って、本明細書に記載される遺伝的に操作された細胞は、糖排出トランスポータをコードする組換え核酸も含み得る。糖排出トランスポータは、例えば、本明細書に記載の方法でHMOのレベルを増加させる。
【0232】
本明細書に記載の遺伝的に操作された細胞の細胞質又は周辺質から産生培地へ、及び/又は産生培地から細胞質若しくは周辺質への、1つ以上のHMOの流入及び/又は流出輸送が開示される。
【0233】
本明細書に開示される遺伝的に操作された細胞の細胞質若しくは周辺質から産生培地及び/又は産生培地から遺伝的に操作された細胞の細胞質若しくは周辺質に1つ以上のHMOを輸送できる本明細書に開示される遺伝的に操作された細胞において発現されるポリペプチドは、糖輸送が可能なポリペプチドである。
【0234】
したがって、本文脈において、糖輸送は、HMOなどであるがこれに限定されない糖の流出及び/又は流入輸送を意味し得る。
【0235】
したがって、1つ以上の例示的な実施形態において、本明細書中に記載される方法に従う遺伝的に操作された細胞は、糖排出トランスポータとしての機能を果たす遺伝子産物を更に含む。糖排出トランスポータとしての機能を果たす遺伝子産物は、遺伝的に操作された細胞内で発現される組換え核酸配列によってコードされ得る。糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列は、遺伝的に操作された細胞のゲノム中に組み込まれ得る。それはプラスミドによってもたらされる場合もあれば、エピソーム発現要素の一部である場合もある。
【0236】
[MFSトランスポータ]
例示的な糖排出トランスポータは、主要ファシリテータースーパーファミリータンパク質の亜種である。MFSトランスポータは、オリゴ糖などの糖などの分子(ただしこれに限定されない)の細胞膜を通過する輸送を促進する。
【0237】
「主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)」という用語は、二次活性トランスポータクラスの大きくて非常に多様なファミリーを意味し、糖、薬物、疎水性分子、ペプチド、有機イオンなどを含む様々な基質の範囲の輸送を担う。
【0238】
本文脈において「MFSトランスポータ」は、細胞膜を通したオリゴ糖、好ましくはHMOの輸送、好ましくは本明細書に記載の遺伝的に操作された細胞によって合成されたHMO/オリゴ糖の細胞サイトゾルから細胞培地への輸送を促進するタンパク質を意味する。加えて、又はあるいは、MFSトランスポータは、ラクトース、グルコース、細胞代謝産物、及び/又は毒素などのHMO又はオリゴ糖とみなされない分子の排出も促進し得る。
【0239】
実施例4において、futC発現細胞の遺伝的バックグラウンドに糖排出トランスポータタンパク質をコードする選択された異種遺伝子を導入すると、最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序を、LNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iへと著しく逆転させることができるのかが実証されている。表4に示すように、これらの菌株間の唯一の違いは、宿主の選択されたゲノム遺伝子座に組み込まれるトランスポータ遺伝子である。このような異種遺伝子の過剰発現は、細胞内部から細胞外環境への2’-FL及び/又はLNFP-Iの輸送を強化し、それによってHMO産生にさまざまな形で影響を与えると考えられている。
【0240】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、表5で示されるような1つ以上の糖トランスポートタンパク質をコードする組換え核酸を更に含む。
【0241】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、Bad、Nec、YberC、Fred、Vag、及びMarcからなる群から選択される。
【0242】
1つ以上の例示的な好ましい実施形態において、糖排出トランスポータは、Nec又はYberCである。
【0243】
[Bad]
「Badタンパク質」又は「Badトランスポータ」又は「Bad」として互換的に本明細書で特定されるMFSトランスポータタンパク質は、配列番号28のアミノ酸配列を有し;配列番号28として本明細書で特定されるアミノ酸配列は、GenBank受入ID WP_017489914.1を有するアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列である。
【0244】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、Badである。更なる実施形態において、糖排出トランスポータは、配列番号28のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号28と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体である。
【0245】
[Nec]
配列番号29のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータタンパク質は、「Necタンパク質」又は「Necトランスポータ」又は「Nec」として互換的に本明細書で特定され;Necタンパク質をコードする核酸配列は、「Necコーディング核酸/DNA」又は「nec遺伝子」又は「nec」として本明細書で特定され;配列番号29として本明細書で特定されるアミノ酸配列は、GenBank受入ID WP_092672081.1を有するアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列である。
【0246】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、Necである。更なる実施形態において、糖排出トランスポータは、配列番号29のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号29と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体である。
【0247】
[YberC]
配列番号30のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータタンパク質は、「YberCタンパク質」又は「YberCトランスポータ」又は「YberC」として互換的に本明細書で特定され;YberCタンパク質をコードする核酸配列は、「YberCコーディング核酸/DNA」又は「yberC遺伝子」又は「yberC」として本明細書で特定され;配列番号30として本明細書で特定されるアミノ酸配列は、GenBank受入ID EEQ08298.1を有するアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列である。
【0248】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、YberCである。更なる実施形態において、糖排出トランスポータは、配列番号30のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号30と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体である。
【0249】
[Fred]
配列番号31のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータタンパク質は、「Fredタンパク質」又は「Fredトランスポータ」又は「Fred」として互換的に本明細書で特定され;Fredタンパク質をコードする核酸配列は、「Fredコーディング核酸/DNA」又は「fred遺伝子」又は「fred」として本明細書で特定され;配列番号31として本明細書で特定されるアミノ酸配列は、GenBank受入ID WP_087817556.1を有するアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列である。
【0250】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、Fredである。更なる実施形態において、糖排出トランスポータは、配列番号31のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号31と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体である。
【0251】
[Vag]
配列番号32のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータタンパク質は、「Vagタンパク質」又は「Vagトランスポータ」又は「Vag」として互換的に本明細書で特定され;Vagタンパク質をコードする核酸配列は、「Vagコーディング核酸/DNA」又は「vag遺伝子」又は「vag」として本明細書で特定され;配列番号32として本明細書で特定されるアミノ酸配列は、GenBank受入ID WP_048785139.1を有するアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列である。
【0252】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、Vagである。更なる実施形態において、糖排出トランスポータは、配列番号32のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号32と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体である。
【0253】
[Marc]
配列番号33のアミノ酸配列を有するMFSトランスポータタンパク質は、「Marcタンパク質」又は「Marcトランスポータ」又は「Marc」として互換的に本明細書で特定され;Marcタンパク質をコードする核酸配列は、「Marcコーディング核酸/DNA」又は「marc遺伝子」又は「Marc」として本明細書で特定され;配列番号33として本明細書で特定されるアミノ酸配列は、GenBank受入ID WP_060448169.1を有するアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列である。
【0254】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、Marcである。更なる実施形態において、糖排出トランスポータは、配列番号33のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号33と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体である。
【0255】
1つ以上の例示的な実施形態において、Bad、Nec、YberC、Fred、Vag、及びMarcからなる群から選択される糖排出トランスポータ及び/又はMFSトランスポートタンパク質は、機能的相同体であってもよい。
【0256】
1つ以上の例示的な実施形態において、糖排出トランスポータ機能的相同体は、配列番号28、29、30、31、32、又は33のうちのいずれか1つ少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、又は例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する。
【0257】
[培養]
本文脈において、培養は、一般に自然環境の外で、制御された条件下で細胞を増殖させるプロセスを指し、したがって、多数の細胞を培養、増殖、及び成長させるために使用される方法を指す。
【0258】
[細胞培養培地]
本文脈において、成長培地又は培養培地は、微生物、細胞、又は小さな植物の成長をサポートするように設計された液体又はゲルである。培地は、適切なエネルギー源を構成し、細胞周期を調節する化合物を含み得る。培養培地は、半規定、即ち複合培地化合物(例えば、酵母抽出物、大豆ペプトン、カザミノ酸など)を含有するものであっても、複合化合物を含まない化学的に規定されたものであってもよい。成長培地、培養培地、及び産生培地は、互換的に使用される。定時的な好適な培地は、実験例で提供される。
【0259】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、最小培地である。
【0260】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、グリセロール、スクロース、グルコース、及びフルクトースを含有する群から選択される1つ以上のエネルギー炭素源が補充される。
【0261】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、グリセロール、スクロース、及びグルコースを含有する群から選択される1つ以上のエネルギー炭素源が補充される。
【0262】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、グリセロール、スクロース、及び/又はグルコースが補充される。
【0263】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、グリセロール及び/又はグルコースが補充される。
【0264】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、スクロース及び/又はグルコースが補充される。
【0265】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、グリセロール及び/又はスクロースが補充される。
【0266】
1つ以上の例示的な実施形態において、培養培地は、スクロースのみが補充される。
【0267】
1つ以上の例示的な実施形態において、培地は、唯一の炭素エネルギー源としてスクロースを含有する。
【0268】
[発酵温度]
実施例6は、どのように発酵温度を有利に使用して株MP21によって生成されるHMOブレンドの組成を調節することができるかについての開示と、特定の菌株、つまりMP21が、このブレンド中の最も豊富な2つのHMOのモル比が例えばLNFP-I:2’-FLについて1.5:1~2:1で変化しながら、3番目に豊富なHMO、つまりLNTは、同じ温度間隔で全HMO混合物のモル比で約5%~1%で変化することの開示と、を扱っている。
【0269】
1つ以上の例示的な実施形態において、上記の例示的な方法の工程(b)の遺伝的に操作された細胞の培養中発酵温度は、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、又は40℃に固定してもよい。
【0270】
本明細書に記載される発酵プロセスはまた、非常に予測可能な方法で、菌株操作から得られた特定の菌株とのHMOブレンドプロファイルを達成するために、発酵温度及び/又は発酵ブロス中のラクトースレベルの調節が含まれる。従って、例えば25~34℃、例えば25~32℃などの発酵温度の変動は、LNFP-I/2’-FL/LNTブレンドの組成を調節することができる。
【0271】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、上記の例示的な方法の工程(b)の遺伝的に操作された細胞の培養中発酵温度は、調節される。遺伝的に操作された細胞の培養中の温度調節は、20~40℃、例えば20~39℃、20~38℃、20~37℃、20~36℃、20~35℃、20~34℃、20~33℃、20~32℃、20~31℃、20~30℃、21~40℃、22~40℃、23~40℃、24~40℃、25~40℃、26~40℃、27~40℃、28~40℃、29~40℃、30~40℃、21~39℃、22~38℃、23~37℃、24~36℃、25~35℃、25~34℃、25~33℃、25~32℃、25~31℃、25~30℃、26~30℃、27~30℃、28~30℃、及び29~30℃であってもよい。
【0272】
実施例6に示されるように、グルコース供給開始後15分で、表8及び9に示すように、発酵温度設定値を33℃から調査中のそれぞれの設定値まで下げた。これらの温度低下は、3時間にわたる直線傾斜で実行された。発酵の終了は、HMOミックスとラクトースの標的組成に達したときに、およそ95~98時間であった。
図6は、異なる産生温度での発酵で株MP21によって産生される3つの主要なHMO、つまりLNFP-I、2’-FL、及びLNTの発生、並びにアクセプタラクトースの発生を示している。LNFP-I/HMOL比は、全ての場合で約60%に増加し、2’-FL及びLNTは温度に大きく依存する挙動を示し、HMOLはHMO及びラクトースの合計である。従って、発酵終了時、2’-FL/HMOL比は15%~35%の範囲であり、LNT/HMOL比は1%~4%の範囲である。更に、2’-FL/HMOLは、調査範囲(25~32℃)で温度に比例して増加する一方、LNT/HMOLは温度に反比例して動作する、つまり、産生温度が低いほど、LNT/HMOL比は高くなる。
【0273】
2’-FL及び2’-FL/DFL生成物のプロセス開発研究中に、本発明者らは、2’-FL産生株のDFL形成に対する発酵温度とラクトースレベル(及び炭素源の種類)の影響を観察した。
【0274】
この場合、低温及び低ラクトースレベルは、より低いDFL形成を支持するとともに、本明細書ではLNFP-I産生株のこれらのパラメータをより詳しく調べている。一方では、LNFP-I産生株の状況は、3つの異なるグリコシルトランスフェラーゼにより更に複雑になり、2’-FL株では1つのグリコシルトランスフェラーゼ及び糖ヌクレオチド経路のみと比較して、LNFP-Iの生合成に必要な糖ヌクレオチド経路を比較した。更に、おそらくLNFP-I株及び2’-FL株は、同じα-1,2-フソシルトランスフェラーゼ(alpha-1,2-fusosyltransferase)を共有しているため、観察された効果のいくつかが観察された。
【0275】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、2’-FL/HMOLの比率は温度に比例して増加する。
【0276】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、LNT/HMOLの比率は温度に比例して減少する。
【0277】
[ラクトースのレベル]
実施例7に示されるように、発酵中のラクトースのレベルは、LNFP-I産生株の1つの特定のファミリーの4-HMOブレンドの組成に非常に大きな影響を与えることを示した。従って、1つ以上の例示的な実施形態において、上記の例示的な方法の工程(b)の遺伝的に操作された細胞の培養中のラクトースのラクトースレベルは、調節される。
【0278】
低レベルのラクトースは、発酵中のラクトースが20g/L未満、好ましくは15g/L未満、例えば0.5~15g/L、好ましくは10g/L未満、例えば1~10g/Lである場合である。
【0279】
高レベルのラクトースは、発酵の最初の40時間で30~80g/Lであり、その後、所望の場合は、発酵の終了時にラクトースレベルを低下させるためにラクトースを枯渇させ、それによってラクトースを含まない生成物を提供するための下流の精製の必要性を減らす。
【0280】
図7に示すように、さもなければ、2つの発酵プロセスは、培地組成、グルコース供給プロファイル、並びに温度、pH及び溶存酸素などの発酵プロセスパラメーターに関して同一である。しかしながら、2番目と3番目に豊富なHMOの存在量の順序が、2’-FL>>LNTからLNT>>2’-FLへと著しく逆転させるには、ラクトースレベルを低(0.5~20g/L)から高(30~80g/L)まで変化させることによってのみ可能であった。
【0281】
高ラクトースレベルのHMO生成物プロファイルは、LNFP-I>2’-FL>LNT>LNT-IIである。
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の培養中のラクトースレベルは、低から高へ調節される。
【0282】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞の培養中のラクトースレベルは、低から高へ調節される。
【0283】
1つ以上の例示的な実施形態において、高レベルのラクトースレベルは、30~80g/L、例えば30~40g/L、30~50g/L、30~60g/L、30~70g/L、40~50g/L、40~60g/L、40~70g/L、40~80g/L、50~60g/L、50~70g/L、50~80g/L、60~70g/L、60~80g/L、35~50g/L、35~60g/L、35~70g/L、35~75g/L、35~80g/L、45~55g/L、45~75g/L、55~65g/L、55~75g/L、55~80g/L、65~75g/L、又は65~80g/Lに関連するがこれらに限定されない。
【0284】
従って、1つ以上の例示的な実施形態において、低レベルのラクトースレベルは、0~15g/L、例えば0~5g/L、0~7.5g/L、0~10g/L、0~12.5g/L、2.5~5g/L、2.5~7.5g/L、2.5~10g/L、2.5~12.5g/L、2.5~15g/L、5~7.5g/L、5~10g/L、5~12.5g/L、5~15g/L、7.5~10g/L、7.5~12.5g/L、7.5~15g/L、10~12.5g/L、10~15g/L、又は12.5~15g/Lに関連するがこれらに限定されない。
【0285】
温度及びラクトース濃度以外の他の発酵パラメータは、LNFP-I産生株のHMOブレンド組成にこれほど大きな影響を与えることは見出されなかった。
【0286】
上記の菌株操作戦略によって導かれた多くのLNFP-I産生株の場合、驚くべきことに、2つの主要な発酵パラメータは、予想可能且つ固有の方法で得られるHMOブレンドプロファイルの組成に大きな影響を与えることが判明し、ブレンドに含まれるHMOの各々について狭い範囲内で事前に決定された組成を有するプロファイルの提供が可能になった。
【0287】
従って、25~32℃の発酵温度の変動により、LNFP-I/2’-FL/LNTブレンドの組成を調節することができる。特定の株(実施例6を参照)、つまりMP21を使用した1つの研究では、このブレンドに含まれる2つの最も豊富なHMOのモル比が、LNFP-I:2’-FLについて1.5:1~2:1で変化しながら、3番目に豊富なHMO、つまりLNTは、同じ温度間隔で全HMO混合物のモル比で約5%~1%で変化するこが示される。
【0288】
[スクロース発酵]
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、PTS依存性スクロース利用輸送系並びに/又はスクロースをフルクトース及びグルコースに加水分解することができる異種ポリペプチドをコードする組換え核酸配列を含み得る。
【0289】
このような細胞は、炭素エネルギー源としてスクロースを利用することができる。例えば、本明細書に開示される方法の工程b)による培養工程は、2段階のスクロース供給を含み、第2の供給段階では、細胞増殖を遅らせ、高細胞密度培養で産生される生成物の含有量を増加させるために、第1の供給段階で連続的に添加される量よりも少ない量のスクロースを培養物に連続的に添加する。
【0290】
第2の供給段階中に細胞培養物に連続的に添加されるスクロースの供給速度は、第1の供給段階中に連続的に添加されるスクロースの供給速度よりも約30~40%低い場合がある。
【0291】
どちらの供給段階中でも、ラクトースは、好ましくは同じ供給溶液中のスクロースとともに連続的に、又は順次添加することができる。
【0292】
任意選択的には、第2段階の後に細胞外画分にかなりの量の未使用のアクセプタが残った場合は、培養は、第3の供給段階を更に含む。
【0293】
次いで、スクロースの添加は、アクセプタを添加せずに、好ましくは第2の供給段階に設定されたほぼ同じ供給速度で、アクセプタが消費されるまで継続する。
【0294】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、1つ以上の異種ポリペプチドをコードする1つ以上の異種核酸配列を含んでもよく、これは、前記遺伝的に操作された細胞の唯一の炭素エネルギー源としてのスクロースの利用を可能にする。
【0295】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、scrYAオペロン及びscrBRオペロンを更に含むPTS依存性スクロース利用システムを含む。
【0296】
1つ以上の例示的な実施形態において、scrYAオペロンによるコードされるポリペプチドは、配列番号34若しくは配列番号35[それぞれ、scrY及びscrA]に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、又は配列番号34若しくは配列番号35[それぞれ、scrY及びscrA]のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する配列番号34若しくは配列番号35[それぞれ、scrY及びscrA]のいずれか1つの機能的相同体である。
【0297】
1つ以上の例示的な実施形態において、scrBRオペロンによるコードされるポリペプチドは、配列番号36若しくは配列番号37[それぞれ、scrB及びscrR]に従うアミノ酸配列を有するポリペプチドであるか、又は配列番号36若しくは配列番号37[それぞれ、scrB及びscrR]のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する配列番号36若しくは配列番号37[それぞれ、scrB及びscrR]のいずれか1つの機能的相同体である。国際公開第2015/197082号パンフレット(参考として本明細書に組み込まれる)では、PTS依存性スクロース利用系が更に詳細に開示されている。
【0298】
1つ以上の例示的な実施形態において、スクロースをフルクトース及びグルコースへ加水分解することができるポリペプチドは、配列番号38若しくは配列番号39[それぞれ、SacC_Agal及びBff]からなる群から選択されるか、又は配列番号38若しくは配列番号39[それぞれ、SacC_Agal及びBff]のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有する配列番号38若しくは配列番号39[それぞれ、SacC_Agal及びBff]のいずれか1つの機能的相同体である。
【0299】
[収集]
文脈における用語「収集」は、発酵の終了に続いて産生されたHMOを回収することに関する。1つ以上の例示的な実施形態において、これは、バイオマス(即ち宿主細胞)及び培地の両方に含まれる、即ちバイオマスからの発酵ブロスの分離前に/分離をせずにHMOを回収することを含み得る。他の実施形態では、産生されたHMOは、バイオマス及び発酵ブロスから個別に、即ち培養培地(即ち発酵ブロス)からのバイオマスの分離後/分離に続いて回収され得る。
【0300】
培地からの細胞の分離は、当業者に周知の方法のいずれか、例えば、任意の好適な種類の遠心分離又は濾過により実行することができる。培地からの細胞の分離は、発酵ブロスの収集直後に続けるか、又は適切な条件で発酵ブロスを貯蔵した後の段階で実行することができる。残留しているバイオマス(又は全発酵)からの産生されたHMOの回収には、バイオマス(即ち、産生細胞)からの抽出が含まれる。
【0301】
発酵からの回収後、HMOは、更なる加工処理及び精製に利用可能である。
【0302】
[遺伝的に操作された細胞]
本明細書で記載される遺伝的に操作された細胞は、上記で記載される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びα-1,2-フコシルトランスフェラーゼであり、実施例で示されるとおりである。いくつかの実施形態において、異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びα-1,2-フコシルトランスフェラーゼのうちの1つ以上は、過剰発現する。
【0303】
本開示は、オリゴ糖を生成するための方法において使用するための遺伝的に操作された細胞について記載している。上記遺伝的に操作された細胞は、遺伝的に操作され、
i.配列番号1若しくは配列番号2若しくは配列番号3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
ii.配列番号4若しくは配列番号5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iii.配列番号6若しくは配列番号7若しくは配列番号49若しくは配列番号8のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、49、若しくは8のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iv.コラン酸遺伝子クラスターと、
v.i)、ii)、及びiii)のタンパク質の発現を制御するための天然又は異種調節要素又はiv)のコラン酸遺伝子クラスターと、を発現する。
【0304】
本発明の一態様は、
i.配列番号1若しくは2若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
ii.配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iii.配列番号6若しくは配列番号7若しくは配列番号49のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iv.コラン酸遺伝子クラスターと、
v.i)~iv)のいずれか1つの発現を制御するための天然又は異種調節要素と、
をコードする組換え核酸配列を含む、遺伝的に操作された細胞に関する。
【0305】
好ましくは、遺伝的に操作された細胞は、2’FL及び/又はLNFP-Iを細胞外に輸送することができる糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列を更に含む。
【0306】
糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列は:
a.配列番号28をコードする核酸配列、又は配列番号28と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
b.配列番号29をコードする核酸配列、又は配列番号29と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
c.配列番号30をコードする核酸配列、又は配列番号30と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
d.配列番号31をコードする核酸配列、又は配列番号31と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、
e.配列番号32をコードする核酸配列、又は配列番号32と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
f.配列番号33をコードする核酸配列、又は配列番号33と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体からなる群から選択することができる。
【0307】
好ましくは、遺伝的に操作された細胞は、コピー数を増加させることによって、及び/又は適切な調節要素を選択することによってコラン酸遺伝子クラスターを過剰発現する。
【0308】
「遺伝的に改変された」又は「遺伝的に操作された」細胞は、本明細書で互換的に使用され、遺伝子材料が遺伝子工学技術を使用して人間の介入によって改変されている細胞として理解され、そのような技術は、例えば、以下に限定されないが、例えば、異種ポリヌクレオチド配列、Crisper/Cas編集及び/又はランダム変異誘発による形質転換又は形質移入である。本発明の文脈において、用語「遺伝子改変細胞」及び「宿主細胞」は、互換的に使用される。
【0309】
本発明において、「遺伝子改変細胞」は、好ましくは、外来ポリヌクレオチド配列によって形質転換又は形質移入されている宿主細胞である。
【0310】
1つ以上の例示的な実施形態において、細胞は、2’-FL、LNT-II、LNT、LNFP-I、及びDFLからなる群から選択される1つ以上のHMOを産生することができる。
【0311】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、2’-FL、LNT-II、LNT、及びLNFP-Iからなる群から選択される1つ以上のHMOを産生することができる。
【0312】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞により産生される主要なHMOは、LNFP-I及び/又は2’-FLである。いくつかの実施形態において、HMO生成総量のうちのLNFP-I及び/又は2’-FL画分は、少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも98%である。
【0313】
1つ以上の例示的な実施形態において、HMOブレンドは、細胞によって産生される全HMOの25~70%の2’-FLのモル%及び30%~60%のLNFP-Iのモル%を含む。
【0314】
遺伝的に操作された細胞は、哺乳動物細胞株を含む、HMO産生に有用な任意の細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞は、真核生物又は原核生物起源の単細胞微生物である。
【0315】
宿主細胞として機能し得る適切な微生物細胞としては、酵母細胞、細菌細胞、古細菌細胞、藻類細胞、及び真菌細胞が挙げられる。
【0316】
遺伝的に操作された細胞(宿主細胞)は、例えば、細菌細胞又は酵母細胞であり得る。好ましい一実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、好ましくは、細菌細胞などの原核細胞である。
【0317】
[宿主細胞]
細菌宿主細胞に関して、原則として、限定されないが、それらは、目的の遺伝子又は調節要素を挿入するための遺伝的操作を可能にする限り、真正細菌(グラム陽性又はグラム陰性)又は古細菌であってもよく、製造規模で培養することができる。好ましくは、宿主細胞は、高細胞密度への培養を可能にする特性を有する。
【0318】
本発明によるHMOの工業的組換え産生のために好適である細菌宿主細胞の非限定的例は、エルウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)(パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans))、シトロバクター・フロインジイ(Citrobacter freundii)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)、ペクトバクテリウム・カロトボルム(Pectobacterium carotovorum)又はキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)であり得る。枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーモフィルス(Bacillus thermophilus)、バチルス・ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、及びバチルス・サーキュサンス(Bacillus circulans)を含むバチルス属(genus Bacillus)の細菌も使用され得る。同様に、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヘルベチクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・クリスパツス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)及びラクトバチルス・ラクティス(Lactococcus lactis)含むが、これらに限定されないラクトバチルス属(Lactobacillus)及びラクトコッカス属(Lactococcus)の細菌は、本発明の方法を使用して操作され得る。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophiles)及びプロピオニバクテリウム・フロイデンライシイ(Proprionibacterium freudenreichii)も、本明細書に記載した本発明のための好適な細菌種である。本発明の一部として挙げられるのは、エンテロコッカス(Enterococcus)属(例えば、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)及びエンテロコッカス・サーモフィルス(Enterococcus thermophiles))、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属(例えば、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)及びビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum))、スポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)属種、ミクロモモスポラ(Micromomospora)属種、ミクロコッカス(Micrococcus)属種、ロドコッカス(Rhodococcus)属種及びシュードモナス(Pseudomonas)属(例えば、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))由来の、本明細書中に記載されるように操作された菌株でもある。
【0319】
本発明によるHMOの産業的組換え生成に好適な真菌宿主細胞の非限定的な例として、例えば、酵母細胞、例えばコマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及び出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)又は糸状菌、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属種、フザリウム(Fusarium)属種若しくはトリコデルマ(Tricoderma)属種があり、例示的な種として、クロコウジカビ(A.niger)、A.ニデュランス(A.nidulans)、ニホンコウジカビ(A.oryzae)、F.ソラニイ(F.solani)、赤かび病(F.graminearum)及びT.リーゼイ(T.reesei)であり得る。
【0320】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、出芽酵母(S.cerevisiae)又はP.パストリス(P.pastoris)である。
【0321】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
【0322】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、出芽酵母(S.cerevisiae)である。
【0323】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、大腸菌(E.coli)、C.グルタミクム(C.glutamicum)、L.ラクティス(L.lactis)、枯草菌(B.subtilis)、S.リビダンス(S.lividans)、P.パストリス(P.pastoris)、及び出芽酵母(S.cerevisiae)からなる群から選択される。
【0324】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、枯草菌(B.subtilis)、出芽酵母(S.cerevisiae)、及び大腸菌(Escherichia coli)からなる群から選択される。
【0325】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、枯草菌(B.subtilis)である。
【0326】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞は、大腸菌(Escherichia coli)である。
【0327】
1つ以上の例示的な実施形態において、本発明は、遺伝的に操作された細胞に関し、その細胞は、大腸菌(E.coli)K-12又はDE3株に由来する。
【0328】
[核酸構築体]
本開示は、
i.配列番号1若しくは配列番号2若しくは配列番号3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
ii.配列番号4若しくは配列番号5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
iii.配列番号6若しくは配列番号7若しくは配列番号8のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、若しくは8のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
iv.コラン酸遺伝子クラスター、
からなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードする組換え核酸配列を含む核酸構築体であって、
上記核酸構築体が、核酸構築体中に存在する遺伝子の発現を制御するための少なくとも1つの天然若しくは異種調節要素、即ちi)~iv)の1つ以上を更に含む、核酸構築体の提供について記載する。
【0329】
本開示の態様において、核酸構築体は、
i.配列番号1若しくは配列番号2若しくは配列番号3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と;
ii.配列番号4若しくは配列番号5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と;
iii.配列番号6、7、若しくは49で示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6、7、若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と;
iv.コラン酸遺伝子クラスターと、
v.i)~iv)のいずれか1つの発現を制御するための天然又は異種調節要素と、
をコードする組換え核酸配列を含む。
【0330】
核酸構築体は、その天然のゲノム遺伝子座からのコラン酸遺伝子クラスターの機能的発現を促進する少なくとも1つの調節要素を含み得る。具体的には、コラン酸遺伝子クラスターは、コピー数を増加させることによって、及び/又は適切な調節要素を選択することによって過剰発現し得る。
【0331】
一実施形態では、調節要素は、lacオペロン又はglpオペロンのプロモータ配列に由来する組換えプロモータ配列であり、i)~iv)のコーディング配列のうちの1つ以上とプロモータ配列とが作動可能に連結している。
【0332】
本発明の一実施形態は、
i.配列番号1で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体
ii.配列番号4で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
iii.配列番号8のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号8のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体
iv.コラン酸遺伝子クラスター
からなる群から選択される1つ以上のタンパク質をコードする組換え核酸配列を含む核酸構築体であって、
核酸構築体が、核酸構築体中に存在するi)~iv)の1つ以上をコードする遺伝子の発現を制御するための天然又は異種調節又はエピソーム要素を更に含む、核酸構築体である。
【0333】
核酸構築体は、組換え核酸配列であり得る。用語「組換え核酸配列」、「組換え遺伝子/核酸/DNAコーディング」、又は「コーディング核酸配列」は、互換的に使用され、適切な制御配列、即ち、プロモータ配列の制御下にある場合、mRNA内に転写されてタンパク質に翻訳される一連の連続的非重複トリプレット(コドン)を含む、人工的(即ち、核酸配列を作製するために標準的な実験室方法を使用してインビトロで生成される)核酸配列を意味する。
【0334】
コーディング配列の境界は、一般に、mRNAの5’末端、翻訳開始コドン(AUG、GUG又はUUG)及び翻訳終止コドン(UAA、UGA又はUAG)でのオープンリーディングフレームのすぐ上流に配置されるリボソーム結合部位によって決定される。コーディング配列として、ゲノムDNA、cDNA、合成及び組換え核酸配列が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0335】
用語「核酸」には、RNA、DNA及びcDNA分子が含まれる。遺伝コードの縮重の結果として、所与のタンパク質をコードする多数の核酸配列が生成され得ることが理解される。
【0336】
[組換え核酸配列]
組換え核酸配列は、コーディングDNA配列、例えば、遺伝子、又は非コーディングDNA配列、例えば、プロモータ配列などの調節DNAであり得る。
【0337】
したがって、1つの例示された実施形態において、本発明は、核酸構築体であって、コーディング核酸配列、即ち、目的の遺伝子の組換えDNA配列、例えばフコシルトランスフェラーゼ遺伝子、及び非コーディング調節DNA配列、例えばプロモータDNA配列、例えばlacオペロン若しくはglpオペロンのプロモータに由来する組換えプロモータ配列、又は別のゲノムプロモータDNA配列に由来するプロモータ配列、或いは合成プロモータ配列を含む核酸構築体に関し、ここで、コーディング配列及びプロモータ配列は、作動可能に連結している。
【0338】
用語「作動可能に連結した」は、2つ以上の核酸(例えば、DNA)断片間の機能的関係を指す。「作動可能に連結した」は、転写調節配列の転写配列との機能的関係を指す。例えば、プロモータ配列は、これが適切な宿主細胞又は他の発現系におけるコーディング配列の転写を刺激又は調節する場合、コーディング配列と作動可能に連結している。
【0339】
一般に、転写配列に作動可能に連結しているプロモータ配列は、転写配列に物理的に隣接しており、即ち、それらは、シス作用性である。
【0340】
1つの例示された実施形態において、本発明の核酸構築体は、ベクターDNAの一部であり得、別の実施形態において、構築体は、宿主細胞のゲノム内に組み込まれている発現カセット/カートリッジである。
【0341】
したがって、用語「核酸構築体」は、ゲノムの遺伝子の発現を修飾するか、又は構築体中に含まれ得る遺伝子/コーディングDNA配列を発現させるために標的細胞、例えば細菌細胞中に「移植」されることが意図される、核酸の人工的に構築された断片、特にDNA断片を意味する。
【0342】
構築体(発現カセット)内に含まれる対象の核酸構築体の細菌ゲノム中への組込みは、従来の方法により、例えばattTn7部位について記載されている、染色体上の特異的部位に相同であるフランキング配列を含有する直線状カートリッジを用いることにより(Waddell C.S.and Craig N.L.,Genes Dev.(1988)Feb;2(2):137-49.);組換えがファージλのRedリコンビナーゼ機能又はRacプロファージのRecE/RecTリコンビナーゼ機能によって媒介される核酸配列のゲノム組込み方法により(Murphy,J Bacteriol.(1998);180(8):2063-7;Zhang et al.,Nature Genetics(1998)20:123-128 Muyrers et al.,EMBO Rep.(2000)1(3):239-243);Red/ET組換えに基づく方法により(Wenzel et al.,Chem Biol.(2005),12(3):349-56.;Vetcher et al.,Appl Environ Microbiol.(2005);71(4):1829-35);又は陽性クローン、即ち例えばマーカー遺伝子若しくは遺伝子機能の損失若しくは獲得によって選択され得る発現カセットを有するクローンにより達成され得る。
【0343】
[遺伝的に操作された細胞の使用]
本開示は、本明細書に記載される遺伝的に操作された細胞又は核酸構築体のあらゆる商用利用にも関する。
【0344】
したがって、1つ以上の例示的な実施形態において、本発明に従う遺伝的に操作された細胞又は核酸構築体は、1つ以上のHMOの製造で使用される。1つ以上のHMOは、2’-FL、LNT-II、LNT、LNFP-I、及びDFLからなる群から選択することができる。好ましい本実施形態において、1つ以上のHMOは、2’-FL、LNT-II、LNT、及びLNFP-Iからなる群から選択される。
【0345】
1つ以上の例示的な実施形態において、遺伝的に操作された細胞及び/又は核酸構築体は、2つ以上のHMOの製造で使用され、1つ以上のHMOは、2’-FL、LNT、及びLNFP-Iからなる群から選択される。
【0346】
別の例示された実施形態において、本開示に従う遺伝的に操作された細胞及び/又は核酸構築体は、2つ以上HMOの製造で使用され、HMOは、2’-FL及びLNFP-Iである。
【0347】
別の例示された実施形態において、本発明に従う遺伝的に操作された細胞及び/又は核酸構築体は、2つ以上HMOの製造で使用され、主要なHMOブレンドは、生成される全HMOの2’-FLのモル%が25~70%、LNFP-Iのモル%が30%~60%である。
【0348】
[HMOの製造]
1つ以上のHMOを産生させるために、本明細書に記載の遺伝的に操作された細胞は、当該技術分野において公知の手法に従って、好適な炭素源、例えばグルコース、グリセロール、ラクトースなどの存在下で培養され、産生されたHMOは、培養培地及び培養プロセス中に形成される微生物バイオマスから収集される。その後、HMOは、当該技術分野において公知の手法、例えば国際公開第2015/188834号パンフレット、国際公開第2017/182965号パンフレット又は国際公開第2017/152918号パンフレットに記載されるものなどの手法に従って精製され、精製されたHMOは、栄養補助食品、医薬品として又は例えば研究用などの任意の他の目的に使用される。
【0349】
HMOの製造は通常、大量で培養を実施することによって行われる。本発明の意味における用語「製造する工程」及び「製造規模」は、最小体積が5Lの培養ブロスを用いた発酵を規定する。通常、「製造規模」プロセスは、目的の生成物を含有する大量の調製物を処理することができ、例えば、治療用化合物又は組成物の場合、臨床試験及び市場供給の需要を満たす量の目的のタンパク質を産生することができることによって規定される。大量であることに加えて、製造規模の方法は、振盪フラスコによる培養のような単純な実験室規模の方法とは対照的に、撹拌、通気、栄養素供給、プロセスパラメーター(pH、温度、溶存酸素圧、背圧など)のモニタリング及び制御のための機器を装備しているバイオリアクター(発酵槽)の技術システムの使用を特徴とする。大体において、本開示の実施例に記載される振盪フラスコ、卓上バイオリアクター又はディープウエルフォーマット等のラボスケールの方法における発現系の挙動は、バイオリアクターの複雑な環境におけるそのシステムの挙動を予測することを可能にする。
【0350】
発酵プロセスに使用される好適な細胞培地に関して、制限はない。培地は、半規定、即ち複雑な培地化合物(例えば、酵母抽出物、大豆ペプトン、カザミノ酸等)であり得るか、又はそれは、いかなる複雑な化合物も含めずに化学的に規定され得る。スクロースが炭素エネルギー源として使用される場合、最小培地の方が好ましい場合がある。
【0351】
[製造された生成物]
遺伝的に操作された細胞又は核酸構築体の使用に従う用語「製造された生成物」は、1つ以上の生成物HMOとして意図される1つ以上のHMOを指す。種々の生成物は、先に記載されている。
【0352】
有利には、本明細書中に開示される方法は、副生成物対生成物の比率の低下及び生成物の全収量(及び/又は総計でのHMO)の増大の両方を実現する。この生成物形成と比較して少ない副生成物形成は、生成物産生の増加を促進し、産生及び生成物回収プロセスの両方の効率を上昇させ、HMOの優れた製造手法を提供する。
【0353】
製造される生成物は、1つ以上のHMOを含む粉末、組成、懸濁液又はゲルであり得る。
【0354】
[表]
【0355】
【0356】
【0357】
【0358】
【0359】
【0360】
【0361】
【0362】
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
【0367】
[全般]
本開示による化合物と関連させて上で論じられたいずれかの特徴及び/又は態様は、本明細書に記載される方法に類似して適用されることが理解されるべきである。
【0368】
ラクト-N-トリオース、LNT-II、LNT II、LNT2、及びLNT 2という用語は、互換的に使用される。
【0369】
以下の図面及び例は、本開示を説明するために以下に提供される。それらは、例示を意図したものであり、決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0370】
【
図1】様々なα-1,2-フコシルトランスフェラーゼを発現する株により生成されたブレンド:(a)ブレンドのHMO含有量(%mM)、(b)全HMO形成(mM)。
【
図2】(a)smob発現細胞及び(b)futC発現細胞におけるコラン酸遺伝子クラスターの発現レベルを変化させたブレンドのHMO含有量(%mM)の変化、並びに対応するブレンドにおける全HMO形成(mM)(c)。
【
図3】LNT合成に必要なグリコシルトランスフェラーゼのコピー数の、株(a)MP10及び(b)MP11により生成される最終ブレンドのHMO含有量(%mM)への影響
【
図4】様々な異種MFSトランスポータを発現する株によって生成された最終ブレンドの全HMO、LNFP-I、及び2’-FL含有量(%mM)の、そのようなトランスポータを有さない株と比較した相対変化。
【
図5】glpR+/-表現型の、株(a)MP19及び(b)MP20により生成される最終ブレンドのHMO含有量(%mM)への影響。
【
図6】a~d 25℃~32℃の6つの異なる温度における、発酵実施全体にわたる全ブロス試料中のHMOブレンド組成の時間プロファイル。HMOL=LNFP-I、2’-FL、LNT、LNT-II、DFL、及びラクトースを含むHMOの合計。DFL及びLNT-IIは、LNTを下回り、典型的には、<1g/Lであるが示されていない。
【
図7】2つの株MP19及びMP22を用いて、高ラクトース(プロセスL2F20)又は低ラクトース(プロセスL2F21)のいずれかの条件の4回の試験を通した、発酵ブロス中のラクトース一水和物濃度の時間プロファイル。
【
図8】2つの株MP19及びMP22を用いて、高ラクトース(プロセスL2F20)又は低ラクトース(プロセスL2F21)のいずれかの条件の4回の試験を通した、発酵ブロス中のLNFP-I/HMO比の時間プロファイル。HMO=LNFP-I、2’-FL、LNT、LNT-II、及びDFLを含むHMOの合計。DFLは<0.3g/Lである。
【
図9】a~c 2つの株MP19及びMP22を用いて、高ラクトース(プロセスL2F20)又は低ラクトース(プロセスL2F21)のいずれかの条件の4回の試験を通した、発酵ブロス中の比率2’-FL/HMO、LNT/HMO、及びLNT-II/HMOの時間プロファイル。HMO=LNFP-I、2’-FL、LNT、LNT-II、及びDFLを含むHMOの合計。DFLは<0.3g/Lである。
【
図10】MFSトランスポータを発現しないsmob発現細胞(MP8株)及びnec(MP23及びMP25株)又はyberC(MP24株)遺伝子のゲノムコピーを有するsmob発現細胞の培養上清で検出されたLNFP-I画分(全LNFP-Iの%)。
【
図11】MFSトランスポータを発現しないsmob発現細胞(MP8株)及びnec(MP23及びMP25株)又はyberC(MP24株)遺伝子のゲノムコピーを発現する細胞についての最終HMOブレンドにおけるLNFP-I対2’-FLの比率。
【
図12】ラクトースから、それぞれ、LNFP-I及び2’-FLを産生するための経路。2’FLは、ラクトースにフコースを付加する酵素α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ(α-1,2-ft)の存在下でラクトースから単一工程で産生される。LNFP-Iの産生は、3工程プロセスであり、そこではβ-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ(β-1,3-GlcNacT)がN-アセチルグルコサミンをラクトースに付加してLNT-IIを形成し、そこにβ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(β-1,3-GalT)はガラクトースを付加してLNTを形成し、その上にα-1,2-フコシルトランスフェラーゼ(α-1,2-ft)はフコースを付加してLNFP-Iを形成する。実施例1で示すように、様々なα-1,2-フコシルトランスフェラーゼは、異なる基質特異性を有していてもよく、つまり、FutCはラクトースに対してより高い特異性を有していても良く、そこでsmobは基質としてのLNTに対してより高い特異性を有するようである。
【0371】
[配列番号]
本出願は、テキスト形式及び電子形式の配列表を含み、優先権出願DK PA 2021 70247の修正配列リストに列挙されている配列と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。以下に配列をまとめる。
【0372】
配列番号1[lgtAタンパク質-β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ]
配列番号2[PmnagTタンパク質-β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ]
配列番号3[HD0466-β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼ]
配列番号4[galTK-β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ]
配列番号5[cvb3galT-β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ]
配列番号6[futC-α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ]
配列番号7[mtun- α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ]
配列番号8[smob- α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ]
配列番号9[pmglB_70UTR]
配列番号10[pmglB_70UTR_SD4]
配列番号11[Pscr]
配列番号12[PgatY_70UTR]
配列番号13[PglpF]
配列番号14[PglpF_SD1]
配列番号15[PglpF_SD10]
配列番号16[PglpF_SD2]
配列番号17[PglpF_SD3]
配列番号18[PglpF_SD4]
配列番号19[PglpF_SD5]
配列番号20[PglpF_SD6]
配列番号21[PglpF_SD7]
配列番号22[PglpF_SD8]
配列番号23[PglpF_SD9]
配列番号24[PglpF_B28]
配列番号25[PglpF_B29]
配列番号26[Plac_16UTR]
配列番号27[Plac]
配列番号28[Bad]
配列番号29[Nec]
配列番号30[YberC]
配列番号31[Fred]
配列番号32[Vag]
配列番号33[Marc]
配列番号34[ScrY]
配列番号35[ScrA]
配列番号36[ScrB CAA47974.1]
配列番号37[ScrR]
配列番号38[SacC_AgaI]
配列番号39[Bff]
配列番号40[lgta遺伝子]
配列番号41[PmnagT遺伝子]
配列番号42[HD0466遺伝子]
配列番号43[galtk遺伝子]
配列番号44[cvb3galT]
配列番号45[α-1,2-フコシルトランスフェラーゼをコードするfutC遺伝子]
配列番号46[α-1,2-フコシルトランスフェラーゼをコードするmtun遺伝子]
配列番号47[α-1,2-フコシルトランスフェラーゼをコードするsmob遺伝子]
配列番号48[DNA結合転写リプレッサGlpR]
配列番号49[fucT54 α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ]
配列番号50オリゴO48、galK.for
配列番号51オリゴO49、galK.rev
配列番号52 CA遺伝子クラスター
【0373】
[項目]
1.主要なHMOとしてLNFP-I及び2’-FLを有するヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを生成するための方法であって、
a)HMOを産生することができる遺伝的に操作された細胞を準備する工程であって、上記細胞が、
i)配列番号1若しくは2若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1若しくは2若しくは3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
ii)配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4若しくは5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iii)配列番号6若しくは7若しくは49若しくは8のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6若しくは7若しくは49若しくは8のいずれか1つと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するその機能的相同体を含み;且つ
iv)コラン酸遺伝子クラスターを機能的に発現し、且つ
v)i)~iv)のいずれか1つの発現を制御するための天然又は異種調節要素を含む工程と、
b)好適な細胞培養培地で(a)に従って細胞を培養し、上記タンパク質を発現し、HMOブレンドを生成する工程と、
c)工程(b)で生成されたヒトミルクオリゴ糖(HMO)ブレンドを収集する工程と、を含む方法。
【0374】
2.i)、ii)、及びiii)のタンパク質の過剰発現が、上記タンパク質をコードする遺伝子のコピー数を増加させることによって、及び/又はiv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターに適切な調節要素を選択することによって提供される、項目1に記載の方法。
【0375】
3.iv)のコラン酸遺伝子クラスターの発現が、天然プロモータを目的のプロモータと交換すること、及び/又は別のゲノム遺伝子座から遺伝子クラスターを発現することにより上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させること、又はコラン酸遺伝子クラスターをエピソーム的に発現することにより調節される、項目1又は2に記載の方法。
【0376】
4.異種調節要素が、配列番号13(PglpF)、配列番号12(PgatY_70UTR)、配列番号27(Plac)、配列番号9(PmglB_70UTR)、配列番号11(Pscr)、又はこれらのバリアントからなるプロモータの群から選択される、項目1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0377】
5.異種調節要素が、PBAD、Pxyl、PsacB、PxylA、PrpR、PnitA、PT7、Ptac、PL、PR、PnisA、Pb、Pscr、PgatY_70UTR、PglpF、PglpF_SD1、PglpF_SD10、PglpF_SD2、PglpF_SD3、PglpF_SD4、PglpF_SD5、PglpF_SD6、PglpF_SD7、PglpF_SD8、PglpF_SD9、PglpF_B28、Plac_16UTR、Plac、PmglB_70UTR、及びPmglB_70UTR_SD4からなる群から選択される、項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0378】
6.異種調節要素が、PglpF、Pscr、Plac、PglpF_B29、及びPglpF_B28からなる群から選択される、項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0379】
7.i)及びii)の発現が、単一コピーから得られる、並びに/又はi)及びii)の発現のための調節要素が、低い又は中間の強度を有する、項目1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0380】
8.調節要素が、PglpF_SD9(配列番号23)、PglpF_SD7(配列番号21)、PglpF_SD6(配列番号20)、PglpF_B28(配列番号24)、PglpF_B29(配列番号25)、Pscr(配列番号11)、及びPlac(配列番号27)からなる群から選択される、項目7に記載の方法。
【0381】
9.調節要素が、強い調節要素である、項目1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0382】
10.調節要素が、PglpF(配列番号13)、PglpF_SD10(配列番号15)、PglpF_SD8(配列番号22)、PglpF_SD5(配列番号19)、PglpF_SD4(配列番号18)、PgatY_70UTR(配列番号12)、PmglB_70UTR(配列番号9)、及びPmglB_70UTR_SD4(配列番号9)からなる群から選択される、項目9に記載の方法。
【0383】
11.異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号1又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0384】
12.異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号4又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0385】
13.iv)のコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターの発現が、天然プロモータを目的のプロモータと交換すること、及び/又は別の遺伝子座からの遺伝子クラスターを発現すること若しくはコラン酸(colonic acid)遺伝子クラスターをエピソーム的に発現することにより上記タンパク質をコードするコラン酸遺伝子のコピー数を増加させることによって調節され、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号6若しくは8又は配列番号6若しくは8のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0386】
14.i)及びii)のタンパク質の過剰発現が、上記タンパク質をコードする遺伝子のコピー数の同時増加によって提供され、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号6又は配列番号6のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0387】
15.HMOブレンドが、モル%で25%~70%の2’-FL、及び30%~60%のLNFP-Iを有する、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0388】
16.生成されたHMOブレンド中の2’-FLのモル%が、30%~70%、例えば40%~55%、例えば50%~70%である、項目13又は14に記載の方法。
【0389】
17.LNFP-Iのモル%が、30%~60%、例えば40%~55%、例えば30%~45%である、項目13又は14に記載の方法。
【0390】
18.異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号7若しくは49又は配列番号7若しくは49のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0391】
19.生成されたHMOブレンド中の2’-FLのモル%が、40%~60%、例えば45%~55%である、項目18に記載の方法。
【0392】
20.LNFP-Iのモル%が、40%~60%、例えば40%~55%である、項目18に記載の方法。
【0393】
21.v)又はv)の上流の領域に結合し、i)~iv)のいずれか1つの発現を抑制する遺伝子産物が、細胞において欠失しているか又は機能せず、異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号6である、項目1~20のいずれか1つの記載の方法。
【0394】
22.上記遺伝子産物が、DNA結合転写リプレッサGlpRである、項目21に記載の方法。
【0395】
23.細胞が、糖排出トランスポータとして機能する遺伝子産物を更に含む、項目1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0396】
24.糖排出トランスポータが、Bad、Nec、YberC、Fred、Vag、及びMarcからなる群から選択される、項目23に記載の方法。
【0397】
25.糖排出トランスポータが、
i)配列番号28又は配列番号28と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体
ii)配列番号29又は配列番号29と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体
iii)配列番号30又は配列番号30と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体
iv)配列番号31又は配列番号31と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体
v)配列番号32又は配列番号32と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体、及び
vi)配列番号33又は配列番号33と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体
から選択されるアミノ酸配列からなる群から選択される、項目24に記載の方法。
【0398】
26.糖排出トランスポータが、好ましくは、Nec又はYberCである、項目24又は25に記載の方法。
【0399】
27.異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号6[futC]若しくは配列番号7[mtun]若しくは配列番号49[FucT54]又は配列番号6、7、若しくは48のいずれか1つと少なくとも80%のアミノ酸配列を有する機能的相同体である、項目26に記載の方法。
【0400】
28.生成されたHMOブレンド中の2’-FLのモル%が、30%~70%、例えば40%~55%、例えば50%~60%である、項目27に記載の方法。
【0401】
29.工程(b)で遺伝的に操作された細胞の培養中発酵温度が、調節されている、項目1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0402】
30.2’-FL/HMOL比が、発酵温度の上昇に比例して増加し、発酵温度が、25~34℃、好ましくは30~32℃である、項目29に記載の方法。
【0403】
31.工程(b)で遺伝的に操作された細胞の培養中発酵温度が、25~34℃であり、2’-FLのモル%が、生成されたHMOブレンドの15%~40%である、項目29に記載の方法。
【0404】
32.異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号6[futC]である、項目30に記載の方法。
【0405】
33.LNT/HMOL比が、発酵温度の上昇に比例して減少する、項目29又は30に記載の方法。
【0406】
34.工程(b)で遺伝的に操作された細胞の培養中ラクトースレベルが、調節されている、項目1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0407】
35.低ラクトースレベル、例えば20g/L未満、好ましくは15g/L未満、例えば0.5~15g/L、好ましくは10g/L未満、例えば1~10g/LのHMO生成物プロファイルが、LNFP-I>2’-FL>LNT>LNT-IIである、項目34に記載の方法。
【0408】
36.高ラクトースレベル、例えば発酵の最初の40時間で30~80g/LのHMO生成物プロファイルが、LNFP-I>LNT>LNT-II>2’-FLである、項目34に記載の方法。
【0409】
37.上記遺伝的に操作された細胞が、1つ以上の異種ポリペプチドをコードする1つ以上の異種核酸配列を含み、これが、上記遺伝的に操作された細胞の唯一の炭素エネルギー源としてのスクロースの利用を可能にする、項目1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0410】
38.スクロース利用系が、配列番号38[SacC_Agal、グリコシドヒドロラーゼファミリー32タンパク質、WP_103853210.19Q ID NO:及び39[Bff、β-フルクトフラノシダーゼタンパク質、BAD18121.1]、又は配列番号38若しくは39のいずれか1つと少なくとも80%のアミノ酸配列を有する配列番号11及び12のいずれか1つの機能的相同体からなる群から選択される、スクロースをフルクトース及びグルコースへ加水分解することができるポリペプチドである、項目37に記載の方法。
【0411】
39.遺伝的に操作された細胞であって、
i)配列番号1若しくは2若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1~3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
ii)配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4~5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iii)配列番号6若しくは7若しくは8のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6~8のいずれか1つと少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するその機能的相同体と、
iv)コラン酸遺伝子クラスターと、
v)i)~iv)のいずれか1つの発現を制御するための天然又は異種調節要素と、
をコードする組換え核酸配列を含む、遺伝的に操作された細胞。
【0412】
40.2’FL及び/又はLNFP-Iを細胞外に輸送することができる糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列を更に含む、項目39に記載の遺伝的に操作された細胞。
【0413】
41.糖排出トランスポータをコードする組換え核酸配列が
i)配列番号28をコードする核酸配列又は配列番号28と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体、
ii)配列番号29をコードする核酸配列又は配列番号29と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体、
iii)配列番号30をコードする核酸配列又は配列番号30と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体、
iv)配列番号31をコードする核酸配列又は配列番号31と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体、
v)配列番号32をコードする核酸配列又は配列番号32と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体、及び
vi)配列番号33をコードする核酸配列又は配列番号33と少なくとも70%同一、例えば少なくとも80%同一、例えば少なくとも85%同一、例えば少なくとも90%同一、例えば少なくとも95%同一、若しくは例えば少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有する機能的相同体
からなる群から選択される、項目40に記載の遺伝的に操作された細胞。
【0414】
42.コラン酸遺伝子クラスターが、コピー数を増加させることによって、及び/又は適切な調節要素を選択することによって過剰発現される、項目39~41のいずれか1つに記載の遺伝的に操作された細胞。
【0415】
43.異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号1又は配列番号1と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目39又は40に記載の遺伝的に操作された細胞。
【0416】
44.異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号4又は配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目39~43のいずれか1つに記載の遺伝的に操作された細胞。
【0417】
45.異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号6又は配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目39~44のいずれか1つに記載の遺伝的に操作された細胞。
【0418】
46.異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質が、配列番号7若しくは49、又は配列番号7若しくは49と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体である、項目39~44のいずれか1つに記載の遺伝的に操作された細胞。
【0419】
47.
i)配列番号1若しくは2若しくは3で示される異種β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号1~3と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
ii)配列番号4若しくは5で示される異種β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号4~5と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
iii)配列番号6若しくは7若しくは8のいずれか1つで示される異種α-1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、又は配列番号6~8のいずれか1つと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するその機能的相同体、及び
iv)コラン酸遺伝子クラスター
からなる群から選択される、タンパク質の1つ以上をコードする組換え核酸配列を含む核酸構築体であって、
上記核酸構築体が、核酸構築体中に存在する遺伝子の発現を制御するための少なくとも1つの天然若しくは異種調節要素又はエピソーム要素、即ちi)~iv)の1つ以上を更に含む、核酸構築体。
【0420】
48.調節要素が、lacオペロン又はglpオペロンのプロモータ配列に由来する組換えプロモータ配列であり、i)~iv)のコーディング配列のうちの1つ以上とプロモータ配列とが作動可能に連結している、項目47に記載の核酸構築体。
【0421】
49.HMOブレンドの生成における、項目40若しくは41に記載の遺伝的に操作された細胞、又は項目47若しくは48に記載の核酸構築体の使用。
【0422】
50.HMOブレンドが、2’-FL、LNT-II、LNT、LNFP-I、及びDFLからなる群から選択されるHMOを含む、項目49に記載の使用。
【0423】
51.HMOブレンドが、2’-FL及びLNFP-Iを含有する、項目49又は50に記載の使用。
【0424】
52.HMOブレンドが、全HMOのモル%の30~60%のLNFP-I、及び30~70%の2’-FLを有する、項目49~51のいずれか1つに記載の使用。
【0425】
[実施例]
[材料及び方法]
[株の構築]
以下の実施例で使用される株のバックグラウンド株として、細菌株MDOを使用した。MDOは、大腸菌(Escherichia coli)K-12 DH1からの構築体である。大腸菌(E.coli)K-12 DH1の遺伝子型は、F-、λ-、gyrA96、recA1、relA1、endA1、thi-1、hsdR17、supE44である。大腸菌(E.coli)K-12 DH1に加えて、遺伝子型MDOは、以下の改変:lacZ:1.5kbpの欠失、lacA:0.5kbpの欠失、nanKETA:3.3kbpの欠失、melA:0.9kbpの欠失、wcaJ:0.5kbpの欠失、mdoH:0.5kbpの欠失、及びgmd遺伝子の上流へのPlacプロモータの挿入を有する。
【0426】
対象の遺伝子を大腸菌(E.coli)のゲノム中に挿入する方法は、当業者に周知である。本出願で使用される株の遺伝子型を、表1、2、3、4、6、7、10、及び12で示す。
【0427】
例として、GalK遺伝子座を置換することによるMFSトランスポータのゲノム挿入が記載されている。大腸菌(E.coli)K-12 DH1 MDOの染色体DNAにおけるfred遺伝子及びT1転写終結配列に連結されたプロモータを含有する発現カセットは、基本的に、Herring et al.(Herring et al 2003.Gene 311:153-163)により記載される遺伝子ゴージング(Gene Gorging)により実施された。簡潔に述べると、ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを、MDOに同時形質転換させ、0.2%のグルコース、アンピシリン(100μg/mL)又はカナマイシン(50mg/mL)及びクロラムフェニコール(20μg/mL)を含有するLBプレート上で選択した。単一コロニーを、クロラムフェニコール(20μg/mL)及び10μLの20%のL-アラビノースを含有する1mLのLB中に播種し、7~8時間にわたり振盪しながら37℃でインキュベートした。大腸菌(E.coli)のgalK遺伝子座内への統合のために、次に、細胞をM9-DOGプレート上にプレーティングし、37℃で48時間インキュベートした。MM-DOGプレート上で形成される単一コロニーを、0.2%グルコースを含有するLBプレート上で再びストリークし、37℃で24時間インキュベートした。McaConkey-ガラクトース寒天プレート上で白色に見え、アンピシリン及びクロラムフェニコールの両方に感受性であったコロニーは、ドナー及びヘルパープラスミドを消失しており、galK遺伝子座における挿入物を含有すると予測された。galK部位での挿入を、プライマーO48(配列番号50)及びO49(配列番号51)を使用するコロニーPCRによって同定し、挿入されたDNAを、シーケンシング(Eurofins Genomics、Germany)によって検証した。
【0428】
遺伝子ゴージング(例えば、Herring and Blattner 2004 J.Bacteriol.186:2673-81及びWarminget al 2005 Nucleic Acids Res.33(4):e36)を様々な選択マーカー遺伝子及び様々なスクリーニング方法に用いて、大腸菌(E.coli)染色体DNA中の他の遺伝子座で遺伝的カセットの挿入を行うことができる。
【0429】
[株の特性評価のためのディープウェルアッセイプロトコル]
本実施例に開示される株は、4日間プロトコルを用いて96ディープウェルプレート内でスクリーニングされた。最初の24時間中、前培養物を高密度に増殖させてから、遺伝子発現の誘導及び生成物形成を可能にする培地に移した。より詳細には、1日目中、硫酸マグネシウム、チアミン及びグルコースを補充した基礎最少培地を用いてフレッシュな前培養物を調製した。前培養物を34℃、1000rpmの振盪で24時間インキュベートし、その後、更に新しい基本最少培地(BMM、pH7,5)に移してメインの培養を開始した。新しいBMMに硫酸マグネシウム、チアミン、20%グルコース溶液のボーラス(100mL当たり50μL)及び10%ラクトース溶液のボーラス(100mL当たり5mL)を補充した。更に、グルコースがC制限増殖に適した速度で放出されるようなスクロースヒドロラーゼ(インベルターゼ)の添加を伴って、50%スクロース溶液を炭素源として提供した。メインの培養物を28℃、1000rpmの振盪で72時間インキュベートした。
【0430】
全ブロスの分析の場合、96ウェルプレートを100℃で煮沸し、その後遠心分離にかけ、最後に上清をHPLCにより分析した。上清試料の場合、マイクロタイタープレートの初期遠心分離に続いて、HPLCによる直接分析用に0.1mLの上清を除去した。ペレット試料の場合、細胞を最初に洗浄して、次に脱イオン水に溶解させ、遠心分離した。遠心分離に続いて、再懸濁、煮沸、遠心分離、及び最終上清の分析後に、ペレットの細胞内部のHMO含有量を分析した。
【0431】
各試料中の検出されたHMOのミリモル含有量(mM)は、報告された分析データに基づいて計算され、最終ブレンド中の各HMOのmMパーセンテージ(%)は、各菌株によって産生されたHMOブレンドの定量的な違いを簡単に比較するために、ブレンド中の全HMO(mM)濃度との関係で計算した。
【0432】
[実施例1-様々な野生型α-1,2-フコシルトランスフェラーゼを試験することによる、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[ディープウェルアッセイで試験された株MP1、MP2、MP3、及びMP4の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表1にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株MP1、MP2、MP3、及びMP4を得るために行われたものであり、全て完全に染色体株であった。菌株は、四糖類HMOであるLNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOであるLNFP-Iを産生ことができる。この反応に使用できるフコシルトランスフェラーゼ酵素は数多くあるが、本開示の枠組みにおいて、本発明者らは、ラクトース及びLNTをフコシル化する能力を試験するために、様々な細菌種からα-1,2-フコシルトランスフェラーゼの小さなサブセットを選択した。選択された酵素は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する、配列番号6)からのFutC、スルフリフレクサス・モビリス(Sulfuriflexus mobilis)(GenBank ID:WP_126455392.1、配列番号8)からのSmob、シデロキシダンス・リソトロフィカス(Sideroxydans lithotrophicus)ES-11(GenBank ID:WP_013031010.1、配列番号49)からのFucT54、及びメチロバクター・ツンドリパルダム(Methylobacter tundripaludum)(GenBank ID:WP_031437198.1、配列番号7)からのMtunを含む。
【0433】
本実施例において、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼの選択が、ほぼLNFP-Iと2’-FLだけからなるHMOブレンドの明確で多様な標的組成を得る遺伝的ツールとしてどのように使用できるかが実証された。本開示は、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼの選択が、株MP1、MP2、MP3、及びMP4により産生されるHMOブレンドの組成調節にどのように有利に利用できるかを実証している。表1に示すように、これらの株間の唯一の違いは、HMO、又はその前駆体である糖の合成のためのラクトース及びLNTのin vivoでの修飾を駆動するために宿主の選択されたゲノム遺伝子座に導入されたα-1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子である。異なる酵素はラクトース及びLNTに対して異なる特異性を示し、これは獲得した最終HMOブレンド中のLNFP-I及び2’-FLの相対存在量に明確に反映された。
【0434】
[ディープウェルアッセイの結果]
「材料及び方法選択」で記載されたように、菌株をディープウェルアッセイで特性評価した。
図1aで示すように、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼの選択により、最終ブレンドのHMO存在量に顕著な違いが生じた。他の酵素と比較して、FutCはLNTよりもラクトースに対する特異性が高いようで、この事実が2’-FLが最も豊富なHMOとなったHMOブレンドをもたらした。これに対して、LNFP-Iが主なHMOであり、2’-FLが2番目に豊富な糖であるのに対し、LNT-IIは限られた量でしか形成されないブレンドが、Smobにより得られた。Smobは驚くべき特異性でLNTをフコシル化することができるが、ラクトースに対する特異性は一見非常に低いようである。最終的に、FucT54及びMtunは、ほぼ等モル濃度のLNFP-I及び2’-FLを有するHMOブレンドをもたらし、これは、LNT及びラクトースに対するそれらの特異性がほぼ均等であることを示している(
図1a)。
【0435】
議論中の菌株によって産生されたブレンド中の全HMO濃度は大きく異なった。高2’-FL濃度と全HMO濃度との間には強い相関関係が存在するが、最終HMOブレンド中のLNFP-I含有量が高いほど、全HMO濃度は低くなる(
図1b)。
【0436】
結論として、LNFP-Iを産生するためにLNT産生株の遺伝的バックグラウンドに導入できるα-1,2-フコシルトランスフェラーゼの選択は、最終ブレンドが、ほぼ独占的にLNFP-I(MP2、Smob)、又は大部分が2’-FL(MP1、FutC)、又は1:1に近い比率のLNFP-I及び2’-FL(MP3、FucT54及びMP4、Mtun)のいずれかからなるような方法で、混合物の相対HMO存在量を有意に変化させることができる。
【0437】
[実施例2-コラン酸遺伝子クラスターの発現レベルを増加させることによる、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[ディープウェルアッセイで試験された株MP5、MP6、MP7、MP8、及びMP9の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表2にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株MP5、MP6、MP7、MP8、及びMP9を得るために行われたものであり、全て完全に染色体株であった。菌株は、四糖類HMOであるLNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOであるLNFP-Iを得ることができる。この反応に使用したフコシルトランスフェラーゼ酵素は、Smob(MP8及びMP9)又はFutC(MP5、MP6、及びMP7)のいずれかであった。実施例1で議論されているとおり、2つの酵素は、ラクトース及びLNTに対して異なる特異性を示し、最終ブレンドでは主なHMOとしてLNFP-I又は2’-FLが得られる。同様に、LNT及びLNT-IIなどの他のHMOが、このようなHMOブレンドに存在するが、濃度は低くなる。
【0438】
本実施例において、コラン酸遺伝子クラスターの発現レベルの増加が、smob発現細胞におけるLNFP-I及び2’-FLの比率を増加させるため、又はfutC発現細胞における最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序をLNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iに逆転させるための遺伝的ツールとしてどのように使用できるかが実証された。本開示は、コラン酸遺伝子の発現の微調整は、smob及びfutC発現細胞によって産生されるHMOブレンドの組成を調節するために有利に使用することができることを実証している。
【0439】
[ディープウェルアッセイの結果]
「材料及び方法選択」で記載されたように、菌株をディープウェルアッセイで特性評価した。
【0440】
図2a~cにて示すように、単一の遺伝子改変、即ちコラン酸遺伝子クラスターの発現レベルの増加は、smob及びfutC発現細胞によって獲得されるHMOブレンドに劇的な変化をもたらした。具体的には、smob発現細胞におけるコラン酸遺伝子の発現を駆動するプロモータの強度を高めること(即ち、PglpF_B29をPglpFプロモータと置き換えること)は、HMOブレンドのLNFP-I画分をほぼ25%増加させ、同時にLNT II+LNT画分をほぼ30%減少させ得る(
図2a)。従って、天然のコラン酸遺伝子座の前でこの単一の単純なプロモータを交換することにより、大部分がLNFP-I(85%)からなり、2’-FLが2番目に豊富なHMOであってブレンドの全HMO含有量の10%のみを構成し得るHMOブレンドの前に生成をもたらすことができる。しかしながら、コラン酸遺伝子クラスターを差次的に発現するsmob発現細胞によって産生されるブレンド中の全HMO濃度が著しく異なることは注目に値する。具体的には、コラン酸遺伝子クラスターの高レベルの発現は、全HMO形成の減少に関連しているようである(
図2c):株MP9はほぼ5mMのHMOを産生するが、株MP8はわずか4mMの総量の糖を産生する。
【0441】
更に、
図2bにて示すように、futC発現細胞におけるコラン酸遺伝子クラスターのプロモータ強度及び/又はコピー数の漸進的増加(即ち、PglpF_B29<PglpF_B28<PglpF+PglpF_B28)は、HMOブレンドの2’-FL画分を最大25%まで徐々に増加させ、同時にブレンドのLNFP-I画分を同様のパーセンテージで徐々に減少させ得る(
図2b)。詳細には、天然のコラン酸遺伝子座の前の単純なプロモータ交換及び異なるゲノム遺伝子座にあるこの遺伝子クラスターの第2のコピーの導入(即ち、PglpF_B29→PglpF_B28+PglpF)によって、futC発現細胞において、最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序をLNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iに逆転させることができる。議論中の遺伝子改変、即ちPglpF_B29→PglpF_B28+PglpFはまた、最終ブレンド中の全HMO濃度も大幅に向上させたことは注目に値する。具体的には、株MP5における遺伝子改変(PglpF+PglpF_B28)は、株MP7(PglpF_B29)と比較して、全HMO含有量がほぼ35%高くなる。
【0442】
結論として、コラン酸遺伝子クラスターの発現レベルの増加は、smob発現細胞においてLNFP-I及び2’-FLの比率を増加させ、又はfutC発現細胞において最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序をLNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iに逆転させることができる遺伝的ツールである。
【0443】
[実施例3-LNT形成に関与するグリコシルトランスフェラーゼのコピー数を増加させることによる、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[ディープウェルアッセイで試験された株MP10及びMP11の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表3にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株MP10及びMP11を得るために行われたものであり、どちらも完全に染色体株であった。菌株は、四糖類HMOである、LNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOである、LNFP-Iを得ることができる。この反応に使用したフコシルトランスフェラーゼ酵素は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する、配列番号6)からのFutC酵素であった。
【0444】
本実施例において、LNT生合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のコピー数の微調整が、futC発現細胞において、獲得したブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序を2’-FL>LNFP-IからLNFP-I>2-FLに逆転させる遺伝的ツールとしてどのように使用できるかが実証された。本開示は、futC発現細胞におけるlgtA(β-1,3-N-アセチル-グルコサミニルトランスフェラーゼをコードする)及びgalTK(β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードする)遺伝子のコピー数の同時増加が、株MP10及びMP11によって産生されるHMOブレンドの組成を調節する手段としてどのように有利に使用するできるかを実証している。表3で示すように、2つの株の唯一の違いは、株MP10のバックグラウンドと比較して株MP11の遺伝的バックグラウンドに追加のlgtA及びgalTKコピーが存在することである。MP11におけるlgtA及びgalTK遺伝子の追加のコピーは、LNT産生を促進し、それによってLNFP-I及び/又は全体的なHMO産生を増加させると考えられている。
【0445】
[ディープウェルアッセイの結果]
「材料及び方法選択」で記載されたように、菌株をディープウェルで特性評価した。
【0446】
図3で示すように、株MP11を産生するためのLNFP-I産生株MP10におけるlgtA及びgalTKコピー数の同時増加は、獲得されたHMOブレンドに顕著な変化をもたらした。具体的には、この改変により、最終ブレンドの2番目に主要なHMOの存在量の順序をLNFP-Iから2’-FLに逆転させることができる。より低い遺伝子コピー数を有する株であるMP10は、58%の2’-FL及び40%のLNFP-Iからなるブレンドを産生するとともに、より高い遺伝子コピー数を有する株であるMP11は、40%の2’-FL及び55%LNFP-Iという逆転したHMOプロファイルを有するブレンドをもたらした。これらの株によって生成された最終HMOブレンドの全HMO濃度は大きく異なり、株MP10(各遺伝子の1つのコピー)は、株MP11(各遺伝子の2つのコピー)によって産生されたものと比較して、全HMO含有量が15%高いブレンドを産生した。従って、議論中の遺伝子改変は、最終HMOブレンドのLNFP-I及び2’-FL画分の両方だけでなく、得られる全HMO濃度にも変化をもたらす(データは示されていない)。
【0447】
結論として、LNT生合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のコピー数の同時増加は、futC発現細胞において、獲得したブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序を2’-FL>LNFP-IからLNFP-I>2-FLに逆転させる効果的なツールである。
【0448】
[実施例4-主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)の糖排出トランスポータを導入することによる、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[ディープウェルアッセイで試験された株MP12、MP13、MP14、MP15、MP16、MP17、及びMP18の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表4にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株MP12、MP13、MP14、MP15、MP16、MP17、及びMP18を得るために行われたものであり、全て完全に染色体株であった。菌株は、四糖類HMOである、LNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOである、LNFP-Iを得ることができる。この反応に使用したフコシルトランスフェラーゼ酵素は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する、配列番号6)からのFutC酵素であった。特に、LNT及びLNT IIなどの他のHMOは、上記の株によって産生された最終HMOブレンド中に存在したが、その濃度は最小限であった。
【0449】
本実施例において、futC発現細胞における遺伝的バックグラウンドに糖排出トランスポータタンパク質(表5)をコードする選択された異種遺伝子の導入が、最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序を、LNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iへとどのように著しく逆転させることができるのかが実証されている。この関連で、本明細書で提示される遺伝的ツールは、上記実施例2の記載されているものと同等であり、ここでfutC発現細胞におけるコラン酸遺伝子クラスターの発現の増加は、ブレンド中の2つの最も豊富なHMOのプロファイルがLNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iへ逆転することも示された。本明細書で議論される開示は、選択された異種糖排出トランスポータタンパク質をコードする遺伝子の導入が、株MP12、MP13、MP14、MP15、MP16、MP17、及びMP18によって産生されるHMOブレンドの組成を調節するために、どのようにして有利に使用できるかを実証している。これらの菌株間の唯一の違いは、表4に示すように、宿主の選択されたゲノム遺伝子座に組み込まれるトランスポータ遺伝子である。このような異種遺伝子の過剰発現は、細胞内部から細胞外環境への2’-FL及び/又はLNFP-Iの輸送を強化し、それによってHMO産生にさまざまな形で影響を与えると考えられている。
【0450】
[ディープウェルアッセイの結果]
「材料及び方法選択」で記載されたように、菌株をディープウェルアッセイで特性評価した。
【0451】
図4で示すように、futC発現細胞の遺伝的バックグラウンドに糖排出トランスポータタンパク質(表5)をコードする選択された異種遺伝子を導入すると、獲得したHMOブレンドに劇的な変化が生じた。これらのトランスポータ遺伝子を有するカセットの発現を駆動するために選択されたプロモータは、Plac又はPglpFのいずれかであったことに注意する。しかしながら、本実施例において、各トランスポータのPlacベース又はPglpFベースの構築体のみのデータが表示される。詳細には、各トランスポータに対して最も顕著な効果をもたらした構築体は、
図4に示されているデータに含まれた。
【0452】
一般的には、
図4に示すように、選択されたMFSトランスポータ遺伝子のいずれかを導入すると、おそらく、トランスポータを介した2’-FL(LNFP-Iではない)の細胞外への効率的な輸送によって、LNFP-Iの形成が明らかに減少し、2’-FL形成が大幅に増加した。トランスポータ発現細胞における2’-FL画分の大幅な増加は、得られたブレンドの全HMO濃度に反映され、対応するブレンドは、MFSトランスポータを有さない宿主株(MP12)のブレンドと比較して35~70%高いHMO含有量を示した(
図4)。
【0453】
産生宿主の遺伝的バックグラウンドに導入されたトランスポータ遺伝子に応じて、得られたブレンド中のLNFP-I濃度は、対照(宿主)株と比較して有意に異なり、異種MFSトランスポータをコードしない宿主細胞内で形成されたLNFP-Iの90%、70%、60%、50%、又はわずか30%を占めた。最終ブレンド中のLNFP-I濃度の最大の減少(70%)は、PglpF-yberC構築体の導入により観察されたが、最終ブレンドのLNFP-I含有量のわずかな損失(10%)は、Plac-nec構築体の導入により観察された。
【0454】
これに対して、産生宿主へのトランスポータ構築体の導入から生じるブレンドは、異種トランスポータを欠く細胞により産生されるブレンドと比較して、2’-FL濃度が2.5~3.5倍増加したことを示した。ブレンドの2’-FL濃度の最も高い相対的な増加は、PglpF-fred構築体の導入で得られたが、最も低い相対的な増加は、PglpF-vag構築体の導入で得られた(
図4)。
【0455】
前述のように、異種糖排出トランスポータを発現する株により産生されるHMOブレンドの全HMO濃度は、宿主株のブレンドと比較して35~70%高いHMO含有量を示した。宿主と比較してHMO含有量の最も高い増加は、Plac-nec及びPglpF-fred構築体の導入で観察され、これは、同様に、2’-FL濃度の最も高い相対的増加のいくつかをもたらした(
図4)。
【0456】
結論として、futC発現細胞の遺伝的バックグラウンドにMFSスーパーファミリーの糖排出トランスポータタンパク質をコードする選択された異種遺伝子を導入すると、最終HMOブレンドの1番目と2番目に豊富なHMOの存在量の順序を、LNFP-I>2’-FLから2’-FL>LNFP-Iへと激しく逆転させることができる。このような遺伝子改変は、最終ブレンドで得られる全HMO濃度に大きな変化をもたらす可能性もあり、LNFP-I産生宿主に導入されたトランスポータ構築体に応じて、トランスポータ発現細胞では全HMO含量が最大70%増加する。
【0457】
[実施例5-PglpF駆動遺伝子発現を抑制するglpR遺伝子を欠失させることによる、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[ディープウェルアッセイで試験された株MP19及びMP20の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表6にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株MP19及びMP20を得るために行われたものであり、どちらも完全に染色体株であった。菌株は、四糖類HMOであるLNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOであるLNFP-Iを得ることができる。この反応に使用した、フコシルトランスフェラーゼ酵素は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する、配列番号6)からのFutC酵素であった。特に、LNT及びLNT IIなどの他のHMOは、上記の株によって産生された最終HMOブレンド中に存在したが、低濃度であった。
【0458】
本実施例において、glpR遺伝子の欠失が、LNFP-I、2’-FL、LNT II、及びLNT(豊富な順)を含む最大4つのHMOを含むHMO混合物の特定の標的組成を獲得するためにどのように遺伝的ツールとして使用されるかが実証された。本開示は、glpR遺伝子の欠失が、株MP19及びMP20により産生されるHMOブレンドの組成調節にどのように有利に利用できるかを実証している。表6に示すように、2つの株間の唯一の違いは、glpR遺伝子のノックアウトである。glpRの遺伝子産物は、DNA結合転写リプレッサGlpRであり、これは、異なるオペロンで構成されているグリセロール-3-ホスフェートレギュロン(regulon)のリプレッサとして機能する。その標的の1つは、PglpFプロモータであり、これは、元々グリセロール促進因子GlpFをコードする天然大腸菌(E.coli)遺伝子glpFの前に見つけられる。コラン酸遺伝子クラスター及びMFSトランスポータ又はHMO合成のためのグリコシルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子はPglpFプロモータの制御下にあるため、glpR遺伝子の欠失により、細胞内の全てのPglpFプロモータからのGlpRによる転写抑制が排除され、この方法で宿主のゲノムに存在する全てのPglpFベースのカセットからの遺伝子発現が増強され、それにより、複数の方法で全体的なHMO産生に影響を与え得る。
【0459】
[ディープウェルアッセイの結果]
「材料及び方法選択」で記載されたように、菌株をディープウェルアッセイで特性評価した。
【0460】
図5に示すように、単一の遺伝子改変、即ちglpR遺伝子の欠失により、得られたHMOブレンドのHMOの分布に顕著な変化が生じた。glpR遺伝子の欠失により、2’-FL、LNT及びLNT-IIの形成が著しく変化したが、LNFP-Iの形成はわずかな影響であった。具体的には、glpR+株であるMP19は、50%のLNFP-I及び44%の2’-FLからなるブレンドを産生したが、glpR-株であるMP20は、MP19と比べて15%少ない2’-FL及び5%だけ多いLNFP-Iを含むブレンドを提供した。更に、glpRの欠失は、最終HMOブレンドにおけるより高いLNT及びLNT-II画分と関連しているようである(
図5)。
【0461】
glpR遺伝子の欠失により、株MP19によって産生されたブレンドと比較して、株MP20によって獲得されたブレンド中の全HMO濃度(7%)がわずかに減少した、即ち株MP19は5.7mMの総量の糖を産生したが、株MP20は5.3mMのHMOを産生した(データは示さず)。
【0462】
結論として、glpR遺伝子の欠失により、得られたブレンド中の個々のHMO存在量が変化し、LNFP-I対2’-FLの比率がglpR+細胞のブレンド(MP19)よりも高くなった(MP20)。この遺伝子改変により、得られたブレンド中のLNT II及びLNTの存在量も増加したが、どちらも最終ブレンドでは最も少ない存在量の糖のままであった。
【0463】
[実施例6-発酵温度調節による、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[発酵で使用される菌株の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表7にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株を得るために行われたものであり、即ち完全染色体株MP21であった。菌株は、四糖類HMOであるLNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOであるLNFP-Iを得ることができる。この反応に使用した、フコシルトランスフェラーゼ酵素、つまりヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する、配列番号6)から誘導されるFutC酵素であるα-1,2-フコシロシル-トランスフェラーゼは、基質としてLNTだけでなくラクトースの両方をフコシル化できるだけでなく、この菌株の主な産物として、それぞれLNFP-I及び2’-FLを産生できることが判明した。LNTも蓄積するが、程度は低く、LNFP-I、2’-FL、及びLNTで構成されるHMOブレンドが残る。さらに程度は低いが、DFL(=2’,3-ジフコシルラクトース)も2’-FLのフコシル化から得られるが、ラクトースの利用可能性が限られている場合にのみ、かなりの量が得られる(実施例7も参照されたい)。
【0464】
[発酵プロセスの説明]
発酵は、2Lの発酵槽バイオリアクター(Sartorius、Biostat B)で実施し、30g/kgの炭素源(グルコース)、MgSO4×7H2O、KOH、H3PO4、微量元素溶液、クエン酸、消泡剤、及びチアミンからなる900mLの規定ミネラル培地から開始した。微量金属溶液(TMS)は、Mn、Cu、Fe、硫酸塩としてZn及びクエン酸を含有した。規定の最小培地中で増殖させた2%(v/v)の前培養物を接種することによって発酵を開始した。バッチ培地中に含まれる炭素源を枯渇させた後、グルコース、MgSO4×7H2O、TMS、及びH3PO4を含有する滅菌供給溶液を、所定の非線形プロファイルを用いて、炭素制限方式で連続的に供給した。75g/kgのラクトース一水和物を、グルコース供給開始の1時間後から開始して30分以内に添加した。28%のNH4OH溶液で滴定することにより、発酵中のpHを6.8に制御した。エアレーションは、大気を使用して1vvmであり、溶存酸素は、30%超の空気飽和で制御された。グルコース供給開始後15分で、表8及び9に示すように、発酵温度設定値を33℃から調査中のそれぞれの設定値まで下げた。これらの温度低下は、3時間にわたる直線傾斜で実行された。発酵の終了は、HMOミックスとラクトースの標的組成に達したときに、およそ95~98時間であった。
【0465】
発酵を通して、HPLCを用いてLNFP-I、2’-FL、LNT、LNT II、DFL、ラクトース、及び他の副生成物の濃度を決定するために試料を採取した。全ブロス試料を脱イオン水で3倍に希釈し、20分間煮沸した。これに続いて、17000gで3分間遠心分離を行い、その後、得られた上清をHPLCで分析した。上記の測定値は、ラクトースを含むHMO(「HMOL」)及びラクトースを含まないHMO(「HMO」)の合計に対する各HMOの比率を正確に計算するために使用された。
【0466】
[発酵実施の結果]
図6は、異なる産生温度での発酵で株MP21によって産生される3つの主要なHMO、つまりLNFP-I、2’-FL、及びLNTの発生、並びにアクセプタラクトースの発生を示している。グラフは、各個々の化合物のモル比を全てのHMO及びラクトースの合計(「HMOL」)で割ったものを示す。驚くべきことに、LNFP-I/HMOLモル比は全ての場合で約45%に増加するが、2’-FL及びLNTは温度に大きく依存する挙動を示す。従って、発酵終了時、2’-FL/HMOLのモル比は20%~50%の範囲であり、LNT/HMOLのモル比は1%のわずか下~3.54%の範囲である。更に、2’-FL/HMOLは、調査範囲(25~32℃)で温度に比例して増加する一方、LNT/HMOLは温度に反比例した挙動を示す、つまり、産生温度が低いほど、LNT/HMOLのモル比は高くなる。すべての発酵終点モル比を表8に示す。発酵終了時のラクトースはHMOLに対して約33%に達する可能性があり、これより低いレベルであってもHMO/HMOL比が突然変化することはないため、最終発酵試料中のラクトースの残留レベルが非常に低く、望ましい組成を確保するために、発酵プロセスを適切に制御することができると考えられる。可能な限り低い残留ラクトースレベルで終了する改良された発酵プロセスの他に、ラクトース濃度を選択的に下げることに加えて、膜プロセスなどのDSP操作を適用することもできる。従って、表9で示される組成範囲を有する最終生成物を得ることが実現可能である。従って、生成物の範囲は以下のとおりであり得る:全てのHMOの合計に対してLNFP-I[47~63]、2’-FL[31~51]、及びLNT[1~5]、又はLNFP-I/2’-FL/LNTが63/31/5~47/51/1(全てモル%)である組み合わせ。
【0467】
[実施例7-発酵中のラクトース濃度調節による、LNFP-I、2’-FL、及びLNTのHMOブレンドのバリエーションの生成]
[高又は低ラクトースプロセスによる発酵で試験された株MP19及びMP22の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表10にまとめた改変は、この研究で使用したLNFP-I産生株MP19及びMP22を得るために行われたものであり、どちらも完全に染色体株であった。菌株は、四糖類HMOであるLNT、及びフコシレートLNTを産生して、更に五糖類HMOであるLNFP-Iを得ることができる。この反応に使用した、フコシルトランスフェラーゼ酵素、つまりヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(GenBank ID:WP_080473865.1、ただし、C末端に2つの追加アミノ酸(LG)を有する、配列番号6)から誘導されるFutC酵素であるα-1,2-フコシロシル-トランスフェラーゼは、LNTをフコシル化して、これらの菌株の主な産物としてLNFP-Iを産生できることが判明した。同様に、他のHMOは、発酵中の増殖条件、特に発酵中のアクセプタラクトースの濃度に依存して、主な副生成物である2’-FL、LNT、及びLNT-IIを様々な濃度で産生されている。実施例6において、発酵中のラクトースレベルの調節が、顕著な量のLNFP-I、2’-FL、LNT、及びLNT-IIの最大4つのHMOを含むHMO混合物の特定の標的組成を得るためにどのように使用されるかが実証された。従って、本開示は、発酵中のラクトースの添加が、株MP19及びMP22により産生されるHMOブレンドの組成調節にどのように有利に利用できるかを取り扱っている。2つの菌株の唯一の違いは、異種グリコシルトランスフェラーゼの組み込みのために選択されたゲノム遺伝子座にある。
【0468】
[高及び低ラクトースレベルによる発酵プロセスの説明]
発酵は、200mLのDasBoxバイオリアクター((Eppendorf,Germany)で実施し、30g/kgの炭素源(グルコース)、MgSO4×7H2O、KOH、NaOH、NH4H2PO4、KH2PO4、微量元素溶液、クエン酸、消泡剤、及びチアミンからなる100mLの規定ミネラル培地から開始した。微量金属溶液(TMS)は、Mn、Cu、Fe、硫酸塩としてZn及びクエン酸を含有した。規定の最小培地中で増殖させた2%(v/v)の前培養物を接種することによって発酵を開始した。バッチ培地中に含まれる炭素源を枯渇させた後、グルコース、MgSO4×7H2O、TMS、及びH3PO4を含有する滅菌供給溶液を、所定の線形プロファイルを用いて、炭素制限方式で連続的に供給した。
【0469】
ラクトース添加は、高又は低ラクトースプロセスを選択するかどうかに依存して、2つの異なる方法で実施された。高ラクトースプロセス(「L2F20」)において、ラクトース一水和物溶液を2回のボーラス添加により添加し、1回目は供給開始からおよそ10時間後、2回目は約70時間EFTで添加した。低ラクトースプロセス(「L2F21」)において、ラクトースをグルコース供給溶液の一部として連続的に供給した。
図7で示すように、これにより、以下のラクトース濃度範囲が得られた:高ラクトースプロセス30~80g/L、低ラクトースプロセス0~15g/L。
【0470】
14%NH4OH溶液で滴定することにより、発酵中のpHを6.8に制御した。エアレーションは空気を用いて1vvmに制御し、溶存酸素は撹拌速度によって制御し、空気飽和の23%以上に維持した。グルコースの供給開始から15分後に、発酵温度設定値を33℃から25℃に下げた。この温度降下は、瞬時に、傾斜なく行った。過剰な泡立ちに関する不安定性が観察されるまで発酵を操作した。
【0471】
発酵を通して、HPLCを用いてLNFP-I、2’-FL、LNT、LNT-II、DFL、ラクトース、及び他の副生成物の濃度を決定するために試料を採取した。全ブロス試料を脱イオン水で3倍に希釈し、20分間煮沸した。これに続いて、17000gで3分間遠心分離を行い、その後、得られた上清をHPLCで分析した。上記の測定値は、HMOの合計(「HMO」)に対する各HMOの比率を正確に計算するために使用された。
【0472】
[発酵実施の結果]
4回の発酵は少なくとも68.7時間安定して実行された。3つの例では、発酵後期に過剰な泡立ちが発生したが、GDF17265は138.3時間非常に安定して実行された。比較の理由としては、表11は、68.7時間の時点での発酵試料中のHMO組成を示す。数字は、DFLを含むこれら4つのHMOの合計(「HMO」)に対する、個々のHMOであるLNFP-I、2’-FL、LNT、及びLNT-IIの比率をモル%で表す。このHMOは最大0.3g/Lという微量しか現れないため、DFL数値は示されていない。
図7に示すように、2つのプロセスは、高ラクトースプロセスであるL2F20では30~80g/Lのラクトースレベル、及び低ラクトースプロセスであるL2F21では0~15g/Lを維持することができる。さもなければ、2つの発酵プロセスは、培地組成、グルコース供給プロファイル、並びに温度、pH及び溶存酸素などの発酵プロセスパラメーターに関して同一である。
【0473】
更に、
図8に示すように、全ての発酵における主要なHMO生成物は、産生される全HMOの65%~80%の範囲のLNFP-Iである。このレベルは発酵の早い段階、つまり約40時間からすでに到達しており、全体を通して実質的に変化しない。更に、LNFP-I/HMO比は、ラクトースレベルとはほぼ無関係であり、即ち、試験した両方の菌株の低ラクトースプロセスでわずかに高くなるだけである。
【0474】
最終的には、
図9a~cは、4回の実施全体にわたる発酵ブロス中の3つの生成物比2’-FL/HMO、LNT/HMO、及びLNT II/HMOの時間プロファイルを示す。データは、ラクトース濃度に大きく依存する2つの主要な生成物組成を明らかにしている。高ラクトースプロセス(L2F20)において、HMO生成物プロファイルは、(降順で)LNFP-I>2’-FL>LNT>LNT IIである。低ラクトースプロセス(L2F21)において、HMO生成物プロファイルは、LNFP-I>LNT>LNT-II>=2’-FLである。これは、調査した両方の株に等しく当てはまる。従って、表11に示すように、高ラクトースプロセスについては、モル%で以下の範囲を見出すことができる:全てのHMOの合計に対してLNFP-I[47~63]、2’-FL[31~51]、及びLNT[1~5]、又はLNFP-I/2’-FL/LNTが63/31/5~47/51/1(全てモル%)である組み合わせ。また、低ラクトースプロセスについては、モル%で以下の範囲が見つかった:LNFP-I/HMO[66~70]、2’-FL/HMO[25~30]、LNT/HMO[3~4]、LNT-II/HMO[1~1.5]。
【0475】
従って、ラクトース濃度は、主にLNFP-Iを含むHMOブレンドの産生中に、3~4種類の主なHMOの所定の望ましいプロファイルを達成するための強力な制御ツールとなり得る。
【0476】
[実施例8-Smob酵素である異種MFSトランスポータNec又はYberCの同時発現により、LNFP-I形成が増加する]
本実施例は、最適化された菌株操作アプローチにより、LNFP-I対2’-FLの比率が高く、生成物のかなりの画分が培養上清中に見出される株を構築する。
【0477】
[株MP8、MP23、MP24、及びMP25の遺伝子型の説明]
以前に報告されたプラットフォームの株(「MDO」)に基づいて、表12にまとめた改変は、完全染色体株MP8、MP23、MP24、及びMP25を得るために行われたものであった。菌株は、五糖類HMOであるLNFP-Iを産生することができる。グリコシルトランスフェラーゼ酵素である、N.メニンギティディス(N.meningitidis)からのLgtA(β-1,3-N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼ)、H.ピロリ(H.pylori)からのGalTK(β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ)、及びS.モビリス(S.Mobilis)からのSmob(α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ)は、4つの株全てに存在する。更に、株MP6は、エルシニア・ベルコビエリ(Yersinia bercovieri)からの主要ファシリテータースーパーファミリー(MFS)であるYberCの異種トランスポータを発現する一方で、株MP5及びMP7は、ローゼンベルギエラ・ネクタレア(Rosenbergiella nectarea)からの異種MFSトランスポータであるNecを発現する。後者の2つの菌株の唯一の違いは、nec遺伝子の発現を駆動するプロモータの強度にある、つまり、株MP5にはPglpF駆動necコピーが存在するが、株MP7は、Placプロモータの制御下でnec遺伝子を発現する。
【0478】
[ディープウェルアッセイの結果]
「材料及び方法選択」で記載されたように、菌株をディープウェルアッセイで特性評価した(ただし、20%ラクトース溶液(10mL又は75mL)を使用した)。各試料で検出されたHMOの濃度を使用して、試験した株のHMO含有量における定量的差異の%を計算した、即ち、異種トランスポータを発現しない細胞のHMO含有量に対するnec及びyberC発現細胞のHMO含有量%。
【0479】
新しく形成された目的のHMOは、HMOによって課される浸透圧ストレスから細胞を緩和するために細胞外に輸送される必要がある。糖エクスポータの特定及びその発現の微妙なバランスが、このような産生システムの成功の鍵となり得る。ただし、選択した糖エクスポータによって結合及び輸送されなければならないのは、その前駆体又は伸長バージョンではなく、目的のHMOのみであるため、この作業は困難になり得る。
【0480】
本実施例において、Nec及びYberC糖トランスポータは、LNFP-I生成物を細胞外に輸送できることが示されている。詳細には、MFSトランスポータを発現しない細胞(株MP8)の上清では、全LNFP-Iの24%のみが検出されたが、合成されたLNFP-Iの約38%が、Necトランスポータを発現する細胞の培養上清中で検出された(
図10)。
【0481】
更に、nec又はYberC糖エクスポータを株に導入すると、細胞によって産生されるHMOブレンドにおけるLNFP-I対2’-FLの比率の変化が誘導される。具体的には、MFSトランスポータを有する株において、糖トランスポータを発現しない株(株MP8)と比較した場合、この比は6.7から約7.8に増加する(
図11)。
【0482】
本明細書で記載されるアプローチによれば、LNFP-I以外のHMOは、操作された細胞によって送達される全HMOブレンドのごく一部にすぎない。本実施例の枠組みにおいて、異種遺伝子である、smob及びnec又はyberCを、すでにLNTを産生している大腸菌(E.coli)DH1 K12株のゲノムに導入することにより、IgtA遺伝子の高コピー数を有利に使用して、上記の有益な形質を有する効率的なLNFP-I細胞ファクトリーを送達することができる。
【0483】
結論として、β-1,3-N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼLgtA、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼGalTK、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼSmob、及びMFSトランスポータNec又はYberCのいずれかのバランスの取れた発現が、LNFP-I対2’FLの比率がより高いHMOブレンドを産生するための効果的な菌株操作戦略を構成する。
【配列表】
【国際調査報告】