(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】シングルトラック車両
(51)【国際特許分類】
B62K 25/20 20060101AFI20240527BHJP
B60G 11/04 20060101ALI20240527BHJP
B60G 11/12 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B62K25/20
B60G11/04
B60G11/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571441
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 AT2022060130
(87)【国際公開番号】W WO2022241490
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516256272
【氏名又は名称】ケーティーエム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KTM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トルプイェールン グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】ハンネス フェルナー
【テーマコード(参考)】
3D014
3D301
【Fターム(参考)】
3D014DD06
3D014DF02
3D014DF12
3D301AA60
3D301AA69
3D301AA72
3D301AA74
3D301BA17
3D301CA02
3D301DA04
3D301DA08
3D301DB01
3D301DB13
(57)【要約】
シングルトラック車両、特にモータサイクルであって、フレーム(2)と、このフレーム(2)に対して回転可能なスイングアーム(3)と、このスイングアーム(3)とフレーム(2)との間でばね作用を得るために、一方ではフレーム(2)に結合されており、他方ではスイングアーム(3)に結合されている板ばね(4)と、を備え、この板ばね(4)は、第1のレバー(5.1)と第1のピボット軸受(6.1)とを介してフレーム(2)に結合されており、これによって、第1のピボット軸受(6.1)の第1のピボット軸線が、第1のレバー(5.1)に基づき板ばね(4)に対して横方向にずらされており、かつ/または、板ばね(4)は、第2のレバー(5.2)と第2のピボット軸受(6.2)とを介してスイングアーム(3)に結合されており、これによって、第2のピボット軸受(6.2)の第2のピボット軸線が、第2のレバー(5.2)に基づき板ばね(4)に対して横方向にずらされている、シングルトラック車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルトラック車両、特にモータサイクルであって、
フレーム(2)と、
前記フレーム(2)に対して回転可能なスイングアーム(3)と、
前記スイングアーム(3)と前記フレーム(2)との間でばね作用を得るために、一方では前記フレーム(2)に結合されており、他方では前記スイングアーム(3)に結合されている板ばね(4)と、
を備える、シングルトラック車両において、
前記板ばね(4)は、第1のレバー(5.1)と第1のピボット軸受(6.1)とを介して前記フレーム(2)に結合されており、これによって、前記第1のピボット軸受(6.1)の第1のピボット軸線が、前記第1のレバー(5.1)に基づき前記板ばね(4)に対して横方向にずらされており、かつ/または
前記板ばね(4)は、第2のレバー(5.2)と第2のピボット軸受(6.2)とを介して前記スイングアーム(3)に結合されており、これによって、前記第2のピボット軸受(6.2)の第2のピボット軸線が、前記第2のレバー(5.2)に基づき前記板ばね(4)に対して横方向にずらされている
ことを特徴とする、シングルトラック車両。
【請求項2】
前記第1のピボット軸受(6.1)は前記フレーム(2)に直接配置されており、かつ/または、前記第2のピボット軸受(6.2)は前記スイングアーム(3)に直接配置されていることを特徴とする、請求項1記載のシングルトラック車両。
【請求項3】
前記板ばね(4)は、専ら2つの結合部材、特に前記第1のレバー(5.1)および前記第2のレバー(5.2)を介して前記モータサイクル(1)の残りの部分に接触していることを特徴とする、請求項1または2記載のシングルトラック車両。
【請求項4】
前記第1のレバー(5.1)は前記板ばね(4)と共に直角または鋭角を成しており、かつ/または、前記第2のレバー(5.2)は前記板ばね(4)と共に直角または鋭角を成していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項5】
前記第1のレバー(5.1)および/または前記第2のレバー(5.2)は、前記板ばね(4)のばね予荷重および/またはばね硬さを調整するために長さ調整可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項6】
前記板ばね(4)は、第1の端部(7)と第2の端部(8)とを備えたフラットな本体として形成されており、前記板ばね(4)は、好ましくは、バウンド時に前記板ばね(4)の前記第1の端部(7)と前記第2の端部(8)とが走行方向で見て後方に撓むように配置されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項7】
前記板ばねの前記第1の端部(7)は、前記第1のレバー(5.1)に姿勢不変に緊締されており、かつ/または、前記板ばね(4)の前記第2の端部(8)は、前記第2のレバー(5.2)に姿勢不変に緊締されていることを特徴とする、請求項6記載のシングルトラック車両。
【請求項8】
前記板ばね(4)は第1の湾曲部(9.1)および/または第2の湾曲部(9.2)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項9】
前記第1の湾曲部(9.1)と前記第2の湾曲部(9.2)とによって、S字形状が形成されており、前記第2の湾曲部(9.2)は、好ましくは、前記第1の湾曲部(9.1)よりも著しく顕著であることを特徴とする、請求項8記載のシングルトラック車両。
【請求項10】
前記板ばね(4)は、繊維強化されたプラスチックとして製造されており、前記板ばね(4)を製造するために、それぞれ異なる長さの多数の積層された繊維強化層が、前記プラスチックまたは前記プラスチックの前駆体によってフラッディング処理されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項11】
前記板ばねの長手方向軸線(A)に関して、
前記板ばね(4)の一定の厚さの第1の領域(11)と、
前記第1の領域(11)に続く、前記板ばね(4)の可変の厚さの第2の領域(12)と、
前記第2の領域(12)に続く、前記板ばね(4)の一定の厚さの第3の領域(13)と、
が生じていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項12】
前記第1のピボット軸受(6.1)と前記第2のピボット軸受(6.2)とは、実質的に互いに上下に配置されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項13】
前記スイングアーム(3)への前記板ばね(4)の結合部材、特に前記第2のピボット軸受(6.2)は、前記スイングアーム(3)を前記フレーム(2)に結合するメインピボットジョイント(14)と、車軸(15)との間に配置されており、前記スイングアーム(3)への前記板ばね(4)の前記結合部材は、好ましくは、前記車軸(15)よりも前記メインピボットジョイント(14)の近くに配置されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のシングルトラック車両。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のシングルトラック車両(1)での板ばね(4)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する、シングルトラック車両(einspuriges Fahrzeug)、特にモータサイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載したシングルトラック車両は、
フレームと、
フレームに対して回転可能なスイングアームと、
スイングアームとフレームとの間でばね作用を得るために、一方ではフレームに結合されていて、他方ではスイングアームに結合されている板ばねと、
を備えている。
【0003】
板ばねは、モータサイクルにおけるサスペンション用に以前から知られている。実際、板ばねは、元々、今日慣用のコイルばねよりも広く普及していたように思える。より大きなばね撓みは、板ばねよりもコイルばねによって容易に実現することができたので、そうこうしているうちに、コイルばねが普及するようになった。それにもかかわらず、最近のモータサイクルにおいて板ばねコンセプトを実現することも試みられた。これは、一部で成功にも至った。事実、90年代には、板ばねコンセプトを有するマシンがモトクロス世界選手権で優勝することができた。
【0004】
冒頭に記載したモータサイクルは、例えば欧州特許第0725004号明細書、特許第6122453号公報、特開平07-149275号公報、特開平05-330476号公報、特開平05-178264号公報または独国特許発明第102012101551号明細書に基づき公知である。
【0005】
板ばねは、基本的には、慣用のコイルばねに比べて(例えば重量に関して)利点を有しているように思われるものの、板ばねコンセプトを大量生産では普及させることができなかった。これについては、
-大部分において、先行技術の板ばねは、モータサイクルにおける不都合な箇所に極めて大きな構成スペースを要する(好ましくない「詰込み」)。これは、大抵の場合、板ばねが3点曲げ梁として使用されることに基づいており、したがって、互いに離間した少なくとも3つの結合点がモータサイクルに対して存在していなければならない;
-類似の理由から、慣用のコイルばねと比較して、板ばねによって理論的に達成可能な重量削減が達成されず、実際には逆の結果になる;
-先行技術の構成は、慣用のコイルばねと比較して、多数の様々な構成部材を含んでおり、したがって、比較的複雑である;
-先行技術の板ばねは、モータサイクルの最低地上高を減じるように配置されていることが多く、これは、オフロード領域では特に望ましくない;
-公知の板ばねは、露出している箇所、例えばエンジンの下側に配置されているかまたはスイングアームに対して平行に配置されているため、落石、土壌接触およびこれに類することによって、寿命が短くなる(板ばねの層間剥離);
-すでに述べた、当付け体(特に欧州特許第0725004号明細書参照)に相俟った3点曲げ梁としての使用の結果、当付け体と板ばねとの間に異物が容易に達してしまう。このことも、板ばねの層間剥離ひいては短い寿命に繋がってしまう;
-板ばねの幾何学的な配置における制限によって、望ましい構成目標、例えばばね力の漸増性の改善を達成することができない(かまたはこのために、構成の重量、複雑性および構成スペースにマイナスの影響を与える付加的な構成部材が再び使用されなければならない):
という理由が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、少なくとも大量生産車両に使用可能となる程度に上述した欠点を回避する、シングルトラック車両用の板ばねコンセプトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有するシングルトラック車両によって、つまり、
板ばねは、第1のレバーと第1のピボット軸受とを介してフレームに結合されており、これによって、第1のピボット軸受の第1のピボット軸線が、第1のレバーに基づき板ばねに対して横方向にずらされており、かつ/または
板ばねは、第2のレバーと第2のピボット軸受とを介してスイングアームに結合されており、これによって、第2のピボット軸受の第2のピボット軸線が、第2のレバーに基づき板ばねに対して横方向にずらされている
ことによって解決される。
【0008】
本発明の基本的な態様は、板ばねがフレームまたはスイングアームに取り付けられている点と、板ばねが実際にその作用を発揮する(つまり、本発明によれば、第1のレバーおよび/または第2のレバーの板ばね側の端部における)点とを空間的に分離することによって、少なくとも1つの付加的な自由度(離間に相俟った回動)が発生することである。これは、構成スペースにもサスペンションのキネマティクスにも影響を与える。特に、板ばねに対して横方向にずらされたピボット軸受によって、サスペンションの漸増、つまり、バウンド行程に関連したばね力の増加を幅広い範囲にわたって目標に向けて正確に設定することが可能となる。これは、特に、極めて強い漸増が所望されている場合に該当しているものの、この場合だけでない。つまり、サスペンションの設計時に本発明が提供する付加的な自由度によって、例えば線形のまたは漸減的なサスペンションも容易に実現することができる。
【0009】
本発明によれば、先行技術において教示されているような、(ばね力の所望の漸増性を達成するために)板ばねのより大きな区分をフレームに緊締することを単純かつ簡単に省略することができる。
【0010】
本発明によれば、これによって、板ばね用の構成スペースが可能な限り少なく保たれる。驚くべきことに、これによって、(板ばねの変形がもはやフレームとスイングアームとの間の相対運動に一対一で結び付けられていないので、)ばねキネマティクス、特にばね力の漸増性を所望のように形成することが同時に可能となる。
【0011】
本発明の更なる利点は、
-サスペンションを(ただ単にフレームおよびスイングアームへの2つの結合点しか必要とならないという理由だけで)小さな構成スペースで形成することができ、モータサイクルにおける所望の箇所、例えば保護された箇所に配置することができ、その際、最低地上高は損なわれず、
-より少ない重量を達成することができ、
-簡単な構成を実現することができ、特に種々異なる部材をほとんど使用する必要がなくなり、
-例えばばね力の漸増を変更するために板ばねに接触する付加的な構成部材を使用する必要がなく、また、板ばねに先行技術と比較して均一な荷重が加えられるので、長寿命の構成を実現することができる
ということである。
【0012】
慣用のコイルばねと比較して、板ばね、特に繊維強化されたプラスチック構造形態の板ばねは、高い内在的な減衰作用を有している。これは、予期した通り、大量生産モータサイクルの走行特性の改善に繋がる。幾何学的な切離しによって、本発明では、慣用のコイルばねと比較して、さらに、減衰作用とばね弾性作用とを互いに十分に独立させて調整することができる。
【0013】
本発明の範囲内では、滑り軸受および/または転がり軸受を第1のピボット軸受および/または第2のピボット軸受と解する。
【0014】
板ばねが、(第1の)ピボット軸線に対してずらされてフレームに支承されるだけでなく、(第2の)ピボット軸線に対してずらされてスイングアームに支承されてもよい本発明の実施形態が特に好適となる場合がある。この場合、このような構成によれば、板ばねが、ある意味浮遊した状態でモータサイクルに配置され、板ばねを構成スペースとサスペンションのキネマティクスとに適合させるための最大の可能性を提供している。
【0015】
好ましくは、重量と構成スペースとを可能な限り減らすために、正確に1つの板ばねを使用することができる。しかしながら、基本的には、2つ以上の板ばねが本発明によって使用される構成も可能である。
【0016】
板ばねが第1のピボット軸線および第2のピボット軸線に対して横方向にずらされているとは、第1のピボット軸線および第2のピボット軸線が、それぞれ板ばねの(場合により板ばねを越えて延長する仮想の)平面に対して所定の間隔を有していることと解することができる。
【0017】
第1のピボット軸線および第2のピボット軸線は、それぞれ第1のピボット軸受または第2のピボット軸受の仮想の回転軸線または物理的な軸であってよい。
【0018】
本発明は、特に好適には後輪サスペンションにおいて使用されてよい。しかしながら、前輪サスペンションでの使用が少なくとも理論的に可能である。
【0019】
本発明は、あらゆる形態のモータサイクルにおいて使用されてよい。モータサイクルとは、それ自体の推進のために原動機を有する全てのシングルトラック車両を意味している。特に好適には、本発明は、不整地走行用のモータサイクル(エンデューロ、モトクロス)において使用されてよい。原理的には、自転車での本発明の使用も可能である。この場合、補助モータ(つまり、例えばEバイクにおいて、それ自体の推進のためではなく、アシストのためのもの)を備えたシングルトラック車両も自転車と呼ばれる。
【0020】
さらに、本発明に係るシングルトラック車両での板ばねの使用に対して保護が求められる。
【0021】
本発明の好適な実施形態は従属請求項に規定してある。
【0022】
好適には、第1のピボット軸受がフレームに直接配置されていてよく、かつ/または、第2のピボット軸受がスイングアームに直接配置されていてよい。しかしながら、基本的には、ピボット軸受は別の位置に位置決めされてもよい。例えば、キネマティクスの観点から有利であるように思われる場合、第1のピボット軸受はエンジンまたはバッテリボックスに配置されて取り付けられていてもよい。同じ理由から、第1のピボット軸受および/または第2のピボット軸受は、フレームまたはスイングアームの何かしらの延長部、例えば組み付けられたレバーまたはこれに類するものに配置されていてよい。
【0023】
つまり、板ばねが、第1のレバーと第1のピボット軸受とを介してフレームに結合されているとは、ピボット軸受が、何かしらの支持構造を介してシングルトラック車両のフレームに対して姿勢不変に結合されていることと解することができる。
【0024】
好適には、板ばねが、専ら2つの結合部材、特に第1のレバーおよび第2のレバーを介してモータサイクルの残りの部分に接触していてよい。すでに述べたように、板ばねは、本発明によれば、特にばね力の許容可能なまたは改善された漸増を伴う所望のばねキネマティクスを実現するために、もはや3点曲げ梁として使用される必要はない。
【0025】
しかしながら、原理的には、本発明の範囲内では、別の結合点を設けることも可能である。例えば、先行技術に類似して、例えばばね力の極端に強い漸増を達成するために、転支体または当付け体が使用されてもよい。
【0026】
第1のレバーは板ばねと共に直角または鋭角を成していてよく、かつ/または、第2のレバーは板ばねと共に直角または鋭角を成していてよい。
【0027】
第1のピボット軸受と第2のピボット軸受との結合線に対して平行に測定して、第1のレバーおよび第2のレバーは共に(これについては
図3aおよび
図3b参照)1cm~20cm、好適には2cm~15cm、特に好適には5cm~10cmの長さを有していてよい。
【0028】
第1のレバーおよび/または第2のレバーは、好適には、第1のピボット軸受と第2のピボット軸受との結合線に対して平行な、それぞれ他方のレバーに向けられた延在部を有していてよい。これによって、漸増的なばね特性を達成することができる。
【0029】
むしろ、線形のばね特性が所望されている場合には、第1のピボット軸受と第2のピボット軸受との結合線に対して平行に測定して、第1のレバーおよび第2のレバーが共に約0の長さを有していてもよい。
【0030】
むしろ、漸減的なばね特性では、第1のレバーおよび/または第2のレバーが、第1のピボット軸受と第2のピボット軸受との結合線に対して平行な、それぞれ他方のレバーから離れる方向に向けられた延在部を有していてもよい。
【0031】
第1のピボット軸受と第2のピボット軸受との結合線に対して垂直に測定して、第1のレバーおよび第2のレバーは共に(これについては
図3aおよび
図3b参照)5cm~30cm、好適には8cm~20cm、特に好適には10cm~18cmの長さを有していてよい。
【0032】
好適には、第1のレバーおよび/または第2のレバーが、板ばねのばね予荷重および/またはばね硬さを調整するために長さ調整可能であってよい。これは、例えばねじ山を介して行われてよい。
【0033】
板ばねは、第1の端部と第2の端部とを備えたフラットな本体として形成されていてよく、板ばねは、好ましくは、バウンド時に板ばねの第1の端部と第2の端部とが走行方向で見て後方に撓むように配置されている。
【0034】
板ばねの第1の端部は、第1のレバーに姿勢不変に緊締されていてよく、かつ/または、板ばねの第2の端部は、第2のレバーに姿勢不変に緊締されていてよい。これによって、バウンド工程中に板ばねの増大された撓みを生じさせることができる。これは、ばね力の漸増をアシストすることができる。つまり、第1のレバーおよび/または第2のレバーに板ばねを取り付ける形態が、ばね特性に影響を与える別の可能性を成している。
【0035】
板ばねは第1の湾曲部および/または第2の湾曲部を有してよい。
【0036】
第1の湾曲部と第2の湾曲部とによってS字形状が形成されていてよく、第2の湾曲部は、好ましくは、第1の湾曲部よりも著しく顕著である。
【0037】
第1の湾曲部および/または第2の湾曲部によって、1つには、ばね力を所望のように調整することができる。もう1つには、湾曲部は、板ばねを可能な限り省スペースでモータサイクル内に嵌め込む(最適化された詰込み)ために使用することができる。
【0038】
指摘しておくと、述べたS字形状は除荷状態でしか生じることができず、バウンド状態では解消されていてよい。
【0039】
第1の湾曲部の凹状の面は、走行方向で見て後方に向けられていてよい。
【0040】
第2の湾曲部の凹状の面は、走行方向で見て前方に向けられていてよい。
【0041】
第1の湾曲部は第2の湾曲部の上側に配置されていてよい。
【0042】
特に好適には、板ばねが、繊維強化されたプラスチック、特にガラス繊維強化されたプラスチック(GFK)として製造されていてよく、板ばねを製造するために、それぞれ異なる長さの多数の積層された繊維強化層が、プラスチックまたはプラスチックの前駆体によってフラッディング処理される。
【0043】
このことに関して、互いに独立して、
-プラスチックは熱可塑性ポリマーおよび/または合成樹脂であってよい;
-繊維強化層のフラッディング処理(Fluten)とは、(例えばオートクレーブまたは成形金型を用いた)プラスチックまたはプラスチックの前駆体のあらゆる接触/流入と解され、これによって、繊維強化層が母材としてのプラスチック内に埋め込まれるため、繊維強化層により改善された機械的な特性を有するプラスチックボディが形成される;
-この場合、プラスチック/合成樹脂の前駆体は化学的に反応して、完全にプラスチック/合成樹脂となることができ、かつ/または、熱可塑性プラスチックは、冷却によって固形(つまり、非可塑性)の相状態に移行することができる;
-繊維強化層は、好適には、いわゆるエンドレスな繊維強化層であってよい;
-繊維強化層は、例えば既製されたテープまたはオルガノシートの形態で存在していてもよいし、直接立体賦形されてもよい:
ことを述べることができる。
【0044】
板ばねの長手方向軸線に関して、
板ばねの一定の厚さの第1の領域と、
第1の領域に続く、板ばねの可変の厚さの第2の領域と、
第2の領域に続く、板ばねの一定の厚さの第3の領域と、
が生じていてよい。
【0045】
すでに述べたように、本発明によって、板ばねに比較的均一な荷重を加えることを達成することができるため、第1の領域は、板ばねの比較的大きな領域にわたって延在していてよい。
【0046】
好適には、一定の厚さの領域、特に第1の領域および/または第2の領域が、板ばねの面積の30%よりも多く、好適には40%よりも多く、特に好適には50%よりも多くを占めていることが特定されていてよい。
【0047】
第2の領域では、板ばねの厚さが、好適には、板ばねの第1の端部に向かって減少するように変化する。
【0048】
第3の領域は、板ばねを第1のレバーに姿勢不変に緊締するために使用されてよい。
【0049】
特に、板ばねがフラットまたはほぼフラットに(つまり、第1または第2の湾曲部なしに)形成されており、かつ/または一定の厚さを有して形成されている場合には、板ばねが金属から製造されている本発明の実施形態も好適となることがあることに留意されたい。つまり、こうして、製造技術的に本発明の特に簡単な実施形態を実現することができる。
【0050】
板ばねに関する好適な構成は、当然ながら、板ばねの本発明に係る使用にも適用することができる。
【0051】
第1のピボット軸受と第2のピボット軸受とは、実質的に互いに上下に配置されていてよい。
【0052】
スイングアームへの板ばねの結合部材、特に第2のピボット軸受は、スイングアームをフレームに結合するメインピボットジョイントと、車軸との間に配置されていてよく、スイングアームへの板ばねの結合部材は、好ましくは、車軸よりもメインピボットジョイントの近くに配置されている。
【0053】
スイングアーム長さ、つまり、メインピボットジョイントと車軸との間の間隔に関して、スイングアームへの板ばねの結合部材は、スイングアーム長さの50%よりも少なく、好適にはスイングアーム長さの40%よりも少なく、特に好適にはスイングアーム長さの36%よりも少なく、全く特に好適にはスイングアーム長さの30%よりも少なくメインピボットジョイントから離されて配置されていてよい。
【0054】
特に好適な実施例では、スイングアームへの板ばねの結合部材は、スイングアーム長さの20%よりも多くメインピボットジョイントから離されて配置されていてよく、特にスイングアーム長さの約23%メインピボットジョイントから離されて配置されていてよい。
【0055】
スイングアームへの板ばねの結合部材は、メインピボットジョイントからスイングアーム長さの10%よりも多い間隔を有していてよい。
【0056】
車軸は、述べたように、好適には後輪車軸である。
【0057】
本発明の更なる利点および詳細は、図面ならびに対応する図面の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明に係るモータサイクルの実施形態を示す図である。
【
図2a】
図1に示した実施例に基づく板ばねのリバウンド状態を示す図である。
【
図2b】
図1に示した実施例に基づく板ばねのバウンド状態を示す図である。
【
図3a】
図1に示した実施例に基づく板ばねのリバウンド状態を示す図である。
【
図3b】
図1に示した実施例に基づく板ばねのバウンド状態を示す図である。
【
図4】本発明に係るモータサイクル用の板ばねの別の実施例を示す図である。
【
図5】
図1に示した実施例に関して、ばね撓みに対してプロットされたばね力を示す図である。
【
図6a】
図1に示した実施例による板ばねにおける応力状況のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6b】
図1に示した実施例による板ばねにおける応力状況のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図7a~
図7dは、本発明に係るモータサイクル用の板ばねの別の実施例を示す図である。
【
図8】
図8a~
図8dは、本発明に係るモータサイクル用の板ばねの別の実施例を示す図である。
【
図9】
図9a~
図9cは、本発明に係るモータサイクル用の板ばねの別の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1には、本発明に係るモータサイクル1(この実施例ではモトクロスマシン)が示してある。このモータサイクル1は、フレーム2と、車軸15(後輪車軸)を支承するスイングアーム3とを備えている。このスイングアーム3は、メインピボットジョイント14を介してフレーム2に結合されている。
【0060】
サスペンション部材として、本発明によれば、板ばね4が設けられている。この板ばね4は、第1のレバー5.1および第1のピボット軸受6.1を介してフレーム2に支承されており、第2のレバー5.2および第2のピボット軸受6.2を介してスイングアームに支承されている。
【0061】
即座に認めることができるように、板ばね4の配置形態は、先行技術と比較して極端に省スペースであり、板ばね4は、エンジン16の背後の特に良好に保護された箇所に配置されている。同時に、板ばね4はエンジン16の極めて近くにあり、最小のスペースしか要していない。
【0062】
述べておくと、板ばね4は、
図1に同じくさらに認めることができるコイルばねの代わりを成している。つまり、コイルばねは実際にはもはや存在していない。
【0063】
しかしながら、それにもかかわらず、本実施例では、自体先行技術と同様に形成されていてよい減衰要素がなおも存在していることもある。
【0064】
この比較から、本発明によれば、板ばね4がどのくらい少ない構成スペースしか必要としていないのかも明らかとなる。また、特に、大きなばね撓みを実現しなければならない場合、大量生産モータサイクルであると、後輪サスペンションの領域においてスペース状況が特に狭められていることもさらに指摘しておかなければならない。本発明により得られる構成スペースは、様々な形態に対して利用することができる。例えば、エンジン16の所定の構成要素(例えば吸気系統、排気管、エアボックス、プリサイレンサ)をより大きくまたはより複雑に形成することもできるし、またはより多くの構成部材を備えたより複雑な構成を考慮することもできる。例えば、エンジン16は電気モータに置き換えられてもよい。
【0065】
さらに、板ばね4の比較的小さな構造形態によって、重量が節約される。さらに、板ばね4はモータサイクル1のかなり低いところに配置されており、これによって、重心が、有利には下方に変位する。しかしながら、この場合、最低地上高は損なわれない。
【0066】
同時に、
図1に示した構成は簡単であり、つまり複雑でなく、ほんの僅かな部材しか必要とせず、特に長寿命である。
【0067】
図1に示した実施例において、第1のピボット軸受6.1および第2のピボット軸受6.2は、(さらに強い漸増をばね力において達成すべく、たとえ原理的にさらに当付け体を、例えば
図1において板ばね4の中央に使用することができるとしても)ばね装置をモータサイクル1の残りの部分に接触させる個々の結合点を成している。
【0068】
したがって、板ばね4は、述べたように、保護された状態で配置されているので、
図1に示した実施形態は特に長寿命となる。
【0069】
図2aおよび
図2bには、板ばね4がバウンド時にどのように変形させられるのかが示してある。
図2bには、より高い荷重が加えられた状態が示してある。
【0070】
良好に認めることができるように、回転するレバー5.1,5.2によって、比較的均一に板ばね4を変形させると共に板ばね4に荷重を加えることが達成される(これについては
図5aおよび
図5bも参照)。これによって、同時に、板ばね4が全体的に効率よく使用される。これによって、ばね力の所望の強い漸増を達成することできる(これについては
図4参照)。認めることができるように、バウンド中には、(23°だけの)レバー、特に第1のレバー5.1の比較的強く現れる回転が生じる。このことも、ばね力の所望の強い漸増のための前提条件を成している。
【0071】
本実施例では、板ばね4のばね予荷重を調整することができるように、第1のレバー5.1の長さがねじ山を介して調整可能である。
【0072】
本実施形態では、第1の端部7が第1のレバー5.1にかつ第2の端部8が第2のレバー5.2に姿勢不変に(つまり、レバーに対する回動を許容することなく)緊締されている。
【0073】
板ばね4は、この板ばね4のS字形状を共に形成する第1の湾曲部9.1と第2の湾曲部9.2とを有している。
【0074】
第2の湾曲部9.2は、板ばね4に付加的なばね硬さを付与すると同時に構成スペースを節約する対応湾曲部を成している。
【0075】
図3aおよび
図3bにも、板ばね4がリバウンド状態およびバウンド状態で示してある。本発明の機能形態をさらに詳しく図示するために、板ばね4は、第1のピボットジョイント6.1の同時回転基準系で図示してあり、これによって、第1のピボットジョイント6.1と第2のピボットジョイント6.2との間の結合線が、バウンド状態およびリバウンド状態で互いに合致している。言い換えると、この結合線の、
図2aおよび
図2bに明示した回動が、
図3aには示されない。
【0076】
第1のレバー5.1は2つのパラメータX,Yによって特徴付けられてよい。これら2つのパラメータX,Yは、第1のピボット軸線の中心点と、板ばね4が第1のレバー5.1に対する緊締部を越えて突出している点との間隔を、第1のピボット軸線と第2のピボット軸線との結合線に対して平行または垂直に測定したものである(
図3b参照)。
【0077】
本実施例では、Xは約8cmである。
【0078】
本実施例では、Yは約10cmである。
【0079】
図3aには、板ばね4のバウンド状態とリバウンド状態とが重ね合わせて示してある。さらに、点P1,点P2は、板ばね4上の同じ箇所に記入してあり、これによって、両方の状態の間での板ばね4の運動および変形を簡単に認識することができる。
【0080】
図3aから認めることができるように、力Fの影響下では、まず、第1のピボット軸線と第2のピボット軸線との間の間隔の減少が生じる(ΔX)。認めることができるように、点P2は比較的少ない撓み区間だけしか変位していない。点P1では、バウンド時にX方向で同じく比較的少ない変化しか生じていない。最大の変化は、点P1のY成分において生じている。
【0081】
これは、なぜ第1のレバー5.1がより大きなXパラメータによってばね力のより強い漸増を生じさせるのかを直観的に示している。なぜならば、バウンドの際、第1のレバー5.1のXパラメータが大きいほど、点P1がより強く変位するからである。
【0082】
類似のことは、当然ながら、第2のレバー5.2に対する類似の観察時にも当てはまる。本発明者らの研究から、両方のレバーのX値とY値との和が、漸増的、線形かつ/または漸減的な特性に対して特徴的であることがあると判っている。
【0083】
第2のレバーに対するY値は、本実施例では約7cmである。
【0084】
図4には、
図1に示した実施例にかなり類似した板ばね4の実施例が示してある。しかしながら、この実施例では、長さ可変の第1のレバー5.1が存在していないため、板ばね4のばね予荷重が固定されている。
【0085】
図5には、ばね撓みに対する、
図1に示した実施例に基づく板ばね4のばね力がプロットしてある(濃色の方の上昇曲線)。さらに、例えば最近のモトクロス用モータサイクルにおいて所望されているばね力の漸増を示す別の線を、明灰色で認めることができる。これに関連して、漸増とは、ばねが撓むようにバウンドする際にばね力が非線形に上昇する、つまり、「上向きの曲線」を認めることができることを意味している。
【0086】
図5に示した線図における鉛直な線は、例えばゴムストッパ(「バンプラバー」とも呼ばれる)を介して実現される、
図1に示した構成によるモータサイクル1の最大のばね撓みを示している。
【0087】
認められるように、実際の曲線は、最大のばね撓みに達するまで所望のばね撓みに極めて合致しており、より大きな理論上のばね撓みにおいて初めて、より大きな偏差を示している。
【0088】
最大のばね撓みの終了付近のより小さな偏差は、例えば、より硬質のバンプラバー、拡大されたバンプラバーまたは別の形態に変更されたバンプラバーによって補償されてもよい。
【0089】
すでに述べたように、本発明によれば、ばね長さは先行技術よりも著しく短い。これは、3点曲げ梁コンセプトにおいて、最大の曲げモーメントが常に中央の取付け部に生じることに関係している。この場合、外側の両方の取付け点には、かなり少ない曲げモーメントしか発生せず、したがって、板ばね4にばね長さにわたってかなり不均一な荷重が加えられる。この問題は、ばね厚さおよび層構造によって幾分か阻止することができるものの、それにもかかわらず、高い荷重および低い荷重が加えられる領域が存在し続ける。本発明によれば、板ばね4全体に比較的不変の曲げモーメントによって荷重が加えられる。均一な荷重を加えることによって、生じる変形をばね長さ全体に極めて均一に分散させることができる。明示するために、
図6aおよび
図6b(
図6aは内面、
図6bは外面、内面は走行方向で後向きである)では、完全なバウンド状態での外繊維歪みが下側に示してある。
【0090】
しかしながら、すでに述べたように、板ばね4をGFK構造形態で製造する必要はない。ある実施形態では、特に湾曲部および/または板ばね4が一定の厚さで設けられていない場合、例えば金属製の板ばね4が使用されてもよい。
【0091】
図7a~
図7dには、板ばね4と、第1のレバー5.1と、第2のレバー5.2とを備えた本発明による板ばね装置の様々な実施形態が示してある。このために、
図5に類似して、それぞればね撓みに対するばね力に関する線図が示してある。板ばね4は、
図7a~
図7dでは、それぞれ同一に形成されている。つまり、
図7a~
図7bは、第1のレバー5.1および第2のレバー5.2の構成の点でしか異なっていない。
【0092】
図8a~
図8dには、板ばね4と、第1のレバー5.1と、第2のレバー5.2とを備えた本発明による板ばね装置の様々な実施形態が示してある。
【0093】
同図から認めることができるように、ばね撓みに対するばね力は、第1のレバー5.1および第2のレバー5.2の構成に決定的に左右される。同時に、これは、所望のばねキネマティクスを本発明によって容易に実現することができることを示している。
【0094】
図9a~
図9cには、別の実施例が示してある。
図9a~
図9cに示した第2のレバー5.2において認めることができるように、レバーは、常に板ばねに対して鋭角を成している必要はない。ピボット軸線を板ばね4に対して(本来では板ばね4の仮想延長線に対して)横方向にずらすレバーも本発明の範囲内で難なく使用されてよい。
【0095】
さらに、
図9a~
図9cには、ほぼ三角形である第1のレバー5.1が示してある。このような実施形態では、各々のレバーと板ばね4とが成す角度wが、以下の両方の線、つまり、
- 板ばね4の長手方向軸線Aに対して平行な線
- ピボット軸線の中心点から、板ばね4が第1のレバー5.1に対する緊締部を越えて突出する(つまり、完全に板ばね4の端部までではない)点までの線
によって挟まれる角度を意味していることに留意されたい(
図9a参照)。
【0096】
別の実施形態が可能である。例えば、
図1(または別の全ての実施例)に示したばね装置が単純に反転されて組み込まれてもよい。つまり、第1のレバー5.1および第1のピボット軸受6.1と第2のレバー5.2および第2のピボット軸受6.2との位置が入れ換えられ、板ばねが水平線に対して鏡像対称的に組み付けられる(キネマティック反転)。第1のピボット軸受6.1が、例えばエンジン16に直に取り付けられていてもよい。
【0097】
本発明の利点をさらに記載しておくと、(許容可能な漸増的なばね力を有する)公知の解決手段と比較した第1の利点は、改善された詰込みである。ばねをより簡単に車両レイアウト内に組み込むことができ、最低地上高の損失が生じない。この場合、車両内でのこの位置決めに対する前提条件は、比較的短いばね長さである。
【0098】
より小さな寸法に起因して、次の利点、つまり、より少ない重量が得られる。
【0099】
極めて重要な更なる利点は、頑強性というテーマである。なぜならば、公知の解決手段では、ここに明確に問題があったからである。前方からの硬い落石に対する防護は、(エンジンハウジングによって保護された状態での)ばねの隠れた位置決めによって行われる。砂やより小さな汚れパーティクルによる「通常」の汚れは、転支体の省略によって問題にならない。なぜならば、両方の緊締部において(ばねとクランプ部との間で)相対運動が生じないからである。これと比較して、公知の解決手段では、このことが極めて問題となっている。(ばねと転支体との間の)接触箇所に幾分か砂があると、あらゆるバウンドおよびリバウンド時に砂粒が擦れて、急速に摩損が生じてしまう。
【0100】
大量生産用途に関する更なる利点は、フレームにおける製造誤差に対する影響がより小さいことである。実際、特にフレームには、(溶接構成に起因して)ある程度のばらつきを覚悟しなければならない。しかしながら、支えの省略および回動可能な支承によって、結果的に生じるばね力への製造誤差の影響が減じられる。
【0101】
万全を期すために、力導入または力作用方向というテーマにも言及しておかなければならない。(発生した力が、縁部からインタフェース、例えばフットレスト、ハンドルおよびシートベンチを介してライダーに作用するような)パワーフローが個々人のライドフィーリングに影響を及ぼすことが経験から判っている。ここでは、変化する力導入によって、ライドフィーリングの改善を見込むことができる。
【0102】
本発明は経済的な利点をも提供するため、板ばねコンセプトを実際に大量生産マシンに使用することができる。本発明は、意識的に極めて単純と考えられている。つまり、全体として、より少なくてより単純な構成部材が使用される。全体をひっくるめて評価すると、より少ない構成部材によって、構成部材コストがより低くなり、組立て手間もより少なくなる。そして、これによって、より好都合な製品が得られる。システム全体から離れて板ばね4自体だけを考慮すると、ここでも経済的な利点が得られる。本発明による板ばね4は著しく小さく形成されており、ひいては、必要となる材料もより少なくて済む。
【0103】
付加的には、さらに、製造に即したデザインに重きを置くこともできる。本発明によれば、板ばね4は、比較的一定の曲げモーメント推移に基づき、かなり不変の肉厚を有することができ、これによって、多数の一貫した織物層を有することもできる。これと比較して、公知の解決手段における板ばね4は、中央に著しく大きな横断面を有しており、これは、中央に付加的な短い織物層が一緒に挿入されなければならず、層構造が象徴的にピラミッドのように見えることによって達成される。構成部材数における結論に類似して、ここでも、より少ない層は、板ばね4のより少ない製造の手間、ひいてはより低い製造コストを意味している。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルトラック車両、特にモータサイクルであって、
フレーム(2)と、
前記フレーム(2)に対して回転可能なスイングアーム(3)と、
前記スイングアーム(3)と前記フレーム(2)との間でばね作用を得るために、一方では前記フレーム(2)に結合されており、他方では前記スイングアーム(3)に結合されている板ばね(4)と、
を備える、シングルトラック車両において、
前記板ばね(4)は、第1のレバー(5.1)と第1のピボット軸受(6.1)とを介して前記フレーム(2)に結合されており、これによって、前記第1のピボット軸受(6.1)の第1のピボット軸線が、前記第1のレバー(5.1)に基づき前記板ばね(4)に対して横方向にずらされており、かつ/または
前記板ばね(4)は、第2のレバー(5.2)と第2のピボット軸受(6.2)とを介して前記スイングアーム(3)に結合されており、これによって、前記第2のピボット軸受(6.2)の第2のピボット軸線が、前記第2のレバー(5.2)に基づき前記板ばね(4)に対して横方向にずらされている
ことを特徴とする、シングルトラック車両。
【請求項2】
前記第1のピボット軸受(6.1)は前記フレーム(2)に直接配置されており、かつ/または、前記第2のピボット軸受(6.2)は前記スイングアーム(3)に直接配置されていることを特徴とする、請求項1記載のシングルトラック車両。
【請求項3】
前記板ばね(4)は、専ら2つの結合部材、特に前記第1のレバー(5.1)および前記第2のレバー(5.2)を介して前記モータサイクル(1)の残りの部分に接触していることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項4】
前記第1のレバー(5.1)は前記板ばね(4)と共に直角または鋭角を成しており、かつ/または、前記第2のレバー(5.2)は前記板ばね(4)と共に直角または鋭角を成していることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項5】
前記第1のレバー(5.1)および/または前記第2のレバー(5.2)は、前記板ばね(4)のばね予荷重および/またはばね硬さを調整するために長さ調整可能であることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項6】
前記板ばね(4)は、第1の端部(7)と第2の端部(8)とを備えたフラットな本体として形成されており、前記板ばね(4)は、好ましくは、バウンド時に前記板ばね(4)の前記第1の端部(7)と前記第2の端部(8)とが走行方向で見て後方に撓むように配置されていることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項7】
前記板ばねの前記第1の端部(7)は、前記第1のレバー(5.1)に姿勢不変に緊締されており、かつ/または、前記板ばね(4)の前記第2の端部(8)は、前記第2のレバー(5.2)に姿勢不変に緊締されていることを特徴とする、請求項6記載のシングルトラック車両。
【請求項8】
前記板ばね(4)は第1の湾曲部(9.1)および/または第2の湾曲部(9.2)を有することを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項9】
前記第1の湾曲部(9.1)と前記第2の湾曲部(9.2)とによって、S字形状が形成されており、前記第2の湾曲部(9.2)は、好ましくは、前記第1の湾曲部(9.1)よりも著しく顕著であることを特徴とする、請求項8記載のシングルトラック車両。
【請求項10】
前記板ばね(4)は、繊維強化されたプラスチックとして製造されており、前記板ばね(4)を製造するために、それぞれ異なる長さの多数の積層された繊維強化層が、前記プラスチックまたは前記プラスチックの前駆体によってフラッディング処理されることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項11】
前記板ばねの長手方向軸線(A)に関して、
前記板ばね(4)の一定の厚さの第1の領域(11)と、
前記第1の領域(11)に続く、前記板ばね(4)の可変の厚さの第2の領域(12)と、
前記第2の領域(12)に続く、前記板ばね(4)の一定の厚さの第3の領域(13)と、
が生じていることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項12】
前記第1のピボット軸受(6.1)と前記第2のピボット軸受(6.2)とは、実質的に互いに上下に配置されていることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項13】
前記スイングアーム(3)への前記板ばね(4)の結合部材、特に前記第2のピボット軸受(6.2)は、前記スイングアーム(3)を前記フレーム(2)に結合するメインピボットジョイント(14)と、車軸(15)との間に配置されており、前記スイングアーム(3)への前記板ばね(4)の前記結合部材は、好ましくは、前記車軸(15)よりも前記メインピボットジョイント(14)の近くに配置されていることを特徴とする、請求項
1記載のシングルトラック車両。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のシングルトラック車両(1)での板ばね(4)の使用。
【国際調査報告】