(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】改善された抗バイオフィルムアッセイ法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575396
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 US2022032525
(87)【国際公開番号】W WO2022261112
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517317347
【氏名又は名称】アダプティブ ファージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Adaptive Phage Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリー, ワカス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ10
4B063QQ61
4B063QR66
4B063QR75
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
細菌バイオフィルムに対する活性物質の抗バイオフィルム活性を決定するための方法。本方法は少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で培養培地中において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程を含む。その後、少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズは浮遊細菌から分離されて、浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供する。その後、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズは容器(例えば、ウェルプレートのウェル)に無菌的に移される。その後、増殖培地、代謝色素および既知量の目的の活性物質が、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含むその容器または各容器に添加される。その後、その増殖培地、代謝色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズは、その容器または各容器においてインキュベートされる。その容器または各容器における代謝色素の色強度の何らかの変化が測定され、その細菌バイオフィルムに対するその活性物質の活性が、その容器または各容器におけるその色強度に基づいて決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌バイオフィルムに対する活性物質の抗バイオフィルム活性を決定するための方法であって、
少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程;
浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供するために、該少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを浮遊細菌から分離する工程;
洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを容器に移す工程;
増殖培地、バイオフィルム色素および既知量の目的の活性物質を、該洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む容器に添加する工程;
該増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズを該容器または各容器においてインキュベートする工程;
該容器または各容器における代謝色素の色の強度のなんらかの変化を測定する工程;ならびに
該ウェルまたは各ウェルにおける該色の強度に基づいて、該細菌バイオフィルムに対する該活性物質の活性を決定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記活性物質が抗生物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性物質がバクテリオファージである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性物質が、抗生物質と抗生物質との組合せ、抗生物質と抗菌化合物との組合せ、ファージとファージとの組合せ、またはファージと抗菌化合物との組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の既知量の前記目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第1の容器に添加する工程;
少なくとも1種の他の既知濃度の該目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む少なくとも1個の他の容器に添加する工程;ならびに
該第1のウェルにおける色の強度と該他の容器における色の強度との間の差に基づいて、前記細菌バイオフィルムに対する該活性物質の活性を決定する工程
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオフィルム色素が代謝色素である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記代謝色素が3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
吸光度が400ナノメートル~700ナノメートルにて測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記増殖培地がトリプトンソイブイヨン培地(TSB)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細菌コロニーが単一細菌コロニーである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用されるビーズが磁性である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌コロニーが、移植されたデバイスおよび/または補綴物を有する患者から単離されたものであり、aluおよび前記ビーズの材料が該移植されたデバイスおよび/または補綴物の材料と合致する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
活性物質の最小バイオフィルム阻止濃度を決定するための方法であって、
少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程;
浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供するために、該少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを浮遊細菌から分離する工程;
洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズをマルチウェルプレートのウェルに移す工程;
増殖培地、バイオフィルム色素および第1の既知量の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第1のウェルに添加する工程;
増殖培地、バイオフィルム色素および第2の既知量の該目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第2のウェルに添加する工程;ならびに
該増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズを該第1のウェルおよび第2のウェルにおいてインキュベートする工程;
該第1のウェルおよび第2のウェルにおける代謝色素の色の強度のなんらかの変化を測定する工程;ならびに
該第1のウェルにおける色の強度と該第2のウェルにおける色の強度との間の差に基づいて、該細菌バイオフィルムに対する該活性物質の最小バイオフィルム阻止濃度を決定する工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記細菌コロニーが、感染症に罹患している患者から単離されたものであり、該感染症は、人工関節感染(PJI)、慢性細菌感染症、急性細菌感染症、難治性感染症、バイオフィルムに関連する感染症、移植型デバイスに関連する感染症、糖尿病性足骨髄炎(DFO)、糖尿病性足感染症(DFI)、肺感染症、例えば、嚢胞性線維症(CF)を有する患者において存在する肺感染症もしくは肺炎、尿路感染症(UTI)、皮膚感染症、例えば、挫瘡もしくはアトピー性皮膚炎、眼感染症、例えば、結膜炎、細菌性角膜炎、眼内炎、もしくは眼瞼炎、敗血症または他の血液感染症から選択される、前述の請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本開示は、一般的には抗菌アッセイに関連し、より詳細には、バイオフィルムに対する活性物質の効力を決定するためのアッセイに関連する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
バイオフィルムは、水和した細胞外マトリックスに包まれた、表面に付着する複雑な三次元細菌集団である。生体表面および無生物表面におけるバイオフィルムの形成は重大な医療上の問題を提示し、バイオフィルムはヒトの疾患および植物感染症の多くの病原形態にしばしば関連する。
【0003】
バイオフィルム関連感染症は、浮遊細菌によって引き起こされる感染症を処置するために最適化された抗生物質または抗生物質の組合せで典型的には処置される。残念ながら、バイオフィルム増殖様式の細菌は、抗生物質での処置に対して非常に耐性がある。したがって、抗生物質が血液中で治療濃度に達するという事実にも関わらず、バイオフィルム感染症は、感染表面が除去されるまでしばしば持続する。
【0004】
抗生物質処置およびファージ処置は、バイオフィルム関連感染症に対する2つの第一選択処置である。しかし、従来のバイオフィルム感受性試験の結果と、慢性感染症における治療の成功との間には、相関関係が欠如している。したがって、バイオフィルムに対する抗微生物活性を評価するためのいくつかのインビトロモデルが、開発された。例えば、バイオフィルムに対する抗生物質の最小阻止濃度は、広範に使用される2種の方法(すなわち、抗生物質の最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)の決定のためのテトラゾリウム色素法、およびMBEC Assay(商標)(以前はCalgaryバイオフィルムデバイス)法)のうちの1種によって、インビトロで一般的には決定される。
【0005】
簡単に述べると、このテトラゾリウム色素法においては、細菌株の培養物がウェルプレートにおいてインキュベートされ、そのウェルにおけるバイオフィルムの存在が、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を使用する代謝色素還元アッセイ法によって決定される。このアッセイにおいて、生細胞がこの色素を還元して、570nmにて読み取られ得る色の形成をもたらし、色の強度は生細胞の数と相関し得る。バイオフィルム阻止研究のために、そのウェルに種々の濃度の抗生物質薬物が投与され、そのウェルの内容物が吸引除去され、そのウェルに付着したバイオフィルムが、上記のMTTアッセイを使用して定量される。そのMBICは、薬物の発色を何も示さない最小濃度として定義される(Nairら、2016)。
【0006】
このMBEC Assay(商標)においては、プラスチックの蓋から広がってバイオフィルムが96個のペグに形成され、その96個のバイオフィルム被覆化ペグを96ウェルプレートに挿入することによって、抗微生物効力試験が実施される。このアッセイの設計は、複製サンプルを用いた複数濃度の複数の殺生物剤の同時試験を可能にする。
【0007】
バクテリオファージ(「ファージ」)を抗バイオフィルム活性についてインビトロでスクリーニングするために使用され得る2種の方法が、文献において広く報告されている。光学密度ベースのアッセイは、バイオフィルム形成およびファージ処理を調査するために使用されるアッセイである。簡単に述べると、バイオフィルムがマイクロタイタープレートにおいて増殖され、ファージが、そのマイクロタイタープレートの洗浄したウェルに添加され、インキュベートされて、そのファージがバイオフィルム細菌集団を停止する/殺すことを可能にする。いったん、その処理時間が終わると、そのプレートは、そのウェルの壁にあるバイオフィルムの塊に結合するクリスタルバイオレット(CV)で染色される。そのCV色素の量が、590nmで光学密度を測定することによって測定される(Merritら、2005)。生細胞計数法においては、バイオフィルム培養物がファージで処理され、処理後に、その細胞は、木製のアプリケーターでウェルの壁からバイオフィルムを引っ掻くことによって浮遊状態にされ、その後、その培養物をホモジナイズするためにシリンジ針に通される。生菌の密度およびファージの密度が、段階希釈およびプレーティングによって評価される(Chaudhryら、2017)。
【0008】
相乗作用的なファージ-抗生物質の組合せもまた、バイオフィルム関連感染症を処置するために使用されており、クリスタルバイオレットファージ-抗生物質バイオフィルム相乗作用試験アッセイ(Comeauら、2007)および生細胞計数アッセイ(Chaudhryら、2017)もまた、抗バイオフィルム活性についてファージ-抗生物質の相乗作用をインビトロでスクリーニングするために使用されている。
残念ながら、多くの従来のアッセイ法は時間がかかり、いくつかは結果を生じるのに3日間~5日間かかる。さらに、多くの従来のアッセイ法、リアルタイムでは結果を提供せず、かつ/または強固で再現性のある結果を生じない。本出願人はまた、細菌バイオフィルムに対する最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)を決定するためのいかなる現行の商業的診断試験も知らない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nair S, Desai S, Poonacha N, Vipra A, Sharma U. Antibiofilm Activity and Synergistic Inhibition of Staphylococcus aureus Biofilms by Bactericidal Protein P128 in Combination with Antibiotics. Antimicrob Agents Chemother. 2016 Nov 21;60(12):7280-7289. doi: 10.1128/AAC.01118-16. PMID: 27671070; PMCID: PMC5119008.
【非特許文献2】Merritt, J. H., Kadouri, D. E., & O’Toole, G. A. (2005). Growing and analyzing static biofilms. Current protocols in microbiology, Chapter 1, Unit-1B.1. https://doi.org/10.1002/9780471729259.mc01b01s00.
【非特許文献3】Chaudhry WN, Concepcion-Acevedo J, Park T, Andleeb S, Bull JJ, Levin BR. Synergy and Order Effects of Antibiotics and Phages in Killing Pseudomonas aeruginosa Biofilms. PLoS One. 2017 Jan 11;12(1):e0168615. doi: 10.1371/journal.pone.0168615. PMID: 28076361; PMCID: PMC5226664.
【非特許文献4】Comeau AM, Tetart F, Trojet SN, Prere MF, Krisch HM (2007) Phage-antibiotic synergy (PAS): β-lactam and quinolone antibiotics stimulate virulent phage growth. PLoS One 2:e799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、従来の方法に関連する問題のうちの1つまたは複数を克服する、活性物質(例えば、抗生物質、ファージおよび抗生物質-ファージの組合せ)の抗バイオフィルム活性を決定するためのインビトロ方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
本開示の第1の局面にしたがって、細菌バイオフィルムに対する活性物質の抗バイオフィルム活性を決定するための方法が本明細書において提供され、この方法は、
少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程;
浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供するために、その少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを浮遊細菌から分離する工程;
洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを容器に移す工程;
増殖培地、バイオフィルム色素および既知量の目的の活性物質を、その洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む容器に添加する工程;
その増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズをその容器または各容器においてインキュベートする工程;
その容器または各容器における代謝色素の色の強度のなんらかの変化を測定する工程;ならびに
そのウェルまたは各ウェルにおけるその色の強度に基づいて、その細菌バイオフィルムに対するその活性物質の活性を決定する工程
を含む。
【0012】
一部の実施形態において、その活性物質は抗生物質である。
【0013】
一部の実施形態において、その活性物質はバクテリオファージである。
【0014】
一部の実施形態において、その活性物質は、抗生物質と、バクテリオファージまたは1種よりも多いバクテリオファージとを含む。
【0015】
一部の実施形態において、その方法は、
第1の既知量の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第1の容器に添加する工程;
少なくとも1種の他の既知濃度の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む少なくとも1個の他の容器に添加する工程;ならびに
その第1のウェルにおける色の強度とその他の容器における色の強度との間の差に基づいて、その細菌バイオフィルムに対するその活性物質の活性を決定する工程
を含む。
【0016】
一部の実施形態において、そのバイオフィルム色素は代謝色素(例えば、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT))である。
【0017】
一部の実施形態において、その増殖培地はトリプトンソイブイヨン培地(TSB)である。
【0018】
一部の実施形態において、その細菌コロニーは単一細菌コロニーである。
【0019】
本開示の第2の局面にしたがって、活性物質の最小バイオフィルム阻止濃度を決定するための方法が本明細書において提供され、その方法は、
少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程;
その少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを浮遊細菌から分離して、浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供する工程;
洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズをマルチウェルプレートのウェルに移す工程;
増殖培地、バイオフィルム色素および第1の既知量の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第1のウェルに添加する工程;
増殖培地、バイオフィルム色素および第2の既知量の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第2のウェルに添加する工程;ならびに
その該増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズをその第1のウェルおよび第2のウェルにおいてインキュベートする工程;
その第1のウェルおよび第2のウェルにおける代謝色素の色の強度のなんらかの変化を測定する工程;ならびに
その第1のウェルにおける色の強度とその第2のウェルにおける色の強度との間の差に基づいて、その細菌バイオフィルムに対するその活性物質の最小バイオフィルム阻止濃度を決定する工程
を含む。
【0020】
(図面の簡単な説明)
本開示の実施形態が、添付の図面を参照して議論される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態を示す模式図である。
【0022】
【
図2】
図2は、本開示の実施形態にしたがうMBICアッセイにおける使用のために適切なビーズを含む96ウェルプレートの配置を示す。
【0023】
【
図3】
図3は、ファージ存在下(Φ)およびファージ非存在下(対照)での浮遊細菌(上の2段のパネル)およびバイオフィルム細菌(下の2段のパネル)の代謝活性を示す。
【0024】
【
図4】
図4は、ファージ、抗生物質、またはそれらの組合せの存在下での浮遊細菌およびバイオフィルム細菌の代謝活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態の説明)
本明細書において使用される用語の詳細が、本開示の実施において当業者を導くことを目的として以下に提供される。本開示における用語法は、特定の実施形態のより良い説明を提供する目的のために有用であることが理解され、本開示における用語法は、限定するものと見なされるべきではない。
【0026】
別途説明されない限りは、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属す分野の当業者によって一般的に理解されるとのと同じ意味を有する。
【0027】
本開示の文脈において、用語「約」および「およそ」は量、数、また値と組み合わせて使用され、その場合、その組合せは、記載された量のみ、数のみ、または値のみ、ならびにその量、数、または値プラスその量、数、または値の10%、あるいはその量、数、または値マイナスその量、数、または値の10%を記載する。例として、語法「約40%」および「およそ40%」は、「40%」および「36%~44%(両端を含む)」の両方を開示する。
【0028】
本開示の文脈において、「有効量」および関連する用語は、所望される反応を誘導するために必要とされる量を意味する。
【0029】
本開示の文脈において、「ファージ」および関連する用語は、細菌ウイルスであるバクテリオファージを意味する。
【0030】
単数形「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、そうではないことを文脈が明示しない限りは、複数の指示物を含む。用語「含む(包含する)(comprise)」は「含む(含有する)(include)」を意味する。したがって、「A」または「B」を含むとは、Aを含む、Bを含む、またはAおよびBの両方を含むことを意味する。核酸またはポリペプチドについて与えられるすべての塩基のサイズまたはアミノ酸のサイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は、概数であり、説明のために提供されることが、さらに理解されるべきである。
【0031】
本明細書において記載される方法および材料と類似するかまたは等価である方法および材料が本開示の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料が本明細書において記載される。矛盾する場合は、用語の説明を含む本明細書が統制する。さらに、それらの材料、方法、および例は提示に過ぎず、それらは限定することは意図されない。
【0032】
細菌バイオフィルムに対する活性物質の抗バイオフィルム活性を決定するための方法が、本明細書において開示される。その方法は、少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程を含む。その後、その少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズは浮遊細菌から分離されて、浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供する。その後、その洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズは、容器(例えば、ウェルプレートのウェル)に無菌的に移される。その後、増殖培地、代謝色素および既知量の目的の活性物質が、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含むその容器または洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む各容器に添加される。その後、その増殖培地、代謝色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズは、その容器または各容器においてインキュベートされる。その容器または各容器における代謝色素の色の強度のなんらかの変化が測定され、その細菌バイオフィルムに対するその活性物質の活性が、その溶液または各容器におけるその色の強度に基づいて決定される。
【0033】
その活性物質は、任意の抗菌部分または可能性のある抗菌部分(例えば、抗生物質、ファージ、殺生物剤、消毒剤または重金属)であり得る。
【0034】
一部の実施形態において、その活性物質は抗生物質である。したがって、本明細書において開示される方法は、バイオフィルム感染症に対する抗生物質の最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)を決定するための迅速で正確で信頼性のある方法を提供する。任意の既知の抗生物質が、本明細書において開示される方法を使用してアッセイされ得る。一部の一般的な抗生物質としては、細菌細胞壁を標的とする抗生物質(ペニシリンおよびセファロスポリン)または細胞膜を標的とする抗生物質(ポリミキシン)、細菌の必須酵素に干渉する抗生物質(リファマイシン、リピアルマイシン、キノロン、およびスルホンアミド)、タンパク質合成阻害剤(マクロライド、リンコサミド、およびテトラサイクリン)、グラム陰性抗生物質、グラム陽性抗生物質、広域スペクトル抗生物質、環状リポペプチド(例えば、ダプトマイシン)、グリシルサイクリン(例えば、チゲサイクリン)、オキサゾリジノン(例えば、リネゾリド)、ならびにリピアルマイシン(例えば、フィダキソマイシン)が挙げられる。
【0035】
一部の実施形態において、その活性物質はファージである。したがって、本明細書において開示される方法は、ファージをバイオフィルムにマッチングする迅速で正確で信頼性のある方法を提供する。そのようなファージの例としては、PCT/US21/25794(その全体が参照によって本明細書に援用される)において開示される、APT-PJI-01、APT-PJI-02、APT-PJI-03、APT-PJI-04、APT-PJI-05、APT-PJI-06、APT-PJI-07、APT-PJI-08、APT-PJI-09、APT-PJI-10、APT-PJI-11、APT-PJI-12、APT-PJI-13、APT-PJI-14、APT-PJI-15、APT-PJI-16、APT-PJI-17、APT-PJI-18、APT-PJI-20、APT-PJI-21、APT-PJI-22、APT-PJI-23、APT-PJI-24、APT-PJI-25、APT-PJI-26、APT-PJI-27、APT-PJI-28、APT-PJI-29、APT-PJI-30、APT-PJI-31、APT-PJI-32、APT-PJI-33、APT-PJI-34、APT-PJI-35、APT-PJI-36、APT-PJI-37、APT-PJI-38、APT-PJI-39、APT-PJI-40、APT-PJI-41、APT-PJI-42、APT-PJI-43、APT-PJI-44、APT-PJI-45、APT-PJI-46、APT-PJI-47、APT-PJI-48、APT-PJI-49、および/またはAPT-PJI-50から選択されるファージが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0036】
一部の実施形態において、その活性物質は抗生物質およびバクテリオファージを含む。したがって、本明細書において開示される方法は、バイオフィルム感染症に対する迅速で正確で信頼性のあるファージ-抗生物質相乗作用試験を提供する。
【0037】
その活性物質はまた、抗生物質と抗生物質との組合せ、抗生物質と抗菌化合物との組合せ、ファージとファージとの組合せ、またはファージと抗菌化合物との組合せであり得、本明細書において開示される方法は、バイオフィルム感染症に対するそのような任意の組合せの相乗作用を試験するために使用され得る。
【0038】
活性物質のMBICは、第1の既知量の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第1のウェルに添加すること、および少なくとも1種の他の既知濃度の目的の活性物質を、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む少なくとも1個の他のウェルに添加することによって、決定され得る。細菌バイオフィルムに対する種々の濃度の活性物質の活性が、その第1のウェルにおける色の強度とその他のウェルにおける色の強度との間の差に基づいて決定され得る。したがって、活性物質の最小バイオフィルム阻止濃度を決定するための方法もまた、本明細書において開示される。その方法は、少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地において細菌コロニーを少なくとも1個のビーズと接触させて培養する工程を含む。その少なくとも1個のバイオフィルム被覆化ビーズは浮遊細菌から分離されて、浮遊細菌を実質的には含まない少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供し、その後、その少なくとも1個の洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズはマルチウェルプレートのウェルに移される。増殖培地、バイオフィルム色素および第1の既知量の目的の活性物質が、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第1のウェルに添加され、増殖培地、バイオフィルム色素および第2の既知量の目的の活性物質が、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを含む第2のウェルに添加される。その第1のウェルおよび第2のウェルにおける増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズはインキュベートされ、その第1のウェルおよび第2のウェルにおける代謝色素の色の強度のなんらかの変化が測定される。その後、その細菌バイオフィルムに対するその活性物質の最小バイオフィルム阻止濃度が、その第1のウェルにおける色の強度と第2のウェルにおける色の強度との間の差に基づいて、決定され得る。
【0039】
そのビーズは、ガラス、金属、ゴム、プラスチック、複合物質などから製造され得、バイオフィルム増殖のために適切な表面を有し得る。例えば,ビーズは、適切な材料(例えば、ヒドロキシアパタイト、ポリスチレン、ゴムラテックス、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、デキストラン、シリカ、炭素、または他の適切な材料)で被覆され得る。そのビーズは、任意の適切なサイズ、例えば、例えば、少なくとも2mm~少なくとも8mmのサイズ、または少なくとも2mm~少なくとも4mmのサイズ、または少なくとも2mm~少なくとも6mmのサイズ、または少なくとも2mm~少なくとも8mmのサイズ、または4mm~少なくとも8mmのサイズ、または少なくとも4mm~少なくとも6mmのサイズ、または少なくとも6mm~少なくとも8mmのサイズ、または少なくとも2mmのサイズ、または少なくとも4mmのサイズ、または少なくとも6mmのサイズ、または少なくとも8mmのサイズであり得る。特定の実施形態において、そのビーズは4mmビーズである。
【0040】
必要に応じて、そのビーズは磁性であり得る。そのビーズは、任意の公知の滅菌法を使用して、使用前に滅菌される。
【0041】
細菌コロニーが、バイオフィルム被覆化ビーズを形成する条件下で、培養培地においてビーズと接触して培養される。その細菌コロニーは、目的の単一細菌コロニーであり得る。その細菌は、グラム陽性、例えば、Bacillusspp、Listeria monocytogenes、Staphylococcus spp、および乳酸菌(Lactobacillus plantarumおよびLactococcus lactisが挙げられる)であり得、またはその細菌は、グラム陰性種、例えば、Escherichia coli、またはPseudomonas aeruginosaであり得る。Staphlococcusの好ましい例としては、S.aureus、S.epidermidis、S.capitis、S.caprae、S.warneri、またはS.lugdunensisが挙げられるが、それらに限定はされない。さらなる好ましい実施形態において、その細菌単離物はまた、Enterococcus spp.(E.fecalisおよびEnterococcus feciumが挙げられる)、他のコアグラーゼ陰性Staphylococcusの種(S.simulansが挙げられる)、Streptococcus spp.(ランスフィールド分類A群、B群、C群およびG群、S.agalactiaeならびにS.pneumoniaeが挙げられる)、好気性グラム陰性細菌(E.coliが挙げられる)、他のEnterobacteriaceae(Enterobacter clocaeが挙げられる)、Clostridium spp.、Actinomyces spp.、Peptostreptococcus spp.、Cutibacterium acnes、Klebsiella pneumoniae、P.aeruginosaならびにBacteroides fragilisのうちの少なくとも1種から選択される細菌を有し得る。なおさらなる実施形態において、その細菌は多剤耐性(「MDR」)細菌であり得る。このスクリーニングに含まれ得るMDR細菌の例としては、「ESKAPE」病原体(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa、およびEnterobacter sp)が挙げられるが、それらに限定はされず、これらは、しばしば自然に病院内に存在し、重篤な局所感染症および全身感染症を引き起こし得る。詳細には、これらとしては、例えば、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA);バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VRE);カルバペネム耐性Klebsiella pneumonia(NDM-1);MDR-Pseudomonas aeruginosa;およびMDR-Acinetobacter baumanniiが挙げられる。
【0042】
任意の適切な培養培地が、その細菌コロニーを培養するために使用され得る。一部の実施形態において、その培養培地はトリプトンソイブイヨン培地(TSB)である。その培養培地は、出発培養物としての新たに画線培養されたプレートから単一細菌コロニーを接種され得る。その細菌コロニーは、ビーズの存在下で任意の適切な容器(例えば、1ウェル当たりおよそ20個のビーズを含むウェルプレート)において培養され得る。
【0043】
その細菌コロニーは、37℃にて適切な時間(例えば、24時間)、振盪しないインキュベーションによって培養され得る。その細菌はその培地において増殖し、これらの条件下でビーズの表面にバイオフィルムを形成する。この方法は、バイオフィルムを形成するための比較的簡単な方法を提供する。
【0044】
そのバイオフィルム被覆化ビーズは浮遊細菌から分離されて、洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズを提供する。有利なことに、本明細書において開示される方法は、浮遊細菌をビーズのバイオフィルムから除去し、それにより、アッセイに対する浮遊細菌からの緩衝を防止、最小化、または減少するための、簡単で有効で信頼できる方法を提供する。浮遊細菌は、自由に浮遊し、ビーズには緩く付着した細菌である。それらは、血清ピペットで除去されて、ウェル中にビーズを残し得る。その後、そのビーズは適切な溶液(例えば、PBS)で取り出され得る。その後、その溶液は除去され得る。そのビーズは、望ましい数のサイクルで再洗浄され得る。このプロセスは、そのビーズから実質的にすべての浮遊細菌細胞を除去する。洗浄サイクル中にウェルにおいてビーズを懸濁することによって、バイオフィルム破壊を最小にする。
【0045】
その後、その洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズは、適切な容器(例えば、ウェルプレートのウェル)に、各容器中に1個のビーズが存在するように移される。その洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズは、任意の適切な方法(滅菌済み鉗子を用いること、滅菌済みピペットを用いること、またはビーズが磁性である場合には磁気を使用することが挙げられる)を使用して、移され得る。望ましい場合は、その洗浄されたバイオフィルム被覆化ビーズは、無菌的に移され得る。
【0046】
一部の実施形態において、そのアッセイは、移植されたデバイスまたは補綴物を有する患者におけるバイオフィルム形成を評価するために使用され得、そのアッセイにおいて、細菌がその患者から単離され、その患者における移植されたデバイスの材料と合致するビーズの材料が選択される。他の実施形態において、その細菌は、感染症に罹患している患者から単離され、その感染症は、人工関節感染(PJI)、慢性細菌感染症、急性細菌感染症、難治性感染症、バイオフィルムに関連する感染症、移植型デバイスに関連する感染症、糖尿病性足骨髄炎(DFO)、糖尿病性足感染症(DFI)、肺感染症)例えば、嚢胞性線維症(CF)を有する患者において存在する肺感染症もしくは肺炎)、尿路感染症(UTI)、皮膚感染症(例えば、挫瘡もしくはアトピー性皮膚炎)、眼感染症(例えば、結膜炎、細菌性角膜炎(bacterial kaeratitis)、眼内炎、もしくは眼瞼炎)、敗血症または他の血液感染症から選択される。
【0047】
そのウェルプレートは、任意の適切なウェルプレート、例えば、96ウェルHRQT Biologプレートであり得る。本明細書において使用される場合、「HRQT」とは「Host Range Quick Test」を表す。このHRQTアッセイはBiolog機器において実施され得、細菌の代謝活性に起因するテトラゾリウム色素の色の変化を測定し得る。現在、本発明者らは、ファージと対照浮遊(PLANKTONIC)(自由に浮遊する)細菌集団とのマッチングのためにこの試験を使用している。
【0048】
その後、増殖培地、バイオフィルム色素および既知量の目的の活性物質が、各ウェルに添加される。
【0049】
その増殖培地は、任意の適切な増殖培地(例えば、トリプトンソイブイヨン培地(TSB))であり得る。
【0050】
そのバイオフィルム色素は、任意の公知の色素(例えば、サフラニン)、代謝色素(例えば、テトラゾリウムベースの色素)、レサズリン(rezazurin)色素、および他の蛍光標識であり得る。特定の具体的な実施形態において、そのバイオフィルム色素は代謝色素であり、より詳細にはテトラゾリウムベースの色素、例えば、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)である。
【0051】
そのバイオフィルム色素は、増殖培地に溶液(例えば、増殖培地において1%のバイオフィルム色素溶液)として添加され得る。
【0052】
その後、その増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズは、そのウェルにおいてインキュベートされる。好都合には、増殖培地、バイオフィルム色素、目的の活性物質およびバイオフィルム被覆化ビーズを含むウェルを備えた96ウェルHRQT/BiologプレートがHRQT/Biolog機器においてインキュベートされ、このHRQT/Biolog機器は、15分間ごとに色の読取り値を読み取る。
【0053】
各ウェルにおけるバイオフィルム色素の色の強度のなんらかの変化が、HRQT/Biolog機器において測定される。HRQT/Biolog機器のカメラはプレートの上から写真を撮影して、バイオフィルム色素の色の変化を測定する。活性物質の存在下で細菌が代謝するにつれてその色素は色または色の強度が変化するので、細菌バイオフィルムに対するその活性物質の活性が、各ウェルにおけるその色または色の強度に基づいて決定され得る。このHRQTの自動化は、その結果をリアルタイムで提供し得る。
【0054】
あるいは、細菌バイオフィルムに対する活性物質の活性は、光学密度ベースのプレートリーダーを使用して測定および決定され得る。
【0055】
本明細書において開示される方法は、目的の活性物質の最小阻止濃度(MIC)、最小致死濃度(MBC)または最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)を決定するために使用され得、診断実験室、病院または研究実験室において使用され得る。
【実施例】
【0056】
(実施例)
(実施例1-バイオフィルム感染症に対する抗生物質の最小バイオフィルム阻止濃度(MBIC)を決定するための方法)
抗生物質のMBICを以下の方法によって決定した:
・4mm滅菌済みビーズを6ウェルプレートに、1ウェル当たりおよそ20個のビーズで添加する。
・5mLのTSB培地をその6ウェルプレートの各ウェルに添加し、出発培養物としての新たに画線培養したプレートから単一細菌コロニーを接種する。
・そのプレートを振盪せずに37℃にて24時間インキュベートする。
図1の工程1において示されるとおり、その細菌はその培地において増殖し、ガラスビーズの表面にバイオフィルムを形成する。
・その浮遊培養物(自由に浮遊し、ビーズに緩く付着した細菌)を血清ピペットで除去し、そのウェル中にビーズを残す。
・7mLのPBSを添加してそのビーズを洗浄し、そのPBSを除去し、そのビーズをPBSで再洗浄する。これは、すべての浮遊細菌細胞をそのビーズから除去する。
・滅菌済み鉗子を使用してそのビーズを取り出し、そのビーズを、1ウェル当たり1個のビーズが存在するようにHRQT Biologプレートに移す。12列目に、バイオフィルムの無いビーズを対照として添加する。ビーズを含む96ウェルプレートの配置を、
図2に示す。
・1%代謝色素テトラゾリウムを含むTSB培地を各ウェルに100μl添加する。
・1列目において、テトラゾリウムTSB培地中に生成した目的の抗生物質を最高濃度で添加する。
・マルチピペットを使用して、その薬物を混合し、50μlを次の列に移し、そのマイクロピペットのチップを新しいチップと交換し、その薬物を2列目において混合し、その薬物-培地混合物のうちの50μlを採取して次の列に移し、これをそのBiologプレートの10列目に到達するまで行う。
・11列目に薬物は添加しない。その理由は、この11列目は薬物の無い対照であるからである。
・そのプレートをHRQT/Biolog機器においてインキュベートし、15分間ごとに読取り値を得る。
・そのテトラゾリウム代謝色素は、ファージの存在下で細菌がそれを代謝するにつれて色の強度を変化させる。
・HRQT/Biolog機器のカメラは上から写真を撮影して、代謝色素の色の変化を測定する。そのウェル中にビーズが存在することは、機器の機能を邪魔しない。
【0057】
このアッセイは、バイオフィルム試験に対するMBICを測定するための時間を、従来の方法と比較して約1.5日間に減少させ得、このアッセイはその結果をリアルタイムで提供し得る。このアッセイは、制御されており、効率的であり、このアッセイは、強固で再現性のある結果を生じる。
【0058】
さらに、病院における商業的使用のためのMBIC方法は何も存在しない。現在、医師は、浮遊細胞から測定されたMIC値を使用して、MBICを推測する。対照的に、細菌バイオフィルムに対するMBICについての商業的診断試験として本方法を使用し得る。
【0059】
(実施例2-代謝色素および球状ビーズを使用することによって、ファージを抗バイオフィルム活性についてマッチングする方法)
ファージの抗バイオフィルム活性を以下の方法によって決定し得る:
・4mm滅菌済みビーズを6ウェルプレートに、1ウェル当たりおよそ20個のビーズで添加する。
・5mLのTSB培地を6ウェルプレートの各ウェルに添加し、出発培養物としての新たに画線培養したプレートから単一細菌コロニーを接種する。
・そのプレートを振盪せずに37℃にて24時間インキュベートする。
図1の工程1において示されるとおり、その細菌はその培地において増殖し、ガラスビーズの表面にバイオフィルムを形成する。
・その浮遊培養物(自由に浮遊し、ビーズに緩く付着した細菌)を血清ピペットで除去し、そのウェル中にビーズを残す。
・7mLのPBSを添加してそのビーズを洗浄し、そのPBSを除去し、そのビーズをPBSで再洗浄する。これは、すべての浮遊細菌細胞をそのビーズから除去する。
・滅菌済み鉗子を使用してそのビーズを取り出し、1ウェル当たり1個のビーズが存在するようにHRQT Biologプレートに移す。
・1%テトラゾリウム代謝色素と10
7PFU/mLの目的のファージとを補充した100μlのTSB培地を、各ウェルに添加する。ファージの無い対照では、ファージを添加しない。
・そのプレートをHRQT(OmniLog)機器においてインキュベートし、15分間ごとに読取り値を得る。
・そのテトラゾリウム代謝色素は、ファージの存在下で細菌が代謝して増殖するにつれてその色の強度を変化させる。
・HRQT/Biolog機器のカメラは上から写真を撮影し、そのソフトウェアはその代謝色素の色の強度の変化を経時的に測定する。そのウェル中にビーズが存在することは、機器の機能を邪魔しない。
【0060】
上記の方法を、24時間経過したバイオフィルムを使用して、SEMN68細菌、SAMD07ファージ(Φ)を使用して処理時間50時間で実行した。それらの結果を
図3に示す。それらの結果は、バイオフィルム細菌の代謝活性が、ファージ存在下ではファージの無い対照よりも少ないことを示す。
【0061】
(実施例3-細菌代謝色素および球状ビーズを使用することによる、ファージ-抗生物質相乗作用試験の方法)
目的のファージと目的の抗生物質との間のなんらかの相乗作用を、以下の方法によって決定し得る:
・4mm滅菌済みビーズを6ウェルプレートに、1ウェル当たりおよそ20個のビーズで添加する。
・5mLのTSB培地をその6ウェルプレートの各ウェルに添加し、出発培養物としての新たに画線培養したプレートから単一細菌コロニーを接種する。
・そのプレートを振盪せずに37℃にて24時間インキュベートする。
図1の工程1において示されるとおり、その細菌はその培地において増殖し、ガラスビーズの表面にバイオフィルムを形成する。
・その浮遊培養物(自由に浮遊し、ビーズに緩く付着した細菌)を血清ピペットで除去し、そのウェル中にビーズを残す。
・7mLのPBSを添加してそのビーズを洗浄し、そのPBSを除去し、そのビーズをPBSで再洗浄する。これは、すべての浮遊細菌細胞をそのビーズから除去する。
・滅菌済み鉗子を使用してそのビーズを取り出し、1ウェル当たり1個のビーズが存在するように96ウェルHRQT Biologプレートに移す。
・1%代謝色素テトラゾリウムと10
7PFU/mLのファージとを含むTSB培地100μlを、目的の抗生物質の種々の組合せとともに各ウェルに添加する。ファージの無い対照では、ファージを添加しない。
・そのプレートをHRQT/Biolog機器(OmniLog)においてインキュベートし、15分間ごとに読取り値を得る。
・そのテトラゾリウム代謝色素は、ファージの存在下で細菌が代謝して増殖するにつれて色の強度が変化する。
・HRQT/Biolog機器のカメラは上から写真を撮影して、代謝色素の色の強度の変化を測定する。そのウェル中にビーズが存在することは、機器の機能を邪魔しない。
【0062】
休眠細胞を検出するために、処理の完了後に、そのビーズを96ウェルプレートから取り出し、そのビーズをPBSで洗浄し、そのビーズを新鮮なTSB培地とともに新たな96ウェルプレートに配置する。
【0063】
そのビーズが、抗生物質またはファージの存在下で休眠状態であった生細胞を有する場合、その生細胞はその新鮮なTSB培地において増殖し始め、代謝色素の色の強度を変化させる。
【0064】
それらの結果を
図4に示す。
図4において、一番上のパネルは、ファージ存在下およびファージ非存在下(対照)における浮遊細菌の代謝活性を示し、上から2番目のパネルは、1×最小阻止濃度(MIC)のバンコマイシン抗生物質の存在下ならびに1×MICのバンコマイシンおよびファージの存在下でのバイオフィルム細菌の代謝活性を示し、上から3番目のパネルは、1×最小阻止濃度(MIC)のセフトリアキソン抗生物質の存在下ならびに1×MICのセフトリアキソンおよびファージの存在下でのバイオフィルム細菌の代謝活性を示し、上から4番目のパネルは、1×最小阻止濃度(MIC)のリファンピシン抗生物質の存在下ならびに1×MICのリファンピシンおよびファージの存在下でのバイオフィルム細菌の代謝活性を示し、一番下のパネルは、ファージのみの存在下でのバイオフィルム細菌の代謝活性を示す。
【0065】
本明細書において提供される結果は、これらのアッセイがバイオフィルムとファージとのマッチングのための迅速で効率的な方法であり得ることを示す。その理由は、これらのアッセイが、抗バイオフィルム試験のためにファージライブラリーをスクリーニングするための時間を、結果を生じるのに3日間~5日間かかる従来の方法と比較して約1.5日間に減少させ得るからである。これらのアッセイは、その結果をリアルタイムで提供し、それらの結果は強固で再現性がある。
【0066】
このアッセイは、細菌バイオフィルムに対するファージのマッチングのための商業的な診断試験として使用し得、種々の細菌標的のバイオフィルムに対して多数のファージ収集物をスクリーニングして、バイオフィルムに特化したファージを見出すことを助け得る。この同じアッセイをまた使用して、複数のファージ間、ファージと抗生物質との間、または抗生物質間での相乗作用を測定し得る。
【0067】
本明細書におけるいずれかの先行文献に対する参照は、そのような先行文献が技術常識の一部を形成するという承認でもなく、そのような先行文献が技術常識の一部を形成するといういかなる形式の示唆でもなく、本明細書におけるいずれかの先行文献に対する参照はそのような承認ともそのような示唆とも受け取られるべきではない。
【0068】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される用語「含む(包含する)(comprise)」および「含む(含有する)(include)」ならびにそれらの派生形(例えば、含む(包含する)(comprises)、含む(包含する)(comprising)、含む(含有する)(includes)、含む(含有する)(including))のいずれかは、それらの用語が指す特徴を含むと受け取られるべきであり、それらの用語は、そうではないと記載も暗示もされない限りは、なんからの追加的特徴の存在を排除することは意味しないことが、理解される。
【0069】
一部の場合には、単一の実施形態が、簡潔性のため、および/または本開示の範囲を理解することを補助するために、複数の特徴を組み合わせ得る。そのような場合には、これらの複数の特徴は別々に(別個の実施形態において)提供されてもよく、または他の任意の適切な組合せで提供されてもよいことが、理解されるべきである。あるいは、別個の特徴が別個の実施形態において記載される場合、そうではないと記載も暗示もされない限りは、これらの別個の特徴は単一の実施形態に組み合わせられ得る。このことは特許請求の範囲にも適用され得、特許請求の範囲は任意の組合せで組み換えられ得る。すなわち、ある請求項は、他の任意の請求項において規定された特徴を含むように補正され得る。さらに、項目の列挙「のうちの少なくとも1つ」に言及する句は、それらの項目の任意の組合せ(単一の要素を含む)を指す。例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-cを網羅することが意図される。
【0070】
本開示は記載された特定の1つの適用にも複数の適用にもその使用を制限されないことが、当業者によって認識される。本開示はまた、本明細書において記載または示された特定の要素および/または特徴に関して、本開示の好ましい実施形態において制限されない。本開示は開示された1つの実施形態にも複数の実施形態にも限定されないが、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示され規定される範囲から逸脱することなく多数の再編成、改変および置換が可能であることが、認識される。
【0071】
添付の特許請求の範囲は仮の特許請求の範囲であるに過ぎず、添付の特許請求の範囲は可能な特許請求の範囲の例として提示されており、添付の特許請求の範囲は、本出願に基づく将来のいずれかの特許出願において特許請求され得るものの範囲を限定することは意図されないことに、留意されたい。この例示的な特許請求の範囲の範囲をさらに規定または再規定するために、後日、この例示的な特許請求の範囲に整数が追加され得、またはこの例示的な特許請求の範囲から整数が削除され得る。
【0072】
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