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特表2024-521576圧力ベースの質量流量比制御のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】圧力ベースの質量流量比制御のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575559
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022072774
(87)【国際公開番号】W WO2022261618
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】17/342,341
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592053963
【氏名又は名称】エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ディング・ジュンファ
【テーマコード(参考)】
5H307
【Fターム(参考)】
5H307AA15
5H307BB01
5H307CC11
5H307DD01
5H307EE02
5H307FF13
5H307JJ03
5H307KK01
(57)【要約】
単一の質量流を、総流量に対する所望の比の二次流れに分割するためのシステム及び方法。各二次流れラインは、圧力降下要素と、絶対圧力センサーと、差圧センサーとを含む。流量と圧力との間の非線形関係は、流量と線形関数を有する絶対圧力及び差圧の関数に変換され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量流を二次流れに分割するためのシステムであって、
入口流を受け取るように構成される入口と、
前記入口に接続される二次流れラインであって、各二次流れラインは、
二次流量で二次流れを搬送するように構成される流路と、
前記流路における圧力降下要素と、
制御信号に基づいて前記二次流量を制御するように構成される弁と、
前記圧力降下要素における圧力を表す圧力信号を提供するように構成される圧力センサーと、
前記圧力降下要素の上流及び下流の圧力と連通し、且つ前記圧力降下要素にわたる差圧を表す差圧信号を提供するように構成される差圧検出要素と
を含む、二次流れラインと、
前記圧力信号及び前記差圧信号に基づいて各二次流れラインの二次流量を計算するように構成される制御器であって、前記制御信号を各弁に生成して、総流量に対する二次流量の所望の比を得るように更に構成される制御器と
を含むシステム。
【請求項2】
前記差圧検出要素は、1つの面において前記圧力降下要素の上流の前記圧力にさらされ、且つ反対側の面において前記圧力降下要素の下流の前記圧力にさらされるダイヤフラムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各二次流れラインにおいて、前記圧力センサーは、前記圧力降下要素の上流にあり、及び前記弁は、前記圧力降下要素の下流にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
各流れラインの前記上流圧力センサーは、全ての二次流れラインによって共有される共通の圧力センサーである、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記弁は、前記圧力降下要素の上流に位置決めされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記圧力センサーは、前記弁と前記圧力降下要素との間に位置決めされる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記圧力センサーは、前記圧力降下要素の下流に位置決めされる、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記圧力降下要素は、前記二次流量と、前記圧力降下要素における前記圧力及び前記圧力降下要素にわたる前記差圧の関数との間の線形応答をもたらすように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記圧力降下要素は、層流要素である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
各二次流れラインにおける前記流体の温度を測定するように構成される温度センサーを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御器は、関係
【数1】
に従って各二次流量の前記比を計算及び制御するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
質量流を所望の比の二次流れに分割する方法であって、
入口で入口流を受け取るステップと、
前記入口に接続される二次流れラインに前記入口流を分割するステップであって、各二次流れラインは、
二次流量で二次流れを搬送するように構成される流路と、
前記流路における圧力降下要素と、
制御信号に基づいて前記二次流量を制御するように構成される弁と、
前記圧力降下要素における圧力を表す圧力信号を提供するように構成される圧力センサーと、
前記圧力降下要素の上流及び下流の圧力と連通し、且つ前記圧力降下要素にわたる差圧を表す差圧信号を提供するように構成される差圧検出要素と
を含む、ステップと、
制御器により、前記圧力信号及び前記差圧信号に基づいて各二次流れラインの前記二次流量を判定するステップと、
前記制御器により、前記制御信号を各弁に生成及び印加して、総流量に対する二次流量の所望の比を得るステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記差圧検出要素は、1つの面において前記圧力降下要素の上流の前記圧力にさらされ、且つ反対側の面において前記圧力降下要素の下流の前記圧力にさらされるダイヤフラムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各二次流れラインにおいて、前記圧力センサーは、前記圧力降下要素の上流にあり、及び前記弁は、前記圧力降下要素の下流にある、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
各流れラインの前記上流圧力センサーは、全ての二次流れラインによって共有される共通の圧力センサーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記弁は、前記圧力降下要素の上流に位置決めされる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記圧力センサーは、前記弁と前記圧力降下要素との間に位置決めされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記圧力センサーは、前記圧力降下要素の下流に位置決めされる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記圧力降下要素は、前記二次流量と、前記圧力降下要素における前記圧力及び前記圧力降下要素にわたる前記差圧の関数との間の線形応答をもたらすように構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記圧力降下要素は、層流要素である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
各二次流れラインにおける前記流体の温度を測定するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記制御器は、関係
【数2】
に従って各二次流量の前記比を計算及び制御する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年6月8日出願の米国特許出願第17/342,341号明細書の継続出願である。上記の出願の教示全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造は、多くの場合、慎重な同期化及び処理ツール(例えば、真空チャンバ)への十数もの気体の精密測定送出を必要とする。様々な方法が製造処理で使用され、半導体デバイスの洗浄、研磨、酸化、マスク、エッチング、ドープ、金属化などが行われる多くの個別の処理ステップが必要とされ得る。使用されるステップ、ステップの特定の順序及び関連する材料は、全て特定のデバイスの製造に寄与する。
【0003】
従って、ウェハー製造設備は、化学蒸着、プラズマ蒸着、プラズマエッチング、スパッタリング及び他の同様の気体製造処理を実行する領域を含むように一般的に組織化される。処理ツール(例えば、化学蒸着反応器、真空スパッタリング機械、プラズマエッチング装置又はプラズマ助長化学蒸着)に様々な処理気体を供給する必要がある。純気体を、汚染物質がない精密定量でツールに供給する必要がある。
【0004】
典型的なウェハー製造設備では、配管又は導管を介してガスボックスに接続されたタンクに気体が貯蔵される。ガスボックスは、汚染物質がない精密定量の純不活性又は反応気体を製造設備のタンクから処理ツールに送出する。ガスボックス又は気体計量システムは、気体計量ユニット(例えば、弁、圧力調節器及び変換器、質量流量制御器及びフィルター/清浄器)を有する複数の気体経路を含む。各気体経路は、個々の気体源への接続のためのそれぞれの入口を有するが、全ての気体経路は、処理ツールへの接続のための単一の出口に収束する。
【0005】
複合処理気体を複数の処理チャンバ又は他の送出先間で分割することが望ましい。このような場合、ガスボックスの単一の出口を、二次流路(ライン又は経路)を介して複数の位置に接続する。流量比制御器(FRC)を使用して、二次流れラインにおける二次流れの相対比を測定して制御し、既知の正確な値の二次流れで処理チャンバへの流体の精密送出を保証する。
【0006】
熱流量センサーは、線形センサー応答及び低い圧力降下特性のために、長年にわたって質量流量比制御(FRC)で使用されている。しかし、熱流量センサーは、ゼロドリフトになりやすい。更に、特定の用途において、化学反応は、センサーの毛細管熱センサー管表面を変えてセンサードリフトを引き起こし得る。
【0007】
圧力ベースの流量比制御(PBFRC)が米国特許第10,698,426号明細書に提示されている。そのシステムでは、熱流量センサーは、流量制限器の上流及び下流で検出される圧力に基づいて流量を判定する圧力ベースのセンサーと交換された。圧力センサーの数を減らすために、共通の圧力センサーがFRCの入口で共有され、各流量制限器に隣接し、各流量制限器の直接上流の圧力は、再帰的計算を介してその共有の検出圧力から計算された。流量は、その上流圧力及び検出下流圧力から計算された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
圧力ベースの流量センサーは、熱流量センサーによって生じる課題を克服するが、それ自体の課題が生じる。圧力センサー信号と流量との間の関係は、非常に非線形であり得、従って流量比制御用途で使用される場合、気体特性の知識を必要とする。その課題を克服するために、各流量センサーにおける圧力降下要素(流量制限器)は、各ラインの二次流量と上流圧力及び下流圧力の関数との間の線形応答をもたらすように構成され得る。その目的のために、層流要素が選択され得る。
【0009】
FRC用途に特有の別の課題は、圧力降下要素にわたる圧力差が非常に低いことがあり、絶対圧力センサーの誤差帯域、即ち圧力読み取り値の1%である場合があることである。低い差圧は、層流圧力降下要素によって悪化し得る。その問題を克服するために、各流れラインにおける圧力センサーの1つを、圧力降下要素の上流及び下流の圧力と連通する差圧検出要素と交換する。差圧センサーは、小さい差圧測定値に対して絶対圧力センサーよりも高い精度を与え、その精度は、絶対圧力と無関係である。単一の差圧測定値は、2つの絶対圧力センサーによって得られる圧力差よりも誤差範囲に含まれる可能性があまりない。単一の絶対圧力センサーと組み合わせて、差圧センサーは、特に低い圧力降下状態で非常に正確な流量測定値を与える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
質量流を二次流れに分割するためのシステムは、入口流を受け取るように構成される入口と、入口に接続される二次流れラインとを含む。各二次流れラインは、二次流量で二次流れを搬送するように構成される流路と、流路における圧力降下要素と、制御信号に基づいて二次流量を制御するように構成される弁とを含む。圧力降下要素における圧力を表す圧力信号を提供するように構成される圧力センサーと、圧力降下要素の上流及び下流の圧力と連通し、且つ圧力降下要素にわたる差圧を表す差圧信号を提供するように構成される差圧検出要素とにより、各二次流れラインにおける流量が検出される。制御器は、圧力信号及び差圧信号に基づいて各二次流れラインの二次流量を計算するように構成され、且つ制御信号を各弁に生成して、総流量に対する二次流量の所望の比を得るように更に構成される。
【0011】
各差圧検出要素は、1つの面において圧力降下要素の上流の圧力にさらされ、且つ反対側の面において圧力降下要素の下流の圧力にさらされるダイヤフラムを含み得る。
【0012】
1つの構成では、各二次流れラインにおいて、圧力センサーは、圧力降下要素の上流にあり、及び弁は、圧力降下要素の下流にある。各流れラインの上流圧力センサーは、全ての二次流れラインによって共有される共通の圧力センサーであり得る。
【0013】
他の構成において、弁は、圧力降下要素の上流に位置決めされる。圧力センサーは、弁と圧力降下要素との間又は圧力降下要素の下流に位置決めされ得る。
【0014】
圧力降下要素は、二次流量と、圧力降下要素における圧力及び圧力降下要素にわたる差圧の関数との間の線形応答をもたらすように構成され得る。その目的のために、圧力降下要素は、層流要素であり得る。
【0015】
各二次流れラインにおける流体の温度を測定するように構成される温度センサーが各流れラインに提供され得るか、又は共通の温度センサーが提供され得る。
【0016】
制御器は、関係
【0017】
【数1】
【0018】
に従って各二次流量の比を計算及び制御するように構成され得る。
【0019】
質量流を二次流れに分割する方法において、制御器は、圧力信号及び差圧信号に基づいて各流れラインの二次流量を判定し、及び制御器は、制御信号を各弁に生成及び印加して、総流量に対する二次流量の所望の比を得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
上述の内容は、異なる図面全体にわたって同じ参照符号が同じ部品を意味する添付図面に例示のような実施形態の例の下記のより詳細な説明から明確になるであろう。図面は、必ずしも原寸に比例するとは限らず、むしろ実施形態を例示することに重点を置く。
図1】質量流量制御器のセットから単一の質量流を受け取る先行技術の熱流量比制御器を例示する概略図である。
図2】層流要素を有する流路における気体N2の上流圧力と、下流圧力と、流量との間の関係を例示する三次元グラフである。
図3】圧力ベースの流量比制御器の実施形態の例の概略図である。
図4】共有の絶対圧力センサーを用いた別の実施形態の概略図である。
図5A】本発明の実施形態の例で圧力降下要素として使用可能な層流要素の一例の図である。
図5B】同層流要素の別の例の図である。
図5C】同層流要素のさらに別の例の図である。
図6A】絶対圧力センサーの断面図である。
図6B】差圧センサーの断面図である。
図7】絶対及び差圧センサーを利用して単一の質量流を所望の比の二次流れに分割する方法の実施形態の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の例の説明は、以下の通りである。
【0022】
開示のデバイス、システム及び方法の1つの使用は、汚染物質がない精密定量の処理及びパージ気体を半導体処理ツール、チャンバ及び/又は他のシステム、装置及びデバイスに送出する気体計量システムのためのものである。現在開示のデバイス、システム及び方法は、任意の上流の質量流量制御器の性能を妨げることなく動作する利益をもたらす。現在開示のデバイス、システム及び方法は、圧力センサーを用いて単一の質量流を所望の比の二次流れに分割することができる利益をもたらす。デバイス、システム及び方法は、相対的に高い上流圧力又は流量を含む気体又は複数の気体の知識を必要とすることなく、気体又は液体の単一の流量を所望の比の既知の正確な相対値の複数の二次流れに分割する利益をもたらす。
【0023】
図1は、熱流量センサーに依存する先行技術の流量比制御器100の概略図である。流量比制御器100は、比較のために示す質量流量制御器101のセットから単一の質量流103を受け取る。質量流量制御器101のセットは、流量比制御器100の入口ライン又はマニホールド104への流体102の流量を制御する。流体は、既存の気体貯蔵デバイス(例えば、気体タンク)から引き込まれる処理気体及びパージ気体の両方を含む混合物であり得る。図示されないが、流体102を追加の構成要素(例えば、フィルター、清浄器及び圧力変換器及び制御器)によって監視又は制御し得る。質量流102は、入口104によって受け取られた入口流103を形成する。他の実施形態において、入口流は、単一の質量流量制御器、気体貯蔵容器又は他の供給源から受け取られた単一の流体102から構成される。入口流は、流量Qで入口104に進む。気体102の量及び質量流量制御器101は、可変であり得る。気体102は、任意の可能な供給源又は気体貯蔵デバイスから発生し得る。個々の気体102の特性が既知である場合でも、混合物103及び入口流量Qの特性は、異なる処理方法のために未知であり得る。
【0024】
入口104を二次流れライン105a、105b、...、105Nに接続する。入口流を二次流れに分割する。二次流れは、二次流量Q、Q、...、Qで二次流れライン105の流路内に進む。流量比制御器は、流量比制御器が動作するシステムの必要性に応じて、任意の数の二次流れライン及び二次流れを有し得る。二次流れライン105内の二次流量Q、Q、...、Qの合計は、以下の式で表されるように入口流量Qと同じである必要がある。
【0025】
【数2】
【0026】
各二次流量Q、Q、...、Qと入口流量Qとの間の比を以下の式によって定義することができる。
【0027】
【数3】
【0028】
ここで、rは、二次流れラインiの流量比である。二次流量Q、Q、...、Qと入口流量Qとの間の比を判定することができると、比を正確に制御することができる。測定された二次流れを示す信号を提供する各二次流れライン105に流量センサー106によって供給される信号に基づいて、二次流れの比を判定する。
【0029】
二次流れは、各二次流れライン105に設置された弁107によって制御され得る。制御器は、流量センサー106によって供給される信号を受信し、二次流れの現在の比を判定し、二次流れライン105における二次流れを変更して二次流れの所望の比を得るようにする弁107の少なくとも1つに制御信号を送信するようにプログラムされる。制御器は、ホスト制御器から又はユーザインターフェースを介して二次流量の所望の比、即ち質量流量比設定点(rspi、i=1、2...N)を受信するようにプログラムされ得る。
【0030】
制御器は、流量センサー106によって供給される測定された二次流れを示す信号を受信し、二次流れラインにおける二次流れの流量比を計算するようにプログラムされる。更に、制御器は、フィードバック制御アルゴリズム(例えば、PID)又は他のフィードバック制御アルゴリズムを用いて、二次流れの計算比と二次流れの所望の比との間の差に基づいて制御信号を計算するようにプログラムされる。更に、制御器は、弁107の少なくとも1つに計算制御信号を送信するようにプログラムされる。制御信号は、少なくとも1つの二次流れを調整するように少なくとも1つの弁107に指示する。弁107の少なくとも1つに制御信号を送信することにより、制御器は、二次流れの実際の比が二次流れの所望の比に等しくなるまで、二次流れライン105の少なくとも1つを通る二次流れを調整する。
【0031】
入口質量流を含む入口104によって受け取られる流体又は流体の混合物に関する事前知識がない場合、流量比を計算するために、流量センサー106の信号と、流量センサー106が監視する二次流れとの間の関係は、線形である必要がある。線形関数f(x)は、以下の特性:f(k*x)=k*f(x)及びf(x1+x2)=f(x1)+f(x2)(ここで、kは、定数である)を有する。これらの特性は、流体103の特性の知識なしで二次流れ比を分割して計算するために使用される数学的計算に不可欠である。
【0032】
=f1(x1)(ここで、Qは、二次流れライン105aにおける二次流れの流量であり、f1(x1)は、流量センサー106aによって供給される信号x1の線形関数である)である場合及びQ=f2(x2)(ここで、Qは、二次流れライン105bにおける二次流れの流量であり、f2(x2)は、流量センサー106bの信号x2の異なる線形関数である)である場合、2つの二次流量Q及びQ間の比rを以下の式として表し得る。
【0033】
【数4】
【0034】
関数f1(x1)及びf2(x2)の線形特性のために、上述の式を以下のように変換することができる。
【0035】
【数5】
【0036】
ここで、x0は、定数であり、従って、
【0037】
【数6】
【0038】
は、定数であり、y1=x1/x0及びy2=x2/x0は、変換センサー信号である。関数f1(x0)及びf2(x0)の両方は、流体特性に基づく同じ変数を含む。関数f1(x0)を関数f2(x0)で割ってk0を生成するため、関数f1(x0)及びf2(x0)に認められる未知の流体特性に基づく変数は、相殺し、もはや流量比rを計算する必要がない。従って、流量比
【0039】
【数7】
【0040】
は、変換センサー信号の比
【0041】
【数8】
【0042】
と均等である。この関係は、流量センサー106によって供給される信号に基づいて二次流量の比の判定を可能にする。入口104内の気体又は流体103及び/又は入口流量Qに関する事前情報がない場合でも、二次流量の比を判定することができる。
【0043】
流量比制御器(例えば、図1に示す流量比制御器)において、二次流量の比を判定するために使用される変換の数学的制限は、流量センサー106の信号と、流量センサー106が二次流れライン105内で測定する流量との間の線形応答を有する流量センサー106の使用を必要とする。流量比制御器で使用される熱流量センサーは、典型的には、このような線形応答を有する。
【0044】
熱流量センサーは、測定流量と線形関数によって関係付けられるセンサー出力を有する。更に、熱流量センサーは、流量比制御を必要とする特定の状況で利益になる低い圧力降下を有する。しかし、熱流量センサーを使用する際に欠点がある。詳細には、熱流量センサーは、熱流量センサーを使用する流量比制御器に不正確さを取り込む測定で長期ドリフトに直面する。更に、熱流量センサーの高温は、特定の反応性気体種類(例えば、HBr及びCl2)と組み合わせて使用される場合、望ましくない化学反応を引き起こし得る。この反応は、熱センサー精度を更に低下させ得る。
【0045】
圧力ベースの質量流量測定技法及びセンサーは、熱ベースの質量流量センサーの代替形態を提供する。典型的な圧力ベースの流量センサーは、流量制限器の上流及び下流の絶対圧力センサーを有する。圧力センサーを使用する流量比制御器は、ゼロドリフト、耐食性及び高温性能の点で既存の熱ベースの流量比制御器よりも優れた性能を有し得る。しかし、圧力ベースの質量流量測定は、通常、圧力センサー出力と流量との間で非常に非線形の関係を有する。この関係は、極めて複雑であり得、重要な変数として流体特性を含む。例えば、非チョーク流動状態におけるノズルに対する流量(Q)を以下の式によって判定する。
【0046】
【数9】
【0047】
ここで、C’は、放出係数であり、Aは、ノズルののど面積であり、Puは、ノズルの上流の圧力であり、Pdは、ノズルの下流の圧力であり、Rは、一般気体定数であり、Tは、流体温度であり、Mは、流体分子量であり、γは、気体の比熱比である。これらの他の非常に非線形の関係のため、一般的に、圧力センサーからの測定値を用いて流量比を直接判定するように流体特性に要求する。しかし、流量を搬送する各ラインに圧力降下要素(例えば、層流要素)を配置した場合、圧力降下要素は、要素の上流の圧力と、要素の下流の圧力と、流量との間の新しい関係を生成する。
【0048】
質量流量比制御用途において、入力流量の気体特性は、流量比制御器に知られていなくてもよい。これらの特性は、各二次流路における絶対二次流量を判定するのに必要な気体比熱、気体分子量及び気体粘性(但し、これらに限定されない)を含む。入口質量流は、少なくとも2つの成分の未知の混合物から構成され得る。
【0049】
二次流量を以下の式によって一般的に判定し得る。
Q=f(∈,d,L,mw,r,μ,T,Pu,Pd)
ここで、Qは、二次流量であり、f()は、圧力降下要素の寸法(∈、d、L)、流体特性(mw、r、μ)、流体温度(T)、上流圧力(Pu)及び下流圧力(Pd)の関数である。層流要素の場合、関数f()は、以下の形式を有し得る。
Q=f(∈,d,L,mw,r,μ,T,Pu,Pd)=k(∈,d,L,mw,r,μ,T)*(Pu-Pd
ここで、k()は、圧力、即ちPu及びPdを有しない関数である。換言すれば、流量Qに対する上流圧力及び下流圧力の影響を他の要因から分離することができる。
【0050】
図2は、層流要素を有する流路における気体N2の上流圧力と、下流圧力と、流量との間の関係301を例示する三次元グラフ300である。グラフ300は、要素から上流の圧力Puと、要素の下流の圧力Pdと、流路内の流量Qとの間の関係301を表示し、特定のデータ点302を含む。Qと、Puと、Pdとの間の関係301は、以下のように依然として非常に非線形である。
Q=k(∈,d,L,mw,r,μ,T)*(Pu-Pd
ここで、k(∈、d、L、mw、r、μ、T)は、層流要素の形状(∈、d、L)、流体特性(mw、r、μ)及び気体温度Tに依存する関数である。関数k(∈、d、L、mw、r、μ、T)の場合、∈は、層流要素が多孔性媒体の場合、層流要素の多孔性であり、dは、環状側管又は束管層流要素の内径であり、Lは、層流要素の長さである。しかし、k()の全変数を流量比制御器の二次流れラインにわたって一定に保つことができ、従ってk()を、気体温度が固定であると仮定して数学的定数として扱うことができる。k()が定数である場合、層流要素を有する流路における流量は、要素から上流の圧力の2乗と要素の下流の圧力の2乗との間の差に線形的に関係する。ベクトル変換列の以下の例を用いて、流量Qに線形的に関係する2つの圧力Pu及びPdからベクトル変数を得ることができる。2つのベクトルを以下のように定義することができる。
(1)修正圧力ベクトル
【0051】
【数10】
【0052】
【数11】
【0053】
修正圧力ベクトルは、上流圧力及び下流圧力スカラー変数から構成された列ベクトルである(ここで、[]’は、ベクトル転置演算子である)。
(2)変換ベクトル
【0054】
【数12】
【0055】
【数13】
【0056】
変換ベクトルは、スカラー定数関数k(∈、d、L、mw、r、μ、T)の行ベクトルである。Qと、Puと、Pdとの間の関係を、以下のように上述の2つのベクトルを用いて書き換えることができる。
【0057】
【数14】
【0058】
ここで、・は、行列/ベクトルに対するドット積演算子である。書き換えられたQは、各二次流路に対する上流圧力Pu及び下流圧力Pdから得られる修正圧力ベクトル
【0059】
【数15】
【0060】
と線形関係を有する。換言すれば、圧力ベースの流量比制御器における圧力降下要素として層流要素を用いて、流量Qと、修正圧力ベクトル
【0061】
【数16】
【0062】
との間の線形応答を与える。これは、未知の入口流体に対する質量流量比制御を可能にする。
【0063】
上述の式を以下のように展開することができる。
【0064】
【数17】
【0065】
この形式から、所与の流量に対して、平均圧力(Pu+Pd)/2が増加するにつれて、制限器間の圧力降下(Pu-Pd)が減少することが分かる。1つの流路が他の流路に対して低い比設定点を有する場合にこの状況が発生し得る。他の流路を通る高い流量は、高い入口圧力、従って全流路における高い平均圧力になり得、低設定点流路を通る低い流量は、非常に小さい圧力降下になる。
【0066】
小さい圧力降下は、2つの絶対圧力センサーを用いた流量測定にとって問題を引き起こす。低い流量及び低い圧力降下状態の場合、圧力降下要素にわたる差圧(Pu-Pd)は、小さくなり得、絶対圧力センサーの誤差帯域、即ち圧力読み取り値の1%の範囲内であろう。換言すれば、2つの絶対圧力センサーは、低い流量測定に正確な差圧測定値(Pu-Pd)を与えることができない。
【0067】
流量比制御器の各流路における各流量制限器にわたる圧力差が、絶対圧力センサーPu及びPdによって正確に測定されるのに十分であるかどうかは、用途に大きく左右される。2流路の流量比制御器の以下の2つの場合を考える。
【0068】
第1の場合、総入口流は、Qt=200sccmであり、比設定点は、1:1である。その場合、Q1=Q2=100sccmである。流路1の圧力状態は、(Pu+Pd1)/2=10トル及びPu-Pd1=2トルである。2つのトル圧力差は、10トルの1%の誤差範囲を超え、その結果、測定値及び制御は、許容できる。
【0069】
第2の場合、総入口流は、Qt=1100sccmであり、比設定点は、1:10である。次に、Q1を100sccmに制御し、Q2を1000sccmに制御する。Q2を制御する制御弁を非常に開の状態に保持して、1000sccmを得るが、高い流量は、大きい圧力降下、従って高い上流圧力Puになる。流路1における弁をほぼ閉の状態に保持して、高い上流圧力からの流量を最小限にする。その結果、流路1の状態は、平均圧力(Pu+Pu1)/2=100トル及び圧力差Pu-Pd1=0.2トルである。0.2トルの圧力差は、平均圧力及び上流圧力センサーの圧力の実質的に1%未満である。従って、2つの絶対圧力センサーは、正確な流量比制御に正確な差圧Pu-Pd1を与えることができない。
【0070】
低い差圧の問題を克服するために、絶対圧力センサーの1つを差圧センサーと交換する。次に、以下のように比計算式を提示することができる。
【0071】
2つの絶対圧力センサー、即ちPu及びPdの場合、以下の通りである。
【0072】
【数18】
【0073】
ここで、kは、気体特性及び流路Iに対する圧力降下要素の特性の関数であり、Qは、
【0074】
【数19】
【0075】
のような総流量である。
【0076】
1つの絶対圧力センサー及び1つの差圧センサー、即ちPu及びDPの場合、Pd,iに(Pu,i-DP)を代入すると、以下の通りである。
【0077】
【数20】
【0078】
図3は、各上流及び下流絶対圧力センサーを上流絶対センサー及び差動センサーと交換する圧力ベースの流量比制御器300の実施形態の例を示す概略図である。図3における流量比制御器300は、マルチチャンネル気体送出器の一部であり得、例えば気体供給器(例えば、気体タンク)からの処理気体及びパージ気体を含む個々の気体又は複数の気体の混合物を選択的に受け取る。流量比制御器300は、圧力センサー306及び圧力差センサー308から圧力信号を受信し、二次流れライン305を通る二次流れの比を判定して正確に制御するように構成される。各差動センサーを層流要素309に接続する。このようなセンサーは、典型的には、2つのポートを接続する気体圧力が反対面に掛かるダイヤフラムを含む。流量比制御器300は、温度センサー311から気体温度信号を取得するように構成され得る。温度センサー311は、入口流の温度を表す気体温度信号を提供するように構成される。代替の実施形態において、温度センサー311を各二次流れライン305に設置し得る。供給温度信号を使用して、流量比制御器300の較正処理でk(∈、d、L、mw、r、μ、T)を正規化することができる。
【0079】
流量比制御器300及び関連方法は、相対的に高い上流圧力を必要とすることなく且つ気体特性の知識を必要とすることなく、気体又は液体の単一の流量を、二次流れの所望の比を有する既知の正確な相対値の複数の二次流れに分割する利益をもたらす。圧力センサー306及び差圧センサー308は、圧力降下要素309の上流で測定される圧力及び圧力降下要素309間で測定される圧力をそれぞれ表す信号を生成する。
【0080】
入口304を二次流れライン305a、305b、...、305Nに接続する。流体の入口流を、二次流れライン305の経路において流量Q、Q、...、Qで進む二次流れに分割する。入口304内の入口流の入口流量Qは、二次流れライン305内の二次流量Q、Q、...、Qの合計に等しい(
【0081】
【数21】
【0082】
)。流量比制御器は、流量比制御器が動作するシステムの必要性に応じて、任意の数の二次流れライン305を有し得る。二次流れラインの出口を同数の位置(例えば、1つのみの処理ツールにおける処理チャンバ又は2つ以上の処理ツールにおける位置)に接続することができる。各二次流れラインの出口を、システムによって必要な任意のデバイス又は送出先に接続することができる。
【0083】
各上流圧力センサー306は、圧力降下要素の上流の圧力に対応する信号を生成し、各二次流れライン305に対して変数Puiのための入力として使用可能である。各差圧センサー308は、圧力降下要素にわたる差圧に対応する信号を生成し、各二次流れライン305に対して変数DPiのための入力として使用可能である。従って、二次流れライン405内の二次流量Q、Q、...、Qは、以下のように圧力信号(2Pui-DPi)*DPi又はベクトル
【0084】
【数22】
【0085】
の関数に線形的に関係する。
【0086】
【数23】
【0087】
これらの線形関係により、二次流れライン305内の二次流量Q、Q、...、Qと入口流量との間の各比(即ち、
【0088】
【数24】
【0089】
)を、圧力センサー306i及び308iによって供給される信号を用いて判定することができる。これは、流体303、流体303の特性及び入口304内の流体303の絶対の真の流量Qに関する事前情報なしでも可能である。流体303は、幾つかの成分流体の混合物であり得、成分流体は、既知又は未知であり得る。
【0090】
制御器310は、メモリ及びプロセッサを有するコンピュータ(例えば、マイクロプロセッサ)であり得る。代わりに、制御器310は、数学的処理を実行することができる任意の同様のデバイスであり得る。制御器310は、上流圧力センサー306及び差動センサー308によって供給される信号を受信するようにプログラムされる。更に、制御器310は、上流圧力センサー306及び差圧センサー308からの信号を使用し、各二次流れライン305に対する変換センサー応答ベクトル
【0091】
【数25】
【0092】
を得るようにプログラムされる。変換センサー応答ベクトル
【0093】
【数26】
【0094】
は、それぞれ二次流れラインにおける二次流れの流量Q、Q、...、Qと線形関係を有する。制御器310は、変換センサー応答ベクトル
【0095】
【数27】
【0096】
を使用し、二次流れライン305の二次流量Q、Q、...、Qの比を判定するように構成される。二次流量の各比をあらゆる二次流れライン305a、305b、...、305Nの二次流量Q、Q、...、Qと入口流量Q(ここで、
【0097】
【数28】
【0098】
である)との間で判定することができる。
【0099】
各二次流れライン305は、二次流れライン305内の二次流量Q、Q、...、Qを制御するように構成される弁307を含む。弁307を圧力流量センサー306及び308の上流又は下流に設置し得る。制御器310は、二次流れの目標又は所望の比を得るために、制御信号を制御弁307に送信するように構成され得る。制御器310は、圧力センサー306及び308からの圧力信号に基づいて、二次流量Q、Q、...、Qの現在の比を判定するように構成され得る。制御器310は、弁307の少なくとも1つに制御信号を後に送信し得、制御信号に応じて、弁307の少なくとも1つは、二次流れライン305の二次流れを変更する。弁307の少なくとも1つに制御信号を送信することを含むフィードバックループを介して、制御器310は、二次流量の比が所望の比に等しくなるまで少なくとも1つの二次流れライン305の二次流れを調整する。
【0100】
制御器310は、二次流量の所望の比又は流量比設定点を受信するように構成され得る。制御器310は、二次流量Q、Q、...、Qと、圧力センサー306及び308からの信号との間の開示の数学的関係の何れかを使用し、現在の二次流量Q、Q、...、Q、二次流量の現在の比、二次流量の目標比、即ち質量流量比設定点(rspi、i=1、2、...N)、二次流量の目標比を生成する二次流量Q、Q、...、Q及び二次流量の目標比を誘導する弁307の少なくとも1つに送信される制御信号を判定し得る。制御器310は、二次流量の計算比及び二次流れの所望の比に基づいて二次流路における各弁に制御信号を計算して送信し、各二次流路における流量比を所望の流量比設定点に調節するフィードバック制御モジュールを含み得る。更に、制御器310は、入口流Qを計算するように構成され得る。
【0101】
流量比制御器300は、絶対圧力センサー306及び差圧センサー308を使用し、流量、従って流量比を測定するため、流量比制御器300は、既存の熱質量流量比制御器に優る幾つかの利点を有する。第1に、流量比制御器300は、二次流量と圧力センサー306及び308の変換信号との間の線形関係を利用して、圧力ベースの質量流量比制御を実行する能力を提供する。第2に、圧力ベースの流量センサーは、先行技術の熱ベースの流量センサーよりも安定している。更に、圧力ベースの流量センサーは、熱ベースの流量センサーよりも耐食性がある。更に、圧力ベースの流量センサーは、熱ベースの流量センサーよりも高温の用途に対応することができる。
【0102】
一実施形態において、圧力降下要素309は、層流要素である。二次流量Qと線形関係を有する(2Pu-DP)・DPに均等な関数がある限り、層流要素に加えて、他の圧力降下要素309を流量比制御器300で使用し得る。1つの代替例は、二次流れがノズルの上流の圧力に直接線形的に関係する臨界流量ノズル/オリフィスである。しかし、臨界流量ノズルによって引き起こされ得る高い圧力降下は、流量比制御器の幾つかの用途からの関心事である。圧力降下要素309として層流要素を使用する1つの利益は、臨界流量ノズル/オリフィスの圧力降下よりも低い圧力降下を有することである。実際に、層流要素の場合でも、高分解能のために、低い圧力層流範囲を維持することが最良である。その目的のために、上流圧力及び圧力降下は、チョーク流れを回避するために臨界流動点未満であるように十分低くすべきである。
【0103】
差圧流量センサーを用いて、図3のように、制御弁を流量制限及び圧力センサーの上流に位置決めすることが一般的に好ましい。なぜなら、構成は、より高い分解能のために、より高い差圧DPになるからである。更に、Puの代わりに、Pdを測定することができるが、より低い圧力Pdを測定する制限の下流ではなく、より高い圧力Puを測定する制限の上流に絶対圧力センサーを位置決めすることが最良である。
【0104】
流量制御弁を流量制限及び圧力センサーの下流に位置決めすることもできる。その場合、圧力測定は、差圧センサー及び上流又は下流圧力センサーによって可能である。しかし、上流圧力を検出することにより、上流圧力センサーを図4に例示の米国特許第10,698,426号明細書のように共有することができる。ここで、各流路405の制御弁407を制限器409の下流に位置決めする。制限器にわたる差圧を差圧センサー408によって測定する。上述のように、共通の温度センサー411を全流路によって共有し得るか、又は個々の温度センサーを各流路に位置決めし得る。絶対圧力センサー406を各流路における流量制限の上流に流量制限に隣接して位置決めし得る。しかし、圧力センサーの数を減らすために、単一の圧力センサー406を図4に示すような全流路によって共有し得る。米国特許第10,698,426号明細書のように、各流量制限器に隣接して各流量制限器の直接上流の実際の圧力を、再帰的計算を介して計算することができる。
【0105】
図5A図5Cは、本発明の実施形態で圧力降下要素として使用可能な幾つかの層流要素の図である。幾つかの異なるタイプの層流要素を圧力降下要素として使用することができる。可能なタイプの層流要素は、波形層流要素501、束管層流要素502及び環状層流要素503を含む。他の層流要素は、平行板層流要素及び圧縮層流要素(例えば、焼結多孔性金属フィルター又は他の多孔性媒体)を含む。層流要素を優れた整合性で正確に設計する。更に、層流要素は、低圧範囲でも、流量と、上流圧力と、下流圧力との間の関係を保持する。各層流要素は、要素の内部を進むように流れを押しやる周囲ケース500a、500b、500cを含む。各層流要素の内部は、要素を進む流体に層流を引き起こす障害物を含む。波形層流要素501の場合、隆起及び溝付き層状金属板504を層流要素の内部に充填する。束管層流要素502の場合、流れ方向に長さが平行である管505を層流要素の内部に充填する。環状層流要素503の場合、層流要素の内部は、周囲ケース500cと中心円柱506との間に環状ギャップ507を生成する流れ方向に長さが平行である固体円柱506を含む。層流要素が二次流れラインに層流を含むことができる限り、図5に例示の層流要素(但し、これらに限定されない)を含む層流要素の任意の変型例及び構成を本発明によって利用することができる。
【0106】
層流要素の場合、関数(2P-DP)*DPは、流路における流量と線形関係を有する。この線形関係のために、流量比制御器は、層流要素の上流で測定された圧力及び層流要素にわたる測定された圧力に対応する信号を使用し、未知の気体又は気体混合物から構成される未知の流体の二次流れの比を判定して制御することができる。強い線形関係は、図3に示すような流量比制御で層流圧力降下要素を使用する場合、正確な流量比測定及び制御を可能にする。
【0107】
適切な絶対圧力センサー306は、MKSバラトロン絶対静電容量圧力計であり、断面を図6Aに示す。センサーカプセルは、ダイヤフラム601及び電子機器604に結合された金属-セラミック電極構造体603を含む。ダイヤフラムの基準側605(裏側)を、測定される圧力よりも非常に低い超高真空まで空にする。基準側上の高真空を内部化学ゲッターポンプ607によって圧力計の全期間にわたって維持する。バッフル613にわたってポート611を介してダイヤフラム601の測定側をシステムに接続する。金属ダイヤフラムと、隣接する固定二重電極との間の静電容量の変化を測定することによって圧力を判定する。適切な差圧センサーは、MKSバラトロン差動静電容量圧力計であり、断面を図6Bに示す。金属検出ダイヤフラム615と、隣接する固定二重電極617との間の静電容量の変化を測定することによって圧力を判定する。検出ダイヤフラムの一方の側を「低圧ポート」P2に接続し、ダイヤフラムの他方の側をバッフル619にわたって「高圧ポート」P1に接続する。ダイヤフラムは、曲がり、2つの圧力の差に比例する電気信号として検出される。
【0108】
幾つかの実施形態において、流量比制御用途に流量測定値を供給するために、各二次流路を較正する必要がある。較正気体(例えば、N2)を使用して、以下の流量計算式に対してi番目の二次流路(i=1、2、...N)でk(∈、d、L、mw、r、μ、T)の係数を判定することができる。
【0109】
【数29】
【0110】
(Pui、DPi、Qi)の複数の較正点を較正処理中に全動作範囲に対して収集することができる。更に、温度センサーを使用して、入口流及び/又は二次流れに対してTを判定し得る。較正点を使用して、k(∈、d、L、mw、r、μ、T)の係数を判定することができる。
【0111】
代替の流量計算方法は、較正中の各二次流路に対して図3に示す内容と同様の変数Pui、DPi、Qiの三次元マップの構成を含む。流量比制御器310、410は、i番目の流路に対する測定上流圧力Pui及び差圧DPiに基づいて流量Qiを判定するためにルックアップテーブルとして三次元マップを使用することができる。入口気体が未知の気体である場合、流量比制御器300、400は、入口気体を較正気体(例えば、N2)として取り扱い、較正係数ki(∈i、di、Li、mw、r、μ、T)又は(Pui、DPi、Qi)の三次元マップを使用して、二次流量Qiを較正気体及びその後対応する流量比rとして計算することができる。各二次流れラインにおける流量Qiは、修正圧力ベクトル
【0112】
【数30】
【0113】
と線形関係を有するため、計算流量Qiが、実際の気体ではなく、較正気体に基づく場合でも、対応する流量比rは、正確である。
【0114】
図7は、絶対及び差圧センサーを利用して入口流を所望の比の二次流れに分割する方法の実施形態の例を示すフローチャート700である。図3及び図4に例示の方法で構成される圧力降下要素、弁、圧力センサー、制御器及び他の要素を有する流量比制御器を用いて、フローチャート700に示す方法を実行することができる。第1のステップ701は、入口路で入口流を受け取ることである。入口流を含む流体、流体特性及び入口内の流量は、未知であり得る。次のステップ702では、入口流を二次流れに分割する。二次流れを、入口に接続された二次流れラインの経路によって搬送する。二次流れは、二次流量で二次流れラインに進む。各二次流れラインに対して、次のステップ703及び704を実行する。ステップ703では、第1の圧力センサーは、圧力降下要素の上流又は下流の二次流れライン内の圧力を測定し、ステップ704では、差圧センサーは、圧力降下要素にわたる二次流れライン内の圧力を測定する。
【0115】
次のステップ705を制御器によって実行する。制御器は、測定絶対圧力及び圧力降下要素にわたる差圧を使用して、流量及び二次流量の比を判定する。これは、二次流れライン路内の層流要素の場合、二次流量が、絶対圧力及び差圧の関数、具体的には一実施形態において(2Pu-DP)*DPに線形的に関係するために可能である。最後のステップ706では、制御器は、二次流れラインに設置された弁の少なくとも1つに制御信号を計算して送信し、二次流れラインにおける二次流量の少なくとも1つを制御し、二次流量の指定又は所望の比を得る。制御器は、ステップ703に戻ってループすることによってステップ706を完了するために、フィードバック制御アルゴリズムを使用し得る。制御信号は、二次流量の判定比及び二次流量の所望の比に応じて弁の少なくとも1つを制御する。フローチャート700に示す方法を流量比制御器の動作中に連続的に実行し得、極めて正確に二次流量の一連の所望の比を達成するために使用し得る。
【0116】
一般的に、制御器は、絶対流量比Q/Qを処理する。しかし、2つの二次流れのみの場合、制御器は、相対流量比Q/Q又はQ/Qを処理し得る。いずれの場合にも、総流量に対する二次流量の所望の比を得る。
【0117】
実施形態の例を詳細に示し、説明しているが、添付の特許請求の範囲によって含まれる実施形態の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更形態がなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】