(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】結晶性ABDNAZ組成物ならびにその作製方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/397 20060101AFI20240527BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240527BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240527BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240527BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240527BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240527BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240527BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240527BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240527BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240527BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240527BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240527BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240527BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240527BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 9/08 20060101ALI20240527BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240527BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240527BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240527BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240527BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240527BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240527BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240527BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
A61K31/397
A61K47/22
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/46
A61K9/14
A61K47/12
A61K47/26
A61P35/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/04
A61P1/16
A61P3/10
A61P27/02
A61P11/00
A61P9/08
A61P25/00
A61P1/04
A61P13/12
A61P7/04
A61P7/06
A61P35/02
A61P29/00
A61P37/02
A61P39/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575588
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 US2022032780
(87)【国際公開番号】W WO2022261284
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518246958
【氏名又は名称】エピセントアールエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】オロンスキー,ブライアン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リード,トニー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】カンター,ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB21
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4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC35
4C086ZC54
(57)【要約】
本発明は、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)を含む、固体結晶性の非衝撃感受性または非爆発感受性粒子を含む組成物、当該結晶形態の調製方法、及びその使用に関するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を含む、固体結晶性の非衝撃感受性または非爆発感受性粒子を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物は、溶媒和形態の前記化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、テトラヒドロフラン(THF)を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中のTHFの濃度は、少なくとも約330ppmである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒子は、クラスレート形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子は、THFを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子中のTHFの濃度は、少なくとも約330ppmである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、n-ヘプタンをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中のn-ヘプタンの濃度は、少なくとも約800ppmである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子は、n-ヘプタンを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子中のn-ヘプタンの濃度は、少なくとも約800ppmである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物のかさ密度は、0.1g/cm
3~0.6g/cm
3の範囲にある、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記かさ密度は、0.15g/cm
3~0.5g/cm
3、0.15g/cm
3~0.4g/cm
3、または0.16g/cm
3~0.3g/cm
3である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記粒子のかさ密度は、約0.45g/cm
3未満である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子のDv(10)は、約40μm未満である、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記粒子のDv(50)は、約200μm未満である、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記粒子のDv(90)は、約400μm未満である、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記粒子は、実質的に針状の形状である、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物の溶解度は、25℃にてDMSO中約20mg/mL超である、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記粒子の安息角は、約45度未満である、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物で処理されたがん細胞の生存率は、等量のABDNAZを含む衝撃感受性または爆発感受性組成物で処理されたがん細胞の生存率よりも低い、請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
各処理をしてから約24時間後に測定したとき、(i)前記組成物のABDNAZ約8μMで処理されたHCT 116細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性組成物のABDNAZ約8μMで処理されたHCT 116細胞の生存率よりも少なくとも約50%低い、(ii)前記組成物のABDNAZ約4μMで処理されたSCC VII細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性組成物のABDNAZ約4μMで処理されたSCC VII細胞の生存率よりも少なくとも約25%低い、または(iii)前記組成物のABDNAZ約20μMで処理されたA549細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性組成物のABDNAZ約20μMで処理されたA549細胞の生存率よりも少なくとも約25%低い、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
各処理をしてから約24時間後に測定したとき、(i)前記組成物のABDNAZ約10μMで処理されたHCT 116細胞の生存率は、未処理のHCT 116細胞の生存率の約25%未満である、(ii)前記組成物のABDNAZ約4μMで処理されたSCC VII細胞の生存率は、未処理のSCC VII細胞の生存率の約50%未満である、または(iii)前記組成物のABDNAZ約20μMで処理されたA549細胞の生存率は、未処理のA549細胞の生存率の約50%未満である、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記粒子は、除塵剤中に分散している、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記除塵剤は、ポリエチレングリコールである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項27】
N,N-ジメチルアセトアミドをさらに含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
抗凝固剤をさらに含む、請求項26または27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物または請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物と、血液試料とを含む、混合物。
【請求項30】
前記血液試料は、前記化合物で処置されることになる対象から回収されたものである、請求項29に記載の混合物。
【請求項31】
式Iの化合物の濃度は、0.1mg/血液mL~10mg/血液mLである、請求項30に記載の混合物。
【請求項32】
式Iの化合物の結晶形態を生成させる方法であって、以下のステップ:
(a)式Iの化合物をテトラヒドロフラン中に溶解させるステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を、n-ヘプタンに撹拌しながら添加するステップ、及び
(c)ステップ(b)によって生成した溶液を冷却し、それによって、式Iの結晶形態を生成させるステップ、
を含む前記方法。
【請求項33】
ステップ(a)で生成したTHF溶液は、ステップ(b)において、約1:3(v/v)~約1:10(v/v)の比で前記n-ヘプタンと組み合わせられる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(b)の間、前記添加は、約10分~約6時間の期間にわたって行われる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
請求項32~34のいずれか1項に記載の方法によって生成した式Iの化合物の結晶形態。
【請求項36】
前記組成物は、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に示される、Series 3 Type(a)(ii)Testを用いて、前記組成物の試料40mm
3を40Jのエネルギーに曝すことによって決定されるように、非衝撃感受性である、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記結晶形態は、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に示される、Series 3 Type(a)(ii)Testを用いて、前記結晶形態の試料40mm
3を40Jのエネルギーに曝すことによって決定されるように、非衝撃感受性である、請求項35に記載の化合物の結晶形態。
【請求項38】
がんの処置を必要とする対象におけるその方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の有効量を前記対象に投与することによって、前記対象における前記がんを処置することを含む、前記方法。
【請求項39】
請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物または請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物を、前記対象から回収した血液と組み合わせて混合物を創出させ、その上で、前記混合物を前記対象に投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
虚血状態または低酸素状態の処置または予防を必要とする対象におけるその方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記虚血状態は、急性虚血状態または慢性虚血状態である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記急性虚血状態は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、肺塞栓症、周産期低酸素症、循環性ショック、高山病または急性呼吸不全である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記慢性虚血状態は、アテローム性動脈硬化症、慢性静脈不全、慢性心不全、心臓性肝硬変、糖尿病、黄斑変性症、睡眠時無呼吸、レイノー病、全身性硬化症、非細菌性血栓性心内膜炎、閉塞性動脈疾患、狭心症、一過性脳虚血発作、または慢性アルコール性肝臓疾患である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記低酸素状態は、がん、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍、肝疾患もしくは腎疾患、血小板減少症、血液凝固障害、慢性疾患、がん化学療法等の貧血を生じさせる治療的介入または高山病である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記がんは、膀胱癌、乳癌、明細胞型腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、悪性黒色腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、小細胞肺癌(SCLC)、トリプルネガティブ乳癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性白血病細胞-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記医薬組成物は、式Iの化合物を少なくとも0.5mg含み、静脈内、経鼻、耳介内、腹腔内、皮下、または経口投与される、請求項38~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
化学療法及び/または放射線療法によって生じる毒性から正常組織を保護する方法であって、その保護を必要とする対象に、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の有効量を、前記対象が前記化学療法及び/または放射線療法に曝される前に皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項48】
前記対象は、がんを有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記がんは、頭頸部癌である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも約0.5mgの式Iの化合物が前記対象に投与される、請求項47~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
約0.5mg~4mgの式Iの化合物が前記対象に投与される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
式Iの化合物の前記量は、1回以上の分割注射で投与される、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
前記正常組織に対する毒性は、急性粘膜炎または嚥下障害である、請求項47~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記粘膜炎は、遅発性粘膜炎である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、及び神経筋障害からなる群より選択される障害の処置を必要とする対象におけるその方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の負荷量を、前記障害の症状を改善するのに有効な量で前記対象に投与し、その後、前記症状の前記改善を長期間維持するために、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の維持用量を投与することを含む、前記方法。
【請求項56】
自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、または神経筋障害の処置を必要とする対象において、適応性及び忍容性を高めるための方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の治療有効量を投与することを含み、前記治療有効量の投与により、血液学的、神経学的、肺性、代謝性、心血管性、皮膚病学的、腎臓病学的、胃腸管系、尿生殖器系、炎症性、自己免疫性、甲状腺性、及び免疫不全関連の副作用が生じず、前記対象では、RRx-001またはそのアナログによる処置が、少なくとも1mgまたは1mg/m
2の累積投与量で完了する、前記方法。
【請求項57】
自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、及び神経筋障害からなる群より選択される障害の症状の惹起、発症または悪化の予防を必要とする対象におけるその方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の有効量を前記対象に投与して、前記障害の前記症状の惹起、発症、または悪化を予防することを含む、前記方法。
【請求項58】
自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、及び神経筋障害からなる群より選択される障害の症状の惹起、発症または悪化の予防を必要とする対象におけるその方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の有効量を前記対象に投与して、前記障害の前記症状の惹起、発症、または悪化を予防することを含む、前記方法。
【請求項59】
哺乳動物の身体動作を改善する方法であって、前記身体動作に先立って、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の有効量を前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項60】
患者の肺高血圧症(PH)を予防または処置するための方法であって、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項29~31のいずれか1項に記載の混合物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月9日に出願された米国仮出願第63/208,631号の優先権及び利益を主張するものであり、当該開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)を含む、固体結晶性の非衝撃感受性または非爆発感受性粒子を含む組成物、当該結晶形態の調製方法、及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
本発明は、酸化ストレス、炎症、及び低酸素に関連する疾患もしくは病状の予防または処置において使用するための、新規脱感作ABDNAZ組成物に関するものである。酸化作用及び環ひずみの両方から内因的に高エネルギー値を得るエネルギー性化合物として、ABDNAZは、衝撃感受性及び爆発に対する感受性という非常に不利な特性を有するものであり、この特性によって、製造、輸送、製剤化、及び保管中に、不注意による傷害もしくは死亡または機器もしくは設備の損傷が導かれる可能性がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、機械的衝撃及び爆発に対して不活性化され、それ故、調製、ハンドリング、製剤化、及び輸送に対してより安全な脱感作ABDNAZ組成物を安定して提供することである。本発明の別の目的は、治療活性が先行技術の組成物よりも改善された脱感作ABDNAZ組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、溶解度が先行技術の組成物よりも改善された脱感作ABDNAZ組成物を提供することである。その上、本発明のさらなる目的は、かねてより衝撃感受性及び爆発感受性物質に関連していた、ハンドリング及び輸送の問題の多くを克服することである。
【0005】
ABDNAZの合成方法は、米国特許第7,507,842号及び米国特許第8471,041号等に記載されている。しかしながら、そのようにして合成されたABDNAZの衝撃感受性及び爆発感受性は、非常に変動的であり、予測または制御することが不可能である。したがって、本発明は、改善されたクラスの「脱感作」ABDNAZを提供するものであり、この改善には、ショック、衝撃、または爆発に対する不活性、水及びDMSOにおける溶解度の向上、ならびに抗がん活性の改善が含まれる。
【0006】
がんは、この疾患の検出及び処置のために多くの進歩がもたらされたにもかかわらず、重大な健康問題である。がんの管理に対する現行のストラテジーは、早期診断及び積極的処置に依存している。処置の選択肢には、多くの場合、外科手術、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、またはそれらの組み合わせが含まれる。かかる治療法により多くの患者が利益を得ているが、様々なタイプのがんを処置するためのより優れた治療薬が依然として必要とされている。
【0007】
前立腺癌、乳癌、及び肺癌は、がん関連死の主要原因である。前立腺癌は、男性に最も多く認められる形態のがんであり、50歳超の男性における発病率は30%と推定されている。さらに、臨床所見から、ヒト前立腺癌は骨に転移する傾向があることが示され、当該疾患は、アンドロゲン依存性状態からアンドロゲン低抗性状態へと必然的に進行し、患者の死亡率を増加させるようにみえる。乳癌は、依然として女性の主な死因である。その累積リスクは相対的に高く、ある報告が示すことによれば、米国では85歳までに、女性の約8人に1人が何らかのタイプの乳癌を発症すると予想されている。同様に、肺癌はがん関連死の主要原因であり、こうした症例の約80%を非小細胞肺癌(NSCLC)が占めている。
【0008】
さらに、炎症、酸化ストレス及びニトロ化ストレスならびに低酸素は、がん、虚血再灌流障害、自己免疫、及び外傷を含む多様な範囲にわたる疾患の特徴であり、有効な治療法が依然として未だ満たされていない臨床ニーズである。ABDNAZは、腫瘍に対しては細胞毒性を示すが、非悪性組織に対しては細胞毒性を示さない抗炎症剤及び抗酸化剤として、現在、いくつかの病状及び疾患の予防及び/または処置に向けて臨床的に評価されている。これらの病状/疾患には、種々のがん、虚血再灌流障害(IRI)、ならびに自己免疫疾患、変性疾患、及び炎症性疾患が含まれる。加えて、ABDNAZは、軍事衝突または核のメルトダウン時に生じ得る核放射線に対して使用されることになる抗放射線剤または放射線防護剤、ならびにがんの処置における化学療法及び放射線療法の望ましくない副作用の低減を意図した放射線防護剤及び化学的防護剤としても同様に調査中である。
【0009】
しかしながら、上記を要約すると、ABDNAZ原体は、有利な特性が多いにもかかわらず、ショックまたは衝撃を加えることにより爆発しやすく、それによって、治療使用のために原体を作製、輸送、保管、及び製剤化する際に、潜在的な安全上の問題が創出する。したがって、治療用途における使用のために、常態的に非爆発性形態であるABDNAZを創出させて、ABDNAZの安全な保管、輸送及び全般的なハンドリングを可能にする必要が残されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、部分的には、衝撃及びショックならびに爆発に非感受性である新規ABDNAZ形態の発見、その製造及び使用に基づくものである。
【0011】
1つの態様において、式I:
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む、固体結晶性の非衝撃感受性または非爆発感受性粒子を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、溶媒和形態の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、テトラヒドロフラン(THF)を含む。いくつかの実施形態において、組成物中のTHFの濃度は、少なくとも約330ppmである。いくつかの実施形態において、粒子はクラスレート形態である。いくつかの実施形態において、粒子はTHFを含む。いくつかの実施形態において、粒子中のTHFの濃度は、少なくとも約330ppmである。いくつかの実施形態において、組成物は、n-ヘプタンをさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物中のn-ヘプタンの濃度は、少なくとも約800ppmである。いくつかの実施形態において、粒子は、n-ヘプタンを含む。いくつかの実施形態において、粒子中のn-ヘプタンの濃度は、少なくとも約800ppmである。
【0012】
いくつかの実施形態において、組成物のかさ密度は、0.1g/cm3~0.6g/cm3の範囲にある。いくつかの実施形態において、かさ密度は、0.15g/cm3~0.5g/cm3、0.15g/cm3~0.4g/cm3、または0.16g/cm3~0.3g/cm3である。いくつかの実施形態において、粒子のかさ密度は、約0.45g/cm3未満である。いくつかの実施形態において、粒子のDv(10)は、約40μm未満である。いくつかの実施形態において、粒子のDv(50)は、約200μm未満である。いくつかの実施形態において、粒子のDv(90)は、約400μm未満である。いくつかの実施形態において、粒子は、実質的に針状の形状である。いくつかの実施形態において、組成物の溶解度は、25℃にてDMSO中約20mg/mL超である。いくつかの実施形態において、粒子の安息角は、約45度未満である。
【0013】
いくつかの実施形態において、組成物で処理されたがん細胞の生存率は、等量のABDNAZを含む衝撃感受性または爆発感受性組成物で処理されたがん細胞の生存率よりも低い。いくつかの実施形態において、組成物のABDNAZ約8μMで処理されたHCT 116細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性組成物のABDNAZ約8μMで処理されたHCT 116細胞の生存率よりも少なくとも約50%低い。いくつかの実施形態において、組成物のABDNAZ約4μMで処理されたSCC VII細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性組成物のABDNAZ約4μMで処理されたSCC VII細胞の生存率よりも少なくとも約25%低い。いくつかの実施形態において、組成物のABDNAZ約20μMで処理されたA549細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性組成物のABDNAZ約20μMで処理されたA549細胞の生存率よりも少なくとも約25%低い。いくつかの実施形態において、測定は、各処理をしてから約24時間後になされる。
【0014】
いくつかの実施形態において、組成物のABDNAZ約10μMで処理されたHCT116細胞の生存率は、未処理のHCT116細胞の生存率の約25%未満である。いくつかの実施形態において、組成物のABDNAZ約4μMで処理されたSCC VII細胞の生存率は、未処理のSCC VII細胞の生存率の約50%未満である。いくつかの実施形態において、組成物のABDNAZ約20μMで処理されたA549細胞の生存率は、未処理のA549細胞の生存率の約50%未満である。いくつかの実施形態において、測定は、各処理をしてから約24時間後になされる。
【0015】
いくつかの実施形態において、粒子は、除塵剤中に分散される。いくつかの実施形態において、除塵剤は、ポリエチレングリコールである。
【0016】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、N,N-ジメチルアセトアミドをさらに含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗凝固剤をさらに含む。
【0017】
いくつかの態様において、本明細書に記載される組成物または本明細書に記載される医薬組成物及び血液試料を含む混合物が提供される。いくつかの実施形態において、血液試料は、自己由来の血液試料であるか、または当該化合物で処置されることになる対象から回収されたものである。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の濃度は、0.1mg/血液mL~10mg/血液mLである。
【0018】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物の結晶形態を生成させる方法を提供するものであり、当該方法は、以下のステップを含む:(a)式Iの化合物をテトラヒドロフラン中に溶解させるステップ、(b)ステップ(a)の溶液を、n-ヘプタンに撹拌しながら添加するステップ、及び(c)ステップ(b)によって生成した溶液を冷却して、式Iの結晶形態を生成させるステップ。いくつかの実施形態において、ステップ(a)で生成したTHF溶液は、ステップ(b)において、約1:3(v/v)~約1:10(v/v)の比でn-ヘプタンと組み合わせられる。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の間、添加は、約10分~約6時間の期間にわたって行われる。
【0019】
1つの態様において、本明細書に記載される特徴を有する式Iの化合物の結晶形態が提供される。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に示される、Series 3 Type(a)(ii)Testを用いて、組成物の試料40mm3を40Jのエネルギーに曝すことによって決定されるように、非衝撃感受性である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される結晶形態は、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に示される、Series 3 Type(a)(ii)Testを用いて、結晶形態の試料40mm3を40Jのエネルギーに曝すことによって決定されるように、非衝撃感受性である。
【0021】
1つの態様において、本明細書では、がんの処置を必要とする対象におけるその方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の有効量を当該対象に投与することによって、当該対象におけるがんを処置することを含む。別の態様において、本発明は、がんを処置すること、またはがんの放射線処置及び/または化学療法処置に関連する損傷から非悪性組織を保護することを必要とする対象におけるその方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される医薬組成物、または本明細書に記載される混合物の有効量を当該対象に投与することによって、当該対象におけるがんを処置することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物または医薬組成物を、対象から回収した血液と組み合わせて混合物を創出させる。その上で、当該混合物を当該対象に投与する。
【0022】
1つの態様において、本明細書では、虚血状態または低酸素状態の処置または予防を必要とする対象におけるその方法が提供され、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される医薬組成物、または本明細書に記載される混合物の治療有効量を当該対象に投与することを含む方法も提供される。いくつかの実施形態において、虚血状態は、急性虚血状態または慢性虚血状態である。いくつかの実施形態において、急性虚血状態は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、肺塞栓症、周産期低酸素症、循環性ショック、高山病または急性呼吸不全である。いくつかの実施形態において、慢性虚血状態は、アテローム性動脈硬化症、慢性静脈不全、慢性心不全、心臓性肝硬変、糖尿病、黄斑変性症、睡眠時無呼吸、レイノー病、全身性硬化症、非細菌性血栓性心内膜炎、閉塞性動脈疾患、狭心症、一過性脳虚血発作、または慢性アルコール性肝臓疾患である。いくつかの実施形態において、低酸素状態は、がん、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍、肝疾患もしくは腎疾患、血小板減少症、血液凝固障害、慢性疾患、貧血を生じさせる治療的介入(がん化学療法等)または高山病である。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱癌、乳癌、明細胞型腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、悪性黒色腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、小細胞肺癌(SCLC)、トリプルネガティブ乳癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性白血病細胞-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法の医薬組成物は、式Iの化合物を少なくとも0.5mg含み、静脈内、経鼻、耳介内、腹腔内、皮下、または経口投与される。
【0024】
1つの態様において、本明細書では、化学療法及び/または放射線療法によって生じる毒性から正常組織を保護する方法が提供され、当該方法は、その保護を必要とする対象に、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の有効量を、当該対象が化学療法及び/または放射線療法に曝される前に皮下投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象はがんを有する。いくつかの実施形態において、がんは頭頸部癌である。いくつかの実施形態において、少なくとも約0.5mgの式Iの化合物が対象に投与される。いくつかの実施形態では、約0.5mg~4mgの式Iの化合物が対象に投与される。いくつかの実施形態において、式Iの化合物の量は、1回以上の分割注射で投与される。いくつかの実施形態において、正常組織に対する毒性は、急性粘膜炎または嚥下障害である。いくつかの実施形態において、粘膜炎は遅発性粘膜炎である。
【0025】
1つの態様において、本明細書では、自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、及び神経筋障害からなる群より選択される障害の処置を必要とする対象におけるその方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の負荷量を、当該障害の症状を改善するのに有効な量で当該対象に投与し、その後、当該症状の改善を長期間維持するために、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の維持用量を投与することを含む。
【0026】
1つの態様において、本明細書では、自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、または神経筋障害の処置を必要とする対象において、適応性及び忍容性を高めるための方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の治療有効量を投与することを含み、治療有効量の投与により、血液学的、神経学的、肺性、代謝性、心血管性、皮膚病学的、腎臓病学的、胃腸管系、尿生殖器系、炎症性、自己免疫性、甲状腺性、及び免疫不全関連の副作用が生じず、当該対象では、RRx-001またはそのアナログによる処置が、少なくとも1mgまたは1mg/m2の累積投与量で完了する。
【0027】
1つの態様において、本明細書では、自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、及び神経筋障害からなる群より選択される障害の症状の惹起、発症または悪化の予防を必要とする対象におけるその方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の有効量を当該対象に投与して、当該障害の当該症状の惹起、発症、または悪化を予防することを含む。
【0028】
1つの態様において、本明細書では、自己免疫不全、炎症性疾患、神経変性疾患、及び神経筋障害からなる群より選択される障害の症状の惹起、発症または悪化の予防を必要とする対象におけるその方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の有効量を当該対象に投与して、当該障害の当該症状の惹起、発症、または悪化を予防することを含む。
【0029】
1つの態様において、本明細書では、哺乳動物の身体動作を改善する方法が提供され、当該方法は、前記身体動作に先立って、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の有効量を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0030】
1つの態様において、本明細書では、患者の肺高血圧症(PH)を予防または処置するための方法が提供され、当該方法は、本明細書に記載される組成物、医薬組成物、または混合物の治療有効量を投与することを含む。
【0031】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される方法によって生成した式Iの化合物の結晶形態を提供するものである。いくつかの実施形態において、組成物は、溶媒和形態の化合物を含み得、当該溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)であり得る。代替的に、または加えて、組成物は、クラスレート形態の粒子を含み得、当該粒子は、例えば、THFを含み得る。別の態様において、本発明は、本明細書に記載される組成物を含む医薬組成物を提供するものである。
【0032】
本出願は、添付の図面と共に以下の記載を参照することにより理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】試料用量の関数としての相対的細胞生存率をプロットしたグラフを示している。
【
図1B】試料用量の関数としての相対的細胞生存率をプロットしたグラフを示している。
【
図1C】試料用量の関数としての相対的細胞生存率をプロットしたグラフを示している。
【
図2】試料濃度の関数としての濁度をプロットしたグラフを示している。
【
図3】A及びBは、実質的に針状の形状を有するABDNAZ粒子の例示的SEM画像を示している。
【
図4】実質的にかさ高い形状または丸い形状を有するABDNAZ粒子の例示的SEM画像を示している。
【
図5A】THF非含有結晶化RRx-001粒子のかさ密度を示すものである。
【
図5B】THF含有結晶化RRx-001粒子のかさ密度を示すものである。
【
図5C】非衝撃感受性RRx-001粒子のかさ密度を示すものである。
【
図5D】衝撃感受性RRx-001粒子のかさ密度を示すものである。
【
図5G】かさ密度の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図5H】かさ密度の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図6A】THF非含有結晶化RRx-001粒子のD10を示すものである。
【
図6B】THF含有結晶化RRx-001粒子のD10を示すものである。
【
図6C】非衝撃感受性RRx-001粒子のD10を示すものである。
【
図6D】衝撃感受性RRx-001粒子のD10を示すものである。
【
図6G】D10の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図6H】D10の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図7A】THF非含有結晶化RRx-001粒子のD50を示すものである。
【
図7B】THF含有結晶化RRx-001粒子のD50を示すものである。
【
図7C】非衝撃感受性RRx-001粒子のD50を示すものである。
【
図7D】衝撃感受性RRx-001粒子のD50を示すものである。
【
図7G】D50の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図7H】D50の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図8A】THF非含有結晶化RRx-001粒子のD90を示すものである。
【
図8B】THF含有結晶化RRx-001粒子のD90を示すものである。
【
図8C】非衝撃感受性RRx-001粒子のD90を示すものである。
【
図8D】衝撃感受性RRx-001粒子のD90を示すものである。
【
図8G】D90の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【
図8H】D90の統計分析に基づく箱ひげ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、部分的には、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)の非衝撃感受性または非爆発感受性結晶形態、当該結晶形態の生成方法、及びかかる組成物を使用した種々の病状の処置方法を提供するものである。
【0035】
式C
5H
6BrN
3O
5のジニトロアゼチジンであるABDNAZは、以下の化学構造:
【化2】
を有する。
【0036】
この化合物は、がんならびに他の虚血性/低酸素性疾患及び障害の処置だけでなく、化学療法及び/または放射線の毒性から非悪性組織を保護することに向けて臨床的に評価されている。先行する当該化合物の合成法(Straessler et al.ORG.PROCESS RES.DEV.(2012)16,512-517)により、当該化合物の結晶形態がもたらされている。しかしながら、これらの結晶形態は、爆発性であり得、例えば、従来の衝撃感受性または爆発感受性試験のもと、衝撃感受性または爆発感受性に関して高度の変動性を示している。
【0037】
その結果、この化合物の結晶形態の特徴は、当該化合物の輸送、保管及び使用に影響を与え得る。
【0038】
本発明は、部分的には、当該化合物の結晶形態の衝撃感受性または爆発感受性を消失させることによって、当該化合物の輸送、保管及び使用がより安全になり得る、という発見に基づいている。このことは、組成物の本質的な化学的特性を変えることなく、当該結晶の生理化学的特性、例えば、その衝撃感受性または爆発感受性及び流動性を変化または「調整」することによって達成されている。この化合物の結晶形態の調整は、ある種の結晶化条件を用いて、合成の最後に特定の再結晶ステップを実行することにより達成され、このことによって、感受性が正常な物質の生成が保証される。
【0039】
本発明の種々の態様を以下の節に示すが、1つの特定の節に記載される本発明の態様は、任意の特定の節に限定されるものではない。さらに、変数に定義が付されていない場合、先行する当該変数の定義が優先する。
【0040】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句を以下に定義する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」及び「the」は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、本発明の方法によって処置されることになる生物を指す。かかる生物としては、限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、及び同様のもの)が好ましく挙げられ、最も好ましくは、ヒトが挙げられる。本発明の観点から、用語「対象」は、一般に、アポトーシスプロセスの調節異常によって特徴づけられる病状に対する処置(例えば、本発明の化合物及び任意選択で1つ以上の他の薬剤の投与)を受けることになる、または受けた個体を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、有益な結果または所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量は、1回以上の投与、適用または投薬で投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されることは意図されない。本明細書で使用される場合、用語「処置する」には、病状、疾患、障害、及び同様のものの改善、またはその症状の緩和をもたらす、任意の効果(例えば、軽減、低減、調節、緩和または解消)が含まれる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、活性剤と、不活性もしくは活性の賦形剤または担体との組み合わせを指し、組み合わせることにより、組成物が、in vivoもしくはex vivoでの診断または治療における使用に特に適したものとなる。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション(例えば、油/水エマルションまたは水/油エマルション等)、及び様々なタイプの湿潤剤等、標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤及び保存剤を含み得る。担体の例は、安定剤及びアジュバントである(例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照のこと)。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、対象に投与されるとすぐに、本発明の化合物またはその活性代謝物もしくは残基を提供することができる、薬学的投与に適切な、本発明の化合物の任意の循環性である塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に知られているように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸及び塩基から誘導され得る。
【0047】
酸の例としては、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及び同様のものが挙げられる。シュウ酸等の他の酸は、それら自体が薬学的に許容されるものではないが、本発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に利用してもよい。
【0048】
塩基の例としては、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、及び式NW4
+の化合物(式中、WはC1~4アルキルである)、ならびに同様のものが挙げられる。
【0049】
塩の例としては、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、及び同様のものが挙げられる。塩の他の例としては、Na+、NH4
+、及びNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)、ならびに同様のもの等の適切なカチオンと化合した、本発明の化合物のアニオンが挙げられる。
【0050】
治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものとして企図される。しかしながら、薬学的に許容されない酸及び塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用されるものと認められ得る。
【0051】
本明細書の全体を通じて、組成物及びキットが、特定の構成要素を有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、またはプロセス及び方法が、特定のステップを有する、含む(including)、または含む(comprising)と記載される場合、詳述された構成要素から本質的になるか、またはそれらからなる本発明の組成物及びキットの存在、及び詳述されたプロセスのステップから本質的になるか、またはそれらからなる本発明によるプロセス及び方法の存在が追加的に企図される。
【0052】
一般的な事柄として、別段明示されていない限り、組成物の百分率での明示は、重量によるものである。さらに、変数に定義が付されていなければ、先行する当該変数の定義が優先する。
【0053】
I.2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)の結晶形態
本発明は、部分的には、式Iの化合物:
【化3】
である、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)の非衝撃感受性である結晶形態を提供するものである。
【0054】
1つの態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を含む、固体結晶性の非衝撃感受性または非爆発感受性粒子を含む組成物を提供するものであり、当該固体結晶性の非衝撃感受性または非爆発感受性粒子の安息角は、約45度未満である。
【0055】
組成物は、溶媒和形態の化合物を含み得、当該溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)であり得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、本明細書に記載される任意の溶媒または任意の溶媒の組み合わせである。
【0056】
代替的に、または加えて、組成物は、クラスレート形態の粒子を含み得、当該粒子は、例えば、THFを含み得る。いくつかの実施形態において、溶媒は、本明細書に記載される任意の溶媒または任意の溶媒の組み合わせである。
【0057】
粒子は、本明細書に記載される特徴の組み合わせを有し得る。例えば、粒子の粒径の中央値は、50μm~300μm、50μm~200μm、または50μm~100μmの範囲にあり得る。粒子は、Dv(10)、D10、またはx10が、50μm未満、40μm未満、30μm未満、または20μm未満である粒度分布を有し得る。さらに、粒子は、Dv(50)、D50、またはx50の値が、100μm未満、90μm未満、80μm未満、70μm未満、または60μm未満である粒度分布を有し得、及び/または粒子は、Dv(90)、D90、またはx90の値が、300μm未満、250μm未満、200μm未満、150μm未満、または100μm未満である粒度分布を有し得、及び/または粒子は、D10またはx10の値が、20μm超、30μm超、40μm超、または50μm超である粒度分布を有し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物は、Dv(10)、D10、またはx10が約40μm未満であり、Dv(50)、D50、またはx50が約200μm未満であり、及び/またはDv(90)、D90、またはx90が約400μm未満である粒度分布を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物は、Dv(10)、D10、またはx10が約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80μm未満であり、Dv(50)、D50、またはx50が、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、または300μm未満であり、及び/またはDv(90)、D90、またはx90が、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、または800μm未満である粒度分布を有する。
【0059】
再結晶条件によっては、得られる結晶は、例えば、ガスクロマトグラフィーによって決定されるように、例えば、800、700、600、500、400、300、200または100ppm未満の残留または微量テトラヒドロフランを含有し得る。代替的に、または加えて、得られる結晶は、例えば、ガスクロマトグラフィーによって決定されるように、例えば、900、800、700、600、500、400、300、200または100ppm未満の、残留または微量n-ヘプタンを含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中のテトラヒドロフランの濃度は、少なくとも約330ppmである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中のテトラヒドロフランの濃度は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppmである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中のテトラヒドロフランの濃度は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppm未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中のテトラヒドロフランの濃度は、上限が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppmであり、独立して選択される下限が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppmであり、ここで、上限は下限より大きい。
【0061】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性ABDNAZ粒子は、実質的に針状の形状である。
図3A及び
図3Bは、実質的に針状の形状の例を示している。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性ABDNAZ粒子は、実質的にかさ高い形状または丸い形状ではない。
図4は、実質的にかさ高い形状または丸い形状の例を示している。いくつかの実施形態において、形状は、SEM画像に基づいて決定される。
【0062】
ある特定の実施形態において、組成物のかさ密度は、0.1g/cm3~0.6g/cm3の範囲にある。例えば、かさ密度は、0.15g/cm3~0.5g/cm3、0.15g/cm3~0.4g/cm3、または0.16g/cm3~0.3g/cm3である。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物のかさ密度は、約0.45g/cm3未満である。いくつかの実施形態において、組成物のかさ密度は、約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、または1g/cm3未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物のかさ密度は、約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、または1g/cm3超である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物のかさ密度は、上限が約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、または1g/cm3であり、独立して選択される下限が約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、または1g/cm3であり、ここで、上限は下限より大きい。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物の溶解度または平衡溶解度は、DMSO中約20mg/mL超である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物の溶解度または平衡溶解度は、約16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27mg/mL超である。いくつかの実施形態において、溶解度または平衡溶解度は、25℃で測定される。いくつかの実施形態において、溶解度または平衡溶解度は、37℃で測定される。いくつかの実施形態において、溶解度または平衡溶解度は、DMSO中で測定される。いくつかの実施形態において、溶解度または平衡溶解度は、N.Colclough et al.,“High throughput solubility determination with application to selection of compounds for fragment screening”Bioorganic & Medicinal Chemistry Vol.16,Issue 13(2008):6611-6616に記載される方法に従って測定される。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ結晶またはABDNAZ組成物で処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性のABDNAZ結晶またはABDNAZ組成物で処理されたがん細胞の生存率よりも低い。いくつかの実施形態において、がん細胞は、HCT-116、SCC VII、またはA549である。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、処理してから24時間後に測定される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)比色アッセイを用いて測定される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、570nmでの光学密度(OD)として測定される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、いかなる処理も受けない対照と比較して測定される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、用量約10μMにてHCT116で測定及び/または比較される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、用量約4μMにてSCC VIIで測定及び/または比較される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、用量約20μMにてA549で測定及び/または比較される。いくつかの実施形態において、細胞生存率は、用量約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または30μMにて測定及び/または比較される。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子またはABDNAZ組成物で処理されたがん細胞の生存率は、等量のABDNAZを含む衝撃感受性または爆発感受性の粒子または組成物で処理されたがん細胞の生存率よりも低い。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子またはABDNAZ組成物で処理されたがん細胞の生存率は、等量のABDNAZを含む衝撃感受性または爆発感受性の粒子または組成物で処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約25%低い。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子またはABDNAZ組成物で処理されたがん細胞の生存率は、等量のABDNAZを含む衝撃感受性または爆発感受性の粒子または組成物で処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%低い。
【0067】
いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にHCT 116細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約8μMで処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約8μMで処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約50%低い。いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にHCT 116細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約8μMで処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約8μMで処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%低い。
【0068】
いくつかの実施形態において、ABDNAZ濃度の前にある「(理論的に)」は、当該濃度が所与の体積中に加えられたABDNAZの総量に基づくものであり得、したがって、実際に細胞に溶解したABDNAZ濃度または細胞が利用可能なABDNAZ濃度と必ずしも一致しない可能性があることを示している。
【0069】
いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にSCC VII細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約4μMで処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約4μMで処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約25%低い。いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にSCC VII細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約4μMで処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約4μMで処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%低い。
【0070】
いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にA549細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約20μMで処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約20μMで処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約25%低い。いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にA549細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約20μMで処理されたがん細胞の生存率は、衝撃感受性または爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約20μMで処理されたがん細胞の生存率よりも、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95%低い。
【0071】
いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にHCT 116細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約10μMで処理されたがん細胞の生存率は、対照の生存率の約25%未満である。いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にHCT 116細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約10μMで処理されたがん細胞の生存率は、対照の生存率の約20、25、30、35、40、または45%未満である。
【0072】
いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にSCC VII細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約4μMで処理されたがん細胞の生存率は、対照の生存率の約50%未満である。いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にSCC VII細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約4μMで処理されたがん細胞の生存率は、対照の生存率の約30、35、40、45、50、55、60、65、または70%未満である。
【0073】
いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にA549細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約20μMで処理されたがん細胞の生存率は、対照の生存率の約50%未満である。いくつかの実施形態において、処理してから24時間後にA549細胞株で測定したとき、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性の結晶または組成物のABDNAZ(理論的に)約20μMで処理されたがん細胞の生存率は、対照の生存率の約30、35、40、45、50、55、60、65、または70%未満である。
【0074】
II.ABDNAZの結晶形態を調製する方法
ABDNAZの調製方法は、米国特許第7,507,842号(「’842特許」)及び米国特許第8,471,041号(「’041特許」)に開示されている。’842特許に開示された方法は、1-tert-ブチル3,3-ジニトロアゼチジン(DNAZ)を、ブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させ、そこから、反応混合物を冷却し、ジクロロメタンを添加し、形成したDNAZ HBrを濾過し、ジクロロメタン濾液を水で洗浄し、それを乾燥させ、次いで、ジクロロメタンを蒸発させることにより、ABDNAZを単離することを伴う。’041特許に開示された方法は、ジクロロメタン中で、3,3-ジニトロアゼチジン(DNAZ)を、ブロモアセチルブロミド及び三フッ化ホウ素エーテラートと反応させて、ABDNAZ及びDNAZの臭化水素塩を含む反応混合物を生成させ、そこからDNAZを分離し、エタノールをジクロロメタン及びABDNAZに添加し、ジクロロメタンを減圧下で蒸発させてABDNAZ/エタノール懸濁液を形成し、次いで、エタノールをABDNAZ/エタノール懸濁液から濾過することを伴う。
【0075】
しかしながら、予測不可能であり、したがって、危険である、得られたABDNAZの衝撃感受性または爆発感受性及び起爆剤の起爆に対する感受性(「爆発感受性」)に、これらの特許は対処するものではない。
【0076】
非衝撃感受性または非爆発感受性であるABDNAZの結晶形態は、例えば、本明細書に記載されるように、例えば、以下の合成スキームに示されるように生成し得る。
【化5】
【0077】
いくつかの実施形態において、HAZは、1-tert-ブチルアゼチジン-3-オールである。いくつかの実施形態において、HMNAZは、1-tert-ブチル-3-ヒドロキシメチル-3-ニトロアゼチジンである。いくつかの実施形態において、TBDNAZは、1-tert-ブチル-3,3-ジニトロアゼチジンである。いくつかの実施形態において、ADNAZは、1-アセチル-3,3-ジニトロアゼチジンである。いくつかの実施形態において、DNAZは、3,3-ジニトロアゼチジンである。
【0078】
いくつかの実施形態では、上記の合成スキームに従ってRRx-001を合成する。いくつかの実施形態では、亜硝酸ナトリウムによる求核置換のために、HAZをメタンスルホニル化してアルコールを活性化する。いくつかの実施形態では、生成した中間体(スキーム中「RRx-001ステージ1」と記載)をホルムアルデヒドでトラップして、HMNAZを生成させる。いくつかの実施形態では、触媒としてヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムを用いて、第2のニトロ基を導入することにより、HMNAZからTBDNAZを生成させる。いくつかの実施形態では、TBDNAZのtert-ブチル基を、ルイス酸触媒による脱アルキルアセチル化を介してアセチル基で置換し、したがって、ADNAZを得る。いくつかの実施形態では、ADNAZのアセチル基を酸性条件下で除去し、その後、ショッテン-バウマン条件を用いてブロモアセチル基で置換し、したがって、高密度形態のABDNAZが生成する。いくつかの実施形態では、高密度形態のABDNAZを再結晶させて、非衝撃感受性の低密度形態であるABDNAZを得る。
【0079】
HAZからのRRx-001ステージ1及びステージ2(HMNAZ)の生成
いくつかの実施形態では、HAZをメタンスルホニル化する。いくつかの実施形態において、HAZのメタンスルホニル化は、亜硝酸ナトリウムによる求核置換のためにアルコールを活性化することである。いくつかの実施形態では、HAZのメタンスルホニル化のために、メタンスルホニルクロリドをHAZに添加する。いくつかの実施形態では、水を除去してからメタンスルホニルクロリドをHAZに添加する。いくつかの実施形態では、トルエン中の出発物質溶液の共沸蒸留によって水を除去する。いくつかの実施形態では、次のステップの間、塩基性pHが確実に維持されるようにトリエチルアミンの量をわずかに増加させ、したがって、放出されるNOxの量を減少させる。いくつかの実施形態では、生成物溶液を次のステップへ直接持ち込む。いくつかの実施形態では、第2のステップの試薬量(亜硝酸ナトリウム及びホルムアルデヒド)を2倍にして、収率をより高くする。いくつかの実施形態では、それぞれ約4時間の添加時間ならびに撹拌時間を用いる。いくつかの実施形態では、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10時間の添加時間を用いる。いくつかの実施形態では、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、または10時間の撹拌時間を用いる。いくつかの実施形態では、水性ワークアップを高温(例えば、約35℃)で実施して、生成物を溶液状態に保つ。いくつかの実施形態では、高温とは、約30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、または50℃である。いくつかの実施形態では、蒸留を介して有機相を濃縮する前に、水を添加して残留ホルムアルデヒドの共沸除去を促進させる。いくつかの実施形態では、トルエン/n-ヘプタン(約1:1)からの単離により、十分な純度(99.8%-a/a、99%-w/w)の淡黄色生成物が得られる。いくつかの実施形態では、純粋なトルエンからの単離を介して、白色~灰色がかった白色かつ分析的に純粋な生成物が、約4%の理論的収率を犠牲にして得られる。
【0080】
HMNAZからのRRx-001ステージ3(TBDNAZ)の生成
いくつかの実施形態では、酸化的ニトロ化のための末端酸化剤(過硫酸ナトリウム)を数回に分けて添加して、反応混合物における溶解を容易にした。いくつかの実施形態では、反応温度を22~32℃に上昇させて、RRx-001ステージ3(TBDNAZ)の結晶化を防止する。いくつかの実施形態では、変換完了後に亜硫酸ナトリウムでのクエンチを導入して、ジクロロメタンをトルエンで置換し、生成物の希釈及び抽出ができるようにする。いくつかの実施形態では、追加で水性洗浄を導入して、有機相からの残留塩を除去する。いくつかの実施形態では、次のステップのプロセス溶媒もトルエンである場合、(溶媒交換の代わりに)共沸乾燥のみを用いる。いくつかの実施形態では、トルエン中のRRx-001ステージ3溶液(約32%-w/w)は、冷却条件下で保管される。
【0081】
TBDNAZからのRRx-001ステージ4(ADNAZ)の生成
いくつかの実施形態では、BF3触媒下、還流させながら、TBDNAZ及び無水酢酸をADNAZに変換させる。いくつかの実施形態では、反応が開始したことを確認するために、50℃にて工程内安全管理を行った後、BF3触媒下、還流させながら、TBDNAZ及び無水酢酸をADNAZに変換する。いくつかの実施形態では、ADNAZの分解を防ぐために上限時間を導入する。いくつかの実施形態では、水溶性炭酸カリウムでのクエンチの間、THFでの希釈により生成物を溶液状態に保つ。いくつかの実施形態では、エタノールの添加により、相分離が良好になる。いくつかの実施形態では、溶媒交換後、生成物がn-プロパノール/n-ヘプタンから結晶化する。いくつかの実施形態では、衝撃感受性または爆発感受性物質のハンドリングを防ぐための安全対策が講じられる。例えば、(i)いくつかの実施形態では、乾燥ADNAZが衝撃感受性または爆発感受性であるため、濾過ケーキを水で濡らして洗浄し、(ii)THFを用いて、水で濡らした濾過ケーキをフィルターから分離させる。
【0082】
RRx-001ステージ5(DNAZ)及びステージ6(ABDNAZ「高密度」)の生成
いくつかの実施形態では、酸性条件下でアセチル基を除去をする。いくつかの実施形態では、メタンスルホン酸を使用する。いくつかの実施形態では、5eqの酸及び15eqの水を使用する。いくつかの実施形態では、約40℃にて反応を実行させる。いくつかの実施形態では、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、または50℃以上にて反応を実行させる。いくつかの実施形態では、粘度変化及び塩析沈殿の問題を回避するために、反応混合物を水溶性リン酸カリウム中にクエンチする。
【0083】
いくつかの実施形態では、次のアシル化のための塩基としてリン酸カリウムを使用する。いくつかの実施形態では、ショッテン-バウマン条件を使用して、ほとんどの求核剤を水相状態に保ち、それにおいて求核剤は、不安定なα-臭化物の置換による不純物を形成し得ない。これらの条件下で生成する唯一の不純物は、第二級アミンRRx-001ステージ5と生成物との反応に由来するものである。いくつかの実施形態では、この不純物の量を、トルエン/THF比の調節(したがって、溶媒系は極性となる)及び/または添加時間の制限(下限及び上限の両方)によって制限する。いくつかの実施形態では、溶液中のRRx-001ステージ6の安定性を保証するために、弱酸性ワークアップが必要とされる。いくつかの実施形態では、トルエン/MiBK(MiBK=4-メチル-2-ペンタノン)からの結晶化により、API-品質の生成物が得られる。いくつかの実施形態では、RRx-001ステージ6の衝撃感受性または爆発感受性に起因して、THFを用いて生成物をフィルターから分離させる。いくつかの実施形態では、THF中の溶液であるRRx-001ステージ6は、低温で保管する必要がある。
【0084】
RRx-001ステージ7
いくつかの実施形態では、高密度ABDNAZ(乾燥)を酢酸エチル中に溶解させる。いくつかの実施形態では、得られた溶液を、素早く撹拌したn-ヘプタンに添加する。いくつかの実施形態では、したがって、溶媒がTHFに変更される。いくつかの実施形態では、結晶化を制御しやすいように、THF中のRRx-001ステージ6溶液を、高温(例えば、30~35℃)にて、素早く撹拌したn-ヘプタンにゆっくりと添加し、冷却速度は遅くする。
【0085】
合成の最後のステップである、ステージ6の物質からステージ7の物質へのABDNAZの再結晶化は、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性物質を創出させる上で重要であることが発見された。このステップにおいて、プロトコルは以下のステップを含む:(a)式Iの化合物または衝撃感受性もしくは爆発感受性ABDNAZ(ステージ6の物質のABDNAZ等)をテトラヒドロフラン中に溶解させるステップ、(b)ステップ(a)の溶液を、例えば、室温でn-ヘプタンに添加するステップ、及び(c)ステップ(b)の溶液を、例えば、15℃、10℃、または5℃に冷却し、それによって、式Iの化合物の非衝撃感受性結晶形態を提供するステップ。ステップ(b)の間、テトラヒドロフラン溶液は、ヘプタンに約1:5(v/v、すなわち、THF溶液の体積:ヘプタンの体積=1:5)の比で、少なくとも1時間ヘプタンが撹拌されている間、少なくとも30分間にわたって添加される。ステップ(c)の間、混合物は、少なくとも30分、45分、少なくとも1時間撹拌される。得られた物質は、濾過及び乾燥により回収され得る。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の間にアセトンまたはジクロロメタン等の別の溶媒をヘプタンに添加した場合、得られる物質は、衝撃感受性または爆発感受性になる。
【0086】
いくつかの実施形態において、プロトコルは、式Iの化合物または衝撃感受性もしくは爆発感受性ABDNAZ(ステージ6の物質のABDNAZ等)を、溶媒1中に溶解させるステップ(a)を含む。いくつかの実施形態において、プロトコルは、ステップ(a)の溶液を温度T1で溶媒2に添加するステップ(b)を含む。いくつかの実施形態において、プロトコルは、ステップ(b)の溶液を温度T1からT2に冷却することを含み、それによって、式Iの化合物の非衝撃感受性結晶形態を提供するステップ(c)を含む。ステップ(b)のいくつかの実施形態において、ステップ(a)の溶液は、溶媒2に約1:R1(v/v、THF溶液の体積:ヘプタンの体積=1:R1)の比で添加される。ステップ(b)のいくつかの実施形態において、ステップ(a)の溶液は、溶媒2が撹拌されている間、t1の期間にわたって溶媒2に添加される。ステップ(c)のいくつかの実施形態において、混合物は、t2の期間撹拌される。いくつかの実施形態において、得られた物質は、濾過及び乾燥により回収され得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、溶媒1は、非プロトン性極性溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒1は、境界型非プロトン性極性溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒の誘電率は、約10未満である。いくつかの実施形態において、溶媒の誘電率は、約7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、20、30、40、または50未満である。いくつかの実施形態において、溶媒の双極子モーメントは、約2未満である。いくつかの実施形態において、溶媒の双極子モーメントは、約1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、または5.5未満である。いくつかの実施形態において、溶媒は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチル、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、溶媒はテトラヒドロフランである。いくつかの実施形態において、溶媒1は、酸素含有溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒1は、アルコール、エステル、またはケトンである。いくつかの実施形態において、溶媒1は、酢酸エチル(EtOAc)、メチルイソブチルケトン(MiBK)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、溶媒1は、酢酸、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、酢酸n-ブチル、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0088】
いくつかの実施形態において、溶媒2は、非極性溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒2は、極性溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒2は、n-ヘプタン、メチルイソブチルケトン(MiBK)、ジクロロメタン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0089】
いくつかの実施形態において、溶媒1はEtOAcであり、溶媒2はn-ヘプタンである。いくつかの実施形態において、溶媒1はエタノールであり、溶媒2はジクロロメタンである。いくつかの実施形態において、溶媒1はMiBKであり、溶媒2はn-ヘプタンである。いくつかの実施形態において、溶媒1はTHFであり、溶媒2はn-ヘプタンである。
【0090】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒1の濃度は、少なくとも約330ppmである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒1の濃度は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppmである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒1の濃度は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppm未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒1の濃度は、上限が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppmであり、独立して選択される下限が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000ppmであり、ここで、上限は下限より大きい。
【0091】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒2の濃度は、少なくとも約800ppmである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒2の濃度は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000ppmである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒2の濃度は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000ppm未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される非衝撃感受性または非爆発感受性のABDNAZ粒子または組成物中の溶媒2の濃度は、上限が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000ppmであり、独立して選択される下限が約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、550、600、650、700、750、800、850、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000ppmであり、ここで、上限は下限より大きい。
【0092】
いくつかの実施形態において、T1は、約30℃~約35℃である。いくつかの実施形態において、T1は、少なくとも20℃である。いくつかの実施形態において、T1は、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95℃である。いくつかの実施形態において、T1は、少なくとも約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95℃である。いくつかの実施形態において、T1は、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95℃未満である。いくつかの実施形態において、T1は、上限が約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95℃であり、独立して選択される下限が約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95℃であり、ここで、上限は下限より大きい。
【0093】
いくつかの実施形態において、T2は、約0℃~約10℃である。いくつかの実施形態において、T2は、約20℃未満である。いくつかの実施形態において、T2は、約-20、-17.5、-15、-12.5、-10、-7.5、-5、-2.5、0、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、または90℃である。いくつかの実施形態において、T2は、少なくとも約-20、-17.5、-15、-12.5、-10、-7.5、-5、-2.5、0、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、または90℃である。いくつかの実施形態において、T2は、約-20、-17.5、-15、-12.5、-10、-7.5、-5、-2.5、0、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、または90℃未満である。いくつかの実施形態において、T2は、上限が約-20、-17.5、-15、-12.5、-10、-7.5、-5、-2.5、0、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、または90℃であり、独立して選択される下限が約-20、-17.5、-15、-12.5、-10、-7.5、-5、-2.5、0、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、55、60、65、70、75、80、85、または90℃であり、ここで、上限は下限より大きい。
【0094】
いくつかの実施形態において、R1は、約5である。いくつかの実施形態において、R1は、約3~約10である。いくつかの実施形態において、R1は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50である。いくつかの実施形態において、R1は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50である。いくつかの実施形態において、R1は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50未満である。いくつかの実施形態において、R1は、上限が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50であり、独立して選択される下限が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50であり、ここで、上限は下限より大きい。
【0095】
いくつかの実施形態において、t1は、約0.5時間である。いくつかの実施形態において、t1は、約10分~約6時間である。いくつかの実施形態において、t1は、少なくとも約10分である。いくつかの実施形態において、t1は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間である。いくつかの実施形態において、t1は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、210、または240分である。いくつかの実施形態において、t1は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間未満である。いくつかの実施形態において、t1は、上限が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間であり、独立して選択される下限が約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、210、または240分であり、ここで、上限は下限より長い。
【0096】
いくつかの実施形態において、t2は、少なくとも約2時間である。いくつかの実施形態において、t2は、少なくとも約0.5時間である。いくつかの実施形態において、t2は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間である。いくつかの実施形態において、t2は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間である。いくつかの実施形態において、t2は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間未満である。いくつかの実施形態において、t2は、上限が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間であり、独立して選択される下限が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、または10時間であり、ここで、上限は下限より長い。
【0097】
得られた化合物は、例えば、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019(Orange Book)に記載されている1つ以上の標準プロトコルを用いて、衝撃感受性または爆発感受性について試験され得る。例えば、化合物(例えば、結晶性ABDNAZ)の爆発性は、Orange Bookに記載されているように、BAM Fallhammerを用いたSeries 3 Type(a)(ii)Testの手順により決定され得る。試験は、衝撃装置内に配置された40mm3の試料を、40Jのエネルギー(例えば、重量10kgの落下物を40cmの高さから落下させて使用)に供するようにして実施される。試験は、同一の実験条件下で、6つの別々の試料に対して実施され、爆発が生じたかどうかは作業者が決定する。6つの試料すべてで爆発が生じない場合、当該物質は、衝撃感受性または爆発感受性でない、あるいは非衝撃感受性または非爆発感受性であるとして特徴づけられる。しかしながら、試料のうちの1つが試験に失敗し、爆発を引き起こした場合、当該物質は、衝撃感受性または爆発感受性であるとして特徴づけられる。
【0098】
従来のRRx-001組成物では、40ジュール(0.4mの高さで10kgの質量)でのBAM Fallhammer試験で、爆薬であるTNT、HMX、及びRDXに匹敵する陽性結果が認められた。このことに基づき、RRx-001は、クラス1の爆薬として分類されている。したがって、好ましくは、人口が密集した中心地から遠く離れ、特別な設備及び許可を備え、かつ、最新の爆薬安全規制及び環境規制に適合している施設が必要とされ、それだけでなく、こうした化合物を合成し保管するために適切な訓練を受け、認定された人員も必要とされる。臨床使用に関し、適切なCMC/cGMPの専門的技術及び設備を備えた施設は、世界的にもほんの一握りしか存在しない。したがって、先行するRRx-001組成物の大規模製造は、後期臨床検査材料を提供し、商業化のための現実的な選択肢となる能力及び経験を有する、ニッチな医薬品製造受託機関(CMO)に限定される。しかしながら、本発明により開示される組成物では、BAM Fallhammer試験(10kgの質量、0.40mの高さ、40J)の結果は、無反応であり、一貫して繰り返し陰性であることが認められた。
【0099】
別の標準試験は、8号雷管で物質の爆発が生じ得るかどうかを評価するものである。「8号試験雷管」は、試験物質(この場合はABDNAZ)を爆発させるために使用される充填起爆薬を含有する金属性カプセルを指す。前述のABDNAZ組成物では爆発感受性が変動的であり、すなわち、時には当該ABDNAZは爆発可能なものであり、時には当該ABDNAZは爆発不可能なものであった。
【0100】
III.医薬組成物
本発明は、活性治療薬ならびに1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/または希釈剤を含む医薬組成物を提供するものである。ある特定の実施形態において、本発明が、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)及び/または希釈剤と共に製剤化されたABDNAZを含む医薬組成物を提供するものであるように、活性治療薬は、ABDNAZである。医薬組成物は、治療有効量でABDNAZを含み得る。下で詳細に記載されるように、本発明の医薬組成物は、以下:(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性の溶液または懸濁液)、及び(2)例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による非経口投与(例えば、滅菌溶液もしくは懸濁液、または徐放性製剤として)に適合するものを含む、液体形態での投与用に特別に製剤化され得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」は、本発明の化合物、物質、または化合物を含む組成物の量であり、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利点/リスク比で、少なくとも動物の細胞亜集団において何らかの所望の治療効果を生じさせるのに有効な量を意味する。
【0102】
語句「薬学的に許容される」は、健全な医療的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、妥当な利点/リスク比に見合う、化合物、物質、組成物及び/または剤形を指すように本明細書で用いられる。
【0103】
単一の剤形を生産するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量となる。いくつかの実施形態において、この量は、100%パーセント中、活性成分の約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲にあることになる。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物を静脈内投与する場合、水は賦形薬である。いくつかの実施形態において、食塩水及び水溶性デキストロース及びグリセロール水溶液も、特に注射液用の液体賦形薬として採用され得る。いくつかの実施形態において、適切な医薬賦形薬としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール及び同様のもの等の賦形剤も挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、所望により、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤も含有し得る。加えて、助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤が使用されることがある。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物のいずれかは、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠形成、微粒子化、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または助剤(これらは、薬学的に使用され得る調製物へと化合物を加工することを容易にするものである)を用いて従来の様式で製剤化されてもよい。選択された投与経路に依存して、製剤化は適切になされる。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として、慣例の手順に従って製剤化される。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、静脈内投与用の滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物のいずれかは、注射用に、水溶液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液等の生理的適合性のある緩衝液中で製剤化されてもよい。いくつかの実施形態において、溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/または分散剤等の製剤化用薬剤を含有してもよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、必要な場合に可溶化剤も含み得る。いくつかの実施形態において、静脈内投与用の医薬組成物は、注射部位の痛みを和らげるために、任意選択で、リグノカイン等の局所麻酔薬を含んでもよい。いくつかの実施形態において、成分は、例えば、活性剤の量を指し示すアンプルまたはサシェ等の密封容器に、凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、単位剤形において別々にまたは共に混合されて供給される。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物が輸液により投与される場合、例えば、製薬用グレードの滅菌水または滅菌生理食塩水を含有する輸液ボトルで、本発明の医薬組成物が調剤され得る。他の実施形態において、本発明の医薬組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合できるように、滅菌注射用水または滅菌生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物の経口投与用液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、水性または油性懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。いくつかの実施形態では、活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物等の他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤等、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤を含有してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、経口組成物は、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤及び保存剤等のアジュバントも含み得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、活性化合物に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天及びトラガカント、ならびにそれらの混合物として、懸濁化剤を含有してもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、非経口投与に適切な本発明の医薬組成物は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、または懸濁化剤もしくは増粘剤を含有し得る、1種以上の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルション、または使用直前に滅菌注射液もしくは分散液へと再調製され得る滅菌粉末、と組み合わせた1つ以上の本発明の化合物を含む。
【0112】
本発明の医薬組成物に利用され得る適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及び同様のもの等)、及びそれらの適切な混合物、オリーブ油等の植物油、ならびにオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。いくつかの実施形態において、適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材料の使用、分散体の場合における必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用により維持され得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントも含有し得る。いくつかの実施形態において、対象化合物に対する微生物の作用を予防することは、例えば、種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、及び同様のもの)を含めることによって確実になり得る。また、糖、塩化ナトリウム、及び同様のもの等の等張化剤を組成物中に含めることが望ましいこともある。他の実施形態において、注射可能な医薬形態の吸収作用は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅らせる薬剤を含めることによって延長され得る。いくつかの実施形態において、ネブライザー及び液体噴霧デバイスならびにEHDエアロゾルデバイスと共に使用するのに適切な液体医薬製剤は、典型的には、薬学的に許容される賦形薬を伴う組成物を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形薬は、アルコール、水、ポリエチレングリコールまたはペルフルオロカーボン等の液体である。任意選択で、別の材料を添加して、化合物の溶液または懸濁液のエアロゾル特性を変化させてもよい。いくつかの実施形態において、この材料は、アルコール、グリコール、ポリグリコールまたは脂肪酸等の液体である。エアロゾルデバイスでの使用に適切な液体薬物溶液または懸濁液を製剤化する他の方法は、当業者に既知である(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号、Biesalski、米国特許第5,556,611号を参照のこと)。
【0114】
いくつかの実施形態において、本発明の調製物は、例えば、経口的または非経口的に投与され得る。本明細書で使用される場合、語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、経腸投与及び局所投与以外の投与様式で、通常は注射によることを意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内注射ならびに注入を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、全身性製剤には、注射(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内または腹腔内注射)による投与用に設計されたもの、ならびに経皮、経粘膜、経口または経肺投与用に設計されたものが含まれる。全身性製剤は、気道粘膜の粘液線毛クリアランスを改善するか、または粘液粘度を低減させる、さらなる活性剤と組み合わせて作製され得る。こうした活性剤としては、限定されないが、ナトリウムチャネル遮断薬、抗生物質、N-アセチルシステイン、ホモシステイン及びリン脂質が挙げられる。
【0116】
本明細書で使用される場合、語句「全身投与」、「全身性に投与される」、「末梢投与」及び「末梢性に投与される」は、化合物、薬物または他の物質が、患者の体内に入り、したがって、代謝及び他の同様のプロセスに供されるような、中枢神経系に直接投与される以外の投与(例えば、皮下投与)を意味する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、経口、経鼻(例えば、噴霧によるように)、直腸性、膣内、非経口、大槽内及び局所を含む、任意の適切な投与経路によって、治療のためにヒト及び他の動物に投与され得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、本出願に記載される組成物は、局所投与用に、粉末、軟膏または液滴(バッカル用及び舌下用を含む)、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして、当該技術分野において周知であるように製剤化され得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、バッカル投与用に、従来の様式で製剤化された錠剤、トローチ剤などの形態をとり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、経粘膜投与用に、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が製剤中で使用される。かかる浸透剤は、当該技術分野で一般に知られている。
【0121】
いくつかの実施形態において、本医薬組成物は、溶液剤、懸濁液剤、乳剤、錠剤、丸剤、粒剤、カプセル剤、液体含有カプセル剤、散剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁液剤、または使用に適切な任意の他の形態の形態をとり得る。1つの実施形態において、薬学的に許容される賦形薬はカプセルである(例えば、Grosswald et al.、米国特許第5,698,155号)。医薬組成物の調製の一般的考察は、Remington,“The Science and Practice of Pharmacy,”19th Editionで見出すことができる。
【0122】
他の実施形態において、本医薬組成物は、カプセル剤、錠剤または丸剤の形態である場合、消化管における崩壊及び吸収を遅延させるためにコーティングされることがあり、それによって、長期間にわたる持続的作用がもたらされる。いくつかの実施形態において、浸透圧的に活性な駆動用化合物を取り囲む、選択的透過性の膜も、経口投与化合物に適切である。いくつかの実施形態では、これらの後者のプラットフォームにおいて、カプセル周囲環境の流体が駆動用化合物によって吸収され、この駆動用化合物が膨潤して、開口部を通じて薬剤または薬剤組成物が浸出する。いくつかの実施形態において、これらの送達プラットフォームにより、即放性製剤のスパイク性プロファイルとは対照的に、本質的にゼロレベルの送達プロファイルがもたらされ得る。いくつかの実施形態において、グリセロールモノステアレートまたはグリセロールステアレート等の時間遅延材料もまた使用されてよい。いくつかの実施形態において、経口組成物は、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的賦形薬を含み得る。いくつかの実施形態において、かかる賦形薬は、医薬グレードのものである。
【0123】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるABDNAZの結晶形態及び/またはその医薬組成物は、例えば、カカオバターまたは他のグリセリド等の従来の坐薬基剤を含有する、坐薬または停留浣腸等の直腸または膣用医薬組成物の状態でも製剤化され得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投薬量は、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効であり、当該患者に毒性でない活性成分化合物1の量とするために、変更することができる。
【0125】
いくつかの実施形態において、選択される投薬量は様々な要因に依存することになり、こうした要因としては、用いられる本発明の特定の化合物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度または代謝速度、吸収の速度及び程度、処置期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、病状、健康状態及び既往歴、ならびに医療技術分野において周知である類似の要因が挙げられる。
【0126】
当業者である医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師であれば、医薬組成物において用いられる本発明の組成物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができる。
【0127】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物の適切な1日量は、治療効果をもたらすのに有効である最低用量の化合物量となる。かかる有効量は、一般に、上記の要因に依存することになる。いくつかの実施形態において、化合物は、約0.01mg/kg~約200mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg~約100mg/kg、さらにより好ましくは約0.5mg/kg~約50mg/kgで投与される。本明細書に記載される化合物が別の薬剤(例えば、増感剤として)と併用投与される場合、有効量は、薬剤が単独で使用される場合よりも少なくてよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、活性化合物の有効1日量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6回またはそれ以上の分割用量として、任意選択で、単位剤形で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、投薬は、1日あたり1回なされる。
【0129】
上の記述は、本発明の複数の態様及び実施形態を説明するものである。本特許出願は、態様及び実施形態のすべての組み合わせ及び順列を特に企図するものである。
【0130】
IV.治療上の投与
上記の疾患または障害を処置または予防するために使用される場合、本明細書に開示される組成物は、単独で、または他の薬剤と組み合わせて投与または適用され得る。また、ABDNAZ及び/またはその医薬組成物は、単独で、または他の薬学的に活性な薬剤(例えば、他の抗がん剤、他の関節炎剤など)と組み合わせて投与または適用され得る。
【0131】
本明細書に開示される組成物及び別の治療薬は、相加的または相乗的に作用し得る。1つの実施形態において、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態及び/またはその医薬組成物は、別の治療薬の投与と同時に投与される。別の実施形態では、そのABDNAZの結晶形態の製剤及び/または医薬組成物は、別の治療薬の投与前または投与後に投与される。
【0132】
各治療薬の逐次投与または同時投与は、限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を通じた直接吸収を含む、任意の適切な経路によって行われ得る。
【0133】
治療薬は、同一の経路または異なる経路で投与され得ることが理解される。いくつかの実施形態において、選択された組み合わせの第1の治療薬は、静脈内投与により投与され得、一方、当該組み合わせの他の治療薬(複数可)は、経口投与され得る。代替的には、例えば、すべての治療薬が経口投与されてもよく、またはすべての治療薬が静脈内注射により投与されてもよい。
【0134】
特に、1つの実施形態において、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態及び/またはその医薬組成物は、他の化学療法薬(例えば、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン(melphalen)、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア、トリアジン)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸アナログ、ピリミジンアナログ(例えば、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シトシンアラビノシドなど)、プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン(thiogunaine)、ペントスタチンなど)、天然物(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド(tertiposide)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(doxurubicin)、ブレオマイシン、ミトラマイシン(mithrmycin)、マイトマイシンC、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンアルファ)、白金配位錯体(例えば、シスプラチナム、カルボプラチンなど)、アポトーシス誘導剤、グルタチオン枯渇剤、または細胞の酸化還元状態を変化させることができる他の薬剤)を伴う併用療法において使用され得る。また、本明細書に開示される組成物は、上で列挙された化学療法薬及び放射線療法の両方を伴う同時的併用療法においても使用され得ることを、当業者は認識するであろう。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、経口投与され得る。また、本明細書に開示される組成物は、任意の他の便宜的経路によって(例えば、注入もしくはボーラス注入によって、上皮もしくは粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜及び腸粘膜など)を通じた吸収によって)も投与され得る。投与は、全身性または局所性であり得る。種々の送達系(例えば、リポソーム、微小粒子、マイクロカプセル、カプセルなどへの包埋)が知られており、これらは、本明細書に開示される組成物を投与するために使用され得る。投与方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経鼻、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸性、吸入によって、または局所性(特に耳、鼻、眼もしくは皮膚)が挙げられる。投与様式は、医師の判断に任され、部分的には病態の部位に依存することになる。ほとんどの場合、投与により、ABDNAZ及び/またはその医薬組成物が血流中に放出されることになる。
【0136】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、医用機器を介して、例えば、国際公開第WO 2019/241276号(当該文献の開示全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるような薬物注入デバイス、システム、及び方法を使用して投与され得る。
【0137】
特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物を、処置が必要な領域に局所的に投与することが望ましい可能性がある。このことは、例えば、限定するものではないが、手術中の局所注入、局所的適用(例えば、手術後の創傷被覆との併用)によって、注射によって、カテーテルによって、坐薬によって、またはインプラントによって達成され得、前記インプラントは、シラスティック(sialastic)膜または繊維質等の膜を含む、多孔質、非多孔質、またはゲル状の材料である。1つの実施形態において、投与は、疾患または障害の部位(または以前の部位)での直接注射によって行われ得る。
【0138】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物を、脳室内、髄腔内及び硬膜外注射を含む任意の適切な経路によって中枢神経系内に導入することが望ましい可能性がある。脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバー等のリザーバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって促進され得る。
【0139】
他の実施形態において、本明細書に開示される組成物は、吸入によって肺にも直接投与され得る。吸入による投与に関し、ABDNAZ及び/またはその医薬組成物は、いくつかの異なるデバイスによって肺に簡便に送達され得る。例えば、適切な低沸点の噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または任意の他の適切なガス)を含有するキャニスターを利用する定量噴霧式吸入器(「MDI」)を使用して、ABDNAZ及び/またはその医薬組成物を肺に直接送達することができる。
【0140】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物を肺に投与するために、乾燥粉末吸入器(「DPI」)デバイスが使用され得る。DPIデバイスは、典型的には、容器の内側で乾燥粉末雲を創出させ、次いで、この乾燥粉末雲を患者に吸入させることができるガス噴出等の機構を用いるものであり、当該技術分野において周知である。特定の実施形態において、普及しているバリエーションは、多回投与DPI(「MDDPI」)システムであり、これは、1回超の治療用量を送達可能にするものである。MDDPIデバイスは、いくつかの製薬会社から市販されている(例えば、Schering Plough,Madison,NJ)。例えば、吸入器または散布器で使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、本明細書に開示される組成物の粉末混合物、及びこれらのシステム用のラクトースまたはデンプン等の適切な粉末基剤を含有するように製剤化され得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物を肺に送達するために使用され得る別タイプのデバイスは、例えば、Aradigm Corporation,Hayward,CAによって供給される液体スプレーデバイスである。液体スプレーシステムは、極めて小さなノズル孔を使用するものであり、そのノズル孔によって液体薬物製剤がエアロゾル化され、次いで、それが肺内に直接吸入され得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、ネブライザーは、本明細書に開示される組成物を肺に送達するために使用される。ネブライザーは、例えば、超音波エネルギーを使用して、容易に吸入され得る微粒子を形成させることにより、液体薬物製剤からエアロゾルを創出させる(例えば、Verschoyle et al.,British J.Cancer,1999,80,Suppl.2,96を参照のこと)。ネブライザーの例としては、Sheffield Pharmaceuticals,St.Louis,MO(Armer et al.、米国特許第5,954,047号、van der Linden et al.、米国特許第5,950,619号、van der Linden et al.、米国特許第5,970,974号)及びBatelle Pulmonary Therapeutics,Columbus,OHが供給するデバイスが挙げられる。
【0143】
他の実施形態において、電気流体力学(「EHD」)エアロゾルデバイスが、本明細書に開示される組成物を患者の肺に送達するために使用される。EHDエアロゾルデバイスは、電気エネルギーを使用して、液体薬物溶液または懸濁液をエアロゾル化するものである(例えば、Noakes et al.、米国特許第4,765,539号を参照のこと)。EHDエアロゾルデバイスでABDNAZ及び/またはその医薬組成物を肺に送達する場合、製剤の電気化学的特性が、最適化されるべき重要パラメータであり得る。EHDエアロゾルデバイスは、既存の肺送達技術よりもさらに効率的に薬物を肺に送達し得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、小胞、特にリポソーム中で送達され得る(例えば、Langer,1990,Science,249:1527-1533、Treat et al.,in“Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,”Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365(1989))。
【0145】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、徐放システム、例えば経口徐放システムを介して送達され得る。他の実施形態では、ポンプが使用され得る(例えば、Langer,supra,Sefton,1987,CRC Crit.Ref Biomed.Eng.14:201、Saudek et al.,1989,N.Engl.J Med.321:574)。
【0146】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料が使用され得る(例えば、“Medical Applications of Controlled Release,”Langer and Wise(eds.),CRC Press,Boca Raton,Florida(1974)、“Controlled Drug Bioavailability,”Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984)、Ranger et al.,1983,J Macromol.Sci.Rev.Macromol Chem.23:61、Levy et al.,1985,Science 228:190、During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351、Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105)。
【0147】
他の実施形態では、経口徐放性送達のためにポリマー材料が使用される。ポリマーとしては、限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース(最も好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)が挙げられる。他のセルロースエーテル類も説明されている(Alderman,Int.J.Pharm.Tech.& Prod.Mfr.1984,5(3)1-9)。薬物放出に影響を及ぼす因子は、当業者に周知であり、当該技術分野において説明されている(Bamba et al.,Int.J.Pharm.1979,2,307)。
【0148】
他の実施形態では、腸溶コーティング製剤が、経口徐放性投与のために使用され得る。コーティング材料としては、溶解度がpHに依存するポリマー(すなわち、pH制御放出)、膨潤、溶解または浸食の速度が遅いかまたはpHに依存するポリマー(すなわち、時間制御放出)、酵素により分解されるポリマー(すなわち、酵素制御放出)、及び圧力の増加によって破壊される堅固な層を形成するポリマー(すなわち、圧力制御放出)が挙げられる。
【0149】
他の実施形態において、浸透圧性デリバリーシステムが、経口徐放性投与のために使用される(Verma et al.,Drug Dev.Ind.Pharm.,2000,26:695-708)。いくつかの実施形態において、OROS(商標)浸透圧性デバイスが、経口徐放性送達デバイス用に使用される(Theeuwes et al.、米国特許第3,845,770号、Theeuwes et al.、米国特許第3,916,899号)。
【0150】
さらに他の実施態様において、制御放出システムは、ABDNAZ及び/または医薬組成物の標的の近傍に配置され、したがって、全身用量の一部のみを必要とすることができる(例えば、Goodson,in“Medical Applications of Controlled Release,”supra,vol.2,pp.115-138(1984))。従来の他の制御放出システムも使用してよい(Langer,1990,Science 249:1527-1533)。
【0151】
他の実施形態では、粒子は、除塵添加剤中に分散される。例えば、除塵剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-400)である。
【0152】
別の態様において、本発明は、本明細書に開示される組成物または医薬組成物と血液試料とを含む混合物を提供するものである。
【0153】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物の濃度は、0.1mg/血液mL~10mg/血液mL、または0.2mg/血液mL~5mg/血液mL、または0.4mg/血液mL~2.5mg/血液mLである。状況によっては、式Iの化合物を血液2.5mLあたり1mgの化合物という濃度で投与することが有用であり得る。
【0154】
投与されるABDNAZの用量
例示的なABDNAZの投与量は、m2で測定した患者の表面積に基づいて当該患者に投与されることになるABDNAZのミリグラム数によって示される。ある特定の実施形態において、患者に投与されるABDNAZの用量は、約1mg/m2~約2mg/m2、約2mg/m2~約4mg/m2、約4mg/m2~約6mg/m2、約6mg/m2~約8mg/m2、約8mg/m2~約10mg/m2、約10mg/m2~約12mg/m2、約12mg/m2~約14mg/m2、約14mg/m2~約16mg/m2、約16mg/m2~約18mg/m2、約18mg/m2~約20mg/m2、約20mg/m2~約25mg/m2、約25mg/m2~約30mg/m2、約30mg/m2~約35mg/m2、約35mg/m2~約40mg/m2、約40mg/m2~約45mg/m2、約45mg/m2~約50mg/m2、約50mg/m2~約60mg/m2、または約60mg/m2~約75mg/m2である。
【0155】
患者に投与されるABDNAZの用量は、ABDNAZの量及び静脈内注入等の送達様式の両方に従ってさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約1mg/m2~約90mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約1mg/m2~約10mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約1mg/m2~約2.5mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約2.5mg/m2~約5mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約5mg/m2~約10mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約5mg/m2~約7mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約8mg/m2~約9mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約10mg/m2~約20mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約1mg/m2~約1.5mg/m2、約1.5mg/m2~約2mg/m2、約2mg/m2~約2.5mg/m2、約2.5mg/m2~約3mg/m2、約3mg/m2~約3.5mg/m2、約3.5mg/m2~約4mg/m2、約4mg/m2~約4.5mg/m2、約4.5mg/m2~約5mg/m2、約5mg/m2~約5.5mg/m2、約5.5mg/m2~約6mg/m2、約6mg/m2~約6.5mg/m2、約6.5mg/m2~約7mg/m2、約7mg/m2~約7.5mg/m2、約7.5mg/m2~約8mg/m2、約8mg/m2~約8.5mg/m2、約8.5mg/m2~約9mg/m2、約9mg/m2~約9.5mg/m2、約9.5mg/m2~約10mg/m2、約10mg/m2~約12mg/m2、約12mg/m2~約14mg/m2、約14mg/m2~約16mg/m2、約16mg/m2~約18mg/m2、約18mg/m2~約20mg/m2、約20mg/m2~約25mg/m2、約25mg/m2~約30mg/m2、約30mg/m2~約35mg/m2、約35mg/m2~約40mg/m2、約40mg/m2~約45mg/m2、または約45mg/m2~約50mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、ABDNAZを含む製剤の各用量は、約3mg/m2~約8mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。
【0156】
より具体的な実施形態では、本明細書に開示される組成物の各用量は、約1.25mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約2.5mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約5mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約8.4mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約1mg/m2、約1.5mg/m2、約2mg/m2、約2.5mg/m2、約3mg/m2、約3.5mg/m2、約4mg/m2、約4.5mg/m2、約5mg/m2、約5.5mg/m2、約6mg/m2、約6.5mg/m2、約7mg/m2、約7.5mg/m2、約8mg/m2、約8.5mg/m2、約9mg/m2、約9.5mg/m2、約10mg/m2、約12mg/m2、約14mg/m2、約16mg/m2、約18mg/m2、約20mg/m2、約25mg/m2、約30mg/m2、約35mg/m2、約40mg/m2、約45mg/m2、または約50mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。
【0157】
本明細書に記載される方法は、患者に投与されるABDNAZの用量に従ってさらに特徴づけられ得る。テモゾロミド及び放射線療法と組み合わせて使用するための本明細書に記載されるABDNAZの用量は、投与スケジュールならびにテモゾロミド及び放射線療法の量を鑑みて選択されている。ABDNAZの投与量は、m2で測定した患者の表面積に基づいて当該患者に投与されることになるABDNAZのミリグラム数によって示される。
【0158】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約2mg/m2~約20mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約2.5mg/m2~約5mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約5mg/m2~約10mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約10mg/m2~約16.5mg/m2の範囲の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約2.5mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約5mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約10mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約16.5mg/m2の量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。
【0159】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約0.1mg~約20mgの量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約0.1mg~約10mgの量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約0.5mg~約4.0mgの量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物の各用量は、約0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、3.5mg、4.0mg、4.5mg、5.0mg、7.5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mgまたは250mgの量でABDNAZを提供する静脈内注入によって患者に投与される。用量0.5mg~66mgのABDNAZが対象に投与され得るが、実際の用量は、本明細書に開示される種々の要因に基づいて決定されることになる。
【0160】
以下の節に記載するように、ABDNAZを対象に投与するための1つの手法では、化合物は、PEG(例えば、PEG-400)を含有する液体製剤として、2mg/mLの濃度で提供される。1つの手法では、投与されることになる液体製剤中の化合物1mgごとに、当該化合物を対象の血液2.5mLと組み合わせて混合物を生成し、次いで、当該混合物を対象に投与する。例えば、対象への投与前に、0.5mgの用量(0.25mLの液体製剤中)では、1.25mLの血液と組み合わせ、またはABDNAZ66mgの用量(33mLの液体製剤中)では、165mLの血液と組み合わせる。
【0161】
いくつかの実施形態において、投与されるABDNAZの結晶形態及び/またはその医薬組成物の量は、当然ながら、特に、処置される対象、対象の体重、苦痛の重症度、投与様式及び処方医の判断、という要因に依存する。例えば、結晶及び/または医薬製剤としてのABDNAZの投薬量は、単回投与、多回適用または放出制御により送達され得る。いくつかの実施形態において、投与は、間欠的に繰り返され得、単独かまたは他の薬物と組み合わされて提供され得、疾患状態または障害の効果的処置に必要な限り継続され得る。
【0162】
経口投与に適切な投薬量の範囲は、放射線増感作用の有効性に依存するが、一般に、体重kgあたりのABDNAZ結晶形態は約0.001mg~約100mgである。投薬量の範囲は、当業者に既知の方法により容易に決定され得る。
【0163】
静脈内(i.v.)投与に適切な投薬量の範囲は、kg/体重あたり約0.01mg~約100mgである。鼻腔内投与に適切な投薬量の範囲は、一般に、約0.01mg/kg体重~約1mg/kg体重である。坐薬は、一般に、kg/体重あたり約0.01ミリグラム~約50ミリグラムのABDNAZを含有するか、または約0.5重量%~約10重量%の範囲でABDNAZを含む。皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下または脳内投与のための推奨投薬量は、kg/体重あたり約0.001mg~約200mgの範囲にある。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から推定することができる。かかる動物モデル及び系は、当該技術分野で周知である。
【0164】
例示的ABDNAZ製剤
本発明は、ABDNAZの結晶形態を含む製剤、例えば、全血(例えば、処置される患者の自家血液)、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、抗凝固剤、ならびに任意選択で水、ポリエチレングリコール、及びN,N-ジメチルアセトアミドのうちの1つ以上を含有する製剤を提供するものである。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、全血、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、及び抗凝固剤から本質的になる。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、全血、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、抗凝固剤、ならびに任意選択で水、ポリエチレングリコール、及びN,N-ジメチルアセトアミドのうちの1つ以上からなる。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、全血、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、抗凝固剤、ならびに任意選択で水、約200g/mol~約600g/molの範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコール、及びN,N-ジメチルアセトアミドのうちの1つ以上からなる。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、全血、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、抗凝固剤、水、約200g/mol~約600g/molの範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコール、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、全血、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、抗凝固剤、ならびに任意選択で水、約400g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコール、及びN,N-ジメチルアセトアミドのうちの1つ以上からなる。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、全血、ABDNAZ(例えば、ABDNAZの結晶形態)、抗凝固剤、水、約400g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコール、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる。
【0165】
抗凝固剤
ABDNAZ結晶形態の製剤は、抗凝固剤の個性及び/または量に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、ヘパリン及びクエン酸塩のうちの1つ以上を含む。ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、クエン酸アルカリ金属塩、デキストロース、及び水を含む溶液である。ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、約0.1%wt/wt~約15%w/wの範囲にある量でABDNAZ製剤中に存在する。ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、約1%wt/wt~約10%w/wの範囲にある量でABDNAZ製剤中に存在する。ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、約2%wt/wt~約8%w/wの範囲にある量でABDNAZ製剤中に存在する。
【0166】
製剤は、本明細書に記載されるABDNAZ製剤中の抗凝固剤の個性に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、ヘパリン及びクエン酸塩のうちの1つ以上を含む。ある特定の実施形態において、抗凝固剤は、クエン酸アルカリ金属塩、デキストロース、及び水を含む溶液である。
【0167】
ABDNAZ製剤中の全血量
ABDNAZ結晶形態の製剤は、ABDNAZ製剤中の全血の量に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、全血は、少なくともABDNAZ製剤の30%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくともABDNAZ製剤の40%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくともABDNAZ製剤の50%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくともABDNAZ製剤の60%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくともABDNAZ製剤の75%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくともABDNAZ製剤の90%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、ABDNAZ製剤の約60%wt/wt~約99%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、ABDNAZ製剤の約70%wt/wt~約95%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、ABDNAZ製剤の約75%wt/wt~約90%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血はABDNAZ製剤中に約5mL~約10mL、全血はABDNAZ製剤中に約10mL~約15mL、全血はABDNAZ製剤中に約9mL~約11mL、全血はABDNAZ製剤中に約10mL~約20mL、全血はABDNAZ製剤中に約20mL~約30mL、全血はABDNAZ製剤中に約30mL~約50mL、全血はABDNAZ製剤中に約50mL~約70mL、または全血はABDNAZ製剤中に約70mL~約90mL存在する。ある特定の実施形態において、全血はABDNAZ製剤中に約90mL~約110mL存在する。ある特定の実施形態において、全血はABDNAZ製剤中に約95mL~約105mL存在する。ある特定の実施形態において、全血はABDNAZ製剤中に約100mL存在する。
【0168】
対象に投与されるABDNAZ製剤の体積
本方法は、患者に投与される本明細書に記載の組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約10mL~約200mLの範囲にある。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約10mL~約15mL、約15mL~約20mL、約20mL~約30mL、または約30mL~約50mLの範囲にある。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約50mL~約200mLの範囲にある。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約75mL~約150mLの範囲にある。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約90mL~約140mLの範囲にある。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約100mL~約140mLの範囲にある。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物(例えば、ABDNAZ製剤)の体積は、約100mL~約120mLの範囲にある。
【0169】
より具体的な例示的製剤の1つは、患者に静脈内投与するためのABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)を含有する静脈内製剤であって、以下:
a.少なくとも製剤の60%v/v量である全血、
b.製剤中約0.4μL/mL~約30μL/mLの濃度であるポリエチレングリコール、
c.製剤中約0.2μL/mL~約15μL/mLの濃度であるN,N-ジメチルアセトアミド、
d.少なくとも製剤中10μg/mLの濃度であるABDNAZ、
e.水、及び
f.抗凝固剤、
を含む前記静脈内製剤である。
【0170】
別のより具体的な例示的製剤は、以下:
a.少なくとも製剤の60%v/v量である全血、
b.製剤中約0.4μL/mL~約30μL/mLの濃度であるポリエチレングリコール、
c.製剤中約0.2μL/mL~約15μL/mLの濃度であるN,N-ジメチルアセトアミド、
d.少なくとも製剤中10μg/mLの濃度であるABDNAZ、
e.水、及び
f.抗凝固剤、
から本質的になる製剤である。
【0171】
別のより具体的な例示的製剤は、以下:
a.少なくとも製剤の60%v/v量である全血、
b.製剤中約0.4μL/mL~約30μL/mLの濃度であるポリエチレングリコール、
c.製剤中約0.2μL/mL~約15μL/mLの濃度であるN,N-ジメチルアセトアミド、
d.少なくとも製剤中10μg/mLの濃度であるABDNAZ、
e.水、及び
f.抗凝固剤、
からなる製剤である。
【0172】
別のより具体的な例示的製剤は、患者に静脈内投与するためのABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)を含有する静脈内製剤であって、以下:
a.少なくとも製剤の30%v/v量である血液製剤(例えば、赤血球細胞、血漿、または全血)、
b.任意選択で、製剤中約0.4μL/mL~約30μL/mLの濃度であるポリエチレングリコール、
c.任意選択で、製剤中約0.2μL/mL~約15μL/mLの濃度であるN,N-ジメチルアセトアミド、
d.少なくとも製剤中10μg/mLの濃度であるABDNAZ、
e.任意選択で、水、及び
f.任意選択で、抗凝固剤、
を含む前記静脈内製剤である。
【0173】
別のより具体的な例示的製剤は、患者に静脈内投与するためのABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)を含有する静脈内製剤であって、以下:
a.少なくとも製剤の30%v/v量である全血、
b.ポリエチレングリコール(例えば、製剤中約0.4μL/mL~約30μL/mLの濃度)、
c.N,N-ジメチルアセトアミド(例えば、製剤中約0.2μL/mL~約15μL/mLの濃度)、
d.少なくとも製剤中10μg/mLの濃度であるABDNAZ、
e.水、及び
f.抗凝固剤、
を含む前記静脈内製剤である。
【0174】
別のより具体的な例示的製剤は、以下:
a.少なくとも製剤の30%v/v量である全血、
b.ポリエチレングリコール(例えば、製剤中約0.4μL/mL~約30μL/mLの濃度)、
c.N,N-ジメチルアセトアミド(例えば、製剤中約0.2μL/mL~約15μL/mLの濃度)、
d.少なくとも製剤中10μg/mLの濃度であるABDNAZ、
e.水、及び
f.抗凝固剤、
から本質的になる製剤である。
【0175】
静脈内製剤の例示的特徴
静脈内製剤は、例えば、本明細書の以下に記載されるポリエチレングリコールの個性、抗凝固剤、ABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)の濃度、全血の量、及び他の特徴に応じて特徴づけられ得る。
【0176】
ポリエチレングリコール
製剤は、本明細書に記載されるABDNAZ製剤中のポリエチレングリコールの個性に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約200g/mol~約600g/molの範囲の数平均分子量を有するポリエチレングリコールである。ある特定の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約400g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0177】
ある特定の実施形態において、ポリエチレングリコールは、製剤中に約0.4μL/mL~約4μL/mLの濃度で存在する。ある特定の実施形態において、N,N-ジメチルアセトアミドは、製剤中に約0.2μL/mL~約2μL/mLの濃度で存在する。
【0178】
ABDNAZの濃度
製剤は、本明細書に記載されるABDNAZ製剤中のABDNAZの濃度に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、少なくとも20μg/mLの濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、少なくとも50μg/mLの濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、少なくとも100μg/mLの濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、少なくとも150μg/mLの濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、約10μg/mL~約1mg/mLの範囲にある濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、約10μg/mL~約0.5mg/mLの範囲にある濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、約10μg/mL~約250μg/mLの範囲にある濃度でABDNAZを含有する。ある特定の実施形態において、ABDNAZ製剤は、約20μg/mL~約200μg/mLの範囲にある濃度でABDNAZを含有する。
【0179】
全血の量
製剤は、本明細書に記載されるABDNAZ製剤中の全血の量に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、全血は、少なくとも製剤の30%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくとも製剤の40%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくとも製剤の50%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくとも製剤の75%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、少なくとも製剤の90%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、製剤の約60%wt/wt~約99%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、製剤の約70%wt/wt~約95%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は、製剤の約75%wt/wt~約90%wt/wtを構成する。ある特定の実施形態において、全血は製剤中に約90mL~約110mL存在する。ある特定の実施形態において、全血は製剤中に約95mL~約105mL存在する。ある特定の実施形態において、全血は製剤中に約100mL存在する。
【0180】
静脈内製剤の単位用量形態
製剤は、本明細書に記載されるABDNAZ製剤の単位用量の体積に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約10mL~約200mLの範囲にある単位用量形態である。ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約10mL~約15mL、約15mL~約20mL、約20mL~約30mL、約30mL~約40mL、または約40mL~約50mLの範囲にある単位用量形態である。ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約50mL~約200mLの範囲にある単位用量形態である。ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約75mL~約150mLの範囲にある単位用量形態である。ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約90mL~約140mLの範囲にある単位用量形態である。ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約100mL~約140mLの範囲にある単位用量形態である。ある特定の実施形態において、製剤は、体積が約100mL~約120mLの範囲にある単位用量形態である。
【0181】
対象への静脈内投与に対する疼痛効果の特性評価
本明細書に記載される製剤は、ABDNAZ製剤を患者に静脈内投与する上で患者が経験する疼痛の程度に応じてさらに特徴づけられ得る。したがって、ある特定の実施形態において、製剤は、10mL/時間~50mL/時間の範囲にある速度で当該製剤を患者に静脈内投与することに起因する、静脈内投与部位で当該患者が経験するあらゆる疼痛が、グレード2以下である、という特徴により特徴づけられる。ある特定の実施形態において、製剤は、10mL/時間~50mL/時間の範囲にある速度で当該製剤を患者に静脈内投与することに起因する、静脈内投与部位で当該患者が経験するあらゆる疼痛が、グレード1以下である、という特徴により特徴づけられる。
【0182】
上の記述は、本発明の複数の態様及び実施形態を説明するものである。本特許出願は、態様及び実施形態のすべての組み合わせ及び順列を特に企図するものである。
【0183】
V.治療適用
本発明は、部分的には、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)の結晶形態またはその医薬組成物を使用して、細胞増殖の異常に関連する疾患を処置または予防する方法を提供するものである。
【0184】
1つの態様において、本明細書に記載されるABDNAZの結晶形態を使用して、本明細書に記載される疾患または病状のいずれかを処置、予防、または軽減する方法が提供される。いくつかの態様において、本明細書に記載される疾患または病状のいずれかを処置、予防または軽減するための医薬の製造における、本明細書に記載されるABDNAZの結晶形態または組成物のいずれかの使用が提供される。いくつかの態様において、本明細書に記載される疾患または病状のいずれかの処置、予防または軽減における使用のための、本明細書に記載されるABDNAZの結晶形態及び組成物が提供される。いくつかの実施形態において、疾患は、細胞増殖の異常に関連する。
【0185】
1つの態様において、がんを処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載される結晶または組成物のいずれかの有効量の投与を必要とする対象に対するその投与を含む。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、投与は、静脈内または経口で行われる。
【0186】
別の態様において、虚血状態または低酸素状態を処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載される結晶または組成物のいずれかの有効量の投与を必要とする対象に対するその投与を含む。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、投与は、静脈内または経口で行われる。
【0187】
別の態様において、神経変性疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、線維性疾患、炎症性疾患、感染性疾患、肺性疾患、心疾患、血管疾患、または代謝疾患を処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載される結晶または組成物のいずれかの有効量の皮下投与を必要とする対象に対するその皮下投与を含む。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0188】
別の態様において、化学療法及び/または放射線療法によって生じる正常組織に対する毒性から保護する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載される結晶または組成物のいずれかの有効量の皮下投与を必要とする対象に対するその皮下投与を含み、当該皮下投与は、当該対象が化学療法及び/または放射線療法に曝される前に行われる。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0189】
別の態様において、血液量の減少または低灌流を患う患者を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載される結晶または組成物のいずれかを含む血液製剤の投与を必要とする患者に対するその投与を含む。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0190】
いくつかの実施形態において、本方法は一般に、かかる処置または予防を必要とする患者に、本明細書に開示される治療有効量の組成物を投与することを伴う。ある特定の状況において、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)は、腫瘍細胞の還元環境によって細胞内で活性化される。他の状況において、対象は、ABDNAZを活性化するために照射される。理論に束縛されるものではないが、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)が照射または還元によりフリーラジカルを形成し、その後、当該フリーラジカルが、おそらくDNA複製を妨害すること及び/または細胞膜と反応することにより、細胞複製が妨げられ、細胞が死滅し得る。しかしながら、現在知られていない他の機序が、異常な細胞増殖の処置または予防における2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)の有効性の原因であることが示され得る。他の状況下では、2-ブロモ-1-(3,3-ジニトロアゼチジン-1-イル)エタノン(ABDNAZ)は、細胞内還元及び外部照射の両方により活性化され得る。これらの実施形態では、相乗効果または相加効果が認められ得る。
【0191】
別の態様において、本発明は、細胞増殖の異常によって特徴づけられる疾患または障害の処置を必要とする対象におけるその方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される医薬組成物、または本明細書に記載される混合物の有効量を当該対象に投与することによって、当該対象における細胞増殖の異常を処置することを含む。
【0192】
いくつかの実施形態において、細胞増殖の異常によって特徴づけられる疾患または障害は、炎症、心血管疾患及び自己免疫疾患である。いくつかの実施形態において、炎症性疾患は、関節炎、糖尿病性網膜症、糖尿病、関節リウマチ、血管新生性緑内障及び乾癬である。いくつかの実施形態において、心血管疾患は、動脈硬化症、肺高血圧症、体高血圧症、狭心症、心臓シンドロームX、心筋梗塞、末梢動脈疾患、またはレイノー病である。
【0193】
別の態様において、本発明は、がんの処置を必要とする対象におけるその方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される医薬組成物、または本明細書に記載される混合物の有効量を当該対象に投与することによって、当該対象におけるがんを処置することを含む。
【0194】
いくつかの実施形態において、がんは、限定されないが、肺癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、膵臓癌、喉頭癌、食道癌、精巣癌、肝臓癌、耳下腺癌、胆管癌(bilary tract)、大腸癌、直腸癌、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌(prostrate)、甲状腺癌、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫(限定されないが、星細胞腫、神経膠芽腫を含む)、神経芽細胞腫、肉腫(限定されないが、血管肉腫、軟骨肉腫を含む)を含む血管新生固形がんである。
【0195】
別の態様において、本発明は、溶血性状態の処置を必要とする対象におけるその方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される医薬組成物、または本明細書に記載される混合物の有効量を当該対象に投与することによって、当該対象における溶血性状態を処置することを含む。
【0196】
いくつかの実施形態において、溶血性状態は鎌状赤血球症である。他の実施形態において、溶血状態は、以下:鎌状赤血球クライシス、サラセミア、ヘモグロビンC症、ヘモグロビンSC症、鎌状赤血球症サラセミア、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性卵形赤血球症、グルコース-6-リン酸欠損症及び他の赤血球酵素欠損症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群(TTP/HUS)、特発性自己免疫溶血性貧血、薬剤惹起性免疫溶血性貧血、続発性免疫溶血性貧血、化学的または物理的作用因子により生じた非免疫溶血性貧血、マラリア、熱帯熱マラリア、バルトネラ症、バベシア症、クロストリジウム感染症、重度のヘモフィルスインフルエンザ菌b型感染症、広範囲の熱傷、輸血反応、横紋筋融解症(ミオグロビン血症)、老化血液の輸血、心肺バイパス(cardiopulomonary bypass)、ならびに血液透析を含む例示的な溶血状態のうちの1つから選択される。
【0197】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物または本明細書に記載される組成物医薬組成物を、対象から回収した血液と組み合わせて混合物を創出させる。その上で、当該混合物を対象に投与する。いくつかの実施形態において、血液は、全血(例えば、自己全血または同種全血)である。他の実施形態において、血液は、限定されないが、血漿、赤血球のうちの1つ以上を含む血液製剤である。別の実施形態において、本明細書に記載される組成物または本明細書に記載される医薬組成物は、出血性ショックを患い、血液量の減少または低灌流に苦しむ患者に輸血するための血液製剤と併用される。別の実施形態において、本明細書に記載される組成物または本明細書に記載される医薬組成物は、血液製剤とは別に患者に投与される。
【0198】
別の態様において、本発明は、in vitroでの滅菌方法を提供するものである。生物学的溶液は、病原性細菌、ウイルス及び細胞に有毒な本発明物で処理され得る。このプロセスは、光及び熱等の外部エネルギーの適用によっても触媒され得る。
【0199】
別の態様において、本発明は、細菌感染症を患う患者に対する処置方法を提供するものである。いくつかの実施形態において、細菌感染症は、グラム陽性細菌感染症またはグラム陰性細菌感染症であり得る。ある特定の実施形態において、細菌感染症は、グラム陽性球菌感染症またはグラム陽性桿菌感染症である。ある特定の他の実施形態において、細菌感染症は、グラム陰性細菌感染症である。ある特定の他の実施形態において、細菌感染症は、グラム陰性球菌感染症またはグラム陰性桿菌感染症である。
【0200】
細菌感染症のタイプは、細菌感染症を引き起こすのが嫌気性細菌かまたは好気性細菌かに応じても特徴づけられ得る。ある特定の実施形態において、細菌感染症は、嫌気性細菌感染症である。ある特定の他の実施形態において、細菌感染症は、好気性細菌感染症である。
【0201】
ある特定の実施形態において、細菌感染症は、マイコバクテリア感染症である。さらなる特定の実施形態において、細菌感染症は、Mycobacterium tuberculosis、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Mycobacterium smegmatis、Bacillus anthracis、Escherichia coli、Proteus mirabilis、Pseudomonas aeruginosa、Acinetobacter baumannii、Yersinia enterocolytica、Francisella tularensis、Eubacterium lentum、Bacteroides fragilis、Fusobacterium nucleatum、Porphyromonas asaccharolyticus、Clostridium perfringens、及びClostridium difficileを含む群から選択される細菌の感染症である。さらに他の実施形態では、細菌感染症は、Mycobacterium tuberculosis菌(「MTB」または「TB」と略される)の感染症である。
【0202】
ある特定の他の実施形態において、細菌感染症は、Peptostreptococci属のメンバー(Peptostreptococci asaccharolyticus、Peptostreptococci magnus、Peptostreptococci micros、Peptostreptococci prevotii)、Porphyromonas属のメンバー(Porphyromonas asaccharolytica、Porphyromonas canoris、Porphyromonas gingivalis、Porphyromonas macaccae)、Actinomyces属のメンバー(Actinomyces israelii、Actinomyces odontolyticus)、Clostridium属のメンバー(Clostridium innocuum、Clostridium clostridioforme、Clostridium difficile)、Anaerobiospirillum属のメンバー、Bacteroides属のメンバー(Bacteroides tectum、Bacteroides ureolyticus、Bacteroides gracilis(Campylobacter gracilis))、Prevotella属のメンバー(Prevotella intermedia、Prevotella heparinolytica、Prevotella orisbuccae、Prevotella bivia、Prevotella melaninogenica)、Fusobacterium属のメンバー(Fusobacterium naviforme、Fusobacterium necrophorum、Fusobacteriu varium、Fusobacterium ulcerans、Fusobacterium russii)、またはBilophila属のメンバー(Bilophila wadsworthia)に起因するものである。
【0203】
ある特定の他の実施形態において、細菌感染症は、好気性及び嫌気性、グラム陽性及びグラム陰性の両方の抗生物質耐性細菌に起因するものである。
【0204】
別の態様において、本発明は、虚血状態または低酸素状態の処置または予防を必要とする対象におけるその方法を提供するものであり、当該方法は、本明細書に記載される組成物、本明細書に記載される医薬組成物、または本明細書に記載される混合物の治療有効量を当該対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物である。
【0205】
いくつかの実施形態において、虚血状態は、急性虚血状態または慢性虚血状態である。他の実施形態において、急性虚血状態は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、肺塞栓症、周産期低酸素症、循環性ショック、高山病または急性呼吸不全である。ある特定の実施形態において、慢性虚血状態は、アテローム性動脈硬化症、慢性静脈不全、慢性心不全、心臓性肝硬変、糖尿病、黄斑変性症、睡眠時無呼吸、レイノー病、全身性硬化症、非細菌性血栓性心内膜炎、閉塞性動脈疾患、狭心症、一過性脳虚血発作、または慢性アルコール性肝臓疾患である。いくつかの実施形態において、低酸素状態は、がん、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍、肝疾患もしくは腎疾患、血小板減少症、血液凝固障害、慢性疾患、貧血を生じさせる治療的介入(がん化学療法等)または高山病である。他の実施形態において、がんは、膀胱癌、乳癌、明細胞型腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、悪性黒色腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、小細胞肺癌(SCLC)、トリプルネガティブ乳癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性白血病細胞-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0206】
本明細書に記載される組成物を使用する処置または予防に企図される追加の病態としては、窒素酸化物に関連する関節リウマチ、糖尿病(神経障害及び血管障害を含む)、ならびに全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0207】
企図される医薬組成物は、式Iの化合物を少なくとも0.5mg含み得、静脈内、経鼻、耳介内、腹腔内、皮下、または経口投与される。
【0208】
がんのタイプ
がんの処置のために、本明細書に開示される組成物が、がんに罹患している対象に投与される場合、本方法は、処置されることになるがんのタイプに応じてさらに特徴づけられ得る。例えば、ある特定の実施形態において、がんは、固形腫瘍である。例えば、がんは、脳癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、胆管癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、または子宮癌であり得る。
【0209】
ある特定の実施形態において、がんは、脳癌である。ある特定の実施形態において、がんは、結腸直腸癌である。ある特定の実施形態において、がんは、胆管癌または肺癌である。ある特定の実施形態において、がんは、肺癌である。ある特定の実施形態において、肺癌は、小細胞肺癌である。ある特定の他の実施形態において、がんは、非小細胞肺癌である。ある特定の実施形態において、がんは、白血病またはリンパ腫である。ある特定の実施形態において、がんは、B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫である。
【0210】
処置されるがんのさらなる例示としては、例えば、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、及び子宮癌が挙げられる。
【0211】
がんは、血管新生腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭癌、耳下腺癌、胆管癌(bilary tract cancer)、甲状腺癌、末端部黒子黒色腫、光線性角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星状細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆道癌、骨の悪性腫瘍、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/脈絡叢癌(choriod plexus papilloma/carcinoma)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織癌、嚢腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞癌、上衣腫、上皮細胞癌、ユーイング肉腫、眼及び眼窩癌、女性生殖器癌、限局性結節性過形成、胆嚢癌、幽門洞癌、胃底癌、ガストリノーマ、グリア芽細胞腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽細胞腫(hemangiblastomas)、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内組織異常増殖、上皮間扁平上皮細胞異常増殖、肝内胆管癌、浸潤性扁平上皮癌、空腸癌、関節癌、カポジ肉腫、骨盤癌、大細胞癌、大腸癌、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、リンパ腫、男性生殖器癌、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜癌、中皮癌、転移性癌、口腔癌、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻腔癌、神経系癌、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、非上皮性皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、エンバク細胞癌、乏突起膠細胞癌、口腔癌、骨肉腫、乳頭状漿液性腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋癌、軟部組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎癌、扁平上皮癌、横紋筋癌、中皮下癌、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌癌、未分化癌、尿管癌、尿道癌、膀胱癌、泌尿器系癌、子宮頸癌、子宮体癌、ブドウ膜黒色腫、膣癌、疣贅癌、VIPoma、外陰癌、分化癌、またはウィルムス腫瘍であり得ることが企図される。
【0212】
本発明は、脳転移を処置するための治療法も提供する。例えば、本方法では、ABDNAZの特定の投与レジメン、放射線療法、及び任意選択で追加の抗がん剤が使用され得る。治療法は、処置されることになる脳転移のタイプに応じてさらに特徴づけられ得る。例えば、脳転移は、脳転移の由来となる原発腫瘍のタイプに応じて特徴づけられ得る。ある特定の実施形態において、脳転移は、黒色腫、肺癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、子宮内膜癌、または食道癌に由来する脳転移である。ある特定の他の実施形態において、脳転移は、黒色腫、肺癌、乳癌、大腸癌、または腎臓癌に由来する脳転移である。さらなる他の実施形態では、脳転移は、黒色腫に由来する。
【0213】
脳転移の由来となり得る例示的ながんとしては、限定されないが、例えば、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、胃癌、精巣癌、及び子宮癌が挙げられる。さらに他の実施形態では、がんは、血管新生腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭癌、耳下腺癌、胆管癌(bilary tract cancer)、甲状腺癌、末端部黒子黒色腫、光線性角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管癌、肛門癌、肛門直腸癌、星状細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆道癌、骨の悪性腫瘍、骨髄癌、気管支癌、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/脈絡叢癌(choriod plexus papilloma/carcinoma)、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織癌、嚢腺腫、消化器系癌、十二指腸癌、内分泌系癌、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞癌、上衣腫、上皮細胞癌、ユーイング肉腫、眼及び眼窩癌、女性生殖器癌、限局性結節性過形成、胆嚢癌、幽門洞癌、胃底癌、ガストリノーマ、グリア芽細胞腫、グルカゴノーマ、心臓癌、血管芽細胞腫(hemangiblastomas)、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道癌、肝細胞癌、ホジキン病、回腸癌、インスリノーマ、上皮内組織異常増殖、上皮間扁平上皮細胞異常増殖、肝内胆管癌、浸潤性扁平上皮癌、空腸癌、関節癌、カポジ肉腫、骨盤癌、大細胞癌、大腸癌、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、リンパ腫、男性生殖器癌、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜癌、中皮癌、転移性癌、口腔癌、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉癌、鼻腔癌、神経系癌、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、非上皮性皮膚癌、非ホジキンリンパ腫、エンバク細胞癌、乏突起膠細胞癌、口腔癌、骨肉腫、乳頭状漿液性腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸癌、腎細胞癌、呼吸器系癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔癌、皮膚癌、小細胞癌、小腸癌、平滑筋癌、軟部組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎癌、扁平上皮癌、横紋筋癌、中皮下癌、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌癌、未分化癌、尿管癌、尿道癌、膀胱癌、泌尿器系癌、子宮頸癌、子宮体癌、ブドウ膜黒色腫、膣癌、疣贅癌、VIPoma、外陰癌、分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0214】
他の追加の抗がん剤との組み合わせ
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される方法は、追加の抗がん剤を対象に投与することをさらに含む。ある特定の実施形態において、追加の抗がん剤は、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、トラスツズマブ、またはスニチニブである。さらなる他の実施形態では、追加の抗がん剤は、テモゾロミドである。ある特定の実施形態において、テモゾロミドが患者に投与される任意の日に関して、テモゾロミドは、約75mg/m2~約150mg/m2の投薬量で経口投与される。
【0215】
さらなる例示的な追加の抗がん剤としては、例えば、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カペシタビン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、ロムスチン、メクロルエタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、プロカルバジン、ラロキシフェン、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、タモキシフェン、トレミフェン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及び薬学的に許容可能なそれらの塩が挙げられる。
【0216】
さらなる他の実施形態では、追加の抗がん剤は、アブラキサン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、ジメシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール(cedefmgol)、セレコキシブ、クロラムブシル、シロールマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン(de/.aguanine)、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキサート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン(enloplatm)、エンプロマート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン、ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ハーセプチン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモホシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、ラパチニブ、レトロゾール、酢酸リュープロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン(portiromycin)、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ロミデプシン、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、幹細胞治療薬、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、タキソテール、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンレウロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、または塩酸ゾルビシンである。
【0217】
抗がん効果の特性評価
がんを処置するために本明細書に記載される組成物が、がん患者に投与される場合、治療法は、(i)患者における少なくとも1つの腫瘍のサイズ減少、及び/または(ii)患者における腫瘍の数の減少等、処置の抗がん効果に応じてさらに特徴づけられ得る。
【0218】
したがって、ある特定の実施形態において、本明細書に記載される治療法は、患者における少なくとも1つの腫瘍のサイズが、少なくとも20%減少することによって特徴づけられる。ある特定の他の実施形態において、患者における少なくとも1つの腫瘍のサイズは、少なくとも35%減少する。ある特定の他の実施形態において、患者における少なくとも1つの腫瘍のサイズは、少なくとも50%減少する。ある特定の他の実施形態において、患者における少なくとも1つの腫瘍のサイズは、少なくとも60%、70%、80%または90%減少する。ある特定の他の実施形態において、患者における少なくとも1つの腫瘍のサイズは、約5%~50%、10%~50%、20%~50%、5%~75%、10%~75%、20%~75%、または50%~90%減少する。
【0219】
処置されることになるがんが脳転移である場合、本方法は、脳転移の数及び/またはサイズの減少に応じてさらに特徴づけられ得る。ある特定の実施形態において、患者における脳転移の数は、少なくとも20%減少する。ある特定の他の実施形態において、患者における脳転移の数は、少なくとも35%減少する。さらに他の実施形態では、患者における脳転移の数は、少なくとも50%減少する。ある特定の他の実施形態において、患者における脳転移の数は、少なくとも60%、70%、80%または90%減少する。ある特定の他の実施形態において、患者における脳転移の数は、約5%~50%、10%~50%、20%~50%、5%~75%、10%~75%、20%~75%、または50%~90%減少する。
【0220】
処置対象の患者
治療法は、処置されることになる患者に応じてさらに特徴づけられ得る。ある特定の実施形態において、患者は、成人である。ある特定の他の実施形態において、患者は、小児である。
【0221】
ある特定の実施形態において、患者は、貧血を患っていないか、または血液量が減少していない。ある特定の実施形態において、患者は、自身の1日平均血液量の少なくとも95%量を有する。
【0222】
組織の保護
ある特定の状況下では、対象が化学療法及び/または放射線を受けている場合に生じ得る毒性から正常組織を保護するために、本明細書に記載される化合物が使用され得ることが企図される。本方法は、本明細書に記載される式Iの化合物を含有する非衝撃感受性または非爆発感受性の組成物、医薬組成物、または混合物の有効量を皮下投与することを必要とする対象に対するその皮下投与を含み、当該皮下投与は、当該対象が化学療法及び/または放射線療法に曝される前に行われる。
【0223】
ある特定の状況下では、対象は、がん(例えば、頭頸部癌)を有する。また、少なくとも約0.5mg(例えば、0.5mg~4mg)の式Iの化合物が対象に投与されることが企図され、この投与は(例えば、注射による)、単回投与または多回分割投与注射で行われ得る。
【0224】
ある特定の状況下では、予防すべき正常組織に対する毒性は、急性粘膜炎(例えば、遅発性粘膜炎)または嚥下障害であり得る。
【0225】
VI.医療用途にて使用するためのキット
本発明は、ABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)及び/またはその医薬組成物を含む治療用キットも提供する。治療用キットは、他の化合物(例えば、化学療法薬、天然物、アポトーシス誘導剤など)またはその医薬組成物も含有し得る。
【0226】
治療用キットは、ABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)及び/またはその医薬組成物を、他の構成要素(例えば、他の化合物またはこうした他の化合物の医薬組成物)の有無にかかわらず含有する単一の容器を有し得るか、または各構成要素用の別個の容器を有し得る。いくつかの実施形態において、治療用キットは、第2の化合物(好ましくは、化学療法薬、天然物、アポトーシス誘導剤など)またはその医薬組成物との共投与で併用するために包装されたABDNAZ(例えば、本明細書に開示されるABDNAZの結晶形態)及び/またはその医薬組成物を含む。キットの構成要素は予め複合化されていてもよく、または各構成要素が、患者への投与前には別々の異なる容器中にあってもよい。
【0227】
キットの構成要素は、1種以上の溶液(好ましくは水溶液、より好ましくは滅菌水溶液)の状態で提供され得る。キットの構成要素は固体として提供されることもあり、これに適切な溶媒を加えて、液体に変換してもよく、この溶媒は、好ましくは別の異なる容器で提供される。
【0228】
治療用キットの容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または固体もしくは液体を封入する任意の他の手段であり得る。構成要素が1つを超える場合、通常、キットは第2のバイアルまたは他の容器を含有し、これにより、別々の投与が可能になる。キットはまた、薬学的に許容される液体用の別の容器も含有し得る。
【0229】
好ましくは、治療用キットは、キットの構成要素を投与可能にする器具(例えば、1つ以上の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を含有することになる。
【0230】
実施形態の列挙
以下に列挙する実施形態は、本発明のいくつかの態様を代表するものである。
1.式Iの化合物:
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を含む、固体結晶性の非衝撃感受性粒子を含む組成物であって、前記固体結晶性の非衝撃感受性粒子の安息角は、約45度未満である、前記組成物。
【0231】
2.前記組成物は、溶媒和形態の前記化合物を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0232】
3.前記組成物は、テトラヒドロフラン(THF)を含む、実施形態2に記載の組成物。
【0233】
4.前記組成物は、クラスレート形態の前記粒子を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0234】
5.前記粒子はTHFを含む、実施形態4に記載の組成物。
【0235】
6.前記組成物は、n-ヘプタンをさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0236】
7.前記組成物のかさ密度は、0.1g/cm3~0.6g/cm3の範囲にある、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0237】
8.前記かさ密度は、0.15g/cm3~0.5g/cm3、0.15g/cm3~0.4g/cm3、または0.16g/cm3~0.3mg/cm3である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0238】
9.前記粒子は、除塵剤中に分散している、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0239】
10.前記除塵剤は、ポリエチレングリコールである、実施形態9に記載の組成物。
【0240】
11.実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【0241】
12.N,N-ジメチルアセトアミドをさらに含む、実施形態11に記載の医薬組成物。
【0242】
13.抗凝固剤をさらに含む、実施形態11または12に記載の医薬組成物。
【0243】
14.実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物または実施形態11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物と、血液試料とを含む、混合物。
【0244】
15.前記血液試料は、前記化合物で処置されることになる対象から回収されたものである、実施形態14に記載の混合物。
【0245】
16.式Iの化合物の濃度は、0.1mg/血液mL~10mg/血液mLである、実施形態15に記載の混合物。
【0246】
17.式Iの化合物の結晶形態を生成させる方法であって、以下のステップ:
(a)式Iの化合物をテトラヒドロフラン中に溶解させるステップ、
(b)ステップ(a)の溶液を、n-ヘプタンに撹拌しながら添加するステップ、及び
(c)ステップ(b)によって生成した溶液を冷却し、それによって、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物の結晶形態を生成させるステップ、
を含む前記方法。
【0247】
18.ステップ(a)によって生成した溶液は、ステップ(b)において、1:5(v/v)の比で前記ヘプタンと組み合わせられる、実施形態17に記載の方法。
【0248】
19.ステップ(b)の間、前記添加は、少なくとも30分、45分または1時間にわたって行われる、実施形態17または18に記載の方法。
【0249】
20.実施形態17~19のいずれか1つに記載の方法によって生成した式Iの化合物の結晶形態。
【0250】
21.前記組成物は、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に示される、Series 3 Type(a)(ii)Testを用いて、前記組成物の試料40mm3を40Jのエネルギーに曝すことによって決定されるように、非衝撃感受性である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0251】
22.前記化合物の非衝撃感受性は、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に示される、Series 3 Type(a)(ii)Testを用いて、前記化合物の試料40mm3を40Jのエネルギーに曝すことによって決定される、実施形態20に記載の化合物の結晶形態。
【0252】
23.がんの処置を必要とする対象におけるその方法であって、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物、実施形態11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態14~16のいずれか1つに記載の混合物の有効量を前記対象に投与することによって、前記対象における前記がんを処置することを含む、前記方法。
【0253】
24.実施形態1~10または21のいずれか1つに記載の組成物または実施形態11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物を、前記対象から回収した血液と組み合わせて混合物を創出させ、その上で、前記混合物を前記対象に投与する、実施形態23に記載の方法。
【0254】
25.虚血状態または低酸素状態の処置または予防を必要とする対象におけるその方法であって、実施形態1~10または21のいずれか1つに記載の組成物、実施形態11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態14~16のいずれか1つに記載の混合物の治療有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0255】
26.前記虚血状態は、急性虚血状態または慢性虚血状態である、実施形態25に記載の方法。
【0256】
27.前記急性虚血状態は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、肺塞栓症、周産期低酸素症、循環性ショック、高山病または急性呼吸不全である、実施形態26に記載の方法。
【0257】
28.前記慢性虚血状態は、アテローム性動脈硬化症、慢性静脈不全、慢性心不全、心臓性肝硬変、糖尿病、黄斑変性症、睡眠時無呼吸、レイノー病、全身性硬化症、非細菌性血栓性心内膜炎、閉塞性動脈疾患、狭心症、一過性脳虚血発作、または慢性アルコール性肝臓疾患である、実施形態26に記載の方法。
【0258】
29.前記低酸素状態は、がん、胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍、肝疾患もしくは腎疾患、血小板減少症、血液凝固障害、慢性疾患、がん化学療法等の貧血を生じさせる治療的介入または高山病である、実施形態25に記載の方法。
【0259】
30.前記がんは、膀胱癌、乳癌、明細胞型腎臓癌、頭頸部扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、悪性黒色腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、小細胞肺癌(SCLC)、トリプルネガティブ乳癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄性白血病細胞-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、または小リンパ球性リンパ腫(SLL)である、実施形態29に記載の方法。
【0260】
31.前記医薬組成物は、式Iの化合物を少なくとも0.5mg含み、静脈内、経鼻、耳介内、腹腔内、皮下、または経口投与される、実施形態23~30のいずれか1つに記載の方法。
【0261】
32.化学療法及び/または放射線療法によって生じる毒性から正常組織を保護する方法であって、その保護を必要とする対象に、実施形態1~10または21のいずれか1つに記載の組成物、実施形態11~13のいずれか1つに記載の医薬組成物、または実施形態14~16のいずれか1つに記載の混合物の有効量を、前記対象が前記化学療法及び/または放射線療法に曝される前に皮下投与することを含む、前記方法。
【0262】
33.前記対象は、がんを有する、実施形態32に記載の方法。
【0263】
34.前記がんは、頭頸部癌である、実施形態33に記載の方法。
【0264】
35.少なくとも約0.5mgの式Iの化合物が前記対象に投与される、実施形態32~34のいずれか1つに記載の方法。
【0265】
36.約0.5mg~4mgの式Iの化合物が前記対象に投与される、実施形態35に記載の方法。
【0266】
37.式Iの化合物の前記量は、1回以上の分割注射で投与される、実施形態35または36に記載の方法。
【0267】
38.前記正常組織に対する毒性は、急性粘膜炎または嚥下障害である、実施形態32~37のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
39.前記粘膜炎は、遅発性粘膜炎である、実施形態38に記載の方法。
【実施例】
【0269】
目下、本発明を広く記載しているが、以下の実施例を参照することにより、本発明は、より容易に理解されるであろう。これらの実施例は、単に本発明のある特定の態様及び実施形態を例証する目的で挙げられるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0270】
実施例1.非衝撃感受性のABDNAZ結晶形態の合成
下記合成スキームに従って、ABDNAZの結晶形態を調製した。
【化7】
【0271】
最後の再結晶ステップ(ステージ6の物質をステージ7の物質に変換するステップ)では、ABDNAZをTHF中に溶解させ、ABDNAZの溶液(相対体積5)を、室温にて1時間にわたり、素早く撹拌したn-ヘプタン(相対体積25)に添加した。得られた懸濁液を5℃に冷却し、1時間撹拌し、その後、濾過して単離した。
【0272】
乾燥させ、次いで、特性評価した結晶性物質は、LC-純度及びアッセイによると、分析的に純粋であった。
【0273】
結晶性物質の試料を、United Nations Manual of Tests and Criteria,seventh edition,2019に記載されているように、BAM Fallhammerを用いたSeries 3 Type(a)(ii)Test手順に従い、標準落下試験に供した。試験は、前述の方法により生成した結晶性物質40mm3を衝撃装置内に配置し、40Jのエネルギーに供するようにして実施した。試験は、同一の実験条件下で、6つの個別の結晶性物質試料に対して実施し、爆発が生じたかどうかは作業者が決定した。いずれの試料でも爆発は生じず、その結果として、本実施例で生成した結晶性物質を、爆発性または衝撃感受性がないとして特徴づけた。換言すれば、当該物質は、非衝撃感受性であった。
【0274】
実施例2.非衝撃感受性のABDNAZ結晶形態の生物活性
試料1及び3を、衝撃感受性のABDNAZ結晶形態として調製した。試料2及び4を、上記実施例1で示した合成スキームに従って調製した。試料2及び4が非衝撃感受性であることを見出した。
【0275】
がん細胞株HCT-116、SCC VII、及びA549を、American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD,USA)から入手し、ATCCの指示に従って維持した。すべての培養試薬は、Invitrogen(Carlsbad,CA,USA)から入手した。
【0276】
これらのがん細胞株を、ウェルあたり2,000細胞で96ウェルディッシュに分け、試料1、2、3、または4の濃度を変えて処理した。試料1、2、3、または4で処理してから24時間後に、MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)比色アッセイを用いて、細胞増殖を評価した。ホルマザン溶液の吸光度を、波長570nmで分光光度的に測定した。測定した光学密度(OD)値は、生存細胞数に正比例するものであった。実験は、細胞株、試料、及び試料濃度の組み合わせごとに2回繰り返した。対照と比較した細胞生存率の百分率を
図1A~
図1Cにプロットした。
【0277】
結果から、ABDNAZの非衝撃感受性結晶形態(試料2及び4)は、ABDNAZの衝撃感受性形態(試料1及び3)に比べて、がん細胞株の生存率を抑制する効果が高いことが示された。
【0278】
実施例3.非衝撃感受性のABDNAZ結晶形態の溶解度
試料5及び6を、上記実施例1で示した合成スキームに従って調製した。試料5及び6が非衝撃感受性であることを見出した。試料7及び8を、衝撃感受性のABDNAZ結晶形態として調製した。
【0279】
これらの試料の溶解度は、DMSOで各試料を階段希釈することによって測定した。アッセイは、96ウェルマイクロプレートで実施した。各ウェルに、100μLのDMSO及び設定量の各試料を添加した。各試料の初期量は、DMSOが飽和するのに十分であり、溶解していない粒子が各ウェル内に沈殿することによって特徴づけられる量であった。インキュベーターシェーカーを使用して、試験の間、試料を25℃に保ち、50rpmで4時間撹拌した。
【0280】
各ウェルに追加のDMSOを添加して、試料を段階的に希釈した。各DMSOの添加後、温度を25℃に維持しながら、試料を50rpmで4時間撹拌した。次いで、各試料の未溶解量を、UV-Vis分光光度計を用いて、緩衝液と比較した250nmでの吸収度に基づき定量化した。
【0281】
得られた濁度を
図2にプロットした。このプロットに基づき、以下の表1に要約したように、各試料の溶解度を決定する。
【表1】
【0282】
実施例4.RRx-001粒子のかさ密度及び粒度分布の統計分析
かさ密度、D10、D50、及びD90測定に基づく、THF含有試料とTHF非含有試料との間の差は、統計的に有意であった(ノンパラメトリック検定(Wilcoxon)及びKolmogorov-Smirnov検定)。
【0283】
かさ密度の測定分布上の比較
結晶のかさ密度のグラフ描写は、THF含有試料とTHF非含有試料との間、ならびに衝撃感受性試料と非衝撃感受性試料との間に明白な分離があることを明らかにしている。
図5Aは、THF非含有結晶化RRx-001粒子のかさ密度を示すものであり、
図5Bは、THF含有結晶化RRx-001粒子のかさ密度を示すものであり、
図5Cは、非衝撃感受性RRx-001粒子のかさ密度を示すものであり、
図5Dは、衝撃感受性RRx-001粒子のかさ密度を示すものである。
【0284】
かさ密度の経験的確率関数を
図5E及び
図5Fに示し、箱ひげ図を
図5G及び
図5Hに示す。視覚的な分離には、真のかさ密度位置シフトがゼロである(すなわち、中央値の同等)という帰無仮説を、真の位置シフトがゼロではないという対立仮説に対して検定するための、連続性補正を適用した、ノンパラメトリックWilcoxon順位和検定に基づく、統計的に有意な所見が付随する。Wilcoxon検定により、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(統計量W=1.5、対応のある両側p値=0.0001)、また、THF含有粒子とTHF非含有粒子との間(統計量W=153、p値=0.0022)に、統計的に有意な差が確認された。かさ密度の分布を比較するKolmogorov-Smirnov(KS)検定でも、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(KS統計量W=0.95、p=0.0001)、及びTHF含有粒子とTHF非含有粒子との間(KS統計量W=0.6166及びp=0.0125)に、統計的に有意な差が確認された。
【0285】
D10の測定分布上の比較
D10測定値のグラフ描写は、THF含有試料とTHF非含有試料との間、ならびに衝撃感受性試料と非衝撃感受性試料との間に明白な分離があることを明らかにしている。
図6Aは、THF非含有結晶化RRx-001粒子のD10を示すものであり、
図6Bは、THF含有結晶化RRx-001粒子のD10を示すものであり、
図6Cは、非衝撃感受性RRx-001粒子のD10を示すものであり、
図6Dは、衝撃感受性RRx-001粒子のD10を示すものである。
【0286】
D10の経験的確率関数を
図6E及び
図6Fに示し、箱ひげ図を
図6G及び
図6Hに示す。視覚的な分離には、真のD10位置シフトがゼロである(すなわち、中央値の同等)という帰無仮説を、真の位置シフトがゼロではないという対立仮説に対して検定するための、連続性補正を適用した、ノンパラメトリックWilcoxon順位和検定に基づく、統計的に有意な所見が付随する。Wilcoxon検定により、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(統計量W=21.5、対応のある両側p値=0.0200)、また、THF含有粒子とTHF非含有粒子との間(統計量W=153.5及びp値=0.0002)に、統計的に有意な差が確認された。D10の分布を比較するKolmogorov-Smirnov(KS)検定でも、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(KS統計量W=0.5666、p=0.1032)、及びTHF含有粒子とTHF非含有粒子との間(KS統計量W=0.8666及びp=0.0001)に、統計的に有意な差が確認された。
【0287】
D50の測定分布上の比較
D50測定値のグラフ描写は、THF含有試料とTHF非含有試料との間、ならびに衝撃感受性試料と非衝撃感受性試料との間に明白な分離があることを明らかにしている。
図7Aは、THF非含有結晶化RRx-001粒子のD50を示すものであり、
図7Bは、THF含有結晶化RRx-001粒子のD50を示すものであり、
図6Cは、非衝撃感受性RRx-001粒子のD50を示すものであり、
図7Dは、衝撃感受性RRx-001粒子のD50を示すものである。
【0288】
D50の経験的確率関数を
図7E及び
図7Fに示し、箱ひげ図を
図7G及び
図7Hに示す。視覚的な分離には、真のD50位置シフトがゼロである(すなわち、中央値の同等)という帰無仮説を、真の位置シフトがゼロではないという対立仮説に対して検定するための、連続性補正を適用した、ノンパラメトリックWilcoxon順位和検定に基づく、統計的に有意な所見が付随する。Wilcoxon検定により、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(統計量W=20.5、対応のある両側p値=0.0173)、また、THF含有粒子とTHF非含有粒子との間(統計量W=160及びp値<0.0001)に、統計的に有意な差が確認された。D50の分布を比較するKolmogorov-Smirnov(KS)検定でも、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(KS統計量W=0.6、p=0.0720)、及びTHF含有粒子とTHF非含有粒子との間(KS統計量W=0.8666及びp=0.0001)に、統計的に有意な差が確認された。
【0289】
D90の測定分布上の比較
D90測定値のグラフ描写は、THF含有試料とTHF非含有試料との間、ならびに衝撃感受性試料と非衝撃感受性試料との間に明白な分離があることを明らかにしている。
図8Aは、THF非含有結晶化RRx-001粒子のD90を示すものであり、
図8Bは、THF含有結晶化RRx-001粒子のD90を示すものであり、
図8Cは、非衝撃感受性RRx-001粒子のD90を示すものであり、
図8Dは、衝撃感受性RRx-001粒子のD90を示すものである。
【0290】
D90の経験的確率関数を
図8E及び
図8Fに示し、箱ひげ図を
図8G及び
図8Hに示す。視覚的な分離には、真のD90位置シフトがゼロである(すなわち、中央値の同等)という帰無仮説を、真の位置シフトがゼロではないという対立仮説に対して検定するための、連続性補正を適用した、ノンパラメトリックWilcoxon順位和検定に基づく、統計的に有意な所見が付随する。Wilcoxon検定により、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(統計量W=25、対応のある両側p値=0.0354)、また、THF含有粒子とTHF非含有粒子との間(統計量W=153及びp値=0.0002)に、統計的に有意な差が確認された。D90の分布を比較するKolmogorov-Smirnov(KS)検定でも、衝撃感受性粒子と非衝撃感受性粒子との間(KS統計量W=0.55、p=0.1225)、及びTHF含有粒子とTHF非含有粒子との間(KS統計量W=0.8666及びp=0.0001)に、統計的に有意な差が確認された。
【0291】
参照による組み込み
本明細書で言及される各特許文献及び各科学論文の開示全体が、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0292】
均等物
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的形態において具体化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明を限定するものではなく、むしろあらゆる点で例示的なものである、と考慮されるべきである。このように、本発明の範囲は、前述の記載によるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲が意味することの内側及び特許請求の範囲と等価である範囲の内側に入るあらゆる変更が、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】