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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電力供給分配ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240527BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023576206
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022065760
(87)【国際公開番号】W WO2022258782
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178610.8
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21198991.8
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21212633.8
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523464185
【氏名又は名称】キャパクテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス-クレメンツ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ハジルー,アシュカン ダリア
(72)【発明者】
【氏名】モガダム,マンスール サレヒ
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ガレス
(72)【発明者】
【氏名】クエネル,ドミニク
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
電力供給システムは、導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを備え、上記ケーブルは、上記第1ノードおよび第2ノードとの間に高周波数(例えば、100Hz以上、例えば、20KHz以上)の交流を伝導しており、上記導電性ケーブルは、容量性ケーブルである。上記高周波数の電源が、上記第1ノードに接続されていてもよく、あるいは、50Hzまたは60Hzの電源が、上記高周波数の電力を出力するコンバータに、上記コンバータの出力を上記第1ノードに接続した状態で接続されていてもよい。コンバータが上記第2ノードに接続されていてもよく、あるいは、高周波電力によって動作する電気機器が上記第2ノードに接続されていてもよい。関連する無線電動車両充電システムは、(a)電源、任意には、本発明の電力供給システムと、(b)上記電源に接続され、高周波数、例えば、1kHz以上の電力を出力するように構成されたインバータと、(c)少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを備え、上記インバータは、容量性ケーブルを用いて上記複数の無線充電ステーションに接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを備える電力供給システムであって、
該ケーブルが、該第1ノードおよび該第2ノードとの間に高周波数の交流を伝導しており、そして
該導電性ケーブルが容量性ケーブルである、電力供給システム。
【請求項2】
前記第2ノードが、前記電力を熱、光および/または機械仕事に変換する、高周波電力によって動作するモータ、アクチュエータ、電球、ヒータ、計器、機械などの1つ以上の電気機器に接続されている、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第2ノードが、複数の前記電気機器に接続されている、請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記第2ノードが、前記周波数を約50Hzまたは約60Hzまで減少させるコンバータに接続されている、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記インバータからの出力が、前記電力を熱、光および/または機械仕事に変換する、低周波電力によって動作するモータ、アクチュエータ、電球、ヒータ、計器、機械などの1つ以上の電気機器に接続されている、請求項4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
50Hzまたは60Hzの電源と、前記周波数を高周波数に増大させるコンバータとを備え、該電源が、前記第1ノードに接続されている、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記第1ノードに接続された電源を備え、該電源が、高周波数の電力を供給する発電機またはバッテリである、請求項1から5のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記容量性ケーブルの長さが1m以上である、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記容量性ケーブルの長さが5m以上である、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記容量性ケーブルの長さが5km以上である、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項11】
前記容量性ケーブルの長さが100km以上である、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項12】
前記電流が少なくとも100Hzの周波数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項13】
前記電流が少なくとも200Hzの周波数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項14】
前記電流が約400Hzの周波数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項15】
前記電流が少なくとも1kHzの周波数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項16】
前記電流が少なくとも20kHzの周波数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項17】
前記電流が少なくとも80~85kHzの周波数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項18】
先行する請求項のいずれかに記載の電力供給システムを備える空港または海港。
【請求項19】
請求項1から17のいずれかに記載の供給システムを備える航空機。
【請求項20】
請求項1から17のいずれかに記載の電力供給システムを備える船舶。
【請求項21】
請求項1から17のいずれかに記載の電力供給システムと、前記容量性ケーブルを保持する複数の鉄塔とを備える、電力供給ネットワーク。
【請求項22】
電力供給システムにおける2つのノード間に電力を供給する方法であって、
導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを提供するステップと、
該第1ノードに電力を供給するステップとを含み、
該電力が高周波数の交流であり、
該導電性ケーブルが容量性ケーブルである、方法。
【請求項23】
コンバータに50Hzまたは60Hzで電力を供給するステップと、該コンバータを用いて前記周波数を高周波数に増大させるステップであって、該高周波電力が前記第1ノードに供給されるステップとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
コンバータを用いて前記周波数を50Hzまたは60Hzまで減少させるステップであって、該コンバータが前記第2ノードの出力に接続されているステップをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記電流が少なくとも100Hzの周波数を有する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記電流が少なくとも200Hzの周波数を有する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記電流が約400Hzの周波数を有する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記電流が少なくとも1kHzの周波数を有する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記電流が少なくとも20kHzの周波数を有する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記電流が少なくとも80~85kHzの周波数を有する、請求項22から24のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
航空機または空港の電力供給システムのための請求項22から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
無線電動車両充電システムであって、
(a)電源と、
(b)該電源に接続され、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
(c)少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを備え、
該インバータが、容量性ケーブルを用いて該複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続されている、無線電動車両充電システム。
【請求項33】
前記インバータが少なくとも5つの無線充電ステーションに接続されている、請求項32に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項34】
前記インバータが少なくとも10の無線充電ステーションに接続されている、請求項32に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項35】
前記インバータの前記電力出力が多相であり、異なる位相からの電力が異なる無線充電ステーションに供給される、請求項32から34のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【請求項36】
前記インバータが3相インバータである、請求項35に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項37】
前記容量性ケーブルが3相容量性ケーブルまたは3つの単相容量性ケーブルである、請求項35または36に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項38】
前記インバータの前記電力出力が少なくとも1kHzの周波数を有する、請求項32から37のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【請求項39】
前記インバータの前記電力出力が少なくとも10kHzの周波数を有する、請求項32から38のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【請求項40】
1台以上の静止している電動車両を充電するための、請求項32から39のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【請求項41】
1台以上の移動している電動車両を充電するための、請求項32から39のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【請求項42】
道路を走行している電動車両を充電するための、請求項41に記載の無線電動車両充電システムであって、前記無線充電ステーションが少なくとも25m互いから離隔している、無線電動車両充電システム。
【請求項43】
前記無線電動車両充電システムが、車両が前記無線充電ステーションの上方またはその側方を順次走行するように構成されている、請求項41または42に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項44】
前記無線電動車両充電システムが2つ以上のサブシステムとして提供され、該サブシステムが、それぞれ、
(a)電源に接続され、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
(b)少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを有し、
該インバータが容量性ケーブルを用いて前記複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続され、
該2つのサブシステムの該インバータが該電源に並列接続され、
各サブシステムにおける該容量性ケーブルが、他の該サブシステムのうちの1つにおける該容量性ケーブルに接続され、
各サブシステムが、該インバータのうちの1つが機能停止した場合、他の該サブシステムのうちの1つのためのバックアップシステムとして機能する、請求項32から43のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【請求項45】
(a)前記インバータの前記電力出力が多相であり、
(b)各サブシステムにおける前記容量性ケーブルの各位相は、他の該サブシステムにおける該容量性ケーブルの同じ位相に接続されている、請求項44に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項46】
電動車両を充電する方法であって、
請求項32から45のいずれかに記載の無線電動車両充電システムの一部である無線充電ステーションの近傍に該電動車両を配置するステップを含む、方法。
【請求項47】
請求項1から21のいずれかに記載の電力供給システムに接続された、請求項32から45のいずれかに記載の無線電動車両充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(序論)
本発明は、電力供給分配ネットワーク全般および、その特定の実施形態に関する。本発明は、分配伝送システムに接続された陸上または海上発電ユニットの輸送システムにも適用される。
【0002】
特定の実施形態において、本発明は、ワイヤレス電力伝達、および電動車両を充電するためのシステムにおけるその利用にも関する。特に、本発明は、静的システム(例えば、自動車用駐車場)および動的システム(例えば、道路)における電動車両の充電に関する。
【背景技術】
【0003】
いくつかの電力分配供給用途では、システム全体のコストを削減するために、あるいは、変圧器、モータおよび発電機といった電気機械の軽量化および小型化を実現するために、高周波数を使用する必要がある。高周波交流の使用の問題点は、電気接続(典型的にはケーブル)のインピーダンスが、さらなる損失のために電力伝達が非効率となるか、あるいは、電圧降下によって接続が長くなるために電力伝達が不可能となるレベルまで増加することである。
【0004】
したがって、小型化および軽量化は、搭載バッテリの充電およびアクチュエータ、計測装置、レーダなどの装置への電力供給を行うために400Hz系統が使用される航空電気システムにおいて実現される。電力は、通常のグリッド周波数を400Hzに変換する固定設備であって、周波数変換器と通常ケーブルとを備える固定設備を有する集中型システム、またはディーゼル発電機と、周波数変換器と、ケーブルとで構成される可動システムを介して、航空機に供給される。
【0005】
同様の理由で、海事用途においても、搭載システムへの電力供給を行うために高周波数システム(典型的には、400Hzシステム)が使用される。電力は、集中的に生成され、400Hz装置の付近に配置された通常ケーブルまたはコンバータ/インバータを介して、様々な電圧レベルおよび400Hzで船舶全体に供給される。
【0006】
高周波交流の他の用途には、宇宙システム、コンピュータ電源システムおよびレーダシステムが含まれる。
【0007】
高周波数システムに関する問題の1つは、上述したように、ケーブルに沿って発生する電圧降下である。ケーブルのリアクタンスはケーブルの周波数および長さの両方とともに増加するので、高周波数システムの場合、電力の伝達は、電源からの距離が短いケースに限られる。航空用途における可動システムの使用、および海事用途における多数のコンバータ/インバータの使用は、この重要な問題を解消することを目的に行われる。
【0008】
もう1つの問題は、いわゆる「表皮効果」によって等価抵抗が高くなるために、ケーブル内で発生する損失が高くなることに関する。表皮効果は、ケーブル断面の縁部に向かって電流が集中することを示す。このような電流の集中により、伝導に効果的に使用される断面が減少し、したがって、ケーブルに沿った等価抵抗および電力損失が増加する。表皮効果は、電流そのものによって発生する磁界に関連しており、したがって、ケーブルの誘導性リアクタンスに関連している。表皮効果の大きさは、ケーブルを通過する電流の周波数とともに増加する。
【0009】
ケーブル長さが制限されていることにより、航空用途では、設計および安全の面でさらなる問題が生じる。電源からの距離が制限されているので、ネットワークのケーブルは、とりわけ、遠隔の駐車場所の場合、容易に埋設することができない。さらに、周波数変換器は、典型的には、最適以下の環境条件においては、負荷/機器の近傍に位置していなければならず、これにより、安全性および可用性の両方についての問題が深刻化する。
【0010】
20kHzテストベッドの開発が、Buttonら(1989年8月6日、XP010089777、605~610ページ)に記載されており、例えば、そのゴアケーブルが、その「リッツケーブルに比べて高いキャパシタンスを有する」ことに着目されたい。しかし、これは、以下に記載する本発明の文脈において、導体内に容量結合を有する容量性ケーブルに関連するものではない。
【0011】
背景技術情報は、Tsaiら(XP000127753、1990年3月1日、239~253ページ);Rahmanら(XP033921327、2020年11月1日、135901364ページ);特許第4536131号;Riveraら(2021年2月1日、XP011862658)および国際公開第00/04621号からも公知である。
【0012】
より具体的には、既存の無線電動車両充電システムは、一般に電力コンバータまたは電力インバータとして知られる、電源に接続された周波数変換器を典型的には備えており、当該インバータは、高周波数で送信された交流(AC)として電力を出力するように構成されている。このシステムは、従来型(すなわち、導電性)ケーブルを用いてインバータに接続された無線充電ステーションも備える。インバータからの電荷が無線充電ステーションに到達すると、無線充電ステーションの一部を形成する送信機が、無線充電ステーションの周囲に磁界を発生させる。次いで電動車両が無線充電ステーションの近傍に配置されると、この磁界は、電動車両内の受信機において電流を誘導する。この受信機は、電動車両のバッテリに接続されており、その内部の受信機からの電流がバッテリを充電する。したがって、電力は、無線電動車両充電システムから電動車両のバッテリに無線伝達され、電動車両内でバッテリを充電する。
【0013】
インバータの電力出力は、ケーブルに沿って無線充電ステーションに高周波数で伝送されることが不可欠である。なぜなら、これにより、無線充電ステーションと電動車両の受信機との間隙全体にわたってより大きなレベルの電力が伝送されることが保証されるからである。電動車両が自動車である場合、この間隙は、典型的には、15cm~50cmである。この間隙は、特注システムにおいてある程度存在し得る。
【0014】
このように動作する既存の無線電動車両充電システムは、各インバータから電力を受信することができる無線充電ステーションの数について制限される。これは、上述したように、無線電動車両充電システムにおいては、電力は高周波数で伝送されなければならないためである。高周波伝送を使用する場合、非常に高いインピーダンスが従来型ケーブルにおいて発生する。なぜなら、ケーブルにおける表皮効果の大きさおよび誘導性リアクタンスは、使用される周波数とともに増加するからである。この結果、電力損失および電圧降下は、ケーブルの長さに沿って大きくなり、それにより、ケーブルが電力を伝送する能力は、その長さに沿って低下する。このため、ケーブルは、無線充電ステーションに到達する電力が電動車両の所望の充電速度を実現するのに十分なものであることを保証するために、合理的な範囲で可能な限り短いものでなければならない。したがって、多くの既存の無線電動車両充電システムでは、長さがわずか2m~3mのケーブルが使用される。1つの場所に設置された異なる無線充電ステーションは通常2m~3m以上互いから離隔していることを考えれば、各インバータが1つの無線充電ステーションにのみ接続されることは珍しくない。これはつまり、1つの場所に設置された各無線充電ステーションに対して個別のインバータを設置しなければならないことを意味する。
【0015】
電動車両の無線充電を可能にするように設計された場所に多数のインバータを設置する必要性に関連していくつかの問題が存在する。第一に、大規模なインフラストラクチャが必要とされるため、これらの無線電動車両充電システムは、多くの無線充電ステーションを必要とする場所に設置するのに費用がかかる場合がある。第二に、上記場所の周囲に多数のインバータを間隔をあけて配置することにより、これらのインバータは、無線充電ステーションに駐車している電動車両によって追突されやすいか、あるいは破壊されやすい状態となる。加えて、インバータは、電界および磁界を発生させるので、適切に遮蔽されていない場合、公共安全に対するリスクをもたらす。
【0016】
さらに、以下においてより詳細に記載する比較例において、従来型ケーブルを用いて複数の無線充電ステーションを1つのインバータに接続することは、第2の無線充電ステーションおよびそれ以降の無線充電ステーションにおいて大きな電力損失をもたらし、したがって実行不能であることが示されている。
【0017】
インバータに接続された電源を備える無線電動車両充電システムが確立されており、当該インバータは従来型ケーブルを介して4つの無線充電ステーションに直列接続されている。このシステムがテストされた際、電力は4つの無線充電ステーション間で均等に分配されないことが分かった。代わりに、インバータに最も近接した無線充電ステーションが最も多くの電力を受信し、第2の無線充電ステーションは第1の無線充電ステーションよりも少ない電力を受信し、第3の無線充電ステーションは第2の無線充電ステーションよりもさらに少ない電力を受信し、第4の無線充電ステーションは最も少ない電力を受信する。
【0018】
インバータに接続された複数の無線充電ステーション間の電力分配がこのように不均等であることにより、さらなるロジスティクス問題が生じる。最も多くの電力を必要とする電動車両がインバータまたはコンバータに最も近接した充電ポイントを使用する必要がある一方で、最も少ない電力を必要とする電動車両は、当該車両から最も離れた充電ポイントを使用しなければならない。このためには、無線電動車両充電システムによって充電が行われるすべての電動車両が最も適切な無線充電ステーションに配置されることを確実にするための注意深い計画が必要となる。
【0019】
多くの電動車両は、自車両のバッテリを1回充電しただけでは長距離を走行することができないことも知られている。その結果、多くの電動車両ユーザは、行程中に少なくとも1度停止してバッテリを充電しなければならない。したがって、電動車両を充電するためにユーザが行程中に行わなければならない停車回数が最小限となるように、移動している電動車両を充電するための方法を提供する必要が依然として存在する。これは理論的な概念として提案されており、「動的充電」として知られるが、完全な商業ベースでの実現はこれまでに成功していない。
【0020】
当該技術分野において、米国特許出願公開第2015/177302号は、無線充電設備を開示しているが、これは上述の問題点の1つ以上を有している。米国特許出願公開第2018/254643号は、プラグイン再充電に関連するものである。すなわち、全く無線ではない。さらに詳細には、米国特許出願公開第2015/177302号は、無線電動車両充電システムからの電磁暴露を評価するためのシステム、方法および装置に関し、電力は、低周波数、すなわち、10~60Hzで伝達され得ることを開示している。以下に記載する本発明の文脈では、これは、高周波電力システムと相反する教示である。
【0021】
同じく当該技術分野において、背景技術情報は、米国特許出願公開第2017/136890号;米国特許出願公開第2017/136881号;米国特許出願公開第2016/031330号;国際公開第2021/050642号;国際公開第2010/131983号;Pevereら(2014 IEEE International Electric Vehicle Conference、2014年12月17日、1~7ページ、XP032744152)およびFengら(IEEE Transactions on Transportation Electrification, vol. 6, no. 3,2020年7月28日、886~919ページ、XP011809983)においても見ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、上記において特定された問題のうちの1つ以上に対処するとともに、好ましくは、当該問題に対する改善をもたらす代替的な電力分配供給システムに対する必要性が存在する。
【0023】
したがって、複数の無線充電ステーションを、典型的にはインバータの2m~3m以内に無線充電ステーションを配置することを必要とせずに単一のインバータに接続することができ、かつ、好ましくは、充電中の電動車両に対して当該インバータに接続された無線充電ステーションのすべてが等しい量の電力を提供することができる無線電動車両充電システムに対する必要性も依然として存在する。
【0024】
移動している電動車両に対し、当該電動車両のユーザが行程中に停止することが必要となる頻度が低減するように電力を提供するよう構成され得る無線電動車両充電システムを提供することも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを備える電力供給システムであって、
上記ケーブルは、上記第1ノードおよび上記第2ノードとの間に高周波数の交流を伝導しており、
上記導電性ケーブルは容量性ケーブルである電力供給システムを提供する。
本発明はまた、電力供給システムにおける2つのノード間に電力を供給する方法であって、
導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを準備するステップと、
上記第1ノードに電力を供給するステップとを含み、
上記電力は、高周波数の交流を含み、
上記導電性ケーブルは、容量性ケーブルである方法も提供する。
【0026】
本発明において、ノードは、任意にはケーブルのさらなる長さに亘って接続されたケーブル端であってもよい。ノードは、適切には、ケーブル端における導電性の入力または出力である。負荷は、第2ノードから引き出されてもよい。本発明において使用される容量性ケーブルは、別個の負荷にそれぞれが接続され得る多数の取り出し口(take-offs)を含んでいてもよく、ケーブル端のように終端させなくてもよい「ピグテール」と称される場合がある。別の適したノードは、容量性ケーブルの取り出し口である。
【0027】
本発明の特定の実施形態の無線電動車両充電システムは、したがって、
・電源と、
・上記電源に接続され、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
・少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを備え、
上記インバータは、容量性ケーブルを用いて上記複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続されている。
【0028】
同様に、本発明は、電動車両を充電する方法であって、上記に定義した無線電動車両充電システムの一部である無線充電ステーションの近傍に当該電動車両を配置するステップを含む方法を提供する。動的充電システムの場合、これには、典型的には、例えば、無線充電ステーションの上方、下方または側方で、電動車両を無線充電ステーションに十分に近接するように移動させる、すなわち、無線充電ステーションの充電範囲に移動させることを伴う。
【0029】
このようなシステムを設置するために、本発明の無線電動車両充電システムのためのキットは、
・電源に接続するためのインバータであって、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
・少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションと、
・複数の無線充電ステーションのそれぞれにインバータを接続するための1つ以上の容量性ケーブルとを備え、
インバータ、無線充電ステーションおよび容量性ケーブルは、本明細書に定義されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の2つのサブシステムを示す駐車場レイアウトの単線結線図(SLD)バージョンを示す。
図2図2は、電源から負荷までの本発明の主要構成要素のブロック図を示す。
図3図3は、電動車両バッテリの充電電流/電圧プロファイルを示す。
図4図4は、本発明に係る電動車両のバッテリの充電速度の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
よって、本発明の電力供給システムは、導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを備え、
上記ケーブルは、上記第1ノードおよび上記第2ノードとの間に高周波数の交流(AC)を伝導することが可能であり、
上記導電性ケーブルは容量性ケーブルである。
【0032】
使用時、上記ケーブルは、適切には以下により詳細に説明する実施形態の1つ以上またはそれらの組合せに従って、上記ノード間にAC電力を伝導する。第2ノードは、さらなるケーブル、または電力を使用する機器(負荷)に電力を伝導してもよい。第1ノードは、さらなるケーブル、または電力入力もしくは電力源に対する導電結合であってもよい。
【0033】
本発明の第1の一連の実施形態において、上記第2ノードは、上記電力を熱、光および/または機械仕事に変換する、高周波電力によって動作するモータ、アクチュエータ、電球、ヒータ、空調ユニット、計器、機械などの1つ以上の電気機器に接続されている。好ましくは、上記第2ノードは、複数の電気機器に接続されている。
【0034】
これらの実施形態には、例えば、空港および海港における高周波電力の分配が含まれる。1つの利点は、第2ノードからの電力を多数の高周波数ユーザ間で分配することができるということである。
【0035】
これらの実施形態には、高周波電力によって動作する内部電力システムを有する車両が含まれる。1つの具体的な実施形態では、飛行機が本発明の電力供給システムを備える。さらなる具体的な実施形態では、船舶が本発明の電力供給システムを備える。
【0036】
本発明の第2の一連の実施形態において、上記第2ノードは、上記周波数を50Hzまたは60Hzまで低減させるインバータに接続されている。この低周波数または通常(あるいは「正常」)周波数の電力出力は、次に、上記電力を熱、光および/または機械仕事に変換する、低周波電力によって動作するモータ、アクチュエータ、電球、ヒータ、計器、機械などの1つ以上の電気機器に接続されていてもよい。ここでもまた、上記出力は、好ましくは、複数のこのような機器に接続されている。この構成の1つの利点は、高周波電力を長距離にわたって伝送し、次いで、基準周波数あるいは従来周波数の機器を用いる用途のために、再び低周波数に変換することが可能であるということである。
【0037】
本発明の第3の一連の実施形態において、50Hzまたは60Hzの電源が、第1ノードに対する電力入力の周波数を高周波数に増加させるインバータによって第1ノードに接続されている。この構成の1つの利点は、電力を通常周波数で発生させ、次いで、高周波数で長距離にわたって伝送することが可能である点である。
【0038】
本発明の第4の一連の実施形態において、電源が上記第1ノードに接続され、発電機またはバッテリによって高周波数で発生させた電力を上記第1ノードに供給する。この構成の1つの利点は、電力を低周波数で発生させ、次いで、長距離伝送のためにより高い周波数に変換することを必要とするのではなく、電力を高周波数で発生させ、次いで、この同じ周波数で長距離にわたって移送することができるということである。
【0039】
本発明の利点は、本明細書の他の箇所においても記載されており、当該利点には、ケーブルの長さ/距離にわたる電力損失および電圧低下の低減が含まれる。適切には、容量性ケーブルは、これらの利点を実現し、かつ電力システム設計に適したものとするに足る有意な長さを有する。本発明の利点は、交流の周波数が高いほど、より短いケーブル長で実現される。例えば、容量性ケーブルの長さは、概して1m以上もしくは5m以上、概して25m以上、100m以上、特に、200m以上および500m以上である。本発明の用途としては、例えば、10kHz以上の非常に高い周波数の電力の伝導が含まれるが、その場合、1m以上や5m以上といった非常に短いケーブル長でも利点がある。本発明の用途は、事実上、容量性ケーブルである送電線であるケーブルを含む実施形態にまで及び、これらの長さは、1km以上、好ましくは5km以上、さらには10km以上である。電力グリッドにおける使用では、ケーブルは、100km以上、あるいはそれよりもさらに長くてもよく、例えば、数百キロメートルの長さであってもよい。
【0040】
以下の実施例において、より任意選択的な詳細に説明される、本発明の第1の具体的な実施形態においては、空港が本発明に係る電力供給システムを備える。
【0041】
以下の実施例において、より詳細に記載される、本発明の第2の具体的な実施形態においては、海港が本発明に係る電力供給システムを備える。
【0042】
本発明の第3の具体的な実施形態においては、電力供給ネットワークが本発明に係る電力供給システムを備える。当該ネットワークは、地中または海上に設置されるか、あるいは海底に沿って設置された1つ以上のケーブルを備えてもよい。当該ネットワークは、以下の実施例においてさらに記載される、1つ以上のケーブルであって、当該ケーブルを保持する複数の鉄塔に沿って設置されたケーブルを備えてもよい。本発明の本実施形態の用途は、個々の鉄塔に対する1つ以上のケーブルの接続、好ましくは複数のケーブルの接続にまで及び、好ましくは、各鉄塔は、当該鉄塔に接続する複数のケーブルを有し、当該ケーブルは容量性ケーブルである。この第3の実施形態により、100kmまたはそれよりも長い距離にわたるネットワークが本発明に係る電力供給システムを用いて電力を伝送することが可能となる。
【0043】
電力供給システムにおける2つのノード間に電力を供給する方法であって、
導電性ケーブルを介して第2ノードに接続された第1ノードを準備するステップと、
上記第1ノードに電力を供給するステップとを含み、
上記電力は、高周波数の交流を含み、
上記導電性ケーブルは、容量性ケーブルである方法も本発明によって提供される。
【0044】
典型的な用途においては、電源が第1ノードに接続され、負荷が第2ノードに接続されている。このような接続は、直接的なものであっても、例えば介在ケーブル介した間接的なものであってもよい。本発明の電源に関連して本明細書の他の箇所に記載される任意かつ好適な特徴および実施形態は、本発明の電力供給方法にも適用される。よって、例えば、当該方法は、50Hzまたは60Hzでインバータに電力を供給するステップと、当該インバータを用いて周波数をより高い周波数に増加させるステップであって、高周波電力は第1ノードに供給されるステップとを含んでもよく、および/または当該方法は、インバータを用いて周波数を50Hzまたは60Hzまで減少させるステップであって、当該インバータは第2ノードの出力に接続されているステップを含んでもよい。
【0045】
他の箇所でより詳細に記載されるように、本発明の1つの利点は、高周波電力が使用される場合にケーブルに沿った電力損失および電圧降下が低いということである。高周波数では電圧および電力がいずれもケーブルの短い長さに沿って実質的に減少し得る従来型のケーブルとは異なり、容量性ケーブルは、高周波電力を少ない損失でその長さに沿って伝達することができる。
【0046】
これらの利点の例は、車両の無線充電に関する本発明のさらなる具体的な実施形態に関連する。したがって、本発明によれば、無線電動車両充電システムであって、
・電源と、
・上記電源に接続され、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
・少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを備え、
上記インバータは、1つ以上の容量性ケーブルを用いて上記複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続されている無線電動車両充電システムが提供される。上記1つ以上のケーブル接続は、1つ以上のケーブルを介した、または当該ケーブルに対する、環状または放射状の接続であってもよい。
【0047】
よって、高周波数の電流、典型的にはACを出力するように構成されたインバータが、少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションに容量性ケーブルを用いて接続されている。
【0048】
他の箇所でより詳細に記載されるように、本発明の1つの利点は、上記ケーブルに沿った電力損失および電圧降下が低く、それにより、多数の送信機を有する単一のインバータの使用が可能となるか、あるいは上記システムの範囲が拡張され、システム設計が簡易化されるということである。
【0049】
特定の設備、例えば、高電圧設備は、1つのインバータにつき1つまたは2つの送信機を備えてもよい。インバータに対する送信機の比率が高いほど、より大きくコストが削減される。典型的には、インバータは、少なくとも5個の無線充電ステーション、好ましくは少なくとも10個の無線充電ステーション、より好ましくは少なくとも30個の無線充電ステーションに接続されている。他のシステムパラメータによれば、より多数の無線充電ステーションが接続されていてもよい。システムは、無線充電ステーションのそれぞれの組に順番に接続された複数のインバータも備えてもよい。
【0050】
従来型ケーブルを用いる場合、無線充電ステーションは、概して、インバータから2m~3m以上離れない位置に配置しなければならない。そうしなければ、ケーブルの長さに沿った電力伝送は、十分な充電速度を得るには非効率すぎるものとなる。本発明のさらなる利点は、無線充電ステーションをインバータから離して配置する、例えば、インバータから2mよりも離して配置することが初めて可能となるということである。本発明に係る1つの開発中の設備において、充電ステーションは、インバータからおよそ25m以上の位置にある。これは、無線充電ステーションが、無線電動車両充電システムの一部として追加のインバータを設置する必要なしに互いから離隔し得ることを意味する。
【0051】
本発明の特定の実施形態において、無線充電ステーションは、少なくとも5m互いから離隔している。本発明の他の実施形態では、無線充電ステーションは、少なくとも10m互いから離隔している。上記システムはまた、無線充電ステーションをさらに離隔させることができる(電力損失を特に低下させた本発明によって可能となった)、移動車両を充電するための道路、例えば、既存の道路を改良した道路または新たな道路も提供する。
【0052】
本発明の特定の実施形態において、インバータの電力出力は多相である。このような実施形態において、異なる位相からの電力は、異なる無線充電ステーション、例えば、各位相が単一の無線充電ステーションに接続された3相電源に供給されてもよい。
【0053】
他の実施形態において、インバータの電力出力は多相であり、各位相からの電力は、複数の無線充電ステーション、例えば、各位相が少なくとも2つの無線充電ステーションに接続された3相電源に供給されてもよい。
【0054】
駐車場における国産車の充電は、本発明の1つの具体的な実施形態である。本発明の特定の実施形態において、より一般的には、無線電動車両充電システムは、1台以上の静止している電動車両を充電するために使用されてもよい。本発明のこれらの実施形態は、典型的には、自動車用駐車場、バス用駐車場、トラック用駐車場または類似の駐車場などの車両駐車場において電動車両を充電するために用いられる。本発明の実施形態は、例えば、ドックまたは港に充電ユニット(そして船舶上に受信機)を備える電気作動式の船舶を充電するために使用されてもよい。本発明はまた、道路上またはバス停留所のバス、倉庫内のフォークリフトトラック、空港の航空機用牽引車、空港の荷物用カート、商用車両全般、鉱山の運送トラック、コンテナ港においてコンテナを移動させるためのカートおよびトラック、ならびにドローンを充電するためにも有用に利用され、また、自動車、軽商用車、バスまたは運送トラックに特に利用される。
【0055】
本発明の他の実施形態において、無線電動車両充電システムは、1台以上の移動している電動車両を充電するために使用されてもよい。本発明のこれらの実施形態は、典型的には、道路を走行する電動車両を充電するために使用される。当該道路は、車輪付き車両がその上で走行し、連続する無線充電ステーションおよびその各送信機の上方または側方を1台ずつ通過することが可能な表面を備えてもよい。これらは、幹線道路または高速自動車道路などの道路上にあってもよい。道路は、車両用のレーンで備えてもよく、当該レーンに沿って送信機が離隔して配置されていてもよい。道路は、レールを備えてもよく、送信機が道路に沿ってかつレール間において離隔配置されていてもよい。すべてのケースにおいて、原理は同じである。すなわち、車両は、連続する無線充電ステーションの送信機の付近、例えばその上方、側方または下方を通過し、その間に、移動中であるにもかかわらず、車両内の1つ以上のバッテリが部分的に充電されるのに充分な電力を受信する。
【0056】
道路を走行する電動車両を充電するために無線電動車両充電システムが使用される本発明の実施形態において、無線電動車両充電システムは、道路に一体化されている。これらのシステムは、各インバータに接続された多数の充電ユニットを備える。充電ユニットは、互いにかなり近接していてもよく、例えば、20cm以上または50cm以上離隔していてもよい。他の実施形態において、無線充電ステーションは、さらに、例えば、少なくとも25m互いから離隔していてもよい。あるいは、無線充電ステーションは、少なくとも50m互いから離隔していてもよい。無線充電ステーションは、少なくとも100m互いから離隔していてもよい。適切には、システムは、車両が、所与の充電ステーションとの相互作用によって、次の充電ステーションに到達するのに十分な電力、好ましくは十分以上の電力を受信するように構成されている。その後、再充電のために停止する必要なしに、バッテリの1回の充電範囲を超えて長距離にわたって道路に沿った走行を継続することが可能である。
【0057】
道路を低速で走行する電動車両を充電するために無線電動車両充電システムが使用される本発明のさらなる実施形態において、無線電動車両充電システムは、同じく適切には道路に一体化される。本発明のこのような実施形態において、無線充電ステーションは、互いから離隔しているものの、互いにかなり近接しており、例えば、少なくとも2m~10mまで互いから離隔している。あるいは、無線充電ステーションは、少なくとも3m~10mまで、または3m~5mまで互いから離隔していてもよい。無線充電ステーションは、互いに近接する車両が同時に充電されるように離隔していてもよい。このような低速充電または近距離充電のケースの例としては、交通信号で一時停止している車両、道路沿いに列をなしている運送トラック、店舗またはフードショップに向かって道路沿いに列をなしている車両、およびタクシー乗り場で顧客を待っているタクシーが挙げられる。
【0058】
よって、通常、移動している電動車両を充電するために無線電動車両充電システムが使用される場合、無線電動車両充電システムは、車両が無線充電ステーションの上方を順次走行するように構成されている。
【0059】
本発明の無線電動車両充電システムの設備は、様々な冗長機構を用いて設計することができる。本発明の特定の実施形態において、また、この目的で、無線電動車両充電システムは、2つ以上の別個のサブシステムとして設けられてもよい。このような実施形態において、サブシステムのそれぞれは、
・電源に接続され、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
・少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを有し、
上記インバータは、容量性ケーブルを用いて上記複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続され、上記2つ以上のサブシステムの上記インバータは、上記電源に並列接続され、各サブシステムにおける上記容量性ケーブルは、他方の上記サブシステム(あるいは2つ以上存在する場合は、他の上記サブシステムのうちの1つ)における上記容量性ケーブルに接続され、各サブシステムは、上記インバータのうちの1つが機能停止した場合(例えば、上記インバータは、故障するか、あるいはメンテナンスまたは別の理由で使用中止となる場合がある)、他の上記サブシステムのうちの1つのためのバックアップシステムとして機能する。よって、例えば、1つのサブシステムは、複数の他のサブシステムのための冗長性を提供することができ、それにより、100%未満の冗長性がもたらされる。
【0060】
それぞれのサブシステムは、このように並列接続されており、すべての無線充電ステーションにわたって機能性を維持しつつ、1つの並列アーム/サブシステムにおける故障に対処することができる。
【0061】
2つ以上のサブシステムを備える本発明の実施形態において、インバータの電力出力は多相であってもよい。このような実施形態において、サブシステムにおける容量性ケーブルの各位相は、他方のサブシステム(あるいは他のサブシステムのうちの1つ)における容量性ケーブルの同じ位相に接続されており、インバータのうちの一方が故障した場合、各サブシステムは、他方のサブシステムのためのバックアップシステムとして機能する。これにより、2つのインバータのうちの一方が破損するか、他の何らかの理由で機能停止した場合、あるいは、例えばメンテナンスのためにインバータが使用中止となった場合、第2のインバータが第1のサブシステムに対して電力を提供するので、すべての無線充電ステーションが動作可能な状態のままとなる(例えば、修理が行われるか、あるいはインバータが動作状態に戻るまで)ことが保証される。ただし、この期間中、両方のサブシステムの無線充電ステーションは、(システム全体の負荷、例えば、所与の時点で充電を行おうとしている車両の数に応じて)通常よりも低い電力レベルで動作する可能性がある。
【0062】
本発明の電源は、利用可能な主電源または他の電源に応じて任意の量の電力を提供してもよい。しかし、システムが適度な数の車両を同時に充電することを可能にするためには、電源は、20kW以上の電力、または、50kW以上の電力を提供するのが好ましい。本発明の用途では、より高い電力が想定される。すなわち、電源は、100kW以上の電力またはメガワット範囲の電力を提供してもよい。
【0063】
本発明は、電動車両を充電する方法であって、本発明の無線電動車両充電システムの一部である無線充電ステーションの近傍に上記電動車両を配置するステップを含む方法も提供する。動的充電の場合、当該方法は、本発明の無線電動車両充電システムの一部である無線充電ステーションの上方、側方または下方を移動する電動車両を移動させるステップを含んでもよい。
【0064】
本発明は、本発明の電動車両充電システムのためのキットをさらに提供し、当該キットは、
・電源に接続するためのインバータであって、高周波数の電力を出力するように構成されたインバータと、
・少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションと、
・複数の無線充電ステーションのそれぞれに対してインバータを接続するための1つ以上の容量性ケーブルとを備え、
上記インバータ、上記無線充電ステーションおよび上記容量性ケーブルは、上記システムならびにその任意の特徴および好適な特徴に関連して本明細書で定義されたものである。
【0065】
本発明により、本明細書に記載される本発明のシステムを備える車両駐車場または道路がさらに提供される。車両駐車場もしくは道路を改修する方法、または車両駐車場もしくは道路を提供する方法であって、本明細書に記載される本発明のシステムを当該車両駐車場または道路に設けるステップを含む方法も本発明によってさらに提供される。
【0066】
本明細書において、「インバータ」は、入力電流を出力交流に変換する電子機器であり、出力交流の周波数は、規定の公称値にある。「コンバータ」は、インバータを含み得る。よって、本明細における一方への言及は、他方への言及を含み得る。このことは文脈から明らかであると考えられる。「無線充電ステーション」は、電動車両に対して、当該電動車両のいかなる部分にも直流接続される必要なしに電力を供給することが可能な電子機器である。「容量性ケーブル」は、本明細のその他の箇所で定義されるように、導体/導電素子内に容量結合を有する任意のケーブルである。
【0067】
電力が高周波数で伝送された場合、容量性ケーブルが示す長さに沿った電力損失および特に電圧降下は、従来型ケーブルよりもはるかに低い。これは、容量性ケーブルが従来型ケーブルよりもはるかに低いリアクタンスを有していることによるものである。したがって、インバータおよび無線充電ステーションがいずれも無線電動車両充電システムの一部である無線充電ステーションにインバータを接続するために従来型ケーブルの代わりに容量性ケーブルを用いることにより、無線充電ステーションをインバータから2m~3mよりも離して配置することができる。1つの利点は、インバータから電源を遠ざけることにある。別の利点は、各インバータに多くの充電ステーションを接続させるという選択肢にある。したがって、複数の無線充電ステーションは、それぞれ、単一のインバータに接続されてもよい。なぜなら、従来型ケーブルを用いる場合とは異なり、ケーブルの長さが電力損失によって制限されないからである。これにより、所与の数の無線充電ステーションのために所与の場所に設置される必要のあるインバータの数が減少し、システムの効率性が高まるとともに、付随コストが削減される。
【0068】
インバータは、インバータによって発生する電界および磁界に起因する、インバータの近傍に対する人々に対する健康上のリスクを低減するために遮蔽されてもよい。同じ数の無線充電ステーションのために設けられるインバータの数が従来型ケーブルを用いる場合よりも少なくなるため、必要な遮蔽の強さは小さくなり、それにより、設置費用がさらに削減され、電界および磁界がもたらす公衆の健康リスクが低減される。
【0069】
インバータは、当該インバータが接続されている無線充電ステーションから数メートル離れて、かつ道路から数メートル離れて、かつ道路上を移動する車両から数メートル離れて配置されてもよい。これにより、電動車両がインバータによって追突される危険性が低下する。加えて、必要とされるインバータの数が既存の無線電動車両充電システムにおけるものよりも少ないことにより、これらの電動車両が追突される危険性がさらに低下する。
【0070】
インバータを、当該インバータが接続されている無線充電ステーションから数メートル離して配置することによるさらなる利点は、無線電動車両充電システムが設置されている場所のユーザの視野の外にインバータを配置することができ、それにより、インバータが破壊されたり不正変更が加えられたりする危険性が低下するということである。
【0071】
インバータを、当該インバータが接続されている無線充電ステーションから数メートル、すなわち2m~3mよりも大きく離して配置することにより、メンテナンス作業者が容易にアクセスできるようにインバータを配置することができる。例えば、無線充電ステーションが道路の長さに沿って配置される本発明の実施形態において、インバータは、道路の上や下方ではなく、道路に隣接して設けられてもよい。これにより、メンテナンス作業者が当該場所にアクセスするために道路を閉鎖する必要がなくなることが保証される。
【0072】
加えて、電気容量は容量性ケーブルの全長に沿って分散配置されるため、インバータに最も近い無線充電ステーションが最も多くの電力を受信し、インバータから最も離れた無線充電ステーションが最も少ない電力を受信する代わりに、インバータに接続されている無線充電ステーションのそれぞれが、同様の割合の電力を受信することができる。したがって、電動車両がどの無線充電ステーションを使用すべきかを決定するための計画は不要である。
【0073】
無線充電ステーションが道路の長さに沿って分散配置されている場合(ここで、「道路」は、「車輪付き車両がその上方を走行する表面」であると定義される)、電力は、電動車両が無線充電ステーションの上方、側方または下方を走行するたびに当該電動車両に伝達されることになり、結果として、運転者が車両を充電するために停止する頻度が低下する。これは、商業的に採算の合う動的充電が初めて実行可能となるとともに、既存の電動車両のバッテリよりも小さいバッテリを有する電動車両の使用が可能となり、それによって環境面の利点がもたらされるということを意味する。
【0074】
本発明のさらなる利点は、無線電動車両充電に対する需要が増加した場合に無線電動車両充電システムを容易にアップグレードすることができるということである。このような状況においては、各無線充電ステーションからより大きな電力出力を提供することが必要となる場合があり、これには、より大きな電力入力が必要である。このためには、インバータをアップグレードすることが必要となる。既存のシステムでは、これは費用および時間の両方を要する。なぜなら、ある特定の場所において多数のインバータをアップグレードすることが必要となるからである。しかし、本発明は、1つのインバータのみがアップグレードされる無線電動車両充電システムを提供する。したがって、本発明は、無線電動車両充電に対する需要の増加とともに容易にアップグレードすることができるシステムを提供する。
【0075】
本発明は、送信機から電力を無線受信することが可能な受信機が装着された任意のタイプの電動車両とともに使用されることを意図している。しかし、本発明の好適な実施形態においては、無線電動車両充電システムは、電気自動車、バンやタクシーなどの電動商用車両、電気バスまたは電気運送トラックを充電するために使用される。
【0076】
本発明の実施形態は、容量性ケーブルを使用するか、あるいは備えるものであると定義される。この用語は、従来の送信線などの従来型導体のケーブルのキャパシタンス特性を意味するものではない。この用語は、従来の送信線における絶縁された2つの導体間のキャパシタンスを意味するものではない。代わりに、この用語は、容量性伝送システムの一部であって、回路図においてコンデンサで表されるケーブルを意味する。本発明で使用される容量性ケーブルは、導体内に容量結合を有する任意の容量性ケーブルであってもよい。例えば、国際公開第2010/026380号、国際公開第2019/234449号、国際公開第2021/094783号、国際公開第2021/094782号および国際公開第2020/120932号にそれらの例が記載されている。
【0077】
一般に、特に英国においては、インバータの電力出力が多相である場合、インバータは3相インバータであり、容量性ケーブルは3相容量性ケーブルまたは3つの単相容量性ケーブルである。理解されるように、3相ケーブルは、適切には、1つのケーブルに含まれる3つのコア、またはそれぞれが1つの位相を流す3つの単線ケーブルである。
【0078】
本発明の1つの利点は、電圧降下が低く、その結果、電力伝送能力が高まることにより、業界標準に従って高周波数の電力を提供するために本発明を用いることができるということである。当業界において、「高周波数」という用語は、当業者によって理解されるものであると思われる。
【0079】
本発明は、高周波ネットワークに対する容量性ケーブルの適用に関し、ここで、高周波数とは、通常の分配電力グリッドまたは伝送電力グリッドの公称周波数よりも高い電流周波数が意図される。公称周波数は、欧州諸国、中国またはオーストラリアでは50Hz、アメリカ、カリブ諸国、韓国および他の国々では60Hzである。
【0080】
本発明の場合、いかなる誤解も避けるため、インバータからの電力出力に関連して言及される「高周波数」は、少なくとも100Hz、適切には少なくとも200Hz、好ましくは少なくとも350Hzの周波数を適切には意味するものとする。以下により詳細に記載される特定の実施形態では、高周波数は、約400Hzもしくは少なくとも約400Hzまたは少なくとも1kHzの周波数を意味するものである。なお、国内AC電力周波数は、英国では約50Hz、米国では60Hzである。本発明のさらなる実施形態において、インバータの電力出力は、少なくとも10kHzの周波数を有する。いくつかの好適な実施形態では、インバータの電力出力は、少なくとも20kHzの周波数を有する。インバータの電力出力は、少なくとも50kHzの周波数を有していてもよい。現在、英国および米国において、電源規格では、約20kHzおよび約80~85kHzの高周波電源が認可されており、したがって、これら2つの周波数値は、特に英国および同様の認可基準を有する国々での使用における本発明の具体的な実施形態を示している。本発明は、さらに高い周波数で動作することも可能である。また、ある特定の周波数への言及は、当該産業における電力周波数への通常の言及に対応している。すなわち、単一の数字を使用する。ただし、例えば、50Hzまたは60Hzにおいては+/-1Hz、400Hzまたは1kHzおよび類似の周波数においては+/-10Hzといった変動の許容差は存在し得る。しかし、一般に、周波数変動は最小限である。
【0081】
本発明の一態様は、航空機および/または空港の電力供給システム、ならびに航空機および/または空港の電力供給システムにおける2つのノード間に電力を供給する方法にのみ関する。本態様において、電力周波数は400Hzである。この特定の文脈において、適切には+/-10Hz、好ましくは+/-2Hzである、上記周波数内で許容される若干のばらつきが存在する。航空機および/または空港の電力供給システムは、115V+/-3Vの電圧を使用してもよく、また、50kVA以上、80kVA以上または120kVA以上の電圧を供給することが可能であってもよいが、電源電圧は、本態様に特有のものではない。
【0082】
したがって、本発明の他の態様は、上記態様を除外してもよい。本発明の他の態様は、(i)非航空機・非空港電力供給システムおよび電力を供給する方法、および/または(ii)電力を供給するための電力供給システムおよび電力供給方法であって、電力周波数が400Hz以外の周波数(上述の変動が許容されるため、390Hz以下であって410Hzを超える周波数)である電力供給システムおよび電力供給方法を提供してもよい。
【0083】
本発明の他の具体的な態様は、
(i)宇宙船および宇宙港と、
(ii)潜水艦および潜水艦港と、
(iii軍用車両、軍装備品および軍事基地と、
(iv)手動工具ならびに手動工具の部品および付属品と、
電力供給システムおよび電力供給方法のみに関する。
【実施例
【0084】
次に、添付の図面を参照しながら、以下の実施例において本発明について説明する。
【0085】
(実施例1-電動車両充電システム)
駐車場用の静的無線電動車両充電システムは、39個の無線充電ステーションを含み、当該無線充電ステーションは、それぞれ、単一の送信機を備え、電動車両を送信機の上方に駐車することを可能にするために自動車駐車スペースに一体化されている。
【0086】
この充電システムは、2つの別々のサブシステムを備えており、当該サブシステムは、それぞれ、3相インバータによって150kWの出力電力の供給を受け、合計300kWの入力電力を提供する。各サブシステムにおいて、3相容量性ケーブルは、3相インバータの出力に接続されている。各インバータは、一方のインバータが破損した場合、修理が行われるまで、すべての送信機が動作可能な状態のままとなることを保証するために、他方のインバータのためのバックアップとして機能する。ただし、これらの送信機は、この期間、最大電力レベルよりも低いレベルで動作する。
【0087】
図1は、2つのサブシステムを示す駐車場レイアウトの単線結線図(SLD)バージョンを示す。インバータ1(INV01)からの容量性ケーブルの位相のそれぞれの長さは、およそ122.3mである。インバータ2(INV02)を備えるサブシステムの場合、容量性ケーブルの位相のそれぞれの長さは、98mである。容量性ケーブルの位相のそれぞれの断面は、150mmであると仮定されており、結果として得られる、全システムに組み込まれるケーブル長の総計は、少なくとも660.3mである。容量性ケーブルの異なる位相およびこれらに関連付けられた送信機は、緑色、黄色および赤色の位相色割り当てによって区別されている。加えて、図1は、各送信機のそれぞれのインバータからの距離を示している。
【0088】
39個の無線充電ステーションは、容量性ケーブルの3つの位相のそれぞれに対して3つのグループに分けられている。換言すれば、合計で13個の送信機が、容量性ケーブルの各位相の長さに沿って電力供給され、分散配置されている。3相容量性ケーブルは、3相インバータから単相送信機に直接連結されており、各位相は、85kHzの周波数で動作する。3相インフラストラクチャであるため、リターン/中性ケーブルは不要である。図2は、電源から負荷までの主要構成要素のブロック図を示し、図中、電源はインバータであり、負荷は電動車両である。
【0089】
加えて、平衡負荷システムを形成するために3相ループ構成が用いられる。当該構成において、図1に示されるように、各サブシステムにおける容量性ケーブルの各位相の端の長さは、他方のサブシステムにおける容量性ケーブルの同じ位相に接続されるが、自身のインバータに近い長さにおいて接続される。これは、インバータのうちの1つが故障した場合にバックアップシステムとしても機能する。
【0090】
送信機のそれぞれは単相であり、容量性ケーブルの位相のうちの1つによって電力が供給されるが、図1の点線で示される用に、1つの位相からの送信機が、他の位相の送信機と3相接続を確立してもよい。
【0091】
図1に示されるように、ループ構成および線形構成間の移行を行うために、3相高周波スイッチがシステム内に設置されている。
【0092】
無線電動車両充電システムは39個の送信機で構成されており、各送信機は、最大22kWの定格充電レベルを有する。2つの150kWインバータが、容量性ケーブル、ひいては送信機に電力を供給する。すなわち、2つのインバータの出力電力の合計である300kWが供給される。このセットアップでは、39個の無線充電ステーションが同時に稼働状態/電動車両によって使用中であるとき、各送信機は、当該車両がより高い充電容量、すなわち、11kWまたは22kWを有している場合であっても、充電が7.7kWに制限されるようになっている。すべての無線充電ステーションが使用中である状態で送信機の出力電力を11kWまで増加させるように要求された場合、無線充電ステーションのうちおよそ26個の無線充電ステーションが稼働中となり、その他の13個のベイは、休止状態のままとなり、入力電力が300kWの制限内に保たれる。同様に、送信機をその最大電力率である22kWで使用することにより、14個の無線充電ステーションがサポートされる、残りの25個の無線充電ステーションは非稼働状態のままとなる。
【0093】
稼働ユニットと非稼働ユニットとの間の相関関係は、バッテリの充電状態およびユーザが無線充電ステーションから離れることを所望する緊急度によって変化し得る。このように無線充電ステーションを早期に離れる必要性が存在するために、いくつかの車両は、より高速で充電されてもよく、反対に、他の無線充電ステーションに影響を及ぼすために、特定の車両をより長期間にわたって、ただし、より低い充電レベルで充電状態に維持してもよい。
【0094】
さらに、充電率は、電動車両バッテリの通電容量に応じて、一定の時間間隔後に変化してもよい。換言すれば、高速充電は、バッテリが一定の電荷を下回った場合に行われ、指定閾値に達すると、バッテリは、より低い充電レベルで引き続き充電されてもよい。すなわち、低速充電が行われてもよい。インテリジェント電力送達におけるこのような移行により、電動車両バッテリの状態およびユーザの需要に応じて、さらなる無線充電ステーションが稼働中となるかあるいはその充電レベルが増加する。
【0095】
電動車両(リチウムイオン)バッテリの充電へのこのような典型的な電力プロファイル移行は、コンデンサにやや類似しており、これらのバッテリの充電電流/電圧プロファイルを示す図3に示されている。
【0096】
使い果たされたバッテリである始点から、充電速度は、最初は高く(すなわち、電圧は一定電流で上昇し)、バッテリは、短時間内にその電荷の大部分を回復する。バッテリの電荷が一定閾値である80%に達すると、電流および充電速度はいずれも減少する。
【0097】
さらに、図4に示されるように、80%基準を超えた後に充電速度が遅くなることは、電動車両のバッテリの寿命を延長するのに有用である。
【0098】
39個の無線充電ステーションのすべてが22kW定格の電動車両によって使用中である場合、時間および優先度などの制御素子入力に基づいて、39台の電動車両のうちの14台の電動車両は、22kW定格で充電され、一方、他の使用中のベイは、非稼働状態のままとなる。これら14台の電動車両が当該車両の最大容量の80%に達した後、当該車両の継続充電プロセスは延期され、第1の位相中に休止していた次の14台の電動車両は、充電を開始することができる。これらの電動車両が80%基準に達すると、残りの11台の電動車両に対して上記プロセスを繰り返してもよい。すべての電動車両が80%充電容量に達すると、当該車両は、より低い速度(より長い時間)である7.7kWで同時に充電されてもよい。
【0099】
(実施例2-航空産業における固定設備)
電力は、従来型ケーブルを介して50Hzの周波数で空港ターミナルに供給される。従来型ケーブルは、空港ターミナルにおいて、集中型インバータに接続されており、当該インバータは、次いで、自身が受信した電力の周波数を400Hzに変換する。400Hzの周波数を有する電力は、次いで、空港ターミナルの異なるゲートにそれぞれ設置された複数の電源コンセントに容量性ケーブルを介して伝送される。各電源コンセントは、単一の別個の容量性ケーブルまたは当該ケーブルの取り出し口によってインバータに接続されている。接続形状は、放射状、環状またはメッシュ状であってもよい。
【0100】
次いで、空港ターミナルのゲートに駐機された航空機の従来型ケーブルの第1端がゲートの電力出力に接続され、400Hzの周波数を有する出力から電力を受信する。当該航空機の従来型ケーブルの第2端が外部の航空機用ソケットに接続され、次に当該ソケットは、特に航空機のバッテリに接続され、当該バッテリは、ゲートの電力出力から受信した400Hzの電力によってそこで充電される。任意には、さらなる従来型ケーブルが航空機に搭載された機器に接続され、当該機器は400Hzの電力によって動作する。
【0101】
(実施例3-航空産業における可動設備)
400Hzの周波数を有する電力を航空機の飛行中に提供する発電機ユニットが航空機に搭載されている。航空機は、400Hzの周波数で供給された電力によって動作するようにそれぞれ設計された複数の計器をさらに備える。
【0102】
したがって、アクチュエータおよびレーダ装置を含む、航空機に搭載された複数の計器は、それぞれ、容量性ケーブルを用いて発電機ユニットに接続されており、各計器は、別個の容量性ケーブルまたは取り出し口によって発電機ユニットに接続されている。接続形状は、放射状、環状またはメッシュ状であってもよい。
【0103】
このように、電力は、容量性ケーブルに沿って発電機ユニットから計器のそれぞれに対して400Hzで供給される。
【0104】
(実施例4-海事産業における固定設備)
高周波電力分配ネットワークが、コンテナ船舶等のための海港に設置されている。
【0105】
陸上にある主電源が、50Hzの周波数を有する電力を従来型ケーブルを介して海港に提供する。海港にあるこの従来型ケーブルの端部には、単一の集中型インバータが接続されている。このインバータは、自身に供給された50Hzの電力を400Hzの周波数を有する電力に変換し、この電力は、次いで、各ターミナルの電源コンセントに伝送される。各電源コンセントは、容量性ケーブルを介してインバータに接続されている。
【0106】
上記ターミナルのうちの1つにおいて船舶を入渠させた後、船舶からの従来型ケーブルは、当該ターミナルの電源コンセントに接続されてもよい。この電力は、従来型ケーブルに沿って400Hzの周波数で供給され、さらなる従来型ケーブルを介して、船舶に搭載された当該周波数で動作する様々なシステムに分配される
【0107】
(実施例5-海事産業における可動設備)
船舶の発電機は、周波数400Hzの電力を提供するとともに、船舶搭載システムのそれぞれに対して高周波電力を供給する。各システムは、400Hzの周波数で動作するように構成されている。
【0108】
容量性ケーブルの第1端は発電機に接続され、容量性ケーブルの第2端は、例えば船舶の照明システムといった、船舶搭載システムのうちの1つに接続されている。
【0109】
さらなるシステムが、さらなる容量性ケーブルを介して発電機に接続されている。
【0110】
このように、電力は、発電機と、400Hzで動作する搭載システムのそれぞれとの間で伝送され、搭載システムによって周波数で直接使用される。
【0111】
(実施例6-送信用鉄塔を介した高周波電力伝送)
発電所(石炭火力発電所、風力タービンもしくは風力発電所、原子力発電所、太陽電池パネルアレイ、水力発電ダム、地熱発電所または類似物のいずれであってもよい)は、50Hzの周波数を有する電力を発生させ、当該発電所は、第1従来型ケーブルを介して第1インバータに接続されている。
【0112】
第1インバータが、自身に供給された電力の周波数を50Hzから200Hzに変換し、第1端においてインバータに接続された容量性ケーブルに沿って200Hzの電力を出力する。容量性ケーブルは、長さが数キロメートルであり、複数の送信用鉄塔の間で地面より上方に配置されている。複数の鉄塔の他端に配置された第2インバータが、容量性ケーブルの第2端に接続されており、容量性ケーブルを介して自身が第1インバータから受信した電力を再び50Hzの周波数に変換する。
【0113】
第2インバータは、いくつかの別個の従来型ケーブルによって、家屋などの複数の建物内の複数のコンセントに接続され、当該ケーブルは、それぞれ、50Hzの周波数を有する電力を出力する。
【0114】
(実施例7-マイクログリッド)
用地に設置された太陽電池パネルアレイは、DC電力を発生させる。太陽電池パネルアレイは、10mの長さを有する従来型ケーブルを介してインバータに接続されている。
【0115】
当該インバータは、自身に供給された電力を500Hzの周波数を有するACの電力出力に変換する。次いで、この出力電力は、別個の500Hz取り出し口を有する500Hz環状配電系統(ring main)を介して伝送される。これらの容量性ケーブル/取り出し口のそれぞれの第2端は、出力装置(無線電話充電器、冷蔵庫、空調用コンプレッサ、電球もしくは発光ダイオード(「LED」)などの照明素子または類似物のうちのいずれであってもよい)に接続されている。この出力装置は、500Hzの周波数で動作する。
【0116】
(実施例8-送電用鉄塔を介した高周波発電および送電)
発電所(ガス火力発電所もしくは石炭火力発電所、風力タービンもしくは風力発電所、原子力発電所、太陽電池パネルアレイ、水力発電ダム、地熱発電所または類似物であってもよい)は、200Hzの周波数を有する電力を発生させる。
【0117】
この発電所は、容量性ケーブルによってインバータに接続されており、当該ケーブルは、長さが数キロメートルであり、送信用鉄塔のネットワークを介して地面の上方に吊り下げられており、インバータは、自身に供給された電力を60Hzの周波数を有する電力に変換する。
【0118】
インバータは、複数の従来型ケーブルを介して複数の建物内の複数のコンセントに接続されており、各コンセントは、60Hzの周波数の電力を出力する。
【0119】
したがって、本発明は、電力供給分配ネットワーク、ならびに、具体的には、無線電動車両充電システムおよびその方法を提供する。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ノード、第2ノード、および導電性ケーブルを備える電力供給システムであって、
該第1ノードが、該導電性ケーブルを介して該第2ノードに接続されており、
該ケーブルが、該第1ノードおよび該第2ノードとの間に高周波数の交流を伝導するためのものであり、
該導電性ケーブルが容量性ケーブルであり、そして
該容量性ケーブルが、その導体/導体素子内に容量結合を有しかつ回路図においてコンデンサによって表されるケーブルである、電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給システムを備える、電力供給および分配ネットワーク。
【請求項3】
請求項1に記載の電力供給システムを備える、無線電動車両充電システム。
【請求項4】
前記第2ノードが、前記電力を熱、光および/または機械仕事に変換する、少なくとも350Hzの周波数での電力を用いて動作するモータ、アクチュエータ、電球、ヒータ、計器、機械などの1つ以上の電気機器に接続されている、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記第2ノードが、前記周波数を約50Hzまたは約60Hzまで減少させるコンバータに接続されている、請求項1または4に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記容量性ケーブルの長さが5m以上である、請求項1または4に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記電流が少なくとも20kHzの周波数を有する、請求項1または4に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記電流が少なくとも80~85kHzの周波数を有する、請求項1または4に記載の電力供給システム。
【請求項9】
請求項1または4に記載の電力供給システムを備える空港海港、航空機または船舶
【請求項10】
電力供給システムにおける2つのノード間に電力を供給する方法であって、
1ノード、第2ノード、および導電性ケーブルを提供するステップであって、該第1ノードが、該導電性ケーブルを介して該第2ノードに接続されているステップと、
該第1ノードに電力を供給するステップとを含み、
該電力が少なくとも350Hzの周波数の交流であり、
該導電性ケーブルが容量性ケーブルであり、そして
該容量性ケーブルが、その導体/導体素子内に容量結合を有しかつ回路図においてコンデンサによって表されるケーブルである、方法。
【請求項11】
前記電流が少なくとも20kHzの周波数を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
無線電動車両充電システムであって、
(a)電源と、
(b)該電源に接続され、少なくとも350Hzの周波数での電力を出力するように構成されたインバータと、
(c)少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを備え、
該インバータが、容量性ケーブルを用いて該複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続されており、そして該容量性ケーブルがその導体/導体素子内に容量結合を有しかつ回路図においてコンデンサによって表されるケーブルである、無線電動車両充電システム。
【請求項13】
前記インバータが少なくとも5つの無線充電ステーションに接続されている、請求項12に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項14】
前記インバータの前記電力出力が多相であり、異なる位相からの電力が異なる無線充電ステーションに供給される、請求項12または13に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項15】
前記インバータが3相インバータである、請求項14に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項16】
1台以上の静止している電動車両を充電するための、請求項12または13に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項17】
1台以上の移動している電動車両を充電するための、請求項12または13に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項18】
前記無線電動車両充電システムが2つ以上のサブシステムとして提供され、該サブシステムが、それぞれ、
(a)電源に接続され、少なくとも350Hzの周波数での電力を出力するように構成されたインバータと、
(b)少なくとも1つの送信機をそれぞれが含む複数の無線充電ステーションとを有し、
該インバータが容量性ケーブルを用いて前記複数の無線充電ステーションのそれぞれに接続され、
該2つのサブシステムの該インバータが該電源に並列接続され、
各サブシステムにおける該容量性ケーブルが、他の該サブシステムのうちの1つにおける該容量性ケーブルに接続され、
各サブシステムが、該インバータのうちの1つが機能停止した場合、他の該サブシステムのうちの1つのためのバックアップシステムとして機能する、請求項12または13に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項19】
(a)前記インバータの前記電力出力が多相であり、
(b)各サブシステムにおける前記容量性ケーブルの各位相は、他の該サブシステムにおける該容量性ケーブルの同じ位相に接続されている、請求項18に記載の無線電動車両充電システム。
【請求項20】
電動車両を充電する方法であって、
請求項12または13に記載の無線電動車両充電システムの一部である無線充電ステーションの近傍に該電動車両を配置するステップを含む、方法。
【国際調査報告】