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特表2024-521608顕微鏡を通る流れを使用して撮像される試料の傾斜照明
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】顕微鏡を通る流れを使用して撮像される試料の傾斜照明
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20240528BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20240528BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01N21/01 D
G01N33/483 C
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554907
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022029378
(87)【国際公開番号】W WO2022250992
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/192,297
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】510005889
【氏名又は名称】ベックマン コールター, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Beckman Coulter, Inc.
【住所又は居所原語表記】250 S. Kraemer Boulevard, Brea, CA 92821, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨゼフ ソフカ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G045CA25
2G045CB03
2G045CB30
2G045FA16
2G045JA07
2G059AA05
2G059BB13
2G059EE11
2G059FF01
2G059GG02
2G059GG08
2G059JJ11
2G059JJ30
(57)【要約】
顕微鏡検査の撮像における試料の傾斜照明のための技術を提示する。試料は、発光器からの光を、撮像装置の光軸に直接に沿ってではなく、斜めの角度で試料へ向けて配向することにより、斜めに照明可能である。当該斜めの角度は、撮像装置の光軸に対して同軸でないアパーチャを有するアパーチャマスクを使用して形成することができる。また、当該斜めの角度は、コンデンサレンズにより光が試料へ向けて配向されるよう、撮像装置の光軸に対して同軸でない発光器およびコレクタレンズを使用して形成することもできる。傾斜照明を使用して取得された像は、半透明粒子のコントラストの改善をもたらし、エンボス状の3次元外観を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡検査のためのシステムであって、前記システムは、
試料を含むフローセルと、
前記フローセル内の試料を斜めに照明するように構成された傾斜照明システムと、
前記試料の照明中に前記試料の像を取得するように構成された撮像装置と、
を備え、
前記傾斜照明システムは、
光を放出することにより前記試料の照明を形成するように構成された発光器であって、前記照明は前記試料の像を取得するために使用される発光器と、
前記発光器と前記フローセルとの間に配置されており、前記発光器からの光を集光するコレクタレンズと、
前記フローセルと前記コレクタレンズとの間に配置されており、前記コレクタレンズからの光を受け取って前記フローセル内の前記試料へ向けて配向するコンデンサレンズと、
を備えている、
システム。
【請求項2】
前記試料は、尿試料、血液試料、脳脊髄液試料、滑液試料、漿液試料、胸腔内液試料、心膜液試料、腹膜液試料および羊水試料のうちの1つである、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記発光器は、発光ダイオードである、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記発光器は、アークランプである、
請求項1または2記載のシステム。
【請求項5】
前記フローセル内の前記試料は、運動しており、
前記発光器からの照明は、取得された像における暈けを防止する光パルスである、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記フローセル内の前記試料は、運動しておらず、
前記発光器からの照明は、連続的である、
請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記傾斜照明システムは、アパーチャを含むアパーチャマスクをさらに含み、前記アパーチャマスクは、前記コレクタレンズからの光の少なくとも一部が前記アパーチャを通過することを可能にし、前記アパーチャは、前記試料の照明が非対称となるよう、前記アパーチャマスクに対してセンタリングされていない、
請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記発光器、前記コレクタレンズ、前記アパーチャマスク、前記コンデンサレンズおよび前記試料は、それぞれ前記撮像装置の光軸に対してセンタリングされている、
請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記アパーチャの直径は、前記試料のタイプに基づく、
請求項7または8記載のシステム。
【請求項10】
前記試料および前記コンデンサレンズは、それぞれ、前記撮像装置の光軸に対してセンタリングされており、これにより、前記コンデンサレンズの中心からの光が傾斜なしに前記試料を照明し、前記コンデンサレンズの縁部からの光が斜めの角度で前記試料を照明し、
前記コレクタレンズは、前記コンデンサレンズとは異なるサイズを有しており、前記コレクタレンズは、前記撮像装置の光軸に対して同軸ではない、
請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記発光器は、前記コレクタレンズに対してセンタリングされている、
請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記傾斜照明システムは、光を放出することにより前記試料の照明を形成するように構成された第2の発光器を備えている、
請求項10または11記載のシステム。
【請求項13】
前記発光器は、第1の色を有する光を放出することにより前記試料の照明を形成するように構成されており、
前記第2の発光器は、前記第1の色とは異なる第2の色を有する光を放出することにより前記試料の照明を形成するように構成されている、
請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記傾斜照明システムは、前記第2の発光器と前記フローセルとの間に配置され、前記第2の発光器からの光を集光する第2のコレクタレンズを含み、
前記第2の発光器は、前記第2のコレクタレンズに対してセンタリングされており、
前記第2のコレクタレンズは、前記コンデンサレンズとは異なるサイズを有し、前記第2のコレクタレンズは、前記撮像装置の光軸に対して同軸ではなく、
前記発光器は、前記第2のコレクタレンズに対してセンタリングされていない、
請求項12または13記載のシステム。
【請求項15】
顕微鏡検査の方法であって、前記方法は、
発光器を使用してフローセル内の試料を斜めに照明するステップと、
前記試料が斜めに照明されているときに、像取得装置を使用して前記試料の像を取得するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記フローセル内の前記試料は、運動しており、前記発光器は、発光ダイオードであり、前記発光器からの照明は、取得された像における暈けを防止する光パルスである、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記試料を斜めに照明するステップは、
前記発光器からの光をコレクタレンズによって受け取るステップと、
前記像取得装置の光軸に対して同軸でないアパーチャを通過する以外のアパーチャマスクのすべての位置において前記コレクタレンズからの光を阻止するステップと、
傾斜照明を形成するために、コンデンサレンズにより、前記アパーチャからの光を前記試料へ向けて配向するステップと、
を含む、
請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記発光器、前記コンデンサレンズおよび前記コレクタレンズは、それぞれ前記像取得装置の光軸に対してセンタリングされる、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記試料を斜めに照明するステップは、
前記発光器を前記像取得装置の光軸に対して同軸とならない位置に配置するステップと、
前記発光器の軸線に対してセンタリングされて配置されたコレクタレンズにより、前記発光器からの光を集光するステップと、
前記像取得装置の光軸に対してセンタリングされたコンデンサレンズにより、前記コレクタレンズからの光を前記試料へ向けて配向して、傾斜照明を形成するステップと、
を含む、
請求項15または16記載の方法。
【請求項20】
前記コレクタレンズは、前記コンデンサレンズとは異なるサイズを有する、
請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
試料流体流中の細胞および粒子の撮像を使用して細胞および粒子を識別することができ、個体が健康であるかまたは疾病に罹患しているかを判別することができる。像から必要な情報を収集するために、像は、明瞭であってかつ試料流体流中の粒子および細胞を明確に示すものでなければならない。試料流体システムにおいて現在のところ利用可能な撮像は、例えば試料流体流中の半透明の粒子および細胞に対して多くの場合に低いコントラストしか提供せず、このため像内のいくつかの粒子および細胞の検出が困難となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
1つの一般的な態様は、顕微鏡検査のためのシステムを含んでいてよく、当該システムは、試料を含むフローセルを含むことができる。システムはまた、フローセル内の試料を斜めに照明するように構成された傾斜照明システムを含むことができる。システムはまた、試料の照明中に試料の像を取得するように構成された撮像装置を含むこともできる。傾斜照明システムは、光を放出することにより試料の照明を形成するように構成された発光器であって、照明は試料の像を取得するために使用される、発光器を含みうる。傾斜照明システムはまた、発光器とフローセルとの間に配置されており、発光器からの光を集光するコレクタレンズも含むことができる。傾斜照明システムはまた、フローセルとコレクタレンズとの間に配置されており、コレクタレンズからの光を受け取って、フローセル内の試料へ向けて配向するコンデンサレンズを含むこともできる。試料を斜めに照明することは、試料を斜めの角度で照明することを指すことができる。斜めの角度とは、90°以外のゼロでない角度を意味する。斜めの角度とは、撮像装置の光軸、試料に対する法線または試料の平面に対して相対的な角度であってよい。斜めの角度は、例えば5~85°、10~80°または20~70°の範囲内にあってよい。当該一般的な態様の他の実施形態には、それぞれ記載のシステムに対応する顕微鏡検査の方法の動作を実行するように構成された、1つもしくは複数のコンピュータストレージ装置に記録された対応するコンピュータシステム、装置およびコンピュータプログラムが含まれる。
【0003】
各実現形態は、以下の特徴のうち1つもしくは複数を含むことができる。いくつかの実施形態では、試料は、尿試料、血液試料、脳脊髄液試料、滑液試料、漿液試料、胸腔内液試料、心膜内液試料、腹腔液試料または羊液試料である。いくつかの実施形態では、発光器は発光ダイオードである。いくつかの実施形態では、発光器はアークランプである。いくつかの実施形態では、フローセル内の試料が運動しており、発光器からの照明は光パルスである。運動している試料を照明するための光パルスの使用は、有利には、取得された像における暈けを防止する。いくつかの実施形態では、フローセル内の試料が運動しておらず、発光器からの照明は連続的である。記載の技術の各実現形態は、コンピュータアクセス可能な媒体上のハードウェア、方法もしくはプロセスまたはコンピュータソフトウェアを含むことができる。
【0004】
いくつかの実施形態では、傾斜照明システムはさらに、アパーチャを含むアパーチャマスクを含むことができ、アパーチャマスクは、コレクタレンズからの光がアパーチャを通過することを可能にし、ここで、アパーチャは、試料の照明が非対称となるよう、アパーチャマスクに対してセンタリングされていない。アパーチャマスクは、好ましくは、アパーチャを通る以外のすべての位置においてコレクタレンズからの光を阻止する不透明マスクであってよい。任意選択手段として、発光器、コレクタレンズ、アパーチャマスク、コンデンサレンズおよび試料は、それぞれ、撮像装置の光軸に対してセンタリングされている。任意選択手段として、アパーチャの直径は試料のタイプに基づいていてよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、コンデンサレンズおよび試料はそれぞれ、撮像装置の光軸に対してセンタリング可能であり、これにより、コンデンサレンズの中心からの光が傾斜なしに(例えば直接にまたは真直ぐに)試料を照明し、コンデンサレンズの縁部からの光が斜めの角度で試料を照明する。換言すれば、コンデンサレンズの中心からの光の光路を撮像装置の光軸に対して同軸とすることができ、したがって、試料の法線に対して(試料の平面に対して)平行とし、かつ(試料の平面に対して)同軸とすることができる。したがって、コンデンサレンズの中心からの光は、試料を直接に(光軸または試料の法線に対して傾斜なしに(実質的に0°で))照明することができる。こうした試料の直接の照明は、オンアクシス照明または通常照明と称されうる。コンデンサレンズの縁部からの光の光路は、撮像装置の光軸に対して同軸でなくてよく、かつ光軸に対してゼロでない角度を有していてよい。これにより、コンデンサレンズの縁部からの光は斜めの角度で試料を照明する。斜めの角度とは、90°以外のゼロでない角度を意味する。斜めの角度とは、光軸、試料に対する法線または試料の平面に対して相対的な角度であってよい。斜めの角度は、例えば5°~85°、10°~80°または20°~70°の範囲内にあってよい。コレクタレンズはコンデンサレンズとは異なるサイズを有していてよく、コレクタレンズは撮像装置の光軸に対して同軸でなくてよい。例えば、コンデンサレンズは、コレクタレンズの直径とは異なる直径を有していてよい。さらなる別の例として、コンデンサレンズが、コレクタレンズの直径よりも小さい直径を有することもできる。任意選択手段として、発光器は、コレクタレンズに対してセンタリングされている。任意選択手段として、傾斜照明システムは、光を放出することにより試料の照明を形成するように構成された第2の発光器を備えている。発光器は、第1の色を有する光を放出することにより試料の照明を形成するように構成可能であり、第2の発光器は、第1の色とは異なる第2の色を有する光を放出することにより試料の照明を形成するように構成可能である。任意選択手段として、斜光照明システムは、第2の発光器とフローセルとの間に配置されて第2の発光器からの光を集光する第2のコレクタレンズを含み、第2の発光器は、第2のコレクタレンズに対してセンタリングされていてよく、第2のコレクタレンズは、コンデンサレンズと異なるサイズを有し、第2のコレクタレンズは、撮像装置の光軸に対して同軸でなくてよく、発光器は、第2のコレクタレンズに対してセンタリングされていなくてよい。
【0006】
別の一般的な態様には、顕微鏡検査の方法が含まれる。方法は、発光器を使用してフローセル内の試料を斜めに照明することを含みうる。方法はまた、試料が斜めに照明されているときに、像取得装置を使用して試料の像を取得することを含みうる。本態様の他の実施形態は、それぞれ方法の動作を実行するように構成された1つもしくは複数のコンピュータストレージ装置に記録された対応するコンピュータシステム、装置およびコンピュータプログラムを含む。本明細書におけるシステムに関して記載する特徴は、顕微鏡検査の方法にも同様に適用される。
【0007】
各実現形態は、以下の特徴のうち1つもしくは複数を含むことができる。いくつかの実施形態では、発光器は発光ダイオードであり、発光器からの照明は光パルスである。運動している試料を照明するための光パルスの使用は、有利には(例えば、取得された像が運動している試料の像である場合に)取得された像における暈けを防止する。いくつかの実施形態では、試料を斜めに照明することは、発光器からの光をコレクタレンズによって捕捉することと、像取得装置の光軸に対して同軸でないアパーチャを通過する以外のアパーチャマスクのすべての位置においてコレクタレンズからの光を阻止することと、傾斜照明を形成するために、コンデンサレンズにより、アパーチャからの光を試料へ向けて配向することと、を含む。任意選択手段として、発光器、コンデンサレンズおよびコレクタレンズはそれぞれ、像取得装置の光軸に対してセンタリングされている。いくつかの実施形態では、試料を斜めに照明することは、発光器を像取得装置の光軸に対して同軸とならない位置に配置することと、発光器の軸線に対してセンタリングされて配置されたコレクタレンズにより、発光器からの光を集光することと、像取得装置の光軸に対してセンタリングされたコンデンサレンズにより、コレクタレンズからの光を試料へ向けて配向して、傾斜照明を形成することと、を含む。任意選択手段として、コレクタレンズは、コンデンサレンズとは異なるサイズを有する。記載の技術の各実現形態は、コンピュータアクセス可能な媒体上のハードウェア、方法もしくはプロセスまたはコンピュータソフトウェアを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】いくつかの実施形態による顕微鏡検査解析システムの態様を示す図である。
図2】いくつかの実施形態による傾斜照明システムを示す図である。
図3】いくつかの実施形態による、別の傾斜照明システムを示す図である。
図4】いくつかの実施形態による、傾斜照明のための方法を示す図である。
図5】いくつかの実施形態による、傾斜照明のための別の方法を示す図である。
図6】いくつかの実施形態による、傾斜照明システムからの例示的な像を示す図である。
図7】いくつかの実施形態による、例示的なコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
生体組織(例えばヒト、動物および植物)からの細胞または粒子の分析は、疾患および細胞欠陥ならびに健康な細胞を識別するために使用される医療診断ツールとして使用可能である。分析のための細胞または粒子の捕捉は、例えば、生体組織(すなわち生物学的試料)から流体を介して粒子を収集することによって行うことができる。例えば、ヒトからの血液試料または尿試料はそれぞれ細胞を含み、これらの細胞の種類および量が分析されて、これらを分析のために医療従事者に提供することができる。さらに、試料内の他の粒子を識別してレビューのために提供することもできる。
【0010】
ルーチンの尿検査は、医師によって世界で3番目に頻用されている患者臨床検査プロファイルである。尿検査は、不顕性の代謝性疾患もしくは腎尿路疾患につき新規患者のスクリーニングを行う場合、または慢性腎尿路疾患の患者の状態を評価する場合、または術前もしくは術後の状態を評価する場合に、一般的に必要とされている。
【0011】
ルーチンの実験室尿検査には、ヘモグロビン、グルコース、ビリルビンおよび他の物質の存在を検出するための含浸試験紙片を用いた半定量化学アッセイのパネル、(存在する疾患または薬剤代謝物に関連する)色および(微粒子含有量に基づく)透明度を視覚的に判断するための「マクロスコピック」検査、ならびに感度の最大化のために尿を濃縮した後に尿中に形成される粒子成分の存在が腎臓、尿路および膀胱の状態を直接に反映する、粒子成分の顕微鏡検査が含まれうる。
【0012】
正常な尿中に存在することの多い粒子の類型として、(血管漏出によって産生される)赤血球および白血球、腎尿路を覆う様々な型の上皮細胞、溶解した代謝物の結晶もしくは特定の酸/塩基条件下で形成されうる薬物の結晶、細菌、酵母、トリコモナスなどの微生物、ならびにストレス時に腎糸球体から放出される沈渣タンパク質から形成される「円柱」などがある。腎臓の疾患は、腎出血、ひいては、観察される血球濃度の増大、糸球体膜の漏出によって生じる円柱の形成の亢進、ならびに腎内膜上皮細胞の剥離の亢進を引き起こすことがある。
【0013】
下部尿路の疾患は、炎症性出血、移行上皮の剥離および感染菌の所見に起因して、血球により特徴付けることができる。一部の尿分析物は健康状態および疾患状態の双方にあり、他の尿分析物は病態のみに関連するため、参照範囲ごとの尿中粒子の検出および定量の双方が必須である。
【0014】
一般的に、形成された尿沈渣成分の存在は、尿化学プロファイルおよびマクロスコピック検査の情報とは異なる診断情報を提供する。なぜなら、ヘモグロビンおよび白血球エステラーゼを測定する化学物質のみが沈渣物所見(赤血球および白血球)に直接に関連するためである。
【0015】
血球分析は、患者の健康状態を概観するために最も一般的に行われる医学検査の1つである。血液試料を患者の身体から採取し、凝固を防ぐ抗凝固薬を含有した試験管内に保存することができる。全血試料は、通常、赤血球(すなわちエリスロサイト)、白血球(すなわちロイコサイト)および血小板(すなわちトロンボサイト)を含む3つの主要な血球クラスから成る。各クラスはさらに、メンバのサブクラスに区分することができる。例えば、白血球の5つの主要な型もしくはサブクラスはそれぞれ異なる形状および機能を有する。白血球には、好中球、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球が含まれうる。また、赤血球の型についてもサブクラスが存在する。試料中の粒子の外観は、病態、細胞の成熟度および他の原因に従って異なりうる。赤血球のサブクラスには、網状赤血球および有核赤血球が含まれうる。
【0016】
尿細胞および粒子の分析も一般的に行われており、患者の健康に関する情報が提供される。患者は侵襲的な手技なしに尿試料を提供することができる。当該処置は侵襲的ではないので、試料を提供する個人に衝撃を与えることなく、繰り返し行うことができる。尿には多くの細胞および粒子が含まれうるが、その多くは半透明で、残りの液体試料からの鑑別が困難なことがある。本明細書に記載する技術により、こうした半透明の粒子の鑑別および同定がいっそう正確にかつ効果的に行われる。
【0017】
別の断りがない限り、本開示において行われる「粒子」または「複数の粒子」への言及は、流体中に分散しているあらゆる別個のもしくは形成された対象物を包含すると理解される。本明細書で使用される場合、「粒子」とは、生物学的流体中の(例えば像によってかつ/または他の測定可能なパラメータによって)測定可能かつ検出可能なすべての成分を含むことができる。粒子は、任意の材料、任意の形状および任意のサイズのものである。粒子は細胞を含みうる。粒子の例には、以下に限定されるものではないが、血球、胎児細胞、上皮細胞、幹細胞、腫瘍細胞を含む細胞、または生物学的流体中の細菌、寄生虫もしくは上述した断片もしくは他の断片のいずれかが含まれる。血球は、生物学的流体中に存在する可能性のある、任意の正常もしくは異常な、成熟もしくは未成熟の細胞、例えば赤血球(“RBC”)、白血球(“WBC”)、血小板(“PLT”)および他の細胞を含む、任意の血球であってよい。ここでのメンバには未成熟細胞または異常細胞も含まれる。未成熟WBCには、後骨髄球、骨髄球、前骨髄球、芽球が含まれうる。成熟RBCに加え、RBCのメンバには、有核RBC(“NTRC”)および網状赤血球が含まれうる。PLTには、「巨大」PLTおよびPLT塊が含まれうる。本明細書を通して、像については、細胞または粒子の像として説明する。多くの場合において細胞と称するが、像は任意の粒子のものであってよい。血小板、網状赤血球、有核RBC、さらに好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球を含むWBC、および芽球、前骨髄球、骨髄球もしくは後骨髄球を含む未成熟WBCが計数され、粒子として分析される。
【0018】
例示的な尿粒子は尿沈渣物粒子を含みうる。例示的な尿沈渣物粒子には、赤血球(すなわちRBC)、異形赤血球、白血球(すなわちWBC)、好中球、リンパ球、食細胞、好酸球、好塩基球、扁平上皮細胞、移行上皮細胞、デコイ細胞、腎尿細管上皮細胞、円柱、結晶、細菌、酵母、寄生虫、卵円形脂肪体、脂肪滴、精子、粘液、トリコモナス、細胞塊および細胞断片が含まれうる。例示的な細胞には、赤血球、白血球および上皮細胞が含まれうる。例示的な円柱は、無細胞円柱、硝子様円柱、未分類の円柱、顆粒状円柱、ワックス状円柱、幅広円柱、脂肪円柱、結晶円柱、RBC円柱、WBC円柱、細胞円柱などが含まれうる。例示的な結晶には、例えば、シュウ酸カルシウム、三リン酸、リン酸カルシウム、尿酸、炭酸カルシウム、ロイシン、シスチン、チロシン、および非晶質結晶が含まれうる。例示的な非扁平上皮細胞には、例えば、腎尿細管上皮細胞および移行上皮細胞が含まれうる。例示的な酵母には、例えば、出芽酵母および仮性菌糸を有する酵母が含まれうる。例示的な尿沈渣物粒子には、RBC塊、脂肪、卵円形脂肪体、およびトリコモナスも含まれうる。これらの粒子のうち所定のものは、例えばその半透明の外観のために、撮像において観察が困難なことがある。例えば、硝子様円柱は半透明であり、像内での観察が困難でありうる。本明細書に記載の傾斜照明を使用することにより、そのままでは像内の観察が困難な粒子、例えば硝子様円柱が、傾斜照明を使用して取得された像においてより明瞭に観察できるようになる。
【0019】
血球分析、例えば尿または他の体液の分析は、計数技術を使用して行うことができる。撮像を基礎とした計数技術では、観察領域を通過可能な準備された試料のピクセルデータ像が、デジタルカメラに接続された顕微鏡対物レンズを使用して取得される。ピクセル像データは、データ処理技術を使用して分析することができ、またモニタ上に表示することもできる。ピクセルデータ像はさらに、システム内のストレージ装置に記憶可能であり、または外部位置に伝送可能である。
【0020】
高光学分解能撮像装置なる用語は、形態学的な特徴および/または変化を鑑別するための十分な視覚的区別を有する粒子像を取得することのできる装置を含みうる。例示的な高光学分解能撮像装置には、例えば0.2μm~0.5μm、例えば0.345μmの光学分解能を含む1μm以下の光学分解能を有する装置が含まれうる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の構成および/または本発明の方法のいずれかにおいて取得された像は、デジタル像でありうる。任意選択手段として、像を取得する手順の少なくとも一部が自動化されている。いくつかの実施形態では、像は、フローセルを備えた視覚的分析装置、高光学分解能撮像装置またはデジタル像取得装置を使用して取得可能である。
【0022】
任意選択手段として、像は、細胞の細胞質、細胞核および/または核成分に関する情報を提供する。任意選択手段として、像は、細胞の顆粒状成分および/または他の形態学的な特徴に関する情報を提供する。任意選択手段として、像は、細胞の細胞質成分、核成分および/または顆粒状成分に関する情報を提供する。顆粒像および/または核像および/または特徴は、相互に独立にまたは組み合わされて、細胞のクラス分類およびサブクラス分類の双方のために決定可能である。
【0023】
以下の説明では、説明の目的で、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、特定の詳細を記載する。ただし、これらの特定の詳細がなくても種々の実施形態を実施可能であることは明らかである。図および説明は限定を意図するものではない。
【0024】
図のいくつかに図示されているシステムは、様々な構成で用意することができる。任意選択手段として、システムは、当該システムの1つもしくは複数のコンポーネントがクラウドコンピューティングシステム内の1つもしくは複数のネットワークに分散されている分散システムとして構成可能である。記載のシステムのすべての特徴は必要な変更を加えたうえで記載の方法に適用可能であり、逆に記載の方法のすべての特徴を必要な変更を加えたうえで記載のシステムに適用することもできる。
【0025】
図1には、流体試料中の粒子を撮像するシステム100の態様が示されている。流体試料は、体液試料、例えば血液試料または尿試料でありうる。本明細書において示されているように、システム100は、試料流体注入システム110、シース流体注入システム150、プロセッサ140、フローセル120、像取得装置130および傾斜照明システム160を含む。フローセル120は、任意選択手段として試料流体と組み合わされて、シース流体流を伝達する流路122を形成する。フローセル120内では、像取得中、試料が連続的に流れ、または運動しうる。いくつかの実施形態では、試料は、像取得箇所132での撮像のための試料の特定部分を形成するために、シース流体流が一時停止できるよう、像取得中、静止させることができる。いくつかの実施形態によれば、試料流体注入システム110は、カニューレまたはチューブ112を含むことができるか、またはこのカニューレまたはチューブ112に接続することができる。試料流体注入システム110は、(例えば試料流体入口102を介して)流路122と流体連通することができ、試料流体流128を形成するために、カニューレ112の遠位出口ポート113を通してフローセル120内を流れるシース流体126中へ試料流体124を注入するように動作可能である。
【0026】
プロセッサ140は、プロセッサによって実行される際に、試料流体注入システム110に対し、流れるシース流体126中へ試料流体124を注入させるように構成されたコンピュータアプリケーションを有する記憶媒体を含むことができるか、またはこの記憶媒体に動作可能に関連付けることができる。ここに示されているように、シース流体126は、(例えばシース流体入口101を介して)シース流体注入システム150によってフローセル120内へ導入することができる。例えば、プロセッサ140は、プロセッサによって実行される際に、シース流体注入システム150に対し、シース流体126をフローセル120内へ注入させるように構成されたコンピュータアプリケーションを有する、記憶媒体を含むことができるか、またはこの記憶媒体に動作可能に関連付けることができる。
【0027】
試料流体流128は、注入チューブ112に接する第1の厚さT1を有する。フローセル120の流路122は、試料流体流128の厚さが初期厚さT1から像取得箇所132に接する第2の厚さT2まで減少するように、流路サイズを減少させる。像取得装置130は、試料流体の複数の粒子がフローセル120の像取得箇所132で撮像されるよう、像取得箇所132に対して位置合わせされている。
【0028】
プロセッサ140は、試料流体注入システム110、像取得装置130、および任意選択手段としてのシース流体注入システム150に接続されている。プロセッサ140は、フローセル120の像取得箇所132で、試料流体からの複数の粒子の像の取得を開始するように構成されている。例えば、プロセッサ140は、プロセッサによって実行される際に、像取得装置130に対し、試料流体流が像取得箇所132を通過した後にフローセル120の像取得箇所132での第2の試料流体からの第2の複数の粒子の像の取得を第1の複数の粒子の撮像の期間内で開始させるように構成されたコンピュータアプリケーションを有する記憶媒体を含むことができるか、またはこの記憶媒体に動作可能に関連付けることができる。
【0029】
プロセッサ140はさらに、傾斜照明システム160を制御することができる。傾斜照明システム160は、像取得装置130によって試料流体中の細胞および粒子の像を取得するために、像取得箇所132に照明を供給することができる。傾斜照明システム160により、斜めの角度で試料流体流128へ向けて配向される照明を形成することができる。像取得箇所132において、フローセル120は透明であり、これにより傾斜照明システム160からの照明が試料流体を照明して、像取得装置130が像を取得することができる。傾斜照明システム160については、図2および図3を参照しながらさらに詳細に説明する。傾斜照明システム160は、試料流体流128を有する試料が凍結されたかのように見せる照明パルス(すなわち光パルス)を供給することができ、これにより、像取得装置130は、試料の運動によって通常引き起こされる暈け効果なしに静止像を取得することができる。プロセッサ140は、傾斜照明システム160が試料流体流128を照明している間、傾斜照明システム160内および像取得装置130内の発光器のパルス形成を調整して、像取得装置130に像を取得させることができる。いくつかの実施形態では、試料流体流128を像取得中に運動させなくてよく、この実施形態では、傾斜照明システム160は試料の連続照明を形成することができる。例えば、像取得箇所132に試料の一部を配置するために試料流体流128を運動させ、像取得装置130が像を撮影するまで一時停止させることができる。このようにして、試料流体流128は、像取得中、像取得箇所132での観察が可能となるように試料の一部を運動させることができる。プロセッサ140は、試料流体流128が運動していないときに像取得装置130が像を取得することを保証するために、試料流体流128および像取得装置130の運動を調整することができる。この実施形態では、傾斜照明システム160は、連続照明を形成することができる。なぜなら、試料の運動を「凍結」させるためのパルスが必要ないからである。いくつかの実施形態では、試料流体流128が像取得中に運動していない場合であっても、傾斜照明システム160は像取得中にのみ照明を形成することができ、これにより、傾斜照明システム160によって光パルスが形成され、像取得中にのみ試料が照明される。
【0030】
図2には、試料230を照明する傾斜照明システム160のブロック図が示されている。傾斜照明システム160を図1に即して説明したが、ここでは、傾斜照明をどのように達成できるかという実施形態を説明する。試料230は、図1に即して説明したように、像取得箇所132内にある試料流体流128の一部であってよい。
【0031】
傾斜照明システム160は、発光器205、コレクタレンズ210、アパーチャマスク215およびコンデンサレンズ225を含むことができる。図示および説明する構成要素の明瞭化のためにここには図示しないが、傾斜照明システムは、他の構成要素、例えば、プロセッサ140へのインタフェース、ハウジングユニット、傾斜照明システム160を顕微鏡システムのハウジングに結合するための結合部品、傾斜照明システム160がフローセル120に対して運動しないことを保証する安定化結合部材、および像取得装置に対する傾斜照明システムの正確な配置および位置合わせの調整を可能にする位置合わせ機構などを含むことができる。
【0032】
発光器205は、任意の適切な光源であってよい。発光器205は、像取得装置130用の試料を「凍結」させるためのパルス発光器205であってよい。発光器205からの光が像取得箇所132に当たると、像取得装置130により試料230が撮像され、運動による暈けのない透明な像を取得することができる。いくつかの実施形態では、発光器205は、例えば、試料230が運動していない場合、試料230の連続照明を形成することができる。発光器205は、アークランプ、発光ダイオード(LED)、またはきわめて短い持続時間(例えば1~10マイクロ秒)および短いオフ時間(例えば10~20ミリ秒)でパルス形成もしくはフラッシュ形成を行うように構成された他の任意の適切な発光器、ならびに連続照明を形成するように構成された他の任意の適切な発光器であってよい。発光器205は、フラッシュ形成のオンオフ時点を示す信号をプロセッサ140から受信することができ、当該信号は、光フラッシュ形成中に像を取得するために像取得装置130と同期させることができる。より高速のプロセッサおよび撮像装置が開発されるにつれていっそう高いフレームレートでの撮像が可能となりうるが、このことは、例示の使用時間フレームによって当該システムの機能が限定されることを意図するものではない。いくつかの実施形態では、発光器205は、像取得箇所132に連続照明を形成するための連続光源であってよい。例えば、試料230が、静止した(すなわち像取得中に運動しない)試料であってよく、したがって、像取得のために試料を「凍結」させるための光パルスは必要ない。
【0033】
発光器205は、直接に光軸235に沿って光を外部へ向けて放出するだけでなく、光ビーム240,245および250およびこれらの間のすべての位置を含む角度で光を放出することができる。発光器205は光軸235に対してセンタリングされていてよい。光軸235は、像取得装置130に基づいて決定可能である。像取得装置130は、自身の回転対称性の中心となる光軸235を有する。
【0034】
コレクタレンズ210は、発光器205から放出された光の集光に適した任意のコレクタレンズであってよい。コレクタレンズ210は、発光器205のジオメトリに基づいて決定される直径を有することができる。発光器205のジオメトリにより、例えば(例えばLEDが点状光を放出する場合には)所定の点として、または(例えばアークランプが線状光を放出する場合には)所定の線として、光が放出可能となる。コレクタレンズのサイズは、光のジオメトリに基づいて光が取得され、次いで均一な光透過が発生するように決定される。例えば、発光器205がLEDである場合、コレクタレンズ210は、例えば発光器205がアークランプである場合よりも小さい直径を有しうる。コレクタレンズ210は、発光器205から放出された光を集光し、アパーチャマスク215へと光を均一に透過させることができる。光ビーム240,245および250は、こうした均一な透過を示す。コレクタレンズ210は、光軸235に対してセンタリングされていてよい。いくつかの実施形態では、コレクタレンズ210および/またはアパーチャマスク215、コンデンサレンズ225、発光器205および試料230を含む他の部品は、傾斜されたうえでなお光軸235に対してセンタリングされていてよい。1つもしくは複数の部品が傾斜しているかどうかにかかわらず、傾斜照明システム160によって形成される照明は、依然として試料230の傾斜照明である。
【0035】
アパーチャマスク215は、アパーチャ220を含むことができる。アパーチャ220は、アパーチャマスク215内のボイドまたは孔であってよい。アパーチャマスク215は、アパーチャ220を通る以外のすべての位置においてコレクタレンズからの光を阻止する不透明マスクとすることができる。アパーチャマスク215は、コレクタレンズ210と同じ直径またはこれよりも大きい直径を有していてよく、光軸235に対してセンタリングされており、これにより、コレクタレンズ210からの均一な透過光がアパーチャマスク215によって阻止されるか、またはアパーチャ220を通過することが可能となる。例えば、光ビーム240および245はアパーチャ220を通ることができる。しかし、光ビーム250はアパーチャマスク215によって阻止される。アパーチャ220は円形のアパーチャであってよく、そのサイズは試料230のタイプに基づいて定められる。例えば、観察困難な粒子(例えば半透明の粒子)を含む試料230も、アパーチャ220が、粒子の観察困難性がより低いとき(例えば不透明な粒子の場合)に必要なアパーチャサイズよりも小さいサイズを有する場合、視認しやすくなる。アパーチャ220のジオメトリは、例えば円形、楕円形、涙滴形、ハート形、正方形、三角形、八角形などを含む任意の適切な形状とすることができる。アパーチャ220の形状の選択は、試料230のタイプに基づいて行われうる。傾斜照明では、アパーチャ220は光軸235に対して同軸ではない。換言すれば、アパーチャ220は、光軸235に対してセンタリングされていない。このとき、アパーチャ220を透過した光は、光軸235に対してセンタリングされていない状態でコンデンサレンズに達する。図2では、このことが、光軸235に対して同軸ではない例示的な光ビーム240および245によって示されている。アパーチャマスク215に関して注意すべきは、従来のシステムでは発光器からの光損失が約99パーセント(99%)であったことである。大量の光損失は少なくとも2つの理由によって生じていた。第一に、従来のシステムはアークランプを使用しており、光アークの形状は線状であるが、点状光を用いると均一な照明の実現がより容易となるため、点状光は線状光よりも格段に光の操作に適している。線状光をより均一に見せるために照明装置内にはディフューザが設けられるが、当該ディフューザは、線状光を暈けさせるだけでなく、複数の配向装置のすべてにおいて光を分散させるので、多くの光が失われる。本解決手段では、LEDを使用することにより、より高い光効率が達成される。第二に、本解決手段のシステムで使用される低い開口数は、従来のシステムにおける低い開口数よりも大きい。従来のシステムにおけるアパーチャは、細部を観察できる低い開口数の像のためにきわめて小さくする必要がある。したがって、本解決手段で使用されるより高い開口数は、より高い光効率を提供する。上述した傾斜照明システム160によれば、光の約25パーセント(25%)が保持され、これは大きな効率の向上となる(つまり、従来の99%の損失に対してわずか75%の損失となる)。こうした効率の利得により、より低い出力の発光器205を使用することが可能となり、傾斜照明システム160ひいては顕微鏡システム全体のコストが削減される。加えて、より小さい発光器205はより多くの点状照明を形成し、これにより光の喪失もより小さくなる。なぜなら、発光器205からの点状照明によって均一な照明パターンの形成がより容易となるからである。ここでのコスト削減は、低電力電子回路のコストの削減、低電力電子回路への電力供給のコストの削減、および発光器205の交換がより少ない頻度で済むことによるコストの削減によるものである。
【0036】
コンデンサレンズ225は、受け取った光を試料230の方へ傾斜させるように構成されている。アパーチャ220を通過した光のすべてがコンデンサレンズ225に到達し、試料230へと透過される。コンデンサレンズ225は、コレクタレンズ210と同じ直径を有していてよい。いくつかの実施形態では、コンデンサレンズ225とコレクタレンズ210とは同じサイズではない。例えば、コンデンサレンズ225は、コレクタレンズ210の直径よりも小さい直径を有しうる。コンデンサレンズ225は光軸235に対してセンタリングされている。アパーチャ220からの光はコンデンサレンズ225で受け取られ、試料230へ向けて配向され、これにより、試料230はこの光によって斜めの角度で照明される。図2に示されているように、光ビーム240および245は、試料230が照明されるように試料230へ向けて配向される。図1によれば、像取得箇所132が照明されている。得られる試料230の照明は傾斜照明である。なぜなら、アパーチャ220からの光ビームが斜めの角度で試料230に到達するからである。直接に光軸235に沿った光はアパーチャマスク215によって阻止されるので、試料230の照明のすべてが傾斜照明となる。
【0037】
図3には、試料230を照明する傾斜照明システム160の代替的な実施形態のブロック図が示されている。傾斜照明システム160を図1に即して説明したが、ここでは、傾斜照明をどのように達成できるかにつき、図2に即して説明した実施形態に対する代替的な実施形態を説明する。試料230は、図1に即して説明したように、像取得箇所132内にある試料流体流128の一部であってよい。
【0038】
当該実施形態では、傾斜照明システム160は、発光器305、コレクタレンズ310およびコンデンサレンズ225を含むことができる。図示および説明する構成要素の明瞭化のためにここには図示しないが、傾斜照明システムは、他の構成要素、例えば、プロセッサ140へのインタフェース、ハウジングユニット、傾斜照明システム160を顕微鏡システムのハウジングに結合するための結合部品、傾斜照明システム160がフローセル120に対して運動しないことを保証する安定化結合部材、および像取得装置に対する傾斜照明システムの正確な配置および位置合わせの調整を可能にする位置合わせ機構などを含むことができる。
【0039】
発光器305は、任意の適切な光源であってよい。発光器305は、像取得装置130用の試料を「凍結」させるためのパルス発光器305であってよい。発光器305は、発光器205と同じものであってよく、ただし、光軸235に関して異なる位置に配置されている。なお、発光器305は、発光器205とは異なるものであってもよい。例えば、発光器305は、発光器205より小さいものであってもよい。発光器305からの光が像取得箇所132に当たると、像取得装置130により試料230が撮像され、運動による暈けのない透明な像を取得することができる。いくつかの実施形態では、発光器305は、例えば試料230が運動していない場合、試料230の連続照明を形成することができる。発光器305は、アークランプ、発光ダイオード(LED)、またはきわめて短い持続時間(例えば1~10マイクロ秒)および短いオフ時間(例えば10~20ミリ秒)でパルス形成もしくはフラッシュ形成を行うように構成された他の任意の適切な発光器であってよく、ならびに連続照明を形成するように構成された他の任意の適切な発光器であってもよい。発光器305は、フラッシュ形成のオンオフ時点を示す信号をプロセッサ140から受信することができ、光フラッシュ形成中もしくは光パルス形成中に像を取得するために、当該光フラッシュ形成もしくは光パルス形成を像取得装置130と同期させることができる。発光器305は、同様に連続照明が使用される場合にもオンオフ時点を示す信号をプロセッサ140から受信することができる。より高速のプロセッサおよび撮像装置が開発されるにつれていっそう高いフレームレートでの撮像が可能となりうるが、このことは、例示の使用時間フレームによって当該システムの機能が限定されることを意図するものではない。いくつかの実施形態では、発光器305は、像取得箇所132に連続照明を形成する連続光源であってよい。例えば、試料230は、静止した(すなわち、像取得中に運動しない)試料であってよく、したがって、像取得のために試料を「凍結」させるための光パルスは必要ない。
【0040】
発光器305は、(光ビーム320によって示されている)光軸235に対して平行に、さらに光ビーム315および325を含む角度とその間のすべての角度とにおいて、光を放出することができる。発光器305は、光軸235に対して同軸でなくてよい。光軸235は、像取得装置130に基づいて決定可能である。像取得装置130は、自身の回転対称性の中心となる光軸235を有する。発光器205は、光軸235に対してセンタリング可能である。
【0041】
コレクタレンズ310は、発光器305から放出された光を集光するのに適した任意のコレクタレンズであってよい。コレクタレンズ310は、発光器305のジオメトリに基づいて決定される直径を有することができる。発光器305のジオメトリにより、例えば(例えばLEDが点状光を放出する場合には)所定の点として、または(例えばアークランプが線状光を放出する場合には)所定の線として、光が放出可能となる。コレクタレンズのサイズは、光のジオメトリに基づいて光が取得され、次いで均一な光透過が発生するように決定される。例えば、発光器305がLEDである場合、コレクタレンズ310は、例えば発光器305がアークランプである場合よりも小さい直径を有しうる。いくつかの実施形態では、コレクタレンズ310のサイズは、試料230のタイプに基づいて決定可能である。コレクタレンズ310は、発光器305から放出された光を集光することができ、この光をコンデンサレンズ225へと均一に透過させることができる。光ビーム315,320および325は、こうした均一な透過を示している。コレクタレンズ310は、光軸235に対して同軸でなくてよいが、発光器305に対してセンタリングされている。こうした非同軸の配置は所望の傾斜照明をもたらす。いくつかの実施形態では、コレクタレンズ310および/またはコンデンサレンズ225、発光器305および試料230を含む他の部品が傾斜されていてよい。1つもしくは複数の部品が傾斜されているかどうかにかかわらず、傾斜照明システム160によって形成される照明は、依然として試料230の傾斜照明である。
【0042】
なお、発光器305からの光はすべてコレクタレンズ310によって集光され、コンデンサレンズ225へと透過されることに留意されたい。当該実施形態は、図2に即して説明した実施形態よりもさらに効率的である。発光器305からの光のすべてが試料230へ配向されるので、きわめてわずかな光損失しか発生しない。このようにすれば、いっそう低い電力の発光器305によって、コスト効率を改善することができる。
【0043】
コンデンサレンズ225については、上記にて図2に即して説明した。図2に即して説明したように、コンデンサレンズ225は、コレクタレンズ310から受け取った光を試料230へ向けて配向するように構成されている。発光器305から放出されてコレクタレンズ310によって集光されたすべての光がコンデンサレンズ225に到達し、試料230へ向けて配向される。コンデンサレンズ225は、上述したようにコレクタレンズ310よりも大きな直径を有していてよい。コンデンサレンズ225は、光軸235に対してセンタリングされている。光軸235に対して同軸でないコレクタレンズ310からの光が試料230へと配向され、これにより試料230が斜めの角度で光によって照明される。図3に示されているように、光ビーム315,320および325は、試料230が照明されるように試料230へ向けて配向される。図1によれば、像取得箇所132が照明されている。光ビームが斜めの角度で試料230に到達するので、得られる試料230の照明は傾斜照明となる。直接に光軸235に沿って透過される光は存在しないので、試料230へのすべての照明が傾斜照明となる。
【0044】
いくつかの実施形態では、図3に示されている発光器305の下方の領域を使用して、例えば、第2の傾斜照明発光器およびコレクタレンズ(図示せず)を設けることができる。いくつかの実施形態では、発光器305および第2の発光器からそれぞれ異なる色の光を放出させることができる。
【0045】
図4には、試料の傾斜照明および試料の像取得のための方法400が示されている。方法400は、例えば図1のシステム100を用いて実行することができる。より具体的には、方法400は、図2に即して説明した傾斜照明システム160と像取得装置130とによって実行することができる。方法400は、ステップ405において、発光器を使用してフローセル内の試料を斜めに照明することから開始可能である。傾斜照明システム160は、例えば、発光器205を使用して、フローセル120内の試料230を斜めに照明することができる。
【0046】
ステップ405のサブステップであるステップ410では、コレクタレンズにより、発光器からの光を捕捉することができる。例えば、コレクタレンズ210は、発光器205から放出された光を捕捉することができる。例えば、プロセッサ140は、発光器205にパルス形成もしくはフラッシュ形成を行わせるためのプロセッサ可読命令を含んでいるので、発光器205にパルス形成を行わせることができ、これにより運動する対象物の暈けのない像取得が可能となる。したがって、試料はフローセルを通流することができ、パルス光により暈けのない像を取得することができる。いくつかの実施形態では、発光器205を、像取得中に試料を静止させることのできる連続照明源とすることができる。
【0047】
ステップ405のさらなるサブステップであるステップ415では、アパーチャマスクが、撮像装置の光軸に対して同軸でないアパーチャを通る以外のすべての位置においてコレクタレンズからの光を阻止することができる。例えば、アパーチャマスク215は、アパーチャ220を通る以外のすべての位置においてコレクタレンズ210からの光を阻止することができる。アパーチャ220は、像取得装置130の光軸235に対して同軸でない。
【0048】
ステップ405のさらなるサブステップであるステップ420では、コンデンサレンズにより、アパーチャからの光を試料へ向けて配向して、傾斜照明を形成することができる。例えば、コンデンサレンズ225は、傾斜照明を形成するために、アパーチャ220からの光(光ビーム240および245)を試料230へ向けて配向することができる。
【0049】
ステップ425では、像取得装置は、試料が斜めに照明されているときに試料の像を取得することができる。例えば、像取得装置130は、傾斜照明システム160によって試料が斜めに照明されているときに、像取得箇所132にあるフローセル120内の試料230の像を取得することができる。
【0050】
図5には、試料の傾斜照明および試料の像取得のための別の方法500が示されている。方法500は、例えば図1のシステム100を使用して実行可能である。より具体的には、方法500は、図3および像取得装置130に即して説明した傾斜照明システム160によって実行することができる。方法500は、ステップ505で、発光器を使用してフローセル内の試料を斜めに照明することから開始可能である。傾斜照明システム160は、例えば、発光器305を使用して、フローセル120内の試料230を斜めに照明することができる。
【0051】
ステップ505のサブステップであるステップ510では、発光器が、撮像装置の光軸に対して同軸とならない位置に配置される。例えば、発光器305は、像取得装置130の光軸235に対して同軸とならない位置に配置することができる。プロセッサ140が例えば発光器305にパルス形成もしくはフラッシュ形成を行わせるためのプロセッサ可読命令を含んでいるので、発光器305はパルス形成を行うことができ、これにより、像取得装置130との協調を行って、試料の運動中にフローセル120内の試料の暈けのない像を取得することができる。いくつかの実施形態では、発光器305は、静止中に試料の像取得に使用される連続照明を放出することができる。
【0052】
ステップ505のさらなるサブステップであるステップ515では、コレクタレンズにより、発光器からの光を集光することができる。コレクタレンズは、発光器の軸線に対してセンタリングされていてよい。例えば、コレクタレンズ310は、発光器305からの光を集光することができる。コレクタレンズ310は、発光器305に対してセンタリングされていてもよい。例えば、図3において光ビーム320により例示されている、発光器305の中心から真直ぐに延在する軸線は、コレクタレンズ310がセンタリングされる軸線であってよい。
【0053】
ステップ505のさらなるサブステップであるステップ520では、コンデンサレンズにより、コレクタレンズからの光を試料へ向けて配向して傾斜照明を形成することができる。例えば、コンデンサレンズ225は、傾斜照明を形成するために、コレクタレンズ310からの光(光ビーム315,320および325)を試料230へ向けて配向することができる。
【0054】
ステップ525で、像取得装置は、試料が斜めに照明されているときに試料の像を取得することができる。例えば、像取得装置130は、傾斜照明システム160により試料が斜めに照明されているときに、像取得箇所132にあるフローセル120内の試料230の像を取得することができる。
【0055】
図6には、代替的な試料の例示的な像が提示されている。顕微鏡システムでは、試料の照明を形成するために明視野照明を使用することができる。当該システムでは、照明源は、像取得装置の位置を基準として試料の後方にある。これは、図1に即して言えば、傾斜照明システム160がフローセル120の像取得箇所132を基準として、像取得装置130の反対側にあることを示している。
【0056】
アパーチャサイズは、得られる像の分解能に影響を与える。例えば、照明システムのアパーチャ(例えばアパーチャ220)が小さくなるにつれて試料の照明をより密にフォーカシングすることができ、その結果、異なる撮像分解能が得られる。傾斜照明を使用しないシステムでは、アパーチャは撮像装置の光軸に対してセンタリングされる。低い開口数(このことはアパーチャがより小さいかまたはより小さい直径を有することを意味する)により、試料内の粒子を観察するための像につき、高い開口数(このことはアパーチャがより大きいかまたはコンデンサレンズと同程度に大きいことを意味する)の場合よりも、低い分解能が生じうる。図6には、各像において利用可能な情報の変化を示すために、変化する開口数を有する照明システムを使用して粒子635の照明中に撮影された3つの像605,610および615が示されている。図示されているように、約0.1の低い開口数を使用する照明システムによって撮影された像605は、幾らかの鮮明度の粒子635を示している。点線の囲みとして示されている挿入図620は、粒子635の一部の詳細部分図を示している。挿入図620に示されている像605における分解能および詳細ならびに挿入図620内の粒子は、かなり不明瞭である。
【0057】
約0.2の中程度の開口数を使用する照明システムによって撮影された像610は、幾らかの鮮明度の粒子635を示しており、粒子635は像605に示されているものよりも明瞭である。点線の囲みとして示されている挿入図625は、挿入図620と同様に、粒子635の一部の詳細部分図を示している。挿入図625は、粒子の一部の明瞭性が挿入図620よりも大きいことを示している。
【0058】
約0.4の高い開口数を使用する照明システムによって撮影された像615は、像605,610および615のうち、最大量の鮮明度の粒子635を示している。点線の囲みとして示されている挿入図630は、挿入図620および625と同様に、粒子635の一部の詳細部分図を示している。粒子635の詳細は、像615において格段に鮮明である。
【0059】
像640は、傾斜照明システム160のようなシステムを使用して、傾斜照明を用いて粒子635を照明している間に取得された像である。像640は、エンボス状の3次元外観を有している。像は、真に3次元ではないが、傾斜照明によって3次元に似た外観が得られる。粒子、特に半透明の粒子、例えば粒子635の詳細は、像605,610および615に示されているものよりも、傾斜照明を使用した像640の方がはるかに明瞭である。エンボス状の3次元的な外観により、均一な半透明の粒子に深さが与えられ、人間の分析者および/またはソフトウェア分析システムの視認性が向上する。
【0060】
既に述べたように、既存の顕微鏡システムは、典型的には明視野照明または他の対称照明技術を使用している。これにはいくつかの理由がある。第1の理由は、エンジニアリングにおける目標が対称性を見出すことにあることが多いからである。光学システムの設計および分析は対称性を有するにつれてより単純となるため、対称の解決手段を用いると作業がより容易となる。このため、通常は対称の解決手段が探索されて使用されるものであり、こうした作業手段が見出されれば探索を終了することができる。非対称性または非対称の解決手段を探索することはより稀である。このため、光軸からの中心を外れた照明を形成することによって対称性から逸脱した傾斜照明は、上述した顕微鏡システムに使用される明らかな選択肢ではない。第2の理由は、エンボス状の3次元外観像への変更が像605,610および615に示されているような典型的な2次元像からの大きな変更であることである。対称照明を使用した顕微鏡システムは長年にわたって存在している。顕微鏡システムによって取得される像は、多くの場合に、試料の採取元の患者が疾患もしくは健康上の問題を有するかどうかを判定するために、異常性または正常性を識別すべく、ソフトウェアまたは人間のいずれかによって分析される。像の分析および評価に使用されるソフトウェアは、2次元像を使用してプログラミングされることが多い。同様に、人間の分析者も2次元像を使用した訓練を受けている。エンボス状の3次元外観を有する像への撮像の変更は、分析ソフトウェアのリプログラミングおよび人間の分析者のための追加の訓練を要しうるので、この変更は明らかな選択肢ではない。
【0061】
図7には、本明細書において説明している像取得および傾斜照明を実行するために使用可能な例示的なコンピューティング装置700のブロック図が示されている。コンピューティング装置700は、例えば、カスタム目的および/またはカスタム設計のコンピューティング装置、サーバコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレット、e-リーダ、スマートフォンまたはモバイルデバイス、スマートウォッチ、パーソナルデータアシスタント(PDA)、またはその他の電子デバイスであってよく、またはこれらを含んでいてもよい。
【0062】
コンピューティング装置700は、バス705を介して他のハードウェアに対してインタフェースを形成しているプロセッサ740を含むことができる。任意の適切な有形の(かつ非一時的な)コンピュータ可読媒体、例えばRAM、ROM、EEPROMなどを含むことのできるメモリ710は、コンピューティング装置700の動作をコンフィグレーションするプログラムコンポーネント(例えば命令715)を具現化するものでありうる。いくつかの例では、コンピューティング装置700は、(例えば、ディスプレイ745、キーボード、マウスおよび/またはこれらに類するものとのインタフェース形成のための)入出力(「I/O」)インタフェースコンポーネント725および付加的なストレージ装置730を含むことができる。
【0063】
コンピューティング装置700はネットワークコンポーネント720を含むことができる。ネットワークコンポーネント720は、ネットワーク接続を可能にする任意のコンポーネントの1つもしくは複数であってよい。いくつかの例では、ネットワークコンポーネント720は無線接続を可能にすることができ、無線インタフェース、例えばIEEE802.11、Bluetooth、またはセルラフォンネットワーク(例えばCDMA、GSM、UMTSもしくは他のモバイル通信ネットワークにアクセスするための通信機/アンテナ)にアクセスするための無線インタフェースを含むことができる。他の例では、ネットワークコンポーネント720は、有線であってよく、イーサネット、USB、IEEE1394、RS232および/またはこれらに類するものなどのインタフェースを含んでいてもよい。
【0064】
図7には単一のプロセッサ740を備えた単一のコンピューティング装置700が示されているが、システムは任意の数のコンピューティング装置700および任意の数のプロセッサ740を含むことができる。例えば、複数のコンピューティング装置700または複数のプロセッサ740は、有線ネットワークまたは無線ネットワーク(例えば、ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワークまたはインターネット)を介して分散配置可能である。複数のコンピューティング装置700または複数のプロセッサ740は、本開示のステップのうちのいずれかを個別にまたは相互に協調させて実行することができる。
【0065】
本明細書において説明している計算または動作のそれぞれは、ハードウェア、ソフトウェアおよび/またはファームウェアを有するコンピュータまたは他のプロセッサを使用して実行可能である。様々な方法ステップがモジュールによって実行可能であり、このモジュールは、本明細書に記載の方法ステップを実行するために構成された広汎なデジタルデータ処理ハードウェアおよび/またはアナログデータ処理ハードウェアおよび/またはソフトウェアのうちのいずれかを含んでいてよい。モジュールは、任意選択手段として、このモジュールに関連付けられた適切な機械プログラミングコードを設けることによって当該ステップのうちの1つもしくは複数を実行するように適応化されたデータ処理ハードウェアを含み、2つ以上のステップ(または2つ以上のステップの一部)用のモジュールは、単一のプロセッサボードに組み込まれているかまたは広汎な任意の統合処理アーキテクチャおよび/または分散処理アーキテクチャ内のそれぞれ異なるプロセッサボードへと分離される。こうした方法およびシステムは、多くの場合に、上記の方法ステップを実行するための命令を含む機械可読コードを具現化した有形の媒体を使用している。適切な有形の媒体には、(揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリを含む)メモリ、ストレージ媒体(例えばフロッピーディスク、ハードディスク、テープなどへの磁気記録;CD、CD-R/W、CD-ROM、DVDなどの光学メモリへの記録;フラッシュドライブもしくは他の任意のデジタルストレージ媒体もしくはアナログストレージ媒体への記録)などが含まれうる。
【0066】
図面に示したもしくは上述した構成要素の異なる配置ならびに図示していないもしくは説明していない構成要素およびステップが可能である。同様に、いくつかの特徴およびサブコンビネーションが有用であり、他の特徴およびサブコンビネーションへの参照がなされなくても使用可能である。本発明の実施形態を非限定の例示目的で説明してきたが、本特許の読者にとっては代替的な実施形態も明らかであろう。特定のケースにおいて、方法のステップもしくは動作を異なる順序で実施もしくは実行することができ、または動作を追加、削除もしくは修正することができる。本発明の特定の態様では、単一の構成要素を複数の構成要素と置換して、また複数の構成要素を単一の構成要素と置換して、要素もしくは構造体を用意したりまたは所定の1つもしくは複数の機能を実行したりすることができると理解することができる。このような置換は、本発明の特定の実施形態の実施にとって有効でない場合を除き、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0067】
本発明の実施形態の図および説明は、本発明の明確な理解にとって重要な要素の説明のために簡略化されていることを理解されたい。ただし、当業者であれば、これらの要素および他の要素が望ましいものでありうることを認識するであろう。ただし、こうした構成要素は当該技術分野で良く知られており、また本発明の良好な理解の特段の助けとなるものでもないため、その構成要素の説明は本明細書では提供しない。図は、構造図面としてではなく例示の目的で提示されていることを理解されたい。省略した詳細および修正形態または代替的な実施形態は当業者の権利範囲内にある。
【0068】
本明細書に提示した各実施例は、本発明の潜在的かつ特定の実現形態を説明することを意図したものである。各実施例は、第一義的には当業者に対する本発明の説明を目的としていることを理解されたい。本発明の精神から逸脱することなく、これらの図面または本明細書に説明した動作に変更を加えることができる。
【0069】
さらに、本発明を限定するためにではなく説明する目的で本発明の特定の実施形態を本明細書に記載したが、当業者であれば、要素、ステップ、構造および/または部品の詳細、材料および配置についての多くの変更が、特許請求の範囲に記載した本発明から逸脱することなく、本発明の基本方式内かつ本発明の範囲内で実行可能であることを理解するであろう。
【0070】
本開示において論じたすべての特許、特許公報、特許出願、紀要論文、書籍、技術文献などは、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0071】
本技術は、以下の条項に従って記載されているように実現することもできる。
【0072】
条項1
顕微鏡検査のためのシステムであって、
試料を含むフローセルと、
光を放出することにより前記試料の照明を形成するように構成された発光器であって、前記照明は前記試料の像を取得するために使用される、発光器と、
前記発光器と前記フローセルとの間に配置されており、前記発光器からの光を集光するコレクタレンズと、
前記フローセルと前記コレクタレンズとの間に配置されており、前記コレクタレンズからの光を受け取って前記フローセル内の前記試料へ向けて配向するコンデンサレンズと、
アパーチャを含むアパーチャマスクであって、前記コレクタレンズからの光の少なくとも一部が前記アパーチャを通過することを可能にし、前記アパーチャは、前記試料の照明が非対称となるよう、前記アパーチャマスクに対してセンタリングされていない、アパーチャマスクと、
前記試料の照明中に前記試料の像を取得する撮像装置と、
を備えている、顕微鏡検査のためのシステム。
【0073】
条項2
前記試料は、尿試料、血液試料、脳脊髄液試料、滑液試料、漿液試料、胸腔内液試料、心膜液試料、腹膜液試料および羊水試料のうちの1つである、条項1記載のシステム。
【0074】
条項3
前記アパーチャの直径は前記試料のタイプに基づく、条項1または2記載のシステム。
【0075】
条項4
前記発光器が発光ダイオードである、条項1から3までのいずれか1つ記載のシステム。
【0076】
条項5
前記発光器がアークランプである、条項1から3までのいずれか1つ記載のシステム。
【0077】
条項6
前記発光器、前記コレクタレンズ、前記アパーチャマスク、前記コンデンサレンズおよび前記試料がそれぞれ前記撮像装置の光軸に対してセンタリングされている、条項1から5までのいずれか1つ記載のシステム。
【0078】
条項7
前記フローセル内の前記試料が運動しており、前記発光器からの照明は、取得された像における暈けを防止する光パルスである、条項1から6までのいずれか1つ記載のシステム。
【0079】
条項8
前記フローセル内の前記試料が運動しておらず、前記発光器からの照明は連続的である、条項1から6までのいずれか1つ記載のシステム。
【0080】
条項9
顕微鏡検査のためのシステムであって、
試料を含むフローセルと、
光を放出することにより前記試料の照明を形成するように構成された発光器であって、前記照明は前記試料の像を取得するために使用される、発光器と、
前記フローセルと前記発光器との間に配置されており、前記発光器からの光を集光するコレクタレンズと、
前記フローセルと前記コレクタレンズとの間に配置されており、前記コレクタレンズからの光を受け取って前記フローセル内の前記試料へ向けて配向するコンデンサレンズと、
前記試料の照明中に前記試料の像を取得する撮像装置と、
を備え、
前記試料および前記コンデンサレンズがそれぞれ、前記撮像装置の光軸に対してセンタリングされており、これにより、前記コンデンサレンズの中心からの光が傾斜なしに前記試料を照明し、前記コンデンサレンズの縁部からの光が斜めの角度で前記試料を照明し、
前記コレクタレンズは前記コンデンサレンズとは異なるサイズを有しており、前記コレクタレンズは前記撮像装置の光軸に対して同軸ではない、
システム。
【0081】
条項10
前記試料は、尿試料、血液試料、脳脊髄液試料、滑液試料、漿液試料、胸腔内液試料、心膜液試料、腹膜液試料および羊水試料のうちの1つである、条項9記載のシステム。
【0082】
条項11
前記コレクタレンズの直径は前記試料のタイプに基づく、条項9または10記載のシステム。
【0083】
条項12
前記発光器は、前記コレクタレンズに対してセンタリングされている、条項9から11までのいずれか1つ記載のシステム。
【0084】
条項13
前記発光器が発光ダイオードである、条項9から12までのいずれか1つ記載のシステム。
【0085】
条項14
前記発光器がアークランプである、条項9から13までのいずれか1つ記載のシステム。
【0086】
条項15
前記フローセル内の前記試料が運動しており、前記発光器からの照明は、取得された像における暈けを防止する光パルスである、条項9から14までのいずれか1つ記載のシステム。
【0087】
条項16
前記フローセル内の前記試料が運動しておらず、前記発光器からの照明は連続的である、条項9から14までのいずれか1つ記載のシステム。
【0088】
条項17
顕微鏡検査の方法であって、
発光器を使用してフローセル内の試料を斜めに照明することと、
前記試料が斜めに照明されているときに、像取得装置を使用して前記試料の像を取得することと、
を含む、方法。
【0089】
条項18
前記フローセル内の前記試料が運動しており、前記発光器は発光ダイオードであり、前記発光器からの照明は、取得された像における暈けを防止する光パルスである、条項17記載の方法。
【0090】
条項19
前記試料を斜めに照明することは、
前記発光器からの光をコレクタレンズによって受け取ることと、
前記像取得装置の光軸に対して同軸でないアパーチャを通過する以外のアパーチャマスクのすべての位置において前記コレクタレンズからの光を阻止することと、
コンデンサレンズにより、前記アパーチャからの光を前記試料へ向けて配向して、傾斜照明を形成することと、
を含む、条項17または18記載の方法。
【0091】
条項20
前記試料を斜めに照明することは、
前記発光器を前記像取得装置の光軸に対して同軸とならない位置に配置することと、
前記発光器の軸線に対してセンタリングされて配置されたコレクタレンズにより、前記発光器からの光を集光することと、
前記像取得装置の光軸に対してセンタリングされたコンデンサレンズにより、前記コレクタレンズからの光を前記試料へ向けて配向して、傾斜照明を形成することと、
を含む、条項17または18記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】