(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】光開始化学気相成長を使用する被覆テキスタイルの製造
(51)【国際特許分類】
D06M 15/263 20060101AFI20240528BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20240528BHJP
D06M 15/347 20060101ALI20240528BHJP
D06M 15/356 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/233
D06M15/347
D06M15/356
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567041
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022027041
(87)【国際公開番号】W WO2022232583
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324004850
【氏名又は名称】ソリヤーン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー トリシャ ライオネル
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ エイドリアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ナンディー サヤンタニ
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC03
4L033AC04
4L033CA13
4L033CA18
4L033CA30
(57)【要約】
光開始化学気相成長を使用して被覆テキスタイルを製造するためのシステムが提示される。このシステムは、処理チャンバと、紫外光の光源とを含む。処理チャンバは、透明窓と、この透明窓の下方に配置された基材ステージと、複数のポートとを含む。これらのポートは、第1の入口ポート及び第2の入口ポートを含む。第1の入口ポートは気相モノマーを処理チャンバ内に輸送し、第2の入口ポートは気相開始剤を処理チャンバ内に輸送する。処理チャンバは、上記モノマー及び上記開始剤をテキスタイル基材上に堆積させるように制御される。紫外光の光源は、上記透明窓を介して処理チャンバ内に紫外光を導入するように位置決めされる。紫外光は、モノマー及び開始剤を重合させて基材をポリマーで被覆する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光開始化学気相成長を使用して被覆テキスタイルを製造するためのシステムであって、
処理チャンバであって、
透明窓、
前記透明窓の下方に配置された基材ステージ、並びに
第1の入口ポート及び第2の入口ポートを含む複数のポート
を含み、前記第1の入口ポートは気相モノマーを前記処理チャンバ内に輸送し、前記第2の入口ポートは気相開始剤を前記処理チャンバ内に輸送し、前記処理チャンバは、前記モノマー及び前記開始剤をテキスタイル基材上に堆積させるように制御される、処理チャンバと、
紫外光の光源であって、前記光源は前記透明窓を介して前記処理チャンバ内に前記紫外光を導入するように位置決めされ、前記紫外光は前記モノマー及び前記開始剤を重合させて前記基材をポリマーで被覆する、光源と
を含むシステム。
【請求項2】
前記処理チャンバは、前記基材ステージの下方に配置されたステージチラーをさらに含み、前記ステージチラーは、前記基材を-50℃~25℃の間の選択された温度に維持するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のポートは真空ポートをさらに含み、前記真空ポートは、0.001~10Torr(約0.133~約1333Pa)の真空を維持するように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2の入口ポートはそれぞれ、0.1~10cm
3/秒の流量で構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、前記テキスタイル基材を被覆するために過酸化物の分解を含まない請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理チャンバは、前記モノマー及び前記開始剤を前記基材上に堆積させるのと同時に前記光源からの前記紫外光によって前記モノマー及び前記開始剤の重合が起こるように制御される請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記テキスタイル基材は布地を含み、前記被覆は、前記布地の少なくともいくつかの繊維の周囲に共形的に堆積される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記テキスタイル基材を被覆する前記ポリマーは、アクリレート、ポリスチレン、又はポリ(ビニル)ポリマーのうちの1つを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記光源からの前記紫外光は、390ナノメートル以下の波長を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記テキスタイル基材を被覆する前記ポリマーはpドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
光開始化学気相成長を使用して被覆テキスタイルを製造するためのシステムであって、
処理チャンバであって、
透明窓、
前記透明窓の下方に配置された基材ステージ、
前記基材ステージの下方に配置されたステージチラー、並びに
第1の入口ポート、第2の入口ポート及び真空ポートを含む複数のポートであって、前記第1の入口ポートは気相モノマーを前記処理チャンバ内に輸送し、前記第2の入口ポートは気相開始剤を前記処理チャンバ内に輸送する、複数のポート
を含む処理チャンバと、
紫外光の光源であって、前記光源は、前記透明窓を介して前記処理チャンバ内に前記紫外光を導入するように位置決めされ、前記紫外光は、前記モノマー及び前記開始剤を重合させて前記基材をポリマーで被覆する、光源と、
前記モノマー及び前記開始剤を前記基材上に堆積させるのと同時に前記光源からの前記紫外光によって前記モノマー及び前記開始剤の重合が起こるように構成されている制御装置と
を含むシステム。
【請求項12】
前記ステージチラーは、前記基材を-50℃~25℃の間の選択された温度に維持するように構成されている請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記真空ポートは、0.001~10Torr(約0.133~約1333Pa)の真空を維持するように構成されている請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1及び第2の入口ポートはそれぞれ、0.1~10cm
3/秒の流量で構成される請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、前記テキスタイル基材を被覆するために過酸化物の分解を含まない請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記テキスタイル基材は布地を含み、前記被覆は、前記布地の少なくともいくつかの繊維の周囲に共形的に堆積される請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記テキスタイル基材を被覆する前記ポリマーは、アクリレート、ポリスチレン、又はポリ(ビニル)ポリマーのうちの1つを含む請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記光源からの前記紫外光は、390ナノメートル以下の波長を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記テキスタイル基材を被覆する前記ポリマーはpドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含む請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月29日出願の米国仮出願第63/181,466号の利益を主張する。この米国仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、概して、糸、繊維及び布地を含む被覆テキスタイルの分野に、より詳細には、光開始化学気相成長を使用する被覆テキスタイルの製造に向けられる。
【背景技術】
【0003】
繊維、糸(ヤーン)、及び布地等のテキスタイル(繊維製品)を製造するための従来のプロセスは、溶媒ベースである。これらのプロセスでは、原材料又は部分的に仕上げられた繊維及び糸を染料で着色し、色堅牢度、感触等について処理することができる。従来のプロセスでは、加工される物品は、溶媒中に処理化学物質、界面活性剤、乳化剤、及び潤滑剤を含有するバットに導入される。加工後、過剰の化学物質が廃棄され、これは汚染された河川及び地下水につながる。そのようなプロセスの環境影響は重大であるが、これらの従来の技術は、従来の繊維及び布地の高スループット生産を提供するため、広く使用されている。
【0004】
従来のプロセスの環境影響に加えて、これらのプロセスは、必然的に界面活性剤、乳化剤又は潤滑剤の一部が最終製品中に残るので、低アレルギー性のテキスタイルを製造するのにも不適切である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、当該分野において、溶媒を使わず、アレルゲンを含まない製品をもたらすプロセスを含む、糸、繊維及び布地等のテキスタイルを製造するための改善されたプロセスの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それゆえ、1つの実施形態では、光開始化学気相成長を使用して被覆テキスタイルを製造するためのシステムが提示される。このシステムは、処理チャンバと、紫外線(UV)光の光源とを含む。処理チャンバは、透明窓と、この透明窓の下方に配置された基材ステージと、複数のポートとを含む。これらのポートは、第1の入口ポート及び第2の入口ポートを含む。第1の入口ポートは、気相モノマーを処理チャンバ内に輸送し、第2の入口ポートは、気相開始剤を処理チャンバ内に輸送する。処理チャンバは、モノマー及び開始剤をテキスタイル基材上に堆積させるように制御される。紫外光の光源は、上記透明窓を介して処理チャンバ内に紫外光を導入するように位置決めされる。紫外線は開始剤を光励起し、その開始剤はその励起状態エネルギーをモノマーに伝達し、モノマーを重合させて基材をポリマーで被覆(コーティング)する。
【0007】
別の実施形態では、光開始化学気相成長を使用して被覆テキスタイルを製造するためのシステムが提示される。このシステムは、処理チャンバと、紫外光の光源と、制御装置とを含む。処理チャンバは、透明窓と、透明窓の下方に配置された基材ステージと、基材ステージの下方に配置されたステージチラーと、複数のポートとを含む。これらのポートは、第1の入口ポートと、第2の入口ポートと、真空ポートとを含み、第1の入口ポートは、気相モノマーを処理チャンバ内に輸送し、第2の入口ポートは、気相開始剤を処理チャンバ内に輸送する。5種までの他の気相コモノマーのための追加の入口ポートも存在することができる。上記光源は、上記透明窓を介して処理チャンバ内に紫外光を導入するように位置決めされる。紫外線は開始剤を光励起し、その開始剤はその励起状態エネルギーをモノマーに伝達し、モノマーを重合させて基材をポリマーで被覆する。上記制御装置は、モノマー及び開始剤を基材上に堆積させるのと同時に光源からの紫外光によってそれらの重合が起こるように構成されている。
【0008】
上記の実施形態は例示にすぎない。本明細書に記載される他の実施形態は、開示される主題の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の特徴を理解することができるように、特定の実施形態を参照することによって、詳細な説明がなされてもよく、実施形態のいくつかは添付の図面に示されている。しかしながら、図面は特定の実施形態のみを示し、それゆえ、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことに留意されたい。というのも、開示される主題の範囲は他の実施形態も同様に包含するためである。図面は必ずしも縮尺通りではなく、概して、特定の実施形態の特徴を例示すことに重点が置かれている。図面において、同様の数字は、様々な図を通して同様の部分を示すために使用される。
【0010】
【
図1A】
図1Aは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る被覆チャンバの一実施形態を描く。
【
図1B】
図1B~
図1Eは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る気化物質送達システムの一実施形態を描く。
【
図1C】
図1B~
図1Eは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る気化物質送達システムの一実施形態を描く。
【
図1D】
図1B~
図1Eは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る気化物質送達システムの一実施形態を描く。
【
図1E】
図1B~
図1Eは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る気化物質送達システムの一実施形態を描く。
【
図1F】
図1F及び
図1Gは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る気化物質送達システムの一実施形態を描く。
【
図1G】
図1F及び
図1Gは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る気化物質送達システムの一実施形態を描く。
【
図3A】
図3A及び
図3Bは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る、テキスタイルの共形性(コンフォーマル、形状適応性)被覆を描く。
【
図3B】
図3A及び
図3Bは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る、テキスタイルの共形性被覆を描く。
【
図4A】
図4A~4Dは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る光開始化学気相成長反応を描く。
【
図4B】
図4A~4Dは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る光開始化学気相成長反応を描く。
【
図4C】
図4A~4Dは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る光開始化学気相成長反応を描く。
【
図4D】
図4A~4Dは、本明細書に記載される1つ以上の態様に係る光開始化学気相成長反応を描く。
【0011】
対応する参照符号は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書に記載される実施例は、いくつかの実施形態を例示するが、いかなる様式でも範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、テキスタイル及びプラスチックを含む平坦でパターン化された基材上にポリマー膜を生成する、単一工程の高スループット(1~100ft(約0.30m~約30.48m)/分)の光開始化学気相成長(PI-CVD)プロセスに関する。この二成分プロセスは、UV-C光によって開始される低真空圧(0.001~10Torr(約0.133~約1333Pa))下での化学気化物質(vapor)の導入直後に進行して、ポリ(アクリレート)、ポリ(スチレン)、及びポリ(ビニルエーテル)ポリマーを形成する。これらの被覆は、界面グラフト化、耐摩耗性、及び洗浄安定性の増加によって増強された機械的堅牢性を有する。ゼロ廃水及び非常にわずかな有害廃棄物しか製造中に生成されない。本技術は、防水被覆、抗ウイルス被覆、導電性被覆、又は必要とされる任意の他の被覆でテキスタイルを被覆するために使用されてもよい。
【0013】
有利には、本技術は、乳化剤又は界面活性剤、又はいずれの溶媒も必要とせず、廃水発生がない。具体的には、共役ポリマー生成を含むこれらの技術は、溶媒和シェル、非混和性、溶媒-基材相互作用、又は成長するポリマー鎖の溶解度に関する懸念を排除する。成長膜の膜厚及びナノ構造のリアルタイム制御は、モノマー及び開始剤の流量を制御することによって容易に達成することができる。
【0014】
本開示の利点は、簡潔さも含む。当該プロセスは、従来のプロセスと比較して界面活性剤及び乳化剤を使用しない。さらに、キャリアガスは不要である。1つの例では、光の導入は、フィラメントヒータ(フィラメント配線、ハーネス、及び電源を必要とする)よりも動作、固定、及び設計が簡単である。
【0015】
多数の反応器構造(幾何学形状)が、本技術において採用されてもよい。例えば、反応器の形状は、正方形、円形等であってもよい。全体的な寸法は、例えば10×10×10インチ(約25.4×約25.4×約25.4cm)から250×250×250インチ(約635×約635×約635cm)の間の目的を含む、必要な任意のサイズとすることができる。
【0016】
図1Aは、被覆処理チャンバ100及び光源150を含むシステムの一実施形態を描く。処理チャンバ100は、透明窓110と、透明窓110の下方に配置された基材ステージ120と、基材ステージ120の下方に配置されたステージチラー(stage chiller)130と、複数のポート142~146とを含む。ポート142~146は、第1の入口ポート142と、第2の入口ポート144と、真空ポート146とを含む。第1の入口ポート142は、気相モノマーを処理チャンバ内に輸送する。第2の入口ポート144は、気相開始剤を処理チャンバ内に輸送する。5種までの気相コモノマーを処理チャンバ内に輸送するための5つ以上の入口ポートも存在してもよい。
【0017】
光源150は、紫外光(波長<390nm)の光源である。
図1Aに示すように、光源150は、透明窓110を介して処理チャンバ100内に紫外光を導入するように位置決めされる。UV光の導入後、UV光はモノマー及び開始剤を重合させて、基材125をポリマーで被覆する。反応は
図4A~4Dに描かれている。反応速度に起因して、1~100ft(約0.30m~約30.48m)/分のスループット速度が達成されている。
【0018】
加えて、モノマー及び開始剤の基材125上への堆積が光源150からの紫外光によるそれらの重合と同時であるように、制御装置(図示せず)を用いて、その堆積を制御してもよい。
【0019】
1つの実施形態では、ステージチラー130は、基材を-50℃~25℃の間の選択された温度に維持するように構成される。別の実施形態では、真空ポート146は、0.001~10Torr(約0.133~約1333Pa)の真空を維持するように構成される。さらなる実施形態では、第1の入口ポート142及び第2の入口ポート144はそれぞれ、0.1~10cm3/秒の流量で構成される。1つの実施形態では、第1の入口ポート142は、第2の入口ポート144に直交する。任意選択で、追加の入口ポート、例えば、2~8個の追加の入口ポートが、互いに0~360°の間の角度で位置決めされてもよい。
【0020】
1つの実施形態では、モノマー及び開始剤を含む試薬は、気化物質送達システム160を介して送達される。気化物質送達システム160は、
図1B~
図1Dに描かれるように、複数のパイプ166を含む。1つの実施形態では、モノマー、開始剤及び/又は他の試薬は、入口161及び162を介して気化物質送達システム160に入る。別の実施形態では、パイプ166は、Lコネクタ163、Tコネクタ164、及びXコネクタ165等のコネクタを使用して連結される。任意選択で、入口161及び/又は162は、例えば、
図1Cに示されるように、キャップ167を使用して、密閉されてもよい。
【0021】
図1Dは、気化物質送達システム160の拡大図であり、気化物質が処理チャンバ100内に出る際に通るパイプ166内の穴168を示す。穴168は、
図1Eの気化物質送達システム160の拡大図にも示されている。さらなる実施形態では、気化物質送達システム160は、1つ以上のパイプ166の周囲に巻着される加熱要素169、例えば抵抗加熱テープを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、気化物質送達システム170は、
図1Fに示すように、入口穴171及び出口穴178を含む基材プラットフォームを含む。
図1Gは、入口穴171からチャネル176を通って出口穴178(
図1F)に到達する経路を示す気化物質送達システム170の断面図である。
【0023】
有利には、このシステムは、新規な光開始重合プロセスに起因して、テキスタイル基材を被覆するために過酸化物の分解を含まず、又は必要としない。1つの実施形態では、テキスタイル基材125を被覆するポリマーは、ポリ(アクリレート)、ポリ(スチレン)、又はポリ(ビニルエーテル)ポリマーのうちの1つを含む。別の実施形態では、光源150からの紫外光は、390ナノメートル以下の波長を含む。別の実施形態では、テキスタイル基材125を被覆するポリマーは、pドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含む。
【0024】
この技術の以下の適用は、本開示の範囲内にある。
【0025】
耐水性被覆(コーティング) - テキスタイルを湿潤及び吸水から保護する被覆。
【0026】
PFCを含まない耐水性被覆:パーフルオロ化(全フッ素置換)化合物を含有しない防水被覆。
【0027】
防汚被覆:塵、血液、油、及び他の保護困難な物質による汚れからテキスタイルを保護する被覆。
【0028】
SFM(Spatial fluid management、空間流体管理):疎水性チャネルと親水性チャネルとの組み合わせを使用して流体をテキスタイル全体に向け直す被覆。
【0029】
抗菌被覆:基材の表面上の微生物を能動的に死滅させる被覆。
【0030】
防食膜:塩への曝露時に酸化又は腐食から基材を保護する被覆。
【0031】
次に
図2A及び
図2Bを参照すると、従来の被覆は、基材の周囲に非柔軟(可撓)性シェルを作り出し(
図2A)、これは着用可能な衣類に必要とされる柔軟性に寄与しないという点で、従来技術の限界は明らかである。
図2Bは、
図2Aに描かれる非柔軟性シェル内に埋め込まれた基材繊維を示す。
【0032】
対照的に、
図3A及び
図3Bに示すように、テキスタイル基材125は布地を含み、被覆は、布地の少なくともいくつかの繊維の周囲に共形的に堆積される。ここで、新規な被覆のいくつかの特性を説明する。
図3A及び
図3Bと
図2A及び
図2Bとの差異に留意されたい。1つの実施形態では、被覆(コーティング)は、
図3Aに示す概略図に描かれるもの等のポリマーを含む。
図3Bは、
図3Aのポリマーの繊維表面への化学的グラフト化を示す。
図3Bに示される被覆は、
図2A及び2Bに示されるような嵩高い形態で表面上に位置する被覆層よりも優れた特性を発揮する。
【0033】
次に
図4A及び
図4Bを参照すると、光開始剤及び共開始剤の一般的な構造が、その直下の重合の一般的なプロセスとともに示されている。ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(アクリレート)及びポリ(スチレン)の3つの構造が示され、続いてR2及びR3の許容できる基が示されている。
【0034】
別の実施形態では、
図4C及び4Dに示すように、重合プロセスに共開始剤は含まれない。光開始剤の一般的な構造が、その直下の重合の一般的なプロセスとともに示されている。ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(アクリレート)及びポリ(スチレン)の3つの構造が示され、続いてR2及びR3の許容できる基が示されている。
【0035】
堆積プロセスの間、被覆は、成長する膜と基材との間の多量の界面グラフト化-共有結合を含む、大きい有効性を有する。さらに、被覆の共形性に少なくとも部分的に起因して、高い耐摩耗性及び増加した洗浄安定性がある。
【0036】
第1に、被覆を形成するために溶媒を必要としないので、防水又は防油用途のための完全にフッ素を含まない被覆を得ることができる。本出願人は、本技術を用いて形成された被覆が高い接触角を有することを認めた。接触角は、被覆の疎外性を定量化するために使用される測定基準である。例えば、油又は水のいずれかの液滴を表面に置き、その液滴を側面から見ることによって表面法線に対する液滴の角度を計算する試験を行う。この接触角の値が高いほど、表面はその液滴に対してより疎外性である。油滴に対する高い接触角は防油性表面を示し、水滴に対する高い接触角は防水性材料を示す。従来の技術は、防油/防水表面のためのフッ素化又はパーフルオロ化した材料の使用(スプレー、電着、メルト等)を必要とする。対照的に、本PFCフリー処方は、撥水性(130°~180°の間の水接触角)、撥油性(80°~150°の間の油接触角)を生じ、かつ高度にテクスチャード加工された表面上のテキスタイルの元の多孔性を維持しながら吸水性を減少させる(非被覆物と比較して200倍少ない)グラフト化炭化水素ポリマー被覆である。当該被覆は、PFCを完全に含まず、市販の化学物質で作られた二成分のモノマー及び開始剤の配合物から構成される。この配合物は、環境への影響が低く、廃水をゼロにし、溶媒を含まない。
【0037】
次に、1つの実施形態の具体的な作業実施例が論じられる。
【実施例】
【0038】
工程1:試料ステージに布地を装填し、布地がステージと密接かつ均一に物理的に接触することを確実にする。
【0039】
工程2:すべての弁を閉じ、ポンプをオンにし、ポンプ弁を完全に開く。
【0040】
工程3:5重量%の熱重合阻害剤で安定化した3mLのモノマーをSwagelok(スウェージロック)ステンレス鋼アンプルに加える。
【0041】
工程4:2.7mLの光開始剤及び0.3mLのα-ハロエステルをSwagelokステンレス鋼アンプルに加える。
【0042】
工程5:自在スパナを用いてSwagelokアンプルを、アンプルが旋回しなくなるまでチャンバポートにねじ込む。
【0043】
工程6:100mTorr(約13.3Pa)未満のベース圧力が達成されると、ステージチラーをオンにし、ステージチラーを0℃未満に到達させる。
【0044】
工程7:ニードルバルブダイヤルをわずか1/8回転させることによって、開始剤アンプルを排出(vent)する。圧力が約20~30mTorr(約2.7~約4.0Pa)/チューブだけ増加し、次いでベース圧力に戻ると、排出が行われる。
【0045】
工程8:もしあれば、漏れを検出する。圧力が上昇し続けると、配管のどこかに漏れがある。漏れは、真空弁が閉鎖され、ニードルバルブが開放されている間に圧力を監視することによってチェックすることができる。
【0046】
工程9:排出した後、ヒートラップ(heat wrap)を配管に巻き付ける。熱電対及び入口の巻き付けを二重チェックする。
【0047】
工程10:ニードルバルブを閉じ、熱テープを稼働させ(plug in)、正しい温度まで加熱する:モノマー:120℃;開始剤:120℃。
【0048】
工程11:開始剤の加熱を開始する。加熱されると、モノマーの加熱を開始する。モノマー及び開始剤がそれらの温度に達したら、タイマーを10分間設定し、熱平衡に到達させる。ステージ温度は0℃未満であるべきである。
【0049】
工程12:真空バルブを閉じる。
【0050】
工程13:堆積:チャンバの上部にUVランプボックスを置き、そのUVランプをオンにする。
【0051】
工程14:開始剤バルブを最初に1/8回転までゆっくりと開け、30秒後にモノマーバルブを1/8回転まで開ける。QCM速度は、各バルブが開かれた後に少なくとも5オングストローム(0.5nm)/秒までジャンプすべきである。
【0052】
工程15:タイマーを30分間設定する。この30分間の後、堆積が完了する。
【0053】
工程16:堆積後:堆積時間に達すると、ポンプの開放を0%に設定し、ヒートラップを外し、熱電対を除去する。
【0054】
工程17:モノマー及び開始剤のバルブを閉じる。
【0055】
工程18:UVランプをオフにする。
【0056】
工程19:ヒートラップの電源をオフにし、それらをSwagelokステンレス鋼バイアルから切り離す。
【0057】
工程20:モノマー及び開始剤を30℃に冷却した後に、残りのモノマー及び開始剤を測定する。
【0058】
工程21:最終圧力及び膜厚を記録する。ブランクバルブを開いてチャンバを大気に戻す。
【0059】
さらなる詳細は、2019年7月25日に公開された、発明の名称「Electrically-heated fiber,fabric,or textile for heated apparel」の米国特許出願公開第2019/0230745A1号明細書(Andrew、Zhang及びBaima)、及び2018年9月20日に公開された、発明の名称「Polymeric capacitors for energy storage devices,method of manufacture thereof and articles comprising the same」の米国特許出願公開第2018/0269006A1号明細書(Andrew及びZhang)に見出すことができる。これらの文献は、それぞれ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】