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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】レーザ焼鈍のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20240528BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/268 J
H01L21/268 F
H01S3/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567968
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022060723
(87)【国際公開番号】W WO2022233599
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,273
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/251,174
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514323268
【氏名又は名称】コヒーレント レーザーシステムズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン デア ヴィルト, パウル
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AD06
5F172AF02
5F172AF06
5F172NN11
(57)【要約】
基板(24)上の層(22)が、均一な直線ビーム(20)に形成される複数のレーザビーム(14A-14D)内のパルスによってレーザ焼鈍される。レーザビーム(14A-14D)は、ビームの第1のセット(14A、14D)およびビームの第2のセット(14B、14C)に仕切られる。ビームの第2のセット(14B、14C)は、組み合わせられた全てのビーム(14A-14D)よりも小さい角度範囲から層(22)の上に入射される。ビーム(14A-14D)内のパルスは、ビームの第1のセット(14A、14D)内のパルスが、ビームの第2のセット(14B、14C)内のパルスの前に、層(22)上に入射されるように同期される。ビームの第1のセット(14A、14D)内のパルスは、層を融解し、ビームの第2のセット(14B、14C)内のパルスは、融解を持続させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の層を焼鈍するための方法であって、
複数のパルス式レーザビームを提供するステップであって、前記レーザビームは、レーザパルスの第1のセットを有するレーザビームの第1のセットと、レーザパルスの第2のセットを有するレーザビームの第2のセットとに分割される、ステップと、
前記レーザビームを直線ビームに形成するステップであって、前記直線ビームは、長寸法と、直交する短寸法とを有し、前記直線ビームは、前記長寸法に沿って均一な強度分布を有し、前記直線ビームの前記長寸法に沿った各場所は、前記レーザビームの全てのものによって照明される、ステップと、
前記直線ビームを用いて前記層を照明するステップであって、前記レーザビームの第2のセットは、組み合わせられた全ての前記レーザビームよりも小さい角度範囲から前記層上に入射される、ステップと、
前記レーザパルスの第1のセットが、前記レーザパルスの第2のセットの前に、前記層上に入射されるように、前記レーザビーム内のパルスを同期させるステップであって、前記レーザビームの第1のセット内の前記パルスは、前記直線ビームによって照明される前記層内の材料を融解し、前記レーザビームの第2のセット内の前記パルスは、前記融解された材料が凝固する前に、前記層上に入射される、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記層は、多結晶質シリコンの中への前記焼鈍することによって変形される、非晶質シリコンから作製される、請求項1に記載の焼鈍するための方法。
【請求項3】
前記レーザビームの第1および第2のセット内の順次パルスが、部分的に重複し、順次パルス間の時間的分離が、等しく、それによって、前記層が前記直線ビームによって持続的に照明される時間を延長する、請求項1または請求項2に記載の焼鈍するための方法。
【請求項4】
前記レーザパルスの第1のセットが、同時に前記層上に入射され、前記パルスの第1のセットおよび前記パルスの第2のセットは、遅延時間ΔTだけ分離され、前記レーザパルスの第2のセットは、同時に前記層上に入射される、先行する請求項のいずれかに記載の焼鈍するための方法。
【請求項5】
前記パルスの第1のセットは、時間δtだけ互いに分離され、前記パルスの第1のセットおよび前記パルスの第2のセットは、遅延時間ΔTだけ分離され、前記パルスの第2のセットは、前記時間δtだけ互いに分離される、先行する請求項のいずれかに記載の焼鈍するための方法。
【請求項6】
ΔT≧2δtである、請求項5に記載の焼鈍するための方法。
【請求項7】
前記遅延時間ΔTは、20~120ナノ秒の範囲内にあり、前記時間δtは、0~60ナノ秒の範囲内にある、請求項5に記載の焼鈍するための方法。
【請求項8】
前記パルスの第1のセットは、同時に前記層上に入射され、前記パルスの第1のセットおよび前記パルスの第2のセットは、遅延時間ΔTだけ分離され、前記パルスの第2のセットは、時間δtだけ互いに分離される、先行する請求項のいずれかに記載の焼鈍するための方法。
【請求項9】
ΔT=1.3δtである、請求項8に記載の焼鈍するための方法。
【請求項10】
前記遅延時間ΔTは、20~120ナノ秒の範囲内にあり、前記時間δtは、0~60ナノ秒の範囲内にある、請求項8に記載の焼鈍するための方法。
【請求項11】
前記レーザビームの第1のセットは、前記直線ビームの中心軸に対して第1の角度範囲α内で、前記層上に入射され、前記レーザビームの第2のセットは、前記中心軸に対して第2の角度範囲α内で、前記層上に入射され、前記第2の角度範囲αは、前記第1の角度範囲αよりも前記中心軸に近い、先行する請求項のいずれかに記載の焼鈍するための方法。
【請求項12】
前記第1の角度範囲αは、1°~9°の範囲内にあり、前記第2の角度範囲αは、0°~3°の範囲内にある、請求項11に記載の焼鈍するための方法。
【請求項13】
前記中心軸は、前記長寸法において、前記層に対して直角である、請求項11または請求項12に記載の焼鈍するための方法。
【請求項14】
前記レーザビームの第2のセットは、前記レーザビームの第1のセットよりも小さい前記層上の入射角を有する、請求項11または請求項12に記載の焼鈍するための方法。
【請求項15】
前記中心軸は、前記短寸法において、前記層の法線に対して、4°~12°の範囲内のある角度θだけ傾動される、請求項11に記載の焼鈍するための方法。
【請求項16】
前記レーザビームの第2のセットは、偏光されていない、先行する請求項のいずれかに記載の焼鈍するための方法。
【請求項17】
前記レーザビームの第1および第2のセットは、355ナノメートルの波長を有し、前記レーザパルスの第1および第2のセットは、20~30ナノ秒の範囲内のパルス持続時間を有する、先行する請求項のいずれかに記載の焼鈍するための方法。
【請求項18】
基板上の層を焼鈍するための光学装置であって、
複数のパルス式レーザ源であって、そのそれぞれが、パルス式レーザビームを提供する、複数のパルス式レーザ源と、
ビームホモジナイザであって、前記ビームホモジナイザは、長軸と、直交する短軸とを有し、前記レーザビームは、前記ビームホモジナイザの中に指向され、それを通して透過され、前記指向されたレーザビームは、前記ビームホモジナイザの前記長軸に沿って直列的に配列され、レーザビームの第1のセットおよびレーザビームの第2のセットに分割される、ビームホモジナイザと、
前記ビームホモジナイザと前記層との間に直列的に配列される複数のレンズを含む、ビームプロジェクタであって、前記ビームプロジェクタは、前記ビームホモジナイザを通して透過される前記レーザビームをインターセプトするように配列され、前記ビームホモジナイザおよび前記ビームプロジェクタは、協働して、前記レーザビームを前記層を照明する直線ビームに形成し、前記直線ビームは、長寸法と、直交する短寸法とを有し、前記直線ビームの前記長寸法に沿った各場所は、前記レーザビームの全てのものによって照明される、ビームプロジェクタと、
前記レーザビーム内のパルスを同期させるためのコントローラと
を備え、
前記レーザビームの第2のセットは、組み合わせられた全ての前記レーザビームよりも小さい角度範囲から前記層上に入射され、
前記コントローラは、前記レーザビームの第1のセット内のパルスが、前記レーザビームの第2のセット内の前記パルスの前に、前記層上に入射され、前記レーザビームの第1のセット内の前記パルスが、前記直線ビームによって照明される前記層内の材料を融解し、前記レーザビームの第2のセット内の前記パルスが、前記融解された材料が凝固する前に、前記層上に入射されるように、前記レーザビーム内のパルスを同期させる、光学装置。
【請求項19】
基板上の層を焼鈍するための光学装置であって、
複数のパルス式レーザ源であって、そのそれぞれが、パルス式レーザビームを提供する、複数のパルス式レーザ源と、
ビームホモジナイザであって、前記レーザビームは、前記ビームホモジナイザの中に指向され、それを通して透過される、ビームホモジナイザと、
前記ビームホモジナイザと前記層との間に直列的に配列される、少なくとも2つの正のレンズを含む、ビームプロジェクタであって、前記ビームプロジェクタは、前記ビームホモジナイザを通して透過される前記レーザビームをインターセプトするように配列され、前記ビームホモジナイザおよび前記ビームプロジェクタは、協働して、前記レーザビームを前記層を照明する直線ビームに形成し、前記直線ビームは、長寸法と、直交する短寸法とを有し、前記直線ビームの前記長寸法に沿った各場所は、前記レーザビームの全てのものによって照明され、前記レーザビームは、集合的に、前記直線ビーム内の場所の上に、入射角の範囲αに跨がる、ビームプロジェクタと、
前記レーザビーム内のパルスを同期させるためのコントローラと
を備え、
前記コントローラは、少なくとも1つのレーザビーム内のパルスが、全て他のレーザビーム内のパルスよりも後に、前記層を照明するように前記レーザビーム内のパルスを同期させ、前記少なくとも1つのレーザビームは、0.5αよりも小さい入射角の範囲に跨がる、光学装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのレーザビームは、0.25αよりも小さい入射角の範囲に跨がる、請求項19に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本願は、それらの開示が、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、2021年5月6日に出願された、米国仮出願第63/185,273号、および2021年10月1日に出願された、米国仮出願第63/251,174号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、直線ビームの中に投影される紫外線レーザ放射を使用した非晶質シリコン層の焼鈍に関する。本発明は、特に、投影された直線ビームが、異なる入射角において非晶質シリコン層に送達される、時間的に分離されたパルスに仕切られる、焼鈍に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術の議論)
レーザシリコン焼鈍は、高分解能アクティブマトリクス液晶ディスプレイ(AMLCD)およびアクティブマトリクス有機発光ダイオード(AMOLED)ディスプレイの生産における重要な処理ステップである。ガラス基板上の薄い非晶質シリコン層が、パルス式紫外線レーザビームによって融解され、冷却されながら結晶化する。多結晶質シリコン層は、半導体基部となり、この上に薄膜トランジスタ(TFT)および他の電子回路が、従来のリソグラフィックプロセスによって形成される。焼鈍ステップの間、基板およびその上のシリコン層は、「パネル」の形態にあり、これは、後に、消費者の電子デバイス内で使用されるもの等のより小型の個々のディスプレイに分割され得る。
【0004】
レーザシリコン焼鈍は、繊細なプロセスであり、レーザ処理の間、パネルの幅を横断して最適なエネルギー密度を維持することが、不可欠である。レーザビームは、パネルの上に投影される、細長い「直線ビーム」に成形される。直線ビームは、パネルの全幅に跨がる長軸および直交する短軸によって特徴付けられる。直線ビームは、パネルの幅に沿って均一または「フラットトップ」な強度分布を有する。各パネルは、パネルの長さに沿って短軸方向において走査される。走査速度は、所望の多結晶質微小構造が取得されるまで、パネル上の各場所において、シリコンを繰り返し融解し、焼鈍するように選択される。約20回の連続レーザパルスによる照射が、典型的である。各場所を複数のレーザパルスに露光させることはまた、パルス間の平均化も提供する。
【0005】
理想的な微小構造では、結晶粒塊は、均一なサイズおよび配向を有し、使用可能なパネルの生産量に悪影響を及ぼし得る欠陥の最小限の密度を伴う。直線ビームに対する露光の間の干渉効果は、これらの結晶粒塊を優先的に配向し、焼鈍されたシリコンの表面において「リップル」を生産する。焼鈍されたシリコン層の品質は、斜角における焼鈍されたシリコンの照明によって査定され、リップルによって引き起こされる回折を観察することができる。直線ビームの長軸に沿った強度における不均一性は、「走査ムラ」として公知である、短軸に沿って整合される縞模様を生産する。強度における時間的変動は、「ショットムラ」として公知である、長軸に沿って整合される縞模様を生産する。シリコン再結晶の特性評価のための方法が、米国特許第9,335,276号および米国特許公開第2013/0341310号(それぞれが、本発明の譲受人に譲渡され、それぞれの完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されている。これらの方法は、プロセスをリアルタイムに調節するために、レーザ焼鈍の間に適用されることができる。
【0006】
エキシマレーザは、レーザシリコン焼鈍にとって有利に働き、これは、約1%RMSよりも小さい低パルスエネルギーノイズと、紫外線波長とを有する、安定したレーザビームを要求する。例えば、193ナノメートル(nm)のレーザビームを発生させるフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ、または351nmのレーザビームを発生させるフッ化キセノン(XeF)エキシマレーザがある。最も強力な最先端技術の産業用エキシマレーザは、塩化キセノン(XeCl)を使用し、308nmのレーザビームを発生させ、最大600ヘルツのパルス反復率において、最大1ジュールのパルスエネルギーを有する。例えば、Coherent Inc.(Santa Clara,California)製のLambda SXエキシマレーザがある。これらの産業用エキシマレーザは、1億パルスを上回って持続的に動作しながら、非常に安定したパルスエネルギーおよびビームパラメータを維持することができる。さらにより大きいパルスエネルギーを要求する用途では、2つ以上のエキシマレーザの出力は、ビーム混合光学系によって、かつパルス送達の同期によって組み合わせられることができる。そのようなビーム混合および同期は、それぞれ、米国特許第7,408,714号および第8,238,400号(それぞれが、本発明の譲受人に譲渡され、それぞれの完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されている。
【0007】
レーザビームを均一な直線ビームに成形するための方法および装置が、米国特許第7,265,908号、第7,428,039号、および第7,615,722号(そのそれぞれが、共同所有されており、それぞれの完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されている。これらの方法は、ビーム均質化を組み込み、それによって、1つ以上の源からのレーザビームが、空間的に仕切られ、仕切られたビームが、シリコン層の上にオーバーレイされ、投影される。例えば、10~30個の仕切られたビームが、オーバーレイされ、投影され、それぞれが、短軸において約0.4mm、長軸において750mm~1,500mmの寸法を有する。ビーム均質化装置は、1つまたは2つの「微小レンズアレイ」を含み、入射ビームよりもはるかに小さい、複数の個別の「微小レンズ」を備える。各微小レンズは、オーバーレイされたビーム全体に寄与する、照明源になる。付加的な光学系が、微小レンズから出現する全てのビームを収集し、それらを均一な直線ビームに成形する。
【0008】
さらに最近では、所望の品質を伴うパネルを生産するために、レーザシリコン焼鈍が可能である、紫外線ダイオード圧送型固体レーザが、開示された。本固体レーザは、米国特許公開第2020/0235544号(共同所有されており、その完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されている。固体レーザは、エキシマレーザよりも低い資本コストおよび低い動作コストという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第9,335,276号公報
【特許文献2】米国特許公開第2013/0341310号公報
【特許文献3】米国特許第7,408,714号公報
【特許文献4】米国特許第8,238,400号公報
【特許文献5】米国特許第7,265,908号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要約)
エキシマレーザ内の利得媒質は、流動ガスと加圧ガスの混合物であり、これは、典型的には、希ガスと、ハロゲン化物ガスと、緩衝ガスとを含む。ガス混合物は、ガス放電において、短電流パルスによって励起され、励振された弱結合二量体を発生させる。例えば、308nmにおけるレーザ線を有する、塩化キセノン二量体がある。エキシマレーザによって送達されるレーザパルスは、典型的には、2つの時間的ピークを備え、異なる振幅を有し、数十ナノ秒(ns)の全体的なパルス持続時間を伴う。50ns~70nsのパルス持続時間は、シリコンレーザ焼鈍において使用されるエキシマレーザに関して典型的である。パルス持続時間は、リップル形成率に影響を及ぼす。全体的なパルス持続時間が、あまりにも短い場合、走査速度は、低減される必要があり、処理時間は、増加するであろう。パネルに送達されるパルスの持続時間は、光学遅延を追加することによって、または同期された複数のエキシマレーザ共振器を使用し、時間的に分離されたパルスを送達することによって延長され得る。
【0011】
前述のダイオード圧送型固体レーザ内の利得媒質は、約1ミクロン(μm)の赤外線波長における光学的利得を有する、ネオジム(Nd3+)またはイッテルビウム(Yb3+)ドープ型酸化物結晶である。レーザパルスは、レーザ共振器のQ切替動作によって生産され、光学的に非線形な結晶内で紫外線波長に周波数変換される。本固体レーザによって送達されるレーザパルスは、数十ナノ秒のパルス持続時間を有する。Nd3+:YAG利得結晶を有する例示的レーザは、2つのLBO結晶内で、周波数の3倍化を行うことによって、355nmにおけるレーザビームを生産した。パルス持続時間は、レーザ共振器が、最高出力電力に対して最適化されたとき、25nsであった。
【0012】
エキシマレーザによって現在のところ提供される高品質な微小構造を伴う多結晶質シリコンを形成するために、それらの資本コストおよび動作コストの利点を伴う、固体レーザを利用するレーザ焼鈍装置および方法に対する必要性が存在する。好ましくは、これらのレーザ焼鈍装置および方法は、均一な粒塊サイズおよび配向という理想にさらにより近く、かつより少ない欠陥を伴う微小構造を形成するであろう。
【0013】
一側面では、本発明による基板上の層を焼鈍するための方法が、開示される。複数のパルス式レーザビームが、提供され、レーザパルスの第1のセットを有するレーザビームの第1のセットと、レーザパルスの第2のセットを有するレーザビームの第2のセットとに分割される。レーザビームは、直線ビームに形成される。直線ビームは、長寸法と、直交する短寸法と、長寸法に沿って均一な強度分布とを有する。直線ビームの長寸法に沿った各場所は、レーザビームの全てのものによって照明される。層は、直線ビームを用いて照明される。レーザビームの第2のセットは、組み合わせられた全てのレーザビームよりも小さい角度範囲から層上に入射される。レーザビーム内のパルスは、レーザパルスの第1のセットが、レーザパルスの第2のセットの前に、層上に入射されるように同期される。レーザビームの第1のセット内のパルスは、直線ビームによって照明される層内の材料を融解し、レーザビームの第2のセット内のパルスは、融解された材料が凝固する前に、層上に入射される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書内に組み込まれ、その一部を構成する、付随の図面は、本発明の好ましい実施形態を概略的に図示し、上記に与えられる概要および下記に与えられる好ましい実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0015】
図1図1は、基板上の層を照明および焼鈍するための本発明による光学装置の1つの好ましい実施形態を概略的に図示し、コントローラと、複数のレーザ源と、線形微小レンズアレイの2つのセットを含むビームホモジナイザと、4つの円筒形レンズを含むビームプロジェクタとを備える。
【0016】
図2図2は、図1の光学装置の拡大図であり、層を焼鈍するための直線ビームの長寸法における1つの場所の上に集束されるレーザ源によって提供される複数のパルス式レーザビームを図示し、ビームホモジナイザおよびビームプロジェクタによって協調して形成される直線ビームを伴う。
【0017】
図3図3は、図1の光学装置の実践的な配列の斜視図である。
【0018】
図4図4は、光学倍率対時間のグラフであり、直線ビーム内の場所上に入射される図2のレーザビーム内のパルスの同期のための1つの好ましい実施形態を概略的に図示する。
【0019】
図5A図5A、5B、および5Cは、光学倍率対時間のグラフであり、直線ビーム内の場所上に入射される図2のレーザビーム内のパルスの同期のための3つの好ましい実施形態を概略的に図示する。
図5B図5A、5B、および5Cは、光学倍率対時間のグラフであり、直線ビーム内の場所上に入射される図2のレーザビーム内のパルスの同期のための3つの好ましい実施形態を概略的に図示する。
図5C図5A、5B、および5Cは、光学倍率対時間のグラフであり、直線ビーム内の場所上に入射される図2のレーザビーム内のパルスの同期のための3つの好ましい実施形態を概略的に図示する。
【0020】
図6A図6Aは、図2に類似する、図1の光学装置の拡大図であり、直線ビームの長寸法における1つの場所の上に集束されるパルス式レーザビームを概略的に図示する。
【0021】
図6B図6Bは、図1および図2の実施形態に類似する、本発明による光学装置の別の好ましい実施形態の拡大図であり、直線ビームの短寸法における1つの場所の上に集束される複数のパルス式レーザビームを概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
ここで図面を参照すると、同様の構成要素は、同様の番号によって指定され、図1は、本発明による光学装置10の好ましい実施形態を概略的に図示する。光学装置10は、複数のパルス式レーザ源12A-12Dを含み、そのそれぞれが、ビームホモジナイザ16の中に指向されるパルス式レーザビーム14A-14Dを提供する。レーザビーム14A-14Dは、ビームホモジナイザ16を通して透過され、ビームプロジェクタ18によってインターセプトされる。ビームホモジナイザ16およびビームプロジェクタ18は、レーザビーム14A-14Dを、基板24上の層22を照明する直線ビーム20の中に協働して形成する。層22は、焼鈍されることになる材料、例えば、非晶質シリコンから作製される。基板24は、ガラス等の支持材料から作製される。
【0023】
図面上のデカルト軸は、参照のためにある。レーザビーム14A-14Dは、レーザ源12A-12Dと層22との間で、「Z」軸に沿って伝搬する。レーザビーム14A-14Dは、それぞれ、直線ビーム20の長寸法および短寸法に対応する、直交する横方向の「X」および「Y」軸を有する。レーザビーム14A-14Dは、図面においてそれらを識別および区別するために、異なる矢印先端部を用いて描写される。各ビームは、中心光線および2つの周辺光線として、図1に描写される。
【0024】
ここで、ビームホモジナイザ16は、線形微小レンズアレイの2つのセット、26A-26Dおよび28A-28Dを備える。各微小レンズアレイは、X軸に沿って線形に配列される複数の円筒形微小レンズ30または32を含む。各セット内の個々の微小レンズアレイもまた、X軸に沿って線形に配列される。ビームホモジナイザ16は、したがって、X軸に平行な長軸と、Y軸に平行な直交する短軸とを有する。代替の配列では、微小レンズアレイの各セット内の複数の個々の微小レンズアレイが、単一の微小レンズアレイと置換されてもよく、これは、全てのレーザビームをインターセプトする。レーザビーム14A-14Dは、レーザ源12A-12Dから、微小レンズアレイ26A-26Dを通して、次いで、微小レンズアレイ28A-28Dを通して伝搬する。
【0025】
ビームホモジナイザ16の上に指向されるレーザビーム14A-14Dは、その長軸に沿って直列的に配列される。ここで、レーザビーム14A-14Dは、それぞれ、線形微小レンズアレイ26A-26D、次いで、微小レンズアレイ28A-28Dを照明する。微小レンズアレイ28A-28Dから出現するレーザビーム14A-14Dは、長軸(X軸)において発散的である。ビームホモジナイザ16の上に指向されるレーザビーム14A-14Dが、良好にコリメートされるとき、微小レンズアレイ26A-26Dは、その実践的な目的が、ビームホモジナイザ16の角度受容度を増加させることであるため、省略されてもよい。
【0026】
ここで、ビームプロジェクタ18は、4つの円筒形レンズ34、36、38、および40を備え、これは、ビームホモジナイザ16と層22との間に、番号順に直列的に配列される。円筒形レンズ34および38は、長寸法(X軸)において正の光学倍率を有する。円筒形レンズ38は、少なくとも長寸法において、基板24に対して略直角である、光軸42を有する。円筒形レンズ34は、全ての円筒形微小レンズ32からのレーザ放射を発散することをインターセプトするように配列され、円筒形レンズ38とともに、長寸法において直線ビーム20を形成する。円筒形レンズ34は、全ての微小レンズからのレーザ放射を収束および重複させることによって、単独で長寸法における直線ビームを形成するために十分であろうが、ビームプロジェクタは、典型的には、複数の光学要素を有する。ここで、ビームプロジェクタ18内に円筒形レンズ38を含めることの1つの実践的な利点は、光学装置10の全長が、低減されることである。
【0027】
微小レンズアレイ28A-28D内の各円筒形微小レンズ32は、発散的レーザ放射の源である。各円筒形微小レンズ32から出現するレーザ放射は、直線ビーム20内の他の円筒形微小レンズ32の全てのものからのレーザ放射に重複する。直線ビーム20の長寸法に沿った各場所は、それによって、レーザビーム14A-14Dの全てのものによって照明され、均質化される。直線ビーム20は、層22上に位置し、長寸法(X軸)に沿って均一な強度分布を有する。直線ビーム20は、それによって、焼鈍の間、層22を均一に照明する。
【0028】
円筒形レンズ36および40は、短寸法(Y軸)における光学倍率を有する。円筒形レンズ36は、全てのレーザ放射をインターセプトするように配列され、円筒形レンズ40とともに、短寸法における直線ビーム20を形成する。全体として、レーザ放射内の全ての光線は、円筒形レンズ34および38によって長寸法(X軸)において、かつ円筒形レンズ36および40によって短寸法において集束される。全ての光線は、直線ビーム20に向かって収束する。
【0029】
図2は、直線ビーム20に形成されるレーザビーム14A-14Dのさらなる詳細を概略的に図示し、図1と比較して、拡大されている。図面は、直線ビーム20内の1つの場所44の上に、長寸法(X軸)において集束されるレーザビーム14A-14Dの部分を描写する。図1では、レーザビーム14A-14Dはそれぞれ、直線ビーム20内の各場所上に入射される単一の光線として描写されている。図2では、レーザビーム14A-14Dはそれぞれ、2つの境界光線として描写され、入射角の範囲を横断して延在する。レーザビーム14Dは、例えば、角度αに跨がる。集合的に、レーザビーム14A-14Dは、より大きい角度αに跨がる。中心軸46は、場所44の上に集束されるレーザビーム14A-14Dの部分の重心である。
【0030】
図1および図2に描写される例示的装置では、レーザビーム14A-14Dは、別個の同じ対の線形微小レンズアレイを通して通過し、レーザビームは、重複しない角度範囲にわたって場所44上に入射される。各レーザビームは、略同一の角度に跨がりながら、場所44を照明する。例示的装置では、4つのレーザ源が存在し、したがって、場所44上に入射される各レーザビームは、0.25αに略等しい、またはそれよりも若干小さい角度に跨がる。例えば、αは、約8°であり、αは、約2°である。
【0031】
本発明者は、より小さい角度範囲からの層22の照明は、リップルの形成および高品質なレーザ焼鈍にとって有利であることを見出している。例えば、全てのレーザ源12A-12Dが、利用される場合、より小さい角度αが、有利である。代替として、レーザ源12Dのみが、利用される場合、より小さい角度αが、有利である。これらの角度を最小限にするために、円筒形レンズ32、34、および38の焦点距離は、実践的に可能な限り長くさせられるであろう。円筒形微小レンズ30の焦点距離および円筒形微小レンズ30および32の幅は、それに応じて調節される必要があり得る。
【0032】
図3は、光学装置10の実践的な配列の斜視図であり、レーザ源12A-12Dが、図示の明瞭性のために省略されている。本配列では、光学装置10は、付加的な操向ミラー50を含み、これは、レーザビーム14Cおよび14Dを線形微小レンズアレイ26Cおよび26Dの中に指向する。操向ミラー50等の操向光学系は、レーザ焼鈍のための統合型ツールの内側の光学要素のコンパクトな配列を有効にする。ミラー52および別のミラー54は、ともに、基板24およびその上の層22の上にレーザ放射を指向し、これらは、好ましくは、焼鈍の間、水平である。ミラー52および54の一方または両方が、米国特許第7,723,169号(共同所有されており、その完全な開示が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において説明されるように、その長寸法における「微小平滑」直線ビーム20に対して、小さい角度範囲を通して急速かつ反復的に傾動され得る。
【0033】
図面上のデカルト軸は、レーザ放射がビームホモジナイザ16およびビームプロジェクタ18を通して層22の上に指向される際の伝搬軸Zと、横軸XおよびYとを示す。焼鈍の間、基板24およびその上の層22は、短寸法(Y軸)において平行移動され、直線ビーム20によって照明される層22の部分56を変形させる。光学装置10の作業実施例では、層22は、部分56において、レーザ焼鈍によって多結晶質シリコンに変形される、非晶質シリコンから作製される。
【0034】
図1に再度目を向けると、光学装置10はさらに、レーザ源12A-12Dのそれぞれに接続される、コントローラ60を含む。コントローラ60は、レーザ源12A-12Dがそれぞれ、レーザ放射のパルスを生産する時間を左右する、クロック信号またはトリガ信号を送信する。コントローラ60は、それによって、レーザビーム14A-14D内のパルスを相互に対して同期させる。
【0035】
図4は、光学倍率対時間のグラフであり、直線ビーム20および照明層22内の場所44上に入射されるレーザビーム14A-14D内のパルスを概略的に図示する。パルス72A-72Dは、レーザ源12A-12Dによって提供される。図4は、コントローラ60によるパルス同期70の一実施形態を描写し、この中で順次パルスは、部分的に重複し、順次パルス間の時間的分離は、略等しい。描写されるパルス同期の実施例では、パルス72A、72D、72B、および72Cは、その順序で場所44上に入射される。パルス72Aおよび72Dは、時間τ1だけ分離され、パルス72Dおよび72Bは、時間τ2だけ分離され、パルス72Bおよび72Cは、時間τ3だけ分離され、τ≒τ≒τである。4つの個々のパルス72A-72Dは、集合的に、より長いパルスを形成し、層22が持続的に照明される時間を延長する。例えば、最大約100nsの有効持続時間を有するパルスは、Q切替されたレーザによって発生される4つの個々のパルスから形成され、それぞれが、25nsの持続時間を有し得る。
【0036】
図5Aは、光学倍率対時間のグラフであり、コントローラ60によるパルス同期80の別の実施形態を図示する。レーザ源のうちの2つによって提供されるパルスの第1のセット82が、他の2つのレーザ源によって提供されるパルスの第2のセット84に先立って、層22上に入射される。第1のセット82内のパルスは、(描写されるように)同時に、または略同時に入射される。第1のセット82内のパルスは、直線ビーム20によって照明される層22内の材料を融解する。遅延時間ΔTの後、第2のセット84内のパルスは、融解された材料が凝固する前に、同時に、または略同時に層22上に入射される。各セット内のパルスによる略同時の照明は、合計光学倍率を最大限にし、融解を初期化および持続させる。遅延時間ΔTは、材料が融解された液相にある時間を延長し、これは、材料の結晶化および高品質な微小構造の形成にとって有利である。パルス同期80は、事実上、レーザ源12A-12Dのいずれかによって個々に提供され得るよりも長いパルスをシミュレートする。
【0037】
パルス同期80の一実施例では、パルスの第1のセット82は、パルス72Aと、72Dとを備え、パルスの第2のセット84は、パルス72Bと、72Cとを備える。本実施例では、図4を参照すると、τ≒0、τ≒ΔT、かつτ≒0である。図2を参照すると、レーザビーム14Aおよび14Dの第1のセットが、場所44上に入射される。次いで、遅延時間ΔTの後、レーザビーム14Bおよび14Cの第2のセットが、場所44上に入射される。レーザビームの第2のセットは、角度αよりも小さい、角度約α+αに跨がる。上記に議論されるように、より小さい角度分布が、レーザ焼鈍された多結晶質シリコン内のより高品質な微小構造を生産する。さらに、本発明者は、微小構造が融解された材料から析出されている時間において、より小さい角度分布を伴って、融解されたシリコンを照明することが、最も有利であることを見出している。概して、析出は、融解および焼鈍の各繰り返されるサイクルの終点に向かって起こるであろう。本洞察をパルス同期80に適用すると、パルスは、パルスの第2のセットが、72Aおよび72B、72Bおよび72C、または72Cおよび72Dのいずれかであり得るように、境界を定められ得る。
【0038】
図5Bは、光学倍率対時間のグラフであり、コントローラ60によるパルス同期90のまた別の実施形態を図示する。第1のセット82および第2のセット84のそれぞれ内の個々のパルスは、時間的に分離される。描写される実施例では、第1のセット82内のパルスは、時間δtだけ互いに分離され、第2のセット84内のパルスは、略同一の時間δtだけ互いに分離され、時間δtは、遅延時間ΔTの約半分である。全体として、第1のセット82は、直線ビーム20によって照明される層22内の材料を融解し、第2のセット84は、材料が融解された液相にある時間を延長する。より一般的には、ΔT≧2×δtであり、これは、パルス同期90が、パルス同期70または80よりも長い全体的な時間にわたって融解を持続することを意味する。
【0039】
図5Cは、光学倍率対時間のグラフであり、コントローラ60によるパルス同期100のさらなる別の実施形態を図示する。全ての個々のパルスによって提供される積分された光学倍率102が、より太い線によって描写されている。第1のセット82内のパルスは、同時または略同時に入射される。第2のセット84内のパルスは、時間δtだけ時間的に分離される。描写される実施例では、遅延時間ΔTは、約1.3×δtに等しい。全体として、パルスの第1のセット82は、直線ビーム20によって照明される層22内の材料を融解するために十分なエネルギーを提供し、パルスの第2のセット84は、材料が融解された液相にある時間を延長するために十分な光学倍率を提供する。パルス同期100の積分された光学倍率102は、レーザ焼鈍のために使用されるエキシマレーザの典型である、2つの時間的な振幅ピークを複製するためにより近い。しかしながら、光学装置10を使用するパルス同期100は、融解を持続させる間、積算された光学倍率102が、より一定であるため、優れたものであり得る。
【0040】
再度、パルス同期90または100では、パルスの第2のセットは、72Aおよび72B、72Bおよび72C、または72Cおよび72Dのいずれかであり得る。概して、最後のパルスは、レーザ焼鈍によって生産される微小構造の品質に最も大きな影響を与えるであろう。パルス同期90または100では、その最後のパルスは、場所44上に入射されるレーザビーム14A-14Dがそれぞれ、略同一の角度(α≒α≒α≒α)に跨がるため、第2のセット84内のいずれかのパルスであり得る。
【0041】
図2に再度目を向けると、レーザビーム14Bおよび14Cは、中心軸46により近く、ともに、角度αよりも小さい、約α+αの角度に跨がる。レーザビーム14Aおよび14Dは、中心軸46からより遠くにあり、角度αに跨がる。図6Aは、直線ビーム20に形成されるレーザビーム14A-14Dを概略的に図示し、図2に類似する。レーザビーム14Aおよび14Dの第1のセットは、中心軸46に対して、第1の角度範囲α内で、場所44上に入射される。レーザビーム14Bおよび14Cの第2のセットは、中心軸46に対して、第2の角度範囲α内で、場所44上に入射される。第2の角度範囲αは、第1の角度範囲αよりも中心軸46に近い。例えば、角度αは、約2°~約4°の範囲内にあり、角度αは、0°~約2°の範囲内にある。
【0042】
パルス同期80、90、または100を本配列に適用すると、高品質な微小構造は、パルスの第1のセット82が、レーザビームの第1のセット内にあり、パルスの第2のセット84が、レーザビームの第2のセット内にあるときに生産される。すなわち、レーザビーム14Bおよび14C内のパルス72Bおよび72Cは、パルスの第2のセット84であるように選択される。
【0043】
図6Aに描写される例示的配列では、直線ビーム20の中心軸46は、場所44において層22に対して略直角である。ビームプロジェクタ18が、テレセントリックである場合、中心軸46は、直線ビーム20内の各場所において、層22に対して略直角であり、中心軸46は、円筒形レンズ38の光軸42に略平行であろう。描写される配列では、レーザビーム14Bおよび14Cは、レーザビーム14Aおよび14Dよりも小さい層22上の入射角を有する。いくつかの焼鈍用途では、より高品質な微小構造が、より小さい角度分布およびより小さい入射角の両方を有する、レーザビーム内のパルスの第2のセットを選択することによって生産される。ここで、レーザビーム14Bおよび14Cは、角度αよりも小さい、第2の角度範囲α内で、場所44上に入射される。レーザビーム14Bおよび14Cもまた、最大約α≒αまでのより小さい入射角を有する。レーザビーム14Aおよび14Dは、最大約α+α≒α+αまでのより大きい入射角を有する。
【0044】
図6Bは、本発明による光学装置110の別の好ましい実施形態の詳細を概略的に図示する。光学装置110は、図1の光学装置10に類似し、直線ビーム20を協働して形成するために、ビームホモジナイザ16と、ビームプロジェクタ18とを含む。光学装置110は、短寸法(Y軸)において、レーザビーム14A-14Dを場所44上に集束する。短寸法において、中心軸46は、ここで描写されるように、層22の法線112に対して小さい角度θにおいて傾動されてもよい。実践では、これは、円筒形レンズ38および40の光軸を傾動させることによって達成される。傾動させることは、層22からの背面反射を軽減することに役立つ。角度θは、典型的には、4°~12°の範囲内にある。実施例として、8°の角度が、図面に描写されている。直線ビーム20が、レーザ放射の波面として、図6Aおよび図6Bに描写されていることに留意されたい。
【0045】
組み合わせられた光学装置は、光学装置10および110の要素を有するであろう。光学装置110は、レーザ源12A-12Dとビームプロジェクタ18との間に位置する、付加的なビームホモジナイザ(図示せず)を含んでもよい。付加的なビームホモジナイザは、短寸法(Y軸)に沿って線形に配列される円筒形微小レンズを有し、これらの微小レンズは、短寸法において、正の光学倍率を有するであろう。レーザビーム14A-14Dは、短寸法において、異なる角度において付加的なビームホモジナイザの上に指向されるであろう。レーザビーム14Aおよび14Dは、付加的なビームホモジナイザの周縁部により近く指向され、レーザビーム14Bおよび14Cは、付加的なビームホモジナイザの中心により近く指向されるであろう。
【0046】
代替として、光学装置110は、ビームホモジナイザ16およびビームプロジェクタ18を通して、単にレーザビーム14A-14Dを指向することによって、付加的なビームホモジナイザを省略しながらも、短寸法における円筒形レンズ36および40の結像性質を適切に考慮し得る。層22の結像平面では、レーザビーム14Aおよび14Dは、レーザビーム14Bおよび14Cに対してより大きい角度において指向されるであろう。層22のフーリエ平面では、レーザビーム14Aおよび14Dは、レーザビーム14Bおよび14Cに対してより大きい変位を有するであろう。
【0047】
これらの配列では、層22上に集束されるレーザビーム14Aおよび14Dは、中心軸46からより遠くにあり、レーザビーム14Bおよび14Cは、長寸法および短寸法の両方において、中心軸46により近い。本集束する配列はまた、コントローラ60によるレーザビーム14A-14D内のパルスの本発明の同期と組み合わせられるとき、焼鈍後の層22内のより高品質な微小構造も提供する。
【0048】
本発明の光学装置は、パルスをレーザビームの第1のセット内の第1のセット82の後に、レーザビームの第2のセット内の第2のセット84に分割し、レーザビームの第2のセットは、組み合わせられた直線ビームを形成する、全てのレーザビームよりも小さい角度範囲から入射される。直線ビームは、全てのレーザビームが、より小さい角度範囲から入射されるとき、直線ビームによって形成されるであろうものと略同一の品質を有する、焼鈍された微小構造を形成する。しかしながら、本発明の光学装置は、より小さい第2の角度範囲内で全てのレーザビームを送達する、同等の光学装置よりも、ビーム伝搬軸(Z軸)に沿ってよりコンパクトである。長寸法(X軸)において、円筒形レンズ34から層22までの伝搬長は、層22の1つの場所の上に収束するレーザ放射に関する角度分布を判定する。実施例として、光学装置の一実施例において1.7°の角度分布を伴う、2,300ミリメートル(mm)長の直線ビームを形成することは、約50mの伝搬長を要求する。比較して、0.85°のより小さい最大角度分布を有する同等の装置において、同一の直線ビームを形成することは、約90mのより長い伝搬長を要求する。より小さい角度範囲内でパルスの第2のセットのみを送達する、本発明の光学装置は、はるかによりコンパクトなツールにおいて、所望のレーザ焼鈍品質を提供することができる。
【0049】
レーザ焼鈍のための最適なパラメータは、層22の厚さ、基板24の厚さ、基板24の熱容量および熱伝導率、レーザ放射の波長、および個々のパルスの持続時間等の因子に応じて変動する。シリコン層、ガラス基板、および約355nmの波長および20~30nsのパルス持続時間を有するレーザ放射の場合、各個々のパルスによって層22上に堆積されるエネルギーは、平方センチメートルあたり0.1~0.5ミリジュール(mJ/cm)の範囲内にあり得、遅延時間ΔTは、20~120nsの範囲内にあり得、時間δtは、0~60nsの範囲内にあり得、個々のレーザビームは、最大3°の角度(α、α、α、またはα)に跨がり得、全てのレーザビームは、最大18°の角度αに跨がり得る。同様に、第1の角度範囲αは、1°~9°の範囲内にあり得、第2の角度範囲αは、0°~3°の範囲内にあり得る。
【0050】
焼鈍された多結晶質シリコン内の周期的微小構造は、集束されたレーザ放射内の干渉によって形成され、本周期性は、主に、電場の方向において形成される。偏光されない直線ビームが、直線ビームの長寸法および短寸法の両方に沿って整合される微小構造を生産し得ることが見出された。光学装置10または光学装置110のいずれかが、偏光されていないレーザビームを使用して、商業用ディスプレイを作製するために十分な品質の焼鈍されたシリコン層を生産することができる。代替として、偏光されたレーザビームまたは部分的に偏光されたビームが、光学装置10または光学装置110内に選択的に指向され、シリコン層上に入射される偏光の最適な混合体を達成してもよい。
【0051】
4つのレーザ源を有する本発明の光学装置が、本明細書に描写されるが、これは、少なくともパルスの第1のセットおよびパルスの第2のセットに仕切られ得る、任意の数のレーザ源を有してもよい。レーザ源は、焼鈍されることになる材料を融解するために好適な任意のタイプであってもよい。非晶質シリコンの場合では、前述の米国特許公開第2020/0235544号において説明される、エキシマレーザおよびダイオード圧送型固体レーザが、レーザ焼鈍にとって好適であることを証明している。
【0052】
第1のパルスセット内の全てのパルスは、ともに、層内の材料を融解するために十分なエネルギーを有する。第1のセット内の第1のパルスまたは初期パルスの適用は、材料を予熱し、融解が、第1のセット内の後のパルスまたはさらに最後のパルスの適用に続いて生じ得る。代替として、パルスの第1のセットは、層内の材料を融解するために十分なエネルギーを有する、1つのみのパルスであってもよい。
【0053】
パルスの第2のセットは、1つのみのパルスであってもよく、これは、第2の角度範囲内で層上に入射され、材料が融解される時間を延長するために十分な遅延時間を伴う。例えば、図4を参照すると、第1のセット82は、パルス72A、72D、および72Bであり得る一方、第2のセット84は、パルス72Cである。最後のパルス(ここでは、レーザビーム14C内のパルス72C)は、微小構造が、本最後のパルスの間、融解された材料から析出されると仮定すると、レーザ焼鈍によって生産される微小構造の品質に最も大きな影響を与えるであろう。最後のパルス内のレーザ放射の光学干渉は、微小構造、例えば、レーザ焼鈍されたシリコン内の結晶粒塊構造を生産するであろう。
【0054】
レーザビームは、集合的に、入射角αの範囲に跨がる。レーザビームのうちの少なくとも1つのパルスは、他の全てのレーザビーム内のパルスよりも後で、但し、パルスの第1のセットによって融解される材料が凝固する前に、層を照明する。少なくとも1つのレーザビームは、好ましくは、0.5αよりも小さく、最も好ましくは、0.25αよりも小さい入射角の範囲に跨がる。
【0055】
要約すると、複数のレーザビームは、レーザパルスの第1のセットを有するレーザビームの第1のセットおよびパルスの第2のセットを有するレーザビームの第2のセットに分割される。ビームホモジナイザおよびビームプロジェクタは、協調して、長寸法および短寸法を有する直線ビームの中にレーザビームを形成する。直線ビームは、基板上の層を焼鈍するために、長寸法に沿って均一な強度分布を有する。レーザビームの第2のセットは、組み合わせられた全てのレーザビームよりも小さい角度範囲から層上に入射される。コントローラが、レーザパルスの第1のセットが、パルスの第2のセットの前に、層上に入射されるようにパルスを同期させる。
【0056】
本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態の観点において、上記に説明される。しかしながら、本発明は、本明細書に説明され、描写される実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に添付される請求項によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
【国際調査報告】