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特表2024-521660より安全な原子炉のための燃料減速材反転
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】より安全な原子炉のための燃料減速材反転
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/26 20060101AFI20240528BHJP
   G21C 3/62 20060101ALI20240528BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G21C1/26
G21C3/62 500
G21C5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570223
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022032226
(87)【国際公開番号】W WO2022271433
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/196,901
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520271676
【氏名又は名称】ウルトラ セーフ ニュークリア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ULTRA SAFE NUCLEAR CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, パオロ, フランチェスコ
(57)【要約】
原子炉心を含む原子炉。原子炉心は、複数の減速材要素と、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックの反転燃料減速材ブロックアレイとを含む。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックは、高温マトリックスと、高温マトリックスの内部に埋め込まれた複数の燃料粒子と、減速材要素のうちの少なくとも1つを入れるための少なくとも1つの減速材開口部とを含む。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックは、冷却材を流すために高温マトリックス中に形成された少なくとも1つの冷却材通路も含む。原子炉は、反応度制御システムも含むことができ、この反応度制御システムは、1つ若しくは複数の制御ドラム、1つ若しくは複数の制御棒、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温マトリックスと、
前記高温マトリックスの内部に埋め込まれた複数の燃料粒子と、
少なくとも1つの減速材要素を入れるための少なくとも1つの減速材開口部と、
を備える反転燃料減速材ブロック。
【請求項2】
前記反転燃料減速材ブロックが連結幾何形状パターンの基部形状を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項3】
前記反転燃料減速材ブロックが、角柱、円柱、多面体、その切頭部分、又はこれらの組み合わせとして形成される、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項4】
前記反転燃料減速材ブロックが複数のブロック境界面壁を含み、
前記複数のブロック境界面壁が、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項5】
冷却材を流すために前記高温マトリックス中に形成された少なくとも1つの冷却材通路を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項6】
前記少なくとも1つの冷却材通路が冷却材通路壁を含み、
前記少なくとも1つの冷却材通路壁が、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む、請求項5に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項7】
前記反転燃料減速材ブロックがキャップを含み、前記キャップが、平面、曲面、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項8】
前記複数の燃料粒子が、被覆された燃料粒子を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項9】
前記被覆された燃料粒子が、三構造等方性(TRISO)燃料粒子、二構造等方性(BISO)燃料粒子、又はTRIZO燃料粒子を含み、
高温マトリックスが、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項10】
複数の減速材要素と、
1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックの反転燃料減速材ブロックアレイと、を含む原子炉心であって、前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、
高温マトリックスと、
前記高温マトリックスの内部に埋め込まれた複数の燃料粒子と、
冷却材を流すために前記高温マトリックス中に形成された少なくとも1つの冷却材通路と、を含む、原子炉心。
【請求項11】
第1の減速材要素が、第1の反転燃料減速材ブロックと第2の反転燃料減速材ブロックとの間に積層される、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項12】
請求項10に記載の原子炉心と、
反応度制御システムと、を備える原子炉であって、前記反応度制御システムが、
(a)1つ若しくは複数の制御ドラム、
(b)1つ若しくは複数の制御棒、又は
(c)これらの組み合わせ
を含む、原子炉。
【請求項13】
前記反転燃料減速材ブロックアレイの第1の体積が前記原子炉心の総体積の1%~20%である、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項14】
前記複数の減速材要素の第2の体積が前記総体積の70%~99%である、請求項13に記載の原子炉心。
【請求項15】
冷却材を流すための複数の冷却材通路をさらに備え、前記複数の冷却材通路の第3の体積が前記総体積の0%~10%である、請求項14に記載の原子炉心。
【請求項16】
前記減速材要素のうちの1つ又は複数が、1つ又は複数の減速材境界面壁と1つ又は複数の減速材切子面とを含む切頭多面体形状であり、
前記1つ又は複数の減速材切子面が、それぞれの反転燃料減速材ブロックに隣接する、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項17】
1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック境界面壁及び1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック切子面を含む、切頭多面体形状であり、
前記少なくとも1つの冷却材通路が、前記もう1つの反転燃料減速材ブロック切子面から形成され、
前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、少なくとも1つの減速材要素を入れるための少なくとも1つの減速材開口部を含む、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項18】
前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、前記冷却材を流すための1つ又は複数の切込み冷却材通路を含む、請求項17に記載の原子炉心。
【請求項19】
多面体形状又は切頭多面体形状を含む複数の反転燃料減速材ブロックをさらに含み、
前記反転燃料減速材ブロックの前記多面体形状又は切頭形状が、多角形又は切頭多面体のサブ集合体を形成する、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項20】
前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが凸多面体形状である、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項21】
炉心中心と、
炉心周辺と
をさらに備え、
少なくとも1つの炉心減速材要素を含む炉心中心反転燃料減速材ブロックが、前記炉心周辺よりも前記炉心中心に近接しており、
少なくとも1つの周辺減速材要素を含む炉心周辺反転燃料減速材ブロックが、前記炉心中心よりも前記炉心周辺に近接しており、
前記炉心中心反転燃料減速材ブロックと前記少なくとも1つの炉心減速材要素の炉心体積割合が、前記炉心周辺反転燃料減速材ブロックと前記少なくとも1つの周辺減速材要素の周辺体積割合とは異なる、請求項10に記載の原子炉心。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2021年6月4日に出願された米国特許仮出願第63/196,901号、名称「Fuel-Moderator Inversion for Safer Nuclear Reactors」の優先権を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本主題は、電力発生及び推進のための原子炉システム及び原子炉の例、例えば、発電又は核熱推進のための陸上原子炉の例に関する。本主題は、反転燃料減速材ブロックアレイを含む原子炉心構造も包含する。
【背景技術】
【0003】
[0003]従来の原子炉では、原子炉内の黒鉛ブロックが、冷却材チャネル並びに燃料チャネルとともに機械加工される。燃料ペレットは、ヘリウム充填とともに燃料チャネルに挿入され、黒鉛キャップで密封される。原子炉の運転中、ヘリウムが黒鉛冷却チャネルを通過して原子炉を冷却する。減圧中又は浸水中には、空気が炉心に入って場合によっては、黒鉛火災としても知られる黒鉛の自己持続酸化をまねく可能性がある。黒鉛は、空気又は水にさらされた場合に、エネルギーを放出する酸化反応を受ける可能性があり、その酸化プロセスで黒鉛の構造的完全性が損なわれる。さらに、黒鉛火災中には、黒鉛との意図しない化学反応もまた、さらなる安全リスクを生じさせる新たな放射性化学種をも生成する可能性がある。黒鉛火災の結果は、黒鉛ダストが存在することによってさらに悪化する。黒鉛は明らかに、かなりの化学的リスクをもたらす。
【0004】
[0004]黒鉛は、炉心の形状を内部で支持するとともに、一部の原子炉では燃料を保護しているので、通常の原子炉における黒鉛の損傷は、燃料の完全性のみならず、原子炉自体に悪影響を及ぼす。従来の原子炉では、燃料は最も脆弱な構成要素であるので、照射損傷及び膨張を受けて崩壊することが多いことにより、核分裂生成物の放出を防ぐための大規模な積み重ねられた格納が必要になる。しかし、核燃料技術の改善が、燃料ペレットが埋め込まれたマトリックスの改善と相まって、燃料ペレットの安定性を向上させている。特に、炭化ケイ素マトリックス中に分散してコンパクトな円筒形の核燃料を形成する三構造等方性(TRISO)燃料粒子が、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの以下の特許及び刊行物に記載されている:2016年3月29日発行の米国特許第9,299,464号、名称「Fully Ceramic Nuclear fuel and Related Methods」;2018年7月24日発行の米国特許第10,032,528号、名称「Fully Ceramic Micro-encapsulated(FCM)fuel for CANDUs and Other Reactors」;2018年10月23日発行の米国特許第10,109,378号、名称「Method for Fabrication of Fully Ceramic Microencapsulation Nuclear Fuel」;2017年4月11日発行の米国特許第9,620,248号及び2019年11月12日発行の米国特許第10,475,543号、名称「Dispersion Ceramic Micro-encapsulated(DCM)Nuclear Fuel and Related Methods」;2020年1月23日発行の米国特許出願公開第2020/0027587号、名称「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」;及び2020年2月25日発行の米国特許第10,573,416号、名称「Nuclear Fuel Particle Having a Pressure Vessel Comprising Layers of Pyrolytic Graphite and Silicon Carbide」。これらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
[0005]それゆえに、原子炉システム100並びに原子炉ブロック及びブロックアレイには、さらなる改善の余地がある。高温ガス炉(HTGR)の主な懸念事項が、空気及び水との黒鉛の化学反応性、並びに黒鉛ダストの放出であるので、燃料減速材反転(FMI)燃料ブロック(すなわち、反転燃料減速材ブロック)の概念では、この問題を、燃料を使用しながら、黒鉛又は他の減速材を外部の種から保護することによって解決し、以て、原子炉107の復元力及び機能性を高める。
【0006】
[0006]本明細書では、反転燃料減速材ブロック103Bソリューション(図1B参照)が説明されており、このソリューションは、反転燃料減速材ブロック103Bが水及び空気に対して不浸透性であり、比較的損傷しやすい減速材要素150B~Mを保護するので、原子炉心101内の水又は空気の存在に対する減速材要素150B~Mの復元力を向上させる。この保護により、黒鉛又は他の減速材によってもたらされる化学的相互作用リスクが低減又は除去されて、原子炉107がより安全になる。
【0007】
[0007]加えて、反転燃料減速材ブロック103Bは流動冷却材に直接さらすことができるので、燃料粒子151が減速材ブロックを介して間接的に熱を流動冷却材に伝達する従来の原子炉とは対照的に、原子炉心101は、臨界運転中に達する燃料温度を低くすることができる。FMI技術は、燃料粒子151A~Nの運転温度を低下させ、これが、燃料粒子151A~N並びに高温マトリックス152にかかる熱応力及び環境応力を低減させて、燃料堅牢性及び核分裂生成物保持を改善する。
【0008】
[0008]反転燃料減速材ブロック103Bソリューションは、冷却材通路141A~Bの容積を小さくすることを可能にして、より小型の原子炉心101、又はより長寿命の原子炉心101も可能にすることができる。さらに、減速材要素150B~Mの表面が、いくつかの反転燃料減速材ブロック103Bソリューションでは冷却材によって濡れないので、潜在的に空気を含む、代替の冷却流体が可能である。これらの小さい冷却材通路141A~N容積は、低減された冷却材チャネル容積とともに、環境空気の吸気及び排気によって空気吸気サイクルを実施する空気吸気原子炉を可能にすることができ、より低コストでより効率的な原子炉を可能にすることができる。
【0009】
[0009]反転燃料減速材ブロック103Bソリューションでは、反転燃料減速材ブロック103Aの形の核燃料は、原子炉心101の中で最も高性能の構成要素である。この核燃料は、空気及び水とほとんど反応せず、高い原子変位数(DPA)及びDPA率の状態で安定であり、高温で安定である。所与の減速材要素150Aを保護するための反転燃料減速材ブロック103Aの形の核燃料を使用することにより、黒鉛の化学反応性及びダストの問題に対処し、その所与の減速材要素150Aに関連するあらゆる反応性の問題に確かに対処する。反転燃料減速材ブロック103Aソリューションは、原子炉心101構成要素を保護し、冷却材までの熱経路長を短縮する。
【0010】
[0010]一例では、反転燃料減速材ブロック103A(図1A参照)は、高温マトリックス152と、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、少なくとも1つの減速材要素150Aを入れるための、空洞などの少なくとも1つの減速材開口部131Aとを含む。
【0011】
[0011]第2の例では、原子炉心101は、複数の減速材要素150N~Zと、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103A~Nの反転燃料減速材ブロックアレイ113とを含む。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103A~Nは、高温マトリックス152と、高温マトリックス152中に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、冷却材を流すために高温マトリックス152中に形成された少なくとも1つの冷却材通路141N~Zとを含む。
【0012】
[0012]これらの例の付加的な目的、利点及び新規の特徴は、以下の説明中に一部記述され、一部は以下の説明及び添付の図面を検討することにより当業者には明らかになり、又は例を製造又は操作することによって知ることができる。本主題の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている方法論、手段及び組み合わせによって実現し達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013]図面の図は、限定ではなく単なる例として、1つ又は複数の実施態様を示す。図で、同様の参照数字は、同一又は同様の要素を指す。
図1A】高温マトリックスから形成された、減速材要素用の減速材開口部を設けている、一般的な反転燃料減速材ブロックの4分の3切取図である。
図1B】複数の減速材開口部、冷却材通路、及び制御ドラムチャネルの用意がある六角形反転燃料減速材ブロックの等角図である。
図1C】個々の減速材開口部と、反転燃料減速材ブロックの整合する角部の冷却材通路とを備えた六角形反転燃料減速材ブロックを実施する原子炉心を含む、原子炉システムの断面図である。
図2】三角形燃料減速材ブロックから形成された反転燃料減速材ブロックアレイの等角図であり、三角形燃料減速材ブロックは、個々の減速材開口部、並びに冷却材を流すための切子状の角部を含む。
図3A】減速材要素と、その減速材要素の上下に積層された2プレート反転燃料減速材ブロックとを含む、層状反転燃料減速材ブロックアレイの側面図である。
図3B図3Aの反転燃料減速材ブロックアレイの等角図である。
図3C】反転燃料減速材ブロック内に冷却材通路が形成されたモノリシック反転燃料減速材ブロックの等角図である。
図3D】冷却材通路を備えた減速材要素と、冷却材通路をライニングする複数のライナ反転燃料減速材ブロックと、減速材要素を取り囲む境界反転燃料減速材ブロックとを含む、反転燃料減速材ブロックアレイの等角図である。
図4A】減速材要素の割合が大きい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図4B図4Aに描かれた複数の三角形反転燃料減速材サブ集合体から形成されたキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体の等角図である。
図4C図4Bのキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体のキャップが除去されている状態の等角図である。
図5A】減速材要素の割合が小さい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図5B図5Aに描かれているキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の等角図である。
図5C図5Bのキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体のキャップが除去されている状態の等角図である。
図6A】3つの追加切込み冷却材通路を備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図6B】追加の切込みリング冷却材通路を備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図7A】二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体の図である。
図7B】多面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体の図である。
図7C】切頭二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体の図である。
図7D】1つ又は複数の三角形面からなる多面体内のテーパ付き三角形反転燃料減速材ブロックの図である。
図7E】凸状上部キャップ及び凹状下部キャップを備えたテーパ付き円形反転燃料減速材ブロックの図である。
図7F】テーパ付き冷却材通路を備えたテーパ付き五角形反転燃料減速材ブロックの図である。
図8】三角形燃料減速材ブロックから形成された反転燃料減速材ブロックアレイの等角図であり、三角形反転燃料減速材ブロックは、個々の減速材開口部、並びに冷却材を流すための切子状の角部を含み、原子炉周辺部に近接している反転燃料減速材ブロックの減速材開口部は、原子炉心中心に近接している反転燃料減速材ブロックのものよりも大きい。
図9A】酸素(O)による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフである。
図9B】水(HO)による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフである。
図10】高温におけるSiC酸化機構の図である。
【0014】
パーツリスト
100 原子炉システム
101 原子炉心
103A~Z 燃料減速材反転ブロック
113 反転燃料減速材ブロックアレイ
115 制御ドラム
131A~Z 減速材開口部
135 制御ドラムチャネル
140 反射体
141A~B、N~Z 冷却材通路
142 冷却材通路壁
150A~Z 減速材要素
151A~N 燃料粒子
152 高温マトリックス
155 キャップ
156 原子炉心中心
157 原子炉心周辺
160 圧力容器
198 ブロック壁
199A~B ブロックベース
203A~N 燃料減速材反転ブロック
213 反転燃料減速材ブロックアレイ
231A~N 減速材開口部
253A~C 反転燃料減速材ブロック境界面壁
254A~C 反転燃料減速材ブロック切子面
241A~N 冷却材通路
250A~N 減速材要素
303A~D、O~Z 反転燃料減速材ブロック
313A プレート反転燃料減速材ブロックアレイ
313C モノリシック反転燃料減速材ブロックアレイ
313D ライニングされた反転燃料減速材ブロックアレイ
341A~Z 冷却材通路
350A~B 減速材要素
390 減速材境界面壁
391O~Z 減速材切子面
403A~C 反転燃料減速材ブロック
413 六角形反転燃料減速材ブロック集合体
414A~F 三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体
441A~C 冷却材通路
450A~F 減速材要素
503 反転燃料減速材ブロック
514 三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体
441A~C 冷却材通路
550 減速材要素
641A~D 切込み冷却材通路
703A テーパ付き三角形反転燃料減速材ブロック
703B テーパ付き円形反転燃料減速材ブロック
703C テーパ付き五角形反転燃料減速材ブロック
714A 二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体
714B 多面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体
713C 切頭二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体
741 テーパ付き冷却材通路
900A OによるSiCの計算された酸化モード領域のグラフ
900B HOによるSiCの計算された酸化モード領域のグラフ
1000 高温におけるSiC酸化機構の図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0040]以下の詳細な説明では、関連する教示の完全な理解が得られるように多数の具体的な詳細が例として示される。しかしながら、本教示がこのような詳細なしに実施され得ることが当業者には明らかなはずである。他の例では、よく知られた方法、手順、構成要素、及び/又は回路は、本教示の態様を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細な説明なしに、比較的高いレベルで説明されている。
【0016】
[0041]本明細書で用いられる「結合された」という用語は、任意の論理的又は物理的接続を指す。特にことわらない限り、結合された要素又はデバイスは、必ずしも互いに直接接続されている必要はなく、中間構成要素、要素などによって分離されていてもよい。
【0017】
[0042]特にことわらない限り、本明細書に記載されるあらゆる測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、角度、及びその他の仕様は、添付の特許請求の範囲に記載されるものを含めて、厳密なものではなく近似的なものである。このような量は、それが関連する機能と、関係する技術分野において慣習的なものとに合致する妥当な範囲を有するものである。例えば、明示的に特にことわらない限り、パラメータ値などは、記載された量から±5%又は±10%程度変動することがある。「おおよそ」又は「実質的に」という用語は、パラメータ値などが記載された量から±10%まで変化することを意味する。
【0018】
[0043]原子炉システム100、原子炉107、原子炉心101、反転燃料減速材ブロック103A~B、N~Z、203A~N、303A~D、O~Z、403A~C、503、703A~C、反転燃料減速材ブロックアレイ113、313A、C~D、反転燃料減速材ブロック集合体413、反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~F、514、714A~C、関連する構成要素、及び/又は図面のいずれかに示されたものなどの原子炉心101を組み込む任意の原子炉システム100は、例示及び考察の目的のために、単なる例として与えられている。特定の原子炉システム100の運転の際に、構成要素は、原子炉システム100の特定の適用例に適した他の方向、例えば、直立、横向き、又は他の任意の方向に向いていることがある。さらに、本明細書で用いられる範囲で、横方向、縦方向、上向き、下向き、上方、下方、最上方、最下方、及び側方などのいかなる方向の用語も単なる例として用いられており、任意の原子炉システム100の、又は本明細書で別に説明されるように構築された原子炉システム100の構成要素の、方向又は向きに関して限定していない。
【0019】
[0044]Aはアルファベットの最初の文字であり、Zはアルファベットの26番目の文字であるが、アルファベットの制限の故に、103、131、132、141、142、161、162などの参照番号に続く場合の「A~Z」、「A~N」、「B~M」、及び「N~Z」という呼称は、26個よりも多い同一の要素を指し得る。いくつかの要素は、読みやすくするために、機能の統一性をなお保持しながら、反転燃料減速材ブロックアレイ113とプレート反転燃料減速材ブロックアレイ313Aなど、形によって区別されている。
【0020】
[0045]次に、添付図面に示され、以下で論じられる例を詳細に参照する。図1Aは、高温マトリックス152から形成され減速材要素150A用の減速材開口部131Aを設けている、一般的な形状のトロイド反転燃料減速材ブロック103Aの4分の3切取図である。一般に、反転燃料減速材ブロック103A~Zは、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nを含む高温マトリックスから形成される。図1Aの例では、燃料粒子151A~NはTRISO燃料粒子を含む。代替又は追加として、燃料粒子151A~Nは、双構造等方性(BISO)燃料粒子を含み得る。TRISO様被覆は、安全性への影響及び製造実現可能性に応じて、簡略化又は削除されてよい。例の燃料粒子151A~Nは、TRISO燃料粒子又はBISO燃料粒子などの被覆された燃料粒子を含むが、燃料粒子151A~Nは、被覆されていない燃料粒子を含むこともある。
【0021】
[0046]図1Aの左側には、反転燃料減速材ブロック103Aが描かれており、高温マトリックス152の切取断面が、高温マトリックス152の内部、並びに高温マトリックス152中に埋め込まれた燃料粒子151A~Nを示している。反転燃料減速材ブロック103Aは、この例では円柱形状として示されているが、反転燃料減速材ブロック103Aは、様々な異なる幾何学的形状に形成することができる。例えば、反転燃料減速材ブロック103Aは、例えば多角形(例えば、立方形)、球形、又は他の形状のタイルとすることができ、他の形状には、平面、非球面、球面(例えば、円柱、円錐、四角錐面)、これらの組み合わせ、又はこれらの一部分(例えば、これらの切頭部分)が含まれ得る。代替又は追加として、反転燃料減速材ブロック103Aは、平面、非球面、又は球面などの正則曲面とは異なって、厳格な半径方向寸法を有しないもう1つの自由曲面を含むことができる。別の例は後の図に現れる。
【0022】
[0047]一例として、反転燃料減速材ブロック103Aは、反転燃料減速材ブロック103Aの外側周辺を形成するための、不連続な複数の横方向切子面を含むことができる。本明細書で用いられる「不連続」とは、横方向切子面全部で形成された外側周辺が連続する丸い(例えば、円形又は楕円形の)外周部を形成しないことを意味する。外側周辺は、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。本明細書で用いられる「自由曲面」は、平面、又は非球面若しくは球面(例えば、円柱、円錐、二次曲面)などの正則曲面とは異なって、厳格な半径方向寸法を有しない。
【0023】
[0048]TRISO燃料粒子151A~Nは、1、600℃を超える温度での応力又は核分裂ガス圧力に起因して割れることがないように設計されており、したがって、最悪の事故シナリオにおいても核燃料を内部に封じ込めることができる。TRISO燃料粒子151A~Nは、高温ガス冷却炉(HTGR)で使用するように、且つ軽水炉の温度よりもはるかに高い温度で機能するように設計されている。TRISO前駆体物質粒子151A~Nは、1500℃未満では破損することが極めて少ない。さらに、封止材料152が存在することが、放射性生成物放出に対するさらなる強固な障壁になる。
【0024】
[0049]いくつかの実施態様では、核燃料は、高温マトリックス内部に埋め込まれた双構造等方性(BISO)燃料粒子から構成された燃料コンパクトを含む。さらに別の実施態様では、核燃料は、TRIZO燃料粒子として知られているTRISOの変形物から構成された燃料コンパクトを含む。TRIZO燃料粒子では、TRISO燃料粒子の炭化ケイ素層を炭化ジルコニウム(ZrC)に置き換えている。代替として、TRIZO燃料粒子は、TRISO燃料粒子の典型的な被覆と、燃料核周囲の追加の薄いZrC層被覆とを含み、この薄いZrC層被覆は、次にTRISO燃料粒子の典型的な被覆で取り囲まれる。TRISO燃料粒子のそれぞれは、多孔性炭素緩衝層に取り囲まれた燃料核と、内側熱分解炭素層と、二元炭化物層(例えば、SiCのセラミック層又は耐火性金属炭化物層)と、外側熱分解炭素層とを含むことができる。TRISO燃料粒子の耐火性金属炭化物層は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル、炭化ハフニウム、ZrC-ZrB複合材料、ZrC-ZrB-SiC複合材料、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。高温マトリックスは、TRISO燃料粒子の二元炭化物層と同じ材料で形成することができる。
【0025】
[0050]炭化ケイ素マトリックス中に分散してコンパクトな円筒形の核燃料を形成するTRISO燃料粒子についての説明が、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの以下の特許及び刊行物に提示されている:2016年3月29日発行の米国特許第9,299,464号、名称「Fully Ceramic Nuclear fuel and Related Methods」;2018年7月24日発行の米国特許第10,032,528号、名称「Fully Ceramic Micro-encapsulated(FCM)fuel for CANDUs and Other Reactors」;2018年10月23日発行の米国特許第10,109,378号、名称「Method for Fabrication of Fully Ceramic Microencapsulation Nuclear Fuel」;2017年4月11日発行の米国特許第9,620,248号及び2019年11月12日発行の米国特許第10,475,543号、名称「Dispersion Ceramic Micro-encapsulated(DCM)Nuclear Fuel and Related Methods」;2020年1月23日発行の米国特許出願公開第2020/0027587号、名称「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」;及び2020年2月25日発行の米国特許第10,573,416号、名称「Nuclear Fuel Particle Having a Pressure Vessel Comprising Layers of Pyrolytic Graphite and Silicon Carbide」。これらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。これらのUltra Safe Nuclear Corporationの特許に記載されているように、核燃料は、円筒形状の核燃料コンパクトを生成するように炭化ケイ素マトリックス内部に埋め込まれたTRISO燃料粒子から構成される、円筒形燃料コンパクト又はペレットを含むことができる。円筒形状の核燃料コンパクトを形成するように炭化ジルコニウムマトリックス中に分散されたTRISO、BISO、又はTRIZO燃料粒子についての説明は、2021年1月7日に公開されたワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの米国特許出願公開第2021/0005335号、名称「Processing Ultra High Temperature Zirconium Carbide Microencapsulated Nuclear Fuel」に提示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
[0051]燃料粒子151Aは、内部核及び少なくとも1つの被覆層から形成される。核は、炭化ウラン(UCx)、二酸化トリウム(ThO)、ウラン酸化物(例えば、UO、UCO、安定化UO)、一窒化ウラン(UN)、ウランモリブデン(UMo)合金、ウランジルコニウム(UZr)合金、二ケイ酸三ウラン(USi)、ホウ化ウラン(UB)、二ホウ化ウラン(UB)、ウランガドリニウム炭化物窒化物(UGdCN)、ウランジルコニウム炭化物窒化物(UZrCN)、ウランジルコニウム炭化物(UZrC)、ウラン三炭化物(UC)、ウランジルコニウムニオブ炭化物(UZrNbC)、炭素核中の溶融燃料(すなわち、浸潤核)、複合材料(例えば、二酸化ウランモリブデン(UOMo)合金、窒化ウラン/二ケイ酸三ウラン(UN/USi)、又は二ケイ酸三ウラン/二ホウ化ウラン(USi/UB))、ドーパント(例えば、酸化クロム(Cr))、他の核分裂性燃料及び肥沃燃料、又はこれらの任意の組み合わせから形成することができる。核は、球状とすること、複合材料とすること、又はナノファイバーから形成することができる。
【0027】
[0052]燃料粒子151A~Nのそれぞれは、内部核を取り囲む多孔性炭素緩衝層と、内側熱分解炭素層と、二元炭化物層(例えば、SiCのセラミック層又は耐火性金属炭化物層)と、外側熱分解炭素層とを含むことができ、各層が少なくとも1つの被覆層を構成する。燃料粒子151A~Nの耐火性金属炭化物層は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル、炭化ハフニウム、ZrC-ZrB複合材料、ZrC-ZrB-SiC複合材料、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。燃料粒子151A~Nは、燃料粒子151A~Nの比質量偏差を高めるための複数のサイズ集団(例えば、100マイクロメートル、700マイクロメートル、2000マイクロメートル)を含む、100~2000マイクロメートルの間とすることができる。
【0028】
[0053]少なくとも1つの被覆層は、炭化ピリジン(PyC)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、炭化ニオブ(NbC)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、炭化ホウ素(BC)、β崩壊窒化ケイ素(β-Si)、SiAlONセラミックス、又はこれらの任意の組み合わせから形成することができる。
【0029】
[0054]高温マトリックス152は、炭化ケイ素(SiC)から形成することができ、SiCは、保存場所条件での空気及び水の存在下で、さらには原子炉107の温度でも優れた化学的安定性を有する。SiCが十分に高性能でない場合には、炭化ジルコニウム(ZrC)などの別の高温マトリックス152材料を使用することもできる。高温マトリックス152の材料のいくつかの例には、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、酸化マグネシウム(MgO)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、NbC、TiC、TaC、TiN、ジルコニウム(Zr)、TaC、BC、β-Si、SiAlONセラミック、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、ステンレス鋼、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0030】
[0055]減速材要素150Aは、グラファイト、水素化ジルコニウム(ZrH)、水素化イットリウム(YH)、知られている複合減速材、鋼缶内の知られている減速材、又はSiC-SiCマトリックス複合材料などの任意の他のタイプのクラッディングから形成することができる。減速材要素150Aは、保護物質で被覆することができ、又は、反転燃料減速材ブロック103Aが、減速材要素150Aの構造格納容器として機能することができる。複合減速材は、減速材要素150Aを冷却材から保護することができ、2相減速材用の構造格納容器として機能することができる。複合減速材は、低減速材料及び高減速材料を含む2つ以上の減速材から形成される。高減速材料は低減速材料に比べて高い中性子減速能を有する。低減速材料は、炭化ケイ素(SiC)又は酸化マグネシウム(MgO)の減速マトリックスを含み、高減速材は、その減速マトリックス内に分散され、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)又はこれらの化合物を含む。このような複合減速材は、保護を反転燃料減速材ブロック103Aに依拠しない。このような複合減速材は、減速材の球体を密封するとともに原子炉心101内の貴重な容積を占めるマトリックスを作成するために、MgO、SiC、又はZrCなどの意図的且つ付加的な構造上及び非核の材料を使用しており、したがって、そのような複合減速材を減速材要素150A内に使用することを回避することは有益であり得る。
【0031】
[0056]図1Aの反転燃料減速材ブロック103Aは、減速材要素150A又はブロック用の空洞又は減速材開口部131Aを収容するように付加的に製造されている。燃料粒子が燃料開口部又は燃料チャネル内に入れられている従来の黒鉛減速材ブロックの代わりに、反転燃料減速材ブロック103Aでは、減速材要素150Aが減速材開口部131A又は減速材チャネル内部に入れられることが可能である。さらに、減速材要素150Aは、反転燃料減速材ブロック103Aの減速材開口部131A内に密封することができ、1つ又は複数のキャップ155が1つ又は複数の減速材開口部131Aの上に配置される。減速材要素150Aを反転減速材燃料ブロック103A内に密封することによって、従来の減速材ブロックが燃料粒子をいかなる外部の種からも保護する、従来の減速材ブロックとは対照的に、反転燃料減速材ブロック103A(及びその結果として構成燃料粒子151A~N)が減速材要素をいかなる外部の種からも保護する。減速材要素150Aを反転燃料減速材ブロック103A内に密封することが、反転燃料減速材ブロック103Aに二重の使途を持たせて、熱発生燃料並びに減速材要素150A保護層として作用する。
【0032】
[0057]状況によっては、反転燃料減速材ブロック103A内に減速材要素150Aを「密封」することは、減速材要素150Aから反転燃料減速材ブロック103Aを介してあらゆる外部の種又は冷却材まで、絶対真空バリアを設けることを構成し得るが、それにもかかわらず、減速材要素150Aは、反転燃料減速材ブロック103Aが、流れ出た液体冷却材への減速材要素150Aの意図的又は偶発的な曝露を防止するならば、反転燃料減速材ブロック103A内に十分に「密封」され得る。
【0033】
[0058]加えて、減速材要素150Aを反転燃料減速材ブロック103A内に密封することは特に有利であるが、減速材要素150Aの接液面積を単に減少させることも有益である。化学気相堆積(CVD)SiCなどの薄い被覆もまた、ある程度の保護を施すために使用することができる。反転燃料減速材ブロック103Aは接液材料の数を低減させるので、溶融塩、空気、二酸化炭素(CO)、窒素(N)、水素(H)、液体金属、又は有機液体などの多くの適合する冷却剤がある。反転燃料減速材ブロック103Aはまた、エアブレシングラムジェット、宇宙炉及び宇宙における核熱推進システムのような、高性能原子炉107の用途を見出すこともできる。
【0034】
[0059]燃料粒子151A~N及び減速材要素150Aを含む反転燃料減速材ブロック103Aを作り出すには、3D付加製造、焼結(無加圧、熱間静水圧圧縮成形、放電プラズマ焼結を含む)、機械加工、又は化学気相浸透(CVI)などの、セラミックマトリックス製造の多くの異なる方法が使用されてよい。しかし、付加製造及びCVIを用いなければ反転燃料減速材ブロック103Aを製造するのが困難なことがあるので、3D付加製造及びCVIを利用する製造プロセスを考察する。このような製造プロセスではまず、反転燃料減速材ブロック103Aのブロック基部199A~B及び1つ又は複数のブロック壁198を製造する。ブロック基部199A~B及びブロック壁198は、燃料粒子151A~N用の空洞と、減速材要素150A用の別個の空洞又は減速材開口部131Aとを備えて形を成す。この図示の例では、燃料粒子151A~N用の空洞は、おおよそ燃料粒子151A~Nのサイズであり、反転燃料減速材ブロック全体にわたって確率的に分布しているが、燃料粒子151A~Nは、一様に分布すること、又は反転燃料減速材ブロック103A全体にわたって複数の行、列、面、又は他のパターンの形で分布することもできる。特に、一列中などの、1つ又は複数の連続する容積部に分布する場合、燃料粒子151Aは、1つ又は複数の連続する容積部の形状に適合する追加のコンパクト材料中にさらに保存することができる。さらに詳細には、このステップは、炭化ケイ素の粉末供給原料を提供することと、次いで、粉末供給原料の連続する層の上に結合剤を選択的に堆積させて、30重量%を超える炭化ケイ素からなる寸法的に安定した物体を製造することとを含むことができる。
【0035】
[0060]ブロック基部199A~B及びブロック壁198を製造することは、バインダジェッティングを使用する3D付加製造によって行うことができるが、ブロックの他の付加製造法又は従来の製造法も実施可能である。反転燃料減速材ブロック103Aは、使用される材料に適している任意のタイプの付加製造法(例えば、セラミック用のバインダジェッティング、又は金属及びセラミック用のレーザベースのシステム製造)を使用して形成することができる。燃料粒子151A~N用の空洞が反転燃料減速材ブロック103A内に形成されると、次に、燃料粒子151A~Nがその空洞内部に入れられる。
【0036】
[0061]次いで、燃料粒子151A~N及び減速材要素150Aを固定するための2つの異なる方法がある。第1の方法は、その結果が図1の反転燃料減速材ブロック150Aを構成しており、減速材要素が減速材料からなる大きいモノリシック要素である場合に使用されることが多く、以下のように実施される。まず、CVIを使用して燃料粒子151A~Nの周囲に高温マトリックス152を生成する。減速材開口部131Aは、このCVIプロセスの間保持される。次に、減速材要素150Aが、反転燃料減速材ブロック103A内の高温マトリックス152中の減速材開口部131A内部に入れられる。最後に、減速材開口部131Aは、高温マトリックス152接合技法、ねじ付きキャップを使用して密封され、又は追加のCVIで、さらなる又は別の材料を堆積させて封止を形成することができる。
【0037】
[0062]第2の方法は、順序が第1の方法と異なる。第2の方法では、CVIが実施される前に、減速材要素150Aが減速材開口部131A内部に入れられる。この第2の方法は、減速材要素150Aが、潜在的に燃料粒子151A~Nと同じかそれよりも小さい、多くのより小さい減速材要素に分割される場合に使用することができる。これらの例における減速材開口部131Aは、減速材要素のサイズに合致しており、したがって、燃料粒子151A~Nの空洞と同じかそれよりも小さくてよい。このような減速材要素150Aは、機械加工の労力を最小化するために、小さい球(100~2000マイクロメートル)からマクロサイズの棒又は角柱までの多くの異なる形状を有することができる。最後に、CVIプロセスで、燃料粒子151A~Nと減速材要素150A又は複数の要素の両方の周囲に高温マトリックス152を生成する。第2の方法は本質的に、燃料粒子151A~Nと減速材要素150Aの粒子とを同時に備えて形成された反転燃料減速材ブロック103Aをもたらす。減速材要素150A用の大きい露出空洞として現れる減速材開口部131Aの代わりに、減速材要素150A粒子(それゆえに、粒子が存在する減速材開口部131A)は、高温マトリックス152中に埋め込まれる。減速材要素150A粒子に対して燃料粒子151A~Nの凝集は、CVI処理ステップの前に、どのようにして燃料粒子151A~N及び減速材要素150A粒子が最初に印刷空洞の中に入れられるかによって制御される。
【0038】
[0063]CVIプロセスは、CVI原子炉内に反転燃料減速材ブロック103Aを配置し、CVI原子炉内の温度を上昇させることにより、反転燃料減速材ブロック103Aを結合解除することを含み得る。次に、CVIプロセスは、CVI原子炉内に、ケイ素及び炭化水素を含む前駆体ガスを高温の間に導入することを含むことができ、それにより、その高温で前駆体ガスが分解すると、炭化ケイ素が反転燃料減速材ブロック103Aに浸透し、反転燃料減速材ブロック103Aを高密度化外層で密封する。反転燃料減速材ブロック103Aは、実質的に純粋な炭化ケイ素微細構造と、85重量%を超える炭化ケイ素の密度による高耐熱性とを含むことになる。
【0039】
[0064]反転燃料減速材ブロック103Aは、化学的制御、製造補助、及び特性調整の目的で、中性子毒及び酸素ゲッタなどの毒物を含み得る。
【0040】
[0065]図1Bは、複数の減速材開口部131B~M、冷却材通路141A~B、及び制御ドラムチャネル135の用意がある六角形反転燃料減速材ブロック103Bの等角図である。この例では、燃料減速材反転ブロックは、高温マトリックス152中に多くの減速材開口部131B~Mを備えて製造されている。減速材要素150B~Mが減速材開口部131B~Mに挿入されると、燃料減速材反転ブロック103Bは、高温マトリックス152接合技法、ねじ付きキャップを使用して密封され、又は追加のCVIでさらなる又は別の材料を堆積させて、封止又はキャップ155を形成することができる。
【0041】
[0066]燃料減速材反転ブロック103Bは、制御ドラムチャネル135をさらに含み、制御ドラム115が、燃料減速材反転ブロック103Bと、燃料減速材反転ブロック103Bが内部に入れられているどれでもすべての原子炉心101との反応度を制御するために、燃料減速材反転ブロック103B内に長手方向に配置されており、且つ、高温マトリックス152に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと減速材要素150B~Mとを横方向に取り囲んでいる。制御ドラム115は、反射体材料を制御ドラム115の外面の第1の部分に含み、吸収体材料を制御ドラム115の外面の第2の部分に含む。可燃性毒物は、緊急時に原子炉心101を停止させるために、燃料減速材反転ブロック103B内に取り込まれることがある。
【0042】
[0067]制御ドラム115は、燃料減速材反転ブロック103B内の中性子密度、原子炉心101、及び原子炉107出力レベルを他の原子炉システムの制御棒と同様に調節する。制御ドラム115を備えた燃料減速材反転ブロック103Bはまた、制御ドラム115を含まない原子炉心101内の他の燃料減速材反転ブロック103Aの反応度を制御することもできる。原子炉心101内の中性子束を増大又は低減させるために、制御ドラム115が反応度制御システムによって回転されるのに対し、制御棒は、反応度制御システムによって原子炉心101に挿脱される。制御ドラム115は、原子炉心101の反応度を調整するのに挿脱ではなく回転されるので、制御ドラム115は、長手方向の位置が恒久的に固定されている。すなわち、制御ドラム115は、原子炉心101又は燃料減速材反転ブロック103Bの内外へ移動しない。制御棒チャネルの位置ずれ又は閉塞に起因して、制御棒が原子炉心101に完全に挿入されないことがあるというリスクが存在するが、制御ドラム115を利用することにより、これらのリスクを有利に低減させることができる。しかしながら、制御棒は、制御ドラムチャネル135の代わりに制御棒チャネルとともに利用することもできる。
【0043】
[0068]制御ドラム115の外面の第1の部分は反射体材料を含み、この反射体材料は一般に、高い弾性散乱中性子断面積を持つ材料から形成されている。反射体材料が炉心中心156に向かって内向きになると、中性子束が増加して、原子炉心101の反応度及び動作温度が上昇する。制御ドラム115の外面の第2の部分は、中性子毒物から形成され得る吸収体材料を含む。中性子毒とは、自由中性子を吸収するのに特に適している高い吸収中性子断面積を持つ同位体又は分子のことである。吸収体材料が原子炉心156に向かって内向きになると、原子炉心101の中性子束が減少して、原子炉心101の反応度及び動作温度が低下する。
【0044】
[0069]1つ又は複数の制御ドラム115を実施する原子炉システム100は、1つの制御ドラム115又は複数の制御ドラム115を選択的に回転させて、吸収体材料を炉心中心156に向けて中性子束及び動作温度を低下させること、又は反射体材料を炉心中心156に向けて中性子束及び動作温度を上昇させることができる。したがって、原子炉システム100は、原子炉心101の中性子束を、それゆえに原子炉心101内の反転燃料減速材ブロック103Bの中性子束を、選択的に増減させることができる。中性子束を迅速に減少させ、減少した中性子束の状態を達成するために、原子炉システム100は、制御ドラム115を回転させて制御ドラム115の吸収材を反転燃料減速材ブロック103Bの燃料粒子151A~Nに最大限さらすことにより、より多くの自由中性子を吸収させ、中性子束を減少させることができる。燃料粒子151A~Nの分布が、反転燃料減速材ブロック103B全体にわたって正規分布ではないことがあり、制御ドラム115が、反転燃料減速材ブロック103B内の中心に位置しないことがあり、又は、複数の反転燃料減速材ブロック103N~Zにわたる燃料粒子151A~Nの密度が、制御ドラム115に対して正規分布でないことがあることにより、制御ドラム115から見て、燃料粒子151A~Nが比較的高密度の領域と、燃料粒子151A~Nが比較的低密度の領域とが生成される。中性子束を急速に増加させ、増加した中性子束の状態を達成するために、原子炉システム100は、制御ドラム115を回転させて、制御ドラム115の反射体材料を反転燃料減速材ブロック103の燃料粒子151A~Nに最大限にさらすことにより、より多くの自由中性子を反射させ、中性子束を増加させることができる。中間調整を行うために、又は中性子束の連続的なレベルを維持するために、原子炉心100は、制御ドラム115を回転させて、制御ドラム115の吸収体材料を反転燃料減速材ブロック103Bの燃料粒子151A~Nに部分的にさらすことができる。
【0045】
[0070]反射体材料を部分的又は全面的にさらすことにより、原子炉107を臨界状態に移行させることができ、持続された臨界状態が活性状態を誘導することになる。反転燃料減速材ブロック103Bを収容する原子炉107が活性状態にあるとき、原子炉107は最適な量の熱を生み出しており、したがって、電気、並びに原子炉心101から漏れ得る高レベルの自由中性子を生み出している。
【0046】
[0071]吸収体材料が部分的若しくは全面的にさらされると、又は燃料粒子151A~Nが実質的に完全に消費されると、原子炉107が未臨界状態に移行することになり、持続された未臨界状態が不活性状態を誘導する。反転燃料減速材ブロック103Bを収容する原子炉107が不活性状態にあるとき、原子炉107は生み出す熱が最小量であり、電気を生み出していない可能性が非常に高い。不活性状態の原子炉107はまた、原子炉心101から漏れる可能性のある自由中性子を生み出す量が最小である。
【0047】
[0072]図1Cは、個々の減速材開口部131N~Zと、反転燃料減速材ブロック103N~Zの整合する角部にある冷却材通路141N~Zとを備える、六角形反転燃料減速材ブロック103N~Zの反転燃料減速材ブロックアレイ113を実施する原子炉心101を含む、原子炉システム100の断面図である。
【0048】
[0073]反転燃料減速材ブロック103N~Zは、図1Aの反転燃料減速材ブロック103Aと、図1Bの反転燃料減速材ブロック103Bとの特徴を共有する。反転燃料減速材ブロック103N~Zは、図1Bの反転燃料減速材ブロック103Bの六角面形状を有し、それぞれが個々の減速材開口部131N~Zを、図1Bの反転燃料減速材ブロック103Bのように複数の減速材開口部131B~Mではなく、図1Aの反転燃料減速材ブロック103Aのように各反転燃料減速材ブロック103N~Zにおいて実施している。反転減速材ブロック103A~Bと減速材開口部150A~Mの両方の形式は、必要に応じて原子炉システム100の設計によって組み合わされてよい。
【0049】
[0074]この反転燃料減速材ブロックアレイ113では、反転燃料減速材ブロック103N~Zの接合部に冷却材通路141N~Zが形成される。冷却材通路141N~Zは、各反転燃料減速材ブロック103N~Zのブロック壁198を完全に包含してもよく、又は、反転燃料減速材ブロック103N~Zの様々な空洞が、冷却材通路141N~Zの助けになるように(好ましくは製造時に)導入されてよい。冷却材通路に関するさらなる詳細は、後の図に現れる。この設計及び後の図の冷却材通路の設計では、燃料粒子151A~Nが、減速材要素150Bを介して間接的に熱を伝達するのではなく、冷却材と直接接触することにより、運転中の燃料温度を低下させることができる。その結果、冷却材経路長は、典型的な熱中性子炉の5という冷却材減速材比を基準として、5分の1以下まで短縮することができる。
【0050】
[0075]原子炉システム100の原子炉107は、圧力容器160を有する。圧力容器160の外側は、減速流体(例えば、水又はより複雑な流体)中に浸漬されたモジュール式原子炉が受ける腐食又は酸化をさらに低減するために、被覆が施されることがあり、又は特定の金属若しくは化学物質を用いて鍛造若しくは製造されることがある。
【0051】
[0076]原子炉107は、圧力容器160の内部に設置された反射体140(例えば、外側反射体領域)を含む。反射体140は、反転燃料減速材ブロックアレイ113を横方向に取り囲む複数の反射体ブロックを含む。
【0052】
[0077]原子炉107は、制御された核連鎖反応が起こってエネルギーが放出される、原子炉心101を含む。原子炉心101内の中性子連鎖反応は臨界的であり(各核分裂核からの単一の中性子が別の核分裂核の核分裂をもたらす)、この連鎖反応は制御されなければならない。制御された核分裂を維持することによって、原子炉システム100は熱エネルギーを生み出す。一例の実施態様では、原子炉システム100はガス冷却高温原子炉107として実施される。しかし、原子炉システム100は、ヒートパイプ原子炉、溶融塩冷却原子炉、ヘリウム冷却原子炉、黒鉛減速原子炉、塩中燃料原子炉、超臨界CO原子炉、(開放又は閉鎖)ブレイトンサイクル原子炉、又はナトリウム冷却高速原子炉としても実施することができる。特に、原子炉システム100は、ガス冷却黒鉛減速原子炉、ガス冷却黒鉛減速原子炉よりも高い熱中性子束を有するフッ化物塩冷却高温原子炉、又はガス冷却黒鉛減速原子炉よりも速い中性子束を有するナトリウム高速原子炉と一緒に実施することができる。
【0053】
[0078]核燃料は、核分裂生成物を核燃料自体の内部に保持して、核廃棄物を直ちに処分する必要性を低減させる。被覆された燃料粒子はまた、商業用軽水炉燃料と比較して、核拡散リスクも低減させる。
【0054】
[0079]図示のように、原子炉心101は、絶縁体要素からなる絶縁体要素アレイを含む。絶縁体要素は、熱伝導率が低い高温熱絶縁体材料から形成される。高温熱絶縁体材料は、低密度の炭化物、金属炭化物、金属酸化物、又はこれらの組み合わせを含むことができる。より具体的には、高温熱絶縁体材料は、低密度SiC、安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、低密度ZrC、低密度炭素、又はこれらの組み合わせを含む。減速材要素103A~Nは、低温固相減速材から形成される。低温固相減速材は、MgH、YH、ZrH、CaH、ZrO、CaO、BeO、BeC、Be、濃縮炭化ホウ素、11BC、CeH、LiH、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0055】
[0080]この原子炉システム100では、原子炉107は、複数の制御ドラム115及び反射体140を含むことができる。制御ドラム115は、制御ドラム115を回転させることによって原子炉心101の反応度を変化させるために、絶縁体要素の絶縁体要素アレイ及び反転燃料減速材ブロックアレイ113を横方向に取り囲むことができる。制御ドラム115は、圧力容器160の外周部又は周縁部に存在することができ、原子炉心101の絶縁体要素102A~N及び反転燃料減速材ブロックアレイ113の周りに周方向に配置することができる。制御ドラム115は、運転中の中性子密度及び原子炉出力レベルを選択的に調節するために、反射体140の領域、例えば、原子炉コア101を直接に取り囲む反射体ブロックから形成された外側反射体領域に設置することができる。例えば、制御ドラム115は円筒形状とすることができ、外面の第1の部分上の反射体材料(例えば、ベリリウム(Be)、酸化ベリリウム(BeO)、BeSiC、BeMgO、Alなど)と、外面の第2の部分(例えば、外周部)上の吸収体材料との両方から形成される。
【0056】
[0081]反射体材料及び吸収体材料は、制御ドラムの円筒形状の両側、例えば外周部の一部分に置くことができる。反射体材料は、円筒又はその切頭部分として形成された反射体基板を含むことができる。吸収体材料は、吸収体プレート又は吸収体被覆を含むことができる。吸収体板又は吸収体被覆は、制御ドラム115の円筒形状を形作るように反射体基板に配置される。例えば、吸収体板又は吸収体被覆は、制御ドラム115を形作るように反射体材料から形成された反射体基板を覆う。反射体材料が円筒の切頭部分である場合、吸収体材料は、円筒形状を形作るように切頭部分と相補的な本体形状になっている。
【0057】
[0082]制御ドラム115は、円筒面又は他の円錐面を形作って双曲面、錐面、楕円面、放物面などの二次曲面を形成するために、連続面、例えば、丸みを帯びた面、非球面、又は球面から形成することができる。代替又は追加として、制御ドラム115は、複数の不連続面から形成することができる(例えば、立方体、又は六角柱などの他の多面体を形成するために)。本明細書で用いられる場合、「不連続な」とは、表面が全体として、制御ドラム115Aの丸い(例えば、円形又は楕円形の)外周部である連続する外面を形成していないことを意味する。
【0058】
[0083]円筒形状の制御ドラム115を回転させると、制御ドラム115の吸収体材料(例えば、炭化ホウ素、BC)の原子炉心101との近接度が変化して、中性子の反射量が変わる。反射体材料が原子炉心101に向かって内向きであり、吸収体材料が外向きである場合、中性子は散乱(反射)して原子炉心101の中へ戻り、より多くの核分裂が生じ、原子炉心101の反応度が増大する。吸収体材料が原子炉心101に向かって内向きであり、反射体材料が外向きである場合、中性子は吸収され、さらなる核分裂が阻止されて、原子炉心101の反応度が低下する。
【0059】
[0084]例えば、外側反射体領域として図示されている中性子反射体140は、最も外側の反転燃料減速材ブロック103N~Zと制御ドラム115との間、並びに制御ドラム115の周囲に配置された充填材要素とすることができる。反射体140は、最も外側の反転燃料減速材ブロック103N~Zと任意選択的なバレル(例えば、ベリリウムから形成される)との間に配置される減速材から形成することができる。反射体140は、六角形又は部分的に六角形の形状の充填材要素を含むことができ、中性子減速材(例えば、酸化ベリリウム、BeO)から形成することができる。必要ではないが、原子炉107は、原子炉心101の絶縁体要素102A~N及び反転燃料減速材ブロックアレイ113、並びに反射体140を含む束ねられた集合体を取り囲むための、任意選択的なバレル(図示せず)を含むことができる。制御ドラム115は、圧力容器160の外周部に存在することができ、反射体140内に散在又は配置すること、例えば、反射体140を形成する充填材要素(例えば、反射体ブロック)のサブセットを取り囲むことができる。
【0060】
[0085]圧力容器160は、アルミニウム合金、炭素複合材料、チタン合金、放射線弾性SiC複合材料、ニッケル基合金(例えば、Inconel(商標)又はHaynes(商標))、又はこれらの組み合わせから形成することができる。圧力容器160及び原子炉システム100は、反転燃料減速材ブロック103N~Zの冷却材通路141N~Zを通って流れる減速材冷却材を移送するシリンダ、配管、及び貯蔵タンクを含む、他の構成要素で構成することもできる。冷却材通路141N~Zは、原子炉心101内で冷却材を通過させるためのチャネル又は孔などの、平らにされたリング形(例えば、O形)の開口部である。冷却材通路141N~Zは、減速材要素150N~Zとの接触を最小限にすることにより減速材要素150N~Zの濡れを最小限にするのが好ましい。
【0061】
[0086]冷却材通路141N~Zを流れる冷却材としては、ヘリウム、フッ化リチウム(LiF)から形成されるFLiBe溶融塩、フッ化ベリリウム(BeF2)、ナトリウム、He、HeXe、CO2、ネオン、又はHeNを含むことができる。
【0062】
[0087]従来の角柱型ガス炉では、黒鉛ブロックが冷却材チャネル及び燃料チャネルを備えて機械加工される。燃料ペレットは、ヘリウムバックフィルと一緒に燃料チャネルに挿入され、黒鉛キャップで密封される。運転中、ヘリウムは黒鉛冷却チャネルを通過して原子炉を冷却する。減圧又は浸水が起きると、空気が炉心に入って場合によっては、黒鉛火災としても知られる黒鉛の自己持続酸化をまねく可能性がある。黒鉛は、空気又は水にさらされた場合に、エネルギーを放出する酸化反応を受けて、炉心の形状を内部で支え一部の原子炉では燃料を保護する、その構造的完全性が損なわれる。黒鉛との化学反応もまた、新たな種をさらなる安全上のリスクを伴って生じさせ得る。この問題は、小石状床ガス炉に関連する問題の1つである黒鉛ダストが存在することによって悪化する。図1Cの原子炉システム100は、この化学的リスクを低減させる。
【0063】
[0088]図2は、三角形燃料減速材ブロック203A~Nから形成された反転燃料減速材ブロックアレイ213の等角図であり、三角形燃料減速材ブロック203A~Nは、減速材開口部内の個々の減速材要素250A~N、並びに冷却材を流すための切子状の頂点を含む。
【0064】
[0089]反転燃料減速材ブロックアレイ213は、図13の反転燃料減速材ブロックアレイ113と機能的及び化学的に非常に類似している。しかし、六角形反転燃料減速材ブロック103N~Zではなく、三角形反転燃料減速材ブロック203A~Nが利用されている。加えて、反転燃料減速材ブロック203A~Nは、冷却材を流すための専用の反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cを有する。図1Cの例では、冷却材は、反転燃料減速材ブロック103N~Zの6つのブロック壁198のそれぞれの上に流すことができる。この例では、三角形反転燃料減速材ブロック203A~Nは、その壁198が2つのサブグループに、すなわち反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cと、反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cとに分割されている。所与の反転燃料減速材ブロック203Aの反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cは、近傍の反転燃料減速材ブロック203Bの反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cと接触する。しかし、第1の反転燃料減速材ブロック203Aの反転燃料減速材ブロック切子面254Aと、第2の反転燃料減速材ブロック203Bの反転燃料減速材ブロック切子面254Bと、第3の反転燃料減速材ブロック203Cの反転燃料減速材ブロック切子面254Cとはすべて、個々の点で出会う。これら3つの反転燃料減速材切片254A~C Nは、互いに隣接して、共同で冷却材通路241Aを形成する。反転燃料減速材ブロックアレイ213の個々の反転燃料減速材ブロック203A~Nは、単一の冷却材通路241Aを完全には包含しないが、反転燃料減速材ブロックアレイ213は共同で、複数の冷却材通路241A~Nを包含する。
【0065】
[0090]反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cは、観察者には、多数の切子面を有するカットされた宝石のように曲面又は平坦面として見える。「切子面」は、平坦な部分(例えば、平面)であることも、湾曲した部分(例えば、非球面又は球面)であることもある。複数の反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cは、反転燃料減速材ブロック203Aの不連続な(例えば、不均一な又はギザギザの)外側周辺を形成する。反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cは、外側周辺が分割されている外側周辺の部分を含む。境界面壁は、図1Aのブロック壁198のように1つの切子面(単一切子状)から、又は燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cのように複数の切子面(多切子状)から、形成することができる。
【0066】
[0091]本明細書で用いられる「不連続な」とは、反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cと反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cとの全体で形成される外側周辺が、連続する丸い(例えば、円形又は楕円形の)外周部を形成しないことを意味する。反転燃料減速材ブロック203Aの外側周辺は、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。本明細書で用いられる「自由曲面」は、平面、又は非球面若しくは球面(例えば、円柱、円錐、二次曲面)などの正則曲面とは異なって、厳格な半径方向寸法を有しない。
【0067】
[0092]図3A図3Dは、反転燃料減速材ブロック303A~D、O~Zの代替構造様式を示す。化学的及び機能的に、これらの反転燃料減速材ブロック303A~D、O~Zは、以前に提示された反転燃料減速材ブロック103A、B、N~Z、203A~Nと実質的に類似している。図3Aは、減速材要素350Aと、その減速材要素350Aの上下に積層された2プレート反転燃料減速材ブロック303A~Bとを含む、層状反転燃料減速材ブロックアレイ313の側面図である。この例では、プレート又はウェハが、反転燃料減速材ブロック303Bからなる下部層又はプレートを最初に配置することによって形成される。次に、減速材要素350A層又はプレートが、反転燃料減速材ブロック303Bからなる下部層の上に配置される。最後に、反転燃料減速材ブロック303Bからなる上部層又はプレートが減速材要素350Aの上に配置される。この例では、反転減速材ブロック303A~B又は減速材要素350Aの中に冷却材チャネルが形成されていない。そうではなく、冷却材は、連続する流体のように、上部反転燃料減速材ブロック303Aの上の平面冷却材通路341Aを通って流れ、また、下部反転燃料減速材ブロックの下の別の平面冷却材通路341Bを通って流れる。冷却材は、減速材要素350Aと直接接触しない。図示されていないが、減速材要素350Aの側面は、追加の反転燃料減速材ブロックによって、又は原子炉107の圧力容器160によって冷却材から保護することができる。図3Bは、図3Aの反転燃料減速材ブロックアレイ313Aの等角図であり、冷却材がどのように反転燃料減速材ブロックアレイ313Aの上部の上を流れ、冷却材が減速材要素350Aに接触する可能性がある側面の周りには流れないのかをさらに示す。
【0068】
[0093]図3Cは、反転燃料減速材ブロック303C内に冷却材通路C~Nが形成されたモノリシック反転燃料減速材ブロック303Cの等角図である。複数の冷却材通路341C~Nは、冷却材を燃料粒子151A~Nに近接して流すために、反転燃料減速材ブロック303C内に直に形成されている。この特定の反転燃料減速材ブロック303Cは、減速材要素を含まないことがあり、又は、図1Aについての説明で提示された燃料粒子151A~N及び減速材要素150Aを固定するための第2の方法と同様の方法を用いて、任意の減速材要素が反転燃料減速材ブロック303C内に埋め込まれる。
【0069】
[0094]図3Dは、冷却材通路341O~Zを備えた減速材要素350Bと、冷却材通路341O~Zをライニングする複数のライナ反転燃料減速材ブロック303O~Zと、減速材要素350Bを取り囲む境界反転燃料減速材ブロック303Dとを含む、反転燃料減速材ブロックアレイ313Dの等角図である。この例は、任意の既存の減速材が減速材要素350Bの形であることを除いて、図3Cの例に類似している。減速材要素350Bには、冷却材を流すための冷却材通路341O~Zが形成されている。減速材要素350Bの濡れを防止するために、各冷却材通路341O~Zは相補減速材要素303O~Zでライニングされている。この相補減速材要素303O~Zは、全体的に太いストロー様に形成されており、減速材要素350Cを濡れから保護しながらも、冷却材が冷却材通路341O~Zを通って流れることを可能にする。減速材要素350B全体はまた、減速材要素350Bの側面の濡れ又は埃から保護するために、隣接する反転燃料減速材ブロック303Dによって取り囲まれている。
【0070】
[0095]図3A図3Dのそれぞれは、三次元物体を表している。必要に応じて、減速材要素350A~Bが露出している三次元物体のどの面も、絶縁体又は圧力容器などの非反応性材料によって覆われてよく、又は追加の反転燃料減速材ブロックによって覆われるか、若しくはキャップが付けられてよい。図3A図3Dはまた、減速材要素350A~Bが単純な円柱である必要がないことを示す。特に、減速材要素350Bは複雑な部片であり、長方形の平行六面体外側が減速材境界面壁390を形成しており、減速材切子面391O~Zが、減速材要素350Bを濡れから保護するためのスリーブを形成する反転燃料減速材ブロック303O~Zと整合している。減速材境界面壁390は、反転燃料減速材境界面壁253A~Cが取り得る任意の形又は構造を取ることができ、減速材切子面391O~Zは、反転燃料減速材切子面254A~Cが取り得る任意の形又は構造を取ることができる。
【0071】
[0096]図4Aは、減速材要素450Aの割合が大きい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体414Aの断面図である。この図では、比較的大きい割合の減速材要素450Aを保持するために、反転燃料減速材ブロック403A~Cは、三角形減速材要素450Aの頂点に保持される。図の各反転燃料減速材ブロック403A~Cは、冷却材通路441A~Cを収容する。
【0072】
[0097]図4Bは、図4Aに描かれた複数の三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fから形成されたキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体413の等角図である。図4Aの図は、冷却材と燃料と減速材の間の機能的関係を示している。図4Bは、そうではなく、物理的要素同士がどのように相互作用するかを示している。まず、特定の反転燃料減速材サブ集合体414Aは、3つの完全な冷却材通路441A~Cを保持していない。そうしないで、各燃料減速材サブ集合体414A~Fは、3つの冷却材通路441A~Cの6分の1ずつを保持している。反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fが組み合わされて反転燃料減速材ブロック集合体413を形成するとき、これらの6分の1冷却材通路441Aのそれぞれが出会って、完全な冷却材通路441Aを形成する。反転燃料減速材ブロック集合体413が、少なくとも2つの他の反転燃料減速材ブロック集合体413に隣接して取り付けられると、6つの6分の1冷却材通路441Bが出会うところに別の完全な冷却材通路441Bが形成される。このパターンは、図1Cの反転燃料減速材ブロック103N~Zの六角形パターンと類似しており、各反転燃料減速材ブロック集合体413は、図2の反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~C及び反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cを六角形配向でさらに実施する。各反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fは、キャップ155付きで描かれており、このキャップは、減速材要素450A~Fを濡れ及び埃から保護する。
【0073】
[0098]図4Cは、図4Bのキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体413のキャップ155が除去されている状態の等角図である。図4Cは、反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fのそれぞれが、冷却材通路441Aの冷却材通路壁142の6分の1のみを提供することをより明確に描いている。図4Cはまた、反転燃料減速材ブロックによって(除去されたキャップ155以外の)すべての側面で保護されている、内部減速材要素450A~Fを描いている。
【0074】
[0099]図5Aは、減速材要素450A~Cの割合が小さい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の断面図である。この図で、減速材要素450Aの比較的小さい割合を保持するために、反転燃料減速材ブロック503は、より小さい減速材要素550を包含し、図4Aの反転燃料減速材ブロックサブ集合体413Aと同様に、三角形反転燃料減速材ブロック503の頂点に3つの6分の1冷却材通路541A~Cを保持する。
【0075】
[0100]図5Bは、図5Aに描かれているキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の等角図である。図5Cは、図5Bのキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514のキャップ155が除去されている状態の等角図である。原子炉心101は、完全な反転燃料減速材ブロック集合体を形成するために、並びに完全な反転燃料減速材ブロックアレイを形成するために、反転燃料減速材ブロックサブ集合体514と反転燃料減速材ブロックサブ集合体414Aの両方を含むことができる。形状及び冷却材通路に互換性があるので、2つの反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A、514は、交換しても原子炉システム100の要件を満たすことができる。
【0076】
[0101]図6Aは、3つの追加切込み冷却材通路641A~Cを備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の断面図である。切込み冷却材通路641A~Cは、任意の形状又は配向であってよく、直径及び容積が異なってもよい。切込み冷却材通路641A~Cは、反転燃料減速材ブロック503の中に「切り込む」ことができるが、そうしないで、反転燃料減速材ブロック503の製造時に切込み冷却材通路641A~Cを形成することが好ましい。図6Bは、追加の切込みリング冷却材通路を備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。図6Bは、切込み冷却材通路641Dをリング形又はトロイド形にできること、及び切込み冷却材通路641Dが複数の冷却材通路壁142を形成できることをさらに示す。
【0077】
[0102]図7A図7Cは、反転燃料減速材ブロックを組み合わせて作ることができる、異なるブロックサブ集合体714A~Cの例である。図7Aは、テーパ付き三角形反転燃料減速材ブロックから構成された、二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Aの図である。図7Bは、多面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Bの図であり、これもテーパ付き三角形反転燃料減速材ブロックから構成されている。図7Cは、切頭二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Cの図である。この反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Cは、異なるサイズのテーパ付き五角形反転燃料減速材ブロックから構成されている。これらの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cは中実であってよく、反転燃料減速材ブロックが反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cの中心まで延びている。代替として、反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cは、切頭テーパ付き反転燃料減速材ブロックを有してもよく、したがって、反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cは部分的に中空であってよく、1つ又は複数の排気冷却材チャネルを介して熱を内部で排出する冷却材リザーバが封じられている。
【0078】
[0103]図7D図7Fは、図7A図7Cの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cを組み合わせる際に使用できる、異なる反転燃料減速材ブロック703A~Cの例である。図7Dは、図7A図7Bの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Bなどの、1つ又は複数の三角形面からなる多面体内のテーパ付き三角形反転燃料減速材ブロック703Aの図である。
【0079】
[0104]図7Eは、凸状上部キャップと凹状下部キャップ155を備えたテーパ付き円形反転燃料減速材ブロック703Bの図である。この反転燃料減速材ブロック703Bは、原子炉システム100のニーズに合わせるのにキャップ155の形状を任意としてもよいことをさらに例示している。さらに、図は、キャップ155が、平坦又は他の任意の平面形状に加えて、凹状又は凸状であってもよいことを示している。図7Fは、テーパ付き冷却材通路741を備えたテーパ付き五角形反転燃料減速材ブロック703Cの図である。この反転燃料減速材ブロック703Bは、図7Cの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Cなどの、1つ又は複数の五角形面からなる多面体に適合する。さらに、冷却材通路741は、冷却材通路741の直径が、冷却材通路の全長にわたって均一である必要がないことを例示している。特に、多面体形状の原子炉心101を実施する場合、多面体の所与の半径における冷却材通路741表面積と反転燃料減速材ブロック体積の比を保持するには、冷却材通路741を、多面体形状の原子炉心101の中心よりも多面体形状の原子炉心101の表面に近い方で広げることが有利であり得る。
【0080】
[0105]図8は、三角形反転燃料減速材ブロック203A~Nから形成された反転燃料減速材ブロックアレイ213の等角図であり、三角形燃料減速材ブロック203A~Nは、図2と同様に、個々の減速材要素250A~N、並びに冷却材を流すための反転燃料減速材ブロック切子面254A~C角部を含む。しかし、ここでは、減速材開口部は、原子炉周辺157により近接している反転燃料減速材ブロック203A~N内の方が、原子炉中心156により近接している反転燃料減速材ブロック内の方よりも大きい。原子炉心101は、原子炉中心156の方が高温であることが望ましいことが多いので、反転燃料減速材ブロック203A~Nに対する減速材要素250A~Nの割合が低いのに対し、過剰な中性子束を低減するために、原子炉心周辺157に向かって、反転燃料減速材ブロック203A~Nに対する減速材要素250A~Nの割合が高くなることが多い。
【0081】
[0106]図9Aは、酸素(O)900による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフである。図9Bは、水(HO)901による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフである。両方とも、所与の原子炉温度における冷却材圧力(言い換えると電気エネルギー)が改善されたことを示している。
【0082】
[0107]図10は、高温におけるSiC酸化機構の図である。
【0083】
[0108]したがって、図1図10は、高温マトリックス152と、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、少なくとも1つの減速材要素150Aを入れるための、空洞などの少なくとも1つの減速材開口部131Aとを含む、反転燃料減速材ブロック103Aを描いている。
【0084】
[0109]いくつかの例では、反転燃料減速材ブロック103Bは、連結幾何形状パターンの基部形状を含む。反転燃料減速材ブロック103Bは、角柱、円柱、多面体、その切頭部分、又はこれらの組み合わせとして形成することができる。反転燃料減速材ブロック203Aは、複数のブロック境界面壁253A~Cを含むことができ、この複数のブロック境界面壁253A~Cは、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。
【0085】
[0110]反転燃料減速材ブロック103Bは、冷却材を流すために高温マトリックス152中に形成された少なくとも1つの冷却材通路141A~Bを含むことができる。少なくとも1つの冷却材通路は、冷却材通路壁142を含むことができ、少なくとも1つの冷却材通路壁142は、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。反転燃料減速材ブロック103Bは、キャップ155を含むことができ、キャップ155は、平面、曲面、又はこれらの組み合わせである。
【0086】
[0111]複数の燃料粒子151A~Nは、被覆された燃料粒子を含むことができ、被覆された燃料粒子は、三構造等方性(TRISO)燃料粒子、二構造等方性(BISO)燃料粒子、又はTRIZO燃料粒子を含むことができ、高温マトリックス152は、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0087】
[0112]図1図10は、複数の減速材要素150N~Zと、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103N~Zの反転燃料減速材ブロックアレイ113とを含む原子炉心101をさらに描いている。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103N~Zは、高温マトリックス152と、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、冷却材を流すために高温マトリックス152中に形成された少なくとも1つの冷却材通路141A~Bとを含む。
【0088】
[0113]いくつかの例では、第1の減速材要素350Aは、第1の反転燃料減速材ブロック303Aと第2の反転燃料減速材ブロック303Bとの間に積層される。
【0089】
[0114]図1図10は、原子炉心101及び反応度制御システムを含む原子炉107をさらに描いており、反応度制御システムは、1つ若しくは複数の制御ドラム115、1つ若しくは複数の制御棒、又はこれらの組み合わせを含む。
【0090】
[0115]いくつかの例では、反転燃料減速材ブロックアレイ113の第1の体積は、原子炉心101の総体積の1%~20%である。複数の減速材要素150N~Zの第2の体積は、原子炉心101の総体積の70%~99%とすることができる。原子炉心101は、冷却材を流すための複数の冷却材通路141A~Bを含むことができ、複数の冷却材通路141A~Bの第3の体積は、原子炉心101の総体積の0%~10%である。減速材要素350Bのうちの1つ又は複数は、1つ又は複数の減速材境界面壁390と1つ又は複数の減速材切子面391O~Zとを含む切頭多面体形状とすることができ、1つ又は複数の減速材切子面391O~Zは、それぞれの反転燃料減速材ブロック303O~Zに隣接する。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック203A~Nは、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~C及び1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cを含む、切頭多面体形状とすることができる。少なくとも1つの冷却材通路241A~Nは、もう1つの反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cから形成され、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック203A~Nは、少なくとも1つの減速材要素250A~Nを入れるための、空洞などの少なくとも1つの減速材開口部231A~Nを含むことができる。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック503は、冷却材を流すための1つ又は複数の切込み冷却材通路641A~Dを含むことができる。
【0091】
[0116]原子炉心101は、多面体形状又は切頭多面体形状を含む複数の反転燃料減速材ブロック703A~Cをさらに含むことができ、反転燃料減速材ブロック703A~Cの多面体形状又は切頭形状は、多角形又は切頭多面体のサブ集合体713A~Cを形成する。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック703Bは、凸多面体形状とすることができる。
【0092】
[0117]図1図10は、炉心中心156及び炉心周辺157を含む原子炉心101をさらに描いており、少なくとも1つの炉心減速材要素250Mを含む炉心中心反転燃料減速材ブロック203Mは、炉心周辺157よりも炉心中心156に近接しており、少なくとも1つの周辺減速材要素250Nを含む炉心周辺反転燃料減速材ブロック203Nは、炉心中心156よりも炉心周辺157に近接しており、炉心中心反転燃料減速材ブロック203Mと少なくとも1つの炉心減速材要素250Mの炉心体積割合は、炉心周辺反転燃料減速材ブロック203Nと少なくとも1つの周辺減速材要素250Nの周辺体積割合とは異なる。
【0093】
[0118]保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書及び後に続く出願経過に照らして解釈された場合に、特許請求の範囲に使用されている言語の通常の意味に合致する限り広く、且つすべての構造的及び機能的等価物を包含するものであり、また、そのように解釈されるべきである。ただし、特許請求の範囲はいずれも、特許法第101条、第102条、又は第103条の要件を満たさない主題を包含するものでも、そのように解釈されるべきものでもない。そのような主題のいかなる意図しない受諾も、ここでは否認される。
【0094】
[0119]本明細書で用いられる用語及び表現は、特定の意味が本明細書に別に規定されている場合を除き、対応するそれぞれの探究及び研究領域に関してそのような用語及び表現に与えられる通常の意味を有することを理解されたい。第1及び第2などの関係を示す用語は、一方の実体又は行為を他方の実体又は行為から単に区別するために、必ずしもそのような実体又は行為間の実際の関係又は順序を要求又は示唆することなく、用いられることがある。用語の「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「収容している(containing)」、「収容する(contain)」、「収容する(contains)」、「ともに(with)」、「~から形成される(formed of)」又はその他のあらゆる変異体は、要素若しくはステップのリストを備える、又は含むプロセス、方法、物品、若しくは装置が、それらの要素又はステップのみを含むのではなく、明示的にリストされていない他の要素若しくはステップ又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有の要素若しくはステップを含み得るように、非排他的な包含に及ぶものである。「1つの(a)」又は「1つの(an)」が先行する要素は、さらなる制約条件がなければ、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置に追加の同一の要素が存在することを排除しない。
【0095】
[0120]加えて、上記の「詳細な説明」では、開示を簡素化する目的で、様々な特徴が様々な例にまとめられていることが分かる。この開示の方法は、特許請求された例が、各請求項で明確に列挙されたものよりも多い特徴を必要とするという意図を表していると解釈されるべきものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲が表するように、保護されるべき本主題は、いずれかの単一の開示された例の特徴のすべてにあるとは言えない。すなわち、添付の特許請求の範囲は、本明細書では「詳細な説明」に組み込まれており、各請求項がそれ自体で、別個に特許請求された主題として存立している。
【0096】
[0121]以上では、最良のモード及び/又は他の例或いはその両方と考えられるものについて説明したが、これらに様々な修正を加えることができること、本明細書に開示された主題は様々な形及び例で実施できること、並びに、主題は多数の用途に適用でき、その一部だけについて本明細書で説明したことを理解されたい。添付の特許請求の範囲によって、本概念の真の範囲に入るありとあらゆる修正形態及び変形形態を特許請求することが意図されている。

図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9A
図9B
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温マトリックスと、
前記高温マトリックスの内部に埋め込まれた複数の燃料粒子と、
少なくとも1つの減速材要素を入れるための少なくとも1つの減速材開口部と、
を備える反転燃料減速材ブロック。
【請求項2】
前記反転燃料減速材ブロックが連結幾何形状パターンの基部形状を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項3】
前記反転燃料減速材ブロックが、角柱、円柱、多面体、その切頭部分、又はこれらの組み合わせとして形成される、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項4】
前記反転燃料減速材ブロックが複数のブロック境界面壁を含み、
前記複数のブロック境界面壁が、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項5】
冷却材を流すために前記高温マトリックス中に形成された少なくとも1つの冷却材通路を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項6】
前記少なくとも1つの冷却材通路が冷却材通路壁を含み、
前記少なくとも1つの冷却材通路壁が、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む、請求項5に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項7】
前記反転燃料減速材ブロックがキャップを含み、前記キャップが、平面、曲面、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項8】
前記複数の燃料粒子が、被覆された燃料粒子を含む、請求項1に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項9】
前記被覆された燃料粒子が、三構造等方性(TRISO)燃料粒子、二構造等方性(BISO)燃料粒子、又はTRIZO燃料粒子を含み、
高温マトリックスが、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の反転燃料減速材ブロック。
【請求項10】
複数の減速材要素と、
1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックの反転燃料減速材ブロックアレイと、を含む原子炉心であって、前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、
高温マトリックスと、
前記高温マトリックスの内部に埋め込まれた複数の燃料粒子と、
冷却材を流すために前記高温マトリックス中に形成された少なくとも1つの冷却材通路と、を含む、原子炉心。
【請求項11】
第1の減速材要素が、第1の反転燃料減速材ブロックと第2の反転燃料減速材ブロックとの間に積層される、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項12】
請求項10に記載の原子炉心と、
反応度制御システムと、を備える原子炉であって、前記反応度制御システムが、
(a)1つ若しくは複数の制御ドラム、
(b)1つ若しくは複数の制御棒、又は
(c)これらの組み合わせ
を含む、原子炉。
【請求項13】
前記反転燃料減速材ブロックアレイの第1の体積が前記原子炉心の総体積の1%~20%である、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項14】
前記複数の減速材要素の第2の体積が前記総体積の70%~99%である、請求項13に記載の原子炉心。
【請求項15】
冷却材を流すための複数の冷却材通路をさらに備え、前記複数の冷却材通路の第3の体積が前記総体積の0%~10%である、請求項14に記載の原子炉心。
【請求項16】
前記減速材要素のうちの1つ又は複数が、1つ又は複数の減速材境界面壁と1つ又は複数の減速材切子面とを含む切頭多面体形状であり、
前記1つ又は複数の減速材切子面が、それぞれの反転燃料減速材ブロックに隣接する、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項17】
1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック境界面壁及び1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック切子面を含む、切頭多面体形状であり、
前記少なくとも1つの冷却材通路が、前記1又は複数の反転燃料減速材ブロック切子面から形成され、
前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、少なくとも1つの減速材要素を入れるための少なくとも1つの減速材開口部を含む、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項18】
前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが、前記冷却材を流すための1つ又は複数の切込み冷却材通路を含む、請求項17に記載の原子炉心。
【請求項19】
多面体形状又は切頭多面体形状を含む複数の反転燃料減速材ブロックをさらに含み、
前記反転燃料減速材ブロックの前記多面体形状又は前記切頭多面体形状が、多角形又は切頭多面体のサブ集合体を形成する、請求項10に記載の原子炉心。
【請求項20】
前記1つ又は複数の反転燃料減速材ブロックが凸多面体形状である、請求項10に記載の原子炉心。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2021年6月4日に出願された米国特許仮出願第63/196,901号、名称「Fuel-Moderator Inversion for Safer Nuclear Reactors」の優先権を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本主題は、電力発生及び推進のための原子炉システム及び原子炉の例、例えば、発電又は核熱推進のための陸上原子炉の例に関する。本主題は、反転燃料減速材ブロックアレイを含む原子炉心構造も包含する。
【背景技術】
【0003】
[0003]従来の原子炉では、原子炉内の黒鉛ブロックが、冷却材チャネル並びに燃料チャネルとともに機械加工される。燃料ペレットは、ヘリウム充填とともに燃料チャネルに挿入され、黒鉛キャップで密封される。原子炉の運転中、ヘリウムが黒鉛冷却チャネルを通過して原子炉を冷却する。減圧中又は浸水中には、空気が炉心に入って場合によっては、黒鉛火災としても知られる黒鉛の自己持続酸化をまねく可能性がある。黒鉛は、空気又は水にさらされた場合に、エネルギーを放出する酸化反応を受ける可能性があり、その酸化プロセスで黒鉛の構造的完全性が損なわれる。さらに、黒鉛火災中には、黒鉛との意図しない化学反応もまた、さらなる安全リスクを生じさせる新たな放射性化学種をも生成する可能性がある。黒鉛火災の結果は、黒鉛ダストが存在することによってさらに悪化する。黒鉛は明らかに、かなりの化学的リスクをもたらす。
【0004】
[0004]黒鉛は、炉心の形状を内部で支持するとともに、一部の原子炉では燃料を保護しているので、通常の原子炉における黒鉛の損傷は、燃料の完全性のみならず、原子炉自体に悪影響を及ぼす。従来の原子炉では、燃料は最も脆弱な構成要素であるので、照射損傷及び膨張を受けて崩壊することが多いことにより、核分裂生成物の放出を防ぐための大規模な積み重ねられた格納が必要になる。しかし、燃料ペレットの安定性に対する核燃料技術の改良がなされてきた。特に、炭化ケイ素マトリックス中に分散してコンパクトな円筒形の核燃料を形成する三構造等方性(TRISO)燃料粒子が、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの以下の特許及び刊行物に記載されている:2016年3月29日発行の米国特許第9,299,464号、名称「Fully Ceramic Nuclear fuel and Related Methods」;2018年7月24日発行の米国特許第10,032,528号、名称「Fully Ceramic Micro-encapsulated(FCM)fuel for CANDUs and Other Reactors」;2018年10月23日発行の米国特許第10,109,378号、名称「Method for Fabrication of Fully Ceramic Microencapsulation Nuclear Fuel」;2017年4月11日発行の米国特許第9,620,248号及び2019年11月12日発行の米国特許第10,475,543号、名称「Dispersion Ceramic Micro-encapsulated(DCM)Nuclear Fuel and Related Methods」;2020年1月23日発行の米国特許出願公開第2020/0027587号、名称「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」;及び2020年2月25日発行の米国特許第10,573,416号、名称「Nuclear Fuel Particle Having a Pressure Vessel Comprising Layers of Pyrolytic Graphite and Silicon Carbide」。これらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0005】
[0005]それゆえに、原子炉システム100並びに原子炉ブロック及びブロックアレイには、さらなる改善の余地がある。高温ガス炉(HTGR)の主な懸念事項が、空気及び水との黒鉛の化学反応性、並びに黒鉛ダストの放出である燃料減速材反転(FMI)燃料ブロック(すなわち、反転燃料減速材ブロック)の概念では、この問題を、燃料を使用しながら、黒鉛又は他の減速材を外部の種から保護することによって解決し、以て、原子炉107の復元力及び機能性を高める。
【0006】
[0006]本明細書では、反転燃料減速材ブロック103Bソリューション(図1B参照)が説明されており、このソリューションは、原子炉心101内の水又は空気の存在に対する減速材要素150B~Mの復元力を向上させる。反転燃料減速材ブロック103Bは、水及び空気に対して不浸透性であり、比較的損傷しやすい減速材要素150B~Mを保護する。この保護により、黒鉛又は他の減速材によってもたらされる化学的相互作用リスクが低減又は除去されて、原子炉107がより安全になる。
【0007】
[0007]加えて、反転燃料減速材ブロック103Bは流動冷却材に直接さらすことができるので、燃料粒子151A~Nが減速材ブロックを介して間接的に熱を流動冷却材に伝達する従来の原子炉とは対照的に、原子炉心101は、臨界運転中に達する燃料温度を低くすることができる。FMI技術は、燃料粒子151A~Nの運転温度を低下させ、これが、燃料粒子151A~N並びに高温マトリックス152にかかる熱応力及び環境応力を低減させて、燃料堅牢性及び核分裂生成物保持を改善する。
【0008】
[0008]反転燃料減速材ブロック103Bソリューションは、冷却材通路141A~Bの容積を小さくすることを可能にして、より小型の原子炉心101、又はより長寿命の原子炉心101も可能にすることができる。さらに、減速材要素150B~Mの表面が、いくつかの反転燃料減速材ブロック103Bソリューションでは冷却材によって濡れないので、潜在的に空気を含む、代替の冷却流体が可能である。これらの小さい冷却材通路141A~N容積は、低減された冷却材チャネル容積とともに、環境空気の吸気及び排気によって空気吸気サイクルを実施する空気吸気原子炉を可能にすることができ、より低コストでより効率的な原子炉を可能にすることができる。
【0009】
[0009]反転燃料減速材ブロック103Bソリューションでは、反転燃料減速材ブロック103Aの形の核燃料は、原子炉心101の中で最も高性能の構成要素である。この核燃料は、空気及び水とほとんど反応せず、高い原子変位数(DPA)及びDPA率の状態で安定であり、高温で安定である。所与の減速材要素150Aを保護するための反転燃料減速材ブロック103Aの形の核燃料を使用することにより、黒鉛の化学反応性及びダストの問題に対処し、その所与の減速材要素150Aに関連するあらゆる反応性の問題に確かに対処する。反転燃料減速材ブロック103Aソリューションは、原子炉心101構成要素を保護し、冷却材までの熱経路長を短縮する。
【0010】
[0010]一例では、反転燃料減速材ブロック103A(図1A参照)は、高温マトリックス152と、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、少なくとも1つの減速材要素150Aを入れるための、空洞などの少なくとも1つの減速材開口部131Aとを含む。
【0011】
[0011]第2の例では、原子炉心101は、複数の減速材要素150N~Zと、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103A~Nの反転燃料減速材ブロックアレイ113とを含む。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103A~Nは、高温マトリックス152と、高温マトリックス152中に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、冷却材を流すために高温マトリックス152中に形成された少なくとも1つの冷却材通路141N~Zとを含む。
【0012】
[0012]これらの例の付加的な目的、利点及び新規の特徴は、以下の説明中に一部記述され、一部は以下の説明及び添付の図面を検討することにより当業者には明らかになり、又は例を製造又は操作することによって知ることができる。本主題の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている方法論、手段及び組み合わせによって実現し達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013]図面の図は、限定ではなく単なる例として、1つ又は複数の実施態様を示す。図で、同様の参照数字は、同一又は同様の要素を指す。
図1A】高温マトリックスから形成された、減速材要素用の減速材開口部を設けている、一般的な反転燃料減速材ブロックの4分の3切取図である。
図1B】複数の減速材開口部、冷却材通路、及び制御ドラムチャネルの用意がある六角形反転燃料減速材ブロックの等角図である。
図1C】個々の減速材開口部と、反転燃料減速材ブロックの整合する角部の冷却材通路とを備えた六角形反転燃料減速材ブロックを実施する原子炉心を含む、原子炉システムの断面図である。
図2】三角形燃料減速材ブロックから形成された反転燃料減速材ブロックアレイの等角図であり、三角形燃料減速材ブロックは、個々の減速材開口部、並びに冷却材を流すための切子状の角部を含む。
図3A】減速材要素と、その減速材要素の上下に積層された2プレート反転燃料減速材ブロックとを含む、層状反転燃料減速材ブロックアレイの側面図である。
図3B図3Aの反転燃料減速材ブロックアレイの等角図である。
図3C】反転燃料減速材ブロック内に冷却材通路が形成されたモノリシック反転燃料減速材ブロックの等角図である。
図3D】冷却材通路を備えた減速材要素と、冷却材通路をライニングする複数のライナ反転燃料減速材ブロックと、減速材要素を取り囲む境界反転燃料減速材ブロックとを含む、反転燃料減速材ブロックアレイの等角図である。
図4A】減速材要素の割合が大きい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図4B図4Aに描かれた複数の三角形反転燃料減速材サブ集合体から形成されたキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体の等角図である。
図4C図4Bのキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体のキャップが除去されている状態の等角図である。
図5A】減速材要素の割合が小さい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図5B図5Aに描かれているキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の等角図である。
図5C図5Bのキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体のキャップが除去されている状態の等角図である。
図6A】3つの追加切込み冷却材通路を備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図6B】追加の切込みリング冷却材通路を備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体の断面図である。
図7A】二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体の図である。
図7B】多面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体の図である。
図7C】切頭二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体の図である。
図7D】1つ又は複数の三角形面からなる多面体内のテーパ付き三角形反転燃料減速材ブロックの図である。
図7E】凸状上部キャップ及び凹状下部キャップを備えたテーパ付き円形反転燃料減速材ブロックの図である。
図7F】テーパ付き冷却材通路を備えたテーパ付き五角形反転燃料減速材ブロックの図である。
図8】三角形燃料減速材ブロックから形成された反転燃料減速材ブロックアレイの等角図であり、三角形反転燃料減速材ブロックは、個々の減速材開口部、並びに冷却材を流すための切子状の角部を含
図9A】酸素(O)による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフである。
図9B】水(HO)による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフである。
図10】高温におけるSiC酸化機構の図である。
【0014】
パーツリスト
100 原子炉システム
101 原子炉心
103A~Z 燃料減速材反転ブロック
113 反転燃料減速材ブロックアレイ
115A~N 制御ドラム
131A~Z 減速材開口部
135A~N 制御ドラムチャネル
140 反射体
141A~B、N~Z 冷却材通路
142 冷却材通路壁
150A~Z 減速材要素
151A~N 燃料粒子
152 高温マトリックス
155 キャップ
156 原子炉心中心
157 原子炉心周辺
160 圧力容器
198A~F ブロック壁
199A~B ブロックベース
203A~N 反転燃料減速材ブロック
213 反転燃料減速材ブロックアレイ
231A~N 減速材開口部
253A~C 反転燃料減速材ブロック境界面壁
254A~C 反転燃料減速材ブロック切子面
241A~N 冷却材通路
250A~N 減速材要素
303A~D、O~Z 反転燃料減速材ブロック
313A プレート反転燃料減速材ブロックアレイ
313C モノリシック反転燃料減速材ブロックアレイ
313D ライニングされた反転燃料減速材ブロックアレイ
341A~Z 冷却材通路
350A~B 減速材要素
390 減速材境界面壁
391O~Z 減速材切子面
403A~C 反転燃料減速材ブロック
413 六角形反転燃料減速材ブロック集合体
414A~F 三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体
441A~C 冷却材通路
450A~F 減速材要素
503 反転燃料減速材ブロック
514 三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合
41A~D 切込み冷却材通路
703A テーパ付き三角形反転燃料減速材ブロック
703B テーパ付き円形反転燃料減速材ブロック
703C テーパ付き五角形反転燃料減速材ブロック
714A 二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体
714B 多面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体
71C 切頭二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体
741 テーパ付き冷却材通路
90によるSiCの計算された酸化モード領域のグラフ
90OによるSiCの計算された酸化モード領域のグラフ
1000 高温におけるSiC酸化機構の図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0040]以下の詳細な説明では、関連する教示の完全な理解が得られるように多数の具体的な詳細が例として示される。しかしながら、本教示がこのような詳細なしに実施され得ることが当業者には明らかなはずである。他の例では、よく知られた方法、手順、構成要素、及び/又は回路は、本教示の態様を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細な説明なしに、比較的高いレベルで説明されている。
【0016】
[0041]本明細書で用いられる「結合された」という用語は、任意の論理的又は物理的接続を指す。特にことわらない限り、結合された要素又はデバイスは、必ずしも互いに直接接続されている必要はなく、中間構成要素、要素などによって分離されていてもよい。
【0017】
[0042]特にことわらない限り、本明細書に記載されるあらゆる測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、角度、及びその他の仕様は、添付の特許請求の範囲に記載されるものを含めて、厳密なものではなく近似的なものである。このような量は、それが関連する機能と、関係する技術分野において慣習的なものとに合致する妥当な範囲を有するものである。例えば、明示的に特にことわらない限り、パラメータ値などは、記載された量から±5%又は±10%程度変動することがある。「おおよそ」又は「実質的に」という用語は、パラメータ値などが記載された量から±10%まで変化することを意味する。
【0018】
[0043]原子炉システム100、原子炉107、原子炉心101、反転燃料減速材ブロック103A~B、N~Z、203A~N、303A~D、O~Z、403A~C、503、703A~C、反転燃料減速材ブロックアレイ113、313A、C~D、反転燃料減速材ブロック集合体413、反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~F、514、714A~C、関連する構成要素、及び/又は図面のいずれかに示されたものなどの原子炉心101を組み込む任意の原子炉システム100は、例示及び考察の目的のために、単なる例として与えられている。特定の原子炉システム100の運転の際に、構成要素は、原子炉システム100の特定の適用例に適した他の方向、例えば、直立、横向き、又は他の任意の方向に向いていることがある。さらに、本明細書で用いられる範囲で、横方向、縦方向、上向き、下向き、上方、下方、最上方、最下方、及び側方などのいかなる方向の用語も単なる例として用いられており、任意の原子炉システム100の、又は本明細書で別に説明されるように構築された原子炉システム100の構成要素の、方向又は向きに関して限定していない。
【0019】
[0044]Aはアルファベットの最初の文字であり、Zはアルファベットの26番目の文字であるが、アルファベットの制限の故に、103、131、141、142などの参照番号に続く場合の「A~Z」、「A~N」、「B~M」、及び「N~Z」という呼称は、26個よりも多い同一の要素を指し得る。いくつかの要素は、読みやすくするために、機能の統一性をなお保持しながら、反転燃料減速材ブロックアレイ113とプレート反転燃料減速材ブロックアレイ313Aなど、形によって区別されている。
【0020】
[0045]次に、添付図面に示され、以下で論じられる例を詳細に参照する。図1Aは、高温マトリックス152から形成され減速材要素150A用の減速材開口部131Aを設けている、一般的な形状のトロイド反転燃料減速材ブロック103Aの4分の3切取図である。一般に、反転燃料減速材ブロック103A~Zは、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nを含む高温マトリックス152から形成される。図1Aの例では、燃料粒子151A~NはTRISO燃料粒子を含む。代替又は追加として、燃料粒子151A~Nは、双構造等方性(BISO)燃料粒子を含み得る。TRISO様被覆は、安全性への影響及び製造実現可能性に応じて、簡略化又は削除されてよい。例の燃料粒子151A~Nは、TRISO燃料粒子又はBISO燃料粒子などの被覆された燃料粒子を含むが、燃料粒子151A~Nは、被覆されていない燃料粒子を含むこともある。
【0021】
[0046]図1Aの左側には、反転燃料減速材ブロック103Aが描かれており、高温マトリックス152の切取断面が、高温マトリックス152の内部、並びに高温マトリックス152中に埋め込まれた燃料粒子151A~Nを示している。反転燃料減速材ブロック103Aは、この例では円柱形状として示されているが、反転燃料減速材ブロック103Aは、様々な異なる幾何学的形状に形成することができる。例えば、反転燃料減速材ブロック103Aは、例えば多角形(例えば、立方形)、球形、又は他の形状のタイルとすることができ、他の形状には、平面、非球面、球面(例えば、円柱、円錐、四角錐面)、これらの組み合わせ、又はこれらの一部分(例えば、これらの切頭部分)が含まれ得る。代替又は追加として、反転燃料減速材ブロック103Aは、平面、非球面、又は球面などの正則曲面とは異なって、厳格な半径方向寸法を有しないもう1つの自由曲面を含むことができる。別の例は後の図に現れる。
【0022】
[0047]一例として、反転燃料減速材ブロック103Aは、反転燃料減速材ブロック103Aの外側周辺を形成するための、不連続な複数の横方向切子面を含むことができる。本明細書で用いられる「不連続」とは、横方向切子面全部で形成された外側周辺が連続する丸い(例えば、円形又は楕円形の)外周部を形成しないことを意味する。外側周辺は、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。本明細書で用いられる「自由曲面」は、平面、又は非球面若しくは球面(例えば、円柱、円錐、二次曲面)などの正則曲面とは異なって、厳格な半径方向寸法を有しない。
【0023】
[0048]TRISO燃料粒子151A~Nは、1、600℃を超える温度での応力又は核分裂ガス圧力に起因して割れることがないように設計されており、したがって、最悪の事故シナリオにおいても核燃料を内部に封じ込めることができる。TRISO燃料粒子151A~Nは、高温ガス冷却炉(HTGR)で使用するように、且つ軽水炉の温度よりもはるかに高い温度で機能するように設計されている。TRISO燃料粒子151A~Nは、1500℃未満では破損することが極めて少ない。さらに、高温マトリックス152が存在することが、放射性生成物放出に対するさらなる強固な障壁になる。
【0024】
[0049]いくつかの実施態様では、反転燃料減速材ブロック103Aは、高温マトリックス152内部に埋め込まれた双構造等方性(BISO)燃料粒子を含む。さらに別の実施態様では、反転燃料減速材ブロック103Aは、TRIZO燃料粒子として知られているTRISOの変形物から構成された燃料コンパクトを含む。TRIZO燃料粒子では、TRISO燃料粒子の炭化ケイ素層を炭化ジルコニウム(ZrC)に置き換えている。代替として、TRIZO燃料粒子は、TRISO燃料粒子の典型的な被覆と、燃料核周囲の追加の薄いZrC層被覆とを含み、この薄いZrC層被覆は、次にTRISO燃料粒子の典型的な被覆で取り囲まれる。TRISO燃料粒子のそれぞれは、多孔性炭素緩衝層に取り囲まれた燃料核と、内側熱分解炭素層と、二元炭化物層(例えば、SiCのセラミック層又は耐火性金属炭化物層)と、外側熱分解炭素層とを含むことができる。TRISO燃料粒子の耐火性金属炭化物層は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル、炭化ハフニウム、ZrC-ZrB複合材料、ZrC-ZrB-SiC複合材料、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。高温マトリックス152は、TRISO燃料粒子の二元炭化物層と同じ材料で形成することができる。
【0025】
[0050]炭化ケイ素マトリックス中に分散してコンパクトな円筒形の核燃料を形成するTRISO燃料粒子についての説明が、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの以下の特許及び刊行物に提示されている:2016年3月29日発行の米国特許第9,299,464号、名称「Fully Ceramic Nuclear fuel and Related Methods」;2018年7月24日発行の米国特許第10,032,528号、名称「Fully Ceramic Micro-encapsulated(FCM)fuel for CANDUs and Other Reactors」;2018年10月23日発行の米国特許第10,109,378号、名称「Method for Fabrication of Fully Ceramic Microencapsulation Nuclear Fuel」;2017年4月11日発行の米国特許第9,620,248号及び2019年11月12日発行の米国特許第10,475,543号、名称「Dispersion Ceramic Micro-encapsulated(DCM)Nuclear Fuel and Related Methods」;2020年1月23日発行の米国特許出願公開第2020/0027587号、名称「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」;及び2020年2月25日発行の米国特許第10,573,416号、名称「Nuclear Fuel Particle Having a Pressure Vessel Comprising Layers of Pyrolytic Graphite and Silicon Carbide」。これらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。これらのUltra Safe Nuclear Corporationの特許に記載されているように、核燃料は、円筒形状の核燃料コンパクトを生成するように炭化ケイ素マトリックス内部に埋め込まれたTRISO燃料粒子から構成される、円筒形燃料コンパクト又はペレットを含むことができる。円筒形状の核燃料コンパクトを形成するように炭化ジルコニウムマトリックス中に分散されたTRISO、BISO、又はTRIZO燃料粒子についての説明は、2021年1月7日に公開されたワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの米国特許出願公開第2021/0005335号、名称「Processing Ultra High Temperature Zirconium Carbide Microencapsulated Nuclear Fuel」に提示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
[0051]燃料粒子151Aは、内部核及び少なくとも1つの被覆層から形成される。核は、炭化ウラン(UCx)、二酸化トリウム(ThO)、ウラン酸化物(例えば、UO、UCO、安定化UO)、一窒化ウラン(UN)、ウランモリブデン(UMo)合金、ウランジルコニウム(UZr)合金、二ケイ酸三ウラン(USi)、ホウ化ウラン(UB)、二ホウ化ウラン(UB)、ウランガドリニウム炭化物窒化物(UGdCN)、ウランジルコニウム炭化物窒化物(UZrCN)、ウランジルコニウム炭化物(UZrC)、ウラン三炭化物(UC)、ウランジルコニウムニオブ炭化物(UZrNbC)、炭素核中の溶融燃料(すなわち、浸潤核)、複合材料(例えば、二酸化ウランモリブデン(UOMo)合金、窒化ウラン/二ケイ酸三ウラン(UN/USi)、又は二ケイ酸三ウラン/二ホウ化ウラン(USi/UB))、ドーパント(例えば、酸化クロム(Cr))、他の核分裂性燃料及び肥沃燃料、又はこれらの任意の組み合わせから形成することができる。核は、球状とすること、複合材料とすること、又はナノファイバーから形成することができる。
【0027】
[0052]燃料粒子151A~Nのそれぞれは、内部核を取り囲む多孔性炭素緩衝層と、内側熱分解炭素層と、二元炭化物層(例えば、SiCのセラミック層又は耐火性金属炭化物層)と、外側熱分解炭素層とを含むことができ、各層が少なくとも1つの被覆層を構成する。燃料粒子151A~Nの耐火性金属炭化物層は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル、炭化ハフニウム、ZrC-ZrB複合材料、ZrC-ZrB-SiC複合材料、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。燃料粒子151A~Nは、燃料粒子151A~Nの比質量偏差を高めるための複数のサイズ集団(例えば、100マイクロメートル、700マイクロメートル、2000マイクロメートル)を含む、100~2000マイクロメートルの間とすることができる。
【0028】
[0053]少なくとも1つの被覆層は、炭化ピリジン(PyC)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、炭化ニオブ(NbC)、炭化チタン(TiC)、炭化タンタル(TaC)、窒化チタン(TiN)、炭化ホウ素(BC)、β崩壊窒化ケイ素(β-Si)、SiAlONセラミックス、又はこれらの任意の組み合わせから形成することができる。
【0029】
[0054]高温マトリックス152は、炭化ケイ素(SiC)から形成することができ、SiCは、保存場所条件での空気及び水の存在下で、さらには原子炉107の温度でも優れた化学的安定性を有する。SiCが十分に高性能でない場合には、炭化ジルコニウム(ZrC)などの別の高温マトリックス152材料を使用することもできる。高温マトリックス152の材料のいくつかの例には、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、酸化マグネシウム(MgO)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ホウ化ジルコニウム(ZrB)、NbC、TiC、TaC、TiN、ジルコニウム(Zr)、TaC、BC、β-Si、SiAlONセラミック、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、ステンレス鋼、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0030】
[0055]減速材要素150Aは、グラファイト、水素化ジルコニウム(ZrH)、水素化イットリウム(YH)、知られている複合減速材、鋼缶内の知られている減速材、又はSiC-SiCマトリックス複合材料などの任意の他のタイプのクラッディングから形成することができる。減速材要素150Aは、保護物質で被覆することができ、又は、反転燃料減速材ブロック103Aが、減速材要素150Aの構造格納容器として機能することができる。複合減速材は、減速材要素150Aを冷却材から保護することができ、2相減速材用の構造格納容器として機能することができる。複合減速材は、低減速材料及び高減速材料を含む2つ以上の減速材から形成される。高減速材料は低減速材料に比べて高い中性子減速能を有する。低減速材料は、炭化ケイ素(SiC)又は酸化マグネシウム(MgO)の減速マトリックスを含む。高減速材は、その減速マトリックス内に分散され、ベリリウム(Be)、ホウ素(B)又はこれらの化合物を含む。このような複合減速材は、保護を反転燃料減速材ブロック103Aに依拠しない。このような複合減速材は、減速材の球体を密封するとともに原子炉心101内の貴重な容積を占めるマトリックスを作成するために、MgO、SiC、又はZrCなどの意図的且つ付加的な構造上及び非核の材料を使用している。したがって、そのような複合減速材を減速材要素150A内に使用することを回避することは有益であり得る。
【0031】
[0056]図1Aの反転燃料減速材ブロック103Aは、減速材要素150A又はブロック用の空洞又は減速材開口部131Aを収容するように付加的に製造されている。燃料粒子が燃料開口部又は燃料チャネル内に入れられている従来の黒鉛減速材ブロックの代わりに、反転燃料減速材ブロック103Aでは、減速材要素150Aが減速材開口部131A又は減速材チャネル内部に入れられることが可能である。さらに、減速材要素150Aは、反転燃料減速材ブロック103Aの減速材開口部131A内に密封することができ、1つ又は複数のキャップ155が1つ又は複数の減速材開口部131Aの上に配置される。減速材要素150Aを反転減速材燃料ブロック103A内に密封することによって、従来の減速材ブロックが燃料粒子をいかなる外部の種からも保護する、従来の減速材ブロックとは対照的に、反転燃料減速材ブロック103A(及びその結果として構成燃料粒子151A~N)が減速材要素をいかなる外部の種からも保護する。減速材要素150Aを反転燃料減速材ブロック103A内に密封することが、反転燃料減速材ブロック103Aに二重の使途を持たせて、熱発生燃料並びに減速材要素150A保護層として作用する。
【0032】
[0057]状況によっては、反転燃料減速材ブロック103A内に減速材要素150Aを「密封」することは、減速材要素150Aから反転燃料減速材ブロック103Aを介してあらゆる外部の種又は冷却材まで、絶対真空バリアを設けることを構成し得るそれにもかかわらず、減速材要素150Aは、反転燃料減速材ブロック103Aが、流れ出た液体冷却材への減速材要素150Aの意図的又は偶発的な曝露を防止するならば、反転燃料減速材ブロック103A内に十分に「密封」され得る。
【0033】
[0058]加えて、減速材要素150Aを反転燃料減速材ブロック103A内に密封することは特に有利であるが、減速材要素150Aの接液面積を単に減少させることも有益である。化学気相堆積(CVD)SiCなどの薄い被覆もまた、ある程度の保護を施すために使用することができる。反転燃料減速材ブロック103Aは接液材料の数を低減させるので、溶融塩、空気、二酸化炭素(CO)、窒素(N)、水素(H)、液体金属、又は有機液体などの多くの適合する冷却剤がある。反転燃料減速材ブロック103Aはまた、エアブレシングラムジェット、宇宙炉及び宇宙における核熱推進システムのような、高性能原子炉107の用途を見出すこともできる。
【0034】
[0059]燃料粒子151A~N及び減速材要素150Aを含む反転燃料減速材ブロック103Aを作り出すには、3D付加製造、焼結(無加圧、熱間静水圧圧縮成形、放電プラズマ焼結を含む)、機械加工、又は化学気相浸透(CVI)などの、セラミックマトリックス製造の多くの異なる方法が使用されてよい。しかし、付加製造及びCVIを用いなければ反転燃料減速材ブロック103Aを製造するのが困難なことがあるので、3D付加製造及びCVIを利用する製造プロセスを考察する。このような製造プロセスではまず、反転燃料減速材ブロック103Aのブロック基部199A~B及びブロック壁198又はブロック壁198A~Nを製造する。ブロック基部199A~B及びブロック壁198は、燃料粒子151A~N用の空洞と、減速材要素150A用の別個の空洞又は減速材開口部131Aとを備えて形を成す。この図示の例では、燃料粒子151A~N用の空洞は、おおよそ燃料粒子151A~Nのサイズであり、反転燃料減速材ブロック103A全体にわたって確率的に分布している。しかし、燃料粒子151A~Nは、一様に分布すること、又は反転燃料減速材ブロック103A全体にわたって複数の行、列、面、又は他のパターンの形で分布することもできる。特に、一列中などの、1つ又は複数の連続する容積部に分布する場合、燃料粒子151A~Nは、1つ又は複数の連続する容積部の形状に適合する追加のコンパクト材料中にさらに保存することができる。さらに詳細には、このステップは、炭化ケイ素の粉末供給原料を提供することと、次いで、粉末供給原料の連続する層の上に結合剤を選択的に堆積させて、30重量%を超える炭化ケイ素からなる寸法的に安定した物体を製造することとを含むことができる。
【0035】
[0060]ブロック基部199A~B及びブロック壁198を製造することは、バインダジェッティングを使用する3D付加製造によって行うことができるが、ブロックの他の付加製造法又は従来の製造法も実施可能である。反転燃料減速材ブロック103Aは、使用される材料に適している任意のタイプの付加製造法(例えば、セラミック用のバインダジェッティング、又は金属及びセラミック用のレーザベースのシステム製造)を使用して形成することができる。燃料粒子151A~N用の空洞が反転燃料減速材ブロック103A内に形成されると、次に、燃料粒子151A~Nがその空洞内部に入れられる。
【0036】
[0061]次いで、燃料粒子151A~N及び減速材要素150Aを固定するための2つの異なる方法がある。第1の方法は、その結果が図1の反転燃料減速材ブロック103Aを構成しており、減速材要素150Aが減速材料からなる大きいモノリシック要素である場合に使用されることが多く、以下のように実施される。まず、CVIを使用して燃料粒子151A~Nの周囲に高温マトリックス152を生成する。減速材開口部131Aは、このCVIプロセスの間保持される。次に、減速材要素150Aが、反転燃料減速材ブロック103A内の高温マトリックス152中の減速材開口部131A内部に入れられる。最後に、減速材開口部131Aは、高温マトリックス152接合技法、ねじ付きキャップを使用して密封され、又は追加のCVIで、さらなる又は別の材料を堆積させて封止を形成することができる。
【0037】
[0062]第2の方法は、順序が第1の方法と異なる。第2の方法では、CVIが実施される前に、減速材要素150Aが減速材開口部131A内部に入れられる。この第2の方法は、減速材要素150Aが、潜在的に燃料粒子151A~Nと同じかそれよりも小さい、多くのより小さい減速材要素に分割される場合に使用することができる。これらの例における減速材開口部131Aは、減速材要素のサイズに合致しており、したがって、燃料粒子151A~Nの空洞と同じかそれよりも小さくてよい。このような減速材要素150Aは、機械加工の労力を最小化するために、小さい球(100~2000マイクロメートル)からマクロサイズの棒又は角柱までの多くの異なる形状を有することができる。最後に、CVIプロセスで、燃料粒子151A~Nと減速材要素150A又は複数の要素の両方の周囲に高温マトリックス152を生成する。第2の方法は本質的に、燃料粒子151A~Nと減速材要素150Aの粒子とを同時に備えて形成された反転燃料減速材ブロック103Aをもたらす。減速材要素150A用の大きい露出空洞として現れる減速材開口部131Aの代わりに、減速材要素150A粒子(それゆえに、粒子が存在する減速材開口部131A)は、高温マトリックス152中に埋め込まれる。減速材要素150A粒子に対して燃料粒子151A~Nの凝集は、CVI処理ステップの前に、どのようにして燃料粒子151A~N及び減速材要素150A粒子が最初に印刷空洞の中に入れられるかによって制御される。
【0038】
[0063]CVIプロセスは、CVI原子炉内に反転燃料減速材ブロック103Aを配置し、CVI原子炉内の温度を上昇させることにより、反転燃料減速材ブロック103Aを結合解除することを含み得る。次に、CVIプロセスは、CVI原子炉内に、ケイ素及び炭化水素を含む前駆体ガスを高温の間に導入することを含むことができ、それにより、その高温で前駆体ガスが分解すると、炭化ケイ素が反転燃料減速材ブロック103Aに浸透し、反転燃料減速材ブロック103Aを高密度化外層で密封する。反転燃料減速材ブロック103Aは、実質的に純粋な炭化ケイ素微細構造と、85重量%を超える炭化ケイ素の密度による高耐熱性とを含むことになる。
【0039】
[0064]反転燃料減速材ブロック103Aは、化学的制御、製造補助、及び特性調整の目的で、中性子毒及び酸素ゲッタなどの毒物を含み得る。
【0040】
[0065]図1Bは、複数の減速材開口部131B~M、冷却材通路141A~B、及び制御ドラムチャネル135の用意がある六角形反転燃料減速材ブロック103Bの等角図である。この例では、反転燃料減速材ブロック103Bは、高温マトリックス152中に多くの減速材開口部131B~Mを備えて製造されている。減速材要素150B~Mが減速材開口部131B~Mに挿入されると、反転燃料減速材ブロック103Bは、高温マトリックス152接合技法、ねじ付きキャップを使用して密封され、又は追加のCVIでさらなる又は別の材料を堆積させて、封止又はキャップ155を形成することができる。
【0041】
[0066] 反転燃料減速材ブロック103Bは、制御ドラムチャネル135をさらに含み、制御ドラム115が、反転燃料減速材ブロック103Bと、反転燃料減速材ブロック103Bが内部に入れられているどれでもすべての原子炉心101との反応度を制御するために、反転燃料減速材ブロック103B内に長手方向に配置されており、且つ、高温マトリックス152に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと減速材要素150B~Mとを横方向に取り囲んでいる。制御ドラム115は、反射体材料を制御ドラム115の外面の第1の部分に含み、吸収体材料を制御ドラム115の外面の第2の部分に含む。可燃性毒物は、緊急時に原子炉心101を停止させるために、反転燃料減速材ブロック103B内に取り込まれることがある。
【0042】
[0067]制御ドラム115は、反転燃料減速材ブロック103B内の中性子密度、原子炉心101、及び原子炉107図1C参照)出力レベルを他の原子炉システムの制御棒と同様に調節する。制御ドラム115を備えた反転燃料減速材ブロック103Bはまた、制御ドラム115C~Nを含まない原子炉心101内の他の反転燃料減速材ブロック103C~Nの反応度を制御することもできる。原子炉心101内の中性子束を増大又は低減させるために、制御ドラム115が反応度制御システムによって回転されるのに対し、制御棒は、反応度制御システムによって原子炉心101に挿脱される。制御ドラム115は、原子炉心101の反応度を調整するのに挿脱ではなく回転されるので、制御ドラム115は、長手方向の位置が恒久的に固定されている。制御ドラム115は、原子炉心101又は反転燃料減速材ブロック103Bの内外へ移動しない。制御棒チャネルの位置ずれ又は閉塞に起因して、制御棒が原子炉心101に完全に挿入されないことがあるというリスクが存在するが、制御ドラム115を利用することにより、これらのリスクを有利に低減させることができる。しかしながら、制御棒は、制御ドラムチャネル135A~Nの代わりに制御棒チャネルとともに利用することもできる。
【0043】
[0068]制御ドラム115の外面の第1の部分は反射体材料を含み、この反射体材料は一般に、高い弾性散乱中性子断面積を持つ材料から形成されている。反射体材料が炉心中心156に向かって内向きになると、中性子束が増加して、原子炉心101の反応度及び動作温度が上昇する。制御ドラム115の外面の第2の部分は、中性子毒物から形成され得る吸収体材料を含む。中性子毒とは、自由中性子を吸収するのに特に適している高い吸収中性子断面積を持つ同位体又は分子のことである。吸収体材料が原子炉心156図1C参照)に向かって内向きになると、原子炉心101の中性子束が減少して、原子炉心101の反応度及び動作温度が低下する。
【0044】
[0069]1つ又は複数の制御ドラム115を実施する原子炉システム100図1C参照)は、1つ又は複数の制御ドラム115A~N又は複数の制御ドラム115A~Nを選択的に回転させて、吸収体材料を炉心中心156図1C参照)に向けて中性子束及び動作温度を低下させること、又は反射体材料を炉心中心156に向けて中性子束及び動作温度を上昇させることができる。したがって、原子炉システム100は、原子炉心101の中性子束を、それゆえに原子炉心101内の反転燃料減速材ブロック103Bの中性子束を、選択的に増減させることができる。中性子束を迅速に減少させ、減少した中性子束の状態を達成するために、原子炉システム100は、制御ドラム115を回転させて制御ドラム115の吸収材を反転燃料減速材ブロック103Bの燃料粒子151A~Nに最大限さらすことにより、より多くの自由中性子を吸収させ、中性子束を減少させることができる。燃料粒子151A~Nの分布が、反転燃料減速材ブロック103B全体にわたって正規分布ではないことがあり、制御ドラム115が、反転燃料減速材ブロック103B内の中心に位置しないことがあり、又は、複数の反転燃料減速材ブロック103N~Zにわたる燃料粒子151A~Nの密度が、制御ドラム115に対して正規分布でないことがあることにより、制御ドラム115から見て、燃料粒子151A~Nが比較的高密度の領域と、燃料粒子151A~Nが比較的低密度の領域とが生成される。中性子束を急速に増加させ、増加した中性子束の状態を達成するために、原子炉システム100は、制御ドラム115を回転させて、制御ドラム115の反射体材料を反転燃料減速材ブロック103の燃料粒子151A~Nに最大限にさらすことにより、より多くの自由中性子を反射させ、中性子束を増加させることができる。中間調整を行うために、又は中性子束の連続的なレベルを維持するために、原子炉心100は、制御ドラム115を回転させて、制御ドラム115の吸収体材料を反転燃料減速材ブロック103Bの燃料粒子151A~Nに部分的にさらすことができる。
【0045】
[0070]反射体材料を部分的又は全面的にさらすことにより、原子炉107を臨界状態に移行させることができ、持続された臨界状態が活性状態を誘導することになる。反転燃料減速材ブロック103Bを収容する原子炉107が活性状態にあるとき、原子炉107は最適な量の熱を生み出しており、したがって、電気、並びに原子炉心101から漏れ得る高レベルの自由中性子を生み出している。
【0046】
[0071]吸収体材料が部分的若しくは全面的にさらされると、又は燃料粒子151A~Nが実質的に完全に消費されると、原子炉107が未臨界状態に移行することになる。持続された未臨界状態が不活性状態を誘導する。反転燃料減速材ブロック103Bを収容する原子炉107が不活性状態にあるとき、原子炉107は生み出す熱が最小量であり、電気を生み出していない可能性が非常に高い。不活性状態の原子炉107はまた、原子炉心101から漏れる可能性のある自由中性子を生み出す量が最小である。
【0047】
[0072]図1Cは、個々の減速材開口部131N~Zと、反転燃料減速材ブロック103N~Zの整合する角部にある冷却材通路141N~Zとを備える、六角形反転燃料減速材ブロック103N~Zの反転燃料減速材ブロックアレイ113を実施する原子炉心101を含む、原子炉システム100の断面図である。
【0048】
[0073]反転燃料減速材ブロック103N~Zは、図1Aの反転燃料減速材ブロック103Aと、図1Bの反転燃料減速材ブロック103Bとの特徴を共有する。反転燃料減速材ブロック103N~Zは、図1Bの反転燃料減速材ブロック103Bの六角面形状を有し、それぞれが個々の減速材開口部131N~Zを、図1Bの反転燃料減速材ブロック103Bのように複数の減速材開口部131B~Mではなく、図1Aの反転燃料減速材ブロック103Aのように各反転燃料減速材ブロック103N~Zにおいて実施している。反転減速材ブロック103A~Bと減速材開口部150A~Mの両方の形式は、必要に応じて原子炉システム100の設計によって組み合わされてよい。
【0049】
[0074]この反転燃料減速材ブロックアレイ113では、反転燃料減速材ブロック103N~Zの接合部に冷却材通路141N~Zが形成される。冷却材通路141N~Zは、各反転燃料減速材ブロック103N~Zのブロック壁198を完全に包含してもよく、又は、反転燃料減速材ブロック103N~Zの様々な空洞が、冷却材通路141N~Zの助けになるように(好ましくは製造時に)導入されてよい。冷却材通路に関するさらなる詳細は、後の図に現れる。この設計及び後の図の冷却材通路の設計では、燃料粒子151A~Nが、減速材要素150Bを介して間接的に熱を伝達するのではなく、冷却材と直接接触することにより、運転中の燃料温度を低下させることができる。その結果、冷却材経路長は、典型的な熱中性子炉の5という冷却材減速材比を基準として、5分の1以下まで短縮することができる。
【0050】
[0075]原子炉システム100の原子炉107は、圧力容器160を有する。圧力容器160の外側は、減速流体(例えば、水又はより複雑な流体)中に浸漬されたモジュール式原子炉が受ける腐食又は酸化をさらに低減するために、被覆が施されることがあり、又は特定の金属若しくは化学物質を用いて鍛造若しくは製造されることがある。
【0051】
[0076]原子炉107は、圧力容器160の内部に設置された反射体140(例えば、外側反射体領域)を含む。反射体140は、反転燃料減速材ブロックアレイ113を横方向に取り囲む複数の反射体ブロックを含む。
【0052】
[0077]原子炉107は、制御された核連鎖反応が起こってエネルギーが放出される、原子炉心101を含む。原子炉心101内の中性子連鎖反応は臨界的であり(各核分裂核からの単一の中性子が別の核分裂核の核分裂をもたらす)、この連鎖反応は制御されなければならない。制御された核分裂を維持することによって、原子炉システム100は熱エネルギーを生み出す。一例の実施態様では、原子炉システム100はガス冷却高温原子炉107として実施される。しかし、原子炉システム100は、ヒートパイプ原子炉、溶融塩冷却原子炉、ヘリウム冷却原子炉、黒鉛減速原子炉、塩中燃料原子炉、超臨界CO原子炉、(開放又は閉鎖)ブレイトンサイクル原子炉、又はナトリウム冷却高速原子炉としても実施することができる。特に、原子炉システム100は、ガス冷却黒鉛減速原子炉、ガス冷却黒鉛減速原子炉よりも高い熱中性子束を有するフッ化物塩冷却高温原子炉、又はガス冷却黒鉛減速原子炉よりも速い中性子束を有するナトリウム高速原子炉と一緒に実施することができる。
【0053】
[0078]核燃料は、核分裂生成物を核燃料自体の内部に保持して、核廃棄物を直ちに処分する必要性を低減させる。被覆された燃料粒子はまた、商業用軽水炉燃料と比較して、核拡散リスクも低減させる。
【0054】
[0079]図示されていないが、原子炉心101は、絶縁体要素からなる絶縁体要素アレイを含むことができる。絶縁体要素は、熱伝導率が低い高温熱絶縁体材料から形成される。高温熱絶縁体材料は、低密度の炭化物、金属炭化物、金属酸化物、又はこれらの組み合わせを含むことができる。より具体的には、高温熱絶縁体材料は、低密度SiC、安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、低密度ZrC、低密度炭素、又はこれらの組み合わせを含む。減速材要素103A~Nは、低温固相減速材から形成される。低温固相減速材は、MgH、YH、ZrH、CaH、ZrO、CaO、BeO、BeC、Be、濃縮炭化ホウ素、11BC、CeH、LiH、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0055】
[0080]この原子炉システム100では、原子炉107は、複数の制御ドラム115及び反射体140を含むことができる。制御ドラム115A~Nは、制御ドラム115を回転させることによって原子炉心101の反応度を変化させるために、反転燃料減速材ブロックアレイ113を横方向に取り囲むことができる。制御ドラム115は、圧力容器160の外周部又は周縁部に存在することができ、原子炉心101の反転燃料減速材ブロックアレイ113の周りに周方向に配置することができる。制御ドラム115は、運転中の中性子密度及び原子炉出力レベルを選択的に調節するために、反射体140の領域、例えば、原子炉コア101を直接に取り囲む反射体ブロックから形成された外側反射体領域に設置することができる。例えば、制御ドラム115A~Nは円筒形状とすることができ、外面の第1の部分上の反射体材料(例えば、ベリリウム(Be)、酸化ベリリウム(BeO)、BeSiC、BeMgO、Alなど)と、外面の第2の部分(例えば、外周部)上の吸収体材料との両方から形成される。
【0056】
[0081]反射体材料及び吸収体材料は、制御ドラム115の円筒形状の両側、例えば外周部の一部分に置くことができる。反射体材料は、円筒又はその切頭部分として形成された反射体基板を含むことができる。吸収体材料は、吸収体プレート又は吸収体被覆を含むことができる。吸収体板又は吸収体被覆は、制御ドラム115の円筒形状を形作るように反射体基板に配置される。例えば、吸収体板又は吸収体被覆は、制御ドラム115を形作るように反射体材料から形成された反射体基板を覆う。反射体材料が円筒の切頭部分である場合、吸収体材料は、円筒形状を形作るように切頭部分と相補的な本体形状になっている。
【0057】
[0082]制御ドラム115A~Nは、円筒面又は他の円錐面を形作って双曲面、錐面、楕円面、放物面などの二次曲面を形成するために、連続面、例えば、丸みを帯びた面、非球面、又は球面から形成することができる。代替又は追加として、制御ドラム115A~Nは、複数の不連続面から形成することができる(例えば、立方体、又は六角柱などの他の多面体を形成するために)。本明細書で用いられる場合、「不連続な」とは、表面が全体として、制御ドラム115A~Nの丸い(例えば、円形又は楕円形の)外周部である連続する外面を形成していないことを意味する。
【0058】
[0083]円筒形状の制御ドラム115A~Nを回転させると、制御ドラム115A~Nの吸収体材料(例えば、炭化ホウ素、BC)の原子炉心101との近接度が変化して、中性子の反射量が変わる。反射体材料が原子炉心101に向かって内向きであり、吸収体材料が外向きである場合、中性子は散乱(反射)して原子炉心101の中へ戻り、より多くの核分裂が生じ、原子炉心101の反応度が増大する。吸収体材料が原子炉心101に向かって内向きであり、反射体材料が外向きである場合、中性子は吸収され、さらなる核分裂が阻止されて、原子炉心101の反応度が低下する。
【0059】
[0084]例えば、外側反射体領域として図示されている中性子反射体140は、最も外側の反転燃料減速材ブロック103N~Zと制御ドラム115A~Nとの間、並びに制御ドラム115A~Nの周囲に配置された充填材要素とすることができる。反射体140は、最も外側の反転燃料減速材ブロック103N~Zと任意選択的なバレル(例えば、ベリリウムから形成される)との間に配置される減速材から形成することができる。反射体140は、六角形又は部分的に六角形の形状の充填材要素を含むことができ、中性子減速材(例えば、酸化ベリリウム、BeO)から形成することができる。必要ではないが、原子炉107は、原子炉心101の反転燃料減速材ブロックアレイ113を取り囲むための、任意選択的なバレル(図示せず)を含むことができる。制御ドラム115A~Nは、圧力容器160の外周部に存在することができ、反射体140内に散在又は配置すること、例えば、反射体140を形成する充填材要素(例えば、反射体ブロック)のサブセットを取り囲むことができる。
【0060】
[0085]圧力容器160は、アルミニウム合金、炭素複合材料、チタン合金、放射線弾性SiC複合材料、ニッケル基合金(例えば、Inconel(商標)又はHaynes(商標))、又はこれらの組み合わせから形成することができる。圧力容器160及び原子炉システム100は、反転燃料減速材ブロック103N~Zの冷却材通路141N~Zを通って流れる減速材冷却材を移送するシリンダ、配管、及び貯蔵タンクを含む、他の構成要素で構成することもできる。冷却材通路141N~Zは、原子炉心101内で冷却材を通過させるためのチャネル又は孔などの、平らにされたリング形(例えば、O形)の開口部である。冷却材通路141N~Zは、減速材要素150N~Zとの接触を最小限にすることにより減速材要素150N~Zの濡れを最小限にするのが好ましい。
【0061】
[0086]冷却材通路141N~Zを流れる冷却材としては、ヘリウム、フッ化リチウム(LiF)から形成されるFLiBe溶融塩、フッ化ベリリウム(BeF2)、ナトリウム、He、HeXe、CO2、ネオン、又はHeNを含むことができる。
【0062】
[0087]従来の角柱型ガス炉では、黒鉛ブロックが冷却材チャネル及び燃料チャネルを備えて機械加工される。燃料ペレットは、ヘリウムバックフィルと一緒に燃料チャネルに挿入され、黒鉛キャップで密封される。運転中、ヘリウムは黒鉛冷却チャネルを通過して原子炉を冷却する。減圧又は浸水が起きると、空気が炉心に入って場合によっては、黒鉛火災としても知られる黒鉛の自己持続酸化をまねく可能性がある。黒鉛は、空気又は水にさらされた場合に、エネルギーを放出する酸化反応を受けて、炉心の形状を内部で支え一部の原子炉では燃料を保護する、その構造的完全性が損なわれる。黒鉛との化学反応もまた、新たな種をさらなる安全上のリスクを伴って生じさせ得る。この問題は、小石状床ガス炉に関連する問題の1つである黒鉛ダストが存在することによって悪化する。図1Cの原子炉システム100は、この化学的リスクを低減させる。
【0063】
[0088]図2は、三角形燃料減速材ブロック203A~Nから形成された反転燃料減速材ブロックアレイ213の等角図である。三角形燃料減速材ブロック203A~Nは、減速材開口部内の個々の減速材要素250A~N、並びに冷却材を流すための切子状の頂点を含む。
【0064】
[0089]反転燃料減速材ブロックアレイ213は、図13の反転燃料減速材ブロックアレイ113と機能的及び化学的に非常に類似している。しかし、六角形反転燃料減速材ブロック103N~Zではなく、三角形反転燃料減速材ブロック203A~Nが利用されている。加えて、反転燃料減速材ブロック203A~Nは、冷却材を流すための専用の反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cを有する。図1Cの例では、冷却材は、反転燃料減速材ブロック103N~Zの6つのブロック壁198~Fのそれぞれの上に流すことができる。この例では、三角形反転燃料減速材ブロック203A~Nは、その壁198~Fが2つのサブグループに、すなわち反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cと、反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cとに分割されている。所与の反転燃料減速材ブロック203Aの反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cは、近傍の反転燃料減速材ブロック203Bの反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cと接触する。しかし、第1の反転燃料減速材ブロック203Aの反転燃料減速材ブロック切子面254Aと、第2の反転燃料減速材ブロック203Bの反転燃料減速材ブロック切子面254Bと、第3の反転燃料減速材ブロック203Cの反転燃料減速材ブロック切子面254Cとはすべて、個々の点で出会う。これら3つの反転燃料減速材切片254A~Cは、互いに隣接して、共同で冷却材通路241Aを形成する。反転燃料減速材ブロックアレイ213の個々の反転燃料減速材ブロック203A~Nは、単一の冷却材通路241Aを完全には包含しないが、反転燃料減速材ブロックアレイ213は共同で、複数の冷却材通路241A~Nを包含する。
【0065】
[0090]反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cは、観察者には、多数の切子面を有するカットされた宝石のように曲面又は平坦面として見える。「切子面」は、平坦な部分(例えば、平面)であることも、湾曲した部分(例えば、非球面又は球面)であることもある。複数の反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cは、反転燃料減速材ブロック203Aの不連続な(例えば、不均一な又はギザギザの)外側周辺を形成する。反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cは、外側周辺が分割されている外側周辺の部分を含む。反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cは、図1Aのブロック壁198のように1つの切子面(単一切子状)から、又は複数の切子面(多切子状)から、形成することができる。
【0066】
[0091]本明細書で用いられる「不連続な」とは、反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~Cと反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cとの全体で形成される外側周辺が、連続する丸い(例えば、円形又は楕円形の)外周部を形成しないことを意味する。反転燃料減速材ブロック203Aの外側周辺は、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。本明細書で用いられる「自由曲面」は、平面、又は非球面若しくは球面(例えば、円柱、円錐、二次曲面)などの正則曲面とは異なって、厳格な半径方向寸法を有しない。
【0067】
[0092]図3A図3Dは、反転燃料減速材ブロック303A~D、O~Zの代替構造様式を示す。化学的及び機能的に、これらの反転燃料減速材ブロック303A~D、O~Zは、以前に提示された反転燃料減速材ブロック103A、B、N~Z、203A~Nと実質的に類似している。図3Aは、減速材要素350Aと、その減速材要素350Aの上下に積層された2プレート反転燃料減速材ブロック303A~Bとを含む、層状反転燃料減速材ブロックアレイ313の側面図である。この例では、プレート又はウェハが、反転燃料減速材ブロック303Bからなる下部層又はプレートを最初に配置することによって形成される。次に、減速材要素350A層又はプレートが、反転燃料減速材ブロック303Bからなる下部層の上に配置される。最後に、反転燃料減速材ブロック303Bからなる上部層又はプレートが減速材要素350Aの上に配置される。この例では、反転減速材ブロック303A~B又は減速材要素350Aの中に冷却材チャネルが形成されていない。そうではなく、冷却材は、連続する流体のように、上部反転燃料減速材ブロック303Aの上の平面冷却材通路341Aを通って流れ、また、下部反転燃料減速材ブロックの下の別の平面冷却材通路341Bを通って流れる。冷却材は、減速材要素350Aと直接接触しない。図示されていないが、減速材要素350Aの側面は、追加の反転燃料減速材ブロックによって、又は原子炉107の圧力容器160によって冷却材から保護することができる。図3Bは、図3Aの反転燃料減速材ブロックアレイ313Aの等角図であり、冷却材がどのように反転燃料減速材ブロックアレイ313Aの上部の上を流れ、冷却材が減速材要素350Aに接触する可能性がある側面の周りには流れないのかをさらに示す。
【0068】
[0093]図3Cは、反転燃料減速材ブロック303C内に冷却材通路C~Nが形成されたモノリシック反転燃料減速材ブロック303Cの等角図である。複数の冷却材通路341C~Nは、冷却材を燃料粒子151A~Nに近接して流すために、反転燃料減速材ブロック303C内に直に形成されている。この特定の反転燃料減速材ブロック303Cは、減速材要素を含まないことがある。又は、図1Aについての説明で提示された燃料粒子151A~N及び減速材要素150Aを固定するための第2の方法と同様の方法を用いて、任意の減速材要素が反転燃料減速材ブロック303C内に埋め込まれる。
【0069】
[0094]図3Dは、冷却材通路341O~Zを備えた減速材要素350Bと、冷却材通路341O~Zをライニングする複数のライナ反転燃料減速材ブロック303O~Zと、減速材要素350Bを取り囲む境界反転燃料減速材ブロック303Dとを含む、反転燃料減速材ブロックアレイ313Dの等角図である。この例は、任意の既存の減速材が減速材要素350Bの形であることを除いて、図3Cの例に類似している。減速材要素350Bには、冷却材を流すための冷却材通路341O~Zが形成されている。減速材要素350Bの濡れを防止するために、各冷却材通路341O~Zは相補的な反転燃料減速材ブロック303O~Zでライニングされている。この相補的な反転燃料減速材ブロック303O~Zは、全体的に太いストロー様に形成されており、減速材要素350Cを濡れから保護しながらも、冷却材が冷却材通路341O~Zを通って流れることを可能にする。減速材要素350B全体はまた、減速材要素350Bの側面の濡れ又は埃から保護するために、隣接する反転燃料減速材ブロック303Dによって取り囲まれている。
【0070】
[0095]図3A図3Dのそれぞれは、三次元物体を表している。速材要素350A~Bが露出している三次元物体のどの面も、絶縁体又は圧力容器などの非反応性材料によって覆われてよく、又は追加の反転燃料減速材ブロックによって覆われるか、若しくはキャップが付けられてよい。図3A図3Dはまた、減速材要素350A~Bが単純な円柱である必要がないことを示す。特に、減速材要素350Bは複雑な部片であり、長方形の平行六面体外側が減速材境界面壁390を形成しており、減速材切子面391O~Zが、減速材要素350Bを濡れから保護するためのスリーブを形成する反転燃料減速材ブロック303O~Zと整合している。減速材境界面壁390は、反転燃料減速材境界面壁253A~Cが取り得る任意の形又は構造を取ることができ、減速材切子面391O~Zは、反転燃料減速材切子面254A~Cが取り得る任意の形又は構造を取ることができる。
【0071】
[0096]図4Aは、減速材要素450Aの割合が大きい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体414Aの断面図である。この図では、比較的大きい割合の減速材要素450Aを保持するために、反転燃料減速材ブロック403A~Cは、三角形減速材要素450Aの頂点に保持される。図の各反転燃料減速材ブロック403A~Cは、冷却材通路441A~Cを収容する。
【0072】
[0097]図4Bは、図4Aに描かれた複数の三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fから形成されたキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体413の等角図である。図4Aの図は、冷却材と燃料と減速材の間の機能的関係を示している。図4Bは、そうではなく、物理的要素同士がどのように相互作用するかを示している。まず、特定の反転燃料減速材サブ集合体414Aは、3つの完全な冷却材通路441A~Cを保持していない。そうしないで、各燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fは、3つの冷却材通路441A~Cの6分の1ずつを保持している。反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fが組み合わされて反転燃料減速材ブロック集合体413を形成するとき、これらの6分の1冷却材通路441Aのそれぞれが出会って、完全な冷却材通路441Aを形成する。反転燃料減速材ブロック集合体413が、少なくとも2つの他の反転燃料減速材ブロック集合体413に隣接して取り付けられると、6つの6分の1冷却材通路441Bが出会うところに別の完全な冷却材通路441Bが形成される。このパターンは、図1Cの反転燃料減速材ブロック103N~Zの六角形パターンと類似している。各反転燃料減速材ブロック集合体413は、図2の反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~C及び反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cを六角形配向でさらに実施する。各反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fは、キャップ155付きで描かれており、このキャップは、減速材要素450A~Fを濡れ及び埃から保護する。
【0073】
[0098]図4Cは、図4Bのキャップ付き六角形反転燃料減速材ブロック集合体413のキャップ155が除去されている状態の等角図である。図4Cは、反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A~Fのそれぞれが、冷却材通路441Aの冷却材通路壁142図1B参照)の6分の1のみを提供することをより明確に描いている。図4Cはまた、反転燃料減速材ブロック集合体413によって(除去されたキャップ155以外の)すべての側面で保護されている、内部減速材要素450A~Fを描いている。
【0074】
[0099]図5Aは、減速材要素の割合が小さい三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の断面図である。この図で、減速材要素の比較的小さい割合を保持するために、反転燃料減速材ブロック503は、より小さい減速材要素450を包含し、図4Aの反転燃料減速材ブロックサブ集合体413Aと同様に、三角形反転燃料減速材ブロック503の頂点に3つの6分の1冷却材通路441A~Cを保持する。
【0075】
[0100]図5Bは、図5Aに描かれているキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の等角図である。図5Cは、図5Bのキャップ付き三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514のキャップ155が除去されている状態の等角図である。原子炉心101は、完全な反転燃料減速材ブロック集合体を形成するために、並びに完全な反転燃料減速材ブロックアレイを形成するために、反転燃料減速材ブロックサブ集合体514と反転燃料減速材ブロックサブ集合体414Aの両方を含むことができる。形状及び冷却材通路に互換性があるので、2つの反転燃料減速材ブロックサブ集合体414A、514は、交換しても原子炉システム100の要件を満たすことができる。
【0076】
[0101]図6Aは、3つの追加切込み冷却材通路641A~Cを備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の断面図である。切込み冷却材通路641A~Cは、任意の形状又は配向であってよく、直径及び容積が異なってもよい。切込み冷却材通路641A~Cは、反転燃料減速材ブロック503の中に「切り込む」ことができるが、そうしないで、反転燃料減速材ブロック503の製造時に切込み冷却材通路641A~Cを形成することが好ましい。図6Bは、追加の切込みリング冷却材通路641Dを備えた図5Aの三角形反転燃料減速材ブロックサブ集合体514の断面図である。図6Bは、切込み冷却材通路641Dをリング形又はトロイド形にできること、及び切込み冷却材通路641Dが複数の冷却材通路壁142図1B参照)を形成できることをさらに示す。
【0077】
[0102]図7A図7Cは、反転燃料減速材ブロックを組み合わせて作ることができる、異なるブロックサブ集合体714A~Cの例である。図7Aは、テーパ付き三角形反転燃料減速材ブロックから構成された、二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Aの図である。図7Bは、多面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Bの図であり、これもテーパ付き三角形反転燃料減速材ブロックから構成されている。図7Cは、切頭二十面体反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Cの図である。この反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Cは、異なるサイズのテーパ付き五角形反転燃料減速材ブロックから構成されている。これらの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cは中実であってよく、反転燃料減速材ブロックが反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cの中心まで延びている。代替として、反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cは、切頭テーパ付き反転燃料減速材ブロックを有してもよく、したがって、反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cは部分的に中空であってよく、1つ又は複数の排気冷却材チャネルを介して熱を内部で排出する冷却材リザーバが封じられている。
【0078】
[0103]図7D図7Fは、図7A図7Cの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Cを組み合わせる際に使用できる、異なる反転燃料減速材ブロック703A~Cの例である。図7Dは、図7A図7Bの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714A~Bなどの、1つ又は複数の三角形面からなる多面体内のテーパ付き三角形反転燃料減速材ブロック703Aの図である。
【0079】
[0104]図7Eは、凸状上部キャップと凹状下部キャップ155を備えたテーパ付き円形反転燃料減速材ブロック703Bの図である。この反転燃料減速材ブロック703Bは、原子炉システム100のニーズに合わせるのにキャップ155の形状を任意としてもよいことをさらに例示している。さらに、図は、キャップ155が、平坦又は他の任意の平面形状に加えて、凹状又は凸状であってもよいことを示している。図7Fは、テーパ付き冷却材通路741を備えたテーパ付き五角形反転燃料減速材ブロック703Cの図である。この反転燃料減速材ブロック703Bは、図7Cの反転燃料減速材ブロックサブ集合体714Cなどの、1つ又は複数の五角形面からなる多面体に適合する。さらに、冷却材通路741は、冷却材通路741の直径が、冷却材通路の全長にわたって均一である必要がないことを例示している。特に、多面体形状の原子炉心101を実施する場合、多面体の所与の半径における冷却材通路741表面積と反転燃料減速材ブロック体積の比を保持するには、冷却材通路741を、多面体形状の原子炉心101の中心よりも多面体形状の原子炉心101の表面に近い方で広げることが有利であり得る。
【0080】
[0105]図8は、三角形反転燃料減速材ブロック203A~Nから形成された反転燃料減速材ブロックアレイ213の等角図である。三角形燃料減速材ブロック203A~Nは、図2と同様に、個々の減速材要素250A~N、並びに冷却材を流すための反転燃料減速材ブロック切子面254A~C角部を含む。しかし、ここでは、減速材開口部は、原子炉周辺157により近接している反転燃料減速材ブロック203A~N内の方が、原子炉中心156により近接している反転燃料減速材ブロック内の方よりも大きい。原子炉心101は、原子炉中心156の方が高温であることが望ましいことが多いので、反転燃料減速材ブロック203A~Nに対する減速材要素250A~Nの割合が低いのに対し、過剰な中性子束を低減するために、原子炉心周辺157に向かって、反転燃料減速材ブロック203A~Nに対する減速材要素250A~Nの割合が高くなることが多い。
【0081】
[0106]図9Aは、酸素(O )による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフ900である。図9Bは、水(H)による、炭化ケイ素(SiC)の計算された酸化モード領域のグラフ901である。両方とも、所与の原子炉温度における冷却材圧力(言い換えると電気エネルギー)が改善されたことを示している。
【0082】
[0107]図10は、高温におけるSiC酸化機構の図1000である。
【0083】
[0108]したがって、図1図10は、高温マトリックス152と、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、少なくとも1つの減速材要素150Aを入れるための、空洞などの少なくとも1つの減速材開口部131Aとを含む、反転燃料減速材ブロック103Aを描いている。
【0084】
[0109]いくつかの例では、反転燃料減速材ブロック103Bは、連結幾何形状パターンの基部形状を含む。反転燃料減速材ブロック103Bは、角柱、円柱、多面体、その切頭部分、又はこれらの組み合わせとして形成することができる。反転燃料減速材ブロック203Aは、複数のブロック境界面壁253A~Cを含むことができ、この複数のブロック境界面壁253A~Cは、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。
【0085】
[0110]反転燃料減速材ブロック103Bは、冷却材を流すために高温マトリックス152中に形成された少なくとも1つの冷却材通路141A~Bを含むことができる。少なくとも1つの冷却材通路141A~Bは、冷却材通路壁142図1B参照)を含むことができ、少なくとも1つの冷却材通路壁142は、平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。反転燃料減速材ブロック103Bは、キャップ155を含むことができ、キャップ155は、平面、曲面、又はこれらの組み合わせである。
【0086】
[0111]複数の燃料粒子151A~Nは、被覆された燃料粒子を含むことができ、被覆された燃料粒子は、三構造等方性(TRISO)燃料粒子、二構造等方性(BISO)燃料粒子、又はTRIZO燃料粒子を含むことができる。高温マトリックス152は、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0087】
[0112]図1図10は、複数の減速材要素150N~Zと、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103N~Zの反転燃料減速材ブロックアレイ113とを含む原子炉心101をさらに描いている。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック103N~Zは、高温マトリックス152と、高温マトリックス152の内部に埋め込まれた複数の燃料粒子151A~Nと、冷却材を流すために高温マトリックス152中に形成された少なくとも1つの冷却材通路141A~Bとを含む。
【0088】
[0113]いくつかの例では、第1の減速材要素350Aは、第1の反転燃料減速材ブロック303Aと第2の反転燃料減速材ブロック303Bとの間に積層される。
【0089】
[0114]図1図10は、原子炉心101及び反応度制御システムを含む原子炉107をさらに描いており、反応度制御システムは、1つ若しくは複数の制御ドラム115、1つ若しくは複数の制御棒、又はこれらの組み合わせを含む。
【0090】
[0115]いくつかの例では、反転燃料減速材ブロックアレイ113の第1の体積は、原子炉心101の総体積の1%~20%である。複数の減速材要素150N~Zの第2の体積は、原子炉心101の総体積の70%~99%とすることができる。原子炉心101は、冷却材を流すための複数の冷却材通路141A~Bを含むことができ、複数の冷却材通路141A~Bの第3の体積は、原子炉心101の総体積の0%~10%である。減速材要素350Bのうちの1つ又は複数は、1つ又は複数の減速材境界面壁390と1つ又は複数の減速材切子面391O~Zとを含む切頭多面体形状とすることができ、1つ又は複数の減速材切子面391O~Zは、それぞれの反転燃料減速材ブロック303O~Zに隣接する。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック203A~Nは、1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック境界面壁253A~C及び1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cを含む、切頭多面体形状とすることができる。少なくとも1つの冷却材通路241A~Nは、もう1つの反転燃料減速材ブロック切子面254A~Cから形成される。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック203A~Nは、少なくとも1つの減速材要素250A~Nを入れるための、空洞などの少なくとも1つの減速材開口部231A~Nを含むことができる。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック503は、冷却材を流すための1つ又は複数の切込み冷却材通路641A~Dを含むことができる。
【0091】
[0116]原子炉心101は、多面体形状又は切頭多面体形状を含む複数の反転燃料減速材ブロック703A~Cをさらに含むことができる。反転燃料減速材ブロック703A~Cの多面体形状又は切頭多面体形状は、多角形又は切頭多面体のサブ集合体714A~Cを形成する。1つ又は複数の反転燃料減速材ブロック703Bは、凸多面体形状とすることができる。
【0092】
[0117]図1図10は、炉心中心156及び炉心周辺157を含む原子炉心101をさらに描いている。少なくとも1つの炉心減速材要素250Mを含む炉心中心反転燃料減速材ブロック203Mは、炉心周辺157よりも炉心中心156に近接している。少なくとも1つの周辺減速材要素250Nを含む炉心周辺反転燃料減速材ブロック203Nは、炉心中心156よりも炉心周辺157に近接している。炉心中心反転燃料減速材ブロック203Mと少なくとも1つの炉心減速材要素250Mの炉心体積割合は、炉心周辺反転燃料減速材ブロック203Nと少なくとも1つの周辺減速材要素250Nの周辺体積割合とは異なる。
【0093】
[0118]保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書及び後に続く出願経過に照らして解釈された場合に、特許請求の範囲に使用されている言語の通常の意味に合致する限り広く、且つすべての構造的及び機能的等価物を包含するものであり、また、そのように解釈されるべきである。ただし、特許請求の範囲はいずれも、特許法第101条、第102条、又は第103条の要件を満たさない主題を包含するものでも、そのように解釈されるべきものでもない。そのような主題のいかなる意図しない受諾も、ここでは否認される。
【0094】
[0119]本明細書で用いられる用語及び表現は、特定の意味が本明細書に別に規定されている場合を除き、対応するそれぞれの探究及び研究領域に関してそのような用語及び表現に与えられる通常の意味を有することを理解されたい。第1及び第2などの関係を示す用語は、一方の実体又は行為を他方の実体又は行為から単に区別するために、必ずしもそのような実体又は行為間の実際の関係又は順序を要求又は示唆することなく、用いられることがある。用語の「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「収容している(containing)」、「収容する(contain)」、「収容する(contains)」、「ともに(with)」、「~から形成される(formed of)」又はその他のあらゆる変異体は、要素若しくはステップのリストを備える、又は含むプロセス、方法、物品、若しくは装置が、それらの要素又はステップのみを含むのではなく、明示的にリストされていない他の要素若しくはステップ又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有の要素若しくはステップを含み得るように、非排他的な包含に及ぶものである。「1つの(a)」又は「1つの(an)」が先行する要素は、さらなる制約条件がなければ、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置に追加の同一の要素が存在することを排除しない。
【0095】
[0120]加えて、上記の「詳細な説明」では、開示を簡素化する目的で、様々な特徴が様々な例にまとめられていることが分かる。この開示の方法は、特許請求された例が、各請求項で明確に列挙されたものよりも多い特徴を必要とするという意図を表していると解釈されるべきものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲が表するように、保護されるべき本主題は、いずれかの単一の開示された例の特徴のすべてにあるとは言えない。すなわち、添付の特許請求の範囲は、本明細書では「詳細な説明」に組み込まれており、各請求項がそれ自体で、別個に特許請求された主題として存立している。
【0096】
[0121]以上では、最良のモード及び/又は他の例或いはその両方と考えられるものについて説明したが、これらに様々な修正を加えることができること、本明細書に開示された主題は様々な形及び例で実施できること、並びに、主題は多数の用途に適用でき、その一部だけについて本明細書で説明したことを理解されたい。添付の特許請求の範囲によって、本概念の真の範囲に入るありとあらゆる修正形態及び変形形態を特許請求することが意図されている。
【国際調査報告】