(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電子素子用分解性基板、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240528BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240528BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240528BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240528BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CEX
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CFG
C08K5/09
C08K3/26
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570413
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 KR2022018364
(87)【国際公開番号】W WO2023140480
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007309
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314000442
【氏名又は名称】高麗大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145, Anam-ro Seongbuk-gu Seoul 02841, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】ファン ソクウォン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジョンウン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA29
4F071AA37
4F071AA43
4F071AA44
4F071AA70
4F071AB21
4F071AC05
4F071AC09
4F071AE01
4F071AE04
4F071AE19
4F071AF05
4F071AG34
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J002AB011
4J002BE021
4J002BJ001
4J002CF181
4J002CF191
4J002CL021
4J002DE227
4J002DE297
4J002EC058
4J002EF026
4J002EF076
4J002FD028
4J002FD326
4J002FD327
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、電子素子用分解性基板、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法に関する。本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板は、高分子物質として提供される基板ベース物質と、粒子形状で、前記基板ベース物質と均一に混合された状態で提供され、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子物質として提供される基板ベース物質と、
粒子形状で、前記基板ベース物質と均一に混合された状態で提供され、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質とを含むことを特徴とする電子素子用分解性基板。
【請求項2】
前記基板ベース物質は、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、セルロース、ポリ乳酸(Polylactic acid、PLA)、Poly(D、L-lactide-co-glycolic acid)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)のいずれか1つ、又は、これらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項3】
前記分解性気泡生成物質は、有機酸及び炭酸水素塩からなることを特徴とする請求項1に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項4】
前記有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、酒石酸、酢酸のいずれか1つ、又は、これらの混合物であることを特徴とする請求項3に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項5】
前記炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのいずれか1つ、又は、これらの混合物であることを特徴とする請求項3に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項6】
前記分解性気泡生成物質は、前記有機酸と前記炭酸水素塩の分子比が1:1乃至1:3であることを特徴とする請求項3に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項7】
前記基板ベース物質と前記分解性気泡生成物質は、4:1乃至1:2の重量比を有することを特徴とする請求項1に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項8】
更に、可塑剤を含み、
前記基板ベース物質は、ゼラチンであることを特徴とする請求項1に記載の電子素子用分解性基板。
【請求項9】
高分子物質として提供される基板ベース物質を含む電子素子用分解性基板と、
前記電子素子用分解性基板の底面に取り付けられて、水の供給状態を制御する流路形成モジュールとを含み、
前記流路形成モジュールは、
内側に入口側流路及び動作側流路が形成される流路形成層と、
前記流路形成層の下方に位置し、前記入口側流路と前記動作側流路を相互連結又は分離させる空圧バルブ制御層とを含むことを特徴とする電子素子用分解性基板アセンブリ。
【請求項10】
前記流路形成層には、前記動作側流路において、前記入口側流路と隣接した領域の反対方向に収容領域が形成され、前記収容領域は、上方に開放されて、前記電子素子用分解性基板と接することを特徴とする請求項9に記載の電子素子用分解性基板アセンブリ。
【請求項11】
前記収容領域は、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質が満たされた状態で提供されることを特徴とする請求項10に記載の電子素子用分解性基板アセンブリ。
【請求項12】
前記電子素子用分解性基板は、更に、粒子形状で、前記基板ベース物質と均一に混合され、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質を含むことを特徴とする請求項10に記載の電子素子用分解性基板アセンブリ。
【請求項13】
前記分解性気泡生成物質は、有機酸及び炭酸水素塩からなることを特徴とする請求項11又は12に記載の電子素子用分解性基板アセンブリ。
【請求項14】
有機溶媒に基板ベース物質を混合するステップと、
前記有機溶媒に分解性気泡生成物質を混合するステップと、
前記基板ベース物質及び前記分解性気泡生成物質が混合された溶液を乾燥するステップとを含むことを特徴とする電子素子用分解性基板製造方法。
【請求項15】
前記基板ベース物質は、高分子物質であることを特徴とする請求項14に記載の電子素子用分解性基板製造方法。
【請求項16】
前記分解性気泡生成物質は、有機酸及び炭酸水素塩からなることを特徴とする請求項14に記載の電子素子用分解性基板製造方法。
【請求項17】
前記分解性気泡生成物質は、粉砕処理された後、前記有機溶媒に混合されることを特徴とする請求項16に記載の電子素子用分解性基板製造方法。
【請求項18】
前記分解性気泡生成物質は、ボールミルにより粉砕されることを特徴とする請求項17に記載の電子素子用分解性基板製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子用分解性基板、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法に関し、より詳しくは、水と反応して早く分解され、人体と環境に無害な特性を有する、電子素子用分解性基板、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体及び電子工学において、素子が有している重要な指標の1つは、長期間使用にも性能低下が発生することなく、安定して動作する信頼性を有していることである。しかし、最近の半導体技術は、長期間ではなく、特定に制御された物理的寿命をもって、使用者の目的に応じて使用可能な時限性エレクトロニクス(transient electronics)、又は、消滅性及び生分解性エレクトロニクス(degradable electronics)と呼ばれる技術が提示されている。
【0003】
この技術は、水、熱、光、微生物、及びその他の要因で消滅機能を活性化する物質からなるが、製作された素子の性能は、商用素子の水準を維持して、産業又は日常で使用可能な機能を有し、不要又は除去すべき状況が発生する場合、物理的・化学的に完全に分解してなくすことができる。
【0004】
このような消滅性、分解性という特性の調節技術は、大きく2つの方式があり、第一は、絶縁層(passivation)、保護層(encapsulation)を構成する物質の密度、結晶性、厚さを調節して、寿命期間を制御する方式であり、第二は、外部刺激(external stimuli)で刺激(trigger)されて、分解が行われる方式である。
【0005】
現存する外部刺激による能動的分解が可能な技術は、熱、光、電気刺激により、発火、腐食性化合物、機械的な破壊などにつながる技術を提示しているが、これは、人体や環境に対して毒性を現わす物質が多く、化学的反応性が高くて不安定で保管が難しく、外部刺激に反応する反応性化合物の合成が難しく、また、分解速度が速くないという不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水と反応して早く分解される、電子素子用分解性基板、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、人体と環境に対して無害な特性を有する、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態によると、高分子物質として提供される基板ベース物質と、粒子形状で、前記基板ベース物質と均一に混合された状態で提供され、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質とを含む電子素子用分解性基板が提供される。
【0009】
前記基板ベース物質は、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシアルカノエート(Polyhydroxyalkanoate、PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、セルロース、ポリ乳酸(Polylactic acid、PLA)、Poly(D、L-lactide-co-glycolic acid)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)のいずれか1つ、又は、これらの混合物である。
【0010】
前記分解性気泡生成物質は、有機酸及び炭酸水素塩からなる。
【0011】
前記有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、酒石酸、酢酸のいずれか1つ、又は、これらの混合物である。
【0012】
前記炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのいずれか1つ、又は、これらの混合物である。
【0013】
前記分解性気泡生成物質は、前記有機酸と前記炭酸水素塩の分子比が1:1乃至1:3である。
【0014】
前記基板ベース物質と前記分解性気泡生成物質は、4:1乃至1:2の重量比を有する。
【0015】
更に、可塑剤を含み、前記基板ベース物質は、ゼラチンである。
【0016】
本発明の他の様態によると、高分子物質として提供される基板ベース物質を含む電子素子用分解性基板と、前記電子素子用分解性基板の底面に取り付けられて、水の供給状態を制御する流路形成モジュールとを含み、前記流路形成モジュールは、内側に入口側流路及び動作側流路が形成される流路形成層と、前記流路形成層の下方に位置し、前記入口側流路と前記動作側流路を相互連結又は分離させる空圧バルブ制御層とを含む電子素子用分解性基板アセンブリが提供される。
【0017】
前記流路形成層には、前記動作側流路において、前記入口側流路と隣接した領域の反対方向に収容領域が形成され、前記収容領域は、上方に開放されて、前記電子素子用分解性基板と接する。
【0018】
前記収容領域は、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質が満たされる。
【0019】
前記電子素子用分解性基板は、更に、粒子形状で、前記基板ベース物質と均一に混合され、水と反応して気泡を生成する分解性気泡生成物質を含む。
【0020】
前記分解性気泡生成物質は、有機酸及び炭酸水素塩からなる。
【0021】
本発明の他の様態によると、有機溶媒に基板ベース物質を混合するステップと、前記有機溶媒に分解性気泡生成物質を混合するステップと、前記基板ベース物質及び前記分解性気泡生成物質が混合された溶液を乾燥するステップとを含む電子素子用分解性基板製造方法が提供される。
【0022】
前記基板ベース物質は、高分子物質である。
【0023】
前記分解性気泡生成物質は、有機酸及び炭酸水素塩からなる。
【0024】
前記分解性気泡生成物質は、粉砕処理された後、前記有機溶媒に混合される。
【0025】
前記分解性気泡生成物質は、ボールミルにより粉砕される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、水と反応して気泡を生成しつつ早く分解される、電子素子用分解性基板、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法を提供することができる。
【0027】
また、本発明によると、自然から由来した物質により分解反応が行われるので、人体と環境に対して無害な特性を有する、電子素子用分解性基板アセンブリ、及び電子素子用分解性基板製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、有機溶媒を準備する過程を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、分解性気泡生成物質を粉砕する過程を示す図である。
【
図4】
図4は、粉砕過程の進行による分解性気泡生成物質の粒径の変化を示す図である。
【
図5】
図5は、粉砕過程の進行による分解性気泡生成物質の平均粒径及び粒径の標準偏差を示す図である。
【
図6】
図6は、分解性気泡生成物質において、有機酸リンと炭酸水素塩の分子比(molar ratio)による分解反応時に生成される溶液のpHを示す図である。
【
図7】
図7は、一実施例として、ゼラチンを基板ベース物質として作られた電子素子用分解性基板が分解される過程を示す図である。
【
図8】
図8は、温度によって、分解にかかる時間を示す図である。
【
図9】
図9は、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質が混合した溶液に可塑剤が更に添加された後に作られた電子素子用分解性基板の機械的物性を示す図である。
【
図10】
図10は、可塑剤であるグリセロールの含量によって、電子素子用分解性基板の熱的な特性であるガラス転移温度と融点を示す図である。
【
図11】
図11は、分解性気泡生成物質の有無による基板の透過度特性を示す図である。
【
図12】
図12は、可塑剤の種類による水分子の時間による電子素子用分解性基板の表面の接触角を示す図である。
【
図13】
図13は、一実施形態によるPLGAに基づく電子素子用分解性基板の分解反応を示す図である。
【
図14】
図14は、一実施形態によるPLGAに基づく電子素子用分解性基板の表面と内部構造を示す電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【
図15】
図15は、PLGAに基づく電子素子用分解性基板において、分解性気泡生成物質とPLGAの質量比による電子素子用分解性基板の機械的な物性を示す図である。
【
図16】
図16は、PLGAに基づく電子素子用分解性基板の時間経過による重さ変化を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態に係るPLGAに基づく電子素子用分解性基板を用いた電子素子の分解過程を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板を用いて作られた遠隔制御可能な電子素子を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板と、これに対比される基板をそれぞれ、4週間、ネズミに挿入する生体適合性/生分解性過程を示す比較実験状態である。
【
図20】
図20は、
図19により、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板と、これに対比される基板が挿入された生体組織の部分を切開して、組織学的分析をした図である。
【
図21】
図21は、他の実施形態による電子素子用分解性基板アセンブリの分解斜視図を示す図である。
【
図22】
図22は、電子素子用分解性基板アセンブリの内側に形成された流路を示す図である。
【
図23】
図23は、入口側流路及び動作側流路が互いに接続された状態を示す図である。
【
図24】
図24は、電子素子用分解性基板アセンブリの上面に素子を形成した後、分解反応を行う状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳述する。しかし、本発明の技術的思想は、ここに説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。ここで紹介する実施例は、開示された内容が徹底的で且つ完全になるように、そして、当業者に本発明の思想が十分伝達されるようにするために提供するものである。
【0030】
また、本明細書の様々な実施例において、第1、第2、第3などの用語が、様々な構成要素を述べるために使われているが、これらの構成要素が、このような用語により限定されてはいけない。これらの用語は、単に、ある構成要素を他の構成要素と区別するために使われているだけである。そこで、ある一実施例に、第1の構成要素として言及されたものが、他の実施例では、第2の構成要素として言及されることもできる。ここに説明及び例示される各実施例は、その相補的な実施例も含む。また、本明細書において、「及び/又は」は、前後に羅列した構成要素の少なくとも1つを含む意味として使用されている。
【0031】
明細書において、単数の表現は、文脈上、明らかに異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。また、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、構成要素、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとすることであり、1つ又はその以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を排除することと理解してはいけない。また、本明細書において、「連結」は、複数の構成要素を間接的に連結すること、及び直接的に連結することをいずれも含む意味として使われる。
【0032】
また、本発明を説明することに当たり、関連する公知機能又は構成に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不要に濁していると判断される場合は、その詳細な説明は、省略する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0034】
図1を参照すると、有機溶媒を準備する(S100)。有機溶媒は、ヘキサフルオロイソプロパノ-ル(HFIP)、アセトン、ブタノン、酢酸エチル、酢酸メチル、クロロホルムなどである。
【0035】
図2は、有機溶媒を準備する過程を示すフローチャートである。
【0036】
図2に示しているように、有機溶媒は、無水化(anhydration)処理の状態で提供される。これにより、後述する分解性気泡生成物質(degradable bubbling agents、BA)が混合される過程で、相互反応することが防止される。まず、有機溶媒に脱水剤を添加する(S110)。前記脱水剤は、塩化カルシウムなどである。脱水剤は、有機溶媒に対して、8%乃至12%の体積重量(w/v:weight/volume)で混合される。
【0037】
以後、脱水剤をフィルタリングして、無水化処理された有機溶媒を抽出する(S120)。有機溶媒と脱水剤が混合された後、溶質である脱水剤が沈むと、溶液から脱水剤をフィルタリングで除去して、無水化処理された有機溶媒を抽出する。フィルタリングは、減圧ろ過方式が用いられる。
【0038】
以後、有機溶媒に基板ベース物質を混合する(S200)。基板ベース物質は、高分子物質として提供される。例えば、基板ベース物質は、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリヒドロキシアルカノエート(Polyhydroxyalkanoate、PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリビニルアルコール(PVA)、コラーゲン、セルロース、ポリ乳酸(Polylactic acid、PLA)、Poly(D、L-lactide-co-glycolic acid)(PLGA)、ポリカプロラクトン(Polycarprolactone、PCL)のいずれか1つ、又は、これらの混合物として提供される。基板ベース物質は、有機溶媒に対して、3乃至10%の体積重量で混合される。
【0039】
以後、分解性気泡生成物質を混合する(S300)。分解性気泡生成物質は、有機溶媒及び基板ベース物質と均質に混合されるように、ミキサなどにより混ぜる。分解性気泡生成物質は、電子素子用分解性基板が水に遭遇すると、気泡生成反応を起こして、発生する気泡及び分解性気泡生成物質の消失により、電子素子用分解性基板が速い速度で分解されるようにする。分解性気泡生成物質は、有機酸と炭酸水素塩からなる。これにより、分解性気泡生成物質は、水に遭遇して反応すると、二酸化炭素を発生させ、且つ、速い速度で分解して消失される。また、二酸化炭素は、気泡形状に電子素子用分解性基板で発生し、電子素子用分解性基板の分解を更に促進させる。有機酸は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、酒石酸、酢酸のいずれか1つ、又は、これらの混合物である。炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのいずれか1つ、又は、これらの混合物である。電子素子用分解性基板において、基板ベース物質と分解性気泡生成物質は、4:1乃至1:2の重量比を有する。
【0040】
図3は、分解性気泡生成物質が粉砕される過程を示す図である。
【0041】
図3に示しているように、分解性気泡生成物質は、水に遭遇したときの反応性、機械的物性を調節するために、粒径が所定の範囲となるように粉砕処理された後、混合される。分解性気泡生成物質は、粒径が平均10μm以下となるように粉砕された後、混合される。一例として、分解性気泡生成物質は、ボールミル(ball-milling)方法で粉砕される。ボールミルは、ドラム1内に、粉砕用ボール3と分解性気泡生成物質2を入れ、ドラム1を回転して行われる。ここで、分解性気泡生成物質は、有機酸又は炭酸水素塩に該当する物質の1つが投入された状態で行われる。粉砕用ボール3は、セラミックスボールである。ドラム1の回転に伴い、粉砕用ボール3と分解性気泡生成物質2が衝突して、分解性気泡生成物質2を粉砕させる。粉砕用ボール3として、セラミックスボールを用いると、分解性気泡生成物質2の粒径を、5μm乃至500nmまで減らすことができる。
【0042】
図4は、粉砕過程の進行による分解性気泡生成物質の粒径の変化を示す図であり、
図5は、粉砕過程の進行による分解性気泡生成物質の平均粒径、及び粒径の標準偏差を示す図である。
【0043】
図4は、ボールミル工程を用いて、炭酸水素塩の1つである炭酸水素ナトリウム(Sodium bicarbonate,SB)と、有機酸の1つであるクエン酸(Citric acid,CA)に対して粉砕工程を行い、工程時間による粒径の変化を、顕微鏡画像として示した写真である。工程の初期には、平均500μm前後の粒径を示しているが、粉砕工程時間の経過によって、粒径は急激に減らし、6時間の経過後、粒径が、炭酸水素ナトリウムは、~1μm、クエン酸は、~2μm程度に減らしたことが確認できる。
【0044】
図5は、炭酸水素ナトリウム、クエン酸のそれぞれに対して、粉砕工程が行われることによって、粒子の平均サイズと標準偏差の変化を示す。ボールミルを用いた粉砕工程の進行により、粒子の平均サイズが減少し、粒径の偏差も減少することが確認できる。すなわち、粉砕工程により、粒径が減少し、且つ、粒径の均一度が高くなることが分かる。
【0045】
分解性気泡生成物質の粒径を減らし、粒径の均一度が向上した状態で、基板ベース物質である高分子物質と均質混合されて、分解性気泡生成物質及び基板ベース物質の複合混合体である電子素子用分解性基板の製作が容易であり、電子素子用分解性基板が汎用的に使用できるようにし、水に遭遇して分解反応が行われるとき、分解速度の向上、分解領域の均質性を有することにする。これにより、分解性気泡生成物質は、粉砕工程が行われて、平均粒子のサイズが少なくとも10μm以下となるようにしてから、混合するのが望ましい。より望ましくは、分解性気泡生成物質は、粉砕工程が行われて、平均粒径が少なくとも5μm以下となるようにしてから、混合するのが望ましい。
【0046】
図6は、分解性気泡生成物質において、有機酸リンと炭酸水素塩の分子比による分解反応時に生成される溶液のpHを示す図である。
【0047】
図6には、有機酸がクエン酸(CA)であり、炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウム(SB)である場合を示している。
【0048】
図6に示しているように、分解性気泡生成物質において、有機酸と炭酸水素塩の割合によって、分解時溶液のpHを調節できることが分かる。これにより、炭酸水素塩に対する有機酸の割合を増やすと、分解反応において、低いpH条件を形成して、生分解性金属性物質であるマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)を、金属-酸反応により分解速度を上げる役割を果たすことができる。また、有機酸と炭酸水素塩が適切な速度で相互反応をするためには、適切な割合を維持する必要がある。これにより、有機酸と炭酸水素塩の分子比は、1:1乃至1:3が望ましい。
【0049】
以後、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質が混合した溶液を乾燥して、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質からなる電子素子用分解性基板を生産する(S400)。例えば、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質が混合した溶液は、電子素子用分解性基板の形状が有する成形型(mold)に注いだ後、湿度が非常に低い環境(dried condition)で、1乃至2日間、完全に乾燥して、電子素子用分解性基板を生産する。ここで、電子素子用分解性基板は、厚さ100~200μmで作られて、生体に投入される方式で用いられる電子素子にも使用可能である。これにより、電子素子用分解性基板は、基板ベース物質に分解性気泡生成物質の粒子がムラなく分布された構造を有することになる。そして、水と反応すると、分解性気泡生成物質の消失、及び気泡生成物質である有機酸と炭酸水素塩が相互反応して発生される気泡で、電子素子用分解性基板が早く分解されることになる。
【0050】
実験例1.
基板ベース物質として、ゼラチンを用いた。ゼラチンを基にした電子素子用分解性基板は、乾燥したアルゴン(Ar)雰囲気のグローブボックス(glove box)内で、HFIP 20mLに0.6~1g(3-5%w/v)の豚(porcine)から抽出したゼラチンと、可塑剤であるグリセロール(glycerol)0.3~1g(1.5-5% w/v)を添加して、高分子溶液を製造した。分解性気泡生成物質は、粉砕した有機酸(クエン酸)と炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム)を、0.3~1.2g(1.5~6% w/v)入れて混合撹拌し(分子比、有機酸:炭酸水素塩=1:1~1:3)、PDMS(ポリ(ジメチルシロキサン))鋳造型に溶液を満たして、24時間の間、乾燥後、乾燥機で更に24時間を乾燥して、電子素子用分解性基板を製造した。厚さは、ゼラチンに対する分解性気泡生成物質の割合によって、50μm乃至200μmとした。ここで、電子素子用分解性基板は、ゼラチンと分解性気泡生成物質が10:3乃至1:2の重量比を有する。
【0051】
実験例2.
また、他の例として、基板ベース物質として、PLGAを用いた。PLGAに基づく電子素子用分解性基板は、前記ゼラチンと同一の条件で製造し、アセトン20mLに、PLGA(ラクチド(Lactide):グリコリド(Glycolide)=50:50、65:35)1~2g(5-10% w/v)を溶解して、高分子溶液を形成する。分解性気泡生成物質は、分子比(1:1~1:3)の粉砕した有機酸と炭酸水素塩0.5~2g(2.5.~10% w/v)を入れて混合し、PDMS鋳造型に入れ、前記と同様な方法で乾燥して、電子素子用分解性基板を製造した。ここで、電子素子用分解性基板は、PLGAと分解性気泡生成物質が、4:1乃至1:2の重量比を有する。
【0052】
図7は、一実施形態として、ゼラチンを基板ベース物質とにして作られた電子素子用分解性基板が分解される過程を示す図であり、
図8は、温度によって、分解にかかる時間を示す図である。
【0053】
図7及び
図8に示しているように、常温(25℃)で水と反応して、急速に気泡を発生させて、分解反応が起き、60秒内に電子素子用分解性基板を消滅させることが確認できる。
【0054】
また、体温に該当する温度条件(37℃)で分解反応速度が早くなり、水と反応を開始した後、30秒内に早く破壊が行われることを確認した。すなわち、周囲環境の温度に分解反応速度が比例することを確認した。
【0055】
図9は、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質が混合した溶液に可塑剤を更に添加した後、作られた電子素子用分解性基板の機械的物性を示す図である。可塑剤は、グリセロール、ソルビトールなどである。
【0056】
本実施形態において、基板ベース物質である高分子物質はゼラチンを用い、可塑剤として、グリセロールを用いた。
【0057】
図9に示しているように、可塑剤を添加して製造した電子素子用分解性基板は、ロード、アンロードサイクル形状の繰返し機械的耐久性実験により、1000回間、90%以上の回復性及び耐久性を表した。すなわち、電子素子用分解性基板は、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質が混合した溶液に、可塑剤を更に添加した後、乾燥して製造する方法により、折れやすい特性を低減し、軟性と柔軟性を付与することができるので、ウェアラブル一形状としても使用できることになる。
【0058】
図10は、可塑剤であるグリセロールの含量によって、電子素子用分解性基板の熱的な特性であるガラス転移温度と融点を示す図である。
【0059】
図10に示しているように、グリセロールの量が多くなることにつれ、ガラス転移温度及び融点が低温に移動する特性を確認することができる。これにより、添加する可塑剤の量を調節して、電子素子用分解性基板のガラス転移温度及び融点を、使用目的に合わせて調節することができる。
【0060】
図11は、分解性気泡生成物質の有無による基板の透過度特性を示す図である。
【0061】
基板ベース物質は、ゼラチンを用いた。可塑剤として、グリセロールを用いた。分解性気泡生成物質を添加して作った電子素子用分解性基板は、分解性気泡生成物質なく作った基板と比較して、70%以上の透過度を維持することが確認できる。すなわち、分解性気泡生成物質が添加されても、一定範囲以上の透過度を維持して、電子素子用分解性基板は、一定範囲以上の透過度を有する形状にも製作が可能である。
【0062】
図12は、可塑剤の種類による水分子の時間による電子素子用分解性基板の表面の接触角を示す図である。
【0063】
基板ベース物質である高分子物質は、ゼラチンを用いた。
図12を参照すると、可塑剤の種類によって、水分子の時間による電子素子用分解性基板の表面の接触角(contact angle)が変わることが分かる。ここで、接触角は、吸湿性と反比例関係を有する。これにより、可塑剤の種類の選択により、電子素子用分解性基板の吸湿性を調節し、これにより、分解速度を調節できることが分かる。また、電子素子用分解性基板の分解速度を速くしたい場合、可塑剤は、ソルビトールよりも湿度が高いグリセロールであることが望ましい。
【0064】
図13は、一実施形態によるPLGAに基づく電子素子用分解性基板の分解反応を示す図である。
【0065】
基板ベース物質として、PLGA、分解性気泡生成物質として、炭酸水素ナトリウムとクエン酸を用いた。電子素子用分解性基板の厚さは、50μm乃至300μmである。
【0066】
水と反応した後、PLGAを基にした電子素子用分解性基板が、60秒以内に消滅することが確認できる。すなわち、ゼラチンと比較して、相対的に遅い分解速度を有した高分子であるPLGAを基にした場合にも、電子素子用分解性基板は、水と反応後、容易に分解することを示す。
【0067】
図14は、一実施形態によるPLGAに基づく電子素子用分解性基板の表面と内部構造を示す電子走査顕微鏡(SEM)写真である。
【0068】
図14に示しているように、基板ベース物質がPLGAである電子素子用分解性基板は、微細多孔性構造を有しており、これにより、水が早く内部に浸透して、水により迅速に反応することになるので、速い消滅現象を説明している。
【0069】
図15は、PLGAに基づく電子素子用分解性基板において、分解性気泡生成物質とPLGAの質量比による電子素子用分解性基板の機械的な物性を示す図である。
【0070】
図15に示しているように、PLGAに対する分解性気泡生成物質の含量が増加するほど、電子素子用分解性基板の軟性が低くなることが確認できる。これにより、PLGAに対する分解性気泡生成物質の質量比調節により、電子素子用分解性基板の軟性を調節することができる。
【0071】
図16は、PLGAに基づく電子素子用分解性基板の時間経過による重さ変化を示す図である。
【0072】
PLGAに対する分解性気泡生成物質の質量比が50%、100%であることがそれぞれ、温度22℃、相対湿度(relative humidity)40%の環境に露出した状態を基準に、30日が経過する間、大きな質量の変化がないことが確認できる。そこで、PLGAに基づく電子素子用分解性基板は、長期間、安定して保管できることを確認することができる。
【0073】
図17は、本発明の一実施形態に係るPLGAに基づく電子素子用分解性基板を用いた電子素子の分解過程を示す図である。
【0074】
基板の上面に形成される素子領域は、分解性のある電極物質(マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W))のうち、マグネシウムを選択して製作した。素子の製作は、シリコンウエハ基板上に、ポリ(メチルメタクリルレート)(PMMA)、ポリイミド(PI)をそれぞれ、50~500nm、1~10μmの厚さで、フィルムを形成した。以後、スパッタ、電子ビーム蒸発器(e-beam evaporator)、熱蒸発器(thermal evaporator)により蒸着した100~500nmの厚さであるマグネシウムを、半導体工程であるフォトリソグラフィでパターニングした後、酸化マグネシウム(MgO)、酸化シリコン(SiO2)を用いて、50~300nmの厚さで金属層を保護する絶縁層(passivation)を、スパッタ、電子ビーム蒸発器により蒸着し、パターニングする。上部に薄いPI層をコーティングしてから、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(Reactive ion etcher、RIE)によりパターニング及びエッチングする。この後、全体のシリコンウエハ基板をアセトン溶液に浸けて、犠牲層(Sacrificial layer)であるPMMA層を除去する。ここで、PMMA上のPI/金属/絶縁層/PI層が、シリコンウエハ基板から分離され、これをPDMSスタンプ、高温剥離テープ、水剥離テープなどを用いて分離した後、RIEにより、残ったPIフィルム層をエッチングし、これを電子素子用分解性基板に転写して、電子素子用分解性基板を用いた電子素子を仕上げた。これによる電子素子用分解性基板を用いた電子素子は、常温の水と反応して、100秒内に完全分解されることが確認できる。また、電子素子用分解性基板を用いた電子素子は、略60秒を経過した時点で、ほとんど機能を行えないほどに性能低下が発生して、分解性気泡生成物質なく、基板ベース物質を用いた基板と比較して、55倍以上の速い性能低下速度を表す。
【0075】
すなわち、電子素子用分解性基板を用いて製作された電子素子の場合も、電子素子用分解性基板を単独で分解させる場合に比べて、大きな差なく、分解が完了することが確認できる。
【0076】
図18は、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板を用いて製作される遠隔制御可能な電子素子を示す図である。
【0077】
図18に示しているように、電子素子用分解性基板に商用素子を取り入れて、ウェアラブル形状のチップを構成する。このような電子素子は、NFC(ニア・フィールド・コミュニケーション)可能な周波数帯域(13.56Mhz)を用いて、遠隔で電力を受信して、動作させる。電子素子用分解性基板は、基板ベース物質がゼラチンであることを用いた。電子素子は、マイクロコントローラ(Microcontroller)、リニアレギュレータ(low drop out、LDO)、ダイオード、キャパシタ、マイクロLED、レーザ切断でパターニングされたコイル(Mg、厚さ5~50μm)、連結線(Mg interconnect、厚さ1~10μm)などで構成され、遠隔で作動できるように具現されている。このように具現された電子素子も水と反応して、300秒内に自己消滅することを確認した。
【0078】
図19は、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板と、これに対比される基板をそれぞれ、4週間、ネズミに挿入する生体適合性・生分解性過程を示す比較実験を示しており、
図20は、
図19により、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板と、これに対比される基板が挿入された生体組織の部分を切開して、組織学的分析を行った図である。
【0079】
電子素子用分解性基板は、基板ベース物質としてPLGAを用い、これに対比される基板は、分解性気泡生成物質なく、PLGAのみを用いて作られた基板を用いた。これを参照すると、本発明の一実施形態に係る電子素子用分解性基板は、PLGAのみある場合と同様に、生体内で安定して分解されることが確認できる。また、分解反応が起きた生体組織においても、PLGAのみある場合と大きな差がないため、分解性気泡生成物質が添加されても、生体適合性の阻害が発生しないことが確認できる。すなわち、分解性気泡生成物質は、自然から由来した物質となっているため、電子素子用分解性基板は、生体に投入及び分解過程において、人体や環境に無害な特性を有する。
【0080】
図21は、他の実施形態による電子素子用分解性基板アセンブリの分解斜視図を示す図であり、
図22は、電子素子用分解性基板アセンブリの内側に形成された流路を示す図であり、
図23は、入口側流路及び動作側流路が互いに連結された状態を示す図である。
【0081】
図21乃至
図23に示しているように、電子素子用分解性基板アセンブリ20は、電子素子用分解性基板21と、流路形成モジュール22、23、24とを含む。
【0082】
電子素子用分解性基板21は、前述した実施形態と同様に、基板ベース物質及び分解性気泡生成物質を含む。また、電子素子用分解性基板は、気泡生成物質を省略した状態で、基板ベース物質として提供することもできる。
【0083】
流路形成モジュール22、23、24は、流路形成層22及び空圧バルブ制御層24を含む。流路形成モジュール22、23、24は、電子素子用分解性基板の底面に取り付けられる。流路形成モジュール22、23、24は、電子素子用分解性基板21に供給される水の供給状態を制御する。流路形成層22の内側には、入口側流路220及び動作側流路221が形成される。入口側流路220及び動作側流路221は、所定の距離を離隔して、切れた状態で提供される。入口側流路220及び動作側流路221が互いに切れた状態で隣接した領域は、下方に開放した状態で提供される。
【0084】
動作側流路221において、入口側流路220と隣接した領域の反対方向には、収容領域222が形成される。収容領域222は、上方に開放して、電子素子用分解性基板21と接するように提供される。収容領域222には、分解性気泡生成物質が満たされた状態で提供される。分解性気泡生成物質は、前述した実施形態のように、有機酸と炭酸水素塩からなり、これらの混合物がペースト状態で満たされる。
【0085】
空圧バルブ制御層24は、流路形成層22の下方に位置する。空圧バルブ制御層24は、入口側流路220と動作側流路221を相互連結又は分離させる。空圧バルブ制御層24の上方には、入口側流路220及び動作側流路221が互いに切れた状態で隣接した領域の下方に配置され、上方に向かって開放した制御空間240が形成される。空圧バルブ制御層24には、制御空間240に連結される制御流路241が形成される。
【0086】
制御空間240の開放した上方を覆う形状で、流路形成層22と空圧バルブ制御層24の間には、メンブレン23が配置される。メンブレン23は、所定の弾性を有し、入口側流路220及び動作側流路221が隣接した領域の底面に密着した状態で提供される。これにより、入口側流路220に水が供給された状態でも、入口側流路220と動作側流路221は、メンブレン23を通じて、切れた状態を維持することになる。制御流路241により、制御空間240を排気減圧すると、メンブレン23は、制御空間240に向かって移動することになり、入口側流路220と動作側流路221が、メンブレン23の上方に形成された空間を通じて連結される。これにより、入口側流路220を通じて供給される水は、収容領域222を通じて電子素子用分解性基板に供給されて、電子素子用分解性基板を分解させる。また、電子素子用分解性基板が、分解性気泡生成物質を省略した状態で提供される場合にも、その代わりに、分解性気泡生成物質を収容領域222に満たし、収容領域222で発生した気泡により、電子素子用分解性基板の分解が促進される。
【0087】
図24は、電子素子用分解性基板アセンブリの上面に素子を形成した後、分解反応を行う状態を示す図である。
【0088】
このための実施形態として、まず、流路形成モジュール22、23、24のための型を、3Dプリンティングを用いて製作した。この後、Sylgard AとBを10:1割合で混ぜた後、型にPDMS(Polydimethylsiloxane)を満たして硬化させる方式で、流路形成層22、空圧バルブ制御層24をそれぞれ製作した。
【0089】
電子素子用分解性基板の上面の素子は、遠隔で動作する電子層(RF electronic layer)を、マイクロLEDとダイオード、キャパシタ、Mgコイル(10~50μm厚さ)、Mg連結線(1~5μm厚さ)を用いて製作した。収容領域222には、分解性気泡生成物質である炭酸水素塩と有機酸の混合物のペーストを満たした。破壊対象となる素子の主要部分として、LEDが収容領域222の上方に配置されるようにした。これにより、収容領域の上方に配置された素子を早く破壊して、動作を停止させることができることを確認した。
【0090】
以上、本発明を好適な実施形態を用いて詳しく説明したが、本発明の範囲は、特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲により解析されるべきである。また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲から逸脱しない多くの修正と変形が可能であることを理解するだろう。
【国際調査報告】