(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】再帰反射特性を有する有機溶媒系組成物を提供する方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240528BHJP
C09D 5/33 20060101ALI20240528BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240528BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20240528BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240528BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/33
C09D7/61
C09D7/43
B05D5/06 B
B05D7/24 303H
B05D7/24 303B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571151
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022063148
(87)【国際公開番号】W WO2022243227
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522166275
【氏名又は名称】インク インベント アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】INK INVENT IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クノート, ヤックス アルテュール
(72)【発明者】
【氏名】メイネン, ポール ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ケレス, ハラルド ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミュイス, フィリップス ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】クノート, メンノ アルテュール
(72)【発明者】
【氏名】シュライパー, ラモン マリア ヘンリクス
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC14
4D075AC45
4D075CB05
4D075EA07
4D075EA33
4D075EC03
4D075EC07
4D075EC24
4D075EC33
4D075EC53
4J038HA446
4J038JC32
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA19
(57)【要約】
本発明は、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料及びコーティング配合物からなる群から選択される組成物を提供する方法に関し、前記方法は、a)再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;b)再帰反射性有機溶媒系組成物を用意するステップ;c)ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物と30:70~70:30の間の重量比で混合して、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料及びコーティング配合物からなる群から選択される組成物を提供する方法であって、
a)
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#1スピンドルを用いて測定される1mPa・sから
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#5スピンドルを用いて測定される300Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度及び20℃の温度でのブルックフィールド粘度η
1を有する、再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
b)第1のブルックフィールド粘度η
2及び第2のブルックフィールド粘度η
3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中20℃の温度で#4スピンドルを用いて測定され、η
3がη
2よりも少なくとも2倍低いことを条件として、5から350Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度でのη
2、及び100から5000mPa・sの間の、20rpmの剪断速度でのη
3を有する再帰反射性有機溶媒系組成物を用意するステップであって、
前記再帰反射性有機溶媒系組成物が、前記再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして
10~49.85重量%の有機溶媒;
レーザー回折を用いて測定される1から1500μmの間の中央粒径D50、及び589nmの波長λで測定される1.5から2.8の間の屈折率を有する50~85重量%の球状ガラスビーズ;
0.15~3.5重量%の増粘剤;及び
0~10重量%の1種又は複数のさらなる成分からなるステップ;
c)ステップ(a)で用意される前記再帰反射特性のない有機溶媒系インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物と30:70~70:30の間の重量比で混合して、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
d)任意選択でステップ(c)で得られた前記再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(c)で得られた前記再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、0~4.5重量%の、5から150μmの間の平均直径、1μm未満の厚さ及び少なくとも10のアスペクト比を有する合成顔料薄片と混合するステップ;並びに
e)任意選択で、ステップ(c)又は(d)で得られた混合物を、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、0~3重量%の増粘剤と混合するステップを含む、方法。
【請求項2】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物が、前記再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして
15~49.85重量%の有機溶媒;
5から1500μmの間のレーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び1.5から2.8の間の589nmの波長λで測定される屈折率を有する50~80重量%の球状ガラスビーズ;
0.15~3.5重量%の増粘剤;及び
0~10重量%の1種又は複数のさらなる成分からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物が、第1のブルックフィールド粘度η
2及び第2のブルックフィールド粘度η
3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#4スピンドルを用いて20℃の温度で測定されるη
3がη
2よりも少なくとも4倍低いことを条件として、8~325Pa・sの0.5rpmの剪断速度でのη
2及び110から4000mPa・sの間の、20rpmの剪断速度でのη
3を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない前記有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物が、
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#1スピンドルを用いて測定される、5mPa・s、より好ましくは10mPa・sから
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#5スピンドルを用いて測定される280Pa・s、より好ましくは250Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度及び20℃の温度でのブルックフィールド粘度η
1を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記球状ガラスビーズが、
(i)2.0から2.8の間、好ましくは2.1から2.4の間の;又は
(ii)1.7から2.1の間、好ましくは1.8から2.0の間の、589nmの波長λで測定される屈折率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記球状ガラスビーズが、1から100μmの間、1から75μmの間、1から50μmの間、1から45μmの間、1から40μmの間又は1から35μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記球状ガラスビーズが、5から100μmの間、5から75μmの間、5から50μmの間、5から45μmの間、5から40μmの間又は5から35μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記球状ガラスビーズの少なくとも一部が、アルミニウムコーティングを用いて半球状にコーティングされている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記有機溶媒が、脂肪族及び芳香族溶媒、ケトン、エステル、グリコエーテル、アルコール、ハロゲン化炭化水素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記増粘剤が、(変性)水素化ヒマシ油、粘土、変性粘土、スルホン酸カルシウム複合体、有機親和性フィロシリケート、シリカゲル、合成無定形シリカ、アクリル酸型ゲル化剤、変性セルロース系材料、ポリ尿素分散体、尿素変性ポリアミドの溶液、ポリウレタン分散体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の増粘剤の量が、ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして、0.20~3.0重量%、好ましくは0.25~2.5重量%、より好ましくは0.30~2.1重量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物中の前記1種又は複数のさらなる成分が、泡制御剤、防腐剤、染料、硬化開始剤、発光剤、顔料、UV吸収剤、結合剤及び樹脂からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)、(d)及び/又は(e)が、撹拌しながら15から30℃の間の温度で遂行される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)が、ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物を、ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない前記有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物に添加することを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)において、ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない前記有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物が、ステップ(b)で用意される前記再帰反射性有機溶媒系組成物と40:60~60:40の間の重量比、好ましくは45:55~55:45の間の重量比で混合される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(e)において、ステップ(c)又は(d)で得られた前記混合物が、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られた再帰反射特性を有する前記有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして0~2.5重量%、0~2.0重量%、0~1.8重量%、0~1.6重量%、0~1.5重量%、0~1.4重量%又は0~1.3重量%の増粘剤と混合される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)、(d)又は(e)で得られた再帰反射特性を有する前記有機溶媒系ペーストインク、塗料又はコーティング配合物を、スクリーン印刷、噴霧コーティング、カーテンコーティング又はスプレー塗装を使用して基材に塗布するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料及びコーティング配合物からなる群から選択される組成物を提供する方法に関する。本発明は、さらに基材に再帰反射性組成物を塗布するステップをさらに含む前記方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
再帰反射性効果は様々な用途に使用される。例えば、暗い条件下で道路標識、道路マーカー、布地、自動車などの視認性を改善するために、又は単にそれらの視覚的外観を改善するために。道路マーカーは、典型的には、特定の屈折率を有する球状ガラスビーズを添加することにより再帰反射特性が付与される。再帰反射は、球状ガラスビーズの上表面を通る入射光の屈折、球状ガラスビーズの下内側表面からの内部反射、及びその後、衝突する光が来た方向に戻って球状ガラスビーズの上表面から出る際の光の屈折のタンデム型作用により生じる。
【0003】
国際公開第2004/017104号は、再帰反射性微小球体、結合剤系、及び再帰反射性組成物を基準として約2~約5重量%の量の少なくとも2種のチキソトロピー剤を含むチキソトロピーブレンドを含む再帰反射性組成物を開示している。再帰反射性組成物は、塗料、インク及びコーティングとして使用されることが意図され、噴射剤を用いてエアロゾルアプリケータを使用して基材に塗布される。
【0004】
国際公開第00/42113号は、液体キャリア媒体中にマイクロビーズを含む再帰反射性インクに関する。インクは布地へのスクリーン印刷用に意図される。
【0005】
有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物は、種々の色で及び/又は種々の用途向けに個別に調整されて多くの供給業者によって商業的に供されている。有機溶媒系ペースト、塗料、インク又はコーティング配合物のすべての新しい用途及びすべての変性には、実験室試料から市販品までのコストと時間のかかる開発プロセスを必要とする。明らかに、種々の色で及び/又は種々の用途向けに多くの製品を供するには、顧客の注文に迅速に対応することができる大きな倉庫及び大きい在庫を必要とする。
【0006】
上記の説明のように、ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物に再帰反射特性を付加することは、改善された視認性及び/又はより魅力的な視覚的外観をもたらすため有利となり得る。
【0007】
再帰反射性球状ガラスビーズを含む追加成分の添加は、乾燥又は硬化後のペースト、塗料、インク又はコーティング配合物の特性は言うまでもなく、既存のペースト、塗料、インク又はコーティング配合物の加工性に実質上影響を及ぼすべきではないため、すでに市販されている有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物の再帰反射性バージョンの開発もまた、コスト及び時間がかかる開発プロセスが必要である。再帰反射特性のないペースト、塗料、インク及びコーティング配合物に加えて、再帰反射性ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物を供するには、大きな倉庫さえ必要である。
【0008】
したがって、有機溶媒系塗料、インク及びコーティング配合物の加工性を実質的に変化させることなく、また乾燥又は硬化後のペースト、塗料、インク又はコーティング配合物の特性に実質的に影響を及ぼすことなく、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物、すなわち市販されている有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物を需要に応じて提供するための効率的な方法が必要とされている。
【0009】
添付された実施例に示すように、本発明者らは、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物を提供することが、単に有機溶媒系ペースト、塗料、インク又はコーティング配合物を再帰反射性球状ガラスビーズと混合するだけでは、組成物にわたる球状ガラスビーズの分布の点で不均質、空気混入及び/又は不安定性がもたらされるため実現できないことを確証した。
【0010】
したがって、本発明の目的は、有機溶媒系ペースト塗料、インク及びコーティング配合物の加工性を実質的に変化させることなく、及び/又は乾燥若しくは硬化後のペースト、塗料、インク又はコーティング配合物の特性に悪影響を及ぼすことなく、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物を提供するための効率的な方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、組成物にわたる再帰反射性球状ガラスビーズの均質で安定な分布をもたらす、再帰反射性球状ガラスビーズを含む有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物を提供するための効率的な方法を提供することである。
【0012】
[発明の概要]
本発明者らは、予想外にも、再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、塗料、インク又はコーティング配合物を、再帰反射性球状ガラスビーズ及び増粘剤(複数可)を含む有機溶媒系組成物(前記有機溶媒系組成物は、5から350Pa・sの間の0.5rpmの剪断速度での第1のブルックフィールド粘度η2、及び100から5000mPa・sの間の20rpmの剪断速度での第2のブルックフィールド粘度η3を有する。ただし、η2及びη3が20℃の温度で#4スピンドルを用いて測定され、η3はη2よりも少なくとも2倍低いことを条件とする)と混合することによって、また任意選択で続いて追加の増粘剤を添加することによって、1つ又は複数の目的を満たすことができることを確証した。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料及びコーティング配合物からなる群から選択される組成物を提供する方法であって、
a)
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#1スピンドルを用いて測定される1mPa・sから
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#5スピンドルを用いて測定される300Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度及び20℃の温度でのブルックフィールド粘度η1を有する、再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
b)第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中20℃の温度で#4スピンドルを用いて測定され、η3がη2よりも少なくとも2倍低いことを条件として、5から350Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度でのη2、及び100から5000mPa・sの間の、20rpmの剪断速度でのη3を有する再帰反射性有機溶媒系組成物を用意するステップであって、
前記再帰反射性有機溶媒系組成物が、前記再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして
10~49.85重量%の有機溶媒;
レーザー回折を用いて測定される1から1500μmの間の中央粒径D50、及び589nmの波長λで測定される1.5から2.8の間の屈折率を有する50~85重量%の球状ガラスビーズ;
0.15~3.5重量%の増粘剤;及び
0~10重量%の1種又は複数のさらなる成分からなるステップ;
c)ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物と30:70~70:30の間の重量比で混合して、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
d)任意選択でステップ(c)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(c)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、5から150μmの間の平均直径、1μm未満の厚さ及び少なくとも10のアスペクト比を有する、0~4.5重量%の合成顔料薄片と混合するステップ;並びに
e)任意選択で、ステップ(c)又は(d)で得られた混合物を、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、0~3重量%の増粘剤と混合するステップを含む方法に関する。
【0014】
ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、主として有機溶媒及び球状ガラスビーズからなる。不活性な球状ガラスビーズは、有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物に影響を及ぼさないか又はほとんど影響を及ぼさない。したがって、これらの系は、「商業的な」有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物と非常に親和性がある。有機溶媒は、乾燥又は硬化と共にペースト、インク、塗料又はコーティング配合物から消える。本発明者らは、ステップ(a)で用意された有機溶媒系ペースト、塗料、インク及びコーティング配合物の加工性は、ステップ(b)で定義される再帰反射性有機溶媒系組成物が、増粘剤の任意選択の添加と共に適切な量で添加される場合、ほとんど変化しないことを確証した。再帰反射性球状ガラスビーズは、ステップ(b)で定義される十分に安定で均質な有機溶媒系組成物の形で添加されるので、それらは、ステップ(a)で定義される再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物に空気混入なしで添加することができ、再帰反射特性を有する十分に安定で均質な有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物が結果として得られる。
【0015】
定義
本明細書において定義されるプロセスのステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の文脈中の「剪断減粘挙動」という用語は、最初静的状態である組成物がある剪断速度にかけられるときの粘度の低下に関係する。
【0016】
詳細な説明
第1の態様において、本発明は、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料及びコーティング配合物からなる群から選択される組成物を提供する方法であって、
a)
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#1スピンドルを用いて測定される1mPa・sから
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#5スピンドルを用いて測定される300Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度及び20℃の温度でのブルックフィールド粘度η1を有する、再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
b)第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中20℃の温度で#4スピンドルを用いて測定され、η3がη2よりも少なくとも2倍低いことを条件として、5から350Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度でのη2、及び100から5000mPa・sの間の、20rpmの剪断速度でのη3を有する再帰反射性有機溶媒系組成物を用意するステップであって、
前記再帰反射性有機溶媒系組成物が、前記再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして
10~49.85重量%の有機溶媒;
レーザー回折を用いて測定される1から1500μmの間の中央粒径D50、及び589nmの波長λで測定される1.5から2.8の間の屈折率を有する50~85重量%の球状ガラスビーズ;
0.15~3.5重量%の増粘剤;及び
0~10重量%の1種又は複数のさらなる成分からなるステップ;
c)ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物と30:70~70:30の間の重量比で混合して、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
d)任意選択でステップ(c)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(c)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、5から150μmの間の平均直径、1μm未満の厚さ及び少なくとも10のアスペクト比を有する、0~4.5重量%の合成顔料薄片と混合するステップ;並びに
e)任意選択で、ステップ(c)又は(d)で得られた混合物を、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、0~3重量%の増粘剤と混合するステップを含む方法に関する。
【0017】
非常に好ましい実施形態において、第1の態様は、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料及びコーティング配合物からなる群から選択される組成物を提供する方法であって、
a)
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#1スピンドルを用いて測定される1mPa・sから
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#5スピンドルを用いて測定される300Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度及び20℃の温度でのブルックフィールド粘度η1を有する、再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
b)第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中20℃の温度で#4スピンドルを用いて測定され、η3がη2よりも少なくとも2倍低いことを条件として、5から350Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度でのη2、及び100から5000mPa・sの間の、20rpmの剪断速度でのη3を有する再帰反射性有機溶媒系組成物を用意するステップであって、
前記再帰反射性有機溶媒系組成物が、前記再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして
15~49.85重量%の有機溶媒;
レーザー回折を用いて測定される1から1500μmの間の中央粒径D50、及び589nmの波長λで測定される1.5から2.8の間の屈折率を有する50~80重量%の球状ガラスビーズ;
0.15~3.5重量%の増粘剤;及び
0~10重量%の1種又は複数のさらなる成分からなるステップ;
c)ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物と30:70~70:30の間の重量比で混合して、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を用意するステップ;
d)任意選択でステップ(c)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を、ステップ(c)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、5から150μmの間の平均直径、1μm未満の厚さ及び少なくとも10のアスペクト比を有する、0~4.5重量%の合成顔料薄片と混合するステップ;並びに
e)任意選択で、ステップ(c)又は(d)で得られた混合物を、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして、0~3重量%の増粘剤と混合するステップを含む方法に関する。
【0018】
当業者によって認識されるように、本明細書において定義されるプロセスのステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の限定的な沈降、(相)分離及び/又は離液は、前記組成物を再懸濁して、例えば簡単な撹拌を使用してそれらを加工するのに十分に長い時間均質のままである組成物を得ること(すなわち、それらを、本明細書において定義されるプロセスのステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物と混合すること)ができる場合、問題ではない。同様に、本明細書において定義されるプロセスのステップ(c)、(d)又は(e)で用意される再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の、限定的な沈降、(相)分離及び/又は離液は、前記組成物を再懸濁して、例えば簡単な撹拌を使用してそれらを加工するのに十分に長い時間安定で均質のままである組成物を得ること(すなわち目的の基材にそれらを塗布すること)ができる場合、問題ではない。
添付された実施例に示すように、本明細書において定義されるプロセスのステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物、及び本明細書において定義されるプロセスのステップ(c)、(d)又は(e)で用意される再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の両方は、それらを加工するのに十分に長い時間安定で均質なままである。
【0019】
ステップ(c)において、ステップ(a)で用意された有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物は、好ましくはステップ(b)で用意された再帰反射性有機溶媒系組成物と60:40~40:60の間の重量比、より好ましくは45:55~55:45の間の重量比で混合される。
【0020】
好ましい実施形態において、本明細書において定義される方法はさらに、スクリーン印刷、カーテンコーティング、噴霧コーティング又はスプレー塗装を使用して、ステップ(c)、(d)又は(e)で得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物を基材に塗布するステップを含む。
【0021】
好ましい実施形態において、ステップ(c)、(d)及び(e)は撹拌しながら15から30℃の間の温度で遂行される。空気泡の混入を回避するために、撹拌は、好ましくは低い剪断速度で遂行される。別の好ましい実施形態において、ステップ(c)は、ステップ(a)で用意された再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物に、ステップ(b)で用意された再帰反射性有機溶媒系組成物を添加するステップを含む。
【0022】
任意選択のステップ(d)で添加される合成顔料薄片は、好ましくは「さらなる成分」の下で本明細書において定義される合成顔料薄片から選ばれる。
【0023】
有機溶媒
本明細書において使用される「有機溶媒」という用語は、有機溶媒、又は3重量%未満の水、好ましくは2重量%未満の水、より好ましくは1重量%未満の水、さらにより好ましくは0.5重量%未満の水を含む(最も好ましくは無水の)、有機溶媒の混合物に関係する。
【0024】
好ましい有機溶媒は、脂肪族及び芳香族溶媒、ケトン、エステル、グリコエーテル、アルコール、ハロゲン化炭化水素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。非常に好ましい有機溶媒は、キシレン(異性体の混合物)、トルエン、エチルベンゼン、ナフサ、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、n-プロピルベンゼン、酢酸イソペンチル、n-酢酸ブチル、(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸2-メチルブチル、イソブタノール、1-ブタノール、1-エトキシプロパン-2-オール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、4,6-ジメチル-ヘプタン-2-オン、4-メチル-2-ペンタノン、1-メトキシ-2-プロパノール、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、5-メチルヘキサン-2-オン、酢酸エチル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
非常に好ましい実施形態において、有機溶媒の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして15~49.85重量%である。
【0026】
好ましい実施形態において、有機溶媒の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして20~45重量%、より好ましくは25~40重量%、さらにより好ましくは28~35重量%である。
【0027】
実施形態において、有機溶媒の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして15~48重量%、15~45重量%、15~42重量%、15~40重量%又は15~38重量%である。
【0028】
実施形態において、有機溶媒の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして10~48重量%、10~45重量%、10~42重量%、10~40重量%又は10~38重量%である。
【0029】
他の実施形態において、有機溶媒の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして20~49.85重量%、24~49.85重量%、26~49.85重量%、28~49.85重量%、29~49.85重量%又は30~49.85重量%である。
【0030】
球状ガラスビーズ
上文に定義されたように、589nmの波長λで測定される球状ガラスビーズの屈折率は、1.5から2.8の間にある。
【0031】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、
(a)2.0から2.8、好ましくは2.1から2.4の間の;又は
(b)1.7から2.1、好ましくは1.8から2.0の間の、589nmの波長λで測定される屈折率を有する。
【0032】
好ましい実施形態において、本明細書において使用される「球状ガラスビーズ」中の「ガラス」という用語は、酸化物でできた非晶質の無定形固体及び透明な材料を指す。他の実施形態において、「球状ガラスビーズ」中の「ガラス」という用語は、酸化物ででき、多少の微小結晶度を含有する固体及び透明な材料を指す。球状ガラスビーズの屈折率は、ガラスの密度と密接に関係するが、関係は線形ではない。ガラスの性質のために、密度はおよそその組成物の加法的関数である。1.5から2.8の間の屈折率を有する球状ガラスビーズの密度は、通常2.5から4.5g/cm3の間で変動する。
【0033】
ガラスに使用することができる酸化物は、シリコン、ホウ素、アルミニウム、ナトリウム、バリウム、バナジウム、チタン、ランタン、ストロンチウム、ジルコニウム、カリウム、マグネシウム、鉄、カルシウム、亜鉛、リチウム、バリウム及び鉛の酸化物である。球状ガラスビーズは、例えばシリカ(SiO2)、酸化ホウ素(B2O3)、五酸化リン(P2O5)、五酸化バナジウム(V2O5)、三酸化二ヒ素(As2O3)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化鉛(PbO)、酸化バリウム(BaO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化リチウム(Li2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ランタン(La2O3)及び酸化ジルコニウム(ZrO2)の種々の組み合わせを含み得る。シリカ及び酸化ホウ素は一般に密度が最も低い。これらの酸化物の大きい重量パーセントを含有するガラスは、したがって、一般に低い屈折率を有するガラスビーズをもたらす。屈折率は、高分子量を有する酸化物の添加により増加させることができる。好ましくは、球状ガラスビーズはPbOを含まない。
【0034】
1.5~2.51の範囲の屈折率を有するガラスビーズ及び酸化物の観点でのそれらの組成が、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/109564号に開示されている。2.15を超える屈折率を有する、PbOを含まない透明ガラスビーズが、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,082,427号に開示されている。
【0035】
球状ガラスビーズは、透明性を維持する限り、有色球状ガラスビーズであってもよい。有色透明ガラスで作製された有色球状ガラスビーズ、及び同心の透明有色コーティングが施された球状ガラスビーズの両方が、本発明に包含される。色は、酸化物の組成によってもたらされた自然の色であってもよく、又は、特定の色を有する成分を添加することによって意図的に選択されてもよい。高い屈折率及び高い透明性を有する有色ガラスビーズが、国際公開第2014/109564号に開示されている。
【0036】
したがって、実施形態において、球状ガラスビーズの少なくとも一部は有色透明ガラスで作製された球状ガラスビーズであり、及び/又は、球状ガラスビーズの少なくとも一部は同心の透明有色コーティングが施されている。
【0037】
球状ガラスビーズは、レーザー回折により測定される中央粒径D50を有する。したがって、中央粒径D50は、体積分布に基づく体積中央値である。中央粒径D50は、球状ガラスビーズの集団の半分がそれ未満に収まる直径である。この体積中央粒径は、当技術分野においてしばしばDv50又はDv0.5と呼ばれる。
【0038】
非常に好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、5から1500μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0039】
実施形態において、球状ガラスビーズは、25から100μmの間、好ましくは30から75μmの間、より好ましくは35から50μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0040】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、5から100μmの間、例えば5から75μmの間、5から50μmの間、5から45μmの間、5から40μmの間又は5から35μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0041】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、1から100μmの間、例えば1から75μmの間、1から50μmの間、1から45μmの間、1から40μmの間、1から35μmの間、1から30μmの間、1から25μmの間、1から20μmの間、1から15μmの間、又は1から10μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0042】
なお別の実施形態において、球状ガラスビーズは、25から150μmの間、例えば50から150μmの間、75から150μmの間、100から150μmの間、110から150μmの間、又は115から150μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0043】
なお別の実施形態において、球状ガラスビーズは、5から1400μmの間の、例えば5から1200μmの間、5から1000μmの間、5から800μmの間、5から500μmの間又は5から300μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0044】
なお別の実施形態において、球状ガラスビーズは、1から1400μmの間、例えば1から1200μmの間、1から1000μmの間、1から800μmの間、1から500μmの間又は1から300μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50を有する。
【0045】
直径D10及びD90はそれぞれ、当技術分野においてしばしばDv10又はDv0.1及びDv90又はDv0.9と呼ばれる。D10直径は、球状ガラスビーズの集団の10%がそれ未満に収まる直径である。同様に、D90直径は、球状ガラスビーズの集団の90%がそれ未満に収まる直径である。
【0046】
レーザー回折により測定される球状ガラスビーズの粒子サイズ分布のスパンは、以下により定義される。
【0047】
【0048】
別の実施形態において、球状ガラスビーズは、15から100μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0049】
なお別の実施形態において、球状ガラスビーズは、30から75μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間、又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0050】
別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、15から50μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0051】
なお別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、5から35μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0052】
なお別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、1から35μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0053】
なお別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、10から25μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0054】
なお別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、1から25μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間、又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0055】
なお別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、1から15μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0056】
なお別の好ましい実施形態において、球状ガラスビーズは、1から10μmの間の、レーザー回折を用いて測定される中央粒径D50、及び0から1.9の間、例えば0から1.5の間、0から1の間、0から0.5の間、0から0.2の間又は0から0.1の間のスパンを有する。
【0057】
当業者により理解されるように、スパン=0は、単分散球状ガラスビーズに対応する。
【0058】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズの少なくとも一部は、光反射コーティングで、好ましくは半球状アルミニウムコーティング(HAC)を用いて半球状にコーティングされている。別の実施形態において、球状ガラスビーズの少なくとも一部は、フッ素化学的にコーティングされている。
【0059】
ステップ(c)、(d)又は(e)で用意される再帰反射特性を有する有機溶媒系インク、コーティング又は塗料組成物の特定の用途は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物において使用される球状ガラスビーズの最適の屈折率を決定する。組成物が乾燥した環境において、又は乾燥条件下で再帰反射性を示すことになる基材上に塗布される場合、また、再帰反射性球状ガラスビーズの塗布層がさらなる層によってコーティングされない場合、589nmの波長λで測定される球状ガラスビーズの屈折率は、1.8から2.8の間にあってもよい。
【0060】
実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物及びステップ(c)、(d)又は(e)で用意される再帰反射特性を有する有機溶媒系インク、コーティング又は塗料組成物は、589nmの波長λで測定される、1.8から2.0の間の屈折率を有する球状ガラスビーズを含む。
【0061】
他方では、組成物が湿潤環境において、又は湿潤条件下で再帰反射性を示すことになる基材上に塗布されることになる場合、又は、再帰反射性球状ガラスビーズの塗布層が1つ又は複数のさらなる透明層によってコーティングされる場合、589nmの波長λで測定される球状ガラスビーズの屈折率は、好ましくは2.0から2.8の間、より好ましくは2.2から2.4の間にある。乾燥及び湿潤条件の両方の下の再帰反射性を示すことになる組成物、及び、再帰反射性球状ガラスビーズの塗布層が1つ又は複数のさらなる透明層によってコーティングされるか、コーティングされない場合、異なる屈折率、及び任意選択で異なるサイズを有する異なるタイプのガラスビーズを含むことができる。実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物及びステップ(c)、(d)又は(e)で用意される、再帰反射特性を有する有機溶媒系インク、コーティング又は塗料組成物は、2.0から2.8の間、好ましくは2.2から2.4の間の、589nmの波長λで測定される屈折率を有する球状ガラスビーズを含む。
【0062】
別の実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物及びステップ(c)、(d)又は(e)で用意される再帰反射特性を有する有機溶媒系インク、コーティング又は塗料組成物は、少なくとも2つのタイプの球状ガラスビーズを含み、少なくとも1つのタイプの球状ガラスビーズは、1.8から2.0未満の間の、589nmの波長λで測定される屈折率を有し、球状ガラスビーズの少なくとも1つのさらなるタイプは、2.0から2.8の間の、589nmの波長λで測定される屈折率を有する。
【0063】
非常に好ましい実施形態において、球状ガラスビーズの量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして50~80重量%である。
【0064】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズの量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして53~75重量%、より好ましくは58~72重量%、さらにより好ましくは60~70重量%である。
【0065】
実施形態において、球状ガラスビーズの量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして50~78重量%、50~75重量%、50~73重量%、50~72重量%、50~71重量%、50~70重量%又は50~69重量%である。
【0066】
他の実施形態において、球状ガラスビーズの量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして52~80重量%、54~80重量%、56~80重量%、57~80重量%、58~80重量%、59~80重量%又は60~80重量%である。
【0067】
なお他の実施形態において、球状ガラスビーズの量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして52~85重量%、54~85重量%、56~85重量%、57~85重量%、58~85重量%、59~85重量%又は60~85重量%である。
【0068】
増粘剤
本明細書において定義される方法のステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は増粘剤を含む。これは(任意選択で)ステップ(e)で適用されるのと同じ増粘剤であってもよい。本明細書において使用される増粘剤という用語は、また1種又は複数の増粘剤の組み合わせを意味することもある。したがって、増粘剤と増粘剤(複数)がどちらも使用され、他の方法で示されない限り、同じ意味を有する。
【0069】
実施形態において、単一の増粘剤が、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物に使用される。別の実施形態において、単一の増粘剤がステップ(e)で使用される。
【0070】
好ましい実施形態において、増粘剤は、種々の増粘剤の混合物を包含する。実施形態において、種々の増粘剤の混合物が、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物に使用される。別の実施形態において、種々の増粘剤の混合物がステップ(e)で使用される。
【0071】
実施形態において、ステップ(e)で適用される増粘剤は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物に適用される同じ増粘剤である。他の実施形態において、ステップ(e)で適用される増粘剤は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物において適用される増粘剤とは異なる。
【0072】
当業者によって認識されるように、ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物もまた増粘剤を含んでもよい。存在する場合、この増粘剤は、ステップ(b)で適用される増粘剤及び/又はステップ(e)で適用される増粘剤と同じでも異なっていてもよい。
【0073】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、増粘剤は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物、及びステップ(c)、(d)又は(e)で用意される、再帰反射特性を有する最終の有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物中の球状ガラスビーズ及び任意選択でさらなる微粒子物質の沈殿及び/又は沈降を制限又は低減し、その結果、これらの組成物は容易に再懸濁することができると考えられる。さらに、やはりいかなる理論にも束縛されることを望まないが、増粘剤は、ステップ(b)で用意される、剪断減粘挙動を有する再帰反射性有機溶媒系組成物を提供すると考えられる。
【0074】
好ましい実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の増粘剤の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして0.20~3.0重量%、より好ましくは0.25~2.5重量%、さらにより好ましくは0.30~2.1重量%である。
【0075】
実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の増粘剤の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして0.15~2.5重量%、0.15~2.0重量%、0.15~1.75重量%、0.15~1.5重量%又は0.15~1.3重量%である。
【0076】
他の実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の増粘剤の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして0.20~3.50重量%、0.30~3.50重量%、0.40~3.50重量%、0.50~3.50重量%、0.60~3.50重量%、0.70~3.50重量%又は0.80~3.50重量%である。
【0077】
好ましい実施形態において、ステップ(c)又は(d)で得られる混合物は、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られる再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして0~2.5重量%、0~2.0重量%、0~1.8重量%、0~1.6重量%、0~1.5重量%、0~1.4重量%又は0~1.3重量%の増粘剤とステップ(e)で混合される。
【0078】
別の好ましい実施形態において、ステップ(c)又は(d)で得られる混合物は、ステップ(c)又は(d)でそれぞれ得られる再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の総重量を基準にして0.1~3.0重量%、0.2~3.0重量%、0.3~3.0重量%、0.4~3.0重量%又は0.5~3.0重量%の増粘剤とステップ(e)で混合される。
【0079】
ステップ(b)及び/又はステップ(e)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物において使用することができる増粘剤の好ましい例は、(変性)水素化ヒマシ油、粘土、変性粘土、スルホン酸カルシウム複合体、有機親和性フィロシリケート、シリカゲル、合成無定形シリカ、アクリル酸型ゲル化剤、変性セルロース系材料、ポリ尿素分散体、尿素変性ポリアミドの溶液、ポリウレタン分散体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0080】
変性粘土の例は、ベントン(BENTONE)(登録商標)LT及びベントン(登録商標)38(Elementis Global)を含む。シリカゲルの例は、HDK(登録商標)N20(Wacker Chemical Corporation)及びアエロジル(AEROSIL)(登録商標)(Evonik)を含む。有機親和性フィロシリケートの例はClaytone 40(Byk)である。変性水素化ヒマシ油の例はエフカ(Efka)(登録商標)RM 1900(BASF)である。水素化ヒマシ油の例はエフカ(登録商標)RM 1920(BASF)である。イソブタノール/モノフェニルグリコール中の尿素変性無極性ポリアミドの溶液の例は、Rheobyk-431(Byk)である。イソブタノール/ソルベントナフサ中の中極性の尿素変性ポリアミドの溶液の例は、Rheobyk-430(Byk)である。合成無定形シリカの例はゼオシクス(Zeothix)(登録商標)95(Huber)である。
【0081】
好ましい実施形態において、ステップ(b)及び/又はステップ(e)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物において、2種の増粘剤が、より好ましくは:
有機親和性フィロシリケート及び変性水素化ヒマシ油;又は
スルホン酸カルシウム複合体及びポリ尿素分散体が使用される。
【0082】
ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の有機溶媒の量は独立して指定される。増粘剤が例えば溶媒中の分散体の形で適用される場合、ステップ(b)の文脈において定義される増粘剤の量は、増粘剤の乾燥重量に関係する。増粘剤が例えばステップ(e)の溶媒中の分散体の形で適用される場合、ステップ(e)の文脈において定義される増粘剤の量は、乾燥重量に関係する。
【0083】
さらなる成分
上文に記載されたように、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、0~10重量%の1種又は複数のさらなる成分を含む。当業者によって認識されるように、「さらなる」成分は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物において定義される他の成分とは異なる。言いかえれば、さらなる成分は球状ガラスビーズ、増粘剤及び有機溶媒を含まない。
【0084】
実施形態において、1種又は複数のさらなる成分は、泡制御剤、防腐剤、染料、硬化開始剤、蓄光剤及び蛍光剤などの発光剤、顔料、UV吸収剤、結合剤及び樹脂からなる群から選択される。
【0085】
有機溶媒に基づく組成物に適切な結合剤及び樹脂は、一般に当業者に公知である。結合剤又は樹脂は放射線硬化性であってもよい。結合剤又は樹脂が放射線硬化性である場合、さらなる成分は、光開始剤又は熱開始剤などの硬化開始剤を含むことができる。
【0086】
実施形態において、1種又は複数のさらなる成分は、染料、顔料、結合剤、樹脂及び硬化開始剤のいずれの1つも含まない。
【0087】
好ましい実施形態において、1種又は複数のさらなる成分は、結合剤、樹脂及び硬化開始剤のいずれの1つも含まない。
【0088】
実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、1種又は複数のさらなる成分の一部として、5から150μmの間の平均直径、1μm未満の厚さ、及び少なくとも10のアスペクト比(薄片直径/厚さ)を有する合成顔料薄片を含み、前記合成顔料薄片は(A)、(B)、(C)又はそれらの組み合わせから選ばれる:
(A)任意選択で金属酸化物、金属、金属硫化物、亜酸化チタン、酸窒化チタン、FeO(OH)、SiO2、B2O3、GeO2、MgF2、合金、希土類化合物からなる群から選択される、1種又は複数の成分の少なくとも1つの層を用いてコーティングされ、任意選択で1種又は複数の着色剤及び結合剤を含む外側層を用いてコーティングされた金属薄片又は合成雲母薄片;
(B)金属酸化物、金属、金属硫化物、亜酸化チタン、酸窒化チタン、FeO(OH)、SiO2、B2O3、GeO2、合金、希土類化合物からなる群から選択された1種又は複数の成分の少なくとも1つの層を用いてコーティングされ、任意選択で1種又は複数の着色剤及び結合剤を含む外側層を用いてコーティングされた、Al2O3、SiO2、ガラス、セラミック、グラファイト又は雲母小板を含む薄片;
(C)金属酸化物、金属、金属硫化物、亜酸化チタン、酸窒化チタン、FeO(OH)、SiO2、B2O3、GeO2、合金、希土類化合物からなる群から選択される1種又は複数の成分の少なくとも1つの層を用いてコーティングされ、任意選択で1種又は複数の着色剤及び結合剤を含む外側層を用いてコーティングされた、TiO2、ZrO2、SiO2、SnO2、In2O3、ZnO及び酸化鉄からなる群から選択された1種又は複数の成分を用いてドープされたAl2O3小板を含む薄片。
【0089】
「平均直径」という用語は合成顔料薄片の文脈において中央粒径D50を指す。
【0090】
当業者によって認識されるように、「合成顔料薄片」中の「合成」という用語は、顔料薄片が天然に存在する顔料薄片ではなく、化学的に製造された顔料薄片、又は化学的/物理的に加工された、天然に存在する顔料薄片であることを意味する。合成色素薄片を使用する利点の1つは、非常に平滑な表面を有し、その結果として反射性を増加させることができることである。
【0091】
本明細書において使用される「薄片」又は「小板」という用語は、大きい表面積及び薄い厚さを有する顔料の形状を指す。通常、薄片又は小板は、最大の寸法(すなわち最も小さな寸法(すなわち厚さ)によって除された表面の最大の直径)として定義されるそれらの「アスペクト比」を特徴とする。本明細書において使用される合成顔料薄片は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20のアスペクト比を有する。
【0092】
好ましい実施形態において、合成薄片の平均直径は、6~45μm、より好ましくは7~35μm、さらにより好ましくは8~25μm、なおより好ましくは9~20μm、最も好ましくは10~16μmである。
【0093】
好ましい実施形態において、合成薄片の厚さは、10nmから800nmの間、より好ましくは15nmから600nmの間にある。別の好ましい実施形態において、合成薄片の厚さは、10から200nmの間、より好ましくは10から150nmの間、さらにより好ましくは10から100nmの間、なおより好ましくは10から50nmの間にある。
【0094】
実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の1種又は複数のさらなる成分の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして0~8.0重量%、0~6.0重量%、0~4.0重量%、0~3.0重量%、0~2.5重量%、0~2.0重量%、0~1.5重量%、0~1.0重量%又は0~0.5重量%である。
【0095】
他の実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の1種又は複数のさらなる成分の量は、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の総重量を基準にして、0.01~10重量%、0.02~10重量%、0.04~10重量%、0.08~10重量%、0.15~10重量%、0.25~10重量%、0.35~10重量%、0.45~10重量%又は0.55~10重量%である。
【0096】
ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物中の有機溶媒の量は独立して指定される。1種又は複数のさらなる成分が例えば溶媒中の溶液、懸濁液又は分散体の形で適用される場合、上文に定義された1種又は複数のさらなる成分の量は、1種又は複数のさらなる成分の乾燥重量、すなわち溶媒を含まない重量に関係する。
【0097】
レオロジー挙動
本明細書において測定され定義される粘度はいわゆるブルックフィールド粘度である。当業者に公知であるように、異なる組成物のブルックフィールド粘度は、異なる標準化されたスピンドルを用いて測定される必要があり得る。非常に低粘度の組成物は通常、スピンドル#1を用いて求められるが、しかし、高粘度の組成物は通常、スピンドル#5を用いて求められる。中位の粘度の組成物は、スピンドル#2、#3又は#4を用いて求められてもよい。
【0098】
本明細書において定義される方法の、ステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物の粘度は、非常に低い値から高い値に変動することがある。そのため、ブルックフィールド粘度範囲の下限はスピンドル#1を、上側の値はスピンドル#5を使用して求められる。
【0099】
好ましい実施形態において、再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物は、
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#1スピンドルを用いて測定される5mPa・s、より好ましくは10mPa・sから
直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#5スピンドルを用いて測定される280Pa・s、より好ましくは250Pa・sの間の、0.5rpmの剪断速度及び20℃の温度でのブルックフィールド粘度η1を有する。
【0100】
本明細書において定義される方法のステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は剪断減粘挙動を示す。
【0101】
好ましい実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#4スピンドルを用いて20℃の温度で測定され、η3がη2よりも少なくとも4倍低いことを条件として、8から325Pa・sの間の0.5rpmの剪断速度でのη2、及び110から4000mPa・sの間の20rpmの剪断速度でのη3を有する。
【0102】
別の好ましい実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#4スピンドルを用いて20℃の温度で測定され、η3がη2よりも少なくとも5倍低いことを条件として10から310Pa・sの間の0.5rpmの剪断速度でのη2、及び125から4000mPa・sの間の20rpmの剪断速度でのη3を有する。
【0103】
別の実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#4スピンドルを用いて20℃の温度で測定され、η3がη2よりも少なくとも30、50、60、70又は80倍低いことを条件として、5から350Pa・sの間の0.5rpmの剪断速度でのη2、及び100から5000mPa・sの間の20rpmの剪断速度でのη3を有する。
【0104】
別の実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、第1のブルックフィールド粘度η2及び第2のブルックフィールド粘度η3が直径8.25cmを有する600mlのビーカー中で#4スピンドルを用いて20℃の温度で測定され、η3がη2よりも少なくとも2、3、4又は5倍低いことを条件として、5から25Pa・sの間の0.5rpmの剪断速度でのη2、及び100から5000mPa・sの間の20rpmの剪断速度でのη3を有する。
【0105】
再帰反射性有機溶媒系組成物の調製のプロセス
ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は以下のように調製することができる。概して言えば、再帰反射性有機溶媒系組成物の成分は任意の順序で添加することができる。しかしながら、均質に成分を分布させることが増粘した組成物においてはより困難になるので、少なくとも球状ガラスビーズを有機溶媒に添加した後、プロセスの終わりに増粘剤を添加することが好ましい。
【0106】
実施形態において、ステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物は、
(i)有機溶媒、上文に定義される球状ガラスビーズ、上文に定義される増粘剤及び任意選択の上文に定義される1種又は複数のさらなる成分を容器に添加するステップ;並びに
(ii)ステップ(i)で得られた混合物を、好ましくは15から70℃の間の温度で、好ましくは5から60分の間の期間撹拌又は均質化するステップによって調製される。
【0107】
好ましい実施形態において、増粘剤は、有機溶媒及び球状ガラスビーズの混合物を撹拌又は均質化した後に添加される。別の好ましい実施形態において、増粘剤は、有機溶媒、球状ガラスビーズ及び任意のさらなる成分の混合物を撹拌又は均質化した後に添加される。空気泡の混入を回避するために、撹拌又は均質化は好ましくは、低い剪断速度で遂行される。
【0108】
したがって、本発明は、上記に論じられたある特定の実施形態を参照して記載されている。これらの実施形態が、当業者に周知の様々な修飾及び代替形態を受け入れやすいことは認識されよう。
【0109】
さらに、本明細書及びその特許請求の範囲を正しく理解するために、「含む」という動詞及びその活用形は、その単語の後にくる項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目が除外されないことを意味するように、非制限的な意味で使用されることを理解すべきである。さらに、不定冠詞「a」又は「an」による要素の言及は、文脈上明確にその要素が1つのみ存在すると解すべき場合を除いて、その要素の2つ以上が存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【実施例】
【0110】
プロトコル粘度の測定
20℃の温度でブルックフィールドアメテック(Brookfield Ametek)(登録商標)DV2T粘度計を使用し、操作指示書に従って種々の標準化スピンドル(#1、#2、#3、#4及び#5;LV-1、LV-2、LV-3、LV-4及びLV-5、ブルックフィールドアメテック(登録商標)から得られた)を使用して粘度を測定した。8.25cmの直径を有する平底の600mlの平型Griffinビーカー中で保護脚を使用しないで測定を遂行した。粘度を測定する前に、試料を20℃の温度にし、撹拌を使用して均質化した。
【0111】
実施例1
以下の順序で容器(3.5リットル)に室温(約20℃)で成分を添加し、Dispermill Orange-line18/186を使用することによって、3種の再帰反射性有機溶媒系組成物(ステップ(b)で用意される本発明によるプロセスの組成物)を調製した。
(1)有機溶媒を添加し、500rpmで撹拌し始めるステップ;
(2)500rpmで少なくとも5分間混合しながらガラスビーズを添加するステップ;
(3)1300rpmで少なくとも5分間混合しながら第1の増粘剤を添加し、空気泡を導入せずに、rpmをゆっくり2000rpmに増加させるステップ;
(4)任意選択でさらなる増粘剤を添加し、引き続き1800rpmで少なくとも45分間撹拌し、さらに、必要な場合、空気泡を導入せずにrpmをゆっくり増加させるステップ;及び
(5)増粘剤(複数可)の最終設定の後、翌日に、約2300rpmで15分間組成物を撹拌するステップ。
種々の成分の量を表1に列挙する。以下の成分を使用した。
【0112】
球状ガラスビーズ:
「(AA)」マイクロガラスビーズ(RI 2.2)、589nmの波長λで測定して約2.2の屈折率を有し、レーザー回折を用いて測定して26.56μmの中央粒径D50、19.77μmのD10直径及び32.41μmのD90直径、及び約4.5g/cm3の比重を有するJianxi Sunflex Light Retroreflective Material Co,Ltd.から得られた。これらの球状ガラスビーズは、TiO2、BaO、ZnO及びCaOを含む。
【0113】
「(BB)」Jianxi Sunflex Light Retroreflective Material Co,Ltd.から得られたマイクロガラスビーズ(RI 2.2、HAC)、589nmの波長λで測定して約2.2の屈折率を有し、レーザー回折を用いて測定して40.37μmの中央粒径D50、37.32μmのD10直径及び44.11μmのD90直径並びに約4.5g/cm3の比重を有する半球状にアルミニウムコーティングしたガラスビーズ。これらの球状ガラスビーズはTiO2、BaO、ZnO及びCaOを含む。
【0114】
有機溶媒
Syrox S8000シンナー(Axalta)、有機溶媒の混合物、5-メチルヘキサン-2-オン、酢酸n-ブチル、2,6-ジメチルヘプタン-4-オン及び4,6-ジメチルヘプタン-2-オンを含む
OKシンナー(Gamma,the Netherlands)
有機溶媒の混合物、例えばキシレン、エチルベンゼン、ナフサ、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、n-プロピルベンゼン、酢酸イソペンチル、n-酢酸ブチル、酢酸2-メチルブチル及び4-メチル-2-ペンタノンを含む、クロマックスXB383標準シンナー(Axalta)
【0115】
増粘剤
エフカ(登録商標)RM1920、BASFから得られた、水素化ヒマシ油、微粉、増粘剤
Claytone 40、Bykから得られた、有機親和性フィロシリケート、増粘剤
【0116】
【0117】
実施例2
表1に示す3種の再帰反射性有機溶媒系組成物の安定性を、試料が再懸濁直前に沈降、離液又は分離(相又はそれ以外)を示すか、また試料が混合物の再懸濁直後に沈降、離液又は分離(相又はそれ以外)を示すかの視覚及び触覚的検査をすることによって判定した。なおその上に、再懸濁後の十分に長い時間試料が安定で均質性を保つかを判定した。
【0118】
当業者によって認識されるように、本発明によるプロセスのステップ(b)で用意される再帰反射性有機溶媒系組成物の限定的な沈降、(相)分離及び/又は離液は、前記組成物が、再懸濁して、例えば、簡単な撹拌を使用してそれらを加工する(すなわちそれらを、本発明によるプロセスのステップ(a)で用意される再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物と混合する)のに十分に長い時間、安定で均質を保つ組成物を得ることができる場合、問題でない。
【0119】
頭頂撹拌機を用いて5分間の激しい機械的撹拌(空気泡を導入せずに)によって再懸濁を遂行した。再懸濁直前直後の安定性測定の結果を表2aに列挙する。表2aは、表2bに示す分類に従って求めた沈降、離液及び「空気泡/凝集」値を列挙する。
【0120】
【0121】
【0122】
表1に示す3種の再帰反射性有機溶媒系組成物(本発明によるプロセスのステップ(b)で用意される)のブルックフィールド粘度を、上文に定義されるプロトコルに従って、スピンドル#4を0.5rpm及び20rpmで使用して求めた。表2cに結果を提示する。3種の再帰反射性有機溶媒系組成物は剪断減粘挙動を示す。
【0123】
【0124】
実施例3
実施例1の3種の再帰反射性有機溶媒系組成物(本発明によるプロセスのステップ(b)で用意される)を、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物からなる群から選択される5種の異なる組成物の調製に使用した。
【0125】
実施例1の3種の再帰反射性有機溶媒系組成物(本発明によるプロセスのステップ(b)で用意される)を、表3に列挙した再帰反射特性のない数種の市販品(本発明によるプロセスのステップ(a)で用意される)と混合した。表3に市販品の粘度を示す。
【0126】
【0127】
必要な場合、追加の増粘剤(実施例1に列挙された増粘剤から選ばれる)を添加した。
【0128】
再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物からなる群から選択される5種の組成物を、Dispermill Orange-line18/186を使用して600mlのビーカーに以下の順序で室温(約20℃)で成分を添加することによって調製した。
(1)ビーカーに再帰反射特性のない有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物(表3)を添加し、撹拌を開始するステップ;
(2)ビーカーに再帰反射性有機溶媒系組成物(表1)を添加し、引き続き700~1500rpmで約10分間撹拌するステップ;
(3)追加の増粘剤を添加するとき、1添加当たりの撹拌を約1800rpmでさらに15分間延長するステップ;及び
(4)増粘剤の最終設定の後、翌日に約1800~2500rpmで15分間組成物を撹拌するステップ。
【0129】
表4に結果として得られた再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物(本発明によるプロセスのステップ(c)又は(e)で用意される)中の種々の成分の量を列挙する。
【0130】
【0131】
再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物からなる群から選択される5種の異なる組成物(本発明によるプロセスのステップ(c)又は(e)で用意される)の安定性を、試料が再懸濁直前に沈降、離液又は分離(相又はそれ以外)を示すか、また試料が混合物の再懸濁直後に沈降、離液又は分離(相又はそれ以外)を示すかの視覚及び触覚的検査をすることによって判定した。なおその上に、再懸濁後の十分に長い時間試料が安定で均質性を保つかを判定した。
【0132】
当業者によって認識されるように、再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物(本発明によるプロセスのステップ(c)又は(e)で用意される)の、限定的な沈降、(相)分離及び/又は離液は、前記組成物が、例えば、簡単な撹拌を使用して再懸濁して、それらを加工する(すなわちそれらを目的の基材に塗布する)のに十分に長い時間、安定で均質性を保つ組成物を得ることができる場合、問題でない。
【0133】
頭頂撹拌機を用いて5分間の激しい機械的撹拌によって(空気泡を導入せずに)再懸濁を遂行した。再懸濁直前直後の安定性測定の結果を表5に列挙する。表5は、表2bに示す分類に従って求めた沈降、離液及び「空気泡/凝集」値を列挙する。
【0134】
【0135】
実施例4
表4に開示した再帰反射特性を有する有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物からなる群から選択される5種の異なる組成物を、表3に開示した対応する「適用方法」を使用して表3に開示した対応する「目的」に適用し、再帰反射特性を有する視覚的に魅力的なコーティングした基材が結果として得られた。
【0136】
比較例
有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物からなる群から選択される組成物(実施例3に定義される)を、実施例1に定義される球状ガラスビーズと直接混合することにより、5種の比較再帰反射性組成物を調製した。以下のように比較再帰反射性組成物を調製した。再帰反射特性のない市販の有機溶媒系ペースト、インク、塗料又はコーティング配合物をビーカーに入れた。続いて球状ガラスビーズを添加し、続いてDispermill Orange-line18/186を用いて1000-2100rpmで7-10分間完全に混合した。室温(約20℃)でプロセスを遂行した。結果として得られた比較組成物中の種々の成分の量を表6に列挙する。
【0137】
【0138】
製作の7日後に5種の比較再帰反射性組成物の安定性を評価した。表7は、表2bに示す分類に従って求められる、5種の比較再帰反射性組成物の沈降、離液及び「空気泡/凝集」値を列挙する。試料は中ないし重度の沈降を示し、その結果、それら(試料T01236、T01237及びT01240)は再懸濁できず、又は、ほとんど再懸濁できなかった(T01238及びT01239)。なおその上に、試料T01239は空気泡及び凝集を示した。
【0139】
【国際調査報告】