(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】効率的なトルク遷移を有する電気機械
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20240528BHJP
H02P 23/04 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H02P21/22
H02P23/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571157
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 US2022033241
(87)【国際公開番号】W WO2022265986
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347203
【氏名又は名称】トゥラ イーテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カーヴェル,ポール
(72)【発明者】
【氏名】シン,アムニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,テイト アレン
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB02
5H505BB04
5H505DD03
5H505EE07
5H505EE41
5H505GG04
5H505HA07
5H505HB02
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505KK06
5H505LL22
5H505LL50
(57)【要約】
電気機械が提供される。多相機械が提供される。電力インバータが多相機械に電気的に接続されている。コントローラが電力インバータに電気的に接続されており、コントローラは、電力インバータに切り換え信号を供給するとともに、コントローラは、第1のトルクから第2のトルクへと多相機械を遷移させるために最適化された軌道を提供する軌道計算器を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相機械と、
前記多相機械に電気的に接続された電力インバータと、
前記電力インバータに電気的に接続されたコントローラと、
を含む電気機械において、
前記コントローラが前記電力インバータに切り換え信号を供給し、前記コントローラが、第1のトルクから第2のトルクへと前記多相機械を遷移させるために最適化された軌道を提供する軌道計算器を含むことを特徴とする電気機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械において、前記軌道計算器が、アンペア当たりの最大トルク(MTPA)、損失当たりの最大トルク(MTPL)、磁束当たりの最大トルク(MTPF)、ボルト当たりの最大トルク(MTPV)、及びコンピュータ最適化軌道のうちの少なくとも1つに基づいて、前記最適化された軌道を提供することを特徴とする電気機械。
【請求項3】
請求項1に記載の電気機械において、前記軌道計算器が、バス電圧を最大限利用するための最適なトルクレート制限、バス電圧を最大限利用するための最適なId/Iqレート制限/電圧角度、IqフィードバックをId基準として用いた開ループIq制御、のうちの少なくとも1つを使用して、前記最適化された軌道、及び任意の他のコンピュータ生成最適軌道を提供することを特徴とする電気機械。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機械において、前記軌道計算器が、ルックアップテーブルを使用することを特徴とする電気機械。
【請求項5】
請求項1に記載の電気機械において、前記軌道計算器が損失を最小限に抑える最適化された軌道を提供し、前記電気機械が前記最適化された軌道に従うことを特徴とする電気機械。
【請求項6】
請求項1に記載の電気機械において、前記コントローラに接続された、前記コントローラにパルストルク信号を供給するパルストルクコントローラをさらに含むことを特徴とする電気機械。
【請求項7】
請求項6に記載の電気機械において、トルクコントローラが前記第1のトルクと前記第2のトルクとの間で、1秒未満の周期でパルス周期的なトルク動作を提供することを特徴とする電気機械。
【請求項8】
請求項7に記載の電気機械において、前記パルス周期的なトルク動作が、前記電気機械の前記パルス周期的なトルク動作の間に、前記電気機械が同じ平均出力を送達するために、前記電気機械を連続的に駆動するように要求される第3のトルクで動作する場合に有するよりも高いエネルギー変換効率を有する総平均システム出力を提供することを特徴とする電気機械。
【請求項9】
請求項8に記載の電気機械において、前記周期が、雑音、振動、及び過酷度の低減を提供する周期であることを特徴とする電気機械。
【請求項10】
請求項1に記載の電気機械において、前記軌道計算器が、少なくとも1つの電圧大きさ及び少なくとも1つの電圧ベクトル角度を提供することを特徴とする電気機械。
【請求項11】
多相機械であって、コントローラによって制御される前記多相機械を第1のトルクレベルから第2のトルクレベルへと遷移させるための方法において、
前記コントローラから前記多相機械に、最適化された軌道を提供すること
を含むとともに、前記最適化された軌道が、前記第1のトルクレベルから前記第2のトルクレベルへと、前記多相機械を遷移させるために最適化された軌道を提供することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記コントローラが、前記最適化された軌道を提供するために、前記多相機械に一連の電圧を供給することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記コントローラが、前記電圧のベクトル角度をさらに提供することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、前記最適化された軌道が、アンペア当たりの最大トルク(MTPA)、損失当たりの最大トルク(MTPL)、磁束当たりの最大トルク(MTPF)、又はボルト当たりの最大トルク(MTPV)のうちの少なくとも1つに基づくことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、前記最適化された軌道が、バス電圧を最大限利用するための最適なトルクレート制限、バス電圧を最大限利用するための最適なId/Iqレート制限/電圧角度、IqフィードバックをId基準として用いた開ループIq制御、及び任意の他のコンピュータ生成最適軌道のうちの少なくとも1つによって提供されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記最適化された軌道が、雑音、振動、及び過酷度の低減を提供することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法において、前記最適化された軌道が損失を最小限に抑え、前記多相機械が前記最適化された軌道に従うことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法において、パルストルク信号を供給して、第1のトルクレベルと第2のトルクレベルとの間でパルス周期的なトルク動作を提供することをさらに含むとともに、前記パルス周期的なトルク動作が、1秒未満の周期を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、前記第1のトルクレベル及び前記第2のトルクレベル、並びに周期が、前記多相機械の前記パルス周期的なトルク動作の間に、前記多相機械が同じ平均出力を送達するために、前記多相機械を連続的に駆動するように要求される第3のトルクレベルで動作する場合に有するよりも高いエネルギー変換効率を有する総平均システム出力を提供することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記周期が、雑音、振動、及び過酷度の低減を提供する周期であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月14日に出願された米国特許出願第63/210,345号明細書の優先権の利益を主張し、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、概して、電気機械に関する。「機械」という用語は、本明細書で使用する場合、電気モータ及び発電機の両方を意味するように広義に解釈されることが意図される。電気モータ及び発電機は、構造的に非常に類似している。いずれも、複数の極を有するステータと、1つのロータと、を含む。機械がモータとして動作しているときに、機械は電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。発電機として動作しているときに、機械は機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
前述したことを実現するために、そして、本開示の目的に従って、電気機械が提供される。多相機械が提供される。電力インバータが多相機械に電気的に接続されている。コントローラが電力インバータに電気的に接続されており、コントローラは、電力インバータに切り換え信号を供給するとともに、コントローラは、第1のトルクから第2のトルクへと多相機械を遷移させるために最適化された軌道を提供する軌道計算器を含む。
【0004】
別の明示では、多相機械であって、コントローラによって制御される多相機械を第1のトルクレベルから第2のトルクレベルへと遷移させるための方法が提供される。コントローラからの最適化された軌道が多相機械に提供され、最適化された軌道は、第1のトルクレベルから第2のトルクレベルへと多相機械を遷移させるために最適化された軌道を提供する。
【0005】
本開示のこれらの特徴及びその他の特徴について、以下の図と併せて下記の詳細な説明において、より詳細に説明することにする。
【0006】
本発明及びその利点は、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による電気機械の概略図である。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態において使用されるハイレベルのフローチャートである。
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態による、パルストルクを有する電気機械の概略図である。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態によって提供される改良を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面において、同様の参照符号は、同様の構造要素を指定するために使用される場合がある。図内の描写は、概略的なものであり、縮尺通りではないこともまた理解されたい。
【0009】
最新の電気機械は、比較的高いエネルギー変換効率を有する。但し、大抵の電気機械のエネルギー変換効率は、その動作負荷に基づいて相当に変化し得る。多くの用途では、機械は、多種多様な異なる動作負荷条件の下で動作することを必要とされている。加えて、電気機械によって供給されるトルクは、第1のトルクから第2のトルクへの変化を必要としながら動作の間ずっと変わる可能性がある。第1のトルクは第1のトルクレベルとすることができ、第2のトルクは第2のトルクレベルとすることができる。
【0010】
大抵の電気機械(モータ及び発電機)は、過渡期間について考慮せずに定常状態の下で最高の効率を発揮するように制御されている。また、高帯域トルクコントローラの場合、過渡期間は可能な限り最短であることも所望されるが、コントローラ出力が飽和してしまうため、制御が最適以下になる場合がほとんどである。
【0011】
トルク遷移に関する研究により、すべてではないとしても、大抵の電気モータの制御法則は、単にトルクを可能な限り速く遷移させようとしているだけであることが示されている。大抵の多相モータ用のマルチ入力・マルチ出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)トルクコントローラは、バス電圧を十分に利用しないか、又はコントローラ出力を飽和させ、過渡の間の制御が最適以下になってしまうか、のいずれかである。バス電圧を十分に利用しないと、トルク応答が遅くなってしまうが、コントローラの飽和を制御しないと、応答は速くても、効率が低下してしまう。したがって、確実に遷移時間が可能な限り速くなるようにし、その一方で、こうした遷移時間中の効率を最大化するために、コントローラ出力を最大化する解決策が必要である。
【0012】
通常、多相電気モータなどのMIMOシステムの場合、コントローラ出力が、バス電圧などのシステムの能力の限界、及びインバータの電流制限内に留まるように、コントローラ利得が調整される。このようなシナリオでは、コントローラが線形ならば、バス電圧が十分に利用されない。但し、過剰調整されたトルクコントローラ、及び非線形のものを含む他の多くの高帯域コントローラは、出力を飽和させ、これにより、過渡の間、全バス電圧を利用する傾向がある。但し、このような飽和の間、モータに印加される電力の軌道は、アンペア当たりの最大トルク(MTPA:Maximum Torque Per Amp)、損失当たりの最大トルク(MTPL:Maximum Torque Per Loss)、磁束当たりの最大トルク(MTPF:Maximum Torque Per Flux)、又はボルト当たりの最大トルク(MTPV:Maximum Torque Per Volt)制御戦略によって定義されるような最適な関係に従わない。要するに、現在使用されている大抵の技術では、トルク性能と引き換えに、過渡効率がかなり失われている。
【0013】
いくつかの実施形態は、バス電圧を最大限に利用し、任意の多相電気モータのトルク過渡の間に、トルク軌道が確実にMTPA、MTPL、MTPF、又はMTPV経路のうちの少なくとも1つに留まるようにすることによって、可能な限り最短の過渡時間で過渡効率を最大化することに対処する。様々な実施形態は、このような性能を実現し得る異なる手法/技法を使用する。いくつかの例では、多くの実現可能な技法のうち、3つの技法を説明して、本発明のいくつかの実施形態を実証する。なお、この3つの技法の説明は以下の通りである:
1)バス電圧を最大限利用するための最適なトルクレート制限。
2)バス電圧を最大限利用するための最適なId/Iqレート制限/電圧角度。
3)Q軸の時定数がD軸の時定数よりも大きい場合、IqフィードバックをId基準として用いた開ループIq制御。D軸の時定数がQ軸の時定数よりも大きい場合には、IdフィードバックがIq基準である開ループId制御が使用される。
【0014】
3つの方法はすべて、トルク過渡の間に使用されるバス電圧をフルに活用し、D軸とQ軸との間でバス電圧を最適に共有することで、最大効率が得られる。いくつかの実施形態では、コンピュータ最適化アルゴリズムを使用して、経路が最適化された軌道を決定することができる。
【0015】
第1の方法は、次のサンプリング周期(すなわち、T[k+1])で実現可能な最大トルクの計算に依拠している。このようなコントローラは、速示コントローラなど高帯域逆モデルコントローラが必要である。それは、直接トルク磁束制御ループ又はId/Iq電流ベクトル制御のいずれかを用いて作動することができる。
【0016】
同期リラクタンスモータの場合について考慮する。電圧Vd、Vq、したがって、ベクトル大きさVsもまた、以下のようにコンピュータ計算することができる。
式中、[k]はサンプリング事例k番目であり、I
dは直軸ステータ電流であり、I
qは横軸ステータ電流であり、L
dは直軸ステータインダクタンスであり、L
qは横軸ステータインダクタンスであり、V
dは直軸ステータ電圧であり、V
qは横軸ステータ電圧であり、V
sはステータ電圧ベクトル大きさであり、ω
eはロータの電気周波数、ラジアン/秒であり、R
sは位相当たりのステータ抵抗、オームである。
【0017】
Id/Iq基準は、トルク、rpmの関数としてコンピュータ計算することができ、バス電圧は、MTPA、MTPL、若しくはMTPVの方程式、又はこれらの方程式を満たすルックアップテーブル(LUT)を使用して導出することができる。
Id[k]=f1(rpm[k],Vbus[k],τ[k]);
Iq[k]=f2(rpm[k],Vbus[k],τ[k]);
Id[k+1]=f1(rpm[k+1],Vbus[k+1],τ[k+1]);
Iq[k+1]=f2(rpm[k+1],Vbus[k+1],τ[k+1]);
式中、[k+1]はサンプリング事例(k+1)番目であり、Vbusは電力インバータに対して利用可能なDCバス電圧である。
【0018】
毎分回転数(RPM)及びVbusは、1つのサンプリング時間では大きく変化しないため、トルク[k+1]を最小トルクと最大トルク間で掃引することができ、そこからId[k]、Iq[k]、Id[k+1]、Iq[k+1]を使用してVs[k]を導出することができる。Vs[k]=Vmaxを満たすトルク[k+1]の値が、コントローラ用に選ばれなければならない。このようにして、Vsは、上記のf1()及びf2()関数を使用して、MTPA、MTPL、又はMTPV条件を満たしながら最大化される。次に、トルク[k+1]を使用して、トルク指令をレート制限することができる。
【0019】
このような最適トルク[k+1]の選択は、リアルタイムで手作業での掃引、及び二分探索法のような探索アルゴリズムを使用して、又はrpm[k]、Vbus[k]、τ[k]を入力として用いる3-D LUTを使用して、のいずれかで行うことができる。
【0020】
第2の方法は、Vs=Vmaxのときに、MTPA、MTPL、又はMTPVを満たす最適な電圧角度及び電圧大きさの計算に依拠している。VsがVmaxに設定されているときの、離散的な状態の空間形態における同期リラクタンスモータの電圧方程式について考慮する。
式中、Φ
vは、直軸を基準としたステータ電圧ベクトルの角度であり、V
maxは、最大許容ステータ電圧ベクトルの大きさである。
【0021】
Φvが0°から360°まで掃引される場合には、Id[k+1]及びIq[k+1]をΦvに対してプロットすることができる。Id[k+1]及びIq[k+1]が、MTPA、MTPL又はMTPV条件を満たすΦvの値が選ばれる。この点では、Id[k+1]及びIq[k+1]を使用して、速示コントローラへの指令をレート制限すること、又はΦvを直接使用して、過渡の間のコントローラ出力用のVd[k]及びVq[k]をコンピュータ計算すること、のいずれかが可能である。
【0022】
D軸の時定数がQ軸よりも高い場合には、第3の方法は比例積分コントローラを使用し、D軸の時定数がQ軸よりも高い時定数であるという事実から、最初に低速の時定数の軸に全電圧を印加し、Idがモータ時定数によってのみ制限されてランプアップできるようにする。次に、Idフィードバックを利用して、最適なMTPA、MTPV、又はMTPLテーブルを使用してIq基準を生成する。次に、Q軸制御ループの出力は、電圧角度をD軸から離れるように摂動させることで、電圧が2つの軸の間で最適に共有されるようにする。Q軸の時定数がD軸よりも高い場合には、第3の方法は比例積分コントローラを使用し、Q軸の時定数がD軸よりも高い時定数であるという事実から、最初に低速の時定数の軸に全電圧を印加し、Iqがモータ時定数によってのみ制限されてランプアップできるようにする。次に、Iqフィードバックを利用して、最適なMTPA、MTPV、又はMTPLテーブルを使用してId基準を生成する。次に、D軸制御ループの出力は、電圧角度をQ軸から離れるように摂動させることで、電圧が2つの軸の間で最適に共有されるようにする。
【0023】
コンピュータ最適化アルゴリズムを使用して、MTPA、MTPV及びMTPLを含むどの所望の軌道にも、トルク遷移の間Id及びIqの両方にとって最適な経路を画定するのに役立てることができる。この結果は、コントローラで、リアルタイムで処理することが可能な、ルックアップテーブル(LUT)又は数学的方程式とすることができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ最適化アルゴリズムは、数値最適化、ダイナミックプログラミング、及びモデル予測制御のうちの少なくとも1つとすることができる。様々な実施形態では、コンピュータ最適化アルゴリズムは、オンライン又はオフラインで使用することができる。オフラインで使用する場合、LUTは、コンピュータ最適化アルゴリズムによって生成することができる。
【0024】
数値最適化を使用するいくつかの実施形態では、微分方程式形式でモータモデルとともに常微分方程式(ODE:ordinary differential equation)求解機を使用して、各ステップで制御入力が適用されると、モデル状態が経時的にどのように変化していくかの推定を行う。各ODEの解を用いて、コストを計算して、ラウンド内の信号又は状態も制約しつつ、トルク目標に従うなどの、何らかの目標にペナルティを与えたり報償を与えたりすることができる。このような最適化をリアルタイムで行うことができない場合には、前もって最適化を計算し、LUTに格納することができる。数値最適化の一例では、指定された期間にわたって満たされるべき目的のコスト関数が提供される。初期値が、電圧などの制御入力用に指定される。いくつかの実施形態では、制御入力は、Vd、Vq、電圧大きさ、及び電圧角度のうちの2つ以上とすることができる。この例では、ODEは、電圧入力が各回で印加されると仮定して解かれる。この例では、ODE結果に基づいてコストを計算する。いくつかの実施形態では、コスト(J)は、単一の関数又は複数のコストの任意の合計とすることができる。実用的なコスト関数は、トルク軌道に従う能力に報償を与えたり、単位電流当たりのトルクのような価値のある統計データを増やすことに報償を与えたりする場合もあれば、バス電圧又は電機子電流制限のような制約に違反することにペナルティを与えるバリア関数である場合もある。コスト関数は、時間の経過とともに、又は複数回繰り返すうちに変化する可能性があり、これは境界関数を使用する重要な側面である。電圧入力の値は、時間の経過とともに繰り返され、何らかの条件において終了し、制御入力のためのコスト最適ベクトルが得られる。いくつかの実施形態では、ODEは1つの時間ステップ上で解かれ、最適化され、その後、次に進むなどする。完了したら、すべての軌道を連鎖させて、最適な長期的コストを見つけ出すことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、ダイナミックプログラミングもまた使用して、コスト最適軌道を導出することができる。微分方程式問題であれば、数値積分の問題から、時間中の状態間の遷移を選択するという問題に変換されることになり、各遷移は、それぞれに関連するある一定のコストを有する。所望の最終状態から始まりまでの一連の経路として問題を表すことによって、ダイナミックプログラミングを使用して、コスト最適経路、したがって、状態及び入力のコスト最適軌道を選択することができる。この方法は、その構造により最適性の原理を活用している。
【0026】
経済的モデル予測制御なら、直接最適化法の一部を使用して設定することが可能である。「経済的な」側面は、この問題を解くために使用されている「コスト」が、電流又は磁束のようなODE状態のうちの1つではなく、任意のコスト関数になることである。ODE問題はそれまで通り解かれ、制約を有する可能性があるコストはそれまで通りODE結果に基づいて計算されることになるが、問題に対して最適化される要素の数は、最初の数回の時間ステップに制限され、最後の入力が残りの時間のために保持されることになる。これにより、長期的な軌道が確実にコスト最適であり、制約されるようになるが、問題は十分に小さく、すぐに解けるほどである。より大きい、オフラインのソリューションであれば、モデル予測制御問題を解き、各時間ステップに対して第1の制御入力を保存することにより、構築することが可能である。
【0027】
現在の技法は、劣った渡過効率でトルク応答性能を発揮するか、又は制御が電圧制限内に留まるように、トルク要求の変化率を制限するか、のいずれかである。いくつかの実施形態は、トルク過渡期間を最適化する。いくつかの実施形態は、可能な限り最短の過渡期間で、過渡期間の間に高い効率を発揮する。いくつかの実施形態は、時定数がサンプリング時間よりも長いため、過渡の間の準定常状態の挙動を想定し、効率の最大化を確保するために最適な状態の軌道を通って遷移するようにシステムに強制する。
【0028】
いくつかの実施形態は、交通輸送業界(traction industry)で使用されるようなトルク制御モータだけでなく、したがって、採用されている既存の制御戦略を補完する任意の電気モータ制御の効率を高める可能性を有する。
【0029】
図1は、いくつかの実施形態において使用し得る電気機械システム100のブロック図である。電気機械システム100は、多相電気機械104と、電力インバータ108と、電力源112と、インバータコントローラ116と、を含む。本明細書及び特許請求の範囲では、多相電気機械104は、多相モータ又は多相発電機とすることができる。したがって、本明細書及び特許請求の範囲では、電力インバータ108は、多相モータ用、又は多相発電機用のいずれかの電力変換器である。このような電力インバータ108は、電力整流器とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、電力源112は、DC電力源である。1つ又は複数のフィードバック信号が多相電気機械104からインバータコントローラ116に供給される。
【0030】
いくつかの実施形態では、インバータコントローラ116は電力インバータ108内にある場合がある。いくつかの実施形態では、インバータコントローラ116は電力インバータ108の外側、又は電力インバータ108から離れたところにある場合がある。いくつかの実施形態では、インバータコントローラ116の一部が電力インバータ108内にあり、インバータコントローラ116の一部が、電力インバータ108の外側、又は電力インバータ108から離れたところにある場合がある。いくつかの実施形態では、インバータコントローラ116は、トルクコントローラ120と、ランプレートリミッタ122と、軌道計算器124と、トルク-電流基準変換器128と、を含む。いくつかの実施形態では、インバータコントローラ116にはトルク-電流基準変換器128がない。このような実施形態では、ユーザトルク指令136は、ランプレートリミッタ122に直接提供することができる。いくつかの実施形態では、インバータコントローラ116は、電力インバータ108に切り換え信号を供給する。いくつかの実施形態では、切り換え信号制御機械が励起すると、電気機械に最適化された軌道に従わせることで、電気機械が、第1のトルクから第2のトルクまで達する損失を最小限に抑えるようにする。
【0031】
いくつかの実施形態では、多相電気機械104が3相モータとして動作する場合、電力インバータ108は、多相電気機械104を駆動するために、DC電力源112から三相AC電力を生成する役割を担う。相A 137a、相B 137b、及び相C 137cとして表示されている三相入力電力は、回転磁界を生成するために、多相電気機械104のステータの巻線部に印加される。様々な相137a、137b、及び137cを描いている線は、矢印で描かれており、矢印の両端は、機械が3相モータとして使用される場合に電流が電力インバータ108から多相電気機械104に流れることが可能であること、及び多相電気機械104が発電機として使用される場合に電流が多相電気機械104から電力インバータ108に流れることが可能であること、の両方を表示している。多相電気機械104が発電機として動作している場合、電力インバータ108は、電力整流器として動作し、多相電気機械104から来るAC電力は、DC電力源112に貯蔵されるDC電力に変換される。
【0032】
図2は、いくつかの実施形態において使用し得るプロセスのフローチャートである。いくつかの実施形態では、ユーザトルク指令が、インバータコントローラ116によって受信される(ステップ204)。一例では、ユーザトルク指令は、多相電気機械104によって供給されるトルクが第1のトルクから第2のトルクへと遷移することを要求する。いくつかの実施形態では、軌道計算器124は、第1のトルクから第2のトルクへの最適化された軌道を提供する(ステップ208)。いくつかの実施形態では、最適化されたトルク軌道が一連の電圧又は電流指令によって表現されて、電圧又は電流経路を提供する。最適化されたトルク軌道情報が、ランプレートリミッタ122に提供される(ステップ212)。ランプレートリミッタは、トルクコントローラ120にレート制限情報を提供する(ステップ216)。多相電気機械104に最適化された軌道を提供するために、制御されたトルク入力が電力インバータ108に提供される(ステップ220)。
【0033】
いくつかの実施形態では、最適化された軌道を計算するために、軌道計算器124は、MTPA、MTPL、MTPF、又はMTPV制御戦略のうちの少なくとも1つを使用して最適化された軌道を計算する。いくつかの実施形態では、最適化された軌道は、1)バス電圧を最大限利用するための最適なトルクレート制限、バス電圧を最大限利用するための最適なId/Iqレート制限/電圧角度、及びIqフィードバックをId基準として用いた開ループIq制御、のうちの少なくとも1つを使用して決定される。いくつかの実施形態では、上記の方法のうちのいくつかを使用して、ルックアップテーブル(LUT)を作成する。ルックアップテーブルは、入力として第1のトルク及び第2のトルクを提供することができ、第1のトルク及び第2のトルクによって識別されたルックアップテーブルに格納されている値が、次に、ルックアップテーブルから提供される。いくつかの実施形態では、最適化アルゴリズムを使用するコンピュータ最適化を使用して、最適化された軌道を決定することができる。
【0034】
図3は、
図1に示されている電気機械システム100を概略的に図示したものであるが、パルス電気機械システムにおいて使用されるパルストルクコントローラが追加されている。このようなパルストルク電気機械の例は、2019年3月14日に出願された米国特許第10,742,155号明細書、2019年3月14日に出願された米国特許出願公開第16/353,159号明細書、並びに2018年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/644,912号明細書、2018年4月17日に出願された米国仮特許出願第62/658,739号明細書、及び2019年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/810,861号明細書に記載されている。前述の出願又は特許はそれぞれ、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。このような出願では、トルクレベル遷移は、非常に頻繁に(場合によっては、1秒当たり何回も)生じ、効率的な遷移制御により、さらに効率の高い動作も可能になる。いくつかの実施形態では、パルストルクコントローラ340は、軌道計算器124にパルストルク指令を提供する。いくつかの実施形態では、第1のトルクレベル及び第2のトルクレベル、並びに周期パルスは、システムが同じ平均出力を送達するために連続的に動作する場合に有するよりも高いエネルギー変換効率を有する総平均出力を提供する。加えて、いくつかの実施形態では、雑音、振動、及び過酷度を最小限に抑えるか、又は低減するように、パルス周期を選ぶことができる。
【0035】
図4は、時間に対するトルク又は電流のグラフであり、パルス周期的なトルク動作を使用するいくつかの実施形態において使用し得る電流の軌道を図示している。この例では、トルクは、第1のトルクT
1から第2のトルクT
2までの間でt
pの周期でパルス化されている。いくつかの実施形態では、パルストルクは、パルストルクコントローラ340からのパルストルク指令又は信号によって供給される。いくつかの実施形態では、第1のトルクT
1は、大きさがゼロである。この例では、
図3に示されているように、軌道計算器124は、最適なトルクが第1のトルクT
1から第2のトルクT
2まで達するように最適化された軌道を提供する。軌道は、期間t
1にわたって第1のトルクT
1から第2のトルクT
2までトルクランプ420を提供するために使用されるI
qランプ412及びI
dランプ416を提供する。トルクは、ある期間の間、第2のトルクT
2で維持される場合がある。トルク指令は、次に、トルクが、第2のトルクT
2から第1のトルクT
1までランプダウンするように要求することができる。軌道は、期間t
2にわたって第2のトルクT
2から第1のトルクT
1まで最適なトルクランプ428を提供するために使用されるI
qランプ422及びI
dランプ424を提供する。パルス周期t
pが終了するまで、トルクは、ある期間の間、第1のトルクT
1で維持される場合がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、Iqランプ412及びIdランプ416の軌道は、効率の向上を提供する。いくつかの先行技術のシステムは、第1のトルクT1から第2のトルクT2への垂直トルクランプを提供することを試みるために、垂直電流ランプを提供することを試みている。このような先行技術の実施形態では、コントローラ出力は、低効率での高速の応答につながる制御されていない飽和出力である。他の先行技術のデバイスでは、非常に低速のランピングプロセスが提供され、バス電圧の利用が不十分になり、その結果低効率で低速のトルク応答につながる可能性がある。したがって、最適化された軌道は、飽和出力及びバス電圧の不十分な利用を防ぎ、したがって、効率の改善をもたらす。
【0037】
いくつかの実施形態では、パルス周期tpは、トルクが毎秒数回、第1のトルクT1と第2のトルクT2との間で遷移し得るように、1秒の半分である。いくつかの実施形態では、パルス周期tpは1秒未満である。いくつかの実施形態では、パルストルクを使用することにより、毎秒数倍の効率の改善が得られる。
【0038】
最適化された軌道を提供することによって、第1のトルクから第2のトルクへの遷移は、より効率的に、より少ない電力消費量で達成される。いくつかの実施形態は、トルク遷移間の最大効率を提供する。加えて、いくつかの実施形態は、トルク遷移の間にモータ軸に伝送される電力が、確実に最大化されるようにする。いくつかの実施形態は、第1のトルクと第2のトルクとの間の遷移の間に利用可能な電圧及び電流を完全に利用することにより、トルク性能を最適化する。モータである電気機械での電力消費量の削減により、所与の電力源の容量におけるモータの範囲が増大する。発電機である電気機械での電力消費量の削減により、より多くの電力をDC電力源112に供給することが可能になる。
【0039】
様々な実施形態では、多相機械は、ブラシレス型DC(BLDC)機械、永久磁石型同期機(PMSM)、内部永久磁石型(IPM)機械、巻線型ロータ同期機、誘導機、及び同期リラクタンス機を含むことができるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、多相機械は2つ以上の相を有する場合がある。上記で言及したように、多相機械は、多相モータ若しくは多相発電機、又はモータ若しくは発電機の両方として動作する多相機械とすることができる。いくつかの実施形態では、トルクコントローラ120は、高帯域電流コントローラ又は磁束コントローラなど、様々な装置として実装することができる。
【0040】
本開示は、いくつかの好適な実施形態に関して説明してきたが、変更、修正、並べ換え、及び様々な代替均等物があり、それらは本開示の範囲内にある。本開示の方法及び装置を実装する多くの代替的なやり方があることにもまた留意されたい。したがって、以下の添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内にあるこのような変更、修正、並べ換え、及び様々な代替均等物をすべて含むと解釈されることを意図している。本明細書において使用されている「A、B、又はC」という語句は、非排他的論理「又は(OR)」を使用して、論理(「A又はB又はC」)を意味すると解釈されるものとし、「A又はB又はCのうちの1つのみ」を意味すると解釈されないものとする。プロセス内の各ステップは、任意のステップとすることができ、必須ではない。異なる実施形態はそれぞれに、1つ又は複数のステップが取り除かれている場合もあれば、異なった順序でステップを提供している場合もある。加えて、様々な実施形態は、異なるステップを順次に提供するのではなく、同時に提供している場合がある。加えて、別々に示され、説明されている要素を、単一のデバイス又は単一のステップにおいて組み合わせてもまたよい。例えば、順を追って説明されているステップが同時のものである場合がある。加えて、ある順序で順を追って説明されているステップが、別の順序で実行される場合がある。
【国際調査報告】