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特表2024-521676マイクロメカニカル部品を機械加工するための工作機械、及び前記工作機械によって実施される機械加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】マイクロメカニカル部品を機械加工するための工作機械、及び前記工作機械によって実施される機械加工方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/404 20060101AFI20240528BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240528BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240528BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20240528BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240528BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20240528BHJP
   B23H 1/00 20060101ALI20240528BHJP
   B23H 5/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G05B19/404 K
B23Q17/20 A
B23Q17/24 Z
B23Q3/12 J
B23Q17/22 A
B23K26/36
B23H1/00 B
B23H5/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571478
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022064698
(87)【国際公開番号】W WO2022253801
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】21176764.5
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523432759
【氏名又は名称】プティピエール ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャコー、フィリペ
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン、イワン
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
3C059
3C269
4E168
【Fターム(参考)】
3C016FA38
3C029AA02
3C029AA40
3C029BB02
3C029BB10
3C059AA01
3C059AA02
3C059AB03
3C269AB08
3C269AB11
3C269AB26
3C269BB03
3C269EF06
3C269EF71
3C269JJ09
4E168AD00
4E168AD18
4E168CB08
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA32
4E168DA46
4E168DA47
(57)【要約】
本発明は、回転軸Aを有する部品2を機械加工するための工作機械1に関し、前記工作機械1は、部品を機械加工するように構成される無力精密加工手段8と、少なくとも1つの第1のスピンドル12と、機械加工されるべき部品2をクランプしてそれを第1のスピンドル12に取り付けるように構成される第1のクランプ装置16と、機械パラメータ誘導システム20とを備える。誘導システム20は、無力精密加工手段8のための制御手段20eを誘導して、その目標寸法が部品2の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きい第1のスピンドル12に取り付けられたブランクを取得するようにプログラムされる第1のスピンドル12に取り付けられる部品2の第1の加工段階を制御し、その後、無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、第1のスピンドル12に取り付けられたブランクを発端として、十分に少量の材料を除去するための第2の加工段階を制御して、第1のスピンドル12に取り付けられる所定の最終寸法と40nm未満の粗さRaとを伴う完成品2を取得する。本発明は、そのような工作機械1を使用して部品2を機械加工するための方法にも関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する部品(2)を機械加工するための工作機械(1)であって、前記工作機械(1)は、前記部品を機械加工するように構成される無力精密加工手段(8)と、Z軸に沿ってXYZ座標系へと延びる回転軸Bを有する少なくとも1つの第1のスピンドル(12)を備える旋盤(10)であって、前記第1のスピンドル(12)が、Z軸に沿って並進移動可能であるとともに、その回転軸Bを中心に回転移動可能である、旋盤(10)と、機械加工されるべき前記部品(2)をクランプするとともに、該部品を前記第1のスピンドル(12)に取り付けるように構成される第1のクランプ装置(16)と、前記第1のスピンドル(12)に組み込まれるとともに、前記第1のクランプ装置(16)を使用して前記部品(2)が前記第1のスピンドル(12)に取り付けられるときに前記部品(2)の実際の寸法を少なくとも測定するように構成される前記部品(2)のための第1の光学測定システム(22)と、加工パラメータを管理するように構成される誘導システム(20)とを備え、前記誘導システム(20)は、
-所定の公差を伴う機械加工後に達成されるべき前記部品の所定の最終寸法のための記録手段(20a)と、
-前記第1のスピンドル(12)に取り付けられる前記部品(2)の実際の寸法を測定して記録するべく前記第1の光学測定システム(22)のための制御手段(20b)と、
-前記部品(2)の実際の測定された寸法を少なくとも前記所定の最終寸法と比較するための比較手段(20c)と、
-前記部品(2)の実際の測定された寸法と少なくとも前記所定の最終寸法との比較に従って前記加工パラメータを適合させるための補正手段(20d)と、
-前記加工パラメータに従って前記部品(2)を機械加工するべく前記無力精密加工手段(8)のための制御手段(20e)と
を備える工作機械(1)において、
前記誘導システム(20)は、前記第1の光学測定システム(22)のための前記制御手段(20b)、前記比較手段(20c)、前記無力精密加工手段(8)のための前記制御手段(20e)、場合により前記補正手段(20d)を誘導して、その目標寸法が前記部品(2)の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きい前記第1のスピンドル(12)に取り付けられたブランクを取得するようにプログラムされる前記第1のスピンドル(12)に取り付けられる前記部品(2)の第1の加工段階を制御し、その後、前記第1のスピンドル(12)に取り付けられた前記ブランクの実際の寸法の少なくとも1回の測定を実現した後、前記無力精密加工手段のための前記制御手段の前記加工パラメータを修正し、前記第1のスピンドル(12)に取り付けられた前記ブランクを発端として、十分に少量の材料を除去するための第2の加工段階を制御して、前記第1のスピンドル(12)に取り付けられる完成品(2)を得るように構成され、前記完成品(2)は、40nm未満、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの粗さRaを有するとともに、前記所定の最終寸法を有し、前記第2の段階における加工パラメータが、場合により、前記第1のスピンドル(12)に取り付けられた前記ブランクの実際に測定された寸法と前記所定の最終寸法との比較に従って補正されることを特徴とする、工作機械(1)。
【請求項2】
前記旋盤(10)は、前記第1のスピンドル(12)とは反対側のZ軸に沿って延びる回転軸B’を有する第2のスピンドル(14)を備え、前記第2のスピンドル(14)は、Z軸に沿って並進移動可能であるとともに、その回転軸B’を中心に回転移動可能であり、前記工作機械(1)は、機械加工されるべき前記部品(2)をクランプするとともに、該部品を前記第2のスピンドル(14)に取り付けるように構成される第2のクランプ装置(18)と、前記第2のクランプ装置(18)を使用して前記部品(2)が前記第2のスピンドル(14)に取り付けられるときに前記部品(2)の実際の寸法を少なくとも測定するように構成され前記第2のスピンドル(14)に組み込まれる前記部品(2)のための第2の光学測定システム(24)とを備え、前記誘導システム(20)は、前記第2のスピンドル(14)に取り付けられる前記部品(2)の実際の寸法を測定して記録するべく前記第2の光学測定システム(24)のための制御手段(20’b)を備えるとともに、前記第2の光学測定システム(24)のための前記制御手段(20’b)、前記比較手段(20c)、前記無力精密加工手段(8)のための前記制御手段(20e)、場合により前記補正手段(20d)を誘導して、その目標寸法が前記部品(2)の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きい前記第2のスピンドル(14)に取り付けられたブランクを取得するようにプログラムされる前記第2のスピンドル(14)に取り付けられる前記部品(2)の第3の加工段階を制御し、その後、前記第2のスピンドル(14)に取り付けられた前記ブランクの実際の寸法の少なくとも1回の測定を実現した後、前記無力精密加工手段のための前記制御手段の前記加工パラメータを修正し、前記第2のスピンドル(14)に取り付けられた前記ブランクを発端として、十分に少量の材料を除去するための第4の加工段階を制御して、前記第2のスピンドル(14)に取り付けられる完成品(2)を得るように構成され、前記完成品(2)は、40nm未満、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの粗さRaを有するとともに、前記所定の最終寸法を有し、第4の段階における加工パラメータが、場合により、前記第2のスピンドル(14)に取り付けられた前記ブランクの実際に測定された寸法と前記所定の最終寸法との比較に従って補正されることを特徴とする、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記無力精密加工手段(8)は、機械加工されるべき前記部品(2)の材料を径方向及び/又は接線方向及び/又は軸方向で前記部分(2)に衝突させるように構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記無力精密加工手段(8)は、フェムト・レーザ旋削加工によって、電気化学旋削加工によって、又は放電旋削加工によって機械加工するための手段を備えることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記誘導システム(20)は、前記第2の加工段階中に前記部品(2)に加えられるエネルギーが前記第1の加工段階中に前記部品(2)に加えられるエネルギーよりも少なくとも40%小さく、前記第2の加工段階中に前記部品(2)に加えられるエネルギーが好ましくは材料との相互作用が進むにつれて減少できるように、前記無力精密加工手段(8)のための前記制御手段(20e)及びそれらの加工パラメータを誘導するように構成されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記無力精密加工手段(8)は、ビームを放出するように構成されるフェムト・レーザ旋削加工によって機械加工するための手段であり、前記ビームの直径が20μm未満であり、前記誘導システムは、前記無力精密加工手段(8)のための前記制御手段(20e)を誘導して、前記第1の加工段階中に直径の50%を超える前記ビームが使用されるとともに前記第2の加工段階中に直径の50%未満の前記ビームが使用されるように前記部品(2)の材料と相互作用するべく前記ビームの位置決めを制御することを特徴とする、請求項4又は5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記光学測定システム(22、24)は、テレセントリック照明(28)と関連付けられたテレセントリック光学系(26)を備えることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記クランプ装置(16、18)は、機械加工されるべき前記部品(2)のための真空クランプシステムを備えることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項9】
そのそれぞれのスピンドル(12、14)上の前記クランプ装置(16、18)のための真空保持システム(36)を備えることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記クランプ装置(16、18)は、Z軸に沿ってそのそれぞれのスピンドル(12、14)上に保持されるとともに、前記誘導システム(20)からの制御により少なくともY軸に沿ってXY平面内で移動され得るように構成されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記部品(2)のための光学測定システム(22、24)は、前記スピンドル(12、14)の回転軸Aと回転軸B、B‘のそれぞれとの間でそのスピンドル(12、14)に取り付けられた機械加工されるべき前記部品(2)の同心度を測定するように構成され、前記工作機械(1)は、前記クランプ装置(16、18)と関連付けられる同心度を補正するための装置(40)を備え、前記補正装置(40)は、そのクランプ装置(16、18)をY軸に沿ってXY平面内で並進移動させることができるように構成され、前記誘導システム(20)は、機械加工されるべき前記部品(2)及びそのスピンドル(12、14)の回転軸(A、B、B’)が加工前に一致するように、XY平面内の前記スピンドル(12、14)の角運動を制御する及び/又はその補正装置(40)を介したY軸に沿う前記クランプ装置(16、18)の並進移動を制御するように構成されることを特徴とする、請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
同心度を補正するための前記装置(40)は、前記関連するクランプ装置(16、18)と協働できるように構成されるロッド(42)と、補正カム(44)とを備え、前記補正カム(44)は、前記ロッド(42)と協働するとともに、回転駆動されて前記誘導システム(20)によって制御され、前記ロッド(42)をY軸に沿って移動させて、補正されるべき同心度に従って前記クランプ装置(16、18)をY軸に沿って並進移動させるように構成されることを特徴とする、請求項11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記部品(2)のための前記光学測定システム(22、24)は、機械加工されるべき前記部品(2)の実際の粗さを測定するように構成され、前記誘導システム(20)は、前記実際の粗さを達成されるべき所定の粗さと比較し、前記部品(2)の実際の粗さと所定の粗さとの比較に従って前記加工パラメータを修正するように構成されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項14】
前記加工パラメータは、前記無力精密加工手段(8)の動作特性、前記スピンドル(12、14)の回転速度、及び前記スピンドル(12、14)の傾きを含むことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の工作機械(1)を使用して回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する部品(2)を機械加工するための方法であって、
a)所定の公差を伴う機械加工後に達成されるべき前記部品の所定の最終寸法を記録するステップと、
b)機械加工されるべき前記部品(2)を用意するステップと、
c)機械加工されるべき前記部品(2)を前記工作機械(1)の前記スピンドル(12)のうちの1つにそのクランプ装置(16)を使用して取り付けるステップと、
d)回転状態のそのスピンドル(12)に取り付けられた前記部品(2)を第1の加工段階に従って前記無力精密加工手段(8)によって機械加工し、その目標寸法が前記部品(2)の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きいそのスピンドル(12)に取り付けられたブランクを得るステップと、
e)前記第1のスピンドル(12)のための前記光学測定システム(22)を使用して前のステップの前記第1の加工段階に従って機械加工された前記部品(2)の寸法を測定し、そのスピンドル(12)に取り付けられた前記ブランクの実際の測定された寸法を得るステップと、
f)ステップe)で測定された実際の寸法と、ステップa)で記録された所定の最終寸法とを比較するステップと、
g)前記無力精密加工手段のための前記制御手段の加工パラメータを修正し、そのスピンドル(12)に取り付けられた前記ブランクを発端として、前記第2の加工段階を制御するステップと、
h)ステップe)で測定された実際の寸法が前記ブランクの目標寸法と異なる場合、ステップf)で得られた測定値の比較に従って、前記第2の加工段階にわたって前記誘導システム(20)によって管理される加工パラメータを補正するステップと、
i)前記第2の加工段階に従ってステップg)で修正され、場合によりステップh)で補正された前記加工パラメータに従って、回転状態のそのスピンドル(12)に取り付けられた前記ブランクを前記無力精密加工手段(8)によって機械加工して、十分に少量の材料を除去し、前記第1のスピンドル(12)に取り付けられる完成品(2)を取得するステップであって、前記完成品(2)が、40nm未満、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの粗さRaを有するとともに、前記所定の最終寸法を有する、ステップと
を含むことを特徴とする、機械加工方法。
【請求項16】
前記スピンドル(12)の1つでの前記部品の機械加工に続き、
c’)機械加工された前記部品を一方のスピンドル(12)から引き出し、その部品を前記工作機械(1)の他方のスピンドル(14)にそのクランプ装置(18)を使用して取り付けるステップと、
d’)回転状態のそのスピンドル(14)に取り付けられた前記部品(2)を第3の加工段階に従って前記無力精密加工手段(8)によって機械加工し、その目標寸法が前記部品(2)の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きいそのスピンドル(14)に取り付けられたブランクを得るステップと、
e’)前記第2のスピンドル(14)のための前記光学測定システム(24)を使用して前のステップの前記第3の加工段階に従って機械加工された前記部品(2)の寸法を測定し、そのスピンドル(14)に取り付けられた前記ブランクの実際の測定された寸法を得るステップと、
f’)ステップe’)で測定された実際の寸法と、ステップa)で記録された所定の最終寸法とを比較するステップと、
g’)前記無力精密加工手段のための前記制御手段の加工パラメータを修正し、そのスピンドル(14)に取り付けられた前記ブランクを発端として、前記第4の加工段階を制御するステップと、
h’)ステップe’)で測定された実際の寸法が前記ブランクの目標寸法と異なる場合、ステップf’)で得られた測定値の比較に従って、前記第4の加工段階にわたって前記誘導システムによって管理される加工パラメータを補正するステップと、
i’)前記第4の加工段階に従ってステップg’)で修正され、場合によりステップh’)で補正された前記加工パラメータに従って、回転状態のそのスピンドル(14)に取り付けられた前記ブランクを前記無力精密加工手段(8)によって機械加工して、十分に少量の材料を除去し、前記第2のスピンドル(14)に取り付けられる完成品(2)を取得するステップであって、前記完成品(2)が、40nm未満、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの粗さRaを有するとともに、前記所定の最終寸法を有する、ステップと
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の機械加工方法。
【請求項17】
ステップd)又はステップd’)に従った機械加工の前に、
j)そのスピンドル(12、14)と関連付けられる前記光学測定システム(22、24)によって前記スピンドル(12、14)の回転軸Aと回転軸(B、B’)との間で前記スピンドル(12、14)に取り付けられる機械加工されるべき前記部品(2)の同心度を測定する中間ステップと、
k)機械加工されるべき前記部品(2)及びそのスピンドル(12、14)の回転軸(A、B、B’)が一致するようにそのクランプ装置(16、18)を移動させることによってそのスピンドル(12、14)の回転軸(B、B’)に対する機械加工されるべき前記部品(2)の同心度を補正する中間ステップと
を含むことを特徴とする、請求項15又は16に記載の機械加工方法。
【請求項18】
前記無力精密加工手段(8)は、フェムト・レーザ旋削加工によって、電気化学旋削加工によって、又は放電旋削加工によって機械加工するための手段を備えることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか一項に記載の機械加工方法。
【請求項19】
前記無力精密加工手段(8)のための前記制御手段(20e)及びそれらの加工パラメータが前記誘導システム(20)によって誘導され、前記誘導システム(20)は、前記第2の加工段階中に前記部品(2)に加えられるエネルギーが前記第1の加工段階中に前記部品(2)に加えられるエネルギーよりも少なくとも40%小さく、前記第2の加工段階中に前記部品(2)に加えられるエネルギーが好ましくは材料との相互作用が進むにつれて減少できるようにプログラムされることを特徴とする、請求項15から18までのいずれか一項に記載の機械加工方法。
【請求項20】
前記無力精密加工手段(8)は、ビームを放出するように構成されるフェムト・レーザ旋削加工によって機械加工するための手段であり、前記ビームの直径が20μm未満であり、前記無力精密加工手段(8)のための前記制御手段(20e)の前記誘導システムは、前記第1の加工段階中に直径の50%を超える前記ビームが使用されるとともに前記第2の加工段階中に直径の50%未満の前記ビームが使用されるように前記部品(2)の材料と相互作用するために前記ビームの位置決めを制御するべくプログラムされることを特徴とする、請求項18又は19に記載の機械加工方法。
【請求項21】
前記加工パラメータは、前記無力精密加工手段(8)の動作特性、前記スピンドル(12、14)の回転速度、及び前記スピンドル(12、14)の傾きを含むことを特徴とする、請求項15から20までのいずれか一項に記載の機械加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する部品、特にマイクロメカニカル部品を機械加工するための工作機械に関し、前記工作機械は、部品を機械加工するように構成される無力精密加工手段と、Z軸に沿ってXYZ座標系へと延びる回転軸Bを有する少なくとも1つの第1のスピンドルを備える旋盤であって、前記第1のスピンドルが、Z軸に沿って並進移動可能であるとともに、その回転軸Bを中心に回転移動可能である、旋盤と、機械加工されるべき部品をクランプするとともに、該部品を第1のスピンドルに取り付けるように構成される第1のクランプ装置と、第1のスピンドルに組み込まれるとともに、第1のクランプ装置を使用して部品が第1のスピンドルに取り付けられるときに部品の実際の寸法を少なくとも測定するように構成される部品のための第1の光学測定システムと、加工パラメータを管理するように構成される誘導システムとを備え、誘導システムは、
-所定の公差を伴う機械加工後に達成されるべき部品の所定の最終寸法のための記録手段と、
-第1のスピンドルに取り付けられる部品の実際の寸法を測定して記録するべく第1の光学測定システムのための制御手段と、
-部品の実際の測定された寸法を少なくとも所定の最終寸法と比較するための比較手段と、
-部品の実際に測定された寸法と少なくとも所定の最終寸法との比較に従って加工パラメータを適合させるための補正手段と、
-加工パラメータに従って部品を機械加工するべく無力精密加工手段のための制御手段と、
を備える。
【0002】
また、本発明は、前記工作機械によって実施される、部品、特にマイクロメカニカル部品を機械加工するための方法にも関連する。
【背景技術】
【0003】
そのような部品、特にマイクロメカニカル部品は、例えば、最大60ミクロン以下の非常に小さな直径を伴う、テンプ軸などの時計製造の回動軸のような非常に小さな寸法を有することができる精密軸であり得る。
【0004】
従来、フェムト秒レーザ旋削、放電旋削、電気化学プロセスによる旋削など、力を必要としない加工や楽な加工を使用する旋盤は、標準的な態様で誘導され、つまり、部品が加工され、加工領域から引き出されて測定される。
【0005】
測定結果は、所望の公差内で部品の寸法を得るために機械の加工パラメータを補正するのに役立つ。
【0006】
このため、この手順を採用した場合、加工欠陥は、部品の加工が完了してから比較的長い時間が経過した後でのみ検出される。
【0007】
その場合、工作機械の状態が(熱膨張やドリフトに関与する他の要因に関して)進化する可能性が十分にあり、部品の測定に基づく工作機械の補正が比較的不正確になるか、更には誤りになる可能性がある。
【0008】
非特許文献1には、直径0.5mm~1.5mmの切削工具を製造するための方法とプロトタイプ機械が記載されており、これらの工具はcBNやWCなどの特定の材料から製造される。この機械はナノレーザを使用する。図1は、ナノ秒とピコ秒の2つの異なるレーザで求められる直径に対する偏差に関する強い非線形性を示している。これは、当業者にとって、異なるレーザの2つのパルス長と、材料除去に関するそれらの性能又は有効性との間の関連相関を推定することが不可能であることを示している。ナノレーザとピコレーザとの間の結果を置き換えることはできない。
【0009】
更に、この文書は、アルゴリズムから始まるモデル化された又は反復的な測定と、常に位置を変更するレーザの継続的な調整による補償カードの使用に基づいた反復補正方法を提案する。そのようなプロセスは、産業環境で実施するには複雑である。更に、5μm程度の形状及び直径の公差、55nm程度の粗さ値Raを得ることができるが、これは時計製造の分野では十分ではない。
【0010】
特許文献1には、特に測定及び位置合わせステーション、第1の処理ステーション、及び第2の処理ステーションを備える機械加工方法及び工作機械が記載されており、測定及び位置合わせステーションは、第1及び第2の処理ステーションとは異なる位置に配置されている。この欠点は、測定及び位置合わせステーションと第1又は第2の処理ステーションとの間で部品を移送しなければならないことである。この部品の移送動作により、数ミクロンの精度が失われる。
【0011】
一方、従来、工作物やブランクを発端として旋削加工(フェムト秒レーザ旋削、放電旋削、又は電気化学的プロセスによる旋削などの楽な加工による旋削を含む)によって機械加工される精密軸は、従来の旋削スピンドルやコレット・クランプを備えたカウンタースピンドル、チャック・クランプ、又はその他の既存のタイプのクランプを使用する。これらのタイプの補正クランプでは、補正加工の高レベルの同心度を保証することはできない。心押し台を使用して加工を改善することもできるが、後者は非常に小さな部品の場合には原則的に使用できない。次に、特に部品の2つの端部を機械加工する必要がある場合、クランプ内の材料を犠牲にして、単一のクランプで部品全体を機械加工する必要がある。この手順により、部品の異なる直径間の同心度を確保することができる。しかしながら、原則として、部品の最終カットでは、この作業中に部品を支持するカウンタースピンドルの使用が必要である。この加工手順では、部品の加工をスピンドルとカウンタースピンドルとに分割することができないため、機械の生産性が最大で2分の1に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1226899号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Warhanek and al. “Accurate Micro-Tool Manufacturing by Iterative Pulsed-Laser Ablation”, Lasers in Manufacturing and Materials Processing, Vol. 4, No. 4, 23 October 2017 (2017-10-23), pages 193-204, XP055857312, ISSN: 2196-7229, DOl: 10.1 007/s4051 6-01 7-0046-y; Internet extract: URL:http://link.springer.com/content/pdf/1 0.1 007/s4051 6-01 7-0046-y.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、部品、特に時計製造の回動軸などのマイクロメカニカル部品を加工するための工作機械及び方法を提案することによってこれらの欠点を改善し、それにより、同心度、同軸度、精度、粗さ、及び公差の極めて優れた品質を有する機械加工部品を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のため、本発明は、回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する部品、特にマイクロメカニカル部品を機械加工するための工作機械に関し、前記工作機械は、部品を機械加工するように構成される無力精密加工手段と、Z軸に沿ってXYZ座標系へと延びる回転軸Bを有する少なくとも1つの第1のスピンドルを備える旋盤であって、前記第1のスピンドルが、Z軸に沿って並進移動可能であるとともに、その回転軸Bを中心に回転移動可能である、旋盤と、機械加工されるべき部品をクランプするとともに、該部品を第1のスピンドルに取り付けるように構成される第1のクランプ装置と、第1のスピンドルに組み込まれるとともに、第1のクランプ装置を使用して部品が第1のスピンドルに取り付けられるときに部品の実際の寸法を少なくとも測定するように構成される部品のための第1の光学測定システムと、加工パラメータを管理するように構成される誘導システムとを備え、誘導システムは、
-所定の公差を伴う機械加工後に達成されるべき部品の所定の最終寸法のための記録手段と、
-第1のスピンドルに取り付けられる部品の実際の寸法を測定して記録するべく第1の光学測定システムのための制御手段と、
-部品の実際の測定された寸法を少なくとも所定の最終寸法と比較するための比較手段と、
-部品の実際に測定された寸法と少なくとも所定の最終寸法との比較に従って加工パラメータを適合させるための補正手段と、
-加工パラメータに従って部品を機械加工するべく無力精密加工手段のための制御手段と、
を備える。
【0016】
本発明によれば、前記誘導システムは、第1の光学測定システムのための前記制御手段、前記比較手段、加工手段のための前記制御手段、場合により前記補正手段を誘導して、その目標寸法が部品の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きい第1のスピンドルに取り付けられたブランクを取得するようにプログラムされる第1のスピンドルに取り付けられる部品の第1の加工段階を制御し、その後、第1のスピンドルに取り付けられたブランクの実際の寸法の少なくとも1回の測定を実現した後、無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、第1のスピンドルに取り付けられたブランクを発端として、十分に少量の材料を除去するための第2の加工段階を制御して、第1のスピンドルに取り付けられる完成品を得るように構成され、完成品は、40nm未満、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの粗さRaを有するとともに、所定の最終寸法を有し、第2の段階における加工パラメータが、場合により、第1のスピンドルに取り付けられたブランクの実際に測定された寸法と所定の最終寸法との比較に従って補正される。
【0017】
また、本発明は、先に規定された工作機械を使用して回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する部品、特にマイクロメカニカル部品を機械加工するための方法にも関連し、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)所定の公差を伴う機械加工後に達成されるべき部品の所定の最終寸法を記録するステップと、
b)機械加工されるべき部品を用意するステップと、
c)機械加工されるべき部品を工作機械のスピンドルのうちの1つにそのクランプ装置を使用して取り付けるステップと、
d)回転状態のそのスピンドルに取り付けられた機械加工されるべき部品を第1の加工段階に従って無力精密加工手段によって機械加工し、その目標寸法が部品の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きいそのスピンドルに取り付けられたブランクを得るステップと、
e)第1のスピンドルのための光学測定システムを使用して前のステップの第1の加工段階に従って機械加工された部品の寸法を測定し、そのスピンドルに取り付けられたブランクの実際の測定された寸法を得るステップと、
f)ステップe)で測定された実際の寸法と、ステップa)で記録された所定の最終寸法とを比較するステップと、
g)無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、そのスピンドル(12)に取り付けられたブランクを発端として、第2の加工段階を制御するステップと、
h)ステップe)で測定された実際の寸法がブランクの目標寸法と異なる場合、ステップf)で得られた測定値の比較に従って、第2の加工段階にわたって誘導システム(20)によって管理される加工パラメータを補正するステップと、
i)第2の加工段階に従ってステップg)で修正され、場合によりステップh)で補正された加工パラメータに従って、回転状態のそのスピンドルに取り付けられたブランクを無力精密加工手段によって機械加工して、十分に少量の材料を除去し、第1のスピンドルに取り付けられる完成品を取得するステップであって、完成品が、40nm未満、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの粗さRaを有するとともに、所定の最終寸法を有する、ステップと、
を含む。
【0018】
本発明に係る方法は、機械加工されるべき各部品に適用され、それにより、各機械加工部品は、その後、そのスピンドル上でその場で測定及び検査される。
【発明の効果】
【0019】
そのような機械及びそのような加工方法により、同心度、同軸度、精度、粗さ及び公差の点で極めて優れた品質を有する加工部品を得ることが可能になる。
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しながら非限定的な例として与えられる本発明の実施例に関する以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る工作機械の概略図である。
図2】スピンドル、クランプ装置、及び光学測定システムの概略図である。
図3】スピンドル及び同心度を補正するための装置の概略図である。
図4】そのクランプ装置に取り付けられた部品の拡大図である。
図5】スピンドル、クランプ装置、及び同心度を補正するための装置を示す図3の詳細図である。
図6】スピンドルに取り付けられたクランプ装置及び同心度を補正するための装置の詳細図である。
図7】スピンドルに取り付けられたクランプ装置及び同心度を補正するための装置の断面図である。
図8】本発明に係る方法のステップの概略図である。
図9】同心度を補正するステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照すると、本発明は、回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する部品2、特にマイクロメカニカル部品を機械加工するための工作機械1に関する。そのような部品は、例えば、図9に表される。この部品2は、例えば、時計製造の回動軸のように非常に小さな寸法を有し得る精密回動軸であり得る。そのような部品の直径は40μm~400μmと非常に小さい。
【0023】
そのような精密軸は、焼入れ鋼、ステンレス鋼、又はインコネル・タイプの金属材料、又は金属ガラス、セラミック、又は炭化ケイ素ベースの材料などの硬質材料で作ることができる。
【0024】
時計製造回動軸は、回動シャンク6の延在部において、その各端部に、回動軸4を備える。従来、少なくとも前記回動軸は、回転面を有し、それぞれがベアリング内、一般的には石やルビーのオリフィス内で回動するようになっている。
【0025】
時計製造回動軸は、従来、2mm以下の直径を有し、回動軸4は、回動軸2がいつでも使用できる完成状態にあるときに、200μm以下、好ましくは100μm以下、好ましくは90μm以下、より好ましくは60μm以下の外径を有する。回動4は例えば円錐型である。
【0026】
時計製造回動軸は、機械加工によって製造される、従来のように段差や肩部を画定する、異なる直径の複数の部分を有することができる。
【0027】
回動軸は、例えばテンプ軸とすることができる。勿論、他のタイプの時計製造回動軸、例えば、時計の歯車及びピニオン、一般に脱進機のピニオン、香箱真、又はアンカー・ステムの軸なども想定できる。この場合、回動軸には、その使用に関連する機能要素を含むことができる。例えば、軸は、歯、ねじ、又は香箱真の場合にスプリングを固定するためのフックを含むことができる。このタイプの部品は、本体の位置に、好ましくは2mm未満の直径を有し、前述したように、数ミクロンの精度で、好ましくは0.2mm未満の直径を有する回動軸を有する。ここで説明する部品は、時計製造用途に好ましく適合するように構成された回動軸であるが、同じ回動軸形態を必要とする任意の他の用途にも使用できることは明らかである。
【0028】
工作機械1に取り付けられる機械加工されるべき部品2は、楽に機械加工され得る材料、粗部品、又は1つの同じ工作機械1を使用してその最終寸法及び粗さを有する部品を得るために工作機械1内で完全に機械加工されて仕上げられる工作物であり得る。
【0029】
工作機械1に取り付けられて機械加工されるべき部品2は、ブランク、すなわち、従来のプロファイル旋削加工又は従来の機械加工方法、或いは材料を除去するための任意の他の方法による、例えば切りくずの除去を含む、別の方法及び別の機械を使用して既に部分的に機械加工されるとともにその最終寸法及び粗さを有する部品を得るために工作機械1で補正されて仕上げられる部品であってもよい。
【0030】
工作機械1は、部品2を機械加工するように構成される無力精密加工手段8を備える。本説明において、無力又は楽な機械加工は、工具と部品の間に直接接触があって大きな切削抵抗が関与する従来の機械加工とは異なり、工具と部品の間の直接接触及び作用力によって伝達される機械的作用が存在しない、従来とは異なる機械加工に与えられた名前である。したがって、無力加工は、機械加工されるべき部品と該部品に作用力又は応力を及ぼす可能性が高い機械加工工具との間の直接接触を伴わない機械加工である。
【0031】
好適には、無力精密加工手段8は、機械加工されるべき部品2が回転しているときにこの部品2に対して径方向及び/又は接線方向及び/又は軸方向に、好ましくは径方向に材料を衝突させるべく構成される。
【0032】
好適には、無力精密加工手段は、フェムト・レーザ旋削加工によって、電気化学旋削加工(電気化学加工(ECM))によって、又は放電旋削加工(例えば、EDM(放電加工))によって機械加工するための手段を備える。
【0033】
無力精密加工手段は、非常に短い期間(10~15秒程度)にわたって高エネルギーパルスを送出するフェムト・レーザであることが好ましい。これにより、加工界面に損傷を与えることなく材料アブレーション・プロセスが可能になる。事実上あらゆる材料をこのプロセスで機械加工できる。
【0034】
好適には、フェムト秒パルス・レーザは、例えば上下限を含む200nm~2000nm、好ましくは400nm~1000nmの波長を伴うレーザである。レーザの特性は、例えば、1W~100Wの平均パワー、20μJ~4000μJのパルスあたりのエネルギー、100KHz~1000KHzの周波数、100fs~2psのパルス長となり得る。
【0035】
レーザは、2D走査ヘッド(2軸)又は少なくとも3軸、好ましくは5軸を伴う歳差運動ヘッドを使用して誘導され得る。そのような装置は市販されている。
【0036】
レーザは、機械1に取り付けられた機械加工されるべき部品2の移動時に作用ゾーン9を生成するように誘導されてプログラムされる。以下でより詳細に説明するように、前記作用ゾーン9は、第1の加工段階と第2の加工段階との間で修正されるとともに、非常に高い精度と極めて低い粗さとを伴う部品を得るために、材料との相互作用を徐々に低減するべく、第2の加工段階中に漸進的に変化する。
【0037】
また、工作機械は、少なくとも1つの第1のスピンドル12と、カウンタースピンドルとして作用する第2のスピンドル14とを備えるデジタル旋盤10も備える。
【0038】
第1のスピンドル12は、Z軸に沿ってXYZ座標系へと延びる回転軸Bを有し、前記第1のスピンドルは、Z軸に沿って並進移動可能であり、その回転軸Bを中心に回転移動可能である。
【0039】
同様に、第2のスピンドル14は、第1のスピンドル12と対向して、Z軸に沿ってXYZ座標系へと延びる回転軸B’を有し、前記第2のスピンドル14は、Z軸に沿って並進移動可能であり、その回転軸B’を中心に回転可能である。
【0040】
各スピンドル12、14は、モータ15によって給電されて、回転駆動される(図3参照)。
【0041】
例えば図2及び図4に示されるように、第1のスピンドル12は、機械加工されるべき部品2の第1の端部をクランプし、部品2の機械加工されるべき部分を露出させることによって第2の端部を自由にしておくとともに、前記部品2を前記第1のスピンドル12に取り付けるように構成される第1のクランプ装置16と関連付けられる。
【0042】
同様に、第2のスピンドル14は、機械加工されるべき部品の第2の端部をクランプし、部品2の機械加工されるべき他の部分を露出させることによって第1の端部を自由にしておくとともに、前記部品2を前記第2のスピンドル14に取り付けるように構成される第2のクランプ装置18と関連付けられる。
【0043】
クランプ装置16、18については後で詳細に説明する。
【0044】
また、機械は、特に、例えばフェムト・レーザの場合には、出力、パルス当たりのエネルギー、周波数、パルス長、様々な通過深さ、後述するように加工段階に従ってレーザ・ビームを位置決めするために部品2に対するレーザ・ビームの主な動きに追加されるレーザの動き(円形、振動など)、場合によっては迎え角(例えば、部品の歳差運動、傾斜移動)などの無力精密加工手段8の動作特性を含む加工パラメータを管理するように構成される誘導システム20も備える。
【0045】
電気化学的旋削加工(ECM)の場合、加工パラメータは、例えば、電圧、電流、電解質濃度である。放電旋削加工の場合、加工パラメータは例えば電圧及び電流である。
【0046】
また、加工パラメータは、スピンドル12、14の回転速度(一定又は動的に調整することができ、例えばレーザ・ビームの速度と同期させることができる)、及び加工「平面」に対する又はデカルト空間の他の2つの平面に対するスピンドルの傾斜角も含む。
【0047】
また、誘導システム20は、以下で更に詳しく説明するように、機械加工されるべき部品2に対する無力精密加工手段8の位置決め、及びそのスピンドル12又は14のそれぞれに対するクランプ装置16、18の位置決めを管理するようにも構成される。
【0048】
また、機械1は、部品を供給するための装置と、供給装置から部品を取り出して、スピンドル上のクランプ装置のうちの1つに部品を位置決めした後に、露出部の機械加工後に部品を引き出し、他のスピンドル上の他のクランプ装置に部品を位置決めして、その後に、機械加工された部品を引き出してその部品をアンロードするように構成されるロード・アンロード・ロボットとを備えることもできる。
【0049】
機械は、機械の環境全体が熱制御下にあるような空調システム、レーザ用の水冷装置、並びにその動作に必要な全てのコネクタ及び電源も備えることができる。
【0050】
工作機械1は、部品2が第1のクランプ装置16を使用して第1のスピンドル12に取り付けられるときに、部品2の実際の寸法を少なくとも測定するように構成される部品2のための第1の光学測定システム22を備える。特に有利な態様で、第1の光学測定システム22は、第1のスピンドル12に組み込まれており、すなわち、第1のスピンドル12によって支持される。
【0051】
同様に、特に第2のスピンドル14が機械加工を実行するために使用される場合、機械は、好適には、部品2が第2のクランプ装置18を使用して第2のスピンドル14に取り付けられるときに、部品2の実際の寸法を少なくとも測定するように構成される部品2のための第2の光学測定システム24を備えることができる。特に有利な態様で、第2の光学測定システム24は、第2のスピンドル14に組み込まれ、すなわち第2のスピンドル14によって支持される。
【0052】
したがって、スピンドルに取り付けられた部品の実際の寸法を光学的手段によって測定するための各システム22、24は、それぞれのスピンドルに組み込まれ、それにより、部品をそのスピンドルから及びそのクランプ装置から引き出すことなくその場で測定を実行することが可能になる。
【0053】
好適には、各光学測定システム22、24は、図2に示されるように、コリメート照明を可能にするテレセントリック照明28と関連付けられたテレセントリック光学系26を備える。各光学測定システム22、24は、図1及び図4に示されるように、そのクランプ装置16、18に取り付けられる部品2の周囲に測定フィールド30を生成するように構成される。
【0054】
更に、誘導システム20は、
-所定の公差を伴う機械加工後に達成されるべき部品の所定の最終寸法のための記録手段20aであって、機械加工の後に達成される所定の最終寸法が、機械加工されるべき部品が完全に機械加工されて仕上げられる工作物又は前記部品を得るために機械1で仕上げられるブランクであるときの部品の最終寸法である、記録手段20aと、
-第1のスピンドル12に取り付けられる部品の実際の寸法を測定して記録するべく第1の光学測定システム22のための制御手段20bと、
-それが存在する場合には、第2のスピンドル14に取り付けられた部品の実際の寸法を測定して記録するべく第2の光学測定システム24のための制御手段20’bと、
-部品の実際の測定された寸法を少なくとも所定の最終寸法と比較するための比較手段20cと、
-部品の実際の測定された寸法と少なくとも所定の最終寸法との比較に従って、レーザの特性又はスピンドル12、14の回転速度などの加工パラメータを適合させるための補正手段20dと、
-加工パラメータに従って部品を機械加工するべく無力精密加工手段8のための制御手段20eと、
を備える。
【0055】
本発明によれば、誘導システム20は、第1の光学測定システム22のための前記制御手段20b、前記比較手段20c、加工手段8のための前記制御手段20e、場合により前記補正手段20dを誘導して、そのクランプ装置16における第1のスピンドル12に取り付けられた部品2の露出部の第1の加工段階を制御し、該第1の加工段階が、その目標寸法、特に目標直径が部品2の所定の最終寸法、特に部品2の所定の最終直径よりも0.5%~20%大きくなるように選択されてそのクランプ装置16における第1のスピンドル12に取り付けられたブランクを取得するようにプログラムされ、その後、そのクランプ装置16における第1のスピンドル12に取り付けられたブランクの実際の寸法の少なくとも1回の測定を実現した後、無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、そのクランプ装置16における第1のスピンドル12に取り付けられたブランクを発端として、十分に少量の材料を除去するための第2の加工段階を制御して、そのクランプ装置16における第1のスピンドル12に取り付けられる完成部品2を得るように構成され、前記部品2は、40nm未満、好ましくは25nm以下、好ましくは20nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは12nm以下、より好ましくは、厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの±20%まで均一な粗さRaを有するとともに、所定の最終寸法を有し、第2の段階における加工パラメータは、場合により、そのクランプ装置16における第1のスピンドル12に取り付けられたブランクの実際の測定された寸法と前記所定の最終寸法に関して規定されるブランクの目標寸法との比較に従って、目標寸法を有するブランクに対応する加工パラメータに対して補正される。したがって、加工パラメータの想定し得る補正は、ブランクの実際の測定された寸法と所定の最終寸法との比較に従って実現される。
【0056】
粗さRaは、ISO 4287規格に従って規定される。
【0057】
同様に、誘導システム20は、第2の光学測定システム24のための前記制御手段20’b、それが存在する場合には、前記比較手段20c、加工手段8のための前記制御手段20e、場合により前記補正手段20dを誘導して、そのクランプ装置18における第2のスピンドル14に取り付けられた部品2の露出部の第3の加工段階を制御し、該第3の加工段階が、その目標寸法が部品2の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きくなるように選択されてそのクランプ装置18における第2のスピンドル14に取り付けられたブランクを取得するようにプログラムされ、その後、そのクランプ装置18における第2のスピンドル14に取り付けられたブランクの実際の寸法の少なくとも1回の測定を実現した後、無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、そのクランプ装置18における第2のスピンドル14に取り付けられたブランクを発端として、十分に少量の材料を除去するための第4の加工段階を制御して、そのクランプ装置18における第2のスピンドル14に取り付けられる完成部品2を得るように構成され、前記部品は、40nm未満、好ましくは25nm以下、好ましくは20nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは12nm以下、より好ましくは、厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの±20%まで均一な粗さRaを有するとともに、所定の最終寸法を有し、第4の段階における加工パラメータは、場合により、そのクランプ装置18における第2のスピンドル14に取り付けられたブランクの実際の測定された寸法と前記所定の最終寸法に関して規定されるブランクの目標寸法との比較、したがって所定の最終寸法との比較に従って補正される。
【0058】
好適には、誘導システムは、第2の加工段階中に部品2に加えられるエネルギーが第1の加工段階中に部品2に加えられるエネルギーよりも少なくとも40%少なくなるように、無力精密加工手段8及びそれらの加工パラメータに関して前記制御手段20eを誘導するように構成され、部品の材料との相互作用のたびに材料を非常に細かく除去するために、及び第2の段階中の加工分解能を向上させるために、第2の加工段階中に部品2に加えられるエネルギーは、材料との相互作用が進行するにつれて減少し得る。
【0059】
例えば、電気化学的旋削加工(ECM)の場合、調整可能な加工パラメータは、特に電圧、電流、及び電解質濃度である。放電旋削加工の場合、調整可能な加工パラメータは特に電圧及び電流である。
【0060】
好適には、無力精密加工手段8は、フェムト・レーザ旋削によって機械加工するための手段である。無力精密加工手段は、好ましくは、直径が20μm未満、好ましくは8μm未満のビームを放出するように構成される。レーザ・ビームの直径は、その横方向の広がり、つまり伝播方向に対して垂直な物理的サイズを規定する。レーザ・ビームの直径は、ビームの強度が最大値の1/e(≒13.5%)に達する点によって区切られる幅1/eで規定される。
【0061】
誘導システムは、第1の加工段階中に直径の50%を超えるビームが使用されるとともに、直径の50%未満のビームが第2の加工段階中に使用されるように部品2の材料と相互作用するべくビームの位置決めを制御するために無力精密加工手段8の前記制御手段20eを誘導するように構成される。
【0062】
例えば、フェムト・レーザによる無力精密機械加工の場合、8μm以下、好ましくは6μm以下、或いは実際には4μmの直径を有するスポットが使用されることが好ましく、レーザ・ビームは、回転する回動軸と径方向で衝突する。
【0063】
したがって、本発明の誘導システム20は、測定可能でありながら、2つの加工段階中にそのクランプ装置におけるスピンドル上に残る部品を機械加工するように構成される。得られる部品は、±1μm以下、好ましくは±0.5μm以下の程度の極めて高い精度で、及び先に規定された極度の粗さで機械加工される。
【0064】
ここで、クランプ装置16、18及びそれらのそれぞれのスピンドル12、14への取り付けについて、図3図7を参照して詳細に説明する。
【0065】
特に有利な態様で、各クランプ装置16、18は、真空によって機械加工されるべき部品2をクランプ又は保持するためのシステム、例えば、陥凹部を形成してそのクランプ装置16、18へと平坦化される部品2を保持するように構成される一体型ベンチュリ・システムを備える。
【0066】
より詳細には、図7に関連して、各クランプ装置16、18は、機械加工されるべき部品2の一端が導入されるオリフィスを有するクランプ・ヘッド32を備え、前記オリフィスはチャネル34を介してベンチュリ・システムと連通する。
【0067】
更に、一体型ベンチュリ・システムに連結されるそれぞれのスピンドル12、14上のクランプ装置16、18のための真空保持システム36も設けられ、形成された陥凹部により、少なくとも機械加工工程中にそれぞれのスピンドル12、14上へと平坦化された各クランプ装置16、18を固定位置で保持することも可能になる。
【0068】
特に有利な態様で、本発明に従って実施される、特にフェムト・レーザによって実施される無力精密機械加工は、機械的労力を伴うことなく実行されるため、真空クランプ・システムを使用して、部品をそのクランプ装置及び真空保持システムに保持し、クランプ装置をそのスピンドルに保持することが可能である。
【0069】
好適には、後述するように、誘導システム20は、これが同心度を補正するために必要な場合に、真空をチェックして、クランプ装置をXY平面内で少なくともY軸に沿って移動させることができるように構成される。したがって、各クランプ装置16、18は、そのそれぞれのスピンドル12、14上にZ軸に沿って保持されるように、及び同心度を補正するために誘導システム20からの制御によって少なくともY軸に沿ってXY平面内で移動され得るように構成される。
【0070】
この目的のために、部品2の各光学測定システム22、24は、部品2の回転軸Aとスピンドル12又は14のそれぞれの回転軸B、B’との間で、スピンドル12、14に取り付けられた機械加工されるべき前記部品2の同心度も測定するように構成される。
【0071】
更に、工作機械1は、各クランプ装置16、18に関連する同心度を補正するための装置40を備え、前記補正装置40は、クランプ装置16、18をY軸に沿ってXY平面内で並進移動させることができるように構成されている。
【0072】
より詳細には、図5図7に関連して、同心度を補正するための装置40は、クランプ装置16、18の外周と該外周を押すことによってY軸に沿って径方向で協働できるように構成されるロッド42と、前記ロッド42を押すことによって前記ロッド42と協働するとともにモータ46によって駆動されるシャフト45と一体化することによって回転駆動されるように構成される補正カム44を含む偏心器とを備える。
【0073】
スピンドル12、14のフランジ48はハウジング50を有し、該ハウジング内に、クランプ装置16、18が、必要に応じて前記クランプ装置16、18をそのスピンドル12、14の軸に対して位置決め及び再心出しできるように、少なくともY方向で一定の遊びをもって位置決めされる。更に、ハウジング50は径方向開口52を有し、それにより、ロッド42が、補正カム44によって作動される際に、前記クランプ装置16、18と径方向で接触できるように通過し得る。
【0074】
補正カム44は、補正されるべき同心度に従ってクランプ装置16、18をY軸に沿って並進移動させるために、矢印Fで示すように、ロッド42をY軸に沿って並進移動させるべく誘導システム20によって制御されるように構成される。
【0075】
更に、誘導システム20は、補正されるべき同心度に従ってXY平面内でのスピンドル12、14の角運動を制御するように構成される。
【0076】
より詳細には、誘導システム20は、機械加工されるべき部品2及びそのスピンドル12又は14のそれぞれの回転軸A、B又はB’のそれぞれが機械加工前に一致するように補正装置40を介してXY平面内でのスピンドル12、14の角運動を制御するべく、及び/又は、クランプ装置16、18のXY平面内でのY軸に沿う並進移動を制御するべく構成される。
【0077】
したがって、部品2をクランプする各クランプ装置16、18の径方向位置は、機械加工に先立って、関連するスピンドル12、14の回転軸B、B’に対して補正され、それにより、同心度及び同軸性の極めて優れた品質を有する機械加工部品を得ることが可能になる。
【0078】
好適には、部品2のための各光学測定システム22、24は、機械加工されるべき部品の実際の粗さを測定するように構成され、誘導システム20は、前記実際の粗さを、達成されるべき所定の最終粗さと比較するように構成される。
【0079】
また、本発明は、前述の工作機械1を使用して回転軸Aを伴う少なくとも1つの回転面を有する、部品2、特にマイクロメカニカル部品を機械加工する方法に関連する。
【0080】
本発明に係る方法は、好適には、図8に関連して、以下のステップ、すなわち、
a)誘導システム20の記録手段20Aを用いて、モデル部品54に対応する、所定の公差を伴う加工後に達成されるべき部品2の所定の最終寸法を記録するステップであって、加工後に達成されるべき前記所定の最終寸法が、機械加工されるべき部品が完全に機械加工されて仕上げられる工作物、又は前記部品を得るために機械1内で仕上げられるブランクである場合の部品の最終寸法である、ステップと、
b)機械加工されるべき部品2を用意するステップと、
c)真空によって保持された関連するクランプ装置16を使用して、工作機械1のスピンドル12、14のうちの1つに機械加工されるべき部品2を取り付けるステップであって、前記クランプ装置16が予めそのスピンドル12の中心に位置決めされており、テスト部品を使用して事前に調整された、その作用ゾーン9を正確に位置決めするために、スピンドル12の位置決めと、無力精密加工手段8、特にフェムト秒レーザの初期位置決めを行う、ステップと、
d)その目標寸法がモデル部品54の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きいそのスピンドル12に取り付けられたブランクを得るようにプログラムされる第1の加工段階に従って、クランプ装置16を介して回転状態のそのスピンドル12に取り付けられた部品2に対して材料を径方向及び/又は接線方向及び/又は軸方向で、好ましくは径方向で衝突させることによって、機械加工されるべき部品2の露出部分を無力精密加工手段8、特にフェムト秒レーザによって機械加工するステップと、
e)工作機械1の第1のスピンドル12に設けられた関連する光学測定システム22と、誘導システム20のための制御手段20bとを使用して、測定フィールド30における前ステップの第1の加工段階に従って機械加工された部品2の寸法を測定して記録し、関連するスピンドル12に取り付けられた部品2のブランクの実際の測定された寸法を取得するステップと、
f)誘導システム20の比較手段20cを使用して、ステップe)で測定された実際の寸法を、ステップa)で記録されたモデル部品54の所定の最終寸法と比較し、したがって、前記最終寸法に関して規定されるブランクの目標寸法に対して比較するステップと、
g)無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、スピンドル12に取り付けられたブランクを発端として、第2の加工段階を制御するステップであって、第2の加工段階にわたって修正される加工パラメータが、より詳細には、フェムト・レーザの場合、レーザの特性、すなわち、出力、部品に対するレーザの距離、パルス当たりのエネルギー、周波数、パルス長、及び/又は関連するスピンドル12の回転速度であり、電気化学的旋削加工(ECM)に関しては、加工パラメータが、例えば、電圧、電流、及び電解質濃度であり、放電旋削に関しては、加工パラメータが、例えば、電圧及び電流である、ステップと、
h)ステップe)で測定された実際の寸法がブランクの目標寸法と異なる場合、補正手段20dを使用して、ステップf)で得られた測定値の比較に従って第2の加工段階にわたって誘導システム20により管理される加工パラメータを補正するステップであって、フェムト・レーザの場合、補正された加工パラメータが、より詳細には、レーザの特性、すなわち、出力、部品に対するレーザの距離、パルス当たりのエネルギー、周波数、パルス長、及び/又は、関連するスピンドル12の回転速度であり、電気化学的旋削加工(ECM)に関しては、加工パラメータが、例えば、電圧、電流、及び電解質濃度であり、放電旋削に関しては、加工パラメータが、例えば、電圧及び電流である、ステップと、
i)十分に少量の材料を除去するための第2の加工段階に従って、ステップg)で修正され、場合によりステップh)で補正された加工パラメータに基づき、誘導システム20の制御手段20eによって制御される無力精密加工手段8によって回転状態のそのスピンドル12に取り付けられた部品2に対して、材料を径方向及び/又は接線方向及び/又は軸方向、好ましくは径方向で衝突させることによって部品2のブランクの露出部分を機械加工し、第1のスピンドル12に取り付けられた完成品2を得るステップであって、完成品2が、40nm未満、好ましくは25nm以下、好ましくは20nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの±20%まで均一な粗さRaを有するとともに、所定の最終寸法を有する、ステップと、
を含む。
【0081】
その後、スピンドル12に取り付けられた部品2の露出部分の機械加工に続いて部品2の他の部分を機械加工することが目的である場合、本発明に係る機械加工方法は、好適には、以下のステップ、すなわち、
c’)ロボットによって、スピンドル12に保持されたそのクランプ装置16から機械加工された部品2を引き出し、その部品を、真空によって保持された関連するクランプ装置18を使用して、工作機械1の他のスピンドル14に取り付けるステップであって、前記クランプ装置18が予めそのスピンドル14の中心に位置決めされており、テスト部品を使用して事前に調整された、その作用ゾーン9を正確に位置決めするために、スピンドル14の位置決めと、無力精密加工手段8、特にフェムト秒レーザの初期位置決めを行う、ステップと、
d’)その目標寸法がモデル部品54の所定の最終寸法よりも0.5%~20%大きいそのスピンドル12に取り付けられたブランクを得るようにプログラムされる第3の加工段階に従って、クランプ装置18を介して回転状態のそのスピンドル14に取り付けられた部品2に対して材料を径方向及び/又は接線方向及び/又は軸方向で、好ましくは径方向で衝突させることによって、機械加工されるべき部品2の露出部分を無力精密加工手段8、特にフェムト秒レーザによって機械加工するステップと、
e’)工作機械1の第2のスピンドル14に設けられた関連する光学測定システム24と、誘導システム20の制御手段20’bとを使用して、関連する測定フィールド30における前ステップの第3の加工段階に従って機械加工された部品2の寸法を測定して記録し、その関連するスピンドル14に取り付けられた部品2のブランクの実際の測定された寸法を取得するステップと、
f’)誘導システム20の比較手段20cを使用して、ステップe’)で測定された実際の寸法を、ステップa)で記録されたモデル部品54の所定の最終寸法と比較し、したがって、前記最終寸法に関して規定されるブランクの目標寸法に対して比較するステップと、
g’)無力精密加工手段のための制御手段の加工パラメータを修正し、スピンドル14に取り付けられたブランクを発端として、第4の加工段階を制御するステップであって、第4の加工段階にわたって修正される加工パラメータが、より詳細には、フェムト・レーザの場合、レーザの特性、すなわち、出力、部品に対するレーザの距離、パルス当たりのエネルギー、周波数、パルス長、及び/又は関連するスピンドル12の回転速度であり、電気化学的旋削加工(ECM)に関しては、加工パラメータが、例えば、電圧、電流、及び電解質濃度であり、放電旋削に関しては、加工パラメータが例えば電圧及び電流である、ステップと、
h’)ステップe’)で測定された実際の寸法がブランクの目標寸法と異なる場合、補正手段20dを使用して、ステップf’)で得られた測定値の比較に従って第4の加工段階にわたって誘導システム20により管理される加工パラメータを補正するステップであって、フェムト・レーザの場合、補正された加工パラメータが、より詳細には、レーザの特性、すなわち、出力、部品に対するレーザの距離、パルス当たりのエネルギー、周波数、パルス長、及び/又は、関連するスピンドル14の回転速度であり、電気化学的旋削加工(ECM)に関しては、加工パラメータが、例えば、電圧、電流、及び電解質濃度であり、放電旋削に関しては、加工パラメータが例えば電圧及び電流である、ステップと、
i’)十分に少量の材料を除去するための第4の加工段階に従って、ステップg’)で修正され、場合によりステップh’)で補正された加工パラメータに基づき、誘導システム20の制御手段20eによって制御される無力精密加工手段8によって回転状態のそのスピンドル14に取り付けられた部品2に対して、材料を径方向及び/又は接線方向及び/又は軸方向、好ましくは径方向で衝突させることによって部品2のブランクの露出部分を機械加工し、第2のスピンドル(14)に取り付けられた完成品(2)を得るステップであって、完成品(2)が、40nm未満、好ましくは25nm以下、好ましくは20nm以下、好ましくは15nm以下、好ましくは12nm以下、より好ましくは厳密に10nm未満、好ましくは9nm以下、より好ましくは上下限を含めて5nm~9nmの±20%まで均一な粗さRaを有するとともに、所定の最終寸法を有する、ステップと、
を含む。
【0082】
第2のスピンドル14上で部品2を機械加工するための方法のこれらのステップは、任意選択的であり、部品2の構成に従って実施することも実施しないこともできる。
【0083】
好適には、本発明に係る機械加工方法は、ステップd)及び/又はd’)に係る機械加工の前に、図9に関連する、以下の中間ステップ、すなわち、
j)そのスピンドル12又は14のそれぞれと関連付けられる光学測定システム22、24によってスピンドルの回転軸Aと回転軸B、B’のそれぞれとの間でそのスピンドル12、14に取り付けられる機械加工されるべき部品2の同心度を測定する中間ステップと、
k)機械加工されるべき部品2及びその関連するスピンドル12又は14のそれぞれの回転軸A、B又はB’のそれぞれが一致するように、同芯度を補正するための関連する装置40を用いて、そのクランプ装置16又は18のそれぞれを移動させることによってその関連するスピンドル12又は14のそれぞれの回転軸B又はB’のそれぞれに対する機械加工されるべき部品2の同心度を補正する中間ステップと、
を含む。
【0084】
より詳細には、ステップk)は、スピンドル12、14、したがって関連するクランプ装置16、18の角運動によってXY平面内でスピンドル12、14の角度を補正する第1のサブステップk1)を含み、スピンドル12、14の回転は、補正されるべき同心度に従って誘導システム20によって制御される。
【0085】
ステップk)は、補正されるべき同心度に従って誘導システム20により制御されて回転駆動される補正カム44によって押される、径方向支持状態になったロッド42を使用して、矢印Fで示すように、クランプ装置16、18をY軸に沿ってXY平面内で並進移動させることによってクランプ装置16、18を径方向で補正する第2のサブステップk2)を含み、このサブステップk2中、誘導システム20は、クランプ装置16、18をXY平面内で少なくともY軸に沿って移動させてその関連するスピンドル12、14の軸に対してクランプ装置を中心に戻すことができるように真空をチェックするべく構成される。
【0086】
例えば、機械加工されるべき部品をクランプ装置に配置するときにクランプ装置がそのスピンドルに対して中心からずれている場合には、同心度を補正する必要がある。クランプ装置の位置に応じて、ステップk2)のみが必要な場合がある。スピンドルの軸と機械加工されるべき部品の軸とが最初から同軸である場合、同心度の測定を伴うステップj)のみが実施され、ステップk)は必要ない。
【0087】
前述の異なるステップb)~i)、c’)~i’)、j)及びk)は、機械加工されるべき各部品2に適用される。その後、全ての部品2が測定されて検査される。
【0088】
好適には、無力精密加工手段8のための制御手段20e及びそれらの加工パラメータは、材料とのそれぞれの相互作用のたびに材料を非常に細かく除去するために、及び第2の段階中に加工分解能を向上させるために、第2の加工段階中に部品2に加えられるエネルギーが、第1の加工段階中に部品2に加えられるエネルギーよりも少なくとも40%小さく、第2の加工段階中に部品2に加えられるエネルギーが好ましくは材料との相互作用が進むにつれて減少できるようにプログラムされる誘導システムによって管理される。
【0089】
例えば、電気化学的旋削加工(ECM)の場合、調整可能な加工パラメータは、特に電圧、電流、電解質濃度である。放電旋削加工の場合、調整可能な加工パラメータは特に電圧及び電流である。
【0090】
第1の段階中、この目的のためにプログラムされる誘導システム20によって管理される無力加工手段は、同じ加工パラメータに基づいて加工し、材料の除去は、部品2の最終寸法より0.5%~20%大きくなるように選択されたブランクの目標寸法に対応するオーバーサイズが達成されるような時間まで、部品との各相互作用において一定である。レーザのような無力加工手段は、ステップj)及びk)に係る加工前に最初に任意の同心度が修正されていることを考えれば一定である、部品の外側の固定点と部品の回転軸の既知の位置とを基準として取る。
【0091】
フェムト・レーザの場合、直径が20μm未満のビームを放出することが選択される。無力精密加工手段8のための前記制御手段20eの誘導システムは、直径の50%を超えるビームが第1の加工段階中に使用されるとともに、直径の50%未満のビームのが第2の加工段階中に使用されるように、部品2の材料と相互作用するべくビームの位置決めを制御するようにプログラムされる。
【0092】
より具体的には、第1の加工段階中、ビームは、部品の回転軸に近づきながら、部品の回転軸と平行に移動され、直径の50%を超えるビームは、かなりの量のエネルギーを利用できるようにするために部品2の材料と相互作用するために使用され、それにより、かなりの量の材料を除去することが可能になる。部品に加えられるエネルギーは、部品との各相互作用で同じ量の材料を除去するために、第1の加工段階中に実質的に一定である。レーザは、それがオーバーサイズに達すると停止し、部品2の最終寸法の0.5%~20%であるオーバーサイズの値は、ビームの寸法、第2の段階を行うのに許可される時間、及び求められる粗さRaに従って選択される。
【0093】
第1の段階と第2の段階との間で、出力パラメータなどの加工パラメータは、この目的のためにプログラムされる誘導システムによって修正され、フェムト・レーザは、直径の50%未満のビームが部品2の材料と相互作用するために使用されるようにその焦点を置くべく移動される。レーザが誘導システム20によって誘導されるその制御手段20bによって位置決めされた時点で、レーザは部品の回転軸から一定の距離に留まるが、ビームは往復することで回転軸と平行に移動され続ける。このため、非常に少ないエネルギーでビームが接触する材料はますます少なくなり、それにより、毎回除去される材料は非常に少なくなり、ビームと部品との相互作用ごとに除去される材料はますます少なくなる。したがって、ビームの品質係数が漸進的に変化し、それにより、そのような小さな部品を非常に高い精度と非常に低い粗さRaで機械加工することが可能になる。第2の加工段階中に相互作用ゾーンが徐々に減少することにより、加工エネルギーを細かくチェックして、極度の粗さ値Raを取得することが可能になる。
【0094】
例えば、スポット直径8μmのフェムト・レーザで直径100μmの部品を加工するために、2μmのオーバーサイズが選択される。すなわち、第1の加工の終了時に達成されるブランクの目標寸法は、最終直径よりも2%大きい。第2の加工段階の場合、フェムト・レーザは、レーザ・ビームの1/8が使用されるように誘導システム20によってブランクに対して位置決めされる。9nmの粗さRaを伴う求められる直径を有する完成品が得られる。1μmのオーバーサイズが選択される場合、すなわち、第1の加工段階の終了時に達成されるブランクの目標寸法が最終直径よりも1%大きい場合、フェムト・レーザは、レーザ・ビームの1/16が使用されるように第2の加工段階のために位置決めされる。9nm未満の粗さRaを伴う求められる直径を有する完成品が得られる。
【0095】
第1の加工段階と第2の加工段階との間で光学測定システム22、24によって取得されたブランクの測定値が、比較手段20cによる比較に従って、目標寸法、すなわち、選択されたオーバーサイズに一致しない場合、オーバーサイズの実際の値を考慮して、ブランクに対してフェムト・レーザを位置決めするために、第2の段階における加工パラメータが補正手段20dによって補正される。
【0096】
本発明に係る工作機械1及び前記工作機械1によって実施される加工方法は、2つの段階の間でスピンドルに組み込まれた光学システムによる部品のその場での寸法測定を伴う2つの加工段階に係る加工を実現できるようにし、加工パラメータは、2つの段階間で修正され、場合によっては、部品をそのスピンドルから取り外すことなく、部品の寸法測定の結果に従って補正され、それにより、±1μm以下、好ましくは±0.5μm以下の極めて高い精度で及び極めて低い粗さ値Raの機械加工部品を得ることが可能になる。
【0097】
更に、本発明に係る工作機械1及び前記工作機械1によって実施される加工方法は、加工前に、光学システムによって、そのスピンドル内で機械加工されるべき部品の回転の同心度を測定できるようにするとともに、実現された同心度の測定値に従って部品のスピンドルの回転軸に対するクランプ装置の径方向の位置を補正できるようにする。同心度の補正及び部品の加工は、同じクランプにおける同じ場所で実行され、それにより、同心度及び同軸度の優れた品質を有する機械加工部品を得ることが可能になる。
【0098】
同心度を補正するための装置40及びその動作に必要な要素を、そのスピンドルに対して部品のクランプ装置を再び心出しするために工作機械で使用できることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】