(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】生体試料または化合物または化学元素を分析するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240528BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240528BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240528BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240528BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20240528BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20240528BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/64 B
G01N33/53 Y
G01N33/53 M
C07K16/00
C12N15/115 Z
C12Q1/68
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571592
(86)(22)【出願日】2021-08-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2021073819
(87)【国際公開番号】W WO2022242887
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/066645
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/063310
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン アルスハイマー
【テーマコード(参考)】
2G043
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA02
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2G043JA04
2G043JA05
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4H045AA11
4H045AA30
4H045BA70
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、試料を分析するための方法であって、該試料は、複数の親和性試薬および第1の複数の色素の組み合わせを含み、各親和性試薬は分析物に付着するように構成されており、親和性試薬の少なくとも1つは分析物に付着しており、各色素の組み合わせは、第1の複数の色素の組み合わせ内で固有であり、各色素の組み合わせは、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する少なくとも2個の色素を含み、固有の色素の組み合わせの各1つは、第1の写像に従って関連する親和性試薬に付着されており、該方法は、i)励起光を試料に向けるステップであって、励起光は、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する少なくとも2個の色素を励起するための特性を有するステップと、ii)励起された色素によって発光された発光光から少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップと、iii)少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、少なくとも1つの第1の読み出しに基づいて、試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップと、を含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析するための方法であって、
前記試料は、複数の親和性試薬および第1の複数の色素の組み合わせを含み、
各親和性試薬は、分析物に付着するように構成されており、前記親和性試薬の少なくとも1つは、分析物に付着しており、
各色素の組み合わせは、前記第1の複数の色素の組み合わせ内で固有であり、各色素の組み合わせは、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する少なくとも2個の色素を含み、固有の前記色素の組み合わせの各1つは、第1の写像に従って関連する親和性試薬に付着されており、
前記方法は、
i)励起光を前記試料に向けるステップであって、前記励起光は、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する少なくとも2個の色素を少なくとも励起するための特性を有するステップと、
ii)励起された前記色素によって発光された発光光から少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップと、
iii)少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、少なくとも1つの第1の読み出しに基づいて、前記試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の複数の色素の組み合わせにおける各固有の色素の組み合わせは、1つの親和性試薬にのみ付着され、そのため、いかなる固有の色素の組み合わせも、前記第1の写像における2つ以上の親和性試薬に関連付けられていない、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップは、
前記励起された色素によって発光された前記発光光を検出チャネルに分離するステップであって、前記検出チャネルが前記色素の発光特性に対応するステップを含む、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
各色素の組み合わせは、検出チャネルごとに1個の色素を含むように選択される、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2個の色素は、異なる励起特性を有し、各励起特性を有する励起光は、異なる時間または同時に前記試料に向けられる、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
複数の親和性試薬を提供するステップと、
前記第1の複数の色素の組み合わせを提供するステップと、
をさらに含む、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記試料を提供し、
I)前記複数の親和性試薬を前記第1の複数の色素の組み合わせに付着させて、複数のマーカーを形成し、
前記複数のマーカーを前記試料に導入して、前記試料中の分析物に付着させるステップ、または
II)前記複数の親和性試薬を前記試料に導入して、前記試料中の分析物に付着させ、
前記複数の親和性試薬を前記第1の複数の色素の組み合わせに付着させて、前記分析物に付着した複数のマーカーを形成するステップ
をさらに含む、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記複数の親和性試薬を前記第1の複数の色素の組み合わせに付着させるステップは、
複数のリンカーを提供するステップであって、各リンカーは、各々が色素に結合するように構成された複数の結合部位を含むステップと、
各親和性試薬について、1つのリンカーを前記親和性試薬に付着させ、前記色素の組み合わせの1つを前記リンカーに結合させるステップであって、前記組み合わせからの各色素が結合部位に結合しているステップと、
を含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、
前記第1の複数の色素の組み合わせにおける前記色素の少なくとも1つを不活性化するステップと、
少なくとも1つの親和性試薬と前記色素の組み合わせの少なくとも1つとの間の付着を除去するステップと、
少なくとも1つの親和性試薬と前記分析物の少なくとも1つとの間の付着を除去するステップと、
前記第1の複数の色素の組み合わせにおける前記色素の少なくとも1つの蛍光寿命よりも長く待機するステップと、
のうちの少なくとも1つをさらに含み、
前記方法は、異なる第2の複数の色素の組み合わせについて、または異なる第2の写像に従って前記第1の複数の色素の組み合わせについて、請求項1のステップi)~iii)を反復するステップをさらに含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、コンピュータプロセッサによって、前記少なくとも1つの第1の読み出しに基づいて、前記第2の複数の色素の組み合わせに対する少なくとも1個の色素および/または色素の組み合わせおよび/または前記第2の写像に対する規則を提案するステップをさらに含む、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記試料中の分析物に付着した全ての親和性試薬が決定されるまで、複数の色素の組み合わせの数と写像の数とのうちの少なくとも一方について、請求項9および/または請求項10の前記ステップを繰り返し反復するステップをさらに含む、
請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、前記試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップは、
少なくとも1つの第1の読み出し、少なくとも1つの第2の読み出し、およびステップii)で生成された任意のさらなる読み出しから選択される少なくとも2つの読み出しを比較するステップと、
前記比較に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つの親和性試薬の存在を決定するステップと、
を含む、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの親和性試薬の存在を決定するステップは、統計的信頼度の少なくとも1つの尺度に基づいている、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
励起および発光のうちの少なくとも1つに関する色素の前記特性は、励起波長、発光波長、蛍光強度および蛍光寿命のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、読み出しに基づいて前記試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップは、
前記読み出しを、完全に決定されたまたは過剰に決定された一次方程式のセットに変換するステップと、
前記一次方程式のセットを解くステップと、
を含む、
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
試料を分析するためのデバイスであって、
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている、
デバイス。
【請求項17】
親和性試薬にカップリングするように構成されたリンカーであって、
前記リンカーは、複数の結合部位を含み、前記結合部位の少なくとも2つは、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する色素に結合するように構成されている、
リンカー。
【請求項18】
レポーターであって、前記レポーターは、
請求項17記載のリンカーと、
色素の組み合わせであって、各色素が前記複数の結合部位の1つに結合した、色素の組み合わせと、
を含み、
前記色素の少なくとも2つは、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する、
レポーター。
【請求項19】
マーカーであって、前記マーカーは、
分析物に付着するように構成された親和性試薬と、
前記親和性試薬に付着した、請求項18記載のレポーターと、
を含むマーカー。
【請求項20】
複数の、請求項19記載のマーカーであって、
各レポーターは、固有の色素の組み合わせを含み、各レポーターは、分析物に付着するように構成された親和性試薬に付着しており、そのため、いかなる固有の色素の組み合わせも、2つ以上の親和性試薬に関連付けられていない、
複数のマーカー。
【請求項21】
請求項17記載のリンカー、請求項18記載のレポーター、請求項19記載のマーカーまたは請求項20記載の複数のマーカーを含む、溶液。
【請求項22】
請求項17記載のリンカー、請求項18記載のレポーター、請求項19記載のマーカーまたは請求項20記載の複数のマーカーを含む、凍結乾燥固体。
【請求項23】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、請求項1から15までのいずれかに記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラム。
【請求項24】
請求項23記載のコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項25】
複数の親和性試薬と、
第1の複数の色素の組み合わせと、
第1の写像と、
に対応する情報を含むデータベースであって、
任意選択的に、前記データベースは、第2のかつ/または任意のさらなる複数の色素の組み合わせ、前記色素の励起および発光のうちの少なくとも1つに関する特性を有する各色素の組み合わせ、第2の写像または任意のさらなる写像、少なくとも1つの第1の読み出し、少なくとも1つの第2の読み出しおよび/または任意のさらなる読み出しのうちの少なくとも1つに対応する情報をさらに含み、
前記データベースは、請求項1のステップi)~iii)の少なくとも1つを実施するために使用される、
データベース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料、特に生体試料を分析するための方法に関する。さらに、本発明は、生体試料を分析するためのデバイスに関する。この方法またはデバイスは、化合物または化学元素にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
ライフサイエンス分野の重要な問題に取り組むためには、生体試料(例えば組織試料または細胞培養物)、環境試料(土壌試料)、水試料、診断手順(例えば、固形生検もしくは液体生検もしくはそのいずれかから調製された試料など)もしくはそのような試料からの溶解物もしくは抽出物のうちの1つに含まれる分析物または分子標的の存在を正確に検出することが不可欠である。これは、特定の構造、例えば特定の生体分子に付着するマーカーを試料に導入することによって行うことができる。これらのマーカーは、典型的には、対象構造に付着する親和性試薬と、親和性試薬に直接コンジュゲートするか、二次親和性試薬によって親和性試薬に付着する蛍光色素と、を含む。このようにして調製された生物学的試料を分析するための様々な技術がある。蛍光顕微鏡におけるプレキシングレベル、すなわち同時に読み出すことができる異なる蛍光色素の数は一般的に低く、蛍光顕微鏡の場合、チャネルベースの読み出しでは、典型的には1~5個の色素の範囲であり、プリズムまたは回折格子などの分散型光学素子を複数の検出器またはアレイ検出器と組み合わせて使用するスペクトル検出器による読み出しでは5~12個の色素の範囲である。蛍光ベースのサイトメトリーおよびソーティングでは、やや高いプレキシングレベルが達成されているが、この場合もプレキシングは、1回の実験で読み出しすることができる色素ひいてはマーカーは少数に限られる。
【0003】
「蛍光細胞バーコーディング」は、2006年にKrutzigおよびNolanによって開発されたマルチプレキシング技術であり、Nat Methods. 2006 May;3(5):361-8. doi: 10.1038/nmeth872に記載されているように3種類の蛍光色素の異なる混合物を使用することに基づいている。
【0004】
Tsai et al. 2020からの引用で、蛍光細胞バーコーディング(FCB)は、高スループットフローサイトメトリー(FCM)のマルチプレキシング技術である。染色のばらつきを最小化する上で強力であるが、この技術は、操作者間のばらつきおよびデータ分析の違いから、主観的なFCM技術であることに変わらない(J Immunol Methods 2020 Feb;477:112667.doi: 10.1016/j.jim.2019.112667. Epub 2019 Nov 11.)。この手法の主観性と本方法の操作者間のばらつきとの両方は、本質的に、情報の一部を色素の色相、すなわち、例えば、薄緑、緑、濃緑のような強度の変化にエンコーディングすることに基づいているという事実に関連しており、この手法の使用を著しく制限している。
【0005】
しかしながら、多数の異なるマーカーの蛍光ベースの読み出しを可能にする技術はない。ここで、読み出しとは、画像ベースまたは非画像ベースの読み出しを指す場合がある。
【0006】
蛍光顕微鏡法では、高い空間分解能で試料をイメージングできるが、関与する異なる蛍光色素の数は少なく、典型的には1~5種類である。利用可能なマーカーは、細胞型の同定に使用されるマーカー、対象タンパク質のような機能マーカーおよび一般的な形態学的マーカーを同じ実験に対応させなければならない。これは、ほとんどのイメージング実験では、細胞型の同定が不十分なものに留まることを意味する。これは、かなり広範な多細胞型集団が研究されていることを意味し、生成される結果の予測力および翻訳価値を著しく制限している。より信頼度が高くロバストな細胞型の同定を可能にする、例えば遺伝子制御ネットワーク(GRN)の分析に基づく最新のアプローチは存在するが、それらのアプローチは、試料から読み出されるはるかに多くの異なるマーカーの数を必要とする。
【0007】
隣接するサイトメトリーの分野では、マスサイトメトリーおよびイメージングマスサイトメトリー技術が、約12~30種類の異なるマーカーを区別することができるが、それらが区別する際の空間分解能は低い。
【0008】
空間プロファイリング技術は、オリゴヌクレオチドを試料にハイブリダイズさせ、次いで、結合したオリゴヌクレオチドを領域選択的に放出した後、放出されたオリゴヌクレオチドの次世代シーケンシングを行うことに基づいているため、空間分解能はさらに低いものの、数桁高い多くの異なるマーカーを区別することができる。
【0009】
本発明は、蛍光ベースの光学的読み出しによって、非常に多数のマーカーを読み出すことを可能にし、この読み出しは、連続データ読み出しストリームまたは離散読み出し(デジタルまたはアナログ)に基づくことができ、点検出器、線検出器、または面検出器、例えばカメラもしくはハイパースペクトルカメラに基づくことができる。したがって、本方法は、生命科学、診断学、環境科学、ならびにヘルスケアおよび品質管理に広く適用可能であり、多様な光学的読み出しと組み合わせることができる。これらには、サイトメータ、プレートリーダ、顕微鏡、イメージングシステムが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
本発明は、次世代シーケンシングベースの読み出しで現在達成可能なマーカー識別能力およびカバー率を、蛍光ベースの光学読み出しに基づいて達成し、例えばSTELLARIS 8共焦点顕微鏡プラットフォーム(Leica Microsystems社製)などの市販の蛍光イメージングシステムで実施することができる。
【0011】
本発明は、本質的に強度値の行列である画像において、空間的に位置する強度を登録する問題ではなく、エンコーディング/デコーディング問題として顕微鏡検査を「見る」ことに基づいている。本発明で説明する方法は、画像ベースの読み出しと互換性があるが、本発明で説明する方法およびデバイスによって生成される「画像」は、調査中の試料の現実の確率的な数学的モデルとみなされるべきであり、その中で、標的分子の存在は、統計的信頼度の尺度および読み出し体積中のそれぞれの標的分子または分析物の存在における統計的信頼度のあるレベルに基づいて、その存在を受け容れるというユーザの決定に基づいて、検出されるか、または呼び出される(存在呼び出し)。
【0012】
統計的信頼度の尺度および/または統計的信頼度のあるレベルに基づいて、あるマーカー、ある親和性試薬、およびある標的分子の存在を受け容れるステップを行うこと(すなわち存在呼び出し)は、数学的真理を生成する。これは本発明の重要な側面であり、存在呼び出しに続いて、非数学的領域、すなわち物理的、化学的、生物学的領域における測定を複雑にする影響を本質的に受けない数学の公理的領域で動作していることを意味する。したがって、この事実は重要な意味を持ち、またこの方法がまったく新しい顕微鏡モダリティを可能にすることを示している。
【0013】
マーカーベースごと、あるいは標的分子ベースごとの統計的信頼度の尺度を提供する統計的方法は、複合的な尺度である可能性が高く、エンリッチメントスコアおよびp値が一般的に使用されるトランスクリプトミクスおよびゲノミクスで使用される方法と、多くの点で類似または同一である可能性がある。
【0014】
用語
本明細書の意味において、以下の用語を以下のように使用する:
「試料」:本明細書の意味において、「試料」とは、例えば、血液、血清、血漿、組織、体液(例えば、リンパ液、唾液、精液、間質液、脳脊髄液)、糞便、固形生検、液体生検、摘出物、全胚(例えば、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエ)、モデル生物全体(例えば、ゼブラフィッシュ幼虫、ショウジョウバエ胚、線虫(C.elegans))、細胞(例えば、原核生物、真核生物、アーキア)、多細胞生物(例えば、ボルボックス)、懸濁細胞培養物、単層細胞培養物、3次元細胞培養物(例えば、腸、脳、心臓、肝臓などの様々な臓器由来のスフェロイド、腫瘍細胞、オルガノイド)、前述のいずれかの溶解物、ウイルスを含む、生体標本と命名されることもある生体試料を指す。本明細書の意味において、「試料」とはさらに、生体試料を取り囲む体積を指す。例えば、成長因子のような分泌タンパク質、細胞外マトリックス構成成分が研究されるアッセイのように、アッセイに依存するある距離までの細胞を取り囲む細胞外環境も「試料」と呼ばれる。具体的には、この周囲の体積に取り込まれる親和性試薬は、本明細書の意味において「試料に導入される」と呼ばれる。
【0015】
「親和性試薬」:本明細書の意味において、「親和性試薬」という用語は、特に、抗体、シングルドメイン抗体(ナノボディとしても知られる)、少なくとも2つのシングルドメイン抗体の組み合わせ、アプタマー、オリゴヌクレオチド、モルフォリノ、所定のRNAに相補的なPNA、DNA標的配列、リガンド(例えば、薬物もしくは薬物様分子)、または毒素、例えば、アクチンフィラメントに結合する毒素であるファロイジンであってもよい。本明細書の意味において、親和性試薬は、ある親和性および特異性をもって標的分子または分析物に結合するように構成されており、そのため、親和性試薬は、標的分子または所定の標的構造に対して実質的に特異的であると言うことができる。本明細書の意味において、「複数の親和性試薬」(S2)には、生体試料内の所定の標的構造または所定の化合物または所定の化学元素または分析物に特異的に結合するように構成された親和性試薬(a1,a2,a3,...an)が含まれる。複数の親和性試薬(A)から少なくともいくつかの親和性試薬が、この親和性試薬が試料内のそれぞれの所定の標的構造に付着できるように「試料に導入」される。本明細書および上記の文脈および意味では、「試料に導入される」とは、試料の体積に物理的に導入されること、または試料を取り囲み、試料に割り当てられた体積に導入されることを指す場合がある。後者のケースの例は、例えば分泌分子のアッセイであり得、分泌分子は細胞外空間で評価されるのが最適であり、この場合、細胞外空間は試料の外側にあるが、試料のある空間的な状況または近傍内にある可能性がある。
【0016】
「所定の標的構造」:本明細書の意味において、「所定の標的構造」とは、例えば、タンパク質(例えば、あるタンパク質)、RNA配列(例えば、ある遺伝子のmRNA)、ペプチド(例えば、ソマトスタチン)、DNA配列(例えば、ある遺伝子座または遺伝要素)、代謝産物(例えば、乳酸)、ホルモン(例えば、エストラジオール)、神経伝達物質(例えば、ドーパミン)、ビタミン(例えば、コバラミン)、微量栄養素(例えば、ビオチン)、金属イオン(例えば、Cd(II)、Co(II)、Pb(II)、Hg(II)、U(VI)のような金属イオンおよび重金属イオン)であり得る、標的分子または標的構造または分析物を指す。
【0017】
「色素」:本明細書の意味において、「蛍光色素」、「フルオロフォア」、「フルオロクロム」、「色素」という用語は、蛍光性化合物または構造を示すために互換的に使用され、特に、蛍光有機色素、蛍光量子ドット、蛍光二分ダイアド、蛍光炭素ドット、グラフェン量子ドットまたは他の炭素ベースの蛍光ナノ構造体、蛍光タンパク質、蛍光DNA折り紙ベースのナノ構造体のうちのいずれか1つである。有機蛍光色素から、以下のものの誘導体が、「蛍光色素」という用語で特に意味される:キサンテン(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、テキサス)、シアニン(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン)、誘導体、スクアリンロタキサン誘導体、ナフタレン、クマリン、オキサジアゾール、アントラセン(アントラキノン、DRAQ5、DRAQ7、CyTRAK Orange)、ピレン(カスケードブルー)、オキサジン(ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170)、アクリジン(プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー)、アリルメチン(オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン)、テトラピロール(ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン)、ジピロメテン(BODIPY、aza-BODIPY)、蛍光色素、または発光色素。以下の商標群は、商業的に入手可能な蛍光色素を指定し、これらは異なる化学ファミリーに属する色素:CF色素(Biotium社)、DRAQおよびCyTRAKプローブ(BioStatus)、BODIPY(Invitrogen社)、EverFluor(Setareh Biotech社)、Alexa Fluor(Invitrogen社)、Bella Fluore(Setareh Biotech社)、DyLight Fluor(Thermo Scientific社)、Atto and Tracy(Sigma-Aldrich社)、FluoProbes(Interchim社)、Abberior Dyes(Abberior Dyes)、Dy and MegaStokes Dyes(Dyomics社)、Sulfo Cy dyes(Cyandye社)、HiLyte Fluor(AnaSpec社)、Seta、SeTauおよびSquare Dyes(SETA BioMedicals社)、QuasarおよびCal Fluor dyes(Biosearch Technologies社)、SureLight Dyes(Columbia Biosciences社)、Vio Dyes(Milteny Biotec社)を含み得る[変更リスト元:https://en.wikipedia.org/wiki/Fluorophore]。蛍光タンパク質のグループからは、GFPおよびGFP様タンパク質(例えば、DsRed、TagRFP)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)ファミリーのメンバー、およびそれらの(単量体化)誘導体(例えば、EBFP、ECFP、EYFP、Cerulaen、mTurquoise2、YFP、EYFP、mCitrine、Venus、YPet、Superfolder GFP、mCherry、mPlum)が、特に本明細書の意味における「蛍光色素」という用語を意味する。さらに、蛍光タンパク質のグループから、本明細書の意味における「蛍光色素」という用語には、例えばBFPms1のようにリガンドの結合によって、または例えば酸化還元感受性のroGFPもしくはpH感受性のバリアントのように環境の変化に応答して、吸光度もしくは発光特性が変化する蛍光タンパク質が含まれ得る。蛍光タンパク質のグループからはさらに、本明細書の意味における「蛍光色素」という用語には、シアノバクテリアのフィコビリタンパク質の誘導体である小さな超赤色蛍光タンパク質smURFPだけでなく、smURFPから誘導され得る蛍光タンパク質ナノ粒子も含まれ得る。蛍光タンパク質の概要は、Rodriguez et al. 2017 in Trends Biochem Sci. 2017 Feb; 42(2): 111-129に見出され得る。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに蛍光量子ドットを指す場合がある。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、Yan et al. 2019 in Microchimica Acta (2019) 186: 583およびIravani and Varma 2020 in Environ Chem Lett. 2020 Mar 10 : 1-25に記載されるような蛍光炭素ドット、蛍光グラフェン量子ドット、蛍光炭素ベースのナノ構造体をさらに指す場合がある。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語はさらに、蛍光ポリマードット(Pdot)またはナノダイヤモンドを指す場合がある。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語はさらに、Kacenauskaite et al. 2021 J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 1377-1385に記載されているような例えばペリレンアンテナとトリアンゲリウムエミッタ(triangelium emitter)とのダイアドのような蛍光ダイアドを指す場合がある。
【0018】
本明細書の意味における「蛍光色素」という用語はさらに、有機色素、ダイアド、量子ドット、ポリマードット、グラフェンドット、炭素ベースのナノ構造体、DNA折り紙ベースのナノ構造体、ナノルーラ、色素を組み込んだポリマービーズ、蛍光タンパク質、無機蛍光色素、SMILES、または前述のいずれかを充填したマイクロカプセルを指す場合がある。
【0019】
本明細書の意味における「蛍光色素」という用語はさらに、FRETドナーとして少なくとも1つの蛍光色素と、FRETアクセプターとして少なくとも1つの蛍光色素とを有するFRETペア、または3成分フェルスター共鳴エネルギー移動を発生させるために使用されるFRETトリプルを指す場合がある。特に、FRETペアまたはFRETトリプレットは、相補的リンカーまたは連結要素によって接続される。
【0020】
本明細書の意味における「蛍光色素」という用語はさらに、物理的に接続された色素のFRETnタプルを指す場合もある。
【0021】
「複数の色素の組み合わせ」(S1):本明細書の意味において、「複数の色素の組み合わせ」(S1)という用語は、各色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)が、複数の色素の組み合わせ(S1)の中で固有であり、各色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)が少なくとも2つの異なる色素(|s|>=2)を含み、複数の色素の組み合わせ(S1)は、複数の色素の組み合わせ(S1)における各色素(y1,y2,y3,...yσ)が読み出しデバイスによって読み出され得るように構成されており、色素は、読み出しデバイスによってチャネルに分離され得、各チャネルは、色素(y1,y2,y3,...yσ)のうちの1つに対応する、複数の色素の組み合わせを指す。
【0022】
「マーカー」:本明細書の意味において、「マーカー」は、マーカーとして使用される単一分子と、マーカーとして使用される同一分子の集合体との両方を示すために使用される。本明細書の意味における「マーカー」とは、標的分子または分析物とも呼ばれる所定の構造に付着するように構成された親和性試薬、および/または「レポーター」の組み合わせである。したがって、「マーカー」とは、親和性試薬の特定の色素の組み合わせへの仮想的な割り当てまたは写像(仮想マーカー)、および親和性試薬と色素の組み合わせとの物理的アセンブリ(物理的マーカー)である。本明細書の意味において、親和性試薬と色素の組み合わせとの物理的アセンブリは、それぞれの親和性試薬の試料への導入前、導入中、または導入後に起こる可能性がある。例えば、オリゴヌクレオチド配列バーコード化抗体が親和性試薬として使用される場合のように、複数の親和性試薬(A)から少なくともいくつかの親和性試薬を試料もしくは化合物もしくは化学元素に導入する前もしくは導入した後に、または励起された色素によって発光された発光から読み出しを生成する前に、例えば固有の色素の組み合わせ(si)を、割り当てられた親和性試薬(ai)に物理的に付着させることによって、試料に取り込み、所定の標的構造に付着させることができる。繰り返しの染色-イメージング-色素不活性化プロセスにおいて、所定の標的構造に結合した親和性試薬は、第1の繰り返しにおける色素の第1の組み合わせと第2の繰り返しにおける色素の第2の組み合わせのように、異なる色素の組み合わせのシーケンスに周期的に接続することができ、この戦略を「繰り返しの間にコードを再割り当てする(「コードスワッピング」)ことによる一次定性的な繰り返しの複数種読み出し体積デコーディング」と呼ぶ。言い換えれば、試料中の1つ以上のマーカーが繰り返しの間に変化する。
【0023】
「レポーター」:本明細書の意味において、「レポーター」は、レポーターとして使用される単一の分子/構造体と、レポーターとして使用される同一の分子/構造体の集合体との両方を示すために使用される。本明細書の意味における「レポーター」とは、固有の「色素の組み合わせ」と「リンカー」との組み合わせであり、「色素」の組み合わせと「親和性試薬」とを接続するように構成されている。
【0024】
「リンカー」:本明細書の意味において、リンカーは、蛍光色素の組み合わせを親和性試薬に連結する一部化学構造(例えば、モノマー分子もしくはポリマー)または化学構造の多部アセンブリを示す。リンカーは、色素および親和性試薬に直接もしくは共有結合でカップリングされるか、または例えばストレプトアビジン-ビオチン相互作用もしくはハプテンもしくはオリゴヌクレオチドなどの例えば親和性タグ-親和性リガンドの組み合わせを介して間接的に結合される場合がある。共有カップリングの場合、これは部位選択的カップリングであり得る。NHS-、マレイミド、アジド-アルキンなどの一般的に使用されるカップリング化学物質、およびさらにいわゆる様々なクリック化学物質が、リンカーと親和性試薬、および/またはリンカーと色素をカップリングするために使用され得る。リンカーは特に、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、LNA、PNA、モルフォリノ、他の人工オリゴヌクレオチド)、ペプチド、DNA折り紙ベースの構造体、例えば、ナノルーラ、マイクロ/ナノビーズ、ポリマー、マイクロ/ナノカプセル、マイクロ/ナノ結晶、カーボンチューブ、炭素ベースのナノ構造体(例えばグラフェン)などを含み得る。
【0025】
リンカーは特に、オリゴヌクレオチドと、例えばオリゴヌクレオチドおよびペプチドを含むような、前述したグループの別の要素と、を含み得る。
【0026】
「読み出しデバイス」:本明細書の意味において、「読み出しデバイス」とは、蛍光マルチカラー読み出しまたはイメージングを行うために使用されるデバイスを指す。読み出しデバイスは、典型的には、少なくとも1つの励起光源、少なくとも1つの検出チャネルを含む検出システムを含み、さらに、励起光を試料に導くための、かつ/または試料からの発光光を検出器に導くための、または検出器の適切な領域に導くための、フィルタおよび/または分散光学素子、例えばプリズムおよび/または回折格子を含み得る。本明細書の意味における検出システムは、複数の検出チャネルを含む場合もあれば、スペクトルの複数の帯域を並行して検出するスペクトル検出器である場合もあれば、スペクトルの連続部分を検出するハイパースペクトル検出器である場合もある。検出システムは、点検出器(例えば、光電子増倍管、アバランシェダイオード、ハイブリッド検出器)、アレイ検出器、カメラ、ハイパースペクトルカメラであり得る少なくとも1つの検出器を含む。検出システムは、典型的にはサイトメータの場合のようにチャネルごとに強度を記録してもよいか、またはプレートリーダもしくは顕微鏡の場合のように画像を記録するイメージング検出システムであってもよい。例えばカメラまたは光電子増倍管のように、1つの検出チャネルを有する読み出しデバイスは、例えば異なる励起帯域および発光帯域を使用して、複数の検出チャネルで読み出しを生成することができる。読み出しデバイスにより、ある数の色素を所与の生体試料から所与のランで分析することが可能である。「ラン」とは、「繰り返し」または「ラウンド」、すなわち、所与の色素の組み合わせのセットと、親和性試薬が分析物に付着している色素の組み合わせに対する親和性試薬の所与の写像についての少なくとも1つの読み出しの生成を指す場合がある。この数は、典型的には、読み出しデバイスが提供するように構成されている、すなわちスペクトル分解できる検出チャネルの数nに依存する。顕微鏡の場合、検出チャネルの数は、カメラベースの広視野検出(例えば、広視野落射蛍光顕微鏡、スピニングディスク顕微鏡、ライトシート蛍光顕微鏡)の場合、典型的には4~5個であり、典型的には励起または発光フィンガープリンティングおよび(スペクトル/線形)アンミキシングに依拠するスペクトル検出コンセプトを有する顕微鏡の場合、5~12個の検出チャネルである。ハイパースペクトルイメージングは、代わりに、広範かつ連続的なスペクトル範囲にわたって非常に微細なスペクトル分解能を提供することによって多数の色素を区別することができるが、顕微鏡ではまだ広く展開されていない。スペクトル特性に加えて、蛍光色素の寿命を使用して複数の色素種を識別し、それらを自家蛍光から効果的に区別することができ、検出チャネルの数yが効果的に増加し、これは、確実に分離できるセット内の色素(すなわち、同じ励起光によって励起可能な色素)の最大数にも対応する可能性がある。
【0027】
「オリゴヌクレオチド」:本明細書の意味において、DNA、RNA、ペプチド核酸、モルフォリノ核酸またはロック核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ヘキシトール核酸または別の形態の人工核酸を指す。
【0028】
「スポット」:本明細書の意味において、読み出される試料または試料を取り囲む領域の体積を指す。スポットのサイズおよび形状は、データを取得するために使用されるイメージングシステムの有効点広がり関数によって決定される。
【0029】
「点広がり関数」:本明細書の意味において、「点広がり関数」という用語は、点広がり関数の主な最大値を示すために使用され、特に断りがない限り、この用語はイメージングシステムの有効点広がり関数(PSF)を指し、これは概ね楕円形であり、すなわち、横方向の解像度は軸方向の解像度よりも優れているが、より多くのビューを好ましくは等距離の角度から取得するにつれて、ほぼ球形に近づき得る。
【0030】
「読み出し」:本明細書の意味において、「読み出し」という用語は、点走査共焦点顕微鏡のような顕微鏡またはスピニングディスク顕微鏡、ライトシート蛍光顕微鏡、ライトフィールド顕微鏡、実体顕微鏡のようなカメラベース/広視野イメージングシステムで取得され得る画像ベースの読み出しを指す。さらに、「読み出し」という用語は、例えばサイトメータまたは少なくとも1つの点検出器または線検出器を備えたフロースルーベースの読み出しデバイスにおけるような非画像ベースの読み出しを指す。読み出しは、例えば発光スペクトルまたは画像スタックの単回取得のような離散的な読み出しからなるものの場合もれば、読み出しは、例えば点走査型共焦点またはサイトメータのような実質的に連続的な読み出しデータストリームである場合もある。さらに、読み出しは、例えばスペクトルまたはハイパースペクトル画像スタックのような一連の画像であってもよく、各画像において異なる波長帯域の蛍光発光が記録される。
【0031】
「読み出し体積」:本明細書の意味において、「読み出し体積」という用語は、顕微鏡またはサイトメータなどの光学システムによって、所与の時点で効果的に検出される体積を指す。連続的なデータストリームを有するシステムの場合、「読み出し体積」は「ピクセルクロック」のようなクロックによって決定され、これは、連続的なデータストリームをチャンクに分割し、そのチャンクを特定の時点または空間的位置に割り当てるものである。読み出し体積は、イメージングシステムの有効点広がり関数に依存し得、例えば、有効点広がり関数は、読み出し体積の最大範囲を定義または制限し得る。
【0032】
「読み出しシーケンス」:本明細書の意味において、「読み出しシーケンス」という用語は、複数の色素の組み合わせ(S1)における色素の組み合わせが構成される複数の色素YDにおける全ての色素(y1,y2,y3,...yσ)を少なくとも1回読み出す、すなわち、複数の色素YDにおける全ての色素(y1,y2,y3,...yσ)が少なくとも1回励起され、発光された蛍光光が検出され、読み出しデバイスによってチャネルに分離され、各チャネルは、色素(y1,y2,y3,...yσ)の1つに対応する、「読み出し体積」の読み出しを指す。読み出しシーケンスを取得した後、読み出し体積からの色素の有無を定性的および/または定量的に評価できるようにし、定性的とは、対応するチャネルの強度があるユーザ定義の閾値を上回った場合に、読み出し体積に存在する色素を呼び出すことを指し、定量的とは、読み出し体積に存在する色素を呼びだし、それに相対強度値または絶対分子数を割り当てることを指す。閾値は、固定閾値、固定チャネル固有閾値、または動的に調整された閾値であってもよい。閾値は、例えば強度閾値および色素分離結果の統計的信頼度のような閾値の組み合わせであってもよい。色素の存在を呼び出す(存在呼び出し)決定は、複数の閾値の組み合わせの通過に依存して行われ得る。
【0033】
好ましくは、読み出しシーケンスは、第1の励起光Aで試料を励起し、放出された蛍光を検出し、DyeA1,DyeA2,DyeA3,...DyeAynに対応するyAチャネルにそれを割り当てることから生じ、第2の励起光Bで、放出された蛍光を検出し、DyeB1,DyeB2,DyeB3...DyeBynに対応するyBチャネルにそれを割り当て、Dyen1,Dyen2,Dyen3,...Dyenyn(すなわち、yσメンバーを有する複数の色素(YD)全体)が少なくとも1回読み出されるまで、このプロセスを反復する。
【0034】
本明細書の意味における「コード」は、以下のとおり定義される:SおよびTは2つの有限集合であり、Sは「ソースアルファベット」と命名され、Tは「ターゲットアルファベット」と命名される。コード
C:S→T*
は、Sからの要素をT上の記号のシーケンスとして固有に表現する全関数またはアルゴリズムである。Cの拡張C’は、S*からT*への準同型性であり、ソース記号の各シーケンスをターゲット記号のシーケンスに自然に写像する。コンピュータサイエンスで使用される言語では、コードは一般にアルゴリズムと呼ばれ、記号のシーケンスはエンコーディングされた文字列と呼ばれる(変更元:Code. (n.d.)Wikipediaでhttps://en.wikipedia.org/wiki/Codeより2021年6月17日に取得)。本明細書の意味において、有限集合S1は、「複数の色素の組み合わせ」とも命名され、T1*はT1上の文字列の有限集合であり、「複数の親和性試薬」に対応し、AまたはS2と命名されることもある。
【0035】
色素の組み合わせのエンコーディング/デコーディングの代わりに、またはそれに加えて、ユーザは、暗号X
X:S→T*
を使用して色素の組み合わせを暗号化/復号化してもよい。
【0036】
2つの異なるケースaおよびbが識別され、エンコーディング/暗号化の方向性の違いとみなすことができる。
【0037】
【0038】
本明細書に開示される方法は、αおよびβの両方のケースと互換性がある。また、複数のコードC1,C2,C3,...Cnおよび/または暗号X1,X2,X3,...Xnが使用される場合にも、それらが全関数であり、結果の写像が単射または全単射である限り、同様に適合し得る。これらの両方のケースにおいて、コードC1,C2,C3,...Cnおよび/または暗号X1,X2,X3,...Xnは、反転、すなわちデコードできる関数である。本発明の特に好ましい実施形態では、全単射写像(エンコーディングまたは暗号化)が使用され、これは、(A)または(T1*)とも命名された複数の親和性試薬(S2)の要素(ai)と、複数の色素の組み合わせ(S1)の要素(si)との間に1対1の対応があることを意味する。これにより、読み出し体積に含まれる色素の組み合わせ(sl~sk)を特に容易にデコードすることができ、それによって、読み出しシーケンスに基づいて、関連する親和性試薬(al~ak)を同定することができ、読み出し体積における全ての色素(y1,y2,y3,...yσ)の存在を定性的に(存在呼び出し、例えば「yes」=「1」、「no」=「0」)、かつ/または定量的に(相対定量もしくは絶対定量による存在呼び出し)評価する。本明細書に記載されているような読み出し体積の顕微鏡検査は、エンコーディング/デコーディング問題とみなすことができ、これは、このようにして標識された読み出し体積中の標的分子をコードする色素の組み合わせに(動的に)連結され、関連付けられた親和性試薬で標的分子を標識することによって解決される。したがって、複数の親和性試薬から、親和性試薬と1対1の写像(全単射結合)を有する標的分子の同一性を検索することは、デコーディングの問題である。複数の色素の中からある色素の存在が、ある程度の統計的信頼度に基づいて読み出しシーケンスに受け容れられた場合、その存在は数学的真理になるということを述べておくことが重要である。色素の組み合わせ(sl~sk)のデコーディングが可能なのは、複数の色素の組み合わせ(S1)における全ての可能な色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)がその下に包含されないような読み出しシーケンスが観察された場合である。言い換えれば、複数の色素の組み合わせ(S1)における全ての可能な色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)を包含し得る読み出しシーケンスが観察された場合、読み出し体積の内容に関する知識を得ない。これは、複数の色素(PD)から全ての色素(y1,y2,y3,...yσ)が読み取り体積に「存在する」と呼び出されることを読み取りシーケンスが示す場合である。しかしながら、こうしたケースは、多数の親和性試薬が使用されている場合であっても、起こりそうもない。なぜなら、複数の色素の組み合わせ(S1)のカーディナリティは指数関数的に増大し、一方、利用可能な親和性試薬の数は、関心のある標的分子の数に制限されるからである。例えば、ヒトゲノム全体には約20,000のコーディング遺伝子が含まれているので、複数の親和性試薬の中から20,000の親和性試薬を使用して、複数の色素の組み合わせ(S1)から固有の色素の組み合わせでこれらの標的分子を標識したとしても、S1の要素の数が>>20,000、すなわち、例えば106~1010のように数桁高くなるように十分な大きさの複数の色素(PD)を定義することは容易であろう。その結果、複数の色素の組み合わせ(S1)から利用可能な全ての色素の組み合わせに対する、実際に割り当てられた色素の組み合わせの割合αが非常に小さくなる条件を定義することが容易に可能となる。この場合、偽陽性、すなわち、マーカーに割り当てられていない色素の組み合わせ(タイプIの偽陽性)、および/または物理的に読み出し体積に存在しない親和性試薬に割り当てられている色素の組み合わせ(タイプIIの偽陽性)が、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能であることを観察する可能性が低くなる。色素の組み合わせ、親和性試薬、および読み出し体積に含まれる標的分子のいずれかについて、1回の反復で存在呼び出しの統計的信頼度が満足できるレベルにならないような条件であれば、本明細書で説明する様々な方法で分析を大幅に改善することが可能である。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態では、第1のステップで第1の読み出しシーケンスが取得され、この第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な「色素の組み合わせの第1のセット」がメモリデバイスに記憶される。次のステップでは、複数の親和性試薬(A)から少なくともいくつかの親和性試薬について、エンコーディング/暗号化が変更される可能性がある。これは、親和性試薬を溶出したり、色素を漂白したり、色素の組み合わせと親和性試薬との間の連結を切断したりするなどの手段によって、第1のステップで導入された色素を不活性化することによって行うことができる。次いで、方法の選択に応じて、標的分子は、第2のステップで複数の親和性試薬(A)から少なくともいくつかの親和性試薬で再標識され、少なくともいくつかの親和性試薬は、異なる第2の色素の組み合わせに割り当てられる。次のステップでは、「色素の組み合わせの第2のセット」が第2の読み出しシーケンスから導出され、すなわち、第1の読み出しシーケンスが生成されたのと同じ方法で第2の読み出しシーケンスが生成され、第2の読み出しシーケンスにおいて色素の組み合わせの第2のセットから色素が同定される。この第2の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の全ての第2の組み合わせの検索は、メモリデバイスに記憶される。さらなるステップにおいて、「色素の組み合わせの第1のセット」と「色素の組み合わせの第2のセット」とを比較して重複を定義することができ、重複において検出された各色素の組み合わせおよび/または親和性試薬および/または標的分子および/または分析物について、少なくとも1つの統計的信頼尺度が計算される。次いで、色素のある組み合わせ、および/またはある親和性試薬、および/またはある標的分子および/または分析物は、この特定の色素のある組み合わせ、および/またはある親和性試薬、および/またはある標的分子および/または分析物について計算された少なくとも1つの統計的信頼度尺度が、固定され先験的に定義されるか、または実験中に動的に導出され調整され得る基準に基づいて許容可能であるとき、読み出し体積中に存在すると言われるか、または呼び出される。
【0040】
原理的には、このプロセスは、関心のある色素のある組み合わせおよび/または親和性試薬および/または標的分子および/または分析物の存在の受容または拒絶における統計的信頼度の許容可能なレベルに達するまで反復され得る。重要なことは、厳密な数学的用語では、この繰り返しのプロセスにおける各繰り返しは、正確に同じ読み出し体積を分析するが、本発明の特に好ましい実施形態では、第1の読み出しシーケンスと第2の読み出しシーケンスとの間の読み出し体積の空間的および/または時間的位置(例えば、試料が有効PSFの横方向の範囲を横断するのに要する時間の割合1/10000、1/1000、1/100、1/10、1/4、1/2)における小さな偏差(例えば、有効PSFの横方向の範囲の割合1/10000、1/1000、1/100、1/10、1/4、1/2)を許容することが可能である。この場合、第1の読み出しシーケンスは、ベイズの定理に従ったベイズの確率の意味において、第2の読み出しシーケンスに関する先験的知識を生成し、これは、診断検査における検査前確率と似ており、有症状患者の偽陽性率は、典型的には、無症状患者より大幅に低い。同様に、親和性試薬atが第1の読み出し体積で検出された場合、その試薬が重複する第2の読み出し体積で検出される確率に影響を与えると主張することができ、この重複は、空間的または時間的なものとして理解され得る。
【0041】
好ましくは、本明細書の意味において、「コード」とは、例えば、線形コード(例えば、バイナリコード)、固定長コード、可変長コード、または誤り訂正コードであってもよい。特に好ましい実施形態では、コードは「独立かつ同一分布」である。本発明の特に好ましい実施形態では、バイナリコードが使用される。
【0042】
「読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット」:本明細書の意味において、「読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット」とは、複数の色素の組み合わせの中から、ある読み出しシーケンスの下に包含され得る全ての色素の組み合わせを含むセットを指す。読み出しシーケンスの下に包含可能な「読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット」にはκ要素が含まれる。
【0043】
「割り当て率」とは、固有のコードのセットからの固有のコード(複数の色素の組み合わせとも呼ばれる)の割合であり、これは、実際にマーカーに割り当てられ、αで示される、複数の色素の組み合わせ(S1)とも呼ばれる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
したがって、本発明は、非常に多数のマーカーを非常に短時間で分析することを可能にする、試料、好ましくは生体試料を分析するための方法およびデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0045】
前述の目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明において定義される。
【0046】
本発明に従って、試料を分析するための方法であって、試料は、複数の親和性試薬および第1の複数の色素の組み合わせを含み、各親和性試薬は分析物に付着するように構成されており、親和性試薬の少なくとも1つは分析物に付着しており、各色素の組み合わせは、第1の複数の色素の組み合わせ内で固有であり、各色素の組み合わせは、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する少なくとも2個の色素を含み、固有の色素の組み合わせの各1つは、第1の写像に従って関連する親和性試薬に付着されており、本方法は、
i)励起光を試料に向けるステップであって、励起光は、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する少なくとも2個の色素を励起するための特性を有するステップと、
ii)励起された色素によって発光された発光光から少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップと、
iii)少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、少なくとも1つの第1の読み出しに基づいて、試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップと
を含む、方法が提供される。
【0047】
本方法は、コンピュータ実装方法であってもよい。
【0048】
このようにして、本方法は、試料中の分析物の存在を検出するための改良された方法を提供する。特に、異なる励起および/または発光特性を有する色素を励起するための特性を有する励起光を向けることによって、生成された読み出しは、本明細書においてより詳細に説明されるように、既知の方法を使用して可能であるよりも、読み出しごとにより多くの数の分析物の決定を可能にする情報を含むことができる。
【0049】
本方法はさらに、第1の複数の色素の組み合わせにおける各固有の色素の組み合わせが、1つの親和性試薬にのみ付着され、そのため、いかなる固有の色素の組み合わせも、第1の写像における2つ以上の親和性試薬に関連付けられないという点で定義され得る。このようにして、読み出し内の固有の色素の組み合わせの検出は、信頼度をもって、分析物が試料中に存在することを決定するために使用することができる。また、複数の色素の組み合わせの親和性試薬への写像は、少なくとも単射的であり、好ましくは全単射的であってもよい。
【0050】
少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップはさらに、励起された色素によって発光された発光光を検出チャネルに分離するステップであって、各検出チャネルが複数の色素からの色素に実質的に対応するか、または検出チャネルが複数の色素からの色素に対応するステップを含み得る。各色素の組み合わせは、検出チャネルごとに1個の色素を含むように選択され得る。
【0051】
このようにして、本明細書においてより詳細に説明されるように、より多くの数の色素が読み出しデバイスで読み出され得る。
【0052】
少なくとも2個の色素は、異なる励起特性を有していてもよく、各励起特性を有する励起光は、異なる時間に試料に向けられる。このようにして、読み出しデバイスが利用可能な情報を増加させることができ、より多くの色素の組み合わせを固有のものにすることができる。例えば、異なる励起特性と同じ発光特性とを有する色素は、その両方の励起特性を有する光を同時に試料の方に向けた場合、互いに区別しにくくなる可能性がある。励起光を分離し、共通の発光特性を有する光がいつ発光されたかを記録することによって、色素をより容易に区別することができる。これは、実現可能な色素の組み合わせの数がより多くなることにつながる。
【0053】
少なくとも2個の色素は異なる励起特性を有していてもよく、各励起特性を有する励起光が同時に試料に向けられる。このようにして、本方法は、計算上および実行時間上の両方において、より効率的であり得る。全ての色素を同時に励起することは、試料中の分析物の数がより少ない場合、すなわち、固有の色素の組み合わせがあまり必要とされない場合に許容され得る。
【0054】
本方法はさらに、複数の親和性試薬を提供するステップと、第1の複数の色素の組み合わせを提供するステップと、を含み得る。
【0055】
本方法はさらに、
試料を提供し、
I)複数の親和性試薬を第1の複数の色素の組み合わせに付着させて、複数のマーカーを形成し、
複数のマーカーを試料に導入して、試料中の分析物に付着させるステップ、または
II)複数の親和性試薬を試料に導入して、試料中の分析物に付着させ、
複数の親和性試薬を第1の複数の色素の組み合わせに付着させて、分析物に付着した複数のマーカーを形成するステップ
を含み得る。
【0056】
このようにして、親和性試薬と分析物との間、色素またはレポーターの組み合わせと親和性試薬との間の付着をどのように達成するかを制御することができる。親和性試薬、分析物、および色素などの変数に応じて、分析物に付着させる前にマーカーを形成するのが有利な場合もある。他の場合には、親和性試薬を分析物に付着させ、後で色素を添加し、試料中に「その場」でマーカーを形成することが有利な場合もある。
【0057】
複数の親和性試薬を第1の複数の色素の組み合わせに付着させるステップは、
複数のリンカーを提供するステップであって、各リンカーは、各々が色素に結合するように構成された複数の結合部位を含むステップと、
各親和性試薬について、1つのリンカーを親和性試薬に付着させ、色素の組み合わせの1つをリンカーに結合させるステップであって、組み合わせからの各色素が結合部位に結合しているステップと
を含み得る。
【0058】
本方法はさらに、
第1の複数の色素の組み合わせにおける色素の少なくとも1つを不活性化するステップ、
少なくとも1つの親和性試薬と色素の組み合わせの少なくとも1つとの間の付着を除去するステップ、
少なくとも1つの親和性試薬と分析物の少なくとも1つとの間の付着を除去するステップ、
第1の複数の色素の組み合わせにおける色素の少なくとも1つの蛍光寿命よりも長く待機するステップ、および
異なる第2の複数の色素の組み合わせについて、または異なる第2の写像に従って第1の複数の色素の組み合わせについて、上記のステップi)~iii)を繰り返すステップ
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0059】
このようにして、同じ試料に関連する、より多くの情報を生成することができる。色素の単一の組み合わせ、および/または単一の写像では、一部または全ての分析物を決定することができる読み出しを生成できない場合がある。したがって、元の試料に関連するより多くの情報を得ることが望ましい。したがって、本方法は、ステップi)~iii)を再度実行したときに生成される(第2の)読み出しが、元の(第1の)読み出しとは異なるように、色素または付着の少なくとも1つを不活性化するか、または不活性化を可能にし得る。次いで、第1の読み出しに対する新たな情報を有する第2の読み出しを使用して、さらなる分析物を決定することができる。
【0060】
本方法はさらに、コンピュータプロセッサによって、少なくとも1つの第1の読み出しに基づいて、第2の複数の色素の組み合わせに対する少なくとも1個の色素および/または色素の組み合わせ、および/または第2の写像に対する規則を提案するステップを含み得る。このようにして、繰り返しの回数を有利に減らし、それによってプロセスを最適化することができる。
【0061】
本方法はさらに、試料中の分析物に付着した全ての親和性試薬が決定されるまで、複数の色素の組み合わせの数と写像の数とのうちの少なくとも一方について、不活性化、付着の除去、待機、および提案のうちの少なくとも1つのステップを繰り返し反復することを含み得る。このようにして、本方法は、試料中に存在する全ての分析物を決定する。
【0062】
少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップは、
少なくとも1つの第1の読み出し、少なくとも1つの第2の読み出し、およびステップii)で生成された任意のさらなる読み出しから選択される少なくとも2つの読み出しを比較するステップと、
比較に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つの親和性試薬の存在を決定するステップと
を含み得る。
【0063】
このようにして、本方法は、読み出し間の差異、および写像および/または色素の組み合わせ間の既知の差異を分析して、試料中の分析物の決定を支援することができる。
【0064】
少なくとも1つの親和性試薬の存在を決定するステップは、統計的信頼度の少なくとも1つの尺度に基づいていてもよい。統計的信頼度の尺度は、方法の任意の数(1つの段階のみを含む)において採用され得る。例えば、統計的信頼度の尺度は、色素が励起されたか否かを決定するために使用されてもよく、次いで、同じまたは異なる尺度が、特定の色素または色素の組み合わせの存在の有無を決定するために使用されてもよく、同じまたは異なる尺度が、決定された色素の組み合わせの存在に基づいて分析物の存在を決定するために使用されてもよい。この「存在呼び出し」のプロセスと、ある例示的な確率閾値については、本明細書でさらに詳細に説明する。
【0065】
励起および発光のうちの少なくとも1つに関する色素の特性は、励起波長;発光波長;蛍光強度;および蛍光寿命のうちの少なくとも1つを含み得る。このようにして、読み出しを効果的に検索、分析し、色素を互いに区別することができる。
【0066】
少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって、読み出しに基づいて試料中に存在する少なくとも1つの親和性試薬を決定するステップは、
読み出しを、完全に決定されたまたは過剰に決定された一次方程式のセットに変換するステップと、
一次方程式のセットを解くステップと
を含み得る。
【0067】
このようにして、本方法は、試料中の分析物の存在を決定することができるように、各読み出し中の情報を「デコード」する計算上効率的な方法を提供する。
【0068】
本発明に従って、試料を分析するデバイスであって、本発明による方法を実施するように構成されている、デバイスが提供される。
【0069】
本発明に従って、親和性試薬にカップリングするように構成されたリンカーであって、複数の結合部位を含み、結合部位の少なくとも2つが、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する色素に結合するように構成されている、リンカーが提供される。
【0070】
好ましくは、リンカーは、本発明による方法または本明細書に記載される方法を実行するように構成される。
【0071】
本発明に従って、レポーターであって、
本発明によるリンカーと、
色素の組み合わせであって、各色素が複数の結合部位の1つに結合した、色素の組み合わせと、
を含み、
色素の少なくとも2つが、励起および発光のうちの少なくとも1つに関して異なる特性を有する、
レポーターが提供される。
【0072】
本発明に従って、マーカーであって、
分析物に結合するように構成された親和性試薬と、
親和性試薬に付着した、本発明によるレポーターと
を含む、マーカーが提供される。
【0073】
本発明に従って、本発明による複数のマーカーであって、各レポーターが固有の色素の組み合わせを含み、各レポーターが分析物に付着するように構成された親和性試薬に付着しており、そのため、いかなる固有の色素の組み合わせも、2つ以上の親和性試薬に関連付けられていない、本発明による複数のマーカーが提供される。
【0074】
このようにして、本発明は、本発明に従った方法を実施するための構成単位を提供する。上記のリンカー、レポーター、マーカー、および複数のマーカーは、方法に関連して説明されるような、読み出しごとにより多くの数の分析物の決定を含む有利な効果を可能にする。
【0075】
本発明に従って、本発明による色素の組み合わせ、本発明によるリンカー、本発明によるレポーター、本発明によるマーカー、および本発明による複数のマーカーのうちの少なくとも1つを含む、溶液が提供される。溶液は、当業者に明らかな任意の適切な方法によって、リンカー、レポーター、マーカー、または複数のマーカーを含むように製造することができる。例示にすぎないが、溶液は水および/または生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水を含んでいてもよく、代替的な処方ではさらにミネラルを含んでいてもよい。
【0076】
本発明に従って、本発明による色素の組み合わせ、本発明によるリンカー、本発明によるレポーター、本発明によるマーカー、および本発明による複数のマーカーのうちの少なくとも1つを含む、凍結乾燥固体が提供される。凍結乾燥固体は、当業者に明らかな任意の適切な方法によって、リンカー、レポーター、マーカー、または複数のマーカーを含むように製造され得る。例示にすぎないが、凍結乾燥固体は、凍結および乾燥のプロセスによって、任意選択的に真空下で製造することができる。
【0077】
本発明に従って、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに本発明による方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが提供される。
【0078】
本発明に従って、本発明によるコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0079】
本発明に従って、複数の親和性試薬;
第1の複数の色素の組み合わせ;および
第1の写像
に対応する情報を含むデータベースであって、
任意選択的に、第2のかつ/または任意のさらなる複数の色素の組み合わせ;色素の励起および発光のうちの少なくとも1つに関する特性を有する各色素の組み合わせ;第2の写像または任意のさらなる写像;少なくとも1つの第1の読み出し;少なくとも1つの第2の読み出しおよび/または任意のさらなる読み出しのうちの少なくとも1つに対応する情報をさらに含み、
データベースは、上記のステップi)~iii)の少なくとも1つを実施するために使用される、
データベースが提供される。
【0080】
このようにして、本発明は、関連情報を効率的な方法で追跡することができ、これにより、迅速な検索と、メモリデバイスの最小量のメモリを必要とする記憶が可能になる。
【0081】
さらなる例示的な実施形態では、生体試料を分析するための方法は、以下のステップ:
a)複数の親和性試薬(S2)を提供するステップであって、複数の親和性試薬(S2)の各親和性試薬(a1,a2,a3,...an)が、生体試料中の所定の標的構造または所定の化合物または所定の化学元素に特異的に結合するように構成されているステップと、
b)[yσメンバーを有する複数の色素(YD)から]複数の色素の組み合わせ(S1)を提供するステップであって、各色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)が、複数の色素の組み合わせ(S1)内で固有であり、各色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)が、少なくとも2つの異なる色素(|s|>=2)を含むステップと、
c)複数の色素の組み合わせ(S1)が、複数の色素の組み合わせ(S1)における各色素(y1,y2,y3,...yσ)が読み出しデバイスによって読み出され得るように構成されており、色素は、読み出しデバイスによってチャネルに分離され得、各チャネルは、色素(y1,y2,y3,...yσ)の1つに対応するステップ(これは、各色素が、以下の特性:励起フィンガープリント/スペクトル、発光スペクトル、強度、蛍光寿命、蛍光異方性、およびマーカーに固有の親和性試薬であって、親和性試薬は試料中の所定の構造に付着するように構成されている、マーカーに固有の親和性試薬のいずれか、またはそれらの組み合わせに基づいて、データ取得に使用される読み出しによって、各色素を他の色素から同時に識別できることを意味する)。本発明の特に好ましい実施形態では、「IHP」(繰り返しのハイパープレキシング)と呼ぶPCT/EP2021/063310に開示されている方法を使用して、適切に構成された読み出しデバイスによって、互いに確実に識別され、別個のチャネルで表現され得る色素の総数であるyσを実質的に増加させる。このことは、例えば、本方法を用いないyσSTD=5(標準的な広視野蛍光顕微鏡)から「IHP」を使用したyσIHP=25のようなyσのわずかな増加であっても、色素の組み合わせを構成するために異なる関数またはアルゴリズムを使用して生成することができる複数の色素の組み合わせ(S1)のカーディナリティが実質的に高くなることから特に有利である。複数の色素の組み合わせのカーディナリティ(S1)のこれらの実質的な増加は、アプローチの統計的検出力を指数関数的に高めることにつながり、デコーディング結果、すなわち存在呼び出しの高い統計的信頼度をもって、読み出し体積に存在する非常に多数の色素の組み合わせをデコードするための基礎となる)と、
d)好ましくは、複数の親和性試薬(A)から少なくともいくつかの親和性試薬を試料に導入するステップ(複数の親和性試薬は、全体的に導入してもよいし、いくつかの繰り返しのステップで導入してもよい。後者の場合、存在呼び出しの条件を最適化するために、先験的知識を使用して親和性試薬のサブ複数(sub-pluralities)を定義することができる)と、
e)ステップd)の前または後に、好ましくは、複数の親和性試薬(S2)の各親和性試薬を、複数の色素の組み合わせ(S1)から少なくとも1個の色素の組み合わせに割り当てるステップ(仮想的な割り当て(仮想マーカー)およびマーカーの物理的な構成(物理マーカー)の両方、すなわち、親和性試薬とその割り当てられた色素の組み合わせとの間の連結の物理的アセンブリは、親和性試薬を試料に導入する前に行うことができる。本発明の特に好ましい実施形態では、親和性試薬と割り当てられた色素の組み合わせとの間の連結が確立される前に、親和性試薬が試料に導入され、所定の標的構造に付着させられる。本発明の別の特に好ましい実施形態では、ステップd)~f)が少なくとも2回の繰り返しで反復される繰り返しのプロセスにおける第1のラウンドからの親和性試薬とその第1の割り当てられた色素の組み合わせとの間の連結が、第2のラウンドにおける前述の親和性試薬と第2の割り当てられた色素の組み合わせとの間の新たな連結の確立を可能にするために切断される。これは、「コードスワッピング」、またはさらなる写像の導入もしくは親和性試薬および/またはマーカーのエンコーディングの変更と呼ばれる場合があり、これは、試料に非常に多数の異なる色素と関連する親和性試薬との組み合わせが含まれている場合でも、読み出し体積をデコードするための強力な戦略である)と、
f)好ましくは、複数の色素の組み合わせにおける各色素を励起するためのそれぞれの特異的特性を有する励起光を、それぞれの色素を励起するために試料に向けるステップと、
g)好ましくは、少なくとも1つの読み出し体積のための検出チャネルによって、試料の読み出し体積に位置する励起された色素によって発光された発光光から、少なくとも1つの読み出しを生成するステップと、
h)好ましくは、少なくとも1つの読み出しに基づいて、どの親和性試薬が読み出し体積に存在するかを決定するステップと
を含む。
【0082】
本発明の特に好ましい実施形態では、読み出し体積中の親和性試薬の存在の決定は、統計的信頼度の尺度および統計的信頼度のあるレベルに基づいて確立される。
【0083】
統計的信頼度の尺度は、各マーカーおよび/または親和性試薬および/または色素の組み合わせおよび/または所定の標的分子について計算される。これは、関連する側面を評価する複数の統計的信頼度の尺度からなる複合尺度であってもよい。統計的信頼度の尺度は、先験的知識を組み込み、例えばベイズの定理を使用して、所与のマーカーおよび/または親和性試薬および/または色素の組み合わせおよび/または所定の標的分子を観察する確率を、そのマーカーおよび/または親和性試薬および/または色素の組み合わせおよび/または所定の標的分子に関する先験的知識に基づいて調整することができる。この先験的知識は、実験前または実験中に生成することができる。これは、例えば、帰無仮説が真であるとき、すなわち、それぞれのマーカーおよび/または親和性試薬および/または色素の組み合わせおよび/または所定の標的分子が実際には読み出し体積中に存在しないときに、検出された存在(定性的デコーディング)および/または量(相対的もしくは絶対的な定量的デコーディング)が観察される確率を評価するp値が、それぞれのマーカーおよび/または親和性試薬および/または色素の組み合わせおよび/または所定の標的分子について計算されることを意味する。存在呼び出し、すなわち、読み出し体積中に所与のマーカーおよび/または親和性試薬および/または色素の組み合わせおよび/または所定の標的分子が存在することを受け容れるかどうかのユーザの決定は、この場合、十分なレベルの統計的信頼度の達成に基づいている。この決定は、全てのマーカー、親和性試薬、色素の組み合わせ、および標的分子にわたって固定された同じであってもよい閾値を使用することによって自動化されてもよいし、先験的知識に基づく可能性のある異なる閾値であってもよい。さらに閾値は、実験を通して動的に調整することもできる。同様に例えば、閾値は、多少なりともストリンジェントにすることができる。これは、特に関心のある標的分子に対して、より高い統計的信頼度を要求できるため有利である。
【0084】
本発明は、本質的に強度値の行列である画像において、空間的に位置する強度を登録する問題ではなく、エンコーディング/デコーディング問題として顕微鏡検査を「見る」ことに基づいている。本発明で説明する方法は、画像ベースの読み出しと互換性があるが、本発明で説明する方法およびデバイスによって生成される「画像」は、調査中の試料の現実の確率的な数学的モデルとみなされるべきであり、その中で、標的分子の存在は、統計的信頼度の尺度および読み出し体積中のそれぞれの標的分子の存在における統計的信頼度のあるレベルに基づいて、その存在を受け容れるというユーザの決定に基づいて、検出されるか、または呼び出される(存在呼び出し)。
【0085】
統計的信頼度の尺度および/または統計的信頼度のあるレベルに基づいて、あるマーカー、ある親和性試薬、およびある標的分子の存在を受け容れるステップを行うこと(すなわち存在呼び出し)は、数学的真理を生成する。これは本発明の重要な側面であり、存在呼び出しに続いて、非数学的領域、すなわち物理的、化学的、生物学的領域における測定を複雑にする影響を本質的に受けない数学の公理的領域で動作していることをさらに意味する。したがって、この事実は重要な意味を持ち、またこの方法がまったく新しい顕微鏡モダリティを可能にすることを示している。
【0086】
マーカーベースごと、あるいは標的分子ベースごとの統計的信頼度の尺度を提供する統計的方法は、複合的な尺度である可能性が高く、エンリッチメントスコアおよびp値が一般的に使用されるトランスクリプトミクスおよびゲノミクスで使用される方法と、多くの点で類似または同一である可能性がある。
【0087】
本発明は、出願番号PCT/EP2021/063310の「Method and device for analyzing a biological sample」という表題の特許出願に関するものであり、これは、「IHP法」の能力を活用して、多数の色素を用いて1回のラウンドで複数の色素を画像化または読み出す。出願番号PCT/EP2021/063310の「Method and device for analyzing a biological sample」という表題の特許出願に開示された方法では、所与の色素と所与の親和性試薬との間に1:1の関係があり、そのため、各マーカーが1ラウンドで固有のものであるのに対し、ここでは、この原理を、マーカーと色素との間に1:多数の関係が存在するようなコンビナトリアルコードと組み合わせた方法を開示している。PCT/EP2021/063310の内容は、参照により本明細書に完全に含まれる。
【0088】
本方法の特に好ましい実施形態では、例えば、抗体、シングルドメイン抗体、オリゴヌクレオチドプローブ、アプタマーまたは毒素のような所与の親和性試薬は、仮想マーカーを形成する色素とリンカーとの固有の組み合わせを含むレポーターに割り当て可能であり、すなわち、親和性試薬(ai)と色素の組み合わせとの間の全単射ペア(604)または単射結合(606a,606b)が、複数のマーカー(M)内のマーカー(μi)に対応する。
【0089】
さらに、この実施形態では、複数の色素における色素が、色素A~nのセット(nは0または自然数の要素である)に割り当てられ得、色素A~nの各セットは、yA~yn個の色素を含み、そのため、複数の色素(PD)は、yA+yB+yC+...yn=yσメンバーを含み、色素A~nのセットのうちの1つに割り当てられた色素が、同じ励起光で、例えば、それぞれ異なる波長λ1~λnを有する励起光で励起可能であり、色素A~nの各セットにおける少なくとも全ての色素が、読み出しデバイスによってチャネルに分離され得、ここで、各色素は、個々のチャネルで読み出され、各チャネルは色素の1つに対応する;「IHP法」に基づき、この方法で色素および読み出しデバイスを使用することにより、確実に読み出され、分離され得る色素の数が最大になり、すなわち、yσ、それによって複数の色素の組み合わせのカーディナリティが増加する(S1)。この場合、固有の色素の組み合わせ(si)は、親和性試薬(ai)に、試料への親和性試薬の導入の前または後のいずれかに、ただし読み出しの生成前に割り当てられる。次のステップでは、複数の親和性試薬(S2)から少なくともいくつかの親和性試薬が試料に導入される。次いで、マーカー(μ1,μ2,μ3,...μn)の蛍光色素を励起するために、励起光が試料に向けられ、これは、複数の色素の組み合わせ(S1)の全ての色素が少なくとも1回励起されることを意味する。色素の励起に続いて、試料の読み出し体積に位置する励起された色素によって発光された蛍光光から少なくとも1つの読み出し、好ましくは完全な読み出しが生成され、読み出しは少なくとも2つのチャネルを含み、各チャネルは色素の1つに対応する。言い換えれば、本明細書で説明する方法では、各色素は個別のチャネルで読み出される。続くステップでは、ステップ(d)で得られた少なくとも1つの読み出しシーケンスに基づいて、読み出し体積に存在するマーカーが決定され、この読み出しシーケンスは、統計的信頼度の尺度に依存し、統計的信頼度があるレベルに達するようにすることができる(「存在呼び出し」)。
【0090】
本方法の特に好ましい実施形態では、複数の色素の組み合わせ(S1)は、少なくとも1つのコード(Cα1~Cαn)および/または少なくとも1つの暗号(Xα1~Xαn)を使用して、複数の親和性試薬(A=S2=T1*)に固有に写像され、C:S->T*またはX:S->T*は、好ましくは全単射または少なくとも射影である全関数であり、Sは「ソースアルファベット」であり、T1は「ターゲットアルファベット」であり、SおよびTは有限集合である[ケースα]。
【0091】
本方法の特に好ましい実施形態では、複数の親和性試薬(A=S2=T1*)は、少なくとも1つのコードCβ1~Cβnおよび/または少なくとも1つの暗号Xβ1~Xβnを使用して、複数の色素の組み合わせS1に固有に写像され、C:S->T*またはX:S->T*は、好ましくは全単射または少なくとも射影である全関数であり、S2は「ソースアルファベット」であり、T1は「ターゲットアルファベット」であり、S2およびT1は有限集合である[ケースβ]。
【0092】
αおよびβの両ケースにおいて、本明細書に開示される方法は、エンコーディング/デコーディングおよび/または暗号化/復号化に使用されるコードC1,C2,C3,...Cn、および/または暗号X1,X2,X3,...Xnが、単射または全単射のいずれかである全関数である限り実行することができる。以下の好ましい実施形態では、あるコードCiを使用する例を提案するが、これは、本明細書で開示される方法を実行するためのエンコーディング/デコーディングおよび/または暗号化/復号化において、全関数であり、単射または全単射のいずれかである全てのコードC1,C2,C3,...Cn、および/または暗号X1,X2,X3,...Xnを使用することができるので、いずれにせよ、特定のコードに対する本方法の制限を表すことを意図するものではない。
【0093】
色素の組み合わせは少なくとも2個の色素を含むので、所与の親和性試薬とそれに割り当てられた、またはそれに付着した色素との間には1:nの関係があり得る。重要なことは、この場合のnは、色素分子の数ではなく、使用される異なる色素種の数を定義することである。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態では、色素の組み合わせは、色素のA~nのセットから1個の色素をランダムに選択することによって確立され、yA+yB+yC・・・+yn=yσメンバーである。例えば「IHP法」に開示された方法が使用され、各セットA~nがyA~yn個のマーカーを含み、n個の異なる読み出しを生成するためにn個の異なる励起光が使用される場合、読み出され、互いに識別され得る固有のマーカーの数は、yA+yB+yC...+ynである。例えば、本明細書に開示される方法が使用され、各マーカーがn個の色素で標識され、n個の異なる画像を生成するためにn個の異なる励起光が使用される場合、読み出され、互いに識別され得る固有のマーカーの数は、yA×yB×yC...×ynである。言い換えれば、これはyA×yB×yC...×ynの固有のコードにつながる。この特に好ましい実施形態を「セットベースのエンコーディング」と呼ぶ。
【0095】
本発明の特に好ましい実施形態では、複数の色素の組み合わせ(S1)の全ての蛍光色素によって形成される複数の色素(YD)は、少なくとも10、20、50、100、1000、または10000の異なる蛍光色素を含む。
【0096】
本方法のさらに特に好ましい実施形態では、例えば抗体、シングルドメイン抗体、オリゴヌクレオチドプローブ、アプタマーまたは毒素のような所与の親和性試薬は、最大n×y個の標識のセットに接続される。このように、所与の親和性試薬とそれに付着した色素との間には、可変的でランダムな関係がある。これは、特定の色素の非存在を「0」、存在を「1」とカウントするバイナリエンコーディングにつながり、最大n×y桁のコードでは、2(yA+yB+yC...+yn
)または2y
σメンバーを有する固有のコードのセットを生成する。この特に好ましい実施形態を「バイナリエンコーディング」と呼ぶ。
【0097】
したがって、本明細書に記載される方法は、マーカーおよび/または色素の組み合わせおよび/または親和性試薬および/または所定の標的構造の数を大幅に増加させ、以前のマーカーを除去または不活性化する必要がなく、追加の染色をすることなく、読み出すことができる。
【0098】
重要なことは、本明細書に開示される方法と組み合わせて使用できる他のコードまたは暗号、すなわちエンコーディング/暗号化およびデコーディング/復号化の方法が数多く存在することである。
【0099】
各親和性試薬は、その色素の組み合わせを、生体試料または溶解物内の標的分子または分析物、例えば、特定の生体分子と命名されることもある、その所定の構造に標的化する。
【0100】
どちらの方法でもコンビナトリアルエンコーディングを行うため、固有のコードとみなすことのできる色素の組み合わせの数は指数関数的に増加し、タンパク質をコードする遺伝子の数(これは20,000個の範囲にある)をすぐに超えてしまう。タンパク質は生物学的機能の大部分を担っているため、これは重要な参考値となり、非常に興味深いものである。この理由から、今日行われている蛍光顕微鏡法の大部分は、タンパク質を標的として分析している。
【0101】
両方の実施形態では、本方法は、例えばローリングサークルDNA増幅などの酵素反応に基づく複数の結合部位または増幅ストラテジーを含む増幅の様々な手段との互換性を維持する。
【0102】
両方の実施形態では、本方法は、親和性試薬が、例えば抗体(タンパク質標的)またはオリゴヌクレオチド(RNA/DNA標的)であることができるので、依然として様々な分析物クラスと互換性がある。
【0103】
本発明の特に好ましい実施形態では、各マーカー(μi)は少なくとも2つの異なる付着部位を有するリンカーを含み、付着部位の組み合わせはマーカーに固有であり、各色素は相補的リンカーに接続されてレポーターを形成し、相補的リンカーは色素に固有であり、所定の付着部位に付着するように構成されている。
【0104】
本発明の特に好ましい実施形態では、リンカーおよび/または相補的リンカーは、DNA、RNA、ペプチド核酸、モルフォリノ核酸またはロック核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ヘキシトール核酸、または別の形態の人工核酸を含むオリゴヌクレオチドである。
【0105】
本発明の特に好ましい実施形態では、リンカーおよび/または相補的リンカーは、酵素的切断または光分解のための部位を含む。これにより、第1の色素の組み合わせを不活性化するために、第1の色素の組み合わせを効率的かつ特に容易に放出することができ、これに続いて第2の色素の組み合わせで再標識することができる。
【0106】
本発明の好ましい実施形態では、マーカーが試料に導入される前に、レポーターがそれぞれの付着部位に付着される。
【0107】
本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも2つの読み出しが生成され、確率的標識を達成するために、第1の読み出しの生成と第2の読み出しとの生成の間に、レポーターがそれぞれの付着部位と動的に関連付けられ、かつ/またはそれぞれの付着部位から解離される。これは、空間分解能を向上させる戦略であり、複数種読み出し体積のデコーディングをより単純化する戦略である。このような確率的標識は、STORM、PALM、GSDIMなどの超解像顕微鏡法、またはブリンキングを利用する関連方法に基づいていてもよい。
【0108】
この発明の特に好ましい実施形態では、確率的標識は、本方法をDNA-PAINTと組み合わせることによって達成される。
【0109】
本発明の特に好ましい実施形態では、マーカーの全ての蛍光色素によって形成される複数の色素は、yA~ynのメンバーを有する色素A~nのセットに分割され、yA+yB+yC+...yn=yσであり、yは自然数であり、yσは複数の色素における色素の総数(PD)であり、同じセットにおける各色素は、本質的に1つの波長スペクトルの光によって、または同じ波長スペクトルによって励起され得、それぞれのセットの蛍光色素を励起するために、色素の各セットに対する少なくとも1つの励起光が試料に向けられ、色素の各セットに対する少なくとも1つの読み出しが、試料の読み出し体積に位置する励起された色素によって発光された蛍光光から生成され、読み出しは少なくとも2つのチャネルを含み、各チャネルはそれぞれのセットの色素の1つに対応する。この実施形態では「IHP法」を使用しており、これは、基本的に、読み出しデバイスで読み出す色素の数をより多くすることができる。これは、yσが高いほど、複数の色素の組み合わせ(S1)のカーディナリティが高くなり、ひいては割り当て率αが低くなり、方法の統計的検出力が高くなるため、特に有利である。
【0110】
本発明の特に好ましい実施形態では、色素A~nのセットを励起するための励起光は、互いに時間的に続くシーケンスで試料に向けられる。
【0111】
本発明の特に好ましい実施形態では、読み出しは、読み出し体積の画像、または顕微鏡画像、または読み出し画像データストリームである。
【0112】
本発明の特に好ましい実施形態では、読み出しは、試料のハイパースペクトル画像であるか、またはそれを含む。これは、色素の総数yσを多く使用することができ、複数の色素の組み合わせ(S1)のカーディナリティが高くなり、ひいては割り当て率αが低くなり、方法の統計的検出力が高くなるため、特に有利である。
【0113】
本発明の特に好ましい実施形態では、本方法は、少なくとも1つの蛍光色素の蛍光寿命を安定化させるさらなるステップを含む。これは、封入、ポリマーマトリックス包埋、および共結晶化のうちの少なくとも1つによって蛍光色素を遮蔽された環境に置くことによって達成することができる。SMILEは、この点で特に有利なクラスの色素である。本発明の特に好ましい実施形態では、複数の色素(PD)における少なくとも1個の色素はSMILEである。
【0114】
本発明の特に好ましい実施形態では、チャネルを生成するステップは、チャネルアンミキシング、スペクトルアンミキシング、励起スペクトルイメージング、スペクトルフェーザ分析、スペクトルFLIMフェーザ、蛍光色素の蛍光寿命、および蛍光色素の励起フィンガープリントのうちの少なくとも1つに基づいている。これは、色素の総数yσを多く使用することができ、複数の色素の組み合わせ(S1)のカーディナリティが高くなり、ひいては割り当て率αが低くなり、方法の統計的検出力が高くなるため、特に有利である。
【0115】
本発明の特に好ましい実施形態では、チャネルを生成するステップは、少なくとも2つの直交コントラストに基づいている。直交コントラストがこれらの方法から得られ、組み合わせて使用される場合、それらは、色素の総数yσ、すなわちはるかに多数の色素を分離するために強く増加させるために使用することができる。同様に例えば、励起フィンガープリンティング情報を蛍光発光スペクトル情報および/または蛍光寿命情報と前述のいずれかまたは両方と組み合わせることができる。
【0116】
本発明の特に好ましい実施形態では、チャネルを生成するステップは、機械学習、深層学習、または人工知能の少なくとも1つに基づいている。
【0117】
本発明の特に好ましい実施形態では、試料の一連の画像または読み出しを作成するために、以下のステップ:第2の複数のマーカーを提供するステップと、第2の複数のマーカーを試料に導入するステップと、少なくとも1つの励起光を試料に向けるステップと、少なくとも1つの読み出しを生成するステップと、読み出し体積に存在するマーカーを決定するステップとが少なくとも2回反復されるか、または上述の方法ステップa)~e)が少なくとも2回反復される。
【0118】
本発明の特に好ましい実施形態では、第2の複数のマーカーを標識するレポーターは、試料の第1の一連の画像または読み出しに基づいて決定された色素の組み合わせを含む。
【0119】
本発明の特に好ましい実施形態では、レポーターは、色素の混合物を添加することによってアセンブリされ、各色素は、相補的リンカーに接続されて、複数の色素における全ての色素のための色素特異的付着部位を含むリンカー分子を有するレポーターを形成し、そうして、固有の色素の組み合わせに対応する色素の混合物をカップリング反応体積中のリンカー分子に添加することが化学量論的カップリングをもたらす。
【0120】
本発明の特に好ましい実施形態では、レポーターは、色素の混合物を添加することによってアセンブリされ、各色素は、相補的リンカーに接続されて、複数の色素における全ての色素のための色素非特異的付着部位を含むリンカー分子を有するレポーターを形成し、そうして、固有の色素の組み合わせに対応する色素の混合物をカップリング反応体積中のリンカー分子に添加することが確率論的カップリングをもたらす。
【0121】
本発明の特に好ましい実施形態では、励起光はコヒーレント光である。
【0122】
本発明の特に好ましい実施形態では、励起光は、50nmよりも小さい波長範囲、30nmよりも小さい波長範囲、10nmよりも小さい波長範囲または単一波長を含む。
【0123】
本発明の特に好ましい実施形態では、生体試料を分析するためのデバイスは、上述の方法の1つによる方法を実施するように適合される。
【0124】
本発明の特に好ましい実施形態では、デバイスは、少なくとも1つの読み出しを生成するように構成された、好ましくはレンズフリー顕微鏡、ライトフィールド顕微鏡、広視野顕微鏡、蛍光広視野顕微鏡、ライトシート顕微鏡、走査型顕微鏡、または共焦点走査型顕微鏡、プレートリーダ、サイトメータ、イメージングサイトメータ、または蛍光活性化セルソータを含む。
【0125】
本発明の特に好ましい実施形態では、デバイスは、試料中の蛍光色素から、蛍光発光強度、蛍光寿命、発光スペクトル、励起フィンガープリント、蛍光異方性を決定するように構成される。
【0126】
本発明の特に好ましい実施形態では、デバイスは、少なくとも2つのチャネルへの読み出しの分離を、プリズムまたは回折格子を含む分光計および少なくとも1つの検出器のうちの少なくとも1つによって行うように構成される。
【0127】
本発明の特に好ましい実施形態では、デバイスは、少なくとも2つのチャネルへの読み出しの分離を、プリズムまたは回折格子を含む分光計および少なくとも1つの検出器のうちの少なくとも1つによって行うように構成され、デバイスは、時間指定検出器を含む。
【0128】
本発明の特に好ましい実施形態では、デバイスは、各マーカーについて、親和性試薬、所定の構造、および固有の色素の組み合わせを識別する固有の識別子を記憶するメモリデバイスを含む。
【0129】
本発明の特に好ましい実施形態では、デバイスは、励起色素によって発光された蛍光光を受け取り、受け取った蛍光光に基づいて較正データを生成するように構成された較正ユニットを含み得、少なくとも1つの読み出しは、較正データに基づいて生成される。
【0130】
本発明の特に好ましい実施形態では、色素の組み合わせは、2つ以上の親和性試薬に割り当てられない。
【0131】
以下の例は、このアプローチの能力を説明し、同様にその実現可能性を強調する。以下の例では、n=5の異なる励起光波長、例えば、405nm、488nm、560nm、630nm、700nmが、yA=yB=yC=yD=yE=5のメンバーを有するn=5の蛍光色素のセットを励起するために使用され、そのため、この例で使用される複数の異なる色素yσは25である。この場合、コンビナトリアルコーディングの指数的性質により、固有のコードの総数は55=3125となる。言い換えれば、ここに提示した方法は、例えば市販の色素を使用した顕微鏡またはサイトメータのような、単純な5チャネルの蛍光ベースの読み出しに基づいて、ヒトのセクレトーム全体を読み出すために使用することができる。繰り返しのプロセスを使用して30~60個のバイオマーカーの範囲でマルチプレキシングを可能にする(すなわち、1ラウンド当たり~マーカー)従来技術と比較して、これは50~100倍の大幅な改善である。同じ色素のセットと、試料を染色し、イメージングし、次いでブランク化する(すなわち、色素を除去または不活性化する)繰り返しのプロセスとを使用すれば、10ラウンドで30,000個の標的をプローブすることが可能であり、これはヒトゲノムのコーディング遺伝子の数にほぼ等しい。現在、約20,380個のヒトタンパク質コード遺伝子がUNIPROTに登録されている。
【0132】
以下の例では、n=6の異なる励起光、例えば、350nm、405nm、488nm、560nm、630nm、700nmが、yA=yB=yC=yD=yE=yF=yG=yH=yI=yJ=10のメンバーを有するn=10の蛍光色素のセットを励起するために使用され、そのため、この例で使用される複数の異なる色素yσは60である。この場合、コンビナトリアルコーディングの指数的性質により、固有のコードの総数は106=1,000,000となる。言い換えれば、ここに提示した方法は、80,000~400,000個のオーダーの異なるタンパク質を有すると推定されるヒトプロテオーム全体を1回のラウンドで読み出すのに使用することができる。
【0133】
さらに、本方法は、サイトメータ、プレートリーダ、蛍光顕微鏡に容易に適応でき、非常に多数のマーカーを読み出すことができる。言い換えれば、本方法は、画像ベースの読み出しとも非画像ベースの読み出しとも互換性がある。
【0134】
さらに、本方法は、蛍光顕微鏡に容易に適応でき、非常に多数のマーカーを非常に高い空間分解能で読み出すことが可能になる。
【0135】
好ましい実施形態では、本方法は、個々のばらばらのスポット、すなわち読み出しデバイスによって互いに分離され得るスポットを検出することに基づいている。例えばカメラのような視野をイメージングする面検出器を使用して、非常に多数のスポットを同時に読み出すことができる。スポットの不一致は、顕微鏡の画像において、単一の視野におけるX,Y方向の位置が異なることに起因し得る。あるいは、例えばサイトメータまたはイメージングサイトメータまたはレーザ走査型顕微鏡のように、フローセルを通過する際の異なる時点Tに起因し得る。顕微鏡およびプレートリーダなどの画像ベースの読み出しを使用するシステムでは、例えば、細胞内の非常に多数のマーカーをイメージングしようとする場合など、高密度に標識された構造における視差は、確率的色素ブリンキング、すなわち時間的分離によって達成され得る。これは、確率的光学再構成顕微鏡法(STORM)および関連するモダリティで一般的に使用されている戦略であり、これは、高密度に標識された試料中のばらばらの発光体の位置を見つけるために、例えばガウシアンフィッティングに依拠している。
【0136】
スポットの不一致は、例えば、フロースルーのビーズベースアッセイで、複数のビーズがフローセル(読み出しデバイスが適合している)を順番に通過するようなアッセイ形式の直接的な結果かもしれない。スポットは、読み出し体積よりも大きいかまたは小さい構造に起因し得る。細胞のような生体試料では、細胞内標的は異なるX,Y,Zの位置にあるかもしれない。場合によっては、ラベル密度が高すぎる場合、ラベル密度を許容可能なレベルまで下げるために繰り返しのアプローチが採用されてもよい。スポットの不一致を達成するための他の戦略は、例えば標識試薬の濃度を下げることによって確率的に標識することを含み得る。さらなる視差は、Wassie et al. 2019 Nature Methods, Volume 16, pages 33-41 (2019)に記載されている拡大顕微鏡法として知られているプロトコルを使用して試料を拡大することによって達成され得る。さらに、色素のセット数nを増やすことによって、スポット間の適切な間隔を達成することができる。この目的のために、可変光源または連続光源を本方法と組み合わせることができる。高密度に標識された試料のさらなる戦略については後述する。
【0137】
開示された方法と繰り返しの染色プロセスとの組み合わせ
別の好ましい実施形態では、試料の一連の読み出し/画像を作成するために、以下のステップを少なくとも2回反復する:試料を染色するステップ。第1の励起光を試料に向けるステップ。第1の読み出し/画像を生成するステップ。第2の励起光を試料に向けるステップ。第2の読み出し/画像を生成するステップ。請求項1に定義されるステップは、読み出し/画像取得の1回のラウンドを説明する。試料の一連の読み出し/画像を取得するために、追加のラウンドを実行してもよい。特に、一連の後続の読み出し/画像は、経時的に生じる試料の変化を観察するために使用することができる。特に、一連の後続の読み出し/画像は、読み出しされ得るマーカーの数をさらに増やすため、または高密度に標識された試料において1回のラウンドで読み出されるマーカーの数が多すぎないようにするために使用することができ、すなわち、この場合、マーカーの数を、例えば、1ラウンド当たり1000個のマーカーに減らすことが有用であり得、これは、蛍光ベースのイメージングに適合した読み出しのための先行技術に記載されている方法よりも依然として有意に高い。
【0138】
単一種読み出し体積と複数種読み出し体積との比較
この方法を使用する場合、有効点広がり関数の主極大のサイズによって定義され、共焦点顕微鏡の場合は共焦点体積とも呼ばれる試料中のスポットは、1つのマーカーまたは複数の単一特異性のマーカーのみを含むこともあれば(単一種読み出し体積)、複数の特異性のマーカーを含む場合もある(複数種読み出し体積)。本明細書で提示した方法では、単一種読み出し体積をロバストにデコードすることが可能であり、非常に多数の固有のコードを提供する。しかしながら、複数種読み出し体積の場合、1スポットに位置する複数の特異性のマーカーをデコードできることは保証できず、それによって固有のコードの単一の可能な組み合わせのみが見つかり、すなわち、複数種読み出し体積のデコーディングは、複数の可能なマーカーの組み合わせにつながる可能性がある。しかしながら、複数種読み出し体積に遭遇した場合、本方法は、この事象を確実に認識し、明確な解が見つからなかった複数種読み出し体積に遭遇したことをユーザに通知することができる。本方法はさらに、限られた数の可能な代替解を見つけ、これらの解に基づいて、新たな蛍光コンビナトリアルコードのセットで標識されたマーカーのサブセットを用いた、少なくとも1回のさらなるラウンドの染色およびイメージングのための標識戦略を提案することができる。代替的または追加的に、ユーザは「高密度に標識された試料のための戦略」のセクションに記載されたアプローチに頼ることができる。
【0139】
複数種読み出し体積に遭遇する可能性は、1回のラウンドで読み出されるマーカーの数と、それらの細胞内位置との両方に依存する。細胞は、核、細胞質、および分泌経路など複数のメタコンパートメントを有し、また、例えば核膜、核小体(約7%、約1300個のタンパク質)、核質、アクチンフィラメント、中間フィラメント、中心体、微小管、細胞質ゾル、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、細胞膜、分泌タンパク質、小胞を含む広範なコンパートメントを有し、これらはさらにサブコンパートメントに分けられる。例えば、エンドソーム、脂質小滴、リソソーム、ペルオキシソームおよび小胞は、小胞のコホートにグループ化される。一部のタンパク質は細胞内で所与の位置にあるが、他のタンパク質は多局在タンパク質(MLP)であり、Cell Atlasの局在タンパク質の約55%(n=7106)を占める(出典:https://www.proteinatlas.org/humanproteome/cell/multilocalizing)。したがって、局在タンパク質の数は約14,000の範囲にあり、そのうち約55%が複数の(サブ)コンパートメントに局在している。核小体は特に緻密な構造であり、これまでに1つまたは複数の核小体サブコンパートメント:核小体(1008)、核小体線維状中心部(300)、核小体リム(100)で約7%または1361個のタンパク質が検出されている(出典:https://www.proteinatlas.org/humanproteome/cell/nucleoli)。典型的な核小体の直径は0.2~3.5μmの範囲である可能性があり、これは直径0.2μmの小さな核小体がおよそ0.0335μm3の体積を有することを意味し、NA1.4の油浸対物レンズの有効PSFの体積よりも約1.3倍大きい。この理由から、核小体は、複数種読み出し体積および本発明に関して興味深い構造とみなすことができる。1回のイメージングでこれを達成しようとすれば、最悪の場合、約1500個の異なる局在タンパク質(非局在タンパク質を除く)を共焦点体積で同時に分解する必要があると推定できる。同様に、ヒトの細胞質ゾルでは、およそ24%または4770個のタンパク質が検出されており(出典:https://www.proteinatlas.org/humanproteome/cell/cytosol)、これは約70%の水と20~30%のタンパク質とからなる。細胞質ゾルタンパク質は、細胞質ゾル全体に均一に分布している場合もあれば、アグレソーム、細胞質小体、ロッド&リングのような点状パターンで分布している場合もある。したがって、染色およびイメージングの繰り返しのプロセスにおいて、タンパク質の局在化に関するこの先験的知識を考慮に入れて、可能な限り多くのサブコンパートメント全体に分布するように各ラウンドのマーカーセットを定義する際に、複数種読み出し体積に遭遇する確率を最小化することができる。
【0140】
複数種読み出し体積のデコーディング
第1の読み出しシーケンスを取得し、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な複数の色素の組み合わせ(S1)から全ての色素の組み合わせを(メモリデバイスから)検索または計算する方法によって、複数種読み出し体積を確実に検出することができる。複数種読み出し体積は、複数の色素の組み合わせ(S1)から2つ以上の色素の組み合わせが第1の読み出しシーケンスの下に包含可能である場合に検出される。この場合、ユーザに、例えばソフトウェアプログラムによって、対応する読み出し体積が複数種標的分子を含むことが通知される。スポットに含まれる可能性のある種と、好ましくは前述のタンパク質発現データベースからの先験的知識とに応じて、複数の色素の組み合わせ(S1)から最適化された第2の決定論的にアセンブリされた色素の組み合わせのセットが、統計的信頼度のある許容可能なレベルに基づく最小限の繰り返しの回数で、繰り返しのデコーディングプロセスにおいて複数種読み出し体積をデコードするために提案され得る。代替的に、またはそれに加えて、複数の色素の組み合わせ(S1)から色素の組み合わせの第2の独立かつ同一に分布したセットを、第2のラウンドにおいて複数の親和性試薬に割り当てることができる(これは、戻し/置き換えを伴うランダムな反復回収とみなされるかもしれない)。
【0141】
繰り返しの間にコードを再割り当て(「コードスワッピング」)することによる一次定性的な繰り返しの複数種読み出し体積のデコーディング
しかしながら、1回のラウンドの読み出しでは明確な解を見つけることができない複数種読み出し体積の場合でも、同じ親和性試薬のセットに付着されたコンビナトリアルの色素の組み合わせのセットを変えながら、複数回のラウンドの読み出しによって、明確な解を見つけてスポットをデコードすることは可能であることに留意することが重要である。コードを生成するために使用される色素の量が限られている場合でも、コンビナトリアルエンコーディングの指数関数的な性質により、固有のコードのセットのカーディナリティは、ヒトゲノムの遺伝子のセットのカーディナリティまたは同定される/デコードされる分析物のカーディナリティに関連して非常に高くなる可能性があることに留意することが重要である。この理由から、利用可能なコードのごく一部しかマーカーおよび標的分子に実際に割り当てられない実験が容易に行われる。同様に例えば、ヒトゲノムのタンパク質コード遺伝子の数はおよそ20,000と推定され得る。n=5およびyA=yB=yC=yD=yE=10の例では、100,000の固有のコードが生成されるが、これは利用可能なコードの約20%が実際に割り当てられることを意味する。さらに、色素のさらなるセットを追加するか、セット内の色素の数を増やすことによって、実際に割り当てられるコードの割合を広い範囲で簡単に調整できることを意味する。同様に例えば、n=6およびyA=yB=yC=yD=yE=yF=15のようにすれば、10,000,000の固有のコードが得られ、20,000のマーカーをコードするのに必要な実際に割り当てられたコードの割合は約0.2%に低下する。重要なことは、例えば360nm、405nm、488nm、560nm、630nm、700nmのような6本の励起線を、例えば市販の共焦点顕微鏡で容易に提供することができ、蛍光寿命(例えば、1ns未満、1~5ns、10ns超)に応じて3つの主要なクラスのいずれかに各々約5個ずつ分類される15個の色素を含むセットは、色素の基本構造を変更することにより既存の蛍光色素から誘導することができる。同様に、蛍光発光スペクトル情報および寿命情報を併用するアプローチもいくつか利用可能であり、スペクトルおよび蛍光寿命、ゲーティング、アンミキシング、フェーザベースのアプローチ、機械学習または深層学習ベースの分類戦略を含む。
【0142】
この理由から、本明細書で開示される方法の特に好ましい実施形態を使用して、例えばp値のような一定の統計的信頼度に基づく繰り返しのプロセスを使用して、複数種読み出し体積を確実にデコードすることが可能である。p値は、帰無仮説が真であるという仮定の下で、実際に測定された値と等しい検定結果が得られる確率を測定する。本明細書で説明する方法では、各マーカーについてp値を計算することができ、このp値は、マーカーが実際には読み出し体積に存在しないという事実にもかかわらず、マーカーが読み出し体積(すなわち、読み出しデバイスの共焦点体積または有効点広がり関数)で観察され、帰無仮説(すなわち、マーカーが読み出し体積に存在しない)が真である確率を測定する。重要なことは、デコーディング結果に対する信頼度は、繰り返しを重ねるごとに急速に高まることになる。この理由から、一般的に許容可能な統計的信頼度、すなわちp値は、例えば1~10回のような限られた繰り返しの回数で達成可能である。
【0143】
これは、(1)色素の組み合わせのセットから(ランダムにまたは決定論的に)選択される色素の組み合わせの第1のセットで標識された親和性試薬の第1のセットでマーカーの第1のセットを提供し、スポットまたは読み出し体積を読み出し、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の全ての可能な組み合わせの第1のセットをアセンブリし、(2)色素の組み合わせのセットからランダムにまたは決定論的のいずれかで選択される色素の組み合わせの第2のセットで標識された親和性試薬の第1のセットでマーカーの第2のセットを提供し、スポットまたは読み出し体積を再度読み出し、第2の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の全ての可能な組み合わせの第2のセットをアセンブリし、(3)第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの第1のセットと、第2の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの第2のセットとを比較し、第1のセットの色素の組み合わせと第2のセットの色素の組み合わせとで共有されない色素の組み合わせを全ての可能な色素の組み合わせによって除去し、すなわち重複を定義し、(4)重複において検出された各色素の組み合わせおよび/または親和性試薬および/またはマーカーおよび/または標的分子について、p値および/または統計的信頼度の他の適切な尺度を計算し、(5)重複において検出された色素の組み合わせおよび/または親和性試薬および/またはマーカーおよび/または標的分子の少なくともいくつかについて、統計的信頼度のあるレベルに基づいて「存在呼び出し」を実行するために、計算された全てのp値および/または統計的信頼度の他の適切な尺度を、ユーザが定義した閾値と比較し、(6)ユーザが定義したサブセット(例えば、関心のある標的分子のグループ)内の、少なくとも各色素の組み合わせおよび/または親和性試薬および/またはマーカーおよび/または標的分子について、満足できるレベルの統計的信頼度で、関心のある全ての複数種読み出し体積がデコードされるまで、このプロセスを反復することによって達成される。
【0144】
二次定性的な複数種読み出し体積デコーディング
上記の方法の代わりに、またはそれに加えて、読み出しシーケンスのデコーディングは、強度情報を活用することができる。全ての色素は、測定が行われる条件のレジームにおいて、実質的に同等の輝度および実質的に線形の応答を示すと仮定することができる。さらに、個々の色素の輝度の差は、適切な較正を行うことによって説明することができる。これは、例えば蛍光顕微鏡測定の基礎となる一般的な仮定である。この仮定の下では、高いシグナル強度が観察される場合、偽陽性結果が観察される可能性が低くなると言うことができる。例えば、第1の読み出しシーケンスがDyeA.1およびDyeB.2について「1」を含み、両者が検出されたことを意味する場合、これらの色素の強度は、例えばDyeA.1が1AU、DyeB.2が10AUを有することがあるように異なる可能性がある。この場合、DyeB.2の位置に「1」を有する読み出しシーケンスの下に包含可能なコードは、読み出し体積に実際に存在する確率がより高いマーカー、すなわち、より良好な強度調整pI値および/または統計的信頼度の他の適切な尺度を有するマーカーに対応する。
【0145】
二次定量的な複数種読み出し体積デコーディング
一次定性的および二次定性的デコーディングの代わりに、またはそれに加えて、複数種読み出し体積を定量的にデコードすることもできる。これは、重複におけるマーカーの割合が、観察された強度プロファイルと可能な限り一致するようなスケーリングを見つけることによってもたらすことができる。一次定性的および/または二次定性的デコーディング(統計的信頼度のあるレベルに基づく)の後、強度プロファイルだけでなく、読み出しスポット内のマーカーの同一性の両方が既知であるため、これは完全に決定された一次方程式のセットになり、本質的に線形アンミキシングに匹敵する。前述のステップを使用することで、複数種読み出し体積は、統計的信頼度の適切な尺度に基づいて、読み出しスポット/体積(すなわち、共焦点体積/有効PSF)内のマーカーの同一性を提供し、統計的信頼度のあるレベルを達成して、限られた回数のラウンド/繰り返しを使用して確実にデコードすることができ、この統計的信頼度の尺度は、例えば、マーカー特異的p値または強度調整pI値、または色素-/親和性試薬-/マーカー-/標的分子特異的な統計的信頼度の尺度の他の適切な組み合わせの形で提供することができる。さらに、相対的定量情報または絶対的定量情報も導出することができる。この場合、読み取りデバイスおよび色素の応答は線形領域にある必要がある。絶対定量的な読み出しのためには、所与の色素発光スペクトルの曲線下面積(AUC)を色素分子の数に戻して関連付けるために、適切なキャリブレーションを実行する必要がある。この方法は絶対的定量読み出しを必要としないことに留意することが重要である。
【0146】
同じ非存在マーカーが複数回観察される可能性
本明細書で提示した方法を、例えばゲノムワイド標識(例えば、20,000個のマーカー)のように非常に高密度で標識された試料に使用する場合、複数種読み出し体積が高頻度で発生する可能性があり、各複数種読み出し体積には多数の種、すなわち異なる標的分子(例えば、100~1000種の異なる標的分子)が含まれる可能性がある。このことから、繰り返しのデコーディングスキームにおいて、同じ非存在マーカーが複数回検出される可能性がどの程度高いのかという疑問が生じる。n=5およびyA=yB=yC=yD=yE=10の例では、ν=20,000のマーカー、ψ=100,000の固有のコードが利用可能である。重複において非存在マーカーが観察される確率、すなわち、同じ間違った結果または真実でない結果が何回も得られる確率はどのくらい高いのか。この意味において、第2のラウンド後の確率を考えることは有用である。第1の読み出しシーケンスの取得に続いて、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの第1のセットと、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能なκ1コードとがメモリから検索される。この例では、κ1は、単一種読み出し体積の場合は1に等しく、複数種読み出し体積の場合は、使用されるコードの最大数である1~20,000になる可能性がある。しかしながら、一般に、複数種読み出し体積の場合、κは10~5000の範囲になる可能性がある。したがって、デコーディングのラウンドの後では、複数種読み出し体積の真の内容に関して大きな不確実性が存在する。ここで疑問が生じる:κコードを包含可能な読み出しシーケンスが得られる確率pκはどのくらい高いのか?マーカーおよびコードは互いにランダムに割り当てられるので、包含可能なコードの全てのセットの中には、安定した重複、すなわち、試料中に実際に存在するマーカーに対応するものと、偶然にコードが観察された読み出しシーケンスの下に包含され得るマーカーのランダムな取り合わせがあると仮定することができる。ν=20,000のマーカーのうち、所与のマーカーが読み出しシーケンスの下に包含可能である確率pκは、読み出しシーケンスに依存し、κ/ψによって提供され、ここで、ψは、複数の色素の組み合わせ(S1)のカーディナリティである。例えば、κ=1,000の場合、各ラウンドで同じ非存在マーカーを2回観察する確率は、1,000:100,000×1,000:100,000、または1:10,000となる。重要なことは、あるκを観察する可能性を先験的に推定し、使用する色素の数、すなわち固有なコードのセットのカーディナリティ、統計的信頼度のあるレベルでマーカーのある数をデコードするために必要な繰り返しの回数に関して、ユーザの選択を導く情報として使用できることである。κが高いか低いかは、多くのパラメータに依存して観察される。例えば、κ、割り当て率α=ν/ψであって、これは、マーカーに割り当てられた色素の組み合わせのセットと、利用可能な色素の組み合わせの全体の数との関係に相当する。さらに、κは、マーカーに割り当てられた色素の組み合わせのセットのエントロピーSに依存し、S,κ~1/Sに反比例し、すなわち、マーカーに割り当てられた色素の組み合わせのセットのエントロピーが高いほど、より少ない繰り返しでより良いp値を得ることが可能である。
【0147】
この特に好ましい実施形態では、試料を染色し、試料を読み出し、かつ色素を不活性化する繰り返しのプロセスに基づくこの方法は、複数のマーカー、マーカーの少なくとも1つのセット、少なくとも1つのマーカーのうちの少なくとも1つを不活性化するステップをさらに含む。本明細書では、1つ以上のマーカーを不活性化するとは、関連する蛍光色素が将来的に試料から蛍光光を発光するのを防ぐことを意味する。これは、試料から蛍光色素を除去するか、蛍光色素を漂白するかのいずれかによって行うことができる。それによって、異なるマーカーのセットに関連する蛍光色素間のクロストークが大幅に低減する。言い換えれば、マーカーのセットを不活性化することで、前述のセットによってマークされた構造は、将来の画像/読み出しでは可視化されなくなる。これは、例えば、類似の発光スペクトルを有する蛍光色素を後続画像で使用できることを意味し、それによって、1回のラウンド、単一の実験および/または単一の生体試料で使用され得るマーカー全体の数が増加する。
【0148】
好ましくは、不活性化ステップは、少なくとも1つのマーカーに固有の蛍光色素を漂白すること、少なくとも1つのマーカーを試料から除去することのうちの少なくとも一方によって、好ましくは、蛍光色素を親和性試薬から解離もしくは切断すること、または親和性試薬を標的構造から解離することのうちの少なくとも一方によって行われる。
【0149】
異なる特性に基づく色素の識別
別の好ましい実施形態では、チャネルを生成するステップは、スペクトルアンミキシング(スペクトルイメージングおよび線形アンミキシング、またはチャネルアンミキシングとも呼ばれる)、蛍光色素の蛍光寿命、および蛍光色素の励起フィンガープリントのうちの少なくとも1つに基づいている。スペクトルアンミキシングは、線形アンミキシング、主成分分析、スペクトルの教師なし手段の学習、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、(スペクトル)フェーザアプローチ、およびモンテカルロ分離アルゴリズムを含むが、これらに限定されない様々な方法で実行することができる。異なるマーカーに関連する蛍光色素間のクロストークを低減するために、いくつかの手法を採用することができる。アンミキシング技術は、同じ検出チャネルに対する異なる蛍光色素からの寄与、すなわち重複する発光スペクトルによるクロストークを分離するために使用される。これらの技術を採用すると、ノイズが減少することで方法の感度が大幅に向上し得る。さらに、蛍光色素を正しく同定するために、蛍光色素の蛍光寿命および励起フィンガープリントを使用することができる。例えば、フェーザS-FLIM(Scipioni, L., Rossetta, A., Tedeschi, G. et al. Phasor S-FLIM: a new paradigm for fast and robust spectral fluorescence lifetime imaging. Nat Methods 18, 542-550 (2021)に記載される)は、発光スペクトルおよび蛍光寿命情報の両方を活用して、確実に識別できる色素の総数を増やすのに適したアプローチである。これを使用して、画像1枚当たりにより多くのマーカーのセットを採用し、すなわち1つのセットにおけるマーカーのセットを増やすことができる。こうして、イメージングできるマーカーの総数が大いに増加する。τゲーティングおよびτアンミキシングはどちらも、蛍光寿命を利用して1セット当たりの識別可能な色素yの数を増やすのに適した戦略である。
【0150】
今日、蛍光寿命は顕微鏡およびサイトメトリーにおける直交コントラストとして広く使用されていない。これはおそらく、市販されている蛍光色素の大部分を占めるほとんどの有機色素の蛍光寿命が1~5nsの範囲であり、寿命に基づく分離が困難であるという事実と関係している。さらに、そしておそらくより重要なことは、蛍光寿命は分子環境に強く依存し、多くの色素は生体標本によく見られる水性または極性環境では蛍光寿命の短縮を示すことである。それにもかかわらず、直交コントラストとして蛍光寿命を広く使用することは実現可能であると思われる。本発明の好ましい実施形態では、色素の蛍光寿命は、以下の封入、ケージング、ダイアド形成、色素からのロタキサンの誘導、色素の例えばSMILEへの共結晶化、色素の重合、およびポリマービーズなどのナノまたはマイクロ構造への色素の組み込みのうちの1つの手段によって、環境条件に対して安定化される。
【0151】
別の好ましい実施形態では、機械学習、深層学習、または他の人工知能アプローチが、励起フィンガープリント、蛍光発光スペクトル、蛍光寿命、蛍光強度、輝度のうちの少なくとも2つの特性の組み合わせに基づいて色素を識別する分類器を訓練するために使用される。このような学習可能な分類器は、McRae TD, Oleksyn D, Miller J, Gao Y-R (2019) Robust blind spectral unmixing for fluorescence microscopy using unsupervised learning. PLoS ONE 14(12): e0225410に記載されている「Learning Unsupervised Means of Spectra」(LUMOS)に類似している可能性があり、これは、k平均クラスタリングに基づいている。
【0152】
特に好ましい実施形態では、サポートベクターマシン、古典的ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、生成的敵対ネットワーク、自己組織化マップ、ボルツマンマシン、深層強化学習、オートエンコーダを含むがこれらに限定されない機械学習、深層学習、または人工知能技術に基づく学習アルゴリズムが、それらの発光スペクトルのいずれかに基づいて色素を分離するように訓練される。
【0153】
特に好ましい実施形態では、サポートベクターマシン、古典的ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、生成敵対ネットワーク、自己組織化マップ、ボルツマンマシン、深層強化学習、またはオートエンコーダを含むがこれらに限定されない機械学習、深層学習、または人工知能技術に基づく学習アルゴリズムが、発光スペクトルおよび蛍光寿命のいずれかに基づいて色素を分離するように訓練される。これは、単純な蛍光寿命ゲーティングに基づいていてもよいか、またはより高度な蛍光寿命分析に基づいていてもよい。このアプローチのための訓練データを導出するための特に適した手段は、例えばフェーザS-FLIMであり得る(Scipioni, L., Rossetta, A., Tedeschi, G. et al. Phasor S-FLIM: a new paradigm for fast and robust spectral fluorescence lifetime imaging. Nat Methods 18, 542-550 (2021)に記載される)。
【0154】
別の好ましい実施形態では、本方法はさらに、試料のハイパースペクトル画像をキャプチャするステップを含む。限られた数の波長帯、典型的には10未満または10前後の波長帯をキャプチャするマルチスペクトルイメージングとは対照的に、ハイパースペクトル画像は、画素当たり数十または数百の波長帯をキャプチャする。言い換えれば、ハイパースペクトル画像は非常に高いスペクトル分解能を有する。これにより、発光スペクトルに基づく蛍光色素の識別がより細かくなり、それによって、本方法の感度および信頼度が向上する。
【0155】
読み出しの堅牢性
読み出しの堅牢性は重要な検討事項である。理想的には、各スポットは個別に読み出され、並行して読み出されるスポットは、検出に使用される光学系がそれらを別々のスポットとして分解できるように空間的に分離されていることを意味する。反応性/特異性の異なる2つ以上のマーカーが空間的に近接しすぎている場合、すなわち、実質的に同じ読み出し体積内に両方が位置し、同時に読み出される場合、コードされた情報の明確なデコーディングが1回のラウンドで得られないことが起こり得る。この場合、以下に述べるように、高密度に標識された試料のための戦略を採用することができる。高密度に標識された試料を、例えばゲノムワイド研究のように非常に多数のマーカーとともに使用する場合、そのような試料では複数種読み出し体積が高い頻度で発生する可能性があるが、この方法は、複数種読み出し体積を確実に検出し、含まれる情報、すなわちスポット内のマーカーの同一性を、限られたラウンド回数の繰り返しのプロセスでデコードするように適合させることができる。これは、本発明の特に好ましい実施形態であり、現在利用可能な方法よりも数桁高い、ラウンドごとに達成可能な「プレキシング」レベルという点で、先行技術に対するブレークスルーである。これは、上述したように、「繰り返しの間にコードを再割り当てすることによる一次定性的な繰り返しの複数種読み出し体積のデコーディング」または「(「コードスワッピング」)」と呼ばれる。さらに、上述したように、相対的および絶対的な定量的デコーディング/復号化を行うことも可能である。
【0156】
高密度に標識された試料のための戦略
本発明で開示される方法が、高濃度に標識された試料と併用することを意図している場合、その方法を適応させることが有益であり得る。そのような適応の1つは、核、細胞質、核細胞質、分泌タンパク質、細胞小器官上もしくは細胞小器官内に位置するタンパク質、または細胞内および細胞外の細胞膜上に位置するタンパク質など、タンパク質の位置に関する先験的知識に基づくものであり、これにより、複数のマーカーを複数のサブ複数に層別化することが可能になり、それを試料に導入し、同じラウンドで2つの異なるマーカーが同じスポットに共局在する可能性を最小限に抑える方法で、染色およびイメージングプロセスを繰り返す複数のラウンドで取得することができる。これは、Martinez et al., Scientific Reports, Volume 10, Article number: 2917 (2020)によって記載されているような拡大顕微鏡検査プロトコルと組み合わせて、試料を全室方向におよそ4倍拡大し、それによって、同じラウンドで2つの異なるマーカーが同じスポットまたは読み出し体積に共局在する確率をさらに低減することができる。さらに、セットの数nを増やすことができ、複数の色素を色素のサブ複数に分割することができ、次いで、色素の各サブ複数を使用して、マーカーの各サブ複数に対する色素の組み合わせを生成することができる。励起スペクトルおよび発光スペクトルの幅が狭い色素が増えるにつれて、より高いnおよび/またはyに対応しやすくなるだろう。超解像顕微鏡でも同様の問題が存在する。前述の問題を回避するために、標的構造の確率的標識または蛍光色素の確率的ブリンキングが使用され得る。蛍光色素のブリンキングは様々な方法で達成することができ、例えば量子ドットのような一部の色素は一般的に点滅するが、他の蛍光色素は、例えば光活性化、光スイッチ、または基底状態の枯渇によって点滅させることができる。これらの技術は、高密度に標識された試料のイメージングを可能にするために、本明細書に開示された方法に適応させることができる。特に好ましい実施形態では、DNA-PAINTを使用し、マーカーを確率的に読み出し、そうして、1~n回の読み出しをi回再び繰り返して第1の読み出しシーケンスを得る。好ましい実施形態では、確率的光再構成顕微鏡法または関連するブリンキング法が使用され、マーカーは、A~nの読み出しがi回再び繰り返されて第1の読み出しシーケンスが得られるように確率的に読み出される。
【0157】
スポット検出
色素の組み合わせを読み出すために、例えば全セクレトームプロファイリングにおけるように、本発明のいくつかの実施形態では、所与の特異性のマーカーが試料中のばらばらの位置またはスポットに位置することを確認することが好ましく、この場合、スポット検出を行うことが有用である。スポット検出は画像セグメンテーションに基づいている。スポットは本明細書の意味における特徴の一種である。色素の組み合わせは、読み出し体積の大半が単一種読み出し体積であるアッセイフォーマットでは、スポットごとに読み出されることが好ましい。
【0158】
画像セグメンテーション分析は、古典的なアプローチ、機械学習およびニューラルネットワーク/深層学習を含む人工知能ベースの技術、または閾値処理技術、次元削減技術、クラスタリング法、圧縮に基づく方法、ヒストグラムに基づく方法、エッジ検出、デュアルクラスタリング法、領域拡大法、偏微分方程式に基づく方法、変分法、グラフ分割法(例えばマルコフランダムフィールド)、流域変換、モデルベースのセグメンテーション、マルチスケールセグメンテーション、半自動セグメンテーション、様々な機械学習、ニューラルネットワークおよび人工知能アプローチ、例えば、パルス結合ニューラルネットワーク(PCNN)、畳み込みニューラルネットワーク(U-Net)、再帰ニューラルネットワーク(RNN)、ならびに例えばマルコフネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、または長期短期記憶(LSTM)などのオブジェクト共同セグメンテーション法を使用した訓練可能なセグメンテーションを含むその他の技術を使用して行うことができる。代替的に、またはそれに加えて、サイズおよび/または色および/または蛍光強度および/または蛍光寿命などの特性を使用して、画像データからマーカーの構成部分を同定することができる。同定には、ハリスコーナー、スケール不変特徴変換(SIFT)、スピードアップロバスト特徴(SURF)、加速セグメントテスト(FAST)からの特徴、および配向FASTおよび回転BRIEF(ORB)を含む様々なアルゴリズムを使用できることが知られており、画像データからマーカーの構成部分および/または特徴を同定するために使用できる。
【0159】
本方法を適用するための一般的考察
別の好ましい実施形態では、本方法はさらに、第1の励起光の後に第2の励起光を一時的に印加するステップをさらに含む。好ましくは、第1の励起光を適用してから第2の励起光を適用するまでの時間は、第1の励起光によって励起された第1のセットの蛍光色素の蛍光寿命よりも長い。これにより、第2の励起光によって励起された、第2の画像/読み出しを生成するために、第2のセットの蛍光色素によって発光された蛍光光のみがキャプチャされることが保証される。それによって、蛍光色素間のクロストークが低減され得、本方法の感度がさらに向上する。
【0160】
別の好ましい実施形態では、色素励起のための第1の波長スペクトルおよび第2の波長スペクトルのうちの少なくとも一方は、50nmよりも小さい波長範囲、30nmよりも小さい波長範囲、10nmよりも小さい波長範囲または単一波長を含む。これらの波長帯域は、例えば、蛍光顕微鏡で使用される二色性ビームスプリッタやバンドパスフィルタの典型的な範囲である。試料の照明または蛍光色素の励起のために、それぞれの波長スペクトルを生成するために、様々な方法を使用することができる。例えば、波長域をフィルタリングするバンドパスフィルタを、広い波長スペクトルを有する光を発する光源、例えば水銀ランプまたはキセノンランプと組み合わせて使用することができる。代替的に、あるいは追加的に、スーパーコンティニューム白色光を発する白色光レーザを、発光された光の1つ以上の単一波長を選択するためのAOTFと組み合わせて使用することもできる。
【0161】
別の好ましい実施形態では、各セットに固有の蛍光色素は、本質的に1つの波長スペクトルによって、または同じ波長スペクトルによって励起され得る。これにより、単一のセットの蛍光色素を、例えば狭い発光スペクトルを有する単一の光源によって励起することができる。本方法のこの実施形態は、しばしばそのような光源を含む既存の蛍光顕微鏡を用いて容易に実施することができる。
【0162】
別の好ましい実施形態では、色素A~nの単一のセットの蛍光色素は、少なくとも部分的に異なる波長範囲の発光スペクトルを含む。それによって、色素A~nの単一のセットの蛍光色素は、その発光スペクトルによって別のものと容易に区別することができる。これにより、各画像のチャネルを分離するために必要なアンミキシングの計算負荷が低減または排除され、方法がより高速かつ信頼性の高いものとなる。
【0163】
別の好ましい実施形態では、少なくとも2つの蛍光色素は、各々が色素A~nの1つのセットに固有であり、異なる蛍光寿命を有する。それによって、少なくとも2つの蛍光色素は、その寿命によって別のものと区別することができる。特に、これを利用して、画像1枚当たりのチャネル数を増やし、すなわち画像1枚当たりにより多くのマーカーをキャプチャすることができる。したがって、イメージングできるセット当たりの色素の総数が大幅に増加する。特に、既存の蛍光色素は、塩基構造を変更するか、蛍光色素を異なる分子環境に置くことによって、同様の励起および/または発光スペクトルを有するが、異なる蛍光寿命を有する誘導体蛍光色素を生成するように設計することができる。特に、既存の蛍光色素をマイクロカプセルまたはナノカプセルに封入したり、ポリスチレンのようなポリマーに包埋したり、ケージ状にしたり、例えばSMILESに共結晶化したりして、それらの分子環境を安定化させ、それによって、それらの蛍光寿命を安定化させることができる。この戦略は、蛍光寿命が異なる同じ色素種の色素のセットを生成するためにも使用できる。ロタキサン、特にスクアレンから誘導されたロタキサンは、この点で興味深い色素である。なぜなら、色素分子が大環状に絡み合うことによって分子環境が安定化し、それによって蛍光寿命が安定化するからである。
【0164】
特に好ましい実施形態では、色素または標識の少なくとも1つは、小分子イオン分離格子(SMILES)であり、これらは、例えばアニオン結合シアノスターまたは代替剤、例えばビスアミド、シクロデキストリン、テトラフェニルもしくはピレンなどの対イオンと共結晶化されたカチオン性色素からなる小結晶であり、Benson et al. 2020 Chem 6, 1978-1997, August 6, 2020に記載されている。
【0165】
特に好ましい実施形態では、色素または標識の少なくとも1つは、小分子イオン分離格子(SMILES)を含むポリマーマイクロビーズまたはナノ構造体である。
【0166】
好ましい実施形態では、色素または標識の少なくとも1つは、例えばスクアレン-ロタキサン色素のようなロタキサン色素である。
【0167】
好ましい実施形態では、色素または標識の少なくとも1つは、アンテナ部分とエミッタ部分とからなるダイアドである。
【0168】
特に好ましい実施形態では、色素または標識の少なくとも1つは、例えば核のようなリンカーによって接続されたドナーとアクセプターとの少なくとも2個の色素のFRET対である。蛍光色素の少なくとも1つは、FRETドナーとして少なくとも1つの蛍光色素を有し、FRETアクセプターとして少なくとも1つの蛍光色素を有するFRET対ベースであってもよい。FRET対は、DNA、RNA、ペプチド核酸、モルフォリノ核酸またはロック核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ヘキシトール核酸または別の形態の人工核酸、DNAナノ構造体および/またはペプチドを含むリンカーによって物理的に接続されていてもよい。
【0169】
別の好ましい実施形態では、第1および/または第2のサブ複数における少なくとも2つの蛍光色素(各々1つのマーカーに固有)は、例えば、試料の一定の第1のpH値、一定の第1の溶媒、一定の第1の酸化還元レベル、一定の第1の温度、またはリガンドの一定の第1の濃度(例えば、以下のCu(II)、Zn(II)、小分子のうちの1つの濃度を下げる)のような第1の条件において本質的に同じ波長範囲の発光スペクトルおよび本質的に同じ蛍光寿命を含み、例えば、試料の一定の第2のpH値、一定の第2の溶媒、一定の第2の酸化還元レベル、一定の第2の温度、またはリガンドの一定の第2の濃度(例えば、以下のCu(II)、Zn(II)、小分子のうちの1つの濃度を下げる)のような第2の条件において本質的に同じ波長範囲の発光スペクトルおよび本質的に異なる蛍光寿命を含む。
【0170】
本発明はまた、上記の生体試料を分析するための方法を実施するように適合された生体試料を分析するためのデバイスに関する。本デバイスは、方法と同じ利点を有し、方法を対象とした従属請求項の特徴を使用して補足することができる。本デバイスは、特に、マイクロプレートなどのアレイ形式の試料をイメージングするように構成することができる。
【0171】
好ましい実施形態では、デバイスは、フローセルを流れる試料を読み出すように構成される。
【0172】
好ましい実施形態では、本デバイスは、第1の励起光を発するように構成された第1の光源、および第2の励起光を発するように構成された少なくとも1つの第2の光源のうちの少なくとも1つを含む。代替的に、あるいは追加的に、本デバイスは、第1および第2の励起光を発するように構成された調整可能な光源を含む。好ましくは、第1の励起光および第2の励起光のうちの少なくとも一方はコヒーレント光である。
【0173】
別の好ましい実施形態では、第1および/または第2の画像(読み出し)の少なくとも2つのチャネルへの分離は、プリズムまたは回折格子と少なくとも1つの検出器とを含む分光計の少なくとも1つによって行われる。回折素子を使用して、例えば、異なる波長を単一の検出器の異なる部分に向けることによって、または異なる検出器に向けることによって、キャプチャされた蛍光光を光学的もしくは空間的に波長ごとに別個のチャネルに分離することができる。これらのチャネルは検出器のハードウェアによって作成されるので、以下では検出チャネルとも呼ぶ。共焦点走査型顕微鏡用のこのような分光計の配置例は、例えば米国特許第6,614,526号明細書に開示されている。
【0174】
別の好ましい実施形態では、少なくとも2つのチャネルへの第1および/または第2の画像(読み出し)の分離は、少なくとも1つの時間指定検出器(time-sensitive detector)によって行われる。このような検出器は、波長スペクトルだけでなく、キャプチャされた蛍光光の到達時間も記録する。それらはまた時間ゲート式、すなわち、時間ゲートと呼ばれる離散的な時間セグメント内のイベントを記録するように構成されることもあり、例えば、キャプチャされた蛍光光の到達時間から寿命情報を決定することが可能になる。それによって、発光スペクトルは著しく重複するが蛍光寿命は異なる蛍光色素を、異なるチャネルに確実に分離することができる。これにより、1つのサブ複数にグループ化できる、すなわち同時にイメージングできるマーカーの数がさらに増加する。
【0175】
本発明はさらに、上述の生体試料を分析するためのデバイスを含む顕微鏡システムに関する。顕微鏡システムは、好ましくは、レンズレス顕微鏡、ライトフィールド顕微鏡、ワイドフィールド顕微鏡、蛍光ワイドフィールド顕微鏡、ライトシート顕微鏡、走査型顕微鏡、または共焦点走査型顕微鏡である。
【図面の簡単な説明】
【0176】
以下、図面を参照して具体的な実施形態を説明する。
【
図1】2つの蛍光色素および一般的に使用される親和性試薬を概略的に示す図である。
【
図2】分光計および分散光学素子の概略図を示す図である。
【
図3】同じ励起光で励起可能な色素のセットが、直交する次元を使用してどのように識別され得るかを概略的に示す図である。
【
図4】ゲーティング、アンミキシング、トポグラフィカルアプローチ、フェーザベースのアプローチに基づく色素分離のための様々なアプローチを概略的にまとめた図であり、これらのアプローチは、色素分離分類器を訓練するためにML/DL/AIアプローチと組み合わせてもよいし、組み合わせなくてもよい。
【
図5】セットにグループ化された複数の直接色素コンジュゲートマーカーを概略的に示す図である。
【
図6A】異なる励起光で励起可能なn個の色素のセット(セットA~セットn)にグループ化された複数の色素y
A+y
B+y
C...+y
nを概略的に示す図である。
【
図6B】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)との関係を概略的に示す図である。
【
図6C】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)との関係を概略的に示す図である。
【
図6D】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)と、複数のマーカー(M)との関係を概略的に示す図である。
【
図6E】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)と、複数のマーカー(M)との関係をさらに概略的に示す図である。
【
図6F】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)と、複数のマーカー(M)との関係をさらに概略的に示す図である。
【
図6G】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)と、複数のマーカー(M)との関係をさらに概略的に示す図である。
【
図6H】複数の色素(Y
D)と、複数の色素の組み合わせ(S
1)と、複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)と、複数のマーカー(M)との関係をさらに概略的に示す図である。
【
図7A】複数の色素(y
A+y
B+y
C...+y
n)を使用して固有のコード(セットベースおよびバイナリーコンビナトリアルコーディング)を生成する異なる方法を概略的に示す図である。
【
図7B】複数の親和性試薬(A=S
2=T
1*)を概略的に示す図である。
【
図7C】連続励起を使用したコード読み出しのスキーム(セットベースおよびバイナリーコンビナトリアルコーディング)を概略的に示す図である。
【
図8】固有のオリゴヌクレオチド配列バーコードを有する色素の単射写像または組み合わせのペアを概略的に示す図である。
【
図9】親和性試薬とレポーターとからなるマーカーによって結合された標的分子を概略的に示す図である。
【
図10A】同じ色素種の複数のコピーがどのようにマーカーに接続されるかを概略的に示す図である。
【
図10B】マーカーに関する情報がデータベースおよびメモリデバイスにどのように記憶されるかを概略的に示す図である。
【
図11】親和性試薬が抗体であるマーカーの連続読み出しの例を概略的に示す図である。
【
図12】親和性試薬がオリゴヌクレオチドプローブであるマーカーの配列読み出しの例を概略的に示す図である。
【
図13】回折限界未満のサイズのレポーターについて、レポーター内またはレポーター上の色素の空間的配置に対する読み出しの独立性を概略的に示す図である。
【
図14】利用可能な色素および検出器技術を使用して達成可能な、異なるnおよびy
A+y
B+y
C...+y
nで達成可能な固有のコードの数を示す棒グラフを示す図である。
【
図16】親和性試薬と色素との相対的なサイズを示す概略図を示す図である。
【
図17】抗体、10nm量子ドット、および1.4NA対物レンズのPSFの相対的なサイズを示す概略図を示す図である。
【
図18】繰り返しの染色プロセスを説明するフローチャートを示す図である。
【
図19】ヒドロゲルで満たされたウェル内またはヒドロゲルビーズ内の細胞の概略図を示す図であり、捕捉試薬はヒドロゲルにカップリングしている。
【
図20A】ヒドロゲルまたはヒドロゲルビーズで満たされたウェル内の細胞の概略図を示す図であり、捕捉試薬はヒドロゲルに包埋されたマイクロビーズにカップリングしている。
【
図20B】ヒドロゲルまたはヒドロゲルビーズで満たされたウェル内の細胞の概略図を示す図であり、捕捉試薬はヒドロゲルに包埋されたマイクロビーズにカップリングしている。
【
図21】ヒドロゲルで満たされたウェル内またはヒドロゲルビーズ内の細胞の概略図を示す図であり、複数のスポットが読み出され、デコードされ、カウントされて、その細胞の分泌プロファイルを導出する。
【
図22】スポット検出および分析パイプラインのフローチャートを示す図である。
【
図23】試料キャリアおよび読み出しデバイスのウェル内にある細胞の概略図を示す図である。
【
図24】フローセルを流れる間に、サイトメータまたはイメージングサイトメータまたは顕微鏡によって読み出されたヒドロゲルビーズ内の細胞の概略図を示す図である。
【
図25】サイトメータを用いたビーズベースのアッセイ読み出しの概略図を示す図であり、マイクロビーズに共有結合した捕捉試薬が標的タンパク質を捕捉し、次いでその標的タンパク質はマーカーによってマークされている。
【
図26】標的分子または分析物の存在を検出するビーズベースアッセイと、標的分子と相互作用する分子を検出するビーズベースアッセイの概略図を示す図である。
【
図27】サイトメータを用いた細胞ベースアッセイ読み出しの概略図を示す図であり、マーカーが細胞表面で発現する分子に結合している。
【
図28】単一種読み出し体積と複数種読み出し体積との違いを概略的に示す図である。
【
図29】第1の励起光で励起された色素を含む複数種読み出し体積と、その結果得られる第1の読み出しシーケンスを概略的に示す図である。
【
図30】色素ブリンキングおよび局在化顕微鏡法に基づいて、異なる方法で複数種読み出し体積のデコーディングをレンダリングするための戦略を概略的に示す図である。
【
図31】y
A=y
B=y
C=y
D=y
E=10およびn=5の例について、異なるコードC
iまたは暗号X
iがyおよびaに与える影響を概略的に示す図である。
【
図32】第1の読み出しシーケンスの異なる例がκに与える影響を概略的に示す図である。
【
図33A】全ての固有のコードまたは色素の組み合わせを含む「複数の色素の組み合わせ(S
1)」と、ソートされていない第1の「マーカーに割り当てられた色素の組み合わせのセット」とを概略的に示す図である。
【
図33B】全ての固有のコードまたは色素の組み合わせを含む「複数の色素の組み合わせ(S
1)」と、ソートされていない第2の「マーカーに割り当てられた色素の組み合わせのセット」とを概略的に示す図である。
【
図33C】全ての固有のコードまたは色素の組み合わせを含む「複数の色素の組み合わせ(S
1)」と、ソートされていない第3の「マーカーに割り当てられた色素の組み合わせのセット」を概略的に示す図である。
【
図34A】第1の読み出しシーケンスの下に包含可能なものと包含不可能なものとにソートされた「複数の色素の組み合わせ(S
1)」を概略的に示す図である。
【
図34B】第2の読み出しシーケンスの下に包含可能なものと包含不可能なものとにソートされた「複数の色素の組み合わせ(S
1)」を概略的に示す図である。
【
図34C】第3の読み出しシーケンスの下に包含可能なものと包含不可能なものとにソートされた「複数の色素の組み合わせ(S
1)」を概略的に示す図である。
【
図35A】第1のラウンドにおける例示的なマーカーμ2015を概略的に示す図である。
【
図35B】第2のラウンドにおける例示的なマーカーμ2015’を概略的に示す図である。
【
図35C】第3のラウンドにおける例示的なマーカーμ2015’’を概略的に示す図である。
【
図36A】全てのラウンドでκ=1000およびψ=100,000の場合に、2~5回の繰り返しで同じ非存在マーカーを観察する確率の例を示す棒グラフを示す図である。
【
図36B】複数の繰り返しで同じ非存在マーカーを観察する確率pに及ぼすψおよびκの影響を示す例を示す図である。
【
図37】マルチスポット一次定性的デコーディングの繰り返しのワークフローを示す図である。
【
図38A】強度情報が二次定性的デコーディングおよび定量的デコーディングにどのように使用されるかを概略的に示す図である。
【
図38B】第1の読み出しシーケンスが、マーカーに割り当てられ、読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの数を減らす強度閾値化され得る方法を概略的に示す図である。
【
図39】直接コンジュゲートリンカーオリゴヌクレオチドと間接オリゴヌクレオチドカップリング色素とを有するマーカーを概略的に示す図である。
【
図40】複数の色素非特異的カップリング部位または付着部位を含むリンカー上にコンビナトリアル蛍光コードをアセンブリする方法を概略的に示す図である。
【
図41】化学量論的な色素カップリングを保証する、複数の色素特異的カップリング部位または付着部位を含むリンカー上にコンビナトリアル蛍光コードをアセンブリする方法を概略的に示す図である。
【
図42】複数の色素非特異的カップリング部位または付着部位を含むマイクロ/ナノビーズ上にコンビナトリアル蛍光コードをアセンブリする方法を概略的に示す図である。
【
図43】組み合わせ蛍光コードをマイクロ/ナノビーズまたはマイクロ/ナノカプセルに封入する方法を概略的に示す図である。
【
図44】リンカーペプチド、ポリマー、またはオリグヌクレオチドを使用してSMILESの組み合わせを親和性試薬に連結する方法を概略的に示す図である。
【
図45】付着プラットフォームとしてナノ構造体を使用してSMILESの組み合わせを親和性試薬に連結する方法を概略的に示す図である。
【
図46】SMILESをマイクロ/ナノビーズに組み込むことができる方法を概略的に示す図である。
【
図47】SMILESをマイクロ/ナノカプセルに組み込むことができる方法を概略的に示す図である。
【
図48A】オリゴヌクレオチド、ポリマー/ペプチド、ナノルーラ/DNA折り紙ベースのナノ構造リンカーを概略的に示す図である。
【
図48B】ペプチド-リンカーおよびオリゴヌクレオチド-マイクロビーズ-リンカーの例を概略的に示す図である。
【
図49】親和性試薬にリンカーをカップリングするための種々のオプションを概略的に示す図である。
【
図50A】読み出しデバイスの主要機能ユニットと一部オプションの機能ユニットを概略的に示す図である。
【
図51】スペクトルの重複がかなりある3個の色素を示す図であり、励起スペクトルイメージングによってアンミキシングすることができ、上の図は3個の色素の励起スペクトルを示し、下の図は3個の色素の発光スペクトルを示し、示した色素は、本発明での使用に適している。
【0177】
詳細な説明
図1は、円として表されたラベル100と名付けることもできる先行技術の蛍光色素を概略的に示しており、左半分102は、同じ左半分パターンを有する色素が同じ励起光で励起可能であるように、励起スペクトルを示す/反映するパターンで満たされており、右半分104は、例えば蛍光発光スペクトル、蛍光寿命、蛍光偏光、輝度、および励起フィンガープリントを含む、読み出しを行うために使用されるデバイスによって色素を互いに識別するために個別または組み合わせて使用され得る全ての特性を示す/反映するパターンで満たされており、そのため、同じ右半分で描かれた2個の色素は、読み出しに使用されるデバイスによって識別できないようになっている。
図1は、2つの蛍光色素100a,100bを示す。各蛍光色素は、実線の境界線を有する円100a,100bとして描かれている。各円100a,100bは、異なるハッチングを施した2つの半円102a,102b,104a,104bに分割されている。左半円102a,102bのハッチングの種類は、それぞれの蛍光色素100a,100bが励起可能な励起光を示し、すなわち、ハッチングが同じ種類の左半円102を有する蛍光色素は、同じ波長スペクトルまたは同じ単一波長を有する励起光で励起可能である。右半円104のハッチングの種類は、例えば、発光スペクトル、蛍光寿命、励起フィンガープリントを含む、データ取得ステップまたは読み出し中に使用されるイメージングシステム上での識別に使用できるそれぞれの蛍光色素100の特性を示す。これは、ハッチングが同じ種類の右半円104を有する蛍光色素100が、同じまたは本質的に同じであり、すなわち区別できない発光特性を有する。
【0178】
例えば、発光スペクトルおよび蛍光寿命などの直交するコントラストを提供する読み出しは、1種類のコントラストのみを提供する読み出しと比較して、より多くの色素を区別することができるため、これは概念的に読み出しに依存することに留意することが重要である。
図1はさらに、色素100への直接コンジュゲーションにより標識される、シングルドメイン抗体108、多量体化された(シングルドメイン)抗体110、従来の抗体112、アプタマー114、オリゴヌクレオチド116、毒素/薬物/薬物様分子/小分子(例えばビオチン)118を含む、一般的に使用される広範な親和性試薬106を示す。同じ親和性試薬に、ペプチドタグ、ハプテンまたはオリゴヌクレオチドをタグ付けすることもできる。
図1はさらに、オリゴヌクレオチド120への直接コンジュゲーションにより標識される、シングルドメイン抗体108、多量体化された(シングルドメイン)抗体110、従来の抗体112、アプタマー114、オリゴヌクレオチド116、毒素/薬物/薬物様分子/小分子(例えばビオチン)118を含む、一般的に使用される広範な親和性試薬106を示す。
【0179】
本明細書の意味において、124は、二量体のみならず、多量体化された(シングルドメイン)抗体一般を表すものとする。このような組み合わせ124は、他の方法では得られない特異的親和性(二重特異的反応性)を達成するため、またはアビディティを増加させるために操作することができる。
【0180】
直接的および間接的な免疫蛍光標識は、タンパク質、RNA、DNA、およびその他の分子などの分子標的の存在を分析するために、ライフサイエンス研究および診断的適用で広く使用されている。典型的には、このような蛍光ベースのアッセイは、プレートリーダ、高含量スクリーニングデバイス、顕微鏡、サイトメータ、または蛍光活性化セルソータのうちの少なくとも1つを使用して読み出される。
【0181】
蛍光マルチカラーイメージングを実行するために使用される読み取りデバイスは、典型的には、励起光を生成するための少なくとも1つの光源、少なくとも1つの検出チャネルを含む検出システムを含み、さらに、励起光を試料に、試料からの発光を検出システムに、かつ/または検出器の適切な領域に導くためのフィルタおよび/または分散光学素子、例えばプリズムおよび回折格子を含むことができる。
【0182】
図2は、分散光学素子(例えばプリズムまたは回折格子)204,206と、複数のチャネル208を有する検出器とを備えた2つの検出システムを概略的に示している。本明細書の意味における検出システムは、複数の検出チャネルからなっていてもよく、スペクトルの複数の帯域を並行して検出するスペクトル検出器であってもよいし、スペクトルの連続部分を検出するハイパースペクトル検出器であってもよい。検出システムは、点検出器(例えば、光電子増倍管、アバランシェダイオード、ハイブリッド検出器)、アレイ検出器、カメラ、ハイパースペクトルカメラであってもよい、少なくとも1つの検出器を含む。検出システムは、典型的にはサイトメータのケースのようにチャネルごとに強度を記録するものであってもよいし、プレートリーダまたは顕微鏡のケースのように画像を記録する画像検出システムであってもよい。
【0183】
読み出しデバイスにより、所与のランで所与の生体試料から一定数の色素を分析することが可能になる。この数は、典型的には、読み出しデバイスが提供するように構成されている検出チャネルの数n、すなわちスペクトル分解、または識別できる数に依存する。顕微鏡の場合、検出チャネルの数は、カメラベースのワイドフィールド検出(例えば、ワイドフィールド落射蛍光顕微鏡、スピニングディスク顕微鏡、ライトシート蛍光顕微鏡)の場合、一般的に4~5であり、励起または発光フィンガープリンティングおよび(スペクトル/線形)アンミキシングに典型的には依存するスペクトル検出コンセプトを有する顕微鏡の場合、5~12検出チャネルである。複数の蛍光体、量子ドット、および/または蛍光タンパク質からの発光を検出し、検出された光子を対応する蛍光体、量子ドット、および/または発光させる蛍光タンパク質に割り当てるために、読み取りデバイスは様々な戦略を採用することができる。発光フィルタは、スペクトルの所望の帯域を検出器に導くために一般的に使用される。複数の発光フィルタをフィルタホイールに取り付け、検出器に到達する発光光の帯域を迅速に変更できるようにするのが一般的である。代替的に、または追加的に、
図2に概略的に示す分散光学素子により、生体試料から発光された光200を分光することもできる。プリズム204および回折格子206はいずれも、例えば顕微鏡、サイトメータ、およびプレートリーダのような読み取りデバイスにおける励起および放出ビームのルーティングおよびスペクトル分離に広く使用されることができる。検出側では、プリズム204および回折格子206は、発光光202をスペクトル分離し、それを複数の点検出器(例えば、光電子増倍管、アバランシェダイオード)、アレイ検出器、カメラまたはハイパースペクトル検出器からなり得る適切な検出器208にルーティングするために、単純またはより複雑な配置で使用することができる。検出システムの構成に応じて、読み取りデバイスは、多数のn個の色素からの発光を確実に分離することができる。このようにして、現在使用されている読み取りデバイスでは、この数nが、それぞれの読み取りデバイスで1ラウンド当たりに取得できる分子マーカーの数を決定する。スペクトル特性に基づいて色素を分離する代わりに、またはそれに加えて、蛍光寿命τを使用することも可能であり、これは、寿命を測定するように構成されたデバイス、すなわちパルスレーザ光源および時間分解検出器を備えたデバイスで蛍光発光を分離するための手段である。
【0184】
図3は、PCT/EP2021/063310に開示される概念の一部を概略的に示したものであり、複数の蛍光色素のn個のセットから蛍光色素の1個のセットの励起および発光特性が概略的に示されている。
図6Aに示すように、蛍光色素のセットは、セット内の各色素が同じ励起光、シングルバンド、マルチバンド、単一波長、または複数の波長で励起され得るように構築される。蛍光色素のセットは、読み出しデバイスおよび読み出しソフトウェアによって色素が互いに識別できるように構成される。これは、より多くのチャネルを有する読み出しデバイス、特に直交コントラストを提供する読み出しデバイスでは、より多くの色素をチャネルに明確に割り当てることができることを意味している。
図3に示す例では、励起線A、例えば390nmで励起可能な蛍光色素のセットには15個の色素が含まれ、それらは蛍光寿命によって3つのグループまたはゲート(τゲーティングもしくはτアンミキシングに基づく)304a,304b,304cに分離され、各グループは発光スペクトルに基づいて互いに識別可能な5個の蛍光色素を保持する。
【0185】
図3は、選択的に励起可能な色素のn個のセットを形成する原理、すなわち、セットAからの色素は励起光Aによって励起可能であるが、励起光B~nでは実質的に励起可能でないn個のセットを形成する原理を、各セットの色素の数が異なる可能性がある場合には、1セット当たり最大y個の色素、または最大y
A,y
B...y
n個の色素を区別することができる読み出しと組み合わせて利用する先行技術の例を概略的に示している。
【0186】
図4は「トポグラフィカルアプローチ」400を概略的に示しており、例えばスペクトルは蛍光寿命および強度に対してプロットされ、同じパターンの線は、同じ色素種402a,402b,402cの(正規化された)強度の異なるレベルに対応する。トポグラフィカルアプローチは、分類器を訓練することによる、機械学習、深層学習もしくは他の形態または人工知能ベースの色素分離に特に適している。このような訓練は教師ありまたは教師なしとすることができる。この「トポグラフィ」が提供するリッチテクスチャは、これらのアプローチにとって理想的な入力である。強度および/または発光スペクトルおよび/または蛍光寿命のような情報を使用した色素分離のためのフェーザベースのアプローチ404も同様に、古典的な色素分離アルゴリズムまたはアプローチだけでなく、機械学習、深層学習もしくは他の形態または人工知能ベースの色素分離の両方にも適している。ここでも、このようなトレーニングは教師ありまたは教師なしとすることができる。
【0187】
図5は、親和性試薬の固有の特異性と複数の色素に固有の色素との間の1:1の関係を活用する当該技術分野で公知の実施例を概略的に示しており、これは、色素100がチャネルに対応し、この場合マーカーに対応することを意味している。本発明は、親和性試薬の固有の特異性と固有の色素との間のこの1:1の関係を変更し、それを1回のラウンドにおけるマーカーと色素の組み合わせとの間の単射または優先的には全単射(すなわち1:1の対応)の関係、および複数回のラウンドにわたるマーカーと複数の色素の組み合わせとの間の1:多数の関係に概念的に置き換える。例えば、PCT/EP2021/063310に記載されているようなアプローチを複数の色素(n=5およびy
A=y
B=y
C=y
D=y
E=10)で使用すると、50個の色素100、したがって50個の異なる反応性/特異性500の50個のマーカーの読み出しまたはイメージングが可能になる。このことは、1回のラウンドで読み出すことができるマーカーの数、および全体的な数、すなわち、大多数のユーザにとって受け容れ可能であり得、1~25回の繰り返しの範囲内であり得る繰り返し回数のある実験で読み出すことができるマーカーの数に関して、本発明の強力な利点を示している。例えば、ゲノムワイドな読み出し(約20,000個のタンパク質がタンパク質コード遺伝子当たり約1個の分子標的/分析物に対応)は、本発明では、たった2回のラウンドで可能であり、大多数の適用において、大多数のユーザにとって一般的に受け容れ可能になり得るp値を得ることができる。さらに重要なことは、p値はさらにラウンドを重ねるごとに指数関数的に改善され、非常に強力な方法となり得ることである。その核心は、ゲノムワイドな読み出しに必要なマーカーの数が多いが限られているのとは対照的な、固有のコード(複数の色素の組み合わせS
1)のセットのカーディナリティが指数関数的に増加することに関連している。
【0188】
図6Aは、励起光A~nによる励起性に基づいて、色素A~nのセット600にグループ化された複数の色素と、各セットのy
A~y
nメンバーとを示している。描かれているように、複数の色素は、y
A+y
B+y
C...+y
n=y
σメンバーまたは要素を含む。励起光の量はnであり得るが、色素の量は上記に示したようにnとは異なる値を有し得る。
【0189】
図6Bおよび
図6Cは、複数の色素Y
D間の関係を概略的に示しており、そこから、複数の色素の組み合わせS
1における各色素の組み合わせが固有であり、複数の色素の組み合わせS
1が、好ましくは、最大量の要素(すなわち、色素の組み合わせ)を含むように、ある「色素の組み合わせを形成する規則」に従って色素の組み合わせ602を構成することによって複数の色素の組み合わせS
1が形成され、これは、それぞれの「色素の組み合わせを形成する規則」によって形成され、または言い換えれば、複数の色素の組み合わせS
1ψのカーディナリティが最大となるように、好ましくは、色素の組み合わせを、それらが固有でランダムに分布するように構成することになる。多くの異なる「色素の組み合わせを形成する規則」がこの方法と互換性がある。
図6Bはさらに、コードC
1,C
2,C
3,...C
nおよび/または暗号X
1,X
2,X
3,...X
nを使用した、複数の色素の組み合わせS
1と複数の親和性試薬A=S
2=T
1*との間の写像、すなわちエンコーディングまたは暗号化を示している。エンコーディングおよび/または暗号化は、ケースαおよびケースβとして示される異なる方法で実行することができる。いずれの場合も、使用されるコードC
1,C
2,C
3,...C
nおよび/または暗号X
1,X
2,X
3,...X
nは、好ましくは全単射および代替的には単射である全関数である。
【0190】
図6Dは、親和性試薬の色素の組み合わせへの割り当てもしくは写像、またはその逆を概略的に示している。上の図は、全単射写像に似た両矢印を示しており、これは、a
i-s
iのペアがエンコーディング/復号化によって形成されることを意味し、言い換えれば、複数の親和性試薬A=S
2=T
1*の要素a
iと複数の色素の組み合わせS
1からの要素s
iとの間に1対1の対応が存在することを意味している。単射の場合も同様に許容されるが、明瞭化のために図では視覚化していない。さらに
図6Dは、複数の親和性試薬A=S
2=T
1*の親和性試薬a
iを、複数の色素の組み合わせS
1からの色素s
iの組み合わせに割り当てること(エンコーディング/暗号化)、またはその逆が、複数のマーカーMからのマーカーμ
iをどのように導くかを示している。この割り当てが純粋に仮想的なものである限り、マーカーは仮想マーカーとみなすことができるが、物理的相関物、すなわち例えば抗体分子のようなある親和性試薬が、例えば特定の色素の組み合わせまたはあるレポーターのような色素の組み合わせの相関物に物理的にカップリングしている場合、マーカーは「物理マーカー」とみなすことができる。
【0191】
図6Eは、親和性試薬と色素の組み合わせ、またはその逆を1対1(1:1)で割り当てもしくは写像することを概略的に示している。このような写像は、「全単射」と表現され得る。
【0192】
図6Fは、色素の組み合わせに対する親和性試薬の1対多の割り当てまたは写像を概略的に示している。このような写像は「少なくとも単射型」と表現され得る。
【0193】
複数の親和性試薬Aからの少なくともいくつかの親和性試薬aは、複数の色素の組み合わせS
1からの色素の組み合わせsに固有に割り当てられる。いずれの写像でも、色素の組み合わせsは、複数のアフィニティー試薬Aから2つ以上のアフィニティー試薬aに割り当てられない。しかしながら、1対多の写像では、複数の親和性試薬Aからの要素a
jは、複数の色素の組み合わせS
1からの2つ以上の色素の組み合わせsに割り当てられ得る。この場合、a
jを含む複数の順不同のペアが形成され、各々が所与のマーカーに対応する。例えば、マーカーμ
h={a
j,s
f}、μh’={a
j,s
z}、μ
h’’={a
j,s
r}は、同じ親和性試薬a
jを共有する3つの異なるマーカーであってもよい(例えば、同じラウンドまたは異なるラウンドにおいて)。このような場合、所与の標的は、色素の組み合わせsが異なる複数のマーカーによってアドレス指定されることになる。さらに、同じ所定の構造または分析物に結合する複数の親和性試薬Aから、異なる親和性試薬aを使用して、同じ標的を複数のマーカーでアドレス指定することもできる。代替的に、または追加的に、複数の親和性試薬Aからの親和性試薬aと複数の色素の組み合わせS
1からの色素の組み合わせsとの間の順序付けられたペアが形成される。
図6Gおよび
図6Hに、全単射のペアリングを形成するマーカーの例示的な図を示している。親和性試薬または色素の組み合わせが2つのマーカーで共有されることはないため、示されたペアリングは全単射、すなわち1対1である。
【0194】
図7Aは、複数の色素Y
D,702からの「色素の組み合わせを形成する規則」の2つの異なる例を概略的に示している。本発明の特に好ましい実施形態では、各色素はバイナリコード704bの数字700に対応し、このバイナリコードは、各コードブロック/コードセグメント706に単一の「1」が含まれるように、色素A~nのセットに対応するコードブロック/コードセグメント706で構成されるデジタルコードであり、そのため、各色素の組み合わせはn個の色素を構成する/含む。言い換えれば、例えば励起線1~5が405nm、488nm、560nm、630nm、700nmである場合、色素A~nのセットに対応する各ブロックにおいて、エンコーディングは、色素の組み合わせに含まれるように、そのセット内の色素の1つをランダムに選択する。例えば、405nm-Atto930;488nm-Atto490 LS;560nm-Alexa Fluor 564、630nm-Alexa 633nm、700nm-Atto690。この場合、エンコーディングは、複数の色素の組み合わせS
1における色素の組み合わせy
A×y
B×y
C...×y
nを提供する。
【0195】
「セットベースのエンコーディング」および「バイナリエンコーディング」は、特定の「色素の組み合わせを形成する規則」に基づいている。「セットベースのエンコーディング」では、複数の色素YDからの色素yは、それぞれの励起光A~nで励起可能なセットA~nにグループ化される。組み合わせは、複数の色素S1における色素の組み合わせの数が最大になるように、かつ各色素の組み合わせが複数の色素の組み合わせに固有のものとなるように、各セットA~nから1個の色素を選択することによって形成される。セットベースのエンコーディングでは、各色素の組み合わせは、n個のメンバーを有するnタプルである。「バイナリエンコーディング」では、「色素の組み合わせを形成する規則」は、複数の色素y1,y2,y3,...yσからの各色素が、バイナリコードの特定の数字700に対応するようなものである。この好ましい実施形態による「バイナリエンコーディング」では、各色素の組み合わせは1~yσのメンバーを構成するか、またはそれを含む。
【0196】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、各色素は、ランダムに選択されかつ1~yA+yB+yC...+yn=yσの可変数の色素を各コード704bが構成し得る/含み得るように、数字700に対応する。これは、本明細書では「バイナリエンコーディング」と命名され、複数の色素の組み合わせS1における色素の組み合わせの数が2(yA+yB+yC...+yn)になる。
【0197】
コンビナトリアルコーディングは先行技術に記載されているが、使用できる色素の数が5個程度に限られていたため、得ることができるコードの数は限られていた。本明細書で開示される方法を使用して、市販の蛍光色素から、市販の読み出しデバイスを使用して読み出すことができる25個以上のメンバーを有する複数の色素を定義することが実現可能である。利用可能な検出器および色素技術を使用して、専用の読み出しデバイスを使用して読み出すことができる、利用可能な蛍光色素から120個以上のメンバーを有する複数の色素を定義することが、本明細書に開示された方法に基づいて実現可能である。これは、例えばn=8(例えば励起線1~8:360nm、405nm、440nm、488nm、560nm、590nm、630nm、700nm)励起線を使用して、yA=yB=yC...=yn=15の色素のセットを3τクラスにグループ化し、各τクラスが十分にスペクトル的に分離された5個の色素を保持するようにした場合に実現可能である。この場合、カーディナリティ、すなわち、色素の組み合わせのセットでエンコードされ得る色素の組み合わせの数は、セットベースのエンコードの場合は25.6億個の色素の組み合わせの範囲であり、バイナリエンコーディングの場合は1.33×1036のオーダーである。この数は、例えばヒトゲノムのタンパク質をコードする遺伝子の数の概算である20,000~30,000個よりもかなり多いが、それでも、このように利用可能なコードの数が多い方が、実際に使用されるのはごく一部となるように実験を設定できるので、望ましい場合がある。20,000個の標的分子αを分析するために、n=8およびy=15のセットをこの方法で使用する場合、セットベースのエンコーディングの例では、25億6,000万通りの色素の組み合わせの場合、利用可能なコードの約0.00078%にすぎない。同じ例でバイナリエンコーディングを使用した場合、固有のコードのセットから実際にマーカーに割り当てられた色素の組み合わせの割合αは、0.000000000000000000000000000002%の範囲になる。これは、既存の色素および読み出し技術に基づいてすでに達成可能な状況であることに留意することが重要である。非常に小さいαを扱うということは、ランダムに割り当てられた色素の組み合わせのセットのエントロピーがより高くなり、ひいてはデコーディングがより容易になることを意味する。また、αが小さければ、タイプIIの偽陽性を何度も観測する確率が低くなり得る。
【0198】
本発明の特に好ましい実施形態では、この戦略は、高密度に標識された試料中のスポットの読み出しを改善するために使用される。
【0199】
図7Bは、複数の親和性試薬の例を概略的に示している。
【0200】
図7Cは、例えば、リンカーと色素602c,dの組み合わせとを含むレポーターを含むマーカー708によって結合された単一の標的分子を含む試料中の所与の読み出し体積が、単一の1~nの取得シーケンス710でどのように読み出されるかを概略的に示している。n=5の色素のセットは、例えば、405nm(セットA)、488nm(セットB)、565nm(セットC)、630nm(セットD)、700nm(セットE)で励起されてもよく、または逆の順序もしくは異なる順序で励起されてもよい。これらの励起波長に対して、スペクトル的に分離可能な、またはスペクトルと蛍光寿命情報とを組み合わせることによって分離可能なy
A=y
B=y
C=y
D=y
E=5の色素メンバーを有する色素のセットは、市販の蛍光色素から容易に構築することができる。
図7Bに示すように、蛍光色素は、好ましくは連続的に励起され、そのため、全ての色素が励起され、それらの蛍光発光が1ラウンドの読み出しで少なくとも1回検出されるようにする。
【0201】
図8は、色素の組み合わせ706a,706b,706cが固有のオリゴヌクレオチド配列バーコード(UOSB)800a,800b,800cに1:1の関係で写像されている本発明の特に好ましい実施形態を示している。これは、色素の組み合わせ706a,706b,706cを、対応する相補的配列バーコード800a,800b,800cを有する特定のマーカーに可逆的に連結することを可能にするので有利である。これは、色素の組み合わせのライブラリーを構築し、オリゴヌクレオチドのライブラリーに接続できることを意味する。親和性試薬をこのプロセスに適合させるには、親和性試薬に相補的配列バーコード(UOSB)を付着させるだけでよい。この実施形態は、以下に述べるように、複数のラウンド間にエンコーディングに変更する繰り返しのプロセスにうまく適している。
【0202】
図9に示すように、オリゴヌクレオチド配列バーコードもまた、異なる色素種に使用することができ、この場合、配列906a*,906b*,906c*は、コンジュゲート色素をリンカー上の相補的結合部位906a,906b,906cに向け、これらは、DNA、RNA、LNA、モルフォリノまたは他の人工核酸のオリゴヌクレオチドもしくはより長い配列を含むリンカー902である可能性が高い。複数の異なる要素を含んでいてもよいリンカー902と色素の組み合わせとを合わせてレポーター908を構成する。
図9はさらに概略的な例を示している:標的分子または分析物900は、対応する特異性500を有する親和性試薬によって結合される。これは、図中、両者に共通するパターンによって概略的に描かれている。親和性試薬はさらに、リンカー902に直接または間接的に接続され、これは、蛍光色素または標識100A~100Eを含むレポーターの配列906a*~906e*に相補的な付着部位906a~906eの固有のバーコードを含んでいる。リンカーはさらに任意に切断部位904を含むことができる。
【0203】
図10Aは、同じ種の複数の色素が、オリゴヌクレオチド、ペプチド、または特に糖であり得るツリー状構造に付加され得ることを示している。レポーターの配列906a*は、
図9および
図10Aの左側に1008aとして示されているように、単一の蛍光色素または標識100Aに付着させることができる。代替的に、レポーターの配列906a*は、
図10Aの右側に1008bとして示されているように、複数の蛍光色素または標識100Aを含むツリー状構造に付着させることができる。
【0204】
図10Bは、色素の組み合わせ、および/または色素の組み合わせ、親和性試薬、マーカー、標的分子の少なくとも1つに関連する情報が、固有の識別子(固有のID)およびDye_IDによって同定されるそれが含む色素などの関連情報、ならびに割り当てられたマーカーに関する情報とともに、データベースおよび/またはメモリデバイスにどのように保存され得るかを概略的に示している。これには、リンカー、レポーター、マーカーおよびUOSB(固有のオリゴヌクレオチド配列バーコード)に関する情報、ならびに色素特異的配列バーコードを使用することによって色素が付着されるオリゴヌクレオチドリンカー402が使用される場合には、さらなる配列バーコードが含まれ得る。メモリデバイスに記憶された情報はさらに、検証データ、推奨希釈度、起源種、交差反応性に関するデータ、標的分子、一般的に使用される遺伝子、転写産物およびタンパク質データベースへのアクセッションなどの親和性試薬に関する情報を含むことができる。
図10Bはさらに、112のようなマーカーに関連するどのタイプの情報がどこに記憶され得るかを概略的に示している。リレーショナルデータベースは、効率的な方法で関連情報を追跡するために使用することができ、これは迅速な検索とメモリデバイス上の最小限のメモリを必要とする記憶とを可能にする。
【0205】
図11は、標的分子に結合したマーカーの連続読み出しを示しており、親和性試薬は抗体であり、標的分子はタンパク質である。読み出しは、1~nで示される読み出し/取得シーケンス710によって、マーカーがそれぞれの分析物に特異的に結合している生体試料に向けて異なる波長の励起光を向けることによって達成される。
図12は、
図11と同じプロセスを概略的に示しているが、核酸標的、例えばDNAまたはRNA標的を用い、これは、DNA、RNA、PNA、LNA、モルフォリノ、または他の形態の人工核酸を含み得る相補的オリゴヌクレオチドマーカーとハイブリダイゼーションすることによって結合させる。
【0206】
図12は、標的分子に結合したマーカーの連続読み出しを示しており、親和性試薬はオリゴヌクレオチドであり、標的分子はDNAまたはRNA配列である。
【0207】
図13は、3つのスポットまたは読み出し体積についての
図11と同じプロセスを概略的に示しており、リンカーオリゴヌクレオチドバーコード上のレポーターオリゴヌクレオチドの空間的位置決めからのコンビナトリアルコードの独立性を示している。読み出し体積K,MおよびPは、各々同じ特異性を有する1つのマーカー分子と結合した各々同じ種の単一の標的分子を含むが、色素の同じ組み合わせに対する付着部位が異なって配置されるリンカーを有している。図示したように、色素の配置に関係なく、色素の間隔が実質的に読み出し体積の範囲内にある限り、すなわち検出のために使用される光学系によって空間的に分解されない限り、この場合、読み出し体積K,M,Pについて同じ読み出しシーケンスが得られる。
【0208】
図14の棒グラフに示されているように、また上述したように、エンコーディングの指数関数的性質が、このアプローチの統計的パワーの基礎となっている。
図14は、セットベースのエンコーディングが使用されている別の例を示しており、n=5セットの色素が405nm(セットA)、488nm(セットB)、565nm(セットC)、630nm(セットD)、700nm(セットE)で励起され、各セットが5個の色素を含み、すなわち、y
A=y
B=y
C=y
D=y
E=5である。この場合、ヒトのセクレトーム中の各タンパク質に対して固有に標識されたマーカーを提供するのに十分な3125個の固有のコードを容易に生成することができ、したがって、染色、読み出し、色素不活性化のための繰り返しのプロセスを必要とすることなく、すなわち、1回のラウンドでセクレトームのプロファイリングを可能にする。さらにこのことは、染色、読み出し、色素不活性化を1~10回のラウンドで繰り返すプロセスで、ヒトゲノム全体とその主要な遺伝子産物とを固有に標識できることを意味する。これと比較すると、最新のマルチプレキシングソリューションでは、12回のラウンドのイメージングで、蛍光イメージングに基づいて約60以上のバイオマーカーをイメージングできる。同様に、最新のサイトカインプロファイリングソリューションでは、1回のイメージングで約40個のサイトカイン(分泌分子の特殊なクラス)を読み出すことが可能になる。この理由から、ここに開示された方法は先行技術を有利に改善するものであり、例えば、全セクレトーム分析に基づく免疫細胞の特性決定を可能にする。このことは、免疫学、感染生物学、および免疫腫瘍学において、免疫細胞の機能性および有効性を分析し、患者集団の層別化を可能にする予測バイオマーカーを導出することに特に関連する。例えばこのような分析に基づいて、例えば、SARS-CoV-2などの特定のウイルスに感染した人が、免疫細胞の全セクレトームプロファイリングに基づいて、軽度の経過をたどり得るか重篤な経過をたどり得るかを予測することが可能になり得る。同様に、腫瘍患者が治療を受けずに予後が良好もしくは不良であるのか、免疫細胞が有能で効果がありそうなのか、またはすでに免疫沈着しているのか、または他の理由で効果がないのかを予測することが可能であり得る。同様に、全セクレタトームプロファイリングは、CAR-T細胞のような遺伝子改変免疫細胞の有効性を予測するのに役立つだけでなく、様々な形態の免疫療法(細胞ベースまたは非細胞ベース)に対するレスポンダーと非レスポンダーとに患者を層別化するのにも役立つ。さらに、このような分析に基づいて、例えば薬物の組み合わせなど、効果の弱い免疫細胞集団を活性化する可能性のある介入を予測することも可能であり得る。
【0209】
図15は、生体試料の例としての全細胞1500の概略図である。
図15では、マーカーはそのリンカー902だけを示し、色素100は明瞭化のために省略している(すなわち図示せず)。細胞は、核1502および細胞質1504を含み、各々、抗体が付着するエピトープ1506a-cとして知られる構造を含む。これは、核1502および細胞質1504にそれぞれ位置するエピトープ1506cに結合するシングルドメイン抗体1518を含む2つのマーカー112について例示的に示されている。親和性試薬はリンカー902に接続されていてもよい。さらに別のマーカーは、リンカー902にコンジュゲートした一次抗体1512および二次抗体1514を含む。一次抗体1512は、細胞質1504のエピトープ1506bに付着しており、二次抗体1514は、一次抗体1512に付着している。さらに、
図15は、標識オリゴヌクレオチド配列を親和性試薬として含む2つのマーカー1520aおよび1520bを示している。これら2つのマーカー1520aおよび1520bは各々、相補的配列1508,1510に付着している。これら2つのマーカー1520aのうちの第1のマーカーは、細胞質1504中のRNA配列1510に付着している。2つのマーカー1520bのうちの第2のマーカーは、核1502中のDNA配列1508に付着している。毒素1522(例えばファロイジン)を親和性試薬として含むマーカーは、アクチンフィラメント1524に付着している。
【0210】
図16は、イムノベースアッセイおよび免疫組織化学の文脈で関連する構造のサイズ範囲を概略的に示している。2~10nmの範囲の原子1600、小分子1602、シングルドメイン抗体またはナノボディ1604、GFP分子1606、抗体1608、量子ドット/ポリマードット/グラフェン系ドット/その他のナノ構造体1610を説明のために大まかな縮尺で示している。
【0211】
図17は、直径10nmの量子ドット1610にカップリングした抗体1608を、1.4NA対物レンズのPSF1700内に概略的に配置したものである。
図11および
図12は、光学分解能がリンカーオリゴヌクレオチドバーコード上の配置レポーターオリゴヌクレオチドを読み取るのに十分でないことを示しており、これが、
図13に示す例では、配置の違いにもかかわらず、スポットK,M,Pの読み出しが全く同じである理由である。
【0212】
図18は、先行技術から公知であり、マルチプレックスイメージングの文脈で使用される繰り返しの染色およびイメージングプロセスを概略的に示している。このプロセスはステップS1800で開始され、ステップS1802で試料が染色される。マーカーは、このステップで試料に導入され、所定の構造に接触してそれらをマークする。一般的にこれらのマーカーは、本明細書で開示されるプロセスでは直接色素コンジュゲートしている。代替的に、マーカーは、一般的に間接的に色素コンジュゲートしており、レポーターが付着した状態で試料に取り込まれる場合もあれば、レポーターなしで取り込まれる場合もある。後者の場合、レポーターは試料に取り込まれるが、マーカーと動的に会合したり解離したりする可能性がある。レポーターは、ステップS1802で試料に導入され得る。ステップS1804でレポーターは連続的に励起され、読み出される。ステップS1806で、レポーターは試料からの漂白または除去によって不活性化され、プロセスはステップS1808で再び繰り返されるかまたは終了してよい。代替的に、試料は、読み出しステップS1804の後、下流の分析プロセスステップS1810に供給されてもよい。
【0213】
任意選択的に、画像のキャプチャまたは非画像ベースの読み出しに続いて、ステップS1806で蛍光色素100を不活性化する。不活性化は、蛍光色素100が将来蛍光を発光することを防止するために行われる。蛍光色素100を不活性化する方法には、蛍光色素100を化学的に不活性化するか、または光物理的に漂白するか、または蛍光色素100を試料から除去するかのいずれかによる、蛍光色素100を漂白することが含まれる。蛍光色素100を試料から除去するためには、一次親和性試薬108~118と所定の構造または標的分子または分析物900との間の接続を切断する必要がある。これは、例えば、親和性試薬が抗体108~118の場合、抗体溶出によって行うことができる。代替的に、蛍光色素100を一次親和性試薬108~118または二次親和性試薬(明確にするために図示せず)のいずれかから除去することもできる。これは、例えば、蛍光色素100と親和性試薬108~118とを接続するペプチド4802またはオリゴヌクレオチド402結合の切断部位904での酵素的切断により行うことができる。例えば、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよびバーコード化抗体の使用により、蛍光色素100を親和性試薬108~118に可逆的に結合させることも可能である。ハイブリダイゼーションに基づくオリゴヌクレオチド116の場合、オリゴヌクレオチドは、標準的なその場ハイブリダイゼーションまたは蛍光その場ハイブリダイゼーション(FISH)プロトコルを使用してハイブリダイゼーションおよび脱ハイブリダイゼーションすることができる。この場合、蛍光色素をリンカーにハイブリダイズさせ、完全に構成されたマーカーを試料に導入することが可能である。代替的に、またはそれに加えて、バーコード化リンカー902を有する親和性試薬108~118で試料を染色し、後の時点で色素を添加することも可能である。非標識一次親和性試薬122~132も同様に
図1に示されている。
【0214】
図19は、分泌タンパク質の細胞ベースのアッセイ法を概略的に示している。図には、細胞1500を取り囲む領域1900が示されている。この領域は、検出された分泌タンパク質が、含まれる細胞1500に割り当てられる仮想的な体積であってもよいし、細胞1500が、例えばヒドロゲルビーズのような離散的な実体に封入されている場合には、物理的な体積であってもよい。いずれの場合も、細胞1500は、マトリックス、例えばヒドロゲル、アガロース、セルロース、アルギン酸塩、マトリゲル(商標)、コラーゲン、バイオインク、および類似の生体適合性材料を含むがこれらに限定されない、3次元細胞培養に使用されるマトリックスに包埋される。このマトリックスは一相性であってよく、すなわち細胞培養に使用されるゾーンと分泌分子の捕捉および検出に使用されるゾーンとが同じであってもよいか、または多相性であってよく、すなわち培養および捕捉および検出のための別個のゾーンがあってもよく、これらは異なる材料を含み得る。後者の場合、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリスチレンのようなポリマーを捕捉および検出ゾーンに使用してもよい。いずれの場合も、
図19に示すように、捕捉親和性試薬1902a,1902bをマトリックスに共有結合させることができる。分泌タンパク質1524a,1524b,1524cが分泌されると、マトリックス中に放出される。
図19に示す例では、分泌タンパク質1524a,1524bは、次いで、拡大挿入図に示すように、捕捉親和性試薬1902a,1902bによって固定化される。この固定化により、それぞれ割り当てられた色素の組み合わせ706aおよび706bによって同定される適切なマーカー1526a,1526bによって、過酷な洗浄条件下でも分泌分子の検出が可能となる。
【0215】
図20Aは、
図19に示した同じプロセスが、異なる固定化戦略を使用している本発明の特に好ましい実施形態を概略的に示している。この場合、捕捉親和性試薬1902a,1902bは、ラテックスビーズまたはポリスチレンビーズなどのマイクロビーズ2000上に固定化される。固定化は、様々な化学的性質(例えば、NHS、マレイミドカップリング)を介した共有結合によって直接的に、またはオリゴヌクレオチドバーコードリンカー、ビオチン-(ストレプト)アビジン相互作用、またはタンパク質A、タンパク質G媒介カップリングを使用した間接的カップリングにより達成され得る。例えば、直径50~250μmのヒドロゲルビーズを、ヒト細胞1500(典型的なサイズは5~50μm)を封入するために使用してもよく、複数の捕捉親和性試薬1902a,1902bを有する50~500nmサイズのマイクロビーズ2000の混合物を包埋ステップ中に添加してもよい。マイクロビーズのサイズにより、それらはヒドロゲル中に固定化され、これは、それらが互いにかつヒドロゲルビーズの周囲に対して実質的に安定した位置にあることを意味する。この理由から、検出スポットまたは検出領域のサイズは、読み出しデバイスの開口数との関係で調整および選択できるため、検出スポットまたは検出領域を定義するのに理想的に適している。マイクロビーズ上の捕捉親和性試薬の局所濃度が高いことは、面積当たりの強度が高くなり、シグナル対バックグラウンドが改善され、セグメンテーションおよび分析が容易になるため、特に好ましい。さらに、マイクロビーズ上の捕捉親和性試薬の高い局所濃度は、顕著なアビディティ効果をもたらし、これにより、弱い一過性の相互作用でさえもこの方法を利用できるようにし、すなわちアッセイの感度を著しく向上させる。捕捉親和性試薬を有するさらなるマイクロビーズは、ライブラリーで調製することができ、例えばマイクロタイタープレートまたはフロースルーでのアッセイのように、様々なアッセイおよび異なるアッセイフォーマットに柔軟に展開することができる。
【0216】
図20Bは、
図19および
図20Aに示したのと同じプロセスで、捕捉親和性試薬が、グラフェン、カーボンチューブ、ナノルーラまたは他のDNA折り紙ベースのナノ構造体などのナノ構造体2002に固定化される、本発明の特に好ましい実施形態を概略的に示している。
【0217】
図21は、1~5nm、5~10nm、50~100nm、100~200nm、250~350nmおよび350nm~1000nm、ならびに1000nm~5000nmの範囲のマイクロビーズおよび類似のサイズのナノ構造体が、マイクロビーズのランダムな配置が検出スポットのばらばらの配置を容易にし、したがって読み出しを助けるので、
図19、
図20A、
図20Bに描かれている分泌タンパク質を含む様々なアッセイにいかに特に好ましいかを概略的に示している。
図21は、タンパク質Cとして固有のコンビナトリアルコード800cによって同定された2つのスポットと、それぞれ付着した色素の組み合わせ706cと、タンパク質Dとして固有のコンビナトリアルコード800dによって同定された3つのスポットと、それぞれ付着した色素の組み合わせ706dとを概略的に示している。さらに
図21は、スポットがどのようにデコードされ、カウントされるかを示している。
図21の下部の棒グラフは、複数のタンパク質のスポットカウント結果の概略を示している。代替的に、または追加的に、DNA折り紙ベースのナノ構造体は、適切なサイズで作製でき、蛍光標識オリゴヌクレオチドまたはその他の標識および機能化のための付着部位を含むように容易に改変できるため、この種のアッセイにうまく適している。
【0218】
図22は、ステップS2200から始まる、
図19~
図21に示すアッセイにおける単一種読み出し体積の検索および読み出しのためのワークフローのフローチャートを示している。これは、画像処理パイプラインとも呼ばれ得る。このような画像処理パイプラインは、背景除去、圧縮、フィルタリング、ノイズ除去、強調、再構成、補正、デコンボリューション、マルチビューデコンボリューション、マルチビューレジストレーション、マルチビューフュージョン、ならびにデジタル画像処理の技術分野の当業者に周知の他のツールのうちの少なくとも1つを含み得、典型的には、特徴とも名付けられ得るセグメント化されたオブジェクトのセットを生成する画像セグメンテーションステップ、ならびに特徴分類ステップを含む。前述の画像処理ツールの多くには、古典的なソフトウェアアルゴリズムと、(最新の)機械学習/深層学習またはAIベースのアルゴリズムが存在する。特に、ピクセル分類、画像ノイズ除去、デコンボリューション、強調、セグメンテーション、およびセグメンテーションされたオブジェクト/特徴の分類については、機械/深層学習またはAIベースのアルゴリズムが存在し、ほとんどの古典的なアルゴリズムよりも優れた性能を提供することが知られている。光学的読み出しによって生成された画像の画像分析、画像改善、および/または画像デコンボリューションを実行すると有利な場合がある。
【0219】
特定のステップは省略されてもよく、反復されてもよく、
図22に示されていない他のステップが画像処理パイプラインに含まれてもよい。パイプラインのサブステップは、古典的な画像処理アルゴリズムおよび/または機械学習、深層学習アルゴリズムを使用して実行することができる。特徴抽出の出力は、その外側の制限、その体積または質量中心などの生体試料が包埋される可能性のあるヒドロゲルビーズの生体試料からの特徴、単一種読み出し体積を含む試料の外側の構造に由来する特徴のサブセット、ならびに生体試料に由来する特徴のサブセットを含む特徴のセットである可能性がある。
【0220】
ステップS2202では、セグメンテーションおよびフィルタリングを含む様々な特徴検出方法によって、背景除去を含み得る画像データの前処理が行われる。マーカーの構成部分は、キーポイント特徴、エッジ、および注目点/特徴点によって同定され得る。特徴点または注目点は、任意の検出可能な物体、例えばマイクロビーズ2000であってもよい。キーポイント特徴は、例えば、一定の近傍を有する全てのオブジェクトであり得る。例えば、マイクロビーズ2000はセグメント化され、その質量中心が決定される。
【0221】
ステップS2204における画像セグメンテーション分析は、古典的なアプローチ、機械学習およびニューラルネットワーク/深層学習を含む人工知能ベースの技術、または閾値処理技術、クラスタリング法、圧縮に基づく方法、ヒストグラムに基づく方法、エッジ検出、デュアルクラスタリング法、領域拡大法、偏微分方程式に基づく方法、変分法、グラフ分割法(例えばマルコフランダムフィールド)、流域変換、モデルベースのセグメンテーション、マルチスケールセグメンテーション、半自動セグメンテーション、様々な機械学習、ニューラルネットワークおよび人工知能アプローチ、例えば、パルス結合ニューラルネットワーク(PCNN)、畳み込みニューラルネットワーク(U-Net)、再帰ニューラルネットワーク(RNN)、ならびに例えばマルコフネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、または長期短期記憶(LSTM)などのオブジェクト共同セグメンテーション法を使用した訓練可能なセグメンテーションを含むその他の技術のうちの少なくとも1つを使用して行うことができる。代替的に、またはそれに加えて、サイズおよび/または色および/または蛍光強度および/または蛍光寿命などの特性を使用して、画像データからマーカーの構成部分を同定することができる。同定には、ハリスコーナー、スケール不変特徴変換(SIFT)、スピードアップロバスト特徴(SURF)、加速セグメントテスト(FAST)からの特徴、および配向FASTおよび回転BRIEF(ORB)を含む様々なアルゴリズムを使用できることが知られており、画像データからマーカーの構成部分および/または特徴を同定するために使用できる。
【0222】
スポット検出および/または特徴抽出および/または特徴分類分析S2206が、例えばコンテンツ認識特徴強調などの機械学習アプローチおよび深層学習アプローチを活用して実行されることが特に好ましい。これは、マーカーが蛍光マイクロビーズ、蛍光ナノルーラまたは類似の構造を使用して生成される場合に特に有利であり、というのも、これにより、これらの特徴に特化してコンテンツ認識特徴強調を実行するようにニューラルネットワークを事前に訓練することができるからである。同様に、この場合、グランドトゥルース、すなわちマーカーだけを含むヒドロゲルビーズからの画像データに対して、実質的な事前訓練を容易に行うことができる。重要なことは、グランドトゥルースを異なるイメージングシステムで生成できることである。特に、グランドトゥルースは、例えば、開口数、解像度、集光効率、エタンデュ(光束)、S/N、色収差または球面収差、ならびに他の任意のイメージング収差に関して高い光学性能を有するイメージングシステム上で生成することができる。重要なことは、本方法は、各ランが、例えばノイズ除去、背景除去、画像補正、デコンボリューション、およびとりわけ特徴抽出の性能を改善することによって、生成された画像データの品質を潜在的に改善するそれぞれの訓練データを生成する方法で実施することができることである。同様に、ネットワークは、特徴を分類するために適切な参照試料を使用して事前訓練することができる。特にネットワークは、特徴をヒドロゲルビーズ、蛍光マイクロビーズ、蛍光ナノルーラ、または類似のものと、細胞、細胞群、または異なる種類の生体試料として分類するために事前訓練することができる。
【0223】
特徴抽出および分類に続いてスポットが読み出され、ステップS2208で、対応するマーカーとその標的分子/所定の構造の同一性をメモリデバイスで調べることによって、それらの色素の組み合わせがデコードされる。次いで、ある色素の組み合わせで標識された各スポットがカウントされ、その結果が強度情報とともにメモリデバイスに記憶される。プロセスはステップS2210で終了する。
【0224】
図23は、
図19~
図21に記載されるアッセイを、例えば96個のウェルまたは試料容器2302を備えたマイクロプレート2300のような、各々が透明な窓または底2304を有する標準的な顕微鏡試料キャリアでどのように実行できるかを概略的に示している。この場合、例えば細胞1500aのような試料が分割され、その質量中心2308が見つけられ、細胞1500aに割り当てられた仮想読み出し体積2310がこの基準点に関連付けられる。試料および仮想読み出し体積2310は、光源2314、ビームルーティングおよびビーム分割素子2316を備えたビーム経路、照明/検出光学系2318(同じ光学系または異なる光学系に通してもよい)、ならびに蛍光強度を読み出すように構成された検出器2320を有する顕微鏡またはプレートリーダ2312を使用して画像化されるかまたは読み出される。検出器2320は、
図2に描かれているように、分光器であってもよい。
【0225】
本発明の特に好ましい実施形態では、検出器および光源は、例えばスペクトルFLIMフェーザを用いて使用することができるスペクトル蛍光寿命イメージングを実行するように構成され、読み出しデバイスの高い色素分離能力を提供する。
【0226】
図24は、フロースルーに基づくイメージングを実行するように構成されたイメージングサイトメータ、サイトメータまたは顕微鏡において、
図19~
図21に記載されるアッセイがフロースルーでどのように実行され得るかを概略的に示している。
図23に記載されるイメージングシステム2312は、この場合、流入口2402、および流出口2404、浸漬またはフロー媒体2406が流れる少なくとも1つの流体流路を有するフローセル2400とともに使用される。この場合、試料1500はヒドロゲルビーズ2408に包埋されるが、これは封入された試料1500を保護し、
図19~
図21に記載されるアッセイをフロースルーで非常に高いスループットで実行することを可能にするため、特に有利である。ヒドロゲルビーズへの生体試料の包埋および同定は、例えばPCT/EP2021/061754に記載されており、その内容は参照により本明細書に完全に含まれる。
【0227】
図25は、捕捉試薬1902aを担持するマイクロビーズ2000aが光源2314からの光によって励起され、発光された蛍光が検出器2320によって検出される、サイトメータ2500上のビーズベースアッセイを示している。
図25に示すように、各マイクロビーズ2000aは、所与の特異性1902aの親和性試薬を担持することができ、これにより、効果的に単一種読み出し体積となる。このような捕捉ビーズ2000aは、例えばウェル内で所与の時間にわたり細胞とともにインキュベートされ得(
図23を比較されたい)、次いでサイトメトリー分析に供される。本方法の特に好ましい実施形態では、これを使用して、記載されたビーズベースのフォーマットおよび読み出しとしてのサイトメトリーを使用して、全セクレトームプロファイリングを行う。
【0228】
代替的に、または追加的に、捕捉ビーズ2000aを細胞の溶解液、または試料もしくは環境試料の溶解液とインキュベートして、試料中の分析物の存在を検出してもよい。本方法の特に好ましい実施形態では、これは、記載されたビーズベースのフォーマットおよび読み出しとしてのサイトメトリーを使用して、同じ実験において多数の分析物の存在を検出するために使用される。
【0229】
任意選択的に、捕捉ビーズ2000aは、蛍光活性化セルソータ(FACS)2502を使用してソートすることができ、このソートは、ビーズをそれぞれの収集チューブ2506に導く偏向プレート2504を使用する。
【0230】
図26は、
図25に記載されるアッセイが、上に示した捕捉試薬-標的分子-マーカー-構成2600における分析物の存在を検出するために使用できることを示しており、これは、
図19、
図20Aまたは
図20Bに示すような構成も同様に考えられ得る。代替的に、または追加的に、フォーマットは、以下に示す捕捉試薬-標的分子-相互作用分子-マーカー-構成2602に調整することもできる。前者は分析される分析物の存在を可能にするが、後者は、捕捉試薬によって捕捉される特定の分析物または複数の分析物と、相互作用分子(すなわち、例えば小分子、タンパク質、核酸のような他の分析物)との相互作用をプローブすることを可能にし、その結果、結合した相互作用分子をマークするマーカーによって読み出される。このようなビーズベースアッセイに本明細書に開示された方法を使用することで、捕捉試薬をビーズ上に濃縮することから生じる顕著なアビディティ効果などのビーズベースアッセイの利点と、非常に多数の分析物を検出する方法、および/または非常に多数の相互作用分子を評価する方法を提供する本明細書に開示された方法の利点とが組み合わされる。相互作用分子は溶液中であってもよいし、細胞に発現する細胞表面分子であってもよい。このようにして、捕捉試薬-標的分子-相互作用分子-マーカー-構成2602を使用したビーズベースアッセイを、複数の細胞表面分子の組み合わせに基づく細胞の存在を検出するために使用することができる。このようにして、この方法は、例えば循環腫瘍細胞または特定の抗原に反応する免疫細胞のような希少な細胞種であり得る特定の細胞種の存在を検出するために使用することができる。これらのアッセイはどちらも、イベント数が多く、分析物の数が多く、スループットが高く、結果が出るまでの時間が短いことが望ましい場合にうまく適している。
【0231】
図27は、
図25と同様のサイトメータ2500およびFACS2502を示している。この場合、試料の流れの中の試料は単一細胞1500である。
図27に概略的に描かれたアッセイは、本発明の特に好ましい実施形態を示しており、非常に多数のマーカーが、細胞1500の細胞表面に結合しているタンパク質または他の標的分子(例えば糖)を標識するために使用される。これは、特に細胞表面レセプターおよび「分化抗原群」(CDタンパク質)のタンパク質であろう。これらの細胞表面に結合した標的分子2700は、親和性試薬1526dと色素の組み合わせ706とからなるそれぞれのマーカーによって結合される。
【0232】
本発明の特に好ましい実施形態では、
図19~
図27に記載されるアッセイは、例えば
図28の2802a,2802bのような、直接読み出すことができる、すなわち読み出しがマーカーの同一性を直接デコードする、主に単一種読み出し体積を生成するように構成される。
【0233】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、
図25~
図27に記載されるアッセイを使用して、超高プレックスサイトメトリーを行う。例えば、100~1000、1000~2000、2000~10,000、10,000~30,000、30,000~100,000、および100,000個を上回るマーカーを用いたサイトメトリーのように、同じ実験において、好ましくは1回のラウンド(複数種読み出し体積)において読み出される(例えば
図28の2804を参照のこと)。
【0234】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、
図23および
図24に記載されるアッセイを使用して、標準的な試料キャリアまたはフローセル内のフロースルーで超高プレックスイメージングを実行する。例えば、100~1000、1000~2000、2000~10,000、10,000~30,000、30,000~100,000、および100,000個を上回るマーカーを用いたイメージングのように、同じ実験において、好ましくは1回のラウンドで、または代替的に染色、イメージング、色素不活性化(複数種読み出し体積)の複数回のラウンドで読み出される。
【0235】
図28は、単一種読み出し体積2802aおよび2802bと複数種読み出し体積2804との違いを示している。
図28に示すような単一種読み出し体積は、単一コピー2802aまたは複数コピー2802bのいずれかに、同じ反応性または特異性500のマーカーを含む。この理由から、単一種読み出し体積2802aまたは2802bからの読み出しシーケンスは、マーカー割り当て済みの色素の組み合わせのセットからの色素の1つの組み合わせと同一である。これは、単一種読み出し体積をデコードする、すなわち含まれるマーカー種を同定するには、単に単一種読み出し体積を読み出し、読み出しシーケンスをメモリデバイスに記憶されているマーカー割り当て済みの色素の組み合わせのセットからの色素の組み合わせと比較することによって、対応するマーカーIDを検索すれば十分であることを意味する。
図28はさらに、複数種読み出し体積2804が、異なる反応性または特異性500の少なくとも2つのマーカーを含むことを示している。
【0236】
単一種読み出し体積とは対照的に、複数種読み出し体積は、読み出しシーケンスを取得し、基礎となるマーカーを検索するだけではデコードされ得ない。
図29に示すように、複数種読み出し体積には多くの異なるマーカーが含まれている可能性がある。
図29には、共焦点読み出し体積または有効点広がり関数1700と、例えば第1の色素のセットの多くの色素100が示されている。図を明瞭にするために、各色素は1つのマーカー分子に対応し、その残りは省略されている(すなわち、親和性試薬と、色素のそれぞれの組み合わせの他の色素)。例えば、このような複数の異なるマーカーが第1の励起光で励起されると、それぞれの色素の組み合わせの第1の色素が励起され、蛍光光を発光することになる。この光は検出され、それぞれの色素チャネルに分離されることになり、これは、右側の読み出しシーケンス2900を視覚的に表す円のカラムによって概略的に描かれている。右側の円は、色素分離に使用される全ての特性を反映する単一のパターンのみを有するが、PSF1700の円は色素100に対応し、励起スペクトルに対応する左半分のパターンと、色素分離に使用できる色素の特性(例えば、発光スペクトル、蛍光寿命、励起フィンガープリント)に対応する右半分のパターンとを有する。
図29に示す例では、第1の励起光が試料に適用され、発光された蛍光光が検出された後、この方法は、10個の異なるパターンを有する10個の円で表される10個の色素の存在を登録した。さらに、この方法はこれらの色素の強度を登録した。類似の方法で、今度は他の全ての励起光が適用され、蛍光光が上記のように検出される。このようにして、第1の読み出しシーケンス(例えば、染色-イメージング-読み出しの繰り返しのプロセスの第1の繰り返しから)が得られる。スポット内の異なるマーカーの数に応じて、この読み出しシーケンスの下に包含され得るコードの数が相当多くなり、同様に、包含可能なコードの多くが偽陽性である可能性があるため、不確実性が大きくなる可能性があり、すなわち、それらの割り当てられたマーカーが共焦点体積または有効点広がり関数に物理的に存在しない可能性がある。
【0237】
以下の議論では、まずこの問題を軽減するための戦略について論じ、次にこの問題のロバストな解決策についての議論に移る。
【0238】
複数種読み出し体積をデコードするという課題を軽減する観点から、色素のブリンキングおよび局在性顕微鏡に使用される方法を使用することが可能であり、これは、複数種読み出し体積を、時間的に分離されたサブ回折局在化された単一種読み出し体積に変えるものである。これは、
図30に示すPSFの各々において1個の色素のみが点灯することによって描かれている。
【0239】
本発明の特に好ましい実施形態では、複数種読み出し体積のデコーディングの課題が原理的に解決される。
図31に示すように、y
A=y
B=y
C=y
D=y
E=10およびn=5の例では、セットベースのエンコーディングによりψ=100,000が生成され、バイナリエンコーディングによりψ=約10
15の組み合わせが生成される。これは、αが20%であり、約1.8×10
-11であることを意味する。言い換えれば、棒グラフで示されているように、利用可能なコードのうち、実際にマーカー(灰色の四角形)に割り当てられているのはごく一部または極めてごく一部だけである。
【0240】
図32は、異なる第1の読み出しシーケンスが、所与の第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの数κにどのように影響するかを示している。「例1」では、色素A1,...,n.yに対応する各桁が「1」を示す、すなわち全ての色素が観察された読み出しシーケンスが観察される。この場合、複数の色素の組み合わせ全体S
1,3200は、必然的に「例1」の読み出しシーケンスの下に包含され得る。これは大きな円3200で概略的に描かれている。「例3」では、読み出しシーケンスにより、色素の単一の組み合わせ602、したがって単一のマーカー(単一種読み出し体積)を明確に同定することが可能となる。「例2」では、その下で相当数の色素の組み合わせが包含され得、「第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット」3202を形成する、読み出しシーケンスが得られる。この後者のケースは、複数種読み出し体積の現実的なケースであり、以下でさらに説明する。
【0241】
図33Aはこれを概略的に示しており、この例では、第1の読み出しシーケンスが得られ、複数の色素の組み合わせ全体S
1,3200が示されている。図中、各円は色素602の組み合わせに対応する。ほとんどの円は白く塗りつぶされており、マーカーに割り当てられていない色素の組み合わせに対応している。いくつかの円はいずれかのパターン(大きな紙吹雪パターンまたは斜めのストライプ)で塗りつぶされており、マーカーに割り当てられた色素の組み合わせに対応している。ほとんどの円は細い輪郭線で描かれ、第1の読み出しシーケンスの下に包含され得ない全ての色素の組み合わせに似ている。一部の円だけが黒く太い輪郭線で描かれ、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせを表している。
図33Aに類似して、
図33Bおよび
図33Cは、色素の組み合わせを親和性試薬に、またはその逆に再割り当てし、色素の組み合わせをマーカーに、またはその逆に再割り当てした後の、第2および第3の読み出しシーケンスのシナリオを示している。この意味において、
図33Aは実験における第1の繰り返しを、
図33Bは第2の繰り返しを、
図33Cは示しており、繰り返しとは、
図18および
図37に示す繰り返しの染色、イメージング、色素不活性化プロセスを示す。ステップの間において、複数の色素の組み合わせのセットS
1,3200は、図示のように同じままであってもよいが、その割り当てはランダムに変更される。代替的に、または追加的に、割り当ては決定論的に変更されてもよい。代替的に、または追加的に、第2の適切な「色素の組み合わせを形成する規則」に基づく第2の複数の色素の組み合わせの複数のセットS
1.2が形成され得、第2の繰り返しで使用され得る(明瞭化のために図示せず)。これは、この例をアニメーション化した
図33A~
図33Cから素早く変更することによって最もよく観察される。これは、戻し/置き換えを伴う繰り返し回収と比較することができる。
【0242】
図34A~
図34Cは、
図33A~
図33Cの複数の色素の組み合わせのセットS
1,3200のソートされたセットとして理解されるべきであり、「第1、第2、および第3の読み出しシーケンスの下に包含可能でない色素の組み合わせのセット」3300a,3300b,3300cと、「第1、第2、および第3の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット」3302a,3302b,3302cとが示されている。「第1、第2、および第3の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット」3302a,3302b,3302cはさらに、実際に存在するマーカーのセット(真陽性)3400a,3400b,3400cと、偽陽性のセットとに分割され、偽陽性は、タイプI(マーカーに割り当てられていない読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせ)またはタイプII(読み出し体積/有効PSFに物理的に存在しないマーカーに割り当てられている読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせ)であり得る。
図34A~
図34Cは、この例をアニメーション化した
図34A~
図34Cから素早く変更することによって最もよく観察される。この例が示すように、色素の組み合わせの割り当ては、1つの繰り返しから次の繰り返しへとランダムに変化する(ランダムに回収して戻すことに匹敵する)。さらに、3400a,3400b,3400cの組成は、色素の組み合わせに関しては変化するが、それらがコードするマーカーに関しては変化しない。3400a,3400b,3400cは真陽性のセットであるため、それらに関連する色素の組み合わせは、全ての場合において、それぞれの読み出しシーケンスの下に包含可能である。言い換えれば、親和性試薬とそれぞれのマーカーとは、全ての繰り返しにおいて3400の要素となる。しかしながら、図示した3つの繰り返しでは、親和性試薬への色素の組み合わせの割り当てが変更されるため、第1の読み出しの真陽性は、
図34Aではマーカーμ23,μ2015,μ434として示され、第2の読み出しの真陽性は、
図34Bではマーカーμ23’,μ2015’,μ434’として示され、第3の読み出しの真陽性は、
図34Cではマーカーμ23’’,μ2015’’,μ434’’として示される。マーカーμ23およびμ23’およびμ23’’は同じ親和性試薬を共有するが、異なる色素の組み合わせを含むことを理解されたい。偽陽性のセットを含む3402a,3402b,3402cの組成は、色素の組み合わせに関しても、含まれるマーカーに関しても、繰り返しごとに実質的に変化する。
図34Aおよび
図34Bに示すように、ある繰り返しから次の繰り返しへと、偽陽性のセットは、例えばμ4124,μ4124’のように、偶然に1つ以上の同じマーカーを含む可能性がある。これは、複数種読み出し体積のデコーディングは繰り返しのアプローチで可能であり、偽陽性を観察する確率は、読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの割合に依存することを意味する。言い換えれば、3202が3200の大部分である場合、偽陽性(タイプIおよびタイプII)が観察される可能性が高くなり、ユーザが要求する統計的信頼度のレベルを得るためには、より多くの繰り返しを行う必要がある。3202が3200のごく一部または極めてごく一部である場合は容易に起こり得るが(
図31を比較されたい)、数回の繰り返しで優れたp値が得られ、読み出し体積/有効点広がり関数内のマーカーの検出における統計的信頼度が得られる。言い換えれば、αが小さいほど、少ない繰り返し回数で高い信頼度が得られる。その結果、色素の組み合わせのセット3200のカーディナリティ(これは、複数の色素の組み合わせS
1と命名することもできる)は、このアプローチを基本的に制限する。カーディナリティは指数関数的に増加するが、興味深い標的分子の数は基本的に制限され(例えば、約20,000個のタンパク質コード遺伝子)、これは、ライフサイエンス研究および診断的適用の両方において、顕微鏡およびサイトメトリーにおける多岐にわたる問題に対する非常に強力なアプローチである。
【0243】
図35A~
図35Cは、標的分子900に対するある反応性500を有する所与のマーカー112を示している。
図35Aに示す第1の繰り返しでは、色素の第1の組み合わせがマーカーμ2015に付着され、
図35Bに示す第2の繰り返しでは、色素の第2の組み合わせがマーカーμ2015’に付着され、
図35Bに示す第3の繰り返しでは、色素の第3の組み合わせがマーカーμ2015’’に付着される。
【0244】
図36Aは、同じ非存在マーカー(タイプIIの偽陽性)を複数回観察する確率p
iを示す棒グラフであり、これはκ
i/ψによって示され、ここで、κ
iはi番目のラウンドにおけるκである。簡単にするために、κ
iは全てのラウンドで1,000に設定され、この例ではψの1%に相当する。確率p
iはマーカー固有のp値に影響を与える重要な因子であり、それ自体がαに強く依存し、正比例する。
【0245】
図36Bは、n=4およびy
A=y
B=y
C=y
D=5およびψ=625の別の例、ならびに例示的な読み出しシーケンス、および読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせおよび対応するマーカーのリストを示している。包含可能であるがマーカーに割り当てられていない色素の組み合わせ、すなわちタイプIの偽陽性は、リストから直接除外され、この例には示されていない。この例では、κ=180で、α=28.8%に相当する。これは、真陽性およびタイプIIの偽陽性を含む比較的少数のマーカーを含むリストを観察するためには、利用可能なコードのごく一部のαのみが使用できることが期待されることを意味する。この例のように、ψがそれよりも小さい場合、これは重要な実用上の制限となる。>10
4、>10
6、>10
10、>10
15、>10
20、およびそれを超える範囲に容易になり得る達成可能なψsの場合、これは実質的にあまり意味を持たなくなる。
図36Bの例では、同じ非存在マーカー(タイプIIの偽陽性)を複数回観察する確率p
iを10
-6の範囲にするためには、10回を超える繰り返しを行う必要がある。αが十分に小さい場合、これは第2の繰り返し後に達成される。
【0246】
図37は、一次定性的な繰り返しの複数種読み出し体積デコーディングのワークフローを示している。ワークフローはステップS3700で開始する。ステップS3702で、試料は、色素の組み合わせの第1のセットで標識された少なくともサブ複数のマーカーで染色される。ステップS3704で第1の読み出しシーケンスが取得され、ステップS3706で、第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な全ての色素の組み合わせの第1のセットがメモリデバイスから検索され、それ自体がメモリデバイスに記憶される。ここで、ステップS3702で導入された第1の繰り返しの色素は、ステップS3708で不活性化される。次に、ステップS3710において、試料は少なくともS3702で使用されたサブ複数の親和性試薬で染色され、この親和性試薬は今や色素の組み合わせの第2のセット(すなわち、第1のものと同じ反応性を有するが、異なる標識を有する第2のサブ複数のマーカー)で標識され、ステップS3712において第2の読み出しシーケンスが取得され、第2の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の全ての組み合わせの第2のセットがメモリデバイスから検索され、ステップS3714においてそれ自体がメモリデバイスに記憶される。
【0247】
ステップS3716では、第1および第2の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせの第1および第2のセットがそれぞれ互いに比較され、重複が確立され、メモリデバイスに記憶される。ステップS3720において、デコーディング結果における統計的信頼度が評価され、ステップS3720において重複内の各マーカーについてp値および/または統計的信頼度の別の適切な尺度が計算される。これは、強度情報の使用を含むだけでなく、重複する共焦点体積/有効点広がり関数における複数の測定値のさらなる情報を含むこともできる。ステップS3722でp値がユーザにとって許容可能であれば、ステップS3724でプロセスを終了することができる。代替的に、ステップS3708に戻る矢印で示すように、さらなる繰り返しを行ってもよい。
【0248】
図38Aは、読み出しシーケンスと、対応する色素チャネルの強度に対応する強度プロファイルとの一例を示す。共焦点体積/有効点広がり関数で検出された色素は、読み出しシーケンスの対応する桁に「1」で示される。同時に、各色素の強度情報はメモリデバイスに記憶される。
図38Aに示されるように、一次定性的デコーディング3800は、上述した繰り返しのプロセスによって得られた複数の読み出しシーケンスと、色素の組み合わせのセット3200に対して動作し、それぞれの読み出しシーケンスの下に包含可能な複数の色素の組み合わせのセットを見つけて、デコーディング結果の重複および統計的信頼度を確立する。二次定性的デコーディング3802は、それ自体がデコーディング戦略であるか、または一次定性的デコーディング3800の後の追加の任意選択的なステップである。二次定性的デコーディング3802は、一次定性的デコーディング3800とは対照的に、強度プロファイルなどの強度情報を考慮する。これは、読み出しシーケンスを強度閾値処理することによって簡単な方法で行うことができ、
図38Bに示されるように、全体的な結果の統計的信頼度を大幅に向上させることができる。代替的に、または追加的に、線形アンミキシングの特別な形態で使用することもできる。本質的に、これは、一次定性的デコーディング3800が、統計的有意性のあるレベルに基づいて共焦点体積/有効PSFに含まれるマーカーの同一性を定義するため機能する。このマーカーのリストが入力として取り込まれる場合、問題は、完全に決定されたまたは過剰に決定された一次方程式のセットであり、これを解くことができる。これは、重複する発光スペクトルから個々の色素の強度をアンミキシングする線形アンミキシングがどのように実行されるかに類似している。この場合、色素の組み合わせの相対数が求められ、これは全ての読み出しシーケンスの下に包含可能であり、強度プロファイルの形状を説明する。このプロセスの結果は、相対的な定量的デコーディングであり、すなわち、統計的有意性のあるレベルに基づいて、読み出しシーケンスのあるセットの組み合わせ、共焦点体積/有効PSFで見つかったマーカーのあるセットが、マーカーおよび標的分子のある相対的な量と一致することが判明する。例えば、
図38Bに概略的に示されているように、μ14はμ9またはμ548よりも4倍高く、μ9はμ255よりも10倍低いことと一致する。適切な標準を使用して読み出しデバイスの適切な較正が行われている場合、この方法は共焦点読み出し体積内のマーカーおよび標的分子の絶対数および有効PSFを提供することもできる。
【0249】
図9、
図10Aおよび
図39~
図47は、マーカーの特に好ましい様々な実施形態を示しており、これは概して、標的分子/所定の構造/分析物900に、その特異性を決定する領域、部分、または配列500で結合する親和性試薬112を含み、この試薬は、例えば抗体またはオリゴヌクレオチドの場合、パラトープまたは相補的配列であってもよい。親和性試薬は、小分子/薬物/薬物様分子/毒素118、すなわち親和性リガンドであってもよく、これは試料中の親和性レセプターに結合する。マーカーは、共有結合によって直接、またはオリゴヌクレオチドおよび他の方法により間接的にリンカー902に接続される。リンカーはさらに色素の組み合わせ、すなわち色素600の特定の組み合わせに接続する。リンカーと蛍光色素との組み合わせは、本明細書の意味においてレポーター908と呼ばれる。色素の組み合わせにおける色素は、当該用途の特定の要件、および使用されるリンカーのタイプおよびカップリングまたは接続戦略に応じて、化学量論量または非化学量論量で存在することができる。リンカーは、色素を含むリンカーを特に容易かつ迅速に除去できるように、特に少なくとも1つの切断部位904を有するさらなる官能性が付与されていてもよい。これは、色素を不活性化する方法として特に好ましい。切断部位904は、例えば制限部位のようなヌクレオチド配列、CRISPR/Casまたは類似の酵素の標的、光切断可能なリンカー、例えばカスパーゼ切断部位などのタンパク質分解的にアドレス指定可能な部位であり得る。
【0250】
代替的に、または追加的に、リンカーは固有のオリゴヌクレオチド配列バーコード(UOSB)を担持していてもよく、このバーコードは色素のある組み合わせを同定し、それぞれのUOSBに相補的な配列を担持する任意の親和性試薬にレポーターを柔軟な方法で付着させるために使用できる。この戦略を使用するか、または単に汎用オリゴヌクレオチド配列を使用してレポーターを親和性試薬に結合したオリゴヌクレオチドに付着させることは、ハイブリダイゼーションおよび融解によって色素の柔軟な付着および除去を可能にするため有利である。ハイブリダイゼーションによって抗体とリンカーとを接続するためにオリゴヌクレオチドを使用することは、親和性試薬をレポーターとは無関係に試料中に取り込み、試料中に留まらせることができるため、特に好ましい。さらに、一旦親和性試薬が標的構造に結合すると、この戦略では、結合したターゲットから親和性試薬を除去する必要がないため、繰り返しのマルチスポットデコーディングプロセスの一環として、色素の組み合わせを特に容易に切り替えることができる。
【0251】
図39は、ペプチド、ナノルーラ、または他のDNA折り紙ベースの構造化されたものであってもよいオリゴヌクレオチド骨格(
図48Aおよび
図48Bを比較されたい)、蛍光色素の非特異的結合部位3900を含むリンカー902を有するマーカーを示しており、これらは、NHS-またはマレイミドカップリングの部位であってもよく、例えばアルキン-アジドカップリングのようなクリックケミストリーカップリングの部位であってもよい。
図39の場合、色素は、反応混合物に色素の混合物を添加するだけで、リンカーにカップリングすることができ、これはある分布をもたらす(非化学量論的カップリング)。
【0252】
図40は、全てのカップリング部位または結合部位3900が色素100C,100Eによって占有された、色素カップリングステップ後の
図39に示すリンカーを示している。
【0253】
図41は、ペプチド、ナノルーラまたは他のDNA折り紙ベースの構造化されたものであってもよいオリゴヌクレオチド骨格(
図48Aおよび
図48Bを比較されたい)、特異性決定部分または官能化4102e,4102h,4102j蛍光色素を有する色素選択的/特異的結合部位4100e,4100h,4100jを含むリンカー902を有するマーカーを示しており、これらはオリゴヌクレオチドであってもよい。この点で、
図41に示す特に好ましい実施形態では、反応混合物に色素の混合物を加えるだけで、色素をリンカーに結合させることができ、これは定量的なデコーディングを容易にするため、この方法にとって特に有利である。
【0254】
図42に示す本発明の特に好ましい実施形態では、UOSBと、非特異的カップリング部位3900で官能化され、
図39に記載したように使用されるコンジュゲートマイクロビーズ2000とからなる2分割リンカーが使用される。これは、3次元支持体およびリンカーの一部として機能するマイクロビーズに多数の色素構造または分子をカップリングさせることができるため、より高い感度を必要とするアッセイに特に有利な実施形態である。
【0255】
図43に示す本発明のさらに特に好ましい実施形態では、色素の組み合わせに対応する色素混合物が、ナノ/マイクロカプセル4300に封入されるか、またはナノ/マイクロビーズ4302に包埋される。このような構造は、ナノ/マイクロ流体工学、エレクトロスプレー、音響液滴放出または乳化を使用して効率的に合成することができ、封入された色素を環境の影響から保護するという利点を有する。関連する環境影響とは、特にオゾンおよびその他の活性酸素種、pH値、溶媒、緩衝剤などである。開示された方法で使用する色素を遮蔽することは、色素の蛍光寿命を安定化させ、したがって、おそらくとりわけ蛍光寿命情報を記録するように構成された読み出しデバイスでの色素の分離を助けるため、特に有利である。
【0256】
図44に示す本発明のさらに特に好ましい実施形態では、使用される色素は、Benson et al. 2020 in Chem 6, 1978-1997に記載されているように、SMILEまたは小分子イオン分離格子である。SMILEは、消光を避けながら、非常に小さな体積(約4nm
3当たり1個の色素)で非常に高い色素濃度を可能にし、したがって非常に高い輝度を提供するという原理的な利点を提供する。さらに、カチオン性色素とアニオン結合性シアノスター大環状化合物との共結晶化により、組み込まれた色素が環境影響から保護され、したがって蛍光寿命が安定化するため、SMILEは、おそらくとりわけ蛍光寿命情報を記録するように構成された読み出しデバイスでの色素分離に理想的である。さらに、SMILEは卓越した輝度を示し、したがって高感度を必要とする広範な用途に理想的に適している。
図44に示すように、SMILE 100M,100N,100O,100Pは、SMILEベースのレポーター4400を生成するリンカーにカップリングされ得る。
【0257】
図45に示す本発明のさらに特に好ましい実施形態では、SMILE 100M,100N,100O,100Pは、SMILEがカップリングできるプラットフォームまたは支持体のようにリンカーの一部として使用されるナノ構造体4500と組み合わせて使用される。ナノ構造体4500は、特に、DNA折り紙ベースのナノ構造体(例えば、実質的に細長い形状のナノルーラ、または例えばピラミッド、グリッド、球体、複合構造体などの他の幾何学的形状のようなもの)、グラフェンベースのナノ構造体または別の形態のナノ構造体であってもよい。
【0258】
図46に示す本発明のさらに好ましい実施形態では、SMILE 100M,100N,100O,100Pはマイクロビーズに包埋され、別の形態のSMILEベースのレポーター4600を生成する。
【0259】
図47に示す本発明のさらなる実施形態では、SMILE 100M,100N,100O,100Pはマイクロカプセルに封入され、別の形態のSMILEベースのレポーター4700を生成する。
【0260】
上記の実施形態に示すように、レポーターは親和性試薬に様々な方法で連結することができる。
図48Aおよび
図48Bは、例えば、分割されていないオリゴヌクレオチド配列リンカー4800のような特に好ましいリンカーのコレクションを概略的に示しており、DNA、RNA、LNA、ペプチド核酸、モルフォリノまたは他の人工核酸を使用してもよい。これは、オリゴヌクレオチド配列のライブラリーが低コストで製造され得るので、特に有利である。さらに、ハイブリダイゼーションおよび融解の原理を使用して、色素または親和性試薬を可逆的にリンカーに付着させるために相補的配列を使用できるので、特に有利である。ポリメラーゼ連鎖反応、その場ハイブリダイゼーション、蛍光その場ハイブリダイゼーション、サンガーおよび次世代シーケンシング、ならびに制限酵素による消化およびCRIPR/Casなどの標的エンドヌクレアーゼによる切断など、一般的に使用される様々なプロトコルを、例えばオリゴヌクレオチドベースのリンカーと組み合わせて使用することができる。
【0261】
本発明の別の実施形態では、リンカーは、少なくともオリゴヌクレオチドとペプチド配列との組み合わせを含み、オリゴヌクレオチド-ペプチドベースのリンカー4802と呼ぶことができる。
【0262】
別の特に好ましい実施形態では、リンカーは、ナノ構造体4500であり、特にDNA折り紙ベースの構造体またはナノルーラであり、ナノ構造体ベースまたはナノルーラベースのリンカー4804と呼ぶことができる。
【0263】
本発明の別の好ましい実施形態では、ペプチドベースのリンカー4806が使用される。
【0264】
本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも1つのナノ/マイクロビーズを含むリンカー4808が使用される4808。
【0265】
レポーターは、NHS、マレイミド、またはアジド-アルキンカップリングなどの様々な「クリックケミストリー」などの標準的なカップリングクリックケミストリー化学物質を介して親和性試薬に直接コンジュゲートさせるか、または例えば核酸、UOSBと相補的配列との間のハイブリダイゼーション、または例えば
図49に描かれているようなビオチン-ストレプトアビジン相互作用などの親和性リガンド4900と親和性タグ4902との間の高親和性相互作用を使用して非共有結合的に結合させることができる。代替的に、または追加的に、二次ナノボディ4904または他の二次抗体が、レポーターを一次親和性試薬に結合させるために使用することができる。同様に、アプタマー結合リンカー4906が、レポーターを一次親和性試薬に結合させるために使用することができる。
【0266】
図50Aは、(生体)試料を分析するデバイス5000の概略図を示している。特に、このデバイス5000は、
図1~
図49を参照して上述した生体試料を分析するための方法を実行することができる。このデバイスは、以下:好ましくはLED光源、コヒーレント光源(例えば、連続波レーザ、固定または調整可能な波長のパルスレーザ、白色光レーザ)を含む光源ユニット5002、
図18の繰り返しのプロセスおよび
図37のプロセスS3702,S3710の関連部分を実行するように構成するための染色ユニット5004、イメージングユニット5006、特に複数のビューおよび/または光学切片を記録するように構成されたイメージングユニット、フローセル/試料キャリア5008、試料位置決めユニット5010、検出ユニット5012、および制御ユニット5014のうちの少なくとも1つを含む。
【0267】
図50Bは、顕微鏡またはイメージングシステムであるデバイス5000を示す。デバイス5000は、複数のマーカー112を試料に導入するための染色ユニット5004を含み得る。そのために、染色ユニット5004は、自動化されていても自動化されていなくてもよい1つ以上のピペットを含み得る。染色ユニット5004はさらに、マイクロ流体および/またはマイクロ流体チップをさらに含み得る。デバイス5000はまた、蛍光色素100を励起するための励起ユニット2314,5002a,5002bを含む。励起ユニット2314,5002a,5002bは、少なくとも1つの光源、好ましくはコヒーレント光源を含む。少なくとも1つの光源は、色素の各セットに関連する励起光を発光するように構成される。異なる波長または波長スペクトルの励起光を発光するために、光源は調整可能な光源であってもよい。代替的に、デバイス5000は、異なる波長または波長スペクトルの光を発光する2つ以上の光源を含み得る。
図23および
図24に示す実施形態では、励起ユニット2314によって発光された励起光は、ビーム分割ユニット2316によって試料1500に向けられる。
【0268】
デバイス5000の任意選択的なイメージングユニット5006は、励起色素100によって発光された蛍光光から、画像または非画像ベースの読み出しであってもよい読み出しを生成するように構成される。イメージングユニット5006は、蛍光光を捕捉するために試料に向けられた対物レンズを含む。次いで、捕捉された蛍光光は、ビーム分割ユニット2316によって検出ユニット2320,5012a,5012bに向けられる。検出ユニット2320,5012a,5012bは、
図2に示すように、少なくとも1つの検出素子と、蛍光光を異なる検出チャネルに分割するための回折素子204,206またはフィルタと、を含む。
【0269】
試料をイメージングした後、蛍光色素100を不活性化する必要がある場合がある。これは、例えば、励起ユニット2314,5002a,5002bの光源のうちの少なくとも1つによって発光されるコヒーレント光で蛍光色素100を光漂白することによって行うことができる。代替的に、蛍光色素1320を化学的に不活性化するための漂白剤を、染色ユニット5004を用いて試料1002に導入することもできる。さらに、一次親和性試薬または二次親和性試薬のいずれかから蛍光色素100を除去することも可能である。これは、例えば、染色ユニット5004を用いて酵素切断剤を試料に導入することによって行うことができる。代替的に、または追加的に、蛍光色素100は、抗体の溶出、または蛍光標識オリゴヌクレオチドの場合には脱ハイブリダイゼーション(すなわち融解)および溶出によって不活性化することができる。したがって、励起ユニット5002a,5002bおよび/または染色ユニット5004は、試料中に存在するマーカーの少なくとも1つのセットを不活性化するように構成されたマーカー不活性化ユニットを形成する。
【0270】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0271】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0272】
いくつかの実施形態は、
図1~
図51のうちの1つ以上に関連して説明したようなシステムを含む顕微鏡に関する。代替的に、顕微鏡は、
図1~
図51のうちの1つ以上に関連して説明されたシステムの一部であってもよいし、システムに接続されていてもよい。
図50Aおよび
図50Bならびに
図23~
図27は、本明細書に記載される方法を実行するように構成された読み出しデバイスまたはシステム5000の概略図を示している。読み出しデバイスまたはシステム5000は、適切な通信プロトコルおよび接続5018(例えば、USB、TCP/IP、イーサネット、ファイバーチャネル、CANバス)によって接続された顕微鏡またはサイトメータ2500およびコンピュータシステム5016を含む。顕微鏡5014は、例えば、マーカーの光学的読み出しを生成するために使用することができ、画像を撮影するように構成され、コンピュータシステム5016に接続されている。コンピュータシステム5016は、本明細書に記載される方法の少なくとも一部を実行するように構成される。コンピュータシステム5016は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム5016および顕微鏡またはサイトメータ2500は、別個の実体であってもよいが、1つの共通の筐体に一緒に統合することもできる。コンピュータシステム5016は、顕微鏡またはサイトメータ2500の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム5016は、顕微鏡もしくはサイトメータ2500の、センサ、アクチュエータ、カメラまたは照明ユニットなどの顕微鏡またはサイトメータ2500のサブコンポーネントの一部であってもよい。
【0273】
コンピュータシステム5016は、1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のストレージデバイスを有するローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータ、または携帯電話)であってもよいし、分散型コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つ以上のリモートサーバファームおよび/またはデータセンターなどの様々な場所に分散された1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のストレージデバイスを有するクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム5016は、任意の回路または回路の組み合わせを含み得る。一実施形態では、コンピュータシステム5016は、任意のタイプであり得る1つ以上のプロセッサを含み得る。本明細書で使用される場合、プロセッサは、任意のタイプの計算回路、例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、例えば、顕微鏡もしくは顕微鏡コンポーネント(例えば、カメラ)のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはその他のタイプのプロセッサもしくは処理回路などに限定されないものを意味し得る。コンピュータシステム5016に含まれ得る他のタイプの回路は、例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機、および同様の電子システムのようなワイヤレスデバイスで使用するための1つ以上の回路(例えば通信回路)などの、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASlC)などであってよい。コンピュータシステム5016は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ、1つ以上のハードドライブ、および/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)などのリムーバブルメディアを扱う1つ以上のドライブなどの、特定の用途に適した1つ以上のメモリ要素を含むことができる1つ以上のストレージデバイスを含むことができる。また、コンピュータシステム5016は、ディスプレイデバイス、1つ以上のスピーカ、およびキーボードおよび/またはコントローラを含むことができ、このキーボードおよび/またはコントローラには、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識デバイス、またはシステムユーザがコンピュータシステム5016に情報を入力し、コンピュータシステム5016から情報を受信することを可能にする任意の他のデバイスを含むことができる。
【0274】
方法ステップの一部または全部は、例えばプロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路のようなハードウェア装置によって(またはそれを使用して)実行されてもよい。いくつかの実施形態では、最も重要な方法ステップのいくつかの1つ以上が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0275】
特定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装することができる。実装は、デジタル記憶媒体、例えばフロッピーディスク、DVD、Blu-Ray、CD、ROM、PROM、およびEPROM、EEPROM、またはFLASHメモリなどの非一過性の記憶媒体を使用して実行することができ、これらの記憶媒体は、その上に記憶された電子的に読み取り可能な制御信号を有し、それぞれの方法が実行されるようにプログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働可能である)。したがって、デジタル記憶媒体はコンピュータ可読であってもよい。
【0276】
本発明によるいくつかの実施形態は、電子的に読み取り可能な制御信号を有するデータキャリアを含み、このデータキャリアは、本明細書に記載される方法の1つが実行されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる。
【0277】
一般に、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実施することができ、プログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときに、方法の1つを実行するために動作可能である。プログラムコードは、例えば、機械可読キャリアに格納することができる。
【0278】
他の実施形態は、本明細書に記載される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを、機械可読キャリア上に格納して含む。
【0279】
換言すれば、本発明の実施形態は、したがって、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、本明細書に記載される方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0280】
本発明のさらなる実施形態は、したがって、プロセッサによって実行されるときに、本明細書に記載される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムをその上に記憶してなる記憶媒体(またはデータキャリア、またはコンピュータ可読媒体)である。データキャリア、デジタル記憶媒体または記録媒体は、典型的には、有形および/または非一時的である。本発明のさらなる実施形態は、プロセッサおよび記憶媒体を含む本明細書に記載される装置である。
【0281】
したがって、本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号のシーケンスである。データストリームまたは信号のシーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えば、インターネットを介して転送されるように構成され得る。
【0282】
さらなる実施形態は、本明細書に記載される方法の1つを実行するように構成された、または実行するように適合された、例えばコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスなどの処理手段を備える。
【0283】
さらなる実施形態は、本明細書に記載される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムをインストールしたコンピュータを含む。
【0284】
本発明によるさらなる実施形態は、本明細書に記載される方法の1つを実行するためのコンピュータプログラムをレシーバに(例えば、電子的または光学的に)転送するように構成された装置またはシステムを含む。レシーバは、例えば、コンピュータ、モバイルデバイス、メモリデバイスなどであってよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムをレシーバに転送するためのファイルサーバーを含んでいてもよい。
【0285】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用して、本明細書に記載される方法の機能性の一部または全部を実行することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書に記載される方法の1つを実行するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般に、方法は、任意のハードウェア装置によって実行されることが好ましい。
【0286】
以下は、特許請求されてよい付番した実施形態の非網羅的なリストである:
1.生体試料または化合物または化学元素を分析するための方法であって、該方法は、以下のステップ:
a)複数の親和性試薬(S2)を提供するステップであって、複数の親和性試薬(S2)の各親和性試薬(a1,a2,a3,...an)が、生体試料内の所定の標的構造または所定の化合物または所定の化学元素に特異的に結合するように構成されている、ステップと、
b)複数の色素の組み合わせ(S1)を提供するステップであって、各色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)が、複数の色素の組み合わせ(S1)内で固有であり、各色素の組み合わせ(s1,s2,s3,...sn)が、少なくとも2つの異なる色素(|s|>=2)を含む、ステップと、
c)複数の色素の組み合わせ(S1)が、複数の色素の組み合わせ(S1)における各色素(y1,y2,y3,...yσ)が読み出しデバイスによって読み出され得るように構成されており、色素は、読み出しデバイスによって分離され得、読み出しデバイスは、好ましくは少なくとも1つのチャネルを含み、1つのチャネルは色素(y1,y2,y3,...yσ)の1つに対応する、ステップと、
d)好ましくは、複数の親和性試薬(A)から少なくともいくつかの親和性試薬を試料または化合物または化学元素に導入するステップと、
e)ステップd)の前または後に、好ましくは、複数の親和性試薬(S2)の各親和性試薬を、複数の色素の組み合わせ(S1)から少なくとも1個の色素の組み合わせに割り当てるステップと、
f)好ましくは、複数の色素の組み合わせにおける各色素を励起するためのそれぞれの特異的特性を有する励起光を試料に向けるステップと、
g)好ましくは、励起された色素(特に、試料の読み出し体積に位置する)によって発光された発光光から、少なくとも1つのチャネルから少なくとも1つの読み出しを生成するステップと、
h)好ましくは、少なくとも1つの読み出しに基づいて、どの親和性試薬が存在するか-特に読み出し体積に存在するか-を決定するステップと
を含む、方法。
2.読み出し体積中の親和性試薬の存在の決定が、統計的信頼度の尺度または推定に基づいて確立される、実施形態1記載の方法。
3.複数の色素の組み合わせ(S1)が、少なくとも1つのコード(Cα1~Cαn)および/または少なくとも1つの暗号(Xα1~Xαn)を使用して、複数の親和性試薬(A=S2=T1*)に固有に写像され、C:S->T*またはX:S->T*は、好ましくは全単射または少なくとも射影である全関数であり、S2は「ソースアルファベット」であり、T1は「ターゲットアルファベット」であり、S2およびT1は有限集合である、実施形態1または2記載の方法。
4.複数の親和性試薬(A=S2=T1*)が、少なくとも1つのコードCβ1~Cβnおよび/または少なくとも1つの暗号Xβ1~Xβnを使用して、複数の色素の組み合わせS1に固有に写像され、C:S->T*またはX:S->T*は、好ましくは全単射または少なくとも射影である全関数であり、S2は「ソースアルファベット」であり、T1は「ターゲットアルファベット」であり、S2およびT1は有限集合である、実施形態1または2記載の方法。
5.先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法であって、
a)親和性試薬(ai)と色素の組み合わせとの間の全単斜ペア(604)または単射結合(606a,606b)が複数のマーカー(M)内のマーカー(μi)に対応し、
複数の色素における色素が色素A~nのセット(nは、0または自然数の要素である)に割り当てられ得、
色素A~nの各セットがyA~yn個の色素を含み、そのため、複数の色素(YD)がyA+yB+yC+...yn=yσメンバーを含み、
色素A~nのセットのうちの1つに割り当てられた色素が、同じ励起光で励起可能であり、
色素A~nの各セットにおける少なくとも全ての色素が、読み出しデバイスによってチャネルに分離され得、各チャネルは色素の1つに対応し、
b)試料への親和性試薬の導入の前または後のいずれかに、ただしステップ(d)の前に、固有の色素の組み合わせ(si)を、割り当てられた親和性試薬(ai)に物理的に付着させ、
c)複数の親和性試薬(S2)から少なくともいくつかの親和性試薬を試料に導入し、
d)マーカー(μ1,μ2,μ3,...μn)の蛍光色素を励起するために、励起光を試料に向け、
e)試料の読み出し体積に位置する励起された色素によって発光された蛍光光から少なくとも1つの読み出しを生成し、読み出しは少なくとも2つのチャネルを含み、各チャネルは色素の1つに対応し、
f)ステップ(d)で得られた少なくとも1つの読み出しシーケンスに基づいて、読み出し体積に存在するマーカーを決定する、
方法。
6.親和性試薬が、複数の色素の組み合わせ(S1)から選択される少なくとも1個の色素の組み合わせ(si)を可逆的に付着させることを可能にするように構成されている、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
7.複数のレポーター(R)を提供し、各レポーター(r1,r2,r3,...rn)が、リンカーおよび色素の組み合わせ(si)を含む、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
8.複数の色素の組み合わせ(S1)の全ての蛍光色素によって形成される複数の色素(YD)が、少なくとも10、20、50、100、1000、または10000の異なる蛍光色素を含む、実施形態1記載の方法。
9.ステップc)およびd)、好ましくはステップc)~g)が、試料の2つ以上の異なる読み出し体積について反復される、実施形態1または2記載の方法。
10.各マーカー(μi)が、少なくとも2つの異なる付着部位を有するリンカーを含み、付着部位の組み合わせがマーカーに固有であり、各色素が相補的リンカーに接続されてレポーターを形成し、相補的リンカーが色素に固有であり、所定の付着部位に付着するように構成されている、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
11.リンカーおよび/または相補的リンカーがオリゴヌクレオチドである、実施形態10記載の方法。
12.リンカーおよび/または相補的リンカーが、酵素的切断または光分解のための部位を含む、実施形態10または11記載の方法。
13.マーカーを試料に導入する前に、レポーターをそれぞれの付着部位に付着させる、実施形態10から12までのいずれか1つ記載の方法。
14.少なくとも2つの読み出しが生成され、確率的標識を達成するために、第1の読み出しの生成と第2の読み出しの生成との間に、レポーターがそれぞれの付着部位と動的に関連付けられ、かつ/またはそれぞれの付着部位から解離される、実施形態10から13までのいずれか1つ記載の方法。
15.確率的標識がDNA-PAINTによって達成される、実施形態14記載の方法。
16.確率的標識が、ブリンキング法によって、例えば、STORM、PALM、GSDIMなどの超解像顕微鏡法、またはブリンキングを利用する関連方法によって達成される、実施形態13または14記載の方法。
17.マーカーの全ての蛍光色素によって形成される複数の色素が、yA~ynのメンバーを有する色素A~nのセットに分割され、yA+yB+yC+...yn=yσであり、yは自然数であり、yσは複数の色素における色素の総数(YD)であり、同じセットにおける各色素は、本質的に1つの波長スペクトルによって、または同じ波長スペクトルによって励起され得、
それぞれのセットの蛍光色素を励起するために、色素の各セットに対する少なくとも1つの励起光が試料に向けられ、
色素の各セットに対する少なくとも1つの読み出しが、試料の読み出し体積に位置する励起された色素によって発光された蛍光光から生成され、読み出しは少なくとも2つのチャネルを含み、各チャネルはそれぞれのセットの色素の1つに対応する、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
18.励起光が、互いに時間的に続くシーケンスで試料に向けられる、実施形態17記載の方法。
19.読み出しが、読み出し体積の画像または読み出し画像データストリームである、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
20.試料のハイパースペクトル画像をキャプチャするさらなるステップを含む、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
21.少なくとも1つの蛍光色素の蛍光寿命を、例えば、封入、ポリマーマトリックス包埋、および共結晶化のうちの少なくとも1つによって蛍光色素を遮蔽された環境に置くことによって、安定化させるさらなるステップを含む、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
22.チャネルを生成するステップが、チャネルアンミキシング、スペクトルアンミキシング、励起スペクトルイメージング、スペクトルフェーザ分析、スペクトルFLIMフェーザ分析、蛍光色素の蛍光寿命および蛍光色素の励起フィンガープリントのうちの少なくとも1つに基づいている、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
23.チャネルを生成するステップが、少なくとも2つの直交コントラストに基づいている、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
24.チャネルを生成するステップが、機械学習、深層学習または人工知能のうちの少なくとも1つに基づいている、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
25.少なくとも1つのマーカーを不活性化するさらなるステップを含む、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
26.不活性化するステップが、少なくとも1つのマーカーの少なくとも1つの蛍光色素を漂白することと、少なくとも1つのマーカーを試料から除去することとのうちの少なくとも一方によって、好ましくは蛍光色素を親和性試薬から解離もしくは切断すること、または親和性試薬を標的構造から解離することのうちの少なくとも一方によって行われる、実施形態25記載の方法。
27.試料の一連の画像または読み出しを作成するために、以下のステップ:第2の複数のマーカーを提供するステップと、第2の複数のマーカーを試料に導入するステップと、少なくとも1つの励起光を試料に向けるステップと、少なくとも1つの読み出しを生成するステップと、読み出し体積に存在するマーカーを決定するステップとが少なくとも2回反復されるか、または実施形態1のステップa)~e)が少なくとも2回反復される、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
28.各マーカーが、少なくとも2つの異なる付着部位を有するリンカーを含み、付着部位の組み合わせがマーカーに固有であり、各色素が相補的リンカーに接続されてレポーターを形成し、相補的リンカーが色素に固有であり、所定の付着部位に付着するように構成されている、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
29.第2の複数のマーカーを標識するレポーターが、試料の第1の一連の画像または読み出しに基づいて決定された色素の組み合わせを含む、実施形態28記載の方法。
30.レポーターが、色素の混合物を添加することによってアセンブリされ、各色素は、相補的リンカーに接続されて、複数の色素における全ての色素のための色素特異的付着部位を含むリンカー分子を有するレポーターを形成し、そうして、固有の色素の組み合わせに対応する色素の混合物をカップリング反応体積中のリンカー分子に添加することが化学量論的カップリングをもたらす、実施形態28または29記載の方法。
31.レポーターが、色素の混合物を添加することによってアセンブリされ、各色素は、相補的リンカーに接続されて、複数の色素における全ての色素のための色素非特異的付着部位を含むリンカー分子を有するレポーターを形成し、そうして、固有の色素の組み合わせに対応する色素の混合物をカップリング反応体積中のリンカー分子に添加することが確率論的カップリングをもたらす、実施形態30記載の方法。
32.励起光がコヒーレント光である、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
33.励起光が、50nmよりも小さい波長範囲、30nmよりも小さい波長範囲、10nmよりも小さい波長範囲、または単一波長を含む、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
34.実施形態1から33までのいずれか1つ記載の方法を実施するように適合された、生体試料を分析するためのデバイス。
35.少なくとも1つの読み出しを生成するように構成された、顕微鏡、好ましくはレンズレス顕微鏡、ライトフィールド顕微鏡、広視野顕微鏡、蛍光広視野顕微鏡、ライトシート顕微鏡、走査型顕微鏡、または共焦点走査型顕微鏡、プレートリーダ、サイトメータ、イメージングサイトメータ、または蛍光活性化セルソータを含む、実施形態34記載のデバイス。
36.試料中の蛍光色素から、蛍光発光強度、蛍光寿命、発光スペクトル、励起フィンガープリント、蛍光異方性を決定するように構成された、実施形態34または35記載のデバイス。
37.少なくとも2つのチャネルへの読み出しの分離が、プリズムまたは回折格子を含む分光計および少なくとも1つの検出器のうちの少なくとも一方によって行われる、実施形態34から36までのいずれか記載のデバイス。
38.時間指定検出器を含む、実施形態34から37までのいずれか記載のデバイス。
39.各マーカーについて、親和性試薬、所定の構造、および固有の色素の組み合わせを識別する固有の識別子を記憶するメモリデバイスを含む、実施形態34から38までのいずれか記載のデバイス。
40.励起色素によって発光された蛍光光を受け取り、受け取った蛍光光に基づいて較正データを生成するように構成された較正ユニットを含み、少なくとも1つの読み出しが較正データに基づいて生成される、実施形態34から39までのいずれか記載のデバイス。
41.色素の組み合わせが2つ以上の親和性試薬に割り当てられない、先行する実施形態のいずれか1つ記載の方法。
42.親和性試薬;親和性試薬に関する特性;複数の色素;複数の色素の組み合わせ;各色素の組み合わせの特性;複数のマーカー;マーカーに関する特性;リンカー;相補的リンカー;レポーターの少なくとも1つに関する情報;および複数の親和性試薬の各親和性試薬の、複数の色素の組み合わせからの少なくとも1個の色素の組み合わせへの割り当てに関する情報であって、実施形態1から33までのいずれか1つ記載の方法を実施するために必要となり得るか、または実施形態34から41までのいずれか1つ記載のデバイスを操作するために必要となり得る、情報を含むデータベース。
43.実施形態1のステップc)に従って構成された、または実施形態1から41までのいずれか1つに記載された特性を有する、複数の色素の組み合わせ。
44.実施形態1のステップc)に従って構成された、または実施形態1から41までのいずれか1つに記載された特性を有する複数の色素の組み合わせ。
45.実施形態1から33までのいずれか1つ記載の方法を実施するように適合されたデバイス。
46.実施形態1から33までのいずれか1つ記載の方法を実行するための、または実施形態34から41までのいずれか1つ記載のデバイスを操作するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
47.実施形態46記載のコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0287】
100,100a,100b,100A~100E 蛍光色素
100M,100N,100O,100P SMILES
102,102a 左半分のパターンが励起特性に類似
104,104a 右半分のパターンが発光特性に類似
106 色素コンジュゲートまたはオリゴヌクレオチド標識一次親和性試薬
108 シングルドメイン抗体
110 多量体化(シングルドメイン)抗体
112 抗体
114 アプタマー
116 オリゴヌクレオチド
118 毒素、薬物、小分子
120 オリゴヌクレオチドバーコード
124 (108~118)付着した色素またはオリゴヌクレオチドを含まない
200 蛍光光
202 スペクトル分離蛍光光
204 プリズム
206 回折格子
208 複数の検出素子を有する検出器
300 複数の励起スペクトル
302 複数の発光スペクトル
304a,304b,304c τクラスのτゲート
306 類似の発光スペクトルを有する色素群
308a,308b,308c 発光スペクトル
400 トポグラフィカル蛍光寿命-発光強度プロット
402a,402b,402c 色素A1,A2,A3
404 スペクトルフェーザ、FLIMフェーザ、またはスペクトル-FLIMフェーザ
500 親和性試薬(例えばパラトープ)の反応性または特異性決定領域
600 色素A~nのセット
602,602a,602b,602c,602d,706,706a,706b,706c,706d 色素の組み合わせ
604 色素の組み合わせ(si)と親和性試薬(ai)とのペア(全単射;1対1対応)
606a,606b 色素(si)の組み合わせの、親和性試薬(ai)への写像またはその逆(単射)
700 (704a,704b)の数字
702 複数の色素(YD)
704a,704b 色素の組み合わせを形成する規則/バイナリコード
706 コードブロック/コードセグメント
708 マーカー、μ
710 取得シーケンス
800a,800b,800c オリゴヌクレオチドバーコード配列
900 標的分子または分析物
902 リンカー
904 切断部位
906a,906b,906c,906d,906e 相補的部位/配列
906a*,906b*,906c*,906d*,906e* 付着部位/配列
908,1008a,1008b レポーター
1500,1500a 細胞
1502 核
1504 細胞質
1506a,1506b,1506c 標的タンパク質
1508 DNA標的配列
1510 RNA標的配列
1512 一次抗体(非標識)
1514 二次抗体(標識)
1518 一次シングルドメイン抗体(非標識)
1520a,1520b オリゴヌクレオチドベースのレポーター
1522 細胞外空間に固定化したキャプチャ抗体
1524a,1524b,1524c 分泌標的タンパク質
1526a,1526b,1526c,1526d 検出抗体
1600 原子
1602 小分子(例えば、コレステロール、薬物)
1604 ナノボディ
1606 緑色蛍光タンパク質
1608 抗体
1610 量子ドット、ポリマードット、ナノ構造体
1700 点広がり関数(概略図)
1900 離散的な実体(例えばヒドロゲルビーズ)または関心のある細胞を取り囲む仮想空間(例えば、マイクロプレートのウェル);仮想または物理的体積
1902a,1902b 捕捉試薬
1904 ポリマー(例えばヒドロゲル)
2000,2000a マイクロ/ナノビーズ(例:ラテックスまたはポリスチレンビーズ)
2002 ナノ構造体(例:ナノルーラ、DNA折り紙、カーボンチューブ)
2300 マイクロプレートまたは試料キャリア
2302 ウェルまたは試料容器
2304 透明窓
2306 ヒドロゲルまたは透明ポリマー
2308 関心のある細胞または構造の質量中心
2310 質量中心を囲む仮想体積
2312 顕微鏡、イメージングシステム、画像ベースの読み出しデバイス
2314 光源
2316 ビーム経路、ビームスプリッタ、ビームルーティング
2320 検出器
2318 イメージング光学系または対物レンズ
2400 フローセル
2402 流入
2404 流出
2406 フロー媒体
2408 離散実体(例えばヒドロゲルビーズ)
2500 フローサイトメータ
2502 フローソータ
2504 偏向プレート
2506 コレクションチューブ
2600 ビーズベースの分析物検出アッセイ
2602 ビーズベースの分析物相互作用アッセイ
2700 細胞表面結合標的
2800 スポット
2802a,2802b 単一種読み出し体積
2804 多種スポット
2900 読み出しシーケンス
3200 複数の色素の組み合わせ(S1)
3202 第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット
3300a,3300b,3300c 第1の読み出しシーケンスの下に包含不可能な色素の組み合わせのセット
3302a,3302b,3302c 第1の読み出しシーケンスの下に包含可能な色素の組み合わせのセット
3400a,3400b,3400c 読み出しスポットまたは読み出し体積に存在するマーカーに対応する色素の組み合わせのセット
3402a,3402b,3402c 第1の読み出しシーケンスの下に包含可能であるが、読み出しスポットまたは読み出し体積に存在しないマーカーに対応する色素の組み合わせのセット
3800 一次定性的デコーディング
3802 二次定性的デコーディング
3804 二次定量的デコーディング
3850 バックボーン
3900 非特異的共有カップリングまたは高親和性結合部位
4100e,4100h,4100j 色素特異的または色素コンジュゲート親和性タグ/リガンド特異的共有カップリングまたは高親和性結合部位
4102e,4102h,4102j 色素コンジュゲート親和性タグ/リガンド
4300 色素の混合物を充填したマイクロカプセル/ナノカプセル
4302 色素の混合物を充填したマイクロビーズ/ナノビーズ
4400 レポーター上のSMILESの組み合わせ
4500 ナノ構造体(ナノルーラ、DNA折り紙、カーボンチューブなど)に基づく色素(例えばSMILES)を担持するナノプラットフォーム
4600 ポリマーマイクロビーズに包埋されたSMILESの組み合わせ
4700 マイクロカプセルに封入されたSMILESの組み合わせ
4800 オリゴヌクレオチドベースのリンカー
4802 オリゴヌクレオチドおよびペプチドをベースとした複合リンカー
4804 オリゴヌクレオチドおよびナノルーラ/DNA折り紙をベースとした複合リンカー
4806 ペプチドリンカー
4808 オリゴヌクレオチド-マイクロビーズ複合リンカー
4900 親和性リガンド
4902 親和性タグ
4904 二次ナノボディ
4906 アプタマー
5100 強く重複する励起スペクトルのコホート
5102 強く重複する発光スペクトルのコホート
【国際調査報告】