(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】生体試料を分析するためのマーカー、方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240528BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20240528BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240528BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20240528BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240528BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20240528BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240528BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/78 C
G01N33/53 M
G01N33/536 D
G02B21/00
C12Q1/6806 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571596
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021087551
(87)【国際公開番号】W WO2022242895
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/063310
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/066645
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/073819
(32)【優先日】2021-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼーレン アルスハイマー
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043EA01
2G043FA02
2H052AA08
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC14
2H052AC15
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2H052AE07
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2H052AF14
4B029AA07
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4B063QR35
4B063QS28
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
生体試料(902)中の所定の構造体(102)をマーキングするためのマーカー(100)である。マーカー(100)は、所定の構造体(102)に付着するように構成されたアフィニティ試薬(104)と、アフィニティ試薬(104)に付着し、アフィニティ試薬(104)から延びるリンカー構造体(106)と、リンカー構造体(106)に配置された少なくとも2つの異なる蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)と、を備える。リンカー構造体(106)は、2つの蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)の間、または蛍光色素とリンカー構造体(106)との間に配置されている少なくとも1つの開裂部位(112a~112d)を備える。リンカー構造体(106)または蛍光色素を、開裂部位(112a~112d)において、開裂剤(200,400)によって、マーカー(100)から蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)のうちの少なくとも1つを切り離すために切断することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料(902)中の所定の構造体(102)をマーキングするためのマーカー(100,600)であって、前記マーカー(100,600)は、
前記所定の構造体(102)に付着するように構成されたアフィニティ試薬(104)と、
前記アフィニティ試薬(104)に付着し、前記アフィニティ試薬(104)から延びるリンカー構造体(106)と、
前記リンカー構造体(106)に配置された少なくとも2つの異なる蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)と、
を備え、
前記リンカー構造体(106)は、2つの前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)の間、または、前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)のうちの1つと前記リンカー構造体(106)との間に配置されている少なくとも1つの開裂部位(112a~112d,604a~604e)を備え、
前記リンカー構造体(106)を、前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)において、開裂剤(200,400)によって、前記マーカー(100,600)から前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)のうちの少なくとも1つを切り離すために切断することができる、
マーカー(100,600)。
【請求項2】
前記アフィニティ試薬(104)は、付着部位(108a)を備え、
前記リンカー構造体(106)は、前記アフィニティ試薬(104)の前記付着部位に付着するように構成された相補的付着部位(108b)を備える、
請求項1記載のマーカー(100,600)。
【請求項3】
前記リンカー構造体(106)は、オリゴヌクレオチドまたはペプチドによって形成されている、
請求項1または2記載のマーカー(100,600)。
【請求項4】
前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)は、酵素開裂部位(112a~112d,604a~604e)であり、前記リンカー構造体(106)を、前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)において酵素開裂剤(200,400)によって切断することができる、
請求項1から3までのいずれか1項記載のマーカー(100,600)。
【請求項5】
前記酵素開裂部位(112a~112d,604a~604e)は、制限酵素の標的部位、CRISPR/Cas標的、リコンビナーゼ標的部位、特にloxP部位もしくはフリッパーゼ標的部位、または、カスパーゼ標的部位である、
請求項4記載のマーカー(100,600)。
【請求項6】
前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)は、光開裂部位(112a~112d,604a~604e)であり、前記リンカー構造体(106)を、前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)において光分解、特にUV光によって切断することができる、
請求項1から3までのいずれか1項記載のマーカー(100,600)。
【請求項7】
前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)は、タンパク質分解性の開裂部位(112a~112d,604a~604e)であり、前記リンカー構造体(106)を、前記開裂部位(112a~112d,604a~604e)においてプロテアーゼ、特にTEVプロテアーゼまたはファクタXaによって切断することができる、
請求項1から3までのいずれか1項記載のマーカー(100,600)。
【請求項8】
(生体)試料(902)を分析するための方法であって、前記方法は、
a)請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも2つのマーカー(100,600)を提供するステップであって、蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)の配列またはリンカー構造体(106)における開裂部位(112a~112d,604a~604e)は、各前記マーカー(100,600)にとって一義的であるステップと、
b)前記マーカー(100,600)を前記試料(902)内に導入するステップと、
c)前記マーカー(100,600)の蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)を励起するために、少なくとも1つの第1の励起光を前記試料(902)に向けるステップと、
d)前記試料(902)の読み出された体積体内に位置する、励起された蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)によって放出された蛍光光から、少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップと、
e)各マーカー(100,600)から少なくとも1つの蛍光色素を切り離すために、少なくとも1つの開裂剤(200,400)を前記試料(902)内に導入するステップと、
f)前記マーカー(100,600)の、残っている蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)を励起するために、少なくとも1つの第2の励起光を前記試料(902)に向けるステップと、
g)前記試料(902)の読み出された体積体内に位置する、励起された、残っている蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)によって放出された蛍光光から、少なくとも1つの第2の読み出しを生成するステップと、
h)前記第1の読み出しと前記第2の読み出しとに基づいて、前記読み出された体積体内に存在する前記マーカー(100,600)を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記第1の読み出しおよび/または前記第2の読み出しを生成するステップは、励起された前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)によって放出された前記蛍光光を、複数の検出チャネルに分けることを含み、
前記検出チャネルは、前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)の少なくとも1つの発光特性および/または励起特性に対応し、
前記発光特性は、発光スペクトル、蛍光強度、蛍光寿命および励起指紋のうちの1つである、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記マーカー(100,600)は、各蛍光色素がそれぞれ前記第1の読み出しおよび前記第2の読み出しの1つの検出チャネルに対応するように提供される、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記マーカー(100,600)のすべての蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)は、色素の複数の集合に分割され、
同じ集合内の各色素は、実質的に1つの波長スペクトルまたは同じ波長スペクトルによって励起可能であり、
ステップc)およびステップf)において、各前記集合の前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)を励起するために、色素の集合ごとに少なくとも1つの励起光が前記試料(902)に向けられ、
ステップd)およびステップg)において、前記試料(902)の前記読み出された体積体内に位置する、励起された前記色素によって放出された蛍光光から、色素の集合ごとに少なくとも1つの読み出しが生成される、
請求項8または9記載の方法。
【請求項12】
ステップc)およびステップf)において、前記励起光は、互いに時間的に追従するシーケンスで前記試料(902)に向けられる、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの開裂された蛍光色素は、前記第2の励起光が前記試料(902)に向けられる前に、前記試料(902)から洗い流される、
請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記第1の読み出しおよび/または前記第2の読み出しは、前記読み出された体積体の少なくとも1つの画像、または前記読み出された体積体の読み出された信号データストリームもしくは読み出された画像データストリームを含んでいる、
請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記第1の読み出しおよび/または前記第2の読み出しを生成するために、前記試料(902)のハイパースペクトル画像を捕捉するさらなるステップを含む、
請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、特に、カプセル化、ポリマーマトリクス埋め込み、共結晶化、および中空コアを備えるDNAオリガミナノ構造体への結合のうちの少なくとも1つによって遮蔽された環境内に前記蛍光色素を配置することによって、少なくとも1つの蛍光色素の蛍光寿命を安定させるさらなるステップを含む、
請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項8から16までのいずれか1項記載の方法を実施するように適合させられた、生体試料(902)を分析するための装置。
【請求項18】
前記装置は、第1の読み出しおよび第2の読み出しを生成するように構成された、顕微鏡、プレートリーダー、細胞測定器、イメージング細胞測定器または蛍光活性化細胞選別機を備える、
請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記装置は、前記蛍光色素(110a,110b,110c,110d,110e)の蛍光発光強度、蛍光寿命、蛍光寿命を表す値、発光スペクトル、励起指紋および蛍光異方性のうちの少なくとも1つを決定するように構成されている、
請求項17または18記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料内の所定の構造体をマーキングするためのマーカーに関する。本発明はまた、生体試料を分析するための方法に関する。本発明はさらに、生体試料を分析するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生命科学の分野における重要な問題に取り組むために、生体試料、例えば組織試料または細胞培養内の特定の構造体を正確に識別しかつその位置を特定することが重要である。マーカーを、特定の構造体、例えば特定の生体分子に結合している試料内に導入することによってこれを行うことができる。これらのマーカーは、概して、対象の構造体に付着するアフィニティ試薬と、アフィニティ試薬に直接的に結合されているか、または他の手段、例えば、二次アフィニティ試薬によってアフィニティ試薬に付着するか、のいずれかである1つまたは複数の蛍光色素と、を備える。
【0003】
蛍光顕微鏡法は、例えば、高い空間分解能での試料のイメージングを可能にするのに、概して1個~5個の少ない数の異なる蛍光色素しか必要としない。利用可能な色素は、同じ実験において、細胞の種類を識別するために使用されるすべてのマーカー、関心対象のタンパク質などの機能マーカー、および一般的な形態マーカーに分配されなければならない。このことは、多くのイメージング実験において、細胞の種類の識別が単に不十分であることを意味している。例えば、遺伝子制御ネットワーク(GRN)の分析に基づいて、より信頼性が高く、堅牢な、細胞の種類の識別を可能にするアプローチが近年は存在しているが、これらのアプローチは、試料から読み出される、極めて多くの数の異なるマーカーを必要とする。
【0004】
文献PCT/EP2021/063310およびPCT/EP2021/073819は、それぞれ、1回の蛍光顕微鏡法実験において使用可能なマーカーの数を増やすためのマーカーおよび方法を提案している。各マーカーは、原則的に、各マーカーを識別するコードを形成する色素の一義的な組み合わせを含んでいる。しかし、特に、多数のマーカーが互いに近接している場合には、ある程度の曖昧さが残る。これらの曖昧さを解消するために、これらのマーカーを切り離し、マーカーの種々異なる集合での画像取得を繰り返す必要がある。このプロセスには、時間および費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、低いコストおよび時間消費で、多数の所定の構造体の確実な識別を可能にする、生体試料中の所定の構造体をマーキングするためのマーカー、生体試料を分析するための方法、および生体試料を分析するための装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項および以降の説明において規定されている。
【0007】
生体試料中の所定の構造体をマーキングするための提案されたマーカーは、所定の構造体に付着するように構成されたアフィニティ試薬と、アフィニティ試薬に付着し、アフィニティ試薬から延びるリンカー構造体と、リンカー構造体に配置された少なくとも2つの異なる蛍光色素と、を備える。リンカー構造体は、2つの蛍光色素の間、またはこれらの蛍光色素のうちの1つとリンカー構造体との間に配置されている少なくとも1つの開裂部位を備える。リンカー構造体を、開裂部位において、開裂剤によって、マーカーからこれらの蛍光色素のうちの少なくとも1つを切り離すために切断することができる。
【0008】
アフィニティ試薬は、特に、抗体、単分域抗体(ナノボディとしても知られる)、少なくとも2つの単分域抗体の組み合わせ、アプタマー、オリゴヌクレオチド、モルホリノ、所定のRNAに相補的なPNA、DNA標的シーケンス、リガンド(例えば薬剤または薬剤様分子)、または毒素、例えば、ファロイジン、アクチンフィラメントに結合する毒素であり得る。本明細書の意味におけるアフィニティ試薬は、アフィニティ試薬のホモ多量体またはヘテロ多量体であってよく、これによってアビディティー効果が導入されるという利点が提供され、これによって、分析物の検出における感度がより高くなる。所定の構造体は、特定の生体分子、例えば、タンパク質、RNAシーケンス、ペプチド、DNAシーケンス、代謝産物、ホルモン、神経伝達物質、ビタミンまたは微量栄養素であってよい。所定の構造体は、1つの分析物、例えば、金属イオン、特に重金属イオン、Cd(II)、Co(II)、Pb(II)、Hg(II)またはU(VI)などであってもよい。
【0009】
本明細書の意味において、「複数のアフィニティ試薬」(S2)は、生体試料中の所定の標的構造体または所定の化合物または所定の化学元素に特異的に結合するように構成されているアフィニティ試薬(a1,a2,a3,…an)を包含する。複数のアフィニティ(A)試薬のうちの少なくともいくつかのアフィニティ試薬は、アフィニティ試薬が試料内の各所定の標的構造体に付着することができるように「試料内に導入される」。この文脈および本明細書の意味において、かつ上述したように、「試料内に導入される」とは、試料の体積体内に、または試料を取り囲んでおり、かつ試料に割り当てられている体積体内に物理的に導入されることを指していてよい。後者の例は、例えば、分泌された分子のアッセイであってよく、これらの分泌された分子は細胞外空間において最もよく評価され、ここではこれらの分泌された分子は試料の外側にある可能性があるが、特定の空間的状況または近傍内にある。
【0010】
アフィニティ試薬は、試料内に導入される際に、所定の構造体に自身を付着させる。これによって、種々異なる蛍光色素が所定の構造体に付着し、これによって、所定の構造体が蛍光イメージングのために可視化される。各マーカーは、原則として各マーカーを一義的に識別するコードを形成する蛍光色素の一義的な配列を備える。配列を解読するために、リンカー構造体は、イメージングの連続するラウンドまたはサイクルにおいて開裂部位において切断される。開裂部位においてリンカー構造体を切断することによって、蛍光色素の1つがマーカーから切り離される。これは、切り離された蛍光色素を試料から洗い流すことができることを意味する。蛍光色素を切り離すことによって、リンカー構造体上での蛍光色素の配列、したがってこの配列によって表されるコードが変更される。マーキングの後のラウンドにおけるイメージングの第1のラウンドにおいて生じる曖昧さを、アフィニティ試薬の切り離しまたは再導入を必要とせずに解消するために、このコード変更を使用することができる。これによって、結果として、多数のマーカー、すなわち識別されるべき多数の所定の構造体を伴う実験のコストおよび時間の浪費が減る。
【0011】
リンカー構造体は、蛍光色素の配列を支援する。この配列は、特に、蛍光色素が、アフィニティ試薬から延びるリンカー構造体に沿って特定の順序で配列されている線形配列であり得る。
【0012】
「リンカー」:本明細書の意味では、リンカーは、蛍光色素の組み合わせをアフィニティ試薬に連結する、一部分化学構造体(例えばモノマー分子またはポリマー)または化学構造体の多部分アセンブリを示す。リンカーは、色素およびアフィニティ試薬に直接的にもしくは共有的に結合されている可能性がある、または例えば、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用などのアフィニティタグ-アフィニティリガンドの組み合わせ、または例えばハプテンもしくはオリゴヌクレオチドを介して間接的に結合されている可能性がある。共有的な結合の場合、これは部位選択的な結合であってよい。一般的に使用されている結合化学物質、例えば、NHS-、マレイミド、アジド-アルキンおよびさらに別のいわゆるクリック化学物質の範囲を使用して、リンカーをアフィニティ試薬に結合させることができる、かつ/またはリンカーを色素に結合させることができる。リンカーは、特に、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、LNA、PNA、モルホリノ、他の人工オリゴヌクレオチド)、ペプチド、DNAオリガミをベースとする構造体、例えば、ナノルーラー、マイクロビーズ/ナノビーズ、ポリマー、マイクロカプセル/ナノカプセル、マイクロクリスタル/ナノクリスタル、カーボンナノチューブ、カーボンベースのナノ構造体(例えばグラフェン)を含んでいてよい。リンカーは、特にオリゴヌクレオチドと上述のグループの他の元素とを備えていてよく、例えばオリゴヌクレオチドとペプチドとを備えていてよい。
【0013】
「試料」:本明細書の意味において、「試料」は、「生体試料」を指しており、「生体試料」は、「生物学的検体」または「検体」と呼ばれることもあり、例えば、血液、血清、血漿、組織、体液(例えば、リンパ、唾液、精液、間質液、脳脊髄液)、糞便、固体生検、液体生検、外植片、胚全体(ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエなど)、モデル生物全体(ゼブラフィッシュ幼生、ショウジョウバエ胚、C.elegansなど)、細胞(例えば、原核生物、多核生物、多核生物)、多細胞生物(例えばボルボックス)、懸濁細胞培養、単層細胞培養、3D細胞培養(例えば、腸、脳、心臓、肝臓などのさまざまな臓器に由来するスフェロイド、腫瘍様体、オルガノイドなど)、上述のいずれかの溶解物、ウイルスを含んでいる。本明細書の意味において、「試料」は、さらに、生体試料を取り囲んでいる体積体を指しており、例えば、成長因子のような分泌タンパク質、細胞外マトリックス成分が研究されているアッセイでは、特定のアッセイ関連距離までの、細胞を取り囲んでいる細胞外環境も「試料」と称される。特に、この取り囲んでいる体積体内に入れられたアフィニティ試薬は、本明細書の意味において「試料内に導入された」アフィニティ試薬と称される。本明細書の意味において、「試料」は、以降の分野、すなわち基礎研究、応用研究または橋渡し研究、診断手順、創薬および開発、バイオテクノロジーおよび生物処理応用、環境科学および環境保護、品質管理および保証品質のうちの少なくとも1つの分野での用途に使用され得る。
【0014】
「分析物」、「所定の標的構造体」、「標的」:本明細書の意味において、「所定の標的構造体」、「分析物」、および「標的」は同義的に使用され、標的元素、標的分子または標的構造体を指し、これは例えばタンパク質(例えば特定のタンパク質)、RNAシーケンス(例えば特定の遺伝子のmRNA)、ペプチド(例えばソマトスタチン)、DNAシーケンス(例えば遺伝子座または遺伝子要素)、代謝物(例えば乳酸)、ホルモン(例えばエストラジオール)、神経伝達物質(例えばドーパミン)、ビタミン(例えばコバラミン)、微量栄養素(例えばビオチン)、金属イオン(例えば、Cd(II)、Co(II)、Pb(II)、Hg(II)、U(VI)などの金属イオンおよび重金属イオン)であってよい。例えばタンパク質のような分析物を評価して、関心対象のタンパク質の発現レベルを測定することができ、同様にmRNA標的を測定して、そこから各mRNA種が転写された各遺伝子の遺伝子発現レベルを評価することができる。
【0015】
「色素」:本明細書の意味において、「蛍光色素」、「蛍光体」、「蛍光クロム」、「色素」という用語は、蛍光化合物または構造体を示すために互換的に使用され、特に、蛍光有機色素、蛍光量子ドット、蛍光ダイアド、蛍光カーボンドット、グラフェン量子ドットまたは他のカーボンベースの蛍光ナノ構造体、蛍光タンパク質、蛍光DNAオリガミベースのナノ構造体のうちの1つであってよい。有機蛍光色素から、特に以降の誘導体、すなわち、キサンテン(例えば、フルオレセイン、ローダミン、オレゴングリーン、テキサス)、シアニン(例えば、シアニン、インドカルボシアニン、オキサカルボシアニン、チアカルボシアニン、メロシアニン)、誘導体、スクアリンロタキサン誘導体、ナフタレン、クマリン、オキサジアゾール、アントラセン(アントラキノン、DRAQ5、DRAQ7、CyTRAKオレンジ)、ピレン(カスケードブルー)、オキサジン(ナイルレッド、ナイルブルー、クレシルバイオレット、オキサジン170)、アクリジン(プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー)、アリールメチン(オーラミン、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン)、テトラピロール(ポルフィン、フタロシアニン、ビリルビン)、ジピロメテン(BODIPY、aza-BODIPY)が、「蛍光色素」という用語によって意図される。以降の商標グループは、種々異なる化学ファミリーに属する色素を含んでいてよい、市販の蛍光色素を指し示しており、CF dye(Biotium)、DRAQ and CyTRAK probes(BioStatus)、BODIPY(Invitrogen)、EverFluor(Setareh Biotech)、Alexa Fluor(Invitrogen)、Bella Fluore(Setareh Biotech)、DyLight Fluor(Thermo Scientific)、Atto and Tracy(Sigma-Aldrich)、FluoProbes(Interchim)、Abberior Dyes(Abberior Dyes)、Dy and MegaStokes Dyes(Dyomics)、Sulfo Cy dyes(Cyandye)、HiLyte Fluor(AnaSpec)、Seta,SeTau and Square Dyes(SETA BioMedicals)、Quasar and Cal Fluor dyes(Biosearch Technologies)、SureLight Dyes(Columbia Biosciences)、Vio Dyes(Milteny Biotec)(https://en.wikipedia.org/wiki/Fluorophoreからのリストを修正した)である。蛍光タンパク質のグループから、特に、GFPおよびGFP様タンパク質(例えばDsRed、TagRFP)ならびにそれらの(単量体化)誘導体(例えば、EBFP、ECFP、EYFP、Cerulaen、mTurquoise2、YFP、EYFP、mCitrine、Venus、YPet、Superfolder GFP、mCherry、mPlum)を含む緑色蛍光タンパク質(GFP)ファミリーのメンバーが、本明細書の意味における「蛍光色素」という用語によって意図される。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、蛍光タンパク質のグループから、例えばBFPms1のようなリガンドの結合に応じて、または例えば酸化還元感受性のroGFPまたはpH感受性の変異体のような環境の変化に応じて、その吸光度または発光特性が変化する蛍光タンパク質を含み得る。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、蛍光タンパク質のグループから、シアノバクテリアのフィコビリタンパク質小型極赤色蛍光タンパク質smURFPの誘導体、ならびにsmURFPから誘導可能な蛍光タンパク質ナノ粒子を含み得る。蛍光タンパク質の概要は、Rodriguez et al. 2017 “Trends Biochem Sci.” 2017 Feb; 42(2): 111-129において見出され得る。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、蛍光量子ドットを指していてよい。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、蛍光カーボンドット、蛍光グラフェン量子ドット、蛍光カーボンベースのナノ構造体を指していてよく、これはYan et al. 2019 “Microchimica Acta” (2019) 186: 583およびIravani and Varma 2020 “Environ Chem Lett.” 2020 Mar 10: 1-25に記載されている。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、蛍光ポリマードット(Pdot)またはナノダイヤモンドを指していてよい。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、例えば、Kacenauskaite et al. 2021 “J. Am. Chem. Soc.”2021, 143, 1377-1385.に記載されているような、ペリレンアンテナおよびトリアンゲリウムエミッターのダイアドのような蛍光ダイアドを指していてよい。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、有機色素、ダイアド、量子ドット、ポリマードット、グラフェンドット、カーボンベースのナノ構造体、DNAオリガミベースのナノ構造体、ナノルーラー、色素を組み込んだポリマービーズ、蛍光タンパク質、無機蛍光色素、SMILE、または上述のいずれかを充填したマイクロカプセルを指していてよい。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、少なくとも1つの蛍光色素をFRETドナーとして有し、かつ少なくとも1つの蛍光色素をFRETアクセプターとして有するFRETペア、または3成分のフェルスター共鳴エネルギー移動を生成するために使用されるFRETトリプルを指していてよい。特に、FRETぺアまたはFRETトリプルは、相補的なリンカーによって連結されている。本明細書の意味における「蛍光色素」という用語は、さらに、物理的に連結された色素のFRETnタプルを指していてよい。
【0016】
好ましい実施形態では、アフィニティ試薬は、付着部位を備え、リンカー構造体は、アフィニティ試薬の付着部位に付着するように構成された相補的付着部位を備える。この実施形態では、リンカー構造体とアフィニティ試薬とは、別々に提供される。これは、一般的なリンカー構造体を使用しながら、特定の用途に対するアフィニティ試薬を提供するために使用され得る。これによって、マーカーの汎用性およびコスト効率がさらに高まる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、リンカー構造体は、オリゴヌクレオチドまたはペプチドによって形成されている。リンカー構造体は、蛍光色素をその配列で保持する。蛍光色素は、直接的に、すなわち共有的に、または間接的に、例えばアフィニティタグ-アフィニティリガンドの組み合わせによって、リンカー構造体に結合されていてよい。リンカー構造体自体は、1つまたは複数のオリゴヌクレオチド、例えばDNA、RNA、LNA、PNA、モルホリノまたは別の人工オリゴヌクレオチドを含んでいてよい。リンカー構造体は、ペプチドまたは他のDNA類似体もしくはRNA類似体も含んでいてよい。オリゴヌクレオチドとペプチドとが同様に、標準化された方法によって特定のニーズに適合するように合成されてよい。したがって、レポーターは簡単かつコスト効率よく製造され得る。
【0018】
別の好ましい実施形態では、開裂部位は、酵素開裂部位であり、付着構造体を、開裂部位において酵素開裂剤によって切断することができる。好ましくは、酵素開裂部位は、制限酵素の標的部位、CRISPR/Cas標的、リコンビナーゼ標的部位、特にloxP部位もしくはフリッパーゼ標的部位、またはカスパーゼ標的部位である。1つまたは複数の蛍光色素をリンカー構造体から切り離すために、酵素開裂剤が試料内に導入される。酵素開裂剤が開裂部位においてリンカー構造体を切断した後、リンカー構造体のうちの切断された部分と、リンカー構造体のこの部分に連結されている蛍光色素と、を試料から洗い流すことができる。酵素的開裂には、開裂部位のみを標的とし、これによって他の構造体への損傷を減らすという利点がある。
【0019】
別の好ましい実施形態では、開裂部位は、光開裂部位であり、リンカー構造体を、開裂部位において光分解、特にUV光によって切断することができる。光分解によってリンカー構造体を切断することは、非常に効率的であり、自動化が容易である。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、開裂部位は、タンパク質分解性の開裂部位であり、リンカー構造体を、開裂部位においてプロテアーゼ、特にTEVプロテアーゼまたはファクタXaによって切断することができる。
【0021】
本発明はまた、(生体)試料を分析するための方法に関する。この方法は、次のステップ、すなわち、a)請求項1から7までのいずれか1項記載の少なくとも2つのマーカーを提供するステップであって、蛍光色素の配列またはリンカー構造体における開裂部位が各マーカーにとって一義的であるステップと、b)マーカーを試料内に導入するステップと、c)マーカーの蛍光色素を励起するために、少なくとも1つの第1の励起光を試料に向けるステップと、d)試料の読み出された体積体内に位置する、励起された蛍光色素によって放出された蛍光光から、少なくとも1つの第1の読み出しを生成するステップと、e)各マーカーから少なくとも1つの蛍光色素を切り離すために、少なくとも1つの開裂剤を試料内に導入するステップと、f)マーカーの、残っている蛍光色素を励起するために、少なくとも1つの第2の励起光を試料に向けるステップと、g)試料の読み出された体積体内に位置する、励起された、残っている蛍光色素によって放出された蛍光光から、少なくとも1つの第2の読み出しを生成するステップと、h)第1の読み出しと第2の読み出しとに基づいて、読み出された体積体内に存在するマーカーを決定するステップと、を含む。
【0022】
任意選択的に、ステップe)~ステップg)は、少なくとももう1回実行されてよく、その後、ステップh)において、読み出された体積体内に存在するマーカーが決定される。
【0023】
この方法は、試料を分析するために上述の1つまたは複数のマーカーを使用する。マーカーは、試料中の種々異なる所定の構造体を標的にして、これらの所定の構造体を視認可能かつ識別可能とするために使用される。個々のマーカーは、蛍光色素の一義的な配列によって識別される。配列を一義的に識別するために、放出された蛍光光に関する情報、特に蛍光色素の発光スペクトル、蛍光発光強度または蛍光寿命を含む第1の読み出しおよび第2の読み出しが使用される。第1の読み出しの捕捉と第2の読み出しの捕捉との間で蛍光色素の1つを切り離すことによって配列が変更されるので、第1の読み出しの捕捉の間に生じる曖昧さを、後続の読み出しにおいて解消することができる。これによって、識別されるべき多数のマーカー、ひいては多数の所定の構造体を確実に識別すること、および分けることが可能になる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、第1の読み出しおよび/または第2の読み出しを生成することは、励起された蛍光色素によって放出された蛍光光を、複数の検出チャネルに分けることを含む。検出チャネルは、蛍光色素の少なくとも1つの発光特性に対応する。発光特性は、発光スペクトル、蛍光強度、蛍光寿命および励起指紋のうちの1つである。好ましくは、マーカーは、第1のレポーターおよび第2のレポーターの各蛍光色素がそれぞれ第1の読み出しおよび第2の読み出しの1つの検出チャネルに対応するように提供される。これらのチャネルは、1回の読み出しに対する種々異なる蛍光色素の寄与を分けるために生成される。チャネルの生成は、スペクトルアンミキシング、蛍光寿命の決定、および蛍光色素の励起指紋の決定のうちの少なくとも1つを含み得る。スペクトルアンミキシング(スペクトルイメージングおよびリニアアンミキシングまたはチャネルアンミキシングとも称される)は、リニアアンミキシング、主成分分析、スペクトルの教師なし学習手段、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、(スペクトル)フェーザーアプローチ、およびモンテカルロアンミキシングアルゴリズムを含むさまざまな様式で実行され得るが、これらに限定されない。種々異なるマーカーに関連する蛍光色素間のクロストークを減らすために、これらの技術のうちのいくつかが使用されてよい。種々異なる蛍光色素からの寄与、すなわち、例えば読み出しの1つの画素における、オーバラップする発光スペクトルに起因するクロストークを分けるためにアンミキシング技術を使用することもできる。これらの技術を用いることによって、ノイズの低減に起因して、この方法の感度を大幅に上げることができる。さらに、蛍光色素、ひいてはレポーターを正確に識別するために、蛍光色素の蛍光寿命および励起指紋を使用することができる。これは、読み出しごとに、マーカーのより多くの集合を使用するために使用可能である。結果として、これは、1回の実験において使用することができるマーカーの総数を大幅に増やす。
【0025】
別の好ましい実施形態では、レポーターのすべての蛍光色素は、色素の複数の集合に分割される。同じ集合内の各蛍光色素は、実質的に1つの波長スペクトルまたは同じ波長スペクトルによって励起可能である。ステップc)およびステップf)において、各集合の蛍光色素を励起するために、色素の集合ごとに少なくとも1つの励起光が試料に向けられる。ステップd)およびステップg)において、試料の読み出された体積体内に位置する、励起された蛍光色素によって放出された蛍光光から、色素の集合ごとに少なくとも1つの読み出しが生成される。蛍光色素の各集合は、種々異なる励起光によって独立して励起され得るので、各集合によって放出される蛍光光を独立して検出することもできる。これは、それぞれが種々異なる集合によって放出された蛍光光を捕捉する複数の読み出しを生成するために使用される。各読み出しにおいて、種々異なる蛍光色素が励起され、これによって、種々異なる色素のより堅牢な識別、ひいてはマーカーと、試料の関連する所定の構造体と、のより堅牢な識別が可能になる。
【0026】
別の好ましい実施形態では、ステップc)およびステップf)において、励起光は、互いに時間的に追従するシーケンスで試料に向けられる。好ましくは、異なる励起光の適用の間の時間は、蛍光色素の蛍光寿命よりも長い。これによって、異なる蛍光色素間のクロストークを減らすことができ、さらにこの方法の感度が向上する。
【0027】
別の好ましい実施形態では、開裂された蛍光色素は、第2の励起光が試料に向けられる前に、試料から洗い流される。結合されていない蛍光色素を洗い流すことによって、確実に、自身の関連するマーカーに実際に付着している蛍光色素のみが検出される。したがって、結合されていない蛍光色素を洗い流すことによって、試料中の構造体の誤識別が防止され、この方法はより信頼性のあるものとなる。
【0028】
別の好ましい実施形態では、第1の読み出しおよび/または第2の読み出しは、読み出された体積体の少なくとも1つの画像、または読み出された体積体の読み出された画像データストリームを含んでいる。特に、この方法は、第1の読み出しおよび/または第2の読み出しを生成するために、試料のハイパースペクトル画像を捕捉するさらなるステップを含む。限られた数の波長帯域、典型的には10未満または10前後の波長帯域を捕捉するマルチスペクトルイメージングとは対照的に、ハイパースペクトルイメーシングは、1ピクセル当たり数十または数百の波長帯域を捕捉する。換言すれば、ハイパースペクトルイメージングは、非常に高いスペクトル分解能を有する。これによって、蛍光色素の発光スペクトルに基づいて、蛍光色素をより微細に区別することが可能になり、これによって、この方法の感度および信頼性が向上する。
【0029】
別の好ましい実施形態では、この方法は、特に、カプセル化、ポリマーマトリクス埋め込み、および共結晶化のうちの少なくとも1つによって遮蔽された環境内に蛍光色素を配置することによって、少なくとも1つの蛍光色素の蛍光寿命を安定させるさらなるステップを含む。蛍光寿命の安定化によって、安定した蛍光色素の寿命に基づいて、安定した蛍光色素の識別の信頼性を大幅に高めることができる。他の点では等しい蛍光色素のうちのいくつかの蛍光色素の蛍光寿命を延ばすためにこの方法を使用することもでき、これは、さらなる区別化特徴を提供し、これによって、1回の実験で使用することができる蛍光色素の数が増える。
【0030】
本発明はさらに、生体試料を分析するための装置に関する。装置は、上述の方法を実施するように適合させられている。
【0031】
装置は、上述の方法と同じ利点を有し、方法に関する従属請求項の特徴を利用して補足され得る。
【0032】
好ましい実施形態では、装置は、第1の読み出しおよび第2の読み出しを生成するように構成された、顕微鏡、プレートリーダー、細胞測定器、イメージング細胞測定器または蛍光活性化細胞選別機を備える。好ましくは、顕微鏡は、レンズレス顕微鏡、ライトフィールド顕微鏡、ワイドフィールド顕微鏡、蛍光ワイドフィールド顕微鏡、ライトシート顕微鏡、走査型顕微鏡、スピニングディスク顕微鏡、または共焦点走査型顕微鏡である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、装置は、蛍光色素の蛍光発光強度、蛍光寿命、蛍光寿命を表す値、発光スペクトル、励起指紋および蛍光異方性のうちの少なくとも1つを決定するように構成されている。
【0034】
以降では、特定の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】一実施形態による、生体試料内の所定の構造体をマーキングするためのマーカーの概略図を示す図である。
【
図2】第1の開裂剤を導入した後の、
図1によるマーカーの概略図を示す図である。
【
図3】第1の蛍光色素を切り離した後の、
図1および
図2によるマーカーの概略図を示す図である。
【
図4】第2の開裂剤を導入した後の、
図1~
図3によるマーカーの概略図を示す図である。
【
図5】第1の蛍光色素および第2の蛍光色素を切り離した後の、
図1~
図4によるマーカーの概略図を示す図である。
【
図6】別の実施形態によるマーカーの概略図を示す図である。
【
図7】
図1~
図6を参照して上述したマーカーを利用して生体試料を分析するための方法のフローチャートを示す図である。
【
図8】2つの異なるマーカーの蛍光色素の配列の概略図を示す図である。
【
図9】生体試料902を分析するための装置の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、一実施形態による、生体試料902(
図9を参照)内の所定の構造体102をマーキングするためのマーカー100の概略図である。
【0037】
所定の構造体102は、試料内に位置する、特定の生体分子、または1つの分析物、例えば金属イオンであり得る。
図1では、所定の構造体102は、五角形として示されている。
【0038】
マーカー100は、アフィニティ試薬104と、アフィニティ試薬104に連結されているリンカー構造体106と、を含む。アフィニティ試薬104は、所定の構造体102に自身を付着させ、これによって、リンカー構造体106を所定の構造体102に連結するように構成されている。架橋剤、例えばグルタルアルデヒドを、アフィニティ試薬104と所定の構造体102との間の結合を強化するために使用することができる。アフィニティ試薬104は、リンカー構造体106の相補的付着部位108bに連結するように構成された付着部位108aを含み、これによってリンカー構造体106をアフィニティ試薬104に連結する。付着部位108aおよび相補的付着部位108bは、マーカー100にとって一義的であり、例えば、ヌクレオチドの一義的なシーケンスを含むオリゴヌクレオチドなどのオリゴマーによって形成されてよい。
【0039】
リンカー構造体106は、5つの蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eが配置されている長鎖として例示的に形成されている。換言すれば、この実施形態では、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eは、リンカー構造体106に沿って線状に配置されている。蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eのこの線形配列は、
図1の下部に、5つの円114a,114b,114c,114d,114eのシーケンスとして概略的に示されており、各円114a,114b,114c,114d,114eは、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eのうちの1つを表している。円114a,114b,114c,114d,114eの塗りつぶしは、各蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eの発光特性、例えば発光スペクトル、発光寿命または発光指紋に対応する。
【0040】
この実施形態では、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eは、リンカー構造体106に間接的に結合されている。蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eは、オリゴヌクレオチドシーケンスに連結されており、このオリゴヌクレオチドシーケンスは、リンカー構造体106上に配置された相補的なオリゴヌクレオチドシーケンスに付着している。しかし、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eが、リンカー構造体106に直接的に、すなわち共有的に結合されてもよい。蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eの組み合わせは、マーカー100にとって一義的である。これによって、マーカー100を一義的に識別することができる。1つの色素の代わりに蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eの組み合わせを用いることによって、一義的に識別可能なマーカー100の数が大幅に増える。例えば、10個の異なる蛍光色素が使用される。2つの色素の一義的な組み合わせは、45通りあり、5つの色素の一義的な組み合わせは、252通りある。つまり、252個までの異なる所定の構造体102がマーキング可能であり、かつ10個の蛍光色素のみによって一義的に識別可能である。
【0041】
蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eが連結された3つの相補的なオリゴヌクレオチドシーケンス間に、開裂部位112a,112b,112c,112dが配置されている。リンカー構造体106を、開裂部位112a,112b,112c,112dにおいて、開裂剤200,400(
図2および
図4を参照)によって、これらの蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eのうちの1つをリンカー構造体106から切り離すために切断することができる。第1の開裂剤200によって第1の開裂部位112aが切断されると、第1の蛍光色素110aが切り離される。第2の開裂剤400によって第2の開裂部位112bが切断されると、第2の蛍光色素110bが切り離され、第3、第4および第5の蛍光色素110c,110d,110eだけがマーカー100に残って付着している。リンカー構造体106の切断を、
図2および
図4を参照して、以降でより詳細に説明する。
【0042】
図2は、第1の開裂剤200を導入した後の、
図1によるマーカー100の概略図である。
【0043】
この実施形態では、開裂剤200,400は酵素開裂剤である。択一的に、開裂剤200,400は、光分解によって開裂部位112a,112b,112c,112dにおいてリンカー構造体106を切断する光、特にUV光であってもよい。
図2では、リンカー構造体106は、第1の開裂剤200によって第1の蛍光色素110aと第2の蛍光色素110bとの間で切断される。これによって、第1の蛍光色素110aがマーカー100から切り離される。次いで、切り離された蛍光色素110aが、試料902から洗い流されてよい。蛍光色素110aを切り離すことによって、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eの配列が変更される。これについては、
図3を参照しながら以降で説明する。
【0044】
図3は、第1の蛍光色素110aを切り離した後の、
図1および
図2によるマーカー100の概略図である。
【0045】
第1の蛍光色素110aがマーカー100から切り離された後、4つの蛍光色素110b,110c,110d,110eがマーカー100に残って付着している。蛍光色素110b,110c,110d,110eのこの新たな配列は、
図3の下部に、4つの円114b,114c,114d,114eのシーケンスとして概略的に示されており、各円は、残っている蛍光色素110b,110c,110d,110eのうちの1つを表している。配列を変更することによって、配列が表すコードも変更されている。これは、
図6および
図7を参照して以降で説明するように、曖昧さを解消するために使用可能である。
【0046】
図4は、第2の開裂剤400を導入した後の、
図1~
図3によるマーカー100の概略図である。
【0047】
図4では、リンカー構造体106は、第2の蛍光色素110bと第3の蛍光色素110cとの間で第2の開裂剤400によって切断される。これによって、第2の蛍光色素110bがマーカー100から切り離される。次いで、切り離された蛍光色素110bが、試料902から洗い流されてよい。蛍光色素110bを切り離すことによって、
図5を参照して以降で説明するように、蛍光色素110c,110d,110eの配列が再び変更される。
【0048】
図5は、第1の蛍光色素110aおよび第2の蛍光色素110bを切り離した後の、
図1~
図4によるマーカー100の概略図である。
【0049】
第2の蛍光色素110bもマーカー100から切り離された後、3つの蛍光色素110c,110d,110eだけがマーカー100に残って付着している。蛍光色素110c,110d,110eのこの新たな配列は、
図5の下部に、3つの円114c,114d,1142eのシーケンスとして概略的に示されており、各円は、残っている蛍光色素110c,110d,110eのうちの1つを表している。
【0050】
図1~
図5には、イメージングの3回のラウンドまたはサイクルにおいて生体試料902を分析するためにマーカー100を使用する方法が示されている。各ラウンドまたはサイクルの後、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eのうちの1つがマーカー100から切り離され、これによって、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eの配列が変更される。以降では、この方法を
図7および
図8を参照してより詳細に説明する。この方法を、
図9を参照して以降で説明する装置によって実施することができる。
【0051】
図6は、別の実施形態によるマーカー100の概略図である。
【0052】
図6によるマーカー600と
図1~
図5によるマーカー100とは、そのリンカー構造体602の形状において異なっている。この実施形態によるマーカー600のリンカー構造体602は、例えばポリスチレンビーズが支持体として使用される場合のような球状の形状、例えばナノルーラーのような、DNAオリガミベースの構造体がリンカー構造体602の一部として使用される場合の棒状、シート状/平面状、多角形状の形状または他の複雑な形状を有していてよい。マーカー600の蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eは、リンカー構造体602の周囲に星形に配置されている。この実施形態では、開裂部位604a,604b,604c,604d,604eは、マーカー600のリンカー構造体602と蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eとの間に配置されている。
【0053】
図7は、
図1~
図6を参照して上述したマーカー100を利用して生体試料902を分析するための方法のフローチャートである。
【0054】
ステップS700において、プロセスが開始される。ステップS702において、上述のような少なくとも1つのマーカー100が提供される。マーカー100,600は、例えば、溶液または凍結乾燥固体で提供されてよい。特に、アフィニティ試薬104と種々異なるリンカー構造体106とは、別々に提供されている。
【0055】
ステップS704において、アフィニティ試薬104が試料902内に導入される。マーカー100,600を試料902内に導入する際には、リンカー構造体106,602がアフィニティ試薬104に既に付着されていてよい。択一的に、アフィニティ試薬104とリンカー構造体106,602とは、試料902内に別々に導入される。アフィニティ試薬104が、自身の各所定の構造体102に自身を付着させる時間を有し、リンカー構造体106,602が、自身の各アフィニティ試薬104に自身を付着させる時間を有した後、結合されていないアフィニティ試薬104およびリンカー構造体106,602は、任意のステップS706において試料902から洗い流される。マーカー100,600が自身を付着させるはずの特定の所定の構造体102が、試料902内に存在しない場合がある。したがって、結合されていないマーカー100,600を洗い流すことによって、以降において、自身の関連する所定の構造体102に実際に付着されたマーカー100,600のみが確実に検出される。また、すべてのリンカー構造体106が、自身の関連するアフィニティ試薬104に自身を結合させるというわけではない場合もある。いずれの場合も、結合されていないマーカー100,600およびリンカー構造体106,602を洗い流すことによって、試料902における構造体の誤識別が防止される。
【0056】
ステップS708において、マーカー100,600の蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eを励起するために、少なくとも1つの第1の励起光が試料902に向けられる。第1の励起光は、特定の蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eに関連する1つの波長または波長スペクトルの光を含み得る。2つ以上の第1の励起光、例えば種々異なる光源によって放出される光が同時にまたは順次に使用されてよい。励起された蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eは、次いで、蛍光光を放出し、この蛍光光は、ステップS710において、少なくとも1つの第1の読み出しを生成するために使用される。第1の読み出しは、蛍光光に関する情報、特に、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eの発光スペクトル、蛍光発光強度、蛍光寿命または励起指紋を含む。第1の読み出しからの情報は、ステップS712において、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110e,したがって、試料902の読み出された体積体内に存在するマーカー100,600を識別するために使用される。ステップS704~ステップS712は、試料902のイメージングの第1のサイクルまたはラウンドに対応する。
【0057】
任意選択的に、試料902内のすべてのマーカー100,600が、第1の読み出しのみから、少なくとも所定の確実性で識別された場合、プロセスは、ステップS712の後に終了してよい。択一的に、プロセスは、ステップS714において継続される。
【0058】
ステップS714において、第1の開裂剤200が試料902内に導入される。第1の蛍光色素110aが切り離されるようにリンカー構造体106が切断された後、ステップS716において、切り離された蛍光色素110aが試料902から洗い流される。これによって、どの蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eがマーカー100,600に連結しているかが変更される。曖昧さを解消し、1回の実験で使用することができるマーカー100,600の数を増やすためにこれを使用できる手法は、以降で
図8を参照して説明される。ステップS718において、マーカー100,600の残っている蛍光色素110b,110c,110d,110eを励起するために、第2の励起光が試料902に向けられる。第2の励起光は、試料902に残っている特定の蛍光色素110b,110c,110d,110eに関連して、1つの波長または波長スペクトルの光を含んでいてもよい。同様に、2つ以上の第2の励起光が使用されてよい。ステップS720において、試料902の読み出された体積体内に位置する、励起された蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eによって放出された蛍光光から、少なくとも1つの第2の読み出しが生成される。ステップS722において、マーカー100,600の蛍光色素110a,110b,110c,110d,110e、ひいては試料902内に存在するマーカー100,600を識別するために、第2の読み出しからの情報が使用される。ステップS714~ステップS722は、試料902のイメージングの第2のサイクルまたはラウンドに対応する。
【0059】
第1の読み出しおよび第2の読み出しから、試料902内のすべてのマーカー100,600が、少なくとも所定の確実性で識別された場合、プロセスはステップS724において終了する。択一的に、ステップS714~ステップS722が、試料902のイメージングの第3のサイクルまたはラウンドにおいて繰り返される。第3のサイクルでは、第1の開裂剤の代わりに第2の開裂剤400が使用される。その後のサイクルまたはラウンドにおいて、さらに別の開裂剤が使用されてよい。
【0060】
図8は、2つの異なるマーカーの蛍光色素の配列の概略図を示す。
【0061】
図8の上側の部分800は、第1のマーカーの蛍光色素の配列を示す。
図8の下側の部分802は、第2のマーカーの蛍光色素の配列を示す。蛍光色素の各々は、
図8において円で表されている。各円の塗りつぶしは、各蛍光色素の発光特性、例えば、発光スペクトル、発光寿命または発光指紋に対応する。2つのマーカーの蛍光色素の配列は、
図8に関して上述した方法のそれぞれ3つのサイクルについて示されている。
【0062】
図8から分かるように、これら2つのマーカーは、同じ蛍光色素を含んでいる。つまり、蛍光色素の配列はマーカーごとに異なるが、これらのマーカーを自身の各蛍光色素の発光特性のみに基づいて区別することはできない。この曖昧さを解消するために、各マーカーの蛍光色素のうちの1つが、各サイクルの後に切り離される。これによって、どの蛍光色素がどのマーカーに付着しているのかが変更される。第1のマーカーの第1の蛍光色素は、第2のマーカーの第5の蛍光色素と同じ発光特性を有している。同様に、第1のマーカーの第5の蛍光色素は、第2のマーカーの第1の蛍光色素と同じ発光特性を有している。各マーカーの第1の蛍光色素を切り離すことによって、ここで、これらのマーカーは、1つの蛍光色素によって異なる。したがって、これらのマーカーを、第2のサイクルから開始して、区別することができる。
【0063】
図1~
図8は、マーカー100,600と、1回の実験で確実に区別することができるマーカー100,600の総数を増やすために使用可能であり、したがって、識別することができる、試料902内の構造体の数を増やす方法とを説明している。
図1を参照して説明した例に戻ると、10個の異なる蛍光色素が使用され、各マーカー100,600が5個の異なる蛍光色素を含む場合、蛍光色素の252通りの一義的な組み合わせが存在する。しかし、上述の方法は、いわば蛍光色素の配列に応じる。これによって、蛍光色素の一義的な組み合わせの数がさらに5!倍になり、このことは、10個の異なる蛍光色素のみで、蛍光色素の30000通り以上の一義的な組み合わせが可能であることを意味する。
【0064】
図9は、生体試料902を分析するための装置900の概略図を示している。
【0065】
特に、装置900は、
図1~
図5を参照して上述したマーカー100,600を利用して、
図6~
図7を参照して上述した生体試料902を分析するための方法を実施することができる。図では、装置900は、顕微鏡システム904の一部として例示的に示されている。
【0066】
装置900は、試料902内にマーカー100,600を導入するための染色ユニット906を備える。この目的のために、染色ユニット906は、自動化されていてもよいし、自動化されていなくてもよい1つまたは複数のピペットを備えていてよい。また、装置900は、マーカー100,600の蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eを励起するための励起ユニット908を備える。励起ユニット908は、少なくとも1つの光源、好ましくはコヒーレント光源を備える。少なくとも1つの光源は、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eを励起するために用いられる励起光を放出するように構成されている。種々異なる波長または波長スペクトルの励起光を放出するために、光源は、調整可能な光源であってよい。択一的に、装置900は、種々異なる波長または波長スペクトルの光を放出する2つ以上の光源を備えていてよい。
図9に示されている実施形態では、励起ユニット908によって放出された励起光は、ビーム分割ユニット910によって試料902に向けられる。
【0067】
装置900のイメージングユニット912は、励起された蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eによって放出された蛍光光から画像を生成するように構成されている。画像は、この実施形態における読み出しである。イメージングユニットは、蛍光光を捕捉するために試料902に向けて配向された対物レンズ914を備える。捕捉された蛍光光は、続いて、ビーム分割ユニット910によって検出ユニット916に向けられる。検出ユニット916は、少なくとも1つの検出要素と、蛍光光を種々異なる検出チャネルに分割するための回折要素と、を備える。
【0068】
読み出しを生成した後、蛍光色素110a,110b,110c,110d,110eのうちの少なくとも1つを、自身の各マーカー100,600および試料902から切り離す必要がある。これは、開裂剤200,400によって行われる。開裂剤200,400は、特に、酵素開裂剤200,400であってよく、酵素開裂剤200,400は、染色ユニット906によって試料902内に導入可能である。択一的に、光分解によってリンカー構造体106,602を切断するために、励起ユニット908の光源または付加的な光源が使用されてよい。
【0069】
装置900は、染色ユニット906、励起ユニット908および検出ユニット916に連結されたプロセッサ918をさらに備える。プロセッサ918は、生体試料902を分析するための方法を実施する目的で、装置900の各要素をコントロールするように構成されている。特に、プロセッサ918は、少なくとも1つのユーザ入力に基づいてこの方法を実施するように構成されている。
【0070】
同一または類似に作用する要素は、すべての図において同じ参照符号で示されている。本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆるすべての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0071】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【符号の説明】
【0072】
100 マーカー
102 所定の構造体
104 アフィニティ試薬
106 リンカー構造体
108a 付着部位
108b 相補的付着部位
110a,110b,110c,110d,110e 蛍光色素
112a,112b,112c,112d 開裂部位
114a,114b,114c,114d,114e 円
200 開裂剤
400 開裂剤
600 マーカー
602 リンカー構造体
604a,604b,604c,604d,604e 開裂部位
900 装置
902 試料
904 顕微鏡システム
906 染色ユニット
908 励起ユニット
910 ビーム分割ユニット
912 イメージングユニット
914 対物レンズ
916 検出ユニット
918 プロセッサ
【国際調査報告】