(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】子宮内膜症の診断における新規な生物学的マーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240528BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571771
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 TR2022050458
(87)【国際公開番号】W WO2022245324
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クルト セレプ インジ
(72)【発明者】
【氏名】テルシ テメルタス ディレク
(72)【発明者】
【氏名】サヒン フィクレッティン
(72)【発明者】
【氏名】バトゥカン メリケ
(72)【発明者】
【氏名】シギンク ハリメ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045DA20
2G045DA36
(57)【要約】
本発明は、子宮内膜症の診断に使用することができる新規な生物学的マーカーの組み合わせに関する。本発明の目的は、子宮内膜症の診断において、健康なeMSCに比べて、子宮内膜生検試料から単離されたeMSCにおいて異なって発現する生物学的マーカーを検出することである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜症患者からの子宮内膜生検及び/又は月経血に由来する単離された子宮内膜間葉系幹細胞において子宮内膜症を診断するためにバイオマーカーとして使用される、組織トランスグルタミナーゼ。
【請求項2】
子宮内膜症患者からの子宮内膜生検及び/又は月経血に由来する単離された子宮内膜間葉系幹細胞において子宮内膜症を診断するために、分化抗原群146、スシドメイン含有タンパク質2、インテグリンβ1及び血小板由来成長因子受容体のマーカー、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーと共にバイオマーカーとして使用される、請求項1に記載の組織トランスグルタミナーゼ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイオマーカーを単独で又は相互に組み合わせて含み、「子宮内膜生検試料及び/又は月経血から単離された子宮内膜間葉系細胞」において遺伝子レベル及び/又はタンパク質レベルを測定するために使用される、子宮内膜症診断キット。
【請求項4】
月経血から単離された間葉系細胞における遺伝子発現レベル及びタンパク質発現レベルが、治療に使用される薬剤の成功を検出するために使用される、請求項1又は2に記載のバイオマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮内膜症の診断に使用することができる新規な生物学的マーカーの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症は、子宮内膜組織の内移植として定義される病気であり、子宮内膜組織は、出産年齢の女性の子宮の内層を裏打ちし、思春期以降、毎月の月経時に子宮の外で肥厚して体の他の部分へ失われる[1]、[2]。子宮内膜症の有病率を考慮すると、出産年齢の女性の10~15%で見られ、不妊の群の9~50%で見られるが、慢性骨盤痛及び月経困難症が疑われる若者では、これらの値が最大約50%まで増加する可能性がある[3]。頭痛[4]、関節痛、筋肉痛[5]、アレルギー、甲状腺機能低下症、線維筋痛症、慢性疲労症候群[6]及び膣内イースト菌感染症体質[7]などの臨床症状は、子宮内膜症疾患でよく見られる。この病気に関連したこれらの症状は、女性の日常生活の活動に大きな影響を与え、生活の質を低下させ[8]、更に、この病気は、女性の不妊を引き起こし、自分が適格ではないと感じさせる可能性さえある。現在のところ、子宮内膜症に関して新規な診断及び治療の方法を適用して、患者の日常生活の質を改善し、患者を精神的に軽減することが不可欠である。
【0003】
これまでの文献研究及び米国生殖医学会(American Society for Reproductive Medicine)が発行した報告書は、「腹腔鏡検査」、つまり外科的介入が子宮内膜症の診断における「ゴールドスタンダード」となっており[9]、多くのリスクを伴うことを示している。例えば、あらゆる外科的介入のリスクに加えて、膀胱、腸、尿管などの腹腔内の臓器への損害及びその後の内出血、卵巣への損傷による卵巣予備能の低下、受胎能力の低下などのリスクは、子宮内膜症患者のリスクとして列挙することができる[10]、[11]。特に、子宮内膜症によって引き起こされる不妊因子を克服することを優先する患者に対して、外科的介入は、高いリスクをもたらす[11]。血清マーカーの1つであるCA125糖タンパク質のモノクローナル抗体が子宮内膜症の診断に使用されているが、研究により、このマーカーは、結果が疑わしく、感度が低く、特に腹膜領域に転移した子宮内膜症で結果が疑わしく、感度が低いことが確定している[12]。
【0004】
文献上の証拠を蓄積したところ、コストが高く、術後に患者が経験する可能性のある合併症を引き起こし、患者が短い時間で社会生活に復帰することを妨げる現在の感度の低い診断技術の代わりに、代替的な診断方法が必要であることが示唆される。これらの情報に照らして、本特許出願の主題となっている研究では、費用対効果が高く、痛みがなく、「手術」などの概念で患者を精神的に疲弊させない子宮内膜症の新規な診断技術の開発に必要な生物学的マーカーを定義することを目的としている。
【0005】
子宮内膜症という病気は「子宮内膜」にちなんで命名されており、子宮内膜症は、1860年に記載されている[1]が、その病因及び発病機序は今日でもまだ不明である[13]、[14]。子宮内膜症の発病機序に関しては、様々な識別表及び理論が作成されている。これらは、逆行性月経/移植[2]、[15]、体腔上皮化生[16]、細胞性免疫変化[17]、[18]、[19]、[20]、転移[21]、遺伝学的要因[22]、[23]、環境要因[24]、及び特定の遺伝子と環境との相互作用[25]である。1920年代に導入された最も重要な理論には、この病気が逆行性月経による子宮内膜組織の腹膜腔への転移から発症することが述べられている[2]、[18]。腹膜下移植物の形の子宮内膜組織の存在は、病的状態を示す。これにより、逆流する子宮内膜組織の断片が腹膜表面に付着し、その後に浸潤が始まり病気が発症する。Sampsonによると、毎月の月経周期とともに廃棄されなければならない月経血中に生細胞がまだ生きている。Sampsonは、これらの生細胞が、体から廃棄される代わりに、様々な領域に移動(遊走)し、移動した領域又は他の隣接する臓器に接着して増殖することができると提案した[2]。Sampsonがその研究で言及し、その後の文献上で行われた研究の主題でもあるヒトの子宮内膜の構造には、多くの異なる細胞型からなるキメラ細胞集団がある[26]。このキメラ構造には、子宮内膜壁を取り囲む間質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、リンパ系細胞、平滑筋細胞及び間葉系幹細胞が存在する。子宮内膜症を発症した女性では、子宮内膜幹細胞がそれらのニッチ細胞と共に逆行性月経によって腹膜腔内に排出されるという仮説が立てられており[27]、[28]、[29]、[30]、これはSampsonの理論を裏付けることが判明した。動物実験研究では、月経周期が続いているヒヒから採取された月経血から単離された間葉系幹細胞が、子宮内膜症が発症する実験環境を誘発し得ることが示されている[31]。子宮内膜間葉系細胞(eMSC)では接着特性及び移動特性が高いという事実から、組織トランスグルタミナーゼ(TG2)酵素がその架橋特性を失い、これらの細胞内で特定の細胞接着分子として高度に合成されるという考えが生まれ[32]、[33]、[34]、[35]、[36]、その故、子宮内膜に存在するべき細胞は、他の場所に移動して子宮内膜症を引き起こす能力を持っているという仮説が立てられている。この情報に基づいて、子宮内膜のキメラ構造に豊富に存在し、健常人と子宮内膜症患者の間で移動する能力が高いeMSCの表面マーカーの違いが調べられ、確定された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rokitansky,C. 1860.、Zeitschr Ges Aerzte Wien 16(1)577-581
【非特許文献2】Sampson JA、Am J Obstet Gynecol 1927、14:422-469
【非特許文献3】Cramer DW、Missmer SA.、Ann NY Acad Sci 2002、955:11-22
【非特許文献4】Tietjen GE、Bushnell CD、Herial NA、Utley C、White L、Hafeez F.、Headache 2007、47:1069-78
【非特許文献5】Pasoto SG、Abrao MS、Viana VS、Bueno C、Leon EP、Bonfa E.、Am J Reprod Immunol 2005、53:85-93
【非特許文献6】Sinaii N、Cleary SD、Ballweg ML、Nieman LK、Stratton P.、Hum Reprod 2002、17:2715-24
【非特許文献7】Lamb K、Nichols TR.、Am J Prev Med 1986、2:324-9
【非特許文献8】Mao AJ、Anastasi JK.、Journal of the American Academy of Nurse Practitioners 2010、22:109-116
【非特許文献9】Somigliana E、Vercellini P、Vigano P,Benaglia L、Crosignani PG、Fedele L.、Hum Reprod 2010、25:1863-8
【非特許文献10】Matsuzaki S、Houlle C、Darcha C、Pouly JL、Mage G、Canis M.、Hum Reprod 2009、24:1402-6
【非特許文献11】Zanelotti A、Decherney AH.、Clin Obstet Gynecol. 2017、60(3):477-484
【非特許文献12】Kitawaki J、Ishihara H、Koshiba Hら、Hum Reprod 2005、20:1999-2003
【非特許文献13】EskenazI B.、Warner M.L.、1997、Obstet Gynecol Clin North Am、24:235-58
【非特許文献14】Vercellini,P.、Vigano,P.、Somigliana,E.、及びFedele,L.(2014)、Nature Reviews Endocrinology、10(5)、261
【非特許文献15】Sampson J.A.、1922. 「Ovarian hematomas of endometrial type (perforating hemorrhagic cysts of the ovary) and implantation adenomas of endometrial type」. Boston Med Surg J、186:445-473
【非特許文献16】Vignali M.、Infantino M.、Matrone R.ら、2002、Fertil Steril、78:665-78
【非特許文献17】Vinatier D.、Dufour P.、Oosterlynck D.、1996、Hum Reprod Update、2:371-84
【非特許文献18】Matarese G.、De Placido G.、Nikas Y.、Alviggi C.、2003、Trends Mol Med、9:223-28
【非特許文献19】Kyama C.M.、Debrock S.、Mwenda J.M.、D’Hooghe T.M.、2003、Reprod Biol Endocrinol、1:123
【非特許文献20】Barrier B.F.、Kendall B.S.、Ryan C.E.、Sharpe-Timms K.L.、2006、Hum Reprod、21:864-69
【非特許文献21】Somigliana E.、Vercellini P.、Gattei U.ら、2007、Fertil Steril、87:1287-90
【非特許文献22】Di W.、Guo S.W.、2007、Curr Opin Obstet Gynecol、19:395-401
【非特許文献23】Kashima K.、Ishimaru T.、Okamura H.ら、Int J Gynaecol Obstet 2004、84:61-64
【非特許文献24】Ryer S.、Foster W.、2002、Toxicological Sciences、70:161-70
【非特許文献25】Collins F.S.、McKusick V.A.、2001、Jama、285:540-4
【非特許文献26】Kleeman S.D.、Silva W.A.、2002、General Gynecology. Philadelphia、Mosby-Elsevier、2007:87
【非特許文献27】Starzinkski Powitz A.、Zeitvogel A.、Schreiner A.ら、2001、Curr Molec Med、1:655-64
【非特許文献28】Gargett C.E. 2007、Hum Reprod Update、13:87-101
【非特許文献29】Leyendecker G.、Herbertz M.、Kunz G.ら、2002、Human Reprod、17:2725-36
【非特許文献30】Sasson I.E.、Taylor H.S.、2008、Ann NY Acad Sci、1127:106-15
【非特許文献31】Fazleabas A.T.、Brudney A.、Gurates B.ら、2002、Ann NY Acad Sci、955:308-17
【非特許文献32】Akimov S.S.、Krylov D、Fleischman LF、Belkin AM. 2000、J Cell Biol. 148(4):825-38
【非特許文献33】Gaudry C.A.、Verderio E.、Aeschlimann D.、Cox A.、Smith C.、Griffin,M.、1999、J.Cell Biol.、274、30707-14
【非特許文献34】Telci D.、Wang Z.、Li X.、Verderio E.A.、Humphries M.J.、Baccarini M.、Basaga H.、Griffin M.、2008、J Biol Chem 283、20937-2
【非特許文献35】Wang Z.、Collighan R.J.、Gross S.R.、Danen E.H.J.、Orend G.、Telci D.、Griffin M.、2010. RGD-independent Cell Adhesion via a Tissue Transglutaminase-Fibronectin Matrix Promotes Fibronectin Fibril Deposition and Requires Syndecan-4/2 and α5β1 Integrin Co-
【非特許文献36】Kao,A.P.、Wang,K.H.、Chang,C.C.、Lee,J.N.、Long,C.Y.、Chen,H.S.、...及びTsai,E.M.(2011)、Fertil
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、子宮内膜症の診断において、健康なeMSCに比べて、子宮内膜生検試料から単離されたeMSCにおいて異なって発現する可能な生物学的マーカーを列挙することである。5名の患者のeMSC試料で発現の変化が観察されたマーカーのリストから選択された生物学的マーカーは、子宮内膜症と診断された17人の患者の子宮内膜症病巣組織でも病理学的に評価され、バイオマーカーとして同定された。
【0008】
本発明の別の目的は、子宮内膜症eMSCにおいて異なって発現される組織トランスグルタミナーゼ(TG2)、分化抗原群146(CD146)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、インテグリンβ1及びスシドメイン含有タンパク質2(SUSD2、又は同義的にW5C5とも呼ばれる)のマーカーの遺伝子又はタンパク質の発現が単独で又は組み合わせて使用される診断キットを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このように、現在患者の子宮内膜症の確定診断に必要な外科的診断の代わりに、生検試料を用いて診断することが可能となる。
【0010】
上記目的を達成するために開発された「子宮内膜症の診断における新規な生物学的マーカー」と題された発明は、添付の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】子宮内膜症がないと診断された個体から採取された子宮内膜組織からの健康な対照子宮内膜間葉系幹細胞(heMSC)のフローサイトメトリーによる特性評価を、黒塗り曲線で表し、±値は5つの異なるheMSCの標準偏差を表す。アイソタイプIgG抗体とインキュベートされた細胞を、陰性対照(NC)として使用し、灰色抜き曲線で表した。
【
図2】子宮内膜症と診断された5名の異なる患者から採取された子宮内膜組織からの患者子宮内膜間葉系幹細胞(peMSC)のフローサイトメトリーによる特性評価を、黒塗り曲線で表し、±値は5名の異なるpeMSCの標準偏差を表す。アイソタイプIgG抗体とインキュベートされた細胞を、陰性対照(NC)として使用し、灰色抜き曲線で表した。
【
図3】全ての単離されたeMSCにおけるTG2タンパク質レベルを示す。(a)5つの異なる群のTG2タンパク質バンドを、ウエスタンブロット技術によって視覚化した。(b)5つの異なる群の異なる対照間葉系幹細胞(heMSC)及び患者間葉系幹細胞(peMSC)から単離されたTG2タンパク質の分析を示す。(c)5つの異なる群の異なるheMSC及びpeMSCから単離されたTG2タンパク質の平均値及び統計分析を示す。使用された全ての細胞は、継代3のもので、非酵素的手順で単離された。P<0.0001の値は、
****の記号で表される。
【
図4】全ての単離されたeMSCにおけるshRNA技術によってサイレンシングされたTG2のタンパク質レベルを示すウエスタンブロット結果を示す。(a)5つの異なる群の対照試料及び患者試料に適用されたSCR及びshRNAの結果の膜画像を示す。(b)5つの異なる群の各対照試料及び患者試料に適用されたSCR及びshRNAの分析を示す。(c)5つの異なる群の対照試料及び患者試料に適用されたSCR及びshRNAの分析の平均値を示す。統計分析の結果として、統計的に有意ではないp値を、「ns」で示し、統計的に有意なp<0.00001の値を、
*****で示す。
【
図5】全ての群における対照(heMSC)及びスクランブルshRNAで処理された対照(heMSC+SCR)のフローサイトメトリーの平均(±)値及び標準偏差を示す。5つの異なるheMSC試料を、黒塗り曲線で表す一方、heMSC+SCR試料を、グラフ内の灰色抜き曲線で表す。
【
図6】全ての群における、スクランブル含有対照レンチウイルス粒子で処理されたpeMSC+SCR試料及びTG2標的化shRNA処理peMSC+shRNA試料のフローサイトメトリーの平均(±)値及び標準偏差を示す。5つの異なるheMSC試料を黒塗り曲線で表す一方、heMSC+SCR試料を、グラフ内の灰色抜き曲線で表す。
【
図7】shRNAを有するtTG2による、5つの異なる群におけるeMSC試料の平均細胞増殖への自発的及び制御されたサイレンシングの影響を示す。統計分析の結果の有意ではないp値に対して、「ns」が使用され、有意な値に対して、
*p<0.05及び
****p<0.00001がそれぞれ使用されている。
【
図8】子宮内膜症病巣から採取された子宮内膜の組織切片に特異的な表面マーカーによる免疫組織化学的染色の代表的な画像を示す。画像は、CD146(A)、インテグリンβ-1(B)、PDGFR(C)及びTG2(D)のマーカーを示す。スケールバーは、50μmである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の主題は、子宮内膜症患者からの子宮内膜生検及び/又は月経血に由来する単離された子宮内膜間葉系幹細胞において子宮内膜症を診断するために、バイオマーカーとして組織トランスグルタミナーゼ(TG2)を使用することである。この方法は、現在子宮内膜症の診断に使用されている「腹腔鏡検査」法に比べると、非侵襲的方法である。これに加えて、子宮内膜症患者からの子宮内膜生検及び/又は月経血に由来する単離された子宮内膜間葉系幹細胞において子宮内膜症を診断するために、組織トランスグルタミナーゼ(tissue transglutaminase、TG2)と共に、「分化抗原群146」(cluster of differentiation 146、CD146)、「スシドメイン含有タンパク質2」(Sushi domain containing protein 2、SUSD2、同義的にW5C5とも呼ばれる)、「インテグリンβ1」(integrin beta 1、ITGB1)及び「血小板由来成長因子受容体」(platelet derived growth factor receptor、PDGFR)のマーカー、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのマーカーは、バイオマーカーとして使用される。更に、TG2又はCD146、SUSD2(W5C5)、ITGB1及びPDGFRのうちの単独の又は相互に組み合わせた1つ以上との組み合わせの本発明のマーカーを含み、その遺伝子レベル及び/又はタンパク質レベルを「子宮内膜生検試料及び/又は月経血から単離された子宮内膜間葉系細胞(eMSC)」において測定するために使用される、子宮内膜症診断キットが本発明の範囲で開発される。これらに加えて、月経血から単離された間葉系細胞におけるTG2又はそれとCD146、SUSD2(W5C5)、ITGB1及びPDGFRのうちの1つ以上との組み合わせである本発明のマーカーの遺伝子発現レベル及びタンパク質発現レベルは、治療中及び治療過程に使用される薬剤の成功を検出するためにも使用できる。子宮内膜症が不妊症例の9%~50%を占めることを考えると、子宮内膜症による若い女性の不妊リスクを確定することは、非常に重要である。子宮内膜症性嚢胞が大きくなった場合に行われる手術は、卵巣予備能を著しく低下させることを考慮すると、若年時に卵子凍結保存法で患者の受胎能力を維持することは、本発明の枠組み内で開発される子宮内膜症の早期かつ容易な診断により適用可能となる。
【0013】
子宮内膜症は、出産年齢の女性の子宮の内層を裏打ちし、毎月の月経時に肥厚して失われる層を意味する「子宮内膜」にちなんで命名される。子宮内膜症では、通常は子宮の内層に存在するべき子宮内膜に似ている組織が、子宮の外で成長し、体の他の部分に内移植される[37]。異所的に内移植された組織に子宮内膜生細胞が含まれるため、これらの細胞は、月経周期ごとに子宮内の細胞と同じように機能する[37]。これらの細胞の高い接着特性と移動特性は、細胞表面に発現する、接着及び移動を誘導する表面タンパク質によって説明できる。文献上で、他の臓器から単離された間葉系幹細胞とは異なり、eMS細胞は、CD146、PDGFR、W5C5のマーカーを発現することが示されている[38]。本発明者らは最近、これらのマーカーに加えて組織トランスグルタミナーゼ(TG2)タンパク質もeMS細胞で発現することを会議要約で発表した[39]。本発明者らの会議要約では、健常人及び患者から単離されたeMS細胞において、シンデカン-4レベル及びインテグリンβ1レベルと共にTG2酵素活性及びmRNAレベルを分析し、TG2によるマトリックスメタプロテイナーゼ酵素活性への影響を確定した。本発明者らが会議要約の続きとして実施し、本特許出願の主題である臨床研究では、TG2の増加が5名の子宮内膜症患者からのeMSCにおいてCD146、SUSD2(W5C5)、ITGB1及びPDGFRのタンパク質発現を制御するだけでなく、eMSCの増殖を促進することが示された。また、CD146、ITGB1及びPDGFRと共にTG2の上方制御も、子宮内膜症組織から得られた17個の生検試料で明らかになった。ファミリーの他のメンバーと同様に、トランスグルタミナーゼファミリーのメンバーであるヒト組織トランスグルタミナーゼ(TG2)は、Ca+2依存性タンパク質の脱アミド、アミド基転移及び架橋を触媒する[40]、[41]。TG2のトランスアミダーゼ活性は、創傷治癒、血管新生、骨修復に不可欠なマトリックス安定化において細胞外の役割を果たし、一般的に、アポトーシス中のタンパク質の架橋において細胞内の役割を果たす[40]。1957年のTG2の発見以来、その多数の酵素基質は、サイトゾル、核、ミトコンドリアを含む細胞内区画で同定されているだけでなく、細胞内及び細胞外マトリックス(ECM)内の細胞外区画で同定されている[42]、[43]、[44]。タンパク質のCa2+依存性翻訳後修飾に加えて、TG2、サイトゾルII型トランスグルタミナーゼ又は肝臓トランスグルタミナーゼとしても知られる酵素は、GTPに結合して加水分解し、Gタンパク質のように作用することができる[41]、[45]。したがって、触媒活性の観点から見ると、TG2は、Ca2+依存性タンパク質架橋活性及びCa2+非依存性GTP加水分解を触媒する能力があるため、二機能性酵素と呼ぶことができる[41]、[46]、[47]、[45]、[48]。
【0014】
TG2のCa+2依存性アミド基転移反応では、分子間イソペプチドε-(γ-グルタミル)リジン結合が形成され、これにより、単量体タンパク質単位の内部架橋が引き起こされる[49]。これらの結合は、化学的劣化及び物理的劣化に対して耐性があるため、生物学的に重要であり、特に細胞外マトリックス(ECM)の安定化において生物学的に重要であることが知られている[50]、[51]。研究により、アミド基転移反応においてCa+2レベルに依存するTG2が低Ca+2量で架橋活性を失う[36]、[50]、[52]と、TG2は、Gタンパク質として細胞の接着と移動に積極的な役割を果たすタンパク質になる[41]、[45]ことが示されている。接着機能においてTG2が機能する能力は、2つの膜貫通型タンパク質、インテグリン(β1/β3/β5)及びシンデカンとの協力、及びこの協力の結果としてのECMタンパク質の接着受容体への非共有結合に依存する[50]、[53]。これらの受容体とTG2自体は、両方ともフィブロネクチンと相互作用する[34]、[36]、[50]。最近の研究では、TG2が細胞外にフィブロネクチン(FN)マトリックスタンパク質に結合することで「架橋」酵素活性を失い、インテグリン受容体とシンデカン-4受容体との共受容体として機能する新規な細胞接着タンパク質として機能することが示唆されている[32]、[33]、[34]、[35]、[36]。また、FNマトリックスタンパク質と複合したTG2は、インテグリン受容体が遮断され、表面に結合できなくなる細胞がアポトーシスを経験するのを防止する役割を果たすため[54]、TG2の上方制御は、悪性黒色腫、乳癌、肺癌及び膵癌で観察され、TG2が癌細胞に薬剤耐性と転移特性を与えることが証明されている[55]、[56]、[57]、[58]、[59]、[60]、[61]、[62]。
【0015】
子宮内膜症患者の逆行性月経周期において、CD146、PDGFR、W5C5の表面マーカーは、月経中の子宮内膜細胞の逆流の結果としての腹膜及び腹腔内の臓器への子宮内膜細胞の移動に役割を果たす可能性のある他の分子である。本発明者らの特許出願の枠組み内で本発明者らが実施した実験室研究では、子宮内膜症に罹った個体から単離されたeMSCと健常人から単離されたeMSCとを比較し、CD146、PDGFR、W5C5の表面マーカーが健康なeMSCよりも子宮内膜症eMSCで高い割合で発現していることを検出した。eMSCにおけるこれらのマーカーの発現の増加は、TG2によって制御されることが示されており、TG2の発現は、shRNA技術によってサイレンシングされる。
【0016】
文献上の多くの研究では、細胞接着分子(CAM)として機能する免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーであるCD146の発現の増加を示した細胞は、細胞移動能力と浸潤能力の増加を示しており[63]、[64]、このマーカーは、健康なeMSCを除く子宮内膜症患者ではこれまで研究されていない。CD146に加えて、別の子宮内膜間葉系細胞マーカーPDFGRが、健康な子宮内膜間葉系幹細胞(heMSC)に比べて、子宮内膜症間葉系幹細胞(peMSC)で過剰発現していることが判明され、これは、該マーカーが別の潜在的なパラメーターとして本発明者らの仮説で考慮されることを示唆している。研究により、PDFGRは、治療を受けていない後期子宮内膜症症例で発生する卵巣癌[65]、[66]、[67]、[68]及び子宮癌[69]で高度に発現していることが示されている。文献上の研究には、PDGFRは、様々な子宮内膜の病気の発症及び発病機序における細胞増殖、移動、形質転換及び生存などの様々な細胞プロセスに不可欠であることも述べられている[70]、[71]、[72]。しかしながら、PDFGRが様々な婦人科疾患の発症に役割を果たすことは解明されているが、子宮内膜症と診断された個体と子宮内膜症がないと診断された個体とのeMSCの比較研究は行われていない。文献上のこの欠陥は、本発明の別の独自の研究をカバーしている。この情報に照らして予想され、そして、本発明の結果によって示されるように、子宮内膜症細胞は、健康な細胞よりも多くのPDGFRを含む。これらのマーカーに加えて、別のマーカーは、健常人から単離された子宮内膜間葉系細胞に特異的であると示されているSUSD2タンパク質を識別するW5C5として知られる抗体である。CD146及びPDGFRと同様に、このマーカーも子宮内膜間葉系幹細胞において基底レベルで発現することが知られている[38]。Gargetらは、その研究で、W5C5が子宮内膜症患者の血管周囲の内移植病巣で高度に発現していることを示した[73]、[74]。文献上の別の研究では、健常人から単離された線維芽細胞に比べて、子宮内膜症と診断された個体から単離された線維芽細胞ではW5C5レベルが高いことも判明した[75]。本発明の範囲内で実施される、健常人及び子宮内膜症患者から単離されたeMS細胞におけるW5C5レベルの検出は、文献上で研究されていない。
【0017】
本発明の枠組み内で、子宮内膜症eMSC及び健康なeMSCに関して実施された本発明者らの研究により、
1. CD146、PDGFR及びW5C5の発現がTG2制御下で子宮内膜症eMSCにおいて増加することと、
2. TG2がこれらの細胞の増殖を引き起こす主要な役割を果たすことと
が実証されている。
【0018】
子宮内膜MSCにおいてCD146、インテグリンβ-1、PDGFR、TG2及びW5C5のマーカーを用いた研究に加え、免疫組織化学的染色法により、異なるステージ(段階)の17名の患者の異なる領域から採取された子宮内膜症病巣におけるこれらのマーカーの発現レベルを調査した。組織内の腺及び間質の染色を個別に評価したところ、eMSCで示したように、全ての子宮内膜症病巣組織の腺において、CD146、PDGFR及びTG2のマーカーが、強い(++)又は非常に強い(+++)として50%以上発現していることが検出された(表5)。子宮内膜症病巣の組織において、間質におけるCD146、PDGFR及びTG2の発現が腺における発現よりも低いことが検出された。
【実施例】
【0019】
実験研究
実験に使用される細胞群の確定
本発明者らの実験で使用された全ての単離された細胞は、子宮内膜症と診断された患者及び健康なボランティアの組織試料から単離された。本発明者らの研究の倫理委員会の申請は、イェディテペ大学人間倫理委員会(Yeditepe University Human Ethics Committee)に提出され、決定番号63/509と番号付けられた承認が委員会のメンバーから得られた。本発明の枠組み内で実施された実験では、5名の異なる健康な人(対照群)及び子宮内膜症と診断された5名の異なる患者から採取された組織試料を研究した。この研究で使用された健康な組織試料は、子宮内の子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症、子宮内膜癌、粘膜下筋腫に患っておらず、かつ子宮内膜症がないと診断された49歳未満の妊娠できる女性から採取された。健康な患者からの子宮内膜生検試料は、骨盤腹膜及び臓器に子宮内膜症を患っていない妊娠できる個体から非婦人科手術中に採取された。
【0020】
患者試料は、米国生殖医学会(ASRM)分類システムに従って中度又は重度の子宮内膜症と確定診断された49歳未満の女性から自発的に採取された。全ての患者は、腹腔検査及び子宮内膜症組織の全切除のために腹腔鏡介入を受けた。研究結果に影響を与える可能性がある子宮内膜症以外の病理学的病気を患っている女性は、該研究に含まれていない。
【0021】
細胞の単離と培養
採取された子宮内膜組織を、血清生理食塩水中で本発明者らの研究室に移した後、3%(v/v)のペニシリンストレプトマイシンを含むリン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄して、組織内の血液を除去して滅菌した。試料を無血清培養増殖培地MEMで2回洗浄した後、メスを使用して組織片を1~2mm3の切片に切った。このプロセスに続いて、切った組織片を、0.05%のトリプシン酵素を含む10mlの無血清MEMで37℃、70rpmで2時間撹拌した。撹拌プロセスに続いて、細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、上清を捨て、残ったペレット部分を6ウェル細胞皿に移し、その上にカバースリップを置き、細胞を、20%(v/v)のウシ胎仔血清(FBS)、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含む低グルコース(1g/L)DMEM培地で37℃、5%のCO2の加湿環境で5日間増殖させた。インキュベーション期間の終わりに、6ウェルプレートの表面を覆う細胞を、T-25組織培養皿に移し、次にT-75組織培養皿に移し、これらの組織培養皿で増殖させた後、これらの細胞に対して、幹細胞の特性の特性評価のためのCDマーカー分析を行った。
【0022】
eMSCの特性評価
フローサイトメトリー分析を、対照eMS細胞及び患者eMS細胞の特性評価に適用した。細胞を4%(v/v)のパラホルムアルデヒド溶液で固定し、PBSで3回洗浄し、eMSCの表面マーカーのCD146、PDGFR、W5C5、CD44、CD29、CD73、インテグリンβ-1、CD90及びCD105の抗体で4℃で16時間標識し、フローサイトメトリーを使用して分析した。同時に、単離された細胞を、(陰性対照として機能するために)造血幹細胞表面マーカーのCD31、CD34、CD45の抗体とも共にインキュベートした。細胞を300×gで沈殿させた後、PBSで1回洗浄し、1mlのPBSに懸濁し、フローサイトメーターのFL1(緑)チャネル、FL2(赤)チャネルを使用して分析した。
【0023】
ウエスタンブロット
heMSC、peMSC及びTG2を下方制御するためにshRNAで処理された細胞におけるTG2タンパク質レベルをウエスタンブロット法で検出した。βアクチンを、各試料のタンパク質量が均等にロードされていることを示すための対照抗体として使用した。この目的のために、eMSCを1ウェルあたり300000細胞の密度で6ウェルプレートに4時間播種した。24時間のインキュベート期間後、30μlのRIPAバッファー(1mMのPMSF、0.5%のノニデット(登録商標)、0.1%のSDS、1mMのNaF、1mMのNa3VO4及びプロテアーゼ阻害剤カクテル)を細胞に加え、細胞膜を断片化し、細胞ライセートを得て、Lowry(ローリー)法でタンパク質量を確定した。細胞ホモジネート中のタンパク質(50μg/ウェル)を、8%~12%の濃度のゲルでドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)技術によって分離した。ウェットトランスファー法で、タンパク質を200mAの電流でニトロセルロース膜に1時間転写してから、該膜を5%の粉乳を含むトリス(Tris)-Tween(100mMのトリス-HCl、0.9%(w/v)のNaCl、0.05%(w/v)、pH7.4)溶液中に1時間保存し、適切な抗体と共に4℃で16時間インキュベートした。ウエスタンブロットで使用された抗体を、購入者の推奨に従って指定された濃度で5%の粉乳を含むトリス-Tween溶液中で用意した。16時間のインキュベート期間後、膜をトリス-Tween溶液で5分間3回洗浄し、5%の粉乳を含むトリス-Tween溶液で1:5000又は1:1000に希釈されたHRP標識抗マウス抗体で室温で2時間標識した。2時間の終わりに、トリス-Tween溶液で5分間3回洗浄された膜のそれぞれを、ECL-HRP基質溶液中に保存し、そして、ChemiDoc XRS+(BioRad)装置で写真を撮った。
【0024】
shRNA技術によるTG2発現の低減
24ウェルプレート(20000/ウェル)に播種してから24時間が経過した後、eMSCを4%(v/v)のFBS、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(形質導入培地)及び8μg/mlのポリブレンを含む培地に12時間保存した。peMSCを、感染多重度(MOI)4で、形質導入培地で希釈された、shTG2を含むレンチウイルス粒子及び対照shRNAレンチウイルス粒子に感染させたのに対して、heMSCを、2のMOIを使用して対照shRNAのみによって形質導入した。ウイルス粒子は、サンタクルーズ(Santa Cruz)(米国)社によって製造され、shTG2ウイルス粒子は、少なくとも3つの異なる位置でTG2 mRNAに結合する、長さが19~25のヌクレオチド(+ヘアピン)を有する標的特異的shRNAを含む。対照shRNAは、任意の細胞メッセージの特定の破壊を引き起こさないレンチウイルス粒子内のスクランブルshRNA配列を含み、形質導入プロセスがeMSCに何らかの影響を与えるか否かを確定するために使用された。処理後、細胞をPBSで1回洗浄し、12%(v/v)のFBS、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン及び2.5μg/mlのピューロマイシンを含む培地に6~9日間保存した。ピューロマイシン耐性遺伝子がshRNAを含むプラスミドにもコードされているため、shRNAプラスミドで形質導入された細胞は、ピューロマイシン耐性を発現すると予想される。ピューロマイシン選択の終わりに、細胞を培養し、10%(v/v)のジメチルスルホキシド(DMSO)を含むFBS中の液体窒素中に貯蔵した。
【0025】
WST-1アッセイによる細胞増殖能力の確定
2-[4-ヨードフェニル]-3-[4-ニトロフェニル]-5-[2,4-ジスルホフェニル]-2Hテトラゾリウムモノナトリウム塩水溶性テトラゾリウム(WST-1)アッセイは、それぞれ24、48、72、96時間の期間でTG2が引き起すeMS細胞増殖を試験するために使用され、shRNAの有無にかかわらず全ての単離されたeMS細胞に対して実行された発色測定である[76]。WST-1細胞増殖アッセイの動作原理では、細胞のミトコンドリア活性が測定される。まず、細胞を、発色基質であるWST-1試薬と共にインキュベートした[77]。この技術は、ミトコンドリア酵素系によって触媒されるテトラゾリウム塩の低減に基づくものである。まず、早朝に、全ての単離されたeMSCを2000細胞/ウェル、5000細胞/ウェル、10000細胞/ウェル、15000細胞/ウェル及び20000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種して、標準曲線を作成した。このプロセスの後、全ての単離されたeMSCを2000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、指定された時点で細胞を、5μLのWST-1試薬及び45μLの増殖培地を含む混合物と共に1時間インキュベートした。インキュベート期間の終わりに、波長420~480nm(λmaxが450nmである)での細胞の吸光度を測定することによって、細胞の増殖能力を確定した。
【0026】
子宮内膜症病巣から採取された組織切片の選択
病理学者は、子宮内膜症と診断された患者の試料の報告書をスキャンし、異なるステージの17名の患者の試料を選択した。試料が異なる段階の試料であるという要件は、選択基準の条件として定められた。組織試料を患者から採取した後、パラフィン包埋方法で保管した。
【0027】
組織切片の免疫組織化学的染色
パラフィン包埋された組織試料を-20℃で冷却して、薄切片を採取した。ミクロトーム装置を使用して試料から厚さが5μmの切片を採取し、熱水に浮かせ、正に帯電したスライド上に置いた。スライドを乾燥させ、パラフィンを含む組織切片をスライドの表面に接着させた。抗体で染色する前に、全てのスライドを70℃で1時間保存して、組織からパラフィンを除去した。そして、製造者の指示によって推奨されるように、これらの組織試料を準備し、CD146、インテグリンβ1、PDGFR、W5C5及びTG2の子宮内膜間葉系幹細胞表面マーカー抗体で処理した。免疫組織化学的染色の全てのプロセスを、Leica Bond Max Immunocytochemistry Stainer(中国上海)装置を使用して実行した。試料を装置内で完全に乾燥させた後、封入培地を加え、カバースリップで覆った。各試料の各抗体染色について、40倍の対物レンズを備えたツァイス(Zeiss)蛍光顕微鏡の光モジュールを使用して異なる領域からそれぞれ5つの画像を取得した。
【0028】
免疫組織化学的染色画像の定量化と評価
各マーカーの染色強度を、Image Jプログラムを使用して腺と間質とに対して個別に分析し、染色強度を百分率で示した。そして、最も弱い染色と最も強い染色を選択し、中央値をexcel(エクセル)(登録商標)プログラムで計算した。最も弱い染色と中央値との間の染色値を2つに分け、「0」、「+」と評価した。同様に、最も強い染色と中央値との間の値を2つに分け、「++」、「+++」と評価した。数値評価表は、以下のとおりである(表1)。このプロセスを、17名の患者の子宮内膜症病巣に対して実行した。W5C5抗体を用いて実施した研究ではいずれの染色も行われなかったため、W5C5抗体は、評価には含めなかった。
【0029】
【0030】
統計分析
全てのデータ分析のために作成されるグラフを、GraphPathプログラムで作成し、データがパラメトリック分布を持つか又はノンパラメトリック分布を持つかを確定した後、パラメトリック分布を示すデータをスチューデントのt検定によって分析し、対照と比較した。ノンパラメトリックデータに対して、分散分析検定とマン・ホイットニー検定を使用した。各実験を少なくとも5回繰り返した。p<0.05は、有意であると認められた。(*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001)。
【0031】
実験結果
本発明の主題である本発明者らの研究を、イェディテペ大学の遺伝学・生物工学学部(Department of Genetics and Bioengineering)の分子細胞生物学研究所で実施した。子宮内膜症と診断された個体(患者群)及び子宮内膜症がないと診断された個体(対照群)から採取された子宮内膜組織から細胞培地で単離された、子宮内膜症間葉系幹細胞(peMSC)及び健康な子宮内膜間葉系幹細胞(heMSC)を、細胞モデルとして使用した。本発明の実験を、5つの異なる患者群及び5つの異なる健常人群から収集された試料を用いて実施し、全ての実験を、各組織試料に対して1回適用するため、5つの反復組の実験を作成した。フローサイトメトリー分析を、eMS細胞の特性評価のために適用した。eMSCの特性評価で説明したプロトコルに従って、CD146、PDGFR、W5C5、CD44、CD29、CD73、インテグリンβ-1、CD90及びCD105の抗体を間葉マーカーとして使用し、(陰性対照として機能するために)CD31、CD34、CD45の抗体を造血マーカーとして使用した。
図1において、各群からのn=5細胞に対するCDマーカーの平均結合親和性と標準偏差が示されている。
【0032】
heMSCにおいて、CD146で42.74%、W5C5で44.60%、PDGFRで43.38%、CD44で92.03%、CD29で93.93%、インテグリンβ-1で92.20%、CD73で91.86%、CD90で89.90%、CD105で90.91%のタンパク質の発現を、表面マーカーとしてそれぞれ検出した。一方、フローサイトメトリー実験により、陰性対照として使用された造血幹細胞表面マーカーは、それぞれCD14で2.64%、CD31で1.44%、CD34で2.87%、CD45で1.58%発現することが判明した。
【0033】
図2において、peMSC試料の特性評価試験にフローサイトメトリーが適用され、各群からのn=5細胞に対するCDマーカーの平均結合親和性と標準偏差が示されている。
【0034】
peMSCのCD表面マーカーの分析を平均化すると、CD146で75.52%、W5C5で73.99%、PDGFRで73.99%、CD44で94.08%、CD29で95.65%、インテグリンβ-1で97.93%、CD73で96.70%、CD90で97.74%、CD105で87.43%のタンパク質の発現を、それぞれ確定した。一方、フローサイトメトリー分析の結果は、陰性対照として使用された造血幹細胞表面マーカーの発現が、それぞれCD14で1.40%、CD31で1.20%、CD34で1.60%、CD45で0.96%であることを示している。
【0035】
5名の健康なボランティアと子宮内膜症患者から採取された子宮内膜試料から単離されたeMSCのマーカーの平均値、標準偏差及び「有意なp」値(****p≦0.0001)は、表2に示されている。
【0036】
【0037】
表2に示される5つの異なるheMSC及びpeMSCの平均値を考慮すると、本発明者らが実施したフローサイトメトリー実験の結果として、表面マーカーのCD146、W5C5及びPDGFRの発現は、heMSC試料に比べて、子宮内膜症と診断された患者から単離されたpeMSC試料において有意に(****、p<0.0001)高かった。peMSCにおいて、CD146の発現がheMSCよりも1.77倍高く、W5C5の発現がheMSCよりも1.65倍高く、PDGFRの発現がheMSCよりも1.71倍高かった。この文脈では、本発明者らの実験は、患者の細胞試料において、CD146、W5C5及びPDFGRが健常人の細胞よりも多く合成されることと、これらのバイオマーカーが個別に又は組み合わせて使用される場合、子宮内膜症の診断のためのバイオマーカーになることとを示した。
【0038】
本発明の範囲内で、ウエスタンブロット法を使用して、対照(健康)MSC及び患者MSCから単離された総タンパク質中のTG2の量を確定した。この目的のために、5つの異なる対照試料及び5つの異なる患者試料から単離されたタンパク質を、ウエスタンブロット技術によってニトロセルロース膜に転写した後にポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)技術によって分離した。
図3において、TG2タンパク質の発現レベルは、TG2を識別する抗体を使用して確定された一方、β-アクチン抗体をウエスタンブロット技術全体で使用して、等しいタンパク質負荷量を保証した。
【0039】
図3において、5名の異なる患者から単離されたpeMSCライセートにおけるTG2レベルは、健常人から単離されたheMSCライセートにおけるTG2レベルよりも高いことが観察された。健常人と患者から単離された細胞におけるTG2タンパク質レベルをそれぞれ群間で比較したところ、群1の患者細胞におけるTG2レベルは、健常人の細胞の7.4倍であることが観察された。群2の患者は、健常人よりも6.1倍高いTG2タンパク質レベルを持っていることが検出された。同様の結果は、群3、群4及び群5の患者細胞のタンパク質試料でも観察され、Image J分析によって、子宮内膜症患者は、健常人の試料よりもそれぞれ6.5、6.3及び5.8倍多くのTG2タンパク質を持っていることが検出された。
図3のcにおいて、全ての群のTG2タンパク質レベルの平均値が示されており、図の統計結果は、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)6の一元配置分散分析検定で評価された。統計分析の結果として、p<0.0001の値が得られ、結果は、
****で示された。全ての群のTG2タンパク質レベルの平均値を示す
図3のcにおいて、peMSC試料の平均TG2タンパク質レベルがheMSC試料の平均TG2タンパク質レベルよりも4.7倍高いことが確定された。
【0040】
peMSC試料におけるCD146、PDGFR及びW5C5の増加がTG2によって引き起こされる可能性があるという本発明の仮説(この仮説が本発明の独創性を高める)を証明するために、本発明者らは、本研究のこの部分でshRNA技術を使用することにより、自発的/制御されたTG2サイレンシングを実施した。実験試料は、未処理heMSC、スクランブルshRNA処理heMSC(heMSC+SCR)、スクランブルshRNA処理peMSC(peMSC+SCR)、そして最後にTG2標的化shRNA処理peMSC(peMSC+shRNA)で構成された。まず、shRNA技術を使用した自発的かつ制御された方法によるTG2のサイレンシングが成功裏に実施されていることを証明するために、ウエスタンブロット(
図4)及びRT-PCR法をheMSC、heMSC+SCR、peMSC、peMSC+SCR及びpeMSC+shRNAの試料に適用した。
【0041】
図4のaにおいて、TG2標的化shRNA適用後の細胞におけるTG2タンパク質レベルの変化は、ウエスタンブロット技術後に膜上のバンド強度を測定することによって確定された。これらのバンド強度の定量的結果は、Image Jソフトウェアプログラムを使用して検出され、
図4のbのグラフに示されている。これらの結果によると、heMSCの全ての群(n=5)におけるSCR shRNAの形質導入は、TG2発現の変化を引き起こさなかった(
図4のc)。TG2標的化shRNAを運ぶウイルス粒子によるpeMSCの形質導入は、群1で1.62倍の減少を引き起こしたが、この値が、群2で1.62倍、群3で3.1倍、群4で3倍、そして群5で2.37倍であると確定された。peMSCにおけるshRNA(peMSC+shRNA)によるTG2の発現の低減の結果として測定されたTG2タンパク質の発現は、heMSC及びheMSC+SCRに比べた場合、同様であることが判明した(
図4のc)。統計分析は、それらの間に有意な差がないことを示し、グラフでは「ns」として表した。同じグラフ上でheMSC試料とpeMSC試料との間で同様の比較を行い、その結果として、peMSCは、peMSC+shRNAよりも2.6倍多くのTG2を合成することが観察され、有意なp<0.00001の値は、
*****で示される。
【0042】
shRNAによるTG2のサイレンシングに成功した後、フローサイトメトリー実験を再度実行して、5つの異なる健康なeMSC及び子宮内膜症eMSCにおけるCD146、PDGFR及びW5C5の表面マーカーを検出し、heMSC試料とheMSC+SCR試料を比較した結果は、
図5に示され、peMSC+SCR試料とpeMSC+shRNA SCR試料を比較した結果は、
図6に示される。
【0043】
フローサイトメトリーの結果では、スクランブルウイルス粒子(heMSC+SCR)で処理された対照試料は、heMSC試料に比べて同様の値を有することが観察された。heMSC及びheMSC+SCR試料の平均値の統計分析の結果は、表3に示される。
【0044】
【0045】
表3の結果によれば、本発明の枠組み内で実施された実験により、本発明者らがキャリアとして使用したレンチウイルスが細胞に影響を与えないことが証明された。
【0046】
結果のこの部分では、peMSC試料におけるCD146、PDGFR及びW5C5の増加がTG2によって引き起こされる可能性があることを示すために、スクランブル対照レンチウイルス粒子で処理されたpeMSC+SCR試料と、tTG標的化shRNAで処理されたpeMSC+shRNA試料とに対してフローサイトメトリー法を適用し、それらの結果は、
図6に示される。
【0047】
フローサイトメトリーの結果は、peMSC+SCR細胞表面マーカーがpeMSC細胞と類似することを説明した。TG2標的化shRNA処理peMSC+shRNA細胞において、peMSCに高度に含まれるCD146、W5C5及びPDGFRの表面マーカーの発現は、TG2サイレンシングに応答して健康なeMSCで見られるレベルまで減少する。peMSC+SCR試料とpeMSC+shRNA試料の平均値の統計分析の結果は、表4に示される。
【0048】
【0049】
表4の結果を考慮すると、peMSC+SCR試料とpeMSC+shRNA試料とを比較した場合、TG2標的化shRNAで処理されたpeMSC+shRNA試料では、統計的にCD146で2.1倍、W5C5で1.82倍、PDGFRで2.26倍の発現の低減(****、p<0.0001)がそれぞれ観察された。これらの結果は、文献上で初めて、子宮内膜症の発症において見られた、peMSC試料におけるCD146、PDGFR及びW5C5の発現レベルの増加がTG2によって引き起こされるという証拠を構成する。
【0050】
peMSCにおける、TG2が引き起こした細胞増殖を比較検出するために、WST-1アッセイを、heMSC試料、heMSC+SCR試料、peMSC試料、peMSC+SCR試料及びpeMSC+shRNA試料に24時間、48時間、72時間及び96時間の異なる時点で適用し、結果は、
図7に示される。
【0051】
図7の結果によれば、24時間、48時間、72時間及び96時間の終わりに、heMSC細胞及びheMSC+SCR細胞は、peMSC細胞及びpeMSC+SCR細胞よりもゆっくりと増殖したことが説明された。24時間及び48時間の終わりに、TG2の発現が高いpeMSC試料及びpeMSC+SCR試料には、heMSC試料よりも平均2.1倍及び2.3倍多くの細胞が存在し、72時間及び96時間の終わりに、この比率は、それぞれ、3.2倍及び3.0倍となることが観察された。TG2の発現がサイレンシングされたpeMSC+shRNA細胞試料では、平均細胞数がheMSC細胞及びheMSC+SCR細胞の平均細胞数と同様であることが検出された(p>0.05)。
【0052】
子宮内膜症病巣から採取された組織に対して、TG2、CD146、PGDGR、SUSD2(W5C5)及びインテグリンβ-1の抗体で免疫組織化学的染色を行った後、組織試料に対して各抗体を個別にプローブし、ツァイス蛍光顕微鏡のライトモジュールを使用して40倍レンズで異なる領域からそれぞれ5枚の画像を取得した。各抗体の代表的な画像は
図8に示される。全ての試料において、インテグリンβ-1、TG2、CD146、PGDGRのマーカーが子宮内膜症病巣の間質よりも腺でより強く発現していることが検出された。子宮内膜症病巣組織試料のいずれにおいても、SUSD2(W5C5)抗体の染色は観察されなかった。
【0053】
【0054】
全ての研究された子宮内膜症病巣組織の腺において、CD146、PDGFR及びTG2のマーカーが、強い(++)又は非常に強い(+++)として50%以上発現していることが検出された(表5)。
【0055】
本発明の結果と適用
以前の研究で述べられたように、子宮内膜症は、子宮内にあるべき子宮内膜組織が子宮の外にも存在し、最も一般的に腹腔の表面、卵巣内又は脳などのより遠い領域に存在している病気である[78]。一般的に女性の有病率を調べると、6%~10%であると確定した[79]、[80]、[81]。しかしながら、骨盤痛又は不妊を患っている女性の子宮内膜症病気の検出率は35~50%であることが示されている[79]、[80]、[81]。米国の子宮内膜症診断の費用報告の結果は、年間6940万ドルである[82]。「腹腔鏡検査」は、この高額な診断の大部分を占めている[82]。腹腔鏡検査は、子宮内膜症の診断において重要な診断方法であるが、手術中に発生する可能性のある外科的問題、腸管及び膀胱の損傷、卵巣への損傷、大血管への損傷、出血などの手術リスク、並びに高額な費用及び患者の長期休息プロセスが伴う[6]、[82]、[83]。非侵襲的で簡単に適用でき、迅速に結果が得られる信頼性の高い診断検査が存在しないため、女性の子宮内膜症の診断は、平均7~11年の遅れを引き起こす[84]、[85]。
【0056】
文献上のこの情報に照らして、本発明者らが高感度の診断検査に取り組み始めた本発明では、本発明者らは、子宮内膜症の診断のための新規な生物学的マーカーとなることができ、かつ費用対効果が高く、外科的介入を必要とせずに短期間で「適用/結果」を得る可能性があるTG2が子宮内膜MSC特異的なCD146、W5C5及びPDFGRの発現を引き起こすことにより子宮内膜症の診断に使用できることを発見した。この文脈では、子宮内膜症の診断と発症の両方におけるTG2の重要性は、本発明の範囲内で本発明者らが実施した実験によって文献上で初めて実証された。
【0057】
フローサイトメトリー検査では、健常人(
図1)及び患者(
図2)の子宮内膜から単離された細胞が、文献のeMSC特性評価情報に対応する間葉系幹細胞の特性を持っていることが証明された[86]、[87]、[88]、[89]。一方では、これらの結果は、子宮内膜が間葉系幹細胞の高い供給源であり、子宮内膜に局在する間葉系幹細胞が月経周期の繰り返し、子宮内膜の修復に寄与して、子宮内膜の動的構造を確保することを示している[90]、[91]。同じ細胞群におけるフローサイトメトリーにより、子宮内膜間葉系幹細胞に特異的なCD146、W5C5及びPDFGR[92]のマーカーは、患者の細胞試料において、健康な細胞よりも多く発現していることが確定された。患者の子宮内膜症細胞における、子宮内膜由来間葉系幹細胞に特異的なCD146、W5C5及びPDFGR[92]の発現の増加は、peMSC試料に細胞の移動、接着及び浸潤の能力を与えている可能性がある。細胞の移動、接着及び浸潤に役割を果たすと知られているCD146、PDGFR、W5C5の量が患者の細胞で多く、PDGFRがTG2と直接的に協力しているため、peMSC試料におけるCD146、PDGFR、W5C5の増加は、TG2によって引き起こされる可能性があると考えられる。Zemskovらの以前の研究では、異なる細胞試料において細胞表面TG2は、PDGFRと相互作用し、インテグリンとのTG2が引き起こすPDGFR依存性細胞接着を引き起こすことが示されている[93]、[94]。一方では、中枢神経系細胞を用いて行われた最近の研究では、CD146がPDGFR-β媒介シグナル伝達において不可欠な役割を果たし、CD146の二量化の結果としてのPDGFR-βリン酸化による細胞の移動及び接着を引き起こすことが示されている[95]。この研究においてCD146とPDGFRの関係が説明されたが、CD146及びPDGFRの、TG2との関係及び子宮内膜症における役割は、解明されなかった。フローサイトメトリーの結果に従って、peMSC試料におけるCD146、PDGFR及びW5C5の発現の増加におけるTG2の役割を確定するために、heMSC試料及びpeMSC試料におけるTG2の存在を調査した。この文脈で実施されたウエスタンブロット(
図3)及びRT-PCR実験により、heMSC試料及びpeMSC試料におけるTG2のタンパク質含有量及び遺伝子発現が調査され、TG2のタンパク質発現及び遺伝子発現の両方が、患者試料において対照試料よりも高いことが検出された。
【0058】
現在までに提示された、本発明者らの仮説を証明するデータで示されているように、peMSCにおけるCD146、PDGFR及びW5C5の表面マーカーの増加がTG2の発現の制御下にあるか否かを理解するために、shRNA技術をeMSCに適用することにより、TG2の発現を、自発的かつ制御された方法でサイレンシングした(
図4)。shRNAをpeMSCに適用した後にTG2タンパク質のレベル(
図4)が低減されることが観察されたが、peMSC及びheMSCに適用された対照レンチウイルス粒子を含む(スクランブル)shRNAは、TG2タンパク質レベルを低減しなかった。文献にも開示されているように、shRNAは、標的遺伝子の産物であるタンパク質を阻害するが、対照レンチウイルス粒子を含むスクランブルshRNAは、あらゆる細胞メッセージに対応しないヒトゲノム内の約19~25個のヌクレオチド配列を含み、スクランブル処理細胞では変化が予想されず[96]、この情報は、本発明者らの結果と一致している。TG2を合成し、高レベルで発現させるpeMSC試料へのshRNAの適用に成功するとともに、CD146、PDGFR及びW5C5の表面マーカーの変化、細胞の増殖能力、細胞の子宮外の領域に移動する能力、及び細胞の移動した新しい場所への浸潤能力の検出を通じて、子宮内膜症におけるTG2の役割を分子的に解明した。
【0059】
知られているように、Ca+2依存性架橋酵素活性[41]、[46]、[97]、[98]、[99]に加えて、TG2は、Ca+2とは独立して架橋活性を失い、GTPに結合して加水分解し、Gタンパク質として細胞の接着と移動に積極的な役割を果たすことができる[41]、[45]、[36]、[50]、[52]。文献上のこの情報に照らして、かつ本発明の範囲内で本発明者らが提示した実験の結果として、peMSCに含まれるTG2の高レベルの発現により、peMSCが子宮の外の領域に移動し、上記領域に接着して侵入する能力を得るか否かを調査した。
【0060】
本発明者らが
図4に提示した結果によれば、shRNAによるTG2の制御された自発的なサイレンシングの後に、peMSC+shRNA細胞におけるCD146、W5C5及びPDGFRの表面マーカーは、heMSC細胞、heMSC+SCR細胞で観察されたレベルまで低減された(
図6、表3及び表4)。これらの結果は、本発明者らに対して、peMSC細胞で高度に発現している表面マーカーのCD146、W5C5及びPDFGRがTG2遺伝子発現の制御下にあることを示している。
【0061】
TG2の発現によるeMSC細胞増殖への影響を確定するために24時間目、48時間目、72時間目及び96時間目に実施されたWST-1アッセイ(
図7)は、peMSC細胞がheMSC試料よりも1.3倍速く増殖することを示した。TG2のサイレンシングにより、peMSC+shRNA細胞の増殖能力は、健康なheMSCレベルまで低減された。これらの結果は、子宮内膜症の場合の細胞増殖がTG2の制御下で行われるという証拠を構成する。
【0062】
子宮内膜MSCにおけるCD146、インテグリンβ-1、PDGFR、TG2及びW5C5のマーカーを用いた研究に加えて、子宮内膜症の異なるステージにある17名の患者の異なる領域から採取された子宮内膜症病巣における発現レベルも免疫組織生化学的染色法で検査した。組織の腺及び間質の染色を個別に評価した。結果は、eMSCで示したように、全ての子宮内膜症病巣の組織の腺において、CD146、PDGFR及びTG2のマーカーが、強い(++)又は非常に強い(+++)として50%以上発現していることを示した(表5)。子宮内膜症病巣の組織において、CD146、PDGFR及びTG2は、間質における発現が腺における発現よりも低いことが検出された(
図8)。eMSCにおける発現が増加しなかったインテグリンβ-1は、子宮内膜症病巣の組織において発現したが、健常人及び患者から単離されたeMSCにおける発現の変化が検出されなかった。これは、eMSCの子宮内膜症病巣の形成中にインテグリンβ-1の発現が増加することを示唆している。本特許出願の枠組み内でW5C5を用いて行われた本発明者らの免疫組織化学的研究は、文献上で初めて、Gargettらに反して、W5C5の発現が子宮内膜症病巣の組織において抑制されているのに対し、このマーカーが子宮内膜症患者の子宮内膜から単離されたeMS細胞において増加していることを実証した。
【0063】
本願に従って実施された研究の枠組み内で、子宮内膜症の診断においてバイオマーカーとして、TG2、CD146、PGDGR、SUSD2(W5C5)及びインテグリンβ-1のマーカーを単独で又は組み合わせて使用することが特許査定されることが要求される。
【0064】
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【国際調査報告】