(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】光-電気化学セル及び対応する装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/23 20210101AFI20240528BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20240528BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240528BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240528BHJP
H02S 40/38 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
C25B9/23
C25B15/02
C25B9/00 A
C25B1/04
H02S40/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571777
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 IB2022054544
(87)【国際公開番号】W WO2022243845
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021000012830
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523435613
【氏名又は名称】グリーン・インディペンデンス・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Green Independence S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100224616
【氏名又は名称】吉村 志聡
(72)【発明者】
【氏名】モンティチェッリ,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
4K021
5F251
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA09
4K021CA15
4K021DB40
4K021DB53
5F251JA28
(57)【要約】
第1電極(104a)を備える第1反応チャンバー、第2電極(104b)を備える第2反応チャンバー、及び2つの反応ハーフチャンバーの間に配置され、イオン交換膜(106a)を含む膜-電極アセンブリ(106)を備える電気化学セル(1)に関する。電気化学セルは、太陽エネルギーを吸収し、2つの出力端子の間に出力電圧を生成するように構成された光起電力システム(101)を更に備える。2つの出力端子はそれぞれ、2つの電極のそれぞれに選択的に結合可能であり、光起電力システムの感光面積と2つの電極の活性面積との比は50以下である。光起電力システムは、直列、並列、又は直列/並列の混合を含む構成で、2つの出力端子の間で選択的に結合可能な複数の光起電力セル(150)を備える。電気化学セルは、前記構成のうち選択された構成で複数の光起電力セルを結合させるように構成された電子制御ユニット(109)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル(1)であって、
第1電極(104a)を備える第1反応チャンバーと、
第2電極(104b)を備える第2反応チャンバーと、
前記第1反応チャンバーと前記第2反応チャンバーとの間に配置され、イオン交換膜(106a)を含む膜-電極アセンブリ(106)と、
光起電力システム(101)であって、太陽エネルギーを吸収し、前記光起電力システム(101)の第1出力端子(101a)と第2出力端子(101b)との間に出力電圧を生成し、前記光起電力システム(101)の前記第1出力端子(101a)は、前記第1電極(104a)に選択的に結合可能であり、前記光起電力システム(101)の前記第2出力端子(101b)は、前記第2電極(104b)に選択的に結合可能であり、前記光起電力システム(101)の感光面積と、前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)の活性面積との比は、50以下である、前記光起電力システム(101)と、
を備え、
前記光起電力システム(101)は複数の光起電力セル(150)を備え、複数の前記光起電力セル(150)は、直列、並列、又は1つ若しくは複数の直列/並列の混合を含む構成で、前記光起電力システム(101)の前記第1出力端子(101a)と前記第2出力端子(101b)との間で選択的に結合可能(S+、S-、SP、SS)であり、
前記電気化学セル(1)は電子制御ユニット(109)を備え、前記電子制御ユニット(109)は、1つ又は複数のユーザ設定可能なパラメータの関数、及び/又は外部制御ユニットから受信した1つ又は複数の信号の関数、及び/又は前記電気化学セル(1)に含まれる1つ又は複数のセンサから受信した1つ又は複数の信号の関数として、前記構成のうち選択された構成で複数の前記光起電力セル(150)を結合させるように構成されている、
電気化学セル(1)。
【請求項2】
前記電気化学セル(1)に含まれる1つ又は複数の前記センサは、
前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に流れる電流を感知するように構成された電流センサと、
前記第1電極(104a)と前記第2電極(104b)との間に印加される電圧を感知するように構成された電圧センサと、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の電気化学セル(1)。
【請求項3】
前記光起電力システム(101)の前記感光面積と、前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)の前記活性面積との前記比は、10以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは1に等しい、
請求項1又は2に記載の電気化学セル(1)。
【請求項4】
前記光起電力システム(101)の前記感光面積、前記第1電極(104a)の活性面積、及び前記第2電極(104b)の活性面積は、25cm
2から1m
2の範囲内にあり、好ましくは50cm
2から25dm
2の範囲内にあり、より好ましくは100cm
2に等しい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項5】
前記第1電極(104a)は第1導電板を備え、前記第1反応チャンバーは、前記イオン交換膜(106a)に面する前記第1導電板の表面に刻まれた少なくとも1つの流路チャンネル(105a)で構成され、
前記第2電極(104b)は第2導電板を備え、前記第2反応チャンバーは、前記イオン交換膜(106a)に面する前記第2導電板の表面において、前記第1導電板に刻まれた前記流路チャンネル(105a)に対応する位置に刻まれた少なくとも1つの流路チャンネル(105b)で構成され、
前記第1反応チャンバーに導入される第1反応流体と、前記第2反応チャンバーに導入される第2反応流体とは、前記イオン交換膜(106a)の2つの対向する側の対応する位置で流れる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項6】
前記第1電極(104a)と前記イオン交換膜(106a)との間に配置された第1ガス拡散層(106a)と、
前記第2電極(104b)と前記イオン交換膜(106a)との間に配置された第2ガス拡散層(106b)と、
を備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項7】
電気エネルギー蓄積装置(107)を備え、
前記電子制御ユニット(109)は、
前記電気エネルギー蓄積装置(107)を前記光起電力システム(101)に結合して、前記光起電力システム(101)が第1の電圧閾値よりも高い出力電圧を供給することに応答して、前記光起電力システム(101)によって生成された過剰な電気エネルギーを蓄積すること、及び/又は、
前記電気エネルギー蓄積装置(107)を前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に結合して、前記光起電力システム(101)が第2の電圧閾値よりも低い出力電圧を供給することに応答して、前記電気エネルギー蓄積装置(107)に蓄えられた電気エネルギーを前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に供給すること、及び/又は、
前記電気エネルギー蓄積装置(107)を前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に結合して、前記光起電力システム(101)の非活動段階の間に最小供給電圧を前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に供給すること、及び/又は、
前記電気エネルギー蓄積装置(107)を前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に結合して、前記光起電力システム(101)の出力電圧が振動、遮断、及び/又は突然の変動を受けたことに応答して、前記電気エネルギー蓄積装置(107)に蓄えられた電気エネルギーを前記第1電極(104a)及び前記第2電極(104b)に供給すること、及び/又は、
前記電気エネルギー蓄積装置(107)を前記電子制御ユニット(109)に接続して、前記電子制御ユニット(109)に電力を供給すること、
を行うように構成されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項8】
前記第1反応チャンバーに導入される第1反応流体の流れを調節するように、前記電子制御ユニット(109)によって制御される第1ポンプ(108a)と、
前記第2反応チャンバーに導入される第2反応流体の流れを調節するように、前記電子制御ユニット(109)によって制御される第2ポンプ(108b)と、
を備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項9】
前記第1反応流体及び前記第2反応流体の前記流れを示す1つ又は複数のパラメータを検出するための1つ又は複数の圧力センサ及び/又は1つ又は複数の流量センサを備え、
前記電子制御ユニット(109)は、検出された前記流れを示す前記パラメータの関数として、前記反応流体の再循環及び導入を調整するように、前記第1ポンプ(108a)及び前記第2ポンプ(108b)を制御するように構成されている、
請求項8に記載の電気化学セル(1)。
【請求項10】
前記第1反応チャンバーからの出口ダクト内に配置された第1スプリットバルブ(204a)と、
前記第2反応チャンバーからの出口ダクト内に配置された第2スプリットバルブ(204b)と、
を備え、
前記第1スプリットバルブ(204a)は、前記第1反応チャンバーに導入された第1反応流体から第1ガス状反応生成物を分離し、前記第1ガス状反応生成物を第1貯蔵リザーバ(110a)に向かって搬送し、前記第1反応流体を前記第1反応チャンバーに再導入するように構成され、
前記第2スプリットバルブ(204b)は、前記第2反応チャンバーに導入された第2反応流体から第2ガス状反応生成物を分離し、前記第2ガス状反応生成物を第2貯蔵リザーバ(110b)に向かって搬送し、前記第2反応流体を前記第2反応チャンバーに再導入するように構成されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の電気化学セル(1)。
【請求項11】
複数の請求項1から10のいずれか1項に記載の前記電気化学セル(1)と、
前記電気化学セル(1)の前記第1反応チャンバーと流体連通し、第1ガス状反応生成物を受け取る第1貯蔵リザーバ(110a)と、
前記電気化学セル(1)の前記第2反応チャンバーと流体連通し、第2ガス状反応生成物を受け取る第2貯蔵リザーバ(110b)と、
装置電子制御ユニット(409)と、
前記電気化学セル(1)の前記第1反応チャンバーと流体連通する第1反応流体のための第1分配回路であって、第1装置ポンプ(408a)を含む、前記第1分配回路と、
前記電気化学セル(1)の前記第2反応チャンバーと流体連通する第2反応流体のための第2分配回路であって、第2装置ポンプ(408b)を含む、前記第2分配回路と、
を備え、
前記装置電子制御ユニット(409)は、前記第1装置ポンプ(408a)を制御して、前記第1分配回路に導入される前記第1反応流体の流れを調整し、前記第2装置ポンプ(408b)を制御して、前記第2分配回路に導入される前記第2反応流体の流れを調整するように構成されている、
装置(40)。
【請求項12】
前記装置電子制御ユニット(409)は、前記電気化学セル(1)の前記電子制御ユニット(109)と制御信号及び/又はフィードバック信号を交換するように構成されている、
請求項11に記載の装置(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セル(electrochemical cells)(例えば、電気分解装置又は電気化学反応器)、及び、例えば電気分解によって生成される水素などの化学生成物を製造するための対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のエネルギー需要が増加しており、2020年には約150000TWhであった。この量のエネルギーを生産するためには、毎年約350億トンの二酸化炭素(CO2)及びその他の多くの汚染物質が排出される。
【0003】
光起電力システムを使用して太陽エネルギーを人間の活動に使用できるエネルギーに変換するとき、生成されたエネルギーの貯蔵に問題が生じる。また、バッテリーなどの貯蔵システムはエネルギー密度が低いため、多くの用途や長期間の貯蔵には不便である。したがって、太陽エネルギーを化学的性質のエネルギーベクトル、例えば、水素などに直接変換することが望ましい。
【0004】
水素は、その単位質量当たりのエネルギー密度(又は比エネルギー)が高いため、特にエネルギー産業及び輸送産業において大きな関心を集めている燃料である。水素は、様々な方法で天然化合物から抽出することで生成できるが、これまでは、世界中で生産される水素の大部分は化石燃料から得られている。例えば、いわゆるブラウン水素はガス化(gasification)として知られるプロセスで石炭から生成されるが、グレー水素はメタンの「スチームリフォーミング(steam reforming)」として知られるプロセスによって天然ガスから抽出される。どちらのプロセスでも大量の二酸化炭素が排出される。いわゆるブルー水素は化石燃料から生成され、同時に炭素の捕捉及び貯蔵の技術を使用して大気中への二酸化炭素の排出を削減する。
【0005】
水素を生成する別の方法は、電気分解プロセスに基づくものがある。電気分解プロセスでは、電解セルが電流を利用して化合物をその構成要素に分解する。ここで考慮されるケースでは、出発化合物が水であり、水がいわゆる水分解反応で水素と酸素とに分解される。電解セルに供給される電気エネルギーが風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーによる場合には、生成される水素は「グリーン水素」と定義される。
【0006】
当技術分野では、電気分解による水素の製造に太陽エネルギーを利用するものは、主に3種類のシステム(いわゆる太陽光水素技術)、すなわち、光触媒(PC)システム、光電気化学(PEC)システム、及び光起電力-光電気化学(PV-EC)システムが知られている。
【0007】
光触媒(PC)タイプのセルは、装置で使用される技術及びコンポーネントにおいてよりシンプルな水分解デバイスを代表する。光触媒セルでは、光触媒材料が電解物の溶液中で粉末の形態であるため、セルの2つの電極間の電荷の移動経路が短く、反応が迅速に起る。水素と酸素とは光触媒材料の同じ粒子上で生成される。したがって、光触媒システムでは、ガスが生成した後にそれらを分離するための更なるプロセスが必要となる。一般に、光触媒は、光を集める半導体と1つ以上の助触媒から構成される複合体である。半導体は、半導体材料のバンドギャップよりも高いエネルギーを持つフォトンを吸収すると、電子-正孔対が生成される。一方、助触媒上では水素発生反応(HER)と酸素発生反応(OER)が発生する。
【0008】
光電気化学(PEC)タイプのセルは、一般に、電荷コレクタに接続され、互いに電気的に接続された光電極(フォトアノード及び/又はフォトカソード)によって得られる。従来、光電極の光吸収側のみが電解相と接触し、電荷コレクタに接続された側は液体から隔離される。光電気化学セルは通常、
単一のp型フォトカソードと、
OER触媒アノード又はn型フォトアノードと、
HER触媒カソードと、
を備える。
【0009】
上記構成を有する光電気化学セルは、過電圧及び全体的な損失を補償するために外部電圧の印加を必要とする。この追加の電位を供給する実用的な方法は、フォトカソード/フォトアノードシステム(すなわち、PECセル)と光起電力セルとを組み合わせて、光起電力-光電気化学(PV-PEC)セルを得ることで構成される。
【0010】
光起電力-光電気化学(PV-EC)システムは、選択された電極触媒材料に接続され、水の分解反応をトリガーするために必要なエネルギーを供給する光起電力デバイスで構成される。したがって、PV-ECセルの効率は、光起電力セルの性能と電極触媒の性能との両方に依存する。
【0011】
光起電力-光電気化学デバイス(PV-EC)には、PC及びPECシステムに比べていくつかの利点がある。特に、PV-ECデバイスは、構成によって、光起電力素子を電気化学相の溶液及び試薬に浸漬すること、又は光起電力素子自体がそれらと直接接触することは想定されることなく、腐食や光吸収体の安定性の低さの問題に悩まされることがない。更に、電荷の光生成(電子-正孔対)と電極触媒作用とが別々に発生するという事実により、システムの拡張が容易となり、光起電力セルと電極触媒との寸法を独立して調整することができる。一方で、個々のシステムの複雑さとそれらのコミュニケーション及び相乗的な配置の複雑さは、PV-ECデバイスの全体的なコスト増加につながり、PV-ECタイプのセルの主な欠点を表している。
【0012】
米国特許出願公開US2018/0171492A1及び文献「Direct Solar-to-Fuel CO2 Reduction」、Alessandro Monticelli、シカゴのイリノイ大学、学位論文、2015(以下のインターネットアドレスでオンライン利用可能:https://hdl.handle.net/10027/19561)は、水及び二酸化炭素から出発して合成ガス(水素と一酸化炭素との混合物)を生成するのに適したシンプルな電解セルについて述べている。一般に、文献US2018/0171492A1は主にCO2の還元反応に関する化学触媒的側面を教示している。当該文献によると、電解セルの反応ハーフチャンバーと光起電力セルとは、光起電力セルがアノード及びカソードと電気的に接触し、2つの反応ハーフチャンバーが互いにイオン接触(ionic contact)するように配置される。
【0013】
しかしながら、上記2つの文献に記載されている既知の装置は、効率が低く、産業及び商業の実情に適した寸法への拡張性が難しい特徴があるため、産業界での利用可能性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記に鑑みると、当技術分野では、産業界での利用に適した改良された電気化学セルを提供することが求められている。例えば、直接供給される太陽エネルギーによって化学製品の生産を可能にし、広範な方法で化学エネルギーベクトル(例えば、水素)を生産することができ、分散型及び独立型生産を可能にする電気化学セルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つ又は複数の実施形態の目的は、既知の装置と比較してより高い効率及びより多様な使用を有し、太陽エネルギー吸収システムと一体化された電気化学セル(又は電気化学反応器)を提供することである。
【0016】
1つ又は複数の実施形態によれば、このような目的は、特許請求の範囲に記載の特徴を有する電気化学セルによって達成することができる。
【0017】
1つ又は複数の実施形態は、複数の電気化学セルを備える対応する装置に関することができる。
【0018】
特許請求の範囲は、実施形態に関連して本明細書に提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【0019】
簡単に言うと、1つ又は複数の実施形態は、第1電極を含む第1反応チャンバーと、第2電極を含む第2反応チャンバーとを備え、膜-電極アセンブリ(MEA)が、第1反応チャンバーと第2反応チャンバーとの間に配置されている、電気化学セルに関する。膜-電極アセンブリはイオン交換膜を含む。電気化学セルは、太陽エネルギーを吸収し、光起電力システムの第1出力端子と第2出力端子との間に出力電圧を生成するように構成された光起電力システムを更に備える。光起電力システムの第1出力端子は第1電極に選択的に結合することができ、光起電力システムの第2出力端子は第2電極に選択的に結合することができる。光起電力システムの感光面積と、第1電極及び第2電極の活性面積との比は、50以下である。
【0020】
更に、1つ又は複数の実施形態では、光起電力システムは複数の光起電力セルを備える。光起電力セルは、直列構成、並列構成、又は1つ以上の直列/並列混合構成で、光起電力システムの第1出力端子と第2出力端子との間に選択的に結合することができる。直列/並列混合構成とは、セルがグループに配置され、各グループが並列に接続された複数のセルを含み、異なるセルグループが直列に接続されている構成として理解されたい。電気化学セルは、ユーザが設定できる1つ以上のパラメータに応じて、及び/又は外部制御ユニットから受信した1つ又は複数の信号に応じて、及び/又は電気化学セルに含まれる1つ又は複数のセンサから受信した1つ又は複数の信号に応じて、前記構成のうち選択された構成で光起電力セルを結合するように構成された電子制御ユニットを備える。
【0021】
1つ又は複数の実施形態は、1つ又は複数の実施形態による複数の電気化学セルと、第1ガス状反応生成物を受け入れるための、電気化学セルの第1反応ハーフチャンバーと流体連通する第1貯蔵リザーバと、第2ガス状反応生成物を受け入れるための、電気化学セルの第2反応ハーフチャンバーと流体連通する第2貯蔵リザーバと、装置電子制御ユニットと、を備える装置に関する。当該装置は更に、電気化学セルの第1反応ハーフチャンバーと流体連通し、第1反応液を分配するための第1分配回路と、電気化学セルの第2反応ハーフチャンバーと流体連通し、第2反応液を分配するための第2分配回路と、を備える。第1分配回路は、装置電子制御ユニットによって制御される第1装置ポンプを備え、第1分配回路に導入される第1反応液の流れを調整し、第2分配回路は、装置電子制御ユニットによって制御される第2装置ポンプを備え、第2分配回路に導入される第2反応液の流れを調整する。
【0022】
以下、添付図面を参照して、単なる例として、様々な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの分解図
【
図2】
図1の電気化学セルの分解図であって、電気化学セルのいくつかの動作原理をハイライトで示す図
【
図3】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの動作原理を例示する図
【
図4】1つ又は複数の実施形態による、複数の電気化学セルを備え、化学製品を製造する装置を示す図
【
図7A】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す平面図
【
図7B】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す不等角投影図
【
図7C】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す図
【
図7D】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す図
【
図7E】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す図
【
図7F】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す図
【
図7G】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す図
【
図7H】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の詳細を示す図
【
図8A】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルのいくつかの構成要素の分解図
【
図8B】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルのいくつかの構成要素の分解図
【
図8C】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルのいくつかの構成要素の分解図
【
図9】1つ又は複数の実施形態の動作原理を例示する電流-電圧のグラフ
【
図10】1つ又は複数の実施形態の動作原理を例示する電流-電圧のグラフ
【
図11】1つ又は複数の実施形態の動作原理を例示する電流-電圧のグラフ
【
図12】1つ又は複数の実施形態の動作原理を例示する電流-電圧のグラフ
【
図13A】第1の構成例に係る1つ又は複数の実施形態の動作例を示す図
【
図13B】第1の構成例に係る1つ又は複数の実施形態の動作例を示す図
【
図14A】第2の構成例に係る1つ又は複数の実施形態の動作例を示す図
【
図14B】第2の構成例に係る1つ又は複数の実施形態の動作例を示す図
【
図15】1つ又は複数の実施形態による電気化学セルの実装の可能な詳細を例示する図
【
図16A】第3の構成例に係る1つ又は複数の実施形態の動作例を示す図
【
図16B】第3の構成例に係る1つ又は複数の実施形態の動作例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明において、本開示の実施形態の例を深く理解できるようにすることを目的として、1つ又は複数の具体的な詳細が示される。実施形態は、1つ以上の特定の詳細を伴わずに得られる場合があり、又は、他の方法、構成要素、材料などを使用して得られる場合もある。また、実施形態の所定の態様が不明瞭とならないように、既知の構造、材料、又は動作は詳細に図示又は説明されない場合がある。
【0025】
本説明の文脈における「一実施形態」又は「1つの実施形態」とは、実施形態に関連して説明される具体的な構成、構造、又は特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを示すことを意図する。したがって、本説明の1つ以上の箇所に記載の「一実施形態において」又は「1つの実施形態において」などの語句は、必ずしも同一の実施形態を指すものではない。更に、具体的な構成、構造、又は特徴は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0026】
本明細書に添付される全ての図において、文脈が別段の指示をしない限り、同様の部分又は要素は同様の参照番号によって示され、簡潔にするために対応する説明は本明細書では繰り返さない。
【0027】
本明細書で使用される参考文献は、単に便宜上で提供しており、したがって、実施形態の保護領域又は範囲を定義するものではない。
【0028】
図1は、1つ又は複数の実施形態による電気化学セル1(又は電気化学反応器)の分解図であって、セル1のいくつかの構成要素が示されている。
【0029】
電気化学セル1は、光起電力システム101(例えば、光起電力パネル)を備え、光起電力システム101は、太陽エネルギーを吸収し、それを電気化学セルに供給するための電気エネルギー(システム101の出力端子101a、101bで利用可能な電流及び電圧)に変換するように構成されている。
【0030】
電気化学セル1は、ガスケット103、絶縁要素102、シール要素、及び液密要素を備え、これらは、いくつかの構成要素を電気的に絶縁するため(例えば、電気化学セル1の反応チャンバーの外壁から光起電力システム101を電気的に絶縁するため)、及び/又は反応チャンバーの液密性を維持するために構成され、電気化学セル1の外部環境への液体及び/又は気体の拡散を防止する。
【0031】
電気化学セル1は、第1導電板104aと第2導電板104bとを備え、第1導電板104aと第2導電板104bとは、電気化学セル1の2つの反応ハーフチャンバーと接触する電極として動作し、2つの導電板(1つはアノード用、もう1つはカソード用)の間に電位差が印加されると、反応器内で化学反応が発生することができる。例えば、
図1に示すように、導電板104aは、光起電力システム101の正極端子101aに電気的に結合することができ、導電板104bは、光起電力システム101の負極端子101bに電気的に結合することができる。更に、各導電板104a、104bは、対応する反応ハーフチャンバー内で試薬を流すための1つ又は複数の流路チャンネル105a、105bを備える(例えば、蛇行構成による流路)。このような流路により、化学反応中の交換を最大化するように流体の内部分配が可能となる。
【0032】
電気化学セル1は、膜-電極アセンブリ(MEA)106を備え、膜-電極アセンブリ(MEA)106は、アニオン交換膜(AEM)106a又はプロトン交換膜(PEM)106aと、1層又は2層の触媒材料(アノード側に1層、カソード側に1層)と、2つのガス拡散層(GDL)106bとを含む。特に、MEA106は、触媒材料が基板上に配置されるCCS(触媒被覆基板)構成に従って構成するか、又は触媒材料が膜106a上に配置されるCCM(触媒被覆膜)構成に従って構成することができる。
【0033】
したがって、導電板104a及び導電板104bは、電極として、又は膜-電極アセンブリ106に電力を供給する導電性要素として直接動作することができる。
【0034】
電気化学セル1は、一時的エネルギー蓄積(バッファ)システム107を備え、エネルギー蓄積システム107は、例えば、光起電力システム101に選択的に結合できるバッテリーである。
【0035】
電気化学セル1は、1つ又は複数のポンプ108a、108b(例えば、圧電ポンプなどのマイクロポンプ)を備える。例えば、セル1は、アノードの再循環又は流れを可能にするポンプ108aと、カソードの再循環又は流れを可能にするポンプ108bとを備えることができる。
【0036】
電気化学セル1は、電気化学セル1の動作を管理するように構成された電子制御ユニット109(例えば、PLC)を備える。これについて後段で説明する。例えば、制御ユニット109は、電気化学セル1に設置された1つ又は複数の流量センサ(
図1には示されていない)によって検出された1つ又は複数の信号の関数として、ポンプ108a、108bを動作させることによって試薬の再循環のためのシステムを調整するように構成することができる。加えて、又は代替的に、制御ユニット109は、光起電力システム101をダイナミックに構成することによって、電気化学システムの動作ポイント(すなわち、セル1の電極に印加される一対の電流-電圧値j、V)を調整するように構成されてもよい。加えて、又は代替的に、制御ユニット109は、電気化学反応器が連続的に動作できるようにエネルギー蓄積システム107を制御するように構成されてもよい。
【0037】
1つ又は複数の実施形態では、ポンプ180a及びポンプ108b、エネルギー蓄積システム107、及び/又は電子制御ユニット109の回路は、電気化学セル1内に統合することができる。
【0038】
また、
図1には、ガスリザーバ110a、110bが示されており、ガスリザーバ110a、110bは、セル1の2つの反応ハーフチャンバー(アノード及びカソード)と流体連通するように結合され、それぞれの反応生成物を収集するように構成されている。
【0039】
図2は、
図1を参照して説明した電気化学セル1の分解図であって、液体及び気体の主な流れ、並びにセル1の様々な構成要素間のいくつかの電気接続が示されている。その代わりに、
図3は、セル1の簡略図であって、液体及び気体の主な流れ、及びセル1の様々な構成要素間のいくつかの電気接続を概略的に示している。
【0040】
図2及び
図3に例示されているように、セル1は次のように構成されている。液体の供給(アノード試薬)は、入口孔201aから回路に供給され、液体が電気化学セル1のカソード側104aに搬送され、流路チャンネル105aに供給される。液体が流路チャンネル105aに導入され、MEA106と接触すると、アノード流路チャンネル105bに導入された液体と反応し、部分的にガス状反応生成物に変換される。一部未変換の試薬とガス状生成物とを含む混合物はプレート105aの出口孔202aに到達し、セル1を通過して孔203aに到達する。次に、まだ変換されていない試薬からガス状生成物を分離するスプリットバルブ204aを通過し、ガス状生成物がそれぞれの貯蔵リザーバ110aに向かって搬送され、まだ変換されていない試薬は、ポンプ108aを介して循環に再導入され、変換サイクルが再開する。同様に、アノード側では、液体(アノード試薬)の送達が、孔201bから回路に供給され、アノード流路チャンネル105bを通して液体が直接搬送される。液体が流路チャンネル105bに導入され、MEA106と接触すると、液体はカソード回路の液体と反応し、部分的にガス状生成物に変換される。一部未変換の試薬とガス状生成物とを含む混合物は出口孔203bに到達し、そして、まだ変換されていない試薬からガス状生成物を分離するスプリットバルブ204bを通過し、ガス状生成物がそれぞれの貯蔵リザーバ110bに向かって搬送され、まだ変換されていない試薬は、ポンプ108bを介して循環に再導入され、変換サイクルを再開する。
【0041】
1つ又は複数の実施形態では、光起電力システム101は、電気化学反応器1の動作に必要な電力を供給するように構成され、制御ユニット109は、セル1の様々な構成要素の間で上記電力を調整して分配するように構成される。具体的には、後段で更に説明するように、光起電力システム101は、複数の光起電力セルを備え、複数の光起電力セルの電気接続は、吸収された太陽エネルギーを様々な電流-電圧(j-V)の組み合わせに変換するように、様々な直列/並列モードで(ダイナミックに)再構成可能であり、そして、反応生成物の量を増加させる(すなわち、電気化学セルの効率を高める)ように最も効率的な方法で電気化学セル1に電力を供給することができる。光起電力システム101内の光起電力セルの直列/並列接続のこのような(ダイナミックな)再構成は、制御ユニット109によって実行される。
【0042】
具体的には、制御ユニット109は、
電気接続及び電力接続を開閉することによって、又は、電気化学セル1のサブコンポーネントの動作を調整することによって、電気化学セル1の動作パラメータを、プログラムされたロジックの関数として、及び/又は電気化学セル1の内部の1つ又は複数のセンサ(流量センサ、電流計、電圧計など)によって検出された信号の関数として、及び/又は外部から(例えば、外部インターフェイスから、モノのインターネットデバイス(Internet-of-Things device)から)受信した信号の関数として調整することと、
1つ又は複数の選択された電気化学反応の動作パラメータの理想値を外部からの入力として受信し、所定の化学反応の動作パラメータの理想値に可能な限り近づくようにシステムを調整し、外部にフィードバックを送信することと、
流量の変化の関数として、及び電気化学セル1への入力における流量と電気化学セル1からの出力における流量との間の差の関数として、再循環ポンプ108a、108bの動作を調整することと、
エネルギー蓄積システム107を充電するために光起電力システム101によって生成された電力の一部を利用するように、光起電力システム101の電気接続を構成すること、具体的には、このように利用される電力の一部は、太陽光照射から吸収される電力と、電気化学反応に有用な電流に変換できる電力との差に等しい(すなわち、即時に化学反応を活性化するために使用できない余剰エネルギーを意味することができる)とすることと、
を含む機能のうちの1つ又は複数を実行するように構成することができる。
【0043】
1つ又は複数の実施形態では、エネルギー蓄積システム107は、制御ユニット109及び/又はポンプ108a、108bに電気を供給することができる。加えて、又は代替的に、エネルギー蓄積システム107は、夜間非活動の時間帯に電気化学セル1に最小の電流及び電圧を供給することができ、これによって、朝に電気化学セル1の始動(光起電力システム101が太陽光照射を電気エネルギーに変換し始めるとき)の速度と効率を高め、セル1の化学触媒成分の劣化を遅らせ、それによって耐用年数を延ばし、システムの安定性を高めることができる。
【0044】
加えて、又は代替的に、1つ又は複数の実施形態では、電極触媒システムで起こる化学反応の安定性を高めるために、エネルギー蓄積システム107は、光起電力システム101による電気エネルギーの生成において起こりうる振動、中断、及び/又は突然の変動を補うことができる。
【0045】
1つ又は複数の実施形態は、
図1から
図3を参照して説明したように、複数の電気化学セル1を含むシステムに関するものであってもよい。したがって、セル1は、より複雑なシステムのモジュールユニットを構成することができる。より複雑なシステムのモジュールユニットは、例えば、複数の電気化学セルを含むパネルであって、それぞれの電気化学セルにそれぞれの光起電力パネルが関連付けられるように構成することができる。
【0046】
図4は、1つ又は複数の実施形態による、複数のセル1を備えるそのようなシステム40を例示する図である。
図4には、液体の主な流れ(太い実線と短い破線)、ガス/生成物の流れ(リザーバ110a’、110b’に向かう破線)、及び相乗的に動作する複数の電気化学セル1を含むシステム40を調節する電気信号(細い実線と長い破線)を示している。
【0047】
具体的には、このようなシステムにおいて、全てのセル1に共通の反応生成物が2つのリザーバ110a’、110b’に存在することができる。システム40は更に、電気モータ420によって供給される2つのポンプ408a、408bを備えることができる。第1ポンプ408aは、対応する流体インプットからアノード試薬を含む液体を受け取り、それを各セル1の対応する複数のポンプ108aに向かって搬送することができる。同様に、第2ポンプ408bは、対応する流体インプットからカソード試薬を含む液体を受け取り、それを各セル1の対応する複数のポンプ108bに向かって搬送することができる。共通ポンプ408a、408b及び専用ポンプ108a、108bの配置により、全てのセルにおける試薬の制御及び分配を改善することができる。
【0048】
更に、システム40は、ポンプ408a、408bを駆動するモータ420を制御する共通の電子制御ユニット409(例えば、PLC)を備えることができる。また、共通の電子制御ユニット409は、各セル1の各ローカル制御ユニット109に接続して、制御信号及び/又はフィードバック信号を交換することができる。
【0049】
したがって、
図4に例示されるような1つ又は複数の実施形態では、共通の電子制御ユニット409によって制御される可変流量吸入ポンプ408aが、アノード側の様々なセル1に流体を送る(カソード側においても同様に、可変流量吸入ポンプ408bにより送液される)。反応は電気化学セル1内で発生し、(セル1に設けられている)様々なスプリットバルブがガス状生成物を液体試薬から分離し、そして、前者をアノード生成物及びカソード生成物用のために設けられた回路内に搬送し(その後、それぞれのリザーバ110a’、110b’に収集される)、後者を搬送して再びセル1を通過させる。
【0050】
例えば、
図5は、システム40を例示する図であって、そこに含まれる電気化学セル1の1つがより詳細に示されている。セル1のローカル制御ユニット109は、共通の電子制御ユニット409と制御信号及び/又はフィードバック信号を交換する。ポンプ408a、408bによって制御されるダクトを介して受け取られた流体は、ローカル制御ユニット109によって制御されるポンプ108a、108bを介して得られるローカル制御の作用にしたがって、それぞれの入口孔201a、201bを通って電気化学セル1に導入される。
【0051】
図6は、システム40の変形実施形態を例示する図であって、セル1のローカル流体ダクトとポンプ408a、408によって制御される共通流体ダクトとの間の異なる接続が示されている。具体的には、この構成では、液体は、スプリットバルブとポンプとの間のダクトの中間部分、すなわち、ポンプ108a、108bの上流におけるローカル再循環システムに導入される。明らかに、当業者であれば、本明細書に記載したものと同じ機能を達成する多数の代替構成が可能であること、そして、その全てが本発明の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0052】
図7Aは、1つ又は複数の実施形態による、電気化学セルで使用するための導電板(例えば、アノード側導電板又はカソード側導電板)の背面の例示的な正面図である。
図7Bは、
図7Aに示すものと同じ背面の不等角投影図である。
図7Cは、
図7A及び
図7Bの導電板の前面(すなわち、反応チャンバーの内側に面する導電板面)の例示的正面図である。
図7Dは、
図7Cに示すものと同じ前面の不等角投影図である。
図7Eは、
図7Dの導電板の拡大した部分を示している。
【0053】
図7Aから
図7Eは、反応チャンバーに面する導電板104a、104bの面に設けられた流路チャンネル105a、105bの構造の一例を詳細に示している。入口からの水性(water-based)の試薬の流れは、(
図7C~7Eに示す)前側から導電板に到達し、(前面の)点701から(背面の)点702へと導電板を通過する。流れは、ミニチャンネル702aを通って点703まで下がり、(背面の)点703から(前面の)点704へと再び導電板を通過する。点704から、試薬(例えば、アノード試薬)で満たされた液体は、流路チャンネル(105a、105b)を通って流れ、そこでイオン交換膜によって分離され、第2の導電板内を流れる逆流の流れ(例えば、カソード流れ)と接触し、生成物に変換される。本明細書に例示される1つ又は複数の実施形態では、一定流量の流体の速度を低下させながら交換面積を増加させるために、流路は点704aで分岐し、そして点705aで合流する。最後に、気体生成物と液体試薬とが混合した流れは点706に到達する。ここから流れは再び導電板を通過して、背面の点707を通って、メインダクトに到達する(背面の点708、その後、再び導電板を通って前面の点709に到達する)。流れはメインダクトからそれぞれのスプリットバルブに到達し、スプリットバルブによって流れのうちの液体部分(未変換試薬)が反応チャンバー内を再度循環し、流れのうちの気体部分がそれぞれのリザーバに収集される。
【0054】
図7Eでは、流路の構造がハイライトされており、流路は、前面においてMEA106(
図7A~7Eでは見えない)によって閉じられている半円形の断面を有する毛細管に類似した構造を有することができる。
【0055】
図7Fは、1つ又は複数の実施形態による電気化学セル1の内部を示す(側方)断面図である。
図1を参照して説明したように、セル1は2つの導電板104a、104bを備え、導電板104a、104bは、それぞれ試薬が(例えば、蛇行状に)流れるための流路チャンネル105a、105bを有し、流路チャンネル105a、105bは、導電板104aと導電板104bとの対向する表面の対応する位置に刻まれている。これにより、2つの液体(アノード液体及びカソード液体)がMEA106の2つの対向する側の対応する位置に流れ、膜を介して化学交換が発生することができる。カソードハーフ反応の試薬を含む液体はカソード流路チャンネル105aを通って流れ、アノードハーフ反応の試薬を含む液体はアノード流路チャンネル105bを通って流れる。導電板104a、104bに電位差が印加されると、MEA106に含まれる触媒によって電気化学反応が刺激され、電気回路が閉じられ、ガス状生成物が生成される。ガス状生成物は、未変換試薬とともに流路を通ってスプリットバルブまで搬送され、そこでガス状生成物と未変換試薬とが分離される。後者は循環に戻ることができる。
【0056】
図7Gは、
図7Aから
図7Eの導電板の前面(すなわち、反応チャンバーの内側に面する導電板面)の更なる例示的正面図である。
図7Hは、
図7Gに示す導電板を
図7GのVII-VII線に沿って横方向に切断した断面図である。
図7Hの左側部分には断面図の拡大図を示し、導電板104の前面に設けられた流路チャンネル105の半円形構造がハイライトされている。
【0057】
したがって、1つ又は複数の実施形態は、(ガス状)生成物の再循環、収集、及び/又は分離のための独立した流体ダイナミックシステムを備えることができる。具体的には、1つ又は複数の実施形態は、試薬と接触する電極の表面の増加及び水頭損失の低減を可能にする分配及びマイクロ流体再循環のためのシステムを備えることができる。例えば、1つ又は複数の実施形態は、液体部分(試薬)からの気体部分(生成物)の分離を容易にする構造を特徴とする。流体ダイナミックシステムは、アノード側とカソード側との両方のインプットにおいて試薬を(液体の形で)分配する機能と、液体と電極とイオン交換膜(例えば、プロトン交換膜-PEM、又は、アニオン交換膜-AEM)の表面との間の接触面を最大化し、システムが連続流で動作できるようにする機能とを有する。
【0058】
更に、1つ又は複数の実施形態は、流体ダイナミック及び再循環システムを調整するための1つ又は複数のセンサを備えることができる。マイクロ流体システムにおける試薬及び生成物の循環及び/又は再循環は、圧力変動によって得ることができ、反応器の動作パラメータをモニタリングする1つ又は複数のセンサを含むシステムによって制御することができる。具体的には、様々な実施形態による流れを管理するシステムは、個々の電気化学セル内の流れを管理するための第1システムと、前述の
図4から
図6に例示されているように、相互に接続された多数のセルで構成されたシステム内の流れを管理するための第2システムとを備える。
【0059】
1つ又は複数の実施形態では、多数の電気化学セルで構成されたシステム内の流れを管理するシステムは、セルのアウトプット流れを単一のダクトに搬送し、そして、試薬の単一のメインダクトからスタートして、個々の電気化学セルの試薬の個々のインプットダクトに供給するように構成される。例えば、流量管理システムは、個々の電気化学セル内で起こる化学反応に基づいて選択された作用点の関数として調整できる逆止弁及び圧力スイッチを備えていてもよい。例えば、1つ又は複数の実施形態は、自動方式(例えば、事前に設定された規制及びパラメータに従って)と、パラメトリック又は手動方式(例えば、ユーザインターフェイスを介して必要な動作パラメータを入力することによって)との両方で電気化学セルの作用点を調整及び管理するように構成された制御ユニット(例えば、マイクロプロセッサなど)を備えることができる。このソリューションにより、電気化学システムの使用の柔軟性が向上し、電気化学セル内で実行される反応に応じて、及び/又は使用される触媒システムの変化に応じて、電気化学セルに構造的な変更を加える必要なく、使用パラメータの更新及び/又は変更をすることができる。
【0060】
図8Aは、様々な実施形態による電気化学セル1のいくつかの構成要素の分解図である。
図8Bは、好ましい実施形態の対応する背面分解図である。
図8Cは、
図8Bに示す電気化学セルの正面分解図である。
【0061】
具体的には、
図8Aは、光起電力パネル101と2つの導電板104a、104bとを示している。また、
図8Aには、領域101S、すなわち、光起電力パネル101の表面の領域が概略的に示されている(この例では、光起電力パネル101が必要に応じて直列及び/又は並列に接続できる複数の光起電力セルを含むことができる限り、6つの領域に分割される)。また、
図8Aには、領域106S、すなわち、セル1の電極の表面の活性領域も概略的に示されている。活性と考えられる電極の面積は、第1反応ハーフチャンバーと第2反応ハーフチャンバーとの間のイオン交換の面積であり、したがって、2つの電極において共通である。
【0062】
図8B及び
図8Cは、本発明の1つ又は複数の実施形態による電気化学セル17の分解図である。電気化学セル17は、特に、光起電力素子が反応チャンバー内に浸漬されず、チャンバー自体の外側にあるPV-EC構成において機能するのに適している。電気化学セル17は、好ましくは、プラスチック材料で作られたプレートを含む第1のフレーム要素170Aを備える。
図8B及び
図8Cに例示されるように、フレーム要素170Aの形状は、好ましくは六角形であるが、本明細書に記載の他の実施形態のように、正方形又は長方形であってもよい。
【0063】
プレートは、その1つの面(すなわち、電気化学セルの「内側」面)に、第1反応ハーフチャンバーの容積を画定する(好ましくは正方形又は長方形の形状の)凹部を備える。当該凹部は、フレーム要素170Aを通過するダクト171A、172A、173A、174Aによって外部環境と流体連通している。当該凹部は、その中にテッセラ状(タイル状)要素176Aを受け入れるように構成され、テッセラ状(タイル状)要素176A(
図8Aの導電板104bに対応する)は、第1反応ハーフチャンバーを画定し、第1のハーフチャンバーの電荷コレクタとして動作する。
【0064】
電気化学セル17は、イオン交換膜1700を更に備え、イオン交換膜1700は、テッセラ状要素176Aによって画定される第1反応ハーフチャンバーを、第2反応ハーフチャンバーから分離し、第2反応ハーフチャンバーは、第2のフレーム要素170Bの凹部内に受け入れられている類似の第2のテッセラ状要素176B(
図8Aの導電板104aに対応する)によって画定される。
図8B及び
図8Cに例示されるように、第2のフレーム要素には、凹部と外部環境との間の流体連通のためのダクトが設けられていなくてもよい。フレーム要素及びイオン交換膜は、電気化学セル17を組み立てるための周囲の穴(perimetral holes)(添付の図面では見えない)を備えていてもよい。
【0065】
1つ又は複数の実施形態では、電気化学セル17は、電極に電気的に結合された光起電力セル178(
図8Aの光起電力素子101に対応する)を備える。
【0066】
電気化学セル17は、光起電力システム178と、電気システムと、触媒システムと、前述したように、流れを管理し、生成物(例えば、水素などのガス状生成物)を収集するシステムと、を用いて、連続流れ(continuous-flow)モードで動作するように構成されている。具体的には、電気化学セル17は、連続流れシステム(continuous-flow system)及び再循環システムと、光の吸収及び変換のためのシステムと、損失を最小化し、且つシステムの相乗効果及び多用性を最大化する構成と、を備えることができる。
【0067】
具体的には、
図8B及び
図8Cに例示されるように、電気化学セル17の電荷コレクタ176A、176Bは、蛇行構成を有する1つ又は複数のエッチングされたチャンネルを備え、これらのチャンネルは、電極及び膜1700の活性表面上に流れを分配し、仮にセルを通過する流量が同じであるとき、交換面積及び接触時間を最大化する。これによって、同じ流量下で生成物に変換される試薬の量を向上させる。1つ又は複数の実施形態では、アノードのチャンネルシステムは、カソードのチャンネルの上に配置され、プロトン/アニオン交換を最大化し、転換率を高めるために、2つの流れが対向流となるように構成される。
【0068】
前述したように、1つ又は複数の実施形態では、ポンプ180a及びポンプ108b、エネルギー蓄積システム107、及び/又は電子制御ユニット109の回路は、電気化学セル1内に統合することができる。例えば、
図8B及び
図8Cを参照すると、上記参照したシステムのうちの1つ又は複数をフレーム要素170A及び/又はフレーム要素170B内に統合することができる。
【0069】
光起電力技術と電気分解技術(または電気化学又はECシステム)を単一システムに統合するには、選択した触媒システムが必要とする電位で、可能な最大電荷密度を電気化学システムに供給する必要があることに注意されたい。既知の解決策では、この目的のために、1つの電気分解装置(したがって、1つの電極セット)に電力を供給するために、大きな光起電力面が使用される。その結果、光起電力面と電極の有効面との比は、通常100よりはるかに大きく、更には1桁又は数桁以上も大きくなる。光起電力面と電極の有効面との低い比(数十から1のオーダーの比)を得ることが、従来技術による解決策では達成できない望ましい特性である。実際、光起電力パネルの各平方メートルにとって、電気分解装置と同じ数の電極を設けることは、経済的に不利である。更に、非常に大きな表面積(例えば、1m2)を有する電極を、同じ表面積(例えば、1m2)の光起電力パネルに接続すると、オーム損失及び電圧降下が生じる。オーム損失及び電圧降下の発生が、電気分解システムの動作条件が保証できなくなるほど重要であり、又は、いずれにしても、その効率を危うくすることでシステムが経済的に持続不可能となる恐れがある。
【0070】
1つ又は複数の実施形態では、光起電力面と電極の有効面との比を可能な限り低く(例えば、100以下、50以下、10以下、5以下、または1以下で、集中構成から拡張構成に移行する)維持し、同時に、触媒システムの動作に必要な条件(例えば、少なくとも8mA/cm2の電流密度及び少なくとも1.5Vの電位差)を維持するためには、光起電力パネルは、多数のユニットに分割され(例えば、各ユニットは、25cm2から1m2の間、選択的に、50cm2から25dm2の間、選択的に、100cm2に等しい表面積を有する)、これらのユニットのそれぞれが光起電力ユニットの表面に相当する表面を有する電極に直接電気的に結合することができる(例えば、25cm2から1m2の間、任意選択で50cm2から25dm2の間、任意選択で100cm2に等しい)。
【0071】
上記の解決策によれば、1つ又は複数の実施形態にかかるシステム40は、同じ数の小さな電気化学セルに接続された複数の小さな光起電力パネルを備え、電気化学セルは、それに電力を供給するそれぞれの光起電力パネルの電極に相当する寸法の電極を備える。
【0072】
1つ又は複数の実施形態は、(一体型)光起電力システムの調整及び管理のためのシステムを備え、当該システムは、動作電圧を調整することによってオーム損失を低減し、反応に必要な表面電荷密度を増加させるように設計されている。例えば、個々の光起電力ユニットの接続は、直列、並列、又はこれら2つの組み合わせで接続できるように構成することができ、これによって光起電力システムの動作曲線を、反応器内で生じる具体的な電気化学反応に適応し、使用される触媒システムにも適応するように調整することが可能となり、そして、光起電力電気化学システムの効率を向上させることができる。1つ又は複数の実施形態による反応器は、所望な生成物(例えば、水素又は合成ガス)によって得られる所定の反応に基づいて選択される触媒システムを備えることができる。各反応及び/又は各触媒システムは、必要な最小動作電圧が異なる場合がある。個々の光起電力ユニットの間の接続を直列及び/又は並列に設定できることは、膜-電極アセンブリ(MEA)に印加される動作電圧の変更を可能にし、選択される触媒システムが変化するとき、システムの電気化学的性能を向上させることができる。例えば、水素を生成するための水の分解反応が起こるには、セルに1.23Vに等しい最低電圧を印加する必要がある。しかし、選択された特定の触媒システムは、1.7Vの電圧で最大効率を有する。この場合、1つ又は複数の実施形態では、電極が1.7Vの最低電圧で可能な最大電流密度で供給されるように、個々の光起電力ユニットは、直列及び/又は並列構成で接続することが可能である。
【0073】
したがって、1つ又は複数の実施形態は、セルの電極に対する(具体的には、MEAに対する)光起電力システムの調整、管理、及び/又は接続のためのシステムを有利に提供することができる。これによって、セル自体の使用の多様性が向上することができる。
【0074】
例えば、
図9は、電気化学反応(EC)の典型的な電流-電圧(J-V)曲線を例示している。
図10の破線は、反応の理論的ポテンシャルVthを示す。反応曲線が理論的反応曲線(破線)に近づくほど(例えば、左へシフトするほど)、電気化学システムの効率が高くなり、過電圧損失が低くなる。
図10は、光起電力システム(PV)の典型的な電流-電圧(J-V)曲線を例示している。光起電力システムの最高効率点は、
図10のグラフの破線領域で強調表示され、曲線のエルボ(elbow)に対応する一対の値(Je,Ve)に対応する。電気化学セルの効率及びその出力率を決定する光起電力-光電気化学システムの作用点(WP)は、セルの反応(EC)曲線と光起電力(PV)曲線の交差によって決められ、
図11に示すように、作用点は電流-電圧の一対の値(J
wp,V
wp)に対応する。同じ反応(EC)曲線を仮定すると、光起電力システムによって供給される電流が大きいほど、電気化学反応器の出力(単位時間当たりに得られる反応生成物の量に関して)も大きくなる。
【0075】
図12は、光起電力システム101に含まれる様々な光起電力セル間の電気的(直列/並列)接続の異なる構成が光起電力システムのJ-V特性曲線をどのように変更できるか、それによって、電気化学反応器1の作用点WPがどのように変化するかを示している。例えば、多数の光起電力セルを並列接続する場合、
図12に示す曲線PARで示すように、電流(J)は個々のセルの特性電流の合計に等しく、電圧(V)は1つのセルのみの電圧に等しいJ-V曲線が得られる。多数の光起電力セルを直列に接続する場合、
図12に示す曲線SERで示すように、電圧(V)は個々のセルの特性電圧の合計に等しく、電流(J)は1つのセルのみの電流に等しいJ-V曲線が得られる。光起電力システム101は、PV-ECシステムの作用点(WP)を最適化するように、様々な光起電力セル間の直列接続及び並列接続のダイナミックな構成を可能にし、ECシステムを、吸収される太陽光の可能な最大電流で動作させ、光起電力システムを光起電力曲線のエルボにできるだけ近づけるように動作させる。例えば、
図12では、作用点WP2に対応する並列構成は、作用点WP1に対応する直列構成よりも効率的である。
【0076】
更に、太陽によって供給されるパワー、したがって光起電力システム101によって吸収されるパワーは、日中にわたって、または一年を通して一定ではないため、システムの効率を高め、EC反応が発生するのに必要な最低電圧を保証するために、例えば、個々の電気化学セル1の電子制御ユニット109によって、及び/又はシステム40の電子制御ユニット409によって管理される予め設定されたロジックに従って。光起電力システム101内部の直列/並列接続をダイナミックに変更することで、システムの作用点を変更することが可能である。
【0077】
例えば、
図13A、
図13B、
図14A、及び
図14Bは、同じ電気化学セル1の2つの異なる構成間の比較を示し、光起電力システム101は、単に一例として、6つの光起電力セルを備えている。
図13A及び
図13Bでは、6つのセルは、並列に接続された2つのセットで接続され、各セットは直列に接続された3つのセルを含む。
図14A及び
図14Bでは、6つのセルは、並列に接続された3つのセットで接続され、各セットは直列に接続された2つのセルを含む。両方の場合に同じEC反応曲線を仮定すると、
図14A、
図14Bの構成では、より高い電流での作用点を決定し、その結果、電気化学セル1は高い生成物の生産を実現し、光起電力システムはPV曲線のエルボに近い位置で動作し、高い効率を有する。
【0078】
図15は、電気化学セル1の1つ又は複数の実施形態を例示する図であって、光起電力システム101は、光起電力システム101に含まれる個々の光起電力セルの直列接続及び並列接続をダイナミックに変更するために、制御ユニット109によって制御される一連の電子スイッチを備える。具体的には、光起電力システム101内の各光起電力セル150は、
セル150の正極端子を電気化学セル1(アノード105a)の正極端子に接続するために作動させることができる電子スイッチS+と、
セル150の負極端子を電気化学セル1(カソード105b)の負極端子に接続するために作動させることができる電子スイッチS-と、
セル150の負極端子を次のセル150の正極端子に接続するために作動させることができる電子スイッチSSと、
セル150の負極端子を次のセル150の負極端子に接続するために作動させることができる電子スイッチSPと、
を備える。
【0079】
前述したように、1つ又は複数の実施形態は、エネルギー蓄積システム107を備える。
図16A及び
図16Bに例示されるように、光起電力システム101内の電気的直列/並列接続を変更させることによって、PV-ECシステムを光起電力曲線のエルボで動作させることができないとき、余剰電圧は、バッファシステム107を充電するために使用することができる。そして、バッファシステム107は、(例えば、1つ又は複数の対応する電子スイッチを介して)光起電力システム101の出力に選択的に結合することができる。
【0080】
図17は、チェッカーボード(chequerboard)又は六角形モザイク構成に組み立てられた複数の電気化学セル17を備える装置40の例を示している。
【0081】
したがって、本発明の1つ又は複数の実施形態は、
中間バッファ(intermediate buffers)(例えば、電気エネルギーを蓄えるバッテリー)又は集中システム(intensive systems)(例えば、電気分解装置)を使用する必要がなく、太陽エネルギーを直接利用して、水の電気分解によって水素を生成する可能性と、
スタンドアロンのデバイスを介して、光起電力システムと触媒システムとの組み合わせ(例えば、統合)を利用して、グリーン水素を広範囲かつin-situ(必要な場合)で生成する可能性と、
同じ反応器内で、水素を生成する水の分解反応と他の反応(例えば、二酸化炭素の排出を有効利用(valorization)し、二酸化炭素のリサイクルと再利用を可能にする反応)とを組み合わせる可能性と、
既知の反応器と比較して、電気化学反応器の柔軟性、並びに設置及び使用の容易さを向上させることと、
を含む利点のうちの1つ又は複数を提供することができる。
【0082】
したがって、1つ又は複数の実施形態は、エネルギー分野2つの主要な問題に対する解決策を提供することができる。すなわち、
太陽放射の断続的な問題は、(化学)エネルギーの貯蔵形式によって解決され、当該(化学)エネルギーの貯蔵形式は、グリーン水素の生成により、リチウムイオン電池と比較して非常にコンパクト(例えば、最大200倍のよりコンパクト)であって、かつ時間的に安定である。
CO2排出の問題は、利用可能な製品におけるCO2排出の有効利用(valorization)によって解決される。
【0083】
1つ又は複数の実施形態は、実際に、再生可能エネルギー源(太陽エネルギー)の直接的かつin-situの使用を介して、CO2排出物のリサイクル、並びにグリーン水素及び/又は他の副産物(例えば、グリコール酸)の生成を可能にする。これは、太陽光吸収システム(PVシステム)と電気化学システム(ECシステム)とを1つのシステムに統合することによって可能になる。このソリューションは、使用の柔軟性、設置及び使用の容易さを提供し、更に(水素生成のための)水分解反応(水素生成のため)を他の反応と結合することを可能にし、例えば、二酸化炭素やグリセロール(バイオガスの廃棄物)の排出を有効利用するための反応により、これらの製品のリサイクル又は再利用も可能になる。
【0084】
本明細書では、水の電気分解により水素を生成するために本発明による電気化学セルを使用する可能性について複数のポイントにおいて説明したが、オプション的に、CO2の還元反応(例えば、合成ガスの生成に伴う)も可能である。1つ又は複数の実施形態は、セル自体によって収集された太陽エネルギーのみによって活性化され、連続的かつ安定した方法で、様々なタイプの還元酸化反応を実行するのに適し、そして工業生産での使用に適した電気化学反応器を提供することができる。
【0085】
基礎となる原理を損なうことなく、詳細及び実施形態は、保護の範囲を逸脱することなく、単に例として本明細書に記載されたものより大幅に変更される可能性がある。
【0086】
保護の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【国際調査報告】