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特表2024-521718NOx吸着用のパラジウム含有複合AFX-BEAゼオライト触媒の合成
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  • 特表-NOx吸着用のパラジウム含有複合AFX-BEAゼオライト触媒の合成 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】NOx吸着用のパラジウム含有複合AFX-BEAゼオライト触媒の合成
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20240528BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20240528BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20240528BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240528BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240528BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240528BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B01J37/04 102
B01J29/80 A ZAB
B01J37/30
B01J35/57 N
B01D53/94 222
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571897
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2022062938
(87)【国際公開番号】W WO2022243165
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2105315
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ベルトルー、 ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス-フランコ、 ラケル
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ、 マリカ
(72)【発明者】
【氏名】ハルブザル、 ボグダン
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB06
3G091AB09
3G091AB13
3G091BA03
3G091BA14
3G091BA15
3G091BA19
3G091BA39
3G091CA17
3G091GA03
3G091GA06
3G091GB07W
3G091GB09W
3G091GB10W
3G091HA19
3G091HA20
3G091HA22
3G091HA23
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC01
4D148AC04
4D148BA11X
4D148BA31X
4D148BB02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01C
4G169BA03C
4G169BA04C
4G169BA05C
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA07C
4G169BB04C
4G169BB05C
4G169BB06C
4G169BB12C
4G169BC02C
4G169BC43C
4G169BC51C
4G169BC60C
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE06C
4G169BE13C
4G169BE17C
4G169BE38C
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EC27
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB67
4G169FC02
4G169FC05
4G169FC08
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZB06
4G169ZC02
4G169ZC04
4G169ZD01
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07A
4G169ZF07B
(57)【要約】
本発明は、少なくとも以下の工程を含む、AFX構造型及びBEA構造型のゼオライトとパラジウムとの混合物を含むゼオライト複合触媒の調製に関する:
i)水性媒体中で、20~60(限界値を含む)の全SiO2(FAU)/Al3(FAU)モル比を有するFAU構造型のゼオライト又はゼオライトの混合物、有機窒素化合物MPC6(MPC6は1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド)、少なくとも1つのナトリウムカチオン源を、均一な前駆体ゲルが得られるまで混合する;
ii)水熱処理。
iii)濾過、洗浄、及び乾燥、そして前記材料の焼成;
iv)アンモニウム形態の焼成材料を得るために、少なくとも1つの工程のイオン交換をし、60℃~120℃の温度で再度乾燥させ、
v)パラジウム溶液を堆積させる。
本発明はまた、得られた触媒、及びNOxの選択的還元のためのその使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AFX構造型及びBEA構造型のゼオライトとパラジウムとの混合物からなるゼオライト複合触媒を調製する方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法に関する:
工程i) 水性媒体中で、20~60(限界値を含む)の全SiO2(FAU)/Al3(FAU)モル比を有するFAU構造型のゼオライト又はゼオライトの混合物、有機窒素化合物MPC6(MPC6は1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド)、少なくとも1つのナトリウムカチオン源を、均一な前駆体ゲルが得られるまで混合する工程であって、反応混合物は以下のモル組成を有する:
(SiO2(FAU))/(Al3(FAU))が20~60であり、
O/(SiO2(FAU))が5~60であり、
MPC6/(SiO2(FAU))0.10~0.50であり、
NaO/(SiO2(FAU))0.05~0.11(限界値を含む)であり、
SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって供給されるSiOの量を示し、Al3(FAU)は、FAUゼオライトによって供給されるAlの量を示し;
工程ii) AFX-BEAゼオライト複合材料を得るために、前記工程i)の終了時に得られた前駆体ゲルを160℃~220℃の温度で12~150時間水熱処理する工程;
工程iii) 前記工程ii)の終わりに得られたAFX-BEAゼオライト複合材料の濾過、洗浄、及び乾燥の工程であって、乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を得るために前記乾燥は60~120℃の温度で5~24時間実施され、次いで、焼成AFX-BEAゼオライト複合材料を得るために前記乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を500~700℃の温度で2~20時間焼成し、前記焼成は、場合によっては、温度を徐々に上昇させる工程;
工程iv) 前記工程iii)で得られた焼成AFX-BEAゼオライト複合材料のイオン交換の少なくとも1つの工程であって、アンモニウム形態の焼成材料を得るために工程iii)で得られた前記焼成AFX-BEAゼオライト複合材料を、アンモニウムカチオン、好ましくは硝酸アンモニウムを含む溶液と、20~95℃、好ましくは60~85℃の温度で、1時間~2日間撹拌しながら接触させ、60℃~120℃で再乾燥させる工程;
工程v) 前記アンモニウム形態の焼成及び乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料上にパラジウム溶液を堆積させる工程。
【請求項2】
工程v)において、乾式含浸により又はコロイド経路を介して前記パラジウム溶液を堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程i)の反応混合物が、Al3(C)で示される少なくとも1つの追加の酸化物形態のアルミニウム源を含み、前記工程i)の反応混合物は、以下のモル組成を有する、請求項1又は2に記載の方法:
SiO2(FAU)/(Al3(FAU)+Al3(C))が20~60(限界値を含む)であり、
O/SiO2(FAU)が5~60であり、
MPC6/SiO2(FAU)が0.10~0.50であり、
NaO/SiO2(FAU)が0.05~0.11(限界値を含む)であり、SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiOの量であり、Al3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAlの量であり、Al3(C)は、酸化物形態と考えられる前記追加のアルミニウム源によって提供されるAlの量であり、MPC6は有機窒素化合物である1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンのジヒドロキシド形態である。
【請求項4】
前記追加のアルミニウム源が、水酸化アルミニウム又はアルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムアルコキシド、又はアルミナの単独又は混合物から選択され、好ましくは前記従来のアルミニウム源が水酸化アルミニウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ナトリウムカチオン源が水酸化ナトリウムである、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
AFX構造型のゼオライト又はBEA構造型のゼオライト又はそれら2つの混合物の種結晶が、前記混合物中に存在する前記無水形態のSiO及びAl源の総質量に対して0.01重量%~10重量%の量で、前記工程i)の反応混合物に添加され、前記種結晶はSiO及びAl源の総質量には考慮されない、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程i)が、前記反応混合物を20~100℃の温度で、撹拌しながら又は撹拌せずに30分~48時間熟成させる工程を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
堆積工程v)によって導入されるパラジウムの含有量が、前記無水複合触媒の総質量に対して、0.5質量%~5質量%、好ましくは0.8質量%~3質量%、より好ましくは0.9質量%~2質量%、非常に有利には約1質量%である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法により得られる、パラジウム含有AFX-BEAゼオライト複合触媒。
【請求項10】
前記SiO/Al比が6~80、好ましくは10~40である、請求項9に記載のAFX-BEAゼオライト複合触媒。
【請求項11】
AFX構造型とBEA型ゼオライト量との質量比が0.9~5.7である、請求項9又は10に記載のAFX-BEAゼオライト複合触媒。
【請求項12】
前記パラジウム含有量が、無水最終触媒の総質量に対して、0.5質量%~5質量%、好ましくは0.8質量%~3質量%、より好ましくは0.9質量%~2質量%であり、より有利には約1質量%であり、CO化学吸着によって測定したパラジウムの金属分散度は、40%~100%、好ましくは50%~100%である、請求項9~11のいずれか一項に記載のAFX-BEAゼオライト複合触媒。
【請求項13】
NH又はH等の還元剤によるNOxの選択的還元のための、請求項9~12のいずれか一項に記載の触媒、又は、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られる触媒の使用。
【請求項14】
前記触媒が、ハニカム構造体又はプレート構造体上にコーティングの形態で堆積することによって形成される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記ハニカム構造が、両端が開口した平行チャネルによって形成されるか、又は隣接する平行チャネルが前記チャネルの両端で交互に遮断された多孔質濾過壁からなる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記構造体上に堆積される触媒の量が、濾過構造については50~240g/Lであり、開放チャネルを有する構造については50~320g/Lである、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
コーティングの形態で堆積によって形成するために、前記触媒を、セリア、酸化ジルコニウム、アルミナ、非ゼオライト系シリカ-アルミナ、酸化チタン、セリア-ジルコニア型の混合酸化物、酸化タングステン及び/又はスピネル等のバインダーと組み合わせる、請求項14~16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングが、汚染物質、特にNOxを吸着する、汚染物質、特にNOxを低減する、又は、汚染物質の酸化を促進する、能力を有する別のコーティングと組み合わされる、請求項14~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記触媒が、最大100%の前記触媒を含む押出成形物の形態である、請求項13に記載の使用。
【請求項20】
前記触媒でコーティングされた、又は前記触媒の押出成形によって得られた構造が、内燃機関の排気ラインに組み込まれる、請求項13~19のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、AFX構造型及びBEA構造型のゼオライトの混合物から構成され、パラジウムを含有するゼオライト複合触媒の製造方法、その変形例のいずれか1つに従い、製造された、又は製造され得る触媒、及び特に内燃機関における受動的NOx吸着剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
化石燃料の燃焼による窒素酸化物(NOx)の排出は、社会にとって深刻な問題である。燃焼排出物が環境や健康に与える影響を制限するために、政府当局によってますます厳しい基準が設けられている。選択触媒還元(SCR)は、希薄混合気モードのディーゼル及び火花点火エンジンに特有の酸素を豊富に含む排気ガスから窒素酸化物を除去するための効果的な技術として登場した。選択接触還元は、還元剤(通常、アンモニア)を使用して実行されるため、NH-SCRと呼ばれることがある。遷移金属で交換されたゼオライトは、特に輸送におけるNH-SCR用途の触媒として使用されている。小孔ゼオライト、特に銅交換チャバザイトが特に適している。化学量論的に作動する火花点火エンジンの場合、三元触媒(TWCs)は、適切に配合されれば、NOxを低減するのに非常に効果的である。
【0003】
しかし、コールドスタート中、又は、より一般的に排気温度が180~200℃を下回る場合、どちらのシステムもNOx排出を効果的に処理できない。具体的には、尿素水溶液の分解には180℃を超える温度が必要であり、NH-SCR効率が制限され、また、TWC触媒に関しては、低温活性の最適化は依然として可能であるが、それでも達成は非常に困難であると考えられる。
【0004】
低温でNOxを貯蔵し、熱放出できるデバイスは、低温でのSCR及びTWCシステムの効率不足に対処できる可能性を提供する。このコンセプトは新しいものではなく、1990年代末にFord Global Technologies LLC(米国特許第6,182,443号公報)とBASF Catalysts LCC(米国特許第6,471,924号公報)によって提案されているが、最近の研究では、コールドスタートNOx排出制御のための最も有望な技術の一つであることが示されている。これらのシステムは、しばしば受動的NOx吸着装置又はPNAと呼ばれる。近年、NOxの吸着・脱着について様々な材料の評価が行われている。
【0005】
コールドスタートの概念に関連して、JohnsonMatthey社は、セリウム酸化物、混合酸化物、又はセリウムをベースとした複合酸化物に分散させたパラジウムをベースとした熱再生可能な吸着剤を提案している(米国特許第8,105,559号公報)。
【0006】
米国特許第2015/01580 19 A1号公報には、吸着剤として白金族金属を有するゼオライトの使用、特にCHA又はAEI型のゼオライトの使用が記載されている。様々なゼオライト構造が研究されている。受動的NOx吸着剤は、貴金属と、OFF型(米国特許第2019/0217269A1号公報)、MAZ型(国際公開2016135465A1号)、LTL型(国際公開2017/001828号)又はSTI型(国際公開2019/186163 A1号)の構造を有するモレキュラーシーブとからなる。国際公開2020039015 A1号には、MOZ構造のゼオライト(ZSM-10)等の12MR及び8MRゼオライトからなり、パラジウムを含有するパッシブNOx吸着剤が記載されている。
【0007】
米国特許第2020/0061595A1号公報は、微細孔内に遷移金属を原子レベルで分散させた小孔径ゼオライト材料に基づく受動的NOx吸着剤を提示している。小孔ゼオライト、特にSSZ-13(CHA)型の微細孔内に原子レベルで分散した金属を高充填することで、重要な吸着特性が得られる。
【0008】
AFX構造型のゼオライトは、国際公開2015/085303A1号公報及び国際公開016135465A1号公報において、NOxの吸着に使用できる小細孔ゼオライトのリストに記載されている。しかしながら、これらの特許出願のいずれも、特にその合成様式に応じて、この構造によって与えられる利点を強調していない。
【0009】
Catal Lett 146, 1706-1711 (2016)では、Pd/BEA触媒の性能評価において、100℃でのNOx吸蔵性は良好であるが、温度が上昇すると急速に劣化する。NOxの脱離は200℃から観察される。
【0010】
本出願企業による国際公開19224091号公報では、AFX構造型とBEA構造型のゼオライトの混合物から構成されるゼオライト複合材料を合成する方法を提示している。
【0011】
本出願企業は、特定の合成様式に従って調製されたAFX構造型のゼオライトとBEA構造型のゼオライトとの密接な混合物からなり、パラジウム(Pd)を含有する新規なゼオライト複合触媒が、先行技術と比較して、全NOx貯蔵容量が増大するだけでなく、NOx脱離温度も高いことを発見した。この脱離温度は、複合材料中のBEAとAFXゼオライトの相対的な比率の関数として調節することができる。さらに、この触媒は水熱安定性が高いため、自動車の排気ガスといった厳しい条件下でも使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6182443号公報
【特許文献2】米国特許第6471924号公報
【特許文献3】米国特許第8,105,559号公報
【特許文献4】米国特許第2015/0158019A1号公報
【特許文献5】米国特許第2019/0217269A1号公報
【特許文献6】国際公開2016/135465A1号
【特許文献7】国際公開2017/001828A1号
【特許文献8】国際公開2019/186163A1号
【特許文献9】国際公開2020039015A1号
【特許文献10】米国特許第2020/0061595A1号
【特許文献11】国際公開2015/085303A1号
【特許文献12】国際公開2016/135465A1号
【特許文献13】国際公開19224091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の概要
本発明は、AFX構造型及びBEA構造型のゼオライトとパラジウムとの混合物からなるゼオライト複合触媒を調製する方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法に関する:
工程i) 水性媒体中で、20~60(限界値を含む)の全SiO2(FAU)/Al3(FAU)モル比を有するFAU構造型のゼオライト又はゼオライトの混合物、有機窒素化合物MPC6(MPC6は1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド)、少なくとも1つのナトリウムカチオン源を、均一な前駆体ゲルが得られるまで混合する工程であって、反応混合物は以下のモル組成を有する:
(SiO2(FAU))/(Al3(FAU))が20~60であり、
O/(SiO2(FAU))が5~60であり、
MPC6/(SiO2(FAU))0.10~0.50であり、
NaO/(SiO2(FAU))0.05~0.11(限界値を含む)であり、
SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって供給されるSiOの量を示し、Al3(FAU)は、FAUゼオライトによって供給されるAlの量を示し;
工程ii) AFX-BEAゼオライト複合材料を得るために、工程i)の終了時に得られた前記前駆体ゲルを160℃~220℃の温度で12~150時間水熱処理する工程;
工程iii) 前記工程ii)の終わりに得られたAFX-BEAゼオライト複合材料の濾過、洗浄、及び乾燥の工程であって、乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を得るために前記乾燥は60~120℃の温度で5~24時間実施され、次いで、焼成AFX-BEAゼオライト複合材料を得るために前記乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を500~700℃の温度で2~20時間焼成し、前記焼成は、場合によっては、温度を徐々に上昇させる工程;
工程iv) 工程iii)で得られた前記焼成AFX-BEAゼオライト複合材料のイオン交換の少なくとも1つの工程であって、アンモニウム形態の焼成材料を得るために工程iii)で得られた前記焼成AFX-BEAゼオライト複合材料を、アンモニウムカチオン、好ましくは硝酸アンモニウムを含む溶液と、20~95℃、好ましくは60~85℃の温度で、1時間~2日間撹拌しながら接触させ、60℃~120℃で再乾燥させる工程;
工程v) 前記アンモニウム形態の焼成及び乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料上にパラジウム溶液を堆積させる工程である。
【0014】
工程v)において、乾式含浸により又はコロイド経路を介して前記パラジウム溶液を堆積されることができる。
【0015】
前記工程i)の反応混合物が、Al3(C)で示される少なくとも1つの追加の酸化物形態のアルミニウム源を含み、前記工程i)の反応混合物は、以下のモル組成を有する:
SiO2(FAU)/(Al3(FAU)+Al3(C))が20~60(限界値を含む)であり、
O/SiO2(FAU)が5~60であり、
MPC6/SiO2(FAU)が0.10~0.50であり、
NaO/SiO2(FAU)が0.05~0.11(限界値を含む)であり、SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiOの量であり、Al3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAlの量であり、Al3(C)は、酸化物形態と考えられる前記追加のアルミニウム源によって提供されるAlの量であり、MPC6は有機窒素化合物である1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンのジヒドロキシド形態である。
【0016】
前記追加のアルミニウム源が、水酸化アルミニウム又はアルミニウム塩、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムアルコキシド、又はアルミナの単独又は混合物から選択され、好ましくは前記従来のアルミニウム源が水酸化アルミニウムである。
【0017】
前記ナトリウムカチオン源が水酸化ナトリウムである。
【0018】
AFX構造型のゼオライト又はBEA構造型のゼオライト又はそれら2つの混合物の種結晶が、前記混合物中に存在する前記無水形態のSiO及びAl源の総質量に対して0.01重量%~10重量%の量で、前記工程i)の反応混合物に添加され、前記種結晶はSiO及びAl源の総質量には考慮されない。
【0019】
前記工程i)が、前記反応混合物を20~100℃の温度で、撹拌しながら又は撹拌せずに30分~48時間熟成させる工程を含むことができる。
【0020】
堆積工程v)によって導入されるパラジウムの含有量が、前記無水複合触媒の総質量に対して、0.5質量%~5質量%、好ましくは0.8質量%~3質量%、より好ましくは0.9質量%~2質量%、非常に有利には約1質量%であることができる。
【0021】
本発明はまた、その変形例のいずれか1つに従う調製方法によって得られる、パラジウム含有AFX-BEAゼオライト複合触媒に関する。
【0022】
有利には、本発明に係る前記AFX-BEAゼオライト複合触媒は、SiO/Al比が6~80(限界含む)、好ましくは10~40(限界含む)である。
【0023】
前記触媒中のAFX構造型のゼオライトとBEA型のゼオライトの量の質量比は、0.9~5.7である。
【0024】
前記パラジウム含有量が、無水最終触媒の総質量に対して、0.5質量%~5質量%、好ましくは0.8質量%~3質量%、より好ましくは0.9質量%~2質量%であり、より有利には約1質量%であり、CO化学吸着によって測定したパラジウムの金属分散度は、40%~100%、好ましくは50%~100%である。
【0025】
本発明はまた、NH又はH等の還元剤によるNOxの選択的還元のための、記載された変形例のいずれか1つによる触媒又は記載された変形例のいずれか1つによる方法によって得られた触媒の使用に関する。
【0026】
前記触媒が、ハニカム構造体又はプレート構造体上にコーティングの形態で堆積することによって形成されることができる。
【0027】
前記ハニカム構造が、両端が開口した平行チャネルによって形成されるか、又は隣接する平行チャネルが前記チャネルの両端で交互に遮断された多孔質濾過壁からなることができる。
【0028】
前記構造体上に堆積される触媒の量が、濾過構造については50~240g/Lであり、開放チャネルを有する構造については50~320g/Lであることができる。
【0029】
コーティングの形態で堆積によって形成するために、前記触媒を、セリア、酸化ジルコニウム、アルミナ、非ゼオライト系シリカ-アルミナ、酸化チタン、セリア-ジルコニア型の混合酸化物、酸化タングステン及び/又はスピネル等のバインダーと組み合わせることができる。
【0030】
前記コーティングが、汚染物質、特にNOxを吸着する、汚染物質、特にNOxを低減する、又は、汚染物質の酸化を促進する、能力を有する別のコーティングと組み合わされることができる。
【0031】
別の実施形態では、前記触媒が、最大100%の前記触媒を含む押出成形物の形態とすることができる。
【0032】
前記触媒でコーティングされた、又は前記触媒の押出成形によって得られた構造が、内燃機関の排気ラインに組み込むことができる。
【0033】
図のリスト
本発明による触媒を調製するための方法の他の特性及び利点は、以下に説明する添付の図を参照して、非限定的な例示的な実施形態の以下の説明を読むと明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、例2に従って得られた、Pdを含有するAFX構造型及びBEA構造型のゼオライトの混合物からなるゼオライト複合材料、Pd/AFX-BEA1のX線回折(XRD)パターンを表す。
図2図2は、例3に従って得られた、Pdを含有するAFX構造型及びBEA構造型のゼオライトの混合物から構成されるゼオライト複合材料、Pd/AFX-BEA2のX線回折(XRD)パターンを表す。
図3図3は、例5に従って得られた、Pdを含有するAFX構造型のゼオライトのX線回折(XRD)パターンを表す。
図4図4は、例4に従って使用された、Pdを含有するBEAゼオライト(CP814E)のX線回折(XRD)パターンを表す。
図5図5は、例5に従って得られた、AFX構造型のゼオライトとBEA構造型のゼオライト(CP814E)の混合物、Pd/AFX-BEA-meca1のX線回折(XRD)パターンを表す。
図6図6は、例2(本発明によるPd/AFX-BEA1)、例3(本発明によるPd/AFX-BEA2)、例4(Pd/BEA、比較例)、例5(Pd/AFX-BEA-meca1、比較例)及び例6(Pd/AFX-BEA-meca2、比較例)に従って合成された触媒によって脱離されたNOx濃度を表す。
図7図7は、Pd/AFX-BEA1-エージング触媒、Pd/AFX-BEA2-エージング触媒、Pd/BEA-エージング触媒、Pd/AFX-BEA-meca1-エージング触媒、及びPd/AFX-BEA-meca2-エージング触媒によって脱離したNOx濃度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
実施形態の説明
別段の定めがない限り、説明全体を通じて、値の範囲は限界値を含むものと理解される。
【0036】
本発明は、より詳細には、AFX構造型のゼオライト及びBEA構造型のゼオライトの密接な混合物から構成され、パラジウムを含有するゼオライト複合触媒を調製する方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法に関する。
工程i):水性媒体中で、20~60(限界値を含む)の全SiO2(FAU)/Al3(FAU)モル比を有するFAU構造型のゼオライト又はゼオライトの混合物、有機窒素化合物MPC6(MPC6は1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド)、少なくとも1つのナトリウムカチオン源を、均一な前駆体ゲルが得られるまで混合する工程であって、反応混合物は以下のモル組成を有する:
(SiO2(FAU))/(Al3(FAU))が20~60であり、
O/(SiO2(FAU))が5~60であり、
MPC6/(SiO2(FAU))0.10~0.50であり、
NaO/(SiO2(FAU))0.05~0.11(限界値を含む)であり、
SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって供給されるSiOの量を示し、Al3(FAU)は、FAUゼオライトによって供給されるAlの量を示す。
【0037】
ナトリウムカチオン源は、好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0038】
別の実施形態では、工程i)の反応混合物は、少なくとも1つの従来の、すなわち、既に形成されたゼオライトから得られない、その酸化物形態で考慮される追加のアルミニウムの供給源(Al3(C)と表記される)を含むことができる。
【0039】
この場合、工程i)の反応混合物は、好ましくは以下のモル組成を有する:
SiO2(FAU)/(Al3(FAU)+Al3(C))20~60(限界値を含む)であり、
O/SiO2(FAU)が5~60であり、
MPC6/SiO2(FAU)0.10~0.50であり、
NaO/SiO2(FAU)0.05~0.11(限界値を含む)であり、
SiO2(FAU)はFAUゼオライトによって提供されるSiOの量であり、Al3(FAU)はFAUゼオライトによって提供されるAlの量であり、Al3(C)はその酸化物形態で考慮される追加のアルミニウムの供給源によって提供されるAlの量であり、MPC6は有機窒素化合物である1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンである。
【0040】
ナトリウムカチオン源は、好ましくは水酸化ナトリウム二水酸化物の形態である。
【0041】
AFX又はBEA構造型のゼオライト又はそれらの2つの混合物の種結晶を、工程i)の反応混合物に添加することができ、前記種結晶は、好ましくは、前記混合物中に存在する無水形態のSiO及びAlの供給源の総質量に対して0.01重量%~10重量%の量で導入され、前記種結晶は、SiO及びAlの供給源の総質量には考慮されない。
【0042】
合成工程i)で使用されるFAU構造型のゼオライト又はゼオライトの混合物は、SiO/Alモル比が20~60(限界値を含む)である。
【0043】
20~60(限界値を含む)のSiO/Alモル比を有するFAU構造型のゼオライトの混合物は、例えば、SiO(FAU)/Al3(FAU)モル比が6.00未満のFAU構造型のゼオライト上での蒸気処理(蒸し)及び酸洗浄等、当業者に公知の任意の方法によって、又は、SiO2(FAU)/Al3(FAU)モル比が20~60(限界値を含む)のSiO2(FAU)/Al3(FAU)モル比を得るために、異なるSiO2(FAU)/Al3(FAU)比のFAU構造型のゼオライトを混合することによって、得ることができる。FAU供給源の中では、Zeolyst社製の市販ゼオライトCBV712、CBV720、CBV760及びCBV780、ならびに東ソー社製の市販ゼオライトHSZ-350HUA、HSZ-360HUA及びHSZ-385HUAを挙げることができる。FAU構造型の出発ゼオライトは、そのナトリウム形態又は他の形態で使用することもでき、又はナトリウムカチオンとアンモニウムカチオンとの部分的又は完全な交換の後、場合によっては焼成工程の後に得ることもできる。
【0044】
Al酸化物の追加の供給源は、好ましくは水酸化アルミニウム又はアルミニウム塩、例えば塩化物、硝酸塩又は硫酸塩、ナトリウムアルミネート、アルミン酸ナトリウム、又はアルミナそのものであり、好ましくは水和又は水和可能な形態、例えばコロイド状アルミナ、ペシュードベーマイト、γ-アルミナ又はαもしくはβアルミナ三水和物である。上述の供給源の混合物を使用することもできる。好ましくは、Al酸化物の追加供給源は水酸化アルミニウムである。
【0045】
工程i)は、反応混合物を20~100℃の温度で、撹拌しながら又は撹拌せずに30分~48時間の間の時間で熟成させる工程を含むことができる。
【0046】
工程ii):160℃~220℃の温度で、12時間~150時間の時間、工程i)の終了時に得られた前記前駆体ゲルを水熱処理する。
【0047】
有利には、得られるAFX-BEAゼオライト複合材料のSiO/Alモル比は、6~80(限界値を含む)の間であり、好ましくは10~40(限界値を含む)の間である。
【0048】
濾過、洗浄、乾燥、焼成の工程iii)。
この工程では、工程ii)の終了時に得られたAFX-BEAゼオライト複合材料を濾過し、洗浄し、60~120℃の温度で5~24時間乾燥させて、乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を得る。次いで、乾燥したAFX-BEAゼオライト複合材料を500~700℃の温度で2~20時間の間の時間にわたって焼成し、前記焼成は、場合によっては、温度を徐々に上昇させる。
【0049】
イオン交換の工程iv):アンモニウム形態の焼成材料を得るために、少なくとも1つのイオン交換を、工程iii)で得られた焼成AFX-BEAゼオライト複合材料に対して行い、工程iii)で得られた焼成AFX-BEAゼオライト複合材料を、20~95℃の温度、好ましくは60~85℃の温度で、1時間~2日間の時間、撹拌しながら、アンモニウムカチオン、好ましくは硝酸アンモニウムを含む溶液と接触させることからなる。イオン交換の工程の最後に、アンモニウム形態の焼成AFX-BEAゼオライト複合材料を、60~120℃の温度で、好ましくは5~24時間の時間、再び乾燥させる。このイオン交換工程は、0.01質量%未満のNaを含む固体を得るために複数回繰り返すことができる。
【0050】
パラジウムの堆積の工程v):アンモニウム形態の焼成及び乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料上へのパラジウム溶液の堆積は、当業者に公知のあらゆる技術に従って実施することができる。
【0051】
パラジウム溶液は、好ましくは乾式含浸法又はコロイド経路で堆積させる。
【0052】
堆積工程v)によって導入されるパラジウムの含有量は、無水複合触媒の全質量に対して、有利には0.5質量%~5質量%、好ましくは0.8質量%~3質量%、より好ましくは0.9質量%~2質量%、非常に有利には約1質量%である。
【0053】
乾式含浸
本発明に係る一実施形態では、パラジウム溶液は乾式含浸法によって堆積される。より詳細には、触媒を調製するための方法は、以下の工程からなる:
a)少なくとも1種のパラジウム前駆体塩を含む水溶液を調製する。
b)本発明に係る調製方法の工程iv)で得られたアンモニウム形態の乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を、周囲温度で、工程a)で得られた水溶液に含浸させる。
c)工程b)の終了時に得られた触媒前駆体は、乾燥触媒前駆体を得るために乾燥される;触媒前駆体は一般に、含浸中に導入された水の全部又は一部を除去するために、好ましくは50℃~250℃の温度、より好ましくは70℃~200℃の温度で乾燥される。乾燥時間は0.5~20時間が好ましい。それ以上の時間も否定はしないが、必ずしも改善されるとは限らない。乾燥は、一般に、炭化水素、好ましくはメタンの燃焼空気下、又は燃焼空気1kg当たり0~80gの水、5体積%~25体積%の酸素含有量及び0%~10体積%の二酸化炭素含有量からなる加熱空気下で行われる。
d)任意に、工程c)で得られた乾燥触媒前駆体を、焼成触媒前駆体を得るために、250~900℃の温度で焼成する。
乾燥後、前記触媒は、空気、好ましくは燃焼空気、より好ましくは、空気1kg当たり40~80gの水、5体積%~15体積%の酸素含有量及び4体積%~10体積%のCO含有量を含むメタンの燃焼空気下で焼成することができる。前記焼成の温度は、一般に250℃~900℃、好ましくは約350℃~約550℃である。焼成時間は、一般に0.5~5時間である。焼成時間は、一般に0.5~5時間である。
e)任意に、還元処理は、還元性ガスと接触させることによって行われる。
【0054】
コロイド経路を介した含浸
本発明に係る別の実施形態では、パラジウム溶液はコロイド法によって堆積される。より具体的には、触媒を調製する方法は以下の工程を含む:
a)少なくとも1種のパラジウム前駆体塩を含む水溶液の調製。
工程a)では、少なくとも1つのパラジウム前駆体塩を含む水溶液を調製する。パラジウム前駆体塩は、好ましくはクロロパラジン酸ナトリウム及び硝酸パラジウムから選択される。
b)含浸担体の調製。本発明に係る調製方法の工程iv)で得られたアンモニウム形態焼成乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料へのパラジウムの堆積は、工程a)で得られた水溶液をアンモニウム形態焼成乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料に乾式含浸させることによって行われ、前記水溶液の体積は、一般に、アンモニウム形態焼成乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料の細孔容積の0.9~1.1倍である。
c)工程b)で含浸させた支持体の熟成。含浸後、アンモニウム形態焼成及び乾燥AFX-BEAゼオライト複合材料を、湿潤状態で0.5~40時間、好ましくは1~30時間熟成させる。それ以上の時間も否定はしないが、必ずしも改善されるとは限らない。
d)工程b)又は工程c)で得られた触媒前駆体の乾燥触媒前駆体は、一般に、含浸中に導入された水の全部又は一部を除去するために、好ましくは50℃~250℃、より好ましくは70℃~200℃の温度で乾燥される。乾燥時間は0.5~20時間が好ましい。それ以上の時間も否定はしないが、必ずしも改善されるとは限らない。
乾燥は、一般に、炭化水素、好ましくはメタンの燃焼空気下又は燃焼空気1kg当たり0~80gの水、5~25体積%の酸素含有量、0%~10体積%の二酸化炭素含有量を含む加熱空気下で行われる。
e)燃焼空気下で、工程d)で得られた乾燥触媒を焼成(任意工程)。
【0055】
乾燥後、前記触媒は、空気、好ましくは燃焼空気、より好ましくは、空気1kg当たり40~80gの水、5体積%~15体積%の酸素含有量及び4体積%~10体積%のCO含有量を含むメタンの燃焼空気下で焼成することができる。前記焼成の温度は、一般に250℃~900℃、好ましくは約350℃~約550℃である。焼成時間は、一般に0.5~5時間である。焼成時間は、一般に0.5~5時間である。
【0056】
本発明はまた、AFX構造型のゼオライトとBEA構造型のゼオライトの混合物から構成され、パラジウムを含有するゼオライト材料の形態の複合触媒であって、本発明の実施形態に係る方法によって調製することができ、前記複合触媒は、AFX構造型のゼオライトの量とBEA構造型のゼオライトの量との質量比が0.9~5.7である複合触媒に関する。
【0057】
本発明に係るゼオライト複合触媒中のパラジウムの含有量は、無水触媒の全質量に対して有利には0.5重量%~5重量%、好ましくは0.8重量%~3重量%、非常に好ましくは0.9重量%~2重量%、非常に有利には約1重量%である。
【0058】
本発明に係るゼオライト複合触媒において、CO化学吸着によって測定されるパラジウムの分散液は、有利には40%~100%の間、好ましくは50%~100%の間である。
【0059】
本発明に係る触媒の特性評価
本発明に係る触媒の調製の工程ii)、iii)、iv)又はv)が終了すると、X線回折により、本発明による工程で得られた固体が、実際にAFX及びBEA構造型のゼオライトを含むAFX-BEAゼオライト複合材料であることを確認することができる。得られる純度は、有利には90重量%より大きく、好ましくは95%より大きく、非常に好ましくは99.8重量%より大きい。
【0060】
言い換えれば、AFX/BEAゼオライト複合材料に基づく、パラジウムを含む本発明によるゼオライト複合触媒は、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.2質量%未満の不純物及び/又はAFX及びBEA以外の結晶相もしくは非晶質相を含む(限界は含まれない)。非常に有利には、本発明の方法は、他の結晶相又は非晶質相を含まないAFX-BEAゼオライト複合材料に基づく触媒の形成をもたらす。
【0061】
また、この技術は、本発明による前記触媒に含まれる、又はその変異体のいずれか1つによる本発明の方法によって得られる各ゼオライト、AFX及びBEAの相対的な割合を決定することも可能にする。
【0062】
有利には、本発明による方法によって得られる固体は、少なくとも表1に記録された線を含むX線回折パターンを有する。
【0063】
この回折パターンは、銅のKα1放射(λ=1.5406Å)を用いた従来の粉末法による回折計を用いた放射光結晶学的分析によって得られる。角度2θで表される回折ピークの位置に基づいて、ブラッグの法則を用いてサンプルの格子面間間隔dhkl特性を計算する。dhklの測定誤差Δ(dhkl)は、2θの測定に割り当てられた絶対誤差Δ(2θ)の関数として、ブラッグ関係によって計算される。絶対誤差Δ(2θ)は±0.02°が一般的である。dhklの各値に割り当てられた相対強度Irelは、対応する回折ピークの高さに従って測定される。本発明に係る方法の工程ii)の終了時に得られる結晶性固体のX線回折パターンは、少なくとも表1に与えられるdhklの値(本発明によるゼオライト複合触媒のX線回折パターン上で測定されたdhklの平均値及び相対強度)における線を含む。dhkl値の欄には、格子間隔の平均値をアングストローム(Å)で示した。これらの各値には、±0.6Å~±0.01Åの測定誤差Δ(dhkl)を割り当てる必要がある。
【0064】
【表1】
【0065】
本発明によれば、調製された複合材料の質量組成、特に複合材料に基づく前記触媒中に存在するAFX構造型のゼオライト及びBEA構造型のゼオライトの相対質量分率は、有利には、ASTM D3906 03の規格と同様の方法を用いて、本発明による複合材料について得られたX線パターンと、AFX構造型の基準ゼオライト、好ましくは高純度のものの、角度(2θ)20.38±0.1(hkl:211);23.67±0.1(hkl:105);26.1±0.1(hkl:303)及び28.02±0.1(hkl:303)のピークの面積の比較によって決定される。したがって、本発明に係る複合材料中の2つのゼオライトAFX及びBEAの質量比は、本発明により調製された複合材料について得られた上記の角度(2θ)におけるピークの面積の合計を、ゼオライト基準サンプルと比較し、以下の計算式を使用することによって評価される:
AFX/BEA=SAFXc/(SAFXr-SAFXc
ここで、SAFXcは、本発明により調製したAFX-BEA複合材料の回折像の角度(2θ)20.38±0.1(HKL:211)23.67±0.1(HKL:105);26.1±0.1(hkl:303)及び28.02±0.1(hkl:106)に存在するピークの面積の合計であり、SAFXrは、基準として用いたAFX構造型の純粋なゼオライトの回折像の角度(2θ):20.38(hkl:211);23.67(HKL:105);26.1(hkl:303)及び28.02(hkl:106)に存在するピークの面積の合計である。基準として用いるAFX構造型の純粋なゼオライトは、例えば、本発明の例5に例示する方法に従って調製することができる。
【0066】
蛍光X線分析(XRF)は、物質の物理的特性である蛍光X線を利用した化学分析技術である。ベリリウム(Be)から始まる化学元素の大部分を、数ppm~100%までの濃度範囲で、正確かつ再現性のある分析結果が得られる。X線はサンプル中の原子を励起するために使用され、各元素に特徴的なエネルギーを持つX線を放出させる。その後、これらのX線の強度とエネルギーを測定し、材料中の元素濃度を決定する。
【0067】
本発明に係る方法の乾燥工程後(及び焼成前)又は工程iii)の焼成工程後に得られる触媒の強熱減量(LOI)は、一般に2重量%~20重量%の間である。LOIという略語で呼ばれる触媒サンプルの強熱減量は、1000℃で2時間の熱処理前後のサンプルの質量差に相当する。それは、質量の損失率に対する%で表される。強熱減量は、一般に固体に含まれる溶媒(水等)の損失に対応するが、無機固体成分に含まれる有機化合物の除去にも対応する。
【0068】
粒子散(D)は単位のない数値であり、多くの場合%で表される。粒子が小さいほど、分散は大きくなる。これは、R. Van HardeveldとF. Hartogによる論文“The statistics of surface atoms and surface sites on metal crystals”, Surface Science 15, 1969, 189-230で定義されている。分散はCOの化学吸着によって測定できる。
【0069】
本発明に係る触媒
出願企業は、本発明に係る方法によって得られた触媒が、従来技術から知られているパラジウムを含む微多孔質アルミノケイ酸塩材料とは異なる特性を有することを発見した。特に、パラジウムを含むAFX-BEAゼオライト複合触媒は、本発明に係る方法の変形のいずれかによって得られ、吸着能力が増大し、脱着温度が上昇し、また、より高い耐水熱性を有する。
【0070】
いかなる理論にも拘束されることなく、本発明に係る触媒を調製するための方法は、特にパラジウムのより良好な分散を可能にし、これは、触媒的NOx還元性能の品質向上に寄与することが可能にするように思われる。さらに、パラジウムの分散が向上することで、入手しやすく活性なパラジウムの量を最適化し、非常に優れた触媒性能品質を得ながら、より低いパラジウム含有量を使用することができる。
【0071】
有利には、得られたAFX-BEA複合ゼオライトに基づく触媒のSiO/Alモル比は、6~80(限界含む)、好ましくは10~40(限界含む)である。
【0072】
本発明によるゼオライト複合触媒中のパラジウムの含有量は、無水触媒の全質量に対して有利には0.5重量%~5重量%、好ましくは0.8重量%~3重量%、非常に好ましくは0.9重量%~2重量%、非常に有利には約1重量%である。
【0073】
本発明に従って調製されたゼオライト複合触媒において、パラジウムの分散は、有利には40%~100%の間、好ましくは50%~100%の間である。
【0074】
本発明による触媒の使用
本発明はまた、200℃未満の温度でのNOxの吸着のために、直接調製されるか、又はその変形例のいずれか1つに従って上述した方法によって調製可能であり、有利には、主に移動用途のために、ハニカム構造体上のコーティング(又は「ウォッシュコート」)の形態での堆積によって形成される、本発明による触媒の使用に関する。
【0075】
ハニカム構造は、両端が開いている開口した平行チャネル(「フロースルーチャネル」)又は多孔質のフィルタリング壁で構成されており、この場合、隣接する平行チャネルは、ガス流が壁を通過するように強制するために、チャネルの両端で交互にブロックされる(「ウォールフローモノリス」)。こうしてコーティングされたハニカム構造体は、触媒ブロックを構成する。前記構造体は、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)、チタン酸アルミニウム(AlTi)、α-アルミナ、ムライト、又は30%~70%の気孔率を有する他の材料で構成することができる。前記構造は、金属板、クロム及びアルミニウムを含むステンレス鋼、FeCrAl鋼で形成することができる。
【0076】
前記構造体上に堆積される本発明に係る触媒の量は、フィルタリング構造体については50~240g/Lであり、オープンチャンネルを有する構造体については50~320g/Lである。
【0077】
実際のコーティング(「ウォッシュコート」)は、本発明に係る触媒を、有利には、セリア、酸化ジルコニウム、アルミナ、非ゼオライト系シリカ-アルミナ、酸化チタン、セリア-ジルコニア型の混合酸化物、酸化タングステン、スピネル等のバインダーと組み合わせて構成する。前記コーティングは、有利には、ウォッシュコーティングとして知られる堆積法によって前記構造体に施され、溶媒、好ましくは水、及び任意にバインダー、金属酸化物、安定剤又は他の促進剤中の本発明に係る粉末状触媒の懸濁液(又はスラリー)にモノリスを浸漬することからなる。この浸漬工程は、所望のコーティング量が得られるまで繰り返すことができる。場合によっては、スラリーをモノリス内部に噴霧することもある。コーティングが堆積されると、モノリスは300~600℃の温度で1~10時間焼成される。
【0078】
前記構造体は、1つ以上のコーティングで被覆することができる。本発明に係る触媒を含有するコーティングは、有利には、汚染物質、特にNOxを低減する能力、及び/又は汚染物質、特に一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化を促進する能力を有する別のコーティングと組み合わされる、すなわち被覆する、又は被覆される。
【0079】
別の可能性は、触媒が押出物の形態であることである。この場合、得られる構造は、本発明に係る触媒を100%まで含有することができる。
【0080】
本発明に係る触媒で被覆された前記構造体は、有利には内燃機関の排気ラインに組み込まれる。このようなエンジン動作条件下では、排気ガスには特に次の汚染物質が含まれる:すす、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)。本発明による触媒で被覆された前記構造は、NH-SCR触媒、NOxトラップ又は三元触媒であり得るNOx処理触媒の上流に配置される。HC及びCOを酸化する機能を有する酸化触媒と、排気ガスからすすを除去するためのフィルターは、前記構造体の上流又は下流のいずれかに配置することができる。
【0081】
前記コーティングされた構造の機能は、NOxを吸着することであり、その動作範囲は以下の通りである:
-吸着相では、-20~300℃の間、好ましくは-20℃~200℃の間である;
-脱着段階では、150℃~500℃の間、好ましくは250℃から~400℃の間である。
【0082】
本発明の利点
AFX構造型のゼオライトとBEA構造型のゼオライトとの密接な混合物からなり、パラジウムを含有するゼオライト複合材料に基づく本発明による触媒は、先行技術の触媒と比較して改善された特性を有する。特に、本発明による触媒の使用は、-20℃~200℃の間でNOxを吸着することを可能にする。
【0083】
また、水熱劣化に対する耐性も優れており、劣化後も高い吸着性能を確保する。
【実施例
【0084】

本発明は以下の例によって説明されるが、これらは決して限定的なものではない。
【0085】
例1:1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド(有機構造化剤MPC6)の調製
50gのN-メチルピペリジン(0.51mol、99%、Alfa Aesar社製)及び200mLのエタノールを含む1Lの丸底フラスコに、50gの1,6-ジブロモヘキサン(0.20mol、99%、Alfa Aesar社製)を加える。反応媒体を撹拌し、5時間還流する。その後、混合物を周囲温度まで冷却し、濾過する。混合物を300mLの冷ジエチルエーテルに注ぎ、形成した沈殿物を濾過し、100mLのジエチルエーテルで洗浄する。得られた固体をエタノール/エーテル混合溶媒で再結晶する。得られた固体を真空下で12時間乾燥させる。71gの白色固体が得られる(すなわち、収率80%)。
【0086】
生成物は予想されるH NMRスペクトルを有する。H NMR(DO,ppm/TMS):1.27(4H,m);1.48(4H,m);1.61(4H,m);1.70(8Hm);2.85(6H,s);3.16(12H,m)。
【0087】
18.9gのAgO(0.08mol、99%、Aldrich社製)を、調製した30gの構造化剤1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジブロミド(0.07mol)と100mLの脱イオン水を含む250mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに加える。反応液を光のないところで12時間撹拌する。次いで、混合物を濾過する。得られた濾液は、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド(MPC6)の水溶液で構成される。この種の測定は、ギ酸を標準物質としてプロトンNMRで行う。
【0088】
例2:本発明に係るパラジウムを含有するAFX-BEAゼオライト触媒の調製
例1に従って調製した275.3gの1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド(18.36重量%)の水溶液を、撹拌しながら周囲温度で390.61gの脱イオン水と混合する。7.18gの水酸化ナトリウム(98重量%、Aldrich社製)を上記混合物に撹拌しながら周囲温度で溶解する。続いて、6.32gの非晶質水酸化アルミニウムゲル(Al(OH)非晶質ゲル、Alに対して58.55質量%、Merck社製)を合成混合物に添加し、これを周囲温度で30分間撹拌し続ける。得られた懸濁液が均一になり次第、70.9gのFAU構造型のゼオライト(CBV780、SiO/Al=90.54、Zeolyst、LOI=8.52%)の投入を開始し、得られた懸濁液を周囲温度で30分間撹拌する。次に、5.73gのAFX構造型の焼成ゼオライトの種(前記混合物中に存在する無水形態のSiO及びAlの供給源の総質量に対して8.36%)を合成混合物に加え、30分間撹拌し続ける。前駆体ゲルのモル組成は以下の通りである:1 SiO:0.05 Al:0.167 MPC6:0.093 NaO:36.73 HO、すなわちSiO/Al比は20である。次に、均質化した後、前駆体ゲルを、4つの傾斜ブレードを備え撹拌システムを備えた1000mLのステンレス鋼反応器に移す。反応器を密閉し、3℃/分で180℃まで昇温し、の昇温で180℃まで、200rpmで撹拌しながら18時間加熱し、AFX構造型のゼオライトとBEA構造型のゼオライトの混合物を結晶化させる。得られた結晶生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄した後、100℃で12時間乾燥させる。乾燥固形物の強熱減量は16.38%である。次に、固体はマッフル炉に導入され、そこで焼成工程が実行される:焼成サイクルは、200℃までの1.5℃/分の温度上昇、200℃で2時間維持される定常段階、550℃まで1℃/分で550℃まで昇温、続いて550℃での定常段階を12時間維持、その後周囲温度に戻すことを含む。
【0089】
焼成後、40.0gのこのゼオライトの混合物を3MのNHNOの水溶液で、80℃で1時間、撹拌(300rpm)し、ゼオライトの質量に対する溶液の体積の比を10(V/W)に等しくして3回交換した。その後、固体を濾過し、100℃で一晩乾燥させた。これには、NH-AFX-BEA1という名前が付けられる。
【0090】
0.25gの水和Pd(NHClを12mLの脱塩水で希釈し、上記で調製した10g以上の固体NH-AFX-BEA1を25℃で含浸させる(乾式含浸法)。
【0091】
得られた触媒Pd-NH-AFX-BEA1を120℃で2時間、空気中で乾燥させた後、HSVが触媒1リットル当たり3000リットルの燃焼空気/時間で燃焼空気流下で、550℃で2時間焼成する。燃焼空気には、乾燥空気1kgあたり約60gの水分が含まれている。
【0092】
このようにして調製した触媒Pd/AFX-BEA1は、触媒の全重量に対して1重量%のパラジウムを含む。CO化学吸着により得られるPdの金属分散度は60%である。
【0093】
触媒Pd/AFX-BEA1をX線回折で分析したところ、約78質量%のAFX構造型のゼオライトと約22質量%のBEA構造型のゼオライトの混合物からなるゼオライト複合材料であり、AFX/BEA質量比が3.55であることを同定した。触媒Pd/AFX-BEA1で生成されたのX線回折パターンを図1に示す。この生成物は、XRFにより測定したところ、16.64のSiO/Alモル比を有する。
【0094】
例3:本発明によるパラジウムを用いたAFX-BEA構造型のゼオライトを含有する触媒の調製
23.9gのFAU構造型のゼオライト(CBV712 Zeolyst、SiO/Al=11.42、LOI=12.81%)を495.2gの脱イオン水と混合した。57.3gのFAU構造型のゼオライト(CBV780 Zeolyst、SiO/Al=98.22、LOI=8.52%)を上記混合物に添加し、得られた調製物を10分間撹拌する。例1に従って調製した290.5gの1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド(20.91重量%)の水溶液を上記混合物に加える。次いで、混合物を10分間撹拌し続ける。33.0gの20重量%の水酸化ナトリウムの水溶液(98重量%水酸化ナトリウムから調製した溶液、Aldrich社製)33.0gを混合物に加え、10分間撹拌を続ける。前駆体ゲルのモル組成は以下の通りである:1 SiO:0.03 Al:0.167 MPC6:0.072 NaO:36.73 HO、すなわちSiO/Al比は33.3である。前駆体ゲルは、均質化後、オートクレーブに移される。オートクレーブを密閉し、回転スピットシステムで35rpmで撹拌しながら180℃で6日間加熱する。得られた結晶生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄した後、100℃で一晩乾燥させる。
【0095】
次に、固体はマッフル炉に導入され、そこで空気流下で焼成工程が実行される:焼成サイクルは、200℃までの1.5℃/分の温度上昇、200℃での2時間維持される常段階を、1℃/minの割合で550℃まで昇温、続いて550℃での定常段階を8時間維持、その後周囲温度に戻すことを含む。
【0096】
焼成後、40.0gのこのゼオライトの混合物を3MのNHNOの水溶液で、80℃で1時間撹拌(300rpm)しながら、ゼオライトの質量に対する溶液の体積の比を10(V/W)に等しくして3回交換した。その後、固体を濾過し、100℃で一晩乾燥させた。これには、NH-AFX-BEA2という名前が付けられる。
【0097】
0.25gの水和Pd(NHClを13mLの脱塩水で希釈し、上記で調製した10g以上のゼオライトNH4-AFX-BEA2を25℃で含浸させる(乾式含浸法)。
【0098】
得られた触媒Pd-NH-AFX-BEA2を120℃で2時間、空気下で乾燥させた後、HSVが触媒1リットル当たり3000リットル/時間の燃焼空気気流下で、550℃で2時間焼成する。燃焼空気には、乾燥空気1kgあたり約60gの水分が含まれている。
【0099】
このように調製された触媒Pd/AFX-BEA2は、触媒の総重量に対して1重量%のパラジウムを含む。CO化学吸着によって得られたPdの金属分散は58%である。
【0100】
触媒Pd/AFX-BEA2をX線回折で分析したところ、約50質量%のAFX構造型のゼオライトと約50質量%のBEA構造型のゼオライトの混合物からなるゼオライト複合材料であり、AFX/BEAの質量比は1であることを同定した。触媒Pd/AFX-BEA2で生成されたX線回折パターンを図2に示す。
【0101】
例4(比較例):Pdを有するBEA構造型のゼオライトを含有する触媒の調製
市販のゼオライトNH-BEA(CP814E、SiO/Al=25.16、Zeolyst社製)をパラジウム前駆体の含浸のための担体として使用した。
【0102】
0.25gの水和Pd(NHClを17mLの脱塩水で希釈し、10g以上のゼオライトNH-BEA(CP814E SiO/Al=25.16、Zeolyst)を25℃で(乾燥含浸法で)含浸させる。
【0103】
得られた固体を空気下、120℃で2時間乾燥させる。得られた触媒Pd-NH-BEAを120℃で2時間、空気中で乾燥させた後、HSVが触媒1リットル当たり3000リットルの燃焼空気/時間で燃焼空気流下で、550℃で2時間焼成する。燃焼空気には、乾燥空気1kgあたり約60gの水分が含まれている。
【0104】
このように調製された触媒Pd/BEAは、触媒の総重量に対して1重量%のパラジウムを含む。CO化学吸着によって得られたPdの金属分散度は28%である。触媒Pd/BEAに対して生成されたX線回折パターンを図4に示す。
【0105】
例5(比較例):AFX及びBEA構造型(78/22)のゼオライトとパラジウムとの機械的混合物を含有する触媒の調製
1)パラジウムを含むAFX構造型のゼオライトを含む触媒の調製
例1に従って調製した275.8gの1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド(18.36重量%)の水溶液を撹拌しながら周囲温度で391.23gの脱イオン水と混合する。7.18gの水酸化ナトリウム(98重量%、Aldrich社製)を上記の混合物に撹拌しながら周囲温度で溶解する。続いて、6.33gの非晶質水酸化アルミニウムゲル(Al(OH)非晶質ゲル、58.55質量%のAl、Merck社製)を合成混合物に添加し、これを常温で30分間撹拌し続ける。得られた懸濁液が均質になり次第、70.88gのFAU構造型のゼオライト(CBV780、SiO/Al=90.54、Zeolyst、LOI=8.52%)の投入を開始し、得られた懸濁液を周囲温度で30分間撹拌する。AFX構造型のゼオライトの形成を促進するために、6.14gのAFX構造型の焼成ゼオライトの種(CBV780ゼオライトの質量に対して8.7%)を合成混合物に添加し、5分間撹拌し続ける。その後、反応混合物は、撹拌(200rpm)しながら周囲温度で24時間熟成させる。前駆体ゲルのモル組成は以下の通りである:1 SiO:0.05 Al:0.167 R:0.093 NaO:36.73 HO、すなわちSiO/Al比は20である。次に、均質化した後、前駆体ゲルを、4つの傾斜ブレードを備え撹拌システムを備えた1000mLのステンレス鋼反応器に移す。反応器を密閉し、5℃/分で180℃まで昇温し、200rpmで撹拌しながら14時間加熱し、AFX構造型のゼオライトを結晶化させる。得られた結晶生成物を濾過し、脱イオン水で洗浄した後、100℃で一晩乾燥させる。次に、固体はマッフル炉に導入され、そこで焼成工程が実行される:焼成サイクルは、200℃までの1.5℃/分の温度上昇、200℃で2時間維持される定常段階、550℃まで1℃/分で550℃まで昇温、続いて550℃での定常段階を12時間維持、その後周囲温度に戻すことを含む。
【0106】
焼成後、40.0gのこのゼオライトの混合物を3MのNHNOの水溶液で、80℃で1時間、撹拌(300rpm)し、ゼオライトの質量に対する溶液の体積の比を10(V/W)に等しくして3回交換した。その後、固体のNH-AFXを濾過し、100℃で一晩乾燥させた。
【0107】
0.25gの水和Pd(NHClを8.2mLの脱塩水で希釈し、上記で調製した10g以上のゼオライトNH-AFXを25℃で含浸させる(乾式含浸法)。
【0108】
得られた触媒Pd-NH-AFX-BEA1を120℃で2時間、空気中で乾燥させた後、HSVが触媒1リットル当たり3000リットルの燃焼空気/時間で燃焼空気流下で、550℃で2時間焼成する。燃焼空気には、乾燥空気1kgあたり約60gの水分が含まれている。
【0109】
このようにして調製された触媒Pd/AFXは、触媒の全重量に対して1重量%のパラジウムを含む。CO化学吸着により得られるPdの金属分散度は55%である。
【0110】
触媒Pd/AFXをX線回折で分析したところ、純度99重量%以上のAFX構造型のゼオライトからなることを同定した。焼成された固体に対して生成されたX線回折パターンを図3に示す。この生成物は、XRFにより測定したところ、14.46のSiO/Alモル比を有する。
【0111】
2)機械的混合により得られるPd AFX-BEA触媒の調製(比較例)
調製した156mgのパラジウム含有AFX構造型ゼオライトと、例4に従って調製した44mgのパラジウム含有BEA構造型ゼオライトを混合する(すなわち、AFX/BEA質量比3.55)。得られた材料はPd/AFX-BEA-meca1と名付けられた。
【0112】
このようにして調製した触媒Pd/AFX-BEA-meca1は、触媒の全重量に対して1重量%のパラジウムを含む。CO化学吸着により得られるPdの金属分散度は50%である。
【0113】
触媒Pd/AFX-BEA-meca1をX線回折法で分析したところ、約78質量%のAFX構造型のゼオライトが、約22質量%のBEA構造型のゼオライトの混合物からなるゼオライト複合材料であり、AFX/BEA質量比は1であることを同定した。触媒Pd/AFX-BEA-meca1のX線回折パターンを図5に示す。
【0114】
例6(比較例):AFX及びBEA構造型(50/50)のゼオライトとパラジウムとの機械的混合物を含有する触媒の調製
例5に従って調製したパラジウムを含有した100mgのAFX構造型のゼオライトと、例4に従って調製したパラジウムを含有した100mgのBEA構造型のゼオライトを混合する(すなわち、AFX/BEA質量比1)。得られた材料はPd/AFX-BEA-meca2と名付けられた。
【0115】
このように調製された触媒Pd/AFX-BEA-meca2は、触媒の総重量に対して1重量%のパラジウムを含む。CO化学吸着によって得られたPdの金属分散度は48%である。
【0116】
例7:水熱劣化工程
例2(Pd/AFX-BEA1)、例3(Pd/AFX-BEA2)、例4(Pd/BEA)、例5(Pd/AFX-BEA-meca1)、及び例6(Pd/AFX-BEA-meca2)に従って合成した550mgの各サンプルを粉末の状態で石英反応器に入れる。以下のモル組成の混合物を150L/hの流速でサンプルに通す:10% HO、20% O、残りはN
【0117】
サンプルは、750℃の温度で4時間これらの条件にさらされる。その後、窒素気流下で常温まで冷却される。
【0118】
例2に従って合成し、例7の条件で劣化させたサンプルをPd/AFX-BEA1-agedと名付けた。
【0119】
例3に従って合成し、例7の条件で劣化させたサンプルをPd/AFX-BEA2-agedと名付けた。
【0120】
例4に従って合成し、例7の条件で劣化させたサンプルをPd/BEA-agedと名付けた。
【0121】
例5に従って合成し、例7の条件で劣化させたサンプルをPd/AFX-BEA-meca1-agedと名付けた。
【0122】
例6に従って合成し、例7の条件で劣化させたサンプルをPd/AFX-BEA-meca2-agedと名付けた。
【0123】
例8:NOx吸脱着試験
吸着能力を実証するために、例2(本発明によるPd/AFX-BEA1)、例3(本発明によるPd/AFX-BEA2)、例4(Pd/BEA)、例5(Pd/AFX-BEA-meca1)及び例6(Pd/AFX-BEA-meca2)に従って合成された触媒を用いて、120℃でのNOx吸着、続いて10℃/分で120℃~600℃まで温度勾配させる試験を実施した。各サンプルを試験するために、523mgの粉末状の触媒を石英反応器に入れる。
-10% O、5% CO、10% HO、残りがNからなる混合物中で、周囲温度(20℃)~550℃まで10℃/分の勾配で昇温することからなる前処理が行われる。温度低下は、同じ混合物で120℃まで行われる。
-吸着は、以下の混合条件下、120℃で行われる:200ppm NO+300ppm CO+5% CO+10% HO、残りはN。この吸着段階の時間は10分である。
-吸着したNOxを脱着させるため、サンプルは10% CO+10% HO、残りはNの混合物下で、10℃/分の勾配に従って550℃まで昇温する。
【0124】
FTIR分析装置を使用して、反応器出口でNO、NO、NH、NO、CO、CO、HO、Oの濃度を測定する。
【0125】
図6は、温度上昇中に脱着したNOx濃度を示している。四角で示した曲線、菱形で示した曲線、三角で示した曲線、十字で示した曲線、及び丸で示した曲線は、それぞれ、例2(本発明によるPd/AFX-BEA1)、例3(本発明によるPd/AFX-BEA2)、例4(Pd/BEA)、例5(Pd/AFX-BEA-meca1)、及び例6(Pd/AFX-BEA-meca2)に従って合成した触媒を用いて実施した試験に対応している。温度勾配時に触媒の単位質量あたりに脱着したNOxの量と脱着最大温度を以下に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
本発明に従って合成された触媒Pd/AFX-BEA1及びPd/AFX-BEA2は、吸着量の点で、触媒Pd/BEA、Pd/AFX-BEA-meca1及びPd/AFX-BEA-meca2よりも優れた吸着性能品質を提供する。150℃からNOx脱着を示す触媒Pd/BEA、Pd/AFX-BEA-meca1及びPd/AFX-BEA-meca2とは異なり、NOx脱着は、本発明による触媒Pd/AFX-BEA1及びPd/AFX-BEA2では、約250℃でのみ出現する。250℃以上のNOx脱離は、NOx排出を抑制する上で大きな利点となる。
【0128】
例10:水熱劣化後のNOx吸着及び脱着試験
例7による劣化触媒:Pd/AFX-BEA1-aged、Pd/AFX-BEA2-aged、Pd/BEA-aged、Pd/AFX-BEA-meca1-aged及びPd/AFX-BEA-meca2-agedを用いて、120℃で、続いて10℃/分で120℃~600℃まで温度勾配でのNOx吸着試験を実施した。
【0129】
各サンプルを試験するために、523mgの粉末状の触媒を石英反応器に入れる。
-10% O、5% CO、10% HO、残りがN2からなる混合物中で、周囲温度(20℃)~550℃まで10℃/分の勾配で昇温することからなる前処理が行われる。温度降下は、同じ混合物下で120℃まで行われる。
-吸着は、以下の混合条件下、120℃で行われる:200ppm NO+300ppm CO+5% CO+10% HO、残りはN。この吸着段階の時間は10分である。
-吸着したNOxを脱着させるため、サンプルは10% CO+10% HO、残りはNの混合物下で、10℃/分の勾配に従って550℃まで昇温する。
【0130】
FTIR分析装置を使用して、反応器出口でNO、NO、NH、NO、CO、CO、HO、Oの濃度を測定します。
【0131】
図7は、温度上昇中に脱着したNOx濃度を示している。四角で示した曲線、菱形で示した曲線、三角で示した曲線、十字で示した曲線、及び丸で示した曲線は、それぞれ、Pd/AFX-BEA1-aged、Pd/AFX-BEA2-aged、Pd/BEA-aged、Pd/AFX-BEA-meca1-aged、Pd/AFX-BEA-meca2-agedの触媒で実施した試験に対応している。温度勾配時に触媒の単位質量あたりに脱着したNOxの量と脱着最大温度を以下に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
本発明に従って合成されたPd/AFX-BEA1-aged触媒及びPd/AFX-BEA2-aged触媒は、Pd/BEAaged触媒よりも、また、従来技術に従って合成された機械的混合によって製造されたPd/AFX-BEA-meca1-aged及びPd/AFX-BEA-meca2-aged触媒よりも、吸着量の点で優れた吸着性能特性を提供する。Pd/BEAaged触媒、Pd/AFX-BEA-meca1-aged触媒、及びPd/AFX-BEA-meca2-aged触媒は、150℃からNOx脱離を示すが、本発明によるPd/AFX-BEA1-aged触媒及びPd/AFX-aged触媒は、NOxの脱着は約250℃でのみ現れる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】