(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】目的に適合したヒドロゲル鞘中の工学的に作製された神経ネットワークおよびそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20240528BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240528BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240528BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20240528BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240528BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240528BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20240528BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240528BHJP
A61K 35/30 20150101ALI20240528BHJP
【FI】
A61L27/36 100
A61L27/20
A61L27/36 300
A61L27/38 100
A61L27/52
A61L27/58
A61P25/00
A61P43/00 105
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/16
A61K35/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571929
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022029908
(87)【国際公開番号】W WO2022245998
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】505082888
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ レプリゼンティッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】カレン ダニエル ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーディアン-ベレス ウィスバーティ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チェン エイチ. アイザック
(72)【発明者】
【氏名】バーディック ジェイソン エー.
【テーマコード(参考)】
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA16
4C081CA081
4C081CD011
4C081CD081
4C081CD111
4C081CD121
4C081CD151
4C081CD171
4C081CD34
4C081DA12
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB45
4C087CA04
4C087MA05
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZB21
(57)【要約】
様々な局面および態様において、本開示は、前もって形成された神経ネットワークを含む構築物であって、ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルを含む外側鞘と細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含む、マイクロカラム;前記マイクロカラムの内部にある複数のニューロンを含む、前記構築物を提供する。さらに、本開示は、前記構築物を作製および使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前もって形成された神経ネットワークを含む構築物であって、
ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルを含む外側鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含む、マイクロカラム;および
前記マイクロカラムの内部にある複数のニューロン
を含む、前記構築物。
【請求項2】
生体適合性である、請求項1記載の構築物。
【請求項3】
移植可能な構築物である、請求項1記載の構築物。
【請求項4】
ヒドロゲル鞘が円筒形である、請求項1記載の構築物。
【請求項5】
前記ECMコアが、ヒドロゲル鞘の内腔を実質的に満たしている、請求項1記載の構築物。
【請求項6】
前記マイクロカラムが、その長手方向の実質的にまっすぐな線に沿って方向付けられている、請求項1記載の構築物。
【請求項7】
前記マイクロカラムが、その長手方向の湾曲した通路に沿って方向付けられている、請求項1記載の構築物。
【請求項8】
前記複数のニューロンが、前記マイクロカラムの第1の末端の近くに実質的に局在する細胞体を有し、前記マイクロカラムの長さの少なくとも一部に沿って長軸方向に軸索を伸長している、請求項1~7のいずれか一項記載の構築物。
【請求項9】
前記複数のニューロンが、1つまたは複数の三次元凝集物を構成する、請求項8記載の構築物。
【請求項10】
前記軸索が、前記ヒドロゲル鞘の内部に配置され、前記ヒドロゲル鞘の内腔に沿って前記第1の末端にある前記ニューロンから反対側の末端に向かって長軸方向に伸長している、請求項8記載の構築物。
【請求項11】
前記軸索が、前記コアの前記ECMを通って成長し、かつ/または前記ヒドロゲル鞘の内面と前記コアの前記ECMとの間にある境界面に沿って成長する、請求項8記載の構築物。
【請求項12】
前記ニューロンとそれから伸長している軸索が、対象に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する、請求項8記載の構築物。
【請求項13】
前記対象がヒト対象である、請求項12記載の構築物。
【請求項14】
前記ニューロン細胞とそれから伸長している軸索が、ヒト対象の脳に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する、請求項13記載の構築物。
【請求項15】
前記ニューロン細胞とそれから伸長している軸索が、対象の脳における黒質と線条体の間にある天然軸索経路を模倣する細胞構造を有する、請求項8記載の構築物。
【請求項16】
前記対象がヒト対象である、請求項15記載の構築物。
【請求項17】
軸索路が、前記マイクロカラムを介して予め方向付けられるかまたは予め方向付けられている、請求項8記載の構築物。
【請求項18】
前記ニューロンが、それから伸長している前記軸索とともに、バイオファブリケーションによって作製された(biofabricated)マイクロ組織を形成する、請求項8記載の構築物。
【請求項19】
前記複数のニューロンの前記軸索が、前記マイクロカラムの長さの少なくとも50%に沿って伸長している、請求項8~18のいずれか一項記載の構築物。
【請求項20】
前記軸索が、前記マイクロカラムの長さの少なくとも75%に沿って伸長している、請求項19記載の構築物。
【請求項21】
前記軸索が、前記マイクロカラムの長さの90%に沿って伸長している、請求項19記載の構築物。
【請求項22】
前記マイクロカラムの外径が約500マイクロメートル~約2,500マイクロメートルである、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項23】
前記マイクロカラムの外径が約500~約1,500マイクロメートルである、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項24】
前記マイクロカラムの外径が約750~約1,000マイクロメートルである、請求項23記載の構築物。
【請求項25】
前記外径が前記ヒドロゲル鞘の横断面の直径である、請求項22~24のいずれか一項記載の構築物。
【請求項26】
前記外径が、前記ヒドロゲル鞘の横断面の直径であり、前記ヒドロゲル鞘上の任意の外側コーティングを含む、請求項25記載の構築物。
【請求項27】
前記マイクロカラムの内径が約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートルである、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項28】
前記マイクロカラムの内径が約250~約1,000マイクロメートルである、請求項27記載の構築物。
【請求項29】
前記マイクロカラムの内径が約500マイクロメートルである、請求項27記載の構築物。
【請求項30】
前記ECMが多糖を含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項31】
前記ECMが、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ラミニン、およびマトリゲルからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項32】
前記ECMがコラーゲンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項33】
前記ECMが、約0.1~10mg/mlの濃度のコラーゲンを含む、請求項32記載の構築物。
【請求項34】
前記ECMが、約1mg/mlの濃度のコラーゲンを含む、請求項33記載の構築物。
【請求項35】
前記ECMがラミニンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項36】
前記ECMが、約0.1~10mg/mlの濃度のラミニンを含む、請求項35記載の構築物。
【請求項37】
前記ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルが、架橋された修飾ヒアルロン酸であるかまたはそれを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項38】
前記修飾ヒアルロン酸がメタクリル化HA(MeHA)である、請求項37記載の構築物。
【請求項39】
前記ヒアルロン酸が、約0.5~約20%wtのMeHAを含む、請求項38記載の構築物。
【請求項40】
前記ヒアルロン酸が、3~5%のMeHAであるかまたはそれを含む、請求項39記載の構築物。
【請求項41】
前記修飾HAが、ノルボルネン修飾HA、アクリル化HA、マレイミドHA、およびヒドロキシエチルメタクリレートHAからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項37記載の構築物。
【請求項42】
外側の前記ヒドロゲル鞘が、3D印刷されかつ光重合されたMeHAシリンダーである、請求項38記載の構築物。
【請求項43】
外側の前記ヒドロゲル鞘が、架橋内に1種類または複数種類の加水分解感受性化合物を含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項44】
前記1種類または複数種類の加水分解感受性化合物がエステルを含む、請求項43記載の構築物。
【請求項45】
前記1種類または複数種類の加水分解感受性化合物が、乳酸、カプロラクトン、または無水物を含む、請求項44記載の構築物。
【請求項46】
前記1種類または複数種類の加水分解感受性化合物が添加されているメタクリル化ヒアルロン酸を、外側の前記ヒドロゲル鞘が含む、請求項43記載の構築物。
【請求項47】
1種類または複数種類の加水分解感受性化合物がHAとメタクリレート基の間に配置されている、請求項45記載の構築物。
【請求項48】
外側の前記ヒドロゲル鞘が、1つまたは複数のジチオールペプチドを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項49】
前記1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部が切断に対して感受性である、請求項48記載の構築物。
【請求項50】
前記1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部が、細胞によって発現されるマトリックスメタロプロテアーゼによる切断に対して感受性である、請求項48記載の構築物。
【請求項51】
前記複数のニューロンがドーパミン作動性ニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項52】
前記複数のニューロンの少なくとも50%がドーパミン作動性ニューロンである、請求項51記載の構築物。
【請求項53】
前記ドーパミン作動性ニューロンが精製によって得られる、請求項51記載の構築物。
【請求項54】
前記ドーパミン作動性ニューロンが中脳ドーパミン作動性ニューロンを含む、請求項51記載の構築物。
【請求項55】
前記中脳ドーパミン作動性ニューロンがA9ニューロンを含む、請求項54記載の構築物。
【請求項56】
前記複数のニューロンがGABA作動性ニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項57】
前記複数のニューロンの少なくとも50%がGABA作動性ニューロンである、請求項56記載の構築物。
【請求項58】
前記GABA作動性ニューロンが精製によって得られる、請求項56記載の構築物。
【請求項59】
前記複数のニューロンがグルタミン酸作動性ニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項60】
前記複数のニューロンの少なくとも50%がグルタミン酸作動性ニューロンである、請求項59記載の構築物。
【請求項61】
前記グルタミン酸作動性ニューロンが精製によって得られる、請求項59記載の構築物。
【請求項62】
前記複数のニューロンがコリン作動性ニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項63】
前記複数のニューロンの少なくとも50%がコリン作動性ニューロンである、請求項62記載の構築物。
【請求項64】
前記コリン作動性ニューロンが精製によって得られる、請求項62記載の構築物。
【請求項65】
前記複数のニューロンが中脳ニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項66】
前記複数のニューロンがヒトニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項67】
前記ヒトニューロンが人工多能性幹細胞(iPSC)由来ニューロンを含む、請求項66記載の構築物。
【請求項68】
前記複数のニューロンがヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項69】
前記ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンが幹細胞由来ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む、請求項68記載の構築物。
【請求項70】
前記A9ドーパミン作動性ニューロンの由来元である前記幹細胞が人工多能性幹細胞(iPSC)である、請求項69記載の構築物。
【請求項71】
前記複数のニューロンが、少なくとも50,000個のニューロンを含む、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項72】
前記複数のニューロンが、少なくとも100,000個のニューロンを含む、請求項71記載の構築物。
【請求項73】
前記複数のニューロンが、少なくとも125,000個のニューロンを含む、請求項71記載の構築物。
【請求項74】
前記マイクロカラムの長さが約2~約5センチメートルである、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項75】
前記複数のニューロンの軸索が、前記マイクロカラムの長手方向に約2~約5センチメートルの距離、伸長している、請求項74記載の構築物。
【請求項76】
前記マイクロカラムが、対象の黒質(SN)領域および線条体領域を包含する投射経路に沿った移植に適合されている、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項77】
前記SN領域が腹外側SN領域である、請求項76記載の構築物。
【請求項78】
前記線条体領域が背側線条体領域である、請求項76記載の構築物。
【請求項79】
前記対象がヒト対象である、請求項76記載の構築物。
【請求項80】
前記ニューロンが、A9ドーパミン作動性ニューロンを含み、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーによって測定された場合に少なくとも50nMのドーパミン放出を示す、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項81】
前記複数のニューロンが、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出し、かつ/または組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出するのに十分な量のドーパミン作動性ニューロンを有する、請求項80記載の構築物。
【請求項82】
前記ドーパミン作動性ニューロンが、前記対象において移植後6週間以内に、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出する、請求項81記載の構築物。
【請求項83】
前記複数のニューロンが、正常値の約50~60%のレベルで対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。
【請求項84】
前記ニューロンが、前記対象に移植されると正常値の約50~60%のレベルで前記対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす、請求項83記載の構築物。
【請求項85】
正常値の約50~60%のレベルの増加が達成される、請求項83または84記載の構築物。
【請求項86】
前もって形成された神経ネットワークを含む構築物を製造する方法であって、
(a)マイクロカラムの第1の末端に複数の神経前駆細胞および/またはドーパミン作動性ニューロンを播種する工程;ならびに
(b)前記マイクロカラムとその中に播種された複数の神経細胞とをインビトロで培養する工程
を含む、前記方法。
【請求項87】
前記構築物が生体適合性構築物である、請求項86記載の方法。
【請求項88】
前記構築物が、移植可能な構築物である、請求項86記載の方法。
【請求項89】
前記構築物が、インビトロテストベッドにおいて使用するためのものである、請求項86記載の方法。
【請求項90】
工程(b)が、前記マイクロカラムの長手方向に前記マイクロカラムの反対側の第2の末端に向かって前記神経細胞からの軸索の成長を引き起こすことを含む、請求項86記載の方法。
【請求項91】
(c)前記複数の神経細胞からの軸索成長が特定の長さに達していると判定する工程、ならびに
(d)達していると判定された軸索成長の前記特定の長さに応答して、移植のために前記マイクロカラムを包装および/または提供する工程
を含む、請求項86記載の方法。
【請求項92】
前記特定の長さが、予め決められた望ましい長さである、請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記特定の長さが約2~約5センチメートルである、請求項91記載の方法。
【請求項94】
工程(c)が、前記マイクロカラムとその中にある神経細胞とを画像化することを含む、請求項91記載の方法。
【請求項95】
工程(c)が、顕微鏡、高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)、染色、切片作製、または軸索密度の測定を介して画像化することを含む、請求項91記載の方法。
【請求項96】
工程(a)で前記マイクロカラムに播種される前記複数の神経細胞が、神経細胞凝集物を構成する、請求項91~94のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
前記神経細胞凝集物が、複数の、ほぼ球形の神経細胞凝集物を含む、請求項96記載の方法。
【請求項98】
それぞれの神経細胞凝集物が、凝集物1つあたりニューロン約100,000~約300,000個の密度で細胞を含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
複数の前記神経細胞凝集物が、少なくとも500μmの直径を示す、請求項97記載の方法。
【請求項100】
前記マイクロカラムが、ヒドロゲル鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含み、前記神経細胞が、前記コアの前記ECMと直接接触するように播種される、請求項86~89のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
前記ヒドロゲル鞘がMeHAを含む、請求項100記載の方法。
【請求項102】
前記マイクロカラムの前記ヒドロゲル鞘が、3D印刷されたシリンダーである、請求項100記載の方法。
【請求項103】
工程(a)の前に前記ヒドロゲル鞘を3D印刷する工程を含む、請求項100記載の方法。
【請求項104】
工程(a)の前の特定の分化期間にわたってヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を分化させ、それによって分化細胞を生成し、かつ、前記特定の分化期間にわたって前記iPSCを分化させた後に前記分化細胞を前記神経細胞として使用して工程(a)を実施する工程を含む、請求項86~103のいずれか一項記載の方法。
【請求項105】
約40dd後に、分化した前記iPSCを前記マイクロカラムに播種する工程を含む、請求項104記載の方法。
【請求項106】
約11~約20dd後に、分化した前記iPSCを前記マイクロカラムに播種する工程を含む、請求項104記載の方法。
【請求項107】
ドーパミン作動性前駆体運命が確立されてから、かつ前記細胞が通常再移植されさらに成熟された場合に、分化した前記iPSCを前記マイクロカラムに播種する工程を含む、請求項104記載の方法。
【請求項108】
前記マイクロカラムおよびまたは細胞が、請求項1~85に記載された1つまたは複数の特徴を有する、請求項86~107のいずれか一項記載の方法。
【請求項109】
ニューロンの第1の集団とそれから成長した軸索とを含む、請求項1~85いずれか一項記載の構築物;および
前記第1の集団とシナプスを形成した、ニューロンの第2の集団
を含む、インビトロテストベッド。
【請求項110】
前記ニューロンの第2の集団が線条体ニューロンを含む、請求項109記載のインビトロテストベッド。
【請求項111】
前記ニューロンの第1の集団が播種された末端とは反対側の構築物末端に、前記ニューロンの第2の集団が播種される、請求項109記載のインビトロテストベッド。
【請求項112】
前記ニューロンの第1の集団からの軸索が、前記構築物の長手方向に前記構築物の第1の末端から長軸方向に伸長しており、前記構築物の反対側の第2の末端に播種された前記第2の集団とシナプスを形成する、請求項109記載のインビトロテストベッド。
【請求項113】
前記第1の集団の細胞体が、前記構築物の第1の末端のかなり近くに局在している、請求項109記載のインビトロテストベッド。
【請求項114】
対象において黒質と線条体との間の経路を形成するニューロンの集団を少なくとも部分的に置き換える方法であって、請求項1~85のいずれか一項に記載された構築物を少なくとも1つ前記対象の脳に移植する工程を含む、前記方法。
【請求項115】
前記対象の1つまたは複数の状態を寛解させる工程を含む、請求項114記載の方法。
【請求項116】
前記1つまたは複数の状態を寛解させる工程が、前記対象の運動機能を回復させることを含む、請求項115記載の方法。
【請求項117】
前記1つまたは複数の状態を寛解させる工程が、前記対象の疼痛を低減することを含む、請求項115記載の方法。
【請求項118】
前記1つまたは複数の状態を寛解させる工程が、前記対象の振戦を低減することを含む、請求項115記載の方法。
【請求項119】
1つの構築物の少なくとも一部を前記対象の黒質内に移植する工程を含む、請求項114~118のいずれか一項記載の方法。
【請求項120】
移植後に、前記構築物の前記ニューロンが前記対象の脳において宿主ニューロンとシナプスを形成する、請求項114~119のいずれか一項記載の方法。
【請求項121】
前記構築物の前記ニューロンとシナプスを形成する前記宿主ニューロンが、前記対象の背外側線条体中に中型有棘神経細胞(MSN)を含む、請求項120記載の方法。
【請求項122】
前記対象がヒト対象である、請求項114~121のいずれか一項記載の方法。
【請求項123】
前記構築物を少なくとも1つ移植する工程が、MRIガイド下神経外科手術を使用することを含む、請求項114~122のいずれか一項記載の方法。
【請求項124】
前記構築物を少なくとも1つ移植する工程が、複数の構築物を移植することを含む、請求項114~123のいずれか一項記載の方法。
【請求項125】
前記複数の構築物を移植することが、複数の構築物を前記対象の脳の1つだけの半球に移植することを含む、請求項124記載の方法。
【請求項126】
前記複数の構築物を移植することが、1つまたは複数の構築物を前記対象の脳のそれぞれの半球に移植することを含む、請求項125記載の方法。
【請求項127】
1~3個の構築物を前記対象の脳のそれぞれの半球に移植する工程を含む、請求項126記載の方法。
【請求項128】
第1の半球における移植が、第1の外科手術を介して行われ、第2の半球における移植が、第2の外科手術を介して行われ、前記第1の外科手術とは異なる時点において行われる、請求項126記載の方法。
【請求項129】
前記第2の外科手術が、前記第1の外科手術の約6ヶ月後に行われる、請求項128記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、35U.S.C.119条(e)に基づいて、2021年5月19日に出願された米国仮特許出願第63/190,581号に係る優先権を受ける権利がある。米国仮特許出願第63/190,581号の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記載
本発明は、米国退役軍人省(Department of Veterans Affairs)によって付与されたI01-BX003748、米国立科学財団(National Science Foundation)によって付与された1845298、米国退役軍人省によって付与されたIK2-RX002013、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって付与されたU01 NS094340に基づいて政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
パーキンソン病(PD)は、振戦、運動の遅さ(動作緩慢)、および硬直などの運動欠陥、ならびに自律神経機能不全、うつ病、および認知症を含む非運動症状を特徴とする障害である。PDは、2番目に多い、よくある神経変性疾患であり、米国において1年に60,000件の新規症例と65歳以上の1~2%を含む世界中で1000万人の生活の質に影響を及ぼしている。人口が最も多い10の国々におけるPD患者数は2030年までに930万人まで倍加することが予測されている。パーキンソン財団(Parkinson’s Foundation)は、米国での処置に関連する総費用が患者1人につき薬物療法の場合は2,500ドル/年、外科手術の場合は100,000ドルを含めて520億ドル/年であると見積もっている。既存の療法は限られた時間しか症状を和らげることができず、現在、根底にある病態を予防または修復するための承認された処置法はない。従って、有効な処置法の探索は非常に重要な研究事業である。PD病態の重要な側面は黒質緻密部(SNpc)におけるドーパミン作動性ニューロンの喪失と黒質線条体路に沿った軸索投射の変性である。これらのドーパミン作動性軸索は、運動、意思決定、および学習に関連する脳領域である背外側線条体において中型有棘神経細胞(medium spiny neuron)(MSN)とシナプスを形成する。健常患者において、活性化されたドーパミン作動性ニューロンはドーパミンを放出し、ドーパミンは、ドーパミン受容体を発現するMSN上で作用する。ドーパミン受容体1が関与する直接経路とドーパミン受容体2が関与する間接経路を通じて、これらのシナプス結合は、大脳基底核(すなわち、淡蒼球内節および黒質網様部(SNpr))のγアミノ酪酸(GABA)依存性の阻害性出力を調整する。PDでは黒質線条体終末によって放出されるドーパミンが失われるので、正味の影響は、線条体による大脳基底核の抑制が小さくなること、視床の阻害が増加すること、および運動皮質の活性化が低下することである。ドーパミン作動性ニューロンの約30~50%が喪失し、線条体ドーパミンが50~60%少なくなることが症状の発症と関連付けられてきた。さらに、軸索変性はそれ自体でニューロン本体の死の何年も前に起こり、PDの初期徴候と解釈されてきた。
【0004】
残念なことに、ほとんどの患者は、運動症状が明らかになり、かなりの疾患進行が既に起こってしまった時に診断される。現行の処置法は薬物療法または深部脳刺激(DBS)によって症状を管理することに焦点を合わせている。第一線において、ドーパミンの直接前駆体であるL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)というゴールドスタンダードが投与されてきた。L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)は、短い半減期と、変化しやすい吸収と、持続的な薬物送達を妨げる血液脳関門輸送を有する。おそらく、この連続しない刺激のために、長期患者は異常な筋肉運動(ジスキネジー)と、症状の管理と再発との変動に苦しむ傾向がある。別の選択肢として、ドーパミンアゴニスト(例えば、アポモルフィン、ロチゴチン)が線条体におけるドーパミンと受容体との正常な相互作用を模倣し、L-DOPAよりも長い半減期と、拍動しない効果を有する傾向があるが、効能は弱い。他方で、DBSは、典型的に、視床下核を刺激するために電極移植を伴い、これにより運動スコアを改善し、薬物への依存を減らすことができる。それにもかかわらず、電気刺激は本質的に非特異的であり、DBSの機構は未知であり、電極の有効性は長期的な異物応答の影響を受けることがある。DBS患者はまた出血、感染症、および精神医学的症状にもかかりやすいことがある。現行の処置法はまたPDの中心にあるドーパミン作動性ニューロンの死と線条体神経支配の喪失にも介入しない。患者の要望をよりよく満たす、パーキンソン病および他の神経系状態に対する新たな処置法が当技術分野において必要とされている。本開示は、この要望に対処する。
【発明の概要】
【0005】
概要
特に、本開示は、前もって形成された神経ネットワークを含む構築物であって、ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルを含む外側鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含む、マイクロカラム;およびマイクロカラムの内部にある複数のニューロンを含む、構築物を提供する。
【0006】
様々な態様では、前記構築物は生体適合性である。
【0007】
様々な態様では、前記構築物は、移植可能な構築物である。
【0008】
様々な態様では、ヒドロゲル鞘は円筒形である。
【0009】
様々な態様では、ECMコアはヒドロゲル鞘の内腔を実質的に満たしている。
【0010】
様々な態様では、マイクロカラムは、その長手方向の実質的にまっすぐな線に沿って方向付けられている。
【0011】
様々な態様では、マイクロカラムは、その長手方向の湾曲した通路に沿って方向付けられている。
【0012】
様々な態様では、複数のニューロンは、マイクロカラムの第1の末端の近くに実質的に局在する細胞体を有し、マイクロカラムの長さの少なくとも一部に沿って長軸方向に軸索を伸長する。
【0013】
様々な態様では、複数のニューロンは1つまたは複数の三次元凝集物を構成する。
【0014】
様々な態様では、軸索は、ヒドロゲル鞘の内部に配置され、ヒドロゲル鞘の内腔に沿って第1の末端にあるニューロンから反対側の末端に向かって長軸方向に伸長する。
【0015】
様々な態様では、軸索はコアのECMを通って成長し、かつ/またはヒドロゲル鞘の内面とコアのECMとの間にある境界面に沿って成長する。
【0016】
様々な態様では、ニューロンとそれから伸長している軸索は、対象に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する。
【0017】
様々な態様では、対象はヒト対象である。
【0018】
様々な態様では、ニューロン細胞とそれから伸長している軸索は、ヒト対象の脳に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する。
【0019】
様々な態様では、ニューロン細胞とそれから伸長している軸索は、対象の脳における黒質と線条体の間の天然の軸索経路を模倣する細胞構造を有する。
【0020】
様々な態様では、軸索路はマイクロカラムを介して予め方向付けられるかまたは予め方向付けられている。
【0021】
様々な態様では、ニューロンは、それから伸長している軸索ととも、バイオファブリケーションによって作製された(biofabricated)マイクロ組織を形成する。
【0022】
様々な態様では、複数のニューロンの軸索はマイクロカラムの長さの少なくとも50%に沿って伸長する。
【0023】
様々な態様では、軸索はマイクロカラムの長さの少なくとも75%に沿って伸長する。
【0024】
様々な態様では、軸索はマイクロカラムの長さの90%に沿って伸長する。
【0025】
様々な態様では、マイクロカラムの外径は約500マイクロメートル~約2,500マイクロメートルである。
【0026】
様々な態様では、マイクロカラムの外径は約500~約1,500マイクロメートルである。
【0027】
様々な態様では、マイクロカラムの外径は約750~約1,000マイクロメートルである。
【0028】
様々な態様では、外径はヒドロゲル鞘の横断面の直径である。
【0029】
様々な態様では、外径は、ヒドロゲル鞘の横断面の直径であり、ヒドロゲル鞘上の任意の外側コーティングを含む。
【0030】
様々な態様では、マイクロカラムの内径は約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートルである。
【0031】
様々な態様では、マイクロカラムの内径は約250~約1,000マイクロメートルである。
【0032】
様々な態様では、マイクロカラムの内径は約500マイクロメートルである。
【0033】
様々な態様では、ECMは多糖を含む。
【0034】
様々な態様では、ECMは、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ラミニン、およびマトリゲルからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0035】
様々な態様では、ECMはコラーゲンを含む。
【0036】
様々な態様では、ECMは約0.1~10mg/mlの濃度のコラーゲンを含む。
【0037】
様々な態様では、ECMは約1mg/mlの濃度のコラーゲンを含む。
【0038】
様々な態様では、ECMはラミニンを含む。
【0039】
様々な態様では、ECMは約0.1~10mg/mlの濃度のラミニンを含む。
【0040】
様々な態様では、ECMは約1mg/mlの濃度のラミニンを含む。
【0041】
様々な態様では、ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルは、架橋された修飾ヒアルロン酸であるかまたはそれを含む。
【0042】
様々な態様では、修飾ヒアルロン酸はメタクリル化HA(MeHA)である。
【0043】
様々な態様では、ヒアルロン酸は約0.5~約20%wtのMeHAを含む。
【0044】
様々な態様では、ヒアルロン酸は3~5%のMeHAであるかまたはそれを含む。
【0045】
様々な態様では、修飾HAは、ノルボルネン修飾HA、アクリル化(acrylated)HA、マレイミドHA、およびヒドロキシエチルメタクリレートHAからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0046】
様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は、3D印刷されかつ光重合されたMeHAシリンダーである。
【0047】
様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は架橋内に1種類または複数種類の加水分解感受性化合物を含む。
【0048】
様々な態様では、1種類または複数種類の加水分解感受性化合物はエステルを含む。
【0049】
様々な態様では、1種類または複数種類の加水分解感受性化合物は、乳酸、カプロラクトン、または無水物を含む。
【0050】
様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は、1種類または複数種類の加水分解感受性化合物が添加されているメタクリル化ヒアルロン酸を含む。
【0051】
様々な態様では、1種類または複数種類の加水分解感受性化合物はHAとメタクリレート基の間に配置されている。
【0052】
様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は1つまたは複数のジチオールペプチドを含む。
【0053】
様々な態様では、1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部は切断に対して感受性である。
【0054】
様々な態様では、1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部は、細胞によって発現されるマトリックスメタロプロテアーゼによる切断に対して感受性である。
【0055】
様々な態様では、複数のニューロンはドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0056】
様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも50%はドーパミン作動性ニューロンである。
【0057】
様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは精製によって得られる。
【0058】
様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは中脳ドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0059】
様々な態様では、中脳ドーパミン作動性ニューロンはA9ニューロンを含む。
【0060】
様々な態様では、複数のニューロンはGABA作動性ニューロンを含む。
【0061】
様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも50%はGABA作動性ニューロンである。
【0062】
様々な態様では、GABA作動性ニューロンは精製によって得られる。
【0063】
様々な態様では、複数のニューロンはグルタミン酸作動性ニューロンを含む。
【0064】
様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも50%はグルタミン酸作動性ニューロンである。
【0065】
様々な態様では、グルタミン酸作動性ニューロンは精製によって得られる。
【0066】
様々な態様では、複数のニューロンはコリン作動性ニューロンを含む。
【0067】
様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも50%はコリン作動性ニューロンである。
【0068】
様々な態様では、コリン作動性ニューロンは精製によって得られる。
【0069】
様々な態様では、複数のニューロンは中脳ニューロンを含む。
【0070】
様々な態様では、複数のニューロンはヒトニューロを含む。
【0071】
様々な態様では、ヒトニューロンは人工多能性幹細胞(iPSC)由来ニューロンを含む。
【0072】
様々な態様では、複数のニューロンはヒトヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0073】
様々な態様では、ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンは幹細胞由来ヒトヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0074】
様々な態様では、ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンの由来元である幹細胞が人工多能性幹細胞(iPSC)である。
【0075】
様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも50,000個のニューロンを含む。
【0076】
様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも100,000個のニューロンを含む。
【0077】
様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも125,000個のニューロンを含む。
【0078】
様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも500,000個のニューロンを含む。
【0079】
様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも1,000,000個のニューロンを含む。
【0080】
様々な態様では、マイクロカラムの長さは約2~約5センチメートルである。
【0081】
様々な態様では、複数のニューロンの軸索は、マイクロカラムの長手方向に約2~約5センチメートルの距離、伸長する。
【0082】
様々な態様では、マイクロカラムは、対象の黒質(SN)領域および線条体領域を包含する投射経路に沿った移植に適合されている。
【0083】
様々な態様では、SN領域は腹外側SN領域である。
【0084】
様々な態様では、線条体領域は背側線条体領域である。
【0085】
様々な態様では、対象はヒト対象である。
【0086】
様々な態様では、ニューロンは、ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含み、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーによって測定された場合に少なくとも50nMのドーパミン放出を示す。
【0087】
様々な態様では、複数のニューロンは、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出し、かつ/または組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出するのに十分な量のドーパミン作動性ニューロンを有する。
【0088】
様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは、対象において移植後6週間以内に、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出する。
【0089】
様々な態様では、複数のニューロンは正常値の約50~60%のレベルで対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす。
【0090】
様々な態様では、ニューロンは、対象に移植されると正常値の約50~60%のレベルで対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす。
【0091】
様々な態様では、正常値の約50~60%のレベルの増加が達成される。
【0092】
別の局面において、本開示は、前もって形成された神経ネットワークを含む構築物を製造する方法であって、
(a)マイクロカラムの第1の末端に複数の神経前駆細胞および/またはドーパミン作動性ニューロンを播種する工程;ならびに
(b)マイクロカラムとその中に播種された複数の神経細胞とをインビトロで培養する工程
を含む、方法を提供する。
【0093】
様々な態様では、前記構築物は生体適合性構築物である。
【0094】
様々な態様では、前記構築物は、移植可能な構築物である。
【0095】
様々な態様では、前記構築物は、インビトロテストベッドにおいて使用するためのものである。
【0096】
様々な態様では、工程(b)は、マイクロカラムの長手方向にマイクロカラムの反対側の第2の末端に向かって神経細胞からの軸索の成長を引き起こすことを含む。
【0097】
様々な態様では、前記方法は、
(c)複数の神経細胞からの軸索成長が特定の長さに達していると判定する工程、ならびに
(d)達していると判定された軸索成長の特定の長さに応答して、移植のためにマイクロカラムを包装および/または提供する工程
を含む。
【0098】
様々な態様では、特定の長さは、予め決められた望ましい長さである。
【0099】
様々な態様では、特定の長さは約2~約5センチメートルである。
【0100】
様々な態様では、工程(c)は、マイクロカラムとその中にある神経細胞とを画像化することを含む。
【0101】
様々な態様では、工程(c)は、顕微鏡、高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)、染色、切片作製、または軸索密度の測定を介して画像化することを含む。
【0102】
様々な態様では、工程(a)でマイクロカラムに播種される複数の神経細胞は神経細胞凝集物を構成する。
【0103】
様々な態様では、神経細胞凝集物は、複数の、ほぼ球形の神経細胞凝集物を含む。
【0104】
様々な態様では、それぞれの神経細胞凝集物は凝集物1つあたりニューロン約100,000~約300,000個の密度で細胞を含む。
【0105】
様々な態様では、複数の神経細胞凝集物は少なくとも500μmの直径を示す。
【0106】
様々な態様では、マイクロカラムは、ヒドロゲル鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含み、神経細胞はコアのECMと直接接触するように播種される。
【0107】
様々な態様では、ヒドロゲル鞘はMeHAを含む。
【0108】
様々な態様では、マイクロカラムのヒドロゲル鞘は、3D印刷されたシリンダーである。
【0109】
様々な態様では、前記方法は、工程(a)の前にヒドロゲル鞘を3D印刷する工程を含む。
【0110】
様々な態様では、前記方法は、工程(a)の前の特定の分化期間にわたってヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を分化させ、それによって分化細胞を生成し、かつ、特定の分化期間にわたってiPSCを分化させた後に分化細胞を神経細胞として使用して工程(a)を実施する工程を含む。
【0111】
様々な態様では、前記方法は、約40dd後に、分化したiPSCをマイクロカラムに播種する工程を含む。
【0112】
様々な態様では、前記方法は、約11~約20dd後に、分化したiPSCをマイクロカラムに播種する工程を含む。
【0113】
様々な態様では、前記方法は、ドーパミン作動性前駆体運命が確立されてから、かつ細胞が通常再移植されさらに成熟された場合に、分化したiPSCをマイクロカラムに播種する工程を含む。
【0114】
様々な態様では、マイクロカラムおよびまたは細胞は、前記態様に記載された1つまたは複数の特徴を有する。
【0115】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載の構築物を含み、かつ、ニューロンの第1の集団およびそれから成長した軸索と;第1の集団とシナプスを形成したニューロンの第2の集団とをさらに含む、インビトロテストベッドを提供する。
【0116】
様々な態様では、ニューロンの第2の集団は線条体ニューロンを含む。
【0117】
様々な態様では、ニューロンの第1の集団が播種された末端とは反対側の構築物の末端に、ニューロンの第2の集団は播種される。
【0118】
様々な態様では、ニューロンの第1の集団からの軸索は、構築物の長手方向に構築物の第1の末端から長軸方向に伸長し、構築物の反対側の第2の末端に播種された第2の集団とシナプスを形成する。
【0119】
様々な態様では、第1の集団の細胞体は構築物の第1の末端のかなり近くに局在している。
【0120】
別の局面において、本開示は、対象において黒質と線条体との間の経路を形成するニューロンの集団を少なくとも部分的に置き換える方法であって、本明細書に記載の構築物を少なくとも1つ対象の脳に移植する工程を含む、方法を提供する。
【0121】
様々な態様では、前記方法は、対象の1つまたは複数の状態を寛解させる工程を含む。
【0122】
様々な態様では、1つまたは複数の状態を寛解させる工程は、対象の運動機能を回復させることを含む。
【0123】
様々な態様では、1つまたは複数の状態を寛解させる工程は、対象の疼痛を低減することを含む。
【0124】
様々な態様では、1つまたは複数の状態を寛解させる工程は、対象の振戦を低減することを含む。
【0125】
様々な態様では、前記方法は、1つの構築物の少なくとも一部を対象の黒質内に移植する工程を含む。
【0126】
様々な態様では、移植後に、構築物のニューロンは対象の脳において宿主ニューロンとシナプスを形成する。
【0127】
様々な態様では、構築物のニューロンとシナプスを形成する宿主ニューロンは、対象の背外側線条体中に中型有棘神経細胞(MSN)を含む。
【0128】
様々な態様では、対象はヒト対象である。
【0129】
様々な態様では、構築物を少なくとも1つ移植する工程は、MRIガイド下神経外科手術を使用する工程を含む。
【0130】
様々な態様では、構築物を少なくとも1つ移植する工程は、複数の構築物を移植することを含む。
【0131】
様々な態様では、複数の構築物を移植することは、複数の構築物を対象の脳の1つだけの半球に移植することを含む。
【0132】
様々な態様では、複数の構築物を移植することは、1つまたは複数の構築物を対象の脳のそれぞれの半球に移植することを含む。
【0133】
様々な態様では、前記方法は、1~3個の構築物を対象の脳のそれぞれの半球に移植することを含む。
【0134】
様々な態様では、第1の半球における移植は第1の外科手術を介して行われ、第2の半球における移植は、第2の外科手術を介して行われ、第1の外科手術とは異なる時点において行われる。
【0135】
様々な態様では、第2の外科手術は第1の外科手術の約6ヶ月後に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
本発明の内容および望ましい目的をさらに詳細に理解するために、添付の図面と共に考慮される以下の詳細な説明が参照される。図面では同様の参照文字が数枚の図を通して対応する部分を示す。
【
図1A】ヒアルロン酸に包まれた、ヒトの組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)の概念および現行の製作方法。
図1A:TE-NSPは、ヒトiPSCから得られたドーパミン作動性ニューロンの凝集物からなり、ヒドロゲルマイクロカラム容器の細胞外マトリックスコア全体を通して長い軸索投射を伸長する。
【
図1B】ヒアルロン酸に包まれた、ヒトの組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)の概念および現行の製作方法。
図1B:約40日後にドーパミン作動性ニューロンをヒトiPSCの底板中脳分化から入手した。選択された体積の解離細胞溶液をオーダーメイドのマイクロウェルに添加し、遠心分離し、一晩インキュベートしてニューロンの凝集物を形成した。
【
図1C】ヒアルロン酸に包まれた、ヒトの組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)の概念および現行の製作方法。
図1C:ニューロン分化と同時進行して、鍼療法用針が入っている毛細管の中にMeHA/光開始剤溶液を吸い込むことによってTE-NSP用のヒドロゲル容器を作製した。MeHAの模式図は修飾HA鎖を示し、メタクリレート基の二重結合を示した。次いで、UV光に曝露し、メタクリレート基の間で架橋を形成することで管の中にあるMeHA溶液をゲル化した。次いで、針と管を取り出して、MeHAヒドロゲルマイクロカラムを得た。MeHAヒドロゲルマイクロカラムのODとIDは、それぞれ、管と針の選択によって制御された。
【
図1D】ヒアルロン酸に包まれた、ヒトの組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)の概念および現行の製作方法。
図1D:前の工程は、マイクロカラムの内腔にコラーゲンとラミニンの溶液を添加および重合し、次いで、鋭利なピンセットを用いて凝集物を一端に播種した時に集中した。次いで、軸索成長を促進するために、構築物を望ましい時間にわたって培養した。
【
図1E】ヒアルロン酸に包まれた、ヒトの組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)の概念および現行の製作方法。
図1E:TE-NSPは、黒質(SN)と線条体との間の領域にまたがり、従って、黒質線条体路を回復するように移植することができる。これらの構築物は軸索を線条体まで伸ばし、PD処置に関連する領域とシナプスを形成し得る。さらに、凝集物の中にあるニューロンは、黒質線条体回路のループを効果的に閉じるように、SNに残っており、かつSNを調整している回路と統合し得る。
【
図2-1】
図2A~2N:MeHAに包まれたラットTE-NSPの成長、表現型、細胞構造、および機能性。
図2A:フォトレオロジープロファイルは、UV光に2分間曝露した後の3%MeHA溶液および5%MeHA溶液の貯蔵弾性率(G')および損失弾性率(G'')の変化を示す。
図2Bおよび2C:圧縮弾性率を応力対圧縮ひずみ曲線の勾配から計算した。データを平均±SEMで示した(
*P<0.05、
***P<0.001、
****P<0.0001)。
図2Dおよび2E:1%アガロース(n=7)、3%MeHA(n=13)、または5%MeHA(n=14)マイクロカラム(OD:398μm、ID:160μm、長さ:約0.5cm、コラーゲン+ラミニンコア)の中にあるラット胚腹側中脳凝集物によって伸長された神経突起成長の長さと速度を時間の関数として定量した。反復測定二元配置ANOVAによって、長さ(P=0.0002)および速度(P=0.0011)に対するバイオマテリアルの有意な効果ならびに長さと速度(P<0.0001)に対する時間の有意な効果が得られた。データを平均±SEMで示した(チューキー(Tukey)の多重比較検定から
*P<0.05、
**P<0.01;星印は、それぞれ、1%アガロースに対する3%MeHAおよび5%MeHAの有意差を示す;#は5%MeHAと3%MeHAとの比較を示し、P<0.05であった)。
図2F:14DIVでの代表的な3%MeHA TE-NSPの位相差画像。
図2G:軸索(β-チューブリンIII)、ドーパミン作動性ニューロン(チロシンヒドロキシラーゼ(TH))、および核(ヘキスト)に対して
図2Fにおいて構築物を染色した後の共焦点zスタックの最大値投影画像(maximum intensity projection)。
図2Hおよび2I:それぞれ、凝集物および軸索路領域のさらに高倍率の画像。
図2J:37DIVに、ラットTE-NSPの電気誘発性ドーパミン放出をFSCVで分析した。刺激用電極がまたがるニューロン凝集物に炭素繊維電極を挿入した。
図2K:ドーパミン放出に対するバイオマテリアル容器の効果を同じ時点で評価したが、有意差はなかった(P=0.6175)。
図2L~2N:1%アガロースならびに3%MeHAおよび5%MeHAの中にある構築物の濃度トレース(上)、ピーク放出時のサイクリックボルタモグラム(CV)(中央)、およびCVカラープロット(下)。黒色の棒は刺激時間を表している。約0.6Vでの特徴的な酸化電流および約-0.3Vでの還元電流から評価されるようにプロットはドーパミン放出を示している。スケールバー:
図2F:250μm;
図2G:200μm;
図2Hおよび2I:50μm。
【
図3】
図3A~3D:MeHAに包まれたラットTE-NSPの移植。
図3A:3%MeHA(OD:398μm、ID:160μm、長さ:0.6cm)に包まれ、成体雄ラットに2週間移植され、全てのニューロン(GFP)およびドーパミン作動性ニューロン(TH)に対して染色されたGFP+ラットTE-NSPの共焦点画像。
図3Bおよび3C:それぞれ、正しい送達投射経路を示す、線条体内の、およびSNpcに隣接するインプラントの領域の拡大図。
図3D:2週間後の、5%MeHA(OD:398μm、ID:160μm、長さ:0.6cm)に包まれている移植TE-NSPの切片。全てのニューロン(GFP)およびドーパミン作動性ニューロン(TH)に対して染色されている。スケールバー:
図3A:500μm;
図3Bおよび3C:200μm;
図3D:250μm。
【
図4-1】
図4A~4O:MeHAに包まれ、ラット移植に適した寸法で製作されたヒトTE-NSPにおける成長、細胞構造、およびドーパミン作動性表現型発現。
図4A:約41ddに凝集し、21DIVにわたってラミニンコーティング表面上で培養した、ヒトiPSCから得られたドーパミン作動性ニューロンの位相差画像。
図4B:ニューロン分散と凝集物からの神経突起外部成長を示した2D培養における一領域の拡大図。
図4C:軸索(β-チューブリンIII)、ドーパミン作動性ニューロン(TH)、および核(ヘキスト)を示した、24DIVでの染色されたヒトドーパミン作動性凝集物。
図4D~4F:それぞれ、8DIV、14DIV、および21DIVでの、同じ3%MeHAに包まれたヒトTE-NSP(OD:398μm、ID:160μm、長さ:0.57cm。約40ddに播種した)の位相差画像化。
図4G~4I:D~F中のTE-NSPの中心の拡大画像では神経突起密度の経時変化を観察することができる。
図4J~4K:3%MeHAを用いて構築され、40~43dd範囲で播種された独立した細胞バッチから作られた、ラットサイズのヒトTE-NSP(ID:160μm、長さ:約0.5cm)における、8DIV、14DIV、および21DIVでの神経突起成長の長さと速度の分布を表したボックスプロット(n=3)。
図4L~4M:それぞれ、23DIVおよび57DIVで、3%MeHAの中にあるヒトTE-NSPを軸索(β-チューブリンIII)、ドーパミン作動性ニューロン(TH)、および核(ヘキスト)に対して染色した。
図4N~4O:それぞれ、凝集物および軸索路領域を示す、Mの四角で囲んだ領域の高倍率画像。スケールバー:
図4Aおよび4C:500μm;
図4D~4F、
図4Lおよび4M:250μm;
図4B、4G、4H、4I、4N、および4O:100μm。
【
図5-1】
図5A~5J:MeHAヒドロゲルを用いて製作し、長さおよび直径をスケールアップしたヒトTE-NSP。43ddに播種した3%MeHAマイクロカラムの中にあるヒトTE-NSPを示した位相差画像。長さ約1cm。21DIVおよび42DIVで、それぞれ、
図5Aおよび
図5BのOD/ID: 700/300μm、
図5Eおよび5FのOD/ID: 973/500μm。
図5C、5D、5G、および5H:成長および密度の変化を経時的に示すように、中心の神経突起領域に対応する四角で囲んだ領域を拡大した。
図5Iおよび5J:神経突起成長の長さと速度を時間およびマイクロカラムのIDの関数としてプロットした。個々のデータ点を示し、星印のついた平均±SEMは同じIDの8DIVでの値と比べて統計的に有意な差を示す(チューキーの多重比較検定から
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001)。スケールバー:
図5A、5B、5E、および5F:500μm;
図5Cおよび5D:100μm;
図5Gおよび5H:200μm。
【
図6-1】
図6A~6E:誘発性ドーパミン放出および線条体ニューロンとの同時培養の点から見た、MeHAに包まれたヒトTE-NSPの機能性。
図6Aおよび6B:それぞれ、29DIV(約70dd)および57DIV(約100dd)において異なる構築物から測定した時の3%MeHA TE-NSP(ID:160μm、長さ:約0.5cm)の中にあるヒトドーパミン作動性凝集物の内部での電気誘発性ドーパミン放出を示す濃度トレースおよびCV。電気刺激の時間を黒色の棒で表した。濃度プロファイルに対するL-DOPAによる灌流の効果も示した。最大放出時のCV(中央)および時間全体を通したCVのカラープロット(下)によって放出分子のドーパミン作動性同一性が確かめられた。CVにおいて、約0.65Vでのピーク酸化電流および約-0.3Vでのピーク還元電流の特徴的なシグナルが観察された。酸化電流はカラープロットでもy軸にある300ポイントの印の近くにある領域として見られた。
図6C:7DIVに他方のマイクロカラム末端にラット線条体ニューロン凝集物を播種した、28DIV(71dd)でのヒトTE-NSP(OD:700μm、ID:300μm、長さ:約1cm)の位相差画像。
図6Dおよび6E:それぞれ、ヒトドーパミン作動性軸索と、線条体標的から出ている神経突起に対する物理的近接を示したTE-NSP領域の拡大図。スケールバー:
図5C:500μm;
図5Dおよび5E:250μm。
【
図7-1】
図7A~7M:ヒトスケールTE-NSPにおける成長の特徴決定および最適化。
図7A、7Eおよび7I:少数(26,550個のニューロン;n=3)、中程度の数(53,100個のニューロン;n=4)、および多数(106,200個のニューロン;n=3)のニューロンを有するヒトドーパミン作動性凝集物を、内径が500umであり、長さが約1cmの3%MeHAヒドロゲルマイクロカラム上に播種し、経時的に画像化した。
図7B~7D、7F~7Hおよび7J~7L:それぞれ、
図7A、7E、および7Iの画像中の四角で囲んだ領域のさらに高倍率の画像。多数のニューロンを有する凝集物を有するマイクロカラム内腔において、より長い成長と神経突起密度を示す。
図7M:これらのヒトスケールTE-NSPの神経突起成長の長さおよび速度を経時的に測定した。時間および細胞数はどちらの場合でも有意な効果を有する(p<0.0001)。データを平均+SEMで示した(多重比較を説明する)。
【
図8-1】
図8A~8E:ヒトスケールTE-NSPの構造の免疫組織化学的評価。
図8A~8C:ニューロン/軸索(Tuj1/b-チューブリンIII)、ドーパミン作動性表現型(TH)、および核(ヘキスト)を観察するために、#DIVで、それぞれ、細胞数が少ない、中程度の、および多い凝集物を有するTE-NSPを染色した。
図8Dおよび8E:C中の構築物の細胞構造をより良く観察するための、これらの構築物の凝集物および軸索路領域のズームイン。
【
図9A】電気誘発性ドーパミン放出に基づいたTE-NSPの機能的特徴決定および最適化。
図9A:#日後に、分析前に撮影した、この高細胞数TE-NSP画像に示したように、凝集物と軸索路領域において同時に刺激・記録することによって構築物を分析した。
【
図9B】電気誘発性ドーパミン放出に基づいたTE-NSPの機能的特徴決定および最適化。
図9B:3つの構築物群および両方の分析領域の代表的な電流/濃度トレースおよびサイクリックボルタモグラム。刺激直後にトレースは濃度のピークを示し、これらのピーク時のサイクリックボルタモグラムは一般的にドーパミンの酸化電圧である約0.6Vでピークを示す。
【
図9C】電気誘発性ドーパミン放出に基づいたTE-NSPの機能的特徴決定および最適化。
図9C:誘発性ドーパミン濃度の定量によって、少ない群および中程度の群と比較して、細胞数の多い構築物の中にある凝集物において放出は有意に多いが、軸索路領域では差がないことが分かる。データを平均+SEMで示した(
*p<0.05、
**p<0.01)。
【
図10-1】
図10A~10I:TE-NSPおよび線条体凝集物を用いたインビトロでの黒質線条体路の再現および特徴決定。
図10Aおよび10B:#DIVでの線条体凝集物が無い単方向性TE-NSPと、ラット線条体凝集物がドーパミン作動性凝集物とは反対側の内腔末端に播種された#DIVでの双方向性TE-NSPの代表的な位相差画像。
図10Cおよび10D:それぞれ、
図10Aおよび10B中の四角で囲んだ領域のさらに高倍率の画像は、ドーパミン作動性凝集物から同じ距離で神経突起成長および密度を示す。
図10Eおよび10F:神経突起成長の長さおよび速度を、それぞれ、少ない細胞数および中程度の細胞数を用いたドーパミン作動性凝集物がある単方向性TE-NSPおよび双方向性TE-NSP(内径500um、長さ1cm)において定量した。データを平均+SEMで示した(stats)。
図10G:FSCVを用いて、#DIV範囲で位相差画像に示した領域における刺激と記録によって、双方向性TE-NSPの機能性と、双方向性TE-NSPが線条体標的においてドーパミンを放出する能力を評価した。
図10H:双方向性TE-NSPのドーパミン作動性凝集物、軸索路、および線条体末端にある軸索における濃度トレースおよびサイクリックボルタモグラムの例。
図10I:単方向性TE-NSPと双方向性TE-NSPの間の誘発性ドーパミン放出の比較によって群間で有意差はないことが分かる。データを平均+SEMで示した。
【
図11】
図11A~11B:線条体凝集物と接続しているヒトドーパミン作動性軸索路を含む双方向性TE-NSPの細胞構造。
図11A:#DIVで線条体ニューロン(DARPP-32)、ドーパミン作動性ニューロン(TH)、および核(ヘキスト)に対して染色した、細胞数が多いヒトドーパミン作動性凝集物とラット線条体凝集物を含む双方向性TE-NSPの最大値投影画像を示した共焦点画像。
図11B:線条体凝集物領域の高倍率画像から、これらのニューロンはTH+ドーパミン作動性軸索と物理的に統合されていることが分かる。
【
図12】
図12A~12B:概念図は、それぞれ、黒質線条体路の健常な外観および病気にかかった外観を示す。健常状態では、黒質におけるA9ドーパミン作動性ニューロンによって投射された軸索線維は、運動回路を正しく調節するのに必要なドーパミンを供給するように線条体を神経支配する。黒質と線条体にまたがる、これらの軸索線維は黒質線条体路として知られる。パーキンソン症候群の状態では、A9ニューロンの有意な喪失と黒質線条体線維の変性があり、それが線条体の脱神経とそのドーパミン入力の枯渇につながる。
【
図13A】ヒト脳における黒質線条体線維の再構築。
図13A:ヒト脳において黒質線条体路の軸索線維を修復しようとする戦略の設計基準の概要。
【
図13B】ヒト脳における黒質線条体線維の再構築。
図13B:ヒト黒質線条体線維の構造と、PDの運動症状に関連する、黒質と線条体における領域の場所を提示したMRI研究およびDTI研究からひらめきを得た概念図。この画像は、PDの原因の一部に対処するために、ニューロンと軸索の細胞構造を回復させる必要がある領域を示している。
【
図13C】ヒト脳における黒質線条体線維の再構築。
図13C:変性した黒質線条体路を置き換えかつ再構築している、組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)を示した、ヒト脳における軸索経路のトラクトグラフィー再現。TE-NSPは、後の移植のために完全にインビトロで製作され、天然の黒質入力との統合を促進するためにドーパミン作動性ニューロン凝集物を包むヒドロゲルを特徴とする構築物である。凝集物はまた、黒質線条体線維の構造を模倣し、線条体を神経再支配してドーパミンを回復させ、従って、脳における運動回路のループを閉じることができる軸索路を伸長する。
【
図14-1】
図14A~14D:黒質線条体路に沿ったMeHAヒドロゲルカラムおよびアガロースヒドロゲルカラムの移植に対するラット脳応答。
図14A~14C:宿主応答を評価するために、1%アガロースを用いて製作した無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(OD:345μm、ID:160μm、長さ:約0.5cm)(n=3)、3%MeHAを用いて製作した無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(OD:345μm、ID:160μm、長さ:約0.5cm)(n=5)、および5%MeHAを用いて製作した無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(OD:345μm、ID:160μm、長さ:約0.5cm)(n=5)を無胸腺ラットの黒質線条体路に沿って6週間移植した。宿主細胞死の程度およびマイクロカラム周囲の炎症応答を判定するために、インプラント投射経路と直交する切片をニューロン(NeuN)、星状細胞(GFAP)、および小グリア(IBA1)に対して染色した。
図14D:注射側でのNeuN+細胞の数ならびにIBA1+およびGFAP+細胞の染色強度を対側に対して基準化し、
図14A~14Cの右端の画像において観察されるように、インプラントの縁端部から0~50μm、50~100μm、100~150μm、および150~200μmに位置する4つの異なる層で定量した。二元配置ANOVA検定から、NeuN+数の場合には層の距離(p<0.0001)、ならびにIBA1強度の場合には層の距離およびバイオマテリアルタイプ(p=0.0183、p=0.0256)、GFAP強度の場合には層の距離およびバイオマテリアルタイプ(p<0.0001、p=0.0059)の有意な効果が示された。データを平均±SEMで示した(50μm層においてGFAPについて3%MeHAと5%MeHAとの間で
**p<0.01)。スケールバー:100μm。
【
図15-1】
図15A~15G:インビトロでのMeHAヒドロゲルに包まれたラットスケールヒトTE-NSPの細胞構造および成長プロファイル。
図15A:ヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンを39~44ddに凝集させ、ラミニンコーティング表面上で培養した。軸索(β-チューブリンIII)、ドーパミン作動性ニューロン(TH)、および核(ヘキスト)に対して染色した1つの凝集物を24DIVに示した。
図15B、15C:3%MeHAの中にあるヒトTE-NSP(OD:345μm、ID:160μm、長さ:5~6mm)を、それぞれ、23DIVおよび57DIVに、軸索(β-チューブリンIII)、ドーパミン作動性ニューロン(TH)、および核(ヘキスト)に対して染色した。
図15D、15E:
図15C中の四角で囲んだ領域の、それぞれ、凝集物および軸索路を示した高倍率画像。
図15F:3%MeHAマイクロカラムの中にあるヒトTE-NSP(OD:345μm、ID:160μm、長さ:5~6mm)の神経突起成長の長さおよび速度を、7DIV、14DIV、および21DIVに比較した(それぞれ、n=28、28、14)。一元配置ANOVAから成長の長さに対して時間の有意な効果が示されたが(p<0.0001)、成長速度について示されなかった(p=0.1068)。
図15G:成長の長さおよび速度に対するバイオマテリアル組成物の効果を、3%MeHA(n=14)または5%MeHA(n=16)ヒドロゲルマイクロカラムで作製したヒトTE-NSPの1つのバッチを用いて特徴決定した。時間は有意な効果を有したが(p<0.0001)、バイオマテリアルは長さ(p=0.5051)および速度(p=0.4056)に対して有意な効果を有さなかった。データを平均±SEMで示した(チューキーの多重比較検定から
****p<0.0001)。スケールバー:図>15A:500μm;15B、15C 250μm;15D、15E 100μm。
【
図16】
図16A~16B:インビトロでのヒトTE-NSPにおけるヒト神経表現型および中脳ドーパミン作動性表現型の発現。
図16A:ヒトニューロン/軸索(hNCAM)、ドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)、および核(ヘキスト);
図16B:A10(カルビンジン(calbindin))およびA9(GIRK2)ドーパミン作動性表現型を視覚化するために、3%MeHAヒドロゲルに包まれたヒトTE-NSP(OD:345μm、ID:160μm)を染色した。スケールバー:
図16A:250μm;16B:150μm。
【
図17A】
図17A~17G:インビトロでのヒトTE-NSPにおける誘発性ドーパミン放出の評価。
図17A:凝集物および軸索における刺激用電極および作用(炭素繊維)電極の配置を示す、28~30DIVでのラットスケールヒトTE-NSPの代表的な画像。
図17B、17C:それぞれ、3%MeHAおよび5%MeHAに包まれたTE-NSPのピーク放出時の代表的な濃度トレースおよびサイクリックボルタモグラム。黒色の棒は電気刺激の瞬間を表している。ボルタモグラムにおけるドーパミンの化学シグネチャーは、約0.6Vでの電流ピークと-0.3Vでの電流トラフに対応する。
図17D:凝集物および軸索路においてドーパミン放出をヒドロゲル組成の関数として定量した(3%MeHA:n=4;5%MeHA:n=4)。二元配置ANOVAから、記録/刺激領域およびバイオマテリアルにはドーパミン濃度に対して有意な効果がないことが示唆された(それぞれ、p=0.3845およびp=0.5067)。
図17E:本発明者らはまた、ID500μmの3%MeHAマイクロカラムの内部にあるドーパミン作動性凝集物とは反対側の末端に、ラット胚線条体ニューロンの凝集物を有するヒトTE-NSPも製作した。位相画像は、ドーパミンを測定するために34~35DIVに使用した代表的な構築物を示す。
図17F:1つの双方向性TE-NSPの代表的な濃度トレースおよびサイクリックボルタモグラム。
図17G:刺激後のドーパミン濃度をドーパミン作動性凝集物、軸索路、および線条体末端にある軸索において定量した(n=3)。一元配置ANOVAから、記録/刺激領域が原因で濃度の有意差は示されなかった(p=0.7746)。スケールバー:
図17A:250μm;
図17E 500μm。
【
図18】
図18A~18B:インビトロでのヒトTE-NSPからのドーパミン作動性軸索による線条体凝集物の神経支配。
図18A:ドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)、MSN(DARPP-32)、および核(ヘキスト)に対して染色した、35DIVでのラット線条体凝集物を有する、スケールアップしたヒトTE-NSP(OD:973μm、ID:500μm、長さ:約1cm)の共焦点画像。
図18B:線条体凝集物のドーパミン作動性神経支配を証明する、四角で囲んだ領域の高倍率画像。スケールバー:250μm。
【
図19-1】
図19A~19H:PDラットモデルに12週間間移植した後のヒトTE-NSPにおけるニューロン生存の組織学的評価。
図19A:透明化し、ドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)およびヒトニューロン(hNCAM;緑色)に対して染色した、3%MeHAヒトTE-NSPを12週間移植した厚い脳切片の1つのz面の共焦点画像。
図19B、19C:2つの異なるz面における凝集物の拡大図。構築物への、いくらかの宿主内部成長 (TH+/hNCAM-)と黒質領域へのTE-NSP外部成長(hNCAM+)を示す。
図19D:完全な細胞構造を示すために様々なz面から再構築したTE-NSPの拡大図。
図19E:軸索路をズームインすることで、移植して12週間後に、これらが維持されていたことが証明される。
図19F:移植前の17DIVにおける、凝集物面積を示した、
図19A~19E中のTE-NSPの位相差画像。
図19G:TE-NSPの中にある凝集物の面積を外科手術前と12週間後に定量した。
図19H:外科手術前面積と比べた12週間での面積の平均パーセント(±標準偏差)を細胞保存の尺度として計算した(n=5)。同じTE-NSPを示すために
図19Gおよび19H中の1つ1つの点を対応させた。スケールバー:図:19A:500μm;19B、19C:200μm;19D:250μm;19E:125μm;19F:100μm。
【
図20-1】
図20A~20N:PDラットモデルに移植して12週間後のTE-NSPにおける軸索保存および線条体神経支配の組織学的評価。
図20A~20C:12週間後に、移植されたヒトTE-NSP(OD:345μm、ID:160μm、長さ:5~6mm;組織学の場合はn=5)を含む厚い矢状切片を透明化し、ドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)に対して染色した。画像は、構築物の約260μmの厚みにまたがる個々のz面を示す。
図20D:いくつかのz面からの
図20A~20Cにおける完全長TE-NSPの再構築。
図20E~20G:それぞれ、構築物の黒質末端、保存された内側軸索路、および線条体の近くにある軸索終末を示したズームイン。
図20H:比較として無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(同じ寸法;n=3)も移植した。画像は、TH染色(赤色)がある1枚のz面を示す。
図20I:完全長無細胞マイクロカラムの合成画像。
図20J、20K:それぞれ、無細胞マイクロカラムの黒質末端よび線条体末端の拡大図。
図20L、20M:それぞれ、修復なし群(n=3)および外科手術の12週間後の脳の(病変がない)対側の代表的なz面であり、TH(赤色)に対して染色した。
図20N:TH+神経支配を有する線条体の面積のパーセントを、3つのROI:線条体全体(上)、背側線条体(中央)、および移植構築物の末端の近くにある線条体縁端部(下)にまたがる線条体神経再支配の代理として使用した(TE-NSP:n=5;無細胞/修復なし:n=5;対側:n=4)。対側を考慮に入れずに、独立t検定は、TH+面積に対する修復タイプの効果について以下のp値:それぞれ、各ROIについて0.3382、0.0040、および0.0237を示した。データを平均±SEMで示した(
*p<0.05、
**p<0.01)。スケールバー:
図20A~20D。20H、20L、20M:500μm;20E:100μm;20F~20G:125μm;20H~20K:250μm。
【
図21-1】
図21A~21G:TE-NSP移植後の病変のあるラットにおける線条体ドーパミンレベルの評価。12週間後の、脳の病変のある、移植された側からの切片とエクスビボFSCVを用いて、線条体におけるドーパミン放出を機能的アウトカムとして用いた。画像は、TE-NSPがある代表的な切片を示す。
図21A:切片作製直後、
図21B:FSCV記録用チャンバーに移した後、
図21C:マイクロカラム末端の近くの領域中の線条体に刺激用電極および炭素繊維電極を配置した。マイクロカラムと記録/刺激領域を白色の丸で囲んだ。
図21D~21F:代表的な濃度トレースおよびピーク放出時のサイクリックボルタモグラム。それぞれ、TE-NSPの線条体(n=3)、無細胞(n=2)、および修復なし(n=2)の群における誘発性ドーパミン放出の程度を示す。
図21G:TE-NSP移植の12週間後に線条体において放出されたドーパミンの濃度を、無細胞群と修復なし群の組み合わせと比較した(P=0.0396, t検定)。データを平均±SEMで示した(
*p<0.05)。
【
図22】
図22A~22C:インビトロでのヒトスケールTE-NSPにおける長距離ドーパミン作動性軸索路。
図22A:5.3×10
4個のニューロンのある凝集物と1.5cm長のドーパミン作動性軸索路を有し、85DIVで固定し、ニューロン/軸索(β-チューブリンIII/Tuj1)、ドーパミン作動性ニューロン(TH)、および核(ヘキスト)に対して染色したヒトTE-NSP。
図22B~22C:それぞれ、ドーパミン作動性凝集物および軸索路領域のさらに高倍率。スケールバー:
図22A:500μm;22B、22C)250μm。
【
図23】PDの無胸腺ラットモデルにおける6ヶ月間の黒質線条体路に沿ったスケールアップTE-NSPの移植。スケールアップしたヒトTE-NSP(OD:556μm、ID:300μm、長さ:5~6mm)を移植して6ヶ月後の、6-OHDAによって病変のある無胸腺ラットの矢状脳切片の共焦点画像。切片を光学的に透明化し、ヒト(hNCAM)およびドーパミン作動性(TH)ニューロンおよび軸索に対して免疫標識した。画像は、移植TE-NSPを含む切片の厚みをカバーするz面の最大値投影画像である。構築物の下の方の末端は、移植TE-NSPの残りとその関連する成長とは異なるz面に位置していた。下の方の末端はここでは目に見えない。なぜなら、起こり得る抗体浸透問題の結果として、その低下した染色強度がz面の圧縮後に不明瞭になったからである。線条体は画像の右側にあるのに対して、黒質領域は左下側にある。スケールバー:500μm。
【
図24】
図24A~24C:PDの無胸腺ラットモデルに移植して6ヶ月後のヒトTE-NSP内部での長い軸索路の保存。
図24A:ここで、本発明者らは前の図からのTE-NSPに焦点を当て、構築物の軸索路領域を含む、異なるz面で構成される合成画像を作成した。本発明者らの移植されたヒトニューロンおよび軸索(hNCAM)ならびにドーパミン作動性組織(TH)を標識するように組織を染色した。
図24B、24C:それぞれ、TE-NSPの末端の周囲にある線条体領域および構築物の内部にある組織の細胞構造の拡大図。スケールバー:
図24A:250μm;24B、24C:125μm。
【
図25】
図25A~25B:PDの無胸腺ラットモデルにおいて6ヶ月後の、移植されたスケールアップTE-NSPから線条体への外部成長。
図25A:ヒト神経組織(hNCAM)およびドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)に対して染色した、別の移植TE-NSPの連続した軸索路領域の共焦点画像。
図25B:58.6μm分だけ隔てられている連続したz面。TE-NSPの線条体末端と、背側線条体へのヒトドーパミン作動性投射の成長を示す。スケールバー:500μm。
【
図26】
図26A~26C:PDの無胸腺ラットモデルにおいて移植して6ヶ月後のスケールアップTE-NSPの生存および黒質領域への成長。
図26A:TH+ニューロンおよび軸索ならびにhNCAM+ニューロンおよび軸索に対して染色した1つのz面の共焦点画像。これは、移植TE-NSPの黒質末端から宿主脳への成長の存在を示している。
図26B、26C:組織形態を示す、このTE-NSP由来の2つの領域の拡大図。スケールバー:
図26A:500μm;
図26B、26C:125μm。
【
図27-1】
図27A~27D:PDの無胸腺ラットモデルにおいて6ヶ月後の線条体における、および移植TE-NSPの内部での誘発性ドーパミン放出。本発明者らは、電気刺激(黒色の棒)の後に放出されたドーパミン濃度の濃度トレース(左)、ならびにエクスビボFSCV測定からのピーク放出時のサイクリックボルタモグラム(中央)および経時的なサイクリックボルタモグラム(右)を含む代表的な結果を示す。
図27Aでは、移植TE-NSPの投射経路に沿った背側線条体の内側縁端部。
図27B:インプラント方向の背側線条体の内部;
図27C:移植TE-NSPの凝集物末端の内部;
図27D:TE-NSPの軸索路領域の内部。全ての場合で、刺激と記録を両方とも同じ領域で行った。
【発明を実施するための形態】
【0137】
定義
本発明は、以下の定義を参照することによって最も明確に理解される。
【0138】
特に文脈によってはっきりと規定されていない限り、本明細書で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は複数の指示を含む。
【0139】
具体的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する「約」という用語は、当技術分野において通常の許容差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差の範囲内だと理解される。「約」は、述べられた値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、または0.01%以内だと理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書において提供される全ての数値は、約という用語によって修飾される。
【0140】
本明細書および特許請求の範囲において使用する、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などの用語は、米国特許法において、これらの用語のものとみなされる意味を有することがあり、「含む(includes)」、「含む(including)」などを意味することがある。
【0141】
本明細書で使用する「バイオファブリケーションによって作製された」という用語は、生物学的な、生体適合性の、および/または生物からひらめきを得た成分に関連するように作製する、作り上げる、および/または組み立てるプロセスを指す。
【0142】
本明細書で使用する「シリンダー」または「円筒形の」という用語は、ある特定の直線と平行であり、かつある特定の曲線を通過する、複数の直線のそれぞれからなる表面を含む。一部の態様では、シリンダーは環状の外形を有する。他の態様において、シリンダーは、四角形、長方形、三角形、卵形、多角形、平行四辺形、ひし形、環形、三日月形、半円形、楕円、スーパー楕円(super ellipse)、デルタ形などからなる群より選択される横断面を有する。他の態様において、シリンダーは、例えば、複雑な内巻、らせん、分岐パターン、複数の筒形の導管、ならびに様々なフラクタル次数を含む、コンピュータ援用設計、3-D印刷、および/または分泌性生物(例えば、サンゴ)の定向進化アプローチにおいて実施することができる任意の数の形状を含むことがある、より複雑な三次元構造の出発点である。
【0143】
本明細書で使用する「マイクロ組織」という用語は、数百から数千マイクロメートルの少なくとも1つの寸法を有する、細胞およびバイオマテリアルの何らかの組み合わせを含む三次元構築物を意味する。
【0144】
本明細書で使用する「修飾ヒアルロン酸」という用語は、ヒドロゲルへのヒアルロン酸の架橋などがあるが、それに限定されるわけではない目的で、二糖反復単位の少なくとも一部に対して化学修飾されているヒアルロン酸を意味する。
【0145】
本明細書で使用する「シナプス」は、ニューロンと別の細胞との間にある接合部を指し、この接合部を横断して化学的連絡が流れる。
【0146】
本明細書で使用する「シナプスを形成した」は、1つまたは複数の細胞、例えば、別のニューロンまたは筋肉細胞と1つまたは複数のシナプスを形成したニューロンを指す。
【0147】
具体的に述べられていない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する「または(or)」という用語は包括的(inclusive)であると理解される。
【0148】
本明細書において提供される範囲は、この範囲内にある全ての数値の短縮表現と理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分領域(ならびに特に文脈によってはっきりと規定されていない限り、その一部)を含むと理解される。
【0149】
詳細な説明
前もって形成された神経ネットワーク
一局面において、本開示は、前もって形成された神経ネットワークを含む構築物であって、ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルを含む外側鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含む、マイクロカラム;マイクロカラムの内部にある複数のニューロンを含む、構築物を提供する。様々な態様では、前記構築物は生体適合性である。様々な態様では、前記構築物は、移植可能な構築物である。様々な態様では、ヒドロゲル鞘は円筒形であるか、または実質的に円筒形である。様々な態様では、ECMコアはヒドロゲル鞘の内腔を実質的に満たしている。様々な態様では、マイクロカラムは、その長手方向の実質的にまっすぐな線に沿って方向付けられている。様々な態様では、マイクロカラムは、その長手方向の湾曲した通路に沿って方向付けられている。
【0150】
様々な態様では、複数のニューロンは、マイクロカラムの第1の末端の近くに実質的に局在する細胞体を有し、マイクロカラムの長さの少なくとも一部に沿って長軸方向に軸索を伸長する。様々な態様では、複数のニューロンは1つまたは複数の三次元凝集物を構成する。様々な態様では、軸索はヒドロゲル鞘の内部に配置され、ヒドロゲル鞘の内腔に沿って第1の末端にあるニューロンから反対側の末端に向かって長軸方向に伸長し、一部の態様では、前記構築物の全長に沿って伸長し、第1の末端とは反対側の末端で終わり、他の態様では、第1の末端と反対側の末端との間の距離の一部を伸長する。様々な態様では、複数のニューロンの軸索はマイクロカラムの長さの少なくとも50%に沿って伸長する、マイクロカラムの長さの少なくとも75%に沿って伸長する、またはマイクロカラムの長さの90%に沿って伸長する。様々な態様では、軸索はコアのECMを通って成長し、かつ/またはヒドロゲル鞘の内面とコアのECMとの間にある境界面に沿って成長する。実施例1および2においてさらに説明されるように、一部の態様では、ヒドロゲル鞘の内面は、ECM内腔を通る軸索伸長を容易にする支持体となる。様々な態様では、ニューロン細胞とそれから伸長している軸索は、対象に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する。様々な態様では、対象は哺乳動物である。様々な態様では、対象はヒト対象である。様々な態様では、ニューロン細胞とそれから伸長している軸索は、ヒト対象の脳に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する。様々な態様では、ニューロン細胞とそれから伸長している軸索は、対象の脳における黒質と線条体の間の天然の軸索経路を模倣する細胞構造を有する。様々な態様では、軸索路はマイクロカラムを介して予め方向付けられるかまたは予め方向付けられている。様々な態様では、ニューロンは、それから伸長している軸索とともに、バイオファブリケーションによって作製されたマイクロ組織を形成する。
【0151】
様々な態様では、マイクロカラムの外径は約500マイクロメートル~約2,500マイクロメートルである。様々な態様では、マイクロカラムの外径は約500~約1,500マイクロメートルである。様々な態様では、マイクロカラムの外径は約750~約1,000マイクロメートルである。様々な態様では、外径はヒドロゲル鞘の横断面の直径である。様々な態様では、外径は、ヒドロゲル鞘上の任意の外側コーティングを含む、ヒドロゲル鞘の横断面の直径である。様々な態様では、マイクロカラムの内径は約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートルである。様々な態様では、マイクロカラムの内径は約250~約1,000マイクロメートルである。様々な態様では、マイクロカラムの内径は約500マイクロメートルである。様々な態様では、ECMは多糖を含む。様々な態様では、ECMは、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ラミニン、およびマトリゲルからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む。様々な態様では、ECMはコラーゲンを含む。様々な態様では、ECMは約0.1~10mg/mlの濃度のコラーゲンを含む。様々な態様では、ECMは約1mg/mlの濃度のコラーゲンを含む。様々な態様では、ECMはラミニンを含む。様々な態様では、ECMは、約0.1~10mg/mlの濃度のラミニンを含む。様々な態様では、ECMは約1mg/mlの濃度のラミニンを含む。
【0152】
ヒアルロン酸ヒドロゲル
様々な態様では、前記構築物の様々な態様に存在するヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルは修飾ヒアルロン酸(例えば、架橋された修飾ヒアルロン酸)であるかまたはそれを含む。様々な態様では、修飾ヒアルロン酸はメタクリル化HA(MeHA)である。様々な態様では、ヒアルロン酸は約0.5~約20%wtのMeHAであるかまたはそれを含む。様々な態様では、ヒアルロン酸は3~5%のMeHAであるかまたはそれを含む。様々な態様では、修飾HAは、ノルボルネン修飾HA、アクリル化HA、マレイミドHA、およびヒドロキシエチルメタクリレートHAからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む。様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は、3D印刷され、光重合されたMeHAシリンダーである。
【0153】
MeHAヒドロゲルは、望ましい機械的特性を生じる、分子量、マクロマー濃度、メタクリル化(methacrylation)度、および光照射時間の組み合わせを有するようにさらに最適化され得る。HAの分子量は、反応物の1つとして望ましい重量を有するHAを用いることで、メタクリル化プロセスの前に選択することができる。様々な態様では、HA酸は、約50kDa~約1.5MDaの範囲の分子量を有する。様々な態様では、HAの分子量は50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、1MDa、1.1MDa、1.2MDa、1.3MDa、1.4MDa、または1.5MDaである。
【0154】
メタクリル化度は、HAと無水メタクリル酸との間の反応の期間を減少または増加させることによって変更することができる。様々な態様では、HAメタクリル化度は約40%である。様々な態様では、HAメタクリル化度は約25%~100%である。
【0155】
マクロマー濃度は、光重合前に作り出されたヒドロゲル溶液中のMeHAのパーセントを指す。様々な態様では、MeHA濃度は約1%~約10%である。様々な態様では、MeHA濃度は約3%~約5%である。
【0156】
一部の態様では、ヒドロゲル特性は紫外線に曝露される時間の関数として変化する。従って、様々な態様では、ヒドロゲルの特性を調整するように曝露時間は変えられる。様々な態様では、全ての利用可能な架橋が形成されるまで、ヒドロゲルは紫外線に曝露される。様々な態様では、曝露時間は約5分である。様々な態様では、曝露時間は約1分、約2分、約3分、または約4分である。全体的に見て、分子量、メタクリル化度、マクロマー濃度、および光照射時間が大きいほど、堅く、ヒアルロニダーゼの存在下で分解するのが遅いMeHAヒドロゲルが生じる。MeHAに加えて、他のタイプの修飾HAを用いて他の架橋挙動および分解特性を付与することができる。例えば、HAヒドロゲルは、加水分解による増大した分解、またはペプチド架橋剤を用いたマトリックスメタロプロテアーゼ分解によって作製することができる。ヒドロゲル内にある様々な異なるタイプの架橋剤も特性を変えることができる。ラジカル光重合によって架橋されたMeHAヒドロゲルは、主に、ヒアルロニダーゼとして知られる酵素によって分解することができる。移植時に、ヒドロゲルが見出される環境には、意味ある分解が起こるのに必要な程度までヒアルロニダーゼがない場合がある。修飾されたメタクリレート、もしくはヒドロゲルをエステル加水分解に対して感受性にする他の化学基を用いて、または酵素分解性の架橋基を用いてHA鎖をつなぐために他のタイプの修飾HAが用いられる場合がある。これらの2つを用いれば有意な分解を起こすことが可能になるだろう。このような分解は、分解が遅くなるように、または速くなるようにヒドロゲルの架橋密度を調整することによって、上記で説明したように同じように調整することができる。様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は架橋内に1種類または複数種類の加水分解感受性化合物を含む。様々な態様では、1種類または複数種類の加水分解感受性化合物は、エステル、例えば、乳酸、カプロラクトン、または無水物を含む。様々な態様では、加水分解感受性部分は架橋中に組み込まれる。様々な態様では、架橋の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約90%、少なくとも約95%は加水分解感受性部分を含む。様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は、1種類または複数種類の加水分解感受性化合物が添加されているメタクリル化ヒアルロン酸を含む。様々な態様では、加水分解感受性化合物はHAとメタクリレート基との間に配置されている。様々な態様では、外側のヒドロゲル鞘は1つまたは複数のジチオールペプチドを含む。
【0157】
様々な態様では、前記構築物は様々な生化学的合図を宿主に提示する。様々な態様では、MeHAの、全てとは限らないが一部のメタクリレートを消費するために(非光ベースの)付加反応が行われる。様々な態様では、その後に光に曝露すると残りのメタクリレートが消費され、ゲルが架橋される。
【0158】
様々な態様では、HAはノルボルネン-HAである。様々な態様では、タンパク質または他のチオール含有分子は光への曝露によってノルボルネン-HAに架橋される。様々な態様では、タンパク質または他のチオール含有分子は、全てではないが一部のノルボルネンに連結される。これらの分子はノルボルネンを介してHAバックボーンに共有結合されるだろう。様々な態様では、ノルボルネンを架橋し、ヒドロゲルを形成するためにジチオールを有する架橋剤。NorHAは添加される。様々な態様では、1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部は切断に対して感受性である。様々な態様では、1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部は、細胞によって発現されるマトリックスメタロプロテアーゼによる切断に対して感受性である。様々な態様では、修飾HAは、マレイミドまたはアクリレート(acrylate)官能基をもつヒアルロン酸である。
【0159】
様々な態様では、増殖因子および薬物を、製作中にヒドロゲル溶液と混合することによって、受動的には、これらの分子を含有する培地中でヒドロゲルを膨張させることによって、またはこれらの分子をHA鎖と共有結合させることによってヒドロゲル鞘に詰め込むことができる。この場合、これらの分子はヒドロゲルの通常の分解プロセス中に放出することができ、分解速度が速くなることで放出が速くなる。前記で説明したように、前記構築物中にあるHAの分解速度を調整し、HAをヒアルロニダーゼ、加水分解、および/または細胞によって放出される酵素の作用に対して感受性にする、いくつかの手法がある。他の場合では、修飾HAは、機械的応力などのトリガーに応答して後で放出することができる、デキサメタゾンのような薬物を含有する構造に共有結合されている。HAは、近赤外光による照射後のナノ粒子放出薬物が、修飾HA中にある感受性のある結合の加水分解につながる光誘発性薬物放出について調査されている。ヘパリン結合ドメインを有する増殖因子の保持および徐放を可能にするために、修飾HAはヘパリンとも共有結合されたことがある。この場合、HAに付加された化学基にチオール化ヘパリンを結合することができ、ヘパリンの濃度とその分子量に応じて放出プロファイルを調整することができる。
【0160】
ニューロンのタイプ
様々な態様では、複数のニューロンはドーパミン作動性ニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%がドーパミン作動性ニューロンである。様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンはマイクロダイセクションを介して得られる。様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは幹細胞からの分化を介して得られる。様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは細胞選別または精製を介して得られる。様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは中脳ドーパミン作動性ニューロンを含む。様々な態様では、中脳ドーパミン作動性ニューロンはA9ニューロンを含む。
【0161】
様々な態様では、複数のニューロンはGABA作動性ニューロンを含む。様々な態様では、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%がGABA作動性ニューロンである。様々な態様では、GABA作動性ニューロンはマイクロダイセクションを介して得られる。様々な態様では、GABA作動性ニューロンは幹細胞からの分化を介して得られる。様々な態様では、GABA作動性ニューロンは細胞選別または精製を介して得られる。
【0162】
様々な態様では、複数のニューロンはグルタミン酸作動性ニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%がグルタミン酸作動性ニューロンである。様々な態様では、グルタミン酸作動性ニューロンはマイクロダイセクションを介して得られる。様々な態様では、グルタミン酸作動性ニューロンは幹細胞からの分化を介して得られる。様々な態様では、グルタミン酸作動性ニューロンは細胞選別または精製を介して得られる。
【0163】
様々な態様では、複数のニューロンはコリン作動性ニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%がコリン作動性ニューロンである。様々な態様では、コリン作動性ニューロンはマイクロダイセクションを介して得られる。様々な態様では、コリン作動性ニューロンは幹細胞からの分化を介して得られる。様々な態様では、コリン作動性ニューロンは細胞選別または精製を介して得られる。様々な態様では、複数のニューロンはドーパミン作動性でもGABA作動性でもグルタミン酸作動性でもコリン作動性でも中脳ニューロンを含む。
【0164】
ヒトスケール構築物
様々な態様では、複数のニューロンはヒトニューロンを含む。様々な態様では、ヒトニューロンは人工多能性幹細胞(iPSC)由来ニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンはヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む。様々な態様では、ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンは幹細胞由来ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む。ニューロンがA9ドーパミン作動性ニューロンを含み、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーによって測定された場合に少なくとも50nMのドーパミン放出を示す、前記請求項のいずれか一項記載の構築物。様々な態様では、複数のニューロンは、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出し、かつ/または組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出するのに十分な量のドーパミン作動性ニューロンを有する。様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンは、対象において移植後2週間以内に、4週間以内に、または6週間以内に、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出する。様々な態様では、複数のニューロンは、様々な態様では移植後約4週間以内、約6週間以内、または約8週間以内に、正常値の約50~60%または約80~100%のレベルで対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす。
【0165】
様々な態様では、本明細書に記載の構築物のニューロンは対象に移植されると、正常値の約50~60%のレベルで対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす。
【0166】
様々な態様では、A9ドーパミン作動性ニューロンの由来元である幹細胞は人工多能性幹細胞(iPSC)である。様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも50,000個のニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも100,000個のニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも125,000個のニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも500,000個のニューロンを含む。様々な態様では、複数のニューロンは少なくとも1,000,000個のニューロンを含む。
【0167】
様々な態様では、マイクロカラムの長さは約2~約5センチメートルである。様々な態様では、複数のニューロンの軸索は、マイクロカラムの長手方向に約2~約5センチメートルの距離、伸長する。様々な態様では、マイクロカラムは、対象の黒質(SN)領域および線条体領域を包含する投射経路に沿った移植に適している。様々な態様では、SN領域は腹外側SN領域である。様々な態様では、線条体領域は背側線条体領域である。様々な態様では、対象は哺乳動物である。様々な態様では、対象はヒト対象である。
【0168】
製造方法
別の局面において、本開示は、前もって形成された神経ネットワークを含む構築物を製造する方法であって、マイクロカラムの第1の末端に、ドーパミン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性、またはコリン作動性のニューロン前駆体またはニューロンからなる群より選択される複数の神経前駆細胞および/またはニューロンを播種する工程;ならびに、マイクロカラムとその中に播種された複数の神経細胞とをインビトロで培養する工程を含む、方法を提供する。様々な態様では、前記構築物は生体適合性構築物である。様々な態様では、前記構築物は、移植可能な構築物である。様々な態様では、前記構築物は、インビトロテストベッドにおいて使用するためのものである。様々な態様では、マイクロカラムとその中に播種された複数の神経細胞とをインビトロで培養する工程は、マイクロカラムの長手方向にマイクロカラムの反対側の第2の末端に向かって神経細胞からの軸索の成長を引き起こすことを含む。
【0169】
様々な態様では、さらに、前記方法は、複数の神経細胞からの軸索成長が特定の長さに達していると判定する工程、ならびに達していると判定された軸索成長の特定の長さに応答して、移植のためにマイクロカラムを(例えば、無菌のパッケージの中に入れて)包装および/または提供する工程を含む。様々な態様では、特定の長さは、予め決められた望ましい長さである。様々な態様では、特定の長さは約2~約5センチメートルである。様々な態様では、複数の神経細胞からの軸索成長が特定の長さに達していると判定する工程は、マイクロカラムとその中にある神経細胞とを画像化することを含む。様々な態様では、複数の神経細胞からの軸索成長が特定の長さに達していると判定する工程は、蛍光または他の顕微鏡、高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)、染色、切片作製、または軸索密度の決定を介して画像化することを含む。様々な態様では、マイクロカラムに播種される複数の神経細胞は神経細胞凝集物を含む。様々な態様では、神経細胞凝集物は、複数の、ほぼ球形の神経細胞凝集物を含む。様々な態様では、それぞれの神経細胞凝集物は凝集物1つあたりニューロン約100,000~約300,000個の密度で細胞を含む。様々な態様では、複数の神経細胞凝集物は少なくとも500μmの直径を示す。様々な態様では、マイクロカラムは、ヒドロゲル鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含み、神経細胞はコアのECMと直接接触するように播種されている。様々な態様では、ヒドロゲル鞘はMeHAを含む。様々な態様では、マイクロカラムのヒドロゲル鞘は、3D印刷されたシリンダーである。様々な態様では、前記方法は、マイクロカラムの第1の末端に播種する工程の前にヒドロゲル鞘を3D印刷する工程を含む。様々な態様では、前記方法は、特定の分化期間にわたってヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を分化させて分化細胞を生成し、特定の分化期間にわたってiPSCを分化させた後に、分化細胞を神経細胞として使用してマイクロカラムに播種する工程を含む。様々な態様では、前記方法は、約40dd後に、分化したiPSCをマイクロカラムに播種する工程を含む。様々な態様では、前記方法は、約11~約20dd後に、分化したiPSCをマイクロカラムに播種する工程を含む。様々な態様では、前記方法は、ドーパミン作動性前駆体運命が確立されてから、かつ細胞が通常再移植されさらに成熟された場合に、分化したiPSCをマイクロカラムに播種する工程を含む。
【0170】
インビトロテストベッド
様々な態様では、本開示は、本明細書に記載の構築物を含み、ニューロンの第1の集団およびそれから成長した軸索と、第1の集団とシナプスを形成した、ニューロンの第2の集団とを含む、インビトロテストベッドを提供する。様々な態様では、ニューロンの第2の集団は線条体ニューロンを含むか、または線条体ニューロンである。様々な態様では、ニューロンの第1の集団が播種された末端とは反対側の構築物末端に、ニューロンの第2の集団が播種される。様々な態様では、ニューロンの第1の集団からの軸索が構築物の長手方向に構築物の第1の末端から長軸方向に伸長し、構築物の反対側の第2の末端に播種された第2の集団とシナプスを形成する。様々な態様では、第1の集団の細胞体は構築物の第1の末端のかなり近くに局在している。
【0171】
処置方法
様々な態様では、本開示は、対象において黒質と線条体との間の経路を形成するニューロンの集団を少なくとも部分的に置き換える方法であって、本明細書に記載の構築物を少なくとも1つ対象の脳に移植する工程を含む、方法を提供する。理論に拘束されることを意味しないが、
図12A~12Dおよび13A~13Cに図示されるように、本明細書に記載の構築物を対象の神経系に移植すると、神経の変性または損傷に関連する様々な状態、非限定的な例としてパーキンソン病が処置される。従って、様々な態様では、前記方法は、対象の1つまたは複数の状態を寛解させる工程を含む。様々な態様では、1つまたは複数の状態を寛解させる工程は、対象の運動機能を回復させることを含む。様々な態様では、1つまたは複数の状態を寛解させる工程は、対象の疼痛を低減することを含む。様々な態様では、1つまたは複数の状態を寛解させる工程は、対象の振戦を低減することを含む。様々な態様では、前記方法は、1つの構築物の少なくとも一部を対象の黒質内に移植する工程を含む。様々な態様では、移植後に、構築物のニューロンは対象の脳において宿主ニューロンとシナプスを形成する。様々な態様では、構築物のニューロンとシナプスを形成する宿主ニューロンは、対象の背外側線条体中に中型有棘神経細胞(MSN)を含む。様々な態様では、対象はヒト対象である。様々な態様では、構築物を少なくとも1つ移植する工程は、MRIガイド下神経外科手術を使用することを含む。様々な態様では、構築物を少なくとも1つ移植する工程は、複数の構築物を移植することを含む。様々な態様では、複数の構築物を移植することは、複数の構築物を対象の脳の1つだけの半球に移植することを含む。様々な態様では、複数の構築物を移植することは、1つまたは複数の構築物を対象の脳のそれぞれの半球に移植することを含む。様々な態様では、1~3個の構築物が対象の脳のそれぞれの半球に移植される。様々な態様では、第1の半球における移植は第1の外科手術を介して行われ、第2の半球における移植は、第2の外科手術を介して行われ、第1の外科手術とは異なる時点において行われる。様々な態様では、第2の外科手術は第1の外科手術の約6ヶ月後に行われる。
【実施例】
【0172】
実施例1:
材料および方法:
MeHA合成および機械的な特徴決定
MeHAは、約40%のメタクリル化度となるように脱イオン水中でヒアルロン酸(Lifecore, 分子量)と無水メタクリル酸(Sigma, 276685)をpH8.5で約3.5時間エステル化することによって合成した。反応物を透析によって5~7日間精製し、生成物を凍結乾燥によって回収した。修飾の程度は、凍結乾燥MeHAの1H-NMRスペクトルにおいて糖の環を示す面積と比べた約5.8ppmおよび約6.3ppmにおける2つのビニルシングレット下の面積の積分から評価した。ゲル化キネティクスを研究するために、0.05%重量/体積(w/v)Irgacure 2959(I2959; Sigma, 410896)光開始剤を含むダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS; ThermoFisher, 14190136)に溶解してMeHA溶液を調製した。溶液を、固定されたプレートと、紫外線(UV)ランプ(Excelitas Technologies, OmniCure S1500)に取り付けたストレス制御式レオメーター(TA Instruments, AR2000)の外形の間に移した。0.5%ひずみと1Hz振動でタイムスイープを用いて、インサイチューで架橋を観察するために、10mW/cm2 UV光に2分間の曝露する前および曝露した後に貯蔵弾性率と損失弾性率を記録した。示したデータは、それぞれのヒドロゲルについて少なくとも2回のプロファイルを測った後の代表例である。ヒドロゲルを約4.78mmのシリンダー(n=5)でも成型し、0.2N/分の荷重速度(loading rate)で動的機械分析装置(TA Instruments, Q800)を用いて圧縮弾性率を応力対ひずみ曲線の勾配(10~20%領域)から計算した。
【0173】
ヒドロゲルマイクロカラムの製作
挿入された鍼療法用針(Lhasa OMS;外径:それぞれ、160μm、300μm、500μm)が入っているガラス毛細管(Drummond Scientific; 内径: 398、701、973μm)の中にMeHA溶液(DPBSに溶解した0.05%I2959を含む)を毛管作用によって吸い上げることによってMeHAマイクロカラムを作製した。針によってマイクロカラムの内径(ID)または内腔が作り出されると同時に、残りの空間は外径(OD)または外殻を形成した。次いで、それぞれの管の内部にある溶液を10mW/cm2 UVで、安定水準に達した機械的特性を得るのに十分な時間である5分の間にゲル化した。鍼療法用針を手作業で管から引き出し、ゲル化したマイクロカラムを内部に残した。管の直径に応じて20、23、または30ゲージ針(BD、305178、305120、305128)を用いて管からヒドロゲルを押し出してDPBSに入れることによって取り出した(
図1B)。マイクロカラムをUV光で30分間滅菌し、望ましい長さに切断した。アガロースマイクロカラムについては、DPBSに溶解したアガロース(Sigma, A9539)を加熱し、撹拌することによってアガロース溶液を作製し、次いで、冷却によってゲル化したことを除けば同じ手順に従った。細胞播種前の最終工程は、pH7.2~7.4のNeurobasal(ThermoFisher, 21103049)に溶解した1mg/mLラット尾I型コラーゲン(Corning; 354236)と1mg/mLマウスラミニン(Corning; 354232)で調製したECMで内腔を満たすことにあった。それぞれのマイクロカラムの周囲および内部からDPBSを吸引した後に、ECM溶液を、内腔に、その寸法に基づいて必要とされる体積を超えて添加し、37℃で15分間重合させた。新鮮な培養培地を、カラムが入っているディッシュに添加し、カラムの側面に付着した過剰なECMをピンセットで取り除き、マイクロカラムを播種まで37℃でインキュベートした。
【0174】
ニューロン細胞培養、凝集、および播種
以前に公表されたようにラットドーパミン作動性ニューロンを胎生14日目(E14)ラット子から単離した。妊娠中のスプラーグドーリーラット(Charles River)を二酸化炭素と断頭で安楽死させ、子を取り出し、ハンクス液(HBSS; ThermoFisher, 14175079)に入れた脳から腹側中脳を解剖した。組織をリンスし、アキュターゼ(ThermoFisher, A1110501)で37℃で10分間解離し、ピペットで粉砕した。200gで5分間遠心分離した後に、Neurobasal、2%B27(Invitrogen, 12587010)、1%胎仔ウシ血清(FBS; Sigma, F0926)、2mM Glutamax(ThermoFisher, 35050061)、0.3%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher, 15140122)、4ng/mLマウス組換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF; Fisher PMG0034)、および100μMアスコルビン酸(Sigma, A5960)を含む培地を用いて、細胞を1~2×106細胞/mLで再懸濁した。E18ラット子の線条体を単離および解離することによって、ラット胚線条体ニューロンを含む細胞溶液を同様に入手し、同じ培地中で培養した。場合によっては、インビボでの視覚化を容易にするために、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するようにラット腹側中脳ニューロンをウイルスによって形質導入した。これらの場合、ラットTE-NSPを、1/2000のpAAV1.hSyn.eGFP.WPRE.bHG(Addgene, 105539-AAV1)を含む培地と5DIVで一晩インキュベートし、翌日、培地を完全に交換した。
【0175】
C1.2ヒトiPSC株(継代22~35)は市販のBJ株(ATCC(登録商標)CRL-2522(商標))に由来した。底板中脳ドーパミン作動性誘導プロトコールに基づいて幹細胞を分化させた。iPSCをCF-1マウス胚線維芽細胞フィーダー細胞(Molecular Transfer, A34181)上で維持し、DMEM/F12(ThermoFisher, 11330032)、20% knockout serum replacement(KSR; ThermoFisher, 10828010)、1mM非必須アミノ酸(ThermoFisher, 11140076)、2mM Glutamax、0.1mMβ-メルカプトエタノール(ThermoFisher, 21985-023)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、および6ng/mL bFGF(R&D Systems, 233-FB-CF)を含有する胚性幹細胞(ESC)培地中で培養した。次いで、ヒトiPSCをアキュターゼで取り外し、DMEM/F12に溶解した1/20マトリゲル(Corning, 354234)でコーティングしたディッシュ上でESC培地と共に培養した。コンフルエントになったら、細胞を、DMEM/F12、15%KSR、2mM Glutamax、および10μMβ-メルカプトエタノール(KSR培地)に溶解した100nM LDN193180(ReprocellUSA, 04-0074)および10μM SB431542(ReprocellUSA, 04-0010-10)に曝露した。これらの2種類の化合物は、神経外胚葉への分化を誘導する二重SMAD阻害のために使用した。次いで、1ddに培地に100ng/mL sonic hedgehog(SHH; R&D Systems, 464SH025CF)および2μMパルモルファミン(ReprocellUSA, 04-0009)を加えた。3ddに、培地は、底板マーカーFOXA2および蓋板マーカーLMX1Aの同時発現に必要なWntシグナル伝達アクチベーターである3μM CHIR99021(ReprocellUSA, 04-0004)も含んだ。5ddから、培地を75%KSR培地および25%N2培地に交換した。N2培地の比率は2日ごとに25%増えた。N2培地は、L-グルタミンおよびHEPES(ThermoFisher, 11330-032)、55μM β-メルカプトエタノール、23.8mM重炭酸ナトリウム(Sigma, S5761)、0.156%w/v D-[+]-グルコース(Sigma, G7021)、22nMプロゲステロン(Sigma, P8783)、および1%N2 Supplement(Stem Cell Technologies, 07156)を含むDMEM/F12からなった。11ddに、2%B27、2mM Glutamax、200μMアスコルビン酸、20ng/mL GDNF(Fisher Scientific, 212GD050CF)、20ng/mL BDNF(Peprotech, 450-02)、1ng/mL TGFβ3(R&D Systems, 243B3002CF)、500μMジブチリルcAMP(Sigma, D0260)、および10μM DAPT(Fisher, 263410)を含むNeurobasalからなる分化培地を添加した後、ドーパミン作動性前駆体運命は確立された。20ddに二極性形態と密充填を確認した後に、アキュターゼを用いて細胞を持ち上げ、15μg/mLポリ-L-オルニチン(Sigma, P4957)および5μg/cm2ラミニンでコーティングしたディッシュ上で培養した。約40ddにアキュターゼを用いて細胞を取り外し、後で凝集させるために1×106細胞/mLで分化培地に再懸濁した。
【0176】
マイクロカラム播種のために、最初に、12ウェルプレートに入れられた3×3逆ピラミッド型マイクロウェルのオーダーメイドアレイの形をとる、それぞれのマイクロウェルに15μLを添加することによって、解離したドーパミン作動性ニューロンまたは線条体ニューロンを凝集させた。1,500rpmで5分間遠心分離した後に細胞は底に凝集物を形成し、その後、一晩インキュベートされた(
図1C)。次いで、凝集物をピペットで取り、切断し、マイクロカラム内腔の一端に入るように鋭利なピンセットを用いて挿入した(
図1D)。播種後に、マイクロカラムには、1つの凝集物につき、ID160μmの場合は約2,000~3,000個またはID500μmの場合は約8,000~10,000個の細胞があった。これらの播種されたマイクロカラムを37℃および5%CO
2で培養し、2~3日ごとに培地を交換した。断りのない限り、約7DIVにマイクロカラムの他の(何もない)末端に線条体凝集物を挿入した。
【0177】
TE-NSPの成長の特徴決定
1%アガロース(n=7)、3%MeHA(n=13)、および5%MeHA(n=14)について、1DIV、3DIV、7DIV、および10DIVにラットTE-NSP(OD:398μm;ID:160μm;長さ:約5mm)における神経突起成長の長さおよび速度に対するバイオマテリアル容器の効果を評価した。これらの寸法を有するヒトTE-NSPを、3%MeHAについても同様に8DIV、14DIV、および21DIV(それぞれ、3回の独立した測定についてn=10、4、2)に特徴決定した。3%MeHA中にあるスケールアップしたヒト構築物を成長測定のために8DIV、14DIV、21DIV、28DIV、および42DIVに画像化した(長さ:約1cm;700/300および973/500のOD/IDの組み合わせについて、それぞれ、n=4、3)。Fijiを用いて、位相差画像から、神経突起成長の長さを、凝集物の内側縁端部と、最も長い観察可能な神経突起の先端との間の距離として測定した。成長速度を、現在の時点と前の時点の神経突起の長さを用いた後退差分法によって見積もった。画像を、NIS Elementsソフトウェア(Nikon)と一体化したNikon Eclipse Ti-S顕微鏡およびQiClickカメラを用いて入手した。該当する場合には、群間の差があるかどうか反復測定二元配置ANOVAと事後チューキー多重比較検定を用いて結果を分析した。統計的有意性がある場合はP<0.05であった。
【0178】
TE-NSPのインビトロでの表現型および構造の特徴決定
TE-NSPの細胞構造ならびにニューロンおよびドーパミン作動性表現型の存在を免疫標識および共焦点画像化によって検証した。TE-NSPおよび他の培養物を、いくつかの時点:ラットTE-NSPの場合は14DIV;ヒトTE-NSPの場合は約21DIV、30DIV、および60DIVで染色した。培養物をDPBSに溶解した4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences, 15710)で35分間固定した。構築物全体を、4%ウマ血清(ThermoFisher, 16050122)に溶解した0.3%Triton X-100(Sigma, T8787)で1時間透過処理し、次いで、4%ウマ血清に溶解した一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。この研究に使用した一次抗体は、ドーパミン合成の律速反応における酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH; 1/500, ヒツジ, Abcam, ab113; 1/500, ウサギ, Pel-Freez Biologicals, P40101)と、ニューロン微小管タンパク質であるβ-チューブリンIII(1/500, マウス, Sigma, T8578)を含んだ。次いで、培養物を、4%ウマ血清に溶解した適切な蛍光二次抗体(1/500, ThermoFisher, Alexa-488, Alexa-568, Alexa-647)に室温で2時間曝露した。最後に、核を染色するために構築物をヘキスト(1/10000,ThermoFisher, 33342)と10分間インキュベートし、徹底的にリンスした。免疫標識された培養物をNikon A1RSIレーザースキャニング共焦点顕微鏡で画像化した。断りのない限り、分析に使用された、またはこの原稿に収録されている全ての画像は全厚zスタックの最大値投影画像を表している。
【0179】
高速スキャンサイクリックボルタンメトリーによるインビトロでの機能的特徴決定
高速スキャンサイクリックボルタンメトリーで電気誘発性ドーパミン放出を測定することによってTE-NSPの機能性を評価した。この焦点はバイオマテリアル容器および/または時間の効果であった。1%アガロース(n=5)、3%MeHA(n=4)、および5%MeHA(n=5)に包まれたラットTE-NSPを約36DIVで評価した。これらの構築物を100μM L-DOPA(Sigma, D9628)と、記録用チャンバーに移す前に30分間インキュベートし、分析全体を通して連続して灌流させた。この場合、ドーパミン放出を、クラスカル-ワリス(Kruskal-Wallis)検定とダン(Dunn)の多重比較検定を用いて分析した。ヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンを用いて製作した構築物(OD:398μm;ID:160μm)を、以下の群:23~24DIV(3%MeHA:n=3;5%MeHA:n=3)、29~32DIV(1%アガロース:n=1;3%MeHA:n=2;5%MeHA:n=1)、および56~58DIV(3%MeHA:n=3)に基づいて評価した。ある特定の場合では、ドーパミン放出に対する効果を判定するためにL-DOPAを添加した。
【0180】
個々のTE-NSPを記録用チャンバーに移し、95%O2および5%CO2で通気し、Neurobasal、2.0mM L-グルタミン、およびアスコルビン酸(ラット細胞の場合は100μM、ヒト細胞の場合は200μM)を含有する培地を37℃で灌流させた。関心領域にまたがるように双極刺激用電極(Plastics One)を配置し、この同じ領域に炭素繊維電極(150~200μm外側繊維の長さ、7μm直径)を置いた。全ての場合において、断りのない限り、関心領域はドーパミン作動性凝集物であった。刺激のために、双極電極は、20Hzおよび8Vの振幅で5ms幅の単相性の+電気による10パルス列を加えるように設定された。記録のために、炭素繊維電極の電位を、ボルトアンメーター/アンペロメーター(amperometer)(Chem-Clamp, Dagan Corporation)を用いて400V/sの速度でAg/AgClに対して-0.4Vから1.2Vから-0.4Vに直線的にスキャンした。8sで刺激の連なりを加え、セッション全体の間に100msごとに、Demon Voltammetry and Analysis Softwareを用いてサイクリックボルタモグラム(CV)を記録した。連続CVおよびセッション中に得られた全てのCVにおけるドーパミンのピーク酸化電位時の電流を、8~12分の差をあけて同じ場所で4~6回の記録測定から平均した。この平均は、ノイズを最小にし、シグナルを強調するために行った。較正曲線を用いて電流をドーパミン濃度に変換した。本発明者らは、1.5μM、3μM、および6μM塩酸ドーパミン(Sigma, H8502)を注射した後の誘発電流を報告し、濃度対電流の回帰の勾配を入手した。この場合、ドーパミンを、126mM NaCl、2.5mM KCl、1.2mM NaH2PO4-H2O、2.4mM CaCl2-2H2O、1.2mM MgCl2-6H2O、25mM NaHCO3、および0.4mM L-アスコルビン酸(全てSigmaから)を含む脱イオン水に溶解した。
【0181】
TE-NSPの移植
2週間の終わりの時点である14DIVにMeHAに包まれたラットTE-NSP(3%MeHA:n=3;5%MeHA:n=3)を移植するために雄スプラーグドーリーラット(8~11週, 275~290g; Charles River)を使用した。ラットを5%イソフルラン(Midwest Veterinary Supply, 193.33165.3)で麻酔し、麻酔を2.5%に維持しながら定位フレームに取り付けた。頭皮をベタジンで消毒し、2.0mg/kgブピバカイン(Hospira,0409-1161-19)を切開領域に注射した。頭皮の正中線に沿って切開を行い、ブレグマに対して-5mmAPおよび+2.2mm MLにおいて5mmの頭蓋骨切除を行った。TE-NSPを、構築物と直接接触するロッド(rod)を備える針(Vita Needle;OD:534μm,ID:420μm)の中に引き入れた。針に合うように保護ポリウレタンチューブ(OD:686μm;ID:559μm;Microspec Corporation)を切断し、一端で密封し、針の外側領域を覆うのに使用した。針を、定位アームに取り付けたHamilton注射器に挿入し、そのプランジャーを、針から出ている露出したロッドと直接接触させた。定位アームを水平面に対して38°になるように調整し、硬膜を切開し、針を脳に入れて約12mm下げた。次いで、封を切るために鞘をピンセットで引っ張り上げ、固定アームがプランジャーを定位置に維持しながら、針を約5mm引っ張り上げることでTE-NSPを配置した。2分後に針を完全に引っ張り出し、頭皮を縫合し、動物に2.0mg/kgメロキシカム(Midwest Veterinary Supply, 577.30200.3)を皮下注射した。ヘパリン添加食塩水の後に10%ホルマリンを経心腔的灌流しながら動物を屠殺した。脳を取り出し、10%ホルマリンで一晩、後固定し、1×PBS中で4℃で保管した。
【0182】
免疫組織化学
構築物全体を視覚化し、その細胞構造および生存を評価するために、厚い脳切片を透明化および免疫組織化学プロトコールに供した。ビブラトーム(Leica, VT1000S)を利用して、移植構築物を含む2mm厚の矢状切片を入手した。切片を漸増濃度のメタノール(Fisher, A412)で脱水し、次いで、脱脂および屈折率の一致のために66%ジクロロメタン(Sigma, 270997)および33%メタノールと室温で一晩インキュベートした。その後、切片を冷5%H2O2 (Sigma, H1009)で一晩漂白し、漸減濃度のメタノールで再水和し、37℃で2日間透過処理し、37℃で2日間ブロックした。透過処理は、1×PBSに溶解した0.16%Triton X-100、20%ジメチルスルホキシド(DMSO; Sigma, 276855)、および0.3Mグリシン(Bio-Rad, 161-0718)を用いて行ったのに対して、ブロッキング溶液は、1×PBSに溶解した0.16%Triton X-100、6%ウマ血清、および10%DMSOからなった。その後、切片を一次抗体および二次抗体に、それぞれ37℃で7日間曝露し、その間に洗浄工程があった。一次抗体緩衝液は、0.2%Tween-20(Sigma, P2287)および10μg/mLヘパリン(Sagent Pharmaceuticals, 25021-400-10)を含む1×PBSに溶解した3%ウマ血清および5%DMSOであったのに対して、二次緩衝液は3%ウマ血清と、同じ溶媒を含有した。本発明者らは、TH(1/100, ヒツジ, Abcam, ab113)およびGFP(1/100, マウス, Aves, GFP-1020)に対する一次抗体と適切なAlexa-Fluor二次抗体(1/250)を使用した。次いで、切片を漸増濃度のメタノールで脱水し、Visikol(登録商標)HISTO-1TMに室温で一晩曝露し、画像化前に少なくとも2時間、Visikol(登録商標)HISTO-2TMとインキュベートした。
【0183】
結果:
MeHAおよびアガロースヒドロゲルの機械的特性の特徴決定
本発明者らは、1%アガロースヒドロゲルに包まれたTE-NSPを従来法で製作したことがあるが(1)、これらの構築物の次世代のために、本発明者らは、HAヒドロゲルの生理活性と、TE-NSPの能力および機能性を拡張するのに利用可能な修飾のためにHAヒドロゲルを選択した。本発明者らは、既存のプロトコールに従ってMeHAを得るために、HAのN-アセチル-D-グルコサミン単位中のヒドロキシル基の約40%を修飾した。MeHAヒドロゲルは、光と開始剤分子によって、メタクリレート反応基と反応するフリーラジカルが発生するラジカル光重合反応によって作り出すことができる。実際に、光に曝露された後の時間の関数として貯蔵弾性率(G’)が損失弾性率(G’’)よりかなり大きな値まで増加することを示したレオロジー測定によって確認されたように、溶液に10mW/cm
2のUV光を照射することによってヒドロゲルが形成された(
図2A)。予想されたように、5%MeHAヒドロゲルのG’値は3%MeHAのG’値より大きかった。さらに、プロファイルから、(対数目盛のないプロットに基づいて)機械的特性がプラトーに達するには約5分の光曝露時間で十分なことが証明された。MeHAヒドロゲルを光架橋できたことが確認された後に、本発明者らは、応力対ひずみ曲線から圧縮弾性率を入手することによって、本発明者らの従来のアガロースヒドロゲルと比較してMeHAヒドロゲルの機械的特性を研究した(
図2B)。5%MeHAヒドロゲルの圧縮弾性率は3%MeHAの値より有意に大きかった。重要なことに、両MeHAヒドロゲルは1%アガロースよりも有意に堅かった(
図2C)。
【0184】
MeHAは成長および機能的アウトカムに基づいたTE-NSP用の適切な容器である
本発明者らは、本発明者らの従来の細胞供給源であるラット胚ドーパミン作動性ニューロンを用いて、これらの構築物を製作し、インビトロでの成長、細胞構造、および機能性のアウトカムを試験することによって、MeHAを使用してTE-NSPを包む実現可能性を評価した。最初に、本発明者らは、重合されたコラーゲンとラミニンで満たすことができる中空マイクロカラムの形でMeHAヒドロゲルを生成できることを確認した。定性的に、本発明者らは、ECMが軸方向および長軸方向に内腔を満たしているMeHAマイクロカラムの高収率を首尾一貫して観察した。次いで、本発明者らは、約0.5cmのマイクロカラムの中にラットドーパミン作動性凝集物がある、MeHAに包まれたTE-NSPを生成することができた。本発明者らは、TE-NSP神経突起成長に対するバイオマテリアルタイプと時間の役割を特徴決定した。前者は長さ(P=0.0002)および速度(P=0.0011)に対して有意な効果があり、後者は両アウトカム(P<0.0001)に対して有意な効果があった。アガロースと比べてMeHA群の神経突起の長さの全ての平均が長く、全時点で1%アガロースとMeHA群の1つとの間で有意差が観察された(
図2D)。軸索は10DIVまでに完全に内腔を通って伸長した。全体的に見て、全てのタイプの容器について3~7DIVの範囲で最高の成長速度が観察され、最低の成長速度が1DIVおよび10DIVで認められた(
図2E)。成長速度の平均は一般的に全ての場合でMeHAの方が速く、1DIV、3 DIV、および7DIVで1%アガロースとMeHA群の1つとの間で有意差があった。1つの場合で、7DIVでの5%MeHAにおける成長速度は3%MeHAよりも有意に速かった。MeHA構築物は正しい細胞構造と表現型発現を示した。本発明者らは、黒質線条体路と同様の、分離されたニューロン細胞体とドーパミン作動性軸索路を、それぞれ、ヘキスト
+核およびTH
+神経突起から認められたように観察した(
図2F~2H)。本発明者らは軸索路に沿ったニューロン移動/分散の事例を観察したが、軸索領域におけるニューロンの存在は最小限であった。
【0185】
これらの構造的な特徴決定研究の後に、本発明者らは、MeHAに包まれたTE-NSPの機能性を電気誘発性ドーパミン放出の点から調べた。本発明者らは、放出された分子の酸化または還元によって誘発される電流に基づいて神経伝達物質濃度の変化を測定するのに用いられる、時間/空間分解能が高い技法である高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)を使用した。この目的のために、本発明者らは、電気刺激後の細胞外ドーパミン放出を記録するために、TE-NSPにおける凝集物に炭素繊維電極を導入した(
図2J)。ドーパミン作動性凝集物の内部にある1つの場所から、いくつかの記録セッションを平均することによって誘発性ドーパミン濃度のピークを計算した。1%アガロースに包まれた時の273.1±45.23nMと比較して、3%MeHAおよび5%MeHAの中にあるラットTE-NSPのドーパミン放出の平均は、それぞれ、317.6±115.7nMおよび206.289±35.69nMであった(
図2K)。これらの誘発された濃度は統計学的に差違がなく(P=0.6175)、従って、本発明者らは、機能性に対するバイオマテリアルの有意な効果を観察しなかった。3つ全ての容器タイプにおいて細胞は刺激に応答し(
図2L~2N、上)、放出された分子はドーパミンの化学シグネチャーを示した。特に、ピーク放出時のサイクリックボルタモグラム(CV)(
図2L~2N、中央)はドーパミンの約0.6Vの酸化電位で明瞭な電流ピークと、約-0.3Vの還元電位でトラフを示した。高スキャン速度で時間の関数として記録したCVは放出期間全体を通して特徴的なドーパミンシグナルも示す(
図2L~2N、下)。
【0186】
MeHAに包まれたラットTE-NSPをラットの黒質線条体路に沿って移植することができる
MeHAを使用してTE-NSPを包む実現可能性の重大な考慮すべき事項は、これらの構築物がラットに移植できるか、送達中および送達後に構造を維持できるか、生存できるかどうかであった。従って、14DIVの後に、MeHAに包まれたラットTE-NSPを、ラットのSNpcと線条体との間の領域にまたがるように定位移植した(
図3A)。MeHAマイクロカラムを針の中に詰め込み、ヒドロゲルまたは細胞および軸索路の完全性に対して観察可能な損傷なく操作することができた。組織透明化および免疫組織化学によって、本発明者らは、構築物が、一方の末端が線条体にあり(
図3B)、他方の末端が黒質細胞体の近位にあって(
図3C)、黒質線条体路にまたがるように送達することができ、その細胞構造および完全性を少なくとも2週間維持できることを観察した。本発明者らはまた、TE-NSPから宿主組織への外部成長の事例も観察した(
図3C)。さらに、宿主TH+投射がマイクロカラムのそばに成長しているのが見られる時もあった。軸索成長が可能な環境は、ヒドロゲルが宿主脳環境に対して副作用を示さない可能性が高いことを示している(
図3D)。さらに、本発明者らは、インプラントに近くにおいて全体的影響の徴候も、炎症の徴候も、出血の徴候も、星状細胞反応性の徴候も観察しなかった。
【0187】
ヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンは様々な寸法のTE-NSPを製作するのに使用することができる
最終的に、本発明者らの目的は、ヒトドーパミン作動性ニューロンから製作された、より臨床的に関連するTE-NSPに移行することであった。本発明者らは、ヒトiPSCを2Dで分化させ、約40ddでオーダーメイドのマイクロウェルに入れて遠心分離することによって凝集させた後に、これらの細胞を入手した。その後、これらの細胞を2Dで、またはマイクロカラムの内部にプレートした。この時点は、ドーパミン作動性運命特定の必要性と、プレートした時の十分なTH発現(>50%)と、移植時の適切な成熟と、TE-NSP製作における適時性のバランスを取って選択された。最初に、本発明者らは、ヒトドーパミン作動性ニューロンをラミニンコーティング表面において凝集物として培養できることを確認する必要があった。これらの凝集物は、周縁全体から全方向に広範囲にわたる神経突起成長を示した(
図4A、4B)。次いで、免疫標識を用いて、これらの凝集物のTH表現型を立証した。画像は、24DIVに、凝集物の周りにある高密度のドーパミン作動性軸索投射と、凝集物から周囲領域全体に、移動中の、および/または分散したヘキスト+ニューロンの存在を示した(
図4C)。
【0188】
ニューロンが凝集後に生存し、成長することを確認したので、本発明者らは、3%MeHAと、これらのヒト凝集ニューロンを用いてTE-NSPを作製することに取りかかった。以前に議論されたように、一般的に、ラットニューロンでは3%MeHAと5%MeHAが同様の成長と機能の結果を出し、本発明者らがヒトニューロンを試験する時に、首尾一貫した容器タイプを維持したかったので、本発明者らはヒト構築物を3%MeHAでしか作製しなかった。さらに、3%MeHAマイクロカラムは5%MeHAよりも著しく柔らかかったが、手で容易に取り扱うことができた。本発明者らは、OD398μmおよびID160μmと約0.5cmの長さを有する、ラットにおいて内因性黒質線条体路にまたがるような移植に関連した大きな重要性がある寸法でTE-NSPを作製し始めた。これらのヒトTE-NSPの代表的な位相差画像はマイクロカラムの全長を通して神経突起成長を示し(
図4D~4F)、密度は8~21DIVまで時と共に増加した(
図4G~4I)。これらの構築物における神経突起成長の長さと速度を3つの独立したバッチから経時的に測定した。成長の長さの平均は、8DIV、14DIV、21DIVで、それぞれ、1.96±0.43mm、3.88±0.22mm、および4.89±0.10mmであったのに対して、中央値は、0.97mm、3.74mm、および4.82mmであった。これらの結果とボックスプロットから、初期の時点の成長には広範な分布があるが、TE-NSPは14DIVまたは21DIVまでにマイクロカラムのほとんどの長さまで、または全長まで一貫して成長することが示唆された(
図4J)。8DIV、14DIV、および21DIVに、成長速度の平均は、それぞれ、0.24±0.05mm/日、0.32±0.04mm/日、および0.14±0.03mm/日であり、速度の中央値は、それぞれ、0.12mm/日、0.32mm/日、および0.16mm/日であった。21DIVには、神経突起がカラムの末端に到達した後に成長する空間が小さくなったため、成長速度分布は8DIVおよび14DIVほど広範ではなかった(
図4K)。本発明者らは、典型的に、21DIVまでにTE-NSPが完全な軸索成長に達することを考えて、移植に関連した大きな重要性がある時間である23DIVに固定されている(
図4L)、構築物の1つ領域に制限されたニューロンクラスターから投射されたドーパミン作動性TH+軸索路の正しい細胞構造を認めた。この構造は黒質線条体路の細胞構造に似ており、インビトロで2ヶ月後でも維持された(
図4M~4O)。このことから、MeHAに包まれたヒトTE-NSPは、その軸索路の完全性および表現型を、少なくともインビトロで長期間維持できることが示唆される。このことは長期移植のための必要条件である。さらに、2D凝集物培養とは対照的に、本発明者らは、マイクロカラムの内部で凝集物からの注目に値する分散も移動もないことを観察した。
【0189】
本発明者らはまた、さらに大きな動物モデルとヒトにおいて移植するための細胞数と構造要件に対応するように、これらの構築物をスケールアップできるかどうか調べるために、さらに大きな直径と長さをもつヒトTE-NSPも製作した。300μm(
図5A、5B)および500μm(
図5E、5F)のIDと、少なくとも1cmまでの長さをもつマイクロカラムの内腔にまたがる軸索路を有するように、MeHAに包まれたヒトTE-NSPを作製することができた。どちらの場合も、軸索密度は時が経つにつれて定性的に増加し(
図5C、5D、5G、5H)、成長のための空間が小さくなるため300μm内腔ではさらに大きくなるように見えた(
図5D、5H)。直径には成長の長さ(P=0.2475)に対しても速度(P=0.3424)に対して有意な効果がなく、各時点で300μm群と500μm群との間に統計学的差異はなかったと結論づけた(
図5I、5J)。他方で、予想されたように、時間には神経突起成長の長さ(P<0.0001)および速度(P=0.0010)に有意な効果があった。両群について約0.52mm/日の最大成長速度が8~14DIVの範囲の初期の時点で観察され、21~28DIVに0.10~0.20mm/日まで低下した。
【0190】
MeHAに包まれたヒトTE-NSPは電気刺激時にドーパミンを放出する
本発明者らは、ヒトTE-NSP凝集物における電気刺激後のドーパミン放出を検出するために、およびこれらの構築物の機能性を立証するためにFSCVを使用した。刺激用電極と炭素繊維電極を両方とも凝集物に置いた後に、本発明者らは、約30DIV後に56nM(
図6A)、約60DIV後に107nM(
図6B)の誘発性放出の実例を観察した。CVによって、約0.6Vでの酸化ピークと-0.3Vの近くでの還元トラフから分かるように放出分子のドーパミン作動性同一性が立証された(
図6C、6D)。これらのヒト構築物はまたL-DOPAによる灌流にも応答することもできた。濃度トレース(
図6A、6B)およびCVカラープロットにおけるドーパミンの酸化ピークの経時的な伸長した外観(
図6C、6D、下)において観察されるように、同じ領域におけるドーパミン放出はもっと長く持続した。これらの結果にもかかわらず、本発明者らは、常に、全ての試験したTE-NSPから、特に、異なる分化バッチ間で比較した時に誘発性ドーパミン放出を得るとは限らなかった(データは示していない)。TE-NSPと天然の黒質線条体路との類似点の最後のショーは、脳における統合を考えるとヒトドーパミン作動性軸索と線条体ニューロンとの同時培養であろう。本発明者らは、ラット胚線条体ニューロン凝集物が、マイクロカラムの中にあるヒトドーパミン作動性凝集物とは反対側の末端に配置されたヒトTE-NSPを成長することができた。両細胞タイプとも神経突起を伸長したが、ヒトドーパミン作動性凝集物は、位相差画像において線条体投射のすぐ近くに検出される長い軸索を投射した(
図6E~6G)。
【0191】
PD療法のための標準的な処置(例えば、L-DOPA)は、一般的に、重度の運動変動と慢性曝露を引き起こし得る不連続の薬物送達を伴う。DBS電極は本質的に非特異的な刺激をもたらし、線条体の下流に移植され、従って、PDの原因を回避する。さらに、これらの堅い無機電極は侵襲的であり、典型的に、その有効性を減らす長期的な異物応答を生じさせる。細胞置換アプローチは、従来法では、線条体にのみある胎児由来ドーパミン作動性ニューロンまたは幹細胞由来ドーパミン作動性ニューロンの移植を伴った。対照的に、TE-NSPは、黒質線条体路中のドーパミン作動性線維路を再構築し、それによって、PD病態生理の中核における、ドーパミン作動性ニューロン/軸索と線条体神経支配とドーパミン入力の喪失を標的とする、生物からひらめきを得た戦略である。TE-NSPは、天然の、シナプスベースの、および空間的に特異的なやり方でドーパミンを送達することでL-DOPAの非連続的な効果とDBSの特異性の欠如を理想的に改善するだろう。これに加えて、おそらく、本発明者らのヒトTE-NSPは、胎児移植片よりも入手しやすく、かつ個別化された移植可能なドーパミン作動性軸索の開発を可能し得る臨床的に関連する細胞供給源を用いることで従来の細胞置換アプローチを発展することができる。これらの構築物も、細胞懸濁液として送達される現行の幹細胞由来移植と比較して移植中および移植後に細胞および軸索を保護するのに役立つHAヒドロゲル封入を特徴とした。これにより、本発明者らは、分解プロファイルを調整し、インビボアウトカムを改善するための生存促進性分子の局所提示または制御放出のような他の機能性を提供することが可能になる可能性がある。
【0192】
TE-NSPの本発明者らの以前の反復適用は、アガロースヒドロゲルとラット胚腹側中脳ニューロンを用いて製作されてきた。ここで、本発明者らは、ドーパミン作動性軸索路の容器用のバイオマテリアルとしてHAを(その修飾型であるMeHAの形で)使用することに移行した。HAは、脳ECMの主なバックボーンであり、CD44およびCD168などの細胞表面受容体を介して神経細胞に結合することができる非硫酸化グリコサミノグリカンである。HAは、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、およびブレビカンを含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの一種であるレクチカンと複合体を形成する。これらの複合体は、構造的支持と、脳機能にとって重要な発達、細胞シグナル伝達、細胞間相互作用、およびシナプス可塑性の調整を提供し、損傷に対する応答に関与する。損傷におけるHA分解は断片の分子量に応じて血管形成ならびに神経免疫応答および炎症応答と関連付けられてきた。HAヒドロゲルは3D幹細胞封入ならびにその拡大、移動、および分化の制御のために適用されてきた。神経応用の点から、HAヒドロゲルは、ヒトiPSCから得られた神経前駆細胞(NPC)を分化させ、脳卒中モデルにおいて生存および行動アウトカムを増強するのに利用されてきた。本発明者らの研究に関連する研究では、ヒトESC由来ドーパミン作動性ニューロンをインビトロで成熟させ、移植中に保護するために、この細胞をHAに封入した。これにもかかわらず、HAの中にある、ヒトiPSCから得られたドーパミン作動性ニューロンを特徴決定する公表データはない。このバイオマテリアルを用いると、ある特定の官能基でバックボーンを修飾した時に、本発明者らの用途に理想的なヒドロゲルを形成することができる。光架橋に最も一般的な種類の修飾HAとしてのMeHAの地位を考えて、本発明者らはMeHAを使用した。光重合パラダイムを用いると、ゲル化と特性を空間的に制御し、インサイチューで細胞を封入することが可能になる。MeHAと他の修飾HAヒドロゲルはまた3Dバイオプリンティングにも広範囲に用いられており、3Dバイオプリンティングを用いると本明細書に記載のようにマイクロカラムの標準化された製造が可能になるはずである。以前の製造方法では、本質的に、構築物に沿って、およびバッチ間で、中心から外れた内腔と、変わりやすい壁の厚みを有するマイクロカラムが生産されることが多かった。これにより、マイクロカラムが破裂し、剛性差(differential stiffnesse)に細胞と軸索が曝露される可能性が大きくなる可能性がある。従って、HAと3Dバイオプリンティングを使用すると、バッチ間のばらつきが小さく、診療所での潜在能力が大きいTE-NSPの製造が可能になると期待される。
【0193】
ここで、本発明者らは、MeHAを適用して、重合されたコラーゲンとラミニンがある内腔を含む中空マイクロカラムを構築できると示すことができた。ラット胚腹側中脳から得られたニューロン凝集物は、重要なドーパミン作動性マーカーであるTHに対して染色された長い軸索路を伸長することができた。1%アガロースマイクロカラムが、TE-NSPおよび他のマイクロ組織構築物を製作する時の本発明者らの歴史的な基準であったことを考えて、このバイオマテリアルと成長および機能的アウトカムを比較した。本発明者らの結果から、ヒドロゲルのタイプは成長の長さと速度に対して有意な効果を有することが示唆され、MeHAに包まれた構築物は1%アガロースと比べて有意に良好なアウトカムを示した。1DIVで成長速度は最低であった。このことは、神経突起がもっと速い成長速度で伸長する前に、凝集物が正しく付着し、その環境に適応するのに時間を必要とする可能性があることを意味する可能性がある。本発明者らは、MeHAに包まれたTE-NSPが、電気刺激時に、1%アガロースに包まれた、時間が一致する構築物に匹敵するレベルでドーパミンを放出することで機能性を保持することを確認した。全体的に見て、本発明者らは、MeHAを用いて、黒質線条体路に構造的および機能的に似たTE-NSPを作製できることを実証した。
【0194】
成長に対するヒドロゲルの効果は、以前の材料、例えば、アガロースよりも神経突起成長の助けとなる微小環境を提供するMeHAそのものに起因すると考えることができた。例えば、HAはインビボでの脳ECMにおける重大な役割を考えると、細胞により良く適用できる可能性がある。HAはアガロースと比較して保持と、細胞への、培地中に存在する増殖因子の局所提示に優れている可能性がある。MeHAはまた、コラーゲンとラミニンのコアの、アガロースより一貫し、優れた重合も促進し、従って、神経突起成長により好ましい3D空間を提供できる可能性がある。他方で、MeHAの中での改善した成長は、MeHAの大きな圧縮弾性率により例示されるようにMeHAとアガロースの異なる機械的特性の結果である可能性がある。本発明者らは、軸索が内腔の周縁部におけるヒドロゲル-ECM境界面に沿って最大の成長密度を有することを以前に示したことがある。従って、神経突起は内腔の幅全体にわたって成長のためにECMコアを使用するが、成長のための支持体としてもヒドロゲルとも相互作用し、それを使用し、従って、そのバイオマテリアルの機械的特性は細胞挙動に直接影響を及ぼす可能性がある。実際に、神経細胞と他のタイプは支持体の堅さを検知し、それに応答することが広範囲にわたって研究されてきた。特に、HA-ペンテノエートとポリ(エチレングリコール)-bis(チオール)架橋剤の3Dヒドロゲル上に播種されたマウス海馬NPC、MeHAヒドロゲルの中にあるマウス腹側中脳NPC、および3Dアガロースヒドロゲルの中にあるニワトリ後根神経節を用いた研究では、神経突起成長と支持体の堅さは逆の関係にあることが広く報告されている。さらに、ヒトiPSC由来NPCはシングル細胞またはスフェロイドとして、アクリル化HAヒドロゲルでは、より多くの拡大と付着を示し、堅い支持体と比べて柔らかかった3D MeHAヒドロゲルでは、より大きな神経突起の外部成長/密度とニューロン分化を示した。本発明者らの結果は、神経突起成長に影響を及ぼす堅さと一致するが、本発明者らは、堅いMeHAマイクロカラムが、これより堅くない1%アガロースと比較した時に成長の長さと速度に利益を与えたという反対の関係を観察した。このことは、他の機械的/物理的性質が、提供される構築物における原動力であること、実際には、MeHAそのものが、堅さとは別個の、アガロースよりも優れた環境を提供すること、および/または堅いMeHAが、ECMコアの完全性を維持する構造的に強固な容器を提供すること、を暗示している可能性がある。後者の点では、実際に、神経突起成長プロセスを混乱させる可能性がある、アガロースヒドロゲル内部でのECMの収縮または剥離を認めることはよくある。本発明者らの結果はまた、ヒドロゲル支持体が3Dマイクロカラムの周辺部に見出される、異なるタイプのスキャフォールドを本発明者らが使用していることを反映している可能性がある。これに対して、以前の研究ではヒドロゲルの全体のブロック/断片における2D表面または3D成長に頼ってきた。実際に、本発明者らは、1~2%アガロースと比べて、3~4%アガロースマイクロカラムの中で成長させた時にTE-NSPと同様の工学的に作製されたマイクロ組織における神経突起の改善した健康状態を以前に証明した。従って、堅さと成長アウトカムの、この直接的な関係は本発明者らのマイクロカラムスキャフォールドの特徴である可能性がある。
【0195】
本開示はまた、MeHAマイクロカラムをラット脳に黒質線条体路に沿って首尾良く送達することができ、細胞がインビボで少なくとも2週間にわたって生き残り、その軸索細胞構造を保持できたことも確認した。従って、本発明者らは、MeHAが、構造、機能、および移植の点から見て実現可能なTE-NSP用の容器だと考えた。MeHAは主にヒアルロニダーゼによる酵素的分解を受けやすい。しかしながら、本発明者らの結果から、インプラントの周囲にあるヒアルロニダーゼの存在では、観察された時点で、目に見えて分かる分解が起こるには十分でなかったことが分かる。一部の態様では、インビトロ培養中に、および初期の移植期間中に分解がほとんどないか、または全くなく、インビボでは時が経つにつれて分解が目立つようになる制御可能な分解プロファイルを有することが望ましい場合がある。これにより、TE-NSPは適切な細胞構造を伴って3Dで成長し、適切に移植されるのに、および鋭敏に宿主回路と統合するのに十分な完全性を有することが可能になるだろう。後になって分解されることで、ドーパミン作動性軸索路と周囲組織との、より優れた、かつよりシームレスな統合が可能になる可能性がある。さらに、分解速度は堅さと逆の関係にあり、他の重要な意味を有する。例えば、インプラントは、炎症応答などの良好なアウトカムのために周囲組織と一致する機械的特性を有さなければならないことが証明されている。実際に、マウス脳と一致する堅さをもつ柔らかいアクリル化HAヒドロゲルは堅いヒドロゲルと比べてナイーブマウスモデルと脳卒中マウスモデルにおいて、それぞれ、有意に反応しない星状細胞と小グリアの存在を引き起こした。それでも、ヒドロゲルが移植前、移植中、移植後に内部を破壊することなく中空マイクロカラムの形状を保持するのを確実なものにするためには堅さが十分でなければならない。分解および堅さなどの重要な特性は、MeHAマクロマー濃度、HAの分子量、およびメタクリル化度を最適化することによって調整することができる。加水分解または細胞ベースの分解に対して感受性が高いヒドロゲルを用いることで、もっと大きな分解制御が与えられる可能性がある。例えば、加水分解に対して感受性のあるHAヒドロゲルは、エステル加水分解に対して応答性の乳酸またはカプロラクトンに結合したメタクリレートを有するようにHAを修飾することによって作り出されてきた。細胞によって発現されるマトリックスメタロプロテアーゼによる切断に対して感受性のあるジチオールペプチドもアクリル化HAヒドロゲルの連続架橋の一部として用いられてきた。
【0196】
他のタイプのHAも用いて、望ましい特性(例えば、分解、堅さ、靱性、細胞応答性ペプチドの結合、保持、および増殖因子の放出)に応じてTE-NSPを作製することができた。以前の研究では、β-シクロデキストリンで修飾されたHAおよびアダマンタンを有するHAの非共有結合性ゲスト-ホストアセンブリ(guest-host assembly)に起因する一次ネットワークと、MeHAのチオールベース架橋を有する二次ネットワークからなる二重ネットワークヒドロゲルが特徴決定されている。一次ネットワークの中にあるポリマーもメタクリル化された時には2つのネットワークは共有結合によって繋ぎ止めることができる可能性がある。ゲスト-ホストアセンブリは、共有結合を保護するために応力を放散および移動することによって自然治癒特性を与えた。他方で、チオール:メタクリレート比を変えることでヒドロゲルの圧縮弾性率が調整された。これらのヒドロゲルを用いると、TE-NSPは壊れずに機械的変形から回復し、もっと大きなレジリエンスを、培養中および移植中の取り扱いにもたらすことが可能になる可能性がある。特に、このことは、ヒト黒質線条体路のより複雑な、湾曲した形状に合うように、移植中にTE-NSPを形作るための考えられる手段となり得る。例えば、ノルボルネン修飾HAでは、ノルボルネンはジチオール分子の付加でしか架橋を有することができない。チオール:ノルボルネンの比を調整することによって、後の反応のために、未反応のノルボルネンが残存することを確実なものにすることができる。このパラダイムは、最初に架橋され、次いで、二次反応においてチオール含有ペプチドまたはタンパク質と結合されるマイクロカラムに包まれたTE-NSPに適用できる可能性がある。これらの分子は、他の関連するインビトロアウトカムおよびインビボアウトカムの中でも特に生存、接着、神経突起成長に影響を及ぼすことができる可能性がある。さらに、増殖因子および薬物を保持または送達するようにTE-NSPをさらに改変できる可能性がある。なぜなら、HAヒドロゲルは、拡散、プロテアーゼ感受性または加水分解性の分解、要望に応じて力によって媒介されるプロセスおよび光によって誘発されるプロセス、ならびに化学基に対する親和性に基づいて、この目的のために広く用いられてきたからである。本発明者らは、HAが、TE-NSPおよび他の工学的に作製されたマイクロ組織の応用範囲、設計管理、および成功した臨床アウトカムの可能性を広げることでTE-NSPおよび他の工学的に作製されたマイクロ組織を大きく改善すると予測する。
【0197】
HAベースのヒドロゲルを用いてTE-NSPを包むことが実証されたので、次いで、本発明者らは、ヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンを用いて、これらの構築物を作製した。これらのニューロンを用いると、患者に由来する移植可能なドーパミン作動性軸索路を製作することが可能になり、ヒト胎児ニューロンまたはESCから得られたニューロンの倫理的な制約および実用上の制約が回避される。これらのニューロンを、確立したプロトコールに従って2Dで約40日間分化させ、次いで、マイクロカラムの内部に播種するために凝集させた。本開示は、HAベースのヒドロゲル容器とヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンを組み合わせてTE-NSPを製作する実現可能性について説明する。本発明者らは、マイクロカラムの内部で28DIVまでにヒトドーパミン作動性凝集物が軸索路を約1cmまで成長できることを発見した。本発明者らの知る限りでは、これは、インビトロで約1cmまでの長さに達する単方向性軸索成長を示した、工学的に作製されたヒトiPSC由来ドーパミン作動性組織の第一報である。ヒトTE-NSPは、マイクロカラム末端に制限されるニューロン細胞体の望ましい細胞構造と、内腔に長軸方向にまたがり、インビトロで少なくとも2ヶ月までドーパミン作動性表現型を発現する一直線に並べられた軸索路を示した。ヒトTE-NSPは電気刺激されると凝集物の内部でドーパミンを細胞外空間に放出し、濃度は時と共に増加した。特に、本発明者らは、FSCVを用いてドーパミン放出を30~60DIVに50~110nMの範囲で観察した。これは、パーキンソン症候群ラットにおいて機能的効果を引き起こすことが推定される範囲である。特に、もっと長く培養した構築物は、刺激後に、もっと多くのドーパミンを放出することができた。このことは、成熟が進行し、それに付随してドーパミン放出機構が増加したことを示唆している。この細胞体樹状突起性ドーパミン放出の評価はTE-NSPの健康状態、表現型、および機能性の根拠として役立った。SNpcにおける細胞体樹状突起性放出はまた、SNpcおよびSNprにおけるニューロン活動ならびに線条体における遠位ドーパミン放出の調整に関与する天然の黒質線条体路の重要な側面である。TE-NSP軸索が発達中の成長期にあり、統合のための末端標的を有さなかったことを考えると、本発明者らが軸索路領域において誘発性ドーパミンを検出しなかったことは驚くことではなかった。研究によって、哺乳動物の発達中の中枢神経系ニューロンでは、誘発性の神経伝達物質放出が存在しなかったこと、またはそのための能力が小さかったことが強調されている。FSCV分析中での別の注目すべき観察は、ラットTE-NSPの非常にきれいなプロットと比較してヒトTE-NSPのCVカラープロットは多くのノイズがあった、またはドーパミンに特徴的なシグナルピーク以外のシグナルピークを示すように見えたことであった。このことは、ラット胚ドーパミン作動性ニューロンとヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンとの間の運命拘束、機能的成熟、または細胞内容の差を強調している可能性がある。
【0198】
本発明者らは、底板マーカーであるFOXA2と蓋板マーカーであるLMX1Aの同時発現に基づいてヒトESCおよびiPSCをドーパミン作動性ニューロンに分化させる既存のプロトコールを利用した。これらのニューロンは50%超のTH発現を有し、ドーパミン放出、SNpcニューロンに特徴的な周波数での膜電位振動ならびにA9ドーパミン作動性ニューロンに特徴的なGIRK2(G-protein-regulated inward-rectifier potassium channel 2)およびA10ドーパミン作動性ニューロンに特徴的なカルビンジンなどのマーカーを示した。
【0199】
構築物製造の別の側面は、機能的ドーパミン回復における、A9ドーパミン作動性ニューロンとA10ドーパミン作動性ニューロンの役割を考えると、分化後の、およびTE-NSPの内部に存在する、これらの細胞タイプの比の周りの考慮すべき事項である。A9ドーパミン作動性ニューロンは主に背外側線条体まで軸索を伸長し、PDにおいて選択的に失われるのに対して、腹側被蓋野のA10細胞は腹側線条体および辺縁領域に投射し、大きく影響されない。もちろん、細胞が適切な外部成長標的を認識する固有の能力は、非ヒトA9ドーパミン作動性ニューロン(例えば、嗅球のドーパミン作動性ニューロン、腹側前脳ニューロン)が背外側線条体を神経支配できないことで強調されている。その結果、6-OHDAラットにおける研究から、A9ニューロンに豊富にある、マウスから得られた線条体内移植片(約65%のGIRK2+/カルビンジン-細胞)は背外側線条体のかなり大きな領域を神経支配し、この細胞タイプが欠損している移植片(約15%のGIRK2+/カルビンジン-細胞)と比較して無傷の病変レベルへの回転スコアおよび前肢非対称(forelimb asymmetry)スコアの改善につながったことが分かっている。それにもかかわらず、幹細胞由来ニューロンを用いた移植研究の全てではないとしてもほとんどが両集団を有し、A9標的領域とA10標的領域両方の神経支配を示す。治療効果を確実なものにするために、TE-NSPにおけるGIRK2+およびカルビンジン+のドーパミン作動性ニューロンの相対含有量を制御すること、ドーパミン作動性サブタイプについて以前に特定された能力である、軸索が適切な線条体標的を神経支配することが望ましいだろう。例えば、異なるプロトコールではレンチウイルスベクターを用いてヒトESCおよびiPSCにおいてLMX1Aを発現させ、その結果として、対照ではたった10%のA9ニューロンと比較して60%超のA9ニューロンが生じた。TE-NSPの将来の反復適用では、特定のドーパミン作動性サブタイプへの分化を説明するプロトコールを取り入れることができる可能性がある。
【0200】
分化プロトコールに加えて、TE-NSPに特有の製作工程も細胞挙動に影響を及ぼす可能性がある。
【0201】
実施例2:
材料および方法
1.MeHAの合成およびヒドロゲル製作
MeHAは、冷脱イオン水中でヒアルロン酸(Lifecore Biomedical)を無水メタクリル酸(Sigma, 276685)で約3.5時間エステル化することによって合成した。NaOHを添加することでpHを始めから終わりまで8.5に維持した。5~7日間透析し、凍結乾燥した後にMeHA固体を入手した。この反応によって、ヒアルロン酸バックボーンのメタクリル化度は1H-核磁気共鳴分光法によって確認した時に約40%になった。メタクリル化度は、スペクトルにおいて約5.8ppmおよび約6.3ppmにおける2つのビニルシングレット下の面積と、糖の環に対応する領域下の面積の比に対応した。MeHA溶液は、3%重量/体積(w/v)のMeHAを、0.05%w/v Irgacure 2959(I2959; Sigma, 410896)光開始剤を有するダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS; ThermoFisher, 14190136)に添加することによって作製した。本発明者らは、光誘導性ラジカル重合によってヒドロゲルを形成する能力について反応生成物を特徴決定した。これは、UVランプ(Excelitas Technologies, OmniCure S1500)に接続したストレス制御式レオメーター(TA Instruments, AR2000)を用いて10mW/cm2紫外線(UV)への曝露前および曝露後にMeHAヒドロゲル溶液の貯蔵弾性率および損失弾性率を経時的に測定することによって成し遂げられた。
【0202】
2.ECMコアのあるMeHAヒドロゲルマイクロカラムの製作
TE-NSP用の容器として使用するヒドロゲルマイクロカラムは、最初に、外径(OD)500μmの鍼療法用針(Lhasa OMS, TC1.50×100)を、内径(ID)973μmのガラス毛細管(Drummond Scientific, 1-000-0750)の中に挿入することによって製作した。前者と後者によって、それぞれ、OD973μmおよびID500μmのマイクロカラムの内腔と外側の外殻が作り出される。管の中にMeHA溶液を毛管作用によって吸い込ませ、次いで、管をUVランプ下で水平に置き、10mW/cm2の光で5分間照射した。針を取り出し、毛細管の中にあるゲル化したマイクロカラムを、20ゲージ針(BD, 305178)を用いて押し出してDPBSに入れた。次いで、正しく形成しなかったものを全て除去するためにマイクロカラムを光学顕微鏡で検査し、UV光下で30~60分間滅菌した。マイクロカラムを解剖顕微鏡下で望ましい長さ(1~2cm)に切断した。
【0203】
マイクロカラムの細胞外マトリックス(ECM)コアは、最初に、1N NaOHでpH7.2~7.4に調整したNeurobasal培地(ThermoFisher, 21103049)に溶解した1mg/mLラット尾I型コラーゲン(Corning, 354236)と1mg/mLマウスラミニン(Corning, 354232)の溶液を作製することによって生成した。ヒドロゲルマイクロカラムの内腔に残っているDPBSを吸引した後に、内腔を満たすために過剰なECM溶液を内腔に添加した(1cm長のカラムの場合、約10μL)。ECMをインキュベーターの中で37℃で15分間重合させ、この期間の後に、新鮮な培地を添加し、カラムの内部にはない、浮かんでいる過剰なゲル化ECMをピンセットで除去した。ニューロン凝集物を播種する前に1日または2日間、ヒドロゲル-ECMマイクロカラムを培地中で37℃に保った。
【0204】
3.TE-NSPにおけるヒトドーパミン作動性ニューロンの凝集および培養
ヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンは、既に分化し、冷凍保存された状態で入手した(Fujifilm Cellular DynamicsのiCell DopaNeurons, R1032)。この会社により報告されたように98%MAP2+/NES-、96%FOXA2+、および90%TH+細胞の純度を有する。供給源の体細胞は50~59歳の健常男性から得られ、作製されたiPSCは中脳底板プロトコールに基づいて分化された。培養培地は、2%Neural Supplement B(M1029)、1%iCell Nervous System Supplement(M1031)、および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher, 15140122)を含むiCell Neural Base Medium 1(Fujifilm Cellular Dynamics, M1010)からなった。受領後に細胞を、会社により示唆されたプロトコールに従って解凍した。バイアルを37℃のビーズバスの中に3分間入れた。この後に、その内容物を50mL遠心管にゆっくりと移した。次いで、バイアルをリンスした後に、9mLの培養培地をチューブにゆっくりと添加し、回旋することで穏やかに混合した。次いで、この細胞溶液を15mLチューブに移し、400×gで5分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞ペレットを2mLの培地に再懸濁し、生細胞濃度を血球計とトリパンブルー排除によって定量した。望ましい数の細胞を有する凝集物を形成するために、新たな細胞溶液を必要に応じて作製した。
【0205】
ニューロン凝集物は、9つの逆ピラミッド型マイクロウェルが入っているオーダーメイドのポリジメチルシロキサン(PDMS)型を用いて作製した。それぞれのマイクロウェルに約15μLの細胞溶液を移し、マイクロウェルの先端に細胞を集めるために、型が入っているプレートを1500rpmで5分間遠心分離した。それぞれのPDMS型を覆うように培養培地を添加し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。翌日、凝集物をマイクロウェルからピペットで取り出し、鋭利なピンセットを用いてヒドロゲルマイクロカラムの一端に播種した。場合によっては、マイクロナイフを用いて、ECMに凝集物を収めるのに十分な空間を作った。この原稿に示したTE-NSPについては、本発明者らは、13,269個のニューロンを含む凝集物から開始した。従って、2.7×104個、5.3×104個、および1.1×105個の細胞を有する凝集物を含むTE-NSPの場合、本発明者らは、それぞれ、2個、4個、および8個の凝集物を播種した。これらの凝集物は時が経つにつれ合体して内腔の中で1つになった。TE-NSPを37℃および5%CO2で培養状態で維持し、培地の75~100%を3日ごとに交換した。
【0206】
4.ラット胚線条体ニューロンの単離
場合によっては、線条体ニューロンの凝集物を、ドーパミン作動性凝集物を含む末端とは反対側のヒドロゲルマイクロカラム末端に、後者を播種して5日後に播種した。この研究のために、2つの線条体凝集物を、合体して合計2×105個の細胞を有するように播種した。これらの線条体ニューロンを胎生18日目ラット子から単離した。妊娠中のスプラーグドーリーラット(Charles River)をCO2曝露と断頭で安楽死させ、子を取り出した。解剖顕微鏡下で、脳を子の頭部から取り出し、あらゆる皮質断片を除去するように注意して、それぞれの半球から線条体を切断した。線条体を冷ハンクス液(HBSS; ThermoFisher, 14175079)でリンスし、次いで、3分ごとに振盪しながらアキュターゼ(ThermoFisher, A1110501)に37℃で10分間曝露した。溶解するまで組織をパスツールピペットを用いて粉砕し、次いで、溶液を200×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットを2mLの培地に再懸濁した。この細胞溶液を利用して、前のセクションにおいて説明したように凝集物を形成した。
【0207】
5.成長の長さおよび速度の特徴決定
インビトロで4日、7日、10日、14日、20日、および31日に、TE-NSPを、位相差顕微鏡と、NIS Elementsソフトウェア(Nikon)と一体化したNikon Eclipse Ti-S顕微鏡およびQiClickカメラを用いて画像化した。神経突起成長の長さと速度を定量するために、これらの画像をImageJ/Fijiを用いて分析した。神経突起成長の長さは、凝集物の縁端部と、内腔において観察できた最長の神経突起の先端との間の距離に対応した。成長速度は、日数の差に対する、ある時点と前の時点の神経突起長の差に基づいて見積もった。細胞数、時間、および/または培養タイプなどの変数の効果を反復測定ANOVAまたは混合効果(mixed-effect)モデルを用いて評価し、群間の差を、チューキーまたはシダック(Sidak)の多重比較検定とPrism8ソフトウェア(GraphPad)を用いて決定した。全ての場合で、p<0.05は統計的に有意だとみなされた。
【0208】
6.免疫細胞化学による構造および表現型の評価
TE-NSPの構造および表現型は、これらの構築物を免疫標識して、関連するニューロンマーカー、ドーパミン作動性マーカー、および線条体マーカーを特定することによって確認した。終わりの時点で、組織を固定するために、TE-NSPを、DPBSに溶解した4%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences, 15710)の中で35分間インキュベートした。次いで、構築物を、4%ウマ血清(ThermoFisher; 16050122)に溶解した0.3%Triton X-100(Sigma, T8787)で1時間透過処理した。その後、TE-NSPを、4%ウマ血清に溶解した一次抗体溶液と4℃で一晩インキュベートした。この研究において使用した一次抗体は、(1)ドーパミン合成の律速反応における酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH; 1/500, ウサギ, Pel-Freez Biologicals, P40101);(2)細胞体および軸索で見られるニューロン微小管タンパク質であるβ-チューブリンIII/Tuj1(1/500, マウス, Sigma, T8578);(3)線条体中型有棘神経細胞マーカーであるdopamine-and-cAMP-regulated neuronal phosphoprotein(DARPP-32; 1/500, マウス, Santa Cruz Biotechnology, sc-271111)であった。リンス後に、構築物を、4%ウマ血清に溶解した二次抗体溶液(1/500, ThermoFisher, ロバ抗マウス488, ロバ抗ウサギAlexa-568)と室温で2時間インキュベートした。次いで、核をヘキスト(1/10000, ThermoFisher, 33342)で10分間染色した。DPBSでリンスした後に、これらの構築物の全厚を、Nikon A1RSIレーザースキャニング共焦点顕微鏡を用いて画像化し、最大値投影画像をzスタックから入手した。
【0209】
7.電気誘発性ドーパミン放出の定量
インビトロで33~42日に、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーを用いて電気誘発性ドーパミン放出があるかどうかTE-NSPを分析した。95%O2および5%CO2の混合物で通気した、Neurobasal、2.0mM L-グルタミン(ThermoFisher, 35050061)、および200μMアスコルビン酸(Sigma, A5960)のインレットフローがある37℃の灌流チャンバーに、これらの構築物を入れた。刺激と記録を両方ともドーパミン作動性凝集物、軸索路、または線条体末端の内部の同じ領域で行った。刺激は、20Hzおよび8Vの振幅で5ms幅の単相性の+電気による10パルス列を加える双極電極(Plastics One)を用いて行った。記録は、炭素繊維電極(150~200μmの外側繊維長, 7μmの直径)を用いて行い、炭素繊維電極の電位を、ボルトアンメーター/アンペロメーター(Chem-Clamp, Dagan Corporation)を用いて400V/sの速度でAg/AgClに対して-0.4Vから1.2Vから-0.4Vに直線的にスキャンした。サイクリックボルタモグラム(CV)は記録セッション中にDemon Voltammetry and Analysis Software (Wake Forest Baptist Medical Center)を用いて100msごとに得られ、セッションの代表的な電流はドーパミンのピーク酸化電位での電流に対応した。それぞれのTE-NSPおよび記録/刺激領域について、本発明者らは、電流、ピーク放出時のCV、および全てのCVを経時的に表示するカラープロットを入手した。これらは全て、8~12分の差をあけた、同じ領域内での3~6回の測定からの平均シグナルを表示した。次いで、本発明者らは、他の妨害シグナルを含むCVからのドーパミン分析物の単離を改善するために、主成分分析と逆最小二乗回帰(inverse least-squares regression)を組み合わせた計量化学ツールである主成分回帰によってデータを処理した。このプロセスは、異なる既知のドーパミン濃度と既知のpHに対応するCVを有する覚醒状態マウスからのトレーニングセットを用いてDemonソフトウェアを用いて行った。1.5μM、3μM、および6μM塩酸ドーパミン(Sigma, H8502)の注射に対応する誘発性電流を測定することによって、本発明者らの記録セッション中に用いられる炭素繊維電極を経時的に、記録前、および記録後に較正した。これらの較正中の溶媒は、126mM NaCl、2.5mM KCl、1.2mM NaH2PO4-H2O、2.4mM CaCl2-2H2O、1.2mM MgCl2-6H2O、25mM NaHCO3、および0.4mM L-アスコルビン酸(全てSigmaから)を含む脱イオン水であった。濃度対電流の勾配を用いて、処理されたTE-NSP記録からの電流を濃度に変換した。それぞれの場合において最大ドーパミン放出を、刺激後2s間のピーク濃度と、刺激前の平均ベースラインシグナルとの差として測定した。二元配置ANOVAを用いて、誘発性ドーパミン濃度に対する構築物タイプ(異なる細胞数、単方向性、または双方向性)および記録/刺激領域(ドーパミン作動性凝集物、軸索路、または線条体末端)の効果を評価した。シダックの多重比較検定を用いて群間の差を決定した。全ての場合でp<0.05は統計的に有意だとみなされた。
【0210】
組織工学的に作製された黒質線条体路
本発明者らの組み合わせアプローチは、損傷した線維を置き換え/再構築するためのユニットとして宿主脳に移植するために、インビトロで黒質線条体路全体を操作することに焦点を当てている。本発明者らが組織工学的に作製された黒質線条体路(TE-NSP)と呼ぶ、このプラットフォームは、細胞外マトリックス(ECM)で満たされ、カラム全体を通して長い軸索路を伸長しているドーパミン作動性ニューロン凝集物が一端に播種された内腔を有する、制御可能な内径/外径と長さのあるヒドロゲルマイクロカラムからなった。従って、TE-NSPは、天然の黒質線条体路の細胞構造:軸索路(黒質線条体線維)を投射する、一端(SNpc)に制限されたドーパミン作動性ニューロンを模倣し、その結果として、インビボで線条体においてドーパミンを放出し、中型有棘神経細胞(MSN)ニューロンに沿ってシナプスを形成する。ヒドロゲルは、工学的に作製されたドーパミン作動性組織を包み、インビトロで長軸方向の軸索成長を動かすように必要な物理的合図を供給し、移植中および移植後に軸索成長を保護する。ECMは、ニューロンが、内腔全体を通して生き残り、軸索を成長させるための正しい環境を有することを確実なものにする。
【0211】
本明細書において、本発明者らは、これらの構築物の機能性と、その特性に対する、本発明者ら有する制御性の程度を増強する1つの手段としてヒアルロン酸(HA)ヒドロゲル、特に、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)を用いて製作したTE-NSPを特徴決定した。HAヒドロゲルは臨床に、および様々な用途のための研究において広く用いられてきた。生体不活性アガロースヒドロゲルと比較すると、HAは細胞応答性であり、脳におけるECMの主成分の1つである。物理的性質、生化学的合図の提示、ならびに増殖因子および薬物の放出の微調整を可能にする、これらのヒドロゲルに適用可能な化学修飾の研究の膨大な収集物もある。従って、需要と用途に応じてTE-NSPを求めて、多くのタイプの修飾HAヒドロゲルを探索することができた。これらのヒドロゲルを用いると、TE-NSPは生体適合性が高まり、多用途になり、特定の設計基準に適合可能になり、PDを処置する目的に最適化することができる。特に、これは、より優れた移植片生存、インビボでの工学的に作製された軸索の構造の保存、および脳組織との統合の結果として大きく改善したアウトカムに寄与する可能性がある。さらに、薬物および他の分子を送達するための容器および保護を越えてヒドロゲルマイクロカラムの機能性を広げると、TE-NSPは、PD病態生理の他の側面に対処する、より包括的なアプローチに変わる可能性がある。胚ラットドーパミン作動性凝集物を用いて、本発明者らは、構造、表現型、およびドーパミン放出の点から黒質線条体路を模倣し、ラット脳において移植および生存することができるTE-NSPを作製するのにMeHAを利用できることを確認した。特に、MeHAに包まれたTE-NSPは、従来の1%アガロース容器と比較した時に速く、かつ長い軸索成長を特徴とし、インビボで6週間後に脳において少ない星状細胞応答および小グリア応答を誘発した。
【0212】
前もって形成された神経ネットワークおよびTE-NSPの利点
TE-NSPは、細胞置換および経路再構築に集中している従来のPD介入およびアプローチを改善し、かつこれらの制約を回避するように設計されてきた。第一線において、TE-NSPは、SNpcにおいて、失われたドーパミン作動性ニューロンを置き換え、黒質線条体路を包含するドーパミン作動性線維の細胞構造を再構築することによってPDの根本原因に直接対処する。その際に、TE-NSPは黒質線条体回路の両端を標的とし、従って、宿主脳との相互作用に応答して生物学的および時間的に制御されたやり方で、かつ標的化された神経支配およびシナプス連絡によってもたらされる空間特異性を伴って線条体においてドーパミンを放出し得る。これは、症状を非特異的に管理することによってPDを間接的に処置し、衰弱性オフターゲット効果を引き起こす傾向がある、L-DOPA、他の薬物療法、およびDBSによる電気刺激とは対照をなす。
【0213】
バイオマテリアルベースおよび/または細胞ベースの戦略の場合、研究の取り組みと臨床試験は、インサイチューでの神経支配を目的とした線条体へのドーパミン作動性ニューロン懸濁液の注射に集中しており、そのため、SNpcおよびその黒質線条体線維における細胞の喪失が見落とされた。他方で、TE-NSPは、実際の神経構造に一致し、SNの周囲と線条体の中にある標的とシナプス的に統合し得る黒質線条体路全体の代替品を移植することを伴う。ドーパミン作動性ニューロンと軸索が正しい場所にあると、運動回路に関連する他の領域との統合が回復する可能性があり、そのため、最終的に、細胞置換のみを上回って、これらの構築物の治療的利益を増強するはずである。さらに、従来のインプラントで観察された低い細胞生存と、オフターゲット細胞が存在する可能性とは対照的に、TE-NSPには、移植中および移植後のより良い細胞生存率と、意図された解剖学的領域における優れた細胞保持を促進し得る保護的なヒドロゲル容器がある。
【0214】
黒質線条体線維を修復する手段を調べる研究は、SNにニューロンを注射し、インビボで受動的に軸索を伸長させることに、または局所微小環境を成長に適用可能にすることで、および経路に沿って、もしくは線条体の中に他の細胞を移植することで能動的に軸索の成長を導くことに焦点を合わせてきた。それにもかかわらず、以前に述べられたように、このインビボ成長の程度はヒトにおいて必要な距離に十分でなく、時として、結果として生じる神経支配は特異性を欠いた。TE-NSPは、最終的には、インビボで軸索が危険な環境を通り抜けて成長する必要性を無くす。なぜなら、これらの構築物が、インビトロで、必要とされる長さ、直径、および密度をもつ軸索を成長した後にユニットとして移植されるからである。インビトロでの、この完全なバイオファブリケーションは、正確な成長条件、シグナル伝達の合図、または広範囲にわたる成長と神経支配に必要な脳微小環境における既存の経路に沿った軸索の経路探索の必要性を回避する。軸索を成長させ、これを包むための管状ヒドロゲルの使用はまた、成長が天然経路と同様の方向に起こるように制限され、移植後に神経支配が線条体に空間的に標的化されることを確かなものにするのに役立つ可能性がある。ヒドロゲルはまた、ヒト黒質線条体路の湾曲した投射経路に対応するようにさらに改変され得る。TE-NSPを用いると、本発明者らは、運動改善を最大にする線条体神経再支配のタイプを保証するために凝集物における表現型分布と、投射される軸索の種類を理想通りに制御することができる。本発明者らはまた、移植前に構築物の最終的な構造と機能を、特に、時間の関数としての軸索成長、生存率、成熟した/機能的なドーパミン作動性マーカーの発現、およびドーパミン放出の点から十分に検証するために、全てインビトロで行われる製作を開発することもできる。従って、TE-NSPは、インビボで現れる適切な状況に頼る、他の信頼性のない方法よりも再現性があり、制御可能であり、かつ首尾一貫した代案となり得る。
【0215】
以前に示唆されたように、ヒドロゲル容器の存在はまた、神経変性の正確なドライバーに取り組むTE-NSPの能力を広げることもできる。例えば、ヒドロゲルマイクロカラムは、中脳ドーパミン作動性ニューロンに対する神経保護効果を有し、注射/注入、ウイルス誘導性発現、または細胞と組み合わせた送達の後の動物モデルおよび臨床試験において機能的利益を有することが示されてきた、GDNF、ニュールツリン、およびBDNFなどの神経栄養因子を送達および放出するのにも使用できる可能性がある。同様に、他のアプローチの中でも特に、熱ショックタンパク質の送達、α-シヌクレイン遺伝子転写または発現を減らすためのベクター、α-シヌクレインのクリアランスを増加させる薬物によって調べられてきたように、α-シヌクレイン凝集およびミトコンドリア機能不全などのPD病態の他の成分を標的とするためにヒドロゲルを活用できる可能性がある。従って、本発明者らのTE-NSP技術は、PDを処置するための既存のアプローチおよび生まれようとするアプローチを超える、いくつかの重要な利点を特徴とする。これまで採用された異なるアプローチを活用することで、その設計を神経構造およびPD病態生理からひらめきを得ることで、組織工学を取り入れることで、制御および汎用性の発展性のある程度を特徴とすることで、ならびに完全に製作されることで、最適化されることで、および使用前のインビトロでの品質について評価されることで、本発明者らは、TE-NSPが黒質線条体線維を修復する理想的な方法だと信じている。
【0216】
軸索成長に対する細胞用量の効果
最初に、本発明者らは、細胞用量/数の関数として、1cm長のマイクロカラムの内部にあるヒトドーパミン作動性凝集物から投射された神経突起成長の長さおよび速度を特徴決定した。本発明者らは、合計2.7×10
4個、5.3×10
4個、または1.1×10
5個のニューロンを有する凝集物を使用した。製造業者によれば、これらのニューロンは90%TH+であった。従って、これらの凝集物は主にドーパミン作動性ニューロを含有した。位相差画像化に基づいて、細胞数が多いほど、神経突起は、長い距離成長し、密度が大きくなると定性的に判定することができた(
図7A、7E、7I)。後者は、マイクロカラム内腔の領域を拡大した時に、さらに明瞭に観察された(
図7B~7D、7F~7H、7J~7L)。統計解析から、神経突起成長の長さと速度の両方において時間と細胞数の有意な役割が示唆された(p<0.0001;混合効果モデル)。長さを定量することで、2.7×10
4個、5.3×10
4個、または1.1×10
5個の細胞を有する構築物は、それぞれ、培養状態で1ヶ月後に3.22±0.16mm、5.85±0.48mm、および8.17±0.17mmの平均成長ピークに達することが分かった(
図7M)。7~31日には、ほとんどの群がチューキーの多重比較検定を用いて互いに有意な差違があった。細胞数の多いTE-NSPはいっそう長く成長すると予想されたが、成長は制限された。なぜなら、軸索はマイクロカラム末端に到達し、凝集物の運動の結果として成長のための利用可能な空間が時間とともに小さくなったからである。成長速度は4日で最大であり、神経突起が成長を止めたか、または末端に達したためにゼロに近い値に達するまで時間とともに減少した。注目すべきことに、細胞数の多い群は、7~14日まで約0.5mm/日という首尾一貫した成長速度と、10日および14日では、数が少ない群と比較して有意に異なる速度を有した(
図7M)。免疫標識されたTE-NSPの共焦点画像化によって、1.1×10
5個の細胞を用いたTE-NSPの成長は長く、軸索密度が大きいことが確かめられた(
図8A~8C)。さらに、画像によって、これらの構築物の凝集物と軸索のドーパミン作動性TH+表現型が確かめられた(
図8D~8E)。ここでのデータから、望ましい成長の長さと速い速度を実現するには細胞数の多い凝集物が必要とされることが分かる。細胞数が多い直接の結果として、より多くの軸索が投射される、および/または、これらの大きな細胞密度が細胞の生存率と健康状態に利益を与える可能性がある。それでもなお、本発明者らは、大きな組織の物質移動制約を考えると、この効果はプラトーに達すると予想する。このデータによって、本発明者らは、約100,000個のニューロンを有するTE-NSPを製作できることが確かめられた。約100,000個のニューロンは、移植用のドーパミン作動性ニューロンの臨床的に関連する数の範囲内である。それでも、本発明者らは、生存率および成長に悪影響を及ぼす前に1個のTE-NSPが保持できる細胞の最大数を求めるために、もっと多くの数の細胞を試験する必要がある。
【0217】
ドーパミン放出に対する細胞用量の効果
あらゆる経路再構築戦略にとって極めて必要なことは、移植片がドーパミンを放出できなければならないことである。従って、本発明者らは、高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)を用いて電気誘発性ドーパミン放出があるかどうかヒトスケールTE-NSPを試験した。本発明者らは個々の構築物を記録用チャンバーに移した。記録用チャンバーでは、ドーパミン作動性凝集物または軸索路領域の内部に刺激用電極と炭素繊維電極が両方とも配置されてた(
図9A)。刺激後に放出されたドーパミンの濃度を、約0.6Vでドーパミン酸化後に炭素繊維電極によって検出された電流と、既知濃度のドーパミンの較正曲線から求めた。FSCVは、炭素繊維先端のすぐ近くで局所ドーパミン濃度を測定し、全ての細胞によって放出されているものを測定しないことに留意しなければならない。濃度トレース中にあるピークと約0.6Vでのサイクリックボルタモグラム中にある特徴的なピークによって観察されたように、全ての細胞数群のTE-NSPが凝集物と軸索路においてドーパミンを放出することで刺激に応答した(
図9B)。凝集物にドーパミン放出が存在することは、これらの構築物に細胞体樹状突起性放出が存在することを示唆しているのに対して、軸索における記録は、シナプス前終末における、従来からある軸索放出の証拠を示している。このことから、これらの構築物は移植時および統合後に両端からドーパミンを放出し、従って、黒質線条体回路全体を調節できたことが示唆される。領域および細胞数の関数としてピークドーパミン放出を定量および統計解析すると細胞数の有意な効果が示された(p=0.0366;二元配置ANOVA)。特に、凝集物におけるドーパミン放出の平均は、細胞数が最も多い群については393.19±54.66nMであり、少ない群(261.53±35.49nM;p=0.0343)および中程度の群(226.48±28.91nM;p=0.0087)と有意差があった。軸索路領域に差はなく、濃度は約236~270nMまで変動する。これらの結果は、ヒトスケールTE-NSPからのドーパミン放出における凝集物における細胞数の、可能性のある役割を反映している。
【0218】
TE-NSPと線条体ニューロンとの間の統合
本発明者らは、TE-NSPの内部で、天然の黒質線条体路において見られるドーパミン作動性軸索とその線条体標的との間の接続性をシミュレートしようと努力した。従って、本発明者らは、E18ラット子から単離し、ドーパミン作動性凝集物とは反対側のマイクロカラム末端の内部に、ドーパミン作動性凝集物の5日後に播種した、約2×10
5個の線条体ニューロンの凝集物を有するヒトスケールTE-NSPを製作した。さらに、本発明者らは成長とドーパミン放出に対するこれらの細胞の存在の効果を調べようと努力した。第一線において、位相差画像は、線条体凝集物を有する双方向性構築物におけるドーパミン作動性凝集物から同じ距離での軸索成長の長さと密度の定性的改善を示した(
図10A~10D)。これは、ドーパミン作動性凝集物において2.7×10
4個の細胞(
図10E)および5.3×10
4個の細胞(
図10F)を用いた場合、培養して約10日から、単方向性構築物と比べて双方向性構築物における成長の長さと速度の明瞭な分離で示される。この効果は、中程度の数の群において最も強く、二元配置ANOVAは、この群でしか長さ(p=0.0104)と成長速度(p=0.0028)に対する培養タイプの有意な効果を生じなかった。一例として、14日で、神経突起の長さは5.01±0.40mmおよび7.24±0.05mm(単方向性対双方向性;p=0.0415)であったのに対して、成長速度は0.20±0.03mm/日および0.56±0.08mm/日(単方向性対双方向性;p=0.0596)であった。どちらの場合も成長があまりに似すぎて、かつ速すぎて、軸索が線条体凝集物またはマイクロカラムの縁端部に到達する前に差違を認めることができなかったので、1.1×10
5細胞の事例は含まれなかった。全体的に見て、データから、線条体標的が存在するとヒトドーパミン作動性軸索の成長が改善することが分かる。効果が10日目から見られ、細胞が5日目に播種されたので、この効果は、線条体標的を加えた日と比べて遅い。これは、線条体標的が馴化し、ドーパミン作動性の成長に利益を与えるシグナル伝達因子を提示もしくは放出し始めるのに必要な時間、または線条体末端から、ある特定の閾値距離を置いて十分に軸索が成長するのに必要な時間を反映している可能性がある。本発明者らはまた、ドーパミン作動性凝集物、軸索路、および線条体凝集物の縁端部にある軸索において記録および刺激するFSCVを用いてドーパミン放出があるかどうか双方向性TE-NSPを試験した(
図10G)。本発明者らは、2つの凝集物間の完全な統合を確実なものにするために、ドーパミン作動性軸索において最大の細胞がある構築物を利用した。本発明者らは3つ全ての領域において電気誘発性ドーパミン放出を記録することができた(
図10H)。注目すべきことに、平均して280.16±35.42nMを放出するように線条体末端にあるドーパミン作動性軸索を刺激することができた。これは、単方向性構築物の軸索路における270.69±30.45nMとほぼ同じであった(
図10I)。二元配置ANOVAの後に培養タイプ(p=0.9432)および領域(p=0.2447)の効果はなく、どの領域でも群間で放出に有意差はなかった。重要なことに、これらの研究から、双方向性TE-NSPは機能し、線条体ニューロンと統合したドーパミン作動性軸索はドーパミンを放出できることが分かった。このことは、これらの構築物が線条体ドーパミン入力の回復を成功するのに不可欠であろう。
【0219】
線条体凝集物を有する双方向性ヒトスケールTE-NSPもドーパミン作動性(TH) マーカーおよび線条体MSN(DARPP-32)マーカーに対して染色し、工学的に作製された組織の細胞構造および凝集物間の物理的接続性を評価するために画像化した。両表現型とも観察され、THはドーパミン作動性凝集物および軸索路において強く発現し、DARPP-32は主に線条体凝集物、隣接する神経突起(樹状突起だと想定される)、および移動中のニューロンにおいて見られた(
図11A)。さらに、線条体凝集物の拡大図は、いくつかの分枝パターンと神経支配密度パターンを示すTH+ドーパミン作動性軸索の有意な存在を示した(
図11B)。これらの軸索は理論上は線条体凝集物のDARPP-32+MSNとシナプス結合を形成するはずである。これにより、これらのヒトスケールTE-NSPが線条体ニューロンを神経支配し、線条体ニューロンと接続する能力が証明された。
【0220】
実施例3:MeHAマイクロカラムに包まれたヒト幹細胞由来TE-NSPのインビトロバイオファブリケーションおよび特徴
本実施例は、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)マイクロカラムに包まれたヒト幹細胞由来TE-NSPのインビボバイオマテリアル応答およびインビトロバイオファブリケーションならびにヒトTE-NSPの特徴について説明する。
【0221】
黒質線条体路に沿ったMeHAカラム移植に対するラット脳応答を評価するために、%アガロースを用いて製作した無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(n=3)、3%MeHAを用いて製作した無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(n=5)、および5%MeHAを用いて製作した無細胞ヒドロゲルマイクロカラム(n=5)を無胸腺ラットの黒質線条体路に沿って6週間移植した。次いで、宿主脳応答を評価した。NeuN+数については、インプラントからの距離が延びると共に数の増加が観察された(
図14D左パネル)。IBA1およびGFAP強度は、使用した材料のタイプおよびインプラントからの距離に依存し、インプラントからの距離が延びると強度が低下した(
図14Dの中央および右のパネル)。
【0222】
次に、MeHAヒドロゲルに包まれたラットスケールヒトTE-NSPのインビトロ細胞構造および成長プロファイルを評価した。ヒトiPSC由来ドーパミン作動性ニューロンは凝集物および軸索路ならびにドーパミン作動性ニューロンマーカーの発現を示した(
図15A~15E)。さらに、ヒトTE-NSPは神経突起成長を証明した(
図15F)。神経突起成長の長さはインビトロで時間と共に増加し、14日目の神経突起は7日目と比較して約2倍の神経突起成長の長さを示し、21日目の神経突起の神経突起成長の長さは7日目と比較して約2.5倍増加した。成長の長さおよび速度に対するバイオマテリアル組成物の効果はまた、3%MeHAヒドロゲルマイクロカラムまたは5%MeHAヒドロゲルマイクロカラムで作製したTE-NSPを用いて特徴決定された。
図15Gにおいて証明されたように神経突起成長の長さの時間依存的な増加があったが(7日インビトロ[DIV]と14DIVを比較した)、バイオマテリアルタイプは神経突起成長の長さにも神経突起成長の速度にも有意な影響を及ぼさなかった。3%MeHAヒドロゲルに包まれたヒトTE-NSPもヒト神経表現型および中脳ドーパミン作動性表現型の発現を示した(
図16A~16B)。
【0223】
インビトロでの誘発性ドーパミン放出についてヒトTE-NSPを試験した。一方の末端にドーパミン作動性凝集物を有するラットスケールヒトTE-NSPを用いた実験において(
図17Aを参照されたい)、凝集物と軸索路の両方とも誘発性ドーパミン放出が観察された(
図17B~17D)。データから、記録/刺激領域とバイオマテリアルはドーパミン濃度に対して有意な効果を有さないことが示唆される。ID 500μmの3%MeHAマイクロカラムの内部にあるドーパミン作動性凝集物とは反対側の末端に、ラット胚線条体ニューロンの凝集物を有するヒトTE-NSPを使用した時に(
図17Eを参照されたい)、ドーパミン作動性凝集物、軸索路、および線条体末端にある軸索において、さらに高レベルの誘発性ドーパミン放出が観察された(
図17F~17G)。記録/刺激領域に基づいて誘発性ドーパミン濃度の有意差は観察されなかった。ラット胚線条体ニューロンの凝集物を有するヒトTE-NSPはまた線条体凝集物のドーパミン作動性神経支配も証明した(
図18A~18B)。
【0224】
要約すると、本実施例のデータから、MeHAマイクロカラムに包まれた、バイオファブリケーションによって作製されたインビトロのヒト幹細胞由来TE-NSPはドーパミンを放出し、ドーパミン作動性表現型を示し、神経突起成長を促進することが分かる。
【0225】
実施例4:MeHAマイクロカラムに包まれたヒト幹細胞由来TE-NSPのインビボ効力
本実施例は、パーキンソン病(PD)の無胸腺ラットモデルにおける、MeHAマイクロカラムに包まれたヒト幹細胞由来TE-NSPのインビボ移植および効力について説明する。移植されたTE-NSPには、インビボで長期間(少なくとも6ヶ月間)存続し、構築物から線条体に神経支配することができ、生理学的機能を証明したニューロンがあった。
【0226】
ヒトTE-NSPをPDラットモデルに移植した。移植して12週間後に、動物を屠殺し、組織学的評価のために脳切片を入手した。
図19A~19Dに示したように、構築物への宿主TH+/hNCAM-細胞の内部成長と、宿主の黒質領域へのTE-NSPの外部成長が観察された。TE-NSPの組織学的評価から、移植して12週間後に軸索路が維持されることも分かった(
図19E)。ラットに移植されたTE-NSPにおける凝集物面積も評価した。
図19G~19Hは、移植して12週間後にTE-NSPにおいてニューロン凝集物面積の約80%が保存されたことを示す。
【0227】
このラットモデルではTE-NSP移植時に軸索保存と線条体神経支配も観察された。移植して12週間後に、保存された内側の軸索路と線条体の近くで終わる軸索が観察された(
図20A~20G)。ヒトTE-NSPを移植すると、対照である無細胞マイクロカラム移植と比較して線条体神経再支配が起こった(
図20N)。ヒトTE-NSPによる線条体神経再支配は、3つ全ての関心領域(ROI):線条体全体(
図20N、上のパネル)、背側線条体(
図20中央のパネル)、および移植構築物の末端の近くにある線条体縁端部(
図20N、下のパネル)にわたって観察された。次に、TE-NSP移植後に、病変のあるラットにおいて線条体ドーパミンレベルを評価した。
図21D~21Gは、無細胞マイクロカラムが移植された対照動物または修復がなかった対照動物と比較してTE-NSP移植ラットの線条体における線条体ドーパミン放出が最大(2倍超)であったことを示す。
【0228】
次に、スケールアップしたヒトTE-NSPを作製した。
図22A~22Cは、5.3×10
4個のニューロンと1.5cm長のドーパミン作動性軸索路がある凝集物を有する、インビトロでのヒトTE-NSP中の長距離ドーパミン作動性軸索路におけるドーパミン作動性ニューロンマーカーの発現を示す。パーキンソン病の無胸腺ラットモデルにおいて、スケールアップしたヒトTE-NSPを黒質線条体路に沿って6ヶ月間移植した。移植して6ヶ月後にTE-NSPにおいてヒトドーパミン作動性ニューロンが観察された(
図23)。移植して6ヶ月後にヒトTE-NSPの中には長い軸索路も保存されていた(
図24C~24C)。このデータから、TE-NSPにおいてヒトドーパミン作動性ニューロンがインビボで少なくとも6ヶ月間持続し、維持されることが証明される。
【0229】
スケールアップTE-NSPはまたインビボで6ヶ月間持続することに加えて、移植されたスケールアップTE-NSPから背側線条体へのヒトドーパミン作動性投射の外部成長も生じることも観察された(
図25A~25B)。黒質領域へのスケールアップTE-NSPの生存および成長を
図26A~26Cに示した。組織学的染色はTH+ニューロンおよび軸索(赤色)ならびにhNCAM+ニューロンおよび軸索を示しており、このことから、移植TE-NSPの黒質末端から宿主脳への成長が存在することが分かる。移植TE-NSPからの誘発性ドーパミン放出も評価した。
図27A~27Dは、移植して6ヶ月後に、電気刺激後に移植TE-NSPの内部に放出されたドーパミンの濃度のエクスビボ高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)測定を示す。電気刺激を、示された部位で行った。データから、電気刺激時に全ての試験部位:背側線条体の縁端部、内側の背側線条体、TE-NSPの凝集物末端、およびTE-NSPの軸索路領域においてTE-NSPからドーパミンが放出されたことが分かる。
【0230】
要約すると、本実施例のデータは、ヒトスケールのヒトiPSC由来TE-NSPのインビボ効力を示している。(例えば、神経再支配(
図20Nを参照されたい)および誘発性ドーパミン放出(
図27A~27Dを参照されたい)によって評価されたように)TE-NSPの長期持続、外部成長、および機能性が証明されたことから、TE-NSP構築物の臨床開発、例えば、ニューロン成長および/または修復を促進するための臨床開発が支持される。
【0231】
列挙された態様のリスト
態様1. 前もって形成された神経ネットワークを含む構築物であって、
ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルを含む外側鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含む、マイクロカラム;および
前記マイクロカラムの内部にある複数のニューロン
を含む、前記構築物。
態様2. 生体適合性である、態様1の構築物。
態様3. 移植可能な構築物である、態様1の構築物。
態様4. ヒドロゲル鞘が円筒形である、態様1の構築物。
態様5. 前記ECMコアが、ヒドロゲル鞘の内腔を実質的に満たしている、態様1の構築物。
態様6. 前記マイクロカラムが、その長手方向の実質的にまっすぐな線に沿って方向付けられている、態様1の構築物。
態様7. 前記マイクロカラムが、その長手方向の湾曲した通路に沿って方向付けられている、態様1の構築物。
態様8. 前記複数のニューロンが、前記マイクロカラムの第1の末端の近くに実質的に局在する細胞体を有し、前記マイクロカラムの長さの少なくとも一部に沿って長軸方向に軸索を伸長している、態様1~7のいずれか1つの構築物。
態様9. 前記複数のニューロンが、1つまたは複数の三次元凝集物を構成する、態様8の構築物。
態様10. 前記軸索が、前記ヒドロゲル鞘の内部に配置され、前記ヒドロゲル鞘の内腔に沿って前記第1の末端にある前記ニューロンから反対側の末端に向かって長軸方向に伸長している、態様8の構築物。
態様11. 前記軸索が、前記コアの前記ECMを通って成長し、かつ/または前記ヒドロゲル鞘の内面と前記コアの前記ECMとの間にある境界面に沿って成長する、態様8の構築物。
態様12. 前記ニューロンとそれから伸長している軸索が、対象に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する、態様8の構築物。
態様13. 前記対象がヒト対象である、態様12の構築物。
態様14. 前記ニューロン細胞とそれから伸長している軸索が、ヒト対象の脳に存在する長距離軸索路を再現する細胞構造を有する、態様13の構築物。
態様15. 前記ニューロン細胞とそれから伸長している軸索が、対象の脳における黒質と線条体の間にある天然軸索経路を模倣する細胞構造を有する、態様8の構築物。
態様16. 前記対象がヒト対象である、態様15の構築物。
態様17. 軸索路が、前記マイクロカラムを介して予め方向付けられるかまたは予め方向付けられている、態様8の構築物。
態様18. 前記ニューロンが、それから伸長している前記軸索とともに、バイオファブリケーションによって作製された(biofabricated)マイクロ組織を形成する、態様8の構築物。
態様19. 前記複数のニューロンの前記軸索が、前記マイクロカラムの長さの少なくとも50%に沿って伸長している、態様8~18のいずれか1つの構築物。
態様20. 前記軸索が、前記マイクロカラムの長さの少なくとも75%に沿って伸長している、態様19の構築物。
態様21. 前記軸索が、前記マイクロカラムの長さの90%に沿って伸長している、態様19の構築物。
態様22. 前記マイクロカラムの外径が約500マイクロメートル~約2,500マイクロメートルである、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様23. 前記マイクロカラムの外径が約500~約1,500マイクロメートルである、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様24. 前記マイクロカラムの外径が約750~約1,000マイクロメートルである、態様23の構築物。
態様25. 前記外径が前記ヒドロゲル鞘の横断面の直径である、態様22~24のいずれか1つの構築物。
態様26. 前記外径が、前記ヒドロゲル鞘の横断面の直径であり、前記ヒドロゲル鞘上の任意の外側コーティングを含む、態様25の構築物。
態様27. 前記マイクロカラムの内径が約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートルである、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様28. 前記マイクロカラムの内径が約250~約1,000マイクロメートルである、態様27の構築物。
態様29. 前記マイクロカラムの内径が約500マイクロメートルである、態様27の構築物。
態様30. 前記ECMが多糖を含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様31. 前記ECMが、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ラミニン、およびマトリゲルからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様32. 前記ECMがコラーゲンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様33. 前記ECMが、約0.1~10mg/mlの濃度のコラーゲンを含む、態様32の構築物。
態様34. 前記ECMが、約1mg/mlの濃度のコラーゲンを含む、態様33の構築物。
態様35. 前記ECMがラミニンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様36. 前記ECMが、約0.1~10mg/mlの濃度のラミニンを含む、態様35の構築物。
態様37. 前記ヒアルロン酸(HA)ヒドロゲルが、架橋された修飾ヒアルロン酸であるかまたはそれを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様38. 前記修飾ヒアルロン酸がメタクリル化HA(MeHA)である、態様37の構築物。
態様39. 前記ヒアルロン酸が、約0.5~約20%wtのMeHAを含む、態様38の構築物。
態様40. 前記ヒアルロン酸が、3~5%のMeHAであるかまたはそれを含む、態様39の構築物。
態様41. 前記修飾HAが、ノルボルネン修飾HA、アクリル化HA、マレイミドHA、およびヒドロキシエチルメタクリレートHAからなる群より選択される1つまたは複数のメンバーを含む、態様37の構築物。
態様42. 外側の前記ヒドロゲル鞘が、3D印刷されかつ光重合されたMeHAシリンダーである、態様38の構築物。
態様43. 外側の前記ヒドロゲル鞘が、架橋内に1種類または複数種類の加水分解感受性化合物を含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様44. 前記1種類または複数種類の加水分解感受性化合物がエステルを含む、態様43の構築物。
態様45. 前記1種類または複数種類の加水分解感受性化合物が、乳酸、カプロラクトン、または無水物を含む、態様44の構築物。
態様46. 前記1種類または複数種類の加水分解感受性化合物が添加されているメタクリル化ヒアルロン酸を、外側の前記ヒドロゲル鞘が含む、態様43の構築物。
態様47. 1種類または複数種類の加水分解感受性化合物がHAとメタクリレート基の間に配置されている、態様45の構築物。
態様48. 外側の前記ヒドロゲル鞘が、1つまたは複数のジチオールペプチドを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様49. 前記1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部が切断に対して感受性である、態様48の構築物。
態様50. 前記1つまたは複数のジチオールペプチドの少なくとも一部が、細胞によって発現されるマトリックスメタロプロテアーゼによる切断に対して感受性である、態様48の構築物。
態様51. 前記複数のニューロンがドーパミン作動性ニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様52. 前記複数のニューロンの少なくとも50%がドーパミン作動性ニューロンである、態様51の構築物。
態様53. 前記ドーパミン作動性ニューロンが精製によって得られる、態様51の構築物。
態様54. 前記ドーパミン作動性ニューロンが中脳ドーパミン作動性ニューロンを含む、態様51の構築物。
態様55. 前記中脳ドーパミン作動性ニューロンがA9ニューロンを含む、態様54の構築物。
態様56. 前記複数のニューロンがGABA作動性ニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様57. 前記複数のニューロンの少なくとも50%がGABA作動性ニューロンである、態様56の構築物。
態様58. 前記GABA作動性ニューロンが精製によって得られる、態様56の構築物。
態様59. 前記複数のニューロンがグルタミン酸作動性ニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様60. 前記複数のニューロンの少なくとも50%がグルタミン酸作動性ニューロンである、態様59の構築物。
態様61. 前記グルタミン酸作動性ニューロンが精製によって得られる、態様59の構築物。
態様62. 前記複数のニューロンがコリン作動性ニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様63. 前記複数のニューロンの少なくとも50%がコリン作動性ニューロンである、態様62の構築物。
態様64. 前記コリン作動性ニューロンが精製によって得られる、態様62の構築物。
態様65. 前記複数のニューロンが中脳ニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様66. 前記複数のニューロンがヒトニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様67. 前記ヒトニューロンが人工多能性幹細胞(iPSC)由来ニューロンを含む、態様66の構築物。
態様68. 前記複数のニューロンがヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様69. 前記ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンが幹細胞由来ヒトA9ドーパミン作動性ニューロンを含む、態様68の構築物。
態様70. 前記A9ドーパミン作動性ニューロンの由来元である前記幹細胞が人工多能性幹細胞(iPSC)である、態様69の構築物。
態様71. 前記複数のニューロンが、少なくとも50,000個のニューロンを含む、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様72. 前記複数のニューロンが、少なくとも100,000個のニューロンを含む、態様71の構築物。
態様73. 前記複数のニューロンが、少なくとも125,000個のニューロンを含む、態様71の構築物。
態様74. 前記マイクロカラムの長さが約2~約5センチメートルである、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様75. 前記複数のニューロンの軸索が、前記マイクロカラムの長手方向に約2~約5センチメートルの距離、伸長している、態様74の構築物。
態様76. 前記マイクロカラムが、対象の黒質(SN)領域および/または線条体領域を包含する投射経路に沿った移植に適合されている、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様77. 前記SN領域が腹外側SN領域である、態様76の構築物。
態様78. 前記線条体領域が背側線条体領域である、態様76の構築物。
態様79. 前記対象がヒト対象である、態様76の構築物。
態様80. 前記ニューロンが、A9ドーパミン作動性ニューロンを含み、高速スキャンサイクリックボルタンメトリーによって測定された場合に少なくとも50nMのドーパミン放出を示す、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様81. 前記複数のニューロンが、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出し、かつ/または組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出するのに十分な量のドーパミン作動性ニューロンを有する、態様80の構築物。
態様82. 前記ドーパミン作動性ニューロンが、前記対象において移植後6週間以内に、組織中の少なくとも4ng/mgのレベルを供給するのに十分なレベルでドーパミンを放出する、態様81の構築物。
態様83. 前記複数のニューロンが、正常値の約50~60%のレベルで対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす、前記態様のいずれか1つの構築物。
態様84. 前記ニューロンが、前記対象に移植されると正常値の約50~60%のレベルで前記対象の被殻において18F-DOPA取り込みの増加をもたらす、態様83の構築物。
態様85. 正常値の約50~60%のレベルの増加が達成される、態様83または84の構築物。
態様86. 前もって形成された神経ネットワークを含む構築物を製造する方法であって、
(a)マイクロカラムの第1の末端に複数の神経前駆細胞および/またはドーパミン作動性ニューロンを播種する工程;ならびに
(b)前記マイクロカラムとその中に播種された複数の神経細胞とをインビトロで培養する工程
を含む、前記方法。
態様87. 前記構築物が生体適合性構築物である、態様86の方法。
態様88. 前記構築物が、移植可能な構築物である、態様86の方法。
態様89. 前記構築物が、インビトロテストベッドにおいて使用するためのものである、態様86の方法。
態様90. 工程(b)が、前記マイクロカラムの長手方向に前記マイクロカラムの反対側の第2の末端に向かって前記神経細胞からの軸索の成長を引き起こすことを含む、態様86の方法。
態様91. (c)前記複数の神経細胞からの軸索成長が特定の長さに達していると判定する工程、ならびに
(d)達していると判定された軸索成長の前記特定の長さに応答して、移植のために前記マイクロカラムを包装および/または提供する工程
を含む、態様86の方法。
態様92. 前記特定の長さが、予め決められた望ましい長さである、態様91の方法。
態様93. 前記特定の長さが約2~約5センチメートルである、態様91の方法。
態様94. 工程(c)が、前記マイクロカラムとその中にある神経細胞とを画像化することを含む、態様91の方法。
態様95. 工程(c)が、顕微鏡、高速スキャンサイクリックボルタンメトリー(FSCV)、染色、切片作製、または軸索密度の測定を介して画像化することを含む、態様91の方法。
態様96. 工程(a)で前記マイクロカラムに播種される前記複数の神経細胞が、神経細胞凝集物を構成する、態様91~94のいずれか1つの方法。
態様97. 前記神経細胞凝集物が、複数の、ほぼ球形の神経細胞凝集物を含む、態様96の方法。
態様98. それぞれの神経細胞凝集物が、凝集物1つあたりニューロン約100,000~約300,000個の密度で細胞を含む、態様97の方法。
態様99. 複数の前記神経細胞凝集物が、少なくとも500μmの直径を示す、態様97の方法。
態様100. 前記マイクロカラムが、ヒドロゲル鞘と、細胞外マトリックス(ECM)を含むコアとを含み、前記神経細胞が、前記コアの前記ECMと直接接触するように播種される、態様86~89のいずれか1つの方法。
態様101. 前記ヒドロゲル鞘がMeHAを含む、態様100の方法。
態様102. 前記マイクロカラムの前記ヒドロゲル鞘が、3D印刷されたシリンダーである、態様100の方法。
態様103. 工程(a)の前に前記ヒドロゲル鞘を3D印刷する工程を含む、態様100の方法。
態様104. 工程(a)の前の特定の分化期間にわたってヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を分化させ、それによって分化細胞を生成し、かつ、前記特定の分化期間にわたって前記iPSCを分化させた後に前記分化細胞を前記神経細胞として使用して工程(a)を実施する工程を含む、態様86~103のいずれか1つの方法。
態様105. 約40dd後に、分化した前記iPSCを前記マイクロカラムに播種する工程を含む、態様104の方法。
態様106. 約11~約20dd後に、分化した前記iPSCを前記マイクロカラムに播種する工程を含む、態様104の方法。
態様107. ドーパミン作動性前駆体運命が確立されてから、かつ前記細胞が通常再移植されさらに成熟された場合に、分化した前記iPSCを前記マイクロカラムに播種する工程を含む、態様104の方法。
態様108. 前記マイクロカラムおよびまたは細胞が、態様1~85に記載された1つまたは複数の特徴を有する、態様86~107のいずれか1つの方法。
態様109. ニューロンの第1の集団とそれから成長した軸索とを含む、態様1~85いずれか1つの構築物;および
前記第1の集団とシナプスを形成した、ニューロンの第2の集団
を含む、インビトロテストベッド。
態様110. 前記ニューロンの第2の集団が線条体ニューロンを含む、態様109のインビトロテストベッド。
態様111. 前記ニューロンの第1の集団が播種された末端とは反対側の構築物末端に、前記ニューロンの第2の集団が播種される、態様109のインビトロテストベッド。
態様112. 前記ニューロンの第1の集団からの軸索が、前記構築物の長手方向に前記構築物の第1の末端から長軸方向に伸長しており、前記構築物の反対側の第2の末端に播種された前記第2の集団とシナプスを形成する、態様109のインビトロテストベッド。
態様113. 前記第1の集団の細胞体が、前記構築物の第1の末端のかなり近くに局在している、態様109のインビトロテストベッド。
態様114. 対象において黒質と線条体との間の経路を形成するニューロンの集団を少なくとも部分的に置き換える方法であって、態様1~85のいずれか1つに記載された構築物を少なくとも1つ前記対象の脳に移植する工程を含む、前記方法。
態様115. 前記対象の1つまたは複数の状態を寛解させる工程を含む、態様114の方法。
態様116. 前記1つまたは複数の状態を寛解させる工程が、前記対象の運動機能を回復させることを含む、態様115の方法。
態様117. 前記1つまたは複数の状態を寛解させる工程が、前記対象の疼痛を低減することを含む、態様115の方法。
態様118. 前記1つまたは複数の状態を寛解させる工程が、前記対象の振戦を低減することを含む、態様115の方法。
態様119. 1つの構築物の少なくとも一部を前記対象の黒質内に移植する工程を含む、態様114~118のいずれか1つの方法。
態様120. 移植後に、前記構築物の前記ニューロンが前記対象の脳において宿主ニューロンとシナプスを形成する、態様114~119のいずれか1つの方法。
態様121. 前記構築物の前記ニューロンとシナプスを形成する前記宿主ニューロンが、前記対象の背外側線条体中に中型有棘神経細胞(MSN)を含む、態様120の方法。
態様122. 前記対象がヒト対象である、態様114~121のいずれか1つの方法。
態様123. 前記構築物を少なくとも1つ移植する工程が、MRIガイド下神経外科手術を使用することを含む、態様114~122のいずれか1つの方法。
態様124. 前記構築物を少なくとも1つ移植する工程が、複数の構築物を移植することを含む、態様114~123のいずれか1つの方法。
態様125. 前記複数の構築物を移植することが、複数の構築物を前記対象の脳の1つだけの半球に移植することを含む、態様124の方法。
態様126. 前記複数の構築物を移植することが、1つまたは複数の構築物を前記対象の脳のそれぞれの半球に移植することを含む、態様125の方法。
態様127. 1~3個の構築物を前記対象の脳のそれぞれの半球に移植する工程を含む、態様126の方法。
態様128. 第1の半球における移植が、第1の外科手術を介して行われ、第2の半球における移植が、第2の外科手術を介して行われ、前記第1の外科手術とは異なる時点において行われる、態様126の方法。
態様129. 前記第2の外科手術が、前記第1の外科手術の約6ヶ月後に行われる、態様128の方法。
態様130. 対象に移植された場合に、1つまたは複数のニューロンが、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約7ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約2ヶ月間、または少なくとも約1ヶ月間、インビボで生存することを特徴とする、態様1~85のいずれか1つの構築物。
態様131. 前記1つまたは複数のニューロンが、例えば、実施例3または実施例4において評価されるように軸索構造または軸索路を維持する、態様130の構築物。
態様132. 前記1つまたは複数のニューロンが電気刺激時にドーパミンを放出する、態様130または131の構築物。
態様133. 対象に移植された場合に、前記構築物からの1つまたは複数のニューロンが、前記構築物が移植された組織中または臓器中に成長する(例えば、組織または臓器を神経支配する)、態様1~85のいずれか1つの構築物。
態様134. 1つまたは複数のニューロンの外部成長が前記組織または臓器の生理学的特徴の改善をもたらす、態様133の構築物。
態様135. 前記組織または臓器の生理学的特徴の改善が、(1)前記構築物が移植される前;(2)1つまたは複数のニューロンが無いことを除いて類似する構築物の移植;または(3)MeHAが無いことを除いて類似する構築物の移植と比較した時の改善である、態様134の構築物。
態様136. 前記生理学的特徴が、(1)ニューロスタンスミッター(neurostansmitter)の放出;(2)シナプスの存在;(3)シグナルを伝達する能力;または(4)その組み合わせを含む、態様134または135の構築物。
【0232】
均等物
好ましい態様が特定の用語を用いて説明されたが、このような説明は例示目的にすぎず、以下の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく変更または変化が加えられ得ると理解しなければならない。
【0233】
参照による組み入れ
本明細書において引用された全ての特許、公開された特許出願、および他の参考文献の全ての内容は、その全体が、参照により本明細書に明確に組み入れられる。
【国際調査報告】